FITA審判員 ガイド ブック

FITA審判員 ガイド ブック
バージョン 6.1
2009 年 6 月発行
(2012年8月時点での最新版)
(抜粋)
2009年6月に更新された FITA JUDGE GUIDE BOOK Version 6.1 の主要な部分の翻訳です。 この GUIDE
BOOK は FITA 競技規則に従って作成されたものです。 したがって、日本の競技規則と異なる点もありますが、
競技規則の趣旨や審判員の心得を理解する上で良い資料であると思い、翻訳しました。
全日本アーチェリー連盟競技規則を参照しながらお読みください。 お役に立てば幸甚です。
拙い翻訳ですがご一読ください。
原文は、FITA ホームページ http://www.archery.org
FITA publications
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Judges Guidebook version 6.1 Download English
から Download できます。
ご意見等がありましたら下記にお寄せください。
木村 照次
東京都武蔵野市吉祥寺北町1丁目28-20
TEL/FAX : 0422-22-2462
e-mail : [email protected]
2012年 8月10日
-1-
目
次
1.0
FITA 審判員と倫理 ........................................................................................ 3
1.1
1.2
1.4
3.0
3.7
FITA 審判員 .................................................................................................... 3
審判員の基本的な考え方 .............................................................................. 3
FITA 審判員としてするべきこと、してはならないこと ...................... 4
競技前の準備 .................................................................................................. 5
弓具検査 .......................................................................................................... 5
3.7.1 検査手順 ............................................................................................................................................. 5
4.5
シューティング
ラインに於いて .......................................................... 7
4.5.1 行射位置 ..................................................................................................................................... 7
4.5.2 上に向けた弓の引き方(ハイ ドロー) ............................................................................. 7
4.6 3m ライン .............................................................................................. 8
4.7 指導情報と射線上いる選手 ...................................................................... 8
4.9 射線からの後退 .......................................................................................... 8
4.11 標的での異常 .......................................................................................... 9
4.11.1 跳ね返り矢 ............................................................................................................................. 9
