卓上水理模型による河床形状の 再現性に関する研究

受 付 番 号 : 0549199909308
水 工 学 論 文 集 ,第 48 巻 ,2004 年 2 月
卓上水理模型による河床形状の
再現性に関する研究
EXPERIMENTAL STUDY ON SIMILARITY OF BED-FORM
IN A TABLE-TOP HYDRULIC MODEL
和 田 一 範 1・ 岡 安 徹 也 2・ 浜 口 憲 一 郎 3・ 市 山 誠
3
Kazunori WADA , Tetsuya OKAYASU ,Kenichirou HAMAGUCHI and Makoto ICHIYAMA
1 正会員
国土交通省国土技術政策総合研究所(前甲府工事事務所長) (茨城県つくば市旭一番地)
2 正会員
財団法人国土技術研究センター 調査第 1 部 (〒105-0001 東京都港区虎ノ門 3-12-1)
3 正会員
パシフィックコンサルタンツ(株) 筑波実験場 (茨城県つくば市作谷 642-1)
A table-top hydraulic model is thought to be used at the place of project
explanation or agreement formation. This study examines the phenomena, which
the table-top hydraulic model can express qualitatively, and reproducibility of
those phenomena. In examination, basic experiments are performed both in a
curved flume and a straight flume, and experimental studies are done about the
table-top hydraulic model for real channels of the Tonegawa down-stream region
and the Kamanashigawa. The channel width of the model concerned is about
10-20cm. Results of experiments shows that for a field where flow is affected by
the plane shape, such as curved channels, reproducibility is relatively observed
even in the table-top hydraulic model, whereas for a field where flow is
influenced by bed-form, reproducibility is low because of the influence of the
model scale.
Key Words: Hydraulic Model Test, Table-top, Agreement formation
1.はじめに
河川法の改正により河川整備計画の策定にあたっ
ては,河川工学以外の分野の学識者や住民の意見も
十分取り入れて計画を検討するように定められ,各
河川で具体的な議論が進められている.また河川管
理にあたっては,河川管理者と流域住民との間で
様々な河川事業の実施に対し,十分な合意形成がな
されることが求められている.一方で,河川事業が
主に対象とする洪水は発生頻度が少ないこと,洪水
による河川内の変化の様子がよくわからないことな
どから河川事業とその影響についての技術的な説明
は大きな困難さを伴う.
水理模型実験は,現象を直接的に把握することが
可能であり,異なる条件での検討が可能なことから
施設計画の検討とともに事業説明や合意形成手法と
しても用いられている.しかし,従来用いられる水
理模型実験はフルードの相似則を用いて定量的な評
価が可能な模型を用いて行われる実験が主であるた
め,対象河川規模によっては模型延長が 100m を超え
る大規模な模型が用いられるなど大規模な実験模型
を用いることが多い.そのため実験見学や他の分野
の専門家による討議に対しては定まった条件での実
験しかできず,討議の場において条件を変更した検
討や,代替案の検討は模型規模の制約などから困難
であり,セットされた条件での観察となる.
近年,住民参加や合意形成を目的とし,模型の再
現性についての厳密性については限定的とし,対象
とする現象を定性的,相対的に表現が可能で,会議
室の机に設置できる程度の小縮尺模型を用いた実験
手法が提案されている.
卓上サイズの水理模型を用いた例としては,米国
工兵隊応用河川工学センターで開発された Micro
Model があり,工兵隊セントルイス地区事務所では
ミシシッピ川を対象とした 1/10,000 程度の模型に
より側水路などの検討を行っている.1)Micro Model
の大きさは縦1m横2m程度であり,河川技術者と
それ以外のプロジェクトメンバーが議論する場を提
供するツールとして活用されているようである.
Micro Model よりは規模が大きいが,1/1,000 程度の
小型水理模型の研究は昭和 55 年に木下良作博士に
よって大井川を対象に行われている.2)ここでは,
「砂レキ堆相似則」の概念が提案されている.
本研究の卓上水理模型は,大きさは工兵隊の Micro
Model と同程度であり,一般的なフルードの相似則
等が成立するモデルではないが,規模が小さいため
条件の変更が容易で,代替案への対応や対象区間の
全体流況把握が容易で安価であることから,大型実
験模型と比較し,その場で条件を変更して影響につ
いて討議することが可能である.しかし,このよう
な小縮尺模型は相似則に従う定量的な評価法が定
まっていない実験方法であり,このような模型がど
のような現象を再現でき,何が再現できていないか
を理解し,再現性・実験結果の評価に関する適正な
判断指標を有することが必要である.
