WHITE P APER Software-based Storage(ソフトウェア型ストレージ)の経済性 Sponsored by: Red Hat Ashish Nadkarni Amita Potnis July 2013 Global Headquarters: 5 Speen Street Framingham, MA 01701 USA P.508.872.8200 F.508.935.4015 www.idc.com IDC の見解 スケールアウト型ファイルストレージおよびオブジェクトストレージ市場は、2016 年に 230 億ドルを超えると IDC は予測している。この市場の大部分を構成するのは、 Software-based(ソフトウェア型)、スケールアウト型、およびファイルベースのシェ アードナッシング型などのアーキテクチャを持つ製品である。Software-based Storage (ソフトウェア型ストレージ)技術の到来は、ソフトウェアベースのコンバージド インフラストラクチャの新時代を導くものであり、ストレージスタックとコンピュ ーティング層の間のシームレスな接続が実現される。IDC では、この市場分野が緩や かながらも着実にデータセンターへの disruptive(破壊的)な効果をもたらすと予測 しているが、その理由はインフラコンポーネントの調達とシステムインフラの導入 における経済性のためである。現在のデータセンターは複数のプロプライエタリー 技術が使われ、ヘテロ ジニアス環境になってい るが、将来のデータセンターは Software-defined(ソフトウェア定義)技術によって極めて統一的に見えるであろう。 Red Hat は、この Software-defined Datacenter(SDDC:データセンターの IT インフラ全 体を仮想化し、ポリシーベースで運用する)というビジョンを実現しようとしてい る数少ない企業の 1 つである。SDDC を志向するサプライヤーは、ユーザー企業が費 用や人的リソースの面で効率的に IT ソリューションを導入しやすくなるよう、スト レージスタックから始めて、コンピューティングおよびネットワーキングコンポー ネントを統合する取り組みを進めている。これを実現させるため、Red Hat などの企 業はまずアーキテクチャの面で健全なコンポーネント一式を用意する必要があると IDC は考えている。たとえば、分散スケールアウト型ファイルシステムの GlusterFS を基盤とした Red Hat Storage Server が挙げられる。Storage Server は Red Hat にとって ストレージ戦略の大動脈であり、いずれは同社のデータセンター戦略の中核を成す ことになる。Storage Server を利用することで、企業は以下の性質を持つストレージイ ンフラを迅速に構築できる。 コモディティサーバーを使用してストレージシステムと同等の利便性/有用性 を提供するインフラ。企業は、製造ベンダーからのサービスを受けざるを得な いプロプライエタリーハードウェアに依存した状況から抜け出して、内蔵スト レージ容量を十分に備えた汎用 x86 系サーバーを調達し、ストレージとコンピュ ーティングのインフラを構築できる。 数種類のストレージリソースを活用し、フェデレーション(連携)を構成する ストレージインフラ。Storage Server を利用することで、企業はストレージインフ ラの構築にサーバー内蔵ディスクまたはフラッシュリソース、外付けディスク システム、オブジェクトプラットフォーム、さらにはクラウドベースのリソー スを活用するための柔軟性が得られる。 サービスベースおよびオープンスタンダードベースのインフラ。企業は、クラ ウドサービスプロバイダーが提供する数多くのサービスメニューの中から好み の運用形式を自社データセンターでストレージインフラを構築できる。こうし たインフラの効率化によって企業は全体的なストレージ投資を抑え、さらに多 くの設備投資費を運用費に振り向けることができる。 調査概要 本書では、Red Hat Storage Server を導入する場合の経済性について考察する。Storage Server は、Red Hat が Gluster の買収によって取得した分散ファイルシステム GlusterFS をベースにしており、Software-based Storage(Software-defined のストレージと呼ぶサプ ライヤーも多い)ソリューションの新時代を主導するものである。このソリューシ ョンで利用されるのは、汎用 x86 系ハードウェアと、経済性の高い方法でストレージ を構築するための分散シェアードナッシングアーキテクチャを実現するソフトウェ アである。 概況 世界中の企業がデジタルデータへの依存をますます深めている。この過程で、各社 は新しいデータソースを探し求めると共に、大量のデータを生成して解析し、長期 間に渡って保存している。