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Lecture on Contracts
2015/1/16
契約法1 総集編 目次
契約法1講義
 返還を要しない契約
 法学部の教育目標
 4. 消費貸借
 教育目標とDo for others
 法律家の社会的使命と臨床教育
 法律家の思考方法
総集編
 財産権を移転しない契約
 物の利用契約
 5. 使用貸借
 6. 賃貸借
 アイラック(IRAC)
 トゥールミン図式に基づく議論の方法
 社会が必要とする知的能力 発見の推論,AIDA
 役務提供契約
 契約の成立






 第1類型,第2類型,第3類型
 延着と信義則上の情報提供義務
 第4類型,第5類型,第6類型
明治学院大学法学部教授
加賀山 茂
 典型契約
 トピックス
 契約法1の総集編(定期試験仮想問題10問を含む)
 財産権を移転する契約
 紛争を解決する契約
 返還を要しない契約
 13. 和解
 1. 贈与
 参考文献
 2. 売買 買戻し
 3. 交換
2015/1/16
Lecture on Contracts
1
2015/1/16
7. 雇用
8. 請負
9. 委任
10. 寄託
11. 組合
12. 終身定期金
Lecture on Contracts
2
法学部の教育理念・教育目標
明治学院大学学則 第5条
 (1) 法学部の教育理念
法学部の教育目標
 法学部は,建学の精神であるキリスト教主義教育の伝統にのっとり,
 他者とりわけ弱者を尊重する自由で平等な社会を主体的に作り上げ
ていくことができる,
 専門的知識を備えた能動的な市民を育成することを教育理念とする。
 (2) 教育目標
就職・進学の際の君の「売り」は何か?
他学部生にはない,法学部卒の「売り」とは?
アイラック(IRAC)で考え,答え,プレゼンする
AIDA(Ab‐ In‐ De‐duction, Argument)で決める
2015/1/16
Lecture on Contracts
 この教育理念のもと,法学や政治学が,社会の平和と人々の幸福を
目指すものであるという本来の出発点に常にたちかえり,
 さらには現代社会において新たに発生する諸問題に対処すべく,
 人間の尊重,弱者救済の視点から,学部における教育・研究を行うも
のとする。
3
2015/1/16
建学の精神 “Do for others” の
民法的解釈
条文
①義務なく他人のために事務の管
理を始めた者(以下この章において
「管理者」という。)は,その事務の
性質に従い,最も本人の利益に適
合する方法によって,その事務の
管理(以下「事務管理」という。)をし
なければならない。
②管理者は,本人の意思を知って
いるとき,又はこれを推知すること
ができるときは,その意思に従って
事務管理をしなければならない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 法律家の理想像
 本条第2項は,管理の方法に付き本人の
意思が管理者に明白なるか又は之を推
知することを得る場合に於ては,第1項に
規定する所の管理の方法に依らずして,
寧ろ,本 人の意思に従ひ管理を為すべ
きことを規定し,
 事務管理の名義を以て濫りに他人の事
務に干渉し,本人の欲せざることを行ふ
こと勿からしむるものにして,
 本人の意思 に反するも,尚ほ且つ,此者
に利益なりとして,其事務に干渉する如
きは,事務管理の立法の本旨に反し,寧
ろ不当利得の規定に従はしむべきものと
云ふべし。
Lecture on Contracts
4
法律専門家の社会的使命
立法理由
 第697条(事務管理)
Lecture on Contracts
5
司法改革審議会意見書
(2001)
 「国民の社会生活上の
医師」としての役割を期
待される専門的資質・
能力の習得と,かけが
えのない人生を生きる
人々の喜びや悲しみに
対して深く共感しうる豊
かな人間性の涵養,向
上を図る。
 事実に即して具体的な
法的問題を解決してい
くため必要な法的分析
能力や法的議論の能
力等を育成する。
2015/1/16
 NHK病名推理番組
 総合診療医ドクターG
 患者の病状から,病名を解明し,診療方
法を確定するまでのプロセスを見せる。
 研修医の最初の見立ては,全て外れ。
 総合診療医のアドバイスを受けながら,可能
性のある病名を全てチェックし,除外すべきも
のを除外して,正解にたどり着く。
Lecture on Contracts
6
1
Lecture on Contracts
2015/1/16
専門的知識の修得
どのようにして修得するか
法律家の思考方法
アイラック(IRAC)→専門的知識の修得,応用
 教育目的
 専門的な法知識を確実に習得させるとともに,
IRAC(アイラック)で考え,論証する
 それを批判的に検討し,また発展させていく創造的な思
考力を育成する。→AIDA
 事実に即して具体的な法的問題を解決していくことを通じ
て,法的専門知識だけでなく,問題解決能力として,
 「法的分析能力」(アイラック(IRAC)),および,
 「法的議論の能力」(トゥールミン図式)等を修得させる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
論点・事実の発見
Issue
 教育方法
7
法的分析 Rules
の能力
ルールの発見
Application ルールの適用
A
Argument
法的議論
の能力 Conclusion
2015/1/16
原告・被告の議論
具体的な結論
Lecture on Contracts
8
法的分析能力とは? →専門的知識の修得
三段論法から「議論の図式」へ
→具体的問題の解決,発見の推論,AIDA
→専門的知識の修得,具体的問題の解決
• 三段論法(反論を許さない硬直性が問題)
• 大前提: 全ての人間は死ぬ。
• 小前提: ソクラテスは人間である。
• 結 論:ソクラテスは死ぬ。
ソクラテスは人間である。
• トゥールミン図式
• 議論の構造の提供
• 全ての議論に通用
誤り
おそらく
ソクラテスは哲学
の神様である。
人間は死ぬ。
万物は流転するが,
2015/1/16
Lecture on Contracts
9
2015/1/16
議論の図式(トゥールミン図式)
による議論の可視化(民法93条)
表意者は,真意でないことを知りな
がら,冗談で,意思表示をしている。
おそらく
誤り
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
10
議論の方法(3/3)
賃借人が無断で
賃借物を転貸した。
意思表示は
有効である。
おそらく
誤り
11
賃貸人は,賃貸借
契約を解除できる。
背信行為と認め
るに足りない特
段の事由がある。
賃借人は,民法
612条1項に違
反しており,2項
に基づいて契約
を解除できる。
表意者が真意とは異なる,誤った外観を作出した場合の意思表示の効果:
1. 相手方が表意者の真意を知っているか,知るべきであったときは,無効となる(原則)。
2. 相手方が表意者の真意を知らず,知ることもできなかったときは,有効となる(例外)。
2015/1/16
真理は生き続ける。
賃貸借の無断譲渡・転貸→Best30
相手方は,意思
表示が真意でな
いことを知ってい
たか,真意でない
とわかるはず。
表意者は,意思
表示に責任を
持つべきである。
ソクラテスは死ぬ。
無断譲渡・転貸の場合に賃貸借契約を解除できるかどうか:
1. 継続的契約関係の当事者が,信頼関係を破壊したときは,契約を解除できる(原則)。
2. 賃借人が無断譲渡・転貸を行ったときは,信頼関係の破壊が推定される(推定規定)。
3. 信頼関係を破壊したと認められない事由があるときは,契約は解除できない(例外)。
2015/1/16
Lecture on Contracts
12
2
Lecture on Contracts
すべての論文の書き方
基本と応用との関係(1/2)
アイラック(IRAC)で書く
応用に接して初めて分かる基本の重要性
問題提起
本論
結論
2015/1/16
• I:重要な問題を発見したことの経緯を述べる
• R:その問題を解決する視点と仮説を提示する
 基本的知識の修得は不可欠だが,それで応用力は養えるか
• A:問題をいくつかのブロックへと分割する
• A:ブロックごとに問題を展開しすべてを解明する
 高度な問題に接して初めて分かる基本の大切さ
 大学教育は基本が大切であって,応用は,実務に任せるべきだとの
議論がある。
 しかし,応用がきく基本でなければ意味がないのではないだろうか。
 基本ができていないと,応用はおぼつかない。だから,基本から始め
て応用に至るのが順当であると,一般には考えられている。
 しかし,本当に基本をマスターするつもりであれば,その前に,応用
の厳しい試練を受けるべきである(発想の転換)。
• C:問題を展開して得られた答えを1つにまとめる
• I:残された問題に対する展望を行う
2015/1/16
Lecture on Contracts
 応用の厳しさに接して,はじめて,人は,基本の大切さを理解し得る
し,基本理論も,応用を念頭に入れてはじめて精緻なものとなりうる
のである。
13
2015/1/16
Lecture on Contracts
14
これからの時代に求められる
能力とは何か?→AIDA
基本と応用との関係(2/2)
基本のマスターは,実は,応用よりも困難
 第1の経験(スキーを始めたときの経験:応用で知る基本の大切さ)
 スキーは,基本と応用との関係を知る上でとても教訓的なスポーツだと思う。
 急斜面で転がり落ちて初めて,基本の大切さを痛感できるし,緩斜面でいくら
基本を勉強しても,実際の急斜面に行ってみなければ応用力はつかないこと
も体験できる。
 第2の経験(国民生活センターでの経験:応用は簡単だが基本は困難)
 実務に入ってみれば,事業者関連法や特別法を理解することはそれほど困
難なことではない。優れたマニュアルができあがっており,それにしたがって
実務をこなすことができるからである。
 実務で解決が困難な問題というのは,実は,特別法に明文の規定がないた
めに,マニュアルでは対応できず,基本法に照らして解決しなければならな
い問題であることがわかる(マニュアル人間の挫折)。
 しかし,基本法を理解するには,時間のかかる地道な学修をするよりほかに
方法がない(学生の時でないとできないことがある)。→連帯債務 応用例
2015/1/16
Lecture on Contracts
15
 全ての惑星は
太陽を1つの焦
点とした楕円軌
道を描く。
 火星は惑星で
ある。
 故に,火星は,
太陽を1つの焦
点とした楕円軌
道を描く。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
帰納法
発見の推論
(induction)
(abduction)
 水星,金星,火
• 火星は惑星である。
星…は,太陽を1
• 火星は,太陽を1
つの焦点とした
つの焦点とした楕
楕円軌道を描く。
円軌道を描く(ティ
コ・ブラーエの観測結果
 水星,金星,火
を基にケプラーが発見)。
星…は惑星であ
る。
• 故に,全ての惑星
は,太陽を1つの
 故に,全ての惑
星は,太陽を1つ
焦点とした楕円軌
道を描く(ケプラーの
の焦点とした円
法則の定式化)。
軌道を描く。
Lecture on Contracts
妥当な解決案を提示できる知的能力が
必要・不可欠となる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
16
問題解決のプロセス
演繹とも帰納とも異なる「発見の推論」とは?
科学的推論の3類型→必要性,具体的問題,AIDA
演繹(三段論法)
(deduction)
これまでにない新しい(Webで検索して
も見つからない)問題に直面したときに,
従来の知識を活用したり(deduction) ,
従来の知識を組替えたり(induction,
abduction )しながら,
17
AIDA(Ab- In- De-duction & Argument)
発見力
• 具体的な事例を分析し,その事例にどのような
• 知識が適用可能かを発見する能力(Abduction)
帰納力
• 従来の知識ではうまくいかない場合,Big Data等を
• 活用し,知識を再構成して使える能力(Induction)
演繹力
(論理力)
議論力
2015/1/16
• 再構成された知識を使って,具定例に適用し,
• 複数の問題解決案を提示できる能力(Deduction)
• 複数の案をふたつの立場に分かれて議論し,
• 妥当な問題解決案を採択する能力(Argument)
Lecture on Contracts
18
3
Lecture on Contracts
2015/1/16
民法の体系
→専門的知識の習得
契約法の体系的理解
第2編 物権
民法の体系の理解
債権法の体系の理解
民法の適用頻度による理解
契約法の体系的理解
1.
2.
3.
4.
•
•
財産法
第3編 債権
民法
第4編 親族
家族法
第5編 相続
契約の流れにしたがった理解
契約の類型にしたがった理解
2015/1/16
Lecture on Contracts
19
2015/1/16
Lecture on Contracts
成立
契約
総論
債権
総論
契約
契約
各論
事務管理
債権
各論
相続
親族
4%
5%
効力
総則
14%
物権
7%
解除
債権総論
11%
不法行為
45%
契約
12%
不当利得
事務管理・
不当利得
2%
不法行為
2015/1/16
Lecture on Contracts
21
2015/1/16
民法条文の適用頻度ベスト20
(1945~2014) →債権,頻度表
95 601
541
1% 1%
703 2%
2%
110 711 416 723
1% 1% 1% 1%
656
1%
612
2%
177
2%
90
2%
719
4%
2015/1/16
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
770
1%
KAGAYAMA Shigeru
710
18%
Lecture on Contracts
22
(1945~2014)(全体で39,408件)→図
1
5%
415
6%
722
9%
Lecture on Contracts
民法条文の適用ベスト30
709
32%
715
8%
20
民法の条文の適用頻度
(分野別の適用頻度)
債権法の体系
Ⅲ
債
権
第1編 総則
23
2015/1/16
条文 頻度
709条 13,803 710条 7,705 722条 3,725 715条 3,301 415条 2,618 1条 2,256 719条 1,944 90条
939 177条
838 612条
722 No.
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
条文 頻度 No. 条文 頻度
703条 722 21 717条 448 541条 672 22 724条 436 95条 615 23 644条 399 601条 614 24 555条 395 110条 587 25 616条 391 711条 564 26 907条 389 416条 528 27 424条 379 723条 522 28 162条 368 656条 518 29 91条 327 770条 450 30 423条 299 Lecture on Contracts
24
4
Lecture on Contracts
2015/1/16
民法条文の適用ベスト30
契約の流れ
(1945~2014)(全体で39,408件)
Start
No. 条文みだし No. 条文みだし No. 条文みだし
11 不当利得
21 工作物責任
1 一般不法行為
慰謝料
2
12 契約解除
22 消滅時効
錯誤
3 過失相殺
13
23 委任・注意
売買
4 使用者責任
14 賃貸借
24
5 債務不履行
15 表見代理
25 賃・使用貸借
6 基本原則
16 近親者慰謝料
26 遺産分割
7 共同不法行為
17 損害賠償範囲
27 詐害行為
8 公序良俗
18 名誉毀損
28 取得時効
9 不動産物権変動 19 準委任
29 契約自由
10 無断譲渡・転貸
20 裁判上の離婚
30 債権者代位権
2015/1/16
Lecture on Contracts
成立
Yes
有効
No(不成立)
不当利得
No(取消し・無効)
(停止条件・始期が未到来)
効力
発生
履行
No(条件・期限)
Yes
No (解除条件・終期が到来)
未発生
履行強制
No(不履行)
No(救済)
契約解除
免責
Yes
損害賠償
End
25
2015/1/16
Lecture on Contracts
26
契約各論(典型契約)
無償
契
約
各
論
典
型
契
約
財
産
権
移
転
2.売買
有償
契約の成立
3.交換
返還必要
4.消費貸借
物の利用
財
産
権
非
移
転
1.贈与
返還不要
無償
5.使用貸借
有償
6.賃貸借
一般
7.雇用
事前テスト
第1類型,第2類型,第3類型
契約成立における信義則
第4類型,第5類型,第6類型
契約成立に関する深い知識
8.請負
特別
(専門家)
9.委任
10.寄託
役務の提供
11.組合
事業
12.終身定期金
紛争の解決
2015/1/16
13.和解
Lecture on Contracts
27
2015/1/16
事前テスト
契約は,(②
成立する。
)と(②
)が(③
次の( )の中に,適切な用語を補って,文
章を完成させなさい。
)との合致によって
契約は,(①申込み)と(②承諾)との合致によっ
て成立する。
)された時点で
契約は,(②承諾)が(③発信)された時点で成立
する。
契約は,(②
)が(①
)と合致しない
場合には,成立せず,その(②
)は,
(④
)とみなされ,始めに戻ることになる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
28
事前テスト
次の( )の中に,適切な用語を補って,文
章を完成させなさい。
契約は,(①
成立する。
Lecture on Contracts
29
契約は,(②承諾)が(①申込み)と合致しない場
合には,成立せず,その(②承諾)は,(④新たな
申込み)とみなされ,始めに戻ることになる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
30
5
Lecture on Contracts
2015/1/16
到達目標達成度チェックテスト(1/6)
問題1(民法521条)
次の場合について,契約が成立するか成立
しないかを答えなさい(AB間では,郵便は2日
で到達するものと仮定する)。
契約成立の第1類型
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を10月31日
(必着)とする申込みを郵便で発信した。この申
込みは10月3日,Bに到達した。
2. 申込みを受けたB(被申込者=承諾者)は,10月
25日に承諾の通知を発信し,この通知は,10月
27日,Aに到達した。
2015/1/16
Lecture on Contracts
31
2015/1/16
Lecture on Contracts
32
到達目標達成度チェックテスト(1/6)
問題1の図式化→Q1, Q2,深い理解1
月日
10月01日
申込者
10月03日
10月25日
10月27日
被申込者
備考
申込発信
申込到達
承諾期限開始
承諾発信
承諾期間
(熟慮期間)
承諾到達
契約成立の第2類型
承諾期限満了
10月31日
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立しているか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
33
到達目標達成度チェックテスト(2/6)
問題2(→民法521条)
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を10月31日
(必着)とする申込みを郵便で発信した。この申
込みは10月3日,Bに到達した。
2. 申込みを受けたB(被申込者=承諾者)は,10月
30日に承諾の通知を発信し,この通知は,11月
1日,Aに到達した。
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
34
到達目標達成度チェックテスト(2/6)
問題2の図式化→Q2, Q1,深い理解2 次の場合について,契約が成立するか成立
しないかを答えなさい(AB間では,郵便は2日
で到達するものと仮定する)。
2015/1/16
2015/1/16
35
月日
10月01日
申込者
被申込者
備考
申込発信
10月03日
申込到達
10月30日
承諾発信
承諾期限開始
熟慮期間
承諾期限満了
10月31日
11月01日
承諾到達
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立するか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
36
6
Lecture on Contracts
2015/1/16
到達目標達成度チェックテスト(3/6)
問題3(→民法522条)
 次の場合について,契約が成立するか成立しない
かを答えなさい(AB間では,郵便は2日で到達するも
のと仮定する)。
契約成立の第3類型
2015/1/16
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を10月31日(必着)と
する申込みを郵便で発信した。この申込みは10月3日,
Bに到達した。
2. 申込みを受けたB(被申込者=承諾者)は,10月25日に承
諾の通知を発信した。通常なら,10月27日に到達するは
ずが,この間,郵便ストライキが発生しため,この通知は,
11月1日になってやっと,Aに到達した。
Lecture on Contracts
37
2015/1/16
到達目標達成度チェックテスト(3/6)
問題3の図式化→Q3, Q6
月日
10月01日
申込者
被申込者
承諾の延着と信義則
備考
被申込(承諾)者側の事情
申込到達
10月25日
承諾発信
10月30日
通常なら承諾到達
(この間郵便スト)
11月01日
承諾到達
11月02日
延着通知発信?
申込者側の事情
承諾期限開始
熟慮期間
法律
要件
通常なら期限内に到達す
べき時期に発信
消印・日付等で延着の事
情が分かる
承諾期限満了
信義則
の適用
通信手段に対する信頼の
保護が必要となる
相手方に対する信義則
上の通知義務の発生
法律
効果
延着通知を受けなければ, 延着通知をしないと,延
契約は成立したものとして 着しなかったものとみな
行動することができる
される
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立するか?
2015/1/16
38
民法522条の法理→申込撤回の延着
申込発信
10月03日
10月27日
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
39
2015/1/16
Lecture on Contracts
40
到達目標達成度チェックテスト(4/6)
問題4(→民法524条)
 次の場合について,契約が成立するか成立しな
いかを答えなさい(AB間では,郵便は2日で到達
するものと仮定する)。
契約成立の第4類型
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を決めずに,Bに
対して申込みを郵便で発信した。この申込みは10
月3日,Bに到達した。
2. 相当期間経過後,しびれを切らしたAは,10月25日,
Bに対して申込みの撤回を通知し,この通知は,10
月27日,Bに到達した。
3. Bは,申込み撤回通知を読まずに,10月28日,承諾
を通知し,承諾通知は,10月30日,Aに到達した。
41
2015/1/16
Lecture on Contracts
42
7
Lecture on Contracts
2015/1/16
到達目標達成度チェックテスト(4/6)
問題4の図式化→Q4
月日
10月01日
申込者
被申込者
申込到達
10月03日
10月25日
承諾期限なし
契約成立の第5類型
相当期間(民
法524条)
申込撤回通知
申込撤回到達
10月27日
承諾発信
10月28日
10月30日
備考
申込発信
承諾到達
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立するか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
43
到達目標達成度チェックテスト(5/6)
問題5(→民法524条)<絶好の試験問題>
44
到達目標達成度チェックテスト(5/6)
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を決めずに,Bに対して
申込みを郵便で発信した。この申込みは10月3日,Bに到
達した。
2. 相当期間経過後,しびれを切らしたAは,10月25日,Bに
対して申込撤回を通知し,この通知は,10月27日,Bに到
達した。
3. その間の10月26日,申込撤回通知を受け取っていないB
は,承諾を通知し,承諾通知は,10月28日,Aに到達した。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
問題5の図式化→Q5,深い理解3,Art.16(1)CISG
 次の場合について,契約が成立するか成立しないか
を答えなさい(AB間では,郵便は2日で到達するものと
仮定する)。←経験上,正解に至るまでに,学生は3度以上,間違いを犯す。
2015/1/16
2015/1/16
45
月日
10月01日
申込者
被申込者
申込到達
10月03日
10月25日
備考
申込発信
承諾期限なし
相当期間(民
法524条)
申込撤回通知
10月26日
承諾発信
10月27日
申込撤回到達 実は到達主義
10月28日
承諾到達
発信主義か?
到達主義か?
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立するか?
到達主義の場合契約は成立するか?国際条約が成立するとしているのはなぜか?
2015/1/16
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46
到達目標達成度チェックテスト(6/6)
問題6(→民法527条)<最後の?試験問題?>
 次の場合について,契約が成立するか成立しないか
を答えなさい。
契約成立の第6類型
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
1. 10月1日,A(申込者)は,承諾期限を決めずに,Bに対して
申込みを郵便で発信した。この申込みは10月3日,Bに到
達した。
2. 相当期間経過後,しびれを切らしたAは,10月25日,Bに
対して申込撤回を通知し,この通知は,10月27日,Bに到
達するはずであったが,この間郵便ストライキのため,申
込撤回通知は,10月29日に到達した。
3. その間の10月28日,申込撤回通知を受け取っていないB
は,承諾を通知し,承諾通知は,10月30日,Aに到達した。
47
2015/1/16
Lecture on Contracts
48
8
Lecture on Contracts
2015/1/16
到達目標達成度チェックテスト(6/6)
問題6の図式化→Q6, Q3,深い理解4
月日
申込者
10月01日
被申込者
申込撤回の延着と信義則
民法527条の法理→承諾の延着,削除?
備考
申込(撤回)者側の事情
申込発信
申込到達
10月03日
10月25日
申込撤回通知
10月27日
この間郵便スト
承諾期限なし
相当期間(民
法524条)
承諾発信
申込撤回到達
10月29日
10月30日
承諾到達
10月31日
延着通知発信?
法律
要件
通常なら期限内に到達す
べき時期に発信
消印・日付等で延着の事
情が分かる
信義則
の適用
通信手段に対する信頼の
保護が必要となる
相手方に対する信義則上
の通知義務の発生
法律
効果
延着通知を受けなければ, 延着通知をしないと,延着
契約は成立したものとして しなかったものとみなされ
行動することができる
る
契約は成立するか? 成立するとして,いつ成立するか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
49
被申込(承諾)者側の事情
2015/1/16
Lecture on Contracts
50
事後テスト(1/2)
承諾の発信主義・到達主義
事後テスト(2/2)
申込撤回と承諾の発信主義
承諾期間のある申込みに対して承諾期間内
に承諾を発信したが,承諾の到達が延着で
はなく,承諾期間経過後に到達した場合,契
約は成立しない(民法521条)。
わが国とアメリカ合衆国を除いて,世界の多く
の国々は,承諾について到達主義(Art. 18 CISG)を採用している。
このことは,承諾の発信主義に反するように
思われるが,なぜ,承諾の発信主義の下で,
正当化されているのか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
51
それにもかかわらず,申込の撤回は,承諾の
発信前に到達しなければならないとしている
(Art. 16(1) CISG)。
申込みの撤回は到達を基準に,承諾は発信
を基準に評価されている理由は何か?
2015/1/16
Lecture on Contracts
52
民法は承諾の発信主義を採用しているか
民法の深い理解の必要性(1/5)→Q1
 民法526条1項の一般的理解:承諾の発信主義
 民法526条1項は,「隔地者間の契約は,承諾の通知を発
した時に成立する」と規定しており,これは,わが国の民
法が,承諾の発信主義を採用しているものと一般に理解
されている。
承諾の発信主義と到達主義
に対する深い理解
 民法526条1項と民法521条2項との関係
 この一般的理解では,民法526条1項は,民法521条2項と
矛盾することになる。
 なぜなら,民法521条1項は,承諾が承諾期間内に発信さ
れたとしても,承諾期間内に到達しなければ契約は成立
しないことを明らかにしているからである。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
53
2015/1/16
Lecture on Contracts
54
9
Lecture on Contracts
2015/1/16
民法は承諾の発信主義を採用しているか
民法は承諾の発信主義を採用しているか
民法の深い理解の必要性(2/5)→Q2
民法の深い理解の必要性(3/5)→Q5
 契約が成立するかどうかの判断(民法521条2項)
 民法521条2項は,契約が成立するか否かを「承諾の到達
時点で,申込みが効力を有しているかどうか」で判断する。
 契約の成立時期の判断(民法526条1項)
 民法526条1項は,「承諾の到達時点で申込みが効力を有
していること」を前提として,「契約の成立時点を承諾の発
信の時点にまで遡らせている」と解すべきである。
 民法521条2項と民法526条1項の矛盾の解消
 このように考えると,民法521条2項と民法526条1項とは,
矛盾なく理解することができる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
55
わが国の民法は,単純な承諾の発信主義を
採用しているわけではない。
民法(債権関係)改正においては,いわゆる承諾
の発信主義を採用しているとして,民法526条を
到達主義へと変更すること,及び,民法527条を
削除することが予定されている。
しかし,このような理解は,わが国の民法の理解
としても誤っており,かつ,国際的な傾向にも合
致しないと思われる。←なぜか?考えてみよう。
2015/1/16
Lecture on Contracts
56
民法は承諾の発信主義を採用しているか
民法は承諾の発信主義を採用しているか
民法の深い理解の必要性(4/5)→Q6
民法の理解の必要性(5/5)→撤回延着
 民法527条に対する一般的な無理解
 民法改正は,何のためになされているのか
 民法527条は,承諾の発信を基準としているため,承諾の
発信主義を規定しているという理解が一般化している。
 法制審議会の諮問事項(2009年10月28日)
 民法制定後の社会・経済の変化に対応すること。
 国民一般にわかりやすいものとすること。
 しかし,国際的な基準として「承諾の到達主義」を採用し
ているCISGにおいても,「申込みの撤回は,承諾の発信よ
り前に到達していること」が必要とされており(Art. 16(2)
CISG),民法527条の規定は,その意味でも,国際基準に
合致した規定である。
 「民法制定後の社会・経済の変化」とは何か
 少子高齢化,情報化,国際化の三つであると解すべき。
 現在の民法改正は,諮問に答えていない
 民法527条を削除する必要はあるのか
 成年後見制度の見直しも,電子マネー,振込制度等の情
報化に対応する基礎理論も,国際条約への対応も怠って
おり,改正の意味を失っている。
 改正案は,専門家にとっても,格段にわかりにくい。
 民法527条は,民法522条とパラレルな関係にある信義則
に裏付けられた規定であり,削除する必要はない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
57
2015/1/16
Lecture on Contracts
58
契約成立の流れ図
契約成立の流れ図
START
単純な流れ図
申込
鏡像原則
承諾
• 鏡像原則
•
承諾の内容は,なぜ,申込みの内容と同じでなけれ
ばならないのか?
合致
• 変更を加えた承諾
•
鏡像原則
申込みには期限や条件を付すことができるのに,承
諾には期限や条件を付すことができないのは何故
か?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
契約は申込みに対する承諾
があった時に成立する(民法
526条)。
Lecture on Contracts
契約成立
59
2015/1/16
承諾は申込みとぴったりと合
わなければならない(鏡像原
則)。
そうでない場合(変更を加え
た承諾の場合)には,契約は
成立しない(民法528条)。
Lecture on Contracts
60
10
Lecture on Contracts
2015/1/16
事後テスト(1/5)
鏡像原則の意味
契約成立の流れ図
START
承諾の内容は,申込内容と鏡像のように一致
していなければならない(民法528条)。その
理由は何か?
申込
反対申込=
申込の拒絶,かつ,
新たな申込とみなされる
承諾
要件論
契約の成立要件は何か?
変更を加えた承諾
背理法
合致
被申込者が,申込の内容を事由に変更できるとした場
合の弊害は何か?
申込者と被申込者とで,支配的地位にあるのはどちら
か?
2015/1/16
Lecture on Contracts
61
鏡像原則の例外
2015/1/16
承諾期間
定めあり
承諾発信
期間
内到達
契約成立
2015/1/16
START
START
承諾期間
定めあり
承諾発信
承諾延着
延着
通知なし
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
反対の
意思なし
承諾期間
定めあり
承諾発信
期間
内到達
契約成立
2015/1/16
• 第525条(申込者の死亡又は行為能力
の喪失)
• 第97条〔隔地者に対する意思表示〕
第2項の規定は,申込者が反対の意
思を表示した場合又はその相手方が
申込者の死亡若しくは行為能力の喪
失の事実を知っていた場合には,適
用しない。
• 第97条(隔地者に対する意思表示)
• ①隔地者に対する意思表示は,その
通知が相手方に到達した時からその
効力を生ずる。
• ②隔地者に対する意思表示は,表意
者が通知を発した後に死亡し,又は
行為能力を喪失したときであっても,
そのためにその効力を妨げられない。
Lecture on Contracts
64
第521条(承諾の期間の定めのある申込み)
• ①承諾の期間を定めてした契約の申込みは,
撤回する【取り消す】ことができない。
• ②申込者が前項の申込みに対して同項の期
間内に承諾の通知を受けなかったときは,そ
の申込みは,その効力を失う。
• 第522条(承諾の通知の延着)
• ①前条第1項の申込み〔承諾期間の定めの
ある申込み〕に対する承諾の通知が同項の
期間の経過 後に到達した場合であっても,通
常の場合にはその期間内に到達すべき時に
発送したものであることを知ることができると
きは,申込者は,遅滞なく,相手方に 対して
その延着の通知を発しなければならない。
ただし,その到達前に遅延の通知を発したと
きは,この限りでない。
• ②申込者が前項本文の延着の通知を怠った
ときは,承諾の通知は,前条第1項の〔承諾〕
期間内に到達したものとみなす。
契約成立の流れ図
•
申込到達
契約成立
63
契約成立の流れ図
能力喪失
能力喪失
不知
申込到達
62
契約成立の流れ図
申込発信
期間
内到達
能力喪失
なし
国際物品売買契約に関する国際連合条約
(平成20年7月7日・条約第8号)
• 第14条〔申込み〕
• (1)一人又は二人以上の特定の者に対してした
契約を締結するための申入れは,それが十分に
確定し,かつ,承諾があるときは拘束されるとの
申入れをした者の意思が示されている場合には,
申込みとなる。
申入れは,物品を示し,並びに明示的又は黙
示的に,その数量及び代金を定め,又はそれら
の決定方法について規定している場合には,十
分に確定しているものとする。
• (2)一人又は二人以上の特定の者に対してした
申入れ以外の申入れは,申入れをした者が反対
の意思を明確に示す場合〔例えば懸賞広告〕を
除くほか,単に申込みの誘引とする。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
申込発信
START
申込到達
•第523条(遅延した承諾の
効力)
• 申込者は,遅延した承
諾を新たな申込みとみな
すことができる。
契約成立
契約成立の流れ図
申込発信
実質的変
更なし
異議
申立なし
鏡像原則
•第528条(申込みに変更
を加えた承諾)
• 承諾者が,申込みに条
件を付し,その他変更を
加えてこれを承諾したと
きは,その申込みの拒絶
とともに新たな申込みを
したものとみなす。
Lecture on Contracts
65
複雑な流れ図
• 期限に遅れた承諾の運命
•
承諾期間を定めた申込みに対する承諾が延
着したときの承諾の運命は?
• 承諾の発信に遅れた申込みの撤回の運命
•
•
2015/1/16
申込みの撤回の効力はどのような場合に,い
つ発生するか?
申込みの撤回が延着した場合,その運命は?
Lecture on Contracts
66
11
Lecture on Contracts
2015/1/16
START
契約成立の流れ図
START
申込発信
申込到達
承諾期間
定めあり
• 第524条(承諾の期間の定めのない申込み)
• 承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは,申
込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまで
は,撤回する【取り消す】ことができない。
承諾期間の定めなし
申込撤回
承諾延着
延着
通知なし
承諾到達
契約成立
2015/1/16
能力喪失
能力
不喪失
反対の
意思なし
能力喪失
不知
申込到達
撤回到達前
承諾発信
撤回
延着なし
承諾発信
承諾発信
期間
内到達
申込
撤回なし
契約成立の流れ図
申込発信
• 第527条(申込みの撤回の通知の延着)
• ①申込みの撤回【取消し】の通知が承
諾の通知を発した後に到達した場合で
あっても,通常の場合にはその前に到
達すべき時に発送したものであることを
知ることができるときは,承諾者は,遅
滞なく,申込者に対してその延着の通
知を発しなければならない。
• ②承諾者が前項の延着の通知を怠っ
たときは,契約は,成立しなかったもの
とみなす。
Lecture on Contracts
承諾期間の定めなし
承諾期間
定めあり
撤回延着
通知あり
67
承諾発信
国際物品売買契約条約(CISG)
• 第16条〔申込みの撤回〕
• (1)申込みは,契約が締結されるまでの間,
相手方が承諾の通知を発する前に撤回の
通知が当該相手方に到達する場合には,
撤回することができる。
申込
撤回なし
申込撤回
撤回
延着なし
承諾発信
期間
内到達
承諾延着
撤回到達前
承諾発信
撤回延着
通知あり
承諾到達
延着
通知なし
契約成立
2015/1/16
Lecture on Contracts
68
契約の交渉戦略
契約の交渉戦略
契約成否に関する戦略
 申込みの誘引の意義と機能
1. 契約成否に関する戦略
 申込みは「白旗」だが,待つだけでは寂しい
 申込みとは異なる申込みの誘引が必要なの
はなぜか?
 事業者による「申込みの誘引戦略」のメリット
は何か,デメリットは何か?
2. Win・Winの手付(オプション取引)戦略
 予約の意義と機能
 手付は,契約の拘束力を強化するものか,
弱めるものか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
 消費者による「予約戦略」は,申込みの誘引と
同じ機能を有するのか?
69
契約成立のための戦略(1/4)
当事者
戦略選択
締結権限授与
締結権限行使
2015/1/16
Lecture on Contracts
70
契約成立のための戦略(2/4)
契約の成否
当事者
戦略選択
締結権限授与
締結権限行使
契約の成否
企業戦略
の失敗
戦略なし
承諾
契約成立
申込みの
拒絶
契約
不成立
事業者
事業者
申込
(白旗)
承諾
契約成立
申込みの
拒絶
契約
不成立
消費者
消費者
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
申込
(白旗)
Lecture on Contracts
71
2015/1/16
Lecture on Contracts
72
12
Lecture on Contracts
2015/1/16
契約成立のための戦略(3/4)
当事者
戦略選択
締結権限授与
締結権限行使
契約成立のための戦略(4/4)
契約の成否
当事者
申込の
誘引戦略
承諾
締結権限行使
契約の成否
契約成立
予約承諾
(申込)
(白旗)
事業者
申込みの
拒絶
契約
不成立
消費者
申込
(白旗)
消費者
2015/1/16
締結権限授与
予約戦略
申込の
誘引
事業者
戦略選択
Lecture on Contracts
73
予約申込
(申込の
誘引)
2015/1/16
予約完結
権の行使
(承諾)
契約成立
予約完結
権不行使
(拒絶)
契約
不成立
Lecture on Contracts
74
事後テスト(4/5)
申込みの誘引
申込の誘引と申込の区別
 「申込み」以外に,「申込み
の誘引」という概念が必要
とされているのは何故か?
 流しをしているタクシーの
「空車」という表示は,「申
込み」か? 「申込みの誘引」
か?
 就職の内定通知は,「申
込」か? 「申込みの誘引」
か?「承諾」か?
 「両親が,明日お見合いし
ろっていうの。ねぇ,断って
もいい?」は,申込みか?申
込みの誘引か?
 「申込みの誘引」を「申込み」
と考え,次の「申込み」を承諾
と考えるとした場合,どのよう
な不都合が生じるのか。
 「申込みの誘引」と「予約」
とは,戦略的には,同じ意
味を有するとされている。そ
の理由は何か?。
2015/1/16
Lecture on Contracts
75
参考条文(1/9)
申込みと申込みの誘引の定義
民法
 申込の定義
 なし。
 ただし,「一人又は二
人以上の特定の者に
対してした申入れ以外
の申入れ」であるが,
申入れをした者が,
「申込の誘引ではなく,
反対の意思を明確に
示す場合」として,懸賞
広告(民法529~532
条)が規定されている。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
資料
1.参考条文
2.参考判例
3.参考文献
76
2015/1/16
参考条文(2/9)
申込みの取りやめ(Withdrawal)
国際物品売買条約(CISG)
民法
 第14条〔申込み〕
 (1)一人又は二人以上の特定の者に対して
した契約を締結するための申入れは,それ
が十分に確定し,かつ,承諾があるときは
拘束されるとの申入れをした者の意思が示
されている場合には,申込みとなる。申入
れは,物品を示し,並びに明示的又は黙示
的に,その数量及び代金を定め,又はそれ
らの決定方法について規定している場合に
は,十分に確定しているものとする。
 (2)一人又は二人以上の特定の者に対して
した申入れ以外の申入れは,申入れをした
者が反対の意思を明確に示す場合を除く
ほか,単に申込みの誘引とする。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
77
国際物品売買条約(CISG)
 第15条〔申込みの効力発生
時期,申込みの取りやめ〕
 申込の効力発生時期
 第97条(隔地者に対する意
思表示)
 ①隔地者に対する意思表
示は,その通知が相手方
に到達した時からその効力
を生ずる。
 申込の取りやめ
 当然のこととして,規定さ
れていない。
2015/1/16
 (1)申込みは,相手方に到達
した時にその効力を生ずる。
 (2)申込みは,撤回
(Revocation)することができ
ない場合であっても,その取
りやめ(Withdrawl)の通知が
申込みの到達時以前に相手
方に到達するときは,取りや
めることができる。
Lecture on Contracts
78
13
Lecture on Contracts
2015/1/16
参考条文(3/9)
承諾期間のある申込み→Q1,Q2
民法
参考条文(4/9)
承諾通知の延着→Q3
国際物品売買条約(CISG)
民法
 第521条(承諾の期間  第16条〔申込みの撤回〕
(2)申込みは,次の場合には,撤回す
の定めのある申込み)
ることができない。
 (a) 申込みが,一定の承諾の期
間を定めることによるか他の方法
によるかを問わず,撤回すること
ができないものであることを示して
いる場合
 (b) 相手方が申込みを撤回するこ
とができないものであると信頼した
ことが合理的であり,かつ,当該
相手方が当該申込みを信頼して
行動した場合
 ①承諾の期間を定めてし
た契約の申込みは,撤
回することができない。
 ②申込者が前項の申込
みに対して同項の期間
内に承諾の通知を受け
なかったときは,その申
込みは,その効力を失う。
2015/1/16
Lecture on Contracts
79
国際物品売買条約(CISG)
 第522条(承諾の通知の延着)
 第21条〔遅延した承諾,通信の遅延〕
 ①前条第1項の申込み〔承諾期間の定
めのある申込み〕に対する承諾の通知
が同項の期間の経過後に到 達した場
合であっても,通常の場合にはその期
間内に到達すべき時に発送したもので
あることを知ることができるときは,申
込者は,遅滞なく,相手方に対して そ
の延着の通知を発しなければならない。
ただし,その到達前に遅延の通知を発
したときは,この限りでない。
 ②申込者が前項本文の延着の通知を
怠ったときは,承諾の通知は,前条第1
項の〔承諾〕期間内に到達したものとみ
なす。
2015/1/16
 (1)遅延した承諾であっても,それが承諾とし
ての効力を有することを申込者が遅滞なく
相手方に対して口頭で知らせ,又はその旨
の通知を発した場合には,承諾としての効
力を有する。
 (2)遅延した承諾が記載された書簡その他の
書面が,通信状態が通常であったとしたなら
ば期限までに申込者に到達したであろう状
況の下で発送されたことを示している場合に
は,当該承諾は,承諾としての効力を有する。
ただし,当該申込者が自己の申込みを失効
していたものとすることを遅滞なく相手方に
対して口頭で知らせ,又はその旨の通知を
発した場合は,この限りでない。
Lecture on Contracts
参考条文(6/9)
申込みの撤回の延着→Q6
参考条文(5/9)
承諾期間のない申込の撤回(Revocation)→Q4,Q5
国際物品売買条約
(CISG)
民法
国際物品売買条約(CISG)
民法
 第524条(承諾の期間の
定めのない申込み)
 第16条〔申込みの撤
回〕 →民法の深い理解4
 第527条(申込みの撤回の通知の延
着)
 承諾の期間を定めない
で隔地者に対してした申
込みは,申込者が承諾
の通知を受けるのに相
当な期間を経過するまで
は,撤回することができ
ない。
2015/1/16
 (1)申込みは,契約が
締結されるまでの間,
相手方が承諾の通
知を発する前に撤回
の通知が当該相手方
に到達する場合には,
撤回することができる。
Lecture on Contracts
81
民法
 ①隔地者間の契
約は,承諾の通知
を発した時に成立
する。
 ②申込者の意思
表示又は取引上
の慣習により承諾
の通知を必要とし
ない場合には,契
約は,承諾の意思
表示と認めるべき
事実があった時に
成立する。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 規定なし。
 ②承諾者が前項の延着の通知を怠った
ときは,契約は,成立しなかったものとみ
なす。
2015/1/16
 承諾通知の延着
と申込撤回通知
の延着を区別す
る意図なのか?
 後者の場合に,
前者の規定を類
推することを許す
のか?
 不明である。
Lecture on Contracts
82
参考条文(8/9)
変更を加えた承諾
国際物品売買条約(CISG)
民法
 第18条〔承諾の方法,承諾の効力発生時期,承諾期間〕
 (1)申込みに対する同意を示す相手方の言明その他の行為は,承
諾とする。沈黙又はいかなる行為も行わないことは,それ自体で
は,承諾とならない。
 (2)申込みに対する承諾は,同意の表示が申込者に到達した時に
その効力を生ずる。
同意の表示が,申込者の定めた期間内に,又は期間の定めがな
い場合には取引の状況(申込者が用いた通信手段の迅速性を含
む。)について妥当な考慮を払った合理的な期間内に申込者に到
達しないときは,承諾は,その効力を生じない。
口頭による申込みは,別段の事情がある場合を除くほか,直ちに
承諾されなければならない。
 (3)申込みに基づき,又は当事者間で確立した慣行若しくは慣習に
より,相手方が申込者に通知することなく,物品の発送又は代金
の支払等の行為を行うことにより同意を示すことができる場合に
は,承諾は,当該行為が行われた時にその効力を生ずる。
ただし,当該行為が(2)に規定する期間内に行われた場合に限る。
Lecture on Contracts
 申込の撤回の
延着
 ①申込みの撤回の通知が承諾の通知を
発した後に到達した場合であっても,通
常の場合にはその前に到達すべき時に
発送したものであることを知ることができ
るときは,承諾者は,遅滞なく,申込者に
対してその延着の通知を発しなければな
らない。
参考条文(7/9)
契約の成立時期
 第526条(隔地者間
の契約の成立時
期)
80
83
 第528条(申込
みに変更を加
えた承諾)
 承諾者が,申込
みに条件を付し,
その他変更を
加えてこれを承
諾したときは,
その申込みの
拒絶とともに新
たな申込みをし
たものとみなす。
2015/1/16
国際物品売買条約(CISG)
 第19条〔変更を加えた承諾〕
 (1)申込みに対する承諾を意図する応答であって,追加,制限
その他の変更を含むものは,当該申込みの拒絶であるととも
に,反対申込みとなる。
 (2)申込みに対する承諾を意図する応答は,追加的な又は異な
る条件を含む場合であっても,当該条件が申込みの内容を実
質的に変更しないときは,申込者が不当に遅滞することなくそ
の相違について口頭で異議を述べ,又はその旨の通知を発し
た場合を除くほか,承諾となる。申込者がそのような異議を述
べない場合には,契約の内容は,申込みの内容に承諾に含ま
れた変更を加えたものとする。
 (3)追加的な又は異なる条件であって,特に,代金,支払,物品
の品質若しくは数量,引渡しの場所若しくは時期,当事者の一
方の相手方に対する責任の限度又は紛争解決に関するもの
は,申込みの内容を実質的に変更するものとする。
Lecture on Contracts
84
14
Lecture on Contracts
2015/1/16
参考条文(9/9)
意思表示の到達の定義
民法
無償
国際物品売買条約(CISG)
 規定なし
 最一判昭36・4・20民集15巻4号
774頁
 到達とは,受領の権限を付与さ
れていた者によって受領され,
或は,了知されることを要する
のではなく,
 それらの者にとつて了知可能
の状態におかれたことを意味す
るものと解すべく,
 換言すれば,意思表示の書面
がそれらの者のいわゆる勢力
範囲(支配圏)内におかれるこ
とを以て足るものと解すべきで
ある。
2015/1/16
契約各論(典型契約)
 第24条〔到達の定義〕
 この部の規定の適用上,申込み,承
諾の意思表示その他の意思表示が
相手方に「到達した」時とは,
 申込み,承諾の意思表示その他の
意思表示が,相手方に対して口頭で
行われた時又は他の方法により相手
方個人に対し,相手方の営業所若し
くは郵便送付先に対し,若しくは相手
方が営業所及び郵便送付先を有しな
い場合には相手方の常居所に対して
届けられた時とする。
契
約
各
論
典
型
契
約
財
産
権
移
転
1.贈与
返還不要
2.売買
有償
3.交換
返還必要
4.消費貸借
物の利用
財
産
権
非
移
転
無償
5.使用貸借
有償
6.賃貸借
一般
7.雇用
8.請負
特別
(専門家)
9.委任
10.寄託
役務の提供
11.組合
事業
12.終身定期金
紛争の解決
Lecture on Contracts
85
2015/1/16
13.和解
Lecture on Contracts
86
贈与 目次
贈与契約
定期贈与
負担付贈与
 無償契約総論としての贈与の機能
死因贈与と遺贈と
の関係
 書面によらない贈与の拘束力
 贈与者の担保責任
参考文献
撤回の多義性
参考判例
参考図書
贈与者の担保責任
2015/1/16
贈与契約
特別の贈与
無償契約としての贈
与の社会的有用性
贈与の法的性質
贈与の拘束力
書面によらない贈与
Lecture on Contracts
 定期贈与と終身定期金との関係
 死因贈与と遺言との関係
87
2015/1/16
贈与契約の社会的有用性
従来の説における偏見
 教科書の記述([我妻Ⅴ2(1957)
222頁,[有斐閣双書 民法(6)
(1987)4頁])
 贈与は無償の財産移転契約で
ある。無償行為の社会的意義は
それほど大きくない。
 たしかに日常生活においては,
無償行為による財産移転が頻
繁に見られる。
 しかし,これは商品交換社会,
有償行為による財産移転が基
本である資本主義社会では,例
外的なものである。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
88
贈与の法的性質
無償契約のための有償契約
 人の一生は,無償の贈与を受ける
ことから始まる。
 中元・歳末商戦を見よ
 消費者が高級品を購入するのは,
贈与のためである。
 贈与の要因としての「愛と恐怖」は,
資本主義社会においても,取引の
最重要の要因であり続けている。
89
 財産権の移転契約
 第549条(贈与)
 贈与は,当事者の一方〔贈与
者〕が自己の財産を無償で
相手方〔受贈者〕に与える意
思を表示し,相手方が受諾を
することによって,その効力
を生ずる。
 贈与の法的性質
 無償・片務・諾成契約
 人の一生を終えるまでに,どれだ
けの贈与(ボランティア)ができた
かで人生の価値が評価されるの
ではないだろうか。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
 贈与は,無償で相手方に財
産権を与える諾成契約であ
る。
 贈与者だけが債務を負担し,
受贈者は債務を負担しない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 自己の財産の実体を減少さ
せることにより相手方に財
産的利益を与えるならば,
財産権の移転に該当すると
するのが通説の考え方であ
る。
 この点から,通説は,債務
免除(民法519条)も,贈与
契約となり得るとしている。
 ただし,通説も,債務免除が
単独行為であることを考慮
して,たとえ,贈与契約とな
る場合であっても,民法550
条は適用されないとしている。
90
15
Lecture on Contracts
2015/1/16
贈与の拘束力
書面によらない贈与 →判例
いわゆる紳士協定と贈与契約(カフェ丸玉事件)
 大判昭10・4・25新聞3835
号5頁
 判例の趣旨を,贈与契約とは異なる「法
的拘束力を有しない給付約束」と考える
説がある。
 カフェーの客がその女
給に対して,独立資金と
して相当多額の供与を
諾約した場合であっても,
 それが一時の興に乗じ,
女給の歓心を買うもの
であるときは,贈与契約
が成立したとは認めら
れず,
 確かに,旧民法は,自然債務を明文で
認めていたが,現行民法は,自然債務
の規定を削除している。
 心裡留保だとすると,受贈者が善意か
つ無過失で,贈与者の贈与意思を信頼
した場合には,贈与契約は有効となる。
 しかも,本件の場合,受贈者は,女給を
辞めて独立の準備をはじめており,信義
則上も,もはや,無効を主張できないと
考えるべきであろう。
Lecture on Contracts
 書面によらない贈与は,各当事者が撤
回することができる。ただし,履行の終
わった部分については,この限りでない。
91
 撤回の意味
 効力が発生した後でも贈与の効力を否
定できるため,その性質は取消しである。
理由を問わない点で,撤回とされている
にすぎない。
2015/1/16
 しかし,申込みは,到達によって
すでに効力が発生しているので,
その後の効力の喪失は,実は,
取消し(Revocation)である。
理由が必要か無理由でもよいか?
 効力発生後の問題なので,本来は「取消し」が正
しい。しかし,「無理由」であることを理由に現代
語化に伴って,「撤回」へと変更された。
 無権代理人の相手方の「取消権」(民法115条)
 「無理由」,かつ,効力発生前の問題であるため,
現代語化の際に,「撤回」と変更すべきであった。
ところが,今も「取消し」のままとなっている(通説
さえも,撤回が正しいとしている)。
 現代語化以前の民法の条文は,
申込みの「取消」としていた。
 それを現代語化に伴って撤回
(Withdrawal)としたのだが,学問
的には,恥ずかしい誤りである。
 夫婦間契約の「取消権」(民法754条)
 国際条約では,申込みの撤回
(Withdrawal)とは,申込みの到達前の
問題であり,申込み到達後は,申込み
の「取消し(Revocation)」とされている。
2015/1/16
 この場合も,「無理由で」契約の効力を失わせる
ものであるため,「贈与」の場合と平仄を合わせ
るのであれば,「撤回」と変更すべきであった。
 しかし,民法は,この場合は,すでに効力が発生
していることが確実であるため,この点を重視し
て,夫婦間契約の「取消し」としている。
Lecture on Contracts
 定期の給付を目的とする贈与は,
贈与者又は受贈者の死亡によっ
て,その効力を失う。
 終身定期金との関係
 定期的な給付の約束である点で
両者は共通する。
 約束の終期を当事者の一方の死
亡時と定めた場合には,定期贈
与は死亡によって効力を失い,終
身定期金に関する規定が適用さ
れることになる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 書面が契約書ではなく,要件が
緩和されている場合には,相手
方の反応を考慮することが必要
である。
Lecture on Contracts
93
 第551条(贈与者の担保責
任)
92
 無償契約の担保責任
 第596条(貸主の担保責任)
 第551条〔贈与者の担保責任〕の規定は,
 ①贈与者は,贈与の目的
使用貸借について準用する。
【物】である物又は権利の
瑕疵又は不存在について,  有償契約の担保責任の免責
その責任を負わない。
 第572条(担保責任を負わない旨の特
 ただし,贈与者がその瑕
約)
疵又は不存在を知りなが
 売主は,第560条から前条まで〔売主の
ら受贈者に告げなかった
担保責任〕の規定による担保の責任を
ときは,この限りでない。
負わない旨の特約をしたときであっても,
 ②負担付贈与については,
贈与者は,その負担の限
度において,売主と同じく
担保の責任を負う。
2015/1/16
定期贈与
 第552条(定期贈与)
 右内容証明郵便は,本条にいう
書面に当たる。
 相手方の反応への配慮
贈与者の担保責任
 書面によらない贈与の「撤回権」(民法550条)
 契約の効力が発生する前の問題なの
で,取消しではなく,撤回としている。
 乙が,司法書士に依頼して,登
記簿上の所有名義人である甲に
対し,右不動産を丙に譲渡したの
で甲から直接丙に所有権移転登
記をするよう求める旨の内容証
明郵便を差し出したときは,
 通説・判例は,要件を緩和し,贈与者の
意思が明確であれば,受贈者の受諾の
意思の記載は不要であるとしている。
撤回の多義性
効力の発生前か発生後か?
 甲から不動産を取得した乙がこ
れを丙に贈与した場合において,
 書面の意味
撤回と取消しの区別の基準の大混乱
 申込みの撤回(民法521条以下)
 最判昭60・11・29民集39巻7号
1719頁
 書面とは,贈与書面,すなわち,贈与契
約書であるとするのが素直な解釈であ
る。
 心裡留保か
 要約者が履行を強要で
きない特殊な債務関係
が生じたにすぎないもの
である。
2015/1/16
 第550条(書面によらない贈与の撤回)
 自然債務か
知りながら告げなかった事実及び自ら第
三者のために設定し又は第三者に譲り
渡した権利については,その責任を免
れることができない。
 (ただし,相手方悪意の場合には適用が
ない。すなわち,担保責任を負わない。)
Lecture on Contracts
94
負担付贈与
 第553条(負担付贈与)
 第689条(終身定期
金契約)
 終身定期金契約は,
当事者の一方が,自
己,相手方又は第三
者の死亡に至るまで,
定期に金銭その他の
物を相手方又は第三
者に給付することを
約することによって,
その効力を生ずる。
95
 負担付贈与については,この節に
定めるもののほか,その性質に反
しない限り,双務契約に関する規
定を準用する。
 負担付贈与の意味
 受贈者に一定の給付をすべき債
務を課する贈与契約。
 負担は付款(合意による条件)の
一種であって,対価ではないため,
負担付贈与は,なお,無償契約で
あるが,双務契約に類似するため,
双務契約に関する規定(同時履行
の抗弁権,解除)が準用される。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 最二判昭53・2・17判タ360号
143頁
 養親が養子に対し養親を
扶養すること等を条件とし
てした土地の負担付贈与
が養子の負担たる義務の
不履行により解除されたも
のと認められた事例。
 負担付贈与において,受贈
者が,その負担である義務
の履行を怠るときは,民法
541条,542条の規定を準
用し,贈与者 は贈与契約
の解除をなしうるものと解
すべきである。
96
16
Lecture on Contracts
2015/1/16
死因贈与と遺言との関係 →判例
 第554条(死因贈与)
 ②前項の規定は,遺言
が遺言後の生前処分そ
の他の法律行為と抵触
する場合について準用
する。
 贈与者の死亡によって効力を生ずる
贈与については,その性質に反しない
限り,遺贈に関する規定を準用する。
 準用が問題となる条文
 準用されない条文
 民法1022条(遺言の撤回)
参考判例
 第1023条(前の遺言と後の遺言との抵
触等)
 ①前の遺言が後の遺言と抵触するとき
は,その抵触する部分については,後
の遺言で前の遺言を撤回したものとみ
なす。
参考図書
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 一般教養
 最高裁判例一覧
(年代順)




