第2章 参加型ワークショップ開発の基礎となる デジタル文化・技術の分析 - 97 - - 98 - 第2章 参加型ワークショップ開発の基礎となる デジタル文化・技術の調査・分析 目次 1.研究の目的と概要......................................................... 100 2.研究のテーマと手法....................................................... 101 1)テーマ................................................................. 101 2)手法................................................................... 101 3.情報社会におけるこどもとポップカルチャー................................. 105 1)日本のポップカルチャーの市場とジャンルの拡張........................... 105 2)プロからアマへ、おとなから若者、こどもへ................................ 106 3)海外から見た日本のポップカルチャー..................................... 107 4)ユビキタス化するポップカルチャー....................................... 109 5)情報社会における日本のこどもとポップカルチャー......................... 110 4.日本におけるポップカルチャー関連政策の課題............................... 111 1)総合政策............................................................... 111 2)創造力と表現力の底上げに向けた政策..................................... 117 5.こどもから始めるポップカルチャーによる国力再生........................... 118 1)ポップカルチャーを主軸としたコンテンツ政策の提案....................... 121 2)国民の表現力と発進力の底上げに向けた政策の提言......................... 121 3)ポップカルチャー政策の確立・強化........................................ 123 4)人材の育成の推進....................................................... 124 6.具体策の提言............................................................. 124 1)創造力育成カリキュラムの開発・試行...................................... 124 2)ポップカルチャー・アーカイブの取組..................................... 126 7.まとめ.................................................................. 129 1)議論の継続............................................................. 129 2)ワークショップ開発実施と情報発信....................................... 129 - 99 - 1.研究の目的と概要 本研究は、「こどもの創造力・表現力向上を目指したワークショップ形態の調査検討とネ ットワークを利用した新しいワークショップ・プログラムの開発」の一環として、昨年度 より開始したものである。 研究の目的は、デジタルコンテンツの創造を行う人材の育成、特にこどもも体験できるプ ログラムの開発を先導するための継続した調査・分析である。またこれによりわが国の情 報産業・文化・社会の特性をとらえ、コンテンツ制作力・発信力を高める指針の策定を目 指すものである。 具体的には、日本の時代性・流行性を背景とした表現文化を学術的に体系づけるための調 査・分析を行う。昨年度より日本の文化の典型ともいえる「ポップカルチャー(マンガ、 アニメ、ゲーム、映画、音楽、テレビ番組など、時代性・流行性の強い表現文化)」に焦点 をあて、その経済インパクトや社会文化的な意義、さらにはその展望について検討してい る。 ここでポップカルチャーに着目するのは、それがブロードバンド時代のコンテンツの基幹 をなし、その表現や利用を中心的にになうのがこどもたちの世代となるからであり、また、 日本の今日的な状況を端的に示す分野として、今後の政策的な指標がもとめられる検討対 象だからである。 同時に、世界においては、本研究の重要性・必要性を裏付ける出来事が次々と起こってい る。宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」のアカデミー賞受賞をはじめ、山村浩一監督の 短編アニメ「頭山」のアカデミー賞ノミネート、北野武監督作品「座頭市」のベネチア映 画祭金獅子賞受賞、アーティスト村上隆のルイ・ヴィトンとのコラボレイトなど、日本発 ポップカルチャーの国際的な評価の高まりが目に見える形であらわれたのである。 すでに世界は、本研究の提言を先取るように日本を「ポップカルチャーの国」として受容 している。もはや国際社会において現在の日本の顔となりつつあるポップカルチャーにつ いて、その社会文化的背景、経済的インパクトなどの分析は急務である。このため本研究 は、その主体である委員会メンバーの充実、ワークショップの実施など、昨年度のスター トから一貫して活動を拡大してきた。 特に今年度は、これらの分析を通じて、こどもたちの世代にとっての新たな自国アイデン ティティとなることが想像されるポップカルチャーが、彼らにとってどのような意味を持 つのか、彼らの能力にこれをどう反映させ、情報社会における能力を育てていくのかとい う課題に対して、研究を継続してきた。 この結果、本研究を通じ以下のような項目において成果を得ることができた。 情報社会におけるこどもとポップカルチャー 1)日本のポップカルチャーの市場とジャンルの拡張 2)プロからアマへ、おとなから若者、こどもへ 3)海外から見た日本のポップカルチャー 4)ユビキタス化するポップカルチャー 5)情報社会における日本のこどもとポップカルチャー 日本におけるポップカルチャー関連政策の課題 - 100 - 1)総合政策 2)長期政策の必要性 3)創造力と表現力の底上げに向けた政策 こどもから始めるポップカルチャーによる国力再生 1)ポップカルチャーを主軸としたコンテンツ政策の提案 2)国民の表現力と発進力の底上げに向けた政策の提言 3)ポップカルチャー政策の確立・強化 4)人材の育成の推進 具体策の提言 1)創造力育成カリキュラムの開発・試行 2)ポップカルチャー・アーカイブの取組 以上の研究成果をこの章では紹介している。 2.研究のテーマと手法 1)テーマ マンガ、アニメ、ゲーム、映画、音楽、テレビ番組などのコンテンツや、インターネッ ト、携帯電話など新しいデジタルメディア、それらメディアを通じたコミュニケーション を研究の対象とする。 また、それらと密接に関る領域であるファッションや食文化、スポーツ、建築、工業デ ザインなど文化や風俗も、現在の日本を特徴づけるものとして検討に加える。 2)手法 スタンフォード日本センター、経済産業研究所などの関係機関と連動して、学際的に調 査検討を行うための研究委員会を発足させ、情報の収集、議論、分析を推進している。具 体的には 2002 年 10 月から、メーリングリスト上に研究会を開催し、アーティスト、研究 者などによる議論を展開している。議論の成果は、毎月議事録にまとめてウェブ上で報告 する形をとっている。 また、これらに加えて本年度は、コンテンツのデジタル化による流通・制作・表現の変 化に対応する新しいコンテンツ政策を議論する委員会「デジコン」への参加や、ポップカ ルチャー政策史、ポップカルチャーと著作権法などポップカルチャー政策を多角的に検討 する委員会「PROJECT-P」の組織化、日々消失を繰り返し失われていくポップカルチャー に対して、その特性に適した新しいアーカイブのあり方を調査検討する「ポップカルチャ ー・アーカイブ・プロジェクト」の実施など、本研究委員会からの派生プロジェクトも実 施された。 さらにこれらの実施結果は、新たに開発するプログラムの方向、目的、内容へフィード バックする。そして、日本独自のコンテンツ創造が行えるようなワークショップ・プログ ラム(ワークショップとは、学外で行われている活動で、参加者自らが体験しながら何か を学ぶ形態のものを指す)の開発に役立てる。 ※研究委員会メンバー(2004 年 2 月現在) - 101 - 東 浩 紀 ..哲学者 阿 部 芳 久 ..文化庁メディア芸術祭事務局 安 藤 英 作 ..内閣官房IT担当室 飯 野 賢 治 ..ゲームクリエイター 飯 嶋 池 田 真一郎 ..デジタルコンテンツ協会 石 川 達 大 ..バンダイビジュアル 石 川 光 石 戸 奈々子 ..MIT 客員研究員/東京大学大学院生 伊 奈 正 岩 永 泰 造 ..岩波書店編集部 岩 浪 剛 太 ..インフォシティ 上 原 伸 元 ..国際通信経済研究所 (RITE) 内 田 斉 .....脳家 遠 藤 大 口 孝 岡 田 朋 之 ..メディア・コミュニケーション研究 岡 田 智 博 .. 奥 平 イ ラ ..デジタルアーティスト/アートディレクター 小 崎 哲 哉 ..REALTOKYO 発行人兼編集長 小 野 千 枝 ..主婦 小野打 徹 ...通信マニア 映像事業本部 久 ..プロダクションIG代表 人 ..社会学者 諭 ...パソコン家/パソコン雑誌編集者 之 ..映像クリエータ/ジャーナリスト アートデモ 恵 ....ヒューマンメディア 海 部 正 樹 ..Wowmax Media プロデューサー 鹿 毛 正 之 ..週刊アスキー 金 村 公 一 ..メディア探検家、プロボクサー 上 出 蒲 生 勇 河 口 洋一郎 ..CG アーティスト 川 崎 はぐみ ..株式会社システムメディア電話番 川 原 和 卓 ...音楽制作者連盟 治 ..東急エージェンシー 彦 ..博報堂 川 邊 健太郎 ..Yahoo! JAPAN プロデューサー 菊 尚 池 岸 博 人 ..FMP総研 CANVAS 幸 .経済財政担当大臣補佐官 喜 多 順 子 ..絵師 木 原 匡 康 ..プロデューサー 木 原 庸 佐 ..イラストレーター 久 保 雅 一 ..プロデューサー 黒 澤 亘 .....イベントプランナー 河 野 真太郎 ..アットネットホーム 小 林 亙 .....立体音響家 - 102 - 齋 藤 境 祐一 ....株式会社ノバック 真良 .....