さいたまスーパーアリーナ

さいたま新都心特集
さいたまスーパーアリーナ
川瀬責晴山村真司
市橋隆石尾明久
TAKAHARUKAWASE川NJIYAMAMURA
(鮎琵措東京本社)(鮎昇雷雲東京本社)
TAKASHIICHIHASHIAKIHISAIS川0
(轟音撃莞撃計本部)(姦紹儲旭洗-*)
はじめに
1. 建築概要
埼玉県の浦和・大宮・与野の3市にまたがる区
名称さいたまスーパーアリーナ
域に2000年5月さいたま新都心が「街びらき」し
所在地埼玉県与野市上落合2-27
た。
国の合同庁舎・郵政庁舎をはじめとしたさま
主要用途観覧場・店舗・文化センター
ざまな施設の中でも「さいたまスーパーアリー
建築主埼玉県
ナ」は,埼玉県の中核施設として,平成6年度に
設計MAS・2000共同設計室(代表:㈱日
行われた設計・施工提案競技により,最優秀案と
建設計)
して選ばれた音楽・スポーツ・展示イベント等に
協力:EllerbeBecket,Flack+
使用される観覧場と商業施設からなる複合施設で
Kurtz
周辺からはJR埼京線,京浜東北線,宇都
ある。
宮線等によりアクセスが可能であり,新都心内に
ConsultingEngineers
さいたま新都心駅も開設された。また,首都高速
構造技術指導:斉藤公男
道路も工事中であり,東京地区をはじめとして北
照明コンサルタント:ライティング・プランナ
関東区域などからの広範なイベント集客が期待さ
ーズ・アソシエーツ
れる(写真-1)0
監理埼玉県,㈱日建設計
技術協力:大成建設㈱・三菱重工業㈱
用途地域商業地域(再開発地区計画区域内)
写葺-1 外観写真
2000・7蝣建築設備士 7
また,メインアリーナ時には可動間仕切り幕に
より,最大約6,000人の音楽イベントに特化した
「ホール」空間の創出が可能である。
一方,「コミ
ュニティアリーナ」は南側に面するけやきひろば
に対して高い開放性を有した半屋外的な利用が可
能な空間である。 建築的には上記可動機構をはじ
め,国内初の縦型通路方式による客席配置を採用
し,観客席の一体感とよりよいサイトラインの確
保を図るなど随所に工夫を凝らしている。
3. 設備計画の基本方針
写真-2アリーナ内部写真(スタジアム時)
(1)空間可変への対応
ムービングブロック(MB)の移動により形成
敷地面積45,007m2
された各空間形状および可動するMB自体に対し
建築面積43,730m2
て,空調・換気,給排水,電力,通信,排煙・消
延床面積132,397m2
火など防災の各機能を満足させるための可動対応
最高高さGL+66.0m
システムとして,配管・ダクト離接合システム,
障数地下1階,地上7階,塔屋2階
ケーブルリールシステムおよび消防防災システム
主要構造鉄骨造,一部鉄骨鉄筋コンクリート造
および鉄筋コンクリート造
を構築した。
(2)イベントへの対応
施工大成建設・三菱重工業・ユーデイ-ケ
上記可動対応システムのほか,音楽イベント,
特定建設工事共同企業体
スポーツイベント等,多彩なイベント内容に対応
工期1997年1月-2000年3月竣工
が可能な空調方式,照明・音響設備を計画した。
また,フィールド面での展示などの対応のため,
2. 建築計画
電源,電話,給排水の供給を行っている。
本施設は,設計競技要項にて,音楽イベント,
(3)安全性の確保
スポーツ競技に高い性能を持って対応する専門空
不特定多数が利用する施設として,安全には十
間を基本とし,さらに空間拡張機能により,産業
分な配慮が求められる。 さらに本施設は空間形状
イベント,フィールド競技等に対応可能な大空間
が変化するため,いずれの形状においても確実な
としても使用できることを要求された。
これに対
火災覚知,避難誘導,消火が可能な防災設備計画
約9,000席の客席,コンコース,トイレ,電気室
を行った。また,計画に際し,消防防災システム
詳細評価申請を行い,平成10年5月に承認を受け
等を内包した約15,OOOtの建築ブロックを64台の
