2014 SUMMER CONCERT 音楽監督 白石卓也 歌曲指導 石田亜希子、杣友惠子、 阿瀬見貴光、熱田鷹丸、上杉清仁 ピアニスト 中村香里、矢野里奈、四條智恵 主催 中央大学音楽研究会混声合唱団 2014.9.6.(sat)18:00 開演 エーデルホテル INDEX 1 年合唱 5 2 年アンサンブル 11 3 年オペラ 19 4 年ソロ 55 ※曲順が変更する場合がございます 2 団員紹介 Soprano ★岡田祥子、岡部優以、北口鈴夏、澤田麻衣、名波友里亜、矢野春陽、 二宮知子、渡邉碧、太田裕美、金森遥、佐伯春奈、林恭子、羽山莉菜、 粕谷奈央、片岡望、澄川遥香、世利南名、黨理紗子、戸出明帆、 野谷ゆりの、平山真生子、矢島早瑛、山下蛍、横田真奈美、渡邉風月 Alto ★富樫美衣、天野里香、大政晶子、坂口真央、髙橋真梨萌、福嶋朋子、 町田仁奈、高野薫、赤崎澪里、石川美雪、押目圭太郎、上松茉琳、 大辻みずき、緒方桃子、白井瑛理奈、鈴木千尋、髙久麻巳子、富樫美結、 中村明日香、橋本明歩、檜森玲奈、堀地綾、松岡碧、山中柚紀、吉川真由 Tenor ★清野裕太、末冨修平、古川上総、山下昌義、鈴木雅人、丹治大河、 西野凌、馬場健太、日暮秀平、前川恵、町田隼人、山戸崇央、横田昂大、 池田尚矢、太田士恭、沖野臣起、小森康平、宗宮健太、林貫太、東俊輔、 村上秀一 Bass ★寺本翔、蟹井啓介、林田陸、藤井宏行、眞野義啓、小山大輝、桐山直樹、 湊和貴、宮野郁、小野裕志、金山拓土、則竹厚輝、福田光一、山下達也、 粟田祐介、伊藤快、大内瑠馬、税所智裕、竹内涼、前田達哉、渡辺兼成 ★:パートリーダー 3 部長挨拶 暑い日が続く中、2014 年度夏合宿コンサートにお越しいただき、誠にありがとう ございます。 新入生が 4 月に入団し、はや半年の月日が流れようとしています。多くの方の協 力を得た新歓など慌ただしい春を経て、7 月には、ジョイントコンサートに臨みまし た。一年生は初舞台、上級生はコンサートホールでの舞台を経験しました。そして、 今現在は定期演奏会に向かっての練習の真っ最中です。 昨年中大混声は 50 回目の演奏会を終えました。節目を通り過ぎた今、中大混声と して新たな一歩を踏み出していきたいと思っております。 さて、本日のコンサートは全て各学年のステージです。団員各自が、それぞれの 目標を自分の前に据え、この夏取り組んできたことを今夜のステージで表現します。 中央大学音楽研究会混声合唱団部長 湊 和貴 4 5 1st stage 1 年合唱 野ばら/H.ウェルナー 流浪の民/R.シューマン 宗教的歌曲/J.ブラームス 6 Heidenröslein H.Werner 野ばら H.ウェルナー この曲はドイツの作曲家ウェルナーが同じくドイツの詩人ゲーテの詩に曲をつけたものである。ゲーテ は「少年」と「野ばら」を用いて自身と牧師の娘フリーデリーテとの恋の芽生えから破局までを清らかに 描き、ウェルナーはこれに民謡的なリズムを以て、出会いと別れという対照的な出来事の流れをわずかな 音階のずれだけで表現した。 因みに、ウェルナー以外にも 150 を超える『野ばら』が作曲されたという。 Sah ein Knab'ein Röslein steh'n, Röslein auf der Heiden, war so jung und morgenschön, lief er schnell, es nah'zu seh'n, sah's mit vielen Freuden. Röslein, Röslein, Röslein rot, Röslein auf der Heiden. 少年が見つけた 小さな野ばら とても若々しくて美しい すぐに駆け寄り 間近で見れば 喜びに満ち溢れる バラよ、バラよ、赤いバラよ 小さな野ばら Knabe sprach: "Ich breche dich, Röslein auf der Heiden, Röslein sprach: "Ich steche dich, dass du ewig denkst an mich, und ich will's nicht leiden." Röslein, Röslein, Röslein rot, Röslein auf der Heiden. 少年は言った、「君を折るよ」 小さな野ばら 野ばらは言った、 「ならば貴方を刺します いつも私を 思い出してくれるように 私は悲しんだりしません」 バラよ、バラよ、赤いバラよ 小さな野ばら Und der wilde Knabe brach's Röslein auf der Heiden, Röslein wehrte sich und stach, half ihm doch kein weh'und Ach, musst'es eben leiden. Röslein, Röslein, Röslein rot, Röslein auf der Heiden. 少年は折った 小さな野ばらを 野ばらは抵抗して、 彼を刺した 傷みや嘆きも彼には効かず 野ばらはただ耐えるばかり バラよ、バラよ、赤いバラよ 小さな野ばら 7 Zigeunetleben R.Schumann 流浪の民 R.シューマン ロベルト・シューマンは、前期ロマン派を代表するドイツ人作曲家である。出版業者であった父親の下 で幼い頃から文学や音楽に親しみ、独学で音楽を修めている。母親の希望により、20 歳までライプチヒ大 学で法律を学ぶが、それ以降はピアニストを目指している。ピアノ教師フリードリヒ・ヴィークに学んだ が、過度の練習によって指を痛め、作曲家へと方向転換する。そして 1840 年にヴィークの娘であるクララ と結婚する。この年は「歌の年」と呼ばれ、134 もの歌曲を書き、優れた作品を残している。ピアノ付四 重唱曲として書かれた《3つの詩 Drei Gedechte》 (『田舎の歌』 『歌』 『流浪の民』 )もその時書かれたも のであり、今回一年生が歌う『流浪の民』は第 3 曲に当たる。ドイツ語のタイトルである“Zigeunetleben” は「ジプシー暮らし」を意味しており、馬車に乗ってさすらうジプシー達の一夜の情景を生き生きと描い ている。 Im Schatten des Waldes, im Buchengezweig, da regt's sich und raschelt und flüstert zugleich. Es flackern die Flammen, es gaukelt der Schein um bunte Gestalten, um Laub und Gestein. Da ist der Zigeuner bewegliche Schar, ブナの森の木陰に mit blitzendem Aug'und mit wallendem Haar, Gesäugt an des Niles geheiligter Flut, gebräunt von Hispaniens südlicher Glut. Ums lodernde Feuer in schwellendem Grün, da lagern die Männer verwildert und kühn, da kauern die Weiber und rüsten das Mahl, und füllen geschäftig den alten Pokal. Und Sagen und Lieder ertönen im Rund, wie Spaniens Gärten so blühend und bunt, Und magische Sprüche für Not und Gefahr verkündet die Alte der horchenden Schar. 輝く瞳と流麗な長髪を持ち ナイル川の聖なる水のほとりで育てられ スペインの太陽に焼かれし褐色の肌 豊かな緑の中で炎が燃え上がり 荒々しく勇敢な男たちが横たわる 女達はしゃがんで食事の支度をし 慌ただしく古い酒杯に酌をする 輪になって伝説や歌を響かせる 色とりどりの花が咲き誇る スペインの庭の如く華やかに 老婆が唱える危険や苦難の時の ための魔法の言葉を告げると 群れはそれに聞き入っている Schwarzäugige Mädchen beginnen den Tanz. Da sprühen die Fackeln im rötlichen Glanz. es lockt die Gitarre, die Zimbel klingt. Wie wild und wilder der Reigen sich schlingt! Dann ruh'n sie ermüdet vom nächtlichen Reih'n. Es rauschen die Buchen in Schlummer sie ein. Und die aus der glücklichen Heimat verbannt, sie schauen im Traume das glückliche Land. 踊り始める黒い瞳の娘たち 火の粉を散らす松明 ギターが誘いシンバルの音が響く 踊りはどれほど 野性的になっていくことか! 踊り疲れると横になり体を休める ブナの木が奏でる子守唄が 彼らを包み込む 幸せに満ちた祖国を追われ 夢の中で愛する故郷に帰る 何かがかさかさと音を立て、 囁く声がする 木の葉と岩の周りに 色とりどりの姿がめぐり その周りでは炎がまたたき 光がひらひら舞っている そこは生き生きとした ロマ(ジプシー)の集まる場所 8 Doch wie nun im Osten der Morgen erwacht, verlöschen die schönen Gebilde der Nacht, es scharret das Maultier bei Tagesbeginn, fort zieh'n die Gestalten, wer sagt dir wohin? 東の空に日が昇り目が覚めると 美しい夜の姿は消え行く 夜明けとともにラバが地面を蹴れば さすらう姿が何処に行くのか、 誰が君に告げるだろうか? 9 Geistliches Lied J.Brahms 宗教的歌曲 J.ブラームス 作曲者ブラームスはバッハ、ベートーベンとともにドイツ音楽における「三大 B」とも称される。フレ ミングの詞は宗教曲以外にも多様に書かれ、現在でもドイツ語圏内で歌い継がれている。ゆったりとした メロディの中で高音パートを追うように歌声が幾層にも重なり、聴いている人々を無限の広がりへといざ なう。穏やかな旋律の中に秘められた強い信仰心が強弱として表現されたとき、より一層美しさを増す一 曲である。 Laß dich nur nichts nicht dauren mit Trauren, sei stille, wie Gott es fügt, so sei vergnügt mein Wille! 悲しみ、 後悔することなかれ 穏やかであれ、 神が定められたように それゆえ、私の意思も満足を得る! Was willst du heute sorgen auf morgen? Der Eine steht allem für, Der gibt auch dir das Deine. 何故あなたは今日、 明日のことを心配しているのか? 全てに優りし方がおられ、 その方があなたにもくださる あなたのものを Sei nur in allem Handel ohn Wandel, steh feste, was Gott beschleußt, das ist und heißt das Beste. Amen. 所業を変えるなかれ 確固たれ、 神が定められることは 最善であり、 最善を示すのである アーメン 10 11 2ndstage 2 年アンサンブル C.モンテヴェルディ~マドリガ-レ集~ 波はささやき この美しい手が罠を仕掛けた さえぎられた希望 私は若い娘 愛する人よ、あなたの心は こうして死にたいものだ 12 Ecco mormorar l'onde C.Monteverdi 波はささやき C.モンテヴェルディ 『Ecco mormorar l'onde』は、詩人のタッソーが自然の美しさと、ラウラという 1 人の女性への思慕を 歌う、代表的マドリガーレである。夜明けを告げるようにテノールの独唱が始まると、アルトとバスが続 く。曙光が海や山、空へ至るように、曲は旋律から和声に変わっていく。 Ecco mormorar l'onde E tremolar le fronde, A l'aura mattutina, e gl'arborscelli; E sovra i verdi rami i vagh'augelli Cantar soavemente, E rider l'Oriente. Ecco, già l'alba'appare E si specchia nel mare E rasserena il cielo, E'imperla il dolce gielo, E gl'alti monti indora. O bella e vagh'aurora, L'aura è tua messaggiera e tu de l'aura, Ch'ogn'arso cor ristaura. Sop. Mez. Alt. Ten. Bas. 林 恭子 押目 圭太郎 赤崎 澪里 山戸 崇央 則竹 厚輝 朝のそよ風の元 波はささやき 木々はゆらめく。 緑なす枝の上では 美しい鳥が甘く歌い 東方は輝き始める。 すでに曙が到来し 海に反射し 空を澄み渡らせ 柔らかな氷を滴らせ 高い山々を輝かせる。 美しい曙光よ そよ風はお前の使い、お前はそよ風の使い 燃えた心を冷やしてくれる、そんなそよ風の。 13 Questa ordì il laccio C.Monteverdi この美しい手が罠を仕掛けた C.モンテヴェルディ 1587 年に出版されたマドリガーレ集第 1 巻の中の 1 曲である。 作詞者はジョヴァン・バティスタ・ス トロッツィ。ルネサンス期のモンテヴェルディ作品の特徴とされる、伝統的な対位法が用いられている。 1 人の男が美しい女性に恋をするが、実は弄ばれていると知り愛の復讐を決意する。曲の前半では裏切ら れた悲しみが表現され、後半になると嘆きから憎しみへと変化する。"vendetta, Amor"で始まる五声の掛け 合いでは、愛と憎しみという正反対であるべき感情が共に高揚していく。 Questa ordì il laccio, questa sì bella man fra fiori e l'herba il tese, e questa il cor mi prese e fu sì presta a trarlo in mezz'a mille fiamme accese. Hor che l'ho qui ristretta, vendetta, Amor, vendetta! Sop. Mez. Alt. Ten. Bas. 金森 遥 林 恭子 石川 美雪 横田 昂大 金山 拓土 この美しい手が罠を仕掛け この美しい手が花々と草木に罠を仕掛け この美しい手が僕の心を捕らえると すぐに燃えさかる炎の中へ投げ入れた。 今しがた、ここでその美しい手を締め上げた。 復讐だ、愛の神よ、復讐だ。 14 Interrotte speranze C.Monteverdi さえぎられた希望 C.モンテヴェルディ モンテヴェルディは数々のマドリガーレ集を作成しており、この曲はその第 7 巻に収録されている。ル ネサンス後期からバロック最初期を生きた彼のマドリガーレはさまざまに変化しており、この曲集からチ ェンバロによる通奏低音が使用されるようになっている。 Interrotte speranze, eterna fede, fiamme e strali possenti in debil core; nutrir sol di sospir un fero ardore e celar il suo mal quand'altri il vede; seguir di vago e fuggitivo piede l'orme rivolte a volontario errore; perder del seme sparso e'l frutto e'l fiore e la sperata al gran languir mercede; far d'uno sguardo sol legge ai pensieri e d'un casto voler freno al desio, e spender lacrimando i lustri interi: questi ch'a voi, quasi gran fasci invio, donna crudel, d'aspri tormenti e fieri, saranno i trofei vostri e'l rogo mio. Ten. Ten. 丹治 西野 大河 凌 さえぎられた希望、永遠の信頼、 弱い心の中の力強い情熱と光線 少しため息をつき、誇りある熱意をつのらせ そしてあなたの弱さを他から隠してください。 さすらい、逃げる足を追ってください、 この意のままに誤りへと導く足跡から。 撒かれた種と果実と花そして 期待されるしおれた 偉大な報酬を失ってください。 ある一つの目線から思想の法則を生み出し、 ある貞淑な意志からの欲求を抑えてください。 そして涙はすべてを清めるために流されます。 この人、ということは あなたへ苦しみの種を送ります。 過酷な苦しみを誇るつらい女性は あなたの勲章であり私の天罰である。 15 Io mi son giovinetta C.Monteverdi 私は若い娘 C.モンテヴェルディ Io mi son giovinetta は、マドリガーレ第四集に収録された曲である。若い男が娘を口説き落とそうとす る際の駆け引きが、軽快なリズムと男声・女声の駆け合いによって表現されている。作詞者は不明である が、エステ家の宮廷詩人 G.B.グァリーニによるものとの説が有力である。 "Io mi son giovinetta, e rido e canto alla stagion novella!" Cantava la mia dolce pastorella. Quando subitamente a quel canto il cor mio canto, quasi augellin vago e ridente: 「私は若い娘、 新しい季節のために笑い、そして歌う」 と、僕のいとしい羊飼いの娘は歌った その歌に合わせて すぐ僕の心は 楽しげにさえずる小鳥のように歌った "Son giovinett'anch'io, e rido e canto alla gentil è bella primavera d'amore che ne begl'occhi tuoi fiorisce!", 「僕もまた若い男、 君の美しい目に咲いている 優雅な愛の春のために 笑い、そして歌う」 Et ella: "Fuggi, se saggio sei," disse, すると彼女は 「逃げて、賢明ならば」と言う 「熱い想いはやめておきなさい この目には あなたのための春など 来ることはないのだから」 "l'ardore, fuggi, ch'in questi rai, primavera per te non sarà mai!" Sop. Mez. Alt. Ten. Bas. 羽山 押目 赤崎 山戸 山下 莉菜 圭太郎 澪里 崇央 達也 16 S’el vostro cor, Madonna C.Monteverdi 愛する人よ、あなたの心は C.モンテヴェルディ この曲は男の悲哀をテノールとベースのデュエットで歌い上げたものである。 「あの男にはあんなにも情け深いのに」という嫉妬心を、短調の旋律と和音を用いて表現している。 