(財)東京国際映像文化振興会・東京国際映画祭組織委員会 長 佐 藤 大 .....文筆業/フロッグネーション所属 四 方 幸 重 子 ..メディアアート・キュレーター 延 浩 ...テレビマンユニオン会長 篠 原 たかこ ..CG-ARTS 協会広報担当 島 田 範 正 ..読売新聞マルチメディア取材班 嶋 本 吉 春 .. デジタルコンテンツ協会 澁 川 修 一 ..Glocom/RIETI/東大 杉 山 知 之 ..デジハリ学校長 瀬 名 秀 明 ..作家 仙 頭 武 則 ..映画プロデューサー 高 井 崇 志 ..県庁職員 高 須 健 一 .. プロダクション IG 高 城 剛 ...ハイパーメディア・クリエイター 竹 内 聖 ...DINA 代表取締役 竹 内 武 田 武 邑 光 裕 ..文化資産学研究者 谷 本 桐 子 ..RIETI ウェブ編集長 千 葉 宏 企画調査部 研究主幹 広報 彰 ..コミックス・ウェーブ代表 徹 ...ジャーナリスト・評論家 麗 子 ...チェリーベイブ代表 ディヴィッド・ディヒーリ・・・映像作家/キュレーター/プロデューサー David Leheny ..ウィスコンシン大学政治学部助教授 塚 本 幹 夫 ..フジテレビ 戸 矢 理衣奈 ..経済産業研究所リサーチアソシエート 豊 田 俊 一 ..放送作家 豊 永 真 美 ..日本貿易振興機構 内 藤 啓 二 ..アートディレクター 中 井 秀 範 ..興行師 中 島 信 也 ..CM ディレクター 中 西 大 輔 ..編集者(リトルモア編集長) 中 西 中 谷 日 出 ..NHK 西 村 博 之 ..2ちゃんねる 野 波 健 祐 ..朝日新聞記者 萩 原 嘉 博 ..「ほしのこえ」製作プロデューサー 畠 山 けんじ ..アマ棋士五段 八 谷 和 服 部 桂 .....朝日新聞記者 シャッフル 寛 ...ISAO 彦 ..メディアアーティスト - 103 - 事務局 濱 野 智 史 ..慶応大学 SFC 浜 野 保 樹 ..東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授 平 井 淳 生 ..元・東映アニメ 平 野 友 康 ..デジタルステージ代表 平 野 雅 章 ..早稲田大学ビジネススクール教授 平 林 久 和 ..ゲームアナリスト 廣 瀬 禎 彦 ..インタネットサービス会社経営 深 川 泰 斗 ..事務局 福 岡 俊 弘 ..週刊アスキー編集主幹 福 島 寿 恵 ..財団法人デジタルコンテンツ協会交流グループ普及交流部 福 冨 忠 和 ..ジャーナリスト/メディアプロデューサー 福 原 義 久 ..SFC 研究所訪問研究員, 写真家,デザイナー,プログラマー 藤 元 健太郎 ..D4DR 前 田 邦 宏 ..関心空間 増 澤 貞 昌 ..モバイルコンテンツプロデューサー 桝 山 松 浦 季 里 ..CG アーティスト 松 下 香 苗 ..METI 松 永 直 哉 ..大和証券 SMBC 松 村 太 郎 ..慶応大学 SFC 松 本 松 吉 慶 一 ..財団法人デジタルコンテンツ協会専務付き研究主幹 間 宮 稲 太 ..(株)有線ブロードネットワークス/資格等再起道5段 三 浦 文 夫 ..電通 水 口 哲 也 ..ゲームプロデューサー 箕 輪 裕 一 ..町田市立国際版画美術館・学芸員 宮 岸 尉 子 ..インストラクター 三 宅 麻 衣 ..イラストレーター 村 井 代表 寛 ...『マネースマート』プロデューサー 修 ...公務員 清 二 ..株式会社スタインバーグジャパン取締役会長 森 田 貴 英 ..弁護士 森 山 朋 絵 ..東京都写真美術館・学芸員 毛 利 嘉 孝 ..社会学者 安 田 孝 美 ..名古屋大学大学院情報科学研究科 矢 野 山 賀 博 之 ..ガイナックス代表取締役・監督 山 口 裕 美 ..現代アート・チアリーダー 山 中 優 ...「新潮」編集長 千 恵 ..社会学/韓国現代文化研究(大阪大学大学院) 山 田 真由美 ..作曲家・クワガタレコード主宰 山 野 直 湯 川 子 ..少年ナイフ 薫 ...作家 - 104 - 吉 川 ラジカル 洋一郎 ....作曲家・音楽家 鈴 木 ..イラストレーター Rica .............イラストレーター リリー・フランキー イラストレーター Lindsey Johnson ..スタンフォード日本センター 脇 田 智 恵 ..NTT ドコモ 鷲 谷 正 史 ..東映アニメーション研究所 渡 辺 健 吾 ..フロッグネーション代表 渡 邊 浩 弐 ..GTV代表 渡 辺 保 史 中 村 伊知哉 ..スタンフォード日本センター研究所長 3.情報社会におけるこどもとポップカルチャー 1)日本のポップカルチャーの市場とジャンルの拡張 こども達とポップカルチャーの関わりを考えるとき、デジタル化の進展によるポップカ ルチャーの市場とジャンルの拡張を視座の中心に置く必要がある。 90 年代におけるマンガ・アニメ・ゲーム産業の成長は、急速に進んだコンピュータの ダウンサイジング化とネットワーク化が推進力となった。新しい技術がインタラクティブ、 CG、3D、ネットゲームなどアニメやゲームの新しい表現様式を生み出していった。そし て、メールやウェブサイト、ケータイネット、着メロ、写真メール、ビデオメールといっ た新しいジャンルを開拓してきた。新しい文化、風俗、ビジネスを生んでいる。 同時に、デジタル化はビジネスモデルを変える。デジタル放送、ブロードバンド、モバ イルなどメディアの多様化により、流通のポートフォリオや活動ステージが広がる。流通 からの独立が進み、投資回収モデルも変化する可能性がある。ネットワーク化を通じた国 際化により、市場の世界化に加え、投資のオープン化や立地の分散が促される面もあろう。 しかし、正の作用ばかりではない。ポップカルチャー産業は、急速に成長をとげたもの の、デジタル化が爆発的に進展した時期からは、むしろ縮小傾向を見せている。音楽業界 では産業をシュリンクさせている一つの要因が不正コピーの横行だとする意見が強い。ゲ ーム業界では、国内市場の縮小と競争の激化とともに、デジタル対応に起因する開発費の 高騰や採算性の悪化が危機としてとらえられている。 一方、インターネットや携帯電話など、通信インフラ産業は成長している。ブロードバ ンドの普及率では既にアメリカを追い抜いた。移動体通信の売上は 98 年の 6 兆円が 2001 年には 9.2 兆円に拡大している。99 年には、家庭当たりの情報支出が平均 1.3 万円も増 加して、家計支出に占める情報支出が初めて 6%のかべを突破したのだが、その増加額の 8 割が通信料とパソコン代に回ったという。十代のこづかいは、男女とも携帯電話への支 出がトップであり(男 29%、女 34%)、CD やゲームを超えている(男 CD15%, ゲーム 10%。 女 CD10%, カラオケ 9%)。ハードに回っていた支出が減り、知識成果物たるソフト(コン テンツ)に流れるようになることが本来想定された情報経済像なのだが、現実にはコンテ ンツに資金は回らず、逆行している。 とはいえ、携帯ネットの市場に限って言えば、インフラだけでなくコンテンツも急成長 - 105 - をみせている。携帯電話でのインターネット利用割合が日本は 80%であり、アメリカの 8%、英独の 7%といった状況に比べ群を抜いて高い。 NTT Docomo の iMode だけで、登場からわずか 2 年で既に 6 万サイトが構築され、そ のうち 3000 の公式サイトだけで 1000 億円のサービス売上をあげるなど、インフラ業に比 べれば小さいながらも、一気に新しい市場を創出した。ケータイの有料コンテンツとして は、10 代、20 代が利用の中心であることもあり、ニュース、天気予報、交通情報などの 実用サイトを上回り、着信メロディがトップ、占いやゲームなど遊びのコンテンツの人気 が高く、若者やこども達が担い手となってポップな産業文化が形成されたということもで きる。 2) プロからアマへ 、おとなから若者、こどもへ エンタテイメントにしろ、非エンタテイメントにしろ、コンテンツと呼ばれるものは、 基本的にプロが制作することが前提となっている。従来のコンテンツ政策も、プロのエン タテイメント産業の発展を重視してきた。 しかし、デジタル技術の最大の力は、だれもが情報を共有し、生産することを容易にす ることである。プロとアマの垣根を崩すことにある。日本の大衆は、近世以前から、内外 の多様な文化を純粋かつ寛容に受け容れてきた。そうした受容力を源泉とした大衆の審美 眼と表現力は、デジタル時代にようやく発揮されるとも言える。 日本はこどもを含む若年層がコミュニケーションの領域を開拓している。ゲームボーイ のポケモン・キャラを交換している小学生も、中学生になるとケータイのメルアドを交換 し、歩きながらしゃべりながら片手の親指でメールを打つ。絵文字を駆使し、ギャル文字 を作り出し、つながりあう。高校生はカレシに写真やビデオを送り、歩くテレビ局と化し ている。 エンタテイメントよりもケータイ通信料に支出するという行動は、プロの作ったコンテ ンツよりも、友達や家族など身近な人とのコミュニケーション、すなわちしろうとのコン テンツに経済的な魅力を感じているということでもある。 これは、ポップカルチャー・ビジネス側の努力を促すべき事柄というよりも、ともすれ ば、誰もが情報を生産し発信する P2P(ピア・トゥ・ピア)社会への移行が実態として始 まっているということかもしれない。 90 年代のコンテンツ制作のダウンサイジングがベンチャーの隆盛をもたらした。映像 や音楽の表現がプロからセミアマに広がった。その技術はさらに浸透し、しろうと同士の コミュニケーションレベルに広がっていく。そういう動きを先取りしているのかもしれな い。 このような世代が今後のポップカルチャーの担い手である。現在、その中心となる世代 は、ハイティーンからローティーンへと下がってきている。表現主体の層の拡大、あるい は消費者と生産者の融合が進んでいくであろう。 数十万人がマンガ、アニメのクリエイターで、かつファン、ユーザーとして互いに出版 物を売買する「コミケ」はその先駆であり、その波がポップな表現全般に広がっていくの かもしれない。 もう一つの典型例が巨大掲示板サイトとして知られる「2ちゃんねる」である。管理者 - 106 - がおらず匿名でニュースやエンタテイメント、ゴシップや罵詈雑言など、一日数十万件の 投稿が行き交う世界最大の BBS である。さまざまな話題や情報が無料で共有・交換される 場として、マスコミとは別種の、あるいはそれを超える力を持ちつつある。 少数のプロが生産するコンテンツを大衆が消費する構造から、参加・共有・交換によっ てコンテンツを共同生産していく P2P モデルへと世界に先駆けて移行することが日本に とって戦略的に重要と言えるかもしれない。 3)海外から見た日本のポップカルチャー これまで、世界から見た日本は「能、いけばな、着物」など伝統文化の国であり、「ソ ニー、トヨタ」など産業の国であった。ところが、近年のアニメ・マンガなどの評価の高 まりとともに、「ポップカルチャーの国」日本という認識が急速に広まりつつある。 