 遺言の方式に関する条文
 遺言者は,いつでも,遺言の方式に
従って,その遺言の全部又は一部を撤
回することができる。
2015/1/16
参考文献
 民法960条,967条~984
条
 遺言能力等に関する条文
 民法961条~966条
贈与の拘束力
書面によらない贈与
負担付贈与の解除
死因贈与と遺贈
 性質上準用されない条文
 民法986条~989条(遺
言の放棄)
 民法1004条(検認),
1005条(過料)
Lecture on Contracts
97
2015/1/16
Lecture on Contracts
98
贈与に関する判例
贈与に関する判例
贈与の拘束力(カフェ丸玉事件)
書面による契約かどうか(1/2)
 最一判昭37・4・26民集16
巻4号1002頁
大判昭10・4・25新聞3835号5頁
カフェーの客がその女給に対して,独立資金とし
て相当多額の供与を諾約した場合であっても,
それが一時の興に乗じ,女給の歓心を買うもの
であるときは,贈 与契約が成立したとは認められ
ず,
要約者が履行を強要できない特殊な債務関係が
生じたにすぎないものである。
2015/1/16
Lecture on Contracts
99
 最二判昭60・11・29民集39
巻7号1719頁
 県知事に対する農地所有権移
転許可申請書に,譲渡人,譲
渡人と表示して各記名捺印が
なされ,
 「権利を移転しようとする事由
の詳細」の項に本件農地を贈
与することにした旨,「権利を
移転しようとする契約の内容」
の項に無償贈与とする旨の各
記載がある以上,
 該申請書は民法第550条の書
面に当る。
2015/1/16
 甲から不動産を取得した乙が
これを丙に贈与した場合にお
いて,
 乙が,司法書士に依頼して,登
記簿上の所有名義人である甲
に対し,右不動産を丙に譲渡し
たの で甲から直接丙に所有権
移転登記をするよう求める旨
の内容証明郵便を差し出した
など判示の事情があるときは,
 右内容証明郵便は,民法550
条にいう書面に 当たる。
Lecture on Contracts
贈与に関する判例
贈与に関する判例
書面による契約かどうか(2/2)
負担付贈与と双務契約に関する規定の準用
 最一判昭53・11・30民集32巻8号1601頁
最二判昭53・2・17判タ360号143頁
 甲が乙を相手方として申し立てた財産処分禁止請求調停事件に丙
が利害関係人として参加して調停が成立し,
 調停調書に「乙は,その所有地のうち約45坪(別 紙図面記載の丙所
有部分)を除いた部分を処分しようとするときには,甲と約10日前に
相談のうえでする」旨の条項が記載されたが,
 右調停調書において丙所 有部分として約45坪の土地が除外された
のは,右調停に際し,乙から丙に対し右土地を贈与する合意が成立
したためであるときは,
 右調停調書は,乙,丙間の 贈与について作成された民法550条所
定の書面にあたる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
100
101
養親が養子に対し養親を扶養すること等を条件
としてした土地の負担付贈与が養子の負担たる
義務の不履行により解除されたものと認められた
事例。
負担付贈与において,受贈者が,その負担であ
る義務の履行を怠るときは,民法五四一条,五四
二条の規定を準用し,贈与者 は贈与契約の解除
をなしうるものと解すべきである。
2015/1/16
Lecture on Contracts
102
17
Lecture on Contracts
2015/1/16
贈与に関する判例
売買 目次
死因贈与に対する遺贈の規定の準用
肯定例,否定例
 最一判昭47・5・25民集26巻4号805頁
 死因贈与の取消については,民法1022条
がその方式に関する部分を除いて準用さ
れると解すべきである。
2015/1/16
 売買契約の性質
 有償契約総論としての売買
 予約
 土地の登記簿上の所有名義人である甲
が,右土地を占有耕作する乙に対して
その引渡を求めた訴訟の第1審で敗訴
し,その第2審で成立した裁判上の和解
において,
 負担の履行期が贈与者の生前と定められ
た負担付死因贈与の受贈者が負担の全部
又はこれに類する程度の履行をした場合
には,
 右契約締結の動機,負担の価値と 贈与財
産の価値との相関関係,契約上の利害関
係者間の身分関係その他の生活関係等に
照らし右契約の全部又は一部を取り消す
ことがやむをえないと認められる
 特段の事情がない限り,民法1022条,
1023条の各規定は準用されない。








売買の費用
代金の支払の時期・場所
同時履行・不安の抗弁権
果実の帰属
 買戻
105
2015/1/16
売買契約の性質
 相手方〔買主〕がこれに対し
てその代金を支払うことを約
することによって,その効力
を生ずる。
 諾成契約
 現実売買(自動販売機による
売買など)については,即時
に履行が完了するため,議
論がある。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
6.
7.
8.
9.
対価の支払時期
対価の支払場所
同時履行と不安の抗弁
果実の帰属
Lecture on Contracts
106
贈与
請負
贈与者
 売買契約は,有償・双務・諾
成契約であり,典型契約の1
つとして民法に規定され,そ
の規定は有償契約一般に準
用される。
 双務契約
 双務契約かどうかは,冒頭条
文に,「…約し,…約する」とい
うように「約する」という用語
が1箇だけか(片務契約),2
箇以上あるか(双務契約)と
いう基準でも判断できる。
Lecture on Contracts
104
典型契約の当事者の呼び方
 有償契約
 売買は,当事者の一方〔売
主〕がある財産権を相手方に
移転することを約し,
 参考判例
売買の性質
有償契約と無償契約
予約
手付
対価と費用
1.
2.
3.
4.
5.
 売主の担保責任
 第555条(売買)
 参考文献
有償契約総論
 有償契約総論としての売買
Lecture on Contracts
買戻の意義
買戻の要件
買戻の実行
共有持分の買戻の特約付売買
再売買の予約
Lecture on Contracts
売買契約
2015/1/16





手付の種類
手付の放棄
手付の倍戻し
手付の性質
2015/1/16
権利の瑕疵
資力の瑕疵
物の瑕疵
免責特約
 買戻
 手付
 右死因贈与は,甲において自由には取
り消すことができない。
103




 予約と申込みの誘引
 予約と本契約
 乙から登記名義どおりの所有権の承認
を受ける代わりに,乙及びその子孫に
対して右土地を無償で耕作する権利を
与え,しかも,右権利を失わせるような
一 切の処分をしないことを約定するとと
もに,甲が死亡したときは右土地を乙及
びその相続人に贈与することを約したな
ど,判示の事実関係のもとでは,
Lecture on Contracts
 他人物売買
 売主の担保責任
 有償契約総論
 最二判昭58・1・24民集37巻1号21
頁
 最二判昭57・4・30民集36巻4号763頁
 売買契約の効力
 第2章 売買契約
否定例
107
受贈者
注文者
売買
売主
買主
委任者
交換
交換当事者
寄託者
消費貸借,使用貸借
貸主
借主
組合員
組合員
終身定期金
終身定期金債権者
終身定期金債務者
賃借人
雇用
2015/1/16
受寄者
組合
賃貸借
使用者(雇主)
受任者
寄託
交換当事者
賃貸人
請負人
委任
和解
労働者(被用者)
和解当事者
Lecture on Contracts
和解当事者
108
18
Lecture on Contracts
2015/1/16
売買の種類・特殊の売買
 見本販売,試味売買
 →条件
有償契約総論としての売買契約
 割賦販売
第559条(有償契
約への準用)
 →準消費貸借
 →割賦販売法
 製造物供給契約
 訪問販売,通信販売等
 →請負
 →特定商取引法
 継続的供給契約
 国際売買
 →サービス契約
 不動産売買
 農地売買→農地法
 →国土利用計画法
 →宅地建物取引業法
2015/1/16
 →インコタームズ
 →国際物品売買契約に
関する国際連合条約
(ウィーン統一売買法)
Lecture on Contracts
109
予約の意義
 第556条(売買の一方の予約)
 ①売買の一方の予約は,相手
方が売買を完結する意思を表示
した時から,売買の効力を生ず
る。
 ②前項の意思表示について期
間を定めなかったときは,予約
者は,相手方に対し,相当の期
間を定めて,その期間内に売買
を完結するかどうかを確答すべ
き旨の催告をすることができる。
 この場合において,相手方がそ
の期間内に確答をしないときは,
売買の一方の予約は,その効力
を失う。
2015/1/16
 この節の規定は,売
買以外の有償契約
について準用する。
 ただし,その有償契
約の性質がこれを
許さないときは,こ
の限りでない。
2015/1/16
 双方の予約
 一方の予約
消費者
 予約完結権とは,契約締結権の
こと。申込みに対する承諾と同じ。
 予約のメリット
 申込みをすると,相手が契約締
結権限を持つことになる。
 予約をすると,相手方が申込み
をしてくれたのと同じ状態となる。
この点に予約のメリットがある
111
権限の保有者
承諾者
相手方の保護
相手方の保護の実現
本契約の成立(予約完結権の行使)
2015/1/16
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
予約を完結します。
事業者
申込みをお願いします。
申込撤回権
申込の効力の消滅
113
申込み(契約締結権限の授与)
消費者
申し込みます。
契約の成立(契約締結権限の行使)
事業者
申込みを承諾します。
Lecture on Contracts
112
予約と本契約との類似点
予約者と申込者の保護
予約者の保護(催告権)
 ①売買の一方の予約は,相手方が
売買を完結する意思を表示した時
から,売買の効力を生ずる。
 ② 前項の意思表示について期間を
定めなかったときは,予約者〔予約
義務者〕は,相手方に対し,相当の
期間を定めて,その期間内に売買
を完結するかどうかを確答すべき
旨の催告をすることができる。
契約締結権限
相手方の保護の実現
承諾者
予約を承りました。
 第556条(売買の一方の予約)
相手方の保護
申込者
予約の消滅
申込みの誘引による契約の締結
(事業者がイニシアティブ)
申込みの誘引
予約を申し込みます。
予約の成立(予約完結権の授与)
事業者
消費者
権限の保有者
予約権者
110
 予約とは,申込みをさせた状態
申込みの誘引による契約の締結
(申込者の保護)
催告権
Lecture on Contracts
予約の申込み
 予約と本契約
予約による契約締結
(予約(義務)者の保護)
予約(義務)者
 なお,無償契約の総論として
の役割を果たしているのは,
贈与契約に関する規定である。
予約による契約締結
(消費者がイニシアティブ)
 予約の形式
予約と申込みの誘引の関係(2/2)
予約完結権
 売買契約の節に書かれている
ことは,原則として,その他の
有償契約にも準用されるから
である(民法559条)。
予約と申込みの誘引の関係(1/2)
Lecture on Contracts
予約権者
 売買契約に関する規定は,有
償契約総論としての意味を
持っている。
申込者の保護(撤回権)
 第521条(承諾の期間の定め
のある申込み)
 ①承諾の期間を定めてした
契約の申込みは,撤回する
【取り消す】ことができない。
 第524条(承諾の期間の定め
のない申込み)
 この場合において,相手方がその
期間内に確答をしないときは,売買
の一方の予約は,その効力を失う。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 承諾の期間を定めないで隔
地者に対してした申込みは,
申込者が承諾の通知を受け
るのに相当な期間を経過す
るまでは,撤回する【取り消
す】ことができない。
114
19
Lecture on Contracts
2015/1/16
売買以外の予約の規定
 準消費貸借
 第588条(準消費貸借)
 当事者がその物を消費貸借の
目的【物】とすることを約したとき
は,消費貸借は,これによって
成立したものとみなす。
 第589条(消費貸借の予約
と破産手続の開始)
 第557条(手付)
 売買代金を直ちに支払わずに借金
とし,それに利息・担保をつける場合
などがその例であって,新たに信用
を授与する機能を営む。
 消費貸借によらないで金銭その
他の物を給付する義務を負う者
がある場合において,
 消費貸借の予約
 銀行貸付開始契約は,消費貸借の
予約と解されている。
 債務保証契約は,保証委託の予約
といわれている。
 諾成的消費貸借契約の実現
 消費貸借の予約は,その後に当
事者の一方が破産手続開始の
決定を受けたときは,その効力
を失う。
2015/1/16
手付の種類
 民法588条と民法589条は,諾成的
消費貸借契約が存在することを前提
とした規定となっている。
Lecture on Contracts
115
手付の意義(1/2)手付の放棄
 証約手付
 ①買主が売主に手付を
交付したときは,当事
者の一方が契約の履
行に着手するまでは,
 買主はその手付を放棄
し,売主はその倍額を
償還して,契約の解除
をすることができる。
 ②第545条第3項〔解除
権の行使は損害賠償
の請求を妨げない〕の
規定は,前項の場合に
は,適用しない。
2015/1/16
 解約手付
 手付を放棄し,または,相手方が,手
付を倍戻して,契約を解除することが
できる(最判昭29・1・21民集8巻1号64
頁)。
 違約手付
 損害賠償額の予定,または,違約罰
を兼ねる。
 ただし,この考え方は,民法557条2項
の明文に反する。
Lecture on Contracts
116
手付の効用(2/2)手付倍戻し
手付300万円返済
手付300万円交付
手付300万円交付
手付300万円放棄
売主A
 契約が成立したことを証明する(予約
手付の場合は,予約の証明となる)。
物件甲(3,000万円)の無理由解除
物件甲(3,000万円)の売買契約
買主B
売主A
甲
3,000万円
物件甲(3,000万円)の無理由解除
物件甲(3,000万円)の売買契約
甲
3,000万円
買主D
4,000万円
売主C
売主Aの収入:
買主Bの収入:
買主Dの費用:
売主Aの収入:
300万円
売主Cの収入:
2,200万円
買主Bの費用:
2,500万円
本来のBの費用: 3,300万円
乙
2,000万円
2015/1/16
Lecture on Contracts
117
オプション(権利の売買)
 手付の性質は,物の売買ではなく,
権利(予約完結権,または,無理由
解除権の売買)である。
予約完結権の売買=予約の手
付
無理由解除権の売買=民法上
の手付
 その対価は,売買代金の1割程度で
よいことが多い(適正価格は,ブラッ
ク・ショールズ式によって求められる
とされている)。
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
4,400万円
300万円
4,400万円
2015/1/16
手付の性質
2015/1/16
買主B
3,000万円
Lecture on Contracts
118
事後テスト
双方向オプション
 わが国の手付の特色
は,無理由解除権の
代金(手付)とその権
利の買戻の代金(手
付倍戻し)が同一であ
ることである。
手付の効用
 無理由解除権の売買
を通じて,契約を破る
自由,公正・自由な競
争が促進される。
119
手付と二重売買
手付の倍戻し
 民法557条(手付)1項は「買  買主が不動産売主に1割の
主が売主に手付を交付した
手付を打って,売買契約を
ときは,当事者の一方が契
成立させた場合,買主がよ
約の履行に着手するまで
り安くより良い別の物件を
は,買主はその手付を放棄
見つけた場合,または,売
し,売主はその倍額を償還
主がより高く買ってくれる別
して,契約の解除をするこ
の買主を見つけた場合,い
とができる」と規定している。
ずれの場合も,Win・Winの
 手付の放棄と手付の倍戻
解決ができるとされている。
しの意味を説明しなさい。
 例に基づいて説明しなさい。
2015/1/16
Lecture on Contracts
120
20
Lecture on Contracts
2015/1/16
売買の費用と弁済の費用
 第558条(売買契約に関
する費用)
 第485条(弁済の費用)
 弁済の費用について別段
の意思表示がないときは,
その費用は,債務者の負
担とする。
 売買契約に関する費用は,
当事者双方が等しい割合
で負担する。
 ただし,債権者が住所の
移転その他の行為によっ
て弁済の費用を増加させ
たときは,その増加額は,
債権者の負担とする。
民法558条は,債権総論
の民法485条の特則とさ
れている。
しかし,特則ではなく,双
務契約への適用に過ぎな
い考えることもできる。
2015/1/16
代金の支払時期と支払場所
Lecture on Contracts
121
代金の支払場所に関する比較法



2015/1/16
(1)弁済をすべき場所について別段の意思表示が
ないときは,
 特定物の引渡の場合は,債権発生の当時
その物の存在した場所で,
 種類物の引渡の場合は,種類 物の特定の
当時その物の存在した場所で,
(a)売主の営業所,又は,
(b)物品又は書類の交付と
引換えに代金を支払うべきと
きには,その交付が行われる
場所。
 (2)契約締結後に売主が営業
所を変更したことにより生じた
代金支払に付随する費用の増
加は,売主の負担とする。
第484条〔弁済の場所〕修正案



 その他の引渡債務(金銭債務)の弁済は,
債権者の現時の住所でこれをしなければな
らない。
(2)その他の債務(作為債務)については,債務者
の現時の住所で弁済をしなければならない。
第574条〔代金支払場所〕修正案


(1)売買代金の支払は,第484条1項の規定に従い,
債権者である売主の住所でこれをしなければなら
ない。
(2)売買の目的物の引渡と同時に代金を払うべき
ときは,買主は,(第533条の規定の趣旨を援用し
て,)その引渡の場所で支払うことができる。
Lecture on Contracts
 第574条(代金の支払場
所)
123
 第577条(抵当権等の登記があ
る場合の買主による代金の支払
の拒絶)
 売買の目的【物】について権利を
主張する者があるために買主が
その買い受けた権利の全部又
は一部を失うおそれがあるとき
は,買主は,その危険の限度に
応じて,代金の全部又は一部の
支払を拒むことができる。
 ただし,売主が相当の担保を供
したときは,この限りでない。
 ①買い受けた不動産について抵
当権の登記があるときは,買主
は,抵当権消滅請求の手続が
終わるまで,その代金の支払を
拒むことができる。
 この場合において,売主は,買
主に対し,遅滞なく抵当権消滅
請求をすべき旨を請求すること
ができる。
 ②前項の規定は,買い受けた不
動産について先取特権又は質
権の登記がある場合について準
用する。
KAGAYAMA Shigeru
 売買代金の支払場所に関する民
法574条は,弁済の場所に関する
民法484条に対する例外であると
解している。
 しかし,民法574条は,民法484条
の例外を定めたものなのだろうか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
122
 同時履行の準用
 第533条〔同時履行の抗弁
権〕の規定は,第563条か
ら第566条まで及び前条
〔売主の担保責任〕の場合
について準用する。
 本来の同時履行の適用
 双務契約から生じる双方
の債務に対して,同時履
行の抗弁権の規定が適用
される。
2015/1/16
 本来ならば,代金債務は,
目的物の引渡と同時履行
の関係に立つ。
 しかし,権利または物に瑕
疵がある場合には,損害
賠償債権を確保するため
に,代金債権と損害賠償
債権との間に同時履行の
抗弁権の規定が準用され
る。
Lecture on Contracts
124
不安の抗弁権(2/2)
 第576条(権利を失うおそれがあ
る場合の買主による代金の支払
の拒絶)
Lecture on Contracts
 通説による解釈
 売買の目的物の引渡し
と同時に代金を支払うべ
きときは,その引渡しの
場所において支払わな
ければならない。
不安の抗弁権(1/2)
2015/1/16
 弁済をすべき場所について別段の
意思表示がないときは,特定物の
引渡しは債権発生の時にその物
が存在した場所において,その他
の弁済は債権者の現在の住所に
おいて,それぞれしなければならな
い。
 売買の目的物の引渡し
について期限があるとき
は,代金の支払について
も同一の期限を付したも
のと推定する。
 第571条(売主の担保責
任と同時履行)
民法改正私案(加賀山)
CISG
 第484条(弁済の場所)
同時履行の抗弁権とその準用
現行民法の不親切な部分(債権総論部分)を補うために
 第57条【売買代金の支払場所】
 (1)代金を他の特定の場所で
支払うことを要しない場合には,
買主はそれを次の場所で売主
に支払わなければならない。
 第573条(代金の支払期
限)
125
 第578条(売主による代金の供託の請
求)
 前2条〔買主の代金支払拒絶権〕の場
合においては,売主は,買主に対して
代金の供託を請求することができる。
 ドイツ民法 第321条(不安の抗弁権)
 ①双務契約に基づいて先給付義務を
負う者は,契約締結後,その者の反対
給付請求権が相手方の給付能力の欠
如により危殆化されることを知ることが
できるときは,
 その者が負担する給付を拒絶すること
ができる。反対給付が実現され,また
はそのための担保が給付されたときは,
給付拒絶権は消滅する。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 ②先給付義務者は,相手
方が給付と引き換えに,そ
の選択に従い,反対給付を
実現し,または担保を給付
しなければならない,相当
期間を指定することができ
る。
 その期間が徒過されたとき
は,先給付義務者は契約
を解除することができる。
 この場合には,323条〔不
給付又は不完全給付の場
合の解除〕の規定が準用さ
れる。
126
21
Lecture on Contracts
2015/1/16
果実の帰属
 第575条(果実の帰属及び代金の利
息の支払)
 ①まだ引き渡されていない売買の目
的物が果実を生じたときは,その果
実は,売主に帰属する。
 ②買主は,引渡しの日から,代金の
利息を支払う義務を負う。ただし,代
金の支払について期限があるときは,
その期限が到来するまでは,利息を
支払うことを要しない。
 第89条(果実の帰属)
 ①天然果実は,その元物から分離
する時に,これを収取する権利を有
する者に帰属する。
 ②法定果実は,これを収取する権利
の存続期間に応じて,日割計算によ
りこれを取得する。
2015/1/16

第189条(善意の占有者による果実の取得等)



①善意の占有者は,占有物から生ずる果実を取
得する。
②善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴した
ときは,その訴えの提起の時から悪意の占有者
とみなす。
売買の効力
第190条(悪意の占有者による果実の返還等)

①悪意の占有者は,果実を返還し,かつ,既に
消費し,過失によって損傷し,又は収取を怠った
果実の代価を償還する義務を負う。

②前項の規定は,暴行若しくは強迫又は隠匿に
よって占有をしている者について準用する。
1.
2.
3.
4.
5.
 大判大13・9・24民集3巻440頁[民法判例
百選Ⅱ(2001)第55事件]
 売主は目的物の引渡を遅滞している場合
でも,引渡までこれを使用し果実を取得し
うると同時に,買主は,遅滞にあるときで
も目的物の引渡を受けるまで代金の利息
を支払うことを要しない。この場合には,
民法190条は適用されない。
Lecture on Contracts
127
2015/1/16
他人物売買と債務不履行責任
 第560条(他人の権利の売
買における売主の義務)
 他人の権利を売買の目的
【物】としたときは,売主は,
その権利を取得して買主に
移転する義務を負う。
 結果債務と手段の債務
 民法560条以下は,原則とし
て,売主の「結果債務」につ
いて規定している。
 したがって,買主が悪意の場
合の「手段の債務」について
は,民法415条以下の債務不
履行責任も問題となる。
2015/1/16
 前条の場合において,売主
がその売却した権利を取
得して買主に移転すること
ができないときは,買主は,
契約の解除をすることがで
きる。
 この場合において,契約の
時においてその権利が売
主に属しないことを知って
いたときは,損害賠償の請
求をすることができない。
2015/1/16
 他人の権利を目的とする売
買の売主が,その責に帰す
べき事由によって,該権利を
取得してこれを買主に移転す
ることができない場合には,
 買主は,売主に対し,民法
561条但書の適用上,担保責
任としての損害賠償の請求
ができないときでも,
 なお債務不履行一般の規定
に従って,損害賠償の請求を
することができるものと解す
るのが相当である。
129
KAGAYAMA Shigeru
 第562条(他人の権利の売買に
おける善意の売主の解除権)
 ①売主が契約の時においてその売却
した権利が自己に属しないことを知ら
なかった場合において,その権利を取
得して買主に移転することができない
ときは,売主は,損害を賠償して,契
約の解除をすることができる。
 ②前項の場合において,買主が契約
の時においてその買い受けた権利が
売主に属しないことを知っていたとき
は,売主は,買主に対し,単にその売
却した権利を移転することができない
旨を通知して,契約の解除をすること
ができる。
Lecture on Contracts
128
売主の責任の体系
権利の全部が他人の権利の場合
 第561条(他人の権利
の売買における売主の
担保責任)
Lecture on Contracts
 最一判昭41・9・8民集20巻
7号1325頁
Lecture on Contracts
他人物売買と債務不履行責任
権利の瑕疵に関する売主の責任
資力の瑕疵に関する売主の責任
物の瑕疵に関する売主の責任
担保責任の免責特約の効力
131
買主の権利
民法561条
売主の権利
民法562条
全部が他人の権利
権利の瑕疵
売
主
の
責
任
2015/1/16
一部が他人の権利
民法563条
数量不足
民法565条
権利の制限
資力の瑕疵
債権の売主の担保
責任
物の瑕疵
瑕疵担保責任
Lecture on Contracts
用益権
民法566条
担保権
民法567条
強制競売
民法568条
民法569条
原則と適用除外
民法570条
同時履行
民法571条
免責特約
民法572条
130
権利の一部が他人に属する場合
 第563条(権利の一部が他人に
属する場合における売主の担
保責任1)
 ③代金減額の請求又は契約
の解除は,善意の買主が損
害賠償の請求をすることを
妨げない。
 ①売買の目的【物】である権利の  第564条〔権利の一部が
一部が他人に属することにより,
他人に属する場合にお
売主がこれを買主に移転すること
ける売主の担保責任2〕
ができないときは,買主は,その不
 前条の規定による権利は,
足する部分の割合に応じて代金の
買主が善意であったとき
減額を請求することができる。
は事実を知った時から,
 ②前項の場合において,残存する
悪意であったときは契約
部分のみであれば買主がこれを買
の時から,それぞれ1年
い受けなかったときは,善意の買
以内に行使しなければな
主は,契約の解除をすることがで
らない。
きる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
132
22
Lecture on Contracts
2015/1/16
数量不足・数量多寡の場合(1/2)
 第565条(数量の不足又は物の一部滅失の
場合における売主の担保責任)
 前2条〔権利の一部が他人に属する場合における売
主の担保責任〕の規定は,数量を指示して売買をし
た物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に
既に滅失していた場合において,買主がその不足又
は滅失を知らなかったときについて準用する。
 CISG 第52条〔引渡履行期前の引渡し,数量
超過の引渡し〕
 (1)売主が定められた期日前に物品を引き渡す場合
には,買主は,引渡しを受領し,又はその受領を拒
絶することができる。
 (2)売主が契約に定める数量を超過する物品を引き
渡す場合には,買主は,超過する部分の引渡しを受
領し,又はその受領を拒絶することができる。
 買主は,超過する部分の全部又は一部の引渡しを
受領した場合には,その部分について契約価格に
応じて代金を支払わなければならない。
2015/1/16
 最判平13・11・27民集55巻6
号1380頁
 民法565条にいういわゆる数量
指示売買において数量が超過す
る場合,買主において超過部分
の代金を追加して支払うとの趣
旨の合意を認め得るときに売主
が追加代金を請求し得ることは
いうまでもない。
133
 最判昭32・12・12民集11巻
13号2131頁
 売買の目的たる土地につ
き罹災都市借地借家臨時
処理法第10条により対抗
力を有する賃借権が存す
る場合,
 この場合において,契約の解除をすることがで
きないときは,損害賠償の請求のみをすること
ができる。
 買主において右対抗力発
生の要件たる事実関係を
知 っていた以上,たとえ対
抗力あることを知らなくて
も,
 民法第566条第2項を類推
適用するにつき準用すべ
き同条第1項の「知ラサリ
シトキ」にあたらない。
Lecture on Contracts
 ①強制競売における買受人は,第
561条から前条まで〔売主の追奪担
保責任〕の規定により,債務者に対し,
契約の解除をし,又は代金の減額を
請求することができる。
 ②前項の場合において,債務者が無
資力であるときは,買受人は,代金
の配当を受けた債権者に対し,その
代金の全部又は一部の返還を請求
することができる。
 ③前2項の場合において,債務者が
物若しくは権利の不存在を知りなが
ら申し出なかったとき,又は債権者が
これを知りながら競売を請求したとき
は,買受人は,これらの者に対し,損
害賠償の請求をすることができる。
2015/1/16
135
KAGAYAMA Shigeru
代金減額
数量超過
受取拒絶
契約解除?
受け取る
?
条文なし
2015/1/16
Lecture on Contracts
134
 第567条(抵当権等がある場合に
おける売主の担保責任)
 ①売買の目的【物】である不動
産について存した先取特権又は
抵当権の行使により買主がその
所有権を失ったときは,買主は,
契約の解除をすることができる。
 ②買主は,費用を支出してその
所有権を保存したときは,売主
に対し,その費用の償還を請求
することができる。
 ③前2項の場合において,買主
は,損害を受けたときは,その賠
償を請求することができる。
2015/1/16
 買主の善意・悪意を問わない
 本条の担保責任は,買主が善
意であると悪意であるとを問わ
ずに適用される。
 その理由は,売主が担保権を消
除する約束で不動産が売買され
るのが通例だからである。
 適用が除外される場合
 したがって,被担保債権を控除
して代金額を定めるなど,買主
が,自らの消除を引き受けたと
認められる場合には,本条の適
用はない。
Lecture on Contracts
136
債権の売主の担保責任
 競売において,売主に当たるのは,債務者か,
債権者か?
 民法568条第1項は,売主に該当する者を債務
者と想定しつつ,
 同条第2項は,債務者が無資力の場合は,債権
者に対して,担保責任を追及できることを規定し
ている。
 最判平8・1・26民集50巻1号155頁
 建物に対する強制競売において,借地権の存
在を前提として売却が実施されたことが明らか
であるにもかかわらず,代金納付の時点におい
て借地権が存在しな かった場合,
 買受人は,そのために建物買受けの目的を達
することができず,かつ,債務者が無資力であ
るときは,
 民法568条1項,2項及び566条1項, 2項の類推
適用により,強制競売による建物の売買契約を
解除した上,売却代金の配当を受けた債権者
に対し,その返還を請求することができる。
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受け取る
数量違い
競売における担保責任
 第568条(強制競売における担保
責任)
契約解除
担保権による制限がある場合
 ①売買の目的物が地上権,永小作権,地役権,
留置権又は質権の目的【物】である場合におい
て,買主がこれを知らず,かつ,そのために契
約をした目的を達することができないときは,
買主は,契約の解除をすることができる。
2015/1/16
受取拒絶
条文あり
 数量指示売買において数量が超
過する場合に,同条の類推適用
を根拠として売主が代金の増額
を請求することはできないと解す
るのが相当である。
用益権等による制限がある場合
 ②前項の規定は,売買の目的【物】である不動
産のために存すると称した地役権が存しな
かった場合及びその不動産について登記をし
た賃貸借があった場合について準用する。
 ③前2項の場合において,契約の解除又は損
害賠償の請求は,買主が事実を知った時から1
年以内にしなければならない。
数量不足
 しかしながら,同条は数量指示
売買において数量が不足する場
合又は物の一部が滅失していた
場合における売主の担保責任を
定めた規定にすぎないから,
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 第566条(地上権等がある場合等における売
主の担保責任)
数量不足・数量多寡の場合(2/2)
137
 第569条(債権の売主の担保責任)
 資力が担保される場合
 ①債権の売主が債務者の資力を担保し
たときは,契約の時における資力を担
保したものと推定する。
 債務者の資力を担保した場合,
契約時の資力を担保したものと
推定される。
 ②弁済期に至らない債権の売主が債務
者の将来の資力を担保したときは,弁
済期における資力を担保したものと推
定する。
 将来債権の資力を担保した場
合,弁済期の資力を担保したも
のと推定される。
 債権売買の原則
 資力の担保の効力
 債権の全部又は一部が他人に属すると
か,債権に他人のために担保が設定さ
れているとかの場合には,債権の買主
は,売主の責任を追及できる。
 しかし,債務者が無資力であった場合に
は,債権の買主は,売主に対して担保
責任を追及できない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 債権の弁済を受けられなかっ
た買主に対して,債権の売主が
損害を填補しなければならない。
 その結果は,債権の売主は,
債務の履行の引受をした(保証
人となった)のと同じである。
138
23
Lecture on Contracts
2015/1/16
売買と請負の担保責任の接近
物に隠れた瑕疵がある場合
住宅の品質確保の促進等に関する法律
 CISG 第37条〔引渡期日前の追完〕
 第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵が
あったときは,第566条〔地上権等
がある場合等における売主の担保
責任〕の規定を準用する。
 売主は,引渡しの期日前に物品を
引き渡した場合には,買主に不合
理な不便又は不合理な費用を生じ
させないときに限り,
 ただし,強制競売の場合は,この
限りでない。
 その期日まで,欠けている部分を
引き渡し,若しくは引き渡した物品
の数量の不足分を補い,又は引き
渡した不適合な物品の代替品を引
き渡し,若しくは引き渡した物品の
不適合を修補することができる。
 第634条(請負人の担保責任)
 ①仕事の目的物に瑕疵があるとき
は,注文者は,請負人に対し,相
当の期間を定めて,その瑕疵の修
補を請求することができる。
 ただし,瑕疵が重要でない場合に
おいて,その修補に過分の費用を
要するときは,この限りでない。
2015/1/16
 ただし,買主は,この条約に規定
する損害賠償の請求をする権利を
保持する。
Lecture on Contracts
139
 第94条(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担
保責任の特例)
 ①住宅を新築する建設工事の請負契約(以下
「住宅新築請負契約」という。)においては,請
負人は,
 注文者に引き渡した時から10年間,住宅のうち
構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止
する部分として政令で定めるもの(次条におい
て「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)
の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のな
いものを除く。次条において同じ。)について,
 民法 (明治29年法律第89号)第634条第1項及
び第2項前段に規定する担保の責任を負う。
 ②前項の規定に反する特約で注文者に不利な
ものは,無効とする。
 ③第1項の場合における民法第638条第2項の
規定の適用については,同項 中「前項」とある
のは,「住宅の品質確保の促進等に関する法
律第94条第1項」とする。
2015/1/16
 瑕疵担保責任に関する
10年の消滅時効の適
用(肯定)
 敷地が都市計画街路
にある場合の瑕疵担保
責任の適用(肯定)
2015/1/16
 敷地に欠陥がある場合の瑕疵
担保責任の適用(否定)
 敷地に含まれる物質(フッ素)
が後に危険物と指定された場
合と瑕疵担保責任の適用(否
定)
 建物としての基本的な安全性
を損なう瑕疵と不法行為責任
(肯定)
Lecture on Contracts
第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)
 ①新築住宅の売買契約においては,売主は,
買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新
築請負契約に基づき請負人から当該売主に
引き渡されたものである場合にあっては,
 その引渡しの時)から10年間,住宅の構造耐
力上主要な部分等の隠れた瑕疵について,
民法第570条において準用する同法第566条
第一項並びに同法第634条第1項及び第2項
前段に規定する担保の責任を負う。
 この場合において,同条第1項及び第2項前
段中「注文者」とあるのは「買主」と,同条第1
項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。
 ②前項の規定に反する特約で買主に不利な
ものは,無効とする。
 ③第1項の場合における民法第566条第3項
の規定の適用については,同項中「前2項」と
あるのは「住宅の品質確保の促進等に関する
法律第95条第1項」と,「又は」とあるのは「,
瑕疵修補又は」とする。
Lecture on Contracts
140
担保責任の免責特約の効力
瑕疵担保責任に関する判例の動向
 種類物に対する瑕疵担
保責任の適用(肯定)

141
 第572条(担保責任を負
わない旨の特約)
 第551条(贈与者の担保責任)
 売主は,第560条から前条
まで〔売主の担保責任〕の
規定による担保の責任を
負わない旨の特約をしたと
きであっても,
 知りながら告げなかった事
実及び自ら第三者のため
に設定し又は第三者に譲り
渡した権利については,そ
の責任を免れることができ
ない。
2015/1/16
 ①贈与者は,贈与の目的【物】で
ある物又は権利の瑕疵又は不
存在について,その責任を負わ
ない。
 ただし,贈与者がその瑕疵又は
不存在を知りながら受贈者に告
げなかったときは,この限りでな
い。
 ②負担付贈与については,贈与
者は,その負担の限度において,
売主と同じく担保の責任を負う。
Lecture on Contracts
142
担保責任免責特約の無効
 消費者契約法 第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無
効)
 ①次に掲げる消費者契約の条項は,無効とする。
買戻し
 一~四(略)
 五 消費者契約が有償契約である場合において,当該消費者契約の
目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場
合には,当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項にお
いて同じ。)に,当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者
の責任の全部を免除する条項
1. 買戻しと再売買の予約はどこが異なるか?
2. 買戻しの担保的機能とは何か?
3. 買戻しと譲渡担保とはどこが異なるか?
 ②前項第五号に掲げる条項については,次に掲げる場合に該当する
ときは,同項の規定は,適用しない。
 一 当該消費者契約において,当該消費者契約の目的物に隠れた瑕
疵があるときに,当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任
又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
143
2015/1/16
Lecture on Contracts
144
24
Lecture on Contracts
2015/1/16
買戻し
 第579条(買戻しの特約)
 法的性質
 不動産の売主は,売買契約と同時にし
た買戻しの特約により,買主が支払っ
た代金及び契約の費用を返還して,売
買の解除をすることができる。
 第580条(買戻しの期間)
 解除権を留保した売買である。
 余り利用されない理由
 民法は不動産についてだけ買
戻しを認める(民法579条)。
 この場合において,当事者が別段の意
思を表示しなかったときは,不動産の
果実と代金の利息とは相殺したものと
みなす。
 しかも,買戻しの特約は売買
契約と同時にしなければなら
ず,また,それと同時に登記し
なければ第三者に対抗できな
い(民法581条1項)。
 さらに,買戻期間は10年を超
えることができないとされ(民
法580条),要件が厳格なので,
あまり利用されていない。
 最三判平18・2・7民集60巻80頁
 買戻特約付売買契約の形式が採られ
ていても,目的不動産の占有の移転を
伴わない契約は,特段の事情のない限
り,債権担保の目的で締結されたもの
と推認さ れ,
 その性質は譲渡担保契約と解するの
が相当である。
2015/1/16
買戻しの要件
Lecture on Contracts
145
 ①買戻しの期間は,10年を
超えることができない。特約
でこれより長い期間を定めた
ときは,その期間は,10年と
する。
 ②買戻しについて期間を定
めたときは,その後にこれを
伸長することができない。
 ③買戻しについて期間を定
めなかったときは,5年以内
に買戻しをしなければならな
い。
2015/1/16
買戻しの実行
 第582条(買戻権の代位行使)
 売主の債権者〔C:債権額200万
円〕が第423条〔債権者代位権〕
の規定により売主〔A〕に代わっ
て買戻しをしようとするときは,
 買主〔B〕は,裁判所において選
任した鑑定人の評価に従い,不
動産の現在の価額〔800万円〕か
ら売主が返還すべき金額〔500
万円〕を控除した残額〔300万円〕
に達するまで売主の債務を弁済
し,
 な お残余があるときはこれ〔100
万円〕を売主に返還して,買戻
権を消滅させることができる。
2015/1/16
 売主の予約完結の意思表示だ
けで,相手方の承諾なしに再売
買が成立する売買の一方の予
約(民法556条)の形式とること
が多い。
 貸主が買主となって貸金相当額
を代金として支払い,借主はそ
の貸金の元利相当額を再売買
代金として再売買をする旨を予
約する形式で行われ,買戻しと
同じく貸金の担保の機能を営ん
でいる。
2015/1/16
 ①売主は,第580条〔買戻しの期
間〕に規定する期間内に代金及
び契約の費用を提供しなければ,
買戻しをすることができない。
 ②買主又は転得者が不動産に
ついて費用を支出したときは,
売主は,第196条〔占有者による
費用の償還請求〕の規定に従い,
その償還をしなければならない。
 ただし,有益費については,裁
判所は,売主の請求により,そ
の償還について相当の期限を許
与することができる。
147
KAGAYAMA Shigeru
146
 第584条(共有持分の買戻特
約付売買1)
 不動産の共有者の1人が買
戻しの特約を付してその持
分を売却した後に,その不
動産の分割 又は競売が
あったときは,
 売主は,買主が受け,若しく
は受けるべき部分又は代金
について,買戻しをすること
ができる。
 ただし,売主に通知をしない
でした分 割及び競売は,売
主に対抗することができな
い。
2015/1/16
 第585条〔共有持分の買戻特約付
売買2〕
 ①前条の場合において,買主が不
動産の競売における買受人となっ
たときは,売主は,競売の代金及び
第583条〔買戻しの実行〕に規定す
る費用を支払って買戻しをすること
ができる。
 この場合において,売主は,その不
動産の全部の所有権を取得する。
 ②他の共有者が分割を請求したこ
とにより買主が競売における買受
人となったときは,売主は,その持
分のみについて買戻しをすることは
できない。
Lecture on Contracts
148
参考文献
 しかし,民法上の買戻しの制度(民
法579条~585条)は要件が厳格で
あるため,再売買の予約の方がよく
使われている。
 目的物が不動産である場合には,
予約完結権を仮登記すれば第三者
に対抗できる。
参考判例

