第33回: EBM実践のための統計学(その19-2)

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株式会社サンテック 統計解析室室長
医学統計学
足立 堅一 先生
第33回: EBM実践のための統計学(その19-2)
― 統計学的側面から観て受理される医学論文を作成するために ―
~~~~~~ CONTENTS ~~~~~~
4 各論 ― 医学臨床論文がrejectされないためへのstep
4.8.5 1元配置分散分析 vs. 2元以上配置分散分析
― 小さな?しかし確実な、変革の1歩!
4.8.5.1 1元配置法/分散分析についての表記法
4.8.5.2 2元配置法/分散分析についての表記法
4.8.5.3 最も単純な2元配置法/分散分析での単純化とその効用
4.8.5.4 2元配置法/分散分析の構造・構成と交絡回避の有無
4.8.5.5 2元配置法/分散分析の構造模型
4.8.6 例数/情報担体と担体に負荷可能最大情報量
印刷される場合には、こちら
(PDF版)をご利用下さい。
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4. 各論 ― 医学臨床論文がrejectされないためへのstep
4.8.5 1元配置分散分析 vs. 2元以上配置分散分析
― 小さな?しかし確実な、変革の1歩!
先ず、一般的に利用される表記法を解説して、2元以上の配置法を理解する。
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4.8.5.1 1元配置法/分散分析についての表記法
表としてまとめる。
表4 1元配置法/分散分析についての表記法
● 要因(因子)数:1
要因
水準数
最も単純な1元配置計画
2
内水準
当該水準例数*1
測定値*2
要因
水準数
一般的な1元配置計画
内水準
当該水準例数
測定値
・
・
・
・
・
・
*1 例数は、一般には「n」で表記するが、以下は、便宜上「r」表記
*2 「測定値」は、2群(t検定)の場合には、通常、
などとするが、ANOVAへと発展・展開するために、こうした表記法を採用
設問3 以下のx・yの2群でのdataを、上記の「最も単純な1元配置計画」での「測定値」の
表記法との対応付けをすること
x群:15、17、13、16
y群:10、12、11、14、13
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4.8.5.2 2元配置法/分散分析についての表記法
2元配置計画についての表記法を示したが、うんざりするほど、複雑になってしまった(表5)。
前述の1元配置計画を、B1~B について繰り返していることに注意したい。各水準における例
数を明記したためである。それを明記したのには、訳がある。それは、説明変数が2個以上に
なると、各水準での例数が一定でない場合には、交絡(comfounding)という不都合な現象
の発生の原因になるからである。
表5 2元配置法/分散分析についての表記法
【 表5の拡大版 】
なんとかして、できれば、例数情報も保持したままでのさらなる単純化を以下に試みる。先ず
は、各水準を弁別するべく表記法を提示しよう(表6)。
この表の意味を、具体的に酵素反応を例としてimageできるようにしよう。Aを酵素量、Bを反
応温度とすると、A2B3は、Aの酵素量が2、Bの反応温度が3に設定された水準を意味する。
酵素学的な視点から、生産量は、酵素量↑とともに↑するが、途中で飽和状態になるであろうし、
また温度も↑とともに生産量↑になるが、こちらは、温度が高温過ぎると、飽和ではなくて、酵素
が変性・失活してしまい、生産量0へと帰結するであろう。酵素反応の例では、例数との概念が
希薄であり、あっても、同一水準、例えばA2B3での繰り返しだけであろう。
そんな訳で、次に、臨床研究や動物での研究の例で考察する。Aを薬剤群、Bを性別・男女な
どとする。反応・結果変数を効果とすると、placebo群よりも実薬群が効果があり、男よりも女
で効果が高いというようなことになる。t検定から容易に類推できることだが、個体差を評価・推
定する必要があるために、この場合には、同一水準について1例だけという訳にはならない。
表6 2元配置法/分散分析についての各水準識別表記表
例:A:酵素量、B:反応温度。工場・研究室
例:A:薬剤(D1・D2)、B:性別(男・女)。臨床研究
表6に、例数情報を付与するには、併記するのも方法だが、煩雑になる。この表を平面とし
て、この上に立体的に入れるのが名案であろうが、それには3次元表記が必要になる。従っ
て、ここでは、対応するものの別表とする(表7)。
表7 2元配置法/分散分析についての各水準識別表記表 ― 例数表
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表5 2元配置法/分散分析についての表記法
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4.8.5.3 最も単純な2元配置法/分散分析での単純化とその効用
2因子ともに、2水準と単純化して、新たな表記法を可能として、問題の本質を考え易くしよう
(表8)。表8の右表のように番号を付与する。そうすると、表9のような表記法が新たに得られ
る。
表8 2因子とも2水準である2元配置法/分散分析についての各水準識別表記表
表9 2因子とも2水準である2元配置法/分散分析についての簡易表記表
後ほど判明するが、この表記法の利点は、3因子以上においても、単純化の規則を前提にす
る限り、表記可能なことである。想像の翼を広げれば、factorial designへの飛躍をも示唆
