目 次 生産者紹介 6 栽 培 技 術 15 25

クロタマゴテングタケ(猛毒)Amanita fuliginea、ブナ科樹木下の地面、鳥取市
目 次
生 産 者 紹 介 第49回全農乾椎茸品評会「上どんこ」の部で
農林水産大臣賞を初受賞
岩手県宮古市の佐々木映実さん……………… 2
研究トピックス きのこの種………………………………………… 6
産地レポート 豊後椎茸研究会の活動紹介…………………… 9
消費拡大活動 「7月7日は乾しいたけの日」銀座で
PRイベントを開催…………………………… 13
平成28年「そうめん&乾しいたけの日」の
PRイベントに参加…………………………… 13
栽 培 技 術 7~9月の原木シイタケ栽培管理……………… 15
市 況 8月号 全農乾シイタケ情報… ………………… 25
生シイタケの市況動向………………………… 28
各地のきのこだより よろしく………………………………………… 29
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
生産者紹介
第49回全農乾椎茸品評会『上どんこ』の
部で農林水産大臣賞を初受賞
岩手県宮古市の佐々木 映実さん
■ 星川淳雄
平成28年6月の第49回全農乾椎茸品評会の上どんこの部で見事に最高位の農林水産大臣賞を
初受賞しました岩手県宮古市の佐々木映実さん(図1)を紹介致します。
図1.農林水産大臣賞初受賞に輝いた佐々木映実さん(中央)。
左は祖父の啓之さん、右は祖母の静子さん。
佐々木さんの住む宮古市は、岩手県の沿岸部に位置し、漁業と観光と農業の盛んな三陸地域に
位置しています。漁業はウニ・アワビ・カキ・ワカメ・鮭等魚介類の宝庫として、宮古湾での生
産額は地場産業の柱になっています。また、観光面では海岸線が三陸海岸国立公園として指定さ
れており、リアス式海岸は他に類を見ない景観となっています。
宮古地区は、どんこの生産が盛んな土地柄で、全国規模の品評会において農林水産大臣賞受賞
者を数多く輩出し、名実ともに岩手はともかく、全国を代表する原木乾シイタケの主要産地とな
っています。しかし、平成23年の東日本大震災により町は大きな被害を受け一変、現在も復興
半ばの状況にあります。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
佐々木さんの家族構成は、映実さん(24才)と祖父の啓之さん(77才)、祖母の静子さん
(75才)、父の久志さん(51才)と母の久代さん(46才)、そして姉と妹二人の計8人家族です。
映実さんは四姉妹の2番目で、いつも笑い声が絶えない賑やかな家族に囲まれ過ごしています。
佐々木さんの家ではもともと祖父の啓之さんが中心となって乾シイタケ栽培を行ってきまし
た。しかし、東日本大震災、またそれに伴う東京電力福島第一原発事故の影響を受けて、平成
24年以降乾シイタケの価格が風評被害により低迷。祖父の啓之さんは高齢であり、父の久志さ
んも会社勤めでなかなか作業ができないという状況下で、乾シイタケ栽培をこのまま継続するか
どうか啓之さんも悩んだそうです。そんな中、まだ大学生だった映実さんが「せっかくここまで
造り上げた基盤を放棄するのはもったいない」と一念奮起、弘前大学農学生命科学部を卒業後す
ぐに就農し乾シイタケ栽培を継ぐことを決断しました。
祖父の啓之さんは、11年前の第38回全農乾椎茸品評会の花どんこの部で農林水産大臣賞を受
賞した実力者でもあり、映実さんにとってはとても力強い先生でもあったと思います。映実さん
自身も就農してからの栽培歴はまだ3年ですが、小さい頃から植菌の手伝い等を行い、自然と身
についた部分があったからこそ就農し、シイタケ栽培を継ぐ決断にもつながったと思います。ま
た今回、同じ品評会で上どんこの部で林野庁長官賞を受賞した涌田氏(宮古市)はじめ地域の諸
先輩方からのアドバイスもあり今日に至っているとお聞きしました。
佐々木さんの経営は、乾シイタケが主体で他に木炭生産(図2)と稲作を営んでいます。原木
林は約15ha 所有していますが、手配しやすい地域であるため近在で立木を購入しています。
不足分があるときだけ自家林を伐採しています。原木伐採は、11月上旬~12月下旬までに行い、
図2.低質原木は炭焼釜での木炭生産に利用している
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
伐採即玉切りします。この理由として、伐採後葉干しをかけると、冬季の積雪で根雪となれば作
業が進まないことと、春先になれば乾燥気象が続く三陸地方であることもあり、年末までに玉切
り・集材を済ませています。玉切った原木はユニック付のトラックで乾燥場近くの広場まで運び、
棒積みにしてブルーシートを掛けて植菌に備えます。
植菌は原木の質、樹皮の厚さや太さで形成菌と駒菌(ともに菌興115号)を使い分けます。3月
上旬~下旬までの間に植菌を終了させ、植菌後の仮伏せは80cm位の棒積みとしています。低
級原木や小径木・曲り木等は炭焼きに回します。年間植菌数も定量植菌(年植10,000本)を
図3.11年前に撮影した育成中のスギ林ほだ場
図4.11年後、現在のスギ林ほだ場
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
守っています。
5月下旬より人工庇陰を使用し
て、順次低い井桁積みにして本
伏せを行います。植菌年の10月
には1年降ろし・起こしを行い、
2カ所あるほだ場へほだ木を運び
込み、低いムカデ組にします。約
38,000本 の 用 役 ほ だ 木 を 栽 培
するほだ場は、植菌場所周辺のス
ギ 林(標 高150m)と、 標 高350
~400mの南向きの比較的ゆる
やかな場所(14年前に祖父がス
ギを植栽してほだ場に育成。図3,
4)の2カ所です。
発生操作は4月上旬にほだ場内
にくまなく設置した散水設備(図
5)を使用して、芽切を促すとと
もに、ほだ場2ヵ所の標高差を利
用し4月下旬から5月上旬頃まで
分散的にきのこを発生させていま
す。収穫は、きのこの巻き込み見
ながら丹念に1個ずつ採取し、特
にどんこ採りの徹底を図っていま
す。映実さんが就農してからは作
業に一段と精細さが増し、採取・
