公益法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2013(平成 25)年度(前期) 在宅医療助成 報告書 研究テーマ 在宅において認知症者に対し男性家族介 護者が抱える葛藤と支援の方向性 研究者氏名:小池妙子(弘前医療福祉大学保健学部看護学科) 共同研究者氏名:工藤 雄行(弘前医療福祉大学短期大学部生活福祉学科) 平川 美和子(弘前医療福祉大学保健学部看護学科) 大沼 由香(弘前医療福祉大学保健学部看護学科) 寺田 富二子(弘前医療福祉大学短期大学部生活福祉学科) 東谷 康生(特別養護老人ホームサンアップルホーム) 高 祐子 (複十字病院) 申請者名:小池妙子(弘前医療福祉大学保健学部看護学科) 提出年月日:平成 26 年 8 月 29 日 本研究はA県において認知症者を自宅で介護している男性家族介護者の意識はどのように変 化したのか,そのプロセスを明らかにし支援の方向性を見出すことを目的とする.10 名の男性 家族介護者にインタビューを実施した.結果,男性介護者の社会的文化的背景の影響,地域の 特性も加味された特徴が明らかにされた.また,認知症者の示す事象(認知症の症状,言動, 日常生活行動)に対応する中で時間を掛けて認知症者に対する意識が変容していくことが文献 にみるプロセスとは異なる特徴がみられた.在宅における男性介護者に対する支援が社会的に 未整備な現状において今後の方向性として①身近な近隣住民,友人等の協力,②家族の会等へ の参加へのサポート ③男性介護者への地域ネットワーク構築のための人的・物的環境整備の必 要性が示唆された. キイワード:男性家族介護者,認知症,介護継続のプロセス,フォーマル・インフォーマルサポート Ⅰ はじめに 高齢化社会の到来に伴い 2013 年に認知症高齢者は 467 万人に達したと厚生労働省は発表 した 53).また,認知症の人の全国有病率推定値が 65 歳以上の高齢者の 15%,軽度認知障 害も 13%との結果が報告されている 54).在宅認知症者の多くは,日常生活全般に家族の見 守りを必要とするために家族は目が離せない状況に置かれている.それに伴い自宅で配偶 者等,男性家族が介護するケースも多くなっている.東谷3)によれば男性介護者は 1981 年 8.2%であったが 2010 年には 32.3%に増加したと述べている. このような中で厚生労働省は認知症対策5カ年計画として認知症になっても住み慣れた 地域で生活が継続できるように,早期診断・早期対応,地域で支える医療・介護サービス の構築,医療サービスを担う人材の育成等いわゆるオレンジプランを平成 25~29 年の計画 として策定し,現在,計画実施中である 55). 男性介護者に関する外国の研究ではクレア・アンガーソン7)が 1980 年代のイギリスの例 として介護を引き受ける女性はライフサイクル上の様々な時期であるが男性は退職後が多 く,介護する理由を男性は愛情,女性は義務として語るとしている.Harris37)(1993)は 男性介護者には①献身的な介護,②社会的孤独,③対処戦略を持つ,④達成感の 4 タイプ があるとしている.わが国では 1990 年代は奥山8)春日 10)竹永 27)の論考がみられる.奥山・ 春日は家族論の視点から男性介護者の閉鎖性や介護の構造的特性を「介護=女性役割」と みなすジェンダー規範が支配する社会としている.竹永は介護のために仕事を辞め親の介 護経験から社会資源の利用法を紹介している.介護保険の導入を契機とする「介護の社会 化」の進展において在宅介護が介護労働として位置づけられた 2000 年以降,男性介護者へ の論稿も数年の間に飛躍的に増加している.男性が介護を受け入れるプロセスは夫婦のみ, あるいは息子と親の二人暮らし世帯が多くを占めている家族形態の中では介護をせざるを 得ない現状にある(58,3%)21).誰が介護を担うかでなく,たまたま,そこにいた者が介護 を担うことになると男性が介護を担う経緯に関しての記述もある 22).男性介護者の全国調 1 査によると 21)被介護者の要介護度が重度化しており「介護の長期化」の傾向にあり,日常 生活では,家事に困っているよりも 365 日家事に追われる大変さの中で排泄,入浴介助な ど身体接触に伴う介護負担の訴えが多いとしている.永井 31)は睡眠時間が少ない,身体の 痛み,ストレスなどの心の健康が低いと心身の影響を論述している.一方,一瀬 6)は男性 介護者が介護に対し高い価値観を抱き,生きがいの源泉としてとらえる傾向が強いという 特色を明らかにした.男性介護者の介護継続要因は精神的・実質的支援,社会への近接・ 出会いと繋がりと場の提供,経済的基盤を挙げている 20)34).また,女性介護者に比べ健康 問題対処力,社会資源活用力が高い,関係調整統合力・対処行動をとる頻度が低い 1) 12) と述べている.このことから男性介護者が認知症の家族を抱え社会規範の中で孤立しがち なこと,一方で男性介護者が同性同士のつながりや社会的支援を求めていること,社会資 源の活用力が高いことなど介護を継続させるために複雑な要因があることが示唆されてい る. A県は「認知症の人と家族の会」を平成 21 年に結成し「認知症の人と家族のつどい」の 事業を実施し成果をあげている.平成 24 年度は家族の要望を受けて 「高齢者家族のつどい」 の他に「若年性認知症の人の家族」 ,「男性家族介護者」のつどいも開催し継続を要望する 声も多く参加者も徐々に増えている.会員である筆者が,家族のつどいに参加している中 で,直接聞いた話は「認知症者が夜間目覚めて動き回ることなどに付き合うため夜間眠れ ない」などの介護疲れの訴えや介護方法の相談,介護保険・医療保険・成年後見制度など 医療福祉制度に関する問題,行政の情報提供への要望など日常生活における認知症者の対 応から社会制度に対する不満や苦情まで多岐にわたっている. Ⅱ 研究目的 このような背景の中で年間 1/3 は雪に覆われるA県において「家族のつどい」に参加し ている認知症の人と共に暮らす男性家族介護者は悩みや葛藤を抱えながら,妻や老親を自 宅で介護を継続しようとするのか,その意思と要因は何か明らかにし,支援の方向性を見 出すことを目的とする. 研究の意義は男性介護者が認知症をもつ家族を介護する時間経過の中で意識が変容して いくプロセスを概念化することと男性介護者への支援の方向性を探ることは,今後,男性 介護者が抱える困難な状況に対する対処法などが特に役立つと思われ,保健医療福祉職の ために重要な資料を提供できると考える. Ⅲ 研究方法 1 研究対象者の選択方法と対象者 「認知症の人と家族の会」A県支部に依頼し, 「家族のつどい」に参加している(したこ とのある)男性家族介護者(以下男性介護者とする)を紹介してもらう.研究委員が家族 のつどいに出席し,男性介護者に研究の目的,方法,録音することなどを説明する.結果, 2 承諾の得られた男性介護者 10 名が対象となった. 2 調査内容 1)基礎資料として認知症者(被介護者)年齢,性別,認知症診断名,介護期間,介護保険 要介護度,認知症以外の疾患,介護保険等のサービス利用の有無,男性家族介護者の年齢, 認知症者との関係,同居家族,自覚している健康状態,職業などである. 2)インタビュー項目 ①男性介護者の悩み葛藤,問題,認知症者に対する心情 ②家族のつどいに参加の契機 ③ 家族のつどいに参加後の気持ちの変化と要因 ④協力者(家族,親戚,地域住民,専門職者) の有無,⑤地域住民,専門職者の支援の実態,行政機関の対応の実態,要望などである. 3 調査方法 面接を承諾された男性介護者と面接日時,場所を設定し,後日,研究者が設定場所に出向 き,研究対象者に同意書への署名を頂いた後,基礎資料と半構造的面接用ガイド(資料1) を用い 60~90 分間のインタビューを実施した.面接の実施期間は 2013 年8月~12 月. 4 倫理的配慮 本研究は弘前医療福祉大学倫理委員会の承認を受けるとともに,男性介護者に研究目的, 方法,インタビュー内容の録音,プライバシーの保護,参加の自由について説明した.了 解を得られた場合に承諾書にサインをもらい面接時に改めて口頭と文書により説明を行い 参加の意思が確認できた場合に文書による同意を得た上でインタビューを実施した. IC レコーダーのテープ起こしは守秘義務を課した誓約書を取り交わし研究協力者に依 頼した.テープ起こしが終了したソフト(USB メモリー)は研究責任者が厳重に保管し研 究終了後に破棄する. Ⅳ 分析方法 1 修正版グラウンデッドセオリー・アプローチ(MGT-A) MGT-A はデータ収集,データ分析,分析結果の応用の全プロセスを通して相互作用 (interactive)性,相互影響性を特徴としている 17)ことから研究対象がプロセス的特性 を持っている場合に適している 18).データを実際に活用しやすくかつ,分析プロセスが他 の人にも理解しやすいという観点から,データを分析者と切り離して位置づけ分析対象と する.次に,データが有している文脈性を重視し意味の深い解釈を試みる.そしてデータ の意味を解釈し概念生成を行い,さらに概念のカテゴリー化を行い概念の理論構築を志向 する.つまり,特定の人間の行為や認識にポイントをおくため,研究結果の実践的活用を 重視する研究法である.また,研究テーマによって限定された範囲内における説明力に優 れた理論であることから本研究の分析に適していると考えた. 3 2 分析方法 1)分析焦点者 研究対象者の中でも研究データを活用する人を分析焦点者とする. 