Title Expression of ZNF396 in basal cell carcinoma( 内容と審査の要

Title
Expression of ZNF396 in basal cell carcinoma( 内容と審査の要
旨(Summary) )
Author(s)
白, 俊丞
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第962号
Issue Date
2015-01-21
Type
博士論文
Version
none
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/50895
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
[
俊
]
氏名(本籍)
白
丞(中国)
学位の種類
博
学位授与番号
甲第
学位授与日付
平成
学位授与要件
学位規則第4条第1項該当
学位論文題目
Expression of ZNF396 in basal cell carcinoma
審査委員
(主査)教授
山
口
瞬
(副査)教授
武
田
純
士(医学)
962
27
年
号
1 月
21 日
教授
清
島
眞理子
論文内容の要旨
Notch 経路を抑制し,神経分化を阻害する因子として,転写抑制因子 Zfp191 が知られていた。表
皮細胞分化での Notch 経路の上流にある因子を検討するため,まず予備実験として,Zfp191 が表皮
でどのように発現しているかを免疫組織学的に検討した。Zfp191 は,表皮において基底細胞のみな
らず有棘層細胞,顆粒層細胞の核でも強く発現していた。そのため,表皮での Notch 経路の抑制,
表皮細胞分化には Zfp191 以外の転写因子が重要な役割をしていると考えられた。そこで本研究では,
Zfp191 の family protein である ZNF396 の表皮分化への役割について検討した。
【対象と方法】
市販の抗 ZNF396 抗体は予備実験で Zfp191 との交差反応性を有していたため,ZNF396 に対して特
異的に反応する単クローン抗体を作製した。まず,大腸菌を使って ZNF396 に特有のアミノ酸配列か
らなるリコンビナント蛋白質を作製した。次にこの蛋白質を使ってマウスを免疫し,ZNF396 に対す
る特異単クローン抗体の作製,樹立を行った。
得られた特異抗体で,非腫瘍性表皮,基底細胞癌 38 例,有棘細胞癌 74 例を含むアーカイバルな
病理ストック標本を免疫組織染色し,ZNF396 の発現を検討した。
次に,基底細胞癌培養細胞株(TE354.T)を用いて,ZNF396 発現の病理学的な意義について検討し
た。具体的には,ZNF396 発現を siRNA 法で抑制することで,TE354.T における Notch 発現,リガン
ド依存性 Notch 活性化の指標である Hes1 mRNA 及び Hes1 蛋白質発現,表皮分化の指標である
involucrin 発現に変化が現れるか,RT-PCR 法,ウエスタンブロット法で検討した。さらに,ZNF396
発現を抑制することで,TE354.T の細胞増殖能力に変化が現れるか検討した。
【結果】
ウエスタンブロット法による解析で,Zfp191 に交差反応性を有さない,抗 ZNF396 抗体の作製に
成功した。この抗体を用いた免疫組織染色では,非腫瘍性表皮組織において,基底細胞の核に陽性
像がみられたが,有棘層細胞,顆粒層細胞に陽性像はみられなかった。
表皮基底細胞類似の形態を示す基底細胞癌では 38 例中 35 例に強い陽性像がみられたが,皮膚有
棘細胞癌では 74 例中 4 例に,部分的に弱い陽性像がみられるに留まった。
ZNF396 に対する siRNA を用いて培養細胞株 TE354.T で ZNF396 発現を抑制すると,Notch2 発現が
誘導され,Hes1 mRNA 及び Hes1 蛋白質発現も認められるようになった。また,ZNF396 の発現抑制で
TE354.T に involucrin の発現誘導がみられた。さらに ZNF396 発現抑制により TE354.T の細胞増殖
が,有意に抑制されることが明らかになった。
【考察】
ヒト表皮組織では ZNF396 が Notch 発現を負に制御することで,Notch 経路を抑制し,表皮分化の
阻害と,基底細胞の自己増殖能力の保持に関係していることが示唆された。
ZNF396 発現抑制,あるいは,その機能障害で,基底細胞癌が制御できる可能性があると考えられ
る。
基底細胞癌は,転移能力がほとんどないが,浸潤能力が高く,局所制御方法が開発されれば,有
意義であると考えられ,本研究知見が,新たな分子標的薬剤の開発につながる可能性もあると考察
する。
【結論】
①本研究で確立した Zfp191 と交差反応性をもたない抗 ZNF396 単クローン抗体は通常ホルマリン
固定標本でも ZNF396 の病理的あるいは生理的な役割を検討するのに有用な抗体と考えられる。
②ZNF396 はヒト表皮で基底細胞に限局発現していることが明らかになった。
③多くの基底細胞癌の核では ZNF396 の強い発現が観察されたのに対して,大部分の皮膚有棘細胞
癌では ZNF396 の発現が検出されなかった。
④基底細胞癌細胞 TE354.T では ZNF396 が Notch2 遺伝子の転写を抑制し,Notch 経路が始動しな
いように働いている可能性が示唆された。また,ZNF396 の発現を抑制すると,Hes1 発現を含む Notch
経路活性化,有棘細胞への分化傾向を表す involucrin 発現とともに,細胞増殖の抑制が起こること
が明らかになった。
論文審査の結果の要旨
申請者
白俊丞は,転写因子 ZNF396 に対する特異的単クローン抗体を作製し,その抗体を用いて,
非腫瘍性表皮の基底細胞や,大部分の皮膚基底細胞癌で ZNF396 の強い発現がみられること,その一
方で,皮膚有棘細胞癌においては,ZNF396 の非常に弱い発現しかみられないことを明らかにした。
さらに皮膚基底細胞癌培養細胞を用いて解析を行い,ZNF396 が表皮分化を抑制するメカニズムの分
子的基盤を明らかにした。本研究の成果は,表皮分化の制御機構に関する新たな知見をもたらし,
皮膚科学,分子病理学の進歩に少なからず寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
Juncheng Bai, Yusuke Kito, Hiroshi Okubo,Tomoko Nagayama,Tamotsu Takeuchi
: Expression of ZNF396 in basal cell carcinoma
Arch Dermatol Res 306,399-404(2014).