乾燥・選別に磨きがかかったと思
われます。この度の受賞品はこの
図5.ほだ場には散水設備を完備
ように丁寧に収穫したものの中か
ら納得のいくきのこを品揃えして出品しました。
祖母の静子さんは、子供の頃の映実さん姉妹が山で遊んでいる写真を見て、「その頃から山が
好きだったのかなぁ」と話しているのが印象的でした。環境・自然が映実さんを育て、今度は映
実さんがその環境を育て、今回の受賞につながったのではないかと思いました。映実さん本人は、
「まだまだ勉強中の身です」と謙虚に話していますが、輝く瞳はしっかりと夢と希望が持てる原
木シイタケ栽培を見据えているように感じられました。これからも良品生産を目指し、仲の良い
家族で末永くシイタケ栽培に邁進していただきたいと思います。
(関東東北事務所)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
研究トピックス
き の こ の 種
■ 牛島秀爾
ヌメリツバタケとヌメリツバタケモドキというきのこは形がよく似ており、日本では初夏から
秋にかけて発生する木材腐朽性の食用きのことして知られています。ナラタケなどの食用きのこ
と比べるとまったく人気の無いきのこですが、筆者は、かつて鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺
伝資源研究センターで、これらのきのこについての分類学的研究を行っていましたので、その要
点について紹介したいと思います。
ヌメリツバタケ(学名はMucidula mucida (Schrad.) Pat.)は約200年近く前にヨーロッ
パで認められた種です(図1)。現地ではヨーロッパブナに良く生え、傘には強いヌメリがあり
ますが、後者の様な“ひだの表面の皺“はありません。分布は欧米やアジア(日本)などの北半
球温帯とされています。本邦では、戦前より松浦 勇博士(1930年)、今井三子博士(1938年)
によって報告されています。
一 方 の ヌ メ リ ツ バ タ ケ モ ド キ(学 名:
Mucidula venosolamellata Imazeki &
Toki)は日本特産の新種として1955年に
発表されました。このきのこの外見および生
態的な特徴としては、ヌメリのある傘、ひだ
の表面の顕著な縮れ皺、非常に軟弱で腐りや
すい性質、ブナに群生するという特徴があり
ます(図2)。古い文献を当たってみると、
原色日本菌類図鑑(1954)には、明治44
年に青森県のブナから採集されたものが紹介
されています(当時はヌメリツバタケとして
図1.日本でヌメリツバタケと言われているきのこ
報告されています)。
このようにそれぞれの種類は長らく別種と
して認識されてきた歴史があります。しか
し、近年の研究報告(Petersenら2010)
では、形態や分布などの違いを考慮し、日
本を含むアジアに分布するヌメリツバタケ
(M. mucida var. asiatica) と 日 本 特 産
のヌメリツバタケモドキ(M. mucida var.
venosolamellata)はヨーロッパのヌメリ
ツバタケ(M. mucida var. mucida)の亜
種(variety)として取り扱いました。つま
図2.ヌメリツバタケモドキ
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
り全て同種ということです。しかしながら、これまでにヨーロッパのヌメリツバタケと日本でヌ
メリツバタケと言われているきのこおよびヌメリツバタケモドキに関する詳細なDNA解析は試
みられておらず、さらに筆者はヨーロッパのヌメリツバタケの胞子が日本でヌメリツバタケと言
われているきのこやヌメリツバタケモドキと比較して明らかに小さいことから、彼らの取り扱い
にも疑問をもっておりました。一般的にきのこの胞子の大きさや形は種を分類する上で最も重要
視されます。そこで、筆者は次のような実験を行いました。①日本でヌメリツバタケと言われて
いるきのことヌメリツバタケモドキの交配試験。②ヨーロッパのヌメリツバタケと日本でヌメリ
ツバタケと言われているきのこおよびヌメリツバタケモドキの分子系統関係。そして③胞子の大
きさの比較、です。
その結果、①日本でヌメリツバタケと言われているきのことヌメリツバタケモドキは正常な交
配反応(クランプを形成する)が確認されました。したがって、日本でヌメリツバタケと言われ
ているきのことヌメリツバタケモドキはひだの皺の有無という形態的特徴と生態に違いがあって
も“生物学的には同種”であることが確認されました。さらにその交雑株はきのこを作る能力を
有していました。この実験結果とアメリカの研究者らの取り扱いには矛盾はありません。本研究
日本のヌメリツバタケ
および
ヌメリツバタケモドキ
ヨーロッパのヌメリツバタケ
M.brunneomarginata
アウトグループ
図3.ITS 配列に基づく分子系統樹
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
日本のヌメリツバタケと
ヌメリツバタケモドキ
ヨーロッパのヌメリツバタケ
図4.担子胞子の大きさの比較
ではヨーロッパのヌメリツバタケとの交配試験は行っていませんが、先行研究では、ヨーロッパ
のヌメリツバタケと極東アジアのヌメリツバタケは正常な交配反応を示さない現象が報告されて
います。②DNA配列を解析して分子系統樹を作成したところ、日本でヌメリツバタケと言われ
ているきのことヌメリツバタケモドキは同じ系統であり区別できないことが示されました。一方、
ヨーロッパのヌメリツバタケは明らかに日本の系統とは異なる系統でした(図3)。③胞子の大
きさをグラフ化してみますと、ヨーロッパのヌメリツバタケは日本のものと比較すると、明らか
に小さいことが良く分かります(図4)。
これらの結果から、筆者の研究では、Petersenら(2010)の取り扱いを改めて、次のよう
に提案しました。すなわち、ヨーロッパのヌメリツバタケの学名はもっとも早く発表されている
ので優先権がありますから M. mucida とし独立種としました。日本でヌメリツバタケと言われ
ているきのこはヌメリツバタケモドキと同種となったわけですから1955年に発表されたヌメ
