Virtual PC を用いた Windows-XP、Windows Vista、Windows 7 の

Virtual PC を用いた
Windows-XP、Windows Vista、Windows 7
の性能比較
経営情報学部
経営情報学科
5107056 奥野
貴弘
5107271 三好
正広
1
目次
第1章
はじめに .................................................................................... 3
第2章
OS について
............................................................................... 4
第1節
OS とは ............................................................................................................... 4
第2節
OS の始まりからの歴史 ..................................................................................... 4
第 3 節・OS の進化 ........................................................................................................... 6
第 4 節・各 OS の違い ...................................................................................................... 8
第3章
検証
....................................................................................... 10
第 1 節・Virtual PC について......................................................................................... 10
第 2 節・検証するのにあたって ...................................................................................... 12
第 3 節・検証手順 ........................................................................................................... 13
第 4 節・検証の種類と結果 ............................................................................................. 13
第 5 節・ベンチマーク .................................................................................................... 17
....................................................................................... 24
第5章 まとめ ..................................................................................... 26
第6章 感想 ....................................................................................... 27
参考文献 ............................................................................................. 27
謝辞 .................................................................................................. 27
第4章
考察
2
第1章
はじめに
パーソナル・コンピュータ(以下 PC)をはじめとする様々な端末を快適に使用するため
に必要なのがオペレーティング・システム(以下 OS)である。今より約 30 年前の 1981
年には、Microsoft 社より OS である Microsoft Windows の原型ともなった MS-DOS Ver 1.0
が発売され、1985 年に Windows 1.0、1987 年に Windows 2.0、1990 年に Windows3.0 と
次々に新しいものが作られた。そして今回の検証で利用する OS、Windows-XP や Windows
Vista、Windows 7 などがクライアント向けに発売されていった。Windows は世界的に有
名であり、現在日本の市販の PC のほとんどには Windows の OS がインストールされてい
る。21 世紀になってから発売された OS は 10 年間に 4 つの OS が発売されたが、Windows
2000 から Windows XP、Windows Vista から Windows 7 はいずれも新規開発ではなくマ
イナーアップデートされたものである[1]。
いままで多くの OS が提供されてきたが、性能の違いは明確になっていない。特に一般の
ユーザーレベルではグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)以外の大きな違いは
実感できない。PC のヘビーユーザでも多少の機能や仕組みの変化は把握できるが、細かな
性能の違いを把握している人は少ない。また、Windows XP から Windows Vista へバージ
ョンアップしたとき、
「Vista は XP より動作が遅い」と多くの人の感想があった。OS の違
いだけで処理速度の差が大きくなる理由の一つとして、Windows XP から Windows Vista
に世代交代した時の PC スペックが Windows Vista の要求スペックに追い付いていないと
いうことも考えられる。性能の高い PC を使えば Windows Vista の性能も維持できる。反
対に、Windows Vista の動作可能な PC で XP を動作させた時の性能の変化にも興味が持て
る。
そこで、本論文では近年使われていることの多い Windows Vista と Windows 7 に加え
Windows XP と 3 つの OS の性能比較、検証を行う。本検証の特徴は Virtual PC 上で 3 つ
の OS を動作させてベンチマークテストなどの検証を実施すことである。それぞれの OS が
同じ条件で動作できる環境を作ったことが大きな特徴である。
最後に本論文の全体の構成を大まかに説明する。第 2 章では OS についての詳細を紹介し、