S'el vostro cor, Madonna, altrui pietoso tanto, da quel suo degno al mio non degno pianto tal hor si rivolgesse e una stilla al mio languir ne desse, forse nel mio dolore vedria l'altrui perfidia el proprio errore, e voi seco direste: ah sapess'io usar pietà come pietà disio! Ten. Bas. 前川 福田 恵 光一 愛する人よ、あなたの心は 別の男には、こんなにも情け多い もしその男の立派な涙から、僕の哀れな涙へと 時折向き直ってくれるなら この焦燥に対して一滴でも涙を流し おそらく僕の苦しみを見て その男の不実と過ちに気付くだろう あなたは心の底からこう言うだろう 「情けを求めるのと同じくらい、 情けの用い方を知っていたらよかったのに。」 17 Sì ch’io vorrei morire C.Monteverdi こうして死にたいものだ C.モンテヴェルディ モンテヴェルディは、ルネサンス期からバロック期への移行期に、極めて重要な役割を果たした作曲家 である。彼の創作は、ルネサンス風のマドリガーレが出発点になっている。マドリガーレはもともとは無 伴奏のポリフォニー技法によって作曲されていた。だが、モンテヴェルディは詞が音楽の上に立つことを 求め、歌詞の劇的な表現を追求していった。その結果、声楽部でソプラノとバスに重点を置いたり、比較 的自由な対位法を使用したり、不協和音を自由に使うなど、古い規則を破る書法を用いたため、当時保守 派の音楽理論家から批判も受けた。やがてモンテヴェルディによってその表現力を異様なまでに高められ たマドリガーレは、バロック期のカンタータへと変容していくことになった。 モンテヴェルディが宮廷楽長に昇格した 2 年後の、36 歳の時に出版されたのが『Si ch'io vorrei morire』 の収録されているマドリガーレ集の第 4 巻であり、ちょうど新書法が確立してきた時期にあたる。 詞は Maurizio Moro によるもので、心から愛する大切な人との甘美な時間が、官能的な表現を用いて描 かれている。 Sì ch'io vorrei morire. Hora ch'io bacio amore, La bella bocca del mio amato core. Ahi, car'e dolce lingua, Datemi tant'humore che di dolcezz'in questo sen m'estingua. Ahi, vita mia, A questo bianco seno. Deh stringetemi fin ch'io venga meno, Ahi bocca, ahi baci, ahi lingua i'torn'a dire. Sì ch'io vorrei morire. Sop. Mez. Alt. Ten. Bas. 佐伯 石川 赤崎 丹治 小野 春奈 美雪 澪里 大河 裕志 こうして死にたいものだ。 心から愛する人の美しい唇に 愛のくちづけをしたこの瞬間に。 ああ、愛しく、そして甘美な舌よ、 たっぷりと濡らしておくれ この甘い快楽で私が消えてしまうほどに。 ああ、かけがえのない人よ、この白い胸よ。 抱きしめておくれ、私が気を失うまで。 ああ唇よ、ああくちづけよ、ああ舌よ、 私はまた繰り返す。 こうして死にたいものだ、と。 18 19 3rdstage 3 年オペラ 「アルジェのイタリア女」第 1 幕第 5 場/G. ロッシーニ 「アルジェのイタリア女」第 2 幕第 16 場/G. ロッシーニ 「愛の妙薬」第 1 幕第 4 景/G. ドニゼッティ 「イル・トロヴァトーレ」第 1 幕第 3 場/G. ヴェルディ 「カルメン」第 2 幕第 15 景/G. ビゼー 「ラクメ」第 1 幕第 2 場/C. P. L. ドリーブ 「蝶々夫人」第1幕フィナーレ/G. プッチーニ 「メリー・ウィドウ」第 2 幕第 12 場/F. レハール 20 Ai capricci della sorte G. Rossini “L'italiana in Algeri” 運命の気まぐれに対しては G. ロッシーニ 「アルジェのイタリア女」第 1 幕第 5 場 アルジェのイタリア女は、19 世紀初頭、ロッシーニが別の作曲家の代役として 1 ヶ月足らずで書き上げ たといわれる 2 幕からなるオペラ(またはドラマ•ジョコーソ)で、時と場所はこの作品が書かれた年代の 1805 年のアルジェ。 今回の場面は、イザベッラのことが好きでイタリアから追っかけてきたタッデーオが、海賊のハーリー に素性を尋ねられたところを、イザベッラに「私の伯父です」と助け舟を出され、お互いの利益のため親 戚のふりをしているという場面。二重唱の初めでちょっとけんかしかかった二人が、この異国にいる間は 親戚として仲良くやろう、と意気投合する。この場面の後に二人は船に乗り、イザベッラのかつての恋人 リンドーロを探しに出かける。この二重唱は、≪ロッシーニ伝≫でスタンダールが絶賛した大傑作である。 〈ISABELLA〉 Ai capricci della sorte Io so far l'indifferente. Ma un geloso impertinente Io son stanca di soffrir. 〈イザベッラ〉 運命の気まぐれに対しては 私も平然と振る舞えますわ だけど 出過ぎた嫉妬には 私はうんざりして耐えられないの 〈TADDEO〉 Ho più flemma, e più prudenza Di qualunque innamorato. Ma comprendo dal passato Tutto quel che può avvenir. 〈タッデーオ〉 私はずっと冷静だし、ずっと慎重なのだ どんな恋人よりも しかし、私は過去の経験から分かっている これから起こるであろうことは 〈ISABELLA〉 Sciocco amante è un gran supplizio. 〈イザベッラ〉 アホな恋する男はとんでもない迷惑だわ 〈TADDEO〉 Donna scaltra è un precipizio. 〈タッデーオ〉 狡猾な女性にはかなわんぜ 〈ISABELLA〉 Meglio un Turco che un briccone. 〈イザベッラ〉 トルコ人の方がこんな悪者より ずっとましよ 〈TADDEO〉 Meglio il fiasco che il lampione. 〈タッデーオ〉 放っとかれる方が厄介者扱いよりは良いぞ 〈ISABELLA〉 Vanne al diavolo in malora! Più non vo'con te garrir. 〈イザベッラ〉 地獄で悪魔に会っておいで! もうあなたにつべこべ言われるのは嫌よ 〈TADDEO〉 Buona notte; sì...Signora. Ho finito d'impazzir. 〈タッデーオ〉 ではおやすみなさい…シニョーラ 私も夢中になるのは止めよう 21 〈ISABELLA〉 (Ma in man de'barbari... senza un amico Come dirigermi? ...Che brutto intrico! Che ho da risolvere? Che deggio far? Che ho da risolvere? Che brutto affar!) 〈イザベッラ〉 (けれど野蛮人どもの手のうちで 友もなしに どうやって対処すれば? …何と嫌らしい難題でしょう! どうやって解決すれば? 何をしなければならないの? どうやって解決すれば? 何て嫌らしい難題!) 〈TADDEO〉 (Ma se al lavoro poi mi si mena... 〈タッデーオ〉 (けれどもし強制労働に 私が駆り出されたら。 どうやって耐えられるのだ 腰が痛いのに?) Come resistere, se ho poca schiena?) 〈ISABELLA, TADDEO〉 (Che ho da risolvere? Che deggio far?) 〈イザベッラ、タッデーオ〉 (何を決意せねばならぬのか? 何をすべきなのか?) 〈TADDEO〉 Donna Isabella?... 〈タッデーオ〉 イザベッラさんは?… 〈ISABELLA〉 Messer Taddeo... 〈イザベッラ〉 タッデーオさん… 〈TADDEO〉 (La furia or placasi.) 〈タッデーオ〉 (怒りは今静まった) 〈ISABELLA〉 (Ride il babbeo.) 〈イザベッラ〉 (アホが笑っているわ) 〈TADDEO〉 Staremo in collera? 〈タッデーオ〉 まだ機嫌が悪いのですか? 〈ISABELLA〉 Che ve ne par? 〈イザベッラ〉 どういうこと? 〈ISABELLA, TADDEO〉 Ah, no: per sempre uniti, Senza sospetti e liti, Con gran piacere, ben mio, Sarem nipote e zio; E ognun lo crederà. 〈イザベッラ、タッデーオ〉 いや、やめよう。ずっと団結して 疑いや争いを持つことなく 大きな喜びで 大切な人よ 私たちは姪と叔父になりきりましょう そうすればみんな信じるようになるはず 〈TADDEO〉 Ma quel Bey, Signora, Un gran pensier mi dà. 〈タッデーオ〉 けれどあの太守が、シニョーラ 私にはとても気になるのだ 22 〈ISABELLA〉 Non ci pensar per ora, Sarà quel che sarà. イザベッラ 富樫 美衣 タッデーオ 湊 和貴 〈イザベッラ〉 今心配してもしょうがないじゃない なるようになるわ 23 Son l'aure seconde, son placide l'onde 風は追い風 波は穏やか G.Rossini G.ロッシーニ “L'italiana in Algeri” 「アルジェのイタリア女」第 2 幕第 16 場 イザベッラの計略によりパッパターチ入会式に訪れたムスタファはイタリア人奴隷を会員にし、入会式 で機嫌よく飲み食いを始める。 ムスタファがご満悦の間に逃亡用の船が海岸に到着し、奴隷達が次々と船へと急ぐ。気づいたタッデー オの警告にも、ムスタファは会則である無言の誓いを守る。 SCENA QUINDICESIMA 〈CORO DI SCHIAVI〉 Son l'aure seconde, son placide l'onde, Tranquille son l'onde, Su presto salpiamo: non stiamo più a tardar. 第 15 場 〈奴隷たちの合唱〉 風は追い風 波は穏やか 波は静かだ さあすぐに船出だ もはやぐずぐずできぬ 〈LINDORO〉 Andiam, mio tesoro. 〈リンドーロ〉 行きましょう、愛する人よ 〈ISABELLA〉 Son teco, Lindoro. 〈イザベッラ〉 あなたと一緒よ、リンドーロ 〈A DUE〉 C'invitano adesso la patria e l'amor. 〈二人〉 今ぼくらの招くのだ、故郷と愛とが 〈TADDEO〉 Lindoro! ...Che sento? Quest'è un tradimento. Gabbati, burlati, noi siamo, o Signor. 〈タッデーオ〉 リンドーロ! …何を言ってるんだ? これは裏切りだ われわれは騙され、嘲けられてますよ おお太守さま 〈MUSTAFÀ〉 Io son Pappataci. 〈ムスタファ〉 わしはパッパターチじゃ 〈TADDEO〉 Ma quei... 〈タッデーオ〉 しかし、こいつらが… 〈MUSTAFÀ〉 Mangia e taci. 〈ムスタファ〉 食べて黙ってろ 〈TADDEO〉 Ma voi... 〈タッデーオ〉 ですが、あなた様… 24 〈MUSTAFÀ〉 Lascia far. 〈ムスタファ〉 放って置くのじゃ 〈TADDEO〉 〈タッデーオ〉 Ma io... ですが、私は… 〈MUSTAFÀ〉 Lacia dir. 〈ムスタファ〉 喋るでない 〈TADDEO〉 Ohimè!...Che ho da far? Restar, o partir? V'è il palo, se resto: se parto, il lampione Lindoro, Isabella: son qua colle buone, A tutto m'adatto, non so più che dir. 〈タッデーオ〉 残るのか…それとも行くのか? ああ…私はどうすればいいのだ? もし残れば、串刺しが待ってるぞ だが行けばただのボンクラだ リンドーロ、イザベッラ 彼らとは良い関係だし 私が辛抱すれば 何とかうまく行くだろう 〈ISABELLA e LINDORO〉 Fa'presto, se brami con noi di venir. 〈イザベッラとリンドーロ〉 急いでくださいよ もし私たちと一緒に来たいのなら SCENA ULTIMA 〈ZULMA e HALY〉 Mio Signore... 最終場 〈ズールマとハーリー〉 ご主人さま… 〈ELVIRA〉 Mio marito... 〈エルヴィーラ〉 旦那さま… 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Cosa fate? 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 いったい何をなさってるんです? 〈MUSTAFÀ〉 Pappataci. 〈ムスタファ〉 パッパターチ 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Non vedete? 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 何のことです? 〈MUSTAFÀ〉 Mangia e taci. Pappataci. Mangia e taci. Di veder e non veder, Di sentir e non sentir, Io qui giuro e poi scongiuro Pappataci Mustafà. 〈ムスタファ〉 食べて黙ってろ パッパターチ、食べて黙ってるのだ 見えても見ないのだ 聞こえても聞かないのだ わしはここに誓うぞ そしてなるのだ パッパターチ ムスタファに 25 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Egli è matto. 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 太守がおかしくなっちゃった 〈ISABELLA, LINDORO, TADDEO〉 Il colpo è fatto. 〈イザベッラ、リンドーロ、タッデーオ〉 作戦成功だ 〈ELVIRA,ZULMA,HALY〉 L'Italiana se ne va. 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 あのイタリア娘が去って行くのに 〈MUSTAFÀ〉 Come...come...ah, traditori. Presto, Turchi...Eunuchi...M ori. 〈ムスタファ〉 何だと…何だと…ああ、裏切り者め 出合え、トルコ兵宦…官よ…ムーア人よ 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Son briachi tutti quanti. 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 みんな酔っぱらってますよ 〈MUSTAFÀ〉 Questo scorno a Mustafà? 〈ムスタファ〉 何たるムスタファの恥だ? 〈CORO DI SCHIAVI〉 Chi avrà cor di farsi avanti Trucidato alfin cadrà. 〈奴隷たちの合唱〉 俺たちの前に立ちはだかる覚悟の奴は ぶっ殺すまでだぜ 〈MUSTAFÀ〉 Sposa mia; non più Italiane. Torno a te. Deh! Mi perdona... 〈ムスタファ〉 わしの花嫁には もうイタリア娘はこりごりだ わしはお前に戻るぞ ああ! 許してくれ… 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Amorosa, docil, buona, Vostra moglie ognor sarà. 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 愛らしく、素直で、気立ての良い あなたの妻はいつもおそばに 〈ISABELLA, LINDORO, TADDEO〉 Andiamo... 〈イザベッラ、リンドーロ、タッデーオ〉 お別れです… 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Buon viaggio! 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 良い旅を! 〈ISABELLA, LINDORO, TADDEO〉 ...Padroni! 〈イザベッラ、リンドーロ、タッデーオ〉 …主人さま方! 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Stian bene! 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 達者でね! 26 〈ISABELLA, LINDORO, TADDEO〉 Possiamo contenti Lasciar queste arene. Timor, nè periglio Per noi più non v'ha. 〈イザベッラ、リンドーロ、タッデーオ〉 私たちは幸せに この岸辺を去って行きましょう 恐れも、危険も 私たちにはもはやありません 〈ELVIRA, ZULMA, HALY〉 Potete contenti Lasciar queste arene. Timor, nè periglio Per voi più non v'ha. 〈エルヴィーラ、ズールマ、ハーリー〉 あなた方は幸せに この岸辺を去って行かれます 恐れも、危険も あなた方にはもはやないのです 〈TUTTI〉 La bella Italiana Venuta in Algeri Insegna agli amanti Gelosi ed alteri, Che a tutti, se vuole, La Donna la fa. 〈全員〉 美しいイタリア女が アルジェにやってきて 恋する男どもを教育したのだ 嫉妬深かったり傲慢だったりする男を もしその気になれば 女はいかようにでも変えるのだ イザベッラ リンドーロ タッデーオ ムスタファ エルヴィーラ ズールマ ハーリー 奴隷たち 高野 薫 鈴木 雅人 湊 和貴 小山 大輝 岡田 祥子 渡邉 碧 寺本 翔 一年生 27 Voglio dire lo stupendo G. Donizetti “L'elisir d'amore” つまり、その G. ドニゼッティ 「愛の妙薬」第 1 幕第 4 景 舞台はスペイン、バスク地方の小さな村。純朴な農夫ネモリーノは農場主の娘アディーナに夢中である。 軍曹のベルコーレが彼女を口説くから、ネモリーノも勇気をふるって告白するが相手にされない。そこへ 「森羅万象に通暁した、人類の救済者」と名乗る薬売りドゥルカマーラ博士なる人物が登場し、巧みな宣 伝口上で村人に薬を売り付けようとする。 