こちらにPDF - 保育の安全研究・教育センター

睡眠時の事故としてよく知られている SIDS と窒息を区別する検査法は存在しないそうです。だ
から進んだ国では近年両者を包括する SUID という言葉が使われているそうです。SIDS と窒息は
適切な睡眠環境と見守りで避けられると言われています。米国の保健省機関が行っている Safe to
Sleep のサイト(https://www.nichd.nih.gov/sts/Pages/default.aspx)が日本での事故削減のため
に翻訳されたのでご活用ください。
What Is SIDS?
Sudden Infant Death Syndrome(SIDS)とは、1 歳未満の赤ちゃんにおける、網羅的な調査をし
てさえも原因が分からない、突然の、説明のつかない死です。この調査とは、網羅的な死亡解剖、
死亡現場の調査、および病歴の確認を含むものです。
赤ちゃんが死ぬと、医療関係者、警察および行政が死因を究明しようと試みます。そのため、事
情聴取、赤ちゃんの検視、情報収集、各種検査が行われます。 死亡原因が見当たらず、赤ちゃん
が 1 歳未満であれば、監察医や検視官が SIDS と判定します。
完全な説明がつかないと判断された事案において、死因に関していくらかの不確定部分が依然あ
る場合は、死因不詳とされることがあります。
Fast Facts About SIDS

SIDS は 1~12 か月の赤ちゃんにおいて最も多い死因です。

統計値がある昨年 2010 年における SIDS の死亡例は 2,000 件以上です(米国)。

殆どの SIDS 死は 1~4 か月の赤ちゃんに起こり、SIDS 死の大多数(90%)が 6 か月未満
に起こります。しかし、それ以降も 1 歳になるまでは起り得ます。

SIDS は健康に見える乳児に起こることがある突然の、症状のない医学的失調(medical
disorder)です。

SIDS は、赤ちゃんの睡眠時と関連があるため、“ベビーベッド死”("crib death"や"cot death")
と呼ばれることがあります。ベビーベッド自体が SIDS を引き起こすわけではありませんが、
赤ちゃんの睡眠環境が睡眠関連の死因に影響を及ぼし得ます。

SIDS による死亡は、女の子より男の子の方が若干多いです。

過去には、SIDS 死は寒い時期に増えるように見えましたが、今日では、年間を通じて以前
より均等に分布しています。

米国での SIDS 率は、1994 年から全人種・民族で着実に減少してきました。何千人もの乳
児の命が救われましたが、一部の民族は依然 SIDS のリスクが高い状態です。
1
Progresss in Redducing SIIDS
SIDS の減少におい
いては大きな
な進歩が見ら
られました。最も大きい
い減少が見ら
られたのは 1992 年~
間です。Saffe to Sleep® キャンペー
ーン(以前は
は“仰向け寝
寝”キャンペー
ーン)が始ま
まった 1994
4
1999 年の間
年から 199
99 年にかけ
けて、米国の
の SIDS の割
割合は 50%以
以上低下しま
ました。同 じ期間にあおむけ寝の
の
割合は 2 倍
倍以上になり
りました。
1988 年~20100 年における米国の S
SIDS 割合と
と睡眠姿勢(
(1000 人当 たりの死亡
亡数)