手付



2015/1/16
解約手付
履行の着手
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
瑕疵担保責任






 目的物の時価が貸金額を上回る場
合には,譲渡担保の場合と同様に,
買主に清算義務を認められる。
149
参考図書
 最高裁判例一覧
(年代順)
 担保目的で使われる場合には一定
の期間内に予約完結権を行使すべ
きことが定められるのが通常であり,
この期間を経過すると売主は予約完
結権を失い,売買目的物は確定的
に買主のものになる。
Lecture on Contracts
 ②登記をした賃借人の権利
は,その残存期間中1年を超
えない期間に限り,売主に対
抗することができる。ただし,
売主を害する目的で賃貸借
をしたときは,この限りでない。
Lecture on Contracts
再売買の予約
 売買に際して,売主が将来
目的物を再び買い戻す旨
を予約すること。
 ①売買契約と同時に買戻し
の特約を登記したときは,買
戻しは,第三者に対しても,
その効力を生ずる。
共有持分の買戻特約付売買
 第583条(買戻しの実行)
Lecture on Contracts
 第581条(買戻しの特約の
対抗力)
種類物
10年の消滅時効
都市計画指定
敷地の欠陥
有害物質の指定
構造上の瑕疵
Lecture on Contracts
150
25
Lecture on Contracts
2015/1/16
手付の解釈
 最三判昭24・10・4民集3巻10号437頁[民
法判例百選Ⅱ(2001)第47事件]
 売買契約書に,
 「買主本契約ヲ不履行ノ時ハ手附金ハ売
主ニ於テ没収シ,返却ノ義務ナキモノトス。
売主不履行ノ時ハ買主ヘ既収手附金ヲ
返還スルト同時ニ手附金ト同額ヲ違約金
トシテ別ニ賠償シ以テ各損害補償ニ供ス
ルモノトス。」
履行の着手に関する判例(肯定)
 最一判昭29・1・21民集
8巻1号64頁
 売買の手付は,反対
の証拠がないかぎり,
民法557条所定のい
わゆる解約手付と認
むべきである。
Lecture on Contracts
 履行の準備にすぎない段階では,履行の着手
とはいえない。
 最大判昭40・11・24民集19巻8号2019頁
 解約手付の授受された第三者所有の不動産の
売買契約において,売主が,右不動産を買主に
譲渡する前提として,当該不動産につき所有権
を取得し,かつ,自己名義の所有権取得登記を
得た場合には,民法557条1項にいう「契約ノ履
行ニ著手」したときにあたるものと解するのを相
当とする。
 解約手付の授受された売買契約において,当
事者の一方は,自ら履行に着手した場合でも,
相手方が履行に着手するまでは,民法557条1
項に定める解除権を行使することができるもの
と解するのを相当とする。(反対意見がある。)
2015/1/16
Lecture on Contracts
151
 最三判平成5・3・16民集
47巻4号3005頁(百選
Ⅱ48事件)
 土地及び建物の買主が履
行期前において,土地の測
量をし,残代金の準備をし
て口頭の提供をした上で履
行の催告をしても,
 売主が移転先を確保する
ため履行期が1年9か月先
に定められ,右測量及び催
告が履行期までになお相
当の期間がある時点でなさ
れた場合には,
 右測量及び催告は履行の
着手に当たらない。
153
敷地が都市計画街路にある場合と瑕疵(肯定)
 最一判昭41・4・14民集
20巻4号649頁
 たとえ買主が右居宅を建築して
も,早晩,都市計画事業の実施
により,その全部または一部を
撤去しなければならない場合に
おいて,
 売買の目的土地の大部分
が都市計画街路の境域内
に存するために売買の目
的物に隠れた瑕疵がある
とされた事例
 右計画街路の公示が,売買契
約成立の10数年以前に,告示
の形式でなされたものであるた
め,買主において買受土地中
の前記部分が右計画街路の境
域内に存することを知らなかつ
たことについて過失があるとい
えないときは,
 買主が原判示規模の
居宅の敷地として使
用する目的を表示して
買い受けた土地の約8
割の部分が都市計画
街路の境域内に存す
るため,
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 売買の目的物に隠れた瑕疵が
あると解するのが相当である。
Lecture on Contracts

155

 賃貸建物の売買において,家屋の売主が賃
借人から明渡しを受けた上これを買主に引き
渡す旨の約定がある場合に(先履行義務),
買主がしばしば売主にこの約定の履行を督
促し,その間常にいつでも支払いができるよ
うに残代金を用意し,他方売主が買主ととも
に賃借人方におもむいて明渡しを求めたとき
は,売主・買主ともに履行に着手したものと
認められる。
最一判昭33・6・5民集12巻9号1359頁
2015/1/16
最一判昭51・12・20判時843号46頁
 借家人の居住する建物及びその敷地の売買
で,売主が借家人を立ち退かせたうえで土地
建物を買主に引き渡す約定である場合,売
主が売買直後ごろ1,2度借家人に立退きを
要求しただけでその後は借家人を立ち退か
せる努力をせずに放置し
 ,他方,買主は,その間しばしば売買の仲介
人に対し借家人を立ち退かせて土地建物を
引き渡すよう売主に催告されたい旨を依頼し,
更にその後売買代金を携えて売主方に赴き,
売主に対しこれを受け取るよう求めた場合に
は,買主に民法五五七条にいわゆる「契約ノ
履行ニ著手」があったものと認めるのが相当
である。
最三判昭30・12・26民集9巻14号2140頁
 土地の買主が約定の履行期後,売主に対し
てしばしばその履行を求め,かつ売主におい
て所有権移転登記手続をすればいつでも支
払えるように残代金の準備をしていた場合に
は,買主に履行の着手がある。
履行の着手に関する判例(否定)
 大判昭8・7・5裁判例(7)民166頁
最一判昭26・11・15民集5巻12号735頁
 家屋の買主が明渡期限後売主に対してしば
しば明渡しを求め,かつ売主が明け渡せば
いつでも残代金の支払いをすることができる
状態にしていた場合には,買主に履行の着
手がある。

 という条項があることだけでは(特に手附
は右約旨の為めのみに授受されたるもの
であることが表われない限り),
 民法557条の適用を排除する意思表示が
あつたものということはできない。
2015/1/16


最一判昭57・6・17判時1058号57頁
 農地の買主が約定の履行期後売主に対して
しばしば履行を催告し,その間農地法3条所
定の認可がされて所有権移転登記手続をす
る運びになればいつでも残代金の支払をす
ることができる状態にあったときは,現実に
残代金を提供しなくても,民法557条1項にい
わゆる「契約の履行に着手」したものと認め
るのが相当である。
Lecture on Contracts
152
種類物に関する瑕疵担保責任(肯定)
 最二判昭36・12・15民集15巻11
号2852頁(約束手形金請求事
件)
 不特定物を給付の目的物とする
債権において給付せられたもの
に隠れた瑕疵があつた場合に
は,債権者が一旦これを受領し
たからといつて,それ以後債権
者が右の瑕疵を発見し,既にな
された給付が債務の本旨に従
わぬ不完全なものであると主張
して改めて債務の本旨に従う完
全な給付を請求することができ
なくなるわけのものではない。
2015/1/16
 債権者が瑕疵の存在を認識し
た上でこれを履行として認容し
債務者に対しいわゆる瑕疵担保
責任を問うなどの事情が存すれ
ば格別,然らざる限り,債権者
は受領後もなお,取替ないし追
完の方法による完全な給付の請
求をなす権利を有し,従ってまた,
その不完全な給付が債務者の
責に帰すべき事由に基づくとき
は,債務不履行の一場合として,
損害賠償請求権および契約解
除権をも有するものと解すべき
である。
Lecture on Contracts
154
敷地の欠陥と瑕疵担保責任(否定)
 最三判平成3・4・2民集45巻4号349
頁[民法判例百選Ⅱ(2001)第54事
件]
 建物とその敷地の賃借権とが売買の目的
とされた場合において,右敷地について
その賃貸人において修繕義務を負担すべ
き欠陥が右売買契約当時に存したことが
その後に判明したとしても,右売買の目的
物に隠れた瑕疵があるということはできな
い。
 けだし,右の場合において,建物と共に売
買の目的とされたものは,建物の敷地そ
のものではなく,その賃借権であるところ,
 敷地の面積の不足,敷地に関する法的規
制又は賃貸借契約における使用方法の
制限等の客観的事由によって賃借権が
制約を受けて売買の目的を達することが
できないときは,建物と共に売買の目的と
された賃借権に瑕疵があると解する余地
があるとしても,
2015/1/16
 賃貸人の修繕義務の履行により補完され
るべき敷地の欠陥については,賃貸人に
対してその修繕を請求すべきものであっ
て,右敷地の欠陥をもって賃貸人に対す
る債権としての賃借権の欠陥ということは
できないから,買主が,売買によって取得
した賃借人たる地位に基づいて,賃貸人
に対して,右修繕義務の履行を請求し,あ
るいは賃貸借の目的物に隠れた瑕疵が
あるとして瑕疵担保責任を追求することは
格別,売買の目的物に瑕疵があるという
ことはできないのである。
 なお,右の理は,債権の売買において,
債権の履行を最終的に担保する債務者
の資力の欠如が債権の瑕疵に当たらず,
売主が当然に債務の履行について担保
責任を負担するものではないこと(民法
569条参照)との対比からしても,明らかで
ある。
Lecture on Contracts
156
26
Lecture on Contracts
2015/1/16
瑕疵担保責任と10年の消滅時効(肯定)
 最三判平13・11・27民集55巻
6号1311頁
 さらに,買主が売買の目的物の引渡しを受け
た後であれば,遅くとも通常の消滅時効期間
の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請
求権を行使することを買主に期待しても不合理
でないと解されるのに対し,瑕疵担保による損
害賠償請求権に消滅時効の規定の適用がな
いとすると,買主が瑕疵に気付かない限り,買
主の権利が永久に存続することになるが,これ
は売主に過大な負担を課するものであって,適
当といえない。
 買主の売主に対する瑕疵担保
による損害賠償請求権は,売
買契約に基づき法律上生ずる
金銭支払請求権であって,これ
が民法167条1項にいう「債権」
に当たることは明らかである。
 この損害賠償請求権について
は,買主が事実を知った日から
1年という除斥期間の定めがあ
るが(同法570条,566条3項),
これは法律関係の早期安定の
ために買主が権利を行使すべ
き期間を特に限定したものであ
るから,この除斥期間の定めが
あることをもって,瑕疵担保によ
る損害賠償請求権につき同法
167条1項の適用が排除される
と解することはできない。
2015/1/16
 したがって,瑕疵担保による損害賠償請求権
には消滅時効の規定の適用があり,この消滅
時効は,買主が売買の目的物の引渡しを受け
た時から進行すると解するのが相当である
危険物であることの指定と瑕疵(否定)
 最三判平22・6・1民集64巻4
号953頁
 売買契約の目的物である土
地の土壌に,上記売買契約
締結後に法令に基づく規制
の対象となったふっ素が基
準値を超えて含まれていた
ことは,
 ①上記売買契約締結
当時の取引観念上,
ふっ素が土壌に含まれ
ることに起因して人の
健康に係る被害を生ず
るおそれがあるとは認
識されておらず,
 本件においては,被上告人が上告人に対し瑕
疵担保による損害賠償を請求したのが本件宅
地の引渡しを受けた日から21年余りを経過し
た後であったというのであるから,被上告人の
損害賠償請求権については消滅時効期間が
経過しているというべきである。
Lecture on Contracts
157
2015/1/16
Lecture on Contracts
瑕疵と不法行為責任(肯定)
 最二判平19・7・6民集61巻5号1769頁(別
府マンション事件・第1次上告審判決)
 建物の建築に携わる設計者,施工者及び
工事監理者は,建物の建築に当たり,契
約関係にない居住者を含む建物利用者,
隣人,通行人等に対する関係でも,当該
建物に建物としての基本的な安全性が欠
けることがないように配慮すべき注意義
務を負い,
 これを怠ったために建築された建物に上
記安全性を損なう瑕疵があり,それにより
居住者等の生命,身体又は財産が侵害さ
れた場合には,
 設計者等は,不法行為の成立を主張する
者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを
前提として,当該建物を買い受けていた
など特段の事情がない限り,これによって
生じた損害について不法行為による賠償
責任を負う。
2015/1/16
158
消費貸借 目次
 最一判平23・7・21判時2129号36頁(別府
マンション事件・再上告審判決(第2次上
告審判決))
 最高裁平成17年(受)第702号同19年7月
6日第二小法廷判決にいう「建物としての
基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,
 居住者等の生命,身体又は財産 を危険
にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,
居住者等の生命,身体又は財産に対する
現実的な危険をもたらしている場合に限
らず,
 当該性質の瑕疵に鑑み,これを放置する
といずれは居住者等の生命,身体又は財
産に対する危険が現実化することになる
場合には,建物としての基本的な安全性
を損なう瑕疵に該当すると解するのが相
当である。
Lecture on Contracts
 ②上記売買契約の当事者間
において,上記土地が備える
べき属性として,その土壌に,
ふっ素が含まれていないこと
や,上記売買契約締結当時に
有害性が認識されていたか否
かにかかわらず,人の健康に
係る被害を生ずるおそれのあ
る一切の物質が含まれていな
いことが,特に予定されていた
とみるべき事情もうかがわれ
ないなど判示の事情の下にお
いては,
 民法570条にいう畷疵に当たらな
い。
159
 第三者のためにする契約とその応用
 消費貸借
 消費貸借の意義
 要物,無償・有償,片務契約
 要物契約とすることの非合理
 諾成的消費貸借
 消費貸借の予約
 準消費貸借
 所有権留保の担保的構成
 消費貸借の効力
 典型例
 債権譲渡,債務引受,保証契約,契約上の地
位の譲渡
 振込契約,誤振込,組戻し
 消費者信用
 消費者金融
 利息制限
 年利と日歩との関係
 販売信用
 販売信用の基本ユニットとその応用
 自社割賦
 ローン提携販売
 個別信用購入あっせん
 ローン提携販売の再構成
 販売信用の展開のまとめ
 貸主の担保責任
 消費貸借の終了




返還の時期
返還時期の合意と要件事実論
返還不能の場合の借主の責任
出世払い契約の解釈
2015/1/16
 参考文献
 参考判例
 参考図書
Lecture on Contracts
160
消費貸借契約
要物契約としての消費貸借
 要物契約としての消費貸借
 諾成契約としての消費貸借
1.
2.
3.
4.
 消費貸借契約の効力(貸主の担保責任)
 返還の時期と効果


 売買と消費貸借の結合としての消費者信用
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
要物契約とはどのような契約か?
消費貸借契約の書面はどのような形態をとるのか?
無償でも有償でも片務契約なのはなぜか?
要物契約とすることが,不合理である理由は何か?
161
2015/1/16
貸金の交付前に作成される公正証書は有効か?
貸金の交付前に行われる抵当権の設定登記は有効か?
Lecture on Contracts
162
27
Lecture on Contracts
2015/1/16
消費貸借の意義と性質
 第587条(消費貸借)
 片務契約
 消費貸借は,当事者の一方
が種類,品質及び数量の同
じ物をもって返還をすること
を約して相手方から金銭そ
の他の物を受け取ることに
よって,その効力を生ずる。
 無償契約(無利子)の場合
 無償契約の場合に,片務契約であ
ることはよくある。例えば?
 贈与,使用貸借などもそうである。
 目的物の授受があるまで,
契約は成立しない。
 目的物の交付を受けてから,
返還合意としての借用書が
作成されることになる。
163
 貸付前の抵当権の設定登記の無効
 要物契約だとすると,貸付に先立って行わ
れる抵当権の設定登記も無効となるはず。
 他の一方が或る時期後に同数量
及び同品質の物を返還する義務
を負担する契約なり。
 被担保債権が未成立のため,抵当権も付
従性によって成立しないからである。
→大判明38・12・6民録11輯1653頁は,付従
性を緩和することによって正当化している。
 債権法改案[3.2.6.011 ](消費貸借
の定義)
 消費貸借契約の予約の無意味
 消費貸借とは,当事者の一方(貸
主)が,相手方(借主)に,金銭その
他の物を引き渡す義務を負い,
 消費貸借契約が要物契約だとすると,消費
貸借契約の予約(民法589条)は,無意味と
なってしまう。
 借主が,引渡しを受けた物と種類,
品質および数量の同じ物をもって
返還する義務を負う契約である。
その後は,借主が,元本等を返
還する義務が残るだけである。
Lecture on Contracts
 要物契約だとすると,貸付に先立って行わ
れる公正証書の作成は無意味となるはず。
→大判昭8・3・6民集12巻325頁は同一性の
議論を持ち出して,正当化に努めている。
 消費貸借は,当事者の一方が代
替物の所有権を他の一方に移転
し,
要物契約であるため,契約成立
の時点で貸主はやるべきことを
全て終えているからである。
 諾成契約ではないので,契
約書は意味を持たない。
 貸付前に作成される公正証書の無意味
 旧民法においても,また,債権法改正
(案)においても,消費貸借契約は,諾
成契約である。
 旧民法財産取得編第78条
 有償契約(有利子)の場合
 有償契約にもかかわらず,片務契約
であるのは,消費貸借に限られる。
 その理由は?
 要物契約
2015/1/16
要物契約とすることの非合理
2015/1/16
 予約完結権を行使しても,目的物の交付が
ない限り,契約が成立しないのであれば,
予約をする意味がないからである。
Lecture on Contracts
164
消費貸借契約の予約
 第589条(消費貸借の予約と破産
手続の開始)
 新しい考え方
 要物契約の予約か,諾成契約の予約か?
 消費貸借の予約は,その後に当
事者の一方が破産手続開始の
決定を受けたときは,その効力
を失う。
諾成契約としての消費貸借
 要物契約の予約だとすると,予約を
する意味がない。
 予約が意味を持つのは,予約完結
権の行使によって,本契約が性質す
る場合のみである(民法556条)。
 通説の見解と問題点
1.
2.
3.
4.
 消費貸借契約は要物契約であ
るから,本契約を成立させるた
めには,予約を完結させるだけ
では足りず,目的物の交付も必
要としている。
 しかし,民法556条は,予約を本
契約とするには,予約完結権の
行使で足りるとしており,通説は,
予約の定義に反することになる。
消費貸借の予約とは?
準消費貸借とは?
割賦販売は特殊な売買か?
割賦販売は準消費貸借か?
2015/1/16
Lecture on Contracts
165
要物契約
従来通り
諾成契約
消
費
貸
借
契
約
贈与の準用
債権者保護
有償
諾成契約
166
 割賦販売契約
 消費貸借によらないで金銭
その他の物を給付する義務
を負う者がある場合におい
て,当事者がその物を消費
貸借の目的【物】とすること
を約したときは,消費貸借は,
これによって成立したものと
みなす。
債権者保護
の実現
公正証書の
有効
抵当権の
有効
 典型例
 売買代金を直ちに支払わず
に借金とし,それに利息・担
保をつける場合など。
融資の確保
KAGAYAMA Shigeru
 しかし,有償の消費貸借契約は,諾
成の消費貸借契約と解すると,予約
に意味があることになる。
Lecture on Contracts
 第588条(準消費貸借)
債権者保護
の実現
予約の有効
Lecture on Contracts
 無償の消費貸借契約は要物契約で
あり,予約は無意味である。
→割賦販売の基本ユニット
債務者保護
2015/1/16
 消費貸借契約には,要物契約と諾成契約
が併存するのか?
準消費貸借と割賦販売との関係
消費貸借契約の再構成
無償
2015/1/16
 したがって,消費貸借契約の予約と
は,諾成的消費貸借契約の予約と考
えるべきである。
167
2015/1/16
Lecture on Contracts
 売買の場合,本来は,目的物
の引渡と代金の支払いは,同
時履行の関係にある。
 しかし,割賦販売の場合,割賦
代金の支払を準消費貸借によ
るものであると考えると,売買
はすでに完結しているので,所
有権が即時に移転すると考え
る当事者の意思に合致する。
 また,代金債権は,準消費貸
借(被担保債権)として残るの
で,売主の所有権留保(割賦
販売法7条)を担保的に構成す
ることにも適合的である。
168
28
Lecture on Contracts
2015/1/16
所有権留保の担保的構成
所有権留保の理論構成
割賦販売の基本ユニット
割賦販売の基本ユニット
所有権留保に関する従来の見解
所有権留保の担保的構成
所有権的構成
 買主が売買代金を完済まで,所有
権は,売主に留保されると考える。
 目的物の引渡と同時に所有権
は,売主から買主に移転する。
 目的物が売主から買主に引き渡さ
れた後も,売主が,完全な所有権
を有する。
 売主は,所有者ではなく,担
保権としての譲渡担保権者に
過ぎない。
 買主は,代金完済を停止条件とす
る,条件付権利(民法128条,129
条)を有しているに過ぎない。
 買主は,売主の残代金債権
(準消費貸借)を被担保債権と
して,目的物に譲渡担保を設
定する。
 代金が支払われないときは,売主
は,所有権に基づいて,目的物を
引き揚げ,処分することができる。
 理論的には,この構成も可能だが,
当事者の意思には反する。
2015/1/16
 代金が支払われないときは,
売主は,譲渡担保権を実行し
て,売買残代金を優先的に回
収することができる。
Lecture on Contracts
169
担保(譲渡担保)的構成
契約後・代金完済までの所有権
売主:所有者
買主:条件付権利者
契約後・代金完済までの所有権
売主:譲渡担保権者
代金債権の性質
代金債権の性質
売主=債権者
(先取特権)
買主:所有者
買主=債務者
売主:債権者
(譲渡担保権者)
買主:債務者
(譲渡担保設定者)
代金不払の場合
代金不払の場合
売主が所有権に基づき処分する
売主が譲渡担保権を実行する
2015/1/16
Lecture on Contracts
170
消費貸借の貸主の担保責任
 第590条(貸主の担保責任)
消費貸借の効力
 ②無利息の消費貸借において
は,借主は,瑕疵がある物の価
額を返還することができる。この
場合において,貸主がその瑕疵
を知りながら借主に告げなかっ
たときは,前項の規定を準用す
る。
1. 無利子の消費貸借の効力は?
2. 利子付の消費貸借の効力は?
2015/1/16
Lecture on Contracts
 有償消費貸借契約の例外か?
 ①利息付きの消費貸借において,
物に隠れた瑕疵があったときは,
貸主は,瑕疵がない物をもって
これに代えなければならない。こ
の場合においては,損害賠償の
請求を妨げない。
171
2015/1/16
 消費貸借契約は,有償・無償を
問わず,片務契約とされている。
 ところが,貸主が担保責任を負
うということになると,双務契約と
同様の効果が生じることになる。
 しかし,消費貸借は,金銭の消
費貸借契約がほとんどであるた
め,「隠れた瑕疵」が生じること
はないので,現実には,問題は
生じないといってよい。
 したがって,有償の消費貸借契
約は,片務契約と解することが
なお可能である。
Lecture on Contracts
172
消費貸借の返還の時期
 兄弟規定
 第591条(返還の時期)
消費貸借の終了
1.
2.
消費貸借契約はいつ終了するのか?
消費貸借の終了の効果は?
3.
要件事実論は,これまで,「弁済期の合意」をどのよう
に扱ってきたか?
4.
現在の要件事実論は,「弁済期」の合意をどのように
扱っているか?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 第666条(消費寄託)
 ①当事者が返還の時期を定
めなかったときは,貸主は,
相当の期間を定めて返還の
催告をすることができる。
 ②借主は,いつでも返還をす
ることができる。
 1項の関連規定
 ②前項において準用する第
591条第1項〔返還の時期・貸
主による返還の催告〕の規定
にかかわらず,前項の契約に
返還の時期を定めなかったと
きは,寄託者は,いつでも返
還を請求することができる。
 2項の関連規定
 第136条(期限の利益及びその
放棄
 親規定
 第412条(履行期と履行遅滞)
③債務の履行について期限を
定めなかったときは,債務者は,
履行の請求を受けた時から遅
滞の責任を負う。
173
2015/1/16
Lecture on Contracts
 ①期限は,債務者の利益のた
めに定めたものと推定する。
 ②期限の利益は,放棄するこ
とができる。ただし,これに
よって相手方の利益を害する
ことはできない。
174
29
Lecture on Contracts
2015/1/16
「弁済期の合意」に関する要件事実論
履行不能の場合の価額返還
学問のマナーに反する「あり得ない」記述
司法研修所
『改訂 問題研究 要件事実』(2006)
司法研修所
『新問題研究 要件事実』(2011)
 弁済期の合意は消費貸借契約の  当事者間に貸金の返還時期についての
成立にとって本質的な要素となる
合意がない場合には,貸主は相当の期
ため,消費貸借契約の成立を主
間を定めて返還の催告をすることができ
張するためには,①金銭の返還
るとされており(民法591条1項),これに
合意,②金銭の交付のほか,③
よれば,貸主が借主に返還の催告をし,
弁済期の合意が必要になります
その後相当期間が経過することによって,
(41頁)。→出世払い
貸金返還請求権が発生することになり
 消費貸借契約の当事者間で弁済
ます(39‐40頁)。
期の合意がされたのか否かが明
確でない場合には,契約当事者
 貸借型の契約である消費貸借契約につ
の合理的意思として弁済期を催
いては,本文に記載した見解と異なり,
告の時とするとの合意があったも
冒頭規定で定める成立要件のほかに,
のと解することになります(42頁)。
返還時期(弁済期)の合意が契約の成
立要件であるとする見解があります。
2015/1/16
Lecture on Contracts
175
 第592条(価額の償還)
 借主が貸主から受け
取った物と種類,品質
及び数量の同じ物を
もって返還をすることが
できなくなったときは,
その時における物の価
額を償還しなければな
らない。
 ただし,第402条第2項
〔債権の目的物である
特定の種類の通貨が弁
済期に強制通用の効力
を失っているとき〕に規
定する場合は,この限
りでない。
2015/1/16
 親規定
 第402条(金銭債権1)
 ①債権の目的物が金銭であるときは,債務者は,
その選択に従い,各種の通貨で弁済をすること
ができる。ただし,特定の種類の通貨の給付を
債権の目的としたときは,この限りでない。
 ②債権の目的物である特定の種類の通貨が弁
済期に強制通用の効力を失っているときは,債
務者は,他の通貨で弁済をしなければならない。
③前2項の規定は,外国の通貨の給付を債権の
目的とした場合について準用する。
 親規定の特別法
 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律
 第7条(法貨としての通用限度)
 貨幣は,額面価格の20倍までを限り,法貨
として通用する。
Lecture on Contracts
176
出世払い契約の解釈
通説(有斐閣・法律学小辞典)
 出世(成功)したときに返済するとい
う約束つきの債務をいい,その借用
証書を出世証文という。
 成功しないときは支払う必要がない
という意味であれば,停止条件であ
るが,成功の時まで猶予され,成功
しないこと〔不能〕が確定した時に弁
済期が到来するという意味であれば,
不確定期限である。
 判例には,出世払特約付貸借を不
確定期限つきと解するものがかなり
多い(大判大正4・3・24民録21・439
等)が,具体的事情に即して当事者
の意思を判断して決定するのが妥
当である〔民127<1>・135<1>参照〕。
2015/1/16
加賀山説
 出世したときに再贈与するという,再贈
与の予約である。
消費者信用
 貸金だと,いつかは返さなければならない。
停止条件付消費貸借というのは,概念矛盾
である。
 しかも,出世払いを消費貸借契約であるとす
ることは,「出世したときだけに返す」という当
事者の意思に反する。
 当事者の意思を考慮すれば,最初に交付し
た金額は, 「ご祝儀」,「餞別」などであり,出
世しなければ返還の必要がないもの,すな
わち,贈与と考えるべきである。
 それでは,出世した時には返済するというの
は,いかなる意味か?
1.
2.
3.
消費者信用にはどのようなものがあるか?
サラ金は,どのように規制されているか?
信用販売にはどのようなものがあるか?
4.
消費者はクレジット会社に対して,抗弁を対抗できる
か?
 それは,出世したら,「内祝い」として,贈与を
受けた金額と同額を再贈与するという,「再
贈与の予約」と考えるべきであろう。
Lecture on Contracts
177
2015/1/16
Lecture on Contracts
178
法定利率
民法
 第404条(法
定利率)
消費者信用
1.消費者金融
1.
2.
利息について,民法・商法はどのような規定をおいているか?
出資法は,どのような利息制限規定を置いているか?
3.
サラ金業法は,どのような規定を置いていたか,そして,現在は,ど
のような規定となっているか?
利息制限法は利息についてどのような制限をしているか?
1.46倍とか,14.6%という不思議な数字は何に由来するのか?
4.
5.
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 利息を生ず
べき債権に
ついて別段
の意思表示
がないときは,
その利率は,
年5分とする。
商法
 第513条(利息請求権)
 ①商人間において金銭の消費貸借をしたと
きは,貸主は,法定利息(次条の法定利率
による利息をいう。以下同じ。)を請求するこ
とができる。
 ②商人がその営業の範囲内において他人
のために金銭の立替えをしたときは,その立
替えの日以後の法定利息を請求することが
できる。
 第514条(商事法定利率)
 商行為によって生じた債務に関しては,法定
利率は,年6分とする。
179
2015/1/16
Lecture on Contracts
180
30
Lecture on Contracts
2015/1/16
出資の受入れ,預り金及び金利等の
取締りに関する法律
 第5条(高金利の処罰)
 ①金銭の貸付けを行う者が,年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年
109.8パーセントとし,一日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合によ
る利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたと
きは,5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。当
該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者も,同様とする。
貸金業法
 第42条(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)
 ①貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借
の契約(手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法に
よって金銭を交付する契約を含む。)において,年109.5パー
セント(2月29日を含む1年については年109.8パーセントとし,
一日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合に
よる利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)
の契約をしたときは,
当該消費貸借の契約は,無効とする。
 ②前項の規定にかかわらず,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う
場合において,年20パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは,5年以下
の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。その貸付けに関し,
当該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を要求した者も,同様とす
る。
 ③前2項の規定にかかわらず,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う
場合において,年109.5パーセント(2月29日を含む一年については年109.8パーセント
とし,一日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息の契約を
したときは,10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科す
る。その貸付けに関し,当該割合を超える割合による利息を受領し,又はその支払を
要求した者も,同様とする。
2015/1/16
Lecture on Contracts
181
 ②出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律
第5条の4第1項から第4項までの規定は,前項の利息の契約
について準用する。
2015/1/16
Lecture on Contracts
利息制限
利息の元本充当と返還
 第2条(利息の天引き)
 利息制限法
 利息の天引きをした場合において,天
引額が債務者の受領額を元本として前
条に規定する利率により計算した金額
を超えるときは,その超過部分は,元
本の支払に充てたものとみなす。
 第1条(利息の制限)
 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は,その利
息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率に
より計算した金額を超えるときは,その超過部分について,
無効とする。
183
損害賠償額の予定の制限
 第4条(賠償額の予定の制限)
 ①金銭を目的とする消費貸借上の債
務の不履行による賠償額の予定は,
その賠償額の元本に対する割合が第
一条に規定する率の1.46倍を超える
ときは,その超過部分について,無効
とする。
 ②前項の規定の適用については,違
約金は,賠償額の予定とみなす。
 賠償額の予定の上限の計算
 元本10万円未満
29.2%
 元本10万円~100万円 26.28%
 元本100万円以上
21.9%
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 当該貸金業者は,同項の適用が
あるとの認識を有しており,かつ,
そのような認識を有するに至った
ことについてやむを得ないといえ
る特段の事情があるときでない限
り,
 民法704条の「悪意の受益者」で
あると推定される。
 制限超過部分の支払は,貸金業の規
制等に関する法律 43条1項にいう「債
務者が利息として任意に支払った」も
のということはできない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
184
不思議な倍率1.46, 109.5%の意味
利息制限法4条,7条 →日歩と年利
個人間の金銭消費貸借
 貸金業者が利息制限法1条1項所
定の制限を超える利息を受領した
が,その受領につき貸金業の規
制等に関する法律43条1項の適
用が認められない場合には,
 利息制限法所定の制限を超える約定
利息と共に元本を分割返済する約定の
金銭消費貸借において,
 ②債務者は,前項の超過部分を任意に支払ったときは,同
項の規定にかかわらず,その返還を請求することができない。
(←2010年削除)
Lecture on Contracts
 最二判平19・7・13民集61巻5号
1980頁
 最二判平18・1・13民集60巻1号1頁(百
選Ⅱ第55事件)
 一 元本の額が10万円未満の場合
年2割
 二 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
 三 元本の額が100万円以上の場合
年1割5分
2015/1/16
182
年利(%)と日歩(1万円借りて何円と読み替えてもよい)との関係
日歩(銭)
営業的金銭消費貸借
年利(%)
日歩(銭)
年利(%)
日歩(銭)
年利(%)
1
3.65
11
40.15
21
76.65
 第7条(賠償額の予定の特
則)
2
7.30
12
43.80
22
80.30
3
10.95
13
47.45
23
83.95
 ①第4条第1項の規定に
かかわらず,営業的金銭
消費貸借上の債務の不
履行による賠償額の予定
は,その賠償額の元本に
対する割合が年2割を超
えるときは,その超過部
分について,無効とする。
 ②第4条第2項の規定は,
前項の賠償額の予定に
ついて準用する。
4
14.60
14
51.10
24
87.60
5
18.25
15
54.75
25
91.25
6
21.90
16
58.40
26
94.90
7
25.55
17
62.05
27
98.55
8
29.20
18
65.70
28
102.20
9
32.85
19
69.35
29
105.85
10
36.50
20
73.00
30
109.50
185
 喫茶店で,300円の珈琲を毎日飲み続けると,1年でいくらになるか?
 109,500円 → 出資法5条, → 消費者契約法9条, → 利息制限法4条・7条
 1日140円(4,200/月)の通信料を払うと,1年でいくらになるか?
 51,100円
2015/1/16
Lecture on Contracts
186
31
Lecture on Contracts
2015/1/16
消費者契約法第9条の不思議な数字
年14.6パーセントの意味 → 日歩と年利
 二 当該消費者契約に基づ
き支払うべき金銭の全部又は
一部を消費者が支払期日(支
払回数が二以上である場合
には,それぞれの支払期日。
以下この号において同じ。)ま
でに支払わない場合における
損害賠償の額を予定し,又は
違約金を定める条項であって,
 これらを合算した額が,支払
期日の翌日からその支払をす
る日までの期間について,そ
の日数に応じ,当該支払期日
に支払うべき額から当該支払
期日に支払うべき額のうち既
に支払われた額を控除した額
に年14.6パーセントの割合を
乗じて計算した額を超えるも
の
 第9条(消費者が支払う損害賠償の
額を予定する条項等の無効)
 次の各号に掲げる消費者契約の条
項は,当該各号に定める部分につい
て,無効とする。

一 当該消費者契約の解除に
伴う損害賠償の額を予定し,又
は違約金を定める条項であって,
 これらを合算した額が,当該条
項において設定された解除の
事由,時期等の区分に応じ,当
該消費者契約と同種の消費者
契約の解除に伴い当該事業者
に生ずべき平均的な損害の額
を超えるもの
 当該超える部分
2015/1/16
 当該超える部分
Lecture on Contracts
187
第三者のためにする契約(条文)
第三者のためにする契約
万能の基本ユニット
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
第三者のためにする契約の典型例
第三者のためにする契約による債権譲渡
第三者のためにする契約による債務引受
第三者のためにする契約による保証契約
第三者のためにする契約による契約上の地位の譲渡
第三者のためにする契約による振込契約
第三者のためにする契約による組戻し
2015/1/16
Lecture on Contracts
188
第三者のためにする契約(典型例)
 第537条(第三者のためにする契約)
 第537条(第三者のた
めにする契約)
 ②前項の場合において,第
三者の権利は,その第三者
が債務者に対して同項の契
約の利益を享受する意思を
表示した時に発生する。
2015/1/16
 前条の規定により第三者の権
利が発生した後は,当事者は,
これを変更し,又は消滅させる
ことができない。
 第539条(債務者の抗弁)
 債務者は,第537条〔第三者の
ためにする契約〕第1項の契約
に基づく抗弁をもって,その契
約の利益を受ける第三者に対
抗することができる。
Lecture on Contracts
189
第三者のためにする契約による
債権譲渡の再定義
新債権者
X
旧債権者
A
譲渡
契約
新債権者
(受益者)
旧債権者
(要約者)
対価
関係
③債権譲渡
抗
弁
①
債
権
債
権
抗
弁
KAGAYAMA Shigeru
第三
者の
ため
にす
る契
約
債務者
(諾約者)
債務者
Y
2015/1/16
債
債
権
権
Lecture on Contracts
 典型例
1. 原因1:対価関係
債権者
(受益者)
 売主が,
その債権者に負って
いる債務を弁済するため,
2. 原因2:補償関係(契約関係)
 売主(要約者)と買主(諾約者)間
の約束で,
3. 結果:直接関係
 売買代金を買主から売主の債権
者(受益者)に直接支払わせるこ
とができる。
2015/1/16
売主
(要約者)
債権
債権
抗
弁
売
売
買
買
代
代
金
金
債
債
権
権
第三者
のため
にする
契約
当事者
買主
(諾約者)
Lecture on Contracts
190
わが国に債務引受の規定がない理由(1/3)
旧民法には規定があった
第三者のためにする契約を使った
債権譲渡
通常の債権譲渡
〔対価関係〕 契約により,当事者の一方〔要約者〕が,第三者〔受益者〕に対して,
〔補償関係〕 ある給付をすることを約したときは,その第三者は,
〔直接関係〕 債務者〔諾約者〕に対して,直接にその給付を請求する権利を有する。
対価関係
売主の
当事者
補償関係
 ①契約により当事者の一方
が第三者に対してある給付
をすることを約したときは,
その第三者は,債務者に対
して直接にその給付を請求
する権利を有する。
 第538条(第三者の権利
の確定)
191
 旧民法 財産編 第496条〔債務者の交替による更改〕
 ①債務者の交替に因る更改は,或は旧債務者より新債務者に為せ
る嘱託〔délégation〕に因り,或は旧債務者の承諾なくして新債務者
の随意の干渉〔l'intervention spontanée〕に因りて行はる。
 ② 嘱託には完全のもの有り,不完全のもの有り。
 ③第三者の随意の干渉〔l‘intervention spontanée d’un tiers〕は下に
記載する如く,除約〔novation par expromission〕又は補約〔simple adpromission〕を成す。
 この規定は,ボワソナードが,フランス民法典1274条(現行
民法514条本文に同じ)を参考にしつつも,フランスの学説・
判例によって発展した債務引受の制度(免責的債務引受,
併存的債務引受)を明文化した貴重な条文である。
2015/1/16
Lecture on Contracts
192
32
Lecture on Contracts
2015/1/16
わが国に債務引受の規定がない理由(2/3)
旧民法の規定はパーフェクトだった
干渉(債務者の交代)
嘱託(指図)
対価関係
債権者
債権
債権
わが国に債務引受の規定がない理由(2/2)
現行民法の起草者による重要規定の削除
 民法514条の立法理由
 立法の趣旨
対価関係
債務者
債権者
(受益者)
債権
抗弁
抗弁
補
償
関
係
債務者
(要約者)
補
償
関
係
 本条は既成法典財産編第496条第1項の規定に対当す。
 旧民法の規定の改正(「嘱託」等の重要性を認識できず)
 第三者の弁済の規定と調和する但書きの追加
新債務者
新債務者
 同条には嘱託〔délégation〕,除約〔novation par expromission〕又
は補約〔simple adpromission〕の如き新熟語を用いて学理的の説
明を為せども,是れ独り其用なきのみならず,頗る法典の体を失
するものなるを以て,改めて本条の如くしたり。
嘱
託
 本条の但書は諸国に例なき所なれども既に弁済の規定に於て之
に類似の法文〔民法474条2項〕を設けたるに因り,更改の場合に
も亦之を置きて二者の権衡を保たんことを欲したり。
(諾約者)
このように,旧民法では,2種類の債務引受が実現されている。現行民法の立法者
は,この点を理解できず,債務者の交代による更改を規定するに留めてしまった。
2015/1/16
Lecture on Contracts
193
2015/1/16
第三者のためにする契約による
債務引受の再定義
対価関係
債権者
債権
債権
債務者
債権
抗弁
補
償
関
係
債務者
(要約者)
債権者
195
2015/1/16
抗弁
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
196
新賃貸人が債務を引受け
(第三者のためにする契約によることで可能)
賃借人
(受益者)
受益者
(振込受取人)
旧賃貸人
(要約者)
使用収益
使用収益
対価関係
債務者
(振込指図人)
抗弁
預
金
債
権
債権
譲渡
契約
債務
引受
契約
(補償
関係)
新賃貸人
(譲受人)
新賃貸人
(諾約者)
Lecture on Contracts
197
振込
委託
(債権
譲渡)
抗
弁
諾約者
(被仕向銀行)
最二判昭46・4・23民集25巻3号388頁
賃貸人の地位の譲渡の場合,新所有者に義務の承継を認めることが賃借人にとって
有利であるから,賃借人の承諾を必要とせず,旧所有者と新所有者間の契約をもって
これをなすことができる。
2015/1/16
保証人
(諾約者)
振込契約の理論構成
対価関係
債権譲渡通知
債務者
(要約者)
抗弁
付従性の抗弁
保証人
(諾約者)
契約上の地位の譲渡
賃料債権
賃料債権
債権者
債権
履行請求権
(受益者)
第三
者のた
めにす
る契約
(書
面)
同一当事者間の契約で権利と義務を同時に移転する方法の解明
旧賃貸人
(債権者)
債務者
抗弁
第三
者の
ため
にす
る契
約
補
償
関
係
Lecture on Contracts
旧賃貸人が権利を譲渡
(通常の債権譲渡によることで可能)
債権
(主たる債務)
新債務者
新債務者
賃借人
(債務者)
第三者のためにする契約による
保証契約
通常の保証契約
対価関係
債権者
(受益者)
抗弁
2015/1/16
194
第三者のためにする契約による
保証契約の再定義
第三者のためにする契約による
債務引受
通常の債務引受
Lecture on Contracts
2015/1/16
振込金支払委託
(債務引受)
Lecture on Contracts
要約者
(支払指図人)
(仕向銀行)
198
33
Lecture on Contracts
2015/1/16
誤振込事件の分析
誤振込の組戻しの理論構成
最二判平8・4・26 民集50巻5号1267頁
対価関係
Xの
債権者
債務者
振込指
図人X
抗
弁
諾約者
D銀行
丙支店
対価関係
預
金
債
権
預
金
債
権
誤
振
振
込
込
委
委
託
託
要約者
A銀行
甲支店
支払
委託
誤振込
受取人
C
なし
最二判平8・4・26 民集50巻5号1267頁
債権
Cの
債権者
Y
対価関係
預
金
債
権
諾約者
D銀行
丙支店
支払
委託
全銀ネット口座
2015/1/16
対価関係
債務者
振込指
図人X
差押え
諾約者
A銀行
乙支店
支払
委託
Xの
債権者
誤振込
受取人
C
なし
預
金
債
権
誤組
振戻
込委
委託
託
要約者
A銀行
甲支店
債権
Cの
債権者
Y
差押え
諾約者
A銀行
乙支店
組戻
引受
全銀ネット口座
Lecture on Contracts
199
2015/1/16
Lecture on Contracts
200
販売信用の類型
割賦販売法2条
消費者信用
包括信用購入
あっせん
(クレジットカード
取引)
(2条3項)
2.販売信用
1.
2.
3.
割賦販売とはどのような契約か?
ローン提携販売とは?
個別信用購入あっせんとは?
4.
消費者が販売店に対して有している抗弁はクレジット
会社に対して対抗できるか?
総合信用購入あっせん(クレジットカード取引)とは?
5.
2015/1/16
(自社)割賦
販売
(2条1項)
201
目的物
目的物
②
割
賦
代
金
支
払
い
買主
B
抗
弁
Simultaneous performance
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
割
賦代
代金
金債
債権
権
割
賦
販
売
契
約
目的物
目的物
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
所
有
権
留
保
金融機関
C
売主
A
④貸金の
履行請求
売
売
買
買
代
代
金
金
債
債
権
権
買主
B
抗
弁
③
一
括
弁
済
売
買
契
約
目的物
目的物
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
買主
B
Buy now, pay later.
203
2015/1/16
Lecture on Contracts
所
有
権
留
保
①引渡し
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
202
②保証人
売主
A
①引渡し
売
買
契
約
Lecture on Contracts
割賦販売の基本ユニット
①引渡し
①
代 代代
金 金金
支 債債
払 権権
い
2015/1/16
割賦販売の基本ユニットの応用(1/5)
ローン提携販売(1)割賦販売? →基本
割賦販売と通常の売買との比較
→割賦販売と準消費貸借との関係; →クレジット販売; →ローン提携販売
売主
A
信用購入あっせん
(2月以上なら1回払でも可)
販売信用
Lecture on Contracts
通常の売買契約
ローン提携
販売
(2条2項)
個別信用購入
あっせん
立替払い・クレ
ジット販売
(2条4項)
 従来の考え方に
よると,ローン提
携販売は,経済
的には,割賦販
売と同じ効果を
生じるが,法律
的には,売買と
消費貸借契約と
の組み合わせに
過ぎないとしてき
た。
 しかし,これでは,
金を借りて,売買
契約をしたのと
同じであり,これ
を割賦販売とし
て扱うことは困難
である。
204
34
Lecture on Contracts
2015/1/16
割賦販売の基本ユニットの応用(2/5)
クレジット販売(三当事者契約)→基本
③債権売買代金
信販会社
C
売主
A
②債権売買
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
所
有
権
留
保
買主
B
抗
弁
2015/1/16
Lecture on Contracts
205
③債権売買代金支払
(受益の意思表示)
売主
A
信販会社
C
割
割
賦
賦
代
代
金
金
債
債
権
権
②
債
権
譲
渡
契
約
①
割
賦
販
売
契
約
目的物
目的物
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
所
有
権
留
保
①引渡し
割
賦
販
売
契
約
①引渡し
割
賦
割
代
賦
金
代
債
金
権
目的物
目的物
 この契約形態は,
割賦販売の一
種と考えること
が容易である。
 しかし,割賦販
売と債権売買が
別々の契約とみ
なされ,抗弁の
切断を正当化す
るおそれがある。
 最高裁も,特別
法が適用されな
い場合に,抗弁
の切断を認めて
いる(最三判平
2・2・20判タ731
号91頁,判時
1354号76頁)。
割賦販売の基本ユニットの応用(3/5)
クレジット販売(第三者のためにする契約)→基本
買主
B
抗
弁
2015/1/16
 同じ契約でも,
「第三者のため
にする契約」の
構成によると,状
況が変わってくる。
 第1に,割賦販売
も債権売買も同
一当事者間の契
約となる。
 第2に,信販会社
は,契約当事者
ではなくなる。
 第3に,明文の規
定によって,信販
会社は,抗弁の
対抗を受けること
になる(最高裁判
決の克服)。
Lecture on Contracts
206
割賦販売の基本ユニットの応用(4/5)
割賦販売の基本ユニットの応用(5/5)
ローン提携販売(2)(三者契約)→基本
ローン提携販売(3)(第三者のためにする契約)→基本
③買主経由
売主への融資
金融機関
C
②保証人
売主
A
割
賦
販
売
契
約
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
買主
B
抗
弁
2015/1/16
所
有
権
留
保
Lecture on Contracts
207
販売信用の展開 →基本
③債権売買
代金支払い
金融機関
C
②将来資力
の担保
売主
A
履行請求
割
賦
割
代
賦
金
代
債
金
権
抗
弁
2015/1/16
Lecture on Contracts
メンバー契約
受益者・債権者
(アクワイアラー)
(Aeon Credit)
売買と金銭消費貸借の結合→
債権売買,売主の資力担保必須
(民法569条2項)
②
代
金
支
払
KAGAYAMA Shigeru
209
2015/1/16
メンバー契約
③債権売買
④代金支払
加盟店
契約
(対価
関係)
要約者
(加盟店)
売主
一括立替払いの委託→
債権売買,売主の資力担保不要
(民法569条1項)
Lecture on Contracts
208
クレジットカード
国際ブランド
クレジット販売
2015/1/16
所
有
権
留
保
(Visa MasterCard, etc.)
(Visa, MasterCard, etc.)
ローン提携販売
三当事者(クレジット会社)
引
引
渡
渡
請
請
求
求
権
権
 ローン提携販売を実質
的な売主への融資と考
え,かつ,「第三者のた
めにする契約」のとして
構成することができる。
 第1に,割賦販売も債
権売買も同一当事者
間の契約となる。
 第2に,明文の規定に
よって,金融機関は,
抗弁の対抗を受けるこ
とになる。
 第3に,金融機関は,
契約当事者ではない
が,買主に対する直接
の権利と売主に対して,
債権売買の担保責任
を追及できる。
クレジットカード契約の理論構成
特殊の売買→準消費貸借
(民法588条)
三当事者(銀行の介入)
割
賦
販
売
契
約
買主
B
自社割賦販売
二当事者
債
権
譲
渡
契
約
目的物
目的物
①引渡し
賦
割
代
賦
金
代
債
金
権
目的物
目的物
①引渡し
②債権売買
資力担保
履行請求 割
 ローン提携販売
を実質的な売主
への融資と考え,
債権売買として
構成すると,割
賦販売の一種と
考えることが容
易である。
 しかし,割賦販
売と債権売買が
別々の契約とみ
なされ,抗弁の
切断を正当化す
るおそれがある。
新債権者
(イシュアー)
(三井住友カード)
カード
会員
契約
代金 代金債権
債権
①債権売買
第三者のためにする契約
Lecture on Contracts
⑤
代
金
支
払
諾約者
(カード利用者)
買主
210
35
Lecture on Contracts
2015/1/16
クレジットカード契約における
チャージ・バックの理論構成
参考文献
クレジットカード
国際ブランド
参考判例
(Visa, MasterCard, etc.)
メンバー契約
新々債権者
③再譲渡
(アクワイアラー)
④代金返戻
(Aeon credit)
⑤
代
金
返
戻
加盟店
契約
(対価
関係)
債務者
(加盟店)
売主
新債権者
(イシュアー)
①返還債権
の譲渡
返還請求
返還請求
売買契約の解除等
2015/1/16