ている。
一方,さいたま新都心における地域避難
台車にて70m水平移動させ,さらに客席・床の可
拠点として,飲料水,緊急時排水設備,非常用発
動システムや天井ブロックの昇降システムを組合
電機容量の確保等を考慮した。
せることで,約19,000席の「メインアリーナ」が
(4)バリアフリーへの配慮
約27,000席収容の「スタジアム」形態に短時間で
高齢者・身障者に使いやすい施設とし,「彩の
変換できるとともに,多様なイベントに対応でき
国さいたまの住み良い福祉のまちづくり推進指
る可変空間とした(写真-2,図-1-図-3)c
針」に準拠した施設・設備としている。
また,メインアリーナ時は「コミュニティアリー
(5)維持管理費削減への配慮
ナ」と呼ばれる三日月型平面(約7,500m2)の空
イベント施設特有の運用形態を考慮した省エネ
間が同時に形成され,2つの性格の異なるアリー
ルギー手法として,アリーナ空調計画にて静粛空
ナ空間でのイベント同時開催も可能な計画として
調,旋回流空調(ゆらぎ・間欠空調)等の選択が
可能な空調方式を採用した。 また自然換気,コミ
して,「ムービングブロック(MB)」と呼ばれる
いる。
8建築設備士2000・7
可動機構 ムービングプロッタ
図-1 メインアリーナ時平断面図(1 :3500
図12 スタジアム時平断面図(1 :3500)
図-3 空間形状可変イメージ
ユニティアリーナ昼光利用等の自然エネルギー利
敷地外構部に浸透管を設置して雨水浸透を図ると
用のほか,雨水利用設備,太陽光発電設備を計画
ともに,改修・更新時の廃棄物低減化を考慮した
設備管理にはビルディングマネジメントシ
した。
使用材料の選定を行った。
ステム(BMS)を導入し,より効率的な維持管
理を図った。
(6)環境への配慮
4. 空調設備概要
(1)熱源設備
低層部での壁面線化・人工地盤面緑化,60に
地域冷暖房施設から冷水,蒸気を地下1階熱源
傾けた大屋根や流線型形状によってアリーナプラ
機械室にて受け入れており,主としてアリーナ空
ザ,けやきひろばを北風・ビル風から守るほか,
調機等の冷水・蒸気直接受入系統と,MB内空調
2000・7・建築設備士9
地冷供給施設
冷水制桝
戦
器
圧力派 弁 ×2
冷水胤 ヘ ッダ(冷水7℃)
鰍 返送ポンプ ×4台
C
紬
寛磁沈 香ナ
ントペ 濃
CR
"
ユニパ- サ ル敵手
二方弁装置
(スプリングリダー ン形)
一】.
7
rTR
^
_ 宗 法懇 親 t
/B B 慧
賢
一掛
N9-Wl・W2・S3-S4-S7
E2-Ml-M2シャフト系統
CH - f itOsUK^gMS田星影
撹
ポンプ×2台
量S
…ヨ
応
jr
返送弁
泰気 ー水熱交換券 ×2台
量計80 (小 レンジ)(脚
地岨 響 設
」 : : N2シャフト系統
- c - サN3シャフト系統
- c - サN8-Elシャフト系統
冷温水(往)ヘ ッダ(冷舶 ℃ 温水55℃)
二方弁装置
(スプリングリターン形)
" " " -
I
1 ク
IJ
N3シャフト系統
N8-Elシャフト系統
- N9-Wl-W2-S3-S4-S7
、、、'、
玲 L 還 )ヘ ッ ダ (冷 水 -∴'"・',∴圭.
CM -"
N2シャフト系統
* 蝣U
C
HR
-<
CR
l hr
C HR ーq N3シャフトノ系統
C HR -. NS・Elシャフト系統
電磁 流量計 N9'W1-W2-S3-S4-S7
if
冷 水 (遼 ) へ ツ ダ (冷 水 15 ℃ ^- CR - i E2-Ml-M2シャフト系轟充
CR - ォN2シャフト系統
一別
CR - ォN3シャフト系統
N8-Elシャフト系統
S「
仙
蒸気へ ツ
CR - <ーN9-Wl-W1-S3-S4-S7
婚
冷水ボン1X婚
(低圧)(0ー19M Pa(2KJ)
ブダ T
E2-M1-M2シャフト系統
N2シャフト系統
S-*N3シャフト系統
S-'Elシャフト系統
S-wl-W2-S3-S4-S7シャフト系統
ゝ-r.
