11MB - 地球環境産業技術研究機構

平成18年度
地球環境国際研究推進事業
国際産業経済の方向を含めた
地球温暖化影響・対策技術の総合評価
成 果 報 告 書
平成19年3月
財団法人 地球環境産業技術研究機構
ま
え
が
き
本報告書は、温暖化問題の総合評価に関する、俗にPHOENIXと呼称している研究
プロジェクトの最終報告書である。20世紀になっていろいろな地球環境問題が顕在化し
たが、その中で、温暖化問題は、商用エネルギーの8割5分以上を占める化石燃料の燃焼
から不可避的に発生する二酸化炭素が主因であるだけに、もっとも対応の困難な文明的問
題といえるであろう。
それへの対応のために、1992年に気候変動枠組条約が締結され、2005年には具
体的な温室効果ガス排出抑制目標を定めた京都議定書が発効した。この気候変動枠組条約
では、究極目標として、人類文明にとって危険でないレベルでの大気中温室効果ガス濃度
の安定化、がうたわれている。誰からみてもきわめて妥当と思われる目標だが、実際には
これだけでは回答にならない。温暖化は抑制できれば出来るほどのぞましいのはたしかだ
が、抑制コストはその抑制努力が大きいほど上昇する。となると結局はコストと温暖化の
影響のみあいで「危険でない」レベルをきめるしかないのだが、この両者とも多岐多様で
あり、またその値に関する知識の不確定性も大きい。このような状況で、人類にとって妥
当と考えられる温室効果ガス排出抑制経路(時間的経緯)を定めることは当然きわめて困
難な問題である。従来から、温暖化対策のコストと温暖化影響の両者をともに考慮して、
もっとも総合コストの安い温室効果ガスの最適排出経路を求めよう、という試みが、
Integrated Assessment の 名 の も と に 行 わ れ て き た が 、誰 し も が 納 得 す る よ う な 成 果 が 得 ら れ
なかったのは、こうした不確定性によるところが大きい。
一方、最近はヨーロッパを中心に長期将来の温暖化対応の方向を提言する試みが増えて
いる。2007年に入ってEU理事会が提案している大気温度上昇を産業革命以前の自然
のレベルにくらべ2度以内に抑える案や、イギリス政府の依頼にもとづいて作成された
Stern Review は そ の 典 型 例 だ が 、 こ れ ら の 提 案 は 簡 単 な 検 討 か ら す ぐ に わ か る よ う に 、 相
当にきびしい目標で、これを実現するためには世界が従来よりもはるかに大きな努力とコ
ストを払わねばならない。果たしてこれは“危険”と対策とのバランスをとった総合的な
答えと言いうるのだろうか?
本研究は、このような状況のもとに、現在知られている知識の範囲で、温室効果ガスの
どのような排出経路が合理的と考えられるかを、温暖化のさまざまな影響と対策とそのコ
-i -
ストを総合的に評価し、バランスのとれた答えを見出すのを目的としている。このための
具体的手法としては、機械的な最適化計算を行うかわりに、多くの関係専門家の問題の諸
側面への意見を対話型のアンケート調査で探索するという手法を採用した。この結果とし
て、本研究では、EUの提言よりは緩やかな対応をのぞましい対策経路として結論してい
る。
なお、ここでは、わが国の関係研究グループのみならず、こうした長期の排出シナリオ
に 指 導 的 な 役 割 を 果 た し て き た オ ー ス ト リ ア の 国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 ( IIASA) と
密接に協力をしながら作業を行った。本報告書は、このような国際共同研究の最終成果を
とりまとめたものである。研究をすすめるにあたっては、諮問委員会委員長の東京大学山
地教授をはじめ外部の多くの研究者のかたがたに多大のご協力をいただいた。厚く感謝申
し上げたい。
平成19年3月
財団法人 地球環境産業技術研究機構
副理事長
地球環境産業技術研究所長
-ii -
茅
陽一
委員会、ワーキンググループ名簿
(順不同)
<温暖化影響・対策総合評価委員会>
委 員 長
山
地
憲
治
東京大学大学院 工学系研究科 教授
委
内
山
洋
司
筑波大学大学院 システム情報工学研究科 教授
大
政
謙
次
東京大学大学院
員
甲斐沼
美紀子
農学生命科学研究科 教授
(独 )国 立 環 境 研 究 所 地 球 環 境 研 究 セ ン タ ー
温暖化対策評価研究室 室長
立
花
慶
治
東 京 電 力 (株 ) フ ェ ロ ー
谷
口
武
俊
(財 )電 力 中 央 研 究 所 社 会 経 済 研 究 所 所 長
時
岡
達
志
(独 )海 洋 研 究 開 発 機 構 地 球 フ ロ ン テ ィ ア 研 究 セ ン タ ー
センター長
松
橋
隆
治
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授
三
村
信
男
茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター 教授
吉
岡
完
治
慶応義塾大学 産業研究所 教授
委員会事務局
地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 (RITE) シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ
<影響・適応評価ワーキンググループ>
主
査
森
俊
介
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 主 席 研 究 員
東京理科大学 理工学部 教授
委
員
阿
部
彩
子 東京大学 気候システム研究センター 地球フロンティア
研究システム地球温暖化予測研究領域 助教授
川
島
清
水
博
寶
之
東京大学大学院 農学生命科学研究科 助教授
庸
東京大学大学院 農学生命科学研究科 助手
馨
京都大学 防災研究所 教授
章
京都大学大学院 エネルギー科学研究科 助教授
前
田
山
中
康
裕
北海道大学大学院 地球環境科学研究院 助教授
横
木
裕
宗
茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター 助教授
伊
東
明
人
RITE 東 京 分 室 主 席 研 究 員
秋
元
圭
吾
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 主 任 研 究 員
礼
美
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
林
本
間
隆
嗣
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
佐
野
史
典
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
小
田
潤一郎
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
亜
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
寧
東
-iii -
<緩和策評価ワーキンググループ>
主
査
森
俊
介
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 主 席 研 究 員
東京理科大学 理工学部 教授
委
員
小
杉
隆
信
立命館大学
政策科学部 助教授
桜
井
紀
久
電力中央研究所 社会経済研究所
エネルギー環境政策領域 領域リーダー 上席研究員
堂
脇
早
見
藤
井
山
志
東京理科大学
均
慶應義塾大学 商学部 教授
康
正
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 助教授
本
博
巳
電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員
伊
東
明
人
RITE 東 京 分 室 主 席 研 究 員
秋
元
圭
吾
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 主 任 研 究 員
本
間
隆
嗣
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
佐
野
史
典
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
小
田
潤一郎
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
亜
RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 研 究 員
寧
清
東
理工学部 経営工学科
-iv -
講師
目
要約
(和 文 ・ 英 文 )
次
……………………………………………………….1
第 1 章 は じ め に .................................................................................. 11
1.1 本 プ ロ ジ ェ ク ト の 背 景 .............................................................................. 11
1.2 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト の 目 標 ..........................................................................12
1.3 平 成 18 年 度 実 施 計 画 概 要 .........................................................................13
第 2 章 地 球 温 暖 化 影 響 ・ 適 応 の 評 価 ................................................. 16
2.1 地 球 温 暖 化 影 響 ・ 適 応 評 価 の 概 要 ............................................................16
2.2 排 出 パ ス の 想 定 お よ び 最 新 の 知 見 に 基 づ く 気 候 変 動 量 の 推 定 ................16
2.2.1
2.2.2
社 会 シ ナ リ オ ・ 排 出 パ ス の 想 定 ...................................................................16
最 新 の 知 見 に 基 づ く 気 候 変 動 量 の 推 定 ........................................................20
2.3 各 温 暖 化 影 響 事 象 の 調 査 お よ び 評 価 ........................................................24
2.3.1
2.3.2
2.3.3
2.3.4
2.3.5
2.3.6
2.3.7
2.3.8
2.3.9
2.3.10
2.3.11
熱 塩 循 環 崩 壊 に 関 す る 評 価 ..........................................................................24
グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減 少 に 関 す る 調 査 ....................................................30
氷 河 ・ 氷 帽 に 関 す る 調 査 .............................................................................34
海 面 上 昇 ・ 沿 岸 域 影 響 評 価 ..........................................................................38
健 康 影 響 の 評 価 ............................................................................................46
農 作 物 影 響 の 評 価 ........................................................................................53
水 資 源 影 響 の 評 価 ........................................................................................61
陸 上 生 態 系 に 関 す る 調 査 .............................................................................73
海 洋 酸 性 化 に 関 す る 調 査 .............................................................................79
生 物 地 球 化 学 的 影 響 に 関 す る 調 査 ............................................................85
そ の 他 の 温 暖 化 影 響 事 象 に 関 す る 調 査 .....................................................86
2.4 地 球 温 暖 化 影 響 ・ 適 応 策 評 価 の ま と め .....................................................90
第 3 章 地 球 温 暖 化 緩 和 策 の 評 価 ........................................................ 92
3.1 地 球 温 暖 化 緩 和 策 の モ デ ル 評 価 の 概 要 .....................................................92
3.2 動 学 的 世 界 多 地 域 多 部 門 経 済 ・ エ ネ ル ギ ー 統 合 モ デ ル DEARS の 拡 張 ...92
3.2.1
3.2.2
3.2.3
モ デ ル 概 要 ...................................................................................................92
推 定 投 入 係 数 の 検 討 .....................................................................................93
A1FI ケ ー ス の 投 入 係 数 の 推 定 .....................................................................98
3.3 モ デ ル 分 析 結 果 と そ の 政 策 的 含 意 .......................................................... 108
3.3.1
3.3.2
3.3.3
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス 想 定 .................................................................... 108
リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の 結 果 ........................................................................ 109
CO 2 排 出 削 減 に よ る に よ る 世 界 産 業 構 造 へ の 影 響 .................................... 117
-v -
3.3.4
3.3.5
3.3.6
3.3.7
3.3.8
CO 2 削 減 に よ る GDP へ の 影 響 ................................................................... 120
S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GDP ロ ス が 発 生 す る 理 由 ............................. 121
S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GDP ロ ス を 発 生 さ せ る 部 門 の 調 査 ............... 125
そ の 他 の 感 度 分 析 ...................................................................................... 126
生 産 額 と 生 産 量 の 検 討 ............................................................................... 131
3.4 Non-CO 2 GHG の 排 出 お よ び 緩 和 策 の 評 価 .............................................. 134
3.4.1
3.4.2
3.4.3
3.4.4
3.4.5
3.4.6
3.4.7
は じ め に ..................................................................................................... 134
Non-CO 2 排 出 量 の 予 測 ............................................................................... 135
Non-CO 2 排 出 量 予 測 の 評 価 方 法 ................................................................. 136
評 価 結 果 ..................................................................................................... 142
MAC に よ る 削 減 ポ テ ン シ ャ ル の 評 価 ........................................................ 163
評 価 結 果 ..................................................................................................... 167
簡 易 気 候 変 動 モ デ ル ( MAGICC: Model for the Assessment of Greenhouse-gas
Induced Climate Change) に よ る 気 候 変 動 量 の 推 定 ....................................... 178
3.4.8 ま と め ........................................................................................................ 189
3.5 温 暖 化 緩 和 策 の 評 価 の ま と め ................................................................. 190
第 4 章 温 暖 化 影 響 と 対 策 の 総 合 評 価 ............................................... 194
4.1 総 合 評 価 の 概 要 ....................................................................................... 194
4.2 エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト ( E J ) の 実 施 と 分 析 結 果 ..................... 197
4.2.1
4.2.2
4.2.3
4.2.4
4.2.5
4.2.6
4.2.7
は じ め に ..................................................................................................... 197
E J の 手 続 き に 関 す る 事 項 ........................................................................ 197
E J 第 1 ス テ ッ プ の 集 計 ........................................................................... 199
E J 第 1 ス テ ッ プ の 集 計 結 果 を 用 い た 費 用 便 益 分 析 ................................ 206
E J 第 2 ス テ ッ プ の 集 計 ........................................................................... 213
E J 第 2 ス テ ッ プ の 結 果 の 分 析 ................................................................. 218
E J に 関 す る 今 後 の 課 題 ........................................................................... 220
4.3 異 な る ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ に 対 す る 温 暖 化 影 響 ・ 緩 和 策 評 価 の 比 較 221
4.4 総 合 評 価 の ま と め ................................................................................... 238
第 5 章 温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 政 策 的 含 意 ............................ 241
5.1 温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 動 向 .......................................................... 241
5.1.1
5.1.2
5.1.3
5.1.4
気 候 変 動 枠 組 条 約 に お け る 言 及 ................................................................. 241
温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 政 治 的 な 動 向 ............................................... 242
ス タ ー ン ・ レ ビ ュ ー ( Stern Review) ........................................................ 244
IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書 ............................................................................. 247
5.2 本 プ ロ ジ ェ ク ト か ら の 政 策 的 含 意 .......................................................... 248
5.2.1
5.2.2
PHOENIX と Stern Review の 比 較 ............................................................... 248
政 策 的 含 意 の ま と め ................................................................................... 254
第 6 章 国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 (IIASA)と の 連 携 .................... 258
-vi -
第 7 章 ま と め と 今 後 の 課 題 .............................................................. 260
7.1 本 研 究 の ま と め ....................................................................................... 260
7.1.1
7.1.2
周 辺 状 況 ..................................................................................................... 260
研 究 総 括 ..................................................................................................... 261
7.2 今 後 の 課 題 .............................................................................................. 262
付
録 ............................................................................................. 265
付録 1
エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト 第 1 ス テ ッ プ の た め の 提 供 資 料 ........ 267
付録 2
エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト 第 2 ス テ ッ プ の た め の 提 供 資 料 ........ 291
付録 3
A1FI シ ナ リ オ ベ ー ス の ス コ ア ボ ー ド ............................................... 324
付録 4
IIASA-RITE 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム .......................................................... 331
付録 5
IIASA に お け る 本 事 業 の 関 連 研 究 .................................................... 430
-vii -
要
約
要
約
本書は、経済産業省の補助事業「地球環境国際研究推進事業」の一つとして平成14年
度より平成18年度までの5ケ年間にわたり実施してきたプロジェクト「国際産業経済の
方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」の最終年度報告書である。プロジェ
クトの目標は、地球温暖化による影響と緩和策の双方を考慮した際のあるべき長期温暖化
抑 制 目 標 の レ ベ ル 、 す な わ ち 、 CO 2 排 出 抑 制 長 期 目 標 レ ベ ル を 見 出 し 、 同 時 に 、 そ の と き
の温暖化影響の大きさおよび最適緩和策とそのコストを示すことである。
この長期目標は、気候変動量や温暖化影響に関する不確定性の他、生態系や人の健康へ
の影響など非市場財にも及ぶ温暖化影響の金銭評価や地域的・時間的に差異の大きい各種
温暖化影響の統合をどのように行うかなどの価値判断の問題が不可避であるため、科学の
みでは一義的に決定のできない問題である。そのため、本プロジェクトでは、温暖化緩和
のコストを定量評価し、また、温暖化影響の大きさを事象固有の物理量で定量評価するも
のの、価値判断の伴う非市場的温暖化影響の金銭評価や地域統合、時間統合の問題につい
ては専門家の判断をうかがうこととし、いわゆるエキスパートジャッジメントにより望ま
しい長期排出抑制レベルを調査した。
現在、京都議定書以降の排出削減に関わる国際的議論が進展している。そして、その議
論 の 前 提 と な る 長 期 抑 制 目 標 と し て EU は 気 温 上 昇 を 産 業 革 命 以 前 と 比 較 し て 2 ℃ 以 下 と
することを提唱しているが、はたして、それはいかなる根拠に基づくものか疑問のあると
ころである。本プロジェクトによる長期抑制目標へのアプローチと現時点におけるその回
答は上記議論に直接の貢献をすることはもちろんであるが、むしろ、この複雑な問題に対
して今後の国際議論の論点を明確にしその収斂に向けて重要な役割を果たすことがより大
きな貢献と考えられる。
本プロジェクトにおいて、最適緩和策の評価は長期および短中期の2通りを実施した。
そのうち短中期のものについてはエネルギーシステムの変革のみならず産業連関をレオン
チ ェ フ 型 で 束 縛 し た 場 合 の 産 業 構 造 の 変 化 や 産 業 各 部 門 へ の 影 響 な ど も 評 価 し た 。そ し て 、
こ の よ う に 産 業 連 関 を 考 慮 し た 場 合 、450ppm 安 定 化 以 上 の 厳 し い 排 出 抑 制 に 対 し て は 、従
来 言 わ れ て き た よ り は る か に 大 き な GDP 損 失 が 生 じ る と い う 興 味 深 い 結 果 も 得 ら れ た 。
以下に、各章毎の概要を記す。
第 1章
はじめに
本章では、本プロジェクトの背景、目的、本年度調査内容を概説している。
第2章
地球温暖化影響・適応の評価
本章では、今年度実施した地球温暖化影響・適応評価についてまとめている。温暖化影
響 事 象 は 前 年 と 同 様 、 破 局 的 か つ 非 連 続 的 事 象 ( Type II) と 、 そ の 他 の 影 響 事 象 ( Type I)
に区分して評価している。また、その評価において、第 4 章で述べる温暖化影響と対策の
-3-
総合評価に向けて、評価対象となる排出パスを揃えている。ただし、現在の科学的知見か
らは対象排出パスを揃えた定量評価が困難な温暖化影響事象も存在しそれらについては定
性的な評価にとどめざるを得なかった。
まず、評価対象の排出パスの設定について述べ、各排出パスに対応した気候変動量の評
価 に つ い て 述 べ て い る 。 IPCC WGI AR4 等 の 最 新 知 見 を 基 に 今 年 度 は 気 候 感 度 の 値 に は
3 ℃ を 用 い た 。推 定 し た 気 候 変 動 量 を も と に 、Type II 事 象 で あ る 熱 塩 循 環 の 崩 壊 に 関 す る
評 価 、 TypeI 事 象 と し て 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減 少 に 関 す る 調 査 、 氷 河 ・ 氷 帽 に 関 す る
調査、海面上昇・沿岸影響の評価、健康影響の評価、農作物影響の評価、水資源影響の評
価、陸上生態系に関する評価、海洋酸性化に関する評価、生物地球化学的な影響の調査、
畜産、永久凍土、アマゾン熱帯雨林などその他の事象についての調査をまとめている。
第 3章
地球温暖化緩和策の評価
本 プ ロ ジ ェ ク ト で は 、温 暖 化 緩 和 策 の 評 価 と し て 、(1)エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 変 革 に 注 目
し た 2150 年 ま で の 超 長 期 の 評 価 、お よ び (2)産 業 構 造 の 変 化 も 扱 う 2050 年 頃 ま で の 中 期 の
評 価 の 2 通 り を 行 っ て い る 。超 長 期 の 評 価 に つ い て は 前 年 度 ま で に 完 了 し て い る 。
(その分
析 結 果 に 関 し て は H17 年 度 報 告 書 を 参 照 さ れ た い )中 期 評 価 用 の モ デ ル は 本 プ ロ ジ ェ ク ト
で新たに開発したもので動学的なボトムアップ型多地域エネルギーシステムモデルとトッ
プ ダ ウ ン 型 多 地 域 多 部 門 経 済 モ デ ル の 両 者 の 長 所 を 生 か し た 統 合 モ デ ル (DEARS; Dynamic
Energy-economic Analysis model with multi-Regions and multi-Sectors)で あ る 。 ま ず 、 本 年 度
に上記モデルにおいて新たに拡張した項目について述べ、ついで、このモデルを用いて温
暖 化 緩 和 策 を 講 じ た と き の 2050 年 頃 ま で の 部 門 別 付 加 価 値 損 失 な ど の 分 析 結 果 と そ の 政
策 的 含 意 を 述 べ て い る 。 ま た 、 Non-CO 2 温 室 効 果 ガ ス に 関 し て は 、 SRES-A1FI シ ナ リ オ に
対 応 し た 分 析 結 果 を 記 載 し て い る 。( H17 年 度 は 、 SRES-B2 シ ナ リ オ 対 応 の 分 析 を 実 施 )
第4章
温暖化影響と対策の総合評価
本章では、本プロジェクトで採用した総合評価方式の詳細とその結果について述べてい
る。本総合評価の基本的視点は費用便益的評価である。基準排出パスから濃度安定化排出
パスに排出抑制するのに必要な費用と濃度安定化したときの温暖化影響低減による便益の
総便益(=影響低減便益の合計-緩和費用)の最大化(あるいは総費用の最小化)の視点
に立っている。ただし、本要約の冒頭に述べたように非市場財の金銭評価およびその時間
的 統 合・地 域 的 統 合 の 問 題 等 が あ る た め 、エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト に よ り 望 ま し い( 総
便益が最小になる、あるいは、総費用が最小になる)と思われる排出パスを調査した。評
価した温暖化影響は多岐・多時点にわたり評価データは膨大となったため、専門家といえ
どもその判断には困難が伴うと考えられた。そのため、エキスパートジャッジメントは次
の2ステップにより実施した。第1ステップは、影響事象を重要な5事象に限り、時点も
2100 年 断 面 の み を 取 り 上 げ 、簡 易 的 な 費 用 便 益 評 価 を 行 っ た 。第 2 ス テ ッ プ で は 、第 1 ス
テップで行った望ましい排出抑制パスについての調査結果を示した上、温暖化影響及び緩
和策評価結果の全容を示し、望ましい排出抑制パスを直接尋ねた。本章では、これらエキ
-4-
スパートジャッジメントの具体的実施方法、提供したデータ、質問内容及びその回答結果
のまとめと分析結果について記述している。
第5章
温暖化長期抑制目標に関する政策的含意
本 章 で は 、ま ず 、温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 国 際 的 な 動 向 に つ い て 整 理 を 行 っ て い る 。
国 連 気 候 変 動 枠 組 み 条 約 に お け る 関 連 規 定 や EU の 政 治 的 動 向 の 紹 介 、 ま た 、 2006 年 10
月 に 発 表 さ れ た Stern Review の 内 容 紹 介 と 、そ れ に 対 す る Nordhaus や Tol に よ る 批 判 論 文
等 の 紹 介 を 行 っ て い る 。 ま た 、 Stern Review の 方 法 論 を 本 プ ロ ジ ェ ク ト の そ れ と 比 較 し て
その欠陥を指摘している。そのうえで、フェニックスで得られた成果の政策的含意を、温
暖化影響と緩和コストの双方から得られた望ましい排出抑制レベル及びそのアプローチの
方法論の視点から取りまとめている。さらに、温暖化緩和コストの観点からも、望ましい
排出抑制長期目標レベルを論じている。
第6章
国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 ( IIASA) と の 連 携
本章では、国際コンソーシアムのパートナーである国際応用システム分析研究所
( IIASA) と の 連 携 に つ い て 記 述 し て い る 。 本 プ ロ ジ ェ ク ト と 関 係 す る IIASA の ENE プ ロ
グ ラ ム 、TNT プ ロ グ ラ ム 、LUC プ ロ グ ラ ム 、POP プ ロ グ ラ ム 、GGI イ ニ シ ア テ ィ ブ の 研 究
レポートは付録 5 として添付している。
第7章
まとめと今後の課題
本章では本年度に得られた主要知見を中心に本プロジェクト全体の研究総括を行い、ま
た 、 EU が 主 張 す る 長 期 抑 制 目 標 や 今 後 の 排 出 抑 制 国 際 枠 組 み に 関 す る 議 論 と 関 係 付 け て
その意義をまとめている。
さらに、温暖化への適応策や持続可能な発展策等の視点から今後の課題についてまとめ
ている。
-5-
Summary
This is the final fiscal year report of the project “Integrated assessment of Global Warming and
its Mitigation Technologies in the Changing World Economy and Industry” that has been
conducted for 5 years from FY 2002 to FY 2006 as a project under the METI R&D subsidization
Framework “Promotion of International Researches on Global Change”. The project objectives is
to explore a preferable level of long-term global warming stabilization or preferable level of
long-term emission reduction target when both various impacts by and mitigation costs of global
warming are taken into account, and at the same time to show the sizes of various impacts, and
the optimal mitigation measures and mitigation costs for the preferable emission reduction target.
This long-term target can not be determined uniquely by science alone because of the
uncertainties about climate change and global warming impacts, and inevitable value judgment
about monetary evaluation of impacts of non-market goods such as eco-system and human health
and their temporal and regional integrations. Therefore, although this project quantitatively
evaluates the mitigation costs and quantitatively evaluates the impacts in terms of their inherent
physical units, monetary evaluation of non-market impacts and the temporal and regional
integrations are passed to expert judgments and the preferable level of long-term emission
reduction target is investigated according to the expert judgment.
International arguments are being made about Post Kyoto emission reduction regimes. The
long-term emission reduction target provides a basis for that argument, and EU proposes that the
mean temperature rise should be below 2 ºC relative to pre-industrial level as a long-term target.
However, the ground for the EU’s proposal, 2 ºC temperature rise, is not clarified and is
questionable. The approach to the long-term target level and its current answer by this project
naturally makes a direct contribution to the above arguments. However, to play an important role
in clarifying points at issue and helping converge the arguments will certainly be a larger
contribution of this project.
Evaluations of optimal warming mitigation measures were conducted two-fold in this project;
one is ultra-long-term and the other is medium-term. The medium-term mitigation evaluation was
carried out considering input-output relationships among industry sectors and investigated
industry structure changes, losses of value-added by sector etc. in addition to changes in energy
systems, providing an interesting results: the GDP loss is much larger for stabilizations below
450 ppm than past evaluations which do not take into account the input-output relationships
among industry sectors.
In the followings provided are outlines of individual chapters.
Chapter 1
Introduction
-6-
This chapter describes the background and objectives of the project and this year research plan.
Chapter 2
Evaluation of global warming impacts and adaptation
This chapter describes evaluation of global warming impacts and adaptations that were
conducted this fiscal year. The impacts are grouped into two types as in the last year; catastrophic
and abrupt impacts (Type II) and other continuous impacts (Type I). The same emission paths are
used for various impact evaluations for the “comprehensive assessment” which is described in
Chapter 4. There existed a number of impacts which were unable to be quantitatively evaluated
despite the best current scientific knowledge.
In the beginning of this chapter described is the setting of emission paths and evaluation of
climate changes for these emission paths. Climate sensitivity of 3 ºC was used this year based on
the recent findings by IPCC AR4 and other literatures. Based on the estimations of climate
changes for the emission paths evaluated or investigated were collapse of THC (Type II),
reduction of Greenland ice sheets, impacts on icebergs and icecaps, sea level rise and coastal
impacts, human health impacts, agricultural crop impacts, water resources impacts, impacts on
terrestrial ecosystems, ocean acidification, bio-geo-chemical impacts and other impacts including
livestock, permafrost, and Amazon rain forest (Type I).
Chapter 3
Evaluation of global warming mitigation
In this project evaluations of optimal warming mitigation measures were conducted two-fold;
one is ultra-long-term, focusing on energy system evolution up to 2150 and the other is
medium-term, focusing on industry structure changes up to around 2050. The ultra-longterm evaluation was completed last year (cf. The report of the last FY) The model for the
medium-term mitigation evaluation has been developed in this project, integrating a dynamic
multi-region bottom-up model of energy system and a multi region and multi-sector top-down
economy model (DEARS; Dynamic Energy-economic Analysis model with multi-Regions and
multi-Sectors). First explained is the model expansion which was made this year. Then, analysis
results such as losses of value added by sector up to 2050 that were obtained using the expanded
model and their policy implications are provided. In addition, analyses of non-CO 2 GHGs are
provided for the scenario of SRES A1FI. (The similar analysis for SRES B2 was made last year)
Chapter 4
“Comprehensive evaluation” of global warming impacts and mitigations
This chapter describes the methodology of “Comprehensive evaluation” adopted in this project
and its results. The basis of the “Comprehensive evaluation” is an evaluation based on
cost-benefit analysis. Basically, maximization of the total benefit (= (sum of benefits generated
by warming impact alleviation)-(mitigation costs)) is aimed; the warming impact alleviation is
the one which is brought about when the reference emission path is suppressed down to one of the
stabilized emission paths by appropriate emission reduction and the mitigation costs is the one
for that. Because of inevitable value judgment about monetary evaluation of impacts of
non-market goods and the temporal and regional integrations, which was explained in the
-7-
beginning of Summary, preferable emission paths were investigated based on “expert judgment”.
Evaluation data amounted to a huge volume and the difficulty was anticipated in experts making
judgments based on these data. Thus the expert judgment was conducted in two steps; in the first
step a simplified cost benefit analysis was made using expert judgment results on small amount of
selected data (only 5 kinds of important impacts at only one time point of 2100), and in the
second step the whole data was provided to the experts together with the results of preferable
emission reduction path which was obtained at the first step, and the direct question about
preferable long-term target of emission reduction path was asked of the experts. This chapter
describes the detail and procedure of “expert judgment”, provided data, inquired questions,
statistics of replies and their analysis results.
Chapter 5
Policy implications about the long-term mitigation target
This chapter first gives the international trends about the long-tern mitigation target. Related
articles of UNFCCC and EU’s political movements are introduced, the Stern Review which was
issued in October 2006 is briefly introduced, and critical reviews and papers against the Review
which were prepared by Nordhaus, by Tol etc. are also introduced. The shortcomings of the Stern
Review methodology are pointed out through comparisons with the methodology of this project.
Policy implications of the achievements of this project are drawn from the viewpoints of both the
preferable emission reduction level and the methodology which was used to derive this.
Chapter 6
Collaboration with International Institute for Applied Systems Analysis
This chapter describes the collaboration with International Institute for Applied Systems
Analysis(IIASA) which is a partner of “International Consortium” of this project. Research
achievements of ENE Program, TNT Program, LUC Program, POP Program and GGI Initiative of
IIASA, which are related to this project, are outlined.
Chapter 7
Conclusions and subjects for future study
This chapter summarizes the
researches conducted in this project, highlighting the major findings acquired in this year and
reviews the significances of the achievements in the context of long-term emission reduction
target arguments and future international regimes of emission reductions.
In addition, future studies are discussed in terms of adaptation and sustainable development
measures.
-8-
本
編
第 1章
1.1
はじめに
本プロジェクトの背景
本 報 告 書 は 、 経 済 産 業 省 「 地 球 環 境 国 際 研 究 推 進 事 業 」 の 一 環 と し て 、 平 成 14 年 度
か ら 平 成 18 年 度 ま で の 5 年 間 の プ ロ ジ ェ ク ト と し て 、地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 に お
いて実施した地球温暖化問題対応評価に関する総合的研究の最終年度の成果報告であ
る。
経済成長に伴う人為的な温暖化ガスの急速な排出増加によって地球が温暖化するこ
との危険性は、平成 9 年の京都議定書採択により、学問的な指摘の段階から社会的な
行 動 が 促 さ れ る 段 階 に 至 っ た 。 そ の 後 、 平 成 13 年 の ブ ッ シ ュ 政 権 下 に お け る 米 国 の 離
脱 な ど に よ っ て 、 発 効 へ の 道 の り は 極 め て 不 透 明 と な っ た も の の 、 平 成 16 年 秋 の ロ シ
ア の 批 准 に よ り 、 平 成 17 年 2 月 16 日 に 京 都 議 定 書 は 発 効 し 、 国 際 的 な 協 力 の 下 で 、
温暖化ガスの排出削減は実施段階に入った。
平 成 17 年 3 月 に は 、 EU 理 事 会 は 「 温 暖 化 リ ス ク 回 避 の た め の 究 極 目 標 と し て の 、
産業革命前を基準とする大気温度上昇の 2 度以下への抑制」が必要であることを再確
認 す る と し 、 さ ら に 平 成 1 9 年 1 月 に は 、 EU は 具 体 的 な 温 暖 化 ガ ス 排 出 削 減 目 標 と し
て 「 全 球 年 平 均 気 温 の 上 昇 幅 が 2℃ を 超 え な い よ う に す る た め に 、 20 50 年 で 少 な く と
も 基 準 年 比 (主 に 199 0 年 比 ) 50%温 室 効 果 ガ ス 排 出 を 削 減 す る 必 要 が 有 り 、 途 上 国 と の
差 異 を 考 え る と 、先 進 国 は 6 0~ 80 %削 減 す べ き で あ る 。そ の た め に は 20 2 0 年 ま で に 3 0 %
削 減 す べ き で あ る 。 EU は 単 独 で あ っ て も 2 02 0 年 に 2 0 %削 減 、 世 界 の 協 力 が 得 ら れ れ
ば 30%削 減 を 実 施 す べ き で あ る 。」と す る 報 告 を 行 い 、同 3 月 の 理 事 会 で も 承 認 さ れ た 。
一 方 、平 成 18 年 10 月 に 、英 国 で は Stern レ ポ ー ト が 公 表 さ れ 、そ こ で は 温 暖 化 が こ の
ま ま 進 行 す れ ば 、 そ れ に 伴 う 経 済 損 失 は GDP の 2 0%に 達 す る 、 と い う 記 述 が あ り 世 界
に衝撃を与えた。この報告の評価については様々な議論の余地があり、本報告書でも
本研究との比較において検討を加えているが、温暖化対策の必要性があらためて世界
の 耳 目 を 集 め た 点 は 疑 い の な い と こ ろ で あ る 。 平 成 1 8 年 は ま た 、 ア ル =ゴ ア 前 米 国 副
大統領の著書と映画「不都合な真実」が、温暖化の危険を広く一般に訴えた年として
も記憶される。
平 成 19 年 に は 、 政 府 間 気 候 変 動 パ ネ ル (IPCC)第 4 次 成 果 報 告 書 (AR4)の 刊 行 も 予 定
さ れ て い る 。こ れ ま で に WG-1 と WG-2 の 報 告 書 の 要 約 が 明 ら か に さ れ て お り 、人 為 的
起源の温暖化ガス排出が温暖化を引き起こすメカニズムや温暖化の生態系や社会への
影響について、これまでの見解にさらなる肯定的な評価を与えている。
このように、本プロジェクトが実施された期間、とりわけ最終年度は地球温暖化問
題に対して世界的に大きな動きのあった 1 年であったと言える。
しかしながら、温暖化への対策のあり方については、今なお議論と問題点が数多く
残っている。実際、温暖化ガスの排出が地球の全体的な気温を上昇させる原理には、
もはや基本的な異論はないものの、温暖化の進行の水準と速度、およびその地域分布
についてなお大きな不確実性が残る。
- 11 -
温暖化の影響に関しては、これまで指摘された海面上昇や食糧生産、健康影響のほ
か、近年では温暖化による海洋の熱塩循環の停止や西部南極氷床の崩壊、グリーンラ
ンド氷床の崩壊、メタンアウトバーストなど、大規模かつ非可逆的な事象の危険性も
議 論 に 上 る よ う に な っ た 。こ れ ら に つ い て は 、上 述 の IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書 が 最 新 の
知見を包括しよう。しかしながら、人類がこれらの事象に対し、どのタイミングでど
の程度の対策を打つべきなのか、またそもそも超長期的な事象に対し、現時点でどれ
ほ ど の 行 動 を 取 る べ き な の か 、そ の 評 価 手 法 は 確 立 さ れ て い る と は 言 え な い 。さ ら に 、
温暖化が進行したとしても、人類は新しい環境に対して何らかの適応策をとることも
できる。実際、都市衛生の改善や農業における品種改良・農法の改良によって、過去
の冷害や干ばつに対処し、生産性の低い土地に農業を広げた実績は疑いがない。しか
し、その費用負担については、規模も枠組みも議論はこれからである。このような対
策については、いかに行うべきかの以前に、いかなる考え方に基づいて策定を行うべ
きなのかという基本的な問題に関し、なお定説を構築するには至っていない。
温暖化の進行と対策についてより具体的な行動を念頭に置く場合、まず無対策の場
合 温 暖 化 が ど の よ う に 進 行 し 、ど の よ う な 影 響 が 現 れ る の か の 見 積 も り が 必 要 と な る 。
次いで、何らかの温暖化対策行動をとった場合の社会経済的な影響の予測と評価が重
要な課題となる。ことに、温暖化の影響は、世界の貧しい地域に強く現れることが過
去 の 政 府 間 気 候 変 動 パ ネ ル (IPCC) 等 で 指 摘 さ れ て お り 、 被 害 の 金 銭 的 な 数 値 が 見 か け
上小さくとも、被害を受ける人口など社会的な影響はきわめて大きなものとなる可能
性もある。かつ、その影響評価は長期的問題であるとともに自然科学的な知識の不十
分性と社会科学的な人間行動の不確実性があいまって、確定的なことは到底いえそう
も な い 状 態 が 続 い て い る 。 上 述 の EU で の 温 度 上 昇 2℃ 制 約 目 標 と 、 経 済 成 長 へ の 制 約
を危惧する米国の対照的な行動、さらに急速な経済成長と人口成長が予想される中国
とインドの行動、化石燃料資源を政治的なバーゲニングパワーとして行使したいロシ
アや中東-石炭遡源の豊富なオーストラリアや南アフリカもこれに加わるかもしれな
い - の 戦 略 、さ ら に 日 本 を 含 む 世 界 各 国 の エ ネ ル ギ ー ・環 境 技 術 開 発 の 市 場 性 見 通 し も
温暖化対策に関係する大きな要因である。
このような複雑に要因が絡み合う中、実効性のある温暖化対策行動の策定が議論さ
れ ね ば な ら な い 。ガ ン の よ う な 難 病 治 療 と 同 じ く 全 人 類 に 共 通 す る 問 題 で あ り な が ら 、
解決への道筋は全く異なる様相が展開されている。
本プロジェクトでは、このような状況を踏まえつつ、温暖化対策のあり方について
首尾一貫性のある包括的な対応策の提案を行うことを目的とした。
1.2
研究プロジェクトの目標
上 記 の 背 景 を 踏 ま え 、 本 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト は 遂 行 さ れ た 。 平 成 17 年 度 ま で に 、 温 暖
化の影響を調査するとともに、幾つかの分野に関しては独自のモデル開発を行い評価
を 行 っ た 。 ま た 緩 和 策 評 価 に 際 し て は 、 こ れ ま で の 研 究 で 不 十 分 で あ っ た 21 世 紀 半 ば
をターゲットとし、かつ産業部門別影響を評価できる新たな視点のモデル開発を行っ
- 12 -
て き た 。 こ れ ら の 蓄 積 を 踏 ま え 、 最 終 年 度 で あ る 平 成 18 年 度 目 標 を 以 下 の よ う に 設 定
した。
日本および世界各地域の望ましい地球温暖化対応戦略のロードマップを、温暖化影
響の多様性を考慮しつつ、緩和策と適応策の総合的評価も含める形で長期から短期ま
で一貫した手順で総合的に分析評価し、提示する。特に、世界の温室効果ガスの排出
削減長期目標については、従来からの様々な提案を整理するとともに、現在の諸知識
から最も合理的と考えられる排出削減パスを示す。温暖化の進行とこれによって発生
する自然体系の変化自体は自然科学的問題であるにもかかわらず、その原因となる温
暖化ガスの発生も、温暖化の人間活動への影響も人間活動によって決まる。かつ、不
確実性も大きい。そのため、温暖化対策を導くには、意思決定問題としての対策目標
の 「望 ま し さ 」の 基 準 の 導 入 が 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 従 来 の 議 論 で は 、 し ば し ば 自 然
科学としての不確実性と、意思決定問題としての不確実性と価値判断が明示的に区別
さ れ ず 議 論 が 混 乱 す る 場 合 が あ っ た 。 本 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て は 、 平 成 17 年 度 で は 、
両者をできる限り分離し、このプロセスを最終段階に集約する接近手順を提案した。
平 成 18 年 度 は 、こ こ ま で に 構 築 し た 調 査 結 果 と 方 法 論 に 改 良 を 加 え つ つ 積 み 上 げ た
上で、エキスパートジャッジメントを実施して望ましい温暖化排出経路のあり方とそ
の分析を行うことを目標とした。
これらにより、本事業においては、温暖化影響を考慮した世界と日本の21世紀半
ば頃までの地球温暖化対応戦略を国際産業経済の変化も含めて提示することを目標と
する。
1.3
平 成 18 年 度 実 施 計 画 概 要
本事業においては、温暖化影響を考慮した世界と日本の21世紀半ば頃までの地球
温暖化対応戦略を総合評価し、温暖化緩和策のうち近未来については国際産業経済の
変化も含めて提示することを目標とした。昨年度までに総合評価の方式を決定してお
り、その方式に則り本年度は具体的な総合評価を進めた。
今 年 度 は 、IPCC-SRES -B2 シ ナ リ オ の 下 に お け る 複 数 の 排 出 パ ス に 対 応 し た 各 種 温 暖
化影響および緩和策評価の結果を整理し、それを専門家に提示して、望ましい排出抑
制 レ ベ ル に つ い て の 専 門 家 判 断 ( エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト ; EJ ) を 収 集 し そ の 結
果を取りまとめた。更には、経済成長がより大きく化石燃料依存度の大きい発展シナ
リ オ で あ る IPCC-SRES-A1FI シ ナ リ オ に 準 拠 し た 将 来 シ ナ リ オ に つ い て も 同 様 の 総 合
的評価を行った。また、産業構造の将来変化を産業連関入出力係数の変遷も考慮して
評価できるようにし、これを、将来シナリオの違いによる排出量の差異の評価や温暖
化緩和策評価にも適用した。具体的実施項目は以下の通りである。
①
基準将来シナリオと排出抑制シナリオの設定・策定
②
①項のシナリオに対応した気候変動量の算出
③
②項に対応した温暖化影響の評価-破局的事象と連続的影響事象
④
基準排出パスから排出抑制パスにまで排出を抑制する最適温暖化緩和策のモデ
ル分析評価
- 13 -
⑤
温暖化の影響と対策との総合評価結果の取りまとめ
⑥
各種温暖化影響事象について相互の連関やエンドポイントを考慮した体系的整
理
⑦
望 ま し い 排 出 抑 制 レ ベ ル に 関 す る エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト( EJ)の 実 施 と そ
の結果の取りまとめ
⑧
将 来 シ ナ リ オ に と も な う 産 業 連 関 入 出 力 係 数 ( Aij ) 変 遷 の 推 計 と 産 業 構 造 変 化
や排出量への影響の評価
⑨
国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 ( IIASA ) と の 研 究 連 携 ( 人 口 推 定 、 温 暖 化 対 策 評
価 、技 術 変 化 の モ デ ル 評 価 、土 地 利 用 変 化 に 関 す る 研 究 分 野 に お い て )と 研 究 交
流
⑩
RITE、IIASA の 研 究 成 果 を 広 く 関 連 機 関 、関 連 専 門 家 に 紹 介 す る た め の 報 告 会 の
開催
<基準将来シナリオと排出抑制シナリオの設定・策定>
①
温 暖 化 対 策 が 何 ら 行 わ れ な い 基 準 将 来 シ ナ リ オ ( ベ ー ス シ ナ リ オ ) に は IP C C の
各 種 シ ナ リ オ を 2 200 年 ま で 延 長 し て 用 い る こ と と す る が 、IPCC の シ ナ リ オ 策 定
か ら す で に 5 年 が 経 過 し て お り 、実 績 値 と の 乖 離 が 生 じ て い る 部 分 に つ い て は 調
整を行った。
②
基 準 シ ナ リ オ 、 排 出 抑 制 シ ナ リ オ に つ い て 、 22 0 0 年 ま で の 気 候 変 動 量 ( 気 温 、
風 速 、降 水 量 等 の 地 域 分 布 )や 海 面 上 昇 量 を 地 域 グ リ ッ ド ご と に 求 め る 。算 定 に
あ た っ て は 、H 1 6 年 度 に 開 発 し た 簡 易 気 候 モ デ ル と G C M モ デ ル の 結 果 を 結 合
し た シ ス テ ム に よ る 。 気 候 感 度 と し て 、 IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書 で 基 準 的 に 用 い
られる3℃を中心として、気候変動量を影響事象の評価に利用できるようにす
る 。平 成 18 年 度 は 、こ れ ま で の IPCC-SRES-B2 シ ナ リ オ に 加 え 、IPCC-SRES- A1F I
シナリオを比較対象として評価した。
③
近年の温暖化影響でしばしば注目される海洋の熱塩循環停止等の破局的事象に
ついて、過去の研究を精査し、温暖化対策シナリオとの関係を分析した。
<最適緩和策のモデル分析評価>
④
平 成 17 年 度 に 引 き 続 き 、最 適 化 型 モ デ ル の 精 緻 化 を 進 め た 。モ デ ル は 2 20 0 年 ま
で と 203 0 年 頃 ま で の 2 通 り の 評 価 の た め に 開 発 を 進 め た 。後 者 203 0 年 付 近 に つ
い て は 産 業 構 造 の 変 化 な ど 詳 細 な 影 響 評 価 も 視 野 に 含 め 、 前 者 22 0 0 年 ま で の 超
長期については特に資源、エネルギー技術戦略を中心に据えた分析を行った。
2200 年 ま で の 評 価 用 に は 昨 年 度 に 時 間 軸 を 拡 張 し た エ ネ ル ギ ー ・ 経 済 ・ 気 候 変
動 モ デ ル DNE21 を 、20 3 0 年 頃 ま で の 評 価 用 に は H14 年 度 か ら 開 発 を 進 め て き た
GTAP デ ー タ ベ ー ス に 基 づ く 多 地 域 多 部 門 エ ネ ル ギ ー ・ 経 済 モ デ ル DEAR S を 用
い た 。 DEARS モ デ ル は 、 基 準 シ ナ リ オ か ら 目 標 と す る 排 出 抑 制 シ ナ リ オ へ 抑 制
す る た め の 緩 和 策 を 、望 ま し い エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム や 産 業 構 造 の 将 来 予 測 を 導 出
し 政 策 評 価 に 足 り う る も の と し た 。DNE21 と DEARS モ デ ル に よ っ て 、排 出 抑 制
- 14 -
政 策 の 下 で の CO 2 削 減 限 界 費 用 や 経 済 へ の 影 響 に つ い て の 各 種 分 析 評 価 を 行 っ
た。
<温暖化影響事象の体系的整理>
⑤
多 様 な 分 野 に 現 出 す る 温 暖 化 影 響 事 象 に つ い て 、こ れ ま で の 調 査 に 最 新 の 科 学 的
知見を合わせ、できる限り排出経路との関連をつけつつ体系化した。
⑥
相 互 の 連 関 や エ ン ド ポ イ ン ト を 、外 部 専 門 家 へ の ヒ ア リ ン グ を 含 め て 考 慮 し 体 系
的 整 理 を 行 う 。 こ れ ら の 情 報 を 総 合 化 し 平 成 17 年 度 ま で に 方 針 を 示 し た ス コ ア
ボ ー ド と し て 表 示 す る こ と に よ り 、全 体 的 な 整 合 性 を 保 ち つ つ エ キ ス パ ー ト ジ ャ
ッジメントを包括的に行えるよう整理した。
<温暖化の影響と対策との総合評価のまとめ>
⑦
H 18 年 度 は 、 以 上 に 述 べ た 影 響 ・ 緩 和 策 評 価 結 果 の 体 系 を 専 門 家 に 提 示 し 、 ど
の 程 度 の レ ベ ル に 排 出 抑 制 す る の が 総 合 的 に 適 切 か に 関 し て 、エ キ ス パ ー ト ジ ャ
ッジによる評価を実施した。
<将来の社会・経済構造に関する感度分析>
⑧
産 業 構 造 変 化 を 扱 え る 多 部 門 動 学 的 モ デ ル の 特 性 を 活 用 し 、よ り 現 実 性 の 高 い 将
来の産業投入構造変化の予測とその世界経済及び温暖化対策導入時の影響評価
を 定 量 的 に モ デ ル 分 析 し た 。こ れ は 、従 来 の 経 済 モ デ ル に は 見 ら れ な い ア プ ロ ー
チである。
< 国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 ( IIASA) と の 研 究 連 携 >
⑨
IIAS A に お け る 研 究 ( 人 口 推 定 、 温 暖 化 対 策 評 価 、 技 術 変 化 の モ デ ル 評 価 、 土 地
利用変化に関する研究)との連携を図るための研究交流を行った。
⑩
RITE、IIASA の 研 究 成 果 を 広 く 関 連 機 関 、関 連 専 門 家 に 紹 介 す る た め の 報 告 会 を 、
平 成 17 年 度 に 引 き 続 い て 開 催 し た 。
- 15 -
第 2章
2.1
地球温暖化影響・適応の評価
地球温暖化影響・適応評価の概要
本章では、今年度実施した地球温暖化影響・適応評価についてまとめている。
PHOE NI X で は 、平 成 1 7 年 度 報 告 書 第 3.2 節 に 詳 述 し た よ う に 、温 暖 化 影 響 事 象 を 、破
局 的 か つ 非 連 続 的 事 象 ( Type II) と 、 そ の 他 の 影 響 事 象 ( Type I) に 区 分 し て 評 価 し て
いる。ここで、各影響事象の評価では、第 4 章で述べる温暖化影響と対策の総合評価
に向け、評価対象の排出パスを揃えている。
本 章 の 第 2.2 節 で は 、評 価 対 象 の 排 出 パ ス 、及 び IPCC WGI AR4 等 の 最 新 知 見 を 基 に
推 定 し た 各 排 出 パ ス の 気 候 変 動 量 に つ い て 述 べ る 。第 2 .3 節 に は 、今 年 度 実 施 し た 温 暖
化 影 響 ・ 適 応 に 関 す る 調 査 ・ 評 価 を 整 理 し た 。 ま ず Type II 事 象 で あ る 熱 塩 循 環 の 崩 壊
に 関 す る 評 価 (第 2.3 .1 節 )を 示 し 、 次 に Typ eI 事 象 の 調 査 ・ 評 価 を 示 す 。 こ こ で 、 TypeI
事 象 に は 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減 少 に 関 す る 調 査 (第 2.3.2 節 )、 氷 河 ・ 氷 帽 に 関 す る
調 査 (第 2.3.3 節 )、 海 面 上 昇 ・ 沿 岸 影 響 の 評 価 ( 第 2.3.4 節 )、 健 康 影 響 の 評 価 ( 第 2.3.5
節 )、 農 作 物 影 響 の 評 価 ( 第 2.3 .6 節 )、 水 資 源 影 響 の 評 価 ( 第 2.3.7 節 )、 陸 上 生 態 系 に
関 す る 調 査 ( 第 2 .3 .8 節 )、 海 洋 酸 性 化 に 関 す る 調 査 ( 第 2.3 .9 節 )、 生 物 地 球 化 学 的 な
影 響 の 調 査 ( 第 2 .3.1 0 節 )、 そ の 他 の 温 暖 化 影 響 に 関 す る 調 査 [畜 産 、 永 久 凍 土 、 ア マ
ゾ ン 熱 帯 雨 林 ]( 第 2.3.11 節 ) が 含 ま れ る 。 第 2 .4 節 に は 、 以 上 の 調 査 ・ 評 価 を ま と め
る。
な お 、 平 成 17 年 度 ま で に 実 施 し た 、 Typ e II 事 象 の 西 部 南 極 氷 床 崩 壊 、 及 び Type I
事象である林業、異常気象、北極の氷等への影響に関する調査は、今年度実施の上記
事象に関する調査・評価と合わせ、本報告書の付録のスコアボードにまとめている。
2.2
排出パスの想定および最新の知見に基づく気候変動量の推定
2.2.1 社 会 シ ナ リ オ ・ 排 出 パ ス の 想 定
(1) 社 会 シ ナ リ オ
本研究では、社会シナリオとして温暖化に関する各種研究で広く用いられている
SRES シ ナ リ オ を 利 用 す る こ と と し 、そ の 中 の SRES B2 シ ナ リ オ を 中 心 に 評 価 を 実 施 し
た 。 各 SRES シ ナ リ オ の イ メ ー ジ を 図 2.2.1-1 に 示 す
1)
。 但 し 、 SRES は 2 10 0 年 ま で の
シ ナ リ オ で あ る た め 、本 研 究 で 対 象 と し て い る 2 20 0 年 ま で の デ ー タ は 独 自 に 作 成 し て
いる
2)
。 想 定 し た 人 口 ・ GDP シ ナ リ オ を 図 2.2.1-2 に 示 す 。
- 16 -
SRES シナリオ
経済重視
A2
A1
地球志向
地域志向
B1
B2
環境重視
図 2 .2 .1 -1
SR E S シ ナ リ オ の 主 な 特 徴 と ド ラ イ ビ ン グ フ ォ ー ス
出 典 : IP CC , S RE S, 2 0 00 1 ) .
- 17 -
12000
Population [Million people]
10000
F U S S R & E .E u ro p e
L .A m e ric a
S u b - s a h a ra n A fric a
M .E a s t & N .A fric a
O th e r A s ia
C .P .E . A s ia
O c e a n ia
Japan
W .E u ro p e
N .A m e ric a
8000
6000
4000
2000
0
2000
2050
2100
Year
2150
2200
(a) 人 口
4 0 0 ,0 0 0
3 5 0 ,0 0 0
F U S S R & E .E u ro p e
L .A m e ric a
S u b - s a h a ra n A fric a
M .E a s t & N .A fric a
O th e r A s ia
C .P .E . A s ia
O c e a n ia
Japan
W .E u ro p e
N .A m e ric a
GDP [Billion US90$/yr]
3 0 0 ,0 0 0
2 5 0 ,0 0 0
2 0 0 ,0 0 0
1 5 0 ,0 0 0
1 0 0 ,0 0 0
5 0 ,0 0 0
0
2000
2050
2100
Year
2150
2200
( b ) GD P
図 2.2 .1 -2
社 会 シ ナ リ オ の 想 定 (世 界 10 地 域 別 : SRES B 2 ベ ー ス )
(2) 排 出 パ ス
評 価 の 基 準 と な る 基 準 排 出 パ ス は 、 前 節 の 人 口 ・ GDP シ ナ リ オ お よ び SRES の 最 終
エネルギー需要シナリオに基づいて想定した最終エネルギー需要シナリオ(図
2.2.1-3) を 用 い 、 DNE21 モ デ ル に よ っ て 算 出 し た 。 排 出 抑 制 パ ス は 、 IPCC WGI 65 0~
450ppmv 濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ (S650~ S450)の 近 時 点 に お け る 不 整 合 に つ い て 、当 該 シ ナ
リ オ 作 成 手 順 お よ び CO 2 濃 度 実 績 値 に 基 づ い て 調 整 を 行 っ た
出 パ ス お よ び 排 出 抑 制 パ ス )を 図 2.2.1-4 に 示 す 。
- 18 -
3)
。 CO 2 排 出 パ ス (基 準 排
8000
1200
7000
FUSSR & E.Europe
L.America
Sub-saharan Africa
M.East & N.Africa
Other Asia
C.P.E. Asia
Oceania
Japan
W.Europe
N.America
800
600
400
Liquid fuel demand [Mtoe/yr]
Solid fuel demand [Mtoe/yr]
1000
200
0
2000
6000
FUSSR & E.Europe
L.America
Sub-saharan Africa
M.East & N.Africa
Other Asia
C.P.E. Asia
Oceania
Japan
W.Europe
N.America
5000
4000
3000
2000
1000
2050
2100
Year
2150
0
2000
2200
( a) 固 体 燃 料
2050
2100
Year
2150
2200
(b) 液 体 燃 料
6000
200000
3000
2000
Electricity demand [TWh/yr]
FUSSR & E.Europe
L.America
Sub-saharan Africa
M.East & N.Africa
Other Asia
C.P.E. Asia
Oceania
Japan
W.Europe
N.America
4000
150000
FUSSR & E.Europe
L.America
Sub-saharan Africa
M.East & N.Africa
Other Asia
C.P.E. Asia
Oceania
Japan
W.Europe
N.America
100000
50000
1000
0
2000
2050
2100
Year
2150
0
2000
2200
2050
(c ) 気 体 燃 料
図 2.2.1 -3
2100
Year
2150
2200
(d ) 電 力
最 終 エ ネ ル ギ ー 需 要 の 想 定 (世 界 10 地 域 別 : SRES B2 ベ ー ス )
30
25
CO2 emission [GtC/yr]
Gaseous fuel demand [Mtoe/yr]
5000
Reference
S650
S550
S450
20
15
10
5
0
1990
2040
図 2 .2 .1 -4
2090
Year
2140
CO 2 排 出 パ ス の 想 定
- 19 -
2190
2.2.2 最 新 の 知 見 に 基 づ く 気 候 変 動 量 の 推 定
(1) 主 な 改 定 点
平 成 17 年 度 ま で の 報 告 書 に 述 べ た よ う に 、 PHOEN IX プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 各 排 出 パ
ス に 対 す る 全 球 平 均 気 温 上 昇 は 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル (MAGICC に 準 拠 し た モ デ ル 、以 下 、
MAGICC と 記 す )で 推 定 し て い る 。 ま た 、 各 排 出 パ ス の 地 域 別 ( グ リ ッ ド 別 ) 気 候 変 動
量 ( 気 温 、 降 水 量 、 風 向 、 風 速 等 ) は 、 大 気 海 洋 結 合 大 循 環 モ デ ル (AOG CM) に よ る グ
リッド別予測値と、前述の全球平均気温と統合をすることにより推定している
4)
。
こ こ で 、 MAGICC の 気 候 感 度 と し て 、 平 成 1 7 年 度 は 、 IPCC WGI TAR ま で の 不 確 実
性 幅 (1.5 ~ 4.5 ℃ ) と 最 良 推 定 値 (2.5 ℃ ) に 依 拠 し 、 破 局 的 か つ 非 連 続 的 事 象 (Type Ⅱ 事 象 )
の 評 価 に は 4 .5℃ 、そ の 他 影 響 事 象 (TypeⅠ 事 象 )の 評 価 に は 2 .5℃ を 用 い た 。し か し な が
ら 、IPCC WGI AR4 の 最 新 知 見 に よ る と 、不 確 実 性 の 幅 は 2~ 4.5℃ 、最 良 推 定 値 は 約 3℃
と改訂されている
5)
。そ こ で 、今 年 度 は こ れ を 反 映 し 、Typ eⅠ の 評 価 に 、気 候 感 度 3.0℃
を用いた。
AOGCM の グ リ ッ ド 別 予 測 値 に つ い て も 、 IPCC AR4 に 向 け 更 に 改 良 さ れ た モ デ ル の
結 果 が 公 開 さ れ た 事 を 受 け 、今 年 度 は そ の 新 た な 公 開 値
6,7)
を 用 い た 。こ こ で 、AOG C M
と し て 、 現 在 の 世 界 の 主 要 な 気 候 モ デ ル の 中 で 最 も 解 像 度 が 高 い MIROC3 .2(hires)
8)
を
取 り あ げ た 。 な お 、 MIROC3.2(hires)で は 、 SRES 排 出 シ ナ リ オ の う ち A1B と B1 シ ナ
リ オ に 対 す る 結 果 が 公 開 さ れ て お り 、 こ の う ち SRES-A 1B シ ナ リ オ に 対 す る 予 測 値 を
用いた。
(2) 推 定 結 果
図 2.2.2-1 に 、 MAGICC で 計 算 し た 19 90 年 比 全 球 平 均 気 温 上 昇 を 示 す 。 基 準 排 出 パ
ス で は 2200 年 に は 5.5℃ 上 昇 す る 。 排 出 抑 制 レ ベ ル が 厳 し く な る に 従 っ て 上 昇 気 温 は
低 下 し 、 2200 年 に お け る 上 昇 気 温 は そ れ ぞ れ 3.3 ℃ (S65 0) 、 2 .7 ℃ (S550)、 2 .0 ℃ (S450)
である。
- 20 -
Temperature rise relative to Y1990 [℃]
6
5
Reference
S650
S550
S450
4
3
2
1
0
1990
図 2.2.2-1
2040
2090
Year
2140
2190
19 9 0 年 比 全 球 平 均 気 温 上 昇 (気 候 感 度 3.0℃ 、 Non-CO 2 GH G s: SR E S B2)
グリッド別気候変動量については、気温、降水量、流出量の推定結果の一部を以下
に示す。ここで、流出量は降水量から蒸発散量を差し引いた量に大凡相当し、水資源
影響評価のため今年度新たに取り上げた。
図 2.2.2-2~ 図 2.2.2-4 は 、2 1 00 年 に お け る グ リ ッ ド 別 の 気 温 、降 水 量 、流 出 量 (年 平
均 ) を 基 準 排 出 パ ス と S550 パ ス に つ い て 示 し た も の で あ る 。 ま た 、 図 2.2.2-5 ~ 図
2.2.2-7 は 、 当 該 項 目 に つ い て 、 1 99 0 年 比 の 変 動 量 の 形 式 で 示 し て い る 。 北 半 球 の 高 緯
度 地 域 で 気 温 上 昇 が 大 き い ( 図 2.2.2-5 )、 降 水 量 は 赤 道 付 近 の 太 平 洋 ・ イ ン ド 洋 上 を
中 心 に 増 加 す る ( 図 2.2.2-6)、 と い っ た 大 ま か な 傾 向 は 平 成 1 7 年 度 ま で と ほ ぼ 同 じ で
あ る 。 流 出 量 に つ い て 、 そ の 年 平 均 値 ( 図 2.2.2-4) は 、 当 然 の こ と な が ら 降 水 量 の 年
平 均 値 ( 図 2.2.2-3) よ り 小 さ く な っ て い る 。 ま た 図 2.2.2-7 よ り 、 南 北 ア メ リ カ の 一
部地域、地中海沿岸からヨーロッパおよび中央アジアにかかる地域等で流出量が減少
するという傾向が見られる。
- 21 -
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -2
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 気 温
(気 候 感 度 3 . 0℃ 、 M AG I CC -MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 GH G s: SR E S B2 )
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -3
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 降 水 量
(気 候 感 度 3 . 0℃ 、 M AG I CC -MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 GH G s: SR E S B2 )
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -4
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 流 出 量
(気 候 感 度 3 . 0℃ 、 M AG I CC -MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 GH G s: SR E S B2 )
注)図中、灰色は予測値無しの領域
- 22 -
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -5
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 気 温 変 動
(1990 年 比 、 気 候 感 度 3 .0℃ 、 M A GICC-MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 G HG s: SR ES B 2)
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -6
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 降 水 量 変 動
(1990 年 比 、 気 候 感 度 3 .0℃ 、 M A GICC-MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 G HG s: SR ES B 2)
( a) 基 準 排 出 パ ス
図 2 .2 .2 -7
(b) S550
21 0 0 年 に お け る グ リ ッ ド 別 年 平 均 流 出 量 変 動
(1990 年 比 、 気 候 感 度 3 .0℃ 、 M A GICC-MIROC3.2(hires)、 Non-CO 2 G HG s: SR ES B 2)
注)図中、灰色は予測値無しの領域
- 23 -
謝 辞 : 本 研 究 で 、 AOGCM の 流 出 量 予 測 値 は 「 WCRP CMIP3 multi-model dataset」 よ り 入 手 し ま し
た 。利 用 に あ た り 謝 辞 を 表 し ま す 。
( We acknowledge the modeling groups for making their model output
available for analysis, the Program for Climate Model Diagnosis and Intercomparison (PCMDI) for
collecting and archiving this data, and the the World Climate Research Programme's (WCRP's) Working
Group on Coupled Modelling (WGCM) for organizing the model data analysis activity. The WCRP
Coupled Model Intercomparison Project (CMIP3) multi-model dataset is supported by the Office of
Science, U.S. Department of Energy .)
参 考 文 献 ( 第 2.2 節 に 関 す る も の )
1)
N. Nakicenovic, et. al., Special Report on Emissions Scenarios, IPCC, 2000.
2)
RITE、「H16 年度 国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2005.
3)
RITE、「H17 年度 国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2006.
4)
RITE、「H15 年度 国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2004.
5)
IPCC WGI AR4: Climate Change 2007, The Scientific Bases.
6)
WCRP CMIP3 multi-model database: (http://www-pcmdi.llnl.gov/ipcc/about_ipcc.php).
7)
IPCC Data Distribution Center: (http://www.ipcc-data.org/).
8)
H. Hasumi and S. Emori: K-1 Coupled GCM (MIROC) Description
(http://www.ccsr.u-tokyo.ac.jp/kyosei/hasumi/MIROC/tech-repo.pdf).
2.3
各温暖化影響事象の調査および評価
2.3.1 熱 塩 循 環 崩 壊 に 関 す る 評 価
PHOE NIX プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 各 排 出 パ ス に つ い て 、 熱 塩 循 環 ( Thermo Halin e
Circulation: THC) が 維 持 す る か も し く は 崩 壊 す る か を 、 Stock er et al. (19 97) 1 ) の 閾 値
に 基 づ き 評 価 し て い る 。 こ こ で 、 TypeII 影 響 事 象 で あ る 熱 塩 循 環 崩 壊 の 評 価 で は 予 防
的 観 点 か ら 、気 候 感 度 の 値 に IPCC が 不 確 実 性 幅 の 上 限 と し て い る 4.5℃ を 平 成 1 7 年 度
ま で 適 用 し て き た 。一 方 、 IPCC-TAR 以 降 、気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 推 定 が 盛 ん に 行 わ
れ ( PHOENI X 平 成 17 年 度 報 告 書 5.3 節 等 参 照 )、 最 近 で は 気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 を
基に影響事象の生起確率を論じた例
2)
も 見 ら れ る 。こ こ で 、影 響 事 象 の 生 起 確 率 を 論 じ
るには、気候感度の他、事象が生起する条件や時期等、各種要因の不確実性を考慮す
べき事は言うまでもない。しかしながら、気候感度の不確実性の影響は、他の要因の
不確実性の影響に比べ決して小さくないと想定される、また、仮に気候感度以外の要
因の影響も大きいとしても、それらの確率に関する十分な研究が現時点ではなされて
い な い 。 そ こ で 、 こ こ で は 気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 を 基 に 、 各 排 出 パ ス の THC 崩 壊 確
率を推計した。
本 節 で は 、 ま ず 昨 年 度 同 様 に 気 候 感 度 4.5℃ で の THC 維 持 /崩 壊 判 定 結 果 を 示 し 、 続
い て 気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 を 用 い た THC 崩 壊 確 率 推 計 結 果 を 示 す 、 そ し て 最 後 に 各
評価結果の解釈について述べる。
- 24 -
(1) 気 候 感 度 4. 5℃ で の TH C 維 持 /崩 壊 判 定
図 2.3.1-1 に 、 気 候 感 度 4 .5℃ で の 、 B2-reference、 B2-S650、 B2-S550、 B2-S450 の 各
排 出 パ ス の THC 維 持 /崩 壊 の 判 定 結 果 を 示 す 。昨 年 度 の 結 果( PHOENIX 平 成 1 8 年 度 報
告 書 5.4.2 節 参 照 )と 比 べ 、各 パ ス の CO 2 排 出 量 を 一 部 改 訂 し た( PHOEN IX 平 成 18 年
度 報 告 書 5.2.2 節 参 照 ) た め 、 全 球 平 均 気 温 の 上 昇 速 度 (℃ /年 )や 平 衡 時 上 昇 量 ( ℃ 、 産
業 革 命 前 比 ) の 値 が 若 干 変 わ っ た が 、 THC 維 持 /崩 壊 の 判 定 結 果 は 同 じ で あ る 。 す な わ
ち 、気 候 感 度 4 .5℃ で は 、B2-reference、B2-S650 の 各 パ ス は THC が 崩 壊 、B2-S550、B2-S450
の 各 パ ス は THC が 維 持 と 判 定 さ れ る 。
Stocker ら (1997)
に基づく閾値
全球平均気温の上昇速度
(ºC/年 )
0.04
0.03
THC崩壊
THC維持
0.02
B2-Reference
B2-S550
B2-S650
B2-S450
0.01
2
3
4
5
6
7
8
9
全球平均気温の平衡時上昇量
(ºC、産業革命前比)
図 2 .3 .1 -1
T H C 維 持 /崩 壊 の 判 定 結 果 (気 候 感 度 = 4.5℃ )
(2) 気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 に 基 づ く THC 崩 壊 確 率 の 推 計
①
気候感度の確率密度分布
気候感度の確率密度分布に関する主要な研究事例
3 -11 )
を 調 査 し 、中 で も 観 測 値 と の 整
合 性 が 高 い と 考 え ら れ る 次 の a.~ c.の 3 つ の 確 率 密 度 分 布 を THC 崩 壊 の 確 率 推 計 用 と
して選択した。
a.
Murphy e t a l. ( 20 04 )
•
7)
( 図 2.3.1-2 a の 赤 線 )
20 世 紀 後 半 ( 測 器 観 測 ) の 平 均 気 候 の 3 2 項 目 ( 1.5 m 気 温 、 降 水 量 、 相 対 湿 度 、
平均海水面での気圧等)について、観測値とモデル計算値の合致度合いから推定
された確率密度分布。
•
比 較 対 象 が 2 0 世 紀 後 半 の 平 均 気 候 の み で あ る が 、他 の 研 究 事 例 に 比 べ 、比 較 に 用
いられた項目が多く、かつ空間解像度が高い。
b.
Annan an d H ar gr ea ve (2 00 6)
•
10)
( 図 2.3.1-2 b の 赤 太 線 )
20 世 紀 の 温 暖 化 、火 山 噴 火 時 の 気 温 変 化 、最 終 氷 期 極 大 期 (約 2 万 1 千 年 前 )の 海
面水温について、観測値(最終氷期極大期は古気候データに基づく復元値)と整
合するように推定された気候感度の確率密度分布。
- 25 -
•
20 世 紀 の み な ら ず 最 終 氷 期 極 大 期 に つ い て も 整 合 が は か ら れ て い る 。 ま た 、 火 山
噴火に伴う短期的な気温変化との整合もはかられている。
c.
Hegerl e t a l. ( 20 06 )
•
11)
( 図 2.3.1-2 c の 青 線 )
過 去 約 700 年 間 の 北 半 球 の 気 温 変 化 ( 古 気 候 デ ー タ に 基 づ く 復 元 値 を 含 む ) と の
整合性を考慮して推計された気候感度の確率分布。
•
他の研究事例に比べ、考慮された年代が広い。
a. Murphy e t a l .( 20 0 4) 7 )
b. A n na n a nd H a rg re ave ( 20 06) 1 0 )
c. H eg er l e t al . ( 20 06 )
図 2 .3 .1 -2
11)
THC 崩 壊 の 確 率 推 計 に 用 い た 気 候 感 度 確 率 密 度 分 布
(a の赤線、b の赤太線、c の青線)
図 2.3.1-3 に 、 図 2.3.1-2 よ り 読 み 取 っ た 気 候 感 度 の 累 積 確 率 を 示 す 。
- 26 -
累積確率 (%)
100
90
80
70
60
50
40
30
Murphy(2004)
Annan(2006)
20
10
0
Hegerl(2006)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
気候感度 (℃)
図 2 .3 .1 -3
②
気 候 感 度 の 累 積 確 率 ( 図 2.3.1-2 よ り 読 み 取 り )
THC 崩 壊 確 率 の 推 計
各 排 出 パ ス の THC 崩 壊 確 率 は 以 下 の 手 順 で 推 計 し た 。 ま ず 、 図 2.3.1-4 に 示 す よ う
に 、気 候 感 度 の 値 を 0.5℃ ず つ 変 え た 各 場 合 に つ い て 全 球 平 均 気 温 の 上 昇 速 度 と 平 衡 時
上 昇 量 を THC 維 持 /崩 壊 の 判 定 図 上 に プ ロ ッ ト し 、 THC 維 持 /崩 壊 の 閾 値 と 交 差 す る 気
候 感 度 の 値 を 求 め た ( 気 候 感 度 0.5 未 満 は 線 形 補 間 に よ り 推 定 )。 次 に 、 気 候 感 度 が 、
こ こ で 求 め た 値 以 上 に な る 確 率 を 図 2.3.1-3 よ り 読 み 取 り 、 そ れ を THC 崩 壊 の 確 率 と
した。
そ の 結 果 、 THC 崩 壊 の 確 率 は 、 B2-reference で 57~ 9 3 %程 度 、 B2-S650 で 9 ~ 23%程
度 、 B2-S550 で 2~ 7%程 度 、 B2 -S450 で 0 ~ 2 %程 度 と 推 計 さ れ た 。 図 2.3.1-5 に 各 排 出
パ ス の THC 崩 壊 確 率 を 示 す 。 な お 、 図 2.3.1-5 の 横 軸 に は 、 参 考 ま で 2 20 0 年 の C O 2
濃 度 ( CO 2 -only) を 示 し て い る 。
THC 崩壊
Stockerら
(1997)に基づく
THC維持 / 崩壊
の閾値
0.02
CS=3.0
CS=2.5
CS=2.0
0.01
2
3
4
5
6
7
8
9
全球平均気温の平衡時上昇量 (ºC、産業革命前比)
(ºC/ 年 )
0.03
THC 維持
B2-S650
0.04
全球平均気温の上昇速度
(ºC/ 年 )
全球平均気温の上昇速度
B2-Reference
0.04
0.03
THC 崩壊
0.02
CS=4.5
THC 維持
CS=4.0
CS=3.5
0.01
2
3
4
5
6
7
8
全球平均気温の平衡時上昇量 (ºC、産業革命前比)
- 27 -
9
B2-S450
(ºC/ 年 )
(ºC/ 年 )
0.04
全球平均気温の上昇速度
0.03
全球平均気温の上昇速度
B2-S550
0.04
0.03
THC 崩壊
0.02
CS=5.5
THC 維持
CS=5.0
CS=4.5
0.01
2
3
4
5
6
7
8
9
0.02
CS=8.0
CS=7.5
CS=7.0
CS=6.5
CS=6.0
CS=5.5
THC 維持
0.01
2
全球平均気温の平衡時上昇量 (ºC、産業革命前比)
図 2.3.1-4
THC 崩壊
3
4
5
6
7
8
9
全球平均気温の平衡時上昇量 (ºC、産業革命前比)
各 排 出 パ ス に つ い て 異 な る 気 候 感 度 で の THC 維 持 /崩 壊 の 判 定 結 果
B2-Reference
100
THC崩壊確率 (%)
90
80
70
60
50
40
B2-S550
30
B2-S650
Murphy(2004)
Annan(2006)
Hegerl(2006)
20
10 B2-S450
0
0
500
1000
1500
2000
2500
2200年のCO2濃度 (ppmv)
図 2 .3 .1-5
THC の 崩 壊 確 率
(3) 評 価 結 果 の 解 釈 と ま と め
B2-reference、 B2 -S6 50 、 B2-S550 、 B2-S450 の 4 つ の 排 出 パ ス に 対 し 、 予 防 的 観 点 か
ら 気 候 感 度 4.5℃ で の THC 維 持 /崩 壊 判 定 結 果 を 基 に 許 容 上 限 排 出 パ ス を 選 ぶ な ら ば 、
(1)節 に 示 し た よ う に B2-S550 パ ス が 相 当 す る 。 但 し 、 (2)節 に 示 し た よ う に B2-S550 パ
ス で あ っ て も 2~ 7%程 度 の 崩 壊 確 率 は 考 え ら れ る 。 逆 に 、 気 候 感 度 4 .5℃ で THC が 崩
壊 す る と 判 定 さ れ た B2-S650 パ ス に つ い て 、THC 崩 壊 確 率 は 9~ 23 %程 度 と な っ て お り
B2-S550 パ ス の 値 に 比 べ 必 ず し も 格 段 に 大 き い わ け で は な い 。
こ こ で 、 THC 崩 壊 確 率 が ど の 程 度 な ら ば 「 予 防 的 」 か は 、 そ も そ も 価 値 判 断 の 問 題
で あ り 、 一 概 に 定 め る 事 は 難 し い 。 例 え ば 、 THC 崩 壊 に よ る 具 体 的 な 影 響 を ど の 範 疇
まで想像するか、また、ここで取りあげた気候感度の不確実性が、他の要因の不確実
- 28 -
性に比べてどの程度重要と考えるか、によっても「予防的」と判断される数値はおそ
らく変わりうる。
以 上 の こ と を 踏 ま え る と 、「 予 防 的 観 点 か ら の 許 容 排 出 パ ス 」 を 、 気 候 感 度 4 .5 ℃ で
の 判 定 が 「 予 防 的 」 で あ る と い う 前 提 で 提 示 す る の も 一 方 法 で あ る が 、 (2) 節 に 述 べ た
よ う な THC 崩 壊 の 確 率 ( そ の 値 に 含 ま れ る 不 確 実 性 の 内 容 も 含 む ) を 示 し 、「 予 防 的 」
の判断は個々人にゆだねるという方策もあり得ると考えられる。
参 考 文 献 ( 2.3.1 節 に 関 す る も の )
1) Stocker, T.F. and A. Schmittner : Influence of CO2 emission rates on the stability of the thermohaline
circulation, Nature, 388-28, 862-865 (1997) .
