目次 第1章 創造都市ネットワーク日本(CCNJ) の活動報告 (1)幹事団体会議の開催 …2 (2)平成 27 年度 創造都市ネットワーク会議(総会) …3 (3)参加団体の拡充 …4 第2章 国内・海外の取組に関する情報収集 (1)ユネスコ創造都市ネットワーク UCCN の動向 (2)東アジア文化都市 2015 の動向 …11 (3)文化芸術創造都市事業の推進に関する自治体アンケートの実施 …16 …5 第 3 章 会議、研修の実施 (1)創造都市ネットワーク日本 世界創造都市シンポジウム in 金沢 …17 (2)創造農村ワークショップ in 十日町「芸術祭と地域再生」 …19 (3)創造都市政策セミナー in 大分「創造都市と文化施設」 …21 (4)クリエイティブ cafe(文化庁文化芸術創造都市振興室) …22 第 4 章 CCNJ ウェブサイトの運営 …25 添付資料 第 1 章関係 創造都市ネットワーク会議(総会) …27 第 2 章 関係 文化芸術創造都市事業の推進に関する自治体アンケートの調査について …34 第 3 章 関係 創造都市ネットワーク日本 世界創造都市シンポジウム in 金沢 創造農村ワークショップ in 十日町「芸術祭と地域再生」 創造都市政策セミナー in 大分「創造都市と文化施設」 …54 …68 …100 創造都市ネットワーク日本(CCNJ)の活動報告 第 1 章 創造都市ネットワーク日本(以下、CCNJ) の活動報告 (1)幹事団体会議の開催 1) 平成 27 年度 第 1 回幹事団体会議 日程 : 平成 27 年 5 月 25 日(月)13 時 15 分~14時 00 分 会場 : 石川県立音楽堂交流ホール第 1 控室 参加者 : 札幌市、鶴岡市、新潟市、金沢市、浜松市、神戸市、篠山市、文化庁、顧問、事務局 (オブザーバー)横浜市、文化庁文化芸術創造都市振興室、NPO 法人都市文化創造機構 <報告事項> 参加登録状況について <審議事項> 平成 27 年度 今後の事業計画(案)について 1. 創造農村ワークショップ 2. 創造都市政策セミナー 3. ネットワーク会議(総会) 4. 自治体会員の拡大、次期幹事団体の選出 他 <意見交換> CCNJ の運営について 平成 28 年度以降の事業計画について 2) 平成 27 年度 第 2 回幹事団体会議 日程 : 平成 27 年 9 月 9 日(水)12 時 15 分〜13時 15 分 会場 : 大分県労働福祉会館「ソレイユ」会議室つばき 参加者 : 札幌市、鶴岡市、新潟市、金沢市、浜松市、神戸市、篠山市、文化庁、顧問、事務局 (オブザーバー)横浜市、文化庁文化芸術創造都市振興室、NPO 法人都市文化創造機構 <報告事項・意見交換> 参加登録状況について 平成 27 年度 事業計画(案)について 1. ネットワーク会議(総会) 2. 次期幹事団体の選出、調査事業、新規事業 他 平成 28 年度 事業計画(案)について CCNJ における「現代芸術祭部会」及び「クリエイティブ産業プロジェクト」について 他 3) 平成 27 年度 第 3 回幹事団体会議 日程 : 平成 28 年 2 月 26 日(木) 11 時 00 分〜 12 時 00 分 会場 : 金沢市役所 7 階第 3 委員会室 参加者 : 札幌市、鶴岡市、新潟市、金沢市、浜松市、神戸市、篠山市、文化庁、顧問、事務局 (オブザーバー)東川町、八戸市、横浜市、可児市、京都市、文化庁文化芸術創造都市振興室、 NPO 法人都市文化創造機構 <意見交換> 創造都市ネットワーク会議(総会)の議案の最終確認 2 創造都市ネットワーク日本(CCNJ)の活動報告 創造都市ネットワーク会議(総会)総会の進行について 現代芸術の国際展部会への参加募集について、他 (2)平成 27 年度 創造都市ネットワーク会議(総会) 日程 : 平成 28 年 2 月 26 日(木)13 時 00 分〜 14 時 30 分(総会)、 14 時 45 分~ 16 時 45 分(講演会) 会場 : 金沢 21 世紀美術館 シアター 21 主催:文化庁、創造都市ネットワーク日本 共催:金沢市 出席団体:自治体40団体、自治体以外の団体6団体、個人会員1名、総会の議決にかかる定数47(総会) 参加者:115名(講演会) 1)議案審議 第1号議案 規約の改正について(添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会)P32 参照) 第2号議案 現代芸術の国際展部会の設置について ( 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会)P32 参照) 第3号議案 平成 27 年度事業報告について(第 3 章 会議、研修の実施 P17 〜 P22 参照) ・ 創造都市ネットワーク日本 世界創造都市シンポジウム ・ユネスコ創造都市ネットワーク会議金沢 2015 モニター聴講 ・創造農村ワークショップ ・創造都市ネットワーク日本 自治体サミット 第4号議案 平成 28 年度事業計画について 1. 創造農村ワークショップ 開催月日 平成 28 年 8 月頃/開催地 真庭市(岡山県)/共催 真庭市 2. 創造都市政策セミナー 開催月日 平成 28 年 10 月頃 /開催地 高松市(香川県)/共催 高松市、香川県 3. ネットワーク会議(総会) 開催月日 平成 29 年 1 月又は 2 月 /開催地 新潟市(新潟県) 4. 現代芸術の国際展部会設立ミーティング(仮称) 開催月日 平成 28 年秋 /開催地 名古屋市(愛知県)/協力 名古屋市 5. その他 ・規約第4条に掲げる事業 スポーツ・文化・ワールド・フォーラムにおける文化プログラムのキックオフにあわせ、市長サミット等会議の開催を検討 第5号議案 次期幹事団体の改選について 次期幹事代表: 金沢市 、可児市 、京都市、神戸市、篠山市、札幌市、鶴岡市、新潟市(代表)、八戸市 、 浜松市 、東川町、横浜市(五十音順) 報告 CCNJ ロゴマークの積極的活用について ( 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会)P33 参照) 議案は全て原案どおりに了承された 2)講演会 講演 1「文化を基軸とした地方創生への展望」 講師:青柳正規(文化庁長官) 講演 2「2020 年東京大会やその後を見据えた文化政策について」 講師:熊倉純子氏(東京藝術大学 音楽学部 環境創造科教授、文化庁文化審議会文化政策部会 部会長) 3 創造都市ネットワーク日本(CCNJ)の活動報告 (3)参加団体の拡充 幹事団体、CCNJ 顧問、文化芸術創造都市振興室によって全国の自治体に対する参加の呼びかけ、及び、各種 セミナーの告知を積極的に行った結果、平成 27 年度中に自治体が 23 団体(広域自治体含む)、自治体以外の 団体が 5 団体、新たに参加することとなった。平成 28 年 3 月 31 日現在で、CCNJ 参加団体数は、93 団体(自 治体 70、自治体以外の団体 23)となり平成 27 年度業務計画書に挙げた目標を達成した。各自治体の概要およ び取組は、CCNJ ウェブサイトの参加団体一覧を参照されたい。(http://ccn-j.net/network/list.html)また、ウェ ブサイトの問合せフォーム経由の参加に関する問合せも年間を通じて 20 件と増加した。昨年度と比べても新規加 盟のペースは加速しており、文化芸術創造都市に対する関心が高まっていることが伺える。 新規加盟団体(自治体) 美唄市、美瑛町(北海道) いわき市(福島県) 富士見市(埼玉県) 、松戸市(千葉県) ● 津南町(新潟県) 、氷見市(富山県) ● 大阪市、堺市(大阪府) ● ● 美唄市 札幌市 豊岡市(兵庫県) 斑鳩町、明日香村(奈良県) 岡山市(岡山県) 、広島市(広島県) 、宇部市(山口県) 松山市(愛媛県) 、高知市(高知県) 別府市(大分県) 、築上町(福岡県) 熊本市、多良木町(熊本県) ● 八戸市 神奈川県、香川県 ● 仙北市 新規加盟団体(自治体以外) 公益財団法人滋賀県文化振興事業団 ● 株式会社ニッセイ基礎研究所 鶴岡市 ● ● 公益社団法人日本オーケストラ連盟 ● 新潟市 山形市 仙台市 福岡県文化団体連合会 ● NPO 法人キッズファン 氷見市 ● 高岡市 ● 南砺市 ● 金沢市 ● ● 十日町市 津南町 ● 真庭市 ● 岡山市● 広島市 尾道市 ● ● 宇部市 ● ● 築上町 ● 大分県 久留米市 ● 別府市● ● 大分市 ● 熊本市 ● 4 多良木町 松山市 ● ● 高松市 香川県 徳島県 ● 富士見市 ● ● ● ●● ● ● さいたま市 草加市 取手市 松戸市 佐倉市 木曽町 豊島区 長浜市 ● ● ● 横浜市 神奈川県 可児市 滋賀県 ● ● 小田原市 南丹市● 名古屋市 甲賀市 ● ● 篠山市 ● ● ● ● 静岡市 兵庫県 ● ● ● ● 浜松市 神戸市 ● ● ● 豊岡市 鳥取県 高知市 舞鶴市 ● 堺市 斑鳩町 奈良市 明日香村 大阪市 守山市 草津市 京都市 京都府 いわき市 中之条町 埼玉県 ● ● 東川町 美瑛町 国内・海外の取組に関する情報収集 第2章 国内・海外の取組に関する情報収集 (1)ユネスコ創造都市ネットワーク UCCN の動向 ユネスコ UNESCO(国連教育科学文化機関)が、2004 年に文化産業の創造的社会経済的潜在力を解放し、 文化的多様性を実現する目的で創造都市のグローバルアライアンスを呼びかけて、10 年が経過した。ユネスコ創 造都市ネットワーク UCCN は、参加を希望する都市が文学、音楽、デザイン、メディアアート、映画、ガストロノ ミー、クラフト・フォークアートの7つの文化産業群の中から、1分野を選択して、各国のユネスコ委員会の推薦を 得て、パリのユネスコ文化局に申請し、審査の後、認定を受けるプロセスで展開してきた。登録の条件として、文 化産業の集積や人材養成機関の充実などのほかに、創造都市の実現に向けた常設の推進団体の活動や、特に公 共セクターと民間セクター、市民セクターの連携を重視していることが特徴的である。 1)第9回 UCCN 年次総会-金沢会議 2015 年 5 月 25 - 28 日 ユネスコ創立 70 周年にあたる 2015 年のユネスコ創造都市ネットワーク UCCN 年次総会には加盟 69 都市(32 か国)のうち 61 都市(27 か国)から 139 名の代表が参加し、ユネスコ代表 3 名を加えて 142 名の参加者となり、 史上最大の会議となった。うち 17 都市からは市長・副市長が参加し、市長ラウンドテーブル会議に臨んだ。 5 月 26 日午前の開会式では、開催都市金沢の山野之義市長が歓迎挨拶をしたのち、ユネスコ文化担当事務局 長補佐(課長)のリン・パチェット氏が開会挨拶において国連で策定中の持続発展アジェンダ(SDG)と、ユネス コが準備している文化と都市の持続発展に関するグローバルレポートとの関連で、UCCN の意義と役割があること を強調した。続いて、日本ユネスコ国内委員会事務総長である山脇良雄文部科学省国際統括官の祝辞の後、佐々 木雅幸同志社大学特別客員教授が以下のような基調講演を行った。 「2004 年に、ユネスコが創造都市のグローバルアライアンスを提唱してから 10 年が経過しました。昨 2014 年 12 月に新たに 28 都市が本ネットワークに参加しましたが、これにより各分野のバランスが改善され、地域バ ランスからみても、地球全体にわたって、都市のグローバルネットワークとして大きく展開する可能性を広げたこと は大変意義深いものだと思います。 前世紀末より金融・経済を中心に進んだ新自由主義的なグローバリゼーションは世界をマネーゲームに没頭さ せ、都市間競争が激化し、社会的・地域的格差の拡大をもたらしました。しかし、9.11 の惨劇以降、ニューヨー ク型の「グローバル都市神話」が崩れ始めました。リーマンブラザーズの破産が引き金になりウォール街から始 まった世界金融危機は、世界経済を不安定な状態に陥れ、 「市場原理主義的なグローバル化」に対する反省の 契機を生みました。 これに替わり、 「調和の取れた多様性を認め合うグローバリゼーション」への模索が始まり、世界の各都市が 芸術文化の創造性を高めることで、市民の活力を引き出し、都市経済を多様に競い合う「創造都市の時代」が 幕を開けました。ユネスコは、文化の標準化に対して警鐘を鳴らし、 「文化的多様性に関する世界宣言」(2001) と「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」 (2005)を推進してきたところです。 21 世紀都市の中心に躍り出た創造都市は、知識情報経済をベースとして発展した創造経済時代にふさわしい 都市であるといえましょう。すなわち、生産・消費・流通の各システムが、大規模集中型から分散的ネットワー ク型に転換し、市場に個性的文化的消費を担う「文化創造型生活者」が多数登場してくると、都市の競争要因 も、資本やエネルギーから、知識と文化、すなわち創造階級に転換します。 しかし、創造階級を誘致すれば創造都市になるわけではなく、創造産業の発展のためには、クリエーターやアー ティストの創造性や自発性に基づくネットワークやクリエイティブ・クラスターの形成がなければ、持続的な発展 は望めません。 5 国内・海外の取組に関する情報収集 また、障害者や老人、 ホームレスピープルを社会的に排除するのでなく、格差の克服や急速なグローバリゼーショ ンが引き起こす難民問題の解決など「社会的包摂」という課題の創造的解決が創造都市論に対して提起されて います。 ユネスコが UCCN を提唱して以来、都市間の「競争から都市ネットワークへ」という新たな展開がいろいろ なレベルで見られるようになりました。国内のネットワーク活動としては、カナダの創造都市ネットワーク・CCNC が約 10 前に発足し、約 130 の自治体が加盟しています。日本でも、2013 年に創造都市ネットワーク日本・ CCNJ が立ち上がり、約 50 の自治体が加盟し、2020 年の東京オリンピックまでに 170 の加盟を目標としています。 東アジア地域においても、 日中韓の3国間で 2014 年より「東アジア文化都市」事業が開始されることになりました。 今世紀に入り、地球環境の急速な悪化、大規模な自然災害の頻発は、都市の持続的発展の大きな障害となっ ており、 グローバル社会の持続可能な発展と、 レジリエント(復元力のある)都市のあり方が、 ますます重要なテー マとなっています。1995 年に地震被害を受けた神戸市は、文化とアートを通して都市の再興をしてきました。 国連は持続的発展の観点から生物多様性の維持に向けて取り組んでいます。近年は都市における生物多様性 や、生物多様性と文化多様性との関係性に関する関心が高まり、 「生物文化多様性」という概念も注目されてい ます。金沢市は、生物・文化多様性を議論する最適なフィールドを提供すると思います。伝統的な町並み、芸 能や工芸を育む生活文化、豊かな自然環境に恵まれるとともに、文化と経済のバランスの取れた都市として、生 物多様性と文化多様性の両面から高く評価されています。 最後に、結論として、五つの重要なポイントを挙げます。 第1に、金融中心の市場原理主義的グローバリゼーションから、文化的多様性を認め合うグローバリゼーショ ンへの転換。 第2に、大量生産、大量消費システムから、脱大量生産の文化的生産に基づく「創造経済」への転換。 第3に、文化的価値に裏打ちされた「本物の価値」を生み出す創造的仕事の復権と、自ら生活文化を創造す る「文化創造型生活者」の登場。 第4に、ベーシックインカムを保証しながら、市民一人一人の創造性を発揮できる包摂型、全員参画型社会 への制度設計。 第5に、地球環境の激変や大災害を乗り越えられる、復元力のある都市に関する研究などが重要になります。 このようなユネスコ創造都市のネットワークの発展に向けた研究所の設立が求められており、その実現に向け て貢献したいと考えています。 」 コーヒーブレイクの後、全体会議に移り、UCCN 事務局の活動報告、UCCN の強化及び国際・地域レベルで の目標の達成、文化と都市の持続発展に関するユネスコ・グローバルレポート、ユネスコ創立 70 周年記念事業の 提案などが議題となった。 午後には、7 分野ごとのワークショップが開催されて、分野ごとの総括と今後の取組方向が議論されたのち、市 長ラウンドテーブルが 4 つのセッションに分かれて開かれた。これは、2011 年のソウル会議以来の企画で、世界 の UCCN 市長副市長が意見交換する貴重な機会となり、7 分野を超えた都市間交流に貢献するものとなった。参 加は以下の 17 都市である。 セッション1 ユネスコ創造都市による影響 利川市、サンタフェ市、名古屋市 セッション2 革新的なパートナーシップの構築 ナッソー市、ファブリアーノ市、アンギャンレバン市、 浜松市、光州市、 セッション3 創造性と地域開発 プカロンガン市、ダニーデン市、エステルスンド市、神戸市 セッション4 前進:ユネスコ創造都市の未来 全州市、鶴岡市、順徳区、ボローニャ市、金沢市 市長ラウンドテーブルの冒頭挨拶において山野金沢市長は、クラフト・工芸を持続的に発展させるため、2008 6 国内・海外の取組に関する情報収集 年より UCCN 都市を招いた「世界創造都市フォーラム」を継続的に開催し意見交換を続けていること、 クリエイティ ブワルツ事業によって若い工芸作家を UCCN メンバーに派遣して研究・研鑽の機会をつくっていること、また、首 都圏から世界への発信する拠点としてダイニングギャラリー「銀座の金沢」を開設していること、若手作家の研修拠 点である卯辰山工芸工房のクリエイティブなインキュベーション機能を充実させることなど抱負を語った。さらに、最 終の発表者として UCCN の前進のために、認定のインセンティブをより明確にすること、より多くの都市が参加しや すいプログラムを開発し、システマチックに展開するプラットフォームを構築することを課題に挙げた。さらに、7 つ の分野を跨った多様な連携と、地域エリアごとの交流の促進によって UCCN のネットワークを強化することを提案し た。 翌 5 月 27 日は新たに発足しているステアリンググループのワーキング会議の後、全体会議に移り、7 分野のワー クショップの振り返りと今後の行動に向けた提案、さらに年次会議開催都市の選考プロセス、認定都市のモニタリ ング基準とその進め方、ステアリンググループの活動の重点領域など多面的なテーマで議論が続いた。最後に、次 期の開催都市であるスウェーデンのエステルスンド市のプレゼンテーション、2017 年開催候補 4 都市であるアンギャ ンレバン市、ファブリアーノ市、フロリアーノポリス市、ナッソー市からのプレゼンテーションの後、会議結論を取り まとめた。特に印象的であったのは、今後の認定都市基準において、UCCN 事務局から提案のあった最少人口規 模 10 万人という基準については異論が多く出されたことである。(この結果、2015 年の公募にあたって、前回申 請都市は例外的に 10 万人に満たない場合でも、審査を受けられる措置が取られることになった。) 全体会議終了後は文化プログラムとして、金沢 21 世紀美術館で開催中の「平成の百工比照」展の視察及び能 楽(加賀宝生)鑑賞を楽しんだ。 最終日 5 月 28 日には、 もてなし茶会、 クラフトツアー、歴史文化ツアーの 3 コースで文化エクスカーションが行われ、 会議後の記者会見で、山野金沢市長は佐々木雅幸氏が基調講演で提案したユネスコ創造都市研究所を金沢市が 積極的に誘致する意向であることを述べたのに対して、ユネスコ代表のリン・パチェット氏は、時期尚早ではあるが、 検討に値すると応じた。 また、連携イベントとして、国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわかなざわオペレーション UNU-IAS OUIK が主催する国際シンポジウム「石川―金沢 生物文化多様性圏」が金沢 21 世紀美術館 シアター 21 で 開催され、ユネスコと生物文化多様性事務局の担当者や金沢大学副学長なども加わり、生物文化多様性と都市地 域の持続発展に関する議論が展開された。 なお、金沢会議に連携して、5 月 25 日には、創造都市ネットワーク日本(CCNJ)と文化庁の主催により、「世 界創造都市シンポジウム in 金沢」が開催され、金沢会議に来沢しているボローニャ市、モントリオール市の代表と UCCN 加盟を目指す新潟市、山形市、篠山市の3市長とが創造都市づくりに向けた取り組み実績と今後の方向に ついて熱く語り合った。 金沢会議終了後、デザイン分野のネットワーク加盟都市が名古屋市(5 月 30 日) 、神戸市(5 月 31 日)におい てそれぞれのテーマでシンポジウムを開催して、交流した。 2)世界創造都市フォーラム in 浜松 2015 2014 年 12 月に音楽分野でのアジア初の UCCN 登録を実現した浜松市はこれを記念して、12 月 4、5 日に「世 界創造都市フォーラム in 浜松 2015」を開催した。 4 日午前は世界の音楽都市のスーパープレゼンテーションとして、ボゴタを除くメンバー都市、セビリア、ボローニャ、 グラスゴー、ゲント、プラザビル、ハノーファー、マンハイム、そして浜松の 8 都市に加えて、新規加盟を目指す7 都市の代表が参加して、活発な取り組みを発表した。 基調講演には元フランス文化大臣、ジャックラング氏が登壇し、フランスのおける文化政策や欧州文化首都の経 験について語った。 7 国内・海外の取組に関する情報収集 次いで、 ラング氏に、 ユネスコ事務総長の松浦晃一郎氏、浜松市長の鈴木康友氏が加わり、 同志社大学教授の佐々 木雅幸氏のモデレートで、スペシャルトークセッションが行われた。 セッションの冒頭で、佐々木氏はユネスコ創造都市ネットワークについて「当ネットワークは 2004 年に創設され、 音楽をはじめ様々な分野で、文化の多様性を担うグローバル組織に発展してきました」と、紹介した。 ネットワーク創設に事務局長として携わった松浦氏は、 「創造都市ネットワークは、グローバル化が進む中で、人 類が大切にしてきた文化多様性・文化遺産を保全していく体制である。同時に地方自治体・住民が一緒になって 新しい文化をつくっていくことも重要な柱であり、それが日本でも注目されている地方創生にもつながる。『音楽』は、 言葉や国の違いを越え理解し合える分野であり、ネットワークにおいても非常に重要である」と、その役割について 触れた。それを受けた鈴木市長は、 「これまで浜松にある世界的楽器メーカーは、世界の音楽文化に大きな役割を 果たしてきた。これからはアジア初の音楽分野加盟都市として、特にアジアの中での音楽文化交流の拠点都市とし ての役割も果たしていく」と意思表明した。 松浦氏はさらに、 「欧州文化都市と同じように東アジア 5 カ国で文化大臣会合を開き文化都市を持ちまわるという 発案をしたが国同士の緊張関係でうまくいかなかった。その後、日中韓3カ国での文化都市が始まったが、アジア 全体に広がるのが望ましい」との見解を示した。佐々木氏も「東アジアはユネスコネットワーク都市の集積が欧州に 次いで2番目に多い。もっと広げていくという次のステップに向かうことが求められている」と、指摘した。 鈴木市長は、国同士の緊張関係下でも継続される都市間外交の重要性を指摘し、来年浜松で行われる「世界 音楽の祭典」は、様々な都市の価値や技術、文化が集まって新しい価値が生まれる場になりうると期待を表明しま した。その構想に着目したラング氏は、 「世界音楽の祭典」において、浜松が様々な世界の音楽が結集する場とな るよう協力したい」とコメントした。 最後に松浦氏から「浜松市には、音楽分野に関してハードとソフトを持つという非常にユニークな特徴があり、そ の特徴を生かして音楽を通じた都市外交を進め、ネットワークの中心になっていただきたい。そのためには、市長、 市役所の頑張りだけではなく、市民の皆さんの頑張りが非常に重要となる」とのメッセージが表明された。 引き続く、 シンポジウム 「音楽の新しい創造性」 では、 ボーカロイド VOCALOID や初音ミクなどニューメディアミュー ジックの可能性について討論され、海外の参加者の大きな関心を呼んだ。 翌 5 日は、国内随一の楽器博物館の視察と民族音楽コンサートを楽しんだ。 3)2015 年 UCCN 認定結果と今後の方向 12 月 11 日に新規の UCCN 認定の 47 都市が発表されて、 グローバルネットワークは 54 か国 116 都市に拡大した。 今回の応募総数は 63 件で、うち 61 件が審査に付され、47 都市が認定された。2015 年 12 月に登録された 47 市の分野別の都市数は、映画3、音楽 10、クラフト&フォークアート8、ガストロノミー 10、デザイン6、文学9、 メディアアート1となり、国別ではメキシコ、スペイン、アメリカが 3 都市ずつ増加した。日本からは新潟市、山形市、 篠山市が応募し、篠山市がクラフト&フォークアートで認定され、合計 7 都市となった。この結果、国別での認定 総数はイギリス、中国が8、日本が7、韓国、アメリカ、メキシコが6となった。(図1、表1参照) 今回の認定プロセスは、ユネスコ事務局での書類受付チェックののち、7分野ごとの専門家による審査、さらに、 メンバー都市による審査の 3 段階を経て行われ、申請に当たっては、1 国 3 都市以内、2 分野以上として、各国 ユネスコ委員会より推薦を取り付ける。さらに、人口 10 万人以上の規模が求められたが、年次総会などでの議論 を経て、前回申請都市は例外的に申請を受理された。 次回の審査は 2017 年とされ、1 国 3 都市以内、2 分野以上として、各国ユネスコ委員会より推薦を取り付ける ことは継続されるが、地域的な制限が設けられる可能性もある。 8 国内・海外の取組に関する情報収集 ユネスコ創造都市ネットワーク登録都市:登録順 平成 27 年 (2015 年 )12 月 現在 54 カ国 116 都市 № 登録年月 都市名 1 2004/10 エディンバラ 2 2005/07 サンタフェ 3 2005/08 ポパヤン 4 2005/08 ブエノスアイレス 5 2005/09 アスワン 6 2005/11 ベルリン 7 2006/03 セビリア 8 2006/05 モントリオール 9 2006/05 ボローニャ 10 2008/06 リヨン 11 2008/08 グラスゴー 12 2008/08 メルボルン 13 2008/10 神戸 14 2008/10 名古屋 15 2008/11 深圳 16 2008/11 アイオワシティ 17 2009/06 金沢 18 2009/06 ゲント 19 2009/06 ブラッドフォード 20 2010/02 上海 21 2010/02 成都 22 2010/07 ダブリン 23 2010/07 利川 24 2010/07 エステルスンド 25 2010/07 ソウル 26 2010/11 サンテティエンヌ 27 2010/12 シドニー 28 2011/03 グラーツ 29 2011/08 レイキャヴィク 30 2012/03 ボゴタ 31 2012/04 杭州 32 2012/05 北京 33 2012/05 全州 34 2012/05 ノリッチ City Edinburgh Santa Fe Popayán Buenos Aires Aswan Berlin Seville Montréal Bologna Lyon Glasgow Melbourne Kobe Nagoya Shenzhen Iowa City Kanazawa Ghent Bradford Shanghai Chengdu Dublin Icheon Östersund Seoul Saint-Étienne Sydney Graz Reykjavík Bogotá Hangzhou Beijing Jeonju Norwich 35 2013/10 ブラザビル Brazzaville 36 37 38 40 41 2013/10 ザーレ 2013/10 クラクフ 2013/10 ファブリアーノ アンギャン=レ= 2013/11 バン 2013/11 パデューカ 2013/11 札幌 42 2014/12 ダニーデン 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 2014/12 Zahlé Kraków Fabriano Enghien-lesフランス Bains Paducah アメリカ Sapporo 日本 ニュージーラ Dunedin ンド Granada スペイン Heidelberg ドイツ Prague チェコ Busan 韓国 Galway アイルランド Sofia ブルガリア Hamamatsu 日本 Hannover ドイツ Mannheim ドイツ Jakmèl ハイチ Jingdezhen 中国 Suzhou 中国 Nassau バハマ Pekalongan インドネシア Bilbao スペイン Curitiba ブラジル Dundee イギリス Helsinki フィンランド 39 グラナダ ハイデルベルグ プラハ 釜山 ゴールウェイ ソフィア 浜松 ハノーファー マンハイム ジャクメル 景徳鎮 蘇州 ナッソー プカロンガン ビルバオ クリチバ ダンディー ヘルシンキ 国名 イギリス アメリカ コロンビア アルゼンチン エジプト ドイツ スペイン カナダ イタリア フランス イギリス オーストラリア 日本 日本 中国 アメリカ 日本 ベルギー イギリス 中国 中国 アイルランド 韓国 スウェーデン 韓国 フランス オーストラリア オーストリア アイスランド コロンビア 中国 中国 韓国 イギリス Country UK USA Colombia Argentina Egypt Germany Spain Canada Italy France UK Australia Japan Japan China USA Japan Belgium UK China China Ireland Korea Sweden Korea France Australia Austria Iceland Colombia China China Korea UK Republic of コンゴ共和国 Congo レバノン Lebanon ポーランド Poland イタリア Italy 分野 文学 クラフト & フォークアート 食文化 デザイン クラフト & フォークアート デザイン 音楽 デザイン 音楽 メディアアート 音楽 文学 デザイン デザイン デザイン 文学 クラフト & フォークアート 音楽 映画 デザイン 食文化 文学 クラフト & フォークアート 食文化 デザイン デザイン 映画 デザイン 文学 音楽 クラフト & フォークアート デザイン 食文化 文学 Field Literature Crafts and Folk Art Gastronomy Design Crafts and Folk Art Design Music Design Music Media Arts Music Literature Design Design Design Literature Crafts and Folk Art Music Film Design Gastronomy Literature Crafts and Folk Art Gastronomy Design Design Film Design Literature Music Crafts and Folk Art Design Gastronomy Literature 備考 * 2008 * 2012 * 2013 * 2009 * 2010 ★* 2015 * 2014 * 2016 ★* 2011 ★ 2013 音楽 Music 食文化 文学 クラフト & フォークアート Gastronomy Literature Crafts and Folk Art France メディアアート Media Arts USA Japan クラフト & フォークアート Crafts and Folk Art メディアアート Media Arts New Zealand 文学 Literature Spain Germany Czech Korea Ireland Bulgaria Japan Germany Germany Haiti China China Bahamas Indonesia Spain Brazil UK Finland Literature Literature Literature Film Film Film Music Music Music Crafts and Folk Art Crafts and Folk Art Crafts and Folk Art Crafts and Folk Art Crafts and Folk Art Design Design Design Design 文学 文学 文学 映画 映画 映画 音楽 音楽 音楽 クラフト & フォークアート クラフト & フォークアート クラフト & フォークアート クラフト & フォークアート クラフト & フォークアート デザイン デザイン デザイン デザイン 9 国内・海外の取組に関する情報収集 № 登録年月 都市名 City 61 2014/12 トリノ Torin 62 2014/12 ダカール Dakar 63 2014/12 光州 Gwangju 64 2014/12 リンツ Linz 65 2014/12 テルアビブ・ヤッファ Tel Aviv-Yafo 66 2014/12 ヨーク York 67 2014/12 順徳 Shunde 68 2014/12 フロリアノポリス Florianópolis 69 2014/12 鶴岡 Tsuruoka 70 2015/12 アデレード Adelaide 71 2015/12 アル・アサ Al-Ahsa 72 2015/12 オースティン Austin 73 2015/12 バグダッド Baghdad 74 2015/12 バーミヤーン Bamiyan 75 2015/12 バンドン Bandung 76 2015/12 バルセロナ Barcelona 77 2015/12 ベレン Belém 78 2015/12 ベルゲン Bergen 79 2015/12 ビトラ Bitola 80 2015/12 ブタペスト Budapest 81 2015/12 ブルゴス Burgos 82 2015/12 デニア Dénia 83 2015/12 デトロイト Detroit 84 2015/12 ドゥラン Durán 85 2015/12 エンセナーダ Ensenada 86 2015/12 ガジアンテプ Gaziantep イ ダ ー ニ ャ・ ア・ Idanha-a87 2015/12 ノバ Nova 88 2015/12 イスファハーン Isfahan 89 2015/12 ジャイプル Jaipur 90 2015/12 カトビーツェ Katowice 91 2015/12 カウナス Kaunas 92 2015/12 キングストン Kingston 国名 イタリア セネガル 韓国 オーストリア イスラエル イギリス 中国 ブラジル 日本 オーストラリア サウジアラビア アメリカ イラク アフガニスタン インドネシア スペイン ブラジル ノルウェー マケドニア ハンガリー スペイン スペイン アメリカ エクアドル メキシコ トルコ Country Italy Senegal Korea Austria Israel UK China Brazil Japan Australia Saudi Arabia USA Iraq Afghanistan Indonesia Spain Brazil Norway Macedonia Hungary Spain Spain USA Ecuador Mexico Turkey 分野 デザイン メディアアート メディアアート メディアアート メディアアート メディアアート 食文化 食文化 食文化 音楽 クラフト & フォークアート メディアアート 文学 クラフト & フォークアート デザイン 文学 食文化 食文化 映画 デザイン 食文化 食文化 デザイン クラフト & フォークアート 食文化 食文化 Field Design Media Arts Media Arts Media Arts Media Arts Media Arts Gastronomy Gastronomy Gastronomy Music Crafts and Folk Art Media Arts Literature Crafts and Folk Art Design Literature Gastronomy Gastronomy Film Design Gastronomy Gastronomy Design Crafts and Folk Art Gastronomy Gastronomy 備考 ポルトガル Portugal 音楽 Music Iran India Poland Lithuania Jamaica クラフト & フォークアート クラフト & フォークアート 音楽 デザイン 音楽 Crafts and Folk Art Crafts and Folk Art Music Design Music DRC 音楽 Music UK Slovenia 音楽 文学 Music Literature DRC クラフト & フォークアート Crafts and Folk Art Ukraine Colombia Uruguay UK Portugal Italy Thailand Mexico Iran Italy Brazil 文学 音楽 文学 文学 文学 食文化 食文化 デザイン 食文化 映画 音楽 Literature Music Literature Literature Literature Gastronomy Gastronomy Design Gastronomy Film Music Mexico クラフト & フォークアート Crafts and Folk Art Brazil Japan Singapore Estonia Korea USA Russian Federation India 映画 クラフト & フォークアート デザイン 文学 音楽 食文化 Film Crafts and Folk Art Design Literature Music Gastronomy 文学 Literature 音楽 Music イラン インド ポーランド リトアニア ジャマイカ コンゴ民主共 キンシャサ Kinshasa 和国 リバプール Liverpool イギリス リュブリャナ Ljubljana スロベニア コンゴ民主共 ルブンバシ Lubumbashi 和国 リビウ Lviv ウクライナ メデジン Medellín コロンビア モンテビデオ Montevideo ウルグアイ ノッティンガム Nottingham イギリス オビドス Óbidos ポルトガル パルマ Parma イタリア プーケット Phuket タイ プエブラ Puebla メキシコ ラシュト Rasht イラン ローマ Rome イタリア サルヴァドール Salvador ブラジル サン・クリストバル・ San Cristóbal メキシコ デ・ラス・カサス de las Casas サントス Santos ブラジル 篠山 Sasayama 日本 シンガポール Singapore シンガポール タルトゥ Tartu エストニア 統営(トンヨン) Tongyeong 韓国 ツーソン Tucson アメリカ 93 2015/12 94 95 2015/12 2015/12 96 2015/12 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 108 2015/12 109 110 111 112 113 114 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 2015/12 115 2015/12 ウリヤノフスク Ulyanovsk ロシア 116 2015/12 バラナシ Varanasi インド 登録順 *・・・定例会議の開催年 ★市長会議の開催年 2015 年 12 月に登録された 47 市の分野別の都市数 映画 3 音楽10 クラフト&フォークアート8 食文化10 デザイン6 文学9 メディアアート1 10 国内・海外の取組に関する情報収集 ユ ネ ス コ 創 造 都 市 ~ ひろがる文化と創造のネットワーク ~ ユネスコ創造都市ネットワーク ○アジア 13 か国 35 都市(日本 7 都市含めて) 創造都市とは、独自の文化をもち、それらを産業と結びつけ、新しい価値を創造し、 まちを元気にしている都市のことです。ユネスコによって 2004 年に創設されたネットワークに、 2015 年 12 月現在、7 分野で 54 か国 116 都市が認定されています。 15 20 21 23 25 31 ○北米 3 か国 10 都市 2 8 16 40 76 認定年 2005. 7 2006. 5 2008.11 2013.11 2015.12 都市名 サンタフェ 国 米 国 モントリオール カナダ アイオワシティ 米 国 パデューカ 米 国 サン・クリストバル メキシコ ・デ・ラス・カサス 80 82 91 96 106 認定年 都市名 2015.12 デトロイト プエブラ エンセナダ ツーソン オースティ 32 国 米 国 33 メキシコ メキシコ 米 米 66 50 40 106 91 ○中南米 8 か国 14 都市 30 52 55 58 68 72 86 87 101 110 113 114 99 65 67 70 71 光 州 テルアビブ 順 徳 2015.12 アルアハサ バーミヤン 韓 国 イスラエル 中 国 94 サウジアラビア 115 アフガニスタン 116 73 イスファハン 74 ジャイプール 92 73 71 95 97 イラン インド 97 48 中 国 98 61 9 93 85 63 115 36 38 65 5 67 94 70 74 86 15 53 金沢市 49 14 20 90 62 110 17 46 33 21 69 23 25 32 7 31 77 54 13 83 116 35 3 2012. 3 ボゴタ 2014.12 ジャクメル ナッソー クリチバ コロンビア ハイチ バハマ ブラジル フロリアノポリス ブラジル 2015.12 ドゥラン エクアドル サントス ブラジル ベレン ブラジル モンテビデオ ウルグアイ キングストン ジャマイカ メデリン コロンビア サルヴァドール ブラジル ○日本 7 都市 13 14 56 17 114 ブラジル 41 72 49 87 111 69 77 ○アフリカ 4 か国 5 都市 75 58 5 35 68 62 75 認定年 2005. 9 2013.10 2014.12 2015.12 111 101 都市名 アスワン ブラザビル ダカール ルブンバシ キンシャサ 国 エジプト コンゴ共和国 セネガル 認定年 2008.10 2008.10 2009. 6 2013.11 2014.12 2014.12 2015.12 都市名 神 戸 名古屋 金 沢 札 幌 浜 松 鶴 岡 篠 山 オーストラリア 27 107 12 コンゴ民主共和国 コンゴ民主共和国 42 4 ○ヨーロッパ 1 映画 クラフト&フォークアート デザイン 食文化 音楽 メディアアート 文学 トルコ プーケット タ イ ラシュト イラン バグダッド イラク 統 営 韓 国 ワーラーナシー インド 78 アルゼンチン 国 インドネシア 41 100 84 103 30 国 コロンビア ブエノスアイレス ガジアンテップ 43 113 4 63 認定年 都市名 2015.12 バンドン ロ シ ア 28 26 10 52 76 認定年 都市名 2005. 8 ポパヤン シンガポール シンガポール 92 中 中 37 95 39 108 55 82 3 83 79 34 89 80 109 45 10 57 国 78 インドネシア 18 22 米 国 国 国 プカロンガン 56 81 64 47 16 6 51 112 カ ナ ダ 54 44 19 8 46 105 1 29 96 60 認定年 都市名 2014.12 景徳鎮 蘇 州 53 104 11 2 36 24 88 59 国 国 認定年 都市名 国 2008.11 深 圳 中 国 2010. 2 上 海 中 国 成 都 中 国 2010. 7 利 川 韓 国 ソウル 韓 国 2012. 4 杭 州 中 国 2012. 5 北 京 中 国 全 州 韓 国 2013.10 ザーレ レバノン 2014. 2 釜 山 韓 国 6 7 9 10 11 18 19 22 24 26 28 認定年 2004.10 2005.11 2006. 3 2006. 5 2008. 6 2008. 8 2009. 6 24 か国 48 都市 都市名 エディンバラ ベルリン セビリア ボローニャ リヨン グラスゴー ゲント 国 英 国 ドイツ スペイン イタリア フランス 英 国 ベルギー ブラッドフォード 英 国 2010. 7 ダブリン アイルランド エステルスンド スウェーデン 2010.11 サン=テティエンヌ フランス 2011. 3 グラーツ オーストリア 29 34 37 38 39 43 認定年 都市名 2011. 8 レイキャヴィク 2012. 5 ノリッチ 2013.10 クラクフ ファブリアーノ 2013.11 アンギャン=レ=バン 2014.12 グラナダ 44 ハイデルベルグ 45 プラハ ゴールウェイ ソフィア ハノーファー マンハイム 47 48 50 51 国 アイスランド 英 国 ポーランド イタリア フランス スペイン ドイツ チェコ アイルランド ブルガリア ドイツ ドイツ 57 59 60 61 64 66 79 81 84 85 88 89 認定年 都市名 2014.12 ビルバオ ダンディー ヘルシンキ トリノ リンツ ヨーク 2015.12 ブダペスト カウナス ビトラ ローマ ベルゲン ブルゴス 国 スペイン 英 国 フィンランド イタリア オーストリア 英 国 ハンガリー リトアニア マケドニア イタリア ノルウェー スペイン 90 93 98 99 100 102 103 104 105 108 109 112 認定年 都市名 2015.12 デニア パルマ バルセロナ リュブリャナ リヴィウ 国 スペイン イタリア スペイン スロベニア ウクライナ ノッティンガム 英 国 オビドス ポルトガル タルトゥ エストニア ウリヤノフスク ロシア イダーニャ・ ポルトガル ア・ノーヴァ カトヴィツェ ポーランド リバプール 英 国 ○オセアニア 2 か国 4 都市 12 27 42 107 認定年 2008. 8 2010.12 2014.12 2015.12 都市名 メルボルン シドニー ダニーデン アデレード 国 オーストラリア オーストラリア ニュージーランド オーストラリア 54 か国 116 都市 (2015 年 12 月 11 日現在) 引用:http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/14113/1/UNESCOCreativeCities201512JPN.pdf (2)東アジア文化都市 2015 の動向 2014 年より開始された東アジア文化都市事業は 2 年目を迎え、新潟市(日本)、青島市(中国)、清州市(韓 国)が東アジア文化都市 2015 として、連携して多様な文化事業に取り組んだ。 新潟市のオープニング式典は 2015 年 2 月 27 日に新潟県民会館大ホールで行われ、新潟市長や青島市、清州 市の代表が挨拶したのち、3 都市の芸能団が一堂に会して共演する記念ステージが展開されて、磨き上げられた珠 玉の技と音色で東アジア文化都市 2015 新潟市の幕開けを盛大に飾った。新潟市からは、和楽器ユニット「音魂」 と新潟総踊りが出演し、迫力ある演奏と演舞で観客を魅了した。 ゲストとして登場した Hilcrhyme(ヒルクライム)も新潟愛と音楽を通じたアジアの融和を熱く語り、「新潟から 世界へ」会場を一つに熱唱し、 「東アジア文化都市 2015 新潟市」の文化親善大使、Negicco も会場に駆けつけ、 新潟市の情景がたっぷり詰まった「サンシャイン日本海」を披露した。 開場前から多くの市民が列を作り、来場者の期待の高さが伺え、また、来場者のアンケートにおいても、約 9 割 が「満足」との回答のほか、 「熱意ある素晴らしいパフォーマンスだった」 、 「3 都市の芸能を同時に観ることで文化 の違いや良さを大変わかりやすく理解できた」 、 「中国・韓国にとても親近感をもった」などの声が多数寄せられるなど、 大きな反響を得て、本事業の周知や日中韓の文化を身近に感じる良い機会となった。 次いで 3 月 28-30 日には、青島市において「東アジア文化都市 2015 青島市」のオープニング式典が開かれ、 3都市の代表に加えて「東アジア文化都市 2014」の横浜市、泉州市、光州市の代表も招かれ、29 日には東ア 11 国内・海外の取組に関する情報収集 ジア文化都市シンポジウムが 6 都市の参加で行われた。この中で、中国の泉州市、青島市からは東アジア文化都 市のネットワーク化を図るべく事務局を担当したいという意向が示され、韓国の光州市からも 2015 年秋に、建設 中のアジア文化センターが完成するので、アジアの文化ハブとしての役割を引き受けたいとの意気込みを示した。こ れに対し、日本側はまずは、都市間の交流の実績を積み上げたいと応じた。今後、東アジア文化都市のネットワー ク化に関して議論が深まるものと思われる。 引き続き、新潟市は 3 都市間の青少年の文化交流事業や、コア事業期間には「水と土の芸術祭 2015」の開催 など多彩な事業を展開したが、10 月 22 日~ 23 日には「日仏中韓都市・文化対話 2015」が開催された。 これは、フランス・ナント市長の呼びかけにより、日仏の創造都市を標榜する自治体などが参加し、各都市の施 策や民間での取り組みなどを相互に紹介し交流を促進する目的で 2007 年度より開始された「日仏都市・文化対話」 をこのたび、東アジア文化都市事業として特別に中韓にも参加都市を拡張して開催されたものである。 参加都市は日本とフランス及び中国、韓国の文化創造に取り組むナント市、パリ市、西安市、清州市、光州市、 横浜市、金沢市、豊島区、鶴岡市、そして新潟市の 10 都市であり、総合テーマを「持続可能な街づくりにおけ る文化の存在」とし、小テーマを「文化と食」「文化と産業」「文化と福祉」の 3 つを設けて、各都市の代表者や 関係者、アーティストなどを交えて積極的な対話を行った。それぞれの文化を活かした都市の取組や交流提案など、 様々な視点からの議論が交わされる機会となり、最後に以下のような「日仏中韓都市・文化対話 2015」新潟宣 言が採択された。 「日仏都市・文化対話」は、日仏交流 150 周年を契機に、2007 年から日仏の創造都市を標榜する自治体など が参加して、各都市の施策や民間での取り組みを相互に紹介し、創造都市の発展に向けた取り組みにつなげてき ました。また、2013 年に開催された会議では、各都市の施策の紹介にとどまらず、都市課題解決に向けた知見・ 経験の共有を図る場にするとともに、今後についても対面して対話を行うこと、複数都市間で協同すること、そして、 対話を継続していくことの重要性を確認いたしました。この度、 「東アジア文化都市」の取り組みを機会に、中韓両 国の都市を交えて、新潟市で開催した、 「日仏中韓都市・文化対話 2015」は、総合テーマを『持続可能な街づく りにおける文化の存在』とし、小テーマ『文化と食』 、 『文化と産業』 、 『文化と福祉』の三つを設けて、互いの都 市政策について未来志向で解決するための、新たな交流や見識と画期的な対策の共有の機会とすることができまし た。発表と議論を通じて、以下の諸点について、その重要性を参加者一同で確認し、文化と創造産業の連鎖した 街づくりを通じ、市民の生活の質を高めるとともに、創造都市の連携を活用しながら、創造的文化産業の振興に向 けて取り組むことを宣言します。 1.市民、事業者、行政などが一体となり、都市固有の文化芸術を生かした創造都市づくりを推進し、創造都市 間のネットワークの発展に努める。 2.欧州文化首都や東アジア文化都市など、他の枠組みとの協力・連携を含め、文化芸術による都市間交流に努める。 3.創造的文化産業に関わる人材育成に努めるとともに、各都市が有する多様な文化芸術の融合により、創造的 文化産業の活性化を図る。 2015 年 10 月 23 日 「日仏中韓都市・文化対話 2015」参加都市一同 また、10 月 23 日午後に、 「日中韓クリエイティブ・シティ・ネットワーク・フォーラム」が新潟市において開催さ れた。これは 2014 年 11 月に横浜市で開催された「第 6 回日中韓文化大臣会合」の成果文書「横浜共同声明」 を踏まえて文化庁と新潟市とが共催し、文化を活かしたまちづくりを進める「創造都市」が、文化芸術活動がもた らす経済効果のみならず、社会課題を解決するという視点に関して、未来志向で解決するために協力し、相互理解 を深めていくことを目的として開催された。 12 国内・海外の取組に関する情報収集 基調講演は佐々木雅幸・同志社大学特別客員教授が「創造都市政策と社会課題」と題して、以下のような内容 を述べた。 「皆さん、こんにちは。創造都市政策と社会課題ということで話をさせていただきます。 イギリスの社会学者、ロナルド・ドーアは、21 世紀は、2001 年 9 月 11 日の悲劇から始まったと言っていま す。この事件が起きるまでは、20 世紀は超大国の世紀、21 世紀は、国家ではなく都市の世紀になるのではな いか、社会はもっと多様化していくだろうと考えられていました。また、その都市の世紀では、ニューヨークやロン ドン、東京、パリのように、グローバルな金融の力の上に成立している巨大都市 ( グローバルファイナンシャルシ ティー ) が世界をコントロールしていくのではないかと考えられていました。 しかし、 この夢はもろくも崩れ去りました。9 月 11 日に、2 機の大きなジェット機が世界の金融の中心であるワー ルド・トレード・センタービルを破壊しました。 これにより、都市文明は巨大都市が世界をリードするのではなく、21 世紀は新しいタイプの都市が推進力にな るのではないかと考えられるようになりました。2000 年には、イギリス人のチャールズ・ランドリーの書いた「ク リエイティブシティ」 、2002 年には、アメリカ人のリチャード・フロリダは「クリエイティブ資本論」を出版しました。 この 2 冊の本がクリエイティブシティの幕開けを告げたのです。 この 2 冊に挟まれて、2001 年に、私も『創造都市への挑戦』という本を出版しました。創造都市論を世界の 新しい潮流として推し進めようと、 ランドリー、 フロリダとは意見を交換しながら政策研究やアドバイスをしてきました。 C. ランドリーは、世界をまたにかけて活躍しているシンクタンクのリーダーです。彼は、これからの都市は、20 世紀には考えられなかったようないろいろな問題に直面するだろう、しかし問題を創造的に解決する力があれば都 市は持続的に発展していくと言いました。創造的問題解決は、これまでにない新しいアイデアが、市民の間や都 市の行政担当者の間から生まれてくることが必要だということです。つまり、セレンディピティ( 遇察力 ) です。ある ものを作ろうと思って実行していると、全く違う結果が生まれたりすることがあります。全く思いがけないような新 たなる発見、アイデアが生まれる場所は、都市の中にはたくさんあることが必要であり、それは芸術家や、クリエー ター、デザイナーの人が集まっている場所であると彼は言いました。都市行政の推進、市民の人たちが、そのよ うな新しいアイデアを問題解決に生かしていくような政策が必要だという話です。 これは、クリエイティブ・ロンドン政策として大規模に採用されました。例えば、古い家電発電所を美術館に変 えたり、学校現場にアートプロジェクトを行うことにより、衰退しかかっていた地域が再生し、ロンドンオリンピッ ク誘致にも成功しました。 ロンドンオリンピックは、オリンピアードの原点に戻り、スポーツと併せてプログラムが展開されました。また、 ロンドンのみならずイギリス全土において、4 年間で 18 万件のアートイベントを展開し、4300 万人のイギリス国 民がこれに参加しました。 この中には、障害を持ったアーティストも参加するアンリミテッドという文化プログラムも行われたということです。 ロンドンでのこのような動きが、結果的に新しい時代の社会の再生、国全体の活性化につながったのです。 一方、アメリカの R.フロリダは、彼が生まれたビッツバーグの町がどんどんさびれていくのを見て、古い産業 だけで発展している都市はもたず、産業構造をどんどん変化させて、新しい産業に移っていかなければならないと 考えました。 そこで、彼は徹底的に調べ、三つの T、Talent、Technology、Tolerance がそろった地域において新しい 産業が発展しているということが分かりました。 私もフロリダも、創造都市論を展開する前は、全世界のハイテク地域の発展を調べていました。Talent、 Technology は、まさにハイテク地域の発展の指標です。しかし、21 世紀になると、ハイテクだけではなく、む しろアーティストやクリエーターが集まっている所に新しい発展の芽が出ていること、また、アーティスト、クリエー 13 国内・海外の取組に関する情報収集 ターにはゲイやレズビアンの人が多いことが分かりました。彼らのような人々が集まる地域にはゲイやレズビアンで あっても排除されない社会、Tolerance の高い社会という特徴がありました。Tolerance は創造都市論にとっては、 非常に大事な要素です。これまでと全く違うライフスタイルや、人々が変だと思うような価値観を持つ人たちを排 除しないということです。そのような地域でハイテクのビジネス、新しいアイデア、新しい発展が生まれるということを、 フロリダは証明しました。 このグラフは、過去 100 年間のアメリカ社会における就業者の変遷を示しています。紫色の線は、スーパーク リエイティブコアと呼ばれる、アーティストや科学技術に関わる人々です。いまや、彼らがサービス業全体を押し 上げて、アメリカのクリエイティブクラスの全就業者の 3 割を占めています。そうなると、農業や製造業の就業者し かいない地域は衰退せざるを得ないのです。 21 世紀は工業経済から創造経済への転換点です。20 世紀は、大量生産、大量消費を特徴として、大量流 通の社会でした。この社会は大量廃棄を生み、環境負荷も高く、環境問題も激化しました。地域の競争優位は、 資産、土地、エネルギーであり、都市のタイプは産業都市です。 しかし 21 世紀になると、生産ではフレキシブルな生産、消費は個性的で文化的な消費、他の人とは違う、自 己を主張するような商品を購入したいという生活者が生まれてきました。流通もネットワークになり、マスメディア ではなく、ソーシャルメディアが発展してきます。 このように生産、消費、流通が大きく変化したとき、都市の競争優位は、クリエイティブな人材、知識、知恵、 文化という要素に替わります。このような形の都市を、私たちは創造都市と呼びます。 ユネスコはグローバリゼーションが進むことで文化や言語が画一化し、それらの多様性が失われることを危惧し、 2001 年に、文化多様性に関する世界宣言を出し、2005 年には、文化多様性条約を採択しました。この文化 多様性条約の採択に併せて提唱したのが、創造都市ネットワークの世界的展開でした。現在のところ、七つのジャ ンルで、69 の都市が認定を受けています。世界に広がった創造都市ネットワークは、社会経済、文化的発展の ための重要な役割を担います。 また、国連は、地球の環境を維持しながらの持続的発展を提唱しています。創造都市ネットワークは、文化の 面から持続的貢献に発展するということですが、特に先進国の都市は、途上国の都市は支援することをミッション としています。 創造都市のネットワークをユネスコが提唱してから 10 年がたちましたが、新しい課題が生まれてきたと考えてい ます。それは、フロリダが言っているように、世界から創造階級を集めれば、自動的に都市が創造的になるので はなく、創造都市の経済的エンジンとなる創造産業の発展のためには、都市が持っている文化資本や文化資源 の歴史的な固有価値を生かすということが不可欠であり、アーティストやクリエーターの自発性、創造性を生かす ネットワークがなければならないということです。 しかし、創造階級の誘致だけに焦点を合わせると、かえって社会的緊張を高めることになります。 このような大きな問題が、特に世界的危機の中で人々の間に認識されるようになりました。そこで、創造都市は、 都市に住んでいる全ての人々を包摂する、社会包摂という問題を正面から取り上げなければいけないということが 議論されるようになってきました。 私も創造都市は、社会包摂型の方向に進むべきであり、競争のみを強調してはいけないと定義しました。例えば、 ロンドンでは、91 年に、ホームレスの自立を支える『ビッグイシュー』という雑誌が登場しました。これはロンドン に住むデザイナーが、ホームレスと一緒になって発行した雑誌で、ホームレスの自立を支える収入源になっています。 先ほどの C. ランドリーは、これはまさに社会包摂のための創造的問題解決の一つの成功モデルであると、大変高 く評価しています。 あらためて、社会包摂とは何かというと、社会的排除(ソーシャル・イクスクルージョン)の反対概念であり、 社会的排除を生み出す諸要因を取り除き、人々の社会参加を進め、他の人々との相互的な関係を回復、あるい 14 国内・海外の取組に関する情報収集 は形成することです。 また、福祉国家という言葉がありますが、この言葉は Welfare から、Well-being という言葉が使われるように なってきました。ナショナルミニマム以下の人々に所得を再配分するという考え方から、一人一人の市民の状態に 合わせた発達可能性を支援していくという考え方に視点が移行したことを意味します。そして、そのために重要な 役割を果たすのは文化であるということから、文化権と人間発達という言葉が強く打ち出されてきました。 文化権という言葉を国連の中で強く提唱したのは、ノーベル経済学者であるアマルティア・センです。彼は、人々 が享受するさまざまな本質的自由というものを増大させることが、発達可能性を引き上げるのであり、総合的な観 点での人間発達を支えなければいけないと言いました。 私は、創造都市は、文化権と人間発達というものを、哲学的基礎に据えて考えたほうがいいと思います。国連 UNCTAD のクリエイティブ・エコノミー・リポートの中でも、創造経済は、文化多様性と人間発達、さらには社 会包摂を両立させて発展するという考え方を提唱しました。従って、クリエイティブエコノミーは、大量生産、大 量消費を乗り越えて、文化多様性、人間発達、社会包摂を上手に融合していく方向に向かうことが必要だと考え ています。 例えば、ボローニャにおけるホームレスの社会復帰支援事業などが有名です。ホームレスの社会復帰を進める ためのピアッツァグランデという社会協同組合のリーダーは、経済的に所得があるだけでは、ホームレスの人たち は社会復帰できない、むしろ精神的なエンパワーメントが必要であり、そのためには芸術の力が必要だと言いました。 次に、日本の取り組みとこれからの展望についてお話しします。まずは、日本の創造都市をリードする横浜です。 私は、C. ランドリーとともに創造都市政策の推進を中田前市長にお願いしました。このすぐあとである 2004 年に 取り組んでいただき、造船所があった横浜の臨海部の中で使われていないオフィスや倉庫は、アートセンターに変 わり、アーティスト・イン・レジデンスをしながら、町を再生してきました。 特に面白いのは、港町で性産業が集中しているエリアを、芸術、文化を使って再生するという試みです。黄金 町バザールというアートイベントを開催して、横浜市立大学の学生、アーティストと一緒にかなりダーティーなエリ アの再生に取り組んできました。 この横浜に次いで、神戸はユネスコの創造都市になっています。ここは今から 20 年前に大震災に遭い、約 6000 人の方が亡くなりました。その後 10 年で物的なインフラの復興には成功しましたが、次に、人々の心の健 康の回復が重要になりました。そこで、神戸は政策を切り替え、震災復興の第 2 ステップとして、創造都市神戸 という事業に取り組みました。かつて輸出産業の中心であった生糸を検査していた生糸検査場を、デザインクリエ イティブセンターに変え、ここを中心に子どもたちを巻き込んだちびっこ神戸という取り組みや、神戸デザインの日 の制定により、市民が参加する形でデザイン都市をつくりました。震災がまた起きたときに備え、さまざまな取り 組みをしています。 そして、金沢では、ユネスコが提唱している文化多様性と、国連の地球温暖化防止のための取り組みで議論さ れている生物多様性という言葉を結び合わせた新しい取り組みをしようとしています。その軸には伝統工芸の現代 的再生を置いて、生物多様性と文化多様性を高めようとしています。 さらに鶴岡市では、食文化を切り口にしました。イタリア料理の先端をリードしている奥田シェフが、地元の 在来野菜、地元の魚を使った斬新なイタリア料理のレシピを作り、消えかかっていた農産品の再生を促しました。 つまり、文化というもので、生物多様性に切り込んできたのです。文化多様性と生物多様性の二つが軸になり、 新しい社会をつくっています。 また、都市だけでなく、過疎と向き合うという地域も出てきました。これを私は、創造農村と呼んでいます。こ れからは、鶴岡や十日町、徳島県の神山という、自然の豊かな過疎地域にアーティストに住んでもらい、その力 で新しい産業を興していくという流れが生まれています。 このように、日本では、創造都市が創造農村にまで広がってきました。そして、これを一つのネットワークにしよ 15 国内・海外の取組に関する情報収集 うと、創造都市ネットワーク日本が設立されました。このネットワークに併せて、昨年からは、東アジア文化都市 事業も始まりました。このように、国内のネットワークと東アジアのネットワークをともに広げていこうとしています。 グローバル、リージョン、そして国内が重層的に展開し、アジアから発展し、アジア全体に広がっていきます。 ASEAN 創造都市ネットワークも昨年からスタートしていますので、東アジアと ASEAN が連携して、アジア全体 をクリエイティブに変えていきます。このように、今、私たちは、クリエイティブアジアを次のステップとして展望す るという段階に入ってきているのです。 」 新潟市のクロージングイベントが 11 月 23 日に開催されて、3 都市の代表が出席したシンポジウムではその成果と 意義が確認されて、文化・芸術分野において 2016 年以後も継続的に交流と友好を促進するとともに、東アジア文 化都市ネットワークの構築を視野に 3 都市が協力連携して取り組むことを以下のように宣言した。 2015年東アジア文化都市共同宣言 日本新潟市、中華人民共和国青島市及び大韓民国清州市は、2015年東アジア文化都市として、文化・芸術 分野における交流事業や各都市の独自文化の魅力を発揮する多彩な取り組みを実施し、東アジア域内の相互理解 の深化と多様な文化の国際発信力の強化に努めてきた。 3都市において本年1年間で得られた成果や知見、経験を共有し、今後の継続的な交流促進や発展に関する議 論を通じて、以下の諸点について、協力連携して取り組むことを宣言する。 1. 3都市は相互協力のもと、文化・芸術分野などにおいて継続的に交流と友好を促進するとともに、民間レベル による交流の活性化を図る。 2.東アジア文化都市発展のため互いの知見や経験を共有し、協力して事業を推進するよう努める。 3.歴代の東アジア文化都市をはじめとした新たなネットワーク構築を視野に入れて協力連携し、文化の力による社 会的課題の解決に貢献する。 引き続き、2016 年の東アジア文化都市には、奈良市、寧波市、済州特別自治道が選ばれて、事業の発展を目 指している。 執筆 NPO 法人都市文化創造機構 (3)文化芸術創造都市事業の推進に関する自治体アンケートの実施 「平成 22 年度・文化芸術創造都市事業の推進に関するアンケート」及び「平成 26 年度・文化芸術創造都市 事業の推進に関する自治体アンケート」に引き続き、自治体における文化芸術創造都市事業の推進がどのように行 われてきたかを把握すること、また、今後、文化芸術創造都市事業を推進しようとする自治体に対し、先行した活動・ 取組の情報提供を行うことを目的に実施した。 対象:平成 27 年 11 月末時点で CCNJ に参加している 64 自治体(広域自治体を含む) 実施時期:平成 28 年 1 月 4 日から 1 月 31 日 回収状況:計 64 自治体に配布し、43 自治体から有効回答があり、有効回収率は 67.2%となった 分析結果:添付資料 国内の取組に関する情報収集(P34 〜 P53)参照 16 会議、研修の実施 第 3 章 会議、研修の実施 (1)創造都市ネットワーク日本 世界創造都市シンポジウム in 金沢 日程:平成27年 5 月 25 日 ( 月 )15 時00分~17時00分 会場:ホテル日航金沢 4階 鶴の間 主催:文化庁、創造都市ネットワーク日本 共催:金沢市 後援:北國新聞社 テーマ:文化芸術を生かした都市の再興と社会課題の解決 世界の創造都市による取組み紹介とセッション 参加者:約 120 名 登壇者: マッテオ・レポレ氏 ( ボローニャ市経済発展・シティプロモーション・観光・国際関係およびデジタルアジェンダ担当 市長代理 ) マリー = ジョゼ・ラクロワ ( モントリオール市デザイン・コミッショナー、都市経済計画部デザイン担当局長 ) 市川昭男氏(山形市長) 篠田昭氏(新潟市長) 酒井隆明氏(篠山市長) ファシリテーター:佐々木雅幸氏(創造都市ネットワーク日本顧問、文化庁文化芸術創造都市振興室長、同志社 大学経済学部特別客員教授) 目的:金沢で開催されるユネスコ創造都市ネットワーク会議金沢 2015 に併せて、創造都市ネットワーク日本の加 盟都市が集い文化芸術を生かした都市の再興と社会課題の解決をテーマに、UNESCO 創造都市の経験から学ぶ とともに日本国内の各都市の知見や経験の共有をはかることを目的として開催された。 主催者挨拶 文化庁長官官房審議官 磯谷桂介氏 この5月に策定された、第4次「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の中に、成熟社会に適した新たな社 会モデルを構築することを目指し、 「文化芸術立国」を創出することを明記しており、本シンポジウムがまさに時宜を 得たものであると考えている。その上で、地域の文化振興のエンジンとして、 「文化芸術創造都市」の取組を推進し、 支援をしていくと表明した。 開催者挨拶 金沢市長 山野之義氏 歓迎の言葉の後、翌日から開催されるユネスコ創造都市ネットワーク会議金沢 2015 について、知見を共有し、 交流を深めていくことで、都市が持続発展的に成長をしていくことができるであろうと、抱負と期待を述べた。 マッテオ・レポレ氏 深い歴史を持つボローニャは、ボローニャ大学の総合芸術学部(DAMS)をはじめとした、教育・研究機関が 集積された若い文化の中心地でもある。また、様々な分野の音楽活動や、マーケットが活発に行なわれている。国 際的な取組事例を2つ紹介しながら、ボローニャにとってそれら文化や文化的な遺産が重要であり、創造性と文化 の振興が将来戦略の要であると述べ、ユネスコのネットワークの一員であることと、都市間連携の重要性を語った。 マリージョゼ・ラクロワ氏 モントリオール市の創造都市政策としての取組は、1991 年に遡り、それらによって、世界的にもよく知られたデザ イン都市となった。クリエイティブシティとしての挑戦を様々な事例と共に紹介し、それらが生活の質を高め、デザイ ン都市としての価値を高めていると語った。最後にクリエイティブ産業の発展には、他の都市と交流を深めることが 17 会議、研修の実施 重要であると述べ、ネットワークの価値を強調した。 市川昭男氏 山形は市民の生活に映像が根付いてきた土地であり、その中で生まれた山形国際ドキュメンタリー映画祭は今年 で14回目を迎え、この分野での世界最高の映画祭のひとつである。山形から生まれた多彩な映画や、映像に関す る積極的な市民活動、震災後における取組を紹介し、映像が重要な歴史・文化資源の一つであると語った。最後 に、山形市は映像による力を基に創造都市を推進し、ユネスコ創造都市ネットワーク加盟を目指すと宣言した。 篠田昭氏 新潟市がマンガや踊り、舞台芸術など文化芸術が根付いた土地であり、 「水と土の芸術祭」等の取組が認められ、 「東アジア文化都市」に選定されたことを紹介。また農業と食が、新潟市の宝であり、それに基づいた文化や産業 をさらに高めるための取組の数々を示し、さらなる取組と世界に向けた発信、貢献のために、ガストロノミー分野で のユネスコ創造都市ネットワーク加盟を目指すと宣言した。その上で、2020 年開催の東京オリンピック・パラリンピッ クに向けて文化プログラムへの抱負を語った。 酒井隆明氏 篠山の特産、京文化の影響を受けた祭等を紹介。「農、美しい町づくり、文化の薫り、自然」を柱に、景観、 農地を継承していくために様々な条例を施行していることを紹介した。そして今後「食と器」に力を入れ、「食と器の 国際ビエンナーレ」を行なっていくといった抱負を述べた。最後にユネスコが本年より申請の基準に「人口10万人 以上の都市」を加えたことに触れ、小さなまちでも認定が認められるべきではないか、様々な価値を認めあうのが 筋ではないのかと訴えた。 全ての発表が終了したのち、ファシリテーターに佐々木雅幸氏を迎え、ディスカッションが行なわれた。 まず、人材育成をテーマに質疑が行なわれ、レポレ氏から、ボローニャにおける民間と政府の恊働による起業の 支援プログラムによって、物資、ネットワーク作りのサポートを行なっている事を述べた。また、子どもたちが企業家 精神を養うためのプログラムを紹介。若い人にチャンスを与える重要性を語った。 ついで、 ラクロワ氏より、 モントリオールが世界に誇る 「シルクドソレイユ」の運営についても絡めながら、 若いアーティ スト、建築家に対してマーケットを提供するプログラムに触れ、市が責任をもって、デザインの領域を守っていくとい う決意を述べた。 次に新潟市より文化支援に対する市民の理解、支持の形成方法、現状についての質問があった。レポレ氏からは、 まず市民の気付きが大事であるということ、戦略を作り市民の合意を得て、環境を作っていくというプロセスを示した。 ラクロワ氏からは教育や、市民が楽しみ、関心を持つことの重要性を語り、様々なサポートが行なわれているモント リオールにおける現状を紹介した。 最後に、認定を目指す国内3都市に対するアドバイスが求められた。レポレ氏からは、まず都市の戦略、将来像 をしっかりと示すことが重要であると提言、山形市と新潟市へそれぞれ助言した。ラクロワ氏は、篠山市の戦略や3 都市の地方政府のバックアップ力を評価した上で、市民の継続的な活動の重要性を述べた。最後に、ネットワーク 加盟は遺産ではなく、継続する長期的なプロジェクトであり、都市として持続可能な発展をどう目指すのか、申請書 類の中で示していくということが重要であると強調した。 佐々木氏から、レポレ氏とラクロワ氏への感謝の意を述べ、閉会した。 18 会議、研修の実施 2)ユネスコ創造都市ネットワーク金沢会議 2015 モニター聴講 日程:平成 27 年 5 月 26 日(火) 、27 日(水) 会場:石川県立音楽堂地下1階 交流ホール CCNJ 加盟団体および会員向けにユネスコ創造都市ネットワーク金沢会議 2015 のプログラムの聴講を可能とし、 創造都市の世界的な潮流の学びの場を提供することを趣旨として開催された。 両日にわたり、開会式と佐々木雅幸氏による基調講演、及び、全体会議と市長ラウンドテーブルのモニター聴講が 行われた。 (2)創造農村ワークショップ in 十日町 日程:平成27年 8 月 4 日 ( 火 )、5 日 ( 水 ) 会場:十日町市当間高原リゾート ベルナティオ(水辺のホール) 主催:文化庁、創造都市ネットワーク日本 共催:十日町市 テーマ: 「芸術祭と地域再生」 参加者:約 80 名 1)講演「まちとアートの結びつき」 講師:北川フラム氏(大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ総合ディレクター) 逢坂恵理子氏(横浜美術館館長、横浜トリエンナーレ組織委員会委員) 司会:佐々木雅幸氏(創造都市ネットワーク日本顧問、文化庁文化芸術創造都市振興室長、同志社大学経済学 部特別客員教授) 佐々木雅幸氏によって、 「創造農村ワークショップ」の趣旨や今までの経緯が説明された後、講師による講演が おこなわれた。 北川フラム氏 第 6 回目を迎えた「大地の芸術祭 2015」の速報を交えた、臨場感溢れる発表となった。過去の開催も含めた 個々の作品を紹介しつつ、初回は地域からの反発がありながらも、集落を一つの単位とし、地域の特色を明らかに する取組を進めることで、地域住民の意識が変わってきた様子が語られた。その中で、サポーターの国際化が進ん でいること、地域間での国際交流が行なわれている様子が紹介され、 「国際交流のリアルな単位」とその重要性を 強調した。また、随所で、サポート体制の重要さと難しさ、特に国内のサポーターの高齢化といった課題が語られた。 最後に今回展の見どころを写真を使って紹介し、講演を締めくくった。 逢坂恵理子氏 横浜トリエンナーレが始まった経緯や、運営体制の変革、1回から5回までのテーマと作品を紹介し、開催年ご とに主な会場や、総合ディレクターが変わることが特色として挙げられた。横浜トリエンナーレの運営は、その都度 試行錯誤の連続であると語り、アーティストと場を創り上げていく為には芸術祭運営側の情熱やスキルが重要である と強調した。そして、 さまざまな気付き、 きっかけを与えるといったアートの可能性を挙げて、横浜トリエンナーレが「若 い人たちに向けて次の世代をどうやって切り開いていくか、何か一つのきっかけになればいい」と語った。今後の運 営を担う人材を育成し、民間と公共の力を組み合わせることができれば、芸術を通じた取組が地域に誇りを維持し ていけるシステムとなりうると期待を述べた。 それぞれの発表後に佐々木氏より、取組の継続をテーマとした質疑が行なわれた。また、創造都市ネットワーク として、様々な課題解決と共有の為の「現代芸術祭部会」の設立が提案され、議論していくこととなった。最後に 現代の困難な課題解決のヒントが農村にあるのではと述べ、ワークショップ1日目を締めくくった。 