丸橋利夫 - 国際武道大学

国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:1− 11(2013) 原著論文
清代における民間宗教・秘密結社による
武術の伝播と発展に関する考察
林 伯原
要 旨
本研究の主要な知見は,以下のように要約される。
1. 清代には多くの民間宗教や秘密結社が存在したが,それらは清朝の専制統治及び苛酷な
迫害に対し,武力で対抗するために設立されたものである。また,それらは清朝の厳格
な取り締まりの下,地下化すると同時に多くの支派を林立させ,その反政府活動をより
一層活発化させた。史料によれば,これらの組織はそのほとんどが宗教や結社としての
活動に武術の訓練を関連付けて行っていた。
2. 明末清初(十六世紀中期から十七世紀にかけて)の社会動乱の中で,民間における各種
の武術流派の活動が活発に行われ,また新たな武術流派も次々と登場した。民間宗教や
秘密結社の発展は,民間の武術流派の創立と伝承を促進しただけではなく,異なる武術
流派間における交流及び武術の多様化にとって重要な役割を果たした。
3. 清代における民間宗教や秘密結社の各派には,加入者の反抗精神・闘争精神を鼓舞する
ため,護符・呪術・服餌・祈祷など,神霊の加護や神秘的な力を得られると見なされた
方法を武術訓練と結びつけて行うといった現象が現れた。これらは武術訓練に対する民
衆の意欲を引き出すために一定の役割を果たしたが,武術活動に神秘的色彩や非科学的
な迷信をもたらす結果になった。
4. 清代における道教は社会の下層へと広範に普及し,道教の「運気法」「練気法」といっ
た気功法が一般化,大衆化することで盛んに行われた。このことは当時の人々が武術と
気功を併せて行う契機となった。気功により体力が増し,疾病を取り除くことができる
といった宣伝には魅力があり,民間武術家のみに止まらず,貧窮し苦難にあえぐ多くの
農民たちの心を引きつけ,積極的に練習に取り組むための動機となった。このため,多
くの民間宗教や秘密結社は勢力や戦闘力を伸張させるために武術と気功を合わせた練習
を積極的に提唱し,こうした方法の民間での普及に大きな役割を果たした。
5. 民間宗教や秘密結社が展開する中で,伝統的哲学,医学,宗教などといった文化的な要
素が武術に浸透したことは注目に値する。例えば,八卦拳・陰陽拳・五祖拳などの出現
と発展あるいは吐納・導引・行気・煉気・内丹・周天・断食・胎息・座禅が武術に応用
されたことがその例である。
つまり,民間宗教や秘密結社の武術は清代以前の農民一揆とは大きく異なる独特な様相を清
代に現出させ,当時の民間における武術活動が空前の活況を呈す大きな要因の一つとなったの
である。
キーワード:民間宗教( folk religion),秘密結社(clandestine association),
武術(wushu),練気(気功)(a system of deep breathing exercises)
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:13 − 19(2013) 原著論文
思春期女子新体操選手の食行動異常に関わる心理的要因
−社会的体格不安と競技意欲との関係性について−
松村さくら (国際武道大学),山本勝昭 (福岡大学),
徳島 了 (福岡大学),今村律子 (九州工業大学大学院)
要 旨
本研究では,思春期女子新体操選手(年齢 15.3 ± 1.7 歳)の食行動異常に,社会的体格不安
と競技意欲がどのように関係しているかを明らかにすることを目的とした。その結果は以下の
通りである。
1. 本調査の対象者(選手)は新体操選手にふさわしい体重(BMI = 17)を意識している
ことがうかがわれる。
2.「食物摂取コントロール不能感」には,SPAS,「不節制」,「計画性」,「緊張性不安」が
関係していることが示唆された。
3.「食物摂取コントロール」には,SPAS,
「不節制」,
「競技価値観」,
「練習意欲」,
「知的興味」
が関係していることが示唆された。
4. 新体操選手の場合,高い競技価値観が食行動に負の影響を及ぼし,必ずしも高い方が良
好であることにつながらないと考えられる。
キーワード:新体操選手,食行動異常,社会的体格不安,競技意欲,思春期
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:21 − 27(2013) 原著論文
コーチングの評価に関する事例研究(Ⅱ)
− I 大学ラグビー部の防御局面に着目して−
廣瀬恒平 (国際武道大学),田中大雄 (國學院大学),千葉 剛 (筑波大学),
嶋崎達也 (筑波大学),安ヶ平浩 (国際武道大学)
要 旨
本研究では,2011 年と 2012 年の I 大ラグビー部の公式戦についてゲーム分析を行い,2012 年