2) Meinshausen, M. : ‘What Dºoes a 2 ºC Target Mean for Greenhouse Gas Concentration? A Brief Analysis
Based on Multi-Gas Emission Pathways and Several Climate Sensitivity Unceratinty Estimates.’ In:
Schellnhuber, H J., Cramer, W., Nakicenovic, N., Wigley, T. and Yohe, G. (eds.) Avoiding Dangerous Climate
Change, Cambridge, Cambridge University Press, 265-279 (2006).
3) Andronova, N.G. and M.E. Schlesinger : Objective estimation of the probability density function for climate
sensitivity, Journal of Geophysical Research, Vol. 106, No.D19, 22,605-22,611 (2001)
4) Forest, C.E., P.H. Stone, A.P. Sokolov M.R. Allen, M.D. Webster; Quantifying Uncertainties in Climate
System Properties with the Use of Recent Climate Observations, Science, 295, 113-117 (2002)
5) Webster, M. and A. Sokolov: A Methodology for Quantifying Uncertainty in Climate Projections, Climatic
Change 46, 417-446 (2000)
6) Wigley, T.M. and S.C.B. Raper : Interpretation of high projections for global-mean warming, Science, 293,
451-454 (2001)
7) Murphy, J.M., D.M.H.Sexton, D.N.Barnett, G.S.Jones, M.J.Webb, M.Collins and D.A.Stainforth:
Quantification of modeling uncertainties in a large ensemble of Climate Change Simulations, Nature, 430,
768-772 (2004)
8) Stainforth, D.A., T.Aina, C.Christensen, M.Collins, N.Faull, D.J. Frame, J. A. Ketteleborough, S. Knight, A.
Martin, J.M. Murphy, C. Piani, D.Sexton, L.A.Smith, R.A.Spicer, A.J.Thorpe and M.R. Allen : Uncertainty in
predictions of the climate response to rising levels of greenhouse gases, Nature, 433, 403-406 (2005)
9) von Deimling, T. S., H. Held, A Ganopolski and S. Ramstorf : Climate Sensitivity Range Derived from Large
Ensemble Simulations of Glacial Climate Constrained by Proxy Data, Workshop Report, Workshop on
Climate Sensitivity, in Paris,145-147 (2004).
10) Annan, J.D. and J.C. Hargreave : Using multiple observationally-based constraints to estimate climate
sensitivity, Geophysical Research Letters, VOL. 33, L06704, doi:10.1029/2005GL025259 (2006) .
11) Hegerl, G.C., T.J. Crowley W.T. Hyde and D.J. Frame : Climate sensitivity constrained by temperature
reconstructions of the past seven centuries, Nature, 440, 1029-1032 (2006).
- 29 -
2.3.2 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減 少 に 関 す る 調 査
平 成 17 年 度 に 続 き 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減 少 に 関 す る 最 新 の 知 見 を 調 査 し た 。
(1) 21 世 紀 中 の 減 少 に 関 す る 予 測
•
表 2.3.2-1 は SRES シ ナ リ オ に 対 す る 21 世 紀 中 の 全 球 平 均 海 面 上 昇 と そ の 要 因 別
上 昇 量 の 予 測 値 で あ る 。こ れ に よ る と 、2 0 90~ 20 99 年 の 海 面 上 昇 率 は 、例 え ば SRE S
シ ナ リ オ の 中 で 最 も 海 面 上 昇 が 小 さ い B1 シ ナ リ オ で 1 .6~ 3.9 mm/ y r、 こ の う ち 、
熱 膨 張 分 が 1 .1~ 2 .6 mm/yr、 氷 河 ・ 氷 帽 の 減 少 分 が 0.5~ 1.3mm/ yr 、 グ リ ー ン ラ ン
ド 氷 床 の 減 少 分 ( 降 水 量 、 流 出 量 変 化 起 因 ) が 0 .2~ 1.0mm/ yr、 南 極 氷 床 の 減 少 分
( 降 水 量 、流 出 量 変 化 起 因 )が -1.4~ -0.3mm/ yr と 推 計 さ れ て い る( 出 典:IPCC WGI
AR4 1 ) Ch.10)。
•
一 方 、 1 910~ 1 99 0 年 の 平 均 海 面 上 昇 率 は -0.8~ 2.0mm/ yr 、 こ の う ち 、 熱 膨 張 分 は
0.3 ~ 0.7 mm/yr 、 氷 河 ・ 氷 帽 の 減 少 分 は 0 .2 ~ 0.4 mm/yr 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減
少 分 ( 降 水 量 、 流 出 量 変 化 起 因 ) は 0.0~ 0 .1 mm/ yr、 南 極 氷 床 の 減 少 分 ( 降 水 量 、
流 出 量 変 化 起 因 ) は -0.2 ~ 0 .0 mm/y r と 推 計 さ れ て い る ( 出 典 : IPCC WGI TAR,
Table11.1 0)。
•
つ ま り 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 は 21 世 紀 中 も 引 き 続 き 減 少 し 海 面 上 昇 に 寄 与 す る 。
一 年 当 た り の 減 少 量 は 、2 1 世 紀 末 に は 2 0 世 紀 に 比 べ 増 大 す る と 予 測 さ れ て い る 。
但し、海面上昇への寄与を要因別に見ると、熱膨張程には大きくないと予測され
ている。
表 2.3 .2 -1
S RE S シ ナ リ オ に 対 す る 21 世 紀 中 の 全 球 平 均 海 面 上 昇 予 測
( 出 典 : IPCC WGI AR4, Ch.10)
各 セ ル 上 段 値 : 2090-2099 年 の 海 面 上 昇 [m,1980-1999 年 比 ]。
各 セ ル 下 段 値 : 2090-2099 年 の 海 面 上 昇 率 [mm/yr]。
上 下 段 値 と も 、 左 右 の 数 値 は 複 数 モ デ ル の 各 5%値 、 95%値 を 示 す 。
Land ice sum: G&IC と Greenland ice sheet SMB、 Antarctic ice sheet の 和 。
Sea level rise: Thermal expansion と Land ice sum の 和 。
- 30 -
(2) 数 万 年 に 亘 る 予 測
•
平 成 17 年 度 に 調 査 し た よ う に 、こ れ ま で の モ デ ル 研 究 は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 期 間 が
長くても数千年のオーダーで、その間、グリーンランド氷床は連続的に減少を続
け る 。そ の う ち 、氷 床 上 の 気 温 上 昇 が +12℃ 以 上 と 極 端 な ケ ー ス で は 、氷 床 が 完 全
に消失するという結果が示されている
•
こ れ ら に 対 し 、 斎 藤 ら (2006)
5)
3,4)
。
は 10 万 年 間 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ て い る 。 図
2.3.2-1 は グ リ ー ン ラ ン ド の 年 平 均 気 温 が +2.4 ℃ 、 +3.1 ℃ 、 +3.3 ℃ 、 +4 .3 ℃ ( 1971
~ 1990 年 の 平 均 値 比 ) と い う 4 つ の シ ナ リ オ ( 左 図 ) に 対 し 、 氷 床 の 減 少 量 を 計
算 し 海 水 準 相 当 量 で 示 し た も の で あ る ( 右 図 )。 こ れ に よ る と 、 +4 .3℃ の シ ナ リ オ
のみ、約 1 万年後にグリーンランド氷床は完全に消失するが、その他のシナリオ
で は 、 約 1 万 年 以 降 に 、 現 在 の 氷 床 の 約 1 /3 以 上 が 残 存 し た 状 態 で 安 定 化 す る 。
•
つまり、温暖化があまりに極端でないシナリオの場合、グリーンランド氷床は必
ずしも完全消失に至るまで減少を続けるわけではなく、十分長期間で見ると途中
で安定化する可能性があるといえる。
図 2 .3 .2 -1
グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 実 験 ( 出 典 : 斎 藤 ら (2006) 5 ))
左 図 : グ リ ー ン ラ ン ド 上 夏 季 平 均 気 温 ( 1971~ 1990 年 比 )。
右図:グリーンランド氷床の減少による海面上昇量。
A 1 B( B1 )T -f i x : 21 00 年 ま で SRES A1B(B1)、 2101 年 以 降 は 気 温 を 固 定 。
A 1 B( B1 )S -f i x : 21 0 0 年 ま で は SR E S A1 B( B1) 、 2 10 1~ 2 3 0 0 年 は G H Gs 濃
度 を 2100 年 値 で 固 定 、 2301 年 以 降 は 気 温 を 固 定 。
(3) 完 全 消 失 に 関 す る 閾 値 的 値
•
氷床の主要なマスバランスは、増加分は積雪や水の凍結による氷の涵養量で、一
方、減少分は氷が融解して流出する量と氷床の縁から氷山として海に流出する量
で 表 さ れ る ( IPCC WGI TAR 2 ) ,Tabel 11 .5 等 参 照 )。
•
Huybrechs et al. (1991) 6 ) と Gregory and Huyb reches (2006) 7 ) は 、氷 床 モ デ ル に よ り 、
年間の涵養量と融解量を算出し、涵養量<融解量になる気温を算出している。つ
- 31 -
まり、温暖化前の氷床について、仮に氷山としての流出量が 0 であったとしても
年 間 の 氷 床 マ ス バ ラ ン ス が 負 に な る 気 温 で あ る 。こ の う ち 、改 訂 版 で あ る Grego r y
and Huyb reches (2006)に よ る と 、グ リ ー ン ラ ン ド の 平 均 気 温 上 昇 が +4.5± 0.9℃( 全
球 平 均 気 温 上 昇 で +3 .1± 0.8℃ 、い ず れ も 1 9 世 紀 後 半 比 )で 涵 養 量 < 融 解 量 に な る 、
従 っ て 気 温 上 昇 が こ れ 以 上 に な る と 、 最 終 的 に 7m の 海 面 上 昇 を 招 く か も 知 れ な
いとしている。
•
Gregory and Huyb reches (2006)の 上 記 値 は 、 一 つ の 指 標 で あ る こ と に 違 い な い が 、
解釈上、この評価で氷床の地勢変化が考慮されていない点に留意が必要と考えら
れる。グリーンランド氷床の減少は数千年以上の現象であり、その間に氷床の高
度や面積、特性が変われば涵養量、融解量とも変化するはずである。現実的な評
価という観点では、氷床の地勢、そして涵養量、融解量、氷山流出量等の各要素
について長期時系列的変化を考慮する事が望まれる。
•
Saito et al.(2006)
8)
は、5 万年間のモデルシミュレーションを行い、氷床が安定化
し た 後 の 氷 床 体 積 を 評 価 し て い る 。こ の モ デ ル で 、氷 床 の 地 勢 、涵 養 量 、融 解 量 、
氷 山 流 出 量 等 、各 種 要 素 の 時 系 列 的 変 化 は 考 慮 さ れ て い る 。図 2.3.2 2 は 、シ ミ ュ
レ ー シ ョ ン 結 果 の 一 部 で 、 氷 床 上 気 温 上 昇 ( 19 7 1~ 1 99 0 年 の 平 均 値 比 ) と 5 万 年
後の氷床体積の関係を示している。図中の太線と細線はモデルの数値表現の違い
を示している。これによると、モデルの数値表現が異なると温暖化による氷床体
積 変 化 の 推 定 値 も 異 な る 。例 え ば 、氷 床 上 の 年 平 均 気 温 上 昇 が + 5℃ の 場 合 、モ デ
ル の 数 値 表 現 に よ っ て は 、 氷 床 が 完 全 に 消 失 す る 結 果 と 1 /2 程 度 が 残 存 す る と い
う異なる結果が得られている。つまり、氷床の完全消失に関する閾値的値(気温
上昇値)について、不確実性は小さくないと考えられる。
図 2 .3 .2 -2
気温上昇に対するグリーンランド氷床の残存体積
- 32 -
8)
(4) グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 減 少 の 加 速 化 を 危 ぶ む 声
•
Rignot et al.(2006)
9)
の衛星データを用いた解析によると、グリーンランドの一部
の氷河で流れの加速傾向が見られる。このため、これまで予測されていた以上の
速度で氷床が減少することが懸念されている。
•
このような、氷河の流れの加速化は、確かに懸念事項で今後も注視すべきと考え
られる。但し、これについて現時点では定量的な議論が出来るまで評価がいたっ
ておらず、今後のモデルへの組み込み等、各種研究の成果が待たれる。
•
Overpeck et al. (2006)
10)
で は 次 の よ う に 述 べ て い る 。古 気 候 デ ー タ に よ る と 、最 終
間 氷 期 ( 約 1 2 万 5 千 年 前 ) の 海 面 は 現 在 よ り 4~ 6 m 高 か っ た 。 一 方 、 モ デ ル 計
算 に よ る と 、 2 10 0 年 ( 大 気 中 CO 2 濃 度 が 産 業 革 命 前 の 3 倍 を 想 定 ) の 気 温 は 、 最
終間氷期の気温推計値より高い。これらに基づくと、最終氷期と同程度の海面上
昇が生じるかもしれない。
•
Overpeck et al. (2006)の 主 張 に つ い て は 、 次 の よ う 留 意 点 が 上 げ ら れ る 。 最 終 間 氷
期の海面上昇のメカニズムは現時点では必ずしも十分明らかでない。例えば、当
文献で述べているように、南極氷床の寄与についてもまだ議論の余地があると考
えられる。従って、当時の海面上昇のメカニズムについて更なる科学的知見を重
ねた上で比較するべきと考えられる。
(5) 調 査 の ま と め
最新知見の調査結果をまとめると次のようになる。
•
最 新 モ デ ル を 用 い た 21 世 紀 予 測 に よ る と 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 は 21 世 紀 中 も 減
少を続け、海面上昇に寄与する。但し、その寄与度は熱膨張程大きくない。
•
10 万 年 間 の モ デ ル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る と 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 は 、 必 ず し も
完全消失に至るまで減少を続けるわけでない。
(現在の数分の 1 の氷床を残して安
定 化 す る 可 能 性 も あ る 。)
•
氷床の完全消失に関する閾値的値(気温上昇値)を論じた事例もあるが、現時点
では不確実性の考慮等、課題が少なくなく、解釈に留意が必要である。
•
氷河の流れの加速化に関する観測結果は確かに懸念事項であり、今後も注視すべ
きである。但し、現在のモデル研究には、氷河の流れの変化、その他、温暖化の
フィードバック効果等幾つかの重要懸念事項が、十分に考慮されていない。従っ
て、氷床減少の加速化については、各種懸念事項の影響を取り込んだ今後のモデ
ル研究の成果を合わせ、慎重に議論すべきと考えられる。
参 考 文 献 ( 2.3.2 節 に 関 す る も の )
1)
IPCC WGI: Climate Change 2007, The Scientific Bases.
2)
IPCC WGI: Climate Change 2001, The Scientific Bases.
3)
Greve, R.,: On the response of the Greenland Ice Sheet to greenhouse climate change. Climatic Change, 46,
(2000) 289-283.
- 33 -
4)
Rignot, E. and P. Kanagaratnam, : Changes in the Velocity Structure of the Greenland Ice Sheet, Science,
311-5763, (2006 ) 986 – 990.
5)
斎藤冬樹, 阿部彩子:Response of Greenland Ice Sheet to the Global Warming Simulated by GCM and an
Ice Sheet Model(技術指導資料),平成 18 年 7 月.
6)
Huybrechts, P., A. Letreguilly, and N. Reeh,: The Greenland Ice Sheet and greenhouse warming.
Paleogeography, Paleoclimatology, Paleoecology (Global and Planetary Change Section), 89, (1991)
399-412.
7)
Gregory, J. M. and Huybrechts, P.,: Ice-sheet contributions to future sea-level change Philosophical
transactions of the royal society of london series a-mathematical physical and engineering sciences, 364,
(2006) 1709-1731.
8)
Saito, F. and Abe-Ouchi, A.: Sensitivity of Greenland ice sheet simulation to the numerical procedure
employed for ice sheet dynamics. Annals of Glaciology. 42 (2005) 331-336
9)
Rignot, E. and P. Kanagaratnam,: Changes in the Velocity Structure of the Greenland Ice Sheet, Science,
311-5763, (2006) 986 – 990.
10) Overpeck, J. T., Bette L. Otto-Bliesner, Gifford H. Miller, Daniel R. Muhs, Richard B. Alley, Jeffrey T.
Kiehl,: Paleoclimatic Evidence for Future Ice-Sheet Instability and Rapid Sea-Level Rise, Science,
311-5768, (2006) 1747 – 1750.
2.3.3 氷 河 ・ 氷 帽 に 関 す る 調 査
グ リ ー ン ラ ン ド や 南 極 以 外 の 陸 域 に 存 在 す る 氷 河 ( Glaciers)、 氷 帽 ( Ice Caps) 1 は 、
体 積 が グ リ ー ン ラ ン ド や 南 極 の 氷 と 比 べ 桁 違 い に 小 さ い 2こ と よ り 、 例 え 完 全 に 消 失 し
たとしても破局的な海面上昇を招くとは考えられない。しかしながら、近年では、ヒ
マラヤやアンデス等山岳地域の氷河や氷帽で体積減少の加速化傾向がみられ、海面上
昇への寄与の他、水資源への影響、洪水災害が危惧されている。そこで、本節では、
氷河・氷帽に関する最近の研究を調査した。なお、グリーンランドや南極の氷床周辺
に も 氷 河・氷 帽 は 存 在 す る が 、気 候 モ デ ル 予 測 で は そ れ ら は 氷 床 と 合 わ せ て 計 算 さ れ 、
それ以外の地域の氷河・氷帽は別途計算される事が多い。そのような状況に合わせ、
本節でも特に断りが無い場合は、氷河・氷帽はグリーンランドや南極以外のものを指
すこととする。
1
2
氷 河 ( Glacier) : ( 内 部 変 形 お よ び 底 部 の 滑 り に よ り ) 斜 面 を 下 降 し 、 周 囲 の 地 形 ( 例 : 渓 谷
斜 面 あ る い は 周 囲 の 山 頂 )に 圧 迫 さ れ て い る 陸 氷 の 塊 。基 盤 地 形 が 氷 河 の 動 態 お よ び 地 表 面 勾 配
に対する主要な影響力となっている。氷河は、高高度における雪の蓄積により成り立っており、
低 地 で の 融 解 あ る い は 海 へ 流 れ る こ と で バ ラ ン ス を 保 っ て い る 。 氷 帽 ( Ice cap) : 高 地 地 帯 を 覆
う ド ー ム 型 の 氷 塊 。 ( 出 典 : IPCC WGI TAR 1) ,Appendix I)
グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 ( 周 辺 の 氷 河 ・ 氷 帽 を 含 む ) の 海 水 準 相 当 量 は 7.2m、 南 極 氷 床 ( 周 辺 の 氷
河 ・ 氷 帽 を 含 む ) の 同 量 は 6 1 . 1 m( 出 典 : I P C C W G I T A R 1 ) T a b l e 1 1 . 3 )。一 方 、 グ リ ー ン ラ ン ド 、
南 極 以 外 の 陸 地 に 存 在 す る 氷 床・氷 帽 の 海 水 準 相 当 量 は 0 . 1 5 ~ 0 . 3 7 m と 推 計 さ れ て い る 。( 出 典 :
IPCC WGI AR4 2) ,Ch.4)
- 34 -
(1) 氷 河 ・ 氷 帽 の 位 置 と 量
•
Global Land Ice Measure ments fro m Space (GLIMS)
の Glacier Database 3 ) に よ る
と 、 現 在 、 世 界 の 主 な Land Ice は 図 2.3.3-1 の 青 域 に 位 置 し て い る ( 本 図 に は グ
リ ー ン ラ ン ド と 南 極 の 氷 も 含 む )。
図 2.3.3-1
•
主 な Lan d Ic e の 存 在 域 ( 図 中 青 域 )( 出 典 : GLIMS Glaci e r D at aba s e 3 ))
グ リ ー ン ラ ン ド 、 南 極 以 外 の 氷 河 ・ 氷 帽 の 面 積 は 5 12~ 5 4 0×1 0 3 km 2 、 体 積 は 51~
133×10 3 km 3 、 海 水 準 相 当 量 は 0.1 5~ 0.3 7 m と 推 定 さ れ て い る 。 但 し 、 こ れ ら の 推
定値(特に体積と海水準相当量)には不確実性が大きく、更なる精度向上が必要
で あ る (出 典 : IPCC WGI AR4,Ch.4 )。
(2) 20 世 紀 後 半 の 氷 河 ・ 氷 帽 の 減 少
•
マ ス バ ラ ン ス 推 計 に よ る と 、氷 河・氷 帽 の 減 少 は 海 水 準 相 当 量 に し て 、1 96 1~ 20 03
年 は 0.4 0± 0.2 2 mm/ yr で あ る が 、 19 93~ 20 0 3 年 に 限 る と 0.5 9± 0.30 mm/yr( グ リ ー
ン ラ ン ド 氷 床 、南 極 氷 床 周 辺 の 氷 河・氷 帽 も 含 む と そ れ ぞ れ 0 .5 1±0 .3 2 mm/ yr、0.8 1
± 0.43mm/ yr)と 推 計 さ れ て い る 。こ の よ う に 、2 0 世 紀 末 に お け る 氷 河 ・ 氷 帽 の 減
少 加 速 化 は お そ ら く 1 97 0 年 代 以 降 の 温 暖 化 の 影 響 で あ ろ う と 考 え ら れ て い る (出
典 : IPCC WGI AR4,Ch.4)。
•
単 位 面 積 当 た り の 体 積 減 少 が 著 し い 地 域 は 図 2.3.3-2 の a に 示 す よ う に 、パ タ ゴ ニ
ア ( 南 米 大 陸 の 南 部 )、 ア ラ ス カ 、 ア メ リ カ 北 西 部 、 カ ナ ダ 南 西 部 で あ る 。 ア ラ ス
カ、北極、アジアの高山地域の氷河・氷帽は面積が大きいため減少量が多い、す
- 35 -
な わ ち 、海 面 上 昇 へ の 寄 与 が 大 き い 、と 推 定 さ れ て い る( 図 2.3.3-2 の b ) (出 典 :
IPCC WGI AR4,Ch.4) 。
図 2.3.3 -2
2 0 世 紀 後 半 の 氷 河 ・ 氷 帽 の 変 化 ( 出 典 : IPCC WGI AR4, Ch.4)
a 図:単位面積当たりの変化量、b 図:変化量(海水準相当量)
(3) 海 面 上 昇 へ の 寄 与
•
AOGCM の 計 算 に よ る と 、 19 10~ 1 99 0 年 の 平 均 海 面 上 昇 率 は -0.8~ 2 .0 mm/yr で 、
こ の う ち 、 熱 膨 張 の 影 響 は 0.3~ 0 .7 mm/ yr、 氷 河 ・ 氷 帽 の 影 響 は 0.2~ 0.4mm/ yr 、
グ リ ー ン ラ ン ド ( 降 水 量 、 流 出 量 変 化 起 因 ) の 影 響 は 0.0~ 0 .1 mm/ yr、 南 極 の ( 降
水 量 、流 出 量 変 化 起 因 )の 影 響 は -0.2~ 0.0 mm/yr と 推 計 さ れ て い る( 出 典:IPCC WG I
TAR, Table11.10)。
•
同 様 に 、 20 9 0~ 2 09 9 年 の 海 面 上 昇 率 は 、 例 え ば SRES シ ナ リ オ の 中 で 最 も 海 面 上
昇 が 少 な い B1 シ ナ リ オ で 1.6 ~ 3.9mm/yr 、 こ の う ち 、 熱 膨 張 の 影 響 は 1.1 ~
2.6mm/ yr、 氷 河 ・ 氷 帽 の 影 響 は 0 .5~ 1.3mm/ yr、 グ リ ー ン ラ ン ド ( 降 水 量 、 流 出 量
変 化 起 因 ) の 影 響 は 0 .2~ 1 .0mm/ yr、 南 極 の ( 降 水 量 、 流 出 量 変 化 起 因 ) の 影 響 は
-1.4~ -0.3mm/ yr と 推 計 さ れ て い る (出 典 : IPCC WGI AR4, Ch.10 )。
•
上 記 の よ う に 、 21 世 紀 終 わ り 頃 は 20 世 紀 に 比 べ 、 海 面 上 昇 率 は 増 す 、 そ の う ち 、
熱膨張ほどではないが氷河・氷帽も海面上昇率の増加に寄与すると予測されてい
る。
(4) 水 資 源 へ の 影 響 ( Co u dr ai n et al.,2005) 4 )
•
ヒマラヤやアンデス、アルプスのような山岳地域の氷河は、安定的な水資源供給
の一役を担っている。例えば、アンデスの乾燥地域では、長い乾季の間も氷河の
融解水が河川に流出している。過去数十年に観測された氷河後退の加速化は、人
間の生活や、生態系、希少な種を脅かすものと危惧される。
•
温暖化による氷河の融解でリスクを被ると考えられる地域として、ボリビア、エ
クアドル、ペルーの一部の地域があげられる。これらの地域では、氷河の融解水
- 36 -
が一年を通じて河川に流出し水資源の重要な源になっている。例えばペルーの太
平 洋 域 で は 、 水 資 源 の 約 8 0%は 雪 や 氷 の 融 解 水 で あ る 。
•
広い山岳氷河を含む多くの流域で、ここ数十年、降水量は変わらない、もしくは
減少しているにも関わらず、流出量が増加している。これは、氷河が後退してい
るためと推測されるが、長期的に継続するはずもなく、将来世代への悪影響が懸
念される。
(5) 氷 河 湖 決 壊 の 懸 念 (U N EP , 20 02 )
•
5)
1999 年 ~ 20 0 2 年 に 、ヒ マ ラ ヤ の ネ パ ー ル と ブ ー タ ン で 行 わ れ た 氷 河 と 氷 河 湖 に 関
す る 調 査 に よ る と 、両 国 で 約 40 0 0 の 氷 河 と 約 5 00 0 の 氷 河 湖 の 存 在 が 確 認 さ れ た 。
•
こ の う ち 、 ネ パ ー ル で 20 個 、 ブ ー タ ン で 24 個 の 氷 河 湖 は 、 水 量 増 加 に よ り 決 壊
す る 可 能 性 が あ る と 推 定 さ れ る 。 例 え ば 、 ブ ー タ ン の 氷 河 湖 に は 1 98 6 年 に 長 さ
1.6k m、 幅 0.96km、 深 さ 80 m で あ っ た が 19 95 年 に は 長 さ 1.9 4k m、 幅 1.13km、 深
さ 107 m に な っ た も の が あ る 。
•
ネ パ ー ル の 49 の 観 測 所 で は 197 0 年 代 に 比 べ 約 1℃ 上 昇 し て お り 、 氷 河 湖 の 急 速
な水量増加は温暖化の影響と考えられる。
•
こ の ま ま で は 5~ 10 年 後 に 氷 河 湖 が 決 壊 し 、 数 百 k m 下 流 の 人 々 や 資 産 が 洪 水 に
襲われる危険性がある。
(6) 調 査 の ま と め
•
観 測 と 推 定 に 基 づ く と 、氷 河・氷 帽 の 減 少 は 、2 0 世 紀 後 半 で も 末 期 の 方 が 大 き く 、
おそらく温暖化がそれに寄与している考えられている。地域別では、アラスカ、
北極、アジアの高山地域で減少が多い。
•
AOGCM を 用 い た 予 測 に よ る と 、氷 河 ・ 氷 帽 の 減 少 に よ る 海 面 上 昇 率 ( mm/ yr ) は 2 0
世 紀 に 比 べ 、 21 世 紀 末 期 の 方 が 大 き い 。 但 し 、 熱 膨 張 に よ る 海 面 上 昇 率 は そ れ 以
上に増加すると予測されている。つまり、氷河・氷帽の減少は今後も海面上昇に
寄与するが、熱膨張ほどではないといえる。
•
水資源という観点からは、氷河の融解水が河川に流出している地域(例えばボリ
ビア、エクアドル、ペルーの一部の地域等)では氷河減少が将来的に水不足を招
くと懸念されている。また、氷河湖決壊による洪水の危険性が示唆されている所
(ネパール、ブータン)もある。但し、これらの影響に関する定量的評価事例は、
現時点では少なく、今後の研究が注目される。
参 考 文 献 ( 2.3.3 節 に 関 す る も の )
1)
IPCC WGI :Climate Change 2001, The Scientific Bases.
2)
IPCC WGI :Climate Change 2007, The Scientific Bases.
3)
Global Land Ice Measurements from Space (GLIMS) Glacier Database: Global Glacier Recession
(http://nsidc.org/data/glims/glaciermelt/index.html).
4)
Anne Coudrain, Bernard Francou, and Zbigniew W. Kundzewicz: Glacier shrinkage in the Andes and
consequences for water resources— Editorial, Hydrological Sciences, 50-6 (2005) 925-932.
5)
UNEP : Global Warming Triggers Glacial Lakes Flood Threat (2002)
- 37 -
(http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=245&ArticleID=3042&l=en) .
2.3.4 海 面 上 昇 ・ 沿 岸 域 影 響 評 価
(1) 海 面 上 昇
①
排出パスに沿った評価
第 2.2 節 で 想 定 し た 排 出 パ ス に つ い て 、MAGICC ベ ー ス の 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル に よ っ
て、全球平均の海面上昇(熱膨張、南極・グリーンランド氷床の融解、氷帽の融解)
を 推 定 し た 結 果 を 図 2.3.4-1( SRES B2 ベ ー ス ) お よ び 図 2.3.4-2( SRES A1FI ベ ー ス )
に 示 す 。 リ フ ァ レ ン ス 排 出 パ ス と 濃 度 安 定 化 パ ス と の 差 は 比 較 的 大 き い 一 方 、 22 00 年
に お け る 650~ 45 0 ppmv 濃 度 安 定 化 の 間 の 差 異 は 、 SRES B2 ベ ー ス 、 A1FI ベ ー ス 共 に
20cm あ ま り に 留 ま る 結 果 と な っ て い る 。
120
Reference
100
S650
Sea level rise (cm)
S550
80
S450
60
40
20
0
1800
1850
1900
1950
-20
図 2.3.4-1
2000 2050
Year
2100
2150
2200
SR ES B 2 ベ ー ス の 各 排 出 パ ス に 対 す る 海 面 上 昇 ( 気 候 感 度 は 3.0℃ )
120
Reference
100
S650
Sea level rise (cm)
S550
80
S450
60
40
20
0
1800
-20
図 2.3.4-2
1850
1900
1950
2000 2050
Year
2100
2150
2200
SR ES A 1 F I ベ ー ス の 各 排 出 パ ス に 対 す る 海 面 上 昇 ( 気 候 感 度 は 3.0℃ )
- 38 -
図 2.3.4-3 に は SRES B2 ベ ー ス の リ フ ァ レ ン ス 排 出 パ ス に お け る 要 因 別 の 海 面 上 昇
を示す。熱膨張分が海面上昇全体に対して大きなウェイトを占めることがわかる。な
お、ここでの南極氷床の融解には、破局的影響事象として危惧されている西部南極氷
床 ( WAIS) の 崩 壊 の 効 果 は 含 ま れ て い な い 。 MAGICC で は 、 南 極 は 降 雪 量 の 増 加 に よ
って海面を低下させる効果として推定される。
140
120
Sea level rise (cm)
100
80
南極氷床の融解
グリーンランド氷床の融解
氷帽の融解
熱膨張
合計
60
40
20
0
1990
-20
図 2.3.4-3
2020
2050
2080
2110
2140
2170
2200
S RE S B2 ベ ー ス の リ フ ァ レ ン ス 排 出 パ ス に お け る 要 因 別 の 海 面 上 昇( 気 候
感 度 は 3.0℃ )
②
海面上昇の時間遅れ
本 研 究 に お い て は 、 22 00 年 ま で の 長 期 の 期 間 に つ い て 、 温 暖 化 影 響 の 評 価 を 実 施 し
た ( 代 表 時 点 と し て 2 0 50、 2 1 00、 21 50 年 )。 し か し な が ら 、 海 面 上 昇 は 時 間 遅 れ が 大
き く 、濃 度 安 定 化 し て も 2 20 0 年 を 超 え て 海 面 が 上 昇 し 続 け る と 推 定 さ れ る 。図 2 . 3.4- 4
は そ の 評 価 の 一 例 で 、 こ の 評 価 例 で は 2 000 年 時 点 で 即 座 に 大 気 中 GHG 濃 度 を 安 定 化
できたとして評価を実施しているが、仮にこのように非現実的な濃度安定化が達成で
き た と し て も 、多 く の ケ ー ス で 2 40 0 年 に 至 っ て も ま だ 海 面 上 昇 が 継 続 す る と 推 定 が 示
されている。海面上昇の時間遅れには大きな注意が必要と言える。
- 39 -
図 2 .3 .4 -4
③
海 面 上 昇 の 時 間 遅 れ ( 出 典 : Wigley, 2005 1 ) )
海面上昇の地域的な差異に関する調査
次 に 、図 2.3.4-5 に 、海 水 の 密 度 と 循 環 の 変 化 に よ る 地 域 的 な 海 面 レ ベ ル の 変 化 を 示
す。これからは、特に北極域では全球平均に比べて上昇が大きいが、沿岸影響が大き
いと考えられる地域については、全球平均との差異は大きくないことがわかる。その
ため、海面上昇による沿岸影響は、全球平均の海面上昇を基に検討すれば十分である
と考えられる。
図 2.3.4-5
海水の密度と循環の変化による地域的な海面レベルの変化(全球平均海
面 上 昇 比 、 単 位 : m)。 図 は 、 S R ES A1B シ ナ リ オ 下 で 計 算 し た 21 世 紀 の 平 均 値 で あ り 、
14 の AOG CM の ア ン サ ン ブ ル 平 均 で あ る 。 図 中 の 等 高 線 は 、 モ デ ル 結 果 の 標 準 偏 差 を 示
し て い る 。( 出 典 : IP C C WG I AR 4 , Ch. 10 2 ) )
- 40 -
(2) 沿 岸 域 影 響
本項では、本研究の最終年度にあたって、今一度、最新の沿岸域影響評価について
整 理 を 行 っ た 。図 2.3.4-6 に は 、沿 岸 に 影 響 を 及 ぼ し 得 る 気 候 変 動 の 要 素 を 示 し て い る 。
海面上昇のみならず、その他の気候変動をどのように考慮して沿岸影響を評価するか
は重要なポイントである。もちろん、後述の論文が示唆しているように、気候変動以
外の影響も大きい。
図 2.3 .4 -6
①
気 候 変 動 に よ る 沿 岸 影 響 ( 出 典 : IPCC WGII AR4, Ch.6 3 ) )
Nicholls ら に よ る 評 価
Nicholls (2004) 4 ) で は 、 SRES A1FI, A2, B1, B2 の 4 シ ナ リ オ に つ い て 、 21 世 紀 中 の 洪
水の変化(人間システムへの影響)と沿岸湿地帯の喪失ポテンシャル(生態系への影
響 ) を 推 定 し て い る ( 図 2.3.4-7 )。 変 化 と し て は 、 海 面 上 昇 の 他 に 、 人 口 ( 洪 水 の 危
険 地 域 に 住 ん で い る 人 口 ( 洪 水 に あ う サ イ ク ル 1 0 00 年 未 満 )、 標 準 的 な 洪 水 の 可 能 性
が あ る 地 域 に 住 ん で い る 人 口 )、 GDP、 沿 岸 地 帯 の 沈 降 ( 自 然 起 因 ( 15 cm/centu ry を 想
定 )、 人 為 起 源 ( 地 下 水 利 用 、 45 cm/century を 想 定 )) を 考 慮 し て 評 価 し て い る 。 そ の
上 で 、 一 人 当 た り GD P を 説 明 変 数 と し て 防 護 レ ベ ル も 想 定 し て い る 。 な お 、 沿 岸 湿 地
帯の喪失は、湿地帯の移動も考慮されている。
こ の 分 析 結 果 に よ る と 、海 面 上 昇 が 無 い と 仮 定 し た 場 合 の 洪 水 の 発 生 リ ス ク は 、20 20
年 代 ま で は 4 シ ナ リ オ す べ て に お い て 増 大 す る が 、 一 方 、 20 8 0 年 代 ま で に は 防 護 が 進
む と 見 ら れ る た め 、 A2 シ ナ リ オ 以 外 で は 減 少 す る 。 た だ し 、 人 口 が 多 く 、 低 経 済 成 長
で あ る A2 シ ナ リ オ は 2 02 0 年 以 降 も 引 き 続 き 増 大 す る 。海 面 上 昇 の 影 響 を 考 慮 す る と 、
2080 年 代 で は 、 A1FI と B1 で は 1 99 0 年 比 で 減 少 、 B2 で は 増 加 、 A2 は 大 幅 な 増 加 が 推
定 さ れ て い る ( 表 2.3.4-1~ 表 2.3.4-3)。 た だ し 、 特 に A1FI は 2 2 世 紀 で の 海 面 上 昇 が
大 き い と 推 定 さ れ る の で 、 22 世 紀 に は 影 響 が 大 き く な る だ ろ う と し て い る ( そ れ に 関
す る 分 析 結 果 は 後 述 の 別 文 献 で 示 唆 さ れ て い る )。
ま た 、 沿 岸 湿 地 帯 の 喪 失 ポ テ ン シ ャ ル に つ い て は 、 A1FI で は 海 面 上 昇 に よ る 喪 失 が
2080 年 に は 2 0 %に 及 ぶ と 推 定 さ れ る が 、 そ れ 以 上 に 直 接 的 な 人 為 影 響 が 大 き く 、 ト ー
タ ル す る と 、 70 %に 及 ぶ と 推 定 さ れ る と し て い る ( 表 2.3.4-4、 表 2.3.4-5)。
- 41 -
図 2.3.4-7
Fl oo d m od e l と W e tl and loss model の ア ル ゴ リ ズ ム ( 出 典 : Nicho ll s,
2004 3 ) ; Nicho ll s et al ., 1 99 9 5 ) と ほ ぼ 同 様 )
表 2.3 .4 -1
沿岸地域の洪水による影響(気候変化を考慮しない場合)
- 42 -
表 2 .3 .4 -2
気候変化に起因する沿岸地域の洪水による追加的影響
表 2 .3 .4 -3
表 2.3.4-4
沿 岸 地 域 の 洪 水 に よ る 地 域 的 な 影 響 ( 2080s)
全 球 平 均 海 面 上 昇 の み の 影 響 に よ る 沿 岸 湿 地 帯 の 喪 失 ( Low/High)
- 43 -
表
2.3.4-5
全球平均海面上昇と人為的な影響の両方による沿岸湿地帯の喪失
( Low/High)
一 方 、 Nicholls は 、 文 献 6, 7)に お い て 、 2 2 世 紀 に お け る 海 面 上 昇 の 影 響 も 評 価 す る
と共に、濃度安定化シナリオについても評価を行っている。
図 2.3.4-8 に は 、 気 候 変 動 に よ る 海 面 上 昇 が 無 い ケ ー ス 、 お よ び 、 各 種 SRES シ ナ リ
オと濃度安定化シナリオ下における洪水に見舞われると推定される追加的人口を示し
て い る 。 A2 ケ ー ス で は 大 き な 値 を 示 し て い る も の の 、 排 出 量 が 大 き い 一 方 、 人 口 が 少
な く 、経 済 発 展 が 大 き い A1FI ケ ー ス で は か な り 影 響 が 小 さ く な る 。と り わ け 濃 度 安 定
化ケースでは小さい。
図 2.3.4-8
2 08 0 s に お け る 沿 岸 地 域 の 洪 水 の 影 響 ( 出 典 : Nichol l s e t a l. , 20 04 6 ) )
図 2.3.4-9 は 、 A1FI、 A2 、 B2 の 各 シ ナ リ オ に つ い て 、 全 球 平 均 気 温 別 に 沿 岸 地 域 の
洪水による影響を受ける人口を示している。なお、3種類のグラフは、防御レベルの
想定の違いである。これを見ると、まず、気温レベル以上に、ベースとなる社会シナ
リ オ ( 人 口 、 GDP ) の 違 い の 影 響 が 大 き い こ と 、 防 御 レ ベ ル に よ っ て 、 影 響 は 大 き く
異なり、適応の余地は大きいことが示唆されている。
- 44 -
図 2.3.4-9
②
2 08 0 s に お け る 沿 岸 地 域 の 洪 水 の 影 響 ( 出 典 : Nichol l s e t a l. , 20 04 6 ))
Ericson ら に よ る 評 価
一 方 、 Ericson et al. (2005) 8 ) で は 、 ”Effective sea-level rise (ESLR)”を 、 世 界 の 4 0 の デ
ル タ 地 帯 に つ い て 、 詳 細 に 評 価 し て い る 。 な お 、 ESLR は 、 デ ル タ 地 帯 の 面 に 対 す る 見
かけの海面上昇変化率として定義される。
た だ し 、 こ の 文 献 で の 分 析 は 、 気 候 変 化 の 影 響 は 考 慮 し て お ら ず 、 20 世 紀 の 海 面 上
昇 速 度 ( 海 水 準 変 動 : 1.5 –2 .0 mm yr - 1 ) が 将 来 も 続 く ( 1 .5 mm yr - 1 を 採 用 ) と し た 保 守
的 な 仮 定 で 評 価 し て い る 。 そ の 上 で 、 推 定 に よ る と 、 世 界 の 40 の デ ル タ 地 帯 に お け る
ESLR は 0.5 ~ 1 2 .5 mm y r - 1 の 範 囲 に あ る と し て い る 。 20 5 0 年 ま で に は 4 0 の デ ル タ 地 帯
の 面 積 の う ち の 8.7 million 人 、 28 ,00 0 km 2 の 面 積 が 沿 岸 侵 食 を 受 け る と し て い る 。 た
だ し 、 そ の う ち の 約 7 0%は ダ ム の 建 設 と 灌 漑 に よ る 水 流 の 減 少 に 起 因 し た 河 口 に お け
る 堆 積 の 減 少 に よ る も の で あ り 、 約 2 0 %は 地 下 水 の 汲 み 上 げ な ど に よ る 沈 降 に よ る も
の で 、 一 方 、 海 面 上 昇 の 影 響 は 10 %に 過 ぎ な い と し て い る 。 た だ し 、 今 後 、 海 面 上 昇
は 速 く な る は ず な の で 、 影 響 が 大 き く な る こ と は 考 え ら れ る と し て い る 。 図 2.3 .4-10
は 、 2050 年 の 被 害 人 口 の 大 き さ を 示 し て い る 。 メ コ ン デ ル タ 、 バ ン グ ラ デ ィ シ ュ 、 ナ
イルデルタでの影響が大きいとしている。
本文献は、気候変化の影響を取り扱った研究ではないものの、評価方法が参考にな
り ( た だ し 、 一 部 の パ ラ メ ー タ に つ い て 用 い た 値 が 不 明 な も の も あ る )、 ま た 、 ど の 地
域が脆弱で注意が必要なのかの示唆を得ることもできる。
- 45 -
図 2.3.4-10
デ ル タ 地 帯 に お け る 脆 弱 性( リ ス ク に 曝 さ れ る 追 加 的 人 口( 2000 年 比 の
2050 年 ) Extre me: 10 0 万 人 以 上 、 High: 50 万 人 程 度 、 Medium: 5000 人 以 上 。 出 典 :
IPCC WGII AR4 , Ch .6 3 ) ; Er i cs o n et a l. , 2 00 6 8 ))
参 考 文 献 ( 第 2.3.4 節 に 関 す る も の )
1)
T.M.L. Wigley, 2005
2)
IPCC WGI, 2007; Climate Change 2007: The Physical Science Basis
3)
IPCC WGII, 2007; Climate Change 2007: Impacts, Adaptation and Vulnerability
4)
Nicholls, R.J., 2004; Coastal flooding and wetland loss in the 21st century: changes under the SRES climate
and socio-economic scenarios, Global Environmental Change, 14, 69-86.
5)
Nicholls, R.J. et al., 1999; Increasing flood risk and wetland losses due to global sea-level rise: regional and
global analyses, Global Environmental Change, 9, S69-S87.
6)
Nicholls, R.J. et al., 2004; Benefits of mitigation of climate change for coastal areas, Global Environmental
Change, 14, 229-244.
7)
Nicholls, R.J. et al., 2006; Climate stabilization and impacts of sea-level rise, In: Avoiding Dangerous
Climate Change, Cambridge University Press, pp.195-202.
8)
Ericson, J.P. et al., 2005; Effective sea-level rise and deltas: Causes of change and human dimension
implications. Global and Planetary Change, 50, 63-82.
2.3.5 健 康 影 響 の 評 価
温暖化による人間の健康への影響として、熱ストレス、生物媒介性感染症、水環境
悪化に伴う下痢、食物生産量減少による栄養失調、浸水や地滑りによる損傷等、の増
加が懸念されている。但し、人間の健康は社会インフラ、年齢、生活習慣等、温暖化
以 外 の 要 因 と の 関 連 も 強 く 、 温 暖 化 に よ る 影 響 は 必 ず し も 明 ら か で な い 。 PHOEN I X プ
ロ ジ ェ ク ト で は 、平 成 1 6 年 度 、1 7 年 度 報 告 書 に 記 し た よ う に 、温 暖 化 に よ る 健 康 影 響
- 46 -
として定量的研究事例が比較的多い熱ストレス(循環器疾患、呼吸器疾患)と生物媒
介 性 感 染 症 ( マ ラ リ ア 、 デ ン グ 熱 ) を と り あ げ 、 To l 文 献
1、 2)
に基づく健康影響評価モ
デルを用いて各疾病の温暖化による死亡者数変化を評価している。
ここで、温暖化による死亡者数変化とは、温暖化しないと想定した場合(熱ストレ
スについては人口と高齢者人口比率の変化のみを考慮した場合、生物媒介性感染症に
ついては人口と所得の変化のみを考慮した場合)の推定死亡者数に対し、温暖化も考
慮 し た 場 合 の 推 定 死 亡 者 数 の 増 加 分 又 は 減 少 分 を 意 味 す る 。モ デ ル の 詳 細 は 平 成 16 年
度 報 告 書 2.4.3 節 の 通 り で 、 大 筋 と し て 、 各 疾 病 の 温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数 変 化 は 、 全 球
平 均 気 温 1 ℃ 上 昇 あ た り の 死 亡 者 数 変 化 ( 人 /単 位 人 口 ) と 、 将 来 の 全 球 平 均 気 温 上 昇
( 1990 年 比 )、 将 来 人 口 、 さ ら に 生 物 媒 介 性 感 染 症 に つ い て は 所 得 に 関 す る 項 、 の 積 よ
り推計される。このように、生物媒介性感染症については、所得向上の効果(例えば
家屋の改善、処方箋の購入が可能になることによる死亡者数減少)が織り込まれてい
る。一方、熱ストレスについては、所得向上の効果(例えばエアコン導入の効果)は
含まれていない。また、生物媒介性感染症、熱ストレスのどちらも、温暖化対策とし
ての適応策は特に考慮されていない。
本 節 で は 、 平 成 1 7 年 度 同 様 に 、 B2-Reference、 B2-S650、 B2-S550、 B2-S450 の 4 つ
の 排 出 パ ス に 対 し 20 5 0 年 、 2 10 0 年 、 21 50 年 の 温 暖 化 に よ る 熱 ス ト レ ス ( 循 環 器 疾 患 、
呼吸器疾患)と生物媒介性感染症(マラリア、デング熱)の死亡者数変化の推定結果
を 示 す 。平 成 1 7 年 度 か ら の 主 な 改 訂 点 は 、(i)今 年 度 は 近 似 点 の CO 2 排 出 量 を 実 績 値 と
整 合 す る よ う に 改 訂 し た 排 出 パ ス を 評 価 対 象 と し た( 2.2.1 節 参 照 )、(ii)GCM の 気 温 変
動 パ タ ー ン と し て 平 成 1 7 年 度 ま で は ECHAM4 の パ タ ー ン を 用 い て い た が 今 年 度 は 最
新 高 解 像 度 モ デ ル MIROC3.2(hires)の パ タ ー ン を 採 用 し た こ と ( 2 .2 .2 節 参 照 )、 及 び 、
(iii)簡 易 気 候 モ デ ル の 気 候 感 度 の 値 に 平 成 17 年 度 ま で の 2.5℃ よ り 高 い 3.0℃ を 採 用 し
た( 2.2.2 節 参 照 )こ と の 3 点 で あ る 。よ り 具 体 的 に は 、(ii)に よ っ て 一 部 の 国 で は 199 0
年の最低月平均気温、最高月平均気温が変わり、このため熱ストレスの「全球平均気
温 1℃ 上 昇 あ た り の 死 亡 者 数 変 化 」 の 値 が 若 干 変 わ っ た 、 ま た (iii)に よ っ て 将 来 の 全 球
平均気温上昇幅が大きくなった。このため、各疾患の温暖化による死亡者数の推定値
は 平 成 17 年 度 と 若 干 異 な っ た も の に な っ て い る 、 但 し 、 影 響 を 受 け や す い 地 域 や 年 齢
等主な傾向はこれまでと同じである。
(1) 熱 ス ト レ ス ( 循 環 器 疾 患 、 呼 吸 器 疾 患 )
前述のように今回改訂したのは温暖化による死亡者数変化で、温暖化がない場合の
死 亡 者 数 の 推 定 値 は 平 成 17 年 度 と 同 じ で あ る 。 但 し 、 温 暖 化 が な い 場 合 の 死 亡 者 数 は
温暖化による死亡者数との対比に利用することより、代表値のみ以下に再掲する。
①
温暖化がない場合の死亡者数(ベースライン死亡者数)
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 は 、 平 成 1 7 年 度 報 告 書 3.4 .8 節 に 記 し た 通 り 、 19 9 0 年 の 死 亡
率 ( 60 歳 未 満 、 6 0 歳 以 上 別 ) に 将 来 人 口 を 乗 じ て 推 定 し た 。 表 2.3.5-1 に 、 循 環 器 疾
患と呼吸器疾患の世界全体のベースライン死亡者数と人口に対する比率の推定値を示
す。
- 47 -
表 2.3.5-1
循環器疾患と呼吸器疾患の推定ベースライン死亡者数(世界全体)
1990 年
2050 年
2100 年
2150 年
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数( 百 万 人 )
17
59
86
98
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
0.3
0.6
0.8
0.9
* 1990 年 は 文 献 値
②
3)
、 2 050 年 以 降 は 推 計 値 。
温暖化による死亡者数変化
図 2.3.5-1 に 世 界 全 体 に つ い て 各 排 出 パ ス に 対 す る 、温 暖 化 に よ る 循 環 器 疾 患 と 呼 吸
器 疾 患 の 死 亡 者 数 変 化 の 推 定 値 を 示 す 。こ れ に よ る と 、ど の 排 出 パ ス も 世 界 全 体 で は 、
温暖化により暑さ起因の死亡者数は増加し、寒さ起因の死亡者数は逆に減少する。寒
さ起因の死亡者数減少は暑さ起因の死亡者数増加より大きく、すなわち、温暖化によ
図 2.3.5-1
15
2050年
2100年
2150年
10
5
0
-5
暑さ起因
-10
寒さ起因
B2-S450
B2-S550
B2-Ref
B2-S650
B2-S450
B2-S550
B2-S650
B2-Ref
B2-S450
B2-S550
B2-S650
-15
B2-Ref
温暖化による死亡者数変化 [百万人]
り循環器疾患と呼吸器疾患の死亡者数は減少する。
循環器疾患と呼吸器疾患の温暖化による死亡者数変化(世界全体)
図 2.3.5-2 は B2 -Reference の 2 15 0 年 に お け る 死 亡 者 数 変 化 を 世 界 8 地 域
3)
別に示し
たものである。これによると、サハラ以南アフリカ等では、暑さ起因の死亡者数増加
が寒さ起因の死亡者数減少より多く、一方、中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の
死亡者数減少の方が多い。また、温暖化による死亡者数変化の多くは高齢者の死亡者
数変化であることが読みとれる。
- 48 -
温暖化による死亡者数変化(百万人)
3.0
暑さ起因の
呼吸器疾患
(全年齢)
2.0
暑さ起因の
循環器疾患
(65歳以上)
1.0
0.0
暑さ起因の
循環器疾患
(65歳未満)
-1.0
-2.0
寒さ起因の
循環器疾患
(65歳以上)
-3.0
寒さ起因の
循環器疾患
(65歳未満)
-4.0
図 2.3.5 -2
中国
先進資本主義圏
旧社会主義ヨーロッパ
中東・北アフリカ
ラテンアメリカ
その他アジア
インド
サハラ以南アフリカ
-5.0
循環器疾患及び呼吸器疾患の温暖化による死亡者数変化の内訳
( B 2- Re fe re n ce、 21 50 年 )
表 2.3.5-2 に 各 排 出 パ ス に つ い て 、循 環 器 疾 患 と 呼 吸 器 疾 患 の 温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数
変化とベースライン死亡者数に対する比率をまとめる。
- 49 -
表 2 .3 .5 -2
循環器疾患と呼吸器疾患の温暖化による死亡者数変化と
ベースライン死亡者数に対する比率
暑さ起因+寒さ起因
2050年
2100年
暑さ起因
2150年
寒さ起因
2050
年
2100
年
2150
年
2050
年
2100
年
2150
年
死亡者
B比
死亡者
B比
死亡者
B比
死亡者
死亡者
死亡者
死亡者
死亡者
死亡者
数変化
(%)
数変化
(%)
数変化
(%)
数変化
数変化
数変化
数変化
数変化
数変化
(万人)
(万人)
(万人)
( 万 人 )( 万 人 )( 万 人 )( 万 人 )( 万 人 )( 万 人 )
B2-Reference
サ ハ ラ 以 南 アフリカ
+6
+0.6
+24
+1
+45
+2
+28
+104
+184
-22
-80
-139
インド
+3
+0.3
+9
+0.6
+16
+0.9
+36
+109
+187
-33
-100
-171
その他アジア
+4
+0.6
+11
+1
+21
+2
+22
+63
+110
-19
-52
-90
ラテンアメリカ
+1
+0.3
+0.5
+0.1
-1
-0.1
+14
+38
+64
-13
-38
-65
中東・北アフリカ
-6
-0.6
-17
-1
-28
-2
+34
+112
+193
-40
-128
-221
旧 社 会 主 義 ヨーロッパ
-22
-7
-39
-13
-64
-20
+4
+7
+12
-26
-46
-76
-172
先進資本主義圏
-43
-7
-82
-14
-135
-22
+12
+23
+38
-54
-105
中国
-78
-7
-213
-14
-363
-21
+8
+27
+50
-85
-240
-413
-134
-2
-305
-4
-509
-5
+157
+484
+837
-291
-789
-1346
+6
+0.6
+21
+1
+32
+2
+27
+90
+133
-22
-69
-100
-124
世界全体
B2-S650
サ ハ ラ 以 南 アフリカ
インド
+3
+0.3
+8
+0.5
+12
+0.6
+35
+95
+136
-32
-87
その他アジア
+4
+0.6
+10
+1
+15
+2
+22
+55
+80
-18
-45
-65
ラテンアメリカ
+1
+0.3
+0.4
+0.1
-0.5
-0.1
+13
+33
+46
-12
-33
-47
中東・北アフリカ
-6
-0.6
-14
-1
-20
-1
+33
+97
+139
-39
-111
-160
旧 社 会 主 義 ヨーロッパ
-21
-7
-34
-11
-46
-14
+4
+6
+8
-25
-40
-55
先進資本主義圏
-41
-7
-71
-12
-97
-16
+11
+20
+27
-53
-91
-125
中国
-76
-7
-184
-12
-263
-15
+7
+23
+36
-83
-208
-299
-131
-2
-264
-3
-368
-4
+153
+419
+605
-283
-683
-974
世界全体
B2-S550
サ ハ ラ 以 南 アフリカ
+5
+0.5
+19
+1
+27
+1
+26
+81
+112
-21
-62
-84
インド
+3
+0.3
+7
+0.4
+10
+0.5
+33
+85
+114
-30
-78
-104
その他アジア
+3
+0.6
+9
+1
+13
+1
+21
+49
+67
-17
-41
-54
ラテンアメリカ
+1
+0.3
+0.4
+0.1
-0.5
-0.1
+13
+30
+39
-12
-30
-39
中東・北アフリカ
-5
-0.6
-13
-0.9
-17
-1
+32
+87
+117
-38
-100
-134
旧 社 会 主 義 ヨーロッパ
-20
-6
-30
-10
-39
-12
+3
+6
+7
-24
-36
-46
先進資本主義圏
-40
-7
-64
-11
-82
-13
+11
+18
+23
-51
-82
-105
中国
-73
-7
-166
-11
-221
-13
+7
+21
+30
-80
-187
-251
-126
-2
-238
-3
-309
-3
+147
+378
+508
-272
-616
-818
-62
世界全体
B2-S450
サ ハ ラ 以 南 アフリカ
+5
+0.5
+14
+0.8
+20
+1
+23
+62
+82
-18
-47
インド
+2
+0.2
+5
+0.3
+7
+0.4
+29
+65
+84
-27
-59
-77
その他アジア
+3
+0.5
+7
+0.8
+9
+1
+18
+37
+49
-15
-31
-40
ラテンアメリカ
+1
+0.2
+0.3
+0.1
-0.3
-0.1
+11
+23
+29
-10
-22
-29
中東・北アフリカ
-5
-0.5
-10
-0.7
-13
-0.8
+28
+66
+86
-33
-76
-99
旧 社 会 主 義 ヨーロッパ
-18
-6
-23
-8
-29
-9
+3
+4
+5
-21
-27
-34
先進資本主義圏
-35
-6
-48
-9
-60
-10
+10
+14
+17
-45
-62
-77
中国
-64
-6
-126
-8
-163
-10
+6
+16
+22
-70
-142
-185
世界全体
-110
-2
-180
-2
-228
-2
+129
+286
+375
-239
-466
-603
注)B 比:ベースライン死亡者数に対する比率。
- 50 -
(2) 生 物 媒 介 性 感 染 症 ( マ ラ リ ア 、 デ ン グ 熱 )
前述したように、生物媒介性感染症に関するモデルには所得変化の効果が織り込ま
れ て い る 。 こ こ で 、 各 排 出 パ ス に 対 す る 所 得 に は 、 DNE21 モ デ ル ( 世 界 1 0 地 域 ) で 計
算 し た GDP の 値 を 用 い た 。
①
温暖化がない場合の死亡者数(ベースライン死亡者数)
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 は 、 平 成 1 7 年 度 報 告 書 3.4 .8 節 に 記 し た 通 り 、 19 9 0 年 の 死 亡
率に将来人口と生物媒介性感染症モデルの所得に関する項を乗じて算出した。表
2.3.5-3 は サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ の ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 推 定 値 を 示 し て い る 。 こ の 他 の
地 域 で は 、一 人 当 た り GDP が 高 く 、2 0 50 年 以 降 の ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 は 無 い と 推 定
された。
表 2.3.5-3
マラリア及びデング熱のベースライン死亡者数(サハラ以南アフリカ)
1990 年
2050 年
2100 年
2150 年
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数( 万 人 )
73
93
0
0
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
0.1
0.05
0
0
1
1
0
0
0.0002
0.0001
0
0
マラリア
デング熱
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数( 千 人 )
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
* 1990 年 は 文 献 値
②
3)
、 20 5 0 年 以 降 は 推 計 値 。
温暖化による死亡者数変化
マラリア及びデング熱の温暖化による死亡者数変化は、前述のベースライン死亡者
数 と 同 様 で 、 一 人 当 た り GDP に 強 く 依 存 し て い る 。 そ の た め 、 サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ の
2050 年 で の み 推 計 さ れ た 。 こ の 他 の 地 域 で は 20 50 年 、 2 10 0 年 、 21 50 年 の 全 時 点 で 温
暖 化 に よ る 死 亡 者 数 変 化 は な い と 推 計 さ れ た 。図 2.3.5-3 と 表 2.3.5-4 に サ ハ ラ 以 南 ア
フリカの温暖化による死亡者数変化の推定結果をまとめる。
- 51 -
温暖化による死亡者数変化(千人)
120
B2-Reference
B2-S650
B2-S550
B2-S450
100
80
60
40
20
0
2050
2100
2150
年
図 2 .3 .5 -3
マラリアとデング熱の温暖化による死亡者数変化
(サハラ以南アフリカ)
表 2 .3 .5 -4
温暖化によるマラリア及びデング熱の死亡者数変化及び
ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 に 対 す る 比 率 ( 2050 年 、 サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ )
B2-Reference
B2-S650
B2-S550
B2-S450
マラリア
ヘ ゙ ース ライ ン死 亡 者
温暖化による
数に対する比
死亡者数変化
率 (%)
(万人)
+10.2
+11
+9.9
+11
+9.5
+10
+8.6
+9
デング熱
ヘ ゙ ース ライ ン死 亡 者
温暖化による
数に対する比
死亡者数変化
率 (%)
(百人)
+6
+49
+6
+48
+6
+46
+5
+41
(3) 健 康 影 響 評 価 の ま と め
温暖化による熱ストレス(循環器疾患、呼吸器疾患)と生物媒介性感染症(マラリ
ア、デング熱)の死亡者数への影響について、本研究の評価結果は以下のようにまと
められる。
•
熱ストレス、生物媒介性感染症とも、温暖化影響の地域差は大きい。例えば、熱
ストレスの分析によると、サハラ以南アフリカ等では温暖化によって死亡者数が
増加するが、中国や先進資本主義圏等、現在比較的寒冷な地域では、温暖化によ
って逆に死亡者が減少する。
•
また、熱ストレスの分析では、若者に比べ高齢者の方が温暖化の影響を受けやす
い事が示された。
•
生 物 媒 介 性 感 染 症 の 分 析 で は 、 所 得 向 上 は CO 2 の 排 出 抑 制 よ り も 死 亡 者 数 抑 制 に
効果的であるという結果が得られた。温暖化対策として適応の余地は少なくない
と考えられる。
- 52 -
参 考 文 献 ( 2.3.5 節 に 関 す る も の )
1)
R.S.J. Tol : Estimate of the Damage Costs of Climate Change, Part Ι: Benchmark Estimates, Environmental
and Resource Economics, 21, 47-73 (2002).
2)
R.S.J. Tol : Estimate of the Damage Costs of Climate Change, Part II: Dynamic Estimates, Environmental
and Resource Economics, 21, 135-160 (2002).
3)
J.L.Murray and A.L.Lopez : The Global Burden of Disease, Published by the Harvard School of Public
Health on Behalf of the World Health Organization and the World Bank, Distributed by Harvard University
Press (1996).