199
94 年、仰向
向け寝は 27%
%でした。1
1999 年は 65%でした。
6

8、米国の S
200
01~2009 年にかけて
年
SIDS 率は低
低く(1990 年代初頭に比
年
比べると特
特に低い)で
で
すが
が、比較的変
変化はありま
ません。同 じ時期、仰
仰向け寝の割
割合は約 74%
%に増加しま
ました。
しかし、数字だけで
では全体像は
は分かりませ
せん。
SIDS の割合が低下
下し、平行線
線になるとと
ともに、ASS
SB(acciden
ntal suffocaation or strangulation
n
in bed-睡
が増えていました。近
睡眠場所にお
おける偶発的
的窒息または
は絞扼)など
どの睡眠関連
連死の割合が
近
年行われた
たいくつかの
の研究から、1999 年以降
降の SIDS 率の低下の
率
ほとんどは
は死因分類 9 の変更で説
説
明されると
という可能性
性が示唆され
れています。
。つまり、以
以前 SIDS と分類されて
ていた死が、偶発的窒
窒
に分類され直したもの
息またはそ
その他の定義
義がはっきり
りしていない
い不詳といっ
った SIDS 以外の死因に
以
の
もありまし
した。
この分類
類変更が Saffe to Sleep® キャンペー
ーンで SIDS
S 以外の睡眠
眠関連乳児死
死亡も視野に入れるた
た
め対象を広
広げた理由の
の一つです。乳児のため
めの安全な睡
睡眠環境やそ
その他の健康
康についての情報を提
提
供すること
とによって、Safe to Sle
eep® キャン
ンペーンは SIDS や、乳
乳児におけ るその他の睡眠関連死
死
などの Sud
dden Unexpected Infa
ant Death ((SUID)を減
減らすること
とを目指して
ています。
2
SIDS を防ぐ確実な
な方法はありませんが、 SIDS とそ
その他の睡眠
眠関連乳児死
死のリスクを
を減らす方
法はありま
ます。
Researcch on Baack Sleep
ping and SIDS
赤ちゃん
んの SIDS リスクを低下
リ
下させるため
めに親や保育
育者がするこ
ことができ る何よりも効果的なこ
とは、昼寝
寝も夜の睡眠
眠時も仰向け
けで寝させる
ることです。
。
仰向け寝
寝に比べて、
うつぶせ寝
寝は SIDS の リスクが 1.7~12.9 倍になります
す。1 うつぶせ
せ寝が SIDS
S
につながる
るかもしれな
ないメカニズ
ズムは完全に
には分かって
ていません。研究から は、以下のような様々
なメカニズ
ズムでうつ伏
伏せ寝による
る SIDS リス
スクが増加す
する可能性が示唆され ています。

の蓄積と血中酸素濃度
赤ち
ちゃんが自分
分の吐いた息
息を再吸入 する可能性
性が高まり、
二酸化炭素の
二
度
低下
下につながる
る

上気
気道閉塞を引
引き起こす

体熱
熱放散を邪魔
魔し、高温化
化につなが る 2
な国の証拠
メカニズ
ズムが何であ
あれ、ニュー
ージーランド
ド、スウェー
ーデン、米国
国など様々な
拠から、仰向
向
けに寝かせ
せることがう
うつ伏せに寝
寝かせるより
りもはるかに
に SIDS 率を
を低下する ことが示唆されていま
す。研究者
者は SIDS で死亡した赤
で
赤ちゃんは死
死亡していな
ない赤ちゃん
んに比べて うつ伏せで寝かされた
た
可能性が高
高いことを示
示して、うつ
つ伏せ寝と SIDS の関連
連を立証しました。
仰向け寝
寝を促進しう
うつ伏せ寝を
を減らすため
め、世間に向
向けたヘルス
スキャンペー
ーンが開始されました
た。
こうしたキ
キャンペーン
ンによって SIDS
S
の劇的
的な減少がす
すべての国で見られ、乳
乳児のうつ伏せ寝普及
及
率の低下に
に功を奏しま
ました。うつ
つ伏せ寝が元
元々稀な地域
域(香港など)では SIIDS の発生率が歴史的
的
にとても低
低かったこと
ともうつ伏せ
せ寝と SIDS
S の関連を更
更に強化しています。 3, 4
3
仰向け寝
寝の乳児に比
比べて、うつ
つ伏せ寝の乳
乳児は

