地域包括支援センター対応事例の特徴

地域包括ケア推進委員会 平成 24 年 11 月 15 日(木)
資料1
地域包括支援センター対応事例の特徴
(平成 24 年度上半期)
Ⅰ
事例集計の目的と方法
1.地域包括支援センターの総合相談業務
①地域包括支援センターには毎日多くの相談が入るが、本人や家族が社会資源を主体的に利用
することができる場合は、適切なサービスを紹介して相談対応は終結する。
②一人暮らしの認知症高齢者など本人が必要な社会資源を利用する能力に不安がある場合や、
家族内の問題が複雑で複数の機関のかかわりが必要になってくる場合、老人福祉法や高齢者
虐待防止法などにより市として対応する必要がある場合などでは、本人や家族への支援が軌
道にのるまで、地域包括支援センターが何らかのかかわりを継続している。
③上記②の事例を把握した場合、地域包括支援センターでは三職種(社会福祉士、保健師、主
任介護支援専門員)によるチームアプローチをすすめるため、毎週 1 回、ケースカンファレ
ンスを行い、緊急性の判断や基本的な支援の方向性の確認を行うとともに、情報の共有を図
っている。
2.事例集計の目的
これらの事例について、その特徴を明らかにし、地域包括ケアの実現~今後の地域における
高齢者の支援体制づくりに向けた課題と取り組みを考えていく材料とする。
3.対象とした事例
平成 24 年 4 月から 9 月までに地域包括支援センターに相談が入り、担当職員が継続的に支
援を行った事例(上記1の②の事例)を集計した。
事例の実件数は、全体で 73 件である。
4.事例の類型化
(1)類型項目と内容
①支援困難事例対応マニュアル報告書(財団法人日本公衆衛生協会 平成 17 年 以下「困難事
例報告書」という。
)で、支援困難に陥りやすい代表的な事例として類型化されたものをベー
スに、類型項目の検討を行った。
②今回対象とした事例は、必ずしも支援困難事例だけではなく、介護サービスやその他の制度
に円滑につながるまでの継続的支援が必要な事例も対象としているので、基本的には報告書
の類型項目の表現を使ったが、対象を広げる必要のあるところは表現を一部変更した。
1
③類型項目
 サービス導入拒否
 経済的問題
 精神疾患に起因する生活障害
 認知症による生活障害
 虐待または虐待疑い
 退院における支援
 円滑なサービス利用の支援(今回、新たに追加した項目)
(2)類型化した事例の具体的な内容
①サービス導入拒否
本人が経済的問題や認知症があるためサービスを拒否する事例や、家族等が精神疾患等で
支援者が来ることを拒否するような事例。
②経済的問題
年金など収入が少ない、リストラなどで職を失い収入がなく世帯が経済困窮している事例、
通販等で物を購入しすぎて支払いが出来ない事例、家族が年金を使い込んでしまうような事
例。
③精神疾患に起因する生活障害
精神障害がある、または病院で精神疾患等のきちんとした診断は受けていないが何らかの
症状があり、サービスの拒否や、被害妄想などで近所やサービス事業所等とトラブルを起し
てしまうような事例。
④認知症による生活障害
認知症により家事が出来なくなり家の中が物で散乱したり、金銭管理や通院、服薬管理等
が正確に行えないような事例。
⑤虐待または虐待疑い
身体的・心理的・経済的・介護放棄などの虐待を受けている事例、または虐待疑いがある
ような事例。
⑥退院における支援
認知症があり、一人暮らしのため支援者がいない等で退院する際に何らかの支援調整が必
要であり、スムーズに退院して家に帰ることが難しいような事例。
⑦円滑なサービス利用の支援
自立支援サービスから介護保険へのサービス移行の調整や、認知症などで在宅での生活が
困難になり施設への入所を調整したような事例。
⑧その他
消費者被害を受けているような事例や、施設介護職員への苦情など。
5.事例が生じる要因としての心身機能の状態と背景因子の選定
(1)要因の選定方法
地域包括支援センターが対応している事例の特徴を把握するため、「対象者の心身機能の状
態」と困難な状況等が生じる「背景因子(環境因子)
」について、日常業務を通じて課題と感じ
ている内容に着目して項目を設定した。
2
(2)設定した項目
イ)対象者の心身機能の状態
①本人に認知症状が見られる事例。
②本人に精神疾患症状が見られる事例。
ロ)背景因子(環境因子)
(対象者の生活に困難を生じさせている因子)
①同居家族が多様な問題(ひきこもり、障害、失業等)を抱えている。
②支援する家族や親族がいない(家族等がいても支援が得られない場合を含む)