2.3.6 農 作 物 影 響 の 評 価
国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 (IIASA ) と 国 連 食 糧 農 業 機 関 (FAO) に よ っ て 開 発 さ れ て
い る GIS (Geographic Information System)を 利 用 し た AEZ (Agro-ecological Zones)モ デ ル
1,2)
の枠組みを利用し、それを拡張することによって、温暖化による農作物影響につい
て、その適応策も考慮した評価が可能なモデルへと改良を行ってきた
3,4)
。
今 年 度 は 、モ デ ル そ の も の の 変 更 は 行 わ な か っ た が 、CO 2 濃 度 安 定 化 の た め の 排 出 パ
スの修正、および、最新の知見に基づく気候感度の修正とそれに伴う気候変動量の変
更があったので、ここでは、その新しい前提条件の下で、昨年度までに構築したモデ
ル
3,4)
を用いて、各種排出パスについての評価を行った。
(1) 農 作 物 影 響 評 価 モ デ ル の 概 要
評 価 に 用 い た 農 作 物 影 響 評 価 モ デ ル の 詳 細 に つ い て は 、 文 献 3 )を 参 照 さ れ た い 。 モ
デルでは、潜在的な農作物生産ポテンシャルを、気温、日射量(雲による被覆率)等
の GIS デ ー タ か ら 推 定 し て い る 。 一 方 、 蒸 発 散 ポ テ ン シ ャ ル を 、 気 温 、 風 速 、 高 度 、
日 射 量 の GIS デ ー タ を 基 に Penman-Monteith 法 に よ っ て 推 定 し 、潜 在 的 な 農 作 物 生 産 ポ
テ ン シ ャ ル と 、 蒸 発 散 ポ テ ン シ ャ ル 、 降 水 量 、 傾 斜 度 、 土 壌 デ ー タ の GIS デ ー タ 、 各
種 作 物 特 性 デ ー タ を 基 に 、 実 際 的 な 生 産 ポ テ ン シ ャ ル を 推 定 し て い る ( 図 2.3.6-1 参
照 )。 本 モ デ ル は 、 AEZ モ デ ル の 拡 張 を 行 う こ と に よ っ て 、 作 付 け 種 や 作 付 け 時 期 の 変
更といった適応策や農業生産性向上を踏まえた評価が可能としている。なお、モデル
計 算 は 、月 別 平 均 値 を 使 い 、1 ヶ 月 単 位 で 計 算 を 行 っ て い る 。評 価 は 、任 意 の 年 に つ い
て 可 能 で あ る が 、 基 準 年 と な る 1 99 0 年 、 お よ び 、 2 0 50、 2 1 00、 21 50 年 に つ い て 評 価 を
行った。なお、農作物需要は推定しておらず、また、生産量についても生産ポテンシ
ャルの推定に留まっており、需給バランスは評価していない。
- 53 -
気候変動モデルより
(GCM計算結果と簡易気候
変動モデルの統合モデル)
グリッド別、
時点別月平均
気温
グリッド別、
時点別月平均
降水量
月別の雲による
被覆率の実績値
月別最高・最低
気温実績値
蒸発散
ポテンシャル
最高気温
最低気温
作物別の
蒸発散量
グリッド別、
時点別月平均
風速
高度データ
作物別
生産量
傾斜度
土壌データ
作物別生産
ポテンシャル
作物別特性
データ
図 2 .3 .6 -1
農作物の温暖化影響に関する計算過程の概略
(2) 分 析 ・ 評 価 結 果
第 2.2 節 で 示 し た よ う な 社 会 経 済 シ ナ リ オ・排 出 パ ス お よ び そ の と き の 気 候 変 動 推 定
量 の 下 で 、 農 作 物 ( 小 麦 ( 冬 小 麦 ・ 春 小 麦 ) と 米 ( ジ ャ ポ ニ カ 米 ・ イ ン デ ィ カ 米 )) へ
の影響評価を行った。以下の評価では、一人当たり所得と共に農業生産性が向上する
シナリオを織り込んでおり、また、作付け種や作付け時期の変更による適応を考慮し
た評価としている。なお、これらの適応を考慮しない場合の分析については、昨年度
の報告書
①
4)
を参照されたい。
排出パスによる影響
ま ず 、社 会 経 済 シ ナ リ オ が IPCC SRES B2 ベ ー ス と し た と き の 各 排 出 パ ス 下 に お け る
農 作 物 影 響 の 差 異 を み る こ と と す る 。 図 2.3.6-2 に は 、 各 排 出 パ ス に お け る 21 5 0 年 の
小麦の生産ポテンシャル変化(生産性向上・適応策有)の世界分布を示す。そして、
そのときの世界の生産ポテンシャル変化と一人当たりの生産ポテンシャル変化を、図
2.3.6-3 と 図 2.3.6-4 に そ れ ぞ れ 示 す 。同 様 に 、図 2.3.6-7 に 、2 1 5 0 年 の 米 の 生 産 ポ テ ン
シ ャ ル 変 化 ( 生 産 性 向 上 ・ 適 応 策 有 ) の 世 界 分 布 を 、 図 2.3.6-8、 図 2 .3 .6-9 に 世 界 の
生産ポテンシャル変化と一人当たりの生産ポテンシャル変化をそれぞれ示す。
• 2150 年 ま で は い ず れ の 排 出 パ ス に お い て も 、 農 業 生 産 性 の 向 上 や 適 応 策 を 考 え る
と、生産ポテンシャルの増大が見られる。ただし、特に小麦については、濃度安
定化レベルが低くなるにしたがって、ポテンシャルの増大が大きい傾向が見られ、
特 に 2100 年 以 降 、 そ の 差 異 が 大 き く な っ て く る 。
• 一人当たりの生産ポテンシャル変化は、小麦、米ともに、ここで評価したすべて
の排出パスにおいて、減少している。食糧需給のリスクは増大すると推定される。
- 54 -
Refer ence (SRE S B2-base )
b) WGI S650
c) WGI S550
各 排 出 パ ス に お け る 2150 年 の 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化
30
20
10
2050
図 2.3.6-3
2100
WGI S450
WGI S550
WGI S650
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
WGI S450
WGI S550
WGI S650
0
Reference
Increase in potential production (%)
図 2.3.6 -2
d) WGI S450
Reference
a)
2150
SR ES B 2 -b as e の 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化
- 55 -
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
2150
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
2100
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
Decrease in potential per-capita production (%)
図 2.3.6-4
2050
0
-10
-20
-30
-40
-50
SRES B2 - ba se の 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 小 麦 の 一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ
ャル変化
②
生産性向上・適応策による効果
前項の排出パスによる農作物影響の評価においては、生産性向上を織り込み、適応
策(作付け種や作付け時期の変更)についても考慮したものである。本項では、これ
らが無いとしたときの分析を行うことによって、生産性向上および適応策による効果
を 評 価 し た 。 図 2.3.6-5 お よ び 図 2.3.6-6 に は 、 S5 50 排 出 パ ス に お け る 2 1 50 年 の 小 麦
の生産ポテンシャル変化について、農業生産性向上および適応策の効果の有無による
差異で比較した結果を示す。これらを見ると、農業生産性向上、適応策ともに生産ポ
テンシャル変化に及ぼす影響は大きいことがわかる。とりわけ適応策の効果は顕著に
見られる結果となっており、適応策を考慮するか否かは農作物影響の評価に決定的に
大きな差異を有無可能性が示されると共に、適応策の重要性がわかる。
- 56 -
a) WGI550( 生 産 性 向 上 有 ・ 適 応 策 有 )
b) WGI550( 生 産 性 向 上 有 ・ 適 応 策 無 )
c) WGI550( 生 産 性 向 上 無 ・ 適 応 策 有 )
d) WGI550( 生 産 性 向 上 無 ・ 適 応 策 無 )
図 2.3.6-5
S5 5 0 排 出 パ ス に お け る 2150 年 の 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化 - 農 業 生
産性向上、適応策の効果
注 ) 図 中 a の グ ラ フ は 、 図 2.3.6-2 の c の グ ラ フ と 同 様 の も の
30
Increase in potential production (%)
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
2050
図 2.3.6-6
2100
生産性向上無・適応策無
生産性向上無・適応策有
生産性向上有・適応策無
生産性向上有・適応策有
生産性向上無・適応策無
生産性向上無・適応策有
生産性向上有・適応策無
生産性向上有・適応策有
生産性向上無・適応策無
生産性向上無・適応策有
生産性向上有・適応策無
生産性向上有・適応策有
-90
2150
SR ES B 2 -b as e S5 5 0 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変
化-農業生産性向上、適応策の効果
- 57 -
Refer ence (SRE S B2-base )
b) WGI S650
c) WGI S550
各 排 出 パ ス に お け る 2150 年 の 米 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化
60
50
40
30
20
10
2050
図 2.3.6-8
2100
WGI S450
WGI S550
WGI S650
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
WGI S450
WGI S550
WGI S650
0
Reference
Increase in potential production (%)
図 2.3 .6 -7
d) WGI S450
Reference
a)
2150
S RE S B2 - ba s e の 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 米 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化
- 58 -
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
2150
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
2100
WGI S450
WGI S550
WGI S650
Reference
Decrease in potential per-capita production (%)
図 2.3.6-9
2050
0
-10
-20
-30
SRES B2 - ba se の 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 米 の 一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ ャ
ル変化
③
社会経済状況の影響
次に社会経済状況(人口、経済成長)の違いによる農業影響に及ぼす影響を見るこ
と と す る 。 図 2.3.6-10 に は 、 SRES B2 と A1FI ベ ー ス の 5 50 pp mv 濃 度 安 定 化 排 出 パ ス
に お け る 世 界 の 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化( 生 産 性 向 上 ・ 適 応 策 有 )を 、図 2.3.6-11
に は 一 人 当 た り の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化 を 示 す 。 な お 、 B2 と A1FI ベ ー ス の 濃 度 安 定
化 パ ス で は 、 大 気 中 CO 2 濃 度 は 両 者 で 同 じ で あ る も の の 、 Non-CO 2 GH G は 両 者 で 異 な
っ て い る た め に 、気 候 変 動 量 は 両 者 で 差 異 が あ る こ と に 留 意 さ れ た い( 第 2 .2 節 参 照 )。
これらから多くのことが示唆される。
• A1FI シ ナ リ オ は 、 高 経 済 成 長 を 想 定 し た シ ナ リ オ で あ る が 、 高 経 済 成 長 に よ っ て
農業生産性の向上が特に途上国において加速されることによって、小麦、米とも
に B2 シ ナ リ オ よ り も 生 産 ポ テ ン シ ャ ル が 相 当 量 増 大 す る 傾 向 が 見 ら れ る 。
• 例 え ば 、5 50 p p mv に 安 定 化 し た と き の 21 0 0 年 に お け る 小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル の
増 大 は 90 年 比 で B2 ベ ー ス で は 約 2 3 %で あ る 一 方 、A1FI ベ ー ス で は 約 2 7 %で あ り 、
一 方 、B2 ベ ー ス で 45 0 p p mv に 安 定 化 し た と き の ポ テ ン シ ャ ル 増 大 も 90 年 比 約 27%
と な っ て お り 、 安 定 化 濃 度 を 4 50 p p mv に す る の と ほ ぼ 同 等 の 差 異 が あ る 。
• 一 人 当 た り ポ テ ン シ ャ ル を 見 る と 、 A1FI シ ナ リ オ で は 低 い 人 口 成 長 が 見 込 ま れ て
い る た め 、 20 50、 21 0 0、 2 15 0 年 の い ず れ の 時 点 に お い て も 、 A1FI の 方 が B2 よ り
も一人当たりポテンシャルは大きく推定される。
• B2 シ ナ リ オ で は 、 小 麦 、 米 に つ い て 、 い ず れ の 排 出 パ ス に つ い て も 一 人 当 た り 生
産 ポ テ ン シ ャ ル の 減 少 が 見 込 ま れ た が 、A1FI シ ナ リ オ で は 人 口 が 頭 打 ち す る 一 方 、
経済成長は続くと想定されているために、濃度を安定化できれば、一人当たり生
産ポテンシャルはむしろ増大する傾向も見られる。
- 59 -
2050
図 2.3.6-10
2100
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
0
-20
-21.1
-30
-40
-32.7
-37.8
-39.5
-50
2050
2150
2100
A1FI-base S550
10
-4.6
-10
B2-base S550
20
A1FI-base S550
23.2 24.3
23.2
19.9
1.9
0
B2-base S550
27.4
Per-capita potential production
10
A1FI-base S550
30
20
B2-base S550
30.0
Increase in per-capita potential production (%)
Potential production
B2-base S550
Increase in potential production (%)
40
2150
S RE S B 2 と A1 F I ベ ー ス の S550 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 小 麦 の 生 産 ポ テ
2050
図 2.3.6-11
2100
2150
10
0
-10
-7.9
-20
-30
-22.1
-23.0
2050
-23.5
2100
A1FI-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
0
20
B2-base S550
20
34.9
22.2
A1FI-base S550
38.8
30
B2-base S550
40
52.5
51.8
64.5
55.7
Per-capita potential production
A1FI-base S550
60
40
B2-base S550
Potential production
63.3
Increase in per-capita potential production (%)
80
B2-base S550
Increase in potential production (%)
ンシャル変化(左図)と一人当たり生産ポテンシャル変化(右図)
2150
SR ES B 2 と A 1 FI ベ ー ス の S550 排 出 パ ス に お け る 世 界 の 米 の 生 産 ポ テ ン
シャル変化(左図)と一人当たり生産ポテンシャル変化(右図)
(3) 農 作 物 影 響 の 評 価 の ま と め
最新知見に基づき新たに想定した排出パスとその気候変動量推定を基に、今年度、
改めて農作物への温暖化影響を分析・評価した。基本的には昨年度までの知見を強化
するものであるが、昨年度までの分析からの知見も含めて、下記に改めてその知見を
まとめておく。
• 2050 年 程 度 ま で は 、 ど の よ う な 排 出 シ ナ リ オ で あ っ て も 、 温 暖 化 の 農 業 影 響 は そ
れほど大きくない。
- 60 -
• むしろ、農業生産性の向上が見込まれることなどから、生産ポテンシャルは増大
する傾向にある。
• また、温暖化に対して、作付け時期や作付け品種を変更することによる適応の機
会は多く、効果も大きい。
• 一 方 、 21 00 年 頃 か ら 、 特 に 小 麦 で は 温 暖 化 の 影 響 が 大 き く な り 、 45 0 pp mv と い っ
た低い安定化濃度が生産量の増大から好ましい。一方、米の生産ポテンシャルは
ここで想定した安定化濃度の範囲ではあまり変化がない。
• 世 界 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル は 、 2150 年 ま で に お い て は 、 多 く の シ ナ リ オ で 増 大 が 見
込 ま れ る も の の 、 世 界 人 口 の 増 大 を 見 込 む SRES B2 ベ ー ス の シ ナ リ オ で は 、 人 口
増大の影響により、一人当たりポテンシャルは減少し、食糧需給リスクは増大す
ると考えられる。
• 一 方 、 人 口 が 低 位 で 、 経 済 成 長 は 高 位 で あ る SRES A1 ベ ー ス の シ ナ リ オ で は 、 一
人当たりポテンシャルの減少も抑制される。
• 農作物影響は、温暖化がどの程度進行するかによっても、もちろん影響を受ける
が、人口や経済成長によってその影響の大きさは大きく異なり得るので、濃度安
定化レベルのみに着目するのではなく、総合的な対応が必要である。
• なお、地域的に見ると、温暖化によって生産ポテンシャルが増大する地域も減少
する地域も存在し、地域差が大きい。
参 考 文 献 ( 第 2.3.6 節 に 関 す る も の )
1)
G. Fischer, et al., “Global Agro-ecological Assessment for Agriculture in the 21st Century: Methodology and
Results,” IIASA, RR-02-02, (2002)
2)
G. Fischer, et al., “Climate Change and Agricultural Vulnerability,” IIASA, (2002).
3)
RITE、「H16 年度
国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2005
4)
RITE、「H17 年度
国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2006
2.3.7 水 資 源 影 響 の 評 価
平 成 17 年 度 ま で の 文 献 調 査 に よ る と 、 温 暖 化 に よ る 水 資 源 へ の 影 響 と し て 、 降 水 量
変化に伴う水資源賦存量変化、豪雨の頻度や強度の増大による洪水増加、無降水継続
日の長期化による旱魃、水温上昇や河川流量減少による水質劣化、海面上昇により沿
岸域や島嶼国で地下水への海水侵入等が懸念されている。このうち、全球規模での定
量的評価として、水ストレス下にある人口や、温暖化によって水ストレスが増大又は
減少する人口の推計事例
1,2)
が あ る も の の 、評 価 さ れ て い る 温 室 効 果 ガ ス 排 出 パ ス や 時
点は限られる。
そ こ で 、 本 年 度 は 、 Arnell(2004) 2 ) の 水 ス ト レ ス に 関 す る 評 価 方 法 と 最 新 の 気 候 モ デ
ル 予 測 値 に 基 づ き 、B2-Reference、B2-S650 、B2-S550、B2-S450 の 4 つ の 排 出 パ ス の 205 0
- 61 -
年 、 2100 年 、 21 5 0 年 に つ い て 、 温 暖 化 が 無 い 場 合 の 水 ス ト レ ス 人 口 、 及 び 温 暖 化 に よ
る水ストレス増大人口と水ストレス減少人口を推計した。
(1)
評価スキーム
①
水ストレスに関する指標
a.
水ストレス
水 ス ト レ ス の 指 標 は 幾 つ か あ り 、 例 え ば 、 Arnell(2004)
3
量 が 1,000m 未 満 を 、Oki ら (2003)
1)
2)
は一人あたり年水資源賦存
は 年 間 の( 取 水 量 ― 海 水 淡 水 化 水 資 源 量 )/水 資 源 賦
存 量 が 0.4 以 上 を 水 ス ト レ ス と し て 用 い て い る 。よ り 現 実 的 な 評 価 と い う 観 点 で は 、取
水量や海水淡水化水資源量、さらには、再利用水量等も考慮すべきであるが、それら
は 非 常 に 難 し い 。例 え ば 表 2.3.7-1 よ り 取 水 量 は 産 業 構 造 や 生 活 様 式 と 関 連 す る と 推 察
さ れ る が 、 21 50 年 ま で の 産 業 構 造 や 生 活 様 式 の 変 化 、 及 び そ れ と 取 水 量 と の 関 係 を 定
量 的 に 表 現 す る 事 は 容 易 で は な い 。 そ こ で 、 こ こ で は 、 Arnell(2004)
2)
と同様に、一人
あ た り 年 水 資 源 賦 存 量 が 1,000m 3 未 満 の 河 川 流 域 を 水 ス ト レ ス 流 域 、そ の よ う な 流 域 に
住 む 人 口 を 水 ス ト レ ス 人 口 と い う 指 標 を 用 い た 。 こ の 指 標 、 及 び 、 次 節 b .に 述 べ る 指
標に基づき、温暖化によって水ストレス変化の影響を受ける人口を評価することとし
た。
表 2 .3 .7 -1
Continents
1 99 5 年 の 大 陸 別 一 人 当 た り 取 水 量 (m 3 / pe r so n/y e ar )
Agricultural
Industry
Do mestic use
Reservoirs
Total
Europe
249
98
298
21
665
N.America
659
162
628
67
1516
Africa
195
25
14
76
310
Asia
518
45
64
21
648
S.America
311
91
82
46
530
Australia&Oceania
540
115
249
157
1061
出 典 : 文 献 3)
b.
温暖化による水ストレス増大・減少
温 暖 化 に よ る 影 響 は 、Arnell(2004)
2)
に 基 づ き 図 2.3.7-1 に 示 す タ イ プ に 分 類 し た 。例
え ば 、「 水 ス ト レ ス ・ 強 化 」 と は 、 温 暖 化 無 し の 場 合 ( 人 口 は 変 化 す る が 、 年 水 資 源 賦
存 量 は 1990 年 の ま ま と 想 定 し た 場 合 ) 水 ス ト レ ス 下 に あ り 、 温 暖 化 有 り の 場 合 ( 人 口
と、温暖化により年水資源賦存量も変化すると想定した場合)に一人あたり年水賦存
量 が 温 暖 化 無 し の 場 合 よ り 減 少 す る タ イ プ を 指 す 。「 水 ス ト レ ス ・ 新 規 」 と は 、 温 暖 化
無しの場合は水ストレスでないが、温暖化有りの場合に水ストレスになるタイプを指
す 。 こ の 「 水 ス ト レ ス ・ 強 化 」 と 「 水 ス ト レ ス ・ 新 規 」 の タ イ プ を 合 わ せ て 、「 温 暖 化
に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 」と 定 義 し た 。ま た 、
「 水 ス ト レ ス ・ 緩 和 」と「 水 ス ト レ ス 解 消 」
の 2 つのタイプを合わせて「温暖化による水ストレス減少」と定義した。
- 62 -
一人あたり年水資源賦存量
水ストレス減少
水ストレス
解消
水ストレス・
緩和
1000[m3/人/年]
水ストレス
河川流域毎に算出)
水ストレス・
新規
水ストレス・
変化無
(
水ストレス・
強化
:温暖化無し(人口のみ変化)
水ストレス増大
:温暖化有り(年水資源賦存量も変化)
図 2 .3 .7 -1
②
主要データ
a.
年水資源賦存量
温暖化による水ストレス増大・減少の定義
年 水 資 源 賦 存 量 に は 、 大 気 海 洋 結 合 大 循 環 モ デ ル MIROC3.2(hires)で 予 測 さ れ た 流 出
量 (0.56× 0.56° )
4)
を 適 用 し た 。 MIROC3.2(hires)は 現 在 の 世 界 の 主 要 な 気 候 モ デ ル の 中
で は 最 高 の 解 像 度 を 備 え 、そ の 予 測 値 は IPCC の 第 4 次 評 価 報 告 書 に も 多 数 引 用 さ れ て
い る 。 但 し 、 公 開 さ れ て い る MIROC3 .2(hires)の 予 測 値 は 、 SRES-A1B、 B1 他 数 個 の 排
出 パ ス に 対 す る も の で あ り 、 本 研 究 で 対 象 と す る B2-Reference 、 B2-S650 、 B2-S550 、
B2-S450 排 出 パ ス と 必 ず し も 一 致 し て い な い 。そ こ で 、本 研 究 で 対 象 と す る 排 出 パ ス の
流 出 量 は 、MIROC3.2(hires)で SRES-A1B パ ス に 対 し 計 算 さ れ た 流 出 量 を 、B2 -Referenc e、
B2-S650 、 B2-S550 、 B2-S450 各 排 出 パ ス の 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル
MAGICC( 気 候 感 度 =3 .0℃ ) で 算 出 ) に 応 じ て 線 形 補 間 し 推 定 し た 。 推 定 結 果 の う ち 、
2150 年 の B2-Reference と B2 -S450 の 流 出 量 を 図 2.3.7-2 に 示 す 。
- 63 -
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0 <
[mm/day]
( a ) B2 -R ef e re nc e
図 2.3 .7 -2
b.
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0 <
[mm/day]
( b) B 2 -S 45 0
2 15 0 年 の 年 平 均 流 出 量 推 定 値 (MIROC3.2(hires)-MAGICC)
河川流域
河 川 流 域 に は 、 全 球 河 道 流 路 網 モ デ ル TRIP の 流 域 デ ー タ (0.5× 0 .5° ) 5 ) を 用 い た 。
図 2 .3 .7 -3
全 球 河 道 流 路 網 モ デ ル TRIP の 河 川 流 域
( 河 川 名 、 河 口 の 位 置 等 が 確 認 さ れ て い な い も の も 含 む 5992 流 域 )
c.
人口分布
人 口 分 布 は 、 19 95 年 の 人 口 分 布 (0.5 ×0.5° ) 6 ) に 、 SRES 国 別 人 口 シ ナ リ オ
7)
に基づ
く 比 率( 評 価 時 点 の 国 人 口 /1995 年 の 国 人 口 )を 乗 じ 推 定 し た (図 2.3.7-4)。評 価 対 象 の
世 界 人 口 は 、 19 90 年 で 約 5 1 億 人 、 20 50 年 で 約 91 億 人 、 2 10 0 年 で 約 1 01 億 人 、 2150
年 で 約 105 億 人 で あ る 。
- 64 -
0
10-3
1
5
10
50
100
200
500
103<
0
10-3
1
5
( a ) 19 9 0 年
0
10-3
1
5
10
50
100
d.
50
100
200
500
103<
(b ) 20 50 年
200
500
103<
0
10-3
1
( c) 2 10 0 年
図 2 .3 .7 -4
10
5
10
50
100
200
500
103<
( d) 2 15 0 年
推 定 人 口 分 布 ( 単 位 : 10 3 p e rs on /0 .5°g ri d)
地域区分
計 算 は 0.5× 0.5°グ リ ッ ド 毎 に 行 っ た が 、温 暖 化 が 無 い 場 合 の 水 ス ト レ ス 人 口 や 、温
暖化による水ストレス増大・減少人口を地域毎にカウントする場合の地域区分は、図
2.3.7-5 に 示 す UNEP の 世 界 20 地 域 分 類
8)
に従った。
- 65 -
Eastern Europe
Canada
Western Europe
USA
Caribbean
Meso-America
South America
図 2 .3 .7 -5
Central
Central
Asia
Europe
Mashriq
Northern
South
Africa
Arabian Asia
Peninsula
Western and
Eastern
Central Africa
Africa
Northwest Pacific
and East Asia
Greater
Mekong
Southern Africa
Southeast
Asia
Australasia
and Pacific
世 界 20 地 域 区 分 ( UNEP 分 類 )
注 ) 灰 色 は UNEP 分 類 に 含 ま れ な い ( 水 ス ト レ ス 人 口 評 価 の 対 象 に 含 ま れ な い ) 地 域
(2) 計 算 結 果
①
温暖化が無い場合の水ストレスの流域と人口
温 暖 化 無 し の 場 合 ( 人 口 は 変 化 す る が 、 年 水 資 源 賦 存 量 は 1 99 0 年 の ま ま と 想 定 し た
場 合 ) の 水 ス ト レ ス 流 域 を 図 2.3.7-6 に 、 ま た 、 水 ス ト レ ス の 流 域 に 住 む 人 口 ( 水 ス ト
レ ス 人 口 ) を 表 2.3.7-2 示 す 。 図 2.3.7-6 に よ る と 、 水 ス ト レ ス 流 域 は 人 口 増 加 に 伴 い
2050 年 ま で 急 速 に 拡 大 す る 。 表 2.3.7-2 よ り 、 世 界 全 体 で の 水 ス ト レ ス 人 口 は 、 20 50
年 に は 1990 年 の 約 3 倍 ( 3 7 億 人 、 全 人 口 の 4 1 %)、 21 5 0 年 に は 1 99 0 年 の 約 4 倍 ( 44
億 人 、 全 人 口 の 42%) ま で 増 大 す る と 推 定 さ れ る 。 こ れ は 、 Arnell(2004)
2)
における温
暖 化 が な い 場 合 の 水 ス ト レ ス 人 口 が 1 9 95 年 に 世 界 全 体 で 全 人 口 の 24 %、 20 5 5 年 に 同
42%、 2085 年 に 同 45 %と い う 推 定 結 果 と 特 別 矛 盾 し な い 。 以 上 よ り 、 仮 に 温 暖 化 し な
くても、人口増加によって水ストレス人口は著しく増大すると考えられる。
- 66 -
( a ) 19 9 0 年
(b ) 20 50 年
( c ) 21 0 0 年
(d ) 21 50 年
図 2 .3 .7 -6
温暖化無しの場合の水ストレス流域(紫域)
表 2 .3 .7 -2
温暖化無しの場合の水ストレス人口
水ストレス人口 [百万人]
水ストレス人口/全人口 [%]
水ストレス人口増加率 [1990年比]
1990年 2050年 2100年 2150年 1990年 2050年 2100年 2150年 2050年
2100年
2150年
北アフリカ
西・中央アフリカ
東アフリカ
南アフリカ
東地中海
アラビア半島
中央アジア
南アジア
東南アジア
メコン
北西太平洋・東アジア
オーストラリア・太平洋
西ヨーロッパ
中央ヨーロッパ
東ヨーロッパ
カナダ
USA
カリブ
中央アメリカ
南アメリカ
世界全体
79
5
2
3
20
18
4
235
36
3
445
9
126
23
19
0
29
25
7
30
1,120
179
49
22
39
118
124
10
1,903
82
14
679
16
118
76
19
0
53
43
82
88
3,712
230
95
54
66
150
166
9
2,159
71
14
659
7
121
63
9
0
60
48
91
97
4,169
242
100
57
89
156
175
10
2,234
73
15
723
7
145
81
10
0
86
50
95
100
4,447
71
2
2
3
50
55
7
20
15
2
34
40
34
13
8
0
12
93
7
11
22
73
6
5
12
100
91
10
80
19
5
40
41
34
36
10
0
16
95
37
17
41
73
8
8
15
100
95
10
80
17
5
40
28
35
30
5
0
17
98
37
17
41
73
8
8
19
100
96
10
80
17
5
42
28
40
37
5
0
24
98
38
17
42
2
10
9
12
6
7
3
8
2
5
2
2
1
3
1
1
2
2
12
3
3
3
20
22
21
8
9
2
9
2
5
1
1
1
3
0
1
2
2
13
3
4
3
21
24
28
8
10
3
10
2
5
2
1
1
4
1
1
3
2
13
3
4
注 ) 地 域 区 分 は 図 2.3.7-5 の 通 り 。
②
温暖化による水ストレス増大・減少の流域と人口
図 2.3.7-7 に 、B2-Refernce と B2-S450 パ ス に つ い て 、温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 ・
減 少 の 流 域 を 示 す 。 こ れ よ り 、 ど の 排 出 パ ス 、 時 点 で も 、 (i) 温 暖 化 に よ っ て 水 ス ト レ
ス が 増 大 す る 流 域 と 、 逆 に 水 ス ト レ ス が 減 少 す る 流 域 が あ る 、 (ii)ヨ ー ロ ッ パ の 一 部 地
- 67 -
域、地中海沿岸~南アジアの一部地域、南アメリカの一部地域では温暖化によって水
ストレスが増大する、一方、北アフリカ、南アジアの一部地域、東アジアの一部地域
では温暖化によって水ストレスが減少する、ということが読みとれる。
( a ) 20 5 0 年
( b ) 21 0 0 年
水 ストレス
・強化
水 ストレス 水 ストレス 水 ストレス
・新規 ・変化無 ・緩和
水ストレス増大
水 ストレス
解消
水 ストレス
・強化
水ストレス減少
水 ストレス 水 ストレス 水 ストレス
・新規 ・変化無 ・緩和
水ストレス増大
水 ストレス
解消
水ストレス減少
( c ) 21 5 0 年
図 2 .3 .7 -7
温暖化による水ストレス増大・減少流域
( 左 列 : B 2- Reference、 右 列 : B2-S450)
注)図中、灰色は温暖化の有無に関わらず水ストレスでない流域
図 2.3.7-8 に 、4 つ の 排 出 パ ス の 各 時 点 に つ い て 、温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 、
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 を 、 世 界 全 体 、 及 び 、 地 域 別 ( 図 2.3.7-5 の 2 0 地 域 よ り 一 部 地 域
- 68 -
の み 抜 粋 ) に 示 す 。 図 2.3.7-8(a)よ り 、 世 界 全 体 で は 、 全 排 出 パ ス 、 全 時 点 で 、 温 暖 化
により水ストレスが減少する人口は、温暖化により水ストレスが増加する人口より多
い と い え る 。 CO 2 排 出 抑 制 に よ り 、 21 0 0 年 以 降 は 温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 減 少 人 口 が
減 る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 南 ア ジ ア ( 図 2.3.7-8(b)) で は 、 世 界 全 体 と 似 た 傾 向 が み ら
れる。また、同地域の温暖化による水ストレス増大人口、水ストレス減少人口は、世
界全体の当該値の大半を占めていることより、この地域の流出量変化が世界の水スト
レス増大人口、水ストレス減少人口の値に大きな影響を及ぼすと考えられる。
南 ア メ リ カ ( 図 2.3.7-8(c)) や 中 央 ヨ ー ロ ッ パ ( 図 2.3.7-8(d)) で は 、 南 ア ジ ア と 逆
の傾向が見られる。すなわち、温暖化による水ストレス増大人口は温暖化による水ス
ト レ ス 減 少 人 口 よ り 多 い 、 ま た 、 CO 2 排 出 抑 制 に よ り 、 21 0 0 年 以 降 は 水 ス ト レ ス 増 大
人口を抑制できる可能性が考えられる。
東 地 中 海 ( 図 2.3.7-8(e) ) や 北 ア フ リ カ ( 図 2.3.7-8(f) ) は 、 温 暖 化 に よ っ て 水 ス ト
レスが増大する人口と水ストレスが減少する人口がほぼ同数である。また、排出パス
1 ,0 0 0
(b -1 ) 南 ア ジ ア -増 大
S450
S550
Ref
S650
S450
500
(b-2) 南 ア ジ ア -減 少
- 69 -
S450
S550
Ref
0
S650
S450
S550
Ref
S650
S450
S550
Ref
S650
S450
S550
Ref
0
1 ,0 0 0
S450
500
1 ,5 0 0
S550
1 ,0 0 0
Ref
1 ,5 0 0
2 ,0 0 0
S650
2150年
S450
2100年
水ストレス・緩和
水ストレス解消
2050年
2100年
2150年
2 ,5 0 0
Ref
水ストレス・新規
S650
2050年
2 ,0 0 0
(a-2) 世 界 全 体 -減 少
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
水ストレス・強化
2 ,5 0 0
S650
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
( a -1 ) 世 界 全 体 -増 大
S550
0
S650
S450
S550
Ref
S650
S450
S550
Ref
S650
S450
S550
Ref
0
2150年
2 ,0 0 0
Ref
1 ,0 0 0
2100年
S450
2 ,0 0 0
2050年
水ストレス解消
3 ,0 0 0
S550
2150年
S550
2100年
3 ,0 0 0
水ストレス・緩和
4 ,0 0 0
Ref
水ストレス・新規
S650
2050年
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
水ストレス・強化
4 ,0 0 0
S650
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
による大きな差は見られない。
図 2.3.7-8
2100年
水ストレス・新規
2150年
100
50
0
(f -1 ) 北 ア フ リ カ -増 大
- 70 -
S450
S550
150
S650
(e -1 ) 東 地 中 海 -増 大
Ref
0
S450
50
S550
100
S650
2150年
S450
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
Ref
150
Ref
水ストレス・新規
S450
(d- 1) 中 央 ヨ ー ロ ッ パ -増 大
S450
0
S550
50
S450
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
150
S650
100
Ref
(c -1 ) 南 ア メ リ カ -増 大
S550
2150年
Ref
S450
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
150
S650
水ストレス・新規
Ref
0
Ref
50
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
S450
S550
100
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
S450
S550
S650
2150年
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
S450
S550
S650
Ref
水ストレス・新規
水 ス ト レ ス 減 少 人 口 [百 万 人 ]
S450
2100年
S650
2100年
S550
Ref
S450
S550
2100年
S650
水ストレス・強化
Ref
S450
S550
S650
水ストレス・強化
Ref
水ストレス・強化
S450
2050年
S550
S650
Ref
S450
S550
S650
Ref
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
水ストレス・強化
S450
2050年
S650
Ref
S450
2050年
S550
Ref
S450
S550
S650
Ref
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
2050年
S650
Ref
S450
150
S550
S650
Ref
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
150
S550
150
S650
Ref
水 ス ト レ ス 増 大 人 口 [百 万 人 ]
150
水ストレス・緩和
水ストレス解消
2050年
2100年
2150年
100
50
0
(c-2) 南 ア メ リ カ -減 少
水ストレス・緩和
水ストレス解消
2050年
2100年
2150年
100
50
0
(d - 2) 中 央 ヨ ー ロ ッ パ -減 少
水ストレス・緩和
水ストレス解消
2050年
2100年
2150年
100
50
0
( e- 2) 東 地 中 海 -減 少
水ストレス・緩和
水ストレス解消
2050年
2100年
2150年
100
50
0
(f-2) 北 ア フ リ カ -減 少
温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 ( 左 列 )・ 水 ス ト レ ス 減 少 人 口 ( 右 列 )
温暖化によって水ストレスが増大又は減少する人口は上記の通りであるが、全排出
パス、全時点、全地域において、水ストレス増大人口のうち「水ストレス・強化」人
口が「水ストレス・新規」人口に比べて多い、また、水ストレス減少人口のうち「水
ストレス・緩和」人口が「水ストレス解消」人口に比べて多い、傾向が見られる。こ
こ で 、「 水 ス ト レ ス ・ 強 化 」 タ イ プ の 人 が 「 水 ス ト レ ス ・ 新 規 」 タ イ プ の 人 に 比 べ ど の
程度水ストレスが増大しているか、同様に「水ストレス・緩和」タイプの人が「水ス
トレス解消」タイプの人に比べどの程度水ストレスが減少しているかをみるため、一
人当たりの水資源量を計算した。
表 2.3.7-3 は 、 B2-S550 排 出 パ ス に つ い て 、 一 人 当 た り 年 水 資 源 賦 存 量 の 温 暖 化 に よ
る 変 化 量 と 変 化 率 ( 温 暖 化 に よ る 変 化 量 /温 暖 化 無 し 時 の 年 水 資 源 賦 存 量 ) を 温 暖 化
影 響 の タ イ プ 別 に 計 算 し た 値 で あ る 。 例 え ば 、 21 50 年 に 「 温 暖 化 に よ っ て 水 ス ト レ ス
が 強 化 す る ( 水 ス ト レ ス ・ 強 化 )」 タ イ プ の 人 は 、 温 暖 化 に よ り 一 人 当 た り 年 水 資 源 賦
存 量 が 世 界 平 均 で 95 m 3 減 少 し 、こ の 量 は 温 暖 化 無 し の 場 合 の 一 人 当 た り 年 水 資 源 賦 存
量 の 23%に 相 当 す る 。 こ れ を 、 同 年 の 「 温 暖 化 に よ っ て 新 た に 水 ス ト レ ス と な る ( 水
ス ト レ ス ・ 新 規 )」 タ イ プ の 人 に 比 べ る と 、 変 化 量 は 確 か に 少 な い が 、 変 化 率 で 見 る と
必 ず し も 大 差 が な い 。 す な わ ち 、 変 化 率 で 見 る と 「 水 ス ト レ ス ・ 強 化 」 タ イ プ 、「 水 ス
トレス・新規」タイプとも、水ストレス増大の程度は小さくない。
同 様 に「 温 暖 化 に よ っ て 水 ス ト レ ス が 緩 和 す る( 水 ス ト レ ス ・ 緩 和 )」タ イ プ の 人 は 、
「 温 暖 化 に よ っ て 水 ス ト レ ス で な く な る ( 水 ス ト レ ス 解 消 )」 タ イ プ の 人 に 比 べ 、 変 化
量 は 1/5 程 度 と 少 な い が 、変 化 率 に は そ れ ほ ど 大 き な 差 が な く い ず れ も 約 1 0%を 上 回 っ
ている。つまり、変化率によると、両タイプとも温暖化による水ストレス減少は無視
できない程度といえる。
表 2.3 .7 -3
一人当たり年水資源賦存量の温暖化による変化量と変化率
( B 2-S550、 世 界 平 均 )
変 化 率 [%]
変化量
3
[m /person]
( 温 暖 化 に よ る 変 化 量 /温 暖 化 無 し 時 の 量 )
温暖化
水 スト
水 スト
水 スト
水 ストレ
水 ストレス
水 ストレス
水 ストレス
水 ストレス
影響の
レス・
レス・
レス・
ス解 消
・強化
・新規
・緩和
解消
タイプ
強化
新規
緩和
2050年
-48
-276
+41
+162
-10
-23
+9
+18
2100年
-87
-431
+56
+300
-21
-35
+13
+34
2150年
-95
-477
+65
+300
-23
-38
+16
+34
(3) 評 価 の ま と め と 課 題
Arnell(2004) 2 ) の 評 価 方 法 と
MIROC3 .2(hires) で 予 測 さ れ た 流 出 量 に 基 づ き 、
B2-Reference、B2-S650 、B2-S550、B2 -S450 の 4 つ の 排 出 パ ス の 2 05 0 年 、21 0 0 年 、2150
- 71 -
年について、温暖化が無い場合の水ストレス人口、及び温暖化による水ストレス増大/
減少人口を推計した。その結果は次のようにまとめられる。
•
1990 年 時 点 に 世 界 全 体 で 約 11 億 人 ( 世 界 人 口 の 約 22 %) が 水 ス ト レ ス に あ る 。
仮に、温暖化による水資源量変化がない場合でも、人口増加により、世界水スト
レ ス 人 口 は 、 20 5 0 年 に は 1 990 年 の 約 3 倍 ( 3 7 億 人 、 全 人 口 の 4 1 %)、 21 5 0 年 に
は 1990 年 の 約 4 倍 ( 4 4 億 人 、 全 人 口 の 4 2%) ま で 増 大 す る 。
•
温暖化影響として、温暖化により水ストレスが増大する人口、及び、逆に水スト
レスが減少する人口を世界全体でみると、排出パス、時点によらず、後者の方が
多い。
•
CO 2 排 出 量 を 抑 制 す る と 、 21 00 年 以 降 、 世 界 全 体 で は 、 温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス
減少人口を減じる可能性がある。
•
但し、上記のような温暖化影響の地域差は大きく、南アジアは世界全体と似た傾
向であるが、南アメリカや中央ヨーロッパでは全く逆の傾向が予想される。
以上の評価結果は、温暖化影響の地域差、時点差、及びそれらの排出抑制との関係
の理解に資すると期待される。
なお、本評価は一人あたり年水資源賦存量に基づいて実施したが、より現実的とい
う観点では、最初に述べたように、例えば、取水量とそれに関連する要素を考慮した
評価が望まれる。これは今後の課題である。
参 考 文 献 ( 2.3.7 節 に 関 す る も の )
1)
T. Oki et al.: Global water resources assessment under climatic change in 2050 using TRIP, Water Resources
Systems - Water availability and global change, Proceedings of symposium HS2a held during IUGG2003 at
Sapporo, July 2003, IAHS Publ. no. 280, (2003), 124-133.
2)
N.W. Arnell: Climate change and global water resources: SRES emissions and socio-economic scenarios,
Global environmental Change,14, (2004), 31-52.
3)
I. A. Shiklomanov: World water resources at the beginning of the 21st century, Summary prepared in the
framework of IHP/UNESCO (1999)
(http://webworld.unesco.org/water/ihp/db/shiklomanov/index.shtml)
4)
WCRP CMIP3 multi-model dataset: (http://www-pcmdi.llnl.gov/ipcc/about_ipcc.php).
5)
T. Oki: Total Runoff Integrating Pathways (TRIP) (2001). (http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/%7Etaika
n/TRIPDATA/TRIPDATA.html).
6)
S. Kanae: Population data from CIESIN,(2002)
(http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/GW/datafile/Pop_-_1995_person_CIESIN-TRIP05.asc).
7)
CIESI: Country-level population and downscaled projections based on the SRES B2 Scenario Country
population,(2002).(http://ciesin.columbia.edu/datasets/downscaled/).
8)
UNEP: Global Environment Outlook, (2000). (http://www.unep.org/geo2000/english/0017.htm).
- 72 -
2.3.8 陸 上 生 態 系 に 関 す る 調 査
(1) は じ め に
昨年度は、陸上生態系の現状および将来予測に関する知見について、ミレニアム生
態系評価プロジェクトを中心に調査・整理を行った。本年度は、その結果に基づき、
ミレニアム生態系評価プロジェクトにおける評価結果、その手順および植生分布につ
いてのプロセスベースモデルを利用し、陸上生態系への温暖化影響として種の損失を
取り上げ、排出パス別に評価を行った。
(2) ミ レ ニ ア ム 生 態 系 評 価 プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 評 価 結 果 に 基 づ く 種 の 損 失 の 評 価
温暖化による陸上生態系への影響を総合的に評価した事例として、ミレニアム生態
系評価プロジェクト
1)
が 挙 げ ら れ る 。同 プ ロ ジ ェ ク ト で は 、陸 上 生 態 系 に 限 ら ず 、エ コ
システムの評価を包括的に実施している。
陸 上 生 態 系 に つ い て は 、 同 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 想 定 し た シ ナ リ オ (CO 2 排 出 量 、 気
温 上 昇 、土 地 利 用 等 )に 基 づ い て 、2050 年 を 中 心 と し て 種 の 多 様 性 と い っ た 視 点 か ら の
評価が実施されている。評価の概要は下記の通りである。
•
植 生 の 分 布 の 変 化 に つ い て は 、気 温 や 降 水 量 等 の 環 境 条 件 に 基 づ い て 最 適 と さ れ
る 植 生 分 布 (ポ テ ン シ ャ ル )を 推 定 す る プ ロ セ ス ベ ー ス モ デ ル と 分 類 さ れ る モ デ ル
の一つ
2)
を用いて評価する。なお、植生の移動の速さや、他の植生の侵入によっ
て 植 生 が 入 れ 替 わ る 可 能 性 等 、植 生 の 移 動 に つ い て は 、不 確 実 性 が 大 き い も の の 、
独自に考慮されている
•
3)
。
各生物は植生と共存するものである。ここでは、各植生における種の密度やその
面 積 の 指 数 関 数 に 基 づ く SAR(Specific-Area Relationship)ア プ ロ ー チ を 取 り 、 あ る
植生の面積が減少すれば、それに相当する種が減少するものとして評価する。
•
分布する面積が増加する植生も当然存在する。しかし、その増加したエリアから
新 た な 種 が ど の 程 度 誕 生 す る か を 評 価 す る の は 困 難 で あ る た め 、種 の 増 加 は 無 い
ものとする。
•
農業用地の拡大等、人為的な土地利用の変化もシナリオとして与え、それによる
植生の分布の減少も同時に考慮する。
陸 上 生 態 系 へ の 影 響 評 価 は 、4 つ の シ ナ リ オ に つ い て 実 施 さ れ て い る 。こ の シ ナ リ オ
と 、PHOENIX に お け る 各 排 出 パ ス と の GHG 排 出 量 お よ び 気 温 上 昇 の 比 較 を 図 2 . 3 .8- 1
に 示 す 。 図 2.3.8-1 よ り 、 PHOENI X の 排 出 パ ス は ミ レ ニ ア ム 生 態 系 評 価 プ ロ ジ ェ ク ト
における二つのシナリオの間に位置することがわかる。そこで、本研究では、気温上
昇を説明変数、ミレニアム生態系評価プロジェクトにおける影響評価指標である温暖
化 に よ る 種 の 損 失 を 被 説 明 変 数 と し 、線 形 補 間 に よ っ て PHOEN IX に お け る 各 排 出 パ ス
の 下 で の 陸 上 生 態 系 の 種 の 損 失 を 推 定 し た 。 結 果 を 図 2.3.8-2 に 示 す 。 20 50 年 に お け
る 温 暖 化 に よ る 陸 上 生 態 系 の 種 の 損 失 は 、1 97 0 年 比 で 4 .0%(基 準 排 出 パ ス )~ 3.4%(S45 0 )
- 73 -
と推定される。なお、土地利用の変化等、温暖化以外の要因による損失は、ミレニア
ム 生 態 系 評 価 プ ロ ジ ェ ク ト で は 12.0%程 度 と さ れ て い る 。
Temperature rise [℃ relative to Y1765]
2.5
B2 Reference
2
B2 S450
1.5
1
Millenium-2050
0.5
PHOENIX-2050
0
0
図 2.3.8-1
5
10
15
20
GHG emission [GtC-eq/yr]
25
30
ミ レ ニ ア ム 生 態 系 評 価 プ ロ ジ ェ ク ト と PHOE N I X に お け る 各 シ ナ リ オ の
G H G 排 出 量 と 気 温 上 昇 の 比 較 (2050 年 )
4.5
Biodiversity loss relative to Y1970 [%]
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
Reference
図 2 .3 .8 -2
S650
S550
S450
ミレニアム生態系評価プロジェクトの結果に基づく
温 暖 化 に よ る 種 の 損 失 の 評 価 (2050 年 )
(3) プ ロ セ ス ベ ー ス モ デ ル を 利 用 し た 種 の 損 失 の 評 価
前 節 で 述 べ た 評 価 結 果 に お い て 、現 時 点 で 利 用 可 能 な の は 2 05 0 年 の 結 果 の み で あ る 。
そ こ で 、 PHOEN IX の 議 論 で 中 心 と な る 21 00 年 等 に お け る 影 響 を 評 価 す る た め 、 プ ロ
- 74 -
セ ス ベ ー ス モ デ ル の 一 つ で あ る BIOME4 4 ) を 用 い 、20 5 0 年 以 降 の 種 の 損 失 の 評 価 を 行 っ
た。評価の手順は以下の通りである。
•
植 生 の 分 布 ポ テ ン シ ャ ル を BIOME4 に よ っ て 評 価 す る 。植 生 の 移 動 の 制 約 は 考 慮
し て お ら ず 、 入 力 す る 環 境 条 件 は 、 評 価 対 象 時 点 (2100 年 等 )に お け る グ リ ッ ド 別
の 気 温 ・ 降 水 量 等 (第 2.2.2 節 参 照 )で あ る 。
•
評 価 対 象 時 点 の 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル と 現 時 点 の 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル (1990 年 )
の 計 算 結 果 か ら 植 生 別 に そ の 面 積 を 比 較 し 、面 積 が 減 少 す る 植 生 の み に つ い て ポ
テンシャル減少分を算出する。
•
植生分布ポテンシャルの減少と温暖化による種の損失は線形比例すると仮定し、
2050 年 に お け る 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル の 減 少 と 種 の 損 失 (図 2.3.8-2)か ら 、各 評 価
対象時点の種の損失を評価する。
表 2.3.8-1 に BIOME4 に お い て 考 慮 さ れ て い る 植 生 タ イ プ の 定 義 を 、 図 2.3.8-3 に
1990 年 に お け る 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル の 推 定 結 果 を 示 す 。 ま た 、 図 2.3.8-4 に は 各 種
排 出 パ ス の 下 で の 21 0 0 年 に お け る 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル の 推 定 結 果 を 示 す 。温 暖 化 に
伴い、北半球高緯度地域の分布ポテンシャルが大きく変化することがわかる。
表 2 .3 .8-1
Biome
植生タイプの定義
Biome Type (Name)
Biome
Type (ID)
Biome Type (Name)
Type (ID)
1
Tropical ever green fo rest
2
Tropical semi-deciduous forest
3
Tropical deciduous
4
Te mp erate deciduous fo rest
forest/woodland
5
Te mperate conifer forest
6
Warm mixed forest
7
Cool mixed forest
8
Cool conifer forest
9
Cold mixed forest
10
Evergreen taiga/ montane forest
11
Deciduous taiga/montane forest
12
Tropical savann a
13
Tropical xerophytic shrubland
14
Te mp erate xeroph ytic shrublan d
15
Te mp erate sclerophyll
16
Te mp erate broadleaved savanna
woodland
17
Open conifer woodland
18
Boreal parkland
19
Tropical grassland
20
Te mp erate grassland
21
Desert
22
Steppe tundra
23
Shrub tundra
24
Dwarf shru b tundra
25
Prostrate shrub tund ra
26
Cushion-forbs, lichen and mo ss
27
Barren
28
Land ice
- 75 -
図 2 .3 .8 -3
1 99 0 年 に お け る 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル の 推 定
(a) 基 準 排 出 パ ス
(b) S650
(c ) S5 5 0
図 2.3.8 -4
(d ) S 45 0
各 種 排 出 パ ス の 下 で の 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル の 推 定 (2100 年 )
- 76 -
図 2.3.8-5 に 、各 種 排 出 パ ス の 下 で の 19 9 0 年 比 の 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル 減 少 を 示 す 。
気候変動が進むに従いポテンシャルの減少が進む。また、排出抑制を行うことにより
その進行が抑制され、基準排出パスとの差異は時点に従って大きくなる。
図 2.3.8-6 は 、 図 2.3.8-2 と 図 2.3.8-5 に 基 づ い て 推 定 し た 各 排 出 パ ス の 下 で の 種 の
減 少 を 示 し て い る 。 21 0 0 年 に お い て は 、 19 7 0 年 比 で 7.9%(基 準 排 出 パ ス )~ 4.8%(S450)
の 種 の 損 失 と な る と 算 定 さ れ た 。ま た 、21 5 0 年 に お い て は 損 失 が 更 に 進 行 し 、12 .0 % (基
準 排 出 パ ス )~ 5.4%(S450)の 損 失 と な る 。
Decreased potential area relative to Y1990 [%]
25
20
Reference
S650
S550
S450
15
10
5
0
Y 2050
図 2.3.8 -5
Y 2100
Y 2150
各 種 排 出 パ ス の 下 で の 植 生 分 布 ポ テ ン シ ャ ル 減 少 (1990 年 比 )
14
Bio diversity loss relative to Y1970 [%]
12
Reference
S650
S550
S450
10
8
6
4
2
0
Y 2050
図 2 .3 .8 -6
Y 2100
Y 2150
各 排 出 パ ス の 下 で の 種 の 減 少 (1970 年 比 )
図 2.3.8-7 は 、異 な る ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ の 下 で の 種 の 減 少 の 評 価 結 果 の 比 較 を 示
し て い る 。 対 象 と し た の は 21 0 0 年 で あ る 。 ま た 、 異 な る ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ と し て
は SRES A1FI シ ナ リ オ を 取 り 上 げ て い る (第 4.3 節 参 照 )。こ こ で の 評 価 で 直 接 的 に 用 い
て い る 指 標 は 気 温 や 降 水 量 等 の 気 候 変 動 量 の み で あ る た め 、排 出 抑 制 パ ス (S650~ S450 )
- 77 -
の 下 で の 種 の 減 少 の 差 異 は Non-CO 2 排 出 パ ス に よ る 影 響 の み で あ り 、A1FI に お け る 損
失 が 約 1%大 き い 。 基 準 排 出 パ ス に お い て は 、 排 出 量 が 多 く 気 候 変 動 が 大 き い A1 F I の
下 で の 損 失 が 13.4%で あ り 、図 2.3.8-7 に 示 し た B2 基 準 排 出 パ ス の 下 で の 2 15 0 年 に お
ける損失よりも大きい。
14
B2
A1FI
Bio diversity loss relative to Y1970 [%]
12
10
8
6
4
2
0
Reference
図 2.3.8 -7
S650
S550
S450
異 な る ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ の 下 で の 種 の 減 少 の 比 較 (2100 年 )
(4) ま と め
ミレニアム生態系評価プロジェクトにおける評価結果、その手順および植生分布に
ついてのプロセスベースモデルを利用し、陸上生態系への温暖化影響として種の損失
を取り上げ、排出パス別に評価を行った。
気 候 変 動 が 進 む に 伴 い 温 暖 化 に よ る 種 の 損 失 は 増 加 し 、 基 準 排 出 パ ス の 下 で は 197 0
年 比 で 4.0%(2050 年 )~ 12 .0%(21 5 0 年 )の 損 失 と な る 。排 出 抑 制 を 行 う こ と に よ り そ の 損
失 も 抑 制 さ れ 、 21 50 年 で は そ れ ぞ れ 8.4%(S650)、 7.2%(S550)、 5.4%(S450)の 損 失 に な
ると算定された。
参 考 文 献 ( 第 2.3.8 節 に 関 す る も の )
1)
Millennium Ecosystem Assessment: Ecosystems and Human Well-Being Vol.1-4, Island Press (2006)
2)
Prentice,I.C., et al. : A global biome model based on plant physiology and dominance, soil properties and
climate, Journal of Biogeography, 19, pp.117-134 (1992)
3)
Jelle G. Van Minnen et al.: Defining the importance of including transient ecosystem responses to simulate
C-cycle dynamics in a global change model, Global Change Biology, 6, pp.595-611 (2000)
4)
J.O. Kaplan, et al.: Climate change and Arctic ecosystems: 2. Modeling, paleodata-model comparisons, and
future projections, Journal of Geophysical Research, Vol.108 No.D19, 8171 (2003)
- 78 -
2.3.9 海 洋 酸 性 化 に 関 す る 調 査
二酸化炭素濃度の上昇によって、炭酸カルシウムでできているプランクトンの殻や
サンゴの骨格が溶け出し、それらの種の生存が危険に曝されることへの危惧が特に近
年 高 ま り を 見 せ て い る 。本 節 で は 、海 洋 酸 性 化 に 関 す る 既 往 研 究 の 整 理 を 行 っ た 上 で 、
既 往 研 究 に よ る 報 告 例 を 基 に し て 、排 出 パ ス に 沿 っ た 海 洋 酸 性 化 の 影 響 評 価 を 行 っ た 。
(1) 文 献 の 調 査 ・ 整 理
海 洋 の 酸 性 化 は 、 以 下 の 化 学 反 応 で 説 明 さ れ る ( 基 本 的 に は 右 方 向 へ の 反 応 )。
CO 2(atmos) ⇔ CO 2(aq)
(1)
CO 2 + H 2 O ⇔ H 2 CO 3
(2)
H 2 CO 3 ⇔ H + + HCO 3−
(3)
H + + CO 32− ⇔ HCO 3−
(4)
(1)~ (3)式 ま で の 反 応 に よ っ て 、H + が 増 大 し 、p H( = –log 1 0 [ H + ])が 減 少 す る 。し か し 、
(4) 式 の 反 応 に よ っ て 、 CO 3 2 - が 供 給 さ れ れ ば 、 pH の 上 昇 が 抑 制 さ れ る ( ど の 程 度 の 効
果 が あ る か は 後 述 )。 一 方 、 CO 3 2 - が 減 少 す る と 、 (5) 式 に お い て 右 方 向 へ の 反 応 が お き
る た め 、 殻 や 骨 を 形 成 す る 海 洋 生 物 へ の carbonate mineral の 供 給 が 減 少 し て し ま う 。
CaCO 3 ⇔ Ca 2+ + CO 32−
(5)
IS92a シ ナ リ オ に よ る p H の 推 定 値 を 図 2.3.9-1 に 、 ま た 、 21 0 0 年 以 降 の 排 出 シ ナ リ
オ を 仮 定 し 、 水 深 別 の p H 変 化 ま で を 推 定 し た 結 果 を 図 2.3.9-2 に 示 す 。
- 79 -
図 2.3.9-1
2001
1)
C O 2 濃 度 と p H の 関 係 ( IS92a シ ナ リ オ )( 出 典 : Zeebe & Wolf-Gald r ow ,
; Turey e t al . , 20 06 2 ))
図 2.3.9-2
水 深 と 経 年 に よ る p H の 変 化( 排 出 シ ナ リ オ は IS92a。た だ し 2100 年 以 降
の シ ナ リ オ は 2 15 0 年 で 排 出 量 の ピ ー ク を 迎 え る と 仮 定 。)( 出 典 : C a ld ei ra & Wi c kett ,
2003 3 ))
次 に 、 (4)式 で 表 さ れ る H + の 上 昇 ( p H の 低 下 ) の 緩 和 効 果 に つ い て 説 明 す る 。 こ の
緩 和 効 果 ( bu ffer) は 、 一 般 的 に は 、 Revelle factor( buffer factor) と 呼 ば れ る 下 式 で 説
明 さ れ る 。 す な わ ち 、 CO 2 の 分 圧 の 変 化 率 が 大 き け れ ば 緩 和 効 果 は 大 き く な り 、 溶 解
CO 2 の 変 化 率 が 大 き け れ ば 緩 和 効 果 は 小 さ く な る 。 な お 、 現 在 の 海 洋 の Revelle fact o r
は 概 ね 8-13 の 範 囲 で あ る ( Sabine et al. 200 4 4 ) ; IPCC WGI AR4 Ch.7 5 ))。( 図 2.3.9-3 参
照)
Revelle factor (or buffer factor ) =
∆[CO2] [CO2]
∆[DIC] [DIC]
図 2.3.9-3 の よ う に 、Revelle factor は 海 水 温 の 上 昇 に 伴 い 小 さ く な り 、CO 2 の 分 圧 の
上昇と共に大きくなる。
- 80 -
図 2.3.9-3
R e ve ll e fa ct or ( b uf fe r f a ct or )。 (a) 海 洋 の 温 度 に 対 す る 値 ( S=35,
pCO 2 =230 matm, T A lk ( to ta l al k al in it y o f se a wat e r) =2 30 0 m mo l k g - 1 )、 ( b) pCO 2 に
対 す る 値 ( Tc=2 5 ℃ , S= 35 , TA l k= 23 00 m m ol k g - 1 )、 (c ) 19 94 年 の 値 ( 出 典 : Ze ebe &
Wolf-Gladrow, 2 00 1 1 ) ; S ab in e e t al ., 2 0 04 4 ) ; IP C C WG I AR 4 C h. 7 5 ) )
図 2.3.9-4 に は 、 各 種 SRES 排 出 シ ナ リ オ 下 で の 21 0 0 年 の 表 層 に お け る p H、 CaC O 3
( Calcite と Aragonite) の 飽 和 度 、 お よ び 、 累 積 CO 2 排 出 量 レ ベ ル に 対 す る 2 300 年 の 表
層 に お け る p H、 CaCO 3 ( Calcite( 方 解 石 ) と Aragonite( あ ら れ 石 )) の 飽 和 度 の 推 定
結 果 を 示 す 。 赤 道 付 近 は 、 気 温 が 高 い た め “ bu ffer” が 小 さ く ( 図 2.3.4-5a)、 p H の 低
下 が 大 き い 。 一 方 、 長 期 的 に は CO 2 濃 度 上 昇 に よ っ て “ buffer” が 大 き く な る た め ( 図
2.3.8-3b)、 気 温 の 差 異 に よ る “ buffer” 効 果 の 減 少 を 打 ち 消 し て 、 地 域 差 は 小 さ く な る
の が 見 受 け ら れ る 。 な お 、 気 温 の 低 い 極 域 で は 、 CaCO 3 の 飽 和 度 が 小 さ く 、 殻 や 骨 を
形成する海洋生物へ影響がより大きく現れる。
- 81 -
図 2.3.9-4
各 種 SRE S 排 出 シ ナ リ オ 下 で の 2100 年 の 表 層 に お け る pH、CaCO (
3 Ca lcite
と Aragonite) の 飽 和 度 ( 上 段 )、 お よ び 、 累 積 CO 2 排 出 量 レ ベ ル に 対 す る 2300 年 の 表
の 飽 和 度( 下 段 )
( 出 典:T he Ro y al S oc iety ,
層 に お け る p H、Ca CO(
3 C al c it e と A ra go nit e )
2005 6 ))
ま た 、同 様 に 、図 2.3.9-5 に は 、IS92a シ ナ リ オ と 各 種 SRES シ ナ リ オ 下 に お け る 210 0
年 ま で の 時 間 経 年 的 な p H お よ び 表 層 の CO 3 2 - の 濃 度 推 定 例 を 示 す ( Orr et al., 2005 7 ) ;
IPCC WGI AR4 Ch.1 0 5 ))。
IPCC で は 、 多 く の サ ン ゴ 礁 は 、 20 70 年 ま で に は Aragonite の 限 界 飽 和 状 態 に 達 し 得
る と し て い る 。CO 2 濃 度 倍 増 時 に は 、サ ン ゴ の 石 灰 化 率 は 20 -60%減 少 す る と し て い る 。
( 出 典 : IPCC WGII A R4 Ch.4 8 ))
な お 、図 2.3.9-6 は 、気 候 変 化 に よ る サ ン ゴ 礁 へ の 影 響 の 大 き さ の 概 念 的 な 比 較 を 示
している。温度変化による白化の影響が最も大きく、ついで、海洋の酸性化と一体と
なって石灰化率の減少の影響が大きい。
- 82 -
図 2.3.9-5
I S9 2a シ ナ リ オ と 各 種 SRES シ ナ リ オ 下 に お け る 2100 年 ま で の 時 間 経 年 的
な 南 半 球 の 海 水 の pH お よ び 表 層 の CO 3 2 - の 濃 度 推 移 ( 出 典 : Orr et al., 2005 7 ) ; IP C C
WGI AR4 Ch.10 5 ))
図 2.3.9-6
サンゴ礁への影響(ボックスの大きさは、定性的な影響の大きさを示し
て い る )( 出 典 : IP CC WG II A R4 Ch .4 8 ))
- 83 -
(2) 排 出 パ ス に 沿 っ た 海 洋 酸 性 化 の 影 響 評 価
図 2.3.9-4 を 基 に し て 、 各 排 出 パ ス ( SRES B2 ベ ー ス の リ フ ァ レ ン ス 、 S650、 S550、
S450 の 各 排 出 パ ス ) に 沿 っ た p H 変 化 と Calcite お よ び Aragonite の 飽 和 度 を 推 定 し た
結 果 を 図 2.3.9-7~ 図 2.3.9-9 に 示 す 。 こ れ か ら の 結 果 は 、 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス に お い
て は 、 2200 年 に な る と 、 北 緯 60°の Aragonite の 飽 和 度 は 限 界 飽 和 率 を 下 回 る 可 能 性
が高い。
8.1
pH
8
7.9
Reference
7.8
S650
S550
S450
7.7
2000
図 2 .3 .9 -7
2050
2100
Year
2150
各 種 排 出 パ ス に お け る 赤 道 上 の pH
北 緯 60°
3
5
2.5
4
2
Reference
2
S650
S550
Ω (Calcite)
Ω (Calcite)
赤道付近
6
3
2200
1.5
Reference
S650
S550
S450
1
S450
1
0
2000
図 2.3.9-8
0.5
2050
2100
Year
2150
2200
0
2000
2050
2100
Year
2150
2200
各 排 出 パ ス に お け る 赤 道 付 近 (0º)と 北 緯 60ºに お け る Calcite の 飽 和 度
- 84 -
北 緯 60°
赤道付近
4
1.8
3.5
1.6
1.4
2.5
2
1.5
Ω (Aragonite)
Ω (Aragonite)
3
Reference
S650
S550
S450
1
0.5
0
2000
図 2.3.9-9
1.2
1
0.8
0.6
Reference
0.4
S650
S550
0.2
2050
2100
Year
2150
2200
0
2000
S450
2050
2100
Year
2150
2200
各 排 出 パ ス に お け る 赤 道 付 近 (0º)と 北 緯 60ºに お け る Aragonite の 飽 和 度
2.3.10 生 物 地 球 化 学 的 影 響 に 関 す る 調 査
IPCC WGI AR4 5 ) で は 、 陸 上 に お け る 生 物 地 球 化 学 的 な 影 響 の 中 で 、 特 に そ の フ ィ ー
ドバック効果として、次の項目を挙げている(海洋生態系における生物地球化学的な
影 響 に つ い て は 、 先 述 し た 酸 性 化 の 影 響 を 指 摘 )。
•
CO 2 fertili z at io n ef f ec t
CO 2 濃 度 上 昇 に よ っ て 光 合 成 が 促 進 。 陸 域 で の CO 2 吸 収 力 が 増 す 。 し か し 、 水 文 、
栄養の循環の変化によっても影響を受ける。
•
Nutrient m i ne ra li sa t io n
温度が上昇すると、植物が利用可能な窒素化合物を排出する効果があり、植物の大
気 中 CO 2 の 吸 収 効 果 が 増 大 す る 。 一 方 、 湿 分 の 変 化 が も た ら す 影 響 は 、 正 負 両 方 有 り
得る。
•
Heterotrop h ic r es pi r at io n
温 度 が 上 昇 す る と 、従 属 栄 養 生 物 の 呼 吸 が 一 般 的 に 増 加 し 、CO 2 排 出 に 正 の フ ィ ー ド
バックをもたらす。湿分の影響はより複雑であり、正負両方の影響が有り得る。
•
Biome sh if t s
北 方 林 が ツ ン ド ラ 地 帯 に 移 動 す れ ば 、CO 2 固 定 量 は 増 大 す る 。一 方 、熱 帯 雨 林 が サ バ
ン ナ に 変 わ れ ば 、 CO 2 排 出 量 は 増 大 し 、 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク と な る 。
•
Producti vi t y ch an ge s
陸上生態システムは、生産性を変化させて気候変化に適応する。例えば、雨量が多
い 気 候 に な れ ば 成 長 し 、生 産 性 が 増 加 し 、CO 2 の 吸 収 を 増 す し 、一 方 、逆 の 効 果 も あ る 。
•
Fire
正のフィードバックがもたらされる。
その他、具体的な重要と考えられる知見を以下に記す。
- 85 -
気候変化によって湿地帯からのメタン排出が増えると考えられているが、現時点で
はメタン排出量は減少傾向にあり、観測からそれを裏付ける結果は得られていない。
( IPCC WGII AR4 Ch.7 Executive Su mmar y 8 ))
気候変化によって、水蒸気が増加し、対流圏オゾンは減少すると考えられるが、高
い 気 温 と 循 環 の 弱 化 に よ っ て 、 地 域 的 な オ ゾ ン 排 出 は 増 加 す る と 考 え ら れ る 。( IPC C
WGII AR4 Ch .7 Ex ecutiv e Su mma ry 8 ))
参 考 文 献 ( 第 2.3.9、 2.3.10 節 に 関 す る も の )
1)
Zeebe, R.E. and Wolf-Gladrow, D.A., 2001; CO2 in seawater: equilibrium, kinetics and isotopes. Elsevier
Oceanography Series. 65: pp. 346.
2)
Turley, C. et al., 2006; ‘Reviewing the Impact of Increased Atmospheric CO2 on Oceanic pH and the Marine
Ecosystem’, In: H.J. Schellnhuber et al. (Eds.), Avoiding Dangerous Climate Change, Cambridge University
Press.
3)
Caldeira, K. and Wickett, M.E., 2003; Anthropogenic carbon and ocean pH. Nature 425, 365.
4)
Sabine, C.L., R.A. Feely, N. Gruber, R.M. Key, K. Lee et al., 2004; The oceanic sink for anthropogenic CO2.
Science, 305 (5682), 367-371.
5)
IPCC WGI, 2007; Climate Change 2007: The Physical Science Basis
6)
The Royal Society, 2005; Ocean acidification due to increasing atmospheric carbon dioxide. Document
12/05 Royal Society: London.
7)
Orr, J.C. et al., 2005; Anthropogenic ocean acidification over the twenty-first century and its impact on
calcifying organisms. Nature, 437, 681-686.
8)
IPCC WGII, 2007; Climate Change 2007: Impacts, Adaptation and Vulnerability
2.3.11 そ の 他 の 温 暖 化 影 響 事 象 に 関 す る 調 査
(1) は じ め に
温暖化影響は多岐に渡り、前節までに取り上げた事象以外にも、畜産影響、永久凍
土の融解による影響、アマゾン地域のサバンナ化なども懸念される。本節は、これら
の事象について、簡潔にまとめることとする。
な お 、ア マ ゾ ン 地 域 の サ バ ン ナ 化 に 関 し て は 、2.3.10 節「 生 物 地 球 科 学 的 な 影 響 の 調
査 」 と も 関 連 が 強 い 。 本 節 で は 、 ア マ ゾ ン 地 域 の サ バ ン ナ 化 や 、 そ れ に と も な う CO 2
放 出 と い っ た 気 候 -炭 素 循 環 の 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク に 特 化 し て 記 述 を 行 う 。 ア マ ゾ ン 以
外 の 一 般 的 な 地 域 の 状 況 や 、 理 論 的 背 景 な ど に つ い て は 、 2.3.10 節 を 参 照 さ れ た い 。
(2) 畜 産 へ の 影 響
温暖化の畜産への影響は次のようにまとめることができる。
- 86 -
1.
畜 産 形 態 に は 、境 界 の な い 放 牧 か ら 家 畜 小 屋 飼 育 ま で 幅 広 く 存 在 。放 牧 場 に は 、砂
漠、低木地帯、藪、サバンナも含む。
2.
屋 内 飼 育 に 対 し 温 暖 化 は 直 接 的 に 影 響 を 与 え る も の が 支 配 的 で あ り 、温 暖 化 は 悪 影
響を及ぼす方向に働く。放牧型の場合、適応がより容易。
3.
放 牧 型 で は 、家 畜 へ の 直 接 影 響 の 他 に 、飼 料 と な る 草 や 草 地 生 態 系 へ の 影 響 の 考 慮
も必要。
4.
草 や 草 地 生 態 系 へ の 影 響 は 気 候 変 動 ( 気 温 、 降 水 量 等 ) の み な ら ず 、 CO 2 濃 度 の 増
大も直接影響するので、放牧型に対する影響経路はより複雑。
5.
草 地 生 態 系 へ の 影 響 評 価 ( 論 文 多 数 );
•
CO 2 濃 度 増 大 は 、降 雨 と 気 温 変 化 と 併 せ 草 地 に 影 響 を 及 ぼ し 、温 暖 多 湿 草 地 で は
生産増大、乾燥および半乾燥地では生産減少する見込み。
•
地 中 海 1 年 生 草 の 草 地;CO 2 増 大 と 窒 素 堆 積 は と も に 多 様 性 を 減 少 さ せ る 、降 水
の 増 大 は 多 様 性 を 増 大 さ せ 、結 果 と し て 温 暖 化 は 意 味 あ る 変 化 を も た ら さ な か っ
た。
•
モ デ リ ン グ 研 究( 予 測 の 信 頼 性 は 乏 し い )
;1 35 0 の ヨ ー ロ ッ パ 植 物 種 を 対 象 と し 、
2080 年 ま で の 温 度 上 昇 と 降 水 量 変 化 を モ デ ル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン し た 結 果 ( 管 理
放 牧 で は な く 、 自 然 放 牧 を 前 提 と し 、 人 為 的 適 応 は 考 慮 し て い な い )、 植 物 種 の
半 数 は ‘ 脆 弱 ’ ま た は ‘ 危 険 に 曝 さ れ る ’( Thuiller et al.,2005)
6.
家畜の行動パターン、飼料、植生など
•
温 暖 化 に よ り 飼 料( 飼 い 葉 )の 質 の 変 化 が 生 じ 、家 畜 の 食 行 動 パ タ ー ン が 変 化 す
る。
•
CO 2 の 増 大 は 、飼 料 の 質 を フ ァ イ ン ス ケ ー ル( 蛋 白 含 有 量 と C/N 比 )及 び コ ア ス
ス ケ ー ル ( C3 対 C4) の 両 方 に お い て 低 下 さ せ る ( C4 草 は C3 草 よ り 、 フ ァ イ ン
ス ケ ー ル 、 コ ア ス ケ ー ル の 両 方 に 関 し て 栄 養 価 が 低 い )。
•
天 候 の 変 動 幅 増 大 に よ る 動 物 の 生 産 性 へ の 影 響 は 、気 候 の 平 均 的 変 化 に よ る 影 響
より大きい。
•
乾 燥 地 域 に お い て 、 植 生 の 退 化 ( degeneration)、 土 壌 の 劣 化 、 降 雨 の 減 少 と い っ
た影響間に正のフィードバックがあり、牧場地や畑地の損失につながる。
•
南 ア フ リ カ な ど に お い て 、気 温 上 昇 は 、降 雨 減 少 と 相 俟 っ て 草 食 家 畜 の 損 失 増 大
につながる。
•
熱ストレス増大により家畜の水要求が増大し、水供給点近傍での過食が拡大す
る。
7.
温度上昇の影響
•
穏 や か な 気 温 上 昇 は 草 地 生 産 性 を 向 上 さ せ る ( 特 に 高 緯 度 で )。
•
2℃ ま で の 上 昇 の 場 合 、 多 湿 温 暖 地 域 で は 牧 草 地 と 家 畜 生 産 性 に 良 い 影 響 を 与 え
る。逆に、乾燥地、半乾燥地では悪影響を与える。
•
降 雨 パ タ ー ン 変 化 、気 候 変 動 幅 の 増 大 、異 常 気 象 の 増 大 、気 温 条 件 の 変 化 は 全 地
域について良い影響を抑制し、悪影響をさらに増大させる。
•
熱 ス ト レ ス は 家 畜 の 生 産 性 を 低 下 さ せ る 。こ れ は 、体 温 を 一 定 に 保 と う と す る 性
質に起因する。
- 87 -
•
熱 ス ト レ ス は 受 精 率 を 低 下 さ せ る 。23.4℃ 以 上 及 び 高 い 熱 指 数 の も と で 牛 の 受 精
率が低下する。
•
こ れ ま で 低 緯 度 地 域 に 見 ら れ て い た 動 物 疾 病 の 拡 大 が 起 こ り う る 。 Bluetongue
の 羊 へ の 感 染 拡 大 。 Malignant Catarrhal Fever (MCF)は 、 牛 、 豚 、 鹿 へ の 伝 染 性 ウ
ィ ル ス 病 で あ り 、拡 大 が 起 こ り う る 。牛 マ ダ ニ に よ る オ ー ス ト ラ リ ア の 牛 肉 産 業
に 対 す る 影 響 評 価 で は 、 現 在 6 千 ト ン /年 の 損 失 と 推 定 さ れ て い る が 、 20 30 年 に
78 百 ト ン /年 、 2 万 16 百 ト ン /年 の 損 失 へ 拡 大 す る 見 込 み ( 19 99 年 生 産 量 2 百 万
ト ン /年 )。
8.
適応可能性
•
窒 素 や リ ン を 肥 料 へ 添 加 す る こ と で 、 草 や 豆 の 大 気 中 CO 2 応 答 を 変 化 さ せ る こ
とができる。
•
草の刈り取り時期の調整や、刈り取らずに食糧とするなどの対応策あり。
•
穀 物 に 関 し て は 、 高 い CO 2 濃 度 で 有 利 な 変 種 植 物 を 選 択 す る と い っ た 選 択 肢 あ
り。
(3) 永 久 凍 土 へ の 影 響
温暖化の永久凍土への影響は次の通り。
1.
永 久 凍 土 の 融 解 は 現 在 で も 極 地 、 ア ジ ア 北 部 、 北 米 北 部 に お い て 生 じ て い る 。( 例
え ば 、 チ ベ ッ ト で 4 - 5 m 厚 さ が 減 少 し て い る 。 中 国 で は 1 97 0 年 代 に 5 0 -7 0 c m 減
だ っ た の が 1 99 0 年 代 に は 1 00c m 減 と な っ て い る 。)
2.
永久凍土融解による影響は、地面沈下・陥没、これに伴う建築物の損壊・倒壊な
ど、輸送インフラへの影響、海面上昇(海水の熱膨張等に比し非常に小さい)な
ど。
3.
北 半 球 の 永 久 凍 土 は 20 50 年 に 20 -3 5%減 少 と の 予 測 、 21 00 年 に は 11 %の ツ ン ド ラ
が 森 林 に 、 極 域 の 砂 漠 の 1 4 -2 3 %が ツ ン ド ラ に 替 わ る と の 予 測 あ り 。
4.
IPCC TAR に お い て 「 永 久 凍 土 融 解 は CH 4 , CO 2 の ソ ー ス と 考 え ら れ て い る 」 と 記
述されていたが、最近では、この懸念(あるいは、量的インパクト)は小さいと
見なされているようである。
(4) ア マ ゾ ン 熱 帯 雨 林 へ の 影 響 と 、 炭 素 循 環 や 大 気 中 CO 2 濃 度 へ 与 え る 影 響
アマゾン熱帯雨林と炭素循環に関する概要は次の通り。
1.
Hadley セ ン タ ー を 中 心 と し た 研 究 グ ル ー プ の 論 文
1)
に て 、「 ア マ ゾ ン 地 域 の 熱 帯 雨
林立ち枯れや、土壌からの炭素放出増大により、温暖化に正のフィードバックが
生 じ 、こ れ ら を 考 慮 し な い ケ ー ス "o ff lin e"で 70 0pp mv (2100 年 時 点 )で あ っ た 大 気 中
CO 2 濃 度 が 、フ ィ ー ド バ ッ ク を 考 慮 し た ケ ー ス "on line"で は そ れ よ り も 2 80 pp mv 程
度 高 い 980ppmv(2100 年 時 点 )と な る 結 果 を 得 た 」 と 示 さ れ て い る 。
- 88 -
2.
Hadley セ ン タ ー の 論 文
1)
で用いているモデルは、他のモデル結果と比較し、正の
フィードバックの度合が極めて大きいといった「モデルの個性」が存在する(後
述)ため、論文
3.
1)
の結果は極端なケースであると考えられる。
4
一 方 、 C MIP* は 、 陸 域 や 海 域 の 炭 素 収 支 と 気 候 変 動 の 動 的 な 関 係 を 評 価 す る プ ロ
ジ ェ ク ト で あ り 、 11 の 異 な る モ デ ル 結 果 を 相 互 比 較 し て い る 。 C 4 MIP で は 、 気 候
変 動 が 炭 素 循 環 に 影 響 を 与 え る "coupled" simulation と 、 炭 素 循 環 が CO 2 起 因 の 気
候 変 動 に さ ら さ れ な い こ と 前 提 と し て い る "u ncoupled " si mu lation を 行 っ て い る
2)3)
。
な お 、論 文
1)
で の "off line"と 、 C 4 MIP で の "uncoupled" si mulation の 定 義 の 違 い に
ついては、各文献
4.