第 3 章では Virtual PC による検証環境の紹介と検証結果、第 4 章では検証の考察をし、第
5 章では全体のまとめを記述し、第 6 章では感想と今後の課題について述べる
3
第2章
第1節
OS について
OS とは
OS とは Operating System の略である。Windows Vista などのことで PC の電源を入れ
れば自動的に起動し、終了させるまで常に起動している。PC 内のメモ帳や電卓、Word、
Excel などソフトウェアはすべて OS 上で起動している。OS はこれらのソフトウェアを起
動させるために必要となるため、「基本ソフトウェア」とも呼ばれ PC の基本となるプログ
ラムが OS である。主な働きはアプリケーションを起動させることで、アプリケーションか
らハードウェア(CPU やメモリ)までを管理し、それらを効率よく動作させる重要な役割
がある。つまり、アプリケーションとハードウェアの仲立ちの位置にあると言える。キー
ボードから文字を打ち画面に出力する、入出力機能やディスク、メモリなどハードウェア
の全体を管理しているものが OS である。他にもプリンターや USB などの周辺機器の制御、
PC 自体の操作時の管理など幅広い働きがある。
Microsoft 社の Windows シリーズの他にも、
Apple 社の Mac OS X や企業がサーバー向けに使う OS、Linux や Microsoft 社の Windows
Server などの UNIX 系 OS がある。
OS が違えば画面や操作などは違うものになっている。
ソフトウェアの開発者などは OS に標準搭載されている機能を使い開発の手間を減らす
ことができ、アプリケーションの統一性も上げるこができる。またこの方法で開発された
ソフトウェアはハードウェアの違いを OS がある程度吸収してくれるため、その OS 向けに
開発されたソフトは基本的にその OS が起動する PC で使用することができる。
第2節
OS の始まりからの歴史[2]
(1)OS の始まり
今は Windows XP や Windows Vista など複数種類の OS があるが、これらの誕生理由を
説明する。1950 年代、コンピュータが利用し始められた初期の頃、システム管理用ソフト
ウェアツールやハードウェアの使用を統一されてわかりやすい利用方法にする必要があっ
た。利用範囲が徐々に拡大した結果、OS という概念が誕生した。
(2)OS の歴史
1960 年代前半になると OS の増強が進められ、後半には現在の OS の概念や基本部分(カ
ーネル)の技術の大半がこの時期に作られた。カーネルとはソフトウェアのことで OS の中
核部分を担っている存在であり、これ無くして OS は機能しない。1960 年代は OS の基礎
を築いた時代であり、本格的なマルチタスク(一度に複数の仕事)が可能になったことに
4
よりユーザーは作業の効率化が図りやすくなった。また、もう一つの進歩としてタイムシ
ェアリングの実用化がある。使われていないコンピュータの CPU 時間を他のユーザーに割
り当てることにより、複数のユーザーが同時にコンピュータをスムーズに使用できるとい
う技術である。この頃はまだ PC が誕生していないので、仕事でひとつのコンピュータを複
数人で使用していると快適さが損なわれたが、タイムシェアリングの実用化によりあたか
も自分ひとりでコンピュータを独占して使っているような感覚を味わうことができた。
1970 年代になるとマイクロプロセッサが登場した。これはソフトウェアを動かすための
ハードウェア(プロセッサ)を集積回路で実装したもので、初期のマイクロコンピュータ、
つまり今でいう PC はこれを搭載する容量もなかったので、必要最低限の機能しか持たない
OS が作られた。そこから CP/M や PC-DOS などの OS が開発され、このすぐ後に Microsoft
から MS-DOS が発売され普及した。
1980 年代前半になるとアップルコンピュータからは Macintosh が、Microsoft からは
MS-DOS の後継とも言える Windows 1.0 が発売された。また、先ほどのマイクロプロセッ
サの高性能化と低価格化が進み、業務用途のシステムでプログラムを自由に書き換えるこ
とができる UNIX をベースとしたクライアントサーバーモデル、つまりコンピュータでサ
ービスを提供しているサーバー(ソフトウェア)にアクセスし、サービスを受ける方式が
普及した。これにより UNIX は広く用いられることとなったが、後にこの利権を持つ企業
が使用条件に厳しい条件をつけたため、UNIX のオープンな文化は一時衰退し、市場は大打
撃を受けた。
80 年代後半になると、OS のシステムソフトウェアの拡張や機能を増やそうとすること
により互換性や信頼性の面で問題が生じるようになり、PC にも高性能化が求められ始めた。
ネットワーク機能の拡張を行い、高グラフィック機能、オブジェクト指向の実装などの機
能を付けると当時のハードウェア性能では負担がかかりすぎた。したがってこれらの機能
は持していないが、強固なメモリ管理がある Mac OS や Windows 3.x などが普及していっ
た。
UNIX の自由な改変が禁じられたその後、これに代わる新たな OS の開発が進み 1990 年
に Hurd、1991 年現在では、PC にだけに限らず様々な電子機器に幅広く応用されている
Linux がフリーソフトウェアとして誕生する。しかし、Hurd は設計手法のトレンドに踊ら
され、頻繁に設計が変更されていたことにより混乱が生まれ開発が停滞する。一方で、Linux
は自社の考えを貫き、保守的な設計と不特定多数の担い手を使用するバザール方式という
開発方法が功を奏し人気を獲得することができた。1993 年に Microsoft から Windows NT
3.1 翌年には Windows NT 3.5 という OS が開発され、Windows NT 3.5 は Windows とし
ては初めての 32 ビットに本格的に対応し情報処理の高速化を図ったが、負荷や互換性の問
題でこの時は広く普及しなかった。
(3)変化する OS
5
Windows NT 3.1 を皮切りにこれまで開発されていた Windows 9x 系とは別の Windows
NT 系が出てきた。2000 年の Windows Me(9x 系)Windows 2000(NT 系)までこの並
存が続いたが、2001 年に作られた Windows XP から Windows NT 系に一本化された。
2003 年には OS の 64 ビット化が進んだが、16 ビットから 32 ビットへの変化と比べると
大きな OS 機能の変貌は起きなかった。現在では 32 ビット OS と 64 ビット OS が並存して
いるが、大きな違いはなく 64 ビット版に移行するメリットはメモリを多く使え、セキュリ
ティーも強固となるが、デメリットとして 16 ビットアプリケーションが動かず、ほとんど
の周辺機器が 32 ビット OS にしか対応していないためにドライバーが動かないという問題
があった。これを懸念して現在メーカー各社の 64 ビット OS に対しての方針が異なる。日
本で 64 ビット版に積極的なのはソニーで、NEC はほぼ全てが 32 ビット版。東芝、富士通、
