CAMECA Instrument Japan K.K. 第3回SIMS研究会 「2次イオン質量分析法のハードウエア基礎講座」 - SIMS真空技術の基礎 2013年6月21日 アメテック(株) カメカ事業部 三輪 司郎 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. ☆ 内容 ☆ 1. SIMSにどうして真空が必要か? 2. 真空技術について - 真空を作る(真空ポンプの種類と仕組み) - 真空を計る(真空ゲージの種類と仕組み) - 真空を保持する(真空チャンバー、フランジ) 3.まとめ 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. Cameca IMS-7fに使われている真空ポンプ、ゲージ類 ペニングゲージ イオン ポンプ イオンゲージ ターボ分 子ポンプ Tiサブリメーション ポンプ 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 何個の真空ポンプ、ゲージが使われているか イオンゲージ 3台 ペニングゲージ 2台 サーモカップル ゲージ 2台 ロータリーポンプ (スクロールポンプ) 1台 ターボ分子ポンプ 6 台 イオンポンプ 2台 Tiサブリメーション ポンプ 1台 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. SIMS法の特長と超高真空の必要性 高感度分析 ppm~ppbオーダの検出感度の分析が可能 元素分析 水素をはじめ周期律表の全ての元素の分析ができる。 深さ方向分析 面内分析 同位体分析 試料中の元素の深さ分布がわかる (µmオーダからnmオーダの範囲) 。 面内の元素分布を二次イオン像として知ることができる。 ミクロンオーダの領域での同位体比測定可能 残留ガスの表面吸着の影響を受ける 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 微少ビーム照射時のH表面吸着 C ameca IMS 7FNew Sample: Recipe: D:\2012_DATA\Ametek\sample.rim Data file: C :\C ameca IMS\Data\kobelco-2\H-depth.dp C s+ Ie: 15000eV Ip: 8.62e-03/8.49e-03nA Raster: 50um DT: On Gate: 100% P: 1.8e-10mbar SpleHV: -5000V MR: 400 FA: 1800um C D: 152um DeltaE: 80eV C omments: 11/29/2012, 12:52 Depth Profile 1e3 1H 大電流 スパッタ Intens, c/s 8e2 分析電流量~10pA スパッタ電流量>10nA 6e2 4e2 装置真空度 ~1.8E‐10 mbar 2e2 20 40 60 80 100 Time, s 120 140 160 180 残留ガス吸着量>1次イオンによるスパッタ量 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. SIMS装置上の超高真空の必要性 イオンレンズ、検出器 高電圧を印可して使用 放電させないため高真空が必要 酸化防止 Csイオン源 金属Csを使用 ガスイオン源 ガスを真空槽に導入 残留ガスとの衝突によるビームの発散抑制 → 差動排気 部分ごとに最適な真空ポンプを配置 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空とはどのようなものか 魔法瓶 100Pa 国際宇宙ステーション 表面分析装置 高度約400km 10-7~10-8 Pa ~10-5 Pa 極高真空 -9 Pa 10 超高真空 高真空 10-6 10-3 中真空 1 富士山頂 636hPa 低真空 103 1気圧(大気圧) 1atm = 1.01325 bar = 1013.25 mbar = 1013.25 hPa = 760 Torr 1 Torr ≒ 133.32 Pa 窒素ガスの平均自由行程(T=300K) 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 超高真空技術の発展 表面科学 電子線回折(LEED、RHEED)、 フィールドエミッション(FEM、FIM、AtomProbe) Si(111)7x7 STM像 SPM技術(STM、AFM、etc.) 各種表面分析装置 (SIMS、AES、XPS、etc.) 素粒子物理 加速器(サイクロトロン、シンクロトロン、etc.) 工業技術 半導体製造(MBE、蒸着、スパッタ) ブラウン管 他の科学技術の発展とともに真空技術も発展 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. MBE装置と真空メーカー 代表的な真空機器メーカ=(元)MBEメーカー バリアン(米)→アジレント リベール(仏) フィジカルエレクトロニクス(米)→ガンマバキューム、アルバックファイ VG(英)→サーモ、VGシエンタ アルバック(日) アネルバ(日):日電バリアン→日電アネルバ→キャノンアネルバ その他真空機器メーカ ファイファー(独):バルザース ライボルト、インフィコン(独): エドワーズ(英): アルカテル(仏): グランビルフィリップス(米): ターボ分子ポンプ、真空計 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. MBE(分子線エピタキシー)装置;超高真空を利用 真空系 ソープションポンプ+イオンポンプ ↓ ドライポンプ+ターボ分子ポンプ K(Knudsen)セル アリオス(株)製のMBE装置 主として半導体薄膜の結晶成長に利用される 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空技術について① - 