研究テーマ 柿渋エキス使用による療養病棟のにおい軽減への取り組み 病 院 名 医療法人社団健育会 石巻港湾病院 演 者 概 ○菊池美咲(看護師) ○菊池美咲(看護師) 武山裕美子(看護師) 武山裕美子(看護師) 阿部喜恵(看護師) 阿部喜恵(看護師) 要 【研究背景】 療養病棟で不快なにおい軽減へのケアを実施して も個人の体臭を感じる現状がある。そこで体臭抑制 効果が高いとされている柿渋エキスにより体臭と病 室のにおいの軽減ができないかと考えた。 【研究目的】 柿渋エキスの使用だけで体臭の軽減は可能か、体 臭が軽減されれば病室のにおいの軽減も可能か、体 臭と病室のにおいの関連性を含めた調査・考察を目 的とする。 【研究方法】 1.研究対象:A 病院医療療養病棟の入院患者と病室 2.研究期間:平成 25 年 4 月~11 月 3.介入方法:介入前後の病室のにおいと個人の体臭 を測定した。介入前後とも同じ全身シャンプーを使 用し、介入後のみ 5%の濃度で柿渋エキスを混合し た。調査期間は介入前後共に入浴日を起点として 1 週間を 2 クールに分けた。 4.調査内容: 1)体臭の測定:機器測定方法①入浴後にガーゼを両 腋窩と前胸部に当てた。②入浴後 3 日目まで 1 日 1 回当てているガーゼのにおいを測定、 3 日目の測定 後にガーゼを廃棄した。 2)病室のにおいの測定①機器測定方法:0 時に病室 で実施。②嗅覚測定方法:師長 1 名が 6 段階臭気強 度表示法で評価。 3)病室のにおいは 1 クール 1 部屋を n=1とし、体臭 は 1 クール一人分を n=1 とした。それぞれ対応の あるt検定を行い、有意水準 P<0.05 とした。 【倫理的配慮】 A 病院倫理委員会にて承認後、対象の患者・家族 に説明し同意が得られた患者のみに実施した。 【結果】 対象病室 7 部屋、対象患者は男性 11 名、女性 9 名、対象患者全員がオムツを使用、95%が日常生活 自立度 C2 であった。 1クール クール1人分を とする クール 人分をn=1とする 人分を 対象病室の患者の体臭 介入前 n 平均値 介入後 SD 平均値 P値 SD 男女入浴後1日目 40 97.9 77.2 65.1 50.5 0.031 男女入浴後2日目 40 119.9 58.3 58.0 53.3 <0.001 <0.001 男女入浴後3日目 40 175.4 80.1 111.0 89.8 男性入浴後1日目 22 110.8 87.1 48.9 38.3 0.002 男性入浴後2日目 22 124.4 63.1 45.9 41.3 <0.001 <0.001 男性入浴後3日目 22 167.1 72.8 102.0 60.6 女性入浴後1日目 18 82.2 61.9 84.8 57.3 0.908 女性入浴後2日目 18 114.4 53.1 72.8 63.1 0.048 女性入浴後3日目 18 185.6 89.3 121.8 117.2 0.077 病室のにおいは入浴後 2 日目に機器測定方法で軽 減傾向だったが、 嗅覚測定方法では変化がなかった。 【考察】 体臭では、男女共に平均値に有意差がみられ、柿渋 エキスの使用が体臭の軽減に影響したと考えられる。 男女共に介入後の入浴後 3 日目からの体臭が増加し ていることから、柿渋エキスを使用し入浴間隔を 2 日に 1 回以上にすることで体臭抑制効果がより高ま る可能性が示唆された。病室のにおいは機器測定方 法と嗅覚測定方法の結果に関連は確認できず、個人 の体臭の低下に伴う病室のにおいの変化はなかった。 A 病院が築 30 年経過していること、複合臭、患者要 因による影響が考えられる。体臭の軽減のみで病室 のにおいの軽減は困難と言わざるを得ず、体臭と病 室のにおいの変化の関連性は明らかにならなかった。 【結論】 1.柿渋エキスを使用した入浴による体臭は介入前に 比し有意に減少し、介入後の入浴後 3 日目には 1・2 日目より体臭が増加した。2.病室のにおいへの変化 はみられなかった。以上より、柿渋エキスを継続的 使用にすることでより体臭が抑制できること、柿渋 エキスを使用し 2 日に 1 回以上の入浴回数にするこ とでさらに高い体臭抑制効果が得られる可能性が示 唆された。 【引用参考文献】光田恵:看護環境における臭気の 特性と対策に関する研究.95-103,日比科学振興助 成財団研究報告書,2005. - 7 -
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