パナソニックの製品は多数が 32 ビット版を扱っている。
2000 年代は PC 普及の年であり 1995 年の Windows 95 発売以降普及率は順調に上昇傾
向をたどり、2010 年には単身世帯を含む普及率は 87.2%と 15 年前の 16.3%の約 5 倍にま
で上昇し、メーカー側は消費者を満足させるにはさらなる機能の多様化が必要となってき
た。
第 3 節・OS の進化
(1)OS の現状
OS の進化の理由は、絶えず研究が進んでいるハードウェアの高性能化に対応し、ユーザ
ーがより快適に作業できるようハードウェアとソフトウェアの仲立ちを行い、新しい技術
に対応していかなければならないからである。しかし、多数のソフトウェアやハードウェ
アが進化するため OS の開発が遅れがちになることもある。OS の起動時間など速くなって
いる部分もあるが、システムソフトウェアの肥大化・複雑化のため以前のバージョンより
他のシステムに影響が出ていることもある。
(2)利用範囲の広がる OS
今では PC を利用していない人のほうが少なくなってきた状況において、PC でできるこ
とは着実に増えて来ている。ハイテク化が進んで最新の多機能家電にはそれらに適応した
OS が入っている。近年では高性能な携帯端末が注目を集めている、iPhone や iPad にも
OS はあり、iOS と名付けられている。この 2 つの製品は、アップル社から発売されたタッ
チパネルを搭載した携帯端末で、今までにない新しいユーザーインターフェースを可能に
した。iPhone とは、多機能携帯電話(スマートフォン)の部類に入り、アプリと呼ばれる
ソフトウェアをダウンロードし、OS が仲立ちすることで多種多様なことが可能となること
で話題となった。従来の携帯電話でもアプリは存在していた。スマートフォンに注目が集
まった理由は、iPhone のタッチパネルを使った新しい操作方法の目新しさもあるが、やは
6
り提供されている機能の便利さ豊富さにある。特に Skype と Twitter はこれが使えるから
購入を決めたというユーザーもいる。Skype はインターネット回線を使い会話でき、知り
合いを登録しておくと無料でいつまでも会話することができる。今までは PC でしか利用が
できなかったが、それが携帯電話で可能となった。さらにもうひとつの iPhone の普及で爆
発的に利用者が増えたのが Twitter(ツイッター)である。これは俗にミニブログと呼ばれ
るもので、ユーザーが何気ないことを 140 文字以内で書き込むサービス、この行為を「つ
ぶやく」(ツイート)と言い、登録するだけで手軽に自分の意見の発信を行え、知り合いや
芸能人のリアルタイムな情報を知り、それに対してリアクションを発信できるツールであ
る。iPad とは、携帯情報端末(PDA)と呼ばれ、見た目は iPhone が大きくなったものの
ようだが、より高性能になりできることも増えた。iPad の登場は一般消費者にしてみたら
完成度の高いものが急に出てきたという感じで、これが登場してから各社タッチパネル端
末を発表し、今や情報家電の新世代を担う注目の的となっている。去年 Softbank の社長孫
正義氏は「iPhone と iPad だけで 99.9%の仕事こなせる」と発言したほどである。
昔の windows95 や windows98 が全盛期の時代は、いまではインターネット上の至る所
に存在し、簡単に見ることができる動画が見られなかった。動画コンテンツが普及してい
なかったため OS も動画再生に対応していなかったが、いまや自分でデジタルビデオカメラ
などの映像機器を使って撮ったものをインターネット上にアップロードすることや、携帯
電話サイズで視聴が可能となっている。
(3)OS サポートの重要性
情報家電と違い PC の OS にはサポート期間があり、製品により少々の違いはあるが約 5
年で終了する。Windows XP は人気が高いため発売から約 10 年たった今も延長サポートが
続いているが、2014 年には終了する。サポートが切れると PC がウイルスの脅威から身を
守る力が弱くなる。ウイルス対策ソフトを導入していても期限が切れると問題があり、土
台となる OS で新たに発見されたセキュリティホールを塞ぐことができないため、定期的に
更新プログラムでセキュリティーを保つ必要がある。サポートが終了しセキュリティーが
脆弱になると、サイバー犯罪などに巻き込まれる可能性が高くなるため、最新のサポート
を受けられるように OS をアップグレードすることが重要である。
(4)OS の進化に伴うハードウェアの増強
一般的に新しい OS は今まで使っていたものより高性能なハードウェアが要求されるケ
ースが多いため、その PC に搭載されているハードウェアの能力が不足しがちである。他に
はインストールされているドライバーの不具合、アプリケーションに新 OS との互換性がな
いなどの原因がある。いくつか考えられるトラブルを回避するためには、事前に情報を集
め仕様などを調べておくことが重要である。またデスクトップ型の PC なら、一部機器の買
い替えや増設することで回避できるが、ノート型パーソナルコンピュータ(以下ノート PC)
7
になると増設が難しくなる。
HDD容量(GB)
600
500
400
300
200
100
0
500
250
120
70
2007
2008
2009
2010
図1 ノートPCの年代別容量
理由は近年、飛躍的にノート PC のハードディスクドライブ(以下 HDD)容量は増加傾
向(図 1 参照)にあり、2007 年に作られた標準製品の HDD には約 70GB の容量が装備さ
れていたのが、年々120GB、250GB と増え、2010 年には 500GB に至った、2007 年と比
べるとこの 4 年ほどで 7 倍になっている。また日立と東芝が 2012 年度までの完成を目指し
て開発している技術があり、ナノテクノロジーを利用して HDD の記憶容量を 10 倍以上に
高める研究が進められている。以上のことから最近のノート PC は高性能でデスクトップ
PC に引けを取らなくなっている。家電量販店を訪れてみても現在メインで取り扱われてい
るのはノート PC で、価格も 4,5 年前と比べ半分ほどになっている。つまり 5 年ほど使用
して調子の悪くなったノート PC はサポート切れや、HDD の寿命を加味してアップグレー
ドするよりも買い換えを選択するユーザーも多い。
上記で記述した問題を解決してユーザーに快適な環境を提供するためにも、これからも
OS は進化していく必要がある。
第 4 節・Windows-XP , Windows Vista ,Windows 7 の違い
第 3 章で検証する Windows XP、Windows Vista、Windows 7 の三つの OS だが、その
前に3つの OS の違いを説明する。もともと Windows XP は Windows 2000 から後継され
た OS である。同じように Vista から Windows 7 へ大きい仕様は受け継がれた。
まず Windows XP と Windows Vista と Windows 7 では OS 自体起動するのに要求する
スペックが違う。各 OS の要求スペックを各表に示す。
表1 Windows XP 推奨システム要求
