市販直後調査 平成28年11月∼平 成 29年5月 日本標準商品分類番号 873999 リクラスト の適正使用 ® ■ 急性期反応 ■ 腎機能障害 ■ 低カルシウム血症 ■ 顎骨壊死 ※注意−医師等の処方箋により使用すること 【 警 告】 急性腎不全を起こすことがあるため、 以下の点に注意すること。 (「重大な副作用」の項参照) 1.各投与前には、 腎機能(クレアチニンクリアランス等) 、 脱水状態(高熱、 高度な下痢及び嘔吐等) 及び併用薬 (腎毒性を有する 薬剤、 利尿剤) について、問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認し、 本剤投与の適否を判断すること。 ( 「慎重投与」 、 「重要な基本的注意」 「相互作用」 、 の項参照) 2.投与時には、 点滴時間が短いと急性腎不全の発 現リスクが高くなることから、 必ず15分間以上かけて点滴静脈内投与する こと。 ( 「用法・用量」 の項参照) 3.急性腎不全の発現は主に投与後早期に認められているため、 腎機能検査を行うなど、 患者の状態を十分に観察すること。 ( 「重要な基本的注意」の項参照) 【 禁忌(次の患者には投与しないこと)】 1.本剤の成分又は他のビスホスホネート製剤に対し、過敏症の既往歴のある患者 2.重度の腎障害(クレアチニンクリアランス35mL/min未満) のある患者[急性腎不全を起こすことがある] (「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 3.脱水状態 (高熱、 高度な下痢及び嘔吐等) にある患者 [急性腎不全を起こすことがある] (「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 4.低カルシウム血症の患者(「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 5.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 ( 「妊婦、 産婦、 授乳婦等への投与」 の項参照) はじめに リクラスト(一 般 名:ゾレドロン酸水和物)は、ノバルティス ファーマAG が創製した、側 鎖 ® にイミダゾール環を有する第 三世 代 の 窒 素含有ビスホスホネート系 薬 剤です。国内では 2010年に、旭化成ファーマ株式会社が「骨粗鬆症」を効能・効 果とするリクラスト点滴 静注 の開発に着手し、2016 年 9 月に「骨粗鬆症 」を効 能・効 果として 製 造 販 売 承認を 取 得し ました。 リクラストの日本人骨粗鬆症患者に対する有効性および安全 性は、国内第III相臨床試験に より検 証されておりますが、処方に際して注意していただきたい事 項があります。 本冊子はリクラストを、より安 全にご使用いただくために作成いたしました。ご処方にあた り本冊子の内容を十 分ご 理解いただきたくお 願 い申し上げます。 ≪監修≫ 急性期反応 岸本 英彰 先生 医療法人十字会 野島病院 整形外科 腎機能障害 / 低カルシウム血症 稲葉 雅章 先生 大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学(第二内科学教室)教授 顎骨壊死 田口 明 先生 松本歯科大学 歯科放射線学講座 教授 2 目 次 警告/ 禁忌 / 効能・効果 / 用法・用量 / 使用上の注意 4 患者への 確認および指導内容 6 1. 急性期反応 8 (1)急性期反応とは 8 (2)急性期反応の発現機序 8 (3)急性期反応の対策フロー (4)急性期反応の対策 (5)国内第Ⅲ相臨床試験における急性期反応の発現状況 2. 腎機能障害 (1)BP 製剤と腎機能障害 (2)リクラストと腎機能障害 (3)腎機能障害の対策 (4)国内第Ⅲ相臨床試験における腎機能関連事象の発現状況 (5)急性腎不全の代 表 症 例(外国、自発 報告) 3. 低カルシウム血症 (1)BP 製剤と低カルシウム血症 (2)リクラストと低カルシウム血症 (3)低カルシウム血症の対策フロー (4)国内第Ⅲ相臨床試験における低カルシウム血症の発現状況 4. 顎骨壊死 (1)顎骨壊死とは (2)顎骨壊死の対策フロー (3)顎骨壊死の発現リスク軽減 (4)国内臨床試験における顎骨壊死の発現状況 (5)海外第Ⅲ相臨床試験における顎骨壊死の発現状況 (6)市販後における顎骨壊死の発現状況(海外) 9 10 12 16 16 16 18 19 20 21 21 21 22 23 24 24 25 26 27 27 27 医薬品リスク管理計画 (Risk Management Plan:RMP) 本資材はRMPの一環として位置づけた資材です 3 警告 / 禁忌 【 警 告】 急性腎不全を起こすことがあるため、以下の点に注意すること。 (「重大な副作用」の項参照) 1.各投与前には、 腎機能(クレアチニンクリアランス等) 、脱水状態(高熱、高度な下痢及び嘔吐等) 及び併用 薬(腎毒性を有する薬剤、 利尿剤) について、 問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認し、 本剤投与 の適否を判断すること。 (「慎重投与」 「重要な基本的注意」 、 「 、相互作用」の項参照) 2.投与時には、点滴時間が短いと急性腎不全の発現リスクが高くなることから、必ず15分間以上かけて 点滴静脈内投与すること。 ( 「用法・用量」の項参照) 3.急性腎不全の発現は主に投与後早期に認められているため、 腎機能検査を行うなど、患者の状態を 十分に観察すること。 (「重要な基本的注意」の項参照) 【 禁忌(次の患者には投与しないこと)】 1.本剤の成分又は他のビスホスホネート製剤に対し、過敏症の既往歴のある患者 2.重度の腎障害(クレアチニンクリアランス35mL/min未満) のある患者 [急性腎不全を起こすことがある] (「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 3.脱水状態(高熱、高度な下痢及び嘔吐等) にある患者[急性腎不全を起こすことがある] ( 「重要な基本的 注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 4.低カルシウム血症の患者(「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 5.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 (「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照) 効能・効果 / 用法・用量 ■効能・効果 骨粗鬆症 【 効 能・効果に関連する使用上の注意】 1. 本剤の適用にあたっては、 日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象とす ること。 2. 本剤は1年に1回間欠投与する薬剤であり、本剤の有効成分であるゾレドロン酸水和物は骨に移行し長期にわたり体内 に残存する。本剤の各投与前に問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認した上で、ベネフィットとリスクを考慮 し、本剤による薬物治療が必要とされる患者を対象とすること。 (「重要な基本的注意」の項参照) ■用法・用量 通常、成人には 1年に1回ゾレドロン酸として5mg を15分以上かけて点滴静脈内 投与する。 使用上の注意 1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) 次に掲げる急性腎不全を起こすおそれがある患者(「重大な副作用」の項参照) (1)中等度の腎機能障害のある患者 (2)腎毒性を有する薬剤又は利尿剤を併用している患者 (3)本剤の投与により、腎機能障害や急性期反応を含む脱水症状を起こしたことのある患者 4 2. 重要な基本的注意 (1)本剤の投与により急性腎不全を起こすことがあり、その多くは本剤投与開始 1ヵ月以内に発現している ので、本剤の各投与に際しては 以下の点に注意すること。 (「重大な副作用」の項参照) 1)投与前に、 腎機能(クレアチニンクリアランス等)並びに脱水状態(高熱、 高度な下痢や嘔吐等)を確認し、 投与の適否を判断すること。脱水状態にある場合は、本剤投与前にあらかじめ処置すること。 2)投与前及び投与後早期は十分な水分補給をするよう指導すること。 3)投与後 1∼ 2 週を目安に腎機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察し、それ以降も患者の状態に 応じて定期的に検査を行うなど、観察を十分に行うこと。異常が認められた場合は適切な処置を行う こと。 特に、急性腎不全を起こすおそれがある患者(中等度の腎機能障害のある患者、腎毒性を有する薬剤又 は利尿剤を併用している患者)や本剤の投与により腎機能障害や急性期反応を含む脱水症状を起こし たことのある患者については、投与後1∼2週に腎機能検査を行うこと。 投与後早期に急性期反応を含む脱水症状が認められた場合には、 医療機関を受診するよう指導すること。 (2)低カルシウム血症やリン、マグネシウム等のミネラル代謝障害がある場合には本剤投与前にあらかじめ治 療すること。 (3)本剤投与中は必要に応じてカルシウム及びビタミンD を補給すること。また、 本剤投与後に血清カルシウム 値が低下する可能性がある(主に投与後14 日以内)ので、血清カルシウム値の変動に注意すること。 (「重 大な副作用」の項参照) (4)骨粗鬆症の発症にエストロゲン欠乏、加齢以外の要因が関与していることもあるので、治療に際してはこの ような要因を考慮する必要がある。 (5)ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることが ある。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現して いる。リスク因 子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、 口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。 本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲 的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に歯科処置が必要になった場合に は、 できる限り非侵襲的な歯科処置を受けるよう指導すること。 また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に 告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けること等を患者に十分説明し、異常が認められた場合には、 直ちに歯 科・口腔外科を受診するように指導すること。 (「重大な副作用」の項参照) 。 (6)ビスホスホネート系薬剤を使用している患者において、外耳道骨壊死が発現したとの報告がある。これらの 報告では、耳の感染や外傷に関連して発現した症例も認められることから、外耳炎、耳漏、耳痛等の症状が 続く場合には、耳鼻咽喉科を受診するよう指導すること。 (「重大な副作用」の項参照) (7)ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨 幹部の非定型骨折が発現したとの報告がある。これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前 に大腿部や鼠径部等において前駆痛が認められている報告もあることから、このような症状が認められ た場合には、X 線検査等を行い、適切な処置を行うこと。また、両 側 性の骨折が生じる可能性があるこ とから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の大腿骨の症状等を確認し、X線検査を行う等、慎 重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合に は適切な処置を行うこと。 (「重大な副作用」の項参照) (8)本剤の投与間隔 は1年と長いことから、以下の点に注意すること。 1)本剤投与後には副作用の発現に注意し、次回投与までの間も患者の状態を十分に観察すること。 2)ビスホスホネート系薬剤と重複して投与しないように注意すること。 5 患者への確認および 指導内容 1. 2. 【効能・効果に関連する使用上の注意】 本剤の適用にあたっては、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象と すること。 本剤は1年に 1回間欠投与する薬剤であり、本剤の有効成分であるゾレドロン酸水和物は骨に移行し長期にわたり体 内に残存する。本剤の各投与前に問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認した上で、ベネフィットとリスクを 考慮し、本剤による薬物治療が必要とされる患者を対象とすること。 (「重要な基本的注意」の項参照) 本剤は骨粗鬆症と確定診断された患者にご使用ください。 本剤の有効成分であるゾレドロン酸は投与後速やかに骨に移行し、残りは腎から排泄されます。骨に移行したゾレドロン 酸は、長期にわたり体内に残存します。本剤の投与前には毎回患者の状態を確認し、治療によって得られるベネフィットと 副作用発現等のリスクのバランスを考慮したうえで 投与してください。また、次回投与予定日まで来院間隔が空く場合でも、 定期的に患者の状態を観察してください。 本剤投与前には患者に問診・検査などを行い、以下の点をご確認ください。 禁 忌 1.本剤の成分又は他のビスホスホネート製剤に対し、過敏症の既往歴のある患者 2.重度の腎障害(クレアチニンクリアランス35mL/min未満) のある患者 [急性腎不全を起こすことがある] (「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 3.脱水状態(高熱、高度な下痢及び嘔吐等) にある患者[急性腎不全を起こすことがある] ( 「重要な基本的 注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 4.低カルシウム血症の患者(「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 5.