Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2014 OPEN EYE 16 オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー vol. 2014 June INDEX トップインタビュー 中部電力株式会社 執行役員 情報システム部長 ユーザー事例 Success Story 松田 信之氏 ユーザー事例 Success Story 中部電力株式会社 日本航空株式会社 レッドハット製品へのリプレースで 安定稼働とコスト大幅削減を両立 国内ツアー予約システムの基盤を、 WebSphereからRed Hat JBossに移行 システムのホワイトボックス化を実現 ○ レッドハット最新レポート ○ 2014年4月14日∼17日 Red Hat Enterprise Linux 7の特徴とLinux事業戦略を発表 「Red Hat Summit 2014」in サンフランシスコ [開催レポート] ○ レッドハット製品情報 Red Hat JBoss Middleware 製品テクノロジー構想 ユーザー事例 Success Story 中部電力 トップインタビュー 本誌PDF版をダウンロードいただけます。 右記QRコードからアクセスしてください。 電力業界でナンバーワンのIT部門を目指し、 OSSをはじめ最先端技術を積極的に採用。 危機をチャンスに変え、従来の殻を破る 中部電力株式会社 執行役員 情報システム部長 松田 信之 氏 なく2 0 1 1 年に発 生した東日 愛知、岐阜、三重、長野、静岡の中部5県で電気事業を展開する中部電力株式会社。 ―IT 部門が業務再構築プラ 本大震災です。政府の要請を ンの中で取り組んだIT投資コス 2010年からは、全社を挙げた業務再構築プランへの取り組みを開始し、高コスト体質か 受けて、静岡県御前崎市にあ トの削減とは、具体的にどのよ る中 部 電 力 唯 一 の 浜 岡 原 子 うなものだったのでしょうか。 らの脱却を実現しつつある。同社の事業展開において、ITはどのような位置付けにある のか。 執行役員 情報システム部長の松田信之氏に伺った。 力発電所の稼働を停止しまし たが、その結果代替燃料の購 「我々電力会社にとってミッ 入が必要となりました。一方、 ションクリティカルなシステムの ―はじめに、貴社のビジネス 我が社では 2010 年から経営 ひとつに、配電システムがあり 活動におけるIT の役割について 効率化に向けた取り組みとし ます。営業区域内の電柱から各 お聞かせください。 て業務再構築プランを実施し 家庭まで電気を送るための各 ており、IT 部門では IT 投資コ 種設備を管理するものですが、 「必要不可欠な社会インフ ストの削減方針を決定してい まずはこのシステムに関連した ラである電力を安心、安全に ました。当時からオープンソー コストの削減を目指しました。 供給するためには、それを支 スソフトウェア(以下、OSS)の 具体的には、インフラの維持コ える IT の安定稼働が何よりも 採 用 を 検 討して い た の で す ストを約半分にし、 さらに開発/ 重要です。しかし同時に今の が、その過程で震災が起きた。 保守の生産性を 30%向上させ IT には、企業全体のコストの 社 長 からは I T 部 門だ けでな ることです。さらに我々は電力 大幅削減にも寄与することが く、全部門に対して 出血を止 業界でナンバーワンの IT 部門 求められています。その大きな めて欲しい という指示が出さ になるという信念の下、最先端 転機となったのが、言うまでも れました」。 の技術を積極的に採り入れて、 OSSの採用で、インフラコストの半減と 生産性の30%向上を目指す Success story for your business コスト効率では同業他社に負 業務を経験し、情報システム関 なか、我々は方針が決定された けないトップレベルを目指すと 連会社である中電シーティーア 時点ですでにLinuxの導入検討 いう目標を立てました。この取 イの 設 立 にも携 わって、イン に着手していたので、対応を進 り組みの中で OSS の導入を検 ターネットプロバイダ事業など めつつ Linux への移行も成功さ 討し、最終的にレッドハット製 を担当しました。その間、さまざ せることができました。 品の採用に至りました」 。 まなテクノロジーに接してきま また、コスト削減への貢献は したが、20年以上も前、当時の 引き続き重要なテーマです。市 ―現在では基幹系システムに 先輩に登場したばかりの Linux 場独占性のあるベンダーは、価 OSSを採用する大規模企業もか をどう思うかと聞いた時、最終 格をコントロールできる環境に なり増えてきていますが、 電力 的に誰が責任を採るのかが不 あり、平気で保守料を毎年値上 既存のホストも含め、2020 年 会社のミッションクリティカルな 明確なものは企業では使用で げしたりします。これは許せな までにこれら全てを仮 想 化と システム という観点からは、や きない。特に我々のような電力 い。私たちユーザー企業にでき セットにして L i n u x に置き換 はりOSSの採用はきわめて画期 会社のシステムにOSS は論外 る唯一の抵抗は、そうした商用 え、我々が 中電クラウド と呼 的な選択だったと思われます。 と言 わ れました 。しかしイン 製品から脱却することで、実際 ぶこの基盤上に業務システム ターネットが普及し、Web 2.0 に我々はデータベースを OSS も順 次 、移 行していく予 定で 「確かに、リスクを犯してシス という考え方が出てきて、OSS の PostgreSQL に切り替えると す。これによって、インフラコス テムの品質が低下したら誰が のエコシステムはこれからの主 いう大方針を立て、既にいくつ トを約半分に削減できる見込 かのサーバーシステムに導入 みです」。 どが約500台残っていますが、 しました」。 仮想化とLinuxを採用して、 ベンダーロックインを回避 2020年までに 中電クラウド への移行を完了 ―最後に、 レッドハットに対す ―先ほど 商用製品に依存し るご意見やご要望についてお 続けるのは技術者としても面白 聞かせください。 くない というお話がありました。 「OSS はコストの大幅削減や この点でもOSSは有効だと思わ 技術者のモチベーション向上 れますが、 いかがでしょうか。 Nobuyuki Matsuda などをもたらしてくれるもので、 流になると直感したのです。米 国の証券取引所の多くがLinux 「今、中電シーティーアイで その有用性については疑う余 を採用しており、Linux を導入 は若い技術者 4∼5 名が OSS 地がありません。 しかし、かつて してコストを下げた先進企業も チームを作り、勉強してくれて の私の先輩が指摘したように、 多いと聞いていた。そういう状 います。これまで商用製品の保 ユーザー企業側での最終責任 況の中で、浜岡原発が止まった 守に携わっていた時は、障害が を誰が取るのかという課題が のです。まさに 今OSSを導入し 起きてもベンダーに状況を伝 残ります。