町r堵KM'.
棟
SR-qN2シャフト系統
SE-サElシャフト系統
SR-.貯湯槽系統
SR-ォWl-W2-S3-S4-S7シャフト系統
SR-iN3シャフト系統
濁流量計2(泊(
地冷プラントよりD遡-S
鵬-,うこトーJflU-sR
0.78MPa'-0.19MPaI
くシャ7 †凡例>
N 2. 3. 8. 9シャ7 ト 北側
北側アリ
一ナ
ーコンコ
ース, V IP - スイート
, その他
E l.2 シャ7 ト
東側
東傭アI)- ナ
▼コンコース, 楽屋, その他
W 1 .2 シャフト
西側
西側アI卜ナ, コンコース V IP ' スイ- I, その他
M l▼2 シヤフー
MB側
M B 系アリーナおよびアリ
P ナ内l$
S 3 .4. 7 シ†7 ト
南側
コミュニティ7 .トナ, 商業施設系, その他
図14 熱源系統図
秦-1 イベント別空調パターン設定例
空調 方式
空 間形状
空間モー ド
サ*
成層
旋回流
ゆ らぎ
省 エネ旋回流
夏 ‥26℃ 夏 ‥26℃ 夏 ‥28℃ 夏 :27- 28 ℃ 夏 :27- 28℃
冬 : 20℃ 冬 :20℃ 冬 :20℃ 冬 :20℃
冬 ‥20℃
ス タジアム
エ ン ドステー ジ
○
○
-
-
◎
ス タジアム
セン ターステー ジ
○
○
スポー ツ
○※
ス タジアム
展示 会
○
㊨
◎
㊨
ス タジアム
◎
-
-
-
メイ ンアリーナ
ホール
◎
○
-
-
メイ ンアリーナ
エ ン ドステー ジ(》
○
○
-
-
◎
メイ ンアリーナ
エ ン ドステ- ジ(彰
○
○
-
-
◎
メイ ンア リーナ
セン ターステー ジ
○
○
スポー ツ上下段席
○※
-
o
◎
◎ 一
メイ ンアリーナ
メイ ンアリーナ
スポー ツ下段席のみ
o *
㊨
◎
-
メ インアリーナ
展示 会
○
㊨
-
-
I
コミュニティアリーナ
(成層空調)
-
○
-
-
-
-
○:設定モード◎. '推奨設定モード
※ドラフf・を避けるスポーツ系イベント
機,ファンコイルユニット等のための熱交換器を
78MPa(8kgf/cm2)
0.
介した冷水・温水系統の2系統で供給している
受入-0.19MPa(2kgf/cm2)に
(図-4)。
減圧し供給
冷水受入量 約50,650MJ 7℃受入-15℃返送 冷水一冷水熱交換器 プレート型
蒸気受入量 約20, 000kg/h(50, 230MJ) ' 2, 215MJ/hx 1, 100g/minx 2台
10 建築設備士 2000・7
(2)スタジアム スポーツモード・
図15 空調パターン設定イメージ
蒸気一水熱交換器シェル&チューブ型
防蝕性に配慮している。
7,233M,∫/hx1,600g/minx2台
(2)空調設備
冷水返送ポンプ6,3001/minx36mX55kWX
①アリーナ・スタジアム客席空調方式
4台(1台INV)
メインアリーナ・ホール・スタジアムの空間形
冷水ポンプ1,1001/minx50mX18.5kWx2
状,音楽・スポーツ・展示会等のイベント内容,
台(INV)
および省エネルギー要求の組合せによって,計26
温水ポンプ1,600J/minX50mX18.5kWx2
台のアリーナ用空調機から,空間パターンに適合
台(INV)
する組合せを選択し(例:ホールモード10台,メ
なお,蒸気還水管はSCH40,SCH80を使用し,
インアリーナモード20台,スタジアムモード26台
2000・7蝣建築設備士ll
図-6 アリーナ空調概念図
図-73方向吹出ユニットイメージ図
1,2,3F
など),3方向吹出ユニットによって,静粛・成
層・旋回流(およびゆらぎ・間欠)空調からイベ
風速分布(2/1615:00旋回流(外気冷房,上下段))
図-8スタジアム気流分布測定結果(旋回流時)
ント内容に最適な吹出方式を選択し,空調パター
3方向吹出ユニ
ンを決定する(義一1,図一5)。
騒音の低減化が特に要求されること,SA立てダ
ットは,ユニットを構成する各vAVのON/OFF
クト直近∼再遠吹出ユニットの間の圧力損失を解
で上記吹出方式を変更する(図-6)。
3方向吹出ユニットの開発に当たっては,空間
消し,各吹出ユニットにて均等な吹出風量を確保
形状,イベント内容に最適な吹出方式を選択でき
実機模型による実験を繰り返し,VAVX3台/
ること,スポーツイベント中心のほかのドームな
どよりも音楽イベントを重視しているため,空調
12建築設備士2000・7
できること,といった条件を全て満足させるため,
uIUt+グラスウール吹出ノズル×3本十パンチン
グスライドダンパ(パンチングメタル2枚を組合
r.、
.も
こ
′
.