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 (「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照) 上記の禁忌に該当しないことをご確認ください。 併用薬の 有無 カルシトニン製 剤(エルカトニンなど) 、アミノグリコシド系 抗 生物質(ゲンタマイシン など) 、シナカルセト:血清カルシウムが 低下するおそれがあります。→p.21 利 尿剤(フロセミドなど) :利尿作用を有する薬剤により、体液量が減少し脱水状 態にな ることがあります。→p.17 腎 毒 性を有する薬 剤(NSAIDsなど) :腎機 能が低下し、本剤 の 排泄が低下することが 考えられます。→p.17 抗がん剤やステロイド治療、放射線治療の有無:顎骨壊死の危険因子とされています。 →p.26 6 口腔衛生状態および歯科治療歴 歯周病や歯肉膿瘍などの炎症疾患の有無 侵襲的歯科治療(抜歯、 歯科インプラント埋入、 根尖外科手術、歯周外科手術など)の有無 ※ 口腔 衛 生 状 態の不良および侵襲的歯科治療は顎骨壊死の危険因子とされています。→p.26 本剤による治療中は患者に以下の点を指導してください。 本剤投与前後には、 こまめに水分を補給し、脱水状態に気を付けること 気になる症状があれば、次回来院日を待たずに来院し、医師の診察を受けること 特に、本剤投与後早期に急性期反応を含む脱水症状(高熱、高度な下痢や嘔吐等) が 認め られた場合は、医療機関を受診すること 歯科治療、特に抜歯などの侵襲的治療が必要となった場合は、患者さん用カードを提示 して歯科医師に本剤による治療中であることを連絡すること 本剤の投与中には他のビスホスホネート製剤の投与はできないので、 もし他の医療機関 で処方されたビスホスホネート製剤が手元に残っていても服用しないこと 他の医療機関を受診したり、薬局で薬の処方を受けたりする場合は、リクラスト患者さん 用カードやお薬手帳用シールを提示することで本剤による治療中であることを医師や 薬剤師に連絡し、薬剤の飲み合わせをチェックしてもらうこと 7 1. 急性期反応 1 急性期反応とは 急性期反応(Acute Phase Reaction:APR) とは、ビスホスホネート製剤(BP 製剤)の投与後数日以内に みられる発 熱、筋肉痛、 インフルエンザ様疾患などを指します。程度はいずれも軽∼中等度で、投与後 3日以内 に発 現し、発現後 2∼3日で 消失する 一 過 性の症 状です。 初回投与に比べ2回目以降の投与では発現率は低下します。また、BP製剤投与歴のある患者では発現率は低 下します。 急性期反応の代表的な症状 発 熱 、筋 肉 痛 、関 節 痛 、悪 心 、頭 痛 、インフルエンザ 様 症 状 な ど 2 急性期反応の発現機序 1 BP製剤がメバロン酸経路下流における ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS) を阻害します。 2 その結果、 イソペンテニルピロリン酸 (IPP)が 蓄積します。 3 蓄積したIPP により 末梢血中のγ,δ-T 細胞が 増殖・活性化されます。 4 γ,δ-T 細胞の作用により 炎症 性サイトカイン (IL-6、TNF-α、INF-γなど) が放出され、 5 炎症反応が誘発されます。 3 γ,δ-T 細胞 増殖・活性化 メバロン酸 2 BP製剤 炎症性 サイトカイン 放出 5 APR 蓄積 イソペンテニルピロリン酸 (IPP) 1 4 ジメチルアリルピロリン酸 (DMAPP) FPPS ゲラニルピロリン酸(GPP) 1 FPPS IPP ファルネシルピロリン酸(FPP) IPP ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP) 細胞骨格形成、細胞内情報伝達 Green JR: J Organomet Chem 2005; 690: 2439-2448. より作成 急性期反応はBP 製 剤 が 骨 組 織に沈着する前の血中存在時に発現します。リクラストは投与後24時間以内 に45.3% が 腎から排泄され、残りはすみやかに骨組織に沈着するため、血中作用は一過性で消失し、APR の発現も 3日以降急速に消失します。 8 3 急性期反応の対策フロー リクラスト投与前および 投与後は、以下を参考に適切な処置を行ってください。 リクラスト投与前 急性期反応の発現リスクが高い患者は、特にご注意ください。 ● BP 製剤の投与経験がない方 ● 比較的若い年齢層の方(65歳未満) ●血 清25(OH) D 値が低い方 Reid IR, et al.: J Clin Endocrinol Metab 2010; 95: 4380-4387. より引用 標準投与量のアセトアミノフェン、または NSAIDs 投与で、 急性期反応の症状が抑制・軽減されるという報告があります。 ガイドライン ACR medication guide:Zoledronic Acid(米国リウマチ学会) 「Patients must be appropriately hydrated prior to treatment. Acetaminophen after administration may reduce the incidence of acute reaction (eg, arthralgia, fever, flu-like symptoms, myalgia).」 AACE medical guidelines for clinical practice for the diagnosis and treatment of postmenopausal osteoporosis.(米国臨床内分泌学会) 「Acetaminophen given at the time of treatment may reduce the likelihood of these reactions and can also be given to treat the symptoms.」 Clinician s Guide to Prevention and Treatment of Osteoporosis 米国骨粗鬆症財団(NOF) 「Patients should be well hydrated and may be pre-treated with acetaminophen to reduce the risk of an acute phase reaction (arthralgia, headache, myalgia, fever).」 論 文 Wark JD, et al.: Osteoporos Int 2012; 23: 503-512. 「H2407 試験において、ゾレドロン酸のみ投与した群の63.5%が体温上昇を認めたのに対し、アセトアミノフェン併用群は 37.3%、イブプロフェン併用群は36.8%と、発現率が有意に低かった(P<0.0001、Fisherの直接確率検定)」 リクラスト投与時 患者に以下のことをご説明ください。 ( 次ページ以降参照) ● 急性期反応と呼ばれる一過性の症状が現れることがある ● リクラスト投与前後には十分水分補給を行うこと ● 症状が現れたら医療従事者に相談すること 患者へ注意喚起の際は、 患者説明用資材「リクラスト® で 治 療 される患者さん へ 」 患者向け冊子「リクラスト® の治療を始める患者さんへ 」 「リクラスト® の 治療を始める 患者さんへ ご注意いただきたいこと」 をご活用ください。 患者説明用資材 患者向け冊子 1 患者向け冊子 2 患者から訴えがあった場合 症状に応じて適切な処置を行ってください。 国内第Ⅲ相臨床試験では、治験薬投与後の発熱の対処薬として、 イブプロフェン200mg が必要に応じて投与されました。 9 4 急性期反応の対策 ●急性期反応について患者への説明 急性期反応は、投与後早期に比較的高率に発 現することから、 リクラストの 投与を 予定している患者へ、投与時に急性期反応についてご説明をお願いいたします。 症 状 発熱、筋肉痛、関節痛、 インフルエンザ様 症状、頭 痛など 程 度 多く (約80%)は軽度(国内第Ⅲ相臨床試験) 経 過 投与 3日以内に発現し、発現後2∼3日のうちに回復する。 初回投与後に最も多く現れるが、2 回目以降の発現率は低い。 患者へのご説明には、患者説明用資材「リクラスト® で 治 療される患者さんへ」や、患者向け冊 子「リクラスト® の 治 療を始める患者さんへ 」 「リクラスト® の治 療を始める患者さんへ ご注意いただきたいこと」をご 活 用く ださい。 患者説明用資材 患者向け冊子 1 患者向け冊子 2 ※ 身 体 の 不 調について記 入するページ があります。 ●投与前後の十分な水分補給 投与前後に十分な水分補給をするよう、患者へご指導ください。 適切な量の水分摂取は、米国骨粗鬆症財団(NOF)など 海外でも推奨されており、脱水を防ぐためにも重要 です。高齢者は脱水を起こしやすく、特に夏場は注意が必要です。 投与前の 500mL 以上の 飲水が急性期反応軽減に有効とする報告 1)があります。 1)Pei FX, et al.: Osteoporos Int 2014; 25 610-611. 10 ●解熱剤の使用 急性期反応は、アセトアミノフェンや NSAIDs により 軽減されたとする報告があります。 ※ ※NSAIDsは腎毒性を有する薬剤であり、添付文書において併用注意とされています。 なお、 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」 ( 日本老年医学会) では、 NSAIDsの使用はなるべく短期間にとどめることが推奨されて います。 解熱剤併用による急性期反応の抑制効果【H2407試験】 海外で実施された臨床試験(H2407 試験) では、 ゾレドロン酸 投与後 3日以内に口腔体温が 1℃ 以上上昇し、 かつ 37.5℃を超えた患者の割合は、ゾレドロン酸+プラセボ群の 63.5%(87/137例)に対し、ゾレドロン 酸+アセトアミノフェン群は37.3% (50/134 例) 、 ゾレドロン酸+イブプロフェン群は36.8%(50/136例) と、 いずれも有意に低いことが示されました(p<0.0001、Fisher の直接確率検定) 。 アセトアミノフェンまたはイブプロフェンの併用によって体温上昇の開始が遅くなり、体温上昇のピークも低下 しました。上昇した体温の回復も速やかでした。 (℃) 1.0 ゾレドロン酸+アセトアミノフェン群 ゾレドロン酸+イブプロフェン群 0.9 ゾレドロン酸+プラセボ 群 0.8 プラセボ +プラセボ 群 口腔体温の変化 0.7 平均値±標準誤差 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0 5 10 15 24 29 34 39 経過 時 間 48 53 58 63(時間) Wark JD, et al.: Osteoporos Int 2012; 23: 503-512. H2407 試験概要 試 験:国際共同、無作為化、 プラセボ対照、 ダブルダミー、二重盲検、並行群間比較試験 対 象:閉経後骨減少症 ※の女性患者(n=481) 方 法:ゾレドロン酸を点滴静注した4時間後から、経口解熱剤(アセトアミノフェン1,000mg、 イブプロフェン400mg) またはプラセボ を3日間、 6時間ごとに投与した。 ※リクラストの効能・効果は「骨粗鬆症」です。 11 5 国内第Ⅲ相臨床試験における急性期反応の発現状況 リクラスト群における投与 3日以内に発現した急性期反応と考えられる有害事象の 発 現 率は、発 熱39.3%、関 節 痛10.5%、 怠感 8.1% 等でした。 投与3日以内に発現した急性期反応と考えられる有害事象(一 部 抜粋) 項 目 発 熱 関節痛 筋肉痛 インフル エンザ様 疾患 頭 痛 リクラスト群 (n=333) 131 (39.3) 35 (10.5) 27 (8.1) 25 (7.5) 23 (6.9) 20 (6.0) プラセボ 群 (n=332) 8 (2.4) 2 (0.6) 7 (2.1) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (0.6) n(%) 承認時評価資料 国内第Ⅲ相臨床試験(ZONE Study)概要 試 験:多施設共同、無作為化、 プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験 対 象:65歳以上89歳以下の原発性骨粗鬆症患者 665例(リクラスト群 333例、 プラセボ 群 332例) 方 法:●リクラスト (ゾレドロン酸として5mg) またはプラセボを1年間隔で2回点滴静脈内投与し、 2回目投与の1年後まで(計2年間) 観察した。 ● 治験薬投与後に38.5℃を超える発熱があり、 被 験 者がつらいと感じた場合のみ 解 熱 鎮 痛 剤(イブプロフェン200mg:ブル フ ェン ® 錠200) を、 1回1錠を2回まで服用可とした。 12 ●急性期反応の程度 リクラスト群における急性期反応と考えられる副作用の程度は、軽度が70.0∼88.5%、 中等度が11.5∼30.0%であり、重度のものは認められませんでした。 急性期反応と考えられる副作用の程度内訳(一部抜粋) 項 目 発 熱 関節痛 筋肉痛 36 27 インフル エンザ様 疾患 頭 痛 発現例数 (n=333) 131 軽 度 110 (84.0) 31 (86.1) 23 (85.2) 23 (88.5) 20 (87.0) 14 (70.0) 中等度 21 (16.0) 5 (13.9) 4 (14.8) 3 (11.5) 3 (13.0) 6 (30.0) 重 度 n(%) 0 0 0 26 0 23 0 20 0 承認時評価資料 程度の分類 軽 度:一過性で容易に耐えられる程度 中等度:通常の活動に支障をきたす程度 重 度:通常の活動を不可能にする程度 13 ●急性期反応の回復までの期間 ほとんどの急性期反応は、発現から3日以内に回復しました。 リクラスト群において、急性期反応は、発現から1∼3 日以内に 65.5%が回復し、 7 日以内には 83.3%が 回 復 しました。これらの回復までの期間は、投与1回目と 2 回目とで大きな差はありませんでした。 