映像アイランド「OKINAWA」 〜映像産業による自立型経済の確立への提言〜 【概要版】 調査研究報告書 平成 16 年 2 月 特定非営利活動法人デジタル社会総合研究所 研究員 石川 正善 研究員 大城 香里 1 はじめに 国内唯一の亜熱帯性気候にある沖縄県は恵まれた自然環境のもと、観光入客者数は今年度 500万人を超える好調ぶりである。しかしながら、一人当たりの宿泊数の低下や滞在中に 落とす経済効果も減少傾向にあり、県内ではこれまでの観光のあり方から新しい誘客の仕掛 けおよび、質の向上に向けての取り組みが行われているところである。今回、世界的にも産 業として注目をあびている映像産業を沖縄県で展開する事を模索してみた。 1章 1‑1 映像産業の現状 諸外国における映像産業の取り組み 近年映画産業を国家戦略の重点施策として位置づけしている国が増えてきている。いくつ かのもくろみがあると考えられるが 1、 工業資源を必要とせず、クリーンな産業である事 2、ワンソース・マルチユースによる高収益が期待できる事 3、自国の文化や歴史そして風土を資源として利用できる事 4、デジタル化の波によるコンテンツの大量消費時代に突入する為 等、様々な事が考えられる 1‑1‑1 米国における取り組み(ハリウッド) 映画からテレビの登場、ビデオ、DVD、そして今後はインターネットを利用したブロード バンドネットワークの利用と映像というコンテンツ一つに対して複数のメディアが存在し ており、それをうまくタイムラグをつけてビジネスに変えていく事を「ウィンドウ戦略」と 呼ぶこの基本に先の新しいメディアを取り組み複数より収益を上げるビジネスモデルが定 着しいている。さらに話題性が高くデザイン性があるものはマーチャンダイジングの収益も 加算されることとなり、トータルで大きな収益構造になっているのがハリウッド映画の特徴 であろう。(下表:ハリウッド映画のウィンドウ戦略(日本版) 封切公開 2 ヶ月 3 ヶ月 6 ヶ月 1年 2年 映画館 ビデオ、DVD(セル→レンタル) PPV ペイ CH 地上波 2 3年 1‑1‑2 ハワイにおける映像産業への取り組み ハワイは年間 600 万人の観光客が訪れ産業の中心はやはり観光産業と言えるが、特に映画 のロケ誘致に関してはかなり積極的な対応を州政府にておこなっており、州政府が自らスタ ジオを所有運営しているケースは米国内でも珍しい。撮影支援のフィルムオフィスはハワイ 州政府内にハワイフィルムオフィス、さらにホノルル、ハワイ島、カウアイ島、マウイ島等 の市もしくは郡の組織内に設置されており、ハワイフィルムオフィスと連携をとりきめの細 かい撮影支援サービスを実施している。また、これらの公的な機関とは別にハワイ州内で海 外からの映画制作と関連を持つ映画業界(制作会社、広告会社、モデル業等)で構成された ハワイ国際映画協議会(The Hawaii International Film Association:HIFA)が 1986 年に 設立され、政府と会員会社、労働組合、一般市民間における情報交換を主な仕事としている ほか、海外からの映画、テレビ、CM 撮影時に必要となるビザと撮影許可について便宜を図っ ている。 1‑1‑3 イギリスにおける取り組み イギリスは政策としてこれまでバラバラだった映像産業の政策関連組織を 2000 年にフィ ルムカウンシルというイギリスの映像振興策を統合戦略的に推進する組織を設置した。イギ リスの映像産業振興の為の資金調達はユニークである。一つはその財源を宝くじに求めたこ とにある。もう一つは政府の直接補助制度の代わりに CHANNEL4 という半官半民の放送局の 設立したことである。独立系映画作品の新たな配給チャンネルという組織使命から独立系制 作者に対する重要な資金供給源となっている。CHANNEL4 は制作機能を持たず、 「制作投資」 「事前放映権買付」「共同制作」などの形式によって番組や作品を外部調達する仕組みとな っているからである。CHANNEL4 の収入源は民放同様に広告収入となっている。イギリスのと ったテレビ業界の強い支援体制が映像産業を発展に寄与した実績を受けフランスでもテレ ビ局が映画制作の支援役に充てる施策がとられるようになった。 1‑1‑4 フランスにおける取り組み フランス映画のイメージとして「芸術性の高い作品」というものがある。1900 年代初頭欧 州で大発展した映画は第一次世界大戦により打撃を受ける事となる。その間に映画の中心は ハリウッドに移る事になる。欧州の映画人達も米国へ移り住み娯楽映画は米国の独擅場とな る。この動きとは別のベクトルでフランス映画は進み実験映画や芸術映画と呼ばれる前衛的 な作品が隆盛を極める事となった。制度的な特徴としては、特別会計による財政支援と放送 局の強制的な投資義務がフランスにおける映像政策の資金源となっている。 1‑1‑5 韓国における取り組み 21 世紀の国家基幹産業として、国を挙げた支援体制を整備し、戦略的にコンテンツ国際展 開を振興。