平成 27 年度 事 業 概 要 越谷市保健所生活衛生課 食肉衛生検査所 は じ め に 越谷市は、多くの河川や用水路が流れ、古くから自然に恵まれていたことか ら、 「水郷こしがや」と呼ばれてきました。江戸時代には日光道中第三の宿場町 としてにぎわいをみせ、今もその名残をとどめるなど、豊かな自然と歴史が融 合したまちです。 平成 27 年度から、地域の実情にあったまちづくりをさらに進めていくため、 越谷市は事務権限の拡大が図れる「中核市」へ移行し、独自に保健所を設置す ることとなりました。それに伴い、埼玉県食肉衛生検査センターから事務の移 譲を受けて、保健所の所属機関として越谷市食肉衛生検査所が設立されました。 平成 27 年 4 月 1 日、業務を開始したまさにその日に、「と畜場法施行規則」 及び「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則」の一部を改 正する省令が施行され、と畜場及び食鳥処理場における HACCP による衛生管 理の段階的な導入が本格的に始まることとなりました。食品製造業界における 国際標準となりつつある、HACCP による衛生管理導入の波は、ついにと畜業や 食鳥処理業にも及んできたことになります。当所所轄のと畜場でも HACCP に よる衛生管理が始まり、現在当所では必要に応じて助言を行っているところで す。 今年でようやく 2 年目の食肉衛生検査所ではありますが、と畜検査による疾 病の排除はもとより、と畜場や食鳥処理場の適切な監視指導、残留動物用医薬 品のモニタリング検査等を通じ、安全な食肉や食鳥肉の提供を目指して、これ からも所員一同努力してまいります。 このたび平成 27 年度事業概要を取りまとめましたので、御高覧いただければ 幸いに存じます。 平成 28 年 7 月 越谷市保健所生活衛生課 食肉衛生検査所 所長 木下 正保 目 次 1 食肉衛生検査所の概要 ...................................................................................................... 1 (1) 庁舎 .............................................................................................................................. 1 (2) 沿革 .............................................................................................................................. 3 (3) 組織 .............................................................................................................................. 3 (4) 所管処理場 ................................................................................................................... 4 (5) 許認可事務等................................................................................................................ 6 2 と畜検査業務の概要 ......................................................................................................... 7 (1) と畜検査の概要 ............................................................................................................ 7 (2) 稼動日数及びと畜検査頭数.......................................................................................... 8 (3) とさつ禁止又は廃棄したものの原因 ..........................................................................11 3 食鳥検査業務の概要 ....................................................................................................... 12 (1) 食鳥検査の概要 .......................................................................................................... 12 (2) 指導助言等の実施状況 ............................................................................................... 13 (3) 確認状況報告.............................................................................................................. 13 4 精密検査業務の概要 ....................................................................................................... 14 (1) 精密検査の概要 .......................................................................................................... 14 (2) 精密検査実施状況 ...................................................................................................... 