音に
に反応しにく
くい

血圧
圧と心拍のコ
コントロール
ルが急に低 下することがある

身体
体の動きが減
減り、覚醒の閾が上が り、深い眠
眠りの時間が
が長くなる 5, 6
これらの
の特徴が SID
DS のリスク
クを高めるこ
ことになるの
のかもしれません。仰向
向けで寝かせるだけで
で
SIDS リスクは大幅に
に減るのです
す。
世界中に
における仰向
向け寝キャン
ンペーンの結
結果うつ伏せ
せ寝が低下するにつれ
れ、SIDS リス
スクへの横
向き睡眠の
の寄与増加が
が統計で示さ
されています
す。横向きは
はうつ伏せと
と同じくらい
い危険であることが研
研
究から示さ
されているた
ため、横向き
きも避けるべ
べきです。7
仰向けで
で寝させるこ
ことは、他の
の問題におけ
けるリスクと関連がありません。例
か
例えば、仰向けで寝か
せても誤嚥
嚥や嘔吐症状
状は増えませ
せん。
更に、仰
仰向け寝は他
他にも利点が
があるかもし
しれないので
です。2003
3 年の研究か
から、うつ伏
伏せ寝より
仰向け寝の
の方が耳感染
染症、鼻づま
まり、あるい
いは熱を起こしにくいことが分か
かっています
す。9
仰向けで
で寝る子供は
は初期の運動
動機能発達が
が遅れることが複数の研
研究で示さ れましたが
が、近年イス
ラエルで行
行われた研究
究では、仰向
向け寝とうつ
つ伏せ寝で 6 か月児の運
運動発達に違
違いは見られませんで
で
になる時期に有意な違
した。中に
には、仰向け
け寝の乳児は
は初期の段階
階で遅れがあ
あっても、歩
歩けるように
違
いはないこ
ことを示しま
ました。
仰向けで
で日ごろ寝る
る子どもにつ
ついて、起き
きている時間
間帯に腹ばい
いで過ごす時
時間と運動機能の発達
達
に相関があ
あることをい
いくつもの研
研究が示しま
ました。この
の結果は腹ば
ばいの重要性
性を親に啓発する必要
要
性を強化し
しています。
4
Common SIDS and SUID Terms and Definitions
医療関係者などは乳児の死亡について話すとき以下の用語を使うことがあります。

Sudden Unexpected Infant Death (SUID):1 歳未満の乳児に突然予期せず起こる死。網羅
的な調査の末、SUID は以下と診断される可能性があります。
o
窒息(Suffocation): 通常、気道の閉塞によって、赤ちゃんの肺に空気が届かない
場合
o
絞扼(Entrapment): マットレスと壁など、物と物の間に赤ちゃんが挟まり、呼吸
ができない場合
o
感染(Infection): ウイルスもしくは細菌によって、赤ちゃんが風邪もしくは感染
症に罹り、呼吸がし難くなる場合
o
誤飲(Ingestion): 赤ちゃんが何かを口に入れ、気道が閉塞したり息が詰まったり
した場合
o
代謝性疾患(Metabolic diseases): 呼吸に問題が出る身体機能の病態
o
不整脈(Cardiac arrhythmias): 赤ちゃんの心拍が早すぎるもしくは遅すぎて呼吸
に影響する場合
o
外傷(偶発的または非偶発的な Trauma): 赤ちゃんが怪我をした場合
o
SIDS
場合によっては、証拠が明確でなかったり十分な情報が手に入らないために死因不詳とみなされ
ます。

Sudden Infant Death Syndrome (SIDS):SUID の一種であり、SIDS は 1 歳未満の赤ちゃ
んにおける、網羅的な調査(網羅的な死亡解剖、死亡現場の調査、および病歴の確認を含む
調査)をしてさえも原因が分からない、突然の、説明のつかない死です。