l=V不汚 囁 き
ペ
b -. * ・
こ
4 6. i
.
>巌 T= 、セ
漂芸
二
言
竃
q還
R g m
芋
" _ " 蝣'
J !ァ ▼
諺
≡
i
(1)垂直温度分布
写真-3 コミュニティアリーナ吹出ノズル
せ,開口率を可変にして入口静庄調整を可能にし
たもの)による方式を採用した(図-7)cまた吹
出風速,吹出口取付位置・角度は,アリーナ,ホ
ール,スタジアムいずれの空間形状・気積におい
ても,熟環境的性能を満足するようシミュレーシ
ョンによって検討を行い決定した。
試運転実測を行った結果,冬季外気冷房運転
(2)水平温度分布(FL+1,500)
図-9コミュニティアリーナ夏季温度分布予測
(冷房時,設定温度28℃,吹出温度19℃)
(』J-約7-8℃吹出)の場合,いずれの空間パ
ターンに対しても良好な気流分布が形成されてい
(3)換気設備
図-8にスタジアム旋回流時の風速分布測定
る。
地下駐車場については,南北ゾーン発停区分制
結果を示す。また,空調騒音(NC値)は,スタ
御C02制御による風量コントロールを行い,省
ジアム時で約25,メインアリーナ時で約20,ホール
時で15-20と良好な結果を得ている。
エネルギーを図っている。
(4)排煙設備
②コミュニティアリーナ空調方式
アリーナ(コミュニティアリーナ)/スタジア
コミュニティアリーナについては,MB可動に
ム空間は,蓄煙+自然排煙,その他は機械排煙方
よる制約から,南面カーテンウオール側に到達距
式である。
(5)自動制御設備・ビルディングマネジメント設備
離の異なる吹出ノズルを上下2段に配し,東西ロ
ールバック面倒で吸い込む計画とした(写真-3)c
これにより,平面形状の特殊性,吹出口・吸込口
配置の偏在があるものの,おおむね良好な熟環境
が形成されると予想される(夏季冷房時シミュレ
自動制御設備はDDC方式を主体としている。
可変する空間形状,イベント内容に適合し,かつ
省エネルギーを実現する最適制御システムを構築
した。空調機制御に関しては,以下のような特徴
を持つ。
ーション結果を図-9に示す)0
(彰その他の主要室空調方式
(D空間形状・イベント内容に応じたコンコー
コンコース・ホワイエ系空調機+単一ダクト
IsA
ス・諸室等の最適空調ゾーン選択制御。
(彰収容人員・イベント内容に応じた温熱感
多目的室・レセプション系空調機(インバー
(SET*)制御(ア1)-ナ内温湿度・風速・放射
タ)+単一ダクト+VAV方式
温度を計測SET*を算出して2方弁制狗)0
楽屋・控室・ショップ系外調機+FCU(2
③旋回流空調時の客席に対する吹出口寄与率を
管式)
考慮したゾーン別空調機静庄制御。
VIPスイートルーム系外調機+FCU(4管式)
④外気冷房制御およびC02による外気量制御。
⑤イベント内容・内部発熱条件・気象条件に基
2000蝣7・建築設備士13
′
づく自然換気判断支援制御。
コミュニティアリ
し,客席部分には補助散水栓および天井高さ8m
ーナ(およびメインアリーナ・スタジアム)に
以下ではスプリンクラー設備を設置することで,
て,自然換気を積極的に活用し省エネルギーを
空間可変に対応可能な消火システムを構築してい
図るため,1階搬入口の給気口および自然排煙
さらに屋外消火栓によるホースカーを用意し,
る。
窓における内外圧力差を計測し,内部発熱条件,
イベント設営による散水障害などに対処する。
外界気象条件とともに自然換気実施の適否を判
ンコース・諸室等はスプリンクラー設備を設置し
断するシステムを構築している。
本施設特有の運用形態を考慮した設備機器の効
ている(防艶センターは予作動型)Oまた,地球温
率的な運転・維持管理を行うため,ビルディング
保全ス
マネジメントシステム(BMS)を導入。
暖化に配慮して特高電気室,発電機室はイナ-ジ