19 会議、研修の実施 2)パネルディスカッション「芸術祭と地域再生」継続的な芸術活動による地域体制について考える ファシリテーター:太下義之氏 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・ 文化政策センター 主席研究員/センター長) 事例発表:嘉原 妙氏(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー) 関口芳史氏(十日町市長) 上村憲司氏(津南町長) 嘉原妙氏 前職である NPO 法人 BEPPU PROJECT での活動から、「国東半島芸術祭」の取組をメインに発表を行なった。 国東半島に古来より続く、風習や宗教観を見据え、地域住民との協同、対話を大事にした芸術祭の活動を丁寧に 紹介。嘉原氏自身や地域住民の想い、国東半島芸術祭の空気が視聴者に伝わる発表となった。 関口芳史氏 地形・気候、 里山文化、 そして過疎という越後妻有の特徴と課題を紹介。これらを活用しチャレンジしているのが 「大 地の芸術祭」であると述べ、アート作品と集落や自然との関わり、芸術祭から生まれたプロジェクトの紹介を行なった。 観光客増や経済的な効果、集落での再生事例など、芸術祭が地域再生にもたらす効果を事例とともにに示し、「新 たなものをつくりだす」と今後の抱負を語った。発表の後、太下氏よりこの「大地の芸術祭」が、世界に無いオリ ジナルな形で発展を遂げているといった解説がなされた。 上村憲司氏 同じく「大地の芸術祭」について、初回開催時の苦労や原点を振り返り、また未来への展望を語った。最後に 津南町の小学生が作った歌を披露し、自身が生まれ育った地域を誇りに感じる子ども達が育っていることが、何よ り芸術祭を通したまちづくりで嬉しい成果であると述べ、事例発表を締めくくった。 ディスカッション ファシリテーターの太下氏より東京オリンピック、パラリンピックでの文化プログラムについての説明がなされ、 2020 年への展望について議論された。嘉原氏からは、2020 年のみに焦点をあてる事に対して疑問が呈され、人 材育成や体制作りには現場と行政が同じテーブルで仕組みづくりを考える機会が必要であると訴えた。太下氏から も、これを一過性ではなく、未来に継承する「レガシー(legacy)」とするべきだといった問題提起があった。 次に関口市長より、混雑した東京に泊まらずともこの越後妻有で滞在すればいいと語り、自然とうまく関わりなが ら、持続可能な生き方をテーマとした「大地の芸術祭」をアピールしていく決意を示した。それを受け、太下氏より、 地域に滞在し東京も訪れるといった発想の転換が、豊かな国土形成に繋がって行くと展望を述べた。そして上村町 長からも、2020 年に向け、既に進みはじめている構想が語られた。 最後に人材育成と体制をテーマに議題が進み、嘉原氏より「現場発の仕組み作り」といったアイデアが出された。 関口市長からは、縁のある人たちで地域の応援団を作る試みや、アートを生かした U ターン、I ターン施策につい て紹介。上村町長からは過疎地域ならではの人材不足と、それゆえに地元での参画者づくりの重要性と試みについ て語られた。最後に太下氏より、東京で人材を育成し、 「地域へ還元する」というアイデアが出され、ディスカッショ ンは終了した。 3)特別講演「地域・アート・内発的」 講師 赤坂憲雄氏(学習院大学文学部教授、福島県立博物館館長) 東京オリンピックを契機として、現代社会は成長から成熟へと価値観の転換に向けて動くべきである。だからこそ 20 会議、研修の実施 アートがテーマになると見解を述べた。日本の地域社会というのは、歴史的にみても大変多様で文化的に豊かであ ると、その例をいくつか示した上で、東京ばかりを見るのではなく、それらの地域文化を糧に明日をつくっていくこと ができると訴えた。 続いて、肘折温泉の事例を挙げ、アートプロジェクトが地域を再生していく過程を紹介、 「人と人、人と地域との つながりが新しいことをつくり出す」 、そのことが芸術祭の効用であると、見解を示した。講演テーマでもある、内発 的な力の重要性を挙げ、福島でのプロジェクトを紹介。厳しい状況にこそ発揮するのがアートの力だと感じていると 語り、これからの社会に、文化・芸術というものが圧倒的な力になるだろうと、期待を込めた。 (3)創造都市政策セミナー in 大分 日程:平成27年 9 月 9 日 ( 水 )、10 日 ( 木 ) 会場:大分オアシスタワーホテル 3F 紅梅の間 主催:文化庁、創造都市ネットワーク日本 共催:大分県、大分市 テーマ: 「創造都市と文化施設」 参加者:約 120 名 1)第一部 講演「創造都市と文化施設 〜英国の事例〜」 講師:湯浅真奈美氏(ブリティッシュ・カウンシル アーツ部長) ブリティッシュ・カウンシルの組織や活動について簡単に紹介。英国の経済的、社会的な背景を説明した上で、 厳しい予算の中でも「全ての国民が文化芸術に触れる機会を担保すること」が目標であると語り、活動ビジョンを 現したアニメーション紹介した。その後、イギリス各地での事例を、豊富なデータと映像を使いながら、その活動内 容をリアルに伝えた。最後にロンドンオリンピックでの文化プログラムについて触れ、観光や経済的な効果が認めら れ、以後も文化芸術やクリエイティブ産業によって英国経済が伸びていると述べて、講演を締めくくった。 2)第二部 パネルディスカッション「創造都市と文化施設」 ファシリテーター:吉本光宏氏(ニッセイ基礎研究所 研究理事) パネリスト:秋元雄史氏(金沢 21 世紀美術館 館長) 衛紀生氏(可児市文化創造センター 館長) 山出淳也氏(NPO 法人 BEPPU PROJECT 代表理事) 秋元雄史氏 増え続ける 21 世紀美術館の来館者数をグラフで示し、美術館という枠を越えて広く観光施設としてのポテンシャ ルを持っている。アイデア次第で人々を惹きつける文化施設をつくることができると、見解を示した。美術館のミッショ ンと事業の枠組みを説明し、 「教育普及チーム」に焦点をあて、いくつかのプログラムを紹介した。人気が高まる中 でも地域に根ざした事業を展開していくと語り、発表を締めくくった。 衛紀生氏 地域の劇場運営とはどうあるべきか、文化という枠にとどまらず、健全な地域社会をつくるための拠点施設である べきだという見解を示し、福祉、教育と幅広い分野にまたがる「まち元気プロジェクト」の事例を紹介。それらが 地域や子どもたちに影響を与えていると語り、地域に根ざした拠点の在り方を示した。 山出淳也氏 自身が代表を務める「BEPPU PROJECT」における多彩な活動を紹介。小さな拠点から、別府のまち、そして 21 会議、研修の実施 大分県内の他地域に繋がる事業展開を語り、緩やかな連携、ネットワークを図っていくことで、地域のクリエイティ ブに携わる人数を増やしていきたいといった展望を述べ、発表を締めくくった。 ディスカッション ファシリテーターの吉本氏が、 「文化や芸術を通じて、地域に働きかけ、より活力のある社会をつくり出す」とい う視点が全ての発表に共通していると述べ、そこに焦点をあてたディスカッションが行なわれた。 衛氏より可児市文化創造センター ala が可児の市民生活に根付き、人口増加にも繋がっていると語り、山出氏は 集客人数の増加だけではない価値の在り方について言及した。次に、創造の場であるという目的と、そこで生まれて くる観光や経済効果という結果の関係性をテーマに、模索しながらも先端を走り続ける 21 世紀美術館の取組が紹 介された。さらに、 山出氏からは、 アートが「地域の課題解決する」のではなく、問題を提起しているのであり、 その「気 付き」 によって活性化した我々市民が、 社会を変えていくのであると持論を展開した。 最後に、 吉本氏より全国に広がっ ているこのような創造都市の取組が、2020 年を一つの契機として新しい展開にチャレンジしてほしいとの期待を述 べて、ディスカッションを終了した。 3)第三部 ワークショップ「地域における文化プログラムの実施に向けて」 参加者を4グループにわけ、文化審議会文化政策部会委員による「第4次文化芸術の振興に関する基本的な方針」 の説明及び、セミナー参加者との意見交換がおこなわれた。 (4)平成 27 年度クリエイティブ cafe(文化庁文化芸術創造都市振興室) 1)目的 コンセプト 関西でまちづくり、文化や産業などの様々な分野で、悩みを抱えながら、現場で日々奮闘している人た ちが集まり、自由に語り、聴くことを丁寧に積み重ね、新たな創造へつなげるプラットフォームを形成し、課題の解 決を目指すものとした。 期待される成果と目標 市民、行政・NPO、学生等多様な立場で文化、芸術、産業等にかかわる “ 人 ” と “ 人 ” とが交流し、対等な立場で議論することにより、創造的な課題解決のできるアイディアの醸成と人材の育成につなげ ることを成果目標とした。 2)開催概要 開催テーマ 今年度は、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムの周知をはかるとともに、 文化振興に取り組まれている団体や自治体との連携企画とした。 3)事業報告 第8回 「フランスの文化政策との出会い」 日程:平成27年6月27日(月)16時30分~18時30分 会場:アンスティチュ・フランセ関西 ゲスト:シャルランリ・ブロソー氏(在京都フランス総領事、アンスティチュ・フランセ関西館長) 共催:アンスティチュ・フランセ関西 (フェットラッドミュージックとマルシェを同時開催) 参加人数:42名 アンスティチュ・フランセ関西のミッションはフランス語を教授することと、文化の伝搬や交流をすること。京都グ ラフィーへの協力やニュイブランシュの開催を通して、フランス文化を知ってもらう場を提供されている。アーティス 22 会議、研修の実施 ト・イン・レジデンスであるヴィラ九条山は、昨年リニューアルし、招聘アーティストの分野を文学や舞台演出に広げ、 工芸職人や、日本人アーティストとの共同プログラムを受け入れるため、パリと京都で新しいアートや産業を作ってい くことを期待している。フランスはこれまで、フランス文化を世界に広めるやり方をしてきたが、現在は交流が大事と 思っており、日本もオリンピック・パラリンピックを通して、世界中の人と交流や対話を進めていくことが大切との話 であった。 第9回「神山発!日本の田舎をステキに変える~アートと IT による未来の働き方」 日程:平成27年7月23日(木)16時00分~19時30分 会場:京都府職員研修・研究支援センター、京都府立大学稲盛記念会館たまごカフェ ゲスト:大南信也氏(NPO 法人グリーンバレー理事長) 共催:京都府立大学京都政策研究センター(連続自治体特別企画セミナーとのタイアップ) 参加人数:53名 神山町は NPO 法人グリーンバレーを中心に、アーティストの滞在満足度を上げることに力点を置いた住民参加 のアートによるまちづくりや、町の将来に必要な移住者を指名して誘致するワークインレジデンス、サテライトオフィス の開設誘致に取り組んできた。その結果、商店街に活気が戻り、町外に出た若者が帰りやすい IT 企業など魅力的 な雇用環境が創出されている。過疎は避けることは出来ないが、人口構成の健全化や仕事を持った人材を誘致す るなど、人の質に着目し、地域がどうなっていきたいのかという目標を中心に据えて、課題解決にあたること。神山 は遍路文化や外国人のホームステイを 13 年間受け入れてきたため、移住者への垣根が低かったが、移住者優遇 より地域が移住者を受け入れる環境になるかどうかが重要との話であった。 第10回「アーティスト・イン・レジデンス、OPEN」 日程:平成27年9月25日(金)18時00分~20時00分 会場:京都芸術センター ゲスト:ディラン・シェリダン氏/ローラ・ハインドマーシュ氏(オーストラリア在住、サウンド/ビジュアルアーティスト) ロサム・プルデンシャド・ジュニア氏/ミア・カバルフィン氏(フィリピン在住、ダンサー) 共催:京都芸術センター 参加人数:36名 2組のアーティストに、レジデンス事業に参加した目的や成果について語っていただいた。ディランとローラは、メ ルボルン大学の Asialink 共同プログラムを活用したレジデンス事業に 9 月から参加し始めたところで、「序破急」の 理解と実践を目的にしている。京都を選択した理由は、滞在経験はないものの、古いモノと新しいモノを掛け合わせ るには、京都が良いと思ったからであった。また、ロサムとミアは 2012 年のレジデンス事業参加したダンサーであり、 同事業をきっかけに、デュオとして活動することを決意したとの話であった。レジデンス事業の効果の1つとして、滞 在アーティストを通して世界各国のレジデンスとつながりが生まれるとの話もあった。 第11回「クリエイティブ産業の新たな展開」 日程:平成27年11月2日(月)16時00分~18時30分 会場:横浜ランドマークタワー BUKATSUDO ゲスト:広瀬郁氏(横浜市創造的産業振興モデル事業 コーディネーター) 浜野慶一氏(株式会社浜野製作所 代表取締役) 小林佳菜氏(経済産業省 商務情報政策局生活文化創造産業課 統括係長) 共催:横浜市文化観光局 23 会議、研修の実施 参加人数:36名 横浜市では、中小企業の高い技術力とクリエイターとのコラボレーションにより新たな価値を生み出しながら、ク リエイターの活躍の場を創出する創造的産業振興モデル事業を平成 26 年度から実施し、顧客がプラモデルを作る ように組み立てる照明器具や人造サファイアの指輪などが試作されている。また、浜野製作所は従来の金属加工業 に加え、3D プリンターなどのデジタル工作機器を導入し、設計も含めた顧客企業の商品開発・加工を町工場の職 人が支援する取組をしているとの話であった。これら日本の優れた地方産品や民間のビジネスの海外需要開拓・拡 大を後押しするため、経済産業省では、クールジャパン政策や The Wonder 500 事業など、デザインの力を活用 した地方創生やイノベーションに向けた政策を展開しているとの話であった。 第12回「アートが農村をステキに変えた」 日程:平成27年12月13日(日)14時30分~16時30分 会場:大庄屋上野家 ゲスト:片木孝治氏(京都精華大学 非常勤講師、株式会社応用芸術研究所 代表取締役所長) 新山直広氏(合同会社 TSUGI 代表社員 / デザインディレクター) 共催:舞鶴市、公益財団法人舞鶴文化事業団 参加人数:47名 河和田アートキャンプが、福井県鯖江市河田地区で、2004 年の豪雨災害復興支援をきっかけに、社会にアー トが貢献できることを切り口に取り組まれている。キャンプの活動主体は大学生であり、約 1 ヶ月の滞在生活を中心 に、単なるアート作品の展示ではなく、農業や漆器産業など地域生活と密着した創作を、住民と一緒に考えて進め られている。また、6、7 年目頃には、地域の夏祭りの日程をファイナルイベントの日程に変更するなど、地域住民 の目線や関わり方が変わり、住民が自主的に行う事業を支援する仕組みができたり、I ターン移住者が約 14 人に 増え、デザインユニットの起業をしたりと活動が広がっている。住民がアートに触れることで、自分たちのアイディア を出したり閃いたり、できるという自信に慣れていったのではないかとの話であった。 第13回「豊岡の挑戦」 日時:平成28年3月10日(木)13時30分~16時30分 会場:城崎国際アートセンター ゲスト:中貝宗治氏(豊岡市長) 平田オリザ氏(劇作家・演出家、豊岡市芸術文化参与) 共催:豊岡市、城崎国際アートセンター 参加人数:48名 豊岡市はコウノトリをシンボルとして、「小さな世界都市」を目指した戦略的なまちづくりを展開している。コウノト リも生きられる町はアーティストも生きられる寛容な町であり、移住者を受け入れるが、その視点は市民、特に子ど もに向いている。ローカルであることはグローバル化の中で輝くチャンスとして、ジオパークやコウノトリなどのふるさ との魅力・面白さを市民や子どもたちに感じてもらうと同時に、舞台芸術に特化したレジデンスである城崎国際アー トセンターは、アーティストが作品制作に訪れ、世界最先端・最高峰のアートを知る場所となる。アートの役割は 多様性を理解させることで、英語や演劇を通した子どもの表現力やコミュニケーション能力向上の教育に力を注ぎ、 大学卒業後に自信を持って豊岡に帰る子どもを増やす狙いがある。世界中から来る人に、豊岡の魅力を誇りを持って、 英語というツールを用いて、豊かな表現力で語る小さな世界都市の市民が育てば、人口は減っても、元気な町は存 続するとの話であった。 24 ウェブサイトの運営 第 4 章 CCNJ ウェブサイトの運営 1)ウェブサイト情報発信内容の充実 CCNJの情報発信力強化のため、ウェブサイト(http://ccn-j/net/ )および CCNJ 公式 Facebook ペー ジ(https://ja-jp.facebook.com/CreativeCityNetworkofJapan/ 以下、Facebook ページ)の運営を行った。 文化芸術創造都市推進事業として実施した世界創造都市シンポジウム(5 月・金沢市)、創造農村ワークショップ(8 月・十日町市)、創造都市政策セミナー(9 月・大分市)および文化庁文化芸術創造都市振興室が主催するクリ エイティブカフェ(年間計 6 回開催)について、昨年度までと同様にウェブサイトおよび Facebook ページにて告知・ 広報を実施し、各セミナーへの集客へとつなげた。2 月の創造都市ネットワーク日本総会(以下、総会)に合わせ て開催する講演会については、試験的にインターネットによる中継を行った。総会にて設置が決定した現代芸術の 国際展部会への参加申し込みについても、同様に告知を行った。また、文化庁から発表された文化芸術創造都市 との関連がある話題について、積極的に発信を行った。(表 1 参照) 表 1 CCNJ ウェブサイトニュースに掲載された文化庁発表内容のお知らせ 掲載日 4 月 26 日 5 月 28 日 7 月 22 日 9 月 30 日 10 月 1 日 10 月 19 日 件名 平成 27 年度「日本遺産(Japan Heritage)」認定が発表されました。 文化庁文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)の閣議決定について 文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想が発表されました。 「地方における文化行政の状況について(平成 25 年度)」が公表されました。 平成 26 年度文化行政調査研究事業報告書が公表されました。 文化庁「文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業」募集開始のお知らせ ウェブサイトには、CCNJ に加盟している自治体名及び自治体以外の団体名を一覧として記載するだけでなく、各 団体の概要や、創造都市に関連する取組概要を画像とともに紹介することができるプロフィールページと、独自の情 報発信機能(ブログ機能)が設けられている。昨年の総会以降に新規加盟した自治体及び自治体以外の団体のプ ロフィールページを同様の様式にて追加設置した。ページの追加を行った団体は、自治体、自治体以外の団体を 含めて、計 23 団体である。 ■自治体(20)※自治体コード順 美唄市、美瑛町、いわき市、富士見市、松戸市、津南町、氷見市、堺市、豊岡市、斑鳩町、岡山市、広島市、 宇部市、松山市、高知市、築上町、熊本市、多良木町、香川県、神奈川県 ■自治体以外の団体(3)50 音順 NPO 法人キッズファン、株式会社ニッセイ基礎研究所、公益社団法人日本オーケストラ連盟 自治体からの情報発信コーナーのコンテンツ充実を図るため、加盟自治体に向けて投稿方法の操作説明の実施、 投稿促進の連絡を行ったところ、平成 26 年度は、年間投稿数は 27 件であったが、本年度は 55 件まで増加した。 2)多言語機能追加 海外への情報発信力強化の一環として、Google 社提供の「ウェブサイト翻訳ツール」を利用して、ウェブサイトに、 ページ自動翻訳機能を 2 月に追加実装した。対応言語は、アラビア語、イタリア語、スペイン語、 ドイツ語、ヒンディー 語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、英語、韓国語、中国語(簡体)、中国語(繁体)の 12 言語である。スマー トフォンからウェブサイトにアクセスした場合も同様に、本機能を利用することができる。 3)今後の課題 2020 年加盟自治体数 170 自治体に向けて、着実に加盟団体数が増えており、平成 28 年度から 29 年度にかけて、 加盟数が 100 自治体を突破することが予想される。文化プログラムの実施に向けて、加盟団体の情報発信もより 積極的に行われていくことに鑑みると、現行のサーバ環境では負荷が高くなりすぎるため、さらなる情報発信力の強 化という側面も含めてウェブサイトの最適化を行うことが求められる。 25 添付資料 26 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) 添付資料 第 1 章 関係 世界創造都市ネットワーク会議(総会) 思います。特に日本の場合には 1000 兆円を超える財政 開催地挨拶 金沢市長 山野之義氏 倒的に不利な条件を背負っていかなければいけないとい 皆さまこんにちは。創造都市ネットワーク日本総会の う、年代による手当の厚さと薄さも、大きな課題になり 開催にあたり、一言ご挨拶いたします。本日はご多用の ところ青柳長官、また佐々木先生はじめ多くの方にお越 しいただき、心から感謝いたします。 創造都市ネットワーク日本が創設されてから丸 3 年に 赤字があり、少子高齢化が始まり、そして我々の世代が 受ける年金等に対して、今の 10 代、20 代の方たちは圧 つつあります。 その際に、以前のように公共投資のようなインパクト による地域おこしではなく、私たちがここで皆さまとも ども、特にこのネットワークが中心になって活動をして なります。現在は 69 自治体、そして 22 の一般団体と個 いる、それぞれの知恵や文化を活性化することによって、 人会員のネットワークに広がりました。このネットワー 地域をさらに維持可能な状況に持っていくという、これ クの皆さま方のお力添えをいただき、去年の 5 月、この が今、最も日本社会の中で必要とされている活動だと考 金沢においてユネスコ創造都市ネットワーク世界会議を えます。 開催しました。27 カ国、61 の都市から、142 名の関係 今日の参加団体の一覧表を見たら、新加入の自治体が 者の方にお越しいただきました。報道の方やさまざまな 今まで加入していた自治体と同じ数ぐらい並んでいるこ スタッフの方を含めると、もっと多くの海外からのお客 とを見ると、いろいろな所でこの活動の必要性や重要性 さまがこの金沢にお越しいただいたことになります。 というものが理解を得て、より大きな運動になりつつあ この間私どもは、皆さま方の力を借りながらずっと準 るのではないかと思います。そういう意味で、このネッ 備に取り組んできました。世界会議の会議期間中も、多 トワークの会議を再び金沢で開き、皆さまと共にさま くの都市から、また多くの人たちからさまざまな刺激を ざまな情報を交換し、知恵を出し合えることを大変嬉し 与えてもらいました。金沢という都市にとっても大変有 く思います。2020 年に向けて、さまざまな行うべきこ 意義な期間であり、創造都市ネットワーク日本としても、 とがありますが、その一つの大きな基盤がこの創造都市 ここにいる皆さま方も含めて、さまざまな学びがあった ネットワーク日本の活動にかかっているので、よろしく のではないか、われわれがこれから進むべき方向が何と お願いいたします。 なく見えてきた気がしています。 その過程をしっかりと踏まえながら、これから取り組 んでいきたいと思い、引き続き皆さま方と、文字通りネッ 創造都市ネットワーク日本顧問 佐々木雅幸氏 トワークを密に強力にしていきながら、進んでいければ 皆さまこんにちは、佐々木です。先ほど山野金沢市長 と思います。 が、現在 CCNJ の加盟自治体は 69 団体と言われたので また、文化庁のご支援のもと、さらなる活動を推進し すが、一昨日、姫路の石見市長にお会いた際に「まだ ていく中で、創造都市の取り組みを進めていければと CCNJ 入っておられないですね」と言うと、「え、そうで 思っています。本日は本当にありがとうございました。 したか」と、 もう入ったつもりでおられた。そこで、 「ちょ うどあなたが入ったら、 70 番目だから」と言いましたら、 「すぐ入るから」となりました。手続きが済めばちょう 文化庁長官 青柳正規氏 ど 70 ということになり、これは昨年目標に立てた数字、 本日は、皆さまご公務でお忙しいところご出席ありが ちょうど 70 団体に到達したので、お互いに喜びたいと とうございます。特に、今年度の CCNJ の代表幹事団体 である、金沢市の山野市長をはじめ、皆さまには心から お礼申し上げます。 昨年5月には、ユネスコ創造都市ネットワーク会議を 思っています。 さて、昨年 5 月に行われたユネスコのネットワーク会 議は素晴らしい会議でしたが、昨年暮れにユネスコは 116 までネットワークの数が増えました。やはり 100 と 開いていただきました。創造都市という運動がいかに世 いう数字を超えるとそれなりの存在感が出てくるので、 界的に重要であるか、特に先進国の間ではどこにも共通 次の総会かその次に、創造都市ネットワーク日本でも した課題があります。つまり、社会保険料の増大や、日 100 を超えるような形に持っていきたいと思っています 本ほどではないにせよ少子高齢化社会の進行、あるいは、 ので、ぜひ皆さん方の周りの自治体にも働き掛けをして ヨーロッパでは難民流入のためにコミュニティの維持を もらいたいと思います。 どうするのかということがあります。そういったさまざ そして昨年の 11 月に、韓国の光州市でアジア文化セ まなことがやがて日本にも影響を及ぼすわけで、そうい ンターの公式オープニングがありました。非常に規模の う意味で CCNJ のネットワークでさまざまな知識や知恵 大きなもので、韓国の総力を挙げてアジア全体の文化的 や活動を共有することが、大変重要になってきていると ハブになるという意気込みで、そのセンターができまし 27 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) た。そこで韓国のユネスコ国家委員会主催の、創造都市 1名、総会の議決にかかる定数 47 名です。以上です。 ネットワークに関するシンポジウムがあり、日本のよう なネットワークの活動は大変意味があるということで、 韓国でも日本に負けないようにやっていきたいので、詳 しいことを知らせてくれと話がありました。ホームペー ジは日本語だからよく分からないということで、私のほ 議長 ありがとうございます。それでは議案の審査に 入ります。 第1号議案、規約の改正について、事務局から説明を 願います。 うで英語に訳したものがあるのでそれを送りましたが、 これからはそういった国際的なプレゼンスも含め広げて いきます。 事務局 第1号議案「規約の改正について」ご説明し ます。 2014 年から横浜市が先陣を切って東アジア文化都市 内容としまして 1 点目は幹事団体の定数の改正を、2 事業も始まり、これも結局のところ、創造都市ネットワー 点目は新たに部会を設置するための所用の改正をお願い ク日本の加盟都市が順番に開催都市をやることになって するものです。 きています。昨年度は新潟市、今年度は奈良市というこ 規約の第8条第4項、幹事団体の定数について、平成 とで、日・中・韓の間で文化都市や創造都市の国際的な 25 年度の総会で改訂しましたが、CCNJ の加盟団体数が 広がりが出てきたので、できるだけ早い時期にアジアに 32 自治体 12 団体から、現在 69 自治体 22 団体に増加し、 広げたいと思います。 これに伴う連絡事項等の調整のため、幹事団体の定数を そして 2020 年以降は、東アジアの東を取って、アジ 増やすものです。 ア文化都市、あるいはアジア創造都市ネットワークとい 第 10 条第 4 号及び第 11 条については、CCNJ の加盟 うような形に広げていきたい。各国間は歴史問題や領土 団体が各々実施している事業の多様化に伴い、個別の分 問題で非常に難しい局面がありますが、都市と都市が互 野に関する情報交換等に特化した部会を設置するための いの交流と平和、そして文化というものを大事にし、大 改正で、部会を設置するためには総会の議決を要するこ きな力強い絆をつくり、そのような絆があって初めて、 と、部会の事務は幹事団体の中から選任することを定め アジアが安定した発展をし、それにより大不況を乗り越 るものです。 えられるということです。つまり、我々は芸術文化で日 本再生を考えているわけですが、アジアでもそういう方 向で平和で安定的な国際関係に持っていくというような 大志を持って、ネットワークを強めてもらいたいと思い ます。今日はありがとうございました。 また、第 11 条を追加することに伴い、元の第 11 条を 第 12 条に変更します。 改正後の全文案については、議案書 ( ※資料参照)に 添付しております。 第1号議案「規約の改正について」は、以上です。 議長 ありがとうございました。それでは、第 1 号議 ー議事ー 司会 それでは議事に入ります。議長の選出ですが、 案について、質疑討論を行います。 第 1 号議案、事務局のほうから説明しましたが、何か 事務局案として金沢市都市政策局長の相川を指名したい 意見・発言ありますか。よろしいですか。それでは採決 と考えています。賛同いただける方は拍手をもって承認 に入ります。本ネットワークの規約において、総会に出 いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 席の構成員の過半数をもって議決をすることになってい (拍手) ます。先ほどの報告を受けたとおり、本日の出席者数は 司会 ありがとうございます。それでは、ここからの 47 名なので、 過半数は 24 名です。採決の方法については、 議事の進行は相川にお願いします。 各団体お一人、あるいは個人の会員のかたに挙手をもっ て行いますので、各団体の方、お一人の挙手をお願いし 議長 議長に指名をいただいた、金沢市の都市政策局 長の相川です。議事の円滑な進行について、皆さまのご 協力をいただきたいと思います。 最初に、本日の会員の出席数について事務局から報告 ます。 それでは第 1 号議案について採決を行います。第 1 号 議案、規約の改正について、賛成の方の挙手をお願いし ます。 します。 (挙手) ありがとうございます。賛成多数なので、第 1 号議案 事務局 事務局を担当している金沢市企画調整課の橋 本です。本日の会議の自治体、団体、個人会員の出席者 数について報告します。 自治体 40 団体、自治体以外の団体6団体、個人会員 28 は承認とします。 引き続いて第 2 号議案に入ります。第 2 号議案ですが、 現代芸術の国際展部会設置についての議案になりますの で、事務局から説明をお願いします。 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) 事務局 第2号議案、現代芸術の国際展部会設置につ いてご説明します。 町市で開催いたしました。テーマは「芸術祭と地域再生」 です。 各地で開催されている現代芸術の国際展の課題やノウ 初日の4日は「まちとアートの結びつき」をテーマに、 ハウを担当者間で共有することにより各国際展の継続開 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」総合 催を目指し、ひいては文化芸術創造都市の普及及び発展 ディレクターの北川様、横浜美術館館長の逢坂様から講 並びに我が国の多様な文化の国際発信にも寄与すること 演をいただきました。 を目的とします。 2日目の5日には、三菱UFJリサーチ&コンサル 部会の参加団体は、原則として現代芸術の国際展の開 ティング芸術・文化政策センター主席研究員/センター 催に携わっている、または携わる予定の自治体や団体と 長の太下様をファシリテーターとし、アーツカウンシル し、講演・会議・視察等の開催など、部会の参加団体の 東京プログラムオフィサーの嘉原様、上村津南町長、関 連携・交流に関すること、現代芸術の国際展の担い手の 口十日町市長にパネリストとして登壇していただき「芸 研修や人材育成に関すること、その他、部会の参加団体 術祭と地域再生」をテーマとしたパネルディスカッショ への事前ヒアリング等により把握した課題等の共有を行 ン及び、学習院大学の赤坂教授による特別講演を実施い うものです。 たしました。 部会の要綱案については、議案書の最後(※※資料参 照)に添付しております。 両日とも、午後から「大地の芸術祭」の現地視察を実 施しました。 第2号議案「現代芸術の国際展部会の設置について」 は、以上です。 9月9日に、創造都市政策セミナーを大分市で開催い たしました。テーマは「創造都市と文化施設」です。 議長 ありがとうございます。それでは第 2 号議案現 基調講演として、ブリティッシュ・カウンシルアーツ 代芸術の国際展部会設置について、同様に質疑討論を行 の湯浅様にご講演をいただき、金沢 21 世紀美術館の秋 います。よろしいですか。それでは意見がないようなの 元館長、可児市文化創造センターの衛館長、ベッププロ で、第 2 号議案、現代芸術の国際展部会設置についての ジェクトの山出代表理事からそれぞれの取り組みについ 採決を行います。先ほどと同じように議案に賛成の方の て事例発表をいただき、ニッセイ基礎研究所 研究理事 挙手をお願いします。 の吉本様をモデレーターとしたパネルディスカッション (挙手) ありがとうございます。賛成多数なので、第 2 号議案、 現代芸術の国際展部会の設置については、承認とします。 続いて、第 3 号議案は平成 27 年度事業報告について、 を実施いたしました。 その後、ワークショップ「地域における文化プログラ ムの実施に向けて」を実施しました。 また、翌 10 日には、現地視察として、大分市内でお 第 4 号議案は平成 28 年度の事業計画について、一括し おいたトイレンナーレ、大分県立美術館を視察した後、 て審議をしたいと思います。それでは、それぞれの議案 別府市内へ移動し、鉄輪地区のレジデンス施設や混浴温 について事務局から説明を願います。 泉世界「アートゲートクルーズ」の視察を行いました。 事務局 第3号議案、平成 27 年度事業報告について ご説明します。 平成 27 年5月 25 日に、創造都市ネットワーク日本 世界創造都市シンポジウムを金沢市で開催しました。 テーマは「文化芸術を生かした都市の再興と社会課題の 解決」です。 佐々木顧問をモデレーターに、翌日から開催されるユ ネスコ創造都市ネットワーク会議で来日されたイタリア のボローニャ市、カナダのモントリオール市の担当者、 事務局 引き続き、第 4 号議案「平成 28 年度事業計 画について」ご説明いたします。 創造農村ワークショップを、平成 28 年 8 月に岡山県 真庭市で真庭市と共催で開催いたします。 創造都市政策セミナーを、平成 28 年 10 月に高松市で 高松市及び香川県と共催で開催いたします。 ネットワーク会議、総会になりますが、平成 29 年 1 月又は 2 月に新潟市で開催いたします。 仮称となりますが、現代芸術の国際展部会設立ミー 国内からは、市川山形市長、篠田新潟市長、酒井篠山市 ティングを平成 28 年 10 月頃に名古屋市で名古屋市にご 長にパネリストとして登壇していただき、パネルディス 協力をいただき開催いたします。 カッションを実施いたしました。 併せて、26 日・27 日には、ユネスコ会議のモニター 聴講を実施しました。 また、これらの会合に加え、規約第4条に掲げる各事 業を必要に応じて実施する他、10 月に開催されるスポー ツ・文化・ワールド・フォーラムにおける文化プログラ ムのキックオフにあわせ、首長サミットなどの会議の開 8月4日・5日には、創造農村ワークショップを十日 催を検討いたします。 29 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) 第 4 号議案「平成 28 年度事業計画について」は以上 です。 認となりました。皆さんのご協力ありがとうございまし た。 引き続いて報告事項に移ります。報告事項、CCNJ の 議長 それでは説明した議案について、質疑討論があ れば受けたいと思います。発言がある場合にスタッフが ロゴマークの積極活用について事務局から説明を願いま す。 マイクをお持ちします。よろしいですか。それでは、採 決を行います。 事務局 報告事項、CCNJ ロゴマークの積極活用につ まず、第 3 号議案、平成 27 年度の事業報告について いてご説明します。今年度、CCNJ に加盟している自治 採決を行います。議案に賛成の方の挙手をお願いします。 体から、その自治体が実施する事業に対して名義後援を (挙手) していただきたいという依頼がありました。その自治体 ありがとうございます。賛成多数なので、第 3 号議案 の意図は、当該自治体が CCNJ の一員として文化芸術活 は承認とします。 動に積極的に取り組んでいることをアピールしたいとい 引き続いて第 4 号議案ですが、平成 28 年度事業計画 う趣旨でした。幹事団体の中で名義後援について検討し について採決を行います。議案に賛成の方の挙手をお願 た結果、任意の集合体であるこの CCNJ が講演の主体と いします。 なり得るかという責任の所在、事務手続き等の負担等を (挙手) ありがとうございます。賛成多数なので、第 4 号議案、 平成 28 年度事業計画については承認とします。 続いて第 5 号議案に移ります。第 5 号議案、次期幹事 団体改選について、事務局から説明願います。 考慮し、名義後援というものは行わないという結論に至 りました。 代わりに、この CCNJ の設立当時から使用しているロ ゴマークを積極的に活用していただくことで、CCNJ の 一員として文化芸術活動に積極的に取り組んでいること のアピールにつなげていただければと考えています。 事務局 第5号議案「次期幹事団体の改選について」 ご説明します。 規約の第 8 条第 2 項により、幹事団体は本ネットワー マークに込めた意図等については議案書に記載のとお りです。報告事項 CCNJ ロゴマークの積極的活用につい ては以上です。 (※※※資料参考) クに参加する基礎自治体から選出することとしておりま す。定数については、第 1 号議案にて改正を議決いただ きましたが、7 から 12 程度となっております。 平成 28 年 3 月 31 日をもって現幹事の任期が満了する ことから、昨年 10 月 1 日の時点で対象となる基礎自治 議長 ありがとうございました。それぞれのネット ワークを生かし連携して、それぞれの会議やセミナー等 が開催できればと思っています。 引き続いて、次期の幹事団体を代表して、本日篠田新 体に立候補の希望調査を実施しました。その結果を基に、 潟市長にご挨拶をいただきたいと思いますので、よろし 幹事団体にて団体数などを検証し、議案として提出する くお願いします。 ものです。 五十音順に、金沢市、可児市、京都市、神戸市、篠山市、 札幌市、鶴岡市、新潟市、八戸市、浜松市、東川町、横 新潟市長 篠田 昭氏 こんにちは。新潟市長の篠田です。このたび、幹事団 浜市の 12 自治体を幹事団体とし、また、代表を新潟市、 体の代表という役を引き受けることになりました。あり 任期を平成 28 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで がとうございます。金沢市の後なので大変荷が重いので とするものです。 すが、われわれは金沢市とまた違った、水と土の暮らし 第5号議案「次期幹事団体の改選について」は以上で す。 文化というものがあるまちだと思っています。新潟市は 日本一の大河である信濃川、それに次ぐ水量を持つ阿賀 野川という、二つの母なる川から育てられています。本 議長 ありがとうございます。それでは第 5 号議案、 州日本海側最大の拠点港新潟も、そしてそれを取り巻く 次期幹事団体の改選について、質疑討論を行います。意 日本一の美田地帯も、この日本一大量の水と土から生ま 見のある方はいらっしゃいますか。よろしいですか。そ れた所だと思っています。 れでは第 5 号議案、次期幹事団体の改選について採決を 行います。賛成の方の挙手をお願いします。 (挙手) ありがとうございます。賛成多数なので、第 5 号議案、 次期幹事団体の改選については、承認とします。 本総会の議案については、議案第 5 号までで全てが承 30 昨年は東アジア文化都市に選定いただいて、文化庁の 支援のもと、本当に素晴らしい活動を行うことができま した。パートナー都市、中国の青島市、韓国の清州市と 1 年間さまざまな交流をしましたが、何よりもありがた かったのは、その 1 年の中で日本と中国、韓国の国同士 の関係も大きく改善されたことでした。 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) 新潟は、今年を日・中・韓の大交流年、また、再びの 司会 以上をもちまして、平成 27 年度創造都市ネッ 幕開けと捉えて、このネットワークを継続して活動して トワーク日本総会を終了します。ありがとうございまし いきたいと思っています。 た。 また、その前の年の横浜市、今年の奈良市、来年の京 都市ともネットワークをさらに積み重ねていき、いずれ は東アジアの東を取って、アジア文化都市ネットワーク ー ネ ッ ト ワ ー ク 記 念 講 演 に つ い て は、WEB(http:// ccn-j.net/activity/) 掲載ー という形に発展すれば大変ありがたいと思いますので、 皆様方にさまざまなアドバイスをいただき、しっかり努 めていきたいと思います。よろしくお願いします。あり がとうございました。 議長 ありがとうございました。またさまざまな役目 をお願いすることになるかと思いますが、よろしくお願 いします。 以上をもちまして、全ての審議を終了します。皆さま には、円滑な運営についてご協力をいただきありがとう ございました。 ここからは司会にマイクを戻します。よろしくお願い します。 司会 ありがとうございました。せっかくの機会です ので、意見や報告等がございましたら挙手にて発言をお 願いします。 質問者 先ほど報告にあった、CCNJ ロゴマークの積 極的活用について、この使用にあたっての条件等があっ たら教えていただきたいのと、使用の際に報告が必要で あるかどうかということが 1 点です。もう 1 点が、現代 美術の国際展ですが、現代美術のカテゴリの定義付けが もし決まっていれば、どの辺りのことを指すのか教えて いただきたいです。 事務局 まず 1 点目のロゴマークの件ですが、報告事 項のページにあります、文化芸術創造都市ネットワーク 日本 ( 仮称 ) の在り方に関する調査研究が、文化庁のホー ムページに掲載しています。そちらで詳細なものは書い ていますが、色等については、黒を基本とするけれども、 必要に応じて透過色等に変更することは可能です。報告 については今のところ特には考えていませんが、まだ幹 事団体で検討させてください。 現代芸術のカテゴリですが、いわゆる美術展的なもの を想定しています。音楽祭などはカテゴリとしては考え ていませんが、そちらについてもまた部会の中で検討さ せてください。 議長 他に何かありますか。よろしいですか。ありが とうございました。 31 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) ※ 造都市ネットワーク日本 規約 (名称)第1条 本ネットワークは、「創造都市ネットワー ク日本」(Creative City Network of Japan)と称する。 (目的)第2条 本ネットワークは、地方自治体等多様な の取組が反映できるようにする。 5 幹事団体会議には当該自治体の担当者が出席するも のとする。 (顧問)第9条 本ネットワークに顧問を置くことができ 主体の創造都市の取組を支援するとともに、国内及びア る。 ジアをはじめとする世界の創造都市間の連携・交流を促 2 代表は、幹事団体会議の同意を得て、顧問を委嘱す 進するためのプラットフォームを形成し、我が国におけ ることができる。 る創造都市の普及・発展を図ることを目的とする。 3 顧問は、代表の求めに応じ総会及び幹事団体会議等 において、意見を述べることができる。 (役割及び使命)第3条 本ネットワークは、創造都市に 関するあらゆる情報・知見・経験交流のハブ機能を担う (総会)第 10 条 本ネットワークに総会を設置する。 ことを基本的役割とし、日本社会の創造的な発展と復興・ 2 総会はネットワークの代表が招集し、原則として毎 再生に貢献することを使命とする。 年 1 回開催する。 3 総会は出席構成員によって構成され、その過半数以 (事業)第4条 本ネットワークは前二条の目的、役割及 び使命を達成するために次の各号に掲げる事業を行う。 上によって議決される。 4 総会は次の事項を審議・議決する。 (1)創造都市ネットワーク会議(総会)の開催など国 (1)規約の変更 内の創造都市間の連携・交流に関すること。 (2)事業計画及び事業報告 (2)自治体職員や NPO など創造都市の担い手の研修や 人材育成に関すること。 (3)幹事団体及び代表幹事団体の選出 (4)部会の設置 (3)Web サイトの運営による創造都市関連情報の提供・ (5)その他運営に係わる重要事項 交流に関すること。 (4)海外の創造都市との交流、国際ネットワークとの 連携に関すること。 (5)創造都市政策に関する調査研究、提言に関するこ と。 (部会)第 11 条 本ネットワークに部会を置くことができ る。 2 部会の設置は、総会の議決を要する。 3 部会の事務局は、代表が幹事団体から指定する。 (6)その他前二条の目的、使命及び役割に資する活動。 (事務局)第 12 条 幹事団体会議のもとに事務局をおく。 (構成員)第5条 本ネットワークは創造都市や文化政策 に携わる基礎自治体を基本的構成員とし、広域自治体、 2 事務局は代表幹事団体が担当するものとする。 附則 本規約は平成 25 年 1 月 13 日より発効する。 及び各地の経済団体、NPO、大学・教育機関等の団体、 附則 本規約は平成 26 年 2 月 27 日より発効する。 個人をもって構成する。 附則 本規約は平成 28 年 2 月 26 日より発効する。 (参加)第6条 本ネットワークに参加しようとする団体・ 個人は、別紙様式 1 又は 2 によりネットワーク代表に届 け出るものとする。 ※※ 現代芸術の国際展部会の設置に関する要綱 (設置)第1条 創造都市ネットワーク日本規約第 11 条 の規定に基づき、現代芸術の国際展部会(以下「部会」 (退出) 第7条 本ネットワークから退出しようとする団 という。 )を設置する。 体・個人は、別紙様式 3 によりネットワーク代表に届け 出るものとする。 (目的)第2条 部会は、各地で開催されている現代芸 術の国際展の課題やノウハウを共有することにより各国 (幹事団体会議)第8条 本ネットワークに基本的運営事 際展の継続開催を目指し、ひいては文化芸術創造都市の 務を担う幹事団体会議を置き、代表幹事団体の長がネッ 普及及び発展並びに我が国の多様な文化の国際発信にも トワークの代表となる。 寄与することを目的とする。 2 幹事団体は本ネットワークに参加する基礎自治体か ら選出する。 (部会の構成)第3条 部会の参加団体は、創造都市ネッ 3 幹事団体の任期は 2 年とし、再任は妨げない。 トワーク日本に参加している自治体や団体のうち、原則 4 幹事団体の定数は 7 から 12 程度とし、都市及び農村 として現代芸術の国際展の開催に携わっている、または 32 添付資料 創造都市ネットワーク会議(総会) 携わる予定の自治体や団体とする。 ※※※報 告 CCNJ ロゴマークの積極的活用について CCNJ のロゴマークについては、「文化芸術創造都市ネッ (参加)第4条 部会に参加しようとする自治体・団体は、 トワーク日本(仮称)」の在り方に関する調査研究(平 別紙様式1により部会の事務局に届け出るものとする。 成 23 年度文化庁事業)の中で取りまとめられたマーク です。 各自治体・団体が文化芸術事業を実施するにあ (退会)第5条 部会から退会しようとする自治体・団 たり、CCNJ の一員として積極的に事業を実施している 体は、別紙様式2により部会の事務局に届け出るものと こ と を ア ピ ー ル す る 際 に 活 用 し て く だ さ い。 する。 (事務局)第6条 創造都市ネットワーク日本規約第 11 条第3項の規定に基づき、部会に事務局を置く。 2 事務局は、部会への参加団体の取りまとめや、部会 開催にあたっての調整等を行う。 (事業)第7条 部会は、目的の達成のために、次の各 号に掲げる事業を行うものとする。 (1)講演・会議・視察等の開催など、部会の参加団体 の連携・交流に関すること。 (2)現代芸術の国際展の担い手の研修や人材育成に関 すること。 (3)その他、部会の参加団体への事前ヒアリング等に 文化芸術創造都市ネットワーク日本(仮称)」の在り方 に関する調査研究(平成 23 年度文化庁事業)より抜粋 太く力強い線と文字により「信頼感」を、CCNJ のそれ ぞれの文字を「自治体、NPO、経済団体、大学・研究 者等」と見立て、ネットワーク(円・縁)の中に集まっ より把握した課題等の共有。 ている状態(多様性)を表す。ネットワークが閉鎖的 2 部会には、各参加団体の担当者が出席するものとす ではなく、開放的であることを示すために、「円」は閉 る。 じていない。また2つの線で円を描くのは、都市と農 3 部会の事務局は、必要に応じ、参加団体以外の者に 村にも通じる。色は黒を基本として、用途や都市ごと 対する事業への出席を認めることができるものとする。 にカラーを用いることも可とする。 (報告)第8条 部会の活動内容は、創造都市ネットワー ク日本に報告するものとする。 (その他)第9条 この要綱に定めのない事項及びこの 要綱の実施に関し必要な事項は、創造都市ネットワーク 日本幹事団体会議で協議するものとする。 附則 この要綱は、平成 28 年 2 月 26 日から施行する。 33 添付資料 国内の取組に関する情報収集 添付資料 第 2 章 関係 文化芸術創造都市事業の推進に関する自治体アンケートの調査について 第 1 章 アンケート調査の概要 目的 本アンケートは「平成 22 年度・文化芸術創造都市事業の推進に関するアンケート」(以下、平成 22 年調査)及び「平 成 26 年度・文化芸術創造都市事業の推進に関する自治体アンケート」(以下、平成 26 年調査)に引き続き、自治体に おける文化芸術創造都市事業の推進がどのように行われてきたかを把握すること、また、今後、文化芸術創造都市事業 を推進しようとする自治体に対し、先行した活動・取組の情報提供を行うことを目的に実施した。 対象 調査対象は、平成 27 年 11 月末時点で創造都市ネットワーク日本(以下、CCNJ)に参加している 64 自治体(広域自治 体を含む)を対象とした。CCNJ 加盟自治体のみで平成 26 年の対象数である 43 自治体から 21 自治体(約 33%)増加 している。平成 26 年調査では文化庁長官表彰を受けた 11 自治体とモデル事業に選定された4自治体都市についても 調査対象としたが、今回は調査対象外とした。ただし、このうち4自治体は平成 27 年 11 月末までに CCNJ に加盟して いる。平成 26 年度に文化庁長官表彰を受けた4自治体のうち2自治体が加盟している。 実施時期と方法 平成 28 年 1 月 4 日から 1 月 31 日までの間に、電子メールと郵便による調査票の送付と回収を行った。交流情報を取得 するためにアンケートの設問は記述式を増やした。 実施主体 文化庁の平成 27 年度文化芸術創造都市事業のなかで、受託事業者である一般社団法人ノオトが行った。 回収状況 計 64 自治体に配布し、43 自治体から有効回答があり、有効回収率は 67.2%となった(平成 26 年調査比で 11 自治体、 7.9% 増) 。これを都道府県、政令市、中核市、さらに市・区・町を人口規模 10 万人以上と未満に分けると表 1-1 のよ うになる(村は対象に含まれていない)。 (表 1-1)自治体の種類別アンケート回収状況 自治体区分 都道府県 政令市・中核市 市・区(人口 10 万人以上) 市・町(人口 10 万人未満) 全体 送付数 8 (7) 20 (17) 16 (17) 20 (13) 64 (54) 有効回答数・率 6 (5) 13 (10) 11 (10) 13 (7) 43 (32) 75.0 (71.4)% 65.0 (58.8)% 68.8 (58.8)% 65.0 (53.8)% 67.2 (59.3)% ( )…昨年実績 全体に占める比率 15.6 (14.0)% 31.3 (30.2)% 31.3 (25.6)% 21.9 (30.2)% 100.0% 第2章 アンケート結果の特徴 はじめに 本アンケート調査は数量的な傾向を把握するだけでなく、取組を互いに共有できるように情報収集することが目的になっ ている。そこでこの第 2 章では平成 26 年調査との比較も交えつつ、全体を通じた概略的な特徴について述べ、第 3 章 で設問ごとの数量的集計を報告した後、第 4 章に自治体ごとの取組について詳細な記述を集約する。なお共有情報はア ンケートに記述された原文を活かしながらも、文体は「である」調に統一し、スペースの関係で短くするなどの編集をし ている。その点で文責は編集部にある。また第 5 章には使用した調査票を資料として掲載した。 調査結果の分析は大きく次のような視点で行っている。すなわち、①どのような文化芸術創造都市(以下、創造都市) の事業が、②どのような体制・手法で行われており、③その中で担当者はどのように事業を評価し課題を感じているか、 ということである。それは創造都市ネットワーク日本(CCNJ)等の取組を通じて、自治体相互の議論につながることを企 図したものである。 平成 26 年調査との比較は、同じか似通った設問であれば、積極的に比較考察を行っているため、併せて参照してほしい。 なお結果分析は全体集計だけでなく、自治体の種類別でも行った。広域自治体・基礎自治体という役割の違い、人口規 34 添付資料 国内の取組に関する情報収集 模による財政力の違い、また権限の違いが事業の内容や規模に大きく影響するからである。ただし分類は、村の回答が なく、中核市が 4 自治体と少なかったため、 「都道府県」「政令市・中核市」「普通市・区(10 万人以上) 」「普通市・町(10 万人未満)」の 4 つとした。 1. 創造都市事業の特徴 (1)都市戦略としての事業 創造都市に関する事業を都市戦略の柱としつつ、文化振興策においても経常的な事業として位置づける自治体が増加し てきた。アンケート結果からそのように見る理由は 2 つある。1 つには、今回のアンケート結果では、創造都市事業の 主管部署が事業・文化部門に多く、回答全体では 65.0%の自治体が事業・文化部門に主管させており、これまで創造 都市の取組をリードしてきた政令市・中核市では 77.0%になる(表 3-1 参照)。平成 26 年調査では企画部門が多かっ たところから、変化が見られる。2 つには、創造都市の事業が、総合計画に位置づけられている割合が増えている。図 2-1 にあるように、その比率は全体が 53.5%であるが、都 道府県では 83.3%、政令市・中核市では 61.5% になる。 総合計画は自治体の最上位計画であり、中長期の自治体 像を示すものであるから、そこに位置づけられているとい うことは重要な戦略課題であることを表している。 さらに、平成 26 年調査では、「事業の根拠として条例化 している自治体は多くない」とされたが、条例化を実施し ている基礎自治体の数は着実に増加しており、政令市・ 中核市が 23.1%、10 万人以上の普通市が 36.4%、10 万 人未満の普通市・町が 23.1%となった。(表 3-11 参照) (2)2020 年文化プログラム展開を視野に入れた意識の変化 平成 26 年調査において、創造都市事業の第二の特徴は、「グローバルな目線と足元の地域に対するローカルな目線を 併せ持っていることである。」としており、本アンケート結果でもその特徴に大きな変化はないものの、よりグローバルな 目線を重視した事業展開が意識され始めている。設問(16)の今後注力したい分野でベスト 3 になったのは、1 位「国 際的イベントの誘致・開催」53.5%、2 位「施策・制度の整理」37.2%、3 位「クリエイティブ人材の集積」34.9% であっ た(図 2-2 参照)。平成 26 年調査において 1 位であった「地域資源の活用」は、全体で 6 位となったが、地域資源を 活用すること自体は前提条件として捉 えられるようになり、それを基礎とし て、2020 年東京オリンピック・パラ リンピック東京大会を契機に日本全 国で開催される文化プログラムの実 施も視野に入れつつ、どのように体 制を整え事業を展開していくべきか に着目されていると言える。 (3)イベント形式以外の事業展開の模索 平成 26 年調査において、「創造都市事業の第三の特徴はイベントの形が多い」としており、本アンケート結果でも、引 き続きその特徴が表れている。各自治体が現在「注力している事業」(設問 12)は、全部で 102 ある(表 4-2 参照)。 その内、52 事業(50.49%)が文化芸術のイベント系であった(図 2-3 参照) 。平成 26 年調査と同様に、内容は地域外 からの集客をめざしたもの、地域内の 賑わいをめざしたもの、アーティスト の集積をめざしたもの等々と多種多様 である。規模も国際的なものから地域 的なものまで幅広い。次に多いのは住 民の文化活動系であるが、こちらは平 成 26 年調査では 8 事業(10.0%)だっ たものが、CCNJ 加盟団体が増加した 35 添付資料 国内の取組に関する情報収集 こともあり、21 事業(20.39%)に増加している。また、複合系が 12 事業(11.65%)であり、ユネスコ創造都市ネットワー クの認定都市が都市間連携を推進するものや、事業自体に創造都市の名を冠し包括的に事業を行うもの、その自治体が 注力している文化事業の発信を強化しながら事業を展開するものが含まれている。こうしたことから言えるのは、創造都 市の事業は、まだイベントが主軸になっているものの、住民の文化活動の支援や、都市間連携という形で事業展開の形 が広がっているということである。 2. 事業推進体制と手法の特徴 (1)行政のコーディネート力を求める事業執行体制 事業の執行体制に関しては、第 4 章の[表 4-3]に一覧を掲載しているが、イベント系の事業で行政が直接の事務局を 担うものは少数であり、この点は平成 26 年調査での傾向から変わっていない。また、イベント系事業の執行体制を集計 すると、「①主催事業」が 36.9%、「②支援事業」が 20.0%、「③ 共同事業」が 26.2%、「④その他」が 7.7%、「NA」が 9.2% で あった(図 2-4)。平成 26 年調査においては、「事業の「外部委 託」によって主管部署をスリムにできるが、その分だけ政策管理・ 執行管理においてコーディネート力を高めないと、事業が形式化 するおそれがあるということである。」という懸念が提示されてい たが、依然として外部委託を中心とした事業の執行体制の中で、 行政自身におけるコーディネート力をどのように高めていくか、 という点は課題が残る。 (2)三重苦に悩む主管部署 設問(14)でこれまで事業を進める中で困難さを感じたことを複数選択してもらったところ、図 2-5 のように、1 位 「予算の確保」69.8%、2 位「行政内の連携確立」48.8%、3 位「住民の事業参加」44.2%、4 位「担当職員の確保」 39.5%、5 位「専門知識やノウハウの確保」32.1%、6 位「クリエイティブ人材等中間支援等を行う人材の育成」34.9%、 7 位「 地 域 経 済 界 の 協 力 確 保 」 32.1%、であった。 平成 26 年調査 にて三重苦として表現していた「予 算の確保」 「行政内の連携確立」 「担 当職員の確保」が 4 位以内に含ま れていることから、事業を推進する 際の課題については、その状況に 目立った改善や変化は見られず、行 政内の推進体制の整備はまだまだ 課題が多い状況であると言える。 (3)ネットワークとしての知見の共有・蓄積とさらなる普及に向けて 創造都市事業の推進状況としては、まだ道半ばであり、推進体制や財政面に厳しい点も多くうかがえるものの、創造都 市事業を総合計画に位置付けている自治体の増加や、条例の整備状況からは、着実に前進していることが読み取れた。 さらに、今後の展開として、個々の自治体の取組のみではなく、事業に積極的に取り組む自治体間の交流や連携が求め られていることが、「CCNJ の枠組みを通じて行いたい取組等」について寄せられた意見[表 3-19]から読み取ることが できる。一部を抜粋すると「加盟都市との共同プロジェクトの実施(広域によるフードツーリズムの展開、人材の交流等) 」、 「芸術祭部会の設置」、「各自治体間の連携による複数自治体による文化芸術創造都市事業の実施」といった意見が挙げ られた。これまで各自治体が推進してきた個々の知見やノウハウをネットワークを通じて共有・蓄積し、自治体間の連携 につなげることが、創造都市事業のさらなる普及のために必要なステップとなると考えられる。 36 添付資料 国内の取組に関する情報収集 第3章 設問ごとの集計結果 1. 創造都市事業の推進体制について (1)自治体名(記述式) (省略) (2)主管部署(記述式) 文化芸術創造都市(以下、創造都市)事業を主管する部署は、文化事業部門が最も多い 65%であった。平成 26 年調 査では企画部門が最も多く、自治体の種類別に傾向が異なっていたが、本アンケートでは、都道府県、政令市・中核市、 普通市・区・町のいずれにおいても、文化事業部門が最も多い結果となった。平成 26 年調査では、企画部門が主担当 となる背景として、「一般的に自治体の戦略的事業を開始するときは企画部門が主担当になることが多く、経常的な事業 になると事業部門に移管する傾向がある。その意味からすると、普通市と町において企画部門が多いのは、創造都市の 事業が都市づくりの戦略的事業として位置づけられていること、及び取組の歴史が浅い自治体が多いことによると思われ る。 」と考察していたが、文化事業部門が主担当となる自治体が増えてきたことにより、創造都市の取組が経常的な事業 として、位置づけられてきたと言える。 (表 3-1) 担当部署の行政部門(記述) 総数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 6 13 11 13 43 企画部門 2 3 4 4 13 33% 23% 36% 31% 30% 文化事業部門 4 10 7 7 28 教育委員会 0 0 0 1 1 67% 77% 64% 54% 65% NA 0% 0% 0% 8% 2% 0 0 0 1 1 (3)職員体制(記述式・選択式) ①職員数(記述式) 担当職員数については、平成 26 年調査と同様に人口 10 万人あたりに換算した人数と配置実数について、それぞれ中 央値、最大値、最小値を自治体の種類別に集計した(表 3-2 参照) 。これらの数値は、10 万人未満の普通市・町の場 合は、実際の人数より多くなるので注意が必要である。 平成 26 年調査と傾向は変わらず、実数の中央値で見ると、人口規模が大きくなるほど担当職員数は多く、これを人口 10 万人あたりに換算すると、人口規模が小さいほど数値が大きくなっている。推進体制を維持するために、「人口規模 の小さな自治体ほど担当者の確保が負担になっている」ということになる。 (表 3-2) 人口 10 万人あたり担当職員数及び配置実数(記述) 中央値 中央値 人口 10 万人あたり 都道府県 0.26 政令市・中核市 0.59 普通市・区(10 万人以上) 2.36 普通市・町(10 万人未満) 6.02 最大値 実数 人口 10 万人あたり 10.5 1.98 5.0 3.24 3.0 8.92 2.0 24.75 実数 21 26 25 7 最小値 人口 10 万人あたり 0.09 0.21 0.41 1.83 実数 1 1 1 1 ②平均担当年数(記述式) 職員の平均担当年数を中央値で見ると、最も長いのが人口 10 万人未満の普通市・町で、2 年 2.5 ヶ月(平成 26 年調査 比 5 ヶ月短縮)である。都道府県や政令市・中核市の中央値より約7ヶ月長い。最大値でも人口 10 万人未満の普通市・ 町が 4 年 3 ヶ月と最長である。昨今の自治体では 2 ~ 3 年で異動するケースが一般化し、人口規模が大きくなるほどそ の傾向が顕著になっているが、それがストレートに反映しているところは、平成 26 年調査と変わらない傾向である。 (表 3-3) 職員の平均担当年数(記述) 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 中央値 1 年 7.5 月 1年7月 2年0月 2 年 2.5 月 最大値 最小値 2年0月 4年0月 3年0月 4年3月 NA 1年0月 0年8月 1年0月 0年5月 0 0 0 1 (集計は NA を除いている ) ③最長経験年数(記述式) 最長経験年数を自治体の種類別に見ると平成 26 年調査と同じく、政令市・中核市が最も長く、中央値で 3 年 8 ヶ月である。 37 添付資料 国内の取組に関する情報収集 最大値では、政令市・中核市に対して、1ヶ月長い普通市・町(10 万人未満)が最も長く、6 年 9 ヶ月となっているが、 平成 26 年調査においても、全体的に突出して長いケースはなく、自治体内に専門人材が育成されているのか、という 点については、引き続き不安が残っている。 (表 3-4) 職員の最長担当年数(記述) 中央値 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 最大値 3年2月 3年8月 2年9月 2年9月 最小値 5年9月 6年 5年 6年 NA 1年8月 8月0年8月 10 月 1 年 8 月 9月0年5月 0 0 0 2 (集計は NA を除いている ) ④専門的知識 ・ 経験を有する人の配置(選択式・単数) 主管部署において「文化政策に関して経験や専門性を もつ人」が「①いる」のは都道府県で 33.3%、政令市・ 中核市で 23.1%、10 万人以上の市区町村で 36.4%、 10 万人未満の市区町村で 15.4%であり、全体的に平 成 26 年度調査より減少傾向にある。この理由として、 新たに CCNJ に参画した自治体の回答が増えており、 その自治体においては、まだ専門性を持つ職員を配置 する段階まで至っていないことが考えられる。 (表 3-5) 専門性を持つ職員の配置 総数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 いる 2 3 4 2 11 6 13 11 13 43 33.3% 23.1% 36.4% 15.4% 25.6% いない 4 10 7 10 31 NA 66.7% 76.9% 63.6% 76.9% 72.1% 0 0 0 1 1 (4)行政内連携部署(記述式・5つまで) 主管部署が創造都市事業の企画・実施において連携している他の行政部署を 5 つ以内で挙げてもらったところ、行政内 連携を行いながら事業を進めているのは 76.7%(平成 26 年調査比 7.7% 減少)となり、連携はないとした自治体は、13 自治体あった。 部署間の組合せの事業内容によった類型化は、平成 26 年調査にならい、「文化関係のみ」「文化 + 市民参画」「文化 + 産業振興」「文化 + 産業振興 + 福祉」「文化 + 産業振興 + 都市計画」「文化 + 産業振興 + 都市計画 + 市民参画」「文 化 + 都市計画」の 7 種類とした(表 3-6 参照)。単純集計として見ると、最も多いのは「文化 + 都市計画」であり、 27.9%を占める。平成 26 年調査では、わずか 3.1% であったことから、24.8% 増加しており、大幅な上昇と言える。「文 化 + 都市計画」は、自治体の種類に関わらず、昨年の数値を上回っており、都道府県、政令市・中核市と比べると、普 通市(10 万人以上・10 万人未満)において、その傾向が顕著である。規模が小さな自治体であるほど、都市計画と創 造都市事業が密接に結びついていると思われる。「文化 + 産業振興 + 都市計画 + 市民参画」についても、平成 26 年調 査では全体で 3.1% であったが、16.3% となり 13.2% 上昇している。平成 26 年調査では、「文化事業として行う体系と文 化に産業振興を組み合わせて行う体系が二大潮流になっている」と見ていたが、都市計画と文化の組み合わせも一つの 流れとして台頭してきていることがうかがえる。 (表 3-6) 行政内連携の類型(記述を類型化) 文化関係 のみ 都道府県 66.7% 政令市・中核市 15.4% 普通市・区(10 万人以上) 9.1% 普通市・町(10 万人未満) 23.1% 全体 23.3% 文+参 0.0% 15.4% 0.0% 0.0% 4.7% 文+産 0.0% 30.8% 27.3% 7.7% 18.6% 文+産+ 文+産+ 文+産+ 福 都 都+参 16.7% 0.0% 0.0% 0.0% 15.4% 7.7% 0.0% 9.1% 18.2% 0.0% 0.0% 30.8% 2.3% 7.0% 16.3% 文+都 16.7% 15.4% 36.4% 38.5% 27.9% 連携無し・ NA 66.7% 15.4% 9.1% 23.1% 23.3% 凡例:文=文化、参=市民参画、産=産業、福=福祉、都=都市計画 (5)行政外の連携組織(記述式・3つまで) 行政外の連携組織を 3 つまで挙げてもらったところ、「なし・NA」の自治体が 41.9%であり、平成 26 年調査とほぼ変 38 添付資料 国内の取組に関する情報収集 わらない水準となった(1.3% 増加)。連携先の内容についても、平成 26 年調査にならい、連携先の役割にもとづいた 類型化を実施した。区分は「文化芸術施設の管理・事業運営組織」 、「文化芸術イベントの事務局」、「個別事業の連携・ 委託先」、「大学等」の4つとした。これらの内、前 3 者が外部委託的性格であり、後者が地域参画的性格である。表 3-7 に類型毎の比率を自治体の種類別にまとめたが、行政外の組織と連携している自治体においても外部委託的性格が 62.7%、地域参画的性格が 21.9%と、参画型が弱い傾向は変わらない。 (表 3-7) 行政以外の推進組織(記述を類型化) 外部委託的性格 文化芸術施設の管 文化芸術イベントの 個別事業の連携・ 理・事業運営組織 事務局 委託先 都道府県 16.7% 16.7% 33.3% 政令市・中核市 23.1% 23.1% 23.1% 普通市・区(10 万人以上) 27.3% 0.0% 36.4% 普通市・町(10 万人未満) 15.4% 7.7% 30.8% 全体 20.9% 11.6% 30.2% 地域参画的性格 なし・NA 大学等 0.0% 0.0% 9.1% 0.0% 2.3% 50.0% 46.2% 27.3% 46.2% 41.9% 注:複数回答のため合計は 100%にならない (6)創造都市事業と既存事業の関係(選択式・単数) 創造都市事業と既存事業の関係について、 「①独立型(既存の事業とは独立して、新規体系として展開) 」 、 「②連携型(既 存の事業と連携しつつ、一定の独立性をもった新規体系として展開)」、「③統合型(既存の事業を重要な要素としてとり こみ、それらの関連づけ ・ 方向づけにウェイトを置きながら、一定の新規事業も展開) 」 、 「④その他」として選択してもらっ た。結果的に最も多かったのはどの自治体の種類においても「③統合型」であるという点、それぞれが占める割合の傾 向は平成 26 年調査から変化は見られなかった。全体集計では「③統合型」が 46.5%(3.5%減少)であった(表 3-8 参照)。 何らかのシーズになる既存事業を足がかりにして、創造都市事業に発展させようとする自治体の意向が伺える。 (表 3-8) 既存事業との関係(単数) 総数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 6 13 11 13 43 ①独立型 0 0.0% 0 0.0% 1 9.1% 2 15.4% 3 7.0% ②連携型 1 16.7% 4 30.8% 2 18.2% 4 30.8% 11 25.6% ③統合型 3 50.0% 8 61.5% 5 45.5% 4 30.8% 20 46.5% ④その他 2 33.3% 1 7.7% 3 27.3% 3 23.1% 9 20.9% NA 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 2. 文化芸術創造都市事業の位置づけについて (7)創造都市事業の開始年(記述式) 文化芸術の創造性を地域づくりに活用するようになった年を記述してもらい、2000 年を基準に 5 年刻みに区分したのが 表 3-9 である。10 万人以上の普通市と 10 万人未満の普通市・町に「未定・NA」がそれぞれ 9.1%と 15.4%含まれてい るが、これは平成 27 年度の間に新たに CCNJ に加盟し、これから創造都市事業を実施・展開していこうとしている自治 体であるため、回答を持ち合わせていないという理由によるものである。 意識的に創造都市事業を位置づけている自治体の中では、2010 年以降の開始が全体で 55.8%と最も多い。また、自治 体の種類別に見た場合も、いずれの種類においても 2010 年以降の開始が 50% を超えており、近年の創造都市の取組 の加速化を如実に表している結果となった。平成 26 年調査において自治体の種類別に見た場合に、「10 万人未満の普 通市・町では 2010 年以降の開始が 0.0%であり、減速している可能性がある。 」と懸念されていたが、創造都市事業の 認知拡大に伴って、CCNJ への加盟自治体数が加速していることがうかがえる。 (表 3-9) 活用開始年(記述を区分) 総数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 6 13 11 13 43 99 年以前 0 0.0% 0 0.0% 1 9.1% 3 23.1% 4 9.3% 00 ~ 04 年 1 16.7% 1 7.7% 1 9.1% 0 0.0% 3 7.0% 05 ~ 09 年 2 33.3% 5 38.5% 1 9.1% 1 7.7% 9 20.9% 2010 年以降 3 50.0% 7 53.8% 7 63.6% 7 53.8% 24 55.8% 未定・NA 0 0.0% 0 0.0% 1 9.1% 2 15.4% 3 7.0% (8)行政方針の中での位置づけ(選択式・複数) 創造都市事業が行政方針の中でどのように位置づけられているかとの問に、自治体の最上位計画である「総合計画」と 答えたのは 53.5%であり、平成 26 年度調査と比較すると、6.6%増となっている。特に都道府県(83.3%)、政令市・中 核市(61.5%)に高い。「平成 27 年度の施政方針で重点」と「自治体の重点事業として採択」は、いずれも 27.9%で 39 添付資料 国内の取組に関する情報収集 同率となっている。 総合計画に位置づけられると、事業が中長期的な展望を持って戦略的に展開されることになる。それが平成 22 年調査 の 8 自治体から平成 26 年調査では 15 自治体に増えたのに対し、今回の調査では 23 自治体、つまり1年の間にさらに 8 自治体増えており、創造都市事業のさらなる前進を表すものと評価できる。 なお「その他」が全体集計の 39.5%を占めているが、その内訳は部分的に総合計画に位置づけられていたり、文化振 興ビジョンや指針等に位置づけられたりしているものであり、特に位置づけがないというのは平成 26 年調査と同じく3 自治体にとどまっている。 (表 3-10) 行政方針での位置づけ(複数) 総数 都道府県 6 政令市・中核市 13 普通市・区(10 万人以上) 11 普通市・町(10 万人未満) 13 全体 43 ①総合計画 5 83.3% 8 61.5% 5 45.5% 5 38.5% 23 53.5% ②施政方針 1 16.7% 5 38.5% 3 27.3% 3 23.1% 12 27.9% ③重点事業 1 16.7% 5 38.5% 3 27.3% 3 23.1% 12 27.9% ④その他 2 33.3% 5 38.5% 6 54.5% 4 30.8% 17 39.5% NA 0 0 0 1 1 (複数回答のため合計は 100%にならない。) (9)制定している条例やビジョン等(記述式) 創造都市事業について条例やビジョン・計画等に定めている場合に、その名称と制定年月を記述してもらった(一覧は 第 4 章に掲載)。全体集計では「ビジョン・計画のみ」で進めているケースが 53.5%と最多である。特に政令市・中核 市(69.2%)及び 10 万人以上の普通市(54.5%)に多く見られる。対して都道府県では「条例と計画」と「ビジョン・ 計画のみ」で進めているところが 50.0% と同率であった。平成 26 年調査では、10 万人以上の普通市・区及び 10 万人 未満の普通市・町で「条例+計画」を策定している自治体は、いずれも 0 であったが、今回の調査では、10 万人以上 の普通市・区で 27.3%、10 万人未満の普通市・町で 15.4% となっており、より明確な指針をもって、創造都市事業が推 進されていることがうかがえる。 (表 3-11) 条例・計画等の策定状況(記述を類型化) 総数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 6 13 11 13 43 条例+計画 3 50.0% 2 15.4% 3 27.3% 2 15.4% 10 23.3% 条例のみ ビジョン・計画のみ 0 0.0% 3 50.0% 1 7.7% 9 69.2% 1 9.1% 6 54.5% 1 7.7% 5 38.5% 3 7.0% 23 53.5% なし 0 0.0% 1 7.7% 1 9.1% 5 38.5% 7 16.3% NA 6 13 11 13 43 3. 創造都市関連の年間予算及び特別予算について (10)創造都市事業に関連する年間文化予算及び特別予算(記述式) ①創造都市関連の年間文化予算(記述式) 創造都市に関連する文化事業の年間予算を平成 26 年度と平成 27 年度について記述してもらった。生の数字そのものは 自治体の規模に比例して大きくなるのが当然で、比較する意味が乏しいため、比較できるように、平成 26 年調査と同様 に、人口千人あたりの金額に直して、平均額・最大値・最小値を調べた(表 3-12 参照) 。 