個別大学情報の内容・形態 に関する国際比較 はじめに 本書の目的は、世界各国の大学に関して、とくに個別の大学についての情報が、ど のような形で存在し、またそれがどのような問題を内包しているのか、またどのよう な社会的な背景をもっているのかを分析することにある。 このような作業は、高等教育に関する研究の上からは、二つの文脈において必要と されていると考える。 第一に、経済社会のグローバル化・知識社会化のなかで、日本の大学とくに教育研 究 の 中 核 的 な 役 割 を 担 う 大 学 (「 主 要 研 究 大 学 」) に お け る 教 育 研 究 水 準 が 、 社 会 的 な 関心の対象となっている。日本の主要研究大学の教育研究水準は実際に、各国の主要 研究大学に比べて、どのような点で、どの程度に異なるのか。またそれは、大学の組 織のあり方、財政基盤、あるいは歴史や組織のカルチャーにどのように規定されてい るのか。さらに日本の大学の個性はどこにあり、弱点・強みはどこにあるのか。 そ う し た 点 で の 詳 細 な 比 較 検 討( ヘ ゙ ン チ マ ー キ ン ク ゙ )、そ し て そ れ に 基 づ く 大 学 の 改 善 の 努 力と、制度改革こそが、日本の大学の教育研究水準の高度化を達成するために必要な は ず で あ る 。こ う し た 研 究 を つ う じ て 、日 本 に お け る 主 要 大 学 の 自 己 認 識 を 明 確 に し 、 その自己改革の指針とするだけでなく、そうした手法と結果が発表されることによっ て、他大学での様々な形での応用、展開が期待できる。また高等教育制度、政策に対 しても具体的な示唆を与えることができるものと期待される。こうした大学改革への 実践的な関心から、世界の大学についてどのような情報が提供されているかが問題と されるのである。 第二に他方で、大学に関する情報は、いま様々な形できわめて多量に供給されてい る 。こ こ 十 年 ほ ど の 間 に 、大 学 の「 ラ ン キ ン グ 」が き わ め て 多 く 供 給 さ れ て い る の は 、 世界各国に共通の現象である。それは一面において上述のような大学改革への実践的 関心にも関連しているのではあるが、他方でそれは必ずしもそうした合理的な目的へ の手段として発展しているのではなく、おそらく高等教育とそれをめぐる社会経済構 造の転換に根ざす、むしろ社会現象としてとらえるべき側面をもっているものと考え られる。世界各国の大学を比較する「ランキング」が流布されるのは、そうした要因 を反映しているとしか考えられない。したがって、そうしたランキングの根拠は曖昧 であって、強い偏見を含んでいることも少なくないことが明らかになりつつある。そ れが一人歩きすることが、特に日本の社会における自らの大学への認識と、学術政策 に一つの歪みを与える可能性があることも見逃せない。 こうしたいわば知識社会学的な関心から、大学情報について批判的な分析を加える こともきわめて重要な課題である。どのような情報が入手可能であり、こうした情報 から私たちは個別の大学について何を知ることができるのか。またこうした情報はど のような意図で、どのような形態で蓄積され、またどのような加工を加えて発表され ているのか。これをなるべく広い視野から様々な形態の大学情報を収集し、それを分 類、分析することによって明らかにすると必要であろう。 この報告書は、上述の第一の関心を背景におきつつも、直接には第二の関心にした がって構成されている。具体的には、まず大学情報についての分析の枠組みについて 述 べ( 序 章 − 金 子 )、世 界 各 国 の 大 学 に つ い て の 包 括 的 な リ ス ト( 第 1 章 方 )、 個 別 大 学 に つ い て の 体 系 的 な 検 索 型 テ ゙ ー タ ヘ ゙ ー ス ( 第 2 章 機能に関する各種のデータベース(第 3 章 (第 4 章 − − − − 小 小 林 )、 大 学 の 研 究 阿 曽 沼 )、 各 国 の 「 大 学 ラ ン キ ン グ 」 間 渕 )、 日 本 の 大 学 評 価 ・ ラ ン キ ン グ ( 第 5 章 − 大多和)につい て 述 べ 、さ ら に 日 本 に お け る 大 学 ラ ン キ ン グ の 信 頼 性 、一 貫 性 を 検 討 す る( 第 6 章 − 小 林 )。 平 成 14 年 3 月 金子 * 元久 こ の 研 究 は 、 平 成 13 ― 1 5 年 度 の 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 基 盤 研 究 ( B)( 2 ) 「 日 米 欧 主 要 大 学 の 研 究 教 育 水 準 と そ の 基 盤 に つ い て の ヘ ゙ ン チ マ ー キ ン ク ゙ 」)に よ る 研 究成果の一部である。 目 次 序章 大学情報の構造と機能 金子 元久 第 1章 大学の包括リスト 小方 直幸 第 2章 大学情報の検索型データベース 小林 雅之 第3章 研究機能の評価に関わる情報 阿曽沼 第4章 世界の大学評価・ランキング 間渕 第5章 日 本 の 大 学 評 価 ・ラ ン キ ン グ 大多和 第 6章 日本の大学ランキングの検証 小林 明裕 泰尚 直樹 雅之 序章 大学情報の構造と機能 金子元久 いま大学に関する情報の流通が爆発的に拡大している。大学についてどのよう な情報が存在し、その背後にはどのような社会的・経済的要因があるのか。そう したことは大学情報にどのような特質を与えているのか。それを明らかにするの が、この報告書全体の課題である。この章では具体的な議論にさきだって、大学 に関する情報を、いわば知識に対する社会学的・経済学的なアプローチからとら えるための、基本的な枠組みを検討する。 大学に関する情報は近年になって大きく増大している。それを形態別に整理す れば、基本的に、①事実情報、②調査情報、③判断情報、の三つに分かれる。さ らにその提供主体を勘案して整理すれば、以下のようになろう。 図表 序 ‑1 大学情報の形態 提供主体 大学自体 事実情報 政府・公共団体 大 学 案 内 、ホ ー 大学一覧 ムページ 「大学包括リスト」 企業 受験案内 「検索型データベース」 調査情報 学生調査 研 究 機 能 の アウトプット統 計 学生の意見調査 雇用者調査 論文データベース 格付け、評価 自己評価 政府機関による大学評価 「大学ランキング」 事実情報 まず第一に考えられるのが、事実をそのまま伝える情報である。大学情報のも っとも基本的な形態といえよう。 その内容は、大学の名称、組織形態、学生数、教員数などである。ただし、大 学自身がすでにもっていて、外部には必ずしも公表されない情報も少なくない。 特にこうした点で重要なのが、大学の財政にかかわる情報である。日本の場合、 1 国立大学の大部分は、支出の総額については公開しているが、詳細にわたっては 公開していない大学が大部分である。私立大学については、財務諸表を一部の大 学が公開しているが、まったく公開していない大学も少なくない。 公開の主体からいえば、こうした情報については大学自身が公開しているもの が 多 い 。「 大 学 案 内 」 と い っ た 名 前 を つ け た パ ン フ レ ッ ト 類 は 、 日 本 の み な ら ず 、 世界各国の大学が発行している。またインターネットを通じて、様々な情報を公 開している大学も多い。ただし、インターネットを通じた情報公開の内容は、ま さに千差万別であって、必ずしも重要な情報が公開されているとは限らない。 こうした点で重要な情報源となるのは、何らかの形で、一定のフォーマットに よ っ て 事 実 情 報 を 一 括 し て 表 示 し た 情 報 で あ る 。 日 本 に つ い て は 、『 大 学 一 覧 』、 あるいは大学基準協会が出版する『大学一覧』がある。あるいは受験生向きに、 大 学 入 試 セ ン タ ー が 提 供 す る 『 大 学 案 内 』、 あ る い は そ の イ ン タ ー ネ ッ ト 版 で あ る HEART Learning シ ステ ム が ある 。 国際 的 に い え ば、 国 際 大 学 協 会の Wo r l d o f が代表的なものである。 企業が、おもに受験生向けに出している情報も少なくない。日本でいえば、受 験雑誌の大学案内、あるいは大学ガイドの類がある。こうした情報はアメリカで の数種類のものが発行されている。 こうした大学に関する事実情報のうち、とくに一定の要件をみたす大学につい ての、包括的な情報の提示はさまざまな意味で重要な意味をもつ。これについて は ,本 書 第 1 章 小 方 論 文 「 大 学 の 包 括 リ ス ト 」 で 概 観 、分 析 さ れ る 。 ま た こ う し た 事実情報において近年、急速に拡大しつつあるのが、個別大学について多量の情 報を含みつつ、しかも包括的なカバレッジをもつ大学データベースである。これ は第 2 章の小林論文「大学情報の検索型データベース」において分析される。 調査情報 大学情報の第二の類型は、既存の情報ではなく、何らかの調査などによって、 明らかにされた情報である。個別大学において創出されるそうした情報の例とし て は 、学 生 に 対 す る 各 種 の ア ン ケ ー ト 調 査 が 上 げ ら れ る 。こ う し た 学 生 に よ る 意 見 の 調 査は、日本では民間教育情報企業などによっても提供されている。たとえば各種 の『学生満足度調査』ルクルート・リサーチ社の『大学改革の認知度調査』など はこうした調査の代表とみることができる。 さらに重要なのは、政府機関、ないし学術団体などがおこなう、特に大学の研 究機能についての調査、あるいは統計である。学術分野別に、論文出版数、また その引用度などについて、包括的なデータベースを作成する。これは、個別大学 2 について、その中での位置を明確にする際の重要な基礎となる。こうした専門分 野別の論文データペースは学会などによってアドホックに行われてきたが、現在 では、企業によって提供されるものも多くなってきた。これについては、第 3 章 の阿曽沼論文「研究機能の評価」において分析する、 格付け・評価 さらにいま急速に拡大しつつあるのが、大学について、一定の判断、評価を与 える情報である。 こうした情報のなかで、大学自身が作成するものが、大学評価にかかわる報告 書 等 で あ る 。 日 本 に お い て は 1991 年 の 大 学 設 置 基 準 の 改 定 以 来 、 こ う し た 報 告 書が数多く発行されている。ただし、大学自身が厳格な意味で「評価」をくわえ たものは必ずしも多くない。あるいはさらに、大学に対する第 3 者による評価も この範疇に入れることもできよう。 また政府機関がおこなう、大学に対する一元的な評価も多く行われるようにな っ た 。 特 に イ ギ リ ス に お い て は 、 大 学 財 政 委 員 会 ( Higher Education Funding Council) に よ っ て 、 大 学 の 評 価 が 行 わ れ た 。 日 本 に お い て も 、 2001 年 に 設 置 さ れ た 「 大 学 評 価 ・ 学 位 授 与 機 構 」 に よ っ て 、 国 立 大 学にかかわる大学評価が実施され、その結果が公表されることになっている。 これに対して、民間の出版社などが、様々なデータから、大学について何らか の相対評価をおこない、それを大学間を比較するという形態で発表するものが、 ここ十年ほどの間に大きく拡大した。これらのほとんどは、大学を一定の序列の 上 に 位 置 付 け る も の が 多 い か ら 、『 大 学 ラ ン キ ン ク ゙ 』と 総 括 し て お こ う 。こ れ は 国 際 間 でもおこなわれているし、国内でも行われる。これは第 4 章間渕論文「世界の大 学 評 価 ・ ラ ン キ ン ク ゙ 」、 お よ び 第 5 章 大 多 和 論 文 「 日 本 の 大 学 評 価 ・ ラ ン キ ン ク ゙ 」 で 分 析 される。 3 研究の課題 以上にのべた関心から、この報告書の分析的な課題は大きく三つあると考える 。 ま ず 第 一 は 、「 大 学 情 報 の マ ッ ヒ ゚ ン ク ゙ 」 で あ る 。 す な わ ち 、 大 学 に つ い て の 、 多 様 な情報が爆発的に提供され、流通されている中で、そうした情報がどのような形 で、どのような主体によって提供されているのかを、整理することである。これ は い わ ば 書 誌 学 的 な 関 心 で あ る と も い え る が 、 ホームページな ど の 利 用 が 一 般 的 に な った現在では、独自の工夫が必要となっている。 3 第二は、大学情報の、情報としての評価である。すなわちそうした情報を、そ の正確さ、一貫性、信頼性、といった観点から評価する。これまで大学情報につ いては、その正確性などをチェックする作業はどこも行ってこなかった。こうし たチェックを行う責任のある主体自体が明確でなかったといえる。政府も、こう した形のチェックを行うことに決して積極的でない。しかし、個々の情報の過誤 やバイアスは決して少なくないのではないかと想像される。 第三は、大学情報の社会的・経済的背景の分析である。いま提供されている大 学情報とその特質が、上述のような大学情報市場の社会経済的構造からどのよう に派生しているのか。それが、市場メカニズムによって大学情報が流通すること に、どの程度起因するのか、またそうした問題点をさけるためにはどのようなメ カニズムが必要であるのか。こうした点を分析、検討することが課題となる。 こうした三つの視点を交錯させつつ、以下では具体的な分析を行う。 4 第1章 大学の包括リスト 小方 1 直幸 はじめに こ の 章 で は 、世 界 の 大 学 の 個 別 情 報 を 包 括 的 に 掲 載 し た も の( 第 2 節 )、 国 別 に 大学の個別情報を包括的に掲載したもの(第3節)を取り上げ、その概要を紹介 す る 。大 学 間 の グ ロ ー バ ル な 競 争 や 国 を 越 え た 学 生・教 員 等 の 交 流 が 進 展 す る 中 、 各国の大学情報に対する需要は着実に高まっている。大学情報という場合、まず 大学を含めた高等教育の制度を理解することが重要なことはいうまでもない。大 学としてカテゴライズされるものが、国によって同等とは限らないからだ。しか し、マクロな制度情報は、大学の競争力の考察や大学間の人的交流を行う場合に は不十分である。制度の中で個々の大学がどういう特色を持つかという個別機関 情報が必要となる。そうした個別機関情報を網羅したものを、ここでは「大学の 包括リスト」と呼ぶ。従来、どういった類の大学包括リストが存在するかに関し ては、ほとんど紹介されてこなかったといってよい。 ここでいう個別機関情報とは、大学院・学部・学科、付属機関、教職員・学生 といった客観的なデータ、序章でいうところの「事実情報」である。もちろん、 こうした情報は各大学のホームページ上でも確認できる。だがホームページを覗 いた経験のある方はわかるように、大学の客観データがわかりやすい(あるいは たどり着きやすい)形で掲載されているとは限らない。なお、個別機関の情報を オンライン上で検索できるタイプのものもいくつか存在するが、ここでは書籍ベ ースのものを中心とする。また、一部書籍の存在は確認できたが未入手のものに ついても紹介している。 さらに、最近注目されているオンライン大学についても、従来型の遠隔・通信 教育も含めて第4節で補足的に扱うことにした。オンライン大学には様々なタイ プがあり、機能は存在するが組織としては明確に存在しないというように、大学 の概念自体に変更を迫る可能性を持っている。ただし、今回は不十分な資料しか 入手できておらず、紹介する情報も断片的なものにとどまる。 なお、以下に紹介するものはいずれも、設立年、教職員・学生数、学部・学科 5 一覧など、機関の基本的なデータを網羅しているが、これらを越えた項目につい ては、本来掲載されるはずの情報であっても、大学によって掲載されているもの と未掲載のものとがある。これは、フォーマットの作り込みや、客観的な事実情 報といっても、調査票に基づく大学側の自己申告という情報収集の手法に課題が あるためと推察される。しかしホームページから情報を得ることや表記言語(今 回挙げたものの大半は英語表記である)の問題を考えるならば、個別大学の概要 を容易に入手できるという意味で、包括リストは一定の意義を持っている。 2 世界の個別機関情報 ここでは、世界の国々の個別高等教育機関の情報を掲載したものを紹介する。 世界各国の個別機関情報を網羅しているため、3節で扱う国別の情報に比べると 情報量は少ない。 図 表 1‑1 世 界 の 個 別 機 関 情 報 掲 載 書 ○個別機関情報 ・ T h e Wo r l d o f L e a r n i n g ( E u r o p a P u b l i c a t i o n s : L o n d o n ) ・ International Handbook of Universities(International Association of Universities: Paris) ・ Wo r l d L i s t o f U n i v e r s i t i e s a n d O t h e r I n s t i t u t i o n s o f H i g h e r E d u c a t i o n (International Association of Universities: Paris) ・ C o m m o n w e a l t h U n i v e r s i t i e s Ye a r b o o k ( A s s o c i a t i o n o f C o m m o n w e a l t h Universities) ・ G a l e D i r e c t o r y o f L e a r n i n g Wo r l d w i d e ( G a l e ) ○国別の教育制度 ・ U N E S C O S t a t i s t i c a l Ye a r b o o k ( U N E S C O ) ・教育指標の国際比較(文部大臣官房調査課) The World of Learning (www.europapublications.co.uk/titles/wol.html) 2001 年 版( 2001 年 12 月 )が 第 52 版 と な る 、世 界 の 高 等 教 育 関 連 機 関 30,000 件 を 収 録 し て い る 。機 関 の 住 所 、電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E - M a i l の ア ド レ ス 、設 立 年 、 管理職・学部長・教授の氏名、学部の種類、付属機関・センター類、図書館の蔵 書数、学生数、教員数、大学の出版物等が掲載されている。検索機能がついた Online 版 ( 有 料 ) も あ り 、 概 要 は ホ ー ム ペ ー ジ を 参 照 の こ と 。 6 International Handbook of Universities 2001 年 版 ( 2001 年 6 月 ) が 第 16 版 と な る 。 IAU は 1950 年 に 創 設 さ れ た ユ ネ ス コ を 基 盤 と す る ワ ー ル ド ワ イ ド な 大 学 協 会 ( w w w. u n e s c o . o r g / i a u / ) で 、 世 界 の 高 等 教 育 機 関 7 , 3 0 0 件 を 収 録 し て い る 。機 関 の 住 所 、電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E - M a i l 、 ホームページのアドレス、管理職・学部長の氏名、学部の種類、設立年、設置形 態、付属機関・センター類、大学管理機関、学年暦、入学要件(資格および試験 の 種 類 の み )、教 育 言 語 、学 位 の 種 類 、図 書 館 の 蔵 書 数 、各 種 施 設 、大 学 の 出 版 物 、 教 員 数 、学 生 数 等 が 掲 載 さ れ て い る 。機 関 の 収 録 件 数 が 少 な い 分 、掲 載 項 目 は T h e Wo r l d o f L e a r n i n g よ り も 多 い 。 World List of Universities and Other Institutions of Higher Educ ation 2000 年 版 ( 2000 年 1 月 ) が 第 22 版 と な る 。 同 じ く IAU か ら 出 さ れ て お り 、 世 界 の 高 等 教 育 機 関 15,000 件 を 収 録 し て い る 。機 関 の 住 所 、電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E-Mail、 ホ ー ム ペ ー ジ の ア ド レ ス 、 管 理 職 の 氏 名 、 設 立 年 、 学 部 名 、 付 属 機 関 ・ センター類等が掲載されている。掲載項目は最低限のものであり、②の簡略版と いえる。 Commonwealth Universities Yearbook 2 0 0 1 年 版 ( 2 0 0 1 年 11 月 ) が 第 7 6 版 と な る 。 英 連 邦 系 の 3 6 カ 国 の 高 等 教 育 機 関 600 件 を 収 録 し て い る 。 機 関 の 住 所 、 電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E-Mail、 ホ ー ム ペ ージのアドレス、管理職・学部長の氏名、学部の種類、学科ごとの教員の氏名、 設立年と沿革、入学要件、学位の種類、図書館の蔵書数、授業料、学年暦、年間 収入、教職員・学生数等が掲載されている。 Gale Directory of Learning Worldwide 2001 【未 入 手 】 3 巻 本 で 、 カ タ ロ グ に よ れ ば 26,000 機 関 の 情 報 を 掲 載 し て い る と い う 。 以下の2点は、個別高等教育機関の情報ではなく、各国の教育制度全般を紹介 したものである。個別機関情報においては、高等教育の制度そのものに関する情 報が欠落しているケースが多いため、それを補うものと位置づけられ、補足的に 紹介しておきたい。 UNESCO Statistical Yearbook 1 9 6 3 年 〜 9 9 年 ( 日 本 語 版 − ユ ネ ス コ 文 化 統 計 年 鑑 は 1 9 8 0 年 〜 9 9 年 )。 何 れ も 1 9 9 9 年 版 で 紙 媒 体 と し て の 出 版 は 終 了 し て い る 。2 0 0 0 年 以 降 の 扱 い に つ い て は 、 ユ ネ ス コ の HP や 日 本 ユ ネ ス コ 国 内 委 員 会 に 問 い 合 わ せ だ が 、 明 ら か に な っ て い ない。本書には、第3段階教育について国別の情報が掲載されている。教員数、 学 生 数 、 在 学 率 、 ISCED 段 階 別 ( 学 士 号 未 満 、 学 士 号 相 当 、 大 学 院 相 当 ) の 在 学 者 の 割 合 、専 攻 分 野 別 在 学 者 の 割 合 、I S C E D 段 階 別 に み た 卒 業 者 総 数 に 対 す る 卒 業者の割合、専攻分野別にみた卒業者総数に対する卒業者の割合、外国人学生の 7 出身国別割合が掲載されている。 教 育 指 標 の国 際 比 較 1969 年 か ら 毎 年 発 行 さ れ て お り 、 日 本 、 ア メ リ カ 、 イ ギ リ ス 、 フ ラ ン ス 、 ド イ ツ、ロシア、中国に関する統計資料を掲載している。具体的には、進学率、在学 率、人口千人あたりの在学者、学部学生と大学院生の比率、専攻分野別在学者、 学位取得者、教員1人あたり学生数、女子の本務教員比率、教育費の公財政支出 と負担区分、使途別の構成、学生一人あたり教育費、学生納付金、政府機関奨学 制度に加えて、各国別の学校系統図が掲載されている。 3 国別の個別機関情報 図 表 1‑2 国 別 の 機 関 情 報 掲 載 書 ○日本 ・全国大学一覧(文教協会) ・大学一覧(大学基準協会) ・全国大学職員録(廣潤社) ・大学研究所要覧(日本学術振興会) ・日本大学大鑑(総合大学問題研究所編、日本学術通信社) ・日本の大学(東洋経済新報社) ・大学ランキング(朝日新聞社) ・ 文部科学大学所轄学校法人一覧(文教協会) ○アメリカ ・ American Universities and Colleges (James J. Murray ed. collaborated with the American Council on Education) ・ The College Blue Book( Manufactured by Gale Group) ・ The College Board College Handbook (College Entrance Examination Board) ・ P r o f i l e s o f A m e r i c a n C o l l e g e s ( B a r r o n ’s E d u c a t i o n a l S e r i e s ) ・ T h e F i s k e G u i d e t o C o l l e g e s ( S o u r c e b o o k s Tr a d e ) ・ College Catalog (Kaplan) ・ P e t e r s o n ' s 4 Ye a r C o l l e g e s ( P e t e r s o n s G u i d e s ) ○イギリス ・ Profiles of Higher Education Institutions (Higher Education Funding Council for England) 8 ・ Students in Higher Education Institutions Resources of Higher Education Institutions First Destinations of Students Leaving Higher Education Institutions ( い ず れ も Higher Education Statistics Agency(HESA)) ・ B r i t i s h Q u a l i f i c a t i o n s : A C o m p l e t e G u i d e t o E d u c a t i o n a l , Te c h n i c a l , Professional and Academic Qualifications in Britain (Kogan Page) ・ The Times Good University Guide(Times Books) ・ The Virgin Alternative Guide to British Universities(Virgin Books) ○中国 ・中国高等学校大全(中華人民共和国国家教育委員会計劃建設司編、高等教育出 版社) ・中国普通高等学校名録(教育部発展規劃司編、高等教育出版社) ・中国高校全書(魏暁東主編、中国物資出版社) ・中国高等院校指南(李輝主編、中国戯劇出版社) ・中国高等院校分布与介紹地図集(成都地図出版社編著、成都地図出版社) ○韓国 ・韓国大学全覧(遠藤誉・鄭仁豪編著、厚有出版) 日本 学校基本調査などの大学機関の集計データについては各種情報が充実している。 しかし、個別機関ごとの基本情報をまとめたものは、大学ランキング関係の雑誌 (詳細は5章)を除いては見あたらない。他は、大学の学部・学科名、教員名、 研究所名といった情報等が、別々のリソースとして出版されているに過ぎない。 全国大学一覧 1 9 4 9 年 か ら 毎 年 出 版 。 沿 革 、 所 在 地 、 電 話 番 号 、 学 長 ( 私 学 は 理 事 長 含 )・ 学 部長の氏名、学部・学科、大学院研究科・専攻名と入学定員を掲載している。こ の 他 に 、放 送 大 学 、通 信 教 育 部 、専 攻 科 、別 科( 入 学 定 員 、設 置 年 )、付 置 研 究 所 ・ 付 属 教 育 研 究 施 設 等 、付 属 学 校 、付 属 病 院 、付 属 図 書 館 、大 学 共 同 利 用 機 関 等( い ずれも所在地情報が主)が掲載されている。 大学一覧 1976 年 か ら 毎 年 出 版 。 学 士 課 程 に つ い て は 、 学 部 ご と に 学 科 数 、 入 学 定 員 、 編 入 定 員 、 在 籍 学 生 数 、 教 員 数 ( 専 任 ・ 兼 担 ・ 兼 任 の 別 )、 助 手 数 ( 専 任 ・ 兼 担 の 別 )が 、大 学 院 に つ い て は 、研 究 科 ご と に 専 攻 数 、入 学 定 員 、在 籍 学 生 数( い ず れ も 修 士 ・ 博 士 課 程 の 別 )、 教 員 数 ( 専 任 ・ 兼 担 ・ 兼 任 の 別 )、 助 手 数 ( 専 任 ・ 9 兼 担 の 別 )が 掲 載 さ れ て い る 。こ の 他 、通 信 教 育 部 、専 攻 科 、別 科 に つ い て も 、 入学定員、在籍学生数、教員数、助手数が、研究機関、病院については、教員 数、助手数が掲載されている。 全国大学職員録 1957 年 か ら 毎 年 出 版 。 管 理 職 の 氏 名 ・ 住 所 、 各 種 セ ン タ ー 、 共 同 施 設 、 大 学 ・ 大学院の学科・専攻別の教員の職階・学位・氏名・生年・最終学歴・専門分野が 掲載されている。 大学研究所要覧 1 9 8 5 年 か ら 2 年 お き に 出 版 ( 前 身 は 研 究 所 要 覧 1 9 7 0 〜 1 9 8 1 )。 大 学 共 同 利 用 機関、国立大学の付置研究所・研究センター、学部付属研究施設、公立・私立大 学 の 付 属 研 究 所 等 に 関 し て 、大 学 別 に 所 在 地 、電 話 番 号 、ホ ー ム ペ ー ジ ア ド レ ス 、 沿革、設置目的、施設長と構成員、経費、定期刊行物、敷地・建物面積が掲載さ れている。 日本大学大鑑 1 9 7 3 年 〜 1 9 8 2 年 ま で 出 版 さ れ て い た 。所 在 地 、学 長 名( 私 学 の 場 合 は 創 立 者 、 理 事 長 名 も )、 予 算 総 額 ・ 国 庫 助 成 額 ( 私 学 の み )、 校 地 ・ 校 舎 面 積 、 教 員 ・ 職 員 ・ 学生数、学部学科構成、学部・学科組織、事務組織、付属研究・教育機関、図書 館の蔵書数、大学の沿革等が掲載されている。①〜③とは異なり、次の⑤と同様 に大学間の比較を意図して設計されている。 日 本 の大 学 ・大 学 ランキング 前 者 は 1993 年 発 刊 で 95 年 か ら 毎 年 出 版 。大 学 へ の 調 査 、予 備 校 か ら の 情 報 提 供、各種ガイドブック等に基づいて算出したデータを掲載している。所在地、電 話 番 号 、ホ ー ム ペ ー ジ ア ド レ ス 、学 長 の 氏 名 、教 職 員 数 、学 部 の 定 員 ・ 在 籍 者 数 、 大学院の定員・在籍者数、沿革、科研費獲得額、校地・校舎面積、付属機関、図 書 館 の 蔵 書 数 、 パ ソ コ ン の 台 数 、 入 試 情 報 、 初 年 度 納 付 金 ( 私 学 )、 就 職 情 報 等 が 掲載されている。 後 者 は 1995 年 か ら 毎 年 出 版 。 編 集 部 が 各 大 学 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 お よ び 取 材 に基づいて算出したデータを掲載している。所在地、電話番号、沿革、学生(留 学 生 は 別 掲 )・ 教 員( 外 国 人 ・ 女 性 は 別 掲 )数 、校 地 ・ 校 舎 面 積 、図 書 館 の 蔵 書 数 、 大学院の研究科・院生数、博士学位数、科研・外部資金情報、帰国子女・編入学 者 数 、初 年 度 納 付 金( 私 学 )、学 生 寮 、パ ソ コ ン 台 数 、付 属 研 究 所 を 掲 載 し て い る 。 文部科学大学所轄学校法人一覧 1 9 7 9 年 か ら 毎 年 発 行 。大 学 、短 期 大 学 又 は 高 等 専 門 学 校 を 設 置 す る 文 部 科 学 大 臣所轄の学校法人について掲載している。学校法人の概要については、法人名、 所 在 地 、認 可 年 、役 職 員( 理 事 長 、事 務 局 長 は 実 名 、他 は 定 数 ・ 実 数 を 記 載 )が 、 10 設置する学校の概要については、学校名・学部・学科・入学定員、学長・事務局 長名、所在地が、この他に、研究所、付属病院、収益事業についての情報が載っ ている。 アメリカ American Universities and Colleges 2001 年 版 ( 2001 年 3 月 ) が 第 16 版 と な る 。 初 版 は 1928 年 。 個 別 機 関 へ の 質 問 紙 に よ っ て 情 報 は 収 集 さ れ て お り 、 未 回 収 分 は The Integrated Postsecondary Education Data System (IPEDS)の デ ー タ で 補 完 し て い る 。 高 等 教 育 機 関 1,900 件 を 収 録 し て い る 。 機 関 の 住 所 、 電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E-Mail、 ホ ー ム ペ ー ジ の ア ド レ ス 、 機 関 の 概 要 ( 設 置 形 態 、 学 生 数 、 学 位 の 種 類 )、 ア ク レ デ ィ テ ー シ ョ ン 、 沿革、管理運営機構、学年暦、新入生の入学率と卒業率、学力特性、性別、入学 要件、学位取得要件、特徴のある教育プログラム名、学位授与数、授業料、各種 奨学金、職階別・学位別教員数、学生数(学士課程/大学院別、フルタイム/パ ー ト タ イ ム 別 、 性 別 )、 外 国 人 学 生 数 ( 地 域 別 )、 学 生 生 活 関 連 施 設 ( 寮 な ど )、 学 術 出 版 物 、 図 書 館 の 蔵 書 数 、 財 政 ( 収 入 及 び 支 出 状 況 、 た だ し 総 額 の み )、 キ ャ ン パスの面積、学長名が掲載されている。なおこの他に学部単位で、専門分野別の 学位、職階別教員、特徴ある教育プログラム、学生数(学士課程/大学院別、フ ルタイム/パートタイム別、性別)も掲載されている。 The College Blue Book 最 新 版 は 第 2 9 版 ( 2 0 0 1 年 1 2 月 )。 全 6 巻 で 初 版 は 1 9 2 3 年 。 大 学 か ら の 情 報 提供に基づいて編纂している。最新版は、第1巻と第2巻が大学の概要(前者は 記 述 式 、 後 者 は 数 量 情 報 )、 第 3 巻 が 機 関 別 の 授 与 学 位 、 第 4 巻 が 職 業 教 育 、 第 5 巻が奨学金、第6巻が通信教育で構成されている。 第 1 巻 は 、 ア メ リ カ と カ ナ ダ の 4 年 制 、 2 年 制 の 高 等 教 育 機 関 計 3,000 校 の 情 報 を 掲 載 し て い る 。 機 関 の 住 所 、 電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E-Mail、 ホ ー ム ペ ー ジ の ア ド レ ス 、 沿 革 ( 学 生 数 や 簡 単 な 学 位 情 報 − 詳 細 は 第 3 巻 − 等 も 含 む )、 入 学 要 項 、 授業料、図書館や宿舎等の各種施設や奨学金情報、大学所在地の各種環境が紹介 されている。第2巻は、学長名、入学、学籍担当者名、大学のタイプ、男女共学 の有無、設置形態、各種入学情報、授業料、奨学金、学年暦、学生数、学生− 教 員比率、宿舎、蔵書、アクレディテーション、学位取得に必要な単位数、予備役 将校訓練の有無、大学対抗競技会の種目が掲載されている。 The College Board College Handbook (www.collegeboard.com/) 2002 年 版 (2001 年 8 月 ) が 第 39 版 と な る 。 初 版 は 1941 年 。 4 年 制 機 関 と 2 11 年 制 機 関 の 別 に 3,600 機 関 の 情 報 が 掲 載 さ れ て い る 。 機 関 の 住 所 、 電 話 ・ フ ァ ッ ク ス ・ E - M a i l 、 ホ ー ム ペ ー ジ の ア ド レ ス 、 沿 革 、 学 位 授 与 数 ( 学 士 課 程 )、 教 員 数 ( フ ル タ イ ム / パ ー ト タ イ ム 別 、 性 別 )、 学 生 数 ( 学 士 課 程 − パ ー ト タ イ ム ・ 女 性 ・ 国 籍 の 比 率 / 大 学 院 )、 受 験 情 報 ( 競 争 率 、 S AT 、 G PA 等 の 要 件 、 選 抜 プ ロ セ ス 、 進 級 率 、 年 齢 構 成 な ど )、 授 業 料 ・ 各 種 生 活 費 、 奨 学 金 、 特 別 な 教 育 プ ロ グ ラ ム 、 主 専 攻 の 種 類 、 コ ン ピ ュ ー タ 施 設 、 宿 舎 、 課 外 活 動 ( 運 動 部 門 )、 学 生 サ ー ビスの種類が掲載されている。受験生に必要な限りでの個別機関情報の提供であ る 。 CD 付 き 。 Profiles of American Colleges (barronseduc.com/) 2001 年 版 ( 200 年 月 ) が 第 24 版 と な る 。 初 版 は 1964 年 。 1690 機 関 を 収 録 。 沿 革 、学 部 数 、 蔵 書 数 、学 生( フ ル タ イ ム / パ ー ト タ イ ム 別 ・ 性 別 ・ 国 籍 別 構 成 、 中 退 率 、 卒 業 率 )、 教 員 数 ( P h . D 取 得 比 率 )、 教 員 − 学 生 比 、 授 業 料 、 宿 舎 、 課 外活動、学位の種類・名称・授与数、卒業要件、特別プログラム、入試情報(競 争 率 、 S AT ・ A C T ス コ ア 、 選 抜 要 項 ・ 手 続 き 、 留 学 生 用 )、 奨 学 金 、 コ ン ピ ュ ー タ 施 設 が 掲 載 さ れ て い る 。 