14 5 衛生指導の実施状況 ....................................................................................................... 15 (1) 衛生指導の概要 .......................................................................................................... 15 (2) と畜場における枝肉の衛生検査実施状況 .................................................................. 15 (3) 食肉衛生月間の実施状況 ........................................................................................... 16 (4) 牛の特定部位の分別管理 ........................................................................................... 17 6 研修会、会議等 ............................................................................................................... 18 7 調査研究 .......................................................................................................................... 20 (1) 豚の右腎に認められた B 細胞性リンパ腫の一例 ...................................................... 21 (2) B 細胞性豚リンパ腫における遺伝子学的検査の検討................................................ 24 8 参考資料 .......................................................................................................................... 27 (1) 越谷市食肉衛生検査所処務規程 ................................................................................ 27 (2) 越谷市事務専決規程(抜粋) .................................................................................... 28 (3) 越谷市手数料条例(抜粋)........................................................................................ 29 1 食肉衛生検査所の概要 (1) 庁舎 ア 事務所 名 称 越谷市食肉衛生検査所 所 在 地 〒343-0012 埼玉県越谷市増森一丁目 5 番地 1 (越谷市動物管理センター2 階) 設置年月日 平成 27 年 4 月 1 日 延 面 積 176.52 ㎡ 平 面 図 (2 階) 洗 濯 室 検査室 給湯室 事務室 女性用 トイレ トイレ 廊下 廊下 更衣室 シャワー室 男性用 倉庫 会議室 (1 階) 物置 ※塗りつぶし部分は動物管理センターエリア 1 イ 精密検査室 所 在 〒343-0023 埼玉県越谷市東越谷十丁目 81 番地 地 (越谷市保健所 3 階) 設置年月日 平成 27 年 4 月 1 日 延 面 130.2 ㎡(食肉衛生検査所エリア) 積 303.59 ㎡(階段・廊下を除いた共有エリア) 平 面 図 (3 階全体) EV 事務室 廊下 泳動 PCR 室 培地 撮影室 作成室 前 室 食肉衛生検査所エリア ※白抜き部分は共有エリア、塗りつぶし部分は衛生検査課エリア等 (食肉衛生検査所エリア拡大) 更衣室 (男) 事務室 更衣室 (女) PS PS 女性用 トイレ 男性用 トイレ 受付 PS EPS 検体 受入室 PS 廃棄物 保管庫 保 管 庫 洗濯機 PS 機器 搬入口 廊下 前室 冷凍 保管庫 包埋染色室 細菌検査室 洗浄滅菌室 解剖室 2 病理検査室 冷蔵 保管庫 (2) 沿革 年月日 事項 平成 23 年 4 月 中核市移行に向け、保健所準備室を設置。 実務研修職員として、埼玉県食肉衛生検査センターへ獣医師 4 名 平成 25 年 4 月 の派遣を開始。 前年度に加え、埼玉県食肉衛生検査センターへ獣医師 2 名を実務 平成 26 年 4 月 研修職員として派遣開始。 中核市移行に伴い、越谷市動物管理センター2 階に食肉衛生検査 平成 27 年 4 月 所を設置。 (3) 組織 ア 組織図 市 長 保健医療部 保 健 所 保健総務課 生活衛生課 食肉衛生検査所 衛生検査課 イ 職員構成 (平成 28 年 3 月 31 日現在) 職種 獣医師 合計 職名 所長 副所長 主任 獣医師 人数 1(1) 2(2) 4(2) 3 10(5) ※括弧内は埼玉県からの派遣職員数で再掲 3 (4) 所管処理場 ア と畜場 一般と畜場 1件 簡易と畜場 0件 許可頭数(頭/日) と畜場 と畜場名 番号 1 越谷食肉センター 所在地 埼玉県越谷市増森 一丁目 12 番地 開設年 大動物 小動物 80 1000 昭和 44 年 イ 食鳥処理場 大規模食鳥処理場 0件 認定小規模食鳥処理場 7件 取り扱う 生鳥取扱い 食鳥の種類 の有無 平成 4 年 3 月 13 日 あひる 無 株式会社 鳥清 平成 4 年 3 月 16 日 鶏 無 有限会社 浜野食鳥 平成 4 年 4 月 10 日 鶏 有 総合食肉卸マルヒデフーズ 平成 10 年 1 月 6 日 鶏 無 宮内庁埼玉鴨場 平成 12 年 11 月 6 日 あひる 有 有限会社 鳥敬本店 平成 13 年 11 月 6 日 あひる 無 株式会社 鴨澤 平成 21 年 5 月 1 日 あひる 無 処理場名 許可年月日 有限会社 鳥安 ウ 届出食肉販売業者 届出食肉販売業者 1件 事業所名 届出年月日 届出者 株式会社 鳥清 越谷営業所 平成 6 年 12 月 27 日 株式会社 鳥清 4 エ 食肉衛生検査所と管内処理場との位置関係 越谷市食肉衛生検査所 宮内庁埼玉鴨場 越谷食肉センター 越谷市保健所 (株)鴨澤 (有)鳥敬 (株)鳥清 (有)浜野食鳥 J R 武 蔵 野 線 総合食肉卸マルヒデフーズ (有)鳥安 5 (5) 許認可事務等 ア と畜場法第 12 条第 1 項の規程によると畜場使用料・とさつ解体料認可 と畜場使用料及びとさつ解体料の合計※(円) と畜場名 越谷食肉 センター 許可年月日 H26.4.1 牛 仔牛※※ 馬 豚 めん羊 山羊 8,640 8,640 8,640 1,944 2,160 2,160 ※:合計金額のみ設定 ※※:仔牛とは、生後 1 年未満の牛をいう。 