Accidental Suffocation and Strangulation in Bed (ASSB):SUID の一種であり、ASSB は
人口動態統計で用いられる死因コードです。このコードは睡眠環境における、窒息
(suffocation)あるいは asphyxia(血中の酸素と二酸化炭素の交換が不十分か全くされな
い状態による窒息)が原因の乳児死に対して用いられます。例えば、
o
柔らかい寝具による窒息(Suffocation by soft bedding):柔らかい寝具類、枕、ウ
ォーターベッドマットレス等で気道が閉塞した場合
o
被さり(Overlay): 乳児と同じベッドまたは布団で寝ている人が睡眠中に乳児に被
さったり、寝返って乳児の上に乗ったり乳児の体に当たる形になり(rolls on top of
or against the infant)
、気道を閉塞する場合
o
挟まり(Wedging)や絞扼(entrapment): マットレスと壁、ベッド枠、家具など、
物と物の間に乳児が挟まり、気道を閉塞する場合
o
絞扼(Strangulation): 何かが乳児の頭や首を圧迫したり巻き付いて、気道が閉塞
する場合
5

添い寝: お互いを見たり、お互いの声・音が聞こえたり、お互いが触れ合えるように、親な
どが乳児と近距離(同じ又は別々の“面”=ベッド・布団)で眠ること。添い寝には、同じ部
屋で寝る、同じ“面”(=ベッド・布団)で寝ることを含む。ベッドシェアと添い寝という言
葉は同じ意味で使われることがよくありますが、異なることを意味します。

ルームシェア: 親もしくはその他の大人と同じ部屋で寝ること。但し、ベビーベッド、バシ
ネット、プレイヤード(=運動スペース)など、親等とは別のベッド・布団で寝る。米国小
児科学会(AAP)は、授乳やミルクを与えたり、なだめたり、常時見ていられるよう親の
ベッドの近くに乳児の寝場所を作るよう推奨している。ルームシェアは SIDS や他の睡眠関
連の死因リスクが低下することが知られています。

