シャルダン展―静寂の巨匠

シャルダン展―静寂の巨匠
(H24.12.20)
完全リタイヤーしてしまうと都内に出かけるのも億劫になる。これまで足繁く通っていた美術鑑賞も
自然と足も遠のいてしまった。今回は退職者会役員の仲間が行かないので美術鑑賞好きの私に招待券が
回ってきた。三菱一号館美術館で開かれている「シャルダン展―静寂の巨匠」である。これならば退職
者会の役員会のついでに鑑賞できるので有難くいただいた。初めて知る画家なので少しプロフィールを
紐解いて見た。
★ジャン・シメオン・シャダン(1699-1799)は、フランスを代表する静物・風俗画の巨匠。パリで家具
職人の父親のもとに生まれた。1718 年から歴史画を得意としていたカーズの工房に入って画業を開始。
1720 年にはコアペルにも短期間師事し、その間
に静物画を描く助手をつとめたことがあるらし
い。1728 年に《赤エイ》で認められて王立絵画・
彫刻アカデミーの正会員となったが、その後も
生計を立てるためフォンテーヌブロー宮殿の
修復作業などに参加。30 年頃から静物画の作品
が増え、台所の食器類や食材などを題材とする作品
が制作されている。33 年頃からは風俗画の作品が増
え始め、その大半が食卓の情景やカード遊びに興じ
る子供などセーヌ左岸の日常生活を主題とする。40
年にヴェルサイユ宮へ参内して献上した《働き者の
母》と《食前の祈り》はシャルダンの作品としては
特に知られている。
1752 年以降、国王の年金を受けており、また 55
年からはアカデミーの会計官をつとめたほかサロ
ンの陳列委員も任され、57 年にルーヴル宮殿にはア
トリエ兼住居を授かっている。これは絵画のなかで
歴史画に最高の価値が置かれていた当時、風俗画家
としては異例の名誉で、彼の作品の買い手や注文主の多くも、国内外の王侯貴族だった。とくにエ
カチェリーナ 2 世は、サンクト・ペテルブルクにあるアカデミーの建物のために装飾画を注文して
いるし、他にも風俗画を含む数点のシャルダン作品を所有していた(
《芸術の寓意とその報償》な
ど)
★パンフレットの案内書には、
[わが国で初めてのシャルダンの個展となる本展は、ルーヴル美術
館名誉館長ピエール・ローザンベールの監修により、厳選した作品のみで構成されます。晩年の静
物画の最高傑作であり、個人所蔵のため普段は非公開<木いちごの籠>、シャルダンの最も美しい作
品と言われる<羽を持つ少女>はともに日本初公開となります。また、1740 年にシャルダンが国王ル
イ 15 世紀に謁見を許され献呈した<食前の祈り>は、その後各国の王侯貴族が競って入手しようと
し、注文が殺到しました。同主題の作品は4点のみ
存在し、そのうちロシアの女帝エカチェリーナが愛
蔵した作品と、シャルダンの未亡人が亡くなるまで
に手元に残した作品が出品されます。食前に捧げる
感謝の祈り(ベネディシテ)の途中で言葉に詰まっ
てしまった幼い子、それを見守る母と姉の視線が交
わされる瞬間を描いた<食前の祈り>のように、本展
は、日常生活のなかの絶妙な瞬間の描写が評
価されたシャルダンの秀作を纏まった形で観
賞する極めて贅沢で稀有な機会となるでしょ
う]と紹介している。
★当時のサロンが歴史画に最高の価値が置か
れていた中で、日常生活の中の風景を画材に
して描きこれほど支持されたことは、彼の作
品に気品があり、誰にも癒しを与える作品だ
ったからではないだろうか。私の心を惹きつ
けたのは、食べて生きることの尊さを神に感謝する当たり前の日常生活風景「食前の祈り」である。
あどけない子供の祈りにお母さんの
眼差しに誰しも癒されるのではない
だろうか。また、暗さの中にモチー
フとしている画材が明るく浮かび出
るような雰囲気に描かれているので、
鑑賞する我々にとっても絵の中の中
心に目が言ってしまう。
「セリネット
(鳥風琴)
」も見応えがあった。
★シャルダンの影響を受けた画家た
ちを紹介している。ここを原点に印
象派などへ繋がって行ったことも考
えられる。
○ミレー「ミルク缶に水を注ぐ農夫」
○セザンヌ「静物(りんご)
」
○マルケ「トリエル、晴れた日」
○ルドン「グラン・プーケ(大きな
花束)