その他,消防
ェンガス消火設備を設置している。
用水,連結送水管設備,屋外消火栓設備,泡消火
ケジュール管理,エネルギー管理をはじめ,イベ
設備(地下駐車場)等を設置している。
ント内容によって最適空調パターン選択・予約が
(5)ガス設備
できるアリーナ空調予約管理等を行っている。
テナント施設である文化アミューズメントエリ
5. 給排水衛生設備概要
アに,厨房用として都市ガスを引込んでいる。
(6)厨房器具設備
(1)給水設備
ショップパントリー・厨房に厨房器具を設置し
上水本管・中水本管から,100Aおよび150Aで
ている。
引込み,地下1階設置の鋼板一体型上水受水槽(地
(7)雨水利用設備
震時の耐久性を考慮130m3×2基),地下ピット
大屋根に降った雨水を集水し,微細目ろ過・塩
利用の中水受水槽(450m3)に貯留。
素注入の上,雨水貯留槽(1,200m3)に貯留。
加圧給水ポ
ンプユニット(上水3,100J/min,中水6,0001/min)
地下1階にて,
による2系統給水を行っている。
イレ洗浄水,植栽散水に再利用し省資源化を図っ
おのおのループ配管とし信頼性を確保した。
の機能も併せ持っている。
各受
ている。また,雨水貯留槽は流出抑制施設として
水槽は死水対策として塩素滅菌装置を設置し,上
(8)避雛拠点設備
水受水槽は収容人員の少ないイベントや,非イベ
本施設は災害時の地域避難拠点施設として,約
ント時の使用量減少に対応して水位差制御を行っ
7,000人のアリーナ部への収容を想定し,防災用
amm
井戸(250(j)×150mx1本),緊急飲料化装置(雨
(2)排水通気設備
水貯留槽の200m3を水源として確保),緊急時汚水
建屋内は汚水,雑排水,厨房排水,空調排水,
槽(常時湧水ピット)などを用意している。
湧水,雨水の分流方式を原則とし,汚水・雑排水
厨房排水はグリ
は合流の上,公共下水道へ放流。
(9)緑化親水設備
ーストラップを介した後,厨房除害施設にて処理
し放流している。 また,外構部については雨水浸
プ)により,壁面緑化・人工地盤面の植栽への潅
透管を採用している。
置している。
・.3:給満設備
地下1階ロッカー室シャワー系統は,地域冷暖
(10)ゴミ処理設備
房の蒸気を利用とした中央式とした。
その他の湯
沸室,ショップパントリー・厨房等は電気または
雨水再利用(不足時は中水によるバックアッ
水を行う。また,アリーナデッキ上に池設備を設
客席から出る可燃ゴミは1階は反転投入装置で,
2-5階は東西2カ所のダストシュートを利用し
ガスの個別方式とした。
て1階ゴミ処理室に集められ,コンテナへ貯留。
また,その他資源ゴミ,有害ゴミ等はゴミ処理室
(4)消火設備
で分別・貯留を行う。 文化アミューズメントでは,
アリーナ/スタジアム空間については,固定側
各階で分別コレクターに集められカン,ビン,可
3基(メインアリーナ北側1基,コミュニティア
燃,不燃ゴミをカプセルエアシューターで1階の
リーナ2基),MB側2基の放水型ヘッド(4,0001
専用ゴミ処理室に搬送し,自動仕分け・分別・貯
/min)でフィールド面および一部客席をカバー
留するシステムを設置している。
14建築設備士2000蝣7
コ
ト
111! 厨房除害設備
続位置が変わる。
その際,避難口として使用で
ショップパントリー・厨房,文化アミューズメ
きない部分に誘導しないよう,対象となる誘導
ントのテナント厨房排水処理のため,汚掘発生量
灯の消灯制御をかけている。
の比較的少ない微生物処理方式を採用している
(彰特定イベント時消灯
(設計水量210m3/日)0
イベント対応設備
特定イベント時に,アリーナ/スタジアム空
展示会等の対応のために,給排水サプライボッ
マイクスイッチに連動して,誘導灯の点灯・活