CD 付 き 。 The Fiske Guide to Colleges (www.fiskeguide.com/) 2002 年 版 ( 2001 年 7 月 ) が 第 18 版 と な る 。 機 関 調 査 、 学 生 調 査 、 そ の 他 の デ ー タ ソ ー ス に 基 づ く 主 観 的 な 評 価 に よ り 抽 出 し た ベ ス ト カ レ ッ ジ 300 機 関 を 掲 載 。 住所、ホームページアドレス、学生総数、学士課程学生数、性別比率、入試情報 ( S AT ・ A C T ス コ ア 、 合 格 率 、 入 学 率 )、 在 籍 6 年 以 内 の 卒 業 率 、 進 級 率 ( 1 年 → 2 年 )、奨 学 金 授 与 率 、授 業 料( 4 類 型 )、各 種 レ イ テ ィ ン グ( A c a d e m i c s 、S o c i a l L i f e 、 Q u a l i t y o f L i f e )、 ア ド ミ ッ シ ョ ン ・ オ フ ィ ス の 連 絡 先 、 有 力 な プ ロ グ ラ ムの各種情報に加えて、文章による大学紹介(約2頁)が掲載されている。 College Catalog (http://www.kaptest.com/) オ ン ラ イ ン 調 査 に 基 づ い た 1,000 機 関 の 情 報 を 掲 載 。 ア ド ミ ッ シ ョ ン ・ オ フ ィ スの住所、電話番号、ホームページのアドレス、学生数(学士課程−フル タイム / パ ー ト タ イ ム 別 ・ 性 別 ・ 国 籍 別 の 比 率 / 大 学 院 )、 教 員 数 ( フ ル タ イ ム / パ ー ト タ イ ム 別 ・ P h . D 取 得 率 )、 特 別 な 教 育 プ ロ グ ラ ム 、 コ ン ピ ュ ー タ 施 設 、 主 要 な 専 攻 名 、進 級 率 と 卒 業 率 、学 生 生 活 情 報( 宿 舎 や 課 外 活 動 な ど )、受 験 情 報( 競 争 率 、 S AT 得 点 な ど )、 授 業 料 、 宿 舎 費 、 奨 学 金 、 卒 業 生 情 報 ( 進 学 率 、 就 職 率 、 キ ャ リアサービスの概要)を掲載している。 Peterson's 4 Year Colleges (iiswinprd03.petersons.com/ugchannel/) 2002 年 版 第 32 版 と な る 。 Peterson が 毎 年 情 報 を 大 学 か ら 収 集 し て お り 、 約 1,000 機 関 の 情 報 を 掲 載 。 ま ず 沿 革 ( 学 生 数 や 課 外 活 動 情 報 含 む ) が 述 べ ら れ た 後、所在地の特徴、専攻と学位名、各種施設の概要、授業料・宿泊費、奨学金、 12 教員数、受験・入試申請情報が掲載されている。連絡先は他の受験者向け大学ガ イ ド と 同 様 に 、 ア ド ミ ッ シ ョ ン ・ オ フ ィ ス を 掲 載 し て い る 。 CD 付 き 。 イギリス Profiles of Higher Education Institutions 1999 年 版 ( 1999 年 12 月 ) が 確 認 で き た も の と し て は 最 新 版 と な る 。 1994 年 が 初 版 で 1 9 9 7 年 版 に 次 ぐ も の 。H E F C E 傘 下 に あ る イ ン グ ラ ン ド 地 域 の 高 等 教 育 機 関 134 件 と 北 ア イ ル ラ ン ド の 2 大 学 を 収 録 し て い る 。大 学 ご と に 見 開 き 2 頁 の 構成で非常に見やすい。1頁目には、所在地情報、管理職の氏名、沿革、大学の 目 的 ( Mission Statement) − 大 学 の 抽 象 的 な 理 念 で は な く 具 体 的 な 教 育 や 研 究 の目標、学部構成、敷地面積がテキスト形式で掲載されている。2頁目には、学 生情報(総学生数、専攻別学生数−学習 形態別、単一/複数専攻別、学士/大学 院 別 、 成 人 学 生 、 海 外 学 生 、 性 別 に み た 各 比 率 )、 収 支 構 造 ( 補 助 金 / 授 業 料 / 研 究 獲 得 資 金 別 )、教 育 評 価 と 研 究 評 価 の 結 果 、が グ ラ フ 付 き で 掲 載 さ れ て い る 。 「事 実情報」と「判断情報−格付 け・評価」とを一体化した、これまで紹介してきた ものとはタイプの異なる包括情報といえる。 Students in Higher Education Institutions (a) Resources of Higher Education Institutions (b) First Destinations of Students Leaving Higher Education Institut ions (c) 最 新 版 は 1999/2000 版 。以 前 は UGC(University Grants Committee)が 同 種 の 統計データを発行しており、それを引き継いだものといえる。現物を入手できて い な い た め 、以 下 は ホ ー ム ペ ー ジ ( w w w. h e s a . a c . u k / p r o d u c t s / p u b s / h o m e . h t m )を 参照し、分冊ごとの表の紹介文から推察したものである。 a)は 、 174 大 学 の 学 生 特 性 を 掲 載 し た も の 。 専 攻 別 、 教 育 段 階 別 、 性 別 、 学 習 形態別の学生数と海外学生の数、専攻別の学位取得状況が個別機関ごとに掲載さ れている。 b)は 、 財 政 に 関 す る デ ー タ と ス タ ッ フ に 関 す る デ ー タ の 2 本 立 て で 構 成 さ れ て おり、個別機関情報は財政に関して収録されている。収入に関しては、補助金、 授業料、研究費、他のカテゴリー別の情報が、支出に関しては、人件費、他の管 理 運 営 費 、 学 科 運 営 経 費 ( Academic Departmental Cost)、 サ ー ビ ス 、 研 究 の カ テゴリー別に掲載されている。 c)は 、 い わ ゆ る 学 校 基 本 調 査 の 卒 業 後 の 状 況 調 査 に あ た る 。 個 別 機 関 ご と の 情 報は、学位別(学士/大学院)にみた卒業後の状況(就職、進学、その他の各人 数)が掲載されている。学校基本調査の進路別卒業者数の状況が、個別機関別に 13 掲載されていると考えてもらえればよい。 British Qualifications: A Complete Guide to Educational, Technic al, Professional and Academic Qualifications in Britain (www.kogan-page.co.uk/) 初 版 は 1966 年 で 、 最 新 版 は 32 版 。 書 名 か ら も 明 ら か な よ う に 、 個 別 機 関 の 提 供 学 位 を 紹 介 し た も の で あ る 。 所 在 地 情 報 ( 住 所 、 電 話 ・ FA X 番 号 、 E - m a i l ア ド レス、ホームページアドレス)の後に、学士課程、大学院の別に学位の名称、取 得に要する期間、専攻名が掲載されている。 The Times Good University Guide 2003 年 版 ( 2002 年 6 月 ) が 第 10 版 と な る 。 102 大 学 が 掲 載 。 設 立 年 、 所 在 地 情 報 ( 住 所 、 電 話 番 号 、 E-mail ア ド レ ス 、 ホ ー ム ペ ー ジ ア ド レ ス ) に 続 い て 、 各 種 ラ ン キ ン グ 情 報 と し て 、 教 育 評 価 ( Q A A )、 研 究 評 価 ( R e s e a r c h A s s e s s m e n t E x e r c i s e )、 入 学 水 準 ( H E S A )、 学 生 − 教 員 比 率 ( H E S A )、 学 生 一 人 あ た り の 図 書 ・ コ ン ピ ュ ー タ 、 施 設 費 用 ( H E S A ) 、 第 1 ・ 上 級 第 2 学 位 獲 得 比 率 ( H E S A )、 就 職 ・ 進 学 率 ( H E S A )、 修 了 率 ( H E F C E ) が 示 さ れ て い る 。 こ の 他 、 学 士 課 程 / 大 学 院 学 生 数 ( フ ル タ イ ム と パ ー ト タ イ ム )、 社 会 人 / 海 外 か ら の 学 生 の 比 率 、 公立学校出身者/労働者階級出身者比率、宿舎情報なども掲載されている。 The Virgin Alternative Guide to British Universities 最 新 版 は 2 0 0 3 年 版 ( 2 0 0 2 年 6 月 )。 初 版 は 確 認 で き て い な い が 1 9 9 8 年 版 ま で は 存 在 。1 8 8 機 関 を 掲 載 。所 在 地 情 報( 住 所 、電 話 / FA X 番 号 、E - m a i l ア ド レ ス 、 ホ ー ム ペ ー ジ ア ド レ ス )、 設 立 年 、 学 生 数 ( 社 会 人 / 海 外 か ら の 学 生 の 比 率 、 性 別 比 率 、公 立 学 校 出 身 者 / 非 伝 統 的 グ ル ー プ 出 身 者 比 率 )、中 途 退 学 率 、専 門 分 野 構 成 比 率 、教 育 ・ 研 究 評 価 、入 学 時 の 学 業 成 績 要 件 、学 生 − 教 員 比 率 、第 1 ・上 級 第2学位獲得比率、宿舎情報、キャンパスの各種環境情報を掲載している。 中国 中 国 高 等 学 校 大 全 (第 2版 、1994 年 ) 国 家 教 育 委 員 会 が 編 纂 し て い る 。 第 1 版 は 1989 年 。 現 在 第 3 版 を 準 備 中 と い う 。1 9 9 3 年 デ ー タ に 基 づ い て 、普 通 高 等 教 育 機 関 1 0 6 2 校 と 成 人 高 等 教 育 機 関 1 1 7 1 校を掲載している。所轄部門、大学名・所在地、電話番号、沿革、専攻(学科に あ た る も の )、 学 位 を 出 せ る 専 攻 名 ( 博 士 ・ 修 士 の 別 )、 学 生 数 ( 学 士 − 専 科 / 本 科 の 別 ・ 大 学 院( 修 士 / 博 士 の 別 )・ 夜 間 ・ 通 信 ・ 留 学 生 の 別 )、教 員 数( 職 階 別 )、 研究機関、蔵書数、面積、学長名が掲載されている。なお本書は、中国大学全覧 ( 遠 藤 誉 編 著 , 厚 有 出 版 , 1996) と し て 翻 訳 出 版 さ れ て い る ( 第 1 版 も 中 国 大 学 総 覧 と し て 1 9 9 1 年 に 出 版 済 み )。 14 中 国 普 通 高 等 学 校 名 録 (1998 年 ) 1997 年 の デ ー タ に 基 づ き 、 普 通 高 等 教 育 機 関 1022 校 を 掲 載 し て い る 。 所 轄 部 門 、 大 学 名 、 所 在 地 、電 話 番 号 、専 攻 、学 位 を 出 せ る 専 攻 数 ( 博 士 ・ 修 士 の 別 ) 、学 生 数( 学 士 ・ 大 学 院 ・ 成 人 − 以 前 は 夜 間 ・ 通 信 と し て 別 カ テ ゴ リ ー ・ 留 学 生 の 別 )、 教 員 数 ( 職 階 別 )、 大 学 院 専 門 の 所 轄 部 署 を 設 置 し て い る 所 が 記 載 さ れ て い る 。 中 国 高 校 全 書 (1999 年 ) 600 あ ま り の 本 科 レ ベ ル の 高 等 教 育 機 関 と 70 の 軍 事 高 等 教 育 機 関 の 情 報 を 掲 載している。沿革、所轄部門、大学名、所在地、電話番号、学院・系・専攻の数 ( 一 部 名 称 も )、学 位 を 出 せ る 専 攻 名( 修 士 )、ポ ス ド ク を 受 け 入 れ 可 能 な 専 攻 数 、 学 生 数 ( 学 士 ・ 大 学 院 ・ 成 人 ・ 留 学 生 の 別 )、 国 が 重 点 分 野 と 定 め た 専 門 分 野 名 と 数 、 重 点 投 資 を 行 う 実 験 室 数 、 研 究 所 の 数 、 教 員 数 ( 職 階 別 )、 学 費 ( 授 業 料 ・ 宿 舎費)を記載している。 中 国 高 等 院 校 指 南 (全 2巻 、1999 年 ) 1998 年 の デ ー タ に 基 づ き 、 900 あ ま り の 普 通 高 等 教 育 機 関 と 52 の 軍 事 高 等 教 育機関の情報を掲載している。所轄部門、大学名、所在地、電話番号、沿革、学 院 ・ 系 ・ 専 攻 の 数 ( 本 科 に つ い て は 専 攻 の 名 称 )、 学 位 を 出 せ る 専 攻 名 ( 修 士 ・ 博 士 の 別 )、 学 生 数 ( 学 士 ・ 大 学 院 ・ 留 学 生 の 別 − た だ し 概 数 )、 国 が 重 点 分 野 と 定 め た 専 門 分 野 数 、重 点 投 資 を 行 う 実 験 室 数 、研 究 所 の 数 、教 員 数 、面 積 、蔵 書 数 、 ポスドクを受けいれ可能な専攻数を記載している。 中 国 高 等 院 校 分 布 与 介 紹 地 図 集 (2001 年 ) 国 が 認 可 し た 高 等 教 育 機 関 1 2 0 0 校( 一 部 軍 事 高 等 教 育 機 関 含 む )に つ い て 2 0 0 0 年の情報を機関所在地の地図と共に掲載している。大学名、所在地、電話番号、 教 員 数( 教 授 ・ 助 教 授 )、学 院 ・ 系 ・ 専 攻 の 数 と 専 攻 名 、学 位 を 出 せ る 専 攻 の 数( 博 士 ・ 修 士 )、 ポ ス ド ク を 受 け 入 れ 可 能 な 専 攻 数 を 記 載 し て い る 。 韓国 韓 国 大 学 全 覧 (1997 年 ) 駐 日 本 国 大 韓 民 国 大 使 館 教 育 官 室 が 監 修 し て お り 、 1995 年 〜 1996 年 に か け て 行 っ た ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 に 基 づ き 、4 年 制 大 学 を 中 心 に 185 機 関 の 情 報 を 掲 載している(内訳は一般大学校・教育大学・特殊大学・産業大学校・各種学校− 4 年 制 大 学 学 力 認 定 校 )。 設 置 形 態 、 所 在 地 ( 住 所 ・ 電 話 ・ FA X 番 号 )、 学 長 名 、 キャンパス数、大学院・学部・学科・研究所の数と名称、学生数(学士課程/大 学 院 の 別 、 留 学 生 )、 教 員 数 ( 職 階 別 )、 大 学 の 沿 革 、 協 定 し て い る 海 外 大 学 ・ 研 究所名が掲載されている。 15 4 オンライン大学 これまで紹介したものは、職業教育機関や生涯学習機関等を含むものもあると はいえ、基本的には伝統的な大学に関する情報であった。他方で昨今、バーチャ ル・ユニバーシティとかオンライン大学などと呼ばれる、新しいタイプの大学が 登 場 し て き て い る 。 そ の 形 態 と し て は 4 つ の タ イ プ が 指 摘 さ れ て い る ( w w w. m e x t . g o . j p / b _ m e n u / s h i n g i / 1 2 / d a i g a k u / g i j i r o k u / 0 0 1 / 0 0 0 3 0 2 . h t m )。 ①キャンパス型【既存の機関がそれぞれのキャンパス型の強化・改善に利用】 ② コ ン ソ ー シ ア ム 型( 機 関 集 合 型 ) 【複数の機関が共同して遠隔教育のコースを提 供するが、単位や学位の発行権はそれぞれの機関がもつ】 → C a l i f o r n i a V i r t u a l C a m p u s ( w w w. c v c . e d u / ) ③ コ ン ソ ー シ ア ム 型( 契 約 型 ) 【 複 数 の 機 関 が 遠 隔 教 育 を 提 供 す る 目 的 で 、単 独 の 機関を設立し、その機関が単位や学位の発行権をもつ】 → We s t e r n G o v e r n o r s U n i v e r s i t y ( w w w. w g u . e d u / ) ④単独型【遠隔教育だけで教育を配信する単独の大学】 → University of Phoenix( onl.uophx.edu/) → Jones International University ( jiu-web-a.jonesinternational.edu/eprise/main/JIU/home.html) オンライン大学と呼ばれているものには、正規の大学と同等なものからカルチ ャーセンターのようなものまで存在し、玉石混淆だといわれる。また新たに生ま れているものがある一方で、立ち行かずにつぶれるものも少なくないという。基 準 の 曖 昧 さ も 手 伝 っ て 、そ の 全 体 像 が ど こ ま で 把 握 さ れ て い る の か も 定 か で な い 。 そ の 意 味 で は 、包 括 的 に 捉 え る こ と 自 体 が 不 可 能 と も い え る 。そ の た め 以 下 で は 、 従来型の通信教育も含めて擬似的にオンライン大学の包括リストと呼び得るもの を紹介しておく。 例 え ば 第 3 節 で 挙 げ た The College Blue Book の 第 6 巻 は 、 通 信 教 育 の プ ロ グ ラムを大学ごとに掲載している。そこでは、大学の沿革、プログラムの性格、配 信メディア、学生サービス、プログラム担当教員、入学条件、授業料、奨学金、 申込み手順と連絡先が記載されており、多くは客観的な数量情報というよりも記 述的な紹介となっている。なお、この他にもいくつか関連すると思われる書籍が あ る 。何 れ も 未 入 手 の た め に 内 容 の 紹 介 は で き な い が 、書 名 を 以 下 に 挙 げ て お く 。 16 図 表 1-3 オンライン大 学 掲 載 書 ・ C o l l e g e O n l i n e : H o w t o Ta k e C o l l e g e C o u r s e s w i t h o u t L e a v i n g H o m e ( W i l e y, John & Sons, Incorporated Pub, 1997) ・ V i r t u a l C o l l e g e : A Q u i c k G u i d e t o h o w Yo u C a n G e t t h e D e g r e e Yo u Wa n t w i t h C o m p u t e r, T V, V i d e o , A u d i o , a n d O t h e r D i s t a n c e L e a r n i n g To o l s ( P e t e r s o n ' s , 1996) ・ Barron's Guide to Distance Learning : Degrees, Certificates, Courses (Barron's Educational Series, 1999) ・ Peterson's Guide to Distance Learning Programs 2001 (Peterson's, 2000) →iiswinprd03.petersons.com/distancelearning/code/search.asp も 参 照 ・ O n l i n e C o m m u n i t i e s : C o m m e r c e , C o m m u n i t y, A c t i o n , a n d t h e V i r t u a l University (Prentice Hall PTR, 2000) ・ I n t e r n e t U n i v e r s i t y, 2 0 0 2 E d : Yo u r G u i d e t o O n l i n e C o l l e g e C o u r s e s (Bookworld, 2001) あくまで書名からの推察の域を出ないが、本章で主として扱ってきた大学の客 観的な事実情報というよりも、プログラムや取得可能な学位紹介という色彩が強 い 。こ れ ら の ほ と ん ど が 利 用 者 用 の ガ イ ド ブ ッ ク と し て 書 か れ て い る と 思 わ れ る 。 学位に繋がらないプログラムも多いため、例えば登録者数や教員の構成の客観的 な数値情報も、提供する必要性の認識が薄いともいえる。遠隔・通信教育プログ ラムを持つ大学の客観的な姿とは何なのか、それ自体が問われているのかもしれ ない。 5 まとめ 以上は、今回入手できた資料を羅列的に紹介したに過ぎない。ただし、どうい った書籍が存在し、個別機関の情報としていかなる項目が取り上げられているか はイメージしていただけたと思う。最後に、それらを列挙する過程で気づいた点 を指摘しておきたい。 まず、事実情報を掲載した大学の包括リストは、その多くが古くからの歴史を 持っていることである。調査情報、判断情報が流通するはるか以前から存在して いたのであり、大学情報市場、つまり大学情報に対する需要と供給の構造にさほ ど影響されないものと考えられる。実際、そこに掲げられている情報にどれだけ 17 市場的な価値があるかも定かでない。その意味で逆説的だが、第2章で触れる検 索 型 の デ ー タ ベ ー ス や 、第 3 章 以 降 で 扱 う 評 価・ラ ン キ ン グ 関 係 の 情 報 が 増 大 し 、 また精緻化したとしても、今後とも残り続ける一連の資料群と考えられる。しか しだからといって、現在の包括リストに課題がないわけではない。 第一の課題は、大学や高等教育機関の定義である。ある国の大学情報が当該国 以外の読者を想定して作られている場合には、この点を意識した構成になってい る。だがそれ以外の場合には、どういった基準で大学や高等教育機関として掲載 しているかが必ずしも明確でない。また、高等教育機関に階層的な構造がある場 合などは、その情報が留学生の受け入れや国際比較を行う際に欠かせない材料と なる。そうした情報に対する需要は高いと考えられ、高等教育システムの概要と 一体化した情報の提供や、大学・高等教育機関として抽出した基準の明記が望ま れる。もちろん、高等教育制度自体を紹介した書籍は別途存在する。だが現時点 で は 、制 度 特 性 の 記 述 と 個 別 機 関 情 報 の 記 述 と 関 連 づ け ら れ て い る と は 言 い 難 い 。 個別機関の顔は見えていても、各機関の同一国の中での、あるいは国際的な比較 可能性については、必ずしも十分な情報が提供されていないのである。 もっとも現在、伝統的な大学を越えた定義は存在しないのかもしれない。我々 が通常使う大学の数や進学率といったデータ自体、国際比較をするには極めて危 うい情報に依拠している可能性もある。 そこで第二の課題は、個別機関情報として取り上げるべき指標である。指標の 在り方は、情報に対する需要によって決まる。例えば受験生を読者に想定したも のでは、指標のフォーマットも確立している。他の資料にあまり掲載されない、 入学要件を含めた受験情報や授業料、奨学金の情報、1年次から2年次への進級 率や卒業率などが載っている。だが入試以外の情報は概数表示の場合が多く、全 てが客観的なデータとはいえない。受験生向け以外のものは何れも、特定の需用 者を見いだせないためか、指標づくりのコンセプトが明確でない。イギリスで紹 介した教育や研究実績の評価を掲載する、アメリカで紹介した管理運営機構や財 務の概要を示す、というのは一つの方策だろう。しかし、管理運営や財務の指標 として何をフォーマットとすべきかについては議論の余地がある。 例えばある国の読者にとっては、その国の事情や関心に基づいた情報が打って つけだろう。だが、世界レベルで指標を標準化することには意義があるし、今後 そうした需要は高まると予想される。その際の情報は、評価やランキングといっ た調査、判断情報に限られるわけではなく、事実情報に対する需要も少なくない だろう。もちろん、ミニマムな項目としては一通り出尽くしている感もある。だ が、教員や学生という項目をとっても、その示し方は多様だ。また、研究所など 大学の付属機関等に関する情報も欠落しているものが少なくない。何が必要な客 18 観的指標なのか。高等教育研究においてコンセンサス作りが必要な時期にきてい るのかもしれない。 大学ランキングに代表される現在の大学情報ビジネスは、リアリティつまり実 証性を欠いた印象論が先行している嫌いもある(印象論こそがリアリティを構成 し て い る と も い え る が )。だ が そ れ を 批 判 的 に 検 証 す る に は 、何 が 客 観 的 な 情 報 で あり、リアリティであるのかを示す必要がある。本章の目的はその手がかりを得 る こ と に あ っ た と も い え る 。確 か に 多 く の 書 籍 で 客 観 的 な デ ー タ を 掲 載 し て い る 。 だがそこから個別大学の顔が浮かび上がってくるかといえば、そうではない。大 学の包括リストに掲載される情報と大学ランキングに掲載される情報の間には大 きな断層があるように思われる。個別機関情報の指標づくりのヒントは、両者が 見落としている部分にこそあるのかもしれない。 追記:上に上げた資料の多くは、広島大学高等教育研究開発センターに所蔵して い る も の で あ る 。 な お 、 イ ギ リ ス に つ い て は 安 原 義 仁 ( 広 島 大 学 )、 中 国 に つ い て は南部広孝(長崎大学)の各先生方から資料及び情報の提供をいただいた。また 今回は時間及び調査の制約もあり、資料として掲載できるには至っていないが、 韓 国 に つ い て 馬 越 徹 ( 名 古 屋 大 学 )、 フ ラ ン ス に つ い て は 大 場 淳 ( 広 島 大 学 )、 服 部 憲 児 ( 宮 崎 大 学 )、 ド イ ツ に つ い て は 金 子 勉 ( 大 阪 教 育 大 学 ) の 各 先 生 方 か ら も 貴重な情報をいただいた。ここに感謝の意を表しておきたい。また、本報告に掲 載した資料及びその解説は全て筆者の責任において行った。 19 第2章 大学情報の検索型データベース 小林雅之 こ こ で は 、現 在 電 子 媒 体 に よ っ て 利 用 で き る 個 別 の 大 学 に 関 す る 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス に つ い て 、概 観 す る 。こ こ で い う 電 子 媒 体 に よ る 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス と は 、C D - R O M な ど の よ う に デ ー タ を 収 め た デ ジ タ ル 化 さ れ た も の も 含 ま れ る が 、と り わ け 、イ ン タ ー ネ ッ ト で 検 索 し た り デ ー タ を ダ ウ ン ロ ー ド で き る 個 別 大 学 デ ー タ ベ ー ス を 指 す 。イ ン タ ー ネ ッ ト の 性 格 上 、す べ て の デ ー タ ベ ー ス を 網 羅 す る こ と は 困 難 で あ り 、遺 漏 も 多 い こ と を お 断 り し て お く 。む し ろ 、個 別 大 学 デ ー タ ベ ー ス に つ い て 、主 に オ ー ス ト ラ リ ア と ア メ リ カ と イ ギ リ ス の 典 型 的なものを取り上げ、その性格や背後にあるポリシーを示すことにしたい。 電 子 媒 体 に よ る 個 別 大 学 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス に は 、大 き く 分 け て 次 の 3 種 類 が あ る 。第 一 は 、様 々 な 機 関 が 提 供 し て い る 個 別 大 学 の 情 報 を 含 ん で い る デ ー タベースである。第二は、大学リスト(ディレクトリ)やリンク集である。第 三 は 、個 別 大 学 の ホ ー ム ペ ー ジ な ど 、個 別 の 大 学 自 身 が 提 供 す る 大 学 の デ ー タ およびデータベースである。 こ れ ら は 、そ の 目 的 と 対 象 も 相 互 に 異 な っ て い る 。対 象 に 関 し て い え ば 、学 生や親 、投資者 、研究 者、他の 高等教 育機 関 などが あり 、対 象に 応 じてデ ータ ベースの目的や性格が異なっている。 こ こ で は 、個 別 大 学 デ ー タ ベ ー ス と し て 、主 と し て オ ー ス ト ラ リ ア と ア メ リ カ と イ ギ リ ス の 例 を 取 り 上 げ る 。特 に こ れ ら の 国 を 取 り 上 げ る の は 、こ れ ら の 国 の 個 別 大 学 に 関 す る デ ー タ ベ ー ス が 最 も 完 備 し 、か つ 新 し い 利 用 形 態 を 提 供 しているからである。 1新しい形態の大学情報データベース オーストラリアの教育科学訓練省のデータベース 最 初 に 、オ ー ス ト ラ リ ア の 教 育 科 学 訓 練 省 の デ ー タ ベ ー ス( w w w. d e t y a . g o v. a u ) を取り上げる。その理由は、大学情報の公開や電子媒体によるデータベースの活 用に最も積極的で、データベース利用のポリシーが最も明確であることによる。 そのポリシーは、次のように「統計の収集の背景」と題するHPの項目に明記さ 20 れている。 オーストラリア教育科学訓練省の高等教育グループは、オースト ラリア統計局との協力の下で、すべてのオーストラリアの大学にお ける高等教育の提供に関する統計の収集と普及に責任を持っている。 その財源はオーストラリア政府による。 このように、単に大学に関するデータを収集することだけでなく、その普及も 重要な目的となっていることが注目される。さらに、高等教育統計アーカイブの 中 の パ フ ォ ー マ ン ス ・イ ン デ ィ ケ ー タ ー の 序 に は 次 の よ う に 記 さ れ て い る 。 近 年 、高 等 教 育 部 門 に 関 す る パ フ ォ ー マ ン ス ・ イ ン デ ィ ケ ー タ ー に 対 す る 関 心 が 、オ ー ス ト ラ リ ア だ け で な く 多 く の 他 の 国 で も 高 ま っ て いる。こうした関心は次のような多くのプレッシャーによる。 ・国 内 及 び 海 外 の 学 生 や 、 親 、 学 校 カ ウ ン セ ラ ー 、 そ の 他 の 者 が 進 学 の際の選択のガイドとして用いることのできる情報を与えるため。 ・将 来 の 教 育 サ ー ビ ス の 提 供 を 発 展 さ せ る た め に 教 育 機 関 が そ の 特 性 とパフォーマンスを他の機関と比較するため。 ・多 額 の 公 財 政 支 出 に 対 す る ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ を 果 た し 、 高 等 教 育 政策の将来の発展を助けるため。 こうした明確なポリシーの下、詳細な大学に関するデータが、様々な形態で用 意されている。それらは出版物、データセット、集計表などで、政府や他の公共 機関、高等教育機関、研究者、ジャーナリスト、組合、個人などの多様な顧客に 利用に供するためであることも明記されている。 実際にオーストラリアのすべての個別大学に関する最新の情報はHPからPD F フ ァ イ ル や エ ク セ ル ・ ワ ー ク シ ー ト な ど の 形 式 で ダ ウ ン ロ ー ド で き る 。ま た 、出 版物しかない過去の情報については有料で印刷物を入手できる。逆に、パフォー マ ン ス ・イ ン デ ィ ケ ー タ ー に 関 し て は 、 H P か ら の み 入 手 で き る 。 高等教育統計コレクションに含まれるデータは次の通りである。 高 等 教 育 機 関 で提 供 される授 業 学 生 の数 や特 性 修了率 授 業 料 (Higher Education Contribution Scheme,HECS)の状 況 教 職 員 の数 と特 性 21 高 等 教 育 機 関 の財 政 状 況 高 等 教 育 機 関 の教 育 的 プロフィール このうち、学生についてみると、詳細は以下の通りである。 授 業 のタイプと水 準 通 学 の形 態 専門分野 国籍 年齢 性別 教育歴 出身国 居住地 アボリジナリティ 他 の特 徴 HECS ま た 、パ フ ォ ー マ ン ス ・ イ ン デ ィ ケ ー タ ー で も 個 別 大 学 に 関 す る 同 じ よ う な 詳 細 なデータが公開されている。しかし、オーストラリアの大学データベースのポリ シーがきわめて先進的なのは、こうした詳細な個別大学に関するデータが公開さ れているからだけではない。この他にも様々な「顧客」の利便性を重視したサー ビスが提供されている。国別や州別の高等教育の概観や分析レポートなどが公開 されているのは言うまでもないが、特筆されるのは、研究者や学生の利用のため に、データセットとそれを利用するためのソフトウェアも公開され、ダウンロー ド で き る こ と で あ る 。 こ れ ら は 、 D A T YA PA C ソ フ ト ウ ェ ア と 呼 ば れ 、 元 デ ー タ 、 集計ソフト、マニュアル、コード表、データ・フォーマットからなっている。こ れらは、データが正しいものであるかどうかチェックし確認するために高等教育 機関に提供されるものであるが、これを用いて、研究者や学生は自由に集計を行 うことができる。この点で、このスタイルは新しい電子媒体によるデータベース の利用の方向を示している。こうした新しいポリシーやスタイルは以下でみるア メ リ カ の I P E D S や D A S や We b C a s p e r と も 共 通 し て い る 。 具 体 的 な デ ー タ ベ ー ス 利 用 方 法 は 、 学 生 、 ス タ ッ フ 、 公 正 ( equity) の 3 つ の モデュールに分かれたソフトウェアで、大学名や集計項目(平均、分散など)を 指 定 し て 行 う 。な お 、こ の ソ フ ト ウ ェ ア は 直 感 的 に 使 い や す い も の と は 言 え な い 。 後 に み る I P E D S や We b C a s p e r の 方 が 分 か り や す い の で 、 具 体 的 な 利 用 法 は そ こ でふれることにする。 22 NCES と NSF の 個 別 大 学 デ ー タ ベ ー ス アメリカ合衆国でも、政府や個別機関の活動について、情報を公開することに 関して、アカウンタビリティの要求ともあいまって、きわめて積極的である。た と え ば 、 全 米 教 育 統 計 セ ン タ ー ( NCES-National Center for Education Statistics) の 報 告 書 や H P に 次 の よ う な 記 述 が あ る 。 NCES の 活 動 は 、 高 い 教 育 デ ー タ へ の 要 望 に 応 え る た め に 、 一 貫 し た信頼性の高い完全で正確な教育状態や傾向の指標を提供し、普通、 教 育 省 や 議 会 や 州 、他 の 教 育 政 策 策 定 者 、教 育 実 践 家 、デ ー タ 利 用 者 、 そして、他の一般公衆へ、時宜を得た有益で高い質のデータを報告す るために設計されている。 我々は、多様な読者に適した様々な形式と言語で利用可能な製品を 生産している。顧客としてのあなたは、情報を効果的にやりとりする ことで我々の成功を判断する最良の審判である。 こ う し た ポ リ シ ー の 下 に 、 NCES は 教 育 に 関 す る 様 々 な デ ー タ を 収 集 し 、 集 計 表やレポートあるいは元データそのものなど様々な形式で提供している。 IPEDS( nces.ed.gov/ipeds) ♦ 概要 こ う し た N C E S の 様 々 な デ ー タ の 中 で も 個 別 大 学 に 関 し て は 、「 中 等 後 教 育 総 合 デ ー タ シ ス テ ム 」( I P E D S - I n t e g r a t e d P o s t s e c o n d a r y E d u c a t i o n D a t a System) が 最 も 網 羅 的 な も の で あ る 。 IPEDS は 、 以 前 の 「 高 等 教 育 総 合 情 報 調 査 」( H E G I S - H i g h e r E d u c a t i o n G e n e r a l I n f o r m a t i o n S u r v e y ) の デ ー タ を 含 む 、 全 米 レ ベ ル 、 州 レ ベ ル 、 個 別 機 関 レ ベ ル の 大 学 デ ー タ ベ ー ス で あ る 。 HEGIS は 1965 年 か ら 1986 年 ま で の 高 等 教 育 機 関 の デ ー タ で 、連 邦 政 府 か ら 認 め ら れ た 基 準協会が大学レベルと認定した機関のみのデータを収録している。 IPEDS の 調 査 対 象 は 中 等 後 教 育 機 関 で 高 卒 が 入 学 資 格 の も の で あ る 。 た だ し 、 成人の準職業教育と基礎教育プログラムは除かれている。近年に関して言えば、 11 , 0 0 0 の 中 等 後 教 育 機 関 の う ち 、廃 止 さ れ た な ど 様 々 な 理 由 か ら 削 除 さ れ た も の を 除 い た 約 9,900 の 教 育 機 関 に つ い て デ ー タ が 収 集 さ れ て 公 開 さ れ て い る 。 た だ し、修業年限2年以下の私立高等教育機関については、全米レベルデータのみで あ る 。 ま た 、 1993 年 か ら は 高 等 教 育 法 タ イ ト ル IV の 奨 学 金 受 給 資 格 に 該 当 す る 高 等 教 育 機 関 に 関 し て す べ て の 領 域 の 調 査 を 実 施 し 、他 の 機 関 は 機 関 特 性 調 査( 後 23 述)のみ実施している。 