真空を作る(真空ポンプの種類と仕組み) 荒引き排気系 1~10-1 Pa までの真空を作る ロータリポンプ、スクロールポンプ、ソープションポンプ 本排気系 10-7 ~10-9 Pa までの真空を作る 拡散ポンプ、イオンポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ 補助ポンプ 本排気系の補助をしてさらに真空を向上する チタンサブリメーションポンプ、非蒸散ゲッター(NEG) 単一真空ポンプで大気から超高真空ま で排気できるポンプはない 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 荒引き排気用ポンプ(背圧ポンプ) ロータリポンプ オイルを真空シールとして利用し、ロータリエンジ ンの逆の動きで真空を作る、 最も一般的(安価)、若干のオイルが真空チャンバーへ混入 スクロールポンプ コンプレッサーを逆回転して真空発生 オイルフリーの真空が得られる、ロータリより高価、メンテ周期短い ソープションポンプ 液体窒素で吸着材を冷却、ガスを液化(固化)する 古くからある単純な構造のドライポンプ、排気量に限界有り ダイアフラムポンプ メンブレンのゴムを伸び縮みさせて真空引きする ドライポンプ、到達圧が高い(200~1000Pa) 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 荒引き排気用ポンプの構造 ロータリポンプの概念図 ダイアフラムポンプ の概念図 スクロールポンプの概念図 ソープションポンプの概念図 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 本排気用ポンプ(主ポンプ) イオンポンプ 高電界で放電イオン化したガスを 磁場により吸着材に閉じ込める 無振動、クリーン、排気量の割にサイズが大きい 油拡散ポンプ オイルを加熱蒸散して気体分子と衝突させる 安価、オイルの蒸散がありトラップ必須(よりトラップと組み合わせれ ば10-8Pa以下も可能) ターボ分子ポンプ ジェットエンジンのような羽でガスを掻き出す 現在最も広く利用されている。若干の振動、時としてクラッシュすることあり クライオポンプ ヘリウム冷凍機でガス吸着フィンを冷却 排気速度が大きい(特に水)、振動が大きい 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 本排気用ポンプの構造 油拡散ポンプの概念図 ターボ分子ポンプの概念図 クライオポンプの概念図 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 補助ポンプ(到達真空度向上) チタンサブリメーションイオンポンプ Tiフィラメントに電気を流してTiを蒸発(昇華)させ、ガスを吸着させる Hの排気速度大、排気速度はフィラメント周りの壁の面積 非蒸散ゲッターポンプ(Non-Evaporable Getter = NEG) Zr系の金属パネルを活性化してガスをトラップする コールドトラップ (試料周り設置した)パネルを冷却してガスをトラップ NEG; SAES SORB AC Cartridge Pump 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空技術について② - 真空を計る(真空計の種類と仕組み) 大気圧~低真空領域(1atm~10-1Pa) ガイスラー管 ピラニー サーモカップル クリスタルゲージ 放電時の色の変化を見る、安価、非定量的 気体分子が測定子から奪った熱量から圧力を求める ピラニー:Pt抵抗体、サーモカップル:熱電対 水晶振動子の波長のずれ、大気圧付近の精度がよい 中真空から超高真空領域(10-1~10-9Pa) ペニング放電を利用、耐久性悪い ペニング(コールドカソード)ゲージ 熱電子によりガスをイオン化、電流測定 電離真空計=イオンゲージ (三極管、シュルツ、B-Aゲージ、ヌードゲージ) エキストラクターゲージ 軟X線のバックグランドを低下=超高真空測定 単一真空計で大気から超高真空まで計 測可能な真空計はない 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空計の種類と仕組み1 サーモカップルゲージの概念図 ピラニーゲージの概念図 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空計の仕組み2 B-Aゲージの概念図 エクストラクターゲージ の概念図 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 真空技術について③ - 真空を保持する(真空チャンバー、フランジ) 真空チャンバー材料 ステンレス(SUS304/316 ) 最も一般的、溶接容易、 各種内面処理不可欠 アルミ ガス放出少ない、溶接難 ガラス 形を自由に作れる、割れやすい、ガス放出有り 真空フランジ形式 真空チャンバー、配管を接続する部分 コンフラット ナイフエッジ+Cuガスケットでシールする JISフランジ 平面と溝付きフランジを組み合わせて利用、ボルト止め シール材 ゴムO-ring アルミ中空スプリングリング(HELICOFLEX) NW(KF) センターリング+クランプ バルブ 各真空槽を隔離したり、繋いだりする アングルバルブ、ゲートバルブ等 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 各種真空フランジ1 JISフランジ(VF) JISフランジ(VG) JISフランジ HELICOFLEX NW(KF)フランジ 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 各種真空フランジ2 コンフラット Cuガスケット (Agコート品有り) コンフラットフランジ コンフラットフランジの呼び方 