そこで私たちの強い ないで、いつ導入するのか と えて回 答をもらうだ けでした 味方となるのが、OSS に関する いうタイミングでした」。 が、OSSになると、自分でソース 豊富な知識を持つ人材を数多 コードを読み、原因を追求しな く抱え、さらに OSS のオープン ければならない。これを、彼ら なエコシステムという特性をよ 力システムに関する改革方針」 はむしろ やる気が出る と言う く理解している会社です。私は が閣議決定され、電力小売の自 のです。技術者たちのモチベー 常々、そういう会社にIT 市場で ―その後、2013年4月には 「電 由化や発送電分離も現実的な ションは、間違いなく上がって の主導権を取ってほしいと考 ものとなってきました。震災以 いる。OSSのエコシステムは、人 えていますが 、その一 番 手こ 降、電力業界を取り巻く環境は 間のモチベーションにもリンク そ、レッドハットだと認識してい 責任を取るのか、という問題は 大きく変化してきていますが、今 した、実に素晴らしいシステム ます。レッドハットの社名の由 あり、OSS の導入について二の 後のビジネスを支えるITの重要 だと思います」。 来として、大学内でいつも赤い 足を踏んでいた時期もありまし な要素として、OSSにはどのよう た。しかし、浜岡原発の稼働停 な役割を期待されていますか。 止によって会社はより高コスト 帽子を被り、困ったことには何 でも答えてくれる レッドハット ―今後、OSSの適用を具体的 に考えられている場面があれば、 おじさん の存在があったとい 体質になりつつあった。また安 「 電力システムに関する改革 ぜひお聞かせいただけますか。 う話を 聞 いたことがあります 定性を優先するあまり商用製 方針 については、方針への対 が、同様の活躍をぜひ期待して 品に依存し続けると、いつまで 応に追われる同業他社が多い 「社内には UNIX サーバーな います」。 経ってもベンダーの制約から 逃れられません。それでは技術 ▼ サーバー構成概要図 者としても面白くない。震災は 取替前構成 我々に危機的な状況をもたら しましたが、逆に考えれば 従 正拠点 来の殻 を破る絶好のチャンス 配電統合 でもありました。そこで私が自 DB 配電SAN サーバー 配電 Web・AP サーバー 配電 センター サーバー ら OS にLinux を導入しよう と いう指示を出したのです」。 ―松田部長ご自身、OSSの有 用性については、以前から確信 を持 たれてい たということで 取替後構成 配電 ファイル共有 サーバー (NAS) 配電関係会社 Web・AP サーバー 正拠点 配電統合 DBサーバー 配電Web・AP サーバー JBoss EAP RHEL RHEL 配電バッチ サーバー 共通SAN RHEL 配電負荷分散 配電負荷分散 副拠点 副拠点 配電統合 配電 配電ファイル 共有サーバー DBサーバー Web・AP (保全) サーバー (保全) (NAS( )保全) 新汎用SAN (保全) しょうか。 配電統合 DBサーバー (保全) 配電 Web・AP サーバー (保全) RHEL JBoss EAP RHEL 配電バッチ サーバー (保全) 共通SAN (保全) RHEL 配電 負荷分散 配電負荷分散 「私は中部電力に入社して情 報システム部に配属されました が、その後研究所や米国での 2 OPEN EYE JBoss EAP Red Hat JBoss Enterprise Application Platform RHEL Red Hat Enterprise Linux Red Hat K.K. EDITORIAL 2014 ユーザー事例 Success Story 中部電力 サーバーOS/ ミドルウェアのリプレース レッドハット製品への リプレースで安定稼働と 中部電力株式会社 情報システム部 共通基盤グループ グループ長 部長 コスト大幅削減 を両立 山田 健史 中部電力は、2010年から取り組みを開始した業務再構築プランでIT投資コストの削減方針を 中部電力株式会社 情報システム部 共通基盤グループ 課長 決定するなか、ミッションクリティカルな配電システムのサーバー環境のリプレースを決めた。そ こでOSとミドルウェアに選ばれたのが、 レッドハット製品だ。 栗林 修 に許容範囲内でした。サーバーOSとしてはCentOSな 背景 氏 氏 ども検討しましたが、保守面が弱い。また、かつて5年 インフラ維持コストの半減を目指し、 OSとミドルウェアにOSSの導入を検討 ごとに実施していたリプレースを 10 年に変更する予 定もあり、RHELであれば我々が望む10年間の保守サ 中部電力の配電システムは、営業区域内に約 380 ポートも保証されます」。 万本ある電柱から各家庭まで電気を送るための各種 さらに栗林氏は、OSSを選択することによるメリット 設備、例えば約 160 万台の変圧器などを管理するた について言及する。 めのもので、安定稼働が最優先のミッションクリティ 「ベンダーロックインから脱却できることは重要なポ カルなシステムだ。 イントです。また今後は、技術的なノウハウが情報シス その一方、コスト削減は全社的な課題としてあり、 テム関連会社である中電シーティーアイに蓄積されて 業務再構築プランでは IT 投資コストの削減が大きな いきます。これらを有効活用できれば、今後、さまざま 目標として掲げられた。当時の状況を、中部電力株式 な最新技術を取り込んでいける。今年度からは、OSSを 会社 情報システム部 共通基盤グループ グループ長 評価/検討する体制もスタートさせる予定です」 。 部長の山田健史氏は、次のように振り返る。 「以前は10台のUNIXサーバーに、OSとしてHP-UX、 ミドルウェアとしてWebSphereを載せて運用していま 中部電力株式会社 情報システム部 共通基盤グループ 主任 中條 宏昭 株式会社中電シーティーアイ プラットフォームソリューション事業部 基盤システム部 販売・配電インフラグループ 配電インフラチームリーダー さ レッドハット製品の導入による効果 す。そのためインフラ部分の維持コストを半減させる や ぎ 茶野木 孝宏 氏 78%ものサーバーコスト削減、 コンサルティング サービスでスムースな製品導入も実現 したが、商用製品では運用コストも高止まりしたままで 氏 目標を立て、 OSSの導入を検討しました」 。 導入プロジェクトは 2011 年から始まり、2014 年 1 で得られたノウハウをベースに、保守については現 そこで選択されたのがレッドハット製品で、OSにRed 月に完了、当初の目標を大きく上回る効果を中部電 在我々だけで問題なく対応できています」。 Hat Enterprise Linux (RHEL) 、ミドルウェアにRed Hat 力にもたらした。 JBoss Enterprise Application Platformが採用された。 「サーバー台数を10台から8台に縮小でき、過去6 年間と今後 6 年間のサーバーコスト総額を比較した 場合、実に78%の削減効果が見込めることがわかり レッドハット製品を選んだ決め手 性能、信頼性、保守性を大きく評価 ベンダーロックインからの脱却も重視ポイント ました。