(三井住友カード)
カード
会員
契約


債権者
(カード利用者)
買主
2015/1/16
 最二判平19・7・13民集61巻5号
1980頁
 貸金業者が利息制限法1条1項
所定の制限を超える利息を受領
したが,その受領につき貸金業
の規制等に関する法律43条1
項の適用が認められない場合に
は,当該貸金業者は,同項の適
用があるとの認識を有しており,
かつ,そのような認識を有する
に至ったことについてやむを得
ないといえる特段の事情がある
ときでない限り,民法704条の
「悪意の受益者」であると推定さ
れる。
Lecture on Contracts
213
2015/1/16
過払金の充当と返還
販売信用

211
旧債務と準消費貸借条
の債務との同一性
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
消費者金融

過払い金の元本充当と返還請求
 利息制限法所定の制限を超える約
定利息と共に元本を分割返済する
約定の金銭消費貸借において,
 債務者が,元本又は約定利息の支
払を遅滞したときには当然に期限の
利益を喪失する旨の特約の下で,利
息として上記制限を超える額の金銭
を支払った場合には,
 債務者において約定の元本と共に
上記制限を超える約定利息 を支払
わない限り期限の利益を喪失すると
の誤解が生じなかったといえるよう
な特段の事情のない限り,
 制限超過部分の支払は,貸金業の
規制等に関する法律 43条1項にい
う「債務者が利息として任意に支
払った」ものということはできない。
準消費貸借

②
代
金
返
金
Lecture on Contracts
 最二判平18・1・13民集60巻1号1頁
(百選Ⅱ第55事件)
参考図書
 最高裁判例一覧(年
代順)
メンバー契約
割賦販売と抗弁の対抗
Lecture on Contracts
212
売買代金債務と準消費貸借上の債務との
同一性の判断基準
 大判昭8・2・24民集12巻265頁
 当事者が既存債務に付,所謂準
消費貸借契約を為したる場合に
於て,常に必ず旧債務を消滅せ
しめ,新債務を発生せしむるもの
と謂ふを得ず。
 或は,債務の同一性は之 を維持
しつつ,単に消費貸借の規定に
従はしめんとするに止まることあ
り。
 其の孰れに属すべきかは一に契
約当事者の意思を解釈して決せ
らるべきものとす。
2015/1/16
 最二判昭62・2・13判時
1228号84頁
 売買代金債務を目的と
する準消費貸借契約が
締結された場合であっ
ても,売主が自己の所
有権移転登記手続債務
につき売買契約に基づ
いて有していた同時履
行の抗弁権を失わない
とされた事例
Lecture on Contracts
割賦販売に関する判例(1/2)
割賦販売に関する判例(2/2)
→クレジット販売図1,図2
→クレジット販売図1,図2
 最三判平2・2・20判タ731号91頁,判時1354号76
頁
 割賦販売法30条の4第1項新設前の個品割賦
購入あっせんにおける売買契約上の抗弁とあっ
せん業者に対する対抗の可否(否定)
 購入者が割賦購入あっせん業者(以下「あっせん
業者」という。)の加盟店である販売業者から証票
等を利用することなく商品を購入する際に,あっ
せん業者が購入者との契約及び販売業者との加
盟店契約に従い販売業者に対して商品代金相当
額を一括立替払し,購入者があっせん業者に対し
て立替金及び手数料の分割払を約する仕組みの
個品割賦購入あっせんは,法的には,別個の契
約関係である購入者・あっせん業者間の立替払
契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提と
するものであるから,
 両契約が経済的,実質的に密接な関係にあるこ
とは否定し得ないとしても,購入者が売買契約上
生じている事由をもって当然にあっせん業者に対
抗することはできないというべきであり,
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 昭和59年法律第49号(以下「改正法」という。)
による改正後の割賦販売法30条の4第1項の規
定は,法が,購入者保護の観点から,購入者に
おいて売買契約上生じている事由をあっせん業
者に対抗し得ることを新たに認めたものにほか
ならない。
 したがって,右改正前においては,
 購入者と販売業者との間の売買契約が販売業
者の商品引渡債務の不履行を原因として合意
解除された場合であっても,購入者とあっせん
業者との間の立替払契約において,かかる場合
には購入者が右業者の履行請求を拒み得る旨
の特別の合意があるとき,又はあっせん業者に
おいて販売業者の右不履行に至るべき事情を
知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実
行したなど右不履行の結果をあっせん業者に帰
せしめるのを信義則上相当とする特段の事情
があるときでない限り,購入者が右合意解除を
もってあっせん業者の履行請求を拒むことはで
きないものと解するのが相当である。
Lecture on Contracts
215
214
 最三判平23・10・25民集65巻7号3114頁
 個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契
約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,
 販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手
続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為に
ついてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,
 販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰
せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定
することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,
 売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替
払契約が無効となる余地はない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
216
36
Lecture on Contracts
2015/1/16
使用貸借契約 目次
 使用貸借の特色
 使用貸借の終了
 使用貸借の意義と特色





 使用貸借の効力
 使用貸借と賃貸借との比較
 貸借型契約としての返還合
意
 借主の使用収益権とその制
限
 借主の費用負担
 貸主の担保責任
期間満了と解約告知
債務不履行解除
収去の権利と義務
借主の死亡
除斥期間
使用貸借契約
 第1節 無償契約の特色
 参考文献
 第2節 使用貸借の効力
 参考判例
 クレジット契約判例1
 クレジット契約判例2
 第3節 使用貸借の終了
 参考図書
2015/1/13
Lecture on Contract
217
2015/1/13
Lecture on Contract
218
使用貸借契約の意義と性質
 第593条(使用貸借)
使用貸借の特色
 無償契約
 民法596条は,贈与の担保責任の規定
(民法551条)を準用している。
 使用貸借は,当事者の一方が無償で使
用及び収益をした後に返還をすることを
約して相手方からある物を受け取ることに
よって,その効力を生ずる。
 要物契約とされているが,諾成契約であ
る贈与の規定が準用されている。
 その理由は? 何が共通なのか?
 典型例は?
 書面によらない贈与契約は,履行が終わ
るまで(目的物の引渡があるまで)は,撤
回できるとされている(民法550条)。
 友人や図書館から本を借りるなど。
 貸借型契約(消費貸借などと共通)
 このことは,目的物の引渡によって,はじ
めて,契約が成立するとされる使用貸借契
約と類似している。
 消費貸借,寄託と並んで,使用貸借契約も,
無償の諾成契約として再構成される予定
である→債権法改正案([3.2.5.01))
 貸借型契約の必須の要素は?
 返還合意であり,返還の時期につい
ては,民法597条で規定されている。
 継続的契約関係が生じる。
1. 使用貸借の特色は何か?
2. 契約はいつ成立するか?
3. 書面はどのようなものになるか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
 要物契約
 片務契約
 要物契約である理由は?
 契約の拘束力は,無償の場合には
緩和されるべきであるとの考え方に
求められる。
→無償契約
219
2015/1/16
 片務契約である理由は?
 要物契約とされているため,貸主は,契約
成立の時点で,やるべきこと(目的物の引
渡)をすでに行っているから。
 無償契約で担保責任も負わないから。
Lecture on Contracts
220
使用貸借と賃貸借との比較
使用貸借
賃貸借
借主の費用負担
必要費負担,有益費償還(民法595条)
必要費,有益費ともに償還(民法608条)
貸主の担保責任
担保責任なし(民法596条)
使用貸借の効力
担保責任あり(民法559条)
貸主の修繕義務
修繕義務なし
修繕義務あり(民法606条)
第三者に対する対抗力
対抗力なし(地震売買)
登記による対抗力あり(民法605条)
1. 使用貸借の借主は使用も収益もできるのか?
2. 借主の注意義務はどのようなものか?
3. 貸主は,どのような義務を負うか?
更新の推定
更新の推定なし
更新の推定あり(民法619条)
貸主死亡の場合の契約関係の継続
借主の死亡によって終了(民法599条)
借主の相続人が承継する
借地借家法の適用
適用なし(借地借家法2条1号)
適用あり(借地借家法2条1号)
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
221
2015/1/16
Lecture on Contracts
222
37
Lecture on Contracts
2015/1/16
貸借型契約としての返還合意
使用貸借の規定を準用した後の
賃貸借の規定(賃貸借契約の再定義)
 使用貸借の規定には,返還合意に関する規定が存在する。
 しかし,賃貸借の規定には,返還合意の規定が存在しない。
 そこで,賃貸借の規定は,使用貸借の規定を準用している。
使用貸借
 使用貸借は,当事者の一方が無償で使用及び収
益をした後に返還をすることを約して相手方から
ある物を受け取ることによって,その効力を生ず
る。
 賃貸借は,当事者の一方がある物の使
用及び収益を相手方にさせることを約し,
 賃貸借は,当事者の一方がある物
の使用及び収益を相手方にさせる
ことを約し,相手方がこれに対して
その賃料を支払うことを約すること
によって,その効力を生ずる。
 第597条(借用物の返還の時期)
 ①借主は,契約に定めた時期に,借用物の返還
をしなければならない。
 第616条(使用貸借の規定の準
用)
 ②当事者が返還の時期を定めなかったときは,借
主は,契約に定めた目的に従い使用及び収益を
終わった時に,返還をしなければならない。…
 相手方がこれに対してその賃料を支払う
ことを約することによって,その効力を生
ずる。
第616条(使用貸借の規定の準用)
 第594条第1項〔借主による使用及び収
益〕,第597条第1項〔借用物の返還の時
期〕及び第598条〔借主による収去〕の規
定は,賃貸借について準用する。
 第594条第1項〔借主による使用及
び収益〕,第597条第1項〔借用物の
返還の時期〕及び第598条〔借主に
よる収去〕の規定は,賃貸借につい
て準用する。
 ③当事者が返還の時期並びに使用及び収益の
目的を定めなかったときは,貸主は,いつでも返
還を請求することができる。
Lecture on Contracts
223
2015/1/16
借主の使用収益権とその制限
使用貸借
 ①借主は,契約又はその目的物の
性質によって定まった用法に従い
〔用法遵守義務〕,その物の使用及
び収益をしなければならない〔→善
管注意義務〕。
←賃貸借の場合にも準用される
(民法616条)。
 ②借主は,貸主の承諾を得なけれ
ば,第三者に借用物の使用又は収
益をさせることができない。
 ③借主が前2項の規定に違反して使
用又は収益をしたときは,貸主は,
契約の解除をすることができる〔解
約告知〕。
2015/1/16
 相手方がこれに対して
その賃料を支払うこと,
並びに,使用及び収益
をした後に,その物を
原状に復して返還する
ことを約することによっ
て,その効力を生ずる。
Lecture on Contracts
224
使用貸借
 第616条(使用貸借の規定の準用)
 第594条第1項〔借主による使用及び
収益〕,第597条第1項〔借用物の返
還の時期〕及び第598条〔借主による
収去〕の規定は,賃貸借について準
用する。
 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の
制限)




②買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは,売主は,
第196条〔占有者による費用の償還請求〕の規定に従い,その償還をし
なければならない。ただし,有益費については,裁判所は,売主の請求
により,その償還について相当の期限を許与することができる。
第196条(占有者による費用の償還請求)

 ②賃借人が前項の規定に違反して
第三者に賃借物の使用又は収益を
させたときは,賃貸人は,契約の解
除をすることができる。

225
①借主は,借用物の通常の必要費を負担する。
②第583条第2項〔買戻しの場合の費用償還請求権〕の規定は,前項の
通常の必要費以外の費用について準用する。
第608条(賃借人による費
用の償還請求)

第583条(買戻しの実行)


賃貸借

第595条(借用物の費用の負担)
 ①賃借人は,賃貸人の承諾を得な
ければ,その賃借権を譲り渡し,又
は賃借物を転貸することができない。
Lecture on Contracts
 賃貸借は,当事者の一
方がある物の使用及び
収益を相手方にさせる
ことを約し,
借主の費用負担→比較
賃貸借
 第594条(借主による使用及び収益)
賃貸借の再定義
 第601条(賃貸借)
 第601条(賃貸借)
 第601条(賃貸借)
 第593条(使用貸借)
2015/1/16
現行民法の賃貸借の定義
賃貸借
2015/1/16
①占有者が占有物を返還する場合には,その物の保存のために支出し
た金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし,
占有者が果実を取得したときは,通常の必要費は,占有者の負担に帰
する。
② 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費につ
いては,その価格の増加が現存する場合に限り,回復者の選択に従い,
その支出した金額又は増 価額を償還させることができる。ただし,悪意
の占有者に対しては,裁判所は,回復者の請求により,その償還につ
いて相当の期限を許与することができる。
Lecture on Contracts

①賃借人は,賃借物につ
いて賃貸人の負担に属す
る必要費を支出したとき
は,賃貸人に対し,直ちに
その償還を請求すること
ができる。
② 賃借人が賃借物につ
いて有益費を支出したと
きは,賃貸人は,賃貸借
の終了の時に,第196条
第2項〔占有者による有益
費の償還請求〕の規定に
従い,その償還をしなけ
ればならない。ただし,裁
判所は,賃貸人の請求に
より,その償還について相
当の期限を許与すること
ができる。
226
貸主の担保責任→比較
使用貸借
賃貸借
 第596条(貸主の担保責任)
 第559条(有償契約への準用)
 第551条〔贈与者の担保責任〕の
規定は,使用貸借について準用
する。
 第551条(贈与者の担保責任)
 ①贈与者は,贈与の目的【物】であ
る物又は権利の瑕疵又は不存在に
ついて,その責任を負わない。
 ただし,その有償契約の性質がこ
れを許さないときは,この限りでな
い。
 ①賃貸人は,賃貸物の使用及び
収益に必要な修繕をする義務を
負う。
 ②負担付贈与については,贈与者
は,その負担の限度において,売主
と同じく担保の責任を負う。
 ②賃貸人が賃貸物の保存に必要
な行為をしようとするときは,賃借
人は,これを拒むことができない。
KAGAYAMA Shigeru
1. 使用貸借はいつ終了するのか?
2. 使用貸借の終了の効果は?
3. 返還はどのようにするのか?
 第606条(賃貸物の修繕等)
 ただし,贈与者がその瑕疵又は不存
在を知りながら受贈者に告げなかっ
たときは,この限りでない。
2015/1/16
使用貸借の終了
 この節の規定は,売買以外の有
償契約について準用する。
Lecture on Contracts
227
2015/1/16
Lecture on Contracts
228
38
Lecture on Contracts
2015/1/16
契約の期間満了と解約告知
使用貸借
賃貸借
 第597条(借用物の返還の時期)

 〔期限を定又場合の期限の到来〕
 ①借主は,契約に定めた時期に,借用物
の返還をしなければならない。
 〔期限を定めなかった場合の目的の終了〕

 〔解約告知〕
 ただし,その使用及び収益を終わる前で
あっても,使用及び収益をするのに足りる
期間を経過したときは,貸主は,直ちに返
還を請求することができる。


①賃貸借の存続期間は,20年を超えることができない。契約で
これより長い期間を定めたときであっても,その期間は,20年と
する。

②賃貸借の存続期間は,更新することができる。ただし,その期
間は,更新の時から20年を超えることができない。
第619条(賃貸借の更新の推定等)
①賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益
を継続する場合において,賃貸人がこ れを知りながら異議を述
べないときは,従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をした
ものと推定する。この場合において,各当事者は,第617条〔期
間の定 めのない賃貸借の解約の申入れ〕の規定により解約の
申入れをすることができる。
第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)

①当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは,各当事者は,
いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては,
次の各号に掲げる賃貸借は,解約の申入れの日からそれぞれ
当該各号に定める期間を経過することによって終了する。

②収穫の季節がある土地の賃貸借については,その季節の後
次の耕作に着手する前に,解約の申入れをしなければならない。



 〔無理由解約告知〕
 ③当事者が返還の時期並びに使用及び
収益の目的を定めなかったときは,貸主は,
いつでも返還を請求することができる。
使用貸借
第604条(賃貸借の存続期間)

 ②当事者が返還の時期を定めなかったと
きは,借主は,契約に定めた目的に従い
使用及び収益を終わった時に,返還をしな
ければならない。
2015/1/16
契約の債務不履行解除
一 土地の賃貸借 1年
二 建物の賃貸借 3箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 1日
Lecture on Contracts
229
 ①借主は,契約又はその目的物の
性質によって定まった用法に従い
〔用法遵守義務〕,その物の使用及
び収益をしなければならない〔→善
管注意義務〕。
←賃貸借の場合にも準用される。
 ②借主は,貸主の承諾を得なけれ
ば,第三者に借用物の使用又は収
益をさせることができない。
 ③借主が前2項の規定に違反して使
用又は収益をしたときは,貸主は,
契約の解除をすることができる〔解
約告知〕。
2015/1/16
終了における収去の権利と義務
 第594条第1項〔借主による使用及
び収益〕,第597条第1項〔借用物の
返還の時期〕及び第598条〔借主に
よる収去〕の規定は,賃貸借につい
て準用する。
 借主の権利か義務か?
 民法598条は,借主の権利として構成さ
れているが,これは,借主の義務でもあ
ると解されている。
 その理由は?
 第593条(使用貸借)
 使用貸借は,当事者の一方が無償で使
用及び収益をした後に返還をすることを
約して相手方からある物を受け取ること
によって,その効力を生ずる。
2015/1/16
 民法は,賃貸借の冒頭条文で,返
還・原状回復を規定していない。
 そこで,民法616条で準用される民
法597条が返還義務・返還請求権
の根拠条文なっている。
 同じく,民法598条が,原状回復義
務・原状回復請求権についての根
拠条文となっている。
Lecture on Contracts
231
 第600条〔使用貸借の場合の損害賠償及
び費用の償還の請求権についての期間
の制限〕の規定は,賃貸借について準用
する。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 ②賃借人が前項の規定に違反して第三
者に賃借物の使用又は収益をさせたとき
は,賃貸人は,契約の解除をすることがで
きる。
230
賃貸借
 第896条(相続の一般的効力)
 相続人は,相続開始の時から,被相
続人の財産に属した一切の権利義
務を承継する。
 ただし,被相続人の一身に専属した
ものは,この限りでない。
2015/1/16
 借地借家法 第36条(居住用建物の賃貸
借の承継)
 ①居住の用に供する建物の賃借人が相
続人なしに死亡した場合において,その
当時婚姻又は縁組の届出をしていないが,
建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子
と同様の関係にあった同居者があるとき
は,その同居者は,建物の賃借人の権利
義務を承継する。
 ただし,相続人なしに死亡したことを知っ
た後1月以内に建物の賃貸人に反対の意
思を表示したときは,この限りでない。
 ②前項本文の場合においては,建物の賃
貸借関係に基づき生じた債権又は債務は,
同項の規定により建物の賃借人の権利
義務を承継した者に帰属する。
Lecture on Contracts
232
参考文献
 第600条(損害賠償及び費用の償還の  大判昭8・2・8民集
請求権についての期間の制限)
12巻60頁
 第621条(損害賠償及び費用の償還の
請求権についての期間の制限) 〔旧・
622条〕
 ①賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,
その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転
貸することができない。
賃貸借(借家)
 使用貸借は,借主の死亡によって,
その効力を失う。
貸主・借主の金銭債権の除斥期間
 契約の本旨に反する使用又は収益によっ
て生じた損害の賠償及び借主が支出した
費用の償還は,貸主が返還を受けた時か
ら1年以内に請求しなければならない。
 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の
制限)
Lecture on Contracts
 第599条(借主の死亡による使用貸
借の終了)
 賃貸借契約における原状回復は?
 使用貸借の冒頭条文である民法593条に
その答えが書かれている。
 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行
為をしようとする場合において,そのため
に賃借人が賃借をした目的を達すること
ができなくなるときは,賃借人は,契約の
解除をすることができる。
使用貸借
 第616条(使用貸借の規定の準用)
 借主は,借用物を原状に復して,これに
附属させた物を収去することができる。
 第607条(賃借人の意思に反する保
存行為)
借主の死亡→比較
賃貸借
使用貸借→返還合意
 第598条(借主による収去)
賃貸借
 第594条(借主による使用及び収益)
 民法第622条〔現
行民法621条〕,
第600条の規定
に依り,裁判上た
ると裁判外たると
を問はず,1年内
に請求するときは,
其の1年の経過に
因りて消滅するも
のに非ずと解す
べきものな〔り〕。
233
参考判例
参考図書
 判例一覧(項
目別・年代順)
 無償性の判断
 解約告知
2015/1/16
Lecture on Contracts
立法理由
教科書
コンメンタール
債権法改正
234
39
Lecture on Contracts
2015/1/16
無償性の判断
 最三判昭35・4・12民集14巻5号817頁
 大判昭10・3・28裁判例9民84頁
 当事者双方がそれぞれの所有土
地を交換的に返還時期の定めなく
無償で貸付ける契約について,
 特別の事情のない限り双方の土地
使用が互いに対価関係にあると
認めるのが相当であり,
 したがって,同契約は全般的に見
て無償契約とみることはできず,使
用貸借契約ではないと言わざるを
得ない。
 最一判昭26・3・29民集5巻5号177
頁
 家屋使用の対価としてその家屋の
留守管理をする旨の契約は,賃貸
借契約とはいえない。
2015/1/16
使用貸借の解約告知
 1畳あたり月1,000円で貸しうる6畳7畳2室を
借り受け使用(ただし7畳の方は家主と共
用)する間借人が毎月室代名義で1,000円ず
つを家主に支払 つていても,間借人が家主
の妻の伯父という関係にあるときは,右金員
は室使用の対価というよりは右関係に基づく
謝礼とみるのが相当で,右使用契約は賃貸
借 でなく使用貸借である。
 最一判昭41・10・28民集20巻8号1649
頁
 建物の借主が該建物を含む貸主所有の不
動産に賦課された固定資産税等の公租公課
の支払を負担する等原判示事実(原判決理
由参照)があるとしても,右負担が 建物の使
用収益に対する対価の意味をもつものと認
めるに足りる特段の事情のないかぎり,当該
貸借関係は使用貸借であると認めるのが相
当である。
Lecture on Contracts
235
 最三判昭34・8・18裁判集民事
37巻643頁
 最二判昭42・11・24民集21巻9号2460頁
 父母を貸主とし,子を借主として成立した返還時期
の定めがない土地の使用貸借であって,使用の目
的は,建物を所有して会社の経営をなし,あわせて,
右経営 から生ずる収益により老父母を扶養する等
判示内容のものである場合において,借主は,さし
たる理由もなく老父母に対する扶養をやめ,兄弟とも
往来をたち, 使用貸借当事者間における信頼関係
は地を払うにいたった等の事実関係があるときは,
民法第597条第2項但書を類推適用して,貸主は借
主に対し使用貸借を解約できるものと解すべきであ
る。
 所有家屋の焼失により住宅に
窮し,家屋を「他に適当な家屋
に移るまで暫くの間」住居とし
て使用するという目的で,無償
で借り受け,その6年5か月後
に貸主が使用貸借の終了を告
知した事案につき,解約告知に
よる家屋の返還請求が認めら
れた事例。
 適当な家屋を見付けるに必要
と思われる期間を経過した場
合には,たとえ現実に見付かる
以前でも民法597条2項但書に
よ り貸主において告知し得べ
きものと解すべきである。
2015/1/16
 最一判平11・2・25判時1670号18頁
 長年月(38年8ヶ月)の経過等の事情が認められる事
案において,借主には本件建物以外に居住するとこ
ろがなく,また,貸主には本件土地を使用する必要
等特別の事情が生じていないというだけでは,使用
収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事
情としては不十分である。
Lecture on Contracts
236
賃貸借 目次
 適法転貸
 賃貸人の直接訴権
 賃貸人の先取特権
 合意解除と契約関係の移転
 賃料支払い,損害防止
 賃貸借契約の意義と性質
 典型例(レンタル)
 賃貸借契約の定義
 貸借型から見た冒頭条文の欠陥
 賃貸借契約(民法60条)の再定義
 賃貸借契約の性質
 賃貸借契約の種類と適用される法
 賃貸借の存続期間
 期限の定めのない賃貸借の終了
 期限の定めのある賃貸借の終了
 賃貸借契約の対抗力
 解除の将来効
 除斥期間
 賃貸人・賃借人の破産と解除制限
 地震売買の意味と建物の保護
 賃貸人の権利・義務
 賃貸借の効力
 賃貸借の終了
 参考文献
 参考判例
 参考図書
 賃借人の権利・義務
 無断転貸・譲渡
 信頼関係破壊の法理
2015/1/16
 賃貸借契約の特色
 賃貸借契約の更新
 更新拒絶と正当事由
 賃貸借契約の効力
 修繕の権利と義務,費用償還
 賃貸人の担保責任
賃貸借契約
 賃貸借契約の終了
Lecture on Contracts
237
2015/1/16
Lecture on Contracts
238
賃貸借の典型例(レンタル)と
リース(三面関係)との相違点
賃貸借契約の性質
レンタル(賃貸借)
リース(ファイナンス)
目的物
1.
賃貸借契約の典型とはどのようなものか?
2.
貸借型契約全体から見た場合に,賃貸借契約の冒頭条文
(民法601条)にはどのような欠陥があるか?
民法601条は,どのように修正されるべきか?
賃貸借契約は,どのような特色を有しているか?
賃貸借契約には,どのような法律が適用されるか?
3.
4.
5.
6.
賃貸人が調達できる物(在庫品など)
期間
時間単位もあり(レンタカーなど)
長期もあり(不動産賃貸など)
賃貸借契約の種類によって,存続期間はどのように異なる
か?
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
耐用年数に相当
料金
相場による(計算式はない)
2015/1/16
何でもあり(サプライヤーから調達)
239
2015/1/16
(販売代金+手数料-残価)/月数
Lecture on Contracts
240
40
Lecture on Contracts
2015/1/16
貸借型契約という観点から見る
冒頭条文(601条)の欠陥
貸借型契約の全体像
消費貸借,使用貸借
 第587条(消費貸借)
 賃貸借は,当事者の一方
がある物の使用及び収益
を相手方にさせることを
約し,
 相手方から金銭その他の物を受け取
ることによって,その効力を生ずる。
 相手方がこれに対してそ
の賃料を支払うことを約
することによって,その効
力を生ずる。
 第593条(使用貸借)
 使用貸借は,当事者の一方が無償で
使用及び収益をした後に返還をする
ことを約して
2015/1/16
 相手方がこれに対してその
賃料を支払うことを約するこ
とによって,その効力を生ず
る。
 第616条(使用貸借の規定
の準用)
Lecture on Contracts
241
 第601条(賃貸借の再定義)
 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及
び収益を相手方にさせることを約し,
 相手方がこれに対してその賃料を支払うこと,
 並びに,使用及び収益をした後に,その物
を原状に復して返還することを約することに
よって,
 その効力を生ずる。
 第594条第1項〔借主による
使用及び収益〕,第597条第
1項〔借用物の返還の時期〕
及び第598条〔借主による収
去〕の規定は,賃貸借につい
て準用する。
 これまでの貸借型の条文と対
比して,賃貸借の条文には,
何か抜け落ちているものがあ
るのではないか?
 相手方からある物を受け取ることに
よって,その効力を生ずる。
 賃貸借の冒頭条文である民法601条には,
貸借型契約の不可欠の要素である「返還合
意」が欠けている。
 幸いにも,返還合意を規定している使用貸
借に関する民法597条1項,および,民法598
条を民法616条が準用している。
 そこで,民法616条によって,民法601条を以
下のように変更することができる。
 賃貸借は,当事者の一方が
ある物の使用及び収益を相
手方にさせることを約し,
 第601条(賃貸借)
 消費貸借は,当事者の一方が種類,
品質及び数量の同じ物をもって返還
をすることを約して
 民法601条の不備
 第601条(賃貸借)
賃貸借
2015/1/16
Lecture on Contracts
242
賃貸借契約(民法601条)の再定義
準用規定を補って条文を完成させる試み
消費貸借,使用貸借,賃貸借のすべてに「返還合意」を完備
(例)民法570条を完成させる
 第587条(消費貸借)
 消費貸借は,当事者の一
方が種類,品質及び数量
の同じ物をもって返還を
することを約して
 相手方から金銭その他
の物を受け取ることに
よって,その効力を生ず
る。
 第593条(使用貸借)
 使用貸借は,当事者の一
方が無償で使用及び収
益をした後に返還をする
ことを約して
 相手方からある物を受け
取ることによって,その効
力を生ずる。
2015/1/16
 第601条(賃貸借)←不備あり
 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用
及び収益を相手方にさせることを約し,
 相手方がこれに対してその賃料を支払うこ
とを約することによって,その効力を生ずる。
 第601条(賃貸借)(完成版)
 相手方がこれに対してその賃料を支払うこ
と,
 並びに,使用及び収益をした後に,その物
を原状に復して返還することを約すること
によって,
 その効力を生ずる。
243
賃貸借契約の性質
 第601条(賃貸借)(完成版)
 賃貸借は,当事者の一方が
ある物の使用及び収益を相
手方にさせることを約し,
 相手方がこれに対してその
賃料を支払うこと,並びに,
使用及び収益をした後に,そ
の物を原状に復して返還す
ることを約することによって,
その効力を生ずる。
 諾成契約
 賃貸人の目的物の引渡義務
 要物契約である使用貸
借契約の場合と異なり,
賃貸人は,目的物の引
渡義務を負う。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru

第570条(売主の瑕疵担保責任)←未完成
第570条(売主の瑕疵担保責
任)(完成版)

①売買の目的物に隠れた瑕
疵があった場合において,そ
のために契約をした目的を達
することができないときは,買
主は,契約の解除をすること
ができる。この場合において,
契約の解除をすることができ
ないときは,損害賠償の請求
のみをすることができる。

ただし,強制競売の場合は,
この限りでない。

②前項の場合において,契
約の解除又は損害賠償の請
求は,買主が事実を知った時
から1年以内にしなければな
らない。
第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責
任)
 ①売買の目的物が地上権,永小作権,地役権,留置権又は質
権の目的 【物】である場合において,買主がこれを知らず,か
つ,そのために契約をした目的を達することができないときは,
買主は,契約の解除をすることができる。 この場合において,
契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみ
をすることができる。
 ②前項の規定は,売買の目的【物】である不動産のために存す
ると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産につい
て登記をした賃貸借があった場合について準用する。
 ③前2項の場合において,契約の解除又は損害賠償の請求は,
買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
244
賃貸目的物と適用法(1/3:推論)
 有償・双務契約
民法
(1898)
 賃貸人の義務
 目的物引渡義務(民法601条)
 担保責任(民法599条)
 修繕義務(民法606条)
 賃借人の義務
 賃料支払い義務
 用法遵守義務(民法594条1項の準用)
借地借家法
借地借家法
農地法
(1921借家法)
(1921借地法)
(1952)
民法
(1898)
農地
駐車場等
建物の
所有を
目的と
する土地
 貸借型契約
 返還合意(欠落→補充の必要あり)
 返還時期
建物
 期間の定めがある場合(民法604条)
 期間の定めがない場合(民法617~619条)
 継続的契約
 対価後払いの原則(民法614条)
 信頼関係破壊の法理
 解除の効力の不遡及(民法620条)
Lecture on Contracts

 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第566条〔地上権
等がある場合等における売主の担保責任〕の規定を準用する。
ただし,強制競売の場合は,この限りでない。

 賃貸借は,当事者の一方がある物の使用
及び収益を相手方にさせることを約し,
Lecture on Contracts
瑕疵担保責任を規定している民法570条も,実は,不完全な条文である。
民法566条の条文で補って,完全な条文に直してみよう。
動産
245
2015/1/16
更地
土地
不動産
Lecture on Contracts
246
41
Lecture on Contracts
2015/1/16
賃貸目的物と適用法(2/3:確認)
民法
(1898)
賃貸目的物と適用法(3/3:復習)
借地借家法
借地借家法
農地法
(1921借家法)
(1921借地法)
(1952)
民法
(1898)
農地
駐車場等
建物の
所有を
目的と
する土地
更地
建物
民法
(1898)
動産
借地借家法
(1921借家法)
建物
建物所有
目的の土地
不動産
借地借家法
(1921借地法)
土地
土地
農地
農地法
(1952)
駐車場等
民法
(1898)
更地
動産
不動産
2015/1/16
Lecture on Contracts
247
2015/1/16
Lecture on Contracts
短期賃貸借
賃貸借の存続期間
 長期賃貸借は,処分行為とみなされる
 第602条(短期賃貸借)
 処分につき行為能力の制限を受けた者
又は処分の権限を有しない者が賃貸借
をする場合には,次の各号に掲げる賃貸
借は,それぞれ当該各号に定める期間
を超えることができない。
 期限の定めのない賃貸借は,民法602条
の適用はない(大判大3・7・13民録20輯
607頁)。
 行為能力の制限を受けた者とは?
 財産管理能力はあるが,処分能力を制
限された者。
 被保佐人(民法11条,13条1項)
 被補助人(民法15条,17条1項)
 財産管理能力のない者は除く
 一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山
林の賃貸借 10年
 二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の
賃貸借 5年
 三 建物の賃貸借 3年
 四 動産の賃貸借 6箇月
 未成年者(民法5条)
 成年被後見人(民法7条,9条)
 第603条(短期賃貸借の更新)
 処分の権限を有しない者とは?
 前条に定める期間は,更新することがで
きる。
 不在者の財産管理人(民法25条,28条)
 権限の定めのない代理人(民法103条)
 ただし,その期間満了前,土地について
は1年以内,建物については3箇月以内,
動産については1箇月以内に,その更新
をしなければならない。
2015/1/16
248
 後見監督人がある場合の後見人(民法
864条)
 相続管理人(民法918条,952条,953条)
Lecture on Contracts
249
借地借家の存続期間(1/3:推論)
 第604条(賃貸借の存続
期間)
 借地借家法(1921→1991)
 借地の存続期間
 借地借家法第3条
 ①賃貸借の存続期間は,
20年を超えることができな
い。
 契約でこれより長い期間を
定めたときであっても,そ
の期間は,20年とする。
 ②賃貸借の存続期間は,
更新することができる。
 ただし,その期間は,更新
の時から20年を超えること
ができない。
2015/1/16
30年以上
 借地借家法4条(更新)
最初の更新 20年
次からの更新 10年
 借家の存続期間
 借地借家法28条
明文の存続期間保護は
ない。しかし,
正当事由によらなけれ
ば更新拒絶・解約できな
い。
Lecture on Contracts
250
借地借家の存続期間(2/3:確認)
30年
以上
20年
以上
50年
以上
30年~
50年
10年~
30年
30年
以上
1年
以上
期間の
定めなし
期間の
定めなし
30年
以上
20年
以上
50年
以上
30年~
50年
10年~
30年
30年
以上
1年
以上
期間の
定めなし
期間の
定めなし
3条
7条1項
22条
23条
1項
23条
2項
24条
26条1
項
本文
29条
1項
26条1
項
但書
3条
7条1項
22条
23条
1項
23条
2項
24条
26条1
項
本文
29条
1項
26条1
項
但書
通常
建物の
滅失・
再築
通常
定期
借地
事業用
定期
借地
事業用
借地
建物譲
渡特約
付借地
通常
建物の
滅失・
再築
通常
定期
借地
事業用
定期
借地
事業用
借地
建物譲
渡特約
付借地
1年
以上
の借家
1年
未満
の借家
更新後
の借家
通常借地
定期借地
借地
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
1年
以上
の借家
1年
未満
の借家
更新後
の借家
通常借地
借家
Lecture on Contracts
定期借地
借地
251
2015/1/16
借家
Lecture on Contracts
252
42
Lecture on Contracts
2015/1/16
借地借家の存続期間(3/3:復習)
通常借地
借地
定期借地
通常の場合
3条
30年以上
建物の滅失・
再築の場合
7条1項
20年以上
定期借地権
22条
50年以上
事業用
定期借地権
23条1項
30年~50年未満
事業用借地権
23条2項
10年~30年未満
建物譲渡特約付
借地権
借家
24条1項
26条1項
1年以上
1年未満の借家
29条1項
期間の定めなし
更新後の借家
26条1項
但し書き
期間の定めなし
2015/1/16
Lecture on Contracts
 第605条(不動産賃貸借の対抗力)
 不動産の賃貸借は,これを登記したとき
は,その後その不動産について物権を
取得した者に対しても,その効力を生ず
る。
 通説は,賃借権の登記は,強制できな
いと解している。
8.
253
 ①賃貸人は,賃貸物の
使用及び収益に必要な
修繕をする義務を負う。
 ②賃貸人が賃貸物の保
存に必要な行為をしよう
とするときは,賃借人は,
これを拒むことができな
い。
2015/1/16
 借地借家法 第31条(建物賃貸借
の対抗力等)
 ①建物の賃貸借は,その登記
がなくても,建物の引渡しがあっ
たときは,その後その建物につ
いて物権を取得した者に対し,
その効力を生ずる。
255
KAGAYAMA Shigeru
254
建物敷地の売買の場合(民法)
B所有
B所有
B所有
乙建物
乙建物
乙建物
甲土地
A所有
甲土地
甲土地
A所有
A所有
A→C
売却
甲土地
C所有
 「地震売買」における比喩的表現(類比から「隠喩」へ)
 建物(A)に対する地震(B)の効力(建物の崩壊)は,
 敷地売買(C)の建物への効力(建物の崩壊)の如し。→「地震売買」←建物保護法(1909)
 隠喩の原型としての「人生の夕暮れ(黄昏)」
 AのBにおけるは,CのDにおけるが如し。(類比)→「BのC」(隠喩)
 老年(A)の人生(B)におけるは,夕暮れ(C)の一日(D)におけるが如し。
→「人生の夕暮れ(黄昏)」(BのC:隠喩)
 隠喩の応用としての「謎かけ」の表現
 「(敷地)売買」と掛けて,「地震」と解く。その心は? どちらも,「建物が壊される」
 (例題)「葬式(埋葬)」と掛けて「うぐいす」と解く。その心は?
2015/1/16
Lecture on Contracts
256
賃借人の費用償還請求権
 第608条(賃借人による費用の償
還請求)
 第607条(賃借人の意
思に反する保存行為)
 賃貸人が賃借人の意思
に反して保存行為をしよ
うとする場合において,
そのために賃借人が賃
借をした目的を達するこ
とができなくなるときは,
賃借人は,契約の解除
をすることができる。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
現実の地震の場合
賃貸人の修繕の義務と権利
 第606条(賃貸物の修
繕等)
賃貸借契約の合意解除が転借人に対抗できない場合,賃
貸人と転借人とはどのような関係となるか?
地震売買(敷地売買は地震だ)とは何か?
 ①借地権は,その登記がなくて
も,土地の上に借地権者が登記
されている建物を所有するとき
は,これをもって第三者に対抗
することができる。
Lecture on Contracts
適法転貸借の場合,賃貸人と転借人との間の関係はどうな
るか?
賃貸借契約の合意解除は,転借人に対抗できるか?
2015/1/16
 借地借家法 第10条(借地権の対
抗力等)
 しかし,不動産登記の共同申請主義は,
賃借人に使用・収益をさせる義務を負っ
ている賃貸人が,賃借権の登記を妨げ
る理由にはならないと解すべきである。
2015/1/16
賃貸借契約をもって第三者に対抗するためには,どのよう
な方法があるか?
賃貸人はどのような権利を有し,義務を負うか?
賃借人はどのような権利を有し,義務を負うか?
無断譲渡・転貸の場合,賃貸人は常に解除をなしうるか?
7.
借地借家法
(賃借権の登記がなくても,
「売買は賃貸借を破らず)
 不動産登記法
 第3条8号…賃借権の登記
 第60条…共同申請主義
地震売買とは何か?
2.
6.
不動産賃貸借の対抗力
民法
(賃借権の登記がない場合には,
「売買は賃貸借を破る」)
1.
3.
4.
5.
30年以上
1年以上の借家
賃貸借の効力
257
 ①賃借人は,賃借物について賃
貸人の負担に属する必要費を支
出したときは,賃貸人に対し,直ち
にその償還を請求することができ
る。
 ②賃借人が賃借物について有益
費を支出したときは,賃貸人は,
賃貸借の終了の時に,第196条第
2項〔占有者による有益費の償還
請求〕の規定に従い,その償還を
しなければならない。
 ただし,裁判所は,賃貸人の請求
により,その償還について相当の
期限を許与することができる。
2015/1/16
 第196条(占有者による費用の償還請
求)
 ①占有者が占有物を返還する場合には,
その物の保存のために支出した金額そ
の他の必要費を回復者から償還させる
ことができる。ただし,占有者が果実を
取得したときは,通常の必要費は,占有
者の負担に帰する。
 ②占有者が占有物の改良のために支
出した金額その他の有益費については,
その価格の増加が現存する場合に限り,
回復者の選択に従い,その支出した金
額又は増価額を償還させることができる。
 ただし,悪意の占有者に対しては,裁判
所は,回復者の請求により,その償還
について相当の期限を許与することが
できる。
Lecture on Contracts
258
43
Lecture on Contracts
2015/1/16
収益目的の土地賃貸借における
不可抗力による減収
目的が明確な場合の数量不足と
減額請求の法理
 第609条(減収による賃料の減額請
求)
 収益を目的とする土地の賃借人は,
不可抗力によって賃料より少ない収
益を得たときは,その収益の額に至
るまで,賃料の減額を請求することが
できる。
 ただし,宅地の賃貸借については,こ
の限りでない。
 第610条(減収による解除)
 前条の場合において,同条の賃借人
は,不可抗力によって引き続き2年以
上賃料より少ない収益を得たときは,
契約の解除をすることができる。
2015/1/16
賃借物の一部不能(滅失)
後発的一部不能の場合の
代金減額・解除の法理
単位が明確な場合の数量不足と
減額請求の法理
 第611条(賃借物の一部滅失
による賃料の減額請求等)
 第565条(数量の不足又は物の一部
滅失の場合における売主の担保責
任)
 前2条〔権利の一部が他人に属す
る場合における売主の担保責任〕
の規定〔減額請求,または,契約
解除の規定〕は,数量を指示して
売買をした物に不足がある場合
又は物の一部が契約の時に既に
滅失していた場合において,買主
がその不足又は滅失を知らな
かったときについて準用する。
Lecture on Contracts
 ①賃借物の一部が賃借人の
過失によらないで滅失したとき
は,賃借人は,その滅失した
部分の割合に応じて,賃料の
減額を請求することができる。
 ②前項の場合において,残存
する部分のみでは賃借人が賃
借をした目的を達することがで
きないときは,賃借人は,契約
の解除をすることができる。
259
2015/1/16
賃貸借
 ①賃借人は,賃貸人
の承諾を得なければ,
その賃借権を譲り渡
し,又は賃借物を転
貸することができない。
 ②賃借人が前項の規
定に違反して第三者
に賃借物の使用又は
収益をさせたときは,
賃貸人は,契約の解
除をすることができる。
2015/1/16
使用貸借
 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして
賃借物の使用収益をなさしめた場合にお
いても,賃借人の当該行為が賃貸人に対
する背信的行為と認めるに足らない特段
の事情があるときは,本条に基づく解除
権は発生しない。
 ②借主は,貸主の承諾を得なければ,第三
者に借用物の使用又は収益をさせることが
できない。
 ③借主が前2項の規定に違反して使用又は
収益をしたときは,貸主は,契約の解除をす
ることができる。
261
2015/1/16
賃貸人は,賃貸借
契約を解除する。

Lecture on Contracts
一部分を短期間貸したにとどまるなど軽微な転
貸の場合
 最三判昭31・5・8民集10巻5号475頁

262
個人企業者が法人に変ったがその実体に変り
がない場合
 最一判昭39・11・19民集18巻9号1900頁
 家屋の賃借人が,同居の女婿の勤務する協
同組合の事務所として,4畳半1室を数か月
間使用させた場合に,賃借人が多年にわた
り多額の費用を投じて右家屋の改良増築等
をしていた事情をも考慮して,背信行為に当
らないとして,解除が否定された事例