韓国では、1998 年、金大中大統領が 21 世紀の国家基幹産業として文化産業を育 成するとの「文化大統領」宣言を行ったことにより、コンテンツ産業発展に向けた法や支援 3 体制の整備が急速に進展した。 1‑1‑6 台湾における取り組み コンテンツ産業を将来のスター産業と位置づけ、中華文化市場をリードすべく、 国家戦 略の中核として戦略的なコンテンツ産業策が進展。台湾では、2002 年、 「両兆双星産業発展 計画」(将来生産高で 1 兆元を超えると見込まれる半導体産業、ディスプレイ産業と、将来 のスター産業としてバイオテクノロジーとデジタルコンテンツ産業を設定)を発表し、将来 のスター産業としてデジタルコンテンツ産業を位置づけ、国家戦略の中核として戦略的なコ ンテンツ産業政策がおこなわれている。 1‑2 政府における映像産業の取り組み 我が国における映像産業支援の政府における取り組みは、最近になって活発化されてきて いる。主に文化庁、経済産業省、国土交通省の三省によって積極的な取組みが行われている。 文化庁は主に文化面からみた人材育成事業、映像制作における直接補助事業が特色であり、 経済産業省は産業面の振興から人材育成についてはプロデューサー育成や、コンテンツ流通 関係に力を入れている。国土交通省はフィルムオフィスの推進を軸に地域振興を行っており、 各省が持つ特色を生かした政策が充実してきた。 1‑3 沖縄における映像産業の取り組み 沖縄県内の映像産業はこれまで民間が主体となって行われてきた。特にロケ地としては復 帰後から多く使われており、民間のロケーションコーディネーター会社等が自然派生的に生 まれていたのが現状である。2003 年4月には待望の沖縄フィルムオフィスが誕生し、行政的 な支援体制が正式にできた。現在沖縄フィルムオフィスの設置により、国内のメジャー級の 撮影オファーもあり今後の活躍が期待できるところである。近年はNHKの朝の連ドラで沖 縄を舞台にした「ちゅらさん」が放映されると観光や沖縄の物産にも好影響が出ており、少 しずつではあるが映像産業と地元の関係性が出てきた様に感じられる。今後の動きとしてフ ィルムオフィスをさらに支援していく主旨で「沖縄FC連絡協議会」の設立を関連業界と連 携を高めながら発足していく準備をしている。 1‑3‑1 県内の映画撮影実績 県内の映画撮影の実績は、意外と古くから映画撮影されている事が解る。沖縄が被写体と して魅力ある事を証明している。また、フィルムオフィスの設置により、近年はさらに映画 撮影の数が増える傾向にある。ここでは、映画の撮影にしぼっているが、実際はテレビの収 録やコマーシャル、スチル撮影等全体を把握できない状態である。フィルムオフィスが設立 できる前の撮影は地元のロケーションコーディネーター会社により対応していたがその、会 社がまだ無かった時代からの撮影もある。 4 1‑3‑2 県内映像コンテンツ制作施設 近年、コンテンツ産業の成長率は、世界のGDP実質成長率よりも高い水準で推移していく と予測される中(経済産業省HP参照)、県内においてもそれに対応した人材育成及びコン テンツ生産を図る事業者の拡大に向けての映像コンテンツ制作施設は少なくない。(本報告 書参照) 1‑3‑3 県内映像コンテンツ関連企業 沖縄は古くからロケ地として沖縄県は利用されていた経緯から現在映像関連企業は多数 存在する。今後フィルムオフィスの支援母体としての「沖縄フィルムコミッション連絡協議 会(仮称)」への発展が期待できる。(関連企業一覧は本報告書参照) 1‑3‑4 映画祭への取り組み 現稲嶺県政は映像産業と観光産業の活性化の目的で沖縄国際映画祭の実施を表明してい る。映画祭は世界的にも各地で400以上も開催されており、地域振興の一つのモデル的に 行われている。 1‑4 1 章のまとめ 各国ともその土地にあった制度をうまく運営しながらも時代の流れの中で絶えず見直し を行い日々進化している事も理解できた。その中でも州ではあるがハワイの事例はその地理 的条件や観光主体の産業構造は我が沖縄県と酷似しており、多いに参考になるものと考えら れる。今後日本国全体が映像産業の展開を考えていく上で沖縄が持つ役割が存在する事もハ ワイがアメリカの中でどのポジショニングなのかという実例から伺える。ハワイの場合は映 像を産業として確実にとらえながらもその根底には観光産業へのフィードバックが顕著に 現れている。 2章 映像産業の構造 2‑1 映画の収益構造 映画の収益構造は大きく3つに分類される。制作、配給、興行である。現在はハリウッド を中心に映画映像産業の収益モデルが完成されており、新規参入者が入り難い世界もあるが (興行は既に配給網が完成されており難しい)映像産業のスタート地点である制作の場はま だまだ才能ある人材を求めており、参入の余地は大いにあると思われる。また、配給に関し ても後述するが、これから到来するデジタル映像の時代においては沖縄県の資源を駆使する 事で参入の可能性は残されているものと考えている。 