に掲げた防御戦術が遂行されていたか,そしてその効果を検証することでコーチングの評価を
行うことを目的とした。
掲げた戦術は1)前に出る,2)1 st タックラーが低く入る,3)2 nd タックラーがボールへ
アシストタックルに入る,4)ボールを奪い返せないと思われるブレイクダウンには入らない,
という4つであった。
分析の結果から,これらの戦術はゲームにおいておおむね遂行されており,1)ボールキャ
リアーに前進させずに倒す,2)ボールをつながせない,3)ブレイクダウンを前方で発生させ
る,4)ボールを奪い返す,5)失点を抑える,といった効果が認められたことから,2012 年
に取り組んだ防御に関するコーチングには成果があったと考えられる。
今後は,戦術面からだけでなく,個人のタックル技能や体力的な要素といった観点からの検
討もなされるべきであろう。
キーワード:ラグビーフットボール,ゲーム分析,防御能力,コーチング評価
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:29 − 38(2013) 原著論文
教養スペイン語における
接続法過去および過去完了の変遷とその使用分布について
佐々木克実
要 旨
現在のスペイン語においては接続法過去に -ra 形と -se 形の二つが存在する。本稿ではまず両
形の歴史を調べ,その後スペイン語圏の主要6都市における両形,およびそこから派生した接
続法過去完了を世代,性,機能別に抽出し,分類,分析した。
その結果,1)マドリードではラテンアメリカの都市より高い頻度で -se 形の使用が確認され
たこと,2)接続法過去完了についてもマドリードでの他よりも高頻度の使用が見られたこと,
3)接続法過去,特に -ra 形がほかの直説法の時制のの代わりに使われている例を見つけること
ができたこと,4)ラテンアメリカ特有の熟語(”¿Cómo te dijera yo?”,”Vieras”,
“Como que si(=como
si)+ 接続法過去あるいは過去完了”)が確認されたこと,などが本稿での研究によって判明した。
キーワード:教養スペイン語,接続法過去,接続法過去完了,アメリカスペイン語
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:39 − 50(2013)原著論文
武道家川島堯の事績に関する研究
松尾牧則 (国際武道大学), 丸橋利夫 (国際武道大学)
要 旨
本研究では,川島堯著の『弓道回顧録』『弓道實脩私見』を基礎資料とし,川島堯の関係者
への聴き取り調査も行って,川島堯の事績について整理した。その結果,以下の点が明らかと
なった。
1. 川島堯は,明治 16 年(1883)4月 15 日,千葉県山武郡に生まれ,明治 43 年(1910),台
湾へ渡った。同地で日置流雪荷派弓術を酒井彦太郎に学んだ。弓歴 24 年で大日本武徳
会弓道範士となっている。昭和 32 年(1957)8月 17 日没。
2. 戦後,川島堯は故郷に引き揚げてきたが,武具や武道資料類は現地で処分せざるを得な
かった。したがって,川島堯の手元には伝書類は一切なかったために,弟子たちは伝書
を受けていない。
3. 昭和6年(1931),川島堯は台湾の私邸に「覓眞館」と称する弓道場を開設した。戦後,
昭和 30 年(1955)頃,故郷でも弓道場を開設し,同じく「覓眞館」と名付けた。覓眞
館は川島堯没後に金刀比羅神社脇(山武市松尾町)に移築されたが,建物は現存しない。
4. 覓眞館での稽古は巻藁稽古を中心としており,的前稽古は多くはなかった。日曜日が定
例の稽古日であった。
5. 台湾で築かれた川島堯の師弟関係は帰国後は継続されなかった。戦後,郷里において新
たな弟子を得て師弟関係を築いた。しかし,川島堯もその弟子も戦後の弓道連盟にはあ
まり関わらなかった。そのことが戦後の弓道界に川島堯の名があまり知られていない理
由であると考えられる。
キーワード:武道,弓道,弓術,流派,日置流,雪荷派
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:99 − 113(2013) 原著論文
アリストテレスと友愛
上林昌太郎
要 旨
大アリストテレス学者 W. D. ロスは,「『ニコマコス倫理学』第八第九巻はほかの巻と重大な
関係を何ら持たぬ」と言った。私の意見は全く違う。
私は両巻の内容を顧み,アリストテレスが開示してくれる友愛の真相を見る。第一に,善き
人同士の友愛が一義的で完全な友愛であり,利益や快に基く友愛は二義的で不完全な友愛でし
かない,と彼は言う。第二に,善き人のおのれに対する友愛が友愛四徴表に適う友愛の原型で
あり,善き人同士の友愛はこれの派生型である,と彼は言う。第三に,「友にして貰うこと」