競争力を維持するためにデータ駆動型の経営を行うこと はもはや選択肢ではなく、必要不可欠な条件となっている。今日の世界で企業が生 き残るには、この新しいパラダイムを取り入れるしかない。 利用されるデータセットの構造も多様に、急速に変化している。元来、企業は構造 化データへの依存度が高かった。つまり、データはデータベースに格納されていた。 しかし、技術が進化し、あらゆるものをデジタルで捕捉する今日の世界では、デー タの半構造化および非構造化が進んでいる。重機から家電やモバイル端末に至るま で、ますます多くのデバイスが膨大な量のデータを生成しており、これらのデータ は最終的に企業のデータセンターに流れ込んでいる。我々はまた、ソーシャルやモ バイルの世界に生きており、この世界ではユーザーが以前よりもはるかに精力的に ますます多くの非構造化データを生成するようになっている。企業は、3 種類すべて のデータセットを取得して保存するだけでなく、ほぼリアルタイムで継続的に解析 することで因果関係や相関ベクトルを引き出し、ビジネスに再適用する必要がある。 一方で、IT 予算およびプロセスはこの変化に追い付いていない。企業は、IT 投資を 大幅に変更することなく、この変化に対応する必要がある。予算サイクルの中で一 度しかストレージを購買できないような硬直した調達パターンにはもはや依存でき ない。ストレージの費用を上げ続けるだけのサプライヤーに頼ることもできなくな った。さらには、アップグレードサイクルでシステム更改するやり方は、費用がか かる上に、人的リソースの負担も大きいので変えたいが、これまでは他に選択肢が なかった。こうしたアップグレードサイクルでは、プロプライエタリーのストレー ジプラットフォームに格納されているデータを、新しいプラットフォームに完全移 行する必要があり、結局は 4 年後にまた同じ処理を繰り返すことになる。 この「より少ないリソースでより多くのことを行う」傾向は、これらのデータセッ トを保管する物理的設備であるデータセンターにも大きな圧力を加えている。従来、 データセンターは過去のデータ消費傾向に基づいて設計されてきた。企業は静的な データセットを想定し、こうしたデータの大部分は本質的に構造化されると見込ん でデータセンター設備に投資していた。このようなデータセンターは、共有ストレ ージエリアネットワーク(SAN)など、集中共有型のコンポーネントとして設計され ていた。データセットの性質がますます分散型および動的になり、かつ多様化する 中で、これらの集中型データセンターモデルは構造的限界を見せ始めている。その ため、データセンターの構築に向けた新たなアプローチが求められている。 代替策の模索:x86/Linux 革命 新世代のサプライヤーは早い段階から、いずれ大多数の企業は自社のデータセンタ ーの変容を経験せざるを得なくなると考えていた。これらのサプライヤーは、すで 2 #242072 ©2013 IDC に大量の半構造化および非構造化データセットが、過負荷状態の構造化データ蓄積 インフラに追加されていることから、IT および従来型 IT サプライヤーに迫り来る脅 威を指摘していた。こうしたインフラの管理費用が増大すると、企業はいずれ現状 を放棄して、データを保管、解析、および廃棄するための新たなモデルを求めざる を得なくなる。データストレージおよび管理におけるこの差し迫った危機に異議を 唱える企業はほとんどいない。 IT は、コンピューティングの側でこのドラマを目にしてきた。数年前までデータセ ンターに設置されていたのは、プロプライエタリーの UNIX や UNIX 系のシステムを 搭載した、プロプライエタリーのコンピューティングプラットフォームばかりであ った。企業は、特にこうした「ビッグエンディアン」のプラットフォーム向けアプ リケーションを購入するか開発するしか選択肢がなかったのである。 x86 プラットフォームが登場すると、状況は一変する。x86 システムの登場はオープ ンプラットフォームの開発につながり、ひいては Linux が支持するオープンソースの 時代を切り開いた。x86 主導のオープンシステムと Linux 主導のオープンオペレーテ ィングプラットフォームの革命は、データセンターに多大な影響をもたらした。プ ロプライエタリーシステムのラックは、オープンプラットフォームを搭載するオー プンシステムの標準ラックに代わり、あるべき姿に近づいた。企業は当初抵抗し、 サプライヤーは非難の声を上げたが、結局はどちらもこの新しい現実に適応した。 この変化は現在でも続いている。 一方、x86 コンピューティングモデルは成熟し続けている。インテルと AMD はチッ プアーキテクチャをアップグレードし続けているだけでなく、コンポーネントサプ ライヤーのエコシステムも生み出した。これらのサプライヤーには、標準のインタ ーコネクト一式、永続および非永続ストレージ機構、ブート機構によってサーバー 設計の標準化に協力する商用パッケージ業者も含まれる。現在、企業は自由にサプ ライヤーを選んで x86 系サーバーを調達し、フェデレーションコンピューティング層 を作成できるようになった。