言葉巧みなドゥルカマーラ博士と純粋なネモリーノのやりとりをお楽しみください。 〈NEMORINO〉 (Ardir! Ha forse il cielo mandato espressamente per mio bene quest'uom miracoloso nel villaggio. Della scienza sua voglio far saggio.) Dottore, perdonate... È ver che possediate segreti portentosi?... 〈ネモリーノ〉 (よし、声をかけよう きっと天が 僕のために遣わした人だ 不思議な力のことを知りたい) すみません、先生… 奇跡を起こす薬を お持ちだとか 〈DULCAMARA〉 Sorprendenti. La mia saccoccia è di Pandora il vaso. 〈ドゥルカマーラ博士〉 山ほどある 私のカバンは宝箱だ 〈NEMORINO〉 Avreste voi...per caso... la bevanda amorosa della regina Isotta? 〈ネモリーノ〉 では、ひょっとして… イゾルデ姫の媚薬も お持ちですか? 〈DULCAMARA〉 Ah! ...che? ...che cosa? 〈ドゥルカマーラ博士〉 何…? なんだって? 〈NEMORINO〉 Voglio dire...lo stupendo Elisir che desta amore... 〈ネモリーノ〉 つまり、その… 人に愛を呼び起こすという妙薬で… 〈DULCAMARA〉 Ah! sì, sì, capisco, intendo, Io ne son distillatore. 〈ドゥルカマーラ博士〉 ああ…そうか…、わかった…わかった… わしはその製造元じゃ 〈NEMORINO〉 E fia vero? 〈ネモリーノ〉 本当ですか? 〈DULCAMARA〉 Se ne fa gran consumo in questa età. 〈ドゥルカマーラ博士〉 さよう 近年とみに愛用されている 〈NEMORINO〉 Oh fortuna! e ne vendete? ... 〈ネモリーノ〉 ああ、よかった! 売っているのですね? 28 〈DULCAMARA〉 Ogni giorno a tutto il mondo. 〈ドゥルカマーラ博士〉 毎日、至る所で 〈NEMORINO〉 E qual prezzo ne volete? 〈ネモリーノ〉 いかほどで? 〈DULCAMARA〉 Poco...assai...cioè...secondo... 〈ドゥルカマーラ博士〉 格別…、安く… 〈NEMORINO〉 Un zecchin...null'altro ho qua ... 〈ネモリーノ〉 1 ゼッキーニしか…、ここには… 〈DULCAMARA〉 È la somma che ci va. 〈ドゥルカマーラ博士〉 それでよかろう 〈NEMORINO〉 Ah! prendetelo, dottore. 〈ネモリーノ〉 それじゃ…これで…、先生、ありがとう 〈DULCAMARA〉 Ecco il magico liquore. 〈ドゥルカマーラ博士〉 これが魔法の薬じゃ 〈NEMORINO〉 Obbligato, ah! sì, obbligato! son felice, son beato. elisir di tal bontà, benedetto chi ti fa! 〈ネモリーノ〉 ありがとう…、かたじけない 僕は幸せ、満足だ この妙薬を作った先生に 心から感謝を 〈DULCAMARA〉 (Nel paese che ho girato più d'un gonzo ho ritrovato, ma un eguale, in verità, non si trova, non si dà.) 〈ドゥルカマーラ博士〉 (今まで方々歩き回ったが こんな奴は初めてだ おめでたいにもほどがある こんなに騙されやすい男は 見たことも出会ったこともない) 〈NEMORINO〉 Ehi...Dottore...un momentino... In qual modo usar si puote? 〈ネモリーノ〉 ところで先生、ちょっと教えてください どうやって飲んだら? 〈DULCAMARA〉 Con riguadro; pian, pianino la bottiglia un po' si scuote... poi si stura...ma si bada... che il vapor non se ne vada. Quindi al labbro lo avvicini e lo bevi a centellini, e l'effetto sorprendente non ne tardi a conseguir. 〈ドゥルカマーラ博士〉 気をつけて…、注意深くゆっくり… しずかに… 瓶を少し振る… それから栓を抜き、 この時…、気が抜けぬよう気をつけて それから唇を瓶の口もとに… 少しずつ、すするのじゃ そして驚くべき効き目が 遅れて現れ始めるぞ 29 〈NEMORINO〉 Sul momento? 〈ネモリーノ〉 すぐにですか? 〈DULCAMARA〉 A dire il vero, necessario è un giorno intero. (Tanto tempo sufficiente per cavarmela e fuggir.) 〈ドゥルカマーラ博士〉 正しくは 丸一日後ということかな (丸一日ありゃ… 逃げるにゃ十分…) 〈NEMORINO〉 E il sapore? 〈ネモリーノ〉 味は? 〈DULCAMARA〉 Egli è eccellente... (È Bordò, non elisir.) Giovinotto! ehi? ehi? 〈ドゥルカマーラ博士〉 格別じゃ (妙薬じゃない…、ただのブドウ酒だが) おい…、お若いの! 〈NEMORINO〉 Signore? 〈ネモリーノ〉 何でしょうか? 〈DULCAMARA〉 Sovra ciò...silenzio...sai? Oggidì spacciar l'amore è un affar geloso assai: impacciar se ne potria un tantin l'Autorità. 〈ドゥルカマーラ博士〉 言っておくが…、黙っているのだぞ 今どき、恋を売るなど ねたみを買うのでな 間違いなくねたまれるのじゃ その筋を刺激しようものなら 〈NEMORINO〉 Ve ne do la fede mia: neanche un'anima il saprà. 〈ネモリーノ〉 誓います 誰にもしゃべりません 〈DULCAMARA〉 Va, mortale avventurato; un tesoro io t'ho donato: tutto il sesso femminino te doman sospirerà. (Ma doman di buon mattino ben lontan sarò di qua.) 〈ドゥルカマーラ博士〉 お前は果報者、運が良い 明日になれば女どもが どっとお前のもとへ お前は大もてじゃ (だが明日の朝になれば 私はもういない) 30 〈NEMORINO〉 Ah! dottor, vi do parola ch'io berrò per una sola: 〈ネモリーノ〉 先生、どうかきいてください たった一人の女性のために 僕は飲むのです。 né per altra, e sia pur bella, né una stilla avanzerà. (Veramente amica stella ha costui mandato qua.) ネモリーノ ドゥルカマーラ博士 どんな美女が現れても、 ほかの女のためになど 一滴だって飲みません (神様がこの方を 僕のために送ってくださったのだ) 清野 桐山 裕太 直樹 31 Tace la notte! G. Verdi “Il Trovatore” 静かな夜だ! G. ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」第 1 幕第 3 場 15 世紀のスペイン。ジプシーの老婦人アズチェーナの子でトロヴァトーレ(吟遊詩人)の騎士マンリー コは、敵であるルーナ伯爵の女官レオノーラを愛していたが、ルーナも同様だった。何度も戦った結果レ オノーラは、マンリーコが勝ち得る。復讐を誓ったルーナは怪しい行動をするアズチェーナを捕まえ、彼 女の処刑を脅しとしてマンリーコをおびき出し……。といったストーリー。 場面は城の庭園。女官レオノーラがマンリーコを待っているところへ、ルーナ伯爵が登場。暗さゆえレ オノーラはマンリーコに抱きつくつもりで間違ってルーナに抱きついてしまう。そこにマンリーコが登場。 当惑するレオノーラ、自分が愛されていないことを知り激怒するルーナ伯爵、レオノーラを赦し伯爵を挑 発するマンリーコによって三重唱が歌われる。伯爵とマンリーコは決闘を行うが勝負はつかない。レオノ ーラは気絶してしまう。 〈CONTE〉 Tace la notte! Immersa nel sonno è certo la regal signora; ma veglia la sua dama! Oh Leonora! tu desta sei; mel dice, da quel verone, tremolante un raggio della notturna lampa Ah! l'amorosa fiamma m'arde ogni fibra! Ch'io ti vegga è d'uopo, che tu m'intenda Vengo A noi supremo è tal momento. Il Trovator! Io fremo! 〈LA VOCE DEL TROVATORE〉 Deserto sulla terra, col rio destino in guerra è sola spese un cor, al Trovator! Ma s'ei quel cor possiede, bello di casta fede, 〈伯爵〉 静かな夜だ! もうぐっすりと王妃さまはきっと おやすみのことだろう だが次女は起きている おお、レオノーラ! あなたは起きている 私にはわかる。 あのバルコニーでちらつく光が ランプより漏れてくるからだ。 ああ、恋の炎よ! 私のすべてを燃やし尽くす! 私はあなたに会わねばならぬ。 そしてすぐに伝えなければ。 あなたに聞いてもらわねば。 行こう…私たちの最高の この瞬間のために。 吟遊詩人め! 身震いするぞ! è d'ogni re maggior il Trovator! 〈吟遊詩人の声〉 地上に一人、 戦の中の運命の流れとともに 心だけが唯一の希望 吟遊詩人にとって! だがその心が 純粋な忠義という 美徳を持っていれば すべての王よりも偉大だ。 吟遊詩人よ! 〈CONTE〉 Oh detti! Oh gelosia! Non m'inganno... Ella scende! 〈伯爵〉 ああ、あの言葉! ああ、嫉妬よ! 私を間違わせないでくれ… 彼女が下りてくる! 32 〈LEONORA〉 Anima mia! 〈レオノーラ〉 私の愛しい人! 〈CONTE〉 (Che far?) 〈伯爵〉 (どうしたらいいのだ?) 〈LEONORA〉 Più dell'usato è tarda l'ora; io ne contai gl'istanti co'palpiti del core! Alfin ti guida pietoso amor fra queste braccia 〈レオノーラ〉 いつもより時間も遅い 心のときめきも! 時を数えていたの やっと慈悲深い愛が あなたをこの腕に導いてくれた 〈LA VOCE DEL TROVATORE〉 Infida!... 〈吟遊詩人の声〉 裏切り者!… 〈LEONORA〉 Qual voce! Ah! dalle tenebre tratta in errore io fui! A te credea rivolgere l'accento e non a lui... A te, che l'alma mia sol chiede, sol desìa! Io t'amo, il giuro, t'amo d'immenso, eterno amor! 〈レオノーラ〉 この声は! ああ、暗闇のせいで 私はとんだ間違えをしてしまった! 私はあなたにむかって 言っていると思ったの。 彼ではなく… あなただけを私の魂は呼び、欲するの... あなたを愛している。誓うわ、 あなたを愛しているの 大きな、永遠の愛よ! 〈CONTE〉 Ed osi? 〈伯爵〉 よくも… 〈MANRICO〉 (Ah, più non bramo!) 〈マンリーコ〉 (ああ、もう君なんかいらない!) 〈CONTE〉 Avvampo di furor! Se un vil non sei discovriti! 〈伯爵〉 怒りで心が燃え上がる! 臆病者じゃないのなら出てこい! 〈LEONORA〉 (Ohimè!) 〈レオノーラ〉 (ああ!) 〈CONTE〉 Palesa il nome! 〈伯爵〉 名を名乗れ! 〈LEONORA〉 Deh, per pietà!... 〈レオノーラ〉 お願いだから!… 〈MANRICO〉 Ravvisami, Manrico io son. 〈マンリーコ〉 私を覚えているか、マンリーコだ。 33 〈CONTE〉 Tu! Come! Insano temerario! D'Urgel seguace, a morte proscritto, ardisci volgerti a queste regie porte? 〈伯爵〉 お前か! なぜここに! きちがいじみた大胆さ! ウルジェル家の支持者に 死刑宣告が出ているのに あえてむかってくるとは この城の門へ? 〈MANRICO〉 Che tardi? Or via le guardi appella, ed il rivale al ferro del carnefice consegna! 〈マンリーコ〉 なにをぐずぐずしてる? 衛兵を呼ばないのか? そしてライバルを 死刑執行人の剣に 託さないのか! 〈CONTE〉 Il tuo fatale istante assai più prossimo è, dissennato! Vieni... 〈伯爵〉 お前の運命のときは もうすぐだ。 そこの馬鹿な女よ! こちらへ来い... 〈LEONORA〉 Conte! 〈レオノーラ〉 伯爵! 〈CONTE〉 Al mio sdegno vittima è d'uopo ch'io ti sveni... 〈伯爵〉 私の軽蔑の犠牲者として お前の血を流してもらわねば... 〈LEONORA〉 Oh ciel! t'arresta! 〈レオノーラ〉 神様! やめて! 〈CONTE〉 Seguimi. 〈伯爵〉 ついてこい。 〈MANRICO〉 Andiam! 〈マンリーコ〉 行こう! 〈LEONORA〉 (Che mai farò? Un sol mio grido perdere lo puote!) M'odi! 〈レオノーラ〉 (どうすればいいの? 私が一声叫べば彼は終わりだ!) 聞いて! 34 〈CONTE〉 No! Di geloso amor sprezzato, arde in me tremendo il fuoco! il tuo sangue, o sciagurato, ad estinguerlo fia poco! Dirgli, o folle, Io t'amo, ardisti! Ei più vivere non può. 〈伯爵〉 だめだ! 嫉妬と愛と軽蔑の炎が 私の胸で燃え狂う! お前の血と不幸でも、 とても消せそうにない! 言ったな馬鹿な女、 「愛している」だと、よくも言ったな Un accento proferisti, che a morir lo condannò! 彼はもうおしまいだ。 お前の一言が彼を死に追いやったんだ! 〈LEONORA〉 Un istante almen dia loco, il tuo sdegno alla ragione... 〈レオノーラ〉 ほんの一瞬でいいから あなたの理性を軽蔑のかわりに 持ってください... 私、私だけがその激しい、激しすぎる 怒りの原因なのです! 鎮めて、ああ! あなたの怒りを鎮めてください。 あなたを激怒させた犯人に この胸に剣の一突きを、 この胸はあなたを愛したくも 愛せもしませんが。 io, sol io, di tanto foco son, pur troppo, la cagione! Piombi, ah! piombi il tuo furore sulla rea che t'oltraggiò, vibra il ferro in questo core, che te amar non vuol, né può. 〈MANRICO〉 Del superbo vana è l'ira; ei cadrà da me trafitto: il mortal, che amor t'ispira, dall'amor fu reso invitto. La tua sorte è già compita, l'ora omai per te suonò! Il suo core e la tua vita il destino a me serbò! レオノーラ 二宮 マンリーコ 清野 伯爵 寺本 知子 裕太 翔 〈マンリーコ〉 こいつの怒りは壮大な無駄だ。 彼は私の一突きに倒れるだろう。 あなたの愛を受けた人間は その愛によって不死身になった。 お前の運命はもう決まった 時はたった今お前のために告げられた! 彼女の心とお前の命を 運命が私に届けてくれた! 35 Nous avons en tête une affaire. G. Bizet “Carmen” 一仕事思いついたんだ。 G. ビゼー 「カルメン」第 2 幕第 15 景 舞台は 1820 年頃、スペインのセヴィリヤ。カルメンは奔放で妖艶な魅力で男たちの憧れの的である。そ んなカルメンは兵隊のホセに恋をしている。ある日、酒場でジプシー仲間たちがカルメン達に密輸の仕事 の話を持ちかけ、それに対してカルメンは今日はどうしても一緒に行けないと言う。 「なぜ?」 「どうして?」 と問うジプシー仲間に対し、 「なぜなら私は恋をしているから!」と自分の気持ちを明かすカルメン。彼ら は唖然として笑い出している。軽妙な楽しさやジプシー達の自由な気風のよさを感じ取れる5重唱をどう ぞお楽しみください 〈LE DANCAÏRE〉 Nous avons en tête une affaire. 〈ダンカイロ〉 一仕事思いついたんだ。 〈MERCÉDÈS, FRASQUITA〉 Est-elle bonne, dites-nous? 〈メルセデス、フラスキータ〉 うまい仕事なの? 〈LE DANCAÏRE〉 Elle est admirable, ma chère Mais nous avons besoin de vous. 〈ダンカイロ〉 素敵な仕事さ、姐さんがた、 だがお前たちの助けが必要なのさ。 〈LE REMENDADO〉 Oui, nous avons besoin de vous! 〈レメンダード〉 そう、お前たちが必要なんだ! 〈CARMEN〉 De nous? 〈カルメン〉 あたしたちの? 〈LE DANCAÏRE〉 De vous! 〈ダンカイロ〉 お前たちさ! 〈FRASQUITA〉 De nous? 〈フラスキータ〉 あたしたちの? 〈LE REMENDADO〉 De vous! 〈レメンダード〉 お前たちさ! 〈MERCÉDÈS〉 De nous? 〈メルセデス〉 あたしたちの? 