2003

1
線型空間
線型空間の公理
集合 V が次の条件((I):(1)∼(4)、(II):(1)∼(4))を満たすとき、V を K 上の線型空間(ベ
クトル空間、vector space)と呼び、V の要素をベクトル(vector)、K の要素をスカラー
(scalor)と呼ぶ。K が C のときは複素線型空間、K が R のときは実線型空間という。
(I) 任意の x, y ∈ V に対して、和 x + y ∈ V が定義されている。この演算を加法といい、
次の四つの公理を満たす:
(1) (x + y) + z = x + (y + z)(結合法則)
(2) x + y = y + x(交換法則)
(3) V の一つの要素 0(零ベクトルと呼ぶ)が存在し、任意の x ∈ V に対して、
x+0=x
が成り立つ。
(4) 任意の x ∈ V に対して、x + x = 0 となる x ∈ V が存在する。これを x の逆ベクト
ルといい、−x と表す。
(II) 任意の x ∈ V , および任意の α ∈ K に対して、スカラー倍 αx ∈ V が定義されてい
る。この演算をスカラー乗法といい、次の四つの公理を満たす:
(1) (α + β)x = αx + βx
(2) α(x + y) = αx + αy
(3) α(βx) = (αβ)x
(4) 1x = x
注. (2) より、(3) や (4) が成り立てば、
x + 0 = 0 + x = x,
x + (−x) = (−x) + x = 0
がそれぞれ成り立つ。
注. 線型空間 V の任意の要素 x, y に対して、減法が次のように定義される:
x − y = x + (−y).
注. 零ベクトルは、存在すれば一意である。実際、二つの零ベクトル 0, 0 ∈ V が存在したとする
と、0 = 0 + 0 = 0 であるから、0 = 0 である。
1
注. x ∈ V の逆ベクトル −x は、存在すれば一意である。実際、任意の x ∈ V に対し、二つの逆ベ
クトル x , x ∈ V が存在したとすると、x = x +0 = x +(x+x ) = (x +x)+x = 0+x = x
であるから、x = x である。
注. 0x = 0 が成り立つ。実際、x = 1x = (1 + 0)x = 1x + 0x = x + 0x と、零ベクトルの一意存
在性から、0x = 0 が成り立つ。左辺は x の 0 倍、右辺は零ベクトルであるので、この両辺は概念
的に全く異なるものであり、この等式は自明でない!ことに注意せよ。
注. (−1)x = −x が成り立つ。実際、0 = 0x = (1 + (−1))x = 1x + (−1)x = x + (−1)x と、逆ベ
クトルの一意存在性から、(−1)x = −x が成り立つ。左辺は x の −1 倍、右辺は x の逆ベクトルで
あるので、この両辺は概念的に全く異なるものであり、この等式は自明でない!ことに注意せよ。
1.
線型空間の例 1
R の要素を成分とする n 次列ベクトル全体を Rn とおく:
  

x1  



 


  x2   
 . 
 . 


 . 



 


 x
n Rn =









x1 , x2 , . . . , xn ∈ R .







集合 Rn において、和とスカラー倍を次のように定義する:


x
 1


   
 x2   y2 
   
 . + . 
 .   . 
 .   . 
   
xn

y
 1
yn

x + y1 
 1
=

 x2






+ y2 

,
.. 
. 





x
 1
 
 x2 
 
α . 
 . 
 . 
 
xn + yn

αx
 1
=
xn


 αx2 


 . .
 . 
 . 


αxn
このとき、集合 Rn が R 上の線型空間をなすことは、線型空間の公理 (I)(II) の全てをチェッ
クすることによって確認される。
(零ベクトルは 0 = t (0, 0, . . . , 0), t (x1 , x2 , . . . , xn ) の逆ベ
クトルは t (−x1 , −x2 , . . . , −xn ) である。)
注. Rn は n 次元ユークリッド空間(Euclidean space)と呼ばれる。2 次元ユークリッド空間 R2
の要素は「平面ベクトル」、3 次元ユークリッド空間 R3 の要素は「空間ベクトル」に相当する。
問題 1. R の要素を成分とする m × n 型行列全体を M(m, n; R) とおく:
M(m, n; R) =



  a11


 ...





 a
m1




· · · a1n  


.. 

· · · .  aij ∈ R, 1 ≤ i ≤ m, 1 ≤ j ≤ n .