コンピューティング機器でベンダー1 社に縛られること もなくなった。これらのサーバーは、高密度のストレージ容量、メモリー、マルチ コアプロセッサーを十分に活用できる。 x86 プラットフォームへの標準化によって、主に企業におけるオープンオペレーティ ングプラットフォームの導入が進んだ。ただし、これらのプラットフォームが企業 で本格的に導入され始めたのは、Linux などのオープンソースプラットフォームが商 用化してからである。企業は商用 Linux 開発の合理性を維持するために社内の Linux 開発者を頼る必要がなくなった。各社は Linux の商用サポート版を提供する Red Hat などのサプライヤーと協業できるようになり、その過程で業務からセルフメンテナ ンス作業を一掃した。ただし、このモデルの成功の鍵は、商用化の過程でプラット フォームがオープンで在り続けたこと、および企業が希望に応じてアプリケーショ ンを開発したり移植したりできる柔軟性を有していたことにある。現在、Linux はア プリケーションの実行に利用されるだけでなく、多くのハードウェアベースのスト レージプラットフォームにも搭載されており、こうした実績は広く認識されている。 サーバーの仮想化では、既存のコンピューティングハードウェアの上にフェデレー ション層を提供することによって、このオープンコンピューティングの概念を次の 段階に導いた。その過程は、オープンコンピューティングの非常に効率的な活用例 を示した。ただし、サーバーの仮想化によって実証されたのは、オープンなハード ウェアプラットフォームが実際にオープン性と柔軟性を維持して、オープンシステ ムのプラットフォームの選択肢を企業に提示できるという点である。 ©2013 IDC #242072 3 Software-based Storage(ソフトウェア型ストレージ) x86 系プラットフォームが成熟すると、商用 Linux モデルの成功もあって、Red Hat な どのサプライヤーは革新的な Software-based Storage ソリューションを開発するように なった。こうしたソリューションの多くは、オープンソースコミュニティにルーツ を持ち、利用しやすい x86 プラットフォーム向けのコンポーネントのみで完結してい る。つまり、市販のあらゆる x86 系サーバー上で実行でき、ハードウェアのカスタマ イズや特別なハードウェアは不要ということである。さらに、これらのソリューシ ョンは将来も考慮して設計されており、共有 SAN など共有インフラコンポーネント の使用は必須ではない。 シェアードナッシングアーキテクチャ これらの新しいプラットフォームは、シェアードナッシングアーキテクチャと呼ば れる設計原理を用いて構築されている。IDC の分類においてシェアードナッシングア ーキテクチャは、Software-based Storage プラットフォームを構成する際の中核となる 要素技術に含まれる。シェアードナッシングアーキテクチャは、自律的なコンピュ ーティングノードを組み合わせてフェデレーション型データストレージとそのアク セスモデルを生成する。このモデルでは、各自律ノードが独自のローカル永続デー タストレージを使用するが、これにはサーバー内蔵ディスクまたは半導体ドライブ を利用できる。このストレージにアクセスするには、Linux ext4 や XFS などディスク ベースのファイルシステムのような標準 OS 構成を使用する。このローカルストレー ジ上に実装されるのはシャーディングと呼ばれる、流れ込んでくるデータストリー ムを固定サイズのチャンクに分割する機構で、データはさらに再構築してチャンク として送り出される。参加ノードが責任を負っているのは自らに割り当てられたチ ャンクの保存または対応だけであり、クラスターの他のノードに保存されたチャン クは認識しない。データの復元性を確保する手段は、これらのチャンクの複製(レ プリケーションと呼ばれる)または分散パリティベースの復元機構(Erasure Coding (消失訂正符号処理)と呼ばれる)である。データのシャーディング、配布、復元 性は、クライアントサイドのアクセスを制御するデータアクセスインターフェース に結び付けられている。特定のデータアクセスインターフェースは、グローバルネ ームスペースと呼ばれるデータフェデレーション機構もサポートする。 シェアードナッシングアーキテクチャの自律ノード型設計は、性質として拡張性や 柔軟性が著しく高まるため、スケールアウト型アーキテクチャと呼ばれることが多 い。ノードは、パフォーマンスや拡張性の要件に応じて動的に追加したり削除した りできる。クラスターの各ノードはさまざまなコンピューティングおよびストレー ジ機能で構成できるため、管理者はクラスターの容量やパフォーマンス特性を互い に切り離して変更できる。ノードはデータセンターの物理サーバーまたは仮想サー バーとして、あるいはクラウドの仮想コンピューティングノードとして追加できる。 