日本 ICF-34 ICF-70 ICF-114 ICF-152 ICF-204 ICF-253 米 CF 1-1/3" CF 2-3/4" CF 4-1/2 CF 6" CF 8" CF 10" EU 16 CF 38 CF 63 CF 100 CF 150 CF 200 CF 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 各種真空バルブ 角形ゲートバルブ ゲートバルブ ダイアフラムバルブ VAT社 アングルバルブ 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 超高真空を作る 背圧ポンプ=ロータリーポンプ 主ポンプ=ターボ分子ポンプ 補助ポンプ=Tiサブリメーション +十分なベーキング →チャンバーの壁面に吸着しているガスを放出する 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. SIMS分析における真空の影響 ~大気ガス元素分析時のBGとは 残留ガス(H2, H2O, CO2, N2, O2 あるいはhydroca)等が、 分析領域に吸着してイオン化するもの Ion Intensity (a.u.) Imax 2ndary Ion Intensity I IBG ± ± =nj・y j j・Cj・Ip Cmax : ピーク濃度 Ip : Current of primary ion Imax : ピークイオン強度 cj : concentration of element j IBG : B.G.強度 y ±: 2ndary Ion yield j nj : transmission Depth (a.u) CDL = Cmax・ IBG Imax ∝ 真空度 ∝ スパッタ速度(1次イオン電流密度) 検出限界を向上するには、 1.真空度の向上 2.スパッタ速度の増大 が必要 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. Quad.SIMSによる大気ガス元素分析 21 10 #H,C,O in GaAs Cs@2keV, 70nA, 250um Sputter rate ~4.5nm/sec H 装置構造の単純なQuad.SIMSで は、適切なベーキングで良好な 真空が得られる。 Hに関しては電子(質量0の イオン)によるBGが高い O C H, C, O Concentration (atoms/cm3) 低スパッタ速度での大気ガス分 析が可能 20 10 19 10 H BG: 3.4E+18 18 10 17 10 C BG: 4.3E+16 O BG: 3.9E+16 16 10 0 250 500 750 1000 1250 Depth (nm) 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. セクターSIMSでの大気ガス元素検出限界向上 長時間のプリスパッタによる試料ホルダー表面、 インプットレンズ付近のコーティング →低スパッタ速度での大気ガス分析が可能 19 10 18 10 (b) 10 17 1 + H 76 12 10 C,OのBGは、 Quad.SIMSと同レベル 3 Background level (atoms/cm ) (b) 3 Background level (atoms/cm ) 18 10 16 + AsH + C 16 + O 87 17 10 12 C 16 10 AsO 10 1 - 16 - H + AsC 91 - O + 15 15 10 0 50 100 150 Time (hours) BGのPre-sputter時間依存性 200 0 5 10 15 20 Sputtering Rate (nm/sec) BGのsputter rate依存性 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. 通常質量分解能でのSi中のP分析 1E+19 Si中のP分析 = 高質量分解能モード利用 Si P 110keV Tilt300 SiO2 31 5nm 検出イオン: Si+ P negative 1E+18 atu #5-2 1.06E13 kuma #5-1 1.06E13 残留ガスHも小 (SiHイオンも減少) Concentration (atoms/cm3) 装置の真空状態良好 kuma #21-2 1.07E13 1E+17 kuma #22-2 1.06E13 1E+16 Pの検出限界向上 1E15 atoms/cm3 1E+15 1E+14 0 0.2 0.4 0.6 Depth (microns) 0.8 1 1.2 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学 CAMECA Instrument Japan K.K. まとめ SIMSにとって、真空は、必要不可欠なものであり、 多数の真空ポンプを利用して超高真空状態を維持 しています。 各種真空ポンプの原理と用法を正しく理解し、装置 の真空を常に良好に保つことが大切です。 大気成分元素の分析など装置の真空に深く関わる ような元素の分析を行う時には注意が必要です。 資料元 アルバック機工: http://www.ulvac-kiko.com/faq/index.html VAT(株):http://www.vatskk.co.jp/ 真空のページ:http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/people/ikuji/edu/vac/index.html アリオス株式会社:http://www.arios.co.jp/products/mbe.html 21 June 2013 SIMS研究会3 北海道大学
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