解答概要 離散構造 3,4 クラス 演習 8 出題:2011 年 2 月 4 日(金) (1) 日本に住んでいる人の集合を A とおいたとき、以下の問に答えよ。 (a) A 上の二項関係 R が、xRy ⇔ (x と y がつくば市に住んでいる) と定義されるとする。 この R は、同値関係であるか否か、理由と共に示せ。 (解答) (反射律) つくば市に住んでいる人 x については、x と x がつくば市に住んでい るといえるが、つくば市に住んでいない人については、この関係は成立しない。 よって、反射律は成り立たない。 (対称律) x と y がつくば市に住んでいるならば、y と x がつくば市に住んでいる と表現できるため、対称律は成り立つ。 (推移律) x と y がつくば市に住んでいて、y と z がつくば市に住んでいるならば、 x と z がつくば市に住んでいることになる。よって、推移律は成り立つ。 (同値関係) 対称律と推移律が成り立つが、反射律が成り立たないため、同値関 係ではない。 (b) A 上の二項関係 S が、xSy ⇔ (x は y が小学生であるときの先生である) と定義され るとする。このとき、合成関係 R ◦ S と合成関係 S ◦ R において、違いがでてくるか 否か、理由と共に示せ。 (解答) 以下のような違いが出てくる。 x(R ◦ S)y において、x はつくば市民であり、y はつくば市民である小学校の先生 にとっての生徒となる。一方、x(S ◦ R)y において、x はつくば市民が小学生の ときの先生であり、y はつくば市民となる。 後者では、先生である x がつくば市以外に住みながら、つくば市で小学校の先 生をしていることもありえる。このため、前者での x が必ずつくば市民である のに対して、後者での x はつくば市民とは限らない。なお、前者での先生は、 xRz ∧ zSy を満たす z ∈ A であり、この先生 z はつくば市に住んでいる。 (2) 無向グラフ G = ⟨V, E⟩ が V = {x ∈ N|0 ≤ x ≤ 5}, E = {{x, y}|y = ax + b ∧ a, b ∈ {1, 2} ∧ x ∈ V ∧ x ̸= y} と定義されるとき、以下の問いに答えよ。但し、自然数の集合を N とし、0 を含むとする。 (a) G を描画した上で、頂点 2 の次数と G のサイズをそれぞれ示せ (解答) x ∈ V と y ∈ V が y = x + 1, y = x + 2, y = 2x + 1, y = 2x + 2 の何れかを満た すときに x と y の間に辺を引くことにより、G が 5 0 4 1 3 2 というグラフであることが分かる。 頂点 2 に接続している辺の数は 5 であるため、頂点 2 の次数は 5 である。 G のサイズは G の辺の総数であり、11 である。 (b) 頂点 5 から頂点 0 へ単純道の中で最も長いものの長さを示せ。 (解答) 以下の理由により、長さは 10 である。 まず、頂点 5 を始点、頂点 0 を終点とする全ての辺を通る単純道 P が存在しな いことを示す。 次数が奇数となる G の頂点は 5 と 2 の 2 つのみである。一般に、次数が偶数であ る頂点が単純道の終点(もしくは始点)であるすると、その頂点自体が始点(も しくは終点)でないと、その単純道は全ての辺を通る単純道とはならない。P に おいて終点となる頂点 0 は次数が偶数であるが、頂点 0 が始点にもなっている訳 ではない。よって、P を描くことはできない。 次に、全ての辺の数は 11 であるから、頂点 5 を始点、頂点 0 を終点とする長さ 10 の単純道 P を探してみると、 ⟨5, 4⟩, ⟨4, 3⟩, ⟨3, 5⟩, ⟨5, 2⟩, ⟨2, 4⟩, ⟨4, 1⟩, ⟨1, 3⟩, ⟨3, 2⟩, ⟨2, 1⟩, ⟨1, 0⟩ が存在する。よって、頂点 5 を始点、頂点 0 を終点とする単純道のうち、長さが 10 のものがもっとも長い単純道となる。 一般に、与えられたグラフにおいて、次数が奇数となる頂点の個数が 2 以下である ならば、そのグラフの全ての辺を通る単純道が存在する。次数が奇数となる G の頂 点は 5 と 2 の 2 つのみであるため、G の全ての辺を通る単純道 P が存在する。G に おいて全ての辺を通る単純道 P を描いた場合、P における頂点 5 の出次数の方が頂 点 5 の入次数より多ければ、P における頂点 2 の入次数の方が頂点 2 の出次数より多 くなる。もしくは、P における頂点 2 の出次数の方が頂点 2 の入次数より多ければ、 P における頂点 5 の入次数の方が頂点 5 の出次数より多くなる。つまり、頂点 5 と頂 点 2 が P の始点と終点、もしくは、終点と始点となっている。この問題では、始点 が頂点 5 であるが、終点が頂点 2 ではないため、この始点と終点の間を結ぶ全ての辺 を通る単純道は存在しない。 (3) 無向グラフ G が以下の 2 つの条件を満たすとき、木であることを証明せよ • G は連結である (グラフ G が連結とは、どの 2 つの頂点の間にも道があることをいう)。 • G から、どの辺を取り除いても (頂点は除去しない)、連結でないグラフができる。 (解答) 無向グラフ G が連結であり、どの辺を取り除いても連結でないグラフができるに も係わらず、木でないと仮定する。 G の頂点の中で根となる特別な頂点が存在しないために、木でなくなることがな いように、G の任意の頂点 a を G が木であった場合の根として指定する。すると、G が木でないことは、根 a への道が唯一存在するとは言えない頂点 v が存在すること を意味する。これは、頂点 v から根 a への道が存在しないか、2 つ以上の道が存在す るかのどちらかである。この内、前者が成り立っている場合、G は連結であるとい う条件と矛盾する。後者が成り立っている場合、G の任意の辺を取り除くと連結で なくなるという条件と矛盾する。よって、いずれの場合も、矛盾が導ける。つまり、 仮定が誤りであり、G は木である。
© Copyright 2024 Paperzz