今回の結果では、表 3-12 の平均額や最大値に見られるように、基礎自治体の方が都道府県よりも人口千人あたりの創 造都市関連予算額が大きいという傾向が平成 26 年調査と同様に表れている。ただし、平成 26 年調査では「規模の小 さな自治体ほど人口千人あたりの創造都市関連予算額の平均が大きいという結果になった」が、今回は政令市・中核市 において人口千人あたりの創造都市関連予算額の平均が大きくなった。 (表 3-12) 人口千人あたりの創造都市関連文化事業予算額(記述額を加工) 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 平均額(千円) H26 H27 441 761 1,774 1,300 1,083 989 1,578 3,864 最大値(千円) H26 H27 1,329 2,791 9,435 4,253 3,359 3,474 8,781 12,241 最小値(千円) NA H26 H27 ( 自治体数) 92 66 1/4 125 139 4/12 12 10 1/11 11 9 6/11 (金額は NA を除く。小数点以下は四捨五入 ) ②創造都市関連文化事業予算の文化予算全体に占める比率(記述式) 文化予算全体に占める創造都市関連文化事業予算の比率は、自治体の種類によって最小値 0.0%から最大値 100.0%ま での幅がある(表 3-13 参照)。中央値だけを見ても同様に 6.0%から 78.0%までの幅になっている。これは自治体の種 40 添付資料 国内の取組に関する情報収集 類や重点度の違いによるものというよりも、創造都市事業関連文化事業の捉え方が自治体によって相当異なっているから だと思われる。そのことが NA の多さにも表れているようである。したがってこのデータから客観的な傾向を読み取るこ とは難しく、参考掲示するにとどめておきたい。 (表 3-13) 創造都市関係予算が文化関係予算に占める比率(記述) 中央値 H26 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 最大値 H27 77.0% 15.6% 14.4% 3.5% H26 86.0% 13.3% 15.5% 4.4% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 最小値 H27 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% H26 NA ( 自治体数) H27 6.2% 4.2% 0.0% 0.0% 7.8% 1.3% 0.0% 1.3% 1/4 5/12 1/11 6/11 (予算比率は NA を除く) ③特別予算額(記述式) 特別予算の傾向は、平成 26 年調査と変わらず、ほとんどが文化芸術イベント関連である。単年度で少額になっているの はイベントの事前調査費用である。 (表 3-14) 特別予算額(記述) 平均額(千円) H26 H27 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 952,785 352,900 50,000 50,491 最大値(千円) H26 H27 2,307,186 200,275 100,000 88,134 2,781,256 847,600 50,000 150,164 最小値(千円) H26 H27 6,731,771 496,100 100,000 383,600 7,100 448,000 50,000 300 NA ( 自治体数) 55,000 70,000 100,000 823 3/5 9/13 10/11 8/13 (金額は NA を除く。小数点以下は四捨五入) 4. 取組内容について (11)文化イベントの数(記述式) 自治体(実行委員会形式含む)の域内における公立文化芸術施設または公的団体が主催共催している文化イベントの 件数について、記述してもらったが、文化イベントの定義を、文化芸術創造都市の関連の有無にかかわらず、文化芸術 に関する催しで広く一般に周知いているものとしたため、自治体によって受け取り方、考え方が大きく異なっている。し たがって、(10)②と同様にこのデータから客観的な傾向を読み取ることは難しく、参考掲示するにとどめておきたい。 (表 3-15) 文化イベントの平均件数 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 自治体 H26 28 15 23 4 H27 27 15 22 5 公立文化芸術施設 H26 H27 129 126 177 133 18 19 14 14 公的団体 H26 47 4 2 2 H27 47 5 2 2 NA( 自治体 数) 2/4 7/12 1/11 1/11 (1 項目でも「不明」や「把握できず」とある場合は集計から除外。入力がない項目は0件とする→平均は0を含んで算出) (12)注力している事業(記述式・選択式) 第 4 章に一覧を掲示している。なお、記述された事業の執行体制(選択式・単数)を集計すると、「①行政主導型」 が 41.1%、「②地域主導型」が 18.6%、「③官民共同型」が 34.3%、「④その他」が 6%と、平成 26 年調査とほぼ変わ らない比率となった。 (13)注力している事業の直近の実績(記述式) (12)で回答してもらった注力している「事業年度」 「来場者数(うち外国人数) 」 「経済波及効果」 「パブリシティ効果(掲 載媒体数、広告換算額等)」「雇用発生数」の直近の実績について把握しているもののみを対象に記述してもらったが、 有効回答が少数であり、集計は割愛している。 (14)これまで困難さを感じたこと(選択式・複数) 創造都市の事業を進める中で特に困難を感じたことを複数選択してもらい、その 9 位までを表 3-16 にまとめた。1 位と 2 位は、平成 26 年調査と変わらず、 「②予算確保」 「④行政内連携」であった。3 位以下は多少の入れ替わりがあるものの、 依然として、創造都市の取組が、現状ではまだ「行政の事業」にとどまっていることがうかがえる。自治体の種類別に見 た場合、10 万人以上の普通市では、1 位「行政内連携」 、2 位「予算確保」 、3 位「アーティストや専門家の確保」となっ 41 添付資料 国内の取組に関する情報収集 ており、10 万人未満の普通市と比較をした際に、行政内連携の図りにくさが顕著であった。 (表 3-16) これまでに困難さを感じたこと・上 9 位(複数) 1位 2位 3位 ④ ⑤ ② 行政内連 住民の事 予算確保 携 業参加 全体 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 69.8% 83.3% 69.2% 63.6% 69.2% 48.8% 50.0% 53.8% 72.7% 23.1% 44.2% 66.7% 23.1% 36.4% 61.5% 4位 5位 6位 7位 8位 9位 ⑥ ⑩ ⑪ ⑧ ① 専門的知 アーティス 地域経済 ③ 文化・芸 担当職員 識やノウハ トや専門 界の協力 施設確保 術団体の 確保 ウの取得 家の確保 確保 協力確保 41.9% 50.0% 53.8% 36.4% 30.8% 39.5% 33.3% 53.8% 27.3% 38.5% 34.9% 33.3% 38.5% 54.5% 15.4% 23.3% 33.3% 30.8% 9.1% 23.1% 16.3% 50.0% 23.1% 0.0% 7.7% 16.3% 50.0% 0.0% 0.0% 30.8% * NA は普通市・町(10 万人未満)で 2 件(15.4%) 、政令市 / 中核市で 1 件(7.7%) (15)事業を進める中での特筆すべき変化(記述式) 第 4 章に一覧を掲示している。 (16)今後注力したい分野(選択式・複数) 今後注力したい分野を複数選択してもらい、結果を上 8 位まで並べた(表 3-17 参照) 。全体集計でみると、1 位は「③ 国際的イベント」53.5%、2 位は「⑦施策・制度の整理」37.2%、3 位は「④クリエイティブ人材の集積」34.9%である。 平成 26 年調査では、「1 位は「⑤地域資源の活用」62.5%、2 位は「③伝統文化・工芸の継承」37.5%、3 位は「③ 国際的イベント」34.4%」であったことを考えると、グローバル目線と全体的な施策・制度の整理、そして、事業実施に 必要な人材の確保が重要視され、注力したい分野の比重が変わってきたことがうかがえる。2020 年東京オリンピック・ パラリンピック競技大会の文化プログラムの実施も見据えているのであろう。自治体の種類別にみると、都道府県では、 「① 国際的イベント」83.3% と突出した数字で 1 位になっており、よりグローバル展開を重視する傾向が見られる。政令市・ 中核市では、 「⑤地域資源の活用」が 53.8%で 1 位となっているが、 「①国際的イベント」と「④クリエイティブ人材の集積」 が 38.5% で 2 位に並んでおり、地域の独自性を重要視しながら、創造都市事業の核となるイベントおよび人材の確保に 向けた取組強化の意向が読み取れる。 10 万人以上の普通市では 1 位が「①国際的イベント」の 72.7%で都道府県と共通するものの、2 位以下への関心が低く、 限られた人員や環境の中で、一点集中での事業展開を見据えたものではないかと考える。10 万人未満の普通市・町で は 1 位が全体としては 4 位の「⑥文化活動拠点の整備・運営」53.8%であり、2 位が「⑦施策・制度の整理」46.2% となっ ており、ハード・ソフト両面での環境整備に高い関心があることがうかがえる。 (表 3-17) 今後注力したい分野(複数) 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 ⑦(①~⑥) ④ ⑥ ⑤ ② ③ ① のための施 クリエイティ 文化活動拠 国際的イベ 伝統文化・ 地域資源の 文化イベン 策・制度の ブ人材の集 点の整備・ ント 工芸の継承 活用 ト 整理 積 運営 全体 53.5% 37.2% 34.9% 34.9% 30.2% 30.2% 25.6% 都道府県 83.3% 50.0% 66.7% 33.3% 16.7% 33.3% 66.7% 政令市・中核市 38.5% 30.8% 38.5% 23.1% 30.8% 53.8% 7.7% 普通市・区(10 万人以上) 72.7% 27.3% 27.3% 27.3% 27.3% 27.3% 18.2% 普通市・町(10 万人未満) 38.5% 46.2% 23.1% 53.8% 38.5% 7.7% 30.8% 8位 ⑧ その他 7.0% 0.0% 7.7% 18.2% 0.0% (NA は普通市・町(10 万人未満)で 2 件(15.4%) 、政令市 / 中核市で 1 件(7.7%)) (17) 創造都市事業の継続予定(選択式・単数) 創造都市事業の継続予定をたずねたところ、いずれの自治体においても、明確な意思表示である「①リニューアルし つつ継続」がトップとなっており、10 万人未満の普通市では、他に比べて数値が下がるものの、全体では 65.1% であっ た。また、「④継続にやや困難さがある」、「⑤継続は困難」の回答が 0% となったのは、今回の調査対象に文化庁長官 表彰受賞都市、またはモデル事業選定のみの都市は含まれていないためである。 (表 3-18) 今後の継続予定(単数) 都道府県 政令市・中核市 普通市・区(10 万人以上) 普通市・町(10 万人未満) 全体 42 総数 6 13 11 13 43 ①リニューア ②現状のまま ④継続にやや ③継続の予定 ⑤継続は困難 ルしつつ継続 継続 困難さがある 66.7% 33.3% 0.0% 0.0% 0.0% 76.9% 0.0% 7.7% 0.0% 0.0% 81.8% 18.2% 0.0% 0.0% 0.0% 38.5% 23.1% 15.4% 0.0% 0.0% 65.1% 16.3% 7.0% 0.0% 0.0% ⑥不明 0.0% 7.7% 0.0% 15.4% 7.0% 添付資料 国内の取組に関する情報収集 5.2020 年に向けた文化関係の取組意向について (18)2020 年に向けた文化プログラム等の取組意向(記述式) 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に焦点を合わせた文化プログラムについて取組意向を記述しても らった。結果は第 4 章に設問 (19) と合わせて一覧を掲示している。 (19)現在決まっているプレイベント(記述式) 第 4 章に設問 (18) と合わせて一覧を掲示している 6. 創造都市ネットワーク日本(CCNJ)について (20)CCNJ の事業の中で特に役立っているもの(選択式・複数) CCNJ が行っている事業の中で、特に自らの自治体に役立っていると思うものについて、5 段階で評価してもらった。(図 3-2 参照)「役立っている」の単独、及び「役立っている」+「まあまあ役立っている」の合計値のいずれにおいても 1 位は、「⑥公式ホームページでの事務局および他団体の情報発信」であった。2 位は「⑤公式ホームページでの自団体 の情報発信機能」であり、情報収集及び情報発信のプラットフォームとして、CCNJ 公式ホームページが機能し、活用さ れていることがうかがわれる。 「②創造農村ワークショップ」「④各種視察ツアー」については、「どちらとも言えない」が過半数を上回っており、今 後 の 改 善 点 とし て、 (21)や(23)に おいて回答された要望 や期待することを考慮 し、加盟団体にとって より役立つ企画運営が 求められると言える。 ( 図 3-2) CCNJ の 取 組 の中で特に役に立ってい るもの(単数) また、上記の取組が自治体において、どのような側面においてどの程度効果を発揮しているかについても 5 段階で評価 してもらった。(図 3-3 参照)「役立っている」+「まあまあ役立っている」の合計値で、「④他の自治体・団体との交流」 が、65.2% で 1 位、「②専門的知識やノウハウの取得」が 65.1% で 2 位と僅差になっている。CCNJ の取組の評価と合 わせて考えると、各種セミナーや、公式ホームページでの情報発信を通じて、創造都市に関する知見を深め、ネットワー クを活用した交流が行われていることがうかがえる。今後は、加盟団体間での連携をより強化し、ネットワークであるこ との利点を活かした事業展開が期待される。 (図 3-3) CCNJ の取組が、自団体においてどの程度役立っているか(単数) 43 添付資料 国内の取組に関する情報収集 (21)今後 CCNJ の枠組みで行いたい取組や期待すること等(記述式) CCNJ の枠組みで行いたい取組や実現したい仕組み、CCNJ に期待することを記述してもらい、それを自治体の種類別 に一覧化した(表 3-19 参照)。ただし表現は、できるだけ原文を尊重しつつ、編集している。 (表 3-19) CCNJ の枠組みで行いたい取組等 都道府県 県外を含む他の自治体・団体との情報共有・意見交換を促進するための機会を活用したい ・2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催時の文化プログラム実施に向けた CCNJ の枠組みを通じた情報共有、連 携実施などの取組の実現 ・文化庁の地方公共団体への補助金額の充実を要望 政令市・中核市 ・芸術祭部会の設置 ・創造的産業振興プロジェクトの実施 ・各自治体が実施している文化プログラムの一覧(データバンク)を設け、取組への参考にするのみならず、外国人が観光情報と して取得できるようにしたい。 普通市・区(10 万人以上) ・他市町村の事例を聞きたい。 ・加盟都市との共同プロジェクトの実施(広域によるフードツーリズムの展開、人材の交流等) ・文化施設の経年劣化に伴う修繕計画の着眼点や重点的、優先的に取り組むべき項目等を知りたい。 ・コンテンツ産業を振興する事業について、CCNJ 加盟する団体との情報・意見交換、事業連携ができる部会等があると良い。 ・創造農村ワークショップの継続。中小規模自治体向けの創造都市セミナー、各自治体での地方創生と創造都市の関連について の情報交換会の開催。 普通市・町(10 万人未満) ・文化芸術創造都市事業に関する情報の共有 ・他市との新たな連携を繋げる場 ・小さな発展途上の都市について特化した、文化芸術を発展させていく具体的な事例やコツを学べるセミナーを開催してほしい。 ・文化芸術を観光資源として活用し、国内外の誘客につながるような取組、助成制度など国への働きかけ。観光協会などへの直 接投資が可能な事業など。 ・各自治体間の連携による複数自治体による文化芸術創造都市事業の実施 ・文化庁からの継続的な財政・人的な支援 7. 文化芸術創造都市事業の情報収集・情報発信について (22) CCNJ や文化庁のホームページ等において閲覧・検索/発信したい情報 創造都市ネットワーク日本(CCNJ)や、文化庁のホームページ等において、事業軸もしくはテーマごとにまとめて閲覧・ 検索したい情報や発信した以上について、選択してもらった(表 3-20、表 3-21 参照)。閲覧・検索したい情報、発信し たい情報のどちらにおいても、1位は、「①国内芸術祭一覧」であり、その関心の高さがうかがえる。 (表 3-20)閲覧・検索したい情報(複数) ①国内芸術祭一覧 都道府県 66.7% 政令市・中核市 61.5% 普通市・区(10 万人以上) 54.5% 普通市・町(10 万人未満) 61.5% 全体 60.5% ②文化施設一覧 33.3% 30.8% 54.5% 38.5% 39.5% ③ AIR* 拠点一覧 16.7% 23.1% 63.6% 23.1% 32.6% ④その他 16.7% 7.7% 0.0% 7.7% 7.0% NA 33.3% 23.1% 9.1% 23.1% 20.9% 複数回答の為、合計は 100%にはならない。* アーティスト・イン・レジデンス (表 3-21)発信したい情報(複数) ①国内芸術祭一覧 都道府県 33.3% 政令市・中核市 69.2% 普通市・区(10 万人以上) 54.5% 普通市・町(10 万人未満) 38.5% 全体 51.2% ②文化施設一覧 0.0% 23.1% 45.5% 23.1% 25.6% ③ AIR* 拠点一覧 0.0% 15.4% 36.4% 0.0% 14.0% ④その他 16.7% 15.4% 9.1% 7.7% 11.6% NA 66.7% 15.4% 36.4% 69.2% 44.2% 複数回答の為、合計は 100%にはならない。* アーティスト・イン・レジデンス (23) (22)に関して特に知りたい発信したい項目や取り組み(記述式) 第 4 章に一覧を掲示している。 44 添付資料 国内の取組に関する情報収集 第4章 自治体の交流情報 1.(表 4-1) 創造都市事業に係わる条例やビジョン・計画 自治体名 条例 ビジョン・計画 神奈川県 かながわ文化芸術振興計画(平成 26 年 3 月) 都道府県 滋賀県文化振興基本方針(平成 23 年 3 月)、滋賀県基本構想(平成 27 年 3 月) 滋賀県 滋賀県文化振興条例(平成 21 年 7 月) 京都府 京都府文化力による京都活性化推進条 京都こころの文化・未来創造ビジョン(平成 24 年 12 月) 例(平成 17 年 10 月) 兵庫県芸術文化振興ビジョン(平成 16 年 5 月)策定、平成 27 年 3 月改訂) 兵庫県 徳島県 徳島県文化振興条例(平成 17 年 3 月) 徳島県文化振興指針(平成 18 年) 大分県 大分県芸術文化創造戦略(仮称)(策定中) 札幌市 札幌市まちづくり戦略ビジョン(ビジョン編)(平成 25 年 2 月) 、 札幌市まちづくり戦略ビジョン(戦略編)(平成 25 年 10 月)、札幌 市文化芸術基本計画(平成 27 年 1 月) さいたま市 さいたま市文化芸術都市創造条例(平 さいたま市文化芸術都市創造計画(平成 26 年 3 月) 成 23 年 12 月) 横浜市 横浜市文化芸術創造都市施策の基本的考え方(平成 24 年 12 月)、 横浜市中期4か年計画(平成 26 年 12 月)、創造都市アクションプ ラン(平成 27 年 7 月) 政令市 新潟市文化創造都市ビジョン(平成 24 年 3 月)、 マンガ・アニメを活用したまちづくり構想(平成 24 年 3 月)、にい がた未来ビジョン(平成 27 年 4 月) 新潟市 静岡市 静 岡 市 創 造 及 び 交 流 によりまちの 活 力を生み出す文化の振興に関する条例 (策定中)(平成 28 年 4 月予定) 浜松市 浜松市文化振興ビジョン(平成 12 年・平成 21 年 3 月改定)、「創 造都市・浜松』推進のための基本方針(平成 25 年 3 月) 神戸市 神戸 2015 ビジョン(平成 23 年 2 月)、第 5 次神戸市基本計画「神 戸づくりの指針」 (平成 23 年 2 月)、神戸 2020 ビジョン(策定中) (平 成 28 年 2 月) 岡山市 岡山市文化芸術振興ビジョン(平成 24 年 3 月) いわき市 名称未定(ビジョン策定予定)(平成 28 年度中) 中核市 金沢市文化芸術振興プラン(平成 18 年)、金沢創造都市推進プログ ラム(平成 22 年、23 年・25 年改訂) 金沢市 高松市 高松市文化芸術振興条例(平成 25 年 高松市創造都市推進ビジョン(平成 25 年 10 月) 12 月) 高松市文化芸術振興計画(平成 26 年 3 月) 松山市 八戸市 (仮)文化振興計画(平成 28 年度中予定) 山形市 文化のまちづくりビジョン(平成 27 年 12 月) 新経営計画(策定中) 10万人以上普通市・区 鶴岡食文化創造都市推進プラン(平成 25 年 2 月) 鶴岡食文化創造都市推進プラン実施計画(平成 26 年 5 月) 鶴岡市 草加市 草加市文化芸術振興条例 ( 平成 26 年 9 草加市音楽都市宣言(平成 5 年)、第三次草加市総合振興計画-快 月) 適都市草加- 後期基本計画(平成 23 年 3 月) 松戸市 松戸市文化芸術振興基本方針(平成 25 年 3 月) 豊島区 豊島区文化芸術振興条例(平成 18 年 豊島区の文化政策に関する提言(平成 16 年 1 月) 3 月) 豊島区国際アート・カルチャー基本構想(平成 27 年 4 月) 高岡市 可児市 可児市文化創造センター条例(設置管 理条例から改正) (平成 28 年 4 月改正予定) 長浜市 宇部市 宇部市文化の振興及び文化によるまち 煌くまち 文化振興ビジョン(平成 24 年 3 月) づくり条例(平成 22 年 12 月) 宇部市 まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成 27 年 10 月) 東川町 写真の町に関する条例(昭和 61 年 3 月) 10万人未満普通市・町 美瑛町 富士見市 長浜市文化芸術振興にかかる基本方針(平成 27 年 11 月) プライムタウンづくり計画 21- Ⅱ(平成 25 年 3 月)、写真文化首都 東川町まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成 27 年 10 月) 町制執行方針(平成 27 年 4 月) 文化芸術振興条例(平成 24 年 6 月 20 文化芸術振興基本計画(平成 26 年 9 月 1 日)文化芸術アクション 日) プラン(平成 27 年度より毎年策定) 津南町 氷見市 文化創造都市高岡推進ビジョン(平成 27 年 3 月) 津南町総合振興計画(平成 23 年 3 月) 氷見市文化振興条例(仮称)(策定中) 南砺市 南砺市文化芸術振興基本計画(策定中) 守山市 守山市文化振興アクションプラン(平成 26 年 12 月) 篠山市 篠山市歴史文化基本構想(平成 23 年 3 月)、篠山市創造都市推進計 画(平成 25 年 9 月) 真庭市 真庭市文化振興計画(平成 28 ~ 32 年)(平成 28 年 3 月予定) ※その他、平成 26 年調査回答にて、名古屋市では名古屋市文化振興計画(平成 22 年 3 月)を策定している。奈良市では奈良 市文化振興条例(平成 21 年 3 月)を策定している。 45 添付資料 国内の取組に関する情報収集 2.(表 4-2) 注力している創造都市事業(5つまで) ※執行体制の凡例:①行政主導型、②地域主導型、③官民共同型、④その他 自治体名 事業名 神奈川国際芸術フェスティバル 神奈川県 滋賀県 都道府県 京都府 兵庫県 徳島県 大分県 事務局団体 (公財)神奈川芸術文化財団 神奈川文化賞・スポーツ賞 神奈川県 2 ① 神奈川県美術展 神奈川県美術展委員会 3 ① カナガワ リ・古典プロジェ クト かながわの伝統文化の継承と創造プロジェクト実 行委員会 1 ③ マグカル劇場 マグカル・フェスティバル実行委員会 1 ③ 地域の元気創造・暮らしアート事業 滋賀県総合政策部文化振興課 1 ① アール・ブリュットの魅力発信事業 滋賀県総合政策部文化振興課 1 ① ラ ・ フォル ・ ジュルネ 滋賀県総合政策部文化振興課 2 ① 「学校にアートがやってきた」推進モデル事業 滋賀県総合政策部文化振興課 1 ① びわ湖ホール舞台芸術体験事業 滋賀県総合政策部文化振興課 2 ① 琳派 400 年記念祭開催 琳派 400 年記念祭実行委員会 3 ③ 多数 ③ 2 ① 2020 京都文化フェア(仮称) 「京都文化フェア呼びかけ」に基づく推進委員会 北山文化環境ゾーン整備 京都府 ひょうごのふるさと芸術文化活動推進事業 芸術文化課 多数 ② 伝統文化体験事業 〃 (( 公財 ) 兵庫県芸術文化協会 ) 多数 ① 県民芸術劇場 同上 多数 ② アート de 元気元気ネットワーク in 兵庫 ・ 神戸推進事業 〃 ( アート de 元気ネットワーク推進会議 ) 多数 ③ 県民文化普及事業 多数 ③ ベートーヴェン第九演奏会 徳島県 NA ① 文化立県とくしま推進事業 文化立県推進会議 17 ①② 徳島県民文化祭 徳島県民文化祭開催委員会 19 ①② 別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世 NPO 法人 BEPPU PROJECT 界 2015」 みんなの芸術文化体験事業 仙台市 さいたま市 横浜市 ① ③ パシフィック・ミュージック・フェスティ パシフィック・ミュージック・フェスティバル組 バル(PMF) 織委員会 5 ③ 札幌国際短編映画祭 SAPPORO ショートフェスト実行委員会 4 ③ ユネスコ創造都市ネットワーク都市間連携 札幌市 1 ① 仙台国際音楽コンクール 仙台市市民文化事業団 1 ① 仙台クラシックフェスティバル 仙台市市民文化事業団 1 ① 舞台芸術振興(劇都仙台) 仙台市市民文化事業団 1 ① 創造都市推進事業 仙台市市民文化事業団 1 ① さいたまトリエンナーレ 文化振興課 29 ③ 横浜トリエンナーレ事業 横浜トリエンナーレ組織委員会 1 ① スマートイルミネーション事業 スマートイルミネーション実行委員会 1 ① 創造界隈活動支援事業 NPO 法人 BankART1929、NPO 法人 YCC、ワコー ル ア ー ト セ ン タ ー、NPO 法 人 ア ー ト プ ラ ッ ト フォーム、黄金町エリアマネジメントセンター 5 ② 27 ③ 63 ③ 10 ③ 5 ③ NA ① 5 ③ 政令市 東アジア文化都市 静岡市 浜松市 神戸市 創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 横浜市芸術文化振興財団 「東アジア文化都市 2015 新潟市」実行委員会 水と土の芸術祭 水と土の芸術祭 2015 実行委員会 ラ・フォル・ジュルネ音楽祭 ラ・フォル・ジュルネ新潟「熱狂の日」音楽祭実 行委員会 がたふぇす にいがたアニメ・マンガフェスティバル実行委員会 みなと新潟光の響演 新潟市 大道芸ワールドカップ 大道芸ワールドカップ実行委員会 NA ② 浜松国際ピアノコンクール 浜松国際ピアノコンクール事務局 2 ③ 静岡国際オペラコンクール 静岡国際オペラコンクール事務局 2 ③ 浜松市アクトシティ音楽院事業 浜松市アクトシティ音楽院事務局 2 ① 2 ④ みんなのはままつ創造プロジェクト(補助 (各事業主体) 金交付事業) NA ② 神戸ビエンナーレ 神戸ビエンナーレ組織委員会 NA ③ KOBE ぽっぷカルチャーフェスティバル 神戸ポップカルチャー実行委員会 NA ③ NA ④ NA ③ アクトシティ浜松及び浜松市楽器博物館の運営 浜松市文化振興財団 デザイン・クリエイティブセンター神戸 神戸市 (KIITO) の運営 「ジャズの街神戸」の全国への発信事業 46 ③ 24 アーツコミッション事業 新潟市 3 NA 札幌国際芸術祭 札幌市 関係団 執行 体数 体制 5 ② 「ジャズの街神戸」推進協議会 添付資料 国内の取組に関する情報収集 自治体名 金沢市 中核市 高松市 事業名 事務局団体 関係団 執行 体数 体制 1 ① 金沢・世界工芸トリエンナーレ開催事業 金沢・世界工芸トリエンナーレ開催委員会 金沢 JAZZSTREET 開催事業 金沢 JAZZSTREET 実行委員会 15 ① 金沢アカペラ・タウン開催事業 金沢アカペラ ・ タウン実行委員会 1 ② 金沢 21 世紀美術館企画運営事業 金沢 21 世紀美術館(( 公財 ) 金沢芸術創造財団) 1 ① 卯辰山工芸工房技術研修者奨励事業 金沢市・( 公財 ) 金沢芸術創造財団 2 ① 瀬戸内国際芸術祭 瀬戸内国際芸術祭実行委員会 NA ③ 高松国際ピアノコンクール 高松国際ピアノコンクール推進事業実行委員会 NA ③ まちなかパフォーマンス事業 MUSIC BLUE TAKAMATSU 実行委員会 街クラ シック in 高松実行委員会 NA ③ サンポート高松トライアスロン サンポート高松トライアスロン大会実行委員会 NA ③ 東川町 写真の町事業 写真の町実行委員会 6 ③ 美瑛町 美瑛町町民センター 美瑛町 5 ③ 南郷アートプロジェクト 八戸市 1 ① 「まちぐ(る)み」事業 八戸市 1 ① 「八戸ロマン時空探検隊」事業 八戸市 1 ① 酔っ払いに愛を~横丁オンリーユーシアター~ 八戸市 1 ② 山形国際ドキュメンタリー映画祭 認定 NPO 法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭 1 ④ ユネスコ創造都都市ネットワーク活動事業 鶴岡食文化創造都市推進協議会 22 ③ 食の祭典開催事業 鶴岡食文化創造都市推進協議会 22 ③ 食文化調理部門高度化促進事業 鶴岡食文化創造都市推進協議会 22 ③ ミラノ国際博覧会出展事業 鶴岡食文化創造都市推進協議会 22 ③ 鶴岡ふうどガイド活動促進事業 鶴岡食文化創造都市推進協議会 22 ③ 国際ハープフェスティバル 草加市文化協会 4 NA 奥の細道文学賞 草加市 多数 ① 暮らしの芸術都市創造 松戸まちづくり会議 13 ② 文化芸術創造支援事業 豊島区 3 ① としま文化フォーラム としま未来文化財団 2 ① F/T(フェスティバル / トーキョー) 池袋 / としま / 東京アーツプロジェクト事業実行 委員会 5 ④ 池袋演劇祭 池袋演劇祭実行委員会 NA ④ 国際アート・カルチャー都市推進事業 豊島区 1 ① 十日町市 大地の芸術祭事業 大地の芸術祭実行委員会 NA ③ 津南町 大地の芸術祭 大地の芸術祭実行委員会 50 ① 文化創造都市高岡推進事業 アート&クラフトシティ高岡推進委員会 5 ③ 万葉アートグローバル化推進事業 高岡万葉遊楽宴実行委員会 8 ① 利賀芸術公園支援事業 利賀芸術公園 5 ② 芸術文化推進事業 文化・世界遺産課 1 ① 可児市 ala まち元気プロジェクト å ( 公財 ) 可児市文化芸術振興財団 1 ④ 長浜市 みんなで頑張る市民オペラ事業 浅井文化ホール(株式会社ロハス余呉) 1 ② 20 ① 八戸市 山形市 鶴岡市 草加市 松戸市 豊島区 普通市・区・町 高岡市 南砺市 ルシオール アート キッズフェスティバ 守山市教育委員会事務局文化・スポーツ課 ル 守山市 ルシオール AKF 秋色 公益財団法人守山市文化体育振興事業団 3 ② ルシオール音楽塾 公益財団法人守山市文化体育振興事業団 2 ② ルシオール街かどコンサート 公益財団法人守山市文化体育振興事業団 1 ② 8 ③ 守山市文化振興アクションプラン推進委員 守山市教育委員会事務局文化・スポーツ課 会 甲賀市 篠山市 尾道市 宇部市 築上町 あいこうかうたプロジェクト - NA ③ 食と器国際ビエンナーレ 創造都市推進委員会 10 ① まちなみアートフェスティバル 実行委員会 20 ① 立杭陶器まつり 丹波陶磁器協同組合 10 ② 現代アート創造発信事業 尾道市企画財務部文化振興課 3 ③ UBE ビエンナーレ(現代日本彫刻展) 宇部市、UBEビエンナーレ運営委員会、毎日新 聞社 3 ① 第 26 回 UBE ビエンナーレ×まちじゅうアー 宇部市、第 26 回 UBE ビエンナーレ×まちじゅう トフェスタ 2015 アートフェスタ 2015 実行委員会 16 ① 宇部市渡辺翁記念会館 宇部市文化創造財団(指定管理者) NA ④ 神楽公演 企画振興課 7 ① 47 添付資料 国内の取組に関する情報収集 3.(表 4-3) 創造都市事業を進める中で起こった特筆すべき変化 自治体名 特筆すべき変化 京都府 文化事業を所管する府体制の強化を行った。 【文化芸術室】 ・文化政策課・文化芸術振興課 (H24.4.1 ~ ) 北山文化環境ゾーン整備事業と国民文化祭の継承・発展等の ため ・文化政策課・文化芸術振興課・文化交流事業課 (H26.5.1 ~ ) 2020 年東京オリンピック・パラリンピックの 開催に向けた文化プログラム推進のため 徳島県 ・目標を大きく上回る 12,897 人が参加した。 【文化的な効果】 ・オーケストラ公演でプロの演奏家との共演機会を設けるなど,次世代人材の育成や活動の場を提供し,若い 芸術家のスキルアップを図ることができた。 ・中学生の活用や、大学生などのボランティアとともに実演芸術公演を行うことで、徳島ならではの音楽文化の 醸成に資することができた。 【社会的な効果】 ・積極的なアウトリーチ事業の実施や一流の芸術家との共演機会の創出、小中高校生を対象とした低廉な入場 料金の設定等により、県民の誰もが気軽に文化に触れ、親しむことができる社会づくりに貢献することができた。 ・本事業を実施することにより , 大きな経済効果(H17 産業連関表により算出)を発生させることができた。 札幌市 ・2006 年の創造都市さっぽろ宣言後、具体的に開催について検討が始まった国際芸術祭が 2014 年に実現した。 ・総合計画「札幌市まちづくり戦略ビジョン」において「都市ブランド創造戦略」が設定され、クリエイティブ 産業の創発や人材育成、アートセンター開設による文化芸術とビジネスの交流促進など「創造性を生かしたイ ノベーションの誘発」を進めていくこととなっている。 ・2013 年 11 月にユネスコ創造都市ネットワークにメディアアーツ都市としての加盟が認められ、同分野の都市 との交流・連携事業に取り組んできたところ。 さいたま市 これまでの、さいたま市らしさにあふれた「さいたま文化」の創造・発信を目指した文化芸術の振興から、文 化芸術の持つ創造性を活かし、国際的な芸術祭、芸術家の新たな創造環境の創出、文化芸術を活用した産業 の振興などを通じた、多様な交流を生み出し、都市の創造性を高め、まちの活性化を図ることとしている。 横浜市 ・都心部へのアーティスト・クリエーターの集積及び ・アートによるまちづくりへの地域の理解 新潟市 ラ・フォル・ジュルネ、がたふぇすなど、年々参加者が増加、市民に定着してきており、まちなか協力店 の数も増え、意識の変化が見られる。 また、東アジア文化都市事業を通じて、市民の東アジア都市の文化への理解が深まり、日中韓の改善関係 を文化交流の面から積極的に取り組み、発信していくことが出来た。 静岡市 実施当初は行政主体であったが、年数を重ねるに従い、市民主体の実行委員会の担う割合が大きくなり、 近年は実行委員会が運営を実施している。 浜松市 「みんなのはままつ創造プロジェクト」 (補助金事業)により、音楽以外の分野を含む創造的活動が活発化し、 担い手の発掘、ネットワーク化が進んだ。実施当初は行政主体であったが、年数を重ねるに従い、市民主 体の実行委員会の担う割合が大きくなり、近年は実行委員会が運営を実施している。 都道府県 滋賀県 事業によっては、県単独での推進ではなく、関係団体や市町との連携・協力が必須と考えている。本年度は県 内の自治体や団体との情報共有・意見交換の場も設けたところであり、今後も効果的な連携のあり方を模索し ている。 政令指定都市 普通市・区・町村 神戸市 文化・芸術・デザインに対する、庁内における理解や興味が高まりつつあり、事業数が増加している。 東川町 様々な人的ネットワークが形成され、文化芸術以外のまちづくりにいかされてきた 美瑛町 多様な芸術文化の鑑賞機会の提供を継続してきたことで、幅広い年齢層の町民の芸術文化への興味・関心 が高まってきている。また、関係団体との連携も定着してきたことから、新たなイベントの開催の協力体 制も整ってきている。 八戸市 地域資源を活用したアートプロジェクトを実施することにより、これまで市民にとって魅力的に映らなかっ たものが、魅力の再発見につながり、地域の良さを再発見する機会となっている。また、文化芸術創造都 市であること自体が、これまで伝統芸能等を担ってきた市民の活動への評価へとつながっている。 山形市 業界団体から少しずつ協力者が現れるようになってきた。 鶴岡市 市民の意識変化(地域食文化の価値に関する再認識、食文化を活用した産業振興や地域振興に関する機運 の醸成) 草加市 文化芸術振興条例の制定や「おくのほそ道の風景地」として草加松原が国の名勝に指定されたことなどで、 市民や市民団体が地域資源を活かした文化芸術によるまちづくりに活発に活動している。 松戸市 2010 年当初、地域アートプロジェクトという、実行委員会形式で市の職員が中心となって行ってきた運営 自体を、2012 年から「松戸まちづくり会議」という地域住民の創意工夫や主体性のもと運営が行われるよ うになったこと。※ これまであまり活用されていなかった公園や道路、河川敷などの地域資源を開拓し、さまざまな場所で創 意工夫の活動が展開されるようになった。また、会の運営を通じて、これまであまり交流が無かった東西 のコミュニティが横断して繋がり、町会・自治会、住民同士の連携強化の場となった。さらに、現在事務 局を担う若手のコーディネーターを育成することができたこと、若手住民の地域活動への参画を促したこ と、聖徳大学、千葉大学、地域事業者が活動をサポートしてもらう環境形成ができたことが挙げられる。 アーティスト・イン・レジデンス・プログラムのパラダイスエアでは、上記若手コーディネーターを中心 に直接、文化庁の補助金を獲得し、取組開始 2 年目の平成 26 年度のロングステイプログラムにおいて、世 界 65 カ国、253 組の応募があり、海外からも注目を集めるようになった。国内外から視察を受けるようになっ た。 ※若手アートディレクター・コーディネーター 2 人、主体的な住民参画 20 人(松戸まちづくり会議理事の数)、学生・ボランティ ア等 100 人超、アーティスト・クリエイター約 200 人移住又はアトリエ利用 48 添付資料 国内の取組に関する情報収集 4.(表 4-4) 2020 年に向けた文化プログラムの意向及び H28 年度予定事業 自治体名 2020 年に向けた文化プログラムの意向 左記の内、平成 28 年度に予定している事業等 滋賀県 県内各域で行われている既存の催事や文化的資産 等をいかに活用し、発信していくかに焦点を当て た取組を行う予定。庁内外の関係者との意見交換 を行うための検討会議を開催し、その結果も踏ま えた上で、向こう 4 年間を見据えた県としての方 針を練り上げていきたい。 京都府 ・スポーツ・文化・ワールド・フォーラム(日本政府が主 オール京都で「京都文化フェア呼びかけ」に基づ 体となって経済界・地方公共団体と連携して開催) く推進委員会を立ち上げ、今年度中に基本構想を 京都日程 日時:平成 28 年 10 月 19 日- 20 日 策定予定。その後、実行委員会を発足し、実施計 概要:全体会、分科会、文化イベント等 画を策定、平成 28 年 10 月に京都と東京で開催さ ・京都文化フェア(仮称)2016 - 2020 れる「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」をキッ 上記フォーラムをキックオフとして、京都独自のプログラム クオフ事業として順次事業を実施する予定。 を順次実施 徳島県 平成 27 年 7 月にまち ・ ひと・しごとづくり法に基 ・とくしま “ 歓喜の歌 ” プロジェクト づき、県が策定した「vs 東京『とくしま回帰』総 ベートーヴェン第九演奏会の開催ほか 合戦略」において、 「阿波藍」 「阿波人形浄瑠璃」 「阿 ・ジャズが流れる街、徳島推進事業(仮称) 波おどり」 「ベートーヴェン『第九』」の「あわ⽂化」 徳島のジャズシーンの活性化事業 四大モチーフ及びクラシック・ジャズ・邦楽の「あ ・邦楽における次世代・後継者育成プロジェクト わ三大音楽」など、音楽⽂化が息づくまちづくり 邦楽演奏会と人形浄瑠璃等の魅力発信事業 の成果を生かした、徳島ならではの「⽂化プログ (注)これらの事業はプレイベントではなく文化プログラム ラム」の創造により、⽂化施策の牽引と交流人口 (本編)を見据えた取り組みであり、代表的なものをここ の増加に取り組むこととしており、これに沿って事 では挙げた。 業を推進していく必要がある。 兵庫県 国の文化プログラムを踏まえて、兵庫県はじめ関 西の文化を国内外に発信できるよう関西広域連 合、県内市町、関係団体等と連携して取り組んで まいりたい。 大分県 ・2018 年の国民文化祭の大分県開催及び 2016 年、 2017 年のプレイベントの開催 ・2019 年ラグビーワールドカップ大分県開催時の ・国民文化祭(文化プログラム)キックオフイベント開催 文化イベント開催 ・2020 年東京オリンピック・パラリンピック時の文 化イベント開催 札幌市 毎年夏に行っているパシフィック・ミュージック・ フェスティバル(PMF)とともに、札幌国際芸術 祭を独自の芸術祭として発展を図りつつ 3 年毎に 継続的に開催しながら、2020 年は東京オリンピッ ク・パラリンピック競技大会に合わせて実施するこ 文化プログラムとしての位置づけや詳細については検討中 とで、訪日外国人など広く世界に向けて文化芸術 であるが、PMF は毎年開催しており、平成 28 年度も実施 を通じた札幌のまちの魅力の発信してまいりたい。 予定である。また「映画」 ・ 「音楽」 ・ 「インタラクティブ ( I さらに、ユネスコ創造都市ネットワーク加盟都市 T先端技術など )」を複合した産学官連携による国際コン の先進事例を参考にしながら、2017 年から札幌 ベンション「 No Maps」のプレイベントも 28 年度に実施 国際短編映画祭を核として、「映画」・「音楽」・「イ 予定である。 ンタラクティブ ( IT先端技術など )」を複合した、 産学官連携による国際コンベンション「No Maps」 を毎年開催する予定であり、2016 年はプレイベン トを実施する予定である。 仙台市 震災からの復興の中で、被災地では文化芸術の力 や様々な地域の文化資源が認識されており、その 可能性を共有している。その文化芸術や文化資源 の持つ社会への波及効果に着目し、文化の力が最 大限に発揮される取り組みを、被災地において国 現在検討中 際的視野で推進し、成熟社会に適合した新たな社 会モデルの構築を目指す。東京オリンピック・パ ラリンピックを契機としてその取り組みを被災地仙 台・東北から世界に発信していく。 さいたま市 具体的な内容は未定だが、2016 年に予定してい るさいたまトリエンナーレを、今後文化プログ ラムの 1 つとして位置付けたいと考えている。 横浜市 ・ヨコハマトリエンナーレ、ヨコハマ・パラトリ エンナーレ、芸術アクション事業(Dance Dance 横浜音祭り(後日リリース予定) Dance @ YOKOHAMA 、横浜音祭り)、他 都道府県 神奈川県 ・カナガワ リ・古典プロジェクト 神奈川県が推進する「マグカル(マグネット・カルチャー) 新規事業、そして既存事業をブラッシュアップし、 事業」の一環として、地域の文化遺産(=古典)を再(= 文化プログラムにふさわしい内容にして、発信す RE)発見し、現代に生きる文化芸術として再(= RE)発 る。 信することで、伝統文化の魅力を外国の方や若い方など 一人でも多くの方に体感していただくことを目指す。 政令指定都市 49 添付資料 国内の取組に関する情報収集 自治体名 左記の内、平成 28 年度に予定している事業等 政令指定都市 新潟市 静岡市 平成 28 年度から「静岡市総合戦略」重点事業と して「『まちは劇場』推進事業」をスタートさせる。 この事業は、本市の有する街並みや公共施設な どのハードストックと文化・芸術などのソフト ストックを活かした、歩くだけで「わくわくド キドキ」するまち、このまちに暮らす誇りと喜 びを感じることのできるまちを目指す継続的な 取組みとしている。また、アーティストと市民 が一体となって取り組む創造的なまちづくりの 魅力を国内外に情報発信することで、インバウ ンド効果を生み、交流人口の増加による経済的 な効果をもたらすことを狙いとしている。本事 業として実施する内容は同時に東京オリンピッ ク文化プログラムにおける本市のコンテンツの ひとつとして位置付けていくものとしている。 浜松市 既存の「浜松国際ピアノコンクール」(平成 27 年度、平成 30 年度)、 「静岡国際オペラコンクール」 (平成 29 年度、平成 32 年度)を軸とする。 臨時事業として平成 27 年度に「世界創造都市 名称:世界音楽の祭典 2016 フォーラム in 浜松 2015」を開催したのに続き、 概要:ユネスコ創造都市ネットワークに加盟する 19 都市 平成 28 年度に「世界音楽の祭典 2016」、平成 29 などから各都市を代表する音楽団 ・ 演奏家等を招聘し、コ 年度に「サウンドデザインフェスティバル 2017」 ンサート等を開催する。 を開催する。東アジア文化都市への参加も検討 する。また、市内での芸術活動の活性化を図る ため、中間支援組織・アーツカウンシル等の設 置に関する研究を進める。 中核市 神戸市 具体的な実施内容・スケジュールは出ていない が、国の動向などの情報収集を図りながら、国 未定 際的な実施事業について検討している。 岡山市 未定 いわき市 着地型観光プログラムを、年間を通じ取りまとめ、提供す 地域の再評価につながるプログラムを構築した るいわきサンシャイン博において、いくつか、地域に根ざ いと考えているが、詳細は未定。 した文化プログラムを提供予定。 金沢市 多様な文化事業(美術展・音楽祭・舞台芸術等) の実施 高松市 松山市 普通市・区・町 50 2020 年に向けた文化プログラムの意向 ・H28 見直し予定の「新潟市文化創造都市ビジョ 名称:BeSeTo 演劇祭 2016 新潟 ン」において、文化プログラムの推進等を盛り 概要:芸術を核とした相互理解を進めるものとして、1994 込む。 年から日中韓持ち回り ・「2020 年東京オリンピック・パラリンピック競 で開催され、Noism 芸術監督である金森氏が 2014 年より 技大会」のキックオフ(H28 年 10 月)に合わせ 国際委員を務める て、 「BeSeTo 演劇祭 2016」や「にいがたアニメ・「BeSeTo 演劇祭」を本市で開催し、高いレベルにある本 マンガフェスティバル(がたふぇす)」などの大 市の舞台芸術並び 型イベントを開催し、市民の機運醸成を図る。 に文化創造都市としての本市の取組を国際発信する。 検討中 (仮)文化振興計画にて検討予定 東川町 写真をはじめ、大雪山や家具・クラフト等のデ ザイン、公立日本語学校に集まる他国言語等を 広範に本町に集積する文化としてとらえ、文化 の融合による交流人口の増加や各種事業の展開 を図りたい。 美瑛町 芸術文化に触れることで、豊かな感性や創造性 ・飯面雅子サンドアート・ファンタジア公演音楽と砂の芸術 を養い、地域の伝統芸能や郷土について更に興 を融合させた物語を展開するとともに、観客体験コーナー 味と関心を持ち、地域資源の継承と健全で心豊 も設け、 参加型の公演を開催する(1,000 千円、300 ~ かな人づくりを進めるために様々な優れた芸術 400 人) 鑑賞の機会を創出する。 八戸市 現在実施しているアートプロジェクトを継続実 施しながら、インバウンド対策について検討す る予定。また、オリンピック期間中が地元の夏 南郷アートプロジェクト(予算、プログラムは現在検討中) 祭りと重複することから、既存の伝統芸能を活 用したプログラムの可能性を検討予定。 山形市 未定 鶴岡市 2020 年までの文化プログラムの実施については、 ぜひ本市においても協力したいと考えており、 鶴岡食文化創造会議・世界のユネスコ食文化創造都市を 段階的に実施していきたい。現在は、そのため 招いての食文化の情報交換 の体制や計画づくりを行っている段階。 草加市 検討中 富士見市 市民文化会館キラリ☆ふじみを舞台とした文化 プログラムに関する事業の実施を検討していき 検討中であるため、特になし たい。 添付資料 国内の取組に関する情報収集 自治体名 2020 年に向けた文化プログラムの意向 左記の内、平成 28 年度に予定している事業等 普通市・区・町 豊島区 国際アート・カルチャー都市構想」として文化 戦略、空間戦略、団体戦略を策定し、実現に向 けての具体的取組を実施する。① 短期的取組 (2015 の新庁舎移転~)新庁舎まるごとミュージ アム実施、アニメ・マンガによるまちづくりの 推進、F/T、演劇祭の拡充など文化プログラムの 推進、文化・観光ボランティアの育成他 ② 中期的取組(2020 まで)新ホール・新区民セ ンターの完成と文化イベントの開催、オリンピッ ク・パラリンピック文化プログラム展開等 ③ 長期的取組(2025 ~)国際コンテンツ産業の 集積、国際イベント招致等 松戸市 【名称】暮らしの芸術都市創造事業 ・松戸駅前の旧ホテルを活用した「PARADISE AIR」を発 展させるため、現況の 4 階(8 部屋)だけでなく、7 階ま での全 4 フロア(32 部屋)を活用し、年間 50 組のアーティ ストを受け入れる日本最大規模の文化芸術の海外発信拠 点をつくる。 ・松戸の歴史や文化伝統を受け継ぎ、「一宿一芸」をコン セプトとして、ロングステイとショートステイの2つプログ ラムを用意し、音楽、美術、ダンス、映画、演劇、ファッショ ン等様々なジャンルのアーティストやキュレーター、リサー ①国内最大規模のアーティスト滞在制作拠点を チャーの滞在を受け入れる。 創り、多様な分野のアーティスト活動を支援す ・スタジオ・プログラムでは、空き部屋(約 26 部屋予定) る。②アウトリーチなどにより、幅広い世代が を若手アーティストやクリエイター、起業家にスタジオとし 生き生きと創造や文化芸術に参画できるように て有料で年間を通じて貸し出す。これらの家賃収入によっ する。③創作活動に開かれた寛容性のある街と て安定財源を増やし、将来的には公的資金のみに依らな して、国際的に発信する。④様々なアート従事 い独立した運営体制を進めていく。 者の安定的で継続的な雇用を創出する。以上、 ・これまで松戸で実践的に活躍してきた若手アートコー ①から④の目的を遂行する団体「一般社団法人 ディネ ーター による新 た な 活 動 団 体 PAIR を立ち上 げ、 PAIR」を設立し、2013 年に立ち上げたアーティ 「PARADISE AIR」を中心に既存の文化事業との連携や発 スト・イン・レジデンス「PARADISE AIR(パラ 展を進める。 ダイスエア)」事業を 2016 年から発展させて運 ・事業の評価や行政への政策提言を行うため、アート専門 営する。また、アート専門家や学識者、地元関 家や学識者によって組織される仮称)アーツカウンシル松 係者を中心に仮称)アーツカウンシル松戸を設 戸準備委員会を設け、将来的には松戸版のアーツカウンシ 立し、本事業の方向付けや評価を行う。 ルの設置を目指す。 「PARADISE AIR」を核に、市内での様々な文化事 【ネットワークの形成と広がり】 業を緩やかにつなぎ、様々な人々へ開かれた文 ・ショートステイ・プログラムの一環として、近隣の大学(聖 化芸術のプラットフォーム機能をつくり、日常 徳大学、千葉大学)と協力しながら、保育現場等の教育 的に文化的な豊かさを享受できるまち「暮らし 機関にアーティストを派遣するアウトリーチに取り組む。 の芸術都市」を実現する ・子供たちに文化芸術と親しむ機会を創出するとともに、 活動を通じて教育者、学生、保護者などの文化芸術への 関心を高める。 ・作品発表の場所として、市内の公園や河川敷などの公共 空間や遊休不動産など、様々な地域資源を活用する。 ・国内外のアーティスト・イン・レジデンスや文化芸術施 設との関係性を発展させ、相互の交流プログラムの検討を 行う。 ・作品制作や発表の過程を通じて、国内外の様々な団体と のネットワークを構築する。 【予算規模】2,600 万円 【集客規模】366,000 人 十日町市 ・大地の芸術祭を核としたアートイベントの実施 (越後妻有 大地の芸術祭アートトリエンナーレ 2021) ・大地の芸術祭に関連したプログラムを検討中。 なし また当地域で発掘された国宝火焔型土器の縄文 文化や、雪まつりなど豪雪地帯特有の里山文化 も発信していきたい。 ① 国際アート・カルチャーフォーラムの開催(平成 27 年 度で実施回数 123 回を数える「としま文化フォーラム」を 国際アート・カルチャー都市構想推進の基幹事業と位置づ け「としま国際アート・カルチャーフォーラム」と改名し、 区民で構成されるアート・カルチャー特命大使と将来像の 共有を図る。) ② 演劇のまちの魅力発信 津南町 現時点で構想はないが、市民団体から国際絵手 紙展の打診有り。 氷見市 是非実施したいと考えており、現在検討中 南砺市 文化芸術振興基本計画策定中により未定 可児市 イ ギ リ ス の 地 域 劇 場 で あ る ウ エ ス ト・ ヨ ー ク シャー・プレイハウスとの演劇作品の国際共同 台本の制作について検討中。 制作について検討中。 51 添付資料 国内の取組に関する情報収集 自治体名 2020 年に向けた文化プログラムの意向 左記の内、平成 28 年度に予定している事業等 普通市・区・町 長浜市 ①「日本 の 祭り in な が はま 2016」 開 催 H28.10/29 ~ 30 地域伝統芸能全国大会の開催と、長浜曳山祭ユネス コ無形文化遺産登録を記念する事業の実施。県内外から ・伝統芸能を活かしたイベントの実施 25 ~ 30 の伝統芸能団体の参加を予定。 ・2020 年を見据えた若者による文化芸術創造事 ②「長浜ものがたり大賞」募集 9月~11月 業(H28 年組織を設立予定) 長浜市を舞台にしたものがたり(シナリオと漫画)を募 集。 ③「観音の里・長浜」の発信に向けた東京藝術大学との 観音展実施 7月頃 守山市 本市では、平成 26 年に策定した守山市文化振 興アクションプランにおいて市の地域資源を活 かしながら、将来の文化振興の担い手を育成し、 活発な文化活動をすることで、賑わいと活力に あふれる「住みやすさ日本一」「文化芸術あふれ るまち」の実現を目指している。 2020 年の東京オリンピック・パラリンピック競 技大会に向けて、本市では、地域資源を活かし た事業を展開し、日本古来の風習を体験できる 取組など、訪日外国人に関心を持ってもらえる ような事業の実施などに注力する。 また、文化芸術における創造都市として全国的 に認識していただけるよう、現在行われている 文化芸術創造都市事業の広報を広域的に展開す る。 甲賀市 現在行っている、平成 22 年に策定した「甲賀 市文化のまちづくり計画」の中間見直しの中で、 文化プログラムを進める方向で検討している。 斑鳩町 文化プログラムのみならず、2021(平成 33)年 の聖徳太子 1400 年御恩記を迎えるにあたり、「木 の文化」に関するプログラムについて検討してい る。 篠山市 文化庁の文化芸術創造都市、日本遺産認定都市 及びユネスコの創造都市としての文化的取組を まちなみアートフェスティバル 進め、併せて観光 DMO を設立し、国内外からの 観光客を呼び込む。 尾道市 平成 27 年度より 3 年間で「現代アートの創造 発信事業」に取り組み、現代アートの想像性に おいて地域資源の掘り起こしを試行する。その 成果を検証しつつ、既存の本市固有に育まれて きた既存の文化芸術活動の継承と発展を支援し、 該当なし 総合計画に掲げる「活力あふれ感性息づく芸術 文化のまち 尾道」の実現に向けた文化プログ ラムに取り組み、地方創生に向けた総合戦略の 一助としたい。 宇部市 本市では、UBEビエンナーレなどの地域資源 を生かし、アートによるまちづくりを進めて交 流人口の増加を図ることとしており、平成 27 年 度に開催した「第 26 回UBEビエンナーレ×ま UBEビエンナーレについて、平成 28 年度文化庁地域活 ちじゅうアートフェスタ 2015」では 141,983 人 性化・国際発信推進事業に事業申請中。 の来場者を迎えることができた。2020 年に向け て、こういった取組内容を充実させ、更なる交 流を行うよう取り組んでいきたい。 5.(表 4-5) 特に知りたい/発信したいと思う項目や取組 都道府県 政令指定都市 52 自治体名 滋賀県 徳島県 特に知りたい/発信したいと思う項目や取組 滋賀県立陶芸の森で実施する国際シンポジウム「関西アーティスト・イン・レジデンス」 (主催:関西広域連合) について、CCNJのホームページで情報発信したい。 (19)に記載した文化事業について、必要に応じて、CCNJホーページで情報発信したい。 札幌市 札幌国際芸術祭も No Maps も事業が立ち上がったばかりであり、これからますます発展させていくために、さ まざまな情報を広く閲覧・検索し、参考にしたいと考える。 横浜市 加盟自治体が開催する芸術祭の内容や予算規模、運営体制を知りたい。 アーティスト・イン・レジデンスに関する情報を発信し、アーティスト・クリエイターの集積につなげたい。 浜松市 大規模事業について、開催時期、開催地などをカレンダーにし、海外に向けた(あるいは海外の)情報発 信サイトとリンクすることで、加盟各都市の国際的な知名度向上とインバウンドの増加を図る。 神戸市 ④各加盟自治体のクリエイティブ人材集積のために行っている施策の概要、予算規模、効果を知りたい。 岡山市 ②加盟自治体が実施している市民などが実施する事業への助成金制度の予算と 1 件当たりの助成金額の上 限、実績としての助成件数等の状況。 添付資料 国内の取組に関する情報収集 普通市・区・町 自治体名 東川町 特に知りたい/発信したいと思う項目や取組 各自治体における文化芸術活動の推進体制 美瑛町 ②各加盟自治体の主要施設の概要、管理・運営体制を知りたい。 山形市 アーティスト・イン・レジデンスの実施体制と概要についてお聞きしたい。 草加市 ②各加盟自治体の主要施設の建築年、長寿命化に向けた大規模改修の有無 富士見市 ②域内の文化芸術創造都市事業について、当市の文化会館で来年度以降実施する、国際交流事業や地域連 携事業について、CCNJ ホームページで情報発信したい。 ④オリンピックに向けた文化芸術創造都市事業について、参加自治体が行っている文化事業について知りた い。 松戸市 ③域内のアーティスト・イン・レジデンス拠点で取り組んでいる内容を知りたい。また多言語で発信して 行きたい。 豊島区 欧州文化都市の取り組み(成功例と失敗例) 氷見市 具体事例について、運営体制、予算規模と経済波及効果を知りたい。 南砺市 各市町村の文化創造都市事業の執行状況 可児市 中心事業である「ala まち元気プロジェクト」の発信 長浜市 ①加盟団体のメディア芸術、コンテンツ事業についての情報が知りたい。 守山市 加盟自治体の開催している芸術祭等について、運営体制や予算規模、来場者数、協力団体の体制を知りたい。 各自治体の情報を広く知り、同じような規模のイベントの自治体に実施状況を詳しく聞いてみたい。 篠山市 各加盟自治体の国際的な芸術祭について、予算規模とその実施体制や経済波及効果を知りたい。各加盟自 治体の芸術家などの人材育成に関する制度について知りたい。 尾道市 瀬戸内国際芸術祭など全国的な知名度を持つ文化イベントについて、予算規模と経済波及効果を知りたい ※使用した調査票については WEB(http://ccn-j.net/activity/) に掲載 53 添付資料 世界創造都市シンポジウム 添付資料 第 3 章 関係 世界創造都市シンポジウム in 金沢 の取組を推進されている自治体や団体の皆様にとって、参 主催者挨拶 文化庁 長官官房審議官 磯谷桂介氏 文化振興のエンジンとして、 「文化芸術創造都市」の取組を、 みなさんこんにちは、ただ今紹介をいただきました。文 推進していきたいと考えております。 考に出来る部分が多いと考えております。また、文化庁と しても、本日のシンポジウムの成果を踏まえつつ、地域の 化庁長官官房審議官の磯谷と申します。世界創造都市シン さて、2020 年には、東京オリンピック・パラリンピック ポジウムの開催にあたり、主催者を代表して、一言御挨拶 競技大会が開催されます。政府としては、この 2020 年を、 を申し上げます。 スポーツだけではなく、文化の祭典とし、また、東京のみ 本シンポジウムの開催に際して、多大なる御尽力をいた だきました、創造都市ネットワーク日本、CCNJ の顧問で ある佐々木雅幸先生、今年度の CCNJ 代表幹事団体であり、 ならず、日本全国を文化の魅力で盛り上げていきたいと考 えております。 そのためには、皆様に、全国における文化プログラムの 本シンポジウムの開催都市でもある、山野市長をはじめと 中核を担っていただくとともに、2020 年に向けた文化プロ する金沢市の皆様方、本日ご参加いただきました、ボロー グラムを、地元の魅力の再発見や、海外からの来訪者の増 ニャ、モントリオールの皆様方、本シンポジウムのために 加の契機として、積極的に活用していただき、2020 年以後 お越し下さいました CCNJ 加盟団体の皆様方、準備に当たっ にも続いていく、地域の文化振興への大きなステップにし てこられた、一般社団法人ノオトの皆様、そして、その他 ていただきたいと思います。 多くの皆様に感謝申し上げます。 さて、文化庁では、平成 13 年に成立した「文化芸術振興 基本法」に基づき、概ね 5 年に 1 度策定される「文化芸術 の振興に関する基本的な方針」に則り、文化施策を総合的 に推進しているところでございます。 去る5月 22 日には、文化審議会の議論を経て、2020 年 文化庁としても、今後とも、CCNJ のような、意欲のある 自治体や団体の皆様で構成されたネットワーク組織の支援 をして参ります。 本日の会の御盛会をお祈り申し上げるとともに、皆様方 の取組の一層の発展を期待して、御挨拶とさせていただき ます。 度までの概ね6年間を対象とします、第4次「文化芸術の 振興に関する基本的な方針」が策定されたところです。 本基本方針では、教育、福祉、まちづくり、観光・産業 等幅広い分野との関連性を意識しながら、それら周辺領域 開催挨拶 金沢市長 山野之義氏 皆さまこんにちは、世界創造都市シンポジウムの開催に あたり、一言ご挨拶を申し上げます。 への波及効果を視野に入れた文化芸術振興施策を展開する 今ほどご挨拶いただきました、磯谷桂介化庁長官官房審 ことや、昨今の人口減少社会、過疎化や、少子高齢化、地 議官をはじめ、顧問の佐々木先生ほか、そして今日お集り 域コミュニティの衰退等、現在の我が国が抱える諸課題の いただきました皆さま、ようこそ金沢市にお越しいただき 改善や解決に、文化芸術を役立てることなどを通じて、成 ました。ようこそ心から歓迎を申し上げます。 熟社会に適した新たな社会モデルを構築することを目指し、 また、海外のユネスコ創造都市からは、ボローニャ市、 文化芸術を日本の未来をつくる資源と捉え、まして「文化 モントリオール市からお越しをいただきました。このあと 芸術立国」を創出することとしております。 発表もいただきます。大変楽しみにしているところであり また、本日お集まりの各都市の皆様が取り組んでおられ ます。また国内からは、CCNJ のメンバーでもあります山形 る、文化芸術創造都市に関しましては、文化芸術創造都市 市、新潟市、篠山市の各市長さんにパネリストとしてお越 に取り組む地方公共団体その他関係者による全国的・広域 しいただき、それぞれの都市の取組をご報告いただけると 的ネットワークの充実・強化を図ること。また、海外の創 聞いております。 造都市やユネスコ等の関係者との交流を促すとともに、文 ご存知のとおり 3 月 14 日北陸新幹線が、金沢駅に開業い 化芸術の持つ創造性を地域振興、観光・産業振興等に活用し、 たしました。高速大量輸送機関がこの金沢市にはいってき 地域課題の解決に取り組む活動を支援する」ことと、明記 たことによりまして、ヒト・モノ・情報様々な交流が盛ん されているところでございます。 になりました。大変活発な交流がなされております。 本日のシンポジウムの議題は、 「文化芸術を生かした都市 そして2月に CCNJ 総会を開催した際に申し上げました の再興と社会課題の解決」ということで、第4次基本方針 とおり、明日からユネスコ創造都市ネットワーク世界会議 において強調されているとおり、まさに時宜を得たもので がこの金沢で開催されます。31 国、68 都市の皆様が今もぞ あると考えております。 くぞくと金沢に入ってきていただいております。明日から ユネスコのクリエイティブシティに認定されている、ボ ローニャレポレ氏とモントリオールの専門家の方から、音 活発な意見交換が行なわれると期待をしているところであ ります。 楽やデザインを生かした、地域活性化の取組の御紹介、また、 加えて先ほども申し上げた新幹線がきたことによって交 今後、ユネスコ加盟を目指している、山形市、新潟市、篠 流がさらに活発になるインフラが整ったと思っております。 山市の市長様からも、お話を頂けると伺っております。 今日の会議を通じて、また今日を含めた 4 日間、活発な意 本日のシンポジウムの内容は、国内の文化芸術創造都市 54 見交換がなされることによって、それぞれの都市の知見を 添付資料 世界創造都市シンポジウム 共有指しあう、また交流を深めていくことによって、お互 いう面もあり、ボローニャという都市には研究・訓練、生産、 いの知見に刺激をあたえ、新たな価値がついてくる。いわ あるいはイベントの主催、ラジオ番組、スペース管理、音 ゆる付加価値というものを高めていく。そうやって都市が 楽商品の販売に特化した多くの団体があります。 持続発展的に成長をしていくことができると、私は固く信 じて疑いません。 ボローニャの文化活動は音楽界の昔からの分野において 広くかかわる団体の数が非常に多いという点で突出してい 是非、この会議を通じて、私もそうですけれども、CCNJ ます。市内には、熟練したスキルを持つ専門の制作会社も のメンバーの皆様、今日様々なお立場で参加されている、 いくつかあります。ボローニャの影響力は、音楽界で活動 皆さまにとって大変実りある会になりますことを期待いた する多くの会社がボローニャを通過した後に市場で成功を しまして、私からの歓迎の挨拶とさせていただきます。も 収めていることで証明されています。 う一度申し上げます。ようこそ、ようこそ金沢市にお越し ボローニャにはいくつかの重要なエージェント業者だけ 頂きました。心より歓迎申し上げます。ありがとうござい でなく、新しく出てくるバンドを支援する多くの独立系レー ました。 ベルがあります。これらはマーケットにとって、特にヨー ロッパでは音楽において大切な点です。 文化芸術を生かした都市の再興と社会課題の解決 - 世界の 創造都市による取組み紹介とセッション ボローニャ市経済発展、シティプロモーション、観光、 大学があることについてはさきほど申し上げました。ヨー ロッパ最古の大学であり、国際的にも名高い重要な教育機 関の 1 つであるボローニャ大学は、毎年およそ 85 名の留学 国際関係およびデジタルアジェンダ担当 市長代理 マッテ 生をボローニャに招き入れており、ボローニャが文化を楽 オ・レポレ氏 しむ若者が多く集まる街になるよう貢献しています。 ありがとうございます。こんばんは、私はマッテオ・レ ボローニャにはその他にもジョンズ・ホプキンス大学な ポレと申しまして、ボローニャ市の経済発展を担当してお ど外国の大学もあります。ジョンズ・ホプキンスはワシン ります、市長代理でございます。ボローニャはイタリアの トン DC、ボローニャ、北京に拠点を置くアメリカの大学で 中心部にあり、人口は 100 万人です。ボローニャといえば す。他にもロイヤルカレッジ・オブ・スペインやカレッジ・ おそらく多くの方がヨーロッパ最古の大学があるところと オブ・チャイナをはじめとした多くの教育機関があります。 してご存じかと思いますが、実は 2006 年からユネスコによ り音楽の都市としても認定されています。私たちにとって ボローニャではクラシック、現代音楽、ジャズ、電子音楽、 この認定は名誉あることであり、この場にいることも光栄 オルガン音楽、オペラといった幅広いテーマの音楽祭や に思います。初めに、こちらにお越しのご来賓の方々、そ イベントが一年を通じて数多く開催されています。Teatro して金沢市長にはお招きいただいたことに感謝申し上げま Comunale はこの取り組みすべての柱の 1 つとなっていま す。 す。ボローニャ・フェスティバルは特にクラシック音楽に 焦点を当てた祭りです。その他に、ジャズとクラシック音 ボローニャは柱廊式の玄関と都市景観、建築でも有名で 楽がテーマの祭りや、アンジェリカ(Angelica)という現 す。この写真では、ボローニャの音楽、景観、都市という 代音楽・実験音楽に焦点を当てている祭りもあります。ロ 一面をご覧いただけます。ボローニャはイタリアの中心部 ボット(roBOt)は名前から想像がつくとおり電子音楽の祭 にある中世都市で、フィルファーモニー音楽院 Academia りです。ボローニャ・ジャズ・フェスティバルはジャズをテー Philharmonicorum や日本でもとても有名なボローニャ市立 マとしたもう 1 つの重要な昔からある祭りです。オルガン・ 劇場 Teatro Comunale など多くのオペラハウスがあります。 アンティーク(Organ Antique)という祭りは昔からの楽器 またマルティーニ師の名をとった音楽院や、多彩な学科の をテーマにしています。 あるボローニャ大学もあります。ボローニャ大学では 1970 年に芸術、音楽、それから演劇を専門とした総合芸術学部 ボローニャには、国際音楽博物館・図書館など、音楽専 (DAMS*)が設立されました。現在では合計 80,000 人の学 用のホールや会場が数多くあり、何世紀にも及ぶヨーロッ 生がいるこの大学で、DAMS には 7,000 人の学生がいます。 パの音楽の歴史の記憶をとどめています。またサン・コロ * Department delle Arti, della Musica e dello Spettacolo ンバーノ教会(San Colombano Church)の複合施設では巨 こういった歴史ある施設の活動のおかげでボローニャは 匠タリアヴィーニによる古代の楽器をそろえた有名なコレ 過去にモーツァルトやワグナーなどの音楽家を迎えること クションを見ることができます。この写真に写っているの ができました。ちなみにワグナーは 1876 年にボローニャの は、国際博物館 Museo Internazionale で、こちらがサン・ 名誉市民の称号を受けました。2004 年にはリッカルドムー コロンバーノ教会の中にあるタリアヴィーニ・コレクショ ティ、2009 年にはクラウディオ・アバドも同じく名誉市民 ンです。 の称号を受けました。他にもロッシーニ、 ロエンツェッティ、 フォルネリ、ヴェルディ、レスピーギといった巨匠も一定 2013 年にはユネスコ創造都市ネットワークの総会も主催 の期間、ボローニャで活動していました。ボローニャは都 しました。2014 年には、音楽と芸術の表現を国際化するた 市としての歴史を持つという面もあれば、現代的な音楽と めの開かれた取り組みであり、フェスティバルを回るツアー 55 添付資料 世界創造都市シンポジウム をして交流することにより音楽家や音楽関係の運営者によ ちの過去、そして明らかに将来の一部であるため、非常に る海外展開を支援する 11 件のプロジェクトを選定しまし 重要です。創造産業での集合的手法こそ、例えば製造部門 た。これはユネスコを通じてアジアからアメリカ、 アフリカ、 などの工業生産を文化的な潜在性と融合させるためにまさ そしてヨーロッパまでのすべての国々が協力し合い、交流 に必要だと私たちは考えています。また大学、学術での教 できる 1 つの例だと思います。 育プログラムにおいてもそうだと思います。Made in Italy(イ タリア製)というラベルを掲げていわゆる国のマーケティ それでは私たちの音楽の国際化について、2 つの事例を 紹介したいと思います。 ングやプロモーションを行う取り組み全般において、創造 性と文化の振興が私たちの将来戦略の基礎となります。で 1 つ目がロボット・フェスティバルです。これは電子音 すからユネスコから認定を受けるということは私たちに 楽とデジタルアートの祭りであり、アルゼンチンのブエノ とってとても大切なことであり、皆さんと連携することが スアイレスで今年初めて開催されました。もう 1 つの例は とても重要です。これはとても面白いプログラムで、創造 ピッコロ・コロ・アテナ児童合唱団で、2014 年に浜松世界 都市ネットワークはとても楽しいものですから、この目標 青少年音楽祭に出演しました。 を達成することに関心を持っている他の都市も支援したい 芸術界の国際化の支援は国際関係によっても可能です。 と考えています。ありがとうございました。 新しい機会やステージを探し、サービスを提供し、プロモー ションをするのです。左側にあるのが中国、日本、韓国で の Gruppo Ocarinistico Budriese ですが、これはオカリナで とても有名です。また独立系バンドがゲントの GLEAM フェ スティバルに参加もしています。 モントリオール市デザイン・コミッショナー、都市経済 計画部デザイン担当局長 マリー = ジョゼ・ラクロワ氏: まず初めに、今年のユネスコ創造都市ネットワーク総会 創造都市ネットワークの加盟都市間での協力関係には音 の主催者である金沢市長と金沢市に心からの感謝の念を申 楽家の交流も実は含まれています。ボローニャとセビリア し上げます。私たちは日本に、そしてこちらのすばらしい の音楽院では、バロック音楽のプロジェクトとして、若い 都市に来ることができて本当に嬉しく思います。また佐々 音楽家同士での情報共有や交流が行われています。2015 年 木先生と皆様、本日の講演のために招待していただきあり 4 月にはスペインの学生グループがボローニャで演奏しま がとうございます。 した。2016 年の 6 月には、イタリアの音楽専攻の学生がス ペインを訪れて特別な活動に参加する予定です。加盟都市 モントリオールではデザインとデザイナーが文化と経済 間の提携の一環として文化事業の運営者が行き来するとい において原動力となっており、最近になってデザインの都 うこともあります。この 2 年間、ボローニャはマンヘイム 市として国際舞台で台頭してきました。モントリオール市 からジャズ音楽フェスティバルの招待状をいただいており、 は創造性あふれるこの力をどのように活用すれば生活環境 そこでは若い運営者が国際シンポジウムのワークショップ を向上させられるかについての理解を常に深めています。 に出席する機会を与えられています。 モントリオールのデザイナーのコミュニティは大きく、ケ ベック州のデザイナーの 2/3 はモントリオールに住んでい 協力関係の中でもう 1 つ好ましい例が、若い芸術家のた ま す。 他 に も モ ン ト リ オ ー ル に は、International Design めの居住プログラムです。ボローニャとコロンビアのボゴ Alliance、といった評判の高い研修機関や有名な展示セン タはボローニャのロボット・フェスティバルのおかげでデ ター、団体があります。デザイン都市としてのモントリオー ジタルアートと電子音楽に特化した芸術のためのレジデン ルの長所・特長は、プロジェクトの規模や種類に関係なく、 シー・プログラムを始めています。2014 年の第 1 回はコロ 都市全体にわたって創造的なデザインと建築がちりばめら ンビアの芸術家がボローニャに滞在しました。ボローニャ れているという点です。デザインに触れる機会が多く、控 の音楽プロジェクトでは、最も関連のある音楽テーマと機 えめであったり、華々しくあったりと、創造性が絶妙に遍 関の位置づけを行っており、現在は会場、イベント、研修 在しています。 センター、調査別に作成されています。この目的は音楽分 野の知識を高め、運営者と他の加盟都市との直接的な提携 チャールズ・ランドリーとリチャード・フロリダにより が進むようにすることです。また音楽の都市にテーマを絞っ もたらされた創造経済、または創造都市という概念が流行 たウェブサイトがありまして、そこでは英語とイタリア語 るかなり前、ほぼ 25 年前の 1991 年に、デザインコミッショ ですべての関係図を見ることができます。 私たちは文化と ナーという役職を創って以来、モントリオール市はデザイ 創造性が将来の文化および経済資本にとって大きな発展の ナーが市の経済・文化の発展に関わるよう奨励するいくつ 可能性を秘めていると確信しており、ボローニャは引き続 かの取り組みの振興・計画を支援してきました。 きこのネットワークを活用して最高品質の地元発の商品を 販売促進し、既存の提携関係を強化していきます。 このスライドは、1991 年以降、そしてそれより前のデザ イン振興における私たちの関わりの歴史を示しています。 都市のデザイン、デザイン都市の統合行動計画を通じて、 特にイタリアの都市にとって文化と文化遺産全般は私た 56 2006 年に設立されたモントリオール・デザイン局(Design 添付資料 世界創造都市シンポジウム Montreal Bureau)は都市デザイン・建築プロジェクトを セスで、2 つ目は広報宣伝の取り組みである商業デザイン・ 開始して支援することによりモントリオールのデザイナー モ ン ト リ オ ー ル 賞(Commerce Design Montreal Awards) のための機会を創ることを目指しており、市民、企業、市 です。どちらの戦略も、モントリオール・デザイン局がど 会議員を対象とした意識向上のための教育構想を通じて建 のようにモントリオールの都市環境の質を持続可能な形で 築とデザインを共有しながら鑑賞することを目的としてい 高めて、デザイナーを各種プロジェクトにさらに組み入れ ま す。 