リツバタケモドキに吸収し、学名を M. venosolamellata に統一しました。すなわち、本邦に
産するものは、ひだに皺があろうと無かろうと“ヌメリツバタケモドキ“なのです。きのこの形
や色の判断だけでは種の異同を判断することは難しいという良い例であると思います。
実際にはひだに皺のあるものはヌメリツバタケモドキ、無いものをヌメリツバタケという従来
の考え方が浸透しているでしょうから、このような研究背景を踏まえた上で、現場で見分けてい
ただければ良いと思います。
(菌蕈研究所 主任研究員)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
産地レポート
豊後椎茸研究会の活動紹介
■ 房田政行
豊後椎茸研究会(会長 帯刀増雄さん、会員78名)は、大分県下の菌興号種駒愛用者で結成
され、(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所を軸として、会員相互の緊密な連絡と親睦を図る
とともに、シイタケ経営に必要な研究を探求し、大分県椎茸産業の振興発展に寄与することを目
的として昭和54年9月に結成、生産技術や経営知識を身につけることでシイタケ栽培経営の安
定を目指すプロ集団です。
今回は、表1に示しました本研究会の主な活動を紹介します。
表1.平成27年における豊後椎茸研究会の主な活動
日 時
活 動 内 容
参加人数
平成27年9月1日
第37回豊後椎茸研究会総会
43名
平成27年10月28日
玖珠地区ほだ場コンクール及び研修会
22名
平成27年10月29~30日
三重地区視察研修(熊本県山都町)
平成27年11月11日
国東、中津地区合同ほだ場コンクール及び研修会
12名
平成27年11月20日
竹田地区ほだ場コンクール及び研修会
16名
平成27年11月30日
大分地区庄内町阿蘇野夜間座談会
6名
平成27年12月2日
三重地区ほだ場コンクール及び研修会
7名
平成27年12月8日
役員研修会、宇目町、蒲江町
7名
18名
※平成28年6月~8月:平成27年の簡易経営分析の聞き取りおよび分析
1.総会
毎年、夏場に県内(別府市のホテル)において、総会、研修会を行っています。また、年会費
の積み立てを行い、5年に一度、鳥取の財団本部および県外研修を実施しています。
平成25年度県外研修および総会(山口県萩市 ホテル本陣に於いて)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
2.地区研修およびほだ場コンクール
夏から晩秋にかけて各地区ごとに研修会を実施しています。原基づくり、秋子や晩秋子づくり、
原木の適期伐採などの重要な作業を控えて、各地区の会員同士の意見交換、親睦を図っています。
平成17年度大分地区研修会・ほだ場コンクール
(佐伯市大入島に於いて)
平成24年度中津・国東地区ほだ場コンクール
(国東市安岐町・阿部悦男さんのほだ場)
平成24年度大分地区ほだ木診断
(大分市・後藤高明さんのほだ場)
平成24年度三重地区ほだ木診断
(犬飼町栗ケ畑・公民館に於いて)
平成27年度玖珠地区研修会・ほだ場コンクール
(九重町・佐藤博美さんのほだ場)
平成27年度竹田地区研修会・ほだ場コンクール
(朝地町・森本一男さんのほだ場)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
3.簡易経営分析
単位当たり収量、平均販売単価の向上を図り、シイタケ栽培経営の安定を目指して、上位の会
員にたいして、毎年表彰を行い、生産の励みとしています。設立当初より行われていましたが、
途中残念ながら途切れたものの、平成25年より再開されました。
図1は平成5~7年の3カ年、図2は平成25~26年の2カ年の単位当たり(ほだ木千本当たり)
の乾シイタケ収量、括弧内は大分県で使用される種菌1駒当たりの収量を示しています。全国平
均が30㎏に対して、研究会員の平均は40~50㎏と高いことが確認できます。しかし、単収の
個人差は4倍と大きく、それを小さくすることが今後の課題となっています。
図1.平成5~7年における豊後椎茸研究会員の単収の推移
年度別の平均値 ※:全国の単収の平均値
図2.平成25~26年における豊後椎茸研究会員の単収の推移
年度別の平均値 ※:全国の単収の平均値
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
図3.平成5~7年における豊後椎茸研究会員の販売手取り単価の推移
年度別の平均値 図4.平成25~26年における豊後椎茸研究会員の販売手取り単価の推移
年度別の平均値 図3は平成5~7年の3ヶ年、図4は平成25~26年の2ヶ年の販売手取り単価(1㎏当たり)を
示したものです。時代によって販売単価は高い時、安い時がありますが、それでも2倍を超える
個人差が生じています。大分県では、何十年の栽培歴を持つベテラン生産者でも「毎年1年生だ」
と言われる由縁でしょう。時代背景は異なるものの、シイタケ栽培経営は、今でも単位当たり収
量で4倍、平均販売単価で2倍と個人差が大きな作物です。だからこそ研究会員同士が切磋琢磨
し、栽培技術、栽培経営の向上を目指し、お互いに儲かるシイタケ作りを行い、大分県のシイタ
ケ産業をリードする存在になって欲しいものです。
(九州大分事務所)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
消費拡大活動
「7月7日は乾しいたけの日」銀座でPRイベントを開催
■ 村山盛繁
今年も7月7日に乾シイタケの美味しさや保健的効能を消費者に直接PRするイベント(日本
産・原木乾しいたけをすすめる会と全国乾麺協同組合連合会の共催、林野庁協力)が、東京銀座
の数寄屋橋公園で開催されました。
今回で4年目となる原木乾シイタケの消費拡大に向けた取組みで、当日は”乾シイタケ”のサ
ンプル1,000袋と保健的効能を紹介するパンフレット、料理レシピをセットしたもの(図1)
が準備されて、“そうめん”のサンプルとともに銀座の街ゆく人々に無料で配布されました。
昼時の12時より配布開始となりましたが、産地からは「岩手県のそばっち」・「大分県のめじ