· · · amn 集合 M(m, n; R) は、通常の行列の和とスカラー倍(実数倍)について、R 上
の線型空間をなすことを確認せよ。
2
2.
線型空間の例 2
R から R への関数全体のなす集合を F とする。任意の f, g ∈ F と α ∈ R について、和
f + g とスカラー倍 αf を、任意の x ∈ R に対して、
(f + g)(x) = f (x) + g(x),
(αf )(x) = αf (x)
と定義する。このとき、F は R 上の線型空間をなす。実際、公理 (I)(1)(2) はよいであろ
う。零ベクトルとしては、恒等的に 0 である関数(そのような関数記号はないので、仮に
f0 (x) ≡ 0 とでもしておけばよい)をとり、関数 f の逆ベクトルとしては、任意の x ∈ R
に対して、f¯(x) = −f (x) と定義される関数 f¯ をとればよい。公理 (II) についても一つ一
つ確認していけばよい。したがって、公理より 0f = f0 , (−1)f = f¯ を導くことも容易で
ある。
注. 通常、関数 f¯ は −f と表される。また、f0 (x) = 0(x) とでも表せば、f − f = 0 である。もち
ろん、これは関数 f 、すなわち F の要素としてのベクトルと f の逆ベクトルの和が零ベクトルに
等しいということ、すなわち定義から、任意の x について f (x) − f (x) = 0(x) が成り立つことを
示しているのであり、したがって、実数の引き算、例えば 3 − 3 = 0 とは全く異なる集合上での演
算である。しかし、3 − 3 = 0 の計算と f − f = 0 の計算を混同しても間違いはおこらない。その
理由は F と R が共に「線型空間」をなしているからで、お陰で、集合上の差異を意識することな
く、慣れ親しんだ計算と同様に計算ができるのである。加えて、記号法のマジックである。
問題 2. 実数列全体の集合を P とおく:P = {{an }n=1,2,... | an ∈ R, n ∈ N }. 任
意の {an }, {bn } ∈ P と α ∈ R に対し、和 {an } + {bn } とスカラー倍 α{an } を、
{an } + {bn } = {an + bn },
α{an } = {αan }
と定義する。このとき、P は R 上の線型空間をなすことを示せ。
注. 以上の例と問題からわかるように、数ベクトル以外に、行列や関数、数列もベクトルと見なす
ことができる。
部分空間
線型空間 V の部分集合 W が、V と同じ演算によってそれ自身線型空間をなすならば、W
は V の線形部分空間(vector subspace)、もしくは略して部分空間と呼ぶ。W (= φ) が部
分空間をなすかどうかの判定は、公理 (I)(II) の全てにわたって調べる必要はない。実は、
次の二つの条件が必要十分である:
x, y ∈ W
=⇒
x + y ∈ W,
x ∈ W, α ∈ R
3
=⇒
αx ∈ W.
実際、必要性は明らかなので、十分性をチェックすればよい。まず、W は V の部分集合、
かつ和とスカラー倍について閉じていることから、公理 (I)(1)(2) と (II)(1)∼(4) は成立す
る。(I)(3)(4) がさしあたり不明である(0 ∈ V だが、0 ∈ W であるかどうか不明。また、
x ∈ W に対して、−x ∈ V ではあるが、−x ∈ W かどうか不明)。しかし上の 2 番目の
条件で、α = 0 とおけば、0x = 0 ∈ W であることがわかり、また、α = −1 とおけば、
(−1)x = −x ∈ W であることがわかる。
注. V 自身、および {0} はそれぞれ V の部分空間である。
3.
部分空間の例 1
(1) n 次実正方行列全体 M(n; R) = M(n, n; R) において、対称行列全体 S, 交代行列全体
A, 上三角行列全体 U はどれも M(n; R) の部分空間である。
(2) F は §2. と同じとする。このとき、
C 0 = {f ∈ F | f (x) は R 上いたるところで連続 }
C 1 = {f ∈ C 0 | f (x) は R 上いたるところで微分可能 }
とすると、C 0 は F の、C 1 は C 0 の部分空間をなす。しかし、
F − C 0 = {f ∈ F | f (x) は少なくとも一点で不連続 }
は、F の部分空間をなさない。
(3) P は問題 2. と同じとする。このとき、
Gλ = {{an } ∈ P | an+1 = λan (n ∈ N )}
とすると、Gλ は P の部分空間をなす。しかし、
Aλ = {{an } ∈ P | an+1 = an + λ (n ∈ N )}
は、λ = 0 のとき P の部分空間をなさない。
問題 3. 上の各例を確かめよ。
4.
部分空間の例 2
a1 , a2 , . . . , an を与えられた実定数とし、少なくとも一つは
0 でない、すなわち
(a1 , a2 , . . . , an ) =
  




x 

 1 
(0, 0, . . . , 0) とする。R 上の線型空間 Rn =

 


  x2   
 . 

 . 


 . 


 


 x
n
4
x1 , x2 , . . . , xn ∈ R












において、
Hcn =
 


x

 1






  x2 
 
 . 
 . 


 . 



 


 x
n
∈
n
R a1 x1 + a2 x2 + · · · + an xn = c

















とおくと、
H n は部分空間をなすが、c = 0 のとき、Hcn は部分空間をなさない。実際、任
  0 
x
y
 1  1
   
 x2   y2 
   
意の  .  ,  . 
 .   . 
 .   . 
   