研究対象者 10 名が分 析焦点者である.分析焦点者の条件は認知症の人と家族のつどいに参加している(したこ とのある)自宅において認知症者を介護している(していた)男性介護者である. 2)分析シートの作成 分析の最小単位である概念生成から始める.概念生成は以下の手順で行った.すべての データは一体のものとして分析するためテープ起こしが終了した逐語録を詳細に読み込み インタビュー内容の豊富なHさんを最初に分析し概念化を実施した.分析シート(表 1)に 概念名,定義,具体例,理論的メモ欄を設けHさんの類似性と対極性の視点から解釈しデ ータを具体例として抽出し,その内容を簡潔な文章で定義づけをする.定義をさらに凝縮 した言葉を考え概念を命名する.データの解釈,その解釈からさらにデータへの確認をし, それを交互にしながら,もっともフィットする概念を生成していく.このとき,研究者が 検討や思考した内容を理論的メモとして記載する. 他の分析焦点者のインタビュー内容を意味内容と類似している場合はHさんの 15 概念に 追記し,当てはまらない場合は新たな概念を生成した. 3)分析テーマの設定 木下によると研究テーマをデータに即して分析していけるように絞り込んだものが分析 テーマであることから,今回の研究テーマである男性家族介護者が認知症者の介護をとお して心の中に葛藤が生じていると考え,分析テーマを2つにし,分析テーマ1を「男性家 族介護者が自宅において認知症者を介護するプロセス」とした.また,研究テーマの「支 援の方向性」に対し男性介護者が認知症の人と家族のつどいに参加していることから社会 との繋がりや支援を求めていると考え,分析テーマ2を「フォーマル・インフォーマルな 個別的・社会的支援に対する要望」とした. Ⅴ 分析結果 1分析焦点者の特徴 年齢 52~87 歳,平均年齢 65.6 歳,被介護者は配偶者・親,各5名,自宅での介護期間 1~10 年,平均介護期間5年,現在有職者2名,被介護者の年齢 52~87 歳,平均年齢 79. 2 被介護者の特徴 介護度は要介護1~5,被介護者の診断名アルツハイマー病7名,脳梗塞2名,パーキ ンソン病1名である.現在(インタビュー時)の医療福祉サービス利用はデイサービス4 名,デイサービス・ショートステイ2名,訪問介護 1 名,グループホーム 1 名,老人保健 4 施設 1 名,療養型病床 1 名である. 表1:分析シ—ト 概念2:不可解な行動への戸惑いと不安 定義:少しずつ異常な言動が現れるようになるが,半信半疑,妻の病状が心配,妻の症状に戸惑い病院受診を繰り返したが,病 名は不明.兄弟仲も疎遠になる. 具体例: ①数字合わせの金庫が開けられない.トイレをトレイ,アヤメをアメヤという.主語なしの話しかけにいらいらしてしまう.椿 をつばきと読めない,話すことがだんだんトンチンカンになり会話が成立しないので推量するのに疲れる.予定の 1 時間前から 待機したり,呼びに来る.時刻表を見て電車の乗り継ぎ等でパニックになる.強く指摘すると苛立つので適当に対応するが,行 動がとっても心配(Hさん) ②暑いのに寒いと言って窓を閉め,厚着をする.9 時をココノカと言ったり,24 万人を 24 万円人と言ったり,夜中に電灯が点け っぱなしなのに消し方がわからなかったという.テーブルにおかれた夕飯の献立は 80%表現できるが,町に買い物に行く目的は 言えず,結局,明日出かけるためのおにぎりに入れる佃煮を買いたかったのだと後でわかる.(Hさん) ③私肺炎起こして1ヶ月半くらい入院したんですよ.その頃,妻はおかしくなってるんですよ.結局,会社でいじめにあってら んですよ.私肺炎起こしたので会社の方さ辞めるって言ったんです.ウツとかそういう病気だと思って,当初はその方向で病院 さ通ってたんです.あと,更年期障害とか.結局,手,痛いとかって言ってたので,それがちょっと出てきてたんだかも知らね ぇけど.H市の病院ほとんど歩いたけど全然わからないんです.(B さん) ④まえは女房の弟のところにしょっちゅう行ってたんだけど.女房が物が無くなった財布がないとかとすぐ電話するわけですよ. 何やってるんだってなっちゃって.だからしょっちゅうけんかになるから.今は付き合いしてない.(Aさん) ⑤あとは何かその時点で呆けたのか,送りつけられてるんだけれども,本人が頼んだのか,頼んでないか分からないんですね. もう最後は,母は,お金を払う方法も分からなくなってしまったみたいで,で,電話をやり取りしてて,相手の剣幕に具合が悪 くなって….(Jさん) ⑥だから以前と違うからさ,自分でもなんでこうなってしまったのかなとか,こんなはずじゃなかったと・・・Fさん. ⑦ひとつ,なんか自分の頭の中にインプットされたことに執着してしまうの.こだわりとか執着な.そのひとつの例が,ごみの 日の前日に出す網あるじゃん.黄色い網.あれにすごい執着してるのよ.必ず朝ま,おきれば,なんもごみの日もなんも関係な いんだよ,必ず玄関開けて,必ず見に行くんだよ.ごみの日でもなんでもないんだよ.玄関に行って必ず見に行くんだよ.(Gさ ん) ⑧言葉でてこない.だけども,おふくろと話するときはスムーズに言葉でてくるんだよ.緊張してないはんで.他の人きて,昔 から出入りしている電気屋さんとか,そういう人来ても,緊張してしまって言葉が出ねくなってる.(Gさん) 理論的メモ: ①おかしい,変だと夫が気づいてから半年の間に会話が通じないほど症状が進行し,夫は途方に暮れる.年齢が若いせいか進行が早 い.アルツハイマーの典型的な症状がみられている.正常な行動に異常な行動が混在している(まだら)ため,夫が間違いを指摘すると, 自分の意志を通そうとする情況がみられ,妻の行動に振り回され始めている.(発症に気づいて約 1 年,不可解な行動に理解できない夫 の不安定化(不安と恐怖)認知症初期のBPSDに家族は戸惑い不安感が増す.会社や金銭トラブルなど社会生活において負担が生じ本 人・家族とも,社会問題に発展していく. 3 インビボ概念からサブカテゴリーへの生成過程 35 の概念(インビボ概念=データに密着した初期の概念)が抽出された.さらに,類似 性がみられなかった単独の概念を破棄し,複数のまとまりである概念を生成し,相互関連 性を質的に解釈し 15 の概念(サブカテゴリー)が抽出された.これらの概念と具体例とを 共同研究委員が再読し文脈の類似性,対極性を検討した結果 14 の概念が生成された(表2). 4 サブカテゴリーとカテゴリーの関係 14 の概念(サブカテゴリーとした)を分析テーマごとに類似性,対極性,プロセスなど の動きを質的に検討した結果,表3に示すように分析テーマ1「男性家族介護者が自宅に おいて認知症者を介護するプロセス」は【被介護者,介護者両者の混乱】 【暗中模索の介 護】 【地域の特性とジェンダーによる困難性】 【介護生活の日常化】 【被介護者への慈愛】の 5つのカテゴリーが設定された. 厳密性を高めるために分析内容は継続的に共同研究委員間で検討された.また,分析内 5 容の妥当性の検討として分析内容を発表し男性介護者に係わりのある世話人等に意見を求 め 表2:35 のインビボ(データに密着した)概念を 14 概念(サブカテゴリー)に整理 No. 概念名 インビボ概念名 概念1:認知症の始まり時期の特定は困難 1 認知症者の言動に振り回され る日々 概念5:排泄・入浴介助の困難さ⇒食事作り,排泄・入浴介助の困難さ 概念4:妻の行動に振り回され右往左往している日々の暮らし 概念24:思い通りに進まない介護 概念25:家族が考える家庭介護の限界 2 抱え込み介護の限界 3 先が見えない不安と恐怖 4 近隣との疎遠 概念6:家族一人の在宅介護は限界の状態 5 認知症に対する偏見 概念35:認知症者が家族にいることを他者に知られたくないこだわり 概念27:家族間で対応が統一できない現状 概念2:不可解な行動への戸惑いと不安 概念3:先が見えない恐怖と不安 概念18:他の家族介護者のサポートの重要性 6 身近なサポーターの存在 概念32:家庭介護における家族,親戚のサポート体制 概念20:病状進行により疎遠となる近隣住民との関係 概念13:社会的サポートが心の支えに 7 介護サービスを利用 概念16:介護保険サービス利用 概念30:家族の支えとなる かかりつけ医の存在 概念9:認知症の進行とともに対応の仕方を習得,介護スキルの習得 8 介護スキルの習得と自信 概念26:認知症についての自発的な学び 概念28:家庭介護の原動力 概念31:家庭介護における自らの価値観,判断基準 概念17:家族介護者息抜きの時間の確保 9 自分時間の確保 概念22:介護に関するストレスの解消方法 概念29:介護負担を軽減する商業施設の活用 概念33:介護者自身の健康管理 概念8:サービス利用により介護量の少なさに不安・不信 10 福祉サービス施設への不信・ 不満 概念11:医療福祉行政職が親身に対応していない 概念14:認知症サポート体制が未整備,バリアが高い 概念7:妻を愛し人として尊敬している⇒家族の絆・夫婦愛 概念12:介護を通して人生を達観 11 被介護者への慈愛 概念15:介護をとおして病気を理解し相手を受け入れ根気よく待つ姿勢を体得 概念19:妻の死,自分の死という不安に対する自らの心構え 概念21:妻との関わりから生じる自責の念 12 提言活動への期待 概念23:家族の会への要望 13 行政サポートへの期待 概念34:経済的困窮への不安 14 自己流介護ゆえに見過ごされ る身体状況 概念10:医療情報(知識)不足が悪化を促進 た.さらに,分析に直接関らなかった共同研究委員に査定を求め,データ分析,解釈を通 じて示唆を得た. 