していることになる。しかも、因子間の均衡(直交)・不均衡や交互作用を理解する上で極めて
便利である。
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4.8.5.4 2元配置法/分散分析の構造・構成と交絡回避の有無
ここが、極めて重要な解説・急所である。先程の、酵素量・温度と反応(合成量)との関係で
も、薬剤群と男女性別との関係でもどちらでも良い。ここでの前提は、酵素量や薬剤群と共に、
温度や性別が、出力(応答・結果)に影響することである。これは、まさに、その意味でfactor
であり、かつ共変量(covariate)である。例えば、酵素量を大小、温度を高低(適温範囲で)
とすると、酵素量の大>小 ⇒ 出力の大>小となり、温度高>低 ⇒ 出力の大>小となる。出
力の大きさの順は、酵素量小&温度低が最低で、最大は、酵素量大&温度高となる。酵素量
大&温度低と酵素量小&温度高との順番は、酵素量の大小と温度の高低のどちらの影響力
が大きいかに依存して決まる。これを次節で、明快にしてmodel化して解説する。ここでは、も
っと直感的に理解しよう。例題にしておく。
設問4 共変量(covariate)という概念は、説明変数が2つになって、初めて登場する概
念であること、しかし、説明変数が1であっても、その時の環境・状況は、実際的に
は、説明変数は複数であること、そしてそれらの意味を考察すること
4 表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしてお
り、Bは、その目的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子を
表9が巧妙に回避する手段を提供するためには、どのような活用法を採用
することになるか? 薬剤群と男女との例で考察すること
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4.8.5.4 2元配置法/分散分析の構造・構成と交絡回避の有無
例題4:
表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしており、Bは、その目
的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子を表9が巧妙に回避する手段を提
供するためには、どのような活用法を採用することになるか? 薬剤群と男女との例で考
察すること
【1】表9の完全利用は、回避して、男だけ、例えば、表の#1と#3とだけとか、その
逆で、女だけとして、designし、研究することがある。しかし、この時には、2つ
の大きな問題が発生する。男女に関係無く有効であって欲しいのが大半の薬剤
への願望である。しからば、男女ともに有効とのevicenceを獲得しない研究は
一般化可能性の点で、致命的である。もう1つは、現実的な実施上の問題であ
る。症例登録を片方に限定する(例えば、女に限定した場合には、男は登録対
象外になる)ために、研究期間がそうでない場合の2倍になってしまうことであ
る。
【2】#1~#4を同一例数r=kにて実施することである。r=1が極端な例であるが、
A1群でも、男女各1例、A2群でも、男女各1例となっているために、男女の影響
はAの両群には均等に負荷される。これにより、研究現場で、常に問題化する、
自分の群にとり、B因子が負荷を掛けたために、「不当にも無効となった!」など
と言う言い訳の余地がなくなる。
こうしたdesignの時、B因子が本命因子に対して「均衡/balance」化」していると呼ぶ。
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4.8.5.4 2元配置法/分散分析の構造・構成と交絡回避の有無
次に、表9について均衡化しないような使用法を問題としておく。
5 表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしてお
り、Bは、その目的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子が
均衡化できない場合を考察すること
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4.8.5.4 2元配置法/分散分析の構造・構成と交絡回避の有無
例題5:
表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしており、Bは、その目
的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子が均衡化できない場合を考察する
こと
【1】表9の完全利用は、回避して、例えば、表の#1を実施しないこと。この時、例え
ば出力が女>男であれば、A1群は、信号検出との観点からすれば、余計に/不
当に出力が上がる。
【2】最悪のcaseとしては、2つだけ、例えば#1と#4だけを実施することである。こ
の場合には、Bの男女の情報がAに被さり、両方の情報が分離不能となる、致
命的な事態に至る。
【3】rを一定にしないこともこれと同類の問題を発生させる。
こうした例題5の【2】 【3】 のcaseは、因子が交絡(comfounding)していると呼ぶ。特
に、【2】 の場合には、「完全交絡」と呼ばれる。【1】 については、B因子の水準は固定されてい
るので、交絡には分類しないことにする。
設問5 共変量(covariate)が交絡することが問題なのであり、出力に影響皆無の因子
がいくら交絡しようと問題はない。論理的には、そうであるが、そうした論法の難点
を考察すること
- 影響が無いことは、実験科学的に検証される必要がある。検証されたのか?