I P E D S の 回 収 率 は 8 5 か ら 9 5 % で あ り 。収 録 さ れ て い る 中 等 後 教 育 機 関 は 1 3 % ほ ど 母 集 団 を 過 小 評 価 し て い る と い う 。( K o r b , R . A . a n d A . F. L i n . 1 9 9 9 . Postsecondary Institutions in the United States: 1997-98. NCES. Education Statistics Quarterly, Postsecondary Education.) ♦ 特徴 IPEDS の デ ー タ は 、 様 々 な 形 式 で 提 供 さ れ て い る 。 IPEDS の デ ー タ ベ ー ス へ の イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で の ア ク セ ス は 図 表 2-1 の よ う に 、 4 つ の 方 法 が あ る 。 第 一 の 方 法 は N C E S に よ っ て 集 計 さ れ た レ デ ィ メ ー ド の 表 で あ る 。こ れ ら は 個 別 教 育 機関のものではなく、集計されたデータであるが、ウェブ上でダウンロードし、 利用者がグラフを作成したり、再集計することができる。こうした既成の表に加 え て 、第 二 の 方 法 は 、ピ ア・ア ナ リ シ ス・シ ス テ ム( I P E D S P e e r A n a l y s i s S y s t e m ) で あ り 、 第 三 の 方 法 は IPEDS COOL で 、 第 四 の 方 法 は 直 接 IPDES の 元 デ ー タ をダウンロードする方法である。 図 表 2‑ 1 IPEDS デ ー タ ベ ー ス の 利 用 法 IPEDS 既製の 検索 検索 元 データの 集計表 (ピアアナリシス) ( COOL) ダウンロード ユーザー 表の加工 リスト入手 24 データ集計 ピ ア ・ア ナ リ シ ス ・シ ス テ ム は 、検 索 し よ う と す る ユ ー ザ ー( 高 等 教 育 機 関 ) と類似性の高い重要な高等教育機関のデータを提供するもので、大学関係者が ベンチマークや比較を行うための検索ソフトである。ただし、これは性格上、 誰 で も ア ク セ ス で き る ゲ ス ト レ ベ ル も あ る が 、主 要 な 部 分 は I D を 獲 得 し た ア メ リカの高等教育機関関係者のみアクセスできる。 ま た 、I P E D S C O O L は 、「 大 学 教 育 機 会 オ ン ラ イ ン 」( C o l l e g e O p p o r t u n i t i e s On-line)と い う そ の 名 の 通 り 、大 学 教 育 機 会 に 関 し て 、利 用 者 が 個 別 大 学 に 関 するデータを得ようとする場合、授業料や奨学金などに関する簡単なデータを 検索することのできるものである。得られる主な情報は、アクセスに関する基 本的な情報のほか、次のようなものである。 設 置 者 タイプ 連邦学生奨学金受給適格性 カーネギー分 類 授 業 料 (州 内 ・州 外 ) 修 学 費 (書 籍 費 など) 生 活 費 (学 内 、学 外 ) 在学者数 学士課程在学者数 男女学生比 人種別学生構成比 フルタイム・パートタイム別 学 生 数 奨 学 金 受 給 率 (フルタイム、1年 生 、連 邦 、州 、大 学 、給 付 、ローン別 ) 平 均 奨 学 金 受 給 額 (連 邦 、州 、大 学 、給 付 、ローン別 ) 学 位 授 与 数 ・学 士 授 与 数 主 な専 攻 の学 位 授 与 数 この内容からも分かる通り、主な利用者としては、学生や親が想定されてい る。また、奨学金のデータは「高等教育機関価格および学生財政援助調査 ( I P S FA - I n s t i t u t i o n a l P r i c e s a n d S t u d e n t F i n a n c i a l A i d s u r v e y )の デ ー タ で あ る 。 こ の 調 査 は 、 1998 年 の 高 等 教 育 法 改 正 に よ っ て 、 NCES に 提 出 す る こ と に な っ た も の で 、 こ の デ ー タ が IPEDS COOL に 記 載 さ れ て い る 。 こ れ も 利 用 者の便宜を図るためであることが強調されている。 第4の利用方法は個別高等教育機関に関する元データベースを直接ダウンロ 25 ードしたり、専用ソフトを用いて必要なデータのみダウンロードする方法であ る。なお、現在ではデータの収集に関しても個別高等教育機関がインターネッ ト上に直接データを提出することになっている。以下、このデータベースにつ いて、概説する。 ♦ データの構成 データは以下のような高等教育機関の特性に関して、調査されている。 機 関 特 性 (Institutional Characteristics, IC) 財 政 ( Fi nanci al Stat istics , F) 在 学 者 (Fall Enrollment, EF) 修 了 (Completions) 卒 業 率 ( G r a d u a t i o n R a t e S u r v e y, G R S ) 学 生 奨 学 金 (St udent Fi nanci al Ai d) 給 与 、 テ ニ ュ ア ( S a l a r i e s , Te n u r e , a n d F r i n g e B e n e f i t s o f F u l l - T i m e I n s t r u c t i o n a l F a c u l t y, S A ) スタッフ( Fall Staff , S) 図 書 館 (Academic Library) 州 別 高 等 教 育 プロフ ィール( Stat e Hi gher E duc at ion Prof il es, S HEP) ♦ データセット これらのデータは上記の構成に対応するいくつかのデータセットに分かれて 収納されている。さらに、個々のデータは、年度ごとにサブセットになってい る 。2 0 0 2 年 3 月 現 在 で 、ほ と ん ど の デ ー タ セ ッ ト は 、1 9 8 9 - 9 0 年 度 か ら 1 9 9 7 - 9 8 年 度 ま で 収 納 さ れ て い る が 、財 政 デ ー タ に 関 し て は 、1 9 8 8 - 8 9 年 度 か ら 1 9 9 4 - 9 5 年 度 ま で の デ ー タ が 収 納 さ れ て お り 、ま た 、図 書 館 は 1 9 8 9 - 9 0 年 度 か ら 1 9 9 5 - 9 6 年 度 ま で し か 収 納 さ れ て い な い 。 ま た 、 州 別 高 等 教 育 プ ロ フ ィ ー ル は 1986-87 年 度 か ら 1990-91 年 度 ま で し か 収 納 さ れ て い な い 。 こ れ ら の デ ー タ は 、 実 際 に はさらに小さなサブセットに分かれているが、すべてダウンロードできる。 こ れ ら の デ ー タ は テ ク ス ト 、 SPSS、 SAS、 マ イ ク ロ ソ フ ト ・ ア ク セ ス 、 マ イ ク ロ ソ フ ト ・ エ ク セ ル 、 CSV、 PDF な ど 様 々 な ア プ リ ケ ー シ ョ ン ・ ソ フ ト の デ ータファイル形式で提供されている。テクストの場合にはデータのコードブッ ク が 別 に 用 意 さ れ て い る 。 こ の ほ か 、 IPEDS の 一 部 の デ ー タ は 電 子 コ ー ド ブ ッ クと呼ばれる独自のアプリケーション・ソフトウェアで利用者の求めるデータ の み を SPSS や エ ク セ ル な ど の 形 式 で 引 き だ す こ と も で き る 。 こ れ は 、 す べ て のデータをダウンロードしようとすると膨大な量になるためである。 26 ♦ その他 個 別 大 学 の 中 に は フ ロ リ ダ 大 学 の よ う に 、I P E D S 調 査 の 自 大 学 の デ ー タ を 大 学 の H P で 公 表 し て い る 例 も あ る 。す べ て の 大 学 の デ ー タ が N C E S の ウ ェ ブ 上 で 公 表されているのであまり意味がないと思われるかもしれないが、利便性を考慮す る と 一 般 の 学 生 や 親 な ど は 、I P E DS そ の も の に ア ク セ ス し な く て 済 む の で 、意 味 はある。 D A S ( w w w. n c e s . e d . g o v / d a s ) 「 デ ー タ 分 析 シ ス テ ム 」( D a t a A n a l y s i s S y s t e m - D A S ) は 、 N C E S の 提 供 す る デ ー タ ベ ー ス を 利 用 し て 集 計 す る シ ス テ ム で あ る 。DAS の デ ー タ は 、高 等 教 育 機 関 の 特 性 そ の も の に 関 す る も の で は な い が 、2 0 0 2 年 4 月 現 在 、以 下 の 調 査 が 利 用 できる。 Baccalaureate and Beyond (B&B) Begi nni ng P ostsec ondary Students (B PS ) High School and Beyond (HS&B) Nati onal Educ at i on Longi tudi nal St udy of 1988 (NELS ) National Household Education Survey (NHES) National Longitudinal Survey of 1972 (NLS) Nati onal Posts econdary Student Ai d St udy (NAP S AS) Nati onal St udy of P osts econdary Faculty (NS OP F) こ れ ら の う ち 、 一 部 は オ ン ラ イ ン で は な く C D - R O M で 提 供 さ れ て い る 。「 学 生 奨 学 金 調 査 」( N A P S A S - N a t i o n a l P o s t s e c o n d a r y S t u d e n t A i d S t u d y ) に つ い て み る と 、I P E D S の 大 学 特 性 と 同 様 の 専 用 ソ フ ト を 使 っ て 元 デ ー タ を ダ ウ ン ロ ー ド できる。しかし、一部の元データを入手するには、許可を得る必要がある。これ は 個 人 の デ ー タ な ど で あ る た め 、プ ラ イ バ シ ー 保 護 の 観 点 か ら の 措 置 と み ら れ る 。 N A P S A S の ダ ウ ン ロ ー ド で き る デ ー タ に つ い て み る と 、サ ン プ ル 番 号 は も ち ろ ん 、 所属大学名もダウンロードすることはできない。 こ の よ う に 、 DAS は 、 IPEDS 同 様 、 ウ ェ ブ 上 で NCES の デ ー タ を 利 用 す る こ と を 目 的 と し て い る 。し か し 、D A S に は I P E D S と 大 き な 相 違 も あ る 。そ れ は D A S では、利用者がインターネット上で、作表をすることで集計データをえることを 目 的 と し て い る こ と で あ る 。D A S で は ク ロ ス 表 や 相 関 表 を 指 定 し て 作 表 さ せ る こ とができる。 従来、利用者は、データの提供者が集計した既製の表しか手に入れることはで きなかった。さもなくば元データを入手して自分で集計するしかなかった。図表 27 2 - 2 の N C E S の D A S や 後 述 の We b C a s p e r は 、 利 用 者 の 望 む 表 を 自 由 に 作 成 す る という点で、データ利用の新しい方向性を示すものといえよう。 図 表 2‑ 2 大 学 情 報 デ ー タ ベ ー ス ( NCES と NSF) 名称 対象 方式 IPEDS US 大 学 SPSS, SAS, XLS NCES オ ン ラ イ ン 大学特性 専用ソフト 財政 テクスト IPDES COOL US 大 学 検索 DAS US 表作成 NAPSAS, HSB, NLS,そ の 他 が 利 用 可 大 学 ・ 学 生 WebCasper 主体 媒体 全部ダウンロード可 NCES オ ン ラ イ ン 専用ソフト US 大 学 ・ 研 究 表 作 成 CD‑ROM・ 一 部 D L 可 NSF オンライン ちなみに、個別大学データベースではないが、国立教育会館の学校基本調査 CD-ROM の ソ フ ト で も 、 同 様 の 集 計 が で き る 。 こ の デ ー タ は 、 個 別 高 等 教 育 機 関 に関するものではなく、集計データであるが、これを利用したことがある者は、 同じような作表を、ウェブ上で行うと考えればわかりやすい。 W e b C a s p e r ( c a s p a r. n s f . g o v ) We b C a s p e r は 、 全 米 科 学 財 団 ( N S F - N a t i o n a l S c i e n c e F o u n d a t i o n ) の 提 供 す る学生や研究者向けのデータベースである。財団の性格上、自然科学や工学の研 究 に 関 連 す る デ ー タ や 大 学 院 の デ ー タ が 中 心 と な っ て い る 。 NFS 独 自 の デ ー タ (大学院生およびPD調査、学位取得調査、R&D科学工学費用調査、非営利研 究 機 関 調 査 、 連 邦 R & D 財 政 調 査 ) の ほ か 、 IPEDS デ ー タ ( 学 生 、 教 員 、 財 政 ) も含んでいる。 We b C a s p e r の 利 用 は 、 匿 名 ユ ー ザ ー ( 利 用 者 ) と 登 録 ユ ー ザ ー ( 利 用 者 ) に 分 か れている。ブラウズ形式の出力は6種類の形式があり、報告書、機関データ、単 独のソース、多数のソース、カテゴリー別単独ソース、カテゴリー別多数のソー スとなっている。登録ユーザーは、自分の要求にあうように出力フォームをカス タ マ イ ズ で き る 。ま た 、エ ク セ ル や ロ ー タ ス の ワ ー ク シ ー ト や S A S の 形 式 で も 引 きだすことができる。また、登録ユーザーは個人的なレポート(出力)を保存す ることもできる。 実際の出力では、専門領域(科目)別、データ収集機関別、変数別、カテゴリ ー別、高等教育機関別の5つのデータソースをまず選択する。高等教育機関別を 例に取ると、選択した大学に関して利用できるすべてのデータのリストが示され る 。 こ こ で は 、 NSF だ け で な く 、 IPEDS デ ー タ な ど も 示 さ れ て い る 。 あ る デ ー 28 タを選択するとさらに下位のカテゴリーを選択するような指示があらわれる。授 業料を例に取ると、学士課程か修士課程か、あるいは州内学生か州外学生かなど で あ る 。 さ ら に 時 系 列 で デ ー タ を 出 力 す る こ と も 可 能 で 、 We b C a p e r が 表 頭 や 表 側 の 指 定 を し た 作 表 フ ォ ー マ ッ ト を 作 成 す る の で 、そ れ に 応 じ て 適 宜 修 正 を 加 え 、 表を完成させ、任意のフォーマットのファイル形式でダウンロードする。 こ の よ う に 、 We b C a s p e r は 、 主 と し て 学 生 が イ ン タ ー ネ ッ ト か ら 単 に デ ー タ を ダウンロードするだけではなく、作表をすることに重点をおいている。つまり、 これまでは、利用者はデータを様々な手法で入手し、それを電子化し、利用者の 使 用 す る 統 計 ソ フ ト 等 で 分 析 し て い た が 、 We b C a s p e r は 、 こ の 作 表 作 業 も イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 行 う こ と を 目 指 し て い る 。 こ れ は 、 先 に ふ れ た NCES の DAS と 、 軌を一にしており新しい電子媒体のデータ利用といえよう。実際に使用した印象 では、1つの画面で1つの変数しか選択できないので、数回画面を切り替える必 要があり、やや作表に手間取る。しかし、時系列の表が簡単に作成できるのは大 きなメリットである。 N S F の そ の 他 の デ ー タ ベ ー ス ( w w w. n s f . g o v / s b e / s r s / s r s d a t a . h t m ) こ の 他 、 N S F に は 研 究 者 向 け の 調 査 の デ ー タ ベ ー ス が あ る 。「 産 業 研 究 開 発 情 報 シ ス テ ム 」( I R I S - I n d u s t r i a l R e s e a r c h a n d D e v e l o p m e n t I n f o r m a t i o n S y s t e m )、「 科 学 技 術 者 統 計 デ ー タ シ ス テ ム 」( S E S T AT - S c i e n t i s t s a n d E n g i n e e r s S t a t i s t i c a l D a t a S y s t e m )、「 I T の 社 会 経 済 的 イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン 」 ( S o c i a l a n d E c o n o m i c I m p l i c a t i o n s o f I n f o r m a t i o n Te c h n o l o g i e s : A Bibliographic Database Pilot Project (Road Maps)) な ど で あ る 。 ま た 、 そ の 他 の デ ー タ も 集 計 さ れ た 表 を ワ ー ク シ ー ト 形 式 や PDF 形 式 で ダ ウ ン ロ ー ド で き る 。 た と え ば 、「 連 邦 大 学 及 び 非 営 利 機 関 に 対 す る 科 学 工 学 支 援 1999 年 度 」 ( Federal Science and Engineering Support to Universities, Colleges, and N o n p r o f i t I n s t i t u t i o n s : F i s c a l Ye a r 1 9 9 9 ) な ど が あ る 。 こ れ ら の 元 デ ー タ は 登 録した利用者のみ使用可能である。 2 イギリスの高等教育データベース アメリカの政府や公共団体と同じように、イギリスでも政府や関連団体が個別 高 等 教 育 機 関 に 関 す る デ ー タ を 提 供 し て い る 。 特 に 、 図 表 2-3 に 示 し た イ ギ リ ス 高 等 教 育 財 政 審 議 会( H E F C E - H i g h e r E d u c a t i o n F u n d i n g C o u n c i l f o r E n g l a n d ) 29 と 高 等 教 育 統 計 局 ( HESA-Higher Education Statistics Agency) お よ び 大 学 入 試 局 ( UCAS-University and Colleges Admissions Service for the United Kingdom) が 、 様 々 な デ ー タ を 提 供 し て い る 。 図 表 2- 3 大 学 情 報 データベース(イギリス) 名称 対象 Research Assessment Exercise UK 研 究 評 価 Publication 学 生 ・ 資 源 ・ そ の 他 XLS, CSV HESA CD‑ROM, FD Institutional Management Information 大 学 特 性 UCAS 方式 主体 媒体 NISS オ ン ラ イ ン 検索 UK 大 学 ( 入 試 ) 特 性 表 作 成 ac.uk の み UCAS オ ン ラ イ ン H E F C E ( w w w. h e f c e . a c . u k ) HEFCE は 大 学 評 価 に 関 連 し た 個 別 高 等 教 育 機 関 の デ ー タ や 報 告 書 を 多 く 提 供 し て い る 。 た と え ば 、 1996 年 の 研 究 評 価 ( Research Assessment Exercise) で は 69 の 項 目 ( 専 門 領 域 ) に つ い て 、 連 合 王 国 4 カ 国 の 191 高 等 教 育 機 関 の 結 果 が 示 さ れ て い る 。 結 果 は 低 い 方 か ら 1 、 2 、 3b、 3a、 4 、 5 と 5*と レ ー テ ィ ン グ 評価されており、その他、選ばれたスタッフの比率(A から E で評価)と、研究 ス タ ッ フ 数 ( フ ル タ イ ム 換 算 )、 主 要 な 研 究 グ ル ー プ ( F l a g g e d R e s e a r c h G r o u p ) が 示 さ れ て い る 。な お 、こ れ ら の デ ー タ は 、 実 際 に は 、「 全 英 情 報 サ ー ビ ス シ ス テ ム 」( N I S S - N a t i o n a l I n f o r m a t i o n S e r v i c e s a n d S y s t e m s , w w w. n i s s . a c . u k )を 通 じて提供されている。 ま た 、 年 次 運 営 報 告 及 び 財 政 予 測 ( Annual Operating Statements and Financial Forecasts)で は 、個 別 高 等 教 育 機 関 の 現 状 と 3 年 先 の 財 政 見 通 を 掲 載 している。これらは高等教育機関の使命や優先順位、将来見込みなど、記述的な データもあるが、財政の現在の分析及び将来の学生数や財政状況の予測もある。 H E S A ( w w w. h e s a . a c . u k ) H E S A で は 、個 別 高 等 教 育 機 関 に 関 す る デ ー タ を C D - R O M も し く は フ ロ ッ ピ ー ディスクで有料で提供している。これらはインターネット上でダウンロードする ことはできない。ただし、集計されたデータは、いくつかのファイル形式でダウ ンロード可能である。 主なデータセットは次の通りである。 高 等 教 育 機 関 の学 生 高 等 教 育 機 関 の資 源 高 等 教 育 卒 業 者 の最 初 の進 路 30 高等教育機関管理運営統計 部門別 高等教育機関管理運営統計 機 関 レベル 高 等 教 育 財 政 プラス こ の う ち 、 高 等 教 育 財 政 プ ラ ス に つ い て み る と 、 CD-ROM に イ ギ リ ス の 大 学 194 校 に つ い て 、 収 録 さ れ て い る 。 主 な デ ー タ は 、 次 の よ う な 基 本 的 な 財 政 プ ロ フィールをあらわす指標である。 流動資産比率 経常収入 収入増加率 利子比率 HEFCE からのファンドの比 率 在学生数 海外学生比率 海 外 学 生 の市 場 でのシェア パートタイム学 生 の市 場 でのシェア 研 究 資 金 に関 する統 計 卒 業 生 の就 職 状 況 様 々な単 位 支 出 (ユニットコスト) UCAS の入 学 者 の属 性 に関 する統 計 これらの一部は学科別データで詳細に記載されている。ファイル形式はロータ スとエクセルの個別大学ごとのワークシートになっており、ワークシートに個別 大学名が記載されている。なお、記載のないものもあるが、個別大学名と対照し た機関コード表があるので、これから大学は特定できる。 これらのワークシートのフォーマットは統一されているため、個々のワークシ ートを統合した集計を行うこと容易である。これは細かいことのようであるが、 実用上はデータベースを利用して集計を行う場合に、このフォーマットの統一が なされているか、それともデータが統一されずに記載されているかどうかでは利 便性に雲泥の差がある。 ま た 、 学 生 デ ー タ は F D 2 枚 で 提 供 さ れ る も の で 、 174 校 に つ い て 、 60 枚 あ ま り の ワ ー ク シ ー ト( エ ク セ ル 、C S V )か ら な っ て い る 。し か し 、こ れ ら の う ち で 、 個別大学ごとに集計されているのは、フルタイム・パートタイム別男女別国内海 外別学士課程学生数、同大学院学生数、取得学位プログラム数のみであり、その 他はすべてクロス集計された表で、機関ごとのデータではない。 31 U C A S ( w w w. u c a s . a c . u k ) ま た 、 イ ギ リ ス の 高 等 教 育 機 関 の デ ー タ の う ち 、 入 試 に 関 す る デ ー タ は UCAS の H P か ら 個 別 高 等 教 育 機 関 に つ い て 、連 合 王 国 全 体 が 1 9 9 6 年 か ら 2 0 0 1 年 ま で 利 用 可 能 で あ る 。 連 合 王 国 の 4 カ 国 別 と 国 際 ( 英 連 邦 ) デ ー タ は 2000 年 と 2001 年 の み 利 用 可 能 で あ る 。こ れ ら の デ ー タ セ ッ ト か ら 、科 目 別 、性 別 、社 会 階 層 別 、 地 域 別 、 修 了 資 格 成 績 ( GCE A レ ベ ル 成 績 な ど ) 別 な ど に 志 願 者 数 、 合 格 者 数 な ど、かなり詳細なデータをダウンロードできる。これらは、元データをダウンロ ー ド す る の で は な く 、 N C E S の D A S や N F S の We b C a s p e r と 同 様 、 ウ ェ ブ 上 で 、 利用者が作表しダウンロードする形式になっている。 3 他の個別大学に関するデータベース こ れ 以 外 に も 個 別 大 学 に 関 す る 電 子 媒 体 に よ る デ ー タ ベ ー ス は 図 表 2-4 の よ う に様々な機関から提供されている。これらについて、概略を述べる。 図 表 2‑ 4 大学情報データベース(その他) 名称 対象 方式 主体 媒体 World of Learning 国際 検 索 european pub オンライン(有料) World HE Database 国際 検 索 UNESCO, IAU CD‑ROM,オ ン ラ イ ン ( 有 料 ) ICDL Database 国 際 遠 隔 高 等 教 育 機 関 検 索 ICDL オンライン 高等教育コンパス 国際学位別 検索 ドイツ学長会議 オンライン College Search US 大 学 検 索 CollegeBoard オンライン 工 学 系 大 学 プ ロ フ ィ ー ル US 大 学 特 性 検 索 ASEE オンライン Gale Database US 学 会 ・ 学 会 誌 XLS CD‑ROM, 表 D L 可 NACUBO US 授 業 料 ・ 奨 学 金 ? Gale CD‑ROM W o r l d o f L e a r n i n g ( w w w. e u r o p a p u b l i c a t i o n s . c o . u k ) 「 学 習 の 世 界 」( Wo r l d o f L e a r n i n g ) は 、 ヨ ー ロ ッ パ 出 版 ( E u r o p e p u b l i c a t i o n )が も と も と 印 刷 媒 体 で 提 供 し て い た も の で あ る( 第 1 章 参 照 )が 、 有 料 で ウ ェ ブ 上 に 2002 年 の オ ン ラ イ ン 版 を 有 料 提 供 し て い る 。 印 刷 媒 体 に 比 較して、検索可能性をアピールしている。 W o r l d H i g h e r E d u c a t i o n D a t a b a s e ( w w w. u n e s c o . o r g / i a u ) 国 際 大 学 連 合 ( IAU-International Association of Universities) は 国 連 U N E S C O の 国 際 的 大 学 連 合 で 、世 界 の 高 等 教 育 機 関 に 関 す る デ ー タ を 印 刷 媒 体 で 提 供 し て い る が ( 第 1 章 参 照 )、 こ れ ら の う ち 、「 世 界 高 等 教 育 デ ー タ ベ ー ス 」 32 ( Wo r l d H i g h e r E d u c a t i o n D a t a b a s e 2 0 0 1 ) を C D - R O M 版 で 提 供 し て い る 。 内 容は、各教育機関に対する調査票がウェブ上に掲載されている。個別大学に関し て 主 な も の を あ げ る と 、ア ク セ ス 情 報 、大 学 の 種 類( 設 置 者 な ど )、設 立 年 、学 部 、 大学院、学年歴、入学要件、主要言語、アクレディテーション、学位、施設、主 要刊行物、教職員数、学生数などのデータが記載されている。 ICDL Database( www-icdl.open.ac.uk) イ ギ リ ス の 公 開 大 学 の 国 際 遠 隔 学 習 セ ン タ ー( I C D L - I n t e r n a t i o n a l C e n t r e f o r Distance Learning) が 提 供 す る 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス で あ る 。 検 索 型 と 地 域 別 が ある。その性格上、遠隔高等教育を提供する高等教育機関に限られているが、世 界 の 各 地 域 1000 以 上 の 機 関 を 網 羅 し て い る 。 し か し 、 提 供 さ れ る 個 別 大 学 に 関 しては、恣意的な掲載となっている。また、情報としても古くなっているものが 多 い 。機 関 の 記 述 、連 絡 先 、授 業 、ア ク レ デ ィ テ ー シ ョ ン な ど が 記 載 さ れ て い る 。 日本では9大学のみが掲載されている。 H i g h e r E d u c a t i o n C o m p a s s ( w w w. h i g h e r - e d u c a t i o n - c o m p a s s . d e ) 「 高 等 教 育 コ ン パ ス 」( H i g h e r E d u c a t i o n C o m p a s s ) は 、 ド イ ツ の 高 等 教 育 学 長 会 議 ( Hochshulretorenconferenz, HRK) の 提 供 す る 大 学 情 報 デ ー タ ベ ー ス で ある。英語版は高等教育機関別、学位プログラム別、博士プログラム別、国際協 力別のデータを提供している。高等教育機関別では高等教育機関リスト、管理主 体 ( G o v e r n i n g B o d i e s )、 大 学 評 議 会 、 出 版 局 、 学 生 助 言 サ ー ビ ス 、 国 際 局 、 女 性関連局、登録局、生涯教育センターなどとなっている。 C o l l e g e S e a r c h ( w w w. c o l l e g e b o a r d . c o m ) ア メ リ カ の 大 学 入 試 関 連 の 非 営 利 公 共 団 体( N P O )で あ る カ レ ッ ジ ボ ー ド( T h e C o l l e g e B o a r d )の 提 供 す る 大 学 情 報 の 検 索 サ イ ト 。利 用 者 の 求 め る 大 学 に つ い て 、 主として入学関連や授業料に関する情報を検索できる。特徴的なのは、 L i k e F i n d e r と 呼 ば れ る 検 索 機 能 で 、あ る 大 学 と 、同 様 の 特 性 を も つ 大 学 を 検 索 で き る 。た と え ば 、ス タ ン フ ォ ー ド 大 学 を 指 定 す る と に 、西 部 の 郊 外 型 の 私 立 大 学 、 合 格 率 5 0 % 以 下 、 高 校 の G PA が 3 . 0 以 上 の 合 格 者 が 、 7 5 % 以 上 、 S A T や A C T の 平均点などが同等の条件となり、これと同等の大学を検索できる。西部には該当 する大学はなく、全米では、デューク、 エモリー、 リッチモンドの各大学が該 当すると検索される。 ア メ リ カ 工 学 教 育 協 会 ( w w w. a s e e . o r g ) ア メ リ カ 工 学 教 育 協 会 ( American Association of Engineering Education-AAEE) は 、 所 属 す る 大 学 の 工 学 部 に 関 す る 検 索 型 の デ ー タ ベ ー ス を 33 提 供 し て い る 。 提 供 さ れ る デ ー タ は 、 342 の ア メ リ カ お よ び カ ナ ダ の 大 学 の 工 学 教育プログラムである。データは、機関に関するデータ、学士課程プログラム、 大 学 院 プ ロ グ ラ ム に 分 か れ て お り 、機 関 デ ー タ は 、ア ク セ ス 情 報 、学 生 数 、学 位 、 入試、入学要件、教員、研究員、授業料と奨学金、提供されるプログラム、研究 資 金 、 研 究 所 ( セ ン タ ー )、 な ど に つ い て デ ー タ を 収 録 し て お り 、 か な り 詳 細 な 情 報が得られる。 こうした専門分野の高等教育関連団体が提供するデータベースは、他にも数多 くあるとみられるが詳細は不明である。 G a l e デ ー タ ベ ー ス ( w w w. g a l e g r o u p . c o m ) G a l e は 世 界 的 な 教 育 関 係 の 企 業 で あ る T h o m s o n L e a r n i n g の 1 企 業 で 、「 世 界 高 等 教 育 機 関 デ ィ レ ク ト リ 」( G a l e D i r e c t o r y o f L e a r n i n g Wo r l d w i d e )な ど 大 学 に関するデータベースを印刷媒体で提供している。これも、オンライン版を有料 で 提 供 し て い る 。 い く つ か の デ ー タ は 、 エ ク セ ル 、 ワ ー ド 、 HTML、 PDF な ど で ダウンロードできる。収録されているデータは、関連学会、研究センターなどの リストなどである。 N A C U B O ( w w w. n a c u b o . o r g ) オ ン ラ イ ン の デ ー タ ベ ー ス は な い が 、 全 米 大 学 職 員 協 会 ( NACUBO-National Association of College and University Business Officers) は 、 実 施 し た 調 査 の CD-ROM を 販 売 し て い る 。 授 業 料 ・ 奨 学 金 調 査 、 小 規 模 公 立 大 学 調 査 ( 財 政 ) な どがある。調査した大学名は記載されているが、個別データでは特定できないよ うになっている。 大 学 ラ ン キ ン グ HP US ニ ュ ー ズ ・ ア ン ド ・ ワ ー ル ド ・ リ ポ ー ト の よ う な 商 業 的 な 大 学 ラ ン キ ン グ の HP に も 個 別 大 学 に 関 す る デ ー タ が 掲 載 さ れ て い る 。 こ れ に つ い て は 、 第 4 章 を参照されたい。 4 大学リストやリンク集のホームページ こうした個別大学のデータベースに対して、より簡潔な情報を提供するのが、 大学リストやリンク集あるいはディレクトリと呼ばれるホームページである。こ れらは、伝統的な印刷媒体に近い情報の提示形態をとっているということができ る。つまり、これらは、それだけで完結した個別大学に対する詳細な情報を提供 するというより、情報を入手するためのディレクトリとして、大学に対する情報 34 を求める者に対して、利便性を提供するものである。 た だ 、 伝 統 的 な 印 刷 媒 体 と 大 き く 違 う の は 、 H P ア ド レ ス ( URL) や メ ー ル ア ドレスが記載されているだけでなく、リンクされている場合が多く、アクセスが 容易であることである。反面、こうしたHPの一般的な特性として、一覧性にお いては印刷媒体より劣っている。 個別大学の名称や簡単な情報を掲載したディレクトリを中心とした大学リスト や リ ン ク 集 に 関 し て は 、 多 く の H P が あ る が 、 図 表 2-2 の よ う に 、 世 界 の 大 学 全 体 を 対 象 と し た も の は 意 外 と 少 な い 。む し ろ 、個 別 の 専 門 分 野( 生 物 学 な ど )で 、 関連した大学のみのディレクトリやリンク集も多くみられる。これは、こうした リンクによって、大学へのアクセスを簡便化しようとする目的で、自然発生的に 作成されたものであるという、この種のHPの性格による。 