投与3日以内によくみられる有害事象 の回復までの期間【 国内第Ⅲ相臨床試験 】 ※ (例) 180 リクラスト群 160 プラセボ群 140 120 100 80 60 40 20 0 合計 1-3 4-7 8-14 15-30 >30 すべての 投 与 合計 1-3 4-7 8-14 15-30 >30 1回目投与 (リクラスト群 n=333、プラセボ群 n=332) (リクラスト群 n=333、プラセボ群 n=332) 合計 1-3 4-7 8-14 15-30 >30(日) 2回目投与 (リクラスト群 n=269、プラセボ群 n=287) ※ 発熱、関節痛、 、筋肉痛、 インフルエンザ様疾患、頭痛、悪寒、血中カルシウム減少、血中リン減少(いずれかの群で2.0%以上発現) (安全性解析対象集団) 承認時評価資料 14 ●急性期反応の投与回別の発現状況 リクラスト群において、急性期反応の発現率は、2回目投与時では初回投与時に比べ、 明らかに低下しました。 初回投与3日以内によくみられる有害事象(いずれかの群で2.0%以上)の発現率を、初回投与3日以内と2回 目投与3日以内で比較したところ、2回目投与時の方が初回投与時よりも発現率が低下しました。 投与回別(初回、2回目) の発現状況 【国内第Ⅲ相臨床試験】 項 目 すべての 有害事象 初回投与 3日以内の 発現 (n=333) 185 (55.6) 2 回目投与 3日以内の 発現 (n=269) 45 (16.7) n(%) 急性期反応と考えられる有害事象 発 熱 関節痛 129 34 (38.7) (10.2) 21 (7.8) 1 (0.4) インフル エンザ様 疾患 筋肉痛 23 (6.9) 22 (6.6) 19 (5.7) 18 (5.4) 15 (4.5) 2 (0.7) 3 (1.1) 9 (3.3) 4 (1.5) 3 (1.1) 頭 痛 悪 寒 (安全性解析対象集団) 承認時評価資料 15 2. 腎機能障害 1 BP製剤と腎機能障害 腎機能がBP製剤の薬物動態に及ぼす影響 BP製剤は腎排泄によって人体から消失します。腎機能が低下している場合、排泄遅延により血中濃度が上昇し、 副作用を誘発する可能性があるため注意が必要です。 BP製剤が腎機能に及ぼす影響 BP製剤は腎排泄であり、尿細管に対する毒性を有します。その 毒 性は AUC( 曲線下面積 ) よりも、Cmax( 最高 血中濃度) に依存するため、一回の投与量が高用量になるほど、また注射剤の場合には点滴時間が短くなるほど 腎毒性のリスクは高まります。 2 リクラストと腎機能障害 添付文書 腎機能障害関連部分の抜粋 【 警 告】 急性腎不全を起こすことがあるため、以下の点に注意すること。 (「重大な副作用」の項参照) 1.各投与前には、 腎機能(クレアチニンクリアランス等) 、脱水状態(高熱、高度な下痢及び嘔吐等) 及び併用 薬(腎毒性を有する薬剤、 利尿剤) について、 問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認し、 本剤投与 の適否を判断すること。 (「慎重投与」 「重要な基本的注意」 、 「相互作用」 、 の項参照) 2.投与時には、点滴時間が短いと急性腎不全の発現リスクが高くなることから、必ず15分間以上かけて 点滴静脈内投与すること。 ( 「用法・用量」の項参照) 3.急性腎不全の発現は主に投与後早期に認められているため、 腎機能検査を行うなど、患者の状態を 十分に観察すること。 (「重要な基本的注意」 の項参照) 【 禁忌(次の患者には投与しないこと)】 2.重度の腎障害(クレアチニンクリアランス35mL/min未満) のある患者[急性腎不全を起こすことがある] ( 「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) 3.脱水状態(高熱、高度な下痢及び嘔吐等) にある患者[急性腎不全を起こすことがある] ( 「重要な基本的注意」 「重大な副作用」 、 の項参照) リクラストは、国内臨床試験においてクレアチニンクリアランス (CCr)35mL/min未満の患者は除外されており、 安全性が確認されていないこと、および企業中核データシート(CCDS) においてこのような患者では腎不全 を起こす可能性があることから禁忌となっています。 また、脱水状態(高熱、高度な下痢及び 嘔吐等)にある患者についても、急性腎不全を起こすおそれがあるため、 禁忌となっています。 16 【使用上の注意】 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) 次に掲げる急性腎不全を起こすおそれがある患者(「重大な副作用」 の項参照) (1)中等度の腎機能障害のある患者 (2)腎毒性を有する薬剤又は利尿剤を併用している患者 (3)本剤の投与により、腎機能障害や急性期反応を含む脱水症状を起こしたことのある患者 2.重要な基本的注意 (1)本剤の投与により急性腎不全を 起こすことがあり、 その多くは本剤投与開 始 1ヵ月以内に発現している ので、本剤の各投与に際しては以下の点に注意すること。 (「重大な副作用」の項参照) 1)投与前に、腎機 能(クレアチニンクリアランス等 )並 び に 脱 水 状 態(高 熱 、高 度な下 痢 や 嘔 吐 等)を 確 認し、投与の適否を判断すること。脱水状態にある場合は、 本剤投与前にあらかじめ処置すること。 2)投与前及び投与後早期は十分な水分補給をするよう指導すること。 3)投与後1∼2 週を目安に腎機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察し、 それ以降も患者の状態に 応じて定期的に検査を行うなど、観察を十分に行うこと。異常が認められた場合は適切な処置を行 うこと。 特に、急性腎不全を起こすおそれがある患者(中等度の腎機能障害のある患者、腎毒性を有する薬剤 又は利尿剤を併用している患者) や本剤の投与により腎機能障害や急性期反応を含む脱水症状を起 こしたことのある患者については、投与後1∼2週に腎機能検査を行うこと。 投与後早期に急性期反応を含む脱水症状が認められた場合には、医療機関を受診するよう指導する こと。 3.相互作用 併用注意(併用に注意すること) 薬剤名等 臨床症状・措置方法 機 序・危険因子 利尿剤 フロセミド ヒドロクロロチアジド等 脱水により急性腎不全の発 現リスクを 増加させるおそれがある 注)。 利尿作用を有する薬剤により、体液量 が減少し脱水状態になることがある。 腎毒性を有する薬剤 非ステロイド系消炎鎮痛剤 (インドメタシン等)等 急性腎不全の発現リスクを増加させる おそれがある 注)。 腎機能が低下し、本剤の排泄が低下す ることが考えられている。 注) 「重要な基本的注意」の項参照 4.副作用 (1)重大な副作用 1)急性腎不全、間質性腎炎、 ファンコニー症候群( 頻度不明 注)) :急性腎不全、間質性腎炎、ファンコニー 症 候 群(低リン血症、低カリウム血症、代 謝 性アシドーシス等を主症状とする近位腎尿細管障害)等の 腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止する など、適切な処置を行うこと。 注 ) 外国において発現した副作用であるため、頻度不明とした。 17 3 腎機能障害の対策 重度の腎障害(CCr35mL/min未満)のある患者、脱水状態にある患者は禁忌です。 リクラストを投与しないでください。 リクラスト投与に際し、以下を参考に適切な処置を行ってください。 