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4.8.5.5 2元配置法/分散分析の構造模型
前節の問題を、構造模型を導入して体系化しておこう。以下の構造模型を考える時は、全体
の中点=総平均を視点の中心に据えて、模型を構築している。一番分かり易いcaseとしては、
総平均からA因子がA1でα上げ、A2でα下げ、同様にB因子がB1でβ上げ、B2因子でβ下げ
るようなものである*。そうすると、出力↑の因子を発見して、↑する水準に固定して、次の実験を
すれば、当然その前の総平均よりも↑となる。
*総平均は、絶対的なものではないことも事実である。その実験がなされた状況・条件を反映し
ている。
というmodelが構築できる。ここで、余計かも知れないが、こうした模型を、電気信号の「直流
+交流」として図解したものを示しておこう(図1)。sin波としたが、矩形波でも同様である。縦軸
から判明するが、直流成分は「0」としているが、当然、「0」でなくてもOKである。
図1 式(1)を、電気信号:直流+交流として図解した模式図
【 図1の拡大版 】
図では、μ=0としているが、当然、μ≠0でも可。αを黒色sin波とすれば、前半(横軸で3>)
の波(半周期)が「+」α、後半が「-」αとなる。βについても、赤色sin波とすれば、同様になる。
図では、10個の因子について示した。
式1において、注目すべきは、
【1】この4個足して、4で割る、つまり平均を取ると、μとなること。εは±に揺れて0が期待できる
(以下、同じ)
【2】因子Aの力αを求めるには、
((#1+#2)-(#3+#4))/4でαが求まることである。このとき、βにたとえ力があっ
たとしても、cancelされることに注意!
設問6 βをも求められる。求めること
逆に、こうした模型が成立していれば、計算値から#1~#4まので各caseについて、値を予
想することが可能となる。2因子の場合には、既に値が測定されているので有難みが薄いが、
3因子4因子となった場合には、有用である。上記の構造模型を、線形modelと呼び、因子達
の力が加算減算できるとき、加法性・相加性がある/成立していると呼ぶ。
6 表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしてお
り、Bは、その目的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子が
均衡化できない場合を考察すること。今度は上の模型式を利用すること
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図1 式(1)を、電気信号:直流+交流として図解した模式図
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4.8.5.5 2元配置法/分散分析の構造模型
例題6:
表9において、Aを説明変数の本命として出力への影響を観ようとしており、Bは、その目
的に関しては、妨害する因子(雑音)とする。妨害因子が均衡化できない場合を考察する
こと。今度は上の模型式を利用すること
【1】表9の完全利用は、回避して、例えば、表の#1を実施しない場合
総平均 A B r
μ+α-β+ε #2
μ-α+β+ε #3
μ-α-β+ε #4
εは、省略!