2‑1‑1 制作 制作は3つの段階に分ける事ができる。一つは「プレ・プロダクション(映画を撮影する 為の準備期間)」二つ目が「プロダクション(撮影作業) 」三つ目が「ポスト・プロダクショ 5 ン(編集作業)」である。 2‑1‑2 配給 配給の収入は上記の劇場上映による上映権、ビデオ権、放送権として「ウィンドウ戦略」 の各ウィンドウでの収益構図を図る事となる。 2‑1‑3 興行 「ウィンドウ戦略」のなかで口火をきる劇場上映は全体収入を考慮した場合重要な事であ り、映画が持つ伝統的な劇場上映のためだけでないのである。よってビデオや DVD 市場が急 速に伸びるなか、ますます劇場での興行成績が需要となっているのである。 2‑2 映像産業職域分類 映画制作時に必要な経費を計上する際「ライン上」と「ライン下」という用語が使われる。 この二つの領域の中で映像産業の職種は整理される。 ライン上とは、諸権利の獲得費、タレント、プロデューサーに関する映画制作費であり、 ライン下はライン上を除く映画制作費となる。具体的にはアシスタントディレクター以下の 制作スタッフ、(道具、衣装、カメラ、音声、電気、メークアップ)ロケーションマネージ ャー等の人件費、交通費、宿泊費等となる。資源的な見方をするとライン上は有限資源であ り、ライン下は無限資源とも言える。地域振興策の中でフィルムオフィスの支援やサウンド ステージの設置による撮影誘致、現地スタッフの受け入れ体制強化等は全てライン下の経費 獲得を目的としていることになる。 2‑3 映像産業と地域振興 2‑3‑1 フィルムオフィス 映画、テレビドラマ、CM などのロケーション撮影誘致を行い、実際のロケをスムーズに進め るための非営利な公的機関であり、現在、欧米を中心に世界 31 カ国に約 300 の団体が組織 されている。それらの多くが自治体等に組織されており、国内ばかりでなく国際的なロケー ション誘致・支援活動の窓口として、地域の経済・観光振興に大きな効果を上げている。 2‑3‑2 映画祭概要 (1)韓国釜山国際映画祭 概 要 釜山で映画祭を開催するきっかけとして、本来は、都市ソウルで映画祭を開催する予定で あったが、さまざまな地理的問題がありソウルでの開催を諦めざるを得なかった。そこで観 光リゾートとしては以前より注目されていた釜山において、観光と映画を結び付けることが きないかというところから映画祭がスタートした経緯がある。初期は観光促進という側面で の映画祭開催であった。釜山国際映画祭には、PPP(Pusan Promotion Plan)という映画そ 6 のもの商品として売買取引できるイベントスペースが設置されている。昨年までの PPP は、 場所の提供のみで自由に製作会社とバイヤーが取り引きをしていたのだが、今年からは、オ フィシャルな PPP として設置した。主な活動として映画の買い付けに関するセミナーなどを 行い、「公式な場所で商談が行える映画祭」としてアピールしていく方針があるという。ま た、PPP を行う事で特に釜山市あるいは映画祭関係者に対するメリット(インセンティブ) などは今のところない。今後模索予定であるとのこと。今回の映画祭スタッフの総数は、400 人を超え、その 1 割はボランティアスタッフであるという。事務局は、通常専従者として 15 人おり、PIFF(釜山国際映画祭)開催 3 ヶ月前になると主力となるスタッフが 50 人ほど採 用される。 映画祭の財源として今年は 30 億ウォン(日本円にして 3 億円)となっており、 開催当初は、釜山市から 5 億ウォン(円にして約 5 千万円)支援してもらっていたが、映画 祭を成功に収め、継続してきた事に対して、今年は国から 10 億ウォン、釜山市から 10〜13 億ウォンまた一般企業等からの賛助金が 9 億ウォンという内訳になっている。映画祭を開催 するにあたり開催する時期に毎年苦労をしているという。韓国には日本のお盆にあたる チ ュソク という大事な行事があり、毎年旧暦に基づいてチュソクは制定されるのだが、年々 時期が変わることにより(旧暦であるので)、映画祭の時期も変えざるを得ないとこのことで ある。今回の映画祭において PIFF や BFC は国から認定をもらった。これから 3 年の間に支 援金として 2,500 億ウォン(日本円にして約 250 億円)を支援してもらう予定である。また 今後の予定として、映画・映像及び映画祭の認知度を高めるため映像メディアセンターやポ ストプロダクションなどのフィルムを現像するような映像関連施設を創設するための活動 を行うとのことである。いずれにせよ、このように映画祭が継続し、なおかつ年々注目され てきている釜山映画祭は、地元のボランティアの力こそが映画祭を成功する秘訣に感じた。 (2)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2004 概 要: ゆうばり国際ファンタスティック映画祭は今年で 15 回目を迎える。