経 済・ 都 市 開 発 課(Department of Economics and ることによって公的・私的スペースのデザイン品質を引き Urban Development)は市内におけるデザイン振興のみを 上げることを目指しているかを説明しています。私たちが 担当する 8 人の専門家からなる小さなチームですが、その 地方自治体としてよりよいクライアントであり、デザイナー 基本的な使命はデザイナーたちの支援を得て都市のデザイ たちにとってよりよいクライアントであれば、都市がより ンの質を高め、公的な委員会およびデザインのために指導・ よく形成されるのに役立つと思います。 支援し、モントリオールを拠点とするデザイナーたちのた めに市場を開拓し、彼らの才能を後押しすることです。 大きく一歩を踏み出す段階にはまだありませんが、デザ イナーに活躍の場を与えようという動きはあります。モン これらすべての資産を携えて、モントリオールはユネス トリオールの未来においてデザイナーにもっと参画しても コデザイン都市として、クリエーターとデザイナーだけで らい、より質の高い仕事をしてもらうための創造性に富む なく、市民と市会議員も自身が暮らす環境を刺激する方法 提案を求める声がいくつも上がっており、2006 年以来、コ としてのデザインに全力を注ぐ都市という地位を確立して ンペを見つけ振興するために 600 万ドルが投資されました。 います。地方自治体は、その介入により活動を支援するた これは私たちのウェブサイトの 1 ページですが、ユネスコ めのデザインの戦略的な重要性を認識しています。公共機 デザイン都市としてのプロジェクトすべてを詳細に記した 関として都市は手本を示し、自らの活動において革新的で サイトもあります。こちらには毎年開催されているコンペ なければなりません。デザイナーは私たちの大部分の革新 の一覧が掲載されています。これまでに、図書館、バス待 的な人材の一部であり、モントリオールを世界的に有名で 合所、リサイクル用回収容器、スポーツ複合施設、プラネ 独創的な知的創造拠点にする上で極めて重要なパートナー タリウム、広場のプロジェクトに関するコンペを開催する なのです。 ことによってモントリオール在住のデザイナーのために市 場を開放してきました。これらのプロジェクトが完了した 私たちの課題ですが、今モントリオールは保存されるべ ら、自転車のシェアリングを行う Bixi Bike Share Network き資産である「デザイナーの都市」という立場から「デザ や繁華街のカルティエ・デス・スペクタクルなどの他の取 インの都市」へと 10 年以内に変わりたいと強く望んでいま り組みと同じようにモントリオール市民の日常生活の環境 す。2006 年にユネスコから認定していただいたのは実は世 を大幅に向上させるでしょう。今挙げた 2 つの事例は共に 界のデザイン首都という地位ではなく、デザイン首都を中 デザインにおけるモントリオールの優秀さを象徴していま 心としたさらなる発展への招待状だというとらえ方をして す。 います。デザインの都市というよりも私たちはデザイナー の都市であると言えるので、これからはデザインの都市に 2 つ目は、デザイン都市はデザイナーに仕事を与え、デ なりたいと強く願っています。この目標を達成するための ザインの都市として優れたデザインを奨励すべきだという 戦略として、デザイナーの真価をより認めること、デザイ 例です。これは商業デザイン・モントリオール賞という取 ナーの意識を向上させること、そして特にデザイナーに雇 り組みで、1995 年から 2004 年まで実施されてとても成功 用を提供することを考えています。そこでこれらの創造性 したプログラムです。10 年連続で行いまして、最近また導 に富む人材をモントリオールで抱え込み、これらの人材の 入することを決めました。なぜ都市は優れたレストランや 持つ才能から恩恵を受け、私たちの都市の未来により貢献 店舗デザインを奨励すべきなのでしょうか。それはこれら してもらうために市内の市場をデザイナーに開放するので の施設のデザインが優れていて魅力的であれば、その施設 す。市と開発業者は、モントリオール内外から最高のデザ のある都市もそうなるし、逆もしかりだからです。 イナーを探し求め、モントリオール市を適切なやり方で築 レストランや小さな店舗は都市との最初の接点の 1 つで くための条件を提供しなければなりません。モントリオー あり、その都市に住む人たちと通勤や訪問する人たちの日々 ルの未来にとってデザインを不可欠なものとしてみなすと の暮らしに大きな影響を及ぼします。小売店は都市の魂で いうことは、これらの力強いデザインのプロセスが市と住 あり、近隣の設備はポストモダンの都市社会での人の交流 民 1 人 1 人を再形成する機会をとらえるということなので にとって極めて重要です。それで、商業デザイン・モント す。 リオール賞は能力の高い専門家の支援を受けて自身の店舗 のデザイン品質に投資する利点についてモントリオールの モントリオールでは、数多くの戦略を策定しているため、 短いこのプレゼンテーションでは 2 つの戦略を例示するこ とにします。 1 つ目はデザインと建築コンペに基づいた公的調達プロ 商人とレストラン経営者を説得することを目的として 1995 年に創設されました。 この賞の意図は、生活環境の品質を高めて都市をより魅 力的にし、企業の競争力を引き上げ、専門の商業デザイン 57 添付資料 世界創造都市シンポジウム サービスに対する地域の需要を高める方法としてモントリ 年記念行事にはすべてのパートナーの代表者をお招きしま オールの商業デザイン市場を発展させることにあります。 した。ストラスブール、ナント、マルセイユ、リヨンから 狙いは他の商人が後に続くよう促し、これらの商人を優れ の代表団がお越しになりましたが、こういった地域と情報 たデザインにより業績も上がると説得し、モントリオール 交換をするのは実に面白かったです。 の商店街を再生し、活性化することにあります。 このプログラムを再度実施することにより、モントリオー 詳細の発表後、20 名の投票対象者全員が大規模な宣伝と ルは他の都市に引き続き刺激を与え、ネットワークを拡大 メディアでのキャンペーンの中心となります。そのため公 し、もちろんこの共有体験の結果としてこの概念が進化し の場に登場する機会が増え、事業の規模も大きくなり、優 続けながら、私たちは自分たちの街で新しい恩恵を享受し れたデザインに関する通説も一掃されるという商業デザイ ていければと思います。商業デザイン・モントリオールや ン・モントリオール賞ならではの特徴があります。今年は、 多数のパートナーによる同様のキャンペーンなどの取り組 商業デザイン・モントリオール賞を再導入した後に 20 周年 みのおかげで、モントリオールにおけるデザインは単なる を祝おうと決めました。600 人ほどが参加し、各地区の区 ショー目的でなく日常の幸福の源泉となり、さらにモント 長全員とモントリオール市長も出席している中、2 週間前 リオール市民にとって基本的価値となりつつあります。モ の 2015 年 5 月 11 日に開催されました。 ントリオール市民がこの事実を受け入れ始めたら、モント 大衆による投票の対象となるのは 20 名の候補者ですが、 面白いのはこれらの候補者全員が同等であり、1 位、2 位、 リオールは必然的にデザインの都市としての自らの地位を 確立するでしょう。 3 位というランク付けはされていない点です。どのような種 類の企業にとっても、規模の大小や流行りの場所にあろう 最後になりましたが、本来の趣旨はレポレさんが言って と遠い場所にあろうと優れたデザインは手に届くものであ いたように交流です。創造産業で自分たち自身の発展を加 り、どのような価格でも得られるものだということを私た 速していきたいのなら、他の都市と交流を深めるのは実に ちは示したいのです。したがって 20 の企業によって、私た すばらしいことですし、実りも多いでしょう。そういった ちは質の高いデザインが多元的にいかせることを実証する 意味でユネスコ創造都市ネットワークは本当に価値があり ことができます。そしてこれは一般の人の投票で決めるピー ます。そしてモントリオールとしては自分たちの経験を共 プルズ・チョイス・アワードでして、市民の皆さんが 20 の 有するとともに日本の都市からも学ばせていただければ非 候補企業の中から気に入ったものに投票するのです。この 常に光栄です。どうもありがとうございました。 取り組みのおかげで皆さんに自分たちの環境を見てもらっ て選んでもらえるのでよい啓蒙になります。 山形市長 市川昭男氏 モントリオール市は 1995 年から 2004 年までに多大な労 山形市長の市川昭男です。映像文化都市・山形の取り組 力をかけてデザインの重要性についてモントリオールの商 みをお話しさせていただきます。山形市は、日本の東北地 人たちに働きかけてきました。その際に実施された影響調 方に位置する山形県の県庁所在地でありまして、人口は約 査によると、10 年の間にこのプログラムは商業デザイン市 25 万人、四季折々の豊かな自然に恵みまれており、冬には 場をしっかりと築き、求められるスピンオフ効果を達成し 多くのスキー客で賑わう温泉地「蔵王」や、俳聖松尾芭蕉 たということです。このプログラムに投入された長く続く が愛した「山寺」といった観光地を有しております。蔵王 労力により、店舗運営者、レストラン経営者、そして大衆 温泉は今、苦戦しております。火口周辺 1.2 キロ立ち入り禁 が優れたデザインの持ちうる価値を理解しやすくなりまし 止となっておりますが、蔵王温泉は絶対に安全でございま た。この戦略は成功事例となり、2003 年以降、このモン す。また、山形県が収穫量日本一を誇る「さくらんぼ」を トリオールでの取り組みに着想を得てこれまでの 10 年間、 はじめとする豊富な果物や、 「そば」、 「山形牛」そして「地酒」 ヨーロッパ、カナダ、アメリカの 14 都市で同様の試みが実 など、多彩な食文化に恵まれた土地です。 施されるほどになっています。 山形市は、これまで、行政が撮りためた当時の映像を学 商業デザイン・モントリオールは 2014 年にモントリオー 校教材として活用し、学校ごとの映画教室の開催をするな ル市の正式なマークになりました。私たちが特に誇らしい ど、もともと映像文化にまつわる実に多様な取組みが行わ のは 2006 年に国連人間居住計画(UN-HABITAT)が商業デ れてきました。加えて、人口に対する映画館のスクリーン ザイン・モントリオール構想を、生活環境を改善する 48 の 数が、全国的にトップクラスであることなど、市民の生活 最優良事例の 1 つに指定したことです。そしてこのプログ に映像が根付いてきた土地柄でございます。また、日本を ラムはユネスコデザインの都市に認定される上で大きく役 代表するドキュメンタリー映画監督である故小川伸介氏が 立ちました。これらは、 ルクセンブルグ、 サン・テティエンヌ、 山形市のお隣の上山市に移住してきており、そこで「ニッ ブリュッセル、ストラスブール、ウィニペグ、アイントホー ポン国古屋敷村」 、 「1000 年刻みの日時計-牧野村物語」と フェンなど、この概念を採用した様々な都市のロゴです。 いう 2 本の代表作を撮影しました。そのような歴史的背景 私たちには多くのパートナーがおり、2 週間前のこの 20 周 もあり、1989 年、山形市が、市制施行 100 周年を迎え、そ 58 添付資料 世界創造都市シンポジウム れを記念し、一過性的な事業ではなく、将来にわたって継 映画監督の根岸吉太郎さんを学科長として迎え入れ、総合 続し、山形市の財産として残していくことができる事業と 的な映像教育機関へと発展し、国内の映像業界や、国際的 して山形国際ドキュメンタリー映画祭を開催するに至りま な映画祭等で活躍している卒業生もいます。また、昨年度は、 した。このアジア初の本格的なドキュメンタリー映画祭の 音楽、造形活動、映像上映、服飾、デザインなど多岐の分 開催を機に、山形には世界中から沢山の映画人が集うこと 野にわたったプログラムの山形ビエンナーレを企画し、山 となり、映画の都と呼ばれるようになりました。 形市の街中、アート一色になりました。 それでは山形の映像文化の取組みを紹介したいと思いま 市民団体の活動も積極的に行われております。山形県内 す。まずは、山形国際ドキュメンタリー映画祭です。1989 を広範囲に巡回して、良質の映画や映像を、30 年以上も配 年に産声を上げてから、2 年に 1 度のペースで開催してき 給し、地域での自主上映を進めている団体などもいらっしゃ ました。2007 年には、それまで市役所内組織だった映画祭 います。こうした方々が、山形の映像文化を支えていると 事務局がNPO法人として独立し、映画祭だけでなく、さ いっても過言ではありません。 らに多彩な取組みを展開しております。独立後は、国際交 流基金国際交流奨励賞・文化芸術交流賞やサントリー地域 こちらはこども映画 文化賞など、多くの賞を受賞しており、行政の枠組みにと ワークショップの様子 らわれない独自の取組みが評価されております。今年の 10 です。認定NPO法人 月には第 14 回目となる映画祭が開催されます。 山形国際ドキュメンタ 行政からは、開催年に1億円の補助金、開催準備年には リー映画祭の取り組み 5千万円の補助金を出しておりますが、事業に関しては、 でありますが、若年層 口出しはいたしません。 への映像教育に力を入 25 年に渡る実績から、世界の映像作家たちより厚い信頼 れており、山形の子どもたちに良質の作品を見せる。また、 を頂き、ドキュメンタリー映画祭としては、世界最高の映 自分たちで、1から脚本を考え、演じ、本物の機材を使っ 画祭の 1 つと評されております。カンヌ国際映画祭で日本 て映画を撮る。自己表現や、映画製作など、学校ではでき 人監督として初めて審査員を務められた河瀬直美氏など、 ない特別な体験がこどもたちの創造力を育んでいきます。 山形を足掛かりに、世界へ巣立っていく監督も沢山おられ ワークショップを受けた子供たちの顔には笑顔と自信があ ます。 ふれ、非常に充実した時間となりました。今後も、こうし 25 年間の映画祭開催の度に集積された、 ドキュメンタリー た映像を用いた創造教育に力を入れていきます。 フィルムは、フィルムライブラリーとして収蔵し、保管し ております。その数は 13000 本以上。世界の「今」を映す そして、皆さんもご承知のとおり、2011 年、東北地方を 貴重な資料として、閲覧はもちろん、定期的な上映会を開 中心に東日本大震災に襲われました。東北地方としては比 催しております。国内外からも、映画人や研究者が訪れ、 較的被害の少なかった山形市は、被災地域そして被災され 学術的資料としての価値も高まっております。 た方々に対し、物心両面について、サポートしてまいりま 山形市では、観光の振興、地域の活性化などを目的に、 した。また、山形市にもたくさんの避難された方々を受け 2005 年に山形フィルムコミッションを設立しております。 入れており、ピーク時には、5,854 名、2015 年 5 月 15 日現 ロケーションの誘致から、撮影前の許可申請、エキストラ 在、1,371 名の避難者を受け入れております。 手配、撮影への同行、広報活動など、撮影が円滑に進む 震災後、復興に向けた取り組みは、あらゆる場面で展開 よう協力をしており、毎年 100 件以上の問合わせを頂き、 されています。しかし、東北全体の復興まではまだまだ道 2013 年には 65 本の撮影協力を行いました。映像として世 半ばであります。故郷に帰りたくても帰れない、希望が見 に出た時には、多くの方にご覧いただき、山形の観光振興 えない、そんな方々に何かできないか、我々は考えました。 につなげていこうと考えております。 そこで、震災後、被災された方々の心のケアを目的に、 藤沢周平原作の「小川の辺 ( ほとり )」という映画の撮影 被災地や避難所等に映写機材を運び、被災者を対象として があった際、私もエキストラで出演しました。この時は知 「映画」を無償で届ける活動を始めました。認定NPO法人 事さんもでました。 ドキュメンタリー映画祭と山形県映画センターが協力体制 を組んで実施しました。 東北芸術工科大学は、1992 年 4 月に開学しました。芸術 また、全国的にも被災地に映画を届けるプロジェクト、 学部、デザイン工学部の2学部と、大学院修士、博士課程 シネマエール東北が立ち上がり、山形市からは、認定NP からなり、約 2,500 人の学生が芸術とデザインを学んでい O法人山形国際ドキュメンタリー映画祭、山形県映画セン ます。 「東北ルネサンス」というスローガンのもと、山形の ター、フォーラムネットワークが参加し 2011 年 3 月より、 芸術、文化を常に牽引していただいております。そのなか 山形県に避難してきた被災者へ向けて避難所での映画上映 で、映像学科は 2009 年に現在の学長である「ヴィヨンの妻 に始まり、現在に至るまで、主に福島エリアを担当し、映 ~桜桃 ( おうとう ) とタンポポ」の監督を務め、同作品で第 画上映と映画ワークショップ等を行っています。 33 回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した 「311 ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ」は、未曾 59 添付資料 世界創造都市シンポジウム 有の災害である東日本大震災に関する貴重なドキュメンタ ります。新潟市のアイデンティティー1つである「水と土 リー作品を保存、活用し、後世に伝えることを目的として、 の暮らし文化」に光を当て、磨き上げるため、2009 年から「水 2014 年 8 月、認定 NPO 法人山形国際ドキュメンタリー映 と土の芸術祭」がスタートしました。招へい作家らの作品 画祭が設立致しました。東日本大震災に関する記録映画の 制作・展示はもとより、市民・地域主体で企画運営する市 上映は、現在も国内外を問わず各地で続けられています。 民プロジェクトが大変盛んに行われているというのが、こ 震災と被災者に対する社会的関心が低下しつつあるなかで、 の芸術祭の特徴の一つです。 震災直後の状況と今も続くその影響をさまざまな視点から 3回目となる今年は、7 月 18 日から 10 月 12 日まで水と 記録した作品群は、今後ますます、災害と人、社会のあり 土の象徴である「潟」をメインフィールドとして、作品展示、 方を考える上で重要な歴史・文化資源の一つとなっていく パフォーマンス、ワークショップなど様々なプログラムを と考えています。 展開します。国内外から参加する著名なアーティストに加 この様に、山形市は、映画映像に関する様々な取り組み をしてまいりました。映像が持つ力、映画が与えてくれる 感動、映像作家の情熱、映像が映し出す貴重な記録。こう えまして、市民や地域が主体となり、参加することで、新 潟市全域が芸術に染まっていきます。 このような「市民力」を生かした「文化創造都市 新潟市」 した映像がもたらす上質なエネルギーを山形の教育、観光 の取り組みが認められ、今年、新潟市は、昨年の横浜市に 振興、産業振興に役立てていきたいと考えております。 続いて国内では 2 番目の「東アジア文化都市」に選定され 映像文化活動を積み重ね、市民一人ひとりが「山形は映 ました。ともに選定された中国・青島市、韓国・清州市と 画の都である」と誇りを持ち、町が発展していく。それこ 深く連携し、文化を切り口に交流を進めるとともに、中国・ そが創造都市である、と考え、これからも活動を続けてい 韓国の文化芸術の要素を取り入れながら多様なイベントを きます。 展開しています。この特別な一年、「市民力」のウェーブを さらに大きくしながら、文化の力で交流人口を拡大すると 最後になりますが、山形市は映像による力を基に創造都 ともに、東アジアの共通性と多様性への理解を深め、世界 市を推進し、日本へ、世界へ発信して行きます。そして、 に開かれた東アジアの交流拠点となるよう取り組みを進め ユネスコ・クリエイティブ・シティーズ・ネットワーク加 てまいります。 盟を目指してまいります ここまでは文化芸術の取り組みをご紹介してきました。 文化と人々の生活には密接な関係があり、特に食文化は人々 が豊かな生活を送る上でとても大きな役割を果たしていま 新潟市長 篠田昭氏 す。 みなさん、こんにちは。新潟市長の篠田です。それでは 私から「文化創造都市にいがた」のまちづくりについてご 説明申し上げます。 ここからは、食文化創造都市にいがたの取り組みをご紹 介します。新潟市はふたつの大きな河が創った肥沃な大地 現在の新潟市は、2005 年までに 14 市町村が大合併して に築かれたまちでございます。様々な水と土の恩恵を得ら 誕生した町であります。従って多彩な文化、港町文化、田 れた一方、かつては「地図にない湖」と表現される腰まで 園文化、これを共に備えているというところに特徴があり つかってしまう条件の悪い深田も多く、過酷な農作業を強 ます。これをまちの活力に繋げる取組をいくつかご紹介い いられていました。 たします。 まず、新潟は大変多くのマンガ家を輩出し、マンガ文化 が根付いている新潟市ということであります。マンガを文 化の柱の一つに位置づけ、マンガ・アニメフェスティバル 先人たちは、水と土との闘いを乗り越え、今日の日本一 の美田を作り上げ、日本一のプレミアムライス「コシヒカリ」 の安定生産を実現しました。 本市の強みである農業と食の力をフルに活かし、農業特 の開催などにより、にぎわいづくりや中心市街地の活性化、 区指定を追い風に、新しいスタイルの農と食を創造し、健 交流人口の拡大を図っています。 康・教育・交流・活性化などの観点からまちづくりを進め、 また新潟市には、優れた踊り文化や舞台芸術がございま 食の都にいがたを目指しています。 す。300 年前の「4日4晩踊り明かす怒涛の踊り」という このように、水と土の恵みを受け、多様で高品質な農産 のがございました。4日4晩踊るわけですけれど、昼間は 物が生産され・海産物が水揚げされておりますが、この四 寝ていたようであります。この怒濤の踊りを市民の手で復 季折々の豊富な地元食材を使った郷土料理は、健康的な和 活させた「にいがた総踊り」 、日本初にして唯一のレジデン 食として、日常的に家庭でも飲食店でも食されています。 シャルダンスカンパニー「Noism」など、多彩な踊り文化 が新潟のまちに根付いています。 一方で、菊池寛や尾崎紅葉といった、様々な日本を代表 する文人たちが愛してきた、湊町文化を現代においても体 さらに、新たな夜の文化として、光のアート・プロジェ 験できる、多くの料亭がございます。そこでは料理を味わ クションマッピングをはじめとする光の演出に積極的に取 いながら、新潟市に宗家がある市山流を継承する古町芸妓 り組んでいます。 の舞も鑑賞することができます。 次に、市民力に基づく水と土の文化創造の取り組みであ 60 このほか、日本酒、味噌・醤油などの発酵食品、米菓な 添付資料 世界創造都市シンポジウム ど米を素材とした多様な加工品など、食品加工技術も優れ 国際交流をはかりながら、2020 年開催の東京オリンピック・ ています。さらに市内では、さまざまな食や酒のイベント パラリンピックに向けて文化プログラムの準備を進めてお が行われています。 例年2月には、 「にいがた食の陣」が開 ります。 催され、市内4会場において地元の食材を工夫したメニュー が提供され、たいへんなにぎわいを生んでおります。2日 以上、新潟市の取組をご説明させていただきました。 ご清聴ありがとうございました。 間で 20 万人以上が来場いたします。 また、例年3月には 新潟県内にある約 90 の蔵元の地酒 500 種が一堂に会する「に いがた酒の陣」 が行われます。これも大変人気でありまして、 今年は2日間で来場者約12万人を数えたということであ 篠山市長 酒井隆明氏 みなさんこんにちは、世界のみなさんこんにちは。これ は私が去年から篠山を世界に PR する挨拶として使っておる ります。 食に関する国際コンベンションも数多く開催しています。 2005 年から「食と花の世界フォーラム」を開催し、2年に のですが、今日はまさにそういう場所での発表をさせてい ただいており、大変光栄に思っております。 1回「国際シンポジウム」を行うほか、食の販路拡大につ 兵庫県の篠山市、丹波篠 なげる「国際見本市・フードメッセ」は毎年行っています。 山、 聞 い た 事 が あ る と また、日本初の食を顕彰する事業として新潟市の産官学 言っていただけるかもし の共同で創設した「食の新潟国際賞」の授賞式も2年に1 れません。私の方は小さ 回行っています。本賞に選ばれますと賞金1千万円が頂け な町で、農村ですので、 ます。これはもちろん新潟市が出しているわけではなく、 創造都市と言わずに創造 地元の食関係の企業さんが浄財を担ってくれています。 農村とこういった呼び方 新潟市では、市民が健康的な食生活を実践する食育と、 体験を通して食や農業への理解を深める教育ファームの取 で進めております。 場所は兵庫県の中央部、京屠と接しております。丹波篠山、 組みを推進しています。2014 年 6 月には、食育・教育ファー 山奥というイメージが強いですが、京都、大阪、神戸から ムの活動の拠点となる 2 つの施設がオープンしました。ま 50 キロ、約1時間の距離にありまして観光の方も大変増え た、 新潟市では学校の授業と農業体験を結び付けた「アグリ・ ております。城下町の中心にお城の跡がありまして、周辺 スタディ・プログラム」を策定し、拠点施設や生産現場な には農村の集落が広がっております。人口は4万5千人の どで農業体験学習を全ての小学生が行っております。 小さなまちです。 これらの取り組みによる農業の活性化も目指しています。 一番全国的に知って頂いておるのが、丹波黒豆です。丹 波栗、山の芋、マツタケ、ぼたん鍋等が名産で、美味しい 新潟市は本市の宝であ と、質が良いというイメージを誇っております。下の写真 る食を活かし、農業を含 は秋に行う味祭り、この時期は多くの皆さんにお越し頂い めた食産業全体が連携 て、まちの中が「どこかいな」と思うくらい多くの方です。 し、さらに発展するため 篠山市内にある重要な歴史的な町並み、「重要伝統的建造 の「新潟ニューフードバ 物群保存地区」 。全国で 110 カ所認められておりますが、そ レー構想」を推進してい うのうち二カ所が篠山市内にあります。城下町の町並みと、 ます。 宿場町の町並みがこれに選定されております。丹波焼とい 「農商工連携」 、 「食産業の集積・創業」 、 「高度な技術・研 う焼き物の産地でもあります。日本六古窯といい 6 つの焼 究開発、人材育成」 、 「食品リサイクル」 、 「ブランド力と情 き物の代表的な産地があります、瀬戸、信楽、備前などと 報発信」、「フードデザイン」のこの6つの柱から構成され 並びましてこの丹波焼は六古窯のひとつとなっております。 ています。 新潟市は以上のような食文化への取組をさらに磨き高め、 それから民謡のデカンショ節というのがありまして、8 月には「デカンショ祭り」というものが行なわれるのですが、 広く発信し、世界に貢献していくため、ユネスコ創造都市 みなさんご存知でしょうか。デカンショというのは出稼ぎ ネットワーク・ガストロノミー分野への加盟を目指してい しようという意味、デカルト、カント、ションペンハウアー ます。すでに登録されている都市の皆さんと連携・協力し といった哲学者の名をとったという説もあります。 ながら、本市の魅力を伝え、またほかの都市の取り組みを 京文化の影響をうけておりまして、京都の祇園祭のよう 吸収しながら、ユネスコ創造都市ネットワークに加盟をし、 なお祭りがあちこちで行なわれます。元朝能、元旦の朝の 貢献していきたいと考えています。 お能。これは日本で一番早く始まる能であります。元旦の 0 時 15 分くらいからおこなわれます。 最後になりました、新潟市にはミラノ万博に鶴岡市と連 「出稼ぎ」丹波杜氏といいまして、夏は農業、冬は酒屋さ 携し参加する予定です。10 月4、5日に新潟市の食文化を んに出稼ぎをするというのが多くの先人の暮らしぶりであ アピールし、交流して参ります。このように新潟市は食を りました。先ほどのデカンショ節でも「灘のお酒はどなた はじめとする文化を通じて、都市レベル、市民レベルでの が作る おらが自慢の丹波杜氏」と謡われています。 61 添付資料 世界創造都市シンポジウム 集落丸山、これは今人気の観光スポットですが、11 戸の 集落で半分ぐらいが空き家になっておったのですが、ここ ン、加工品の製造販売、篠山文化ツーリズム。城下町観光、 こういったものに結びつけようとしております。 を改修して宿泊施設、またはフランス料理のお店ができま して、大変人気をよんでいます。 昨年、ユネスコ創造都市への登録申請初めまして、本来 こういったことで篠山市は地域の魅力を生かすまちづく ならば篠山市は、今説明したように食が得意な分野になる りということに力を入れております。 「農、美しい町づくり、 のですが、食文化の分野では先ほどの新潟市、鶴岡市が申 文化の薫り、自然」これを4つの柱として取組を進めてお 請をされておりましたので、同じ分野では難しいというこ りまして、農の分野では平成 21 年「農都宣言」という、篠 とから、クラフト&フォークアート、工芸民族芸能の分野 山は農業の都だといった宣言をしまして、農業に力を入れ での申請をしております。昨年中国の成都市で行なわれま ています。また「ふるさとの森づくり条例」今山に手が入っ した、ユネスコ会議にオボザーバーとして参加をさせてい ていませんので、定期的に手を入れて行こう、広葉樹林を ただいた写真です。 大切にしようとしております。 今後の方向としては篠山市「食と器」というところに力 美しい篠山づくりでは、 「景観計画」 、 「まちづくり条例の をいれたい、先ほど説明しました丹波焼というものがござ 改正」 、H26 年には「屋外広告物条例」 、 「土地利用基本条例」 いますので、これを展開していきたい。また国際的な貢献 を施行しました。町づくりの専門家からはこれだけ揃って が必要であるといった指摘をいただき、「食と器の国際ビエ いるのは他にはないと評価をいただいておりまして、とく ンナーレ」これに特に力を入れたいと考えています。 に「まちづくり条例」では開発に際して地域の同意を必要 そういった技能だけでなく、特に建築とか技能も大切に とする、 「土地利用基本条例」では農の都にふさわしい農地 したいと思っております。この写真は先ほど紹介しました を大切に継承していくということに力を入れています。自 篠山のお城の城跡地内にある「篠山小学校」の写真であり 然環境では身近な山、川、たんぼの生き物を大切にしよう まして、この3月に改修が終わりました。何に価値がある とし、鳥獣害対策と共生への道を探っています。どこでも と申しますと、ひとつは城跡地内にある小学校であるとい 地方に行きましたら、鹿、猪、猿の被害が大きいですが、 うこと、もう一つは木造小学校の耐震改修を行なった。非 特に猿に関しては希少な動物ではりますので、全てを捕っ 常に全国的にも難しい木造校舎の耐震改修を、先生方のご てしまうわけにもいきません。追い払いと長い目で見た共 指導を得て完成しました。こういった技能を大切にして、 生の道を探っております。 篠山に残る古い民家の改修などを通じて活性化を図ろうと こういった地域の魅力を大切にしながら「ふるさと篠山 しております。 に住もう帰ろう運動」を施行し、若い皆さんが地域に魅力 さらに国際的な交流が必要だというご指摘をいただきま を感じて定住に結びつけられるような取組に力を入れてい したので、昨年の 11 月クラフト&フォークアート分野に既 ます。 に加盟をされている、韓国の利川市、イチョンに篠山市の 議会を中心に訪問しております。今年の5月には中国の広 昨年、 「都市景観大賞」美しい町であるという表彰をいた 州市にも訪れております。 だきました。それからこの 4 月 24 日、日本遺産に篠山市は ところが問題はこれからでして、加盟を目指していたの 認定をいただきました、世界遺産の日本版として文化庁が ですが、つい先日、ユネスコから加盟を目指すためには人 今年から始められた制度でありまして、全国 18 件のうちの 口が 10 万人以上の都市でなければいけない、ということが 1 つに選んでいただきました。単独の市、町としては8つ 発表をされまして、大変ショックを受けております。私ど のみですが、そのうちの1つに入りました。これはデカン もは4万5千しかおりませんので、このままでは登録が認 ショ節という民謡が選ばれたわけではなくして、デカンショ められなくなります。是非加盟都市の皆様、これはおかし という民謡にのせて歌い継ぐふるさとの魅力、地域が選ば いのではないかと、いろいろな価値を認め合うのがユネス れたということでありまして、文化庁の発表を読ませてい コではないかと思いますので、是非に、ご理解をお願いし ただくと「地元の人々はこぞってこれを愛唱し民謡の世界 たいと思います。 そのままに、ふるさとの形式を守り伝え、地域への愛着を 育んできた。今も 300 番にものぼるデカンショ節を通じ、 こういう小さなまちですが、都市を目指して行くのでは 丹波篠山のまちなみや伝統をそこかしこに体験出来る世界 ない。都市は人間が作ったもの、農村は神がつくったもの、 が展開している」 、こう高く評価をしていただきまして、大 本来あるべきなのは農村だと、農村にこそ価値があるのだ 変誇りに思っているところです。 といった誇りを持ったまちづくりを進めたいと思いますの それから5年前から創造都市、創造農村の取組をはじめ ておりまして、「先人が残した技術や資産」に「新しい知恵 を重ねて」これを生業として活力に結びつけようとしてお ります。 都市化を目指す訳ではない、工業化を目指す訳ではない、 独自の良さを目指そうとしておりまして、古民家レストラ 62 で、宜しくご指導いただきたいと思います。以上です。あ りがとうございました。 添付資料 世界創造都市シンポジウム ディスカッション ればボローニャにそのままとどまります。この街の統計は 創造都市ネットワーク日本顧問、文化庁文化芸術創造都市 希望のメッセージであると同時に、創造性とプロジェクト 振興室長、同志社大学経済学部特別客員教授 佐々木雅幸氏 : 構築のメッセージでもあります。 実はこのシンポジウムを企画した意図は、先ほどの篠山市 大学の存在が、この市民の意識と、プロジェクトや取組 長のメッセージにもあったように、ユネスコの創造都市へ の基礎は教育であるというもう一つの意識とを合流させま の申請を今回3都市が考えておられることです。それぞれ した。市民の人生の根本的な側面は教育であり、生涯教育 立派な報告をしていただきました。ボローニャとモントリ なのです。そして、これが、教育と市民権における主要な オールといえば、ユネスコ創造都市の代表的な都市であり、 柱の一つだと思います。ただし現在の市場では十分ではあ 大先輩で、私もそれぞれ伺ったことがありまして、大変感 りません。佐々木さんがおっしゃっていた問題は、イタリ 銘を受けた次第ですが、この2つの都市の胸を借りる形で アはもちろん、重要な文化遺産という伝統を保持している これから日本の都市が新たに加わっていく為にどんな活動 特にヨーロッパの国々における問題です。人文学はイタリ を強めていけばよいのかということを議論したいと思って アの大学および学校プログラムにおいて、とても大切です おります。 が、人文主義的な手法だけでは不十分です。テクノロジー と人文主義的な知識を融合させることが必要だと私は思い その前に、ボローニャとモントリオールのお二人に私の ます。すべての分野を融合させて、とても若いうちから自 方から質問を投げかけてみたいと思います。まず、ボロー ら起業家であることが重要だということを若い人たちに発 ニャですけれど、私は実は 15 年前に、1年間ボローニャ大 信しなければなりません。 学に留学をしていた経験があるものですから、たくさんの 近年、この目標を達成するために 2 種類のプログラムを 友人がおりまして、ボローニャが創造都市として実力を持っ 推進しました。1 つは “Incredible” です。この “Incredible” た都市であるということは充分に分かっております。 は創造産業の新規事業に特化したプログラムです。私たち 特に音楽の分野では、世界の音楽界をリードしてきたヴェ はプロジェクトや新規事業を奨励し、場所や資金、サービ ルディやロッシーニなどの作曲家だとか、モーツアルトが スなどを提供します。さらに私たちは、50 以上の公共・民 若いころ習ったオルガンがまだ教会に残っているだとか、 間団体のネットワークを築きました。これらの団体は私た これは凄いことです。特に、ご紹介の中であった総合芸術 ちと一緒にプロジェクトを選び、自分たちにとって何が重 学部という名称が相応しい DAMS* という学部で、若い学生 要なのか。場所なのか、資金なのか、それともサービスな たちがたくさん養成されています。その人たちが、どのよ のかを決定します。このようなプロジェクトについては個 うに音楽家やアーティストとしてさまざまな芸術分野で自 別に対応した支援を行います。またそれぞれに勇気や機会 立していけるのか。つまり日本でも今、若者が自立をする、 を与え、プロジェクトの創成期に泳ぎ回れるようなネット 職業を得る、ということは難しくなっておりますが、ボロー ワークを作ることが大切です。将来的にはベンチャー・キャ ニャでも事情は同じだと思いますし、特に芸術の分野、あ ピタルが必要で、おそらく国際化も必要だということは承 るいは芸術周辺の分野で安定した仕事を得るということは 知していますが、まずは着手して何が必要なのかを認識さ なかなか難しいのではないかと思います。そういった若者 せることが重要です。 の自立あるいは雇用をどのように応援していくのか、応援 2 つ目のプログラムは現在私たちが “Bloomberg” プロジェ しておられるのか、このあたりをレポレさんに伺いたいと クトと呼んでいるものです。ニューヨークの元市長のブルー 思います。 ムバーグ財団が振興しているものから学んだものでありま * Department delle Arti, della Musica e dello Spettacolo す。これは小学校・高校という早い段階での正規教育にお ける起業家教育の振興に特化したプログラムです。という レポレ氏:佐々木さん、ありがとうございます。佐々木 のも私たちの街で新規事業を立ち上げるのは 30 歳ではなく さんがおっしゃった通り、ボローニャは、若い人たちで溢 18 歳の時であってほしいからです。若い人たちに対して起 れる街です。こういった若い人たちにボローニャが発信し 業家精神・スキルを奨励していきたいのは、この年代です ているメッセージが重要ですので、人口統計データという と1、2回くらいは転職するでしょうし、新たな雇用や発 視点から回答を始めます。10 年ごとにボローニャでは人口 想を生み出すことができるからです。特にイタリアのよう の 25%が変化します。ボローニャではイタリア各地から国 に家族を重視する国では自立する年頃でもあります。ただ 内移動者もたくさんいます。もちろん外国人も多いのです 現在、求人市場は変化を遂げており、政策レベルでの環境 が、その中でも、最も重要なのがイタリア出身の人たちで 変化が起こっているからでもあります。 す。これらのイタリア人はボローニャに来て学んだり、教 育プログラムを受講したり、仕事を創り出したりしていま 佐々木氏 : ありがとうございます。大変興味深いプロジェ す。ボローニャを自分の人生の一部とみなし、3 年、5 年、 クトで、もう少し突っ込んで質問しますが、レポレさんは、 状況によりますが 10 年住む人もいます。しかし、 ボローニャ 今の市役所の仕事の前はレガコープ、協同組合の本部にお に来てまた去ってしまう人もおそらくいるでしょう。仕事 られた。協同組合もまた若者の自立の為にいろんな支援を が見つかったり、家族ができたり、誰かと恋に落ちたりす しているようですし、コーポラティブ・ソシアーレという 63 添付資料 世界創造都市シンポジウム ような新しいタイプの協同組合も出て来ているけれども、 コメントいただけないかと思います。 そういうものと市役所の連携ですね。特に、カルチュラル・ アントレプレナーを創るときに何か特徴的なプロジェクト はあるんでしょうか。 ラクロワ氏 : ありがとうございます。実はこれは大変な質 問なのです。お手柔らかにお願いします。確かにシルク・ ドゥ・ソレイユは文化的な発展や芸術的な発展・創造と環 レポレ氏 : はい。ボローニャでは協同組合の働きがとても 境に配慮した都市開発という両方の要素を取り入れたすば 重要です。これは始まりが 1 世紀前にさかのぼり、第二次 らしい事例です。シルク・ドゥ・ソレイユがモントリオー 大戦後に生まれた自発的な運動です。特徴的なことは 10 社 ルのために取り組んできた試みは間違いなく革新的で並は 中、6 社は都市で生まれた物流など様々な分野の協同組合 ずれています。というのも今おっしゃった通り、ある地区 だという点です。最初の協同組合は消費に特化したもので、 を完全に一新してしまったのです。さらにこのプロジェク 協同組合員は消費者です。その後、不動産、生産、または トにより地元民、市民、若者に多くの仕事が与えられました。 農業といったあらゆる部門に広がりました。大きな協同組 独創性と創造産業における実に複雑で極めて興味深い事例 合もあり、これらは第二次世界大戦後にボローニャの再建 研究です。 中に主役を務めました。こういった団体が存在したおかげ ただ、私も佐々木さんと同じく 2 週間ほど前に聞き及ん で景気がよくなり、私たちの社会経済の文化的なアプロー だのがシルク・ドゥ・ソレイユのアメリカの会社による買 チもこのストーリーによって作られたのです。 収です。これは新聞でもとても大きく取り上げられました。 この 30 年間に多くの文化的な協同組合、特に劇場のス 想像がつくと思いますが、シルク・ドゥ・ソレイユの本社 ペースや会場の管理に特化したものが台頭してきました。 がモントリオールから引っ越してしまったら地元民にとっ 以前は若者の間での新しい協同組合を見つけるのは困難で てのあらゆるメリットも失われることを誰もが極端に恐れ した。というのもコラボレーション(協働、連携)は新し ました。シルク・ドゥ・ソレイユが売却されたと聞いた時 い概念でありコーポレーション(協力)を超えた概念であ に私たちの頭に生じた主な懸念は、本社がどうなるのか、 るからです。古くからの民間部門は、協働関係という新し そしてモントリオール市とその市民にどのような影響があ い発想の重要性をまだ認識していません。ですから社会的 るのかということでした。 そして実際、モントリオール市 な技術革新とコラボレーションは、例えば連帯経済におい 長はすべての討議に関わり、本社はモントリオールにとど て現在とても重要であり、私たちはこれらを優れた政策で まるということを保証してくれました。理由は、人材の多 サポートすることができます。資金を提供したり細かいこ くがモントリオールを拠点としているからと聞いています。 とに口を挟んだりするのではなく、スペースや知識を与え 衣装デザイン、音楽、ダンスなどに優れたこれらの人材を るなど実現を手助けするようにしています。 維持し、囲い込むことができる限り、この大企業をモント そういうわけで、ニューエコノミーと新しい世代がプロ ジェクトを創り連携する可能性を、公共団体とオールドエ リオールにとどめておくことができると私は思います。そ のことで多くのメリットが生まれています。 コノミーが認めなければならない今こそ大変重要な瞬間で す。相互支援がとても大切であり、私たちはそのための適 切な環境を整える機会を若者に与えなければなりません。 私のプレゼンテーションで明確だったかどうかわかりま せんが、レポレさんの最初の質問に答えたいと思います。 というのもユネスコデザイン都市としての私たちのとても 佐々木氏 : ありがとうございました。大変参考になります。 重要な関心事に、若いデザイナーと建築家のための市場を 続いてモントリオールのラクロワさんに是非聞きたいこと 創るということがあります。レポレさんはとても重要なこ があります。私はモントリオールに 7、8 年前に伺った時に とを指摘してくれました。多くの才能あふれる人材がいる あちこちでミュージアムや大学を見た中で、特に印象に残っ 都市として認められるということばかりでなく、この競争 ているのがシルク・ドゥ・ソレイユです。郊外の広大なゴ 上の優位性を維持したければそういった人材のための市場 ミ捨て場であった所に、シルク・ドゥ・ソレイユ 、世界の を開拓し、芸術で生活していけるようにする必要がありま 最大規模のエンターテイメント会社ですが、これの本社が す。その点では市のレベルは州または国レベルと同じでは ゴミ捨て場にあった所に移動して、環境を再生しながらサー ありません。モントリオール市は芸術家を支援するため多 カスアートで周辺の低所得地域の人たちをエンパワメント くの助成金を提供しておらず、プログラムも多くありませ するという、ものすごくチャレンジングなプロジェクトが ん。これらのプログラムは地域か国レベルで運営されてい 進んでいて、これはまさにシティオブデザインだな、と。 ます。 素晴らしいデザインですよね。ただ、最近ニュースが飛び デザイン分野ではより容易でしょう。というのも音楽ま 込んできて、シルク・ドゥ・ソレイユの経営がどこかに買 たは食文化のサービスを購入するための同じような権限を 収されるのではないかという話も聞いたのですが、そのこ 都市は持っていません。できることはできるのですが映画 とも含めて、実は環境再生ということと芸術、あるいはデ 制作と同じで市としては簡単なことではありません。北米 ザイン、これを融合した取組というのはモントリオールが の法的な状況においては、都市はデザイン分野ほどこれら 世界に誇るべきものだと思っているのですが、このあたり の創造産業を支援するための権限を与えられていません。 64 添付資料 世界創造都市シンポジウム デザインは建築、造園、都市、グラフィックスを含みます からね。都市の本当に最初の責任は自らの領域を設計する ラクロワ氏 : 大衆に関わってもらい、文化を意識してもら ことです。私たちは若いデザイナーのために市場を開放す う必要がありますから、レポレさんの言うことに全く同感 るための手段を持っており、これが公共事業の調達プロセ です。そしてこれは教育についての話なのです。そう、要 スや、私が申し上げたデザインなどの宣伝活動で私たちが は教育であり、とても早い時期に始めなければなりません。 やろうとしていたことなのです。 というのも市民が教育を受けて、食や音楽、デザイン、建 最初の質問には完全にお答えできていませんが、2 つは このように考えております。 築、映画の良さを理解するようになれば、消費や購入も進 みますし、芸術シーンも進歩するでしょう。でも教育は主 に公共部門の問題なのです。これこそが公共団体としての 佐々木氏 : ありがとうございました。私としてはもっとこ 私たちの責任です。私たちは、私たちの活動に市民に関わっ のままこのテーマで議論を続けたいのですが、時間に限り てもらうために、活動や取り組みに投資するための多くの がありますので、一旦このテーマから離れて、日本側の 3 資金を確保しようとしています。ところがケベックは北米 都市の市長さん方から、ボローニャ、モントリオールに対 において例外だと思います。ケベックは、よりアメリカ文 する質問があれば今発言していただき、無いようでしたら、 化に近く、英語を話す人々が住むカナダの他の地域と違っ ボローニャ、モントリオールから 3 都市それぞれに、これ て、芸術・文化への公的資金があるヨーロッパの文化を踏 からユネスコ申請をする時を含め、どんな取り組みをした 襲しました。私たちのモデルはイタリアにとても近いもの らいいのかアドバイスをもらおうと思うのですが、その順 であり、実際、公共部門は芸術・文化の振興に多大にかかわっ 序でいいでしょうか。まず質問があれば、手を挙げていた ています。しかし、ますます多くの企業が文化と芸術への だけますか。 支援に関わるようになり、これらの企業にとってのメリッ トを感じています。先に発言があったように、大衆の関心 篠田氏 : よくヨーロッパは文化への支援が大変手厚いと聞 きますが、それに比べ日本はパーセンテージが一桁違うの をそそる必要があると本当に思います。そうすれば資金は 入ってきます。 ではないかということを言われます。かなりの支援をなさっ ていると思うのですが、それに対する市民の理解、支持と 佐々木氏 : ありがとうございました。モントリオールもボ いうのがどんなふうに形成され、どうなっているのか簡単 ローニャもそれぞれの国のレベルで非常に高い文化予算の にお聞きお伺いできればと思います。 割合を維持してきています。それは、やはりトップレベル の創造都市だと思います。努力をしてこられたのだと思い 佐々木氏 : 文化への行政からの支出というのは市民の合意 ます。 を日本ではなかなか得にくいので、ボローニャとモントリ オールではどうなっているのかという質問です。 市川氏 : 山形も初めての申請ですので、今、申請の準備中 でございます。ぜひ、アドバイスをお願いします。 レポレ氏 : よい質問ですね。すべての文化政策における 主な優先事項というのは、創造と大衆への普及推進だと私 佐々木氏 : 篠山もそれでいいでしょうか。それでは、まず は思います。大衆に文化政策を推進すれば、市場が創られ、 レポレさんの方から 3 つの都市へそれぞれにアドバイスを 人材がそろい、聴衆が集まるように、必要とするものが手 お願いしたいと思います。 に入るからです。人々が若いうちに、政策の早い段階で働 きかけ、地方自治体が何をやっているのか認識してもらう レポレ氏 : ユネスコへの申請書については、皆さんの都 ことが重要です。さらに私たちの美徳や文化的な場面にお 市がやっていること、または、その都市に何があるのかを いて共に取り組んでいることへの誇りを、人々に推し進め はっきり描くことが大切だと思います。そして、皆さんが てもらうことが必要ですから、このような働きかけが必要 どのような戦略と成果を求めているのかについてのイメー です。民間資金についての合意を築くために大衆に推進し ジを伝えなければなりません。目標、成果、そして長期的 なければならないのは、社会奉仕の問題だけではありませ 戦略が必要です。というのも、ユネスコ創造都市ネットワー ん。例えばアメリカ、そしてカナダもそうだと思いますが、 クに参加するということは、自分たちの都市と地域社会を 多くの社会奉仕の手法がありますが、イタリアとは異なり 変革するという決意だからです。これはとても大切なこと ます。イタリアでは、資金は少ないのですが、公的資金の です。ユネスコに文化遺産として登録されることとはアプ 計画や手法がより多くあります。また例えばすべての都市 ローチが違います。自分たちがこれまでどのような都市だっ に商業銀行があります。ところが文化団体と民間支援との たかということと、今後何になりたいのかとは異なります。 間に戦略的協調関係はありません。私たちは環境を整え、 特に3つのプレゼンテーションを拝見しましたが、どれも 民間部門から支援を得るための戦略と合意を築いていく必 かなりよかったです。1つ目の山形市の映画とドキュメン 要があり、ここでは大衆が重要な要素であると私は思いま タリー全般に関するものについては、希望があれば我々の す。 方でも力になれるでしょう。ボローニャにはフィルム・アー 65 添付資料 世界創造都市シンポジウム カイブであり、非常に重要な場所であるシネマテークがあ ございました。 ります。また、チャーリー・チャップリン、バスター・キー トン、アントニオーニ、フェリーニのアーカイブもありま 佐々木氏 : ありがとうございます。丁度お時間が来たので、 す。マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロとも この場での議論は終わります。お二人は大変な長旅で、大 連携して、映画や古い映画の修復についての映画に関する 変お疲れのところお話をいただきました。その中、素晴ら 私たちの戦略の基礎を作りました。新潟市の食についての しいお話をいただきましてありがとうございました。また プレゼンテーションも、農業、農業食品、地元、そして様々 皆さまありがとうございました。これにてシンポジウムを な分野についてのビジョンに関する戦略があったため非常 お開きにさせていただきます。 に興味深いものでした。これらは重要な要素ですね。3つ 目の篠山市の環境と景観の重要性についてのビジョンも重 要な点だと思います。 ラクロワ氏 : 最後の篠山市のプレゼンテーションについ てレポレさんの発言に補足したいと思います。食文化分野 での申請からクラフト分野に切り替えたのは賢明だと思い ます。食に関連した工芸品というのは非常に気が利いてい ますね。食文化というそちらの都市の付加価値、または競 争力の高い側面 を維持しつつ、工芸に関係させるというの は素晴らしいです。3都市のプレゼンテーションを本当に 楽しませていただきました。驚いたのは3人の市長がプレ ゼンテーションを行ったという点です。これは本当にプラ スαになりますね。多くの都市では申請するのは民間部門 かその分野の専門家なのです。この点は重要ですが、この 指定の裏に政治的な決意があるというのは本当に重要です。 ▼当日配布資料 Overseas Guest Profile 海外パネリスト紹介 さんは自分たちの都市と創作活動に自信を持っておられま すし、そのことは明らかでしたので賞賛したいと思います。 Bologna ボローニャ市 With a strong academic background in international relations, city planning and economics, Matteo Lepore worked as a consultant before becoming District Councillor in 1999 and then Vice President of the Savena city district of Bologna during the mandate 2004-2009. Between 2008 and 2011, he was head of the Local Development, Innovation and International Affairs Division at Legacoop Bologna, a major organisation of cooperatives, and until March 2011 he was a member of the Board of Directors of Bologna’ s Local Development Agency. Following the local elections in May 2011, he was appointed Deputy Mayor in charge of Economic Development and City Promotion, International Relations, Digital Agenda. 約束ですから、市民、専門家、そして映画、食物、工芸と いった産業を振興している団体が皆さんと親密な関係にあ り、皆さんと連携して今後行動計画を推進していくように されるといいと思います。政治家は残念ながらずっと在任 国際関係、都市計画、経済分野における優秀な学歴を持ち、 コンサルタントとして働き始めた後、1999 年には地方議員、 2004 年から 2009 年までは、ボローニャ県サーヴェナ市 の副市長を務めた。2008 年から 2011 年にかけて、レガコー - 文化芸術を生かした都市の再興 と 社 会 課 題 の 解 決 - 2015 5 25 年 月 日 15:00~17:00 ( 受付 14:30~) ホテル日航金沢4階 鶴の間 石川県金沢市 本町 2-15-1 プ(イタリアの全国協同組合・共済組合連盟)ボローニャ Montreal Bologna の地域開発・イノベーション・国際課の代表を務め、2011 Yamagata Niigata Sasayama 年 3 月までボローニャの地方開発庁理事会のメンバーとし て活躍。2011 年 5 月の地方選挙の後、経済発展、シティ プロモーション、国際関係およびデジタルアジェンダ担当 の市長代理に任命された。 Proglam プログラム 15:00 ~ 15:15 Opening & Welcome Address 挨拶 Director-General, Commissioner's Secretariat, Agency for Cultural Affairs 文化庁 長官官房審議官 Dr.Keisuke Isogai 磯谷桂介氏 Montreal モントリオール市 Mrs.Marie-Josée Lacroix As Design Commissioner, Marie-Josée Lacroix heads the Design Montreal Bureau of Ville de Montreal whose mandate is to improve the design of/in the city and to enhance Montreal’ s status as a city of design. For most of the last 20 years, Marie-Josée Lacroix has been promoting design and making the general public, the politicians and こういったことをユネスコは評価してくれるでしょう。 ただ、アドバイスをするとすれば、これは長期にわたる 世界創造都市シンポジウム マッテオ・レポレ氏 Mr.Matteo Lepore 現在ユネスコは創造都市ネットワークへの参加申請につい て都市からの支持を明確に義務付けています。3都市の皆 World Creative City Symposium 世界の創造都市による取組み紹介とセッション the business community care about it. Since she started working for Ville de Montreal in 1991, she has worked to develop public commissions and to experiment ways of fostering innovative design in major public projects. She has launched many initiatives which led eventually to Montreal’ s designation in June 2006 as a UNESCO City of Design. Mayor of Kanazawa/Representative of Creative City Network of Japan マリー ジョゼ・ラクロワ氏 金沢市長 / 創造都市ネットワーク日本代表 Mr.Yukiyoshi Yamano 山野之義氏 デザイン・コミッショナーとしてモントリオール市の都市 経済計画部デザイン担当局を担当し、その任務はモントリ オール市のデザインとデザイン都市としての地位を向上す ることである。デザイン促進活動を約 20 年間続けており、 15:15 ~ 17:00 世界の創造都市による取組み紹介とセッション "Learn from the best practices of the creative cities in the world" 一般市民、政治家や経済界にこの活動の重要さを認識させ てきた。1991 年にモントリオール市で働き始めてから、デ <ユネスコ音楽都市> Bologna ザイン活動の公的委員会を活性化させ、主要公共事業にお Deputy Mayor in charge of Economic Development and City Promotion, International Relations, Digital Agenda, City of Bologna ける革新的なデザインに関する振興方法をさまざまな連邦 政府省庁や地方官庁に助言してきた。彼女の活動がさまざ まな新規構想を立ち上げることにより、モントリオール市 ボローニャ市 経済発展、シティプロモーション、国際関係およびデジタルアジェンダ担当 市長代理 は 2006 年 6 月ユネスコのデザイン都市に認定された。 Mr.Matteo Lepore マッテオ・レポレ氏 1995 年から 2004 年にかけて企画・実施した「Commerce <ユネスコデザイン都市> Montreal The Commerce Design Awards program that she developed and run from 1995 to 2004 to encourage quality design shops and restaurant is now implemented with her support Design Awards」は、商店やレストランの革新的なデザイン in many European, American and Canadian cities. This successful design strategy was also named one of 48 best practices worldwide as part of the UN-HABITAT 2006 Dubai International Award for Best Practices to Improve the Living Environment. くの欧米やカナダの都市で実施されている。このような有 Design Commissioner, Team Leader of Design Bureau, City of Montreal モントリオール市 デザイン・コミッショナー、都市経済計画部デザイン担当局長 を促進する計画であったが、現在は彼女の支援を受け、多 Mrs.Marie-Josée Lacroix マリー ジョゼ・ラクロワ氏 効 な デ ザ イ ン 戦 略 は、2006 年 国 連 人 間 居 住 計 画 Mayor of Yamagata 山形市長 (UN-HABITAT)のドバイ賞において、生活環境改善の 48 の Mr.Akio Ichikawa 市川昭男氏 優良事例の一つとして表彰された。 Marie-Josée Lacroix’ s interest in design as a vehicle for city development and attractiveness has brought her activities not only within design and the territory of Ville de Montreal, but also to a global stage. The book New Design Cities, drawn from the international symposium held in 2004 at Montreal Canadian Center for Architecture, was written under her supervision and recently selected by Planetizen one of 100 best books ever written on the art of city making. Mayor of Niigata 新潟市長 彼女の都市開発と競争力の手段としてのデザインへの関心 Mr.Akira Shinoda 篠田昭氏 は、その活動をデザインとモントリオール市の領域だけで はなく、国際舞台へ発展している。 Mayor of Sasayama 篠山市長 Mr.Takaaki Sakai 酒井隆明氏 モントリオールのカナディアン建築センターにて 2004 年 に開催された国際シンポジウムを基に作成された書籍 www.mtlunescodesign.com (1) Ville de Montreal is the only Canadian city with a team working exclusively at the promotion of design. しているわけではありません。そこで皆さんの都市の公務 Facilitator ファシリテータ: 『NEW DESIGN CITIES』は、彼 女 の 監 修 に よ り 執 筆 さ れ、 General Manager, Office for Promotion of Creative Cities, Agency for Cultural Affairs/ Distinguished Professor, Doshisha University Planetizen 社によるアートオブシティメイキング分野のベス ト 100 に選出された。 創造都市ネットワーク日本顧問/文化庁文化芸術創造都市振興室長/同志社大学特別客員教授 Dr.Masayuki Sasaki 佐々木雅幸氏 www.mtlunescodesign.com (1) モントリオール市は、カナダで唯一、デザインの振興の みに取り組むチームを持つ都市である。 主催 創造都市ネットワーク日本 れらの約束を最後まで守り通して継続するようにしていき ます。ですから、私からのアドバイスは、申請書類にはネッ トワーク加盟というラベルが欲しいわけではないことを示 City Profile 登壇都市の紹介 Bologna is in the heart of Italy, just middle way from Florence and Venice. It is the capital of the Emilia Romagna region and is surrounded by beautiful plains, hills, woods and the Apennines. Its well–preserved medieval city center is among the largest in Europe and Bologna is home to the oldest University of the Western world, funded in 1088. Bologna can boast a vibrant cultural life and an emerging creative economy: nominated UNESCO Creative City for Music in 2006, the city stands out for its widespread creative fabric dedicated to musical fruition and production, structured in a series of International Festivals of great relevance, promoting a continuous cultural consumption. The remarkable classical music seasons, the contemporary music program, jazz music played in various places, children-targeted initiatives, the presence of song-writers and rock-bands and so much more, they all contribute to make a unique music scene. したり、教えたりすることです。多くの都市が創造都市ネッ ですが、ボローニャのマテオさんも言っていたとおり、こ のネットワークは文化遺産でもなくステータスの確認でも Niigata-Japan 新潟市 The city of Niigata is located on a vast plain created by two giant rivers: the Shinano and the Agano. One of Japan’ s first five ports to be opened to international trade, Niigata city has flourished as a port city for hundreds of years. Niigata’ s urban and rural spaces exist in harmony, and the city is home to both diverse cultural and historical legacies. In particular, cultural legacies rooted in the power of Niigata’ s land and fields, such as the city’ s gastronomy and its local culture of “Water and Land” are especially significant. Bringing these unique legacies to bear, Niigata is committed to using the creativity of culture to drive industry, tourism, education, welfare, and other fields in order to develop into a Creative Culture City defined by its appeal and vitality. For the year of 2015, in addition to acting as an official 2015 Culture City of East Asia, Niigata city will continue to pursue membership to the UNESCO Creative Cities Network as a City of Gastronomy. 西洋最古の大学の本拠地です。ボローニャ市は、継続的な文化需要の振興や、極めて関連性の深い一連の国際フェスティバルの開催、音楽的成果や芸術 作品に貢献した、広範囲にわたる創造的な街の構造が際立っており、活気溢れる文化の街としての生活と、新興の創造経済を誇れる街であり、2006 年 にはユネスコの音楽創造都市に認定されました。目を見張るクラシック音楽の活動期や、現代音楽のプログラム、様々な場所で演奏されるジャズミュー ジック、子どもたちを対象とした取組、ソングライター、ロックバンドの存在等々、そのすべてがユニークな音楽シーン作りに貢献しています。 Montreal -Canada モントリオール市 Since creating the position of Design Commissioner in 1991, quite before the concept of creative economy or creative city brought by Charles Landry and Richard Florida became trendy, the Ville de Montreal has implemented numerous initiatives aimed at stimulating innovation in design and promoting the local and international reputations of Montreal-based designers. In June 2006, Montreal was named a UNESCO City of Design, and became part of the UNESCO Creative Cities Network, established in 2004. In C the title to Montreal, UNESCO acknowledged the potential of designers to contribute to the city’ s future, as well as the commitment and determination of the Ville de Montreal, other levels of government and civil society to build on that strength for the purpose of enhancing Montrealers’ quality of life. The action plan Building Montreal UNESCO City of Design was launched. ベル以上のものであり、皆さんの都市にとっての本当に持 66 評価を受けております。映像が持つ力、映画が与えてくれる感動は計り知れないものがあります。山形市は映像による力を基に創造都市を推進し、日本へ、 世界へ発信して行きます。そして、ユネスコ・クリエイティブ・シティーズ・ネットワーク加盟を目指します。 ボローニャ市は、イタリアの中心部にあり、ちょうどフィレンツェとベニスの中間に位置しています。エミリア · ロマーニャ州の州都であり、美しい平 1つのプロジェクトなのです。皆さんが求めているのはラ さい。私からの提案、アドバイスは以上です。ありがとう 山形市では、アジアで初めてのドキュメンタリー映画祭として 1989 年より 25 年に渡り、山形国際ドキュメンタリー映画祭を開催しており、国際的に 原と丘陵、森林やアペニン山脈に囲まれています。中世の街並み保存が行き届いた中心市街地は、ヨーロッパの中でも最大級で、1088 年に創立された なく、さらなる高みに上ろうとする熱意を意味していて、 続可能な発展を求めているのだということを実証してくだ 北國新聞社 For 25 years since 1989, the city of Yamagata has played host to the Yamagata International Documentary Film Festival, the internationally acclaimed film festival which was the first in Asia to specialize in documentary. We recognize that the power of the film medium and its inspirational qualities are unfathomable. Yamagata City proudly declares its commitment to film culture, to foster the Creative Cities mission and promote it across Japan and the world. It is with earnest determination that we seek to join the UNESCO Creative Cities Network. Bologna -Italy ボローニャ市 クのメンバーとして他のメンバーと意見交換したり、学習 て考え、魅力を感じています。それは確かに魅力的だから 金沢市 後援 Yamagata -Japan 山形市 世界の創造都市による取組み紹介とセッション すことです。皆さんが求めているのは、創造都市ネットワー トワークへの参加というこの肩書をブランドかラベルとし 共催 文化庁 平成 27 年度文化芸術創造都市推進事業 員とコミュニティ、つまり芸術と創造コミュニティが、こ 新潟市は信濃川と阿賀野川の両大河が造った平野に築かれたまちで、開港五港の一つとして古くから湊町として栄え、都市と田園が調和し、多様で魅力 あふれる文化や歴史が共存するまちです。特に「食文化」や「水と土の文化」など田園・大地の力に根差した文化は誇るべきものです。この特色ある文化を“強 み” として、文化が有する創造性を産業・観光・教育・福祉など様々な分野に活かし、魅力と活力ある「文化創造都市」を目指しています。 新潟市は 2015 年、東アジア文化都市に選定されるとともに、ユネスコ創造都市ネットワークガストロノミー分野への加盟に向け取り組んでいます。 Sasayama-Japan 篠山市 Sasayama city is initiating to establish “Creative industry” which connected to the future with new original culture and assets based on various culture such as sceneries, cultures, agricultural products, festivals and Tamba pottery and “Creative Village” which plan to revitalize the village while increasing the true value of village. This April, Sasayama city was resisted to “Japan Heritage” . On this occasion, we will promote more about Sasayama city as “The City of Japan Heritage” to domestic and foreign countries and aim of joining UNESCO Creative Cities Network as Crafts and Folk Arts. チャールズ · ランドリーとリチャード · フロリダによってもたらされた創造経済や創造都市の概念がトレンドとなる前の 1991 年に、デザイン・コミッショ ナーの役職を設置して以来、モントリオール市は、デザインにおける革新の活性化、および、モントリオール市を拠点として活動するデザイナーの国内 および世界的な評判の向上を目的として、様々な活動を実施しています。 2006 年 6 月、モントリオール市は、ユネスコのデザイン都市に認定され、2004 年に設立されたユネスコ創造都市ネットワークの一員となりました。 篠山市では、篠山に残る様々な景観、文化、農産物、祭礼、丹波焼を土台に新しい独自の文化と資産を未来へつなげる暮らしに結び付いた「創造産業」の育成、 ライフ)向上という目的のために、その強みを確立していくというモントリオール市の公約と決定についても評価しました。行動計画「Building れたのを機に、 「日本遺産のまち」としてさらに国内外へ篠山の魅力を発信していきます。