図 表 2- 5 大 学 リンク集 の例 対象 掲載数 方式 内容 H E Institution Registry 国際 7000 検索・リスト universities.com InterEdu College and University HP HE Resource Hub (Network) college source Ulinks.com citycollege.com 国 ヨ 国 ア ア ア 国 10000 以 上 1500 以 上 304 リスト リスト リスト ランダム 簡単な記述あ り URL URL 2200 2795 検索 検索 際 ー 際 メ メ メ 際 ロッパ リカ リカ リカ 大学カタログ 掲載数少ない この種の大学リストでは、大学の所在地、学生数、HPアドレスなどの簡単な 情報のみ掲載されている。利用者自身が提供した情報に基づく場合には、当然な がら、データの精粗や正確性にはきわめて大きな相違がある。いくつかの例をあ げる。 H E I R ( w w w. s i u . n o / h e i r ) 「 高 等 教 育 機 関 登 録 リ ス ト 」( H E I R - H i g h e r E d u c a t i o n I n s t i t u t i o n R e g i s t r y ) は 、 ノ ル ウ ェ ー の 大 学 連 合 で あ る 「 国 際 大 学 共 同 セ ン タ ー 」( C e n t e r f o r I n t e r n a t i o n a l U n i v e r s i t y C o o p e r a t i o n )が 提 供 し て い る 検 索 型 の 大 学 デ ー タ ベ ー ス で 、 世 界 の 7000 以 上 の 高 等 教 育 機 関 の デ ー タ を 収 録 し て い る 。 カ テ ゴ リ ー 別 の リ ス ト も あ る 。 ま た 、リ ン ク 集 や ERASMUS コ ー ド に よ る 検 索( ヨ ー ロ ッ パ の 高等教育機関のみ)もある。データは電話、ファックス番号、メールアドレスの みである。原則として、利用者自身から提供を受けた情報をアップデートしてい く形式でリストが作成されている。この種のHPの自然発生的な性格をよく示し 35 ている。この性格のため、日本の大学で掲載されているのは3大学と1語学学校 のみである。 u n i v e r s i t i e s . c o m ( w w w. u n i v e r s i t i e s . c o m ) u n i v e r s i t i e s . c o m は 、1 0 , 0 0 0 以 上 の 大 学 を 収 録 し て い る 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス で ある。アメリカと国際と遠隔教育に分かれている。収録データは授業料、取得可 能 学 位 、 奨 学 金 、 学 生 、 学 生 の 属 性 な ど と な っ て い る 。 日 本 に つ い て は 、 57 大 学 が収録されている。ただし、多くの大学の情報はアクセスできないが、東大に関 してはいくつかの情報が収録されている。理学部米澤研究室のリンクがついてい るので、ここが情報提供源と思われる。なお、遠隔高等教育機関のリストでは各 機関の簡単な説明がある。 I n t e r E d u ( w w w. i n t e r e d u . c o m ) I n t e r E d u は 、ヨ ー ロ ッ パ に 留 学 を 希 望 す る 者 の た め に 高 等 教 育 機 関 の 情 報 提 供 す る S t u d y i n E u r o p a と い う H P を 提 供 し て い る 。大 学 に 関 し て は 、1 5 0 0 以 上 、 40000 以 上 の 科 目 と 500 の 奨 学 金 が 収 録 さ れ て い る 。 特 に 、 MBA や 就 職 に 関 し て、情報が掲載されている。留学生向けの同種のサイトは多い。 College and University Home Page ( w w w. m i t . e d u : 8 0 0 1 / p e o p l e / c d e m e l l o / u n i v. h t m l ) College and University Home Page は 、 MIT の Christina DeMello が 作 成 し た 大 学 リ ン ク 集 で 、 3000 以 上 の ア ル フ ァ ベ ッ ト 順 と 地 域 別 大 学 リ ス ト で あ る 。 h i g h e r e d u c a t i o n . o r g ( w w w. h i g h e r - e d . o r g ) higher-ed.org の リ ン ク 集 に は 政 策 関 連 機 関 な ど 、 簡 単 な 紹 介 つ き の 4 頁 の リ ン ク 集 が あ る 。H i g h e r E d u c a t i o n R e s o u r c e H u b と か 同 N e t w o r k と 呼 ん で い る 。 c o l l e g e s o u r c e . c o m ( w w w. c o l l e g e s o u r c e . o r g / h o m e . a s p ) C o l l e g e s o u r c e . o r g は 大 学 の 情 報 デ ー タ ベ ー ス で は な く 、大 学 カ タ ロ グ へ の リ ン ク集である。利用には登録が必要。アメリカの多くの大学をカバーしている。同 種の大学カタログについては、第1章を参照されたい。 U l i n k s . c o m ( w w w. u l i n k s . c o m ) Ulinks.com は 、 学 生 向 け の ア メ リ カ の 2200 の 高 等 教 育 機 関 の カ テ ゴ リ ー 別 、 州別、アルファベット別リストである。大学名等で検索も可能である。情報は、 ア ク セ ス 、 カ ー ネ ギ ー 分 類 、 部 門 、 学 生 数 、 タ イ ト ル IV 適 格 な ど が 掲 載 さ れ て いる。 36 c i t y c o l l e g e . c o m ( w w w. c i t y c o l l e g e . c o m ) citycollege.com は 学 生 向 き に 世 界 の 大 学 の コ ン タ ク ト 用 情 報 を 提 供 す る 検 索 型 デ ー タ ベ ー ス で あ る 。究 極 の デ ー タ ベ ー ス( u l tim a te d at ab ase )と 唱 っ て い る が 、 日 本 の 高 等 教 育 機 関 は 一 校 も 収 録 さ れ て い な い 。 ま た 、 全 米 で 2795 の 高 等 教育機関が収録されているが、カリフォルニア州の全高等教育機関レベルで、キ ー ワ ー ド を education で 検 索 す る と 、 1 機 関 し か 検 索 さ れ な い 。 ま た 、 同 様 に business で 検 索 し て も 12 機 関 し か 検 索 さ れ ず 、 収 録 高 等 教 育 機 関 に は 相 当 の 偏 りがあるとみられる。また、収録データはアクセス情報と修業年限のみに限られ ている。このように、この種の大学リンク集の恣意性をよく示している。 5 個別大学のホームページとベンチマーク 世界の多くの大学は自身の大学HPをもっているが、大学に関する情報の公開 の程度は様々である。ほとんどすべての情報を公開しているとみられる大学もあ れば、HPからはほとんど何も情報をえられない大学まである。 例として、ハーバード大学とスタンフォード大学をあげる。ハーバード大学で は ク イ ッ ク フ ァ ク ト ( w w w. n e w s . h a r v a r d . e d u / g l a n c e ) で 簡 単 な 情 報 が わ か る 。 掲載されている情報をあげると、設立年、教員数、学生数、スクールカラー、同 窓生数、ノーベル賞受賞者数、モットー、学長、キャンパス規模、学部、学費、 奨学金平均受給額、収支、資産、大学紋章である。 さらに、ハーバード大学ファクトブック ( v p f - w e b . h a r v a r d . e d u / f a c t b o o k / c u r r e n t _ f a c t s )に は 、よ り 詳 細 な 大 学 情 報 が 掲 載されている。主なものをあげると、組織、学位学生数、出身地別学生数、人種 別学生数、取得学位数、留学生数、教員、職員、授業料、奨学金、収支、資産と なっている。 授業料は、他の大学の授業料と比較表が掲載されている。対象となっている大 学 は 、コ ロ ン ビ ア 、ペ ン シ ル ヴ ァ ニ ア 、ブ ラ ウ ン 、コ ー ネ ル 、M I T 、ダ ー ト マ ス 、 スタンフォード、プリンストン、エールである。 ま た 、 ハ ー バ ー ド ガ イ ド ( w w w. h n o . h a r v a r d . e d u / g u i d e ) に も 資 産 な ど 、 大 学 に関する基本的な情報が収録されている。 他方、スタンフォード大学のHPのファクト ( w w w. s t a n f o r d . e d u / h o m e / s t a n f o r d / i n d e x . h t m l ) は 学 生 向 け の 情 報 が 多 く な っ て い る が 、学 生 数 や 教 職 員 数 、財 政 な ど 基 本 的 な デ ー タ は 収 録 さ れ て い る 。ま た 、 クイック・レファレンス・ガイド 37 ( w w w. s t a n f o r d . e d u / d e p t / n e w s / h t m l / o v e r v i e w. h t m l ) に は 、 よ り 詳 細 な 大 学 情 報が記載されている。また、大学カタログがダウンロードできるので、そこから データを得ることが可能である。さらに、アクセス・ポイント ( w w w. s t a n f o r d . e d u / d e p t / p r e s - p r o v o s t / b u d g e t / p l a n s / p l a n 0 0 . h t m l ) に た ど り 着 く の は 少 々 手 間 取 る が 、予 算 書 な ど き わ め て 詳 細 な デ ー タ も ダ ウ ン ロ ー ド で き る 。 また、各学科や大学院に関しては、詳細なデータがダウンロードできる。たとえ ば 、 教 育 系 大 学 院 ( ed.stanford.edu/suse/index.html) に 関 し て み れ ば 、 フ ァ ク ト ( fact at grance) に 、 学 生 の 構 成 ( 性 別 、 人 種 、 専 門 、 平 均 年 齢 ) や 取 得 学 位 数などが記載されている。また、教員についても出版物と受賞などが記載されて いる。 このように、個別大学のHPを調べていけば、かなり詳細に大学に関するデー タを入手することが可能であるが、当然のことながら各大学のHPの設計が異な るため、目的のデータにたどり着くまでかなり労力を要することも確かである。 また、直接大学データベースと呼ばれるものではないが、大学に関するベンチ マークの結果をウェブ上で公開している例も多い。例えば、カルガリー大学 ( w w w. f p . u c a l g a r y. c a / u n i c o m m / n e w s / N o v _ 0 1 / k p i . h t m ) や 、 オ ハ イ オ 州 立 大 学 園 芸 学 科 の プ ラ ン ト フ ァ ク ト ( plantfacts.ohio-state.edu) な ど が あ げ ら れ る 。 特に、後者は、ファクトシートデータベースとして、アメリカとカナダの植物学 関 連 の 46 大 学 に つ い て 、 検 索 型 の デ ー タ ベ ー ス を 提 供 し 、 大 学 ( 研 究 室 ) の 比 較ができるようになっている。 こうした専門分野別ベンチマークは、他にも多く例が見られる。例えば、フロ リダ州立大学の心理学・学習システムのベンチマーク ( w w w. f s u . e d u / ~ e d r e s / b e n c h m a r k . h t m l ) は ア メ リ カ の 1 0 大 学 を 対 象 と し た ベ ンチマークの結果を掲載している。 な お 、 テ キ サ ス 大 学 や フ ロ リ ダ 大 学 な ど 多 く の 大 学 で 、 大 学 リ ン ク 集 を HP に 掲 載 し て い る 。 こ れ ら は 、 大 学 の ア ド レ ス ( URL) だ け を 掲 載 し た 簡 単 な も の で ある。 6 大学データ活用の新しい時代 利用者と利用目的 このように、電子媒体による大学情報のデータベースは、主として簡単な情報 を引きだす利便性を追及したタイプと、本格的な個別高等教育機関のデータベー 38 ス ま で 大 き な 広 が り を 見 せ て い る 。こ う し た 様 々 な タ イ プ が 発 展 し て き た 理 由 は 、 利用者とその利用目的に応じて、こうした大学情報データベースが発展してきた ためである。 まず、大学情報の利用者として、高等教育関係者があげられる。これには個々 の高等教育機関に所属する教職員などだけでなく、政府公共団体関係者、マスメ ディア関係者などが含まれる。さらに、こうした情報を利用するのは、ダイレク トメールなどの発送業者なども含められよう。こうした高等教育関係者は、個別 高等教育機関へのアクセスのために、ディレクトリを利用する。これらは古くか ら印刷媒体で存在したが、それが電子化された。これは検索が容易な点に大きな 利点がある。この段階では、個別大学に関する情報は、電話番号、住所、管理者 名などアクセスに必要なものに限られる。それ以外の情報が収録される場合にも 学生数、授業料など簡便なものに限られる。 次 に 、利 用 者 が 学 生 や 親 で あ れ ば 、な に よ り 個 別 の 大 学 に 関 す る 情 報 を 求 め る 。 それは、その大学がどのような大学であるか、とりわけ授業料やカリキュラムな どに関心が集中するので、これに応じた情報が提供される。しかし、こうした情 報は、現在では、個別の大学のHPでもみることができる。 そ れ で は 、多 く の 検 索 型 の 大 学 情 報 デ ー タ ベ ー ス は ど の よ う な 意 味 が あ る の か 。 それは、あるカテゴリーに属する高等教育機関をグループ化し、それらに関する 情報を検索によって、引きだせる点にある。たとえば、授業料が1万ドル以下の 法 律 を 学 べ る 大 学 と い っ た カ テ ゴ リ ー で あ る 。 こ の 典 型 は 先 に 見 た College Board の LikeFinder で あ る 。 こうした大学情報は、印刷媒体でも各種の大学案内のように古くから存在して いたが、印刷媒体では検索は利用者自身が行うしかなかった。しかし、電子媒体 では検索は極めて容易である。高等教育がマス化し、学生や親が高等教育機関に 対する情報を十分に持たなくなればなるほど、こうした検索型のデータベースへ の需要は高まる。ことに、高等教育が国際化し、留学生が増加するに従い、検索 型のデータベースに対してより大きな需要が生じるようになり、発展してきたと いえよう。 高等教育研究者と大学データベース 他方、大学情報を求める高等教育研究者などの場合には、上述のような高等教 育関係者や学生や親と同じような方法で大学情報を入手するほか、元データを何 らかの方法で入手して、それを集計して分析してきた。ほとんどの場合には、元 データの作成者や管理者が作成した統計数字や表などを引き写して、利用者が簡 単な再集計したりする程度であった。多くの場合、データは既に集計されたレデ 39 ィメードのものか、個別大学の一覧表(リスト)になっている場合でも個別教育 機関のデータの掲載には限りがあった。これに対して、研究者などが、より詳細 な分析を行おうとすれば、個別高等教育機関の元データを何らかの形で手に入れ て、利用者自身が再加工するしかなかった。これは非公開であったり公開先が著 しく制限されている場合が多く、実質的には元データの利用にはかなり限界があ った。 しかし、既に、高等教育関係者や学生や親の場合に電子化された大学データの 検索可能性がまったく新しい地平を開いているように、研究者の場合にもまった く 新 し い 利 用 方 法 が 進 展 し つ つ あ る 。 図 表 2 - 6 に 示 し た よ う に 、 We b C a s p e r や UCAS で は 、 電 子 媒 体 で の 大 学 情 報 で は 、 デ ー タ の 集 計 や 作 表 な ど も ウ ェ ブ 上 で 自由に行うことができ、利用者が自己の望む集計表や必要なデータのみを納めた データセットを自由に作成することを可能にしている。この点では、従来のレデ ィメードの表か元データのみの提供といった形式から一歩進んでいるといえよう。 このように、電子媒体による大学情報データベースは、従来の印刷媒体とはま ったく異なる新しいデータ活用の方法を生み出しつつある。それは、電子媒体に よるデータベースは大容量性と検索可能性、さらに低コストという点で、印刷媒 体とはまったく異なる利点を有するためである。 図 表 2‑ 6 新しい利用形態の大学情報データベース 既 製 集 計 データベース名称 表 ユーザー集計 DETYAPAC ○ IPEDS ○ ○ HESA ○ UCAS ○ その他の特徴 ○ 一括パッケージ・専用ソフト ○ 全部ダウンロード可 △ 専 用 ソ フ ト , CD‑ROM, FD ○ 大学案内 ○ WebCasper LikeFinder データダウン ロード ○ IPDES COOL DAS 検索 ○ 専用ソフト △ CD‑ROM, FD ○ ○ 同等の大学を検索 これまでの印刷媒体による大学情報データベースが簡単な情報しか収録できな かったのは、主として容量の制限のためであった。また、収録するデータ数が増 え 大 量 に な る ほ ど 、利 用 者 は 必 要 な 情 報 を 引 き だ す こ と が 困 難 に な る 。こ の た め 、 むしろ、授業料のみの大学別リストか、入試情報の大学別リストとか個別のリス トが目的に応じて作成されてきたといえよう。世界の高等教育機関をすべて網羅 40 したリストを作ろうとすれば、簡単な情報しか掲載することはできないことは容 易に想像されよう。また、そうしたリストを利用する者はかなり限定されている ので、印刷媒体では、商品化は難しい。 電子媒体による大学情報データベースは、こうした問題を解決し、求める情報 を容易に入手できるようになった。大学に関するデータの収集という点でも、イ ンターネット上で個別高等教育機関からデータを収集することが普及しつつある。 これは、従来の郵送や電話によるデータ収集と比較すれば、データ収集のコスト を ほ と ん ど ゼ ロ に す る 点 で 画 期 的 な も の で あ る 。I P E DS な ど は 、デ ー タ を イ ン タ ーネットで提出するように求めており、このためのマニュアルなどもHPで公開 している。 他方、こうしたデータの収集と掲載は、インターネットの本質的な性格である データの恣意性という新しい問題を生み出している。大学リンク集にみられたよ うに、利用者自身が提供したデータを掲載したり、収集者がチェックせずにデー タ を 掲 載 し た り す る 問 題 で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 NCES で は デ ー タ の 収 集 と チ ェ ック、修正の過程も公開していることで、この問題に対処している。 大学データベース利用の新しい時代 このように、利用者と利用目的に応じて、大学情報データベースは発展してき た。これまでの大学情報の提供は、これまでみてきたように、利用者と利用目的 によって、単に閲覧する形式のものか、元データを入手して利用者が加工するも のに両極化していたが、電子媒体の場合には、この相違もなくなりつつある。さ ら に 、こ の 方 式 を 進 め る と 、元 デ ー タ の 提 供 者 は 、利 用 者 に 元 デ ー タ を 渡 さ ず に 、 データの活用を図ることができる。この方式は、データの流出防止やプライバシ ーの保護といった点できわめて優れている。さらに、これまでデータベースの大 きな問題はデータの管理や修正・更新であった。元データの作成者や管理者は、 データを収録して、さらに入力ミスの修正やデータの更新などのメインテナンス をする必要がある。しかし、元データを利用者に渡し、そこでも修正が行われる ため、元データの複数の修正版が存在することになり、正確性に問題が生じる。 これは、共同研究などの場合にもしばしば生ずる問題である。元データを利用者 に渡さず、集計のみを許可し、元データは管理者のみが維持管理し、複数の元デ ータの修正版が存在しないことでこの問題を回避できる。 見方を変えていえば、従来元データを利用者に渡すことがなかったのは、上記 のような問題点が存在したことが大きな理由でもあった。インターネット利用の 大学情報データベースはこうした問題点をクリアーしているからこそ、利用が飛 躍的に進展しているといえよう。さらにいえば、こうしたデータの公開と利用を 41 積極的に推進しようとするポリシーがオーストラリアやアメリカやイギリスでは こうした新しい形態の大学情報データベースの推進力となっている。とりわけ、 ア メ リ カ で は IPEDS や HSB な ど を 用 い た 研 究 が 膨 大 な 蓄 積 を 生 ん で い る こ と は もっと注目されていい。一部の研究者が情報を独占することで、研究ができた時 代から、データは一般に公開され誰でも利用できる時代に変わっており、これが 研究のスタイルにも大きな影響を及ぼしているのである。日本でも早急にこうし た政府や公共機関のデータベースの利用が可能になる日が待たれる。 42 第3章 研究機能の評価に関わる情報 阿曽沼明裕 本章では、個別大学の研究機能の評価に関わる情報について、どのような情報 がどのような主体によって提供されているのかを整理しその特質などを検討する。 以 下 で は ま ず 、情 報 の 形 態 と 内 容( 第 1 節 )、情 報 を 蓄 積 ・ 提 供 す る 目 的 と 機 関( 第 2 節 ) を 概 観 し た 上 で 、 研 究 成 果 情 報 ( 第 3 節 )、 研 究 評 価 情 報 ( 第 4 節 ) の 順 に い く つ か 具 体 的 に 情 報 を 取 り 上 げ 、 情 報 の あ り 方 の 特 質 を 検 討 す る ( 第 5 節 )。 なお、研究機能の評価に関わる情報には、個人の研究活動に関するもの、講座 や学科や学部等の組織に関するもの、機関(大学)に関するもの、さらには一国 の研究活動に関するものという具合に多様なレベルがあるが、ここでは機関(大 学)の研究機能に関する情報を扱う。ただし、大学単位で見る場合も分野や領域 別に見ることが多いので、学部や学科単位の情報である場合もある。また、取り 上げる情報は主要な一部にすぎない。 1 研究機能の評価に関わる情報の形態と内容 事実情報・調査情報・判断情報 研究機能の評価に関わる情報にも事実情報、調査情報、判断情報の違いがある ようにも見えるが、実際には研究機能に関する多くの事実情報は調査に基づくこ とが多い。学生数や教員数と違って、例えば、ある大学のある分野の教官による レフェリー付ジャーナルは○本、という情報は何らかの調査やデータベースに基 づかないと一般には分からないので、調査情報である。これに対して、研究機能 に 関 す る 大 学 ラ ン キ ン グ は 判 断 情 報 と い え る だ ろ う 。た だ し 、調 査 情 報 と し て は 、 他大学の同領域の研究者による評価(ピア・レビュー)などもあるが、これはむ しろ判断情報ともいえる。以上から、研究機能に関する情報においては、主に調 査情報といえる「研究成果」情報と、判断情報である「研究評価」情報があり、 その中間に位置づけられるものもある。 43 「研究成果」情報と「研究評価」情報 「研究成果」情報と「研究評価」情報を具体的に見ると(あくまで機関レベル で あ る )、 研 究 評 価 の ベ ー ス と な る 「 研 究 成 果 」 情 報 と し て は 、 最 も 直 接 的 な 研 究 成果は論文であるから、論文数やその引用度などに関する情報が最も典型的な研 究成果情報である。研究分野によっては、論文だけでなく著書が研究成果である 場合(文科系)もあるし、開発された計算機プログラムやソフト、データベース な ど も 研 究 成 果 と い え る だ ろ う 。ま た 、ノ ー ベ ル 賞 や 学 会 賞 な ど の 学 術 賞 の 数 は 、 論文に基づく研究成果情報である(学術賞は個人にとっては評価結果だが、それ を大学単位で集積した情報は、それ自体が評価結果というよりも、機関評価を行 う た め の 成 果 情 報 で あ る )。こ れ ら は 学 術 研 究 論 文 に 対 す る 評 価 で あ り 専 門 分 野 内 部での評価であるが、外部の社会に直接貢献するという点では、特許の情報など も重要な情報となる。このほか、直接的な研究成果とは必ずしも言えないが、学 位(修士号および博士号)取得のための研究も教員の研究成果の一部分である側 面が強いので、学位数なども研究成果情報の一つといえるだろう。 他方で、 「 研 究 評 価 」情 報 と し て は 、さ ま ざ ま な 雑 誌 や ウ ェ ブ 上 の ホ ー ム ペ ー ジ で公表されている大学ランキングが典型的である。その他には、イギリスの高等 教育財政審議会等の評価機関が評価対象の組織に与える評価点数や、アメリカの 全米研究委員会が行ったような教授の質に関する同僚評価調査の結果も研究評価 情報といえよう。 研究活動情報について より広く研究活動情報というべきものも研究評価に関わってくる。研究成果の 他、研究スタッフや研究支援者の情報や、研究奨学金や政府や企業や助成団体か らの外部資金の額等が、評価の基礎資料となっている場合や、研究資金の額(や 採択状況)そのものが研究のランキングになっている場合もある。たしかに、研 究スタッフや研究資金の規模や大学院の規模は研究活動を大きく左右するもので あるし、研究活動の結果をよく反映しているものだが、これらは研究活動のイン プット要因という色彩が強く、必ずしも研究の直接のアウトプット(研究成果) ではない。その意味で研究成果の周辺情報というべきものであり、以下ではそれ のみを全面的に扱うことはしない。 44 2 研究成果・評価の情報を提供する目的と組織 提供する組織 情 報 を 提 供 す る 組 織 に は 、 大 学 ( 機 関 )、 専 門 分 野 ( 専 門 家 集 団 、 学 者 集 団 、 学 問 共 同 体 、 学 界 )、 政 府 ・ 行 政 機 関 、 大 学 評 価 機 関 、 営 利 組 織 が あ る 。 そ れ ぞ れ の 組織レベルで、研究成果情報を提供する組織があり、研究評価結果を提供する組 織もある。 大学は、自分の大学の研究論文や学位論文等をデータベース化して。大学内外 の研究者などに向けて学術情報を提供するほか、自己点検評価報告書を公表した り、パフォーマンス・インディケーターを利用して、自ら研究評価を行って公表 している大学もある。 専門分野によるものとしては、例えばアメリカの全米研究委員会による教授の 質 に 関 す る 調 査 情 報 の よ う に 、専 門 分 野 を 母 胎 に し た 組 織 が 提 供 す る も の が あ る 。 論文抄録データベースには、専門分野の学協会が提供するものもある。学術賞に 関する情報も学協会が出す場合がある。 政府・行政機関は、例えば、日本の国立情報学研究所文献データベースのよう に、学術情報サービスを提供する。また、イギリス高等教育財政審議会のように 公的な財政資源配分機関によって研究評価が行われ公表される場合もある。これ といくらか似ているが、公的な大学評価機関によって研究成果情報が蓄積され、 評価が行われる。例えば、オーストラリアの高等教育品質保証委員会によって研 究成果情報や評価情報が蓄積公開されている。 他方で、民間の情報サービス企業による学術情報の蓄積、提供が行われる。そ の 代 表 は 、 ア メ リ カ ISI 社 の SCI 等 の 論 文 デ ー タ ベ ー ス で あ る 。 民 間 の 営 利 組 織 は ま た 、 例 え ば 「 U S ニ ュ ー ズ ・ ア ン ド ・ レ ポ ー ト 」 や 「 ア ジ ア ・ ウ ィ ー ク 」、 日 本の朝日新聞社等が公表している大学ランキングのように、研究評価の結果を公 表している。 この他、個人が計量書誌学的、科学社会学的、政策科学的関心から論文数や引 用度を分析して研究評価を行う場合もあるが、その基礎データは多く場合、上記 の組織によって蓄積公表された情報を元にしている。 提供する目的 情報を蓄積し提供する目的は情報の形態に対応して異なる。すなわち、研究成 果情報の提供と研究評価情報の提供ではしばしば目的が異なる。研究成果情報つ まり学術情報の提供は、多くの場合、それを利用しようとする研究者や企業に対 45 して、知識の所在と内容を教え、研究の重複等の無駄がなくより効率的な研究を 進めることを可能にする。あるいは共同研究を促進したり、研究成果の応用を促 進する。どこの大学院で何を研究することができるのかを知りたい学生にも役立 つ。 他方で、研究評価の情報の場合、研究内容よりも評価結果の利用が目的とされ るのであり、例えば、大学が学外へ向けてアカウンタビリティを示したり、大学 が改善や経営戦略の基礎としたり、政府がより効率的な財政資源配分を行うため に、評価の結果が利用される。もともと研究成果情報は前者の学術情報の提供が 目的であったが、次第にそれが評価のために使われたり、評価そのものための情 報が多くなってきたと考えられる。 3 研究成果情報 研究成果情報の事例として、論文・抄録データベース、特許データベース等の いくつかを取り上げる。機関レベルの評価に使えるのは、あらゆる分野を含むデ ータベースあるいは特定分野といっても学科程度の広い領域を含むデータベース で、データベース自身に著者の所属機関の情報がなくても何らかの形で所属機関 を同定できるデータベースでなければならない。むろん掲載する対象の雑誌や論 文の選定に定評がなければ使えない。 論文・抄録データベース 論文・抄録データベースの所属機関を利用して、大学別に論文数を集計して、 個別機関の研究成果を測定できる。なお、論文・抄録データベースは多くあるが 研究評価に使われているものはその一部にすぎない。 ア メ リ カ ISI 社 の 論 文 ・ 引 用 索 引 デ ー タ ベ ー ス カナダの世界最大の情報サービス企業であるトムソンコーポレーション傘下の I S I( I n s t i t u t e f o r S c i e n t i f i c I n f o r m a t i o n ) 社 の 学 術 情 報 デ ー タ ベ ー ス 。 1 9 5 8 年 に 設 立 。 ISI は 、 自 然 科 学 ・ 社 会 科 学 ・ 人 文 科 学 分 野 の 主 要 16,000 以 上 の 雑 誌 、 書籍、会議録の全てのドキュメントから、完全な書誌情報、引用情報、著者抄録 を 索 引 。 な か で も 自 然 科 学 分 野 を 対 象 に し た SCI(Science Citation Index)、 社 会 科 学 分 野 の SSCI(Social Science Citation Index)、 人 文 系 分 野 の A& HCI(Arts and Humanities Citation Index)を 基 本 的 デ ー タ ベ ー ス と す る 引 用 文 献 デ ー タ ベ 46 ー ス ( 現 在 は W e b o f S c i e n c e 、 w e b o f k n o w l e d g e と し て We b 上 で 利 用 可 能 ) が 研 究 評 価 に 利 用 さ れ て い る 。 世 界 の 重 要 雑 誌 約 8500 誌 が 収 録 さ れ 、 さ ら に 毎 年 200 誌 程 度 が 追 加 さ れ る 。 「 重 要 文 献 は 一 握 り の コ ア ジ ャ ー ナ ル に 集 中 す る 」と い う考えをベースに、データベースを構成する雑誌の選別には一定の基準を設けそ れは公表されており、データベースの信頼性維持の努力がなされている。このデ ータベースを利用して、大学ごとの論文数を調べ、後述するような機関レベルの 研究評価が行われている。 図 表 3‑1 提供主体 ISI-Institute for Scientific Information IEE-Institution 論文・抄録データベース 名称 アクセス 論 文・引 用 索 引 デ ー タ ベ ー ス w w w. i s i n e t . c o m / i s i / i n ( SCI,SSCI,A& HCI) dex.html INSPEC w w w. i e e . o r g / P u b l i s h / of Electrical Engineers CAS-Chemical INSPEC ケミカル・アブストラクト w w w. c a s . o r g / COMPENDEX w w w. e i . o r g / e i c o r p / e i c Abstracts Service EI-Engineering Information Elsevier Science orp EMBASE w w w. e x c e r p t a m e d i c a . Publishers (Excerpta com/hq Medica) NIH( National Library Medline w w w. n c b i . n l m . n i h . g o of Medicine) 国立情報学研究所 v / e n t r e z / q u e r y. f c g i 引用文献検索データベース w w w. n i i . a c . j p / i r / d b m ember/cjp-j.html ISI 社 の デ ー タ ベ ー ス の 強 み は 、1945 年 か ら の 論 文 の 書 誌 情 報 と 引 用 情 報 を カ バーしている点である。この引用文献検索機能によって、単に論文の数だけの量 的比較だけでなく、引用回数を雑誌別に集計して論文あたりの平均引用数を算出 したものをインパクト・ファクターとし、雑誌の評価を行い、インパクト・ファ ク タ ー の 一 覧 を JCR(Journal Citation Report)と し て 公 表 し て い る 。 こ れ を 利 用 して、引用回数の多い高インパクトファクター雑誌を限定して、そこに含まれる 論文数を比較して、論文の質を考慮した評価が可能となる。 また、特定の国の論文を抽出し、個々の論文について、その引用数の集計結果 を 納 め た 統 計 デ ー タ ー ベ ー ス が 、N C R ( N a t i o n a l C i t a t i o n R e p o r t ) と し て 販 売 さ れ ている。 近年これらを利用した大学の研究評価が増えているが、もともと機関の研究評 47 価を目的としないがゆえの問題点も指摘されている。例えば、しばしば言われる ように、論文執筆者名はイニシャルであるため、筆者を同定する際に、同姓の同 じイニシャルの名前を持つ人を区別できないし、機関を正しく同定するのも手間 がかかる。また、専門分野によって引用回数が大きく異なるため、分野が複数に わたる場合、引用度の信頼性は低くなる。雑誌の種類(総合誌、レビュー誌、個 別専門学会誌等)によっても引用度は大きく違う。そして、英語圏の雑誌が中心 で、例えば日本語雑誌はわずかしかなく、地域的な偏りが大きい。 近年では、日本の大学と研究機関の研究者が発表したハイ・インパクト論文に ついて調査情報を提供するなど、研究評価を対象とした情報サービス事業にも積 極的である。 ISI 社 の デ ー タ ベ ー ス は 多 様 な 分 野 を 含 め た 包 括 的 な も の だ が 、 そ れ ぞ れ 専 門 分野で有力な論文データベースとして以下のようなものがある。 イ ギ リ ス の INSPEC イ ギ リ ス の 電 気 工 学 協 会 ( Institution of Electrical Engineers) の 編 集 に よ る 論 文 抄 録 デ ー タ ベ ー ス INSPEC( Information Services for Physics,Electronics a n d C o m p u t i n g )。 物 理 、 電 気 ・ 電 子 、 管 理 工 学 、 コ ン ピ ュ ー タ 、 情 報 工 学 等 の 分 野 に つ い て 、年 間 3 5 0 0 種 の 学 術 論 文 や 1 5 0 0 も の 会 議 プ ロ シ ー デ ィ ン グ 、著 書 等 か ら 35 万 件 の 抄 録 ( 現 在 累 積 700 万 レ コ ー ド ) を 収 録 。 な お 、 INSPEC デ ー タ ベ ー ス は 、 I S I 社 の We b o f K n o w l e d g e に 加 え ら れ る 予 定 。 ア メ リ カ の CA( CA-Chemical Abstracts) ア メ リ カ 化 学 会 傘 下 の Chemical Abstracts Service( 非 営 利 組 織 で あ る ) の 編 集 に よ る 化 学 論 文 抄 録 誌 ( ケ ミ カ ル ・ ア ブ ス ト ラ ク ト )。 化 学 分 野 に 関 し て 、 年 間 8000 種 の 雑 誌 か ら 57 万 件 の 論 文 抄 録 を 収 録 。 世 界 中 の 化 学 論 文 だ け で な く 、 特 許 資 料( 1 7 万 件 以 上 の 特 許 文 書 )、学 会 プ ロ シ ー デ ィ ン グ 、政 府 報 告 、学 位 論 文 、 専門書なども対象とし、分野も化学だけでなく、生物学、生命科学、地球科学、 物 理 学 、 数 学 な ど 広 い 分 野 に ま た が る 。 採 用 に は 査 読 等 の 審 査 が あ る 。