昭和 60 年代、夕張市 は、自治体としてより大きく発展させる使命に燃えており、「夕張から世界へ情報発信する ことができないだろうか」と昭和 63 年の春、壮大な計画が持ち上がった。進路は映像文化、 マルチメディア事業などと変遷を重ねてきたが、辿り着いたのが最大のエンターテイメント である「映画」による情報発信であり、今のゆうばり国際ファンタスティック映画祭である。 今年(2004 年)の映画祭総予算は、9,000 万円であるとのこと。内訳として、文化庁からの 支援(数字未公表)、夕張市から 5 千万円弱、あとは協賛金及び寄付金などである。国際映画 祭を開くにあたって夕張市は、街全体を映画の街にすると環境を整えている。ゆうばり国際 ファンタスティック映画祭は毎年 2 月に開催されている。海外から参加する作品は 50〜60 本あり、その中でも最も注目を集めているのが、ヤング・コンペティションであり、過去 1 年の間に作られた新作映画の中から優秀作品を選び、グランプリを決める。またこの映画祭 で忘れてならないのがボランティアチームによりサポートである。地元スキーチームによる タイマツ・スラローム、婦人団体の手作り料理など映画祭は 1,000 人に及ぶボランティアで 7 支えられ運営されている。 まとめとして、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を 2 泊 3 日にわたって視察をした のだが、一言で言うととてもアットホームな映画祭という印象を受けた。 夕張市一人一人が笑顔で出迎えてくれて、また行きたいと思わせる雰囲気を多いにもって た。ヒアリングしていく中でも口をそろえて実行委員の方々が言っていたことがボランティ ア及び映画を愛する人がこの町にはたくさんいるとういうこと。映画祭を支えてくれる人が いるからこそ、ここまで(15 回)まで継続した背景があることを忘れてはならないとのこと。 夕張市民各自が映画祭を成功させたいという意気込みを感じた。 最後に実行委員の方に尋ねてみたのだが、「沖縄で国際映画祭開催は可能か?」という問 いにその答えとして「北の地夕張は寒い雪国の心が暖かい町という印象でこの映画祭を継続 してきた。南国沖縄も亜熱帯気候など独自の島嶼性をいかしたコンテンツをもって開催すれ ば同じリゾートの地として成功するだろう」ということ、また根底にはボランティアという 映画祭を開催するにあたっての縁の下の力持ちが必要不可欠であると後藤夕張市長は語っ て下さった。 2‑4 2章のまとめ この章では、映像産業の構造を収益構造、職種構造、地域振興の観点で見てみた。文中に 出てきた「ライン下」の職種をもってまず、沖縄県において撮影現場で使える人材を育成す る事が急務であろう。また、フィルムオフィスと映画祭は地域振興の観点で映像制作者側と 住民との架け橋にとしての役割が重要であることが理解できる。特に映画祭の開催について は、そのコンセプトを良く考える必要がある。 3章 沖縄型映像産業の可能性 3‑1 沖縄における映像産業資源 3‑1‑1 景観資源 ロケーションの場としての一番の売りは何といっても海であろう。亜熱帯性の温暖な気候 は日本のどこにもない景観である。また、島嶼性はさらに南国のイメージを強烈に演出して くれる。沖縄の風景というのはかなり複雑な構成の中で存在しており、一言でいうと混沌か もしれない。それは、日本が持つアジアのイメージそのものと表現する人もいる。 沖縄の観光の目玉が海であるが、人口が一番集中している那覇市から浦添にかけて実は一 般の人が立ち入れる海岸線はかなり少ない。港や米軍の基地に殆ど海外線は占領されている。 また、電力やガス、汚水処理場等人里から離れた方がいいものが海岸線沿いに配置されてい る。もし、海岸線をオープンにしてそこを走る道路が町並み形成の起算点になれば、景観的 にも観光の資源としても有効な計画になるのではないかと考える。 3‑1‑2 地震国日本における沖縄の優位性 沖縄県は元来地震の少ない県であるが、島の形状についても隆起石灰岩の地勢のため、 8 長周期地震の影響を受け難い。映像産業との関わりについては、一義的に制作の場が安全 というよりも、むしろ完成後の商品としての映画作品の保管を考慮した際に重要性を増す。 今後主流になるデジタルコンテンツの保管(アーカイブ、バックアップ)および配信基地 として最適な環境と考えられる。沖縄の地理的資源の一つに地震災害に強いということは 重要である。 3‑2 ロケーション誘致による経済効果 沖縄フィルムオフィスでは、まだ年度的にしまっていないので正式な額の提示はまだない が、支援本数は提示されているので、国土交通省の算出マニュアルから推定してみると現状 では 2 億〜3 億といったところだろうか。 (総合経済効果)今後、地元のスタッフの雇用等が 促進されれば、人件費としてさらに伸びる事が予想される。 