。
③世帯が経済的に困窮している。
(対象者のかかえる問題の改善にとってプラスとなる因子)
④地域の見守りや支え合いなど近隣支援がある。
6.事例集計の方法
(1)集計項目
 年齢(65 歳未満、65 歳~75 歳未満、75 歳~85 歳未満、85 歳以上)
 性別
 世帯区分(一人暮らし高齢者、高齢者世帯、子等と同居)
 相談経路
 事例対象者の所在地校区
 事例類型
 心身機能と背景因子(環境因子)
(2)事例類型化の方法
事例を各類型項目に分類するにあたっては、最も主要な要因に基づいて分類をおこなってい
るが、明らかに複数の主要な要因がある場合はそれぞれの類型に計上した。
(3)割合表示
集計表の割合(%)の表示は、単純に四捨五入した数値である。
3
Ⅱ 集計結果
1.基本的な項目の集計
(1)本人の年齢別、性別
65 歳未満
65~75 歳未満
75~85 歳未満
85 歳以上
計
男
2 (7.1)
11 (39.3)
10 (35.7)
5 (17.9)
28 (38.3)
女
1 (2.2)
16 (35.6)
19 (42.2)
9 (20.0)
45 (61.6)
計
3 (4.1)
27 (37.0)
29 (39.7)
14 (19.2)
73 (100)
[単位:人、
(
)は%]
年齢別の合計では、
「65~75 歳未満」が 37.0%、
「75~85 歳未満」が 39.7%となっている。
性別では、男性が 38.3%、女性が 61.6%となっている。
(2)世帯区分
一人暮らし
高齢者世帯
子等と同居
その他
不明
計
28 (38.4)
11 (15.1)
27 (37.0)
5 (6.8)
2 (2.7)
73 (100)
[単位:人、
(
)は%]
世帯区分では、
「一人暮らし」が 38.4%と最も多く、次いで「子等との同居」が 37.0%となって
いる。
(3)相談経路
対象事例
全ての相談ケース
本人、家族から
11 (15.1)
355 (54.5)
介護支援専門員等、介護保険事業者から
26 (35.6)
43 (6.6)
民生委員等、近隣から
17 (23.3)
112 (17.2)
行政関係機関から
11 (15.1)
74 (11.4)
医療機関から
5 (6.8)
36 (5.5)
その他
3 (4.1)
31 (4.8)
73 (100)
651 (100)
計
[単位:件、
(
)は%]
相談経路については、その特徴をみるため、地域包括支援センターが同期間に対応した全ての相
談内容との比較も行った。
対象事例では、
「介護支援専門員等から」が 35.6%と最も多く、次いで「民生委員等から」が 23.3%
となっている。一方、全ての相談ケースについては「本人・家族から」が 54.5%と最も多い。地
域包括支援センターがかかわる事例の場合、本人や家族から自発的に相談が入る割合は少なく、
介護支援専門員や民生委員などの気付きにより相談が入ってきている状況が伺える。
4
(4)校区別の状況
A地区
B地区
C地区
E
F地区
G
k
校
区
l
校
区
m
校
区
n
校
区
a
校
区
b
校
区
c
校
区
d
校
区
e
校
区
f
校
区
g
校
区
h
校
区
ⅰ
D
j
校
区
校
区
事例件数
7
10
5
5
6
3
2
9
5
4
2
2
2
11
高齢者数
2330
2137
1205
1888
2553
1473
1793
2372
3247
3084
990
1860
1151
1837
高齢化率
22.9
27.2
21.8
24.3
22.7
21.2
26.2
27.9
25.7
25.7
32.1
18.5
23.6
19.6
[単位:件、人、%]
b校区とh校区は高齢化率も高く事例も多いという結果となっている。一方でi校区とj校区は
高齢者数が多いが事例は多くなく、n校区は高齢化率は低いが事例が多くなっている。
※割合(%)は実件数の 73 件を分母にして計算
(5)事例の類型別の状況
本人に問題がある
事例
家族に問題がある
事例
実件数
サービス導入拒否
18 (24.7)
13 (17.8)
23 (31.5)
経済的問題
25 (34.2)
12 (16.4)
26 (35.6)
精神疾患に起因する生活障害
16 (21.9)
11 (15.1)
24 (32.9)
認知症による生活障害
16 (21.9)
3
(4.1)
17 (23.3)
虐待または虐待疑い
17
16 (21.9)
17 (23.3)