∈ Hcn と α ∈ R に対して、
xn
yn
a1 (x1 + y1 ) + a2 (x2 + y2 ) + · · · + an (xn + yn ) = 2c
a1 (αx1 ) + a2 (αx2 ) + · · · + an (αxn ) = α(a1 x1 + a2 x2 + · · · + an xn ) = αc
であるので、Hcn は c = 0 のときのみ和とスカラー倍について閉じる。
注. Hc3 は R3 内で平面をなす。このアナロジーで、Hcn を Rn の超平面(hyperplane)と呼ぶ。Hc2
は平面 R2 内の直線だが、これも特別な平面とみなす。また、H0n は原点を通る超平面であり、部
分空間をなす。原点を通らない超平面 Hcn (c = 0) は、零ベクトルがその要素に含まれず部分空間
にならない。
問題 4. 以下の R 上の線型空間 R3 の部分集合のうち、R3 の部分空間をなす
ものを選べ。
   x (1)
(3)
(5)
(7)




   
 x + y + z = 1
W1 = 
y
 




 z 
(2)
  


x


  

W3 = 
xyz
=
1
y 




 z 
(4)
  


x


  
2
2
2


W5 =  y  x + y + z = 1




 z 
(6)
  


x


  


W7 =  y  x − 1 = y = z




 z 
(8)
5
  


 x 


 
 |x| ≤ 1, |y| ≤ 1, |z| ≤ 1
W2 = 
y
 




 z 
  


x


  x

y
z

=
=
W4 = 
y 

3
4


 z 2

  


x


  


W6 =  y  x = y = z




 z 
  


x


  
2
2
2


W8 =  y  x + y + z < 1




 z 
5.
線型結合
V を R 上の線型空間とする。このとき、a1 , a2 , . . . , am ∈ V , λ1 , λ2 , . . . , λm ∈ R に対し、
λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am
を a1 , a2 , . . . , am の線型結合(1 次結合、linear combination)という。
与えられた a1 , a2 , . . . , am ∈ V に対し、これらの線型結合で表されるベクトル全体の集合
を S とおく:
S = {λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am | λ1 , λ2 , . . . , λm ∈ R}.
このとき、S は V の部分空間をなす。
問題 5. これを確かめよ。
定義. この S を a1 , a2 , . . . , am で張られる(もしくは、生成される)空間と呼び、
span[a1 , a2 , . . . , am ]
あるいは、
G(a1 , a2 , . . . , am ),
{{a1 , a2 , . . . , am }},
[a1 , a2 , . . . , am ]
などと表す。
6.
張られる空間
3
R のベクトル a1 =
 

 1
 
0,
 
 
 0 


−1,




0
a2 =


a3 =
1

 1 


−1 に対し、




1











λ1 + λ3  µ1  















span[a1 , a2 , a3 ] =  
−λ2 − λ3  λ1 , λ2 , λ3 ∈ R =  −µ2  












 λ2 + λ3

 µ2
  




x 




  


= y  y + z = 0 = span[a1 , a2 ]




 




 z 






µ 1 , µ 2 ∈ R




であるので、a1 , a2 , a3 で張られる空間は、a1 , a2 で張られる空間に等しい。実際、a3 =
a1 + a2 であるので、a1 , a2 で張られる空間の生成に a3 は寄与しない。
注. span[a1 , a2 ] は R3 において、a1 と a2 を含む平面を表す。これが「a1 , a2 の 張る 空間」と呼
ぶ由来である。
問題 6. V を R 上の線型空間とする。V の要素 a1 , a2 , . . . , am で張られる空間
span[a1 , a2 , . . . , am ] に b が含まれていれば、
6
span[a1 , a2 , . . . , am , b] = span[a1 , a2 , . . . , am ]
であることを示せ。
線型独立性
線型空間 V の要素 a1 , a2 , . . . , am について、少なくとも一つは残りの m − 1 個の線型結合
で表されるとき、a1 , a2 , . . . , am は線型従属(1 次従属、linearly dependent)であるとい
う。そうでないとき、線型独立(1 次独立、linearly independent)であるという。言い換
えると、次の定理になる。
定理. (1) a1 , a2 , . . . , am が線型従属である。


⇐⇒
λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am = 0

(λ1 , λ2 , . . . , λm ) = (0, 0, . . . , 0)
(2) a1 , a2 , . . . , am が線型独立である。
⇐⇒
7.
となる λ1 , λ2 , . . . , λm が存在する。
λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am = 0 ならば (λ1 , λ2 , . . . , λm ) = (0, 0, . . . , 0) である。
R2 における線型独立性
R2 において、次のベクトルの組
a, b の線型独立性を判定してみよう:




12
7+k
, b = 
.
a=
7−k
4
αa + βb = 0 とおくと、


すると、




12α + (7 + k)β = 0,
(7 − k)α + 4β = 0,
48α + (28 + 4k)β = 0,
より、上の式を 4 倍、下の式を 7 + k 倍
上の式から下の式を引いて、(k 2 − 1)α = 0 を得
2
(49 − k )α + (28 + k)β = 0.
る。よって、k = ±1 ならば、α = 0. これより、β = 0 を得る。k = 1 のときは、上の式
も下の式も 3α + 2β = 0 となり、k = −1 のときは、上の式も下の式も 2α + β = 0 となる
ので、(α, β) = (0, 0) である適当な α, β を用いて、αa + βb = 0 とすることができる。
(実
際、例えば、k = 1 のときは、−2a + 3b = 0, k = −1 のときは、−a + 2b = 0 である。)
以上より、a, b は、k = ±1 のとき線型独立、k = ±1 のとき線型従属である。
β
注. a, b ∈ R2 について、αa + βb = 0 とおく。α = 0 とすると、a = − b, β = 0 とすると、
α
α
b = − a であるから、(α, β) = (0, 0) のとき、a, b のどちらか一方が他方のスカラー倍で表され
β
る。このとき、a, b は線型従属である。したがって、a, b が線型独立であるとき、いずれの一方も
他方のスカラー倍では表されない。ゆえに、
a, b ∈ R2 が線型従属
a, b ∈ R2 が線型独立
⇐⇒
⇐⇒
a, b ∈ R2 が同一直線上にある
a, b ∈ R2 が同一直線上にない
7
という幾何学的解釈ができる。
 
 
a
b
問題 7. R2 のベクトル a1 =   , a2 =   について,
c
d
(1) a1 , a2 が線型独立であるためには, ad − bc = 0 が必要十分であることを
示せ.
(2) ad − bc = 0 であるとき, R2 の基本ベクトル e1 , e2 を a1 , a2 の線型結合と
して表せ.
8.
R3 における線型独立性
R3 において、次のベクトルの組
a, b,
の線型独立性を判定してみよう:
 


 c
0
 0 
k 
 

a=
1 ,
 




 

b=
−1 ,

c=
0 .
 
1
1
1
αa + βb + γc = 0 とおくと、γk = 0, α = β, α + β + γ = 0 を得る。よって、k = 0 のと
き、γ = 0, したがって α = β = 0 を得る。k = 0 のとき、γ = −2α, α = β, したがって
(α, β, γ) = (0, 0, 0) である α, β, γ を用いて、αa + βb + γc = 0 とすることができる。例え
ば、a + b − 2c = 0. 以上より、a, b, c は、k = 0 のとき線型独立、k = 0 のとき線型従属
である。
γ
β
注. a, b, c ∈ R3 について、αa + βb + γc = 0 とおく。α = 0 とすると、a = − b − c, すなわ
α
α
ち、a は b と c の線型結合で表される。言い換えると、a は b と c の張る平面内のベクトルであ
る。このとき、a, b, c は線型従属である。β = 0, γ = 0 のときも同様である。そうでないとき、線
型独立であるのだから、
a, b, c ∈ R3 が線型従属
a, b, c ∈ R3 が線型独立
⇐⇒
⇐⇒
a, b, c ∈ R3 が同一平面上にある
a, b, c ∈ R3 が同一平面上にない
という幾何学的解釈ができる。
問題 8. 以下の R3 の各組のベクトルについて、線型独立か線型従属かを判定
せよ。




 
1
1
5
 
 
 





(1) a = 
,
b
=
,
c
=
−1
 3 
3
0
−1
2
 
 
 
1
1
0
 
 
 





(3) a = 1 , b = 0 , c = 1

0
1
1
 
 
 
0
2
3
 
 
 





(2) a = 
,
b
=
,
c
=
1
1
4
0
0
7
 
 
 
 
1
1
0
1
 
 
 
 







(4) a = 0 , b = 1 , c = 1 , d = 1

1
0
1
1
8
 
 
 
1
1
2
 
 
 





(5) a = 
,
b
=
,
c
=
1
0
3
0
k
1
9.
(k について場合分けせよ。)
Rn における線型独立性
Rn において、a1 , a2 , . . . , an の線型独立性を判定するには、λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λn an =
0 として、(λ1 , λ2 , . . . , λn ) = (0, 0, . . . , 0) かそうでないかを判定する。言い換えれば、
a1 , a2 , . . . , an を列ベクトルとする n 次正方行列 A と、n 次列ベクトル λ = t (λ1 , λ2 , . . . , λn )
を用いると、λ についての連立 1 次方程式 Aλ = 0 について、解が自明解 λ = 0 しかない
か、そうでないかを判定することに等しい。以上の考察は次の問題 (A) の伏線である。
問題 9. 以下の問題を解け。
(A) n 次実正方行列 A の n 個の列ベクトル a1 , a2 , . . . , an が線型従属であるた
めには、det A = 0 が必要十分であることを示せ。
(B) Rn の k 個のベクトル a1 , . . . , ak と n 次実正則行列 P について、a1 , . . . , ak
が線型独立であることと、P a1 , . . . , P ak が線型独立であることは同値である
ことを示せ。
10.
一般の線型空間 V における線型独立性
R 上の線型空間 V のベクトル a1 , a2 が線型独立ならばつねに、「aa1 + ba2 , ca1 + da2 が
線型独立である」ことがいえるのは、a, b, c, d の間にいかなる条件が成立するときかを考
えてみよう。 · · · · · ·
aa1 + ba2 , ca1 + da2 が線型独立であるためには、α(aa1 + ba2 ) +
β(ca1 + da2 ) = 0 ならば、α = β = 0 がいえなければならず、
a1 , a2 の線型独立から、そ

