Tsuchiya General Hospital, Hiroshima

拘束型心筋症とは
心房:心室へ血液を送る
心室:血液を全身や肺に送り出す
拘束型心筋症は
心筋の拡張や肥大はなく、収縮力も正常であるの
に、心室の壁が硬くなって拡張できない(大きくなれ
ない)ために、十分な血液が全身や肺から心室へ
還ってくることができなくなる病気
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
心室の拡張不全に伴う症状
心室拡張不全、心房拡大
静脈還流不全(肺、全身)
肺鬱血症状:咳嗽、息切れ
浮腫:眼瞼、四肢
肝腫大、頚静脈怒張
尿量減少、腹水貯留
心室拡張不全
肺高血圧、肝不全・肝硬変、腎不全
不整脈、重度の心不全
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
原因・頻度
多くは原因不明 ⇒ 特発性
二次性のものもある
アミロイドーシス、サルコイドーシス
Gaucher病、Hurler病、Fabry病
ヘモクロマトーシス、グリコーゲン病
心内膜弾性線維症、好酸球増多症など
特発性の正確な有病率、罹患率は不明
⇒非常に稀 (50万人に1人とも言われている)
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
治 療
安静、水分制限
薬物療法
利尿剤
血管拡張剤
抗不整脈剤
など
⇒対症療法であり、根治治療とはならない
⇒根治治療は心臓移植のみ
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
2歳発症の場合
2歳までの発症は重症化しやすい
成人発症
小児発症
心臓は大人のサイズ
心臓が大きくなれない
症状の進行は遅い
身体の発育についていけない
症状が急速に進行する
(発症後1~3年で亡くなる)
少しでも元気なうちに心臓移植を考慮しない
と救命時期を逃してしまう!
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
心臓移植とは
死亡した方(脳死)から心臓の提供を受け、これを植え
込み、この新しい心臓を維持して心不全から脱却し、
延命を計ることを目標とする治療法
適応:広範囲心筋梗塞、重症特発性心筋症
重症心臓弁膜症、一部の先天性心奇形など
心臓移植後
生涯免疫抑制剤などの内服が必要
感染症予防も重要
移植した患者の幸せが、提供してくれた患者・家族の
希望であり、決して感謝の気持ちを忘れてはいけない
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
海外での心臓移植
イスタンブール宣言(2008年)
自国の患者は自国で治療すべき
海外渡航移植は原則禁止
⇒現時点で海外からの受け入れを行っている国
アメリカ、カナダのみ
人口100万人当たりの心臓提供者
アメリカ 7.3人 ⇔ 日本 0.05人
心臓移植年間実施件数
アメリカ 2200人 ⇔ 日本 20~30人
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小児の心臓移植
体重の3倍くらいまでの提供者からは移植可能
⇒8歳以上であれば成人からの移植が可能
幼小児では成人からの移植は不可能
2010年7月 臓器移植法改正
本人に拒否の意思が無く、家族が同意した場合、
15歳未満の方から臓器提供可能
日本国内での小児への心臓移植への道が開けた
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
小児の心臓移植の実際
⇒実際には・・・
家族に臓器提供の意思があっても、
虐待の疑いが少しでもある子
精神発達遅滞の子
などは手続き上、ドナーにはなれない
⇒現時点(※)で国内での10歳以下の提供者
からの心臓移植は1例のみ
(※平成24年6月15日現在)
深い悲しみの中で臓器提供という尊い決断をされるご家族
への感謝の気持ちを我々は永久に忘れてはならない
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
待機中の患者死亡
日本循環器学会の適応検討委員会で適応決定
→日本臓器移植ネットワークに登録(待機患者となる)
Status1(医学的緊急度が高い)で
待機期間が長い患者が優先
Status1での平均待機期間960日(⇔米国 56日)
国内での移植適応の患者の1年生存率は50%前後
⇒移植待機中に半数以上の患者が亡くなっている
Status1
強心剤点滴、人工呼吸器、補助循環装置などが必要な患者
Status2
それ以外の患者
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小児の拘束型心筋症の心臓移植
進行が早く、Status1で長期間待機できない
(発症後1~3年で死亡)
Status1で待機中の拡張型心筋症などの患者がいる
ため、優先順位を繰り上げることができない
⇒現時点では日本での心臓移植はほぼ不可能
Status1に至ると肝不全、腎不全を合併してくる
⇒移植後の免疫抑制剤投与に制限があり拒絶反応
に至りやすくなる
進行が早い拘束型心筋症の幼小児であれば、
発症した時点で海外での心臓移植を考慮すべき
Tsuchiya General Hospital, Hiroshima
咲帆ちゃんの現在の状態
2歳3ヶ月(平成22年3月11日生まれ)
身長77㎝(1歳4ヶ月相当) 体重9.0㎏
1歳9ヶ月で発症
右房
心エコー
両心房拡大
心室壁運動正常
左心室拡張末期径25.1㎜(1歳相当)
左房
左室
右室
現在 利尿剤・血管拡張剤など内服
強心剤点滴
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咲帆ちゃん救命のために
2歳前に発症した拘束型心筋症
重篤化のスピードが速く、Status1で長期間生存不可
国内で現在までに10歳以下の心臓提供者は1人のみ
提供者が仮に現れても、「Status1で登録順優先」の現
状のシステムでは進行の速い拘束型心筋症の小児へ
移植の機会が回ってくる可能性はほぼゼロに等しい
現在の日本での心臓移植はほぼ不可能
⇒救命のために海外での心臓移植へ
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