例えば、米国においては毎月のように参加者数千人規模のアニメのファンイベントが開 かれており、そこでは日本のアニメ・マンガのファン文化をルーツとする「コスプレ」は 欠かせないものとなっている。そしてこれらのイベントは日本のコミケのような P2P の参 加・共有・交換によるコンテンツの共同生産ノバとなっている。(資料-1)また、同じく 米国の 6 歳〜12 歳の世代における TV アニメ視聴率では、TOP30 のうち、男子の場合で 8 作品、女子の場合でも 6 作品がランクインしている。(資料-2) さらに、中国における人気キャラクター調査では、上位 10 位のうち 6 作品、しかも 5 位〜1 位はすべて日本作品である。(資料-3) - 107 - 資料-1 米国におけるアニメのファンイベント イベント名称 開催月 開催場所 イベント内容 参加者数 ホームページ 1月 2月 Katsucon Baltimore, Marylamd Anime Central Rosemont, Illinois Sakura-Con Seattle, Washington Fanime Con Santa Clara, California Project A-kon Dallas Fort Worth, Texas Anime North CANADA Recca-con Pittsburg, California Anime Expo Long Beach, California Otakon Baltimore, Marylamd Anime Festival Orland Kissimmee, Florida Anime Expo New York Times Square, New Yoek Middle Tennessee Anime Convention MTAC Nashville, Tennessee Comic-Con International San Diego, California Nan Desu Kan Denver, Colorado Yaoi Con San Francisco, Califoria Anime Weekend Atlanta Atlanta, Georgia Sugoi Con Erlanger, Kentucky Ani-Magic Lancaster, California アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど 4000 www.katsucon.com 4520 www.acen.org 2300 www.sakuracon.org 4000 www.fanime.com 未発表 www.a-kon.com 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 アニメファンのイベント。コスプ レ、パネルディスカッションや チャリティーなど アニメファンのイベント。コスプ レ、パネルディスカッションや チャリティーなど アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど アニメファンのイベント。コスプ レ、パネルディスカッションや チャリティーなど アニメファンのイベント。コスプ レ、パネルディスカッションや チャリティーなど 全米最大とされるアニメイベン ト。コスプレ、パネルディスカッ ション、ワークショップなど AXに次ぐ規模のアニメイベン ト。コスプレ、パネルディスカッ ション、ワークショップなど アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど 全米最大のAXがニューヨーク で開催した特別イベント。コス プレ、パネルディスカッション、 ワークショップなど アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど その名の通りコミックのイベン ト。アニメファン参加者も多い。 パネルディスカッションや作家 によるサイン会など アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど 少女向け「美少年マンガ」専門 のイベント アニメイベント。コスプレ、パネ ルディスカッション、ワーク ショップなど ジャパニーズアニメーションの イベント。コスプレやワーク ショップ、ゲームなど アニメファンのイベント。カラオ ケやコスプレ、パネルディス カッションなど 2000 未発表 - 108 - www.anime-garden.com 15000 www.anime-expo.org 13000 www.otakon.com 1800 www.anime.jyu.fi/ 5500 www.anime-expo.org 380 48000 mtac.animenashvlle.org www.comic-con.org 未発表 www.ndk.cc 未発表 www.yaoicon.com 未発表 www.awa-con.com 900 www.sugoikcon.org 未発表 www.ani-magic.org 11月 12月 合計人数 www.animenorth.com 101,400 資料-2 米国におけるアニメーション番組視聴率トップ 30(2003/10/20-10/26) (網かけ部分は日本作品) 全米視聴可能世帯平均 データ:Nilsen Media resaerch 6歳ー11歳 男子 6歳ー11歳 女子 1 YU-GI-OH - WB WB .....S. 11:00 AM 30 7.5 1 X-MEN - WB WB .....S. 11:30 AM 30 3.3 2 OZZY & DRIX - WB WB .....S. 9:30 AM 30 7.2 1 PROUD FAMILY, THE ABC .....S. 9:30 AM 30 3.3 3 POKEMON - WB WB .....S. 10:00 AM 30 7.1 1 LIZZIE MCGUIRE ABC .....S. 10:00 AM 30 3.3 4 JACKIE CHAN ADV - WB WB .....S. 9:00 AM 30 6.4 4 THAT'S SO RAVEN ABC .....S. 10:30 AM 30 2.8 5 MUCHA LUCHA - WB WB .....S. 10:30 AM 30 6.2 5 SCOOBY DOO HALLOWEEN-WB(S)-10/24/2003 WB ....F.. 8:00 PM 30 2.6 6 X-MEN - WB WB .....S. 11:30 AM 30 6 6 DISNEY'S KIM POSSIBLE ABC .....S. 11:00 AM 30 2.4 7 WHAT'S NEW SCOOBY DOO-WB WB .....S. 8:30 AM 30 5.7 7 OZZY & DRIX - WB WB .....S. 9:30 AM 30 2.3 8 YU-GI-OH 1 - WB WB .....S. 8:00 AM 30 4.7 8 DISNEY'S FILLMORE ABC .....S. 9:00 AM 30 2.2 9 KING OF THE HILL 2 FOX ......S 8:30 PM 30 4.3 9 YU-GI-OH - WB WB .....S. 11:00 AM 30 2.1 10 YU-GI-OH(M-F) - WB WB MTWTF.. 4:30 PM 30 4.1 9 KING OF THE HILL 2 FOX ......S 8:30 PM 30 2.1 11 SIMPSONS FOX ......S 8:00 PM 30 3.5 11 POKEMON - WB WB .....S. 10:00 AM 30 2 3.5 12 TEENAGE TURTLES FOX .....S. 10:30 AM 30 1.9 ABC .....S. 8:30 AM 30 1.8 11 SONIC X FOX .....S. 9:30 AM 30 13 POKEMON (M-F) - WB WB MTWTF.. 4:00 PM 30 3.1 13 DISNEY'S RECESS 1 14 KIRBY FOX .....S. 9:00 AM 30 2.7 14 MUCHA LUCHA - WB WB .....S. 10:30 AM 30 1.7 14 TEENAGE TURTLES FOX .....S. 10:30 AM 30 2.7 15 CRAMP TWINS FOX .....S. 11:00 AM 30 1.6 16 SHAMAN KING FOX .....S. 10:00 AM 30 2.5 15 BLUE'S CLUES CBS .....S. 11:30 AM 30 1.6 17 CRAMP TWINS FOX .....S. 11:00 AM 30 2.4 15 DORA THE EXPLORER CBS .....S. 11:00 AM 30 1.6 18 KING OF THE HILL FOX ......S 7:30 PM 30 2.2 18 SIMPSONS FOX ......S 8:00 PM 30 1.5 19 JACKIE CHAN (M-F) - WB WB MTWTF.. 3:30 PM 30 2.1 18 SHAMAN KING FOX .....S. 10:00 AM 30 19 ULTIMATE MUSCLE FOX .....S. 8:30 AM 30 2.1 20 DISNEY'S LILO&STITCH ABC .....S. 8:00 AM 30 1.4 21 BLUE'S CLUES CBS .....S. 11:30 AM 30 1.8 21 JACKIE CHAN ADV - WB WB .....S. 9:00 AM 30 1.3 1.5 1.3 22 FUTURAMA FOX ......S 7:00 PM 30 1.6 21 SONIC X FOX .....S. 9:30 AM 30 23 CHALKZONE CBS .....S. 11:00 AM 30 1.5 21 KING OF THE HILL FOX ......S 7:30 PM 30 1.3 23 DISNEY'S FILLMORE ABC .....S. 9:00 AM 30 1.5 21 SCOUTS SAFARI NBC .....S. 12:30 PM 30 1.3 23 SCOOBY DOO HALLOWEEN-WB(S)-10/24/2003 WB ....F.. 8:00 PM 30 1.5 21 TRADING SPACE:BOY V GIRL NBC .....S. 11:00 AM 30 1.3 26 CROC FILES NBC .....S. 10:00 AM 30 1.3 26 LITTLE BILL CBS .....S. 11:30 AM 30 1.1 26 DORA THE EXPLORER CBS .....S. 11:00 AM 30 1.3 27 YU-GI-OH(M-F) - WB WB MTWTF.. 