ベッドシェア: ベッド、ソファー、椅子など、同じところに、乳児が別の人と寝ること。大
人用ベッドで赤ちゃんと眠ると、窒息や他の睡眠関連の死因リスクが増加します。
Research on Other SIDS Risk Factors
これまで説明したように、昼寝時も夜の睡眠時も仰向けに寝かせるのに加え、他の危険な睡眠環
境に注意することによって SIDS や他の睡眠関連の乳児死因リスクを減らすことができます。
SIDS リスク因子のいくつかを紹介します。
Soft Sleeping Surface and Loose Bedding
ソファーや柔らかいマットレスなど軟らかいところに眠らせることは SIDS の重大なリスク因子
であることが研究から分かっています。例えば、2003 年に NICHD が支援した研究からは、やわ
らかい寝具類に寝かせると、安全承認を受けたベビーベッド用マットレスなど固めの寝具類に寝か
せるよりも SIDS のリスクが 5 倍になることが示されました。しかも更に目を引くのは、やわらか
い寝具類にうつ伏せで寝た乳児は固めの寝具類に仰向けで寝た乳児よりも SIDS リスクが 21 倍高
かったのです。
更に、柔らかく緩い寝具類は窒息の潜在リスクを増加します。消費者製品安全性委員会は、保有
するデータベースにある睡眠関連乳児死の過半数が枕やキルト、余分な寝具類が関与した窒息と関
連していると報告しました。
柔らかいところに寝るとなぜ SIDS のリスクが増加するのか研究者は分かりませんが、この慣例
は非常に危険であることを研究結果は示唆していると警告しています。消費者製品安全性委員会と
米国小児科学会は安全承認を受けたマットレスで、枕の様なぬいぐるみやベッド柵用バンパーパッ
トを含む緩い寝具類のない状態で、仰向けで寝させるよう共同の勧告を出しています。
6
Unaccustomed Sleep Position
NICHD が支援した研究から、仰向けで寝るのに慣れている乳児がうつ伏せや横向きで寝させら
れた場合、SIDS のリスクが高まり、日ごろうつ伏せや横向きで寝させられている乳児の SIDS リ
スクも高いが、それよりも更に高くなることが示されました。
1999 年の研究では、日ごろ仰向けで寝させられている乳児がうつ伏せや横向きで寝させられた
場合、日ごろうつ伏せや横向きで寝させられている乳児の SIDS リスクより 7~8 倍も SIDS リス
クが高いことが示されました。
Overheating During Sleep
Smoking During Pregnancy and Smoke in the Infant’s Environment
Bed Sharing
いつも仰向けで寝させることを心がけましょう。日ごろの行いが重要です。
親、保育者、祖父母、ベビーシッター、兄弟姉妹…。誰であれ、赤ちゃんを寝かし付ける人は毎
回必ず仰向けで寝させるようにしましょう。
What Causes SIDS?
現時点では、何が SIDS を引き起こすのか具体的には分かっていません。
科学者や医療関係者は SIDS の原因を探そうと懸命に努力しています。原因がわかれば、いつの
日か SIDS が起るのを防ぐことができるかもしれません。このウェブサイトの別のセクションに書
かれている science of SIDS を読むと、SIDS の原因として可能性があるものについて具体的に知
ることができます。
SIDS で亡くなる子どもは脳の異常もしくは欠陥を持って生まれてくると示唆する研究結果が増
えています。そうした欠陥は通常、神経細胞に信号を送る神経細胞網内に見られます。信号を送る
この神経細胞は、呼吸、心拍、血圧、体温、睡眠からの覚醒を司るであろう脳の部分にあります。
現時点で、これらの異常を持つ赤ちゃんを特定する方法はありませんが、スクリーニング検査を開
発するための研究が行われています。
しかし、科学者は脳の欠陥だけでは SIDS 死を引き起こすには十分ではないかもしれないと考え
ています。他の事象が併せて発生しなければ、SIDS で死ぬことは決してないことが証拠から示唆
されています。研究者は Triple-Risk Model を使ってこの概念を説明しています。この概念図にお
いて、SIDS で死亡するには、3 つ全ての要素が同時に発生しないといけないことが示されていま
7
す。3 つの
のうち 1 つだ
だけでは、S
SIDS による
る死を引き起
起こすには十
十分ではない
い可能性があ
あり、3 つ
全てが揃っ
った時に、S