263
 賃借家屋を使用してミシン販売の個人営
業をしていた賃借人が,税金対策のため,
これを株式会社組織にしたが,その株主
は賃借人の家族や親族の名を借りたにす
ぎず,実際の出資はすべて賃借人がなし,
該会社の実権はすべて賃借人が掌握し,
その営業,従業員,店舗の使用状況等も
個人営業の時と実質的になんら変更がな
い等判示事実関係のもとにおいては,
賃借人と転借人・譲受人との間柄が,夫婦ないし
内縁の夫婦であるなど密接な身分関係にある場
合
 最一判昭44・4・24民集23巻4号855頁
 夫は宅地を賃借し妻はその地上に建物を所
有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴
い,夫が妻へ借地権を譲渡した場合におい
て,賃貸人は右同居生活および妻の建物所
有を知って夫に宅地を賃貸したものである等
の事情があるときは,借地権の譲渡につき
賃貸人の承諾がなくても,賃貸人に対する背
信行為とは認められない特別の事情がある
というべきである。
無断譲渡・転貸の場合に賃貸借契約を解除できるかどうか:
1. 継続的契約関係の当事者が,信頼関係を破壊したときは,契約を解除できる(原則)。
2. 賃借人が無断譲渡・転貸を行ったときは,信頼関係の破壊が推定される(推定規定)。
3. 信頼関係を破壊したと認められない事由があるときは,契約は解除できない(例外)。
KAGAYAMA Shigeru
 ただし,賃借人の行為が,賃貸人に対す
る背信行為と認めるに足りない特段の事
情があることを賃借人が証明したときは,
賃貸人は,契約の解除をすることができ
ない。
背信行為と認めるに足りない特段の事情の例
背信行為と認め
るに足りない特
段の事由がある。
Lecture on Contracts
 ②賃借人が,賃貸人の承諾を得ないで,
その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転
貸したときは,信頼関係が破壊されたもの
と推定し,賃貸人は,契約の解除をするこ
とができる。
 しかしながら,かかる特段の事情の存在
は土地の賃借人において主張,立証すべ
きものと解する。
民法612条と
信頼関係破壊の法理との関係
2015/1/16
 ①賃借人が契約の目的に違反して使用
又は収益をしたため,賃貸人と賃借人と
の間の信頼関係が破壊されるに至ったと
きは,賃貸人は,契約の解除をすることが
できる。
 土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ること
なくその賃借地を他に転貸した場合にお
いても,賃借人の右行為を賃貸人に対す
る背信行為と認めるに足りない特段の事
情があるときは,賃貸人は民法612条2項
による解除権を行使し得ない。
 第594条第1項〔借主による使用及び収益〕,
第597条第1項〔借用物の返還の時期〕及び
第598条〔借主による収去〕の規定は,賃貸借
について準用する。
賃借人は,民法
612条1項に違
反しており,2項
に基づいて契約
を解除できる。
 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制
限)(民法改正私案)
 最一判昭41・1・27民集20巻1号136頁
 第616条(使用貸借の規定の準用)
おそらく
誤り
260
判例準則による条文の修正
 最二判昭28・9・25民集7巻9号979頁
 ①借主は,契約又はその目的物の性質に
よって定まった用法に従い,その物の使用及
び収益をしなければならない。
賃借人が無断で
賃借物を転貸した。
Lecture on Contracts
判例の準則
 第594条(借主による使用及び収益)
Lecture on Contracts
 第565条(数量の不足又は物の一部
滅失の場合における売主の担保責
任)
 前2条〔権利の一部が他人に属
する場合における売主の担保責
任〕の規定〔減額請求,または,
契約解除の規定〕は,数量を指
示して売買をした物に不足があ
る場合又は物の一部が契約の
時に既に滅失していた場合にお
いて,買主がその不足又は滅失
を知らなかったときについて準
用する。
賃借物の無断譲渡・転貸と
信頼関係破壊の法理
賃借物の無断譲渡・転貸
 第612条(賃借権の譲
渡及び転貸の制限)
原始的一部不能の場合の
代金減額・解除の法理
2015/1/16
 賃貸人の承諾なくして賃借家屋を右会社
に使用させていても,賃貸人に対する背信
行為と認めるに足りない特段の事情があ
るから,賃貸人に民法612条による解除権
が発生しない。
 最二判平成8・10・14民集50巻9号2431頁
Lecture on Contracts
 賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社
において,持分の譲渡及び役員の交代に
より実質的な経営者が交代しても,そのこ
とは,民法612条にいう賃借権の譲渡に当
たらない。
264
44
Lecture on Contracts
2015/1/16
適法転貸借の法律関係
前払は賃貸人に対抗できないとは?
 第613条(転貸の効果)
 ①賃借人が適法に賃借物
を転貸したときは,
賃貸借契約
賃貸人
 転借人は,賃貸人に対し
て直接に義務を負う。
賃借人
(転貸人)
転
転
借
借
料
料
債
債
権
権
移転
前
適
払
法
の
抗
抗
弁
弁
 この場合においては,賃
料の前払をもって賃貸人
に対抗することができない。
 ②前項の規定は,賃貸人
が賃借人に対してその権
利を行使することを妨げな
い。
2015/1/16
賃料債権
賃料債権
転
貸
借
契
約
転借人
Lecture on Contracts
265
民法613条の改正私案
現行民法
第613条(転貸の効果)
①賃借人が適法に賃借物を転貸したときは,転借人は,賃貸人に対して直
接に義務を負う。
この場合においては,賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
通説
 ①賃借人が適法に賃借物を転貸
したときは,… 賃料の前払をもって
賃貸人に対抗することができない。
 条文の反対解釈
 後払いは,賃貸人に対抗できる。
 したがって,賃貸人が直接請求し
た場合でも,転借人は賃借人に転
借料の支払いをすることができる。
2015/1/16
 この場合においては,賃料の
前払をもって賃貸人に対抗
することができない。
 ②前項の規定は,賃貸人が
賃借人に対してその権利を
行使することを妨げない。
2015/1/16
 ①賃借人が適法に賃借物を転
貸したときは,転借人は,賃貸
人に対して直接に義務を負う。
 この場合においては,賃料の詐
害的な前払をもって賃貸人に対
抗することができない。
 転借料の期日前弁済は,詐害
的な前払と推定する。
 ②前項の規定は,賃貸人が賃
借人に対してその権利を行使す
ることを妨げない。
Lecture on Contracts
267
 第612条(賃借権の譲渡
及び転貸の制限)
賃貸人に
対抗できない
賃貸人に
対抗できない
慣習に従った
前払
詐害的な
前払
賃借人への支払
(後払い)
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 ①賃借人が契約の目的に違反して使用又
は収益をしたため,賃貸人と賃借人との間
の信頼関係が破壊されるに至ったときは,
賃貸人は,契約の解除をすることができる。
 ②賃借人が,賃貸人の承諾を得ないで,そ
の賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸し
たときは,信頼関係が破壊されたものと推
定し,賃貸人は,契約の解除をすることが
できる。
2015/1/16
 ただし,賃借人の行為が,賃貸人に対する
背信行為と認めるに足りない特段の事情
があることを賃借人が証明したときは,賃
貸人は,契約の解除をすることができない。
Lecture on Contracts
 詐害的な前払
 直接訴権の成立を正当に妨げる
 賃貸人に対抗できる
直接訴権の
行使前(前払)
 直接訴権の成立を不当に妨げる
 賃貸人に対抗できない
慣習に従った
適法な前払
賃貸人に対抗
できる
詐害的な前払
賃貸人に対抗
できない
直接訴権の
行使後(後払)
269
268
詐害的な前払だけが,
賃貸人に対抗できない
 適法な前払
(後払い)
Lecture on Contracts
266
改正私案(加賀山説)
 ②賃借人が前項の規定
に違反して第三者に賃
借物の使用又は収益を
させたときは,賃貸人は,
契約の解除をすることが
できる。
直接訴権の
行使後
直訴権の
行使前
(広義の前払)
 直接訴権の行使前の転借人の賃
貸人への支払は,原則として直接
訴権の成立を正当に阻害する。
 詐害的な前払のみが,賃貸人に
対抗できない。
 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
 ①賃借人は,賃貸人の
承諾を得なければ,その
賃借権を譲り渡し,又は
賃借物を転貸することが
できない。
前払が賃貸人に対抗できないのなら,
後払いは賃貸人に対抗できるか?
賃貸人に
対抗できる
 反対解釈は慎重に
Lecture on Contracts
現行民法
 第613条(転貸の効果)
 ①賃借人が適法に賃借物を
転貸したときは,転借人は,
賃貸人に対して直接に義務
を負う。
 直接訴権が発生する賃貸人の意
思表示以降は,転借人は,賃貸人
にのみ直接の義務を負う。
民法612条の改正私案(復習)
民法改正私案(加賀山説)
 第613条(転貸の効果)
加賀山説
 直接訴権の解釈。
 第613条(転貸の効果)
2015/1/16
常に賃貸人に
対抗できない
Lecture on Contracts
270
45
Lecture on Contracts
2015/1/16
賃貸人の直接訴権と先取特権
適法転貸借の先取特権
 民法613条に基づく賃貸人の転借人に対する直接の権利(直接訴権)の効力
 第312条(不動産賃貸の先取特権)
 不動産の賃貸の先取特権は,そ
の不動産の賃料その他の賃貸借
関係から生じた賃借人の債務に関
し,賃借人の動産について存在す
る。
賃貸人
賃借人
(転貸人)
賃料債権
先取特権
適
法
抗
弁
 賃借権の譲渡又は転貸の場合に
は,賃貸人の先取特権は,譲受人
又は転借人の動産にも及ぶ。
前
払
の
抗
弁
 譲渡人又は転貸人が受けるべき
金銭〔転借料債権等〕についても,
同様とする。
2015/1/16
 大判昭9・3・7民集13巻278頁
 甲が其の所有物を乙に賃貸し,乙が甲の承諾
を得て之を丙に転貸したるときは,
 丙は其の転貸借契約の内容に従ひて右物件の
使用収益を為す権利を有し,其の使用収益は
甲に於ても之を認容せざるべからざるものにし
て,
 乃ち,丙は甲に対しても右の権利を主張し得る。
 其の権利は甲単独の意思を以て任意に之を消
滅せしめ得べき道理なきは勿論,甲乙間の合
意を以てするも之を消滅せしめ得べき理由なき
ものと云ふべく,
 此の結論たるや信義の原則よりし て観るも洵に
当然のことなりと云ふべし。
271
 最一判昭38・2・21
民集17巻1号219
頁
 土地賃借人と
賃借人との間
において土地
賃貸借契約を
合意解除しても,
土地賃貸人は,
特別の事情が
ないかぎり,そ
の効果を地上
建物の賃借人
に対抗できない。
Lecture on Contracts
273
契約上の地位の譲渡
新賃貸人が債務を引受け
(第三者のためにする契約によることで可能)
対価関係
賃料債権
賃料債権
債権譲渡通知
抗弁
旧賃貸人
(債権者)
賃借人
(受益者)
旧賃貸人
(要約者)
使用収益
使用収益
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
債権
債権者E
抗弁
債権
譲渡
契約
債務
引受
契約
(補償
関係)
新賃貸人
(譲受人)
新賃貸人
(諾約者)
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
 旧賃貸人の権利が移転
(通常の債権譲渡によることで可能)
272
賃貸人が債務を引受け
(第三者のためにする契約によることで可能)
対価関係
転借人
(債務者)
転借料債権
転借料債権
債権譲渡通知
賃借人
(譲渡人)
転借人
(受益者)
抗弁
債権
譲渡
債務
引受
(補償
関係)
賃貸人
(譲受人)
賃貸人
(諾約者)
2015/1/16
Lecture on Contracts
274
賃料の支払時期(後払いの原則)
 第633条(請負の報酬の支払時期)
 第614条(賃料の支払時期)
 報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時
に,支払わなければならない。
 賃料は,動産,建物及び宅地については
毎月末に,その他の土地については毎年
末に,支払わなければならない。
 ただし,収穫の季節があるものについて
は,その季節の後に遅滞なく支払わなけ
ればならない。
 ただし,物の引渡しを要しないときは,第
624条第1項〔報酬の支払時期・労務の提
供の後〕の規定を準用する。
 第648条(受任者の報酬)
 継続的契約における対価後払い
の原則
 ②受任者は,報酬を受けるべき場合には,
委任事務を履行した後でなければ,これ
を請求することができない。
 第624条(報酬の支払時期)
275
賃借人
(要約者)
使用収益
使用収益
抗弁
 ①労働者は,その約した労働を
終わった後でなければ,報酬を
請求することができない。
最二判昭46・4・23民集25巻3号388頁
賃貸人の地位の譲渡の場合,新所有者に義務の承継を認めることが賃借人にとって
有利であるから,賃借人の承諾を必要とせず,旧所有者と新所有者間の契約をもって
これをなすことができる。
2015/1/16
債権者D
賃貸借契約の解除が転借人に対抗
できない場合の転貸借契約の移転
同一当事者間の契約で権利と義務を同時に移転する方法の解明
賃借人
(債務者)
債権
転
先転
借
先取
借
料
取特料
債
特権 権
債
権
権
移転
転借人C
賃貸借の解除と転借人の保護
旧賃貸人が権利を譲渡
(通常の債権譲渡によることで可能)
賃借人B
(転貸人)
賃料債権
先取特権
転借人
Lecture on Contracts
2015/1/16
賃貸人A
転
先転
借
先取
借
料
取特料
債
特権 権
債
権 権
移転
 第314条〔不動産賃貸の先取特権
の目的物の範囲〕
 民法613条の直接訴権は,賃貸人(A)が受益の意思表示をした時点で効力を生じ(民法537条参照),
賃貸人(B)の転借人(C)に対する債権が先取特権とともに,賃貸人に移転する(民法314条)。
 この効力は,賃借人に対する権利を保持したまま(民法613条2項),しかも,転付命令と同様,移転的
効力を生じるので,賃借人の他の債権者(D)の差押えに優先する。
 さらに,直接訴権は,民法314条の先取特権によって,転借人の債権者(E)にも優先する。
 ただし,期間によって報酬を定めたとき
は,第624条第2項〔報酬の支払時期・期
間経過後〕の規定を準用する。
 第665条(委任の規定の準用)
 ②期間によって定めた報酬は,
その期間を経過した後に,請求
することができる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 第646条から第650条まで(同条第3項を
除く。)の規定は,寄託について準用する。
276
46
Lecture on Contracts
2015/1/16
使用貸借の規定の準用による
賃貸借の規定の補充・完成
賃借人の損害防止義務
 第615条(賃借人の  民法615条の立法理由
 賃借人は自ら賃借物の修繕を為すを要せず。賃貸人をして
通知義務)
 賃借物が修繕を
要し,又は賃借
物について権利
を主張する者が
あるときは,賃借
人は,遅滞なくそ
の旨を賃貸人に
通知しなければ
ならない。
之を為さしむることを得。
 従て,物が損壊して使用し難きに至らんとせば,必ず賃貸
人に通知し来りて之が修繕を要求すべしと雖も,時としては
懈怠して,其通知を為さず,又契約期限の終了に近づくに
当りては,面倒なりとて特別に此通知を為さざることあらん
為めに,賃借物に損害を生ずべきを以て,特に法律に明文
を設けて,賃借人に通知の義務を負担せしめたるなり。
 後半即ち第三者の妨害を通知する義務は既成法典財産編
第142条第2項と全く同一なりとす。
 旧民法第142条
 ただし,賃貸人が
既にこれを知っ
ているときは,こ
の限りでない。
 ①賃借人は,賃借物の看守及び保存に付き,用益者と同一
の義務を負担す。
 第601条(賃貸借の再定義)
 第616条(使用貸借の
規定の準用)
 第594条第1項〔借主に
よる使用及び収益〕,第
597条第1項〔借用物の
返還の時期〕及び第598
条〔借主による収去〕の
規定は,賃貸借につい
て準用する。
Lecture on Contracts
277
 相手方がこれに対してその賃料を支
払うこと,並びに,使用及び収益をし
た後に,その物を原状に復して返還
することを約することによって,その
効力を生ずる。
 第616条の2(期間の定めのある
賃貸借の終了)
 ①賃借人は,契約に定めた時期に,
借用物の返還をしなければならない。
 ②賃借人は,賃借物を原状に復して,
これに附属させた物を収去するもの
とする。
 ②第三者が賃借物に侵奪又は作業を為すときは,賃借人
は第96条〔用益権者の告発義務〕に記載したる如く,用益者
と同一の責に任ず。
2015/1/16
 賃貸借は,当事者の一方がある物
の使用及び収益を相手方にさせるこ
とを約し,
2015/1/16
Lecture on Contracts
278
期間の定めのない賃貸借の解約
賃貸借契約の終了
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
期間の定めがない賃貸借には,どのようなものがあるか?
期間の定めがない賃貸借は,どのようにして終了するのか?
期間の定めがある賃貸借は,どのようにして終了するのか?
借地借家の場合,更新拒絶が認められる要件は何か?
賃貸借の解除の効力は,遡及するか?
他の契約の場合の解除はどうか?
賃貸借契約から生じた債権関係はいつ消滅するのか?
賃貸人・賃借人が破産した場合に,賃貸借契約は消滅するか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
 第617条(期間の定めのない賃貸借
の解約の申入れ)
 ①当事者が賃貸借の期間を定めな
かったときは,各当事者は,いつでも
解約の申入れをすることができる。
この場合においては,次の各号に掲
げる賃貸借は,解約の申入れの日
からそれぞれ当該各号に定める期
間を経過することによって終了する。
 一 土地の賃貸借 1年
 二 建物の賃貸借 3箇月
 三 動産及び貸席の賃貸借 1日
民法
279
2015/1/16
 当事者が賃貸
借の期間を定
めた場合で
あっても,その
一方又は双方
がその期間内
に解約をする
権利を留保し
たときは,前
条の規定を準
用する。
 借家
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 第26条(建物賃貸借契約の更新等)
 ①建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,,…従前の契約と同一の
条件で契約を更新したものとみなす。ただし,その期間は,定めがないものとする。
 第29条(建物賃貸借の期間)
 ①期間を一年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めがない建物の賃貸借とみな
す。
 第38条(定期建物賃貸借)
 ⑤第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積が200平方メートル
未満の建物に限る)において,転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情
により,建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となっ
たときは,建物の賃借人は,建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
 この場合においては,建物の賃貸借は,解約の申入れの日から1月を経過すること
によって終了する。
Lecture on Contracts
281
借家の
家主
から
その他
当事者
から
1日前
動
産
建物
解約申し入れ
民法
 借地権の存続期間は,30年とする。ただし,契約でこれより長い期間を定めたときは,
その期間とする。←解約不可
3ヶ月前
Lecture on Contracts
 第619条(賃貸借の更新の推定等)
 第3条(借地権の存続期間)
6ヶ月前
280
賃貸借の更新
借地借家法
 借地
定めのある賃貸借
の解約をする権利
の留保)
土
地
 ②収穫の季節がある土地の賃貸借
については,その季節の後次の耕
作に着手する前に,解約の申入れを
しなければならない。
期間の定めのある賃貸借の解約
 第618条(期間の
1年前
 ①賃貸借の期間が満了した後賃借
人が賃借物の使用又は収益を継
続する場合において,賃貸人がこ
れを知りながら異議を述べないとき
は,従前の賃貸借と同一の条件で
更に賃貸借をしたものと推定する。
 この場合において,各当事者は,
第617条〔期間の定めのない賃貸
借の解約の申入れ〕の規定により
解約の申入れをすることができる。
 ②従前の賃貸借について当事者
が担保を供していたときは,その担
保は,期間の満了によって消滅す
る。
 ただし,敷金については,この限り
でない。
2015/1/16
借地借家法
 第5条(借地契約の更新請求等)
 ①借地権の存続期間が満了する場合において,
借地権者が契約の更新を請求したときは,建
物がある場合に限り,前条の規定によるものの
ほか,従前の契約と同一の条件で契約を更新
したものとみなす。ただし,借地権設定者が遅
滞なく異議を述べたときは,この限りでない。
 ②借地権の存続期間が満了した後,借地権者
が土地の使用を継続するときも,建物がある場
合に限り,前項と同様とする。
 ③転借地権が設定されている場合においては,
転借地権者がする土地の使用の継続を借地
権者がする土地の使用の継続とみなして,借
地権者と借地権設定者との間について前項の
規定を適用する。
Lecture on Contracts
282
47
Lecture on Contracts
2015/1/16
借地借家法(5条,6条)における
START
期間満了と契約の終了
期間満了
合意更新
更新合意なし
No
更新請求せず
No
使用継続せず
期間満了
法定更新
更新拒絶
No
正当事由あり
No
異議あり
No
正当事由あり
No
No
借地借家法(5条,6条)における
START
期間満了と更新
END
283
2015/1/16
更新なし
使用継続せず
更新なし
更新なし
異議・
正当事由
更新拒絶・
正当事由
No
正当事由あり
No
異議あり
No
正当事由あり
No
解除の効力の不遡及
 賃貸借の解除をし
た場合には,その
解除は,将来に向
かってのみその効
力を生ずる。
 この場合において,
当事者の一方に過
失があったときは,
その者に対する損
害賠償の請求を妨
げない。
使用継続
更新請求せず
更新合意なし
期間満了
Lecture on Contracts
285
2015/1/16
 契約の本旨に反する使用又は収益によっ
て生じた損害の賠償及び借主が支出した
費用の償還は,貸主が返還を受けた時か
ら1年以内に請求しなければならない。
Lecture on Contracts
民法620条の準用規定一覧
 第630条(雇用の解除の効力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡
及〕の規定は,雇用について準用する。
 第652条(委任の解除の効力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡
及〕の規定は,委任について準用する。
 第684条(組合契約の解除の効力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡
及〕の規定は,組合契約について準用
する。
Lecture on Contracts
286
(破産法56条→旧民法621条の削除)
 第621条(損害賠償及び費用の償還の  大判昭8・2・8民集
12巻60頁
請求権についての期間の制限) 〔旧・
622条〕
 民法第622条〔現
 第600条(損害賠償及び費用の償還の
請求権についての期間の制限)
284
賃借人の破産と解除の制限
除斥期間
 第600条〔使用貸借の場合の損害賠償及
び費用の償還の請求権についての期間
の制限〕の規定は,賃貸借について準用
する。
Lecture on Contracts
 第620条(賃貸借
の解除の効力)
更新請求
KAGAYAMA Shigeru
No
更新拒絶
解除の効力(将来効)
更新拒絶の正当事由と借地の終了
2015/1/16
No
END
Lecture on Contracts
2015/1/16
更新請求せず
法定更新
契約終了
2015/1/16
更新合意
No
使用継続せず
契約終了
合意更新
更新合意なし
行民法621条〕,
第600条の規定
に依り,裁判上た
ると裁判外たると
を問はず,1年内
に請求するときは,
其の1年の経過に
因りて消滅するも
のに非ずと解す
べきものな〔り〕。
287
民法
破産法
 第622条 削除 〔旧・第621条
【賃借人の破産による解約申入
れ・削除】→破産法第56条〕
 2004年の破産法の改正によ
り,賃借人の保護のため,賃
貸人が破産した場合の解除
は認められないことになった
(破産法56条1項)。
 賃借人が破産した場合にも,
その保護のために,本条も削
除された(2004年)。
2015/1/16
 第56条(賃貸借契約等)
 ①第53条第1項及び第2項の規
定〔管財人による双務契約の解
除又は履行の請求の選択〕は,
賃借権その他の使用及び収益
を目的とする権利を設定する契
約について破産者の相手方が
当該権利につき登記,登録その
他の第三者に対抗することがで
きる要件を備えている場合には,
適用しない。
 ②前項に規定する場合には,相
手方の有する請求権は,財団債
権とする。
Lecture on Contracts
288
48
Lecture on Contracts
2015/1/16
無断譲渡転貸と解除の制限
信頼関係破壊の法理
参考文献
参考判例
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
 最高裁判例一覧
(年代順)


賃貸借
借地借家
2015/1/16
 最二判昭28・9・25民
集7巻9号979頁
参考図書
Lecture on Contracts
 賃借人が賃貸人の
承諾なく第三者をし
て賃借物の使用収
益をなさしめた場合
においても,賃借人
の当該行為が賃貸
人に対する背信的行
為と認めるに足らな
い特段の事情がある
ときは,本条に基づく
解除権は発生しない。
289
背信行為と認めるに足りない特段の事情の例

一部分を短期間貸したにとどまるなど軽微な転
貸の場合
 最三判昭31・5・8民集10巻5号475頁

個人企業者が法人に変ったがその実体に変り
がない場合
 最一判昭39・11・19民集18巻9号1900頁
 家屋の賃借人が,同居の女婿の勤務する協
同組合の事務所として,4畳半1室を数か月
間使用させた場合に,賃借人が多年にわた
り多額の費用を投じて右家屋の改良増築等
をしていた事情をも考慮して,背信行為に当
らないとして,解除が否定された事例

 賃借家屋を使用してミシン販売の個人営
業をしていた賃借人が,税金対策のため,
これを株式会社組織にしたが,その株主
は賃借人の家族や親族の名を借りたにす
ぎず,実際の出資はすべて賃借人がなし,
該会社の実権はすべて賃借人が掌握し,
その営業,従業員,店舗の使用状況等も
個人営業の時と実質的になんら変更がな
い等判示事実関係のもとにおいては,
賃借人と転借人・譲受人との間柄が,夫婦ないし
内縁の夫婦であるなど密接な身分関係にある場
合
 最一判昭44・4・24民集23巻4号855頁
 夫は宅地を賃借し妻はその地上に建物を所
有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴
い,夫が妻へ借地権を譲渡した場合におい
て,賃貸人は右同居生活および妻の建物所
有を知って夫に宅地を賃貸したものである等
の事情があるときは,借地権の譲渡につき
賃貸人の承諾がなくても,賃貸人に対する背
信行為とは認められない特別の事情がある
というべきである。
2015/1/16
 賃貸人の承諾なくして賃借家屋を右会社
に使用させていても,賃貸人に対する背信
行為と認めるに足りない特段の事情があ
るから,賃貸人に民法612条による解除権
が発生しない。
 最二判平成8・10・14民集50巻9号2431頁
 賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社
において,持分の譲渡及び役員の交代に
より実質的な経営者が交代しても,そのこ
とは,民法612条にいう賃借権の譲渡に当
たらない。
Lecture on Contracts
291
2015/1/16
290
原則としての保護の欠如
合意解除と転借人の保護
 最一判昭36・12・21民集15巻12号3243
頁
 大判昭9・3・7民集13巻278頁
 賃貸借の終了によって転貸借は当然に
その効力を失うものではないが,賃借人
の債務不履行により賃貸借が解除され
た場合には,その結果転貸人としての
義務に履行不能を生じ,よって転貸借
は右賃貸借の終了と同時に終了に帰す
る。
 最三判平9・2・25民集51巻2号398頁
 賃借人が賃貸人の承諾を得て
賃借物を他に転貸したるときは,
賃貸人が賃借人と其の賃貸借
解除の合意を為すも,之が為
転借人の権利は消滅すること
なきものとす。
 最一判昭38・2・21民集17巻1号
219頁
 土地賃借人と賃借人との間に
おいて土地賃貸借契約を合意
解除しても,土地賃貸人は,特
別の事情がないかぎり,その効
果を地上建物の賃借人に対抗
できない。
 賃貸借が賃借人の債務不履行を理由と
する解除により終了した場合,賃貸人の
承諾のある転貸借は,原則として,賃貸
人が転借人に対して目的物の返還を請
求した時に,転貸人の転借人に対する
債務の履行不能により終了する。
2015/1/16
Lecture on Contracts
292
雇用 目次
 最二判昭46・4・23民集25巻3号388頁
 土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は,賃貸人の義務
の移転を伴なうものではあるけれども,
 賃貸人の義務は賃貸人が何ぴとであるかによつて履行方法が特に
異なるわけのものではなく,また,土地所有権の移転があつたときに
新所有者にその義務の承継を認めることがむしろ賃借人にとつて有
利であるというのを妨げないから,
 一般の債務の引受の場合と異なり,特段の事情のある場合を除き,
 新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには,賃
借人の承諾を必要とせず,旧所有者と新所有者間の契約をもつてこ
れをなすことができると解するのが相当である。
KAGAYAMA Shigeru
 しかしながら,かかる特段の事情の
存在は土地の賃借人において主張,
立証すべきものと解する。
賃貸借契約の解除と転借人の保護
契約上の地位の譲渡
Lecture on Contracts
 土地の賃借人が賃貸人の承諾を得
ることなくその賃借地を他に転貸し
た場合においても,賃借人の右行
為を賃貸人に対する背信行為と認
めるに足りない特段の事情があると
きは,賃貸人は民法612条2項によ
る解除権を行使し得ない。
Lecture on Contracts
(賃借人の承諾は原則として不要)→図解
2015/1/16
 最一判昭41・1・27民集20巻1号
136頁
293
 労働契約法
 役務提供契約の全体像
 雇用契約の意義と性質
 労働契約法の目的
 労働契約法総論
 労働契約の成立及び変更
 わが国の雇用形態の現状
 雇用契約の意義と適用範囲
 雇用契約の性質
 成立
 変更
 雇用契約の効力
 労働者の労務提供義務
 使用者の報酬支払い義務
 雇用契約上の権利の移転制限
 雇用契約の終了




2015/1/16
 労働契約の継続及び終了
 期間の定めのある労働契約
 無期労働契約への転換 図1 図2
 雇止めに関する法理
 参考文献
 参考判例
 参考図書
雇用期間の定め
雇用契約の解約告知
雇用期間の更新
雇用契約の解除とその制限
Lecture on Contracts
294
49
Lecture on Contracts
2015/1/16
わが国の雇用形態の現状
役務提供契約の比較→体系図
→労働契約法の目的
契約の種類
契約の内容
債務の種類
雇用
使用者の支配の下
で,時間決めで労務
を提供する。
手段債務
請負
独立して,仕事を完
成する。
結果債務
委任
独立して,事務を処
理する。
手段債務
寄託
物を一定期間預かり,
その後返還する。
手段債務
2015/1/16
Lecture on Contracts
正規雇用
非正規雇用
2015/1/16
雇用契約の意義と適用範囲
 第623条(雇
用)
 労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働
し,使用者がこれに対して賃金を支払うことにつ
いて,労働者及び使用者が合意することによって
成立する。
 第22条(適用除外)〔旧20条〕
 ①この法律は,国家公務員及び地方公務員につ
いては,適用しない。→労働基準法112条(適用)
Lecture on Contracts
期間の定めの
ない労働契約
(無期労働契約)
期間工
契約社員
派遣労働者
Lecture on Contracts
 第623条(雇用)
 第6条(労働契約の成立)
 相手方がこれに
 ②この法律は,使用者が同居の親族のみを使用
する場合の労働契約については,適用しない。
対してその報酬
を与えることを約  労働基準法
することによって,
 第106条(適用除外)
 その効力を生ず
 この法律は,同居の親族のみを使用する事業及
び家事使用人については,適用しない。
る。
2015/1/16
期間の定めの
ある労働契約
(有期労働契約)
296
雇用契約の性質(1/2)
 労働契約法
 雇用は,当事者
の一方が相手方
に対して労働に
従事することを
約し,
フルタイム
労働
パートタイマー
アルバイト
雇
用
形
態
295
期間の定めの
ない労働契約
(無期労働契約)
297
 雇用は,当事者
の一方〔労働者〕
が相手方〔使用
者〕に対して労働
に従事すること
を約し,
 相手方がこれに
対してその報酬
〔賃金〕を与える
ことを約すること
によって,
 その効力を生ず
る。
2015/1/16
 諾成契約 →第6条(労働契約の成立)
 労働契約法 第4条
 ②〔書面確認〕労働者及び使用者は,
労働契約の内容(期間の定めのある
労働契約に関する事項を含む。)に
ついて,できる限り書面により確認す
るものとする。
 有償契約,双務契約
 労働基準法 第11条
 この法律で賃金とは,賃金,給料,手
当,賞与その他名称の如何を問わず,
労働の対償として使用者が労働者に
支払うすべてのものをいう。
Lecture on Contracts
298
雇用契約の性質(2/2)
 役務提供型契約の典型
 報酬の後払い(民法624条が他の役務提供契約で準
用されている)
 第633条(請負の報酬の支払時期)
報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなけれ
ばならない。ただし,物の引渡しを要しないときは,第624
条第1項〔報酬の支払時期・労務の提供の後〕の規定を準
用する。
 第648条(受任者の報酬)
②受任者は,報酬を受けるべき場合には,委任事
務を履行した後でなければ,これを請求すること
ができない。ただし,期間によって報酬を定めたと
きは,第624条第2項〔報酬の支払時期・期間経過
後〕の規定を準用する。
 第665条(寄託における委任の規定の準用)
第646条から第650条まで(同条第3項を除く。)の
規定は,寄託について準用する。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 継続的契約(賃貸借に類
似し,一部は賃貸借の規
定が準用されている)
雇用契約の効力
 期間の定めのある契約
の解除(民法626条,
628条)
 期間の定めのない契約
の解約の申し入れ(民
法627条)
 解除の将来効(民法
630条による民法620条
の準用)
 役務提供契約は,「人手
を借りる」というように,役
務の「賃貸借」と考えられ
てきた。
1. 労働者の義務は何か?
2. 使用者の義務は何か?
3. 報酬が後払いとされている理由は何か?
4. 使用者の権利の譲渡や労働者の地位を第三者に
移転することが制限されているのはなぜか?
 →労働契約の原則
299
2015/1/16
Lecture on Contracts
300
50
Lecture on Contracts
2015/1/16
雇用契約の効力
労働者の義務
 民法624条で後払いの原
則が規定されている。
 労働者は,給付義務として,労務提供義務
を負う。
 安全配慮義務
 付随義務
 最高裁の判決(最三判昭
50・2・25(陸上自衛隊事
件)等)を通じて確立した
法理であり,労働契約法5
条で明文化されている。
 解釈上,就業規則を遵守する義務,職務上
知り得た事項の守秘義務,退職後の競業避
止義務の存在が認められている。
 違反の効果と制限
 労働者が上記の義務に違反する場合,使用
者は,就業規則に従い,解雇を含む各種の
懲戒権を行使することができる。
 ただし,労働契約法3条5項の原則に基づく,
同法15条,16条によって,それぞれ,懲戒・
解雇は,厳格に制限されている。
 労働災害に関する無過失
責任
 労働基準法75条~労働
基準法88条で規定されて
いる。
Lecture on Contracts
 第633条(請負の報酬の支払時期)
 第624条(報酬の支
払時期)
使用者の義務
 報酬支払義務
 労務提供義務
2015/1/16
報酬後払いの原則
301
 報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,
支払わなければならない。
 ただし,物の引渡しを要しないときは,第
624条第1項〔報酬の支払時期・労務の提供
の後〕の規定を準用する。
 ①労働者は,その約
した労働を終わった
後でなければ,報酬
を請求することがで
きない。
 第648条(受任者の報酬)
 ②受任者は,報酬を受けるべき場合には,
委任事務を履行した後でなければ,これを
請求することができない。
 ただし,期間によって報酬を定めたときは,
第624条第2項〔報酬の支払時期・期間経過
後〕の規定を準用する。
 ②期間によって定め
た報酬は,その期間
を経過した後に,請
求することができる。
2015/1/16
 第665条(寄託での委任の規定の準用)
 第646条から第650条まで(同条第3項を除
く。)の規定は,寄託について準用する。
Lecture on Contracts
302
使用者の権利の譲渡制限
 第625条(使用者の権利の譲渡
の制限等)
 債権の譲渡制限
 ①使用者は,労働者の承諾を得
なければ,その権利を第三者に
譲り渡すことができない。
 ②労働者は,使用者の承諾を得
なければ,自己に代わって第三
者を労働に従事させることがで
きない。
 役務提供契約を労務の賃貸借
とする考え方
 「人手を借りている」,「大切な
人をお預かりしている」などの
表現がある。
 ③労働者が前項の規定に違反
して第三者を労働に従事させた
ときは,使用者は,契約の解除
をすることができる。
2015/1/16
雇用契約の終了
 民法466条1項の例外
 労務提供義務の一身専属性
 無断譲渡は,賃貸借の無断譲
渡となり,解除ができることに
なる(民法612条)。
Lecture on Contracts
303
期間の定めのある雇用契約の解除
 第626条(期間の定めのある
雇用の解除)→特別法による
制限
 ①雇用の期間が5年を超え,
又は雇用が当事者の一方若
しくは第三者の終身の間継
続すべきときは,当事者の一
方は,5年を経過した後,い
つでも契約の解除をすること
ができる。
 ただし,この期間は,商工業
の見習を目的とする雇用に
ついては,10年とする。
 ②前項の規定により契約の
解除をしようとするときは,3
箇月前にその予告をしなけ
ればならない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
2015/1/16
労働契約の期間についてはどのような制限があるか?
雇用契約はどのような場合に更新されるか?
労働契約はどのような場合に解除できるか?
解除にはどのような効力があるか?
使用者が破産した場合には,労働契約はどうなるか?
Lecture on Contracts
304
期間の定めのない雇用契約の解約告知
 労働基準法 第14条(契約期間等)
 ①労働契約は,期間の定めのないものを
除き,一定の事業の完了に必要な期間を
定めるもののほかは,3年(次の各号のい
ずれかに該当する労働契約にあっては,5
年)を超える期間について締結してはなら
ない。
 労働契約法 第17条(契約期間中の解雇
等)→民法628条の反対解釈の明文化
 使用者は,期間の定めのある労働契約
(以下この章において「有期労働契約」とい
う。)について,やむを得ない事由がある
場合でなければ,その契約期間が満了す
るまでの間において,労働者を解雇するこ
とができない。〔解雇する場合の根拠規定
は民法628条〕
Lecture on Contracts
1.
2.
3.
4.
5.
305
 第627条(期間の定めのない雇
用の解約の申入れ)→特別法
 ①当事者が雇用の期間を定めな
かったときは,各当事者は,いつでも
解約の申入れをすることができる。
この場合において,雇用は,解約の
申入れの日から2週間を経過するこ
とによって終了する。
 ②期間によって報酬を定めた場合に
は,解約の申入れは,次期以後につ
いてすることができる。ただし,その
解約の申入れは,当期の前半にしな
ければならない。
 ③6箇月以上の期間によって報酬を
定めた場合には,前項の解約の申
入れは,3箇月前にしなければなら
ない。
2015/1/16
 労働基準法 第20条(解雇
の予告)
 ①使用者は,労働者を解雇
しようとする場合においては,
少くとも30日前にその予告を
しなければならない。
 30日前に予告をしない使用
者は,30日分以上の平均賃
金を支払わなければならない。
 但し,天災事変その他やむを
得ない事由のために事業の
継続が不可能となった場合
又は労働者の責に帰すべき
事由に基いて解雇する場合
においては,この限りでない。
Lecture on Contracts
306
51
Lecture on Contracts
2015/1/16
解雇事由
雇用の更新の推定
→雇止めの法理1,法理2
 第628条(やむを得ない事由に
よる雇用の解除)
 当事者が雇用の期間を定め
た場合であっても,やむを得
ない事由があるときは,各当
事者は,直ちに契約の解除を
することができる。
 この場合において,その事由
が当事者の一方の過失によっ
て生じたものであるときは,相
手方に対して損害賠償の責任
を負う。
 解雇は,客観的に合理的な理
由を欠き,社会通念上相当であ
ると認められない場合は,その
権利を濫用したものとして,無
効とする。
 最二判昭50・4・25(日本食塩製
造事件)
 民法628条の反対解釈の明文
化→労働契約法第17条。
2015/1/16
 第629条(雇用の更新の推定等)
 労働契約法 第16条(解雇)
 使用者の解雇権の行使も,そ
れが客観的に合理的な理由を
欠き社会通念上相当として是認
することができない場合には,
権利の濫用として無効になると
解するのが相当である。
Lecture on Contracts
307
 ①雇用の期間が満了した後労働者
が引き続きその労働に従事する場
合において,使用者がこれを知りな
がら異議を述べないときは,従前の
雇用と同一の条件で更に雇用をした
ものと推定する。
 この場合において,各当事者は,第
627条〔期間の定めのない雇用 の解
約の申入れ〕の規定により解約の申
入れをすることができる。
 ②従前の雇用について当事者が担
保を供していたときは,その担保は,
期間の満了によって消滅する。ただ
し,身元保証金については,この限
りでない。
 →労働契約法 第19条(更新のみなし規
定)
2015/1/16
雇用の解除の効力(将来効)
 第630条(雇用の解除の効
力)
 第620条〔賃貸借の解除の効
力の不遡及〕の規定は,雇用
について準用する。
賃貸借の規定が準用されて
いるのはなぜか?
継続的契約の典型だから。
労務提供契約は,労務の賃貸
借と考えられていたから(「人
手を借りる」)。
2015/1/16
 賃貸借の解除をした
場合には,その解除
は,将来に向かって
のみその効力を生ず
る。
 この場合において,
当事者の一方に過失
があったときは,その
者に対する損害賠償
の請求を妨げない。
309
 使用者が破産手続開始の
決定を受けた場合には,
雇用に期間の定め がある
ときであっても,労働者又
は破産管財人は,第627
条〔期間の定めのない雇
用の解約の申入れ〕の規
定により解約の申入れを
することができる。
 この場 合において,各当
事者は,相手方に対し,
解約によって生じた損害
の賠償を請求することが
できない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
308
 破産法 第55条(継続的給付を目的
とする双務契約)
 ①破産者に対して継続的給付の義務を負う
双務契約の相手方は,破産手続開始の申
立て前の給付に係る破産債権について弁済
がないことを理由としては,破産手続開始後
は,その義務の履行を拒むことができない。
 ②前項の双務契約の相手方が破産手続開
始の申立て後破産手続開始前にした給付に
係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定
すべき継続的給付については,申立ての日
の属する期間内の給付に係る請求権を含
む。)は,財団債権とする。
 ③前二項の規定は,労働契約には,適用し
ない。
Lecture on Contracts
310
労働契約法総論
総則
労働契約の成立及び変更
労働契約の継続及び終了
期間の定めのある労働契約〔2012年新設〕
適用除外
2015/1/16
 ②従前の賃貸借について当事者が
担保を供していたときは,その担保
は,期間の満了によって消滅する。
ただし,敷金については,この限りで
ない。
労働契約法
(2008(平成20)年施行,2012(平成24)年改正)
第1款
第2款
第3款
第4款
第5款
 この場合において,各当事者は,第
617条〔期間の定めのない賃貸借の
解約の申入れ〕の規定により解約の
申入れをすることができる。
Lecture on Contracts
 第631条(使用者について
の破産手続の開始による
解約の申入れ)
労働契約法
1.
2.
3.
4.
5.
 ①賃貸借の期間が満了した後賃借
人が賃借物の使用又は収益を継続
する場合において,賃貸人がこれを
知りながら異議を述べないときは,
従前の賃貸借と同一の条件で更に
賃貸借をしたものと推定する。
使用者の破産
 第620条(賃貸借の
解除の効力)
Lecture on Contracts
 第619条(賃貸借の更新の推定
等)
1. 労働契約法の目的は何か?
2. 労働契約法の原則とは何か?
3. 安全配慮義務はどのように規定されているか?
311
2015/1/16
Lecture on Contracts
312
52
Lecture on Contracts
2015/1/16
労働契約法の目的
労働契約法の定義
→わが国の雇用形態の現状
 第1条(目的)
 合意の原則
 この法律は,労働者及び使
用者の自主的な交渉の下で,
労働契約が合意により成立
し,又は変更されるという合
意の原則
 その他労働契約に関する基
本的事項を定めることにより,
 合理的な労働条件の決定又
は変更が円滑に行われるよ
うにすることを通じて,労働者
の保護を図りつつ,個別の労
働関係の安定に資することを
目的とする。
2015/1/16
 法第3条第1項の労使対等の原則,
法第6条の労働契約の成立につい
ての合意の原則及び法第8条の労
働契約の変更についての合意の原
則が含まれる。
 労働契約に関する基本的事項
 法第3条第1項以外の法第1章の労
働契約の原則等を定める規定,法
第6条及び第8条以外の法第2章の
就業規則と労働契約との法的関係
等を定める規定,法第3章の出向,
懲戒及び解雇に関する権利濫用禁
止規定及び法第4章の期間の定め
のある労働契約に関する規定が含
まれる。→解雇制限(第17条)
Lecture on Contracts
313
労働契約の原則
 ③〔仕事と生活の調和への配慮の原
則〕
 労働契約は,労働者及び使用者が
仕事と生活の調和にも配慮しつつ締
結し,又は変更すべきものとする。
 ①〔労使対等の原則〕
 労働契約は,労働者及
び使用者が対等の立
場における合意に基づ
いて締結し,又は変更
すべきものとする。
 ④〔信義誠実の原則〕
 ②〔均衡考慮の原則〕
 労働契約は,労働者及
び使用者が,就業の実
態に応じて,均衡を考
慮しつつ締結し,又は
変更すべきものとする。
2015/1/16
 労働者及び使用者は,労働契約を遵
守するとともに,信義に従い誠実に,
権利を行使し,及び義務を履行しな
ければならない。
 ⑤〔権利濫用の禁止の原則〕
 労働者及び使用者は,労働契約に基
づく権利の行使に当たっては,それを
濫用することがあってはならない。
Lecture on Contracts
 労働者の範囲の拡張
 ①この法律において「労
働者」とは,使用者に使
用されて労働し,賃金を
支払われる者をいう(労
働基準法第9条)。
 ②この法律において「使
用者」とは,その使用す
る労働者に対して賃金
を支払う者をいう(労働
基準法第10条)。
2015/1/16
 民法第632条の「請負」,
同法第643条の「委任」
又は非典型契約で労務
を提供する者であっても,
契約形式にとらわれず,
実態として使用従属関
係が認められる場合に
は,法第2条第1項の
「労働者」に該当する。
Lecture on Contracts
314
労働契約の内容の理解の促進
→雇用契約の性質
 第3条(労働契約の原
則)
 第2条(定義)
315
 第4条(労働契約の内容
の理解の促進)
 ①〔労働者の理解の促進〕
使用者は,労働者に提示
する労働条件及び労働契
約の内容について,労働
者の理解を深めるように
するものとする。
 ②〔書面確認〕労働者及び
使用者は,労働契約の内
容(期間の定めのある労
働契約に関する事項を含
む。)について,できる限り
書面により確認するものと
する。
2015/1/16
 労働基準法 第15条(労
働条件の明示)
 使用者は,労働契約の締
結に際し,労働者に対して
賃金,労働時間その他の
労働条件を明示しなけれ
ばならない。
 この場合において,賃金
及び労働時間に関する事
項その他の厚生労働省令
で定める事項については,
厚生労働省令で定める方
法により明示しなければな
らない。
Lecture on Contracts
316
安全配慮義務
 第5条(労働者
の安全への配
慮)
 使用者は,労
働契約に伴い,
労働者がその
生命,身体等
の安全を確保
しつつ労働する
ことができるよ
う,必要な配慮
をするものとす
る。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
労働契約法
労働契約の成立及び変更
 最三判昭50・2・25民集29巻2号143頁
(陸上自衛隊事件)
 陸上自衛隊員が,自衛隊内の車両整備
工場で車両整備中,後退してきたトラック
にひかれて死亡した事例で,国の公務員
に対する安全配慮義務を認定した。
1.
2.
3.
4.
 最三判昭59・4・10民集38巻6号557頁
(川義事件)
 宿直勤務中の従業員が強盗に殺害され
た事例で,会社に安全配慮義務の違背
に基づく損害賠償責任があるとされた。
Lecture on Contracts
317
2015/1/16
雇用契約と労働契約とはどの点が異なるか?
用語法で異なる点はあるか?
適用除外ついてはどうか?
契約を制限する仕組みについてはどうか?
Lecture on Contracts
318
53
Lecture on Contracts
2015/1/16
労使合意による労働契約の成立
 第6条(労働契約の成
立)
START
 雇用は,当事者の一方
が相手方に対して労働
に従事することを約し,
相手方がこれに対して
その報酬を与えることを
約することによって,そ
の効力を生ずる。
Lecture on Contracts
319
(§13)
 ただし,労働契約において,
労働者及び使用者が就業規
則の内容と異なる労働条件
を合意していた部分について
は,第12条に該当する場合
を除き,この限りでない。
2015/1/16
就業規則
なし(§6)
就業規則
合理性な
し(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
 最大判昭43・12・25民集22巻13号3459
頁(秋北バス事件)
 就業規則の変更により,定年制度を改正して
主任以上の職の者の定年を55歳に定めたた
め,新たに定年制度の対象となった労働者
が解雇された事例
 新たな就業規則の作成又は変更によって,
既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働
条件を一方的に課することは,原則として,
許されないが,
 当該規則条項が合理的なものである限り,
個々の労働者において,これに同意しないこ
とを理由として,その適用を拒否することは
許されないと解すべきとし,
 不利益を受ける労働者に対しても変更後の
就業規則の適用を認めた。
Lecture on Contracts
(§3)
就業規則
あり(§7)
就業規則
法令違反
 労働契約の内容は,その就
業規則で定める労働条件に
よるものとする。
労使合意
→消費者契約法10条の構造
(§3)
 労働者及び使用者が労働契
約を締結する場合において,
使用者が合理的な労働条件
が定められている就業規則
を労働者に周知させていた
場合には,
START
労使合意と就業規則との関係
労使合意
就業規則
なし(§6)
 第7条
 民法 第623条(雇用)
 労働契約は,労働者が
使用者に使用されて労
働し,使用者がこれに対
して賃金を支払うことに
ついて,労働者及び使
用者が合意することに
よって成立する。
2015/1/16
就業規則による労働契約の成立
労使合意と就業規則との関係
労使合意が優先する場合
就業規則
あり(§7)
就業規則
法令違反
就規と異
なる労使
合意(§7)
320
(§13)
就業規則
合理性な
し(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
労使合意
就規基準
到達(§12)
労使合意優先
START
労使合意
(§3)
就業規則
なし(§6)
労使合意
就規基準
到達(§12)
就業規則優先
2015/1/16
Lecture on Contracts
321
労使合意優先
2015/1/16
労使合意
優先
就業規則
あり(§7)
(§13)
Lecture on Contracts
就業規則
合理性な
し(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
就業規則
無効
就業規則
無効
労使合意
優先
労使合意が
就業規則の
基準をクリア
法令又は労
働協約に
違反している
就業規則優先
Lecture on Contracts
就業規則
無効
就規と異
なる労使
合意(§7)
労使合意
就規基準
到達(§12)
労使合意優先
322
労使合意が優先する場合
労使合意と就業規則との関係
就業規則が優先する場合
就業規則
法令違反
就規と異
なる労使
合意(§7)
323
労使
合意
2015/1/16
労働条件に
合理性なし
周知せず
異なる
労使合意
あり
就業規則
Lecture on Contracts
324
54
Lecture on Contracts
2015/1/16
就業規則が優先する場合
労働契約の変更 →判例1,判例2
就業規則優先
就業規則優先
 第8条(労働契約の内容
の変更)
労使合意が就業規則の
水準に到達せず(§12)
就業規則と異なる
労使合意なし
就業規則と異なる
労使合意あり(§7)
 使用者は,労働者と合
意することなく,就業規
則を変更することにより,
労働者の不利益に労働
契約の内容である労働
条件を変更することはで
きない。ただし,次条の
場合は,この限りでない。
就業規則の労働条件が合理的(§7)
就業規則が法令・労働協約に違反しない(§13)
Lecture on Contracts
325
 就業規則の合理性について,就業規則の作成又
は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,
それによって労働者が被ることになる不利益の程
度を考慮しても,なお当該労使関係における当該
条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を
有するものであることをいうとし,新規則の合理性
を認めて,不利益を受ける労働者に対しても拘束
力を生ずるものした。
 最二判平9・2・28(第四銀行事件)
 就業規則により定年を延長する代わりに給与が減
額された事例で,秋北バス事件,大曲市農協事件
の最高裁判決の考え方を踏襲し,さらに合理性の
有無の判断に当たっての考慮要素を具体的に列
挙し,その考慮要素に照らした上で,就業規則の
変更は合理的であるとした。
2015/1/16
 労組(従業員の73%が
加入)の同意を得て行
われた賃金制度が見
直され,特定の労働者
が管理職の肩書きを
失い,賃金を減額され
た事例で,第四銀行事
件までの最高裁判決
の考え方を踏襲し,就
業規則の変更は合理
的なものということはで
きず,就業規則等変更
のうち賃金減額の効果
を有する部分は,不利
益を受ける労働者らに
その効力を及ぼすこと
ができないとした。
327
労使合意の効力要件→ 図
(就業規則の水準以上であること)
 第12条(就業規則
違反の労働契約)
 就業規則で定める
基準に達しない労
働条件を定める労
働契約は,その部
分については,無
効とする。
 この場合において,
無効となった部分
は,就業規則で定
める基準による。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 第11条(就業規則
の変更に係る手
続)
 就業規則の変更
の手続に関しては,
労働基準法 (昭和
22年法律第49号)
第89条 及び第90
条 の定めるところ
による。
2015/1/16
326
START
 民法(明治29年法律第89号) ,商法
(明治32年法律第48号)その他の法
律の
 公の秩序に関しない規定〔任意規定〕
の適用による場合に比し,消費者の
権利を制限し,又は消費者の義務を
加重する消費者契約の条項であって,
 民法第1条第2項に規定する基本原
則に反して消費者の利益を一方的に
害するものは,無効とする。
329
328
労働契約法と消費者契約法
(消契§10)
任意規定
なし(§91)
 (1)労働基準法第89条により,
常時10人以上の労働者を使用
する使用者は,変更後の就業
規則を所轄の労働基準監督署
長に届け出なければならない。
 (2)労働基準法第90条により,
就業規則の変更について過半
数労働組合等の意見を聴かな
ければならず,(1)の届出の際
に,その意見を記した書面を添
付しなければならない。
Lecture on Contracts
消費者
契約
 消費者契約法 第10条(消費者の
利益を一方的に害する条項の無
効)
Lecture on Contracts
 ただし,労働契約において,労働者及び使用
者が就業規則の変更によっては変更されない
労働条件として合意していた部分については,
第12条に該当する場合を除き,この限りでない。
就業規則変更の手続き
 最一判平12・9・7(み
ちのく銀行事件)
Lecture on Contracts
 労働契約の内容である労働条件は,当該変更
後の就業規則に定めるところによるものとする。
2015/1/16
労働条件を変更する就業規則の
合理性の判断基準
 最三判昭63・2・16(大曲市農業協同組合事
件)
 使用者が就業規則の変更により労働条件を変
更する場合において,変更後の就業規則を労
働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が,
労働者の受ける不利益の程度,労働条件の
変更の必要性,変更後の就業規則の内容の
相当性,労働組合等との交渉の状況その他の
就業規則の変更に係る事情に照らして合理的
なものであるときは,
 第9条(就業規則による労
働契約の内容の変更)
就業規則が周知されている(§7)
2015/1/16
 第10条
 労働者及び使用者は,
その合意により,労働契
約の内容である労働条
件を変更することができ
る。
任意規定
あり(§91)
公序良俗
に違反
 消費者契約法は,労働契約には適用されない
(消費者契約法の唯一の除外契約である)。
 しかし,労働契約法における「労使合意と就業規
則との関係」は,消費者契約法における,「消費
者契約条項と任意規定との関係」(消費者契約
法10条)との関係に非常によく似ている。
任意規定
に合理性
なし
任意規定
周知せず
任規と異
なる条項
(§7)
(消契§10)
消費者に
有利(消
契§10)
契約優先
2015/1/16
任意規定優先
Lecture on Contracts
330
55
Lecture on Contracts
2015/1/16
就業規則の効力要件
(法令等の違反がないこと)
 第13条(法令及び労働協約
と就業規則との関係)
 就業規則が法令〔労働基準
法等〕又は労働協約〔労働組
合法第14条~18条,特に第
16条参照〕に反する場合には,
 当該反する部分については,
第7条,第10条及び前条の規
定は,
 公の秩序又は善良の風
俗に反する事項を目的
とする法律行為は,無
効とする。
変更の労
使合意
(§8)
就規によ
る変更
なし(§9)
 法律行為の当事者が法
令中の公の秩序に関し
ない規定と異なる意思
を表示したときは,その
意思に従う。
331
就規による
変更あり(§9)
就業規則
法令違反
(§13)
就業規則
周知せず
(§10)
労使合意優先
(§8)
就規による
変更あり(§7)
就業規則
周知せず
就規と異
なる合意
就業規則
法令違反
(§13)
(§10)
(§13)
就業規則
合理性な
し(§10)
労使合意優先
333
就業規則
無効
就業規則
無効
労使
合意
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
労働条件に
合理性なし
周知せず
(§10)
就業規則優先
2015/1/16
Lecture on Contracts
334
就業規則優先
就業規則優先
労使合意
優先
労使合意が就業規則の
水準に到達せず(§12)
労使合意が
就業規則の
基準をクリア
法令又は労
働協約に
違反している
就規と異
なる合意
(§13)
労使合意を変更する就業規則が
効力を生じる場合
労使合意を変更する
就業規則が効力を有しない場合
就業規則
無効
就業規則
周知せず
労使合意
就規基準
到達(§12)
労使合意優先
労使合意
優先
332
労使合意を変更する就業規則
が効力を生じる場合
就規によ
る変更
なし(§9)
Lecture on Contracts
(§10)
Lecture on Contracts
労使合意
就規基準
到達(§12)
2015/1/16
就規と異
なる合意
就業規則優先
2015/1/16
変更の労
使合意
就規による
変更あり(§9)
就業規則
合理性な
し(§10)
就業規則
合理性な
し(§10)
労使合意
就規基準
到達(§12)
START
労使合意を変更する就業規
則が効力を有しない場合
就業規則
法令違反
なし(§13)
就規によ
る変更
なし(§6)
 第91条(任意規定と異
なる意思表示)
Lecture on Contracts
START
(§8)
 第90条(公序良俗)
 当該法令又は労働協約の適
用を受ける労働者との間の
労働契約については,適用し
ない。
2015/1/16
労使合意を変更する
就業規則の効力要件
START
変更の
労使合意
就業規則と異なる
労使合意なし
異なる
労使合意
就業規則と異なる
労使合意あり(§10)
就業規則による変更が周知されている(§10)
あり
就業規則による労働条件の変更が合理的(§10)
就業規則による変更
Lecture on Contracts
就業規則による変更が法令・労働協約に違反しない(§13)
335
2015/1/16
Lecture on Contracts
336
56
Lecture on Contracts
2015/1/16
出向
労働契約法
労働契約の継続及び終了
 第14条(出向)
1. 出向については,どのような制限があるか?
2. 懲戒・解雇については,どのような制限があるか?
3. 解雇はどのような場合になしうるか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
 最二判昭61・7・14(東亜ペイント事件)
 使用者が労働
者に出向を命ず
ることができる
場合において,
当該出向の命
令が,その必要
性,対象労働者
の選定に係る事
情その他の事情
に照らして,そ
の権利を濫用し
たものと認めら
れる場合には,
当該命令は,無
効とする。
337
2015/1/16
 使用者が労働者を懲戒するこ
とができる場合において,
 当該懲戒が,当該懲戒に係る
労働者の行為の性質及び態
様その他の事情に照らして,
客観的に合理的な理由を欠き,
社会通念上相当であると認め
られない場合は,
 その権利を濫用したものとし
て,当該懲戒は,無効とする。
2015/1/16
 「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない
場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,
当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなさ
れたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受
すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもので
あるとき等,特段の事情の存する場合でない限り」
権利濫用は成立せず,また業務上の必要性につい
ては,「企業の合理的運営に寄与する点」が認めら
れれば足りる。
Lecture on Contracts
338
解雇
懲戒
 第15条(懲戒)
 神戸営業所から名古屋営業所への転勤拒否を理
由とする懲戒解雇の効力が争われた事案において,
業務上の必要性は優に存し,転勤が労働者に与え
る家庭生活上の不利益も「転勤に伴い通常甘受す
べき程度のもの」であるとの判断から権利濫用の成
立を否定し,原審に差し戻した事例
→解雇事由
 第3条(労働契約
の原則)
 ⑤〔権利濫用の
禁止の原則〕労
働者及び使用者
は,労働契約に
基づく権利の行
使に当たっては,
それを濫用する
ことがあってはな
らない。
Lecture on Contracts
339
 第16条(解雇)
 解雇は,客観
的に合理的
な理由を欠き,
社会通念上
相当であると
認められない
場合は,その
権利を濫用し
たものとして,
無効とする。
2015/1/16
 最二判昭50・4・25(日本食塩製
造事件)
 ユニオン・ショップ協定に基づき
労働者を解雇した事例(解雇無
効)。
 使用者の解雇権の行使も,それ
が客観的に合理的な理由を欠き
社会通念上相当として是認する
ことができない場合には,権利の
濫用として無効になると解するの
が相当である。
Lecture on Contracts
340
契約期間中の解雇
短期雇用の継続的更新の制限
労働契約法
期間の定めのある労働契約
 第17条(契約期間中の解雇等)
 ①〔契約期間中の解雇〕使用者は,期間
の定めのある労働契約(以下この章に
おいて「有期労働契約」という。)につい
て,やむを得ない事由がある場合でな
ければ,その契約期間が満了するまで
の間において,労働者を解雇することが
できない。(解雇する場合の根拠規定は
民法628条)
1. 期間の定めのある契約については,どのような問
題があるのか?
2. 契約期間中の解雇,更新拒絶にはどのような制
限があるか?
 ②〔契約期間中の配慮〕使用者は,有期
労働契約について,その有期労働契約
により労働者を使用する目的に照らして,
必要以上に短い期間を定めることにより,
その有期労働契約を反復して更新する
ことのないよう配慮しなければならない。
3. どの程度契約が更新されると,期間の定めのない
契約へと変更できるのか?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
341
2015/1/16
Lecture on Contracts
 第628条(やむを得ない
事由による雇用の解
除)→労働契約法第17条(反
対解釈)
 当事者が雇用の期間を定
めた場合であっても,やむ
を得ない事由があるときは,
各当事者は,直ちに契約
の解除をすることができる。
 この場合において,その事
由が当事者の一方の過失
によって生じたものである
ときは,相手方に対して損
害賠償の責任を負う。
342
57
Lecture on Contracts
2015/1/16
無期労働契約への転換
有期労働契約の期間の定めのない
労働契約への転換(1/2)
→http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829‐01.pdf
5年
→http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829‐01.pdf
 第18条(有期労働契約の期間の定めのな
い労働契約への転換)〔新設〕
 この場合において,
当該申込みに係る期
間の定めのない労働
契約の内容である労
働条件は,現に締結
している有期労働契
約の内容である労働
条件(契約期間を除
く。)と同一の労働条
件(当該労働条件
(契約期間を除く。)
について別段の定め
がある部分を除く。)
とする。
 ①同一の使用者との間で締結された二以
上の有期労働契約(契約期間の始期の到
来前のものを除く。以下この条において同
じ。)の契約期間を通算した期間(次項にお
いて「通算契約期間」という。)が5年を超え
る労働者が,当該使用者に対し,現に締結
している有期労働契約の契約期間が満了
する日までの間に,当該満了する日の翌日
から労務が提供される期間の定めのない
労働契約の締結の申込みをしたときは,使
用者は当該申込みを承諾したものとみなす。
2015/1/16
Lecture on Contracts
343
無期労働契約への転換
5年
1年
1年
1年
1年
1年
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
申転
込換
み
1年
1年
5年
3年
3年
締
結
更
新
2015/1/16
申
込
み
1年
1年
1年
1年
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
申転
込換
み
1年
5年
3年
締
結
2015/1/16
無期労働契約
申転
込換
み
無期労働契約
Lecture on Contracts
345
2015/1/16
転
換
Lecture on Contracts
344
 当該空白期間が6月(当該空白期
間の直前に満了した一の有期労
働契約の契約期間(当該一の有
期労働契約を含む二以上の有期
労働契約の契約期間の間に空白
期間がないときは,当該二以上の
有期労働契約の契約期間を通算
した期間。以下この項において同
じ。)が1年に満たない場合にあっ
ては,当該一の有期労働契約の
契約期間に2分の1を乗じて得た
期間を基礎として厚生労働省令で
定める期間)以上であるときは,
当該空白期間前に満了した有期
労働契約の契約期間は,通算契
約期間に算入しない。
Lecture on Contracts
346
→更新の推定 解雇事由
5年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
締 更
結 新
申転
込換
み
6ヶ月以上の
空白期間
KAGAYAMA Shigeru
無期労働契約
申
込
み
 第19条(有期労働契約の更新等)〔旧18
条〕
Lecture on Contracts
無期労働契約
申転
込換
み
有期労働契約の更新(1/2)
通算契約期間の計算(クーリング)
2015/1/16
1年
3年
更
新
 ②当該使用者との間で締結された
一の有期労働契約の契約期間が満
了した日と当該使用者との間で締結
されたその次の有期労働契約の契
約期間の初日との間にこれらの契
約期間のいずれにも含まれない期
間(これらの契約期間が連続すると
認められるものとして厚生労働省令
で定める基準に該当する場合の当
該いずれにも含まれない期間を除く。
以下この項において「空白期間」と
いう。)があり,
転
換
カウントせず
無期労働契約
締 更
結 新
 第18条(有期労働契約の期間
の定めのない労働契約への
転換)〔新設〕
無期労働契約
締 更
結 新
1年
有期労働契約の期間の定めのない
労働契約への転換(2/2)
(アニメーション)→期間の定めのある雇用契約
1年
1年
347
 有期労働契約であって次の各号の
いずれかに該当するものの契約期
間が満了する日までの間に労働者
が当該有期労働契約の更新の申
込みをした場合又は当該契約期間
の満了後遅滞なく有期労働契約の
締結の申込みをした場合であって,
使用者が当該申込みを拒絶するこ
とが,客観的に合理的な理由を欠
き,社会通念上相当であると認めら
れないときは,使用者は,従前の有
期労働契約の内容である労働条件
と同一の労働条件で当該申込みを
承諾したものとみなす。
2015/1/16