3‑3 映像産業と観光産業 沖縄は国内唯一の亜熱帯性気候と島嶼性の景観から日本国内において有数のリゾート地 として発展を遂げている。観光入客者数も復帰直後の 47 万人から今年度は 515 万程度の見 込みがあり、実に 30 数年で 11 倍程度の成長率である。実はこれはインターネットというメ ディアの特性が現れたものと考えられる。クールメディアとしてのインターネットは情報を 得るという能動的なスタイルでその活用に意味が出る。 レンタカーの増加(1999 年の約 9,000 台から 2003 年は約 14,000 とこの5年間で 50%の伸び率)はまさに、決められたパッケージ 旅行ではなく、自分で情報を入手し自分の思いと足で旅をするスタイルと見事にマッチング していると考えられるのである。昨今の沖縄観光はテレビが入客者数の伸びに大きく関与さ れていると考えられる。テレビで健康ブームの火付け役となった「あるある大辞典」の放映 開始や、NHK の朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」のテレビ放映において沖縄が取り扱われ るコンテンツのパワーが観光入客者の増加に結びついているとは言えないだろうか。 3‑4 映像産業と IT 産業 近年の映像にはコンピュータを駆使した CG の利用が日常的になっており、映像コンテン ツとコンピュータの融合は映像の世界にさらなる可能性を提供している。近年では映像産業 にデジタルクリエイターと呼ばれる人材が必要となっている。若年者層の雇用が期待できる 分野でもある。しかしながら、デジタル技術は日進月歩の進化を遂げておりそのスキル取得 には並々ならぬ努力が必要とされている。次世代産業として戦略的な位置づけで技術収得の プログラムを連動させる事が急務であろう。 3‑4‑1 データセンター 県内にはデータセンターと呼ばれる施設として行政や民間が運営しているものが3カ所 存在する。現在のターゲットは日本本土や海外のバックアップセンター的な業務を主な取引 先としているが、そのメリットとしては東京との回線費の県負担による経費軽減がもっとも 9 大きい。また、先に述べた自然災害に強い事も大きなメリットとして今後さらに注目される と考えられる。将来的にブロードバンド時代が普及し、大量コンテンツ消費時代を迎える事 になると考えられる。その際現在の物理的な流通経路ではなくデジタル回線を利用した新し い経路が必要になると考えられる。その様な状況になると映像コンテンツ専用の貿易港が必 要ではないだろうか。データセンターはその役割として位置づけされると考えられる。関税 や源泉税的な海外との窓口が一元化されることが、円滑な推進につながるものと捉えている。 その事を考えた場合、データセンターは現在のセキュリティの考えと新しい海外交易の場と してのセキュリティを持つ事が必要であろう。この様に映像データという大きなデータのや り取りが行われた場合沖縄からアジアへ向けての回線はとても重要なルートになる。現在の 中継基地としての回線基地からそれを使ったアジアと日本をつなぐ映像コンテンツに特化 したデータセンターが必要になるであろう。 3‑4‑2 サウンドステージ サウンドステージとは、映画等の撮影を屋内で行う際のスタジオを意味する。 ハワイの例でも自然環境を全面にロケーションの地としてアピールしている反面サウ ンドステージを州政府が管理運営を行っている。ハワイの場合も 10 年以上続いたテレビシ リーズという担保によってサウンドステージが作られた経緯がある。初動にはそれを利用す るプロジェクトが必要であることがわかる。大規模な施設となるサウンドステージはその運 営維持が難しいということである。沖縄県内にサウンドステージを検討する際にもイニシャ ル、ランニングともにコストのかからない方策を検討しなければならない。そこで考えられ るのが沖縄県には多くの米軍基地が存在する。基地返還プログラムの中には飛行機の格納庫 を多数保有している基地も存在する。もしくは、地下の倉庫を保有しているところもあると 考えられる。沖縄県にて基地が返還された場合に現状引き渡しを行う事で先の軍施設の中で もあまりお金をかけずにサウンドステージを県内に保有する事が可能ではないかと考えて いる。ある程度の時限をきっても良いと考えられる。その間に施設利用の促進を図る事がで きれば、継続もしくはそのときは投資をして新規に建設してもよいだろう。産業の芽だしと して初動を行政にてスタートし、その後県内の民間にて運営していく事が望ましいのではな いだろうか。そのためにも既存で流用できる施設からスタートする事が低リスクで産業を起 こす事になるであろう。 3‑4‑3 アニメーション アニメーションの制作の過程でセル画作成というのがある。膨大な数のセル画に色付け をする作業である。これまでは手作業が中心で人件費のかかるこの作業は中国を初めアジア 諸国の人件費が安いところへ外注する事が多い。