((#2/1-(#3+#4)/2)/2
=((μ+α-β)-(μ-α))/2
=(2α-β)/2
=α-β/2
つまり、-β/2だけbiasが掛かる
【3】rを一定にしないこともこれと同類の問題を発生させる。
μ+α+β+ε #1 2例
μ+α-β+ε #2
μ-α+β+ε #3
μ-α-β+ε #4
εは、省略!
繰り返しではなくて例数はそのまま活用すると言う個体単位の解析を仮定
((#1×2+#2)/3-(#3+#4)/2) /2
=(((2μ+2α+2β)+(μ+α-β))/3-(μ-α)) /2
=((3μ+3α+β)/3-(μ-α)) /2
=((μ+α+β/3) -(μ-α)) /2
=(2α+β/3) /2
=2α+β/6
つまり、β/6だけbiasが掛かる
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4.8.5.5 2元配置法/分散分析の構造模型
構造式の式(1)を以下のようにも表記できる。
【1】μ:grand meanを「1」として一般化
μは、更には、CF(Correction Factor)に連動
【2】因子間の「直交性」などが、表現に反映可能(Cochran and Cox方式)
【3】数学的mechanismを把握・解明するのに適切
【4】最低、4例のconveyor/carrier必要。担える情報量は、4。それぞれ具体的に何か?
設問7 上記【2】 について考察すること(例数1とする)
―Aから観てBは均衡していることは確認した。Bから観て、Aが均衡していることを
確認すること
―因子AとBとが互いに均衡している時、係数の積和が0となることを確認すること
積和=(1×1)+1×(-1)+(-1×1)+(-1×-1)=0
⇒ 均衡していることを、vector論的解釈から、2本のvectorが直交していると言う。これは
また、vectorの内積が0と同義である。拙著「多変量解析超入門」、篠原出版新社参照
設問8 因子数、共変量、交絡、完全交絡、均衡、直交、2元配置表という用語で文章を作
成すること
―均衡 = 直交
―均衡化(直交化)の意味とは? 共変量の交絡への防備
―完全均衡化(完全直交化) = 交絡なし
―完全不均衡化(完全非直交化) = 完全交絡
―直交化designに観られる「美」とは? 信号達を、互いに交絡なく、つまり、互い
のpowerに影響されることなく、独立に、分解・分離して、検出・抽出して、獲得・
入手することを可能化!
設問9 分散分析:1元配置=1因子実験 vs. 2元配置=2因子実験について
・t検定:分散分析、因子/要因、水準、説明変数、目的変数、変数の数、因果、の用
語を使用して説明すること
・1元配置ANOVA:因子/要因、水準、説明変数、目的変数、変数の数、因果、多
変量解析の用語を使用して説明すること
・2元配置ANOVA:因子/要因、水準、説明変数、目的変数、変数の数、因果、多
変量解析の用語を使用して説明すること
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4.8.6 例数/情報担体と担体に負荷可能最大情報量
一般的教科書には、記載されていないのだが、重要なので解説をしておく。
設問10 上記【4】 について考察すること(例数1とする)
―2水準の3因子の情報を交絡なく検出しようとするとき、何例/情報の担い手が必
要か
―式(2)は、実は、さらにもう1つ情報を担わせる/割り付けることが可能(Cと表現し
た)である。4例で、3種の0/1情報を担わせる。
―Cは、AやBと均衡、つまり直交していることを確認すること
―実は、もう1つの情報も存在し、それが総平均である。
設問11 上記式式(3)から、2因子情報を担体2例では不可能であることを考察すること(例
数1とする)。換言すれば、分解不能である!
―conveyableな情報量 ⇔ 担い手conveyor or carrier
因子数2を2例では、解析/分解不能!
―情報量 vs. 解析/分解能力とには、一定の関係がある
―因子数だけでなく水準数と例数とも関係がある
設問12 上記設問の定理の無理解が多変量解析で問題が表面化することがある。それは、
どのようなjことと思われるか考察すること
設問13 上記式(3)までは、水準が2のときである。同様に、水準が3のときの式(直交表と言
われることもある)を、余裕があれば考察すること
設問14 実は、上記の式(3)が最も単純な3元配置ANOVAであることを考察すること(2水
準の3因子)。各種表記法を用いた表記を試みること
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