ろん」
・
「熊本県のくまモン」が乾シイタケ応援団として駆けつけてPRに努めたこともあって(図
2)、40分間ほどで配布は終了しました。また今年は乾シイタケの大産地である熊本県が大地震
に見舞われましたので、
“原木乾しいたけをすすめる会”のPRキャラクター「乾しいたけ貴婦人」
が義援金の呼びかけを行い、多くの方が募金をされていました。
当日は天候にも恵まれて、毎年このイベントを楽しみにされている消費者も多く、開始早々か
ら老若男女の長い行列ができて大変盛況な宣伝イベントとなりました。昼休み時で若い人々も多
く、原木乾シイタケの良さを消費者に直接訴える良い機会となりました。
(一般財団法人日本きのこセンター 参与)
図1.配布された品々
図2 .イベントを盛り上げる
くまモンたち人気キャラクター応援団
平成28年「そうめん&乾しいたけの日」のPRイベントに参加
■ 那須克紀
平成25年より、7月7日の七夕の日が「そうめん・乾しいたけの日」として制定されましたので、
全国各地で様々な消費拡大PRイベントがスタートしました。東京・銀座や大分など全国各地で
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
消費者へのPR活動が年々広がりを見せています。
菌興椎茸協同組合ヘルシー事業部は3年前から毎年、揖保乃糸(兵庫県手延素麺協同組合)が
兵庫県たつの市にある「揖保乃糸資料館そうめんの里」で開催するそうめんの日イベントに主催
者の要請により参加、本年も参加して参りましたので、その様子を紹介します(図1)。
今回のイベントは、七夕の日はもちろん、7/9、7/10両日と3日間にわたり行われました。
最初に参加した時は「なぜ鳥取から?」とか「鳥取に乾シイタケがあるの?」というような声が
ありましたが、今年は「毎年来てるわよね」「去年も購入したよ」という嬉しい声を掛けられま
した。私どものPRコーナーでは、試食として水戻しした乾シイタケを一口サイズにカットし、
オリーブソテーに調理して提供しました。シイタケを食べ慣れているご年配の方から日頃食べる
機会の少ない小学生までの来場者の多くの方々は、「味が濃くて美味しい」と楽しそうに食され
ていました。中には4つも5つもどんどん口に入れていく4歳くらいの女の子を見た保護者の方
は、いつもほとんど食べないのに積極的に食べているのを見て、すごく驚いておられました。
見た目は生シイタケを焼いたものと思い口にされた後で、「乾シイタケを使ったレシピなんで
す」と説明すると、大半の方が意外な食べ方にびっくりされ、予想以上の販売に繋がりました。
特に来場者の声で印象的だったのは、「乾シイタケって水戻ししたら煮るしか方法がないと思っ
ていた!!」ということや「戻す時には必ず砂糖を入れるのよね?」、「いつもぬるま湯で戻して
いる」との声でした。このようなことから、消費者へ乾シイタケの良さやレシピの提案はもちろ
ん必要ですが、”食育”的な使い方のアピールも大切であると強く感じました。今後も揖保乃糸
さんのお力をお借りしながら、乾シイタケファン作りに頑張っていきたいと思っております。
最後となりますが、こちらも恒例となりました「そうめんレディー」さんたちとの記念撮影(図
2)。何回撮っても美女と野獣ぶりは変わりませんね(笑)。
(菌興椎茸協同組合 ヘルシー事業部)
図1.乾シイタケのPR・販売コーナー
図2.そうめんレディーさんとの記念撮影
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
栽培技術
7~9月の原木シイタケ栽培管理
乾シイタケ栽培
1.7月(文月)の栽培管理
シイタケの発生はほだ木の出来具合に大きく左右される。特に植菌直後の活着・成長が影響を
およぼすため、7~9月期のほだ木作りがほだ木一代の発生量に大変重要となってくる。この時
期は暑さが本格的になります。集中豪雨が多く発生する時期でもあります。栽培管理には細心の
注意を払ってください。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
注意点:裸地伏せの場合は周囲の下刈りを行い、風通しを良くする。直射日光が当たると40℃
以上となり、シイタケ菌糸は枯死するため充分な笠木を補充する。また、原木に萌芽が見られる
場合は菌糸成長に支障となるため天地返しや極端な萌芽の場合は背引きを行い強制的に原木水分
を抜くようにする。新植ほだ木(2年ほだ木)は勿論のこと、3~4年ほだ木についても梅雨明
けまでに天地返しを行いましょう。
2.8月(葉月)の栽培管理
8月は暦の上では秋になりますが、日中はまだ残暑が厳しく1年で最も気温が高くなる時期で
す。夏場は高温多湿になりやすく、害菌が発生しやすい。特に殺傷力が強いトリコデルマ類・ヒ
ポクレア・ラクテアなどの害菌は被害が大きいため普段の見回りや早期発見が重要です。ほだ場
も重要であり、ほだ木一代の品質・大きさ・発生量に影響するため、思い切った良いほだ場への
切り替えも必要になる。また9月からの原基形成促進のためにも8月期のほだ場環境整備は必ず
実行しましょう。
注意点:8月も7月と同様に風通しと直射日光に注意して笠木や周囲の下刈り・林内の下刈りを
する。翌9月からは原基形成期に入るため、この8月にはほだ場の環境整備を入念に行いたい。
特に暗いほだ場・北方向のほだ場においては雨の通りや来る冬~春期に成長温度が充分に取れず、
春一発の集中発生・シイタケの小型化が懸念されるため、夏期の内から枝打ち・間伐を行い、庇
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
陰調整を行うことが大切。
10月中旬から原木の伐採期を迎えます。市況が回復・安定している現在、家族労力にあった
適正規模で積極的に伐採しましょう!原木の伐採を安全に行うため、夏期の内に原木林の下刈り
を済ませておきましょう。
3.9月(長月)の栽培管理
9月に入ると、草の葉に白い露を結ぶことから、この時期は白露とも言われます。本格的な秋
の到来を感じられる頃です。日中はまだ暑さが残りますが、朝夕の涼しさの中に肌寒さも感じ始
めます。ほだ木の中では原基が活発に形成する重要な時期に入る。この時期の降水量の多少が晩