1)3)
を参照のこと。
4
C MIP に お け る 11 モ デ ル の 結 果 か ら す る と 、 炭 素 循 環 と 気 候 変 動 の フ ィ ー ド バ ッ
ク を 考 慮 す る こ と で 上 昇 す る 210 0 年 時 点 の 大 気 中 CO 2 濃 度 は 、全 モ デ ル で 20 pp mv
か ら 200ppmv の 範 囲 に あ り 、 モ デ ル の 過 半 は 5 0pp mv か ら 10 0 pp mv の 範 囲 と な っ
た
2)3)
。論 文
1)
で 用 い ら れ た モ デ ル“ HadCM3LC”の 結 果 は 、C 4 MIP で 最 大 の 2 00 ppmv
の 差 を 示 し て い お り 、「 モ デ ル の 個 性 」 存 在 す る と 言 え る 。
5.
従って、気候変動と炭素循環に関して、正のフィードバック(気候変動により陸
域海域からの正味の炭素排出合計が増加するというフィードバック)が存在する
こ と は 確 か で あ る が 、そ の フ ィ ー ド バ ッ ク 度 合 は 、論 文
1)
で示したような極端なも
の で は な く 、現 在 の と こ ろ 、5 0p p mv か ら 1 0 0p p mv 程 度 で あ る と の 知 見 が 得 ら れ て
いる。また、正のフィードバックが生じる主要因については、モデル間で一致し
ていない(あるモデルでは、陸域での炭素収支悪化が主要因であるが、海域の炭
素 収 支 悪 化 が 主 要 因 の モ デ ル も 存 在 す る ) 4)。
6.
現 在 主 流 の OAGCM は 、 植 生 変 化 や 土 壌 炭 素 の 放 出 増 大 、 海 域 の 炭 素 収 支 変 化 を
見 越 し て ( 無 視 し て い る わ け で は な い ) 大 気 中 CO 2 濃 度 を 事 前 に 予 測 ・ 計 算 し 、
こ の 固 定 し た CO 2 濃 度 シ ナ リ オ の 下 、OAGCM を 走 ら せ る( 炭 素 循 環 と 気 候 変 動 の
フ ィ ー ド バ ッ ク を 動 的 に は 扱 わ ず )。 こ の よ う な 静 的 分 析 は 、 炭 素 循 環 と 気 候 変 動
の フ ィ ー ド バ ッ ク を 、 事 前 に 見 越 し て 大 気 中 CO 2 濃 度 を 設 定 す る た め 、 フ ィ ー ド
バ ッ ク を 無 視 し た "off line"や "uncoupled" simu lation と は 本 質 的 に 異 な る 。現 在 主 流
の( 静 的 だ が フ ィ ー ド バ ッ ク を 見 越 し た )分 析 と 、C 4 MIP で 行 わ れ た よ う な 動 的 分
析 の 差 は 、 C 4 MIP で 示 さ れ た 差 よ り も 小 さ く 、 高 々 数 十 p p mv 程 度 と さ れ る
7.
4)
。
他 、 AR5 で は 、 炭 素 循 環 と 気 候 変 動 の フ ィ ー ド バ ッ ク を 動 的 に ( 明 示 的 に ) 扱 っ
た OAGCM が 求 め ら れ て い る 。
*C 4 MIP は 、 Coupled Cli mate-Ca r b o n Cycle Model Interco mp arison Project の 略 。
参 考 文 献 ( 第 2.3.11 節 に 関 す る も の )
1)
P. M. Cox, R. A. Betts, M. Collins, P. P. Harris, C. Huntingford and C. D. Jones, Amazonian forest dieback
under climate-carbon cycle projections for the 21st century, Theoretical and Applied Climatology, 78(1-3),
- 89 -
137-156 (2004)Millennium Ecosystem Assessment: Ecosystems and Human Well-Being Vol.1-4, Island
Press (2006)
2)
海 洋 研 究 開 発 機 構 地 球 フ ロ ン テ ィ ア 研 究 セ ン タ ー : 研 究 報 告 書 ( 平 成 17 年 度 ).
http://kyousei.aesto.or.jp/~k021open/results/report.htm
P. Friedlingstein, et. al., “Climate –carbon cycle feedback analysis, results from the C4MIP model
3)
intercomparison”.
4)
山中康裕 北海道大学大学院助教授 とのプライベートコミュニケーションによる.
2.4
地球温暖化影響・適応策評価のまとめ
本 章 で は 、本 年 度 実 施 し た 地 球 温 暖 化・適 応 策 評 価 に つ い て ま と め た 。第 2.2 節 で は 、
PHOE NI X で 評 価 対 象 と す る 排 出 パ ス に つ い て 述 べ た 。 ま た 、 各 排 出 パ ス に 対 し 、 最 新
知見に基づく気候変動量推定について述べた。ここで、気温、降水量などの気候分布
に は 、 現 在 の 主 要 な 気 候 モ デ ル の 中 で 最 高 の 解 像 度 を 備 え る MIROC3.2(hiers)の 予 測 値
を 採 用 し た 。ま た 、気 候 感 度 に は IPCC WGI AR4 を 考 慮 し こ れ ま で の 2 .5℃ よ り 高 い 3℃
を採用した。
第 2.3 節 に は 、 各 種 温 暖 化 影 響 事 象 に 関 す る 調 査 と 評 価 を ま と め た 。 ま ず 、 第 2 .3 . 1
節 に TypeII 影 響 事 象 で あ る 熱 塩 循 環 崩 壊( THC)に 関 す る 評 価 を 示 し た 。こ こ で 、T H C
維 持 /崩 壊 の 閾 値 に は 平 成 1 7 年 度 ま で と 同 じ Stocker et al.(1997)に 基 づ く 値 を 用 い た 。
今 年 度 の 新 た な 試 み と し て 、 こ の 閾 値 と 最 近 の 気 候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 よ り 、 THC の
崩壊確率を推計した。
第 2.3.2 節 以 降 は 、 Typ eI 影 響 事 象 の 調 査 ・ 評 価 を 示 し た 。 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 減
少 ( 第 2.3.2 節 ) に つ い て は 、 最 新 の モ デ ル 予 測 に よ る と 2 1 世 紀 中 も 減 少 を 続 け 海 面
上昇に寄与するであろうがその程度は熱膨張程ではない事、数万年という超長期的な
モデルシミュレーションによるとグリーンランド氷床は、必ずしも完全消失に至るま
で減少を続けるわけでない事を述べた。また、氷床の完全消失に関する閾値的値を論
じた研究事例があるが、前提条件や不確実性の問題等解釈に留意が必要な事を指摘し
た。
第 2.3.3 節 に は 、氷 河 ・ 氷 帽 に つ い て 、2 0 世 紀 末 の 減 少 加 速 化 に つ い て 述 べ 、海 面 上
昇や、水資源、洪水等への影響を整理した。それによると水資源、洪水等の影響が危
惧されているものの、まだ定量的評価には至っていない。
第 2.3.4 節 で は 、 簡 易 気 候 モ デ ル で 2 200 年 ま で 計 算 し た 各 排 出 パ ス の 海 面 上 昇 値 を
示した。また、その値を要因別に見ると熱膨張の効果が大きい事を示した。また、文
献を基に、海面上昇は時間遅れが大きく、大気中濃度が安定化した後も海面上昇は長
期間に亘って続くと見込まれることを述べた。さらに、海面上昇による沿岸域洪水の
影響や脆弱なデルタ地帯について整理した。
第 2.3.5 節 で は 、 平 成 1 7 年 度 と 同 様 に 、 To l (2002)の 推 定 モ デ ル を 基 に 、 温 暖 化 に よ
る熱ストレス(循環器疾患、呼吸器疾患)と生物媒介性感染症(マラリア、デング熱)
- 90 -
の死亡者数変化を推計した。このうち、熱ストレスに関する分析では、温暖化によっ
て死亡者数が増加する地域と逆に減少する地域があること、そして、若者より高齢者
の 方 が 温 暖 化 の 影 響 を 受 け や す い と い う 結 果 が 得 ら れ た 。生 物 媒 介 性 感 染 症 に つ い て 、
所得向上は排出抑制以上に死亡者数抑制に効果的という結果が得られた。これは、対
策として適応の余地が少なくないことを示唆している。
第 2.3.6 節 で は 、 平 成 1 7 年 度 と 同 様 に こ れ ま で 開 発 し た 農 業 影 響 モ デ ル を 用 い 、 農
作 物 ( 米 、 小 麦 ) 生 産 ポ テ ン シ ャ ル を 推 計 し た 。 そ れ に よ る と 、 21 00 年 頃 か ら 、 特 に
小麦で温暖化の影響が大きくなる、但し、作付け時期や作付け品種変更といった適応
の効果も大きい事が示された。また、人口、経済発展といった社会シナリオの違いは 、
濃度安定化レベル以上に影響が大きいことを述べた。
第 2.3.7 節 で は 、 Arnell(2004)の 水 ス ト レ ス に 関 す る 評 価 方 法 と MIROC3.2(hiers)の 流
出量予測値に基づき、温暖化が無い場合の水ストレス人口、及び温暖化による水スト
レス増大人口、水ストレス減少人口を推計した。ここでも、農業影響と同じように、
社 会 シ ナ リ オ に よ る 影 響 が 大 き い 事 が 示 さ れ た 。 例 え ば 、 19 90 年 の 世 界 の 水 ス ト レ ス
人 口 は 約 11 億 人 で 、 仮 に 、 温 暖 化 に よ る 水 資 源 量 変 化 が な い 場 合 で も 、 人 口 増 加 に よ
り 2150 年 に は 44 億 人 ま で 増 加 す る と い う 結 果 が 得 ら れ た 。 そ の 他 、 温 暖 化 影 響 と し
て水ストレスが増大する地域と逆に減少する地域がある、また、排出抑制の効果も地
域によって異なる事が示された。
陸 上 生 態 系( 第 2.3.8 節 )に つ い て は 、Millennium Ecosyste m Assessment(2006)の 値 に
基づき、温暖化による陸上生態系の種の損失を排出パス毎に推計した。それより、温
暖化の程度が大きい程、種の損失も大きい事、但し、農地の拡大等温暖化以外の要因
による種の損失も小さくない事を示した。
海 洋 酸 性 化 ( 第 2 .3 .9 節 )、 生 物 地 球 化 学 的 影 響 ( 第 2.3.10 節 ) に つ い て は 、 既 往 研
究 を 調 査 、 整 理 し た 。 そ れ を 基 に 、 海 洋 酸 性 化 に つ い て は 、 PHOENI X の 各 排 出 パ ス に
対 す る pH 変 化 と Calcite お よ び Aragonite の 飽 和 度 を 推 定 し た 。そ の 結 果 、B2-Refrenc e
パ ス の 2200 年 に 、 北 緯 60°の Aragonite の 飽 和 度 は 限 界 飽 和 率 を 下 回 る 可 能 性 が 高 い
事が示された。
そ の 他 の 温 暖 化 影 響 事 象 と し て 、 第 2.3.11 節 で は 、 畜 産 影 響 、 永 久 凍 土 へ の 影 響 、
アマゾン熱帯雨林への影響、についてまとめた。温暖化は、多湿温暖地域の牧草生産
に対し良い影響を与えうるが、乾燥地、半乾燥地の牧草生産には悪影響を及ぼす。ま
た、適応策も多いものの、基本的には温度上昇による生産性低下や疾病拡大が見込ま
れることを示した。永久凍土については、融解による人口構造物(建物、輸送インフ
ラ)への悪影響が懸念される。アマゾン熱帯雨林に関して、一部のモデル結果は、熱
帯雨林の広域に渡る立ち枯れを示しているが、これは極端なケースと言える。多くの
モデル結果では、植生変化、土壌炭素の放出による正のフィードバックを考慮しても
50 ppmv か ら 1 00 pp mv 程 度 の 影 響 で あ る と 推 定 し て い る 。
以 上 の よ う に 、温 暖 化 影 響 に は 事 象 に よ っ て 地 域 差 や 時 点 差 が 大 き い 事 が 示 さ れ た 。
また、影響の程度は濃度安定化レベル以上に社会シナリオに大きく依存しうる事、そ
して、適応の余地も少なくない事が示唆された。
- 91 -
第 3章
3.1
地球温暖化緩和策の評価
地球温暖化緩和策のモデル評価の概要
本プロジェクトの主要な目的の一つである近未来の地球温暖化緩和戦略の評価を行
う た め に 温 暖 化 緩 和 策 に つ い て は 、(1)エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 変 革 に 注 目 し た 2 15 0 年 ま
で の 超 長 期 の 評 価 、 お よ び (2)産 業 構 造 の 変 化 も 扱 う 2 05 0 年 頃 ま で の 中 期 の 評 価 、 の 2
通りを異なるモデルを用いて行っている。超長期評価のエネルギーシステムモデル
( DNE21)か ら は 温 暖 化 緩 和 策 を 講 じ た と き の 一 次 エ ネ ル ギ ー 構 成 や CO 2 固 定 ・ 貯 留 量
の 時 系 列 変 化 な ど が 得 ら れ る 。 (1)の 分 析 結 果 に 関 し て は 、 H17 年 度 報 告 書
32)
を参照さ
れたい。中期評価のモデルは本プロジェクトで新たに開発したもので動学的なボトム
アップ型多地域エネルギーシステムモデルとトップダウン型多地域多部門経済モデル
の 両 者 の 長 所 を 生 か し た 統 合 モ デ ル (DEARS; Dyna mic Energy-economic Analysis mode l
with multi-Regions and multi-Sectors)で あ り 、 こ の モ デ ル か ら は 温 暖 化 緩 和 策 を 講 じ た
と き の 2050 年 頃 ま で の 部 門 別 付 加 価 値 損 失 な ど が 得 ら れ る 。 ま た 、 Non-CO 2 温 室 効 果
ガ ス に 関 し て は 、 H17 年 度 報 告 書
32)
に お い て 、 SRES-B2 シ ナ リ オ の も と で 分 析 を 実 施
した。
本年度は、上記モデルにおいて本年度に新たに拡張した項目について述べ、そのモ
デ ル 分 析 結 果 と 政 策 的 含 意 に つ い て 述 べ る 。ま た 、Non-CO 2 ガ ス に 関 し て も 、SRES-A1F I
シナリオに対応した分析を実施した。
3.2
動 学 的 世 界 多 地 域 多 部 門 経 済 ・ エ ネ ル ギ ー 統 合 モ デ ル DEARS の 拡 張
3.2.1 モ デ ル 概 要
DEARS モ デ ル は 、 静 学 的 な 多 地 域 多 部 門 一 般 均 衡 モ デ ル で あ る GTAP (Global Trad e
Analysis Project)モ デ ル
39)
に基づきつつも、複数時点を同時最適化する非線形計画モデ
ルである。本モデルでは、割引後の全期間・全地域の消費効用の総和が最大となるよ
うに、各地域における産業別生産額、貿易額や家計消費額と、それら生産活動および
家計消費活動に必要なエネルギーのコスト効率的な供給構造を整合的に計算する構造
になっている。モデルの特徴としては、トップダウン型経済モジュールとボトムアッ
プ型エネルギーシステムモジュールの統合モデルであり、世界全体の消費効用最大化
を目的とする動的非線形最適化モデルである。
昨 年 度 ま で の モ デ ル は 1 997 年 を 基 準 時 点 に 2 0 27 年 ま で を 分 析 す る モ デ ル で あ っ た
(計 算 は 2047 年 ま で 実 行 す る )。本 年 度 は 、モ デ ル 対 象 期 間 を 21 世 紀 中 頃 ま で を 分 析 で
き る よ う に 1 997 年 を 基 準 時 点 に 2 04 7 年 ま で 分 析 で き る よ う に 拡 張 し た (計 算 は 206 7
年 ま で )。な お 、最 適 化 時 点 間 隔 を 1 0 年 と し て 計 算 し て い る 。地 域 分 割 に 関 し て は 、世
界 を 18 地 域 分 割 し 、 産 業 分 類 に 関 し て は 、 非 エ ネ ル ギ ー 産 業 を 18 産 業 分 類 と し て い
る 。 産 業 連 関 表 ・ エ ネ ル ギ ー バ ラ ン ス 表 に 関 連 し た 経 済 デ ー タ は GTAP5( 基 準 年 1997
年 )や IEA 統 計 に 基 づ い て い る 。 エ ネ ル ギ ー 産 業 に 関 し て は 、 一 次 エ ネ ル ギ ー 7 種 ( 石
- 92 -
炭 、 原 油 、 天 然 ガ ス 、 水 力 、 風 力 、 バ イ オ マ ス 、 原 子 力 )、 二 次 エ ネ ル ギ ー 4 種 (固 体 燃
料 、 液 体 燃 料 、 気 体 燃 料 、 電 力 )を 扱 っ て い る 。
DEARS モ デ ル で は 、DNE21 モ デ ル に 基 づ く 簡 略 化 し た エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ ジ ュ ー
ル が ハ ー ド リ ン ク し 、 ボ ト ム ア ッ プ 的 に エ ネ ル ギ ー 供 給 技 術 や CO 2 回 収 ・ 貯 留 技 術 を
モデル化している。また、産業や運輸などの各部門の生産・輸出等は内生的に決定さ
れ、それらにともなって必要となる各産業のエネルギー需要量も内生的に決定され、
家計部門はエネルギー価格・所得弾性をもとに決定される。本研究における、温暖化
対策によるエネルギーシステム及び産業構造の中期の変化を分析することに適してお
り 、 地 域 別 ・ 産 業 別 の 分 析 ・ 評 価 も 可 能 で あ る 。 図 3.2.1 -1 に モ デ ル の 入 力 及 び 出 力 項
目を示す。
制約条件
温暖化緩和策評価
DEARSモデル
・CO 2排出抑制シナリオ
・GDP
・産業部門別エネルギー消費量
・産業部門付加価値生産額
・産業部門別中間投入額
・最終消費額
前提条件
・人口
・技術進歩率
・中間投入係数
・貿易収支シナリオ
経済モジュール
等
等
・一次エネルギー資源量
・化石燃料生産コスト
・エネルギー変換効率
・CO 2貯留可能容量、貯留コスト
エネルギーシステム
モジュール
最適化
計算
等
図 3 .2 .1 -1
・一次エネルギー生産量
・一次エネルギー消費量
・発電電力量
・CO 2排出量(燃料種別・産業部門別)
・CO 2回収・貯留量
・エネルギー価格
・CO 2削減限界費用
等
DEARS モ デ ル の 入 出 力
3.2.2 推 定 投 入 係 数 の 検 討
(1) 計 算 さ れ た 最 適 解 の 投 入 係 数 へ の フ ィ ー ド バ ッ ク
昨 年 度 、 SRES-B2 シ ナ リ オ に 基 づ く 、 将 来 の 産 業 別 ・ 地 域 別 の 投 入 係 数 を EU 法 1 を
用いて推定した
32)
。 ま た 、 そ れ ら の 投 入 係 数 を 用 い て 分 析 を 実 施 し た 。 こ こ で は 、 EU
法 で 推 定 さ れ た 投 入 係 数 を 与 え て 、DEARS モ デ ル で 最 適 解 を 求 め た と き 得 ら れ る 生 産
額 を 、 も う 一 度 EU 法 の 前 提 と し て 戻 し て 、 投 入 係 数 を 求 め 、 推 定 し た 投 入 係 数 の 検
討を行った。本節では昨年度のモデルの計算結果をもとに検討した。
(2) 地 域 別 ・ 産 業 別 生 産 額 の 推 移
EU 法 に 基 づ い て 求 め ら れ た 投 入 係 数 を 用 い た DEARS モ デ ル に よ る 第 一 回 目 の 計 算
結 果 (以 下 、
「 第 一 回 目 の DEARS 解 」と 記 す 。)と 、そ れ ら の 解 を 再 度 EU 法 に 適 用 し て
求 め ら れ た 投 入 係 数 を 用 い た 計 算 結 果 (以 下 、
「 第 二 回 目 の DEARS 解 」と 記 す 。)の 地 域
別 生 産 額 の 両 者 に 関 し て 、 表 3.2.2-1 に 両 者 の 差 額 、 表 3.2.2-2 に は 、 差 額 の パ ー セ ン
ト表示を示す。それをみると、以下のことがわかる。
1
E U 法 と は 投 入 係 数 を 推 定 す る 手 法 で あ り 、E U 加 盟 国 の 投 入 係 数 を 推 定 す る た め 等 に 幅 広 く 適 応
さ れ て い る 。 詳 細 は H17 年 度 報 告 書 32)参 照 。
- 93 -
•
生 産 額 の 合 計 値 で は 約 1% 程 度 に 差 額 は 収 ま っ て い る 。
•
両 者 の 差 が 大 き い 地 域 は 、 中 米 ( +3.6 % )、 西 欧 ( +8.1 % )、 イ ン ド ( +18.5 % )、
中 東 ( +5.1% ) な ど で あ る 。 西 欧 、 イ ン ド に 関 し て は 、 GDP の 差 額 が 大 き い こ と
も反映していると考えられる。
表 3.2.2-1
地 域 別 生 産 額 : 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DEARS 解 の 差 額 (10Million $)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
表 3.2 .2 -2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
世界計
1997
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2007
2017
2027
2037
2047
-27,478
-6,592
2,903
5,108
-5,530
882
1,626
2,789
6,831
5,070
-23,111 -28,057 -43,246 -87,396 -147,534
905
-829
-83
1,124
192
201
104
-265
2,367
2,878
21,961 -101,557 -154,011 -206,339 -156,258
172
1,024 -56,905
2,482
7,469
3,969
3,410
1,998
7,118
19,621
-226
-154
-2,105
-4,311
-5,129
157
-428
-452
-3,603
-3,334
-627
-121
-2,936
6,200
32,115
12,133
21,534
9,306
18,349 -20,178
8,968
2,867
11,400
48,821
75,729
664
-28 -23,853 -158,168 -269,760
1,152
-3,198
7,448
51,369
62,324
3,691
12,729
24,251
46,491
60,392
-2,076
-4,383
-5,227 -18,079 -16,265
1,212
-172
714
415
11,789
2,549 -102,223 -228,278 -281,222 -346,408
地 域 別 生 産 額 : 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DEARS 解 の 差 額 ( %)
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
世界計
1997
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
2007
-1.5
0.6
-13.2
0.5
0.2
1.2
0.2
2.9
-0.4
0.4
-1.3
1.2
1.3
0.5
0.3
1.9
-1.6
1.0
0.0
2017
-0.3
0.8
-7.9
-0.2
0.1
-4.0
0.8
1.6
-0.2
-0.7
-0.2
1.6
0.2
-0.0
-0.5
4.1
-1.9
-0.1
-0.9
2027
0.1
1.1
-4.9
-0.0
-0.1
-5.3
-22.8
0.6
-2.1
-0.4
-1.4
0.5
0.3
-3.8
0.6
4.6
-1.3
0.2
-1.3
2037
0.1
2.5
-4.0
0.1
0.5
-6.2
0.5
1.3
-3.1
-1.6
1.1
0.9
0.7
-16.2
2.0
5.2
-2.7
0.1
-1.0
2047
-0.1
1.7
-3.6
0.0
0.5
-4.7
0.7
2.4
-2.9
-0.9
2.7
-0.9
0.9
-18.5
1.7
5.1
-2.0
0.8
-0.9
第 一 回 目 の DEARS 解 と 、フ ィ ー ド バ ッ ク し て EU 法 を 再 度 適 用 し た 第 二 回 目 の DEA R S
解 の 産 業 別 生 産 額 の 両 者 に 関 し て 、 表 3.2.2-3 に 両 者 の 差 額 、 表 3.2.2-4 に は 、 差 額 の
パーセント表示を示す。それをみると、以下のことがわかる。
•
生 産 額 合 計 で は 、 上 で 見 た よ う に ほ ぼ 1% 台 の 差 と な っ て い る 。
- 94 -
•
差 が 大 き い 産 業 は 、 鉄 鋼 ( +4 0 % )、 非 鉄 金 属 ( +2 0 % )、 非 金 属 鉱 物 ( +3 9 % ) な
ど 。 い ず れ も 金 属 関 連 で 、 エ ネ ル ギ ー 原 単 位 が 高 い た め 、 CO 2 制 約 で 頭 打 ち に な
った産業である。
•
CO 2 制 約 の あ る 場 合 、産 業 は い く つ か の 対 応 可 能 性 を 持 つ 。第 1 は CO 2 排 出 の 少
な い 技 術 の 採 用 、第 2 は 生 産 額 の 抑 制 、第 3 は 輸 入 で ま か な う こ と で あ る 。EU 法
の 場 合 は 、 後 の 2 者 に 頼 っ て 、 DEARS モ デ ル の 当 初 計 算 値 と 整 合 的 な 値 を 求 め
ている。
表 3.2.2 -3
産 業 別 生 産 額 : 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DEARS 解 の 差 額 (10Million$)
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
世界合計
1997
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2007
2017
2027
2037
2047
155
-9,561 -37,550 -105,315 -106,027
4,550
1,055 -18,690 -40,620 -57,767
-746
-2,352
-4,927 -22,965 -24,213
-1,901 -15,414 -36,769 -73,100 -111,078
1,221
7,650
2,705
-65
2,438
5,459
4,001
3,588
1,312
9,715
-18,514
-1,319
-2,078
-2,619
-3,824
7,491
4,051
-743
-4,595 -21,704
241
703
4,295
9,300
15,955
554
1,060
27
242
2,287
2,151
207 -11,561
9,622
-2,530
1,382
3,170
1,829
8,938
1,212
678
-1,752 -11,373 -19,295 -20,370
274 -16,633 -29,613 -32,711 -22,261
16,007
5,793
9,620
2,384
5,683
2,341
-192
760
2,874
616
6,503
-4,016 -25,599
23,685
18,095
-13,771
577
26,315
46
7,673
267
1,991
8,178
11,061
9,277
1,983
12,076
28,934
54,405
80,338
6,488
14,555
14,972
17,334
27,233
2,416
12,358
20,948
77,537 157,438
0
0
0
0
0
-1,396 -91,087 -95,592 -78,209 -57,893
-21,609 -28,999 -46,631 -85,356 -237,354
5
57
310
-198
-450
325
-203 -29,628 -34,913 -18,894
2,551 -102,224 -228,276 -281,222 -346,412
- 95 -
表 3 .2 .2 -4
産 業 別 生 産 額 : 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DEARS 解 の 差 額 ( %)
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
世界合計
1997
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-
2007
0.1
1.4
-1.2
-1.9
0.4
0.6
-72.6
2.4
0.2
0.8
0.3
0.9
0.8
0.1
4.0
3.4
0.4
-1.1
2.6
6.2
35.3
-
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
2017
-6.5
0.2
-3.0
-12.6
1.5
0.3
-4.3
1.2
0.4
1.2
0.0
1.1
-1.4
-7.0
0.8
-0.2
-0.1
0.0
16.3
23.2
47.5
-
-11.7
-16.9
0.0
0.3
0.0
2027
-20.3
-2.4
-5.2
-22.5
0.3
0.2
-5.0
-0.2
1.7
0.0
-0.9
0.4
-6.2
-11.5
0.9
0.4
-0.5
0.9
44.0
36.0
41.6
-
-657.5
-14.2
0.3
-0.1
-0.9
2037
-42.3
-3.3
-19.4
-29.1
-0.0
0.0
-3.8
-1.2
2.5
0.2
0.5
1.2
-6.8
-11.4
0.1
1.0
0.3
0.0
37.9
41.8
37.7
-
-452.4
-15.3
1.0
-10.6
-1.3
2047
-40.4
-4.0
-19.6
-38.8
0.2
0.2
-5.0
-5.3
3.4
1.5
-0.1
0.1
-6.4
-7.8
0.2
0.1
0.1
0.1
28.1
44.3
45.9
-
-238.2
-17.9
-0.5
-7.6
-1.0
-153.4
-36.3
-0.9
-3.0
-0.9
(3) 世 界 GDP の 推 移
第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DEARS 解 の GDP に 関 し て 、表 3.2.2-5 に 両 者 の 差 額 、表 3 .2.2- 6
には、差額のパーセント表示を示す。それをみると、以下のことがわかる。
•
全 体 と し て は 、 1-8% の 差 額 が 生 じ て お り 、 時 間 の た つ ほ ど 差 額 は 増 大 し て い る 。
•
差 額 の 大 き な 地 域 は 、 西 欧 ( +11 % )、 イ ン ド ( +1 9 % )、 日 本 ( +1 6 % ) な ど で あ
る。こうした地域では、重厚長大型産業のシェアが大きく、それを制御するため
に、輸入が増えていることが、この差の原因のひとつだろう。
- 96 -
表 3.2.2 -5
地 域 別 G D P: 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DE A R S 解 の 差 額 (10Million$ )
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
世界計
表 3 .2 .2 -6
1997
0
0
0
0
-0
0
0
-0
0
0
0
-0
0
0
0
0
0
0
0
2007
-11,005
210
14,140
3,756
-503
17,090
-159
1,898
680
796
-379
6,364
5,633
-89
3,716
3,033
-1,978
674
43,880
2017
19,433
1,109
13,950
6,210
-363
193,966
-501
1,653
1,999
1,755
-647
27,725
8,400
4,612
4,468
14,903
-2,557
1,599
297,715
2027
116,363
4,414
28,740
11,881
931
188,497
-27,604
2,802
883
5,304
-4,686
30,112
61,589
19,846
24,344
22,193
3,242
7,540
496,392
2037
2047
100,710
94,423
10,020
12,555
68,297 152,573
25,044
44,931
5,684
12,964
202,368 210,211
4,411
12,154
11,207
32,529
3,495
8,160
12,499
28,902
-4,090
-6,832
53,928 211,765
152,084 236,660
97,081 165,471
109,643 133,804
39,697
55,520
11,087
17,731
23,306
74,609
926,469 1,498,132
地 域 別 G D P: 第 一 回 目 と 第 二 回 目 の DE A R S 解 の 差 額 ( %)
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
世界計
1,997
0
0
0
0
-0
0
0
-0
0
0
0
-0
0
0
0
0
0
0
0
2,007
-1
0
15
4
-1
2
-0
3
3
3
-1
1
2
-0
2
3
-3
1
1
2,017
1
1
7
3
-0
14
-1
1
6
5
-2
4
1
2
1
9
-2
2
5
2,027
6
3
6
4
1
12
-23
1
2
8
-4
3
4
5
4
8
1
5
5
2,037
5
7
5
5
2
11
2
3
5
10
-1
5
5
17
9
8
3
5
6
2,047
4
8
6
6
3
11
2
7
10
13
-1
16
6
19
7
9
4
9
8
(4) ま と め
動学的に最適解を得るモデルの場合、生産額は、毎期、消費や投資の動き、もしく
は CO 2 制 約 に よ っ て 変 動 す る 。 他 方 で 、 産 業 構 造 (投 入 係 数 に 典 型 的 に 表 れ る )は 、 技
術 的 変 化 (例 : IT 革 新 )や 、需 要 の 長 期 的 変 化 (例 :自 動 車 へ の 需 要 が 高 ま る こ と )に よ っ
て、長期的に緩やかに変わっていく。したがって、生産額の変動に対して、投入係数
を変化させた今回の検討では、こうした両者の相違が確認されたといってよい。
また、これらの結果から、フィードバックさせなくても差異は比較的小さく、推定
した投入係数をフィードバックさせて収束計算を実施したとしても、収束する傾向が
明 ら か と は な っ て い な い 。よ っ て 、本 年 度 は 、昨 年 度 に 推 定 し た EU 法 に 基 づ く 投 入 係
数 (た だ し 、 フ ィ ー ド バ ッ ク は 考 慮 し な い )を 用 い て 、 DEARS モ デ ル を 分 析 す る こ と と
する。
- 97 -
3.2.3 A1FI ケ ー ス の 投 入 係 数 の 推 定
(1) A1FI ケ ー ス と B 2 ケ ー ス の 内 容
昨 年 度 は SRE S- B2 ケ ー ス に 対 応 し た 投 入 係 数 の 推 定 を 行 っ た 。 本 年 度 は SRES-A1 FI
ケ ー ス に 対 応 す る 投 入 係 数 の 推 定 を 、 昨 年 度 と 同 様 に EU 法 を 用 い て 行 っ た 。 両 ケ ー
スの定義は以下のとおりである。
SRES-B2
経 済 ・社 会 ・環 境 面 で の 持 続 可 能 性 に 関 す る 地 域 解 に 重 点 が 置 か れ る 。 世 界 は 異 質 化
し、技術変化は多様でかつスピードは鈍る。地域のイニシアティブに重点が置かれ、
社会的な変革はグローバル解より地域解に重点が置かれる。
SRES-A1F I
経済成長が高く、人口の伸びは低く、新技術導入のスピードは速い。世界は経済的・
文 化 的 に 収 束 に 向 か い 、 そ の 実 現 の た め の 方 策 が 検 討 さ れ る 。 各 国 の 一 人 あ た り GDP
の差は大幅に縮小する。人々は環境の質より、個人的富を追求する。
SRES-B2 が 低 成 長 、 地 域 ご と の 多 様 性 の 保 持 を 特 色 と す る の に 対 し 、 SRES-A1F I は 、
高成長、地域間の所得分配の公平化を意味する。
(2) 個 別 地 域 の 結 果
SRES-A1F I シ ナ リ オ と 整 合 的 な 最 終 需 要 を 前 提 と し て 、 18 地 域 別 に 、 20 47 年 ま で
の 投 入 係 数 の 推 定 を 行 っ た 。 表 3.2.3-1 か ら 表 3.2.3-18 は 、 A1FI ケ ー ス の 推 定 し た 地
域別投入係数を示す。
- 98 -
表 3 .2 .3 -1
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.072
0.013
0.011
0.005
0.000
0.166
0.029
0.000
0.001
0.001
0.013
0.000
0.002
0.000
0.051
0.005
0.251
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.001
0.006
0.041
0.682
0.318
1.000
化学
0.001
0.198
0.000
0.001
0.000
0.025
0.006
0.001
0.008
0.000
0.011
0.001
0.001
0.005
0.031
0.003
0.201
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.046
0.004
0.026
0.590
0.410
1.000
0.005
0.030
0.171
0.002
0.000
0.153
0.033
0.000
0.001
0.001
0.010
0.000
0.001
0.002
0.042
0.004
0.241
0.013
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.005
0.058
0.775
0.225
1.000
0.003
0.052
0.001
0.035
0.000
0.036
0.052
0.000
0.012
0.003
0.015
0.001
0.001
0.002
0.088
0.005
0.214
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.007
0.007
0.028
0.581
0.419
1.000
0.009
0.036
0.011
0.002
0.209
0.225
0.001
0.000
0.001
0.003
0.007
0.003
0.000
0.000
0.014
0.005
0.193
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.735
0.265
1.000
0.020
0.023
0.016
0.002
0.004
0.268
0.000
0.000
0.003
0.001
0.008
0.000
0.000
0.000
0.013
0.004
0.169
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.556
0.444
1.000
表 3 .2 .3 -2
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.099
0.027
0.011
0.012
0.006
0.135
0.019
0.000
0.003
0.001
0.004
0.001
0.002
0.000
0.045
0.004
0.217
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.002
0.008
0.039
0.644
0.356
1.000
化学
0.001
0.304
0.003
0.001
0.002
0.020
0.002
0.003
0.014
0.001
0.003
0.001
0.003
0.002
0.019
0.004
0.168
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.041
0.009
0.021
0.637
0.363
1.000
2047 年 の 米 国 の 投 入 係 数
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
0.006
0.018
0.086
0.002
0.003
0.038
0.124
0.000
0.001
0.000
0.004
0.000
0.000
0.000
0.017
0.002
0.100
0.008
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.002
0.196
0.609
0.391
1.000
0.004
0.062
0.003
0.064
0.006
0.046
0.040
0.000
0.018
0.002
0.003
0.000
0.005
0.000
0.064
0.008
0.208
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.004
0.002
0.014
0.574
0.426
1.000
0.013
0.034
0.008
0.003
0.482
0.076
0.000
0.000
0.002
0.001
0.000
0.001
0.001
0.000
0.009
0.001
0.111
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.753
0.247
1.000
0.023
0.019
0.019
0.002
0.008
0.337
0.001
0.000
0.005
0.001
0.001
0.000
0.001
0.000
0.017
0.004
0.121
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.571
0.429
1.000
鉱業
0.009
0.041
0.000
0.002
0.007
0.144
0.071
0.000
0.002
0.000
0.022
0.000
0.000
0.000
0.039
0.006
0.203
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.098
0.663
0.337
1.000
食料品
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.025
0.000
0.003
0.000
0.050
0.000
0.050
0.016
0.000
0.007
0.000
0.000
0.257
0.023
0.003
0.222
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.008
0.676
0.324
1.000
0.001
0.045
0.001
0.000
0.000
0.024
0.001
0.001
0.101
0.009
0.012
0.001
0.001
0.000
0.028
0.004
0.199
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.003
0.037
0.484
0.516
1.000
0.006
0.039
0.002
0.003
0.004
0.087
0.000
0.000
0.005
0.111
0.007
0.007
0.001
0.056
0.039
0.005
0.257
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.001
0.054
0.704
0.296
1.000
建設
0.004
0.031
0.005
0.017
0.002
0.249
0.008
0.000
0.003
0.029
0.000
0.001
0.002
0.004
0.020
0.002
0.410
0.013
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.800
0.200
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.120
0.000
0.001
0.000
0.012
0.000
0.002
0.002
0.000
0.011
0.078
0.002
0.032
0.033
0.007
0.258
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.001
0.016
0.594
0.406
1.000
0.002
0.030
0.006
0.001
0.018
0.046
0.000
0.000
0.005
0.002
0.042
0.001
0.011
0.003
0.034
0.004
0.208
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.000
0.067
0.508
0.492
1.000
農業
0.000
0.053
0.000
0.000
0.003
0.025
0.001
0.031
0.003
0.001
0.021
0.001
0.001
0.198
0.029
0.001
0.159
0.104
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.014
0.000
0.000
0.646
0.354
1.000
陸・海運
農業
0.000
0.090
0.000
0.001
0.013
0.069
0.000
0.021
0.002
0.001
0.011
0.001
0.001
0.109
0.026
0.002
0.286
0.052
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.018
0.001
0.016
0.719
0.281
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.008
0.000
0.000
0.012
0.022
0.000
0.000
0.002
0.000
0.026
0.000
0.003
0.000
0.132
0.003
0.283
0.037
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.238
0.002
0.003
0.772
0.228
1.000
空運
0.000
0.001
0.000
0.000
0.029
0.007
0.000
0.001
0.001
0.000
0.004
0.000
0.000
0.000
0.064
0.043
0.164
0.110
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.104
0.000
0.000
0.528
0.472
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.004
0.000
0.000
0.007
0.019
0.000
0.000
0.006
0.000
0.017
0.000
0.001
0.000
0.004
0.003
0.282
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.376
0.624
1.000
0.000
0.007
0.000
0.000
0.001
0.012
0.000
0.007
0.003
0.000
0.031
0.000
0.001
0.003
0.002
0.002
0.142
0.041
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.008
0.260
0.740
1.000
2047 年 の カ ナ ダ の 投 入 係 数
鉱業
0.005
0.050
0.001
0.001
0.019
0.083
0.006
0.000
0.003
0.000
0.009
0.000
0.001
0.000
0.064
0.002
0.229
0.057
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.036
0.016
0.223
0.804
0.196
1.000
食料品
0.000
0.034
0.000
0.003
0.000
0.040
0.000
0.057
0.030
0.000
0.001
0.000
0.001
0.144
0.010
0.002
0.213
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.549
0.451
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.058
0.002
0.000
0.003
0.030
0.001
0.000
0.126
0.022
0.003
0.001
0.001
0.021
0.014
0.005
0.197
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.004
0.175
0.682
0.318
1.000
- 99 -
0.005
0.052
0.002
0.004
0.004
0.058
0.000
0.000
0.011
0.073
0.002
0.004
0.003
0.129
0.027
0.003
0.239
0.032
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.649
0.351
1.000
建設
0.007
0.035
0.001
0.020
0.002
0.155
0.003
0.000
0.004
0.025
0.000
0.002
0.001
0.002
0.023
0.001
0.301
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.604
0.396
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.096
0.000
0.000
0.002
0.009
0.000
0.001
0.013
0.000
0.001
0.083
0.003
0.014
0.026
0.006
0.221
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.498
0.502
1.000
0.003
0.045
0.010
0.000
0.007
0.036
0.005
0.000
0.011
0.003
0.005
0.002
0.007
0.001
0.015
0.003
0.136
0.024
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
0.030
0.092
0.443
0.557
1.000
0.000
0.014
0.000
0.000
0.016
0.009
0.000
0.000
0.004
0.000
0.010
0.000
0.001
0.000
0.044
0.001
0.190
0.023
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.063
0.003
0.002
0.381
0.619
1.000
0.000
0.014
0.001
0.000
0.022
0.039
0.000
0.001
0.025
0.000
0.002
0.000
0.000
0.000
0.133
0.006
0.182
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.061
0.000
0.000
0.504
0.496
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.002
0.000
0.000
0.003
0.007
0.000
0.006
0.012
0.000
0.007
0.000
0.001
0.001
0.015
0.004
0.196
0.058
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.001
0.013
0.330
0.670
1.000
0.000
0.004
0.000
0.000
0.001
0.013
0.000
0.001
0.006
0.000
0.009
0.000
0.001
0.000
0.005
0.004
0.162
0.046
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.010
0.264
0.736
1.000
表 3 .2 .3 -3
化学
0.001
0.170
0.001
0.003
0.005
0.022
0.001
0.012
0.010
0.001
0.000
0.004
0.000
0.002
0.015
0.006
0.130
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.156
0.014
0.007
0.569
0.431
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.156
0.010
0.006
0.002
0.012
0.097
0.010
0.001
0.002
0.000
0.000
0.001
0.001
0.000
0.030
0.005
0.140
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.046
0.030
0.061
0.620
0.380
1.000
化学
0.000
0.207
0.001
0.002
0.001
0.045
0.002
0.008
0.004
0.000
0.003
0.002
0.007
0.014
0.009
0.001
0.124
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.302
0.003
0.006
0.758
0.242
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.152
0.027
0.003
0.005
0.000
0.207
0.006
0.000
0.001
0.000
0.000
0.000
0.032
0.013
0.017
0.001
0.256
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.052
0.006
0.092
0.910
0.090
1.000
0.007
0.094
0.038
0.002
0.013
0.071
0.027
0.002
0.004
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.024
0.006
0.182
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.013
0.005
0.072
0.576
0.424
1.000
0.002
0.048
0.001
0.045
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0.000
0.013
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.029
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0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.146
0.012
0.021
0.554
0.446
1.000
0.021
0.047
0.006
0.005
0.219
0.062
0.000
0.002
0.006
0.002
0.000
0.004
0.000
0.001
0.019
0.005
0.195
0.014
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.608
0.392
1.000
0.022
0.039
0.019
0.005
0.010
0.183
0.000
0.001
0.004
0.006
0.000
0.001
0.000
0.000
0.023
0.009
0.180
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.514
0.486
1.000
表 3 .2 .3 -4
0.001
0.070
0.056
0.000
0.002
0.087
0.015
0.000
0.001
0.000
0.002
0.000
0.023
0.000
0.008
0.000
0.150
0.035
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.230
0.001
0.076
0.756
0.244
1.000
0.003
0.047
0.001
0.118
0.000
0.102
0.014
0.000
0.008
0.000
0.005
0.001
0.003
0.001
0.027
0.001
0.182
0.035
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.308
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0.091
1.000
0.010
0.039
0.005
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0.331
0.207
0.000
0.001
0.001
0.001
0.001
0.001
0.009
0.000
0.006
0.001
0.129
0.017
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.762
0.238
1.000
0.026
0.031
0.011
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0.016
0.484
0.001
0.000
0.003
0.002
0.004
0.000
0.007
0.000
0.011
0.002
0.139
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.768
0.232
1.000
2047 年 の 中 米 の 投 入 係 数
鉱業
0.003
0.057
0.003
0.004
0.017
0.059
0.029
0.000
0.001
0.001
0.000
0.000
0.001
0.000
0.058
0.003
0.121
0.020
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.068
0.009
0.049
0.505
0.495
1.000
食料品
0.002
0.031
0.001
0.005
0.016
0.054
0.000
0.080
0.009
0.000
0.000
0.007
0.001
0.136
0.013
0.006
0.290
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.018
0.000
0.031
0.713
0.287
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.002
0.083
0.003
0.001
0.008
0.042
0.000
0.008
0.086
0.006
0.000
0.004
0.001
0.003
0.015
0.009
0.214
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.020
0.001
0.012
0.530
0.470
1.000
0.003
0.058
0.001
0.002
0.003
0.026
0.001
0.000
0.002
0.075
0.000
0.012
0.000
0.063
0.025
0.005
0.230
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.000
0.002
0.524
0.476
1.000
建設
0.046
0.036
0.007
0.064
0.001
0.103
0.007
0.000
0.002
0.017
0.002
0.001
0.000
0.001
0.028
0.002
0.212
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.001
0.560
0.440
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.001
0.142
0.001
0.000
0.007
0.024
0.000
0.013
0.008
0.001
0.000
0.131
0.001
0.013
0.026
0.008
0.334
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.000
0.003
0.735
0.265
1.000
0.003
0.048
0.006
0.003
0.004
0.020
0.003
0.000
0.004
0.003
0.000
0.007
0.000
0.003
0.012
0.006
0.141
0.006
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.471
0.010
0.193
0.944
0.056
1.000
農業
0.001
0.085
0.000
0.000
0.004
0.018
0.000
0.028
0.001
0.001
0.000
0.002
0.000
0.027
0.014
0.002
0.150
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.079
0.000
0.026
0.446
0.554
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.023
0.000
0.000
0.016
0.007
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.001
0.000
0.000
0.023
0.001
0.079
0.013
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.367
0.000
0.001
0.531
0.469
1.000
0.000
0.018
0.001
0.000
0.028
0.037
0.000
0.000
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.066
0.005
0.082
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.232
0.000
0.000
0.492
0.508
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.006
0.000
0.001
0.010
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0.000
0.008
0.006
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.017
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0.142
0.051
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.000
0.004
0.267
0.733
1.000
0.000
0.031
0.000
0.003
0.015
0.020
0.000
0.004
0.006
0.000
0.002
0.003
0.001
0.002
0.005
0.007
0.137
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.000
0.007
0.303
0.697
1.000
2047 年 の ブ ラ ジ ル の 投 入 係 数
鉱業
0.000
0.032
0.000
0.019
0.000
0.161
0.010
0.001
0.002
0.000
0.006
0.001
0.003
0.000
0.042
0.001
0.246
0.059
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.143
0.003
0.019
0.747
0.253
1.000
食料品
0.000
0.037
0.000
0.004
0.000
0.065
0.001
0.079
0.007
0.000
0.002
0.002
0.005
0.176
0.012
0.002
0.266
0.026
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.040
0.000
0.063
0.787
0.213
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.076
0.001
0.001
0.000
0.062
0.001
0.001
0.093
0.002
0.006
0.001
0.022
0.005
0.008
0.002
0.216
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.077
0.001
0.054
0.669
0.331
1.000
- 100 -
0.002
0.114
0.002
0.005
0.004
0.124
0.000
0.001
0.004
0.069
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0.006
0.005
0.052
0.018
0.001
0.198
0.026
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.635
0.365
1.000
建設
0.004
0.047
0.002
0.086
0.001
0.334
0.002
0.000
0.000
0.012
0.121
0.000
0.003
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.819
0.181
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.141
0.000
0.000
0.002
0.059
0.000
0.008
0.007
0.001
0.001
0.123
0.016
0.013
0.017
0.003
0.246
0.036
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.028
0.001
0.009
0.711
0.289
1.000
0.008
0.074
0.005
0.003
0.026
0.127
0.005
0.003
0.010
0.003
0.005
0.006
0.024
0.007
0.011
0.002
0.254
0.046
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.133
0.005
0.052
0.809
0.191
1.000
農業
0.000
0.105
0.000
0.000
0.000
0.011
0.001
0.015
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.044
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0.000
0.148
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.168
0.000
0.017
0.531
0.469
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.045
0.000
0.000
0.039
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.001
0.000
0.000
0.019
0.000
0.071
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.539
0.000
0.017
0.761
0.239
1.000
0.000
0.024
0.000
0.000
0.028
0.029
0.000
0.000
0.003
0.000
0.002
0.000
0.000
0.000
0.078
0.002
0.075
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.465
0.000
0.000
0.716
0.284
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.011
0.000
0.000
0.019
0.013
0.000
0.005
0.007
0.000
0.005
0.001
0.002
0.001
0.021
0.004
0.188
0.074
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
0.000
0.002
0.363
0.637
1.000
0.000
0.020
0.000
0.001
0.014
0.015
0.000
0.009
0.007
0.000
0.048
0.001
0.007
0.003
0.009
0.003
0.160
0.070
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.008
0.378
0.622
1.000
表 3 .2 .3 -5
化学
0.001
0.369
0.001
0.005
0.001
0.050
0.001
0.008
0.010
0.001
0.000
0.002
0.001
0.002
0.004
0.001
0.114
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.001
0.599
0.401
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.095
0.008
0.002
0.003
0.000
0.058
0.005
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.001
0.003
0.000
0.118
0.024
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.012
0.335
0.665
1.000
化学
0.001
0.298
0.003
0.005
0.002
0.042
0.003
0.004
0.009
0.001
0.002
0.001
0.002
0.002
0.022
0.005
0.172
0.062
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.021
0.004
0.017
0.681
0.319
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.220
0.027
0.020
0.012
0.002
0.086
0.021
0.000
0.001
0.001
0.004
0.000
0.005
0.000
0.041
0.008
0.250
0.046
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.002
0.005
0.048
0.804
0.196
1.000
0.007
0.051
0.023
0.004
0.005
0.081
0.015
0.001
0.002
0.000
0.019
0.000
0.001
0.000
0.004
0.001
0.100
0.020
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.025
0.364
0.636
1.000
0.003
0.069
0.001
0.062
0.002
0.060
0.015
0.000
0.026
0.000
0.001
0.001
0.001
0.001
0.009
0.001
0.207
0.046
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.002
0.506
0.494
1.000
0.019
0.038
0.002
0.003
0.400
0.192
0.000
0.000
0.001
0.001
0.000
0.001
0.001
0.000
0.002
0.000
0.054
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.723
0.277
1.000
0.042
0.036
0.014
0.003
0.002
0.373
0.000
0.000
0.003
0.001
0.000
0.001
0.002
0.000
0.006
0.001
0.093
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.602
0.398
1.000
表 3 .2 .3 -6
0.028
0.039
0.191
0.004
0.004
0.096
0.031
0.000
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0.001
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0.000
0.004
0.000
0.028
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
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1.000
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0.000
0.011
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0.000
0.003
0.001
0.055
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.009
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1.000
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0.000
0.000
0.001
0.001
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0.000
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0.137
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
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0.000
0.002
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.666
0.334
1.000
2047 年 の 南 米 の 投 入 係 数
鉱業
0.003
0.053
0.001
0.004
0.016
0.209
0.007
0.000
0.001
0.000
0.004
0.001
0.001
0.000
0.022
0.001
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0.034
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.000
0.002
0.514
0.486
1.000
食料品
0.000
0.031
0.000
0.006
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0.041
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0.001
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.450
0.550
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.076
0.000
0.001
0.001
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.015
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1.000
0.002
0.090
0.001
0.002
0.001
0.068
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.451
0.549
1.000
建設
0.021
0.031
0.003
0.070
0.001
0.248
0.003
0.000
0.001
0.015
0.000
0.001
0.001
0.000
0.007
0.000
0.146
0.008
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.557
0.443
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.134
0.000
0.000
0.000
0.035
0.000
0.007
0.004
0.001
0.001
0.106
0.002
0.011
0.003
0.001
0.166
0.037
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.507
0.493
1.000
0.003
0.034
0.004
0.002
0.001
0.052
0.000
0.000
0.005
0.003
0.001
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0.010
0.000
0.005
0.001
0.056
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.077
0.036
0.666
0.969
0.031
1.000
農業
0.000
0.070
0.000
0.000
0.007
0.030
0.000
0.008
0.001
0.000
0.001
0.001
0.000
0.023
0.003
0.000
0.098
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.003
0.265
0.735
1.000
陸・海運 空運
農業
0.001
0.070
0.000
0.001
0.006
0.042
0.001
0.041
0.002
0.001
0.006
0.001
0.004
0.091
0.020
0.003
0.210
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.004
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0.556
0.444
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.043
0.000
0.000
0.076
0.038
0.000
0.000
0.002
0.000
0.004
0.001
0.001
0.001
0.045
0.001
0.214
0.031
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.103
0.001
0.004
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0.433
1.000
0.000
0.020
0.000
0.001
0.045
0.098
0.000
0.000
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.085
0.003
0.134
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.069
0.000
0.000
0.489
0.511
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.004
0.000
0.001
0.017
0.018
0.000
0.005
0.006
0.000
0.001
0.000
0.001
0.001
0.007
0.002
0.143
0.044
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.255
0.745
1.000
0.000
0.025
0.000
0.004
0.022
0.054
0.000
0.006
0.006
0.001
0.015
0.001
0.003
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0.001
0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.297
0.703
1.000
2047 年 の 西 欧 の 投 入 係 数
鉱業
0.006
0.038
0.000
0.006
0.013
0.099
0.084
0.000
0.004
0.000
0.009
0.000
0.002
0.000
0.102
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0.199
0.044
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.011
0.003
0.059
0.701
0.299
1.000
食料品
0.000
0.033
0.001
0.004
0.002
0.034
0.000
0.053
0.013
0.000
0.002
0.000
0.003
0.201
0.023
0.004
0.218
0.053
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.009
0.655
0.345
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.001
0.056
0.001
0.001
0.003
0.036
0.002
0.001
0.150
0.002
0.003
0.001
0.002
0.012
0.031
0.004
0.220
0.066
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.002
0.046
0.642
0.358
1.000
- 101 -
0.002
0.071
0.001
0.004
0.003
0.062
0.001
0.001
0.006
0.101
0.005
0.004
0.007
0.047
0.035
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0.228
0.072
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.028
0.686
0.314
1.000
建設
0.008
0.029
0.003
0.050
0.003
0.146
0.002
0.000
0.002
0.009
0.046
0.000
0.007
0.000
0.014
0.001
0.201
0.056
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.580
0.420
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.108
0.000
0.000
0.002
0.031
0.000
0.006
0.007
0.001
0.003
0.082
0.003
0.016
0.033
0.008
0.294
0.070
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.010
0.677
0.323
1.000
0.009
0.061
0.015
0.005
0.023
0.099
0.002
0.000
0.006
0.011
0.006
0.003
0.050
0.008
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0.003
0.189
0.044
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.002
0.039
0.597
0.403
1.000
0.001
0.012
0.000
0.000
0.032
0.020
0.000
0.001
0.004
0.000
0.006
0.000
0.002
0.000
0.096
0.010
0.224
0.038
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.079
0.000
0.007
0.533
0.467
1.000
0.000
0.006
0.000
0.000
0.039
0.022
0.000
0.001
0.004
0.000
0.003
0.000
0.001
0.000
0.101
0.038
0.220
0.045
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.059
0.000
0.000
0.541
0.459
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.005
0.000
0.001
0.004
0.016
0.000
0.005
0.007
0.000
0.009
0.001
0.001
0.002
0.013
0.002
0.259
0.051
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.003
0.381
0.619
1.000
0.000
0.011
0.000
0.000
0.009
0.026
0.000
0.003
0.007
0.000
0.012
0.000
0.002
0.002
0.004
0.002
0.112
0.112
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.310
0.690
1.000
表 3 .2 .3 -7
化学
0.002
0.285
0.002
0.004
0.002
0.030
0.002
0.003
0.008
0.001
0.004
0.006
0.002
0.003
0.029
0.005
0.195
0.027
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.023
0.012
0.031
0.677
0.323
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.118
0.040
0.012
0.012
0.005
0.095
0.021
0.000
0.001
0.001
0.004
0.001
0.009
0.001
0.040
0.005
0.198
0.027
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.004
0.012
0.073
0.686
0.314
1.000
化学
0.001
0.291
0.001
0.005
0.000
0.012
0.001
0.017
0.010
0.000
0.001
0.004
0.001
0.004
0.014
0.002
0.182
0.035
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.012
0.025
0.075
0.692
0.308
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.054
0.028
0.005
0.007
0.000
0.029
0.008
0.000
0.002
0.001
0.002
0.000
0.002
0.001
0.030
0.002
0.274
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0.000
0.000
0.000
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0.000
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0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.008
0.572
0.428
1.000
表 3 .2 .3 -8
0.011
0.035
0.033
0.003
0.000
0.030
0.019
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0.000
0.000
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0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
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0.577
1.000
2047 年 の 東 欧 の 投 入 係 数
鉱業
0.003
0.039
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0.000
0.003
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0.003
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
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1.000
食料品
0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
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0.363
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.001
0.049
0.001
0.001
0.001
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.018
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0.288
1.000
建設
0.011
0.035
0.003
0.049
0.008
0.141
0.003
0.000
0.002
0.018
0.033
0.002
0.003
0.002
0.035
0.003
0.227
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.003
0.603
0.397
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.121
0.000
0.001
0.001
0.028
0.000
0.008
0.016
0.004
0.001
0.150
0.005
0.010
0.031
0.008
0.260
0.038
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.011
0.697
0.303
1.000
0.008
0.077
0.014
0.004
0.005
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0.003
0.000
0.011
0.037
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0.003
0.181
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.004
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0.135
0.658
0.342
1.000
農業
0.002
0.101
0.001
0.004
0.015
0.059
0.000
0.038
0.003
0.006
0.005
0.003
0.002
0.096
0.019
0.002
0.186
0.027
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.013
0.001
0.030
0.614
0.386
1.000
陸・海運 空運
農業
0.000
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0.000
0.001
0.002
0.011
0.000
0.067
0.002
0.001
0.001
0.002
0.000
0.057
0.016
0.001
0.219
0.027
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.052
0.046
0.224
0.828
0.172
1.000
陸・海運 空運
0.002
0.037
0.001
0.001
0.054
0.030
0.000
0.000
0.003
0.001
0.006
0.002
0.001
0.001
0.103
0.008
0.253
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.051
0.000
0.009
0.601
0.399
1.000
0.001
0.022
0.001
0.000
0.032
0.044
0.000
0.000
0.009
0.000
0.002
0.001
0.000
0.000
0.136
0.010
0.249
0.036
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.018
0.000
0.000
0.564
0.436
1.000
事業サービス 社会サービス
0.001
0.014
0.000
0.002
0.009
0.026
0.000
0.006
0.009
0.001
0.005
0.002
0.002
0.005
0.018
0.003
0.287
0.047
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.445
0.555
1.000
0.000
0.019
0.000
0.001
0.006
0.049
0.000
0.007
0.010
0.002
0.014
0.004
0.003
0.004
0.010
0.006
0.178
0.087
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.011
0.415
0.585
1.000
2047 年 の 旧 ソ 連 の 投 入 係 数
鉱業
0.001
0.051
0.001
0.010
0.003
0.041
0.088
0.000
0.003
0.001
0.001
0.000
0.002
0.000
0.112
0.003
0.218
0.056
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.015
0.606
0.394
1.000
食料品
0.000
0.028
0.000
0.004
0.000
0.016
0.000
0.117
0.017
0.001
0.000
0.001
0.001
0.161
0.019
0.004
0.265
0.027
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.002
0.027
0.692
0.308
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.055
0.001
0.001
0.000
0.010
0.000
0.001
0.195
0.004
0.001
0.004
0.001
0.006
0.014
0.004
0.297
0.053
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.049
0.697
0.303
1.000
- 102 -
0.003
0.059
0.001
0.004
0.000
0.029
0.001
0.000
0.007
0.060
0.001
0.011
0.001
0.039
0.023
0.002
0.249
0.043
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.010
0.023
0.569
0.431
1.000
建設
0.006
0.032
0.001
0.034
0.000
0.066
0.002
0.000
0.002
0.012
0.004
0.002
0.001
0.001
0.020
0.001
0.252
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.006
0.465
0.535
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.123
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.020
0.008
0.000
0.000
0.185
0.004
0.019
0.024
0.004
0.278
0.039
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.020
0.736
0.264
1.000
0.006
0.111
0.005
0.003
0.001
0.031
0.004
0.002
0.016
0.005
0.001
0.009
0.019
0.004
0.019
0.003
0.253
0.046
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.021
0.037
0.133
0.248
0.976
0.024
1.000
0.000
0.040
0.000
0.000
0.016
0.008
0.000
0.000
0.003
0.000
0.002
0.001
0.001
0.000
0.063
0.001
0.232
0.045
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.029
0.010
0.018
0.470
0.530
1.000
0.000
0.033
0.001
0.000
0.009
0.025
0.000
0.000
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.213
0.005
0.221
0.044
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.065
0.000
0.000
0.633
0.367
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.005
0.000
0.000
0.003
0.006
0.000
0.009
0.011
0.000
0.003
0.001
0.001
0.002
0.013
0.003
0.190
0.079
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.003
0.331
0.669
1.000
0.000
0.023
0.000
0.001
0.005
0.015
0.000
0.012
0.012
0.001
0.002
0.002
0.002
0.002
0.005
0.003
0.162
0.086
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.002
0.337
0.663
1.000
表 3 .2 .3 -9
2 047 年 の 北 ア フ リ カ の 投 入 係 数
化学
0.000
0.159
0.000
0.012
0.006
0.038
0.043
0.002
0.007
0.000
0.008
0.005
0.014
0.003
0.023
0.005
0.221
0.112
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.018
0.005
0.686
0.314
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.135
0.000
0.038
0.016
0.021
0.458
0.002
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.000
0.028
0.003
0.184
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.005
0.957
0.043
1.000
化学
0.001
0.232
0.001
0.002
0.002
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.033
0.003
0.000
0.707
0.293
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.070
0.013
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0.003
0.001
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
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1.000
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0.000
0.040
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0.019
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0.006
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
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0.000
0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.001
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0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.922
0.078
1.000
表 3 .2 .3 -1 0
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0.146
0.000
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0.034
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0.000
0.001
0.000
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0.000
0.000
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
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0.000
0.000
0.003
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.004
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
鉱業
0.004
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0.000
0.001
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.014
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1.000
食料品
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
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0.000
0.000
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0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.663
0.337
1.000
建設
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0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
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0.003
0.800
0.200
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.003
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.014
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
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0.000
0.573
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1.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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鉱業
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
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0.000
0.000
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0.000
0.000
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0.000
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0.328
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.711
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1.000
- 103 -
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0.001
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0.000
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0.000
0.000
0.000
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0.619
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建設
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その他製造業
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0.000
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
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農業
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
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0.016
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陸・海運 空運
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0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.052
0.000
0.000
0.591
0.409
1.000
0.002
0.029
0.000
0.005
0.025
0.026
0.000
0.000
0.002
0.000
0.016
0.001
0.002
0.000
0.047
0.007
0.444
0.035
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.070
0.000
0.000
0.712
0.288
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.011
0.000
0.004
0.006
0.016
0.000
0.007
0.005
0.001
0.004
0.003
0.004
0.005
0.028
0.006
0.271
0.066
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.438
0.562
1.000
0.000
0.016
0.000
0.002
0.005
0.018
0.000
0.002
0.007
0.001
0.024
0.002
0.002
0.005
0.017
0.003
0.264
0.080
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.449
0.551
1.000
表 3 .2 .3 -1 1
2047 年 の 南 ア フ リ カ の 投 入 係 数
化学
0.001
0.335
0.003
0.005
0.000
0.020
0.005
0.005
0.012
0.001
0.000
0.004
0.001
0.003
0.024
0.006
0.204
0.024
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.008
0.000
0.005
0.673
0.327
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.013
0.014
0.002
0.000
0.000
0.032
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.034
0.008
0.191
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.004
0.002
0.104
0.432
0.568
1.000
化学
0.000
0.279
0.003
0.005
0.000
0.024
0.010
0.001
0.007
0.001
0.013
0.001
0.001
0.001
0.015
0.001
0.174
0.056
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.026
0.000
0.034
0.651
0.349
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.261
0.008
0.008
0.009
0.000
0.003
0.197
0.000
0.001
0.001
0.023
0.000
0.001
0.000
0.027
0.000
0.162
0.013
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.001
0.091
0.808
0.192
1.000
0.001
0.046
0.079
0.000
0.000
0.023
0.017
0.000
0.001
0.001
0.000
0.001
0.001
0.000
0.040
0.009
0.324
0.013
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.057
0.614
0.386
1.000
0.003
0.039
0.000
0.044
0.000
0.023
0.017
0.001
0.012
0.002
0.000
0.003
0.001
0.002
0.037
0.010
0.213
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.002
0.002
0.009
0.442
0.558
1.000
0.010
0.026
0.001
0.002
0.120
0.043
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.004
0.001
0.000
0.010
0.002
0.241
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.479
0.521
1.000
0.020
0.040
0.009
0.003
0.000
0.071
0.000
0.000
0.002
0.001
0.000
0.002
0.001
0.000
0.018
0.005
0.136
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.326
0.674
1.000
鉱業
0.001
0.034
0.000
0.003
0.006
0.035
0.001
0.000
0.001
0.002
0.001
0.001
0.002
0.001
0.014
0.007
0.143
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.008
0.000
0.158
0.424
0.576
1.000
表 3 .2 .3 -12
0.001
0.016
0.220
0.003
0.000
0.003
0.433
0.000
0.001
0.006
0.009
0.000
0.001
0.000
0.017
0.000
0.135
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.043
0.908
0.092
1.000
0.004
0.018
0.003
0.065
0.000
0.021
0.478
0.000
0.007
0.008
0.022
0.000
0.002
0.000
0.041
0.001
0.154
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.000
0.037
0.888
0.112
1.000
0.014
0.032
0.013
0.005
0.467
0.119
0.000
0.000
0.001
0.001
0.003
0.000
0.001
0.000
0.008
0.000
0.087
0.024
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.010
0.784
0.216
1.000
0.025
0.022
0.022
0.006
0.000
0.458
0.000
0.000
0.003
0.001
0.007
0.000
0.001
0.000
0.010
0.001
0.135
0.033
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.007
0.731
0.269
1.000
食料品
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.042
0.000
0.005
0.000
0.024
0.000
0.086
0.020
0.001
0.000
0.002
0.001
0.130
0.030
0.008
0.269
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.637
0.363
1.000
0.000
0.095
0.001
0.001
0.000
0.019
0.000
0.003
0.130
0.001
0.000
0.008
0.001
0.016
0.018
0.005
0.289
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.618
0.382
1.000
0.001
0.065
0.003
0.002
0.000
0.034
0.000
0.000
0.011
0.050
0.000
0.021
0.001
0.032
0.020
0.005
0.243
0.038