ではなく,「して上げること」に友愛の本質があるのは,「友にして上げること」は「我々が自
己を実現すること」であるからだ,と彼は言う。第四に,我々が現実活動する際,我々は「我々
は現実活動している」と感覚して快を覚えるが,同様な構造が友に対しても存在し,我々は「友
が現実活動している」と感覚して快を覚える。
友愛研究に際してアリストテレスは第一−第七巻の徳分析を援用するが,これは第八第九巻
が第一−第七巻を前提することを示している。第八第九巻において彼は(イ)「現実活動」概
念を頻用し,(ロ)「理性が各人である」としばしば言う。(ハ)第九巻最終章では彼は「我々
は生き甲斐であることをしながら友達と過ごしたいと思う」と言い,五つの事例(共に飲む,
共に賽を打つ,共に運動する,共に狩猟をする,共に哲学する)を挙げるが,これらはいずれ
も余暇にすることである。第十巻第六 ‐ 第八章(最終幸福論)において,理性の現実活動で
ある観照が最終的な幸福であり,哲学観照は余暇に行う真面目仕事である,と彼は言う。つま
り,(イ)(ロ)(ハ)は最終幸福論の分析道具を用意している。第八第九巻はこの位置になけ
ればならないのである。
キーワード:アリストテレス,『ニコマコス倫理学』,友愛,現 実活動,理 性
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:51 − 54(2013)研究報告
剣道団体試合における選手配置に関する研究
−ポジション別の貢献度−
井上哲朗 (国際武道大学),岩切公治 (国際武道大学),中村 充 (順天堂大学)
要 旨
本研究では,剣道の団体試合において,上位に勝ち上がっていくチームは,どのポジション
の選手がチームの勝利に貢献しているのかを分析し,検討を行った。その結果は,以下の通り
である。
1)男子において貢献度が高い順に,大将,次鋒,副将,先鋒,中堅であった。
2)女子において貢献度が高い順に,次鋒,先鋒,副将,中堅,大将であった。
キーワード:剣道,試合,選手配置
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:115 − 133(2013) 研究報告
『夢十夜』 第一夜,第五夜の一解釈
望月好恵
要 旨
漱石の『夢十夜』の中で,第一夜と第五夜は男女の愛がテーマとなっている。第一夜と第五
夜は,描写の仕方も結末も対照的に書かれているが,両作品の基底に共通してあるのは,宗教
的ともいえるような純粋な愛の希求である。
第一夜では,死にゆく女が男に,自分の墓の傍で百年待っていてくれ,百年後に逢いに来る
と約束する。一見,女が男を試しているようだが,一方で,男も女が本当に約束を果たすかど
うかを見届けようとしている点で,女の愛を試している。女は百合になって約束通り百年後に
男に逢いにやって来る。これは,作家が自らを癒すための物語でもあるのである。
第五夜では,敵に処刑される前に一目逢いたいという男の願いに応えるため,女は必死に馬
を駆るが,天 探女のせいで,男のもとに着く前に死んでしまう。この悲劇的な結末は,作家の
中の「天 探女」,自分の中にあって自分で統御できないもの,すなわちフロイトの言う「エス」
が成した業であると解釈でき,最後の文,「この蹄の痕の岩に刻みつけられている間,天探女
は自分の敵である」は,作家自身が述べた言葉でもある。それほど天探女を強く憎むのは,そ
れほど作家,漱石が,女からの真実の愛を強く求めていたからなのである。
キーワード:美しい女,フェミニズム批評,『文鳥』,約束,純愛,世俗化された愛,
天探女,エス
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:56 − 62(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
スポーツ医科学サポートを通じた
トレーナー育成システムの構築に関する研究
山本利春 (国際武道大学),笠原政志 (国際武道大学),魚住孝至 (国際武道大学),
奥山秀雄 (国際武道大学),田原茂行 (研究支援センター事務室)
要 旨
本研究はこれまで実施してきた体育大学における学生主体のスポーツ医科学サポートシステ
ムに関する取り組みをより効果的に改良して,体育系大学におけるトレーナー教育のモデルと
なるシステムを提案することを目的とした。
学生トレーナーは新入生メディカルチェック,アスレティックリハビリテーション,競技種
目に応じた体力測定,トレーナーステーション,コンディショニングセミナーなどのいずれの
事業においても実地訓練に重きをおき,学生が自主的に運営・実行することで実践的な経験を
積むことが可能になっている。この実地訓練時間は医療人養成機関に劣らぬほどの時間を確保