また中電シーティーアイで内製化したことで、 今後の展望/レッドハットへの期待 ビッグデータの活用場面でもOSSは重要な選択肢、 レッドハットにはコンサルティングの支援も期待 システム構築費用もベンダーに依頼した場合と比べ 今後中部電力では2020年を目標に、既存のホスト て約20%削減できました」 (中條氏)。 と約 500 台残るUNIX サーバーなど全てを仮想化と レッドハット製品の選定理由を、中部電力株式会社 さらに今回、中部電力はレッドハットにコンサル セットにしたLinuxに置き換え、中電クラウドと呼ばれ 情報システム部 共通基盤グループ 課長の栗林修氏 ティングサービスも依頼した。この点について、実際 る全業務システムの基盤構築を進める予定だ。 は次のように説明する。 の導入を担当した株式会社中電シーティーアイ プ 「将来的に電力小売の自由化が進むと、スマート 「判断ポイントは大きく3つ、性能、信頼性、保守性で ラットフォームソリューション事業部 基盤システム部 メーターの大量データを利用したシステムの開発が す。まず、移行によってユーザーに不便をかけるわけ 販売・配電インフラグループ 配電インフラチーム 必要となります。それら全てをデータベースに蓄積し にはいきませんので、従来の品質を確実に維持できる リーダーの茶野木孝宏氏は次のように評価する。 てバッチ処理を行うことは不可能です。その際には かという点は慎重に検証しました。その結果、レッド 「レッドハットには設計段階から参加してもらい、シ OSSであるHadoopを利用するなどの取り組みを考え ハット製品で十分に代替できることを確認しました」。 ステム設定値の妥当性などをレビューしてもらったこ ていく可能性もあります」 (栗林氏) 。 また信頼性と保守性について、中部電力株式会社 とで、自信を持ってプロジェクトを進めることができま 「レッドハットには、引き続きご支援をお願いしたいと 情報システム部 共通基盤グループ 主任の中條宏昭 した。負荷テストの評価といった非機能要件の確認 思います。例えば、ビッグデータ活用場面におけるレッ 氏は次のように評価する。 についても、コンサルティングサービス内で対応して ドハットのストレージ製品など、これからの技術に関し 「信頼性の指標としては障害発生率などが挙げら もらえたので助かりました。短期間で OSS に関する技 てご紹介いただきたいですね。さらに、コンサルティン れますが、レッドハット製品のサービスレベルは十分 術を習得するなど大変な面もありましたが、その過程 グ領域でのサポートも期待しています」 (山田氏) 。 サーバーOS/ミドルウェアのリプレースへの歩み 01 背景 02 レッドハット製品を 選んだ決め手 03 レッドハット製品の 導入による効果 04 今後の展望/ レッドハットへの期待 インフラ維持コストの半減 を目指し、OSとミドルウェア にOSSの導入を検討 性能、信頼性、保守性を大き く評価、ベンダーロックイン からの脱却もポイント サーバーコストは78%もの削減 効果、コンサルティングの支援 でスムースな製品導入も実現 ビッグデータの活用場面でもOSS は重要な選択肢、レッドハットに はコンサルティングの支援を期待 ・業務再構築プランでは、IT 投資 コストの削減が課題 ・レッドハット製品を採用してサー バー環境を刷新 ・代替機能、信頼性のサービスレ ベル、 サポート期間を全てクリア ・ノウハウを蓄積し、最新技術も取 り込んでいくことができる ・サーバー台数は10台から8台へ、 サーバーコストも78%の削減 ・コンサルティングサービスは非機 能要件の確認場面などでも有用 ・ ビッグデ ータ活 用 にお いては Hadoopの利用なども視野に ・レッドハットにはコンサルティン グ領域でのサポートを期待 OPEN EYE 3 Success story for your business ユーザー事例 Success Story 日本航空 IT基盤モダナイゼーション 国内ツアー予約システムの基盤を、 WebSphereからRed Hat JBossに移行 システムのホワイトボックス化を実現 国内外に幅広く航空運送事業を展開する日本航空。同社では2010年から アメーバ経営 を導 入し部門別採算制度を開始、IT についてはシステム基盤の標準化や老朽化したシステムのリプ レースなどを行うIT 刷新プロジェクトを立ち上げた。基本方針として定められたのは、自社独自の システムに固執することなくパッケージ製品を活用し、コストを下げる こと。レッドハットのユーザー会で得た他社の成功事例と知見をベー スに、Red Hat Enterprise LinuxとRed Hat JBoss Middleware の採 用を決めた。 背景 の予約から発券までを可能にする一方、消費者自身 移行し、共通のシステム基盤を構築して、すべてのシス 部門別採算制度実現の第一歩として、 老朽化したシステム基盤の刷新を検討 が Web サイトからツアー商品の予約や発券もできる テムを更新のタイミングで順次その環境に移行してい ようになっている。いわば 2 つの入り口からの申込み くことを目指したのです。いわば マンションタイプ へ を集約して一元的に処理するためのシステムで、稼働 の引っ越しですが、 この戸建てからマンションタイプへ 2010年から日本航空 (以下JAL) が社内への適用を 開始が2004年8月、当時で既に6年が経過しており、 の移行が、 IT刷新プロジェクトの1つの命題でした」 。 始めた部門別採算制度は、企業内の各部門を小さな 老朽化がかなり進んでいた。 また 売上を最大に、経費は最小に という全社ス ユニットに分け、 その各々で採算管理を行うという経営 ローガンのもと、初期コストおよび継続的に発生する 手法だ。めまぐるしく変化するビジネス環境に迅速か コストをできるだけ圧縮することが重要なテーマとし つ柔軟に対応していくための手法であり、例えばアプリ ケーションコストについても、その恩恵を受ける比率に 応じた各事業部門の負担となる。 課題 戸建て のシステム基盤を マンション タイプ へ移行し、 コスト削減も実現する て掲げられた。 システム要件 この部門別採算制度の取り組みの一環として立ち そこでJALでは、たびJALシステムの基盤に焦点を当 上がったのがIT刷新プロジェクトで、システム基盤の て、それまで利用していた商用製品をリプレースするプ 標準化/共通化、老朽化している各種システムの刷 ロジェクトに乗り出すことになる。当時の状況を、日本 新などを目指すものである。今回ご紹介するのは、こ 航空株式会社 IT 企画本部 IT 推進企画部 国内旅客グ それまで同社はたびJALシステムの基盤として、OS の刷新の対象の1つとなった、JALの国内ツアー商品 ループ マネジャーの増満裕氏は、 次のように振り返る。 にはAIX、ミドルウェアにはWebSphereを使っており、 を消費者に販売する 「たび JALシステム」のシステム 「かつては個別のサーバー群の中で、それぞれのシ 開発用のフレームワークもWACs(Web Application 基盤だ。 ステムを構築していました。たとえるなら、各システム Components) というベンダー独自のものを利用して たび JALシステムは、旅行代理店に専用画面を提 が 戸建て の住宅に入居していたイメージです。