このシステムは、ノードが物理的形状や場所に関係なく相互にやり取りできるよう 設計されている。 アジャイルストレージ新時代 IDC による Software-based Storage の分類では、さまざまなシェアードナッシングアー キテクチャを定義するための包括的なアプローチを採用している。いずれのアーキ テクチャも、あらゆる種類のコモディティハードウェアを活用するよう設計されて おり、いくつもの異なるフォーマットでパッケージできる。IDC では、コンポーネン トレベルでデータがどのように体系化されているか、多様なオープンまたはプロプ ライエタリーインターフェースを使用してデータがどのようにアクセスされている か、そのようなシステムを構築するためにどのような永続データストアを活用でき るか、これらのシステムがどのようにパッケージされて提供されるかといったアプ 4 #242072 ©2013 IDC ローチから調査する。これらのレイヤーはその後、システム全体をエンドツーエン ドで分類して整理するために使われる。 Figure 1 では、分類およびアセンブリーモデルを示している。 FIGURE 1 Software-based Storage 分類およびアセンブリーモデル データ体系化 永続 データストア ストレージ サービス デリバリー モデル Source: IDC, 2013 RED HAT STORAGE S ERVER 企業向け分散ストレージアーキテクチャ Figure 2 で示すように、分散ファイルシステムは、シェアードナッシングアーキテク チャを採用する Software-defined のストレージの 1 バージョンである。分散ファイル システムでは、参加ノードがクラスター化されて、NFS/SMB アクセス向けグローバ ルネームスペース、ブロックアクセス(iSCSI)向け分散 LUN ディスカバリーおよび マッピング、オブジェクトアクセス向けコンテナネームスペースを提供する。分散 ファイルシステムは、データアクセスからデータ体系を抽象化できるその能力によ って、コンバージド インフラストラクチャの基本的要素として使用するのに適して いる。つまり、データアクセス層は自律ノード上でデータが体系化される方法から 独立しており、そのため単一のデータ体系化ドメインの上で複数のファイル、ブロ ック、およびオブジェクトのアクセス機構が共存できる。 ©2013 IDC #242072 5 FIGURE 2 IDC による Software-based Storage 分類における分散ファイルシス テムモデル Compu storage ソフトウェア のみ ファイルベースの レイアウト シェアードナッシング 内蔵ディスク ローカルファイル システム ファイルインターフェース ブロックインターフェース 分散メタデータ レプリケーション 物理アプラ イアンス クラウド 仮想アプラ イアンス Source: IDC, 2013 このような分散ストレージアーキテクチャの例として、Red Hat Storage Server が挙げ られる。これは、Red Hat Enterprise Linux を搭載した一連の自律的な物理または仮想 ノードを利用する分散ファイルシステム GlusterFS をベースにしている。また、Red Hat は Amazon Web Services(AWS)などの仮想クラウドリソース上でクラウドベース のプラットフォームとして動作できるバージョンの Storage Server も開発している。3 つの異なる運用モードでインストールできる能力を備えた Red Hat Storage Server は、 ハイブリッドクラウドの導入に最適なプラットフォームである。 Red Hat は、商用オープンソースコミュニティパートナーシップモデルに忠実であり 続けることを保証している。これは同社が Linux と共に支持したモデルで、GlusterFS を開発していた Gluster も Red Hat に買収されるまでこのモデルを踏襲していた。 Storage Server では、Linux のように、企業が Red Hat を頼りに Gluster コミュニティの 開発者が手掛けたバグ修正や機能拡張を即座に組み込めるよう保証している。 GlusterFS(および Red Hat Storage Server)と類似の分散ファイルシステムの違いは、 GlusterFS がデータと共に拡散される分散メタデータリポジトリを採用していること にある。集中型メタデータリポジトリを採用する他のプラットフォームと異なり、 このメタデータの分散によって性能上のいかなるボトルネックも、さらには単一障 害点(SPOF:Single Point of Failure)も取り除かれる。さらに、こうした分散機構で は再構成が並行処理されるため、ノードの再構築が確実に高速化する。 Red Hat Storage Server は、包括的かつ強力なストレージサービスおよびデータ管理機 能一式を備えており、これは他のストレージサプライヤーが提供する多くのハード ウェア中心の製品に対抗するものである。