そして、ユネスコ創造都市ネットワーク、クラフト&フォークアー ユネスコは、市の将来に貢献するデザイナーの潜在能力と同様に、モントリオール市およびその他の行政機関と市民社会の QOL(クオリティ・オブ・ そして農村の良さを更に伸ばしながら活性化を図る「創造農村」を創り出すまちづくりに取り組んでいます。篠山市は今年4月、「日本遺産」に認定さ Montréal UNESCO City of Design(ユネスコデザイン都市モントリオールの構築)」は、開始されました。 ト分野への加盟を目指します。 添付資料 世界創造都市シンポジウム 参 加 者 アンケート ( 有 効 回 答 数 4 1) 1、本日のセミナーをどちらでお知りになりましたか。 4、本シンポジウムは、ユネスコ創造都市の経験から学 1)CCNJ メール ニュース 29 び、各都市間の知見や共有を図ることを目的に実施され 2)創造都市ラウンドニュース 14 ました。 3)その他 4 ※複数回答あり 2、 本シンポジウムへの参加理由をお聞かせ下さい。 ① 本プログラムを通じて「ユネスコ創造都市」に対す る認識は深まりましたか。 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 37 4 0 1)ユネスコ創造都市の取組や事例に関心があっ たから 37 2)国内登壇都市の取組や事例に関心があったから 21 ② 本プログラムを通じて各都市間の知見や共有が図る 3)CCNJ の活動に関心があったから 21 ことができたと感じましたか。 4)その他 1 ※複数回答あり 3、本日のプログラムのうち、関心の高かったものをお a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 31 10 0 選びください。 ③ 文化芸術は都市の再興と社会課題の解決につながる 1) 1) と感じましたか。 ボローニャ市 <ユネスコ音楽都市> 事例発表 マッテオ・レポレ氏 2)モントリオール市 <ユネスコデザイン都市 >事例発表マリー = ジョゼ・ラクロワ氏 22 25 3)山形市 市川 昭男氏 事例発表 13 4)新潟市 篠田 昭氏 事例発表 10 5)篠山市 酒井 隆明氏 事例発表 20 2 6)パネルディスカッション a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 33 6 1 ※未回答あり 5.今後の CCNJ の活動に、期待する内容があればお 聞かせください。 ※複数回答あり ・行政側の面だけでなく、住民の声を聞きたい。 ・1)若者の自立に関して、小さなマーケットでも可能性 ・エリアの登録自治体でのネットワークづくり。 を持続しているかに関して。 ・日本の都市の場合は、自主財源が不足しており、文化 ・1,2)行政主導ではなく、一般市民の主導で長期にわたっ 芸術のアピールでこれをどのくらい補えるか不明。 て築きあげた結果としてのユネスコ登録だったという実情 ・各都市の経済関連表を作成し、文化へのアピールでど が興味深かった。 の程度付加価値があるがのかを動態化して考える必要が ・5) 創造農村が今後の世界のキーになる気がして。 る。 ・2) 創造都市は「遺産」ではないという言葉が印象的で ・国際交流。 した。 ・エクスカーションを中心とした都市間交流の実施。 ・ 2,3)産業にむすびつくこと、NPO 法人化していること など行政だけの取り組みだけでなく、ひろげていくことが 参考になった。 67 添付資料 創造農村ワークショップ 創造農村ワークショップ in 十日町 「芸術祭と地域再生」 実施に向けた、文化庁の基本構想を発表いたしました。こ 主催者挨拶 文化庁 長官官房審議官 磯谷桂介氏 2,000 万人を突破することへの貢献を目標としまして、文化 皆さん、おはようございます。ただいまご紹介をいただ プログラムを進めていきたいと思っております。こうした きました、文化庁の審議官の磯谷と申します。今日は各地 規模については、ロンドンオリンピックの時に同じように からお集まりいただきましてありがとうございます。この 文化プログラムが 4 年間にわたって行われたのですが、そ 第 5 回創造農村ワークショップの主催者を代表して、一言 の規模をぜひ上回りたいと考えております。 ご挨拶を申し上げたいと思います。 の構想では 2020 年までの 4 年間に 20 万件のイベント、5,000 万人の参加、そして、2020 年における訪日外国人旅行者数 また、文化プログラムの 3 つの枠組みとしまして、最初 このワークショップの開催に際して多大なるご尽力を賜 に国の顔となるようなリーディングプロジェクトを進めて りました、CCNJ の顧問である佐々木雅幸先生。それから、 いきたいと思っております。それから、2 番目に芸術祭など 本ワークショップの開催地である、関口市長さんをはじめ の国とか地方と民間がタイアップした取り組みを進めてい とする、十日町市の皆さま。本日ご参加くださる逢坂先生、 きたいと思っております。そして、地域の伝統的な行事など、 北川先生、明日ご紹介いただきます講師の方たち。パネリ 日ごろから行われている民間や地方自治体の取り組みも充 スト、ファシリテーターの皆さま。準備にあたってこられ、 実していきたいと、この 3 つの取り組みで文化プログラム 本日も司会をしていただいております、一般社団法人ノオ を進めていきたいと思っております。2020 年に向けた文化 トの皆さま。そして、関係する多くの皆さまにまずは感謝 プログラムの実施にあたっては、CCNJ 加盟の皆さまに中核 を申し上げたいと思います。 を担っていただきたいと思っておりますし、文化プログラ 文化庁では、去る 5 月 22 日に文化審議会で議論をしま ムを地元の魅力の再発見、あるいは、海外からの来訪者の して、この文化審議会というのは、文化庁に置かれている 増加の契機として積極的に活動していただきまして、2020 審議会で、東京藝術大学の宮田先生に会長をしていただい 年以降も続けていくような文化芸術による地域振興への大 ておりますけれども、そこで一年ほどかけて議論をしまし きなステップにしていただきたいと思っております。文化 て、2020 年度までの概ね 6 年間を対象とする、第 4 次の文 庁としましても、今後とも文化芸術都市の取り組みを支援 化芸術振興に関する基本方針を閣議決定いたしました。こ してまいります。本ワークショップの開催について、改め の基本方針では、教育、福祉、まちづくり、あるいは、観 て感謝を申し上げると共に、皆さま方の取り組みの一層の 光、産業などの幅広い分野との関連性を意識しながら、こ 発展を祈念してご挨拶とさせていただきます。今日はどう うした周辺領域への波及効果を視野に入れた、文化芸術振 かよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 興施策を展開することや、いわゆる人口減少社会、過疎化、 地域コミュニティの衰退など、今のわれわれが直面してい る課題の改善や解決のために、何とかこの文化芸術を役立 てることができないか、そのようなことを通じて、成熟社 開催地挨拶 十日町市長 関口芳史氏 皆さま、ようこそ、越後妻有十日町にお越しいただきま 会に適した新たな社会モデルを構築することを目指して、 した。心より歓迎を申し上げる次第であります。ご紹介賜 2020 年以降の文化芸術立国を実現することとしておりま りました、市長の関口です。今日は、素晴らしいこの機会 す。 を与えていただきまして、今、開催しています、大地の芸 今回のワークショップのテーマは、先ほどご紹介いただ 術祭ともども、この越後妻有の地を皆さまに見ていただけ きましたように、芸術祭と地域再生ということでございま るということを大変嬉しく思っています。今ほど、磯谷審 す。文化芸術の持つ創造性をいかに地域振興につなげるか 議官からのお話しがございましたけれども、2020 年までの という趣旨であります。従いまして、今日お集まりの、文 文化行政の指針はもう、ばっちりスタートしているわけな 化芸術の力によって、都市や農村の魅力を高めて発信して ので、最後におっしゃられたように、その後を見越しながら、 いこうとされている自治体、NPO 法人の方々にとって、こ 地域の再生とありますけれども、地域の創生と言ってもい のワークショップの内容が非常に参考にできるのではない いかもしれません、新しい地域のあり方を、私ども、このアー かと思っております。 トを通して創り上げていきたいということでございますの さて、2020 年には、東京オリンピック、パラリンピック 競技大会が開催されます。政府としては、この 2020 年をス で、ぜひ皆さまにはご理解いただければとお願いを申し上 げたいと思います。 ポーツだけではなくて、文化の祭典として成功させたいと 今日は、北川さんと逢坂先生のご講演ということであり 思っておりますし、東京のみならず、全国津々浦々で魅力 ます。その後は、実際に芸術祭の作品を見ていただけるツ ある文化プログラムを展開することによって国内外の人々 アーもあるということでありますので、ぜひご覧ください。 を日本の文化で魅了したいと考えております。こうした取 東京 23 区がすっぽり入る大きな十日町市と津南町に大地の り組みを通じて、2020 年以降に繋がるレガシーを創出して、 芸術作品は、非常に多く 383 点ほど点在しておりますが、 文化芸術立国を実現したいと思っております。 実際にこれは一つの所にまとめて効率的に見てもあまり面 文化庁としましても、この 7 月 17 日に文化プログラムの 68 白くないと私は思うんです。ぜひ、暑いのですけれども、 添付資料 創造農村ワークショップ 苦労をしながら坂を上ったり、途中でいろいろな方と出会 市政策セミナーを行う際に、札幌国際芸術祭第 1 回目が開 いもあるかと思いますけれども、そういったものも同時に 催されたので、芸術祭となったら、やはり、北川さんをぜ お楽しみいただきながら、芸術を目当てにこの大地をまさ ひお呼びしたいという声がありましたので、そちらにお越 に駆けめぐって歩いていただきたいと思います。そうする しいただきまして、北海道大学の緑の中の、なかなかいい と、きっと懐かしいものに出会うことができるのではない 建物で、議論をしたのですが。今回、改めてやはり、越後 かなと思います。 妻有のこの自然の中で議論できるという、大変素晴らしい この会場は、安藤忠雄さんデザインの会場で、素晴らし 設営になりました。ぜひ、ここでこそ、北川フラムさんの いホテルベルナティオの敷地の中にありますが、あまり宣 お話をじっくり聴きたい。お忙しい中をお引き受けいただ 伝していないので知る人ぞ知るという存在ですけれども、 き、大変感謝しております。 この建物もとても魅力がある。もう一つ向こうに、この対 それと、どんなテーマを見つけたらいいかということを の安藤建築があります。この地域は建築を目指す皆さんに 考えていまして、やはり、現在、実際の芸術祭というのは、 も大変面白いエリアになっていますので、そういう観点か 大地の芸術祭や、瀬戸内国際芸術祭のような、農村部や、 らもまたぜひお楽しみいただければと思います。今日のこ あるいは、瀬戸内海、そういう自然の中で行われていると の素晴らしいイベントが皆さまにとって本当に成果が上が いうタイプと、横浜市や名古屋市を中心とした、あいちト る、価値あるものになりますことを心からご祈念申し上げ リエンナーレ。それから、神戸のトリエンナーレ、そして、 まして歓迎のご挨拶にいたします。よろしくお願いします。 札幌芸術祭。京都市が今年から PARASOPHIA という国際現 ありがとうございました。 代芸術祭をやっております。そういう都市型と両方がある ので、その代表格として、横浜トリエンナーレをお話しい ただければと、逢坂さんに駆けつけていただいたというわ 講演「まちとアートのむすびつき」 創造都市ネットワーク日本顧問、文化庁文化芸術創造都市 振興室長、同志社大学経済学部特別客員教授 佐々木雅幸氏 けであります。 進め方としては、お二人それぞれにたっぷりお話しいた だいて、私のほうから質問を投げかけたり、あるいは、時 皆さん、おはようございます。創造農村のワークショッ 間がありましたら、フロアからも少し質問、感想などを交 プというのは今年で 5 回目を迎えまして、私どもは、創造 えながら進めたいと思っております。スケジュール的には 都市ネットワークを立ち上げるときに、大都市や地方の中 余裕がありますので、北川フラムさんに、たっぷりお話し 規模都市の政策のみならず、農村地域、特に過疎地域の再 いただけると思うので、さっそくお願いしたいと思います。 生を文化芸術でどのようにできるかという問題意識を持っ よろしくお願いします。 ておりまして、そこで、このネットワークを立ち上げると きに、例えば、創造都市田園ネットワークとか、そういっ た名前にしたらどうかという意見もあったんです。ただ、 ユネスコなどが進めております、グローバルなネットワー クは、創造都市ネットワークと言っているものですから、 大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ総合ディレ クター 北川フラム氏 ご紹介いただきました、北川フラムです。越後妻有によ それに準じて、国内の都市農村のネットワークも創造都市 うこそ。大地の芸術祭が始まって、昨日で 9 日目が終わり ネットワーク日本という形で、毎年、政策セミナーを開催 ました。おかげさまで、出だしは、好調で多くの人が来ら して、経験交流、あるいは、理論、政策の問題を考えてき れていますが、びっくりするのが、何しろ半分以上、外国 た。そこで、やはり、農村の問題も焦点を絞って議論をし の人になっていて、突然、直島に訪れる外国人比率を超え たいなということがありましたので、第 1 回目は秋田の仙 たのですね。直島は 4 割が外国人と言っていたのが、この 北市。わらび座という、農村で展開している劇団がござい 間、田中奈緒子さんという人のパフォーマンスを見に行っ ました。そこで開催させていただきました。以来、兵庫県 たら、9 割ぐらいが外国人でした。それはなかなかいいな の篠山市、長野県の木曽町、そして、昨年は北海道の東川町。 と思っていました。この芸術祭が始まったのが、7 月 26 日 今日もおそらくその関係の方々が皆さん、お見えだと思い で、3 日前に中国系のサポーターたちがせっかくサポーター ます。それぞれ非常に印象深い取り組みを見せていただき をしているのだから喋れと、20 時過ぎに呼ばれまして、香港、 ました。例えば、昨年は、東川町は写真文化首都という形で、 台湾、中国の人たちが中心の説明会に行ったら 100 人以上 写真の町ということをやっておられていまして、その 20 周 のサポーターが来ているというのには本当に驚きました。 年記念の会とワークショップが主でした。今年の開催につ これこそ、結論を最初に申し上げておくと、あり得なかっ いて、十日町市のほうからも、この大地の芸術祭が第 6 回と、 た姿です。地域だけでは今いろいろなことは何も出来ませ 2000 年から開催してきて、15 年節目ですので、私どもと ん。いろいろな人たちの交流とか移動というのは、ものす しても開催させていただきたいなという思いがあったのが、 ごい重要であり、しかも、ある意味で便利とは言えるかも うまくこの形で準備できたということでございます。 しれないのですが、画一的、ビジネス的……悪いことはい くらでも言えますが、とにかく、人間の個としての可能性 実は、昨年は、ちょうど今ごろですが、札幌市で創造都 からはまったく遠い管理型の社会に明らかになっています 69 添付資料 創造農村ワークショップ ので、そういうものに対して、グローバリゼーションとい びっくり仰天ですね。パレ・ロワイヤルというフランスの、 う市場、あるいは、通信、あるいは、生活システムの一元 年に一人ずつスーパースターがでる大展覧会がありますが、 化に対して、それぞれの場所に生きてきた人たちの生活。 その時、カバコフはこれに参加していたのですが、自分は それがいろいろな中でままならないときに、見通し、ある こういうふうなことをやってきたわけじゃないと、美術を いは、助け合う、交換し合うという姿があるといいのでは 廃業しようとしていたのですが、ご家族の話だと、ある日 ないかとずっと思ってきました。そういう意味で驚いたわ 突然立ち上がって、ちょっとオーバーかもしれませんが、 「俺 けですね。それで、外国からの人はどのくらいいるのだろ には妻有がある」ということで、もう一度ちょっと美術を うと聞いたら、200 人超えるんじゃないかと。それだけの やり直そうということで、公募みたいな形で提案が来た作 人たちが関わってサポーターをしてくださっている。おそ 品です。昔、棚田だった場所でやりました。 らくその人たちは、10 年後、20 年後に同じ釜の飯を作って、 しかも、相当つらい思いをして。蔡國強(サイ・コッキョ ウ)さんの作品なんか、大変な作業ですから、そういうこ とを一緒にやって、なんとか、それを人が喜んでくれている。 そういうことを見て、その人たちがやはりどういうふうに なっていくのだろうと、ものすごい大きな希望が持てると 思いました。それが目的の一つで、 良かったなと思いました。 今日は幾つかのポイントでお話ししますが、せっかくだ から、速報を交えてお話しします。これは、80 メートルず つの真四角の建物で、原広司さんが十日町という市内が相 イリヤ&エミリア・カバコフ「人生のアーチ」(2015 -)photo:Osamu Nakamura 当傷んできた中で、一つのオアシス、キャラバンをイメー ジして作れられた作品です。水辺のある所にみんなが集ま これは、アネット・メサジェさん、フランスの女性のアー る、そういった祝祭性を最初は望んだわけですが、前回、 ティストです。住む地域の女性たちの記憶の品々。そういっ 関口市長が大英断で作らせてくれて、これを、越後妻有里 たものをぬいぐるみのようにつくろうという形でやったも 山現代美術館[キナーレ]という形に変えていただきました。 のです。これは一軒の空き家です。 里山というのは、地域に深く根を下ろし、資源を探し、耕 次に、これが、JR の飯山線という雪が厳しい飯山から越 していく、ということですね。現在、私たちはそういう世 後川口まで通っている単線です。ぜひ真冬の夜中に来てく 界と繋がりながら生きているわけです。この交差点の中で ださい。4 メートルぐらいの雪の壁の中を走りますから、 地域はどう生きるかと。あるいは、日本の農業はどうある すごい、そういう切実感がある。そこの二つの駅を JR さん かという課題があるわけです。そういう中で、里山現代美 が手伝ってくれましてやりました。このジミー・リャオさ 術館が復活したのです。 んも公募で選ばれた作家です。実はまったく知らない方で、 それで、この 2 階部分が現代美術ですね。これは外国の 特に中国の言葉なので、最初でもうダウンしそうになるわ アーティストがほとんどなのですが、皆さん、全然、オリ けですが、だけど、とにかく公募を、一人で見ていくとい エンテーションしないのに、地域というものを考え、自分 うことは、実に重要なことなのです。平均化しない、それ の作品を表すというより、地域というものが引き立つよう ぞれの存在が伴っている、けれども、それぞれの場所でそ な形の仕組みをつくってくれました。この、蔡國強さんの れぞれの人間と、ある考え方で芸術祭をやっていかなけれ 作品は、正面にある航空母艦らしきものは、下はしめ縄で ば、全部、金太郎飴になるしかないです。それで、やらせ つくっています。つまり、この地域の正月の産業ですね、 ていただいているわけですが、そういう中で、選んで良かっ しめ縄。これを生かしながら、藁を使うということです。 たと思います。打ち合わせしようと言ったら、7 人ぐらい 後ろのほうは、もうまったく舞台裏丸見えにあえてしてい のスタッフがどわっと来て、これは何だと思ったら、この るわけですが、蓬莱山(ほうらいさん)という、古い南方 人は有名な絵本作家であるのだということで、「ああ、恐れ にある、仙人が住む、一種ユートピアの島が、現在、本当 入りました」という感じでしたが、かなり頑張ってこんな にユートピアであり得るのかというような問いかけをして ようなことをやっています。 いるのです。 これはちょっと面白い作品で、古郡弘さんというのは、 次ですが、これも、新作で、イリヤ&エミリア・カバコ 第 1 回の芸術祭から 3 回連続、非常に迫力のある、大地の フの『人生のアーチ』です。これは、イリヤ&エミリア・ 芸術祭を代表する土を使った作品をつくった方です。4 回 カバコフの『棚田』 。松代の大舞台にある棚田、昔の農作業 目の提案に関して、僕は、申し訳ないけれども、やはりこ 風景の5場面が棚田にあって、それを手前のフレームから れは受け入れられないと申し上げました。彼は、今から思 詩と共にのぞくという、大地の芸術祭の代表たる作品があ えば、満を持してというか、要するに、我慢してというか、 りますが、カバコフはこれを自主的に出してきてくれた。 5 年後に電話をかけてきて、 「おい、北川。おまえ、見に来い」 70 添付資料 創造農村ワークショップ と言うので、それで見に行って、びっくり仰天した作品です。 がなかなかできないということで、やるならきちんとやる、 雌伏五年、すさまじい作品をつくって、これはまさにアー でもなんかやれないので、ここはつらいところだというふ ティストらしい作品であります。今どき、とにかくつくれ うな形で今期スタートしました。 ばいいというものとはちょっと訳が違うすごさがありまし た。これは、旅館を少し改築しています。 今回は、今まで残っていた作品、および、新しい作品で 400 点…正しい勘定をした人が誰もいないのですね。どう これは、開発好明さんが、ちょうど今ごろですね、毎日 やって勘定していいのかよく分からないから。ですが、ほ 10 時から 1 時間、 『モグラ TV』をやっていまして、地元の ぼそのぐらいだろうということですが、毎回、200 点ぐら FM 局と組みながら、ラジオでは生、テレビでは YouTube いの作品がつくられて、40 点ぐらいが平均して残る。この でずっと流しっ放しでいます。いろいろなアーティスト、 地域はよそと違って残すというのがものすごく大変なこと あるいは、地元の人たちとの 1 時間対談をしながらやって です。メンテナンス等々で。これを残しながら、今やって いくということで、FM 十日町もこれによって全国区に変わ きているということです。 るということになりました。 何をもって地域づくりとするのかと。そこに住んでいる これで終わりですが、サポータースタッフに関しては、 人にとっては、自分たちが朝起きて寝るときまでに、いか 毎朝、日によってまるで違い、とにかく昨日からも大変な にさわやかにいるか、ということしかない。リアリティは 日が続いています。サポーターが一挙にいなくなると、ほ そこしかないわけです。それをいろいろな数字的なことを とんど外国の人たちだけ。日本の学生たちはずっと勉強し 言われても、それは何の話かさっぱり分からない。 ているのか何かは分かりませんが、少なく、相当大変です この地域のもともとの出発は、国、県が進めていた、平 ね。サポーターの比率が社会人中心になっていまして、学 成の大合併です。これの良し悪しということよりは、それは、 生が本当に足りない。うちらの組織変更をしまして、とに それなりに理由があって、僕は何とか言うわけではないの かくこっちに来るというような形でやらないと、サポーター ですが、その時に、何をもって考えるかということが大事 が足りないという状態です。どこも同じ話で、例えば、15 だと思います。この当時は、リストラと言えば、何でも OK 年前にやっていた地域、あるいは人、もう 15 年経つわけで ということでした。それで、3,200 あった自治体が、国がそ すね。当時、60 の人たち、あるいは、70 ぐらいのまだギリ の当時想定した 800 ぐらいに対して、現在、約半分ぐらい ギリで元気が良かった人たちの 15 年って、恐るべき 15 年。 になりました。新潟県の場合は、合併で 122 あった市町村 この問題はもう待った無しで大変な話になってきている。 が、現在、30 です。長岡なんて海まで持っちゃって、とい 今どこもそうだと思いますが、この数十年、人口が減ら う感じですね。そういう中で、合併とはどういうことなのか、 ざるを得ないときに、どうそれをしのぐかという問題があ 僕はよく分かりません。でも、中に入って、大切にしたい ります。日本はやはり、高度経済成長とか、いろいろな事 ことは、その人にとってそれなりに気持ちが良く、生きて の中で、とにかくアンバランスな成長をしてきましたので、 いて良かった、ここにいて良かったと思えること。日常が 人口問題というのは今もうしょうがない、直面せざるを得 それなりで、挨拶をして挨拶を返してくれるという世界が ない。それで、この地域にある過疎・高齢化の問題は、半 ある。簡単に言えば、そういうことだと思いますが。その 分は、日本全体の自然減の問題だと思いますが、ここをど 単位というのは、この地域では集落だったわけです。つまり、 う広げながら、そこへどう元気よく創造的でいられるかと 車社会になるまでは、半年の間、その集落ですべて助け合っ いう課題があって、僕にとって一番の問題というのは、こ てやっていかなければならない。そのリアリティに増すリ の地域の問題は、高齢化していく最初から頑張った人たち、 アリティは他にまったくありません。 および、若者たちというものが、やはり、いろいろな形で 例えば、後で出てくる、蓬平、あるいは、莇平という集 自分たちの活動をしているときに、第 1 回目は、この芸術 落の人は、その、蓬平、莇平の集落に対しては命懸けです。 祭ぐらいしかあまりありませんでした。が、今はなかなか それに対して、松代町、あるいは、新十日町市と言われて 人が参加しにくい。ここに今、香港、上海の大学がかなり もリアリティがない。その時に、集落というのが、その人 入ってきているというようなこと、それは有り難いわけで たちにとっての一番のリアリティであるとすれば、その集 すが、そういうふうな形がうまく取れていかないといけな 落を軸に考えなきゃいけない。 いと思っています。 土日は当然、数が必要なのですけれども、いろいろな場 それで、当時思ったのは、約 200 の集落という単位があっ て、それが、学区でいうと、4つぐらいで一つの学校がで 所を見て行くために、先に来たい人たちがいる。それで、 きる。そうすると、50 ぐらいの小学校が二つか一つになり ガイドバスが何本走っているかといいますと、全体で、も ますと。これが一つの単位。神戸の震災のときに、ライフ うちょっと増えるかもしれませんが、オフィシャルでやっ ラインを守れて、約4日間を過ごしたのは、主に学区単位 ているバス以外にいろいろな所がバスをスタートしてガイ ですね。つまり、子どもを通して繋がっていた小学校の学 ドさんをやってくださいという感じで、2,000 本を超える 区です。この単位というのがどこにあるかということをや バスが走り回る。それで、土日は大丈夫なのですが、平日 はり考えるしかないと思う。これがやはり、ヒューマンス 71 添付資料 創造農村ワークショップ ケールというものであろうと僕は思っています。それで、 け厳しくなったときに、資本主義のフロンティアが無くなっ 200 の集落にこだわるしかない。最初は 2 集落しか「はい、 てきたときに、私たちは本当に大変なことになる。今まで やるよ」と言ってくれなかったのですが、だんだん、面白 都市の課題が現代美術の課題だと思ったけれど、それだけ いと思いだして、もはや集落の数に対応できない。そうい ではない、地域こそやはりこういう時代に大きな課題を抱 う中で、これまた、おにぎりだとか、もうアートなしでい えているし、あるいは、地域が開口部になるかもしれない いぞというようなことがいろいろと起きてきたということ ということが分かり始めたのが第 1 回の芸術祭の結果です。 が基本的な流れです。これがやってきた基本的な単位です。 そして、これはどこでもやっているわけですが、その場 ここはなかなか面倒なところですが、それで集落単位でやっ 所に固有な美術というのがあるだろうと。例えば、これが ていくということで、5 回もやっていれば、かなりの数だと、 作品だとしたら、ホワイト・キューブにおいては、20 世紀 200 が実際に残ってきたわけですね。 の理想は、やはり、ミース・ファン・デル・ローエの均質 その次に、じゃあ、人の移動とかは、外部からの手伝い 空間です。これが、どこに行っても同じように見えるとい がなければ駄目だということを考えるときに、僕は、国と う空間を用意した。美術で言えばタッパが高くて白い壁の 国との国交はそれなりにあると思いますが、基本的にまっ 空間ですね。十日町にあっても、ニューヨークにあっても、 たく信じていません。昨日の友は明日の敵みたいな、そう ヨハネスブルクでも同じように見える。これが 20 世紀の一 いうような感じですね。だけど、リアリティのある単位で つの、民主主義も含めて一つの理念でした。ところが、今、 あるとすれば、その国に自分の知っている人がいて、一緒 そういった均質空間なんておかしいのではないか、もっと に釜の飯を食った人がいたら、それは変わる話だと思って 地域独自のいろいろな時間の中でという中で、成立すべき います。特に、若い人たちが、やはり、いろいろな地域の ではないかというふうになってきていると。そうしたとき 人と、あるいは、いろいろな国の人たちと一生懸命にやる。 に、もちろんアーティストは自分の作品をつくるのですが、 この単位というのは、僕はリアルな単位だと思っています。 それが、ホワイト・キューブによって守られることではな これをできるだけやりたい。そして、外国の人が、芸術祭 くて、これがあることによって、この場所、あるいは、こ には多いというのは本能ですね。つまり、日本の人とやる の奥に広がる時空間というものを明らかにする。こういっ 場合は楽です、最初は。外国の人はみんな怖がります。け たことが、妻有では議論されてきました。 れども、そのほうが面白いということが、明らかに結果的 1 回目は残念ながら、いわゆる都市型のパブリックアー には出てきます。違う人のほうが人間は面白がる、これは トの作品、あるいは、啓蒙的な作品が多かった。2 回、3 回 本能です。そういう中で、やってきた中で、かなり、それ とだんだん変わってきました。それで、クリスチャン・ボ ぞれの地域が自分たちの目で、あるいは、自分たちとの関 ルタンスキーみたいな……みたいなと言ったらいけないな、 係で、企業なり、団体なり、あるいは、作り手で繋がるよ わりと孤絶的な作品、作家がガラガラと変わりだしました。 うになった。これは大変です。 やはり、おばちゃんにお尻をたたかれて「おい、あんちゃん、 台湾は、大都市および、県で含めて、20 ちょっとくらい 頑張ってんね。」なんて言われたら、元気になっていくんで の単位があります。そのうちの 5 つが、大地の芸術祭に協 すよ。つまり、都市の中で孤独にやってきたアーティストが、 力したいと言ってくるようになりました。そのなかの小さ 妻有に来てかなり変わりだします。こういうことを含めた な市ですが、六結村・大忠村という所が今来ていまして、 場所に対応する美術ができた。 津南町をベースにして、穴山という集落などと一緒に繋がっ それから、決定的なのは、廃校、空き家の活用です。こ ています。これは本当に強いですね。やはり、飯を一緒に の地域は雪が多く、多いときはひと冬で 8 回の雪下ろしを 食いながらモノをやるというところまで踏み出さなければ します。そうしないと、2 冬、3 冬で屋根に穴があいて、全 いけないだろうということで、これが地域にこだわった結 然使いものにならない。これを畳んで出るという余裕はな 果としてかなり出てきています。 かなかありません。畳むのにも 300 万円くらい掛かります。 放っておくというのは、我々から見ても痛ましい風景です 例えば、下条という集落が、フィリピンのイフガオと繋 が、地元にとっては本当につらいです。これをどう活かす がって、かなりいろいろな形で交流している。しかもそれ か。いわゆる、マイナスの価値をプラスの価値にどう変え のすごいのは、山下大将が戦争中に行った場所です。その るかというのが大きな課題になりました。現在、10 を超え 話までちゃんとしながら、どうだったという話ができる。 る廃校、40 軒を超える空き家にアートが入りだして、つまり、 それは集落単位だとできる話です。いったん国になった時 マイナスの資源をプラスに変えるということを徹底的にや には、ああだこうだというとんでもない話題になるけれど るということになりました。つまり、廃屋、廃校は、過疎・ も、これは全然違う話になってくる。こういうことが行わ 高齢化のこの地域の真実です。この真実をちゃんと見据え れてきたのです。 た中で、そこにいろいろな地元の人の力、あるいは、展示 それで、この前の芸術祭の中でやれてきたことは、20 世 会の力、そういったことを何か足し算というか、かけ算し 紀は都市の時代であり、都市の美術でした。けれども、地 ていく、そういうことによって何かをつくっていくことが 域でもやはり美術というものにそれなりに働きがある。逆 よく分かりだしました。 に地域のほうが面白いんじゃないかと。地球環境がこれだ 72 添付資料 創造農村ワークショップ さて、次に文化の話になります。僕は、絵を描きたくて 中からしかないだろうと僕は思っています。 美術学校に行ったわけですが、これは本当にいまだに思っ そういうことで、じゃあ、私たちはどこにいるか。信濃 ていることですが、もう訳が分からない。僕は、ルノワー 川河岸段丘と書いてありますが、どういう場所に住んでい ルとかモネのああいう淡いのが好きなわけですね。こうい るかということですね。これは、磯辺行久さん、今回、辰 う絵を描けたらいいなと思って美術学校に行った。そした ノ口の砂防ダムをまた対象にしていますが、昔は川がこう ら、現代美術の話は論理学の話ばかり。そういうことを知 いうふうに蛇行していたと。それで、5 メートルごとに、 らないから美術をやれないのという話ですね。もう、ちょっ 700 本、3.5 キロにわたって昔の蛇行の跡を表した。こうい と冗談じゃないと思って。それとか、ミロの石膏ですら描 うのが第 1 回目にありました。河岸段丘というのがこうあ けと言う。このように描け、それで採点をされる。冗談じゃ る、そういうことを明らかにした側面もあった。 ない、こんなミロの石膏を美しいとも何とも思わない。例 えば、ルーブルに行って、 「サモトラケのニケ」を見ると、 うわあっと思うようですが、石膏の粉で固めたものを見て 感動するなんて、しているほうがおかしいですよ、僕に言 わせれば。そんなようなことを、 「何なのだろう」と僕は思 いまして、それはいまだに続いていることです。 それなりにいろいろなことがありました。この間、鶴見 俊輔先生が亡くなられました。鶴見先生が言われる現代美 術って、流派はたくさんあります。けれども、彼が戦後出 した定義というのは、専門家による専門家のための話。こ んなのしょうがないだろうと。つまり、僕は半分、建築に 足を突っ込み、半分、美術に足を突っ込んでいますが、建 ミエレル・レーダーマン・ユケレス「スノーワーカーズ・バレエ 2012 雪上舞踏会」 (2012)photo:Osamu Nakamura 築の世界でどう思われる、あるいは、美術の世界でどう思 これはもう見ることはできませんが、芸術祭の作品の最高 われるなんて、どうでもいいだろうと僕は思いますね。最 の一つだと思います。7 つの信濃川河川敷、13台の除雪 終的に、じいちゃん、ばあちゃんが喜んでくれる環境をつ 車で『スノーワーカーズ・バレエ』をやりました。半年の間、 くれればいい。あるいは、子どもたちがこんな作品は見た 合宿をしながら、朝の 2 時、それくらいから出動をして除 ことがない、そういうことをやりたいと僕は思っている。 雪をしている労働者です。技術が必要です、この雪の中で 美術と建築のジャンルは、僕ははっきり言って興味があり やるという。この人たちならこれくらいのことができるだ ません。それが一つですね。 ろうと、2006 年にやって、2012 年にリバイバルで何本か あと、プロによるすさまじい修行をした人が一般のアマ やりましたが、最初の感動は忘れられません。何も説明し チュアに対してやる芸術。これは、美空ひばりの歌なんか ていない中で車が動いている。そうすると、20 分くらいし もそうです。全然違う話をしますが、最近数年やっていま てから、そこはかとなく、さざ波のように「『ロミオとジュ せんが、この地域で、紅白歌合戦妻有版という祭りをやる リエット』じゃないか?」というのが伝わってくるのです。 のです。これは本当にすごいです。10 人ずつ選んで男女で この感じがものすごくいいですね。彼らがこの除雪車から やって、紅白対抗なのですが、出してくる女性は全部、美 降りて手を振ったときの拍手は、本当に今まで幾つかそう 空ひばり。ほとんどが「川の流れのように」 。それが駄目だ いうことはありましたが、そのうちの一つ、ものすごく温 と「リンゴ追分」とかそういうのになるわけです。それも かい拍手です。やはり、その場所で生きてきて、それを支 かぶると、大月みやこさんとかに徐々になるのですが、こ えている人、これに焦点を当てた名作だと思います。こう の人たちはほとんど外国から来られたお嫁さんたちです。 いう作品がいろいろ出てくる。 もう、本当に 5 年間、10 年間、とにかく夜になると美空ひ それで、今回すごい作家が雪の中でやりたいというのが ばりをただ聞いていたと。それしか聞けなかったというよ 出てきました。やはり、十日町は豪雪地として世界でも有 うな人たちなの。もう、めちゃめちゃうまい、歌が。それ 数な地域です。やはりそこをちゃんとやりたいと。それで、 はすごい。 広葉落葉樹があったり、辻惟雄先生がまさに日本美術の特 3つ目、アマチュアによるアマチュアのための芸術とい 質と挙げている、約 4,600 年前の縄文中期の火焔型土器。 うことで、これは、福住廉さんが今、 「農舞台」で企画展を まさにアミニズムと遊び心と飾り、あるいは、美に対する やっていますが、そういうこともやっている。 異常な関心、そういったものがあります。 そういうふうに言わざるを得ないほど、私たちの美術は 孤絶している。本当に 1 万人のファンもいるかいないか、 つまり、ここで分かることは、やはり、私たちはどこに 美術というのは、私たちの生活の中に入っていない。授業 行くか。それは、日本列島そのものと同じです。つまり、 にありながら、美術は分かる、分からないといまだに言っ 親潮、黒潮に囲まれて、大陸の季節風が来て、山にぶつかっ ている。音楽は、好き、嫌いです。そういった中で、じゃあ、 て、ものすごい夏のこの蒸し暑さ、それで、冬の豪雪。そ 私たちの美術って何かといったら、単純に言って、生活の ういう中で必死に米をつくってきて、しかも、これはちょっ 73 添付資料 創造農村ワークショップ と省略して説明しますが、越後の妻有、化外の地の奥の、 これは第 1 回目で、この人はいまや大スターで、里山現代 しかも、とどのつまり(どんづまり)です。この地域は全 美術館もやっている。 部を受け入れて、そのぶん、米をつくってきて、日本一の この雪崩防止柵というのにいたく感銘をしました、マイ 米を、日本一の量をつくってきた。この地域は人減らしを ケル・エルムグリーン&インガードラグセットが、「これは しなかった地域です。これはすさまじい。それで、越後の すごい。これを使わない手はない」と言って、やって、今 女の衆たちが来たというのは、北関東ではいまだに伝わっ も残っていれば名作だと思うのですが、地元の人が反対し ている労働力でした。厳しい中でその人たちが、やはり、 たんです。これは 50 日以上やるにふさわしくない。 「パラ ここまで頑張ってきている。効率が悪いということによっ ダイス」と書いてくれればいいのに、 『HARLEM(ハーレ て、文化が根切りされているのが現実です。それをやはり、 ム)』って付けたのですね。これはやはりちょっとまずいと どういうふうにそこの中から積み上げていくか。そのとき いうので、地元は嫌だと言われて。 に例えば、ボルタンスキーなり、カバコフなりの作品には、 あとは、長野県、新潟県の高校生がやっている詩。これ 僕はやはり感動するわけですね。そういうこととどう繋が を大岡信さんが数千点のなかから自分でセレクトしました。 るのかということ。それをちゃんとやらないとまずいとい 大岡さんは、この時も体調が非常に、今まだ何とか頑張っ うことが今問われているのだと思っているわけですね。 ておられますが、もう本当に厳しい中ですが、自分が全部 僕の所にインタビューの結果が冊子でいっぱい来る。ま 見るということでやりました。つまり、これは僕にとって いっちゃう。みんな、ほとんど、 「分からないよ、現代美術 ものすごく重要な教えです。大岡さんは、例えば、3 万の なんて」と、 いまだに言っています。でも、 まあ、 いいのだと。 作文コンクールを一回、全部読んだことがある。自分の所 そういうものですよ。それを分かったなんて言われなくて に普通に上がってくる、100、200 の作品。本当に冗談じゃ いいと思うのだけど、でも、面白いぞと。人が来てくれる なくて、作文コンクールの予選を、自分と谷川俊太郎がそ のは楽しみだと、そういうようなことだと思いますね。そ れぞれ一回やってみたら、その 200 の作品は一つも入って ういう中で、今これをまた、分かる人は分かりますが、あ いなかったと言う。それが今、私たちのいろいろな、もし えてまた、水と、生木と土を入れてやっているわけですね。 かしたら、アベレージなり、仕組みかもしれない。そんな ことを言っていました。 次に、やはり、多くの人たちを養っていくために、気候 はいいですよ、この辺。だけど、平らな土地がない。そこで、 そ れ で、 空 き 家、 廃校で、これがマ 棚田や瀬替えと『マブ』ということをやっています。大変 リーナ・アブラモ な労苦ですね、これが、カバコフの有名な『棚田』。なかな ヴィッチの最初の か最初、受け入れられないときに、大岩オスカールさんが、 作 品 で す。2004 「この田んぼの持ち主の家一軒一軒行って、記念写真でもや 年の中越大震災で ろう。それをかかしにしよう。 」と言ったら、みんなが受 厳しくなった、人 け入れまして、それで何とか入った。これが瀬替えですね。 うぶすなの家(2006 -)photo:Kazue Kawase 蛇行している部分を水田に入れる。そこで、世界太鼓フェ 軒の集落のうちの一軒。これを大工の棟梁の田中文男さん、 スティヴァルをやりました。これはそういうことです。 里山建築の安藤邦廣さん。焼きもののディレクターの入澤 これは、『マブ』ですね。 『マブ』というのは手堀りのト がいなくなった6 美時さんが組んで、8 人の名人たちの焼きものを使ってや ンネル。これは全国で、日本が一番多いのですが、それだ りました。建物は、実際には、ここの古くからの伝統工法。 け地盤が軟らかいという欠点でもあるわけです。そういう そして、地元の食材。そこで地元のお母さんたちの料理に 中で、明治以降、土木工作物で、もうこれより先に行けな よって、この普通だったら廃屋になる家が再建されました。 いという所に山をまいて道路をつくり、あるいは、スノー これも非常にボロっちい家を掘ることによって作品にし シェッドをやって雪から守る。それで、トンネルを掘る。 ます。こういう作品がみんな空き家ですね。この、行武治 この地域にとって土木工作物はまさに自然との闘いである。 美さんの作品はすぐそこにあります。これは、ここをつく これが僕にとって、やはり今、アーティストがいろいろや るときの作業場だったのですね。それでもう、撤去寸前で、 る技術も有り難いし、でも、こういうものが、自然との関 これだったらいろいろトンカチできるということで借りた わりであるのではないかと。 のですが、あまりの美しさでここも評価され、残すことが ですから、僕が、妻有をやってきて学んだことは、美術 できたのです。 というのは、自然と人間との関わり、関係性の美術だと思 これは、学校で 2000 年の作品です。もう、この時は汚く うようになりました。こういった砂防ダムもそうだし、食 て、ここは僕にとって、本当に廃校というものに対するアー べ物もそうです。それがやはり、私たちにとってアーティ ティストの力が感じられた場所です。つまり、ここに来た フィシャルな技という意味での美術だというふうに思いま ときに誰もいないのに、ここの子どもたちが動いているよ す。 うに見えた。アートというのは時間をよみがえらせること ができると本当に思いました。真冬、4カ月、この北山善 これは、レアンドロ・エルリッヒですね。これは面白い。 夫さんは、やがて捨てられ燃やされる、卒業式の送辞、答辞、 74 添付資料 創造農村ワークショップ あるいは、文集、そういったものを再構成することによって、 きな作品をちゃんとお見せする場所として、作りました。 ここで子どもたちと本当にデスマッチして育てた親、ある あとは、そういうことをやりながら、先ほどちょっとお いは、子どもたちに何か希望を持って見守った地域の人た 話ししたように、これは、瀬戸内国際芸術祭と連動してい ち。そういう人たちの時間というのが何か表れたような気 ますが、アジアのいろんな国の人たちと繋がってやってい がします。 こうと。日本が何かするとか、そういうことは、僕はまっ 田島さんは、絵本と木の実の美術館をリニューアルしま した。ものすごいエレガントというか、面白くなりました。 たく興味がありません。私たちの経験、蓄積、それぞれの 形で介していくことが重要だというふうに思っています。 インフォメーションカフェは香港大学を中心とした所が そういう中で、2011 年 3 月の東北の大震災の 13 時間後、 やり、しかも、香港は画期的なことに、ローテーションを プレートが連動しまして、長野北部地震が起きました。こ 組んで中学生、高校生をずっと送り込んでいます。香港の れは、そこで流れ落ちた場所です。地域の名前は辰ノ口で 人たちにとって、今回の農業というのは実に重要だと理解 す。古くからの人たちは、 「ここは、竜(辰)が、水を吐き できて、役に立っているということですが、これは香港の 出す場所だから要注意」という名前をちゃんと付けている。 自然農法の摩天楼の中にある。こういうような形でのつな だから、ここの人たちもここには住居はつくらない。田畑 がりがあった。 はやってきたけど住居はつくっていません。それで、人身 の被害はまったくなかった。道路を越えてこの場所まで広 それで、食というのは、やはり、地域の一番の自然との がりました。こういう中で、私たちの先人たちは道路を巻 関わりの中にある。ますます食ということを、食を頑張り いて道をつくり、そこに田畑をつくってきた。その時に最 ましょうということで、問題があったらいろいろ教えてく 新鋭の新しいやり方の、円筒型の砂防ダムをつくった。こ ださい。今年、ほとんどの食に関しては一新しました。レ れは、関根伸夫さんの『位相 - 大地』とまったく同じです。 ベルをもっとちゃんと考えようということでやったもので つまり、そこに流れ来た土を全部埋め込んで、しかも、コ す。そのうちの特別なのは「キュウリショー」ですね。キュ ンクリートじゃない、土の耐性のほうが重要だということ ウリ一本でどれだか楽しいかということです。あと、土を でやっているわけですね。これが今、こういう形でやって テーマにしたものとか、幾つか面白い場所がありますが、 いる。今まで、 土木はたかが公共事業だと言われていたのが、 時間ですのでこれで終わります。 土木はこの地域の命だと、全然違う意味で出したから、もう、 国交省とか地方整備局とか振興局も興奮して、自分たちで ローテンションを組んで、山の上まで来た人に本当にサー 今日は、皆さん、越後妻有に来てくださってありがとう ございました。 「写真提供:大地の芸術祭実行委員会」 ビスしている。ちょっと変ではありますが。 あとは、都市と地域の交換です。とにかく、都市の人が こちらに来て、それで本当に里山を楽しみ、いろいろなこ 佐々木氏:たっぷり、フラム節を聞かせていただきました。 とを楽しむ、そのお返しをどうするか。それで、逆もある この建物も面白い建物で、ときどき、スクリーンが揺れる わけですね。農業ベースのいろいろな活動をやろうと、今 のもなかなか面白いなと思いながら見ていたのですけれど やっと始まりました。将来、女子農業チームがサッカーを も。今日のお話の中で、自然の力と自然の脅威と、その中で、 やって、皆さんが応援団になり、冬はそのサッカーチーム 人間が自然と闘いながら生きていく、その技術がアートだ が珍しいキノコ団の教えを受けて……面白いキノコチーム というメッセージがあったのですけれども。北川フラム著 になるだろうというような形で、今そういった形での活動 『ひらく美術 : 地域と人間のつながりを取り戻す』(ちくま新 が始まっています。3 月 11 日以降、福島あるいは東北の人 書)、私もザッと読ませていただいて、今日のお話、ここに たちとの林間学校はずっと受け持ってやっている。 かなり表れていて、改めて、この自然の中で、特に厳しい これは、津南にある学校です。かなり頑張りまして、レ 独特の「とどのつまり」ですね。そういう中で、アーティ ジデンスをやり、ちゃんと東京芸術劇場のシアターイース ストが感じ取ったものが作品として残っていて、それが、 ト・ウエストと同じ大きさでつくっていますので、稽古場 その地域が再生していくときの繋がりや力になっていくの になるということで、重要な拠点です。今、アジア女性舞 だろうと思っていますが。その中で、これを持続的に開催 台芸術会議というのが入っています。 していく課題ですね。つまり、先ほど、サポーターが今年、 これは、 パオラ・ビヴィですね。これは、 浅葉さんが、昔あっ 変わってきていると。その変わり方等を含めて、これから た中学校の校章を使ったまんまやっています。お昼にもし の課題のようなことを、もし、今、考えておられることが チャンスがあったら行ってください。お母さんたちがお芝 あれば、お話しいただきたいです。おそらく、この、ひら 居をします。ご飯を食べに行くとやるんですよ。これも、 く美術の「ひらく」という意味は、第7章に「未来をひらく」 いろいろメニューをつくってひっきりなしに人が来たら大 とあるんですね。だから、未来をひらく美術なのでしょう。 変だと。それで、時間を限ってやるしかやれないというよ うなことで工夫したものです。 あとは、清津峡倉庫美術館ですね。東京ではできない大 私は、こういうことは継続こそ力になると思うので、こ れをどうやって継続していけるシステムに持って行けるか ということも含めて何かアイデアがありましたらお願いし 75 添付資料 創造農村ワークショップ ます。 取り組みを前に進めるような理論的な政策的なお手伝いを するために、迷惑を掛けないように調査をしているつもり 北川氏:はい、ありがとうございました。まったくご指 摘のとおりです。だから、まず、基本的なある部分をそれ なりに美術的にやれる単位の経済的な活動をちゃんとつく でございます。ぜひまたよろしくお願いしたいと思います。 今日はどうもありがとうございました。 それでは、今度は、逢坂さんにお願いします。横浜トリエ らないと、やはり、ものすごく多い人たちが関わっている。 ンナーレは 2001 年から始まった、大都市横浜の取り組みで、 まだ今年は出てきておりませんが、前回、芸術祭で恒常的 この越後妻有とはまた違う独自性もあると思います。それで に関わっている人が 112 人。芸術祭の年が 400 人ぐらいで は、よろしくお願いします。 す。これは、当初の目的、こういうものが増えるといいな と思っていただいてそれはやっていますが。だけど、もう、 危機的ですね。それのために、どれほどの、こちらの持っ ている技術とかそういう産業とか、それをやっていかなきゃ いけないという問題が幾つかあります。それはもうちょっ とうまい経営しないといけないということがあります。 横浜美術館館長、横浜トリエンナーレ組織委員会委員 逢坂 恵理子氏 佐々木先生、ご紹介ありがとうございました。今、北川さ んに、長年にわたって取り組んでこられた、大地の芸術祭に もう一つは、社会人はかなり来ていますが土日なわけで 対するさまざまな思いを熱く語っていただきました。この素晴 す。それでもやはり、コストがものすごく掛かることがあ らしい自然の中、集落の中でどうやってアートと地域の人々を ります。僕らはお支払いしていないですよ、皆さんが負担 結び付けていくかということを常々考えてこられたと思います。 しているのが。それを考えると、いろいろなことを考えて 私がこれからお話しするのは、真逆にあるような大都市を舞 いくと、何かうまい通信教育というか、セミナーというか、 台にした芸術祭のお話しです。 塾というか、そういう形でやはりやっていかないと駄目だ なと。 私は、大地の芸術祭には、2000 年から毎回来ています。 私自身が横浜トリエンナーレに関わるようになったのは 2011 これは、一年前の痛烈な反省ですが、サポーターたちが 年ですが、当時はまさか自分がこういった大きな国際展に関 イベント体質になっています。何かあるとわっと来るけれ わるようになるとは思いませんでした。大地の芸術祭に通い ども、構造的に関わっていくことは自分にとっての重荷に 始めたころは、こんな広域にこんなたくさんのアーティストや なっている。そうすると、イベント体質になりますね。そ 地域の人を巻き込んで継続することができるのだろうかと思い れで、イベント体質になってきたということに対して猛烈 ました。というのは、それまで行われていた世界各国の、ベ な批判があって、僕は、今こうやって担当をしているので ネチア・ビエンナーレとか、ドクメンタとか、現代美術の世界 すが、おまえらのやっているのはイベントじゃないかと。 では有名な歴史のある国際展に比べても、越後妻有はまった イベントはイベントだけど、繋がるように、これをどうす く違うものだったからです。 るかというのはすごく大きな課題だと思っていて、そういっ 私が美術館の学芸員として展覧会を担当したアーティストの た意味での何かフィードバックをされる学び方というか、 方もずいぶん越後妻有に出品されているので、個人的に会っ 学ぶと言うと気持ち悪いので、僕がフィードなんていうの た時に「どう?」と聞くと、畑中とか小学校の廃校で展示する はまったくお門違いなのですが、遊んで何かになるという、 のが自分たちにとって新鮮なことで、刺激を受けると言ってい そういうような仕組みができないと、ちょっとやはり厳し ました。今回の第 6 回目の内覧会では、一週間ほど前になり いなと思うのです。 ますが、北川さんたちにご案内いただいて見ました。毎回、 ただ、面白いのは、本当は、美術とか建築の学生だと駄 私は、一回では見切れないので、まず内覧会に来て、その後、 目です。僕は、散髪、料理人に希望をかけたい。そういう 自分で夏休みを取って来ています。最初はタクシーを一日借 人たちが何かやっていくというやり方みたいなことがいい り切って回りました。それが第 2 回目の開催だったのですけ と思っていて、やはり、本当によくある話ではないですが、 れども、タクシーの運転手さんに、「第 1 回目を経て、第 2 回 かなりの人たちが調査する側の迷惑を平気でやる人たちが 目はどう?」と聞いたら、「第 1 回目のときは反対する人も多 地域づくりの学生、先生たちに多いです。もう、たまらな かったけれども、第 1 回目が済んでからみんなが変わり始め いですと言いたい。みんな、それがものすごく多いです。 た」と。「今、もし、議会の人たちが大地の芸術祭はやらなく そこに関してはやはり大きな問題だと思っています。ただ、 てもいいと言ったら、僕たちが反対しますよ」と、タクシーの それも勉強だといえば勉強なので、そこがやはりちょっと 運転手さんが言ったんですね、2 回目で。それは、すごいこ 大きな課題なのかなと思っていますが、まじめに答えると、 とだなと思いました。その後は、十日町でレンタカーを借りる 市長とお話ししたわけではありませんが、本当にそのへん ことができると気づき、レンタカーで何回か回っているので、 が課題かなというふうに思います。 地理がだいたい頭の中に入っています。東京 23 区より広い 所なので、全部はとても見きれないですけれども、今、北川 佐々木氏:私の同業者にも迷惑を掛けている調査をやっ ている人たちがいるんじゃないかと思ったりもしますが、 私は、決してそういうことはしないで、むしろ、こういう 76 さんがご紹介した作品は全部見ています。だいたいどこにあ るかも分かっています。 添付資料 創造農村ワークショップ そういう中で、まったく違う大都市のお話をします。横浜市 は、こちらの地域とは異なり、日本の歴史の中ではとても新し しました。お正月らしい生け込みをして場の雰囲気を和ませる ような工夫もしています。 い街です。150 年しか歴史がありません。こちらは、縄文時 それから、市民のアトリエではアーティストと一緒にワーク 代の火焔土器に代表されるように、非常に長い歴史の中で培 ショップを行っています。例えば、当館で個展を行った映像作 われてきた地域だと思うのですけれども、横浜は、1859 年の 家の方と一コマ一コマ、コマ送りの作品を市民の方がつくっ 開港を契機に発展してきました。当時は 100 戸しかなかった ています。子どものアトリエでは、フリーゾーンという事業を 小さな漁村だったんですね。当館の所蔵作品には、ペリー上 日曜日にやっています。100 円払えば、誰でも参加できる造 陸の写真を元にして描いた画があります。横浜は、日本の明 形教室でして、保護者と一緒に来なくてはいけないのですけ 治政府の近代化政策と共に発展してきた貿易港で、外国人の れども、幼稚園から小学生までで非常に人気があります。一 居住地もありますし、貿易を通じて海外の文化、経済、教育、 回で 500 人ぐらい来てしまいます。今、学校教育では美術は、 土木技術といった、いろいろな情報と人の交流が成された街 前に比べたら、だんだん時間数も減ってきていますし、自由 です。それが、今や、人口 370 万人の都市になりました。大 に何か自分の思ったことを表現するということが学校でも減っ 阪市を抜いて、今、1,300 万人の東京都の次に大きい都市が ているんですね。そういう意味で、ここでは、粘土と絵の具 横浜市です。海岸を埋め立てて元造船所だった所を開発して を与えて、自分で判断して、自分で選んで、自分で好きなよう 新しく広がった地域が「みなとみらい」という所で、夜は夜景 にやりなさいという、子どもたちの自立を促しています。最後 がとてもきれいです。この地域に横浜美術館があります。 にちゃんとお片付けも学びます。 私たちはこういう活動をしている美術館です。 この美術館が、 横浜美術館は、丹下 横浜トリエンナーレの会場としての中核を担っています。今、 健 三 さん の 設 計 で 蔡國強さんの展覧会をやっていまして、先ほど、北川さんも、 1859 年 の 横 浜 港 開 蔡國強さんのキナーレでの展示を紹介されました。蔡國強さ 港 の 130 年 後、 んはやはり本当にいろいろな人を巻き込む力のある作家です。 1989 年 11 月に開館 私たちも多くの市民ボランティアの方も大変でしたが、アー しました。横浜港開 ティストの力というのは素晴らしくて、アーティストと一緒にこ 港以降の美術、工芸、 の制作の過程に加わったということが一人一人に、アートに 写真、映像などに焦点を当てていまして、今、約 1 万点の作 対する回路を開いていく。ただ観るだけではなくて一緒に制 品がコレクションされています。横浜美術館の外観は上から 作することによって、やはり、 撮るとこういう感じです。(写真) 美術に対する親しみと、アー 横浜美術館の前庭にクラシックカーを並べて、普通、美術 ティストに対する関心が高まる 館に全然来ないような中高年の車好きの方たちにも美術館を ということが 言えると思 いま 知ってもらう機会にもなりました。美術館といえども、本当に す。これは、蔡國強さんが下 運営していくのが大変なので、いろいろな工夫をしていまして、 絵を描いている様子で(写真 市からの指定管理料だけではなくて、どうやってその活動を 右) 、グランドギャラリーで8日間にわたって爆発を行い作品 広げていくか、試行錯誤しています。ちょうど手前のお堀のよ を制作 しました(写真下)。 うに見える所は噴水になっています。 横浜美術館は、国際港の街、横浜にふさわしい、世界に開 キナーレでも開館のと きにやっていました。 かれた交流の場、それから、近代、現代の美術が親しめ鑑賞 もちろん、消防署、警 できる、市民や芸術家に提供していく場として活動しています。 察 署、 横 浜 市、 県 の 「みる、つくる、 まなぶ」が大きな 3 つの方針なのですけれども、 安 全 局、 そ れ か ら、 「みる」というのは、展覧会を通して作品を観る。それから、 「つ 花火師さんの協力とい くる」というのは、アトリエがありまして、市民や子どもたち うように、許認可を得 が造形活動する創作の施設が整っているので、そこで定期的 まして、一つ一つ学芸員がそういった準備を積み重ねてこの にいろいろな教室を開いています。「まなぶ」というのは図書 爆発を建物の中で実施することができたんですね。 館もあります。美術の専門の図書を集めておりまして、美術 こういったことを体験し、多くの方と共有することによって、 の研究者のようなプロフェッショナルな方にとっても横浜美術 現代美術は難しいという先入観が払拭されていくのだと思い 館の図書館というのは非常に認知されているところです。 ます。その結果、出来た作品は、縦 8 メートル、横 24 メー 美術館の正面の入口を入った所は、吹き抜けの大きな空間 で、グランドギャラリーと呼んでいます。下村観山という日本 トルの國強さんが今までにつくった最大の火薬の絵画です。 蔡國強さんは、横浜の地元のいろいろな歴史や文化を調査し 画家の展覧会の会期がお正月にあたりましたので、夜、みな ています。横浜は、岡倉天心という明治期の美術思想家が生 とみらい地区にある企業のオフィスの方々に観てもらうための まれた場所でもあるので、彼に刺激や指導を受けた、横山大 特別開館をしました。その会場の中で、展示室からグランド 観や下村観山といった日本画家が明治期から大正期、新しい ギャラリーに下りて来た方に、金屏風の前でお抹茶をお出し 表現を模索していた時期がありました。蔡さんは日本画家が 77 添付資料 創造農村ワークショップ たくさん描いている桜をモチーフにして、岡倉天心に繋がる 外のものを日本に持って来て日本で紹介する横浜トリエンナー 横山大観の作品にインスピレーションを受けつくったもので レは文化庁の対象事業となったと私は聞いております。文化 す。 庁は支援をしてくださっていますが、横浜トリエンナーレの運 営は、横浜市に移行することになり、事務局が横浜美術館に では、横浜トリエンナーレの説明に入ります。横浜トリ 設置されました。ちょうど 2011 年の 8 月に第 4 回が予定され エンナーレは 2001 年にスタートしていますが、横浜美術 ていたのですけれども、その 3 月 11 日に大震災が起きました。 館は最初まったく関与していませんでした。まず、97 年に こういった大規模な事業をやるべきかどうかということも市の 外務省が経済大国として文化を発信していく、そして、国 中でずいぶん協議されましたが、やはり、継続、実施が大切 内外のアーティストや美術の交流を構築していくプラット であろうということで予定通り開催することになりました。 フォームが必要だということで国際展を組織することを決 ここで過去の横浜トリエンナーレを振り返ってみたいと めました。国の政策だったわけですね。99 年に、その会場 思います。2001 年の国際交流基金がスタートさせた第 1 回 についてはいろいろ候補があったのだと思うのですが、横 目は、多くのディレクターたちが関わりまして、会場は、 浜市がいち早く手を挙げまして、横浜と国の政府とで一緒 見本市会場のパシフィコと赤レンガ倉庫が中心になりまし に横浜トリエンナーレを開催するに至ったわけです。それ た。しかし、屋外にもいろいろな設置がありまして、一番 で、 組織委員会が発足したのが 99 年。2001 年に国家プロジェ 話題を呼んだのは、インターコンチネンタルホテルの外壁 クトとして、第 1 回横浜トリエンナーレが開催されました。 に椿昇さん、室井尚さんという二人組が設置した巨大なバッ 事務局は、国際交流基金という外務省の外郭団体の中にあ タでした。でも、横浜は港に面しているので風が強いんで りました。横浜市は、会場を提供し、初回は、パシフィコ すよね。これは中に空気が入っているバルーンなのですが、 という見本市会場とか赤レンガ倉庫を使いました。2003 年 展示期間中に裂けてしまい、もう必死の決死隊で命綱を着 には、横浜市が横浜創造都市施策を立ち上げまして、創造 けて学生たちがここの下で縫う修理をやりました。これは 都市施策の一環として横浜トリエンナーレを位置付けまし 注目を浴びた一方で、あまりにも危険を伴ったということ た。 で、いい意味でも悪い意味でも、非常に横浜トリエンナー レを象徴するものになりました。 創造都市施策では、歴史的な建物や地域資源を活用すると 2 回目の総合ディレクターは、作家の川俣正さん。山下 いう方針を立てたんですね。これは 1929 年に開館していた 町の上屋という、港の埠頭の突端にある大きな倉庫を使っ 銀行です。使われていなかった建物のファサードを残してアー て展示をしました。ダニエル・ビュラン(Daniel BUREN) トセンターに横浜市が改装しました。それから、もともと赤線 さんの旗の作品がよく記憶に残っているかと思います。3 地帯と言われていた、ラブホテルなどがたくさんあるような、 回目は、神奈川県立近代美術館で学芸員をしていた水沢勉 黄金町のある初黄日ノ出地区では地元の企業や住民たちの協 さんが総合ディレクターになりまして、会場が、新港ピア、 力によって、横浜市の主導でアーティストが滞在し活動できる BankART NYK、赤レンガ倉庫、三渓園というふうに、今ま ような場に変えていきました。ここは特に、 「アーティスト・イン・ では一箇所か二箇所だったものが増えていったんですね。3 レジデンス」という小さな滞在施設があるので、アジアの若 回目で注目を得た作品は、マイケル・エルムグリーン&イ いアーティストを中心にいろいろな人的交流の活動を行ってい ンガードラグセットが横浜美術館の隣りにある、ランドマー ます。 クという高層ビルの中で設置した、男の子が高飛び込み台 他 にも、日本 郵 船 の 持ってい た 倉 庫 な ので すが、 今 は の上から下を見下ろして怖そうにしているという作品です。 BankART NYK と称しまして、公立の美術館ではできないよう この男の子のフィギィアは、横浜市で公募して、小学校 3 な、フレキシブルな現代美術の様々な活動を行っています。 年生だったかな、ある男の子が選ばれました。会期後は、 いろいろ工夫をしてカフェを出したり、川俣正さんのような世 撤去されました。 界で活躍するアーティストや、まだ大学生だったりする若い それから、第 4 回目のアーティスティック・ディレクター アーティストを招聘したりして、非常に幅のある活動をしてい は三木あきこさんで、私が総合ディレクターとして関わっ ます。特に海外への発信も行っていますので、アジアだけで た、震災後の展示です。横浜美術館の前にウーゴ・ロンディ なく様々な国にもここの活動を知られるようになっています。 ノーネ(Ugo Rondinone)の作品を設置したのですけれども、 これは NPO の活動です。黄金町も NPO を立ち上げて活動を これは 12 カ月を表す、イースター島のモアイ像のようなす しています。また、横浜の象徴でもある赤レンガの倉庫では、 ごく大きな顔の彫刻で、漫画的な表情をしているので誰で 商業施設と同時に小さな劇場や展示施設があります。かつて も親しめるんですね。屋外でこれを設置していたら、前を の横浜トリエンナーレでは会場にもなりました。 通る親子連れ、特に子どもがすぐに反応して駆け寄ってき て、写メールでどんどん発信してくれたお蔭で、開館前か 横浜トリエンナーレの歴史では、2011 年の第 4 回目に大き ら非常に話題になった作品です。一つの彫刻がそれぞれ 12 な変化がありました。国際交流基金が主催者から抜けること か月を象徴していますが、1 月から 12 月まで順番にきちん になったんですね。国の政策が変わり、国際交流基金は海外 と並べていなくて、バラバラに設置してあるので、アート に日本の文化を紹介する事業に特化しなさいということで、海 が嫌いな方でも、まず自分のお誕生日月の彫刻を探してみ 78 添付資料 創造農村ワークショップ ましょう、それで、その隣で記念撮影をしましょうと言うと、 顔がほころぶという、そういう効果がありました。 けれども、横浜トリエンナーレが今まで継続してきたも う一方の理由は、やはり、注目度が高くて多くの人たちを 第 5 回目が去年だったのですけれども、アーティスティッ 惹きつけ、メディアに露出する量も大きい現代美術の振興 ク・ディレクターは森村泰昌さん。会場は、横浜美術館と 事業であるということです。今、東京でも越後妻有の情報 新港ピア。森村さんは横浜美術館のグランドギャラリーに が相当流通していて、私がこの間、みどりの窓口にチケッ 巨大なごみ箱、アートのごみ箱を設置しました(写真)。忘 トを買いに行ったら、窓口の横の映像で越後妻有の宣伝を 却が一つの大きなテーマだったのですけれども、自分たち しているんです。JR とタイアップなさっていらっしゃると の背後には忘却の海があるということで、捨ててしまった 思うのですが、そういう意味では、大規模な芸術祭を実現 ものや忘れ去ったものに目を向けてみようというものでし していくうえではものすごくいろいろな苦労があるのです た。 けれども、やはり、注目度が圧倒的に高い。それから、い ろいろな意味で効果がある。これは、シンクタンクの調査 によると、経済波及効果もパブリシティ効果も高く海外へ の発信力もありますし、海外のメディアが取り上げてく ださる件数も多いです。それから、来場者数も、やはり、 2011 年は震災の後にもかかわらず 33 万人来てくださった んですね。2014 年は 21 万人というふうに、11 年よりは少 ないですけれども、でもやはり、現代美術で 10 万人以上の 方たちを惹きつけるのは普通の公立美術館でも並大抵では ありません。この数字は、有料会場の来場者数をカウント していますので、無料会場とか街中に設置されている作品 Michael LANDY, Art Bin , 2010/2014 Photo: KATO Ken Photo courtesy of Organizing Committee for Yokohama Triennale お気付きのように、越後妻有と一番大きく違うところは、 の前を通過している人がどれだけいるかといったら、この 数字よりもずっとずっと多い数字になると思います。例え ば、横浜美術館の中には入らないけど、前の前庭に展示さ 毎回、総合ディレクターとかアーティスティック・ディレ れている作品を見ましたなんていう人を数えたら、もっと クターとか、ディレクターが変わっているということです。 すごい数字になると思います。 こちらは、北川フラムさんが 1 回目から担当していますの で、そういう意味では、毎回毎回、いろいろな課題やいろ 予算に関しても、これは3カ年で約 9 億となっています いろな挑戦があるとは思うのですが、ある種の一貫性があ けれども、この中には、事業費とともに、スタッフの人件費、 るのではないかと思っております。横浜トリエンナーレは、 事務局の運営費、会場の維持管理費も含まれます。例えば、 むしろ、毎回違うということを特徴として出していく。会 新港ピアは、前回はお手洗いが十分ではなかったので、今 場も違いますし、アーティスティック・ディレクターも違 回お手洗いを全部新しく設置し直しました。会場の整備に いますし、テーマも違うと。それは、世の中の変化のスピー かかるハード費、そういったものも全部入っています。だ ドが加速する中で、横浜トリエンナーレはどのようなテー から、事業費がすごくあるというわけではないのです。 マや作品の表現に焦点をあて、毎回その時代性を出してゆ くべきなのか挑戦し続けるということなのです。 横浜トリエンナーレは、2001 年、越後妻有の次の年から 文化創造都市になぜ現代美術が有効なのか。越後妻有を これだけ多くの人たちを惹きつける場に変えてくれたのは、 始まって 2015 年まで、15 年ぐらい継続してきたのですけ やはり、アーティストの力だと私は思います。アーティス れども、毎回毎回いろいろなことを模索して、次はどうし トの創造力が場を変えていく。だけど、アーティストにた ようかと考えてやってきたと思います。国際交流基金がソ だやってくださいという態度では駄目なんです。彼らと一 フトを担当していた時期から、今や、横浜美術館がソフト 緒にこの場でどういうことを実現できるかという運営側の を担当するようになって、横浜市の創造都市施策の一環と 情熱やスキルがどうしても必要です。それはアーティスト して、組織委員会が主催ですけれども、横浜市主導の事業 にとってもすぐに分かることです。この場所に来てこの芸 となっています。ですから、横浜美術館主催のほかの展覧 術祭に参加して良かったと、アーティストが思うかどうか 会とは異なる予算体系と運営体系になっていまして、横浜 がすごく大切です。つまり、アーティストはいい意味で国 美術館が会場とはいえ、組織委員会の中で、現場を担うの 内外での本当の広報する人です。 「越後妻有は良かったよ」 は横浜美術館のスタッフ、横浜市のスタッフ、横浜市芸術 と言うと、今度、 「自分は呼ばれていないけど出品したいな。 文化振興財団のスタッフ。それから、その度ごとに有期雇 だから、公募に応募しよう」となっていくわけです。私た 用で雇われるスタッフです。そして、そこにボランティア ちも横浜トリエンナーレに来て良かったと思えるように、 の人たちも入ってきます。この多様な組織のメンバーが中 やはり、心を砕きます。十分ではないけれども。というの 核を担って、もう汗水を流して毎回準備しているというの は、今、世界各国に大小を入れれば 500 ぐらいの現代美術 が実情です。 の国際展があると言われています。19 世紀の最後、1895 年 79 添付資料 創造農村ワークショップ にスタートしたベネチア・ビエンナーレは 100 年以上続い 人がいた。そういう重層的な感情の起伏を受け止め、コミュ ていますけれども、その後、欧米を中心にして展開してき ニケーションが成り立つ場があったのですけれども、大都 た国際展は、今や、アジア、中東、アフリカ、南米に広がっ 会ではそれが失われています。マンションの隣に住む人が ています。現代美術の持っている可能性というものがやは 誰か分からない。それを繋いでくれるのは、今や大都会で り人々に受け入れられてきたのだと思います。でも、現代 はアートだと私は思います。ちょっと越後妻有とは違うか 美術というのはまだまだマイノリティです。 もしれないけれども、でも、根本は同じかなと思っています。 それで、なぜ、現代美術が有効なのかということですが、 今本当に必要なのは、価値が違う人がいるということを 正解ではないかもしれませんけれども、私が国際展を通じ 知ることではないでしょうか。これを私たちがないがしろ て経験してきたことからご説明したいと思います。多くの にして、同じ価値観の人だけで集まってしまったら、対立、 人が、美術と言われると絵か彫刻を頭に浮かべると思いま 紛争、けんか、排斥、そういったことが地球上に蔓延する す。額縁に入った絵、ロダンの『考える人』のような人体 だけです。でも、違いを自分が受け入れられなくても違う の彫刻。でも、絵や彫刻といったジャンルを超えた表現と 価値観を持っている人がいるということを知ることによっ いうのが、もう、越後妻有のあちこちでも見られるわけで て共生を促す。デジタル社会では、何万人入った、経済効 す。それは未知との遭遇でもあります。その未知との遭遇を、 果はどのくらいかということですべてが計られてしまうの 驚きを持って何か心に響くように伝えていくには、その場 ですが、数字で証明できない価値があるということをアー の設定が必要なんですね。ホワイト・キューブではなくて、 トは教えてくれる。 緑の中に設置したことによって全然違う感想を持つことが できます。越後妻有は敷居が低い。美術館のような仕切り それから、すべてが分かるということはあり得ません。 がない。だから、リラックスして、自分の生活の延長で作 見ても分からない作品もあります。アーティストは一般の 品を観るということができるんです。でも、多くの人はそ 人たちよりも 2 歩も 3 歩も先に進んでいる目を持っている ういう経験をする前に、 「現代美術って分からないよ」と反 方たちが多いので、発想が自由で縛られていない。先入観 応しますが、出会うことによって、 「あ、こんな見方もある にとらわれていない人が多いので、こちらが予想もしなかっ んだ」とか、 「こんな価値が多様なのか」ということに気付 たことをどんどん出してきたりするんですね。そういう意 いてくるはずです。 味では、世の中には自分が知らないこと、分からないこと アーティストが表現しようとしていることを読み取ると いうことは、今、自分の目で見ている表面だけではなく、 その後ろに何があるかということを読み取ろうとすること があることを知るというのはとても大事です。これは特に 子どもたちに大切です。 そして、いろいろな経験を積み重ねる、違う世代の人た です。それができると現代美術は面白くなるんですね。でも、 ちが一緒に何かを取り組むということによって、一筋縄で それが出来ないとしても、出会いが面白ければ見に行こう はいかないことがたくさんあっても、乗り越えて行けるこ という気持ちは繋がっていくはずです。それを重ねること ともあるということを若い人たちが知るという場でもあり で、観察力や読解力や創造力が鍛えられます。 ます。ですから、大都会で開催している横浜トリエンナー レは、私はどちらかと言えば、若い人たちに向けて次の時 アートを介してコミュニケーション力を刺激することは、 今の時代、非常に大切だと私は思っています。コンピュー 代を切り開いていく何か一つのきっかけになればいいなと 思っています。 タ社会のオン、オフの時代、デジタルの世界にあってアナ これは、少人数対象の、一つの事例ですけれども、前回の ログの交流を皆求めています。アーティストと直接関わる、 横浜トリエンナーレでは、中学生、高校生、約 20 名を募集して、 美術作品をつくるために多くの人が一緒に何かをつくる。 13 回の講座やワークショップで横トリや現代美術を学んでも 汗水をたらして雑草を抜く、掃除をする。共に働くことに らい、それを小学生に伝える夏の教室というプロジェクトをや よってチームワークを生み出すことができます。芸術祭に りました。中学生、高校生が週末に横浜美術館に来て、 アーティ 集まる方たちは世代もバラバラです。