4.11.2 貫通矢 ..................................................................................................................................... 9
4.11.3 ぶら下がり矢 ....................................................................................................................... 10
4.15 行射開始或いは行射終了信号の前又は後の行射................................................................. 10
4.17
採点での審判員の位置 ........................................................................ 10
4.18
4.19
矢の得点 - セカンド・コールは行わない ................................ 11
時間外発射 ............................................................................................ 12
4.19.1 規定本数以上の矢を行射した場合 ................................................................................... 12
4.20
4.23
4.24
スコアーカードの訂正 ........................................................................ 12
標的での問題 (標的面の垂れ下がり) ........................................ 12
バットレスの落下 ................................................................................ 12
-2-
FITA審判員 ガイド ブック(抜粋)-2009 年 6 月発行
1.0
1.1
FITA 審判員と倫理
FITA 審判員
FITA審判員になることは名誉なことである。 その成功は審判各人の誠実さ、性格、知識、思
慮深さに係っている。 審判員は競技会の奉仕者であって、その主人ではない。 従って我々の義
務は、適用する規則を完全に熟知して実行することであって、高圧的や権威的であってはならない。
これは時には困難なことでもある。
常に心を開いていること(open mind を保つこと)
選手や役員の説明を注意深く聞き、幅広いバランスのとれた態度を保つよう心がけることが大切で
ある。 最近、審判員や審判手順に大きな注意が払われてきている。 従って、審判員は世界で共
通な審判を行うために、最新の規則を実施する責任がある。 これにより、競技の公平さに対する
選手の信頼を得、そして世界中で共通な競技方式と行射方法で競技を行うことに貢献出来るのであ
る。
1.2
審判員の基本的な考え方
競技会での役員の任務は、各選手が最高の成績を残せるよう、順調な競技会の進行に勤めることで
ある。
役員の基本的な概念は下記のオリンピック役員宣誓である。
私達は、すべての審判・役員の名において、オリンピック憲章に則
り、 真のスポーツマン・シップに従って競技ルールを尊重し、完全
な公平さをもって、このオリンピック・ゲームに携わることを誓います。
不幸にして、選手の中には審判員の弱点を利用することを含め、さまざまな手段で自分の順位を上
げようとする選手がいる。 あなたはこのような行為に同意してはならないが、それを無視するの
は賢明ではない。
時には FITA 競技規則をすべての選手に公平且つ誠実に適用することを示すために、確固たる姿勢
を示すことも必要である。 そうするためには、少数の選手が自分の点数を高くすることが出来る
ような機会についても、審判員は気を配らねばならない。
我々は自制と公平さの手本を示し、
選手に貴方自身の冷静さや正しい判断を失わせるようなことを、決してさせてはならない。
我々は規則を熟知し、規則に対する最新の解釈もよく知らねばならない。 審判員は常に最新の規
則を知ることは不可欠であり、“古い”規則を適用しようとしてはならない。 我々はすべての選
手の権利を保護し、そのように努力した後に規則を的確に適用しなければならない。
第一に、我々は正しく且つ最新の情報を持っている事を確認しなければならない。
決定を下す前に、他の審判員と協議することは、弱点を示すものではなく、完全に正しい決定をく
だすことを望むからである。
時には、問題を議論しても全員が満足するように解決されない場合がある。 そのような事が起こ
れば、審判員会議を開催し、結論が出るまで最終決定を遅らせることである。
-3-
審判員達は十分に情報が与えられていなければならず、協議することや必要に応じて教育を受ける
ことを望み、丁重で且つ確信をもって決定に当たるべきである。
そうする事により、審判員は