イ 牛の皮のと畜場外への持出し許可 と畜場法施行令第 5 条第 1 項第 1 号の規定に基づき、次の施設に対して持出しの許 可をしました。 持出しを行うと畜場 持ち出した牛の皮を保存する施設 施設の所在地 株式会社 大津屋 東京都台東区 有限会社 石川商店 埼玉県さいたま市 越谷食肉センター ウ と畜検査合格証明 申請に基づき、次のとおり証明書の発行を行いました。 対象部位 証明書発行枚数 牛枝肉 73 通 牛原皮 22 通 豚原皮 24 通 6 2 と畜検査業務の概要 (1) と畜検査の概要 と畜場法に基づき、都道府県知事(保健所を設置する市にあっては市長)から、と畜 検査員を命じられた獣医師の資格を持つ職員が、食用に供する目的でとさつ解体される 獣畜に対して行う検査を、と畜検査と言います。 ア と畜検査の流れ 搬入 農 場 と 畜 場 受 付 検査 申請 生 体 検 査 合格 解 体 前 検 査 不合格 と さ つ 禁 止 合格 解 体 後 検 査 ・頭検査 ・内臓検査 ・枝肉検査 ・TSE 検査 保留 不合格 合格 検 印 ・ 出 荷 「 合格 精密検査 解 体 禁 止 不合格 不合格 廃棄・焼却 TSE とは伝染性海綿状脳症(Transmissible Spongiform Encephalopathy)のこと で、TSE 検査は牛、めん羊及び山羊に対して行う TSE の有無についての検査です。現 在は、生後 48 か月齢超である牛及び生体検査において臨床症状を呈する牛、並びに月 齢に関わらず生体検査において臨床症状を呈するめん羊及び山羊に対してエライザ法 によるスクリーニング検査を実施しています。スクリーニング検査で陽性となった場 合は、国が指定する専門機関に検体を送り、確認検査が実施されます。確認検査でも 陽性であった場合は、専門家会議が開かれて確定診断が行われます。 イ 精密検査について と畜場内での検査では判定が困難である場合は検査保留とし、解体された獣畜の一 部を検体として持ち出して、越谷市保健所の 3 階にある精密検査室でより詳細な検査 を実施してから総合的に判断をしています。 保留の際に行う精密検査には、腫瘍や炎症、変性等の判定を行う『病理学検査』 、細 菌等による疾病の判定を行う『微生物検査』 、尿毒症や黄疸等の判定を行う『理化学検 査』の 3 種類の検査があり、状況に応じてそれぞれ必要な検査を実施しています。 7 (2) 稼動日数及びと畜検査頭数 ア 年間稼働日数 と畜場名 土曜日※ 年間 240 越谷食肉センター 日曜日※ 祝祭日※ 1 1 10 ※:再掲 イ 獣種別と畜検査頭数 と畜場名 牛 仔牛 2,327 越谷食肉センター 馬 0 豚 0 めん羊 172,352 山羊 0 0 ウ 牛の月齢区分別と畜検査頭数 牛 と畜場名 越谷食肉センター 30 月超から 48 月まで 48 月超 総数 2,327 24 30 月以下 568 1,735 各月齢区分別の割合 1.0% 24.4% 48月超 30月超から48月まで 30月以下 74.6% 8 エ 月別と畜検査頭数 越谷食肉センター 牛 仔牛 馬 豚 めん羊 山羊 4月 204 0 0 14,477 0 0 5月 152 0 0 13,353 0 0 6月 167 0 0 14,512 0 0 7月 198 0 0 13,570 0 0 8月 159 0 0 12,400 0 0 9月 236 0 0 13,985 0 0 10 月 188 0 0 14,483 0 0 11 月 336 0 0 14,327 0 0 12 月 276 0 0 16,420 0 0 1月 114 0 0 13,967 0 0 2月 132 0 0 14,885 0 0 3月 165 0 0 15,973 0 0 合計 2,327 0 0 172,352 0 0 月別と畜検査頭数(牛) 400 336 300 200 204 152 167 5月 6月 198 276 236 188 159 165 114 132 1月 2月 3月 1月 2月 3月 100 0 4月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 月別と畜検査頭数(豚) 20,000 15,000 10,000 5,000 0 4月 5月 6月 7月 8月 9月 9 10月 11月 12月 オ 産地別と畜検査頭数 都道府県 頭数 北 海 道 秋 田 県 茨 城 県 栃 木 県 群 馬 県 島 根 県 合 計 490 623 411 184 25 594 2,327 21.06 26.77 17.66 7.91 1.07 25.53 100 牛 % 産地別と畜検査頭数(牛) 栃木県 群馬県 1% 8% 秋田県 27% 茨城県 18% 秋田県 島根県 北海道 茨城県 栃木県 群馬県 北海道 21% 都道府県 茨 城 県 島根県 25% 栃 木 県 群 馬 県 埼 玉 県 千 葉 県 合 計 頭数 34,894 21,463 95,466 3,121 17,408 172,352 % 20.25 12.45 55.39 1.81 10.10 100 豚 産地別と畜検査頭数(豚) 千葉県 10% 埼玉県 2% 群馬県 栃木県 13% 茨城県 栃木県 群馬県 55% 茨城県 20% 10 千葉県 埼玉県 (3) とさつ禁止又は廃棄したものの原因 細 畜 検 項 実 頭 頭 丹 数 目 数 サ 結 禁 モ ネ 毒 症 病 ブ 破 ル 核 セ 病 病 放 そ 線 傷 風 ウイルス病 原虫症 寄 生 虫 症 豚 ト キ ソ プ ラ ズ マ 病 の の 症 そ コ 菌 ラ ラ 疽 牛 豚 ル 査 種 炭 菌 の レ 他 ラ 他 う の 病 そ 膿 敗 尿 黄 他 水 の 腫 ス ト 虫 他 ジ の の 毒 血 毒 マ 病 他 症 症 症 疸 腫 瘍 疾 病 中 に 炎 症 よ 又 毒 は る 炎 諸 汚 症 産 症 染 物 変 そ 性 ・ 計 の 萎 縮 他 止 2,327 全部廃棄 一部廃棄 1,276 禁 馬 そ そ 1 22 777 522 140 1,462 止 0 全部廃棄 一部廃棄 禁 豚 止 172,352 全部廃棄 77 一部廃棄 98,865 禁 めん羊 8 4 18 44 止 0 全部廃棄 一部廃棄 禁 山羊 止 0 全部廃棄 一部廃棄 11 1 46 77 2 141 17 90,497 161 8,011 98,873 3 食鳥検査業務の概要 (1) 食鳥検査の概要 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律に基づき、都道府県知事(保健所を 設置する市にあっては市長、又は特別区にあっては区長。