6 表3:分析テーマ 1 のカテゴリーの生成 分析テーマ1:男性家族介護者が自宅で認知症者を介護するプロセス -混乱からうけいれるまでの変化過程- サブカテゴリー 認知症者の言動にふりわされる日々 抱え込み介護の限界 先が見えない不安と恐怖 近隣との疎遠 認知症に対する偏見 自己流介護ゆえに見過される身体的状況 介護スキルの習得と自信 身近なサポーターの存在 介護サービス利用の成果 自分時間の確保 被介護者への慈愛 カテゴリー 被介護者と介護者両者の混乱 暗中模索の介護 地域の特性とジェンダーによる困難性 介護生活の日常化 被介護者への慈愛 Ⅵ 分析テーマ1「男性介護者が自宅で認知症者を介護するプロセス」―混乱から受け 入れるまでの意識の変容― 1 結果 (本文中の「 」はデータ,≪ ≫はサブカテゴリー,【 】はカテゴリーを表す) 1) 【被介護者と介護者両者の混乱】 家族の中に介護を必要とされる方が生じた場合,最初に訪れるのは【被介護者と介護者 両者の混乱】である.認知症の始まりは,一緒に生活していても普通に過ごしていること が多いのでほとんど気づかれず,後になり行動がいつもと違うことに気づくということが みられる.夫や息子も今までとは異なる妻や親の言動に半信半疑で,今まで任せていた家 事なども夫や息子が担うことになり,勝手がわからず右往左往することが多くなる.この 時期の男性介護者は驚き,戸惑い,不安が強い.やがて認知症症状が起因となる言動が顕 著にみられるようになり日常生活に不安を覚えることが増してくる.お互いの思いや考え が相手に通じないことも多くなり混乱が生じる. 2) 【暗中模索の介護】 毎日の日常生活では,様々な状況に対応しながら手探りの介護が続いていく.これまで に経験のない家族の認知症症状への対応,介護中心の生活は「出口の見えないトンネルの 中を突き進んでいく感じ」をもつ.≪先がみえない不安と恐怖≫を生じさせ,誰に相談し てよいかわからない状況などは抱え込み介護を生み出し孤立化していく.その結果,男性 介護者が認知症に対する理解も少ない中で自己流の技術を駆使していく.ある男性介護者 は「お風呂は,もう裸にすると,しがみついて嫌がって嫌がって,うちではそんなしょっ 7 ちゅう入らない.失禁をしたときは,脱がせて履かせて,厚手の広告を下にしいて立たせ て,そして今でいうリハパン,はくパンツ,それをおろして,またそのふろに行って体洗 ってきて,そしてあがってきて拭いて・・・力づくですよ.抱え込んで,すべってね.そ この中に入って・・・ふろに入る時にね,湯船につかまってね,家内はそんなに大きい人 間じゃないのに,ちからがね・・いやぁ,あれは苦労する」 ・・・H さん 3) 【地域の特性とジェンダーによる困難性】 「毎日のように出かけようとする, 玄関に厳重に鍵,鈴をつけたり突っ張り棒をしたり, 何としても無断で外出できないように・・・,一番つらい時期だったんですね.もう,どうな っちゃったんだろうかっていう異常な行動に振り回され,毎日,何が起こるかわからない 日々でした.何(本・手帳・帽子・下着・財布鞄等)でも自分のベッドに仕舞い込む.い や完全に壁にぶちあたっている状況ですね.認知症の人に対する対応のしかたは,どうに もならなくなってということなんですね.誰かに救いを求めるっていうことはなかったで す.救いを求めるっていっても,誰にどう求めたらいいのかわからなかった.一人で抱え 込んでしまうんですよね.ほんと孤独だったんですね」 .(H さん) 男性介護者は昼夜別なく介護に振り回され精神的にも身体的にも追い詰められ,暴力や虐 待につながる場合もあり得るが,今回の事例は腰痛や肺炎など,体調を崩し寝込むケースが 多かった.これらは【地域の特性とジェンダーによる困難性】を生む背景になっている. 4) 【介護生活の日常化】 男性介護者が切実な状態になったとき,このままでは共倒れになるという思いに駆られ, 親族,身近な人の支援を要請するようになる.この支援が介護保険の利用につながり,情報 を入手し,自己学習も効を奏して自己流ではあるが介護の方法にも慣れてくる.デイサービ スや訪問介護などの介護サービスの利用,また夫や息子が毎日繰り返し行う介護体験などか ら介護のコツや工夫を見出すなど≪自らの介護スキルの習得と自信≫が生まれる.また,時 間の経過と共に自らの趣味やリフレッシュ方法も見出すことができる等≪自分時間の確保 ≫もできるようになる.生活に規則的なリズムができる. 5) 【被介護者への慈愛】 介護者に余裕が生じたときに自分を見つめる機会が訪れる.長年連れ添った妻,親に対す る愛情と慈しみの感情が出現し,認知症のために自己主張がままならない弱い立場の被介護 者を他者の手に委ねられないという強い意志“自分が守らなければ誰が護る”という男性特 有の気概がみられる.夫が妻の介護をどんな状況でも続けていくことができる根底には長年 連れ添った妻や親へのやさしいまなざしは困難を乗り越えた介護経験と自己洞察から生じ ている. 8 結果と考察(在宅介護のプロセスと生きがい) 介護スキルの習得が 自身と余裕に繋がる 男性介護者が遭遇する事象 介 護 受 容 度 近隣との疎遠 社会の偏見の 眼差し 誰にも相談せ ず独りよがり 自己流の介 護 サービス利用 生活リズムの 獲得 介護生活 の日常化 身近なサポータ (親族・同じ境遇の 介護者など)の出 現と助言 地域の特性と ジェンダーに よる困難性 両者の 混乱 責任感と見栄 先が見えない不 安と恐怖(驚き・ 戸惑い) トンネルの中 を突き進む 家族を護るという 気概 自分時間の確保 家族に認知症者が いることを人に言え ない 暗中模索 の介護 被介護者 への慈愛 心に余裕 自己の生き方を振 り返る 認知症者を見つめる優 しい眼差し 男性介護者の意識の変容 介護時間 図1 男性介護者の在宅介護のプロセス 2 分析テーマ1の結果図の説明 男性介護者にみられる介護プロセスの特徴について,明らかになった 5 つのカテゴリー の関連性を検討し図式化を試みた. (図 1 参照) 横軸を介護時間,縦軸を介護受容度と考える. 男性介護者は,時間の経過とともに【被介護者・介護者両者の混乱】→ 【暗中模索の介 護】→【地域の特性とジェンダーによる困難性】→ 【介護生活の日常化】→ 【被介護 者への慈愛と男性介護者の生きがい】というステップを経ていく. 各段階に応じて,男性介護者が遭遇する事象は異なり,併せて,男性介護者の意識も変容 するということが分かった. それは単に介護時間の経過と共に各段階を経験するのではなく,男性介護者の介護受容度 の変化とも関連性がある. このプロセスの中で男性介護者にみられる生きがいは,介護に携わる時間の経過や,自 宅で家族の介護をしなければならない現実を受け入れ,献身的に家族に尽くそうとする介 護受容度の高まりと共に男性介護者が認識していくものと考えられる.今回,明らかにな ったプロセスの混乱期や暗中模索の前半の時期は,介護が必要な現実と懸命に向き合う男 性介護者の姿をうかがい知ることができたが,その段階ではまだ介護が自分にとっての生 きがいになっているとの認識はない. しかし,身近なサポーターとの関わりや自分自身の介護スキルの習得などにより,心に 余裕が生まれ,自分自身を内省することで介護の意味について考え,介護と生きがいにつ 9 いても認識するようになり,介護生活の日常化,被介護者への慈愛と男性介護者の生きが いというステップを踏んでいくと考える. ある男性介護者は,「介護という営みの中で得るもの,鍛えられるもの,それは『ここ ろ』と信じ込むことにしました.思いやる心,いたわる心,察する心,世話をする心,愛 おしむ心,かばう心,繋がる心,自分の忍耐,辛抱,根気など数多くあげることができる」 と述べている.つまり,介護っていうのが私の人生を豊かにしているんじゃないか,負と 考えないで介護を通して感謝しないと」 (H さん)と述べていた.家族の介護が自らの生き がいに変わる,正にその時の心情が克明に表れている語りと言える.(図1) Ⅶ 分析テーマ2「フォーマル・インフォーマルな個別的・社会的支援に対する要望」 1 カテゴリーの生成 研究テーマの「支援の方向性」に対し男性介護者が認知症の人と家族のつどいに参加し ていることから社会との繋がりや支援を求めていると考え 分析テーマ 2を「フォーマ ル・インフォーマルな個別的・社会的支援に対する要望」とした. 【地域の特性とジェンダ ーによる困難性】 【認知症ケアに対する社会的未成熟】 【家族会活動への期待と充実】 【社会 福祉制度の理解と充実】の4カテゴリーが生成された(表4). 表 4:分析テーマ2のカテゴリーの生成 分析テーマ2:フォーマル・インフォーマルな選別的・社会的支援に対する要望 サブカテゴリー カテゴリー 近隣との疎遠 認知症に対する偏見 自己流介護ゆえに見過される身体状況 福祉サービス施設への不信・不満 身近なサポータの存在 提言活動への期待 経済的困窮への不安 行政サポート期待 地域の特性とジェンダーによる困難性 認知症ケアに対する社会的未成熟 家族の会活動への期待と充実 社会福祉制度の理解と活用 2 結果 1) 【地域の特性とジェンダーによる困難性】 このカテゴリーは本研究の中心概念として分析テーマ1,2両者に位置づけた. (分析テー マ1参照) 2) 【認知症ケアに対する社会的未成熟】 ある男性介護者は妻が入院したため,病院に行った時に他の入院者(正常な方)から「看 護師がきて1口2口,食事を与えて行ってしまう」と聞いて「昼くらいは行かなくちゃと 思い最低でも 10 口は食べさせようと・・・認知症患者が入院した時は悲惨だなと思った」 , 10 『看護師さんたち忙しいから1人に患者さんに時間をかけていられない,ここは介護施設 ではありません,治療施設です』と言われたんですよ,44 日間,毎日食事介助のために通 院しました」 (H さん) 「男性介護と女性介護は全然違う.