高度な専門性をもって任務を遂行していると選手に理解されるのである。
選手たちは、全力で競い合っていることを忘れてはならない。 彼らは良い成績を挙げることを何
よりも一番望んでいるのである。
FITA の倫理規定は、FITA ファミリーの一員である審判員が、オリンピック理念に対して誠実であ
ることを確実にするためものである。 FITA 倫理規定は、IOC の倫理規定に準拠しており、FITA や
その役員及び全てのアーチェリー・ファミリーに対する最高の倫理水準を保つことを目指したもの
である。
1.4
FITA 審判員としてするべきこと、してはならないこと
この件に関して完全なリストを作ることは不可能である。 参考となる考え方は貴方の行動が、選
手、FITA、貴方自身、同僚の審判員から信頼されることである。 貴方が選手、観客、役員、メデ
ィアに与えるイメージを考え、行動しなければならない。 常識が常に貴方の指針でなければなら
ない。
するべき事
(a) 審判員の制服を着用する: 制服を着ることに誇りを持ち、競技会によい貢献ができることを
目的とすること。
(b) 貴方自身が観客を歓迎する側の主人公であると考えること。
(c) 熱心で、礼儀正しく、友好的であること。
(d) 競技規則を公平に、常に変わることなく、的確に適用すること。
(e) 選手、チーム役員、来客、観客、報道機関、他の役員全てに丁重に支援を申し出でること。
(f) 国歌と FITA ファンファーレには敬意を持って起立すること。 男性は脱帽すること。
してはならない事
(a)
貴方の主な任務である競技会から注意を逸らしてはならない。
(b) 競技場内等では、喫煙や飲食をしてはならない。 FITA 審判員のイメージは、自制心を持ち、
妨げられないで決定を下し、専門的であること。
任務中の喫煙や飲食は審判員のイメージ
を損なう。
(c)
任務に携わっている時、選手や他の役員と無駄話をしてはならない。
このような行為は、
貴方が与えられた任務に充分な注意を払っていないとか、他の特定の選手に便宜を図ってい
ると思わせる。
(d) 安全以外のことでは選手に干渉しないこと。 安全上の問題以外では、正式な接触はチーム・
キャプテンがいる場合はチーム・キャプテンを通じて行うのが最も望ましい。
(e)
任務に携わっている時は、カメラやウォークマンを持ち歩いてはならない。
(任務につい
ていない時に、写真を撮るためにバッグに入れて持ち歩くのは差し支えない。)
(f) 任務に携わっている時は、携帯電話を所持してはならない。
-4-
3.0
競技前の準備
3.7
弓具検査
競技開始前に全ての選手は弓具の検査を受けなければならない。 その為には競技種目別選手のリ
ストを入手しておくこと。 競技規則では、選手が使用する全てのものを提示することは要求され
ていないが、検査に合格した弓具を使用することは選手の責任である。 競技規則には使用が許可
されるものが記載されている。
従って、記載されていないものの使用は許可されない。
このことを良く理解しておくこと。
3.7.1 検査手順
審判員は弓具検査の手順を作成しておかねばならない。 検査は必要な人数で行い、他の審判員は
その他の作業に当たる。 部門やラウンドの競技規則に精通していなければならない。
競技規則に従った弓具を使用する事は、選手の責任である。 選手達がそれに
従っている事を確認するのは、審判員の義務である。
リカーブ・ボー
(a) 弓の外観全体を調べ、一般的なものと異なる点をメモする。
弓は弦を自分に向け、ハンドルに最も近い部分のリムを手で持つ。
(b)
決してグリップを持ってはならない。
貴方の手に汗や日焼け止めクリーム等が付いている
ことがあり、選手はグリップが汚れることを好まないものである。
(c) 最近、リカーブ・ボーにブレースの付いたハンドルを見かけることがある。
(トルクを避
けるために)ブレースは腕や手首に常に接触していないことを確認する。 これを正確に確認
することは困難である。 一つの方法は、競技中にブレースが支持具として使用されていない
かを確認することである。
審判員は選手の斜め後方から確認できるであろう。
-5-
(d) サイトを調べる。
光ファイバー、フード、チューブ等は選手から標的に向かって水平に2
cm以内であることを確認する。 この長さの制限は弓を水平に保つためにサイトを利用する
ことを避けるためである。
サイトピンを光らせる光ファイバーは、サイト・ケースと一体として使用出来ないので、別箇の部
品と考える。 この件に関して、技術委員会は下記のように述べている。
“サイトの全長に関して、光ファイバーは別箇の部品であり、全長は直線部分が最長2cmまで許
可される。 光ファイバーピン用のケースの長さは、最長2cmである。 光ファイバーとケース
は別箇に計測する。
(e) レスト、プランジャー、クリッカーを調べる。 これらの部品には絶対触れてならない。 我々
が最も注意している点は、ハンドルの一番深い部分からプランジャーまでの距離は4cmを超
えていないことで、どの部品も電気的又は電子的なものであってはならい。
(f)
弦と付属部品を調べる。
照準の助けになるような付加物がないことに注意する。
最近、