他の多くのサプライヤーと異なり、Red 6 #242072 ©2013 IDC Hat は企業に対し、これらの機能を使用するための追加料金を課していない。各種機 能はすべて基本製品のサブスクリプションに含まれている。 Red Hat は Storage Server によって、同社が提供する他の製品同様に、IT に関わる複数 のニーズに同時に対処する計画である。 複数のデリバリーオプションを提供する上で、Red Hat はストレージおよびシス テムの設計者に対し、同社のプラットフォームを採用してハイブリッドクラウ ドを導入する優位性を訴求している。そうすることによって設計者は、クラウ ドインフラにおけるプラットフォームの数を最小限に抑えることができる。 Red Hat Enterprise Linux を搭載したいかなる x86 系サーバーハードウェアにも Storage Server をインストール可能にすることで、Red Hat はサーバー管理者に対 し、日々管理しているハードウェアおよび関連のオペレーティングプラットフ ォームが、アプリケーションデータを格納するプラットフォーム持続型のスト レージとしても最適であることを伝えている。 GlusterFS ブランドを維持することによって、Red Hat は、すでに GlusterFS を利用 している技術および高性能分野のコミュニティのメンバーに引き続き関与して いく姿勢を示している。 GlusterFS のプラグインを Hadoop に提供することによって、Red Hat は、このプ ラットフォームの適用範囲をビッグデータやアナリティクスのコミュニティに まで拡大している。これらコミュニティの多くは、Hadoop 分散ファイルシステ ム(HDFS:Hadoop Distributed File System)が性質として持っている限界を乗り 越えようと代替策を模索している。 Red Hat の 企 業 向 け 仮 想 化 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム RHEV ( Red Hat Enterprise Virtualization)を Red Hat Storage Server と連携することによって、Red Hat は IT マ ネージャーに対し、コンピューティングとストレージへの包括的なアプローチ を採用し、オンデマンドのアプリケーションデリバリープラットフォームを開 発することの正当性を訴求している。 Red Hat がエンタープライズ市場に取り組むのはこれが初めてではない。それどころ か、同社はこれまでも大多数の業種の企業を対象にしてきた。Red Hat の Enterprise Linux 製品は今なお最も普及している商用版 Linux の 1 つであり、IT 業界でも特に多 様性に富む一連のアプリケーションに適応してきた。現在、これらのアプリケーシ ョンは非構造化および半構造化データセットをサポートしており、構造化データセ ットのサポートも進んでいる。多くの企業は、データベースの Linux への移行を検討 しているか、あるいはすでに移行を済ませている。中には、Red Hat Enterprise Linux をプラットフォームに選んだ企業もある。Red Hat は今や、データセンターインフラ プラットフォームのプロバイダーとして、この成功を次の段階に進めようとしてい る。 Software-based Storage 導入における経済性 IT ソリューションのサプライヤーは、現代のデータ駆動型のユーザー企業に対して、 経済性について説得力のあるストーリーを語ることができなければ、自社プラット フォームが disruptive(破壊的)であると主張することはできない。Red Hat はこれま で、このストーリーを何度も繰り返し説いてきた。企業は競争の激しい市場に駆り 立てられている。市場を構成するサプライヤーは売り込みに長けており、実績のあ るソリューションを提供し、ターゲット市場のニーズを非常によく理解している。 ただし、自らのストーリーを武器にブランドも認知されている Red Hat などのサプラ イヤーは、現状を乗り越えようとしている企業に対し、Red Hat Storage Server のよう ©2013 IDC #242072 7 な Software-based Storage ソリューションが、アジャイル、オンデマンド、およびサー ビス志向のデータセンターの大動脈になり得ると納得させることができるであろう。 Storage Server などのソリューションにおける経済性についてのストーリーとして、最 初に挙げられるのは、ハードウェアプラットフォーム選択の柔軟性である。こうし たプラットフォームでは、内蔵ディスクを備えた既存のサーバーハードウェアから 使い始め、ニーズの高まりに応じて追加のサーバーハードウェアを調達できる。