一 当該有期労働契約が過去に反
復して更新されたことがあるもので
あって,その契約期間の満了時に当
該有期労働契約を更新しないことによ
り当該有期労働契約を終了させること
が,期間の定めのない労働契約を締
結している労働者に解雇の意思表示
をすることにより当該期間の定めのな
い労働契約を終了させることと社会通
念上同視できると認められること。
 最一判昭49・7・22(東芝柳町工場事
件)
Lecture on Contracts
 「有期労働契約が期間の満了毎に当
然更新を重ねてあたかも期間の定め
のない契約と実質的に異ならない状
態で存在していた場合には,解雇に
関する法理を類推すべきである」
348
58
Lecture on Contracts
2015/1/16
有期労働契約の更新(2/2)
期間の定めがあることによる
不合理な労働条件の禁止
→解雇事由
 第19条(有期労働契約
の更新等)〔旧18条〕
 二 当該労働者におい
て当該有期労働契約の
契約期間の満了時に当
該有期労働契約が更新
されるものと期待するこ
とについて合理的な理
由があるものであると認
められること。
2015/1/16
 最一判昭61・12・4(日
立メディコ事件)
 「有期労働契約の期間
満了後も雇用関係が継
続されるものと期待する
ことに合理性が認めら
れる場合には,解雇に
関する法理が類推され
るものと解せられる。」
Lecture on Contracts
349
 第20条(期間の定めがあることに
よる不合理な労働条件の禁止)
〔新設〕
 有期労働契約を締結している労働
者の労働契約の内容である労働条
件が,期間の定めがあることにより
同一の使用者と期間の定めのない
労働契約を締結している労働者の
労働契約の内容である労働条件と
相違する場合においては,
2015/1/16
参考文献
参考判例

安全配慮義務

就業規則による労働
条件の成立

就業規則による労働
条件の変更
解雇制限

2015/1/16
 最三判昭50・2・25(陸上自
衛隊事件)
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
Lecture on Contracts
 陸上自衛隊員が,自衛隊内
の車両整備工場で車両整備
中,後退してきたトラックにひ
かれて死亡した事例。
 不法行為に基づく請求権に
ついては,時効期間(3年)が
経過していたが,
 債務不履行の時効期間(10
年)が経過していないとして,
国の公務員に対する安全配
慮義務を認定した。
351
 就業規則の変更により,
定年制度を改正して主
任以上の職の者の定年
を55歳に定めたため,
新たに定年制度の対象
となった労働者が解雇さ
れた事例。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 新たな就業規則の作成又は
変更によって,既得の権利を
奪い,労働者に不利益な労
働条件を一方的に課すること
は,原則として,許されない
が,
 当該規則条項が合理的なも
のである限り,個々の労働者
において,これに同意しない
ことを理由として,その適用
を拒否することは許されない
と解すべきとし,
 不利益を受ける労働者に対
しても変更後の就業規則の
適用を認めた。
Lecture on Contracts
350
2015/1/16
 最三判昭59・4・10(川義事
件)
 宿直勤務中の従業員が強盗
に殺害された事例
 使用者は,労働者が労務提
供のため設置する場所,設
備もしくは器具等を使用し又
は使用者の指示のもとに労
務を提供する過程において,
労働者の生命及び身体等を
危険から保護するよう配慮す
べき義務があるとして,
 会社に安全配慮義務の違背
に基づく損害賠償責任があ
るとされた。
Lecture on Contracts
352
就業規則による労働条件の成立
(2/2)→条文
就業規則による労働条件の成立
(1/2)→条文1,条文2
 最大判昭43・12・25民
集22巻13号3459頁(秋
北バス事件)
Lecture on Contracts
安全配慮義務→条文
参考図書
 最高裁判例一覧
(年代順)
 当該労働条件の相
違は,労働者の業務
の内容及び当該業
務に伴う責任の程度
(以下この条におい
て「職務の内容」とい
う。),当該職務の内
容及び配置の変更
の範囲その他の事
情を考慮して,不合
理と認められるもの
であってはならない。
353
 最一判昭61・3・13(電電公社帯
広局事件)
 健康診断受診の業務命令を拒
否した労働者に対して,懲戒処
分を行った事例
 秋北バス事件の最高裁判決の
考え方を踏襲し,
 就業規則上の労働者の健康管
理上の義務は合理的であり,労
働契約の内容となっているとし,
 健康診断の受診拒否は懲戒事
由に当たり,懲戒処分が有効と
された。
2015/1/16
 最一判平3・11・28(日立製作所
武蔵工場事件)
 就業規則に,36協定〔労働基準
法第36条(時間外及び休日の労
働)に関する協定〕に基づき時間
外労働をさせることがある旨の
定めがあったが,労働者が残業
命令に従わなかったため,懲戒
解雇した事例。
 秋北バス事件の最高裁判決の
考え方を踏襲し,
 就業規則は合理的であり,労働
契約の内容となっているとし,懲
戒解雇は権利の濫用にも該当
せず,有効とされた。
Lecture on Contracts
354
59
Lecture on Contracts
2015/1/16
就業規則による労働条件の変更
合理性の判断基準(1/3)
就業規則による労働条件の成立
周知性→条文1,条文2
 最二判平15・10・10フジ
興産事件
 就業規則に基づき労働
者を懲戒解雇したが,懲
戒事由に該当するとさ
れた労働者の行為の時
点では就業規則は周知
されていなかった事例
2015/1/16
 就業規則が拘束力を生
ずるためには,拘束力を
生ずるためには,その
内容を適用を受ける事
業場の労働者に周知さ
せる手続が採られてい
ることを要するとし,懲
戒解雇を有効とした原
審を破棄し,差し戻した。
Lecture on Contracts
355
就業規則による労働条件の変更
合理性の判断基準(2/3)→条文
 最二判平9・2・28(第
四銀行事件)
 ① 就業規則の変更によって労働者が
被る不利益の程度
 ② 使用者側の変更の必要性の内容・
程度
 ③ 変更後の就業規則の内容自体の相
当性
 ④ 代償措置その他関連する他の労働
条件の改善状況
 ⑤ 労働組合等との交渉の経緯
 ⑥ 他の労働組合又は他の従業員の対
応
 ⑦ 同種事項に関する我が国社会にお
ける一般的状況
 秋北バス事件,大曲市
農協事件の最高裁判決
の考え方を踏襲し,
 さらに合理性の有無の
判断に当たっての考慮
要素を具体的に列挙し,
 その考慮要素に照らした
上で,就業規則の変更
は合理的であるとした。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 農協の合併に伴い,
新たに作成・適用さ
れた就業規則上の
退職給与規定が,
ある農協の従前の
退職給与規定より
不利益なものであっ
た事例。
2015/1/16
 ユニオン・ショップ協定に基づ
き労働者を解雇した事例
 使用者の解雇権の行使も,
それが客観的に合理的な理
由を欠き社会通念上相当とし
て是認することができない場
合には,
 権利の濫用として無効になる
と解するのが相当であるとし,
本件解雇を無効とした。
2015/1/16
357
KAGAYAMA Shigeru
356
 就業規則の変更は
合理的なものという
ことはできず,
 労組(従業員の73%が加
入)の同意を得て行われた
賃金制度が見直され,特
定の労働者が管理職の肩
書きを失い,賃金を減額さ
れた事例。
 就業規則等変更の
うち賃金減額の効
果を有する部分は,
不利益を受ける労
働者らにその効力
を及ぼすことができ
ないとした。
 第四銀行事件までの最高
裁判決の考え方を踏襲し
た上で,
2015/1/16
Lecture on Contracts
358
有期労働契約の解雇制限
 労働契約法 第16条
(解雇)
 最一判昭49・7・22(東
芝柳町工場事件)→条文
 解雇は,客観的に合理
的な理由を欠き,社会
通念上相当であると認
められない場合は,そ
の権利を濫用したものと
して,無効とする。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
 最一判平12・9・7(みちの
く銀行事件)
解雇制限
 最二判昭50・4・25(日本食
塩製造事件)
 秋北バス事件の最高裁判決の考
え方を踏襲した上で,
 就業規則の合理性について,就
業規則の作成又は変更が,その
必要性及び内容の両面からみて,
それによって労働者が被ることに
なる不利益の程度を考慮しても,
なお当該労使関係における当該
条項の法的規範性を是認できる
だけの合理性を有するものであ
ることをいうとし,
 新規則の合理性を認めて,不利
益を受ける労働者に対しても拘
束力を生ずるものした。
就業規則による労働条件の変更
合理性の判断基準(3/3)→条文
 第四銀行事件で列挙された考慮要素
 就業規則により定年を延
長する代わりに給与が
減額された事例。
 最三判昭63・2・16
(大曲市農業協同
組合事件)
 有期労働契約が期間の
満了毎に当然更新を重
ねてあたかも期間の定
めのない契約と実質的
に異ならない状態で存
在していた場合には,
 解雇に関する法理を類
推すべきである。
359
2015/1/16
 最一判昭61・12・4(日
立メディコ事件)→条文
 有期労働契約の期間満
了後も雇用関係が継続
されるものと期待するこ
とに合理性が認められ
る場合には,
 解雇に関する法理が類
推されるものと解せられ
る。
Lecture on Contracts
360
60
Lecture on Contracts
2015/1/16
請負契約 目次
 適用除外
 存続期間とその伸長
 特別法による売買と請負の
担保責任との接近
 免責特約
 請負契約の意義と性質
 請負の意義
 製作物供給契約,下請契約
 請負契約の効力
 請負債務の同時履行と先履
行
 仕事の完成と所有権の帰属
 請負人の担保責任
 請負契約の終了
 請負契約の意義と性質
 注文者による契約の解除
 注文者の破産と請負人の解
除
 請負契約の効力
 参考文献
 特定履行,損害賠償
 請負契約の終了
 参考判例
 参考図書
 解除
2015/1/16
請負契約
Lecture on Contracts
361
2015/1/16
Lecture on Contracts
362
請負契約の意義と性質→体系
1.
2.
3.
4.
5.
 役務提供契約
 第632条(請負)
請負契約の意義と性質
 請負は,当事者の一
方がある仕事を完成
することを約し,
 相手方がその仕事の
結果に対してその報
酬を支払うことを約す
ることによって,
 その効力を生ずる。
請負契約の性質は何か?
役務提供契約の中での請負契約の特色は何か?
製作物供給契約とはどのような契約か?
下請契約とはどのような契約か?
注文者と下請人との間に直接の関係は生じるか?
 諾成・有償・双務契約
 冒頭条文だけで明確
2015/1/16
Lecture on Contracts
363
製作物供給契約
2015/1/16
 契約当事者の一方が相手方の注文に応
じて自己の所有する材料で製作したもの
を供給することを約し,注文主がこれに対
価を払うことを約して成立する契約。
 製造物供給契約・請負供給契約ともいう。
 典型例
 請負人が材料を供給して行う家屋建築や
注文服・注文家具,印鑑の製作など。
 性質
 注文に応じての制作は,仕事の完成を目
的とする請負的要素を含み,
 製作物の供給による所有権移転は売買
的要素も含む。
 通説は請負と売買の混合契約と解し,特
約がない場合には製作には請負の規定
を,供給については売買の規定を適用す
べきであるとする。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 履行につき,最善の努力を
する債務(→最一判昭41・9・
8民集20巻7号1325頁)
 報酬の支払
 同時履行(引渡の場合)
 後払い(引渡なしの場合)
 役務の提供は,先履行
下請契約
 請負人が材料を提供する場合には,請負
人から注文者へと財産権が移転するため,
売買と解され,
 注文者が材料を提供する場合には仕事
の完成が目的となるので,請負と解される。
 実質的には,前者につき注文者の瑕疵修
補請求権・解除権など(民法634条,641条,
636条)の適用(準用)は肯定されてよく,
後者についても代金の支払や果実に関す
る規定(民法573条~575条)の適用があ
りうる。
 立法の動向
 住宅の品質確保の促進等に関する法律
第94条,95条は,建売住宅(売買)と注文
建築の場合にも,同様の担保責任を負わ
せるようにしており,売買と請負との区別
は薄れてきている。
Lecture on Contracts
 特定の結果を達成する債務
 手段の債務(委任契約な
ど)
Lecture on Contracts
365
364
下請契約
下請人
 定義
 製作物供給契約の定義
 結果債務(請負が典型例)
下請債権
 請負人(元請人)が請け負った仕事
の全部又は一部を,第三者(下請
人)にさらに請け負わせること。
請
請
前 負
負
適
払 料
料
法
の 債
債
抗
抗 権
権
弁
弁
移転
 典型例
 家屋の建築を請け負った大工が,
内装を専門業者に請け負わせる場
合など。
 下請の許容の理由
 請負は仕事の完成を目的とするか
ら,下請負が許される。
 下請負は元請人と下請人との間の
請負契約であるから,請負人が下
請人を利用しても,注文者と下請人
との間に直接の法律関係が生ずる
わけではない(通説)。
2015/1/16
請
負
契
約
注文者
 ただし,一括下請負(丸投げ)につい
ては,注文者の承諾が必要とされる
ことがある(建設業法第22条)。
 直接の権利・義務関係
請負人
(元請人)
 通説批判
 請負人が下請代金債務の履行のために,
請負代金の支払いを自らではなく,下請
人に支払うように約束することができる。
 この場合,下請人が受益の意思表示をす
ると,下請人は,注文者に対して直接に請
負代金を請求することができる。
 民法613条を類推することも可能である。
Lecture on Contracts
366
61
Lecture on Contracts
2015/1/16
請負上の債務の
同時履行と先履行→図解
 第633条(報酬の
支払時期)
請負契約の効力
 報酬は,仕事の
目的物の引渡し
と同時に,支払わ
なければならない。
仕事の完成と報酬請求とはどのような関係にあるか?
完成した目的物の所有権は誰に帰属するか?
請負人はどのような担保責任を負うか?
特定履行,損害賠償,解除のそれぞれの要件は?
担保責任の存続期間は?
1.
2.
3.
4.
5.
2015/1/16
Lecture on Contracts
 ただし,物の引渡
しを要しないとき
は,第624条第1
項〔報酬の支払
時期・労務の提
供の後〕の規定を
準用する。
367
(広い意味での同時履行)
仕事の開始
(先履行)
報酬支払なし
(後払い)
 請負の目的は仕事を完成することで
あり,仕事の完成と報酬の支払いと
が広い意味で同時履行となる。
 請負の目的物を引き渡す場合に,引
渡と報酬の支払いとが同時履行とな
るのはその理由に基づく。
 先履行の関係
 しかし,請負人の立場からすれば,報
酬を受け取る前から,役務の提供を
はじめるわけであるから,役務の提供
が先履行となる。
Lecture on Contracts
368
→契約の体系図
 特約がある場合
報酬支払
 通説・判例に対する
批判
 特約に従う
 特約がない場合(通説・判例)
 注文者が材料の全部または主要部分を提供した場合
 所有権は原始的に注文者に帰属する(大判昭7・5・9民集
11巻824頁)。
 請負人が材料の全部または主要部分を提供した場合
 所有権は請負人に帰属する。
 引渡によって,所有権が注文主に移転する(大判明37・6・
22民録10輯681頁)。
 注文者が代金全部または代金の大部分を支払ってい
る場合
 所有権が注文者に帰属するとの特約の存在が推認され
るため(大判昭18・7・20民集22巻660頁),
請負契約の締結
2015/1/16
 同時履行の関係
完成した目的物の所有権の帰属
同時履行と先履行との統合→条文
目的物引渡
仕事の完成
2015/1/16
 同時履行か先履行か
Lecture on Contracts
 特段の事情がない限り所有権は原始的に注文者に帰属
する(最二判昭46・3・5判時628号48頁,最二判昭44・9・
12判時572号25頁)。
369
2015/1/16
 請負人の報酬債権を確
保するための手段として
は,拙劣
 請負人帰属説は,建築許
可を注文者名義でとり,注
文者名義で所有権保存登
記をするのが通例である
実務に適合していない。
 請負人は敷地利用権を持
たないため,注文者から建
物収去・土地明渡しを求め
られると対応ができない。
 請負人は,登記をすれば,
抵当権に勝る先取特権を
有しており(民法339条),
これを活用すべきである。
Lecture on Contracts
370
請負人の担保責任
 第634条(請負人の担保責任1)
 ①仕事の目的物に瑕疵があるとき
は,注文者は,請負人に対し,相
当の期間を定めて,その瑕疵の修
補を請求することができる。ただし,
瑕疵が重要でない場合において,
その修補に過分の費用を要すると
きは,この限りでない。
請負人の担保責任
特定履行
契約解除
損害賠償
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 ②注文者は,瑕疵の修補に代えて,
又はその修補とともに,損害賠償
の請求をすることができる。この場
合においては,第533条〔同時履行
の抗弁権〕の規定を準用する。
371
2015/1/16
Lecture on Contracts
 特定履行としての修補請
求権の性質
 売買契約における売主の
担保責任との相違点
 特定履行の要件としては,
合理的な理由があること
が要求されるようになって
いる。
 「瑕疵が重要でない場合
において,その修補に過
分の費用を要するときは,
この限りでない」という規
定は,その意味でも重要
な意義を有している。
372
62
Lecture on Contracts
2015/1/16
請負人の担保責任と解除権
 第635条〔請負人の担
保責任2〕
 最三判平14・9・24判時
1801号77頁
 仕事の目的物に瑕疵が
あり,そのために契約を
した目的を達することが
できないときは,注文者
は,契約の解除をするこ
とができる。
 ただし,建物その他の土
地の工作物については,
この限りでない。
2015/1/16
請負人の担保責任の規定の不適用
 建築請負の仕事の目的
物である建物に重大な
瑕疵があるためにこれ
を建て替えざるを得ない
場合には,
 注文者は,請負人に対
し,建物の建て替えに要
する費用相当額を損害
として請求することがで
きる。
Lecture on Contracts
373
 第636条(請負人の担保責
任に関する規定の不適用)
 前2条の規定は,仕事の目的
物の瑕疵が注文者の供した
材料の性質又は注文者の与
えた指図によって生じたとき
は,適用しない。
 注文者は,請負人が
その仕事について第
三者に加えた損害を
賠償する責任を負わ
ない。
 ただし,請負人がその材料又
は指図が不適当であることを
知りながら告げなかったとき
は,この限りでない。
 ただし,注文又は指
図についてその注文
者に過失があったと
きは,この限りでない。
2015/1/16
請負人の担保責任の存続期間
 第637条(請負人の担
保責任の存続期間1)
 第638条〔請負人の担保責任の存続期
間2〕
 ①建物その他の土地の工作物の請負
人は,その工作物又は地盤の瑕疵につ
いて,引渡しの後5年間その担保の責任
を負う。
 ②仕事の目的物の引
渡しを要しない場合に
は,前項の期間は,
仕事が終了した時か
ら起算する。
 ②工作物が前項の瑕疵によって滅失し,
又は損傷したときは,注文者は,その滅
失又は損傷の時から1年以内に,第634
条〔請負人の担保責任〕の規定による権
利を行使しなければならない。
 ただし,この期間は,石造,土造,れん
が造,コンクリート造,金属造その他こ
れらに類する構造の工作物については,
10年とする。
Lecture on Contracts
375
売買と請負の担保責任の接近
 ①住宅を新築する建設工事の請負契
約(以下「住宅新築請負契約」という。)
においては,請負人は,注文者に引き
渡した時から10年間,住宅のうち構造
耐力上主要な部分又は雨水の浸入を
防止する部分として政令で定めるもの
(次条において「住宅の構造耐力上主
要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐
力又は雨水の浸入に影響のないもの
を除く。次条において同じ。)について,
民法 (明治29年法律第89号)第634条
第1項及び第2項前段に規定する担保
の責任を負う。
 ②前項の規定に反する特約で注文者
に不利なものは,無効とする。
 ③第1項の場合における民法第638条
第2項の規定の適用については,同項
中「前項」とあるのは,「住宅の品質確
保の促進等に関する法律第94条第1
項」とする。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の
特例)
 ①新築住宅の売買契約においては,売主は,
買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新
築請負契約に基づき請負人から当該売主に引
き渡されたものである場合にあっては,その引
渡しの時)から10年間,住宅の構造耐力上主要
な部分等の隠れた瑕疵について,民法第570条
において準用する同法第566条第1項 並びに同
法第634条第1項及び第2項前段に規定する担
保の責任を負う。この場合において,同条第1項
及び第2項前段中「注文者」とあるのは「買主」と,
同条第1項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。
 ②前項の規定に反する特約で買主に不利なも
のは,無効とする。
 ③第1項の場合における民法第566条第3項の
規定の適用については,同項中「前2項」とある
のは「住宅の品質確保の促進等に関する法律
第95条第1項」と,「又は」とあるのは「,瑕疵修
補又は」とする。
Lecture on Contracts
374
 第639条(担保
責任の存続期
間の伸長)
 第637条及び前
条第1項の期間
は,第167条
〔債権等の消滅
時効〕の規定に
よる消滅時効
の期間内に限
り,契約で伸長
することができ
る。
2015/1/16
 品確法 第97条(瑕疵担保責任の
期間の伸長等の特例)
 住宅新築請負契約又は新築住宅の
売買契約においては,
 請負人が第94条第1項に規定する瑕
疵その他の住宅の瑕疵について同項
に規定する担保の責任を負うべき期
間又は売主が第95条第1項に規定す
る瑕疵その他の住宅の隠れた瑕疵に
ついて同項に規定する担保の責任を
負うべき期間は,
 注文者又は買主に引き渡した時から
20年以内とすることができる。
Lecture on Contracts
376
請負人の担保責任の免責特約
→製作物供給契約,期間の伸長
 第94条(住宅の新築工事の請負人の
瑕疵担保責任の特例)
Lecture on Contracts
担保責任の期間の伸長
 ①前3条〔請負人の担
保責任〕の規定による
瑕疵の修補又は損害
賠償の請求及び契約
の解除は,仕事の目
的物を引き渡した時
から1年以内にしなけ
ればならない。
2015/1/16
 第716条(注文者の
責任)
377
 第640条(担保責任を負わない旨の特
約)
 請負人は,第634条又は第635条の規定
による担保の責任を負わない旨の特約を
したときであっても,知りながら告げな
かった事実については,その責任を免れ
ることができない。
 ②前項第五号に掲げる条項については,
次に掲げる場合に該当するときは,同項
の規定は,適用しない。
 消費者契約法 第8条(事業者の損害賠
償の責任を免除する条項の無効)
 ①次に掲げる消費者契約の条項は,無
効とする。

2015/1/16
五 消費者契約が有償契約である場合にお
いて,当該消費者契約の目的物に隠れた瑕
疵があるとき(当該消費者契約が請負契約で
ある場合には,当該消費者契約の仕事の目
的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)
に,当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠
償する事業者の責任の全部を免除する条項
Lecture on Contracts

一 当該消費者契約において,当該消費
者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき
に,当該事業者が瑕疵のない物をもってこ
れに代える責任又は当該瑕疵を修補する
責任を負うこととされている場合

二 当該消費者と当該事業者の委託を受
けた他の事業者との間の契約又は当該事
業者と他の事業者との間の当該消費者の
ためにする契約で,当該消費者契約の締
結に先立って又はこれと同時に締結された
ものにおいて,当該消費者契約の目的物
に隠れた瑕疵があるときに,当該他の事業
者が,当該瑕疵により当該消費者に生じた
損害を賠償する責任の全部若しくは一部を
負い,瑕疵のない物をもってこれに代える
責任を負い,又は当該瑕疵を修補する責
任を負うこととされている場合
378
63
Lecture on Contracts
2015/1/16
注文者による契約の解除
 第641条(注文
者による契約
の解除)
請負契約の終了
Lecture on Contracts
379
2015/1/16
Lecture on Contracts
注文者の破産
 第642条(注文者についての破
産手続の開始による解除)
 ①注文者が破産手続開始の決定
を受けたときは,請負人又は破産
管財人は,契約の解除をすること
ができる。
 この場合において,請負人は,既
にした仕事の報酬及びその中に含
まれていない費用について,破産
財団の配当に加入することができ
る。
 ②前項の場合には,契約の解除に
よって生じた損害の賠償は,破産
管財人が契約の解除をした場合に
おける請負人に限り,請求すること
ができる。
 この場合において,請負人は,そ
の損害賠償について,破産財団の
配当に加入する。
2015/1/16
 破産法 第53条(双務契約)
 ①双務契約について破産者及びその相手方が破産手
続開始の時において共にまだその履行を完了していな
いときは,破産管財人は,契約の解除をし,又は破産
者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求する
ことができる。
参考判例
参考図書
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
 最高裁判例一覧
(年代順)
 ②前項の場合には,相手方は,破産管財人に対し,相
当の期間を定め,その期間内に契約の解除をするか,
又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告
することができる。この場合において,破産管財人がそ
の期間内に確答をしないときは,契約の解除をしたも
のとみなす。


請負建築物の所有権
の帰属
請負人の担保責任
 ③前項の規定は,相手方又は破産管財人が民法第
631条 前段の規定〔使用者の破産の場合の労働者の
解約申し入れ〕により解約の申入れをすることができる
場合又は同法第642条第1項前段〔注文者の破産の場
合の請負人の解除〕の規定により契約の解除をするこ
とができる場合について準用する。
Lecture on Contracts
 大判明37・6・22民録10輯
681頁
 請負人の材料で,注文者が
地上権を有する土地の上に
建物その他工作物を設置す
べき請負契約においては,
仕事の結果その材料を土地
に附着させた時,当然に,そ
の所有権が注文者に移転す
るものではなく,請負人から
注文者に対し建物または工
作物を引渡すことによって,
初めて移転する。
KAGAYAMA Shigeru
380
参考文献
381
建築物の所有権の帰属(1/3)
2015/1/16
 ①委任は,各当事者がいつ
でもその解除をすることがで
きる。
 ②当事者の一方が相手方
に不利な時期に委任の解除
をしたときは,その当事者の
一方は,相手方の損害を賠
償しなければならない。
 ただし,やむを得ない事由
があったときは,この限りで
ない。
 請負人が仕
事を完成しな
い間は,注文
者は,いつで
も損害を賠償
して契約の解
除をすること
ができる。
1. 請負契約はどのような場合に終了するか?
2. 注文者の無理由解除権とはどのようなものか?
3. 注文者の破産の場合,請負人は契約を解除できるか?
2015/1/16
 第651条(委任の解除)
Lecture on Contracts
382
建築物の所有権の帰属(2/3)
 大判昭7・5・9民集11巻824頁
 注文者が建築の主要材料であ
る木材一切を供給したときは,
その建物の所有権は,竣工と
同時に,原始的に,注文者に帰
属する。
 大判昭18・7・20民集22巻660
頁
 建物建築の請負契約において,
建築完成前に請負代金の全額
が支払われている場合には,
建築完成と同時に建物の所有
権は注文者に移転する旨の合
意があったものと推定すべきで
ある。
Lecture on Contracts
2015/1/16
383
 最二判昭44・9・12判時572号25
頁
 本件建物を含む4戸の建物の建築を
注文した被上告人は,これを請け
負った上告人Aに対し,全工事代金
の半額以上を棟上げのときまでに支
払い,なお,工事の進行に応じ,残代
金の支払をして来たというのである
が,右のような事実関係のもとにお
いては,特段の事情のないかぎり,
建築された建物の所有権は,引渡を
まつまでもなく,完成と同時に原始的
に注文者に帰属するものと解するの
が相当である。
 最二判昭46・3・5判時628号48頁
 請負人が,材料全部を提供して,注
文者の所有する土地に建物を建築し
た場合において,
2015/1/16
 請負契約が分譲を目的とする建物6棟につき
一括してされたものであり,請負人は,その内
3棟については注文者ないしこれから分譲を
受けた入居者らに異議なくその引渡を了し,
注文者から,請負代金の全額につきその支
払のための手形を受領し,その際,6棟全部
についての建築確認通知書を注文者に交付
したなどの事実関係があるときは,
 右確認通知書交付にあたり,6棟の建物につ
き完成と同時に注文者に所有権を帰属させる
旨の合意がなされ,いまだ引渡しのされてい
ない建物も完成と同時に注文者の所有に帰し
たものと認めることができる。
 最一判昭54・1・25民集33巻1号26頁
 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建
前に第三者が材料を供して工事を施し独立の
不動産である建物に仕上げた場合における
建物所有権の帰属は,民法246条2項の規定
に基づいて決定すべきである。
Lecture on Contracts
384
64
Lecture on Contracts
2015/1/16
建築物の所有権の帰属(3/3)
請負契約と危険負担
 最三判平成5・10・19民集47巻8号5061頁[民法
判例百選Ⅱ(2001)第66事件]
最三判昭52・2・22民集31巻1号79頁
 建物建築工事の注文者と元請負人との間に,請負
契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権
は注文者に帰属する旨の約定がある場合には,元
請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人
が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても,
注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特
段の事情のない限り,
 右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有
権は注文者に帰属する。(補足意見がある。)
2015/1/16
Lecture on Contracts
385
請負契約において仕事が完成しない間に注文者
の責に帰すべき事由によりその完成が不能と
なった場合には,請負人は,自己の残債務を免
れるが,民法536条2項により,注文者に請負代
金全額を請求することができる。
ただし,自己の債務を免れたことにより得た利益
を注文者に償還すべきである。
2015/1/16
Lecture on Contracts
請負人の担保責任
委任・準委任契約 目次
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な
瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない
場合には,
 任意解除権
 専門家と素人の協働の実現
 解除の将来効
 委任契約の終了事由
 受任者の義務
注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要
する費用相当額を損害として請求することができ
る。
Lecture on Contracts
 委任契約の終了
 役務提供契約の比較
 委任契約の意義と性質
 委任契約の効力
最三判平14・9・24判時1801号77頁
2015/1/16
386
387




善管注意義務
報告義務
物の引渡義務,権利の移転義務
金銭消費の責任
 当事者の死亡
 当事者の破産手続の開始
 受任者の後見開始の審判
 委任契約終了後の処分
 委任契約終了の対抗要件
 委任者の義務