4:30 PM 30 1 26 THAT'S SO RAVEN ABC .....S. 10:30 AM 30 1.3 27 JACKIE CHAN (M-F) - WB WB MTWTF.. 3:30 PM 30 1 29 DISNEY'S LILO&STITCH ABC .....S. 8:00 AM 30 1.2 27 STRANGE DAYS AT BHH NBC .....S. 12:00 PM 30 1 29 JEFF CORWIN SHOW NBC .....S. 10:30 AM 30 1.2 30 POKEMON (M-F) - WB WB MTWTF.. 4:00 PM 30 0.9 29 PROUD FAMILY, THE ABC .....S. 9:30 AM 30 1.2 30 FUTURAMA FOX ......S 7:00 PM 30 0.9 30 ENDURANCE NBC .....S. 11:30 AM 30 0.9 資料-3 中国でのキャラクター人気ランキング 調査対象:中国 3 都市(北京・上海・広州)在住の 20 代以上の男女 1,000 人 1 2 3 4 5 6 7 8 10 クレヨンしんちゃん 孫悟空 ドラえもん 名探偵コナン ちびまる子ちゃん スヌーピー ドナルドダック ミッキーマウス ガーフィールド 桜木花道 74 人 73 人 68 人 57 人 53 人 49 人 43 人 39 人 39 人 37 人 (2001 年 12 月サイバーブレインズ社調査結果より) 以上見てきたように、未来のこどもたちの時代においては、国際社会における「ポップ カルチャーの国」の日本人という認識が広がり、新たな日本人像への期待が高まることは 明らかである。 そのため国民全体がポップカルチャーの国として評価・認識し、自らのアイデンティテ ィ形成の基盤を確立することが求められている。 4)ユビキタス化するポップカルチャー P2P と並び、国際的にも注目される日本でのデジタル化のトレンドがユビキタスである。 モバイルやウェアラブル、あるいは埋め込みコンピュータといったコンピュータの一層 - 109 - のダウンサイジングと浸透は、服や家具、クルマや道路など、あらゆるモノをコンピュー タ化し、ネット接続することを意味する。ヒトとモノ、モノとモノがデジタルで対話しは じめる。 便利さや機能性といった近代のテーゼを追求するというより、ヒトと機械の関係が変わ る点が重要である。例えばホンダのアシモにしろ、ソニーのアイボにしろ、あるいはもっ とオモチャに近いセガトイズのプーチにしろ、ロボットペットはいずれも高性能のコンピ ュータだ。四角四面だったコンピュータは、業務をこなす冷徹な機械から、ヒトと対話し 共存する友達へとポジションを変えようとしている。そして、その姿かたちがコンテンツ となる。 擬人化を好むのは日本人の特性と言われるが、ポップなキャラクターがハイテクを伴う 実体となって身近に遍在するのはまさに日本的である。身近なのはロボットばかりではな い。自動販売機がこれほど浸透しているのも日本の特徴だ。 ジュースやタバコだけでなく、オモチャも、花も、コメも、生卵も、生きたカブトムシ も自販機で買える。利用者に話しかけたり、携帯電話で支払いができたり、やけにハイテ クである。それらを通信回線でネットワーク化するプロジェクトもある。 アニメやゲームのキャラクターがオモチャや日用品、あるいは旅客機や軍用機にまでシ ンボルとして活用されている。村上隆のデザインがルイ・ヴィトンに採用されたように、 日本のポップなアートが高級ブランドと溶け合ったりする。日本のポップカルチャーがデ ィスプレイを飛び出して、現実空間に姿を示すケースも増加するだろう。 ティーンズのファッション、フィギュア人形やカップめん、異様に浸透したコンビニ、 どつき漫才、多様な性風俗産業。強い個性を放つニッポンの文化状況は、これからも世界 から発見されていくこととなろう。それがポップなものとして受け容れられるか、異質な る好奇の対象として消費されるだけかは別として。 5)情報社会における日本のこどもとポップカルチャー インターネット、携帯電話など、日々進化をとげる最先端の情報テクノロジーを使いこ なしてきたのはこどもたちである。また出版、テレビ、映画といった既存のメディアにお いても、こども向けの表現ではマンガ、アニメが中心となっており、こどもたちの遊びの コミュニケーションでも、ゲームをはじめとするインタラクティブなメディア芸術=ポッ プカルチャーの文法が多用されている。さらに先に見てきた P2P やユビキタスによるメデ ィア環境を、真っ先にとり入れて生活スタイルを変化させていくのもまた、こどもたちで ある。 このように、こどものメディア・コンテンツの利用のあり方は、20 世紀後半までの、 また現在の大人のメディア・コンテンツの利用と、全く異なるフェーズにあるものと思わ れる。以下は、この点を比較した表である。 - 110 - 資料-4 ポップカルチャーにおけるメディアとコンテンツ構成要素の関係 従来のメディア コンテンツ構成要素 こ ど もた ちが親 し む メディア表現 コンテンツ構成要素 図書・ 文字中心 マンガ 画像中心 コ ン テン ツ 構成 要 素 の融合 キャラクター テレビ・映画 映像・音声 アニメ デジタル映像と音 声 を中心に マンガ、アニメ、 ゲーム、ロボット、 電子メディア出版 インターネット 携帯 電子図書など 図書の代替 ゲーム ウェブサイト、メ インターネット ールマガジンなど 図書の代替 携帯サイト、メー 携帯 ルなど文字中心 その他 P2P やユビキタス インタラクティブ な遊戯性 文字情報のみなら ず Flash アニメな ど ゲーム、アニメ画 面や着信メロディ など画像中心 コミケなどの流 通、ロボット、食 玩具などのプロダ クト 食玩など メディアを 横断した表現 ネット上での 文字・映像・音声 を併用した表現 これらこどものメディアコンテンツ受容と発信の生態は、これからの文字のみならず画 像や音声を複合的に用いる高度情報社会の文化・産業のあり方について、先導的な示唆を 含むものである。 4.日本におけるポップカルチャー関連政策の課題 1)総合政策 ネットワーク化の進展に伴い、ポップカルチャーを含むコンテンツに関する政策が注目 を集めている。これを概観すると、映画・音楽・出版などのエンタテイメント産業支援が あげられ、同様に文化芸術振興という支援政策もある。放送コンテンツについては、産業 振興と放送法規に基づく規制とがある。コンテンツ生産・流通・消費のインタフェース条 件としての著作権に関する政策も重要な要素である。 電子商取引、遠隔教育・医療、電子政府など高度情報化の進展に伴い重要性を増してき た各分野の情報化政策もまたコンテンツ政策の一部をなす。最近では、インターネットの 利用をめぐり、公序良俗に係る規制や社会秩序の維持に向けた施策も強化されている。前 述のとおり、安全保障の領域にも目配りが求められる分野でもある。 このように、コンテンツ政策は、産業、文化、技術、教育などにわたり、外交や科学技 術政策のように横断的な性格を持つ。振興すべき対象と規制すべき対象が混在し、政策手 法にも多様なものがある。 コンテンツ政策の目的は、多元的である。コンテンツ「産業の拡大」を図ること、コン テンツを「誰もが安価に安心して楽しめる」ようにすること、コンテンツを「誰もが創造・ - 111 - 発表できる」ようにすること、日本ブランドを確立し文化発信することなど、多様な軸が 並び立つ。 国としては、そのバランスを図りつつ国家としての意思を形成しなければならない。そ して、これらの重点領域は場面により変動する。利害が対立することもある。政府内の調 整も重要である。行政責任を明確化しなければならない。 ところが、現状としては、各省庁の施策が縦割りのまま並び立ち、政府としてひとまと まりの政策が構成されているとは言い難い。eJapan 戦略の策定や知的財産戦略本部など の取組によって、こうした横断的な行政領域がようやくコンテンツ政策として認識される ことになったが、それでも産業振興に重心を置いた短期施策にすぎず、国家戦略としての 総合政策は未だ形成されていない。 1993 年ガット・ウルグアイラウンド交渉において、映画市場の開放を迫ったクリント ンーゴア政権に対し、仏ミッテラン大統領は、映画は文化であって文化の多元性確保が必 要とし市場保護を主張した。米・産業政策と仏・文化政策の対峙はその後も続き、ユネス コの場でもブッシュ政権とシラク政権が火花を散らせている。これに対し日本政府は、基 本的な姿勢が定まらないばかりか、国としての行政責任の所在も不明確なままである。 まして、映画のような国際的な芸術・産業にまで成熟していないポップカルチャー分野 は、社会規制の対象として取り上げられることはあっても、国の強みや財産として肯定的 にとらえられることはなかった。西欧の高級文化やハリウッド型の重厚長大コンテンツ産 業を後追いする施策はあっても、マンガ、アニメ、ゲーム、ケータイ、ファッションとい ったジャンルを政策面で積極的に扱う場面はほとんどなかった。 デジタル化の進展により、これらが成長産業として期待されるに至り、産業政策の一翼 を担うようになったものの、国として総合・横断的に検討されるには至っていない。重要 なのは、日本の「主流文化」としてのポップカルチャーを総体として正当に評価し、政策 の体系を形作ることである。以下、 産業、文化、教育の 3 つにおける、政策のあり方とその課題を見ていく。 ①産業政策の課題 コンテンツ産業関連の政策は、国際的な競争力をもつ産業としての海外進出支援、そ れらの制作力・創造力をさらに高めていくための人材育成、メディア産業の下請け的存 在に陥りやすいコンテンツ産業の自立にむけて行われている。 - 112 - 資料-5 経済産業省メディア・コンテンツ課 コンテンツに関する具体的な施策の考え方 ①新たな流通ルートの立ち上げ等流通インフラの整備とルート間競争の促進 (a)ブロードバンドの立ち上げと安全性確保 ・ブロードバンドコンテンツの EDI 化システムの普及・支援 ・複製防止技術確立のための環境整備 (b)映像における新たな流通ルートの立ち上げ ・地域上映マッチングシステムの開発・実証 (c)海賊版の撲滅による海外市場への展開 ・アジアにおける海賊版撲滅のためのコンテンツ海外流通促進機構立ち上げ ②活力ある市場環境の整備 (a)公正な競争の確立 ・独禁法ガイドライン改訂への働きかけ ・モデル契約書案の策定 (b)資金調達環境の整備 ・信託関連法の見直し等直接金融スキームの整備 ・商品ファンド法の運用見直し、税務上の取扱の明確化 (c)人材育成 ・プロデュース機能強化プログラムの策定 平成 15 年度には、このような考え方に基づいて、 「ブロードバンドコンテンツのブレ ークスルー技術等開発支援事業(5.4 億円)」 、「上映型デジタル映像産業総合支援プロ グラム(1.5 億円)」などの事業・予算が実施されている。 