秋子~春子の発生量に影響します。散水施設がある方は積極的に散水を行い原基形成を促進する。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
散水の注意点
(1)散水できない場合
①自然の雨を効率良く受けるため、原基形成期(9月中旬頃)までに「ほだ倒し」をする。
②「天地返し」「ほだ回し」を9月中旬までに実行する。
(2)散水できる場合
①予備散水(菌糸成長散水)
ほだ場の最高気温が30℃以下になる日(8月下旬~9月上旬)から、1回当り24時間以上の
散水を2回実施する。本年においても4年(3才)ほだ木以降のものについては、原基形成に適
する水分量にはほど遠く、軽い状態であり、最優先に散水を行う。ほだ木を軟らかくし、吸水し
やすくして菌糸の再生を図るため。
②原基形成の散水
ほだ場の平均気温が25℃以下になる時期(9月中旬~10月上・中旬)からほだ木の年齢別に
7~10日周期に4回の散水を実施する。散水時間は、2年ほだ木(1才)で24時間以上、3年ほ
だ木(2才)で48時間以上、4年ほだ(3才)で72時間以上を目安とする。ほだ木が水分を充
分吸収していれば、内樹皮(あま皮)がオレンジ色に変ってくるので、これを目安とする。水量
や水源が乏しい所では、節水型間欠散水を取り入れ、少しでも原基を作る。ただし、きのこの発
生直前までは散水をしないこと。発生する20~30日前までに散水を止める。なお、乾きやすい
ほだ場では、防風垣を早めに設置し、水分・湿度の保持を図りたい。
シイタケは、他の農作物とは違って1年ほだ~5年ほだ(0才~4才)までのほだ木が総動員で
き、次の年の発生に備えられる優位な点がある。シイタケは昔から「備荒作物」と言われるよう
に、米が不作の年はシイタケの発生が良いとされている。今年こそ、品柄・収量とも安定させる
べく、やれることは全てやるとの心構えで栽培管理に努めましょう。 (四国事務所 西本 博)
生シイタケ栽培
今年はしばらく続いたエルニーニョが終息し、替ってラニーニャ現象の発生が予測されてい
る。太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海面水温が低い現象で、ラニーニャ
現象が起こると日本の気象は夏場の猛暑や空梅雨による水不足、その冬は厳冬となる等大きな影
響を与える。2010年各地で40℃の最高気温を記録した年もラニーニャの影響と言われている。
特に夏場の高温と降雨には注意しシイタケ栽培に取り組んでほしい。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
図1.ハッポー栓の盛り上がり。植菌後の梅雨時期、植菌孔の中に原基が形成さ
れハッポー栓が浮き上がる。この時期にはほだ木への刺激(積み替え、散水)
を一時休止する。
1.ほだ木作り
夏期の高温は、高冷地や東日本地区では積算温度の確保となりシイタケ菌の繁殖が旺盛となり
ます。一方、低暖地や西日本ではトリコデルマ、ラクテア、クロコブタケ、クロボタンタケなど
の害菌発生、ほだ木表面や形成菌・オガ菌では種菌部の過乾燥をまねく原因となります。7~9
月はとりわけ高温と降雨に注意してほだ木作りに取り組んでほしい。
(1)積み替え・天地返し
新植ほだ木は、梅雨期には大きな変化が現れる。特に、形成菌では種菌部のオガが菌糸マット
状への変化が顕著となり、ハッポー栓の浮き上がり見られるようになります(図1)。また、木
口に菌糸紋が現れ、ほだ木重量も植菌時に比べるとかなり軽くなるのもこの時期の特長です。菌
糸紋の発生の仕方でほだ木内の水分状態や菌糸の伸長程度を推察することができるので管理の目
安にしてほしい。
木口全体に白く発菌している場合(図2)は、材内の水分も抜け、菌糸も順調に伸長している
ものが多い。一方、植菌列の部分のみに発菌した菌糸紋(図3)は、材内部に水分が多く菌糸が
表面を伸長してきたもので、ほだ木を持っても重く感じます。
ほだ化が遅れていると思われるほだ木については、温度が高い夏期に天地返しや積み替えを行
い均一なほだ化を目指したい。また、人工庇陰等でよく見られる井桁積みは、上下に雨の当たり
方にムラが出るため天地返しは必ず実行しましょう。
(2)散水管理
梅雨期は、人工的に散水を行う機会は少ないと思われるが、場所によっては雨量が少ない地域
もある。降水量に注意し散水の有無を判断したい。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
図2.木口全面に出現した菌糸紋。材内部はほぼ全体に菌糸が蔓延している。
図3.植菌した列に沿って発生する菌糸紋。水分の多い生木状のほだ木に発生し
た菌糸紋。
また、梅雨明け後は猛暑日が続く予想が出されているため、盛夏時を乗り切るまで定期的に散
水を実施し軟ほだ木作りや種菌部の乾燥防止を行いましょう。
夏期の散水には、ほだ木温度を下げる効果とほだ木内に直接給水させる効果があります。特に
人工庇陰下やハウス内は高温となるため、地下水や山水を日中しっかり散水し、ほだ木温度を下
げることが大切です(図4)。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
図4.夏場のハウスの高温防止。夏場の温度が上がる時期にはハウス・小屋の屋根
から隙間を作って遮光ネットを張る。また、地下水を屋根にかけて温度を下
げることも有効。
2.発生操作(菌興537号、697号、702号、706号)
(1)操作方法(基本)
①浸 水 時 間:12~18時間(冷水を確保し古ほだ木は長めに)
②芽出し温度:20℃以下が最適。夜間温度が最適温度時や多発時には即展開も可。
③生 育 温 度:13~27℃、湿度は75%程度。
④休 養:約30日間が基本。多発後や使用回数が多い場合、古ほだ木は長めの休養(40
~50日間)が望ましい。
(2)盛夏時の発生ポイント
夏出しで最も苦労するのは、梅雨明け(7月下旬ころ)から9月上旬の二百十日頃の栽培管理で
す。この時期の栽培管理のポイントは以下のとおりです。
①浸水時間帯:発生量を増やすためには、夕方冷たい水に浸水することで温度較差を付けるこ
とで刺激を大きくする。一方、多発時には温度較差を少なくし、朝方浸水することで芽数を
