報道解禁時間:平成 27 年 4 月 14 日(火)16 時 平成 27 年 4 月 14 日(火)14 時 (報道資料提供) 大阪科学・大学記者クラブ 提供 お問い合わせ先 公立大学法人大阪府立大学 21 世紀科学研究機構 ナノ科学・材料研究センター テニュア・トラック講師 小菅厚子 Tel: 072-254-9826 Fax: 072-254-9826 e-mail: [email protected] 様 ~革新的な光熱変換フィルムで携帯機器の補助電源などへの応用に期待~ 「光」を「熱」に迅速・高効率に変換するフィルムの開発に成功 公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻洋)の研究チーム(小菅厚子テニュア・トラック講師、飯田 琢也准教授、床波志保准教授ら)とグリーンケム株式会社(社長:山本陽二郎)の研究チームは、ポリマ ーの基板上に球殻状の金属ナノ粒子を集めた「光熱変換フィルム」を新開発し、迅速で高効率な光発熱 効果を示すことを明らかにしました。本研究成果は特許出願中です。特に、「金ナノ粒子」を高密度に 集積したタイプでは、たった 100 秒の擬似太陽光照射で、45℃の温度上昇(25→70℃)を達成しました。 研究成果のポイント 1.球殻状の金属ナノ粒子集積構造体を配列した高効率光熱変換フィルムの開発に成功。 2.100 秒足らずの擬似太陽光照射下で、約 45℃の温度上昇(25→70℃)を達成。 3.携帯機器の補助電源への活用など、小型で柔軟性に富むポータブルな太陽光駆動型熱電変換 デバイスの実現が期待される。 今回、真夏の晴天時のアスファルトでも2~3時間かか る高い温度上昇を数分程度の短時間で超える全く新しいフ ィルムの開発に成功し、 「太陽光駆動型熱電変換デバイス」 (※)の小型化、軽量化、フレキシブル化(活用例:携帯 機器の補助電源など)への応用可能性を解明しました。特 に、得られたフィルムを熱電変換ユニットに実装すること で、小型で柔軟性に富むポータブルな太陽光利用システム の革新に道を拓き、再生可能エネルギーとしての太陽光の 有効利用のための新しい選択肢を与えるものと期待されま す。 (※)「太陽光駆動型熱電変換デバイス」 …太陽光のうち、発熱の原因となる赤外光だけでなく、紫外域や可視域の波長帯の光のエネルギ ーも熱エネルギーに変換して熱電変換を行うことができるデバイスのこと 1 1.研究概要 研究論文名: A High Performance Photothermal Film with Spherical Shell-type Metallic Nanocomposites for Solar Thermoelectric Conversion (球殻状金属ナノ粒子複合体を塗布した 高効率光熱変換フィルムと太陽光熱電変換への応用) 著者: 小菅厚子 1*, 山本靖之 2,3,宮井萌 2,松沢美恵 1,西村勇姿 2,3,日高慎平 1,3,山本康平 1,3, 田中伸 1,3,山本陽二郎 4,床波志保 1,飯田琢也 1,2* (1 大阪府立大学ナノ科学・材料研究センター、2 大阪府立大学大学院理学系研究科、 3 大阪府立大学大学院工学研究科、4 グリーンケム株式会社) 公表雑誌:Nanoscale (英国王立化学会の科学論文雑誌) 公表日時:日本時間 2015 年 4 月 14 日(火)16 時 (英国時間 2015 年 4 月 14 日 8 時) 大阪府立大学とグリーンケム株式会社の研究チームは、球殻状に集積化した金属ナノ粒子集積構造 体を、透明なポリマー基板上に配列させた光熱変換フィルムを開発し、迅速かつ高効率な光発熱効果 を示すことを明らかにしました(特許出願中:特願 2012-109651)。特に、金ナノ粒子を高密度集積し た光発熱素子では、たった 100 秒の擬似太陽光(解説 1)照射下で、45℃の温度上昇(25→70℃)を達成し ました。 これは、真夏の太陽光の下でのアスファルトで数時間かかる温度上昇や、高効率の白色光吸収体と して知られる黒体テープの温度上昇を超えるものです。このような大きな光発熱効果は、強い反射を 示す結晶の金属やバラバラの金属ナノ粒子を用いた場合には得られません。 今回の研究では、金属ナノ粒子(解説 2)中に閉じ込められた電子状態である「局在表面プラズモン」 がナノ粒子の高密度化により強く電磁気学的な相互作用をした結果、光学的スペクトルが増強・広帯 域化することに起因することも解明しました。