〈LE REMENDADO, LE DANCAÏRE〉 De vous! 〈レメンダード、ダンカイロ〉 お前たちさ! 〈FRASQUITA,MERCÉDÈS,CARMEN〉 Quoi! Vous avez besoin de nous? 〈フラスキータ、メルセデス、カルメン〉 なんだって! あたしたちが必要なのかい? 36 〈LE REMENDADO, LE DANCAÏRE〉 Oui, nous avons besoin de vous! Car nous l'avouons humblement, Et fort respectueusement, Oui nous l'avouons humblement: Quand il s'agit de tromperie, De duperie, de volerie, Il est toujours bon, sur ma foi, D'avoir les femmes avec soi, Et sans elles, Mes toutes belles, On ne fait jamais rien de bien. 〈レメンダード、ダンカイロ〉 そう、お前たちが必要なんだ! 正直なところを言うと、 尊敬の念をもって言えば、 そう、正直なところを言えば、 詐欺だの、 かたりだの、盗みをやるとなったら、 誓って、上手くやるにはいつも 女が必要なのさ、 もし女がいなきゃ 俺たちの女が一人もいなきゃ 何も上手くはいかないさ。 〈FRASQUITA, MERCÉDÈS ,CARMEN〉 Quoi! Sans nous jamais rien De bien? 〈フラスキータ、メルセデス、カルメン〉 まあ! あたしたちがいないと上手くいかない? 〈LE REMENDADO, LE DANCAÏRE〉 N'êtes vous pas de cet avis? 〈レメンダード、ダンカイロ〉 そう思わないか? 〈FRASQUITA, MERCÉDÈS, CARMEN〉 Si fait, je suis de cet avis. Si fait vraiment je suis de cet avis. 〈フラスキータ、メルセデス、カルメン〉 もちろん、思うわ その通りよ。 〈TOUS LES CINQ〉 Quand il s'agit de tromperie, De duperie, de volerie, Il est toujours bon sur ma foi D'avoir les femmes avec soi. Et sans elles, les toutes belles, On ne fait jamais rien de bien. 〈五人全員〉 詐欺だの、 かたりだの、盗みをやるとなったら、 誓って、上手くやるにはいつも 女が必要なのさ もし女が、 俺たちの女が一人もいなきゃ、 何も上手くはいかないさ。 〈LE DANCAÏRE〉 C'est dit alors, vous partirez. 〈ダンカイロ〉 そういうわけだ、さあ行こうか。 〈MERCÉDÈS,FRASQUITA〉 Quand vous voudrez. 〈メルセデス、フラスキータ〉 いつでも行くわ。 〈LE REMENDADO〉 Mais tout de suite. 〈レメンダード〉 よし、すぐ行こう。 37 〈CARMEN〉 Ah! Permettez, permettez. (à Mercédès et à Frasquita) S'il vous plaît de partir, partez. Mais je ne suis pas du voyage; Je ne pars pas ... je ne pars pas. 〈カルメン〉 ああ!ちょっと待って。 (メルセデスとフラスキータに) 行きたいんなら、 あんたたちは行ってもいいけど あたしはだめだわ、 あたしは行けない…行けないんだ。 〈LE REMENDADO, LE DANCAÏRE〉 Carmen, mon amour, tu viendras, Et tu n'auras pas le courage De nous laisser dans l'embarras. 〈レメンダード、ダンカイロ〉 カルメン、愛する人よ、来てくれよ、 まさか、この俺たちを 困らせようというんじゃないだろ。 〈CARMEN〉 Je ne pars pas, je ne pars pas 〈カルメン〉 行けない、行けないのよ。 〈FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Ah! Ma Carmen tu viendras! 〈フラスキータ、メルセデス〉 ああ! あたしたちのカルメン、来ておくれよ! 〈LE DANCAÏRE〉 Mais au moins la raison, Carmen tu la diras? 〈ダンカイロ〉 それならせめて、 カルメン、わけを聞かせろよ。 〈FRASQUJTA, MERCÉDÈS, LEDANCAÏRE, LE REMENDADO〉 La raison! La raison! La raison! La raison! 〈フラスキータ、メルセデス、 ダンカイロ、レメンダード〉 わけを聞かせて! わけを! わけを! 〈CARMEN〉 Je la dirai certainement. 〈カルメン〉 わけだったら、言うわ。 〈LE DANCAIRE, LE REMENDADO, FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Voyons! Voyons! Voyons! Voyons! 〈ダンカイロ、レメンダード、 フラスキータ、メルセデス〉 さあ! さあ! さあ! さあ! 〈CARMEN〉 La raison c'est qu'en ce moment 〈カルメン〉 そのわけというのは、実は今… 〈LE DANCAÏRE, LE REMENDADO〉 Eh bien? 〈ダンカイロ、レメンダード〉 それで? 〈FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Eh bien? 〈フラスキータ、メルセデス〉 それで? 〈CARMEN〉 Je suis amoureuse! 〈カルメン〉 あたしは、恋をしてるのよ! 〈LE DANCAÏRE, LE REMENDADO〉 Qu'a-t-elle dit? Qu'a-t-elle dit? 〈ダンカイロ、レメンダード〉 何? 何だって? 38 〈FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Elle dit qu'elle est amoureuse! 〈フラスキータ、メルセデス〉 恋をしてる、だってさ! 〈LE DANCAÏRE, LE REMENDADO, FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Amoureuse! Amoureuse! 〈ダンカイロ、レメンダード、 フラスキータ、メルセデス〉 恋をしてる! 恋をしてるだって! 〈CARMEN〉 Oui, amoureuse! 〈カルメン〉 そう、恋をしてるの! 〈LE DANCAÏRE〉 Voyons, Carmen, sois sérieuse! 〈ダンカイロ〉 おいおい、カルメン、まじめにやれよ! 〈CARMEN〉 Amoureuse à perdre l'esprit! 〈カルメン〉 恋しくて、首ったけなの! 〈LE DANCAÏRE, LE REMENDADO〉 La chose certes nous étonne, Mais ce n'est pas le premier jour Où vous aurez su, ma mignonne. Faire marcher de front le devoir et l'amour. 〈ダンカイロ、レメンダード〉 そいつは確かに驚きだが、 まさか初めてのことじゃあるまいし、 お前さんはいつだって、なあ、おい、 仕事と恋を一緒にやってのけたじゃないか。 〈CARMEN〉 Mes amis, je serais fort aise De pouvoir partir avec vous ce soir, Mais cette fois, ne vous déplaise, Il faudra que l'amour passe avant le devoir. 〈カルメン〉 でもね、本当に今夜は あんたたちと一緒に行けたらいいけど、 今回だけは、気を悪くしないでね、 仕事より恋を優先したいのさ。 〈LE DANCAÏRE〉 Ce n'est pas là ton dernier mot? 〈ダンカイロ〉 どうしても嫌なのか? 〈CARMEN〉 Absolument! 〈カルメン〉 どうしてもね! 〈LE REMENDADO〉 Il faut que tu te laisses attendrir! 〈レメンダード〉 何とか考えなおしてくれよ! 〈LE DANCAÏRE, LE REMENDADO, FRASQUITA, MERCÉDÈS〉 Il faut venir, Carmen, il faut venir. 〈ダンカイロ、レメンダード、 フラスキータ、メルセデス〉 おいでよ、カルメン、 来なくちゃだめだ、 一人欠けても仕事にならない、 俺たちの仲じゃないか… あたしたちの仲じゃないの Pour notre affaire, C'est nécessaire, Car entre nous... 39 〈CARMEN〉 Quant à cela, je l'admets avec vous. 〈TOUS LES CINQ〉 Quand il s'agit de tromperie, De duperie, de volerie Il est toujours bon sur ma foi D'avoir les femmes avec soi. Et sans elles, les toutes belles, On ne fait jamais rien de bien. フラスキータ メルセデス カルメン レメンダード ダンカイロ 岡田 高野 富樫 鈴木 宮野 祥子 薫 美衣 雅人 郁 〈カルメン〉 そのことなら、よく分かってるつもり。 〈五人全員〉 詐欺だの、かたりだの、盗みをやるとなったら、 誓って、上手くやるにはいつも女が必要なのさ もし女が、俺たちの女が一人もいなきゃ、 何も上手くはいかないさ。 40 Viens, Mallika, les lianes en fleurs C. P. L. Delibes “Lakmé” おいで、マリカ、花をつけた蔦は C. P. L. ドリーブ 「ラクメ」第 1 幕第 2 場 フランスオペラ『ラクメ』 。作曲者ドリーブはバレエ音楽など劇音楽で有名である。舞台はイギリス植民 地時代のインド。アジアンテイストの効いた音楽で、そこかしこにジャスミンの香りが漂うようなメロデ ィが散りばめられている。 今作はイギリス人将校のジェラルドとバラモン教の巫女ラクメとの悲恋を描く。このシーンは、まだジ ェラルドとラクメが出会う前の穏やかな寺院の庭での出来事。ラクメと侍女マリカが歌う美しい旋律をお 楽しみください。 〈Lakmé〉 Viens, Mallika, les lianes en fleurs jettent déjà leur ombre Sur le ruisseau sacré qui coule, calme et sombre, Eveillé par le chant des oiseaux tapageurs! 〈ラクメ〉 おいで、マリカ、花をつけた蔦は もはやその影を 聖なる川に落としているわ。 暗く静かな流れは さえずる小鳥の歌に 目を覚ますのよ! 〈Mallika〉 Oh! maîtresse, C'est l'heure où je te vois sourire, L'heure bénie oùje puis lire Dans le coeur toujours fermé De Lakmé! 〈マリカ〉 ああ、お嬢様 今の時間は、あなた様のお顔に 微笑が浮かぶ、しあわせの時です。 ラクメ様の閉ざされたままのお心が わずかに開く時ですね! 〈Lakmé〉 Dôme épais le jasmin A la rose s'assemble, Rive en fleurs, frais matin, Nous appellent ensemble. Ah! glissons en suivant Le courant fuyant ; Dans l'onde frémissante, D'une main nonchalante, Gagnons le bord, Où l'oiseau chante, Dôme épais, blanc jasmin Nous appellent ensemble! 〈ラクメ〉 ジャスミンとバラの 厚く群れ咲くアーチ、 花咲く岸辺、清々しい朝、 みんな私たちを呼んでいる。 ああ、流れ行く水に乗って さざめく水面を すべってみましょう ゆっくりと漕いで 小鳥たちの歌う 岸辺にまいりましょう 繁ったアーチ、白いジャスミンがそろって 私たちを呼んでいる! 41 〈Mallika〉 Sous le dôme épais où le blanc jasmin A la rose s'assemble, Sur la rive enfleurs, riant au matin, Viens, descendons ensemble. Doucement glissons; De son flot charmant Suivons le courant fuyant; Dans l'onde frémissante, D'une main nonchalante, Viens, gagnons le bord Où la source dort. Et l'oiseau, chante. Sous le dôme épais, Sous le blanc jasmin, Ah! descendons ensemble! 〈マリカ〉 白いジャスミンとバラの群れ咲く 白いアーチの下 花咲く岸辺を、朝の清清しさを吸って さあ一緒にまいりましょう。 静かにすべりましょう。 心地よい 流れに乗って さざめく波の中を。 ゆっくりと漕いで、 そこには 泉が眠り 小鳥が歌っている。 繁ったアーチの下を、 白いジャスミンの下を ああ、一緒に下りましょう! 〈Lakmé〉 Mais je ne sais quelle crainte subite S'empare de moi, Quand mon père va seul à leur ville maudite, Je tremble d'effroi! 〈ラクメ〉 でも、どんな恐ろしいことが突然に 私の上にふりかかることやら。 お父上はおひとりで あの呪われた町に行かれたが、 思えばおそろしいこと! 〈Mallika〉 Pour que le Dieu Ganeça le protège, Jusqu'à l'étang où s'ébattent joyeux Les cygnes aux ailes de neige, Allons cueillir les lotus bleus. 〈マリカ〉 ガネサのお加護がありますように。 では、雪のような羽の白鳥たちが 喜びあそぶあの池に行って 青い蓮を摘みましょう。 〈Lakmé〉 Oui, près des cygnes aux ailes de neige, Allons cueillir les lotus bleus. Dôme épais le jasmin A la rose s'assemble, Rive en fleurs, frais matin, Nous appellent ensemble. Ah! glissons en suivant Le courant fuyant ; Dans l'onde frémissante, D'une main nonchalante, Gagnons le bord, Où l'oiseau chante, Dôme épais, blanc jasmin Nous appellent ensemble! 〈ラクメ〉 そうね、雪のような羽の 白鳥たちの側で 青い蓮を摘みましょう。 ジャスミンとバラの 厚く群れ咲くアーチ、 花咲く岸辺、清々しい朝、 みんな私たちを呼んでいる。 ああ、流れ行く水に乗って さざめく水面を すべってみましょう ゆっくりと漕いで 小鳥たちの歌う 岸辺にまいりましょう 繁ったアーチ、白いジャスミンが そろって私たちを呼んでいる! 42 〈Mallika〉 Sous le dôme épais où le blanc jasmin A la rose s'assemble, Sur la rive enfleurs, riant au matin Viens, descendons ensemble. Doucement glissons; De son flot charmant Suivons le courant fuyant; Dans l'onde frémissante, D'une main nonchalante, Viens, gagnons le bord Où la source dort. Et l'oiseau, chante. Sous le dôme épais, Sous le blanc jasmin, Ah! descendons ensemble! ラクメ マリカ 渡邉 碧 富樫 美衣 〈マリカ〉 白いジャスミンとバラの群れ咲く 白いアーチの下 花咲く岸辺を、朝の清々しさを吸って さあ一緒にまいりましょう。 静かにすべりましょう。 心地よい 流れに乗って さざめく波の中を。 ゆっくりと漕いで、 そこには 泉が眠り 小鳥が歌っている。 繁ったアーチの下を、 白いジャスミンの下を ああ、一緒に下りましょう! 43 Vogliatemi bene, un bene piccolino, G. Puccini “Madama Butterfly” 私にくださいね、小さな幸せを G. プッチーニ 「蝶々夫人」第 1 幕フィナーレ 原作は同名小説に基づく戯曲である。舞台は明治時代の長崎。アメリカ海軍士官のピンカートンと、日 本人の芸者蝶々さんの悲劇的な恋が描かれる。当時のジャポニズム影響を受けており、日本的情緒を含ん だ旋律もところどころに見られるのも特徴である。 蝶々さんのキリスト教改宗に怒った叔父により結婚式が台無しにされ、親戚からも見放された直後の場 面である。周囲の怒りの声に苦しむ蝶々さんをピンカートンが慰め、二人は結ばれる。 〈BUTTERFLY〉 Vogliatemi bene, un bene piccolino, un bene da bambino, quale a me si conviene. Vogliatemi bene. Noi siamo gente avvezza alle piccole cose umili e silenziose, ad una tenerezza sfiorante e pur profonda come il ciel, come l'onda del mare! 〈蝶々夫人〉 私にくださいね、小さな幸せを 赤ちゃんのような幸せを 私にはそれがふさわしいのです 私にくださいね 私どもは慣れていますの ささやかなことに つつましく静かな幸せに そして優しさに 控え目でいながら それでも深い 空や海の波のような優しさに! 〈PINKERTON〉 Dammi ch'io baci le tue mani care. Mia Butterfly! Come t'han ben nomata tenue farfalla... 