クスをフィールド面に計34カ所,アリーナ東西搬
性化を行う。
(5)バリアフリー対応
間の誘導灯が消灯可能。
入口付近に計4カ所設置している。
非常時は,非常放送の
一部客席の座席下に誘導コイルを配した集団補
6. 電気設備概要
聴設備,身障トイレ呼出表示設備,音声誘導設備,
=)受変電設備
受電方式は公共施設・イベント施設としての信
LED付誘導ブロックを用意している。
(6)イベント電源設備
頼性を考慮し,3回線スポットネットワーク方式
持込イベント用のイベント電源盤をフィールド
を採用。地下1階の特高電気室に受電,6.6kVに
外周,天井キャットウォーク,可動天井に設置し
降庄後,館内に5カ所設けたサブ変電室に配電し
ている。特高電気室からサブ変電室への幹線は,
ている。電源は照明用・音響用・動力用を用意。
音響用は変圧器から単独系統にし,ノイズ等の影
AC系とAC-GC系の幹線を配し二重化している。
響を抑える計画としている。
契約電力は約5,600kW。
(7)アリーナ照明設備
・.21自家発電設備
非常用・保安用に3,OOOkVAガスタービン非常
アリーナ/スタジアムの空間照明として,天井
用発電機を1台設置。
イベントモードごとにシミュレーションを行い,
災害時には地域避難拠点と
部に高演色HIDを中心とした照明を設置している。
して活用されるため,全負荷運転で3日以上連続
設定照度の確認を行っている。
運転できる貯留量(約10万g)のオイルタンクを
オペレーションはアリーナ空間に面する3階調
設置している。
(3)太陽光発電設備
光室に設置したアリーナ照明制御盤からの操作・
大屋根に最大50kW発電可能な多結晶シリコン
にて,簡易的制御も可能である。
太陽電池を設置している。 発電電力は受変電設備
明演出の多いイベント開催には,調光室にてアリ
と系統連携を行い,災害時およびイベント非開催
ーナ照明制御盤から」,「照明演出のない展示会や
時に使用される保安・非常照明の変圧器系統に供
(4)非常照明・誘導灯設備
会場設営・清掃には防災センターにて照明制御卓
また,フィールドレ
から」と使い分けができる。
ベルにも副制御盤を設置している。
アリーナ/スタジアム空間の通路誘導灯兼非常
(8)アリーナ音響設備
照明として,電源別置型の投光器を設置している。
誘導灯の制御として活性化制御および消灯制御を
大空間における明瞭な拡声の形成および各空間
行っており,活性化制御については,
スピーカを固定設置する分散型配置を行った。
・アリーナ/スタジアム空間からコンコース・
れにより,1点集中型配置よりも建築的な反射面
通路-の避難口-点滅制御
に対向しないスピーカの指向角度が形成される。
スピーカは,アリーナ床面用のメインスピーカ,
給する。
・各階避難階段の人口・最終避難口-点滅制御
+誘導音
制御が基本であるが,防災センターの照明制御卓
これにより「照
パターンへの対応を考慮して,各昇降可動天井に
段床客席用のサテライトスピーカおよびシーリン
また,イベント関連の消灯制御は,
としている。
以下の通りである。
グスピーカ,スタジアム時の拡張空間用サテライ
①空間形状による消灯
カ,大型映像音声の拡声を兼ねるコミュニティア
MBの移動に伴い,MBと固定側の通路の接
リーナのスピーカなどから構成される。
トスピーカ,5,000人ホール用昇降式サイドスピー
2000・7蝣建築設備士15
こ
また,各スピーカ出力レベルや遅延時間などの
設定をプリセット化し制御することが可能である。
同時に,建築音響的な残響の抑制・エコー障害
の軽減対策についても計画している。
(9)映像送出設備
6階映像情報室をコントロールセンターとして,
以下のような映像情報設備を設けている。
・大型映像(フルカラーLED)
ア1)-ナ/スタジアム空間66m2×2面