照準用ではない付加物(チュニングを良くすると思われる)が弦に取り付けられている事があ
る。 しかし、競技規則で述べられているもの以外の付加物は許可されない。
(g)
タブ又はグラブを調べる。
これらの部品を手で触って調べる必要があるときは、指に汗や
油が付着していないこと。 タブやグラブの表面以外の所に注意を集中させるべきで、その表
面に触る必要はない。
コンパウンド・ボー
コンパウンド・ボー及びその付加物はその目的及び趣旨として、基本的に制限していない。
但し下記の制限がある。
(a)
どのクラスに於いても、ピーク・ドローウエイトは60ポンドを超えてはならない。
(b)
弓、サイト、レスト、リリーサは電子的なものではあってはならない。
(c)
レストのプレッシャー・ポイントは弓のピボット・ポイント(ハンドルの一番窪んだ処)か
ら6cm以上後方にあってはならない。
(d) サイト ポイントは1個だけ付けても良い。
コンパウンド・ボーのピーク・ドローウエイトを調べるときは、1ポンド以上の誤差のない秤を使
用する。 検査の前に、すべての秤で弓を引いて比較し、一番良い秤を使って選手の弓を調べる。
検査では、各選手の弓のポンドを記録する。 チーム・キャプテン会議で、競技中にスポット・チ
ェックを任意に行うことを通知する。 弓は選手に引かせること。
ブレースに関する問題はリカーブ・ボーと同様である。 ドローウェイトを調べるときに選手に弓
を引かせるので、その時に確認するのが良い。 選手の腕やブレースに白い粉末を付けてチェック
することが必要になることもある。 苦情を避けるために、粉を付ける前に選手の同意を取ってお
くこと。
-6-
矢
矢に自分の名前か印が付いている事。 シャフトの直径は9.3mm以下で、ポイントは0.1mm
大きい(9.4mm)以下であること。
4.5
シューティング
ラインに於いて
4.5.1 行射位置
射線上の選手の位置及び足の位置が規則通りであることを確認する。
4.5.2 上に向けた弓の引き方(ハイ
ドロー)
審判員は競技会中、常に安全に気を配らなければならない。 もし、選手が弓を引くときに、誤っ
て矢を発射し、その矢が安全領域を超えると審判員が判断した時は、選手にそのような危険な引き
方をしないように忠告しなければならない。 もし、選手がそのような弓の引き方をすると主張す
る場合は、審判長又はDOSは安全の観点からその選手に行射を即時中止させ、直ちに射場を出る
よう指示する。
しかし、その引き方が危険な引き方と判断するのは必ずしも容易ではない。 選手が弓を肩の高さ
よりも高く上げたのがハイ
ドローであるとは必ずしも断定できない。 安全上の問題は、弓が引
きこまれた時にのみ(コンパウンド・ボーではピーク ウェイト ポイントを過ぎて引き絞られた
時)に発生する。
従って、審判員は弓を引いた時の押し手の位置と矢の方向を観察しなければならない。 コンパウ
ンド・ボーでは、誤ってリリースすることがあるので、特に良く注意する必要がある。
危険だと判断する場合は、これらの事を考慮して、役員を含めて何名かの審判員で検討するのが良
い。
-7-
4.6
3m
ライン
3mラインは何らかの理由で矢を落下させた場合、公平に処理するために設けられた。 この規則
は、矢のシャフトの一部が3mラインの内側にある場合は、矢は発射していないと見做すものであ
る。 この規則はノックや羽だけが落下している場合は、矢の再発射は認められない。 ノックだ
けが3mライン内にあり、そのノックがシャフトに付いている限り、矢を再発射することが許され
る。
3mラインは3次元であり、下図のように垂直に伸びている。
矢の落下した問題を簡単に取り扱う方法は、選手が制限時間内にもう1本の矢を行射することであ
る。 しかし、選手が矢の落下はノックの破損等の弓具故障であると考えて、行射を止めて審判員
を呼んだ場合は、弓具故障としてこの問題を取り扱うべきである。
射線から矢が3mライン内にあるのを判定するのが難しい場合がよく発生する。 もし、矢が3m
ライン以内にあると選手が判断して行射を続行したが、行射終了後に調べてみると矢は3mライン
外にあった場合、審判員は射線(選手の位置)から確認し、判定が難しい場合は選手にとって有利
な判定(benefit of doubt)を行う。
矢が3mラインに落下した場合は、矢の再発射が許される2つの場合の内の一つである。
4.7
指導情報と射線上の選手
選手が射線上にいる時、他の選手の妨げにならなければ、チーム役員から指導情報(電子的でない)
を得ることができる。
問題は“妨げにならないのはどのような場合か?”ということである。 その基準については、経
験としては普通の大きさの声であればよく、サインも認められるとされている。
この趣旨は、射線上での選手同士又は競技役員との会話は認められない。 これは他の
選手の妨げとなるからである。
4.9
射線からの後退
この規則は、選手は行射が終わったら射線から後退することを定めている。 この目的は、競技会
を必要以上に遅らせないことで、最後に射線に残っている選手にとって重要な規則である。
-8-
まだ行射している他の選手に対しする好意的行動を考えているのではない。
別の問題として、制限時間内に射線を離れ、再度射線に戻ってくる選手がいる。 他の選手の行射