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.537
0.463
1.000
建設
0.006
0.029
0.000
0.043
0.001
0.071
0.006
0.000
0.002
0.008
0.023
0.002
0.002
0.000
0.018
0.005
0.273
0.033
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.001
0.526
0.474
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.104
0.000
0.000
0.000
0.014
0.000
0.010
0.012
0.001
0.000
0.129
0.004
0.017
0.021
0.006
0.279
0.045
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.646
0.354
1.000
0.003
0.040
0.005
0.003
0.002
0.037
0.004
0.004
0.006
0.004
0.001
0.006
0.029
0.006
0.016
0.004
0.168
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.011
0.027
0.003
0.570
0.970
0.030
1.000
農業
0.000
0.139
0.000
0.002
0.007
0.013
0.000
0.033
0.005
0.002
0.001
0.003
0.001
0.026
0.026
0.007
0.258
0.034
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.013
0.000
0.031
0.602
0.398
1.000
陸・海運
0.001
0.029
0.000
0.005
0.016
0.014
0.000
0.002
0.007
0.001
0.004
0.003
0.003
0.000
0.029
0.009
0.311
0.036
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.126
0.000
0.009
0.605
0.395
1.000
空運
0.001
0.025
0.000
0.005
0.015
0.014
0.000
0.002
0.006
0.001
0.004
0.003
0.003
0.000
0.032
0.008
0.283
0.042
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.100
0.000
0.000
0.545
0.455
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.017
0.000
0.002
0.006
0.011
0.000
0.007
0.014
0.001
0.002
0.002
0.002
0.001
0.018
0.005
0.259
0.129
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.479
0.521
1.000
0.000
0.022
0.000
0.002
0.015
0.022
0.000
0.004
0.010
0.001
0.005
0.002
0.005
0.004
0.010
0.003
0.176
0.070
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
0.362
0.638
1.000
2047 年 の 日 本 の 投 入 係 数
鉱業
0.000
0.024
0.000
0.000
0.000
0.077
0.000
0.000
0.002
0.013
0.019
0.003
0.006
0.000
0.383
0.016
0.353
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.014
0.000
0.061
0.988
0.012
1.000
食料品
0.000
0.022
0.001
0.006
0.000
0.059
0.000
0.027
0.012
0.001
0.005
0.000
0.002
0.058
0.025
0.001
0.206
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.013
0.447
0.553
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.041
0.001
0.000
0.000
0.000
0.006
0.000
0.126
0.058
0.011
0.001
0.001
0.000
0.022
0.003
0.204
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.063
0.551
0.449
1.000
- 104 -
0.000
0.032
0.000
0.000
0.000
0.029
0.000
0.000
0.004
0.440
0.003
0.000
0.001
0.072
0.061
0.004
0.246
0.003
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.895
0.105
1.000
建設
0.008
0.017
0.007
0.054
0.000
0.244
0.065
0.000
0.002
0.079
0.005
0.000
0.008
0.001
0.030
0.000
0.233
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.765
0.235
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.088
0.000
0.000
0.000
0.009
0.000
0.002
0.009
0.002
0.009
0.051
0.010
0.003
0.026
0.003
0.293
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.018
0.545
0.455
1.000
0.008
0.063
0.014
0.008
0.000
0.101
0.027
0.000
0.010
0.136
0.025
0.001
0.025
0.004
0.022
0.001
0.185
0.020
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.019
0.001
0.102
0.770
0.230
1.000
農業
0.000
0.064
0.000
0.001
0.011
0.005
0.000
0.016
0.007
0.002
0.005
0.001
0.001
0.043
0.043
0.002
0.193
0.003
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.019
0.000
0.031
0.447
0.553
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.003
0.000
0.000
0.018
0.004
0.000
0.000
0.003
0.007
0.022
0.000
0.001
0.000
0.060
0.000
0.376
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.034
0.000
0.008
0.549
0.451
1.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.019
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.238
0.005
0.235
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.067
0.000
0.000
0.577
0.423
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.005
0.000
0.001
0.008
0.025
0.000
0.004
0.010
0.001
0.009
0.000
0.002
0.001
0.015
0.001
0.216
0.024
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.330
0.670
1.000
0.000
0.018
0.000
0.000
0.003
0.008
0.000
0.000
0.004
0.000
0.037
0.000
0.003
0.000
0.007
0.001
0.106
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.012
0.222
0.778
1.000
表 3 .2 .3 -13
化学
0.001
0.365
0.001
0.006
0.005
0.064
0.006
0.003
0.007
0.000
0.001
0.010
0.004
0.006
0.019
0.002
0.140
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.032
0.002
0.011
0.703
0.297
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.194
0.015
0.006
0.026
0.020
0.197
0.034
0.000
0.001
0.001
0.000
0.001
0.027
0.000
0.035
0.002
0.212
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.006
0.000
0.016
0.806
0.194
1.000
化学
0.001
0.269
0.005
0.001
0.000
0.015
0.000
0.001
0.009
0.000
0.000
0.003
0.009
0.005
0.015
0.001
0.156
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.280
0.008
0.007
0.793
0.207
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.232
0.012
0.065
0.002
0.001
0.027
0.002
0.000
0.000
0.001
0.003
0.000
0.059
0.000
0.056
0.002
0.296
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.043
0.000
0.015
0.834
0.166
1.000
0.003
0.041
0.141
0.011
0.008
0.109
0.092
0.000
0.002
0.001
0.001
0.001
0.032
0.000
0.028
0.002
0.225
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.004
0.001
0.020
0.749
0.251
1.000
0.013
0.077
0.001
0.130
0.010
0.216
0.039
0.000
0.031
0.002
0.001
0.005
0.009
0.001
0.041
0.001
0.220
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.006
0.000
0.007
0.829
0.171
1.000
0.026
0.036
0.004
0.005
0.384
0.216
0.001
0.000
0.001
0.001
0.001
0.002
0.003
0.000
0.007
0.001
0.078
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.778
0.222
1.000
0.033
0.046
0.013
0.011
0.009
0.516
0.002
0.000
0.004
0.001
0.002
0.001
0.004
0.000
0.011
0.001
0.103
0.014
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.773
0.227
1.000
表 3 .2 .3 -1 4
0.018
0.039
0.242
0.000
0.000
0.017
0.007
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.008
0.000
0.035
0.003
0.221
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.030
0.000
0.039
0.686
0.314
1.000
0.017
0.037
0.008
0.059
0.000
0.050
0.005
0.000
0.004
0.001
0.021
0.008
0.017
0.001
0.081
0.004
0.328
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
0.075
0.000
0.022
0.761
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1.000
0.035
0.050
0.020
0.001
0.315
0.071
0.000
0.000
0.002
0.001
0.007
0.000
0.021
0.000
0.010
0.001
0.145
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.701
0.299
1.000
0.052
0.026
0.051
0.002
0.006
0.367
0.000
0.000
0.002
0.001
0.000
0.000
0.017
0.000
0.018
0.001
0.160
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.010
0.000
0.000
0.732
0.268
1.000
2047 年 の 中 国 の 投 入 係 数
鉱業
0.003
0.083
0.000
0.007
0.047
0.269
0.146
0.000
0.000
0.001
0.012
0.002
0.005
0.000
0.066
0.003
0.168
0.047
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.005
0.866
0.134
1.000
食料品
0.000
0.032
0.000
0.006
0.005
0.059
0.000
0.033
0.015
0.000
0.001
0.002
0.004
0.084
0.016
0.001
0.190
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.003
0.471
0.529
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.063
0.001
0.003
0.010
0.080
0.000
0.000
0.158
0.003
0.004
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0.020
0.002
0.241
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.002
0.000
0.006
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0.363
1.000
0.009
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0.007
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0.000
0.000
0.010
0.139
0.002
0.026
0.016
0.019
0.027
0.002
0.269
0.026
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.000
0.004
0.756
0.244
1.000
建設
0.030
0.024
0.002
0.169
0.002
0.337
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0.000
0.001
0.011
0.001
0.002
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.810
0.190
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.098
0.000
0.001
0.003
0.050
0.000
0.005
0.005
0.000
0.002
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0.006
0.016
0.022
0.003
0.263
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.004
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0.337
1.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.003
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0.361
1.000
農業
0.000
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0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.000
0.003
0.361
0.639
1.000
陸・海運 空運
0.001
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0.000
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0.000
0.017
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.052
0.000
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0.002
0.000
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.046
0.000
0.000
0.613
0.387
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.010
0.000
0.002
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0.058
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0.029
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0.003
0.003
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0.009
0.200
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.424
0.576
1.000
0.000
0.028
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0.004
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0.131
0.000
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0.013
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0.048
0.002
0.005
0.000
0.011
0.006
0.118
0.048
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.002
0.438
0.562
1.000
2047 年 の イ ン ド の 投 入 係 数
鉱業
0.000
0.008
0.000
0.000
0.000
0.055
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.000
0.014
0.003
0.035
0.003
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.202
0.000
0.005
0.329
0.671
1.000
食料品
0.000
0.028
0.003
0.001
0.000
0.031
0.000
0.018
0.010
0.002
0.000
0.003
0.004
0.092
0.020
0.001
0.354
0.011
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.043
0.000
0.003
0.623
0.377
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.001
0.076
0.008
0.001
0.000
0.029
0.000
0.000
0.166
0.001
0.000
0.003
0.011
0.005
0.026
0.002
0.264
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.000
0.010
0.629
0.371
1.000
- 105 -
0.004
0.035
0.002
0.000
0.000
0.010
0.000
0.000
0.001
0.030
0.000
0.002
0.009
0.060
0.025
0.000
0.283
0.009
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.470
0.530
1.000
建設
0.090
0.025
0.002
0.060
0.003
0.191
0.002
0.000
0.001
0.008
0.006
0.001
0.003
0.007
0.029
0.005
0.208
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.651
0.349
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.001
0.127
0.000
0.000
0.000
0.044
0.000
0.000
0.002
0.000
0.002
0.066
0.005
0.018
0.026
0.002
0.365
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.030
0.000
0.006
0.716
0.284
1.000
0.104
0.027
0.051
0.001
0.025
0.084
0.000
0.000
0.003
0.001
0.006
0.001
0.045
0.001
0.022
0.002
0.187
0.023
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.066
0.000
0.101
0.757
0.243
1.000
農業
0.000
0.076
0.000
0.000
0.006
0.003
0.000
0.002
0.000
0.000
0.029
0.001
0.003
0.022
0.008
0.000
0.107
0.002
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.009
0.000
0.009
0.276
0.724
1.000
陸・海運 空運
0.001
0.018
0.000
0.000
0.084
0.021
0.000
0.000
0.001
0.000
0.016
0.000
0.003
0.001
0.009
0.006
0.102
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.524
0.000
0.001
0.806
0.194
1.000
0.000
0.024
0.000
0.000
0.049
0.020
0.000
0.000
0.001
0.000
0.008
0.000
0.004
0.001
0.011
0.009
0.124
0.014
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.415
0.000
0.000
0.679
0.321
1.000
事業サービス 社会サービス
0.004
0.011
0.002
0.001
0.007
0.019
0.000
0.002
0.007
0.001
0.010
0.002
0.008
0.005
0.037
0.004
0.197
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.338
0.662
1.000
0.002
0.042
0.001
0.000
0.003
0.013
0.000
0.000
0.004
0.000
0.061
0.001
0.004
0.001
0.004
0.000
0.056
0.008
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.200
0.800
1.000
表 3 .2 .3 -1 5
化学
0.000
0.267
0.001
0.003
0.002
0.039
0.002
0.002
0.005
0.001
0.001
0.002
0.001
0.013
0.019
0.005
0.141
0.023
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.022
0.004
0.010
0.562
0.438
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.223
0.015
0.004
0.010
0.002
0.085
0.011
0.000
0.000
0.001
0.001
0.000
0.001
0.001
0.038
0.007
0.161
0.029
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.002
0.041
0.637
0.363
1.000
化学
0.001
0.264
0.001
0.003
0.001
0.017
0.003
0.008
0.009
0.001
0.001
0.003
0.001
0.003
0.020
0.003
0.229
0.054
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.012
0.018
0.005
0.658
0.342
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.133
0.008
0.012
0.004
0.001
0.043
0.006
0.000
0.001
0.000
0.001
0.000
0.001
0.000
0.051
0.005
0.291
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.003
0.045
0.628
0.372
1.000
0.002
0.011
0.137
0.001
0.003
0.040
0.049
0.000
0.002
0.001
0.005
0.000
0.000
0.000
0.038
0.008
0.160
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.002
0.481
0.519
1.000
0.005
0.039
0.003
0.097
0.015
0.084
0.041
0.000
0.011
0.004
0.005
0.001
0.001
0.002
0.056
0.009
0.203
0.032
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.012
0.010
0.000
0.021
0.651
0.349
1.000
0.015
0.030
0.002
0.002
0.324
0.198
0.000
0.000
0.001
0.001
0.000
0.001
0.002
0.000
0.006
0.001
0.084
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.686
0.314
1.000
0.010
0.018
0.005
0.003
0.009
0.613
0.000
0.000
0.002
0.001
0.001
0.000
0.002
0.000
0.012
0.004
0.100
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.796
0.204
1.000
2047 年 の ア ジ ア NIES の 投 入 係 数
鉱業
0.001
0.050
0.000
0.000
0.037
0.128
0.013
0.000
0.001
0.002
0.024
0.000
0.002
0.001
0.078
0.010
0.155
0.036
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.004
0.549
0.451
1.000
表 3 .2 .3 -16
0.046
0.019
0.080
0.001
0.004
0.028
0.011
0.002
0.002
0.001
0.001
0.001
0.001
0.000
0.019
0.002
0.206
0.029
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.022
0.475
0.525
1.000
0.004
0.036
0.001
0.066
0.001
0.023
0.010
0.000
0.012
0.001
0.002
0.000
0.001
0.001
0.039
0.004
0.235
0.072
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.022
0.530
0.470
1.000
0.015
0.024
0.004
0.003
0.186
0.065
0.001
0.002
0.002
0.003
0.000
0.001
0.001
0.000
0.017
0.002
0.200
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.548
0.452
1.000
0.027
0.026
0.013
0.003
0.002
0.141
0.002
0.000
0.004
0.001
0.001
0.001
0.001
0.000
0.019
0.003
0.207
0.031
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.485
0.515
1.000
鉱業
0.001
0.030
0.001
0.004
0.005
0.037
0.038
0.000
0.002
0.001
0.001
0.000
0.001
0.000
0.070
0.001
0.200
0.129
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.020
0.543
0.457
1.000
食料品
0.000
0.019
0.000
0.002
0.002
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0.000
0.037
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0.000
0.001
0.001
0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.011
0.471
0.529
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.050
0.000
0.001
0.004
0.037
0.001
0.000
0.146
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0.003
0.001
0.001
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0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.000
0.009
0.525
0.475
1.000
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0.000
0.001
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0.052
0.000
0.001
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0.121
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0.003
0.001
0.076
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0.281
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.003
0.666
0.334
1.000
建設
0.022
0.022
0.003
0.049
0.007
0.301
0.009
0.000
0.001
0.024
0.002
0.000
0.003
0.002
0.024
0.001
0.242
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.730
0.270
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.134
0.000
0.000
0.002
0.038
0.000
0.002
0.005
0.001
0.002
0.150
0.005
0.009
0.020
0.006
0.229
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.000
0.010
0.644
0.356
1.000
0.005
0.064
0.011
0.003
0.003
0.181
0.001
0.001
0.010
0.035
0.003
0.011
0.028
0.002
0.024
0.006
0.183
0.023
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.038
0.007
0.139
0.783
0.217
1.000
農業
0.000
0.045
0.000
0.000
0.004
0.022
0.000
0.012
0.001
0.001
0.005
0.000
0.000
0.014
0.013
0.002
0.091
0.008
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.000
0.006
0.230
0.770
1.000
陸・海運
0.000
0.018
0.000
0.000
0.039
0.029
0.000
0.000
0.001
0.000
0.012
0.001
0.001
0.001
0.052
0.002
0.228
0.021
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.056
0.000
0.001
0.461
0.539
1.000
空運
0.000
0.011
0.000
0.000
0.075
0.079
0.000
0.000
0.008
0.000
0.001
0.001
0.000
0.000
0.131
0.005
0.193
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.031
0.000
0.000
0.547
0.453
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.004
0.000
0.000
0.008
0.033
0.000
0.004
0.007
0.000
0.011
0.001
0.001
0.003
0.012
0.006
0.201
0.058
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.000
0.003
0.354
0.646
1.000
0.000
0.017
0.000
0.001
0.021
0.072
0.000
0.005
0.006
0.000
0.038
0.002
0.003
0.002
0.007
0.009
0.138
0.043
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.004
0.370
0.630
1.000
2047 年 の 中 東 の 投 入 係 数
食料品
0.000
0.020
0.000
0.003
0.003
0.017
0.000
0.076
0.011
0.001
0.001
0.002
0.001
0.107
0.013
0.002
0.261
0.039
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.560
0.440
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.001
0.051
0.001
0.001
0.001
0.023
0.000
0.002
0.200
0.003
0.001
0.002
0.003
0.008
0.016
0.004
0.298
0.055
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.671
0.329
1.000
- 106 -
0.002
0.041
0.001
0.004
0.000
0.026
0.000
0.004
0.007
0.116
0.002
0.008
0.001
0.047
0.027
0.003
0.276
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.012
0.615
0.385
1.000
建設
0.017
0.026
0.002
0.057
0.005
0.092
0.004
0.000
0.003
0.024
0.013
0.001
0.001
0.001
0.026
0.001
0.234
0.034
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.542
0.458
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.040
0.000
0.000
0.000
0.008
0.000
0.018
0.002
0.000
0.000
0.106
0.002
0.036
0.026
0.004
0.360
0.079
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.020
0.703
0.297
1.000
0.016
0.072
0.027
0.004
0.000
0.031
0.005
0.001
0.010
0.005
0.002
0.004
0.079
0.004
0.036
0.005
0.296
0.057
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.037
0.054
0.248
0.997
0.003
1.000
農業
0.000
0.060
0.000
0.000
0.001
0.010
0.000
0.014
0.001
0.000
0.003
0.002
0.000
0.067
0.015
0.001
0.227
0.070
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.012
0.010
0.068
0.562
0.438
1.000
陸・海運
0.000
0.030
0.000
0.000
0.019
0.011
0.000
0.000
0.002
0.000
0.003
0.001
0.001
0.001
0.057
0.001
0.235
0.047
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.023
0.000
0.000
0.432
0.568
1.000
空運
0.000
0.016
0.000
0.000
0.028
0.034
0.000
0.000
0.010
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.131
0.003
0.167
0.054
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.015
0.000
0.000
0.461
0.539
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.006
0.000
0.000
0.006
0.009
0.000
0.012
0.009
0.001
0.003
0.001
0.001
0.003
0.015
0.003
0.192
0.077
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.343
0.657
1.000
0.000
0.021
0.000
0.001
0.009
0.021
0.000
0.006
0.008
0.002
0.007
0.002
0.003
0.004
0.007
0.006
0.152
0.141
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.011
0.400
0.600
1.000
表 3 .2 .3 -1 7
化学
0.001
0.251
0.008
0.003
0.000
0.028
0.013
0.004
0.012
0.001
0.002
0.002
0.001
0.008
0.021
0.004
0.191
0.040
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.055
0.008
0.015
0.668
0.332
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.106
0.027
0.064
0.014
0.002
0.035
0.081
0.000
0.001
0.001
0.001
0.001
0.001
0.000
0.032
0.002
0.258
0.014
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.002
0.005
0.042
0.695
0.305
1.000
化学
0.000
0.304
0.001
0.003
0.001
0.023
0.001
0.002
0.006
0.001
0.005
0.003
0.003
0.005
0.027
0.002
0.235
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.038
0.013
0.000
0.691
0.309
1.000
非鉄金属 非金属鉱物 輸送機器 その他機械
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属鉱物
輸送機器
その他機械
鉱業
食料品
紙パ・印刷
木材・木製品
建設
繊維・皮革
その他製造業
農業
陸・海運
空運
事業サービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオ(P)
その他(P)
石炭(S)
石油(S)
ガス(S)
電気(S)
中間投入計
付加価値
生産額計
鉄鋼
0.130
0.046
0.015
0.006
0.001
0.048
0.021
0.000
0.002
0.000
0.003
0.000
0.027
0.001
0.047
0.002
0.210
0.012
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.004
0.001
0.002
0.582
0.418
1.000
0.012
0.023
0.108
0.001
0.000
0.010
0.199
0.000
0.001
0.000
0.001
0.000
0.001
0.003
0.021
0.001
0.145
0.007
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.020
0.015
0.148
0.720
0.280
1.000
0.004
0.051
0.005
0.083
0.000
0.046
0.118
0.000
0.012
0.003
0.006
0.001
0.001
0.002
0.095
0.004
0.190
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.005
0.012
0.032
0.700
0.300
1.000
0.020
0.032
0.008
0.003
0.227
0.094
0.000
0.000
0.004
0.006
0.000
0.000
0.001
0.000
0.009
0.003
0.180
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.007
0.613
0.387
1.000
0.035
0.031
0.027
0.003
0.003
0.242
0.007
0.000
0.005
0.003
0.001
0.001
0.001
0.000
0.018
0.003
0.147
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.550
0.450
1.000
表 3 .2 .3 -1 8
0.011
0.059
0.124
0.001
0.001
0.029
0.034
0.000
0.001
0.000
0.003
0.000
0.013
0.000
0.031
0.001
0.229
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.004
0.000
0.001
0.558
0.442
1.000
0.006
0.068
0.001
0.056
0.002
0.044
0.010
0.000
0.010
0.001
0.004
0.002
0.004
0.001
0.063
0.004
0.241
0.017
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.089
0.004
0.001
0.632
0.368
1.000
0.017
0.063
0.007
0.002
0.257
0.114
0.000
0.000
0.002
0.001
0.002
0.001
0.004
0.000
0.012
0.001
0.191
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.690
0.310
1.000
0.026
0.053
0.014
0.004
0.007
0.236
0.000
0.000
0.003
0.001
0.002
0.000
0.003
0.000
0.021
0.002
0.167
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.560
0.440
1.000
2047 年 の オ セ ア ニ ア の 投 入 係 数
鉱業
0.004
0.028
0.001
0.002
0.004
0.085
0.148
0.000
0.001
0.000
0.009
0.000
0.001
0.000
0.026
0.006
0.290
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.025
0.000
0.032
0.683
0.317
1.000
食料品
0.000
0.030
0.001
0.004
0.000
0.038
0.000
0.047
0.013
0.000
0.001
0.001
0.001
0.351
0.021
0.001
0.177
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.027
0.733
0.267
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.047
0.003
0.000
0.000
0.052
0.001
0.001
0.096
0.001
0.001
0.001
0.001
0.030
0.018
0.004
0.216
0.062
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.002
0.023
0.561
0.439
1.000
0.014
0.059
0.007
0.007
0.000
0.064
0.000
0.000
0.007
0.109
0.003
0.004
0.000
0.117
0.036
0.003
0.228
0.025
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.073
0.757
0.243
1.000
建設
0.005
0.018
0.001
0.048
0.000
0.185
0.007
0.000
0.003
0.024
0.028
0.001
0.001
0.002
0.021
0.001
0.290
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.000
0.001
0.661
0.339
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.047
0.001
0.000
0.000
0.013
0.000
0.010
0.009
0.001
0.002
0.085
0.002
0.187
0.027
0.006
0.232
0.030
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.001
0.015
0.666
0.334
1.000
0.004
0.038
0.009
0.004
0.005
0.059
0.040
0.000
0.002
0.002
0.001
0.001
0.004
0.001
0.013
0.004
0.143
0.023
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.005
0.004
0.036
0.399
0.601
1.000
農業
0.000
0.056
0.000
0.001
0.005
0.031
0.000
0.014
0.003
0.001
0.014
0.001
0.002
0.180
0.024
0.002
0.225
0.030
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.013
0.000
0.006
0.608
0.392
1.000
陸・海運 空運
0.000
0.014
0.000
0.000
0.032
0.024
0.000
0.000
0.002
0.001
0.007
0.001
0.000
0.001
0.047
0.003
0.249
0.028
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.201
0.000
0.004
0.617
0.383
1.000
0.000
0.012
0.000
0.000
0.058
0.012
0.000
0.000
0.005
0.000
0.001
0.000
0.000
0.001
0.107
0.004
0.174
0.016
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.139
0.000
0.000
0.529
0.471
1.000
事業サービス 社会サービス
0.000
0.005
0.000
0.001
0.011
0.017
0.000
0.004
0.012
0.001
0.002
0.000
0.002
0.005
0.011
0.005
0.289
0.047
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.003
0.416
0.584
1.000
0.000
0.012
0.000
0.001
0.008
0.034
0.001
0.001
0.007
0.002
0.011
0.001
0.005
0.003
0.007
0.005
0.182
0.062
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.006
0.348
0.652
1.000
2047 年 の そ の 他 の 投 入 係 数
鉱業
0.001
0.021
0.000
0.003
0.007
0.045
0.057
0.000
0.001
0.000
0.003
0.000
0.001
0.000
0.067
0.002
0.205
0.026
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.005
0.000
0.001
0.445
0.555
1.000
食料品
0.000
0.033
0.000
0.002
0.003
0.030
0.000
0.077
0.014
0.000
0.006
0.001
0.001
0.097
0.025
0.001
0.225
0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.540
0.460
1.000
紙パ・印刷 木材・木製品
0.000
0.058
0.001
0.000
0.000
0.025
0.000
0.001
0.210
0.002
0.002
0.001
0.005
0.005
0.023
0.002
0.226
0.029
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.592
0.408
1.000
- 107 -
0.001
0.064
0.001
0.004
0.003
0.044
0.000
0.000
0.019
0.104
0.003
0.001
0.003
0.040
0.044
0.002
0.183
0.018
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.539
0.461
1.000
建設
0.013
0.034
0.010
0.051
0.004
0.107
0.005
0.000
0.001
0.009
0.031
0.001
0.004
0.006
0.029
0.002
0.187
0.015
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.000
0.510
0.490
1.000
繊維・皮革
その他製造業
0.000
0.117
0.000
0.000
0.001
0.028
0.000
0.003
0.004
0.000
0.002
0.082
0.003
0.017
0.027
0.003
0.300
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.610
0.390
1.000
0.021
0.061
0.020
0.003
0.011
0.047
0.004
0.000
0.006
0.026
0.004
0.006
0.032
0.001
0.033
0.002
0.230
0.022
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.050
0.184
0.034
0.102
0.898
0.102
1.000
農業
0.000
0.100
0.000
0.001
0.004
0.028
0.000
0.011
0.001
0.002
0.004
0.001
0.002
0.035
0.021
0.001
0.269
0.014
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.034
0.002
0.011
0.541
0.459
1.000
陸・海運 空運
0.001
0.025
0.000
0.001
0.058
0.017
0.000
0.000
0.002
0.001
0.004
0.001
0.001
0.000
0.075
0.008
0.206
0.033
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.202
0.000
0.000
0.634
0.366
1.000
0.000
0.013
0.000
0.000
0.037
0.013
0.000
0.000
0.004
0.000
0.001
0.000
0.001
0.000
0.097
0.014
0.152
0.031
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.224
0.000
0.000
0.588
0.412
1.000
事業サービス 社会サービス
0.001
0.017
0.000
0.002
0.005
0.019
0.000
0.007
0.007
0.001
0.004
0.001
0.003
0.004
0.019
0.002
0.283
0.047
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.424
0.576
1.000
0.000
0.023
0.000
0.001
0.005
0.020
0.000
0.003
0.007
0.001
0.018
0.001
0.003
0.001
0.011
0.004
0.172
0.066
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.001
0.000
0.001
0.337
0.663
1.000
①
投入係数固定の場合との生産額の相違
2047 年 の 最 終 需 要 に 19 97 年 の 投 入 係 数 を 使 用 し た 場 合 の 生 産 額 (H17 年 度 報 告 書
32)
)と 、2047 年 の 投 入 係 数 を 使 用 し た 場 合 の 相 違 を 見 る こ と に よ っ て 、投 入 係 数 変 化 の
産業構造(エネ消費)へのインパクトを見ることができる。多くの場合、投入係数可
変のケースで、生産額は低下しているが、例外は中米、ブラジル、日本、中国、イン
ド 、 ア セ ア ン で あ り 、 こ れ ら の 地 域 で は 、 SRES-B2 に 比 べ 、 SRES-A1FI の ほ う が 、 投
入 係 数 可 変 の ケ ー ス の 生 産 額 が 増 加 し て い る 。こ れ は 鉄 鋼 ・化 学 な ど の 重 厚 長 大 型 産 業
は低下するものの、その他機械や対事業サービスなどの増加が、前者の減少分を上回
る か ら で あ る 。 高 成 長 シ ナ リ オ の 反 映 で あ ろ う 。 な お 北 ア フ リ カ と 中 東 は SRES- B 2 、
SRES-A1F I の 両 ケ ー ス で 、 投 入 ケ ー ス 可 変 の 生 産 額 が 、 固 定 ケ ー ス の そ れ を 上 回 る 。
これは、産業構造の“近代化”によるものだろう。
②
誘発係数の変化
誘発係数変化を見ることによって、投入係数の構造的変化を見ることができる。通
常先進国では産業構造の高度化とともに誘発係数は低下する傾向が見られる。以下の
よ う に 、 SRES-A1F1 の 場 合 は 、 SRES-B2 に 比 べ て 誘 発 係 数 は 増 加 す る 傾 向 に あ る 。
表 3 .2 .3 -1 9
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
3.3
誘 発 係 数 の 比 較 (FD 計 、 2 0 4 7 年 )
B2ケース A1F1ケース A1F1/B2
1.57
1.60
1.02
1.29
1.43
1.11
1.30
1.63
1.25
1.52
1.87
1.23
1.43
1.39
0.97
1.38
1.59
1.15
1.54
1.67
1.08
1.35
1.41
1.04
1.95
2.10
1.08
1.65
1.60
0.97
1.50
1.51
1.01
1.53
1.71
1.12
1.50
2.00
1.33
1.50
1.63
1.09
1.37
1.70
1.24
1.41
1.32
0.94
1.54
1.63
1.06
1.56
1.58
1.01
モデル分析結果とその政策的含意
3.3.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス 想 定
CO 2 排 出 パ ス に 関 し て 、 SRES-B2 の マ ー カ ー シ ナ リ オ に 対 応 さ せ た リ フ ァ レ ン ス ケ
ー ス ( 特 段 の CO 2 排 出 削 減 対 策 を と ら な い ケ ー ス ) と CO 2 濃 度 安 定 化 ケ ー ス
- 108 -
(S650,S600,S550,S500,S450) に つ い て DEARS モ デ ル を 用 い て 温 暖 化 緩 和 策 評 価 を 行 っ
た 。な お 、世 界 の GDP や CO 2 排 出 量 パ ス は SRES-B2 3 4 ) に ほ ぼ 合 致 す る よ う に パ ラ メ ー
タ を 調 整 し た 。 ま た 、 人 口 シ ナ リ オ に は SRES-B2 シ ナ リ オ を 用 い 、 割 引 率 と 資 本 減 耗
率 は そ れ ぞ れ 年 5 %と し 、 炭 素 抑 制 時 の 排 出 量 取 引 は 有 り と し た 。 ま た 、 将 来 時 点 に お
ける各産業の技術構造を示す投入係数は、将来産業構造をもとに時点別・地域別・産
業 別 に 推 定 し た 投 入 係 数 を 用 い た ( 投 入 係 数 の 推 定 に 関 し て は 、 H17 年 度 報 告 書
32)
参
照 )。 な お 、 動 学 的 最 適 化 モ デ ル に 生 じ る 終 端 効 果 へ の 対 応 と し て は 、 19 97 年 を 基 準 年
と し 、 最 適 化 時 点 間 隔 10 年 と し て 2 0 67 年 ま で モ デ ル 計 算 を 行 い 、 終 端 効 果 の 影 響 が
十 分 小 さ い と 考 え ら れ る 2 047 年 ま で の 解 を 評 価 に 用 い た 。
3.3.2 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の 結 果
リファレンスケースでは、世界全体ではサービス産業のシェアが増加しつつ、経済
成 長 に 必 要 な 資 本 財 や 投 資 財 を 含 め た 多 く の 産 業 で 生 産 額 は 増 加 す る 。OECD90 地 域 は
輸送産業が特に成長し、エネルギー多消費産業はほとんど成長しない。旧ソ連・東欧
地域はサービス産業・輸送産業を中心に成長し、エネルギー多消費産業はそれほど成
長しない。アジア地域はサービス産業・エネルギー多消費産業を中心に成長し、輸送
産業はそれほど成長しない。その他地域は他地域に比べ、比較的どの産業も平均的に
成 長 す る 。 (産 業 分 類 ・ 地 域 分 類 は 、 表 3.3.2-1~表 3.3.2-3 に 示 す 。 )
世界全体
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
2.0
エネルギー産業
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
1997
建設産業
2007
輸送産業
2017
2027
2037
2047
*(基 準 年 比 対 数 表 示 ; 基 準 年 =01
図 3.3.2-1
1
: 世 界 全 体 の ア グ リ ゲ ー ト 6 産 業 別 生 産 額 成 長 の 推 移 -リ フ ァ レ ン ス -
基 準 年 の 各 産 業 の 生 産 額 値 を 1 に 基 準 化 し た 後 、 基 準 年 値 =0 と な る よ う に 対 数 化 し て 表 示 し て
いる。
- 109 -
エネルギー産業
部門別GDP (10Billion$)
14,000
12,000
サービス産業
10,000
輸送産業
8,000
61%
59%
6,000
建設産業
57%
4,000
2,000
56%
その他
55%
56%
0
1997
2007
2017
2027
2037
2047
エネルギー多消
費産業
年
図 3.3 .2 -2
: 世 界 全 体 の ア グ リ ゲ ー ト 6 産 業 別 GDP -リ フ ァ レ ン ス -
14,000
部門別GDP (10billion$)
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
1997
2007
2017
2027
2037
2047
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属
輸送機械
その他機械
その他鉱物
食料品
紙・パルプ
製材・木製品
建設
繊維
その他の製造
農林水産業
運輸
航空
ビジネスサービス
社会サービス
石炭(P)
原油(P)
天然ガス(P)
バイオマス(P)
その他(P)
固体燃料(S)
液体燃料(S)
気体燃料(S)
電力(S)
年
図 3 .3 .2 -3
: 世 界 全 体 の 産 業 別 GDP -リ フ ァ レ ン ス -
(1) リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の 地 域 別 結 果
•
米国は輸送産業の成長が大きい。輸送機械・その他機械産業も比較的成長する。
エネルギー多消費産業は概して成長しない。
•
西 欧 地 域 は 米 国 同 様 に 輸 送 産 業 を 中 心 に 成 長 す る 。米 国 と 似 た 成 長 パ タ ー ン を 示
す。
•
日本地域は輸送産業を中心に成長する。建設産業はほとんど成長しない。
•
中国地域はサービス産業を中心に、多くの産業が成長する。
•
イ ン ド 地 域 は サ ー ビ ス 産 業 の 成 長 が 著 し く 、中 国 地 域 と 同 様 の 成 長 パ タ ー ン を 示
す。
- 110 -
・米国
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
エネルギー産業
2.0
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
建設産業
輸送産業
図 3.3.2-4
: 米 国 地 域 の 産 業 別 G DP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス -
・西欧
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
エネルギー産業
2.0
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
建設産業
輸送産業
図 3.3.2-5
: 西 欧 地 域 の 産 業 別 G DP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス -
- 111 -
・日本
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
エネルギー産業
2.0
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
建設産業
輸送産業
図 3.3.2-6
: 日 本 地 域 の 産 業 別 G DP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス -
・中国
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
エネルギー産業
2.0
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
建設産業
輸送産業
図 3.3.2-7
: 中 国 地 域 の 産 業 別 G DP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス -
- 112 -
・インド
エネルギー多消費産業
4.0
3.0
2.0
エネルギー産業
その他
1.0
0.0
-1.0
サービス産業
建設産業
輸送産業
図 3.3.2-8 : イ ン ド 地 域 の 産 業 別 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス (2) リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の 産 業 別 結 果
・鉄鋼
OECD90
4.0
3.0
60
その他
1.0
0.0
その他
-1.0
旧ソ連・東欧
付加価値額 (10Billion$)
2.0
50
40
18%
14%
30
20
10
13%
20%
61%
24%
21%
24%
アジア(日本除く)
16%
45%
36%
51%
52%
旧ソ連・鉄鋼
57%
43%
32%
22%
17%
2037
2047
OECD90
0
1997
アジア(日本除く)
1997
2007
2017
2027
2037
2007
2017
2027
年
2047
図 3.3.2-9: 鉄 鋼 部 門 の 地 域 別 産 業 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン ス
鉄鋼部門はアジア地域、特に中国・インド・南アフリカの成長が大きい。基準年で
大きなシェアを占める先進国の鉄鋼生産額は年々下降し、鉄鋼生産はアジア地域、特
に中国・インドへと生産が移転する。
- 113 -
・化学
OECD90
4.0
350
3.0
付加価値額 (10Billion$)
2.0
1.0
0.0
-1.0
その他
旧ソ連・東欧
その他
300
34%
250
アジア(日本除く)
29%
200
23%
150
18%
34%
32%
27%
旧ソ連・東欧
12%
18%
21%
66%
58%
46%
69%
35%
27%
1997
2007
2017
2027
2037
2047
100
13%
14%
50
OECD90
0
アジア(日本除く)
1997
2007
2017
2027
2037
年
2047
図 3.3.2-10: 化 学 部 門 の 地 域 別 産 業 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ レ ン
ス化学部門は中国・インド・南アフリカの成長が大きく、先進国はそれほど成長しな
い。鉄鋼部門同様に、基準年で大きなシェアを占める先進国の化学生産額は年々下降
し、化学生産はアジア地域、特に中国へと生産が移転する。
・輸送機械
OECD90
4.0
3.0
350
その他
1.0
0.0
その他
-1.0
旧ソ連・東欧
付加価値額 (10Billion$)
2.0
300
30%
250
26%
200
21%
150
31%
17%
100
50
アジア(日本除く)
33%
12%
18%
11%
12%
73%
28%
旧ソ連・東欧
22%
64%
54%
45%
35%
27%
2007
2017
2027
2037
2047
OECD90
0
1997
アジア(日本除く)
1997
2007
2017
2027
2037
年
2047
図 3.3.2-11: 輸 送 機 械 部 門 の 地 域 別 産 業 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ ァ
レンス輸送機械部門は中国・インド・南アフリカの成長が大きく、先進国はそれほど成長
しない。旧ソ連地域も後半期には成長する。基準年で大きなシェアを占める先進国の
輸 送 機 械 生 産 額 は 年 々 下 降 し 、輸 送 機 械 生 産 は ASI A 地 域 、特 に 中 国 へ と 生 産 が 移 転 す
る。
・その他機械
- 114 -
OECD90
4.0
3.0
1,200
その他
1.0
0.0
その他
-1.0
旧ソ連・東欧
付加価値額 (10Billion$)
2.0
1,000
21%
800
17%
13%
600
38%
400
200
アジア(日本除く)
43%
8%
18%
8%
14%
74%
32%
11%
23%
旧ソ連・東欧
69%
61%
49%
39%
30%
2007
2017
2027
2037
2047
OECD90
0
1997
2007
アジア(日本除く)
2017
2027
1997
2037
年
2047
図 3.3.2-12: そ の 他 機 械 部 門 の 地 域 別 産 業 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、 基 準 年 =0) -リ フ
ァレンスその他機械部門は中国・インド・南アフリカの成長が大きく、先進国はそれほど成
長しない基準年で大きなシェアを占める先進国のその他機械生産額は年々下降し、そ
の他機械生産はアジア地域、特に中国へと生産が移転する。
・ビジネスサービス
OECD90
4.0
3.0
5,000
4,500
1.0
0.0
-1.0
その他
旧ソ連・東欧
付加価値額 (10Billion$)
2.0
4,000
3,500
1,500
1,000
1997
2007
2037
アジア(日本除く)
19%
3,000
2,500
2,000
500
0
アジア(日本除く)
2017
2027
その他
23%
29%
15%
21%
12%
14%
8%
7%
旧ソ連・東欧
10%
12%
80%
74%
1997
2007
26%
69%
59%
49%
40%
2027
2037
2047
OECD90
2017
年
2047
図 3.3.2-13: ビ ジ ネ ス サ ー ビ ス 部 門 の 地 域 別 産 業 GDP(基 準 年 比 対 数 表 示 、基 準 年 =0 ) リファレンスビジネスサービス部門はどの地域も成長するが、特に、中国の成長は大きい。米国
から中国へと順位が逆転する。
- 115 -
表 3 .3 .2 -1
No.
1
2
3
4
Code
Sector Name
I_S
CRP
NFM
NMM
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属
5
TRN
輸送機械
6
OME
その他機械
7
OMN
その他鉱物
8
FPR
食料品
基礎製品及び鋳鍛造品
化学磯製品、その他の化学製品、ゴム及びプラスチック製品
銅・アルミニウム・亜鉛・鉛・金・銀製品及び鋳造品
セメント、石膏、石灰石、砂利、生コンクリート
乗用車、トラック、トレーラー及セミトレーラー
船舶・同修理、鉄道車両・同修理、航空機・同修理、自転車、その他輸送機器・同修理
事務用機械、電子会計機、電子計算機、ラジオ、テレビ、通信機械及び装置
電気機械、装置等、医療・精密・光学機器、腕時計・時計
板金製品(機械・装置を除く)
金属鉱石・ウラン・宝石の鉱物、その他鉱物、採石
豚肉・豚くず肉、肉加工品・保存用肉、と畜副産物
植物油脂
大豆粗製油・精油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ヒマワリ種子油、ベニバナ油、綿実油、菜
種油、カラシナ油、ココナッツパーム油、パーム核油、ヒマシ油、キリ油、ホホバ油、ババス油、アマニ油、完全に又
は部分的に、水素添加し、インターエステル化し、リエステル化又はエライジン化したもの。マーガリンと類似の調理
品、動物ろう・植物ろう、油脂・油とその成分、リンター、油粕、植物油脂・原油抽出で生じる固形残留物を含む;脂
肪種子・脂肪性果物(カラシナを除く)の粉末・ミール;脂肪質物質・動物油脂・植物油脂の処
酪農品
精米
砂糖
9
10
11
PPP
LUM
CNS
12
TWL
13
OMF
飲料・たばこ
と畜
紙・パルプ パルプ・紙・紙加工品・出版・印刷
製材・木製品 製材・木製品
建設
建設
繊維製品
繊維
衣服
なめし革・毛皮・同製品
その他製造 その他の製造工業製品
水道
米
小麦
その他の穀類
野菜・果実
油糧作物
砂糖原料作物
繊維作物(非食品作物)
14
AGR
農林水産業
その他作物
畜産
その他の畜産
16
17
18
Description
鉄鋼
化学製品
非鉄金属
窯業・土石製品
乗用車
その他輸送機械
電気機器
その他機械・機器
金属製品
その他鉱物
畜産食料品
その他の食料品
15
18非エネルギー産業詳細
Sector Name
乳製品
米、完全精米、部分精米
調理・保存魚介類或いは野菜、フルーツジュース・野菜ジュース、調理・保存果物或いは豆類、全穀紛、穀粒、小麦の
ミール及びペレット、ひき割り穀物、その他のミール・ペレット、その他の穀物製品(コーンフレークを含む)、その
他の植物製粉・ミール、パン類調理の素・生地、澱粉・澱粉製品;砂糖・その他の糖蜜、飼料に利用される加工品、パ
ン類、ココア、チョコレート・砂糖菓子類、マカロニ、麺類、クスクス或いは類似の穀紛製品、その他食料品
生鮮肉、冷蔵肉、牛・羊・馬・ロバ・ラバ・ケッテイ食用くず肉。動物或いは鳥類由来の未加工油脂・獣脂
出版・印刷・記録媒体の製版を含む
家具装備品を除く木材・木及びコルク製品;麦わら製品・めっき原料
住宅・工場・オフィス・道路建設
織物、化学繊維
衣服、毛皮衣料品・毛皮染物
なめし革・革製衣料品、かばん、ハンドバック、馬具類、馬車馬装着帯、履物
家具・装備品、玩具・運動用品、楽器、情報記録物、筆記具・文具、身辺細貨品、畳、わら加工品、武器、その他の製
造工業品、リサイクル品を含む
貯水、浄水、配水
米、玄米、もみ
小麦・メスリン
トウモロコシ、大麦、ライ麦、オート麦、その他穀類
野菜、果菜、果実、豆類
脂肪種子、脂肪果実;コプラ
サトウキビ、甜菜
綿、亜麻、麻、サイザル麻及びその他の繊維利用の植物原材料
苗;切花及び花芽;花の種及び果実の種;野菜種、飲料及び香辛料作物、製品化されていないタバコ、穀類のわらおよ
びトウモロコシの皮、加工・未加工、細断、挽き割り、圧搾、ペレットの状態のもの;スイード、マンゴールド、飼料
用根、まぐさ、ルツェルン(アルファルファ)、クローバー、イガマメ、飼料用ケール、ルピナス、ベッチ及び類似の
飼料製品、ペレットの状態であるに関わらず主に香料、製薬、殺虫剤、殺菌、及び類似の目的に利用される植物および
植物の一部、甜菜の種、飼料作物の種子、その他未加工植物原材料
畜牛、羊、ヤギ、馬、ロバ、ラバ、ケッテイ
豚、家禽及びその他の生きている動物、;殻に入っている卵(生鮮或いは調理済み)、天然ハチミツ、カタツムリ(生
鮮或いは調理済み)海の巻貝を除く;カエルの脚部、その他動物由来の食用製品、皮革、皮膚、毛皮、精製着色に関わ
らず未加工昆虫ろう及び、鯨ろう、
生乳
羊毛、絹、その他繊維利用の未加工動物性原材料
羊毛
林業、伐木搬出及び関連サービス業
林業
狩猟、、捕獲、関連サービス業を含む狩猟普及、漁業、養殖、漁業に付随するサービス業
漁業
道路、鉄道;パイプライン、補助運輸業;旅行代理業
その他の運輸付帯サービス
T_T
運輸
水運
ATP
航空
航空輸送
全ての小売;卸売り及び仲介商業;旅館及び飲食店;自動車修理、パーソナル用品及び家庭日用品
対事業所サービス
補助的金融業を含む、保険・年金基金は除く(次項参考)
ビジネスサービ 金融
BSR
年金基金を含む、加入義務のある社会保障を除く
ス
保険
不動産、レンタル業、事業活動
その他の対事業所サービス
郵便、電気通信
通信・放送
娯楽サービス・その他の個人サービ娯楽サービス、文化・スポーツ活動、その他サービス業;被雇用者(従業員)がいる民間世帯
SSR 社会サービス
公務および防衛;加入義務のある社会保障、教育、保健衛生、社会事業、下水及び廃棄物処理、公衆衛生及び類似事
公務・公共サービス
業、その他会員組織事業、国外組織及び団体
住居の所有権(所有者の住宅保有による帰属家賃)
住宅賃貸料(帰属家賃)
- 116 -
表 3 .3 .2 -2
18 産 業 部 門 と ア グ リ ゲ ー ト 産 業 区 分 の 対 応 表
No. Sector Code Description
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
I_S
CRP
NFM
NMM
TRN
OME
OMN
FPR
PPP
LUM
CNS
TWL
OMF
AGR
T_T
ATP
BSR
SSR
鉄鋼
化学
非鉄金属
非金属
輸送機械
その他機械
鉱業
食料品
紙・パルプ
木材・木製品
建設
繊維
その他製造
農業
陸水運
空運
エネルギー
多消費
○
○
○
○
建設
運輸
サービス
エネルギー寡
消費(その他)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
ビジネス(事業)サービス
社会サービス
: 1 8 地 域 区 分 と SRES4 地 域 区 分 の 対 応 表
REF
ASIA
Region Code Description
OECD90
USA
米国
○
CAN
カナダ
○
MCM
中央アメリカ
BRA
ブラジル
SAM
南アメリカ
WEP
西ヨーロッパ
○
EEP
東ヨーロッパ
○
FSU
旧ソ連
○
NAF
北アフリカ
CAF
中央アフリカ
SAF
南アフリカ
JPN
日本
○
CHN
中国
○
IND
インド
○
ASN
アジアNIES
○
TME
中東
ANZ
オセアニア
○
XAP
その他
○
表 3 .3 .2 -3
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
ALM
○
○
○
○
○
○
○
3.3.3 CO 2 排 出 削 減 に よ る に よ る 世 界 産 業 構 造 へ の 影 響
図 3.3.3-1~図 3.3.3-3 は 、各 抑 制 シ ナ リ オ の 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 を 示 す 。図 3 .3.3- 4
は 各 シ ナ リ オ の 産 業 別 国 内 生 産 額 の 各 需 要 構 成 比 を 示 す 。図 3.3.3 -5 は 、各 抑 制 シ ナ リ
- 117 -
オ の 産 業 別 国 内 生 産 額 の 各 需 要 変 化 を 示 す 。 前 述 の 18 非 エ ネ ル ギ ー 産 業 ・ 7 種 一 次 エ
ネルギー・4 種二次エネルギーを集約して 6 産業に集約して表示している。
図 3.3.3-4 か ら 、輸 送 部 門 と サ ー ビ ス 部 門 は 、他 部 門 に 比 べ て 相 対 的 に 消 費 財 の 役 割
が大きく、建設産業は投資財の役割が大きいことがわかる。また、この需要構成比は
排 出 抑 制 シ ナ リ オ に よ っ て 大 き く 変 化 し な い が 、 図 3.3.3-5 よ り 、 投 資 や 中 間 消 費 は 、
消 費 に 比 べ 、 CO 2 排 出 抑 制 に よ っ て 大 き な 影 響 を 受 け る こ と が わ か る 。
図 3.3.3-1~図 3.3.3-3 よ り 、ど の 産 業 も 、濃 度 安 定 化 レ ベ ル が 厳 し く な る に つ れ て 付
加価値額の減少は大きくなる。家計の主要な消費財である輸送産業やサービス産業は
付加価値額減少の割合が小さい。特に、サービス部門はエネルギー原単位が小さいこ
と も そ の 原 因 と な る 。 な お 、 こ こ で の 輸 送 部 門 と は IEA エ ネ ル ギ ー バ ラ ン ス 表 に 基 づ
き 自 家 用 自 動 車 も 含 ま れ る 。一 方 、エ ネ ル ギ ー 原 単 位 の 大 き く 、図 3.3.3-4 よ り 中 間 財
の役割が大きいエネルギー多消費産業は付加価値額減少の割合が大きくなる。エネル
ギー原単位の低いその他産業の付加価値額減少の割合が大きい理由としては、産業の
波 及 効 果 や 、図 3.3.3-4 よ り 経 済 成 長 の 資 本 ス ト ッ ク の 蓄 積 に 関 わ る 投 資 財 の 役 割 が 相
対的に大きい点があげられる。また、原単位の低い建設産業の付加価値額減少の割合
が 相 対 的 に 大 き い 理 由 と し て は 、 図 3.3.3-4 よ り 消 費 財 と し て の 役 割 が ほ と ん ど な く 、
経済成長の資本ストックの蓄積に関わる投資財の役割が非常に大きいために、生産活
動の縮小に大きく影響を受ける。また、建設産業は内需産業であり、貿易による国際
5.0
Y2007
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
図 3.3 .3 -1
Sector total
Other sector
Energy
sector
Service
sector
Transport
sector
-30.0
Construction
sector
-25.0
Energyintensive
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
分業による影響が少ないために、付加価値額の大幅な減少につながる。
S 45 0 ケ ー ス の 世 界 付 加 価 値 額 変 化 (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
- 118 -
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
図 3.3.3-3
-0.8
-1.0
-1.2
- 119 Y2037
Sector total
Other sector
Y2037
Sector total
Other sector
Y2027
Energy
sector
Y2027
Energy
sector
Y2017
Service
sector
Y2017
Service
sector
Y2007
Transport
sector
Construction
sector
Energyintensive
sector
Y2007
Transport
sector
0.4
0.2
Construction
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
-2.0
Energyintensive
sector
図 3.3.3-2
1.0
Y2047
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
S 55 0 ケ ー ス の 世 界 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
Y2047
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
S 65 0 ケ ー ス の 世 界 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
Intermediate Consumption
Final Consumption
Investment
Net Export
100%
60%
40%
Construction sector
図 3 .3 .3 -4
Transport sector
Service sector
Other sectors
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
S450
Energy sector
Reference
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
S450
Reference
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
S450
Energy intensive
sector
Reference
S550
0%
S650
20%
Reference
Composition ratio of output (%)
80%
Sector Total
各シナリオの産業別国内生産額の需要構成比
Intermediate Consumption
Final Consumption
Investment
5.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
-25.0
-30.0
-35.0
Energy
intensive
sector
図 3.3.3-5
Construction
sector
Transport
sector
Service
sector
Energy
sector
Other
sectors
S450
S550
S650
S450
S550
S650
S450
S550
S650
S450
S550
S650
S450
S550
S650
S450
S550
S650
S450
S550
-40.0
S650
Changes in sectoral domestic outputs
(%, relative to that in Reference case
0.0
Sector Total
各 シ ナ リ オ の 産 業 別 国 内 生 産 額 の 需 要 変 化 (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
3.3.4 CO 2 削 減 に よ る GDP へ の 影 響
SRES-B2 シ ナ リ オ の も と で の 各 抑 制 シ ナ リ オ の DEARS モ デ ル に よ る GDP ロ ス ( リ フ
ァ レ ン ス 基 準 )と CO 2 削 減 の シ ャ ド ー プ ラ イ ス を 表 3.3.4-1 と 図 3.3.4-1 に そ れ ぞ れ 示
す 。 な お 、 表 3.3.4-1 の IMCP プ ロ ジ ェ ク ト の GDP ロ ス の 範 囲 は 、 S450 ケ ー ス 時 に 内
生的技術習熟を考慮した場合のプロジェクトに参加した各モデル分析結果の範囲を示
している。
- 120 -
GD P ロ ス と シ ャ ド ー プ ラ イ ス は と も に 、S650-S500 ケ ー ス ま で は 比 較 的 小 さ な 値 を 示
し て い る が 、 S450 ケ ー ス に な る と 急 激 に 増 加 す る 。 DEARS モ デ ル の 想 定 の も と で は 、
450ppmv 達 成 の た め に は 、 経 済 活 動 全 体 の 縮 小 を も た ら し 、 極 め て 大 き な GDP ロ ス と
なっている。
表 3 .3 .4 -1
Ye a r
2007
2017
2027
2037
2047
2050
( D N E 2 1)
2050
(IPCC TAR
35)
S500
0.00%
0.06%
0.20%
0.58%
1.67%
S550
0.00%
0.02%
0.10%
0.24%
0.68%
S600
0.00%
- 0.02 %
- 0.05 %
1.33%
—
0.40%
—
0.32%
2.6%
—
0.6%
—
0.4%
0.00%
0.32%
S650
0.00%
- 0.03 %
- 0.05 %
- 0.03 %
0.20%
- 4 % t o 1 0% ( 4 5 0 p pm v C O 2 o n l y ) ;
1 % b e l o w i n a l l ( e i g h t m o d e l s ) bu t t w o m o d e l s
(IMCP
36),37)
S450
0.01%
0.79%
2.08%
4.74%
11 . 2 8 %
)
2050
project
各 排 出 シ ナ リ オ の 世 界 GDP ロ ス (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
)
a r o u nd 1 % ( 5 0 0- 5 5 0 C O 2 e q )
2050
38)
)
ShadowPrice ($/tC)
(Stern Review
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
S450
S500
S550
S600
S650
1997
図 3 .3 .4 -1
2007
2017
2027
2037
2047
濃 度 安 定 化 レ ベ ル 別 の CO 2 シ ャ ド ー プ ラ イ ス
3.3.5 S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GDP ロ ス が 発 生 す る 理 由
DEARS モ デ ル と 従 来 の 温 暖 化 緩 和 策 評 価 モ デ ル と の 計 算 結 果 を 比 較 す る と (表 1 ) 、
S650- S500 ケ ー ス ま で の GDP ロ ス は そ れ ほ ど 大 き な 違 い は な い 。 一 方 、 S450 ケ ー ス
で は DEARS モ デ ル で は 急 激 な GDP ロ ス が 生 じ る が 、 従 来 研 究 の 多 く の エ ネ ル ギ ー シ
ス テ ム モ デ ル で は S4 5 0 ケ ー ス に お い て も こ れ ほ ど 急 激 な GDP ロ ス は 生 じ て は い な い 。
この原因として以下の 2 点が考えられる。
- 121 -
第 一 に 、 両 者 の モ デ ル 構 造 の 違 い が あ げ ら れ る 。 DNE21 モ デ ル を 含 め た 代 表 的 な エ
ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル の モ デ ル 構 造 を 比 較 し た 場 合 、 DEARS モ デ ル で は 産 業 の 連 関
構造を明示的に扱っており、それに関連して産業用エネルギー需要の代替の想定に関
してやや保守的な想定となっている。一方、従来のエネルギーシステムモデルは、非
エネルギー産業部門を 1 マクロ経済部門として扱っているモデル構造に基づき、産業
構造は明示的に扱っていないために地域内での産業移転の制約が無く自由に動くこと
ができる想定であり、また各産業が必要とするエネルギー需要に関してもそれらの代
替 関 係 が 極 め て 柔 軟 に 対 応 す る こ と が で き る と い う 想 定 と な っ て い る 。例 え ば 、DN E 2 1
モデルでは産業・輸送・民生用を区別することなくそれらをアグリゲートした燃料種
別最終エネルギー需要が価格弾性値によりトップダウン型で表現され、産業間及び産
業内の燃料間の代替が比較的容易に行われる。
ま た 、 最 終 エ ネ ル ギ ー 需 要 の 柔 軟 性 に も 両 者 の 設 定 に 相 違 が あ る 。 DEARS の 需 要 関
数 も 価 格 弾 性 値 を 含 む が 、 DEARS で は 市 場 価 格 は 生 産 価 格 と リ ン ク す る た め 一 定 の 技
術 制 約 の も と で は 市 場 価 格 の 高 騰 に よ る 需 要 の 削 減 は 限 定 さ れ る 。 こ の た め CO2 制 約
が厳しくなると、最終エネルギー需要の縮小は基本的に所得弾性を通じてのみ可能と
な る 。こ れ に 対 し 、DNE-21 で は 生 産 価 格 と は 独 立 し て 需 要 関 数 に 沿 っ た シ フ ト を 認 め
最終消費については消費者効用の最大化を行う。このため、需要の縮小がより柔軟に
行える構造をもつ。
さ ら に 、 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス で の 最 終 エ ネ ル ギ ー 消 費 構 成 も 異 な り 、 DEARS モ デ ル
で は DNE21 モ デ ル の 想 定 シ ナ リ オ よ り も 液 体 燃 料 需 要 が 相 対 的 に 伸 び る 。こ の た め に 、
DEARS モ デ ル で は 、モ デ ル 構 造 よ り 電 力 化 が あ ま り 進 展 せ ず 、S450 へ の 対 応 が 難 し く
大 幅 な GDP ロ ス と な っ て い る と 考 え ら れ る 。
DNE21 モ デ ル と DEARS モ デ ル で は 、リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の CO 2 排 出 パ ス は SRES-B 2
シナリオとほぼ合致するように調整しているために両モデルの化石燃料の一次エネル
ギ ー 生 産 量 は ほ ぼ 同 じ で あ る が (図 3.3.5-1;モ デ ル 最 適 化 代 表 時 点 の 違 い に よ り グ ラ フ
表 示 の 横 軸 が 異 な る 点 に 留 意 さ れ た い )、 最 終 エ ネ ル ギ ー 量 及 び そ の 構 成 は 大 き く 異 な
っ て い る (図 3.3.3-4,図 3.3.3-5)。 な お 、 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の DNE21 モ デ ル の 最 終 エ
ネ ル ギ ー 量 は SRES-B2 シ ナ リ オ に 基 づ く 外 生 値 で あ る の に 対 し 、DEARS 最 終 エ ネ ル ギ
ー 量 は 産 業 構 造 変 化 に 伴 っ て 各 エ ネ ル ギ ー 需 要 が 内 生 的 に 決 定 さ れ る 。 DNE21 モ デ ル
ではリファレンスケースで電力化・ガス化が急速に進展し、石炭は主に電力使用に使
用 さ れ 固 体 燃 料 と し て の 使 用 は 急 速 に 減 少 す る 。一 方 、DEARS モ デ ル で は DNE21 モ デ
ルに比べると電力化の進展はそれほど進まず、最終エネルギー消費としての固体燃料
シェアが残っているために石炭は主に固体燃料として使用され、天然ガスが主に電力
使 用 と な っ て い る 。 特 に 、 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス で 、 DEARS モ デ ル の 最 終 エ ネ ル ギ ー 需
要で固体燃料が特に産業用として必要とされる保守的な構成となっている。
資 本・労 働・エ ネ ル ギ ー (電 力・非 電 力 )の 代 替 を 表 す マ ク ロ 生 産 関 数 に 関 し て 、DNE21
モ デ ル は CES 型 (代 替 弾 性 値 0.4 )、 一 方 DEARS は コ ブ ダ グ ラ ス 型 ( 弾 性 値 1 ) を 定 式
化 し て い る 。 な お 、 こ の 生 産 関 数 で 表 す エ ネ ル ギ ー と は DNE21 モ デ ル で は 燃 料 種 別 総
最 終 エ ネ ル ギ ー 量 で あ る が 、 DEARS モ デ ル で は 付 加 価 値 額 の 定 義 か ら 産 業 用 ・ 輸 送 用
- 122 -
の最終エネルギー量のみを用い、家庭用最終エネルギー量はこのマクロ生産関数に含
まない。
DEARS モ デ ル で は リ フ ァ レ ン ス で 電 力 化 が あ ま り 進 展 せ ず 、 ま た 最 終 エ ネ ル ギ ー 需
要 の 構 造 決 定 が や や 保 守 的 な 結 果 を 導 き や す い こ と か ら 、 DEARS モ デ ル で S450 へ の
対 応 が 難 し く 大 幅 な GDP ロ ス と な っ て い る と 考 え ら れ る 。 DNE-21 で は 、 燃 料 種 別 エ
ネルギー需要の想定が個々の部門ごとの想定に分離されていないために、もともと電
力 が 非 電 力 を 代 替 し や す く 、 さ ら に 資 本 が エ ネ ル ギ ー を 代 替 す る 傾 向 の 構 成 (リ フ ァ レ
ン ス ケ ー ス で 比 較 す る と DNE21 モ デ ル の 資 本 ス ト ッ ク が 多 い )と な っ て い た た め 、C O 2
制約が強く課されても、需要全体の電力シフトが進む構成のために、電力への脱炭素
化 技 術 が 電 力 の CO 2 排 出 原 単 位 を 下 げ る と と も に 、 産 業 部 門 で の 電 力 投 入 が 非 電 力 投
入を代替し、資本がエネルギー投入の変化を吸収しやすいといえる。
第二に、エネルギー技術の想定に関する違いがあげられる。エネルギー技術を詳細
に モ デ ル 化 し て い る DNE21 モ デ ル に 比 べ 、DEARS モ デ ル は 扱 っ て い な い エ ネ ル ギ ー 技
術 が 存 在 す る 。 例 え ば 、 DNE21 モ デ ル で は モ デ ル 化 し て い る バ イ オ マ ス 液 化 プ ロ セ ス
が DEARS モ デ ル で は モ デ ル 化 し て い な い 。 し か し 、 こ れ が 原 因 で 大 き な GDP ロ ス が
生 じ て い る わ け で は な い 。こ こ で 、S450 ケ ー ス に お い て DNE21 モ デ ル の バ イ オ マ ス 液
化 プ ロ セ ス の 有 無 に よ る GDP ロ ス の 比 較 を 行 う と 、 そ れ ぞ れ 1.3%(バ イ オ マ ス 液 化 プ
ロ セ ス 有 )、 1.8 %(バ イ オ マ ス 液 化 プ ロ セ ス 無 )と な り 、 DEARS モ デ ル ほ ど の GDP ロ ス
は生じない。
こ れ ら の こ と か ら 、多 数 の 経 済 部 門 を も つ DEARS モ デ ル と 、DNE21 モ デ ル の よ う な
1 経 済 部 門 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル で は 、前 述 の 電 力 シ フ ト を 産 業 部 門 が ど こ ま で 許
容できるかといった産業のエネルギー需要構造に関するモデル構造の違いが大きな影
響 を も た ら し て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 こ の た め に 、 DNE21 モ デ ル の よ う な 1 部 門 マ
ク ロ 生 産 関 数 で は 楽 観 的 な 結 果 を 導 く 可 能 性 が あ る の に 対 し 、多 部 門 モ デ ル DEAR S は 、
産業部門のエネルギー需要に関しては悲観的な結果を提供しているといえる。
どちらがより現実的であるとは一概に述べることはできないが、一般的には、長期
的には経済は市場条件に柔軟に対応できるが、短期的には既存の技術・社会・経済構
造 の も と で 対 応 が な さ れ る と 考 え ら れ る 。 21 世 紀 半 ば 付 近 と い う 中 期 的 な 視 点 は 後 者
から前者への過渡期であるため、それぞれのモデル上の特徴を踏まえて、結果の解釈
をすることが重要である。この意味では、従来の長期的視点に立つ多くのエネルギー
システムモデルによる温暖化緩和策評価では、長期的な柔軟性がそのまま中短期評価
に も 適 用 さ れ 、 CO 2 排 出 削 減 に よ る GDP ロ ス が 過 小 評 価 さ れ て い る 可 能 性 が あ る 。
- 123 -
Primary Energy Production (Mtoe)
Primary Energy Production (Mtoe)
25000
Innovatives
Nuclear
Biomass
Photovoltaics
Wind
Hydro & Geoth.
Coal
Crude Oil
Natural Gas
20000
15000
10000
5000
0
25000
20000
15000
10000
5000
0
1997
2000 2010 2020 2030 2040 2050
図 3.3.5-1
Nuclear
Biomass
Wind
Hydro
Coal
Crude Oil
Natural Gas
2007
2017
2027
2037
:リファレンスケースの世界一次エネルギー生産量
2047
- DNE21(左 )、
Final Energy Consumption (Mtoe)
Final Energy Consumption (Mtoe)
D E AR S(右 )-
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
2010
図 3.3.5-2
2020
2030
2040
16000
14000
12000
Ele
Gasseous
Liquid
Solid
10000
8000
6000
4000
2000
0
1997
2050
2007
2017
2027
2037
:リファレンスケースの世界最終エネルギー消費量
2047
- DNE21(左 )、
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
Final Energy Consumption
Final Energy Consumption
D E AR S(右 )-
2010
図 3.3.5 -3
2020
2030
2040
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2050
Ele
Gasseous
Liquid
Solid
1997
2007
2017
2027
2037
2047
:リファレンスケースの世界最終エネルギー消費量の構成
D N E2 1(左 )、 DE AR S(右 )-
- 124 -
-
3.3.6 S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GDP ロ ス を 発 生 さ せ る 部 門 の 調 査
前 述 の よ う に 、 GDP ロ ス に 関 し て 、 S500 ケ ー ス ま で は 従 来 研 究 の 緩 和 策 評 価 モ デ ル
と そ れ ほ ど 大 き な 違 い は な い が 、S450 ケ ー ス に お い て GDP ロ ス が 急 激 に 増 加 す る 結 果
と な っ て い る 。 こ の 原 因 を 現 在 の モ デ ル 構 造 の 範 囲 内 で 詳 し く 探 る た め に 、 S4 50 ケ ー
ス に お い て ど の 産 業 部 門 が ボ ト ル ネ ッ ク と な り 大 き な GDP ロ ス を 生 じ さ せ て い る か を
調 査 し た 。 具 体 的 に は 、 S450 ケ ー ス に お い て 仮 想 的 な CO 2 削 減 技 術 を 導 入 す る こ と に
よ り 評 価 を 行 っ た 。 今 回 は 、 S450 ケ ー ス の 際 に 、 対 象 と な る 各 部 門 の CO 2 排 出 係 数 を
改善させることにより、仮想的な部門別の排出削減技術導入の効果を想定し、その影
響 を 調 べ た 。 S450 ケ ー ス に お い て 、 20 2 7 年 以 降 、 全 治 行 き 場 各 需 要 部 門 別 に 世 界 一 律
で そ れ ぞ れ CO 2 排 出 5 0%改 善 す る よ う な 場 合 (コ ス ト フ リ ー で 、当 該 部 門 の み の 化 石 燃
料 消 費 の CO 2 排 出 係 数 を 従 来 値 の 5 0%に す る よ う な 技 術 が 導 入 さ れ た と す る 仮 想 的 な
場 合 )の 世 界 GDP ロ ス に つ い て の 結 果 を 図 3.3.6-1 に 示 す 。 図 3.3.6-2 は リ フ ァ レ ン ス
ケ ー ス と S450 通 常 ケ ー ス の CO 2 排 出 量 の 推 移 を そ れ ぞ れ 示 す 。
図 3.3.6-1 よ り 、 当 該 部 門 の CO 2 削 減 向 上 に よ る GDP ロ ス へ の 影 響 が 最 も 大 き い 部
門は、輸送部門である。エネルギー多消費産業である鉄鋼産業等の改善による影響は
小 さ い 。 よ っ て 、 輸 送 部 門 が ボ ト ル ネ ッ ク と な り S4 5 0 に お い て 大 き な GDP ロ ス を 生
じさせていることが示唆される。
図 3.3.6-2 よ り 、リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の CO 2 排 出 の 部 門 別 シ ェ ア が あ ま り 大 き な 変 動
な く 安 定 的 に 推 移 し て い る の に 比 べ 、 S450 通 常 ケ ー ス に お い て は 輸 送 部 門 の CO 2 排 出
量 が 後 期 で は か な り の シ ェ ア を 占 め て い る こ と に 加 え 、 S450 ケ ー ス に お い て 、 輸 送 部
門 (陸 水 運・航 空 )か ら の CO 2 排 出 量 の リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス か ら の 変 化 率 が 他 部 門 に 比 べ
て 相 対 的 に 小 さ く 、 輸 送 部 門 は 他 産 業 と 比 較 し て CO 2 排 出 量 の 絶 対 量 が 元 々 大 き い た
め 、 こ の よ う な 条 件 下 で 輸 送 部 門 に CO 2 削 減 技 術 が 導 入 さ れ る と 、 輸 送 部 門 の C O 2 排
出削減が緩和され、輸送部門の生産額は増加する。その生産波及効果によって他の産
業の生産増加を促す。同時に、他の部門の排出にかなり大きなゆとりができるため、
そ れ ま で 抑 制 さ れ て い た 部 門 か ら の CO 2 排 出 を 増 加 さ せ る こ と が で き 、 GDP ロ ス も 大
き く 減 ら せ る 。 一 方 、 鉄 鋼 部 門 な ど の エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 に お い て CO 2 原 単 位 は 相
対 的 に 大 き い が 、CO 2 排 出 量 の 絶 対 量 が そ れ ほ ど 大 き く な い た め に 、そ の 波 及 効 果 を 含
め た と し て も 、 そ れ ら の CO 2 排 出 改 善 に よ る GDP へ の 影 響 は 限 定 的 で あ る と い え る 。
- 125 -
Y2017
Y2027
Y2037
繊維
農業
社会サービス
Y2007
12%
Y2047
10%
8%
6%
4%
2%
S450
通常
ケース
輸送(陸水運+航空)
航空
陸水運
ビジネスサービス
その他製造
建設
製材
紙・パルプ
食料品
鉱業
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
0%
CO2-50% emissions improvement case
図 3.3.6-1
S 45 0 シ ナ リ オ に お け る 各 部 門 CO 2 -50%改 善 技 術 導 入 仮 想 ケ ー ス の 世 界
G D P ロ ス (リ フ ァ レ ン ス 比 )
図 3.3.6-2
部 門 別 の 世 界 CO2 排 出 量
2
0
2047
2047
2037
2027
2017
2007
1997
0
4
2037
2
6
2027
4
8
2017
6
10
2007
8
12
1997
CO2排出量(GtC)
10
家庭
社会サービス
ビジネスサービス
航空
陸水運
農業
その他の製造
繊維
建設
製材・木製品
紙・パルプ
食料品
その他鉱物
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
CO2排出量(GtC)
12
家庭
社会サービス
ビジネスサービス
航空
陸水運
農業
その他の製造
繊維
建設
製材・木製品
紙・パルプ
食料品
その他鉱物
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
- リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス (左 )、 S450 通 常 ケ ー ス
(右 )-
3.3.7 そ の 他 の 感 度 分 析
(1) エ ネ ル ギ ー 原 単 位 に 関 す る 感 度 分 析
S450 ケ ー ス に お い て 仮 想 的 な エ ネ ル ギ ー 原 単 位 を 削 減 す る 技 術 を 導 入 に よ る 感 度 分
析 を 実 施 し た 。 今 回 は 、 S450 ケ ー ス の 際 に 、 対 象 と な る 各 部 門 の 金 額 ベ ー ス の エ ネ ル
ギー原単位である投入係数を改善させることにより、仮想的な部門別のエネルギー原
単 位 削 減 技 術 導 入 の 効 果 を 想 定 し 、 そ の 影 響 を 調 べ た 。 S450 ケ ー ス に お い て 、 全 地 域
の 2027 年 以 降 の S450 ケ ー ス に お い て 、 各 需 要 部 門 別 に 世 界 一 律 で そ れ ぞ れ エ ネ ル ギ
ー 原 単 位 を 50 %改 善 す る よ う な 場 合 (コ ス ト フ リ ー で 、 当 該 部 門 の エ ネ ル ギ ー 投 入 係 数
を 従 来 値 の 50%に す る よ う な 技 術 が 導 入 さ れ た 場 合 )の 結 果 を 図 3.3.7-1 に 示 す 。
図 3.3.7-1 よ り 、 3 .3 .6 節 の CO 2 削 減 技 術 の 仮 想 的 導 入 ケ ー ス と 比 較 す る と 、 エ ネ ル
ギ ー 原 単 位 が 向 上 さ れ た と し て も GDP ロ ス が 大 き く 緩 和 さ れ る 部 門 は 見 つ か ら な い 。
な お 、 陸 水 運 部 門 エ ネ ル ギ ー 原 単 位 50 %改 善 ケ ー ス で GDP ロ ス が や や 増 加 し て い る の
は 、輸 送 部 門 の 総 エ ネ ル ギ ー 需 要 が CO 2 制 約 ケ ー ス に お い て も GDP 弾 性 値 の 関 数 と し
て表現するという、過去トレンドに従ったやや硬直的な仮定に基づくモデル定式化で
- 126 -
あ り 、 輸 送 部 門 の 総 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 が 減 少 す る と GDP も 減 少 す る モ デ ル 構 造 と な っ
ているためである。
Y2007
14%
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
12%
10%
8%
6%
4%
2%
S450
通常
ケース
図 3.3.7-1
航空
陸水運
社会サービス
ビジネスサービス
農業
その他製造
繊維
建設
製材
紙・パルプ
食料品
鉱業
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
0%
Energy Intensity 50% improvement case
S 45 0 シ ナ リ オ に お け る 各 部 門 エ ネ ル ギ ー 原 単 位 50%改 善 技 術 導 入 仮 想 ケ
ー ス の 世 界 GDP ロ ス (リ フ ァ レ ン ス 比 )
(2) CCS 技 術 導 入 に 関 す る 感 度 分 析
各 抑 制 シ ナ リ オ に お い て CCS 技 術 の 導 入 の 有 無 に よ る 感 度 分 析 を 実 施 し た 。こ れ に
よ り 、 CCS 技 術 の 導 入 に よ る GD P ロ ス へ の 影 響 を 比 較 し 、 CCS 技 術 導 入 の 重 要 性 に 関
し て 調 べ た 。図 3.3.7-2 は 、CCS 技 術 導 入 の 有 無 に よ る 各 シ ナ リ オ の GDP ロ ス を 示 す 。
図 3.3.7-3 は 、CCS 技 術 導 入 が 無 い 場 合 の S450 ケ ー ス の 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 を 示 す 。
図 3.3.7-2 よ り 、CCS 技 術 導 入 が な い ケ ー ス で は 、CCS 導 入 が 有 る ケ ー ス と 比 べ て 、こ
こ で 分 析 を 行 っ た ほ と ん ど の 濃 度 安 定 化 レ ベ ル に お い て 約 2 倍 の GDP ロ ス が 必 要 と な
る こ と が わ か る 。CCS 技 術 導 入 が GDP ロ ス の 緩 和 に 大 き な 影 響 を 与 え る 要 因 と な っ て
お り 、 温 暖 化 緩 和 策 と し て の CCS 技 術 導 入 の 重 要 性 が 確 認 で き る 。 産 業 別 に み る と 、
図 3.3.3-1 と 図 3.3.7-3 の 比 較 に よ り 、 建 設 ・ エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 の 損 失 が 相 対 的 に
大きくサービス産業が相対的に小さいという、産業別経済ロスへの相対的な傾向は
CCS 技 術 導 入 の 有 無 に よ り 大 き な 変 化 は な い 。 し か し 、 CCS 技 術 導 入 が 無 い 場 合 の 経
済 ロ ス 11.2%(2047 年 )は 、有 る 場 合 に 比 べ て 約 2 倍 増 加 の 20.6%(204 7 年 )ま で 増 加 す る 。
こ の こ と か ら 、 CCS 技 術 導 入 が 、 排 出 抑 制 時 の GD P ロ ス に 与 え る 影 響 が 大 き い こ と が
示唆される。
- 127 -
12%
2007
2017
2027
w.o.
CCS
w. CCS
2037
2047
8%
4%
0%
-4%
w. CCS
w. CCS
S450
w.o.
CCS
w. CCS
S500
S550
w.o.
CCS
w. CCS
S600
w.o.
CCS
S650
C C S 技 術 導 入 の 有 無 に 関 す る 世 界 GDP ロ ス の 比 較 (リ フ ァ レ ン ス 比 )
Y2047
Sector total
Y2037
Other sector
Y2027
Energy
sector
Y2017
Service
sector
Y2007
Transport
sector
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
-25.0
-30.0
-35.0
-40.0
-45.0
Construction
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
図 3.3.7-2
図 3.3.7-3
w.o.
