コレステロールと心臓病 P h y s i c i a n s C o m m i t t e e f o r R e s p o n s i b l e M e d i c i n e 5 1 0 0 W i s c o n s i n A v e., n. w., S u i t e 4 0 0 • W a s h i n g t o n, D C 2 0 0 1 6 phone (202) 686-2210 • Fax (202) 686-2216 • [email protected] • www.pcrm.org 毎住民を対象に、心臓病に関連する要因の特定が研コ究されてきました1,2。Castelli医学博士の研究では、レステロールレベルが一定のレベル以下であると、冠動脈疾患は発生しないことを明らかにしました。フラミンガム心臓研究のデータでは、コレステロールレベルが1dlあたり150mg以下の場合、冠動脈疾患のリスクは最も低いという結果でした。コレステロールレベルが150mg/dl以下であった人で冠動脈疾患の発症がみられたのは、フラミンガム心臓研究が開始されてから50年間の間で、たったの5人でした。アテローム性動脈硬化アジアやアフリカ、ラテンアメリカの新興国の地方アテローム性動脈硬化は、心臓病の患者によくみに住む住民は、一般的にコレステロールが125~140 られます。プラークという、コレステロールや他の物で、冠動脈疾患の発症がほとんどみられません2。質で形成された小さな腫瘍のようなものが、動脈壁内に形づくられ、最終的に血液の通路を詰まらせてコレステロールとは？コしまいます。血液が流れにくくなると、心臓の筋肉にコレステロールは、脂肪と同じではありません。ワックスのような酸素が届きにくくなります。胸痛（狭心症）は、通常、運レステロールは手にとってみると、コレステロールは肝臓で生成され、ホルモ動や精神的興奮が原因となって心臓に負担がかかものです。ンや細胞膜をつくったり、身体の他の部分で使うたったとき、発生します。血液供給が完全に遮断されるコレステロールの値と、心臓の筋肉の一部が死に心臓発作が起きます。めに、血液中に放出されます。は、血清1dlあたり何mgあるかで測定します。フラミアテローム性動脈硬化症とは何ですか？ンガム心臓研究や他の研究の結果から、適切なコレアテローム性動脈硬化症は、加齢によって起こるステロール値は150mg/dl以下といわれています。こものではありません。韓国とベトナムでの戦争におけの値であれば、冠動脈疾患の発症はほとんどみられる戦死者を調べたところ、アメリカ人の兵士には、わません。ずか18~20歳で顕著なアテローム性動脈硬化症が残念なことに、およそ1億700万人のアメリカ人は見つかりました。一方、アジアの人は米や野菜中心コレステロール値が2001を超えており、冠動脈疾患の食事で育っており、彼らの動脈ははるかによい状を発症した人の平均コレステロール値は2253です。態でした。驚くべきことに、連邦政府は推奨されるコレステロー高齢者は若年者に比べて心臓に問題がよく見らル最大値をいまだに200という高い値に設定していれる傾向があります。これは高齢者が不健康な生活ます。を送っている期間が長いという理由からであり、心臓病にかかりやすい遺伝的傾向を高齢者が持って様々なタイプのコレステロールいるためというわけではありません。通常、心臓病コレステロールは、低密度リポタンパク質（LDL）には、遺伝によるのではなく、食生活や喫煙習慣に関よって血流に運ばれます。LDLは、悪玉コレステロー連しています。遺伝性の心臓病は人口のわずか5% ルと呼ばれているものです。LDLは体のさまざまな部しかいないと言われており、もしあなたが遺伝性疾分にコレステロールを運ぶ役割をしているので、一患の有無を知りたいなら、検査で調べることが可能定量は必要ですが、高LDLコレステロールレベルは劇的に心臓発作のリスクを高めます。です。多くの研究がコレステロールと心臓の問題との関高密度リポタンパク質（HDL)(善玉コレステロー連を指摘しています。1948年からWilliam Castelli医ル）は死んだ細胞から放出されたコレステロールをコレス学博士の主導でマサチューセッツ州フラミンガムの処分するために回収する役割を果たします。