次の各段落において同じ。 )が、 獣医師の資格を持ち、食品衛生監視員、と畜検査員、狂犬病予防員及び環境衛生監視員 である職員のうちから食鳥検査員として指定された職員が、食用に供する目的で食鳥処 理される家きんに対して行う検査を、食鳥検査と言います。 ただし、1 年間に食鳥処理をしようとする食鳥の羽数が 30 万以下であり、食鳥の各状 況についての確認規程が都道府県知事の認定を受けた場合は、食鳥処理衛生管理者が食 鳥検査に代わって確認を行います。この場合、都道府県知事はこの認定を受けた「認定 小規模食鳥処理業者」に対して、必要な技術的な指導及び助言を行います。また、認定 小規模食鳥処理業者は、毎月末日までにその前月中に実施した確認の状況を都道府県知 事に報告することとなります。 また都道府県知事は、厚生労働大臣の指定をうけた「指定検査機関」に、食鳥検査の 全部又は一部を委任することが出来ます。この場合、指定検査機関は毎月末日までに、 その前月中に実施した食鳥検査の結果を都道府県知事に報告することとなります。 食鳥検査の流れ 搬入 農 場 食 鳥 処 理 場 検査 申請 合格 生 体 検 査 脱 羽 後 検 査 不合格 と さ つ 禁 止 合格 内 臓 摘 出 後 検 査 合格 ・内臓検査 ・体壁内側 面の検査 保留 不合格 出 荷 合格 精密検査 内 臓 摘 出 禁 止 不合格 廃棄等の措置 12 不合格 (2) 指導助言等の実施状況 「越谷市食品衛生監視指導計画」の定めるところにより、管内の認定小規模食鳥処理 場施設の監視を行い、必要な技術的指導及び助言を行いました。 項目 数値 出動回数 19 回 出動人数 38 人 指 導 件 数 生鳥取扱い施設 11 件 上記以外 25 件 認定小規模食鳥処理場 1件 届出食肉販売業施設(再掲) 17 件 監視時食鳥処理実施施設(再掲) (3) 確認状況報告 平成 27 年度中に、管内の認定小規模食鳥処理場において食鳥処理が行われた家きんの 確認状況は次のとおりでした。 項目 成鶏 3,316 27,846 493 0 72 全部廃棄 56 0 0 全部廃棄 153 0 0 一部廃棄 12 0 0 全部廃棄 272 0 29 内臓全部廃棄 0 0 43 内臓一部廃棄 0 0 0 基準に適合しなかった食鳥の羽数 ( 内 訳 ) あひる 28,835 食鳥処理をした羽数 生体の状況 ブロイラー 体表の状況 体壁の内側面の状況 内臓の状況 13 4 精密検査業務の概要 (1) 精密検査の概要 と畜検査及び食鳥検査の際に、検査保留としてより詳細な検査を行う場合や、と畜検 査不合格として廃棄した獣畜についてより詳細な探索や鑑定を行う場合、旋毛虫の検査 及び TSE 検査を実施する場合に、精密検査を行います。 (2) 精密検査実施状況 ア 精密検査実施頭数 獣種 牛 豚 精密検査 26 頭 3,124 頭 保留検査 0頭 87 頭 ( 鑑定検査 2頭 3頭 ) 旋毛虫検査 0頭 3,034 頭 TSE 検査※ 24 頭 内 訳 ※TSE 検査については、スクリーニング検査を埼玉県に委託しています。 イ 検査区分別の検査実施状況 保留検査及び鑑定検査については、次のとおり検査を実施しました。 保留及び鑑定検査 ( 重 複 あ り 頭数 検体数 項目数 ) 病理学検査 60 頭 556 検体 819 項目 微生物検査 31 頭 278 検体 1,135 項目 理化学検査 5頭 5 検体 70 項目 14 5 衛生指導の実施状況 (1) 衛生指導の概要 と畜場法及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律に基づき、食肉及び食 鳥肉等による食品衛生上の危害の発生を防止するために、 「越谷市食品衛生監視指導計画」 の定めるところにより衛生指導を行います。 (2) と畜場における枝肉の衛生検査実施状況 とさつ解体処理のすべての工程が終了した直後の枝肉を対象に、表面の拭き取り検査 を実施してその結果をと畜場に還元するとともに、必要に応じて衛生指導を行いました。 ア 細菌検査の実施状況 獣種 豚 牛 項目 回数 頭数 検体数 結果 生菌数 14 回 70 頭 140 検体 衛生上問題なし 大腸菌群数 14 回 70 頭 140 検体 衛生上問題なし 生菌数 12 回 60 頭 120 検体 衛生上問題なし 大腸菌群数 12 回 60 頭 120 検体 衛生上問題なし 腸管出血性大腸菌※ 12 回 60 頭 115 検体 すべて陰性 ※腸管出血性大腸菌 O26、O103、O111、O121、O145 及び O157 を対象に実施。 イ GFAP 検査の実施状況 獣種 牛 項目 GFAP※残留度 回数 12 回 頭数 36 頭 検体数 72 検体 結果 すべて検出限界値未満※※ ※グリア線維性酸性タンパク(Glial Fibrillary Acidic Protein)は、神経組織に特異的 に存在するため、特定部位である脳や脊髄による汚染の指標となります。 ※※検出限界値未満:100cm2 当たりの GFAP 量が 3ng 未満。 15 (3) 食肉衛生月間の実施状況 食肉及び食鳥肉の適正な衛生管理を確保し、安全性をより向上させることを目的に、7 月から 8 月までの期間を「食肉衛生月間」として、集中的な監視指導や衛生に関する講 習会を実施しました。 ア ポスターの掲示 食肉衛生月間の趣旨を関係者に周知するためにポスターを作成し、管内のと畜場に 掲示しました。 平成 27 年度食肉衛生月間ポスター イ と畜場の監視指導 管内と畜場の管理者及びと畜業者等に対し、と畜場法第 6 条及び第 9 条に規定され る衛生管理等について、同法施行規則で定める基準を遵守しているか立入検査を行い、 その結果に基づいて指導を実施しました。 ウ 衛生講習会の実施 実施期間 平成 27 年 8 月 24 日(1 回) 受 講 者 と畜場従業員及び出入り業者 58 人 ・と畜場での HACCP について 講習内容 ・豚肉の生食リスクについて ・豚枝肉における細菌汚染の原因調査結果について 16 エ 食肉等輸送車の衛生監視指導 管内と畜場から食肉及び内臓を搬出する輸送車を対象に、車両内の拭き取り検査及 び衛生指導を行いました。 