SIDS の確率
率が高いので
です。
SIDS の具体的な原
原因は不明で
ですが、SID
DS and othe
er sleep-related infantt death リス
スクを減ら
す方法はあ
あるのです。
Research on Possible
P
Causess of SIDS
S
SIDS で
で亡くなる赤
赤ちゃんは乳
乳児の生活で
で普通におこ
こる内的およ
よび外的なス
ストレス因子
子に対して
意外な反応
応を引き起こ
こす状態を一
一つ以上持っ
って生まれてくるとほ
ほとんどの科
科学者が考え
えています。
SIDS で亡
亡くなった子
子供を含めた
た乳児の脳と
と神経系の発
発達と機能を
をより深く理
理解することが SIDS
の原因究明
明に必要だと
と多くの科学
学者は主張し
しています。
。1
The Triplle-Risk Moodel
研究者は
は現在、SID
DS 死を理解
解するために
に関係図とし
して三重リス
スクモデルを
重
を用いています。三重
リスクモデ
デルによると
と、3 つの条
条件が重なっ
った時に SIDS による乳
乳児死亡につ
つながる可能性がある
のです。
乳児:潜在的
的な欠陥や脳
脳異常のため
めに赤ちゃん
んが死に陥りやすくな る。三重リスクモデル
ル
・脆弱な乳
った要因が脆弱性に寄
では、呼
呼吸や心拍、あるいは遺
遺伝子変異を
を司る脳の部
部分における
る欠陥といっ
寄
与する。
8
・重要な発達時期:生まれて最初の 6 か月間は、恒常性を司る機能に急速な成長と変化が起こる。
これらの変化は目に見えることもあれば(例:睡眠覚醒パターン)分かりにくいこともある(例:
呼吸、心拍、血圧、体温の変調)
。また、これらの変化の中には、乳児の身体を一時的もしくは
周期的に不安定にすることがある。
・外的ストレス因子:ほとんどの赤ちゃんは、うつ伏せ寝姿勢、高温、副流煙、上気道感染といっ
た環境負荷(ストレス因子)に遭遇しても乗り越えられるが、すでに脆弱な乳児はそれらを乗り
越えられない可能性がある。これらのストレス因子はそれだけで乳児死を引き起こすとは考えら
れていないが、脆弱な乳児では乗り越えられる確率を下げる可能性がある。
三重リスクモデルによると、乳児突然死が起こるには、3 つ全ての要素がないといけないのです。
1.赤ちゃんの脆弱性が分かっていない。
2.身体が一時的に不安定になり得る重要な発達期間にある。
3.これら 2 つの要因のために自分では乗り越えることができない外的ストレス因子に一つでもさ
らされている。
うつぶせ寝でなく仰向け寝にするなど、外的ストレス因子を一つでも保育者が除去できれば、
SIDS のリスクを減らせるのです。
Brain Abnormalieis
SIDS で亡くなる赤ちゃんの中には、目に見えない脳の異常をもって生まれる子どもがいること
を示唆する証拠が増えています。これらの異常は通常、セロトニンを神経伝達物質として使う神経
細胞網の中に見られ、呼吸、心拍、血圧、体温、睡眠からの覚醒を司るであろう脳幹の部分にあり
ます。
しかし、科学者は脳の異常だけでは SIDS 死を引き起こすには十分でないかもしれないと考え
ています。他の事象(例:酸素欠乏、二酸化炭素の過剰吸入、高温、感染症)が併せて発生しなけ
れば、SIDS で死ぬことは決してないと理論化しています(三重リスクモデルに示した通り)
。
例えば、多くの赤ちゃんは、呼吸器感染あるいはうつ伏せで寝具に溜まった呼気を再吸入するため、
酸素が不足し、血中の二酸化炭素が過剰になります。通常、乳児は酸素の吸入不足を自分で察知し、
脳が赤ちゃんを眠りから起こしたり、心拍や呼吸パターンを変化させたり代償させます。しかし、
脳幹に異常がある赤ちゃんでは、これらの保護機序が有効に働かない可能性があり、SIDS で死ん
でしまう可能性があります。
このようなシナリオは、なぜうつ伏せ寝の赤ちゃんの方が SIDS になりやすいかを説明している
のかもしれません。
9
Genetic Polymorphisms
欠陥遺伝子が一つあるだけで SIDS になりやすいとは考えにくいですが、遺伝子が環境リスク因
子と合わさって SIDS をもたらす可能性はあります。5 素因には、代謝と免疫系に関わる遺伝子の
多型や、脳幹に影響して脳の神経系統の均衡に影響を与える病態などが可能性として考えられます。
遺伝子多型は critical(生死を分ける)状況において死を引き寄せる可能性があります。