 αa + βc = 0
れは、α, β についての連立 1 次方程式
が自明解 α = β = 0 しかもたない
 αb + βd = 0
ことに等しいい。したがって、そのための条件は ad − bc = 0 である。
問題 10. V を R 上の線型空間とする。このとき、以下の問題を解け。
(A) a, b, c ∈ V が線型独立であるならば、
(1) a, b, c のどの 2 つの組も線型独立であることを示せ。
(2) a + b, b + c, c + a も線型独立であることを示せ。
(3) a, a + b + c, a − b − c は線型従属であることを示せ。
(4) x = a + b − 2c, y = a − b − c, z = a + c は線型独立であることを示せ。
(5) u = a + b − 3c, v = a + 3b − c, w = b + c は線型従属であることを示せ。
9
(B) a1 , a2 , . . . , am ∈ V , および任意のスカラー c2 , c3 , . . . , cm ∈ R に対し、
a1 = a1 + c2 a2 + c3 a3 + · · · + cm am
とおく。このとき, a1 , a2 , . . . , am が線型独立ならば、a1 , a2 , . . . , am も線型独
立であることを示せ。
(C) a1 , a2 , . . . , ak ∈ V が線型独立であるならば、a1 , a2 , . . . , ak ∈ V の線型結
合による表現は一意的である:
c1 a1 + c2 a2 + · · · + ck ak = c1 a1 + c2 a2 + · · · + ck ak
=⇒
c1 = c1 , c2 = c2 , . . . , ck = ck ,
ことを示せ。また、逆も成り立つことを示せ。
線型独立性と階数の関係
問題 9.(B) を用いると、次の定理が証明される。
定理. 行列 A について、
rank A = (A の線型独立な列ベクトルの最大個数)
= (A の線型独立な行ベクトルの最大個数)
が成り立つ。
これより、次の系が導かれる。
系. n 次正方行列 A = (a1 , a2 , . . . , an ) について、
rank A = n
⇐⇒
a1 , a2 , . . . , an は線型独立 が成り立つ。
いままでの知識をまとめると、n 次実正方行列 A = (a1 , a2 , . . . , an ) について、以下の条
件は全て同値であることがわかる。
(1) A は n 次正則行列である。
(2) rank A = n である。
(3) A の n 個の列ベクトル a1 , a2 , . . . , an は線型独立である。
(4) det A = 0 である。
(5) x ∈ Rn についての連立 1 次方程式 Ax = b が唯一の解をもつ(b ∈ Rn )。
(6) x ∈ Rn についての連立 1 次方程式 Ax = 0 は自明な解しかもたない。
(7) A は行の基本変形のみで単位行列になる。
10
11.
基底
線型空間 V の要素 a1 , a2 , . . . , an ∈ V について、
(1) span[a1 , a2 , . . . , an ] = V
(2) a1 , a2 , . . . , an は線型独立である。
が成り立つとき、a1 , a2 , . . . , an は V の基底(basis)をなすといい、
a1 , a2 , . . . , an などと表す。
例えば、R上の線型空間
 


x 
 1 Rn =

 


  x2   
 . 

 . 


 . 


 



xn 








x1 , x2 , . . . , xn ∈ R







において、基本ベクトル
 
 
1
0
 
 
e1 =
 
 0
 
 .  , e2
.
.
 
=
0
 
 
 1
 
 .  , . . . , en
.
.
 
0
=
0
 
 
0
 
.
.
.
 
1


x
 1
n
は基底を与える。実際、R の任意のベクトル x =
 
 x2 
 
 .  は、
 . 
 . 
 
xn
(1) x = x1 e1 + x2 e2 + · · · + xn en と表すことができ、
 
 
x
0
1
 
 
(2) x1 e1 + x2 e2 + · · · + xn en =
 
 x2 
 
0 とおけば、 . 
 . 
 . 
 
=
xn
 
0
 
 .  であるので、e1 , e2 , . . . , en
.
.
 
0
は線型独立である。
注. この基底 e1 , e2 , . . . , en を Rn の標準基底と呼ぶ。
問題 11. 次の各問に答えよ。
 
0
 
(1) Rn において、a1 =
 
 1
 
 .  , a2
.
.
 
1
=
 
 
1
 
 
 
1
 
 .  は基底を与えること
.
.
 
 
0
 
 .  , . . . , an
.
.
 