実施期間 平成 27 年 8 月 21 日から 8 月 31 日まで 実施車両数 13 台 実施内容 検査結果 (100cm2 当たり) ・輸送車の設備の確認と衛生管理状況の聞き取り ・拭き取り検査による生菌数及び大腸菌群数の測定 菌 数:1 千以上 3 台、検出限界以下 8 台 生 大腸菌群数:陽性 1 台、陰性 12 台 拭き取り検査の結果をもとに、小まめな洗浄の励行等の指導を 指導内容 行いました。また故障した冷蔵設備を早急に修理することや、不 衛生な道具の改善等の指導も行いました。 エ と畜場使用水の残留塩素濃度測定 井水を使用している管内と畜場に対し、水道法施行規則第 17 条第 1 項第 3 号に規程 する基準を満たしているか検査を行いました。 検査方法 DPD 法(比色板)による遊離残留塩素測定 検査実施日 平成 27 年 8 月 4 日、24 日、26 日 検 体 8 検体 数 検査結果 すべて基準値(0.1mg/L)以上 (4) 牛の特定部位の分別管理 牛のとさつ解体の実施日ごとに行う特定部位の分別管理の確認に加え、舌扁桃の除去 が確実に実施されているかを確認する目的で、牛の舌の試売検査を実施しました。 検査方法 検 体 検査結果 病理組織学的検査(HE 染色) 舌扁桃除去処理後の最前位有郭乳頭部から舌根部にかけて、等 間隔に左右 9 箇所ずつ、計 18 検体を切片にして検査を行った。 すべての検体で舌扁桃陰性 17 6 研修会、会議等 平成 27 年度は下記の研修会、講習、演習、及び会議等に参加しました。 月日 名称 場所 4 月 24 日 病理機器研修(クリオスタット) 参加者 サクラファインテックジャ パン株式会社 4人 平成 27 年度全国食肉衛生検査所協議 5 月 14 日、15 日 会病理部会総会及び第 70 回病理研修 麻布大学百周年記念ホール 3人 会 5 月 28 日 平成 27 年度関東甲信越ブロック食肉 衛生検査所協議会総会及び所長等会議 浦和コミュニティセンター 1人 6 月 19 日 タカラセミナー(リアルタイム PCR) 宝明治安田ビル 2人 7月3日 タカラセミナー(免疫染色) 宝明治安田ビル 1人 7 月 10 日 平成 27 年度四県市合同研修会 さいたま市保健所 1人 7 月 22 日、23 日 議及び第 51 回全国食肉衛生検査所協 アークホテル岡山 1人 平成 27 年度全国食肉衛生検査所長会 議会全国大会 10 月 2 日 10 月 9 日 10 月 14 日 10 月 29 日 11 月 13 日 11 月 18 日 11 月 19 日、20 日 第 33 回全国食肉衛生検査所協議会理 文部科学省研究交流センタ 化学部会総会及び研修会 ー 平成 27 年度家畜畜産物衛生対策協議 埼玉県食肉衛生検査センタ 会 ー と畜場における衛生管理の高度化に向 さいたま新都心合同庁舎 2 号館 5 階共用大研修室 けた研修会 平成 27 年度関東甲信越ブロック食肉 衛生検査所協議会業績発表会 平成 27 年度関東甲信越静地区食肉衛 生担当者会議 全国食肉衛生検査所協議会微生物部会 第 35 回総会・研修会 平成 27 年度全国食肉衛生検査所協議 会病理部会 第 71 回病理研修会 18 1人 3人 1人 浦和コミュニティセンター 2人 高崎市総合保健センター 2人 横浜市開港記念会館 講堂 2名 麻布大学百周年記念ホール 3人 月日 1 月 18 日、19 日 1 月 20 日、21 日 名称 場所 平成 27 年度食肉衛生技術研修会・衛生 発表会 平成 27 年度食鳥肉衛生技術研修会・衛 生発表会 2 月 22 日、23 日 有機溶剤作業主任者技能講習 2 月 26 日 3 月 8 日、9 日 3 月 10 日 平成 27 年度中央家保管内口蹄疫防疫 演習 特定化学物質・四アルキル鉛等作業主 任者技能講習 星陵会館ホール 3人 星陵会館ホール 4人 大宮ソニック市民ホール 1人 桶川市農業センター 1人 川口機械工業協同組合 1人 平成27年度埼玉県・さいたま市及び 埼玉県食肉衛生検査センタ 越谷市食肉衛生技術研修会 19 参加者 ー 5人 7 調査研究 平成 27 年度は下記の 2 題について調査研究を行い、その成果を埼玉県・さいたま市・越 谷市食肉衛生技術研修会にて発表しました。 題名 発表者 豚の右腎に認められた B 細胞性リンパ腫の一例 横田 裕美 B 細胞性豚リンパ腫における遺伝子学的検査の検討 上口 卓志 20 (1) 豚の右腎に認められた B 細胞性リンパ腫の一例 越谷市食肉衛生検査所 ○横田裕美、戸川洋子、木下正保 はじめに と畜検査において豚の腎臓で見られる病変は、腎炎や嚢胞腎などの炎症や一種の 奇形が 多く挙げられるが、それに対して腫瘍の発生は少ないのが一般的である。豚の腎臓原発腫 瘍 と し て は 腎 芽 腫 が 最 も 多 い と 言 わ れ て お り [1]、そ れ 以 外 の 腫 瘍 に つ い て の 報 告 は 少 な く 、 情報が乏しいのが現状である。 今回、豚の右腎に弧在性に白色腫瘤を認め、病理及び免疫組織化学的検査の結果から B 細胞性リンパ腫と診断したので、その概要を報告する。 材 料 及 び方 法 1 材料 豚、ランドレース系、雌、6 ヶ月齢。 当該畜は普通畜として搬入され、生体検査では異常は認められなかった。内臓検査では 異常が認められず、枝肉検査において右腎の頭側半分が手拳大に膨隆しているのが認めら れた。 2 方法 ( 1) 肉 眼 検 査 腫瘤の大きさ、硬度、色調等の観察を肉眼で行った。 ( 2) 病 理 組 織 学 検 査 腫 瘤 の 一 部 に つ い て ス タ ン プ 標 本 を 作 製 し 、 デ ィ フ ・ ク イ ッ ク 溶 液 ( SYSMEX) で 染 色 を 行 っ た 。ま た 、腫 瘤 の 一 部 を 10% 中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン 溶 液 で 固 定 後 、定 法 に 従 い パ ラ フ ィ ン 切 片 を 作 製 し 、 ヘ マ ト キ シ リ ン ・ エ オ ジ ン ( 以 下 、 HE。) 染 色 を 実 施 し た 。 ( 3) 免 疫 組 織 化 学 的 検 査 一 次 抗 体 と し て 抗 CD79α モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( PS1, ニ チ レ イ )、 抗 CD3 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( HM57, ニ チ レ イ ) を 用 い て 、 SAB 法 ( ヒ ス ト フ ァ イ ン SAB-PO(M)キ ッ ト , ニチレイ)により免疫組織化学的検査を行った。 