日、約2,600人のアメリカ人が何らかの循環器の病気で亡くなっています。これは、平均34秒に一人が亡くなっていることになります。また、710万人のアメリカ人が一生のうち一回は心臓発作を起こしています1。心臓発作を経験した人の多くが、その後に再度心臓発作を起こしていますが、心臓病は予防することが可能です。食習慣や他の生活習慣を変えることで、心臓病は、多くの場合予防でき、又、改善することも可能なのです。 1 13093A-NTR • 20130523 CHolesterol and Heart Disease テロール値の測定方法は、総コレステロールをまず調べて、さらに詳細に調べるため、総コレステロール値からHDL値を分けて確認します。総コレステロール値が低く、HDLが占める割合が高ければ、心臓発作のリスクが低いといえます。総コレステロールにおけるHDLの比率は、理想的には、 4 対 1未満が望ましいと考えられています。残念なことに、平均的なアメリカ人男性の比率は5対1で、それよりもはるかに高くなっています。一方、ベジタリアンは平均で約2.8対1と低いといわれています3。喫煙や肥満は、HDLの低下と関連しますが、HDLは強度の高い運動やビタミンCが豊富な食品によって幾分上昇させることができます4。スクリーム・チーズ）、揚げ物・マーガリン・植物性の油・マヨネーズ・デザート類はすべて多量の脂肪が含まれています。残念なことに、食品会社の一部は脂肪の含有量を誤解を招くような方法で表示しています。重要のは、食品の全カロリーの何％を脂肪が占めているかということです。脂身をカットした牛肉でも、脂肪分は全カロリーの30%です。皮なしの鶏肉も同様に高く、23%です。ましてや皮つきの鶏肉は、本来はまったく低脂肪の食品ではないのです。大部分のチーズは脂肪分は全カロリーの60~80%です。プレミアムアイスクリームは 45~65%、バターやマーガリン、油は95~100%、穀物、豆類、野菜、果物の脂肪分は、カロリーの10%以下となっています。動物性の食品は、飽和脂肪を含んでおり、飽和脂肪は肝臓にさらにコレステロールを産出させます。不飽和脂肪はこのような働きは持っていません。飽和脂肪を見分けるのは簡単です。飽和脂肪は室温で固体になりますが、不飽和脂肪は液体です。牛肉、鶏肉、その他の動物性食品は、多くの飽和脂肪を含んでいます。これは動物性食品を避けるべき理由のひとつです。植物性の油にも飽和脂肪が多く含まれているものがあります。熱帯性の油（パーム油、パーム核油、ココナッツオイル）と呼ばれるものです。また、硬化油（水素添加油）（マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなど）も、飽和脂肪の含有量が高くなっています。液体の植物性の油は、動物性の脂肪や熱帯性の油よりははるかによいですが、すべての脂肪や油は飽和脂肪と不飽和脂肪が混ざっています。したがって、どのような油や脂肪も冠動脈疾患に影響があり、摂取は最低限にする必要があります。下記の表は様々な種類の脂肪に含まれる飽和脂肪の割合を示しています。コレステロールを低下させる方法コレステロール摂取を減らす必要なコレステロールは体内で作ることができるため、食事からさらにコレステロールを摂取する必要はありません。コレステロールは、動物性の食品（牛や豚、鳥類の肉、魚、卵、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどすべての肉類・乳製品）すべてにみられます。肉のコレステロールは主に赤身の部分にあるので、肉の脂肪分を避けるだけでは十分ではありません。多くの人は、鶏肉にも牛肉とほぼ同量のコレステロールが含まれるのを知ったら驚くでしょう。牛肉あるいは鶏肉約110gあたり100mgのコレステロールが含まれています。また、多くの貝類もコレステロール値が非常に高いです。この理由から、動物性の食品を避けることは賢明といえます。植物性の食品にはコレステロールが含まれていません。 