CCS
Energyintensive
sector
GDP loss (%, relative to that in reference case)
20.6%
S 45 0・ C C S 導 入 無 ケ ー ス の 世 界 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 (リ フ ァ レ ン ス 比 )
(3) 家 庭 用 の 燃 料 種 間 の 代 替 性 に 関 す る 感 度 分 析
DEARS モ デ ル で は 、家 庭 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 は 、燃 料 種 別 (4 種 )に 価 格 弾 性 ・ G D P
弾性を用いて表現され、モデル内で内生的に決定される。そこで、家庭用の燃料種間
の 代 替 性 に 関 し て 、 CO 2 排 出 抑 制 ケ ー ス に お い て 、 家 庭 部 門 の 非 電 力 燃 料 種 間 (固 体 燃
料 ・ 液 体 燃 料 ・ 気 体 燃 料 )の 完 全 代 替 を 想 定 し た 場 合 (家 庭 用 非 電 力 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 合
計 に 関 し て 価 格 弾 性 ・ GDP 弾 性 で 定 式 化 す る 。 た だ し 、 電 力 に 関 し て は 従 来 通 り に 価
格 弾 性 ・ GDP 弾 性 で 表 現 す る )、 ど の よ う な GDP 影 響 が 見 ら れ る か を 評 価 し た 。
Case A を 3.3.1~3.3.4 節 と 同 様 の 家 庭 用 非 電 力 燃 料 種 代 替 想 定 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ
ー ス と し 、 Case B を 家 庭 用 の 非 電 力 燃 料 種 に 関 し て 完 全 代 替 を 認 め た 場 合 と す る 。 図
3.3.7-4 は 、排 出 抑 制 シ ナ リ オ 別 の 両 ケ ー ス の GDP ロ ス を Case A・リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス
比で示す。家庭用の非電力燃料種間を完全代替を認めることにより、最も厳しい排出
抑 制 ケ ー ス で あ る S4 5 0 ケ ー ス に お い て 、 11 .2 %(2047 年 )か ら 6.6%(204 7 年 )へ と 大 き く
GD P ロ ス が 低 減 す る 。 こ の こ と か ら 、 CO 2 排 出 抑 制 に お け る GDP ロ ス の 大 き さ が 、 特
- 128 -
に厳しい排出抑制ケースにおいて、家庭用の燃料種代替の想定によって大きな影響を
GDP loss (%, relative to that in Case Areference)
受けることが示唆される。
8%
Y2007
11.2%
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
6%
4%
2%
0%
-2%
図 3.3.7-4
Case A Case B Case A Case B Case A Case B Case A Case B Case A Case B
S450
S500
S550
S600
S650
家 庭 用 非 電 力 燃 料 種 代 替 に よ る 世 界 GDP ロ ス の 比 較 (Case A・ リ フ ァ レ ン
ス比)
(4) 産 業 ・ 運 輸 用 の 燃 料 種 間 の 代 替 性 に 関 す る 感 度 分 析
DEARS モ デ ル で は 、 産 業 ・ 運 輸 用 の エ ネ ル ギ ー 消 費 は 、 産 業 連 関 表 に 基 づ き 、 産 業
別 の 各 燃 料 種 の 投 入 係 数 (金 額 ベ ー ス )を 用 い て レ オ ン チ ェ フ 関 数 で 決 定 さ れ る 構 造 と
なっており、モデル内で内生的に決定される。そこで、産業・運輸用の燃料種間の代
替 性 に 関 し て 、 CO 2 排 出 抑 制 ケ ー ス に お い て 、 産 業 ・ 運 輸 用 の 非 電 力 燃 料 種 間 (固 体 燃
料 ・ 液 体 燃 料 ・ 気 体 燃 料 )の 完 全 代 替 を 想 定 し た 場 合 (産 業 ・ 運 輸 用 の 非 電 力 エ ネ ル ギ ー
消 費 額 合 計 の 投 入 係 数 に よ る レ オ ン チ ェ フ 関 数 を 想 定 )、ど の よ う な GDP 影 響 が 見 ら れ
るかを調べた。ただし、電力に関しては従来通りの投入係数で表現する。また、ある
産業において基準年において不使用の燃料種に関しては、その産業において将来も使
用されないという想定とした。
前 節 同 様 に 、 Case A を 3.3.1~3.3.4 節 と 同 様 の 産 業 ・ 運 輸 用 の 非 電 力 燃 料 種 代 替 想 定
の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス と し 、 Case C を 産 業 ・ 運 輸 用 の 非 電 力 燃 料 種 に 関 し て 完 全
代 替 を 認 め た 場 合 と す る 。 図 3.3.7-5 は 、 排 出 抑 制 シ ナ リ オ 別 の 両 ケ ー ス の GD P ロ ス
を Case A・ リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 で 示 す 。 産 業 ・ 運 輸 用 の 非 電 力 燃 料 種 間 を 完 全 代 替
を 認 め る こ と に よ り 、 最 も 厳 し い 排 出 抑 制 ケ ー ス で あ る S450 ケ ー ス に お い て 、
11.2%(2047 年 )か ら 2.8%(2047 年 )へ と 大 き く GDP ロ ス が 低 減 す る 。こ の こ と か ら 、CO 2
排 出 抑 制 に お け る GD P ロ ス の 大 き さ が 、 特 に 厳 し い 排 出 抑 制 ケ ー ス に お い て 、 産 業 ・
運輸用の燃料種代替の想定によって大きな影響を受けることが示唆される。
- 129 -
GDP loss (%, relative to that in Case Areference)
Y2007
11.2%
8%
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
6%
4%
2%
0%
-2%
Case A Case C Case A Case C Case A Case C Case A Case C Case A Case C
S450
図 3.3.7-5
S500
S550
S600
S650
産 業 ・ 運 輸 用 非 電 力 燃 料 種 代 替 に よ る 世 界 GDP ロ ス の 比 較 (Case A・ リ フ
ァレンス比)
図 3.3.7-6 は 、 CaseA・ リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス と 比 較 し た CaseC・ リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の
世 界 の 主 要 項 目 の 変 化 を 示 す 。 Case C で は 、 燃 料 代 替 以 外 の パ ラ メ ー タ は CaseA と 同
じ想定で、産業・運輸用の非電力の燃料種間の完全代替を考慮したことにより、一次
エ ネ ル ギ ー 量 と 最 終 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は と も に 増 加 し 、 結 果 と し て 世 界 全 体 の CO2 排
出量も増加する。一方、総消費額が増加し、総投資額が減少していることにより、世
界 GDP は 大 き く 変 化 し な い 。 こ れ は 、 人 口 ・ 資 本 ・ エ ネ ル ギ ー 量 で 定 義 さ れ た マ ク ロ
生産関数において、資本 K がエネルギー消費量 E によって代替されたと考えられる。
ま た 、Case A・リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス が SRES-B2 シ ナ リ オ の CO 2 排 出 パ ス と GDP パ ス に
ほ ぼ 一 致 す る こ と か ら 、 Case C・ リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の CO 2 排 出 量 は SRES-B2 シ ナ リ
オよりも多い。
50%
40%
30%
2007
10%
2017
0%
総投資
総消費
CO2
最終エネルギー消費量
一次エネルギー消費量
2027
割引後消費効用
-10%
図 3.3.7-6
1997
20%
GDP
変化率(Case A基準)
60%
2037
2047
C as e C・ リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の 世 界 全 体 の 主 要 項 目 の 変 化 (Case A・ リ フ
ァレンス比)
図 3.3.7-7 は 、S450 シ ナ リ オ 下 で の CaseC の 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 を CaseC リ フ ァ レ
ン ス 比 で 示 し た も の で あ る 。前 述 の 通 り 、CaseA・リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス に 比 べ 、C a s e C・
- 130 -
リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス の CO 2 排 出 量 は 大 き い に も 関 わ ら ず 、S450 ケ ー ス で の CaseC の 世
界 GDP 損 失 は 5.0%(Case C・ リ フ ァ レ ン ス 比 )と 、 CaseA(図 3.3.3-1)と 比 較 し て も 小 さ
い 。 こ の こ と か ら も 、 CO 2 排 出 抑 制 に お け る GDP ロ ス の 大 き さ が 、 燃 料 種 代 替 の 想 定
により大きな影響を受けることが示唆される。ただし、燃料種の代替がどこまで許容
されるかについては、部門ごとの技術特性等に依存することから、代替性の想定に関
図 3.3.7 -7
Sector total
Y2047
Other sector
Y2037
Energy
sector
Y2027
Service
sector
Y2017
Transport
sector
Y2007
Construction
sector
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
-6.0
-7.0
Energyintensive
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
しては今後の重要な課題となる。
C as eC・ S4 5 0 の 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 (Case C・ リ フ ァ レ ン ス 比 )
3.3.8 生 産 額 と 生 産 量 の 検 討
DEARS モ デ ル は 、地 域 別 ・産 業 別 の 生 産 額 な ら び に 貿 易 量 を 計 算 で き る( 百 万 ド ル 、
1997 年 価 格 )。こ れ を 生 産 量 に 置 き 換 え て 読 む こ と が で き れ ば 、数 字 の 含 意 を さ ま ざ ま
な角度から検討することができる。試みのひとつとして、鉄鋼と自動車を取り上げ、
その生産量を検討した。
(1) 鉄 鋼
鉄 鋼 の 生 産 額 を 粗 鋼 生 産 量 に 変 換 す る た め に は 、 ト ン /生 産 額 な る 原 単 位 が 必 要 に な
る 。 図 3.3.8-1 の よ う な 形 で そ れ を 想 定 し た 。 す な わ ち 、 日 本 の 現 在 の 値 ( 19 97 年 で
6.1 ト ン /千 ド ル ) を 参 考 に し 、 各 地 域 の 原 単 位 (ト ン /百 万 ド ル )が 204 7 年 で 7 .0 に 向 か
って、緩やかに収束していくものと想定した。これは値が小さいほど、粗鋼トン当た
りの生産額が高いことになる。つまり棒鋼などの低級製品を作る場合には、この値は
高いが、自動車用鋼板などを作ると、この値は小さくなる。現状で見ると、この値の
高 い の は 旧 ソ 連 、東 欧 な ど で あ る 。な お 南 米 の 値 は 非 常 に 小 さ い が 、こ れ も 7.0 に 向 か
って収束することとした。
図 3.3.8-2 は 、 上 記 の 鉄 鋼 原 単 位 シ ナ リ オ を 用 い て 粗 鋼 生 産 量 を 算 出 し た 。 た だ し 、
こ の 数 字 は 注 意 し て 読 む 必 要 が あ る 。 最 新 の 実 績 (鉄 鋼 統 計 要 覧 や IISI)は 2 0 05 年 ま で
得 ら れ て い る が 、 20 0 5 年 の 世 界 粗 鋼 生 産 量 は 、 11 億 ト ン に 達 し て い る 。 こ れ は こ こ
で の 2007 年 推 定 値 を 大 き く 上 回 っ て い る 。そ の 大 き な 原 因 は 、中 国 の 生 産 が 急 上 昇 し
- 131 -
た こ と で あ る 。 20 05 年 に 中 国 の 生 産 量 は 3.7 億 ト ン に 達 し た (1 99 7 年 が 1 .2 億 ト ン )。
1997 年 か ら 2 00 5 年 の 年 平 均 伸 び 率 は 33% で あ る 。こ れ の 伸 び は 過 去 の 鉄 鋼 生 産 ト レ
ンドから見ても驚異的であり、本モデルでは均衡発展経路を求める構造となっている
ので、当然のことながら表現できない。より近時点の実績値が得られるように、外生
的な想定を行うことは今後の課題としてあげられる。
こ の よ う な 分 析 を 行 う こ と の メ リ ッ ト は 2 つ あ る 。第 1 に 、生 産 額 を 生 産 量 に 置 き
換えることで、エネルギー消費と生産額との関係を、プロダクトミックスと技術特性
に分けて、分析できることである。
E=
E G
⋅ ⋅X
G X
E:エ ネ ル ギ ー 消 費 量 、 G:生 産 量 、 X:生 産 額
産業連関表に基づく鉄鋼部門の生産額 X は粗鋼生産額そのものではなく、鉄鋼部門財
全 体 の 生 産 額 が 考 慮 さ れ て お り 、 G/X に は 、 物 理 量 よ り む し ろ 、 プ ロ ダ ク ト ミ ッ ク ス
(例 : 棒 鋼 と 薄 板 )の 変 化 が 反 映 さ れ て い る 。 E/G は 技 術 的 な 数 字 (例 : コ ー ク ス 比 )と 解
釈できる。したがってこの 2 つの変化を明示的に取り入れることができる。第 2 に、
生産量で予測値を表すことによって、その分野の専門家のコメントを入れやすくでき
ることである。例えば、鉄鋼生産額ではなく粗鋼トン数で示すと、専門家にとっては 、
将来のイメージが持ちやすくなり、有用なコメントを得ることができるだろう。
原単位(粗鋼トン/百万ドル)シナリオ
35
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
30
25
20
15
10
5
0
1997
図 3 .3 .8 -1
2007
2017
2027
2037
2047
鉄 鋼 部 門 の 原 単 位 (粗 鋼 ト ン /千 ド ル )の 想 定
- 132 -
その他
オセアニア
中東
アセアン
インド
中国
日本
南アフリカ
中央アフリカ
北アフリカ
旧ソ連
東欧
西欧
南米
ブラジル
中米
カナダ
米国
1400
粗鋼生産量(千トン)
1200
1000
800
600
400
200
0
1997
図 3 .3 .8 -2
2007
2017
2027
2037
2047
地 域 別 の 粗 鋼 生 産 量 (Case C・ リ フ ァ レ ン ス )
(2) 自 動 車
DEARS モ デ ル の 輸 送 機 器 部 門 の 生 産 額 を を 自 動 車 生 産 台 数 に 変 換 す る た め に は 、台 /
生 産 額 な る 原 単 位 が 必 要 に な る 。 こ こ で は 、 図 3.3.8-3 の よ う な 形 で そ れ を 想 定 し た 。
す な わ ち 、日 本 の 現 在 の 値( 199 7 年 で 0 .3 台 /千 ド ル )を 参 考 に し 、各 地 域 の 原 単 位 が
2047 年 で 0.3 に 向 か っ て 、緩 や か に 収 束 し て い く も の と し た 。た だ し 鉄 鋼 の 場 合 よ り 、
収束度は緩やかにしてある。これは、自動車という製品の多様性を反映している。こ
れは値が小さいほど、台当たりの生産額が高いことになる。しかし地域ごとの変動は
か な り 大 き く 、そ の 数 字 の 解 釈 (輸 送 機 器 の 地 域 で の 生 産 内 容 を 含 め て )に は 慎 重 さ が 必
要だろう。例えば、アフリカなどの数字が低くなっている。
米国
カナダ
中米
ブラジル
南米
西欧
東欧
旧ソ連
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
日本
中国
インド
アセアン
中東
オセアニア
その他
0.8
自動車原単位(台/千ドル)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
1997
図 3 .3 .8 -3
2007
2017
2027
2037
2047
輸 送 機 械 部 門 の 自 動 車 原 単 位 (台 /千 ド ル )の 想 定
- 133 -
350
300
百万台
250
200
150
100
50
0
1997
図 3 .3 .8 -4
2007
2017
2027
2037
2047
その他
オセアニア
中東
アセアン
インド
中国
日本
南アフリカ
中央アフリカ
北アフリカ
旧ソ連
東欧
西欧
南米
ブラジル
中米
カナダ
米国
地 域 別 の 自 動 車 生 産 量 (Case C・ リ フ ァ レ ン ス )
図 3.3.8-4 は 、上 記 の 自 動 車 原 単 位 シ ナ リ オ を 用 い て 自 動 車 生 産 量 を 算 出 し た 。た だ
し 、こ の 数 字 は 注 意 し て 読 む 必 要 が あ る 。最 新 の 実 績 で あ る 2 00 5 年 の 世 界 自 動 車 生 産
台 数 (世 界 自 動 車 統 計 年 報 )は 、64 00 万 台 と な っ て い る 。こ こ で の 2 007 年 推 定 値 は 870 0
万 台 で あ り 、や や 高 い 可 能 性 が 大 き い 。例 え ば 、ア メ リ カ の 20 0 4 年 の 生 産 台 数 は 120 0
万 台 だ が 、 こ こ で の 2 00 7 年 の 計 算 値 は 1 80 0 万 台 弱 と な っ て い る 。
鉄鋼部門と同様に、輸送機械部門においても、より近時点の実績値が得られるよう
に、外生的な想定を行うことは今後の課題である。
3.4
Non-CO 2 GHG の 排 出 お よ び 緩 和 策 の 評 価
3.4.1 は じ め に
地 球 温 暖 化 の 影 響 は CO 2 が 最 も 寄 与 が 大 き い と い わ れ て お り 、 今 後 も そ の 対 策 が 必
要であることは、既に周知の事実である。そのため、今後、各国の政府レベルや企業
等による対策を講じるために、将来的な温暖化の予測が重要な課題となっており、こ
れまで、各国の研究者がモデル分析等によるその対策を勘案した分析・評価が行われ
て い る 。 他 方 、 CO 2 以 外 の 温 暖 化 要 因 で あ る Non-CO 2 の 影 響 に つ い て も 、 近 年 着 目 さ
れ て お り 、そ の 定 義 は 京 都 議 定 書 で 定 義 さ れ て い る N 2 O( 亜 酸 化 窒 素 )、CH 4( メ タ ン )、
ハ イ ド ロ フ ル オ ロ カ ー ボ ン 類 ( HFCs )、 パ ー フ ル オ ロ カ ー ボ ン 類 ( PFCs ) 六 フ ッ 化 硫
黄 ( SF 6 ) の 温 暖 化 へ の 寄 与 が 重 要 視 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 現 在 の と こ ろ 、 CO 2
と 同 様 な モ デ ル 分 析 に よ る Non-CO 2 の 将 来 予 測 に 関 す る 分 析 事 例 は 少 な く 、 こ れ ら の
ガスのインベントリーの整理や削減オプション用いた削減ポテンシャルの評価が
IPCC、 EPA 及 び ABARE 等 の 数 少 な い 研 究 機 関 に よ っ て 行 わ れ て い る 程 度 で あ る 。
Non-CO 2 は 、CO 2 に 比 し て 排 出 量 は 小 さ い が 温 暖 化 係 数 が 大 き く 、ラ イ フ タ イ ム が 長
い た め 、 CO 2 と 同 様 に 削 減 す る 必 要 性 を 生 じ る 。 各 Non-CO 2 の ラ イ フ タ イ ム に つ い て
は 、IPCC TAR に よ る と 、CH 4( 8.4 年 )、N 2 O( 1 20 年 )、HFCs( ~ 2 6 0 年 )、PFCs( >50,000
- 134 -
年 )、 SF 6 ( 3,2 0 0 年 ) で あ り 、 当 該 ガ ス に よ る 温 暖 化 影 響 の 将 来 へ の 持 続 性 が 懸 念 さ れ
各温暖化事象への影響を必ずしも無視することはできないと考えられている
1)
。
Phoenix プ ロ ジ ェ ク ト の 中 で は 、主 に CO 2 排 出 抑 制 に 関 し 、社 会 的 な 費 用 負 担 、経 済
活動及び排出された濃度に対する地球全体の影響に関して分析している。しかしなが
ら 、 将 来 の Non-CO 2 の 削 減 オ プ シ ョ ン が 十 分 な 評 価 精 度 の も と 、 考 慮 さ れ る こ と に な
れ ば 、 現 状 の CO 2 単 独 の 評 価 よ り も 、 さ ら に 緩 和 さ れ る 可 能 性 が あ る 。 す な わ ち 、 同
じ CO 2 削 減 費 用 の も と 、 温 暖 化 影 響 を 軽 減 す る 追 加 的 な 効 果 が 期 待 で き る 可 能 性 が あ
る。
従 っ て 、 こ の よ う な 背 景 か ら 、 本 研 究 で は Non-CO 2 に 対 す る 将 来 排 出 量 及 び 削 減 費
用 を 与 え た 場 合 の 削 減 パ ス の 明 示( 削 減 ポ テ ン シ ャ ル )に 関 す る 分 析 を 行 い 、CO 2 削 減
に対する追加的な削減ポテンシャルがどの程度なのかを検討するという意味での評価
を 行 っ た 。 な お 、 当 該 分 析 に お い て は 、 CO 2 と は 異 な り Non-CO 2 の 将 来 予 測 に 関 連 す
るデータについて詳細な分析方法ならびに分析データを提供している研究成果は殆ど
存在しないなどの制限があり、また、大気中での化学変化や土壌へのシンクなど不確
実 な 部 分 も あ る た め 、 一 般 的 に は 、 未 だ CO 2 と 同 様 の 分 析 精 度 は 期 待 す る こ と は 難 し
いと考えらており、本研究においても、過去のトレンドを将来に延長して分析する方
法 を 利 用 し 、そ の 結 果 に つ い て は 、既 存 の 各 排 出 シ ナ リ オ( IPCC-SRES )の 結 果 と 比 較
することによって、その分析結果の有意性を確認することに留めた。
3.4.2
Non-CO 2 排 出 量 の 予 測
こ れ ま で の Phoenix プ ロ ジ ェ ク ト の 研 究 成 果 に お い て は 、Non-CO 2 排 出 量 予 測 は 、各
排 出 シ ナ リ オ ( IPCC-SRES ) か ら 提 供 さ れ る 人 口 、 GDP お よ び 土 地 利 用 変 化 が 主 な
Driving Force と さ れ 、 平 成 1 7 年 度 の 研 究 成 果 に お い て は SRES-B2 シ ナ リ オ に 基 づ い
た評価を実施した
32)
。本研究においては、さらに、他の経済成長等の変化に伴うシナ
リ オ ( 本 研 究 で は 、 A1FI を 参 照 ) か ら 、 こ れ ま で と 同 様 な 評 価 を 行 い 、 B2 と の 結 果 を
合 わ せ て 比 較 し な が ら 併 記 す る こ と と し た 。 な お 、 本 研 究 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予
測 は 、 Phoenix1 8 地 域 ( 世 界 の 各 エ リ ア を 1 8 地 域 に 分 割 し た 地 域 区 分 で あ る 。 こ れ は 、
Phoenix プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 、 共 通 な 評 価 対 象 地 域 と な っ て い る 。 な お 、 詳 細 に つ い
て は 、 Appendix 4.を 参 照 さ れ た い 。) ご と に 2 10 0 年 ま で の 評 価 を 行 い 、 各 温 暖 化 影 響
評 価 に 温 暖 化 指 標 等 の デ ー タ を 供 与 す る こ と が 最 終 的 な 目 的 で あ る 。 各 国 の Non-CO 2
排 出 量 予 測 に つ い て 、 報 告 さ れ て い る 事 例 は 少 な い が 、 こ こ で は 、 SRES シ ナ リ オ を 参
照 デ ー タ と し て 、 EPA の 評 価 方 法 に 準 拠 し た 方 法 に よ り 、 各 排 出 部 門 別 に 整 理 し た 。
こ こ で 、 本 研 究 で 対 象 と す る B2 及 び A1FI シ ナ リ オ の 説 明 を し て お く 。
B2 シ ナ リ オ フ ァ ミ リ ー は 、 経 済 、 社 会 及 び 環 境 の 持 続 可 能 性 を 確 保 す る た め の 地 域
的 対 策 に 重 点 が 置 か れ る 世 界 を 描 い て い る 。世 界 の 人 口 は A2 よ り も 緩 や か な 速 度 で 増
加 を 続 け 、 経 済 発 展 は 中 間 的 な レ ベ ル に 止 ま り 、 B1 と A1 の 筋 書 き よ り も 緩 慢 だ が 、
より広範囲な技術変化が起こるというものである。このシナリオも環境保護や社会的
公正に向かうものであるが、地域的対策が中心となる。
- 135 -
次 に 、 A1 シ ナ リ オ フ ァ ミ リ ー は 、 高 度 経 済 成 長 が 続 き 、 世 界 人 口 が 21 世 紀 半 ば に
ピークに達した後に減少し、新技術や高効率化技術が急速に導入される未来社会を描
いている。主要な基本テーマは、地域間格差の縮小、能力強化(キャパシティービル
ディング)及び文化・社会交流の進展で、1人当たり所得の地域間格差は大幅に縮小
す る と い う も の で あ る 。 A1 シ ナ リ オ フ ァ ミ リ ー は , エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム に お け る 技 術
革新の選択肢の異なる三つのグループに分かれる。本研究では、化石エネルギー源重
視 ( A1FI) に 着 目 し て 分 析 を 行 っ た 。
こ こ で 、 Non-CO 2 排 出 量 予 測 の 分 析 フ ロ ー を 図 3.4.2-1 に 示 す 。
○評価方法
○入力データ(Non-CO2排出量)
・ALGAS
(China, India, Korea, Myanmar Pakistan, Viet Nam)
・National Communication
(Brazil, Venezuela)
・UNFCCCデータベース(その他の国)/EPA
石油・天然ガス
1)2000~2025年までの予測
・各地域の石油・天然ガスの消費予測に従う
2)2025~2100年までの予測
・EPAのデータとGDP/cap.のデータとを近似
・基準年における石油・天然ガス消費量×排出
原単位による分配
1時点(1990年,1992年,1994年,1995年,1999年,2000
年)のNon-CO2排出量データの整備(各地域単位)
・各地域の対象国数と分析可能な国数が合わない
→地域の人口に比例して拡張する。
ベースラインの将来予測(2000~2100年)
(EPAの評価手法に準拠)
○評価地域(世界52地域)
・欠損地域(5地域)
(Other Oceania, North Korea Mongolia, Brunei,
Chinese Taipei, Saudi Arabia)
Non-CO2予測(EPA)
排出強度の推定
↓
基準データ×排出強度
↓
排出量予測
石油・天然ガスの生産量・消費量予測(EIA)
天然ガス及び原油生産量(IEAデータベース)
石炭の消費量予測(EIA)
石炭
1)2000~2025年までの予測
・先進国:各地域の石炭の消費予測に従う
・途上国:EPAの予測結果に従う
2)2025~2100年までの予測
・EPAのデータとGDP/cap.のデータとを近似
Non-CO2予測(EPA)
SRES-B2データ(人口,GDP)
産業・交通
1)2000~2025年までの予測
・各地域のセクター別の最終エネルギー消費予
測に従う
2)2025~2100年までの予測
・1)のデータとGDP/cap.のデータとを近似
最終エネルギー消費量予測(EIA)
腸内発酵
1)2000~2020年までの予測
・各地域の食肉・乳製品の消費予測に従う
(排出量(A)を算出)
2)2025~2100年までの予測
・EPAの予測値と排出量(A)とを近似
食肉と乳製品の消費予測(IFPRI)
各種原単位(Revised IPCC guideline)
Non-CO2予測(EPA-発展途上国/先進国)
土壌
1)化学肥料由来:消費量,穀物面積,GDP,人
口による回帰分析
2)穀物由来:穀物生産量予測(2015年まで)及び
原単位による(2020年以降は、腸内発酵と同じ)
3)家畜由来:予測した家畜数に原単位を乗じる
(予測方法は腸内発酵と同じ)
・1)~3)の合計値とEPAの予測値との近似
肥料、土地面積、作物消費量データ(FAOSTAT)
GDP及び人口(IEAデータベース)
穀物類の将来消費予測(FAPRI)
SRES-B2データ(人口,GDP, 土地面積)
稲作
SRES-B2データ(人口,GDP)
・人口変化に比例
埋立・下水処理
・EPAの予測値(2020年までのデータ)と
GDP/cap.による近似
Non-CO2予測(EPA-発展途上国/先進国
・初期年(2000年)における調整
→初期時点と合うように全体を調整する
○既存評価(EPA)との比較
ベースラインの将来予測(2000~2100年)
1) Phoenix 18地域に整理
2) SRES 4地域に整理
EPAデータ(CH4及びN2O)との比較+調整
図 3 .4 .2 -1 分 析 方 法 ( フ ロ ー 図 )
3.4.3
Non-CO 2 排 出 量 予 測 の 評 価 方 法
次 に 、 Non-CO 2 排 出 量 予 測 に 関 す る 分 析 に あ た っ て は 、 以 下 の 事 項 を 仮 定 し た 。
- 136 -
(1) 基 準 年 を 20 0 0 年 と し 、SRES の 各 モ デ ル 間 で 初 期 値 が 同 一 の 排 出 量 で あ る 点 を 考 慮
し 、 本 評 価 に お い て も SRES シ ナ リ オ の 4 地 域 の 各 初 期 値 デ ー タ と 評 価 さ れ た
Non-CO 2 排 出 量 予 測 に 関 し て 、 4 地 域 ご と に 積 み 上 げ た と き の 初 期 値 デ ー タ が 一 致
するものとする。
(2) Phoenix18 地 域 に 含 ま れ る す べ て の 国 の デ ー タ が 揃 っ て い る わ け で は な い 。例 え ば 、
1 国 あ る い は 2 国 の デ ー タ し か 存 在 し な い 地 域 を Pheonix18 地 域 レ ベ ル に 各
Non-CO 2 ( CH 4 及 び N 2 O) 排 出 量 を 拡 張 す る 場 合 、 当 該 地 域 に 含 ま れ る 人 口 に 比 例
す る も の と し て 扱 っ た 。 こ れ は 、 人 口 に よ る 拡 張 に よ っ て 、 SRES の 初 期 値 デ ー タ
との差が小さくなったことによる。
(3) CH 4 及 び N 2 O の 将 来 予 測 シ ナ リ オ に つ い て は 、EPA の 方 法 に 準 拠 し た 。な お 、E P A
は EIA 等 の 他 の 研 究 機 関 に よ る デ ー タ を 利 用 し て 、 将 来 予 測 を 行 っ て お り 、 本 研
究 に お い て も 、同 様 の デ ー タ を 用 い る が 、当 該 デ ー タ が 2 025 年 や 20 20 年 ま で し か
デ ー タ 存 在 し て い な い ( い ず れ も 、 本 評 価 の 対 象 期 間 で あ る 2 100 年 ま で の 予 測 デ
ー タ は 存 在 し な い 。 ) 2 ) 3 ) 。 従 っ て 、 本 評 価 に お い て は 、 20 2 5 年 以 降 の シ ナ リ オ に
つ い て は 、 Kurosawa の Non-CO 2 の 分 析 方 法 を 参 考 に 、 20 20 年 ま で の GDP あ る い
は 人 口 と 排 出 量 の 関 係 を 回 帰 分 析 し 、そ れ に よ っ て 各 ガ ス の 排 出 量 を 将 来 へ 延 長 し
た
4)
。
(4) 次 に 、 HFCs、 PFCs 及 び SF 6 に つ い て は 、 IPCC-SRES シ ナ リ オ に お い て も 、 シ ナ リ
オ 別 の 評 価 は 行 っ て い な い 。 従 っ て 、 本 研 究 に お い て も 、 SRES シ ナ リ オ の 地 域 ご
と の 排 出 量 を Pheonix18 地 域 ご と に GDP/cap.に よ っ て 配 分 し た
4)
。SRES に よ れ ば 、
こ れ ら の ガ ス の 特 性( 少 量 に 大 気 に 放 出 さ れ 、長 寿 命 で あ る 。)に つ い て は 言 及 し
て お ら ず 、モ ン ト リ オ ー ル 議 定 書 の み 考 慮 し た 排 出 と な っ て い る 。各 ガ ス の 将 来 的
な 予 測 に つ い て は 、HFCs に つ い て は ト レ ン ド に 基 づ い て 評 価 さ れ 、PFCs は ア ル ミ
ニ ウ ム 生 産 や 半 導 体 で あ る 。 ま た 、 SF 6 に つ い て は 、 ガ ス 絶 縁 体 や マ グ ネ シ ウ ム 鋳
造 所 か ら 排 出 さ れ る こ と に な っ て い る 。本 研 究 で は 、以 上 の 点 を 考 慮 す る と と も に 、
こ れ ら の 排 出 量 予 測 に つ い て は 、総 温 暖 化 ガ ス 排 出 量 に 対 し て も 影 響 が 小 さ い も の
と 考 え ら れ る た め 、GDP/cap.に よ る 配 分 に 対 し て 十 分 な 妥 当 性 が あ る も の と 判 断 し
て分析を行った。
次 に 、 Non-CO 2 排 出 量 に 関 す る デ ー タ ベ ー ス に つ い て 述 べ る 。
①
UNFCCC デ ー タ ベ ー ス
5)
各 国 か ら 提 出 さ れ た National Communication を も と に UNFCCC が Non-CO 2 に 関 す る
デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し て い る 。な お 、こ の デ ー タ ベ ー ス の 特 徴 は 以 下 の と お り で あ る 。
デ ー タ 期 間 : 19 90~ 20 0 2 年 ( 20 0 5 年 時 点 に お け る 最 新 デ ー タ )
対 象 ガ ス : CO 2 , CH 4 , N 2 O, PFCs, HF Cs, SF 6 , CO, NOx , NMVOCs, SOx
対 象 国 数 : Annex-I( 最 大 3 9), Non-Annex I(最 大 10 3 )
注)中国、インド及びブラジルなどの発展途上国については、データベース化され
ていない。
排 出 部 門 数 : 大 分 類 (11), 小 分 類 (36)
- 137 -
なお、先進国については、排出データがある程度整備されているが、フロンガス類
の発生部門を特定していない、また、発展途上国についてはデータが未整備であり、
フ ロ ン ガ ス 類 の デ ー タ が な く 、 そ の 他 の CH 4 及 び N 2 O に つ い て も 対 象 期 間 の 1 時 点 や
2 時点程度しかデータが存在していない。
②
National Co mmunication 6 ) 7 )
ブ ラ ジ ル 及 び ベ ネ ズ エ ラ の CH 4 及 び N 2 O 排 出 量 に つ い て は 、National Communicatio n
からデータを引用する。
③
ALGA S 8 ) 9 ) 1 0 ) 1 1 ) 1 2 ) 1 3 )
その他、1)及び2)のデータほか、データが欠損している中国、インド、韓国、
ミ ヤ ン マ ー 、 パ キ ス タ ン 及 び ベ ト ナ ム に つ い て は 、 ALGA S か ら デ ー タ を 引 用 す る 。
④
EPA 1 4 )
各 地 域 の デ ー タ 整 備 に お い て 、 EPA と EMF21 が 整 備 し た デ ー タ の 一 部 を 活 用 し て 、
不 足 し て い る デ ー タ 等 の 調 整 を 行 う 。 な お 、 こ の EPA の デ ー タ に は 後 述 す る 各 地 域 及
び各部門からの削減コスト曲線に関するデータも含まれている。
以 上 の デ ー タ を 用 い て 、 20 00 年 時 点 の 各 Non-CO 2 排 出 量 を 各 地 域 及 び 排 出 部 門 別 に
評 価 し た 。こ こ で 、緩 和 策 対 応 排 出 部 門 と 各 デ ー タ ベ ー ス と の 関 係 を 表 3.4.3-1 に 示 す 。
な お 、 こ の 排 出 区 分 は 、 後 述 す る 削 減 ポ テ ン シ ャ ル の 評 価 に お い て 、 MIT の Hy ma n ら
が 評 価 し た Non-CO 2 の 削 減 評 価 区 分 を 参 考 に し て 整 理 し た も の で あ る
- 138 -
15)
。
表 3 .4 .3 -1 各 種 デ ー タ と 緩 和 策 対 応 排 出 部 門 の 対 応 関 係
対象ガス
緩和策対応排出部門
UNFCCC データベース*1
EPA に準拠した評価区分
Rice Cultivation
Prescribed Burning of savannas
Field Burning of Agricultural Residues
農業
Agriculture(大)
Enteric Fermentation
(Agric)
Manure Management
Agricultural Soil
Land Use Change and Forestry
Land Use Change and Forestry(大)
Energy Industries(小)
Manufacturing Industries and
Construction(小)
Process
(Energy
Industries
+
Manufacturing Industries and Construction +
エネルギー多消費型産業
Industrial Processes
(Enint)
CH4・N2O
Industrial
Chemical Industry
Industrial Processes + Chemical Industry + Metal
Production)
Metal Production
Other Sectors (fuel combustion)(小)
Other Industrial Process (Other Sectors (fuel
その他産業及びサービス
(Othind)
Other (fuel combustion)(小)
Other Production
combustion) + Other (fuel combustion) + Other
Production)
Oil and Natural Gas
Oil*2
天然ガス (Gas)
Oil and Natural Gas
Gas*2
石炭 (Coal)
Solid Fuels (Fugitive Emissions)(小)
Coal
最終需要
Solid Waste Disposal on Land
Landfill
Wastewater Handling
Wastewater
Transport
Transport
石油精製 (Refoil)
(Final Demand)
*1()内 の 大 及 び 小 は 、 UNFCCC デ ー タ ベ ー ス で の 大 分 類 及 び 小 分 類 を 表 わ す 。
*2 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 (GJ 単 位 )×排 出 原 単 位 で 比 例 配 分 す る 。
表 3.4.3-1 の 排 出 区 分 に 従 っ て 、20 0 0 年 時 点 の 各 Non-CO 2 排 出 量 を 整 理 し 、こ れ ら の
データを以下の方法に基づいて将来予測を行うこととした。
a.
農 業 - 稲 作 ( Rice Cu ltivation)
稲 作 か ら の Non-CO 2 排 出 量 予 測 に つ い て は 、 当 該 地 域 の 人 口 に 比 例 す る も の と し て
評価した
b.
16)
。
農 業 - 草 原 へ の 焼 入 ( Prescribed Burning of savannas)
こ こ で の Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、 Masui ら の 評 価 方 法 を 参 考 に し て 、 SRES シ ナ
リオの土地利用変化の評価結果をもとに評価した。すなわち、バイオマス燃焼による
Non-CO 2 排 出 量 は 、 牧 草 地 の 面 積 に 応 じ て 変 化 す る も の と 仮 定 し て 評 価 し た
た 、 基 準 年 に お け る 各 地 域 の 牧 草 地 面 積 は 、 FAOSTAT よ り デ ー タ を 引 用 し た
- 139 -
17)18)
19)
。ま
。
c.
農 業 - 農 業 廃 棄 物 の 燃 焼 ( Field Bu rnin g of Agricultural Residues)
b.と 同 じ 方 法 で 評 価 し た 。 但 し 、 参 照 す る 土 地 利 用 区 分 は 耕 地 面 積 で あ る 。
d.
農 業 - 腸 内 発 酵 ( Enteric Fermentation)
EPA で は 、腸 内 発 酵 に よ る CH 4 の 排 出 量 予 測 は 、家 畜 数 の 変 化 と し て 評 価 し て い る 。
家畜数の将来予測については、食肉及び乳製品の生産率から評価されおり、これら生
産 率 の 将 来 予 測 に つ い て は 、 IFPRI に よ っ て 地 域 区 分 が 粗 い も の の 2 02 0 年 ま で 評 価 し
たデータがある
20)
。 こ こ で は 、 2 02 0 年 ま で の 生 産 率 は IFPRI の デ ー タ を 利 用 し 、 2020
年 か ら 2100 年 ま で の 生 産 率 は Masui ら の 論 文 を 参 照 に 、各 家 畜 数 は 牧 草 地 の 面 積 変 化
18)
に応じて変化するものとして評価した
。ここで、食肉対象家畜は、牛、山羊、らく
だ 、 豚 、 羊 、 馬 、 ま た 乳 製 品 対 象 家 畜 は 乳 牛 で あ り 、 こ れ ら の 腸 内 発 酵 に よ る CH4 の
排 出 原 単 位 は 、 Revised 1996 IPCC guideline に 従 っ て ボ ト ム ア ッ プ に よ り 評 価 す る こ と
ができる
21)
。なお、排出原単位は将来にわたり経年変化はないものとして扱う。さら
に、評価した排出量は、不確定要素が大きい土地利用変化に関するデータを用いてい
る た め 、こ こ で は EPA の 評 価 結 果 と 整 合 性 を 持 た せ る た め に 、EPA の 2 02 0 年 ま で の ト
レンドに合わせるように調整を行った
e.
14)
。
家 畜 糞 尿 ( Manure Management)
家 畜 糞 尿 に よ る Non-CO 2 排 出 量 は 、 腸 内 発 酵 と 同 じ 方 法 で 推 定 し た 。 な お 、 こ の 場
合は鳥類の糞尿も考慮する必要がある。
f.
土 壌 ( Agricultural Soil)
EPA に よ る 土 壌 か ら の N 2 O ガ ス 排 出 に つ い て は 、 化 学 肥 料 、 窒 素 固 定 植 物 、 農 作 物
の残渣及び間接排出を対象としている
16)22)
。
ま ず 化 学 肥 料 の 将 来 予 測 に つ い て は 、 Til man ら の 肥 料 に 関 す る 将 来 予 測 に 関 す る 分
析 を 参 考 に し た 。 Til man ら は 、 過 去 の 肥 料 ( 窒 素 、 リ ン 、 カ リ ウ ム ) の 生 産 量 と 人 口
及 び 経 済 指 標 と の 関 係 が 指 数 関 数 的 に 一 致 す る こ と を 見 出 し て お り 、 20 50 年 ま で の 肥
料に関する分析を行っている
23)
。 こ こ で は 、 Masu i ら の 分 析 方 法 も 考 慮 し て 、 さ ら に
耕地面積を含めた回帰分析を行った
18)
。また肥料使用量の将来予測について、過去の
デ ー タ を 用 い て 行 う 方 法 は 、 USDA の 将 来 の 食 糧 予 測 に お い て も 行 っ て い る
26)
。従っ
て、ここでも対象地域における今後の肥料の消費が過去のトレンドから表現できると
仮 定 し 、FAOSTAT よ り 1 96 1 年 ~ 20 00 年( 途 上 国 に つ い て は 19 7 1 年 ~ 200 0 年 )ま で の
窒 素 肥 料 生 産 量 に 対 し て 年 、 人 口 及 び 1 人 あ た り GDP を 用 い て 回 帰 分 析 を 行 い 、 各 説
明変数の係数を求め将来予測を行った
19)24)25)
。なお、これらの係数は地域固有の係数
である。
次 に 、 窒 素 固 定 食 物 か ら の N2O 排 出 に つ い て 検 討 す る 。
EPA で は 、 窒 素 固 定 食 物 を 大 豆 と 食 用 種 の 2 つ に つ い て 検 討 を 行 っ て い る 。 こ こ で
は、この2つの食物について以下のような方法で将来予測を行った。
ま ず FAOSTAT よ り 、2 0 0 0 年 の 大 豆 及 び 食 用 種 の 生 産 量 デ ー タ を 用 い 、続 い て 、FAPR I
に よ り 2015 年 ま で の 将 来 予 測 デ ー タ を 用 い て 、 将 来 の 生 産 量 を 求 め た
19)27)
。 20 20 年
以 降 に つ い て は 、耕 地 面 積 に 応 じ て 収 穫 量 が 変 化 す る も の と し て 、SRES シ ナ リ オ の 耕
地面積の土地利用変化のデータを用いて将来予測を行った
- 140 -
17)
。
Revised 1996 IPCC guideline に よ れ ば 、 こ れ ら の 作 物 か ら の N 2 O 排 出 量 は 、 収 穫 量 を
乾 燥 重 量 に 変 換 し( 含 水 率 1 5% と す る 。)、こ の う ち 3% が 揮 発 し 、さ ら に 1 .2 5% が N 2 O
になるとしている
21)
。
ま た 農 作 物 の 残 渣 に つ い て は 、 EPA で は 窒 素 固 定 作 物 に 加 え ト ウ モ ロ コ シ 及 び 麦 を
対象としている。分析方法については、トウモロコシと麦をさらに加えるだけで基本
的 に は 同 じ で あ る 。 但 し 、 残 渣 か ら 揮 発 す る 窒 素 の 割 合 が 1 .5% と 窒 素 固 定 作 物 よ り も
低く見積もられている
21)
。
さ ら に 動 物 の 排 泄 物 か ら の N 2 O 排 出 量 は 、 D.で 推 定 さ れ た 家 畜 数 に 家 畜 か ら の 糞 尿
中 の 窒 素 分 に よ る N 2 O 排 出 原 単 位 を 乗 じ る こ と に よ っ て 求 め ら れ る 。 Revised 1996
IPCC guideline に よ れ ば 、こ の 原 単 位 は 地 域 に よ っ て 変 化 す る
21)
。こ れ ら の 直 接 的 な 排
出量のほか、これらの要因を排出源とする溶脱等により窒素が土壌中から逸脱し、そ
の 後 、 化 学 変 化 を 経 て N2O に 変 化 す る 間 接 的 な 排 出 が あ る
16)22)
。
最 後 に 、 こ れ ら の 推 定 さ れ た 排 出 量 に つ い て は 、 EPA の 評 価 結 果 と 整 合 性 を 持 た せ
る た め に 、 EPA の 評 価 し た 結 果 と ト レ ン ド が 合 う よ う に 調 整 を 行 っ た
g.
14)
。
土 地 利 用 変 化 と 森 林 ( Land Use Change and Forestry)
Revised 1996 IPCC guideline に よ る と 、 土 地 利 用 変 化 に よ る Non-CO 2 排 出 量 は 、 バ イ
オマス系廃棄物の焼却処分や腐敗であるとしている
21)
。従 っ て 、こ こ で は 、SRES シ ナ
リオの土地利用変化(牧草地及び森林面積の合計)に反比例するとして評価した。
h.
産 業 プ ロ セ ス ( Industrial Process)
EPA で は 、 産 業 プ ロ セ ス か ら の Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、 過 去 の ト レ ン ド か ら 排
出 率 を 与 え て 評 価 し て い る( 例 え ば 、直 近 の 排 出 率 が あ る 一 定 期 間 同 じ で あ る と 仮 定 )。
ここでは、各エネルギーの将来予測のデータとして、産業分野でのエネルギー消費量
を EIA の デ ー タ を 用 い て 評 価 し た
28)
。20 2 5 年 以 降 に つ い て は 、EPA の 分 析 結 果 の ト レ
ン ド ( Non-CO 2 排 出 量 と GDP/cap.の 関 係 を 評 価 し 、 GDP/cap.に よ り 延 長 す る 。)、 に 合
わせて延長して推計した
i.
14)
。
そ の 他 の 産 業 プ ロ セ ス ( Other Industrial Process)
そ の 他 の 産 業 プ ロ セ ス に つ い て は 、 h .と 同 じ 方 法 で 分 析 を 行 っ た 。
j.
石 油 ( Oil) ・ 天 然 ガ ス ( Gas: Gas) ・ 石 炭 ( Coal: Coal)
EPA で は 、 各 エ ネ ル ギ ー 源 か ら の Non-CO 2 排 出 量 に つ い て 、 EIA に よ る 生 産 量 あ る
いは消費量の将来予測のデータを用いて評価している
28)
。ここでの評価においても、
EPA の 方 法 に 準 拠 し た 分 析 を 行 っ た 。 但 し 、 産 業 プ ロ セ ス で も 述 べ た よ う に 2 02 5 年 以
降 に つ い て は 、 EPA の 分 析 結 果 の ト レ ン ド ( Non-CO 2 排 出 量 と GDP/cap.の 関 係 を 評 価
し 、 GDP/cap.に よ り 延 長 す る 。) に 合 わ せ て 調 整 し た 。 ま た 、 UNFCCC の デ ー タ ベ ー ス
においては石油と天然ガスが集約したデータのみが示されているので、エネルギー源
別 Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、石 炭・天 然 ガ ス の 各 エ ネ ル ギ ー 生 産 量 に IPCC に よ る 排
出原単位を乗じ、この2つの排出強度による割合で各エネルギーへ再配分することに
よって評価した
14)21)24)25)
。
- 141 -
k.
埋 立 処 理 ( Landfill) ・ 下 水 処 理 ( Wastewater)
埋 立 処 理 及 び 下 水 処 理 に よ る Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、EPA の 評 価 方 法 と 同 様 に 、
1 人 あ た り GDP に よ っ て 決 定 さ れ る も の と し て 評 価 し た
l.
14)16)22)
。
交 通 ( Tran sport)
交 通 部 門 に お け る Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、 h~ j と 同 様 に EIA の 交 通 部 門 に お け
る 最 終 エ ネ ル ギ ー 消 費 予 測 か ら 、 将 来 ト レ ン ド ( 20 25 年 ま で ) を 予 測 し 、 EPA の 分 析
結 果 の ト レ ン ド ( Non-CO 2 排 出 量 と GDP/cap.の 関 係 を 評 価 し 、 GDP/cap.に よ り 延 長 す
る 。) に 合 わ せ て 調 整 し た
14)28)
。
そ の 他 の フ ロ ン ガ ス 類 に つ い て は 、各 地 域 の GDP/cap.に 応 じ て 、SRES デ ー タ を 再 配
分した。
3.4.4 評 価 結 果
(1) SRES-B2 ベ ー ス の 分 析
前 述 し た 評 価 方 法 を も と に 、 SRES-B2 デ ー タ を も と に 世 界 4 7 地 域 に つ い て 、 CH 4
及 び N 2 O の 排 出 量 予 測 を 行 い 、 各 地 域 の 分 析 結 果 に つ い て 、 EPA の 分 析 結 果 と 比 較 検
討 を 行 っ た( Appendix 1 参 照 )。な お 、評 価 結 果 は EPA の 分 析 結 果 が 存 在 し て い る 地 域
の み を 対 象 と し 、 SRES の 4 地 域 ご と に CH 4 及 び N 2 O に 区 分 し て 示 し た 。 各 地 域 の 評
価 結 果 か ら 本 研 究 で 検 討 し た CH 4 及 び N 2 O の Non-CO 2 排 出 量 予 測 に つ い て は 、概 ね E PA
の推定結果と整合性のある結果が得られたと考えられる。
次 に 、 こ れ ら の 結 果 を SRES の 4 地 域 に 集 約 し 、 SRES の 各 モ デ ル の ス ト ー リ ー ラ イ
ン と の 比 較 を 行 っ た ( 図 3.4.4-1 及 び 図 3.4.4-2 参 照 )。
SRES シ ナ リ オ の 特 徴 は 、約 17 0 の ソ ー ス か ら 4 00 以 上 の 排 出 シ ナ リ オ を 収 集 し 、 そ
の う ち 2100 年 ま で を 推 計 期 間 と し て い る 1 90 の シ ナ リ オ を 分 析 し 、将 来 の 社 会 経 済 の
発展について、叙述的なシナリオを以下の6つのモデルにより定量的に示したシナリ
オ か ら 構 成 さ れ て い る 。な お 、B2 に 対 す る Non-CO 2 排 出 量 予 測 を 行 っ て い る モ デ ル は 、
MARIA を 除 く 5 つ の モ デ ル で 推 定 さ れ て い る 。
•
日 本 の 国 立 環 境 研 究 所 の ア ジ ア 太 平 洋 統 合 モ デ ル ( AIM)
•
ア メ リ カ ICF Consulting の 大 気 安 定 化 枠 組 モ デ ル ( ASF)
•
オ ラ ン ダ RIVM の 温 室 効 果 ガ ス 影 響 評 価 統 合 モ デ ル ( IMAGE)
•
オ ー ス ト リ ア IIASA の エ ネ ル ギ ー 供 給 戦 略 ・ 環 境 影 響 モ デ ル ( MESSA GE)
•
ア メ リ カ の PNNL の 簡 略 気 候 評 価 モ デ ル ( MiniCAM)
- 142 -
OECD90
CH4 [Gt-CO2eq.]
4.00
3.00
1.00
8.00
6.00
2020
2040
2080
2100
2080
2100
2080
2100
2080
2100
ASIA
AIM
IMAGE
MINICAM
ASF
MESSAGE
Phoenix
2.00
2020
2040
2.00
2060
REF
3.00
CH4 [Gt-CO2eq.]
2060
4.00
0.00
2000
AIM
IMAGE
MINICAM
ASF
MESSAGE
Phoenix
1.00
0.00
2000
6.00
CH4 [Gt-CO2eq.]
ASF
MESSAGE
Phoenix
2.00
0.00
2000
CH4 [Gt-CO2eq.]
AIM
IMAGE
MINICAM
4.00
2020
2040
2060
ALM
AIM
IMAGE
MINICAM
ASF
MESSAGE
Phoenix
2.00
0.00
2000
2020
2040
2060
図 3 .4 .4 -1 S RES シ ナ リ オ と の 比 較 ( CH 4 )
- 143 -
OECD90
N2O [Gt-CO2eq.]
3.00
2.00
AIM
IMAGE
MINICAM
1.00
0.00
2000
2020
N2O [Gt-CO2eq.]
1.00
2060
2080
2100
AIM
IMAGE
MINICAM
2080
2100
2080
2100
2080
2100
ASF
MESSAGE
Phoenix
0.50
0.00
2000
2020
3.00
2040
2060
ASIA
4.00
N2O [Gt-CO2eq.]
2040
REF
1.50
AIM
IMAGE
MINICAM
ASF
MESSAGE
Phoenix
2.00
1.00
0.00
2000
2020
3.00
2040
2060
ALM
4.00
N2O [Gt-CO2eq.]
ASF
MESSAGE
Phoenix
AIM
IMAGE
MINICAM
ASF
MESSAGE
Phoenix
2.00
1.00
0.00
2000
図 3 .4 .4 -2
2020
2040
2060
SRES シ ナ リ オ と の 比 較 ( N 2 O )
本 研 究 で 評 価 さ れ た Non-CO 2 排 出 量 予 測 に つ い て は 、 こ れ ら の 各 モ デ ル の 分 析 の 範
囲 内 で 評 価 さ れ て お り 、 こ れ ま で の Non-CO 2 の 将 来 予 測 と ほ ぼ 同 一 の 結 果 が 得 ら れ る
- 144 -
こ と が 確 認 さ れ た 。 こ こ で 、 本 研 究 で 評 価 し た Non-CO 2 排 出 量 予 測 と SRES マ ー カ ー
Non-CO2 [Gt-CO2eq.]
シ ナ リ オ (MESSAGE モ デ ル )と の 比 較 を 図 3.4.4-3 に 示 す 。
30.0
3 0 . 0
24.0
2 4 . 0
18.0
1 8 . 0
12.0
1 2 . 0
6.0
6 . 0
CH4
0.0
2000
N2O HFCs
SRES
PFCs
SF6
0 . 0
2 0 0 0
2 0 2 0
2 0 4 0
2 0 6 0
2 0 8 0
2 1 0 0
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .4 -3 S RES マ ー カ ー シ ナ リ オ と の 比 較
SRES マ ー カ ー シ ナ リ オ ( 図 中 点 線 ) と の 差 に つ い て は 、 20 50 年 で 2.60Gt-CO 2 eq .、
2100 年 で 2.75 Gt-CO 2 eq.と な っ て い る 。 ま た 、 SRES の 5 つ の 各 モ デ ル 評 価 結 果 と マ ー
カ ー シ ナ リ オ と の 差 の 最 大 値 を 比 較 し た 場 合 、 20 50 年 で 3.69Gt-CO 2 eq. 、 21 00 年 で
4.86Gt-CO 2 eq.と な っ て お り 、 当 該 予 測 は ほ ぼ SRES の 各 モ デ ル の 中 位 水 準 で 評 価 さ れ
たことになる。この差は、例えば、データソース及び基準年が異なる、対象地域に包
含されているすべての国のデータが存在しない、あるいはデータの将来の延長に若干
の 仮 定 を 用 い た な ど が 挙 げ ら れ る 。 EPA に お い て も 、 将 来 予 測 の 不 確 実 性 と し て 、 新
しい機器が導入された場合、現時点での排出量は評価できるが、将来にわたる予測は
困 難 で あ る と し て い て 、仮 定 に よ っ て 排 出 量 予 測 が 変 わ る こ と を 示 唆 し て い る 。ま た 、
ある国・地域の排出量について、既に削減技術が考慮されているケースがあり、この
データを用いてベースラインシナリオに戻して再評価するためには、当該評価に含ま
れ て い る 控 除 を 割 戻 す 必 要 が あ る 。 EPA の 評 価 で は 、 米 国 の 技 術 を も と に 控 除 の 割 戻
しを行っているが、これがすべての国・地域に適応できるわけではないとしている。
さらに、データ不足の国については、データの存在している類似国との補間を行って
いる
22)
。これらの点を考慮しても、ある程度のデータの不確実性は避けられないと考
えられる。
次 に 、 世 界 全 体 で の CH 4 及 び N 2 O の 排 出 部 門 別 将 来 予 測 に つ い て 図 3.4.4-4 に 示 す 。
- 145 -
N2O [Mt-CO2eq.]
10.0
Agric
8.0
Enint
Othind
Oil
Gas
Final Demand
6.0
4.0
2.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
CH4 [Mt-CO2eq.]
20.0
Agric
Oil
Final Demand
15.0
Enint
Gas
Othind
Coal
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .4 -4 世 界 全 体 で の CH 4 及 び N 2 O の 排 出 部 門 別 将 来 予 測
こ の 結 果 か ら 、 CH 4 で は 農 業 ( 主 に 家 畜 の 腸 内 発 酵 )、 天 然 ガ ス 、 最 終 需 要 か ら の 排
出 量 が 多 く 、 N2O で は 、 農 業 ( 主 に 土 壌 ) か ら の 排 出 量 が 多 く な っ て い る こ と が わ か
る 。 以 上 の 結 果 を 踏 ま え 、 Phoenix18 地 域 の 区 分 に 従 っ て 、 フ ロ ン ガ ス の 評 価 結 果 を 加
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
え た Non-CO 2 排 出 量 予 測 を 図 3.4.4-5~図 3.4.4-11 の よ う に 整 理 し た 。
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
USA
図 3 .4 .4 -5 P ho en ix 18 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (1)
- 146 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
2,500
CH4
2,000
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
MCM
500
CH4
400
N2O
HFCs
PFCs
SF6
300
200
100
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CAN
1,500
1,200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
900
600
300
0
2000
2020
2040
2060
Year
BRA
図 3 .4 .4 -6 P ho en ix 18 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (2)
- 147 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
SAM
500
400
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
300
200
100
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
EEP
200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
150
100
50
0
2000
2020
2040
2060
Year
SAF
図 3 .4 .4 -7 P ho en ix 18 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (3)
- 148 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
5,000
CH4
4,000
N2O
HFCs
PFCs
SF6
3,000
2,000
1,000
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CHN
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
WEP
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
FSU
図 3 .4 .4 -8 P ho en ix 18 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (4)
- 149 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,000
CH4
800
N2O
HFCs
PFCs
SF6
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
NAF
200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
150
100
50
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
JPN
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
ASN
図 3 .4 .4 -9 P ho en ix 18 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (5)
- 150 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,000
CH4
800
N2O
HFCs
PFCs
SF6
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CAF
500
CH4
400
N2O
HFCs
PFCs
SF6
300
200
100
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
ANZ
2,500
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
Year
IND
図 3 .4 .4 -10 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (6)
- 151 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,500
1,200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
900
600
300
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
TME
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
XAP
図 3 .4 .4 -11 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (7)
(2) SRES-A1F I ベ ー ス の 分 析
次 に 、 SRES- A1FI デ ー タ を も と に 世 界 4 7 地 域 に つ い て 、 (1)の B2 シ ナ リ オ の 場 合
と 同 様 に CH 4 及 び N 2 O の 排 出 量 予 測 を 地 域 ご と に 整 理 し た 。こ れ ら の 結 果 に つ い て も 、
B2 ケ ー ス の 場 合 と 同 様 に 、 SRES の 4 地 域 に 集 約 し 、 SRES の 各 モ デ ル の ス ト ー リ ー ラ
イ ン と の 比 較 を 行 っ た( 図 3.4.4-12 及 び 図 3.4.4-13 参 照 )。な お 、A1FI の Non-CO 2 排 出
量 予 測 を 行 っ て い る モ デ ル は 、 次 の 3 つ の モ デ ル で 推 定 さ れ て お り 、 MiniCAM モ デ ル
で算出された予測が代表的なデータとして扱っている。
•
日 本 の 国 立 環 境 研 究 所 の ア ジ ア 太 平 洋 統 合 モ デ ル ( AIM)
•
オ ー ス ト リ ア IIASA の エ ネ ル ギ ー 供 給 戦 略 ・ 環 境 影 響 モ デ ル ( MESSA GE)
•
ア メ リ カ の PNNL の 簡 略 気 候 評 価 モ デ ル ( MiniCAM)
- 152 -
OECD90
CH4 [Gt-CO2eq.]
6.00
5.00
4.00
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
3.00
2.00
1.00
0.00
2000
8.00
CH4 [Gt-CO2eq.]
AIM
6.00
2020
2040
2100
2080
2100
2080
2100
2080
2100
ASIA
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
2.00
2020
2040
4.00
2060
REF
5.00
CH4 [Gt-CO2eq.]
2080
4.00
0.00
2000
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
3.00
2.00
1.00
0.00
2000
6.00
CH4 [Gt-CO2eq.]
2060
2020
2040
2060
ALM
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
4.00
2.00
0.00
2000
2020
2040
2060
図 3 .4 .4 -12 SRES シ ナ リ オ と の 比 較 ( CH 4 )
- 153 -
OECD90
N2O [Gt-CO2eq.]
3.00
2.00
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
1.00
0.00
2000
2020
N2O [Gt-CO2eq.]
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
2020
2100
3.00
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
ASIA
4.00
N2O [Gt-CO2eq.]
2080
0.50
0.00
2000
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
2.00
1.00
0.00
2000
2020
3.00
2040
2060
ALM
4.00
N2O [Gt-CO2eq.]
2060
REF
1.50
1.00
2040
AIM
MESSAGE
MINICAM
Phoenix
2.00
1.00
0.00
2000
2020
2040
2060
図 3 .4 .4 -13 SRES シ ナ リ オ と の 比 較 ( N 2 O )
- 154 -
本 研 究 で 評 価 さ れ た Non-CO 2 排 出 量 予 測 に つ い て は 、 こ れ ら の 各 モ デ ル の 分 析 の 範
囲 内 で 評 価 さ れ て お り 、 こ れ ま で の Non-CO 2 の 将 来 予 測 と ほ ぼ 同 等 の 結 果 が 得 ら れ る
こ と が 確 認 さ れ た 。 こ こ で 、 本 研 究 で 評 価 し た Non-CO 2 排 出 量 予 測 と SRES 代 表 的 シ
Non-CO2 [Gt-CO2eq.]
ナ リ オ ( MiniCAM モ デ ル ) と の 比 較 を 図 3.4.4-14 に 示 す 。
40.0
40. 0
30.0
30. 0
20.0
10.0
CH4
N2O
SRES
HFCs
PFCs
SF6
20. 0
10. 0
0.0
2000
0 . 0
20 00
2020
2040
2020
20 60
2040
208 0
2060
2100
2080
2100
Year
図 3 .4 .4 -14 SRES 代 表 的 シ ナ リ オ と の 比 較
SRES 代 表 的 シ ナ リ オ( 図 中 点 線 )と の 差 に つ い て は 、2 05 0 年 で 11 .9 3Gt-CO 2 eq.、2100
年 で 13.32Gt-CO 2 eq.と な っ て お り 、 代 表 的 シ ナ リ オ ( MiniCAM モ デ ル ) よ り も 低 い 水
準 で の 評 価 と な っ て い る 。 こ こ で 、 B2 シ ナ リ オ に よ る 分 析 結 果 と 当 該 ベ ー ス に お け る
分 析 結 果 を 比 較 し た ( 図 3.4.4-15 参 照 )。
Non-CO2 [Gt-CO2eq.]
30.00
24.00
B2-base
A1FI-base
18.00
12.00
6.00
0.00
2000
2020
2040
2060
2080
2100
図 3.4.4-15 B 2 シ ナ リ オ と A 1FI シ ナ リ オ に お け る Non-CO 2 排 出 量 比 較 ( 世 界 合 計 )
こ の 図 か ら も 明 ら か な よ う に 、 Non-CO 2 排 出 量 の 将 来 予 測 に つ い て は 、 世 界 の マ ク
ロ的な視点で検討した場合、特に、シナリオの変更に伴うストーリーラインの変化は
殆 ど 見 ら れ な か っ た 。 こ の こ と は 、 特 に 、 経 済 や 人 口 の 変 化 に 伴 う Non-CO 2 排 出 量 に
つ い て は 大 き な 変 化 は 見 ら れ な い こ と が 示 唆 さ れ る 。 し か し な ら が 、 一 方 で 、 A1 F I シ
ナ リ オ に お い て は 、CO 2 排 出 量 が 大 き く 、CO 2 抑 制 に 際 し て は 、削 減 費 用 も 大 き く な る
こ と が 予 想 さ れ る 。 従 っ て 、 後 述 す る CO 2 削 減 費 用 に 関 す る Non-CO 2 排 出 ポ テ ン シ ャ
ル に 関 し て は 、地 域 性 や 排 出 区 分 等 に B2 シ ナ リ オ と は 異 な る 変 化 が 見 ら れ る こ と が 予
想され、その部分に着目した分析を行うこととする。
次 に 、 当 該 ベ ー ス に お け る 世 界 全 体 で の CH 4 及 び N 2 O の 排 出 部 門 別 将 来 予 測 に つ い
て 図 3.4.4-16 に 示 す 。
- 155 -
CH4 [Mt-CO2eq.]
20.0
Agric
Oil
Final Demand
15.0
Enint
Gas
Othind
Coal
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
N2O [Mt-CO2eq.]
10.0
Agric
8.0
Enint
Othind
Oil
Gas
Final Demand
6.0
4.0
2.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .4 -16 世 界 全 体 で の CH 4 及 び N 2 O の 排 出 部 門 別 将 来 予 測
こ の 結 果 か ら 、 B2 ベ ー ス と 同 様 に CH 4 で は 農 業 ( 主 に 家 畜 の 腸 内 発 酵 )、 天 然 ガ ス 、
最 終 需 要 か ら の 排 出 量 が 多 く 、 N2O で は 、 農 業 ( 主 に 土 壌 ) か ら の 排 出 量 が 多 く な っ
ていることがわかる。
以 上 の 結 果 を 踏 ま え 、 Phoenix18 地 域 の 区 分 に 従 っ て 、 フ ロ ン ガ ス の 評 価 結 果 を 加 え
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
た Non-CO 2 排 出 量 予 測 を 図 3.4.4-17~図 3.4.4-23 の よ う に 整 理 し た 。
2,500
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
USA
図 3 .4 .4 -17 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (1)
- 156 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
MCM
1,000
800
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CAN
1,500
1,200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
900
600
300
0
2000
2020
2040
2060
Year
BRA
図 3 .4 .4 -18 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (2)
- 157 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
SAM
500
400
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
300
200
100
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
EEP
200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
150
100
50
0
2000
2020
2040
2060
Year
SAF
図 3 .4 .4 -19 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (3)
- 158 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
5,000
4,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
3,000
2,000
1,000
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CHN
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
WEP
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
FSU
図 3 .4 .4 -20 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (4)
- 159 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,000
CH4
800
N2O
HFCs
PFCs
SF6
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
NAF
200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
150
100
50
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
JPN
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
ASN
図 3 .4 .4 -21 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (5)
- 160 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
800
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
CAF
800
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
ANZ
2,500
2,000
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,500
1,000
500
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
IND
図 3 .4 .4 -22 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (6)
- 161 -
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
1,500
1,200
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
900
600
300
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2080
2100
Year
Non-CO2 [Mt-CO2eq.]
TME
2,000
1,600
CH4
N2O
HFCs
PFCs
SF6
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
XAP
図 3 .4 .4 -23 Ph oe ni x1 8 地 域 に お け る Non-CO 2 排 出 量 予 測 (7)
次 に 、シ ナ リ オ の 違 い に よ る Non-CO 2 排 出 量 の 違 い を 地 域 別 に 検 討 す る た め に 、CH 4 、
N 2 O 及 び High-GWP Gases に つ い て の 予 測 差 を Ph oenix 18 地 域 の 区 分 に 従 っ て 図 3.4.4-24
の よ う に ま と め た 。 こ の 結 果 、 CH 4 に つ い て は A1FI ベ ー ス で 評 価 し た 方 が 大 き く 評 価
されており、一方、中国が小さくなるという結果が得られている。
ま た 、 N2O に つ い て は 、 ブ ラ ジ ル 、 ヨ ー ロ ッ パ 各 国 で 大 き く 評 価 さ れ て お り 、 フ ロ ン
ガス類については、ブラジル、インドで大きく評価されている。
- 162 -
1,500
2100
500
0
US
A
CA
N
M
C
M
BR
A
SA
M
W
EP
EE
P
FS
U
NA
F
CA
F
SA
F
JP
N
CH
N
IN
D
AS
N
TM
E
AN
Z
XA
P
ΔCH4 [Mt-CO2 eq.]
2050
1,000
△500
△1,000
400
2050
2100
200
100
△100
IN
D
AS
N
TM
E
AN
Z
XA
P
0
US
A
CA
N
M
C
M
BR
A
SA
M
W
EP
EE
P
FS
U
NA
F
CA
F
SA
F
JP
N
CH
N
ΔN2O[Mt-CO2eq.]
300
△200
△300
400
2050
2100
300
200
100
△100
IN
D
AS
N
TM
E
AN
Z
XA
P
0
US
A
CA
N
M
C
M
BR
A
SA
M
W
EP
EE
P
FS
U
NA
F
CA
F
SA
F
JP
N
CH
N
ΔHigh-GWP Gases[Mt-CO2eq.]