〈ピンカートン〉 君の可愛い手にくちづけさせておくれ 僕のバタフライ! なんて君に似合った名前だ、か弱い蝶々… 〈BUTTERFLY〉 Dicon che oltre mare se cade in man dell'uom, ogni farfalla da uno spillo è trafitta ed in travola infitta! 〈蝶々夫人〉 海の向こうの国では 人の手に捕らえられると 蝶々は針で刺されて 板の上に留められるのだそうですね! 〈PINKERTON〉 Un po' di vero c'è. E tu lo sai perché? Perché non fugga più. Io t'ho ghermita Ti serro palpitante. Sei mia. 〈ピンカートン〉 少しは本当だけど 君はなぜだか分かるかい? もう二度と逃がさないためなのさ 僕は君を捕まえたんだ 震える君を抱きしめ 君は僕のものさ! 〈BUTTERFLY〉 Sì, per la vita. 〈蝶々夫人〉 ええ、生きている限り 44 〈PINKERTON〉 Vieni, vieni! Via dall'anima in pena l'angoscia paurosa. È notte serena! Guarda: dorme ogni cosa! 〈ピンカートン〉 おいで、おいで! 痛む魂からうち捨てよう 恐ろしい苦悩なんか とても澄み切った夜だ! ご覧、すべてが眠っている! 〈BUTTERFLY〉 Ah! Dolce notte! 〈蝶々夫人〉 ああ! ステキな夜! 〈PINKERTON〉 Vieni, vieni! 〈ピンカートン〉 おいで、おいで! 〈BUTTERFLY〉 Quante stelle! Non le vidi mai sì belle! 〈蝶々夫人〉 何てたくさんの星たち! こんな美しい景色は見たことがないわ! 〈PINKERTON〉 È notte serena! Ah! vieni, vieni! È notte serena! Guarda: dorme ogni cosa! 〈ピンカートン〉 とても澄み切った夜だ! ああ! おいで、おいで! とても澄み切った夜だ! ご覧、すべてが眠っている! 〈BUTTERFLY〉 Dolce notte! Quante stelle! 〈蝶々夫人〉 ステキな夜!何てたくさんの星たち! 〈PINKERTON〉 Vieni, vieni! 〈ピンカートン〉 おいで、おいで! 〈BUTTERFLY〉 Non le vidi mai sì belle! 〈蝶々さん〉 こんな美しい景色は見たことがないわ! 〈PINKERTON〉 vieni, vieni!... 〈ピンカートン〉 おいで、おいで!… 〈BUTTERFLY〉 Trema, brilla ogni favilla... 〈蝶々夫人〉 震え、火花のように輝いている… 〈PINKERTON〉 Vien, sei mia!... 〈ピンカートン〉 おいで、君は僕のものさ!… 〈BUTTERFLY〉 ...col baglior d'una pupilla! Oh! Oh! quanti occhi fissi, attenti d'ogni parte a riguardar! pei firmamenti, via pei lidi, via pel mare! 〈蝶々夫人〉 …瞳のきらめきとなって! まあ! まあ!何てたくさんの瞳が つつましく あちこちから見つめているのかしら! 大空からも、 陸からも、海からも! 45 〈PINKERTON〉 Via l'angoscia dal tuo cor ti serro palpitante. Sei mia. Ah, vien, vien, sei mia! Ah! Vieni, guarda: dorme ogni cosa! Ti serro palpitante. Ah, vien! 〈ピンカートン〉 君の心から不安を打ち捨てよう 震える君を抱きしめるんだ。 君は僕のものさ。 ああ、おいで、おいで、君は僕のもの! ああ! おいで、ご覧、 すべてが眠っている! 震える君を抱きしめるんだ。ああ、おいで! 〈BUTTERFLY〉 Oh! quanti occhi fissi attenti. Quanti sguardi ride il ciel! Ah! Dolce notte! Tutto estatico d'amor ride il ciel! 〈蝶々夫人〉 まあ! なんてたくさんのまなざしが たくさんのまなざし 空が笑っているわ! ああ! ステキな夜! みんな愛に酔いしれて、空が笑っているわ! 〈PINKERTON〉 Guarda: dorme ogni cosa. Ah! vien! Ah! vieni, vieni! Ah! vien, Ah! vien! sei mia! 〈ピンカートン〉 ご覧、すべてが眠っている。 ああ! おいで! ああ! おいで、おいで! ああ! おいで! ああ! おいで! 君は僕のものだ! 蝶々夫人 ピンカートン 岡田 鈴木 祥子 雅人 46 Ha!― Wir fragen, was man von uns will! F. Lehár “Die Lustige Witwe” や!―何事ですの? F. レハール 「メリー・ウィドウ」第 2 幕第 12 場 舞台は 1905 年パリ。未亡人となり、巨額の遺産を手にしたハンナはポンテヴェドロ国パリ公使館でのパ ーティで豪遊中、かつて相思相愛でありながら家柄の違いで結ばれることのなかったダニロと偶然遭遇し た。 遺産で国家再建を目論むポンテヴェドロ公使ツェータ、夫人ヴァランシェンヌ、パリの色男カミーユ、 書記官のニェグシ、様々な人物の思惑が交差する中、互いに素直になれないハンナとダニロの恋の行方が 描かれる。 自分の妻とカミーユが庭の小屋で二人になったことに気付いたツェータが怒って現場を押さえようとす ると、小屋から出てきたのはカミーユとハンナであった。ヴァランシェンヌを救うためにハンナがうまく 入れ替わったのである。 〈DANILO〉 Ha! 〈ダニロ〉 や! 〈ZETA〉 Ha! 〈ツェータ〉 や! 〈DANILO,ZETA〉 Ha? 〈ダニロ、ツェータ〉 や? 〈HANNA〉 Wir fragen, was man von uns will! 〈ハンナ〉 何事ですの? 〈DANILO〉 Ha! Hanna und Camille! 〈ダニロ〉 ハンナとカミーユ! 〈ZETA〉 War ich denn blind? Ich seh genau... 〈ツェータ〉 おかしいな、確かに見えたはずだが… 〈DANILO〉 Ha! Hanna und Camille! Mein ganzer Geist steht still. Jetzt wird die Sache etwas flau! 〈ダニロ〉 ハンナとカミーユ! 何が何だか分からなくなった。 調子が狂った! 〈ZETA〉 〈ツェータ〉 Wo ist denn meine Frau? 私の妻はどこにいった? 〈VALENCIENNE〉 Du wünschest? 〈ヴァランシェンヌ〉 何か御用? 〈ZETA〉 Ich bin stumm und starr! 〈ツェータ〉 驚いて声も出ない! 47 〈VALENCIENNE〉 Was ist gescheh'n? So sprich doch klar! 〈ヴァランシェンヌ〉 どうしたの? はっきりして! 〈DANILO〉 Ha! Hanna und Camille! 〈ダニロ〉 ハンナとカミーユが! 〈CAMILLE〉 So sei doch endlich still! 〈カミーレ〉 静かにしてくれ! 〈ZETA〉 Ich sah dort eine Dame kurz zuvor. Ich guckte schnell durchs Schlüsselloch― 〈ツェータ〉 鍵穴を覗いた時は 彼女ではなかった… 〈HANNA〉 Das war gerade nicht sehr fein― 〈ハンナ〉 そんな下品な― 〈DANILO〉 Aber praktisch doch! 〈ダニロ〉 でもそれが確実! 〈ZETA〉 Ich hört' und traute meinen Ohren nicht― Wie dieser Herr da ihr Liebe schwor! 〈ツェータ〉 耳を疑った, 〈HANNA〉 Die Dame, die war ich! 〈ハンナ〉 その相手は私だったの! 〈DANILO〉 Ha! Hanna! 〈ダニロ〉 ハンナ! 〈ZETA〉 Ich hätt'geschworen es wär'meine Frau! 〈ツェータ〉 たしかに私の妻かと思ったが! 〈HANNA〉 Mein lieber Camille, gesteh'n Sie's nur ein― 〈ハンナ〉 愛するカミーユ、 話して頂戴― 〈VALENCIENNE〉 Oh, dies zu hören, ist Rettung und Pein! 〈ヴァランシェンヌ〉 それを聞くのは 救いであり苦痛だ! 〈CAMILLE〉 Ach, dies zu sagen ist Rettung und Pein! 〈カミーユ〉 それを話すのは救いであり苦痛だ! この紳士が愛を誓うのを聞いて 48 〈DANILO〉 Mich packt die Eifersucht, fast könnte ich schrei'n! 〈ダニロ〉 嫉妬で叫びたいほどだ! 〈ZETA〉 Ich kann's nicht glauben, oh nein, oh nein! 〈ツェータ〉 これが本当とは信じられない! 〈NJEGUS〉 Das arrangierte ich ganz schlau und ganz fein! 〈ニェグシ〉 どうやら首尾は上々のようだ! 〈HANNA〉 Und war der Baron so indiskret, zu lauschen und spähen beim Schlüsselloch, so sagen Sie hier, was drinnen Sie mir gestanden, ich bitte, so sagen Sie's doch! 〈ハンナ〉 男爵はずいぶん無作法ですこと 盗み聞きしたり 鍵穴から覗くなんて! 中で私に告白したことを ここで話して お願い、話して! 〈CAMILLE〉 Ich soll es sagen? 〈カミーユ〉 どうしても? 〈DANILO〉 Und ich soll's ertragen? 〈ダニロ〉 私はそれに耐えろと言うのか? 〈CAMILLE〉 Nun, Exzellenz, da ich nicht anders kann― was ich drin sagte―so hören Sie's an: 〈カミーユ〉 閣下、選択の余地はないようです 中で言ったことをお聞きください 〈ZETA〉 Jetzt bin ich doch neugierig, was er mir sagen wird. 〈ツェータ〉 では聞かせてもらおう 〈CAMILLE〉 Wie eine Rosenknospe im Maienlicht erblüht, so ist in meinem Herzen die Liebe aufgeglüht! Das war ein selig Keimen, von dem ich nichts geahnt, ein wundersames Träumen, das mich ans Glück gemahnt! Und nun das Glück gekommen, soll's wieder, wieder fort? Das Maienlicht verglommen? Die Knospe, sie verdorrt? Ein jauchzend, jubelnd Singen 〈カミーユ〉 5月の日差しに膨らむ バラのつぼみのように 私の心に 愛の花が咲いた! 知らぬ間に芽生えた 愛の芽生え 僕を幸福へ近づける 不思議な夢! でも、ついに幸福をつかまえたのに また逃げていく? 五月の光は消えゆくのか? 花の蕾は枯れてしまうのか? 歓喜の歌声が 49 in meiner Seele schallt, Es wird dich mir erringen der Liebe Allgewalt. 心に鳴り響く 愛の絶大なる力が あなたを奪い取るだろうと! 〈HANNA〉 Er glaubt ihm wirklich Wort für Wort. Und sein Verdacht, er ist schon fort! Ah, lieber Graf, und du bleibst ganz kalt? Was wetten wir, du redest bald! 〈ハンナ〉 彼はこれを信じて疑惑は消えたでしょう。 〈HANNA〉 Nun wissen Sie, meine Herrschaften, was sich im dunklen Pavillon zugetragen hat. Es gibt kein Zurück! Jetzt kommt der Haupttrumpf! Den Herrschaften hab' ich was zu erzählen 〈ハンナ〉 さて皆様、これで 東屋の中での出来事は お分かりと思います。 もう後戻りはできない! お知らせしたいことがあります 〈CHOR〉 Nun was? Nun was? 〈合唱〉 何を? 〈HANNA〉 Daß als Verlobte sich empfehlen: Herr Rosillon― 〈ハンナ〉 婚約します ロシオン氏と 〈CAMILLE〉 Was? Ich? 〈カミーユ〉 私と? 〈VALENCIENNE〉 O Gott! 〈ヴァランシェンヌ〉 なんてこと! 〈DANILO〉 Ach, schön! 〈ダニロ〉 おもしろい! 〈ZETA〉 Wie? Was? 〈ツェータ〉 そんな? 〈HANNA〉 Und meine Wenigkeit! 〈ハンナ〉 そうです! 〈CHOR〉 Ah, welche Neuigkeit! 〈合唱〉 すごい驚き! 〈VALENCIENNE〉 Bin starr! 〈ヴァランシェンヌ〉 何も言えない! 〈CAMILLE〉 Bin starr! 〈カミーユ〉 何も言えない! でも、伯爵は冷静かしら? 黙っていられないわ 50 〈DANILO〉 Bin starr! 〈ダニロ〉 何も言えない! 〈CAMILLE〉 Bin starr! 〈カミーユ〉 何も言えない! 〈DANILO〉 Bin starr! 〈ダニロ〉 何も言えない! 〈ZETA〉 Bin starr! 〈ツェータ〉 何も言えない! 〈HANNA〉 Die Wirkung ist ganz wunderbar! 〈ハンナ〉 効果は抜群だわ! 〈CHOR〉 Wir gratulieren! 〈合唱〉 おめでとうございます! 〈DANILO〉 Oh, ihr verfluchten Millionen! 〈ダニロ〉 彼女の遺産! 〈ZETA〉 Oh, ihr verlor'nen Millionen! 〈ツェータ〉 大金を逃した! 〈CAMILLE〉 Das geht doch nicht! Da muß ich protestier'n! 〈カミーユ〉 それは無理だ! 反対です! 〈HANNA〉 Dann werden Sie die Baronin blamieren! 〈ハンナ〉 苦情は男爵夫人に! 〈ZETA〉 Sie wollen wirklich? 〈ツェータ〉 本気かね? 〈VALENCIENNE〉 Wirklich wollen Sie―? 〈ヴァランシェンヌ〉 本当にそうしたいの? 〈HANNA〉 Warum denn nicht? 〈ハンナ〉 なぜダメなの? 〈ZETA〉 Ich bin dagegen,―und der Graf 〈ツェータ〉 反対だ―伯爵も! 〈HANNA〉 Sie euch? 〈ハンナ〉 反対? 51 〈DANILO〉 Oh nein! Warum soll ich dagegen sein? Ich gebe Ihnen meinen Segen! Ich meine nur― 〈ダニロ〉 とんでもない! 反対する理由がどこにある? 心から祝福しよう! いやつまり... 〈HANNA〉 Was meinen Sie? 〈ハンナ〉 何? 〈DANILO〉 Verlieb'dich oft, verlob dich selten, heirate nie! Die Ehe ist für mich privat, ―ich rede nur als Diplomat― wahrhaftig nur ein Standpunkt, der längst überwunden: Ein Zweibund sollte stets sie sein, doch bald stellt sich ein Dreibund ein― der zählt oft bloß nach schwachen Stunden! Vom europäischen Gleichgewicht, enn einer sich verehelicht, von dem ist bald nichts mehr zu spüren. Der Grund liegt meistens nur darin: Es gibt Madam' zu sehr sich hin, der Politik der offnen Türen! 〈ダニロ〉 恋はしょっちゅう、婚約はまれ 結婚は絶対しない! 結婚は私的な事だから 外交官として話そう… 二国が同盟を結ぶのは 時代遅れの考え方 間もなく三国同盟の時代 結婚も同じこと 三つ目が絡むと ヨーロッパ勢力均衡の話になる! 一人が結婚すると 均整は失われてしまう その原因は分かりきったこと 大抵の場合 マダムが門戸開放政策に 没頭しすぎるから! 〈HANNA〉 Das ist doch unverschämt! 〈ハンナ〉 それはとんでもない! 〈DANILO〉 Jawohl, ich schiId're nicht zu stark, 's ist etwas faul im Staate Dänemark! 〈ダニロ〉 誇張しているわけではない 道徳が乱れているのだ! 〈HANNA〉 Ein flotter Ehestend soll's sein: ganz nach Pariser Art! Er sagt: "Madame"―ich sag': "Monsieur"! Ganz nach Pariser Art! Wir lieben uns, wie sich's versteht, ganz nach Pariser Art! Wo jeder seine Wege geht: Ganz nach Pariser Art! Das hat Rrrrass so, tral-la-la-la-la-la! Macht mir Spaß so, tral-la-la-la-la-la! Und sollt' die Ehe anders sein, 〈ハンナ〉 気ままなパリ風の 結婚生活がいいわ! 「マダム」「ムッシュー」と パリ風に言い合い パリ風に 好きなように愛し合うの! 誰も我が道を行くのよ そう、パリ風にね! なんて素晴らしい! トラララ! なんて愉快なの! トラララ! そういうものでなければ 52 〈HANNA〉 denn spring' ich nicht hi... ,nein, oh nein, oh nein, nein, nein, nein. 〈ハンナ〉 私は結婚などしない! ダメよ、ダメ! 