2016/04/15・21 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 日本経済史 I・II(日本経済史) 第3回 中世社会の形成 Ⅰ 中世社会の特徴 古代から中世へ:中央集権化から分権化へ、日常的な紛争 在地勢力の台頭:領主(武士)、農民 中央政府の二元化:朝廷(荘園領主)と武家政権(幕府))、在地勢力への影響 Ⅱ 鎌倉幕府(1192~1333 年) 在地領主(武士):所領確保、荘官として活動、国衙へ参加、中央の動向に左右 東国武士団(御家人)による幕府設立(反乱軍):朝廷(従来の政府)と対立 軍事的勝利:西国に支配域拡大、地頭職の新設、朝廷と妥協(二元体制) 元寇 元(モンゴル) 鎌倉幕府 朝廷 天皇 任命 将軍(征夷大将軍) 有力貴族 荘園領主 有力寺社 執権(北条氏) 制約 任命、命令、裁定 年貢 任命、指示命令 国 守護(有力御家人) 国内の御家人の統率、 国内の治安維持 こくがりょう 国衙領 国司(目代) 在庁官人 荘園 対立 荘官 (非御家人) 年貢 地頭(御家人) 荘園内の治安維持 支配 領主 (御家人) 領主 (非御家人) 年貢 年貢 支配 年貢 支配 百姓 百姓 1 百姓 2016/04/15・21 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama ひ ご け に ん 非御家人 (鎌倉幕府の保護下にない在地領主):元寇による経済的負担 AE 鎌倉時代初期の若狭国:御家人は 27 名、限られたメンバーシップ 個人的主従関係による支配:将軍と御家人 御家人内の格差:幕府執行部に近い人々を優遇、恩賞の不足、分割相続 Ⅲ 室町幕府(1338~1573 年) 武士による支配体制の再編:在地領主(武士)の取り込み 旧勢力(荘園領主)の既得権益温存:在地への影響力、二元支配の継続 ぢざむらい 在地領主(地侍 ):守護(幕府)への帰属は不完全 朝廷 室町幕府 任命 天皇 荘園領主 有力貴族 有力寺社 将軍(征夷大将軍) 支配体制の維持 対立 年貢 任命 任命 国 守護(有力武士) 働きかけ 軍事的奉仕 保護 荘園 所領 守護被官 領主(地侍) 荘官 領主(地侍) 年貢 年貢 そうそん そうそん 惣村 百姓 Ⅳ 有力百姓 有力百姓 百姓 百姓 惣村 百姓 戦国時代[室町時代後期:応仁の乱(1467~73)以降] こくじん 守護と荘園領主による二元支配:在地領主(地侍、国人 )は帰属先選択、政情の不安定化 荘園領主の権益保持:朝廷の権威(将軍の任命など) 百姓(農民)も武装(領主に対抗、武具所持、城砦建設):実力行使(暴力の連鎖) 2 2016/04/15・21 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 荘園領主 守護 地侍(国人) 年貢の滞納 荘官→守護被官 村落 有力百姓 年貢 領地 荘園 一揆(国一揆、一向一揆) 在地勢力(国人、百姓)による守護や荘園領主の勢力の排除 荘園領主 守護 勢力バランスを利用 不当な介入を抑止 山城の国一揆 南山城一帯を国人層が支配 (1486~93) 在地領主(国人) 郡レベルで 団結(一揆) 有力百姓 年貢 年貢 領地 荘園領地 各勢力の集合離反:自力救済(暴力や威嚇)による利益確保 百姓同士の争い:村落間の境界、水利権の紛争 紛争の日常化:暴力の応酬 Ⅴ 中世の経済発展 市場経済の発展:農民層の成長 物資の流通(遠隔地の荘園や所領からの年貢輸送、各地域の在地交易) 各地でマーケット(市)の形成:渡来銭(中国の貨幣)の流通(米も代替貨幣) 遠隔地からの送金:13 世紀から為替使用 3 2016/04/15・21 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 各種物資、銭 町場 都市 各種物資、銭 荘園領主 守護所在地 各種物資、銭 各種物資、銭 米、各種物資、銭 市(不定期) 地侍(国人) 各種物資、銭 農村 各種物資、銭 米、各種物資、銭 京(京都) 商人 各種物資、銭 (貴族、寺社) 物資の交換 守護被官、荘官 都市居住者 各種物資、銭 米、各種物資、銭 (職人など) 有力百姓 百姓 百姓 百姓 中世の経済発展:在地勢力(領主、農民)の成長 人口増加:耕地面積の増大、農業生産の発展、稲の単位面積あたり収量の伸び 領主や村落による開発:荒地の開墾、灌漑施設の建設(溜池[瀬戸内海沿岸]) 古代から中世にかけての人口と農業生産の推移 年代 ca.750 ca.1150 ca.1280 ca.1450 ca.1600 1721 総人口 (万人) 総耕地面積 (千町) 1反あたり 米の生産量 (石) 0.48 * 559 550-630 570-620 960-1,050 1,500-1,700 3,130 956 977 1,241 1,588 2,251 0.85 1.23 0.96 1.09 注:1 町=10 反=1 ヘクタール、1 石=180 リットル。 この講義の第 1 回では、古い研究をもとに 750 年頃の 1 反あたり 収量を 0.67 石としたが、ここでは、最新の推計結果を提示した。 出所:Farris, W.W., Japan’s Medieval Population: Famine, Fertility, and Warfare in a Transformative Age, (Honolulu, 2006), pp. 4, 262-63. 経済発展に対する制約 紛争の日常化:耕作の中断、物資輸送のコスト(関銭、海賊) 開発規模の制約:分権的体制、大規模開発が不可能(後の近世と比較) 4 2016/04/15・21 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 荘園領主 関所 銭 物資 村落 A 村落 B 金銭の支払いと引換 に通行の安全を保障 略奪 商人 都市の金融業者をめぐる紛争(京都周辺) 債務者(領主、百姓):徳政令への期待(債務の返済免除)、土一揆へ便乗(流民の蜂起) 利子率の高騰(月 4~6%=年利 48~72%) 都市 幕府 徳政令の要求 借金 守護 荘園領主 足軽 (傭兵) 荘官 守護被官 地侍(国人) 地侍(国 土一揆 流民 近郊農村 年貢 年貢 借金 百姓 Ⅴ 中世に対する評価 在地勢力の成長:人口増加、耕地増大、農業生産の発展 過度の分権化:中央集権体制の弛緩、社会の不安定化 経済発展には限界:後世の近世(江戸時代)との対比 参考文献 最近の概説書が参考となる 『岩波講座日本歴史』第 6~9 巻(中世)、岩波書店、2013~15 年 シリーズ日本中世史(現在刊行中) 1.五味文彦『中世社会のはじまり』岩波文庫、2016 年 2.近藤成一『鎌倉幕府と朝廷』岩波文庫、2016 年 5 ど そう 土倉、酒屋 (金貸業者)
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