CPU
Pentium 233MHz または それ以降(400MHz 以上推奨)
メモリ
128MB 以上
ハードディスク
1500MB 以上の空き容量
8
表2
Windows Vista 最低システム要求
CPU
メモリ
ハードディスク
800MHz,32bit(x86)または 64bit(x64)プロセッサ
512M 以上
20GB 以上の HD で 15GB の空き容量
グラフィック
SVGA(800*600)
表3
Windows 7(32bit 版) 推奨システム要求
CPU
1GHz 以上
メモリ
1GB 以上
ハードディスク
16GB 以上の空きスペース
グラフィック
Windows Display Driver Model(WDDM)1.0 以上のドライバー
で稼働する DirectX9 対応のグラフィックスデバイス
表 1 と表 2 の推奨スペックの差を見比べてみると Windows XP と Windows Vista ではメ
モリだけでも 4 倍、ハードディスクは 10 倍以上のスペックを要求する。しかも Windows
Vista のこの最低システム要求というのは 6 種類以上あるエディションの内、消費者向けの
下位エディションである Home Basic のものである。また Windows Vista の推奨システム
要求と Windows 7 の 32bit 版のシステム要求は同じものとなっている。そのため Windows
7 のインストールディスクさえあれば周辺機器の増設などしなくとも Windows Vista から
Windows 7 にアップグレード可能である。
性能の上昇だけではなくプログラムの追加もあり、特に最近の問題としてセキュリティ
ー面の強化が大きいものとなった。しかしいろいろなシステムやプログラムを詰め込んだ
ため以前のバージョンの OS より重くなってしまうということもある。Windows Vista が
Windows XP より重いといわれていたのもこれらの原因と予測できる。Windows Vista の
性能を引き出すために必要なスペックは高いものになっている。低スペックでは Windows
Vista 本来のスペックを引き出すことが難しいため、高いハードウェア性能が要求される。
Windows Vista が販売開始された当初は PC 本体のスペックも Windows XP に近いものが
多かったため現在の PC より快適さが劣っていた。
9
第3章
Windows-XP, Windows Vista, Windows 7
の性能比較検証
第1節
Virtual PC について
図 2.Windows Vista で Virtual PC(Vista)の起動
3つの OS の性能を比較するにあたり Microsoft Virtual PC を使用する。この実験の重要
な条件の一つはなるべく同様のコンピュータ環境である。コンピュータの性能が少し違う
と正しい性能比較結果が求められないためである。Virtual PC は基本となる OS 内で別の
OS をインストールでき、インストールされた別の OS を実行できる。図 2 に PC の中で別
の PC を起動させる様子を示す。PC に新しく OS をインストールしなくても、Virtual PC
を使えば別の OS を同様の環境で実行することができる。Virtual PC をインストールした
PC の OS は Windows Vista だが、Virtual PC に Windows Vista をインストールし、起動
させることにより、Vista も Virtual PC にインストールされた他の OS と Windows Vista
も Virtual PC にインストールされた他の OS と同じ条件で検証することが可能になる。ま
た Windows 7 Professional には Windows Virtual PC を利用する Windows XP モードとい
うものがある。図 3 の右側の赤枠が XP モードで IE を起動している画面である。新しい
OS になることにより昔の OS に対応していたソフトや周辺機器が対応してなく使えないと
いう問題点がある。それを Windows XP モードにより周辺機器やアプリケーションの互換
性を高めることができる[3]
10
図 3 Windows XP モードの概念(左)と起動画面(右)
しかし、OS 内でもうひとつ OS を本体の PC からメモリや HD の容量などを借り起動し
ているため、最新の OS など要求スペックの高いものは本来の性能を出すことは難しいとい
う問題点もある。今回の性能比較ではこの問題を考慮しつつ性能比較という点に重点をお
いて比較実験を行う。
まず、本来の PC から仮想マシン(Virtual Machine)を構築する。この仮想マシンに割り
当てるハードディスクやメモリの容量を設定する。それに OS をインストールすることによ
り使用することができるようになる。Virtual PC 内でも普段の PC でできること、ネット
ワーク接続やサウンドカード、ディスクドライブなどを使用することもできる。また Virtual
PC にインストールした OS は Virtual PC 内で保存したファイルのイメージは一緒のファ
イルに保存されるためバックアップなど簡単に行うことができる[4]。
Virtual PC は HDD の容量を一度設定するとそれを変更すことはできない。メモリに関
してはいつでも変更すことはできる。このとき追加の HDD を設定すれば容量を追加するこ
とができる。Virtual PC を二つインストールしている場合、その二つの Virtual PC の間で
フォルダを共有することができる。違う OS でもあっても外付けの HDD のように中身の同
じフォルダを使うことができる(図4、図5参照)。
図4
Windows XP(左)と Vista(右)のマイコンピュータ
11
図5
第2節
Windows XP(左)と Windows Vista(右)のボリューム E
検証するのにあたって
各 OS の検証をする前に Virtual PC の設定をすべての OS と同じにする必要がある。ま
ず Virtual PC をインストールした PC のスペックを下の表 4 に示す。
表 4 本体のスペック
OS
Windows Vista
プロセッサ
Intel core 2 Duo Processor E4500 2.20GHz
メモリ
2G
使用可能 HDD 容量
20G
同じ性能の PC の A と B を 2 台用意し、A の PC に Vista と Windows XP、B の PC に
Windows 7 をそれぞれ Virtual PC にインストールした。そして Virtual PC の設定でメモ
リと HD 容量はそれぞれ下の表 5 のように割り当てた。
表5
Virtual PC の設定
メモリ(バーチャルマシン上 RAM)
1G
HD 容量
10G
また Virtual PC に OS をインストール後、Virtual PC 内の OS の初期設定後の使用容量
は以下のようになっていた。
表6
OS インストール後の使用容量
Windows XP
3.6G
Windows Vista
6G
Windows 7
5G
PC には検証に必要になるもの以外はインストールせず設定も初期の設定のまま行った。