1
を示せ。
11
1
=
0
(2) R 上の線型空間 C の基底を求めよ。
(3) C 上の線型空間 C の基底を求めよ。
(4) R 上の線型空間 V において、a, b がその基底ならば、a + b, a − b も
その基底であることを示せ。
12.
次元
問題 11.(4) でみたように、基底の取り方は一意的でない。しかし、その基底を構成するベ
クトルの個数は一定である。したがって次の定義が意味をもつ。
定義. 線型空間 V の基底が n 個のとき、V は n 次元であるといい、dim V = n と表す。
注. 問題 11.(2)(3) でみたように、R 上の線型空間 C は 2 次元、C 上の線型空間 C は 1 次元であ
る。つまり同じ集合 C であるにもかかわらず次元が異なっている。これは、線型空間の次元は線
型空間を作る集合によってではなく、線型空間の構造(演算など)によって定まる量であること
を示唆している。
注. V の中に線型独立なベクトルがいくつでも取っていけるとき、V は無限次元であるという。
(こ
れに対し基底の個数が有限個の空間の次元は、有限次元という。)例えば、x の実係数多項式全体
の集合 P において、f0 (x) = 1, f1 (x) = x, f2 (x) = x2 , . . . , fn (x) = xn , . . . は、基底を与え、P は
無限次元である。
問題 12. 以下の各線型空間の基底と次元をそれぞれ求めよ。
 





x


 

(1) W =
(2) H =
 

 y  ∈ R3 x = y = z
 




 




 z

 



 x1 





 x2 
 
4
  ∈ R x1 + x2 + x3

x 


 3






 x
4
(3) R 上の線型空間 C 2









+ x4 = 0








(4) C 上の線型空間 C 2
補充定理
n 次元線型空間 V の部分空間 W が基底 a1 , a2 , . . . , ak をもつとき、適当な n − k 個の V
のベクトル b1 , b2 , . . . , bn−k をとれば、a1 , a2 , . . . , ak , b1 , b2 , . . . , bn−k が V の基底となる。
注. この定理は「勝手に V のベクトルを k 個とってきたとき、それらが線型独立ならば、それら
を含む形で V の基底を構成することができる」ということを主張している。
12
1
線型空間(解答例)
解答 1. (I) 任意の A, B ∈ M(m, n; R) について、通常の行列の和 A + B ∈ M(m, n; R) が
定義されている。また、公理 (1)(2) も満たされ、(3) 零ベクトルとして、m × n 型零行列
Om,n , (4)A の逆ベクトルとして、−A をとればよい。
(II) 任意の A ∈ M(m, n; R) と α ∈ R について、通常の行列の実数倍 αA ∈ M(m, n; R)
が定義されている。公理 (1)∼(4) を満たすことはよいであろう。
解答 2. 公理 (I)(1) は、
({an } + {bn }) + {cn } = {an + bn } + {cn } = {(an + bn ) + cn }
= {an + (bn + cn )} = {an } + {bn + cn } = {an } + ({bn } + {cn })
のようにして、満たされることがわかる。(2) も同様。(3) 零ベクトルとしては、0 が並ん
だ数列(そのような記号はないので、仮に {zn } : z1 = 0, z2 = 0, . . . とする。)、(4){an } の
逆ベクトルとしては、{an } = {−an } と定義される数列 {an } をとればよい。
注. {zn } = {0}, {an } = −{an } と表すと、なおのことわかりやすい。
解答 3. (1) S, A, U ⊂ M(n; R) であり、例えば、対称行列同士の和も、対称行列の実数倍
もまた対称行列になるので、S は M(n; R) の部分空間をなす。A, U についても同様。
(2) C 1 ⊂ C 0 ⊂ F であり、連続関数同士の和も、連続関数の実数倍もまた連続関数にな
るので、C 0 は F の部分空間をなす。同様に C 1 も C 0 の部分空間をなす。また、任意の
f ∈ F − C 0 に対し、これを 0 倍すると、0f (x) ≡ 0 (∀x ∈ R), すなわち、恒等的に 0 の定
数関数である。これは連続なので 0f ∈ F − C 0 . したがって、F − C 0 は、F の部分空間
をなさない。
(3) Gλ ⊂ P であり、{an }, {bn } ∈ Gλ に対し、an+1 + bn+1 = λan + λbn = λ(an + bn ) よ
り、{an } + {bn } = {an + bn } ∈ Gλ . また、α ∈ R に対し、αan+1 = αλan = λ(αan ) より、
α{an } = {αan } ∈ Gλ . ∴ Gλ は部分空間。
次に、Aλ ⊂ P であるが、{an }, {bn } ∈ Aλ に対し、an+1 + bn+1 = an + λan + bn + λ =
an + bn + 2λ より、λ = 0 のとき、{an } + {bn } = {an + bn } ∈ Aλ , λ = 0 のとき、
{an } + {bn } ∈ A0 . また、α ∈ R に対し、αan+1 = α(an + λ) = αan + αλ より、λ = 0 の
とき、α{an } = {αan } ∈ Aλ , λ = 0 のとき、α{an } ∈ A0 . よって、A0 は P の部分空間を
なし、Aλ (λ = 0) は部分空間をなさない。
解答 4. (4)(6) のみ部分空間。実際、W4 =
  


2 


  

t
3 
  



4 





t ∈ R , W6 =





  


1 


  

t
1 
  



1 





t∈R と





書け、両方とも原点を通る直線である。部分空間となるための条件をチェックすることは
13
容易であろう。その他の集合が部分空間にならない理由は以下の通り。まず
(1)(3)(5)(7)
 
