Preview 1.1 コンピュータとは何か FURTHER STUDY コンピュータの世代

TEXTBOOK 1
TEXTBOOK 1
Preview
1.1 コンピュータとは何か
FURTHER STUDY
1. コンピュータの定義
コンピュータは、人間が記述した一連の命令であるプログラム
(program)
にした
がってデータ
(data)
を処理する機械です。この
「人間が記述した一連の命令である
プログラム」
がソフトウェア
(software)
であり、「データを処理する機械」
がハード
ウェア(hardware)です。
一般に、ハードウェアはコンピュータの装置や機器の総称です。一方、ソフト
ウェアはさまざまなプログラムの総称です。プログラムとは、ハードウェアに対
する命令をコンピュータが理解できる言葉で記述したものをいいます。
コンピュータは、あらかじめコンピュータ内部にプログラムやデータを記憶し
(stored-program concept)
と
て処理を行います。この方式を、プログラム内蔵方式
いいます。
図 1-01
Preview
それぞれのテーマについて
専門知識を学習し、例文学
習への土台を固めます。
ソフトウェア
コンピュータの世代
コンピュータの発展過程は、その変遷の幅も広く変化に富んでいるため、い
くつかの世代(generation)に分類しています。世代は、ハードウェアやソフト
ウェアに顕著な進展があった場合、それを目安に区別しています。
表 1-01
−コンピュータの世代−
世代
論理素子*
第1世代
プログラム
(1940∼1950年代)
コンピュータ
代表機
記憶素子
1946年 ENIAC
ブラウン管
1949年 EDSAC
磁気ドラム
1958年 USSC
磁気コア
1960年 IBM7000シリーズ
磁気コア
1964年 IBM SYSTEM /360
磁気コア
真空管
ハードウェア
第2世代
−コンピュータとは−
(1950年代後半
太字で表示してある
のでキーワードが一
目でわかります。
∼1960年代前半)
2. 内部構成
コンピュータは、演算など、データの処理を行う中央処理装置
(CPU = Central
Processing Unit)
、プログラムやデータを記憶する主記憶装置(main memory)、
データを保存したり印刷する周辺装置(peripherals)、データの通り道となるバス
(bus)などで構成されます。
図 1-02
バス
CPU
図表を多く使った、
知識を整理しやすい
テキストです。
FURTHER STUDY
LESSONのテーマに沿った専
門用語を説明したり、学習内容
に関連した発展知識や最新技術
を解説しています。
トランジスタ
第3世代
(1960年代後半)
シリーズ
IC
第4世代**
1970年 IBM SYSTEM /370
(1970年代前半
シリーズ
∼現在)
半導体メモリ
(IC、LSI、VLSI)
1979年 IBM E シリーズ
LSI、VLSI
主記憶装置
周辺装置
(補助記憶)
周辺装置
(プリンタ)
−コンピュータの内部構成−
など
第5世代
半導体メモリ
(未来) (LSI、VLSI、
ULSI)
3. コンピュータの分類
今日コンピュータは、そのニーズの多様化にともなって大きさや性能も日々変
化しています。そのため、さまざまなコンピュータを明確に分類することは難し
くなっていますが、一般にコンピュータの用途、情報の表現形式、規模などか
ら、次のように分けることができます。
2
ULSI
その他
*
**
論理演算を行う論理回路を構成する要素を、論理素子といいます。
おもに LSI を使用した1970年代を第3.5世代と呼ぶこともあります。
3
LESSON 1
TEXTBOOK 1
1.1 コンピュータとは何か
プログラム内蔵方式
例文2
1.1 コンピュータとは何か プログラム内蔵方式
例文学習
語句を参照して専門用語を確認し、ヒントを
読みながら訳文を考えます。その後、解説を
読んで技術翻訳の手法を学びます。
The stored-program concept, which allows the computer to retain a
program and run or execute it whenever we direct it to, is an important factor
separating computers from other data-manipulating machines such as
calculators.
訳例
プログラム内蔵方式では、コンピュータがプログラムを記憶していて、人間が
コンピュータに指示すればいつでもそのプログラムを実行することができます。
この方式は、計算器など、コンピュータ以外のデータ処理機器とコンピュータと
を区別する重要な要因です。
解説
語句
stored-program concept プログラム内蔵方式、ストアードプログラム方式
記憶装置の中にあらかじめプログラムを格納しておき、逐次に処理を実行する方式。
retain 保持する、格納する、記憶する = store
program プログラム
例 1 The program is suspended. そのプログラムが中断される。
例 2 to operate under program control プログラム制御下で作動する
run 実行する、起動する、ランする、走らせる
コンピュータでプログラムを実行すること。たとえば、プログラム言語 BASIC の実行命
令は RUN であり、実行時は「ランする」という。
例 1 the running software 実行中のソフトウェア
例 2 to be processed in one run 1回の実行で処理される(*名詞としての用例)
execute 実行する
コンピュータでプログラムを走らせたり、装置を作動させたりすること。
ヒント
● allows the computer to ∼
「allow +(目的語)+ to ∼」は「(目的語)に to 以下のことを行うことを許す」が
直訳だが、「(目的語)が to 以下のことをできる」というように目的語を主語に
して訳した方が日本語としてしっくりする場合が多い。
● to retain a program and run or execute it whenever we direct it to,
2つの it がそれぞれ何を指しているのかを明確に訳し分ける。run or execute
it の it は program を、we direct it の it は computer を指す。
direct it to のあとには、run or execute (it) が省略されている。
run or execute は run と execute が同じ意味なので、or は言換えを表す。こ
の場合、run or execute をまとめて「実行する」と訳せる。
コンピュータの特徴の一つである、プログラム内蔵方式についての説明です。現代
のコンピュータの大半が、この方式を採用しています。
■ retain(l.1)
は、
「保持する」
という意味です。訳例では
「記憶する」
と意訳していますが、この
場合は直訳でもかまいません。
■ この段落は、文が1つです。1文で訳して不自然な日本語になる場合は、訳例のように2文
に分けて訳してもかまいません。1文のまま訳すなら素直に
「コンピュータがプログラムを
保持し、人間の指示にしたがって実行するプログラム内蔵方式の考え方は、コンピュータ
と、計算器などのデータ処理機器とを分かつ重要な要因です」とするか、意訳して「コン
ピュータと普通のデータ処理装置との大きな違いは、プログラムを記憶し、命令を受けると
実行する、コンピュータのプログラム内蔵方式の概念にあります」
とすることもできます。
また、前半 The stored-program concept, which allows ∼ whenever we direct it to,(l.1∼2)
は、
「コンピュータの処理方式の一つにプログラム内蔵方式があり、この方式の場合、プロ
グラムの記憶が可能であるとともに、そのプログラムを外部からの指示により実行させる
(もしくは走らせる)ことができます」とも訳せます。
■ calculators(l.4)
は、この例文の中ではコンピュータに比べて、
「プログラムを実行すること
のできない、単純な計算装置」という対立概念で使われています。calculator は「計算器」ま
たは
「電卓」
と訳します。computer は
「計算機」
です。一般にはあまり区別せずに使っていま
すが、この文のように両者を対比させている場合は必ず区別します。
「解説」
では、専門知識や技術翻訳の視点から
例文を分析し、適訳に至るプロセスを示して
います。
おもに英文法の観点か
らの
「ヒント」
です。
4
5