退院における支援
円滑なサービス利用の支援
その他
(23.3)
3 (4.1)
0
(0)
3 (4.1)
10 (13.7)
0
(0)
10 (13.7)
2 (2.7)
0
(0)
2 (2.7)
[単位:人、
(
)は%]
事例類型別では、
「経済的問題」が 35.6%で最も多く、次いで「精神疾患に起因する生活障害」が
32.9%、
「サービス導入拒否」が 31.5%、
「認知症による生活障害」と「虐待または虐待疑い」が 23.3%
となっている。この 5 つの類型はいずれも 20%以上の比率となっている。
支援困難に陥りやすい代表的な事例として類型化されたものをベースに類型の分類を行ったが、
今回対象にした事例の 8 割以上がこれらの類型(サービス導入拒否から退院における支援まで)
に分類される結果となった。
5
(6)着目した心身機能の状態と背景因子(環境因子)の関係
※割合(%)は実件数の 73 件を分母にして計算
本人に認知症状が見られる
22 (30.1)
本人に精神疾患症状が見られる
16 (21.9)
同居家族が多様な問題(ひきこもり、障害、失業等)を抱
えている
19 (26.0)
支援する家族や親族がいない(家族等がいても支援が得ら
れない場合を含む)
24 (32.9)
世帯が経済的に困窮している
24 (32.9)
地域の見守りや支え合いなど近隣支援がある
19 (26.0)
心身機能
背景因子
(環境因子)
[単位:人、
(
)は%]
本人の心身機能の状態として、
「認知症状が見られる」事例は 30.1%、
「精神疾患症状が見られる」
事例は 21.9%を占めており、この2つの項目で 5 割を超えている。
背景因子では、
「支援する家族や親族がいない」と「世帯が経済的に困窮している」事例が 32.9%
と高くなっており、
「同居家族が多様な問題を抱えている」事例が 26.0%となっている。
一方、対象者のかかえる問題の改善にとってのプラス因子である「地域の見守りや支え合いなど
近隣支援がある」事例は、26.0%となっている。
6
2.事例類型に関する集計
(1)年齢別
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
65 歳未満
65~75
歳未満
75~85
歳未満
85 歳以上
実件数
0 (0)
6 (26.1)
13 (56.5)
4 (17.4)
23
経済的問題
1 (3.8)
11 (42.3)
10 (38.5)
4 (15.4)
26
精神疾患に起因する生活障害
1 (4.2)
10 (41.7)
10 (41.7)
3 (12.5)
24
認知症による生活障害
1 (5.9)
3 (17.6)
8 (47.1)
5 (29.4)
17
虐待または虐待疑い
1 (5.9)
8 (47.1)
6 (35.3)
2 (11.8)
17
0 (0)
0 (0)
2 (66.7)
1 (33.3)
3
1 (10.0)
4 (40.0)
2 (20.0)
3 (30.0)
10
0 (0)
2 (100.0)
0 (0)
0 (0)
2
サービス導入拒否
退院における支援
円滑なサービス利用の支援
その他
[単位:人、
(
)は%]
75 歳以上の後期高齢者に着目すると、
「退院における支援」が 100%、
「認知症による生活障害」
が 76.5%、
「サービス導入拒否」が 73.9%と、この3つの類型では後期高齢者の割合が 7 割以
上になっている。
65 歳~75 歳未満の比率が高いのは、
「経済的問題」が 42.3%、
「精神疾患に起因する生活障害」
が 41.7%、
「虐待または虐待疑い」が 47.1%、
「円滑なサービス利用の支援」が 40.0%となって
いる。
(2)性別
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
男
女
実件数
サービス導入拒否
7 (30.4)
16 (69.6)
23
経済的問題
11 (42.3)
15 (57.7)
26
精神疾患に起因する生活障害
7 (29.2)
17 (70.8)
24
認知症による生活障害
7 (41.2)
10 (58.8)
17
虐待または虐待疑い
6 (35.3)
11 (64.7)
17
0 (0)
3 (100.0)
3
円滑なサービス利用の支援
4 (40.0)
6 (60.0)
10
その他
1 (50.0)
1 (50.0)
2
退院における支援
[単位:人、
(
)は%]