リクラスト投与の検討時 以下について問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認し、本剤投与の適否を判断してください。 ・腎機能(血清クレアチニン、eGFR、クレアチニンクリアランスなど) ● ・脱水状態(高熱、高度な下痢および嘔吐など) ・併用薬(NSAIDs、 アミノグリコシド系抗生物質、ACE 阻害薬などの腎毒性を有する薬剤、 フロセミド などの利尿剤など) ● 脱水状態にある場合は、本剤投与前にあらかじめ 処 置してください。 本剤投与予定の患者に以下のことをご指導ください。 ・脱水を防ぐため、 リクラスト投与前は、 十 分な水分補給を行うこと ● リクラスト投与時 点滴 時 間が短いと急性腎不全の発現リスクが高くなることから、 必ず15分間以上かけて点 滴を行ってください。 ● 患者に以下のことをご説明ください。 ・脱水を防ぐため、 リクラスト投与当日は、十分な水分補給を行うこと ・投与後早期に急性期反応を含む脱水症状が認められた場合には、医療機関を受診すること ● リクラスト投与後 ● 患者に以下のことをご 説明ください。 ・脱水を防ぐため、 リクラスト投与後早期は、十 分な水分補給を行うこと ・投与後早期に急性期反応を含む脱水症状が認められた場合には、医療機関を受診すること ● 急性腎不全の発現は主に投与後早期に認められています ( p19∼20 をご参照ください) 。 投与後 1∼ 2 週を目安に腎機能検査を行うなど、患者の状態を十 分に観察し、それ以降も患者の状態に 応じて定期的に検査を行うなど、観察を十分に行ってください。 異常が認められた場合は適切な処置を行ってください。 特に、急性腎不全を起こすおそれがある患者(中等度の腎機能障害のある患者、腎毒性を有する薬剤ま たは利尿剤を併用している患者)や本剤の投与により腎機能障害や脱水を起こしたことのある患者に ついては、投与後1∼2 週に腎機能検査を行ってください。 18 4 国内第Ⅲ相臨床試験における腎機能関連事象の発現状況 リクラスト群において、尿蛋白増加 4.2%、血中クレアチニン増加3.0% が 認められました。 腎機能関連事象の発現状況 有害事象 副作用 リクラスト群 (n=333) プラセボ 群 (n=332) リクラスト群 (n=333) プラセボ 群 (n=332) 尿蛋白増加 21 (6.3) 4 (1.2) 14 (4.2) 2 (0.6) 血中クレアチニン増加 13 (3.9) 2 (0.6) 10 (3.0) 0 (0.0) 腎機能障害 1 (0.3) 1 (0.3) 0 (0.0) 1 (0.3) n(%) (安全性解析対象集団) 承認時評価資料 短期的な腎への影響(投与後2週間以内) リクラスト投与による腎への短期的な影響は、軽微、かつ 一 過 性のものでした。 投与後 2週 間以内に、 リクラスト群において血中クレアチニン増加 2 例 2 件、尿蛋 白増加 2例 3件が認められ ました。5 件中3件は発現後 1ヵ月以内、2件も半 年以内に処置なく回復しました。 長期的な腎への影響(投与12、24ヵ月後) リクラスト投与による腎への長期的な作用は認められませんでした。 投与12、24ヵ月後に、CCrが30mL/min未満もしくは血清クレアチニンが開始時から0.5mg/dLを 超えて 上昇もしくは尿蛋白が投与後2+を超えた患者の割合は、 リクラスト群とプラセボ 群で大きな違いはありませ んでした。 ※クレアチニンクリアランスの測定法 AK156-Ⅲ-1試験:ZONE Study において、クレアチニンクリアランスは Cockcroft-Gault 計算式を用いて算出しました。 男性:クレアチニンクリアランス=(140 - 年齢) ×体重 /(72×血清クレアチニン値※) 女性:クレアチニンクリアランス=0.85× (140- 年齢)× 体重 /(72× 血清クレアチニン値) ※ 血清クレアチニン値:酵素法で測定された場合は+0.2 (mg/dL) した値を用いる。 19 5 急性腎不全の代表症例(外国、 自発報告) 米国食品医薬品局(FDA) により、本剤の 投与と関連する腎機能障害および急性腎不全について、2007年 4月 から2009年 2月17 日までの間に有害事象報告システム(Adverse Event Reporting System、AERS) に報告された24 症例の評価が実施されています。この 評 価によると、 リクラスト投与から腎機能障害または 急性 腎 不 全 発 現 ま で の 期 間 の中央値は11日でした。また、 14 症例で腎機能障害や急性腎不全につながる リスクのある基 礎 疾 患( 糖 尿 病、うっ血 性 心 不 全、慢 性 腎 疾 患 など)を有しているか、腎 毒 性 の あ る 薬 剤 (NSAIDs など )が併用されていました。なお、 13 症例では投与後に一過性の血中クレアチニン増 加 が 認め られたと報告されています。 FDA(2009)Zoledronic Acid (Marketed as Reclast): Renal Impairment and Acute Renal Failure. Drug Safety Newsletter; Volume 2, Number 2 (Internet). http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/DrugSafetyNewsletter/ucm167883.htm Accessed 2016.8.1. 以下に代表的な症例の概要を示します。 症例概要 患 者 性・ 年齢 女・ 80 代 使用理由 原疾患 ( 合併症 ) 副作用 1回投与量 投与回数 5mg/年 閉経後 骨粗鬆症 1回 (うっ血性 心不全、 心房細動、 慢性胃炎、 胃食道 逆流性疾患、 高血圧、 高脂血症、 筋肉痛) 経過および処置 急性腎不全、インフルエンザ様疾患 投与16日前 血清クレアチニン:1.1mg/dL。 投 与 開 始 日 本剤 5mg 投与。 投 与 7 日 後 インフルエンザ様疾患発現。 悪心に対しメトクロプラミド投与。 投 与 9 日 後 心臓専門医の定期診察を受けた際、背部痛と疲労を訴える。 血清クレアチニン:4.1mg/dL、BUN:64mg/dL、 (発現日) ジゴキシンレベル:1.8nmol/L。 重度の脱水、悪心の持続、時折の嘔吐、急性腎不全および ジゴキシン毒 性 と 診 断 され入院 。輸液、メトクロプラミド 点滴、カリウム交換が行われ、併用薬のジゴキシン、 フロセ ミド、メトロニダゾールおよび ワルファリンは適切に水分が 補給されるまで休薬された。 投与10日後 血清クレアチニン:2.9mg/dL、BUN:49mg/dL、 ジゴキシンレベル:1.4 nmol/L。 投与11日後 血清クレアチニン:2.1mg/dL、BUN:32mg/dL、 INR:3.9。 投与12日後 血清クレアチニン:1.5mg/dL。 悪心は持続。 投与13日後 血清クレアチニン:1.3mg/dL、BUN:11mg/dL。 投与14日後 症状改善、脱水からの回復を確認し、退院。 併用薬:メトロニダゾール、フロセミド、ワルファリン 20 3. 低カルシウム血症 1 BP製剤と低カルシウム血症 BP 製 剤では、破骨細胞の減少により骨吸収が低下し、低カルシウム血症が発現する 可 能 性があることが知 られています。 