0
 

については、零ベクトル 
0 をそれぞれの集合に含まないので部分空間ではない。(2)(8)
 
0
 
 
x
 

については、各集合のある要素 
y  と α
 
z
x
 

R に対し、α 
y  が各集合の要素とならない
 
∈
z
 
 1

1

ことを見ればよい。例えば、a = 
1 とおくと、(2) において a ∈ W2 であるが 3a ∈ W2
2 
1
であり、(8) において a ∈ W8 であるが 2a ∈ W8 である。
解答 5. 任意の S の要素 x, y は、x = λ1 a1 + · · · + λm am , y = µ1 a1 + · · · + µm am と
書けるので、x + y = (λ1 + µ1 )a1 + · · · + (λm + µm )am ∈ S. また、α ∈ R に対し、
αx = (αλ1 )a1 + · · · + (αλm )am ∈ S であるから。
解答 6. 包含関係 span[a1 , a2 , . . . , am , b] ⊃ span[a1 , a2 , . . . , am ] は明らかであろう。実際、
x ∈ span[a1 , a2 , . . . , am ] ならば、
x = λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am = λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am + 0b
より、x ∈ span[a1 , a2 , . . . , am , b] である。
逆に、x ∈ span[a1 , a2 , . . . , am , b] ならば、b ∈ span[a1 , a2 , . . . , am ] より、
b = λ1 a1 + λ2 a2 + · · · + λm am
と書け、ゆえに、
x = µ1 a1 + · · · + µm am + µm+1 b = (µ1 + µm+1 λ1 )a1 + · · · + (µm + µm+1 λm )am
より、x ∈ span[a1 , a2 , . . . , am ]. よって、逆の包含関係
span[a1 , a2 , . . . , am , b] ⊂ span[a1 , a2 , . . . , am ]
が成り立つ。
∴ span[a1 , a2 , . . . , am , b] = span[a1 , a2 , . . . , am ].
解答 7. (1) αa1 + βa2 = 0 とする。よって、

 
の連立 1 次方程式 
 
a b
α
 



aα + bβ = 0,
cα + dβ = 0.
すなわち、α, β について
0
=   が成り立つ。
c d
β
0
(必要性)a1 , a2 は線型独立であるとする。このとき、ad − bc = 0 とすると、自明解
α = β = 0 以外の解が存在するので矛盾。∴ ad − bc = 0.
14

a b
(十分性)ad−bc = 0 とすると、行列 

 
α
 は正則なので逆行列をもち、 
c d
すなわち、a1 , a2 は線型独立である。
β
注. 問題 9.(A) はこの問題の Rn のバージョンである。参照せよ。

 
 
 

 
0
=  .
0
 
d −b
1
1
   =   = e1 を解いて、  =

  =
(2) αa1 +βa2 = 
ad − bc −c a
c d
β
0
β
0

a b
α
1
α

d
1
1
1
 . ∴e1 =
(da1 − ca2 ). 同様に、e2 =
(−ba1 + aa2 ).
ad − bc −c
ad − bc
ad − bc
解答 8. (1) αa + βb + γc = 0 とおくと、











α + β + 5γ = 0,
−α + 3β + 3γ = 0, を得る。第 3 式より、
−β + 2γ = 0,
β = 2γ. 第 2 式に代入して、α = 9γ. さらに第 1 式に代入して、16γ = 0. ∴ γ = 0. ∴
α = β = 0. よって線型独立。同様に、(2) 線型独立、(3) 線型独立、(4) 線型従属、(5)k = 1
なら線型独立、k = 1 なら線型従属、がわかる。
解答 9. (A) α1 , α2 , . . . , αn ∈ R に対し,

α1 a1 + · · · + αn an =


A



α1
..
.