500
△200
△300
△400
図 3.4.4-24
シ ナ リ オ 別 地 域 別 N on-CO 2 排 出 量 の 予 測 差 ( B2 ベ ー ス - A 1 F I ベ ー ス )
3.4.5 MAC に よ る 削 減 ポ テ ン シ ャ ル の 評 価
以 上 の 2 つ の SRES シ ナ リ オ に 基 づ い た Non-CO 2 排 出 量 予 測 を も と に 、 削 減 費 用 を
与えた場合のガス種別、地域別の削減ポテンシャルの評価を行った。なお、評価条件
は以下のとおりである。
- 163 -
•
対 象 ガ ス : CH 4 , N 2 O, HFCs, PFCs, SF 6
•
排 出 区 分 : CH 4 ( 農 業 , エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 , そ の 他 産 業 , 石 油 , ガ ス , 石
炭,最終需要)
•
N 2 O( 農 業 , エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 , そ の 他 産 業 , 石 油 , ガ ス , 最 終 需 要 )
•
HFCs, PF Cs, SF 6 ( 排 出 部 門 区 分 は な し )
•
地 域 数 : Phoenix18 地 域
•
対 象 年 数 : 20 00 年 ~ 21 00 年 ( 但 し 、 緩 和 オ プ シ ョ ン は 20 10 年 か ら 導 入 さ れ る
と仮定)
•
削 減 費 用 及 び 割 引 率 : CO 2 削 減 費 用 に 従 う ケ ー ス ( DNE21 よ り 得 ら れ た 削 減 費
用曲線を利用)
具体的な評価方法については、以下のとおりである。
い ま 、 E g (k, h, i ) 及 び R g (k, h, i ) は 、g ガ ス の Phoenix1 8 地 域 の k 地 域 に 対 す る h 排 出 部 門
か ら の i 年 に お け る 排 出 量 [Mt-CO2eq.]及 び 削 減 量 [Mt-CO2eq.]と す る 。
こ こ で 、 i 年 に お け る Non CO2 削 減 量 の 世 界 合 計 Total _ Re d _ NonCO 2 (i ) [Mt-CO2eq.]は 、
Total _ Re d _ NonCO 2 (i ) =
∑ R CH 4 (k, h, i ) + ∑ R N 2O (k, h, i )
k ,h
k ,h
(3.4-1)
+ ∑ R HFCs (k , h , i ) + ∑ R PFCs (k, h , i ) + ∑ R SF6 (k , h , i )
k ,h
k ,h
k,h
と表される。
本 研 究 に お け る Non-CO 2 削 減 パ ス の 評 価 に お い て は 、 Hyman ら が 行 っ た CES 型 関 数
による代替弾性値を与えて評価する方法を用いた。この評価方法によれば、具体的な
技術オプションを明示する必要がなく、既往の研究成果を弾性値によって包括的に扱
うことができるという利点がある。一方で、代替弾性値を個別技術に合致するように
決定する場合、削減量についてはやや楽観的な評価となる
15)
。ここで、g ガスの k 地
域 に 対 す る h 排 出 部 門 か ら の i 年 に お け る 削 減 率 Re d _ rg (k, h, i ) [%]は 次 式 の よ う に 定 義 さ
れる。
Re d _ rg (k , h , i ) =
R g (k, h, i )
(3.4-2)
E g (k , h, i )
ま た 、 こ の と き の 削 減 価 格 を Pg (k, h, i ) [$/TCE]と 表 せ ば 、
⎞
⎛
1
⎟
Re d _ rg (k , h , i ) = 1 − ⎜
⎜ Pg (k, h , i ) ⎟
⎠
⎝
σ
(3.4-3)
と な る 。 こ こ で 、 各 ガ ス の 地 域 別 、 排 出 部 門 別 の 代 替 弾 性 値 は 、 Hyman ら の デ ー タ 及
び EPA の デ ー タ を 利 用 し て 、 表 3.4.5-1~ 表 3. 4. 5-3 の 値 を 用 い た
- 164 -
14)15)
。ここで用いられ
る 代 替 弾 性 値 は 、 CH 4 及 び N 2 O の 一 部 の デ ー タ に つ い て は EPA の デ ー タ を 回 帰 分 析 に
よ り 算 出 し 、 そ の 他 の デ ー タ の 無 い 部 門 の CH 4 及 び N 2 O、 あ る い は フ ロ ン ガ ス 類 に つ
い て は Hyman ら の デ ー タ を 用 い た
31)
。
こ こ で の ア ル ゴ リ ズ ム で は 、 最 終 的 に 最 初 に 与 え た 削 減 価 格 P0 (i ) [$/TCE] を 満 た し な
が ら 、 Total _ Re d _ NonCO 2 (i ) [Mt-CO 2 eq.]の 最 大 化 問 題 を 解 く こ と で あ る 。
すなわち、
max .{Total _ Re d _ NonCO 2 (i )}
P0 (i ) =
( 3 . 4 -4)
∑ Pg (k, h , i )
k ,h
( 3 . 4 -5)
⎧
⎫
12
⎨ ∑ R g (k , h , i )× × 1000⎬
44
⎩k , h
⎭
と な る 。 ま た i 年 か ら n 年 後 の 削 減 価 格 ( 現 在 価 値 ) P0 (i + n ) [$/TCE]は 、 割 引 率 DR [ % ]
を考慮した場合、
P0 (i ) =
P0 (i + n )
( 3 . 4 -6)
(1 + DR )n
を満たす。
- 165 -
表 3 .4 .5 -1 C H 4 の 代 替 弾 性 値
地域
σ CH 4 ( A g r i c )
σ CH 4
(Enint, Othind)
σ CH 4 ( C o a l )
σ CH 4 ( O i l )
σ CH 4 ( G a s )
σ CH 4
(F demand)
USA
0.05
0.30
0.04
0.12
0.32
CAN
0.04
0.00
0.06
0.12
0.35
MCM
0.02
0.30
0.09
0.13
0.32
BRA
0.02
0.00
0.06
0.13
0.32
SAM
0.03
0.00
0.08
0.13
0.32
WEP
0.07
0.08
0.02
0.10
0.35
EEP
0.08
0.24
0.05
0.10
0.32
FSU
0.05
0.22
0.06
0.10
0.32
NAF
0.02
0.30
0.09
0.13
0.32
CAF
0.03
0.30
0.09
0.13
0.32
0.11
SAF
0.03
0.30
0.09
0.13
0.32
JPN
0.08
0.60
0.00
0.14
0.35
CHN
0.07
0.29
0.10
0.09
0.32
IND
0.04
0.28
0.04
0.14
0.32
ASN
0.07
0.08
0.03
0.14
0.33
TME
0.02
0.16
0.07
0.14
0.33
ANZ
0.04
0.27
0.05
0.13
0.35
XAP
0.03
0.17
0.07
0.11
0.34
表 3 .4 .5 -2 N 2 O の 代 替 弾 性 値
地域
σ N 2O
σ N 2O
σ N 2O
σ N 2O
σ N 2O
削 減 率 *1
(Agric)
(Enint)
(Othind)
(Oil)
(Gas)
(F demand)
USA
0.04
0.37
10%
CAN
0.04
0.37
10%
MCM
0.02
0.34
20%
BRA
0.02
0.47
20%
SAM
0.02
0.00
20%
WEP
0.04
0.37
10%
EEP
0.04
0.09
20%
FSU
0.04
0.00
20%
NAF
0.02
0.00
20%
CAF
0.02
0.00
SAF
0.02
0.00
-
0.00
-
20%
20%
JPN
0.04
0.37
10%
CHN
0.02
0.39
20%
IND
0.02
0.34
20%
ASN
0.02
0.49
20%
TME
0.02
0.00
20%
10%
ANZ
0.04
0.37
XAP
0.02
0.42
15%
*1 価 格 ゼ ロ の と き に 削 減 で き る 割 合 を 示 し た
29)。
- 166 -
表 3 .4 .5 -3 P FC s・ H FC s 及 び S F 6 の 代 替 弾 性 値
σ SF6
σ PFC
σ HFC
地域
全地域
0.30
0.15
0.30
N 2 O の 最 終 需 要 部 門 で は 、 削 減 価 格 が ゼ ロ の と き に 削 減 で き る 、 い わ ゆ る No-reg re t
option と な る
29)
。他 の 排 出 部 門 に つ い て も 、価 格 下 落 に 伴 う 削 減 が 可 能 で あ り 、No-regre t
に な り 得 る が (1.1-3)式 を 使 う 限 り に お い て は 、こ れ を 表 現 す る こ と が で き な い 。従 っ て 、
各 年 、 各 地 域 に お け る 最 終 需 要 部 門 ( F demand ) の N 2 O だ け が 常 に 表 3.4.5-2 で 示 し た
割合だけ削減されると仮定して分析を行い、他の排出部門からの削減量については、
No-regret に つ い て は 考 慮 し な か っ た 。
3.4.6 評 価 結 果
次 に 、 Non-CO 2 の 削 減 費 用 が CO 2 削 減 費 用 と 同 等 な る 場 合 の 効 果 に つ い て 、 各 C O 2
安 定 化 シ ナ リ オ に 基 づ い た 検 討 を 行 っ た 。 な お 、 こ の 評 価 で は Non-CO 2 の 削 減 費 用 が
CO 2 削 減 費 用 ま で 削 減 可 能 で あ る こ と を 仮 定 す る が 、Non-CO 2 の 追 加 的 な 削 減 に よ っ て
CO 2 の 限 界 費 用 を 変 化 に つ い て は 、 前 述 し た Non-CO 2 の 分 析 精 度 の 不 確 実 性 の 観 点 か
ら 考 慮 し な い こ と と し た 。 ま た 、 21 00 年 ま で の 世 界 の CO 2 の 限 界 費 用 に つ い て は 、
DNE21 に よ っ て 計 算 さ れ た 値 を 用 い た
33)
。こ こ で の 評 価 は 、リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス( B A U
ケ ー ス )と し て 、SRES-B2 及 び SRES-A1 FI シ ナ リ オ の CO 2 排 出 量 に 対 し て 、4 50、550
及 び 650ppmv 安 定 化 ケ ー ス に 資 す る と き の 削 減 費 用 を 用 い て 、 追 加 的 な Non-CO 2 削 減
効果について検討した。
(1) SRES-B2 ベ ー ス の 分 析
以 上 の 分 析 方 法 を 用 い て 、 Phoenix1 8 地 域 に 対 す る Non-CO 2 削 減 量 の 評 価 を 行 っ た 。
CO2 Shadow Price [$/TCE]
最 初 に DNE21 で 計 算 さ れ た 削 減 費 用 を 図 3.4.6-1 に 示 す 。
300
250
200
B2-S450
B2-S550
B2-S650
150
100
50
0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -1 C O 2 削 減 費 用 曲 線 ( レ フ ァ レ ン ス シ ナ リ オ : B2)
続 い て 、 各 安 定 化 ケ ー ス に 対 す る CO 2 削 減 費 用 に よ る Non-CO 2 の 削 減 パ ス 、 地 域 別
削 減 効 果 及 び 部 門 別 削 減 効 果 に つ い て 検 討 し た ( 図 3.4.6-2~ 図 3.4.6-9 参 照 )。
- 167 -
Non-CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 450ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
Baseline(B2)
20.0
CO2-S450
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -2 N on -C O 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 450ppmv 安 定 化 )
12.0%
Abatement [%]
CH4
9.0%
2025
N2O
HFC
2050
PFC
SF6
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
CHN WEP USA CHN ASN WEP CHN ASN
SAM CHN SAM MCM
図 3 .4 .6 -3 地 域 別 の N o n-CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 450ppmv 安 定 化 )
- 168 -
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
100.0%
Percentage [%]
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
100.0%
Percentage [%]
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-4 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 450ppmv 安 定 化 )
Non CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 550ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
20.0
Baseline(B2)
CO2-S550
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -5 N on -C O 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 550ppmv 安 定 化 )
- 169 -
12.0%
Abatement [%]
CH4
N2O
2025
9.0%
HFC
PFC
2050
SF6
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
CHN WEP USA CHN WEP ASN CHN ASN
WEP CHN SAM MCM
図 3 .4 .6 -6 地 域 別 の N o n-CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 550ppmv 安 定 化 )
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-7 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 550ppmv 安 定 化 )
- 170 -
Non CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 650ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
20.0
Baseline(B2)
CO2-S650
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -8 N on -C O 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 650ppmv 安 定 化 )
12.0%
Abatement [%]
CH4
9.0%
N2O
HFC
2050
PFC
SF6
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
図 3 .4 .6 -9
2025
CHN WEP ASN CHN ASN
WEP CHN SAM MCM
地 域 別 の N on -CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 650ppmv 安 定 化 )
- 171 -
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-10 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 650ppmv 安 定 化 )
こ れ ら の 結 果 、 20 50 年 で は 対 20 0 0 年 比 で 53 .7% ( 45 0p pmv)、 42.7% ( 55 0p pmv)、
32.8 %( 650ppmv)と な り 、同 様 に 2 100 年 に お い て は そ れ ぞ れ 76.2%( 4 5 0p p mv)、7 3.1 %
( 550ppmv )、 6 7 .5 % ( 6 5 0p p mv ) の 削 減 が 見 込 ま れ る 。 こ の 結 果 か ら 、 2 10 0 年 で は 、
$118/TCE( 65 0 pp mv ) に 対 し て 、 $279/TCE( 45 0p pmv) と な っ て い る も の の 削 減 効 果 に
ついては、削減費用の増大に伴う排出削減にはつながらない可能性があることを示唆
している。
地 域 別 の 削 減 量 の 変 化 に つ い て は 、 将 来 の Non-CO 2 削 減 量 は 、 2 000 年 初 期 の 段 階 で
は 、 中 国 及 び 西 欧 各 国 の 削 減 量 が 多 く 、 ア ジ ア 地 域 に 移 り 、 21 00 年 頃 ま で に は 南 米 地
域に削減量が移行することが想定される。さらに、いずれの安定化ケースにおいても
2100 年 ま で の 中 国 の 削 減 量 が 最 も 多 く な る こ と が 予 想 さ れ る 。 ま た 、 将 来 的 に は 各 国
で み ら れ る よ う に 冷 媒 で あ る HFCs の フ ロ ン ガ ス 削 減 量 が 増 加 傾 向 に あ る 。
最 後 に 部 門 別 の 削 減 効 果 に つ い て は 、 い ず れ の ケ ー ス も CH 4 に 対 し て は 、 最 終 需 要
(埋立処理)からの削減が最も大きいが、天然ガスの消費の拡大に伴い、ここからの削
減 も 大 き く な っ て い く 可 能 性 が あ る 。 一 方 、 N 2 O に 対 し て は 、 21 00 年 ま で エ ネ ル ギ ー
多消費型産業及び農業部門からほぼ一定の割合で削減されている。
- 172 -
(2) SRES-A1F I ベ ー ス の 分 析
次 に 、 A1FI シ ナ リ オ に つ い て 、 Phoenix18 地 域 に 対 す る Non-CO 2 削 減 量 の 評 価 を 行
った。
CO2 Shadow Price [$/TCE]
最 初 に DNE21 で 計 算 さ れ た 削 減 費 用 を 図 3.4.4-23 に 示 す 。
700
600
500
400
300
200
100
0
2000
A1FI-S450
A1FI-S550
A1FI-S650
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -11 CO 2 削 減 費 用 曲 線 ( レ フ ァ レ ン ス シ ナ リ オ : A1FI)
続 い て 、 各 安 定 化 ケ ー ス に 対 す る CO 2 削 減 費 用 に よ る Non-CO 2 の 削 減 パ ス 、 地 域 別
削 減 効 果 及 び 部 門 別 削 減 効 果 に つ い て 検 討 し た ( 図 3.4.6-12~ 図 3.4.7-22 参 照 )。
Non CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 450ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
20.0
Baseline(A1FI)
CO2-S450
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -12 No n- CO 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 450ppmv 安 定 化 )
- 173 -
12.0%
Abatement [%]
CH4
9.0%
HFC
PFC
2050
SF6
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
図 3.4 .6 -13
N2O
2025
CHN USA WEP CHN ASN USA CHN USA ASN USA CHN WEP
地 域 別 の N on-CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 450ppmv 安 定 化 )
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-14 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 450ppmv 安 定 化 )
- 174 -
Non CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 550ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
Baseline(A1FI)
20.0
CO2-S550
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -15 No n- CO 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 550ppmv 安 定 化 )
12.0%
Abatement [%]
CH4
9.0%
2025
N2O
HFC
2050
PFC
SF6
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
CHN USA WEP CHN ASN USA CHN USA ASN USA CHN WEP
図 3 .4 .6 -16 地 域 別 の N on -CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 550ppmv 安 定 化 )
- 175 -
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
100.0%
Percentage [%]
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
100.0%
Percentage [%]
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-17 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 550ppmv 安 定 化 )
Non-CO2 [Gt-CO2eq.]
・ 650ppmv 安 定 化 ケ ー ス
25.0
20.0
Baseline(A1FI)
CO2-S650
15.0
10.0
5.0
0.0
2000
2020
2040
2060
2080
2100
Year
図 3 .4 .6 -18 No n- CO 2 削 減 パ ス の 分 析 結 果 ( 650ppmv 安 定 化 )
- 176 -
12.0%
Abatement [%]
CH4
N2O
2025
9.0%
HFC
PFC
SF6
2050
2075
2100
6.0%
3.0%
0.0%
CHN USA WEP CHN ASN USA CHN USA ASN USA CHN WEP
図 3 .4 .6 -19 地 域 別 の N on -CO 2 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 650ppmv 安 定 化 )
Agric
Enint
Othind
Refoil
Gas
Coal
Final Demand
2075
2100
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
Agric
Enint
2050
Othind
Year
Refoil
Gas
Final Demand
Percentage [%]
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
2025
2050
Year
2075
2100
図 3.4.6-20 部 門 別 削 減 量 の 分 析 結 果 ( 上 図 : CH 4 , 下 図 : N 2 O )( 650ppmv 安 定 化 )
こ れ ら の 結 果 、 20 50 年 で は 対 20 0 0 年 比 で 71 .0% ( 45 0p pmv)、 67.3% ( 55 0p pmv)、
65.8 %( 650ppmv)と な り 、同 様 に 2 100 年 に お い て は そ れ ぞ れ 82.0%( 4 5 0p p mv)、8 0.5 %
( 550pp mv)、 79 .5% ( 6 5 0p p mv) の 削 減 が 見 込 ま れ る こ と が 評 価 さ れ た 。
次 に 、こ の 結 果 を B2 ベ ー ス と 比 較 し た 場 合 、化 石 エ ネ ル ギ ー 資 源 を 重 点 に お い て い
る A1FI シ ナ リ オ に つ い て は 、各 濃 度 安 定 化 の た め の CO 2 削 減 費 用 が 増 加 す る た め 、結
果としてケースも高い削減率となることが示唆された。また、地域別の削減率を比較
し た 場 合 、 B2 シ ナ リ オ と 比 べ ミ ク ロ 的 な 地 域 に お け る 削 減 率 が 減 少 し て お り 、 上 位 3
カ 国 に つ い て も 平 均 化 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 こ れ は 、 B2 シ ナ リ オ に お い て は 、 中 国 か
ら の 削 減 ポ テ ン シ ャ ル が 高 い と い う こ と が 示 さ れ た が 、 A1FI シ ナ リ オ で は 、 CO 2 削 減
- 177 -
費用の増加につれて、世界各国からの削減の機会が増える可能性があることを示唆し
て い る こ と に な る 。ま た B2 シ ナ リ オ と 同 様 に 、将 来 的 に は 各 国 で み ら れ る よ う に 冷 媒
で あ る HFCs の フ ロ ン ガ ス 削 減 量 が 増 加 傾 向 に あ る こ と も 評 価 さ れ た 。
さ ら に 、65 0 pp mv 安 定 化 の ケ ー ス に お い て は 、A1 FI シ ナ リ オ で は 、B2 シ ナ リ オ の 場
合と異なり、早い段階から削減の機会を得ている。
最 後 に 部 門 別 の 削 減 効 果 に つ い て は 、 い ず れ の ケ ー ス も CH 4 に 対 し て は 、 最 終 需 要
(埋立処理)からの削減が最も大きいが、天然ガスの消費の拡大に伴い、将来的に削減
の 機 会 が 多 く な る 可 能 性 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 一 方 、 N 2 O に 対 し て は 、 21 00 年
農業部門からの削減の機会が大きな割合を示しているが、エネルギー多消費型産業部
門の削減の機会も増加する傾向にあることが評価された。
3.4.7 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル ( MAGICC: Model for the Assessment of Greenhouse-gas
Induced Climate Chan ge) に よ る 気 候 変 動 量 の 推 定
次 に 、 Non-CO 2 排 出 量 及 び 削 減 ポ テ ン シ ャ ル を ベ ー ス に 、 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル
( MAGICC) に よ り 等 価 CO 2 濃 度 換 算 、 全 球 気 温 の 変 化 及 び 海 面 上 昇 の 変 化 の 推 定 を 行
った
30)
。 こ こ で は 、 Non-CO 2 の 各 種 気 候 変 動 量 の 影 響 を 検 討 す る た め に 、 BAU シ ナ リ
オ ( Reference シ ナ リ オ を B2 シ ナ リ オ 及 び A1FI シ ナ リ オ と す る 。)、 CO 2 の み を 450,
550, 650pp mv に 安 定 化 さ せ る シ ナ リ オ 、 CO 2 及 び Non-CO 2 の い ず れ も 削 減 さ れ る シ ナ
リ オ を MAGICC の 入 力 デ ー タ と し て 利 用 し た 。 な お 、 各 排 出 量 デ ー タ と シ ナ リ オ の 関
係 に つ い て は 、 図 3.4.7-1 に 示 す と お り で あ る 。
図 3 .4 .7 -1 各 シ ナ リ オ と 排 出 量 デ ー タ と の 対 応 関 係
Non-CO 2 の 排 出 量 デ ー タ は 、 ベ ー ス ラ イ ン で は 前 述 し た 推 定 結 果 を 用 い 、 同 様 に
Non-CO 2 削 減 シ ナ リ オ に つ い て は 、 各 リ フ ァ レ ン ス シ ナ リ オ か ら 濃 度 安 定 化 の た め に
課される削減費用から緩和された排出量によって評価した。
- 178 -
ま た 、 CO 2 の ベ ー ス ラ イ ン に つ い て は 、 SRES-B2 の マ ー カ ー シ ナ リ オ ま た は
SRES-A1F I の 代 表 的 シ ナ リ オ に 従 い 、 ま た 、 削 減 量 に つ い て は IPCC の S450、 S550 及
び S650 安 定 化 シ ナ リ オ に 従 う と し 、 さ ら に 、 MAGICC の 計 算 に お い て は 、 気 候 感 度 を
2.5℃ 、 拡 散 係 数 1.0c m 2 /s と し て 各 気 候 変 動 量 を 求 め た 。
全 球 の Non-CO 2 排 出 量 を 考 慮 し た 等 価 CO 2 換 算 に つ い て は 、 各 ガ ス の 放 射 強 制 力 の
変化を求め、次式によって算出した。
CO 2 の 放 射 強 制 力 の 変 化 と 濃 度 の 関 係 は 、
⎛ C(t )CO w
∆FCO 2 = q CO 2 ln⎜
⎜ C(0 )CO
2
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
( 3 . 4 -7)
の よ う に 表 す こ と が で き る 。こ こ で 、 q CO 2 、 ∆FCO 2 、 C(0)CO 2 及 び C(t )CO2 は 、17 6 5 年 の CO 2
の 全 放 射 強 制 力 ( = 5.35) [W/ m 2 ] 、 176 5 年 か ら の 全 放 射 強 制 力 の 変 化 [ W/ m 2 ] 、 初 期 時
点 の 濃 度 ( 17 65 年 の と き の CO 2 濃 度 27 8 pp mv を 用 い た 。) [ppmv]及 び t 年 の 等 価 CO 2
濃 度 [ppmv]で あ る 。ま た 、(1 .1 -7 )式 を 用 い て GHGs 排 出 量 に 対 す る t 年 の 等 価 CO 2 濃 度
C(t )GHGs は 、 各 年 の 対 象 ガ ス の 放 射 強 制 力 の 変 化 を 用 い て 、 CO 2 と CO 2 及 び そ れ 以 外 の
放 射 強 制 力 ( CH 4 , N 2 O, HFCs, PFCs, SF 6 , 対 流 圏 , 成 層 圏 の オ ゾ ン や 煤 , 有 機 炭 素 、
エアロゾル等)の変化の割合から、次式によって評価した。
⎛ ∆FCO 2 + ∆FCH 4 + ∆FN 2O + ∆FHFCs + ∆FPFCs + ∆FSF6 + ∆FO3 + ∆Faero
C(t )GHGs = C(t )CO w exp⎜
⎜
q CO 2
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
( 3 . 4 -8)
こ こ で 、 B2 シ ナ リ オ と A1FI シ ナ リ オ の BAU ケ ー ス ( リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス ) に つ い
て、
( 1.1-7)式 及 び( 1.1 -8)式 か ら 与 え ら れ る CO 2 濃 度 の 変 化 と Non-CO 2 を 含 め た GHGs
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
濃 度 の 変 化 を 示 す ( 図 3.4.7-2 参 照 )。
1,600
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs(B2-Ref.)
1,200
CO2(A1FI-Ref.)
CO2(B2-Ref.)
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -2 各 シ ナ リ オ の CO 2 濃 度 及 び GHGs 濃 度 の 変 化
こ の 図 か ら 、 GHGs 排 出 量 に よ る 等 価 CO 2 濃 度 ( B2: 赤 線 , A1FI: 青 線 ) と CO 2 の
ス ト ー リ ー ラ イ ン ( B2 : オ レ ン ジ 線 , A1FI : 黄 緑 線 ) の 各 年 に お け る 濃 度 を 検 討 し た
場 合 、 例 え ば 、 21 00 年 に お い て は 、 B2 シ ナ リ オ で は 、 CO 2 の み で も 59 0 pp mv と な り 、
GHGs 全 体 で は 7 9 7p pmv に 達 す る 。 一 方 、 A1FI シ ナ リ オ で は 、 同 年 に お い て 、 CO 2 の
- 179 -
み の 場 合 で 9 97 pp mv、GHGs 全 体 で 1,529ppmv に 達 し 、CO 2 か ら の 寄 与 が 大 き く な る こ
とが示された。
ま た 、GHGs 排 出 量 に よ る 等 価 CO 2 濃 度 と CO 2 の ス ト ー リ ー ラ イ ン と の 差( GHG s 濃
度 - CO 2 濃 度 )を 検 討 し た 場 合 、B2 シ ナ リ オ で は 、2 00 0 年 で △ 5p p mv、2 0 50 年 で 96 pp mv
及 び 2100 年 で 2 07 ppmv と な る 。 ま た 、 A1 FI シ ナ リ オ で は 、 20 0 0 年 で △ 2 5 pp mv、 2050
年 で 47ppmv 及 び 2 10 0 年 で 5 32 p p mv と な っ た 。
次 に 、各 シ ナ リ オ 間 で の 差( A1FI 濃 度 - B2 濃 度 )を 比 較 し た 場 合 、CO 2 に つ い て は 、
2050 年 で は 74 pp mv 、 21 00 年 で は 40 8p pmv と な り 、 GHGs ま で 含 め た 場 合 に は 、 2050
年 で 24ppmv、 2 1 0 0 年 で は 7 32p p mv と な っ た 。 ま た 、 2 05 0 年 か ら 2 100 年 ま で の GHGs
増 加 分 の う ち CO 2 の 寄 与 率 は 4 7% と な っ た 。従 っ て 、こ の こ と か ら 、前 述 し た Non-CO 2
排 出 量 予 測 結 果 ( 図 3.4.4-15 参 照 ) と と も に 鑑 み た 場 合 、 B2 シ ナ リ オ と A1FI シ ナ リ
オ に お け る GHGs 濃 度 の 差 は 、そ の 大 部 分 が CO 2 ,対 流 圏 ,成 層 圏 の オ ゾ ン や 煤 ,有 機
炭素、エアロゾル等によるものと判断されることが示された。
次 に 、 各 シ ナ リ オ 間 で の 1 990 年 比 の 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 図 3.4.7-3 参 照 ) 及 び 19 9 0
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
年 比 の 海 面 上 昇 ( 図 3.4.7-4 参 照 ) を 評 価 し た 。
4.0
A1FI-Ref.
3.2
B2-Ref.
2.4
1.6
0.8
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -3 各 シ ナ リ オ の 平 均 気 温 上 昇 変 化 ( 対 1990 年 )
こ の 図 か ら 、B2 シ ナ リ オ に お け る 気 温 上 昇( 赤 線 )は 、2 05 0 年 に お い て 1 .3 8℃ 、2100
年 で は 2.44 ℃ の 上 昇 と な り 、A1FI シ ナ リ オ に お け る 気 温 上 昇( 青 線 )に つ い て は 、2050
年 で は 1.31 ℃ 、 2 10 0 年 で は 3.89℃ の 上 昇 と な っ た 。
ま た 、 各 シ ナ リ オ 間 で の 差 ( A1FI 温 度 上 昇 - B2 温 度 上 昇 ) を 比 較 し た 場 合 、 2050
年では
0.07℃ と 負 数 と な り 、 B2 シ ナ リ オ に よ る 影 響 が 大 き い が 、 21 0 0 年 で は 1.45℃
と な り 、 2050 年 以 降 A1FI シ ナ リ オ に よ る 影 響 が 大 き く な る 傾 向 が 見 ら れ た 。
次に、海面上昇変化量についても気温上昇と場合と同じような傾向を示す。この図
か ら 、B2 シ ナ リ オ に お け る 海 面 上 昇( 赤 線 )に つ い て は 、2 05 0 年 に お い て 23.2cm、2100
年 で は 4 5.3c m 海 面 が 上 昇 す る こ と に な り 、 A1FI シ ナ リ オ の 結 果 ( 青 線 ) で は 、 20 50
年 に 19.9cm、 2 1 0 0 年 で は 5 9 .7 c m の 上 昇 と な っ た 。
ま た 、 各 シ ナ リ オ 間 で の 差 ( A1FI 温 度 上 昇 - B2 温 度 上 昇 ) を 比 較 し た 場 合 、 2050
年では
3.3c m と B2 シ ナ リ オ に よ る 影 響 が 大 き い が 、2 100 年 で は 14 .4 cm と な り 、205 0
年 以 降 A1FI シ ナ リ オ に よ る 影 響 が 大 き く な る 傾 向 と な っ た 。
- 180 -
Sea level change from 1990
[cm]
60.0
A1FI-Ref.
B2-Ref.
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -4 各 シ ナ リ オ の 海 面 上 昇 変 化 ( 対 1990 年 )
次 に 、 各 シ ナ リ オ の BAU ケ ー ス ( リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス ) に つ い て 、 CO 2 安 定 化 ケ ー
ス を 考 慮 し た 評 価 を 行 っ た 。 こ こ で の 評 価 で は 、 各 安 定 化 ケ ー ス で の Non-CO 2 排 出 量
予 測 の 結 果( 図 3.4.6-2,図 3.4.6-5,図 3.4.6-8,図 3.4.6-12,図 3.4.6-15 及 び 図 3.4.6-18
参 照 ) を 用 い て 等 価 CO 2 濃 度 、 平 均 気 温 上 昇 及 び 海 面 上 昇 を 評 価 し た 。 な お 、 CO 2 単
独の場合における各影響評価についても評価した。
最 初 に 、B2 シ ナ リ オ の と き の 等 価 CO 2 濃 度 、平 均 気 温 上 昇 及 び 海 面 上 昇 を 図 3.4.7- 5
~ 図 3.4.7-13 に 示 す 。 な お 、 図 中 の ”GHGs mitigation”が Non-CO 2 及 び CO 2 の 両 方 が 削
減 さ れ た ケ ー ス で あ り 、 ”CO 2 alone”が CO 2 単 独 で 削 減 さ れ た 結 果 で あ る 。 ま た 、 こ こ
で の 評 価 で は 、 Non-CO 2 の 削 減 費 用 が CO 2 の 削 減 費 用 ま で 削 減 可 能 で あ る こ と を 仮 定
す る が 、 Non-CO 2 の 追 加 的 な 削 減 に よ っ て CO 2 の 限 界 費 用 が 変 化 す る こ と に つ い て は
考慮しないものとして評価した。
- 181 -
(1) B2 シ ナ リ オ
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 450ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,000
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
800
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -5 G HG s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 45 0p p m v 安 定 化 )
3.6
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
3.0
2.4
1.8
1.2
0.6
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -6 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 450ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -7 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 45 0p p mv 安 定 化 )
- 182 -
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 550ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,000
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
800
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -8 G HG s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 55 0p p m v 安 定 化 )
3.6
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
3.0
2.4
1.8
1.2
0.6
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -9 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 550ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -10 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 550ppmv 安 定 化 )
- 183 -
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 650ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,000
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S650)
CO2 alone(S650)
800
600
400
200
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -11 GH G s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 650ppmv 安 定 化 )
3.6
GHGs(B2-Ref.)
CO2 alone(S650)
GHGs mitigation(S650)
3.0
2.4
1.8
1.2
0.6
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -12 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 650ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(B2-Ref.)
GHGs mitigation(S650)
CO2 alone(S650)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -13 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 650ppmv 安 定 化 )
- 184 -
次 に 、A1FI シ ナ リ オ の と き の 等 価 CO 2 濃 度 、平 均 気 温 上 昇 及 び 海 面 上 昇 を 図 3.4.7-14
~ 図 3.4.7-22 に 示 す 。
(2) A1FI シ ナ リ オ
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 450ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,600
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -14 GH G s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 450ppmv 安 定 化 )
4.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
3.2
2.4
1.6
0.8
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -15 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 450ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S450)
CO2 alone(S450)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -16 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 45 0p pmv 安 定 化 )
- 185 -
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 550ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,600
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -17 GH G s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 550ppmv 安 定 化 )
4.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
3.2
2.4
1.6
0.8
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -18 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 550ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S550)
CO2 alone(S550)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -19 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 550ppmv 安 定 化 )
- 186 -
GHGs Conc. [ppm CO2eq.]
・ 650ppmv 安 定 化 ケ ー ス
1,600
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S650)
CO2 alone(S650)
1,200
800
400
0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Global mean temperature
change from 1990 [℃]
図 3 .4 .7 -20 GH G s 排 出 量 に 対 す る 等 価 CO 2 濃 度 ( 650ppmv 安 定 化 )
4.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S650)
CO2 alone(S650)
3.2
2.4
1.6
0.8
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
Sea level change from 1990
[cm]
図 3 .4 .7 -21 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 650ppmv 安 定 化 )
60.0
GHGs(A1FI-Ref.)
GHGs mitigation(S650)
CO2 alone(S650)
45.0
30.0
15.0
0.0
2000
2020
2040
2060
Year
2080
2100
図 3 .4 .7 -22 全 球 平 均 海 面 上 昇 ( 650ppmv 安 定 化 )
こ れ ら の 結 果 か ら 、 B2 シ ナ リ オ 及 び A1FI シ ナ リ オ の 各 シ ナ リ オ に お い て 、 い ず れ
も 効 果 に お い て も CO 2 の み を 削 減 す る こ と よ り も Non-CO 2 の 削 減 に よ り 、 さ ら に 影 響
を 緩 和 す る こ と が 可 能 で あ る こ と が 推 測 さ れ た 。 こ こ で 、 B2 シ ナ リ オ と A1FI シ ナ リ
オ に お け る 各 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス か ら の 削 減 量 ( ベ ネ フ ィ ッ ト ) に つ い て 、 20 5 0 年 及
び 2100 年 で の Non-CO 2 緩 和 に よ る 効 果 を 図 3.4.7-23~ 図 3.4.7-25 に 示 す 。
- 187 -
Benefit [ppm CO2eq.]
2,000
1,500
CO2 alone(A1FI-S450)
CO2 alone(A1FI-S650)
GHGs(A1FI-S550)
CO2 alone(B2-S450)
CO2 alone(B2-S650)
GHGs(B2-S550)
CO2 alone(A1FI-S550)
GHGs(A1FI-S450)
GHGs(A1FI-S650)
CO2 alone(B2-S550)
GHGs(B2-S450)
GHGs(B2-S650)
1,000
500
0
2050
Year
2100
図 3.4.7-23 各 安 定 化 ケ ー ス に お け る Non-CO 2 削 減 に よ る 等 価 CO 2 濃 度 の 緩 和 効 果
5.0
Benefit [deg.C]
4.0
3.0
CO2 alone(A1FI-S450)
CO2 alone(A1FI-S650)
GHGs(A1FI-S550)
CO2 alone(B2-S450)
CO2 alone(B2-S650)
GHGs(B2-S550)
CO2 alone(A1FI-S550)
GHGs(A1FI-S450)
GHGs(A1FI-S650)
CO2 alone(B2-S550)
GHGs(B2-S450)
GHGs(B2-S650)
2.0
1.0
0.0
2050
Year
2100
図 3.4.7-24 各 安 定 化 ケ ー ス に お け る Non-CO 2 削 減 に よ る 平 均 気 温 上 昇 の 緩 和 効 果
70.0
Benefit [cm]
56.0
42.0
CO2 alone(A1FI-S450)
CO2 alone(A1FI-S650)
GHGs(A1FI-S550)
CO2 alone(B2-S450)
CO2 alone(B2-S650)
GHGs(B2-S550)
CO2 alone(A1FI-S550)
GHGs(A1FI-S450)
GHGs(A1FI-S650)
CO2 alone(B2-S550)
GHGs(B2-S450)
GHGs(B2-S650)
28.0
14.0
0.0
2050
Year
2100
図 3.4.7-25 各 安 定 化 ケ ー ス に お け る Non-CO 2 削 減 に よ る 平 均 海 面 上 昇 の 緩 和 効 果
こ れ ら の 図 か ら 、 CO 2 削 減 費 用 に 基 づ い て 計 算 さ れ た Non-CO 2 を 含 め た GHGs 緩 和
効 果 に つ い て は 、 各 シ ナ リ オ に お い て 、 い ず れ の 安 定 化 ケ ー ス に お い て も Non-CO2 を
含めた削減の効果が高いものと推測された。また、本研究で扱った2つのシナリオに
お い て 、 BAU ケ ー ス に お け る Non-CO 2 排 出 量 に つ い て は 、 大 き な 差 が 見 ら れ な か っ た
が 、 A1FI シ ナ リ オ に お け る 各 環 境 影 響 の 緩 和 効 果 が 大 き く な っ た 。 こ の 理 由 と し て 、
BAU ケ ー ス に お け る CO 2 排 出 量 が B2 シ ナ リ オ に 比 し て 大 き く 、 そ の た め に 各 安 定 化
の た め の CO 2 削 減 費 用 及 び 削 減 量 が 増 大 し た た め で あ り 、 そ の 結 果 、 レ フ ァ レ ン ス ケ
- 188 -
ー ス か ら の 緩 和 量 が 大 き く な り 、大 き な 緩 和 効 果 を 得 ら れ た も の と 考 え ら れ る 。一 方 、
Non-CO 2 を 含 め た 緩 和 効 果 に つ い て は 、 DNE-21 で 算 出 さ れ る CO 2 の 削 減 費 用 は A1 F I
シ ナ リ オ の 方 が 削 減 費 用 も 大 き く な り 、 CES 関 数 に よ る Non-CO 2 の 削 減 効 果 も 大 き く
な る こ と が 予 想 さ れ る が 、 Non-CO 2 の 削 減 オ プ シ ョ ン に つ い て は 、 必 ず し も 明 示 的 で
はなく、また、削減できない量(腸内発酵等)もあるため、削減費用が増加しても、
Non-CO 2 の 削 減 量 が 増 加 す る わ け で は な い こ と が 、 こ れ ま で の 研 究 成 果 よ り 得 ら れ て
いる
32)
。追 加 的 な Non-CO 2 の 削 減 量 に つ い て は 、本 研 究 の 結 果 に お い て は 、B2 シ ナ リ
オ よ り も A1FI シ ナ リ オ の 方 が 削 減 効 果 の あ る こ と が 確 認 さ れ た が 、削 減 費 用 の 増 大 に
見合うだけのベネフィットが得られたわけでないと判断される。従って、この評価で
は 、 む し ろ 、 世 界 的 な マ ク ロ で 見 た 場 合 の Non-CO 2 排 出 総 量 に つ い て は 、 シ ナ リ オ 間
での差は見られなかったが、削減可能な排出区分や地域のポテンシャルが増えたとい
うことが重要な指標となり得る。
3.4.8 ま と め
今 回 、 各 排 出 部 門 の 積 み 上 げ に よ る ト レ ン ド 解 析 を 用 い て 、 Phoen ix1 8 地 域 ご と の
Non-CO 2 に 関 す る 排 出 量 予 測 を 行 っ た 。 こ の 結 果 、 当 該 プ ロ ジ ェ ク ト で 評 価 し た 排 出
に 関 す る ス ト ー リ ー ラ イ ン に つ い て は 、SRES の モ デ ル 解 析 結 果 と あ る 程 度 合 致 す る と
同 時 に 、 等 価 CO 2 濃 度 に 関 し て も 、 従 来 の 結 果 と 大 き く 異 な る も の で は な か っ た 。 こ
の 結 果 は 、 こ れ ま で の SRES4 地 域 の み の 限 定 し た デ ー タ 公 開 で あ っ た が 、 本 研 究 の 成
果により、不確実性は残るもののある程度の地域性を考慮することが可能となった。
ま た 、本 研 究 で は 2 つ の SRES シ ナ リ オ( B2 シ ナ リ オ 及 び A1FI シ ナ リ オ )に つ い て 分
析 を 行 っ た 。 Non-CO 2 の 排 出 量 予 測 に つ い て は 、 マ ク ロ 的 に は 2 つ の シ ナ リ オ 間 で の
差 は 見 ら れ な か っ た が 、 削 減 費 用 曲 線 を 与 え る こ と に よ っ て 計 算 さ れ る Non-CO 2 削 減
量に関するベネフィットについては、シナリオ間での差は大きな効果はないと判断さ
れるが、環境影響評価は、ある程度の地域性を反映させることが重要であるとの認識
から、本研究の成果として、地域的な差を検討することができた点は非常に有意義な
も の で あ る 。 な お 、 い ず れ の シ ナ リ オ の 評 価 に お い て も 、 Non-CO 2 削 減 が 温 暖 化 負 荷
の緩和において重要であるとの認識が得られた点は大きい。一方、削減費用を課して
も全ての排出部門から完全に排出を抑制できる削減オプションがあるわけではないの
で ( 例 え ば 、 腸 内 発 酵 や 土 壌 か ら の 排 出 は 抑 制 で き な い 。)、 Non-CO 2 の 削 減 オ プ シ ョ
ン に つ い て は 、 必 ず し も 本 研 究 の よ う に CO 2 排 出 シ ナ リ オ の 変 更 に 伴 う 削 減 コ ス ト の
変化によって、コスト増分に見合う削減のメリットが得られるわけでないことに注意
しなければならない。
デ ー タ の 不 確 実 性 に つ い て は 、B2 シ ナ リ オ を 用 い た 分 析 の と き と 同 様 に 、A1F I シ ナ
リ オ に お い て も 主 に 産 業 か ら の 排 出 が メ イ ン で あ る CO 2 の み の 予 測 精 度 よ り は デ ー タ
欠損や取得について困難性を伴い、例えば生物由来など正確に測定できないなどの理
由 に よ り 不 確 実 性 が 高 い と 考 え ら れ る 。 ま た 、 A1FI シ ナ リ オ に お い て は 、 IPCC-SR ES
から提供されているモデル間での差も大きいことに注意して検討する必要がある。
- 189 -
3.5
温暖化緩和策の評価のまとめ
本 章 で は 、 PHOENI X プ ロ ジ ェ ク ト で 行 わ れ た 温 暖 化 緩 和 策 の 詳 細 な 分 析 の た め の 2
つ の 評 価 、(1)多 地 域 ・ 多 部 門 ・ 動 学 的 エ ネ ル ギ ー 経 済 モ デ ル DEARS の 開 発 と こ れ に よ
る 評 価 、 (2)Non-CO 2 温 暖 化 ガ ス 排 出 の 分 析 と 予 測 評 価 、 の 点 に つ い て の べ た 。 緩 和 策
評価の結果をまとめると以下のようになる。
(1) DEAR S モ デ ル を 用 い た CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル に よ る 産 業 部 門 へ の 影 響 を 分 析
ここでは、多地域・多部門・動学的エネルギー経済モデルという従来にない新たな
枠組みのモデルを開発し評価を行った。ここでは将来の産業構造変化を考慮した技術
構造を示す投入係数に関する時系列変化の想定も含んだ。主な知見は以下のようであ
る。
①
炭 素 濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ に よ る 産 業 部 門 別 影 響 に つ い て 、燃 料 種 の 代 替 に 関 し て レ
オ ン チ ェ フ 型 生 産 関 数 の 想 定 に 基 づ く や や 硬 直 的 な 想 定 の も と で は 、中 間 財 や 投 資
財 と し て の 役 割 が 比 較 的 大 き い 「 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 」 、「 建 設 産 業 」で の 付 加
価 値 額 低 減 が 相 対 的 に 大 き く 、消 費 財 の 役 割 が 大 き い「 輸 送 産 業 」や「 サ ー ビ ス 産
業」の付加価値額低減は小さい傾向にある。
こ れ は 、「 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 」 は エ ネ ル ギ ー 原 単 位 の 大 き く か つ 中 間 財 で あ る 、
ま た 、「 建 設 産 業 」 は 総 投 資 額 に 占 め る 割 合 が 大 き い 投 資 財 で あ る た め で あ る 。 一 方 、
排 出 抑 制 ケ ー ス 時 に お け る「 サ ー ビ ス 産 業 」の 生 産 損 失 が 相 対 的 に 小 さ い 要 因 と し て 、
エ ネ ル ギ ー 原 単 位 が 他 産 業 に 比 べ て 相 対 的 に 小 さ い こ と が 主 要 因 で あ り 、 ま た 、「 サ ー
ビス産業」は消費財としての役割が大きく、投資財としての役割が小さいため、排出
抑制時の生産損失が相対的に小さくなる。
②
マ ク ロ 経 済 へ の 影 響 に 関 し て 、 550 ~500ppmv-CO 2 only 程 度 は 、 や や 硬 直 的 な 燃 料
種 代 替 想 定 の も と で 期 待 で き る 産 業 構 造 変 化 に よ る エ ネ ル ギ ー 需 要 変 化 や CO 2 削
減のための技術的方策の対応範囲である可能性が大きい。
③
さ ら に 厳 し い 4 50 ppm v -CO 2 only レ ベ ル を 実 現 す る に は 、 産 業 の エ ネ ル ギ ー 需 要 の
代 替 関 係 に や や 硬 直 的 な 想 定 を 行 う と 、 大 き な GDP ロ ス が 発 生 す る 可 能 性 が あ る 。
た だ し 産 業 構 造 変 化 や エ ネ ル ギ ー 供 給 部 門 、 特 に 運 輸 部 門 で 2030 年 頃 に CO 2 を 大
幅 に 抑 制 で き る 技 術 革 新 が あ れ ば GDP ロ ス は 大 き く 緩 和 で き る 可 能 性 が あ る 。
本分析では、特に運輸部門での技術開発の重要性が示唆された。
感 度 分 析 の 結 果 よ り 、 GDP ロ ス を 緩 和 す る た め に 、 CCS 技 術 の よ う な エ ネ ル ギ ー 供
給技術の対策は経済影響に重要な要因であるとともに、産業あるいは家庭における燃
料 種 間 の 代 替 の 想 定 に よ っ て も 、CO 2 排 出 抑 制 時 の 経 済 影 響 が 大 き く 変 化 す る こ と が 明
らかとなった。ただし、燃料種の代替性の想定については、部門ごとの技術特性等に
依存することから、注意して検討する必要がある。
(2)Non-CO 2 温 暖 化 ガ ス 排 出 の 分 析 と 予 測 評 価
Non-CO 2 温 室 効 果 ガ ス に つ い て 、 各 排 出 部 門 の 積 み 上 げ に よ る ト レ ン ド 解 析 を 用 い
て 、Phoenix18 地 域 ご と の Non-CO 2 に 関 す る 排 出 量 予 測 を 行 っ た 。現 状 、緩 和 対 策 技 術 、
- 190 -
費 用 対 効 果 の い ず れ に 関 し て も CO 2 排 出 緩 和 策 と 比 べ る と デ ー タ の 信 頼 度 は 低 く 、 不
確実性が高いと言わざるを得ない。その留保条件のもとで評価した結果、
① 当 該 プ ロ ジ ェ ク ト で 評 価 し た 排 出 に 関 す る ス ト ー リ ー ラ イ ン に つ い て は 、 SRES の
モ デ ル 解 析 結 果 と あ る 程 度 合 致 す る と 同 時 に 、 等 価 CO 2 濃 度 に 関 し て も 、 従 来 の 結
果と大きく異なるものではないことが確認された。
② 緩 和 策 オ プ シ ョ ン と し て は 、 Non-CO 2 温 暖 化 ガ ス 削 減 は 、 無 視 で き な い 大 き な 削 減
ポ テ ン シ ャ ル が あ る こ と が 示 さ れ た 。 こ と に 、 A1FI ケ ー ス の よ う に 温 暖 化 ガ ス 排 出 の
ベースラインが高い場合に有効であった。ただし、緩和費用と効果の分析からは、必
ず し も CO 2 排 出 緩 和 策 に 比 べ 決 定 的 に 優 位 な 費 用 対 効 果 が あ る と ま で は 言 え な い 。 排
出 削 減 策 の 不 確 実 性 を 考 慮 す れ ば 、 Non-CO 2 温 暖 化 ガ ス の 排 出 緩 和 策 は 、 付 加 的 な 位
置づけにとどまらざるをいないと結論された。
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- 193 -
第 4章
4.1
温暖化影響と対策の総合評価
総合評価の概要
地球温暖化問題には、その影響範囲が広く、極めて重大な問題であることに疑いの
余地はない。しかしながら、人類が利用できる資源には当然限りがある。そのため、
その限りある資源をいかに有効に配分し、全体的な最適性を追求するかを常に考えな
ければならない。それは、地球温暖化問題であっても例外ではあり得ず、基本的に費
用 便 益 分 析 ( CBA) 的 に 考 え る こ と し か 評 価 の 方 法 論 は あ り 得 な い 。 PHOENI X で は 、
長期的にどのような濃度安定化レベルを目指すべきかを費用便益的な視点に基づいて
言及するために、濃度安定化レベル毎に温暖化影響被害の大きさ(評価可能な事象に
ついては適応策の効果も含めて)を出来る限り定量的に評価を行い、また、一方、温
暖化緩和コストについても濃度安定化レベル毎に評価を実施した。
しかし、費用便益といっても、温暖化問題は、以下のような点で特に困難な課題を
有している。
• 温 暖 化 影 響 の 部 門 間 統 合 の 問 題 : CBA の た め に は 、 様 々 な タ イ プ の 温 暖 化 影 響 を
すべて金銭換算しなければならないが、温暖化影響は、市場における貨幣価値に
換算できない非市場的な影響も多く、事実上不可能。ある一つの生物種が絶滅す
るかもしれないが、その特定の生物種を重要と考えるか、全く重要と思わないか
は、人によって全く異なる可能性がある。
• 地 域 間 統 合 の 問 題 : CBA で は 、 金 銭 換 算 さ れ 算 出 さ れ た 温 暖 化 被 害 額 を 地 域 間 で
統 合 す る こ と に な る が 、例 え ば 、島 嶼 国 の 被 害 額 は 世 界 全 体 か ら は 大 き く な い が 、
それを決して看過できないと思う人もいるだろう。
• 時点間統合の問題:金銭換算され算出された時点毎の温暖化被害額の統合方法。
割引率といった便宜的なパラメータを用いて統合されることが多いが、将来世代
の負担をどのように見るかは千差万別。
• 不確実性の大きさ:気候変動メカニズムについては気候感度に代表されるような
大きな不確実性が残っており、また、温暖化影響についての不確実性は更に大き
い。また、適応策による効果および適応策のコストについても不確実である。不
確実であるために、リスク回避的に行動したいと思う人もいれば、不確実だから
あまり対応をとる必要はないと考える人もいるだろう。
これらは、個人の価値判断の問題であり、科学に基づく定量的な分析・評価だけで
は結論が得られない問題である。一方、評価のプロセスにおいて、科学的知見と上記
のような価値判断の部分とを混在させてしまうと、政策的な意思決定における論点が
不 明 確 に な っ て し ま う 。 従 来 の CBA に 基 づ く 統 合 評 価 モ デ ル に よ る 分 析 に よ っ て 得 ら
れた最適な排出パスでは、このような問題が存在していた。そこで、本研究において
は、科学的知見と研究者の価値判断とを峻別し各種評価作業の途中で研究者の価値判
断を滑り込ませないこと、価値判断は価値判断が潜り込んでいない科学的知見をもと
- 194 -
に最終段階で実施すべきこと、価値判断の実施は専門家や関係者により実施すること
になるが価値判断を行うのであることを明確にしてこれを行うこととした。
望ましい長期排出抑制目標パスの策定のために、上述の温暖化の影響と温暖化緩和
策をエキスパートジャッジメントにより総合化することとしたが、多岐に亘る評価結
果を単に提示したのみでは、専門家と言えど判断は困難と考えられ、専門家の判断を
合理的に抽出するためのシステム的な決定手順が必要となる。具体的には以下の手順
に よ っ て 温 暖 化 影 響 と 対 策 の 総 合 評 価 を 実 施 し た 。な お 、図 4.1-1 に 、総 合 評 価 の 手 順
の概要を示す。
< I. RITE に よ る 温 暖 化 影 響 ・ 緩 和 コ ス ト の 推 定 ・ 評 価 >
①
リ フ ァ レ ン ス 、 S650、 S5 5 0、 S450 の 各 排 出 パ ス に つ い て 、 20 50、 2 10 0、 2 1 5 0 年 の
各時点における各種温暖化影響の大きさの物理量、およびエネルギーシステムコ
ス ト 、 付 加 価 値 等 を 推 定 ( 分 析 ・ 評 価 の 基 礎 と な る 人 口 、 GDP 等 の ベ ー ス ラ イ ン
シ ナ リ オ は IPCC SRES B2 シ ナ リ オ で 統 一 )
②
定量的な評価が困難な温暖化影響事象についても、考えられる影響を定性的に整
理
< II. エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト ― 第 1 ス テ ッ プ >
①
I.の 評 価 の う ち 、 リ フ ァ レ ン ス か ら S550 に し た 場 合 の 5 項 目 ( 海 面 上 昇 ・ 沿 岸 影
響、農作物影響、健康影響、陸上生態系影響、熱塩循環崩壊)についての温暖化
影 響 低 減 の 物 理 量( 2 1 0 0 年 時 点 、世 界 合 計 値 )、お よ び 、そ の と き の 緩 和 コ ス ト( こ
こ で は DNE21 モ デ ル の シ ス テ ム コ ス ト 増 分( 世 界 合 計 値 ))を エ キ ス パ ー ト に 提 供
②
温暖化影響事象5項目について、一対比較による相対的重付けを質問
③
I.に お け る 評 価 の 前 提 と し た 一 人 当 た り 所 得 、 お よ び 、 統 計 的 生 命 価 値 ( VSL) の
事例、日本の各種環境政策において費やされている費用を参考情報として提示し
た上で、温暖化起因健康影響による死亡回避価値について、具体的な金銭値を質
問
< III. 費 用 便 益 分 析 >
①
II.② 、 ③ の 質 問 に 対 す る 回 答 か ら 、 回 答 者 別 に 、 21 0 0 年 時 点 の 5 項 目 の 温 暖 化 影
響についての影響低減に伴う便益の金銭換算値を導出
②
I.の 評 価 の う ち 、 21 0 0 年 時 点 に お け る リ フ ァ レ ン ス 、 S650、 S550、 S450 の 各 排 出
パスについての5項目の温暖化影響および緩和コストの推定値と、上記①で導出
し た 2100 年 時 点 に お け る 温 暖 化 影 響 事 象 別 の 影 響 低 減 ( リ フ ァ レ ン ス か ら S5 5 0
にした場合)の金銭換算値を基に、影響低減の金銭換算値と緩和コストの差(こ
れを総便益と定義)を算出し、総便益の最も大きい安定化レベル(一次最適安定
化レベルと記載)を特定
< IV. エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト ― 第 2 ス テ ッ プ >
- 195 -
①
各回答者に、本人の第 1 ステップでの一次最適安定化レベルを通知
②
2050 年 、 21 0 0 年 、 21 5 0 年 の 3 時 点 に お け る 、 地 域 別 の 温 暖 化 影 響 事 象 に 関 し て 、
RITE 側 で 見 積 も り ・ 文 献 調 査 を 行 っ た 温 暖 化 影 響 事 象 の 定 量 的 、 も し く は 定 性 的
評価について整理した資料を提示(第 1 ステップで注目した5項目以外の事象も
含む)
③
最も望ましいと考える濃度安定化レベル(排出パス)を直接的に質問
④
質 問 ③ の 回 答 を 行 っ た 理 由 や 、 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル と 異 な る ( /同 等 と な る ) 理
由について質問
< V. 結 果 の ま と め >
①
IV の エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト の 回 答 集 計 、 分 析 、 ま と め を 実 施
A. 世界合計値_2100年時点_Ref, S550のみ
RITEによる
評価/見積
の情報
C. 世界地域別_2050,2100,2150の3時点
_Ref, S650, S550, S450の各シナリオ
温暖化影響の評価
温暖化影響の評価
1 海面上昇/沿岸影響 2 農作物影響
3 健康影響 4 陸上生態系 5 THC崩壊
- 左記5項目以外の影響事象(例えば、WAIS,
異常気象, 山岳氷河, 北極海氷など)も
緩和コストの評価
緩和コストの評価
- DNE21モデルによるシステムコスト増分
- さらに、地域別/産業別の付加価値変化も
B. 上記Aの項目に関して、 S650,
S450のケースについても評価
質問1. 温暖化影響緩和の
相対的重要度の一対比較
(5項目のみ)
第1
ステップ
悪影響の金銭
換算値/コスト
総コスト(=総便
益の負数)
緩和コスト
質問2. 健康影響による死
亡回避価値(金銭換算値)
総コストが最小(=総便益最大)
となる「安定化レベル」を算出
温暖化による
悪影響金銭換
算値
Ref
l
l
S650 S550
l
S450
排出パス/
安定化レベル
質問1. 総合的に考えた上での、最も望ましい安定化レベル
第2
ステップ
質問2. 質問1.の回答を行った理由
質問3. 質問1.の回答を行うにあたり、重要視した項目
図 4 .1-1
総合評価の手順
- 196 -
回答の集計、
分析、まとめ
4.2
エキスパートジャッジメント(EJ)の実施と分析結果
4.2.1 は じ め に
前節で述べた通り、温暖化による影響評価や温暖化対策に関して、科学的な論理を
ベースとして議論できる内容と、その判断にとりわけ個人の価値判断を必要とする内
容があり、これらを区別することなく、混在したままで議論が行われることが通例で
ある。
そ こ で 、 最 初 に 「 科 学 的 な 論 理 を ベ ー ス と し て 議 論 で き る 内 容 」 に 関 し て は 、 RITE
がモデルによる分析評価や文献調査などによって、温暖化影響の定量的評価、定性的
評 価 を 行 っ た( 前 節 の < I> )。影 響 事 象 が 緩 和 し た 場 合 の 便 益 や 、金 銭 換 算 値 に つ い て
は、価値判断が必要であるため、次に、影響の物理量を定量的評価可能であった温暖
化影響事象5項目について、その相対的重みや、金銭換算値を、エキスパートジャッ
ジメント(EJ)第 1 ステップとして各専門家にアンケートを実施した(前節の<I
I > )。 ア ン ケ ー ト 結 果 を 本 に 定 量 的 な 費 用 便 益 分 析 を 行 い 、 専 門 家 ご と の 一 次 最 適 な
安 定 化 レ ベ ル を 特 定 し た ( 前 節 の < I I I > )。
なお、温暖化影響事象には、現段階で得られる科学的諸知識を基にしても物理量を
定 量 化 で き な い 事 象 も 多 い( 異 常 気 象 な ど )。そ こ で 、エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト( E
J ) 第 2 ス テ ッ プ と し て 、 GHG 排 出 抑 制 に よ り 温 暖 化 影 響 事 象 を 和 ら げ て 得 ら れ る 便
益 と 、 GHG 排 出 抑 制 に 要 す る 費 用 な ど を 総 合 的 に 判 断 し て 、 最 も 望 ま し い 排 出 パ ス を
直接的に各専門家に尋ねた。また、その回答理由などについても同時に尋ねた(前節
の < I V > )。
以上が、エキスパートジャッジメント(EJ)の概要である。本節では、EJのや
り方に関する事項、EJ第 1 ステップ、第2ステップで提示した資料、用いた質問表 、
集計結果を以下に示す。
4.2.2
(1)
EJの手続きに関する事項
エキスパートの選定
そもそも、温暖化影響及び緩和の総合的な評価は、きわめて幅広い知識と同時に深
い専門知識も必要となる。また、倫理的・道徳的側面と、政策の実効性といった側面
のバランスなども問われる。また、同分野の専門家であっても、様々な価値判断をめ
ぐって、幅広い意見が存在するのは自明である。従って、結果の含意や客観性を担保
す る た め に 、温 暖 化 総 合 評 価 へ 向 け て の エ キ ス パ ー ト の 選 定 は 本 質 的 に 重 要 で あ る( 詳
し く は 文 献 1 )の 5 .5 節 参 照 )。
一方、エキスパートジャッジメント(EJ)実施にあたっては、事前にエキスパー
トに対し十分な情報の伝達を図り、誤解や食い違いを避けるのはもちろん、EJの背
景などについても十分伝えておく必要がある。一方、エキスパートの人数は、少数よ
りはある程度多いほうが価値判断の差異を把握するためには望ましい。従って、現実
的な選択肢としては、エキスパートとして、本プロジェクトの委員会、及びWGの専
門家とすることが考えられた。
- 197 -
以上を勘案し、本EJのエキスパートを、委員会、及びWGの専門家とし、さらに
研 究 の 実 施 主 体 で あ る RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ の メ ン バ ー も エ キ ス パ ー ト と し て
加えることとした。
(2)
第 1 ステップと第 2 ステップの関連/相違点
第 1 ス テ ッ プ で は 、 定 量 評 価 を 行 う 便 宜 上 、 21 0 0 年 の 一 時 点 で の 評 価 と し 、 定 量 評
価可能であった5事象のみを扱った。これに対し、第2ステップでは全影響事象を総
合的に判断し、直接望ましい安定化レベルを尋ねた。
なお、第2ステップの質問票の冒頭には、回答者本人(のみ)の第 1 ステップでの
最適安定化レベルを記載した。従って、第2ステップ回答前に、回答者本人の第 1 ス
テップの結果は提示されるものの、第2ステップでの「望ましい安定化レベル」の回
答に関しては、第 1 ステップの結果に拘束されることなく、回答者の任意で安定化レ
ベ ル を 回 答 で き る よ う に し た( た だ し 、安 定 化 レ ベ ル の 選 択 理 由 に つ い て は 、尋 ね た )。
(3)
第 1 ステップで扱う安定化レベル
リファレンスケース(特段の温暖化対策をとらないケース、B2シナリオベース、
以 下 Ref と 記 載 )、 S 5 5 0 安 定 化 ケ ー ス と し 、 Ref か ら S 5 5 0 に し た 場 合 の 、 温 暖
化影響緩和の便益を質問する。他、S650、S450のケースの温暖化影響事象の
物理量についても影響事象の評価を行い、費用便益分析、及び第2ステップの資料情
報として用いることとした。
(4)
温暖化影響緩和の便益を金銭換算する方法
第 1 ス テ ッ プ に て 、費 用 便 益 分 析 を 行 う た め 、Ref か ら S 5 5 0 へ 濃 度 安 定 化 す る こ
とによる温暖化影響事象緩和の便益を、金銭換算する必要がある。ここでは、健康影
響による死亡回避一人当たり価値を尋ねることで、影響事象5項目を金銭換算するこ
ととした。
そもそも、死亡回避価値は倫理的に無限大である。しかし、ここでは、ある特定の
死 亡 の 回 避 に 言 及 し て い る わ け で は な く 、マ ク ロ と し て の 死 亡 リ ス ク の 低 減 に 対 し て 、
それに見合った便益がどの程度かを便宜的に換算しているため、死亡回避価値は有限
と考えられる。また、我々は、日常においても、死亡リスクを低減したり、受容した
りする替わりに、費用を負担したり、便益を得たりしている。そのことからも、死亡
回避価値は有限である。
人間活動による環境負荷による悪影響(人間への健康被害など)の金銭換算方法に
つ い て は 、従 来 か ら 議 論 が 続 い て お り 、そ の 詳 細 や 研 究 例 に つ い て は 、既 往 の 文 献
2)-4)
を参照のこと。
本EJにおいて以上の背景や留意点を認識した上で、
「健康影響による死亡回避一人
当たり価値」を直接尋ねることとした。
- 198 -
(5)
情報の伝達方法/情報の内容
質問を行う際は、その質問内の語彙ついても、定義や解釈が分かれるケースも考え
られる。また、複数の温暖化影響事象を議論する際は、複合的な影響をどの事象とし
てカウントすべきかの判断が困難なケースも考えられる(例:海面上昇、降雨量増大、
生態系の破壊などを要因として、ある地域の河川下流にて洪水が発生し、その結果、
健 康 影 響 、 農 作 物 影 響 が 生 じ る ケ ー ス な ど )。 従 っ て 、 各 温 暖 化 影 響 事 象 の 物 理 量 や 文
脈、定義を明らかにするため、ある程度の情報を記載した資料を提供する方が望まし
い。一方、過剰/あるいは偏った情報は、回答者の価値判断を歪め、ひいてはEJ実
施事務局の主観的な意図を回答者へ押し付ける可能性がある。
本 EJ で は 、 本 報 告 書 の 付 録 1 に 示 し た よ う に 、 第 1 ス テ ッ プ に お い て は 、 温 暖 化 影
響 5 項 目 に 関 す る 21 0 0 年 時 点 の 情 報 、GDP や 人 口 な ど の 基 本 的 な 情 報 を 記 載 し た 資 料
を回答者に提示した。
第 2 ス テ ッ プ で は 、 本 報 告 書 の 付 録 2 に 示 し た 通 り 、 2 050 年 、 21 00 年 、 21 50 年 の 3
時点における影響事象を、スコアボードにまとめるとともに、特に関心度が高いと思
われる主要な項目については、より詳細に図表を用いた資料を作成し、一定の情報提
示を行った。
参 考 文 献 ( 4.2.2 節 に 関 す る も の )
1)
RITE、「H17 年度
2)
Extern-E プロジェクト、http://www.externe.info/
3)
植田和弘、「環境経済学」
、岩波書店、第 5 章、1996.
4)
RITE/NEDO、
「地球再生計画」の実施計画作成に関する調査事業、H10 年度報告書、NEDO-GET-9836、
国際産業経済の方向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価」、2006.
第 4.3 節、1999.
4.2.3
EJ第1ステップの集計
WG、 委 員 会 、 RITE 内 部 か ら 、 計 2 5 名 の 回 答 を 得 た 。 得 ら れ た 回 答 と 、 そ の 数 値 か
ら 推 計 さ れ る 影 響 項 目 別 の 重 み /貨 幣 価 値 換 算 値 を 表 2.3.7-1 に 示 す 。
表 2.3.7-1 に お け る 各 数 値 の 意 味 、 計 算 方 法 は 次 の 通 り 。
①
横 (行 )の 項 目 が 縦 (列 )の 項 目 に 対 し 、 相 対 的 に ど れ だ け の 重 み が あ る か を 示 し て い
る ( 即 ち 、 回 答 者 A1 の 場 合 、 農 作 物 影 響 の 緩 和 の 重 要 度 を 1 と す る と 、 海 面 上
昇 ・ 沿 岸 影 響 の 緩 和 の 重 要 度 を 0.5 と 回 答 )
②
「推計された重み」とは、相乗平均を用いた簡易法により算出(固有値を用いた
推定ではない)
③
貨 幣 換 算 は 、 健 康 影 響 に よ る 死 亡 者 数 1 08 万 人 、 為 替 レ ー ト ($1=¥120)を 用 い て 、
2000 年 US$ へ 換 算
④
整 合 度 は 、 項 目 別 の 重 み が ど れ ほ ど の 意 味 を 持 つ か と い っ た 指 標 で あ る ( *整 合 度
0.1 以 下 で 誤 差 の 許 容 範 囲 と す る こ と が 多 い )。
- 199 -
なお、各回答者の通し番号については、次のように整理している。
A1 か ら A4: 緩 和 策 評 価 WG の 回 答 者 ( 以 下 、 緩 和 WG と 記 載 )
A11 か ら A14: 影 響 ・ 適 応 評 価 WG の 回 答 者 ( 以 下 、 影 響 WG と 記 載 )
B1 か ら B8: 温 暖 化 影 響 ・ 対 策 総 合 評 価 委 員 会 の 回 答 者 ( 以 下 、 委 員 会 と 記 載 )
C1 か ら C9: RITE シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ の 回 答 者
- 200 -
表 4 .2 .3 -1
各回答者、グループの影響事象別重み、貨幣価値換算
①
海面上
回答者A1
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
2.00
農作物影響
2.00
健康影響
3.50
陸上生態系影響
0.20
THC崩壊
合計
海面上
回答者A2
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
10.00
農作物影響
10.00
健康影響
10.00
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
海面上
回答者A3
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
5.00
農作物影響
0.05
健康影響
2.00
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
農作物
健康影響
影響
0.50
1.00
2.00
4.00
0.20
0.50
0.50
1.00
10.00
0.20
農作物
健康影響
影響
0.10
1.00
10.00
10.00
10.00
0.10
0.10
1.00
1.00
1.00
農作物
健康影響
影響
0.20
1.00
0.02
0.50
0.50
20.00
50.00
1.00
50.00
50.00
②
④
整合度 0.183
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
510
0.29
5.00
11.6%
0.25
5.00
15.0%
655
0.10
5.00
16.4%
8,000
720
1.00
5.00
53.0%
2,324
0.20
1.00
3.9%
173
100.0%
4,382
整合度 0.176
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
568
0.10
0.10
2.0%
0.10
0.10
4.9%
1,426
1.00
1.00
31.0%
100,000
9,000
1.00
1.00
31.0%
9,000
1.00
1.00
31.0%
9,000
100.0%
28,994
整合度 0.083
健康影響による 貨幣換算
推計された
陸上生態
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
1,242
0.50
0.10
7.3%
2.00
2.00
40.0%
6,821
0.02
0.02
0.5%
1,000
90
1.00
1.00
22.0%
3,746
1.00
1.00
30.3%
5,169
100.0%
17,068
海面上
回答者A4
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.50
農作物影響
0.05
健康影響
0.02
陸上生態系影響
0.20
THC崩壊
合計
整合度 0.449
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
1,136
2.00
20.00
50.00
5.00
51.8%
1.00
10.00
50.00
2.00
28.4%
624
0.10
1.00
100.00
2.00
8.2%
2,000
180
0.02
0.01
1.00
0.01
0.3%
6
0.50
0.50
100.00
1.00
11.3%
248
100.0%
2,194
海面上
回答者A11
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
5.00
農作物影響
5.00
健康影響
10.00
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
整合度 0.015
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
21
0.20
0.20
0.10
0.10
3.3%
1.00
2.00
1.00
1.00
25.0%
548
0.50
1.00
0.50
0.50
14.3%
1,000
90
1.00
2.00
1.00
1.00
28.7%
629
1.00
2.00
1.00
1.00
28.7%
629
100.0%
1,918
海面上
回答者A12
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
10.00
農作物影響
1.00
健康影響
0.10
陸上生態系影響
0.10
THC崩壊
合計
整合度 0.225
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
450
10.00
10.00
15.9%
10.00
10.00
63.2%
1,791
10.00
10.00
15.9%
5,000
450
1.00
1.00
2.5%
71
1.00
1.00
2.5%
71
100.0%
2,834
農作物
健康影響
影響
0.10
1.00
0.10
0.10
0.10
1.00
10.00
1.00
0.10
0.10
- 201 -
③
海面上
回答者A13
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.10
農作物影響
0.50
健康影響
0.02
陸上生態系影響
0.20
THC崩壊
合計
海面上
回答者A14
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.20
農作物影響
1.00
健康影響
0.10
陸上生態系影響
5.00
THC崩壊
合計
海面上
回答者B1
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
10.00
農作物影響
1.00
健康影響
2.00
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
農作物
健康影響
影響
10.00
1.00
5.00
0.10
2.00
2.00
0.20
1.00
0.05
0.50
農作物
健康影響
影響
5.00
1.00
5.00
0.10
10.00
1.00
0.20
1.00
0.10
5.00
農作物
健康影響
影響
0.10
1.00
0.20
0.20
1.33
1.00
5.00
1.00
2.00
7.50
整合度 0.024
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
197
50.00
5.00
54.7%
10.00
0.50
6.3%
23
20.00
2.00
25.0%
1,000
90
1.00
0.05
0.9%
3
20.00
1.00
13.1%
47
100.0%
360
整合度 1.000
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
450
10.00
0.20
0.0%
10.00
0.10
0.0%
149
10.00
0.20
0.0% THC崩壊
450
1.00
0.10
0.0%
45
10.00
1.00 重み
1,358
18.4%
2,452
整合度 0.013
健康影響による 貨幣換算
推計された
陸上生態
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
197
0.50
0.10
4.5%
5.00
0.75
36.6%
23
0.50
0.13
5.4%
1,000
90
1.00
0.20
8.9%
3
5.00
1.00
44.6%
47
100.0%
360
海面上
回答者B2
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.10
農作物影響
10.00
健康影響
0.05
陸上生態系影響
20.00
THC崩壊
合計
整合度 0.315
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
32
10.00
0.10
20.00
0.05
7.2%
1.00
0.05
2.00
0.10
1.8%
8
20.00
1.00
20.00
0.20
27.4%
1,000
122
0.50
0.05
1.00
0.02
0.9%
4
10.00
5.00
50.00
1.00
62.7%
279
100.0%
445
海面上
回答者B3
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.10
農作物影響
0.05
健康影響
0.20
陸上生態系影響
0.02
THC崩壊
合計
整合度 0.069
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
98
10.00
20.00
5.00
50.00
73.7%
1.00
2.00
2.00
5.00
9.7%
13
0.50
1.00
0.20
2.00
3.4%
50
5
0.50
5.00
1.00
10.00
11.7%
16
0.20
0.50
0.10
1.00
1.5%
2
100.0%
134
海面上
回答者B4
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
1.00
農作物影響
0.05
健康影響
0.50
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
整合度 0.164
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
624
2.00
0.10
12.6%
2.00
0.20
12.6%
624
1.00
0.05
1.8%
1,000
90
1.00
0.05
4.0%
197
20.00
1.00
69.1%
3,427
100.0%
4,961
農作物
健康影響
影響
1.00
1.00
0.10
0.50
5.00
20.00
10.00
1.00
1.00
20.00
- 202 -
海面上
回答者B5
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
5.00
農作物影響
5.00
健康影響
2.00
陸上生態系影響
5.00
THC崩壊
合計
海面上
回答者B6
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
10.00
農作物影響
0.50
健康影響
1.00
陸上生態系影響
50.00
THC崩壊
合計
海面上
回答者B7
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
0.20
農作物影響
2.00
健康影響
1.00
陸上生態系影響
100.00
THC崩壊
合計
農作物
健康影響
影響
0.20
1.00
1.00
0.50
1.00
0.20
1.00
1.00
0.50
1.00
農作物
健康影響
影響
0.10
1.00
0.05
0.10
5.00
2.00
20.00
1.00
2.00
100.00
農作物
健康影響
影響
5.00
1.00
10.00
5.00
100.00
0.50
0.10
1.00
0.50
100.00
整合度 0.001
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
188
0.50
0.20
5.7%
2.00
1.00
27.1%
900
2.00
1.00
27.1%
10,000
900
1.00
0.50
13.0%
430
2.00
1.00
27.1%
900
100.0%
3,319
整合度 0.000
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
18
1.00
0.02
1.6%
10.00
0.20
16.0%
180
0.50
0.01
0.8%
100
9
1.00
0.02
1.6%
18
50.00
1.00
80.0%
900
100.0%
1,125
整合度 0.122
健康影響による 貨幣換算
推計された
陸上生態
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
3,101
1.00
0.01
1.1%
0.20
0.01
0.3%
856
2.00
0.01
2.0%
60,000
5,400
1.00
0.01
1.1%
3,101
100.00
1.00
95.4%
258,215
100.0%
270,674
海面上
回答者B8
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
10.00
農作物影響
20.00
健康影響
10.00
陸上生態系影響
100.00
THC崩壊
合計
整合度 0.000
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
68
0.10
0.05
0.10
0.01
0.7%
1.00
0.50
1.00
0.10
7.1%
675
2.00
1.00
2.00
0.20
14.2%
15,000
1,350
1.00
0.50
1.00
0.10
7.1%
675
10.00
5.00
10.00
1.00
70.9%
6,750
100.0%
9,518
海面上
昇・沿岸
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
1.26
農作物影響
0.53
健康影響
0.31
陸上生態系影響
0.88
THC崩壊
合計
整合度 0.004
健康影響による 貨幣換算
農作物
陸上生態
推計された
健康影響
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
影響
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
114
0.79
1.87
3.22
1.14
25.1%
1.00
2.13
4.25
1.39
31.1%
179
0.47
1.00
2.13
0.88
15.4%
2,354
129
0.24
0.47
1.00
0.31
7.2%
97
0.72
1.14
3.27
1.00
21.2%
935
100.0%
1,455
海面上
委員会の回答の
昇・沿岸
相乗平均
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
1.33
農作物影響
1.12
健康影響
0.82
陸上生態系影響
10.00
THC崩壊
合計
整合度 0.009
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
125
1.22
0.10
7.9%
1.89
0.25
12.3%
148
1.30
0.12
8.8%
1,609
83
1.00
0.11
6.7%
39
9.17
1.00
64.3%
425
100.0%
820
WGの回答の
相乗平均(A2除く)
農作物
健康影響
影響
0.75
1.00
0.82
0.53
4.01
0.89
1.22
1.00
0.77
8.11
- 203 -
RITE内部の回答
海面上
の相乗平均
昇・沿岸
(C7除く)
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
1.03
農作物影響
0.43
健康影響
0.10
陸上生態系影響
5.01
THC崩壊
合計
全回答者
海面上
相乗平均
昇・沿岸
(A2,C7除く)
影響
海面上昇・沿岸影響
1.00
1.20
農作物影響
0.64
健康影響
0.29
陸上生態系影響
3.75
THC崩壊
合計
農作物
健康影響
影響
0.97
1.00
0.48
0.14
6.76
2.31
2.07
1.00
0.30
11.21
農作物
健康影響
影響
0.84
1.00
0.57
0.26
2.85
1.55
1.74
1.00
0.48
5.00
整合度 0.001
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
62
10.43
0.20
14.0%
7.23
0.15
12.1%
54
3.35
0.09
5.9%
329
26
1.00
0.03
1.7%
8
29.82
1.00
66.3%
296
100.0%
447
整合度 0.001
健康影響による 貨幣換算
陸上生態
推計された
THC崩壊
死亡回避1人当た [billion
系影響
重み
り価値 [万円/人] US$/年]
125
3.46
0.27
15.3%
3.85
0.35
18.1%
148
2.10
0.20
10.1%
1,040
83
1.00
0.10
4.8%
39
10.10
1.00
51.8%
425
100.0%
820
注 1)「 相 乗 平 均 」 と は 、 各 回 答 者 の 一 対 比 較 の 値 を 、 整 合 度 の 調 整 無 し の ま ま 、 相 乗
平 均 し 、か つ 健 康 影 響 に よ る 死 亡 回 避 一 人 当 た り 価 値 の 回 答 に つ い て も 、相 乗 平
均したものである。
注 2)た だ し 、健 康 影 響 に よ る 死 亡 回 避 一 人 当 た り 価 値 の 回 答 で 上 下 端 の 回 答 で あ っ た
回 答 者 A2、 及 び C7 の 回 答 は 除 く こ と と し た
図 2.3.7-1 に 回 答 者 別 の 項 目 別 重 み 、及 び 全 項 目 を 合 計 し た 金 銭 換 算 値 を 示 す 。緩 和
に よ る 便 益 合 計 ( 図 2.3.7-1 下 図 、 影 響 事 象 5 項 目 の 合 計 ) が 大 き い 回 答 者 は 、 THC
の 重 み が 大 き い 傾 向 が あ る が 見 受 け ら れ る 。 こ れ は 、 TCH 崩 壊 を 「 絶 対 に 避 け る べ き
事象」として捉えている回答者がいることと関連があると考察される。
ま た 、 自 明 で は あ る が 、 緩 和 に よ る 便 益 合 計 は 、「 健 康 影 響 に よ る 死 亡 回 避 一 人 当 た
り価値/健康影響の重み」の値が大きい回答者である。
以上から分かる通り、回答者別、項目別に極めて幅広い分布となっている(特に上
側 に は 裾 野 が 広 く な っ て い る )。そ こ で 、こ れ ら 平 均 的 な 値 や ば ら つ き を 確 か め る た め 、
各 回 答 者 の 金 銭 換 算 値 を 対 数 変 換 し 相 加 平 均 と 標 準 偏 差 を と っ た( こ の 相 加 平 均 値 は 、
対 数 変 換 せ ず そ の ま ま 相 乗 平 均 を と っ た 値 と 等 し い )。 こ れ ら を 図 4.2.3-2 に 示 す 。 健
康影響緩和の貨幣価値換算の分布も十分幅広いが、陸上生態系影響の分布はより幅広
くなっている。
図 4.2.3-3 に 、健 康 影 響 に よ る 死 亡 回 避 一 人 当 た り 価 値 の 分 布 、そ の 回 答 理 由 を 示 す 。
全 回 答 者 は 25 名 で あ り 、 こ の 内 10 0 万 円 /人 以 上 、 1 億 円 /人 以 下 の 回 答 を 1 9 名 が 行 っ
て い る 。 た だ し 、 最 下 端 0 .5 万 円 /人 ( 回 答 者 C7)、 最 上 端 1 0 億 円 /人 ( 回 答 者 A2 ) と
裾 は 広 い 。 図 4.2.3-3 に お い て 、 相 対 的 に 低 い 金 額 の 回 答 者 は 、 適 応 可 能 性 、 犠 牲 者 が
高齢者であること、他の対策に資金を回すべきといった回答理由が目立つ。一方、相
対 的 に 高 い 金 額 の 回 答 者 は 、 VSL ( 統 計 的 生 命 価 値 )、 GDP 、 環 境 規 制 を 回 答 理 由 に 挙
げる傾向がある。
- 204 -
THC崩壊
80%
陸上生態系
影響
60%
健康影響
40%
農作物影響
20%
海面上昇・
沿岸影響
C9
C8
C4
C7
C3
C4
C6
C2
C3
C5
C1
C2
B8
C1
B7
B6
B5
B4
B3
B2
B1
A14
A13
A12
A11
A4
A3
A2
269
50
40
30
20
10
図 4.2 .3 -1
図 4 .2 .3 -2
緩和コスト
C9
C8
C7
C6
C5
B8
B7
B6
B5
B4
B3
B2
B1
A14
A13
A12
A11
A4
A3
0
A1
S550安定化ケース Ref比の緩和総便益
(Trillion US1990$ per year)
A1
0%
A2
S550安定化ケース 便益の項目別重み
100%
項 目 別 重 み ( 上 図 )、 全 項 目 を 合 計 し た 金 銭 換 算 値 ( 下 図 )
対 数 変 換 後 の 相 加 平 均 と 標 準 偏 差 ( A2,C7 の 回 答 除 く )
- 205 -
15,000
23
15,000
22
10,000
22
10,000
21
22
8,000
21
8,000
20
20
5,000
20
5,000
18
5,000
17
18
3,500
17
3,500
16
16
2,000
16
2,000
15
1,000
15
14
1,000
13
1,000
12
12
1,000
11
1,000
10
10
1,000
9
350
9
350
8
8
300
8
300
7
6
150
7
150
6
100
6
4
100
5
100
3
2
50
3
50
1
0.51
1
0内部試行の結果
0.51 1.E+5
0
1.E-1 1.E+0 1.E+1 1.E+2 1.E+3 1.E+4
健康影響による
健康影響による死亡回避
一人当たり価値 (万円/人)
累積回答者数
24
図 4.2.3 -3
4.2.4
A2 [日本の環境規制]
B7 [VSL、GDP]
B8
B5 [VSL、一人当たりGDP]
A1 [生涯賃金]
A12 [一人当たりGDP]
A14
C6
C9 [期待余命×(年間所得×1/3から1/4、転地費用]
A4 [保険金額]
A3
A11
A13
B1
B2
B4
[VSL、規制]
[日本の規制、GDP]
[平均所得、平均余命]
[必要な情報が提供されてないため不明]
[不明、他の対策に資金を回すべき]
C3 [高齢者、適応可能性]
C5 [倫理的には1億円程度必要だが、一人当たりGDPで判断]
C8 [寒さ起因死亡者数減少、一人当たりGDP]
B6 [高齢者は生産年齢層の負担、他対策に資金を回すべき]
C1 [一人当たりGDP、世界経済への影響]
C2 [VSL、途上国の一人当たりGDP]
B3 [犠牲者が高齢者]
C4 [寒さ起因死亡者数減少、適応可能性、一人当たりGDP]
C7 [適応可能性、電気代2ヶ月分、安価なエイズ薬10ヶ月分]
健康影響による死亡回避一人当たり価値の分布、その回答理由
EJ第1ステップの集計結果を用いた費用便益分析
Ref を 基 準 に S 5 5 0 安 定 化 レ ベ ル と し た 場 合 の 影 響 緩 和 の 便 益 に つ い て 、こ れ ま で
見 て き た 。ど の 安 定 化 レ ベ ル が 望 ま し い か を 費 用 便 益 分 析 に て 明 ら か に す る た め に は 、
S650、S450の各安定化シナリオのケースを含め、影響事象ごとの便益関数を
想 定 す る 必 要 が あ る 。こ こ で は 、THC 崩 壊 を 除 く 4 つ の 影 響 事 象 に つ い て は 、便 益 は 、
リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス か ら の 物 理 量 ( 表 4.2.4-1) に 対 し 線 形 と し た ( 図 4.2.4-1)。
* た だ し 、2 1 0 0 年 時 点 の 大 気 中 CO 2 濃 度 は 、Ref、S650、S550、S450 の 順 に 6 13 pp mv、
553ppmv、 517p p mv、 4 5 0p p mv。
- 206 -
表 4 .2 .4 -1
影 響 事 象 の 排 出 パ ス /安 定 化 レ ベ ル 別 物 理 量 (上 表 )
便 益 関 数 の 想 定 (下 表 )
物理量
Ref S650
海面上昇・沿岸影響
50
46
農作物影響
0 7.5%
健康影響
0.0 67.1
陸上生態系影響 7.90% 6.78%
THC崩壊 0.733 0.162
S550
43
9.1%
108.4
6.15%
0.035
S450
36
11.1%
201.4
4.78%
0.010
定義
2100年時点における1990年比海面上昇(cm)
Ref比生産ポテンシャル増加(%), 小麦と米の平均
熱ストレス(暑さ起因)死亡者数低減分(万人)
温暖化起因によるBio-diversity Loss(%)
平均崩壊確率p
便益関数値*
海面上昇・沿岸影響
農作物影響
健康影響
陸上生態系影響
THC崩壊 (I. 線形)
Ref S650 S550 S450
定義
0.00 0.57 1.00 2.00 Ref比抑制海面上昇7cmを1.0とする
0.00 0.82 1.00 1.22 Ref比ポテンシャル増加9.1%を1.0とする
0.00 0.62 1.00 1.86 Ref比死亡者数低減分108万人を1.0とする
0.00 0.64 1.00 1.78 Ref比Bio-diversity Lossの低減1.75%を1.0とする
0.00 0.82 1.00 1.04 Ref比THC崩壊確率の低減69.8%を1.0とする
THC崩壊 (II. ルート) 0.00 0.67 1.00 1.07 THC崩壊確率p のルートをとり規格化
THC崩壊 (III. 逆数) 0.00 0.32 1.00 1.17 THC崩壊確率p の逆数をとり規格化(一部、線形)
*
便益関数値は、値が大きいほど便益が大きいことを意味する
2
2
1.8
海面上昇・沿岸影響
1.6
規格化された便益関数
規格化された便益関数
1.8
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
Ref
1.8
S650
S550
排出パス/安定化レベル
S450
1.8
健康影響
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
Ref
2
規格化された便益関数
規格化された便益関数
1.4
0.2
2
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
図 4.2.4-1
S450
1.4
0
S650
S550
排出パス/安定化レベル
S650
S550
排出パス/安定化レベル
陸上生態系影響
1.6
0.2
Ref
農作物影響
1.6
S450
Ref
S650
S550
排出パス/安定化レベル
S450
4 つ の 影 響 事 象 に お け る 便 益 関 数 の 想 定 ( Ref 比 物 理 量 変 化 分 の 線 形 )
- 207 -
THC 崩 壊 に つ い て は 、
( 気 候 感 度 の 不 確 実 性 に 注 目 し た )崩 壊 確 率 に 基 づ き 質 問 を 行
っていることもあり、特に注意が必要であると考えられる。無数の便益関数が考えら
れ る が 、 こ こ で は 、 以 下 の 3 ケ ー ス の ダ メ ー ジ 関 数 を 想 定 し ( 図 4.2.4-2 )、 そ の ダ メ
ー ジ 関 数 を 基 に 便 益 関 数 を 作 成 し ( 図 4.2.4-3)、 感 度 解 析 を 行 う こ と と す る 。
I.