Virtual PC のメモリ設定や HDD 設定など、特にメモリに関しては数字が違うだけで結果
12
が変わってくる。今回表 5 の設定にしたのは本体の容量やスペックを考慮したものである。
この設定上 Windows Vista と Windows 7 は推奨システム要求に近い設定となり、Windows
XP は操作に関して不自由にならない軽さとなった。
第3節
検証手順
本検証をするのにあたりこのストップウォッチを使用した[5]。なるべく PC に負担のか
からない軽いものを使用した。このストップウォッチを Virtual PC 内ではなく、本体のほ
うで起動し検証した。また結果は検証毎にある程度の誤差があるので 5 回検証しその平均
を結果としてだした。図6の赤枠がストップウォッチ、黄枠が Virtual PC のウィンドウで
ある。
図6
第4節
検証中の画面
検証の種類と結果
この節では 4 つの検証を行った。1 つ目は起動からデスクトップまでの表示速度と終了速
度と起動時のメモリの使用量、2 つ目は Windows Media エンコーダを使ったエンコード時
間の検証、3 つ目はファイルのコピー時間、4 つ目はファイルの圧縮と解凍時間を検証した。
(1)起動と終了速度と起動直後のメモリ使用量
それぞれ Virtual PC 起動からデスクトップが表示されるまでの時間を検証した。終了速
度はシャットダウン選択から Virtual PC が終了するまでの時間を検証した。下の表 7、表
8 がそれぞれ 5 回検証した平均時間の結果である。
13
表7
起動からデスクトップ表示までの速度
Windows XP
59 秒
Windows Vista
1 分 30 秒
Windows 7
1 分 10 秒
表8
終了速度
Windows XP
25 秒
Windows Vista
19 秒
Windows 7
16 秒
起動速度(秒)
終了速度(秒)
59
Windows XP
25
90
Windows Vista
19
70
Windows 7
16
0
50
100
図7 起動速度、終了速度まとめ
Windows XP の起動が一番早くその次に Windows 7 と遅れて Vista という結果だったが、
終了速度は新しい OS ほど時間が速いものとなっていた。これらを比べると起動時間の差は
大きいものであった。これは表 9 の起動直後のメモリの影響が大きい。Windows Vista、
Windows 7 は Windows XP に比べ主にセキュリティー面が大幅に強化された。そのため起
動時にも Windows XP より多くのプログラムが起動しているためその分メモリを消費して
しまっている。セキュリティー関連の他にもネットワーク関連のプログラムが多く起動し
ている。表 9 が OS 起動直後のメモリの使用量である。
表9
OS 起動時のメモリ使用量
起動時のメモリ使用量
Windows XP
104MB
Windows Vista
333MB
Windows 7
280MB
表 9 を見ると Windows Vista は起動直後にも多くのメモリを使用している。そのせいで
14
ほかのアプリケーションに使うメモリが少なくなっている。少し古い OS のため Windows
XP のほうは空きメモリと消費メモリともに少なくなっている。Windows 7 は Windows
Vista と比べメモリの消費量なども抑えられている。重いといわれていた Windows Vista
から進化した部分の一つである。
Windows Vista で一度使用しないサービスを停止し再度起動してみた[6]。停止したプロ
グラムは Print Spooler(プリンター関連のサービス)などの Virtual PC では認識しない周辺
機器関連のもの、Windows Media Center Receiver Service(Windows Media Center 関連
のサービス)など使用しないアプリケーションなどのサービスであり、これらのサービスは
Windows Vista、Windows 7 で は デ フ ォ ル ト で 起 動 設 定 が さ れ て い る 。 標 準 サ ー ビ
ス の 数 は Windows XP が 85、Windows Vista が 124 と な っ て い る 。こ れ ら の サ ー
ビ ス を 停 止 し 検 証 し た 結 果 が 表 10 である。起動、終了速度ともに大きな変化はなかっ
たもののどちらも速度が速くなった。そしてメモリ消費量に関しては大きく減った。
表 10 不必要プログラム終了後の Windows Vista
起動時間
1 分 20 秒
終了時間
15 秒
起動時のメモリ使用量
260MB
(2)Windows Media エンコーダによるエンコード時間
表 11 がエンコードに使用するファイルとエンコード設定である。この設定を使い各 OS
でエンコードを行い、その時間を計った。
表 11 エンコード設定
エンコードしたファイル
1.07G の mpg ファイル
ビットレート設定
282Kbps
フレームレート
29.97
動画サイズ
320×240
表 12 エンコード結果
Windows XP
31 分 15 秒
Windows Vista
31 分 28 秒
Windows 7
32 分 47 秒
完成したファイル
50M の wmv ファイル
結果はいずれの OS もエンコード時間に大きな差がなかった。Windows Vista と Windows
XP を比べメモリの使用量と Virtual PC の環境下で考慮するとエンコード性能は上がって
いることがわかる。
次にファイルサイズの小さい動画ファイルのエンコードを実行した。エンコードに使った
ファイルは Windows 7 に標準で保存されている動画サイズが 1280*740 で容量が 25MB の
15
wmv ファイルである。これを縮小するエンコードを行った。エンコードの設定は基本表 11
のままの設定で行い動画サイズは 640*480 にエンコードした。
表 13 エンコード結果
Windows XP
2 分 44 秒
Windows Vista
2 分 29 秒
Windows 7
2 分 28 秒
完成したファイル
1M の wmv ファイル
こちらは mpg ファイルのエンコードとは逆の結果となった。容量の大きいファイルはメ
モリの使用量が多い OS では負担が大きいことはわかる。逆に小さいファイルだと Windows
7 では多少早く処理を行うことができる。
(3)ファイルのコピー時間
コピーするファイルは(2)の検証で使った mpg ファイルを使用した。そのファイルを
DVD からデスクトップへコピーをする時間、そしてそのファイルを別のフォルダへコピー
するまでの時間を検証した。
表 14
表 15
DVD からデスクトップへのファイルコピー
Windows XP
3 分 12 秒
Windows Vista
3 分 56 秒
Windows 7
3 分 18 秒
デスクトップからフォルダへのファイルコピー
Windows XP
5 分 35 秒
Windows Vista
5 分 22 秒
Windows 7
4 分 45 秒
DVD からファイルのコピーは Windows XP と Windows 7 が早く Windows Vista が少し