100mgのコレステロールを食事から摂取するごとに、血中のコレステロールレベルは個人差がありますが、おおよそ5ポイント上昇するといわれています。100mgのコレステロールは、約110gの牛肉・鶏肉・卵1/2個・牛乳コップ3杯に含まれています。牛肉と鶏肉はほぼ同じ約25gあたり25mgのコレステロールが含まれています6。食べるものを変えることで、コレステロール値を劇的に減らすことができます。血中コレステロール値が1%下がるごとに、心臓病のリスクが2%下がると言われています5。例えば、血中コレステロール値が 300mg/dlから200mg/dlに3分の1下がったとすると心臓発作のリスクが3分の2減ることになります。個人差があるため、さらに大きな効果が得られる場合もあります。動物性脂肪牛脂50% 鶏脂肪30% 豚脂（ラード）39% 熱帯性の油ココナッツオイル87% パーム油49% パーム核油82% 脂肪摂取の減少、特に飽和脂肪植物性油キャノーラオイル12% コーン油13% 綿実油26% オリーブオイル13% ピーナッツオイル17% ベニバナ油9% ごま油14% 大豆油15% ひまわり油10% すべての脂肪の摂取量を減らすことは、コレステロール値を低くし、他の慢性疾患のリスクを減らす飽和脂肪はコレステロールを上昇させますが、不ための有効な方法です。動物性の食品（特に肉・アイ飽和脂肪もフリーラジカルの産出を増加させたり、 2 13093A-NTR • 20130523 CHolesterol and Heart Disease 免疫システムを損傷させたり、体重増加などを引きの食事は、脂肪やナトリウムの含有量が低いのですが、それ以上に血圧を下げる効果が大きいのです。起こしたりする傾向があります。さらに、ベジタリアンの食事では、鉄の貯蔵が減るとプラントベースの食事いう利点があります。ある研究では、鉄と心臓病、鉄すでに述べたとおり、植物性の食品（穀物、豆類、と血圧の間に強い関連が見られています11。野菜、果物）の食事をすることは、飽和脂肪の摂取を抑え、コレステロールを完全に除去する最もよい方他の要因タバコが法です。ビーガンの食事は、すべての動物性の食品心臓病に関連している他の要因として、タバコを吸っていては、健康的な食事を摂取しないため、心臓病のリスクが最も低いとい挙げられます。われています。ある研究では、ベジタリアンの食事ををしていても、効果は薄れます。少しでもタバコを吸している人は、飽和脂肪の摂取量がそうでない人とう人は、非喫煙者よりも心臓病のはるかに高いリスク比べ26％少なく、ベジタリアンの食事に変えることを持っているため、やめることが不可欠です。運動もによりたった6週間でコレステロール値が劇的に下重要です。毎日30分のウォーキングといった定期的がったと指摘されています7。ベジタリアンの食事でな軽い運動は、劇的に心臓病による死亡率を減少すは、脂肪の摂取が非常に低いことに加えて、植物性ることができます。運動の種類と、約68kgの成人の1 のタンパク質のおかげで心臓病のリスクを低下させ時間あたりの燃焼カロリー量は、次のとおりです。ることができます。動物性のタンパク質を大豆のタンパク質に置き換えると、食事中の脂肪や飽和脂肪運動 1時間あたりのカロリー燃焼量 400カロリーの量が同じであっても血中コレステロール値が下が自転車 8 ることが指摘されています。カヌー 180カロリー食物繊維：プラントベースの食事のさらなる恩恵料理 180カロリー 240カロリー水溶性食物繊維は、コレステロールなどの吸収ダンス、社交ダンスを遅くするのに役立ちます。また、食物繊維は、肝臓ガーデニング 480カロリーが作るコレステロール量を減らします。オート麦、大ゴルフ 345カロリー麦、豆9、および一部の果物や野菜は、水溶性食物繊縄跳び 570カロリー維を多く含んでいます。すべての動物性食品には食卓球 285カロリー物繊維が含まれていません。ピアノを弾く 165カロリー適切な体重を維持するラケットボール 615カロリー体重を減らすことにより、HDL値（善玉コレステロ 525カロリーール値）をあげることができます。肥満は、心臓病の水泳（ダブルス） 270カロリーリスクに影響します。