さらに、本研究で開発した光熱変換フィルムを熱電変 換(解説 3)ユニットに搭載することで、搭載しない場合と比べ、一桁もの大きな電力を得ることに成 功しました。本研究成果は、小型で柔軟性に富むポータブルな太陽光駆動型熱電変換デバイス(解説 4)の実現に新しい道を拓くと期待されます。 ■背景 人類が文化的な生活を営むに当たって、持続可能なエネルギー供給は重要課題になっており、再 生可能エネルギー源である太陽エネルギーが重要な役割を果たすと期待されています。一般的に、 太陽エネルギーを利用する場合、光と熱を利用する二通りの方法が考えられます。光を電気に変換 する材料としては、光電効果を利用した太陽電池があり、既に身近に幅広く普及しています。一方、 熱を電気に変換する材料としては、ゼーベック効果を利用した熱電変換材料がありますが、太陽熱 では、熱電変換材料にとって重要となる大きな温度差をつけることが容易ではなく、太陽光の熱流 (主に赤外光が主成分)をいかに効率良く熱電変換材料の高温部に導くかが課題でした。従来法と しては、鏡やレンズを用いて、熱電変換材料の高温部に太陽光を集光・集熱する方法が取られてい ましたが、太陽を追尾するシステムや大規模で複雑な高コストのシステムが必要でした。我々は、 コンパクトかつ軽量な光吸収体を用いて、赤外光だけでなく太陽光の紫外域から可視域の波長の成 分のエネルギーも効率良く熱エネルギーに変換できれば、従来とは異なるコンセプトの「太陽光駆 動型熱電変換」を実現できる可能性があると考えました。これまで、本チームでは、混ぜるだけの 簡単作業で金属ナノ粒子を自己組織的に球殻状に高密度集積した「金属ナノ粒子固定化ビーズ」を 2 作製し、その光応答スペクトルがバラバラの金属ナノ粒子よりも大幅に広がり、紫外-可視-赤外域 の光を高効率に吸収・散乱できることを理論的・実験的に明らかにしていました。特に、還元法で 作製した「金」のナノ粒子をマイクロメートル程度の大きさのプラスチックビーズに高密度に集積 した材料において、この効果は顕著となり、太陽光照射下での発熱効果の向上が期待されます。こ の原理に注目すれば、太陽光駆動型熱電変換デバイスの高効率化やコンパクト化に多大な貢献がで きるはずとの着想の下で研究を行いました。 ■研究手法 本研究では、数百個~数千個の金属ナノ粒子(金、銀)を、有機分子を介してマイクロビーズに固 定した金属ナノ粒子固定化ビーズの分散液を、透明で柔軟性に富んだポリマー(ポリエチレンナフ タレート(PEN))でできた4cm角のフィルム上に塗布・乾燥して「光熱変換フィルム」を作製しま した(図 1 左)。さらに、ソーラーシミュレーターと呼ばれる太陽光スペクトルとほぼ同じ波長分布 の白色光(疑似太陽光)を発生する装置を用い、基板への放熱を防ぐために中空に浮かせた状態で擬 似太陽光照射下での発熱効果の性能評価を行いました。また、熱電変換ユニットに搭載した際の、 光熱変換フィルムの有無による発電特性の評価も行いました。 2.研究成果 金ナノ粒子固定化ビーズを用いた光熱変換フィルムにおいて、驚くべきことに疑似太陽光をたっ た100秒間照射しただけで初期温度25℃から約70℃に上昇することを解明しました(図1右 上)。真夏の太陽光の下でアスファルトが25℃から約60℃に上昇するのに2~3時間かかるとい う報告がありますが、このような温度上昇を凌ぎ、かつ圧倒的な迅速性を示すものです。また、高 効率の白色光吸収体として知られる黒体テープを用いた光熱変換フィルムとの比較でも、温度上昇、 迅速性の観点から金ナノ粒子固定化ビーズを用いたフィルムの方が高い性能を示すことが分かり ました。さらに、比較として、銀ナノ粒子固定化ビーズ、バラバラの金ナノ粒子、透明なポリマー 基板のみを用いた光熱変換フィルムの表面温度も同じ条件で測定したところ、金ナノ粒子固定化ビ ーズが温度上昇においても最大となることを確認できました。これは、光応答スペクトル(図1右下) の積分値の大小関係と対応していることから、光熱変換フィルムの温度上昇と相関していることを 確認できたと言えます。図2ではこれら複数種類の光熱変換フィルムを搭載した熱電変換ユニット の、電流-電圧特性および電流-出力曲線をプロットしています。この実験においても、金ナノ粒子 固定化ビーズを用いた場合が最も高い電圧と出力を誇っており、図1の温度上昇や光応答スペクト ルと対応した結果となっています。