外に行って,とにかくトイレ一番大変です.結局,本 人,まだちょっとわかっているので男性のトイレには入らないんですよ,障害者トイレが あれば一緒に入ってやれるんだけども,障害者トイレないば女性用トイレさ行くしかない. そうすると女性からの視線がさ,最悪ですよ,ホントに」(B さん) 「特養や老健は常に満床で待機者が多く, 在宅で介護できない認知症者の受け皿が少ない」 (D さん) 福祉施設や医療機関において職員の対応に不信感を抱く.1 対1の介護は望めないとし ても職員の心を込めた対応をしていれば家族は不信感を持たないであろう.地域のバリア フリー設備を含め,人的・物的に医療,施設介護に対する施策の未整備(専門職個々の対 応の問題でなく人員不足や研修の未実施)が影響し【認知症ケアに対する社会的未成熟】 な状況を生んでいると思われる. そのために,ますます他者に委ねたくない,大変でも自分で介護しようという男性家族 介護者の気持ちを強くしている. 3) 【家族の会活動への期待と充実】 家族会とは,お互いに悩みを分かち合い,共有し,連携することで支えあう会であると している 51) .そして,公益社団法人認知症の人と家族の会 52) は,「ともに励まし合い助け 合って,人として実りある人生を送るとともに認知症になっても安心して暮らせる社会の 実現を希求する」と掲げている.また,同会の支部活動において「つどい/会報/電話相 談」を支部活動 3 本柱として位置づけており,認知症の人や介護者を孤立させない,認知 症を正しく理解することなどを大きな役割としている.他に,国や自治体への提言・要望, 街頭活動による認知症に関する普及・啓発なども同会での重要な取り組みとして掲げてい る. わが国では,認知症者が増加しているにも関わらず認知症を他人事として捉えている風 潮があるように思われる.ところが,自分の家族が認知症となった時,誰しもが大きな戸 惑いと不安を抱え,悩みと混乱の日々を送る.様ざまな困難に直面して初めて「認知症の 人と家族の会」の存在を知る方も多い. 本稿,男性介護者の「家族の会 つどい」へ参加するに至った経緯について「介護疲れか ら藁をもすがる思いで入会した」「新聞に掲載された情報を見た」「知人に誘われた」など と述べている.つまり,家族が認知症になったと同時期に参加し始めたのではなく,自分 なりの介護を行った末に家族会へ関わるようになったと推測できる.家族の会の利用は 1%にも満たないとの調査結果 50) にもあるように家族の会が身近なものとして認識され ていないという現状を示している. 11 男性介護者の多くは,介護を理由に退職し介護に追われる日々では,ストレスを発散す る場も無く孤立への道が続く.ところが,つどいへ参加することによって,孤立解消への 糸口へ繋がっていくのであれば,認知症の人と家族の会が掲げている「孤立の解消」とい う役割が十分に機能しているといえよう. 即ち,つどいをストレス解消の場,介護に関わる情報収集の場,みな同じ思いをしてい ると共感の場,認知症の人を受け入れる理解の場など,それぞれの参加者によって求める 役割が異なることが分かる.そして,その何れに対してもつどいは応え得る機能を持ち合 併せている.つどいに参加した後の感想として「本音が話せて心が軽くなる,みな同じ思 いをしている,身近な情報が得られ経験者の話が自分の道標になる」 「いままで暗かったの がちょっと明るくなった,やっぱり一人で黙っているより,気持ちが変わったみたいな感 じ.周りの人もわかってくれる」 「行政に電話しても待たされるだけで,何も問題は解決し ないので,私たちは(ストレスを)発散したい」という好意的な意見が多く聞かれた. 一方で,高額な会費が壁になっている,家族のつどいでの体験談は「介護度の違いから 自分とは無縁の場にもなりかねない」, 「決定的に男性介護者の参加が少ない」 ,などの声も 聞いている.そして, 「語りあうだけでは何も変わらない,行政への働きかけが必要である」 「各家族の情報交換だけではなく,リハビリや認知機能低下防止のための取り組みにも力 を入れて欲しい」という要望もある. 今後の家族の会には,一人ひとりの声を集めて,より強く社会へ働きかけていくことな ど単なる情報交換に留まらないあり方が求められている.とりわけ,男性介護者の場合, 他者へ対して弱音を吐くことを望まず,問題を自分だけで抱え解決へ導きたい思いが強い. 4) 【社会福祉制度の理解と活用】 ≪経済的困窮への不安≫は「現状で,結局,高額で介護力の薄い老人ホームに入所せざ るを得ない」 (B さん) 「老夫婦にとり,認知症の経過は長期にわたるため,心身の負担不安に加えて経済的負担 が追い打ちをかける結果になり,八方塞がりになってしまいがち・・・」 , 「認知症の人を抱え る家族に厳しい経済的負担」(B,C さん) ある男性介護者は経済的負担を「①介護用品の多大な出費(おむつ,パット,フラット タイプ,防水シート,使い捨てグローブ,パジャマ・タオルのレンタル等の出費)②少な い食事量と高い請求費 ③高額な有料老人ホームの入居費 ④通院費とその交通費」と述べ ている(H さん) 男性介護者はインターネット等で情報を得るなど,自らの力でなんとか切りぬけようと 努力した末に行政の窓口を訪ねる.時間をかけて悩んできた男性介護者にとって公的機関 等が即応してくれないことへのいら立ちが募り,最初からスムーズに相談機関と良好な関 係を形成することができなかったことが以下のインタビュー内容からうかがえる. 「結局ですね,介護申請して 30 日以内に結論が出ますという話だった.で,わたしとすれ 12 ば一日も早く待っているわけですよ.やっと 30 日たとうかってときに,あと 30 日後にな ります,延期になりますってなったんですね.その時に役所がね,なぜ日にちかかるって 2通の手紙が来た.私は苦しくて苦しくて」(H さん) 「一番つらかったのは,週 1 回で肉体だけのサービス受けてたものを,週 3 回だといわれ ても,2 ヶ月くらいなかなか決まんなくて,要介護認定も要介護1になっても,週3回必 要だよって言われても,なかなかフォローしてもらえなくてね.2ヶ月くらいほっぽいと かれてたもんね」 (A さん) 「行政・医療機関の対応と要望に関しては,認知症者には介護保険が適応されるが介護者 には救済措置がない(介護者の人権も守らなければならない)②介護保険申請時,窓口で は真摯に対応してもらえない」 (B,H さん) 「女のケアマネってさ,教科書めくるようにさ,ものごとすすめねっきゃ.なんかあれば 法律をたてに理論をまるめてぶつかってくるっきゃ」(F さん) 「ケアマネさ,これから親父どうなるんだべ,どんな介護用品必要なんだべかってきいた ら,そういうことは私より医者が詳しいので医者に聞いてくださいって」 (B さん) 「これからこういうことになりますからとかよ,来たときさ,たとえば,グループホーム ってこういう人達が入るんですよとか,特別養護老人ホームってこういう人達が入るんで すよとか,経費はこれくらいかかるとか具体的なこと最初から話してくれればいいけど」 (B さん) 男性介護者にとっては,相談援助職としての面接技法をもたないケアマネとのやりとり がかなりのストレスになってしまったことを感じさせる言葉である. 男性介護者のこころの動きを想像できる力量を備えたケアマネの存在に期待したいとこ ろである. 「そいでさ,かなり上から目線でみてらもんね.介護してら家族の目線で見てねえ.この 人の面倒みてやってらのよって目線でみてら」 (C さん) 以上の語りからフォーマルな支援に対する不満や要望が強いことが分かった. 認知症者を介護する男性介護者にとって,初めての公的支援を受けようとする水先案内 人となるケアマネジャーが,いかに共感して支援してくれる存在であるかどうかが,先の 見えない介護生活の質を左右すると考えられる. 地域ごとに異なる公的支援内容について, 認知症者にとっても介護者にとってもより自立した生活を送るためには何が適切なサービ スであるか,適宜,寄り添いながら共に考えようとする姿勢こそ,相談援助者に求められ ていると考える. 3 分析テーマ2の結果図の説明 自宅で認知症者を男性介護者が介護する時,分析テーマ1で述べたように孤立無援 の状況におかれる.この状況は介護者自身の近隣に対する偏見もあるが,地域の理解 不足,福祉医療機関・行政の人的物的な支援が未整備の状況にあることから生じると 13 考えられる.これらのことが地域特性とジェンダーの困難性を生む背景である.そこ で男性介護者を円の中心に位置づけ,自助努力で解決できない場合に近隣住民,友人, 同性介護者などの支援が求められる.また,家族の会や見守りネットワークの構築な ど身近な人たち,いわゆるインフォーマルサポーターの支援を互助として期待するこ とから中心円を 取り巻く形にした。さらに,その周りを制度への提言やしくみ作りも含め行政の対応 や働きかけが共助・公助として求められるため外周を取り巻く形にした。 佐藤は,インフォーマルサービスは介護保険給付を単に補完するような主従の関係 ではなく利用者の周りに日常的にサービスが機能し、利用者が活用し得る社会資源と して用意されるべき 58) と述べている.