な お 、CA に は 特 許 デ ー タ ベ ー ス ( Chemical Patents Plus) も あ る 。 ア メ リ カ の COMPENDEX ア メ リ カ の EI(Engineering Information)が 編 集 す る COMPENDEX( Ei C o m p e n d e x P l u s )。 工 学 分 野 を 対 象 と し 、 そ の 中 の 1 7 5 分 野 を 含 む 包 括 的 な デ ー タ ベ ー ス 。 年 間 22 万 件 の 論 文 抄 録 を 追 加 。 1970 年 以 降 の デ ー タ で 累 積 500 万 件 以上。 オ ラ ン ダ Excerpta Medica の EMBASE オ ラ ン ダ の 出 版 社 Elsevier Science Publishers の メ デ ィ カ ル・コ ミ ニ ュ ケ ー シ ョ ン 部 門 セ ク セ プ タ ・ メ デ ィ カ ( Excerpta Medica) の 医 学 薬 学 文 献 デ ー タ ベ ー 48 ス 。 年 間 約 3500 以 上 の 学 術 雑 誌 か ら 40 万 件 の 論 文 抄 録 を 収 録 。 600 万 件 の レ コ ー ド ( 4 0 0 万 件 抄 録 )。 ア メ リ カ の Medline ア メ リ カ の 国 立 保 健 機 構 ( NIH-National Institute of Health) ,National Library of Medicine の Medline デ ー タ ベ ー ス 。 70 カ 国 以 上 の 生 命 医 学 分 野 の 4300 誌 か ら の 引 用 文 献 と 抄 録 を 収 録 。 日本の国立情報学研究所の引用文献検索データベース 日 本 版 の S C I と い う べ き も の で 、C J P ( C i t a t i o n D a t a b a s e f o r J a p a n e s e P a p e r s ) と い う 。 ISI 社 の SCI で は 日 本 の 雑 誌 の 掲 載 数 が 少 な く 、 日 本 の 大 学 の 研 究 評 価 に は 必 ず し も 十 分 で は な い た め 、拡 大 S C I に 収 録 さ れ て い な い 理 工 系 分 野 の 邦 文 論文を中心に作成された。 特許データベース 特許データベースが大学の研究評価に使用される例はまだ少ないが、利用でき そうな特許データベースは少なくない。基本的には論文・抄録データベースと同 じく、所属機関を同定し、所属機関毎の特許数を推計する必要がある。特許デー タベースは数多くあるが、いくつかあげると以下のようなものがある。 図 表 3‑2 提供主体 Derwent 特許データベース 名称 アクセス Derwent Innovations Index w w w. i s i n e t . c o m / i s i / p r o ducts/derwent/ 欧州特許機構 特許情報データベース w w w. e u r o p e a n - p a t e n t office.org/index.htm 米国特許商標庁 特許データベース w w w. u s p t o . g o v / p a t f t 日本の特許庁 特許電子図書館 w w w. i p d l . j p o . g o . j p / h o 科学技術振興事業団 研究成果展開総合データベース jstore.jst.go.jp/ パトリス社 PA T O L I S w w w. p a t o l i s . c o . j p / o n l i mepg.ipdl ne/index.html イ ギ リ ス Derwent 社 の 特 許 デ ー タ ベ ー ス イ ギ リ ス の ダ ウ エ ン ト 社 は ISI と 同 様 に カ ナ ダ の 世 界 最 大 の 情 報 サ ー ビ ス 企 業 で あ る ト ム ソ ン コ ー ポ レ ー シ ョ ン 傘 下 の 会 社 。 世 界 40 カ 国 以 上 の 特 許 発 行 機 関 か ら の 全 分 野 の 科 学 ・ 特 許 情 報 か ら 得 ら れ た 1000 万 件 以 上 以 上 の 発 明 と 2000 万 49 件 以 上 の 特 許 を 含 む D W P I ( D e r w e n t Wo r l d P a t e n t I n d e x ) と 、 6 つ の 主 要 特 許 発 行 機 関 か ら の 特 許 引 用 情 報 を カ バ ー す る D P C I( D e r w e n t P a t e n t C i t a t i o n I n d e x ) が あ り 、 Derwent Innovations Index は 、 こ れ ら 二 つ を 、 姉 妹 会 社 で あ る ISI の 引 用 間 リ ン ク の 技 術 で 統 合 し た We b ベ ー ス の デ ー タ ベ ー ス 。 DW PI は 、 毎 週 ア ッ プ デ ー ト さ れ ( 年 に 7 6 回 以 上 )、 1 9 6 3 年 以 降 。 化 学 、 電 子 ・ 電 気 工 学 、 機 械 工 学の3つのカテゴリーを収録。 欧 州 特 許 機 構 の 特 許 情 報 デ ー タ ベ ー ス esp@cenet 1973 年 に 欧 州 特 許 条 約( EPC)が 調 印 さ れ 、ヨ ー ロ ッ パ で 単 一 の 手 続 き に よ り 特 許 を 得 る こ と が で き る 欧 州 特 許 機 構( EPO)が 創 立 さ れ 、現 在 で は 加 盟 国 は 25 ヶ 国 に の ぼ っ て い る 。そ の 特 許 デ ー タ ベ ー ス で あ る エ ス パ ス ネ ッ ト e s p @ c e n e t は 、 欧 州 を 中 心 と す る 約 3000 万 件 の 特 許 情 報 か ら な る 。 米国特許商標庁の特許データベース 毎 年 世 界 の 約 15 万 件 も の 特 許 申 請 を 受 け て お り 、 米 国 特 許 商 標 庁 は 、 特 許 デ ータベースとして、全文データベースと書誌的事項データベース、そのほか商標 データベースを公表している。 日本の特許庁による特許電子図書館 特許庁が保有する特許情報のデータベースと検索用システムをウェブ上で公 開 し て い る 。な お 、特 許 庁 の ホ ー ム ペ ー ジ に 統 計 情 報 と し て 、2 000 年 度 の 大 学 別 特許登録件数や、大学別特許公開公報件数等が掲載されている。 日本の科学技術振興事業団の研究成果展開総合データベース 科 学 技 術 振 興 事 業 団 ( JST) が 国 公 立 研 究 機 関 、 大 学 、 JST な ど の 研 究 成 果 の 企 業 へ の 技 術 移 転 促 進 を 目 的 と し て 作 っ た デ ー タ ベ ー ス ( J - S T O R E )。 技 術 シ ー ズデータベース、研究成果紹介データベース、特許紹介データベースからなる。 平 成 12 年 9 月 で 、 技 術 シ ー ズ 約 500 件 、 特 許 約 1400 件 、 研 究 成 果 約 300 件 の 合 計 約 2200 件 の デ ー タ を 含 む 。 パトリス 3 0 年 間 特 許 情 報 を 提 供 し て き た 財 団 法 人 日 本 特 許 情 報 機 構( J A P I O )か ら 株 式 会 社 パ ト リ ス が 引 き 継 い た オ ン ラ イ ン ・ デ ー タ ー ベ ー ス ( 2 0 0 1 年 4 月 か ら )。 約 9000 万 件 の 特 許 情 報 デ ー タ を 蓄 積 。 その他の研究成果情報 大学の博士学位授与数については、例えばアメリカでは、全米教育統計センタ ー ( NCES-National Center for Education Statistics) の 機 関 デ ー タ べ ー ス で あ る IPEDS(Integrated Postsecondary Education Data System)に よ っ て 各 大 学 の 50 学 位 授 与 数 が わ か る ( h t t p : / / n c e s . e d . g o v / i p e d s / )。 ま た 、 全 米 科 学 財 団 ( NSF‑National Science Foundation) の Survey of Graduate Students and Postdoctorates in Science and Engineering よ り 学 位 数 が わ か る 。 日 本 に つ い ては、個別の大学が自己点検・評価報告書やホームページで学位情報を公表する (学位論文データベースを持つところも少なくない)一方で、文部省による全国 的な学位調査があり、 『 大 学 資 料 』で 個 別 大 学 の 学 位 授 与 数 が 領 域 別 に 公 表 さ れ て いる。 このほか研究成果情報として学協会等が教員に与える学術賞についての情報が あ る 。 ノ ー ベ ル 賞 に つ い て は 『 ノ ー ベ ル 賞 − 受 賞 者 総 覧 』( 教 育 社 ) や 『 ノ ー ベ ル 賞受賞者業績事典』 ( 日 外 ア ソ シ エ ー ツ )等 が あ る 。そ れ 以 外 の 学 術 賞 に つ い て は 『 科 学 賞 事 典 』( 日 外 ア ソ シ エ ー ツ )、『 文 化 賞 事 典 』( 日 外 ア ソ シ エ ー ツ )、『 文 化 勲章−受賞者総覧』 ( 教 育 社 )等 が あ る 。日 本 の 大 学 に 関 し て は 、毎 年 文 部 科 学 省 が個別大学について調査している(大学院に関する調査や国立学校財務センター による調査等複数ある)が公表されていない。国立情報学研究所の研究者ディレ ク ト リ ー ( 平 成 15 年 度 よ り 科 学 技 術 振 興 事 業 団 に 移 管 ) に は デ ー タ と し て 存 在 するが、機関別に集計するには使いやすくない。なお、学術賞は研究成果の象徴 としての意味が大きいものだが、受賞者の所属機関がわかっても、受賞時の所属 機関と研究を行った時期の所属機関とはかなりのタイムラグがある可能性があり ( 論 文 の 場 合 以 上 に )、 機 関 の 研 究 機 能 の 評 価 に 適 し て い な い 場 合 も あ る 。 4 研究評価情報 具体的に研究機能の評価に関わる情報のいくつかを取り上げる。まず、研究大 学・大学院プログラムが調査や評価の対象のカテゴリーとして明確になっている 点で特徴のあるアメリカの研究大学の評価、イギリスやオーストラリアの公的機 関による研究評価情報をとりあげ、最後に研究機能の大学ランキングを見る。 アメリカの研究大学(大学院)に関する調査 アメリカの場合、大学の研究機能の評価は、しばしば大学院プログラムの評価 と重なる。 51 図 表 3‑3 アメリカの研究大学・大学院の評価 実施主体 NRC-National 名称 研究− 博士プログラム評価 Research Council Graham& Diamond アクセス w w w. p h d s . o r g / r a n k i ngs/ The Rise of American Research Universities The Center To p A m e r i c a n R e s e a r c h t h e c e n t e r. u f l . e d u / Universities U.S. News and Wo r l d R e p o r t Best Graduate Schools w w w. u s n e w s . c o m / u s 2002 news/edu/grad/ranki ngs/rankindex.htm ア メ リ カ NRC に よ る 研 究 − 博 士 プ ロ グ ラ ム 評 価 全 米 研 究 委 員 会( NRC‑National Research Council)に よ る Research‑Doctorate P r o g r a m 評 価 で 、『 合 衆 国 の 研 究 − 博 士 プ ロ グ ラ ム : 継 続 と 変 化 』( 1 9 9 5 ) と し て 出版されている。全米研究委員会は民間非営利組織である全米科学アカデミーに よ っ て 設 置 さ れ た 組 織 で 、1982 年 と 1993 年 に 調 査 を 行 っ た 。約 274 大 学 に 設 置 さ れ て い る 、 41 の 専 門 分 野 、 計 3634 の 研 究 博 士 プ ロ グ ラ ム を 対 象 に し た 大 規 模 調 査 。 ISI 社 の 論 文 デ ー タ ベ ー ス に よ る 論 文 数 ・ 引 用 度 デ ー タ も 示 し て い る が 、 基本的には教授陣の質を中心とした主観的評価指標を利用するピアレビューであ る と こ ろ に 特 徴 が あ る 。 National Survey of Graduate Faculty と 呼 ば れ 、 各 専 門分野の研究者の中から選定された評定者がその分野の研究博士プログラムを担 当する教授の質と研究者養成の有効性をそれぞれ5段階評価する。この他、学生 数や教員数や学位取得者の割合など客観的データも掲載。ランキングは教授の質 の調査によるが、こうした主観的あるいはフィーリング評価は、大学院プログラ ムの規模が評価に影響しているなどの問題点が指摘されているが、論文数などの 客 観 的 な 指 標 と の 相 関 の 高 さ や 同 僚 評 価 で あ る こ と で 信 頼 が お か れ て い る 。な お 、 こ の 調 査 を 基 に 、 Customized Graduate Program Rankings と い う ウ ェ ブ サ イ ト で、自由に好みの指標を選択して大学ランキングを作ることができる。 The Rise of American Research Universities Graham& Diamond (1997)は 、 The Rise of American Research Universities: Elites and Challengers in the Postwar Era と い う 著 書 で 、 こ の 全 米 研 究 委 員 会 の同僚評価に基づく調査によるランキングに対抗して、客観的な指標によるラン キングを提唱した。教員一人あたりの学術研究費、一人あたりの論文数、著名な 学会誌への教員一人あたりの論文掲載数、一人あたりのフェローシップ数、を指 52 標とし、それらを合わせて総合ランキングを示した。 The Center( フ ロ リ ダ 大 学 ) に よ る Top American Research University フ ロ リ ダ 大 学 の T h e C e n t e r は「 ト ッ プ の ア メ リ カ 研 究 大 学 」を 公 表 し て い る 。 これはさまざまな情報機関が公表しているデータを収集し、データベース化し、 それをもとに研究費総額、連邦政府からの研究補助金額、寄付金、全米のアカデ ミ ー 会 員 数 、 学 位 授 与 数 、 ポ ス ド ク 数 、 S AT ス コ ア な ど で 序 列 化 し て い る 。 こ れ ら の 指 標 の 中 で ト ッ プ 25 位 に 入 っ て い る 数 で 大 学 の カ テ ゴ リ ー を 作 っ て い る 。 U.S. News and World Report の Best Graduate Schools 2002 アメリカの大学院プログラムの評価で代表的なもの。これは威信調査で、大学 教育関係者に同一カテゴリーに属する調査対象大学の教育の質を5段階評価して も ら っ た も の で あ る 。し か し 、P h . D . プ ロ グ ラ ム に つ い て も 研 究 の 要 素 は 少 な く 、 プロフェッショナルスクール関係のものなどは教育機能の評価である。このほか の大学院プログラムに関する評価やランキングは、教育の評価がメインである。 例 え ば 、 National Doctoral Program Survey, 2000 ( h t t p : / / s u r v e y. n a g p s . o r g / i n d e x . p h p ) は 、 全 米 大 学 院 − 専 門 職 学 生 協 会 に よ る 全 米 博 士 プ ロ グ ラ ム 調 査 で 、大 学 院 教 育 に 関 す る 大 学 院 生 へ の 調 査 の 結 果 で あ る 。 全 米 科 学 財 団 ( NSF-National Science Foundation) の 調 査 研究成果や研究評価情報ではないが、研究大学・大学院の研究活動情報という べき情報として、全部科学財団が毎年調査し公表している広範な情報である ( w w w. n s f . g o v / s b e / s r s / p r o f i l e s / s t a r t . h t m )。 大 学 院 生 に 関 す る 調 査 ( 学 生 数 、 学 位 取 得 数 、 PD 等 ) と し て Survey of Graduate Students and Postdoctorates in S c i e n c e a n d E n g i n e e r i n g 、多 様 な 財 源 か ら な る 連 邦 政 府 補 助 金 に つ い て の 調 査 と し て 、 Survey of Federal Science and Engineering Support to Universities,Colleges and Nonprofit institutions、 大 学 に お け る 研 究 開 発 費 支 出 に 関 す る 調 査 と し て 、 Survey of Research and Development Expenditures at Universities and Colleges、 が 行 わ れ 、 マ ク ロ の 動 向 や 機 関 別 デ ー タ な ど 多 様 な 形態で数多くのデータが冊子として出版公表されている。ウェブ上でも見ること が で き る 。 な お 、 NSF は 、 大 学 の 機 関 別 デ ー タ を あ つ め た 統 合 型 の デ ー タ ベ ー ス We b C A S PA R を ウ ェ ブ 上 で 作 っ て い る 。 こ の デ ー タ ベ ー ス は 、 N S F の 調 査 か ら 学 位 数 、研 究 費 な ど の 機 関 デ ー タ を 、全 米 教 育 統 計 セ ン タ ー( N C E S - N a t i o n a l C e n t e r for Education Statistics) の 機 関 デ ー タ べ ー ス で あ る IPEDS(Integrated Postsecondary Education Data System)か ら 主 に 財 務 機 関 デ ー タ を 、 そ の 他 の デ ー タ と し て 全 米 研 究 委 員 会 ( NRC) の Research‑Doctorate Program ラ ン キ ン グ の データを使えるように、これらを統合したデータベースである。 53 公的機関による評価情報 図 表 3‑4 公的機関による(機関)研究評価 実施主体 アクセス イギリス高等教育財政審議会 w w w. r a e . a c . u k / オーストラリア高等教育品質委員会 w w w. d e s t . g o v. a u / h i g h e r e d / q u a l i t y. h t m 大学評価・学位授与機構 w w w. n i a d . a c . j p / h y o u k a / i n d e x . h t m イギリス高等教育財政審議会による研究評価 イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの高等教育財政 審 議 会 ( Higher Education Funding Council) が 合 同 で 行 う 研 究 評 価 ( RAE− R e s e a r c h A s s e s s m e n t E x e r c i s e )。 1 9 8 6 年 か ら 始 ま っ て 、 3 〜 5 年 ご と に 調 査 が 行 わ れ 、2 0 0 1 年 度 の 公 表 は 5 回 目 に な る 。研 究 評 価 が 予 算 配 分 と リ ン ク し て い る こ と が 大 き な 特 徴 で あ る 。 評 価 の 単 位 は 学 科 ( 科 目 ) で あ り 、 評 価 対 象 は 69 の 専門分野に分けられる。大学関係者などで構成される分野別審査委員会が、大学 から提出された研究実績(論文や著作など)の資料を基に、1〜5の7段階のグ レ ー ド で 評 価 さ れ る 。評 価 結 果 は 、レ ー テ ィ ン グ が 公 表 さ れ る( w w w. r a e . a c . u k / )。 なお、イギリスの大学の機関別研究費データなどは、イングランド高等教育財政 審 議 会 の ホ ー ム ペ ー ジ で 入 手 可 能( w w w. h e f c e . a c . u k / )で あ り 、H E S A が C D - R O M 等 で 多 く の デ ー タ を 提 供 し て い る ( こ れ ら に つ い て は 第 2 章 小 林 論 文 を 参 照 )。 オーストラリアの高等教育品質委員会による研究評価 イギリスと同様に全国規模で大々的な機関(研究)評価が高等教育品質委員会 ( CQAHE− Committee of Quality Assurance in Higher Education) に よ っ て 行 わ れ て い る 。 各 大 学 は 、 研 究 費 支 出 額 、 ISI に よ る 引 用 度 、 科 学 ア カ デ ミ ー 等 の メ ン バ ー の 数 、 Brennen Index 等 の パ ー フ ォ ー マ ン ス ・ イ ン デ ィ ケ ー タ ー に よ る 評価と改善プランを公表している ( w w w. d e t y a . g o v. a u / a r c h i v e / h i g h e r e d / p u b s / q u a l i t y / c o n t e n t s . h t m )。個 別 大 学 の 研 究 費 等 の デ ー タ は 、 オ ー ス ト ラ リ ア 文 部 省 ( D E T YA − D e p a r t m e n t o f E d u c a t i o n , Tr a i n i n g a n d Yo u t h A f f a i r s ) が か な り 詳 細 な も の を 公 開 し て い る 。 例 え ば 、 H i g h e r E d u c a t i o n R e p o r t f o t t h e 2 0 0 0 t o 2 0 0 2 Tr i e n n i u m ( h t t p : / / w w w. d e t y a . g o v. a u / h i g h e r e d / h e _ r e p o r t / 2 0 0 0 _ 2 0 0 2 / p d f / d e f a u l t . h t m )。 日本の大学評価・学位授与機構による研究評価 評価の対象は学部や研究科であり、大学から提出された自己評価報告書と評価 員によるヒアリングをふまえて、研究体制及び研究支援体制(目標達成に貢献し て い る か 否 か )、 諸 施 策 及 び 諸 機 能 の 達 成 状 況 ( 目 標 が 達 成 さ れ て い る か 否 か )、 54 研 究 内 容 及 び 水 準 ( 卓 越 ・ 優 秀 ・ 普 通 ・ 要 努 力 )、 社 会 ( 社 会 、 経 済 、 文 化 ) 的 貢 献、研究の質の向上及び改善のためのシステム(機能しているか否か)の項目に つ い て 評 価 が な さ れ て い る ( w w w. n i a d . a c . j p / h y o u k a / i n d e x . h t m ) 。 平 成 1 4 年 3 月 に 、 平 成 12 年 度 着 手 分 12 機 関 の 報 告 書 が 公 開 さ れ た が 、 評 価 の 基 準 の 問 題 が 指 摘されている。日本の場合、個別大学の研究費等のデータは、十分公表されてい るわけではない。 研究に関する大学ランキング(論文数がベース) 研究成果の評価では、先に見たようなアンケートによるフィーリング調査とと もに、論文数をカウントして大学間で比較したり、特定の領域で大学間比較を行 われる。主に日本の大学について見たものいくつかをあげると以下のようなもの がある。 図 表 3‑5 研究に関する大学ランキング 実施者 内容 慶 伊 ・ 緒 方 ( 1984) 化学における大学ランキング 朝日新聞社編 『 2002 年 版 有 馬 ( 1990) 科学諸分野の研究論文評価 山 崎 ( 1991) 医科大学・医学校ランキング 太 田 和 ( 1998) 工学分野の大学ランキング 慶 伊 ・ 本 多 ( 2000) 化学(自然科学)における大学ランキング 根 岸 ( 2000) 研究分野別大学ランキング 真 行 寺 ・ 金 子 ( 2001) 世界の中の東京大学(東京大学白書) 大学ランキング』 慶 伊 ・ 緒 方 ( 1984) の 化 学 に お け る 大 学 ラ ン キ ン グ 「 ケ ミ カ ル ・ ア ブ ス ト ラ ク ト( 化 学 抄 録 誌 )」 に よ っ て 日 本 の 大 学 の 国 際 的 な 位 置を分析し、日本化学会の年会講演数、発行雑誌、日本化学会誌(和文誌、欧文 誌、レター)からみた大学の研究ランキング、高分子化学と触媒学の領域での研 究ランキングなどを分析している。 朝 日 新 聞 社 編 『 2002 年 版 大学ランキング』 前 述 し た ア メ リ カ の ISI 社 の デ ー タ ベ ー ス を も と に し た 自 然 科 学 系 論 文 数 ラ ン キ ン グ ( 世 界 )、 分 野 別 の 論 文 数 ・ 引 用 度 ラ ン キ ン グ ( 国 内 )、 ハ イ イ ン パ ク ト 論 文ランキング(国内)等を含み、この他電子ジャーナル(サイエンス・ダイレク ト ) ラ ン キ ン グ 、 化 学 論 文 抄 録 誌 ( ケ ミ カ ル ・ ア ブ ス ト ラ ク ト ) ラ ン キ ン グ 、「 ネ イチャー」ランキング、国際的経済学誌掲載ランキング、数学論文ランキング、 55 特許ランキングなどを掲載している。 ハ イ イ ン パ ク ト ラ ン キ ン グ に つ い て は 、 ア メ リ カ ISI 社 の 引 用 デ ー タ ベ ー ス を 利用して、ハイインパクト論文を検索し、その中で日本の大学・研究機関で発表 された論文をとりあげ、各機関のハイインパクト論文数を確定し、総合あるいは い く つ か 分 野 別 ( 分 野 ご と に 200 本 論 文 を 対 象 ) に 大 学 ラ ン キ ン グ を 作 成 し て い る。 有 馬 ( 1990) ら に よ る 科 学 諸 分 野 の 研 究 論 文 評 価 イ ギ リ ス EI の 物 理 学 分 野 の 論 文 デ ー タ ベ ー ス INSPEC と 、 ISI 社 の 論 文 ・ 引 用 検 索 デ ー タ ベ ー ス SCI を 利 用 し て 、論 文 数 や イ ン パ ク ト ・ フ ァ ク タ ー を 考 慮 し た論文数で大学のレーシングを行っている。 山 崎 ( 1991) の 医 科 大 学 ・ 医 学 校 ラ ン キ ン グ Exerpta Medica( 1989) と Medline( 1993) デ ー タ ベ ー ス を 活 用 し て 、 一 人 あたりの生産論文数から日本の医科大学・医学部のレーティングを行った。 太 田 和 ( 1998) に よ る 工 学 分 野 の 大 学 ラ ン キ ン グ C O M P E N D E X P L U S デ ー タ ベ ー ス に よ り 、機 関 別 の 論 文 数 を 調 べ 、工 学 分 野 の 大学ランキングを行ったもの。 慶 伊 と 本 多 ( 2000) に よ る 大 学 ラ ン キ ン グ アメリカの化学抄録誌論文(ケミカル・アブストラクト)のデータベース(自 然科学系分野の7割をカバーする)を利用して、生産性(教員一人あたりの論文 数)から世界の大学ランキングを作成し日本の位置を分析した。前掲、朝日新聞 社の『大学ランキング』にも所収。 根 岸 ( 2000) ら の 研 究 分 野 別 大 学 ラ ン キ ン グ ISI の 引 用 索 引 デ ー タ ベ ー ス の 日 本 版 National Citation Report(NCR) for Japan を 用 い て 、 そ こ に 掲 載 さ れ て い る 大 学 関 係 者 に よ る 論 文 58,472 件 を 対 象 に、論文数と引用倍率によって分野別に大学ランキングを作成したもの。前掲、 朝日新聞社の『大学ランキング』にも所収。 これらの例では、組織よりも個人での分析が多いが、大学自身が行ったものと し て は 、 東 京 大 学 は 、「 東 京 大 学 現 状 と 課 題 3 」で 、ISI 社 の 拡 大 SCI を 利 用 し て、国内外の大学との比較から、東京大学の国際的な位置を示した(真行寺・金 子 2 0 0 1 )。 日 本 以 外 の 各 国 で 行 わ れ て い る 大 学 ラ ン キ ン グ で は 、 C o l e m a n( 1 9 9 2 )ら に よ る イギリス大学の研究パフォーマンスランキング、のように論文数と引用度を利用 し た も の も あ る が 、 雑 誌 や 新 聞 に よ る 大 学 ラ ン キ ン グ ( 香 港 「 A S I A W E E K 」、 イ ギ リ ス 「 T I M E S 」、 ポ ー ラ ン ド 「 W P O S T 」、 カ ナ ダ の 「 M A C L E A N 」 等 ) で は 、 研 究 機 能 の ラ 56 ンキングそのものよりも、論文数や威信調査を基にした研究スコアを加味した大 学の総合的なランキングを行っているところが多い。 5 情報のあり方の特質と問題点 以 上 の よ う に 研 究 機 能 の 評 価 に 関 わ る 情 報 を 概 観 す る と 、情 報 の 目 的 、所 在( 提 供 主 体 )、 形 態 等 に お い て い く つ か の 特 徴 と 問 題 点 が 指 摘 で き る 。 第一に、情報のかなりの部分が専門分野の構成員のピア・レビューに基づいて いることである。明らかに同僚評価といえるのはアメリカの全米研究委員会によ る教授の質に関する調査情報であるが、論文・抄録・引用データベースも同僚評 価 を ベ ー ス に し て い る( 特 許 デ ー タ ベ ー ス は 同 僚 評 価 を ベ ー ス に し な い )。論 文 は 学会誌であれば、それぞれの専門分野の同僚による評価を経て掲載が認められ、 妥当な知識として正当化され引用され流通する。このような同僚評価によって知 識の品質管理を行うジャーナルシステムをベースにして初めて、論文・抄録・引 用データベースが機関評価のための研究成果情報となるのであり、そうしたデー タベースが多くの研究大学ランキングなどに使われている。その意味で結局のと ころ研究評価の大部分は同僚評価を基礎にしている。 第二に、同僚評価情報には、同じ専門分野の研究者によるアンケートや訪問に よる調査結果のような主観的データと、論文データベース等の客観的データを集 めた情報があり、近年後者の充実の動きが強いが、前者も依然重要な役割を果た している。主観的データと客観的データのどちらがよいか、どのように組み合わ せるべきかということは、研究の機関レベルの評価に関わる情報の信頼性や一貫 性を考える上で常に問題とされる点である。 他方で第三に、情報を提供する組織の観点からは、研究成果情報において必ず しも研究評価を目的としない民間組織(営利組織・非営利組織)の役割が小さく な い 。 そ の 顕 著 な 例 は ISI 社 の 論 文 デ ー タ ベ ー ス で あ り 、 近 年 の 機 関 レ ベ ル の 研 究 評 価 で そ の 役 割 は 増 し て い る 。 ISI 社 の 論 文 デ ー タ ベ ー ス は 、 大 規 模 で 、 主 要 な国際的学会誌を収録しており、引用度によって量的のみならず質的な評価にも 貢献している。研究評価の信頼性や客観性を高めるために、こうした論文データ ベースが使われるようになったといえようが、本来これらのデータベースは学術 情報提供のためのものである。学術情報の需給関係の中で、学術情報サービスと して優れていなければ研究者によって使用されない、といういわば市場的な評価 にさらされ、より優れたデータベースへと改善されてきた。そして、そのように 本来研究評価を目的としていないという点は、そのことに起因する問題点はある 57 だろうが、むしろ評価のベースとしての不偏性や信頼性を保証するという側面も あっただろう。その意味で、近年になってこれらの論文データベースはより研究 評価への志向を強めているようだが、それがデータベースの客観性や信頼性にど のように影響するのか興味深い。 これに対して第四に、アメリカの大学院プログラムの評価調査や、イギリスな どの政府・行政機関や公的な大学評価機関による研究成果・評価情報の収集・蓄 積は、最初から評価を目的としている。日本の大学評価・学位授与機構もこれに 含まれる。これらの情報の一貫性や信頼性については、一概にはいえないが、同 分野の他大学の研究者によるインタビューなどを用いて主観的要素が入ったり、 評価のための項目が多様であったり、情報の網羅性や一貫性や信頼性を評価する ことはより難しいだろう。さらには、民間の学術情報の提供と違って、市場によ って情報自体が十分な評価に晒されるわけではないので、情報を改善するメカニ ズム自体を作りあげねばならないだろう。その意味で、評価結果の公表よりも、 そのベースとなる研究活動情報をなるべく公開することによって、多様な目的に 応じた多様な評価が行えるように、そうした中で情報そのものが外部からチェッ クされるようにするのも一つの方法かもしれない。 このように研究評価に関わる情報の信頼性や一貫性については、その情報の形 態 や 目 的 に 応 じ て そ れ ら を 保 証 し 改 善 す る 仕 組 み を 考 え る 必 要 が あ る 。さ ら に は 、 より長期的な観点からすると、インターネットの発達によってジャーナル・シス テムによる知識の品質管理という仕組みそのものが変わる可能性もあるし、本来 機関の壁を超えて進んでいく研究活動を機関レベルで評価することの矛盾も残っ たままであり、こうした問題への対応もいずれ必要になるだろう。 参考文献 朝日新聞社編『大学ランキング 有馬朗人代他 2002 年 版 』 朝 日 新 聞 社 . 1990, 『 科 学 諸 分 野 の 研 究 論 文 評 価 』昭 和 6 0 〜 6 2 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 特 定 研 究 2 研 究 成 果 報 告 書 ( 研 究 代 表 者 : 有 馬 朗 人 ). 石井啓豊 1 9 9 6 ,「 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 − 先 進 6 か 国 の 動 向 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 3 9 , N o . 5 , 3 2 6 - 3 3 8 頁 . 江原武一 1 9 9 7 ,「 ア メ リ カ 合 衆 国 の 大 学 評 価 」『 大 学 評 価 に 関 す る 総 合 的 比 較 研 究 』 平 成 6〜 8 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 (A)研 究 成 果 報 告 書 ( 研 究 代 表 者 : 桑 原 敏 明 ), 7 - 1 8 頁 . 太田和良幸 1998,「 工 学 分 野 に お け る 我 が 国 機 関 の 論 文 生 産 数 に 関 す る 研 究 − 58 CONPENDEX PLUS 収 録 論 文 数 の 分 析 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 4 1 , N o . 7 . 1 9 9 6 ,『 科 学 を 図 る − ガ ー フ ィ ー ル ド と イ ン パ ク ト ・ フ ァ ク タ ー 』 イ 窪田輝蔵 ンターメディカル. 1 9 9 9 ,「 研 究 ラ ン キ ン グ を 考 え る 」『 I D E 』 N o . 4 0 6 , 2 0 - 2 5 頁 . 慶伊富長 慶伊富長・緒方直哉 1 9 8 4 ,「 研 究 活 動 − 化 学 の ケ ー ス 」 慶 伊 富 長 編 『 大 学 評 価 の研究』東京大学出版会. 慶伊富長・本多卓也 2 0 0 0 ,「 自 然 科 学 系 の 研 究 − そ の 現 状 と 大 学 評 価 」『 高 等 教 育 研 究 』 第 3 集 , 玉 川 大 学 出 版 部 , 63-80 頁 . 2 0 0 2 ,「 平 成 9 年 度 博 士 ・ 修 士 の 学 位 授 与 状 況 」『 大 学 資 料 』 高等教育局大学課 文 教 協 会 , 35-89 頁 . 小間篤 2000, 「発表論文数から見た日本の大学の実力」 『 科 学 』7 0 ,7 0 5 - 7 0 9 頁 . 真行寺千佳子・金子元久 2 0 0 1 ,「 世 界 の 中 の 東 京 大 学 」 東 京 大 学 編 『 東 京 大 学 現 状 と 課 題 3 』 東 京 大 学 出 版 会 , 48-56 頁 . 田中秀明 2001, 「 We b o f S c i e n c e を 用 い た 研 究 評 価 の 試 み と 留 意 点 」 『情報管理』 Vo l . 4 4 , N o . 1 , p p . 2 - 7 . 