事例件数の多い類型では、男性が 3 割から 4 割、女性が 6 割から 7 割という傾向になっており、
性別での大きな差は見られない。
7
(3)世帯区分別
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
一人暮らし
高齢者世帯
子等と同居
その他
不明
実件数
サービス導入拒否
9 (39.1)
6 (26.1)
8 (34.8)
0 (0)
0 (0)
23
経済的問題
9 (34.6)
4 (15.4)
12 (46.2)
1 (3.8)
0 (0)
26
精神疾患に起因する生活障害
9 (37.5)
4 (16.7)
11 (45.8)
0 (0)
0 (0)
24
認知症による生活障害
11 (64.7)
2 (11.8)
2 (11.8)
1 (5.9)
1 (5.9)
17
1 (5.9)
1 (5.9)
15 (88.2)
0 (0)
0 (0)
17
退院における支援
3 (100.0)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
3
円滑なサービス利用の支援
2 (20.0)
2 (20.0)
3 (30.0)
2 (20.0)
1 (10.0)
10
その他
1 (50.0)
0 (0)
0 (0)
1 (50.0)
0 (0)
2
虐待または虐待疑い
[単位:人、
(
)は%]
一人暮らしの比率が高いのは、
「認知症による生活障害」の類型で 64.7%である。
高齢者世帯の比率が高いのは、
「サービス導入拒否」の類型で 26.1%である。
子等と同居の比率が高いのは、
「経済的問題」が 46.2%、
「精神疾患に起因する生活障害」が 45.8%、
「虐待または虐待疑い」が 88.2%となっている。
(4)相談経路別
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
本人
家族
介 護支 援
専門員等
民 生委 員
等
医療機関
行 政関 係
機関
その他
実件数
0 (0)
10 (43.5)
6 (26.1)
3 (13.0)
4 (17.4)
0 (0)
23
経済的問題
6 (23.1)
12 (46.2)
4 (15.4)
1 (3.8)
2 (7.7)
1 (3.8)
26
精神疾患に起因す
る生活障害
認知症による生活
障害
虐待または虐待疑
い
4 (16.7)
9 (37.5)
6 (25.0)
1 (4.2)
3 (12.5)
1 (4.2)
24
0 (0)
6 (35.3)
7 (41.2)
1 (5.9)
3 (17.6)
0 (0)
17
4 (23.5)
6 (35.3)
2 (11.8)
1 (5.9)
4 (23.5)
0 (0)
17
退院における支援
0 (0)
0 (0)
0 (0)
1 (33.3)
2 (66.7)
0 (0)
3
円滑なサービス利
用の支援
1 (10.0)
5 (50.0)
1 (10.0)
0 (0)
1 (10.0)
2 (20.0)
10
その他
1 (50.0)
1 (50.0)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
2
サービス導入拒否
[単位:件、
(
)は%]
介護支援専門員等からの相談が全体に多くを占めている。
「認知症による生活障害」では、民生委員等が最も多く 41.2%になっている。
「サービス導入拒否」と「認知症による生活障害」では、本人・家族からの相談はゼロとなって
いる。
8
(5)校区別
a
校
区
b
校
区
c
校
区
d
校
区
e
校
区
f
校
区
g
校
区
h
校区
校
区
j
サービス導入
拒否
3
7
2
2
1
0
1
3
経済的問題
3
5
1
1
3
3
1
1
5
2
1
3
2
2
5
1
2
1
2
0
3
1
1
0
0
1
0
その他
0
実件数
7
l
校
区
m
校
区
n
校
区
1
0
0
1
1
1
4
1
1
0
0
1
2
0
6
1
0
1
1
1
0
0
2
0
1
0
0
0
0
3
0
0
0
5
1
0
1
1
0
3
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
3
1
1
0
3
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
10
5
5
6
3
2
9
5
4
2
2
2
11
ⅰ
精神疾患に起因