=0
· · · · · · (♦)
αn
とおく. det A = 0 ならば, A は正則で, (α1 , . . . , αn の連立 1 次方程式としてみたときの)
(♦) の解は自明解 α1 = · · · = αn = 0 のみ. ∴ a1 , . . . , an は線型独立. det A = 0 ならば,
(♦) は非自明解 (α1 , . . . , αn ) = (0, . . . , 0) をもつ. ∴ a1 , . . . , an は線型従属.
(B) α1 (P a1 ) + · · · + αk (P ak ) = P (α1 a1 + · · · + αk ak ) = 0 ならば、P −1 を両辺の左からか
けて、α1 a1 + · · · + αk ak = 0. よって、a1 , . . . , ak が線型独立ならば、α1 = · · · = αk = 0.
∴ P a1 , . . . , P αk は線型独立。逆も同様に示せる。
解答 10. (A) α, β, γ ∈ R とする.
(1) a, b, c のある 2 つの組, 例えば a, b, が線型従属であったとすると, a = αb とかける.
これは a, b, c の線型独立性に矛盾.
(2) α(a + b) + β(b + c) + γ(c + a) = (α + γ)a + (α + β)b + (β + γ)c = 0 と a, b, c の線
型独立性から, α + γ = α + β = β + γ = 0. よって, α = β = γ = 0. ∴ 線型独立.
(3) αa + β(a + b + c) + γ(a − b − c) = (α + β + γ)a + (β − γ)b + (β − γ)c = 0 と a, b, c
の線型独立性から, α = −2β, γ = β. ∴ 線型従属.
15
(4) αx + βy + γz = (α + β + γ)a + (α − β)b + (−2α − β + γ)c = 0 と, a, b, c の線型
独立性より, α + β + γ = α − β = −2α − β + γ = 0. これより, α = β = γ = 0. ∴
x, y, z は線型独立.
(5) αu + βv + γw = (α + β)a + (α + 3β + γ)b + (−3α − β + γ)c = 0 と, a, b, c の線型
独立性より, α + β = α + 3β + γ = −3α − β + γ = 0. これより, β = −α, γ = 2α と
なるので, u, v, w は線型従属.
(B) b1 , b2 , . . . , bm ∈ F に対し,
b1 a1 + b2 a2 + · · · + bm am = b1 a1 + (b1 c2 + b2 )a2 + · · · + (b1 cm + bm )am = 0
とおく. a1 , a2 , . . . , am の線型独立性より, b1 = b1 c2 + b2 = · · · = b1 cm + bm = 0. よって,
b1 = b2 = · · · = bm = 0. ∴ a1 , a2 , . . . , am も線型独立.
(C) c1 a1 + c2 a2 + · · · + ck ak = c1 a1 + c2 a2 + · · · + ck ak とおくと、(c1 − c1 )a1 + (c2 −
c2 )a2 + · · · + (ck − ck )ak = 0 となる。a1 , a2 , . . . , ak は線型独立であるから、c1 − c1 =
c2 − c2 = · · · = ck − ck = 0. すなわち、c1 = c1 , c2 = c2 , . . . , ck = ck .
逆は、c1 = c2 = · · · = ck = 0 のときを考えれば、a1 , a2 , . . . , ak が線型独立であることが
わかる。


x
 1
n
解答 11. (1) R の任意のベクトル x =
 
 x2 
 
 .  は、基本ベクトル e1 , e2 , . . . , en を用い
 . 
 . 
 
xn
 
1
て、x =
n
i=1
xi ei のように表されるが、ai = 1 − ei , 1 =
あるので、x = −
n
i=1
xi ai +
n
xk 1 =
k=1
n
線型結合でも表される。また、
n
i=1
i=1
n
i=1
n
 
 
 1
 
.
.
.
 
(i = 1, . . . , n) で
1
xk
− xi ai と a1 , a2 , . . . , an の
n−1
k=1
xi ai = 0 とおけば、
n
i=1
xi 1 =
n
i=1
xi ei . よって、
xi = x1 = x2 = · · · = xn . これより、x1 = x2 = · · · = xn = 0 となり、a1 , a2 , . . . , an
は線型独立であることがわかる。よって、a1 , a2 , . . . , an は Rn の基底を与える。
(2) C の要素 x は、α1 , α2 ∈ R と e1 = 1, e2 = i を用いて、x = α1 e1 + α2 e2 と一意に表
されるので、e1 , e2 = 1, i は R 上の線型空間 C の基底を与える。
(3) C の要素 x は、α = x ∈ C と e = 1 を用いて、x = αe と一意に表されるので、
e = 1 は C 上の線型空間 C の基底を与える。
16
(4) V の要素 x は、α, β ∈ R を用いて、x = αa + βb と一意に表される。一方、λ =
α+β
α−β
とおけば、αa + βb = λ(a + b) + µ(a − b) となるので、x は、
,µ =
2
2
a + b, a − b の線型結合でも表される。また、λ(a + b) + µ(a − b) = 0 とすると、a, b
の線型独立性より、λ + µ = λ − µ = 0. よって、λ = µ = 0. だから、a + b, a − b も
線型独立である。∴ a + b, a − b も基底を与える。
 
解答 12. (1) a =
 1
 
1 とおくと、W
 
 
= {ta | t ∈ R} と書けるので、W は基底 a の R3
1
の 1 次元部分空間(直線)である。






−1
−1
−1
(2) a =








1

,
0


b=








0

,
1

c=









0

 とおくと、H
0

= {ra + sb + tc | r, s, t ∈ R} と書き

0
0
1
表すことができる。よって、H は基底が a, b, c である R4 の 3 次元部分空間(超平面)
である。  
 
 
 
1
0
i
0
(3) e1 =  , e2 =  , e3 =  , e4 =   とおくと、R 上の線型空間 C 2 の要素
0
1
0
i


z1



 は、R の要素 a, b, c, d を用いて、

z1
= ae1 + be2 + ce3 + de4 と書けるので、C 2
z2
z2
は基底 e1 , e2 , e3 , e4 の 4 次元線型空間である。
 
 
 
1
0
z1
(4) e1 =  , e2 =   とおくと、C 上の線型空間 C 2 の要素   は、C の要素
z2
0
1

z1

a = z1 , b = z2 を用いて、  = ae1 + be2 と書けるので、C 2 は基底 e1 , e2 の 2 次元線
z2
型空間である。
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