中井浩二他 1 9 9 5 ,『 学 術 研 究 と 評 価 : 我 が 国 に お け る 研 究 評 価 手 法 の 総 合 的 研 究 』 平 成 5,6 年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助 金 総 合 研 究 A 研 究 成 果 報 告 書 ( 研 究 代表者:中井浩二) 日本学術振興会 1 9 9 6 ,『 学 術 月 報 特集 学 術 研 究 と 評 価 』 Vo l . 4 9 , N o . 2 . 日本学術振興会 1 9 9 8 ,『 学 術 月 報 特集 大 学 の 機 関 評 価 』 Vo l . 5 1 , N o . 8 . 根岸正光 1 9 9 6 ,『 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 − 理 学 ・ 工 学 ・ 医 学 分 野 の 学 術 論 文数の動向』学術情報センター. 根岸正光 1 9 9 6 ,「 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 − 結 果 の 概 要 と 分 析 視 点 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 3 9 , N o . 4 , 2 4 5 - 2 5 7 頁 . 根岸正光・西澤正己・孫媛・山下泰弘 2 0 0 0 ,「 わ が 国 の 大 学 に お け る 論 文 生 産 と そ の 引 用 状 況 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 4 3 , N o . 7 , 5 7 5 - 5 9 2 頁 . 根岸正光・山崎茂明編著 武藤晃・湯川奈穂美 2 0 0 2 ,『 研 究 評 価 』 丸 善 株 式 会 社 . 2 0 0 0 ,「 各 国 特 許 庁 ホ ー ム ペ ー ジ を 解 析 す る 米国特許商 標 庁 ホ ー ム ペ ー ジ ( 1 ) 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 4 3 , N o . 3 , 1 8 7 - 2 0 2 頁 . 武藤晃・湯川奈穂美 2 0 0 0 ,「 各 国 特 許 庁 ホ ー ム ペ ー ジ を 解 析 す る 欧州特許庁 ホ ー ム ペ ー ジ 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 4 3 , N o . 6 , 5 1 0 - 5 1 9 頁 . 文部省学術国際局 1 9 8 7 ,『 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 』. 文部省学術国際局 1 9 9 3 ,『 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 』. 山野井敦徳 1 9 9 5 ,「 我 が 国 の 学 界 に お け る 学 術 報 償 シ ス テ ム に 関 す る 考 察 − 学 術 賞 の 構 造 分 析 を 中 心 と し て − 」『 大 学 論 集 』 第 25 集 , 23-41 頁 . 59 山崎茂明 1 9 9 1 ,「 論 文 発 表 か ら み た 日 本 の 生 命 科 学 」『 科 学 』 Vo l . 6 1 , 5 4 4 - 5 4 7 頁. 山崎茂明 1 9 9 6 ,「 学 術 論 文 数 の 国 際 比 較 調 査 − 医 学 領 域 の 分 析 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 3 9 , N o . 6 , 3 9 1 - 4 0 7 頁 . 山崎茂明 1 9 9 8 ,「 イ ン パ ク ト フ ァ ク タ ー を め ぐ る 議 論 : 正 し い 理 解 と 研 究 へ の 生 か し 方 」『 情 報 管 理 』 Vo l . 4 1 , N o . 3 , 1 7 3 - 1 8 2 頁 . 山 崎 茂 明・根 岸 正 光 1998, 「研究評価のためのデータベース」 『 情 報 管 理 』Vo l . 4 1 , No.6, 479-484 頁 . C o l e m a n , A n d r e w a n d M . , G a r n e r, A n n e t t e B . at United Kingdom Universities, 1992, Research Performance S t u d i e s i n H i g h e r E d u c a t i o n , Vo l . 1 7 , Issue 1. Hugh Davis Graham and Nancy Diamond 1997, The Rise of American Research Universities: Elites and Challengers in the Postwar Era ,Johns Hopkins University Press. Na n c y D i a m o n d a n d H u gh Da vi s G ra h a m 2 0 0 0 , H o w S h o u l d We R a te Re s e a r ch Universities? ( w w w. v a n d e r b i l t . e d u / A n S / H i s t o r y / g r a h a m / C h a n g e . h t m ) . National Research Council 1995, Research-Doctorate Programs in the United States, Continuity and Change, National Academy Press. The Center 2 0 0 1 , T h e To p A m e r i c a n R e s e a r c h U n i v e r s i t i e s , T h e C e n t e r a t the University of Florida. Ya m a z a k i , S . 1 9 9 4 , Research activities in life sciences in Japan, S c i e n t o m e t r i c s , Vo l . 2 9 , N o . 2 , p p . 1 8 1 - 1 9 0 . Ya m a z a k i , S . 1 9 9 4 , Vo l . 3 7 2 , Ra n ki n g o f J a pa n ’s l i f e s c i e n c e re se a r c h, pp.125-126. 60 Nature, 第4章 世界の大学評価・ランキング 間渕泰尚 大学に関する情報の提示方法にはさまざまなものがあるが、本章では主に民間 企業によって提供される大学評価情報である「大学ランキング」を対象とする。 まずはこうした大学ランキングが隆盛となるきっかけでもあり、手本ともなって い る U S N e w s & Wo r l d R e p o r t 誌 ( 以 下 U S N e w s ) を と り あ げ 、 大 学 ラ ン キ ン グ が ど う い っ た も の か を 明 ら か に す る( 1 節 )。次 に 米 国 内 で の 多 種 多 様 な ラ ン キ ン グ を 紹 介 し 、 大 学 ラ ン キ ン グ の 広 が り を 明 か に す る ( 2 節 )。 さ ら に 、 こ う し た ラ ン キ ン グ が 世 界 的 に 広 が っ て い る 状 況 を 述 べ る( 3 節 )。職 業 大 学 院 に 関 す る ラ ン キ ン グ も 紹 介 し( 4 節 )、最 後 に こ う し た 状 況 か ら 見 ら れ る 傾 向 に つ い て 考 察 す る( 5 節 )。 なお 、本章 では イ リノイ 大学図 書館に よる大 学ラン キング紹介ホ ームペー ジ ” C o l l e g e a n d U n i v e r s i t y R a n k i n g s ” [ g a t e w a y. l i b r a r y. u i u c . e d u / e d x / r a n k i n g s . h t m ] を参考にした。 1 U S N e w s & W o r l d R e p o r t A m e r i c a ’s B e s t C o l l e g e s [ w w w. u s n e w s . c o m / u s n e w s / r a n k g u i d e / r g h o m e . h t m ] 現 在 世 界 中 に 広 が り を 見 せ て い る 大 学 ラ ン キ ン グ の 中 で 、最 も 有 名 な も の が U S N e w s 誌 に よ る A m e r i c a ’s B e s t C o l l e g e s で あ る 。こ の ラ ン キ ン グ が 最 初 に 発 表 さ れ た の は 1983 年 で 、 対 象 校 は 76 校 だ っ た 。 ラ ン キ ン グ 作 成 の 基 準 と な っ て い た の は 評 判 の み で あ っ た 。 現 在 US News 誌 が 情 報 を 収 集 し て い る 学 校 数 は 約 1300 校 で あ る が 、そ の う ち 総 合 ラ ン キ ン グ の 発 表 対 象 と し て い る の は 上 位 1 0 0 校 で あ る 。 それ以外の学校に関しては「ランキング」という形では発表していないものの、 個別大学の情報を見れば総合スコアがどの程度かが分かるしくみになっている。 総合的なランキングを作成するためには多種多様な指標にウェイト付けを行い、 合 成 ス コ ア を 作 成 す る 必 要 が あ る 。 US News 誌 の も う 1 つ の 特 徴 は 、 こ の 合 成 ス 61 コアの計算方法を年々公開していることにある。さらに近年では外部シンクタン クと提携し、計算方法のさらなる精緻化を図っているという。 そのタイトルからも分かる通り当初は学部段階の教育が対象となっていたが、 現在では大学院もその対象となっている。大学院のランキングでは、学部段階の ように総合的なランキングではなく、細かい分野別のランキングが公表されてい る。 研 究 大 学 院 ( Ph.D) コ ー ス に 関 し て は 、 12 分 野 に 分 け て 、 そ れ ぞ れ の 専 門 分 野 別にランキングが作成されている。しかし学部段階と違って、このランキングの 作成に用いられているのは評判だけなのが特徴である。 職業大学院(プロフェッショナルスクール)については、経営、法律、教育、 医学、工学など 8 つの専門分野に関してそれぞれランキングが公開されている。 例としてここではビジネススクールとロースクールに関して紹介しておく。ビジ ネ ス ス ク ー ル に 関 し て は 、 威 信 ( 4 0 % )、 雇 用 状 況 ( 3 5 % )、 学 生 の 選 抜 度 ( 2 5 % ) の 合 成 得 点 に よ っ て 総 合 ス コ ア が 計 算 さ れ 、 全 米 341 校 が 対 象 と な っ て い る が 、 ラ ン キ ン グ が 公 開 さ れ て い る の は 50 位 ま で で あ る 。 2001 年 度 の ト ッ プ は ス タ ン フォード大学である。 ロ ー ス ク ー ル で は 威 信 ( 4 0 % )、 選 抜 度 ( 2 5 % )、 就 職 状 況 ( 2 0 % )、 教 育 環 境 ・ 資 源 ( 15% ) に よ っ て 総 合 ポ イ ン ト を 算 出 し て い る 。 全 米 174 校 が 対 象 で 、 ラ ン キ ン グ 公 表 は ビ ジ ネ ス ス ク ー ル と 同 様 50 位 ま で で あ る 。 2001 年 度 の ト ッ プ は イ ェール大学となっている。 古くから公表されていることと、その影響力の大きさから、研究者によっても すでに多くの批判や研究が行われている。具体的には実際の進学者の行動にどの ような影響を与えているのかといった点や、ランキング算出方法に対する疑問、 検 証 な ど が 行 わ れ て い る 。( 注 ) 2 米国内の大学ランキング ア メ リ カ で は US News 以 外 に も 数 多 く の ラ ン キ ン グ が 作 成 ・ 公 表 さ れ て い る 。 またランキングの対象もさまざまである。ここではそれらの一部を紹介する。 62 図 表 4− 1 米 国 内 の大 学 ランキング例 対象 学部 大学院 名称 A m e r i c a ’s B e s t C o l l e g e s The Best 331 Colleges Ranked by Students P r i v a t e C o l l e g e s Wo r t h t h e P r i c e To p 1 0 A c t i v i s t S c h o o l s Disability-Friendly Colleges To p 5 0 C o l l e g e s f o r A f r i c a n A m e r i c a n s A m e r i c a ' s M o s t Wi r e d C o l l e g e s Research-Doctorate Program Rankings To p A m e r i c a n R e s e a r c h U n i v e r s i t i e s Customized Graduate Program Rankings A Ranking of U.S. Graduate Programs in Analytic Philosophy 発行元 U S N e w s & Wo r l d R e p o r t Princeton Review 発行形態 単行本 単行本 Kiplinger Mother Jones New Mobility Black Enterprise Ya h o o ! I n t e r n e t L i f e National Research Council T h e C e n t e r ( F l o r i d a U n i v. ) 雑誌 雑誌 雑誌 雑誌 雑誌 単行 単行 We b We b (個人) The Philosophical Report Gourmet 記 記 記 記 記 本 本 学部段階に関するランキング P r i n c e t o n R e vi e w ' s T h e B e s t 3 3 1 C o l l eg e s R a n ke d b y St u d e n t s f o r 2 0 0 0 [ w w w. r e v i e w. c o m / c o l l e g e / r a n k i n g s . c f m ? r a n k i n g s = 0 & m e n u I D = 0 & s e a r c h = 0 ] 教 育 関 連 サ ー ビ ス を 行 っ て い る Princeton Review に よ る ラ ン キ ン グ 。 単 行 本 と して出版。学生アンケートにもとづき分野別(学生生活、生活の質等)のランキ ング作成。その他大学の各種情報を提供している。調査頻度は2,3年に1度。 J o h n Te m p l e t o n F o u n d a t i o n C o l l e g e s T h a t E n c o u r a g e C h a r a c t e r D e v e l o p m e n t [ w w w. c o l l e g e a n d c h a r a c t e r. o r g / g u i d e / ] 学 生 の 人 格 形 成 プ ロ グ ラ ム に 関 す る ガ イ ド 。ラ ン キ ン グ は 行 っ て い な い 。10 カ テ ゴ リ ー・4 0 5 プ ロ グ ラ ム の ガ イ ド 、5 0 人 の 学 長 を 紹 介 。T h e Te m p l e t o n H o n o r R o l l と い う 賞 を 100 大 学 に 大 し て 授 与 し て い る 。 集 計 方 法 は 各 大 学 ・ 学 長 へ の ア ン ケ ー ト 。 ガ イ ド そ の も の は 1999 年 が 初 出 版 。 K i p l i n g e r ' s P r i v a t e C o l l e g e s Wo r t h t h e P r i c e [ w w w. k i p l i n g e r. c o m / m a g a z i n e / a r c h i v e s / 1 9 9 9 / S e p t e m b e r / c o l l e g e . h t m ] 個 人 向 け 投 資 ガ イ ド 雑 誌 で あ る K i p l i n g e r に よ る ラ ン キ ン グ 。雑 誌 記 事 。大 学 の 質だけでなく、大学別の奨学金制度を考慮した投資効果に着目してランキング付 け し て い る 。 対 象 は 先 述 の P e t e r s o n ’s で ” c o m p e t i t i v e ”と カ テ ゴ ラ イ ズ さ れ た 1 0 0 私 立 大 学 。 ト ッ プ は Rice 大 。 質の指標として入学許可率、2学年への進学率、4年・6年での卒業率、寄付 額 、 S T 比 、 TA 授 業 量 。 価 格 指 標 と し て 、 全 学 費 、 低 所 得 層 向 け 奨 学 金 、 成 績 に よる奨学金の額と受給率、平均負債を使用。 63 事 事 事 事 事 M o t h e r J o n e s To p 1 0 A c t i v i s t S c h o o l s [bsd.mojones.com/mother_jones/SO98/wieczorek.html] 政 治 行 動 に 熱 心 な ト ッ プ 1 0 大 学 の み を 公 表 。雑 誌 記 事 。ラ ン キ ン グ 方 法 は 不 明 。 1995 年 か ら 2000 年 ま で 公 表 。 New Mobility Disability-Friendly Colleges [ w w w. n e w m o b i l i t y. c o m / r e v i e w _ a r t i c l e . c f m ? i d = 1 2 2 & a c t i o n = b r o w s e ] 身 体 障 害 者 向 け の 施 設 が 充 実 し て る キ ャ ン パ ス に 関 す る ラ ン キ ン グ 。雑 誌 記 事 。 33 の 公 立 大 学 が 対 象 。具 体 的 な ラ ン キ ン グ 方 法 に 関 す る 記 述 は な い 。専 門 ス タ ッ フがいるか、カウンセリングがあるかといった修学上のポイントに加えて、学生 寮 の 設 備 等 に つ い て 一 覧 表 あ り 。ト ッ プ 1 0 大 学 に つ い て は レ ポ ー ト つ き 。ト ッ プ は イ リ ノ イ 大 Urbana-Champaign 校 。 To p 5 0 C o l l e g e s f o r A f r i c a n A m e r i c a n s [ w w w. b l a c k e n t e r p r i s e . c o m / S 2 / P a g e O p e n . a s p ? S o u r c e = P a g e s / To p F i f t y C o l l e g e s . h t m ] ア フ リ カ 系 ア メ リ カ 人 向 け の 大 学 ラ ン キ ン グ 。黒 人 向 け 月 刊 誌 B l a c k E n t e r p r i s e 誌 の 特 集 記 事 。 936 人 の ア フ リ カ 系 ア メ リ カ 人 高 等 教 育 関 係 者 へ の ア ン ケ ー ト を 中心に集計。トップはムアハウス大。 Ya h o o ! I n t e r n e t L i f e A m e r i c a ' s M o s t W i r e d C o l l e g e s [ w w w. z d n e t . c o m / y i l / c o n t e n t / c o l l e g e / ] キャンパスのネットワーク整備状況から見た大学ランキング。3年前から雑誌 Ya h o o ! I n t e r n e t L i f e の 記 事 と し て 掲 載 。 大 学 に 対 し て 機 器 の 整 備 状 況 等 に 関 し て アンケート調査を行い、その結果から総合ポイントを作成。ランキングは総合大 学、中小の学部大学等4つのカテゴリー別に作成。 St u d e n t s R e v i ew. c o m [ w w w. s t u d e n t s r e v i e w. c o m / ] 学生による大学自己評価サイト。ランキングは行っていない。学生が自分の通 う大学を評価したものを集計。ただしサンプル調査ではない。 大学院に関するランキング To p A m e r i c a n R e s e a r c h U n i v e r s i t i e s [ t h e c e n t e r. u f l . e d u ] 64 フ ロ リ ダ 大 の The Center が 公 表 。 単 独 の パ ン フ レ ッ ト と し て 作 成 。 外 部 機 関 が 公 表 し て い る 研 究 面 で の デ ー タ( 9 分 野 − 研 究 費 、寄 付 、学 会 員 数 、受 賞 者 数 等 ) を 集 計 し た も の 。9 分 野 の う ち 、ト ッ プ 2 5 位 に 入 っ て い る も の が 何 分 野 あ る か に よ っ て 順 位 は つ け て あ る も の の 、「 総 合 ラ ン キ ン グ 」 は な い 。 上 位 1 0 0 大 学 を 私 立 ・ 公 立 別 に 表 示 ( 計 2 0 0 大 学 )。 デ ー タ は 年 に 1 回 更 新 さ れ る 。 National Research Council Research-Doctorate Program Rankings [ w w w. i b c . w u s t l . e d u / n r c _ r a n k i n g s / v i e w. c g i ] N R C 書 籍 の オ ン ラ イ ン 版 。 威 信 調 査 を 中 心 と す る ラ ン キ ン グ 。( 詳 細 は 3 章 )。 Custo mized Graduate Prog ra m Ranki ng s [ w w w. p h d s . o r g / r a t i n g s / ] NRC デ ー タ を 元 に 、 ア ク セ ス し た 各 自 が 19 項 目 の デ ー タ の ウ ェ イ ト 付 け を 操 作してランキングを算出してくれるHP。対象は科学技術分野。 The Philosophical Gourmet Report, 1998-2000: A Ranking of U.S. Graduate Prog ra ms in Analytic Philosophy [ w w w. b l a c k w e l l p u b l i s h e r s . c o . u k / g o u r m e t / ] 哲 学 分 野 の ラ ン キ ン グ 。教 員 の 威 信 調 査 の み に よ る 。対 象 は ア メ リ カ 中 心 だ が 、 イ ギ リ ス 、カ ナ ダ 、豪 も 含 ま れ る 。総 合 ラ ン キ ン グ お よ び 下 位 分 野 別 ラ ン キ ン グ 。 WEB 上 で の み 公 開 。 3 国際的ランキング ここまではアメリカ国内の大学を対象としたランキングを見てきたが、現在で は日本を含めた世界各国で大学ランキングが作成・公開されている。日本の大学 ランキングについては5章で扱うので、ここでは日本以外の各国におけるランキ ングを紹介する。 図 表 4− 2 世 界 各 国 の大 学 ランキング例 国 オ リ イ イ ー ス ト ラ ア ギリス ギリス 名称 GoodGuides 発行者 Good University Guide Research Assessment Exercise Outcome T h e Ti m e s HEFCE 65 発行形態 単行本 単行本 カナダ カナダ ド ド イ イ 中 イ イ ン ン 国 Universities Ranking Best Buys in Canadian Programs ツ ツ ド ド MBA To p 1 0 C o l l e g e s The Best B-schools Maclean Canadian Business der Stern der Spiegel I n d i a To d a y B u s i n e s s To d a y Chinese University Ranking 雑誌記事 雑誌記事 雑誌 雑誌 雑誌 雑誌 HP 記 記 記 記 事 事 事 事 各国の国内ランキング GoodGuides [ w w w. t h e g o o d g u i d e s . c o m . a u / ] オーストラリアの大学に関する包括的なガイドブック。オンライン版は会員登 録しないと全てを閲覧できない。威信、分野別といった様々なレーティングが行 われている。独自調査に基づいて行われているが、その方法に関する細かい記述 はない。 Good University Guide [ w w w. t i m e s - a r c h i v e . c o . u k / n e w s / p a g e s / t i m / 2 0 0 0 / 0 4 / 1 4 / t i m g u g g u g 0 1 0 0 2 . h t m l ] T h e Ti m e s に よ る イ ギ リ ス の 大 学 に 関 す る ラ ン キ ン グ 。 総 合 ラ ン キ ン グ と 分 野 別 ラ ン キ ン グ が あ る 。9 つ の 分 野( 教 育 評 価 、研 究 評 価 、入 学 基 準 、S T 比 、図 書 ・ コンピューター支出、設備支出、学位の状況、卒業後の状況、卒業率)のデータ は全て外部機関が収集したもの。1位はケンブリッジ大。 Higher Education Funding Council of England: 1996 Research Assess ment Ex ercise Outco me [ w w w. n i s s . a c . u k / e d u c a t i o n / h e f c / r a e 9 6 / c 1 _ 9 6 . h t m l ] イ ギ リ ス 4 カ 国 の 高 等 教 育 基 金 が 合 同 で 行 っ た 1996 年 の 研 究 に 関 す る 評 価 結 果 。全 て の 大 学 の 全 て の 分 野 に つ い て 、1 〜 5 ま で 7 段 階 に よ る 評 価 が 行 わ れ た 。 た だ し こ れ は 研 究 状 況 に つ い て の み の レ ー テ ィ ン グ で あ る ( 詳 細 は 3 章 )。 Maclean's 2000 Universities Ranking [ w w w. m a c l e a n s . c a / x t a - d o c / 2 0 0 0 / 1 1 / 2 0 / U n i v e r s i t i e s 2 0 0 0 / i n d e x . h t m l ] カ ナ ダ の 週 刊 誌 Maclean に よ る カ ナ ダ の 大 学 ラ ン キ ン グ 。 大 学 を 研 究 /医 科 大 、 総合大、学部大の3カテゴリーにわけ、それぞれについてランキングを公表。算 出には学生、授業、教員、財政、図書館、そして独自の威信調査を使用。総合順 位は出ているが、各大学のスコアは掲載されていない。研究のトップはトロント 66 大学。 Canadian Business B est B uy s in Canadian MB A Prog ra ms [ w w w. c a n a d i a n b u s i n e s s . c o m / m a g a z i n e _ i t e m s / 2 0 0 0 / o c t 3 0 _ 0 0 _ m b a i n t r o . h t m l ] Canadian Business 誌 に よ る カ ナ ダ の MBA ラ ン キ ン グ 。 投 資 効 果 ( 放 棄 所 得 を 含 む ) を 中 心 と し た ラ ン キ ン グ 。 そ の 他 各 機 関 へ の 調 査 ( 入 学 難 易 度 等 )、 卒 業 生 調査(満足度)も加味している。ランキング表は WEB か ら は 見 ら れ な い ( Not F o u n d )。 1 位 は 4 年 連 続 で ク イ ー ン ズ 大 。 d e r St e r n [ w w w. s t e r n . d e / c a m p u s - k a r r i e r e / u n i w e l t / r a n k i n g / ] ド イ ツ の ニ ュ ー ス 誌 d e r S t e r n と 、 C H E( 大 学 発 展 セ ン タ ー ) が 共 同 で 発 表 し て い る ラ ン キ ン グ 。専 門 分 野 別 に 公 表 。教 育 、研 究 、設 備 、教 員 、継 続 率( dur at ion) の5項目について、4段階のレーティングで表示。総合スコア・総合ランキング といったものは公表していない。 der Spiegel [ w w w. s p i e g e l . d e / s p i e g e l / 1 , 1 5 1 8 , 1 8 1 0 4 , 0 0 . h t m l ] 法 ・ 経 済 と い っ た 1 2 分 野 別 に 大 学 ラ ン キ ン グ を 作 成 。 総 合 ス コ ア に よ る 。対 象 は 63 大 学 。 I n d i a To d a y - B u s i n e s s To d a y T h e B e s t B - S c h o o l s [ w w w. i n d i a - t o d a y. c o m / b t o d a y / 0 7 0 5 1 9 9 8 / c o v e r 5 . h t m l ] イ ン ド の ビ ジ ネ ス 誌 B u s i n e s s To d a y に よ る イ ン ド 国 内 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル ラ ン キ ン グ 。 50 校 に つ い て 、 1000 点 満 点 で 評 価 。 機 関 へ の 調 査 ( 入 学 状 況 、 設 備 等 ) が 400 点 、 企 業 の 人 事 担 当 者 の 評 価 が 300 点 、 教 員 調 査 が 150 点 、 学 生 調 査 が 50 点 、 卒 業 生 調 査 が 100 点 を 満 点 と し て 配 分 。 総 合 ラ ン ク の 他 に 、 地 域 別 、 各 指 標 別ランキングあり。 To p 1 0 C o l l e g e s [ w w w. i n d i a - t o d a y. c o m / i t o d a y / 2 0 0 0 0 6 1 9 / c o v e r. h t m l ] イ ン ド の ニ ュ ー ス 週 刊 誌 I n d i a To d a y に よ る 大 学 ラ ン キ ン グ 。4 5 0 人 の 学 者 を 対 象に行ったアンケート調査の結果により集計。研究、威信、カリキュラム等の7 つ の 分 野 に 関 し て ス コ ア を 集 計 。 A r t s , S c i e n c e , E n g i n e e r i n g , C o m m e r c e , L a w, Medicine の 各 分 野 に つ い て ト ッ プ 10 大 学 を 掲 載 。 67 Chinese University Ranking [en.netbig.com] 中 国 の 大 学 ラ ン キ ン グ 。H P で 公 開 。1 9 9 9 年 か ら 2 0 0 1 年 ま で が 公 開 さ れ て い る 。 対 象 は 9 9 2 校 ( 2 0 0 1 年 版 )。 評 判 ( 1 5 % )、 研 究 水 準 ( 2 0 % )、 研 究 成 果 ( 2 2 % )、 学 生 ( 1 2 % )、 学 位 取 得 教 員 比 率 ( 1 9 % )、 教 育 環 境 ( 1 2 % ) と い う 6 つ の 領 域 に ついてスコアを計算して、総合スコアを作成している。1位は同率で北京大学と 清華大学。3位が復旦大学。 国際的ランキング ここまで見てきたランキングは、基本的に同一国内の大学をランキング対象と したものであった。それ以外にも、複数の国の大学を対象とした国際的なランキ ングも存在する。以下に国際的な大学ランキングの例を見ていく。 The Gourman Report 大 学 ラ ン キ ン グ の さ き が け と し て は 、初 版 が 1 9 6 7 年 に 出 版 さ れ た T h e G o u r m a n Report が 上 げ ら れ る 。 こ の 本 は し ば し ば 日 本 に お い て も 大 学 ラ ン キ ン グ の 代 表 で あるかのように語られるが、そのランキング作成方法には不透明な部分が多く、 研究者からの批判も絶えない。 Asiaweek's Best Universities 2000 A s i a w e e k 誌 が 行 っ て い た 、日 本 を 含 め た ア ジ ア 各 国 の 大 学 に 関 す る ラ ン キ ン グ で あ る 。 1997 年 か ら 2000 年 ま で 4 回 に わ た っ て に ラ ン キ ン グ が 作 成 ・ 発 表 さ れ た が 、 2001 年 か ら は ラ ン キ ン グ の 作 成 を や め て し ま っ て い る 。 対 象 校 は 1997 年 の 50 校 か ら 2000 年 に は 79 校 ま で 増 え て い る が 、 そ の 間 に 入 れ 替 わ り も あ り 、 4 年 間 で 登 場 し た 学 校 は 100 校 を 超 え て い る 。 ラ ン キ ン グ 作 成 の 方 法 は 、基 本 的 に US News の 方 法 を 踏 襲 し て い る 。学 問 的 評 判,学生の選抜性,教授団,研究成果,財政資源という5つの分野についてそれ ぞれ複数の指標からスコアを作成し、それらを合成した総合スコアによって順位 をつけている。学際領域(総合大学)のランキングだけでなく、科学工学大学院 を 対 象 と し た ラ ン キ ン グ も 発 表 し て お り 、 こ ち ら は 35 校 ( 2000 年 度 ) が ラ ン キ ングされている。 68 4 職業大学院に関するランキング 今 ま で 述 べ て き た の は 学 部 段 階 お よ び 研 究 大 学 院 ( Ph.d を 付 与 す る も の ) が 中 心 だ っ た が 、そ れ 以 外 に も 職 業 大 学 院( Professional School)に つ い て も 多 く の ラ ンキングが発表されている。これらの学校は、キャリアと直結しているだけに、 入学希望者を対象として、自分への「投資先」を選ぶガイドといった目的をもっ たものが多く見受けられるのが特徴である。 ビジネススクール(独自調査を行っているもの) 入学する学生の視点から見て、最も国際化していると考えられるのはビジネス スクールである。こういった状況を反映して、複数国のビジネススクールを対象 と し た 国 際 的 ラ ン キ ン グ が 行 わ れ て い る 。以 下 に そ の い く つ か を 紹 介 し て お こ う 。 F i n a n c i a l Ti m e s M B A A n n u a l R a n ki n g s [ w w w. f t . c o m / f t s u r v e y s / s p 8 8 8 e . h t m ] U K の 経 済 誌 F i n a n c i a l Ti m e s に よ る ラ ン キ ン グ 。 M B A に つ い て は 各 国 の 7 5 校 が 対 象 。 学 校 へ の 調 査 、 卒 業 生 調 査 と 独 自 調 査 の 合 計 。 経 済 効 果 ( 収 益 率 等 )、 多 様 性 ( 外 国 人 教 員 比 率 等 )、 研 究 ( 雑 誌 論 文 数 等 ) の 3 分 野 に つ い て デ ー タ を 収 集 し、合計スコアを算出してランキング(ただし総合スコアの算出法はよくわから な い )。 相 対 的 に ス コ ア 算 出 さ れ て い る 。 1 位 は ハ ー ヴ ァ ー ド 大 。 Executive Education Ranking は 学 位 を 発 行 し な い プ ロ グ ラ ム が 対 象 。 主 に 満 足 度 を 測 る 顧 客 調 査 が も っ と も 大 き な ウ ェ イ ト ( 70% ) を 占 め 、 学 校 調 査 が 残 り を 占 める。それぞれの要素について相対的にスコア算出。オープンコースとカスタマ イ ズ コ ー ス 別 に ラ ン キ ン グ を 提 示 。 ト ッ プ は フ ラ ン ス の Insead。 オ ー プ ン コ ー ス ではコロンビア大が1位。 B u s i n e s s We e k B e s t B - S c h o o l s [ w w w. b u s i n e s s w e e k . c o m / b s c h o o l s / i n d e x . h t m l ] 雑 誌 B u s i n e s s We e k に よ る M B A の ラ ン キ ン グ 。 