ク ラスターのノードはシームレスに追加したり削除したりできる。Storage Server のシェ アードナッシング属性によって、参加ノードは、物理、仮想、またはクラウドの異 なるプラットフォームにインストールできるほか、異なるハードウェア属性で構成 することもできる。企業はこのソリューションを仮想マシンとして既存のインフラ にインストール可能で、ハイパーバイザープラットフォームを実行するサーバーの 内蔵ディスクリソースを活用できる。多くのデータセンターで度々無視されている 事実として、このようなサーバー上の内蔵ストレージ容量が無駄にされているとい う状況があるが、これは、企業が性能や容量を理由に外部の共有ストレージを使用 するよう仮想インフラを設定しているためである。Linux 管理者はすでに、Linux をベ ースとした Storage Server をインストールして構成するために必要なスキルの多くを 身に付けている。Linux 導入企業は、既存のリソースプールを活用して自社環境で Storage Server を導入できる。最初はテストまたは開発環境で Storage Server を構成でき れば、次には非ミッションクリティカル環境に利用を拡大できる。 Storage Server は、(マシン生成された)大量の非構造化および半構造化データセット の格納に最適である。これらのデータセットを費用効率の高い方法で格納して解析 する上で、最適なプラットフォームを見付けるのに苦労している企業は多い。安価 で低速なディスクを備えた容量最適化型の外部ストレージシステムは、性能面で課 題が多い。一方で性能最適化型のストレージシステムは、これらのデータセットを 格納することに関して言えば高価になってしまう。さらに、これらのシステムはい ずれもコンピューティングワークロードをネイティブでサポートしておらず、デー タを解析するにはコンピューティング層に転送する必要があるが、この作業はデー タセットが数 TB(テラバイト)規模になるとすぐに経済的に行き詰まってしまう。 企業は Storage Server を RHEV などの仮想化プラットフォームと組み合わせることで Compustorage クラスターの構築が可能で、このソリューションではデータの格納と解 析をローカルに同時に行える。 Red Hat Storage Server の経済性を定量化するため、IDC では、NAS(NFS/CIFS)イン ターフェースを介してアクセスする企業向けディスクストレージシステムおよびデ ィスクストレージシステムの 100TB の調達費用と、Red Hat Storage Server の 100TB の 調達費用を 3 年間と 5 年間で比較した。その結果を Table 1 および Figure 3 に示す。 8 #242072 ©2013 IDC TABLE 1 Red Hat Storage Server とディスクストレージシステムの 100TB 当たりの初期調達費用 の違い(ドル) 0 年目 Red Hat Storage Server* 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 5 年間の 費用 3 年間の 費用 95,725 19,145 23,261 28,947 41,973 59,025 371,460 270,461 ディスク ストレージ システム 平均** 167,011 33,402 42,838 56,817 73,231 96,116 549,415 380,068 ミッドレンジ ディスク ストレージ システム** 249,314 49,863 63,949 84,817 109,319 143,482 780,744 527,943 Notes: * サーバーハードウェアと内蔵型ディスクストレージシステムの費用を含む ** ネットワーク接続ストレージ(NAS)製品を使用 Source: IDC, 2013 FIGURE 3 Red Hat Storage Server とディスクストレージシステムの 100TB 当 たりの初期調達費用の違い、前年比 20%成長の場合 300,000 ($) 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 0 1 2 3 4 5 (Year) Red Hat Storage Server* Midrange disk storage system** Average disk storage system** Notes: * サーバーハードウェアと内蔵型ディスクストレージシステムの費用を含む ** ネットワーク接続ストレージ(NAS)製品を使用 Source: IDC, 2013 ©2013 IDC #242072 9 Table 1、Figure 3 から明らかなように、内蔵ディスクを備えたサーバーハードウェア を調達して Red Hat Storage Server など Software-based Storage ソリューションを導入す ると、容量が最適化された平均的な NAS ソリューションを導入するより 29%近く安 価に、また、容量が最適化された平均的なミッドレンジディスクストレージシステ ムを導入するより 49%近く安価に抑えることができる。