特に、透明なポリマー基板のみの場合と比較した時、1ケタ以 上の出力の増強が得られることが分かりました。これは球殻状の金属ナノ粒子集積構造体を用いた 光熱変換フィルムの太陽光駆動型熱電変換デバイスへの応用可能性を期待させる重要な成果であ り、安価で柔軟性に富んだポリマー基板を用いているため、様々な場所に貼り付けて使用できる可 能性も期待できます。さらに、塗って乾かすだけの簡単安価な作製法なので、量産化も容易にでき ると考えられます。 3 なお、本研究は、熱電変換工学を専門とする小菅グループ(小菅厚子テニュア・トラック講師、松 沢美恵技術補助員)、生体光物理を専門とする飯田グループ(飯田琢也准教授、山本靖之氏、宮井萌 氏、西村勇姿氏、日高慎平氏、山本康平氏、田中伸氏)、分析化学を専門とする床波グループ(床波 志保准教授)、グリーンケム株式会社(山本陽二郎社長)の共同研究により実施したものです。 3.今後への期待 今回開発した球殻状金属ナノ粒子集積構造体を用いた光熱変換フィルムは放熱を抑えられれば 数分程度という短時間で100℃近い温度が達成できる可能性も理論的には示されています。この ことからも、放熱効果の抑制などの工夫をすることでより高効率化できる可能性もあります。さら に、今回の成果を利用した「太陽光駆動型熱電変換デバイス」は、PEN や PET などのポリマー基 板を用いることができるため、フレキシブルかつ軽量であることからスマートフォンなどの携帯機 器の補助電源としての実装可能性もあります。また、光熱変換フィルム自体は、加熱あるいは温度 保持が必要な物に貼り付けて使うような用途など、住宅用建材や植物工場の温度保持など熱電変換 以外にも様々な用途での利用が期待できます。 4.研究助成資金等 本研究は、挑戦的萌芽研究「局在表面プラズモンの協力現象による高効率光熱電変換の原理 開拓」(研究代表者:飯田琢也 大阪府立大学大学院理学系研究科)および文部科学省 若手 研究者の自立的研究環境整備促進「地域の大学からナノ科学・材料人材育成拠点」プログラム (大阪府立大学)、その他の支援を受けて完成しました。 4 5.参考図 5 6.用語解説 解説1:疑似太陽光 ソーラーシミュレーターと呼ばれる装置を用いて発生した、太陽光とほぼ同様の波長分布を示す白色 光のことを指します。キセノンランプにAM1.5フィルターを付けることでこのような白色光を人工 的に発生させることができます。主に、太陽電池の性能評価などに用いられています。 解説2:金属ナノ粒子 典型的には金属を 100 nm 以下のサイズの粒子にしたものです。金属がナノサイズ(ここでは、100 nm 以下の大きさの物質を指す。※1 nm=100 万分の 1 mm)になると電子の波が表面に強く束縛されます。 この束縛効果により、金属光沢を示す目に見えるサイズの結晶の金属とは異なり、特定の共鳴波長を持 つようになります。このような表面に束縛された電子状態を「局在表面プラズモン」と呼びます。局在 表面プラズモンの共鳴波長は金属ナノ粒子のサイズや形、粒子間の相互作用に応じて敏感に変化します。 このため、例えば、400~500 nm に共鳴波長を有する銀のナノ粒子の溶液は、サイズに応じて共鳴波長 の補色(紫色~青色)である橙色~黄色に変化します。最近では、この性質を太陽電池や光バイオセン サーの増感に利用する試みが盛んに行われています。 解説3:熱電変換 我々が使用している一次エネルギーの大部分は廃熱として捨てられています。このような廃熱を直接 電気に変換する技術が熱電変換技術です。熱電変換技術には、熱電変換材料が使用されており、ゼーベ ック効果という固体の物理現象を利用して、直接熱を電気に変換することができます。熱電変換効率は、 熱電材料自体の特性と、材料の上下端につける温度差により決まります。熱電材料の特性が良い程、ま た材料の上下端につける温度差が大きい程、熱電変換効率は高くなります。 解説4:太陽光駆動型熱電変換デバイス 太陽光に含まれる熱の原因となる赤外光だけでなく、紫外域から可視光域の波長を持つ光の成分のエ ネルギーも熱エネルギーに変換して熱電変換を行うことができるデバイスをここでは指しています。背 景で説明したような鏡やレンズを用いたり、太陽の位置を機械的に追尾したりして赤外光を集めて熱電 変換を行う「太陽熱電変換」とは区別しています。 6
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