假屋崎省吾 (華道家) 「美をつむぎ出す手を持つ人」と評さ れ、 近 年 は 本 業 の 華 道 に 加 え て 着 物 や ガラス花器のデザインでも活躍する假 屋 崎 省 吾 さ ん。 そ の 創 造 力 と 活 力 の 源 について、話をうかがいました。 假屋崎さんは子供の頃から花に親 ―― しみ、現在は花をいけることで多くの人 30 を魅了していらっしゃいます。花ととも 魅力、華道の魅力とはなんでしょう。 絵画や文学、音楽、建築、ファッショ ンなど、芸術のあらゆる分野で花を題 材にした作品が生まれるわけです。 その花を使って空間を彩り、自己表 現を通じて多くの人に喜びを与えられ ることが、華道の一番の魅力ではない でしょうか。日本が世界に誇る、素晴 らしい伝統文化だと思いますよ」 そんな華道の世界に身を置かれて ―― 年。日々、膨大な仕事をこなしなが ら元気を保つ秘訣はなんですか。 「 今 の 世 の 中、 忙 し い ほ ど お 仕 事 を いただけるのは素晴らしいこと。だか ら、どんなに多忙で大変でも、感謝の 気持ちを忘れずに前を向くことが第一 です。時間は仕事の組立てを工夫して 上手に作れば大丈夫。私の場合、 分 刻みでスケジュールを決め、仕事に掛 かったら一気に片付けてしまいます。 常に感性のアンテナを張り巡らせ、 日常にある 「美」 を敏感に吸収することが創造力の源です。 かりやざき・しょうご◎華道家。假屋崎省吾 花・ブーケ教室主宰。美輪明宏氏より 「美をつ むぎ出す手を持つ人」 と評され、花と音楽や花 とファッションのコラボレーション、日仏交流 150 周年フランス広報大使などを務め、内外の VIP からも高い評価を得ている。近年では新た な取り組みとして、ガラス花器や着物のデザイ ンおよびプロデュースをはじめ、花と建造物の コラボレートとなる個展 “ 歴史的建築物に挑む ” シリーズも開催。イタリア「ローマ国際映画祭」 、 フランス「プティ・パレ宮殿」などで個展やデ モンストレーションを行い、国際的にも目覚ま しい活動を展開している。 30 に人生を歩む假屋崎さんにとって、花の 「 鮮 や か な 色 あい、千 変 万 化 の 造 形 …そうした美しいものを、花はありの ま まの 姿 で 私 た ち に 与 えて く れ ま す。 いわば、花は人にとって無くてはなら ない、 美の原点のひとつ。私はいつも 『花 は心のビタミン』と申しますが、目の 前 に 花 が あ る だ けで 人 は 心 が 癒 さ れ、 エネルギーを与えられます。ですから、 そのかわり、仕事を終えたら大好き なピアノを弾いたり、ゆっくりお風呂 に入ったりして、しっかり息抜きをし ています。睡眠時間も、少ないとはい えできるだけ確保しています。一日を ダラダラ過ごさず、メリハリをつける から仕事もはかどります。それによっ ていっそう充実感が生まれるし、心身 ともに元気で過ごせるんです」 華道の第一人者として作品を求め ―― 続けられるプレッシャーはすごいもの だと思います。創造力を保つために心 がけていることはありますか。 「常に感性のアンテナを張り巡らせ、 あらゆることへ関心を払うことです ね。日常生活の中でも美しいもの、感 動的なものとの出会いは数え切れませ ん。街角の木々や公園の草花、果物屋 の店先に並ぶフルーツの飾り付けに だって、ハッとするような美しさを発 見することがあります。そういう日常 的な『美』に敏感になれば、吸収すべ き材料はいくらでもあるんですよ。 その一方で、ときどき普段と違った 環境に身を置くことも重要です。私は 旅行が大好きですから、時間が出来る と 海 外 を 旅 し て 美 術 や 建 築 物、 コ ン サート、芝居など、いろんな美しいも のに出来るだけ多く触れてきます。そ うすることで心身がリフレッシュさ れ、細胞に新たな美のエッセンスが刻 み込まれます。そうして得たものすべ てが、新たな創造力の源になるんです」 假屋崎さんは「美をつむぎ出す手 ―― を持つ人」として有名ですが、高齢化 社会を迎える日本人が美しく歳を重ね るには何が大切だと思いますか。 「 年 齢 に 関 わ ら ず、 活 き 活 き と 輝 く 人生を送るには、自分らしさとは何か を見つけ出し、それに磨きをかけるこ とが欠かせません。その第一歩は、い ろんなものに興味を持って実際に経験 し、学んでみること。その繰り返しを 通じて自分にマッチしたものと、そう でないものを見極めるわけです。 また、さまざまな経験を積むことで、 知識や教養もおのずと身に付き、すぐ れたセンスも培われます。そうしたこ とを通じて、自分が理想の姿に近づく ことを実感できれば、生きがいも格段 に増すでしょう。いくつになっても自 分を磨き、自分らしさを発揮できる人 生って素晴らしいと思います」 では最後に、これから新たに取り ―― 組もうと考えているプランや、今後に ついての抱負、夢を教えてください。 「先日、フランス Daum 社の依頼で ガラス花器をデザインしましたが、今、 きもののデザイン・プロデュースに夢 中になっています。今後もいろいろな モノのデザイン、他の分野のアーティ ストとのコラボは積極的にやっていき たいですね。 もちろん、華道家としても、今まで 以上に世界中いろんな場所へ出かけて 行くし、歴史的建築物に花で挑むとい うライフワークにも、いっそう力を注 ぎます。花の力でもっともっと多くの 人に楽しんでもらい、それがいろんな 国の人の心をつなぐのに役立ってくれ たら本当にうれしい。だから、常にチャ レンジ精神を忘れず、生涯現役を目指 してがんばっていきますよ」 GOOD AGING BOOK 2013 グッドエイジャー賞 受賞者 特別インタビュー 11 回 第
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