低カルシウム血 症はしばしば 無 症 候 性です。症 状が現れる場 合には、背 部および下肢の筋肉の痙攣 が 一 般 的にみられます。血 清カルシウム濃 度 が7.0mg/dL 未満(1.75mmol/L 未満)の重度低カルシウム血症では、 テタニー、喉 頭 痙 攣、全 身 性 痙 攣を引き 起こすおそれがあります。 2 リクラストと低カルシウム 血症 添付文書 低カルシウム血症関連部分の抜粋 【 禁忌(次の患者には 投与しないこと)】 4.低カルシウム血症の患者(「重要な基本的注意」、 「重大な副作用」の 項 参照) 国内第Ⅲ相臨床 試 験において、安全性評価対象症例333 例中 1例(0.3%)に低 カルシウム血症 が 認められ ました。本 症 例における自覚症 状は 怠感のみでしたが、一 般に低カルシウム血症の初期症状は、血 清カル シウム値 の 低 下(補 正値 が8.0mg/dL 以下) 、筋 肉の脱力感、筋力の 減 退、 しび れ、手 足の 震えなどが 認めら れるとされていることから、類 薬の記 載を参考に 設定しました。 【使用上の注意】 2.重要な基本的注意 (2)低カルシウム血症やリン、 マグネシウム等のミネラル代謝障害がある場合には本 剤 投与前にあらかじめ 治療すること。 (3)本剤投与中は必要に応じてカルシウム及び ビタミンD を補給すること。また、 本剤投与後に血清カルシウム 値が低下する可能性がある (主に投与後14日以内)ので、血清カルシウム値の変動に注意すること。 (「重大 な副作用」の項参照) 3.相互作用 併用注意(併用に注意すること) 薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子 カルシトニン製剤 エルカトニン サケカルシトニン 血 清カルシウムが 急速に低下するおそれが ある 注)。 相互に作用を増強する。 アミノグリコシド系抗生物質 ゲンタマイシン等 長 期 間にわたり血 清カルシウムが 低 下する おそれがある 注)。 相互に作用を増強する。 シナカルセト 血清カルシウムが 低 下するおそれがある 注)。 相互に作用を増強する。 注) 「重要な基本的注意」の項参照 4.副作用 (1)重大な副作用 2)低カルシウム血症(0.3%):QT 延長、痙 攣、テタニー、しびれ、失見当識等を伴う低カルシウム血症が あらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合にはカルシウム剤を投与する等 の適 切な処置を行うこと。 (「重要な基本的注意」の項参照) 21 3 低カルシウム血症の対策フロー リクラスト投与前および投与後は、以下を参考に適切な処置を行ってください。 低カルシウム血症のある患者は禁忌です。 低カルシウム血症の治療を行ってからリクラストを投与してください。 リクラスト投与の検討時 低カルシウム血症の兆候を認めた場合は、 リクラスト投与前に血清カルシウム濃度を測定してください。 血清カルシウム値が低値の場合は、必要に応じてカルシウムおよびビタミンDの補給を行ってください。 低カルシウム血症ではない場合 低カルシウム血症の場合 リクラスト投与前に、低カルシウム血症の 治療を行ってください。 是 正後 リクラスト投与時 リクラスト投与により、低カルシウム血症 が 起こる可 能 性 があります。 低カルシウム血症 が 認められた場合 低カルシウム血症の治療を行ってください。 22 4 国内第Ⅲ相臨床試験における低カルシウム血症の発現状況 国内第Ⅲ相臨床試験において、安全性評価対象症例333例中1例(0.3%)に 低カルシウム血症が 認められました。 低カルシウム血症が リクラスト群の333 例 中1例(0.3%)にみられました。当該被験者は、投与開始時に9.5 mg/dL (2.4mmol/L) であった血 清カルシウム値 が初回投与の3日後に8.4mg/dL(2.1mmol/L) に低下し、 自覚症状として 怠感が認められました。 怠感は発現の3日後に消失し、血 清カルシウム値 は 発 現6日後に は 8.6mg/dL(2.2mmol/L)に回復しました。 この低カルシウム血症は軽度かつ非重篤な有害事象で、投与中止には 至りませんでした。また、低カルシウ ム血症でよく知られている口唇や手指のしび れの報告はなく、血清カルシウム値は軽微な変動でした。 国内第Ⅲ相臨床試験で低カルシウム血症と判 定されたリクラスト群の1症例 症 例 69 歳女 性 投与から発現までの期間 血 清カルシウム 値 転 帰 症 状 3日後 投与前 9.5mg/dL(2.4mmol/L) 発現日 8.4mg/dL(2.1mmol/L) 発現6日後 8.6mg/dL(2.2mmol/L) 発現から6日後に無処置で回復 (発現から3日後に消失) 承認時評価資料 23 4. 顎骨壊死 1 顎骨壊死とは1) 2003年にBP製剤による治 療を受けているがん患者、あるいは骨粗 鬆 症患者に、頻度は非常に低いが、難治 性の顎骨壊死(BRONJ)が 発 現することが 報 告されました。10年以上にわたる多くの症例の蓄 積とその検 討、解析 により、徐々にBRONJの病態に対する理解が深まり、口腔管理あるいは歯周組織や根尖の病変を除 いておけば BRONJ発 現を予防できることが 明らかとなりつつあります。また、同じく破骨細胞による骨吸収 をターゲットとするデノスマブ治療を受けている患者にもBRONJと同 様 のONJ(DRONJ)がほぼ同じ頻度 で 発 現することが 判 明したことから、日本のポ ジションペーパーにおいても両者を包括したARONJ(Antiresorptive agents-related ONJ)という名称が用いられています。 ARONJの診断 以下の診断基準を満たした場合に、ARONJと診 断します。 1)BP またはデノスマブによる治 療 歴 がある。 2)顎骨への放射線照射歴がない。また骨病変が顎骨へのがん転移ではないことが確認できる。 3)医療従事者が指摘してから8 週間以上持続して、口腔・顎・顔面領域に骨露出を認める、または口腔内、 ある いは口腔外の瘻孔から触知出来る骨を8 週間以上認める。ただしステージ 0 に対してはこの 基 準は適用さ れない。 1) ARONJの臨床症状とステージング(一部抜粋) ステージ 臨床症状 0 骨露出 / 骨壊死なし、深い歯周ポケット、歯牙動揺、 口腔粘膜潰瘍、腫脹、膿瘍形成、開口障害、下唇の 感覚鈍麻または麻痺(Vincent 症状) 、 歯原性では 説明できない痛み 1 骨露出 / 骨壊死あり、感染症状なし 2 ステージ 1に加えて、 疼痛、 あるいは 排膿などの感染症状を呈する、 口腔内瘻孔形成 3 ステージ2に加えて、 口腔外瘻孔、遊離腐骨、 下顎骨の病的骨折、 上顎洞あるいは鼻腔への穿孔 ステージ 0 のうち半分はONJに進展しないとの報告があり、 過剰診断とならないよう留意する。 62 歳、 ARONJ 患者:口腔内に骨露出を認め(上図) 、 2) X 線写真では骨溶解像と遊離腐骨を認める(下図) 。 1)骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016より 2)ビスホスホネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー( 改訂追補 2012 年版)より 24 2 顎骨壊死の対策フロー リクラスト投与前および投与後は、以下を参考に適切な処置を行ってください。 