それ いた。 しかしこのWACsも当時で3世代前のバージョン 供し、店頭で来店客の要望を聞きながらツアー商品 を今回のプロジェクトでは、別立ての統合サーバーに を使っており、老朽化が深刻化していた。 従来機能を踏襲しつつ コストを抑制することは可能か 「そこでシステム基盤の刷新にあたり、大きく2 つの 選択肢に絞りました。既存の商用製品をそのままバー ▼「たびJALシステム」のシステム基盤概要 ジョンアップするか、あるいは全く新しい環境を実現 従来の構成 新構成 業務アプリ たびJALアプリ たびJALアプリ 共通機能 IBM WACs オープンソースのフレームワーク ミドルウェア IBM WebSphere Red Hat JBoss EAP OS IBM AIX Red Hat Enterprise Linux するか、すなわちOSSを採用し、レッドハット製品を適 用するかです」。 たびJALシステムは、JALの国内ツアー商品の販売 を担うもので、同社にとってはミッションクリティカル なシステムだ。当然システム基盤にも24時間365日の 安定稼働が求められることになる。例えば同社では年 に2回、大々的な売り出しを実施しているが、 その際に すべてオープンソースにすることで、 ホワイトボックス化を実現 ■アプリケーションの改修・ バージョンアップコストを最小に ■維持管理コストも最小化 システムのブラックボックス化 アプリケーション改修コスト/ 維持管理コストの増大 発生する大量のトランザクションも滞りなく処理する ■ ■ ■ 必要がある。 JALでは今回の基盤刷新に先立ち、OSSを採用した システム標準化の検証をレッドハットと共に進めてお システム基盤刷新の流れ 01 背景 02 課題 03 システム要件 04 レッドハット製品を 選んだ決め手 部門別採算制度実現の第一 歩として、老朽化したシステム 基盤の刷新を検討 戸 建て のシステム基 盤を マンションタイプ へ移行し、 コスト削減も実現する 従来機能を踏襲しつつコスト を抑制することは可能か ベンダー依存脱却とコスト削 減効果、ユーザー会での情報 提供が安心感をもたらす ・システム基盤の標準化、老朽化シス テムの刷新を目指す ・国内ツアー商品を販売するシステム の基盤を対象に ・個別システムを統合し、共通のシス テム基盤に移行する ・初期コストおよび継続的に発生す るコストを極力圧縮する ・商用製品のバージョンアップか、OSSを 採用してレッドハット製品を適用するか ・ 業務アプリケーションと開発用フ レームワークとの依存関係にも留意 ・ 現 行 環 境のアセスメントをレッド ハットに依頼 ・初期コスト/運用コストの大幅低減 も実現可能に 4 OPEN EYE Red Hat K.K. EDITORIAL 2014 り、OSSの有用性についても認識していた。 スメントやセキュリティ上の留意点などさまざまなア 「最終的な製品の選定ポイントは、業務アプリケー ドバイスをもらったおかげで、安全移行を実現するこ ションの機能をきちんと踏襲でき、さらにコストを抑え とができました。稼働開始から現時点で半年以上が ることができるかどうか。その際には、業務アプリケー 経過していますが、リリース初期は数件トラブルも発 ションと開発用フレームワークとの依存関係も十分に 生したものの、現在は安定的に稼働しています」。 見極める必要がありました」。 また増満氏は具体的な導入効果として、大幅なコ 日本航空株式会社 IT企画本部 IT推進企画部 国内旅客グループ マネジャー スト削減が達成できたことも強調する。 「まず当初の想定よりも、数分の1の初期コストで移 レッドハット製品を選んだ決め手 も、OSSであるレッドハット製品を採用したことで、こ 同社では、現行環境のアセスメントをレッドハット トを最小化することができました。 経費は最小に と に依頼、刷新にあたっての既存環境との依存関係や いう全社スローガンにも、十分応えることができたと 想定されるリスク、 さらには初期および運用コストなど 考えています」。 Hat JBoss Enterprise Application Platformだ。 まずアセスメントの結果、業務アプリケーションと既 存の開発用フレームワークであるWACsとの依存関 レッドハット製品を導入したメリット2 商用製品からのリプレースで、 システム 環境の ホワイトボックス化 を実現 株式会社JALインフォテック エアライン事業本部 国内旅客・旅行システム部 エンジニア 大崎 卓真 氏 係は、懸念するほど大きくないということが判明した。 また JALと共にプロジェクトを推進した株式会社 「当初は、商用製品のバージョンを上げるほうが初 JALインフォテック エアライン事業本部 国内旅客・旅 期コストを下げられると思ったのですが、バージョン 行システム部 エンジニアの大崎卓真氏は、今回レッ まったのです」 (増満氏)。 アップに伴う細かい調整やテストなどを含めると、結 ドハット製品を導入したシステム環境面からの効果に 当然JALでは事前に準備を行っていたが、文字コー 局は作り直すのとほぼ同等の費用がかかることがわ ついて、次のように説明する。 ド部分のバグなどを完全に押さえ切ることができず、 かりました。一方レッドハット製品なら、初期コストが 「OS やミドルウェアに商用製品を利用していた時に テストでの検証時まで対応を引っ張ることになった。 大幅に下げられることが見えてきたのです」。 は、改修などが必要になった場合には、その対応をベ 「しかしこれは予期せぬトラブルが突発的に発生し またWACs はいわゆるブラックボックス化が進みつ ンダーに依頼しなければならなかったのですが、OSS たわけではなく、ある意味で 想定内の出来事 でし つあり、システム改修の際にはベンダーに依頼せざる であるレッドハット製品を採用したことで、システム環 た。そのため落ち着いて適切な対応を施すことができ を得なかった。維持管理コストもかさんでいたのだ。 境をホワイトボックス化することができました。これで た。感覚的な要素ではありますが、事前に心の準備が 「運用コストの部分についても、レッドハット製品を 今後、何か手を加える必要が発生した場合でも、我々 できているかどうかは、 プロジェクトの進捗やシステム 選択することでベンダー依存の状況から脱却し、最小 JALインフォテック側で修正できるようになります。こ の品質を大きく左右する重要なポイントになると思い 化を図ることができると考えました」。 れは維持管理コストを最小化する上でも、大前提とな ます」 (同氏)。 さらに同社は、今回のシステム基盤刷新プロジェク るシステム要件だと考えています」 (大崎氏)。 トに先立ち、AIX→Linux のリプレースを成功させた さらに今回、業務アプリケーションとの依存関係が 他社事例をレッドハットから紹介してもらい、実際に 大きな課題となっていた開発用フレームワークの そのユーザー企業を訪問してさまざまな知見を得て WACs については、オープンソースのフレームワーク いたという。 を採用した。この部分においても、ベンダーロックイン 「もともとはレッドハットのユーザー会で事例を知 からの脱却に成功している。 