する生活障害
認知症による
生活障害
虐待または
虐待疑い
退院における
支援
円滑なサービス利
用の支援
校
区
k
校
区
[単位:人]
類型別では各校区の事例件数のばらつきがより大きくなる傾向がみられる。
(6)心身機能との関係
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
認知症状が見られる
精神疾患症状が見られる
実件数
サービス導入拒否
10 (43.5)
5 (21.7)
23
経済的問題
8 (30.8)
8 (30.8)
26
精神疾患に起因する生活障害
3 (12.5)
13 (54.2)
24
認知症による生活障害
16 (94.1)
0 (0)
17
虐待または虐待疑い
4 (23.5)
2 (11.8)
17
退院における支援
0 (0)
1 (33.3)
3
円滑なサービス利用の支援
0 (0)
0 (0)
10
その他
0 (0)
2 (100.0)
2
[単位:人、
(
)は%]
「サービス導入拒否」の類型のうち、本人に認知症状が見られる人の割合は 43.5%、精神疾患症
状が見られる人の割合が 21.7%となっており、合わせて 65.2%になっている。
「経済的問題」の類型では、本人に認知症状が見られる人の割合は 30.8%、精神疾患症状が見ら
れる人の割合も 30.8%で、合わせて 61.6%になっている。
「虐待または虐待疑い」の類型では、本人に認知症状が見られる人の割合は 23.5%、精神疾患症
状が見られる人の割合が 11.8%となっており、合わせて 35.3%になっている。
9
(7)背景因子(環境因子)との関係
※割合(%)は実件数の値を分母にして計算
同居家族が多様な
問題を抱えている
支援する家族や
親族がいない
実件数
サービス導入拒否
10 (43.5)
13 (56.5)
23
経済的問題
10 (38.5)
13 (50.0)
26
精神疾患に起因する生活障害
12 (50.0)
10 (41.7)
24
認知症による生活障害
2 (11.8)
9 (52.9)
17
虐待または虐待疑い
11 (64.7)
7 (41.2)
17
退院における支援
0 (0)
0 (0)
3
円滑なサービス利用の支援
0 (0)
0
(0)
10
その他
0 (0)
0 (0)
2
経済的に困窮している
地域の見守りや支え合い
など近隣支援がある
実件数
サービス導入拒否
8 (34.8)
10 (43.5)
23
経済的問題
24 (92.3)
7 (26.9)
26
精神疾患に起因する生活障害
12 (50.0)
7 (29.2)
24
認知症による生活障害
3 (17.6)
8 (47.1)
17
虐待または虐待疑い
6 (35.3)
2 (11.8)
17
退院における支援
0 (0)
1 (33.3)
3
円滑なサービス利用の支援
0 (0)
0 (0)
10
その他
0 (0)
0 (0)
2
[単位:人、
(
)は%]
「支援する家族や親族がいない」と「近隣支援がある」の二つの背景因子に着目すると、
「サービ
ス導入拒否」の類型では、
「支援する家族や親族がいない」が 56.5%と高くなっているが、一方で
「近隣支援がある」も 43.5%と高くなっている。同様に「認知症による生活障害」の類型も、
「支
援する家族や親族がいない」が 52.9%と高くなっている一方、「近隣支援がある」も 47.1%となっ
ている。
「経済的問題」
、
「精神疾患に起因する生活障害」、
「虐待または虐待疑い」の類型では、
「支
援する家族や親族がいない」が 41%~50%あるものの、「近隣支援がある」は 11%~29%にとどまっ
ている。
「同居家族が多様な問題を抱えている」背景因子に着目すると、
「精神疾患に起因する生活障害」
の類型が 50.0%、
「虐待または虐待疑い」の類型が 64.7%と高くなっている。
「経済的に困窮している」背景因子に着目すると、
「経済的問題」の類型が 92.3%、
「精神疾患に
起因する生活障害」の類型が 50.0%と高くなっている。
10
Ⅲ
まとめ
1.全般的な特徴
①今回対象とした事例の 8 割以上が、困難事例報告書で支援困難に陥りやすい代表的な事例とし
て類型化された項目に分類することができた。地域包括支援センターが継続的にかかわりを持
つケースは、支援困難な状況にあることが改めて明らかになった。
②対象事例のうち、本人の心身機能として「認知症状が見られる」が 30.1%、
「精神疾患の症状が