同様に男性介護者の個人的,社会的な要望に対 応していくためには,その受け皿となる地域住民,保健医療福祉専門職,行政等によ る柔軟性のある対応が実現できる地域ネットワークの構築が必要であると考える。 地域特性とジェンダーの困難性(自助) インフフォーマルサポーターの 支援(互助) 認知症ケアの未成熟 福祉医療の理解と活用(共助・ 公助) 家族の会活用へ の期待と充実 男性介護者を支える地域住民,保健医療福祉専門 職,行政等の地域ネットワーク 図2「フォーマル・インフォーマルな個別的・社会的支援に対する要望」 Ⅷ 考 察 分析テーマ1・2を統合して両者に共通の『地域の特性とジェンダーによる困難性』, 『男 性介護者が自宅で介護するプロセス』, 『フォーマル・インフォーマルな支援の方向性』 の3点から考察する.まず,研究テーマ全体の結果図を作成した.(図2) 1研究テーマ全体の結果図の説明 分析テーマ1・2を統合して研究テーマである「在宅において認知症者に対し男性家 族介護者が抱える葛藤と支援の方向性」の結果図を作成した.分析テーマ1は「男性介護 者が自宅で介護するプロセス」の4カテゴリーを【被介護者・介護者両者の混乱】 ,【暗中 14 模索の介護】 ,【介護生活の日常化】 ,【被介護者への慈愛】を時間の経過とともに男性介護 者の認知症者に対する認識が変容していくプロセスを左側に上から下に表示した.分析テ ーマ2の「フォーマル・インフォーマルな個別的・社会的支援に対する要望」は【認知症 ケアに対する社会的未成熟】, 【家族会活動への期待と充実】,【社会福祉制度の理解と充 実】の3テゴリーと【地域の特性とジェンダーによる困難性】である。 【地域の特性とジェ ンダーによる困難性】は,分析テーマ1・2両者に共通のカテゴリーであり、キイ概念 であることから図の中心に位置づけた.すなわち,本研究のテーマである男性家族介護者 の抱える葛藤と支援の方向性は8カテゴリーに集約された. (図3) 分析テーマ1 男性介護者が自宅で認知 症者を介護するプロセス 男 性 介 護 者 の 在 宅 介 護 の プ ロ セ 被介護者 と介護者 両者の混 乱 認知症ケ アに対す る社会的 未成熟 暗中模索 の介護 介護生活 の日常化 地域の特性と ジェンダーに よる困難性 分析テーマ2 フォーマル・イ ンフォーマル な個別的・社 会的支援に対 する要望 家族会活 動への期 待と充実 社会福祉 制度の理 解と活用 ス 被 介 護 者 へ の 慈 愛 在宅において認知症者に対し男性家族介護者が抱える葛藤と支援の方向性 図3 研究テーマ全体の結果図 2 地域の特性とジェンダーによる困難性 山田 2)はA県民のプラス面の気質として「忍耐強さ」「勤勉」を,マイナス面として「頑 迷」「排他的」であるといわれると述べている.また,A県の地域特性を「三パリ」とい う言葉で紹介している.その他「三ふり」とも言われることがある.いずれも他者に対し て自分を良く見せようとし見栄を張ることに関連する言葉である.以上の県民気質,地域 特性は男性介護者の在宅介護のプロセスにも反映されているといえる. 本稿でジェンダーとは社会的,文化的な男性性を指す.斎藤 21)は 20 年以上の居住歴を 持つ男性介護者の4割は挨拶程度か,ほとんど付き合いがない,また,介護開始後, 付き合いがなくなった人が増えていると述べている.従来,介護は女性の問題としてみ 15 なされてきたが,男性介護者が増加する中で,本稿においても「以前は付き合いがあった が発症してから疎遠になった」と ≪近隣との疎遠≫と訴える人が多かった. また,地域特性の「三ふり」にも表れているように,自分のことを良く見せたいという 気持ちがあるため,自分の,あるいは自分の家族の弱いところ(病気になっている姿,困っ ている姿など)は見せたくないという思いが近隣と疎遠になっている状態を作り出すさら なる要因になっていると考える. また,藤崎 40) は地域において共同性を失った匿名性の欠如はときとして監視の目へ と転化するため,他者の目にさらしたくないという意識が自助を貫こうとしている. 本稿において近隣との疎遠を招く要因に認知症の家族のことを他者に伝えられないこ だわり≪認知症に対する偏見≫がみられた.地域の特性が男性性と輻輳して孤立感を 深めている要因とも推察される. 一方で,自立した社会生活が送れない認知症者を護らなければという責任感が【地域の 特性とジェンダーによる困難性】を生む背景にもなっている.男性介護者が認知症に対す る曖昧な知識と介護の基本的なスキルを身につけていないために自己流や力ずくで身 体介護を行っている.そのため,きめ細かい観察や皮膚の状態や筋力低下などに気づ かず,運動機能の低下など身体悪化に結びつくおそれが生じている.認知症介護に対 する知識が少なく床ずれなど知らなかったために対処が遅れ認知症状,身体状況の悪 化を招くとしている 24)42). ジェンダー役割として,介護に対する責任感が強く自分の役割として何とかしなければ ならなかった 22)43)と指摘している.多くの男性介護者は自分が介護をしていることや介護 上の苦労,辛さなどを人に話すことをせず社会から孤立していることが多い8).男性介護 者の介護の特質は, ジェンダー規範としての性別役割分業意識の伝統的規範を背景に持ち, その伝統的規範には夫婦の責任といった夫婦規範,家族だから当たり前といった家族規範, 男性は仕事,女性は家庭といったジェンダー規範があると指摘されている 8)21)30)39) .さら に,男性介護者は介護を仕事と捉え,弱音を吐かない,介護支援を求める姿勢が消極的で 介護負担が発生しても相談することが少なく,抱え込みや孤立しやすく 21) 33) 33)40) ,公的 福祉サービスと結びつかないというような孤独な介護状況下にある 26)といわれている. 男性介護者は昼夜別なく介護に振り回され精神的にも身体的にも追い詰められ,暴力や 虐待につながる場合もあり得る 36)が,本稿の対象は腰痛や肺炎など体調を崩し寝込むケー スが多かった. ジェンダー役割として認知症になった妻や親をみていると自分の人生は何だったのか, 無駄になったと嘆く気持ちとともに妻や親のために立ち上がる勇気と行動力を支えている のは,家・家族を守る責任感というよりは男性介護者の気概(心意気)を感じさせる. 経済的負担を抱えながら何とかして自宅で介護するために様ざまなサポート体制への活 用を試みている. 早期から専門職の介入の必要性が望まれるが,男性介護者の特性を考えると専門職者で 16 はなく,時々,介護仲間と話をする.介護している仲間同士だから忌憚のない話ができる 33) .同じ立場で介護を経験した先輩男性介護者の存在が縦社会で生きてきた男性には必要 と考える.つまり,この時期は≪身近なサポーターの存在の必要性≫があり,効果的に利 用することは重要と考える. 男性介護者の登場は,近代家族を支えてきたジェンダー構造を時代の変化とともに部分 的に融解する一方で,夫婦愛・親子愛という「近代家族」の愛情原則を強化する作用を潜 在的に包摂している.家族介護は介護者にとって「やりがいがある」と同時に「過酷な労 働である」男性介護者が夫婦愛,親子愛の体現として全身全霊で介護に没頭する 23)と論述 している.本稿の【身近なサポーターの存在】【被介護者への慈愛】のサブカテゴリーで ある≪身近なサポーターの存在≫は親族のみでなく,男性介護者同士,家族の会の世話人 などである.それらの要因が≪自分時間を確保≫する余裕につながり,≪自分時間の確保 ≫し≪被介護者への慈愛≫の心を惹起させるのであろう. 3 在宅認知症者に対する男性介護者の意識の変容過程(介護プロセスの特徴) 夫婦あるいは親子が認知症と気づかず,従来の生活様式で過してきた中で,ある時期か ら会話が成立しなくなる,炊事中に鍋を焦がす,味付けがおかしいなど徐々に変化が現れ 生活リズムがかみ合わなくなり,被介護者の認知症の言動に振り回される日々が続き, 【被 介護者と介護者の両者の混乱】が生じる.この混乱期においてわが国には「相談すること は恥,相談することは『わかっていない,できない』という恥」の文化がある 26).男性で あるが故に SOS は本音でなく,弱音と思っているため 【被介護者と介護者両者の混乱】の 中で誰にも相談せずに一人で抱え込み何でもやってしまう,という男性ならではの特徴が みられる.「男性は外では稼げるが生活力は弱い」26)と述べているが,認知症者への対応 は限界と思い途方に暮れながらも必死で介護経験をしている男性介護者の姿が浮上してく る.つまり,男性であるがゆえのプロセスを踏むと考えられる. 家族男性介護者の介護力獲得には戸惑い,疾患の理解,仕事継続への葛藤,新価値と問 題解決の獲得,地域への発信のプロセスがある 44)としている意見もある. 中村和 33)は介護者の心の段階を①怨む,憎む ②あきらめる ③消極的な受け入れ ④積 極的な受け入れ ⑤感謝,としている.また,認知症者の家族がたどる4つのステップ 56) として①驚き,戸惑い,否認 ②混乱,怒り,拒絶,抑うつ ③あきらめ,開き直り,適応 ④ 受容,と述べている.一方,杉山 24) は①戸惑い,否定 ②混乱 ③割り切り ④受容, としている. しかし,本稿において必ずしも上記の段階と同様のプロセスを踏んではいない.①の驚 き,戸惑いは他の文献と同様であるが,怒り,否認の感情よりも,むしろ不安,恐怖の感 情が強い.今後の生活に対する先行き不安は男性特有の抱え込みと夫婦,親子とのこれま で築いてきた関係から生じていると考えられる.②混乱,怒り,拒絶,抑うつの段階では 拒絶という行動は認められず,認知症に対する知識も乏しく自己流ではあるが必死で介護 17 し孤立し混乱が増している.