減少させる効果があります(刺激を少なくする)。
②水温:浸水に使用する水については20℃以下を使用するが、猛暑時にはより強い低温刺激
を与えるため15℃程度の冷水を使用します。ほだ木を浸水すると水温が上昇するため、し
ばらく流し水を行い低い温度を維持しましょう。
③芽出しの実施:最低気温が20℃以上になると極端に芽切りが悪くなります。水槽内の水を
抜き、ハッポー材などでフタをすることで断熱対策をします(図5)。より効果的な方法は
クーラー室を利用した芽切り促進です(図6)。
④休養方法:休養は林内やハウス内で散水を実施しながら約1か月を目安に行うが、温度が高
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
図5.高温時の芽出し(エアコンを使用した芽出し)。コンクリ
ートや断熱材を使用した小部屋内に家庭用エアコンを設置
し20℃程度に設定し芽出しを行う。
図6.浸水槽を利用した芽出し。浸水後、水を抜き冷たい状態をシルバーシート
やハッポウスチロールで蓋をして1~2日芽出しを行う。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
い状態で休養が続くと、原基は多数できても充実したものとはなり難い。小形のきのこが多
発する場合はこれを疑い、夕方~夜間散水を繰り返し行うことで充実した原基作りを行いま
しょう。
(3)初回使用前の原基作り散水
駒菌の2年ほだ木や形成菌・オガ菌1年ほだ木の初回使用をする場合は、少なくとも使用前2
週間から20日程度前に原基作りの散水を開始するが、原基形成は品種に係わらず20℃前後が適
温となる。これはほだ木材内の温度であり、外気温は25~28℃付近の頃です。従って外気温が
30℃を下回った頃より散水を開始し、原基形成の適温確保に努めましょう。
(4)害虫対策について
①防蛾灯の設置
シイタケオオヒロズコガ対策として防蛾灯(イエローガードなど)を設置することで、夜行
性の蛾には忌避効果と行動抑制効果が期待できます(図7)。
②防虫ネットの設置
孔の大きさ2mmの防虫ネットでほだ木全体を覆うことにより、成虫の飛来を防ぎ、害虫被
害を防止することができます(図7)。
(鳥取事務所 影井和男)
防蛾灯の設置 防虫ネットの被覆
図7.防虫対策
全国の向こう3カ月気象予報(平成28年7月25日、気象庁発表)
8月 北日本では、天気は数日の周期で変わるでしょう。東・西日本では、平年と同様に晴れ
の日が多いでしょう。気温は、東日本で平年並または高い確率ともに40%、西日本で高い確率
50%。降水量は、北日本で平年並または多い確率ともに40%。
9月 北・東日本と西日本日本海側では、天気は数日の周期で変わるでしょう。西日本太平洋側
では、平年と同様に晴れの日が多いでしょう。気温は、全国で高い確率50%。
10月 全国的に、天気は数日の周期で変わるでしょう。北日本太平洋側、西日本では、平年と
同様に晴れの日が多いでしょう。気温は、北・東日本で平年並または高い確率ともに40%、西
日本で高い確率50%。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
市 況
8月号 全農乾シイタケ情報
■ 全農椎茸事業所
1.日本産・原木乾しいたけをすすめる会の通常総会が開催されました
6月2日に東京都内で日本産・原木乾しいたけをすすめる会(略称;すすめる会)の平成28年
度通常総会が開催されました。すすめる会は、中国からの安価な乾シイタケ輸入が急増し、それ
に伴い国産の市況が低迷するなど国産原木乾シイタケが危機的な状況にあった平成7年に、乾シ
イタケの関係団体が集まり、国産原木乾シイタケの美味しさ、良さを宣伝する組織として発足し
た組織で、その歩みは20年を越えるものとなりました。全農も特別会員として、平成27年度に
続き、28年度も幹事を務めています。また、乾シイタケを当事業所に出品いただいている生産
者の皆様にも出荷1kg当たり8円の拠出金をご負担いただき、その活動の根幹を支えていただい
ております(販売先である商社も拠出金を負担しています)。
すすめる会の事業は、①宣伝事業、②食育等支援事業、③調査事業、④その他直面する課題対
応(例えば陳情等)の4つの柱からなっており、平成27年度は海外宣伝事業として、5月~10
月にイタリアで開催されたミラノ国際博覧会の日本館レストランに国産原木乾シイタケを提供し
ました。日本館レストランでは、京懐石料理店の前菜、和食レストランの天ぷら・天丼、日本料
理店の和牛すき焼きの食材として使用され、合計約83,500食が来場者に食されました。イタ
リアではきのこを食べる習慣があり、乾シイタケに対しても好意的で味も美味しい評価の方が多
かったとのことですが、各店舗からは、京懐石は配膳時に各メニューを説明し乾シイタケについ
ての説明もしたが「イタリア語のパンフレット」があるとより深い情報提供ができたという意見
や、天ぷらの衣に覆われた黒い色の見た目を警戒して手をつけないお客様がいたことから、カッ
トをしたり、盛り付け、飾り包丁等の見た目の工夫をしたほうがよかったとの意見、反省があり
ました。
現在、日本からの乾シイタケ輸出の9割近くはアジア圏向けが占めていますが、ヨーロッパに
も潜在的な市場可能性があるということが分り、今後、日本に観光に来るヨーロッパからの旅行
者向け等にPRするにあたっても貴重な取り組みとなりました。
また、すすめる会の主事業となっている国内での宣伝事業では、平成28 年度も地方での宣伝
活動に予算が組まれています。消費宣伝による予算支出の際には、事前にすすめる会事務局に
計画書を提出し、承認を得る必要がありますので、希望する産地がありましたら椎茸事業所ま
でご連絡をお願いします。すすめる会のホームページには乾シイタケのレシピや、歴史、成分
と効用など、役立つ情報が掲載されていますので、是非ご覧いただければと思います(http://
j-shiitake.com/wp/)
。また、facebook もありますので、こちらも是非よろしくお願いします。
ここ数年の国産原木乾シイタケ生産量の減少によりすすめる会への拠出金も減少しています。
生産量の減少はひいては業界全体の縮小にもつながるため、当事業所としても何とか再生産可能