クトを取りました。参考にできるノウハウが豊富にあ ることは、きわめて大きな安心感に繋がりましたね」 (増満氏)。 レッドハット製品を導入したメリット1 今後の展望/レッドハットへの期待 ユーザー会での豊富な成功事例は大きな安心感に、 今後もトータルなフォローを期待 前述のとおり、JALでは今回のシステム基盤刷新プ り、その後その企業を紹介してもらって個別にコンタ 05 氏 れまでベンダーに支払っていた多大な維持管理コス を洗い出した。そして最終的に選択したのが、OSとし てRed Hat Enterprise Linux、ミドルウェアとしてRed 増満 裕 行を完了することができました。運用コストの面から ベンダー依存脱却とコスト削減効果 ユーザー会での情報提供が安心感をもたらす ロジェクトに先がけて、AIX→Linux のリプレースを成 レッドハット製品を導入したメリット3 事前の注意喚起で、発生した課題にも 想定内の出来事 として対応 功させた他社事例をレッドハットのユーザー会を通じ て紹介してもらい、そのノウハウを習得したうえでリプ レースに臨んだ。 「繰り返しになりますが、豊富な成功事例があり、そ 今回のプロジェクトでは、事前にレッドハットから指 のノウハウを参考にできることは、ユーザー企業に 当初予定の数分の1の初期コストで 移行を実現、運用コストも大幅削減 摘を受け、 さらにJAL側でも留意していたものの、実際 とってきわめて大きな安心感に繋がります。単に公開 のプロジェクトの過程でやはり問題として浮上した項 された事例記事だけではわからない、細かな点まで 目があるという。文字コードの互換性だ。 情報提供してもらえることは、我々にとってたいへん 実際のシステム基盤刷新プロジェクトは 2011 年 「AIXを利用していた時には、Shift JISがデフォルト 大きなメリットでした。 にスタート、調査に 3ヵ月、分析/評価に 6ヵ月を費 の文字コードで、実は現在でもデータベースなどとの 今回は JAL の基幹システムの中で最初となるOSS やし、さらに半年にわたって一部のパイロットシステ 絡みでこれは変わっていません。しかし Linux では への移行プロジェクトでしたが、海外ツアー商品のシ ムで検証を行った。その後、1年半をかけて全システ UTF-8がデフォルトの文字コードになります。そこで両 ステム基盤も同様に老朽化の問題を抱えています。今 ムを完成させてテストを実施、稼働開始は 2013 年 者の互換性には注意が必要ですよという指摘をレッ 後も多数のシステムを移行していく予定ですが、レッ 11月だ。 ドハットから受けていたのですが、Shift JIS には細か ドハットには引き続き技術的なノウハウだけでなく、 「今回の最大のポイントだったのは、何よりもまず い派生コードがあり、UTF-8と完全な互換性がないも プロジェクトの進め方までを含めて継続的に支援して 安全にシステムを移行すること。レッドハットからアセ のも一部にはある。それがテスト段階で出てきてし ほしいと思っています」 (大崎氏)。 レッドハット製品を 導入したメリット1 06 レッドハット製品を 導入したメリット2 07 レッドハット製品を 導入したメリット3 08 今後の展望/ レッドハットへの期待 当初予定の数分の1の初期コ ストで移行を実現、運用コスト も大幅削減 商用製品からのリプレースで、 システム環境の ホワイトボッ クス化 を実現 事前の注意喚起で、発生した 課題にも 想定内の出来事 と して対応 ユーザー会での豊富な成功事 例は大きな安心感に、今後も トータルなフォローを期待 ・安全にシステム移行を完了、稼働後も トラブルを最小限にとどめ安定稼動 ・ 経費は最小に という全社スローガ ンも十分に達成 ・今後のシステム改修も自社で対応 可能に ・開発用フレームワークもベンダー ロックインからの脱却に成功 ・文字コードの互換性の問題はテス ト段階でも発生 ・想定内の出来事だったことで、落ち 着いて対応することができた ・ユーザー会で成功事例を知り、自社 が求める様々な知見を獲得 ・技術的なノウハウに加え、プロジェク トの進め方までを含めた支援に期待 OPEN EYE 5 Success story for your business ○ レッドハット最新レポート レッドハット RHEL 7の特徴と Linux事業戦略を発表 新ソリューションの提供や エコシステムの拡充を軸に Red Hat Enterprise Linuxを拡販する! Linux市場の拡大に大きく貢献し続けているレッドハット。ここでは、今後リリースを予定しているRed Hat Enterprise Linux 7の特徴と今後のLinux 事業の戦略について、3月18日に行われた記者発表か らその概要をご紹介する。 のインターネット (Internet of Things) という4成長分 野を定義している。 「仮想環境ではゲストOS のシェアを取っていく。パ ブリッククラウド上のシェアについては、昨年リリース したレッドハット版 OpenStackでシェアを取っていく。 ウドを実現するための基盤へと進化した」 と強調した。 Jim Totton さらに今年はパートナーと共に、クラウド対応の新し レッドハットの提唱するオープンハイブリッドクラ いサブスクリプションモデルを拡販していく予定だ。 ウドは、プライベートクラウドとパブリッククラウドの また国内には 2,000 社近くのレガシーユーザーが 両方を同じ操作性で柔軟に利用できる環境を実現す 残っているので、Windows環境も含めできるだけ早く るもので、データセンターのモダナイゼーションから RHEL に移行していく。さらにモノのインターネットに 標準化、仮想化というプロセスを経て到達できる理 ついては、NFV(Network Functions Virtualization: 想的なクラウド環境だといえる。 ネットワーク機能の仮想化)の世界での 組み込み と 「このオープンハイブリッドクラウド環境を支えるの いうモデルで、OpenStack 上のゲストOSとしての が RHEL 7だ。その特徴として、大きく6 つのポイント RHELを拡販していく」。 が挙げられる」。 新しいソリューションの提供については、ABCDと 最初のポイントは プロファイルに基づくパフォー いう4つの観点からアプローチする。 マンスの最適化 で、RHELをインストールする際、例 「A は、AMC(Advanced Mission Critical)領域で えばそれがWebシステムのサーバーか、 ファイルシス 我々の得意分野だ。引き続きこの領域でRHELを拡販 ▼ RED HAT ENTERPRISE LINUX 7(ベータ) テムのサーバーかに応じて、パフォーマンスを最適に していく。B はビッグデータで、JBoss の仮想データ 6つのハイライト チューニングする仕組みを提供する。2点目は ファイ ベースソリューションや Red Hat Storageソリューショ ルシステムの選択肢の拡大 で、デフォルトが XFSと ンなどと組み合わせ、ビッグデータ市場でもRHEL の なり、500TBまで増強される。