③あきらめ,開き直り,適応については病気であることを少 しずつ認識し,自ら健康を損じて,ようやく他者の支援を求めるというプロセスを辿る. また,介護を仕事と割り切り介護生活に適応していく,同時に様ざまな情報を得ることに よって介護スキルにも精通し自信がついてくる.④のステップは認知症に対する理解も深 まり認知症者の気持ちを自分自身に投影できるようになり,優しいまなざしで受け入れる ようになる. 「介護できることに感謝する」 「生きるとは何か,介護とは何か」と語った男 性介護者がいるが,杉山 24)も述べているように認知症への理解の深さが認知症者と介護者 の関係を質的に変化させていると考える. 表5 文献と本研究の認知症者に対する介護者がたどる心理的ステップ( ステ ップ Ⅰ 文 献 )は文献番号 本研究 A(44) B(33) C(56) D(24) 男性家族介護者 戸惑い 怨む,憎む 驚き,戸惑い 戸惑い 戸惑い,混乱 混乱 (将来への) 否認 Ⅱ 疾患の理解 あきらめる 混乱,怒り,抑 うつ Ⅲ 仕事への葛藤 消極的な 不安・恐怖 拒絶 割り切り 暗中模索・孤立 受容 (他者支援への) 受け入れ Ⅳ 新価値と問題 積極的な あきらめ,開き 解決の葛藤 受け入れ 直り,適応 打開 (生活への)適応 Ⅴ 地域への発信 感謝 受容 受容 4 フォーマル・インフォーマルな支援の方向性 認知症の支援はインフォーマルサポートとフォーマルサポートに分けて考える必要があ るため,ここでは,インフォーマルサポートを家族・友人・近隣とのネットワークとし, フォーマルサポートを民生児童委員・NPO・社会福祉協議会・地域包括支援センター・ 市役所・福祉施設・病院といった制度化された集団とのネットワークとする 57). インフォーマルサポートに関して伊藤ら 50)は,認知症の重症度が増すにつれ,インフォ ーマルサポーターの活用が減少していることを報告しており,本稿においても認知症が重 度になるにつれて医療・福祉サービスの活用に移行している.しかし,男性介護者は可能 な限り,自宅での介護を希望していることを鑑みると,認知症の重症度が増しても自宅で の介護が継続できる支援体制を構築する必要があると考える.インフォーマルサービスを 活用するためには地方自治体等に認知症者専門の窓口を設置するなど相談者が一か所で問 題が解決する手立てを講じるなど,従来より一歩進んだ対策が求められる.さらに,自治 体は住民の身近な相談窓口になっている地域包括支援センターや民生委員などに認知症 18 者・家族の情報提供を積極的に行うなどネットワーク構築に力を注ぐ必要がある. また平成 13 年以降,国の施策として認知症サポーターの養成が実施されているが,地域 住民との連携,在宅認知症者とその家族との見守りなどのネットワークは未整備の状態で ある.男性高齢者の健康の維持・向上のために目的を同じくするインフォーマル・フォーマ ルな人々が連携して取り組む必要がある.インフォーマルサービスが人の人に対する思い やりや優しさを具体化したものであるとすれば地域のニーズを最もよく知る市民が集い組 織的に活動するNPOは重要な担い手となるであろう 58)との提言もある.男性介護者が身 近な地域で仲間との交流を通じて自己の能力を再認識し新しい自分を発見し,生き生きと 生活する主体的活動を支援するために,住民の意識変革,組織化,活動の継続などに努力 し定着させたい.そして,遂行可能な具体的な行動を提案して男性介護者が妻や親の介護 を継続していく目標を達成できるように支援することを目指したい. スウェーデンでは,被介護者に対しての支援だけではなく,インフォーマルサポートの 資源である介護者に対しての支援を法改正の実施とともに行っており,ホームレスパイト ケア(家族介護者のための休養提供などの支援)などは 60)今後の参考になるといえる. フォーマルサポートである介護保険制度の導入の目的の一つは介護の社会化であり, 家族介護者を当てにせずに在宅介護が継続できる支援体制の整備であった 59).しかし,本 稿においてもフォーマルサービスに対する不満や要望が強いことから,十分な活用ができ ていないことがわかる.同時に男性介護者は他者に委ねたくない,大変でも自分で介護し ようとしているため,介護の社会化からは遠のく要因となっている.前述の伊藤らの報告 でもインフォーマルサポートの6割以上が家族であることから,フォーマルサービスも, これまでの被介護者に対する支援の充実ではなく,インフォーマルサービスの担い手であ る介護者に対する支援の充実を図る必要がある.介護者支援の方向性を考えるうえでは Twigg and Atkin の要介護者だけでなくその介護者自身も援助の対象者である 62)という考 え方と被介護者の従属的立場としての介護者ではなく独立した介護者個人としての個別的 支援が必要であるという考え方が重要である.つまり,介護者は介護するためだけに生き ているのではなく,その人自身の生活と人生が保障されるべきであり,被介護者の従属的 立場ではないということ 61)を男性介護者自身に理解させることも重要である. Ⅸ 結論 在宅における認知症家族を介護する男性介護者のインタビューをとおして以下のことが 明らかになった. 1 男性介護者は認知症者の示す事象(認知症の症状,言動,日常生活行動)に対応する 中で時間をかけて認知症者に対する意識が変容していく.それは過去の文献にみるプロ セスとは異なっている場面がみられることが明らかになった. 2 男性介護者の介護の特徴としてジェンダーによる介護の困難性の他に地域特性が影響 していることが推察された. 19 3 カテゴリー生成の根拠となる事象と心情 男性介護者の認知症者との関わりの中で混乱期から暗中模索の事象を経て介護スキル の習得が余裕のある生活へと変化し認知症者を理解するようになる.男性介護者の認知 症者に対する見かたは夫も息子もこれまで生活をともにしてきた家族としての関わり の深さと情愛が一貫して流れていることがインタビューをとおして明らかにされた. 4 認知症に対する支援が社会的に整備されていない現状において支援の方向性として① 身近な近隣住民の協力 ②家族の会等への参加 ③男性介護者のための地域ネットワー ク構築に向けて人的・物的環境の整備を推進する必要がある. 5「 認知症者と男性介護者を別個の存在としてとらえ,介護者としてではなく社会に生 きる一人の人としてとらえる」視点をもち,精神的・身体的・経済的に支援することが 求められる. 6 本研究の限界は対象数が 10 名と少ないこと,A県という一定の地域に限られたこと, 家族の会に参加しているかしたことのある男性に限定したため,情報が一定になった可 能性がある.今後,地域を広げ対象者の年齢,認知症者の要介護度や介護期間などの条 件も加味することが将来行うべき重要な検討課題である. 謝辞:本研究にご協力くださいました男性家族介護者,家族会の役員,世話人の方々に厚 くお礼申しあげ深く感謝いたします. 文献: 1) 青木頼子,山田美紀他:痴呆性高齢者の男性介護者の介護負担感の特徴 女性介護者の介護負担感と 関連要因及び対処行動との関連性を比較分析して,北陸公衆衛生学会誌,30(1),p6-11,2003 年. 2) 青森地域社会研究所編:青森県人の気質,北の街社,1985. 3) 東谷 康生:「男性介護者を取り巻く状況」,青森県支部会報「こなゆき」第 25 号,2013 年 5 月. 4) 石橋文枝:在宅看護における家族介護者の対人認知に関する研究-男性介護者の対人認知の実態-, 藍野学院紀要 16,74‐78,2002. 5) 一瀬貴子:在宅痴呆高齢者に対する老老介護の実態とその問題-高齢男性介護者の介護実態に着目し て-,家政学研究 48,28‐37,2001. 6) 一瀬 貴子:「介護の意味」からみた高齢配偶介護者の介護特性,関西大学研究紀要第 7 号,p75― 90.2004. 7) Ungerson,C.:Sex gender and informal care,1987.平岡公一・平岡佐智子訳,ジェンダーと家族 介護,光生館,1999. 8) 奥山 則子:性別役割からみた高齢男性介護者の介護,月刊地域保健 28(1),p62―74,1997. 9) 梶原弘平,横山正博:認知症高齢者を介護する家族の介護継続意向の要因に関する研究,日本認知症 ケア学会誌, 6(1),p38-45,3 月,2007 年. 20 10) 春日キスヨ:介護とジェンダー,家族社,1997. 11) 金川 克子,彦 聖美他:男性家族介護者を地域で支える方略に関する調査研究,公益財団法人 勇 美記念財団,2010 年度(後期)在宅医療助成報告書,p1-38,2月,2012 年. 12) 川野英子,平野美穂他:男性が主介護者である家族への生活力向上を目指した支援, 家族看護学研 究 13(3),p150-157,2月,2008 年. 13) 北原かな子,郭 南燕:津軽の歴史と文化を知る,2004. 14) 木下 康仁:グラウンデッド・セオリー・アプローチ―質的実証研究の再生―,弘文堂,1999. 15) 木下 康仁:グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践―質的研究への誘い―,弘文堂,2003. 16) 木下 康仁:分野別実践編,グラウンデッド・セオリー・アプローチ,弘文堂,2005. 17) 木下 康仁:質的研究と記述の厚み,弘文堂,p27,2009.p31 18) 木下 康仁:ライブ講義M-GTA,実践的質的研究法,弘文堂, 2007. 