しかし近年では「千と千尋の神隠し」等コ ンピュータによる作業で行われる様になりデジタル技術で作業を行う事が可能になってき ている。この作業を海外へ外注するのではなく、国内でも処理する事が可能であろう。その 際にデータセンターがその中核をになう施設になると考えている。大量の画像データのやり 10 取りは半端なサーバーや回線では仕事にならないからである。また、公開(放映)前のコン テンツは企業秘密でもあり、セキュリティの確保も重要だからである。 県内は若年者層の失業率が高いのが特徴であるが、裏を返せば若年者層の雇用が取りやす いとも言える。作業自体若年者層の嗜好にもあっていると考えられる。現在の海外発注が沖 縄で行えれば大幅な雇用の機会を得るものと考えられる。 3‑5 3章のまとめ 今後、デジタル地上波の普及が進めば比例してコンテンツの需要が伸びるであろう。まだ 市場的には限られたものであはるが、今後さらに世界的に日本に対するアニメーションの評 価の高まり、とそれを消費する大量コンテンツ時代を鑑みた中で沖縄の果す役割が存在する ものと考えている。景観的にも亜熱帯気候による豊な自然資源が撮影のロケーションの場と してだけではなく、デジタルコンテンツを制作する者にとっての作業環境としても有効であ ることも解った。また、県内には多くのデジタルコンテンツを制作する施設も多く存在する 事や、データセンターをさらに利活用する方策も提示した。さらに米軍施設の返還に伴い現 状返還の手法を取る事が可能であれば映像コンテンツ制作の場として有効なアイディアも 提示した。しかし、映像産業にまつわる資源としていくつかの角度から沖縄県を検証した結 果その利活用とその効果が期待できる反面、横断的なプログラムが存在していないことに気 がつく。自立型経済という命題のもとに、映像産業を推進する強力なプログラムがなければ、 折角の有効な資源も活用されず、それぞれに取り組んでいる事業プログラムにおいても大き な成果は期待できないのではないだろうか。 4章 4‑1 将来展望 フェーズ1(ロケーションの場としての認知活動) 映像産業を沖縄に確立する為の最初のステップとしては県内での撮影頻度を高める事を 推進する。そのトリガー役となるのが、フィルムオフィスである。フィルムオフィスは地域 振興の面での活躍が大きく、映像産業という特殊な産業と地域を結び付ける重要なポジショ ンと言える。ハワイフィルムオフィスを例にとると州内にくまなく配置されたフィルムオフ ィスと連携をとり、相乗効果を上げるシステムを取る事は沖縄県においても島嶼性を考慮す ると今後の課題になると考えられる。沖縄県内のあちこちで撮影ロケが日常茶飯事に行われ ている環境を思い起こしてみると、これが日常的な風景として若年者の目にも映るのではな いだろうか。確かに、そこで働いている人間が存在している事。そして何よりその仕事の成 果が映画やテレビの番組として我々の目の前に登場する。このサイクルを体験できる地域と そうでない地域では確実に人材の育成に差がでるのではないだろうか。 次に、映画祭の開催が考えられる。夕張の映画祭的なイメージがスタート時においては沖 縄で定着しやすいのではないだろうか。映画と地域を愛する者からスタートした映画祭は息 が長く地域振興に好影響を与えている。沖縄においては、宮古島のトライアスロンがその経 路で最大に成功した例と考えられる。夕張の映画祭はどちらかというと、世界の映画人のコ 11 ミュニケーションの場として定着した感があり、住民もそれを望んだ。外向きと内向きの方 向性やそのさじ加減はとても難しいであろう。今後沖縄県においても、映画祭の開催が検討 されている。沖縄で開催される映画祭の意味を良く考えて行う事が重要である。イベント的 な位置づけであれば、観光との直接的な結び付きで片付けられるが、映像産業としての認知 度を外と内に促す事を考慮する事が必要ではないかと考えている。映画祭のテーマや募集内 容という具体的なところにその答えは存在しているかもしれない。いずれにせよ、一過性の イベントとして終わらせる事の無いように、確実に地域と映像産業を結びつける架け橋とし て存在してほしい。フェーズ1の目的としては、映像関係者をいかに数多く沖縄の地に足を 運ばせるかがポイントであろう。その為には行政的にもいくつかの施策が必要である。撮影 誘致に関しては、沖縄県内で可能な映画撮影に伴う経費の軽減処置を図る事である。折角の ロケーションを保有していても、中央に集積する制作会社との距離は課題である。航空運賃 の特別割引や、現地調達による経費の一部税金控除等、行政的に手当をしなければ実現でき ない事もある。また、撮影の増加に見合う現地スタッフの雇用率の向上についても、先の経 費軽減処置の条件事項に盛り込む事で制作会社の積極的な採用を促す仕掛けも考えられる。 4‑2 フェーズ2(制作支援体制の整備) フェーズ1で沖縄県を映像の撮影の場もしくは、映画の島というスタイルを確立するのと 平行に、映像産業として機能する為の受け入れ体制を強化する必要がある。