を繰り返して妨げない限り、禁止すべきではない。 しかし、エンド終了前に射線に戻ることは選
手の義務である。
4.11
標的での異常
4.11.1 跳ね返り矢
跳ね返り矢の発生を通知された審判員は、射線まで進んで正確な状況を確認して、ウェイティン
グ・ラインに戻る。 射線から全ての選手が後退したら、審判員はDOSに跳ね返り矢が発生した
ことと、行射し残した矢の本数を知らせる。
DOSは全選手にこの問題の処理が終わるまで、待機するよう告げる。 審判員は跳ね返り矢が発
生した選手と一緒に標的に進む。 審判員は最初に跳ね返った矢を探し、矢が落ちていた場所が地
面か或いはその他の場所かを考慮して、跳ね返り矢か或いはそうでないかを確認する。 審判員は
跳ね返り矢で出来た痕跡を探す。 痕跡が発見されれば、審判員は自分のノートにその点数を記録
し、的中孔に印を付け、跳ね返った矢を標的の後方に置く。 的中孔に印を付ける前に、審判員は
採点時に問題となるような矢が無いことを確認する。 そのような場合は、審判員は的中孔に印を
付ける前に、得点を自分ノートに記入しておく。
もし、審判員が的面に2個以上の印の付けられていない的中孔を発見した場合は、得点は
その内の一番低い点数とする。
その標的の選手に行射し残した矢があれば、全選手が採点に進む前に、その矢を行射する。
担当している審判員は、採点に当たって跳ね返り矢の得点を確認する。
4.11.2 貫通矢
貫通矢の処理方法は跳ね返り矢の処理と似たようなものであるが、多くの場合、選手が採点で標的
に行くまでは分らない。 行射中に貫通矢が発生したことが分かったら、その的のバットレスを交
換する場合もあるので、その標的を行射しているすべての選手は行射を中止して、採点するために
標的に行く。
選手が貫通であると申し立てたら、審判員は矢が地上か又はバットレスに残っているかを調べる。
貫通矢であることを確認したら、審判員は矢の場所を参考にして、的中孔を探す。
もし、矢がバトッレスに深く潜っていれば、審判員は矢をバットレスの前面に押し戻す前に、矢の
得点を確認しなければならない。 バットレスの後方に突き出している他の矢との距離や、バット
レスの端からの距離を測ることで得点を確認することが出来ることもある。
矢を押し戻すのは、矢の得点を判定するのに必要な時だけで、他の矢の採点が終わる
までは押し戻してはならない。
矢を押し戻すときは、矢がバットレスに入った方向と同じ方向に十分注意して押し戻す。
貫通矢が発生したら、再度発生しないようにバットレスを交換するか又は補強しなければならない。
-9-
4.11.3 ぶら下がり矢
もし矢が標的面にぶら下がり、バットレスに正しく刺さっていなければ、その矢が落下したり、他
の矢で破損することがないように、そのバットレスでの全ての選手の行射を直ちに中止する。 取
扱い方法は貫通矢や跳ね返り矢と同様である。
ぶら下がり矢の得点の判定は、ぶら下がっている場所の得点帯上の痕跡で判断する。
矢のシャフトが幾つかの得点帯に接触していることがあるが、これは得点とはならない。
4.15
行射開始或いは行射終了信号の前又は後の行射
行射開始信号が出される前に選手は弓を挙げてはならないので、行射開始信号の前に矢を発射する
ことは殆どない。 良く発生するのは、行射時間が終了し行射終了信号の後で矢を発射する場合で
ある。 (音響信号の始まりが時間の終了を示している。)
貴方は行動を起こす前に、行射時間が終了したことに確信がなければならない。 これは難しい判
断を伴うことが多い。 貴方は選手より早く信号音を聞いたかも知れない。 もし、貴方が選手よ
りもスピーカーの近くいたら、このようなことが起こる。 DOSはこのような状況を良く見てい
ると思われるので、DOSと相談するのも良い。
もし、矢が信号と同時に発射されたのなら、選手に有利な判定(Benefit of doubt)を下すべきで
ある。
矢が行射時間外に発射された場合は、選手はそのエンドの最高得点を失う。 選手は3射又は6射
の各得点をスコアーカードに記録する。 審判員は赤ペンで点数を修正し、サインをする。
練習の終了後、競技開始前又は休憩時間中に競技射場で発射された矢は、次のエンドで記録された
最高点を削除する。 この場合、選手はそのエンドで3射又6射を行射する。 そのエンドの競技
開始前に、選手にはそのエンドで行射すべき矢をすべて行射し、すべての矢の得点を記録した後、
審判員がスコアーカードの得点を修正すると伝えておくことが望ましい。
このような事が発生したら、審判員はこのエンドの終わりにレッド・カードを挙げる。
4.17
採点での審判員の位置
得点記録の信号が出たら、審判員は一列になって一つのグループとして標的に向かって前進する。
割り当てられた標的の手前5m乃至10mの所に留まる。 選手から援助を求められたら、必要な
作業をして元の場所に戻り、標的に向かって立つ。
貴方の両側いずれかの審判員が忙しくて、その審判員が担当する他の標的の問題が処理できなくて
援助を必要としている場合は、直ちに援助を申し出で、その作業が終わったら元の待機場所に戻る。
全ての選手が採点を終わって、審判員の列を通り過ぎたら、審判員は標的の後方に残っている選手
がいないこと、および担当の標的に何も残っていないこと(特に矢が残っていないこと)