現行の ext4も50TBま 販売を加速させる。そしてC がクラウドで OpenStack で拡張され、引き続き利用可能だ。3 点目は アプリ 関連製品による拡販、D がデータセンターの刷新で、 ケーション分離の軽量化 。Linuxコンテナを利用した OSSインテグレーションセンターをベースにRHELを アプリケーションの仮想化を可能にする。 拡販していく」。 4つめのポイントは Windows 環境との相互運用性 OSSインテグレーションセンターは、レガシー環境 の向上 で、Active Directoryとの連携を強化すること からの移行支援を目的に2013年9月に設立されたも 安全性 プロファイルに基づく パフォーマンスの最適化 ファイルシステムの選択 柔軟性 アプリケーションの分離を 軽量化(LINUX コンテナ) WINDOWSとの相互運用性 効率性 より簡素化された インストールとデプロイ OPENLMIを利用した システム管理 でクロスドメインを可能にする。5 点目となる インス ので、現在43社のパートナーと共にエコシステムを形 トール/デプロイの簡素化 では、RHEL 6 からRHEL 成し、移行ロードマップを作成するワークショップを 7 へのインプレースアップグレードをガイドするツー 無償で提供している。 ルも提供する。そして最後が、OpenLMIを利用した 「2014年3月時点で50社以上の相談を受け、10社 システム管理の実現 で、これによりデータセンター 以上のお客様にレガシー環境からオープン環境への 全体におけるプロビジョニングやコンフィギュレー 移行を決めていただいた」。 ション、 モニタリングなどがさらに強化される。 3 つめのエコシステムの拡充も、ABCD の各領域で 「RHEL 7 は現在ベータテストを進行中で、十分な パートナー企業を増やし、現在 250 社の認定パート 品質が得られていると判断した時点で市場に投入す ナーを500社に倍増していくことで、RHELのシェア拡 る予定だ」。 大を目指す。 「この4つの方針をベースに、2014年もRHELの拡 オープンハイブリッドクラウドを支える Red Hat Enterprise Linux 7 2014年度は4つの方針で RHELの販売をさらに加速させていく IT専門調査会社IDCによれば、世界のサーバーOS市 続いてレッドハット 常務執行役員 パートナー・ア 場に占める Linux の割合は依然上昇傾向にあり、 ライアンス営業統括本部長の古舘正清が、2014 年 この Windowsとほぼ半々の比率に近づいてきている※。 のLinux事業戦略について説明した。 結果を受けて、米国レッドハット 副社長兼プラット 「RHELの販売をさらに加速させていくためには、ポ フォーム事業部門長のジム・トットンは記者発表の冒頭 イントが 4つある。1. 成長分野への注力、2. 新しいソ で 「OSSおよび Linuxベースのソリューションの導入が リューションの提供、3.エコシステムの拡充、4. RHEL 7 引き続き増加している点が見てとれる」 と評価し、 「12 のリリース、 の4点だ」 。 年前のリリース当時、我々はRed Hat Enterprise Linux ここでは前段で触れたRHEL 7を除く3 つのポイン (以下、RHEL) を単一製品として扱っていたが、その後、 ▼ 2014年のLinux事業方針 ― 4つの方針でさらに成長を加速 ― 成長分野への フォーカス 新ソリューション の提供 トについて紹介しよう。 より完全なプラットフォームのポートフォリオへと移行 まず成長分野への注力について、レッドハットでは してきており、現在ではまさにオープンハイブリッドクラ 仮想環境、パブリッククラウド、マイグレーション、モノ ※出典: 米国IDC, Worldwide Linux Client and Server Operating Environments Market Analysis and 2013-2017 Forecast and 2012 Vendor Shares: 3rd Platform Transitions Take Hold(IDC #242635, August 2013),and Worldwide Windows Server Operating Environments 2013-2017 Forecast: Windows Server Drives into Virtualization(IDC #242789, August 2013) RHEL 7は現在ベータテストを進行中、 十分な品質が得られた段階で市場投入予定 6 OPEN EYE 販にさらに拍車をかけていく」。 Masakiyo Furudate エコシステム の拡充 Red Hat Enterprise Linux 7 Red Hat K.K. EDITORIAL 2014 ○ レッドハット製品情報 Red Hat JBoss Middleware 製品&テクノロジー構想 続々登場!Red Hat JBoss Middlewareの新製品 ビッグデータとの統合、IoT、DevOpsを支える Red Hatの新しいミドルウェア Red Hat JBoss Middleware が提供する新しい製品とテクノロジーは、アプリケーションサーバー に留まらない。ビッグデータと企業の構造化データを瞬時に統合するデータ仮想統合基盤、M2M の 進化系である家電や自動車などすべての " モノのインターネット IoT(Internet of Things) を支え る つなぐ ための技術基盤、そして統合BPM、最先端のDevOps環境を提供するPaaS構想など、新し い製品やテクノロジーが続々と登場。2014 年を支えるシステム基盤は、Red Hat JBoss Middleware が提供していく。 ▼ 複数のデータソースから仮想データベースを構築、 データの可視化を実現 ダッシュボード ディシジョンテーブル)に切り出すことが可能。そのた め、複雑になりがちな BPM のモデルをシンプルにす ることができ、ビジネスの変更に瞬時対応できるプ ラットフォームを提供する。 Red HatのPaaS新戦略 OpenShift & xPaaS発表 のシステム連携環境を支える。Apache Active MQ の OpenShift は、Red Hatが提供するパブリッククラウ 企業向け製品であるRed Hat JBoss A-MQ は、Java、 ドだけでなく、プライベートクラウドにも展開可能な C++、.NETの言語が利用でき、さらにIoTで必須となる PaaS (Platform as a Service) である。2014年4月に米 MQTT、XMPP、AMQP、STOMPのプロトコルと通信で 国カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたRed きる。また、軽量コンテナであるため組み込みソリュー Hat Summit 2014では、このOpenShift戦略における ションにも最適だといえる。企業のMQ基盤としてだけ 新たな発表として、Red Hat JBoss Middlewareと融合 でなく、スマートメーターとの連携、代理店連携、チ させたxPaaS体系が紹介された。