5 年間で見ると、これらの費 用はそれぞれ 33%と 52%になる。サーバーユニット数と減価償却費の前提条件は補 遺/関連資料で確認できる。 これらの費用には人件費が含まれていないが、平均すると、企業はストレージチー ムのメンテナンス作業の一部をサーバーチームに移すことによって人件費を少なく とも 20%削減できると IDC では推計している。 将来の展望 収益性を維持しながら競争力を維持するためにデータとアナリティクスを重視する 企業がますます増えている。絶好のタイミングでリスクをとって適切な技術を導入 した企業が今なお活躍し、自社のストーリーを語っているように、これらの企業だ けでなく他の多くの企業にとっても、データセンターインフラを構築するための新 たなアプローチを採用する時期に来ている。 将来のデータセンターは現在のデータセンターとはまったく違って見えるであろう。 設置するインフラは本質的に同種になり、さまざまなコンピューティング、ストレ ージ、およびネットワーキングを管理するソフトウェアスタックと設備機能を介し てほぼすべてが統制されるようになる。つまり、将来のデータセンターは Softwaredefined となり、データの大部分はソフトウェアベースのシステムに格納されること になる。一見すると、コンピューティングクラスターで構成されるラックとストレ ージクラスターで構成されるラックに違いはなく、このような線引きはいずれ消え 去ることになる。 当然ながら、こうした変化はすぐに起こるわけではなく、主要企業がこのモデルに 移行するには数年かかるであろう。ただし、企業はコンピューティング層を仮想化 することによって、すなわちソフトウェアベースまたは Software-defined のコンピュ ーティングとも考えられる動きによって、すでに大きな一歩を踏み出している。 そこで次の段階である Software-based Storage が到来することになる。コンピューティ ング層の均一化において経験豊富な企業は、自社のストレージインフラをこの緩や かながらも着実な転換プロセスに乗せるための取り組みに着手しつつある。 Red Hat Storage Server の市場機会と課題 将来のデータセンターインフラに向けた Software-defined という壮大なビジョンにお いて、Red Hat Storage Server の未来は非常に有望に見える。ただし、企業がその構想 について完全に納得した上で、Software-defined Datacenter の IT インフラの恩恵を認識 するまでには、数年かかるであろう。これらを実現するすべての責任は、このビジ ョンの結実に関心を抱く Red Hat などのサプライヤーにかかっている。 実現に至るまでには、サプライヤー各社が、既存の市場シェアを守るためにあらゆ る手を使って Software-defined のビジョンを歪めようとする現行勢力からの抵抗に遭 うことは間違いない。Red Hat を始めとするサプライヤーは、経済性のストーリーを 練り上げる姿勢を貫き通す必要がある。その過程で、Software-defined のストレージと いうビジョン、ひいてはソフトウェアベースのデータセンターというビジョンを組 10 #242072 ©2013 IDC 織としてサポートするサーバーベンダー、コンポーネントサプライヤー、アプリケ ーションパートナーの協力を取り付けなければならない。各社にとってこうした状 況は、まったく新しいわけではないはずである。サーバーの仮想化でも経験してお り、現在もその恩恵を受けている。 Red Hat はさらに、管理した経験のないプラットフォームを導入することについて多 少懐疑的になっている IT ストレージ管理のコミュニティも納得させる必要がある。 また、システム管理のコミュニティにも協力を求めなければならない。こうしたコ ミュニティは Linux で同様の変革に対する抵抗感を経験したかもしれないが、現在で は逆に、Linux 以外のいかなる OS の管理プラットフォームも導入する気にならない 状況になっているとも言えるであろう。さらに重要なこととして、Red Hat は、基盤 アーキテクチャに対応するデータ管理機能といった Storage Server プラットフォーム の可能性を強調することで、ストレージ管理者が他の分野に注力できるようにする べきである。Storage Server プラットフォームおよび類似のプラットフォームは、他の 商用パッケージ版分散ストレージシステムと変わらない。ただし、後者が工場から 事前設定されて出荷されるのに対し、前者は社内のシステム管理者がインストール を行う。 Red Hat は、ストレージサプライヤーとして振る舞うための施策を進めなければなら ない。