な販売を維持し、生産量が維持できるよう取り組んで参りますのでよろしくお願いします。全国
でも関係者が一丸となって消費者にもっともっと国産原木乾シイタケをPRしていきましょう。
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
2.入札状況(品柄・出品数量等)
全農入札状況:7月13日に島根県特別入札を開催しました。例年よりヒダ色の劣るものが目
立ちましたが、島根県産指定の買い付けがあり、出席商社が多くない中で引き合いは強いものと
なりました。7月27日の一般入札は産地からの出品が少なく中止しました。次回8月24日の佐
渡特集入札には佐渡以外の産地も出品できますので、全国からのご出品をよろしくお願いします。
産地状況:6月は、全国的に気温は平年並みとなりましたが、降水量は西日本・北日本では平
年よりかなり多く、西日本では土砂災害等も発生しました。東日本の降水量は全体としては平年
並みでしたが、場所によっては5月から少雨が続き取水制限がとられる河川もあるなど、地域ご
とにバラつきが出ました。9月からの原基形成期に向けて、伏込場、ほだ場の環境整備などを引
き続きお願いします。
3.乾シイタケ販売動向・一般情勢
贈答:贈答の荷動きが芳しくなく、贈答向け規格の市況も一服傾向となっています。比較的健
闘していた仏事も商品の量目を減らした影響が少しずつ出てくると思われます。
家庭用・小袋:椎茸事業所近隣の量販店のチラシを確認しましたが、7月7日「乾しいたの日」
で売り込みを行なっているところはありませんでした。「乾しいたけの日」が徐々に認知度を上
げていくよう、地道な売り込みを継続していくよう商社に働きかけていきます。お盆向けの商談
も、商社側からすると物が少ない、量販店側からすると売れないということで、特売の引き合い
もあまりなく低調な状況です。お盆の売り場、売れ行きを注視していきます。
業務・加工用:業務用に向かう国産の特用、加工の市況は引き続き良い水準で推移しています。
日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によりますと、平成27年の外食売上
高は前年比100%で、そのうち和風ファミリーレストランは同106%と全体平均を上回ってい
ます。
輸出入:5月の輸出量は0.5tで、単価は7,082円でした。輸出量は単月では昨年対比13%で、
1~5月累計では同19%と国産の生産量の減少等により大幅に減少しています。
5月の輸入量は504tで、1~5月累計では昨年対比107%となっています。5月の単価は
1,230円で昨年対比80%でした。ある商社は、今後数年は中国産菌床シイタケの生産量は減少
しないと見ているようです。
4.事業所から
椎茸事業所のある関東では7月も残すところ数日になった現在も梅雨明けしておらずどんより
とした雲がかかり時おり雨が降るような日が多くなっています。全国的には平年より梅雨が早く
明けたところがほとんどですが、関東甲信は平年より1週間近く、東北も数日遅い梅雨明けにな
りそうです。梅雨は少し長くなっていますが、気温が例年より低いため、梅雨時特有の蒸し暑い
感じはあまりなく、逆に朝晩は涼しいぐらいの気候で夏商材の売れ行きを気にしてしまう今日こ
の頃です。
さて、7月7日の「乾しいたけの日」には全国で消費宣伝イベントが行なわれ、椎茸事業所も
東京銀座での乾麺業界との共同イベントに参加し、国産原木乾シイタケ、レシピ、パンフレット
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
を街行く方々に配布し、その美味しさ、保健的効能をPRしました。「乾しいたけの日」が制定
されてからまだ4年。乾麺業界の「そうめんの日」は35年の歴史があるということで、「乾しい
たけの日」も全国各地でのイベントを継続し、歴史を積み重ね、認知度を高めていきましょう。
5.今後の全農椎茸事業所入札日程
8月:24日(佐渡特集入札会)
9月:14日(岩手特集入札会)
10月:12日
全農乾シイタケ入札結果(平成28年7月)
区分
月/日
7/13
島根特別入札
(単位:円/㎏)
本 数(箱)
高 値
平均値
410
8,880
4,864
高値規格(出品JA):中上厚(JAしまね、やすぎ地区本部)
乾シイタケの輸出実績(平成28年5月、財務省貿易統計より)
5月
数量 Kg
中
台
香
シンガポー
価額(千円) 単価(円 /Kg)
国
湾
港
ル
0
0
61
0
0
0
282
0
0
0
4,623
0
マ レ ー シ ア
0
0
0
マ
カ
オ
ク ウ エ ー ト
カ タ ー ル
イ ギ リ ス
オ ラ ン ダ
ス ペ イ ン
カ
ナ
ダ
アメリカ合衆国
オーストラリア
0
0
0
140
0
0
0
275
25
0
0
0
981
0
0
0
2,077
208
0
0
0
7,007
0
0
0
7,553
8,320
合 計
前年対比
前年実績
501
3,548
7,082
13.1%
19.8%
3,828
17,914
1~5月
数量 Kg
0
1,123
4,310
109
価額(千円) 単価(円 /Kg)
0
2,905
28,053
869
0
2,587
6,509
7,972
57
318
5,579
350
48
60
173
70
32
177
770
25
1,441
231
208
1,233
490
225
1,149
4,569
208
4,117
4,813
3,467
7,127
7,000
7,031
6,492
5,934
8,320
7,304
41,899
5,736
151.3%
19.1%
34.7%
182.0%
4,680
38,308
120,718
3,151
乾シイタケの輸入実績(平成28年5月、財務省貿易統計より)
5月
数量 Kg
韓
中
台
香
価額(千円) 単価(円 /Kg)
1~5月
数量 Kg
価額(千円) 単価(円 /Kg)
国
国
湾
港
0
503,788
0
0
0
619,555
0
0
0
1,230
0
0
0
2,195,461
0
0
0
2,815,926
0
0
0
1,283
0
0
合 計
前年対比
前年実績