本研究は,河川教育や合意形成のツールとしての
卓上水理模型の適用範囲を探るべく,緩流河川と急
流河川を研究モデルとして,定性的ではあるが小縮
尺の模型が再現可能な事象,また再現困難な事象の
把握を目的に行った.
2.研究方法
CaseBおよび C の水路勾配は,後述の実河川モデ
ルとの比較を容易にするため,実河川モデルの平均
河床勾配を水路勾配とした.流量は,実河川モデル
が対象とする河道において複列の河床波が認められ
るため,砂州の発達速度から推定して,比較的複列
モードが卓越する流量条件とした.7)
A-4
表- 1 水路実験の条件
ケー
ス
Q
㍑/秒
τ*
A
0.078
B-1
B
Ib
粒径
mm
cm
0.166
1/80
0.4
0.170
0.065
1/135
B-2
0.233
0.079
C-1
0.255
C-2
0.350
Fr
水路形状
10.0
1.23
L 型湾曲
0.8
20.0
0.88
直線
1/135
0.8
20.0
0.91
〃
0.065
1/135
0.8
30.0
0.88
〃
0.079
1/135
0.8
30.0
0.91
〃
※強制的給砂無し
本研究は基礎的な検討としてL字型単湾曲水路及
び直線水路に生じる河床形状,河床形態の観察を
行った.L字型単湾曲水路は,緩流河川における低
水路の蛇行を想定したものであり,水路形状により
構造的に流れが影響を受ける場を対象としている.
また,直線水路における河床形態の観察は,急流河
川の河道に生じる河床波により流れが影響を受ける
場を対象としている.
水路実験によって小規模縮尺模型に生じる河床形
状,河床形態の特徴を把握した後,実河川を対象と
した卓上水理模型を製作し,現地河道状況・ミオ筋
や大型模型実験結果と比較することによって,模型
内で再現可能な現象について考察を行った.
B=10cm
0.7m
4cm
θ
水路断面
r=0.5m
1.8m
B=0.1m
flow
図- 1 L 型実験水路
B=20cm,30cm
2cm
水路断面
(1)水路実験
実験を行った5ケースの実験条件を表- 1に示す.
ここに,CaseAは,緩流河川を想定した湾曲水路実
験,CaseBと C のシリーズは,急流河川を想定した
直線水路実験である.L 型単湾曲水路の条件は,大
型の水路実験が行われており,河床形状が計測され
ている福岡等 5)の実験を対象とし,本検討水路は
1/10 に縮小した水路形状を用いた.実験水路の幅は
10cm である.また,直線水路については,水路幅
が河床波に及ぼす影響を見るために,水路幅 20cm
と 30cm の2種類の水路幅を設定した.
実験Aでは,先ず福岡等の水路実験におけるτ*C/
τ*の値に小縮尺模型水路内の条件を合わせること
から始めた.福岡等の実験ではτ*C/τ*=0.982 であ
り,この条件に粒径 0.4mm,比重 1.65 の本検討モ
デルの条件を合わせようとすると水路勾配は
Ib=1/192 となった.この条件下で通水を行った結果,
河床材料の動きが殆ど認められなかったため,水路
勾配を徐々に急にした結果,河床材料の移動が見ら
れた勾配が Ib=1/80 であり,これを Case の通水条件
とした.流量は,福岡等の実験流量 Q=24.6 ㍑/秒を
1/10 縮尺でフルードの相似則に基づき縮小した流量
とした.
L=13.5m
B=20cm
,30cm
Ib=1/135
図- 2 直線実験水路
(2)実河川を対象とした実験
実河川のモデルとして利根川の下流部と釜無川を
選定した.利根川の下流部については,既に大型の
模型実験 6)が実施されており,検証データとして使
用可能な平面流速分布や河床形状が計測されており,
卓上水理模型で生じる現象を考察する際に比較検討
ができるという理由から選んだ.釜無川については,
急流河川の一つとして筆者等が卓上水理模型を用い
た教育・合意形成ツールの可能性を検討しており,
現地の測量等の資料との比較ができることから選定
した.
河川を対象とした卓上水理模型の実験条件は,表2のとおりであり,釜無川については,1/4,000 の縮
尺モデルも研究しているが,ここではより再現性の
よい 1/2,000 のモデルを用いた研究結果について報
告する.