しかし映画・テレビなど従来の「大量生産・大量消費型」マスビジネスを対象とした 政策から抜け出ておらず、ゲーム、アニメなどの国際的なリーディング産業の分析や、 インディーズ・コミケ的な多様な価値の少量流通型の新産業への移行に対応した政策へ 向け、コンテンツ産業政策の認識を改める必要があると考えられる。 本調査・研究の視点からは、現在の政策の課題として、以下のような点が抽出できる。 ・ 課題(1) :従来型のメディアとコンテンツの関係にとらわれ、ネットワーク化、デ ジタル化によりもたらされる産業構造の変化に対応できていない。例えば音楽にお いては以下のような変化に対応した政策が行われておらず、従来独占的に音楽パッ ケージ出版を行ってきたレコード会社のみの視点にたった対応では需要と供給を とらえることができなくなっている。 - 113 - 資料-6 音楽流通の変化 従来の音楽流通 現在の音楽流通 小売店 ネット 販売 DV 携帯 キャリア 配信会社 着信メロディ 菓子 メーカー 小売店 大手レコード会社 エンドユーザー インディーズ出 音楽製作者・著作者 エンドユーザー 小売店 大手レコード会社 音楽製作者・著作者 CD CD 食玩 CD ・ 課題(2) :マンガ、アニメ、ゲームに代表されるポップカルチャー的メディアミッ クスをモデルとした政策が行われていない。例えば出版、テレビ、映画、ゲーム、 キャラクタービジネスを横断する、典型的なポップカルチャー・ビジネス戦略によ り海外に進出を果たしている事例が数多くあるにもかかわらず、プロデューサーや クリエイターの育成のモデルとなるのは、伝統的な映画ビジネスであることが多い。 資料-7 映画ビジネスのリクープモデルとポップカルチャーのリクープモデル 日本映画のリクープ マンガ・アニメ・ゲームキャラクターによるポップカルチャーのリクープ 出版社 玩具メーカー等 小売店 アニメ製作会社 スポンサー企業 ) テレビ局 配給会社 映画館 映像ソフト出版社 セル・レンタル店 テレビ局 ※海外においても同様のリクープ展開 以上から、ポップカルチャーの視点にたった産業政策では ・インディーズ生産・流通やコミケのようなアマチュアの生産・流通 - 114 - 小売店 エンドユーザー ゲーム会社 原作者 セル・レンタル店 映像ソフト出版社 エンドユーザー 映画館 映画製作者・著作者 配(給収入 出 ) (版権収入 放 ) (送収入 配給会社 書店 スポンサー企業 ・従来型の放送、映画、パッケージ・コンテンツのみならずネット、携帯、キャラ クター商品などコンテンツ利用機会の多様化 ・ポップカルチャー的メディアミックス戦略によるビジネスモデルの確立 ・以上に対応した国際戦略や国内流通合理化 などをとらえていく必要があると考えられる。 ②文化政策の課題 これまでの文化政策は、主に日本の古典芸能の保存とヨーロッパ芸術の普及を支援の 対象としてきたと考えられる。 そうした中で現在、文部科学省・文化庁では、ポップカルチャーに関連するものとし て映画振興に力を入れており、新人監督・シナリオ作家への制作支援、海外映画祭への 出品支援、こどもたちの映画鑑賞普及事業などの振興事業が行われている。また、平成 14 年 5 月より開催の「映画振興に関する懇談会」では、映画産業関係者、経済産業省、 総務省などからの参加を得て、日本映画の製作から配給・興行、保存・普及、人材育成 までの振興策を検討した。 資料-8 映画振興に関する懇談会 平成 15 年 提言内容 <国の映画侵攻の基本的方向> 1)文化遺産としての映画フィルムの保存・継承 2)映画界における自律的な創造サイクルの確立 3)人材養成の重要性を踏まえた総合システムの構築 4)映画という芸術分野への適正な評価 <明日の日本映画のための施策> 1)日本映画フィルムの保存を行う制度の創設 2)新たな製作支援形態の導入 3)地域におけるロケーション誘致への協力 4)非映画館も活用した上映機会の拡大 5)多様な映画作品情報と上映者の出会いの場の形成 6)国内映画祭の普及・発信機能の充実 7)海外展開への支援 8)現場と密着した人材養成策の再構築 9)映画の広場の開設 10)映画という芸術分野への適正な評価 11)こどもの映画鑑賞普及の推進 12)フィルムセンターの独立 これら以外では、アニメーション、やデジタルアート、ゲームなど新しい表現分野を、 メディア芸術と位置付け、「メディア芸術祭」の開催により、発表と鑑賞の場を提供す ることでメディア芸術の振興を図る事業も実行されているが、やはり映画振興策に較べ れば規模は小さい。 - 115 - しかし先に述べたように、世界から見た「日本の文化」のイメージは変わりつつある。 今後、「ポップカルチャーの国」としての日本像を世界から求められることが予想され る中で、ポップカルチャーを「文化」として支援することは急務である。 本調査・研究の視点からは、現在の政策の課題として、以下のような点が抽出できる。 ・ 課題(1) :日本の古典芸能・ヨーロッパ芸術や映画などに対し、ポップカルチャー は文化の範疇としてとらえられておらず、世界の評価する現在の日本の大衆文化、 ポップカルチャーに対する体系的な研究が不在である。例えば出版、テレビ、映画 の市場においてマンガ、アニメの占める割合は25%から50%にものぼるが、低 俗として規制対象になることはあっても、その文化性の研究や評価はほとんど行わ れておらず、これにもとづく文化政策も行われていない。 ・ 課題(2) :現在の日本のポップカルチャーはこどもや若者による同時代的、国際的 な表現だが、文化的に収集・保存の対象になっていないため、逸散・消失している のが現状である。例えばメディアのジャンルを横断して体系化しないと意味のない、 ポップカルチャーのメディアミックス性をとらえ、マンガ、アニメ、ゲームなどを 体系的に収集し、展示している公的機関が存在していない。 ・ 課題(3)ポップカルチャーと一体の新しいコミュニケーションのあり方に対する ニーズの分析が行われていない。例えばゲームは、インターネットや携帯と並びイ ンタラクティブな表現が可能な、ネットワーク化とデジタル化によるコミュニケー ションツールの典型である。こうしたメディアでは新しい多様なコミュニケーショ ンが可能になると考えられるが、これを用いた試みは遊びの世界に閉じられたまま になっている。 以上から、ポップカルチャーの視点にたった文化政策では ・同時代の国際文化としてのポップカルチャーの体系的研究 ・これに基づくポップカルチャー表現の収集・保存 ・ポップカルチャー的メディアミックス戦略によるコミュニケーションのあり方の変 化の把握 ・上記に対応した新たなコミュニケーションのあり方の研究開発 などをとらえていく必要があると考えられる。 ③教育政策の課題 教育にポップカルチャーを取り入れることは、新たな表現を生み出す人材を育成する 意味においても、ポップカルチャーの文化認識の土台を作る意味においても、重要な事 柄である。 現在小学校の社会の教科書には、「情報」に関する項が設けられており、基本的な「情 報」概念の説明、情報の伝達手段、メディアの種類などの説明がなされている。中には、 TV の報道番組の制作過程について触れたものや、ニュース制作のワークショップを取 り入れたものなどもあるが、ポップカルチャー分野のコンテンツの制作過程や、それら - 116 - を媒介するメディアについての記述は見受けられない。 また同様に高等学校の「情報」科目でも、その内容は表計算ソフトを利用した情報処 理方法や、データベースを利用した検索方法について、インターネットやコンピュータ の仕組みについてなど、技術・工学に偏った内容となっている。 いずれも情報に対して、受け手としての視点から構成された内容であり、情報の発信 者の視点、表現力・創造力の育成という観点が希薄である。 こどもたちは日常、アニメ・マンガ・ゲームなどに囲まれる、非常に目の肥えた優秀 な受容家である。それはすなわち、彼らに優秀な表現者としての素養が備わっているこ とを意味する。その素養を活かし、次代の新たな表現を生み出すための、表現教育の導 入が望まれる。 本調査・研究の視点からは、現在の政策の課題として、以下のような点が抽出できる。 ・ 課題(1) :メディアのあり方に関して、ごく一部のプロが一般生活者に発信すると いう固定的な関係を前提としており、メディアリテラシー教育もプロとなるための 職業教育か利用者向教育に限られている。例えばテレビ局のようなメディアに対し てはプロの仕事を知るための体験教育がカリキュラムが組まれ、インターネットに 関してはあくまでアマチュアとしてのホームページ制作の実習が行われている。し かし現在では放送と通信の境界があいまいになり、またプロとアマチュアの区別も 難しくなっており、これに対応した教育が必要とされている。 ・ 課題(2) :文章づくり、画像・映像づくり、音づくり、デジタル・ネットワーク理 論が分断されており、体系的なマルチメディア表現教育がなされていない。例えば、 こどもの体験するメディア表現の大半が、文章、画像・映像、音を一体に表現した ものであるのに対し、学校のカリキュラムではこれらを別々に教えており、メディ ア体験を理論化するのに重要なプログラムの考え方を、わかりやすく教えることも 行われていない。 以上から、ポップカルチャーの視点にたった教育政策では ・新旧のメディアに対し生活者は利用者であると同時に表現者であることを前提とし た教育理念 ・これに基づきメディアミックスによるポップカルチャー表現の体験・実習教育 ・文章、画像・映像、音を一体にとらえたマルチメディア表現教育の体系化 ・上記に対応した新たなコミュニケーションにおける倫理・規律などの検討 などをとらえていく必要があると考えられる。 2)創造力と表現力の底上げに向けた政策 ポップカルチャーの強化・発展を図るには、ファイナンス手法の充実など制作産業の基 盤を拡充すること、著作権処理や通信・放送制度など流通構造の改革を進めること、制作 技術の開発を推進することなど、多くのメニューが考えられる。まずもってそれら施策の 優先順位を上げていくことが重要である。 そして、現在の強みを活かし続けるメカニズムを長期的に構築するためには、何より人 材の強化施策を拡充することであろう。 - 117 - 現在、政府部内で検討されているのは、一流のクリエイターとマネジメント人材を養 成する施策である。一流のクリエイター、アーティストを育てるシステムとしての大学や 研究所の必要性が叫ばれて久しい。表現をビジネスとして展開するプロデューサーやエー ジェントなどマネジメント層の人材を養成するための大学院も求められている。 一方、このようなトップ層の拡充というハリウッド後追い型の施策に増して重要な課題 は、その土台、裾野をなす国民全体の底上げである。学校教育、地域コミュニティ、家庭 など多様な場での鑑賞、創造、表現の学習活動が大切である。こどもたちがアニメ、ビデ オ、音楽、ゲームなどのコンテンツを創る活動を推進し、世界最高のメディア学習環境を 整えていくべきである。 デジタル・ネットワーク技術の最大の力は、だれもが情報を共有し、その生産コミュニ ティへ参加することを容易にすることである。表現や発信を欲する人々誰もが、情報をよ り円滑に生産・発信できるような土壌を形成することが、今後のコンテンツ政策の最大の 眼目となる。 