特 集 記 事 。 1 9 8 8 年 か ら 2 年 ご と に公表。卒業生調査と企業人事担当者調査のスコアを均等にウェイト付けしてラ ン キ ン グ を 作 成 。2 0 0 0 年 は さ ら に 学 会 誌 等 へ の 影 響 力 を 1 0 % 加 味 。ラ ン キ ン グ 発 表 は 上 位 30 校 。 ト ッ プ は ペ ン 大 ウ ォ ー ト ン ス ク ー ル 。 69 P r i n c e t o n R e v i e w To p B u s i n e s s S c h o o l s R a n k e d b y C a t e g o r y [ w w w. r e v i e w. c o m / B u s i n e s s / t e m p l a t e s / t e m p 2 . c f m ? t o p i c = f i n d & b o d y = r a n k / i n d e x . c f m & Link=Rank.cfm&special=Business.cfm] 学生アンケートのみによるランキング。研究、設備、就職等の分野別にランキ ング。 Business School research Rankings [ w w w. t e r r y. u g a . e d u / ~ a d e n n i s / r a n k i n g s / ] 1 9 8 6 年 か ら 9 8 年 ま で の 、主 要 2 0 研 究 雑 誌 に 掲 載 さ れ た 論 文 の ペ ー ジ 数 を カ ウ ントし、著者の大学別に集計。各誌の総ページ数によりウェイトづけした上で、 上 位 100 大 学 を ラ ン キ ン グ 。 総 合 ラ ン ク と 、 8 つ の 分 野 別 ラ ン キ ン グ が あ る 。 Official MBA Guide: MBA Program Ranking and Screening [unicorn.us.com/guide/mbarank.html] Unicorn Research Corporation と い う 企 業 が 運 営 す る 、 学 生 向 け の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル 選 択 補 助 H P 。ま ず は 地 域 、修 学 形 態 と い っ た 項 目 を 選 択 肢 、次 に 教 育 内 容 等 に 関 す る 20 項 目 に ウ ェ イ ト 付 け を し 、 最 後 に 3 カ テ ゴ リ ー 21 項 目 の 質 問 に 答 え ると、条件に見合うビジネススクールをリストアップしてくれる。 S u c c e s s M a g a z i n e To p B u s i n e s s S c h o o l s f o r E n t r e p r e n e u r s [ w w w. s u c c e s s m a g a z i n e . c o m / 2 5 b e s t s c h o o l s . h t m l ] ア メ リ カ の 『 Success Magazine』 誌 に よ る 起 業 家 の た め の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル ラ ン キ ン グ 。 上 位 25 校 を 発 表 。 B-School Net [ w w w. b - s c h o o l - n e t . d e / ] 独 自 ラ ン キ ン グ は ド イ ツ 国 内 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル が 対 象 。 学 生 13000 人 ( 回 答 は 2 7 9 1 人 )対 象 の ア ン ケ ー ト に よ り 、「 授 業 に お け る 教 員 の 質 」「 教 員 に よ る 学 習 の サ ポ ー ト 」「 図 書 館 の 質 」「 I T 施 設 の 質 と 使 い や す さ 」「 学 生 活 動 の 質 と 量 」 と いった分野別にランキング。ベスト5のみ発表。その他、各種ビジネススクール ランキング(ドイツ以外含む)へのリンクあり。 C o m p u t e r w o r l d To p Te c h n o - M B A S u r v e y [ w w w. c o m p u t e r w o r l d . c o m / c w i / s t o r y / 0 , 1 1 9 9 , N AV 4 7 - 6 8 - 8 7 - 1 6 8 _ S T O 4 2 3 7 7 , 0 0 . h t m l ] 情 報 産 業 に 関 す る 週 刊 誌『 Computerworld』に よ る「 明 日 の 技 術 界 を 支 え る リ ー 70 ダー教育」という視点からのランキング。企業の採用担当者への調査と、教育プ ロ グ ラ ム 、 就 職 率 を 組 み 合 わ せ て 、 上 位 25 大 学 を 発 表 。 To p 2 5 A s i a - P a c i f i c M B A s [ w w w. a s i a - i n c . c o m / i n d e x . p h p ? a r t i c l e I D = 1 9 9 8 ] シ ン ガ ポ ー ル の ビ ジ ネ ス 誌 『 Asia-Inc』 に よ る ア ジ ア 太 平 洋 地 区 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル ラ ン キ ン グ 。 教 員 、学 生 の 質 、 評 判 の 3 分 野 に つ い て の ラ ン キ ン グ 1 0 位 ま で と 、総 合 ラ ン ク 2 5 位 ま で を 発 表 。各 校 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 か ら ラ ン ク 付 け し て いる。 BRW - Business Schools Lack the IT Factor [ w w w. b r w. c o m . a u / n e w s a d m i n / s t o r i e s / b r w / 2 0 0 0 0 1 1 4 / 4 5 9 5 . h t m ] オーストラリアのビジネス雑誌,卒業生へのアンケート調査によるランキング 調査項目は学生の管理的,リーダーシップ的,企業家的,工学的及びチームワー ク的能力の開発,就職サービス,学問の幅,産業との連携,学生の学習負担 メルボルン大学のビジネススクールがトップ ビジネススクールランキング(2次資料を使用したもの) M arr/K i rkw ood Side by Side Comparison of International Business School Rankings [ w w w. b s c h o o l . c o m / i n t l s b y s . h t m l ] ビ ジ ネ ス ス ク ー ル に 関 す る 1 0 の ラ ン キ ン グ を 比 較 し て い る 一 覧 表 。順 位 と 大 学 名 の み を 掲 載 。ラ ン キ ン グ 対 象 が 主 体 に よ り 異 な る の で 、直 接 的 な 比 較 は 難 し い 。 掲 載 ラ ン キ ン グ は Commission B u s i n e s s We e k , A s i a We e k , A s i a I n c . , B u s i n e s s E d u c a t i o n (Europe), Asia Business, Financial Ti m e s , Canadian Business, B E C ( A s i a ) , I n d i a To d a y, T h e T i m e s 。 MBA Rankings - Pforzheim University [intl.fh-pforzheim.de/mba] ド イ ツ の P forzheim 大 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル に よ る 国 際 的 な ビ ジ ネ ス ク ー ル ラ ン キ ン グ 。 G o u r m a n R e p o r t , P r i n c e t o n R e v i e w, B u s i n e s s We e k ( 2 ) , E c o n o m i s t , O f f i c i a l Guide to MBA-Programs published by the Graduate Management Admission Council ( G M A C ) . の 6 つ の デ ー タ を 集 計 し て 、 評 判 、 G M AT 平 均 得 点 、 入 学 許 可 率 と い っ た カ テ ゴ リ ー に 世 界 の 50 校 を ラ ン キ ン グ 。 71 ロースクール Cost-B enefit Analy sis of A merican Law School s [ w w w. i l r g . c o m / s c h o o l s / a n a l y s i s / ] USNWR に よ る ラ ン キ ン グ を 、 修 学 費 用 と 卒 業 後 の 平 均 給 与 の 面 か ら 再 評 価 し た ラ ン キ ン グ 。 Internet Legal Resource Guide が 作 成 。 そ の 他 、 各 分 野 別 の ラ ン キ ングもある。 My Law School Rankings [ w w w. m y l a w s c h o o l r a n k i n g s . c o m / ] 評判、学生の質、学生教員比、就職状況、教育の質の5分野に関してユーザー が ウ ェ イ ト 付 け を 選 択 し て 、 米 国 内 の 164 の ロ ー ス ク ー ル を 独 自 に ラ ン ク 付 け で き る H P 。 デ ー タ は USNWR な ど 他 紙 の も の を 使 用 。 New Educational Quality Ranking of U.S. Law Schools for 2000-2002 [ w w w. u t e x a s . e d u / l a w / f a c u l t y / b l e i t e r / L G O U R M E T. H T M ] USNWR の ラ ン キ ン グ へ の 批 判 と し て 、 テ キ サ ス 大 の Leiter 教 授 が 発 表 。 教 員 の 質 、学 生 の 質 、そ し て 授 業 の 質 と い う 3 つ の カ テ ゴ リ ー に よ っ て 、上 位 5 0 大 学 を発表。 The Ranking Game [ m o n o b o r g . l a w. i n d i a n a . e d u / L a w R a n k / r a n k g a m e . h t m l ] I n d i a n a 大 教 授 に よ る 。ユ ー ザ が 独 自 に 基 準 を 設 定 し て 、ラ ン キ ン グ を 作 成 で き る J AVA ア プ レ ッ ト 。 ラ ン キ ン グ 作 成 と と も に 、「 ラ ン キ ン グ ・ ゲ ー ム 」 の 危 険 さ を知らせることが意図されている。 T h e S t u d y o f P h i l o s o p h y i n L a w S c h o o l s a n d To p L a w S c h o o l s f o r P h i l o s o p h y [ w w w. b l a c k w e l l p u b l i s h e r s . c o . u k / g o u r m e t / R a n k i n g s . h t m ] 法思想の分野における大学院ランキング。総合ランク以外にも、分野別ランキ ング等がある。その他、教授リストなどあり。 Thomas E. Brennan's Judging the Law Schools [ w w w. i l r g . c o m / r a n k i n g s / ] ア メ リ カ 弁 護 士 協 会 が 収 集 し た デ ー タ に 基 づ い て 、 Brennan 元 ミ シ ガ ン 最 高 裁 72 長官が作成したランキング。データは機関、教員、多様性、図書館、費用等の5 つ の カ テ ゴ リ ー ・ 50 項 目 か ら な る 。 そ れ ぞ れ の ラ ン キ ン グ に 加 え て 、 Quality、 Composite と い う 2 つ の 独 自 ラ ン キ ン グ が あ る 。 い ず れ も 上 位 20 校 を 発 表 。 5 考察 以 上 見 て き た よ う に 、大 学 ラ ン キ ン グ は そ の 対 象 と な る 学 校 の 種 類 の み な ら ず 、 空間的にも広がりを見せている。主流となっているのは各国内の大学、しかも学 部段階を対象とした総合的なランキングであるが、アメリカに関してはランキン グそのものも細分化され、消費者の多様なニーズに応じた形で提供されていると いえる。また、これはビジネススクールにおいて顕著であるのだが、学生市場自 体のグローバル化に伴い、大学ランキングもグローバル化する傾向が見られる。 誰のためのランキングか こうしたランキングの読者、あるいは消費者としてまず第一に想定されている のは、進学希望者である。進学希望者が学校を選択する際の参考となるような情 報の提供である。進学者のニーズが多様になれば、それだけ多様なランキングが 発表される。 しかしながら、進学者のニーズに対応するだけならば、必ずしもランキングを 作成する必要はないはずである。にもかかわらずこれだけランキングが流行して いるのは、やはりランキングそれ自体にも需要が存在していると見るべきであろ う。学校関係者、あるいは経営者にとっては、自分の学校がどのような位置付け をされるのかは重要な問題である。また卒業生にとっても興味をそそるものとな る だ ろ う 。U S N e w s 誌 、d e r S t e r n 誌 や T i m e s 誌 の よ う な ラ ン キ ン グ の 発 行 主 体 は 、 必ずしも教育に特化した新聞・雑誌ではなく、むしろ広く一般読者を対象にして いることからみても、ランキングへの関心は広がっていると考えられる。こうし て「ランキング市場」ともいうべきものが成立しているのかもしれない。それは 複数のランキングを横並びに比較するような情報が登場していることからも明ら かである。 ランキングの対象と手法 ランキングが対象とするのは、基本的に各国で上位と見られている大学に限ら れ る 。す な わ ち To p o f To p s を 明 ら か に す る の が 目 的 で あ る 。そ の 手 法 は 、U S N e w s 73 の方法が1つのスタンダードとなっていることがわかる。多様な指標を用い、そ れらにウェイトをかけて総合スコアを算出する、という手法である。スポーツで あれば成績、企業ランキングであれば売上や資産といった明確な基準があるが、 大学ランキングではその中心となっているのは「評判」である。 しかし総合スコアを算出するためのデータ収集方法にはいくつかの方法が見受 けられる。各機関に対して独自に調査を行う、というのが最も一般的な手法であ る。ただし、これはいわば「自己申告」されたデータなので、信頼性には若干の 問題がある。また公的機関から多くのデータが提供されている場合はそちらが使 用 さ れ る 傾 向 に あ る 。 ア メ リ カ に お け る NRC デ ー タ や イ ギ リ ス に お け る HEFCE のデータがそれにあたる。その他には、機関ではなく個人にアンケートを取って 集計する手法も多く見られる。ただしその対象は学生、卒業生、企業の採用担当 者、教員といったように様々である。 商業的な部分を加味すると、ランキングは変動する。その変動は、毎年計算手 法を微妙に変化させることにより発生している。当然のことながら、こういった 手法には研究者を中心に批判も多い。 最近では2章でも述べられているように、個人でも電子化された機関データに 容易にアクセスできるようになってきた。発表方法に関しても、インターネット を利用することで安価かつ用になった。それを受けて、個人でランキングを発表 したり、あるいはデータのウェイト付けを変更して、ユーザが独自にランキング を作ることが出来るようなものもいくつも出来上がっている。 ランキングという情報 情報の提供という視点から見ると、ランキングという形態が登場するには正反 対の2つの状況が考えられる。まず第一に、情報そのものが極端に少ない場合で あ る 。 The Gourman Report や US News が 最 初 に 情 報 を 提 供 し た 当 時 に は 、 そ も そ も 大 学 に 関 す る 情 報 が 少 な か っ た 、と い う 状 況 が 考 え ら れ る 。し た が っ て 、「 情 報 を売る」という形態が成り立っていたと考えられる。 第二の状況は、情報過多である。2章で明らかにされたように、現在ではイン ターネットを含めた電子媒体を利用することで、大学に関する多種多様な情報を 得ることができる。しかし、あまりにも情報が多すぎると、かえって混乱が生ま れる。ランキングとは一元的な情報であり、情報の種類としては最もわかりやす いものである。様々な情報をニーズに合わせて加工することで、情報に価値が生 まれるのである。 と同時に、個人が大学に関するさまざまな情報を用意に収集することが可能と 74 なっている。それに伴い、それらの情報を加工して、個人がランキングを作成す ることも十分可能である。かつてはそういった情報を公表するには、新聞や雑誌 といった媒体が必要であったが、インターネットの普及によって個人でも低コス トで世界中に情報を発信することが可能になっている。 ランキングの今後 こうしたランキングは今後どのようになっていくのか。大学に関する情報は今 後ますます公開されていくものと考えられるし、公的な機関が公表する情報もま すます増えていくだろう。しかし、情報が増えれば増えるほど、情報を縮減し、 あるいは一覧性を高めることへの需要は高まっていくと考えられる。 参考文献 間 渕・大 多 和・小 林 2 0 0 2 ,「 市 場 型 大 学 評 価 ― 正 当 化 と セ ル フ ・ フ ィ ー デ ィ ン グ の 過 程 ― 」『 高 等 教 育 研 究 』 第 5 集 , 玉 川 大 学 出 版 部 。 75 第5章 日本の大学情報・大学評価情報 大多和直樹 ここでは、日本の大学情報について、①カテゴリーごとに典型的なソースのマッピ ングをし、次に②これらのソースの歴史的展開を押さえ、とりわけ新しいタイプの市 場型ともいえる大学情報に着目し、現在の状況を把握することを目的とする。 本 章 で は 、様 々 な 日 本 の 大 学 に か ん す る 情 報 を 表 の よ う に カ テ ゴ ラ イ ズ し て 捉 え る 。 以 下 、 ① 大 学 の 網 羅 的 情 報 、 ② 統 計 、 ③ 入 学 (受 験 )情 報 、 ④ 大 学 案 内 、 ⑤ 市 場 型 大 学 評価について見ていく。ただし、これらの総数は膨大な数に上る。ここでは、典型的 な も の を ピ ッ ク ア ッ プ し て 紹 介 す る 。 ま た 、 特 に 90 年 代 に 入 る と 市 場 型 大 学 評 価 と 呼ぶことができるマスコミを中心とした新たな形での大学情報が流通してきている。 本章では、特にこの動きに注目し、節を設けて扱う。 1 大学情報のマッピング 網羅的情報〜大学録 日 本 の 大 学 に か ん す る 情 報 の う ち 、古 く か ら 存 在 す る も の は 、「 大 学 一 覧 」と い っ た 形の網羅的情報である。機関別の所在地や学部・学科構成、設置年度、あるいは入学 定員などの極めて基礎的なデータが収録され、いわば大学録といった性格となってい る 。大 学 が ど こ に あ り 、ど の よ う な 学 部・学 科 が あ り 、規 模 は ど れ く ら い か と い っ た 、 大学の基礎的なプロファイリングが掲載されている。大学の外形ないしは「箱」に関 する情報であり、教育研究の質的な情報を直接掲載するものではない。 ◎ ◎ ◎ 76 − − − − − − − − − 介 の 紹 る 得 − − − 項 徴 筆 事 特 査 特 関 の 機 ラ ン 識 調 − − − キ ン グ に よ 集 )情 報 易 度 績 試 (募 究 業 − − − 意 − − − 入 − − − 入 − − ○ 研 設 費 ・財 務 等 − − ○ 員 数 員 学 生 実 員 − ○ ○ 試 難 先 ・連 絡 生 定 学 在 地 ◎ ◎ − 経 文教協会 大学基準協会 施 原書房 全国大学一覧 大学一覧 教 大学の網羅的情報 全国学校総覧 所 大 学 名 の 網 羅 点 計 ・叙 述 算 図 表 5‑1 △…定員の集計は、学 部別集計のみ 機関別データ 大 学 一 覧 (大 学 基 準 協 会 ) 機関別に学部学科・研究科にかんする基礎的なデータを掲載。データは、大学を基 準 協 会 の 会 員 資 格 (維 持 会 員 ・ 賛 助 会 員 等 )ご と に わ け て 欄 を 作 成 し た う え で 、 各 大 学 とも学部ごと掲載されている。 入学定員は総数で、編入枠を添えて掲載されている。在籍学生数があることが特徴。 ま た 、教 員 数 は 専 任 、兼 担 、兼 任 別 に 提 示 さ れ 、ま た 教 員 と 助 手 を 別 に 掲 載 し て い る 。 録 法 収 学 生 数 学 定 員 入 手 数 助 員 数 教 調 査 単 位 図 表 5‑2 大学一覧 大学基準 協会 学部別 専任、兼担 当、兼任別 ○ 総数・編入枠も ○ 会員区分別 全国大学一覧 文教協会 学科別 − × 臨定数を明記 − 一覧 全 国 大 学 一 覧 (文 教 協 会 ) その年度に存在する国公私立大学の大学名一覧から始まり、個別機関の基礎的な情 報を掲載する。典型的な、大学録であり、大学番号順の網羅的な掲載となる。機関の 住 所 、 学 長 名 、 学 部 学 科 名 (学 部 長 名 )、 学 科 別 入 学 定 員 、 設 置 年 お よ び 変 遷 を 掲 載 し て い る 。 定 員 は 、 学 科 ご と に 示 さ れ 、 上 記 の 大 学 一 覧 (大 学 基 準 協 会 )よ り も 細 か い 単 位となる。さらに常時の定員と臨時定員が別に占められていることが特徴である。教 員数については、総数のみ掲載である。 全 国 学 校 総 覧 (原 書 房 ) 大学から幼稚園まで、日本にある全ての学校を網羅した学校名鑑である。大学に関 し て は 、 校 名 、 学 長 名 、 学 部 構 成 お よ び 学 生 数 (男 女 別 )、 郵 便 番 号 、 所 在 地 、 電 話 が 記載される。 統計 学校基本調査報告書 文 部 省 に よ る 学 校 基 本 調 査 の 報 告 書 で あ る 。 学 生 定 員 、 教 員 数 、、 施 設 、 財 務 、 卒 業 者 数 、卒 業 後 の 進 路 に か ん す る デ ー タ が 載 せ ら れ て い る 。集 計 は 、総 数 、、お よ び 県 別 、 設 置 者 別 、 分 野 (学 部 )別 な ど で 行 わ れ る 。 77 私立学校の財務状況調査 文 部 省 に よ る 統 計 調 査 。大 学 に か ん す る デ ー タ と し て は 、収 入 に つ い て A 一 般 収 入 ( a . 学 生 生 徒 納 付 金 、b 手 数 料 、c 寄 付 金 、d 補 助 金 、e 資 産 運 用 収 入 、f 資 産 売 却 収 入 ) 、 B 事 業 収 入 (1 医 療 収 入 、 2 そ の 他 )、 C 借 入 金 等 収 入 (1 長 期 借 入 金 収 入 、 2 短 期 借 入 金 収 入 、 3 学 校 祭 収 入 )の 項 目 が 設 け ら れ て い る 。 ま た 支 出 に つ い て は 、A 消 費 的 支 出 (a 人 件 費 、 b 教 育 研 究 費 、 c 管 理 経 費 )、 B 資 本 的 支 出 (a 施 設 費 、 b 設 備 費 )、 C 債 務 的 支出の項目がある。学部別等に集計がなされている。 介 の 紹 る 得 徴 項 特 筆 事 特 機 関 の 査 キ ン グ 識 調 試 難 試 (募 究 業 費 ・財 設 ラ ン − − 意 − − 入 − 入 − 研 ○ 経 ○ 施 − 績 務 等 員 員 数 学 教 生 実 員 生 定 学 所 − に よ 集 )情 報 易 度 先 ・連 絡 大 学 名 在 地 の 網 羅 点 計 ・叙 述 算 図 表 5‑3 統計 学校基本調査報告書 文部省 私立学校の財務状況 文部省 調査 ○ ○ − ○ − ○ − − − − − − − − − 卒業後の状況調査、卒 業者数 − 入試・受験情報 一般の人が触れる大学にかんする情報としては、受験情報という形で接することが 多いと考えられる。これらは、民間の予備校や受験産業等によって情報が提供されて い る も の と 、入 試 セ ン タ ー な ど が 公 的 な 受 験 案 内 と し て 情 報 提 供 し て い る も の が あ る 。 前者は、いわゆる偏差値を中心に、受験科目および配点、受験および合格発表の日程 等で構成されるものの、大学の所在地等にかんする基礎的なデータを掲載している。 また、近年では、大学入試センターによるウェブ上での受験情報検索など、公的機関 によるデータベースも登場している。 よ ン る キ 得 ン 点 グ 計 機 算 関 の 特 徴 特 の 筆 紹 事 介 項 ・叙 述 調 査 識 意 入 入 に 度 試 難 易 (募 集 試 業 績 究 研 − − − − ◎ − − − − ○ − ○※ − − − − − ◎ − − − − ○ ○ − − − − − − ◎ − − − − ○ − − − − − − − − ○ − − − ラ − 施 経 設 員 数 費 ・財 務 等 実 員 生 教 − 学 ○ 所 ○ 大 学 生 定 員 地 ・連 在 )情 先 絡 羅 の 網 名 学 報 図 表 5‑4 入学情報 大学進学情報一覧 大学入試センター 国公私立大学ガイド ブック 大学入試センターハー トシステム 全国大学偏差値一覧 国大協/公大協/入試セ ンター 大学入試センター サンデー毎日 78 機関別の入学広報資料 の一覧 入試日程、課目、配点等 ※定員は、入試区分ごと 入試関係のデータベー ス サンデー毎日・全国大学偏差値一覧 週刊誌のサンデー毎日に掲載される偏差値情報。偏差値に特化して、提供。有名予 備 校 が 算 出 し た 難 易 度 (偏 差 値 ) を 集 め 、 予 備 校 ご と に 比 較 す る こ と が で き る 。 国公私立大学ガイドブック 国立大学協会、公立大学協会、大学入試センターが共同編集で提供される情報で、 受験の条件、試験の科目、配点等がきめ細かく載せられている。 大 学 入 試 セ ン タ ー ハ ー ト シ ス テ ム ( h t t p : / / w w w. h e a r t . d n c . a c . j p / ) 大学入試センターが提供する受験情報。民間のデータが、入学難易度を中心に構成 されているのにたいして、このシステムは、大学の提供するサービスを中心に検索が できるようになっている。地域、国公私、昼間・夜間、資格取得の有無、就職先主要 業 種 、 初 年 度 納 付 金 等 か ら 該 当 す る 大 学 を 選 択 す る こ と が で き る 。 ま た 、 AO 入 試 や 推薦入学の有無等を入れて検索をすることが可能となっている。期間中は、国公立大 学の志願状況もみることができる。 個別大学が公開する入試等にかんするデータを一括して、このホームページから得 られるようになっている。 大学案内 以前のように入学難易度を唯一の軸とした受験情報に限定されなくなってきている。 近年になって、とくに大学院や社会人のための大学選びなど、大学入学案内も多様化 してきた。様々な角度からの大学案内がでてきている。 − △ − − − △ − 介 項 筆 事 関 の 特 徴 の 紹 よ る 得 に 査 キ ン グ 識 調 易 試 難 試 (募 度 )情 報 研 特 − ○ 機 − ○ ラ ン ○ ○ 意 △ 入 − 入 − 経 − 究 業 費 ・財 設 ○ 施 教 ○ 績 務 等 員 数 学 生 実 員 員 ○ 集 先 ・連 絡 生 定 学 在 地 所 大 学 名 の 網 羅 点 計 ・叙 述 算 図 表 5‑5 大学案内 リフレッシュ教育 大学図鑑 大学案内 − − ◎ − − − △ − △ − − − 文部省 オバタカズユキ&石原壮一 郎(ダイヤモンド社) 79 △ − − − − ◎ ◎ 社会人に開かれた大学 ※社会人受け入れ学部 の定員と、社会人枠につ いて 学生の気質に特に重点 大学の文化・環境に注 目 「リフレッシュ教育──社会人に開かれた大学ガイド」 新 し い 大 学 を め ぐ る 動 き に 対 応 し て 、文 部 省 が 提 供 す る 情 報 で あ る 。こ こ で は 、「 リ フレッシュ」という概念が用いられている。知識社会化を受けて社会と大学との関係 変 化 に 伴 う 対 応 で あ る 。こ こ で は 、社 会 人 学 生 に と っ て は 、「 日 頃 、職 業 生 活 、社 会 生 活に忙殺されがちな、社会人・職業人にとって、大学という自由で学問的な雰囲気の 中 で 、新 し い 知 識 を 得 、異 な っ た 経 験 や 考 え 方 を 持 っ た 多 様 な 人 々 と ふ れ 合 う こ と は 、 何 よ り の リ フ レ ッ シ ュ に な り ま す 」、ま た 産 業 界 に と っ て も 知 識・技 術 の 陳 腐 化 の 速 度 がかつてなく早まるのをうけての新しい人材の養成の場としての大学を利用する動き となる。 データは、社会人を受け入れる大学を掲載し、大学ごとに受け入れる学部・学科の 定 員 (総 定 員 と 社 会 人 枠 )、 選 抜 方 法 、 出 願 資 格 、 入 学 時 期 、 授 業 料 、 社 会 人 学 生 の 利 用可能な精度、募集要領の配布時期、受付時期、試験日程が提供されている。 大学図鑑 9 0 年 代 以 降 に 登 場 し た 新 し い タ イ プ の 大 学 案 内 で あ り 、極 め て ポ ッ プ な 情 報 と な る 。 「学生の気質」や「世間の評判」といった側面から大学を照射する。また、大学の所 在 地 周 辺 の 土 地 の 環 境 な ど 、文 化 的 な 側 面 か ら 捉 え る 。「 ○ ○ 学 部 る 」「 ○ ○ 学 部 別格 貴族人 一番楽とされてい 雲 上 人 」「 孤 独 を も て あ ま す 金 太 郎 飴 」な ど の 言 葉がならび、知る人ぞしる大学の持つイメージを描き出す。 網羅はせず、有名な大学を中心に大学をピックアップして、紹介するものが多い。 充実する大学案内 9 0 年 代 に は 、以 下 の よ う な 特 色 あ る 大 学 案 内 が 登 場 し は じ め て い る 。社 会 人 入 学 や 、 大学院案内も登場してきているのである。 図 表 5‑6 お嬢さま大学 世界文化社 音楽大学・学校案内 音楽之友社 ミッション大学 世界文化社 ナースのための大学・大学院案内 学習研究社 理学工学系大学院案内 東京図書 ライオン社 首都圏大学・大学院社会人入学案内 全国大学院受験案内 晶文社出版 80 採用状況・就職 受 験 の 難 易 度 と と も に 、卒 業 後 ど の 大 学 か ら ど こ に 就 職 す る の か に も 、古 く か ら 関 心 が 寄 せ ら れ て き た 。い わ ば 、「 い い 大 学 か ら い い 会 社 」と い っ た 形 で 、入 試 難 易 度 と 卒業後の就職状況はある意味学歴社会における学歴の効用をとらえるような共通の視 角を有していると見ることができる。 サンデー毎日・著名企業採用ランキング 企 業 別 に 、ど の 大 学 か ら 新 規 大 卒 を 採 用 し た か の ラ ン キ ン グ を 提 示 し て い る 。欄 は 、 企業ごとに提示され、まず、過去 2 年間の採用人数がのせられている。つぎに、人数 が多かった大学から、人数べつに大学名から列挙される紙面構成である。 評価情報 国立大学における教養教育の取組の現状 △ − 識 調 試 難 − 査 に よ る キ 得 ン 点 グ 計 機 算 関 の 特 徴 特 の 筆 紹 事 介 項 ・叙 述 △ 意 − − − ラ ン 集 )情 報 易 度 − 入 績 入 試 (募 研 設 員 数 ○ 究 業 等 ○ 教 学 生 実 員 員 ○ 費 ・財 務 先 ・連 絡 生 定 学 在 地 ○ 経 ○ 施 大学評価 国立大学における教 養教育の取組の現状 − 実状調査報告書 − 大学評価・学位授与機構 所 大 学 名 の 網 羅 図 表 5‑7 − 実状調査報告書 大学評価・学位授与機構の一連の大学評価活動の一環として行われた調査の報告書 で あ る 。国 立 大 学 お よ び 国 立 の 高 等 教 育 機 関 の 各 機 関 に つ い て 1 対 象 機 関 の 概 要 、2 教養教育に関するとらえ方、3 教養教育の目的及び目標、4 教養教育に関する取組 (( 1 ) 実 施 体 制 ( 2 ) 教 育 課 程 の 編 成 及 び 履 修 状 況 ( 3 ) 教 育 方 法 ) 、 5 変 遷 及 び 今 後の方向の項目で記述がなされる。 新しいタイプの市場からの情報 9 0 年 以 降 に 新 し い タ イ プ の 大 学 情 報 が 提 供 さ れ る 。今 ま で に な か っ た よ う な 、大 学 のサービスの質を見ようとするものである。ここでは、独自に調査をして、そうした 質をベンチマークする形式のものが多くなってきている。 81 − ○ ○ − − − − ○ △ − − − − − − △ − − − − − ○ 度 )情 報 識 調 易 試 難 試 査 に よ ン る キ 得 ン 点 グ 計 機 算 関 の 特 徴 特 の 筆 紹 事 介 項 ・叙 述 − ラ △※ 意 ○ 入 ○ 入 − (募 ・財 究 業 費 研 経 設 施 教 − 績 務 等 員 員 数 学 生 実 員 生 定 − 学 − 所 − 大 △ 集 先 ・連 絡 在 地 学 名 の 網 羅 図 表 5‑9 市場型大学評価 満足度・認知度調査 カレッジマネージメント(誌 上) 日本の大学 河合塾・東洋経済 大学ランキング 朝日新聞・ベネッセ 役に立つ大学 週刊ダイヤモンド(誌上) 潰れる大学・伸びる大 学 梅津和郎(エール出版) − △ − − − ○ − − − △ △ − ◎ ○ ○ △ ○ ○ ○ − ◎ ◎ − ○ − ○ ◎ − − △ − △ ○ 募集情報は特に、一芸 入試やAOなどの新タイ プ入試 募集情報は特に、一芸 入試やAOなどの新タイ プ入試 カレッジ・マネジメント 「 大 学 別 満 足 度 調 査 」 は リ ク ル ー ト 社 の 「 カ レ ッ ジ ・ マ ネ ジ メ ン ト 」 誌 上 に 、 1992 年以降、2 年に一度行われている大学評価である。当初は、大学の満足度調査から始 まり、後に改革の認知度へと、評価の視点を転換させた。この視点の転換は、日本の マスコミによる大学評価の方向性を見る上で重要である。 カレッジ・マネジメント誌は、学生を対象に意見を調査し、学生の視点から見た大 学評価という性格を前面に打ち出した。この視点の背景には、これからは大学は入学 難易度ではなく、学生すなわち消費者がどれだけサービスから利益を得るかであると い う 考 え 方 が あ る 。こ こ か ら 大 学 評 価 偏 差 値 に よ る 大 学 評 価 か ら の 脱 却 し 、「 東 大 が 一 番にならないような」大学評価を企図したのである。すなわち、カレマネ誌によれば 「どうしても最初にまず偏差値が出てくる。受験生の受験学力水準を表す入試難易指 標といえる。しかし、そこからは、教育内容や大学それ自体の特徴をつかむことはで き な い 。」 と 教 育 そ の も の に ま な ざ し を 向 け る 。 こ こ で は 、「 大 学 教 育 を 一 つ の サ ー ビ スととらえ、学生を消費者と見た場合の 満足 という使用感を、大学の新しい見方 の一つとして提供できればということである」というように、大学を消費者という観 点から捉えている。ここでは、大学はサービスの提供者となり、様々な側面からその サービスの充実度を問われることになる。また、学生がこれらのサービスからどのよ うに消費者利益を得ているかも重要な視点となる。 項目としては、総合満足から、教育、人的交流まで学生の満足度を訊いている 「役に立つ大学」 「役に立つ大学」はダイヤモンド社の週刊ダイヤモンドの特集で、人事部から見た 大学、すなわち、大学のアウトプットである学生を人事部から様々な観点で評価する ものである。ここでは、言説集の②「偏差値という妖怪に縛られているのは受験生や 82 社会だけではないのだ。いま大学は生き残りをかけた改革に取り組んでいる。もしそ れに自信があるのなら堂々としていればいい。社会は卒業生という『製品』の出来栄 えで評価するはずだ。本誌が毎年調査する役に立つ大学は大学が取り組む改革への一 つ の 評 価 と 考 え て い る 」 労 働 市 場 =人 事 部 の 視 点 か ら の 学 生 を 大 学 教 育 の 「 製 品 」 と して評価する。大学の外部の企業という視点にまかせた評価のまなざしである。 評価は、ランキング形式でたとえば、○○年度の総合ランキング一位は○○大学と いった具合にセンセーショナルに提示される。項目としては、人事部から見たその大 学の学生の採用好感度から、問題解決能力、創造性などの評価をきいている。 「役に立つ大学」の誌面は、大学が本当に役に立つかどうかを人事部に訊いたらこ う な っ た と い う 、 大 学 教 育 を 挑 発 的 に 評 価 す る 。 