〈CAMILLE, ZETA UND CHOR〉 Des hat Rrrrasss' so tral-la-la-la-la! Macht ihr Spaß so, tral-la-la-la-la! Und sollt' die Ehe anders sein, denn springt sie nicht hinein! oh nein, oh nein, 〈カミーユ、ツェータ、合唱〉 なんて素晴らしい! トラララ! なんて愉快なの! トラララ! そういうものでなければ 決して結婚などしない! しない! 〈HANNA UND VALENCIENNE〉 La, la la, la! Nein. Dann spring' ich springt sie nicht hinein! Nein! 〈ハンナ、ヴァランシェンヌ〉 ララララ!しないわ! 結婚しないわ! しないわ! 〈VALENCIENNE〉 Ja, dieser Ehestend wird flott! 〈ヴァランシェンヌ〉 気ままな結婚ね! 〈HANNA〉 Ganz nach Pariser Art! 〈ハンナ〉 パリ風よ! 〈VALENCIENNE〉 Der Mann zieht hü― die Frau zieht hoff! 〈ヴァランシェンヌ〉 男が左へ行けば、女は右へ! 〈HANNA〉 Ganz nach Pariser Art! 〈ハンナ〉 パリ風ね! 〈VALENCIENNE〉 Und keiner macht sich was daraus! 〈ヴァランシェンヌ〉 それでも誰も気にしない! 〈HANNA〉 Ganz nach Pariser Art! 〈ハンナ〉 パリ風だわ! 〈VALENCIENNE〉 Sie seh'n ganz scheidüngsfähig aus! 〈ヴァランシェンヌ〉 離婚までできそうにお見受けしますわ! 〈HANNA〉 Ganz nach Pariser Art! 〈ハンナ〉 本当にパリ風ね! 〈Valencienne und Hanna〉 Das hat Rrrrass so, tral-la-la-la-la-la! Macht mir Spaß so, tral-la-la-la-la-la! 〈ヴァランシェンヌ、ハンナ〉 なんて素晴らしい ラララ! なんて愉快! ラララ! 53 〈CAMILLE, ZETA UND CHOR〉 Das hat Rrrrass so, tral-la-la-la-la-la! Macht mir Spaß so, tral-la-la-la-la-la! (Alle, außer Danilo, tanzen.) 〈カミーユ、ツェータ、合唱〉 なんて素晴らしい! トラララ! なんて愉快! トラララ! 〈DANILO〉 In mir tobt es, in mir bebt es! In mir zuckt es, in mir juckt es! Halt's nicht aus! Es muß heraus! Aber nicht so wutentbrannt! Ruhig―ruhig―mit Verstand! Zu der Vermählung, schöne Frau, gestatten Sie eine Erzählung. 〈ダニロ〉 〈HANNA〉 Gewiß, des ist ja interessant! Seh'n Sie mich an, ich bin schon sehr gespannt! Also bitte! 〈ハンナ〉 もちろんよ、おもしろそう! どんなお話か楽しみですわ。 〈DANILO〉 Also bitte! Es waren zwei Königskinder― ich glaube, sie hatten sich lieb. Sie konnten zusammen nicht kommen― wie dies einst ein Dichter beschrieb! Der Prinz, der blieb aber verschlossen, er hatte dafür seinen Grund. Das hat die Prinzessin verdrossen, warum er nicht auftat den Mund. Und weiter da sagte der Prinz noch: Da hat nun die Dame Prinzessin getrieben ein grausames Spiel, sie gab ihre Hand einem and'ren. und das war dem Prinzen zu viel. Du gnädige Dame Prinzessin, du tatest daran gar nicht recht, du bist auch nicht besser wie andere, vom schwachen, koketten Geschlecht! Doch glaubst du, dass ich mich drob kränke? 〈ダニロ〉 それでは! 昔々あるところに 王子と王女がいました。 二人は愛し合っていましたが 僕は激昂し、この身は震える もう我慢できない! いや、落ち着くのだ! 怒りに燃えてはいけない! 気を静めて 理性を取り戻さねば! 美しきマダム、ご結婚のお祝いに 物語を一つよろしいですか? さあ、どうぞ! その恋は成就しませんでした というふうに ある詩人が書いています。 しかし王子は口を閉ざしたまま それには理由があるのですが 王子が口を開かないことに 王女は傷つき、気分を損ねました。 そこで残酷な仕打ちに出たのです。 王女は他の男性と結婚し 王子は悲しみました。 いとしき王女よ あなたは間違っている 貴方は媚を売る弱い女と なんら変わらない それで僕が苦しむとでも? とんでもない間違いだ! 54 〈DANILO〉 Haha! Da täuschest du dich! Im Traume ich nicht daran denke!― Das sagte der Prinz, und nicht ich! Und weiter da sagte der Prinz noch: "Da nimm ihn, der sei dir vergönnt!" Drauf ist er von dannen gegangen. und das tu' ich auch, Kompliment! 〈ダニロ〉 夢にも思わないさ! 言ったのは王子だ、僕じゃない。 そして王子は続けました。 さあ、この人と結婚すればいい! そういうと王子は去っていきました。 僕もそうします、では失礼! 〈HANNA〉 Wohin denn, Graf, wohin? 〈ハンナ〉 伯爵、どちらへ行かれますの? 〈DANILO〉 Wohin ich...? Dort, wo ich zu Hause bin― Jetzt geh' ich zu Maxim― dort bin ich sehr intim! ich duze alle Damen, ruf' sie beim Kosenamen: Lolo, Dodo, Jou-jou, Clo-clo, Margot, Frou-frou, sie lassen mich vergessen, was ich so bang empfand! 〈ダニロ〉 どこへいくかって? もちろん自分の家ですよ… マキシムへ行きますよ… くつろげる場所へ! どの女性とも 親しく愛称で呼ぶ。 ロロ、ドド、ジュジュ、 クロクロ、マルゴ、フルフル 彼女たちが忘れさせてくれる 僕が独りだということを! 〈HANNA〉 (Allein liebt er mich, nur allein!) Das hat Rrrrass so, tral-la-la-la-la-la! Macht mir Spaß so, tral-la-la-la-la-la! 〈ハンナ〉 (彼は私だけを愛していたのだわ!) なんて素晴らしい! トララララ! なんて愉快! トララララ! 〈HANNA UND VALENCIENNE〉 La, la la, la, la! 〈ハンナ、ヴァランシェンヌ〉 ララララ! 〈CAMILLE, ZETA UND CHOR〉 〈カミーユ、ツェータ、合唱〉 Das hat Rrrrasss, usw. なんて素晴らしい! ハンナ ヴァランシェンヌ カミーユ ツェータ ダニロ ニェグシ 合唱 渡邉 碧 二宮 知子 清野 裕太 小山 大輝 宮野 郁 桐山 直樹 1 年生 55 4thstage 4 年ソロ 勝利だ、私の心/G. G. カリッシミ Sop.北口 鈴夏 貴女が私の死に栄光を/A. スカルラッティ Bas.藤井 宏行 私を泣かせてください/G. F. ヘンデル Alt.福嶋 朋子 ああ、私は感じる/W. A. モーツァルト Sop.矢野 春陽 惨い運命よ!/G. A. ロッシーニ Alt.大政 晶子 私は町の何でも屋/G. A. ロッシーニ 誘惑/G. A. ロッシーニ Bas.林田 陸 Sop.名波 友里亜 君がほほえみ/G. ヴェルディ Bas.眞野 義啓 日の光が薄らいで/G. ヴェルディ Alt.町田 仁奈 人知れぬ涙/G. ドニゼッティ Ten.山下 昌義 くちづけ/L. アルディーティ Sop.澤田 麻衣 古い外套よ、聞いておくれ/G. プッチーニ Bas.蟹井 啓介 禁じられた歌/S. ガスタルドン Sop.岡部 優以 フィデリコの嘆き/F. チレア Ten.末冨 修平 手紙の歌/G. マスネ Alt.坂口 真央 セギディーリャ/G. ビゼー Alt.高橋 真梨萌 あなたの声に私の心は開く/C. サン=サーンス Alt.天野 里香 なんと素晴らしい美人/G. プッチーニ Ten.古川 上総 56 Vittoria, mio core! G. G. Carissimi 勝利だ、私の心 G. G. カリッシミ G.G.カリッシミは、イタリアのバロック初期の作曲家であり、C.モンテヴェルディや画家のカラヴァッ ジョと同時代に活躍した。彼はこの曲のような室内カンタータの他に、主に旧約聖書をモチーフとしたオ ラトリオの作曲も行っている。 失恋の苦しみをあえて明るい曲調とテンポで「愛からの勝利」と歌い上げている。 Vittoria, mio core! Non lagrimar più, é sciolta d'Amore la vil servitú. 勝利だ、私の心よ! もはや涙を流すな、 「愛」へのへりくだった奉仕は 終わったのだ。 Giá l’empia a'tuoi danni fra stuolo di sguardi con vezzi bugiardi dispose gl'inganni; le frode, gli affanni non hanno più loco, del crudo suo foco è spento l'ardore! かつてはあの残酷な女が 偽りの愛嬌を持って 数多の眼差しで お前をたぶらかし傷つけたが、 欺瞞も苦悩も もはや無く、 彼女の惨い火の熱も 消えてしまった! Da luci ridenti non esce più strale che piaga mortale nel petto m'avventi: nel duol, ne'tormenti io più non mi sfaccio è rotto ogni laccio, sparito il timore! 私の胸の中に 致命的な傷を与える矢は ほほえむ光りのような瞳から もはや飛び出してこない。 私はもはや、悩みにも苦しみにも 身を滅ばすことはない。 すべての絆は解け 恐れは消えてしまった! Sop. 北口 鈴夏 57 Se tu della mia morte A. Scarlatti “La caduta de'Decemviri ” 貴女が私の死に栄光を A. スカルラッティ オペラ「十人委員会の凋落」第 3 幕より アレッサンドロ・スカルラッティはバロック期のイタリアの作曲家。特にオペラとカンタータで著名で ある。オペラにおけるナポリ楽派の始祖と考えられている。 1697 年にナポリで初演された正歌劇と言われる『十人委員会の凋落』 (La caduta de'Decemviri)の中の アリアで、A-B-A の三部から成るダ・カーポ形式が用いられている。 Se tu della mia morte a questa destra forte la gloria non vuoi dar, dalla a'tuoi lumi, e il dardo del tuo sguardo sia quello che m'uccida e mi consume. Bas. 藤井 宏行 私の死の栄光を 貴女がこの強い右手に 与えたくないのなら、 それを貴女の瞳に与えるがよい、 そして射るような貴女の眼差しが 私を殺し私を消滅させるがよい。 58 Lascia ch’io pianga G. F. Händel “Rinaldo” 私を泣かせてください G. F. ヘンデル オペラ「リナルド」第 2 幕より G.F.ヘンデルは、ドイツ生まれでイギリスに帰化した、バロック期を代表する重要な作曲家の 1 人であ る。この曲はオペラ『リナルド』第 2 幕に登場する有名なアリア。敵の魔術師に捕らわれた女性アルミレ ーナが恋人を想って自分の悲運を嘆くシーンで歌われる。 オペラの舞台はエルサレムを包囲している十字軍のキャンプ。勇敢な騎士リナルドは、十字軍の総司令 官ゴッフレードの娘アルミレーナと恋に落ちていた。エルサレムを見事攻め落としたら、アルミレーナと の結婚を認めてもらえる約束だった。ある日アルミレーナとリナルドが愛を確かめ合っていたところ、エ ルサレムの王アルガンテの妻アルミーダが二人の前に現れ、魔術を使ってアルミレーナを奪い去ってしま う。捕らわれたアルミレーナは、その若さと美しさから、エルサレムの王アルガンテに執拗に迫られてい た。それでも愛するリナルドへの貞節を守るため「苛酷な運命に涙を流しましょう」と歌うアリア。 Armida, dispietata colla forza d'abisso, rapimmi al caro Ciel di miei contenti, e qui con duolo eterno viva mi tiene in torment d'inferno. 奈落の力を持った情け知らずのアルミーダは 懐かしい歓びの天上から私を奪い去り、 ここで、永遠の苦しみを持った 地獄の責め苦の中に 私を生きたまま閉じ込めている。 Signor! Ah! per pietà lasciami piangere. Lascia chi'o pianga la dura sorte e che sospiri la libertà. Il duol infranga queste ritorte de’ miei martiri sol per pietà. 主よ! ああ! どうか私を泣かせてください。 過酷な運命に涙し、自由に憧れることを お許しください。 私の苦しみに対する憐れみだけによって 苦悩がこの鎖を打ち毀してくれますように。 Alt. 福嶋 朋子 59 Ach, ich fühl’s, es ist verschwunden W. A. Mozart “Die Zauberflöte” ああ、私は感じる W. A. モーツァルト オペラ「魔笛」第 2 幕より 夜の女王の娘パミーナのアリア。神殿の中で恋人タミーノを見つけたパミーナは喜び、彼に話しかける が、タミーノはそれを無視する。実は、彼は沈黙の修業中で、返事をすることができなかったのだ。その 事情を知らないパミーナは、自分がタミーノに愛想を尽かされてしまったのだと勘違いする。恋人の心変 わりを嘆いて、パミーナはこの歌を歌い、その場を去る。 Ach, ich fühl's, es ist verschwunden, Ewig hin der Liebe Glück! Nimmer kommt ihr, Wonnestunden, Meinem Herzen mehr zurück. Sieh Tamino, diese Tränen Fliessen,Trauter, dir allein! Fühlst du nicht der Liebe Sehnen, So wird Ruh im Tode sein. Sop. 矢野 春陽 ああ、私は感じる、消え去ってしまったと 永遠に、愛の幸福が! 喜びの時はもう二度と 私の心へ帰ってこない。 見て、タミーノ、この涙を、 ただあなたの為だけに流れるのよ! あなたが恋の憧れを感じないのなら 憩いは死の中にあるのだわ。 60 Cruda sorte! G. A. Rossini “L'italiana in Algeri” 惨い運命よ! G. A. ロッシーニ 「アルジェのイタリア女」第 1 幕より オペラ「アルジェのイタリア女」より”イタリア女”イザベッラのアリア。行方不明の恋人リンドーロを 探しに出たイザベッラだったがアルジェリアの大守ムスタファにより船を攻撃され、囚われの身となる。 彼女は自らの運命を嘆きつつも女の色気を武器に切り抜けることを決意する。 イザベッラは冒頭で我が身の不幸を歌い上げるがムスタファの手下がやって来たシーンで雰囲気がガラ リと変わる。イザベラのいじらしさと逞しさが描かれた、曲調の変化が楽しい曲である。 Cruda sorte! Amor tiranno! Questo e il premio di mia fé: non v’e orror, terror, ne affanno pari a quel ch’io provo in me. Per te solo, o mio Lindoro, io mi trovo in tal periglio. Da chi spero, oh Dio! Consiglio? Chi conforto mi dara? 惨い運命よ!暴君よ! これが私の忠実さに対するご褒美ですか。 これほどの恐ろしさや怖さ、不安を 感じている者は私以上にいないわ。 あなたのためだけに、ああ、リンドーロ 私はこのような危険に陥ったの。 おお神よ、誰に頼ったらいいの? 誰が慰めてくれるのでしょう。 Qua ci vuol disinvoltura, non piu smanie, né paura: di coraggio e tempo adesso, or chi sono si vedra. Gia so per pratica qual sia l’effetto d’un sguardo languido, d’un sospiretto... so a domar gli uomini come si fa, si, si, si, si, Sian dolci, o ruvidi, sian flemma, o fuoco, ここでは涼しい顔をしていましょう、 怖がったり、イライラするのではなく。 今こそしっかりするのよ、 私がどんなものだか見せてあげるわ。 物憂げな眼差しやため息がどんな効果を 持っているか、私はちゃんと知っているの。 どうやって男達を手なづけるのかぐらい 分かっているのよ 優しい人、ぶっきらぼうな人、冷徹な人、 情熱的な人、 大抵みんな同じようなものよ。 すべての男達は求めて、そして欲しがっているわ 美しい女達との楽しみを。 son tutti simili o presso a poco... Tutti la chiedono, tutti la bramano da vaga femmina felicita, si, si, si, si, Alt. 大政 晶子 61 Largo al factotum G. A. Rossini “Il Barbiere di Seviglia ” 私は町の何でも屋 G. A. ロッシーニ オペラ「セビリアの理髪師」第 1 幕より ロッシーニ作曲のオペラ『セビリアの理髪師』第 1 幕で、理髪師のフィガロが登場する場面で歌われる アリア。 劇中では、伯爵の恋のキューピッド役として活躍する理髪師フィガロ。アリア『私は町の何でも屋』の 歌詞には、依頼があれば何でもこなす町の便利屋として、生きがいを感じているフィガロの自信と自負が 明るく陽気に歌い込まれている。 