コミュニティアリーナ空間37m2×1面
・プラズマディスプレイ
グレードの高い客席部分の天井に42インチ
のプラズマディスプレイを設置している。
・70インチ移動型液晶プロジェクタ
離接合配管の内訳
アリーナ/スタジアム空間のほか,会議等で
東側 (合 計 9 本)
西側 (合計 7 本)
の使用も考慮し移動型液晶プロジェクタを用
冷水曹 (往環 )
スプ リンクラー管
冷温水管 (往 環)
連結 送水管
意している。
・映像幹線
空調 ドレン管
放水塑 ヘ ッ ド管
上水管
放水塑 試験 管
中水管
消火 ドレン管
汚水管 ( 2 F 以上) 汚水管 ( 2 F 以上)
汚水管
IF)
汚水管
IF)
中継車への送受信などに対応できるようフィ
ードレベルに接続端子盤を設置し,配線を敷
設している。
(10)舞台照明設備
5,000人ホール時の舞台で,集会・会議程度の
図-10 配管離接合概念図
演出に対応した舞台照明を設置している。
また,
持込機器による調光演出などに対応できるようフ
]6 建築設備士 2000蝣7
離接合ダクトの内訳
N0 設置階
系 統名
ダクけ イズ 風量 CM H
備考
1
2
M B ア リー ナR A 系統
1,400×1,200 - 57 ,6 00
2
2
M B ア リー ナR A 系統
1,4C氾×1,200
57 , 60 0
3
M B ア リー ナS A 系統
1,400 ×2,500
122 ,2 0 0
防 霧対策
4
3
M B ア 7) ー ナS A 系統
1,400X 2,500
1 22 ,2 00
防 霧対 策
防 霧対策
3
5
7
M B ア リー ナ0 A 系統
1,650 ×1,650
93 ,9 00
6
7
M B 一般排気系統
1,650×1,650
81 ,3 00
7
7
M B 厨房排気系 統
450 ×700
7 ,7 0 0
8
7
M B トイ レ排気系 統
700 ×650
10 ,9 00
9
7
M B ア リー ナ0 A 系統
1,650 ×1,650
94 ,4 0 0
10
7
M B 一般排気系統
1,650 ×1,650
81 ,6 00
ll
7
M B 厨 房排気系統
450 ×700
3 ,4 0 0
12
7
M B トイ レ排気系 統
700 ×650
12 ,7 0 0
13
7
M B 排 煙系統
0 X 1,200
59 , 700
防露対 策
t ft if*
固定側 MB側
(2)接合時
写真15 ダクト粧接合実機試験槻
(大成建設㈱技術研究所三軸振動台加震実験)
図-11ダクト離接合装置概念
放送無音状態)よう制御し,マイク放送にて的確
な避難誘導が行えるようにしている。
また,マイ
イールド外周・天井に電源・調光制御信号ライン
ク放送に連動し,アリーナ音響設備のカット,ア
を用意している。
リーナ/スタジアム空間の避難口誘導灯の点灯・
(ll)施錠監視設備
空間パターンの変化により,避艶口として使用
活性化などが行われる。
非常放送ブロックは階層および平面的に分割し,
できない部分-の進入,MB移動時のアリーナ/
鳴動連動は発報ブロック自体とその隣接および直
スタジアム空間への進入を禁じるため,対象とな
上ブロックのみとしている。
る建具の閉鎖状態を防災センター,MB移動監視
防災センターの放送卓のCRT画面で視覚的に認
室にて監視している。
(12)非常放送設備
知が可能である。
特定イベント開催時,観客のパニックによる避
アリーナ/スタジアム空間の火艶覚知は,放水
難支障を避けるため,非常放送設備に通常時とイ
型ヘッドの炎検知器による覚知を基本とし,客席
ベント時の2つのモードを持たせ,イベントモー
部は自火報の煙・炎感知器にて覚知する。
ド時は,スタジアム/アリーナ空間の非常放送が