2015/1/16
報酬支払い
費用の前払
立替費用償還義務
代弁済・担保供与義務
損害賠償責任
 参考文献
 参考判例
 参考図書
Lecture on Contracts
388
委任・準委任の意義と性質
委任契約
1. 役務提供契約の中で,委任契約はどのような特色を有
しているか?
2. 委任契約と準委任契約とはどこが違うのか?
3. 委任契約の内容(委託)にはどのようなものがあるか?
 第1節 委任・準委任契約の意義と性質
 第2節 委任契約の効力
 第3節 委任契約の終了
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
389
2015/1/16
Lecture on Contracts
390
65
Lecture on Contracts
2015/1/16
委任と準委任の例
委任と準委任の意義と統合→体系
 第643条(委任)
 委任は,当事者の一
方が法律行為をする
ことを相手方に委託し,
相手方がこれを承諾
することによって,そ
の効力を生ずる。
 第656条(準委任)
 この節〔委任〕の規定
は,法律行為でない
事務の委託について
準用する。
2015/1/16
弁護士への
訴訟委任
委任と準委任との区別
委任
→例
 委任
 法律行為をなすことを委託すること。
 準委任
 法律行為でない事務を委託すること。
区別の必要性
 委任と準委任とは,委託内容が違う
だけである。
391
幼児の
監護養育の委託
準委任
→例
 準委任には,委任の規定が準用され
るため,区別して取り扱う必要はなく,
委任の中に準委任を含めて考えるこ
とができる。
Lecture on Contracts
司法書士への
登記手続の委任
委任
(広義)
2015/1/16
医師への
治療の委託
Lecture on Contracts
392
受任者の義務(1/5)
善管注意義務
 第644条(受任者の注意
義務)
委任契約の効力
 受任者は,委任の本旨に
従い,善良な管理者の注
意をもって,委任事務を処
理する義務を負う。
1. 受任者はどのような義務をどの程度で負うか?
2. 委任者はどのような義務をどの程度で負うか?
 善管注意義務
 抽象的軽過失のこと
 民法400条(特定物の
引渡の注意義務)
 自己の財産に対する
のと同一の注意義務
 委任の本旨
3. 受任者の権利移転義務と委任者の代弁済義務と
はどのような関係にあるか?
 具体的軽過失
 民法659条(無償受寄
者)
 民法827条(親権者)
 債務の本旨と同じ
 民法415条(債務不履行)
 民法493条(弁済の提供)
2015/1/16
Lecture on Contracts
393
2015/1/16
Lecture on Contracts
394
受任者の義務(2/5)
受任者の義務(3/5)
復委任の場合の受任者の責任
報告義務
復委任の許諾
 復代理の規定の
類推
第104条(任意代理人
による復代理人の選
任)
委任による代理人は,
本人の許諾を得たと
き,又はやむを得ない
事由があるときでなけ
れば,復代理人を選
任することができない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
復委任の場合の受任者の責任
第105条(復代理人を選任した代理人の責
任)
①代理人は,前条の規定により復代理人
を選任したときは,その選任及び監督につ
いて,本人に対してその責任を負う。
②代理人は,本人の指名に従って復代理
人を選任したときは,前項の責任を負わな
い。
ただし,その代理人が,復代理人が不適
任又は不誠実であることを知りながら,そ
の旨を本人に通知し又は復代理人を解任
することを怠ったときは,この限りでない。
Lecture on Contracts
395
 第645条(受任者による報
告)
 受任者は,委任者の請求がある
ときは,いつでも委任事務の処
理の状況を報告し,
 委任が終了した後は,遅滞なく
その経過及び結果を報告しなけ
ればならない。
 商法 第27条(通知義務)
報
告
義
務
 代理商は,取引の代理又は媒
介をしたときは,遅滞なく,商人
に対して,その旨の通知を発し
なければならない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
終
了
前
終
了
後
委任者
の請求
により
民法
645条
前段
受任者
自ら
商法
27条
受任者
自ら
645条
後段
民法
396
66
Lecture on Contracts
2015/1/16
受任者の義務(4/4)
受任者の義務(3/4)
金銭の消費に対する責任
受取物・果実の引渡し,権利の移転義務
 第646条(受任者による受
取物の引渡し等)
 第647条(受任者の金
銭の消費についての
責任)
民法646条2項の権利移転
 ①受任者は,委任事務を処
理するに当たって受け取った
金銭その他の物を委任者に
引き渡さなければならない。
第三者
(債務者)
 その収取した果実についても,
同様とする。
 ②受任者は,
権利 権利
譲渡通知
受任者
(譲渡人)
抗弁
権利
譲渡
 委任者のために自己の名で
取得した権利を
委任者
(譲受人)
 委任者に移転しなければな
らない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
397
 第419条(金銭債務の特則)
 ①金銭の給付を目的とする債務の不履行
については,その損害賠償の額は,法定利
率によって定める。ただし,約定利率が法定
利率を超えるときは,約定利率による。
 受任者は,委任者に
引き渡すべき金額又
はその利益のために
用いるべき金額を自
己のために消費した
ときは,
 その消費した日以後
の利息を支払わなけ
ればならない。
 この場合において,
なお損害があるとき
は,その賠償の責任
を負う。
 ②前項の損害賠償については,債権者は,
損害の証明をすることを要しない。
 ③第1項の損害賠償については,債務者は,
不可抗力をもって抗弁とすることができない。
 第190条(悪意の占有者による果実の返還
等)
 ①悪意の占有者は,果実を返還し,かつ,
既に消費し,過失によって損傷し,又は収取
を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2015/1/16
Lecture on Contracts
398
委任者の義務(1/5)
委任者の義務(2/5)
有償委任の場合の報酬支払義務
費用の前払義務
 第648条(受任者の報酬)
 ①受任者は,特約がなければ,委任者
に対して報酬を請求することができない。
 ②受任者は,報酬を受けるべき場合に
は,委任事務を履行した後でなければ,
これを請求することができない。
 ただし,期間によって報酬を定めたとき
は,第624条第2項〔報酬の支払時期・期
間経過後〕の規定を準用する。
 ③委任が受任者の責めに帰することが
できない事由によって履行の中途で終了
したときは,受任者は,既にした履行の
割合に応じて報酬を請求することができ
る。
2015/1/16
 第624条(報酬の
支払時期)
 ①労働者は,そ
の約した労働を
終わった後でな
ければ,報酬を
請求することがで
きない。
 ②期間によって
定めた報酬は,
その期間を経過
した後に,請求す
ることができる。
Lecture on Contracts
399
 第649条(受任
者による費用の
前払請求)
 委任事務を処
理するについて
費用を要すると
きは,委任者は,
受任者の請求
により,その前
払をしなければ
ならない。
2015/1/16
 弁護士に訴訟委任する場合の
着手金
 弁護士に事件を依頼した段階で
支払う費用の前払いであり,事
件の結果に関係なく,たとえ不成
功に終わったとしても返還されな
い。
 着手金の相場は,離婚で20~30
万円,刑事事件で30~40万円程
度。民事訴訟の場合は,訴訟額
によって着手金の額が変化する。
Lecture on Contracts
委任者の義務(3/5)
委任者の義務(4/5)
受任者の立替費用償還請求権
 第650条(受任者によ
る費用等の償還請求
等)(1/3)
 立替費用償還請求権
 事務管理で準用されて
いる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
受任者の代弁済請求・担保供与請求権
 第702条(管理者による費用の償
還請求等)
 ①受任者は,委任事務
を処理するのに必要と
認められる費用を支出
したときは,
 委任者に対し,その費
用及び支出の日以後に
おけるその利息の償還
を請求することができる。
 ①管理者は,本人のために有益な
費用を支出したときは,本人に対し,
その償還を請求することができる。
 ②第650条第2項〔受任者による費用
等の償還請求〕の規定は,管理者が
本人のために有益な債務を負担した
場合について準用する。
 ③管理者が本人の意思に反して事
務管理をしたときは,本人が現に利
益を受けている限度においてのみ,
前2項の規定を適用する。
Lecture on Contracts
400
401
 第650条(受任者による費
用等の償還請求等)(2/3)
 ②受任者は,委任事務を処
理するのに必要と認められる
債務を負担したときは,
債務の代弁済・担保供与
第三者
(受益者)
 委任者に対し,自己に代わっ
てその弁済をすることを請求
することができる。
 この場合において,その債務
が弁済期にないときは,委任
者に対し,相当の担保を供さ
せることができる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
受任者
(要約者)
債権
債権
抗弁
債務
引受
(指図)
委任者
(諾約者)
402
67
Lecture on Contracts
2015/1/16
委任者の義務(5/5)
受任者・委任者間の相互の法律関係
受任者の損害賠償請求権
 第650条(受任者による
費用等の償還請求等)
(3/3)
 旧民法 財産取得編 第245条
 ①委任者は,代理人に対して,左の義務を
負担す。
 第一 代理人が代理の履行の為め支出した
る立替金又は正当の費用の弁償及び其支
出したる日以来の法律上の利息の弁償
 第二 合意したる謝金の弁済
 ③受任者は,委任事務
を処理するため自己に
過失なく損害を受けた
ときは,委任者に対し,
その賠償を請求するこ
とができる。
受任者の権利移転義務
(民法646条2項:債権移転)
第三者
(債務者)
権利 権利
譲渡通知
 主として無償委任の場
合を想定して,受任者
が不慮の損害を受けた
場合に救済を与える規
定である。
 但予見したる損害にして,其全部又は一分
に付き特に謝金を諾約する理由と為りたる
ものは此限に在らず。
 第四 代理人が其管理に因りて負担したる
一身上の義務の解脱又は其賠償。
2015/1/16
Lecture on Contracts
403
第三者
(受益者)
受任者
(要約者)
債権
債権
抗弁
抗弁
債務
引受
権利
譲渡
 第三 代理人が其管理に因り又は其管理を
為すに際し,自己の過失に非ずして受けた
る損害の賠償。
 損害賠償
受任者
(譲渡人)
委任者の代弁済義務
(民法650条2項:債務引受)
(指図)
委任者
(譲受人)
委任契約には,受任者が得た権利を委任
者に譲渡すべきであるとの合意(第三者
のためにする契約)が含まれている。
2015/1/16
委任者
(諾約者)
委任契約には,受任者が負った債務を委
任者が引き受けるべきであるとの合意(第
三者のためにする契約)が含まれている。
Lecture on Contracts
404
委任と代理との関係
 委任契約
 委任に代理権の授与が伴わない場合
は,権利移転(民法464条2項)と代弁
済(民法650条2項)の法理で個別に対
応せざるをえない。
第三者
(相手方)
契約交渉
受任者
(代理人)
委任契約の終了
 代理権授与(委任状による)
 委任状によって委任者が受任者に代
理権を与えると,委任者(本人)と第三
者(相手方)との権利義務関係を一挙
に解決することができる。
代理
権授
与(委
任状)
 委任契約と代理関係の無因・有因
 受任者による債務不履行があっても,
代理から生じる法律関係には影響を及
ばさないのが原則である。
 ただし,受任者による債務不履行(代
理権の濫用)を相手方が知っている場
合には,民法93条の類推によって,本
人と相手方の法律行為は無効となる。
2015/1/16
委任者
(本人)
Lecture on Contracts
405
任意解除
 受任者の保護
 ②当事者の一方が相手
方に不利な時期に委任
の解除をしたときは,そ
の当事者の一方は,相
手方の損害を賠償しなけ
ればならない。
 ただし,やむを得ない事
由があったときは,この
限りでない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 素人が専門家と対等の立場に立つた
めには,素人に,いつでも,理由を述
べることなく,専門家を解任できるとい
う権利を与えておく必要がある。
 委任者の保護
 特に無償委任の場合,委任者の負担
を軽減する必要がある。
 民法641条(注文者による無理由解
約),および,民法628条(やむを得な
い事由による雇用の解除)も参考にな
る。
 当事者対等の原則
 当事者の一方に認められる権利は,
当事者双方に認められるべきである。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
406
一つの分野で専門家になる
 無理由解約が認められる理由
 ①委任は,各当事者が
いつでもその解除をする
ことができる。
2015/1/16
委任契約の解除の要件は何か?
解除の効力は遡るか?
委任契約はどのような場合に終了するか?
委任者の死亡の場合はどうか?
素人と専門家と協働の実現のために
委任の終了(1/5)
 第651条(委任の解除)
1.
2.
3.
4.
407
 現在社会の重要課題の一つは,専門家と
素人との協働をどのようにして実現するか
である。
 どのような努力によって専門家への道
が開かれるのか?
 人は,全ての分野に通じることはできない
ので,専門家と素人がよい関係を結べるよ
うにする環境を整える必要がある。
 一方で,専門家に素人が事務処理を委託
する委任契約において,素人が,受任者を
無理由で解雇できるという制度(民法651
条)は,素人を専門家の横暴から保護され
るための不可欠の前提となる。
 他方で,専門家の質を見極め,専門家ま
がいの人に騙されないようにするためには,
一人一人が,ある分野で専門家になる経
験を踏むことが大切である。
 専門家との協働によって,人生の困難な
問題を乗り越えていく上で,シーナ・アイエン
ガー(櫻井祐子訳)『選択の科学』文藝春秋
(2010)は,よい手引きとなる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 1つの分野で,世界の専門家並みの理
解度に到達するには,平均してのべ1万
時間,つまり毎日3時間ずつ,約10年間
にわたって,訓練を積む必要があると言
われる。
 それだけではない。医師や政治専門家
は,職務経験が豊富だからといって,
様々なバイアスを免れるとは限らない。
 ただやみくもに何かを毎日3時間ずつ,
10年間続けたからといって,その分野の
世界チャンピオンになれるはずもない。
 向上するためには,たえず自分の行動
を観察し,批判的に分析し続けなくては
ならない。何がまずかったのか? どうす
れば良くなるのだろう?と(アイエンガー
『選択の科学』(2010) 162頁)。
408
68
Lecture on Contracts
2015/1/16
委任の終了(3/5)
解除以外の委任の終了事由(1/3)
委任の終了(2/5)
解除の将来効
 第652条(委任の解除の効力)
 民法620条が準用される規定
 第620条〔賃貸借の解除の効
力の不遡及〕の規定は,委任
について準用する。
 第630条(雇用の解除の効力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の
不遡及〕の規定は,雇用について
準用する。
 第620条(賃貸借の解除の効
力)
 第684条(組合契約の解除の効
力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の
不遡及〕の規定は,組合契約につ
いて準用する。
Lecture on Contracts
409
委任の終了(3/5)
解除以外の委任の終了事由(2/3)
 第653条(委任の終了事由)
 委任は,次に掲げる事由によって終了する。
 二 委任者又は受任者が破産手続開始
の決定を受けたこと。 〔号の新設〕
 最二判平21・4・17(株主総会等決議不存
在確認請求事件)判タ1295号124頁,判時
2044号74頁
 会社が破産手続開始の決定を受けた
場合,破産財団についての管理処分権
限は破産管財人に帰属するが,役員の
選任又は解任のような破産財団に関す
る管理処分権限と無関係な会社組織に
係る行為等は,破産管財人の権限に属
するものではなく,破産者たる会社が自
ら行うことができるというべきである。
 そうすると,同条の趣旨に照らし,会社
につき破産手続開始の決定がされても
直ちには会社と取締役又は監査役との
委任関係は終了するものではないから,
 これは,破産手続開始により委任者が自らす
破産手続開始当時の取締役らは,破産
ることができなくなった財産の管理又は処分
手続開始によりその地位を当然には失
に関する行為は,受任者もまたこれをすること
わず,会社組織に係る行為等について
ができないため,委任者の財産に関する行為
は取締役らとしての権限を行使し得ると
を内容とする通常の委任は目的を達し得ず終
解するのが相当である。
了することによるものと解される。
Lecture on Contracts
 民法653条は任意規定
 明示又は黙示で死後も存続
する「死後委任」を肯定する
ことが認められている。
2015/1/16
 自己の死後の事務を含めた
法律行為等の委任契約が成
立したとの原審の認定は,
 当然に,委任者の死亡によっ
ても右契約を終了させない旨
の合意を包含する趣旨のも
のというべく,
 民法653条の法意がかかる
合意の効力を否定するもの
でないことは疑いを容れない
ところである。
Lecture on Contracts
411
 第653条(委任の終了事
由)
 委任継続の特約が存在
する場合
 委任は,次に掲げる事由
によって終了する。
 三 受任者が後見開始の
審判を受けたこと。 〔号の
新設〕
 受任者の後見開始
 受任者が財産管理権を失
い,委任者との信頼関係
が破壊されるために,委
任終了事由とされる。
2015/1/16
 委任契約を継続する特約
がある場合には,受任者
の後見人が委任事務を継
続する。
 委任者の後見開始
 委任者には事務処理能力
は必要とされないため,
 委任の終了事由とされて
いない。
Lecture on Contracts
委任の終了(4/5)
委任の終了(5/5)
委任の終了後の処分
委任終了の対抗要件
 第654条(委任の終了後
の処分)
 委任が終了した場合にお
いて,
 急迫の事情があるときは,
 受任者又はその相続人若
しくは法定代理人は,委任
者又はその相続人若しく
は法定代理人が委任事務
を処理することができるに
至るまで,
 必要な処分をしなければ
ならない。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 第700条(管理者による
事務管理の継続)
 管理者は,本人又はその
相続人若しくは法定代理
人が管理をすることができ
るに至るまで,
 事務管理を継続しなけれ
ばならない。
 ただし,事務管理の継続
が本人の意思に反し,又
は本人に不利であること
が明らかであるときは,こ
の限りでない。
Lecture on Contracts
410
委任の終了(3/5)
解除以外の委任の終了事由(3/3)
 民法653条は,委任者が破産手続開始の決
定を受けたことを委任の終了事由として規定
する。
2015/1/16
 一 委任者又は受任者の死
亡 〔号の新設〕
 二 委任者又は受任者が破
産手続開始の決定を受けたこ
と。 〔号の新設〕
 三 受任者が後見開始の審
判を受けたこと。 〔号の新
設〕
 第620条〔賃貸借の解除の効力の
不遡及〕の規定は,委任について
準用する。
 この場合において,当事者の
一方に過失があったときは,
その者に対する損害賠償の
請求を妨げない。
 最三判平4・9・22金法1358
号55頁(葬儀用等寄託金返
還請求事件)
 委任は,次に掲げる事由に
よって終了する。
 第652条(委任の解除の効力)
 賃貸借の解除をした場合に
は,その解除は,将来に向
かってのみその効力を生ずる。
2015/1/16
 第653条(委任の終了事
由)
413
 第655条(委任の
終了の対抗要
件)
 委任の終了事由
は,これを相手
方に通知したと
き,又は相手方
がこれを知って
いたときでなけ
れば,これをもっ
てその相手方に
対抗することが
できない。
2015/1/16
412
 相手方への意思表示による終了原
因(民法651条等)の場合
 常に相手方に通知されるので(民法540
条1項),本条は適用されない。
 代理権の消滅の場合の対抗要件
 第112条(代理権消滅後の表見代理)
 代理権の消滅は,善意の第三者に
対抗することができない。
 ただし,第三者が過失によってその
事実を知らなかったときは,この限
りでない。
Lecture on Contracts
414
69
Lecture on Contracts
2015/1/16
委任者死亡の場合における
委任契約の継続
参考文献
参考判例
参考図書

委任者の死亡と委任
契約の継続

委任者の破産と委任
契約の継続
2015/1/16
最三判平4・9・22金法1358号55頁(葬儀用等
寄託金返還請求事件)
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
 最高裁判例一覧
(年代順)
Lecture on Contracts
自己の死後の事務を含めた法律行為等の委任
契約が成立したとの原審の認定は,当然に,委
任者の死亡によっても右契約を終了させない旨
の合意を包含する趣旨のものというべく,
民法653条の法意がかかる合意の効力を否定す
るものでないことは疑いを容れないところである。
415
2015/1/16
委任者の破産手続開始の場合の
委任契約の継続
 最二判平21・4・17(株主総会等
決議不存在確認請求事件)判タ
1295号124頁,判時2044号74頁
 民法653条は,委任者が破産手続
開始の決定を受けたことを委任の
終了事由として規定するが,これ
は,破産手続開始により委任者が
自らすることができなくなった財産
の管理又は処分に関する行為は,
受任者もまたこれをすることができ
ないため,委任者の財産に関する
行為を内容とする通常の委任は目
的を達し得ず終了することによるも
のと解される。
 会社が破産手続開始の決定を受
けた場合,破産財団についての管
理処分権限は破産管財人に帰属
する。
2015/1/16
 そうすると,同条の趣旨に照らし,会社
につき破産手続開始の決定がされても
直ちには会社と取締役又は監査役との
委任関係は終了するものではないから,
破産手続開始当時の取締役らは,破
産手続開始によりその地位を当然には
失わず,会社組織に係る行為等につい
ては取締役らとしての権限を行使し得
ると解するのが相当である(最高裁平
成12年(受)第56号同16年6月10日第
一小法廷判決・民集58巻5号1178頁参
照)。
417
身長160cm,体重が60kgなので,少しスリム
になりたいと思い,3カ月で10kg必ず痩せる,
しかも,リバウンドしないというエステティック
サロンで,痩身のプログラムを実施することに
した。
3カ月コースで,10万円を支払ったが,全く効
果がなかった。
エステティックサロンに対して,10万円の損害
賠償を請求できるか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
請負人の債務(結果債務)と
受任者の債務(手段債務)との区別
結果債務と手段の債務の判断基準
 UNIDROIT Article 5.4 ‐ 特定の結果の達成義務(結
果債務),最善の努力義務(手段債務)
 UNIDROIT Article 5.5 ‐ 関連する義務の種類(結果債務か手
段債務か)の決定
 (1) 結果債務
当事者の債務が,特定の結果を達成する債務とかか
わる場合には,その限りにおいて,その当事者は,そ
の結果を達成するように義務づけられる。
 (2) 手段の債務
当事者の債務が,ある行為の履行につき,最善の努
力をする債務とかかわる場合には,その限りにおいて,
その当事者は,同種の合理的人間が同じ状況におい
て為すであろう努力をするように義務づけられる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
416
練習問題
 しかし,役員の選任又は解任のような
破産財団に関する管理処分権限と無
関係な会社組織に係る行為等は,破産
管財人の権限に属するものではなく,
破産者たる会社が自ら行うことができ
るというべきである。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
419
418
 当事者の債務が,どの程度まで,行為の履行における最
善の努力債務または特定の結果の達成債務とかかわる
のかを決定するに際しては,とりわけ,以下の各号の要
素が考慮されなければならない。
 (a) 契約の中でその債務がどのように表示されているか
 (b) 契約の価格,および,価格以外の契約条項
 (c) 期待されている結果を達成する上で通常見込まれるリスクの
程度
 (d) 相手方がその債務の履行に対して及ぼしうる影響力
2015/1/16
Lecture on Contracts
420
70
Lecture on Contracts
2015/1/16
寄託契約 目次
 寄託の終了
 寄託の意義と性質









寄託の意義
寄託の性質
寄託の位置づけ
寄託の体系上の地位(図)
 寄託の効力
寄託契約
 消費寄託
 受寄者の義務




寄託者の任意解約権
受託者の任意解約権
任意解約権のまとめ
返還の場所
委任の規定の準用




保管義務
復寄託,図解
注意義務
通知義務
 第1節 寄託契約の意義と性質
 第2節 寄託契約の効力
 参考文献
 寄託者の義務
 委任の規定の準用による義務
 損害賠償義務
2015/1/16
寄託と消費寄託との比較
消費寄託と消費貸借との比較
消費寄託の性質
有償寄託と有償消費寄託との比較
 第3節 寄託契約の終了
 参考判例
 参考図書
Lecture on Contracts
 第4節 消費寄託契約
421
2015/1/16
Lecture on Contracts
422
寄託の意義→体系
 寄託に該当しない典型例
 第657条(寄託)
 寄託は,当事者の一方が相手方の
ために保管をすることを約して
 ある物を受け取ることによって,その
効力を生ずる。
寄託契約の意義と性質
Lecture on Contracts
 駅または空港の手荷物預かり所に,荷物
を預ける。
 美術館または劇場にあるクロークに,荷
物を預ける。
 具体例
 Aは,たぬき大の犬(キク)を飼っているが,
家族を伴って海外赴任することになった。
そこで,愛犬家のBに頼んで,帰国するま
で,キクの世話をお願いすることにした。
 Bは,Aが帰宅するまで,自宅で飼育する
ことを引き受けて,キクを受け取った。
423
2015/1/16
寄託の性質→体系
 第657条(寄託)
 義務を負わないのはどちらか?
 寄託者(引渡を完了しているから)
 相手方は何の義務を負うか?
 消費貸借契約の場合と同様,要
物契約とする意味は薄弱である。
 債権法改正(案)
 【3.2.11.011】 (寄託の定義)
寄託は,当事者の一方(受寄者)
が
相手方(寄託者)から物を受け取り,
その物を相手方のために保管し,
返還する義務を負う契約である。
 寄託者の義務は?
 報酬支払義務
 受寄者の義務は?
 保管(民法400条)及び返還義務(662条)
 無償と有償との相違点
 無償寄託の注意義務
 自己の物と同一の注意義務
 有償寄託の注意義務
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 寄託は,当事者の一方(寄託者)が
相手方(受寄者)のために,ある物
(寄託物)を保管し,その後返還する
ことを約して
 その物を受け取ることによって,その
効力を生じる。
424
貸借型契約との類似点
役務提供契約内での位置づけ
 無償寄託は,使用貸借に類似しており,
有償寄託は,賃貸借に類似している。
 役務の提供契約の中で,寄託は,保管事務
の委託なのであるから,広い意味での委任
(準委任)契約に包摂されるはずである。
 例えば,荷物を預けるという例を
とっても,手荷物預かり所に荷物を
預けるのは寄託であるが,コイン
ロッカーに荷物を預けるのは,賃
貸借である。
 このような区別が生じているのはなぜ
か?
 これらの区別は,物の利用(使用
貸借,賃貸借)か,それとも,労務
の利用(寄託)かという基準に従っ
ている。
 善管注意義務
2015/1/16
 賃貸借の冒頭条文と同様,寄託の冒頭条
文には,「返還合意」が欠けている。
 民法657条(改正・暫定版)
Lecture on Contracts
 それにもかかわらず,寄託と使用貸借・
賃貸借と寄託とは区別されている。
 保管と返還の義務
 有償の場合(双務契約)
 要物契約
 委任契約(動物を訓練するために預
ける場合も同じ)
 冒頭条文の欠陥
寄託契約の位置づけ→体系
 無償の場合(片務契約)
 寄託は,当事者の一方が相手
方のために保管をすることを約
して
 ある物を受け取ることによって,
その効力を生ずる。
 賃貸借契約(駐車場に自動車を預け
る場合も同じ)
 子どもを託児所に預ける場合
 典型例
1. 寄託は,消費貸借と同様,要物契約であり,
かつ,返還合意を含んでいるにもかかわらず,
有償契約の場合には,消費貸借とは異なり,
双務契約となる。その理由は何か?
2. 寄託が要物契約とされる理由は何か?
2015/1/16
 コインロッカーに荷物を預ける場合
425
2015/1/16
 それにもかかわらず,寄託契約が,委任とは
異なる契約として位置づけている理由は何
であろうか?
 その理由は,寄託契約には,貸借型契
約必須のアイテムである「返還合意」が
含まれているからである。
 寄託は,役務提供契約の中で,貸借型
の契約として独自の存在意義を有して
いる。
 特に,消費寄託は,寄託契約よりも,消
費貸借契約としての性格を強く有してい
る。
Lecture on Contracts
426
71
Lecture on Contracts
2015/1/16
受寄者の義務(1/6)
物の保管義務
 第657条(寄託)
寄託契約の効力
1.
2.
3.
4.
Lecture on Contracts
 寄託物の譲受人は,引渡がなくても,受
寄者に対抗できる(判例)。
 大判昭13・7・9民集17巻1409頁(最
三判昭29・8・31民集8巻8号1567頁)
 ある物を受け取ることに
よって,その効力を生ずる。
 単に物の寄託を受け之を寄託者の為に
保管する者は,
 物の保管
受寄者は一般にどのような義務を負うか?
無償の受寄者の義務はどのようなものか?
有償の受寄者の義務はどのようなものか?
寄託者はどのような義務を負うか?
2015/1/16
 寄託物が第三者に譲渡された場合
の寄託者の地位の移転
 寄託は,当事者の一方が
相手方のために保管し,そ
の後返還することを約して
 受寄者の支配(所持)内
において物を盗難や紛
失から守り(保持し),そ
の物の滅失・損傷を防
止して原状維持のため
に必要とされる措置を講
じること。
427
2015/1/16
 返還時期の定あると否とを問はず請求
次第何時にても之が返還を為すべき義
務を負担し〔民法662条〕,
 寄託物に付所有権を取得したる者に対し
之が引渡の欠缺を主張する正当の利益
を有するものに非ざれば,
 民法第178条に所謂第三者に該当せざ
るものとす。
Lecture on Contracts
受寄者の義務(2/6)
受寄者の義務(2/6)
本人保管義務とその例外(復寄託)
 第658条(寄託物の
使用及び第三者に
よる保管)
 ①受寄者は,寄託者の
承諾を得なければ,寄託
物を使用し,又は第三者
にこれを保管させること
ができない。
 ②第105条〔復代理人を
選任した代理人の責任〕
及び第107条第2項〔復
代理人の権利・義務〕の
規定は,受寄者が第三
者に寄託物を保管させ
ることができる場合につ
いて準用する。
2015/1/16
本人保管義務とその例外(復寄託)
 第104条(任意代理人による復代理人の選任)
 委任による代理人は,本人の許諾を得たとき,又はやむを得な
い事由があるときでなければ,復代理人を選任することができ
ない。
 第105条(復代理人を選任した代理人の責任)
 ①代理人は,前条の規定により復代理人を選任したと
きは,その選任及び監督について,本人に対してその
責任を負う。
 ②代理人は,本人の指名に従って復代理人を選任した
ときは,前項の責任を負わない。ただし,その代理人が,
復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら,
その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを
怠ったときは,この限りでない。
 第107条(復代理人の権限等)
 ①復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する。
 ②復代理人は,本人及び第三者に対して,代理人と同
一の権利を有し,義務を負う。
Lecture on Contracts
428
429
 第658条(寄託物の使用
及び第三者による保
管)
寄託者
(本人)
寄託契約
 ①受寄者は,寄託者の承諾を得
なければ,寄託物を使用し,又
は第三者にこれを保管させるこ
とができない。
 ②第105条〔復代理人を選任した
代理人の責任〕及び第107条第2
項〔復代理人の権利・義務〕の規
定は,受寄者が第三者に寄託物
を保管させることができる場合に
ついて準用する。
2015/1/16
復寄
託契
約
復受寄者
(第三者)
Lecture on Contracts
受寄者の義務(3/6)
受寄者の義務(4/6)
受寄者の注意義務
受寄者の通知義務
第659条(無償受
寄者の注意義務)
商法 第593条【寄託
を受けた商人の責任】
無報酬で寄託を受
けた者は,自己の
財産に対するのと
同一の注意をもっ
て,寄託物を保管
する義務を負う。
商人が其営業の範囲
内に於て寄託を受けた
るときは,報酬を受け
ざるときと雖も,善良な
る管理者の注意を為
すことを要す。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
431
受寄者
(代理人)
 第660条(受寄者の通
知義務)
430
 第615条(賃借人の通
知義務)
 寄託物について権利を
主張する第三者が受寄
者に対して訴えを提起し,
又は差押え,仮差押え
若しくは仮処分をしたと
きは,
 賃借物が修繕を要し,
又は賃借物について権
利を主張する者がある
ときは,賃借人は,遅滞
なくその旨を賃貸人に通
知しなければならない。
 受寄者は,遅滞なくその
事実を寄託者に通知し
なければならない。
 ただし,賃貸人が既にこ
れを知っているときは,
この限りでない
2015/1/16
Lecture on Contracts
432
72
Lecture on Contracts
2015/1/16
受寄者の義務(5/6)
受寄者の義務(6/6)
受寄者による受取物の引渡し等
受寄者の金銭の消費についての責任
 第665条(委任の規定の準用)
 第646条から第650条まで(同
条第3項を除く。)の規定は,
寄託について準用する。
 第646条(受任者による受取物の
引渡し等)
 第665条(委任の規定の準用)
 民法646条2項の権利移転
第三者
(債務者)
 ①受任者は,委任事務を処理す
るに当たって受け取った金銭そ
の他の物を委任者に引き渡さな
ければならない。その収取した
果実についても,同様とする。
 ②受任者は,委任者のために自
己の名で取得した権利を委任者
に移転しなければならない。
2015/1/16
権利 権利
譲渡通知
受寄者
(譲渡人)
抗弁
権利
譲渡
寄託者
(譲受人)
Lecture on Contracts
433
 第419条(金銭債務の特則)
 第646条から第650条まで(同
条第3項を除く。)の規定は,
寄託について準用する。
 ①金銭の給付を目的とする債務の不履
行については,その損害賠償の額は,
法定利率によって定める。ただし,約定
利率が法定利率を超えるときは,約定
利率による。
 第647条(受任者の金銭の消費に
ついての責任)
 ②前項の損害賠償については,債権者
は,損害の証明をすることを要しない。
 ③第1項の損害賠償については,債務
者は,不可抗力をもって抗弁とすること
ができない。
 受任者は,委任者に引き渡
すべき金額又はその利益の
ために用いるべき金額を自
己のために消費したときは,
 第190条(悪意の占有者による果実の
返還等)
 その消費した日以後の利息
を支払わなければならない。
 この場合において,なお損害
があるときは,その賠償の責
任を負う。
2015/1/16
 ①悪意の占有者は,果実を返還し,か
つ,既に消費し,過失によって損傷し,
又は収取を怠った果実の代価を償還す
る義務を負う。
Lecture on Contracts
寄託者の義務(1/2)
寄託者の義務(2/2)
委任の規定の準用による寄託者の義務
寄託者の損害賠償義務
 第665条(委
任の規定の
準用)
 第661条(寄託者による
損害賠償)
 寄託者の義務(民法665条)
 報酬支払義務
 民法648条(受任者〔受寄者〕の報酬)
 第646条から
第650条まで
(同条第3項
を除く。)の
規定は,寄
託について
準用する。
 保管費用前払義務
 民法649条(委任者〔受寄者〕による費用の
前払請求)
 立替費用償還義務

民法650条1項(受任者〔寄託者〕による費用
の償還請求)
 代弁済義務・担保供与義務
 民法650条2項(受任者〔受寄者〕による代弁
済請求・担保供与請求)
2015/1/16
Lecture on Contracts
435
 具体例
 寄託者は,寄託物の性質
又は瑕疵によって生じた
損害を受寄者に賠償しな
ければならない。
 ただし,寄託者が過失なく
その性質若しくは瑕疵を知
らなかったとき,又は受寄
者がこれを知っていたとき
は,この限りでない。
2015/1/16
434
 AからBが預かった犬(キ
ク)が凶暴な犬で,Bが手
を噛まれて大けがをした
場合。
 第650条(委任者の損害
賠償責任)
 ③受任者は,委任事務を
処理するため自己に過失
なく損害を受けたときは,
委任者に対し,その賠償
を請求することができる。
Lecture on Contracts
436
寄託契約の終了(1/3)
寄託者の任意解約権
第662条(寄託者
による返還請求)
寄託契約の終了
当事者が寄託物
の返還の時期を
定めたときで
あっても,寄託者
は,いつでもそ
の返還を請求す
ることができる。
1. 寄託者はどのような場合に寄託契約を終了できる
か?
2. 受寄者は,どのような場合に寄託契約を終了させ
ることができるか?
3. 寄託物の返還先はどこか?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
437
2015/1/16
 寄託者の任意解約権
 寄託は,物を預けた寄託者
の利益のために存する制度
であるから,寄託者による任
意解約について,貸借型契
約とは異なり,借主保護の
ための制約を必要としない。
 ただし,有償寄託の場合に
は,民法665条の準用規定
によって,民法648条3項が
準用される。
Lecture on Contracts
438
73
Lecture on Contracts
2015/1/16
寄託契約の終了(2/3)
寄託契約の終了(2/3)
受寄者による任意解約権
任意解約権のまとめ
 第663条(寄託物の返還
の時期)
 ①当事者が寄託物の返還
の時期を定めなかったとき
は,受寄者は,いつでもそ
の返還をすることができる。
 商法 第619条【保管の期
間】
 当事者が保管の期間を定
めざりしときは,倉庫営業
者は受寄物入庫の日より6
个月を経過したる後に非ざ
れば,其返還を為すことを
得ず。
 ②返還の時期の定めがあ
るときは,受寄者は,やむ
を得ない事由がなければ,
その期限前に返還をする
ことができない。
2015/1/16
寄託者
 663条第1項の特則
期間の定めあり
いつでも返還を請求できる
(民法662条)
 但,已むことを得ざる事由
あるときは此限に在らず。
期間の定めなし
439
2015/1/16
寄託物の返還の場所
 寄託物の返還は,その保
管をすべき場所でしなけ
ればならない。
 ただし,受寄者が正当な
事由によってその物を保
管する場所を変更したとき
は,その現在の場所で返
還をすることができる。
2015/1/16
やむを得ない事由がなければ,期限
前に返還できない(民法663条2項)。
いつでも返還を請求できる
(民法662条)
Lecture on Contracts
 第664条(寄託物の返還
の場所)
受寄者
Lecture on Contracts
440
委任の規定の準用
 第484条(弁済の場所)
 弁済をすべき場所につい
て別段の意思表示がない
ときは,
 特定物の引渡しは債権発
生の時にその物が存在し
た場所〔要物契約の場合
は,債務者の住所地〕にお
いて,
 その他の弁済は債権者の
現在の住所において,そ
れぞれしなければならない。
Lecture on Contracts
いつでも返還できる
(民法663条1項)
441
 第665条(委任の規定
の準用)
 第646条から第650条
まで(同条第3項を除
く。)の規定は,寄託に
ついて準用する。
 受寄者の義務
 民法646条(受任者〔受
寄者〕による受取物の
引渡し等)
 民法647条(受任者〔受
寄者〕の金銭の消費に
ついての責任)
2015/1/16
 寄託者の義務
 報酬支払義務
 民法648条(受任者〔受寄者〕の報酬)
 保管費用前払義務
 民法649条(委任者〔受寄者〕による費
用の前払請求)
 立替費用償還義務

民法650条1項(受任者〔寄託者〕によ
る費用の償還請求)
 代弁済義務・担保供与義務
 民法650条2項(受任者〔受寄者〕によ
る代弁済請求・担保供与請求)
Lecture on Contracts
442
消費寄託契約の意義(1/3)
寄託と消費寄託との比較
 第666条(消費寄託)
消費寄託
1. 消費寄託の典型例は何か?
2. 消費寄託にはどのような危険が伴うか?
3. 消費寄託に消費貸借の規定が準用されるのはな
ぜか?
4. 消費寄託契約が有償・無償を含めて片務契約とさ
れているのはなぜか?
5. 消費寄託はどのような場合に終了するか?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 寄託と消費寄託との違い
 ①第5節(消費貸借)の規定
は,受寄者が契約により寄
託物を消費することができる
場合について準用する。
〔旧・第666条本文〕
 ②前項において準用する第
591条第1項〔返還の時期・
貸主による返還の催告〕の
規定にかかわらず,前項の
契約に返還の時期を定めな
かったときは,寄託者は,い
つでも返還を請求することが
できる。 〔旧・第666条ただ
し書〕
443
2015/1/16
 寄託
 特定物を預けて,その後,その
物自体を返還する契約。
 特定物を預けて,その後,その
物自体を返還するという使用
貸借・賃貸借契約と似ている。
 消費寄託
Lecture on Contracts
 代替物を預けて,その後,これ
と種類,品質および数量の同
じものを返還する契約。
 この点で,代替物を借りて,そ
の後,これと同じ種類,品質お
よび数量の同じものを返還す
るという消費貸借契約と似てい
る。
444
74
Lecture on Contracts
2015/1/16
消費寄託契約の意義(2/3)
消費寄託契約の意義(3/3)
混蔵寄託と消費寄託との比較
 混蔵寄託([我妻・債権各論〔中巻二〕
(1962)716‐718頁])
 第666条(消費寄託)
 ①第5節(消費貸借)の規定は,
受寄者が契約により寄託物を
消費することができる場合につ
いて準用する。 〔旧・第666条
本文〕
 ②前項において準用する第591
条第1項〔返還の時期・貸主によ
る返還の催告〕の規定にかかわ
らず,前項の契約に返還の時
期を定めなかったときは,寄託
者は,いつでも返還を請求する
ことができる。 〔旧・第666条た
だし書〕
2015/1/16
消費寄託と消費貸借との比較(1/4)
 複数の寄託者から保管を依頼された
油類,穀物,清酒,証券など,同種・
同等の代替物を混合して保管する寄
託(→スイス債務法484条)。
 混和した寄託物は,寄託者との個別
の所有関係を離れ,寄託者全員によ
るいわゆる共有物となる。
 受寄者は,寄託者からの返還請求が
あれば,預かったのと同量の物を,他
の寄託者の同意なしに返還できる。
 寄託者が特定の寄託物の所有権を
維持していない点で消費寄託に似る
が,受寄者に消費する権限がない点
ではむしろ通常の寄託に近い。
Lecture on Contracts
445
 第666条(消費寄託)
 ①第5節(消費貸借)の規定
は,受寄者が契約により寄
託物を消費することができ
る場合について準用する。
〔旧・第666条本文〕
 ②前項において準用する第
591条第1項〔返還の時期・
貸主による返還の催告〕の
規定にかかわらず,前項の
契約に返還の時期を定めな
かったときは,寄託者は,い
つでも返還を請求すること
ができる。 〔旧・第666条た
だし書〕
2015/1/16
 消費貸借の定義を使って,消費寄託の
冒頭条文を作成する(1/3)。
 第587条(消費貸借)
 消費貸借は,当事者の一方〔借主〕が種類,
品質及び数量の同じ物をもって返還をす
ることを約して
 相手方〔貸主〕から金銭その他の物を受け
取ることによって,その効力を生ずる。
 第666条1項の改正(暫定版)
 ①消費寄託は,当事者の一方(受寄者)が
種類,品質及び数量の同じ物をもって返
還をすることを約して,
 相手方(寄託者)から金銭その他の物を受
け取ることによって,その効力を生ずる。
Lecture on Contracts
消費寄託契約の意義(3/3)
消費寄託契約の意義(3/3)
消費寄託と消費貸借との比較(2/4)
 第666条(消費寄託)
 ①第5節(消費貸借)の規
定は,受寄者が契約によ
り寄託物を消費することが
できる場合について準用
する。 〔旧・第666条本
文〕
 ②前項において準用する
第591条第1項〔返還の時
期・貸主による返還の催
告〕の規定にかかわらず,
前項の契約に返還の時期
を定めなかったときは,寄
託者は,いつでも返還を
請求することができる。
〔旧・第666条ただし書〕
2015/1/16
消費寄託と消費貸借との比較(3/4)
 消費寄託の冒頭条文を作成する(2/3)。
 第591条(返還の時期)
 第666条(消費寄託)
 ①当事者が返還の時期を定めなかったときは,
貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をす
ることができる。
 ②借主は,いつでも返還をすることができる。
 第666条2項の改正(暫定版)
 ②当事者が寄託物の返還の時期を定めたとき
は,受寄者は,期限の利益を放棄し,全利子を
支払って,返還をすることができる(民法136条)。
これに対して,寄託者は,期限到来まで返還を
請求できない(民法135条)(約款は肯定)。
 ③当事者が返還の時期を定めなかったときは,
受寄者は,いつでも返還することができる(民法
591条2項の準用)。寄託者もまた,いつでも返
還を請求することができる(民法666条2項)。
Lecture on Contracts
447
 ②前項において準用する
第591条第1項〔返還の時
期・貸主による返還の催
告〕の規定にかかわらず,
前項の契約に返還の時期
を定めなかったときは,寄
託者は,いつでも返還を請
求することができる。 〔旧・
第666条ただし書〕
2015/1/16
消費寄託契約の意義(3/3)
借主は,期限の利益を
放棄して(民法136条),
返還できる。
受寄者は,期限の利益
寄託者は,期限到来ま
を放棄し,利子を払って
で返還を請求できない
返還できる(民法136条)。
(民法135条)。
期限の定めなし
期限の定めなし
借主は,いつでも返還
できる(民法591条2項)。
貸主は,相当の期間を
定めて返還の催告を
する(民法591条1項)。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
受寄者は,いつでも返
還できる(民法591条2
項の準用)。
Lecture on Contracts
 ②当事者が返還の時期を定めたときは,
受寄者は,期限の利益を放棄し,有償の
場合には,全利子を支払って返還すること
ができる。これに対して,寄託者は,期限
が到来するまで,返還を請求することがで
きない。
 ③当事者が返還の時期を定めなかったと
きは,受寄者は,いつでも返還することが
できる。寄託者もまた,いつでも返還を請
求することができる。
Lecture on Contracts
 第666条の改正(完成版)
期限の定めあり
貸主は,期限が来るま
で返還を請求できない
(民法135条)。
 ①消費寄託は,当事者の一方(受寄者)が
種類,品質及び数量の同じ物をもって返
還をすることを約して,相手方(寄託者)か
ら金銭その他の物(消費寄託物)を受け取
ることによって,その効力を生ずる。
448
消費寄託の性質
消費寄託(受寄者保護)
期限の定めあり
 第666条の改正(完成版)
 ①第5節(消費貸借)の規
定は,受寄者が契約により
寄託物を消費することがで
きる場合について準用する。
〔旧・第666条本文〕
消費寄託と消費貸借との比較(4/4)
消費貸借(借主保護)
446
寄託者は,いつでも返
還を請求できる(民法
666条2項)。
449
 ①消費寄託は,当事者の一方(受寄
者)が種類,品質及び数量の同じ物を
もって返還をすることを約して,相手方
(寄託者)から金銭その他の物(消費寄
託物)を受け取ることによって,その効
力を生ずる。
 ②当事者が返還の時期を定めたとき
は,受寄者は,期限の利益を放棄し,
有償の場合には,全利子を支払って返
還することができる。これに対して,寄
託者は,期限が到来するまで,返還を
請求することができない。
 要物契約
 準用される消費貸借契約
と同じ。
 片務契約
 無利息消費寄託
 寄託者は債務を負わない。
 受寄者は返還債務を負う。
 利息付消費寄託
 ③当事者が返還の時期を定めなかっ
たときは,受寄者は,いつでも返還する
ことができる。寄託者もまた,いつでも
返還を請求することができる。
2015/1/16
Lecture on Contracts
 寄託者は債務を負わない。
 受寄者は,利息を支払う債
務とともに,返還債務を負
う。
450
75
Lecture on Contracts
2015/1/16
参考文献
有償寄託と有償消費寄託との比較
有償寄託(双務契約)
寄託者
報酬支払義務
債務を負わない
受寄者
返還義務
2015/1/16

寄託物の譲渡と寄託
者の地位の譲渡

消費寄託契約の成立
(誤振込事件)
受寄者
元本返還
義務
451
2015/1/16
Lecture on Contracts
大判昭13・7・9民集17巻1409頁
単に物の寄託を受け之を寄託者の為に保管する
者は,返還時期の定あると否とを問はず請求次
第何時にても之が返還を為すべき義務を負担し,
受託物に付所有権を取得したる者に対し之が引
渡の欠缺を主張する正当の利益を有するものに
非ざれば,民法第178条に所謂第三者に該当せ
ざるものとす。
Lecture on Contracts
453
 最二判平8・4・26 民集50巻
5号1267頁(誤振込事件)
 1.振込依頼人から受取人の
銀行の普通預金口座に振込
みがあったときは,振込依頼
人と受取人との間に振込みの
原因となる法律関係が存在す
るか否かにかかわらず,受取
人と銀行との間に振込金額相
当の普通預金契約が成立し,
受取人が銀行に対して右金
額相当の普通預金債権を取
得するものと解するのが相当
である。
2015/1/16
誤振込事件→解決策
対価関係
抗
弁
諾約者
D銀行
丙支店
対価関係
債務者
振込指
図人X
支払
委託
預
金
債
権
なし
預
金
債
権
誤
振
振
込
込
委
委
託
託
要約者
A銀行
甲支店
誤振込
受取人
C
支払
委託
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 2.また,振込依頼人と受取人と
の間に振込みの原因となる法
律関係が存在しないにかかわら
ず,振込みによって受取人が振
込金額相当の預金債権を取得
したときは,振込依頼人は,受
取人に対し,右同額の不当利
得返還請求権を有することがあ
るにとどまり,右預金債権の譲
渡を妨げる権利を取得するわけ
ではないから,受取人の債権者
がした右預金債権に対する強
制執行の不許を求めることはで
きないというべきである。
Lecture on Contracts
454
誤振込事件の解決→事案図
債権
Cの
債権者
Y
Xの
債権者
対価関係
諾約者
A銀行
乙支店
諾約者
D銀行
丙支店
支払
委託
対価関係
債務者
振込指
図人X
預
金
債
権
差押え
全銀ネット口座
2015/1/16
452
消費寄託の成立
寄託物の譲渡と寄託者の地位の譲渡
Xの
債権者
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
利息支払
義務
Lecture on Contracts
2015/1/16
参考図書
 最高裁判例一覧
(年代順)
寄託者
保管義務
参考判例
有償消費寄託(片務契約)
なし
預
金
債
権
誤組
振戻
込委
委託
託
要約者
A銀行
甲支店
誤振込
受取人
C
組戻
引受
債権
Cの
債権者
Y
差押え
諾約者
A銀行
乙支店
全銀ネット口座
455
2015/1/16
Lecture on Contracts
456
76
Lecture on Contracts
2015/1/16
組合契約 目次
 組合の財産関係
 組合契約の性質
 個人から団体へ
 団体の種類
 社団の理念型(中央集権型
ネットワーク)
 組合の理念型(分散型ネット
ワーク)
 団体を存続させるための最小
限のルール
 組合契約の意義と成立
 組合の管理




出資義務
組合の業務執行
組合の意思決定
組合代理
2015/1/16




組合契約
合有
清算前の分割禁止
持分譲渡の制限
組合員の債務との相殺禁止
 組合契約の法的性質
 組合員の加入と脱退
 任意脱退
 法定脱退
 脱退の効果
 組合の管理
 組合の財産関係
 組合の解散と清算
 参考文献
 組合員の加入と脱退
 参考判例
 参考図書
 組合の解散と清算
Lecture on Contracts
457
2015/1/16
Lecture on Contracts
458
個人と団体
 人間は,社会的動物である。
組合契約の法的性質
 人間は一人では生きていけない。
 遺伝的にも,文化的にも,集団生活を営むように設計されている。
 社会はどのようにして存続することが可能か?
1. 個人は,どのような条件があれば,任意に団体を
構成することができるのか?
2. 団体にはどのようなものが存在するか?
 個体が「分かち合う心」を持っていること。
交換,売買契約の基礎となる。
委任による分業が可能となる。
 個体同士が,「目標に向かって協働する」ことができること。
3. 団体の中で民法上の組合はどのよう地位を占め
ているか?
4. 合同行為とは何か?
5. 組合契約に双務契約の規定は準用されるか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
個人の知力,資力,労力を出し合って,別財産を管理できること(管
理のルール)。
これによって,交換以上の恩恵を受けることができるようになる(規
模の経済)。
このため,全員が,「信賞必罰」を受け入れること。
459
2015/1/16
Lecture on Contracts
団体の分類
社団型
460
社団の理念型
中央集権的なネットワーク
ネットワーク線の数 = n
法律に従って設立された法人
団体の機関
団体の財産
合名会社
法人
組合型
団
体
持分会社
合資会社
専門資格士法人
合同会社(LLC)
団体の目的
定款
合同行為
労働組合
各種協同組合
マンション管理組合法人
社団型
個人
個人
個人
個人
個人
財産
財産
財産
財産
財産
権利能力なき社団
非法人
有限責任事業組合(LLP)
特別法上の有限責任組合
組合型
投資事業有限責任組合
民法上の組合
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
461
2015/1/16
Lecture on Contracts
462
77
Lecture on Contracts
2015/1/16
団体を存続させるための
最小限のルール
組合の理念型
分散型ネットワーク
ネットワーク線の数
= n(n‐3)/2 + n
共通目標の設定と維持
財産
組合
(代表者)
組合
財産