見られる」が 21.9%で合わせて 52.0%となっている。こうした事例に対応できる支援技術の向
上と医療を含めた関係機関との連携が必要である。
③背景因子については、今回着目した4つの因子のうち「支援する家族や親族がいない(家族等
がいても支援が得られない場合を含む)
」が全体で 32.9%。事例類型では「サービス導入拒否」
と「認知症による生活障害」
、
「経済的問題」の類型では 50%を超えている。
公的なサービスによる支援はもちろんのこと、地域や近隣・友人等のインフォーマルサポート
を含めた支援体制づくりが必要である。今年度から本格的に取り組みを開始する「地域ケア会
議」において、個別事例ごとにこうした支援体制づくりをすすめていくことも重要になってく
る。
④同じく背景因子について、
「同居家族が多様な問題(ひきこもり、障害、失業等)を抱えている」
事例が 26.0%。事例類型では「虐待または虐待の疑い」と「精神疾患に起因する生活障害」の
類型では 50%を超えている。
地域包括支援センターだけの対応では困難であり、福祉事務所や保健所等との連携強化をはか
るなど、多機関・多職種による支援体制づくりをめざす必要がある。
⑤背景因子のうち、対象者のかかえる問題の改善にとってプラスとなる因子として設定した「地
域の見守りや支え合いなど近隣支援がある」事例は、26.0%。事例類型では「サービス導入拒
否」と「認知症による生活障害」の類型では 40%を超えている。
民生委員や地域等による見守りや支援の活動は、地域包括支援センターの活動を支える大きな
力になっている。上記③での考察のとおり、今後も地域での見守りや支えあいの必要性は高く
なると考えられる。
⑥相談経路については、介護支援専門員等の介護保険事業者からが最も多く、次いで民生委員や
地域からとなっている。今回対象としたようなケースの場合、本人や家族から相談が入ってく
る割合は少ないため、今後も地域や本人にかかわる関係機関の気付きからの把握が重要になっ
てくる。現在、各校区ですすめている「ふれあいネット雅び」ネットワークを土台にして、地域
における高齢者の見守りの促進と、高齢者にかかわる様々な関係機関や事業者と地域包括支援
センターとの連携強化が重要である。
11
2.類型別の事例の特徴
事例件数の多い上位 5 類型(サービス導入拒否、経済的問題、精神疾患に起因する生活障害、
認知症による生活障害、虐待または虐待疑い)について、特徴的な点を整理した。
①「サービス導入拒否」の類型では、75 歳以上の後期高齢者の割合が 73.9%。認知症の症状が見
られる事例が 43.5%、支援する家族や親族がいない事例が 56.5%となっている。
地域の支援がある事例が 43.5%となっているものの、何らかの支援や介入がないと地域での生
活の継続は心配な状況にある。
②「経済的問題」と「精神疾患に起因する生活障害」の類型では、子等と同居の事例が 45~46%
である。相談経路として民生委員等からのものは 15~25%になっており、同居家族は地域の見
守りの対象から外れている場合が多い。
複雑な問題を抱えた家族が地域から孤立すると、問題が表面化しないまま困難な事例になる可
能性が高くなる。地域や対象者にかかわる関係機関・専門職の気付きが重要になる。
③「認知症による生活障害」の類型では、75 歳以上の後期高齢者の割合が 76.5%。一人暮らしの
事例が 64.7%。支援する家族や親族がいない事例が 52.9%となっている。一方で、地域の気付
きがあり地域支援がある事例が 47.1%となっている。
認知症状が出現し様々な生活障害があらわれている方が、民生委員等による見守りや近隣支援
があることで、地域生活を維持することができている事例もある。
地域の見守りや対象者にかかわる関係機関・専門職の気付きにより、早期にかかわることが重
要である。
④「虐待または虐待疑い」の類型も「経済的問題」と同様の傾向にある。子等と同居の事例が 88.2%
と高い。同居の場合、地域の見守りの対象から外れているため、地域での把握は少なく、相談
経路として民生委員等からのものは 11.8%にとどまっている。
「同居家族が多様な問題を抱えている」事例が 64.7%と高くなっており、複雑な問題を抱えた
家族が地域から孤立し問題が表面化しない可能性もある。
介護事業者や医療機関等、当事者にかかわる関係機関の気付きが重要になる。また、虐待に関
しては高齢者虐待防止法による通報義務等、地域や関係機関への周知が必要である。
12