実験流量は,二つのケースともフルードの相似則
に基づき計画高水流量を模型値に縮小した.河床勾
配については,利根川の場合は低水路の湾曲による
深掘位置が概ね大型模型実験と一致するように調節
した.釜無川については,現地の平均河床勾配に一
致させた.
表- 2 実験条件
Q
㍑/秒
τ*
Ib
d
mm
縮尺
利根川
0.200
0.443
1/80
0.4
1/4,000
釜無川
0.208
0.073
1/135
0.8
1/2,000
※強制的給砂無し
ター図であり,図- 5及び図- 6は,計測データを下
に福岡等 5)の水路実験結果と比較を行ったものであ
る.
福岡等の実験に対する本検討モデルの水平縮尺
1/10 を用いて,鉛直方向の洗掘深さの絶対値を比較
すると,本検討モデルの洗掘深が小さくなっており
一致していない.しかし,最大洗掘の生じる場所が
θ=60°前後であることや,洗掘横断形状は大型水
路を用いた福岡等の実験結果と酷似していることが
確認できた.
実験においては前述したように初期に設定した河
床勾配では河床の移動が見られなかった.これは、
水深が浅く水深粒径比が 10 程度であることが影響
していると考えられる。山本らが整理した流れの抵
抗と河床形態の分類図 4)を見ると水深粒径比が 20 以
下では移動限界無次元掃流力τ*は一般的な値の2
倍以上 0.08∼0.1 程度を示しており、水深粒径比が
小さい流れの場における河床の抵抗と河床形態が不
明な領域の現象であると判断される。
写真- 1 利根川モデル
図- 3 L 型水路の水面流速分布
写真- 2 釜無川モデル
3.結果と考察
図- 4 L 型水路河床コンター図
6.0
卓上水理模型
4.0
福岡等の実験
2.0
水路床高(cm)
(1)緩流河川に対する適用
河道法線や低水路が蛇行した緩流河川に卓上水理
模型を適用した際の特徴を考察するにあたって,は
じめに蛇行を想定した単純な L 字型単湾曲水路を対
象に卓上モデルにおける河床洗掘の特性を考察した.
実験に用いた L 字型単湾曲水路は,
水路幅が 10cm
であり,狭い小型の水路床の形状を正確に計測する
ために,レーザー変位計と X・Y トラバース装置を
組み合わせた装置を用いた.この装置により,予め
設定した側線上の水路床高を 0.1mm の精度で計測
した.また通水中の流況については水面の流速分布
を PIV によって取得した.
実験は水路床が平坦な状態から始めた.通水初期
に水路湾曲区間下流端(θ=0°)付近の外岸から洗掘
が生じ始め,約 30 分で湾曲区間外岸の洗掘が安定し
た状態となったため,PIV 用の撮影を数分行った後
に通水を終了した.図- 4は,湾曲区間の河床高コン
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
-12.0
450
470
490
510
530
横断距離(cm)
図- 5 河床横断形状の比較
550
卓上水理模型
6.0
福岡等の実験
4.0
水路床高(cm)
2.0
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
2.5m/s
-8.0
-10.0
(b)卓上水理模型
-12.0
0
15
30
45
60
75
90
湾曲下流端からの位置 θ(DEG)
図- 6 外岸から 5mm 位置での
河床縦断形状の比較
0.6m/s
図- 8 利根川モデルの水面流速の比較
2.0
0.0
-2.0
河床高(m)
次に実河川モデルとして利根川下流部を対象とし
た卓上水理模型の実験を行った.流量は計画規模の
流量を対象とし,大型模型実験(水平縮尺 S=1/100,
鉛直縮尺 S=1/50)において計測が行われている水面
流速分布,河床横断形状の比較を行った.