Red Hat JBoss EAPが ケット端末連携など国内導入実績も急増中だ。 利用できるaPaaS(Application PaaS)、JBoss Fuse や Red Hat JBoss Fuse は、Apache Camel とApache JBoss Data Virtualization が利用できる iPaaS CXFおよび JBoss A-MQ が統合された軽量エンタープ (Integration PaaS)、JBoss BPM Suite が利用できる ライズサービスバスで、150 以上の豊富な接続アダプ bpmPaaS、そして、モバイルデバイスへのプッシュテク タは競合製品を圧倒する。最新バージョンの JBoss ノロジーを統合したmPaaS (Mobile PaaS) である。 Fuse 6.1では、Salesforce.comおよびSAPの接続アダ OpenShift は、Red Hat Enterprise Linuxとアプリ プタを追加。またJBoss A-MQ同様、組み込みESBとし ケーション開発環境(Java、Ruby、Node.JS、Python, ても活用できるため、パッケージアプリケーションやア PHP など)、Web サーバー、アプリケーションサー 欲しい情報が手に取るようにわかる Red Hat JBoss Data Virtualization プライアンス製品に組み込むことで、自社製品をさま バー、OSSデータベースなどをオンデマンドに利用で ざまなシステムや機器、デバイス連携できるIoT に対 きるアプリケーションスタックを提供する。さらに、ア Red Hat JBoss Data Virtualization 6 は、JBoss 応したソリューション製品に変革させることも可能だ。 プリケーションの「継続的インテグレーション開発」環 Data Services Platform 5 の後継製品だ。クラウド Red Hat JBoss Fuse Service Worksは、WS-BPEL、 境を提供するJenkins、統合開発環境などを包括的に サービスを含む、企業内外のさまざまなデータソー ルールベースルーティング、データ変換、サービスレジ 提供する新しいコンセプトのPaaS環境だ。xPaaS戦略 スから1 つの仮想的なデータベース基盤となる本製 ストリ、サービスガバナンスを管理できるエンタープ は、このOpenShift が提供するPaaSを強化するととも 品は、この新しいバージョンからデータ仮想化製品 ライズ SOA 基盤を提供する。最新の実装技術 SCA に、現在、注目度が高い「DevOps」環境を提供する。 (Data Virtualization) とその名を改めた。国内で (Service Components Architecture)によって、サー は、わずか2.5ヵ月で100以上のデータベースを仮想 ビスコンポーネントの組み替えによる動的なサービス 統合した紀陽銀行の導入事例(本誌 Vol.13 / 2013 オーケストレーションを実現できる。Red Hat では、 年7月発行を参照) をはじめ、製造業、通信業、サービ Integration Everywhere ‒ すべてをつなぐ、をキー ス業などでの先進的な導入が次々と始まっている。 ワードにこれら3 製品の日本語サポートサービスを 新しいバージョンでは、仮想統合されたデータを瞬 2014 年 3 月から開始している。各製品のサブスクリ 時に可視化するダッシュボード機能が追加された プションサービスによって、安定版の製品提供だけで (上図)。RDBMSとSalesforce.comとSAP、そしてビッ なく、高度な日本語サポートサービスを受けることが グデータを扱うHadoopなどのさまざまなデータソー ▼ すべてを つなぐ を解決するRed Hat JBoss Fuse Google Salesforce SAP など 交通/センサー スマート家電 クラウドサービス ビジネス アプリケーション データベース チケット端末 スマートメーター 代理店や 工場のサーバー 可能となった。 スから一瞬で 1 つの仮想データベースを構築できる のはJBoss Data Virtualizationのみである。 日本語サポートを開始 Red Hat JBoss A-MQ、Red Hat JBoss Fuse、 Red Hat JBoss Fuse Service Works 完全なBPMのライフサイクルを実現する Red Hat JBoss BPM Suite Red Hat JBoss BPM Suite は、企業のビジネスプ ロセスの自動化やモデリング、シミュレーション、実行 とモニタリングを提供する BPM 基盤だ。本製品は Integration Everywhere ‒ すべてをつなぐ。Red JBoss BRMS を完全に包含しているため、複雑な判 Hat が提供するミドルウェアは、今、話題急騰中のIoT 断は高度なビジネスルール表記(日本語ルールや 国内BRMS市場シェアNo.1! Red Hat JBoss BRMS IT 関連の市場レポートを提供している国内の調査会社 ITRは、同社発行の レポート 「ITR Market View:システム連携/統合ミドルウェア市場 2013」の国 内BRMS市場動向で、Red Hat JBoss BRMSが22.6%でシェアNo.1を獲得す 2013年度には、 ソフトバンクモバイル ると予測した調査報告書を発表した※。 や日産自動車をはじめ、数多くのお客様に導入いただいている。BRMSは、ア プリケーションの開発生産性に大きく貢献するだけでなく、企業コンプライア ンス、属人的な判断、複雑なビジネスロジックの実装が必要なアプリケーショ ンをシンプルにすることができる。BRMSといえば、 Red Hat JBoss BRMSだ。 ※「ITR Market View:システム連携/統合ミドルウェア市場 2013」国内BRMS市場動向 株式会社アイ・ティ・アール 2013年10月 発行 OPEN EYE 7 Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2014 ○ 2014年4月14日∼17日 Red Hat Summit 2014 in サンフランシスコ [開催レポート] 仮想コンテナ技術を新たに搭載した RHEL 7がアプリケーションの可搬性を 劇的に向上させる Red Hat は 2014 年 4 月14日からの 4日間、米サンフランシスコにて節目の 10 回目となる 「Red Hat Summit 2014」 を開催、Red Hat Enterprise Linuxの次期バージョンであるRHEL 7の詳細などについて 明らかにした。 今回の発表内容から主なトピックスを紹介する。 援する仕組みの開発も目指す。 さらに今回Red Hatは、OpenShiftのパートナー企業 が提供する様々なソリューションを 1 か所に集約した 「OpenShift Marketplace」 も発表した。これによって 「OpenShift Online」 を利用するユーザーが、例えば データベースやメッセージキューといったソリューショ ンやアドオンを、簡単に検索/試用/購入することが できるようになる。