最近は中高年が多い ストの森村さんや、いろいろな人の話を聞き、展覧会がつく と言われていますが、私たちの横浜トリエンナーレのとき られる状態、何も無い所から、その後、巨大な作品がどんど も中高年のボランティアの方も多いです。十代の学生もい ん構築されるような現場を見てもらいました。そして美術はど れば、七十代のおじいちゃんもいる。定年退職した方もい ういう意味があって、どういうことを作家が伝えようとしている る。主婦の方もいれば、 バリバリ働いている女性の方もいる。 のかということを、中高生なりに学んでもらったんです。それ そういった違う世代の人たちが、一緒に交わって、違う意 を自分の中にインプットして、小学生にどうやって伝えるか。 見や違う見方があることを実際に共有することがすごく大 今の生徒は忙しいので 13 回全部来られる子はなかなかい 切です。というのは、大都会ではもうコミュニティが失わ ないんです。でも、とにかくそれをやってもらった。その約 れているからです。前は、町内会が機能し、隣のおじいちゃ 20 人の中の 1 人に、不登校の高校生がいました。お母さん ん、おばあちゃん、核家族ではなくて、世代の違う人たち に相談されたとき、私は、「いや、大丈夫だと思うから連れて が住んでいて、子どもたちが何か悪さをすれば叱ってくれ 来たら?」と言って、参加してもらいました。その生徒は美術 る人がいた。それから、怒られる子がいたら慰めてくれる に興味があり、感性が鋭かった。そうしたら、13 回だけでな 80 添付資料 創造農村ワークショップ く何回も美術館に来て、横浜トリエンナーレが準備される過 11 回と同じ人が続けられるかどうかというと、それは疑問で 程を共有して、それを小学生たちにアウトプットすることによっ すし、世代も交代していきます。だから、やはり、次の世代 て、自信を回復できたんですね。横浜トリエンナーレが去年 に渡していかないといけない。そのためには、組織母体の制 終わった後に、高校の卒業資格の試験を受けて、今年の 4 月、 度を複雑なものにせずにスリム化しなくてはいけないし、芸 大学入学の試験も受けて入ることができました。 術祭のプロをきちんと育成していかなくてはいけないと思いま それから、親御さんと先生に反対されているのだけど美大 す。そして、民間の活力と公共の安定性ということを理想的な を受けたいという子も来ました。横浜トリエンナーレが終わっ 形で組み合わせることができれば、日本の中での、芸術祭と ても教育担当が相談にのっています。こうしたことは、たった いちいち銘を打たなくても、多くの街が芸術を取り込み、そ 二人の子の事例かもしれないけれども、私は税金を使ってい の中で生きる力を育み、そして、過疎化というのではなくてこ るからこそできると思っています。そういうことをないがしろ の街に住み続けたいと思うようなシステムをつくり続けて行け にせず、やはり、一人一人の中に何か生きる力とか前向きな るのではないでしょうか。 ポジティブな感情というものを、大きな芸術祭を通して、育む 横浜は今、幸い、全国でいろいろな調査をする中で、最 ことができるのではないかなという思いがあります。そして、 も住みたいまちの一つに掲げられています。でも、少子化に それがとても大切であると思っています。 あってそれがいつまでも続くとは私も思っていません。それが、 誇れることではあるかもしれないけれども、実はその誇れる 最後に一つだけ事例を出します。これは、山形県の最上郡 質を継続していくというのは本当に大変なことだと思っていま の金山町という所です。人口は 6,000 人ぐらいです。平成大 す。ですが、アートが私たちに伝えてくれること、それから、 合併に参加しなかった妻有町と同じです。全国美しい村百選 私たちを刺激してくれることは奥深く、本当に海のように広が の一つに選ばれています。金山町には芸術祭なんて全然無い りがあるものではないかなというふうに思っております。長時 んですね。ですけれども、街並みが非常に美しい。金山杉と 間にわたりましてご清聴ありがとうございました。 白い壁の建物のある民家や、非常に美しい木の橋があります。 「写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会」 小学校は、東京芸術大学の建築科の先生が設計したそうです が、年月を感じさせないほど斬新です。古い土蔵を改装して 商工会議所のオフィスにしたり。案内していただいた町役場 佐々木氏:どうもありがとうございました。昨年の秋に、創 の方が素晴らしかったです。本当の豊かさというのは何かを 造都市ネットワークの首長サミットを横浜で開催させていただ 改めて感じました。ここは、もしかしたら、地域創生のために きました。そのとき、関口市長もおられたのですが、横浜の 国から補助金をもらっていると思うのですけれども、自分たち 林文子市長が、横浜トリエンナーレについて普段お聞きでき の手で自分たちが住んでいる町を美しく維持することを実践し ないような率直な感想を述べられていました。これまで、横 ていて、それが、都会から行っても美しく、落ち着くんです。 浜トリエンナーレに市長として関わってはいたけれども小難し そこで感じたことは、美意識とはいったい何かなということ いなと思っていたと。だけど、アーティスティックディレクター です。美意識というのは、これが美しいとか、美しい女性を の森村さんのメッセージが今回はよく分かったと。だから、多 見るとかだけではなくて、自分の生き方の中に美意識をつくっ 少、観客動員は前回よりも減ったかもしれないけれども、私 ていく。それが芸術祭を通してできれば、美術館を離れた所 は自信を持って、市議会や何かに出ても意味があると言える でも自分の家のカーテンやインテリア、そういったものに対し と言われたんです。それは非常に印象に残っています。 ても関心が出て、色合いを考えたり、街並みがゴチャゴチャ 美術館の中で、ホワイト・キューブの中で普通の作品を観 しないように整えていったり、ごみの出し方一つ、分別ごみも るということではない使い方ですごく努力された。もちろん、 きちんと区分けるというようなこと、つまり、良く生きてコミュ エントランスのごみ箱もそうだったけれども、2 階に上がった ニティをつくることに繋がっていくと思いました。 ということを言うと、北川さんとあまり変わらないと私は思っ 所のメインの会場に釜ヶ崎芸術大学が来ましたから。いきな り、釜ヶ崎のおっちゃんたちが現れて、日常生活がアートになっ ています。それで、最終的に、 まちとアートの結びつき。こういっ ているんですね。だから、生活の中の芸術という意味でいくと、 た拠点形成とアーカイブ化、人材の育成と安定雇用、量から そこがある意味では、従来の 20 世紀型の芸術の枠をはみ出 質への転換、あるべき姿での継続性をどうやって担保するか。 そうとしている。それが、現代美術アートの良さなんだと思う それから、本当に大切なことは、先ほども言いましたけれども、 ので、今日はすべて分かりやすい形で説明をいただきました 海外の人と、それから、都会や農村の人たちとは顔の見える し、メッセージはずいぶん伝わったと思うので、あえて質問は ネットワークをつくることこそが一番重要です。それが本当の しません。でも、一番最後に、要はこれをどういうふうに回し 力になっていきます。それと、今言った、美意識ですね。 て続けていくかということですよね。次の世代に渡していくそ のシステム、安定性ということもあるけれども、そのあたりを それで、横浜トリエンナーレも継続をして、毎回模索しなが 何か言い残したことがあれば一言、もしあれば、お願いします。 ら理想に繋げていきたいと思っているのですけれども、やは り、これだけの事業をやっていくというのは本当に大変なの で、1 回、2 回、3 回はできるかもしれないけれども、10 回、 逢坂氏:安定性を考えると、本当は文化国家であり、経済 大国としては財政的なことをきちんと担保して欲しいという思 81 添付資料 創造農村ワークショップ いが非常に強いのですけれども、やはり、多くの人がこの芸 のビエンナーレ、トリエンナーレというものを上手に回す体制 術祭を支えようと思ってくれなくてはいけないと思います。そ ができれば、創造都市政策も継続的に発展するということに のためには、今まで美術館に来たことがない人たちにも芸術 なってくる。つまり、現代芸術祭というのは、創造都市、創造 祭を一つのきっかけにして、ふり向いてもらい、本当に文化 農村の、ある意味では、継続的エンジンになるというふうに を支えるということはどういうことなのか知ってもらえる機会に 考えています。 なればと思います。 ちょっと誤解を恐れずに言うと、横浜市の 150 年は、日本 ただし、今、お話があったように、担い手たちが息切れし ている。あるいは、その層が変わってきている。あるいはまた、 だと本当にその歴史が浅いです。私は水戸市という 25 万人 財政制約があって、これまでと同じように税金だけでは回って 都市の水戸芸術館でも働いていた経験があるのですが、造り いかないとしたら、もっと民間の力に依拠する、例えば大地 酒屋の旦那さんが、その地域のいろいろな文化を支援してい の芸術祭の場合はベネッセさんが民間から支援に入っている、 たというような歴史があって、昔の旦那衆の系譜のある人たち そういうふうなことですね。そういう体制というものを見越し というのは、やはり、文化支持に回ってくださるのですけれど て芸術祭も変化していくし、創造都市政策も変わってくるとい も、横浜市はそれが、新しい街だからなのか、ちょっと違うな う、このあたり、われわれもこれから研究していくことになる と思っているんです。でも、その分、新しい文化との関わりを と思います。 面白がってくれる人たちを広げていく回路はいろいろあるかな その意味で、今日のお二人の話を受けて、創造都市ネット と思います。そのためには、私自身としては長期的な視点と ワークのあり方としては、例えば、創造農村ワークショップと 制度のスリム化と言いますか、あまり複雑な運営組織にしな いうものが部会のような形でありますが、それと連携するよう いで、フレキシブルに進めて行くことができるようになればい な形でもいいのですが、現代芸術祭部会というものを創造都 いなと思っているのですけれども、税金を使う以上、どうして 市ネットワークの中に設置して、いろいろな課題について政策 も書類は山のように作らなければいけないので、スタッフは 的に解決し、そしてそれを、文化庁なり関係の総務省の地域 その山のような書類で疲れてしまうという現実があります。 創造ですね、そういったところと政策提言していくということ が求められると考えています。その意味で、この集まりの中か 佐々木氏:どうもありがとうございました。では、お二人の ら、創造都市ネットワーク日本の中で、現代芸術祭部会とい 講演は、今日はこれでいったん終わります。私のほうからちょっ うものの提案、あるいは、設置ということを皆さんと共に今後 とだけ感想を、まとめさせていただきます。 議論していきたいと思っています。 先 ほど、 年 表もありました けれども、 大 地 の 芸 術 祭 は、 1996 年の新潟県の「ニューにいがた里創プラン」がきっかけ それから、私は、実は、『創造農村 : 過疎をクリエイティブ に生きる戦略』という本を、昨年の 3 月にまとめたのですが、 でした。横浜の場合は 1997 年に国が出しました政策ですね、 その時に改めて思ったのですけれども、北川フラムさんのち これが国際交流基金等々から展開しました。ということで、こ くま新書や、宮沢賢治の『農民芸術概論』は素晴らしいです の 96 年、97 年というのが一つの起点になります。 ね。やはり、今、「半農半 X」なんていう言葉あるけれども、 実は、私は、 『創造都市の経済学』を、97 年に出版してい 宮沢賢治はずいぶん前から、「半農半芸」ということがこれか るんです。その 97 年ごろの状況というのは、ヨーロッパで らの農村の生き方だということを言っていまして。科学と芸術 1995 年ぐらいから創造都市という言葉が流行りだしました。 というものを、農村や農業に生かさなくてはいけないというふ クリエイティブシティですね。ある意味で、創造都市政策って、 うな話をなさって、非常に感銘を受けたのだけれども、やは 今非常に世界中に広がってきているのだけど、これは間違い り、人間の創造力というのは社会環境の中からも生まれるの なく、この現代芸術祭、ビエンナーレ、トリエンナーレという だけれども、大自然、あるいは、この困難な自然災害、そう ものの世界的広がりとまったく軌を一にしている。 いったものと立ち向かうときに新しいアイデアとか新しい技術 それで、ビエンナーレ、トリエンナーレと、従来の一過性 が生まれてくる。そこに、現にそのブレークスルーが出てくる のイベントと何が違うかということですね。2 年、あるいは、 のでしょうね。だから、そう考えると、都市は農村に学ぶとい 3 年ごとに事業を展開していくという継続的なスケジュールで うことだと思います。この 21 世紀の非常に困難な大都市の問 すね。これがビルトインされています。ですから、一過性の 題の解決というのは、やはり、農村にヒントがあるのではな 打ち上げ花火的なものなら、とにかく先のことを考えないで取 いかと、改めて今日は思った次第です。お二人、どうも今日 り掛かれるのだけれども、そうではなくて、2 年後、3 年後に はありがとうございました。 さらに進化した形で、例えば、地域とアートの問題を考えよう とか、あるいは、大都市の持っている社会問題、先ほどの、 黄金町バザールとかですね。こういったものを高めようと思い ますと、その継続性ということを最初から考えて問題設定をし ますし、担い手たちをどう広げて行くかということを考えなきゃ いけない。 逆にいうと、2年、3年というよりも、準備期間の間にうま く次の体制や、仕組みが回っている。そういうことなので、こ 82 添付資料 創造農村ワークショップ パネルディスカッション「芸術祭と地域再生」継続的な 芸術活動による地域体制について考える 生まれた、小沢剛さんの作品です。こちらは別府タワーの 「アサヒビール」のネオンサインを使って、「アサヒビール」 の 6 文字の中から、「アヒ」とか「アール」などの日本語の 三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・文化政策 センター 主席研究員/センター長 太下義之氏 意味だけではなく、世界中からいろいろな言葉の意味を探 してきまして歌にしています。音楽は、安野太郎さんが作 これから一時間半ほど、3 名のパネリストの方を交えた られており、こういった形で街の中にある空間を使って作 ディスカッションを行っていきたいと思います。ご案内の 品をつくっています。別府の中には、元ストリップ劇場を とおり、ご登壇いただいている 3 名のパネリストの方々は、 市民劇場にした「永久別府劇場」を BEPPU PROJECT が運営 それぞれ地域におけるアートプロジェクトの活動に携われ していまして、そちらで金粉ショーですとか、ダンスのパ てこられた方たちです。それぞれお三方から最初に、プレ フォーマンスを行ったり、商店街の中を劇場空間に装飾し ゼンテーションをいただいて、それを踏まえて後半でディ てパフォーマンスを行ったりしています。こちらは古い長 スカッションをする、こういう流れにしたいと思います。 屋をアーティストと共に作品空間にリノベーションをして、 最初に、アーツカウンシル東京 プログラムオフィサーの 肩書きでご登壇いただきます、嘉原妙さんに事例発表をい 芸術祭が終わった後には、アート作品を体験できる宿泊施 設になっている場所です。 ただきます。嘉原さんは直近まで BEPPU PROJECT で活動さ その他にも、アーティストを大分県の小中学校や高校な れてきました。ですからおそらく別府の、地域での取り組 どに派遣をして、一緒に子どもたちと作品を作っていくプ みという話が中心になろうということで、ご登壇いただき ログラムを行っています。別府の中には、芸術祭の前だけ ます。 にアーティストがいるのではなく、365 日を通して人々の 暮らしの中にアーティストの制作活動拠点というもがあり ます。こちらは「清島アパート」という場所で、2009 年の アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー嘉原妙氏 芸術祭のときに、あるアーティストが移住をして、ずっと 皆さま、おはようございます。アーツカウンシル東京か 継続して運営を行っている場所です。 らまいりました、嘉原と申します。今ほどご紹介にあずか その他、大分の、特に別府は竹工芸が非常に盛んで、竹 りましたとおり、今年の 4 月からアーツカウンシル東京と や、つげ工芸といった地元の伝統工芸品を作っている作家 いう東京都の財団に所属して働いており、今年の 3 月まで さんとコラボレーションした商品などを販売するセレクト は大分県の別府市に活動拠点を持つ、BEPPU PROJECT とい ショップの運営も行っています。最近では、 「Oita Made(オ う NPO で約 4 年半、地域とアートをつなぐ仕事をさせてい オイタメイド)」という、大分県産品のデザインをリパッケー ただきました。本日は、その中で、私が一番長く関わらせ ジし、大分の魅力を伝えていくプロジェクトを行っていま ていただいている、芸術祭をメインにお話しできたらと思っ す。 ております。 最初に、BEPPU PROJECT の活動をご紹介いたします。別 ここからが本日のメインのお話となります。まず、国東 府市の鉄輪という湯治場が集まっている、こういった場所 半島という場所をご存じでしょうか。私は、4 年半前に大 で、BEPPU PROJECT は現代アートを主に、今生きている作 分に移住をして働きましたが、その前は、全く本当に、恥 家と一緒にプロジェクトを行っています。彼らの活動、アー ずかしながら知りませんでした。大分県北東部の丸い半島 トの活動を通して、新しい気付きを、私たち作り手もそう になります。朝鮮半島などの大陸からの文化や、南ポリネ ですし、別府の地域の皆さまに楽しみにしていただくよう シアなどを含めた南からの文化が日本に最初に入ってきた、 な活動をと、思っております。それが活動のメインになり 文化の結節点となっている半島と言われ、ご存じかもしれ まして、他にもその地域の課題を一緒に解決していくよう ませんが、神仏、神様、仏様が一緒にある、神仏習合の発 な、いろいろな活動をしています。 祥の場所とも言われています。 BEPPU PROJECT の 沿 革 を 簡 単 に ご 紹 介 い た し ま す と、 こちらが、国東半島の一部のエリアですけれども、田染 2005 年にアーティストの山出淳也さんという方が呼び掛け 荘という、1300 年以上変わらない田園地帯と言われていま て発足した NPO になり、 主に 2009 年から、 別府現代芸術フェ す。区画整理をされた田園だけではなく、このように地形 スティバル 2009 「混浴温泉世界」 という芸術祭を 3 年に一度、 を利用した、1300 年変わらない風景が今でも残っている場 開催していました。2009 年、2012 年、そして今年の 2015 所で、写真家の石川直樹さんという方に撮影していただき 年のただ今も開催中です。この準備期間にも地域の中でさ ました。他にも、このように岩にへばりつくようにお寺や、 まざまな活動を行ってきています。 お堂が入っている場所もあります。ほかにも石仏が、日本 こちらは 2009 年にできた、これも混浴温泉世界で生まれ 全国の約 6 割以上のものがあると言われているぐらい、野 た作品の、マイケル・リンさんの壁画です。これは今も残っ 仏や石仏がたくさんある場所です。日常の暮らしの中に、 ております。その他にも、市民芸術祭の「ベップ・アート・ 今でも祈りであるとか、例えばある家では屋敷神という神 マンス」なども行っています。 を、春と秋にお祭りをしていたり、それを行うことが本当 次も芸術祭の作品の一つです。 「混浴温泉世界 2012」に に皆さんの暮らしの中に当たり前にあるものでした。 83 添付資料 創造農村ワークショップ 国東半島芸術祭について経緯をご紹介します。まず大分 今残っている作品で詳しくご紹介したいのは、宮島達男 県から、国東半島で何かアートができないかとご相談があ さんの『Hundred Life Houses』という作品です。成仏プロ り、スタートしています。2012 年からスタートしているの ジェクトとありますが、作品の会場の地名を取っています。 ですが、やはり、地域でアートプロジェクトを行うには、 「成仏」という地名が本当にあり、ここには、約 40 戸の世 その場所のことを知らないと何もできないので、2011 年は、 帯があるのですけれども、65 歳以上の高齢化が進んだ地域 私も徹底的に調査で国東半島を回っていました。この時に になっています。おそらく、もう 30 年、50 年経つと、こ は、地域の方に、 「あなたのとっておきの場所はどこです の集落が無くなってしまうのではないかという危機感を集 か?」という質問をしまして、その場所まで連れて行って 落の方は感じていました。そこに大きな岩壁がありまして、 いただいてインタビューを記録映像に残して、シンポジウ この壁を使わせてもらい作品を作るということになりまし ムで流すといったようなことをしました。何か地域でプロ た。最初は、岩に穴を開けて作品を設置していこうとした ジェクトをするとなったときに、もちろん外からの視点と のですが、それが技術的に難しいということが分かりまし いうのは非常に重要ですけれども、やはりそこで暮らしを て、コンクリートで家型をつくり、その中に宮島さんの作 している方々が、自分が暮らしている地域に対してどうい 品でよく用いられる、デジタルカウンターを入れた作品に う思いを持っているのか、どういうふうに見ているのかと なります。これは、地域の 40 世帯の方と、30 歳未満の若 いう、そこに暮らしている方の視点というのもとても重要 者たちに集まっていただいてワークショップという形で制 だと思っています。 作しました。それは、この国東半島という場所がかつてさ 2012 年にはアートプロジェクトとして、国内の若手の作 まざまな方々が交流をしていった文化の結節点であるとい 家に入っていただき、レジデンス・プロジェクトを行って うことと、大陸からの文化が入ってきていることからです。 いただくプロジェクトや、飴屋法水さんというアーティス このワークショップも中国や韓国からの留学生の参加も呼 トが来てくださり、その時には約 12 時間にも及ぶ演劇で、 びかけ作り上げられています。そして、この作品を作るこ バスで移動しながら国東半島を巡り、この場所の強さであ とで、外からやってきた学生さんとか地元の子どもたちが るとか魅力に気付くような作品が生まれています。 またこの場所に帰ってくる、というストーリーを込めて作っ 2013 年には、この国東半島に、芸術祭が終わった後の作 ています。この制作は 2 日間で行いました。まず、1 日目 品を残していくプロジェクトとして「サイトスペシフィッ は、地元の方と外からやってきた若者たちが交流をするワー クプロジェクト」というものが生まれました。こちらも、 クショップです。このときは、この岩の所でお祓いをして、 今も 6 つの作品が残っています。これは後ほどご紹介いた そして地元の太鼓や鬼のお面を着けたお祭りをして、一緒 します。 に食事し、次の日のワークショップに備えるという形にし そして、2014 年にこの約 3 年間の集大成として、昨年の ました。そして、ワークショップ 2 日目です。まず、木枠 11 月に国東半島芸術祭が開催されたのですが、 2012 年が「異 を組むのですけれども、これは先ほどお見せした家型をつ 人」 、2013 年が「地霊」 、3 年目が「LIFE <生命、生きて活 くる枠になります。この木の枠の所に思い思いの絵を描い 動すること、人生、存在>」というテーマです。この国東 ていただいて、それを彫刻刀で彫っていきます。子ども、 半島の場所とアートに向き合って、そして、時間をかけて おじいちゃん、おばあちゃんまで、そうしていただいて、 この国東半島に出会っていただくという芸術祭を行ってい 数字のデジタルカウンターの数字を、参加者一人一人がお きました。 好きなテンポに設定し、世界に一つ、その人がつくったデ ここからが、今残っている作品です。これは、チェ・ジョ ジタルカウンターが生まれていきます。そして最後に、宮 ンファさんの作品で長崎鼻という岬にあるものです。チェ・ 島達男さんから参加者全員に、皆さん一人一人がこの作品 ジョンファさんの代表作によく挙げられる作品は、カラフ のアーティストの一人ですという証明書を発行してくださ ルな FRP 用いた彫刻ですが、これは本当の土と生きている いました。このようにできた作品の一部をこのように壁に 花を使った作品です。一つ一つお話ししていきたいのです 設置していったわけです。 が、時間がありませんので、後ほど今残っている作品の一 つを詳しくお話ししたいと思います。こちらは、オノ・ヨー コさんの『見えないベンチ/ Invisible Benches』という作 品です。このベンチに座って、彼女の詩を読んで、目の前 の景色を見て感じていただく作品です。これは、 アントニー・ ゴームリさんの作品になります。これは、体の型を取った、 鉄の作品になっています。こちらは、川俣正さんの森の中 の教会をイメージした『説教壇』という作品になります。 そして、チームラボさんの作品で、今残っている作品のほ とんどが屋外なのですが、これだけは屋内の作品です。本 当は、これは芸術祭以降に、撤去される予定だったのです けれども、市からの要望もあり今も残っています。 84 添付資料 創造農村ワークショップ ちょっと暗くて分かりにくいですが、近づきますとこの いたり、その中にそれぞれのこだわりがあって、そこは本 ように点滅している。点滅して、1 から 9 までカウントし 当に皆さん一人一人の中にある創造性、そういったところ ていく、0 になったときに消灯するのですが、その消灯し が生きている。それが、私は今でも思い出すとすごくグッ たときにパラパラと、まるで風が横切ったかのように見え と来てしまう、そのような芸術祭を秋にしました。 たりですとか、まるでホタルがきれいに点滅しているよう だねとか、本当にいろいろなご感想をいただきました。 この 4 月から東京に来ていますが、今でも地元の方とは 連絡を取り合ったりしていて、国東半島芸術祭は、昨年で ひとまず終えたのですけれども、今、地元のほうから、何 最後に、国東半島芸術祭で私が本当に嬉しく感じ、学ば かまた芸術祭のようなことができないか、というような声 せていただいたことがあるので紹介します。国東半島芸術 が挙がっているということを聞いたりもしていますので、 祭のボランティアは、おせっ隊さんという名前になってい 私も少し離れてはしまったのですけれども、今後も引き続 ます。おせったいというのは、国東半島に残っている風習 き、大分の活動に注目し、何らかの形で関わり続けたいと から来ているのですが、主に春と秋に弘法大師の小さな石 思っています。ありがとうございました。 仏、各地域でお祭りをしているオコボ様、それに皆さんが お参りをする。そして春は山菜のおこわご飯であるとか、 太下氏:嘉原さん、どうもありがとうございました。主に、 お菓子、秋は手打ちのけんちんのおうどんを皆さんに提供 国東半島芸術祭の事例のご紹介をいただきました。国東と してくださる。それは、地元の方だけではなくて外から来 いう所は非常に宗教的にも興味深いところで、ご存知の方 た方にも提供してくださるというのが「おせったい」とい も多いと思いますが、岬とか瀬崎とか「崎」という言葉の う風習ですが、ここからこの名前が来ています。 残る地名は、もともと、神がそこに来た、そういう証しで 芸術祭のときも、私たちの方から強く働きかけたわけで もあります。おそらく、朝鮮半島が由来とされる古代の修 はなく、地元の方が外から時間をかけて来てくれるお客さ 験道のような宗教が日本で最初に根付いた所の一つではな んのために、このように皆さん家々でつくったお漬物を持 いかと国東半島は言われていて、非常に興味深い場所です ち寄って、この竹筒に入れておもてなししたり、また「成 ね。 仏プロジェクト」の会場で、地元のお父さんたちがアーティ それでは、続きまして、十日町市長の関口さんのほうか ストの作品制作に触発をされて、自分たちでグッズをつく ら事例発表をいただきたいと思います。当然ではあります りました。これは宮島達男さんも公認の、芸術祭では非公 が、大地の芸術祭のご紹介になろうかと思います。では、 式のグッズです。こういうふうに、生まれた作品を大事に よろしくお願いします。 してくださるということで、アーティストもとても喜んで います。 その他にも、アントニー・ゴームリーさんの作品会場で は、自分の家の庭先から摘んできたお花を生けてくださっ 十日町市長 関口芳史氏 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました、十日町市 ていました。また、この作品がある所は山の少し上なので、 の市長の関口です。昨日、今日と、大変暑い中、お越しい 歩くと 10 分、15 分ぐらいの山道ですけれども、この方は、 ただきましてありがとうございます。昨日、北川フラムさん、 本当に毎日山道の上から下まで熊手で掃除をしてください 逢坂恵理子さんのご講演と、そして午後のツアーに皆さん ました。たくさん掃除しているのであっという間に熊手が がご参加いただいたという前提で喋らせていただきます。 壊れてしまって「もう、今月に入って 3 本目なんだよね」 今日のこのテーマは、芸術祭と地域再生ということでご と少し自慢気にお話しをしてくださって、 「カエデは掃かな ざいます。15 分ぐらいのお時間ということでありますので いように残して掃いているんだよ」とか、そういったこだ 駆け足で、発表させていただきます。越後妻有のご紹介、 わりを聞かせてくださいました。 つぎに「なぜアートなのか」 、そしてそこで発見したもの。 そして、川俣正さんの作品の所では、お母さんが、バス そして、芸術祭がこの地域にもたらしてくれたものが3番 で来てくださった方をお見送りしてくださっています。彼 目であります。4番目になぜ成功したのかと言うとおこが 女は、川俣さんが作品制作をしているときに、毎日、12 時 ましいのですけれども、大地の芸術祭が皆さまからご注目 と 15 時の時間帯に、やかんを持ってアーティストが制作し いただいている、我々から感じた気付きといいますか、そ ている所にお茶とお菓子を届けてくれている方で、この芸 うしたもの。最後に、今日のテーマ「地域再生」でありま 術祭のときも毎日お客さんに、自分がつくったシソジュー すけれども、その先に新たな地域の創造なるものができる スやお漬物、そういったものをお渡しして、川俣さんが来 のかどうかとか、そのような内容です。しばらくの間、お ていたときのお話なども来場者にされていました。 付き合いいただきたいと思います。 その時に、私が感じたのは、アーティストがこの場所で まず、越後妻有を紹介させていただきます。この地域は、 滞在制作をして、感じ取った地元の方たちの空気、想いと 長野県から津南町に入りまして、十日町、旧5市町村が合 いうものも、こういった形でお客様にも伝わったのではな 併して、今一市一町でありますけれども、このエリアが越 いかということです。あとは、お花を生けているお母さん 後妻有と言います。信濃川が真ん中を流れているわけであ がいたり、熊手でお掃除をされていらっしゃるお父さんが ります。そして、なぜか長野県から新潟県に入りますと大 85 添付資料 創造農村ワークショップ きく様相が変わります。縄文文化の展開する、まったく雰 この土地に根ざした文化的な資源、たとえば織物なんかが 囲気の変わった所になるわけであります。 「妻有」というの この地域には、ずっと続いているのですけれども、そうし は名前の由来が、いろいろ想像されますけれども、中世以 たものを含めまして、もう一度その潜在的なものを磨いて、 来このあたりの庄の名前だったのではないかというふうに そして芸術祭を通して新たな視点による再発見、現代的な 言われているわけであります。 チャレンジにそれを活用する、そういうものだと理解をし 特徴でありますけれども、まず非常に雪が多いエリアで ております。 す。ひと冬の累計の積雪量は 10 メートルを超えるというこ とでございまして、平らな所も意外に雪が降る。スキー場 アートによる再発見について、しばらくお話をしたいと の中でずっと生活しているという感じではないでしょうか。 思います。越後妻有のアート作品、このように 760 平方キ そして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、新 ロメール、東京 23 区がスッポリ入る、これだけのエリアに 潟県に入りますと、急に河岸段丘が大きく展開して、昔、 点在をしているわけであります。そうした中で、まず我々 大地の褶曲と信濃川がずいぶん暴れたのではないかという は自然を改めて発見した。この草間彌生さんの作品、そして、 ことが想像されるわけであります。そこに重なるように縄 このリチャード・ディーコンさんの作品であります。これは、 文の集落が本当に多く点在します。津南町から始まって、 ポケットパークという公共事業に、ベンチと強引に新潟県 十日町、小千谷、長岡、そして新潟、日本海に及ぶまで信 に解釈していただきまして、この作品を作っていただいた 濃川周辺に縄文、特に中期、今少し年代修正をして、5000 わけでございます。座るに大変なベンチですけれども、面 年前、そのあたりの時代の火焔型土器がものすごくたくさ 白い。ここが道路です、このベンチに座ろうとして近づき んあり、公共事業をやるごとに調査をする状況になってお ますと、その下に清水の棚田がものすごいスケールで展開 ります。十日町市の火焔型土器は国宝に指定されておりま している。それは残念ながら、3.12 の長野県北部地震で流 す。土器が 57 点、一緒に出てきたものを付けたら、全部で れてしまったのですけれども、また今再生しています。昔 928 あって、全てが国宝です。そういう非常に珍しい、自 ほどなめらかなカーブにまだならず、ちょっとギクシャク 然に賞讚されている所であります。美というものに対する していますが、再生いたしました。そしてその向こうには、 こだわり、芸術に繋がるものがこの地域には以前からあっ 越後黒姫が見える。本当に、この作品に近づいて何かまた たのではないかと感じております。 新しいものを発見するような、そういう自然を見せる、こ そして、3つ目はこの里山文化というものです。原生林 はいろいろな所にあるわけですが、人間がそこに住んで、 ういう素晴らしい作家の目線が魅せてくれていると思いま す。 自分の住んでいる里の周りの山を少しずつ、そこにある自 これはご案内のとおり、イリヤ&エミリア・カバコフの『棚 然の恵みをいただきながら、しかもそれを再生できるよう 田』という作品です。これは第 1 回の 2000 年から繋がって な形で使わせていただいたというのが、私は里山文化かと いる。パッと見たときに、周りは全部森です。ここだけ昔 思います。里山というのは、今はもう英語にも翻訳されな に地滑りが起こったのでしょう。険しい山は切り開きにく いでそのまま使われていると伺います。自然と共生して、 いですけれど、斜めになったら田んぼにしやすい。ここに いわゆる持続可能的な文化、そういった里山文化がしっか は、80 歳の老人がこの時までこの棚田を耕作していたんで りと根付いている地域だと言えると思います。 す。ところが、やめようかなと思っていた矢先にこの話が そして、4 つ目は、越後妻有だけの特徴と言うわけには いかないと思います。全国の、我々と似たような地域も同 あって、説得されて、それからもう 5 年間頑張って 85 歳ま でこの田を耕していただいたと伺っております。 じようなことだと思いますけれども、過疎の問題です。高 そして、芸術祭は作品と作品を回る中で、車窓からの景 齢化の進展が著しい地域であります。ここまで減らなくて 観などもお楽しみいただけるものだと思う。よく私どもは もいいというぐらいまで減っているわけであります。 言うのですけれども、作品を目当てに向かってください、 この幾つかの特徴を活用しながら、最後に書いてある我々 その間にいろいろな発見があるのではないでしょうかと。 の大きな課題に対してチャレンジしているのが、芸術祭で これは星峠の棚田でしょうかね。こちらの黄色い花の写真 はないか思うのです。過疎で減りすぎてしまって、高齢者 は、家の後ろに庭をつくって、偶然訪れた方のために心づ だけになる、それをどうやって元に戻すか、地域を再生す かいをしている。こんなような美しいものと出会うことが るかという営みが、私は大地の芸術祭の役割ではないかと、 できる。それが一つの、大地の芸術祭の仕組みではないか こう思う。そして、その地域には、空き家だの廃校だのが と思います。 たくさんあるわけですね。ここを活用していく事業のお話 もできると思います。 そして、我々は芸術祭を通して、集落を新たに発見した と言ってもいいかと思います。1 つは、この空き家、廃校 2012 年、3 年前にも約 7 万人の規模のこの地域に 49 万 プロジェクトでありまして、これは第 3 回展から積極的に 人の皆さまにご来訪いただいた。先ほどから申し上げてお 展開され、北川さんもこれほど長く続くと考えていなかっ りますけれども、地域の潜在的な資源の棚田、里山の自然 たものだと聞いたことがあります。これは小学校を使用し の資源と合わせたことで、そして、集落の中にある、特に た、田島征三さんの『絵本と木の実の美術館』であります。 マイナスの資源と言われるような空き家、廃校を活用する。 最後、たった 3 人しか生徒がおらなかった、その学校を田 86 添付資料 創造農村ワークショップ 島さんが、 本当に面白い要素に仕立ててくれました。中には、 本当にそよ風が通り抜ける素晴らしいカフェがありまして、 予感がいたします。 次に、大地の芸術際がもたらしてくれたものということ ここに行かれると、しばらく動きたくないな、という感想 であります。アートを使っていろいろなものを我々にプレ を持たれる方が多いのではないかと思います。 ゼントしてくれました。その一つが、「Roooots 名産品リデ これも廃屋です。鞍掛純一さんですね。日本大学芸術学 ザインプロジェクト」でございます。津南町と十日町市で 部彫刻コースの皆さんが、二年半かけて彫刻刀で古い家に つくられたもの以外は駄目。十日町と津南町で作られたも 彫りを入れた。梁の裏まで全てです。まったくサボってい のをアーティストにちょっとエッセンスをふりかけていた ないというか、素晴らしい作品です。宿泊もできます。こ だきますと、売り上げがこんなに変わってしまいました、 ういう素晴らしい作品が出来た。廃校、廃屋を利用して、 というものです。中身は、本当に優良品がいっぱいあった 集落の中に作品ができると、ここにまた関わりが出てくる のですけれども、包装がいまひとつだったということで、 わけでありますので、本当に有り難い再発見だったなと思 本当にパッケージの力の偉大さを我々は学びました。お酒 います。 でありますとか、お米でありますとか。よく売れています。 そして、我々がいつも食べている、食べ物に関しても非 本もありますよね。そして、スカーフ。プリント技術が十 常に有り難い再発見があったと聞いております。山菜です。 日町にはたくさんあります。そして、お酒ですね。そうし 山の恵みでありますけれども、そのことが多くの皆さんに たものをデザインしてくれました。 賞讚され、これをしっかりと、もっときれいに発信しよう あと、アートの力でいただいたものに復興というものが とたくさんのレストランができました。こちらは、「うぶす あります。地震がこの 10 年間に 3 回ありました。全部、災 なの家」です。下条の山の中に建っていて、中越地震で取 害救助法適用という厳しい地震でした。「オーストラリア・ り壊れてしまった所ですが、こちらも畑で採れた野菜がど ハウス」は、長野県北部地震で倒壊しました。雪が乗って んどん地域の皆さんから出てきて、 「小金を稼がせていただ いて、遠くにあって近づけないものですから、壊れたか壊 いています」とおっしゃっていたりする。本当に、彼女た れなかったか、しばらく誰にも分からなかったのですけれ ちにとっても人生が変わったのではないかなと思います。 ども、先遣隊が向かいまして、発見したら本当にこんな感 地域のお母さんたちに、外でこういったことを勉強されて じになっていた。これは、第 5 回展の前の年です。ですか いる方が関わっていただくと、全然違うものになって、ま ら、我々の仕事のペースとしては異様な早さで再生をいた た美味しいものが出てくるということでございます。この しました。つまり、1 年と 3 カ月後には、オーストラリア・ ような再発見がありました。 ハウスは、こういう形で新しいものになった。我々からす 昨日の北川さんのほうと重複にもなりますので、さっと 今年の新作を振り返りたいと思います。ここれはイリヤ& ると異例のペースで作った再生プロジェクトです。 そして、先ほどもお話ししましたけれども、中越地震に エミリア・カバコフの作品でありまして、人生のアーチ。 よって半壊しました古民家です。「うぶすなの家」として再 この作品、さすが、カバコフさんだなというふうに思います。 生をしたわけであります。中には陶芸家の皆さんから本当 これは、飯山線の二つの駅に展開されているプロジェク に安価で作っていただいた釜戸とかお風呂とか囲炉裏とか、 トであります。ちょっと見ると何か分からないのですけれ 九谷焼、信楽焼をイメージとしたものが展開して、地域の ども、実は、裏には台湾人のジミー・リャオさんの絵本が 若者たちがここで大活躍をしているということであります。 あって、そのシナリオです。最後の所、絵本の最後の所に、 希望もいっぱいアートが呼んでくれました。こへび隊の この越後水沢駅の所だろうなと思われる景色がありまして、 皆さんの活躍、これはもう言うまでもないかと思います。 そこにぜひ行っていただきたいと思います。そこに行かれ 当時学生だった人がいまだに絡んでいただいております。 ると、駅の裏側に広がる美しい棚田を再発見できるような、 そして、先ほど申し上げました、お祭りすらできなくなっ そんな仕掛けになっている面白い作品です。 た集落に入っていただく中で、盛り上げていただいていま これも、後で上村町長からお話しがあると思いますけれ す。 ども、津南町です。これは皆さんにご案内の『土石流のモ そして、これはぜひ、今回大いに宣伝させていただきた ニュメント』でございます。これは、国土交通省推薦とい かったところです。オフィシャルサポーターという皆さん う感じでありまして、国土交通省の事務所にお邪魔します が登場した。高島宏平さんという方を中心に行っており、 と、ポスターがバンバン貼ってある。本当に、ここの土木 高島さんは起業家です、41 歳とまだお若い。自分の会社は 工事とアートの関係というのは、まさに我々の先祖の苦難 マザーズに上場しているのですけれども、物資両面でサポー の歴史ではないかと思います。 トしてくれている。北川さんのご苦労を聞いて、もう本当 これは、奴奈川キャンパスという、今年の新作であります。 に感動したと、そういう皆さんが集まってくれています。 ここにも、鞍掛さんが日大の芸術学部の皆さんと一緒の素 本当に、この若者サポーターの力を、本当に頼もしく思っ 晴らしい作品が、今回揃っています。主要 5 科目以外の教 ています。 科を学べる場所だということで、ぜひこれは、まだスター 何で成功したかなんて、ちょっとおこがましくて言えな トしたばかりですけれども、これは十日町市長として、ぜ いので、ここのところは飛ばしますけれども、芸術祭の効 ひ成功してもらいたい、これは大きなプロジェクトになる 果は、非常に大きな効果が出てきています。観光客、経済 87 添付資料 創造農村ワークショップ 効果もずいぶんあった。一番、嬉しいのは参加する集落が いというふうに思っている次第であります。本当に雑ぱく どんどん増えていることだと思います。 な説明で恐縮でございますが、ご清聴本当にありがとうご 3 年前の 5 回展のときに、日銀の 9 月の短観で、第 5 回 ざいました。 展の開催期間中、7 月から 9 月の間の新潟県内の景気の判 断において、非製造業は 3 ポイント改善している。その要 太下氏:関口市長、どうもありがとうございました。こ 因は、大地の芸術祭やインターハイなどのイベントが相次 の大地の芸術祭は、私も初回から毎回来ていますけれども、 いで、旅館などが盛況だというお話があったのでございま 今回は特に、アート作品のクオリティが充実しているよう す。このことを、当時の近藤文化庁長官に、たまたま機会 に感じ入っております。こういうビエンナーレ、トリエン があってお話ししたら、その資料をすぐにくれとおっしゃっ ナーレというものは、日本全国で数えていくと、100 とも て、喜んでいただいたことを、今でも思い出します。芸術 200 あるとも言われています。その中でもこの大地の芸術 祭の効果、本当に多くの地域が生まれ変わったと思います。 祭は、ある意味成功モデルとして評価が確立されてきてい 先ほどの、なぜ成功したのかということですけれども、 るのでないかと思います。さて、日本の文化政策というも ファーストムーバーというか、それがあったからではない のは、海外の事例を参考に企画されていることが多く、こ かと思います。またリーダシップ、この北川フラムさんの のビエンナーレ、トリエンナーレという形式自体も確かに 協力が、またこれをやろうと決めていただいた、当時の平 海外から持って来ているのですけれども、大地の芸術祭の 山新潟県知事の感性。こうしたものが非常に大きく、これ ように、地域の中で作品が展開するにあたり、そこに地域 らがちょうどよく重なっていったのだろうと思います。そ の住民も深く関わっていくような事例は実は世界的に見て して、我々もその一人ですけれども、我々の価値観、そし もほとんど例が無いのです。大地の芸術祭は、ドイツの小 て皆さんの違う価値観、科学反応を起こすところまでいろ 都市ミュンスターで開始されて、10 年おきに開催されてい いろ、もめにもめましたけれどもここまで頑張った、乗り る、ミュンスター野外彫刻展ををモデルにしたと言われて 越えたのが、ここに来て、お互いに幸せになっているので いますけれども、それとは全然違う別のものとして進化し はないかと感じています。 ているように思います。 そして、いつも言っていますけれども、ここに点在して それでは、続きまして、津南町長の上村さんから、やはり、 いる作品を一つの所に集めて、効率的ですから、今ここで この大地の芸術祭について、今度は津南町の取り組みの事 ご覧くださいと言ったのでは、 やはり味わえない。いわゆる、 例をご紹介いただきたいと思います。それでは、よろしく ホワイトキューブに対する自然、このことが大地の芸術祭 お願いします。 の大きなポイントではないか。このことを実現できている 芸術祭というのはあまり無いのではないかと感じているわ けでございます。 残された課題がいっぱいあります。財源の問題もありま 津南町長 上村憲司氏 津南町の上村でございます。今ほど、大地の芸術祭その すし、人材は、特に外からの人材には大変恵まれていると ものにつきましては、十日町の関口市長さんのほうから、 思いますが、市民、住民が、本当に分かっているのかとい 聞いていて「なるほどな」と思うぐらい素晴らしいプレゼ う思いはあります。そして、そういった中でまだまだ駐車 ンテーションがございましたので、私からは、大地の芸術 場が足りない、オペレーターや財政の問題などもあるよう 祭のこぼれ話的な話を申し上げさせていただいて、お許し に思います。先ほども申し上げましたけれども、地域再生 いただきたいと思っております。目の前をこう見ていると、 ということで取り組んでいるわけでありますけれども、な 風にそよいでいる草木、セミの鳴き声というのが、どんな んとか、お祭りができるくらいに集落が回復したら、その バックグラウンドミュージックよりも今日のテーマに合っ 先に何かこう、示すことができればと感じているところで ている、そんなことを思いながら伺っております。 あります。 まず、津南町という所でありますけれども、皆さん、信 引き続きとなりますけれども、最初は、北川さん指導で 濃川と千曲川という川が同じ川だということを知らなかっ 地域の「すてき」を見つけてくれと、ここから始まったん たよという人はおられますか。ああ、おられる。同じ川な です。それで、我々お見せするもの、お見せするものを全部、 んです。長野県に入ると千曲川になります。全長 360 キロ 北川さんに却下された、 「それじゃない。本当はこれが素晴 あまりあるのですけれども、そのうちの、新潟県の信濃川 らしいんだ」ということで教えていただき、そこから始まっ というのは 150 キロしかありません。210 キロは長野県を て行ったのではないかと思います。本当にこの地域の再生 流れる千曲川であります。そうなのですけれども、国交省 には、 「文化とか芸術は、全くどうやって役に立つのだろう」 の河川法によって信濃川と銘じられておるものですから、 という風潮の中で、向かって行ったと思いますが、あまり 信濃川という呼称が、日本で一番長い川であるということ にも、もう本当に手がないものだから、藁にもすがるといっ になっております。その信濃川が千曲川と名前を変える、 たら失礼なのですけれども、そんなことで北川さんとのお 長野県との接点、世界一の豪雪地域でありますけれど、そ 付き合いが始まったのではないか。再生、新たなものをつ こに人口 1 万少しで暮らしておる、それが津南町という町 くり出す村おこしですね。これからも頑張っていただきた であります。これは、全景でありますけれども、所々、グ 88 添付資料 創造農村ワークショップ リーンの木のラインが入っておりますが、これが河岸段丘 ういったことを前提でさまざまなことを進めておるところ の印であります。世界で一番はっきり、河岸段丘が見える であります。今流行の言葉で「新しい公共」なんて言葉を 場所ということで、アメリカの地理の教科書にも載ってい 皆さん使われておりますけれども、同じように地域の皆さ る地域であります。河岸段丘が信濃川から、一番上にグリー んが自分で考え、共存するということを決意いただいて、 ンピア津南という大地があるのですけれども、そこまで九 ただ出来上がった所へ加わるだけではなくて、計画や片づ 段あるという、そういった地域であります。 けから進んで行く、そういった参画型の共存ということで 先ほど有数の豪雪地と言いましたけれども、人口 1 万人 以上が集団して、地球上で雪が 3 メートル以上、毎年降る 地域づくりを進めていきたいと考えておるところでありま す。 という気候になったのは、およそ 8000 年前だそうで、津 さまざまな制作活動に地元のボランティアの方々が本当 南町は石器時代から人が住み継いでおる、そういった遺跡 に多く参加していただいてもらっております。先ほどの土 がとても多く残っております。人がこれだけの豪雪地に住 石流の現場の写真に黄色い棒がありましたけれども、これ んでおるのは世界であまり例がないのだそうでありまして、 は実は、一カ月間の土曜・日曜、全部かけて、数百本に及 國學院の小林達雄先生によれば、古代七不思議の一つです ぶこのポールを作ろうということでやったのですけれども、 というお話であります。それが津南町であるわけです。 なんと、土日の二日間で、地域のほとんどの人に参加して 今からちょうど 20 年前に、当時、県庁の友人である一 いただいて出来上がったという事例もあります。 人の方から、大地の芸術祭のことを伺って、また当時の新 資料の中にお母さん方が跳ねている写真がありますけれ 潟県知事の平山知事さんに、なんとか北川フラムさんを会 ど、これは先ほど十日町市長さんのご説明にもあった、4 わせてやって欲しいという話をいただきました。1997 年で 年前の 3 月 12 日の未明にありました長野県北部地震で、長 ありました。当時、現代アートなんていうものは、私ども 野県に一番隣接しておる津南の、その中でもすぐ隣り合っ まったく聞いたことも触ったこともない言葉ですから、アー た、震源地にほぼ逼迫する上郷地区という所があります。 トというのは、芸術ということを英語で言うというぐらい そこの中学校が地震で壊れたために、廃校を余儀なくされ の認識しかありませんでした。それが芸術の一部の分野を た学校であります。その廃虚になった、がらくたの中を、 指す言葉だと、そんなことすら知らない私たちでありまし 北川先生と二人で歩きながら、大地の芸術作品で素晴らし たけれども、北川先生にご挨拶をさせていただいて、その いのは、人間の営み、生きているということだと思うのだ 情熱というのと目力というもの、そういったものに圧倒さ けれども、そういったことをテーマにして何か出来ないか、 れて本日に至った、そんなことを思っております。これを そんなお話をしたときに、北川先生のほうから、この廃虚 2000 年のミレニアムの記念事業として、この地域へ持って になった学校を、人間が演ずるパフォーマンスという、そ くるということを県のほうで決めていただきました。私は うしたレジデンス施設にしたらどうだろうかと、そんなお 当時、県議会にいたものですから、地元に戻ってきたら袋 話をいただいて始めさせていただいたものであります。こ 叩きにあいました。 「何でこんなものを持って来たんだ」 「つ れは本当に、上郷地区の農家のお母さん方であります。今、 まらないことをするな」 。地元紙の方も今日おいででありま メンバーが 40 名ぐらいおいでなのですけれども、その「ク すけれども、地元紙すべてで叩かれました。今は懐かしい ローブ座」という所で劇団が訓練をしながら、発表してい 思い出です。そういった中で、今日の状況になってきた、 ただく劇場がある。その下でレストランをやっております。 今日これだけになれたのは、最初の反対というのがとても 自分の家で採れた野菜を持ち寄ったレストランです。そこ 大きかった、そう思っております。最初爆発的な人気で始 で農家のお母さん方が演技をしながら、食事を提供させて まったのであれば、地域の理解者だとか応援団というもの いただく、そういうレストランをやらせていただきました。 がだんだん少なくなってきたのではと。最初反対の中で始 その下のトンネルの中で何かやっているのは、これは、 めて、次々に実績を重ねることによって、地域の皆さま方 雪崩から身を守るための道路にかけたスノーシェッドとい の理解、あるいは応援というものを年ごとに増やしていく う構築物であります。全長が約 900 メートルある、明かり ことができて、そのことが大地の芸術祭というものを今日 取りのあるトンネルであります。その中で演ずるというこ までに高めさせてくれることになった、一つの要因かもし とを、このたび初めて計画をさせていただいております。9 れないと、そんなことを思っております。そして、何より 月早々にそのことを実行したいと考えております。さまざ も力強い応援団になったのは、地元以外の多くの皆さん まな、公共構造物、特に道路という災害から身を守る、そ が、海外も含めて、大地の芸術祭というものをとても重要 ういったものと、人間というもの、アートというものは、 だ、素晴らしいものだと賞讚をしていただいて、そのこと どこで出会うのか、そういったことを今回の津南における がフィードバックして地元の皆さんに、だんだん入ってき 芸術祭の大きなテーマとして進めさせていただいておると た、大地の芸術祭というものをここまで盛り上げていただ ころであります。 いたのは、むしろ、地元以外の皆さまのお力だったな、そ んなことを改めて思っております。 自然の中で地元のボランティアの皆さんとどうやって作 品を作るのか、この暑い中、何日もボランティアで草刈り 津南の、大地の芸術祭の考え方ということでありますけ をさせていただいておる風景であります。特に私どもの地 れども、あくまで、参加ではなくて参画してください、そ 域は雪がひどいものですから、冬期の雪囲いも大変な手間 89 添付資料 創造農村ワークショップ ですけれども、そうしたこともそれぞれの地元の方々のボ 後もアート・プロジェクトを続けていく、そういう形になっ ランティアがやらせていただいております。ガイドボラン ていくのではないかと思うわけです。そこで、ぜひ 2020 年、 ティアもそうです。例えば、うちの娘も、土日は帰ってき そしてそれ以降も、オリンピックで文化プログラムをやる てガイドのボランティアをさせてもらっております。とて という中で、それぞれの地域で、今後どういう取り組みが も喜んでおります。 考えられるのかというあたりをぜひお聞きしたいと思いま 私たちは、なぜこういったことをやるようになったのか。 この地域、自分のふるさとというものがとても誇りである す。 最初は、嘉原さん、お願いします。嘉原さんの場合は、 と、そう思っていただける子どもたちに多く育っていただ 今までの取り組みだけではなく、今度はアーツカウンシル きたい、そんなことを願って、大地の芸術祭、あるいは昨 東京に異動され、ある意味、オリンピック文化プログラム 年暮れに私どもの地域は日本ジオパーク委員会からジオ の本丸にあたるので、たぶん両方のことがお伺いできるの パークの認定をいただきましたが、そういった、今作った ではないかと思います。よろしくお願いします。 ものではなく、大地、あるいは地方だとか、この地に備わっ た、そういったことを自ら子どもたちが誇りとしてくれる、 嘉原氏:今後、私がいた BEPPU PROJECT の活動が 2020 そういう地域づくり、まちづくりをなんとしてもさせてい 年のオリンピックに向けてどういう活動を行っていくのか ただきたい。そんなことで、 大地の芸術祭、 あるいはジオパー というのは、今、山出さんをはじめ、スタッフの中でお話 ク、そういったことに取り組みを進めさせていただいてお されていることだと思うので、私からはそこはお話が難し るところであります。 いですけれど。 最後でありますけれども、そのジオパークという所に認 東京オリンピックの文化プログラムのお話で、すごく感 定をもらう活動を起こしたときに、津南町の小学校 6 年生 じるのは、2020 年にどういう行動をしていくかという話題 の子どもたちが皆でこんな歌をつくってくれました。 はやはりあるのですが、私が出会っている中では、それ以 「津南はただのいなかじゃないよ 降の話が少ないように感じています。私も本当にアーツカ 津南の未来を僕らがつなぐ ウンシルに入ってまだ数カ月しか経っていない中での本当 僕らが津南の未来を創る!」 に感覚的なお話で申し訳ないのですが、いったいどんな課 そういう歌であります。この話をすると私はどうしても 題が残っていくのか、またこれから 5 年間で増えて行くで 声がつまるのですけれども、自分が小学校 6 年生、津南と あろう文化プロジェクトや小さな組織が、ちゃんと自立し いう地域全体のことを、明日のことを、一回でも考えたこ て育っていくような仕組みをどう作ることができるのか、 とがあっただろうか、そんなことを思います。そういった というのはすごく注目もしています。今、東京都の中で、 子どもたちが出てきてくれた。そのことが何よりも大地の NPO 団体と都内のアートプロジェクトを一緒にしている中 芸術祭で、嬉しい有り難いことだな、そのように思ってお でも、彼らの事務局をみると業務に追われていることを、 るところであります。ご清聴ありがとうございました。 すごく感じていまして、人材不足に直面しているというこ とも感じます。そうして、現場のほうは疲れてしまって倒 れてしまう。そういったところを、特に今日私も大分で大 ディスカッション 変お世話になったサポーターの方々が来ておられますけれ 太下氏:上村町長、素晴らしい講演ありがとうございま ども、地域で活動する場合は、例えばそういう団体である した。では、限られた時間ではありますけれども、これか とか、行政の方が、同じテーブルについて、いろいろ仕組 ら 20 分ぐらいは話を伺えるかと思っております。ご承知の みを一緒に考えていくというような機会がどんどん生まれ とおり、2020 年に東京でオリンピックが開催されます。オ ていくのが重要かと思っています。すみません、ざっくり リンピックというと、一般的にはスポーツイベントという としたお話で恐縮です。 イメージが非常に強いかと思うのですが、実は前回のオリ ンピックであるロンドン大会のときに文化プログラムとい 太下氏:どうもありがとうございました。2020 年という う要素が非常に重視されました。そして、ロンドンはもち 話は出てくるけれども、その先の話が無いという点はその ろんのこと、イギリス全土で文化プログラムが開催されま とおりかと思います。 した。その数は、総数で 17 万 8,000 件弱と言われていま 一方で、ご存じの方も多いと思いますけれども、IOC 国 す。これを受けて、日本の文化庁としては、日本は 20 万 際オリンピック委員会が非常に重要視しているキーワード 件やろうという構想を公表しました。ものすごい数ですね、 がありまして、それは、「レガシー(legacy)」という言葉 20 万件とは。もちろんこれは東京だけではなくて、日本全 です。「レガシー」と言うと、よく日本語では「遺産」とい 国で実施すると宣言をしました。そうなってくるとおそら うふうに訳されるのですが、ここで言っているレガシーは、 く、今日ご紹介された別府や国東での取り組み、または越 「ヘリテージ(heritage)」という意味の遺産とはちょっと違っ 後妻有大地の芸術祭の取り組みが、そういう大きな動きの ていて、未来に継承すべきものというふうに考えています。 中にうまく参画していくことになるのだと思います。むし オリンピックという国際的にも大きなイベントを開催する。 ろ、地域としてはオリンピックをうまく活用しながら、今 けれども、それが開催する都市や国にとって、一過性のも 90 添付資料 創造農村ワークショップ のであってはいけないということを、関係者自身が考えて そんなことをしなくても、日本はなぜか各県に地方に空港 いくべきこということではないかなと思います。そういっ があります。そして、新幹線や高速バスで日本全国がネッ た意味では、オリンピックに向けてきっといろいろな動き トワークされています。そこで海外からの観光客は、たと が起こってくるのだろうけれども、おそらく、 「レガシー」 えば新潟空港に直接入ってもらって、越後妻有地域でのん という考え方を組み込んだ形で、今後の 5 年間を計画され びりしてもらって、なおかつオリンピックの試合を観たい ていくのではないかと思っております。 という外国人がいれば、東京に日帰りもできるわけです。 それでは、関口市長のほうから今後のお取り組みについ て、お考えをお聞きしたいと思います。 そういう逆転の発想がこれから必要ではないかと思います。 ちなみに、ロンドンオリンピックの時には、ロンドン・プ ラス(London Plus)という観光キャンペーンが行われまし 関口氏:私は、今、文化庁の皆さま、日本政府の取り組みで、 非常に明確な指針を示していただいたことは有り難く思っ ております。やはり、前回の東京オリンピックの時に、オ た。これは、せっかくロンドンに来る人を、プラス 1 地域、 プラス 2 地域、もっと回ってもらおうという発想で行われ たものです。しかし日本の場合は、むしろ、主語を逆転で、 リンピック後、社会の人々の考え方とか暮らし方とかも大 「プラス・トーキョー」ではないかと考えています。全国の きく変わったように思う。必ずや、このオリンピックをきっ さまざまな地域に直接入ってもらって、地域でステイして かけに、例えば、生活の仕方とか国際社会との関わり方と もらって、どうしても東京に来たければ、プラスで回って か、そういったものを本当に日本人が学習して、それから もらうほうが、むしろこれからの豊かな国土形成につながっ 先の 50 年、100 年が見えてくると思っています。我々がぜ ていくのではないかなと思います。 ひ、そういう大きな動きの中で、越後妻有として、十日町 市として頑張りたいのは、やはり、自然との関わり方です。 それでは、上村町長から今後の取り組み、お考えをお願 いします。 エネルギーのことも含めて、破壊しつくすような生き方で はなく、何とか自然とうまく関わりながら、持続可能な生 上村氏:たまたま偶然、こちらに寄せてもらう前に、あ き方を進める、そういったことが大地の芸術祭の大きなテー る方と 3 年先の大地の芸術祭、ならびに、その 2 年後にあ マなのですが、この 5 年間、一生懸命発信させていただけ る東京オリンピック、そういったところを視野に入れて、 れば有り難いと思っています。 少し打ち合わせをさせていただきました。一つは、先ほど 具体的に言えば、ここから 5 年あるわけですけれども、 出ました、雪崩から人を守るスノーシェッドがありました。 東京はオリンピックに向けて忙しくなると思います。今で だいたい延長 1 キロの所に、700 メートルぐらいの連続す すら国立競技場も大変です。学校にテントを張る計画があ る切岸の中腹を縫うようにして出来ているスノーシェッド るとか、本当に本気なのかなと思うような案もあるらしい。 ですけれども、それ全部を世界一長い美術館というコンセ そんなことをするぐらいなら、新潟空港に来ていただいて、 プトにしてできないかという話をさせていただきました。 ここで芸術祭を楽しみながら、オリンピックも同時に楽し もちろん、すぐに、オリンピックを目指して短年度で完成 んでいただきたい。それに向けて、大地の芸術祭も自然と するなんていうことは当然ないわけで、一年ずつ蓄積しな の関わりということを、どんどんと世界に発信していくお がら、5 年先の東京オリンピックに向けて一つの完成型を 手伝いができれば本当に幸せなことです。 見るような、そのプロセスもみんなで楽しみながらやれる、 今、6 回展をやらせていただいて、今回も大きな変化が あり、外国人の皆さんの観光客が本当に多い。先ほどの「こ そんなことができないだろうかと、具体的に検討させてい ただきました。たった一つの事例ではありますけれども。 へび隊」も外国人の方に多く関わっていただいている。今 また皆様ご存知かどうかわかりませんが、十日町市は日 までとは全然違うので、3 年後も今では想像できないよう 本女子レスリングの強化合宿所であります。レスリングの なことになっていると思います。そういったことをしっか 「虎の穴」という漫画がありますが、十日町の練習所は世 り抜かりなく備えて、そして、その後の 2020 年に向けて、 界中で「虎の穴」と呼ばれている。今、女子レスリングで、 先ほど申し上げたようなテーマを発信できる、日本の中の そこに来なければオリンピックでメダルを取ることができ 拠点に越後妻有がなっていきたいと、そう考えています。 ないというぐらい厳しい訓練所になっております。また、 津南も女子ウエイトリフティングの強化合宿所になってお 太下氏:ありがとうございました。今、関口市長のほう ります。そういった、スポーツも発進力として考えていける、 から新潟空港からこの越後妻有に宿泊、というお話があり ということを考えたり、夢見たりしておるところです。以 ました。私も前々からまさに同じことを申し上げています。 上です。 ちなみに、政策都市銀行さんは 2020 年、東京にホテルが 足りないという予測を出されている。2020 年に政府目標の 太下氏:ありがとうございました。だんだん定刻が近づ 2,000 万人が日本に訪れる場合、東京のホテルは年間で 372 いてきているので、これが最後のお話の機会になってしま 万人分不足します。簡単に言うと、毎日、1 万人泊まれな うと思います。先ほど、嘉原さんのお話から、これから取 いということになるのです。普通に考えると、それに対応 り組みを進めて行く中で 2020 年以降も考えていかなければ しなければ、東京にホテルを建設しなくてはとなりますが、 いけないという指摘がありました。同時に、人材不足とい 91 添付資料 創造農村ワークショップ う話が出ました。嘉原さん自身が別府から東京に来て、こ わけでありますから、どういうふうに人をお連れするか、 れから別府の現場はどうなるのかなと思ったりするのです 育てるかというのは、まさに大事な課題です。そういう中で、 けれども。やはり、そういった地域での担い手や専門家に 私どもが一生懸命、意識してやっているのは、とにかく応 ついては、これから地域でも育てていかなくてはいけない 援団をつくることです。応援団は、やはり一つは出身者で のではないかと思います。そうなってくると、やはり、個々 すね。この地域に縁のある人。みんなと仲良くなりたいの の人材と同時に体制の問題が持続可能性の大きな鍵になっ はやまやまですけれども、それは理想形なので、まず私は、 てくるのではないかと思います。この人材不足にどう取り 絶対に縁のある人の所に行くべきだと。ですから、東京・ 組んでいくのか、非常に難しい問題で答えは無いかもしれ 新潟県人会とか、東京・十日町会だとか、そういった会に ませんが、そのあたりの考えをぜひ最後にお伺いしたいと は必ず自分が出席します。そういう縁というのはとても大 思います。それでは、順番に、嘉原さんからお願いします。 事だと思います。そして、都会で事業なりいろいろ成功さ れたりした皆さん、いろいろな方がいらっしゃるわけです 嘉原氏:私が所属しているアーツカウンシル東京では、 けれども、例えば、高齢になってくるとやることが無い。 アーティストや地域の方をつないでいく、アートマネジャー その人たちに、ふるさとのために応援しなよと言うのです。 を育てる講座をしており、そういう人材不足の所に起用し その人たちの力をどれだけ結集できるかというのは本当に ていきたいという活動も行っています。先日面白いアイデ 大事じゃないかなと思うんです。 アだなという話を聞いたので、そのことをお伝えできたら と思います。 もう一つは、地域おこし協力隊という諸君がいまして、 都会で生活している方が地域に来て、そこで 3 年間、お給 「3331 Arts Chiyoda」という、東京の千代田区に、廃校を 料をもらいながら地域づくりに励む。これは国のシステム 使用したアートセンターがあります。そこをつくられたアー ですけれども、その方たちに、何でこの町を選んでくれた ティストの中村政人(3331 Arts Chiyoda 統括ディレクター) のかと聞きますと、やはり芸術祭をやっている所だから、 さんや、彼の年代のアーティストが集まったトークイベン という方が結構多い。とても多くて嬉しいのですよ。先ほ トの中で、今後のオリンピックの話をされていました。そ どのお話ではないけれども、我々の暮らしを改めて発見し の中で中村さんからのアイデアで、全国各地で活動してい て磨いて発信すると、そうして 3 年住んでくれて、その後 る NPO や、そういった所で少しずつスキルを身に付けた 結婚してお子さんができてという方もいっぱいいらっしゃ 方々が、そこだけに留まるのではなくて、組織間でネット いますし、ずっと住んでくれる方も本当に多い。そういう ワークをつくって、その人材を交流させ、ある場所で大き 人たちをすくっていくことが大事かなと。その方たちが今 なプロジェクトをするときには、全国から集まってプロジェ また芸術祭に、非常に高いレベルで絡んでいただけるよう クトを行ったり、またはそこでスキルを学んだら自分の所 になった。だから、そういう外の班づくりですね。そうす に持って帰って活用をしたりとか、今、現場にいる人たち ると、U ターンしてきた方がこんなに頑張っているのに、 でネットワークをつくって、スキルアップをするシステム うちの息子は何で帰ってこないのだと、こういう話が結構 を考えていくのが重要なのではないか、というような話を ありまして、I ターンを刺激し始めている、というのも実際 されていました。それはすごく、私も現場にいた者として ありますので、そんなような動きが出てくれば、絶対に人 共感しました。 材は確保できるのではないかと思います。 他の場所ではどうやっているのだろうか、という疑問を 持っていたので、中村さんがおっしゃっていたそういう仕 太下氏:どうもありがとうございました。アートを通じ 組みがうまく作られていくと、総体的にスキルアップや、 た U ターン、I ターンということですね。それでは、上村町 また、人材の育成にも繋がると思うので、これからそのよ 長、よろしくお願いします。 うな動きがあるのか、ほかにも今後どういう活動が出てく るのか注目したいと思っています。 上村氏:今日、ご参加の方には、行政からおいでの方も 多いように伺っております。ここみたいに田舎の、山間地 太下氏:ありがとうございました。廃校の問題というの 域のたった人口 1 万人の町で、一番の格差は何だろう。一 は地方の過疎地の問題だけと思っていらっしゃる方いるか つは、行政でプロフェッショナルを雇うことができない、 もしれませんけれども、実は、都心過疎という現象もあって、 育てることができない。これが一番辛い格差の一つです。 東京でも廃校がいっぱいあるわけですね。そうした廃校を そうしたことを補うために、私たちには何があるのか。こ アートセンターとして活用するということも非常に重要な れはやはり、今、関口市長さんが言われたように、外から ポイントだと思います。それでは、続けて関口市長のほう のサポートということを、期待しなければならない。そう からお願いいたします。 いった、スタッフ&ラインのつくり方というのはとても重 要なテーマであると思っております。アートという部分で 関口氏:芸術祭を回していくという観点もそうですし、 はプロフェッショナルの方を、北川フラムさんのアートフ 地域を創生、再生していくという、両方に共通していると ロントギャラリーの中に、はり付けていただいていますの ころはありますが、いずれにしても人がいないとできない で、私たちは逆に、地元の人たちをどう集めるというか、 92 添付資料 創造農村ワークショップ そういったことを一番考えております。大地の芸術祭をや 特別講演「地域・アート・内発的」 るから集まってと言っても、集まってくれない。だから、 学習院大学文学部教授、福島県立博物館館長 赤坂憲雄氏 どうやって楽しく地域のおじいちゃん、おばあちゃんをは こんにちは。僕は民俗学者ですけれども、なぜかこうい じめとして、みんなが集まってくれるか、そのことをいつ うアートの現場で話をする機会が少しずつ多くなっていま も考えております。 して、何かの縁というか、意味があるのだろうと感じてい 何でもそうなのですけれども、仕事はまず楽しくという ます。2020 年の話がしきりに出てきますけれども、きっと のが私のモットーでして、次に力、最後に美しく。この「楽 我々は東京オリンピックの後にどのような社会を作ること しさ」とは何なのだろうということを常に問いかけながら、 ができるのか、どのような社会に向けて動いていくべきな 参画者にしていく。そういったことをこれからも続けてい のかという、大変深刻な問いを、実は背負わされているの ただきたいと思っております。 だと感じています。2020 年の東京オリンピックに向けて、 人もお金もいろいろなものが動くと思いますけれども、そ 太下氏:ありがとうございました。先ほど、 嘉原さんがおっ れは大河ドラマみたいなもので、それが終わった時にすべ しゃっていましたけれども、地域とアートをつなげる、こ てが消えてしまう、そういうことではたぶんいけない。そ れがこれから重要になってくるとのことです。2020 年にか して、今の議論の中でも「人材の育成」ということをテー けては、幸いにして、東京は一番早く、かつ、大規模、多 マにするのは、5 年のスパンではなく、10 年、20 年、30 様にさまざまな文化的な取り組みが行われる地域になると 年先の少子高齢化と人口減少が急激に進んでいく我々の社 期待されています。私の考えとしては、東京でそういう専 会の将来を見据えて、今、我々は何に取り組むべきなのか 門的な人材を OJT で育てて、人材を地域に派遣し、地域で ということを議論しなくてはいけない。 活躍していただく。そういった、今までとは違う逆の人材 現代社会の向かうべき方向というのは、はっきり、成長 の流れがうまく作れるのではないのかと思います。もちろ から成熟への転換だと思っています。経済的な成長を追い ん、その費用を誰がどう負担するかとかいろいろ現実的な 求めても、おそらく半世紀後に日本の人口は 8,000 万人台 問題はあるでしょうが、そういうところの支援をぜひ文化 になります。1 億 3,000 万人の人口が支えている経済と、8,000 庁さんに期待できないかと思います。今まで首都東京が地 万人が支えることができる経済というものが違うのは、はっ 域の人材を吸収していたので、ささやかな恩返しというか、 きりしている。成長というものを唯一の価値観にすると、 逆流みたいな動きが起こってくるといいのではないかと思 今我々が何をなしていくのかという大きな道筋において、 います。 きっと道を誤る、必ず失敗する。この成熟ということをい それではいよいよ時間となりましたので、これで、芸術 ろいろな形できちんと議論する段階になっている。2020 は 祭と地域再生のディスカッションを終わらせていただきま こうした価値観の転換のようなものに向けて動いているし、 す。どうもご清聴ありがとうございました。 そのきっかけだけでも生まれてほしいと思っています。だ からこそ、アートがテーマになるのです。 最近、僕は明治時代に日本へやって来た異邦人たちが書 き残した紀行文を、ずっと読んでいます。とても面白い仕 事です。その中で、明治の日本を訪れたアメリカ人のある 人が、 「日本は芸術の国だ」と言っているのです。パーシ ヴァル・ローエルというアメリカ人ですけれども、彼は日 本のあちこちを旅する。たとえば、旅をしていると小さな 茶屋があって、そこで休憩をする。そうすると、その茶屋 の娘さんがもてなしをしてくれる。それがとても気持ちい い。そして、彼は「日本という国はとても不思議な国だ。 貧しい茶屋の娘ですら、礼儀作法のモデルのような、もて なしをしてくれる」と言う。これはとても大事なことです。 あるいは、そこには荷物を運ぶ肉体労働者たちがいて、休 憩のときに将棋をさしている。その将棋をさしている姿が、 インテリジェンスを感じさせられるらしいのです。入れ墨 だらけの肉体労働者の男たちが、真剣な顔をして、将棋に 興じている。欧米社会では、茶屋の娘や肉体労働者がそう した礼儀作法や高度な遊びというのを当たり前にやってい る姿はあり得ない。彼は言うのです、「日本というのは、社 93 添付資料 創造農村ワークショップ 会的な芸術というものを本当に大事にしている国だ」と。 ということに、僕は本当に感動して、文章を 50 枚ぐらい書 それはもしかしたら、我々自身が忘れてしまったことかも きました。地域社会というのは、我々の日本の地域社会と しれない。町に暮らしている人たちが皆で歌詠みの会をし いうのは、まだまだ豊かなのです。それを一つ一つ掘り起 ている。