防災センターの総合操作盤にはCRTを設置し,
自火報などとの連動で自動的に鳴動しない(非常
発報箇所を視覚的に認識できるようにしている。
各ブロックの状態は,
(13)自火報設備
2000・7・建築設備士17
また,
図-12 ケーブルリール概要図
写責-6 ケーブルリール設置
大屋根(固定側) ケーブルリール
抜き∼中水による接続部洗浄∼脱臭剤+スケール
除去剤充填による防臭およびカブラ一部まわりの
スケール防止といったフローを組み込んでいる。
ダクト離接合に関しては,エアシリンダーを用い
てスライド式ダクトをフランジ状接続面で庄着さ
せる方式を採用した(図-ll,写真-5)c
これら離接合システムは水平方向±25mmの
MB停止誤差を吸収可能であり,地震時のMBと
建物本体との層間変位に対しても追随のできる仕
組みとなっている。 また,配管離接合に関しては,
MB移動中の火炎発生を考慮して,MBを最寄り
の定位置に移動させた上で,消火配管の緊急接続
が可能な制御フローを組み込み,信頼性・安全性
を確保している。
(2)ケーブルリール設備
写真-7ケーブルリールおよび平型ケーブルの
接続状況(メインアリーナ時)
MBに対し,電源供給・弱電・防災設備の稼働
状態を常時保持するため,固定大屋根部にケーブ
7. 可動対応設備概要
ルリール設備を2基設置(図-12,写真-6,写
真-7)。 ケーブルを巻き取る方向に常時トルクを
(1)配管・ダクト離接合システム
かけ,MB移動に伴いリールから引き出し/巻き
MBの移動に伴う空間形状の可変に追随し,ア
取りが行われる。
リーナ/スタジアム空間およびMB内の空調換気
また,リールの回転軸部分に電源ラインはスリ
設備,衛生設備,防災設備を稼動させるため,各
ップリングを,弱電・防災信号ラインは光化した
種空調・衛生・消火配管および空調・換気・排煙
信号の接続システム(光プリズムを利用)を採用
し,接続状態を保持する。 巻取ケーブルは,MB
ダクトの一連の切り離し・再接続を全自動で行う
システムを構築した。
配管離接合は各種配管をMB側および固定側の
に供給する6.6kV系幹線と,弱電・防災侶号の光
各プレートにまとめて固定し,MB側プレートを
にて耐熱性能の確認を行っている。
上下させて切り離し・接合を行う(図-10,写真
ケーブルを複合した平塑ケーブルを採用し,実験
おわりに
-4)c
特に汚水配管系統は,切り離し前に接続部の水
]8建築設備士蝣2000・7
さいたまスーパーアリーナは,「建物自体が動
く」というこれまでに例を見ない複雑な施設であ
号)
り,発注者である埼玉県のご担当の皆様をはじめ,
4)山村:特集ドーム建築さいたまスーパーア
ご支援・ご協力いただいた関係者ならびに工事関
リーナ,空気調和・衛生工学,第73巻第10号
係の皆様のご尽力により,このたび竣工・街びら
(1999年10月号)
きを迎えた。今後は,2000年9月のグランドオー
5)山村ほか:さいたまスーパーアリーナ,BE
プンに向けて各種調整を行っていく予定である。
建築設備(2000年5月号)
参考文献
6)山村:特集大型建物の建築設備さいたま
1)亀井ほか:さいたまアリーナ(仮)建築概要,建
スーパーアリーナ,建築設備と配管工事(20
築技術(1997年8月号)
2)川瀬・市橋ほか:さいたまスーパーアリーナ
00年増刊号(投稿中))
7)永瀬・山村:空間形状が可変する多目的アリ
建築設備の可動対応技術,建築技術(1999年
ーナの温熱環境,空気調和・衛生工学会学術
5月号)
3)司馬・買手ほか:さいたまスーパーアリーナ
遮音・室内音響計画,建築技術(1999年7月
◇ ◇ ◇
講演会講演論文集2000年9月(投稿中))
(平成12年6月28日原稿受理)
◇ ◇ ◇
2000・7・建築設備士 19