19) 木下 康仁:グラウンデッド・セオリー・アプローチ,自治医科大学院看護学研究科 FD 評価・実施 委員会,平成 24 年度看護学部・大学院看護学研究科 FD 研究会報告書,p116-129,2013. 20) 小林陽子:痴呆症の妻を介護する高齢男性介護者の看護認識とその影響要因,老年看護学,9(2),64 ‐76,2005.. 21) 斉藤眞緒:男が介護するということ―家族・ケア・ジェンダーのインターフェイス―,立命館産業社 会論集,45(1),p171-188,6 月,2009. 22) 新舘良雄:男性介護者の介護生活の実態と課題,社会福祉士,第 21 号,p24-32, 2014 年. 23) 杉原百合子,山田裕子他:認知症高齢者家族の意思形成過程の経時的変化に関する研究,日本認知症 ケア学会誌,11(2),p516-528,7 月,2012 年. 24) 杉山孝博:家族がたどる心理的ステップ,http://www.alzheimer.or.jp/?p=3417 25) 鈴木祐恵,彦聖美,金川克子,石垣和子,大木秀一:訪問看護ステーション利用者を介護している石 川県下の男性介護者の実態と介護に対する意識,石川看護雑誌 10,65‐75,2013. 26) 高室 室 成幸:私が「男性とはを語る理由」,中央法規ケアサポ,2014,3,14,インターネットブログ「高 成幸のケアマネさんあっちこっちどっち」より 27) 竹永 睦男:男の介護,法研,1998. 28) 田部井 康夫:利用者,家族からみたケアスタッフ,日本認知症ケア学会誌,7(3),p511-516,11 月,2008 年. 29) 男性介護者支援者の全国ネットワーク代表荒川不二夫:男性介護者 100 万人へのメッセージ,2009 年,12 月. 30) 津止正敏,齋藤真緒:男性介護者白書-家族介護支援への提言-.かもがわ出版,2007. 31) 永井 邦芳 堀 容子 他:男性家族介護者の心身の主観的健康特性,公衆衛生誌,58(8),p606-615, 8月,2011 年. 32) 長澤久美子,飯田澄美子:男性介護者の介護継続要因,家族看護学研究 14,58‐67,2008. 33) 中村 和仁:男の介護,新泉社,2010. 34) 中村もとゑ,永井真由美他: 認知症高齢者を在宅で介護する向老期・老年期にある男性介護者のよ 21 りよく生きる力とそれを育む要因,老年看護学,16(1),p104-110,11 月,2011 年. 35) 西岡 浩子 高木 初子 他:在宅で認知症高齢者を介護する主介護者の日常生活を安定させるため の対処行動,日本認知症ケア学会誌,12(4),p715-722,2014 年. 36) 羽根文:介護殺人・心中事件にみる家族介護の困難とジェンダー要因-介護者が夫・息子の事例か ら-,家族社会学研究 18,27‐39,2006. 37) Harris,.P..B.,The Misunderstood Caregiver?A Qualitative Study of Male Caregiver Alzheimer’s Disease Victims The Gerontologist ,33|4|:551-556,1993. 38) 馬庭恭子:男性介護者の現状と今後のあり方,保健の科学 38,538‐541,1996. 39) 林 葉子:有配偶男性介護者による介護役割受け入れのプロセス,家族研究年報,no28,2003. 40) 藤崎 宏子:家族はなぜ介護を囲い込むのか,ネットワーク形成を阻むもの,p141―161 41) 村山 由子:認知症高齢者の男性家族介護者ニーズと介護者の会作りの試み,日本認知症ケア学会誌, 5(2),p461,(抄録)2006 年. 42) 森 43) 森泉 詩恵:男性家族介護者の家族実態とその課題,大阪経済大学論文集 58(7),p101-112,2008 年. 保子,小林 和美他:認知症の妻を介護する夫の実情;夫の『語り』から男性介護者支援を考 える,臨床看護,35(11),p1689―1694,10 月,2009 年. 44) 薬師寺文子:認知症高齢者を介護する家族男性介護者の介護力獲得のプロセス,日本看護学会論文集, 第 40 回地域看護,1347-8257(40),p127-129,4月,2009 年. 45) 山下祐介,作道信介,杉山裕子:津軽近代化のダイナミズム,お茶の水書房,2008. 46) 山本 則子:痴呆老人の家族介護に関する研究,娘および嫁介護者の人生における介護経験の意味, 1.研究背景・文献検討・研究方法,看護研究 28(3),p178-199,年. 47) 山本 則子:痴呆老人の家族介護に関する研究,娘および嫁介護者の人生における介護経験の意味, 2.価値と困難のパラドックス,看護研究 28(4),p313-333,2005 年. 48) 山本 則子:痴呆老人の家族介護に関する研究,娘および嫁介護者の人生における介護経験の意味, 3.介護料引き下げの意思決定過程,看護研究 28(5),p409-427,2005 年. 49) 山本 則子:痴呆老人の家族介護に関する研究,娘および嫁介護者の人 2005 生における介護経験の 意味,4.価値と困難のパラドックス,看護研究 28(6),p481-201,2005 年. 50) 伊藤 美智子, 鈴木 亮子他:認知症の人が活用しているインフォーマルサポートの種類と機能, 日本認知症ケア学会誌,12(4),p731-740,2014 年. 51) 厚 生 労 働 省 「 知 る こ と か ら 始 め よ う み ん な の メ ン タ ル ヘ ル ス 」 2014,6,5 ア ク セ ス http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/consult_4.html 52) 公益法人認知症の人と家族の会:案内パンフレット 53) 厚生労働省老健局「高齢者介護研究会報告書『2013 年の高齢者介護』認知症者数の現状と将来推計」, 2013 年 6 月. 54) 厚生労働省「認知症への取組み」http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/demenitia/ 2012,9,4 アクセス 55) 厚生労働省認知症策定検討プロジェクトチーム(2012)「認知症策定推進 5 か年計画(オレンジプラン)」 22 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002j8dh-att/2r9852000002j8ey.pdf,201 3.1.14). 56) 認知症介護研究研修大府センター編:若年性認知症ハンドブック 平成 25 年版 57) 奥田憲昭:認知症のインフォーマルサポートネットワークに関する地域間比較研究紀要 (12), 1-18, 2009. 58) 佐藤信人:在宅介護におけるインフォ‐マルなサービスの役割,月刊ケアマネジメント 15(10),p58-59, 2004 年. 59) 菊池 いづみ:家族介護支援の政策動向, 高齢者保健福祉事業の再編と地域包括ケアの流れのなかで, 地域研究,長岡大学地域研究センター年報 (12), 55-75, 2012. 60) 藤岡純一:特集,介護者支援の国際比較,要介護者と家族を支える取り組みの多様性 スウェーデン における介護者支援,海外社会保障研究 Autumn2013,No184,4-15. 61) 木下康仁:高齢社会フォーラム,ケアラー学に向けて,Dia News ,No68,3-6,2012. 62) Twigg,Julia and Kari Atkin, Carers Perceived:Policy and Practice in Informal Care. Open University Press,USA 1994. 公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成による 23 資料 1 半構成的インタビューガイド(手持ちメモ) 導入のための あいさつ 質問 ご家族(認知症者)の状況についてお聞かせ下さい. 基礎資料参照 あなた(家族)のことについてお聞かせ下さい. 介護を体験して,感じられたことはどんなことでしたか. また,家族のつどいに参加して感じられたこともお聞かせ下さい. 質 問 日常の関わり a 困っていることはどんなことですか,(認知症者)の状況の変化で困ったと感じ 項 目 で困っている たことを教えてください. ① こと b ご家族の悩みはありますか c 問題と感じていることは何ですか,具体的にお話しください d そのことは 1 日の時間帯に関係ありますか.どんな状況で起きるのでしょうか. e 認知症のご本人がどんな気持ちでおられるか考えられたことはありますか fご家族の(認知症者)の状況の変化でよかったと感じたことを教えてください. 質 問 項 目 ② つどい参加の 質 問 つどい参加後 aつどいに参加してよかったと思うことがありましたか 項 目 の心の変化 bつどい参加後に認知症の人をどう思われましたか つどい参加するきっかけはどんなことでしょう 動機 ③ c身体の変調をきたしましたか.それはどんなことですか.いつ頃からですか. d気持ちに安らぎを覚えることありましたか.それはどんなことで,いつ頃ですか. e誰かに助けられたと感じたことはありましたか,それはどんなことで,いつ頃ですか. f行政のサービスで不足だと思うことがありますか.それはどんなことですか g医療機関のサービスで不足だと思うことがありますか.