21 成績 1 肉眼検査 右 腎 全 体 は 約 14×8.5×7cm 大 で 、 腎 臓 の 頭 側 半 分 が 約 7×7.5×6cm 大 に 膨 隆 し て い た 。 右 腎 の 表 面 は 茶 褐 色 ~ 暗 赤 色 を 呈 し 、 平 滑 で あ っ た 。 腎 臓 を 割 す る と 、 頭 側 半 分 に 約 6× 6.5×5cm 大 の 乳 白 色 腫 瘤 が 腎 髄 質 か ら 腎 皮 質 を 圧 迫 す る よ う に 認 め ら れ た 。腫 瘤 は 柔 ら か く 、割 面 は 密 実 で 光 沢 感 が あ り 、一 様 に 乳 白 色 を 呈 し て い た 。腎 実 質 と 腫 瘤 と の 境 界 は不明瞭であった。 左 腎 は 約 12×6×4cm 大 で 、 特 に 著 変 を 認 め な か っ た 。 その他の部位では著変を認めなかった。 2 病理組織学検査 <スタンプ標本> 細胞質に乏しく、類円形~不整形で大小不同の核を有する幼若リンパ球様の腫瘍細胞が 認められた。 < HE 染 色 > 右腎の乳白色を呈した腫瘤部位では、腎臓の固有構造は消失し、幼若リンパ球様の腫瘍 細胞が増殖していた。腫瘍細胞の細胞質は乏しく、核は大小不同で類円形を呈し、核クロ マチンは疎~富むものまで様々みられた。核分裂像が多数観察された。腎臓実質との境界 付近では、尿細管を島状に残し腫瘍細胞が増殖していた。 その他の部位で、転移を疑う所見は認められなかった。 3 免疫組織化学的検査 腫 瘍 細 胞 は 抗 CD79α モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 陽 性 、 抗 CD3 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 陰 性 を 示 し た。 4 組織診断 B 細胞性リンパ腫 考察 日 本 で 豚 の と 畜 検 査 で 見 ら れ る リ ン パ 腫 の 発 生 率 は お お よ そ 1~ 15 頭 /10 万 頭 で あ る [2]。 成書によると、リンパ腫は病理解剖学的病型によって、多中心型、消化器型、胸腺型、皮 膚型及び孤在型に分類され、豚における発生は多中心型、消化器型の順に多く、胸腺型、 皮 膚 型 及 び 孤 在 型 は 少 な い [2,3,4]。腎 臓 に 発 生 す る リ ン パ 腫 の 多 く が 、多 中 心 型 の 転 移 22 性 病 巣 で あ り 、通 常 腎 臓 両 側 の 皮 質 に 病 巣 を 形 成 す る と さ れ て い る [1]。一 方 、腎 臓 が 原 発 の リ ン パ 腫 の 発 生 は ま れ で あ る と 言 わ れ て い る [1]。本 症 例 は 、右 腎 の 髄 質 を 中 心 に 幼 若 リ ンパ球様の腫瘍細胞の増殖が認められ、他の部位への転移が認められなかったことから、 腎臓原発の孤在型リンパ腫の可能性が高いと示唆される。 近 年 、免 疫 組 織 化 学 的 研 究 が 行 わ れ 、豚 リ ン パ 腫 の 腫 瘍 細 胞 が B 細 胞 性 由 来 か T 細 胞 性 由 来 か を 明 ら か に す る こ と が 可 能 と な っ た [5]。中 島 ら [6]の 報 告 に よ る と 、免 疫 組 織 化 学 的 分 類 に お い て 、豚 の リ ン パ 腫 の 多 く は B 細 胞 性 由 来 で 、一 部 の 胸 腺 型 リ ン パ 腫 で T 細 胞 性 由 来 で あ っ た 。一 方 、腎 臓 原 発 の 孤 在 型 リ ン パ 腫 で の 免 疫 組 織 化 学 的 分 類 の 報 告 は 少 な く 、 本症例は免疫組織化学的検査の結果より B 細胞性由来のリンパ腫に分類されると考えられ た。 成 書 に よ る と 、 豚 の 腎 臓 で 確 認 さ れ る 原 発 性 腫 瘍 は 腎 芽 腫 が 多 い [1, 3]。 豚 の 腎 芽 腫 は 片 側 性 で 転 移 す る こ と は ま れ で あ る の に 対 し 、 リ ン パ 腫 は 転 移 の 可 能 性 が 高 い と さ れ [1, 4]、 両 者 の 鑑 別 は と 畜 検 査 上 も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 本 症 例 の よ う に 、 腫 瘤 が 認 め ら れた場合、スタンプ標本を作製し、細胞の形態を確認することは、他の腫瘍等と鑑別を行 う上で有用であると再認識することができた。 著 者 ら は 豚 の 腎 臓 に 孤 在 型 と 思 わ れ る B 細 胞 性 リ ン パ 腫 の 症 例 に 遭 遇 し た 。豚 の 腎 臓 原 発の孤在型リンパ腫は報告が少なく、情報が乏しいのが現状である。今後も通常のと畜検 査に加え、病理組織化学的検査や免疫組織化学的検査による詳細な探索を行い、さらなる 知見を集めていきたいと考える。 [1] 磯 貝 恵 美 子 ,他:動 物 病 理 学 各 論 ,日 本 獣 医 病 理 学 専 門 家 協 会 編 ,第 2 版 ,284-285, 文 永 堂 出 版 , 東 京 (2015) [2] 柏 崎 守 , 他 : 豚 病 学 - 生 理 ・ 疾 病 ・ 飼 養 - , 柏 崎 守 他 編 , 第 4 版 , 223-226, 近 代 出 版 , 東 京 (1999) [3] 谷 津 壽 郎 : 豚 の リ ン パ 腫 - 獣 医 師 の た め の 染 色 体 診 断 ガ イ ド - ,第 1 版 ,7-37,(財 ) 宮 城 県 公 衆 衛 生 協 会 , 宮 城 (2010) [4] 板 倉 智 敏 , 他 : 動 物 病 理 カ ラ ー ア ト ラ ス , 日 本 獣 医 病 理 学 会 編 , 第 3 版 , 148-149, 文 永 堂 出 版 , 東 京 (2012) [5] 星 野 稔 , 小 黒 雅 史 , 田 邊 純 一 , 辻 沢 雅 人 , 登 坂 友 一 : 日 獣 会 誌 , 59, 135-139(2006) [6] 中 島 弘 美 , 笠 井 潔 , 門 田 耕 一 , 石 野 清 之 : 日 獣 会 誌 , 53, 328-334(2000) 23 B 細胞性豚リンパ腫における遺伝子学的検査の検討 (2) 越谷市食肉衛生検査所 ○上口卓志、横田裕美、戸川洋子、 伊藤雄太、木下正保、 はじめに 豚 の リ ン パ 腫 は 腫 瘍 の 中 で は 発 生 頻 度 が 高 く 、B 細 胞 由 来 が 多 い と 言 わ れ て い る[ 1,2]。 