大手ストレージサプライヤーと同じ態度で、ユーザー企業のデータを扱う必 要がある。Red Hat は、データの完全性、サービス品質、ビジネスの目的、アジャイ ルおよびサービスベースのストレージインフラを提供する能力を巡る議論に重点を 移すべきである。 IDC の提言 Software-defined Datacenter への移行がすでに始まっていることは明らかである。この 変化は一方通行であり、IT のデリバリー方法に大きな影響を及ぼすであろう。スト レージは、Software-defined モデルに変容する次なる分野である(最初に変容したのは コンピューティングにおけるサーバー仮想化である)。共有ストレージアーキテク チャの当初の狙いは、必要なデータセンターストレージ要素を同じ傘の下に集約す ることであった。その意味で、設計の目的は果たしたと言える。ただし、共有スト レージは決して、分散スケールが必要なデータ駆動型の世界に対処するために設計 されたわけではない。このスケールを巡る要件には、より経済的で、予期しないワ ークロードにも迅速に対応できる別のアプローチが必要である。つまり、アジャイ ルかつサービスベースにしなければならないのである。 Red Hat Storage Server など、オープンな Software-defined のストレージ製品の導入を決 める企業は、はるかに急速に次のような恩恵を受けるであろう。 ストレージおよびデータ管理の効率化 アプリケーション性能の向上 ストレージインフラ費用の削減 IT 生産性の向上 こうしたソリューションを活用する企業は、効率的で機動的、かつ管理しやすくス ケーラブルなストレージインフラの恩恵を受けることになる。その過程で、ある程 度のリスクはとらなければならないかもしれないが、よく言われるように、リスク なくしてリターンは得られない。 ©2013 IDC #242072 11 補遺/関連資料 計算の基本的前提条件 Tables 2、3 では、計算の基本的前提条件を示している。 Table 2 では、TB 容量の増加率と、企業がコンピューティングおよびストレージ投資 にかける一般的な減価償却率を示す。サーバーユニット数は物理サーバーインスタ ンスの数を表し、Red Hat Storage Server では各々が自律ノードとして構成される。 TABLE 2 前提条件 0 年目 増加率(%) 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 10 20 35 40 45 50 プロビジョニング 用 TB 100 20 27 38 55 82 コンピューター 減価償却率(%) 1.00 1.00 0.90 0.80 0.80 0.75 ストレージ 減価償却率(%) 1.00 1.00 0.95 0.90 0.80 0.70 サーバー ユニット数 9 2 3 3 4 6 移行費(PS) ($) 0 0 0 80,000 0 80,000 Source: IDC, 2013 12 #242072 ©2013 IDC Table 3 では、Red Hat Storage Server の単一ノードとして使用される一般的なサーバー ユニット構成を示す。サーバー1 台当たりの標準取得原価に、一般的な 40%割引が適 用される。一般的なサーバーの平均販売価格(ASV)は 5,000 ドル超であるため、こ の構成はさまざまな買い手パターンを考慮して比較的高めに設定されている。 TABLE 3 一般的なサーバーユニット構成 システム ユニット費($) 数量 定価($) 初期価格 2,250 1 2,250 プロセッサー 2,000 1 2,000 メモリー 330 2 660 ストレージ 720 2 1,440 追加ストレージ 620 14 8,680 10 1 10 700 1 700 1,240 1 1,240 ネットワークカード 冗長電源 その他の追加 一般的なサーバーユニット構成 の定価 16,980 割引(40%)後のサーバー価格 10,188 Red Hat Storage Server サブス クリプションを割引後のサーバ ー価格に追加 1,299 1 一般的なサーバーユニット構成 1,299 11,487 Source: IDC, 2013 Copyright Notice External Publication of IDC Information and Data — Any IDC information that is to be used in advertising, press releases, or promotional materials requires prior written approval from the appropriate IDC Vice President or Country Manager. 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