OpenShift Marketplace は近日中 に、OpenShift Onlineが提供されている全ての地域で 利用可能になる予定だ。 Red Hat は、仮想コンテナを作成するDockerを次 RHEL 7の仮想コンテナ技術が 次世代のクラウド環境を支える ドやパブリッククラウドといった IT 基盤から切り離し 期バージョンのRHEL 7でサポートするだけでなく、よ て、自由に稼働させることが可能となる。この点に関し り軽 い L i n u x O S を新たに開 発 / 提 供し、さらに て、同じく基調講演で登壇した製品&戦略部門担当 OpenShiftとDockerとの統合を図ることで、アプリ 現在の IT 環境はきわめて複雑化しており、ユー エグゼクティブ バイスプレジデントのポール・コーミ ケーションの可搬性をさらに高めていく。 ザー企業に対して全てのソリューションを単独で提供 アは次のように説明を加えた。 できるIT ベンダーはいないと言っても過言ではない。 「次世代のオープンハイブリッドクラウド環境では、 こうした現状を踏まえ、基調講演で登壇した米国レッ アプリケーションこそが主役となる。そこで求められる ドハット 社長兼CEOのジム・ホワイトハーストは、Red のは、アプリケーションの可搬性とモダナイズされた Hatの存在意義を次のように表現した。 環境だ。近い将来、データーセンター間をまたぐアプ 日本のパートナー・ユーザー企業から 60名以上が参加 今回のRed Hat Summitでは、日本からも34社60 リケーションの稼働もごく当たり前になるだろう。今回 名以上が参加し、キーノートセッションやエグゼク DockerをサポートしたRHEL 7 は、まさに次世代のク ティブセッションを聴講した。 ラウド環境を担うに相応しいOSだと言える」。 OpenShiftとDockerとの統合を図り、 アプリケーションの可搬性を高めていく 米国レッドハット 社長兼CEO ジム・ホワイトハースト Jim Whitehurst 現在 Red Hat では、OSS の PaaS( Platform as a Service)である OpenShift を製品化した Red Hat OpenShiftを北米や欧州で提供しているが、今回 Red 「今のITには、ユーザー企業や開発者のコミュニティ、 Hat OpenShiftのアプリケーションコンテナをDockerと セッションの参加にとどまらず、ジム・ホワイトハー ITベンダーなどから構成されるエコシステムが必要だ。 統合し、Dockerのコンテナ形式でパッケージ化された ストをはじめ米国レッドハット幹部、同行したレッド 我々はその結び付きや動きを加速させる存在となる」 。 認定アプリケーションをサポートすることも発表した。 ハット株式会社社長 廣川を交えての個別セッション この Red Hat の役割を支える具体的な製品が、 またOpenShiftのアップストリームとして提供してい や、アマゾン ウェブ サービス、シスコシステムズ、ベ 2013 年にベータ版を発表し、今年正式リリースを予 る 「OpenShift Origin」 で新たなプロジェクトを立ち上 ライゾンなど、世界の最先端をいく米国ユーザー企 定しているRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL) の げ、OpenShift 上における仮想コンテナを利用したア 業との意見交換の場も設けられ、参加者には現地の 次期バージョン「RHEL 7」 だ。そして今回、RHEL 7 に プリケーションのデプロイメントや運用管理などを支 スピード感を肌で感じられる有意義な時間となった。 新たに盛り込まれた注目すべき特徴が、コンテナ型仮 想化ソフトウェア 「Docker」 をサポートすることだ。 ここでいうコンテナとは、通常 OS に依存するライブ ラリやファイルシステムといったアプリケーションを稼 働させるために必要な要素を、OS から切り離して格 納するもので、Docker はこのコンテナを仮想的に作 成するためのソフトウェアだ。RHEL 7では Docker に よって仮想コンテナを作成し、アプリケーション環境 を物理環境や仮想環境、あるいはプライベートクラウ ユーザー事例としてソフトバンクモバイルが登壇、 ルール記述をサポートする 「MITHRIL」 を紹介 ソフトバンクモバイルは、他社製ルールエンジンからRed Hat JBoss BRMSに移行した経緯について紹介した。Red Hatのルールエンジン は、他社製と比較してその性能は3倍、価格は1/6と素晴らしいもの だったが、移行にあたって、Red Hatのツールではルール記述の生 産性に課題があることが判明。 このギャップをを克服するために作 成されたツールがMITHRILであり、ルールの記述性を大幅に向上 させる豊富な機能を備えている。 講演では、 ソフトバンクモバイル株式会社 情報システム本部 モバ イルシステム統括部 山口 敬太氏が、 デモを交えながら各機能を紹 介。結果的にMITHRILは他社製ルールエンジンをしのぐ生産性効果 の高いツールとなり、同社ではJBoss BRMSを使用するプロジェクト の標準ツールとして使用している。 ◎ レッドハットの製品、 サービスに関するお問い合わせはこちらまで >>> セールス オペレーションセンター ☎ 0120-266-086(携帯電話からは ☎ 03-5798-8510) 〔受付時間/平日9:30∼18:00〕 e-mail: [email protected] レッドハットニュースレターにぜひご登録ください! 最新ニュース、 キャンペーンやイベント・セミナー情報など、 旬のトピックをお届けします (月1回配信) Copyright 2013 Red Hat Inc. All Rights Reserved. "Red Hat"、"Red Hat Enterprise Linux"、"JBoss"、"Openshift"および"Shadow Man"ロゴは、米国およびその他の国における Red Hat, Inc. の登録商標です。 Linuxは、Linus Torvalds氏の登録商標です。OpenStackR Word MarkとOpenStackのロゴは、米国とその他の国における OpenStack Foundation の登録商標/サービスマークまたは商標/サービスマークのいずれ かであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack FoundationやOpenStack コミュニティの系列企業ではなくまた、支持や出資を受けていません。その他全ての登録商標 及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。 OPEN EYE Vol.16 2014年06月 発行 発行:レッドハット株式会社 東京都渋谷区恵比寿 4-1-18 tel:03(5798)8500
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