Largo al factotum della città. Presto a bottega ché l'alba é già. Ah, che bel vivere, che bel piacere per un barbiere di qualità! さあ、町の何でも屋に道を開けておくれ。 夜明けが近い、店へ急げ。 ああ、なんて素晴らしい人生、 素晴らしい喜び。 床屋の腕前も一流さ! Ah, bravo Figaro! Bravo, bravissimo; fortunatissimo per verità! Pronto a far tutto, la notte e il giorno sempre d'intorno, in giro sta. miglior cuccagna per un barbiere, vita più nobile, no, non si dà. ああ、凄いぞ、フィガロ!凄い、最高だ、 なんてついてる男! 昼でも夜でも何でもやる用意はあるぞ、 いつでもどこかに神出鬼没。 床屋にとっては最高の理想郷さ、 これ以上素晴らしい人生はあり得ない。 Rasori e pettini, lancette e forbici, al mio comando tutto qui sta. 剃刀に、くし、針に、ハサミ、 私の意のままになるようにみなここにある。 Vè la risorsa, poi, del mestiere colla donnettta...col cavaliere... これが商売道具。この仕事のお相手は 可愛い子ちゃんたちや…紳士諸君… Ah, che del piacere per un barbiere di qualità! ああ、なんて素晴らしい人生、 床屋の腕前も一流さ! Tutti mi chiedono, tutti mi vogliono, donne, ragazzi, vecchi, fanciulle; Qua la parrucca...presto la barba... gua la sanguigna...presto il biglietto... Figaro...Figaro...Ahimè, che furia! Ahimè, che folla! Una alla volta, per carità! みんなにひっぱりだこ 女たちも、若者たちも、爺さんたちも、娘たちも、 こっちはカツラだ…早く髭を剃ってくれ… 紅をさしてくれ…手紙を届けてくれ… フィガロ…フィガロ…ああ! なんて騒ぎだ! ああ! なんて人だかりだ! 一人ずつお願いしますよ! Ehi, Figaro...Son qua Figaro qua, Figaro là, Figaro su, Figaro giù, Pronto prontissimo son come il fulmine: sono il factotum della città. おーいフィガロ…私はここに フィガロはここに、フィガロはそこに フィガロは上に、フィガロは下に 素早い動きは電光石火。 私はこの町の何でも屋。 62 Ah, bravo Figaro! bravo bravissimo; a te fortuna non mancherà. Sono il factotum della cità Bas. 林田 陸 ああ、凄いぞ、フィガロ! 凄いぞ、最高だ! あなたにも幸運が授かりますよ。 私はこの町の何でも屋。 63 L'invito G. A. Rossini Les Soirées Musicales 誘惑 G. A. ロッシーニ 音楽の夜会より G.A.ロッシーニは、イタリアの作曲家である。この曲は『音楽の夜会』の第 5 曲目で、副題に「ボレロ」 とあり、スペインのリズムを巧みに織り込んだ情熱的な恋の歌である。ほの暗い主部と、恋人の素晴らし さを讃えている中間部がパッと明るくなるところの対比が実に素晴らしいところ。詞はロッシーニの友人 のカルロ・ペーポリ伯爵の手によるもので、激しい女性の愛の告白の詞と裏腹にロッシーニの前奏は魅惑 的ですらある。しかし曲中の不規則なアクセントや極端な強弱の変化が感情の起伏を表しているといえる。 Vieni, o Ruggiero, la tua Eloisa da te divisa non puo restar: alle mie lacrime già rispondevi, vieni, ricevi il mio pregar. 来てよ、おおルッジェーロ あなたのエロイーザのもとへ あなたと離れてることなんて いやよ、とても耐えられない あたしの涙に すぐに答えてくれたのだから 来て、答えてよ あたしの願いに Vieni, o bell'angelo, Vien, mio diletto, sovra il mio petto vieni a posar! Senti se palpita, se amor t'invita... vieni, mia vita, vieni, fammi spirar... 来てよ、おお素敵な天使さん 来てよ、あたしの愛する人 このあたしの胸に 来て休んでちょうだい! 感じてよ この胸の震えを この愛の誘いを 来てよ、あたしの人生の人 来て、あたしを逝かせてちょうだい Sop. 名波 友里亜 64 Il balen del suo sorriso G. Verdi " Il Trovatore " 君がほほえみ G. ヴェルディ オペラ「イル・トロヴァトーレ」第 2 幕より 夜の城の庭園にて。美しい女官レオノーラは、想いを寄せる吟遊詩人マンリーコに会いに行こうとする。 すると、レオノーラに想いを寄せるルーナ伯爵が現れ、レオノーラは暗さゆえにマンリーコと勘違いし、 伯爵に抱きついてしまう。そこにマンリーコ本人が登場し、レオノーラは勘違いに気づき、伯爵はそのこ とに激怒する。そして、伯爵とマンリーコは決闘を行い、レオノーラは気絶してしまう。 伯爵との決闘でマンリーコが絶命したと思っているレオノーラは絶望し、修道院入りを決意する。伯爵 は修道院の前で待ち構え、レオノーラを略奪しようと企てる。そして伯爵はその修道院前にて、彼女への 思いとして、このアリアを歌う。 Il balen del suo sorriso D'una stella vince il raggio! Il fulgor del suo bel viso Novo infonde in me coraggio! Ah! l'amor, l'amore ond'ardo Le favelli in mio favor! Sperda il sole d'un suo sguardo La tempesta del mio cor. Bas. 眞野 義啓 彼女の笑顔の輝きは 星のきらめきにも勝っている! 彼女の美しい顔の華やぎは 私に新たな勇気をくれる! ああ! この愛、燃え上がる愛よ 彼女に語りかけておくれ 私のために! 払いのけておくれ 彼女の瞳の中の太陽よ 私の心の中の嵐を 65 La luce langue G. Verdi “Macbeth” 日の光が薄らいで G. ヴェルディ オペラ「マクベス」第 2 幕より オペラ『マクベス』第 2 幕第 1 場よりマクベス夫人のアリア。原作はシェイクスピアの悲劇『マクベス』 である。マクベスとその友人バンクォーは森の中で魔女たちに遭遇し、マクベスはコーダーの領主となり、 スコットランドの王になるという予言、バンクォーは王の父親となるであろうという予言を受ける。野心 に駆られたマクベスはダンカン王を殺害することにより王となったが、バンクォーの子供が王になるとの 予言に不安を感じ、夫人と語らってバンクォー一家を暗殺する事にする。夫が立ち去った後、夫人は王位 を護るためにまた別の罪を犯さねばならぬと覚悟を決め、このアリアを歌う。 La luce langue, il faro spegnesi Ch'eterno scorre per gli ampi cieli! Notte desiata, provvida veli La man colpevole che ferirà. Nuovo delitto! E'necessario! Compiersi debbe l'opra fatale Ai trapassati regnar non cale; A loro un requiem, l'eternità. 光は色あせ、天の灯台は消えてゆく 広い天空を駆け巡る永遠の太陽の光は! 待ち望んだ夜よ 用心深くヴェールを 人を傷つける罪深き手にかけておくれ 新たな犯罪! それが必要なのです! 宿命の行為は為されねばならぬのです 死者にとっては支配することは無意味 彼らには永遠のレクイエムを O voluttà del soglio! O scettro, alfin sei mio! Ogni mortal desio Tace e s'acqueta in te. Cadrà fra poco esanime Chi fu predetto re. おお王位を求める喜び! 王の笏よ、ついにお前はわたしのもの! すべての死すべき者の欲望は 静かにお前の中に潜んでいるのだ もうすぐ死んで倒れるだろう 王になると予言されたかの者は Alt. 町田 仁奈 66 Una furtiva lagrima G. Donizetti “L'elisir d'amore” 人知れぬ涙 G. ドニゼッティ オペラ「愛の妙薬」第 1 幕より 薬を飲んだことで気が大きくなったネモリーノは、アディーナのプライドを傷つけ、彼女はベルコーレ 軍曹と結婚すると言い出す。しかも、今日中ということになり、ネモリーノは大いに慌てたのだった。 ネモリーノは愛の妙薬の効き目をはやく出すためにもう1本飲もうとするが、お金がなくて買えないた め、命の保証も顧みず軍隊に入り契約金を手に入れた。実はちょうどそのとき、村の娘たちの間では、ネ モリーノの叔父が亡くなって莫大な遺産が彼に転がり込んだという話で持ちきりになっていた。ネモリー ノの周りに集まる娘たちに、何も知らない彼は薬の効き目が現れてきたと勘違いをする。 一方のアディーナはそんなおかしな光景を見せられ困惑するが、ドゥルカマーラからネモリーノにまつ わる一連の事情を聞き、命を投げ出す覚悟で軍隊に入ってまで妙薬を手に入れようとしたネモリーノの愛 情の深さに、彼女は涙を見せるのだった。それを物陰から見ていたネモリーノは、彼女の愛を確信しこの アリアを歌う。 〈Nemorino〉 Una furtiva lagrima negli occhi suoi spuntò: Quelle festose giovani invidiar sembrò. Che più cercando io vo? M'ama! Sì, m'ama, lo vedo. Un solo instante i palpiti del suo bel cor sentir! I miei sospir confondere per poco a'suoi sospir! I palpiti, i palpiti sentir, confondere i miei coi suoi sospir... Cielo, Si può morir; di più non chiedo. Ten. 山下 昌義 〈ネモリーノ〉 ひそかな涙が あの女(ひと)の眼に浮かんだ 彼女は賑やかな娘たちを 羨んでいるようだった 僕はこれ以上何を求めよう? あの女は! 僕を愛しているのだ。 彼女の心のときめきを 一時でも感じることができたなら! 僕の溜め息と 彼女の溜め息を混ぜ合うことが できるなら! 心のときめきを感じることができたなら 僕の溜め息と彼女の溜め息を 混ぜ合うことができるなら ああ、死んでもいい これ以上何を求めようか 67 Il bacio L. Arditi くちづけ L. アルディーティ 現在では演奏される機会の多くない L.アルディーティの作品だが、 『くちづけ』はイタリア・ロマン派歌 曲のスタンダード・ナンバーとして知られ、多くの歌手のレパートリーになっている。イタリアらしい活 気と情熱に満ちた愛のワルツ。 Sulle labbra se potessi dolce un bacio ti darei. Tutte ti direi le dolcezze dell'amor. Sempre assisa te d'appresso, mille gaudii ti direi, Ah! ti direi. Ed i palpiti udirei che rispondono al mio cor. Gemme e perle non desio, non son vaga d'altro affetto. Un tuo sguardo è il mio diletto, un tuo bacio è il mio tesor. Ah! Vieni! ah vien! più non tardare! a me! Ah vien! nell'ebbrezza d'un amplesso ch'io viva! Ah! Sop. 澤田 麻衣 できることなら、あなたの唇に やさしくくちづけしたい 愛のやさしさのすべてをあなたに語りたい いつもあなたのそばに座って たくさんの喜びを語りたい そして私の心に応える あなたのときめきを聞きたい 宝石も真珠も欲しくない ほかの愛情もいらない あなたのまなざしは私の喜び あなたのくちづけは私の宝 来て、遅れないで 私のそばに来て! さあ、抱擁に酔いに来て 私が愛だけに生きられるよう! 68 Vecchia zimarra, senti G. Puccini “La Boheme” 古い外套よ、聞いておくれ G. プッチーニ オペラ「ラ・ボエーム」第 4 幕より 1830 年代のパリ。詩人のロドルフォをはじめとする 4 人のボヘミアンはカルチエ・ラタンにある屋根裏 部屋で貧しいけれども陽気な共同生活を送っている。ロドルフォはここで針子のミミと出会い、幸せなひ と時を過ごす。しかしミミは持病を抱えていた。貧乏のため部屋を暖かくすることもできないロドルフォ は、お互いのためミミと別れることを決断する。 数ヵ月後、ロドルフォと画家のマルチェッロが屋根裏部屋で仕事をしていると、マルチェッロの別れた 恋人であるムゼッタが瀕死のミミを連れて駆け込んでくる。ミミは愛するロドルフォの元で最期を迎えた いというのだ。彼女をベッドに寝かせると、ロドルフォとミミを二人きりにさせようとムゼッタは手を温 めるマフを取りに、マルチェッロはムゼッタのアクセサリを売って薬を買うためにそろって部屋を後にす る。そのあと哲学者であるコッリーネは自らの哲学者としてのシンボルである外套を売る決意をし、心か らの思いやりを不器用かつ真面目に表現するこのアリアを歌う。 Vecchia zimarra, senti, io resto al pian, tu ascendere il sacro monte or devi. Le mie grazie ricevi. Mai non curvasti il logoro dorso ai ricchi ed ai potenti. Passar nelle tue tasche come in antri tranquilli filosofi e poeti. Ora che i giorni lieti fuggir, ti dico addio fedele amico mio, addio, addio. Bas. 蟹井 啓介 古い外套よ、聞いておくれ。 私は地上にとどまるが おまえは今神聖な山に登らねばならない。 私の感謝の心を受けておくれ。 お前は今までそのすり減った背中を お金や力に対して屈したことは無かった。 お前のポケットの中を ちょうど静かな洞窟を通るように 哲学者や詩人たちが通って行ったのだ。 今や楽しかった日々は過ぎ去り お前に別れを告げる日が来たのだ。 忠実なる私の友人よ、さらば、さらば。 69 Musica proibita S. Gastaldon 禁じられた歌 S. ガスタルドン S.ガスタルドン(1861~1939 年)はプッチーニと同世代のイタリアの作曲家。他の歌曲やオペラも作曲し ていたが、現在でも歌われているのはほとんどこの曲のみとなってしまっている。 この曲は、ある恋する少女が庭から聴こえる青年の愛の歌に聴き惚れている様子が歌われており、美し く雄弁なメロディと、歌詞の途中で青年が歌う愛の歌を模倣して歌っている部分がとても魅力的である。 大胆かつ純粋に青年の歌に恋する少女の様子と、青年が歌う情熱的で甘い愛の歌を感じていただきたい。 Ogni sera di sotto al mio balcone, Sento cantar una canzon d'amore Piu volte la ripete un bel garzone, E battere mi sento forte il cor Oh Quanto è dolce quella melodia! Oh Com'è bella,quanto m'è gradita! Ch'io la canti non vuol la mamma mia. Vorrei saper perché me l'ha proibita? Ella non c'è, ed io la vo'cantare, La frase che m'ha fatto palpitare “Vorrei baciare i tuoi capelli neri, Le labbra tue e gli occhi tuoi severi Vorrei morir con te,angel di Dio, O bella innamorata, tesor mio” Qui sotto il vidi ieri a passeggiare, E lo sentiva al solito cantar “Vorrei baciare i tuoi capelli neri, Le labbra tue, e gli occhi tuoi severi Stringimi, o cara, stringimi al tuo core! Fammi provar l'ebbrezza dell'amor” Sop. 岡部 優以 夜毎私のバルコニーの下で、 愛の歌を歌うのが聞こえる。 美しい青年がそれを 何度も繰り返すと、 私は心が激しく高鳴るのを感じる。 おお、あの旋律は、 なんと甘美なことか! おお、なんと美しく、 私を魅了することか! 私の母は私があの歌を歌うことを望まない。 なぜ禁じたのか私は知りたい。 母はもういない、そして私は 私の心を震わせたあの歌を歌いたい 「君の黒い髪と、唇と、 厳しい瞳に口づけたい。 君と一緒に死にたい、私の天使よ。 美しい恋人、僕の宝よ。」 私は昨日彼がこの下を 散歩するのを見た。 そしていつものように歌うのを聞いた。 「君の黒い髪と、唇と、 厳しい瞳に口づけしたい。 抱きしめて、愛する人よ、 君の胸に抱きしめて! 愛の陶酔を私に味わわせてほしい」 70 Il lamento di Federico F. Cilea “L'arlesiana” フィデリコの嘆き F. チレア オペラ「アルルの女」第 2 幕より フランスの小説家、アルフォンス・ドーデーによる全三幕の戯曲に基づき、イタリア人の作曲家、フラ ンチェスコ・チレアが作曲したオペラのアリアである。オペラが全曲演奏される機会は極めて稀。あらす じはドーデーがある田舎の村に滞在中、実際に遭遇した事件をもとにしたとされている。 南フランスのある豪農の息子フィデリコは都会の町アルルに住む女に心奪われる。由緒ある農家の老主 人は見知らぬ女を迎えることを快く思わなかったが、女の身元が健全であるという知らせと息子の熱意が それを変えさせる。そうして婚礼を許され宴を挙げる一家のもとに突然、そのアルルの女と密かに関係を もつという男が現れ、フィデリコは彼女からその男に宛てられた手紙を読み驚愕し、落胆する。