- 10 -
及び安全(例えば標的面が良い状態であること)を確認する。 その後、審判員達は一団になって
所定の位置に後退し、DOSに射場には何も残っておらず、安全であることを伝える。
4.18
矢の得点
-
セカンド・コールは行わない
標的面での矢の得点は一人の審判員の判定で決まる。 従って、これは審判員の最も重要な責任の
一つである。 もしこの重要な作業を専門家として遂行出来れば、選手から尊敬と信頼を得ること
が出来る。
この問題を適切に対処することが重要である。
(a) 常に拡大鏡を使用する事
(b) 常に矢の両側から(一度だけ)見ること
(c) 常に矢を出来るだけ直角(90度)の位置から見ること
(d) 常に標的面や矢に触れないこと
(e) 常に矢の得点をはっきり告げること
(f) 常に貴方が伝えた得点が記録されている事を確認すること
判定する矢の所有者に質問をしてはならない。 また、この判断がいかに難しいか等のコメントを
してはならない。
貴方が決定した点数を(例えば、この矢は9点である)はっきりを伝えること。
得点帯を区分する境界線が失われている場合は、標的面の正面からから見ると、失われた部分をよ
り正確に判断できることがよくある。 これは矢の両側から拡大鏡で見た後にのみ行うべきである。
2点帯と3点帯との間及び4点帯と5点帯の間にも境界線はないことを常に覚えておくこと。 し
ばしば多くの選手が黒色帯の中の黒い線に矢が接触しているから、5点であると主張することがあ
る。 これは2つの色が重なっているので、この部分は4点の得点帯である。
審判員として判断する際に、下記のガイドラインを適用すること
(1) 問題の個所の得点帯分割線が明瞭でないか或いは矢で歪んでいる場合、元の円の
線を想像するように努める。
(2) 判断の決定に時間を掛け過ぎてはならない。 もし確信が持てなければ、高い方の
点数を与える。 これは疑わしい時は選手に有利なように判定する(benefit of doubt)。
一番右下の矢は分割線に近いため、審判員の判断を必要とする。 的面を正面から見た第一印象で
判断した場合は、点数を見誤ることが多いので、この見方で判断して得点を告げてはならない。 得
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点帯に向かって接線方向から、矢が刺さっている所を右上方向から矢に向かって見る。(View A)
そして、下からも矢に向かって見る。(View B) 分割線が無くなっている時のみ、的面の正面方
向からみて判断してもよい。
審判員が矢の得点を決定したら、選手はセンカンド・コールもアピールも行えない。
得点が明確に分かっていて容易に判断できるにも関わらず、審判員を呼ぶ選手がいる。 このよう
な場合は選手に意見を聞くのが賢明である。 そうすると選手は貴方の援助なしに、正しい得点に
同意するのが普通である。
4.19
時間外発射
時には、選手がそのエンドの時間内や時間外に、規定された本数以上の矢を行射することがある。
この場合は、選手はすべての矢の得点を記録し、審判員は選手のスコアーカードを訂正する。 こ
れは、選手がアピールする場合に必要となるからである。
4.19.1 規定本数以上の矢を行射した場合
選手がそのエンドの規定の本数以上の矢を行射した場合は、6射のエンドでは一番低い点数の矢か
ら6本、3射のエンドの場合は3本の矢の得点を記録する。
4.20
スコアーカードの訂正
記録に間違いがあれば、矢が引き抜かれる前にその標的の全ての選手が訂正に同意し、スコアーカ
ードにサインすれば、スコアーカードの得点を選手自身で訂正することができる。 もし、選手が
審判員に得点の訂正を求めたら、訂正すると同時に選手に自分たちで処理するように告げる。
ラウンドの最後に選手はスコアーカードにサインをする。 これは、選手がスコアーカードに記録
された点数、合計点数及び10点とXの数に同意したことを意味している。
4.23
標的での問題
(標的面の垂れ下がり)
風の強い日では標的面の固定が緩くなることがある。 もしエンド中に標的面の端が得点帯の内側
に垂れ下がった場合は、その標的での選手は他の全選手のそのエンドの行射が終了するまで、行射
を中止する。
審判員はその標的の選手と共に標的に行き、選手のノートに矢の得点を記録させ、
的中孔に印をつけさせ、矢を引き抜かせ、的面を修復する。 引き抜かれた矢は標的の後ろに置か
せる。
審判員は選手と共に射線に戻り、当該選手が行射する矢の本数をDOSに知らせる。
審判員は
当該標的での採点に加わる。
4.24
バットレスの落下
もし、標的面或いはバットレスが風で吹き飛ばされたら、その標的の担当審判員は必要と思われる
全ての処置を取らなければならない。 修復後に行射し残した矢の行射時間を確保する。
もし矢が破損したり、矢の正確な痕跡が分からなくて点数が判定できない場合は、審判員はどのよ
うな手段が必要か判断する。 採点が不可能な矢のみ発射していないとして、再発射することを認
める。
これは選手にとって、再発射が認められる2つ場合の内の一つである。
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