遅い、デスクトップからフォルダへのコピーは今までと少し結果が違った。Windows 7 が
他より 1 分近くはやく、Windows Vista、Windows XP の順になった。同ドライブ内での
コピーは Windows7が圧倒的に早く、DVD からのコピーのデータも考慮するとコピーの性
能は Windows7が他の OS と比べ優れている。Windows 7 はコピー性能にすぐれている
OS である。マイクロソフトの公式ページ[7]では Vista と 7 のコピー速度は 1.2 倍差がある
と記載されている。この検証でも 1.2 倍近くの差が出ていることがわかる。
(4)ファイルの圧縮と解凍時間
圧縮、解凍に使う動画ファイルは前検証と同じ mpg ファイルを使用する。
表 16
mpg ファイルの圧縮時間
5 分 10 秒
Windows XP
16
Windows Vista
10 分 17 秒
Windows 7
8 分 30 秒
表 17
mpg ファイルの解凍時間
Windows XP
4 分 19 秒
Windows Vista
8 分 10 秒
Windows 7
5 分 47 秒
圧縮、解凍ともに今までの検証と比べ差が開いたと言える。圧縮解凍ともに Windows XP
が速かった。Windows Vista が他の OS と違いかなり遅い結果となった。解凍時間に関し
て Windows Vista はほかに比べ差が大きいが Windows XP と Windows 7 を比べ圧縮ほど
時間の差がない。
さらに表 13 のエンコードに使った wmv ファイル(25MB)の圧縮解凍を行う。
表 18
wmv ファイルの圧縮時間
Windows XP
3.95 秒
Windows Vista
10.9 秒
Windows 7
9.11 秒
表 19
wmv ファイルの解凍時間
Windows XP
3.46 秒
Windows Vista
3.98 秒
Windows 7
3.66 秒
こちらも Windows XP の圧縮は早かったが、解凍に関してはどの OS もほぼ同じ時間をだ
した。二つのファイルの圧縮解凍を比べ考察すると重いファイルと軽いファイルで差の大
きい Windows Vista は重いファイルでの圧縮解凍は負担が大きいことがわかる。軽いファ
イルでは Windows7と大きな差はないが Windows7のほうがどちらも早い。
第5節
ベンチマーク
次に各 OS のベンチマークをとってみた。ベンチマークとは、コンピュータのハードウェ
ア、ソフトウェアの性能を図るものである。この検証には Crystal Mark[8]と Crystal Disk
というベンチマークソフトを使用した。
17
図8
Crystal Mark のメイン画面
(1)Crystal Mark の説明
この項目の各単語に関しては次項で説明する。測定するには Mark のボタン(図 8 の赤
枠)を押せば全てのデータの測定を始め、Mark より下のボタンはそのデータのみを検証す
る。例えば ALU ボタンを押せば ALU のみの測定を開始する。測定結果は図 8 の Mark な
どのボタンの横にある 0 の数字が書かれているところにそれぞれ表示される。図 8 の青枠
の HDD は HDD の測定に使うハードディスクドライブの設定、緑枠の HDD Size は HDD
測定に使うファイルの大きさを選択する。128MB、256MB、512MB、1024MB の中から
選択できる。
測定は一つの測定でも何度か条件を変更し行いそれらの合計値がボタンの横に表示され
る。例えば D2D の検証では図 9 のように最初は 10 個の星が飛び回っているが 10→100→
500→1000→5000→10000 と数が増えていく。D2D だとそれらの段階での FPS とスコアの
詳細を黄枠の部分で確認することができる。
図9
D2D の測定画面。星は動きながら時間ごとに数が増える。左の星の数は 10、右が 500
18
(2) 各単語の説明
ここでは測定項目の Mark、ALU、FPU、MEM、HDD、GDI、D2D、OGL の各単語の
説明をする。
【1】Mark
Mark はベンチマークの合計(ALU~OGL の数値の合計)を測定する。この数値が高けれ
ば高いほど PC の性能がいいということになる。
【2】ALU
ALU とは Arithmetic Logic Unit の略である。整数演算速度を測るものであり、CPU 性
能に関するベンチマークである。整数演算とはその名の通り整数の演算のことである。そ
れの速度を測る。足し算や掛け算、
「1+2」や「2*2」のことである。主にプログラムの制
御に使われることの多いものである。
【3】FPU
FPU とは Floating point number Processing Unit の略である。こちらも CPU 性能に関
するベンチマークであり、浮動小数点演算速度を測るものである。浮動小数点演算とは浮
動小数点型のデータの計算のことである。浮動小数点とは計算機における実数表現の一つ
である。321 なら 3.21*10 。1234 なら 1.234*10 と表現する。なぜこのような計算式に
なるのかというと、例えば「10」というデータの数値があるとする。この「10」を少し上
げ た い と き 整 数 演 算 だ と 「 11 」 と い う 風 に な る 。 浮 動 小 数 点 だ と 10.01(1.001 ×
10 や 100.01 1.0001 ∗ 10 というようにほんの少しの数値の上昇を可能にする。これが浮
動小数点演算であり、これの速度を調べるものである。
【4】MEM
MEM とはメモリの性能に関するベンチマークであり、メモリの読み書きの速度を測るも
のである。
【5】HDD
HDD とはハードディスクの性能に関するベンチマークであり、ハードディスクの読み書
きの速度を測るものである。(1)で説明したように図8の青枠と緑枠で設定したハードディ
スクとファイルサイズでこの測定を行う。
【6】GDI
GDI とは Graphical Device Interface の略である。2D グラフィックスの性能に関するベ
ンチマークであり、2D グラフィックの表示速度を測るものである。GDI は直線や曲線、フ
ォントのレンダリング(数値データや数式などを演算しグラフィックや画像、音声などを
生成すること)など 2D 系の制御の処理を担当するものである。またディスプレイやプリン
ターなどの出力デバイスのコントロールもする。
【7】D2D
19
D2D とは DirectDraw の表示速度を測るものである。こちらも 2D グラフィックスの性
能に関するベンチマークである。DirectDraw とはマイクロソフト社の DirectX API の一部
であり、パフォーマンスが重要なアプリケーションのレンダリングするために使用する。
図 9 が検証中の画面である。
【8】OGL
OGL とは Open Graphics Library の略である。3D グラフィックスの性能に関するベン
チマークである。OGL は Silicon Graphics 社が中心となって開発した 3D グラフィックス
用プログラムインターフェイスである。図 10 が検証中の画面である。
図 10
OGL の測定画面。様々な 3D 映像が表示される