リクラスト投与前 口腔内の衛生管理を徹底することが、ARONJ 対策の最も重要なポイントです。 口腔内細菌が常在することで、顎骨は感染しやすい部位であることを考慮し、 患者へ薬剤使用に関する抜歯後治療不全の可能性を十分に説明し、以下のことを指導してください。 ● 必要に応じて、歯科検 診を受けること ● 侵 襲 的歯科治療中の方は、 リクラストの投与前に治療を終えることが 望ましいこと ARONJ 発現のリスク因子1)がある患者は、特にご注意ください。 ● 侵襲的歯科治療(抜歯、 インプラント埋入、根尖手術など)を行っている方 ● 義歯が不適合な方 ● 口腔衛生状態不良の方 ● がんや糖尿病を有する方 ● 喫煙されている方 ● ステロイド剤や血管新生阻害剤を投与されている方 リクラスト投与時 患者に以下のことをご説明ください。 ● 口腔衛生状態を良好に保つこと ● 定期的(3ヵ月に1度程度)に歯科を受診し、歯茎の状態や 歯石の除去などの処置を受けること ● 歯科受診時には、 リクラスト患者さん用カードを持 参し、 リクラストを投与していることを医療従事者に伝えること リクラスト患者さん用カード 〈侵襲的歯科治療が必要になった場合〉 口腔内を清潔に保つようご指導いただき、歯科医 師へご相 談ください。 侵襲的歯科治療後にリクラストを投与する際は、術創の上皮化が終了するのを待って、術部に感染がないことを 確認してください。 1)骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016より 25 3 顎骨壊死の発現リスク軽減 口腔 衛生状 態を良好に保ち、歯科での定期的なケアにより、ARONJの 発 現リスクは 軽 減することができます。 BP 製剤投与予定の患者に対しては、投与開始前に口腔衛生状態を良好に保つことを指 導します。 可能であれば侵襲的な歯科治療を終えてから投与を開始することが望ましいとされています。 ARONJに適切に対応するには、医 師、歯 科医 師/口 腔 外 科 医 師、薬 剤 師、看 護師、歯 科衛生士、歯 科技工士 の協力によるチーム医 療 体 制 を 築くことが 大 切です。 ARONJのリスク因子 BP製剤の中では、 悪性腫瘍に用いられる静注BP製剤の発 現リスクが高いとされています。ARONJの発現機 序は明らかにはなっていませんが、最 近、 BP製 剤とは異なる作用機 序により骨吸収を抑 制するデノスマブでも、 ONJが 発 現することが報 告され、ARONJ の 発 現はBP製 剤 に 特 有のものではなく、破骨細胞の抑制による 骨吸収抑制が関与すると考えられています。 局所性 骨への侵襲的歯科治療(抜歯、インプラント埋入、根尖手術など) 不適合義歯、過大な咬合力 口腔内衛生不良、歯周病などの炎症性疾患 ※根管治療、矯正治療はリスク因子とはされていない 薬 剤 全身性 ライフスタイル 併用薬 骨吸収抑制剤 悪性腫瘍用製剤>骨粗鬆症用製剤(BP製剤、デノスマブ) がん、糖尿病、関節リウマチ、低 Ca血症など 喫煙、飲酒、肥満 抗がん薬、副腎皮質ステロイド、血管新生阻害剤など 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016より BP製剤投与中の休薬について 国内の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016 では、 「 EBMの 観点に基づいて論理的に判断すると、侵 襲的歯科治療前の BP 製剤の休薬を積極的に支持する根拠に欠ける」 とされています。しかしその 一方、米国 口腔顎顔面外科学会が提唱している、 「 骨吸収抑制薬投与が 4 年よりも多い場合、あるいは ONJ のリスク因子 を有する骨粗鬆症患者に侵襲的歯科治療を行う場合には、 骨折リスクを含めた全身状態が許容すれば2ヵ月前 後の骨吸収抑制薬の休薬について主治医と協議、検討すること」 についても、併せて掲載されています。 26 4 国内臨床試験における顎骨壊死の発現状況 国内第Ⅰ相臨床試験および 国内第Ⅲ相臨床試験において、 顎骨壊死の発現報告はありませんでした。 5 海外第Ⅲ相臨床試験における顎骨壊死の発現状況 海外第Ⅲ相臨床試験(HORIZON-PFT )では、ゾレドロン酸 群 3,862例中 1例 (0.03% ) 、プラセボ 群3,852例中1例(0.03%)に顎骨壊死が発現しました。 ゾレドロン酸 群およびプラセボ群に各 1例ずつ ONJ が 認められました。2 例とも、 下 顎または上 顎に対する 外科的処置後に数ヵ月間にわたる治 癒の遅延が記 録されており、抗 生 物 質 や 創 面 切 除により回復しました。 ゾレドロン酸 群の 1 例は 定 期 的 な口腔ケアを受けたことがなく、さらに糖 尿 病を合 併していることが 感 染の リスクを高 めていた可 能 性 が 考えられます。また、過 去の 抜歯残根に膿瘍が認められた 被 験 者でした。 海外第Ⅲ相臨床試験(HORIZON-PFT)で ONJと判定されたゾレドロン酸群の1症例 症 例 合併症・既往歴・併用薬剤 BP製剤服用歴 臨床症状 75 歳女性、アジア人 2型糖尿病、網膜炎、神経障害合併。 直近に重度心筋梗塞の既往。定期的な歯科ケアなし。 なし 抜歯後の残根片に囲まれた膿瘍 12ヵ所のさらなる抜歯が行われた 歯 周 感 染 を 起 こ し た が 、入 院 拒 否 ● 下顎にも感染が拡大し、 骨髄炎と下顎一部の骨壊死に発展 ● 抗生物質による治療で初発から2 年後に完全寛解 ● 治療および 転 帰 ● Grbic JT, et al.: J Am Dent Assoc 2008; 139: 32-40. 海外第Ⅲ相臨床試験(HORIZON-PFT)概要 試 験:国際共同、無作為化、層化、 プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較 対 象:閉経後骨粗鬆症患者7,736例 方 法:ゾレドロン酸5mgまたはプラセボを1回15分以上かけて3年間(3回)点滴静脈内投与し、 3回目投与1年後までの3年間観察した。 なお、全患者に毎日、カルシウム1,000∼1,500mg/日およびビタミンD 400∼1,200IU/日を投与した。 6 市販後における顎骨壊死の発現状況(海外) 骨粗鬆症患者での海外市販後の ONJの報告は、 10万人・年あたり4.5人であり、経口 BP 製剤を使用している骨粗鬆症患者で報告されているONJの発生頻度(10万人・年 あたり1∼10人 )と同程度でした。 Novartis Pharmaceuticals Corporation Briefing Document for the September 9, 2011 Joint Meeting of the Advisory Committee for Reproductive Health Drugs and the Drug Safety and Risk Management Advisory Committee. 27 GARC-201600008002 2017年1月作成 KY
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