こうした政策を形作るに当たっては、関連産業に対する財政・税制支援というのが従来 の安直な処方であったが、課題はより複雑である。国民全体がマンガやアニメを楽しみ、 大人とこどもの文化構造が未分化であること、暴力・性表現も含む多様な文化を受容する 風土であることなど、見方によっては眉をひそめる社会状況がポップカルチャーの基礎を なしていることを認識する必要がある。 コンテンツに関する政策は、国のかたちを問うものとなる。コンテンツ産業の発達とい う切迫した課題にとどまらず、百年を展望した文明の維持・発展という観点から、政策を 構築することが大切である。世界の一翼を担う創造力と表現力を育んでいこうとするなら ば、地理的にも経済文化構造的にも米国と中国という二極の間に位置する文明国として、 アジアにおける立場を考慮に入れつつ、共有と協調の長期戦略を編み上げていかなければ なるまい。 5.こどもから始めるポップカルチャーによる国力再生 1)ポップカルチャーを主軸としたコンテンツ政策の提案 工業資源に乏しく、近年は農業生産も縮小し、工業生産も国外化する傾向にある日本に おいて、知的資源・文化資源を活用した産業振興は、現在最も有効と思われる国際戦略で あり、産業政策と文化政策は一体で行われるべきである。 一方、フランスに代表されるEU諸国ではテレビ放送における一定割合以上の自国制作 番組放送の義務付けや、放送収益の一定割合の番組制作資金への注入の義務付けなど、自 国文化保護政策とコンテンツ制作振興策が行われており、日本のアニメなどには放送への 参入が厳しい状況になっている。また中国では国内でのCMわくの買い付けや、番組制作 受注への参入が自由化される一方で、フランスと同じような一定割合以上の自国制作番組 放送の義務付けや輸入番組の表現内容への規制もあり、同じく日本のアニメなどには放送 への参入が厳しい状況になっている。またアメリカでも、輸入番組の表現内容は倫理的、 宗教的な規制がある一方、番組の買いつけは徹底した価格とレイティング・データの競争 によるものとなっている。 このような状況のもと、日本の知的資源・文化資源の典型としてポップカルチャーを捉 - 118 - え、こうした産業・文化一体の国際戦略のありかたについて、委員会メンバーで以下のよ うな議論が行われた。 産業 VS 文化 ・工業資源に乏しく、過去半世紀にわたり農業生産を縮小し、最近では工業生産も外部化 してきた日本において、知的資源、文化資源を活用した産業振興、経済活動以外に今後 の経済・産業の展望はない ・したがって、産業政策、経済政策、文化政策は三位一体で行うべきである プロ VS アマ ・これまでのコンテンツのプロは、独占的なメディア産業、芸術界のしくみの中でのみ育 成されてきた ・これに対し、国民の全てに開かれたデジタル表現の機会を提供し、プロとアマ、すなわ ち営利・非営利いずれのコンテンツもあらゆるメディアをつうじて表現が可能、すなわ ち多様な流通が可能なしくみのもとで、プロ・アマ双方、開かれた育成が望まれる 一流 VS 底上げ ・ポップカルチャーの世界では、日本の底辺のアマチュアも世界的なレベルに達している ・これと同じように、映像表現、インタラクティブ表現、デザイン表現の世界でも、こど もたちの多くが世界的レベルに達することのできるような底上げが必要 ハイ VS サブ ・これまでの文化振興は、西欧のハイカルチャーか、日本の伝統芸能のみを対象にしてき た。戦後のマスメディア普及の遺産としての映画も、今や伝統芸能化して振興の対象と なっている ・これに対して、アニメ・マンガ、ゲーム、情報メディア芸術といった、これまでサブカ ルチャーとして扱われてきたが、今後は日本が世界をリードしていく先端的表現分野の 振興を図るべきである 重厚長大 VS 軽薄短小 ・現在の日本では、ハリウッド型の巨大資本投資・短期大型回収のコンテンツビジネスモ デルは成立しなくなっている ・マニアックなオタク=コミケ的市場やインディーズによるマイクロビジネスを振興すべ きであり、こうしたビジネスモデルが世界的にも評価されはじめている 弱み VS 強み ・日本の産業政策、文化政策において国内産業保護のためのコンテンツ輸入規制を行う ことは容易ではない ・このため輸出超過となっているアニメ・マンガ・ゲームなどの強みを生かすことが必要 追従 VS 独自 ・単にハリウッド型、欧米型への追従をさけるのみではなく、大量生産・大量消費型社会 と一体のマスメディア・マスコミュニケーション中心の社会構造への追従をさけるべき ・したがって日本独自のポップカルチャー性を生かしたメディア・コミュニケーション政 策を打ち出すべき エンタメ VS コミュニケーション ・マスメディア・マスコミュニケーションのもとで商品化されるエンタテイメント・コン - 119 - テンツのあり方は、20 世紀型の過去のビジネスモデル ・1 対 1 のコミュニケーションにまで縮小したコンテンツの流通が、普遍的な産業・経済・ 文化の基盤となる 東京集中 VS 全国分散 ・東京は日本のメディア拠点として機能しているが、これは国内の問題ではなく、世界的 な市場と流通の問題。中国にはメディア拠点となる核都市を取り巻く 1 億人マーケット が 10 以上ある。 ・アジア市場へのアプローチを考えると、東京以外に市場のメディア拠点機能を移転する ことは十分あり得る。沖縄、福岡、新潟、札幌などを拠点として、韓国、台湾、中国、 ロシアなどを市場とした第 2、第 3 の 1 億人マーケットを作る策が分散への道 生産 VS 流通 ・生産力の増強は文化政策としての人材育成で可能、教育こそ最強の産業施策 ・流通を担うメディアによるコンテンツの権利の独占や、コンテンツ対価と流通コストの 不透明化などの問題には、産業構造改革が必要 アーティスト VS プロデューサー ・セルフマネジメントのできるクリエイター、ディレクターがアーティスト ・プロジェクトワークの場合は、プロデューサー、ディレクター、クリエイター、プログ ラマー、アシスタントの協働をシステム化する必要がある ・これらの個人事業者にはユニオンが必要となっている ・また、プロジェクトコーディネイトやファイナンスを扱うエージェントの重要性も増し ている 支援 VS 放置、規制 VS 放任 ・放置、放任であっても、民間資本や個人のプロ、アマの表現者、そして利用者は新しい 文化・産業・経済を形成していく ・これに対して国が政策を行うか」かどうかは、国自身の存続の問題であり、未来のこど も達にメリットのある政策を導入しない限り、民間資本や表現者、利用者にとっての必 要悪ということになる 著作権 ・まず、近代の複製技術、放送・通信技術に対応した著作権規定は、欧米主導の特殊規定 であって普遍的なものでないことを認識すべき ・そして、世界中に広がるデジタル・ネットワーク上の著作者、流通、利用者の 3 者にメ リットのある著作権ルールを提唱することが必要 技術開発 VS 普及 ・国と民間が開発資本を投下し、これによって開発された技術を官民役割分担して普及す るというしくみは、既に成り立たなくなっている ・これをやめて、マーケティングにもとづく普及シナリオを分析したうえでの開発、開発 と普及が一体となった社会実験などを、表現者と利用者を主体に行うことが必要となっ ている 伝送技術 VS 制作技術 ・技術は本来、表現者と利用者のためにあり、ハードメーカー、メディア企業など流通に 関る産業はそのメリットを合理的に実現するというポジションにたつべき - 120 - ・したがって、社会が共有すべき技術開発は、産官学民共同出資した資本で表現者と利用 者の先進的モニターに開発委託し、これによって得られた仕様と要求項目を、ハードメ ーカー、メディア企業など流通に関る産業が普及するというプロセスで行うべき こうした議論をもとに、 総務省情報通信ソフト懇談会デジタルコンテンツ WG が設置され、 本委員会メンバーも複数参加することとなり、ネットワーク時代のポップカルチャーとこ どもに関する政策のあり方が討議された。 以下 2), 3), 4)として、その報告から抜粋掲載する。 2)国民の表現力と発信力の底上げに向けた政策の提言 従来のコンテンツ政策は、プロのエンタテイメント産業の発展を重視してきた。 しかし、デジタル・ネットワーク技術の普及は、コンテンツの生産・発信者を拡大、分 散し、生産者と消費者の同化、プロ・アマの垣根の崩壊をもたらした。デジタル・ネット ワーク技術の最大の力は、だれもが情報を共有し、その生産コミュニティーへ参加するこ とを容易にすることである。こうしたデジタル時代の特徴を活かし、表現や発信を欲する 人々誰もが、情報をより円滑に生産・発信できるような土壌を形成することが、今後のコ ンテンツ政策の最大の眼目といえよう。 現在、日本がもつポップカルチャーの競争力も、大衆の審美眼と表現力に立脚している。 日本の大衆は、近世以前から、内外の多様な文化を純粋かつ寛容に受け容れ、独自に読み 替えるという創造的受容習慣を保持し続けており、かかる受容力を源泉とした大衆の審美 眼と表現力はデジタル時代にこそ発揮し得る。その強みを活かす。一流のクリエイターを 輩出する土壌として、アマチュア層の厚みと広がりが重要である。 さらに、インターネットは、権威ある情報を大勢が受け取る「教会型」から、みんなで 情報を提供・交換・共有する「バザール型」へと情報行動を変える。このような時代には、 コミケに代表されるような乱雑な場の力を高めることが重要となる。 産業面で見ても、プロのコンテンツ産業 11 兆円に対して、メールや会話を含む個人コン テンツのやりとりの場である通信産業は、既に 17 兆円の規模と広がりを有している。イン ターネットやケータイの普及により、ウェブ、写真メール、着メロ、掲示板(2ちゃんね る等)、ネットゲームなど、従来のマス・片方向のコンテンツとは異なるパーソナル・双方 向のコンテンツが急激に拡大している。 今後、成長が見込まれるのは、電子商取引や遠隔教育など非エンタテイメントを含め、 多様な主体が表現者となるウェブやケータイといったコミュニケーション空間の拡張であ るともいえる。 かかる状況に鑑み、政府は従来型のエンタテイメントコンテンツだけでなく、非エンタ テイメントコンテンツやパーソナルなコミュニケーションに用いられるコンテンツを含む、 幅広く、新しいコンテンツ領域をコンテンツ政策の柱に据えるべきである。 市民の情報生産を活性化するための環境整備を政策課題と認識し、コンテンツ政策とい うより、より広がりを持つ「トータル・コミュニケーション政策」へスコープを拡大すべ きである。 - 121 - 3)ポップカルチャー政策の確立・強化 日本は、ポップカルチャーの国である。アナログの千年間を通して、ずっとそうであっ た。この強みをデジタル時代にも活かしたい。西欧の高級文化やハリウッド型の重厚長大 コンテンツ産業を後追いするだけでなく、マンガ、アニメ、ゲーム、ケータイ、ファッシ ョンといった日本の主流文化としてのポップカルチャーを政策面でも正当に扱うべきであ る。 言うまでもなく、我が国の伝統文化を守り、伝承することは大切にしなければならない。 