個人
財産
個人
財産
個人
個人
個人
 全員の同意以外の処分禁止
 清算前の分割禁止
 意思決定における多数決原
理
 業務執行における分業
財産
 単独…常務
 代理…組合代理
 共同…原則
財産
Lecture on Contracts
 団体の財産の合有
出資義務
利益分配・損失負担
相互監視・相互連絡・協議
脱退自由
463
 個人の債務と団体の債務と
の間の相殺禁止
 脱退者への持分の払戻し
 解散による清算
 解散事由
 清算人の選任
 財産分割
 責任
2015/1/16
団体財産の分別管理
 共同目的の共有
2015/1/16
Lecture on Contracts
464
民法上の組合の法的性質
 第667条(組合契約)
 ①組合契約は,各当事
者が出資をして共同の事
業を営むことを約するこ
とによって,その効力を
生ずる。
 ②出資は,労務をその目
的とすることができる。
 双務契約に関する規定の不適
用
 合同行為
組合の管理
 出資の履行請求を受けた組合員
は,他に出資していない組合員
がいることを理由に履行を拒絶
できない。
1.
2.
3.
4.
 危険負担
 ある組合員の出資義務の不能に
よって他の組合員の出資義務が
消滅することはない。
 各当事者に出資という給
付を義務づける行為。
 共同目的達成のために
団体的組織を設定する
行為。
2015/1/16
 同時履行の抗弁権
 解除→除名(民法680条),解散
(民法682条,683条),脱退(民法
687条)の規定による。
Lecture on Contracts
465
個々の組合員の権利と義務は何か?
組合の意思決定はどのようにしてなされるか?
組合の対内的な業務執行はどのようになされるか?
組合の対外的な業務執行は,どのようになされるか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
組合員の出資義務と制裁
 第669条(金銭出資の不履行の
責任)
 金銭を出資の目的とした場合におい
て,組合員がその出資をすることを
怠ったときは,その利息を支払うほ
か,損害の賠償をしなければならな
い。
 第416条(損害賠償の範囲)
 ①債務の不履行に対する損害賠償
の請求は,これによって通常生ずべ
き損害の賠償をさせることをその目
的とする。
 ②特別の事情によって生じた損害で
あっても,当事者がその事情を予見
し,又は予見することができたときは,
債権者は,その賠償を請求すること
ができる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
組合の業務の分類
 第419条(金銭債務の特
則)
共同事業の変更
全員で
出資の増額
全員で
組合員の加入・交替
全員で
組合員の除名
全員で
組合契約関係
 ①金銭の給付を目的とする債務
の不履行については,その損害
賠償の額は,法定利率によって
定める。ただし,約定利率が法
定利率を超えるときは,約定利
率による。
 ②前項の損害賠償については,
債権者は,損害の証明をするこ
とを要しない。
 ③第1項の損害賠償については,
債務者は,不可抗力をもって抗
弁とすることができない。
Lecture on Contracts
466
467
業務
執行
以外
団体規約の変更
組
合
の
業
務
損益分配の変更
業務執行のための意思
決定権限者・方法
内部的業務執行
業務
執行
多数決
常務
単独で
常務以外
全員で
常務
単独で
業務執行の権限者・方法
対外的業務執行
2015/1/16
全員で
常務以外
組合代理
Lecture on Contracts
468
78
Lecture on Contracts
2015/1/16
業務執行の権限者と方法
 業務執行の意思決定
 第670条(業務の執行の方法)
 ①組合の業務の執行は,組合員の
過半数で決する。
 常務以外(戦略)
 ②前項の業務の執行は,組合契約
でこれを委任した者(次項において
「業務執行者」という。)が数人あると
きは,その過半数で決する。
 ③組合の常務は,前2項の規定にか
かわらず,各組合員又は各業務執
行者が単独で行うことができる。
 常務(戦術)
 権限者単独で行うこと
ができる。
 業務執行
 第644条から第650条までの規
定は,組合の業務を執行する組
合員について準用する。
 業務執行組合員の選任の性質
 組合員の全員の合意によるもの
であり,組合契約とは別個の委
任契約に基づくものではない。
 しかし,組合と業務執行組合員
との間人は,信認関係が生じる
ため,委任の規定が準用される
ことになる。
2015/1/16
対外的
業務
執行
 常務
単独で
常務以外
全員で
常務
単独で
組合
代理
全員で
常務以外
業務執行
者の共同
代理
常務
多数決
2015/1/16
Lecture on Contracts
470
業務執行の委任と解除(辞任と解任)
 準用される委任の規定
 民法644条(善管注意義務)
 民法645条(受任者の報告義務)
 第646条(受任者による受取物
の引渡し等)
 第647条(受任者の金銭の消費
についての責任)
 第648条(受任者の報酬)
 第649条(受任者による費用の
前払請求)
 第650条(受任者による費用等
の償還請求,代弁済請求等)
Lecture on Contracts
多数決
常務
業務執行者の定めが
ある場合
 権限者が単独で行うこ
とができる。
委任の規定の準用と特則
常務以外
業務執行者の定めが
ない場合
 権限者全員で共同し
て行う。
469
業務執行のための
意思決定
権限者・方法
業務執行の
権限者・方法
業
務
執
行
 常務以外
Lecture on Contracts
 第671条(委任の規定の準用)
内部的
業務
執行
 権限者の過半数で決
する。
 ただし,その完了前に他の組合員又
は業務執行者が異議を述べたとき
は,この限りでない。
2015/1/16
組合の業務執行の分類
471
 第672条(業務執行組合員
の辞任及び解任)
 ①組合契約で1人又は数人
の組合員に業務の執行を委
任したときは,その組合員は,
正当な事由がなければ,辞
任することができない。
 ②前項の組合員は,正当な
事由がある場合に限り,他の
組合員の一致によって解任
することができる。
2015/1/16
 第651条(委任の解除)
 ①委任は,各当事者がいつ
でもその解除をすることがで
きる。
 ②当事者の一方が相手方に
不利な時期に委任の解除を
したときは,その当事者の一
方は,相手方の損害を賠償
しなければならない。
 ただし,やむを得ない事由が
あったときは,この限りでない。
Lecture on Contracts
472
組合員の検査権
 第673条(組合員
の組合の業務及
び財産状況に関
する検査)
 各組合員は,組
合の業務を執行
する権利を有し
ないときであって
も,その業務及
び組合財産の状
況を検査するこ
とができる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 第644条(受任者の注意義務)
 受任者は,委任の本旨に従い,善良な
管理者の注意をもって,委任事務を処
理する義務を負う。
組合の財産関係
 第645条(受任者による報告)
 受任者は,委任者の請求があるときは,
いつでも委任事務の処理の状況を報告
し,委任が終了した後は,遅滞なくその
経過及び結果を報告しなければならな
い。
1.
2.
3.
4.
 以上の受任者の義務の裏返しの権
利として,業務執行組合員以外の組
合員の権利を読み解くことができる。
Lecture on Contracts
473
2015/1/16
組合の財産はどのように分類されるか?
組合の財産を分別管理する仕組みは何か?
組合の利益はどのように分配されるか?
組合の損失はどのように負担されるか?
Lecture on Contracts
474
79
Lecture on Contracts
2015/1/16
組合の財産関係
 第668条(組合財産の
共有)
 各組合員の出資そ
の他の組合財産は,
総組合員の共有に
属する。
 最三判昭33・7・22民集12巻12号
1805頁
 第674条(組合員の損
益分配の割合)
 組合財産が理論上合有であるとしても,民
法の法条そのものはこれを共有とする建前
で規定されており,組合所有の不動産の如
きも共有の登記をするほかはない。
 第255条(持分の放棄
及び共有者の死亡)
 従って解釈論としては,民法の組合財産の
合有は,共有持分について民法の定めるよ
うな制限を伴うものであり,持分についてか
ような制限のあることがすなわち民法の組
合財産合有の内容だと見るべきである。
 共有者の1人が,そ
の持分を放棄したと
き,又は死亡して相
続人がないときは,
その持分は,他の共
有者に帰属する。
2015/1/16
組合員の利益配分と損失分配
 そうだとすれば,組合財産については,民法
667条以下において特別の規定のなされて
いない限り,民法249条以下の共有の規定
が適用されることになる。
Lecture on Contracts
475
組合債権者による
組合員の個人財産への責任追及
 第675条(組合員に対する組合の
債権者の権利の行使)
 本条は会社の債権者に対する各社
員の義務の程度を示したるものなり。
 此事に関しては二個の主義あり一
は分担主義にして一は連帯主義なり。
 連帯主義の理由とする処は主として
信用を保持するの点に在り。
 然れども,一たび此主義を採るとき
は,当事者の責任重きに過ぎ,其相
互間の便宜を目的として設くる民事
会社は殆ど行はるることなきに至る
可きなり。
 債務も合有的債務とすべきか?
 組合財産は合有であり,清算まで
の間分割不可である。
 そうだとすると,債務も不可分債
務とするか,組合員を保護するの
であれば,共同保証人として,分
別の利益を与えるのが妥当では
ないか。
2015/1/16
 故に本案に於ては,割合に依る分担
主義を採用し,只善意なる債権者を
保護する為め。末文の規定を置きた
り。
Lecture on Contracts
 ②利益又は損失につ
いてのみ分配の割合
を定めたときは,その
割合は,利益及び損
失に共通であるものと
推定する。
2015/1/16
 組合員の一部のみが利益を受ける
組合のことを獅子組合という。
 獅子組合は,民法674条の規定に
反しており,民法上の組合からは
除外される。
 損失負担
 損失負担とは,損失額を損失分担
の割合に従って各組合員に計算上
割り当てることをいう。
 損失(債務超過)が生じた時点で損
失負担額を組合にはらいこむこと
ではない。
Lecture on Contracts
476
組合員の持分処分・分割の禁止
 民法675条の立法理由
 組合の債権者は,その債権の発
生の時に組合員の損失分担の割
合を知らなかったときは,各組合
員に対して等しい割合でその権利
を行使することができる。
 ①当事者が損益分配
の割合を定めなかっ
たときは,その割合は,
各組合員の出資の価
額に応じて定める。
 獅子組合の禁止
477
 第676条(組合員の持
分の処分及び組合財
産の分割)
 ①組合員は,組合財産
についてその持分を処
分したときは,その処分
をもって組合及び組合と
取引をした第三者に対
抗することができない。
 ②組合員は,清算前に
組合財産の分割を求め
ることができない。
2015/1/16
 持分処分の制限
 実質的には,持分処分
の禁止を定めたのに等
しい。
 分割請求の禁止
 ただし,組合員善意の
合意で組合財産を分割
することができる。
 しかし,その場合は,組
合は解散され,清算を
済ませたのと同じことに
なる。
Lecture on Contracts
478
組合債務者の相殺の禁止
 第677条(組合の債務者
による相殺の禁止)
 組合の債務者は,その債
務と組合員に対する債権
とを相殺することができな
い。
 組合債権と組合員の債
務との間の相殺の禁止
 この規定によって,組合員
の個人債務に基づく組合
財産の逸失を防止するこ
とができる。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 民法677条の立法理由
 民事会社は法人に非ざる
を以て,会社の債務者は
其債務と社員に対する債
権と相殺することを得るも
のと謂はざる可からず。
 然れども,若し果して此の
如くんば,会社の共同事
業を妨ぐるに至るべきを以
て,独乙民法第二読草案
に倣ひて,本条の規定を
設けたり。
Lecture on Contracts
479
組合員の加入・脱退
1. 組合員を新たに加入させることは可能か?
2. 組合員はどのような場合に脱退できるか?
3. 組合員を除名させることは可能か?
4. 脱退した組合員に出資に相当する額を払い戻さなけれ
ばならないか?
2015/1/16
Lecture on Contracts
480
80
Lecture on Contracts
2015/1/16
組合員の任意脱退
 第678条(組合員の脱退1)
 第679条〔組合員の脱
退2〕
 民法678条2項の強行規定性
 最三判平11・2・23民集53巻2号
193頁
 ①組合契約で組合の存続期
間を定めなかったとき,又は
ある組合員の終身の間組合
が存続すべきことを定めたと
きは,各組合員は,いつでも
脱退することができる。
 ただし,やむを得ない事由が
ある場合を除き,組合に不利
な時期に脱退することができ
ない。
 ②組合の存続期間を定めた
場合であっても,各組合員は,
やむを得ない事由があるとき
は,脱退することができる。
2015/1/16
組合員の非任意脱退
 民法678条は,組合員は,やむを得
ない事由がある場合には,組合の存
続期間の定めの有無にかかわらず,
常に組合から任 意に脱退することが
できる旨を規定しているものと解され
るところ,
 同条のうち右の旨を規定する部分は,
強行法規であり,これに反する組合
契約における約定は効力を有しない
ものと解するのが相当である。
 けだし,やむを得ない事由があって
も任意の脱退を許さない旨の組合契
約は,組合員の自由を著しく制限す
るも のであり,公の秩序に反するも
のというべきだからである。
Lecture on Contracts
481
 前条の場合のほか,組
合員は,次に掲げる事
由によって脱退する。
 一 死亡
 二 破産手続開始の決定
を受けたこと。
 三 後見開始の審判を受
けたこと。
 四 除名
2015/1/16
 第680条(組合員の除
名)
 組合員の除名は,正当
な事由がある場合に限
り,他の組合員の一致
によってすることができ
る。
 ただし,除名した組合員
にその旨を通知しなけ
れば,これをもってその
組合員に対抗すること
ができない。
Lecture on Contracts
482
組合員の脱退の効果
 第681条(脱退した組合員
の持分の払戻し)
 組合員の脱退の効果
 利益分配請求権の消滅
 業務執行権限などの消滅
 財産関係の清算
 民法255条(共有の弾力性)の適
用
脱退した組合員の有していた
潜在持分は,残存組合員に
帰属する。
 ②脱退した組合員の持分
は,その出資の種類を問
わず,金銭で払い戻すこと
ができる。
 脱退した組合員の持分払戻請求
権
 ③脱退の時にまだ完了し
ていない事項については,
その完了後に計算をする
ことができる。
2015/1/16
組合の解散と清算
 組合員としての権利義務の消滅
 ①脱退した組合員と他の
組合員との間の計算は,
脱退の時における組合財
産の状況に従ってしなけ
ればならない。
Lecture on Contracts
 第682条(組合の解散事由)
 組合は,その目的である事業の
成功又はその成功の不能によっ
て解散する。
 第683条(組合の解散の請求)
 やむを得ない事由があるときは,
各組合員は,組合の解散を請求
することができる。
 第684条(組合契約の解除の効
力)
 第620条〔賃貸借の解除の効力の
不遡及〕の規定は,組合契約につ
いて準用する。
KAGAYAMA Shigeru
2. 組合が解散した場合に清算人はどのようにして選任さ
れるか?
3. 清算人の業務と権限はどのようなものか?
4. 組合の財産は,どのような基準で分割されるのか?
 脱退の時に解散あったならば得ら
れるであろう残余財産の分配の額
が,計算の基礎となる。
483
組合の解散
2015/1/16
1. 組合はどのような場合に解散するか?
Lecture on Contracts
2015/1/16
Lecture on Contracts
484
清算人の選任,業務執行,辞任・解任
 組合の解散と契約の解除
 組合の解散とは,組合契約
の解除のことである。
 組合の解除は,将来に向
かってのみ効力を有し,しか
も,その目的は,原状回復で
はなく,財産関係の清算であ
る。
 解散の原因
 第685条(組合の清算及び清算人の選
任)
 ①組合が解散したときは,清算は,総組合
員が共同して,又はその選任した清算人
がこれをする。
 ②清算人の選任は,総組合員の過半数で
決する。
 第686条(清算人の業務の執行の方
法)
 解散事由の発生
 解散請求
 第670条〔業務の執行の方法〕の規定は,
清算人が数人ある場合について準用する。
 解散の効果
 清算手続きへの移行
485
2015/1/16
Lecture on Contracts
 第687条(組合員
である清算人の
辞任及び解任)
 第672条〔業務
執行組合員の
辞任及び解任〕
の規定は,組合
契約で組合員
の中から清算人
を選任した場合
について準用す
る。
486
81
Lecture on Contracts
2015/1/16
清算人の職務と残余財産の分割
 第688条(清算人の職務及び権限
並びに残余財産の分割方法)
 ①清算人の職務は,次のとおりとす
る。
 一 現務の結了
 二 債権の取立て及び債務の弁済
 三 残余財産の引渡し
(平成18法50本項全部改正)
 ②清算人は,前項各号に掲げる職
務を行うために必要な一切の行為を
することができる。(平成18法50本項
追加)
 ③残余財産は,各組合員の出資の
価額に応じて分割する。
2015/1/16
 旧第688条(清算
人の職務及び権
限並びに残余財
産の分割方法)
 ①第78条〔法人
の精算人〕の規
定は,清算人の
職務及び権限
について準用す
る。
 ②残余財産は,
各組合員の出
資の価額に応じ
て分割する。
Lecture on Contracts
487
参考文献
参考判例
2015/1/16
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
Lecture on Contracts
488
組合の成立要件としての
「共同の事業」の意味
権利能力なき社団の成立要件
 最一判昭39・10・15民集18巻8号1671頁
最一判昭26・4・19民集5巻5号256頁
 法人に非ざる社団〔権利能力なき社団〕が成立する
ためには,
1.
2.
3.
4.
参考図書
 最高裁判例一覧
(年代順)
土地の共有者が共同でその土地を使用す
ることは共有土地の利用方法であって,民
法第667条の「共同の事業を営むこと」にあ
たらない。
団体としての組織をそなえ,
多数決の原則が行なわれ,
構成員の変更にかかわらず団体が存続し,
その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管
理等団体としての主要な点が確定していること
 を要する。
 法人に非ざる社団がその名においてその代表者によ
り取得した資産は,構成員に総有的に帰属するもの
と解すべきである。
2015/1/16
Lecture on Contracts
489
 代表者の定
めがある民
法上の組合
は,訴訟当
事者能力を
有する。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 最大判昭45・11・11民集24巻12号
1854頁
 民法上の組合において,組合規約
に基づき,自己の名で組合財産を管
理し,対外的業務を執行し,訴訟を
追行する権限を与えられた業務執
行組合員は,組合財産に関する訴
訟につき,組合員から任意的訴訟
信託を受けたものであり,自己の名
で訴訟を追行することが許される。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
490
組合代理
(業務執行社員が選任されていない場合)
組合の訴訟当事者能力
 最三判昭
37・12・18民
集16巻12号
2422頁
2015/1/16
491
 最二判昭35・12・9民集14巻13号2994頁
 民法上の組合において組合契約その他により業務執行組合員が定められていない場合,組合員
の過半数の者は,共同して右組合を代理する権限を有するものと解すべきである。(反対意見があ
る。)
 (反対意見)民法670条1項の「組合員の過半数を以て決す」とは総組合員に決議に参与する機会
を与え,その過半数の同意によって業務執行の方法を決定することを要する趣旨と解すべきであっ
て,各組合員に対し賛否の意見を表する機会を与えることなく単に組合員の過半数の者において,
業務執行を為し得ることを決めたものではない。
 この理は代理の場合においても同様であって,多数者が少数者に意見を述べる機会を与えること
なくして,総組合員を代理する権限を有するに由ないことも当然の帰結である。然るに多数意見が
組合の過半数の者は当然に総組合員を代理して法律行為を為す権限ありと判断し,組合員7名中
の4名が組合を代理して為した行為は,他の3名の者が意見表示の機会を与えられたと否とを問わ
ず,これらの者に当然その効力が及ぶものと解せられたことには賛成できない。
 けだし,常務にあらざる業務につき組合員が予めその計画を知るにおいては,自己の不利益と思う
債務負担行為等につき,これを阻止するための手段を講じ,場合によって組合を脱退する機会もあ
るに拘らず,かかる機会を与えられることなく,一部の組合員の独断専行による代理行為により,
全く関知しない組合員がその責任を負わなければならないような結果は到底認容できないからで
ある。
2015/1/16
Lecture on Contracts
492
82
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2015/1/16
組合代理
(業務執行社員が選任されている場合)
 大判大8・9・27民録25
輯1669頁
 組合契約をもって,業務
執行者を定めた場合,
他に特別の意思表示が
ない限り,業務執行者
は第三者に対し組合員
を代表して法律行為を
する権限をも授与された
ものと解すべきである。
組合員に対する債権者の権利行使
 最二判昭38・5・31民集
17巻4号600頁
 民法上の組合において
組合規約等で業務執行
者の代理権限を制限し
ても,その制限は善意
無過失の第三者に対抗
できないものと解するの
が相当である。
 最三判平10・4・14民集52巻3号813頁
 構成員に会社を含む共同企業体の各構成員は,共同企
業体がその事業のために第三者に対して負担した債務
につき連帯債務を負う。
 参照条文
 原則:
 第427条(分割債権及び分割債務)
 数人の債権者又は債務者がある場合において,別段の意思表示がな
いときは,各債権者又は各債務者は,それぞれ等しい割合で権利を有
し,又は義務を負う。
 例外
 商法511条(多数当事者間の債務の連帯)
 ①数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって
債務を負担したときは,その債務は,各自が連帯して負担する。
2015/1/16
Lecture on Contracts
493
2015/1/16
民法678条2項の強行法規性
 民法678条は,組合員は,やむを得ない事由がある場合
には,組合の存続期間の定めの有無にかかわらず,常に
組合から任 意に脱退することができる旨を規定している
ものと解されるところ,
 同条のうち右の旨を規定する部分は,強行法規であり,こ
れに反する組合契約における約定は効力を有しないもの
と解するのが相当である。
 けだし,やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さな
い旨の組合契約は,組合員の自由を著しく制限するも の
であり,公の秩序に反するものというべきだからである。
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494
終身定期金契約 目次
最三判平11・2・23民集53巻2号193頁
2015/1/16
Lecture on Contracts
495
 終身定期金契約の成立
 典型例
 第三者のためにする契約
 利用率の低迷
 終身定期金契約の効力
 終身定期金の計算
 終身定期金契約の終
了
 解除の要件と効果
 同時履行の抗弁権の
準用
 参考文献
 終身定期金契約の存続
妨害とその効果 図解
 遺贈に基づく終身定期金
2015/1/16
 参考判例
 参考図書
Lecture on Contracts
496
終身定期金契約の成立
終身定期金契約
 終身定期金契約の成立
1. 終身定期金契約の典型例はどのようなものか?
 終身定期金契約の効力
2. 終身定期金契約が第三者のためにする契約として成立
する場合というのはどのような場合か?
3. 終身定期金契約が余り使われていない理由は何か?
 終身定期金契約の終了
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
497
2015/1/16
Lecture on Contracts
498
83
Lecture on Contracts
2015/1/16
第三者のためにする契約に基づく
終身定期金契約
終身定期金契約の成立
 第689条(終身定期金契
約)
 典型例
 終身定期金契約は,当事
者の一方〔終身定期金債
務者〕が,自己,相手方
〔終身定期金債権者〕又は
第三者の死亡に至るまで,
 定期に金銭その他の物を
相手方又は第三者に給付
することを約することに
よって,
 その効力を生ずる。
2015/1/16
 A(60歳)が,B(35歳)に
時価3,000万円の土地建
物を贈与し,Aが死亡す
るまで,BがAに対して毎
月10万円を支払うという
約束をする場合など。
 もしも,Aが平均寿命より
前に死亡すると,Bは,大
きな利益を受ける。
 反対に,Aが85歳以上に
長生きすると,Bは損失を
被ることになる(射幸契
約)。
Lecture on Contracts
499
 Aは,両親と喧嘩して家を飛び
出して以来,互いに音信を絶っ
定期金
ていたが,最近父が亡くなり,
債権者C
母Cが一人暮らしをしていること (受益者)
を知った。
 A自身も定年となって,妻の実
家で田舎暮らしをすることにな
り,現在暮らしている土地建物
を息子Bに贈与し,月々10万円
を母Cに仕送りするよう依頼した。
 Cは,Aとは喧嘩別れしたとして
も,孫Bはかわいいらしく,Bから
の年金だったら受け取ってもよ
いとのことであった。
2015/1/16
対価
関係
抗
弁
不動産
売主A
(要約者)
定
定
第三
期
者の
期
金
ため
金
債
にす
債
権
る契
権
約
定期金
債務者B
(諾約者)
Lecture on Contracts
500
終身定期金契約が
余り利用されない理由
終身定期金の効力
 制度自体が,大数の法則に基づく射幸契約
 個人間の契約では,信頼性に欠ける。
 大数の法則が利用できるだけの契約者の人数が必要。
 社会保障制度の発達
1. 終身定期金契約の成立によって,当事者双方に
どのような権利・義務が生じるのか?
 公的年金制度
 国民年金
 厚生年金
 共済年金など
2. 中途で当事者の一方が死亡した場合に,定期金
の支払はどのように行うべきか?
 私的年金制度
3. 当事者の一方が,故意に,終了原因を招来したよ
うな場合には,契約の効力はどうなるか?
 保険会社等が,様々な年金制度を運用している。
 将来的な活用の見通しはあいまい。
 公的年金制度に対する不安があるものの,
 リバース・モーゲージなどの市場は不透明。
2015/1/16
Lecture on Contracts
501
2015/1/16
終身定期金の計算
第690条
(終身定
期金の計
算)
終身定
期金は,
日割りで
計算す
る。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
502
終身定期金の存続
具体例
毎月10万円の給付を目的と
する定期金債権が,1月14
日に自己,相手方または第
三者の死亡によって消滅し
たとする。
1月分は,14日分を日割りで
計算して,5万円を給付する
ことになる。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
503
 第693条(終身定期金債権
の存続の宣告)
 ①終身定期金債務者の責め
に帰すべき事由によって第
689条〔終身定期金契約〕に
規定する死亡が生じたときは,
 裁判所は,終身定期金債権
者又はその相続人の請求に
より,終身定期金債権が相
当の期間存続することを宣告
することができる。
 ②前項の規定は,第691条
〔終身定期金契約の解除〕の
権利の行使を妨げない。
2015/1/16
 条件付権利の侵害に対す
る効果
 民法130条は,条件成就に
よって不利益を受ける当事者
が,条件成就を故意に妨害し
た場合に,条件が成就したも
のとみなすことができるとして
いる。
 民法693条は,これとは反対
に,条件成就によって利益を
受ける当事者が,条件成就
を故意に早めた場合に,相
当期間,条件が成就しなかっ
たことにするものである。
Lecture on Contracts
504
84
Lecture on Contracts
2015/1/16
条件付権利の妨害とその制裁
遺贈に基づく終身定期金
条件成就の
妨害
民法
130条
条件が成就
したものと
みなされる
条件成就の
早期実現
民法
693条
条件が相当
期間成就し
ないものと
される。
条件付
権利の
妨害
2015/1/16
Lecture on Contracts
505
 第694条(終身定
期金の遺贈)
 この節〔終身定
期金〕の規定は,
終身定期金の遺
贈について準用
する。
 立法の趣旨
 契約による終身
定期金と遺言に
よる終身定期金
とで区別をしない。
2015/1/16
 民法694条の立法理由
 終身定期金を設定するに遺贈を
以てすること多く,或国の如きは,
唯遺贈を以て之を設定する場合の
みに関して規定を為せる程なり。
 遺贈を以て定期金を設定せると,
契約を以て之を設定せるとの間に
区別を附すべき理由なきが故に,
本案に於ても,本節の規定を遺贈
の場合にも準用することとせり。
Lecture on Contracts
506
終身定期金契約の解除
 第691条(終身定期金契約の解
除)
 ①終身定期金債務者が終身定
期金の元本を受領した場合にお
いて,その終身定期金の給付を
怠り, 又はその他の義務を履行
しないときは,相手方は,元本の
返還を請求することができる。
終身定期金の終了
1. 終身定期金はどのような場合に終了するのか?
2. 終身定期金は,有期契約か,無期契約か?
3. 民法691条は,通常の債務不履行解除とどの点
が異なるか?
 通常の解除との相違点
 要件
 催告を必要としない。
 終身定期金は,生活の糧となる
ため,定期行為(民法542条)に
準じるものとされる。
 効果
 一般の場合
 この場合において,相手方は,
既に受け取った終身定期金の
中からその元本の利息を控除し
た残額を終身定期金債務者に
返還しなければならない。
 受領の時からの利息を付して返
還しなければならない(民法545
条2項)。
 終身定期金の場合
 受け取った終身定期金の中から,
元本の利息に相当する分を控除
した残額を返還すればよい。
 ②前項の規定は,損害賠償の
請求を妨げない。
2015/1/16
Lecture on Contracts
507
2015/1/16
解除と同時履行の抗弁権の準用
 第692条(終身
定期金契約の
解除と同時履
行)
 第533条〔同時
履行の抗弁
権〕の規定は,
前条の場合に
ついて準用す
る。
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 同時履行の関係に立つの
は,どの債権とどの債権
か?
Lecture on Contracts
参考文献
参考判例
参考図書
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
 最高裁判例
 終身定期金債権者による元
本返還債権と,終身定期金
債務者による交付した定期
金の返還債権とが同時履行
の関係に立つ。
 この関係は,民法546条の
場合の準用関係と同様であ
る。
Lecture on Contracts
509
508
2015/1/16
Lecture on Contracts
510
85
Lecture on Contracts
2015/1/16
終身定期金契約の解除を認めた判例
最判昭3・2・17民集7巻76頁
〔本件〕契約は,民法第698条所定の終身定期金
契約に外ならざるが故に,定期金債務者たる被
上告人が定期金の元本を受けたること上叙の如
くなるに拘らず,其の定期 金の給付を怠りたる場
合に於て,相手方は隠居後と雖,民法第691条に
基き,既に元本として給付せるものの返還を求め
得べく,従て,其の返還不能なる本件に於て,之
が代償を求むることを得るは言を俟たざる所なり。
2015/1/16
Lecture on Contracts
511
条件を不法に成就させた場合の判例
(アートネーチャー vsアデランス事件)
 最三判平6・5・31民集48巻4号1029頁(条件成就による執行
文付与に対する異議の訴え)
 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させた
ときは,民法130条の類推適用により,相手方は条件が成就していな
いものとみなすことができる。
 X関西がAに櫛歯ピン付き部分かつらを販売した行為が本件和解条項第
1項に違反する行為に当たるものであることは否定できないけれども,上
告人は,単に本件和解条項違反行為の有無を調査ないし確認する範囲
を超えてAを介して積極的にX関西を本件和解条項第一項に違反する行
為をするよう誘引したものであって,これは,条件の成就によって利益を
受ける当事者である上告人が故意に条件を成就させたものというべきで
あるから,民法130条の類推適用により,Xらは,本件和解条項第2項の
条件が成就していないものとみなすことができると解するのが相当であ
る。
2015/1/16
Lecture on Contracts
512
和解契約 目次
 参考文献
和解の成立
 和解の意義
 和解と交渉
 ハーバード流交渉術の薦め
 参考判例
 和解と合気道の極意
 参考図書
和解契約
 和解の確定効
 和解の確定効の例外
 和解契約の成立
和解の効力
 和解契約の効力
 確定効
 確定効の例外
2015/1/16
Lecture on Contracts
513
2015/1/16
Lecture on Contracts
514
和解契約の成立と意義
 和解は,当事者が互いに譲歩を
してその間に存する争いをやめ
ることを約することによって,そ
の効力を生ずる。
 典型例
1. 和解の成立要件としての互譲とは何か?
 ある商品について,売買契約が
締結されたが,売買代金につい
て争いが生じ,売主が100万円,
買主が50万円を主張しあったが,
結局,代金を70万円とすることで
決着したという場合のように,当
事者が互いに譲歩して,争いを
おさめることを和解と呼んでいる。
2. 和解と示談とは同じか,違うとすれば,どう違
うのか?
3. 訴訟による解決と比較した場合の和解のメ
リットは何か?
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
Lecture on Contracts
 和解の意義
 第695条(和解)
和解契約の成立
515
2015/1/16
 和解は,裁判の目的と同様,紛争の解
決にある。しかし,その方法は,裁判が
戦闘であるのに対して,和解の方法は
平和である[梅・民法要義(3)(1887)
842頁]。
 和解のメリット
 裁判は,一種の戦闘に類するものであ
り,莫大な費用と日時とを要するばかり
でなく,勝ち負けがはっきりするために,
敗訴した当事者には怨恨の情が残るこ
とになる。
 これに比して,和解は,互譲によるもの
であるだけに,妥結の条件は,当事者
が考えているものよりも多少不利益に
なることはやむを得ない。しかし,相反
目していた当事者が,他人の力を借り
ることなく,合意に基づいて和合し,再
び友好関係を確立する意義は大きい。
Lecture on Contracts
516
86
Lecture on Contracts
2015/1/16
ハーバード流交渉術の薦め(1/2)
 バーバード流交渉術の紹介
 フィッシャー&ユーリー/金山宣
夫,浅井和子訳『ハーバード流交
渉術(Getting to Yes)』三笠書房
(1990),W.ユーリー/斎藤精一
郎訳『ハーバード流”NO”と言わ
せない交渉術』三笠書房(1995)
を参考にして,ハーバード流交渉
術を紹介する。
 ハーバード流交渉術の特色
(その1)
 当事者双方の正当な要望を可能
な限り満足させる。←相互利益型
交渉*(得・得交渉)
2015/1/16
 図書館で二人の男が言い争って
いるとしよう。一人は窓を開けた
いし,もう一人は閉めたい。彼ら
はどれだけ窓を開けておくか,
さっきから言い争っているが,な
かなか埒があかない。
 そこへ図書館員が入ってきた。
彼女は,一方の男になぜ窓を開
けたいか尋ねた。「新鮮な空気
が欲しいからですよ」と彼は答え
た。次にもう一方に,なぜ閉めた
いか尋ねると,「風に当たりたく
ないんですよ」という答えだった。
 少し考えてから,彼女は隣の部
屋の窓を開けた。こうして風に当
たることなく新鮮な空気が入れら
れ,二人の男は満足した
Lecture on Contracts
517
ハーバード流交渉術の薦め(2/2)
 交渉で無理に相手のガードを崩
そうとすれば,相手はかえって
意固地になってしまうことが多い。
こういう場合には,正面から攻め
ようとしないで,回り込めばよい
(cf. 入り身投げ,小手返し)。こ
れこそが,交渉を成功させる究
極の秘訣なのである
 ハーバード流交渉術の特色(そ
の2)
 対立する立場の裏にある利害に
焦点をあわせ,双方が参加・協
力して利害を公平に調整する。
←協働型交渉(横並び(隣席)交
渉**)
 交渉を成功に導く最も確かな方
法は,相手のペースにはまる前
に,相手をこちらのペース,つま
り,協力方式の交渉パターンに
引き入れてしまうのがよい。
 ハーバード流交渉術の特色(そ
の3)
 時間がたっても効力を失わず,
社会全体の利益を考慮に入れ
た解決を行う。←原則立脚型交
渉***(勝ち・勝ち交渉)
 柔道,柔術,合気道といった日
本武道・武術は,相手の攻撃に
まともに対することを避けて,そ
れを巧みに受け流すことを教え
ている。
2015/1/16
Lecture on Contracts
518
和解と合気道の極意
和解契約の効力
攻撃の受け流し
回り込み
1. 和解の効力は何か?
2. 和解の確定力とは何か?
3. 和解の確定力はどのような場合に破られる
か?
横並び・視線が同一方向
(合気道の特色)
2015/1/16
崩しと技
(http://www.aikidou.info/)
Lecture on Contracts
519
2015/1/16
Lecture on Contracts
和解の効力
 第696条(和解の効力)
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
和解の効力の喪失
 和解の確定効
 当事者の一方が和解によっ
て争いの目的である権利を
有するものと認められ,又は
相手方がこれを有しないも
のと認められた場合において,
 その当事者の一方が従来そ
の権利を有していなかった旨
の確証又は相手方がこれを
有していた旨の確証が得ら
れたときは,
 その権利は,和解によってそ
の当事者の一方に移転し,
又は消滅したものとする。
 最二判昭36・5・26民集15巻5
号1336頁
 借地権の期間満了による
建物収去土地明渡の調
停において期限後におけ
る借地権の消滅が合意
せられた以上,
 借地法6条の法定更新に
よる期限後の借地権存
続につき錯誤があつたこ
とを理由として右調停の
効力を争うことは,民法
696条により許されない。
Lecture on Contracts
520
521
 錯誤による無効
 最一判昭33・6・14民集12
巻9号1492頁
 原則
 和解契約の確定効によっ
て,最後の主張は遮断さ
れる。
 例外
 当事者が和解の前提とし
て争わなかった事項(非争
点事項)については,錯誤
無効の主張が許される。
 仮差押の目的となつてい
るジヤムが一定の品質を
有することを前提として和
解契約をなしたところ,
 右ジヤムが原判示の如き
(原判決理由参照)粗悪品
であつたときは,
 右和解は要素に錯誤があ
るものとして無効であると
解すべきである。
2015/1/16
Lecture on Contracts
522
87
Lecture on Contracts
2015/1/16
参考文献
参考判例
和解の確定効
和解の確定効の例外
2015/1/16
最二判昭36・5・26民集15巻5号1336頁
参考図書
 最高裁判例一覧
(年代順)


和解の確定効
借地権の期間満了による建物収去土地明渡の調停に
おいて期限後における借地権の消滅が合意せられた
以上,
借地法6条の法定更新による期限後の借地権存続に
つき錯誤があつたことを理由として右調停の効力を争
うことは,民法696条により許されない。
 立法理由
 教科書
 コンメンタール
 総合判例研究
Lecture on Contracts
523
2015/1/16
和解の確定効の例外(1/2)
最二判昭43・3・15民集22巻3号587頁
仮差押の目的となつているジヤムが一定の品質
を有することを前提として和解契約をなしたところ,
右ジヤムが原判示の如き(原判決理由参照)粗
悪品であつたときは,
右和解は要素に錯誤があるものとして無効であ
ると解すべきである。
Lecture on Contracts
525
 「個品割賦購入あっせん契約(現在は個別信用購入あっ
せん)において,購入者が販売業者に対して有する抗弁
がクレジット会社に抗できるための理論について
割賦販売法30条の4,または,同法35条の3の19の規
定ではなく,民法の仕組みを使って説明できるかどう
か?
もしできるとすれば,どの条文を組み合わせることに
よってそれが可能であるか?
KAGAYAMA Shigeru
2015/1/16
Lecture on Contracts
526
定期試験仮想問題10題 目次
 最三判平2・2・20判時1354号76頁(クレジット契約における抗
弁の切断事件)をよく読んで,第8回の講義(11/11)までに,
以下の問題についてアイラック(IRAC)で論じなさい。
Lecture on Contracts
交通事故による全損害を正確に把握し難い状況
のもとにおいて,早急に,小額の賠償金をもって
示談がされた場合において,右示談によって被
害者が放棄した損害賠償請求は,示談当時予想
していた損害についてのみと解すべきであって,
その当時予想できなかった後遺症等については,
被害者は,後日その損害の賠償を請求すること
ができる。
レポート課題
2015/1/16
524
和解の確定効の例外(2/2)
最一判昭33・6・14民集12巻9号1492頁
2015/1/16
Lecture on Contracts
527
 Q1: 契約法の位置づけ
 Q2: 契約の成立
 Q3: 贈与,売買,交換
 Q4: 消費貸借・消費者信用
 Q5: 使用貸借,賃貸借・借地借家
 Q6: 雇用・労働契約
 Q7: 請負・建築請負
 Q8: 委任・準委任
 Q9: 寄託・消費寄託
 Q10: 組合,終身定期金
2015/1/16
Lecture on Contracts
528
88
Lecture on Contracts
2015/1/16
定期試験仮想問題(1/10)→Q ToC
定期試験仮想問題(2/10)→Q ToC
契約法の位置づけ
契約の成立
 契約の位置づけに関する以下の問いに答えなさい。
 契約の成立に関する以下の問いに答えなさい。
 1月5日,Aは,Bに書面で,承諾期間を定めずに,売買契約の申し込みをした。
この書面は,1月7日,Bに到達した。
 Aは,Bからの返事を待ったが,20日以上も返事がないため,1月27日,申込
撤回の書面をBに発信した。
 その間Bは,熟慮していたが,1月28日に意を決し,Aに承諾の返事を書面で
発信し,その書面は1月30日にAに到達した。
 Bが承諾を発信した翌日の1月29日,Bは,Aから申込撤回の通知を受け取っ
た。
1. 債権の発生原因を4つ挙げなさい。
2. 契約総論と契約各論との関係をパンデクテン方式の考
え方に従って述べなさい。
3. 契約総論が,すべての契約の総論ではなく,特に,どの
ような契約の総論となっているのかを述べなさい。
4. 契約の成立,契約の有効・無効,契約の履行・不履行と
の関係を,婚姻・離婚との比較において述べなさい。
1.
2.
3.
2015/1/16
Lecture on Contracts
529
わが国の現行民法の下で,AB間で,売買契約は成立するか。
民法(債権関係)が改正され,承諾の到達主義を採用して,民法526条
1項と民法527条が削除された場合には,AB間で契約は成立するか。
承諾の到達主義を採用するCISGの下では,AB間で売買契約は成立す
るか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
定期試験仮想問題(3/10)→Q ToC
定期試験仮想問題(4/10)→Q ToC
贈与,売買,交換
消費貸借・消費者信用
 財産権を移転する契約に関する以下の問いに答え
なさい。
1. 売買契約の規定は,有償契約の総論を構成するといわ
れている。その根拠となる規定をあげ,他の有償契約
に売買契約の規定が準用される具体例を示しなさい。
2. 贈与契約の規定は,無償契約の総論を構成するという
考え方がある。その根拠となる規定をあげ,具体例を示
して,贈与が無償契約の総論となりうることを示しなさい。
3. 買い物をして得たポイントで,他の物を購入する場合,
それは,贈与か,売買か,交換か。条文の根拠を示して
説明しなさい。
2015/1/16
Lecture on Contracts
531
 消費貸借契約に関する以下の問いに答えなさい。
1. 100円を1日借りて30銭の利子を支払う場合(1万円
を1日借りて30円の利子を支払う場合も同じ),これ
を日歩30銭という。日歩30銭は,年利に換算すると
何パーセントになるか。
2. クレジット販売契約(立替払契約)を利用して,割賦
で商品を購入したが,その商品に重大な瑕疵が
あったため,クレジット会社からの代金相当額の支
払いに対して,その支払いを拒絶することは可能か。
3. 割賦販売法が適用できず,民法だけが適用される
とすると,その場合はどうか。
2015/1/16
定期試験仮想問題(5/10)→Q ToC
1. Cは,Aの無断譲渡を理由に,賃貸借契約を解
除して,Bに甲住宅からの退去を求めることがで
きるか。
2. AとCとは,親族同士で,AがCから甲住宅をただ
で借りていた場合はどうか。
KAGAYAMA Shigeru
532
雇用・労働契約
AとBは夫婦である。AがCから甲住宅を賃借し
て夫婦で共同生活していたが,その後,ABは
離婚することになり,Aは,Bに財産分与をし,
慰謝料を支払った後に,Cに無断でBに賃借
権を譲渡して,甲住宅から退去した。
Lecture on Contracts
Lecture on Contracts
定期試験仮想問題(6/10)→Q ToC
使用貸借,賃貸借・借地借家
2015/1/16
530
533
 雇用契約に関する以下の問いに答えなさい。
 従来,停年制のなかった主任以上の職にある被用者Xに対して,使用者会社
Yがその就業規則で新たに55歳の停年制を定め,それに基づいて,主任以
上の職にあったXがY会社から解雇の通知を受けた。
 Xは,新たな就業規則の作成又は変更によって,既得の権利を奪い,労働者
に不利益な労働条件を一方的に課することは許されないとして,就業規則の
改正の無効とXY間の労働関係の存在の確認を求めて訴えを提起した。
 新たな就業規則は,一般職種の被用者の定年が50歳である状況の下で,主
任以上の従業員に対して55歳の定年制を定めるものであり,また,被解雇者
に対する再雇用の特則が設けられていた。
 上記の労働規約の改正は,労働契約法9条~10条に照らして検討した場合,
有効といえるか。以下の順序で検討しなさい。
1.
上記の就業規則は,どのような場合に無効となるか
2.
上記の就業規則は,どのような場合に有効となるか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
534
89
Lecture on Contracts
2015/1/16
定期試験仮想問題(7/10)→Q ToC
定期試験仮想問題(8/10)→Q ToC
請負・建築請負,建売住宅の売買
委任・準委任
 請負に関する以下の問いに答えなさい。
 委任・準委任に関する以下の問いに答えなさい。
1. 売買契約の場合の売主の瑕疵担保責任については,
瑕疵を発見してから1年間の期間制限が課せられてい
る(民法566条3項)。請負契約の場合の請負人の担保
責任の期間制限の開始時は,どのように定められてい
るか。
 エステ契約において,1ヶ月間で10kg減量するという
コースを選択して,10万円を支払ったが,1ヶ月後に,
体重が3kgしか減少しなかった。
1. この契約は,請負契約か準委任契約か。
2. 注文住宅(建築請負契約)に雨漏り等の瑕疵がある場
合と建売住宅(売買契約)に雨漏り等の瑕疵がある場
合において,請負人,および,売主の担保責任には,ど
のような差があるか。
2. 請負契約か準委任契約かを区別する判断基準はど
のようなものか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
535
3. 完全脱毛コースを選択して,処理が終了したが,期
待された結果が出なかったという場合はどうか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
定期試験仮想問題(9/10)→Q ToC
定期試験仮想問題(10/10)→Q ToC
寄託・消費寄託
組合,終身定期金,和解
 寄託・消費寄託に関する以下の問いに答えなさい。
1. 期限を決めていない場合について,貸したお金の返還
を求める場合に,相当の期間を定めて催告をしなけれ
ばならない(民法591条)。これに対して,預けたお金に
ついては,お金の返還を求めるのに,催告の必要がな
いのはなぜか。条文の根拠を示して答えなさい。
2. 定期預金について,解約をしない場合,預金者は民法
662条に基づいて,催告なしに返還を請求できるのか,
それとも,民法666条が準用する消費貸借の原則に基
づいて,期間が到来しなければ返還を求めることができ
ないのか。
2015/1/16
Lecture on Contracts
537
536
組合に関する以下の問いに答えなさい。
1. 組合と社団について,構成員のネットワークの
観点から,その違いを指摘しなさい。
2. 民法668条が,「組合財産は,総組合員の共有
に属する」と規定しているにもかかわらず,学
説・判例は,組合財産は,民法249条以下に規
定された「共有」ではなく,「合有」であると解して
いる(最三判昭33・7・22民集12巻12号1805頁) 。
その根拠となる条文を列挙し,民法249条以下
の共有との違いを述べなさい。
2015/1/16
Lecture on Contracts
538
活用すべき文献
参考図書
 組織のリーダーは何をすべきであり,何をしてはならないか
 コンメンタール
 現行民法の立法理由
 広中俊雄『民法修正案(前三編)
の理由書』有斐閣(1987)
 法務大臣官房司法法政調査部
『法典調査会民法議事速記録3』
商事法務研究会(1984)
 教科書
 我妻栄『債権各論中巻一 (民法
講義Ⅴ2)』岩波書店(1957)
 半田吉信『契約法講義』〔第2版〕
信山社(2005)
 加賀山茂『契約法』日本評論社
(2007)
2015/1/16
KAGAYAMA Shigeru
 我妻・有泉『コンメンタール民法
-総則・物権・債権-』〔第2版〕
日本評論社(2008)  松岡久和・中田邦博『新・コンメ
ンタール民法(財産法)』日本評
論社(2012)  債権法改正
 民法(債権法)改正検討委員会『詳
解・債権法改正の基本方針Ⅴ-各
種の契約(2)』商事法務(2010)343‐
361頁
Lecture on Contracts
 P.F.ドラッカー(上田惇生訳)『非営利組織の経営』ダイヤモンド社(2007)
 フィッシャー=ユーリー(金山宣夫,浅井和子訳)『ハーバード流交渉術』三笠書房(1990)
 科学的なものの考え方・仮説と発見の推論
 米盛裕二『アブダクション-仮説と発見の論理』勁草書房(2007)
 法律家のものの考え方
 カイム・ペレルマン,江口 三角 (訳) 『法律家の論理―新しいレトリック』木鐸社(2004)
 民法(財産法)全体を理解する上での助っ人
 我妻栄=有泉亨『コンメンタール民法』〔第3版〕日本評論社(2013)
 金子=新堂=平井編『法律学小辞典』有斐閣(2008)
 民法の学習入門書
 加賀山茂『民法入門・担保法革命』信山社(2013)(DVD付)
 加賀山茂『現代民法 学習法入門』信山社(2007)
 契約法全体についての概説書
 佐藤孝幸『実務契約法講義』民事法研究会(2012)
 加賀山茂『契約法講義』日本評論社(2009)
539
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Lecture on Contracts
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