503,788
619,555
1,230
2,195,461
2,815,926
1,283
107.3%
85.9%
80.1%
105.2%
87.7%
83.4%
469,598
721,153
1,536
2,086,725
3,209,699
1,538
-27-
菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
市 況
生シイタケの市況動向
大阪市場
7月上旬の生シイタケ入荷量は前年比117%の48t(国産前年比118%の47.6t、輸入前年
比63%の0.4t)でした。価格は前年比92%のキロ799円(国産前年比92%の801円、輸入
前年比89%の589円)でした。
同中旬の入荷量は前年比124%の46.4t(国産前年比127%の46t、輸入前年比49%の
0.4t)でした。価格は前年比97%のキロ845円(国産前年比96%のキロ847円、輸入前年比
91%のキロ581円)でした。
7月に入り夏秋野菜の潤沢な入荷に押されきのこ売り場の縮小に加え、気温高により煮炊き商
材の消費低迷により厳しい販売となりました。8月に入り猛暑が予想され、入荷量の減少により
盆休前より徐々に価格の回復が見込まれます。
(大阪中央卸売市場 大阪中央青果㈱ 蔬菜部 田島範弘)
生シイタケの輸入実績(平成28年5月、財務省貿易統計より)
5月
1~5月
数量 Kg
価額(千円) 単価(円 /Kg)
数量 Kg
価額(千円) 単価(円 /Kg)
韓
国
0
0
0
0
0
0
中
国
75,066
28,792
384
791,375
284,384
359
合 計
75,066
28,792
384
791,375
284,384
359
前年対比
98.2%
80.3%
81.7%
71.2%
67.9%
95.3%
前年実績
76,423
35,865
469
1,111,042
419,053
377
その他の生鮮冷蔵きのこの輸入実績(平成28年5月、財務省貿易統計より)
5月
1~5月
数量 Kg
価額(千円) 単価(円 /Kg)
数量 Kg
価額(千円) 単価(円 /Kg)
韓
国
10,054
3,289
327
69,330
19,600
283
中
国
0
0
0
2,060
1,823
885
フ
ス
353
525
1,487
4,087
7,391
1,808
ポ ル ト ガ ル
ラ
ン
246
551
2,240
408
1,299
3,184
ス
432
1,061
2,456
1,887
4,799
2,543
ペ
イ
ン
ポ ー ラ ン ド
0
0
0
201
871
4,333
ブ ル ガ リ ア
174
398
2,287
261
975
3,736
ト
ル
コ
87
712
8,184
674
5,061
7,509
カ
ナ
ダ
547
2,390
4,369
793
3,183
4,014
合 計
11,893
8,926
751
79,701
45,002
565
前年対比
132.2%
103.0%
77.9%
110.0%
101.2%
92.0%
前年実績
8,996
8,664
963
72,448
44,460
614
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菌蕈8月号(第62巻 第8号 731号)
各地のきのこだより -よろしく-
全国農業協同組合連合会広島県本部 園芸・資材部園芸課 竹本恭祐さん
今年度より広島県のシイタケを担当させていただくことになりました。
私はきのこ類が全般的に好きで、その中でもシイタケは、その味わい深さ
から、好物だったため、業務には特に身が入る思いです。
5~7月の期間には、生産者総会に出席させていただいたり、共選出荷
の受け入れを行わせていただくなどしました。わずか3ヶ月ではあります
が、この期間に多くの方にお世話になり、また、多くのことを学ばせてい
ただきました。関係各所、シイタケ生産者の皆様には、感謝の念が絶えません。
乾シイタケの情勢は回復傾向にあり、その上でさらに消費拡大を見込めると考えていま
す。長い食の歴史の中で、日本の人々の食卓に上がり続けてきたという実績と魅力がシイタ
ケにはあると思います。それをいかにしてより多くの人々に伝えられるのか、微力ではあり
ますが、今後そのお手伝いをさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
栃木県林業センター 研究部主任 杉本恵里子さん
略歴
私は、平成17年度に栃木県庁に入庁し、出先の環境森林事務所で6年
間、主に森林整備業務を担当していました。平成23年4月に林業センタ
ーに異動となり、きのこに関する研究に携わって6年目に突入しました。
現在の仕事内容
福島第一原発の事故が発生した年に林業センターに異動となったため、
専ら、原木シイタケの放射能対策に特化した試験研究と、特用林産物の出荷前モニタリング
検査を行っています。「放射能」、「セシウム」、「ベクレル」と、全く馴染みのない言葉のオ
ンパレードに、当初は少し不安にもなりましたが、先輩方や生産者のご協力のもと、ここま
で試験研究を行ってくることができました。
シイタケに関する思い
きのこ担当になり、改めて実感したことは、「原木シイタケって美味しい!」ということ
です。そして、こんなに香りが良いものなのだと、正直驚きました。
一時は県内の22市町で、原木シイタケに出荷制限がかけられましたが、現在は制限解除
が進み、多くの生産者が生産を再開しています。栃木の美味しい原木シイタケを、多くの消
費者に味わっていただけるよう、その一助となることを願い、これからも業務に励みたいと
思います。今後ともよろしくお願いいたします。
菌蕈8月号(第 62 巻 第8号 通巻 731 号)
発行日:平成 28 年 8 月 5 日
発 行:一般財団法人日本きのこセンター
鳥取県鳥取市富安 1 丁目 84 番地
☎ 0857-22-6161、http://www.kinokonet.com/
編 集:菌蕈編集委員会
記事、写真およびデータの無断転載を禁じます。
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