一番強化しなけ ればならないのが、人材育成であろう。既に説明してあるように、映画、映像に関わる職種 は多種多様にあり、それぞれ特別なスキルが要求される。フェーズ1では主にライン下の人 材および職種を要求しており、ライン下がなければ、地域経済に対して直接的な効果は期待 できない。フェーズ2ではライン下の人材の拡充を図りながらも、ライン上の人材育成につ いても取りかかる事を目標としている。映画の権利自体を握る事のできるライン上に沖縄の 人材が食い込む事を将来的に模索しなければ、永遠に下請け的な産業に甘んじる事となるか らだ。しかしながら、ライン上の人材だけを狙ってみても産業としての基礎がなければそれ に適合する人材は現れないと考えている。このフェーズ2では、映像産業に関わる就業人口 をさらに延ばす事と合わせて、質の向上を持つ事に目的がある。ゆくゆくは、沖縄県内にお ける自主映画製作への布石になるものでもある。 4‑3 フェーズ3(フィルムマーケットの整備) 映画際には大きく分けると鑑賞会型、コンペ的型、見本市型があるが、フェーズ3ではコ ンペ型と見本市型的な意味合いをもたせる。沖縄の地で沖縄を舞台にした映画に対してその 制作費の一部を支援する試みは若い映像作家にとっては資金調達が難しい映画制作の世界 で支持される要因になるであろう。沖縄の映画祭がそれによって作られた映画の発表の場と しての意味合いも出てくる。沖縄という地に映画をビジネスとしてとらえている業界人を集 める事はその後の展開に大きく意味を持つものである。映像のデジタル化時代を考慮すると、 先に述べたデータセンターの活用が考えられる。国内外のデジタルコンテンツが集積できる 12 事で、ブロードバンド配信のビジネス展開や、字幕スーパーの加工事業等、沖縄において、 映像コンテンツによる配給ビジネスの可能性がある。しかし、回線コストやデータセンター のクオリティが高いだけでは、集積を促進することは難しい。海外販売に関わる税制面の優 遇処置や著作権管理、作品のプロモート事業の展開等、国の制度と合わせた仕掛けが必要と なる。また、サウンドステージの設置についても沖縄での撮影頻度と要望によりフェーズ3 では十分に考えられる。さらに、サウンドステージとデータセンター、高速回線が揃う事で 現在中央に集中しているポスト・プロダクションの誘致も可能性が出てくる。これは企業誘 致と同じ意味を持つ事になる。また、ポスト・プロダクションが沖縄にて営業を行う場合自 由貿易地域の特例を使い海外の事業を税制面の優遇を受け展開できるのではないだろうか。 国内でも稀な地域の活用をコンテンツの加工についても適応する事でメリットが発生する と考えられる。インターネットを介したブロードバンド配信における配給会社的な事業は可 能性があると考えられる。但し、膨大な映像コンテンツを買い付けで走り回るのでは無くデ ータセンターへ集積する事が可能なのがデジタルコンテンツである。コンテンツを供給した い者(個人、法人を問わず)直接個人の視聴者へ供給できる整備を行う事でビジネスが成立 する。今後の映像産業の流通形態としてブロードバンドの普及やハードの低価格化と高性能 化が進む事でその可能性はもうすぐそこまで来ている。インターネット配信によるコンテン ツビジネスのモデルは以前よりあったが、問題点がいくつもありまだ市場的には開拓されて いないと言える。技術的や経済的にクリアされる日はもうすぐというところだが、著作権の 問題や倫理的な問題とう技術的な解決とは違う世界の問題があるのも事実である。 5章 5‑1 「映像アイランド沖縄」の実現化へ向けての提言 撮影誘致に関わるもの 沖縄県のロケーションは国内でも有数である事を前提に日本における映像コンテンツの 充実化を図る為に今後撮影がし易い環境整備を推進する事が必要である。 5‑1‑1 映像関連企業誘致の為の税制緩和 沖縄県内における映像産業定着の為に映像関連企業の積極的誘致を行う。県内に本社(支 社)機能を移転(設置)した場合映像関連企業に限り大幅な法人税の控除を行う。 5‑1‑2 撮影における航空運賃の特別割引制度の導入 沖縄県は遠隔地であるが故に航空運賃が他の地域より高く。映画撮影等の大人数の移動の 場合、その経費はかなりのウエイトを占める。コールセンターの回線費補助的な意味合いと なる。移動にかかる経費を落とす事が可能になれば沖縄でのロケは確実に伸びるものと考え られる。一定規模の人数や搭乗回数等によって割引にバリエーションを持たす等の工夫を行 う事とするが、基本的には沖縄へ行き易い環境を提供する事を目的とする。映画の場合プロ ジェクト自体が頓挫するリスクもあり得るので、完成をもって払い戻しの制度でもいいかと 思われる。 13 5‑1‑3 撮影における経費に対する税制控除の導入 ハワイ式の税制優遇制度である。沖縄で使われた経費にかかる税については、映画完成後 清算を行い払い戻すというものである。 