それはどんなことですか 上記で得られ ・夜眠れないことはありましたか.(日常生活上の困難) なかった場合 ・イライラして怒りっぽくなっている(心の健康) の予備質問 ・頭痛・腰痛・肩こり,薬の使用(健康上の症状) ・支援して欲しい内容(親戚・地域・専門職・行政など) 24 資料2 平成 25 年 月 日 認知症の人と家族の会 A県支部長 ○ ○ ○ ○ 様 弘前医療福祉大学保健学部 教授 小池 妙子 研究協力のお願い 拝啓 時下,ますますご健勝のこととお喜び申し上げます. さて,私どもは「在宅認知症者の男性の家族介護者が抱える葛藤と支援の方向性」 というテーマで研究を計画しております. A県において認知症の人と共に暮らす家族(主として男性介護者)が,日頃,抱えてい る悩みや葛藤,介護負担感,対処方法などを明らかにし,その要因と支援の方向性を探求す ることを目的としています.研究により,今後,認知症の人と同居する家族の助けになり, 少しでもお役に立てればと考えております. つきましては,A県において認知症の人と生活をともにしている男性家族介護者で「認 知症の人の家族のつどい」に参加している(したことがある)20 名程度をご紹介いただき たくお願い申し上げます. 研究方法:紹介していただいた方に研究の趣旨を説明し,同意の得られた男性介護者に面 接の協力と録音することを説明します.研究を承諾された男性介護者に面接日時,場所を 指定していただき,研究者が出向き面接を実施します.基礎資料の質問と半構造的面接用 ガイドを用いて 60~90 分の予定でインタビューを実施します. 調査内容: 表1 属性等基礎資料 認知症者 年齢,性別,認知症診断名,認知症罹患期 間,認知症自立度,日常生活自立度,介護 保険要介護度,認知症以外の疾患,症状, 状態,服薬の有無 介護サービス利用の内容 家 族 年齢,性別,認知症者との関係,同居している 家族の人数,自覚している健康状態,服薬の有 無, 仕事(職業)の有無 表2 主な質問(インタビュー項目)内容 ①介護者の悩み,葛藤,問題と感じていること,②認知症の人に抱いている思い,③家族 のつどいに参加する動機,参加した結果,④協力者(家族,親戚,地域住民,専門職者) の有無,⑤ストレスの解消法,⑥行政・医療機関の対応と要望,地域住民,専門職者の支 援と要望,⑥認知症の人と家族の会に対する要望等 25 倫理的配慮: 家族のつどいに参加している男性家族介護者に研究目的,方法,録音すること,個人が 特定されないこと,研究以外にデータを使用しないこと,研究終了後はテープを破棄する ことなど)参加の自由,研究に参加しなかった場合,途中で参加を取りやめた場合でも不 利益が生じないことを説明する.了解を得られた場合に承諾書にサインをいただく.面接 時に改めて口頭と文書により説明を行い参加の意思が確認できた場合に文書による同意を 得た上で基礎資料と半構造的面接用ガイドを用いて 60~90 分の予定でインタビューを実 施する. 調査時期:2013 年7月~2013 年 12 月 共同研究者:略 研究にあたり, 認知症の人と家族の会 A県支部のご理解とご協力を賜りたくお願い申し上 げます. 敬具 ご不明点は,下記,小池の連絡先へお問い合わせください. <連絡先> 略 26 資料3 認知症の人を介護されているご家族の方へ 平成 25 年 月 日 前医療福祉大学保健学部 教授 小 池 妙 子 面接のお願い 拝啓 私どもは「在宅において認知症の人に対し男性家族介護者が抱える葛藤と支援の方向性」 というテーマで研究を計画しております. 主としてA県において認知症の人と共に暮らす家族(男性家族介護者)が,日頃,抱え ている悩みや葛藤,介護負担感,対処方法などを明らかにし,その要因と支援の方向性を 探求することを目的としています.研究により,今後,認知症の人と同居する家族の助け になり,少しでもお役に立てればと考えております. 1)研究方法:在宅において認知症の人を介護されている男性のご家族にインタビュー(面 接)を行い,日頃抱えている悩みや葛藤をお聞きします.時間は 60~90 分程度です.なお, インタビューの内容はテープに録音して逐語録に起し分析を行います. ご承諾いただきました方には,面接日時,場所を決めさせていただきます. 2)調査内容 表1 属性等基礎資料 認知症者 家 族 年齢,性別,認知症診断名,認知症罹患期 年齢,性別,認知症者との関係,同居している 間,認知症自立度,日常生活自立度,介護 家族の人数,自覚している健康状態,服薬の有 保険要介護度,認知症以外の疾患,症状, 無, 状態,服薬の有無 介護サービス利用の内容 仕事(職業)の有無 表2 主な質問(インタビュー項目)内容 ①介護者の悩み,葛藤,問題と感じていること,②認知症の人に抱いている思い,③家族 のつどいに参加する動機,参加した結果,④協力者(家族,親戚,地域住民,専門職者) の有無,⑤ストレスの解消法,⑥行政・医療機関の対応と要望,地域住民,専門職者の支 援と要望,⑥認知症の人と家族の会に対する要望等. 27 3)倫理的配慮:研究を行う際は,認知症の人と家族の会における個人情報の取扱いの取 決めに従い守秘義務を厳守し,倫理的配慮に努めます. 面接時,研究の趣旨とプライバシーの保護を説明し,データは研究以外に使用しないこ と,テープの取り扱いには細心の注意を払い,分析作業の終了後には消去すること,研究 結果を論文やその他の方法で公表する際は,個人名が特定されないよう配慮すること,研 究協力は自由意思によるものであり,この依頼に同意されなくても全く不利益を被ること はないことなど説明し,同意書にサインをいただいた後,面接を開始します. 調査時期:2013 年7月~2013 年 12 月 共同研究者: 略 敬具 ご不明点は,下記,小池の連絡先へお問い合わせください. <連絡先> 略 28 資料4 認知症の人の家族宛承諾書(家族宛) 弘前医療福祉大学 研究責任者 小池 妙子宛 承 諾 書 私は「在宅認知症者の男性の家族介護者が抱える葛藤と支援の方向性」 について依頼文書の内容の説明を受け理解しましたので,研究に協力し面 接(インタビュー)に応じることを承諾いたします. 平成 25 年 住所: 〒 電話: 氏名 29 月 日 資料5 認知症の人の家族宛 同意書 弘前医療福祉大学 研究責任者 小池 妙子宛 同意書 様 件名「在宅認知症者の男性家族介護者が抱える葛藤と支援の方向性」 平成 25 年 月 日 において 時 分から 時 研究委員 分まで 氏名 より 1 研究の目的方法 2 予想されるメリット及びデメリット 3 同意しないでも不利益を受けないこと 4 同意を撤回した場合でも不利益を受けないこと 5 人権,その他保護について配慮されていること 6 研究に参加した場合の費用など について説明文書につき十分説明を受け理解しましたので自らの意思でこの研究に参加 することを同意いたします. 同意年月日 氏名 30 年 月 日 サイン 資料6 テープ起こし外部発注に対するプライバシーの保護について 誓約書 研究者(甲)よりテープ起こしを依頼された者(乙)はテープ起こしにより抽出された 個人情報については,次の通り取り扱いを遵守します. 1 個人情報の秘密を保持すること 2 目的以外に使用しないこと 3 第三者に提供しないこと 4 複写または複製をしないこと 5 使用後は機密資料として処分すること 6 紛失等の事故発生時は速やかに報告すること 7 その他取り扱いに疑義が生じたときは協議すること 上記規定を違反した場合は必要な措置を講ずることを勧告することができる.勧告に係る 措置に応じなかった場合において,個人の権利利益が不当に侵害されるおそれがあると認 めるときはその者に対し,その勧告に係る措置を講ずることを命じることができる. 平成 25 年9月 日 勇美財団助成研究者代表 (甲)小池 妙子 殿 テープ起こし責任者 (乙)氏名 31 感想: 研究申請者:弘前医療福祉大学保健学部看護学科 小池 妙子 今回,初めて公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団から助成金の交付を得て研究を実 施することができた.共同研究委員は研究責任者と同じ大学・同短期大学の教員と東京で 過去に共同研究を実施してきた看護教員と臨床看護師(医療相談室勤務),並びに特別養護 ホームにて福祉相談の(認知症の人と家族の会の世話人を担っている)業務についている 現役の職員とである. 研究責任者が認知症の人と家族の会の会員として長期間「家族のつどい」に参加してい て,世話人とも顔見知りであったことから共同研究委員として快く参加してくれた. 在宅における認知症の家族を抱えた男性介護者がどのような悩みや葛藤を抱えているの か,については以前から関心を持っていた.しかし,インタビューを実施するためには旅 費や謝金を含め,多大な経費を必要とすることから逡巡していた.この度,幸いにも貴財 団から研究費の助成の交付を受けたことで,今回の研究を実施することができた. 時間を掛けて実施したインタビューでは家族のつどいでは見られない男性介護者の素顔 と「ホンネ」の思いを知ることができた.男性介護者は今後,ますます増加することが予 測される中で時宜を得た研究になったと考える. 今回の研究を契機に認知症の家族の男性介護者に焦点を当てて今後も引き続き研究を進め ていく所存である. ここに改めて貴財団にお礼と感謝の意を表したい.本当にありがとうございました. 32
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