あるいは、絵を描いている人がいる。日本という こし、そこに埋もれている歴史や文化や自然風土というも のは、実は、非常に格差が少ない社会で、上の人から下の のを糧として、資源として、自分たちの将来の社会をデザ 人までみんなが遊びを知っている。花見をしたり、紅葉狩 インしてゆく、明日を作ってゆく。絶対にできると僕は信 りを楽しんだり、そういうことを当たり前にやっている。 じています。 暮らしの中に、さりげなく芸術とか文芸といったものが根 付いているのです。 たとえば、近世には芭蕉とかいろいろな文人たちが全国 いきなり、シナリオ無しで話を始めちゃったのですが、 僕自身は、アートの人間ではありません。けれども、幾つ を旅しています。どうして旅ができたのかと考えたことが かの縁があって、アートとの関わりが深い場所にいます。 あるでしょうか。それは、地域に歌を詠んだり、俳句を詠 一つは、僕の義理の兄は堀浩哉と言いまして、越後妻有に んだりする人たちの集まりがあるからです。そこを訪ねて も参加させてもらっている現代アートの作家です。僕は彼 宿を乞えば、彼らは師匠として迎えてもらえて、そこで皆 の作品を 40 年ぐらいずっと見てきました。一人の作家の で歌を詠みながら何日かを過ごし、また違う所に移って行 40 年間の制作活動というものをすぐ傍らから見てきたこと くことができた。つまり、調べてみると分かるのですけれ によって、いわば現在進行形で、堀浩哉という作家の全集 ども、江戸時代の日本の地域社会というのは、田舎で貧し をずっと眺めてきたような気がします。そのことはとても いと思っていると、とんでもない。ものすごくレベルが高 大きいと感じています。彼は、本当にいい作品を作ってい い文化とか芸術といったものを享受することを知っている。 ますが、あまりにもプレゼンテーションが下手なのですね。 和算ってご存知ですか。日本版の算数ですね。あれはす 押しも押されぬ作家なはずですけれど、金銭的には恵まれ さまじいレベルだった。西洋から数学が入ってきたときに、 ているわけではありません。それを身近に見てきたことは、 形は違うけれども、それをすぐに受け入れることができた 僕にとってとても大きいですね。 のは、すでに和算という形で数学の学術をしていたからで 震災の前に、20 年間ほど、山形市にある東北芸術工科大 す。算額と言いまして、和算の問題を額に書いて奉納する 学という所で教員をしていました。その中で、とりわけ若 という遊びが行なわれていた。それが、たとえば、仙台な い作家の卵たちと年がら年中付き合っていて、「この子たち んかでは盛んに行われていたらしい。一般の民衆、しかも、 は何のために絵を描いているのだろう。何のために誰も理 女性も面白がって参加している。そういう、とても高度な、 解してくれない現代アートをやっているのだろう」と、ずっ 今の我々がたやすくは解けないような数学の問題を算額の と不思議に感じてきました。それで、どうも心がときめい 形にして奉納する。奉納すると皆がそれを見て、問題を解 てしまう、この若い作家たちの世話をしたくなるというか、 く競争をするのです。そういうことが実に当たり前に行わ 支援をしたくなるというか。いつの間にか、気がつくと、 れていたのが、我々の国だった。 僕は若いアーティストたちのサポーターになっていました。 そして、地域の文化的な衰えとかいろいろなことが言わ 東北芸術工科大学は離れましたけれども、今でもそこで付 れ、高度成長期以降、日本の地域社会は均一化してしまって、 き合った若い作家たちに対してはいろいろな形で応援をし もう面白くないと言われるのですね。でも、僕はとんでも ていますし、会津で芸術祭のようなことを仕掛けるときに ないと思います。日本の地域社会というのはいまだに、大 は、彼らを招いて、制作の場、あるいは発表の場を作ると 変多様で、それぞれの地域が本当に豊かなものを抱え込ん いうことをしてきました。 でいる。どうして、そこから眼を背けて東京ばかり見てい るのか。 僕の大好きな岡本太郎さんが、「アートというのは、無用 にして無償の行為である」といった言葉を残しています。 たとえば、嘉原さんがお話しされた国東半島芸術祭。僕 無用というのは、何の役にも立たないということですね。 は、昨年の 11 月に、3 日間ほど参加させてもらいました。 越後妻有には経済的な効果というものが幸いにも生まれて 国東半島というのは、若いころに石仏巡りの旅をして、ヒッ いますけれども、多くの作家たちは自分の作品が、社会的 チハイクなんかをしてすごく楽しかった記憶がある。しか にはほとんど無用であるという感覚を持っていると思いま しもう、石仏や野仏だけでは、国東半島の観光は成り立た す。しかも、お金儲けにならないという意味では、疑いも ない状況が生まれている。その中で、国東半島芸術祭は何 なく無償である。ですから、僕は岡本太郎のその言葉がと を徹底してやったかと言えば、縄文文化や弥生文化、ある ても気になってきました。この眼の前にいる若い作家たち いは人々が自然や神や仏とどのように交わりながら暮らし、 をどうやったら応援できるのかと考えるときに、いつもそ さまざまな祭りを行なってきたのか。それを、アートを仲 の言葉を思い出します。 立ちとして掘り起こしたのです。つまり国東半島は、数千 年の歴史の中で実に多様な文化が流れ込み、交わり、営ま 僕は 9 年前に、山形県の最上郡大蔵村の肘折温泉という れてきた半島なのです。その文化的な豊穣さを、アートと 所で小さなアートプロジェクトを言い出しっぺで始めまし いうのはこんなふうに豊かに掘り起こすことができるのか た。それは、今年で 9 年目になります。「ひじおりの灯」と 94 添付資料 創造農村ワークショップ 呼ばれています。その話をさせていただこうと思います。 とでした。 森繁哉という、十日町市の方たちは当然、ご存知だと思い そこからは怒濤のような日々でした。肘折温泉には、修 ますけれども、舞踏家の土方巽の弟子です。僕にとっては 験者によって 1300 年前に開湯したという伝説があります。 三十年来の大事な親友であり、同志です。その舞踏家の森 そのお祭りを 7 月にやるから、その季節にやろうとなった。 繁哉が大蔵村という所で暮らしています。彼は廃屋になっ 4 月になって大学に話をしたのですが、3 カ月ぐらいしか た藁葺きの家を舞踏の練習場、劇場に変えて「すすき野シ 準備期間がない。無謀です。お金はどこにあるか。お金な アター」を作りました。これは震災の後に雪でつぶれてし んかどこにもない。それで、僕はかけずり回って、150 万 まいました。そのかたわらに廃校になった学校があって、 円を大学の予算から捻り出しました。僕は言い出しっぺで そこで若い東北芸術工科大学の学生さんたちと森繁さんと はあるけれども、みごとに何の能力もありません。そこで、 で一緒にいろいろなことをやって来ました。 宮本武典君というキーパーソンの登場です。宮本君は越後 忘れもしない、9 年前の 3 月はじめのことでした。森さ 妻有の映像記録を制作していますから、皆さんもご存知だ んに、 「芸工大の学生たちと卒業制作の展示をやっているか と思います。彼に、一緒にやってくれないかと声を掛け、 ら見に来てくれ」と言われ、津南町といい勝負の数メート 仲間になってもらいました。そうしたら、彼はすごいコー ルの雪景色のなか、車を走らせて訪ねて行きました。学生 ディネーターで、やっちゃったのです。たった 3 カ月で、 たちの作品が廃校の中に展示されていました。でも、人気 第 1 回目の「ひじおりの灯」を開催してしまったのです。 は全くない。学生たちしかいない。僕は聞いたのです、「何 ところで、「ひじおりの灯」って何だ、どんな芸術祭なの 人ぐらい来てくれたの?」と。一人の男の子がぼそっと答 か。ただ単に、灯籠をつくって、旅館や商店の軒先に吊り えました、 「一人」と。その廃校のすぐかたわらに住んでい 下げるだけのプロジェクトです。「何、それ……」って言わ て、いつもお酒を持って遊びに来るじいちゃんがたった一 れそうですけど、こういうことです。壁に固定する鉄の部 人の観客だというのです。僕はさすがに、これでいいのだ 分は、山形鋳物という地場の職人さんに頼みました。それ ろうかと思いました。学生ではあれ、アーティストたちが から、木組みのところは庄内の建具職人さんにお願いした。 作品を作って、作っただけでいいと言えばいいのかもしれ 周りに貼る和紙は月山和紙といって、月山の麓のムラで紙 ないけれども、これで終わっていいのだろうか。 漉きをしている方に特注しました。それで、ほとんど 150 そこで、僕は考えたのです。その大蔵村の柳渕という集 落から 20 分ぐらいの所に、肘折温泉という、東北でたぶん 万円の予算は終わってしまった。とにかく、徹底的に地域 にこだわることを理念に掲げたわけです。 たった一つ残った湯治場の温泉がある。その温泉場とアー 肘折温泉には、三十軒ぐらいの温泉旅館と商店があるの トを結び付けることはできないか。まあ、妄想です。それ ですね。その旅館や商店に頼んで、協力してくれる方たち で、僕は早速、三十年来の付き合いがある旅館の経営者に、 を見つけて、そこにうちの大学院生を送り込みました。ど 「ちょっと話をしたい、提案がある」と連絡しました。そう こか別の所でつくった灯籠を持ってきて吊り下げるという したら、嬉しいことに、70 代のじいちゃんから 10 代の若 ことは絶対にしたくなかったのです。ですから、若いアー 者まで 20 人ぐらいが集まってくれた。僕は彼らに向かって、 ティストたちを無理矢理に温泉街に投げ込みました。今の いきなり「肘折温泉を舞台にして、アートのイベントをや 若い子たち、しゃべるのが苦手じゃないですか。アーティ りませんか」と提案したのです。越後妻有と比べたら、きっ ストなんていうと、どこかに籠もって描いているわけです と千分の一ぐらいの大きさの芸術祭でしょう。何ひとつ当 よ。自分の制作活動がどういうふうに人に見られるかなん てはないのです。ところが、僕は結構、人を乗せるのがう て、あまり考えないでやっているわけです。それをいきな まいらしい。喋っていたら、居合わせた肘折の人たちが皆 り投げ込んで、その旅館の人たちと一緒にお茶なり、食事 興奮しはじめたのです。 なりを居候のようにさせてもらいながら、話を聞かせても 理由ははっきり分かる。肘折温泉は、最盛期には入り込 らって、そこからヒントを得て作品を描くという形をつくっ み客が年間 27 万人くらいいましたが、ところが、その当時 た。そうすると、嫌でも話をしなくちゃいけない、話を聞 は 12、3 万人にまで減っていました。その間、手をこまね かなくちゃいけない。そうして、公開の形で、温泉の人た いていたわけではなく、前の世代の経営者たちが、高度経 ちも参加しながら、制作する作品のモチーフなどを全員の 済成長期のあとバブルがはじけて、客が来なくなって、も 前で発表してもらう。そういうことを繰り返し、宮本君が うお手上げの状態になり、コンサルタントを入れ、あらゆ 彼らをケアしながら、制作を進めていったわけです。作品 ることをやって来たのです。でも、どれも失敗している。 が出来上がっても、その旅館の人から「何でこんなものを コンサルタントなんかに頼んだって、ほかのどこかでやっ うちに飾らなくちゃいけない」と拒まれたり、それでも何 たことを字面を少しばかり変えて持ってきて、 「はい」と出 とか折り合いをつけながら、祭りの初日には燈籠を飾るこ すだけじゃないですか。そんなことでうまくいくはずがな とができました。 い。何をやってもうまくいかなかった。世代交代がありま 学生たち、院生たちが作る作品ですから、一つ一つの作 した。そこで、無謀にも肘折でアートプロジェクトをやろ 品がすごいインパクトがあるわけじゃない。でも、思いだ うと言い出したわけです。僕はいつでも妄想と無謀さだけ けはこもっている。それぞれの燈籠の前で、学生たち、院 で突っ走ってきましたが、ともあれ、それが 3 月半ばのこ 生たちが自分の作品制作について話す。聞いていると涙が 95 添付資料 創造農村ワークショップ 出てくるような話をする。そうすると、100 人、200 人の 肘折温泉の歴史と重ね合わせにしながら映画を制作しまし 人たちが集まってくれて、皆「うん、うん」とうなずきな た。その映画の中では、肘折の若者たちが気が付いたら主 がら、応援したくなるのです。そして、この期間中には親 役になっていました。 たちが、おじいちゃん、おばあちゃんたちを連れて、泊まっ 僕が 20 年も前に肘折温泉に関わったころには、明らかに て、見て歩きます。肘折温泉は湯治場ですから、19 時、20 長老支配でした。おじいちゃん、おばあちゃんの世代が実 時を過ぎると、もう旅館から出て歩く人なんかいなかった。 権を握っていて、40 代、50 代になっても若造扱いされてい ところが、灯籠が通りに面して吊り下げられているという るがゆえに、何もできない。僕はひそかに狙っていたのです、 ことで、泊まりの客が浴衣で、下駄をカランコロン鳴らし 世代交代のときが訪れることを。僕はおじいちゃんの世代 ながら歩くのを楽しむようになってゆく。だんだんと、こ が大好きなのです。民俗学者なんてそもそも、おじいちゃん、 うして灯籠を見て回ることが肘折温泉の夏の風物詩になっ おばあちゃんの話を聞くのが仕事ですから。にもかかわら ていったのです。 ず、どこかで新陳代謝しないと駄目だと思っていた。放っ でも、眼に見える経済効果なんて何もない。宣伝もして ておいたら客がやがて 10 万人を切る、この温泉も終わるぞ いません。でも、2 年、3 年続けていったらいろいろなこ という危機感の中で、世代交代が始まろうとしていた。僕 とが始まりました。まず、先ほど、アーティストは土地の はそれを見計らったのですね、実は。それで、40 代、50 代 魅力を再発見してくれるという話をされましたけれども、2 の人がだんだんと主役になりつつあった。数年後には気が 年目だったか、一人の女性のアーティストがプレゼンのと 付くと、さらにその下の世代の 20 代の若者たちまで姿を現 きに言ったのです、 「肘折温泉は水の街だ」と。皆びっくり わし、活動を始めていた。とても大きな励ましになりました。 しました。 「水の街って、何?」と思ったわけです。すると、 集まった中でカップルが生まれて結婚するとか、そういう 「ここに来て何を描こうかと思って歩いていたら、いろいろ ことも始まりました。そして、いつしか夏の風物詩として「ひ な所から水の音、湯の流れる音、さまざまな音が聞こえて じおりの灯」という小さな、たった 150 万円の年間予算し きた。それで気になって、水路の地図を作りました」とい かないアート・プロジェクトが大きく肘折温泉を変えてい う。そのためにあちこち歩き回ったのですね。絶対に、普 こうとしていたのです。そんな気配が見えてきた。 通の人じゃそんなことはしません。詳細な水の街の地図が そんなときに、3.11 があって、肘折温泉は大変厳しい状 できた。そうすると、 「あ、これは銅山川に流れ込んでいる 態に追い込まれます。僕は個人的な事情で、震災の前に大 水だ」 「これは、 あそこから湧き出している源泉かな」といっ 学を離れていたのです。温泉街の人たちと会うと、仕方の た具合いに、実にたくさんの水、湯が温泉街の中を血管の ないことことだけど、皆泣きそうな顔をしているわけです ように流れていることがわかった。僕はそのプレゼンテー よ。客なんか一人もいない。でも、僕には残念ながら、も ション以来、肘折温泉に行くと耳で温泉を味わうようになっ う何もできない。ところが、さっきの宮本君という有能な てしまった。「ああ、いい音だな。あの音はどこから来てい コーディネーターがその後も、この「ひじおりの灯」を膨 るのかな」とか。アーティストって、どこか、日常から離 らませて、たくさんの人たちを巻き込んで、みごとに育て 脱しているところがあって、だからこそ、発見してくれる。 ていってくれたわけです。 何か未知のものを再発見してくれる。そして、それを不思 議な形で表現して提示してくれる。 誰もがきまって、ここはじっちゃん、ばあちゃんしかい 僕は 7 年目の夏の「ひじおりの灯」のときに肘折を訪ねて、 そこで、付き合いのある五十代の経営者の方から言われま した。「先生よ、もし『ひじおりの灯』をやっていなかったら、 ない温泉場だという。でも、若い女の子たちがスケッチと 俺たちきっとつぶれていたな」と。「ひじおりの灯」という かデッサンをしている、作品を展示する、 「ひじおりの灯」 のは、単に灯籠を吊り下げるのがイベントじゃない。それ が少しずつ知られるようになる。気が付いたら、どこにこ を開催するために、実は、数百人の人たちがいろいろな形 れだけの若者がいたのかと思うような、10 人を超える若者 で動いている。ですから、人間関係のネットワークが、そ たちが、肘折温泉の中から姿を現わしました。どこにもい れまでの温泉街の論理とは異なる所で生まれていたし、関 なかったはずなのに、変な若者たちが絵を描いたり、ウロ わってきた多くの人たちが駆けつけてくれたのです。つま ウロし始めたら、肘折の若者たちが顔を出すようになって、 り、震災の後でも、肘折が厳しいと聞けばいろいろな形で 2 年目か 3 年目かに、 飲み会をやると、 明け方まで皆ドンチャ 支援してくれた。泊まりに来たり、友人を連れて来たりとか。 ン騒ぎです。そうしたら、そこに、大学を出て肘折温泉に そして、あの震災の年にも「ひじおりの灯」は行なわれた 戻ったのだけれど、うつ状態で引きこもっていた若者が現 のです。 れたのです。音楽か何かやっていたらしい。彼はそこに若 い仲間たちがいることに気付いて、飲み会に加わり、初め 芸術祭というのは、越後妻有も、その千分の一の規模の て自分のことを語り始める。存在の気配すらなかったのに、 小さな湯治場のアートイベントも、起こっていることは同 そんな若者たちが現われて、彼らが中心になって肘折温泉 じなのかもしれません。人と人とのつながりが、人と地域 の映画を撮ることになる。若者たちは、134 年の歴史を閉 とのつながりが新しいことを創り出す。それが芸術祭の大 じたばかりの小学校の同窓生たちですから、集まって、オー きな働き、効用だというふうに感じています。 ケストラをやって、下手くそな音楽をやり、それを全部、 96 講演テーマに「地域・アート・内発的」という言葉を、 添付資料 創造農村ワークショップ 自分でも訳が分からないなと思いながら並べてみました。 に展開していくのかを一緒に走って見てくれる。おそらく、 内発的という言葉について説明させてください。内発的発 そういう人材育成の仕組みとか、支援の仕組みとかを作っ 展論いうのは、社会学者の鶴見和子さんが提示されたもの ていかないと、絶対に 20 万か所でアートイベントを開催す です。僕はこの 25 年間、東北学という地域学を提唱して活 ることなんて不可能です。人がいない、それを支える人材 動を行なってきましたが、それを支えてくれた哲学は鶴見 もいない。本当に泣きたくなるくらい、いないのです。 さんの内発的発展論なんですね。内発的って何か。たとえば、 僕らは今、「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」 震災後、再生可能エネルギーが東北復興にとって大きな鍵 ということで、文化庁から異例のお金をいただいている。 になるというふうに言い続けてきました。そして、社会的 もう、スタートから 5 年ほどになる。福島県内のさまざま にもそれは一定の理解のうえで、さまざまな再生可能エネ な場所で小さなアートイベントをやりながら、そこに関わ ルギーを導入するという動きが起こりました。けれども、 る人たちを育てるということを徹底してやっている。いろ そこで見られるのは、ほとんどが外発的な形なのです。つ いろなところで若者たちが関わりながら育ち始めています。 まり、東京の企業を誘致して、土地を安くお貸しして、そ その育っていく若者たちが、おそらく次の芸術祭を作って こで風車をつくってもらう。行政の方たちは、税金が増え いくだろうと思います。現場のスタッフたちも死に物狂い たと喜んでいる。でも、風車一基がきちんと回れば、1 億 でやっています。 近い売電効果があるのに、行政に落ちている税金は数百万 我々は東日本大震災、そして、原発の事故という厳しい、 円でしかない。地域の人たちも、わずかな地代で喜んでい 本当に厳しい状況の中で、どうやって地域の復興・再生を るレヴェルなんですね。 していくのかということを、待った無しでやらざるをえな そうした企業誘致型の開発を否定するつもりはありませ い。この7、8年、手探りでアートイベントをやって来ま んが、今必要なのは内発的な再生エネルギーの展開です。 した。ですから、いろいろな所に応援してくれる仲間がい そこで、僕らは会津電力を立ち上げました。地域の人たち、 て、一緒に活動してくれる作家さんたちがいて、それを糧 経営者とかいろいろな人たちが関わって、地域の銀行から にしてやってきました。福島の復興という本当に厳しいテー もお金を借りています。外発的なものとの違いははっきり マを背負わされて、その中で、アートの力というものへの している。たとえば、バイオマスの企業を誘致している。 信頼を培ってきたように思います。というのは、日常生活 けれども、それは循環型の森の間伐材を利用するものでは は厳しい分断と対立です。補償が何だかんだということで、 なく、巨大な施設であり、だから、彼らはすぐに原生林を 皆声が上げられない。声を上げれば、ぶつかる。でも、そ 切りたいと言い出す。それを許したら、何のための自然エ んな時にアートって、実は、語られない、隠されている、 ネルギーなのだと思いますね。それで、僕らは荒れている さまざまな深い所に見え隠れしているテーマをやわらかく、 里山を再生するための試行錯誤にとりかかったのです。会 ある時はユーモアを交えて、ある時は知らん顔をして、む 津には木を伐採する業者がほとんどいなくなった。そこで、 き出しにして展示してくれる。それを前にして人々が怖ず たった一人の木こりを先生にして、会津の里山を復興する 怖ずと言葉を交わし始めるのです。つまり、アートの周り ためのプロジェクトが生まれた。つまり、主役は地域とそ に小さな広場が生まれて、言葉を交わし始める。これはきっ こに暮らす人たちなのです。自分たちの生活の場を総体と と、アートにしかできないことなのです。アートの力は、 して再生することが求められる。できることから一つ一つ こういう厳しい福島の状況の中では、とりわけ力強いサポー やる。自分たちの、その地域に暮らす人たちの内発的な力 ターになることも感じてきました。 を信じる。しかも、外の知恵とか技とかお金は遠慮無くい 最後に、岡本太郎さんの話をしようと思います。大阪万 ただいて応援してもらう。そうして、自分たちの小さな風 博のときに、太郎さんは丹下健三さんがつくった巨大なドー 景を手作りで再生させてゆく。僕はそれが内発的というこ ムの天井にどでかい穴をあけて、あの途方もないモノを作っ とだと思います。そういう内発的な地域のデザインの仕方 の可能性ということを考えるときに、越後妻有で北川フラ た。太陽の塔ですが、おそらく誰も理解しませんでした。 「美しくもないし、壮大でもないし、何あれ、変なの、気持 ムさんが現実にしてくれたアートの力、芸術祭の力という ち悪い」といったところですか。でも、半世紀近く経って、 ものが、我々に対する励ましになっています。それに学び 大阪万博の敷地には、太陽の塔しか残っていないのです。 ながら、自分たちの出来る範囲でやれることをやろうとい あの訳のわからない変なモノだけがニュッと立ち尽くして うことでやってきました。 いて、もう、今となってはあれを壊すことなんて誰もでき 実は、僕は会津で、福島県立博物館の館長をしています。 なくなっちゃいましたね。太郎さんはつまり、万博が掲げ 福島では、それこそ文化庁からの支援をたくさんいただき、 た「進歩と調和」なんてくそ食らえって言っていた。人間 アーツカウンシル東京からの支援もいただきながら活動し は進歩なんてしない、ばかげている。調和なんかしない。 ています。アーツカウンシル東京に本当に感謝しているの 異質なものがぶつかり合って、そこに新しい風景が生まれ は、お金を出すだけじゃなくて、実際に人を送ってくれて、 てくる。進歩と調和なんてくそ食らえと言いながら、チー 一緒になって作ってくれるからです。そのことに対して、 フプロデューサーだった。芸術ってそういうものじゃない 我々の現場のスタッフもすごく感謝しています。お金を出 かなと思う。 してそれで終わるのではなくて、そこで何がどういうふう それから半世紀が経って、もう我々は、国家的に進歩を 97 添付資料 創造農村ワークショップ 信じられる時代じゃないじゃないですか。僕は最初に、進 歩じゃなくて、成長じゃなくて、成熟への転換だと言いま した。たぶん、そういう時代が始まっている。そこでは、 文化とか芸術というものが我々の未来を豊かにデザインし ていくための圧倒的な力になる。そして、これも最初に言 いました、我々の日本という国には、まだまだ地域社会が 生き残っています。地域を掘り起こせば豊かな可能性が見 いだされる。そういうところに向かって動き出す。本当に、 越後妻有というのは、我々の価値観を大きく揺さぶり、励 まし、変えてくれた。でも、その二番煎じで真似っこして いたら駄目ですね。そこに自分たちの創造的なさまざまな ものをぶち込んで、そうして新しい風景を皆で創っていく。 最後にこれだけ読ませてください。宮沢賢治の『農民芸 術概論綱要』の一節です。農民芸術が元気になって広まっ て欲しい。そのメッセージが託された言葉です。 都人よ 来ってわれらに交れ 世界よ 他意なきわれら を容れよ。 つまり、自分たちだけで引きこもるのではなくて、都の 人たちよ、こんなに楽しいお祭りをしているから見におい でよ。一緒に遊ぼう、といったところですか。そんな呼び かけです。おつき合いいただきまして、ありがとうござい ました。 ▲告知パンフレット 98 添付資料 創造農村ワークショップ 参 加 者 アンケート ( 有効回答数 2 4 ) 1、本日のセミナーをどちらでお知りになりましたか。 [8 月4日:二日目にご参加いただいた方] 1)CCNJ メールニュース 9 3、本日のプログラムのうち、関心の高かったものをお 2)ツイッター、フェイスブック等の SNS 2 選びください。 3)設置パンフレット、案内パンフレット 4 4)その他 8 1)事例発表「アーツカウンシル東京 プログラ ムオフィサー」嘉原妙氏 7 ※複数回答あり 2)事例発表「津南町長」上村憲司氏 7 2、 本 セ ミナ ー へ の 参 加 理 由 を お 聞 か せ 下 さ い。 3)事例発表「十日町市長」関口芳史氏 6 1)大地の芸術祭、もしくは横浜トリエンナーレ に関心があったから 4)ディスカッション 1 5)講演「学習院大学文学部教授、福島県立博 物館館長」赤坂憲雄氏 6 2)テーマ「芸術祭と地域再生」に関心があった から 3)創造都市、創造農村の取り組みに関心があっ たから 4)CCNJ の活動に関心があった、または CCNJ の会員だから 5)その他 12 15 10 10 0 ※複数回答あり [8 月3日:一日目にご参加いただいた方] 3、本日のプログラムのうち、関心の高かったものをお 選びください。 ※複数回答あり ・実際の経験されたことを課題解決の方向を示してもらえ た。 ・芸術祭をもたらしてくれたものを理解できた。 ・ディスカッションの時間が短く物足りなかった。 ・地域住民の反対があったにも関わらず、技術祭を開催 するという、首長たちのビジョンを感じました。 4、①本プログラムを通じて「創造都市・創造農村」に 対する認識は深まりましたか。 1)講演「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナー レ 総合ディレクター」 北川フラム氏 18 2)講演「横浜美術館館長、横浜トリエンナーレ組 織委員会委員」逢坂恵理子氏 17 3)ディスカッション 1 ※複数回答あり ・さりげないひとことに、すごく奥深さを感じた。経験か 哲学に基づくものと思うが、感嘆しました。 ・開催土地が両極端の妻有と横浜の差や共通点を考えな a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 15 1 0 ※未回答あり ②芸術祭やアートプロジェクトによる地域再生の可能性を 感じましたか。 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ がら聴講できた。 13 1 0 ※未回答あり ・地域の人たちへの影響や効果が具体的に聞く事が出来 6.今後の CCNJ の活動に、期待する内容があればお聞 た、自尊意識の回復など、社会の中で今日的な課題解決 かせください。 に効果があればと共感しました。持続性の大事さを学び ・地域ブロックの交流があればいい。 ました。 ・現場的な人材育成、体制づくりのノウハウ共有。 ・地域と海外との交流、受け入れ体制(特に 2020 にむ 4、①本プログラムを通じて「創造都市・創造農村」に けて)の調査やマニュアル。 対する認識は深まりましたか。 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 20 1 1 ※未回答あり 7.その他、ご意見・アイデアなどがあればお聞かせく ださい。 ・規模は小さくてもいいので、意見をだしあったり、体を 動かしたりしながら地域おこしについて考えられるイベン ②芸術祭やアートプロジェクトによる地域再生の可能性を ト。 感じましたか。 ・CCNJ に加盟していない主体のイベントに関しても情報 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 19 2 1 掲示板のとりまとめのようなものがあると、CCNJ の活動 が広がって行くような気がします。 ※未回答あり 99 添付資料 創造都市政策セミナー 創造都市政策セミナー in 大分 「創造都市と文化施設」 お祭りなどを民間やあるいは地方主体で行っておられます、 そういうことに対する奨励。このような 3 つのスキームを 想定いたしています。これらの取り組みを実施するために、 主催挨拶 文化庁 長官官房審議官 磯谷桂介氏 先ほどご紹介した来年度概算要求におきましては、例えば ご紹介をいただきました、文化庁長官官房審議官の磯谷 国における文化プログラムを推進するための体制整備、あ でございます。本日は、ご多用の中、足をお運びいただき るいはジャパン・リーディング・プロジェクト事業の実施 まして誠にありがとうございます。この創造都市政策セミ に必要な経費ということで新規に約 13 億円、それから国と ナーの開催にあたりまして、主催者を代表して一言ごあい 地方自治体とタイアップした先ほどの芸術祭などへの支援 さつ申し上げたいと思います。 として約 150 億円、文化プログラム推進のための基盤整備 このセミナーの開催に際しまして、多大なるご尽力をい に約 25 億円ということで、文化プログラム関係予算の合計 ただきました、創造都市ネットワーク日本の顧問である佐々 で 180 億円の要求をしているところでございます。2020 年 木雅幸先生、そして今日も広瀬知事がお忙しい中お越しい 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を東京におけ ただいておりますけれども、本セミナーの開催地である大 るスポーツだけの祭典にするのではなくて、日本の文化の 分県ならびに大分市の皆さま、そしてご参加くださる講師、 祭典としても成功させることを目指しております。全国津々 パネリスト、ファシリテーター、文化庁文化審議会政策部 浦々で魅力ある文化プログラムを展開することにより、国 会委員の先生がた、準備に当たってこられたノオトの皆さ 内外の人々を魅了し、またこうした取り組みを通じて 2020 ん、そして関係者の方々に、まずもって深く御礼を申し上 年以降にもレガシーになるような、そうした取り組みを進 げたいと思います。 めていきたいというように思っております。 さて、去る 8 月末に、国の年中行事でもございますけれ 今回のセミナーでございますが、テーマは創造都市と文 ども、文化庁でも概算要求書を財務省に提出をいたしまし 化施設ということで、創造都市における文化施設の役割や た。この概算要求では、5 月に閣議決定をいたしました第 4 市民の役割について考えるものです。第 1 部ではブリティッ 次文化芸術の振興に関する基本方針に基づきまして、世界 シュ・カウンシルアーツ部長の湯浅真奈美さんから、基調 に誇るべき文化芸術立国を実現するべく、文化力による輝 講演として英国の事例を中心に話していただこうと思って く地域と日本を目指すというキャッチフレーズで必要な経 おります。それから、第 2 部では、ニッセイ基礎研究所研 費を計上しております。第 1 に、後ほどご説明いたします 究理事の吉本光宏さんをファシリテーターに、金沢 21 世紀 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け 美術館長の秋元雄史様、可児市文化創造センター館長の衛 た文化プログラムの推進。そして、地域の魅力ある文化芸 紀生様、NPO 法人 BEPPU PROJECT 代表理事の山出淳也様 術への取り組みといったものに対するご支援。第 2 に、日 をパネリストにお迎えしましてパネルディスカッションを 本遺産を中心といたします文化財を活用した地域の活性化 行います。さらに、第 3 部のワークショップでは地域にお に対する重点支援。第 3 に、わが国の多彩な文化芸術を世 ける文化プログラムの実施ということで、先ほどご紹介い 界に発信するための経費といったことを盛り込んでおりま たしました政府全体として進める文化力プロジェクト、こ す。これに要する経費として文化芸術関係予算といたしま れは地域の皆さまがたで協力して進めるわけですが、これ しては、前年度から 154 億円増の 1192 億円です。いい国 をテーマといたしまして文化審議会文化政策部会委員でい つくる文化立国と我々は思っておりますが、そういう要求 らっしゃる佐々木雅幸先生、柴田英杞先生、湯浅真奈美先生、 をしたところでございます。これを実現する年末に向けて、 吉本光宏先生に参加をいただきまして、皆さまがたと意見 しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。 交換をしたいと思っております。こうした今日のセミナー さて、8 月に新潟県の十日町市で行いました創造農村ワー の内容が文化芸術創造都市を進める自治体、あるいは NPO クショップでも私のほうからお話し申し上げましたが、特 の皆さま、関係支部の皆さまにとって有意義なものになる に 2020 年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に ように、また地域における文化プログラムの推進に資する 向けた文化プログラムの推進につきまして、去る 7 月 17 日 ような活発な議論が行われることを期待いたしております。 に文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想を発表 2020 年に向けた文化プログラムの実施にあたっては、CCNJ いたしております。この構想では、2020 年までの 4 年間に 加盟団体の皆さんのみならず、自治体や NPO あるいは企 20 万件のイベントや 5000 万人の参加、2020 年の訪日外国 業の皆さまがたに中核を担っていただく必要がありますし、 人旅行者数 2000 万人を実現することへの貢献を目標として 市民の方々の参加が必要であります。また、文化プログラ 掲げております。それから、文化プログラムの 3 つの枠組 ムを地元の魅力の再発見、あるいは海外からの来訪者の増 みといたしまして、 1 つ目に国の顔となるジャパン・リーディ 加のきっかけとして積極的に活用していただき、2020 年以 ング・プロジェクトの実施。2 つ目に、例えば新潟で行わ 降にも続いていく文化芸術を大いに活用して地域振興への れた大地の芸術祭や、今日も午前中に少し拝見させていた 礎にしていただきたいと思っております。 だきましたけれども、大分県のトイレンナーレなどの各地 文化芸術が地域を創生する、文化芸術が日本を変える、 の芸術祭といったものについて、国と地方と民間がタイアッ そして発展させる、国民の生活の質を高めるということで、 プした取り組みの促進。そして 3 つ目に、伝統的な地域の ぜひ皆さまと協力をさせていただきながら進めていきたい 100 添付資料 創造都市政策セミナー と思っております。今後とも、文化芸術都市の取り組みを んも出てきました。別府の方も、使い古した飲み屋が、こ 文化庁としても支援してまいります。本セミナーの開催に んなにきれいになるのかということで、少し町に自信がつ ついて、あらためて感謝申し上げますとともに、皆さまが いてきたということです。その山出さんが中心になって、 たの取り組みの一層の発展をご期待申し上げまして、ご挨 国東半島で芸術祭というのをやっていた。そうしたら、地 拶とさせていただきます。今日は、どうかよろしくお願い 域の人が、このような山の中にこんなにもお客さんが来て いたします。 くれるのかと、これはまた案外、地域の元気に繋がった、 というようなことがいわれております。 大分県知事 広瀬勝貞氏 皆さん、 こんにちは。今日は創造都市政策セミナーという、 大分市内でも、県立の美術館がだいぶ古くなったもので すから、市の中心部に OPAM という愛称で呼ばれる美術館 九州では初めてのセミナーということでございまして、そ をつくりました。その前には文化センターもあります。こ れを大分県でやっていただけるということで、大変、光栄 れは非常に音響のいいホールになっているのですが、そう に存じているところです。ありがとうございます。心から いうものをつくって、芸術文化の創造発信拠点にするとい 感謝を申し上げます。とはいえ、創造都市とはなんですか うことを行ないました。4 月から開館をしたのですが、も というと、よく分からないところがありまして、いろいろ う 8 月までに 40 万人の来館者を数えるというようなことで、 聞いてもよく分からない、百聞は一見にしかずということ 大変に多くの方にお集まりをいただいています。駅から美 で、この春にイギリスに行ってまいりました。 術館まで商店街を歩いていくのですが、お客さんが増えま 今日、ご講演をいただく湯浅さんのご指導もいただきな して、商店街のおやじさんが最近、非常にご機嫌がいいと がらロンドンの郊外のマーゲイトという所に行ってまいり いうことです。地域との連携ということで、アート、ある ましたけれども、そこはこれまではリゾート地として大変、 いは創造ということ、クリエーティブな人というのは活力 有名な場所でした。ところが、リゾート地が他に移ってし や、あるいは仕事、お金にも繋がるのかとしみじみ思って まったので、町として寂れていたということで、どうした いるところでございます。 ものかと考えていたそうです。そこで、ここに美術館をつ そういう意味で、アートは分かりませんけれども、地域 くって人を呼ぶということを中心に、町おこしをやってみ の元気や金儲けになるのなら、これは大いに振興するべき たところ、人も来てくれる、美術館に人が来ればアーティ ではないかと思って、今張り切っているところでございま ストもいろいろと集まってくれる、アーティストのための す。そういうことを思っていますと、アーティストから「広 ビルもできるということで、賑わいが出てきたというよう 瀬さん、アートは金儲けではありません、創造する喜びです」 な町でございます。アートによる町づくりはこのようなも と注意を受けまして、それはそうかもしれません。しかし、 のかと思って、それを見てきました。 結論は地域の元気と金儲けに繋げればいいのではないかと さらに、ロンドンの下町も見てきました。これもイギリ 思って、私もここは譲れないと頑張っております。 スの経済の衰退と伴に大変、物騒な下町になってきたとい そういうことで、創造都市というのを我々も大変、興味 うことですが、ここにいろいろなアーティスト、クリエー 深く思っていますし、またそういうことが地域の地方創生 ティブな人たちが集まる場所をつくる、という考え方です。 に繋がってくるのではないかと思っているところでござい いつかの首相だったと思うのですが、その人のお声掛かり ます。今日は錚々たるの方々のパネルディスカッション、 で、この地域はアーティスト、この地域は ICT のソフトウ 非常に面白そうなプログラムになっております。心から歓 エアのデザイナーというようなことで、いろいろなコミュ 迎を申し上げまして、このセミナーの成功を心から祈念申 ニティーの人が集まる場所をつくったということです。そ し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。ありがとう うしたら類は類を呼ぶといいますか、いろいろな人が集まっ ございました。 てきて、これはまた町に賑わいが出てきたということです。 カリフォルニアのシリコンバレーというのはご存じだと思 いますけれども、ロンドンにバレーはありませんが、ロー 第 1 部 基調講演「創造都市と文化施設 - 英国の事例 -」 タリーがありますね。そのロータリーにちなみまして、シ ブリティッシュ・カウンシルアーツ部長 湯浅真奈美氏 リコンランドアバウトというぐらいの所があると、後から 本日は、このような貴重なセミナーにお呼びいただきま 湯浅さんたちから伺いました。そういうことを見てきまし して、ありがとうございます。ブリティッシュ・カウンシ た。 ルの湯浅と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 そして、帰って大分で考えてみますと、今日は山出さん 今日はテーマが創造都市と文化施設というセミナーになり もおられますけれども、別府で混浴温泉世界というコンテ ますので、英国の文化施設が都市とどのように関わって、 ンポラリーアートの展示があります。別府という町は温泉 どのような取り組みをしているかということをお話させて の町ですけれども、そこに何となくアートが入り込んで、 いただきたいと思います。 少し懐深い町になってきた。別府に行くということは、た その前に自己紹介を兼ねまして、私どもブリティッシュ・ だ温泉に入りに行くということだけではなくて、少しかっ カウンシルについて簡単にご説明をさせていただきたいと こいい話になってきたということです。いろいろなお客さ 思います。ブリティッシュ・カウンシルは、聞き覚えのな 101 添付資料 創造都市政策セミナー い方もいらっしゃるかもしれませんけれども、英国の公的 真を多めにご覧いただきながら、実際に活動の様子が伝わ な国際文化交流機関です。日本では英国大使館の文化部を ればいいと思っております。 兼ねておりますが、独立した機関になっております。活動 具体的な事例にいく前に、今の英国の文化の状況につい の中心は、カルチュラルリレーションズというふうに、国 てお話をさせていただきたいと思います。先ほど文化庁さ 際文化交流という国際的な関係を紡いでいくということが、 んから来年度の予算請求のお話がありましたけれども、英 その中心になっております。私たちは非常にネットワーク 国はちょうど 2010 年に政権交代がありまして、それまでの が広くて、世界の 100 以上の国と地域に拠点を持っており 労働党政権から政権が大きく変わりました。当時から英国 ます。そうした所に事務所を置いて、スタッフを抱えて、 は非常に国として赤字が累積しているその中で、これから 英国とそれ以外の国々の方々、特に市民の人たちが、文化 国を成長させていくためには大きな歳出削減策を取るとい や英語、または教育などを通じて信頼を紡ぎながら関係性 うことを掲げて、政権が変わっています。英国というのは、 を紡いでいくというところをお手伝いし、橋渡しをしてい 複数年で先々の各省庁の予算が大まかに決まっていきます。 くのが私たちです。英国の中でも、このような海外拠点を ちょうど政権交代があった 2010 年の頃に、2011 年からそ 持って国際文化交流にコミットした機関というのは BBC れ以降の 10 年の予算分配について決まる時でした。そこで ワールドワイドとブリティッシュ・カウンシルのみでして、 歳出削減策を取るということが決められている中で、では 世界的に他の国を見ましても、非常にスケールの大きい組 文化の予算はどうなっていくのか、その他を含めてどのよ 織になっています。そして、各地でそこで活躍される若い うになるのかということが、英国でも非常に大きなニュー 人たち、アーティストの人たち、起業家の人たち、そしてリー スになりました。今もそうですが、当時の英国の状況を考 ダーの方々、いろいろな方々と人と人のネットワークをつ えれば、各省庁が努力をして公的な予算を圧縮しながらも、 くっているというのが、私たちの組織です。 大事な、例えば教育や健康など必須の所には予算を確保す 特に日本におきましては、先ほど文化庁の方からもお話 がありましたけれども、2020 年のオリンピックに向けて全 るというような策を取らざるを得ないような状態です。 英国の場合は、文化だけでなく、スポーツとメディア、 国的な期待の中でどのようなビジョンを持って、プログラ あと観光も見ているのが文化・メディア・スポーツ省にな ムを推進していくのか、特に文化がどういった役割がある ります。文化で働いている人たちから、もともと小さいの のかということは今、非常にご関心も高いかと思います。 だからそこをいくら削っても大きな国のお財布の中であま そこで、2012 年にオリンピックを経験した会得としまして り変わらないのではないか、そしてこの英国に文化がある は、英国で成功もあれば失敗もありまして、試行錯誤の中、 ことが非常に大事なので、それをこれ以上、削減してしまっ 夢中で 2012 年を迎えたわけなのですが、そこのいろいろな たら英国の文化は滅びてしまうのではないかというような 経験を日本の方々とシェアをさせていただきながら、一緒 大きなキャンペーンがありました。 に 2020 年、そしてその先を目指していけるような関係をつ くれればいいのではないかと思って活動をしております。 そのような中で、この文化・メディア・スポーツ省の予 算は、当時、約 25 パーセントが 5 年間で削減されるという ことが発表されました。英国の中ではイングランド、スコッ もう一度、本日のテーマに戻りますと、本当でしたら英 トランド、ウェールズ、アイルランドと国が分かれており 国のさまざまな地域で実際に文化施設やアートに携わる方 ますけれども、イングランドの文化の予算分配をしている に来ていただいて、皆さまと意見交換をしていただけるよ のがアーツ・カウンシル・イングランドになります。文化・ うな場を持てればいいのではないかと思いましたが、今日 メディア・スポーツ省の予算がアーツ・カウンシル・イン は私のほうで代表をして代理にご紹介をさせていただきま グランドのほうに影響されますので、その結果、アーツ・ す。逆に、一つの拠点ではなく、幾つかの都市の事例につ カウンシル・イングランドの予算も 5 年間で 30 パーセント いて、具体的に今、どのようなビジョンを持ってどういう が削減されるということが、当時出ました。現在 2015 年で 活動をして、そしてそれがどのような都市や社会にインパ すが、その途中でもまた修正がかかっていきます。現在の クトをもたらしているのかということをご紹介したいと思 段階で、2010 年から比べて 36 パーセントが削減になって います。ただ、 この後日本の美術館、 劇場の方もプレゼンテー います。非常に厳しい状態ですが、その中で例えば文化団 ションをしていただけると思いますが、フェスティバルも 体への削減率を少なくするために、より効率的な運営を目 含めて非常に素晴らしい取り組みをされていて、取り立て 指していくような策がとられ、いろいろな試みが行われて て今、英国が特に進んでいるということではないと思いま います。 す。英国と日本というのは、今、その社会的な課題や文化 少しグラフでご のインフラというものが、例えば文化の資金の助成の仕組 紹介をしますが、 みなどに非常に近いところがあると思います。その似たよ 昨年の秋にアー うな国の状況の中で、英国の人たちがどのような視点を持っ ツ・カウンシル・ てプロジェクトを進めているかということを、少しご紹介 イングランドが できればと思っております。事前にいろいろな方とご相談 その助成を受け をし、いろいろと素材を頂いてあります。今日は映像や写 るアート団体に 102 添付資料 創造都市政策セミナー 向けて説明会を行なっています。それは毎年 1 回行ってい セクター全体が力強くサステイナブル、持続可能でなけれ ます。英国はこの後、2016 年から数年後の各省庁の予算が、 ばいけない。そういう団体、セクターを育てていこうとい 今年の恐らく 11 月、12 月ぐらいに決まると思います。今 うことと。ゴールの 4 番目が、そこで働く人のスキルとい の下げ幅を保持するのか、それとも 5 パーセント削減にな うものが非常に多様なスキルがあって、多様な人材を登用 るのか、15 パーセントなのかといういろいろなシナリオの していく。そうすることによって、5 番目の若い人たちや子 中で、これが 10 パーセント、15 パーセントと減ってきた どもたち、次世代の人たちに大きなインスピレーションを 場合は、今の文化助成やアート、文化の仕組みを大きく見 出していこうというのがビジョンです。このビジョンをアー 直していかなければいけないだろう、文化団体にもより経 ツ・カウンシル・イングランドは映像でまとめていまして、 営について基盤を固めるような後押しがされています。 アニメーションを使って紹介するというのはすごく珍しい さらに厳しいのは、日本も少し似ているかもしれません が、地方行政、地方自治体の予算も非常に削減になってい のではないかと思うのですが、少しご覧いただきます。 参考 http://www.artscouncil.org.uk/what-we-do/mission/ ます。これはずっと下がってきていまして、これからまた こちらの映像の中で、その5つのゴールがどれだけ大事 下がることが予想されます。今現在の時点で、福祉やその なのか、どういう連携があるのかということに合わせて、 インフラなどいろいろな優先的な思考がある所も多い中、 文化芸術、クリエイティブ産業を含めて、社会にどのよう 予算が非常に厳しいという市や県の自治体は、文化予算が なインパクトがあるかということが語られていたかと思い 非常に大きく削減をされています。ただ、この状態の中で、 ます。今、このように経済的な状況や社会の状況が厳しい 文化はどうでもいいから削減しているわけではないのです。 中で、受動的に待っていると文化に予算が落ちるという状 その国の状態の中でこうならざるを得ない中、より文化を 態ではないのです。そういった中で、この社会の人々や政 どういうふうに推進していくかということを、いろいろな 治家の方々、政権、そして財務省の方々、いろいろな方々に、 国も含めていろいろな取り組みがされています。もう一つ、 文化に投資する意義というものをきちんと明確に語ってい 誤解をされないように申し上げたいのは、イギリスの文化 かなければいけないというのがあります。 団体のお金は国の補助金だけではなく、公益宝くじの予算 そこで、アーツ・カウンシル・イングランドを含め、そ が入っています。そこの宝くじのロッタリーの予算が少し の土地で他のアーツカウンシルもいろいろな努力をしてい 増えてはいます。ですから、これほどのドラスチックな下 ます。これは最近、新しく出たものなのですが、2013 年と がり方ではないのですけれども、物価の上昇を考えると、 2015 年はちょうどこういった状況が厳しくなっているとき やはり削減しているというのが現状のようです。 ですけれども、クリエイティブ産業の英国経済の貢献とい そこで、このアーツ・カウンシル・イングランドは、ちょ うことで、どのような価値、インパクトを出しているかと うど同じ時期に、2010 年から 2020 年までの 10 年間の戦略 いうレポートを出しています。そこで、いろいろな数字が 的優先事項というものを発表しています。これをまとめる まとめられています。これは、英国政府が日本とすごく近 にあたり、2010 年の数年前から業界全体、または社会やい いと思うのですが、成長戦略を非常に推しているからです。 ろいろな人たちにヒアリングをしながら、コンサルテーショ こういう状態の中でも英国がどんどん成長していくために、 ンをして大きなビジョンを出していました。そのビジョン 文化芸術はこんなにも貢献をするのだということを、具体 が、グレート・アート・フォー・エブリワンというものです。 的な事例を出しています。その間の年の 2014 年には、そう これが、アーツカウンシルの今の全ての助成プログラムや はいっても文化芸術というのはお金だけの経済的インパク 戦略の中心になっています。こちらが最新版の戦略ペーパー トではなく、それは社会や人々の生活を豊かにしたり、人 で、グレート・アート・アンド・カルチャー・フォー・エ と繋がりをつくったり、大きな価値があるということで、 ブリワンです。大事なのがそのグレートです。これはハイ そのエビデンス、データを集めてくる大きなレポートを出 アート、例えばオペラやバレエなどのハイアートではなく、 しました。 人々の生活や、人生に大きなインパクトがあると、そういっ そこの中で、文化芸術の社会的インパクトや教育のイン た質の高い芸術を全ての人に届けるということです。この パクト、経済的インパクト、そしてヘルス・アンド・ウェ エブリワンというのは、非常に難しいことになっています。 ルビーイングということが、ここ数年さらに注目が高まっ というのも、英国は格差も非常に大きいですし、地域格差 ているのですが、心身の健康に対するインパクトというも もありますし、移民の方も多く、いろいろな出身の方もい のも検証データを集めています。それをまた一つ、いろい らっしゃいます。都市によっては劇場もないような所もあ ろなデータをこういったインフォグラフィックスにして、 りますが、そういう中で、文化を支えているのは国民にな またそのアドボカシーとかロビーイングのツールに使って りますので、その全ての国民が文化芸術に触れていく機会 いくのです。これを今、ウェブサイトのほうでも全部公開 を担保していくということは大きな目標の一つです。 をしていまして、文化団体やアーティストの方が地元議員 これはテクニカルな情報に見えますけれども、このビジョ ンの中で、5つのゴールを出しています。1 つ目が、エク の方にこれを持ってお話に行ってください、というような ツールキットもサイトから出ています。 セレンス、優れたアートを、エブリワン、全ての人に届ける。 少しエデュケーションの所を見てみますと、例えば音楽 そのためにはゴールの 3 つ目が、その文化団体、文化分野、 教育プログラムで新しく導入されたインハーモニーという 103 添付資料 創造都市政策セミナー プログラムがあります。その初年度に参加した子どもたち ストというプロジェクトです。これは日本、オノ・ヨーコ をリサーチしたところ、78 パーセントの子どもたちがその さんも出ていたと思いますけれども、アジア地域のアーティ 音楽教育を体験したことにより、主要科目、例えば算数や ストとヨーロッパのアーティストの作品を展示し、そして 理科などの科目の成績が少し上がったというデータがあり 教育普及的なプログラムが非常に多くあって、多くの市民 ます。教育関係者に対して文化芸術の取り入れた教育の価 の方たちも参加していました。もともとここは美術館がな 値、意義というものを、これをもって説得の材料に使う、 いのです。このマーゲイトという町はケント州になるので というようなことだと思います。 すけれども、イングランド全体の中でも非常に貧困率が高 かったり、教育水準や教育に対する意識というものも非常 これから、いろいろな地域、特にロンドン以外の地域で に低かったりという地域です。ケント州は難しい地域なの 異文化団体、美術館や音楽団体などが行っている活動につ です。その中で、その地域の人たちをこのアートとアーティ いて少しご紹介をしていこうと思いますが、全てどの活動 ストが一緒に招き入れながらプロジェクトを丁寧にして をしている人たちも自分たちの地域の人々、コミュニティー いったことによって、オープニングの日に市民がものすご や社会に目を向けて、どういう効果が出せるのかというこ く押し寄せる素晴らしいオープニングを迎えています。 とを試しているというように私は思います。 オープニングに合わせて、館内や館外、そしてそれまで 先ほど広瀬知事がご紹介をしていただいたマーゲイトと のいろいろなプログラムの中で、ターナー・コンポラリー いうのは、この端にあります。これは 5 月に行ったときに は、10 年間のプログラムや、市民の方々も参加をして大き 撮ってきた写真ですけれども、ここの方とお話をすると、 なフェスティバルのようなことをしました。これによって、 「ここに文化施設をつくっても、お客さんは魚しかいないよ」 2011 年のオープンからまだ 3 年半ぐらいしかたってないの といわれていたそうです。先ほどもお話がありましたが、 ですが、この地域を非常に大きく変え始めています。 かつてはビーチリゾートというのが非常に栄えていました。 今の時点で 100 パーセント大きく変わったということで 今も夏ですとまだ少しは観光客が来るのですが、あたりに はなく、今まだいろいろな変化が起きているところですが、 人がいなくなってきているのです。奥の所に商店がたくさ この短い期間に、英国を代表する美術館になっていまして、 んあって、お土産屋さんやいろいろな商店があったのです 県や市外からのお客さまも非常に多いです。特にこの来館 が、ほとんど 90 年代後半から 2000 年にかけて空き店舗に 者データで見ますと、初めての方に加えて、リピーターに なっています。そこの中で、このイングランドのこの海岸 なる方も非常に多い。新しい観客をどんどん創出している。 線を再生していこうという取り組みが幾つも行われていま そして、その人たちがリピーターになっているというのが、 して、その一つがこのマーゲイトで行われました。これが、 これで分かると思います。お客さまがどこから来るかです 先ほどもご紹介がありましたが、ターナー・コテンポラリー が、マーゲイト、サネットというのがその地区、地域にな という新しい美術館で、2011 年にオープンしています。こ ります。約 4 割がその周辺の地域からなのですが、離れた の美術館をここにつくろうという案が 2001 年に決まりまし ロンドンから、そして英国全土からも人が訪れています。今、 て、資金調達がされて、そして 10 年かけて開館までの準備 海外の方が 5 パーセントとなっていますが、この数字も非 がなされています。これが館内になります。非常にオープ 常に伸びてきているようです。 ンでとても光が入って、とても素敵な美術館になっていま 特に教育プログラムは英国の中でとても先進的なプログ す。この美術館のミッションがアート・インスパイアリング・ ラムをしているので、視察やヨーロッパの美術館との連携 チェンジ、変化を起こしていく、アートが変化を起こして 事業なども非常に増えているそうです。これによって、ケ いくということです。もう一つがラーニング、学びという ント州というマーゲイト市だけではなく、日本で言うと、 ものがこの組織全体の中心にあります。全ての活動の中心 その県、その広い地域に非常に大きなインパクトがありま がラーニング、学びということで、ビジョンをつくってい して、もちろん経済的な効果もそうですが、ここで丁寧な ます。その中で、子どもから若い人たち、そして高齢者まで、 プログラムがあることによっての教育水準の高まりなども 全ての世代の人たちに向けていろいろな取り組みがされて 非常に大きな効果になっています。このデータをどう見る います。 か、日本の数字で考えると大きいのか少ないのかというの 特に 2001 年から 2011 年の開館準備の 10 年間に、美術 があるかもしれませんけれども、このマーゲイトという土 館のスタッフは数が少なかったのですが、徹底的に地域と 地を考えますと、非常に大きな起爆剤になるようなことだっ 関わり、多様にさまざまなプロジェクトをしていました。 たと思います。特に、経済効果が非常に高いということで まだ館がなかったのですが、例えば地域の合唱、コーラス す。ここでは雇用を創出しています。そして新しいビジネ の人たちを招き、一緒に曲を作ったり、そのリハーサルを スが生まれています。空き店舗が非常に多かったのですが、 一緒に練習するようなプログラムをしていました。町にあ 今年の 5 月に行った時点で、ほぼ 9 割以上が新規のビジネ る空き店舗をターナー・コンテポラリーのプロジェクトス スに生まれ変わっていました。そこで、若い方が起業して ペースというふうに変え、ここでさまざまなプロジェクト カフェや雑貨屋などのショップをしたり、またアーティス を行なっていました。これは一つ例なのですが、開館前の トがスタジオを作ったりということで、外からも人が集まっ 2008 年から 2009 年に行われたプロジェクトでファーウエ て、そこでビジネスをするようにもなってきているようで 104 添付資料 創造都市政策セミナー した。さらにここで、宿泊を伴う観光客数というのも増え マンチェスターは非常に大きな町ですし、かつ工業産業が ているようでして、この地域全体に大きな効果があったと 非常に栄えた町であります。ここも美術館で、マンチェス いわれています。 ター大学に併設された美術館のウィットワーズ・アート・ さらに、教育でもいろいろなプログラムあります。特に ギャラリーという美術館があります。ここが、1 年半の改 ここはラーニングというか、非常に自発的な人々の学びと 修を経て、今年の 2 月にリニューアルオープニングをして いうものを助けるいろいろな事業をしています。一つご紹 います。これが、リニューアルした後の映像です。開館か 介をしたいのが、オリンピック 2012 の後から始まったプロ らは、多分 120 年以上たっていると思います。大学に併設 グラムで、オリンピックのレガシープログラムの一つです。 されているので、暗い感じのトラディショナルな建物だっ インスパイアーというプログラムなのですが、ケント州の たのですか、ここを改装することによって、庭も取り込ん アート団体、恐らく 18 から 10 ぐらいの団体が連携をして で非常にオープンな美術館になっています。ここが、開館 一緒にやっているプログラムです。これは、4 歳から 18 歳 後 3 カ月後の今年の 7 月に、アートファンドというのが認 の子どもたちのリーダーシップを育成するというプログラ 定していますミュージアム・オブ・ザ・イヤーを受賞して ムです。鑑賞を助けるということよりも、子どもたちが自 います。英国で非常に素晴らしい挑戦をし、そしてイノベー 発的に考えて、そしてチームワークができ、リーダーにな ションを起こしている美術館に与えられる賞です。 れるよう、子どもたちを対象にやっているものです。この ここは何が素晴らしいのかといいますと、1 年半の間は 地域はロイヤル・オペラ・ハウスという教育センターがあ 館としてはクローズしていますが、館長さんは非常にビジョ ります。あとは日本的に言いますと、NPO のパフォーミン ンのある女性で、この閉まっている間も館をとにかくオー グアーツの拠点であったり、大小さまざまな人が連携をし プンにしていくというのをコミットにしていました。です てアートフォームをクロスしてプロジェクトをしています。 から、館はないけれども、その代わり町の中のあらゆる行 少しかわいい映像があるので、少しだけご紹介したいと思 ける所にコレクションを持っていったり、そしてアーティ います。これは特にオリンピックを経験したことによって、 ストと共同して出掛けていったりという作業を丁寧にやっ この地域の文化団体や教育関係者のネットワークが非常に ています。その中で、例えばセルフリッジズというデパー 広がっているという話です。 トがあり、そこでピカソやルシアン・フロイドなどの、イ このプログラムは非常に大きなプログラムでして、ケン ギリスの現代アーティストの作品も展示をしたり、併せて ト州でいったら 120 の学校があって、100 人のアーティス 大学、ケアホーム、病院、公園、いろいろな所で教育のプ トが 200 人の先生がたと恊働しています。そして 7000 人 ログラムや展示をしたり、街の中に美術館が出てきて市民 の子どもたちにフィーチャーをしています。そこで、リー と共にプロジェクトをしています。もともとマンチェスター ダーシップというスキルに注目をしてプログラムをしてい の文化の中心的な役割を果たすということが美術館のビ ます。この若い小さな女の子が、インタビューで語ってい ジョンの一つでもあります。この美術館は市民の為のもの ます。リーダーというのは上から指示をするだけでは駄目 だというようなビジョンを掲げて、今後、非常にラーニン なのだということを学んだようでして、それをお話しされ グにコミットメントをしているところですが、この 1 年半 ていました。今、このプログラムはさらに伸びていまして、 の市民との関係により、更に今までリーチをしていなかっ このターナー・コンテンポラリーは今年の目標としては、 た人たちとの関係性が生まれたり、新しい大学や NPO との ケント州全部の学校にリーチアウトをしてプログラムをし パートナーシップが生まれたりと「非常に大きな資産がで ていこうという目標を立てています。教育チームは 3 人ぐ きた」と言っていました。また特にここが素晴らしいのは、 らいしかいません。本当に小さなチームなのですが、それ 館長さん以下、お庭のお世話をするガーデンキーパーの方 を実現するために大学と連携をしたり、各地域の団体と連 やコレクションの方、館のスタッフ、一人一人がこのビジョ 携を取ったりして、パートナーシップを非常にうまく使っ ンをすごく共感をして、市民のため、またはお客さまの為 ています。そして、こういったプログラムの効果測定とい に活動をしています。ここで、今年の 2 月のリニューアル後、 うものを、非常に力を入れてやっていまして、大学機関と 10 週間で 15 万人の人が訪れたそうです。リニューアル記 連携をして実際にこの参加した子どもたちがどう変化をし 念の展覧会をしながら、これを企画した市民の人たちも出 ていったのかということを検証しています。そのデータを てきて、さらにはこの美術館がより伸びていくことに貢献 もって、翌年の次のファンドレイジングにつなげていくと をしています。 いうようなプロジェクトをしています。このターナー・コ 受賞の理由が幾つもあるのですが、その一つにラーニン ンテンポラリーがこの地にあることによって、経済効果は グというもの、併せて高齢者を対象としたプログラムの質 もちろんですけれども、人々の繋がりということや教育的 の素晴らしさということも書かれていました。ここはマン な効果というものが非常に大きいのではないかというよう チェスターというのは、イギリスも日本と同じ高齢化が非 に思いました。 常に加速しています。特に地方都市においては、高齢の方 の孤立の問題や、いかにその健康な年齢を延ばしていくか、 少し場所を移動していきたいと思います。中部のマンチェ そして世代間の格差をどう埋めていくかなど、いろいろな スターという町の取り組みを、ご紹介したいと思います。 高齢社会にまつわる課題というのが非常に累積をしていま 105 添付資料 創造都市政策セミナー す。日本は世界でも高齢化が進んでいる国の一つですけど リサーチで、恐らく「世界で初めての研究だ」というふう も、英国も日本の姿を見ながら、恐らく福祉、健康、医療 に言っていました。ここもかといって、この音楽が認知症 予算だけではこれは賄えないので、国全体として、いろい を治したり、その医療に打って変わったりということでは ろなビジネスも含めて、ここをどうしていくか。いろいろ なく、音楽だからできることは何なのかということを見つ な取り組みがされている中で、文化セクターも文化だから めてプロジェクトをされているのだと思います。 できること、アートだからできることということで、さま ざまな取り組みがされています。 少しお隣の町になりますが、ナショナル・ミュージアム・ 日本でも幾つかの都市がエイジフレンドリー都市を標榜 リバプールのプロジェクト、ハウス・オブ・メモリーズと して掲げて、活動されていると思うのですが、マンチェス いうのは非常に大きなプロジェクトで、英国でもとてもユ ターも市の政策として、エイジ・フレンドリー・マンチェ ニークな、そして重要なプロジェクトといわれています。 スターというのを掲げています。WHO で、英国の中で、初 ここのコレクションがある美術館がやはりアルツハイマー めてエイジ・フレンドリー・シティーに認定されたのもマ 協会と連携をしながら、ケアホームのケアラーの方々、介 ンチェスターです。非常にまだ新しい取り組みで、ここ数 護者の方々に向けたトレーニングプログラムを開発しまし 年のことなので、一体これがどういう効果があるのか、ど た。英国の介護者の方々も毎日、厳しい状況に直面してい ういうふうにしていくのが一番良いのかということを試し まして、どういうふうに接していいのか分からない中で演 ているのですが、特にこのマンチェスター近隣の文化団体 劇的手法や、あとは美術館のコレクションを使った対話の 16 から 19 のアート団体が連携してワーキンググループを プログラム、ということを開発しています。そして奮闘し つくっています。美術館もあれば管弦楽団もあって劇場も ているケアラーの方々を招き入れて、トレーニングをして あったり、またはサイエンスミュージアムもあったり、い います。今、このプログラムを他の地域の美術館にもカス ろいろな機関が揃っているのですが、現場レベルの人たち ケードのトレーニングをして、そこの美術館が自分たちの がワーキンググループを組みながら情報交換をしたり、ま コレクションを使って、地域のケアホームの方々と連携が たは共同で事業を展開したりしています。そして、その文 できるような大きなトレーニングのプログラムが出ていま 化以外の人たちとも連携を取りながら、プログラムをして す。これについては、文化予算は入っていませんが、この います。これが一つ、マンチェスターの博物館、ミュージ 美術館の館長さんはすごくビジョンが高く、そしてとても アムのほうのプログラムです。 説得がうまい方々なので、保健省の大きな予算を取ってき こういった地域にある美術館や博物館というのは、地域 ました。そして、今、スポンサーも付けて、これをどんど の資産である歴史もコレクションをしていますので、こう ん進めています。これをアプリも開発しまして、日本でも いった方々の対談の種になるような素材もいっぱいありま Apple のストアで買えるようでして、これをもって、例え す。美術館だからこそできる、コレクションがある美術館 ば対話療法やコレクションをアップロードして使っていけ だからこそできるプログラムというのを提供しながら、こ るようになっています。今、これにブリティッシュ・ミュー れの効果を今、検証をしています。 ジアムやロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート・ 特に、孤立をしている高齢者の方々です。あと、赤ちゃ ミュージアムなども関心を寄せていて、今、ちょうど連携 んのいるお母さんたちというのは実はとても孤立をしてい をしていこうというような話が進んでいるというふうに聞 て、家の中から出られなくてとても孤独を抱えているので、 きました。 そういった居場所をつくっていくということがその館があ る美術館のミッションだということで、いろいろなプログ ラムをしていました。 もう一つ、先ほどのワーキンググループにも入っている、 マンチェスターパメラーターという音楽団体です。もちろ ここまで、駆け足ですけれども、文化芸術機関が例えば 教育的な目的だったり、あとは健康だったり、そして地域 活性や経済についていろいろな取り組みをしているという ことを、少しご紹介させていただきました。 ん海外ツアーや素晴らしい演奏会もするのですが、ミュー 今日は、第 3 部が文化プログラムを中心に、皆さまとワー ジック・イン・マインドというプログラムがとても注目を クショップをするということでなっています。多分、皆さ されています。これはアルツハイマー協会やケア UK という んは、オリンピックについてご関心が強いだろうと思いま ケアの専門の機関と、あとはマンチェスター大学やランカ す。今日は細かくプログラムをお話しする場ではないので スター大学などと連携した認知症の方に向けた音楽のプロ すが、英国全土で非常に大きな、そして今までにないよう グラムです。そこで、プロの音楽家が、このケアラーのサ な、そしてイノベーションを生むようなプログラムがアー ポートスタッフの方々とも連携をしながら、曲を一緒に作っ ティストや文化機関やそしていろいろなパートナーと連携 ていく。認知症の方々と一緒にプロジェクトをしています。 して行われていました。今、このオリンピックを終えて 3 年、 8 週間か 10 週間のプログラムを今年は行なっているのです この結果が見えてきています。 が、その中で治験も入れながら、大学と連携をして今、専 実際英国の中でもいろいろな目標設定がされています。 門的なリサーチを入れています。音楽というものが認知症 市民参加だったり市民のコミュニティーをつくったりいろ の方の治療にどのような効果があるのか、ないのかという いろありますが、その中で観光を増やしていくというのが 106 添付資料 創造都市政策セミナー あります。オリンピックの後、 観光客が非常に増えています。 第二部 パネルディスカッション「創造都市と文化施設」 ロンドンがオリンピックの翌年に、世界で、外国人観光客 金沢 21 世紀美術館 館長 秋元 雄史氏 が訪れる都市の 1 位になりました。それまでフランスが 1 新幹線が東京金沢間 位だったのですが、変わりました。また、政府が掲げた目 で開業する前年の平 標を大きく上回る観光客数と観光収入というのが出てきて 成 26 年 で す が、 こ います。そして、いろいろな経済効果みたいなものも案外、 れは新幹線が通ると 出てきているのですが、一つご紹介をしたいのが、ロンド いうことで首都圏を ン市が今年の 7 月に新しく文化観光のビジョンペーパーを 中心にして、テレビ、 発表しました。このオリンピックを経験していく中で、そ 雜誌で金沢がだいぶ こから数年たって、文化と観光というものの非常にいい相 取り上げられまし 互関係というのが、実証されています。そこで、ロンドン た。その影響で、例年、150 万人台だった年間来場者数が のことを考えてみますと、観光の、観光客による数だった 一気に伸びて 176 万人という数字になりました。平成 27 年 り、経済の効果だったり観光客の伸び率というのが、ここ 度、今年度ですけれども、前半が終わったところですでに でまとめられています。今、 力強く観光という産業があって、 100 万を超え、今の状態が続くと、多分、220 万ぐらいの数 併せて文化のランドスケープを見てみますと、ロンドンを 字になるだろうと予測されています。 訪れる 10 人のうち 8 人の方は文化的体験をするというのが 美術館という枠を取って、全国の文化観光施設の 2014 年 データで出ています。9 割の方が、ロンドンで文化的体験 ランキング表があります。テーマパークを含めた文化施設 をしたときに、とても満足度が高いということです。こう の年間来場者数比較です。金沢 21 世紀美術館は 33 位です。 いったリッチな文化リソースがある、資産がある。今、別々 他にはどういう施設があるかというと、1 位は東京ディズ の政策を一緒にして文化観光の政策を作っていこうとされ ニーランド&ディズニーシー、3 位がユニバーサル・スタ ています。恐らくこれから日本の中でも既に観光と文化と ジオ・ジャパン、8 位が東京スカイツリー、16 位がハウス いうところでの効果というのも実証されると思うのですが、 テンボス、18 位首里城と続きます。美術系の博物館では、 参考になるかと思ってご紹介をしました。 17 位の国立新美術館、29 位の東京国立博物館とあり、その 次に金沢 21 世紀美術館がランクインします。美術館、博物 併せて、先ほどご紹介したアーツカウンシルの経済効果 館としては全国 3 位。上位 2 つが、国立の、東京にある大 のデータですけれども、オリンピック以降、やはり非常に 型博物館、美術館です。それと比較すると金沢 21 世紀美術 文化芸術やクリエイティブ産業の英国経済の合計は非常に 館の存在感は際立ちます。また他の文化施設と共にランク 伸びています。あるデータによりますと、英国のどの産業 インしているということは美術館という枠を越えて機能し よりも、一番成長率が好調だというような数字が出ていま ているということでもあり、広く観光施設としてのポテン すし、雇用も創出しています。またイングランドの美術館 シャルを持っているということです。ちなみに多くの文化 や博物館は少なく見積もっても 3 万 8000 人ぐらいの雇用機 施設が大都市に集中する中、金沢 21 世紀美術館がある金沢 会を創出していて、1 ポンドの公的助成に 3 ポンド生み出 市の人口は 45 万です。それに多くの施設が、大資本や国立 していくというデータを出しています。こういったデータ、 など大きな組織の下で運営されているのと比べ、金沢市と ハードなエビデンスを持って、文化の 1 ポンドの投資をカッ いう小さな運営母体であるという点も興味深いところです。 トしてしまったら 3 ポンドもなくなってしまうのではない このような結果から考えると、アイデア如何によって人び かという議論形成をしています。少し長くなりましたが、 とを惹きつける魅力ある文化施設を作ることができるとい 最後に、アーツカウンシルがこの文化の地域における力と うことです。 いうものをまとめた映像がありますので、それをご紹介し て終わりたいと思います。 ここで皆さんにお伝えしたいのは、何もこれだけ人が入っ てすごいだろうという話ではなくて、現代アートという、 参考 https://www.youtube.com/watch?v=Ub7oG1K4EnA どちらかといえば、趣味嗜好が限られたものであっても、 以上です。ありがとうございました。 これだけの人が集まる観光施設になるということです。現 代アートは決してわかりやすいものではありませんが、工 夫次第ということでしょう。 これは来館者アンケートです。来館者数の属性に関する ものです。どんな人がどんな所から来ているか、という基 本的な情報です。 男女比でいくと、大体、女性が 6 割、男性 4 割です。見 ていると、大体、女性が先ですね。新しい物に対する好奇 心が女性のほうが高いということでしょう。男性を引っ張っ ていくようにして館内を案内しているというような図です。 