(3)本体に合わせたベンチマークの結果
OS 同士の検証を行う前に、本体の性能と比較しその差を検証してみた。本体の Windows
Vista のスペックは表 4 で示してある。ように Virtual PC の OS より高性能を要求されて
いる。このベンチマークは画面の解像度が違うだけでグラフィック関連(GDI、D2D、OGL)
の数値が大きく変わってくる。本体の解像度 1280*1024 の 32bit に Virtual PC 各 OS も設
定し検証した。
表 18
本体と各 OS を比べたベンチマークの結果
Windows XP
Windows Vista
Windows 7
Windows Vista(本体)
Mark
37545
30859
28830
73172
ALU
9518
8866
8743
19277
FPU
11153
9136
8608
20747
MEM
7677
6443
5430
10429
HDD
3703
1856
1846
6444
GDI
1228
370
503
6155
D2D
3418
3630
2916
1753
20
OGL
848
709
697
図 11
8367
表 18 のグラフ
ALU
FPU
MEN
Windows XP
HDD
Windows Vista
GDI
Windows 7
Windows Vista(本体)
D2D
OGL
0
5000
10000
15000
20000
25000
図 11 に示すように本体の性能が圧倒的に高かった。3D のグラフィック表示速度などは
Virtual PC 上だと制限が大きいことがわかった。本体の設定に合わせると Windows XP と
比べて Windows Vista と Windows 7 はやはり負担が大きくなってしまい、グラフィック関
連のスコアが急激に落ちている。しかし本体の D2D の数字だけは Virtual PC の OS より低
くなっている。これはグラフィックボードの問題で、D2D が低くなり OGL が高くなるの
は仕様だが、それが Virtual PC では 3D グラフィックの表示制度が落ちたため D2D の数値
が上がった可能性がある。FPS は本体の数値が初期の測定では 3 倍以上高かったが、後半
の測定では急激に FPS が落ちている。
(4)Virtual PC の OS のベンチマーク
下の表 19 が Virtual PC だけでベンチマークをとったものである。解像度の設定は
800*640 の 32bit に設定し検証を行った。
表 19
各 OS のベンチマークの結果
Mark
Windows XP
37004
Windows Vista
34913
Windows 7
35963
ALU
9057
8877
8983
FPU
10682
9277
9581
MEM
7012
6451
6402
HDD
2055
1769
1925
GDI
1290
593
546
D2D
7121
7006
7200
OGL
974
940
876
21
図 12
各 OS のベンチマーク結果のグラフ
ALU
FPU
MEM
Windows XP
HDD
Windows Vista
GDI
Windows 7
D2D
OGL
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
表 18 と表 19 を比べると Windows Vista と Windows 7 は解像度を低く設定した数値の
ほうが高くなっているものが多い。特に D2D は表 18 より急激に上がっている。解像度に
よりグラフィック関連の数値が大きく変わるのがわかる。ALU や MEM に関しては大きな
変化はなかったものの 7 と Windows Vista は Mark の数値が Windows XP に比べ大きくな
っている。負担が少なくなり数値が上がっているものが多かった。一方 Windows XP は数
値が落ちているものが多かった。
(5) Crystal Disk Mark による検証[8]
こちらは HDD の読み書きなどの性能を計測するものである。Seq とはシーケンシャルリ
ードのことで、データーベースのレコードを、テーブルに並んでいる順番に読んでいくも
のである。512K、4K はシーケンシャルリードの反対のランダムリードをそれぞれの数値
で行う。ランダムリードとは、データーベースのレコードとキーを選択し読み取っていく
ことである。それぞれ書き込み、読み込みの速度の測定値を表すものである。単位の[MB/s]
は一秒間に何百万バイトのデータを読み込み、書き込みできるかを表す。2MB/s なら1秒
間に 200 万バイトのデータを読み込むことを表す。
図 14 Crystal Disk Mark2.2。こちらは測定中も画面は変わらない
22
表 20
HDD ベンチマークの結果
Windows XP
Windows Vista
Windows 7
Seq Read
8.738
8.025
8.070
Seq Write
8.745
8.490
8.729
512K Read
7.882
6.985
7.581
512K Write
8.353
8.207
8.644
4K Read
0.488
0.524
0.583
4K Write
1.664
1.723
1.792
ベンチマーク結果は表 20 のようになった。シーケンシャルリードは Windows XP が高い
数値を出しているが、Windows 7 のランダムリードの読み込み書き込みは 4K では
Windows 7 のほうが高く、512K も書き込みは Windows 7 のほうが高い数値をだし、読み
込みも近い数値を出した。ランダムリードや軽い処理に関しては Windows Vista、Windows
7 ともに負担が少なく高い数値をだすことができる。Windows Vista と Windows 7 を比べ
るといずれも Windows 7 のほうの数値が高い。Windows Vista のときディスクパフォーマ
ンスが悪いという不満点が多かったが、それが Windows 7 になって改善されている。
23
第4章
考察
最初に全体の結果についての考察をし、次に Virtual PC で検証していくうえでの検討、
最後に各 OS についてのことを議論する。
全体的な結果をみると Windows XP が高かったが、これは Virtual PC のメモリや HDD
などの制限のため Windows Vista、Windows 7 は本来の性能を発揮できないスペックに落
ちているためである。Windows XP に関しては Virtual PC の設定が Windows XP の推奨ス
ペックより高いため、よい記録を出すことができた。全く同じ条件ですべての OS を動かす
というのは難しい。しかし、検証の結果を見るとどの OS がどの分野で優れているとわかる。
全ての結果をみると Windows XP が高い結果を出している。Windows Vista と Windows 7
を比べた時ほぼ全てが Windows 7 の性能が上となっている。Virtual PC により Windows
Vista も Windows 7 も同じ環境で起動が可能になった。結果としては Windows Vista より