リンパ腫の診断では、組織構造の評価が重要であるが、犬や猫では細胞診や組織学的検査 で診断がつかない場合、リンパ球のクローナリティ検査が診断補助として行われることが あ る [ 3]。 豚 の リ ン パ 腫 に お い て 、 免 疫 組 織 化 学 的 お よ び 超 微 形 態 学 的 研 究 の 報 告 は あ る が [ 2]、 Polymelase Chain Reaction ( PCR) 法 を 用 い た リ ン パ 球 の ク ロ ー ン 性 の 評 価 を した報告は確認できなかった。今回、B 細胞性豚リンパ腫と診断した 3 例に対し遺伝子学 的検査を試み、その有用性について検討したので、その結果を報告する。 材料及び方法 1 供試材料 越谷市食肉衛生検査所管内の K と畜場で豚リンパ腫と診断した 3 例の臓器を用いた。 DNA の 抽 出 に は 、 - 25℃ で 凍 結 保 存 さ れ た 臓 器 を 用 い た 。 月 齢 、 性 別 、 品 種 及 び 解 体 後 所見を表 1 に示した。 表 1 症例 No. リンパ腫 3 例の月齢、性別、品種および解体後所見 月齢 性別 品種 解体後所見 1 約 6 ヶ月 去勢雄 L 系* 右頚部に灰白色腫瘤 2 約 6 ヶ月 去勢雄 L系 左右内腸骨リンパ節および左右腎門リンパ節の腫脹 3 約 6 ヶ月 L系 右腎に白色腫瘤 雌 *ラ ン ド レ ー ス 系 2 病理組織学的検査 検 査 に 供 し た 臓 器 は 、 10% 中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン 液 で 固 定 後 、 常 法 に 従 い パ ラ フ ィ ン 包 埋切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。 3 免疫組織学的検査 免 疫 組 織 化 学 染 色 は 、ヒ ス ト フ ァ イ ン SAB-PO( M)キ ッ ト( ニ チ レ イ 社 )を 用 い て 実 24 施 し た 。一 次 抗 体 と し て 、ヒ ス ト フ ァ イ ン CD79α モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体( HM57) (ニチレ イ 社 ) お よ び ヒ ス ト フ ァ イ ン CD3 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( PS1)( ニ チ レ イ 社 ) を 用 い た 。 4 遺伝子学的検査 DNeasy ® Blood&Tissue キ ッ ト ( Qiagen 社 ) 用 い て 、 そ れ ぞ れ の 臓 器 よ り DNA を 抽 出 し た 。得 ら れ た DNA を 鋳 型 と し て 、免 疫 グ ロ ブ リ ン 重 鎖 の 相 補 性 決 定 領 域 3( Compleme ntarity-Determining Region 3:CDR3)に 対 す る プ ラ イ マ ー セ ッ ト( 表 2)を 用 い て 、PCR 反 応 を 行 い 、 CDR3 遺 伝 子 の 増 幅 を 行 っ た 。 遺 伝 子 抽 出 の 確 認 に は 、 β-actin 遺 伝 子 を 用 いた。また検査の陰性対象として、異常の認められない豚の内腸骨リンパ節も同様に検 査 し た 。 PCR 反 応 液 の 調 整 は 、 TaKaRa Ex Taq ® ( タ カ ラ バ イ オ 株 式 会 社 ) を 用 い て 行 い 、 PCR 反 応 は 、 Proflex ™ PCR System(Thermo Fisher Scientific 社 )を 用 い て 行 っ た 。 反 応 条 件 は 、94℃ 5 分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト 後 、94℃ 45 秒 間 の 熱 変 性 、62℃ 45 秒 間 の ア ニ ー リ ン グ 及 び 72℃ 45 秒 間 の 伸 長 反 応 を 35 サ イ ク ル 行 い 、 最 後 に 72℃ 7 分 間 の 伸 長 反 応 を 行 っ た 。 増 幅 の 確 認 は 、 2%ア ガ ロ ー ス ゲ ル を 用 い て 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 表 2 CDR3[ 4] お よ び β -actin[ 5] の 検 出 に 用 い た プ ラ イ マ ー の 塩 基 配 列 プライマー シークエンス(5`-3`) FR3A GTT TCT TTG AGA ACC GAA GAC ACG GC JH TGA GGA CAC GAC GAC TTC AA Β-Actin F GAC ATC CGC AAG GAC CTC TA Β-Actin R ACA CGG AGT ACT TGC GCT CT 成績 1 病理組織学的および免疫組織学的検査 3 症例全てにおいて、細胞質が乏しく、核が大小不同、核クロマチン疎~富む幼弱リ ン パ 球 様 腫 瘍 細 胞 が 増 殖 し て い た 。免 疫 組 織 化 学 染 色 に お い て は 、 CD79α 陽 性 、CD3 陰 性を示し、B 細胞性のリンパ腫と判定された。 2 遺 伝 子 学 的 検 査 ( 図 1) 陰性対象では、明瞭なバンドは得られなかっ た 。症 例 1 は 、約 800bp に バ ン ド が 検 出 さ れ た 。 同 様 に 、 症 例 2 は 約 100bp に バ ン ド が 、 症 例 3 は 約 100bp に バ ン ド が 検 出 さ れ た 。 3 例 と も ク ローナリティを示すバンドが検出され、病変部 において、B 細胞性リンパ球のクローン性増殖が 示された。 25 図 1 電気泳動の結果 考察 今 回 の 3 例 は す べ て 、病 理 組 織 学 的 検 査 お よ び 免 疫 組 織 学 的 検 査 で B 細 胞 性 リ ン パ 腫 と 診断された。遺伝子学的検査においては、陰性対象では確認できない増幅産物が 、3 例す べてで 1 本も しく は 2 本の明 瞭なバ ンド とし て出現 し、B 細胞 性リ ンパ球 のクロ ーン 性増 殖 が あ る と 判 定 さ れ た 。 鷹 栖 [ 2] に よ る と 、 犬 や 猫 に お け る ク ロ ー ナ リ テ ィ 検 査 の 感 度 は 、 方 法 論 な ど に よ り 単 純 な 比 較 は で き な い が 、 お お よ そ 80~ 90% で あ る と さ れ て い る 。 