することを目指している。その結果,課程教育で受けた専門的知識を実践で活用できる知恵に
変える能力を身につけることができ,社会から求められる人材を育成できるのではないかと考
えている。
キーワード:スポーツ医科学,トレーナー教育
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:64 − 70(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
学校水泳教育の位置づけに関する実態調査と将来展望
土居陽治郎 (国際武道大学),中島一郎 (国際武道大学),
下永田修二 (千葉大学教育学部),松井敦典 (鳴門教育大学),
南 隆尚 (鳴門教育大学)
要 旨
平成 12 年度より「学校水泳研究会」を立ち上げ,学校水泳の現状と問題の把握に努めてき
たが,問題の所在を検討するたびに学習指導要領の歴史的変遷や教員養成側の大学カリキュラ
ム,さらには学校プール利用という形での地域社会との連携など,主に学校現場での問題提起
や解決策の模索ということでは容易に対応できないことが調査等を行って浮き彫りになってき
た。主たる原因としては,学校水泳の位置づけが単に「泳ぐ」「泳げる」という運動そのもの
に執着する傾向があり,そのままでは民間企業等で取り組んでいる活動との差別化を図れず,
学校教育としての果たすべき方向性が明確化されていない傾向は否めない。新しい学習指導要
領ではこうした問題を背景に,「安全水泳」への取り組みを強調しているが,十分に教育界に
浸透しているわけではない。本研究では,現状の学校水泳の問題点を解決するための具体的方
策を検討し,以下のような観点でその成果をまとめるものである。
・地域スポーツとの連携 主に日本水泳連盟公認指導者との連携強化策
・安全水泳指導教材の開発 新指導要領で盛り込まれた内容を指導者が学べる教材開発
・学校教育全体との連携化 水泳教育内容と他教科との関連性を具体的に明示
キーワード:学校体育,水泳教育,地域スポーツ連携,新学習指導要領
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:72 − 81(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
幼少年のライフスタイル改善と体力向上に関わる
近隣地域との共同調査介入研究
小磯 透 (国際武道大学),中西 純 (国際武道大学),長野敏晴 (いすみ市立東小学校),
中村功樹 (いすみ市立千町小学校),平田佳弘 (環太平洋大学),
大野昌子 (勝浦市立勝浦幼稚園),溝口洋樹 (匝瑳市立八日市場第一中学校),
大崎正和 (浜田市立第一中学校),小山 浩 (筑波大学附属中学校),
平野延行 (筑波大学附属坂戸高等学校),森 喜雄 (いすみ市教育委員会),
鮫田 晋 (いすみ市教育委員会),鈴木宏哉 (東北学院大学),鈴木和弘 (山形大学),
中野貴博 (名古屋学院大学),内田匡輔 (東海大学),國土将平 (神戸大学)
要 旨
多くの学校現場に本学が関わる三年間の包括的実践・調査研究により多くの成果が得られ
た。幼稚園では訪問指導による運動遊びの効果,運動能力の向上,小学校短距離走では疾走
フォームの改善,疾走区間,最高疾走速度の改善や成績向上,始業前の軽運動が学習成果に好
影響をもたらす示唆も得られた。中学校では体つくり運動の定期的実践により体力の向上,生
活習慣の改善,規範意識の改善等の効果や,体つくり運動単元の作成を中核とする保健体育科
の年間指導計画の立案,作成の改善も示された。同一地域での小中高生の健康意識に関しては
特に女子高生のやせ願望の強さが顕著である懸念がここでも確認された.持久走・長距離走に
関する意識では,小学生から高校生にまで忌避感が確認されたが,その意義や価値を認めてい
ることも表れており,授業改善の手立ての示唆が得られた。
キーワード:学校体育,体力,幼児,児童,生徒,ライフスタイル
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:83 − 87(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
平成 18 年度から平成 23 年度にわたる
御宿町「健康・体力チェック」の集計結果報告
井上哲朗 (国際武道大学),小西由里子 (国際武道大学),谷口有子 (国際武道大学),
見波 静 (社会福祉法人よしだ福祉会),増尾善久 (マッスル・ラボ有限会社),
高田 誠 (御宿町 B&G 海洋センター)
要 旨
御宿町では人口に対する 65 歳以上の高齢者の割合が 30%を超えるなどの,数年後の医療費
や介護費の負担増が容易に推測される状況が進行している。このような現状のなか,健康診断,