マ ス コ ミ に よ る 90 年 代 の 大 学 評 価 には、一種のアカウンタビリティをチェックしてやろうという意図を多分に含んでい るといえるのかもしれない。 「大学ランキング」 つ ぎ に 、「 大 学 ラ ン キ ン グ 」や 後 述 す る「 日 本 の 大 学 」の よ う に で き る 限 り 多 様 な 指 標から、大学の姿を浮き彫りにしようとするものがある。 「 大 学 ラ ン キ ン グ 」は 、朝 日 新 聞 社 が ベ ネ ッ セ の 協 力 の も と 、1 9 9 2 年 よ り 毎 年 刊 行 され、多様な視点から大学の姿を浮き彫りにしている。第一に多様な評価者である。 高校生の進路指導の先生から評価した大学の情報発信である。こうした多様な評価者 を交えながら、ランキング的に編集している。第二に項目の多様さである。蔵書数、 教員の給料から、学生がファッション雑誌に登場する回数が多い大学など、きわめて 多様な、視点からの評価が見られる。一つ一つの項目ごとにランキングが出される。 当初ランキングは、大学評価というよりは、一つのマスコミ特有の情報の提示方法と しての側面が強かったが、現在では、こうした情報が他にないこともあり、このラン キング自体が市場・社会で影響力を持つようなところまで来ている。 「日本の大学」 日 本 の 大 学 は 、 河 合 塾 ・ 東 洋 経 済 に よ っ て 、 1 9 92 年 以 降 、 1 9 9 2 年 を の ぞ い て 毎 年 刊 行されている。入り口から、出口までの指標をそろえる。比較的伝統的、古典的なも のをベースにしながら、新しい視点を盛り込んでいる。このソースのねらいは、大学 をプロファイリングするものである。これは大学ごとに各指標についてデータが示さ れる。 83 2 大学情報の展開〜大学へのまなざしを中心に 90 年 代 以 前 の 第 三 者 に よ る 大 学 評 価 〜 学 歴 主 義 的 ま な ざ し 以上で行ったマッピングをもとに、そうした情報の変遷を、どういった目的で、大 学のどの側面を浮き彫りにしてきたかという、大学へのまなざしを中心に整理してみ る 。こ こ で は 、と り わ け 、9 0 年 代 以 降 の メ デ ィ ア に よ る 大 学 の 独 自 調 査 情 報 の 展 開 を 軸に進めたい。 9 0 年 以 前 に も 、第 三 者 に よ っ て 、様 々 な 大 学 に 関 連 す る 情 報 が 発 信 さ れ て い た 。そ の担い手は、受験産業によるものが一番多く、次いで情報産業、マスコミとなる。こ の 時 代 の 情 報 は 、偏 差 値 に 代 表 さ れ る よ う な 、大 学 の 入 試 難 易 度 に 集 中 し 、す な わ ち 、 学歴主義的な視角から、どれだけ学力レベルの高い大学か、といった観点から大学へ まなざしが向けられていたといえる。 大学の入り口にかんするものでは、偏差値情報の他、サンデー毎日にみられるよう な 有 名 大 学 合 格 者 ラ ン キ ン グ 等 が 有 名 で あ る 。サ ン デ ー 毎 日 で は 、○ ○ 年 か ら 、東 大 ・ 京大等への入学者の氏名を県、高校ごとに、掲載している。この企画は、同誌の目玉 記事となっている。ここでは、氏名の掲載だけでなく、有名大学入学者の人数が高校 別 に 集 計 さ れ 、受 験 で 高 い パ フ ォ ー マ ン ス を あ げ た 高 校 が ど こ で あ る か を 示 し て い る 。 このように、ここでも受験の観点が用いられているのである。出口についても、人材 がどのような大学からどのような企業へ輩出されるか、同じくサンデー毎日等の就職 先一覧といった情報が存在した。 対して、大学の中身については、こうした情報産業の独自の視点による調査と言う よりは、基礎的な入学金などデータ等大学が提供する情報をそのまま整理する傾向に あった。 90 年 代 以 降 の 第 三 者 に よ る 大 学 評 価 まなざしの多元化 こ れ に 対 し て 、9 1 年 の 大 学 設 置 基 準 の 大 綱 化 を 受 け た 市 場 / メ デ ィ ア か ら の 動 き と し て 捉 え る こ と が 可 能 で あ る と お も わ れ る が 、9 0 年 代 に 入 る と 本 発 表 で 扱 う 三 つ の ソ ースに代表されるような新しいタイプの情報が登場してきた。ここでは、学歴社会に おける威信の尺度に一元化された形で、大学の進学情報/状況や大学からの就職状況 を伝えるのではなく、①学生の満足度や高校の先生の薦める大学など、評価の主体の 84 多様化、②進学者数などのハードなデータ以外に、満足度にみられるように当事者の 感覚などを扱うようになってきたこと、③またハードなデータにおいても、教員の業 績、コンピュータ設備など評価の観点が多元化している等の特徴がある。まなざしは 多 元 化 さ れ た と 見 る こ と が で き る の で あ る 。9 0 年 代 の 第 三 者 に よ る 新 し い 大 学 評 価 の 切り口は、後に見ていくように消費者主義的ともいえる側面を基調にしたものが出て きたことなのである。大学への選抜の情報にとどまらず、教育サービスの充実度や、 それらへの満足度など、大学教育そのものへの評価のまなざしが向けられている。ま た、大学と中等教育/社会との連接する市場においては、誰がどこからどこにどれだ け入学/就職したかではなく、とりわけ労働市場において、価値のある人材をつくる 教育をするのはどこかという視角から評価が行われている。 消費者主義的まなざし〜主体と意図 新しい市場型評価の特徴は、学生を学歴主義社会の競争者という見方のオルタナテ ィブとして、学生を消費者として捉えるものである。まず、大学を入学市場、労働市 場の二つの市場を形成していると捉えられる。こうした見取り図の中に、消費主義の まなざしがどのように構成されるかを見ていく。 以 下 、 市 場 的 評 価 と し て 特 に 表 1 に あ げ る 「 日 本 の 大 学 」「 大 学 ラ ン キ ン グ 」「 役 に 立 つ 大 学 」「 カ レ ッ ジ ・ マ ネ ジ メ ン ト 」満 足 度 ・ 認 知 度 調 査 の ソ ー ス を 取 り 上 げ て 議 論 をする。まず、各ソースの主体とそのねらい・意図について概観する。 消費者主義的まなざしでは、教育をサービスと捉えるほか、従来、誰がどこに進学 するか/就職するかで捉えられていた大学と高校/社会との連接点における情報提供 に お い て 、教 師 や 人 事 部 と い っ た 関 係 者 に 大 学 の 有 効 性 を 訊 く ス タ イ ル に な っ て い る 。 ま た 、近 年 で は 大 学 の サ バ イ バ ル と い っ た こ と が 社 会 的 に 注 目 さ れ て き て い る 。こ こでは、どこの大学が「倒産」しやすいかといった問題が、ゴシップ的にも社会の関 心を集めてきている。この流れから大学を評価する情報も登場してきている。 市場型大学評価の見取り図 学歴主義の脱却と、消費者主義的まなざしの獲得のあと、これらの評価は市場に一 定 の 役 割 を も ち 、実 際 に 影 響 を も た ら す 段 階 へ と シ フ ト し つ つ あ る 。そ う し た 評 価 は 、 概念的にディメンジョンを整理すれば、次の二極の中に位置付く。 ひ と つ は 、 大 学 の 姿 を 良 く 理 解 す る た め の 評 価 で あ る 、 Formative な 評 価 で あ る 。 も う 一 つ は 、 大 学 の 良 し 悪 し の 判 断 を 評 価 す る Evaluative な 評 価 で あ る 。 85 今 見 た よ う に 、カ レ マ ネ は 典 型 的 な F o r m a t i v e な も の と し て 位 置 づ け ら れ る 。た い し て、人事部の評価こそに製品の価値が端的に現れるとする、役に立つ大学は、教育の 内容を理解するというよりも、一定の基準から、大学教育の良し悪しの情報を提示す る も の と な っ て い る 。 こ の 意 味 で 、 Evaluative な 評 価 の 性 格 が 強 い 。 中でも、朝日の大学ランキングは、面白い位置づけである。当初は、こうした中間 的なものとして、多様な情報提供目的とし、微妙な比重はあるものの両側面を内包し ていると考えられる日本の大学・大学ランキングとして整理できるものであった。し かしながら、市場において大学の質を評価する気運がある一方、大学の質についての 多元的なデータがない状況の中で、大学ランキングのデータは、参照される機会が多 くなってきている。情報枯渇状況のなかでの数少ない情報として、力を持ち始めてい る の で あ る 。 よ り Evlauative な 位 置 づ け の も の と し て 流 通 し 始 め て い る の で あ る 。 図 表 5‑9 学歴主義的まなざし 消費者利益主義的 まなざし 『日本の大学』 まなざしの獲得の段階から 評価のあり方の明確化 (東洋経済・河合塾) 『大学ランキング』 (朝日新聞社・ベネッセ) 「大学改革の認知度調査」 「役に立つ大学」 (『カレッジマネージメント』リクルート) (『週刊ダイヤモンド』ダイヤモンド社) Evaluative Formative 86 第6章 日本の大学ランキングの検証 小林雅之 1 大学評価の時代 様々な大学評価の中でわが国でこれまで体系的な検討の対象となってこなかったのが、 民間企業による大学評価や大学ランキングである。それはいわば市場の要求に根ざした、 大学評価の一形態とみることができる。大学総合教育研究センターでは、こうした大学 評価や大学ランキングについて、これを「市場型大学評価」と名付け、その特徴や問題 点を整理し、実証的なランキングの検証も試みている。このうち、国際的な大学評価や 大学ランキングについては、既に結果を公表しているので(間渕泰尚・小林雅之・大多 和直樹「市場型大学評価」日本高等教育学会編『高等教育研究』第5集 2002 年 ) 、 こ こでは日本の市場型大学評価について、検証を試みる。 わが国でも民間企業による大学情報の提供は、新しいものではない。受験雑誌あるい は予備校などは、大学の入試について志願倍率、あるいは合格者の偏差値などをさまざ まな形で提供してきた。わが国特有の「受験情報産業」は学歴主義社会の要求を反映し て発達したのである。 わが国に限らず、一般に高等教育システムは威信・資産・資金配分・入学学生・世評 などで機関類型や個別の教育機関の間で差異がある階層構造をなしている。この中で個 別教育機関の相違を測定するランキングはインフォーマルには様々な形で行われている。 しかし、わが国ではとりわけこうした階層構造を偏差値という一元的な基準で評価・ラ ンク付けし、それが社会的に大きな影響を持ってきたことが顕著な特徴となっている。 しかし、他方で、受験産業はそうした情報だけではなく、それぞれの大学の環境、学 費、また教育環境などのについての紹介も行ってきた。ただしそうした情報提供は、基 本的には大学によって提供された、いわばタテマエをそのまま伝えるものであった。 そうした形の情報提供を第一世代とすると、あきらかにそれとは異なる形での、いわ ば 第 二 世 代 の 情 報 提 供 が 199 0 年 代 に 入 っ て 行 わ れ る よ う に な っ た 。 そ の 代 表 的 な も の が、リクルート社の『カレッジマネジメント』における「満足度・認知度調査」、河合 塾・東洋経済の『日本の大学』各年版、朝日新聞社・ベネッセの『大学ランキング』各 年版、ダイヤモンド社の『週刊ダイヤモンド』 特集「役に立つ大学」である。これら は 199 1 年 の 大 学 設 置 基 準 の 大 綱 化 に と も な っ て 、 大 学 自 己 評 価 が 義 務 化 さ れ 、 社 会 一 87 般にも大学に対する評価の必要性が議論された時期にはじまった。 第一世代の情報と比べれば、これらは一方において、単なる偏差値指標だけでなく、 大学教育そのものに注目しようとした点において、学歴主義的志向からの脱却を志向す るものであった。他方でこれらは、大学のタテマエの紹介にとどまらず、その実態を詳 細なデータで示した。それだけでなく、さらに、これらは、大学教育そのものを、学生 の「 満 足 度 」、 あ る い は 高 校 教 師 、 企 業 の 人 事 担 当 者 の 意 見 を 聞 く こ と に よ っ て「 評 価 」 しようとしたのである。こうした意味で、大学を、大学の外の基準によってあえて横並 びに評価し、ランク付けしようとした点に重要な特色があったといえよう。それは、市 場のあるいは社会の要求を反映したものでもあった。 市 場 型 評 価 の 特 徴 を 従 来 の 制 度 型 ( 機 関 型 ) 大 学 評 価 と の 相 違 と し て み る と 図 表 6-1 に示した通りである。なお、日本における市場型大学評価のひろがりやまなざしについ ては、第5章でとりあげているので、ここでは、実証分析が可能な大学ランキングに限 定して検証を行うことにする。市場型大学評価は必ずしもランキングではないことには 注意する必要がある。大学評価は必ずしも順位づけやその前提となる量的尺度による測 定に限られるのではない。これは、市場型大学評価の場合も同様である。しかし、市場 型大学評価はランキングである場合が多い。その理由はランキングの方が客観的にみえ ることや、明快なために商業的な価値を持つことが多いからである。このため、ここで も以下の検証の対象は大学ランキングに限定して行う。 信頼性への疑問 他方、こうした市場型大学評価とりわけ大学ランキングの信頼性や妥当性には、疑問 の声が絶えない。たとえば、大学ランクは毎年、順位が変動するが、それほど変わるも のなのかとか、評価主体によってランクに大きな相違があるのではないかとかといった 疑問があげられる。 実際、大学評価や大学ランキングは大学自体や大学を見る社会の変化によって絶えず 変わるものであることは事実である。しかし、それが1年や2年で変わるような性格の ものであるかという点になると議論の余地がある。アメリカの代表的な市場型大学ラン キ ン グ で あ る U S Ne ws and Wo rld Re po rt 誌 と ス タ ン フ ォ ー ド 大 学 の キ ャ ス パ ー 学 長 の 論争もこの点に焦点があった。 こ う し た ラ ン ク の 変 動 に つ い て 、 U S Ne ws an d Wo rl d R epo rt 誌 で は 、 同 誌 の 大 学 ラ ンキングの基準は、絶えず読者からの批判や信頼できるシンクタンクの調査によって、 よりよいものにするために、変更を加えているために生じるとしている(この点につい ての詳細は前掲「市場型大学評価」を参照されたい)。こうした基準の変更は市場型評 価では特に顕著な特徴のひとつである。 88 確かに、評価やランキングは不変の基準で行うというより絶えずフィードバックを受 け、改善されていくべきであるという主張には一理ある。とりわけ、大学評価やランキ ングのように、比較的歴史が浅く、安定性がない評価の場合にはそうした傾向は不可避 であろう。しかし、他方で、基準の変更は、評価やランキングの変化が、大学自体の変 化なのか基準の変化によるものなのかを区別できなくするという問題点も持っている。 図 表 6‑1 制度型(機関型)大学評価と市場型大学評価 制 度 型 (機 関 型 ) 市場型 評価主体 1 つ あ る いは 少 数 の 制 度 ・ 機 関 複数 評価責任 あり なし 評価基準 明確 不明確 評価軸 非多元的 多元的 評価内容 評 価 容 易 なも の 市 場 価 値 のあるもの 大 学 シ ステ ムの 入 り 口 と 出 口 情報提供 信頼性 あり 乏 しい 具体例 ア ク レ ディ テ ーシ ョ ン 情報誌 自己評価 第三者評価機関 2 市場型大学評価の一貫性 このように市場型大学評価や大学ランキングに関して、アメリカではその時系列的な 安定性について、論争が起こっている。これに対して、日本の大学評価や大学ランキン グの状況はどのようなものであろうか。日本の大学評価や大学ランキングについて、時 系列的な安定性を検証した研究はみられない。このため、ここでは、こうした市場型大 学評価・大学ランキングの中で、先にあげた「役に立つ大学」、「リクルート大学満足 度調査」、『大学ランキング』、『日本の大学』の4つを取り上げその安定性を検証す る。これらの調査は、毎年あるいは隔年で実施されているため、これらの評価の継続的 な変化を検証することができる。 調査項目について まず、それぞれの大学ランキングの調査項目のうち、満足度に関する質問項目は図表 6-2 の 通 り で あ る 。 こ の 表 だ け み る と 、 同 一 の 調 査 で は 、 同 じ よ う な 項 目 が 調 べ ら れ て いるようにみえるが、大項目や中項目ではなく、設問自体や設問文などでみると、毎回 かなり変化している。 89 図 表 6‑2 調査項目の比較 リクルート大 学 満 足 度 調 査 調査実施時期 サンプル数 大学数 サンプリング 満足度の 項目数 大項目 こど も の 入 学 第 1回 1991 年 9/10 月 第 2回 1993 年 10/11 月 第 3回 1995 年 11/12 月 15,366 18,800 15,979 191 226 247 小 規 模 大 小規模大学を 小規模大学を 学 を除 く 除く 除く 河 合 塾 /東 洋 経 済 日 本 の大 学 '96 '97 '95 '96 発行 発行 発行 発行 1995 年 4 月 1996 年 5月 1994 年 3月 1995 年 3月 − − 31,410 29,025 100 100 − − 学部 大学 学部 学部 11 13 13 1(5) 1(5) 第 1回 第 2回 第 3回 '96 '97 '95 '96 ○ ○ ○ ◎(5)一 部 のみ ◎(5)一 部 のみ ○ ○ 充実感 点数化 朝 日 /ベネッセ 大 学 ラ ン キン グ ○ ○ ○ ○ 授業内容 ○ ○ ○ 教員 ○ ○ ○ ○ ○ 施設設備 ○ ○ ○ ○ ○ 授業外活動 ○ ○ ○ 学 生 サ ービ ス ○ ○ ○ 生 活 施 設 ・設 備 大学周辺の 環境 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 交友関係 ○ ○ ○ ○ 大 学 の雰 囲 気 ○ ○ ○ ○ ○ 中項目 就職内定先 設問項目や設問文が変化している例として、『カレッジマネジメント』の授業の満足 度 ( 同 誌 で は 「 授 業 内 容 全 般 」 と 呼 ん で い る ) の 満 足 度 の 小 項 目 を み る と 図 表 6― 3 の 通 り で あ る 。 第 1 回 で は 2 1 項 目 で あ っ た の が 、 第 2 回 で は 19 項 目 に な っ て い る 。 ま た 、 △をつけた項目は質問文が若干変更されている。こうした変更がある以上、同じような 設問についてみても、毎回変動があるのは当然とも言えるかもしれない。 90 図 表 6‑3 カレッジマネジメント満足度調査質問項目の比較 調査小項目 自 分 の 好 きな 勉 強 が で きる 幅 広 い 知 識 を 身 に つける 専 門 的 な 知 識 を 身 に つ ける 資 格 取 得 に 役 立 つ 勉 強 が できる 時 代 に 即 し た 新 しい 分 野 の 勉 強 がで きる カリキ ュラ ム 選 択 が 自 由 に できる 実 習 ・ 実 験 を 豊 富 に 取 り 入 れている 専 門 分 野 以 外 の 授 業 も 受 けら れる 海 外 留 学 で き るチ ャ ンスが ある 小 人 数 ・ ゼ ミ 形 式 の 授 業 が 受 け ら れる わか りや すい 授 業 が 受 け ら れる おも し ろ い 授 業 が 受 け られる 新 しい テーマ の 授 業 が 受 け られ る 教 授 陣 が 専 門 分 野 で 研 究 成 果 をあげて いる 教 授 陣 が 授 業 の 取 り 組 みに 熱 心 であ る 教 授 陣 が 社 会 的 影 響 力 を 持 って いる コンピュ ー タな どの 機 器 を 十 分 に 使 うこ と がで きる 研 究 室 ・ 実 験 室 の 設 備 が 充 実 して いる 教 室 が きれい である 図 書 館 の蔵 書 数 ・種 類 が多 い A V 機 器 な どを 用 いた 授 業 が 受 け られ る 第 1回 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第 2回 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ △ ○ △ △ ○ さ ら に 、 「 役 に 立 つ 大 学 」 の 1993 年 か ら 1999 年 に つ い て 調 査 項 目 の 変 化 を み る と 、 章末の附表1の通りである。毎回調査されているのは、「採用高感度」、「創造性」、 「柔軟性」、「学問修得」などの数項目に過ぎない。なお、こうした項目名は「役に立 つ大学」で使われているものであるが、これら自体も毎回同じではない。このため、こ の 表 は 、「 役 に 立 つ 大 学 」の 項 目 名 で 類 似 し た も の を 筆 者 が 再 構 成 し 直 し た も の で あ る 。 また、この表でわかるように、毎回調査されている項目でも設問文はかなり変化してい る。また、調査対象企業やサンプル数や総合評価・ランキングの方法もかなり変化して いる。こうした変更は、「役に立つ大学」の評価、とりわけ総合評価やランキングが経 年的に安定しないことを予想させるものになっている。 カレッジマネジメント「学生満足度調査」 次に、それぞれの評価や満足度の経年的な関連をみていく。まず、カレッジマネジメ ン ト の 満 足 度 調 査 に つ い て 、 199 1 年 の 第 1 回 調 査 と 199 3 年 の 第 2 回 調 査 の 授 業 満 足 度 についてみる。この授業満足度は、小項目の満足度の加重平均である。 91 図 表 6‑4 カレッジマネジメント授業満足度第1回と第2回 図 表 6― 4 の よ う に 、 大 100 きくみれば両者の間に明確 90 な関連はあるものの、個別 80 r=0.70 70 の大学に関しては、かなり 第2回 60 変動が見られる。なお、X 50 40 軸とY軸上にある大学は、 30 一方の調査でしか調査され 20 ていない大学であり、相関 10 係数の計算では除かれてい 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 る。両調査の間の相関係数 第1回 は 0.7 0 で あ り 、 同 一 の 調 査 で 2 年間の間隔しかないことを考えると、必ずしも高いとは言えない。他の年度につい て も 図 表 6− 5 の よ う に 、 3 回 の 調 査 の 授 業 満 足 度 の 相 関 は 必 ず し も 高 く な い が 、 0.7 前 後で安定している。しかし、その他の項目についてみると、「周辺環境の満足度」につ い て 、 相 関 係 数 は 0.9 前 後 と き わ め て 高 く な っ て い る も の も み ら れ る 。 図 表 6‑5 『カレッジマネジメント』授業満足度間の相関 総 合 順 位 92 総 合 順 位 94 総 合 順 位 94 .3743** 1 総 合 順 位 96 .4357** .6161** このように、個別具体的な項目に関する満足度は、授業に対する満足度や周辺環境の 満足度のように3回の調査の間で相関が高く、安定した傾向が見られる。しかし、総合 満 足 度 ラ ン キ ン グ に つ い て み る と 、 図 表 6− 6 の よ う に 、 相 関 係 数 は 0 .4 か ら 0. 6 と 個 別 の満足の項目に比べ、きわめて低くなっている。 図 表 6‑6 『カレッジマネジメント』総合順位間の相関 授 業 92 授 業 94 授 業 94 .7014** 1 授 業 96 .6788** .7474** 92 逆にみると、各年度の総合満足度ランキングの相関係数はあまり高くないものの個別 の満足度は安定していると言えなくもない。しかし、個々の大学について詳細に見ると 図 表 6― 7 の よ う に 、 1 年 間 の 間 で も 評 価 点 の 変 動 が 激 し い 大 学 も 少 な く な い 。 ま た 、図 には示さなかったが、総合ランキングも個別の大学別に見ると、大きく変化している例 が 少 な く な い 。 こ れ は U S Ne ws a nd Wo rl d Re po rt 誌 で み ら れ た 傾 向 と 全 く 同 様 の 傾 向 であり、ランキングの信頼性として激しい論争を巻き起こしたことは、先にふれたとお りである。日本の大学ランキングにも全く同様の問題があることが示されている。 図 表 6‑ 7 カレッジマネジメント授業満足度の変化 62 52 42 早稲田大学 関西大学 32 新潟大学 東京大学 22 12 2 1 2 回 3 このように、相関係数や個別の大学ランクの状況からみても、いずれの場合も『カレ ッジマネジメント』の各回の満足度調査の結果の中でも、とりわけ総合満足度や満足度 ランキングは変動が激しく、安定していないことこそが大きな特徴であるといってい い。 『日本の大学』 『 日 本 の 大 学 』に つ い て も 、 1995 年 と 1996 年 の 1 年 間 の 間 で 、 図 表 6― 8 の よ う に「 授 93 業」、「講座」、「教員」、「施設」の四つの項目に関する満足度の評価をみると、同 じ 項 目 間 の 1995 年 と 1996 年 の 間 で「 授 業 」が 0. 54、「 講 座 」が 0. 57、「 教 員 」が 0.11、 「 設 備 」 が 0.5 7 と 「 教 員 」 以 外 は 、 0.5 以 上 の 相 関 が 見 ら れ る 。 こ れ は 、 リ ク ル ー ト の 満足度調査より低く、安定性に欠けるものになっている。 図 表 6‑8 『日本の大学』調査項目間の相関 授 業 ( ’95 ) 授 業 ( ’96)講 座 ( ’95 )講 座 ( ’96)教 員 ( ’95)設 備 ( ’95 ) 授 業 ( ’96 ) .5407** 講 座 ( ’95 ) .2345** .1830** 講 座 ( ’96 ) .1303** .2221** .5697** 教 員 ( ’95 ) .2057** .2191** 0.0481 0.0439 設 備 ( ’95 ) .1442** .0824** .3172** .2120** .1077** 設 備 ( ’96 ) 0.0527 .1472** .2491** .3129** 0.0176 1 1 1 1 1 .5697** (注)()内は年度 実 際 に 、 0.5 の 相 関 が ど の 程 度 の も の で あ る か を 図 6― 9 に 示 し た 。 両 調 査 の 間 に 安 定 した関係があれば、対角線に集中して、バブルが大きくなるはずである。ところが、 1995 年 で 2 の 評 価 だ っ た も の が 1996 年 で は 3 に な っ て い る も の が 多 い た め 、 2 よ り 3 の方がバブルが大きくなっている。これが相関係数が低い原因のひとつとなっている。 図 表 6‑9 『日本の大学』授業満足度間の関連 6 r=0.547 5 1996年版 4 3 2 1 0 0 1 2 3 1995年版 94 4 5 6 このような結果は、相関係数が有意であるといっても、決して安定した関係があると いうことを意味しないことを示している。『日本の大学』の場合にも調査間の安定性は 高いとは言えないことが示されたと言えよう。 「役に立つ大学」 先に見たように、「役に立つ大学」は調査対象、調査方法、調査項目とも毎年かなり 激しく変更されているために、毎年度の変化を見ることはあまり意味があるとはいえな い 。 そ こ で 、 こ こ で は 、 比 較 的 調 査 項 目 に つ い て 変 化 の 少 な い 1994 年 度 と 1995 年 度 に つ い て み る と 、 図 表 6− 10 の よ う に 、 総 合 ラ ン ク の 順 位 相 関 係 数 は 0.9 1 と 高 い も の の 、 下位の方は安定しているのに対して、中上位は安定していない。さらに、章末附表2に 採用好感度ランクの変化を示した。これで個々の大学について詳細に見ると1年間の間 でも太枠で示した一橋大学や慶応大学のように、評価点、順位とも変動が激しい大学も 少なくない。 図 表 6‑10 「役に立つ大学」ランク順位 1994 年 と 1995 年 100 90 r=.911 80 70 1995年 60 50 40 30 20 10 0 0 10 20 30 40 50 1994年 95 60 70 80 90 100 経年的な安定性はなぜ低いか このように同一調査の同一項目の経年的な相関は比較的高い。これに対して、各調査 では個別項目別に満足度を評価させており、これらの評価項目の間の相関自体は異なる 年ではもちろんのこと、同一年の調査でもかなり小さい。これは別の項目についての評 価であるから当然ともいえる結果であるが、項目設定によって、これらの合計で示され る総合満足度はかなり異なることを意味している。 実際、同一の調査でも総合満足度は、経年的な変化が激しく、相関係数が低く、安定 していない。それはなぜか。もちろん、大学自体が変化しているということもあるであ ろう。しかし、大学自体の変化だけでは説明しにくいほど、1、2年間の間に同じ大学 に関して、ランクの変動が起きていることも確かである。 一つの理由は、個々の設問に関しては、設問文などに若干の変更があるものの、それ ほど大幅な変更はないために相関係数が高く安定しているのに対して、総合満足度や総 合満足度ランキングは、それを算出する複数の設問の構成自体が変化しているためと思 われる。なお、もう一つの変化の要因として、学生や人事担当者など調査対象者が変化 しているということも当然考えられるが、具体的な設問に関して相関係数が高いことか ら、調査対象者の変化による変動が大きいとは考えにくい。 しかし、先にふれたように、満足度やランクの変化は、大学自体の変化か調査項目の 変化か、どちらかの要因の影響が強いかは特定できない。そこで、この点について、大 学自体の変化か設問による相違かについて、検討するために、同時点で、異なる調査の 間にどのような関係があるかを検証する。この場合、同時点であることで、対象となる 大学自体は同じものを評価していることになる。もちろん、調査によって、設問が異な るために、同一の大学といっても異なる側面を評価していることになる。しかし、当然 のことながら、調査対象者は異なる。こうした点に留意して、できるだけ各大学ランキ ングで類似した設問を選んで、設問間の関連を調べることによってこの点を検討するこ とにしたい。 各調査間の一貫性 まず、『カレッジマネジメント』の授業満足度の評価結果と『大学ランキング』の評 価 を 比 較 し た の が 図 表 6 − 11 で あ る 。 相 関 係 数 は 0.65 と や や 高 い と も 言 え な く は な い が 、 図 の よ う に 、 両 調 査 に よ っ て か な り幅があることも確認できる。 96 図 表 6‑11 『カレッジマネジメント』と『大学ランキング』の授業満足度 6 5 大学ランキング授業満足度 r=0.65 4 3 2 1 0 0 図 表 6‑12 10 20 30 40 50 カレッジマネジメント授業満足度 60 70 80 90 『大学ランキング』と『日本の大学』授業満足度の関連 また、同じ授業満足度を 6 r=0 .22 『大学ランキング』と『日本 5 の大学』で比較したのが図表 日本の大学 4 6 − 12 で あ る 。 こ れ を み る と 、 3 『大学ランキング』では1か 2 ら5と評価されているのに対 して、『日本の大学』では、 1 ほとんどが3に集中しており、 0 0 1 2 3 大学ランキング 4 5 6 同じ授業満足度といっても両 者の間には著しい差があるこ と が 分 か る 。 相 関 係 数 は 0.22 と 低 く な っ て い る 。 こ の ひ と つ の 理 由 は 『 大 学 ラ ン キ ン グ』では 5 段階評価なのに対して、『日本の大学』は 4 段階評価であることである。し かし、それだけが原因で、これだけの差が出るとは考えにくい。 97 図 表 6‑13 『カレッジマネジメント』授業満足度と「役に立つ大学」の総合ランク また、『カレッ ジマネジメント』 の総合満足度ラン 70 65 役に立つ大学総合ランク クと『役に立つ大 r=‑0.33 60 学』の総合ランク 55 50 の関連をみたもの 45 が 図 6− 13 で あ る 。 40 両者の関連は強い 35 とはいえないが、 30 0 10 20 30 40 50 60 カレッジマネジメント総合満足度ランク 70 80 90 10 0 相 関 係 数 で は -0.3 3 と 負 の 相 関 を示している。これは両調査が全く異なる大学の側面を評価してランクづけしているこ とを示している。言い換えれば、学生の満足度の高い大学の多くは、企業人事担当者か ら見れば、あまり「役に立つ」とは評価されていないということになる。 これに関連して、『カレッジマネジメント』の満足度調査は、「従来の偏差値とは異 なる大学の評価」を意識して行われたとされる点について、偏差値との関連をみると、 図 表 6-14 の よ う に 、 偏 差 値 と は や や 関 連 が あ り 相 関 係 数 は 0.43 で あ る 。 こ れ が 「 偏 差 値とは異なる」評価になっているかどうか評価するのは難しいが、偏差値とはあまり関 連が強くない評価になっているという点では調査の目的は果たされていると言えるかも しれない。 図 表 6‑14 『カレッジマネジメント』総合満足度と偏差値の関連 この点は、『役に立つ大 70 学』の総合ランキングと偏 65 差 値 が 図 表 6― 15 の よ う に r=0.427 相 関 係 数 は 0.71 と『 カ レ ッ 偏差値 60 ジマネジメント』と比較す るとかなり高くなっている 55 ことと対照的である。つま り、『役に立つ大学』の総 50 合ランキングは、従来の偏 45 40 50 55 60 65 70 75 80 満足度 98 85 差値ランクからそれほど大きく外れているというわけではないと言えるのである。 図 表 6- 1 『 役 に 立 つ 大 学 』 と 偏 差 値 の 関 連 こ れ に 比 べ れ ば 、『 カ レ ッ ジ マ ネ ジ メ ン ト 』の 総 合 満 70 ランク r=0 .713 65 足 度 は 、同 一 偏 差 値 で も 満 60 足度にはかなりばらつき 55 が あ り 、同 じ 評 価 基 準 で は 50 ないということが言える 45 かもしれない。 40 35 30 40 45 50 55 偏差値 60 65 70 安定性の検証のまとめ 大学ランキングについて、経年的な安定性と各調査のランクの関連をみてきた。同一 調査でも同一項目の間の経年的安定性は高いのに対して、総合的ランクは、経年的な安 定性を欠いている。また、同一の評価項目でも、調査によって、評価はばらばらで、調 査間の相関は低い。また、総合ランクの間の相関はさらに低くなっている。 こうした結果は、いわゆる大学評価やランキングという指標が、きわめて安定性の低 いものであることを示しているものといえよう。その理由のひとつは調査項目の設定や 変更にある。同じ満足度調査とはいえ、その内容・評価基準(明示的ではないものもあ る)が各社ごとに、あるいは同一の雑誌でも年によって異なるためと考えられる。そう した意味では、大学はきわめて多様な側面をもっており、調査項目や基準の変化に敏感 であり、単一の評価基準で測定することはできず、多次元的な評価が必要なことを示し ているということもいえる。しかし、このことは他方では、複数の評価項目を組みあわ せて算出した総合評価の作成の難しさやそれに基づいている総合ランクへの疑問につな がる。言い換えれば、大学の総合評価や総合ランクはまだ発展途上であり、試行錯誤の 段階にあるとも言える。いずれにせよ、こうした結果は、市場型大学評価の安定性に疑 問を投げかけるものである。 99 3 多元的な評価の登場の意義 大学教育の客観的な格付けに踏み込もうとした第二世代の大学情報産業は、市場的な 大学評価への要求を反映したものといえよう。それは暗に、大学をわかりやすい形でラ ンク付けし、社会的に批判されてきた偏差値に変わるモノサシを求めたものであったと もいえる。具体的にそうした形での評価を行おうとすれば、それは結局、学生あるいは 企業などの大学への主観的な評価に頼らざるを得ない。しかし、そうした個々の学生あ るいは企業の「評価」は実は、複雑な大学の現実に対する偏った知見と解釈にもとづく ものにすぎない。それらに依拠した評価はそうした意味で、きわめて大きな限界をもつ ものといえよう。個々人の主観的な評価の総合が必ずしも客観的な大学評価であるとは 限らない。また、個別の評価項目を組み合わせた総合ランキングに問題が多いことは、 アメリカでの多くの研究でも指摘されている(前掲「市場型大学評価」参照)が、本研 究によって日本の大学ランキングについても同様の問題があることが検証されたといえ よう。 しかし、それは市場型大学評価が無力であることを意味するのではない。これまでみ てきたように、「役に立つ大学」の総合ランキングは偏差値尺度と異なる評価という意 味では従来の評価と異なるとはいえない。これは、同ランキングが人材として企業に売 れるかどうかという観点からのみ大学を評価していることにもよるとみられる。これに 対して、『カレッジマネジメント』の満足度調査は偏差値とは必ずしも一致せず、従来 の偏差値とは別の形成的な評価としての意義をもつものとみることもできよう。 いずれにせよ、わが国において、市場型大学評価はまだ始まったばかりであり、未成 熟であることは否めない。しかし、大学を評価することは、日本においても急速に進展 しており、評価の必要性自体には異論は少ない。というより、好むと好まざると評価の 時代という国際的な潮流の中に日本の大学もさらされているのである。わが国において、 市場型大学評価が形成的な評価として一定の役割を果たしうるのか、それとも、営利目 的が優先され、評価の正当化・権威化のセルフフィーディングが起こるのか、今後の動 向を注視する必要がある。 100
© Copyright 2024 Paperzz