しかし、ポップカルチャーは伝統芸能文化に比べて、産業競争力の面のみならず、国際的 な文化伝播力や政治的影響力の面からみても重要である。 事実、失われた十年の間に、日本はポップカルチャーの活躍によって、国際的にはクー ルな国へと変貌することができた。ただ、それはたまたま外国に発見されたものであり、 我が国の豊かなポップの土壌を内側から評価し展開するメカニズムはないのが現状である。 日本のポップカルチャーのクールさを日本自体が操作できるかどうか、これから本当に問 われていく。 今、ポップカルチャーの産業競争力が注目されているが、それが持続する保証はなく、 メカニズムも確立されていない。既にアジアでも文化を巡る「競争」が始まっている。む しろ他国の追い上げなどにより、危機に瀕していると認識すべきである。 この際、日本をデジタル時代のポップカルチャーの本場とする決意をもった政策を遂行 しなければ、将来の保証はなかろう。ハリウッドが映画の本場として、パリがファッショ ンの本場として、ウィーンがクラシック音楽の本場として世界中の才能と資本を集めるよ うに、日本を、トーキョーを、デジタル・ポップの文化・産業面での世界的な本拠とした い。外国で認められて日本に上陸するのではなく、日本で認められて初めて世に胸を張れ る状況を実現する。 国民全体がマンガやアニメ、ゲームやカラオケ、ケータイを楽しみ、大人もこどもも鍛 えている状況がポップカルチャー産業力の基礎である。その先鋭であり、増殖炉でもある オタク(同人)層は、ポップカルチャーの消費者であるとともに生産者でもある。コンテ ンツの生産が、集団から個人・小集団へと流れる変化を先取し、強みを活かす政策を推進 する。 ただし、これは、大人とこどもの文化構造が未分化であること、暴力・性表現が遍在し ていることなど、見方によっては眉をひそめる社会状況にも立脚していることを認識した 上で、政策立案に当たる態度が必要である。 戦後、公的部門による文化、表現行為への関与(とりわけ対外的)の自粛という萎縮の 構造から脱し、日本のブランド力増強を意識した、ポップカルチャー政策の検討・実行に 正当かつ果敢に取り組む公的な体制強化が必要である。 [関連施策] ①コンテンツ産業支援・人材育成施策のポップカルチャー分野への拡充 ②ポップカルチャー研究機関の充実 ③ポップカルチャー・アーカイブ(リアル、バーチャルを組み合わせた総覧リンク集) の構築 - 122 - ④オタク(同人)サイトの海外展開の支援 ⑤トーキョーでの各種イベントの連携と国際的プレイアップ 4)人材の育成の推進 コンテンツ産業、特にポップカルチャー分野の競争力を維持・発展させるため、国際ビ ジネス、学校教育、地域社会など、領域毎に人材養成機関・プログラムを早期に設置、推 進すべきである。一流のクリエイターとマネジメント人材を養成することと、国民全体の 表現力を底上げすることの両面に注力せねばならない。 日本は世界的にも一流のクリエイター、アーティストを生んでおり、その土壌もある。 しかし、それを維持していくシステムとしての大学や研究所は、不足しているのが現状で ある。 さらに深刻なことは、表現をビジネスとして展開するプロデューサーやエージェントが 極めて不足していることである。コンテンツ分野におけるマネジメント層の人材を養成す る大学院が必要である。また、ポップカルチャーのクリエイター、マネジメント層を養成 する一級の機関も必要である。 かかる人材育成機構には、国際性が必要である。日本を国際舞台とし、多様な文化背景 をもつ優れた人材を集め、そこから新しい人材が育つ環境を作るためである。とりわけ、 若く、潜在的にプロとして活躍する可能性がある層に対する、創造、制作、発表、交流の ための国際的な場や仕組みを設けることに注力しなければならない。 さらに、重要な課題は、その土台、裾野をなす国民全体の底上げである。学校教育、地 域コミュニティー、家庭など多様な場での鑑賞、創造、表現の学習活動が大切である。こ どもたちがアニメ、ビデオ、音楽、ゲームなどのコンテンツを創る活動を推進し、世界最 高のメディア学習環境を整えていく。そして、学校や地域がブロードバンド放送局の機能 を有して、世界に情報を発信できる環境を整備し、活動を支えていく地域社会の仕組みを 構築する。 他方、表現にかかわる人材の特性についても、包容力のある政策を展開せねばならない。 伝承を一義とする伝統芸能はともかく、新表現を産み続けるポップカルチャーは、型破り でなければならない。表現者は在野のアウトローから輩出されたケースが多い。手塚治虫 も、ビートルズも育てられたのではなく、自ら育った。社会への反発が生んだ表現分野も 多い。国はそうしたコンテンツ分野の性格をわきまえたうえで、枠にはまらない、原石の ような人材も夢を抱き、光が当たるよう、機会を与えていくことが肝要である。 [関連施策] ①ポップカルチャーのクリエイターやマネジャーの国際的人材育成機関の設立 ②こどもたちがアニメ、ビデオ、音楽、ゲームなどのコンテンツを創る活動の推進 ③学校や地域がブロードバンド放送局で世界に情報を発信する環境の整備 ④こどもたちが自由に観賞、利用できるポップカルチャーアーカイブの整備推進 ⑤こども・高齢者など誰もが制作し表現できるツールの開発 - 123 - 6.具体策の提言 上記を踏まえ、特に重要かつ緊急な課題について提言する。 一つは、こどもたちによる創造力活動としてのワークショップカリキュラムの開発・試 行、もう一つは、その土台として、誰もが過去のポップカルチャー資産を利用できるよう にするためのアーカイブの構築である。すなわち、制作強化のための施策と、利用環境の ための施策の同時推進である。 1)創造力育成カリキュラムの開発・試行 デジタル時代、ネット時代の創造力・表現力を高め、日本が世界をリードしていくため のワークショップを開発する必要がある。 この場合、上記のとおり、日本の中心文化としてのポップカルチャー=歴史的に育まれ てきたモノという認識のもと、その強みを活かすべく、ワークショップのカリキュラムを 設計することが求められる。 取り分け、前述のように、産業・文化・教育政策の観点から、「メディアミックス、マ ルチメディア対応」「国際性」を重視することが大切である。 このため、以下の観点からワークショップを構築すべきである。 ①メディアミックスの観点 ア)映像系、音楽系、演劇系のミックスとバランス 映像系の取組をまずは重視すべきである。ショートフィルム作りやアニメ作りが これに該当する。 次いで音楽系ワークショップ、その次に演劇系ワークショップを実施したい。無 論、これら全部に取り組み、ワークショップ開発のバランスを図ることが望ましい。 イ)ブロードバンド展開 ブロードバンドで展開できるワークショップが望ましい。ケータイでの展開も重 要であるが、拡張性・汎用性の観点から、まずはブロードバンドを活用したウェブ 系のものから入ってゆき、その後広げてゆくことでよかろう。 遠隔地点どうしでブロードバンドを用いた同時並行のワークショップ開催も考 えたいところであるが現時点では、まずは作品のアップロード及びダウンロードで の利用方法を固め、着実にワークショップの種類を増やすことが求められる。 ウ)混成メディアによるワークショップ 一つのワークショップ内で、ビデオやパソコンやネットやケータイといった各種 メディアを同時・複合的に使いこなすようなワークショップを設計すると効果的と 考えられる。デジタル・ビデオ作品作りのロケハンにカメラ付きケータイを活用す るといった例がこれに当たる。 ②文化ジャンルの観点 ア)強みの活用 日本文化の強みを活かすことを中心に据えるべきである。アニメや J-Pop(音楽)、 あるいはその土台となる日本の古典的なポップカルチャーに焦点を当てる、という ことになる。 イ)弱みの克服 日本の弱みを克服することにもバランス見合いで対応すればよい。例えばハリウ ッド対抗型の映画作りといったものである。 124 ウ)国際発信できる日本独自文化 伝統的な日本文化を発信するものも取り上げてよい。ただし、古びた表現の伝承 やエキゾティシズムとして受け容れられることを避けるため、古典芸能の枠組みに とどまらずに今もポップであり続けるジャンルであることが求められる。 例えば、チャンバラ、漫才、チンドン屋、華道などが挙げられる。 ③その他重視すべき観点 ア)編集力 ネットワーク時代は、さまざまな情報をいかに選択し、組み合わせ、加工し、新 たな表現としていくかの能力が、情報を制作する能力と並んで重要になる。コンテ ンツの制作力だけでなく、編集力の強化を重視すべきである。 この場合、映画やアニメ作りのように、制作工程の中に編集行為が含まれるもの を重視するというだけでなく、ワークショップ自体が編集活動であるようなものも 採用するとよい。たとえば音楽の DJ は、多数の音源の中から選択し、合成・加工・ 表現するという総合編集行為である。 イ)参加型 大衆の表現力を育むという観点では、特殊な訓練なく参加できる敷居の低さが重 要である。初めての体験であっても十分に面白いポップなものを採択することが効 果的であろう。 ウ)アーティスト できれば、ワークショップにはインストラクターとしてポップ・アーティストに 参加してもらうことが望ましい。本物のクリエイターの言葉に接し、教えを受ける 経験は、いかに充実したマニュアルでも到達不可能な刺激をこどもたちの創造力・ 表現力に与えるであろう。 ④具体的なワークショップの提案 上記を踏まえ、まずは以下のようなワークショップの組み合わせを開発するのがよい と考えられる。いずれも、簡易に実施できるバージョンであることが求められる。 ア)アニメ作り 映像系ワークショップその1。 デジタル・ビデオとパソコンを使用。ブロードバンド展開。 日本ポップカルチャーの強みジャンル。編集工程含む。 インストラクターとしてアーティストに参加してもらいたい。 イ)ショートフィルム作り 映像系ワークショップその2。演劇系ワークショップでもある。 デジタル・ビデオとパソコンを使用。ブロードバンド展開。ロケハンにモバイ ルを活用可。 日本の弱みジャンル。編集工程含む。 演技指導アーティストに参加してもらうのが効果的。 ウ)音楽DJ 音楽系ワークショップ。 デジタルDJマシンを使用。ブロードバンド展開。 日本の強みジャンル。編集力を最重視するワークショップ。 DJアーティストの参加が必須。 125 エ)チャンバラ 演劇系ワークショップ。 撮影したものをブロードバンド展開することは可能。 伝統表現+ポップ+国際性。 殺陣師の参加が必須。 このほか、メディアミックス、マルチメディア、国際性という観点から、既に 試行されている以下のようなワークショップを加工・実施し、発展させることも 効果的であろう。 オ)連画 パソコンとネットワークを用いたお絵かきリレー。遠隔地でのネット系ワーク ショップに発展させていくことが想定される。 カ)ラジオDJ 簡易な編集装置などを用いた音声系・演劇系ワークショップ。こどもたちがデジ タルラジオ、インターネット放送などに展開していくことが想定される。 キ)打楽器 打楽器によるリズム制作。各国の文化に根ざした独自リズムをファイルとして交 換し、共有・加工するネットワーク系のワークショップに発展させていくことが可 能。 