5‑1‑4 撮影における雇用に対する税制控除の導入 現地スタッフの雇用の場の確保として行う。何名雇用するかにより、上記の控除が合わせ て適応される。もしくは、緊急雇用対策費的に行政よりある額まで負担し雇用を促進させる。 5‑2 地域振興に関わるもの 5‑2‑1 フィルムオフィスの全島ネットワーク網の整備 島嶼性が特徴的な沖縄県において、全島を一つのフィルムオフィスでカバーするのは人的 にも経済的にも難しい。ある一定の人口を持つ島単位に最低限フィルムオフィスを設置する 事を推進する。行政としてはそれにかかる費用の予算化等を行う必要がある。 5‑2‑2 映画際開催における独立組織の設立 沖縄県が現在取り組始めている映画祭は国際映画祭であるが、映画祭はテーマや、ゲスト そして肝心の作品集め等時間がかかるのと同時に専門知識も必要となる。観光振興の位置づ けでも専属の組織を設け運営しなければ、成功は難しい。将来的な見本市やコンペへの発展 性を考慮した組織作りを行う。フィルムオフィス同様行政の支援と民間の力を総合的に合わ せる必要がある。 5‑3 映像制作者に関わるもの 撮影時における特例処置は当然、映像制作者にとってメリット性の高いものであるが、さ らに沖縄で撮影をする価値を高める必要がある。映画制作において重要な事は資金調達であ る。これは国内においても大きな課題であり経済産業省も様々な取り組みを現在行っており、 いままでコンテンツを流通する企業(放送局、配給会社等)からの資金調達で予算が頭打ち になり十分な予算を調達できなかった現状から広く資金調達を図る事ができ、コンテンツの クオリティを高め国際競争に勝てる商品開発を目指すものである。この制度が制定し推進さ れれば諸外国並みの資金調達となる。こうした背景の中さらに、沖縄にて撮影を行う際に「沖 縄映画ファンド」を設立する事を提案する。条件整備の中で沖縄という枠においてのみ対象 となる作品を絞り込む。前述した「沖縄国際映画祭」とのリンクを行い沖縄県の利益につな がる映画(国際的なイメージ確立に向けて)を強力にサポートする事で沖縄における創作活 動を提供するものである。 5‑4 流通に関わるもの デジタルコンテンツの流通に関してはこれからの市場であり、沖縄県が参入する事も可能 14 ではないだろうか。その中核に位置するのがデータセンターと本土〜沖縄〜アジアを結ぶ高 速回線の整備であろう。この二つのツールにコンテンツの海外貿易を円滑に行うための行政 的な介入すなわち、法人税やコンテンツに発生する源泉税の優遇処置を設ける。 また、流通を促進するための通信インフラの補助を現在の制度拡大運用を行う。 デジタルコンテンツ関連の民間の活性化を国内外に促す事を目的として「デジタルコンテン ツフリードレードゾーン」の設立を提案する。この提案は、既に県内にある制度の柔軟的運 営として考えた。沖縄自由貿易地域や沖縄特別自由貿易地域における制度の適応を企業では なく、一つのプロジェクトあたりに対象とするものである。国内の外国税額控除制度はライ センシングした相手国で一方的に控除された源泉税を国内の法人税で控除する救済制度で あるが、通常会社全体で一括して計算されるため、他のプロジェクトの影響を受けて控除で きないケースがある。これをプロジェクト毎に適応させることも可能にする制度改正があれ ばリスク軽減につながると考えられる。 5‑5 人材育成に関わるもの 既に、文化庁でも「新進芸術家国内研修制度」を実施しており国策として推進されている ところである。当然沖縄からも才能をもった人間は挑戦するべきである。監督や、プロデュ ーサー、脚本家、アクターはこの制度に沿った人材育成であると考えられる。産業として捉 えると、ブレーンの育成と合わせて現場レベルの人材についても育成しなければ、実働が伴 わない。沖縄県において、ライン下の人材育成はロケ誘致にもっとも必要な人材でもあり、 そこをターゲットにした留学制度を行って頂きたい。また、人材育成のベースになるべく、 英語のスキルを高めるプログラムを行う事も急務である。 おわりに 制度的なものを改正することや、インフラの補助事業への要請的なものが多く含まれて いたが、一番大切なものは映像産業との関わりを持つ事が将来の沖縄の自立型経済へ大きく 貢献できるという意識を持てるかどうかである。官が出来る事、民が努力することそして地 域が一つの目標を持つ事等、当たり前でなかなか実現できない事でもある。多様性の時代の なか、いかにベクトルを合わせる事ができるか。そして、それをなし得るには横断的な施策 が必要だと感じる。 国の映像産業政策の中で沖縄県しかできない役割を再度認識して推進していく事ができ れば、日本の映像産業が今後ますます発展し、国際競争力のあるコンテンツを作りあげるこ とができると信じている。 15
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