ビジネス入門 第5回:11月10日 経営戦略と競争環境分析 工学系研究科 技術経営戦略学専攻教授 工学部システム創成学科C(知能社会システム) 元橋一之 http://www.mo.t.u-tokyo.ac.jp ビジネス入門のゴール: 企業価値とは何か?それを高めるため にはどうしたらいいか? • 日本のIT企業は企業価値が低い – 売上高利益率が低い – なぜか?IBM、Google、Microsoftなどとの違いは何 か? • 企業価値を高めるためには? – 企業の仕組みについて理解する – 企業価値とは何か? – 企業価値を高めるためには? • 経営戦略 • 技術経営マネジメント • グローバル戦略 経営戦略とは • 企業価値を高めるための企業活動全体に関する方 向性 – 戦略:もともと軍事用語(孫子の「兵法」に遡る) – MOSTの一部 • • • • Mission:基本理念、信条(「ソニーは開拓者である」) Objective:理念をより詳細化したもの Strategy:戦略、上記実現のための企業経営方針 Tactics:戦術、戦略を実現するための方法論 • 敵を知って己を知れば百戦危うからず – 「外部競争環境」と「内部競争力分析」 – 経営の3C:Competitor, Customer, Company 経営戦略の階層構造 (多角化企業、多角化企業グループ) 経営戦略分析のツール 外部環境を重視:ポーターの5フォースモデル(ポジショニング) 内部競争力を重視:RBV(Resource Based View) V(Value), R(Rarity), I(Imitability), O(Organization) 外部競争分析-1 (ポーターの5フォースモデル) 事例:ライアンエアー • ヨーロッパのディスカウントフライヤー – ロンドン-パリ間の料金がたったの0.99ユーロから • ノー・フリル、低価格で営業利益率30%を達成 座席クラスをエコノミークラスに統一。 マイレージポイントの提供や座席指定の廃止。 機内誌や新聞、雑誌や毛布などの無償サービスの廃止。 機内食や飲料の無償提供の廃止と有料販売化。 機内シートのリクライニング機能とシートテーブル、シートポケット廃 止。 – 機内シートには掃除しやすい本革張りを使用する。 – – – – – • 世界で最も評判の悪い航空会社 – 大都市圏外にある空港を、さも大都市圏内にあるかのように詐称(訴 訟の結果、名称変更) – 座席指定がないので、乗客の間の席の奪い合い • 主要ハブ空港はロンドン・スタンステッド空港 事例:ライアンエアー • • • • • 新規参入? サプライヤーの競争力? 買手の交渉力? 代替品・サービスの競争? 競合他社との競争状況? ポーターの5フォースモデルの限界は? 次のどの戦略が最も成功可能性が高いか? 内部競争力分析 Capability理論 • Resource Based View – 企業における経営資源(人財、技術、サプライ ヤーとの関係、企業文化)に着目 – 「希少」でかつ「模倣困難」な技術をいかに有して いるか? • Core Competence • Sustainable Competitive Advantage 内部競争力分析 Capability理論 • Resource Based View – 企業における経営資源(人財、技術、サプライ ヤーとの関係、企業文化)に着目 – 「希少」でかつ「模倣困難」な技術をいかに有して いるか? • コアコンペテンス経営(Pamel & Praharad) – キャノンの事例 • Sustainable Competitive Advantage ユニクロの経営資源は? V:経済価値(Value)に関する問い R:希少性(Rarity)に関する問い I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い O:組織(Organization)に関する問い Value Rarity Inimitability × × × →? ○ × × →? ○ ○ × →? ○ ○ ○ →? Organization 戦略ストーリー 『ストーリーとしての競争戦略』(楠木建)東洋経済新報社 スターバックスのストーリー 『ストーリーとしての競争戦略』(楠木建)東洋経済新報社 事業ポートフォリオ分析 BCのGSM(Growth Share Matrix) IT産業の特性 • 「自動車産業において、GMがコンピュータ業界のよ うに常に競争にさらされていたら、自動車は現在1 台25ドルになって燃費は1000マイルになっただろ う」(ビル・ゲイツ) • ムーアの法則:半導体の集積度は18ヶ月で2倍にな る。 PCのイノベーションスピード 10年前のパソコンと最新機種の比較 NEC9801RA51 (1990年) CPU インテル386 20MHz メインメモリ 1.6MB VRAM他 テキスト12KB グラフィック256KB FDD 5インチ2HD×2 HDD 40MB 通信 なし ValueStar VT900/5D 技術進歩度 (2003年) (*) インテルPentium ® 4 2.8Ghz 140 (1.5) 512MB 320 (1.6) ビデオRAM 32MB キャッシュメモリ 他 なし(CD/DVD-R/RW) 250GB 6250 (2.0) 56Kbpsモデム LAN対応 価格 668,000円 約350,000円(オープン) (*)性能向上倍率(カッコ内は年率換算) コンピュータの価格低下 2.50 2.00 1.50 Korea Japan: Chain Weight Japan: Fixed Weight 1.00 0.50 0.00 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 IT産業における主要企業 30% Microsoft 25% Cisco 利益率 20% Intel 15% Nokia Motorola 10% Samsung IBM HP Dell 5% FujitsuToshibaSony Matsushita Hitachi NEC 0% 0 20 40 60 売上高(10億ドル) 80 100 多様な事業分野 半導体 HP IBM Hitachi Samsung Matsushita Sony Dell Nokia Toshiba Microsoft Motorola NEC Fujitsu Intel Cisco ○ ○ ○ ○ PC ○ ○ ○ ○ ○ ○ ソフト サービス ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ コンピュータ ○ その他 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ミニケース:IBM • International Business Machine: 事務機器 メーカーとして発足(1914年設立、1924年に IBMに) • 1950~1970年:メインフレーム時代の独占企 業、サイエンス分野においても世界をリード • 1980年代:コンピュータのダウンサイジング の影響をうけ業績悪化 • 1990年代:ガースナー改革(『巨象も踊る』) • 2000年代:?? パルミサーノ会長CEO • ちなみに2012年1月1日~ロメッティCEO
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