図-7に示す河床形状においては,低水路の深掘部
の位置を卓上モデルの水路勾配を調節することに
よって概ね合わせることができた.図- 8の卓上モデ
ルの水面流速分布は,フルードの相似則に基づき大
型模型実験のスケールに割り戻してもその差は大き
いものとなったが,最大流速の発生位置や主流の流
下位置については,大型模型実験に似たパターンを
示した.また,図- 9の河床横断形状についても最深
河床高を一致するように算定した鉛直縮尺を適用す
ることによって,標高は異なるが,横断面の形状は
概ね合わせることができた.なお,No.40.0 の左側
は,模型固定床形状の違いによるものである。
-4.0
-6.0
-8.0
No.36.6
-10.0
大型模型実験
卓上水理模型
-12.0
-14.0
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
300
350
400
450
300
350
400
450
横距(m)
0.0
-2.0
-4.0
河床高(m)
-6.0
-8.0
-10.0
-12.0
-14.0
No.37.0
-16.0
大型模型実験
卓上水理模型
-18.0
-20.0
0
50
100
150
200
250
横距(m)
(b)卓上水理模型
6.0
4.0
河床高 (m)
2.0
0.0
-2.0
-4.0
No.40.0
-6.0
大型模型実験
卓上水理模型
-8.0
図-7 利根川モデル河床平面形状の比較
-10.0
0
50
100
150
200
250
横距(m)
図- 9 利根川モデルの横断形状の比較
(2)急流河川に対する適用
急流河川における適用の検討として,扇状地河川
で河道が比較的直線的な区間に見られる河床のパ
ターンを卓上モデルが再現可能かどうか検討を行っ
た.扇状地河川として山梨県釜無川の信玄堤付近を
選んだ.この区間には高岩と呼ばれる河道屈曲部が
あり,高岩の下流は直線的な河道に特徴的な河床パ
ターンを見ることができる場所である.
まず,釜無側の実河川モデルの実験に先立ち,釜
無川の直線河道区間を想定した水路実験を行った.
表- 3は水路実験の条件であり,水路幅が 20cm と
30cm について,それぞれτ*c/τ*が1に近いケー
スと比較的砂の移動が大きいケースを設定した.写
真- 3は,水路床が平坦な状態から通水を始めて 60
分後の河床形態である.水路幅が 20cm の CaseB-1
及び B-2 では明らかに単列の砂州が形成されており,
B/H の小さいCaseB-2 になると砂州波長が伸びてい
る.CaseC-1 及び C-2 は,河床に作用する掃流力を
そのままにして,B/H を大きくしたケースである.
この場合も,単列砂州のモードが強い傾向があるが,
CaseC-1 は単列から複列に変化するような河床形状
が見られた.
表- 3 直線水路実験の諸量
Case
Q
㍑/秒
τ*
B-1 0.17 0.065
B-2 0.23 0.079
C-1 0.17 0.065
C-2 0.35 0.079
※強制的給砂無し
B/H u*(m/s) τ*c/τ*
43
36
65
54
0.018
0.020
0.018
0.020
0.930
0.738
0.930
0.738
Fr
0.88
0.91
0.88
0.91
図-10は,水路下流側において水面流速を PIV に
よってとらえた等流速分布図である.CaseB-1 では,
単列砂州モードが卓越するため水面の流速も 1.2m
程度の波長で主流が蛇行して流下している.複列砂
州モードが出始める CaseC-1 では,約 1m おきに水
路中央部に高流速域が発生しており,流れの発散と
収束が縦断方向に連続的に生じ,複雑な河床形態を
生じさせていることがわかる.以上の実験から,掃
流力等が同じであっても,それによって発生する砂
州のパターンは B/H に依存し,複列モードの砂州を
表現しようとすると,30cm 程度の水路幅が必要で
あった.三輪 8)らの砂礫堆に関する研究においては,
フルード数とB/H をパラメータとして砂礫堆の領域
図を示しており,本研究での領域も同様な傾向を示
している。しかし、水路幅を 20cm にした場合 B/H
を確保するためには水深が浅くなり、水深粒径比が
10 程度に減少することで、流れの構造が砂礫堆形状
に影響を及ぼしている判断される。
次に実河川モデルではどのような河床形態を表現
することが出来るか確認した.釜無川モデルは,釜
無川御勅使川合流点上流から開国橋下流を対象とし
たモデルである.湾曲部に位置する高岩地区の下流
部の水路幅は,水平縮尺 1/2,000 でモデル化すると
CaseB-1
CaseB-2
CaseC-1
CaseC-2
写真- 3 直線水路上の河床波
二十数 cm の川幅となり,概ね水路実験の CaseB-1
に相当する.
図-11の航空写真は平成 9 年に撮影されたもので
あるが,高岩頭首工から下流の直線的な河道区間に
おいて複数の流路が認められ複雑河床形態になって
いることが分かる.同区間の卓上モデルに計画規模
の流量を通水した後の河床形態が,図-11の下段であ
る.これはレーザー変位計によって計測された河床
高をコンター図に加工し,その時の河床状況の写真
に重ねたものである.このコンター図によると一見
複雑な河床形態が現れているように見えるが,大き
くは高岩の河道屈曲部においてはねられた流水が大
きく蛇行しながら流下している状況となっている.