形態・体力測定,運動指導,栄養指導を一つにした健康づくり事業が企画された。そのなかの
「健康・体力チェック」なる形態・体力測定部門の協力を本学に依頼された。本研究では,平
成 18 年度から平成 23 年度の6年間にわたり行われた「健康・体力チェック」の集計結果を報
告する。
キーワード:健康・体力づくり,形態,体力,中高年者
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:89 − 94(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
公共スポーツ施設の指定管理者制度に対応できる
体育系学部教育内容の開発
−千葉県内施設管理者企業との連携を中心に−
松井完太郎 (国際武道大学),土居陽治郎 (国際武道大学),
鈴木知幸(前 武道・スポーツ科学研究科・特任教授),木村寿一 (国際武道大学)
要 旨
わが国の公共スポーツ施設数は約6万個所もあり,2003 年の地方自治法改正に伴う指定管
理者制度導入によって,これまでに数多くの民間組織(フィットネス企業,スポーツ用品メー
カー,プロスポーツ団体,施設メンテナンス企業や競技団体・地域スポーツ団体等)が参入し
てきている。それ以前は自治体が出資する「財団,事業団,公社等」といった外郭団体が独占
的に運営にあたっていたことから,体育系学部学生との関係性は薄いものがあった。法改正に
よって規制緩和が進んだことで,体育系学部学生の専門性を生かす場として注目する必要性が
出てきたが,制度導入後まもないことから,体育系学部でのカリキュラムや育成視点には数多
くの課題がある。こうした課題を,可能な限り,指定管理者企業・団体での公共スポーツ施設
での管理運営面での学生実習を通じ,今後の体育系学部教育への指針を得ることを本プロジェ
クトの目的とした。その結果は,次のようにまとめることができる。
・「スポーツ基本法」によって強調されているテーマでありながら,体育学部教育の軸は「学
校体育」(延長線上に位置する部活動)が中心であることからの転換を図り,地域経営を
含めたマネジメント能力の開発・育成に着手する必要性が高いこと
・ 公共スポーツ施設における指定管理者側が最重要視すべき内容としては,「リクスマネジ
メント」であり,体育学部教育を通じてのリスクマネジメントへの取り組みや理解促進が
急務であること
キーワード:公共スポーツ施設,指定管理者制度,体育学部カリキュラム,
リスクマネジメント,マネジメント資質
国武大紀要 (Int. Budo Univ. Journ.)
第29号:96 − 98(2013)
大学教育研究プロジェクト研究成果報告書
『武道論集』第3集「グローバル時代の武道」英語版の刊行
魚住孝至 (国際武道大学),柏崎克彦 (国際武道大学),林 伯原 (国際武道大学),
Alexander BENNETT(関西大学),阿部哲史 (Dharma Gate Budapest Buddhist University),
朴 周鳳 (早稲田大学),Maja SORI DOVAL(明治大学)
要 旨
武道が急速にグローバル化している現在,日本の武道の独自性は何か,他の武術と比較文化
論的に捉えるとともに,現代武道の指導の現場で直面している諸問題について考えることが重
要である。昨年度研究所で編集した『武道論集』第3集「グローバル時代の武道」を英語に翻
訳して広く海外の人々にも広めることを目指した。
第一部は,東アジアにおける日本武道・中国武術・韓国武芸を比較文化的に論じている。第
1章は,日本武道の伝統的な基盤と近代化の過程,さらに戦後国際化していく流れを,中国・
朝鮮武術や近代スポーツとも比較しつつ論じる。第2章は中国武術史の大家が中国武術と日本
武道との比較をしている。第3章は韓国人研究者が戦後に再編・展開する韓国武芸について論
じている。
第二部は,現代武道の現場で生じている諸問題を考えた。第1章は,元世界チャンピオンで
海外での指導経験豊かな柔道家が,国際柔道連盟創立以降,最近までの展開と日本の対応を論
じる。第2章は,ドイツ人研究者が,少年期から綿密な教育指導法を工夫しているドイツ柔道
の現状を紹介する。第3章は,ハンガリーで長年指導する剣道家が,外国での剣道指導で直面
する問題と解決の一方策を論じる。第4章は,外国人武道家・研究者が,外国人が武道を始め
る動機などについて論じる。
付録として,15 世紀以降の日本,東アジア,欧米の社会の動きの中で武道・武術・スポー
ツがいかに展開したのかの年表を付けた。
各章をその内容に詳しいネイティヴか留学経験がある人6名が英訳した上で,第4章の著者
でもある Alexander BENNETT 氏に全体の監修をお願いした。 B 5版 136 頁
キーワード:武道の比較文化論的考察,中国武術,韓国武芸,武道のグローバル化