ま た 、鷹 栖 [2]は 、こ の 検 査 は 単 独 で リ ン パ 腫 や 白 血 病 の 診 断 に 用 い ら れ る 検 査 で は な い と し、必ず形態学的検査と併用し、形態学的な検査では評価が分かれる症例において、クロ ーナリティ検査を併用すべきであるとしている。今回の症例では、 3 例とも病理組織学的 および免疫組織学的検査によりリンパ腫の判定ができたため、犬や猫と同様に、と畜検査 において必ずしもクローナリティ検査は必須でないと考えられる。しかしながら、形態学 的な検査で診断に至らない場合には、クローナリティ検査の併用が有用であると考えられ た。 今回、T 細胞性リンパ球に対して遺伝子学的検査は行わなかった。これは、越谷市では T 細胞性リンパ腫の症例がなく、クローナリティ検査では、T 細胞受容体 γ 鎖の検出を行 う が 、 豚 の T 細 胞 受 容 体 γ 鎖 に つ い て は 遺 伝 子 座 が 明 ら か に さ れ て い な い こ と [ 6] を 考 慮 し た た め で あ る 。 し か し 、 そ の ほ か の T 細 胞 受 容 体 α 鎖 や δ 鎖 に つ い て は PCR 法 に よ る 検 出 の 報 告 が あ る た め [ 5, 7]、 T 細 胞 性 リ ン パ 球 に 対 し て も 、 Multiplex PCR 法 等 で 検査は可能であると考えられる。 と畜検査において、一般的には豚のリンパ腫は組織学的検査によって診断が出来る。一 方、確定診断に至らないとき、今回のようなクローナリティ解析などを併用することで、 より客観的にリンパ腫の診断が可能であると考えられた。今後も遺伝子学的な研究等、最 新の研究を注視し、と畜検査に活用していきたいと考えた。 [ 1] Nakajima H. et al.J.Jpn.Vet.Med.Assoc .53,319-323(2000) [ 2] Nakajima H. et al.J.Jpn.Vet.Med.Assoc .43,369-374(1990) [ 3] 鷹 栖 雅 峰 . 犬 と 猫 の リ ン パ 腫 Part1 総 論 ・ 診 断 編 . CAP. 9,22-36(2015) [ 4] Bulter J.E. et al.J.immunol. 165,6999-7011(2000) [ 5] Galindo R.C. et al.Parasites & Vectors .5,181(2012) [ 6] 小 川 智 子 . The Journal of Animal Genetics.43,13-23(2015) [ 7] Holtmeier W. et al . J. Immuno. 169,1993-2002(2002) 26 8 参考資料 (1) 越谷市食肉衛生検査所処務規程 平成27年3月31日訓令第11号 (趣旨) 第1条 越谷市食肉衛生検査所(以下「検査所」という。)の処務については、別に定める もののほか、この規程の定めるところによる。 (事務分掌) 第2条 検査所の分掌事務は、次のとおりとする。 (1) と畜検査に関すること。 (2) 食鳥検査に関すること。 (3) と畜場の設置の許可、指導等に関すること。 (4) 食鳥処理の事業の許可、指導等に関すること。 (職員) 第3条 検査所に所長その他必要な職員を置く。 (職務権限) 第4条 所長は、上司の命を受け、検査所の業務を統括し、所属職員を指揮監督する。 2 所長に事故があるときは、上席の職員がその職務を代行する。ただし、重要又は異例 な業務については、上司の指示を受けなければならない。 3 職員は、上司の命を受け、担当する事務を処理する。 (事務分担) 第5条 職員の事務分担は、所長がこれを定める。 附 則 この訓令は、平成27年4月1日から施行する。 27 (2) 越谷市事務専決規程(抜粋) 昭和46年6月22日規則第29号 最終改正 平成28年3月31日規則第85号 (施設長の専決事項) 第18条 施設長は、次の事項を専決することができる。 施設長の共通事項 (略) 食肉衛生検査所長 (1) と畜場に係る処理頭数の制限、検査、持出しの許可、措置、報告の徴収、立入 検査及び届出の受理に関すること。 (2) 食鳥処理事業及び食鳥検査に係る検査、措置、報告の徴収、立入検査及び届出 の受理に関すること。 (3) と畜場における牛海綿状脳症に係る検査並びに牛の特定部位の使用及び焼却の 免除の許可に関すること。 28 (3) 越谷市手数料条例(抜粋) 平成12年3月31日条例第8号 最終改正 平成28年3月23日条例第24号 (趣旨) 第1条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第227条の規定により徴収する手数料 は、別に定めがあるもののほか、この条例の定めるところによる。 (徴収する手数料) 第2条 市長は、別表に定める手数料を徴収する。 別表(第2条関係) 2 衛生手数料 (20) と畜場法(昭和28年法律第114号)関係 ア 第4条第2項の規定に基づく一般と畜場の設置の許可の申請に対する審査 一般と畜場設置許可申請手数料 23,000円 イ 第4条第2項の規定に基づく簡易と畜場の設置の許可の申請に対する審査 簡易と畜場設置許可申請手数料 11,000円 ウ 第14条第1項から第4項までの規定に基づく獣畜のとさつ又は解体の検査 と畜検査手数料 (ア) 生後1年以上の牛又は馬 1頭につき700円 (イ) 生後1年未満の牛又は馬 1頭につき300円 (ウ) 豚、めん羊又は山羊 1頭につき300円 (21) 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(平成2年法律第70号) 関係 ア 第3条の規定に基づく食鳥処理の事業の許可の申請に対する審査 食鳥処理事業許可申請手数料 20,000円 イ 第6条第1項の規定に基づく食鳥処理場の構造又は設備の変更の許可の申請に 対する審査 食鳥処理場の構造又は設備変更許可申請手数料 11,000円 ウ 第15条第1項から第3項までの規定に基づく食鳥検査 食鳥検査手数料 1羽につき5円 エ 第16条第1項の規定に基づく確認規程の認定の申請に対する審査 確認規程認定申請手数料 5,700円 オ 第16条第2項の規定に基づく確認規程の変更の認定の申請に対する審査 確認規程変更認定申請手数料 2,500円 29 平成 27 年度 事業概要 発 行 越谷市保健所生活衛生課食肉衛生検査所 〒343-0012 埼玉県越谷市増森一丁目5番地1 電 話 (048)969-8522(直通) FAX (048)969-8521 E-mail [email protected]
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