SIDS との関連があるかもしれない遺伝子多型の一つの例が免疫系です。ノルウェーとドイツの
研究から、高度に多様性のある C4 遺伝子の部分欠失と SIDS 死亡児の軽度呼吸感染の間に関連が
示されました。6 C4 発現の違いが、SIDS リスクを高める感染性自己免疫疾患の罹りやすさに作用
して、免疫系の強さの違いに寄与するのかもしれません。C4 遺伝子の部分欠失は結構一般的で、
白人の 20%までに見られます。遺伝子多型や遺伝変異の他の例は SIDS 児でより一般的ですが、ど
のように SIDS に関係するかは分かっていません。
また、多くの SIDS 児で免疫系が作動しており、SIDS で死亡した子供は些細な感染にもかかり
やすいことを示しているのかもしれません。ある研究では、SIDS で死亡した乳児の約 50%に死亡
前軽度の上気道感染がありました。
Genetic Mutations
遺伝子変異は、突然の予期しない死を引き起こし得る遺伝障害をもたらすことがあります。
代謝障害の家族歴があれば、遺伝子検査で親が遺伝子変異のキャリアであるかが分かり、キャリア
であれば、誕生後すぐに検査をすることができます。遺伝子変異が判明していなければ、SIDS と
間違われるかもしれません。
乳児突然死が起った場合、遺伝子変異を探すことが重要です。変異のある乳児は SIDS による死
亡と判断された事例から除外されるべきなのです。8 SIDS と誤って診断される可能性のある遺伝
子変異の一つの例が脂肪酸代謝欠如です。突然亡くなる赤ちゃんの中には、脂肪酸を適切に処理で
きない代謝障害を持って生まれてきた可能性があります。脂肪酸代謝物の蓄積が呼吸と心機能の急
な混乱につながることがあります。この乱れは命にかかわることがあります。
SIDS 死と診断された乳児の中には、心臓伝導系機能に影響する稀な変異を持つ子供がいます。
この変異は致死性の不整脈につながることがあります。
10
危険となり
り得る睡眠環
環境で眠る乳
乳児約 55%
%(米国)
安全でない
い寝具類の使
使用、警告に
にもかかわら
らず依然一般
般的との研究結果
Monday, D
December 1,
1 2014
米国では
は、啓発活動
動にも拘らず
ず、乳児の 5
55%近くが SIDS のリス
スクを高め る睡眠環境で寝かされ
れ
ていると米
米国国立衛生
生研究所(N
NIH)の疾病
病対策センター(CDC
C)等の機関
関の研究者が
が報告した。
NIH の Sa
afe to Sleep®キャンペー
ーンによる と、厚地のブランケット、キルト 、枕などの柔らかいも
のや緩い寝
寝具類は乳児
児の気道を塞
塞ぎ、窒息の
のリスクをもたらすことがある。 柔らかい寝
寝具はまた、
SIDS のリスクを増加
加することが
が示されてい
いる。乳児は
は一人で、仰
仰向けで、安
安全基準を満
満たしたベ
ビーベッド
ドに備え付け
けるマットレ
レスなどの固
固めのマットに、シーツ
ツをしっか り伸ばして寝させるべ
べ
きである。柔らかいも
もの、おもち
ちゃ、ベビー
ーベッド柵、
、キルト、掛
掛け布団、緩
緩い寝具類は赤ちゃん
ん
の寝る場所
所に置くべき
きではない。
親など子
子供の世話を
をする人 20,000 人近く からの回答
答に基づき、こうした危
危険となり得
得る寝具類
の使用は 1
1993 年~19
995 年の 85
5.9%から低
低下したが、2008 年~2
2010 年には
は 54.7%と依
依然高いま
まであるこ
ことを研究者
者らが報告し
した。
「親は善
善意でも、ブ
ブランケット
トやキルト、枕が SIDS
S および偶発
発的窒息の リスクを増加させるこ
とを理解し
していないか
かもしれない
い」とアトラ
ランタにある CDC の Division
D
off Reproducttive Health
h
の上級科学
学者 Carrie K. Shapiro
o-Mendoza 博
博士は述べ
べた。
現在の研
研究では、乳
乳児の世話の
の仕方につい
いて睡眠姿勢
勢の影響とそ
その他の安全
全な睡眠勧告に関する
情報を集め
めた Nationa
al Infant Sleep Positioon Study のデータが分
の
分析された。 NIH の Eunice
E
Kennedy S
Shriver 国立
立小児保健発
発育研究所
所(NICHD)
)が資金を出
出し、本調査
査では 1992 年~2010
0
年にかけて
て米国で無作
作為に抽出さ
された 1000
0 人以上の親
親などによる