リンゴ型肥満（体の中心部に脂テニス肪がたまる内臓肥満型）の人は、洋なし型（腰やお尻テニス（シングルス） 435カロリーに脂肪がたまる皮下脂肪型）の人よりリスクが高いバレーボール 330カロリーリンゴ型肥満の人は、低脂肪のといわれています10。ウォーキング 360カロリー食事あるいは運動によって体重を落とすとよいでしょう。最後に、ストレスは、心臓に負担をかけます。日常生活では、心拍数が上がったり、血圧が上がるような血圧できる範囲で様々なストレスがたくさんあります12。高血圧は心臓病のリスクを高め、脳卒中や他の深ことにチャレンジすることや十分な休息、瞑想、ヨガ刻な健康問題を引き起こします。しかし、食べるものなどはストレス解消に非常に役に立ちます。に気を付けることで血圧をコントロールすることが低脂肪のプラントベースの食事、日常的な運動、可能です。ストレスを減らすという健康的なライフスタイルで食塩は、血圧に影響するため、最小限にするべき健康な心臓を手に入れることができるのです。です。多くの研究でベジタリアンの食事をする人はそうでない人と比べて血圧が低いことが明らかになよいニュース：心臓病を改善するっています。塩分の摂取量を低下させなくても、低 1990年7月21日に、権威ある医学学術雑誌Lancet 脂肪、高繊維のベジタリアンの食事は、10％も血圧にディーン•オーニッシュ医学博士の薬物療法を使を下げることができます。このことの明確な生物学用せずに心臓病を改善した研究結果が発表されま的根拠はまだ明確になっていません。ベジタリアンした13。心臓病がアメリカにおける死因の第1位であ 3 13093A-NTR • 20130523 CHolesterol and Heart Disease ったにもかかわらず、それまでほとんどの医師は心臓病の治療を試みてはきませんでした。心臓の動脈を詰まらせるコレステロールや他の物質のプラークはいったん出来てしまうとなくなることはないと考えられていたからです。バイパスまたは血管形成術が必要なほど症状が深刻化してからプラークを除去するのが従来の方法でした。オーニッシュ医学博士は、より厳格な食事療法と生活習慣を改善させることが、他のライフスタイルの変化とともに、心臓病を改善する可能性があることをカリフォルニア大学サンフランシスコ校で検証しました。彼は、血管造影でプラークがはっきりと見えた患者を選択し、2つのグループに分けました。1 つのグループの患者は、対照群と呼ばれ、通常の心臓病に対する標準治療を受けました。もう1つのグループは、プラントベースの食事（脂肪はカロリーの 10%以下）を行いました。適度な運動と、ストレスの管理を様々な簡単なテクニックを通して学ぶことも行いました。もちろん、喫煙は禁止されました。プラントベースの食事を行ったグループの患者たちは、すぐに体が楽になり、その後1年間を通して、症状が改善し続けました。彼らはそれまで心臓病の激しい胸痛に苦しんでいましたが、オーニッシュ医学博士によると、「大部分の人が痛みから解放され」ました。「以前より活動的になり、仕事に戻り、それまで数年間にできなかったようなことを行っても、心臓病の胸痛はおそってこなかったのです。」。彼らのコレステロール値は劇的に低下しただけではなく、1年後、プラントベースの食事を行った患者の82%が冠動脈閉塞が改善されました。プラークは薬物療法、手術、副作用なしに、溶解しはじめていたのです。一方、もう一つのグループでは、通常の心臓病に対する医療を受けましたが、あまり効果がありません 4 でした。ほとんどの患者は、胸痛は消えず、悪化し続けており、プラークは成長を続け、毎日少しずつ心臓への血流を遮断し続けていました。オーニッシュ医学博士らの研究は、それまでよいとされていた治療方法に疑問を投げかけました。　多くの医師は、いまだに「鶏肉と魚」の食事をすすめています。しかし、多くの研究でそのような中途半端な食事の変更では長期的には心臓病が悪化することが明らかになっています。低脂肪のプラントベースの食事と、日常的な運動、禁煙やストレス管理は心臓病を改善する最高の方法です。参考文献 1. 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