ク)糸電話 アナログ系の試みとして、糸電話を使ってプリミティブな通信の手段を組み立て ていくという取組み。理科の学習+アート+遊びであるが、コミュニケーションに 関心を持ってもらう上でも効果的。 2)ポップカルチャー・アーカイブの取組 ①ポップカルチャーの資産の収集・分析・公開に向けて 様々な方面で、高い評価を得ながら世界に受容される日本のポップカルチャーであ るが、それらの資産・資料・ノウハウは体系化されることなく、逸散しているのが現 状である。これらは次代のため、未来への資産として誰もがアクセスできるように収 集・分析・公開されるべきだと考えられる。 しかし一方で、ポップカルチャーは同時代的な生活者による評価が重要であり、歴 史的権威性を基準に専門家が文化資産として評価する、美術館・博物館的な収集・分 析・公開の方法は、ふさわしくないとの議論もある。 これについて、委員会メンバーによって、次のような議論が行われた。 ・データをストックするという行為は、個人レベルにまで一般化している。特にポッ プカルチャーのコレクションは個人によるところが大きい。 ・現在流通する情報量の中で、意味付与されないままの個人の記憶(個人 HP など) が圧倒的に増えている。 ・「制度に回収されない」「消失を恐れない」のがポップカルチャーのポップ性であ り、これまでのアーカイブの考え方とは背反するものである。 ・そもそも日本のアーカイブは、「捨てられないもの(物質)」をアーカイブし、死 蔵させてきた。 126 ・それがデジタルアーカイブになっても、大型映像ベンダーがコンテンツ欲しさのデ ジタルビジネスのネタとして伝統文化をつる形で、利用価値の低いアーカイブばか り増えた。 ・対して欧米は、記憶産業としてなりたっており、アーカイブするときは徹底的に網 羅してアーカイブする。「ためこんでおけば、いずれ価値がでる」という方針。 ・ポップカルチャーは現在進行形のものであり、一度体験すると価値が失われてしま うエンターテイメントである。それを、公的なアーカイブとするのには疑問がある。 過去の遺産をアーカイブするのは問題ないが、ポップカルチャーでは商業価値を下 げることになるので、ビジネスをしている企業からも反対される可能性がある。 ・個人や民間でアーカイブやデータベース・サービスを行っているところはすでにあ り、そういった人々も上の理由から協力しない、情報提供しないだろう ・同時代性、時代感ごと全てをアーカイブしてしまうようなものなら意味がある →現在放送中のすべての TV 番組を、タイムテーブルごとアーカイブしてしまう。 数年後、数十年後に、未来のタイムテーブルと平行して流れるアーカイブしたタ イムテーブルを放送し、視聴者が利用する。 ・複数のボランティアで、各人がそれぞれの判断で「ポップカルチャー」をアーカイ ブしていく。 →データをストックするという行為は民主化しており、その意味では国家のアーカ イブ事業と、個人の趣味のアーカイブに大きな違いがなくなっている。多数の個 人収集家(ボランティア)が各自の判断で、権利のクリアなどはひとまず保留し て、とにかく集めてしまう。集めてしまったものを、どのように権利をクリアす るか?というように課題設定すれば、コピーライツの問題も進展するのではない か? ・個人のマニアサイトや業界団体・単独企業のアーカイブなど、既存のアーカイブを、 そのデータの信頼性などの基準から評価し、公式ポップカルチャーアーカイブとし て認定・運営を助成し、これのポータル化を行うするシステムを作る。いわば「ア ーカイブのアーカイブ」。 ・既存のアーカイブを英語化するなどの国際広報は、それが国際的なビジネスの可能 性を広げることもあり、ぜひやるべき。 ・既に価値の確定しているものについては、適切に評価し、公的にアーカイブして逸 散する事のないように保存・顕彰する。これらの評価を行う、委員会組織が必要と なる。 ②ポップカルチャー・アーカイブのあり方 以上のような議論を踏まえ、ポップカルチャー・アーカイブの構築を推進する場合、 ポップカルチャーの資産の収集・分析・公開に当たっては、以下のような考えで進め るべきである。 日本のポップカルチャー表現の創造と消失の現状 ・従来、文化遺産としての価値が確定したものを対象としてきたが、マンガ・アニ メ・ゲームなどに代表されるポップカルチャーは文化的に評価対象となっていな い ・ポップカルチャーにおいては、プロとアマやマスメディアとインディーズの境界 があいまいで、新しい分野のアーティストやインディーズ、アマチュアの作品や ウェブ・携帯などの新しいオンラインコンテンツはアーカイブのしくみがない ・従来、印刷物、フィルム、ビデオのようにメディア毎に収集・保存、アーカイブ 化が行われてきたが、ポップカルチャーはこれらを横断した表現が特徴で、体系 化するには新しい方法が必要 127 日本のポップカルチャーに対するアーカイブの考え方 ・日々消失している同時代の日本のポップカルチャーを対象として、国内外に広く ライブな体験をナビゲートするような、リアルとバーチャルを横断した新しいア ーカイブのあり方を検討し、海外への広報、国内でのインキュベーションの場と する ・同時代のデータを網羅的に蓄積し、ポップカルチャーのメディア環境そのものを、 年代的に保存、参照可能とする新しいアーカイブのあり方を検討する ・既に価値の確定しているものについては、適切に評価し、公的にアーカイブして 逸散する事のないように保存・顕彰する ・以上を、個人やアマチュア、企業や業界団体のアーカイブやデータベースを横断 して、体系化し、社会の共有財として運用できるようなしくみを検討する ③ポップカルチャー・ミュージアム&ライブラリー構築の具体的方策 日本の重要な文化資産であるポップカルチャーの体系的な収集・分析・公開を進め ていくことが必要になっている。また、それらは産学官連携による体制で分散型のネ ットワーク上の活動として実施されることが望ましい。 ア)対象とするポップカルチャーの特性 ・混血性・・・日本の古典文化や、ヨーロッパ的芸術・文化に特徴的な伝統性、権威性 ではなく、国境や言語、民族の境界を超えて広がる混血的な普及を特徴とする文 化 ・大衆・若者・こどもの表現性・・・社会の権威を担う上流ではなく下層の大衆や、権 威に反抗する若者、現実よりも空想を大切にするこどもの価値観・世界観を表現 ・同時代性・・・歴史的に評価が決まるのではなく、ヒット、ブームといった同時代的 な社会現象による評価が決まる ・多メディア展開・・・新しいメディアテクノロジーを複合的に横断して、世界のマー ケットに流通 ・シンボル価値・コレクション型消費・・・利用価値を持つ実体商品としてではなく、 ファンの間で生み出される価値観・世界観に基づくシンボル価値によりコレクシ ョンされる情報商品 ・作り手と受け手のコミュニティの形成・・・ファン、マニアという受け手と、アマチ ュア、インディーズ、マスメディア向けのプロのつくり手がコミュニティを形成、 そのなかでダイレクト、かつ可逆的なワントゥワンのマーケットの関係が生じる イ)ポップカルチャー・ミュージアム&ライブラリーのあり方 ・ファン、アマチュア、企業、業界団体による分散的なデータベースやコレクショ ンを、横断的にナビゲーションできるようなしくみを構築 現状の情報蓄積・発信 横断的なナビゲートのしくみ 公共支援、エージェント共同によるポータルサイト 企業・業界団体の プレゼンテーション アマチュアの プレゼンテーション 企業・業界団体の プレゼンテーション バラバラで無関係 企業・業界団体の データベース・ コレクション ファンの データベース・ コレクション 企業・業界団体の データベース・ コレクション 128 アマチュアの プレゼンテーション ファンの データベース・ コレクション ・プレゼンテーション情報については、企業・業界団体、アマチュアとともに、外国 サイト・メールマガジンなどにより、国内のみならず、海外に対しても B to B、 B to C のコミュニケーションが行えるなどのメリットをもたらし、ポータルサイ ト構築・運営のエージェントのもとに協力体制を構築する ・データベース、コレクション情報については、二次利用、文化共有財の 2 つの観 点から、所在を明らかにして情報を開示することに特典を与え、「どこにいくと何 がある、誰が何を待っている、その著作権はどこに帰属している」という情報の データベース化を、エージェントを中心に進めていく ・過去のポップカルチャーを再生可能とするメディアテクノロジー環境を保存する センターを設置・運営 現状の情報の消失 電子情報をパッケージ化 映像・音声のデジタルパッケージ化 映像・音声のアナログパッケージ化 印刷物 情報は消失しやすい 電子化が進むほど 電子情報のみ 情報を保存するためのメディアテクノロジー環境 電子的再生環境 (コンピュータ、ゲーム等) 映像・音声再生環境 (テレビ、ビデオ、CD、LD 等) 再生サービス 複製サービス ソフト保管サービス 玩具、グッズ等 ・過去の OS など、各年代・各世代のコンピュータ、ゲームなどの再生環境や、ビデ オ、LD、VHD、6m/m テープなどアナログ映像・音声の再生環境を収蔵し、利用可 能な状態で運用することで、再生、複製、ソフト保管サービスを行う ・企業、ファンのコレクターからソフト保管の委託を受け、これらの資産について、 権利上の問題をクリアーにしながら、二次利用、文化共有財としての公共利用を 検討する 7.まとめ 1)議論の継続 メーリングリストにおいては、委員会メンバーの増加に伴い、より分野横断的・多角的 な議論が行われるようになってきている。今後も引き続き、特に以下の論点について深く 堀りさげ、検証を進めるべく議論の継続が望まれる。 ・誰もが情報を作り、発信する状況が進展すると、コンテンツの生産・消費構造は変わる か。その場合の産業面、政策面での課題は何か。 ・マンガ、アニメ、ゲームは、輸入したテクノロジーを土台に日本的な表現を生んでいっ た。今後もそのような方向か。あるいは、独自の表現分野を生んでいくべきか。 ・モバイル、ユビキタスといった新しいデジタルメディアのコンテンツ分野で、日本は強 みを発揮できるのか。ウェブでの表現はどうか。そのための政策課題は何か。 ・次世代のコンテンツ分野の領域や産業可能性を探ること ・日本の強みを強化し、弱みを克服するための総合政策を検討すること ・推進すべき創造・表現活動や、技術開発などの具体策を検討すること 2)ワークショップ開発実施と情報発信 ワークショップについても、昨年度に引き続いての開発・実施が求められる。委員会で 129 の議論や、実施結果のフィードバックから内容を精査した上で、さらに、こどもの学習に 深い理解のある主体と連携しての実施が必要となる。 また、これらの研究や活動で得られた情報の発信も重要な課題である。5.6.にあげた ような、ポップカルチャーについての体系的な知識を、誰でもが利用できる形で提供し、 政府や自治体、企業や学校に向けて一層の啓発を図ることが求められる。 130
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