文化的な感度は女性のほうが高いわけで、大体このような 107 添付資料 創造都市政策セミナー 数字にも出ているだろうと思います。 また年齢ですけれども、10 代、20 代、30 代のところで、 とはありません。常に心掛けて、どのような小さいプログ ラムでも出来上がっています。これはショップやレストラ ほぼ 6 割になります。やはり現代アートというのは、若い ン、そして監視や清掃のスタッフに至るまで、徹底している。 人たちが興味を持つカルチャーだということです。働き盛 我々自身が常に繰り返し話し、また共有している美術館の りの 40 代は一度減りますが、 それでも、 また 50 代から 60 代、 考え方です。 70 代とパーセンテージを伸ばしているのが興味深い点です。 まず世界の今現在というものと一緒に活動をしていく、 自分の時間が作れる人ということになるのでしょうが、美 生きていく美術館ということです。同時代を常に意識して 術館はそういう人たちに魅力的な場になりつつあるという いくということです。2 つ目が、この金沢という町の中で ことです。この辺りは、 「参加型プログラムと自己実現」と 活動をして、その町に暮らす皆さんと一緒になって美術館 関係していると思います。美術館のボランティア活動や教 活動をしていくということです。参加できる、そして交流 育普及プログラムなどです。 できるということを、強く美術館のミッションにしていま また県内か県外かという項目ですけれども、金沢市内、 す。3 つ目が、金沢は非常に伝統文化が色濃く残っている 石川県在住の人は、大雑把に捉えれば 3 割、それ以外の 7 所でして、こういった地域の伝統文化というものを今の時 割の人が県外ということになります。県内の 3 割は、ざっ 代の中でまた創造的に発展させていく、未来に繋げていく と 50 万人で、ほぼ金沢市の人口プラスアルファぐらいの数 ということ、また金沢の中だけに閉じ込めないで、それを 字です。 世界に届けていく、開いていくということです。そして 4 利用回数ですけれども、初めての方が約 62 パーセントで、 つ目で、金沢の子どもといっしょになって成長していこう 6 割ぐらいです。残りの 4 割の方たちが、2 回以上の利用者 ということです。こども美術館以外で、こういうことをミッ です。ここで見ていただきたいのは、3 回以上というのが ションとしてうたっている美術館というのは少し珍しいと 27 パーセントで、3 割近いパーセンテージを持っていると 思いますけれども、4 つ目の重要な柱としてあります。子 いうことです。先ほどの年齢アンケート、県内県外の数字 どもも大人も一緒になって、クリエイティブな場をつくっ と合わせると「何度も足を運び、美術館のプログラムに積 ていこうという考え方です。この 4 つで、美術館の活動は 極的に参加する、地元金沢の人たち」がある一定以上数い 出来上がっています。 るということがわかっていただけると思います。これはと こういった基本的な考え方に沿って、事業の枠組みがつ ても大事なことで、強調しておきたい点です。この、何度 くられています。さらに年間のテーマがあり、それに則っ も足を運んでいる、そして交流プログラムに熱心な、地元 て各プログラムが出来上がっています。組織的にユニーク の3割の人びとによって、この美術館は支えられているの なところは、学芸課の中に教育普及チームがあるのとは別 です。そしてこの人々によって、美術館の鑑賞者のスタン に、課として交流課という課が存在していることです。基 ダードなスタイルが形成されています。ある意味で模範的 本は、美術以外の、主にパフォーミング系の事業を行うこ な見学者となって美術館の活動を支えているということな とと、もうひとつは、地域との交流を促進するという業務 のです。多くの来館者数が来て、また県外からも多くの皆 があります。ここでは、町の商店街との関わりからお祭り さんが来ていますけれども、美術館のベーシックな活動を からお付き合いをしていきます。つまり、町の中で行われ 支えている人たちというのは、実はこの金沢市内、石川県 るさまざまなまちづくり活動や交流活動を、美術館で関わ 内に住んでいる 3 割、そして 2 回以上というような何度も れるところがあれば関わっていくのですが、そのための課 足を運んでくれている地元の方たちということになります。 ということになります。 ここのところとしっかり関係を築けていけるかが、まずは 一方に教育普及チームがあるので、そちらもご紹介しま その美術館活動を継続的にいい形で展開していくための秘 す。プログラムは、大体六つに大きく分かれるのですが、 訣ではないかと私自身は思っています。 まずは一般の鑑賞プログラム。アーティストやキュレー ター、専門家のトークなどです。これは必ず各美術館博物 後出しになってしまいましたけれども、この美術館がど 館で行われている。 ういう目的で造られたかというと、大きなミッションとし そして、キッズ・スタジオ・プログラムというのがあり ては、金沢の新しい文化の創造ということ、そして新たな ます。これは子供向けのスタジオで主催される創作と鑑賞 町の賑わいの創出という、この 2 つのために開館をされた のためのプログラムです。美術館の中に子ども向けの創作 ということです。そして、それを実現するために、次の 4 室がありまして、展覧会を見た足でそのまま造形ができる つのミッションがあります。 「世界の今とともに生きる」 「ま というようなものです。常に展示、展覧会の中身とこのキッ ちに活き、市民とつくる参画交流型」 「地域の伝統を未来に ズスタジオで提供するプログラムというものは連動してい つなげ、世界にひらく」 「子どもたちとともに成長する」と まして、この中でさまざまな子どもたちの創作の場という いうものです。非常に重要なものでして、この 4 つの美術 のを確保していっています。 館の方針にのっとって、各プログラムがつくられています。 あと、アートライブラリー・プログラムです。図書室が これはスタッフ間で強く共有された考え方でして、これか あるのですが、そこでも独自のプログラムを提供していま ら逸脱したところで勝手にプログラムが作られるというこ す。アーティストの中には絵本の制作をしている方がいま 108 添付資料 創造都市政策セミナー す。また、童話作家に絵を提供しているアーティストもい ります。年間で大体、60 弱の事業です。それと、皆さんの ます。そこで作家が作った絵本を読み聞かせるプログラム お手元に配布しております、まち元気プロジェクト、これ を実施しています。親子向けのプログラムです。 が年間 480 ぐらいの事業をやっております。今日はまち元 年間を使った長期プログラムというのもあります。これ は 1 年間を通じて行うものです。 「金沢若者夢チャレンジ・ 気のほうを中心にお話をしようと思いますので、経営全体 の考え方、創客経営ということは改めたいと思います。 アートプログラム」というもので、大学生から 20 歳代の若 者を対象にして 2007 年から始めたものです。若者の社会参 金沢と違って、可児市はどこにあるかを説明しないと分 加を促すプログラムとして行われていて、ニートという言 からない所で、岐阜県の一番愛知県寄りの県境です。愛知 葉が社会問題化したときにつくったものです。アーティス 県寄りが犬山市です。岐阜県寄りが可児市です。人口は 10 トと参加した若者が組み、ロングランで創造的な場所をつ 万 912 人です。でも、ここ 2、3 年で毎年 120 ~ 130 から くり上げるというものです。展覧会やイベントを 1 年間か 150 人ずつ増えております。リーマンショック以降、10 万 けてアーティストと共につくります。さまざまな出会いが 1500 人いた人口がブラジルの方を中心に一気に減ってしま あり、社会との接点が生まれ、一年もするとしっかりして いまして、大きく人口減少したけれども、最近、少し取り きます。 返しつつあります。 また、学校関連事業。これは、美術館と学校との連携事 私は 2007 年に大学も辞められなかったので、非常勤で新 業です。教育委員会に仲立ちをしていただいて、現場の学 任しました。このときに地域の皆さんと、ala では委託業者 校の先生たちと館のエデュケーター(教育普及の専門スタッ も含めておよそ 80 人が働いていますけれども、そういう方 フ) 、そして市民ボランティアの皆さんの三者で行うプログ たちを 3 つに分けてコミットメントをしたのが、可児市は ラムです。対象の小学4年生は金沢市内で約 5,000 人弱い 芸術の殿堂は要らないということです。つまり市民が来て ますが、その子どもたちが美術館を訪問し、現代アートに 心を休めたり、あるいは羽を休めたりできる場所をつくろ 触れて、理解を深めていくプログラムです。もう開館から うというのが私の考えです。 実施しているので、10 年を過ぎ、始めの頃に経験した子ど 政策目的として、皆さんは劇場ホールを造っているので もたちも大学生なって、今度は子どもたちの面倒を見るボ すが、そういうことをするから、マネジメントが中途半端 ランティアとして戻ってきています。これも長く実施して になるというのが私の大学の研究室での考え方です。つま きたお陰です。 り政策手段だということです。社会規範としての劇場、社 最後にひとつ。色々な展覧会やプログラムを提供してき 会規範としてのアートを作ろう。自治体や行政、それから ました。すでに 10 年が過ぎています。そこでちょっと立ち 公立文化施設は、共に健全な地域社会を共通の目処として 止まり、改めて美術館の向き合うべきお客様は誰かと言う いるはずなのです。従って、両者の共同は、最終利益者で 話をしています。どのような人たちとどんな約束をするの ある地域住民への責務であると考えています。私は行って か、どんな場所と時間を提供するのかということをスタッ すぐに関係各課の課長と会長さんに手紙を書きまして、い フと話をしています。これは新幹線開業によって大きく環 かに手を携えて地域の人たちのために何ができるかを一緒 境変化を起こしている今だから余計に考える必要がありま に考えようということを、提案をしました。私が持ってい す。また、美術館にとって一番コミットすべき観客、お客 る劇場ホールの考え方の最も原点になったのは、フィリッ さまがはっきりしてくれば、そこを足がかりに美術館の枠 プ・コトラーの『ソーシャル・マーケティング』です。『行 を越えて、他の志を同じくする組織とネットワークを組ん 動変革のための戦略』という、日本語版が 95 年だったかに で、より豊かな時間や場所を広域的に提供していきたいと 出て、そのときにコトラー自身が書いた序文がそもそもの 考えています。たぶん最もコアな観客は、それは地域の皆 原点です。その後、97 年に私も『芸術文化行政と地域社会』 さんになるわけですけれども、そことしっかり関係をつくっ という本を書き、この考えがベースになっています。つまり、 ていこうということで、いろいろなプログラムを作ってい ここにあるように物質的福祉の向上のためにマーケティン ます。 グはされてきたけれども、今日ではそれだけではない。逆 最後端折り気味に話してしまいましたが、この後、また に、さまざまな社会問題を生み出して悪化している。これ 皆さんと意見交換ができればと思います。どうもありがと をどういうふうにするか、この拠点施設として、私は劇場 うございました。 音楽堂等を考えるというところから始まって、その 97 年に 出した本も、それ以降の活動、考え方も、これが原点になっ ています。キーワードはここにあります。後で見ていただ 可児市文化創造センター 館長 衛 紀生氏 皆さん、こんにちは。可児市文化創造センターの衛でご ざいます。よろしくお願いします。 ala は非常に大きな施設でして、床面積 18,000 平米、こ の中で年間 7 本の作品制作をしており、7 本のうちの 3 本 が全国に回って、1 本は東京にもいくという形でやってお ければ分かると思います。 ここでは社会貢献型マーケティング、コーズ・リレイテッ ド・マーケティングということを、うちは採用して創客経営、 お客さんをつくり続けると、お客さんに変化し続けていた だくという経営をしています。 それから、包摂な社会というのはこうだと、私は定義し 109 添付資料 創造都市政策セミナー ています。人間を社会的に孤立させないという社会のユニ セントと非常に高かったので、そういう非難はありました。 バーサルデザインである。芸術文化による社会包摂とは、 そのときに「興行しているのだから、利益を上げないとど 孤立しがちな人間を芸術文化活動により、社会の構成員と うする」と言われました。けれども、私は「興行師ではない」 してもう一度、取り込んでいくということである。自己肯 というふうに、議員さんにはっきり言いました。「愛好家や 定感を持って、 人々によって形成される社会である。つまり、 特権階級だけのために税金を費やすことは、社会的正義に 生きる意欲を持った子どもたち、あるいは高齢者や障害者、 かないますか」と言いました。動員でも集客でもない新し 普通の生活者が自己肯定感を持つということ、希望を持つ い鑑賞社会というのはこういうことでやるのですというこ ということです。希望格差のない町をつくろう。そのため とで、創客経営というものを提案しました。 の拠点施設になろうということで考えています。 つまり、劇場ホールが一つの社会的価値を高めて、その 包摂的な社会構築のためにはどうあるべきかということ ブランディングを撤去した継続客と支持者をつくるのです。 で考えまして、身体的な障害はもちろんのこと社会的な障 支持者をつくるということは、非常に大事なことなのです。 害はありますね。最近では子どもの貧困です。これは本当 皆さんが 1 票を投票するように、チケットを買ってくださ に深刻な問題です。私が可児に行ったときは 30 数名しか就 い。チケットを買ってくださらないお客さまもお客さまで 学支援の援助を受けている子はいなかったのが、今は 400 あるという考え方です。民間の興行師だったら、お金も出 名を超えています。いかに健全な成育環境をつくるかとい さないお客に対しては愛想も無いと思いますけれども、う うことが、可児市の未来となるし、日本の未来となると思 ちはお金を出さないお客さま、市民に対しても、おはよう います。 ございます、こんにちは、つまり、あいさつです。あなた 精神的な障害というのは、もちろん精神疾患の場合もあ りますけれども、被災した方たちの PTSD の急性ストレス に関心がありますよというメッセージを届けるというのが、 うちの職員に対する教育の一つです。 障害をいかにケアするかということにもなります。これは、 20 世紀では本当に成長重視の社会で、経済的な営業ばか 私は阪神淡路大震災も経験しておりますので、このことは りが注目されましたけれども、21 世紀というのは成熟社会、 文化の力で何とかなると思っています。これらの要因とす 人間の世紀であり、人間の生き方に対して新しい価値を提 る生活困難、生きにくさを感じている人たちと、それから 案し、社会の分断から来る閉塞感から地域住民を救済し、 人間の尊厳の危機的な状況によって社会的孤立に瀕してい 人間的尊厳を守る、魂の自立を支え、市民の基本的権利を る地域社会の構成員を、文化芸術の社会包摂機能によって 最大限に維持して、絆の回復による地域社会の活力、発展 ケアするのです。つまり、先ほど申し上げた自己肯定感と と健全化という変化をもたらす時代だということです。だ 生きる意欲を醸成するということが劇場の仕事であるとい からこそ公的資金でこうして投資をするということが、戦 うように、私は進めます。 略的な投資として捉えられると、私は考えています。人が 今年の 3 月に業務提携をしましたイギリスのリーズ市に 支払う価値に対して、税金であり、あるいはチケットであ あるウエストヨークシャー・プレイハウスに、私は 98 年に り、支払う価値に対して社会的価値、顧客自身の社会貢献 行ったことがあります。その劇場は地域社会と非常に素晴 度の高度化を求める。つまり、ピンクリボン運動やゴール らしい環境を結んでいました。そういう劇場の在り方とい ドリボン運動というようなものと同じように、自分の消費 うのを、やはりこの可児市文化創造センター ala という施設 が、消費による参加が実は社会参加になるというようなマー の目標、グランドデザインにしました。 ケティングをしていく。それによって対象者を変えますと 日本の福祉政策は何かあったらセーフティーネットとし いうことが、私どもの劇場です。 てというもので、非常に消極的な事後的な福祉政策ですけ 地域の劇場は、これでなければいけないと私は思ってい れども、そういう仕事をすることによって、社会予防政策 ます。東京から何かを呼んで、チケットを売りさばいて収 としての福祉政策の拠点としてシフトできるのだというこ 入を上げるということが、地域の劇場の役割ではないとい とです。それが文化の仕事であり、それが文化に公的資金 うことを言っています。この皆さんのお手元にありますシー を投入する意義であると、投資であると私は思っています。 ト、これが社会貢献マップというもので、つまり、倫理的 全ての人間に等しく幸福追求権が保障されている地域コ な顧客はこれをやっています。エシカルコンシューマーを ミュニティーの形成と再生。コミュニティーの部分はいろ どうやってつくるか。それによって継続的な顧客開発をす いろな手垢が付いているので、私はコミュニティーという る。これが創客であるというふうに思っています。 言葉はあまり使わないようにしていますが、身内意識です。 これは、慶応大学の経済学者の井原先生が、身内意識とい うことを非常に言っています。誰かの悲しみが自分の悲し みになる、誰かの喜びが自分の喜びになるような人間関係 をつくっていくというのが、劇場の一つの仕事である。 私が可児へ行ったときに、 「あんなものは売ってしまえ よ」、「壊せ」と言う人が、可児市議会の中におよそ 3 名い ました。当時は 5 億の指定管理費でして、一般会計の 2 パー 110 添付資料 創造都市政策セミナー 今、21 世紀美術館とは及ぶところもない数字ですけれども、 てのリース会社、印刷会社、デザイナーが無料で協力して 年間におよそ 47 万 6000 人の方が来館しております。客席 います。毎年やっております。 稼働率も大体、 1.78 倍という人が利用しています。観客数は、 これが今日の一番話した 私が来た 2007 年から言うと、3.68 倍になっています。パッ いことです。劇場から一 ケージチケットというものを私も出していて、このチケッ 番遠くにいる人々に自分 トは 8.75 倍になっています。経済的効果は、ニッセイ基礎 たちが何を届けられるか 研究所さんにお願いして、2010 年にやってもらった時の誘 ということで、あしなが 発係数が 2.57 ということで、恐らく可児市の中で一番誘発 おじさんプロジェクトチ 係数の高い産業だろうと思います。これは、普通のウイー ケット、プロジェクトというのをやっているのですが、つ クデーの写真です。こういうふうに人がたくさん来ていま まり中高生に好きなものを届ける。企業、団体が 3 万円ず す。 つ提供して、見てもらう。こちらが今年度からの分なので、 就学支援を受けている子どもとその子たちです。校教育課 ala まち元気プロジェクトのなかで、若いお母さまとゼロ を連携しました。それから、こども課と連携して、一人親 歳児から 3 歳児までのお子さんたちのワークショップ「ala 家庭で児童扶助を得ている子どもたちとそのご家族に、好 エンジェルプログラム」やりました。これは、若いお母さ きなものを見ていただく。チケットをお渡しして、席を一 まの子育てストレスをいかにケアするかということと、孤 緒に親子で探したいとなる所から冒険をしてもらうという 立しがちな育児の中でネットワークをつくっていくという ことで、そのことによって会話が家族の中に出てきたらい ことです。つまり、先ほど申し上げた身内意識を持った仲 いのではないかと思うのです。これは、富田高校行ったと 間をつくっていくという部分です。 きに、富田高校の子どもたちを先生が、成育環境を考える こういう形で、いろいろな人にアプローチしております。 2009 年に始めましたので、そこは 267 回はやっております。 今は大体、年間で 423 回になっております。 と叱れないと言ったことが、このプロジェクトの始めだっ たわけです。 昼間に空に星を見つけるように、劇場で働く人間は、そ 先ほど申し上げたように、非常に在留外国人が多いとい ういう眼差しを持っていなくては駄目だということは、い うことで、その外国人の子どもたちも、それから 2 世や混 つも私が言っていることです。つまり、自分たちは人間に 血の子も多い所で、人口の 7 パーセントぐらいです。多文 ついての仕事をしているのだろうということです。私たち 化共生パフォーマンスも、1 回目にやったときに既に国際交 は、興行戦略で、いい体験をいい経験を提供するのが仕事 流基金さんが、今度は欧州評議会のスタッフさんが視察に なのです。それは、必ずしも何かを見ることではありません。 来られました。私は開館 5 年目に来ている。外国人も納税 誰かと知り合うことだったり、いい仲間ができるというこ 者なのに、その前は、一つも外国人のプログラムをやって とです。身内意識を持った仲間を見つけることがいい体験 ないのです。それはおかしいということで始めました。写 だということです。 真のブラジルの方ですが、彼というか、彼女はゲイなのです。 というようなことで、すごく簡単でしたけれども、お手 故郷では迫害されたそうで、 「日本はとてもいい」と言って、 元にマップシートと、別のパンフレットがあると思います こういう格好して踊っています。自分がブラジルでどうい ので、それを併せて見ていただければ、私どもがやってい う迫害を受けたかということを喋っています。また、ドキュ ることがお分かりいただけるかと思います。どうもありが メンタリープロジェクト。これは、 ボスニア・ヘルツェゴヴィ とうございます。 ナのときに 14 歳で、あのひどい状況、戦渦を経験してオー ストラリアに移った方が可児に当時いまして、そのボスニ ア体験をドキュメンタリーでしゃべります。 BEPPU PROJECT 代表理事 山出淳也氏 つぎに、不登校の子たちのアプローチです。学校に行け こんにちは。BEPPU PROJECT の山出です。15 分少々だと るようにするのではなくて、通信でも高校に行こう。もっ 思いますので、少し駆け足になるかもしれません。よろし と大学に行こうという意欲を持った子どもをつくるという くお願いします。そもそも昨年、札幌でセミナーも行われて、 ことです。つまり、自己肯定感を持つ子どもになってほし その席に僕も呼ばれて少しお話しさせていただいきました。 いというのが、私どもの狙いです。これは 富田高校に入っ そこで、佐々木先生と文化庁の方々に、ぜひ来年、大分県 ての活動です。これは図を見ていただくと分かるとおり、 に来てほしいということをお話しさせていただいた経緯も 平成 19 年ぐらいを境に非常に退学生が多くなっているので あって、このようにこの日にセミナーが開催されることを す。県の松川教育長さんに言われて始めて、3 年間、私ど 大変嬉しく思っております。ありがとうございます。 もと地域拠点契約を結んでいる文学座さんに入っていって もらって、退学者が 9 人になりました。 今日は皆さんにお話しいただいた内容というのが文化施 設というものが、どうやってその創造都市を地域の活性化 つぎに震災の後、毎日、あの津波の絵を見せられて、特 や都市の活性化、活力に繋げていくかという話だったと思 に高齢の方が何かしなければいけないということがあった うのですが、僕らが活動しているものはその施設を中心と ので、すぐにいろいろなコンサートを行なっています。全 していくというよりも、その都市そのものを劇場と見立て 111 添付資料 創造都市政策セミナー ていって、要するにアートが地域の中のある種の OS に代 このシンポジウムの中で、僕からも 10 分ぐらい簡単にお わっていけないかということです。アートというのは必ず 話しさせていただいたのですが、街中の活性化をしていこ しも芸術ということではなく、考え方なのだと思うのです。 う、中心地市街地の活性化をしていこうということを一つ 新しい価値をそこで見いだしていったり、今あるものに違 視野に入れたシンポジウムで、その中で空き店舗をリノベー うスポットを当てていったりすることによって、どうやっ ションしていきながらコンバージョンしていきながら、さ て見え方が違うのか、また多様な価値が共存していく在り まざまな方が活動できるスペースをつくっていこうとお話 方とは何なのかをさまざまに考えていくことだと思ってい ししました。そして、それらを緩やかにつなげていくよう ます。2005 年に活動を始め、今、10 年たったところです。 な取り組みをしてみませんかということを、全く最初の事 さまざまに活動をしていき、大体、年間 2 億 5000 か、3 億 前の調整なしに提案させていただきました。 円を NPO として進めているのですが、やっている内容をご 紹介します。 そうすると、その年、別府市はものすごく早く動いてい ただいて、翌年の当初予算から、これを具体化していこう ということで、platform という場所が生まれています。こ 小さな拠点施設を幾つか持っています。街中の回遊拠点 ういうスペースをさまざまな NPO の方々、我々も含めて、 や小さな劇場などのさまざまな運営を行っております。さ しかもアートだけではない方々も活動の拠点にして、街中 らには、居住をする場所を運営しているのですが、特にク でさまざまな展開を行っています。こういうスペースなど リエイターのかたがたに滞在してもらうモデルをつくって を一つの拠点としていながら、今、行っているのが混浴温 います。また、 さらには国内外のさまざまなアーティストに、 泉世界というイベントです。7 月 18 日から 9 月 27 日まで 1 カ月から 3 カ月間短期的に滞在していくようなレジデン 約 2 カ月間、今、開催しておりますが、2009 年に 1 回目を ス事業なども行っています。 迎えて、12 年、15 年とトリエンナーレ形式で行ってきまし さらに、これが中心ですけれど、芸術祭やアートプロジェ た。当初から実は予定していたのですが、準備含めて 10 年 クトなどを行っています。多い年は年間で 200 ぐらいのプ の 3 回で混浴温泉世界をひとまず最終回にしようとしてお ロジェクトを実現させています。最近、かなり力を入れて りまして、今回が最終回になっていきます。 いるのがアウトリーチなのです。うちは 2006 年からやって います。特に最近、文化庁さんや、さらに大分県さんと共に、 県内の小学校や中学校 40 校ぐらい行くのですが、そういう 所に出前事業、アウトリーチをしています。そして、映像 が出ているのは福祉施設ですが、そこでアーティストに入っ ていただいて、障害者と共にその音楽を作っていくような こともやっております。 他には今日、皆さまに冊子をお渡ししているかと思うの ですが、Oita Made というような大分のブランドづくりや さまざまな産品のプロデュース、紹介などを行っています。 これらのさまざまな事業を外に発信していくような情報発 信の事業なども行っています。 これが混浴温泉世界自体の集客のデータです。世代別、年 2007 年の 10 月に、佐々木先生にご協力いただいて、ま 代別データの中でやはり突出して高いのは 20 代と 30 代で た今日ファシリテーションをしていただく吉本さんにもご す。緑色が女性になりますけれども、全体の 20 代、30 代 協力いただいて、創造都市について考えていく国際シンポ 女性が 43 パーセントとなります。男子を入れると 68 パー ジウムを行いました。創造都市という概念を発表していっ セントです。この比率は、2009 年、2012 年ともに同じ比 たチャールズ・ランドリーという方、さらにそれを実践し 率なのです。どこから来たかです。県外が 6 割を超えてい ているフランスナント市の行政のジャン=ルイ・ボナンさ ます。滞在期間です。大分県内の方は基本的に日帰りです んという方など、皆さまにお越しいただき、いろいろな話 けれども、やはり 1 泊が 27 パーセントで 2009 年、2012 年 をしていきました。その中で、大変に僕は感銘を受けた言 共に一番多いようなものになっています。今年はどうなの 葉がありました。チャールズ・ランドリーさんの言葉なの かということで、内容については後ほど紹介しますが、8 ですが、創造的都市とは社会に関わること、環境に関わる 月 22 日時点なので、まだ 1 カ月です。ちょうど中間発表し こと、行政に関わること、そして政府に関わること、全て たときのデータなので、男女比で女性がやはり 55 パーセン の分野において、皆さんが創造性を発揮できる町のことで ト多いのですが、県外がかなり増えました。76 パーセント すという言葉です。つまり、何かをつくろう、仕組みをつ です。これが一番、僕は嬉しいのですが、1 泊 23 パーセン くろうではなくて、一人一人が創造的である社会。それが トなのですが、2 泊が 30 パーセントになっているというこ 社会的包摂、創造的であることが担保されている都市のこ とです。 とであるということに大変、感銘を受けました。 112 実は今回の混浴温泉世界は僕の中で一つ大きな目標が 添付資料 創造都市政策セミナー あって、それは拡大しないという理念を掲げています。拡 うふうに別府、大分にコミットするかをすごく重要視した 大しないけれども、コンパクトな中でよりその創造力が深 プロジェクトになっています。それと共に別府は市民文化 く高まっていくような深さを考えていこうということにし 祭も開催していて、2010 年から開催しているのですが、こ ています。エリアもかなりコンパクトで、プログラム数も ちらは別府市民がお客さまとして参加する割合が 50 パーセ かなり絞っています。特にツアーを中心とした鑑賞体験、 ントを超えています。主婦がフラダンスを発表したり、自 これを美術展にしてもダンスにしても徹底しています。も 分の自宅を開放して写真展を行ったり、プロの小説家も来 ちろんそれらの作品は新作で、場所性を生かしたプロジェ て、ここで小説を書いていったりといろいろなことが起こっ クトの組み方です。 ています。これは一切、助成金を出さない事業です。観客 もう一つ重要な点が、これは僕らが今やっている事業が に対してアンケートをしていますが、とても面白いのが、 全てそうなのですが、混浴温泉世界を一つのターゲットに 今回は観客として参加しているけれども、来年以降はプロ するのではなくて、プラットホームとしていって、その中 グラムの実施者になってみたいかということを問い掛けた でいろいろなことが回遊し、どんどん生まれてくることを ときに、確か 2011 年が 6 割くらいではなかったでしょうか。 理想にしようということです。 6 割を超えている方が、来年は自分がプログラムを作りた もう一つは、この芸術祭自体を一つのインフォメーショ ンとして考えて、ここに来た方々を次にどこに繋げるかと いですと話してくれました。そのようなイベントを、これ は毎年、継続して行っています。 いうことです。例えば広域的な連携をしているこの大分市 さらに、こちらは昨年に行った、国東半島という所で行 のトイレンナーレや国東半島の芸術祭などで、竹田市や大 われた芸術祭です。このディレクターも僕はしているので 分県なんかにいろいろな所を繋げていく。さらには、町の すが、例えばさっき湯浅さんのスライドで一番冒頭にあっ 紹介なども行っていく。いろいろなものを連携していくこ た鉄の彫刻は、アントニー・ゴームリーさんの作品でした。 とで、 1 泊 2 日から 2 泊 3 日モデルをつくろうとしています。 この国東半島にもありますけれども、この作品は山の峰道 にこのように設置されていますが、鑑賞しようとすると、 少し紹介をしたいのが、混浴温泉世界のツアーの様子で 我々のルートであれば大体 80 分ほど山を歩かないといけま す。これはダンスツアーになります。毎回 50 名の定員でツ せん。そうしないと体験できないのです。その歩いていく アーをしていて、こうやって歩いていくのですが、例えば 道すがら、地域資源などいろいろなことを感じていきます。 温泉の 2 階が別府は公民館になっているのです。これも大 この国東半島という場所がどうやってできていったのかと 変、特徴的だけれども、そういうことを紹介していくために、 いうことを、体験していけるのです。オノ・ヨーコさんや こういう場所をダンスの会場にしています。ツアーがここ さまざまな方に作品を作って残してもらっていますので、 に歩いて移動して、そのダンサーにいざなわれて 2 階に入っ これも皆さん、もしお時間あれば体験してください。 てきて、ダンスを体験する。また、その鑑賞した方々が次 この大分市でも今、アートの取り組みが行われていて、 に移動するのが、例えばビルの屋上に行って、町を俯瞰で これはトイレンナーレという取り組みです。明日の朝に、 きる所でさまざまな体験をしていく。そのようなことをやっ 幾つかショーがありますので、ぜひご体験ください。こち ています。しかも、これは毎週アーティストが変わり、毎 らのディレクターもさせていただいております。 週場所が変わるというようなツアーで、町歩きとアート体 験をセットにしています。 少し駆け足ですが、せっかく大分県にこうやって来てい ただける、別府だけではなくて、国東半島や大分市でいろ 美術展も同じで、美術展はもっとラジカルで 1 日 15 人し いろな所に行っていただけるのであれば、お土産も大分県 か体験できないというようなことにしています。それを 1 のものを、買って帰ってもらいたいと思っています。そも 日 2 本出しています。これは、ただ場所も 1 カ所ではなく そも今、地方創生といって、国からいろいろな形で入って て 4 名の作家に参加いただいているのですが、それぞれが くるのは大変ありがたいのだけれども、僕はお金の動き方 別府の特徴的な場所を展覧会の会場として選んでいるとい がどうデザインされているかが大変気になっています。で うような美術展です。 すので、主原料が大分県産のもの、大分県の方々が大量生 大友良英さんという方の作品ですけれども、それぞれの 産ではなくて自分たちで作っていること。さらには、その 家電がいろいろなノイズを発しながらある曲を奏でていく 人たちがその地域を回していく。例えばいい商品を作ろう、 というようなものです。昭和時代に作られた家電が、今は いい素材を作ろう、そのためには水がきれいでないととい ボロボロになりほとんどの動きもギイギイ言いながらなの けない。そのために山を守っていこうということです。つ だけれども、一生懸命、音を奏でている様子は、感動的な まり、そういう方々を応援することによって地域の環境や、 のです。そういうふうに操作をする人がいて、毎回 15 分ぐ また文化というものは守れるのではないか。そういうこと らいのミニコンサートを開催します。これもツアーに参加 を考えて、昨年の 10 月から Oita Made というブランドを大 しないと体験できません。そのようなことを混浴温泉世界 分県さんとやっています。 では今回しています。 ですから、参加者数がどのくらいいるのかということよ りも、その人たちはどういう体験をして、この後、どうい そのようなさまざまなプロジェクトを展開しながら今に至 るのですが、最後にお話しした内容をまとめていきます。 113 添付資料 創造都市政策セミナー これは ( 図)大分県全体の地図で、便宜上、JR の路線を書 ディスカッション いていますけれども、別府はこの辺りです。混浴温泉世界 ニッセイ基礎研究所研究 理事 吉本光宏氏 とベップ・アート・マンスが、同時期に開催しています。 ありがとうございます。ここからパネルディスカッショ さらには、国東半島に作品が残っています。これはピラミッ ンのファシリテーターを務めさせていただきますニッセイ ド型の作品ですけれども、そういうものをいつでも見るこ 基礎研究所の吉本です。どうぞよろしくお願いします。 とができます。さらには、この大分市ではトイレンナーレ、 最初の湯浅さんの本当に素晴らしいプレゼンテーション トイレのみがアートのプロジェクトの舞台である、前代見 に始まって、その後、3 人のパネリストの皆さんからそれ 聞のものがあります。また、他の地域、日田や竹田などの ぞれ非常にユニークといいますか、それぞれのお立場から、 とてもいい場所があるのですが、そういう所ですごい規模 三人三様の取り組みを発表していただきました。アーツカ は小さいけれども、とても地域に根差したいろいろなプロ ウンシルのプレゼンテーションは素晴らしさ、分かりやす ジェクトが生まれ始めています。そして、大分県立美術館 さに加えて、映像も良かったです。文化庁の磯谷審議官に などがここ大分市で集積をしていて、大分と別府のちょう 「あれと同じ映像を、ぜひ文化庁で作ってください」と先ほ ど中間に水族館があります。ここもアートで少しリニュー どお願いをしましたので、皆さんも近いうちにそれを使え アルをしていった場所があるのですが、これも大変に面白 るようになるのではないかと思います。 い場所で、うちも一部をプロデュースさせていただきまし た。 今日のテーマは創造都市と文化施設ということなのです が、イギリスの話、国内の 3 施設の話を聞きながら、文化 施設の中で展覧会や公演をします、という話がほとんどな かったことが共通していると思いました。また、どのよう に地域に働き掛けていって、文化や芸術を通じてより活力 のある社会をつくり出していくのか、という視点も共通し ていたように思います。特に衛さんのお話を聞いていると、 福祉や社会包摂、経営など、これは文化の話ではなく福祉 の話を聞きに来たのではないかと思うようなキーワードば かりが並んで、非常に印象的でした。 ここからは今日の全体のテーマに繋がる形で幾つかのポ イントについてディスカッションしていきたいと思います。 今、私が申し上げましたように、とにかく文化施設から外 にどうコネクションをつくっていって、地域であったり市 このようにいろいろな所、全県内で、いろいろな地域と 民であったり、そういう人たちにどういうインパクトをも アートが融合した試みが生まれているので、それらを 1 冊 たらすのか、ということが重要なポイントだと思います。 にまとめた ARTrip という本を出しています。これも、大分 まずは 21 世紀美術館の秋元さんから、最後の部分が少し短 県と一緒に出させていただきました。無料のフリーマガジ くなってしまったと思いますので、地域への繋がりや市民 ンです。 を巻き込む方法といった辺りのことをもう少しお話をいた また、レンタカーを借りていくのは大変だということで、 だけますか。 JR さんが、トイレンナーレという企画に対抗して、大分の トレインナーレという企画を作っていくのです。アートト 秋元氏:分かりました。美術館の活動が外に広がってい レインも走らせてスタンプラリーをしていく。これも少し るわけなのですが、冒頭でもお話ししたように金沢は文化 うちもやらせていただいたのですが、そういうものが今あっ 的な土壌というのが結構あるのです。伝統文化というとこ て、大分県内をグルグル巡っていって、大分はいい所だと ろが、大変に充実した都市の一つに入ると思うのですが、 思った方々が Oita Made のお土産を買って帰るというよう その伝統文化と新しく生まれつつある今の時代の文化とい に繋がっていくといいのではないかと思っています。 うのを、どのようにいい形で刺激し合える関係にしていく 一つ一つのプロジェクトはやはりコンパクトだけれども、 かということが大事な課題なのですが、それに美術館とし 質というか、深さです。その地域性をいかに体験できるか、 てどのように関わるかというが重要なところなのではない その深さを追求する。それを広域的に連携する。緩やかな かと思っています。 ネットワークを図っていって、顔の見える芸術祭、顔の見 えるアートプロジェクトを仕掛けていく。そのことによっ て、 地域で創造的な活動を始める人を増やしていく。それが、 吉本氏:最後のほうの具体例で、もう少しお話しされた いことがあったと思うのですが、それはどうですか。 我々の大きな活動の目標だと思っています。少し長くなり ましたが、以上で終わります。ありがとうございました。 秋元氏:それは様々な文化団体とネットワークしていく アライアンス構想のことだったのですが、金沢の旧市街地 に広がる大学、美術館、ギャラリー、アート NPO、作家の 114 添付資料 創造都市政策セミナー 結びつきを強めて、創造的な関係を構築していく、また、 文化観光マップとしても顕在化させていくという構想です。 ちのネットワークをつくることに他ならないと思うのです。 さっき言ったように、介護する人同士が身内意識を持つ アライアンスを組んでいるメンバーとイベントなどを定期 ような関係づくりを、アートを通してやっていくしかない 的に行い美術館単独で活動を終わらせないようにしたいと と思っていまして、そういう意味で言うと、社会のさまざ 思っています。そのためには共有できるテーマ設定が必要 まな課題というのは、文化芸術がきちんと対応できるので なわけですが、それは1つの組織を超えてその町全体で共 す。どういうふうでも対応ができる、とても柔軟なツール 有できるものである必要があるわけで、日頃から様々な意 であるというふうに私は信じていまして、それは提携しま 見のやりとりがなければなりません。その中で先ほど言っ したウエストヨークシャー・プレイハウスを私は初めて見 たような伝統文化でいえば、 例えば「工芸の現代化、産業化」、 たときから、アートのすごさというか、社会との親和性と 「創造都市構想、 文化のビジネス化」 「観光と町並み保存」いっ たテーマが生まれます。 いうのを感じています。さらに、もちろんいい作品を作っ て発信することもやりながら、こういう仕事を可児市民に サービスすることによって、可児市が住んでみたい町だと 吉本氏:ありがとうございました。次に、衛さんもスラ いうように外から思われるような町にしていくということ イドを駆け足で一気にいってしまったのですが、最後に学 です。そういう意味で言うと、町自体が、比較的朗らかになっ 校の具体的な数字もお見せいただきました。その ala 元気プ たという感じはしています。 ロジェクトを中心に町と関わることを本当に幅広くやって きていらっしゃって、ala の活動を通じて、可児市の市民や 吉本氏:ありがとうございます。今のお話で介護する方々 地域はこのように変わってきたというような実感があれば、 は大変だという話がありましたけれども、湯浅さんプレゼ ご紹介いただけたらと思うのですが。 ンテーションの中でも、ケアラーの方に対するサービスを やってらっしゃるということでした。その辺りもすごく共 衛氏:とにかく人口が増え始めたというのが非常に面白 通しているというように思いました。そして、何よりも人 いです。可児市というのは、待機児童ゼロの所です。若い 口が増えるというのは、今、日本全体が人口減少に入って ご夫婦たち、小さいお子さんのいるご夫婦さんたちが家を いる中で、地域の置かれている環境によって相当に違うと 建てて住み始めた。あと外国人の家族、とりわけ一人親の 思いますけれども、名古屋周辺の町の中でどこか住むとし 外国人の方が可児は住みやすいと、随分来ているそうです。 たら可児に住みたいという人が、何となく増えてきている 市長とお話しした時に、その子どもたちのこれからの環境 という感じなのですね。 を何とかしなければいけないということを話しました。 それから、私どもは今、7 本の制作をやっていると申し 衛氏:そうだと思います。 上げましたけれども、制作する事業には必ず市民サポーター が発生します。特に滞在型、アーティストのレジデンスで 吉本氏:それが税収増に繋がるということですから、ala やりますので、滞在しているアーティストたちやスタッフ のような文化施設や劇場・音楽堂などがあるから人口が増 の食の面倒です。自分の家で作ったコメや野菜などを提供 えていると言えるか、言えないか、直接的な因果関係は難 したり、毎週土日はパンを焼いて出してくれたりという形 しいかもしれません。けれども、なにがしかの要因になっ で、滞在している人たちを支える、ということを非常によ ていることは、衛さんも実感していらっしゃるところです くやってくれています。アーティストとの関係も非常に良 ね。 好でして、町自体が前に私の来た頃に比べると、そういう 人と繋がろうというような意欲を持った人たちが非常に多 くなりました。 衛氏:それは実感しています。とにかく先ほど写真があっ たように、劇場に来る方が非常に多いのです。決してお金 高齢者のアートなどもやっているのですが、高齢者は出 を落とす方ではないのです。少し休みに来て、またお母さ 入り自由なのです。これは毎週 1 回やったのですが、少し んが子どもを連れて芝生にブルーシート持ってきてお弁当 認知症になってしまった義理のお母さんを連れて娘さんが、 を食べていたりです。安心で安全な場所だというふうな一 「姑と一日中、昼間に一緒に家の中にいるのがつらくてしょ うがない」と言って ala に来られた。その方が、最後に担当 つのブランドができているということです。 こういう時代ですから何が起こるか分からないので、暴 者に電話をかけてきて「私、 お母さんが好きになったのです」 漢が来るといけませんから、3 年前に私は刺股を 3 本、買っ と言うそうです。ワークショップでは、意識的にお母さん てもらいました。私は個人持ちの木刀を買ってもらいまし とその方を引き離して、その認知症のお母さんのさまざま た。けれども、この安心で安全な場所だと可児市の市民が な対応をコミュニティーアーツワーカーの皆がとても楽し 思ってきて、羽休みに来られる場所だという場所は何とし そうに受け止めて、面白い、楽しいというような雰囲気を ても死守しなければいけないという感じはしています。 つくって、グループが進んでいったのです。やはり認知症 の親の介護は大変なので、認知症の方を介護する皆さんを、 どういうふうにケアしていくかといことは、介護する人た 吉本氏:ありがとうございます。衛さんがどすの利いた 声で木刀を持っていたら、少し怖いでしょうね。もう一つ 115 添付資料 創造都市政策セミナー に外国人も増えているということで、多文化共生もやって とても大きいのです。いろいろなプレーヤーが生まれてい いらっしゃいます。多くの民族というか、文化の違う方々 ます。僕らが関わっていない所でも、いろいろな活動を始 が一緒に住めるコミュニティーになるにも文化施設が貢献 めています。さらには、外から来たお客さま方を自主的に しているということです。今、ヨーロッパで移民の問題が 混浴温泉世界などに案内している人たちがいます。こうい 随分、問題になっています。日本では、移民に対する具体 うことがすごく嬉しいですね。つまり、今日お話ししたい 的なビジョンは今、見えていませんけれども、確実にこれ のですが、プラットホーム型の芸術祭というか、プラット から増えていくことは間違いないと思います。そういう点 ホーム型の文化を流していくことになるととても嬉しいと でも、可児の取り組みというのはすごく日本の状況を先取 思っているし、少しずつそういうことが始まっているので りしていろいろなことをやっていらっしゃるという印象が はないかと思います。 ありました。 山出さん、BEPPU PROJECT のランドリー氏を招いた国 吉本氏:そして、混浴温泉世界も 3 回目でやめられると 際会議のお話がありましたけれども、その前にアート NPO 確か宣言されていると思うのですが、これはトリエンナー フォーラムという全国のフォーラムをされましたよね。そ レが本当に全国あちこちでやるようになっている中で、や して実は今日のこの創造都市政策セミナーも、山出さんが めるということはすごく鮮烈なメッセージを発信している 誘致されたという話を聞いて、やはりと思いました。別府 ように思います。その辺りの考えを、ここでぜひお話しい で言ってみれば本当に小さな NPO という活動母体から始め ただきたいのですが。 て、混浴温泉世界を立ち上げ、その次にベップ・アート・ マンスを開催、それから platform というリノベーションが 山出氏:そもそも、2009 年の芸術祭をやったときに 3 回 あり、去年は国東半島全体の芸術祭を開催。そしてクリエ まではしようと考えたのです。それはその後、継続しない イティブなムーブメントが大分全域に広がってきているわ ということを、考えているわけではなく、準備から 10 年、 けです。山出さんは、まさしくそういうことを仕掛ける立 この方向性でいいのかということはやはり 3 回はしないと 場でいらっしゃると思います。それで一番大きな変化とい 分からない。僕は一つのタームを 10 年だと考えています。 うか、あるいは、10 年前と比べて随分変わったなど、その しっかり検証した上で、この先はどういうやり方が望まし 辺りを少しご紹介いただけたらと思うのですが、いかがで いのかということを芸術祭の仕組み、芸術祭というコンテ しょうか。 ンツありきで考えるのをやめたいのです。今、我々の社会や、 この先の未来の幸せは何だろうかということを考える上で、 山出氏:成果と感じるなど、いろいろな変化というのは その芸術祭なのか、そうではないやり方なのか、そこをも あると思います。10 年前に別に誰からも頼まれず始めたこ う一度、見極めたいと思っています。何回かやっていくと とではあるとはいっても、いろいろな方々にご協力いただ やはり知名度が上がってきて、いろいろな方に知られるよ いて、その芸術祭を開催しようとしたときに、今回の例え うになると、混浴はこういう形だ、ということが生まれて ば 2015 年の混浴温泉世界で集客交流人口の増加を求めな きてしまう。それはそれで大変嬉しいのですが、プロジェ い、という決断をさせてもらえたということは実は大きな クトとしてやっているので、それをやはりこの町、この時代、 ことなのです。人口と同じで、ずっと増えていくというこ この人たちとどうやってつくっていくのかということをま とではなく、その増えるということだけではない価値の在 ず最前提に考えたいので、一度ここで今までやってきたこ り方というものを、僕ら、文化に関係する人間はやはり言 とを検証し、どう次あるべきかということをもう一回、定 い続けなければいけないと思うのです。2012 年は 15 万人 義し直したいというように思っています。 が目標、というように言っていましたけれども、今回はそ もそも最大でも 3 万人しか来られないことを実行委員会や 吉本氏:ありがとうございます。山出さんの先ほどの発 県、市、あと企業とかいろいろな方々が入っている中で、 言の中で、集客交流人口の増大を目指さないという考え方 やろうと言ったときに、全員一致で、それでいこうという に基づいてという発言がありましたが。 ことを言っていただいたというのはとても大きいです。 つまり、アートというものを単なるそれこそ一過性の集 山出氏:ごめんなさい。それは少し言葉が足りなかった 客装置ではなく、今、衛さんもおっしゃったような一人一 のですが、集客交流人口の増加が駄目だという意味ではな 人の拠り所であったり、アートは全員が違うということが くて、僕が目指したいのは集客交流人口の多様化というこ 前提なので、多様な人たち、いろいろな価値に居場所があ とです。そこをすごく大切にしたいということです。 るということが担保されるものだと考えています。お客さ まの声でいろいろな交流が生まれて、いろいろな場所で出 吉本氏:ありがとうございます。何を話そうと思ってい 会いがあって、それを我々の NPO が全部を把握していない たかというと、冒頭に広瀬知事が「美術館もできてお客さ というところがとても大きな変化だと思います。 まもたくさん来て、そして地元の商店街が潤って経済的な 僕の理想は、僕がいなくなっても別府や大分がもっと面 白くなっているという状況でバトンを渡せるかというのが 116 効果がある」というふうに言ったら、ある人から「美術館 は新しい創造をする所です」と言われたということです。 添付資料 創造都市政策セミナー けれども知事は「いや、 経済価値も諦めずにやりたい」とおっ そして、来年は「工芸」をテーマにしているわけですけれ しゃっていました。こういう二つの考え方を対立させると ども、美術的に見た新しいトレンドをただ見せるというの 本当は物事の本質を見失うのですが、議論を分かりやすく ではなくて、工芸が産業としても芸術としても重要な金沢 するために最後に少しそのテーマでディスカッションをし の町に、一方で引きつけていくような視点も必要なのだろ たいと思います。 うと思います。そのために美術館の中だけに留まるのでな 人がたくさん来て、それで観光的な成果があり、そのこ く、テーマを共有して他の研究機関や組織と連携し、テー とによって経済的な成果があるというのは、例えば 21 世紀 マを深めていきたい。話がずれたので戻しますが、美術館 美術館も新幹線効果があるといえ、すごい人が増えていま の運営をただ来場者数の数字だけで言われたら少し辛いで す。そして、経済効果もあると思うのですが、そのことを すね。 目的に美術館をつくったわけではないと思うのです。です から、その美術館なり、あるいは創造的な活動を行うとい 吉本氏:220 万人という数字は、やはりすごいと思うの うことの本質的な価値と、それからその結果で生まれてく です。さっき、ディズニーランドとの比較がありました。 るであろう観光や経済の効果を一緒に論じると対立するか 少し古いデータですが、2012 年の世界で最も多く美術館の のように感じてしまう。別の言い方をすると、目的と、そ 入場者を集めているのはルーヴル美術館で、970 万人なの の結果で起こることは分けて考えなければいけないと私は です。ルーヴルの 5 分の 1 のお客さんが金沢市の現代美術 何となく思っているのですが、その辺りについて、秋元さ 館に来ているという事実。これは本当にすごい数字だと思 んから 21 世紀美術館のご経験に基づいてご意見いただけま うのです。この間、少し金沢に行く機会がありまして、そ せんか。 の 220 万人というのを聞いて、私は全く個人的な意見で申 し上げました。 「あまり人が来過ぎると、美術館としてのサー 秋元氏:公立美術館では入場者数というのが目標として ビスの質が低下しないのですか。もしそういう課題がある 掲げられます。金沢 21 世紀美術館もそのように数字目標を なら、開かれた美術館から閉じられた美術館を目指したら 持ち、外からの評価のバロメーターにもなっています。と どうでしょう」と僕は秋元さんに言ったのですが、その辺 きにはそれが過剰な期待を生み数字だけが独り歩きしてし りはいかがですか。要するに質を高めていくということと、 まうこともあります。ひとりでも多くということになり、 量を増やすということは、どこかで限界というか臨界点が 数だけを求める。しかし実際の現場は来場する人たちの数 あると思うのですが。 はもちろんだけれども、それだけでなく、あるいはそれ以 上に、どのような人たちが来場するかという、来場者属性 秋元氏:そうですね。美術館のスタッフの中でもいろい が気なる。繰り返しですが、数だけでなく、どのような人 ろな意見があるので、いま今後の方針を考えているところ かという属性によって美術館で生まれる場が全く違う。場 です。個人的には、両方持っていて、「どこまで多くの来場 そのものが変質していく。だからどんな人達かというのは 者を受け入れられるのだろうか? それに挑戦したい」と とても大事な観点なのです。その人達とどのようなコミュ ニケーションが成り立つかが一番大事ですから。 だから人数だけを目標にしていくと、館の運営目標が見 いう気持ちと、現実のオペレーションの状況を見ていると 「規制した方がいい。最低限でも鑑賞環境を確保したい方が いい」という思いが交錯しているのです。 えなくなって、理念そのものが細ってしまうわけです。そ ただ、どのように見ても、あの施設だけでは、行き詰まっ のためにどんなお客様、あるいはどんな人達と関係を深め ています。例えばレストランにしてもショップにしても、 るかを考えることが大事になります。そこで常に接してい ギャラリーにしても、もうどこもいっぱいに人が溢れてい る地元・金沢の皆さんとの関係が大事になる。金沢という町、 ます。極端な言い方ですが、ゴールデンウィークや夏休み 金沢という土地を足場にして美術館活動をやっていってい 期間などは時間帯によっては足の踏み場がないという状況 るので、金沢のまちの課題というか、今後のテーマとどこ になっています。とにかく人だらけと言う状態で、こんな かで館の運営をリンクさせていくということが大切になる。 ことが地方の美術館であるのかという状況です。多分、客 そうすることで館の存在意義がしっかりする。すると来場 様の動線を考え直さないといけないぐらいなのではないか 者数だけに振り回されずにすむと思うのです。ただ、金沢 と思うぐらいです。もうこれ以上のお客様は入れませんと 21世紀美術館の現状の来場者数が多いので、やはりそれ あんまり簡単に諦めたくない気持ちはありますが、一方で を下回るというのはなかなか想定ずらい。設置主体の市も 本当に時間制限などを設けないとダメなのではないかと思 右肩上がりの数字をなんとなくですが思い描いています。 うのです。現場は大変なので、その中で今、一生懸命に皆 ここのところ学芸的には年間を通してテーマを設けてい で考えているところです。 ます。金沢との関わりが直接間接にあるテーマで年間を通 じた大きなテーマです。例えば去年だったら「建築」がテー 吉本氏:ありがとうございました。レッドゾーンを越え マだったのですが、単に建築展をやるというのではなくて、 て、その先に行くと、何が起こるかというような感じでしょ 金沢の町中に残る歴史的建築を振り返りつつ、金沢の町の うか。クリエイティビティーのさらに先に行くような感じ 建築事情なり、現状の課題なりを浮かび上がらせていく。 がしましたけれども、衛さんの所は 50 万人ぐらいでしたで 117 添付資料 創造都市政策セミナー しょうか。 とです。 最近は、政府はトリプルダウンと言わなくなりましたけ 衛氏:そうです。昨年は 43 万ぐらいです。 れども、私は、トリプルダウンは悲しき流しそうめんだと 思っているのです。つまり、最後のほうは 1 本か 2 本のそ 吉本氏:簡単に量で測れない部分があると思います。そ うめんを食べるだけだということです。その 1 本か 2 本の れと、今日ご紹介いただいたことは、例えば福祉というよ そうめんを皆で分けて食べる層が、すごく広がっています。 うなキーワードがあって、福祉の祉というのはもともと幸 これはもちろん現金給付で何とかするということもあるの せというような意味が入っているということだと思います でしょうけれども、一方で私たちのような劇場をやる人間 が、質をしっかり保って少ない人数に深い文化的なサービ たちが、その人たちにコミットメントをする、支えるのです。 スを提供していくということをやはり重視をされているの 私たちだけで支えられるのではなくて、支え合う仲間をつ ですか。 くるのです。つまり、身内意識を持った仲間をつくるのです。 そこの役割を果たしていくということが、まちを取りあえ 衛氏:はい。僕は実は金沢 21 世紀美術館がオープン前か ず健全にしていくことではないかという感じです。 ら山田市長と一緒になって、10 年間、金沢市民芸術村のディ レクターをやっていて、21 世紀美術館ができたら、一気に 吉本氏:ありがとうございました。最近、文化芸術によっ 予算が減らされたのです。今、終えんに向かっているわけ て、教育や福祉、あるいは地域再生にすごくインパクトが ですが、けれども、21 世紀美術館はそれだけの役割を果た あるということが語られています。実際に創造都市にはそ していたというように私は思っています。 ういう概念も含まれているものだと思うのですが、最後に 同じコンセプトで、私は実は可児市の 5 年目に入ってき 山出さんからもう一言いただきたいと思っていることがあ ているのですが、もちろん例えば 1 年目演劇を 4 本見る市 ります。先ほどのスライドの最後のページを多分時間の関 民が 36 名だったのが、今、213 名になっているのです。最 係から飛ばされていて、そこに非常に重要なことが書いて 大 1760 人ぐらい私どもがつくった演劇にお客さんが来てい あるのです。「アートは地域の課題を解決しない、問題提起 るのです。10 万の町で、ほとんど奇跡的な数なので、確か を行う」とありました。ですから、その辺りのことについて、 に数が増えるのはとてもいいことなのですが、一方でまち 山出さんに創造都市ということを念頭に置きながら、少し 元気でやっていることというのは実は引き算ではないかと 思いを語っていただいて、最後にしたいなと思うのですが。 思うのです。福祉、教育、保健医療に掛かる予算を、実は 削減させているのではないかということです。それが、私 にとっては引き算が目標なのです。 山出氏:時間もあって、はしょっていったのですが、そ こに書いていたのは 3 つポイントがありました。アートは 例えば私が宮城大学にいる頃に、岩手県の東和町、ここ 何なのだろうと考えたときの僕らなりの考え方です。アー は今、花巻市になっていますけれども、ここは農水省の若 トとは自由な物の見方や考え方を促し、気付きを与える媒 い女性職員が農水省を辞めて町に就職したと、一度、評判 体であると、僕は考えています。デザインとアートという になっていまして、公民館で生きがいづくり事業というの のは、ここが大きく違うのだと思うのです。誰かと誰か、 があるのです。それをやったら、高齢者の医療費自体が非 クライアントと消費者を繋げていくためにコミュニケー 常に下がった所です。病院以外に、他に行く場所ができた ションを、例えば言葉を翻訳することや、そこに新しい何 のです。仲間も支え合って、生きがいになって生きる意欲 か表現をするということがデザイナーの目的ではなくて、A が生まれているということなのです。 と B を円滑に繋げていくということが本来の目的だと思い それと同じように、実は、教育や福祉、保健医療という ます。ただ、アートというのは内発的な衝動で、100 人い ものの予算をいかに引き算していくか、ということをうち れば 100 通り違う表現が起こりやすいのだと思っています。 がやっているというように感じています。ですから、数字 つまり、これは何かの課題を解決することではなくて、い を積み上げるのがいいことだけではなくて、むしろ全体か わば問題提起だと思っているのです。言葉の使い方が違う ら見ると、予算の負担が減っている。そのためになるとい かもしれないので、誤解をされないように聞いてほしいの うことは市民の負担が減るということなので、そういう引 ですが、僕は、アートは「地域の課題解決する」とは全く思っ き算なのではないかということが一つあります。 ていないのです。僕らはマネジメントをやっているので、 やはりそのように言いながら、先ほど言った就学援助を いろいろな誤解をされながらいるのです。つまり、この地 受けている子どもの数と一人親家庭の児童扶助を受けてい 域、この場所が自分にとってはこのように、見えるという る子どもの数です。これはご家族で見に来られるように、 ことが大切ではないかと、問題を投げ掛ける。例えば、美 チケットをあしながおじさんでやるのですが、個人情報に 術館の中に便器が展示されるなどと思ったことがありまし 関わることなので、学校福祉課からと子ども課から言われ たか。そのように提示をされたときに、あっと気が付くこ た数だけのチラシを収めるだけで私はノータッチなのです とがあります。美術館の中に置かれることによって、これ が、この数になると驚きます。それも、私が行ったときから、 を自分たちはアートと見なしている、という気付きがあり 今、8 年目です。8 年で、これほど数が増えるのかというこ ます。その気付きが起きて、いろいろなことに対して、例 118 添付資料 創造都市政策セミナー えば感じやすくなったり想像力が膨らんだり、その鑑賞者、 るなんてきっと思いもしなかったと思います。そして、こ 体験をした我々市民が町を変えるのだと思うのです。 の後、ワークショップがありますけれども、2020 年という ですから、アートというのはある意味、心を活性化させ のがその 1995 年から数えるとちょうど四半世紀になるわけ ていくための媒体であって、活性化した我々市民が変えて です。ですから 2020 年を目標に、この全国に広がっている いくのだと思うのです。そこにいくと、大変大きな意味が 創造都市の取り組みが、次の新しいチャレンジに向けて展 あるし、もう一つ付け加えるならば、言ってみればアート 開をすればいいというふうに思いました。それでは、これ はいろいろな今までにない価値をつくることなので、社会 でこのパネルディスカッションを終わりたいと思います。3 をある種のイノベーションや創造をして前進させる、その 人のパネリストの皆さん、ありがとうございました。 活力を生むことはあるかもしれません。ただ、もう一つ重 要なのは、アーティストがつくる作品は全員が違うという ことを言っているのは、つまりそれは多様な価値がここに 共存しているということで、それは強い弱いなどというこ とではなくて、本当に多分、皆の居場所があると思うのです。 先ほどの可児市の話もそうですけれども、そういうこと を大切にしていく、そういうことに気が付いていくという ことが一番の効能だと思います。たくさん自治体の方がい らっしゃいますが、アートをやればいいのだ、芸術をやれ ばいいのだ、芸術をやったら人数が増えるのだということ 文化庁 平成27年度文化芸術創造都市推進事業 創造都市政策セミナーin大分 創造都市と文化施設 2015 年9 月9 日 水 10 日 木 10日 視察 / 有料 9日 14:30-18:20 セミナー / 入場無料 一部 基調講演「創造都市と文化施設-英国の事例-」 主催 二部 パネルディスカッション 「創造都市と文化施設」 www.bunka.go.jp 三部 ワークショップ 「地域における文化プログラムの実施に向けて」 ccn-j.net/ 会場: 大分オアシスタワーホテル 3F 紅梅の間 共催 〒870-0029 大分県大分市高砂町2-48 大分県 問合せ:事務局(平成27年度文化芸術創造都市推進事業受託事業者) 一般社団法人ノオト [email protected] www.pref.oita.jp 申込: https://f.msgs.jp/webapp/form/13503_jzt_98/index.do ccnj 大分市 www.city.oita.oita.jp ではない。その来た人たちが地域のことに関して、この町 はいい町だね。皆に紹介するよと言って、だんだんと増え ていく、ということを一番お勧めしておきます。 吉本氏:ありがとうございました。最後に重要なポイン トをご指摘いただいたと思います。既に頂いた 30 分を超え ていますので、この辺りで終わりたいと思います。創造都 市と文化施設というのは一言でまとめて言うことはできま せんし、今日はそういう結論を出す会でもないと思います が、やはり冒頭の湯浅さんのプレゼンテーション、それか ら 3 人のパネリストの皆さんのお話、そして今のディスカッ 大分県立美術館(OPAM) 平成27年4月24日開館(設計者 坂茂) をしていくという空気をつくるというか、そういう人材を イギリスのプレゼンテーションの中でも、子どもたちに たちを育てるということをすごく重要視されているようで した。それから、衛さんの所も子どもというのがすごくター ゲットですし、21 世紀美術館も 4 番目のビジョンは子ども と共に育つことだったと思います。そして山出さんの所は、 地域の人々の皆がクリエイティブになるというようなこと ですので、ぜひこれからの創造都市というのは、各地でい ろいろな環境も違うし、性格や目標も違うと思いますけれ ども、各地でそれぞれの地域ならではの創造都市というも のが、発展してほしいというように思います。 確か、チャールズ・ランドリーとビアンキーニが『The Creative City』という小冊子を発行したのは、 1995 年ですね。 ですから、今年は 20 年です。日本では佐々木先生が旗振り 役で、創造都市というのがこれだけ広がり、61 の団体がネッ トワークに入っている。ランドリー氏も佐々木先生の招き で何度も来日されていますけれども、日本がそのようにな 三部 コミットして、将来、クリエイティビティーのある子ども 14:30~14:35 二部 思いました。 9日 プログラム 定員150名/無料 14:00~ 受付開始 一部 つくっていくということがすごく重要なのだというように 創造都市の取組を進めていく上で、美術館や劇場などの文化施設は どのような関わりや役割を担っていくべきなのでしょうか。 あるいは、市民がそれらをどのように活用していくべきなのでしょうか。 英国や国内の先進事例を紐解きながら、 これらの問題意識について、考えていきます。 て、従来にない考え方で新しいことにどんどんチャレンジ 創 造 都 市 と文 化 施 設 ションを聞いていて、地域にも新しい価値をつくっていっ 14:35~14:40 14:40~15:25 15:25~15:35 主催者挨拶 文化庁 開催地挨拶 大分県知事 基調講演「創造都市と文化施設-英国の事例-」 講師:ブリティッシュ・カウンシル アーツ部長 湯浅 真奈美氏 休憩 15:35~17:00 パネルディスカッション「創造都市と文化施設」 ファシリテーター:ニッセイ基礎研究所 研究理事 吉本光宏氏 パネリスト:金沢21世紀美術館 館長 秋元 雄史氏 可児市文化創造センター 館長兼劇場総監督 衛 紀生氏 NPO法人 BEPPU PROJECT 代表理事 山出 淳也氏 17:00~18:20 ワークショップ「地域における文化プログラムの実施に向けて」 シンポジウム参加者と文化審議会文化政策部会委員による意見交換 10日 視察 定員40名/2,100円 午前 大分県立美術館、おおいたトイレンナーレ2015 午後 別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」 一部 基調講演「創造都市と文化施設-英国の事例-」 講 師 湯浅 真奈美 | ゆあさ まなみ ブリティッシュ・カウンシル アーツ部長 大学卒業後、 国際産業見本市主催会社の広報部を経て、 独立系の映画配給会社の劇場宣伝部に所属。 宣伝プロデューサーとして、 劇場公開映画の広報宣伝を担当。 1995年、 英国の公的な文化交流機関、 ブリティッシュ・カウンシルのアーツチームに所属。 2005年より現職。 アーツ部門の担当ディレクターとして、 日本におけるブリティッシュ・カウンシルのアートプログラムを統括。 日英両国の文化機関と連携し、 文化芸術を通した日英間の交流事業、 人材育成プログラムなどを担当。 二部 パネルディスカッション「創造都市と文化施設」 パネリスト パネリスト 秋元 雄史 | あきもと ゆうじ 東京藝術大学大学美術館館長・教授/ 金沢21世紀美術館館長 山出 淳也| やまいで じゅんや NPO法人 BEPPU PROJECT 代表理事/アーティスト 1970年大分生まれ。2005年に同団体を立ち上げる。平成20 年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞 (芸術振興部門) 。 国東半島芸術祭 総合ディレクター(2014)、別府現代芸術 フェスティバル 「混浴温泉世界」 総合プロデューサー(2009、 2012、 2015) 、 おおいたトイレンナーレ2015総合ディレクター。 1955年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科卒業 後、1991年よりベネッセアートサイト直島のアートプロジェクト に関わる。2004年より地中美術館館長、 ベネッセアートサイト 写真提供:金沢21世紀美術館 直島・アーティスティックディレクターを兼務。 2007年より金沢 21世紀美術館館長。 「金沢アートプラットホーム2008」、「金沢・世界工芸トリエンナ ーレ」、「工芸未来派」等を開催。2013年4月~2015年3月東京藝術大学客員教授、 2013年4月~秋田公立美術大学客員教授も務める。2015年より東京藝術大学大学 美術館館長・教授を兼務。 パネリスト 衛 紀生| えい きせい 可児市文化創造センター館長兼劇場総監督(専務理 事)/特定非営利活動法人舞台芸術環境フォーラム地域 演劇マネジメントセンター代表理事/演劇評論家/劇場 経営アドバイザー/文化経済学会理事/(公社)全国公文 協理事/(公社)日本劇団協議会理事 ファシリテーター 吉本 光宏|よしもと みつひろ ニッセイ基礎研究所 研究理事 1958年徳島県生まれ。早稲田大学大学院修了 (都市計画) 後、社会工学研究所などを経て1989年からニッセイ基礎研に 所属。 東京オペラシティ、 いわきアリオス等の文化施設開発、 東 京国際フォーラム等のアートワーク計画などのコンサルタント として活躍する他、文化政策、創造都市等の調査研究に取り組む。現在、文化審議会 文化政策部会委員、文化庁2020年に向けた文化イベント等の在り方検討会座長、 東京芸術文化評議会評議員/文化プログラム検討部会長、 (公社)企業メセナ協議 会理事、東京藝術大学非常勤講師。著作に 「再考、文化政策(ニッセイ基礎研所報)」 「アート戦略都市 (監修、 鹿島出版会) 」 等。 早稲田大学中退後、虫プロダクション企画演出課に勤務。ほ ぼ同時に演劇批評家として70年初頭より雑誌「新劇」等に連載を始める。80年代後 半からBSエンターテイメント・ニュースの演劇キャスターを務め,93年に地域演劇の 振興と演劇環境の整備を目的に舞台芸術環境フォーラムを設立。現在、文化庁、財 団法人地域創造、芸術文化振興基金、芸団協、芸術文化振興会議などの委員、 日本 照明家協会賞舞台部門、 ニッセイバックステージ賞等の審査委員を務める。早稲田大 学文学部講師、県立宮城大学事業構想学部・大学院研究科教授を経て、現職。 会場の大分オアシスタワーホテルまでは、 JR大分駅(府内中央口)より、徒歩8分、 循環バス(大分きゃんばす)で5分、 タクシーで3分程度となります。 ※なお、会場の大分オアシスタワーホテルに隣接して、 本年4月に開館したばかりの 大分県立美術館(表面写真)がございます。 この機会に、ぜひ、ご来館ください。 OPAM 視察集合場所 iichiko総合文化センター1F アトリウムプラザ 会場 オアシス タワーホテル 府内中央口 別府現代芸術 フェスティバル2015 「混浴温泉世界」 会期 2015年7月18日 -9月27日 会場 大分県別府市内各所 JR大分駅 ▲告知パンフレット 119 添付資料 創造都市政策セミナー 参 加 者 アンケート ( 有 効 回 答 数 3 4) 1、本日のセミナーをどちらでお知りになりましたか 5.① 本ワークショップを通じて「文化プログラム」に対 17 する認識は深まりましたか。 2)大分県からの案内、大分県のサイト 4 3)ツイッター、フェイスブック等の SNS 4 4)設置パンフレット、案内パンフレット 2 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 5)その他 7 1)CCNJ メールニュース、CCNJ のサイト ※複数回答あり 2、 本 セ ミナ ー へ の 参 加 理 由 を お 聞 か せ 下 さ い。 1)大分県立美術館、もしくは大分での取組に関 心があったから 3 2)テーマ「創造都市と文化施設」に関心があっ たから 22 3)創造都市、創造農村の取り組みに関心があっ たから 4)CCNJ の活動に関心があった、または CCNJ の会員だから 5)その他 15 13 3 ※複数回答あり 15 8 4 ※未回答あり ②「文化プログラム」の実施に向けて、本ワークショップ の内容は参考になりましたか。 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 12 11 3 ※未回答あり ③ 本ワークショップで参考となった内容があればお聞か せください ・九州での連携は各地域が離れいて大変。まとめ役が苦 労する、メリットがあればよいが。 ・文化庁の事業説明になっている。 ・実例をどう文化プログラムとして、みがきあげるか参考 3、本日のプログラムのうち、関心の高かったものをお にしたい。 選びください。 ・詳しく聞けてよかった。ガイドラインなど注目しています。 1)基調講演「創造都市と文化施設— 英国の事例—」湯浅真奈美氏 23 2)事例発表 金沢 21 世紀美術館館長 12 秋元雄史氏 3)事例発表 可児市文化創造センター館長 兼劇場総監督 衛紀生氏 15 4)事例発表 NPO 法人 BEPPU PROJECT 代表理事 山出淳也氏 21 5)ディスカッション ・文化プロジェクトの認定スチームが示されたりし、今後 の取組を考える参考となった。 6.今後の CCNJ の活動に、期待する内容があればお聞 かせください。 ・具体的な連携についての提案。 ・具体的な都市のビジョンと具体的な施策に繋がる提案 を多くいただいて、共有していきたい。 7 ・自治体で海外ゲストや大使館をよぶのは、費用的にも ※複数回答あり 人脈コネクション的にも難しいので、ネットワークで先進 ・1、4) 様々な事例が聞けてよかった。 事例を多くの自治体に紹介していただきたい。 ・5) ディスカッションでの美術教育に関するやりとりが良 かった。 7.その他、ご意見・アイデアなどがあればお聞かせく ・ 1、 3) どちらも英 国 の 事 例 で、social inclusis みゃ ださい。 divercity などユネスコが重視している観点と同じだから。 ・高齢化著しい文化団体や市町村に説明するのも大変。 弱者のためのアートの果たす役割が興味深かった。 市町村は目の前の任務で精一杯。郷土芸能は別として、 文化との優先順位は低い。 4、① 本プログラムを通じて「創造都市・創造農村」 ・時間が足りない(盛りだくさんすぎ)では 。 に対する認識は深まりましたか。 ・地域に良いプランナーや、プロデューサーがいても、窓 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 24 8 0 ※未回答あり ② 創造都市政策を進める上で、文化施設が担う役割の 重要性を感じましたか。 a. はい b. どちらともいえない c. いいえ 28 3 0 ※未回答あり 120 口となる自治体職員の知識やモチベーションが低く、規則 ばかりいわれて、前向きな運営が難しい。 文化芸術創造都市推進事業 成果報告書 本報告書は、文化庁の委託事業として「一般社団法人ノオト」が実施 した平成 27 年度文化芸術創造都市推進事業の成果をとりまとめたも のです。 従って、本報告書の複製、転載、引用等には文化庁の承認手続きが必 要です。
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