Windows 7 のほうの性能が高かったと言える。機能面に関しては Windows 7 は Windows
Vista より必要プログラムが抑えられて実際に操作した感想も Windows 7 が軽かった。
Windows Vista と Windows 7 で同じファイルを同時に開き操作したときも Windows 7 の
ほうが早く、検証をするうちに Windows Vista はセキュリティー面の強化や機能の増加に
より、デフォルトの状態でもメモリの消費量が増えているという問題もわかった。しかし、
検証の結果をみると Windows Vista で問題視されていたことは Windows 7 では解消されて
いたことがわかる。
検証にあたりベンチマークや起動時間などは起動のたびに測定しても似た結果となった
が、コピーや解凍圧縮、エンコードなどは時間がかかり数値が安定しなかった。容量の大
きいファイルだと HDD の容量にも制限があり安定させるのは難しく、さらに問題として
Virtual PC の HDD 容量は Virtual PC 内のファイルを削除しても本体の容量が増えない問
題にあたった。1G のファイルを削除しても本体の容量は 1 も減らなかった。この増えた容
量を減らすには Virtual PC の HDD を圧縮しなければいけない。しかし、圧縮するには本
体にも多くの空き容量が必要となる。圧縮を行えなかったため対策として Virtual PC にも
う一つの HDD を設定しファイルを移動させた。これだけでは効果はないが削除をするとき
にその HDD ごと本体から削除することにより Virtual PC と本体の容量両方減らすことが
可能となる。ファイルの保存などをその HDD に行うことにより安定させることができた。
ファイルも重いものは負担が多かったため、負担のかからない容量のもので再検証を行っ
た。
Windows Vista の欠点は Windows 7 では解消されていることが本検証で証明された。結
果としては多くのサービスやプログラムが常時起動し動作を遅くしている Windows Vista
だったが、プログラムを停止することにより動作を早めることに成功した。メモリの使用
量による操作やアプリケーション起動などの鈍化に関し、Windows Vista、Windows7は
24
メモリ使用量が多く動作が重くなっていた。しかし、今回使用した PC では Virtual PC の
メモリ設定は 1G が限界であり、そのため Windows Vista と Windows7は推奨スペックに
近いものとなった。この状態でもメモリ使用量の少ない Windows XP より Windows7や
Windows Vista が高い数値をだした検証もあり、メモリを増設すれば結果が大きく変わっ
てくることが推測できる。
25
第5章
まとめ
本論文では Windows XP, Windows Vista, Windows 7 の 3 つの OS の詳細な性能の違い
を知るために Virtual PC で使用し性能比較、検証を行った。その結果 Virtual PC 上では十
分なメモリも確保でき、負担が一番少ない Windows XP が有利であった。ベンチマークを
見ても差が出ており解像度を変えても Windows XP の数値が高かった。また HDD の読み
書き性能も安定しており、解凍圧縮時間はファイルの大きさに限らず一番早かった。
Windows Vista は使いやすいユーザーインターフェースを構築しようとして必要のないプ
ログラムがメモリを圧迫し、操作に負担をかけている。エンコード検証では約 1G の動画フ
ァイルを使用した際には 3 つの内で差が開かなかったが、小さい動画ファイルでは
Windows 7 が早かった。デスクトップからフォルダへの 1G ファイルのコピーでも
Windows 7 が早く、DVD からデスクトップへの 1G の動画データのコピーは Windows XP
と Windows 7 が同じぐらいの早さであった。しかし Windows Vista はコピー速度が遅い結
果となった。Windows 7 は Windows Vista の Home Basic と推奨システム要求が一緒にも
かかわらず Windows Vista よりも様々な項目で優れた結果をだした。今後の技術革新への
期待が持てる。
26
第6章
感想
検証を終えて思ったことは Virtual PC の環境下では Windows XP の性能が Windows
Vista、Windows 7 を超え高い数値を出すと思っていたが Windows Vista もだが Windows 7
も私たちの想像とは違い推奨環境程度のスペックでも数値をだしたことに驚いた。この論
文作成した2名とも Virtual PC の使用は初めてだったのでミスややり直しなどで再インス
トールを何度もするなど時間がかかってしまった。当初は Windows Vista と Windows 7 の
みの検証であったが追加で Windows XP の検証もすることになった。Virtual PC 内での
Windows XP の操作は快適であったため Windows Vista と Windows 7 にかなり差が開くの
ではないかと思っていた。結果としては Virtual PC の設定が Windows XP を不自由なく動
かせる設定となり結果が高いものになったが、Windows Vista や Windows 7 もそれほど差
もなくむしろこの環境下でも Windows XP より優れている場面があったのは感覚ではわか
らない OS の進化を体感した瞬間であった。
二人でお互いの検証結果を見比べ、作業の分担などでかみ合わない所などもありなかな
か進展しない今までにない難しさを実感させられた。
今後の課題としては Windows Vista や Windows 7 も推奨スペックをみたし、すべての
OS が最善の状態で検証するとこの結果とはどのような差が出るのかというものも気にな
るところである。
参考文献
[1]http://e-words.jp/w/Windows.html
[2]http://www.microsoft.com/japan/windows/20th/history.mspx
[3]http://h50146.www5.hp.com/products/portables/personal/dv7_11spr/dv7_5000.html
[4]http://e-words.jp/w/Virtual20PC.html
[5]http://www.vector.co.jp/vpack/browse/pickup/pw6/pw006564.html
[6]http://mikasaphp.net/vista_p2.html
[7]http://www.microsoft.com/japan/windows/explore/default.aspx
[8]http://crystalmark.info/
謝辞
応援やサポートなどをしてもらった同ゼミの同級生や先輩達に感謝します。OS の貸し出
しや HDD の容量を増やしていただいた、情報センター、情報システム課に感謝します。最
後に多くのアドバイスや指導をしていただいた花川典子先生に感謝します。
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