水路実験のCaseB-1 のような単列砂州とは異なる河
床形状であり,河道の平面形状による影響を大きく
受けている.そのため,河床形態が流れの状態に影
響を及ぼすCaseC-1 や実河川に生じているような複
列モードの河床形態は現れていないと言える.
図-12の流速分布も No.190 地点の水当たりを上流の
境界条件とする主流の蛇行となっており,
図-10の CaseC-1 のような収束発散の流速分布とは
違っている.
CaseB-1
CaseB-2
CaseC-1
CaseC-2
←:主流線
図-10 直線水路の水面流速分布
以上,釜無川を実河川モデルとして卓上モデルの
流れや河床形態を観察した結果,河道の湾曲に伴う
水衝部の発生位置は似通ったものとなったが,川幅
の広い直線河道区間に現れる複列河道特性を卓上モ
デル上で再現することは出来なかった.今回の実験
は,直線河道区間の水路幅 20cm であることから,
水路実験の結果から推察すると,単列モードの河床
波の再現が限界と思われる.また,河道延長が短い
ことなどから単列砂州形状は,実河川モデルの下流
端付近に発生し始めるに留まっていた.
今後の検討として,実河川モデルにおける河床波
の定性的な再現に必要な川幅等を検討するために今
後,更に大きなサイズの極小水理模型実験の必要性
も考えられる.
②
③
④
⑤
て水路幅 10∼20cm の水路モデルであっても定
性的な表現が可能である.
流れの構造で洗掘形状が定まるような河道断面
形状については,キャリブレーションにより鉛
直縮尺を算定することで概ね洗掘深の相対変化
を把握することが可能である.
扇状地河川にみられる複列河床形状などの再現
はテーブルサイズを想定した卓上水理模型では
再現が困難であり,河床形態を再現しうる川幅
や川幅・水深比の限界値が在ると判断される.
卓上モデルにおける河床形態についての限界値
は水深が少なくなると粘性や水深・粒径比の影
響が顕著となることが要因であると考えられる.
今回の研究において,レーザー河床高センサー
やPIVによって,卓上モデル上で生じている
現象を数量化して捉えることが出来た.
今後,さらに卓上水理模型の技術的位置付けを明
らかにし,簡便なツールとして河川事業の合意形成
の場や河川教育の場への適用の可能性を研究してい
く所存である.尚、適用性の研究にあたっては、卓
上水理模型が用いる水深が浅く、水深粒径比が極め
て小さな領域での河床抵抗則、河床形態などは研究
事例の少ない領域でもあり、今後さらに研究を行い
流れと河床変動の関係を明らかにしていきたいと考
えている。
謝辞:本研究にあたり,砂礫堆相似に関する実験手
法などについて貴重な意見をいただいた木下良作博
士,岩手大学農学部三輪教授に謝意を表します.
図-11 釜無川モデルの河床高コンター
(現地航空写真との比較)
参考文献
1)宇塚公一,和田一範:住民合意形成の新しいツール「マ
イクロモデル」について,ダム技術 NO.157
2)木下良作:大井川牛尾狭窄部開削の影響に関する「砂レ
キ堆相似」による模型実験,昭和 55 年 8 月,静岡河川
工事事務所
3)和田一範等:「極小移動床水理模型の国内での活用につ
いて」
河川技術論文集,
第 7 巻,
2001 年 6 月,PP. 497-500
4)山本晃一:「沖積河川学」山海堂,P.397
5)福岡捷二,渡辺昭英:「横断方向流砂を制御するベーン
工の設計法」
第32回水理講演会論文集,
1988年2月,PP.
467-472
図-12 釜無川モデルの水面流速
4.結論
合意形成のツールとしての卓上水理模型の適用性
について,現象の再現性を視点とした検討を行い,
以下のような結論を得た.
① 河道の平面形状により流れの構造が影響される
緩流河川では,洗掘位置や洗掘形状などについ
6)宇多高明等:「利根川下流部洗掘対策模型実験報告書」
土木研究資料 第 3267 号 1994 年 2 月
7)黒木幹男,岸力:「中規模河床形態の領域区分に関する
理論的研究」,土木学会論文集第 342 号,1984 年 2 月,
PP.769-774
8)三輪弌:「単列砂レキ堆と複列砂レキ堆の関係」,第 28
回水理講演会論文集,1984 年 2 月,PP. 775-781
(2003.9.30 受付)