る集団から電
電話で情報を収集した
た。
「親たちは
は良いメッセ
セージも悪い
いメッセージ
ジも受け取っ
っている」と NIH の E
Eunice Ken
nnedy
Shriver NIICHD の SIIDS 特別アシスタント である本研
研究著者 Ma
arian Willin
nger 博士は述べる。
「親
戚からキル
ルトやブラン
ンケットをプ
プレゼントさ
されると親は
は使わなくてはいけな
ないと感じる
る。あるいは
は
危険となり
り得る寝具類
類と写った赤
赤ちゃんの写
写真を雑誌で
で目にする。しかし、赤
赤ちゃんは固めの安全
全
認証された
たマットレス
スとしっかり
り伸ばしたシ
シーツに他に
に何もない状態で眠ら せるべきで
です。
」
SIDS は 1 歳未満の
の子供の説明
明のつかない
い死です。1992 年、米国
国小児科学会
会が仰向け寝を勧告し
し
ました。2 年後、NIC
CHD 等は仰
仰向け寝キャ
ャンペーンを
を開始し、そ
その後このキ
キャンペーン
ンは Safe too
Sleep と改
改められまし
した。米国の
の SIDS の発
発生率は 199
92 年から 50%低下しま
ましたが、2000
2
年から
低下率が緩
緩やかになり
り、偶発的窒
窒息、寝具類
類に挟まる・絡まる、も
もしくはその
の他の死因による不慮
慮
の乳児死が
が増えたと報
報告しました
た。これらの
の偶発的窒息
息は 2000 年 100,000 人
人当たり 7 人だったの
の
が、2010 年
年には 15.9
9 人に増えま
ました。
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調査の一環で、乳児を寝かせるとき、ブランケットやビーンバッグチェア、ラグ、シープスキン
クッション、枕などの上に寝かせているかを尋ねました。また、ブランケット、キルト、掛け物、
シープスキン、枕などの寝具を被せているか尋ねました。Safe to Sleep® キャンペーンではブラン
ケットやその他の掛け物を使わないようアドバイスしており、スリーパーなどのねまきを使い、部
屋の温度を適温に保つことを推奨しています。
「寝具類は使わないようにと言われているにもかかわらず、一般的」とその研究の著者は書いて
います。
2007 年~2010 年まで、ベビーベッドかバシネットに寝かせる、仰向けで寝かせる、同じベッド
に二人寝かせないという Safe to Sleep®の勧告に従っているとほとんどの回答者が答えました。し
かし、寝具類の使用は一貫して 50%以上でした。
1993 年~1995 年と 2008 年~2010 年の間、厚地のブランケットの使用は 56%から 27.4%に減
少し、キルトや掛け物の使用は 39.2%から 7.9%に減少しました。しかし、下に敷く寝具類では大
きな減少は見られず、25.5%~31.9%がブランケットを乳児の下に敷いていると答え、3.1%~4.6%
がクッションを乳児の下に敷いていると答えました。
「興味深いことに、敷く方の寝具類(ブランケット)に比べて、掛ける方の寝具類(キルト、掛
け物、厚地のブランケット)にも大きな減少が見られました」と研究の著者は書いています。
「こ
の結果は親たちが Safe to Sleep®の勧告を乳児に掛けるものや乳児の周りに置くものだけと考え、
下に敷くものは関係ない」と誤って捉えているかもしれないという懸念が持ち上がりました。
母親が寝具類を使う理由として、寒くないように、安心するように、もしくは大人用のベッドや
ソファーから落ちないように枕で衝立を作る、などを考えました。子育て年齢の女性をターゲット
にした有名雑誌のイメージを調査した結果、そうしたイメージの 3 分の 2 がブランケットや枕など
危険となり得る寝具類のある所で眠る赤ちゃんでした。
「こうしたイメージを見ると、乳児の睡眠環境にそれらの物を置いておくのは好ましい慣行でな
いだけでなく、常識であるという思い込みや認識を強化する可能性がある」と研究の著者は書いて
います。
また、ヒスパニック系とアフリカ系米国人の乳児の保育者は白人の乳児の保育者に比べて危険と
なり得る寝具類を使う傾向があることを示しました。更に、母親の年齢が若い方がこうした寝具類
を使う傾向があり、大卒の母親に比べて非大卒の母親の方がこうした寝具類を使う傾向があること
を示しました。
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