息子を心 配し夜も眠れぬ母と、彼に幼少期から想いを寄せていた幼馴染ヴィヴェットの献身的な思いも虚しく、フ ィデリコは死んだように日々を過ごす。しかしついにヴィヴェットの純真な愛に心を動かされ、フィデリ コはアルルの女を忘れることを決意し、ヴィヴェットと添い遂げることを決意する。結婚式の夜、アルル の女と関係をもつ男が再度農家を訪れ、今夜アルルの女と駆け落ちするという話を漏らす。嫉妬に狂った フィデリコは祝いの踊り「ファランドール」が賑やかに踊られる中、高い納屋の窓から身を投げ出し自ら 命を絶つ。 知障を患うフィデリコの弟がアルルの女の不実を知ったフィデリコを元気づけようと、彼に話をして聞 かせてやろうとするが、始めてすぐに物語を思い出せず眠りに落ちてしまう。安らかに眠る可愛い弟の寝 顔を見てフィデリコが自分の苦しみを嘆き歌ったのがこのアリアである。 E la solita storia del pastore... Il povero ragazzo voleva raccontarla, E s'addormi. C'e nel sonno l'oblio... come l'invidio! Anch'io vorrei dormir cosi, Nel sonno almen l'oblio trovar! La pace sol cercando io vo. Vorrei poter tutto scordar! 羊飼いがするいつもの話じゃないか… 哀れな弟はそれを話そうとして、 眠ってしまった… そして忘れてしまうんだ。何て羨ましい! 俺だって、そんなふうに眠りたいんだ、 そして眠りの中で、せめて忘れたい! 俺はただ心の平和を得たいだけだ… すべてを忘れることができたなら! Ma ogni sforzo e vano. Davanti ho sempre di lei, Il dolce sembiante. La pace tolta e solo a me! Perche degg'io tanto penar? Lei! sempre lei mi parla al cor… いくら忘れようとしても無駄なんだ… あの人の麗しい面影が いつも俺の眼の前に浮かび上がる! 俺にはほんの束の間の安息もない! 俺はこんなにも苦しいのか…? 彼女だ!いつも彼女が俺の心に囁くんだ Fatale vision, mi lascia! Mi fai tanto male! Ahime! 俺を惑わす幻影よ離れてくれ! お前は俺を不幸にする! ああ! Ten. 末冨 修平 71 Air des lettres G. Massenet “Werther” 手紙の歌 G. マスネ オペラ「ウェルテル」第 3 幕より 1780 年のある夏、ドイツの片田舎町で、若い詩人のウェルテルは大法官の娘シャルロッテに愛の告白を する。しかし彼女にはアルベールという婚約者がいることを知りウェルテルは絶望する。 そしてシャルロッテはアルベールと結婚をするが、ウェルテルはシャルロッテへの気持ちをあきらめきれ ず苦悩している。アルベールは妻のシャルロッテもウェルテルを憎からず思っている事に気がついている。 そこで彼はウェルテルに「妻との幸せな生活を壊さないで欲しい」と告げる。そして、ウェルテルは再び シャルロッテに愛を打ち明けるが、彼女は拒絶する。「しばらく会わないほうが良いわ。しかしクリスマ スには再会しましょう。」と告げる。 そして、クリスマスの夜、二人は再会するが、彼女はウェルテルに別れを告げる。絶望したウェルテル はアルベールから借りたピストルで自殺を図る。死にかけている彼の元にシャルロッテが駆けつけ彼の前 で初めて愛を告げるが、ウェルテルは彼女の腕の中で息を引き取る。 この『手紙のアリア』はオペラの第 3 幕の冒頭で歌われる。 クリスマスの夜、ウェルテルと再会する約束をしたシャルロッテが今まで彼からもらっていて隠してあ った手紙を読み直しているシーン。彼女は胸の高ぶりを自覚して、苦悩する。 Werther...Werther... Qui m'aurait dit la place Que dans mon coeur il occupe aujourd'hui. Depuis qu'il est parti, malgré moi, tout me lasse! Et mon âme est pleine de lui! ウェルテル…ウェルテル… 誰にわかるでしょう、あなたが 私の心を占領しているなんて。 Ces lettres! ces lettres! Ah! je les relis sans cesse... Avec quel charme... mais aussi quelle tristesse! Je devrais les détruire... je ne puis! この手紙、手紙! ああ、いったい何度読み返したことか… 心をときめかせ、 同時に、悲しみに沈みながら! 破り捨てるべきなのに...でも、できない! "Je vous écris de ma petite chambre: au ciel gris et lourd de Décembre pèse sur moi comme un linceul, Et je suis seul! seul! toujours seul!" 「僕の小部屋で今、手紙を書いている、 12 月の灰色の重い空に おしひしがれながら。 僕は独りきり! いつも独り!」 Ah! personne auprès de lui! pas un seul témoignage de tendresse ou même de pitié! Dieu! comment m'est venu ce triste courage, d'ordonner cet exil et cet isolement? ああ、誰も彼のそばにいないなんて! 何の証もないのね 愛や哀れみの! 神様! どうして彼に流浪と孤独を強いるような 悲しい勇気が私にあったのでしょうか? "Des cris joyeux d'enfants montent sous ma fenêtre, Des cris d'enfants! Et je pense à ce temps si doux. 「子供たちの歓声が、 僕の部屋の窓の下から聞こえる。 あなたが旅立って以来、 何も手につかないの! 私の心はあなたのことで一杯! 子供たちの歓声! 幸せだったあの頃のことを思い出す。 72 Où tous vos chers petits jouaient autour de nous! Ils m'oublieront peut-être!" 君のかわいい子供たちが 周りで遊んでいたあの頃のことを! 彼らは僕のことは 忘れてしまうのだろう!」 Non, Werther, dans leur souvenir votre image reste vivante... et quand vous reviendrez... mais doit-il revenir? Ah! ce dernier billet me glace et m'épouvante! いいえ、ウェルテル。子供たちの中に あなたの想い出は息づいているわ… あなたが戻ってきたとき… でもあなたは戻るの? ああ! この最後のページが私を凍らせ 不安にさせる! "Tu m'as dit: à Noël, et j'ai crié: Jamais! On va bientôt connaître qui de nous disait vrai! 「君は僕に言った『クリスマスに!』 僕は叫んだ『そんなことはありえない』と じきに知ることになる 僕たちのどちらが本当のことを 言ったのか! でも、僕が約束の日に 君の前に現れなくても 僕を咎めず、 僕のために泣いてほしい! そう。君はその魅力に満ち溢れた目で、 手紙の一行一行を君は読み返し 君の涙で手紙を濡らすのだ シャルロッテ、 そして君は身を震わせるのだ!」 Mais si je ne dois reparaître au jour fixé, devant toi, ne m'accuse pas, pleure-moi!" Oui, de ces yeux si pleins de charmes, Ces lignes...tu les reliras, tu les mouilleras de tes larmes... O Charlotte, et tu frémiras!" Alt. 坂口 真央 73 Séguidilla G. Bizet “Carmen” セギディーリャ G. ビゼー オペラ「カルメン」第 1 幕より メリメの原作に基づいてビゼーが作曲したオペラ『カルメン』は、1875 年にオペラ=コミック座(パリ) で初演された。オペラ・コミックは歌以外の台詞を含むフランス・オペラの形式の一つで、本作はその代 表的な作品に数えられる。 多くの女工が働く煙草工場がにわかに騒ぎ立ち、傷害事件を起こしたカルメンが衛兵に捕らえられる。 そこで伍長ドン・ホセを惑わし、逃げおおせようとする女が歌うのがこの曲である。カルメンの強かで奔 放な性格を見事に表現する小さな傑作。 〈CARMEN〉 〈カルメン〉 Près des remparts de Séville, Chez mon ami Lillas Pastia, J'irai danser la Séguedille Et boire du Manzanilla! J’irai chez mon ami Lillas Pastia. セビリヤの城壁の近くの 友達のリリアス・パスティアの店へ セギディーリャを踊りに マンザニーヤを飲みに! リリアス・パスティアの店へ行くわ Oui, mais toute seule on s'ennuie, Et les vrais plaisirs sont à deux; Donc, pour me tenir compagnie, J’emmènerai mon amoureux! Mon amoureux...il est au diable, Je la'i mis à la porte hier! Mon pauvre cœur très consolable, Mon cœur est libre comme l’air! でもひとりじゃ退屈 ほんとに楽しいのは二人のときよ そう、連れがいるの 恋人と一緒に行くわ 恋人は昨日はるか遠くに 捨ててやった! あたしのさみしい心は立ち直りが早い あたしの心は空気みたいに自由! J'ai des galants à la douzaine, Mais ils ne sont pas à mon gré. Voici la fin de la semaine: Qui veut m'aimer? je l'aimerai! Qui veut mon âme? Elle est à prendre! Vous arrivez au bon moment! Je n'ai guère le temps d'attendre, Car avec mon nouvel amant, 色男はいくらでもいるわ でもあたしの好みじゃない この週末に あたしに惚れたるひと? あたしも惚れるわ! あたしの心が欲しいひと? 召し上がれ! あんたはいい時にやってきた 待ってる時間はないの だって新しい恋人と行きたいから 〈DON JOSÉ〉 Tais-toi ! je t'avais dit de ne pas me parler ! 〈ドン・ホセ〉 うるさい! しゃべりかけるなと言ったろ! 74 〈CARMEN〉 〈カルメン〉 Je ne te parle pas, je chante pour moi-même, Et je pense! il n'est pas défendu de penser! Je pense à certain officier, Qui ma'ime, Et quà' mon tour, oui, qu'à mon tour Je pourrais bien aimer! あんたにはしゃべってないわ 自分に歌ってるのよ 考えてるの、 考えるくらいいいでしょう! 考えてるのよ あたしに惚れてるある士官さんのことを それで、あたしはどうなんだろうって すごく惚れるかもしれないってね! Mon officier n'est pas un capitaine; Pas même un lieutenant, il ne'st que brigadier. Mais c'est assez pour une Bohémienne, Et je daigne m'en contenter! あたしの士官さんは 隊長じゃないし 大尉でもない ただの伍長さん でもジプシーの女には それで十分 あたしは満足なのさ! 〈DON JOSÉ〉 Carmen, je suis comme un homme ivre, Si je cède, si je me livre, 〈ドン・ホセ〉 カルメン、 俺は酔っぱらったようだ もし俺が折れれば、 おまえに委ねてしまえば その約束、守ってくれるのか? ああ! 俺が愛したら、 おまえも愛してくれるのか? Ta promesse, tu la tiendras, Ah! si je t'aime, tu m'aimeras? 〈CARMEN〉 〈カルメン〉 Oui, Nous danserons la Séguedille En buvant du Manzanilla. ええ、一緒にセギディーリャを踊りに マンザニーヤを飲みに行きましょう Ah! Près des remparts de Séville, Chez mon ami Lillas Pastia, Nous danserons la Séguedille Et boirons du Manzanilla. セビリヤの城壁の近くの リリアス・パスティアの店へ あたしたちセギディーリャを踊りに マンザニーヤを飲みに。 Alt. 髙橋 真梨萌 75 Mon cœur s'ouvre à ta voix B. Saint-Saëns “Samson et Dalila” あなたの声に私の心は開く C. サン=サーンス オペラ「サムソンとデリラ」第 2 幕より オペラ『サムソンとデリラ』第2幕よりデリラのアリア。小さい頃は普通の子供であったサムソンだが、 あるとき神から怪力を授かった。その力を使い宿敵ペリシテ人との戦いを続けるうち、ペリシテ人のデリ ラという女性を愛するようになった。これを知った敵は、デリラを利用してサムソンの力の秘密を探ろう とする。はじめはなかなか秘密を教えなかったサムソンだが、ついに怪力の源は髪の毛にある事を話して しまう。このアリアはサムソンの弱点を探ろうと女の魅力で彼に迫るシーンに歌う曲である。 Mon cœur s'ouvre à ta voix comme s'ouvrent les fleurs Aux baisers de l'aurore! Mais, ô mon bien-aimé, pour mieux sécher mes pleurs, Que ta voix parle encore! Dis-moi qu'à Dalila tu reviens pour jamais! Redis à ma tendresse Les serments d'autrefois, ces serments que j'aimais! Ah! réponds à ma tendresse! Verse-moi, verse-moi l'ivresse! Réponds à ma tendresse! Ah! verse-moi, verse-moi l'ivresse! 花が開くように私の心はあなたの 声に開かれる 夜明けのくちづけで! けれど、おお愛する人よ 私の涙を乾かすには あなたの声をもう一度聞かせて! 告げてください、永遠にデリラの そばを離れないと! もう一度、私の愛に聞かせて 昔の誓いの言葉を、私の愛した あの誓いの言葉を! ああ! 私の愛に応えて! 私に注いで、あの陶酔を! 私の愛に応えて ! ああ! 私に注いで、あの陶酔を! Ainsi qu'on voit des blésles épis onduler Sous la brise légère, Ainsi frémit mon cœur, prêt à se consoler, À ta voix qui m'est chère! La flèche est moins rapide à porter le trépas Que ne l'est ton amante à voler dans tes bras! そよ風によって、 麦の穂が波打つように Ah! réponds à ma tendresse! Verse-moi, verse-moi l'ivresse! Réponds à ma tendresse! Ah! verse-moi, verse-moi l'ivresse! Samson! Samson! je t'aime! ああ! 私の愛に応えて! 私に注いで、あの陶酔を! 私の愛に応えて ! ああ! 私に注いで、あの陶酔を! サムソン! 愛しているわ! Alt. 天野 里香 あなたの声で慰めてもらおうと 私の心は震える 死をもたらす矢でさえも、 これほど速くはない あなたの恋人が 腕の中に飛び込む速さほどは! 76 Donna non vidi mai G. Puccini “Manon Lescaut” なんと素晴らしい美人 G. プッチーニ オペラ「マノン・レスコー」第 1 幕より 『マノン・レスコー』はアベ・プレヴォの長編小説、およびその主人公の名前。題名は正しくは『騎士 デ・グリューとマノン・レスコーの物語』といい、7 巻からなる自伝的小説集『ある貴族の回想と冒険』の 第 7 巻にあたる(1731 年刊) 。 騎士デ・グリューは美少女マノンと出会い駆け落ちするが、彼女を愛した男たちは嫉妬や彼女の欲望か ら破滅していき、デ・グリューも巻き込まれて数々の罪を犯す。彼女はアメリカへ追放処分となり、デ・ グリューも彼女に付き添って行くが、アメリカでも彼女をめぐる事件は起き、ついにマノンは寂しい荒野 で彼の腕に抱かれて死ぬ。ファム・ファタール(男たちを破滅させる女)を描いた文学作品としては最初 のものといわれ、繊細な心理描写からロマン主義文学の走りともされる。 プッチーニは 35 歳の時(1893 年)にこれをオペラとして発表、大成功を収め、彼の代表作である『ラ・ ボエーム』『トスカ』『蝶々夫人』につながることとなる。なお、プッチーニはマスネの『マノン』との違 いを出すため、ヒロインの性格に重きをおいた『マノン』に対して、物語性を重視する筋立てにした。 場面は冒頭、フランス・アミアンの宿屋の広場に学生と娘たちが集まっていたところへレスコーと妹マ ノン、財務大臣ジェロンテらがやってくる。デ・グリューはマノンが一人になった際に話しかけ、彼女の 身の上を知る。兄の呼ぶ声で彼女が戻った後、その美貌に陶然とするデ・グリューはこのアリアを歌う。 Donna non vidi mai simile a questa! A dirle: io t'amo, a nuova vita l'alma mia si desta. "Manon Lescaut mi chiamo!" Come queste parole profumate mi vagan nello spirto e ascose fibre vanno a carezzare. O susurro gentil, deh! non cessare! Ten. 古川 上総 このような女性に逢ったことがない! 彼女に伝えたい、「愛している」と 新たな生命が私の魂に目覚めたのだ 「私の名はマノン・レスコーよ!」 どれほどこの香しい言葉が 私の心の中を漂い 隠された琴線を愛撫することか 優しい囁きよ、止まないでおくれ!
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