THC 崩 壊 確 率 の 線 形 (p)
II.
THC 崩 壊 確 率 の ル ー ト ( p^0.5)
基準ケースとする
THC 崩 壊 確 率 の 逆 数 (20/19–1/19p)[p≥0.1], p が 小 さ い 範 囲 で は 直 線 (p/0.19)[p ≤0.1 ]
1.2
規格化したダメージ関数値
1.0
III.逆数
崩壊確率
の逆数
線形
0.8
II.ルート
0.6
S650
S450
Ref
0.4
I.線形
0.2
S550
0.0
0%
20%
図 4 .2 .4 -2
40%
60%
THC崩壊確率
80%
100%
THC 崩 壊 確 率 に 対 す る ダ メ ー ジ 関 数
2
1.8
規格化された便益関数
III.
・・・
THC崩壊 (I. 線形)
1.6
THC崩壊 (II. ルート)
1.4
THC崩壊 (III. 逆数)
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
Ref
図 4 .2 .4 -3
S650
S550
排出パス/安定化レベル
S450
各安定化レベルにおけるTHC崩壊抑制の便益関数値
- 208 -
影響事象緩和の便益関数の想定により、安定化レベル別の総便益を算出することが
できる。
図 4.2.4-4 に 、例 と し て 回 答 者 A12 の 安 定 化 レ ベ ル 別 の 便 益 合 計 と Ref 比 シ ス テ ム コ
ス ト 増 分 を 示 す 。 回 答 者 A12 の 場 合 、 ど の 安 定 化 レ ベ ル に お い て も 、 緩 和 総 便 益 と シ
ス テ ム コ ス ト 増 分 の 差 は 正 と な る が 、こ の 中 で 最 も 差 が 大 き い の は S650 と な っ て い る
( → こ の 差 を 総 便 益 と し 、総 便 益 が 最 も 大 き な 安 定 化 レ ベ ル を 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル と
記 載 す る )。
影響事象緩和の便益、システムコスト増分
(billion US1990$ per year)
4500
4000
3500
3000
2500
THC崩壊
陸上生態系影響
健康影響
農作物影響
海面上昇・沿岸影響
Ref比システムコスト増分
2000
1500
1000
500
0
Ref
図 4 .2 .4 -4
S650
S550
排出/安定化レベル
S450
影 響 事 象 緩 和 の 便 益 と システムコスト増 分 ( 回 答 者 A12 の 場 合 )
* 用 い た T H C の 便 益 関 数 は 、「 I . 線 形 」
WG 回 答 者 の 総 便 益 を 図 4.2.4-5 に 示 す 。 WG 回 答 者 の 中 で 、 A1、 A2、 A3 は S450 が
最 も 望 ま し い 安 定 化 レ ベ ル と な る 。 一 方 、 回 答 者 A4 、 A11、 A12 は S650 に 総 便 益 の ピ
ー ク が き て お り 、 S650 が 最 も 望 ま し い パ ス と な る 。 な お 、 図 4.2.4-5 で は THC 崩 壊 確
率 低 減 の 便 益 関 数 を I.線 形 と し た が 、 II.ル ー ト 、 III.逆 数 を 採 用 し た 場 合 も 以 上 の 一 次
最 適 安 定 化 レ ベ ル は 変 化 し な か っ た 。( 一 部 の 回 答 者 に つ い て は 、 T H C の 便 益 関 数 の
取 り 方 に よ っ て 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル が 変 わ る 。)
- 209 -
A1
A2
A3
A12
A13
A14
A4
A11
40,000
総便益 (billion US1990$ per year)
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
Ref
S650
S550
S450
-5,000
A1
A2
A3
A12
A13
A14
A4
A11
5,000
総便益 (billion US1990$ per year)
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
Ref
S650
S550
S450
-2,000
-3,000
-4,000
-5,000
図 4 .2 .4 -5
回答者別総便益(WG回答者)
*上下の図で、縦軸のスケールが異なることに注意
委 員 会 回 答 者 に 基 づ く 総 便 益 を 図 4.2.4-6 に 示 す 。回 答 者 B4、B7、B8 に と っ て 、S450
が 最 も 望 ま し い 安 定 化 レ ベ ル と な る 。 一 方 、 回 答 者 B1、 B6 は S650 に 総 便 益 の ピ ー ク
が き て お り 、 S650 が 一 次 最 適 な 安 定 化 レ ベ ル と な る 。 回 答 者 B4、 B5 は 、 THC 崩 壊 確
率に関する便益関数の取り方によって、一次最適な安定化レベルが変化する。
- 210 -
40,000
総便益 (billion US1990$ per year)
35,000
30,000
25,000
B1
B2
B3
B4
20,000
B5
B6
B7
B8
15,000
10,000
5,000
0
Ref
S650
S550
S450
Ref
S650
S550
S450
-5,000
5,000
総便益 (billion US1990$ per year)
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
-2,000
-3,000
B1
B2
B3
B4
-4,000
B5
B6
B7
B8
-5,000
図 4 .2 .4 -6
回答者別総便益(委員会)
*上下の図で、縦軸のスケールが異なることに注意
図 4.2.4-7 に 、 相 乗 平 均 し た 総 便 益 の 結 果 を 占 め す 。 具 体 的 な 「 相 乗 平 均 」 の 取 り 方
については、以下の通りである。
各 回 答 者 の 影 響 事 象 緩 和 の 一 対 比 較 の 数 値 (整 合 度 調 整 な し )、健 康 影 響 に よ る 死 亡 回
避一人当たり価値の数値を相乗平均し算出。一対比較の数値を整合度が 0 となるよう
個 別 の 調 整 を 行 っ た 後 に 相 乗 平 均 を と る と 、 重 み が 1 %程 度 変 化 す る が 、 こ の よ う な 調
整は行っていない。
- 211 -
1,000
総便益 (billion US1990$ per year)
500
0
Ref
S650
S550
S450
-500
-1,000
-1,500
両WG(A2除く)
委員会
-2,000
RITE(C7除く)
全ての回答者(A2,C7除く)
-2,500
図 4 .2 .4 -7
相乗平均した総便益の結果
グ ル ー プ 別 に 見 る と 、 S650 に お け る 委 員 会 、 WG の 相 乗 平 均 値 は 大 き く 、 RITE 内 部
の 相 乗 平 均 値 は 低 い 。 RITE 内 部 の 結 果 は 、 T H C 便 益 関 数 の 取 り 方 に よ っ て Re f 側 が
一 次 最 適 と な る 。一 方 、委 員 会 、WG の 相 乗 平 均 は 、T H C 便 益 関 数 の 取 り 方 に よ ら ず
S650 が 一 次 最 適 と な る 。
全 回 答 を 相 乗 平 均 し た 場 合 、 S650 が 一 次 最 適 と な る 。 こ れ は 、 THC の 便 益 関 数 の 取
り方にもよらない。今回、健康影響による死亡回避一人当たり価値に関して上下端の
回 答 を 行 っ た 2 名 の 回 答 を 除 い た 集 計 内 容 を 示 し た が 、こ の 2 名 を 含 め た 場 合 で も「 一
次最適安定化レベル」の結果は変わらないことを別途確認した。
第 1 ステップでは、温暖化影響事象の緩和による便益を金銭換算する際、健康影響
による死亡回避一人当たり価値のみを用いた。死亡回避一人当たり価値の回答の相乗
平 均 値 ( 上 下 端 の 回 答 を 行 っ た A2 、 C7 を 除 く ) は 、 1 ,040( 万 円 /人 ) で あ っ た 。 こ の
回避価値が、一次最適な安定化レベルを決める大きな要素であると考えられるため、
回避価値に関して感度分析を次に行う。
図 4.2.4-8 は 、 5 項 目 の 相 対 的 重 み 、 死 亡 回 避 価 値 の 相 乗 平 均 を 全 回 答 者 ( A2,C 7 の
回答除く)でとり、5項目の相対的重みを固定させたまま、死亡回避価値の相乗平均
値が変化した時の一次最適安定化レベルへの影響を見たものである。
死 亡 回 避 価 値 の 相 乗 平 均 値 は 実 際 1 ,04 0( 万 円 /人 ) で あ り 、 S650 が 一 次 最 適 で あ る
が 、 仮 に こ の 値 が 7,0 00( 万 円 /人 ) で あ っ た な ら ば 、 S450 が 一 次 最 適 と な る 。 な お 、
本 報 で は THC 崩 壊 確 率 と ダ メ ー ジ 関 数 の 関 係 が 線 形 の 場 合 を 基 準 ケ ー ス と し て い る
( 図 4.2.4-8 左 側 )。
ダメージ関数に関してリスク回避度に差異のある2つのケースを設定し、感度解析
を 行 っ た ( 図 4.2.4-8 中 央 、 右 側 )。 死 亡 回 避 価 値 の 相 乗 平 均 値 が 3,000( 万 円 /人 ) の
- 212 -
場 合 、 よ り 大 き な リ ス ク 回 避 度 を 想 定 し た 「 III.逆 数 」 で 、 S550 が 一 次 最 適 と な る 。 た
だ し 、実 際 の 相 乗 平 均 値 は 1,04 0( 万 円 /人 )で あ り 、今 回 、設 定 し た ケ ー ス に 対 し て は 、
何 れ も S650 が 一 次 最 適 と な り 、 ロ バ ス ト な 結 果 が 得 ら れ て い る と 言 え る 。
死亡回避価値(万円/人)
8,000
S450
S450
S450
6,000
S550
S550
4,000
S550
S650
S650
2,000
0
S650
Ref
Ref
Ref
基準ケース [I.線形]
[II.ルート]
[III. 逆数]
THCに関する便益関数の想定
図 4.2.4-8
全回答者の
実際の相乗平均
1,040(万円/人)
死 亡 回 避 価 値 と 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル ( A2,C7 除 く 全 回 答 者 相 乗 平 均 )
以 上 か ら 、総 じ て 、E J 第 1 ス テ ッ プ に お け る 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル は S6 5 0 と な る 。
た だ し 、( 既 に 述 べ た 通 り ) 第 1 ス テ ッ プ で は 21 00 年 断 面 で の 事 象 5 項 目 の み に 注 目
した結果であることに注意が必要である。
4.2.5
(1)
EJ第2ステップの集計
質問1.望ましい濃度安定化レベル
第 2 ステップでは最初に、直接「総合的に判断した最も望ましい安定化レベル」に
つ い て 尋 ね た 。 そ の 結 果 、 S550 を 中 心 と し た 回 答 を 得 た ( 表 4.2.5-1)。 表 4.2.5-1 に
は、第 1 ステップの一次最適安定化レベルと、第 2 ステップの結果をマトリックスに
し て 示 し た 。 第 1 ス テ ッ プ で の 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル で は 、 S650 の 回 答 が 最 頻 値 で あ
り 、 ま た 、 Ref と S650 の 間 ( = T H C 崩 壊 の ダ メ ー ジ 関 数 の 設 定 に よ り 最 適 レ ベ ル が
変 化 す る 回 答 者 ) や 、 S450 の 回 答 も 多 い 。 こ れ に 対 し 、 第 2 ス テ ッ プ の 回 答 は 、 S5 5 0
の 回 答 が 最 頻 値 で あ る ( 表 4.2.5-1 の 最 右 列 参 照 )。 全 体 的 に 見 て 対 角 線 上 の 左 下 の 人
数が多く、これは第 2 ステップの方でより低い(数値の小さい)安定化レベルを回答
した人数が多いことを意味する。
- 213 -
表 4.2 .5 -1
第 1、 第 2 ス テ ッ プ に お け る 望 ま し い 安 定 化 レ ベ ル の 回 答 推 移
第1ステップ一次最適(5項目,2100年時点)
Ref
~
650
~
550
~
450 合計
第2ステップ回答
Ref
~
1
1
650
2
4
6
~
2
1
3
550
6
~
450
2
2
10
1
1
2
2
3
5
25
1
合計
5
12
3
図 4.2.5-1 に 、第 1 ス テ ッ プ 、第 2 ス テ ッ プ で の 最 適 安 定 化 レ ベ ル の 相 加 平 均 、標 準
偏 差 を と っ た 図 を 示 す 。第 1 ス テ ッ プ 、第 2 ス テ ッ プ の 相 加 平 均 値 は 、そ れ ぞ れ 60 0ppmv
程 度 、 550ppmv 程 度 と な っ て い る 。 ま た 、 標 準 偏 差 に 関 し て は 第 2 ス テ ッ プ の 方 が 小
さ い 。 従 っ て 、 第 2 ス テ ッ プ の 回 答 は 、 55 0p p mv 程 度 へ 回 答 が 収 束 す る 傾 向 に あ っ た
と言える。
望ましい安定化レベル(ppmv)
750
700
650
618
610
603
600
568
543
550
525
500
図 4 .2 .5 -1
RITE
委員会
影響WG
緩和WG
第2ステップ回答
[全回答者]
第1ステップ一次最適
[全回答者]
450
第2ステップ回答を
グループ別に見たもの
最適安定化レベルの相加平均と標準偏差
- 214 -
図 4.2.5-1 で は 、 第 2 ス テ ッ プ の グ ル ー プ 別 回 答 に つ い て も 比 較 を 行 っ た 。 影 響 W G
と RITE 内 部 は 、6 00 pp mv 程 度 と 比 較 的 数 値 の 大 き い 安 定 化 レ ベ ル の 回 答 と な っ て い る 。
こ れ に 対 し 、 緩 和 WG、 委 員 会 で は 500 か ら 55 0p p mv と い っ た 数 値 の 低 い 安 定 化 レ ベ
ル と な っ て い る 。 緩 和 WG は 、 相 対 的 に 緩 和 コ ス ト よ り も 影 響 の 度 合 が 大 き い と 判 断
し 、 逆 に 影 響 WG は 、 相 対 的 に 緩 和 コ ス ト よ り も 影 響 の 度 合 が 小 さ い と 判 断 し た 点 は 、
逆説的であり注目に値する。
(2)
質問2.影響事象、緩和コストの重要視度
(3)
質問3.地域間の差異、時点間の差異の重要視度
図 4.2.5-2 に 、安 定 化 レ ベ ル 回 答 に お け る 項 目 別 重 要 視 度 に 関 し て 、相 加 平 均 、標 準
偏 差 を と っ た も の を 示 す 。影 響 事 象 の 内 Typ e II の THC、Typ e I の 異 常 気 象 、海 面 上 昇 ・
沿岸影響の平均値が高い。緩和コストの重要視度も高く、また地域間の差異、時点間
の差異も比較的重要視度が高い。
標 準 偏 差 は( 平 均 値 が 1 や 5 に 近 い と 減 少 し や す い た め 、単 純 な 比 較 は で き な い が )、
Type II の THC、 WAIS、 Typ e I の 水 資 源 影 響 、 健 康 影 響 、 及 び 緩 和 コ ス ト に お い て 特 に
大 き く な っ て い る 。 な お 、 質 問 2 に お け る 「 そ の 他 」 に つ い て は 、「 そ の 他 」 の 内 容 が
回答者により異なるため、平均値、標準偏差を算出しなかった。
重要視の度合
5
4
3
図 4 .2 .5 -2
時点間の差異
地域間の差異
その他
温暖化緩和コスト・対策
氷河・氷帽
永久凍土
北極の海氷
異常気象
その他産業
畜産業
漁業
林業
海洋酸性化
健康
農作物
生態系
水資源
海面上昇・沿岸影響
WAIS
THC
1
グリーンランド氷床
2
影響事象項目別の重要視度の相加平均、標準偏差
な お 、回 答 者 別 の 回 答 を 表 4.2.5-2 に 示 す 。ま た 、重 要 視 度 の 分 布 が 分 か る よ う ヒ ス
ト グ ラ ム に し た も の を 図 4.2.5-3 に 示 す 。
- 215 -
表 4 .2 .5 -2
RITE システム研究G
委員会
影響WG
緩和WG
THC WAIS
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
A11
A12
A13
A14
A15
B1
B2
B3
B4
B5
B6
B7
B8
C1
C2
C3
C4
C5
C6
C7
C8
C9
相加平均
標準偏差
回答者別の影響事象、緩和コストなどの重要視度、最適安定化レベル
グリーン 北極
その
海洋
永久 氷河・ 緩和 その 地域 時点
異常
海面 水資 生態 農作
畜産
ランド の海
他産
健康 酸性 林業 漁業
凍土 氷帽 コスト 他 差異 差異
気象
上昇 源
系
物
業
氷床 氷
業
化
3
4
4
2
3
1
4
5
2
3
2
4
3
4
2
5
3
5
5
5
3
2
1
2
3
1
4
2
3
3
2
2
4
2
1
2
3
1
5
5
4
3
2
3
3
2
4
2
1
3
2
2
3
3
5
5
3
4
4
5
3
3
2
4
2
3
2
2
5
3
3
3
4
3
4
5
4
4
5
5
3
3
5
2
4
4
3
2
1
1
2
2
1
2
2
1
3
4
4
4
4
3
3
4
2
2
1
2
1
3.6
1.2
2.2
1.2
3.4
0.9
4
4
5
3
3
2
5
4
3
1
3
2
3
4
3
3
4
4
3
4
2
4
5
3
2
5
4
3
2
4
4
3
2
4
2
4
4
4
3
3
4
1
4
4
2
4
3
2
4
5
3
3
2
4
2
4
1
4
4
3
2
1
4
2
2
3
3
3
3
2
2
3
4
3
1
3
5
3
2
4
2
2
3
3
2
3
4
3
2
4
2
3
3
3
2
3
1
3
2
4
2
1
4
2
2
4
4
3
2
4
2
3
3
4
2
3
4
3
4
3
2
2
4
3
2
3
3
3
2
4
2
3
3
3
2
3
3
3
2
3
2
2
3
3
2
3
1
2
2
3
2
2
2
2
4
3
4
3
3
4
2
5
3
4
3
4
3
4
3
5
3
3
4
5
4
4
4
4
4
3
2
4
3
3
2
5
4
4
3
2
3
4
4
3
5
3
2
3
3
3
2
4
3
3
2
4
4
4
3
3
4
4
2
3
4
3
5
3
2
3
2
4
3
3
3
4
3
4
2
3
4
5
4
4
3
3
5
3
3
3
2
4
2
3
2
4
3
4
2
3
4
3
4
3
5
3
2
3
3
3
5
5
5
4
5
4
5
3
5
4
3
2
1
5
5
4
5
5
3
2
2
3
4
2
4
2
2
2
2
1
2
2
2
4
3
2
3
3
2
3
3
2
3
3
2
3
3
2
4
2
2
3
3
3
1
2
4
3
2
2
1
1
1
2
2
1
2
1
2
2
1
2
3
2
2
2
1
2
1
1
1
1
2
1
2
2
3
1
1
1
1
1
1
1
1
3
3
4
3
3
3
3
4
4
2
1
2
2
3
2
2
2
2
3
1
2
4
2
1
1
2
3
3
1
1
3
1
2
2
2
2
3
1
2
3
1
2
4
1
3
5
5
5
5
5
2
3
5
4
2.8
1.1
2.9
1.1
3.2
0.9
3.0
1.0
2.7
0.9
2.3
0.9
2.7
1.0
2.3
0.9
2.1
1.0
3.6
0.7
2.9
1.0
2.9
1.0
2.9
1.1
2.8
1.0
4.1
1.2
5
5
3
4
2
2
3
3
2
4
4
4
3
2
4
4
3
5
4
4
5
2.5
4
2
3
4
4
2
3
5
3
5
-
3.4
1.0
3
4
4
4
4
3
4
3
2
4
3
5
2
5
3
5
4
4
第1ス
第2ス
テップ
テップ
一次
回答
最適
450
450
450
650
650
650
750
650
650
650
750
550
550
650
4
450
3
550
5
650
3
650
4
650
3
650
2
750
3
650
2
750
3
750
2
450
3.5 618
1.0 103
450
550
500
650
550
550
550
550
650
650
650
550
550
450
600
500
550
550
450
550
550
600
550
550
600
650
750
650
530
568
69
注:次のように重要視度合に対応した色を設定
5
4
3
2
1
←重視
重視せず→
- 216 -
14
12
10
8
8
7 8
5
6
4
1
2
0
1 2 3 4 5
14
12
12
10
8
8
5
6
4
2 2
2
0
1 2 3 4 5
海面上昇・
沿岸影響
14
11
12
9 10
8
5
6
34
2
0
0
1 2 3 4 5
畜産業
その他産業
14
12
9 9 9
10
8
6
4
2
2
0
0
1 2 3 4 5
異常気象
14
12 13
12
10
8
6
34
1
2
0
0
1 2 3 4 5
回答者数(人)
回答者数(人)
THC
14
12
10
8
6
4
2
0
14
12
10
8
6
4
2
0
14
11 11
12
10
8
5
6
4
2
2
0
0
1 2 3 4 5
WAIS
水資源
生態系
農作物
健康
14
12
9
10
7
6 8
6
3
4
2
2
0
1 2 3 4 5
14
12
9
10
8
7 8
6
4
2
2
2
0
1 2 3 4 5
14
12
10
9
10
8
8
6
4
2
2
0
0
1 2 3 4 5
14
12
10
10
8 8
8
6
4
2
12
0
1 2 3 4 5
グリーンランド氷床
14
11
12
10
10
8
5 6
4
2
1
2
0
1 2 3 4 5
北極の海氷
14
12
10
10
8
7
8
6
3
4
12
0
1 2 3 4 5
永久凍土
図 4.2.5-3
14
12
12
10
6
6 8
6
3
4
2
2
0
1 2 3 4 5
氷河・氷帽
14
12
12
10
7
6 8
6
3
4
12
0
1 2 3 4 5
海洋酸性化
13
14
12
9
10
8
6
3
3 4
12
0
1 2 3 4 5
14
11
12
9
10
8
6
6
3 4
2
0
0
1 2 3 4 5
温暖化緩和コスト 地域間の差異
14
14
16
12
12
10
10
10
8
8
8
6
5 5 6
6
4
4
4
2
1
2
2
0
0
0
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
項目別の重要視度の回答者数ヒストグラム
- 217 -
漁業
林業
12
8
6
3
0
1 2 3 4 5
時点間の差異
9
5
10
4
0
1 2 3 4 5
重要視度
1 = 全く重要とは思わない
2 = あまり重要とは思わない
3 = 重要と思う
4 = かなり重要と思う
5 = 非常に重要と思う
表 4.2.5-2 か ら 、 RITE の 回 答 者 は 、 重 要 視 度 の 最 も 低 い 「 1 」 と し て 温 暖 化 影 響 事
象 が 目 立 つ 。図 4.2.5-3 か ら 、重 要 視 度 の 分 布 を 見 え る と 、THC 崩 壊 、漁 業 な ど で 分 布
が分かれる傾向にある。一方、海洋酸性化、畜産業、異常気象に関しては、平均値に
集中した分布となっている。緩和コストに関しては、重要視度の最も高い「5」とし
た回答者が多数を占める。
4.2.6
EJ第2ステップの結果の分析
重 要 視 度 と 第 2 ス テ ッ プ の 望 ま し い 安 定 化 レ ベ ル の 関 係 を 調 べ る た め 、ま ず 表 4 .2 .5
2 で 示 し た 重 要 視 度 を 回 答 者 別 に 規 格 化 し た( 平 均 0、標 準 偏 差 1 )。回 答 者 別 に 規 格 化
す る と は 、表 4.2.5 2 に お い て 横 方 向 に 規 格 化 す る こ と を 意 味 す る 。こ の 規 格 化 さ れ た
重要視度を説明変数、安定化レベルを被説明変数として単回帰を行った(重回帰分析
で は な い )。 単 回 帰 の 結 果 ( 一 部 ) を 図 4.2.6-1 に 示 す 。
図 4.2.6-1 の 生 態 系 に 関 し て 、相 対 重 要 視 度 と 第 2 ス テ ッ プ で の 望 ま し い 安 定 化 レ ベ
ルの間には、ある一定の負の相関が見られる。即ち、生態系を他の項目より重要視す
る 傾 向 に あ る 回 答 者 は 、よ り 厳 し い 排 出 抑 制 を 必 要 と す る 安 定 化 レ ベ ル( 例 え ば 、S45 0 )
を選択する傾向にある。
健康影響に関しては、それほど強くないものの正の相関が見られる。即ち、健康影
響を相対的に重要視する回答者は、厳しい排出抑制を必要としない安定化レベル(リ
フ ァ レ ン ス 側 )を 選 択 す る 傾 向 に あ る 。こ こ で 図 4.2.6-1 の 横 軸 は あ く ま で も「 相 対 重
要視度」であることに注意が必要である。つまり、健康を重要視する回答者とは、他
の 1 9 項 目 を 相 対 的 に 重 要 視 し な い 回 答 者 を 同 時 に 意 味 す る( 図 4.2.6 1 の 中 段 右 図 参
照 。 な お 、 海 面 上 昇 、 海 洋 酸 性 化 も 同 様 )。
異常気象に関しては、図の右側に位置する回答者が多く、相対的に重要視する回答
者が多い。しかしながら、異常気象の重要視度は安定化レベルの選択には影響を与え
ず、無相関である。緩和コストも相対的に重要視する回答者が多いが、安定化レベル
の選択にはあまり影響を与えない。
図 4.2.6-2 に 、 図 4.2.6-1 で 示 し た 単 回 帰 直 線 の 傾 き 、 及 び そ の 標 準 偏 差 を 示 す 。 図
4.2.6-2 に お い て 、 t 値 絶 対 値 が 2 を 上 回 る 項 目 は 、 生 態 系 、 海 洋 酸 性 化 の 2 つ で あ る 。
こ の 内 、海 洋 酸 性 化 は 、図 4.2.6-1 に 示 し た 通 り 、一 人 の 回 答 者 の 結 果 に 引 き づ ら れ て
お り 、こ の 回 答 者 を 除 く と t 値 は 2 未 満 と な り 有 意 性 は 維 持 で き な い 。従 っ て 、実 質 的
に 生 態 系 の み が 有 意 と 言 え る 1。
生態系に関しては、相対重要視度と安定化レベルの間に、統計的に有意な負の相関
が見られる。これは、生態系を重要視する傾向にある回答者は、数値の低い安定化レ
1
t 値 絶 対 値 に つ い て : 第 2 ス テ ッ プ 回 答 者 は 、 29 名 で あ り 、 単 回 帰 分 析 で あ る こ と か ら 、 自 由 度
は 29-1=28 と な る 。 自 由 度 28 の 下 、 有 意 水 準 を 2.5% と し た 場 合 、 t 値 は 2.05 前 後 、 有 意 水 準 を
5%と し た 場 合 は 1.70 前 後 、 必 要 と な る 1)。 今 回 、 有 意 水 準 2.5% を 基 本 と し 、 t 値 絶 対 値 が 「 2」
を上回る必要があるとの立場をとった。
- 218 -
ベルを選択するといったことを意味し、生態系は安定化レベルの選択と密接な関係が
あることが示唆される。
こ れ と は 逆 に 、 THC、 異 常 気 象 、 緩 和 コ ス ト な ど は 図 4.2.5 2 に 示 し た 通 り 、 そ も そ
もの重要視度は高いが、望ましい安定化レベルの選択とは関連が見られない。このよ
うに、重要視度は高いものの、望ましい安定化レベルの選択とは関連が見られない事
象と、重要視度は高くないものの、安定化レベルの選択との連関が見られる事象があ
り、注意が必要である。
800
800
750
750
650
600
550
500
450
400
350
第二ステップ回答(ppmv)
650
600
550
500
450
400
350
y = 25.18x + 565.34
R2 = 0.12
300
-2
-1 800 0
1
2
3 -3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
750
異常気象
第二ステップ回答(ppmv)
700
650
600
550
500
450
400
350
-3
第二ステップ回答(ppmv)
300
-2
-1 800 0
1
2
3 -3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
750
健康
700
-3
y = -38.48x + 566.41
R2 = 0.20
第二ステップ回答(ppmv)
-3
生態系
第二ステップ回答(ppmv)
第二ステップ回答(ppmv)
700
y = -2.82x + 570.16
R2 = 0.00
300
-2
-1
0
1
2
3 -3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
図 4 .2 .6 -1
海洋酸性化
700
650
600
550
500
450
400
350
y = 30.25x + 579.61
R2 = 0.14
300
-2
-1 800 0
1
2
3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
健康影響以外
750
700
の19項目合計
650
600
550
500
450
400
350
y = -25.18x + 565.34
R2 = 0.12
300
-2
-1 800 0
1
2
3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
750
緩和コスト
700
650
600
550
500
450
400
350
y = 9.53x + 558.19
R2 = 0.03
300
-2
-1
0
1
2
3
回答者ごとの相対重要視度(規格化後)
重要視度と第 2 ステップ回答の単回帰結果(一部)
- 219 -
40
20
時点差異
地域差異
その他
緩和コスト
氷河・氷帽
永久凍土
北極の海氷
グリーンランド氷床
異常気象
その他産業
畜産業
漁業
林業
海洋酸性化
健康
農作物
生態系
水資源
海面上昇
-20
WAIS
0
THC
第二ステップ回答に対する相対重要視度の連関 (ppmv/標準偏差)
60
-40
-60
図 4.2.6-2
回 答 者 ご と の 相 対 重 要 視 度 ( 規 格 化 後 ) と 安 定 化 レ ベ ル (ppmv)の 連 関
(ただし、単回帰の結果であり、t 値絶対値が 2 を超える項目は、
生 態 系 [t =- 2 .6]、 海 洋 酸 性 化 [t=2.1]の み )
参 考 文 献 ( 4.2.6 節 に 関 す る も の )
1)
森棟公夫、「計量経済学」
、東洋経済新報社、p.393、1999.
4.2.7
EJに関する今後の課題
E J を 2 段 階 に 分 け て 実 施 し た が 、 こ の 内 の 第 1 段 階 で あ る AHP と 費 用 便 益 を 組 み
合わせた手順においては、温暖化に関する専門家の個別の判断に大きな広がりがある
と同時に、いくつかの専門家グループに層別して平均をとった場合、あるいは全体の
平均をとった場合にはきわめて類似したパターンが観測されるというきわめて興味深
い結果が得られた。また、第 2 段階で影響要因の重視度と安定化レベルの相関に簡単
な分析を行った結果では、ほとんどが統計的な有意性を示さなかったものの、生物多
様性と温暖化レベルの間に有意な関係が観測できたこと、また影響要因として異常気
象が多くの専門家の注意を引いている点等、新しい知見が得られた。
しかしながら、言うまでもなく本調査の対象者数が限定されていること、また温暖
化問題全体について判断を求めるという本研究の方法はほかに例を見ないものである
だけに、エキスパートジャッジメントの方法、結果の分析とも残された課題がなお多
いことも付記しておく必要がある。
- 220 -
温暖化影響は、第 2 章に詳述したように多岐に亘るとともに、その空間的分布、時
間的変化とも一様でなく、かつ不確実性が高い。すなわち、温暖化の影響のレベルを
明らかにすること自体が困難であり、仮に何らかの設定ができたとしてもなお、そこ
には生態系影響のように金銭価値に換算し難い要因が含まれる。すなわち、目標とす
べき影響の緩和レベルと対策費用の比較評価は、自然科学に基づいた結論が出せるも
のではなく、価値判断と合意形成の問題とならざるを得ない。もちろん、企業経営の
意 思 決 定 問 題 は 多 か れ 少 な か れ こ の よ う な 性 格 を 持 っ て お り 、OR や 意 思 決 定 論 と い う
経営科学はこの価値判断のプロセスをいかに科学的に行ないうるかを扱ってきた長い
歴史を持つ学問分野である。その意味で、本章の方法もこの分野の一環に位置づけら
れる。しかしながら、スコアボードに集約された温暖化の影響要因の多様性と不確実
性 の 範 囲 は き わ め て 広 く 、 例 え ば 効 用 関 数 の 推 定 に し て も AHP の 適 用 に し て も 、 既 存
方法の直接的な適用では扱いきれないことが明らかとなった。そこで、価値判断の数
値 付 与 を す こ し で も 容 易 に す る た め 、 本 手 順 の 第 1 段 階 で は AHP、 効 用 関 数 の 推 定 の
いずれにも簡略化した方法を採用した。例えば、緩和コスト及び影響レベルとその効
用値の間に、アプリオリに一次関数を当てはめたこともそのひとつである。
また、アンケート結果の統計的解析に関しても、サンプル数の関係から、本報告で
は最も基本的な相関分析の適用にとどまった。相関分析は平均値からの変動を扱うも
のであるため、本質的に判断の平均値が持つ情報は失われる。また、共分散構造分析
など判定の決定構造への接近には至らなかった。
このように、本方法は新しい試みであるだけに、研究対象としての今後の発展課題
は多く残る。しかし、多様な背景を持つ専門家集団の全体、グループ化のいずれの判
定 に お い て も 、 限 定 し た 主 要 影 響 要 因 に 対 し て は 6 50 ppmv 程 度 の 安 定 化 水 準 が 、 全 影
響 事 象 を 考 慮 す る 場 合 は 550 p p m の 安 定 化 レ ベ ル が 最 も 好 ま し い と い う 基 本 的 な 結 論
については、温暖化問題に一つの道標を提供したことは疑いのないものと思われる。
4.3
異なるベースラインシナリオに対する温暖化影響・緩和策評価の比較
PHOE NI X プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 こ れ ま で IPCC SRES-B2 の 人 口 、 経 済 、 エ ネ ル ギ ー 技
術をベースラインシナリオとする排出パスについて、温暖化影響と緩和策の評価を行
ってきた。但し、その評価結果はベースラインシナリオに依存して変わり得る。そこ
で 、 本 節 で は 異 な る ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ の 一 例 と し て SRES-A1FI を 取 り あ げ 、 そ れ
に 関 す る 評 価 結 果 を 、こ れ ま で の SRES-B2 を ベ ー ス ラ イ ン と す る 評 価 結 果 と 比 較 し た 。
(1)
想定内容
①
ベースラインシナリオ
IPCC SRES(Special Report on Emissions Scenarios)
1)
では、将来の社会・経済の発展方
向 を 経 済 志 向 - 環 境 志 向 と 地 球 主 義 - 地 域 主 義 の 二 軸 で 大 分 し 、A1 、A2、B1、B2 と 称
- 221 -
す る 4 つ の シ ナ リ オ フ ァ ミ リ ー が 設 け ら れ て い る 。 こ の う ち 、 A1 フ ァ ミ リ ー は 、 さ ら
に エ ネ ル ギ ー 技 術 の 指 向 に よ り 、 A1FI、 A1B、 A1T の 3 つ に 区 分 さ れ て い る 。 こ れ に
よ る と 、 本 節 で 取 り あ げ る B2 と A1FI は 、 下 記 の 様 な 特 徴 を 有 し て い る 。
a.
SRES-B2
•
人 口 成 長 : 中 位 ( 国 連 1 99 8 年 版 推 計 の 中 位 推 計 に 従 う 。)
•
経済成長:中位
•
エ ネ ル ギ ー 技 術 : A1FI よ り 緩 慢 で あ る が 新 技 術 、 高 効 率 技 術 が 導 入 さ れ る 。
b.
SRES-A1FI
•
人 口 成 長 : 低 位 ( 21 世 紀 半 ば で ピ ー ク に 達 し た 後 減 少 。 高 齢 者 人 口 比 率 が 高 い 。)
•
経済成長:高位、かつ、地域間格差が減少
•
エネルギー技術:新技術、高効率技術が急速に導入される。化石燃料依存型。
PHOE NI X プ ロ ジ ェ ク ト で は 、SRES に 準 拠 し 2 15 0 年 ま で 延 長 し た シ ナ リ オ を ベ ー ス
ラ イ ン シ ナ リ オ と し て 用 い た 。 表 4.3-1 は 、 PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト で 想 定 し た ベ ー ス
ラ イ ン シ ナ リ オ の 、 世 界 全 体 の 人 口 と GDP で あ る 。 図 4.3-1 は 、 世 界 人 口 と そ の 年 齢
構 成 ( 60 歳 未 満 、 60 歳 以 上 ) を 示 し て い る 。
表 4.3-1
PH OE NI X プ ロ ジ ェ ク ト の ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ ( 人 口 と GDP、 世 界 全 体 )
1990年
2050年
2100年
2150年
52
94
104
108
2 3 ,1 0 0
1 0 6 ,7 0 0
2 2 2 ,4 0 0
2 9 6 ,6 0 0
4 ,4 0 0
1 1 ,4 0 0
2 1 ,4 0 0
2 7 ,5 0 0
52
87
71
64
2 3 ,1 0 0
1 9 8 ,0 0 0
5 7 8 ,4 0 0
9 0 1 ,8 0 0
4 ,4 0 0
2 2 ,8 0 0
8 1 ,9 0 0
1 4 0 ,0 0 0
B2 ベ ー ス
人口(億人)
G D P ( bi l l i o n U S $ /年 )
世界平均
一 人 当 た り GD P
( U S $ /年 /人 )
A1FI ベ ー ス
人口(億人)
G D P ( bi l l i o n U S $ /年 )
世界平均
一 人 当 た り GD P
( U S $ /年 /人 )
- 222 -
12500
age < 60
age 60+
10000
Population [million]
Population [million]
12500
7500
5000
2500
10000
age < 60
age 60+
7500
5000
2500
0
Y1990
図 4.3 -1
Y2050
Y2100
0
Y2150
Y1990
Y2050
Y2100
Y2150
世 界 人 口 と 年 齢 構 成 (左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
注 ) 60 歳 以 上 人 口 比 率 の 出 典 : B2 ベ ー ス は UN2)、 A1FI ベ ー ス は IIASA3)
②
排出パス
評 価 対 象 の 排 出 パ ス は 、B2 ベ ー ス 、A1 FI ベ ー ス と も 、特 段 の CO 2 排 出 抑 制 政 策 を 取
ら な い 基 準 排 出 パ ス (Reference)と 、 CO 2 排 出 量 を 異 な る 3 つ の レ ベ ル に 抑 制 し た パ ス
(S650、 S55 0、 S450)の 計 4 つ で あ る ( 表 4.3-2)。
表 4 .3 -2
評 価 対 象 排 出 パ ス の CO 2 排 出 量 、 Non-CO 2 排 出 量
CO 2 排 出 量
評価対象排出パス
Non-CO 2 排 出 量
B2 ベ ー ス
B2- Ref ere nce
B2-S6 50
B2-S5 50
B2-S4 50
SRES-B2 に 準 拠 し た 排 出 量
( 特 段 の CO 2 排 出 抑 制 政 策 を 取 ら な い )
① IPCC-WGI の 650ppmv-CO 2 安 定 化 パ ス
に準拠した排出量(図 2 参照)
SRES-B2
( 2 10 0 年 以 降 は 一 定 )
② IPCC-WGI の 550ppmv-CO 2 安 定 化 パ ス
に準拠した排出量(図 2 参照)
③ IPCC-WGI の 450ppmv-CO 2 安 定 化 パ ス
に準拠した排出量(図 2 参照)
A1FI ベ ー ス
A1FI -Re f erenc e
SRES-A1F I に 準 拠 し た 排 出 量
( 特 段 の CO 2 排 出 抑 制 政 策 を 取 ら な い )
A1FI -S65 0
①と同じ
A1FI -S55 0
②と同じ
A1FI -S45 0
③と同じ
SRES-A1F I
( 2 10 0 年 以 降 は 一 定 )
各 排 出 パ ス の 、 CO 2 排 出 量 を 図 4.3-2 に 、 大 気 中 CO 2 濃 度 を 図 4.3-3 に 、 等 価 CO 2
濃 度 を 図 4.3-4 に 、 全 球 平 均 気 温 上 昇 を 図 4.3-5 に 示 す 。
- 223 -
30
A1FI-Reference
B2-Reference
A1FI-S650, B2-S650
A1FI-S550, B2-S550
A1FI-S450, B2-S450
CO2 emission [GtC/yr]
25
20
15
10
5
0
1990
2040
2090
Year
図 4 .3 -2
1200
B2-Reference
B2-S650
B2-S550
B2-S450
1000
CO2 concentration [ppmv]
CO2 concentration [ppmv]
800
600
400
200
0
1990
2040
2090
Year
2140
1800
B2-Reference
B2-S650
B2-S550
B2-S450
1600
1000
800
600
400
200
0
1990
400
2040
2090
Year
2140
2190
C O 2 濃 度 ( 左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
CO2eq concentration [ppmv]
CO2eq concentration [ppmv]
1200
600
0
1990
2190
1800
1400
800
A1FI-Reference
A1FI-S650
A1FI-S550
A1FI-S450
200
図 4 .3 -3
1600
2190
CO2 排 出 量
1200
1000
2140
1400
A1FI-Reference
A1FI-S650
A1FI-S550
A1FI-S450
1200
1000
800
600
400
200
2040
図 4 .3 -4
2090
Year
2140
0
1990
2190
2040
2090
Year
2140
等 価 CO 2 濃 度 ( 左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
- 224 -
2190
Change of global mean temperature
(℃, relative Y1990)
5.0
A1FI-Reference
4.0
A1FI-S650
A1FI-S550
3.0
A1FI-S450
B2-Reference
2.0
B2-S650
B2-S550
1.0
B2-S450
0.0
2000
2050
2100
2150
Year
図 4 .3 -5
各 排 出 パ ス の 全 球 平 均 気 温 上 昇 ( 1990 年 比 )
(2) 温 暖 化 影 響 の 比 較
ベースラインシナリオの違いによる差異が大きい 3 つの事象(水資源、農作物、健
康 )を 取 り あ げ る 。な お 、A1FI-Reference パ ス は 、気 温 上 昇 が 著 し く 大 き く 、そ の 温 暖
化影響の評価はモデルが想定している分析対象の範囲を大きく逸脱する可能性がある
た め 、 こ こ で は 、 CO 2 排 出 抑 制 パ ス の 結 果 の み を 示 し 、 比 較 す る 。
①
水資源
a.
人口変化のみを考慮した場合の水ストレスの流域と人口
図 4.3-6 に 、 人 口 の み 変 化 す る ( 年 水 資 源 賦 存 量 は 19 90 年 の ま ま ) と 想 定 し た 場 合
の 水 ス ト レ ス 流 域 ( 一 人 あ た り 年 水 資 源 賦 存 量 が 1 00 0m 3 未 満 の 流 域 ) を 示 す 。 ま た 、
表 4.3-3 に 、世 界 全 体 の 水 ス ト レ ス 人 口 と 全 人 口 に 対 す る 比 率 を 示 す 。こ れ ら に よ る と 、
次のことが読みとれる。
•
B2 ベ ー ス で は 2 05 0 年 ま で に 水 ス ト レ ス 流 域 が 急 速 に 拡 大 し 、 そ の よ う な 状 態 が
そ の 後 2 150 年 ま で 継 続 す る 。
•
A1FI ベ ー ス は 人 口 変 化 に 伴 い 2 050 年 に 水 ス ト レ ス 流 域 が 最 も 広 が り 、 そ の 後 縮
小する。
- 225 -
( a ) 19 9 0 年
(b) 21 5 0 年 ( B 2 ベ ー ス )
図 4 .3 -6
( c) 2 15 0 年 ( A 1FI ベ ー ス )
人口変化のみを考慮した場合の水ストレス流域(紫域)
表 4 .3 -3
人口変化のみを考慮した場合の
世界の水ストレス人口と全人口に対する比率
1990 年
2050 年
2100 年
2150 年
水ストレス人口(百万人)
112 0
3 7 12
4 1 69
4 4 47
水 ス ト レ ス 人 口 比 率 ( %)
22
41
41
42
水ストレス人口(百万人)
1119
3 3 50
2 0 66
1 4 94
水 ス ト レ ス 人 口 比 率 ( %)
22
40
30
25
B2 ベ ー ス
A1FI ベ ー ス
b.
温暖化による水ストレス増大人口・減少人口
図 4.3-7 は B2-S450 と A1FI-S450 パ ス の 2 15 0 年 に つ い て 、 温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス
増 大 ・ 減 少 流 域 を 示 し た も の で あ る 。 ま た 、 図 4.3-8 と 図 4.3-9 は 、 そ れ ぞ れ B2 ベ ー
ス と A1 FI ベ ー ス の 各 排 出 パ ス に 対 す る 、温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 ・ 水 ス ト レ
ス減少人口を示している。これより、以下のような傾向が見られる。
B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス に 共 通 す る 傾 向
ア)
•
地中海沿岸~南アジアの一部域、ヨーロッパや南アメリカの一部地域では温暖化
によって水ストレスが増大し、一方、東アジアの一部地域や北アフリカ地域では
温暖化によって水ストレスが減少する。
- 226 -
•
世界全体では温暖化による水ストレス減少人口の方が水ストレス増大人口より多
い。
B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス で 異 な る 傾 向
イ)
•
世 界 人 口 の 少 な い A1FI ベ ー ス の 方 が 温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 、水 ス ト レ
ス減少人口とも少ない。
水 ストレス
・強化
水 ストレス 水 ストレス 水 ストレス
・新規 ・変化無 ・緩和
水ストレス増大
水 ストレス
解消
水 ストレス
・強化
水ストレス減少
水 ストレス 水 ストレス 水 ストレス
・新規 ・変化無 ・緩和
水ストレス増大
( a ) B2 -S 45 0
図 4 .3 -7
水 ストレス
解消
水ストレス減少
( b) A 1F I -S 45 0
温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 ・ 減 少 流 域 ( 2150 年 )
注)図中、灰色は温暖化の有無に関わらず水ストレス無の領域
図 4.3-8
2,000
1,500
1,000
500
B2-S450
B2-S550
0
B2-S650
B2-S450
B2-S550
B2-S650
B2-S450
B2-S550
B2-S650
B2-S450
B2-S550
0
2150年
3,000
2,500
B2-S450
500
2100年
B2-S550
1,000
2050年
3,500
B2-S650
1,500
4,000
B2-S450
2150年
B2-S550
2100年
B2-S650
2050年
水ストレス・緩和
水ストレス解消
水ストレス減少人口 [百万人]
2,000
B2-S650
水ストレス増大人口 [百万人]
水ストレス・強化
水ストレス・新規
温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 ・ 減 少 人 口 ( 世 界 全 体 、 B2 ベ ー ス )
- 227 -
2150
1,500
1,000
500
A1FI-S450
A1FI-S550
A1FI-S650
A1FI-S450
0
A1FI-S550
A1FI-S450
A1FI-S550
A1FI-S650
A1FI-S450
A1FI-S550
A1FI-S650
A1FI-S450
A1FI-S550
0
2100年
A1FI-S650
500
2050年
2,000
A1FI-S450
1,000
2,500
A1FI-S550
2150年
1,500
図 4.3-9
②
2100年
水ストレス・緩和
水ストレス解消
A1FI-S650
2050年
水ストレス減少人口 [百万人]
2,000
A1FI-S650
水ストレス増大人口 [百万人]
水ストレス・強化
水ストレス・新規
温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 増 大 人 口 ・ 減 少 人 口 ( 世 界 全 体 、 A1FI ベ ー ス )
農作物
図 4.3-1 0 に は 、小 麦 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル と 一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化( 1990
年 比 ) に つ い て 、 S5 5 0 排 出 パ ス に お け る B2 ベ ー ス と A1 FI ベ ー ス で 比 較 し た 結 果 を 示
す 。 ま た 、 図 4.3-11 に は 同 じ く 米 の ポ テ ン シ ャ ル に つ い て の 推 定 結 果 を 示 す 。 B 2 ベ
ー ス と A1FI ベ ー ス の 違 い に よ っ て 以 下 の よ う な こ と が 言 え る 。
•
A1FI ベ ー ス で は 、 B2 ベ ー ス よ り も 経 済 成 長 が 大 き い た め 、 途 上 国 に お け る 生 産
性 向 上 の 急 速 な 進 展 が 期 待 で き る の で 、 特 に 20 50 年 で は 、 A1FI ベ ー ス の 推 定 生
産 ポ テ ン シ ャ ル は B2 ベ ー ス に 比 べ 大 き い 。
•
小 麦 に つ い て は 、 21 5 0 年 頃 に は A1FI ベ ー ス と B の ベ ー ス に よ っ て あ ま り 差 異 が
な く な っ て く る( こ こ で の 分 析 で は 、CO 2 の 排 出 量 は 両 者 同 じ と し て い る が 、A1F I
ベ ー ス の 方 が 、 Non-CO 2 GH G の 排 出 が 大 き く 、 気 温 上 昇 が 高 く 小 麦 生 産 へ の ダ メ
ー ジ が 大 き く な っ て く る 。)。
•
一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ ャ ル で 見 る と 、B2 ベ ー ス で は 、人 口 の 増 加 が 生 産 ポ テ ン
シ ャ ル の 増 大 を 上 回 る た め 、小 麦 、米 と も に 大 き く 減 少 す る と 推 定 さ れ る が 、A1F I
ベ ー ス の シ ナ リ オ で は 、 人 口 の 伸 び が 小 さ い た め 、 特 に 2 10 0 年 や 2 15 0 年 で は 一
人当たりで見てもポテンシャルの減少はほとんどなく、むしろ増大する。
- 228 -
2050
2100
図 4 .3 -1 0
-20
-21.1
-30
-40
-32.7
-37.8
-39.5
2150
2050
2100
A1FI-base S550
-50
B2-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
0
-4.6
-10
A1FI-base S550
10
1.9
0
B2-base S550
23.2 24.3
23.2
19.9
Per-capita potential production
10
A1FI-base S550
27.4
20
B2-base S550
30.0
30
20
Increase in per-capita potential production (%)
Potential production
B2-base S550
Increase in potential production (%)
40
2150
小麦の生産ポテンシャルと一人当たり生産ポテンシャル
2050
2100
図 4 .3 -1 1
0
-10
-7.9
-20
-30
-22.1
-23.0
2050
2150
-23.5
2100
A1FI-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
B2-base S550
A1FI-base S550
0
10
B2-base S550
20
22.2
A1FI-base S550
38.8
34.9
20
B2-base S550
40
51.8
64.5
55.7
52.5
Per-capita potential production
30
A1FI-base S550
60
40
B2-base S550
Potential production
63.3
Increase in per-capita potential production (%)
80
B2-base S550
Increase in potential production (%)
― S5 5 0 ケ ー ス に お け る B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス の 差 異 ―
2150
米の生産ポテンシャルと一人当たり生産ポテンシャル
― S5 5 0 ケ ー ス に お け る B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス の 差 異 ―
③
健康
a.
生物媒介性感染症(マラリア・デング熱)
生物媒介感染症(マラリア、デング熱)の温暖化による死亡者数変化(温暖化無し
と想定した場合注
1)
の 推 定 死 亡 者 数 か ら の 変 化 分 )の 推 計 値 に 関 し 、B 2 ベ ー ス と A 1 F I
ベースで次のような違いが見られた。
•
B2 ベ ー ス : 一 人 当 た り GDP が 低 い サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ 地 域 の み 注
2)
で 、 2 0 50 年
に 、 生 物 媒 介 感 染 症 ( マ ラ リ ア 、 デ ン グ 熱 ) の 死 亡 者 数 が 温 暖 化 に よ り 約 10 万
人 増 加 す る と 推 計 さ れ た 。但 し 、同 地 域 で も 2 10 0 年 以 降 は GD P が 向 上 す る た め 、
温暖化による死亡者数増加は無い。
- 229 -
•
A1FI ベ ー ス : 一 人 当 た り GDP が 高 い た め 、 20 5 0 年 、 21 0 0 年 、 21 5 0 年 の ど の 時
点も、世界全地域注
2)
において温暖化による死亡者の増加はない。
注 1): 人 口 と 所 得 の 変 化 の み を 考 慮 し た 場 合 。
注 2): DNE21 モ デ ル と 同 じ 世 界 10 地 域 で 分 析 。
b.
熱ストレス(循環器疾患・呼吸器疾患)
表 4.3-4 に 、 温 暖 化 が 無 い と し た 場 合 注 ) の 循 環 器 疾 患 と 呼 吸 器 疾 患 の 推 定 死 亡 者 数
を 示 す 。 A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス に 比 べ 全 人 口 は 少 な い が 、 高 齢 者 人 口 比 率 が 高 い 。
こ こ で 、 高 齢 者 は 死 亡 率 が 相 対 的 に 高 い こ と よ り 、 A1FI ベ ー ス で は 推 定 死 亡 者 数 の 全
人口に対する比率が高くなっている。
注 ): 人 口 と 高 齢 者 人 口 比 率 の 変 化 の み を 考 慮 し た 場 合 。
表 4.3-4
温暖化が無い場合の呼吸器疾患と循環器疾患の推定死亡者数(世界全体)
1 99 0 年
2 05 0 年
2 10 0 年
2 15 0 年
推定死亡者数(百万人)
17
59
86
98
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
0.3
0.6
0.8
0.9
推定死亡者数(百万人)
17
69
85
72
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
0.3
0.8
1.2
1.2
B2 ベ ー ス
A 1 FI ベ ー ス
注 ) 1 99 0 年 は 文 献 値 、 2 05 0 年 以 降 は 推 計 値 。
図 4.3-12 に 、呼 吸 器 疾 患 と 循 環 器 疾 患 の 温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数 変 化( 温 暖 化 な し の
場 合 の 推 定 死 亡 者 数 比 ) に つ い て 、 S5 5 0 排 出 パ ス に お け る B2 ベ ー ス と A1 FI ベ ー ス で
比 較 し た 結 果 を 示 す 。 B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス の 人 口 及 び 年 齢 構 成 の 違 い に よ る 影 響
として以下のようなことが読みとれる。
•
2050 年 に 、A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス よ り も 総 人 口 が 少 な い が 熱 ス ト レ ス の 影 響 を
受けやすい高齢者人口が多いため、温暖化による暑さ起因の死亡者数増加、寒さ
起 因 の 死 亡 者 数 減 少 と も 、 A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス と 同 程 度 か そ れ 以 上 で あ る 。
•
2150 年 に は 、総 人 口 、高 齢 者 人 口 と も A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス よ り 少 な く な る た
め 、 温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数 変 化 も A1FI ベ ー ス の 方 が 小 さ い 。
なお、熱ストレスの死亡者数推計で適応策は考慮されていない。
- 230 -
寒さ起因
図 4.3 -1 2
暑さ起因
10
2050年
2100年
2150年
5
0
-5
A1FI-S550
B2-S550
A1FI-S550
A1FI-S550
B2-S550
-10
B2-S550
温暖化による死亡者数変化 [百万人]
15
呼吸器疾患および循環器疾患の温暖化による追加死亡者数
(世 界 全 体 、 温 暖 化 な し の 場 合 の 推 定 死 亡 者 数 比 )
(3) 緩 和 策 評 価 の 比 較
①
長期緩和策評価
長 期 緩 和 策 評 価 で は 、各 パ ス の 総 CO 2 排 出 量( 図 4.3-2)か ら 土 地 利 用 変 化 や セ メ ン
ト 起 源 の CO 2 排 出 量 を 差 し 引 い た 、 エ ネ ル ギ ー 起 源 の CO 2 排 出 量 ( 図 4.3-13) を 評 価
対象とする。
20
15
10
5
0
2000
2020
図 4.3-13
a.
25
B2-Reference
B2-S650
B2-S550
B2-S450
CO2 emission from energy [GtC/yr]
CO2 emission from energy [GtC/yr]
25
2040
2060
2080
Year
2100
2120
2140
20
A1FI-Reference
A1FI-S650
A1FI-S550
A1FI-S450
15
10
5
0
2000
2020
2040
2060
2080
Year
2100
2120
2140
エ ネ ル ギ ー 起 源 CO 2 排 出 量 ( 左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
経済指標
図 4.3-20、 図 4.3-21、 図 4.3-22 に 、 そ れ ぞ れ 、 CO 2 限 界 削 減 費 用 、 Reference 比 エ
ネ ル ギ ー シ ス テ ム コ ス ト の 増 加 及 び GD P 低 減 を 示 す 。 以 下 の よ う な 結 果 が 得 ら れ て い
る。
•
B2 ベ ー ス に 比 べ A1FI ベ ー ス の 方 が CO 2 濃 度 安 定 化 の た め に 必 要 な CO 2 排 出 削 減
量 が 多 い こ と よ り 、 CO 2 限 界 削 減 費 用 は 、 全 期 間 で A1FI ベ ー ス の 方 が 高 い 。 例
え ば 210 0 年 時 点 の 同 費 用 は 、 B2 ベ ー ス は 100$/tC( S650) ~ 30 0$ /tC( S450) で
あ る の に 対 し 、A1FI ベ ー ス で は 300$/tC( S650)~ 450$/tC( S450)で あ る 。な お 、
A1FI ベ ー ス の CO 2 限 界 削 減 費 用 が 21 00 年 で 2 075 年 よ り 安 い の は 、 抑 制 ケ ー ス
- 231 -
に お け る エ ネ ル ギ ー 起 源 CO 2 排 出 制 約 の 20 7 5~ 21 0 0 年 の 伸 び が 大 き い こ と や 太
陽 光 等 の 技 術 オ プ シ ョ ン の 価 格 低 減 を 21 0 0 年 ま で 外 生 的 に 見 込 ん で い る こ と 等
に起因する。
•
エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム コ ス ト は 、21 0 0 年 に お い て B2 ベ ー ス で 200 billion$/yr( S650 )
~ 3,000 billion$/yr( S4 5 0)( Reference ケ ー ス に 対 す る 比 率 で は 3 %( S650) ~ 23 %
( S450))、 A1FI ベ ー ス で 6,000 billion$/yr( S650) ~ 9,500 billion$/yr( S4 5 0) (同
比 22% ( S6 5 0) ~ 3 0%( S450) )の 増 加 と な る 。
•
GD P 低 減 は 、 21 0 0 年 に お い て B2 ベ ー ス で 1 .2 %( S650) ~ 2.3 %( S4 5 0)( 絶 対 額
で は 2,600 billion$/yr
( S650)~ 5,000 billion$ /yr
( S450))、A1FI ベ ー ス で 1 .9%
( S650 )
~ 2.1%( S450)(絶 対 額 で は 10,000 billion$ /yr( S650)~ 12,000 billion$/yr( S450))
の 低 減 と な る 。こ の 低 減 に よ り 、一 人 当 た り GDP は B2 ベ ー ス で 21 ,100 $ /year/capit a
( S650) ~ 21,000$/year/capita( S450) (Reference の 同 値 は 21,400$/year/capita)、
A1FI ベ ー ス で 80,100$/year/capita( S6 5 0)~ 79,800$/year/capita( S450)(Reference:
81,500$/year/capita)と な る 。
700
700
S650
S650
S550
600
S550
600
S450
500
CO2 shadow price [$/tC]
CO2 shadow price [$/tC]
S450
400
300
200
500
400
300
200
100
100
0
2000
2025
2050
図 4.3 -1 4
2075
Year
2100
2125
0
2000
2150
2025
2075
Year
2100
2125
2150
CO 2 限 界 削 減 費 用 (左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
15,000
15,000
S650
S650
Increase in Energy system cost relative to that in
Reference case [Billion$/yr]
Increase in Energy system cost relative to that in
Reference case [Billion$/yr]
2050
S550
12,000
S450
9,000
6,000
3,000
0
S550
12,000
S450
9,000
6,000
3,000
0
2000
2025
2050
2075
Year
2100
図 4 .3 -1 5
2125
2150
2000
2025
2050
2075
Year
2100
エネルギーシステムコストの増加
( 左 図 : B 2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス 、 各 Reference 比 )
- 232 -
2125
2150
4
S650
S650
S550
S550
S450
Decrease in GDP relative to that in
Reference case [%]
Decrease in GDP relative to that in
Reference case [%]
4
3
2
1
0
2000
2025
図 4.3-16
b.
2050
2075
Year
2100
2125
S450
3
2
1
0
2000
2150
2025
2050
2075
Year
2100
2125
2150
GDP 低 減 (左 図 : B 2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス 、 各 Reference 比 )
一次エネルギー生産量
図 4.3-17 に 世 界 全 体 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 生 産 量 の 計 算 結 果 ( 但 し 、 S650 と S450 パ ス
のみ)を示す。
Primary energy production [Gtoe/yr]
100
90
80
70
110
Photovoltaics
Wind
Hydro & Geoth.
Nuclear
Biomass
Natural Gas
Crude Oil
Coal
Photovoltaics
Wind
Hydro & Geoth.
Nuclear
Biomass
Natural Gas
Crude Oil
Coal
100
Primary energy production [Gtoe/yr]
110
60
50
40
30
20
90
80
70
60
50
40
30
20
10
10
0
2000
2025
2050
2075
Year
2100
2125
0
2000
2150
2025
2050
2075
Year
2100
2125
2150
2050
2075
Year
2100
2125
2150
( a ) S6 50
Primary energy production [Gtoe/yr]
100
90
80
70
110
Photovoltaics
Wind
Hydro & Geoth.
Nuclear
Biomass
Natural Gas
Crude Oil
Coal
60
50
40
30
20
90
80
70
60
50
40
30
20
10
10
0
2000
Photovoltaics
Wind
Hydro & Geoth.
Nuclear
Biomass
Natural Gas
Crude Oil
Coal
100
Primary energy production [Gtoe/yr]
110
2025
2050
2075
Year
2100
2125
2150
0
2000
2025
( b ) S4 50
図 4.3-17
世界全体一次エネルギー生産量
- 233 -
(左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
図 4.3-17 に よ る と 、
•
B2 ベ ー ス で は 、 長 期 的 に 原 子 力 及 び 太 陽 光 の シ ェ ア が 拡 大 す る 。
•
エ ネ ル ギ ー 需 要 が 大 き く 、CO 2 濃 度 安 定 化 の た め に 必 要 な 排 出 削 減 量 が 多 い A 1 F I
ベ ー ス で は 、太 陽 光 の シ ェ ア 拡 大 が 著 し い 。ま た 、石 炭( IGCC)も 多 く 利 用 さ れ 、
2150 年 ま で に 累 積 で 1 ,0 50~ 1,200Gtoe 生 産 す る (図 4 .3 -1 8 参 照 )。
Cumulative coal production [Gtoe]
1200
1400
Coal (S650)
Coal (S550)
Coal (S450)
1200
Cumulative coal production [Gtoe]
1400
1000
800
600
400
1000
800
600
400
200
0
2000
200
2020
2040
2060
2080
Year
2100
2120
0
2000
2140
(a)
600
Conventional Oil (S650)
600
500
Cumulative oil production [Gtoe]
Cumulative oil production [Gtoe]
Unconventional Oil (S550)
Unconventional Oil (S450)
300
200
2060
2080
Year
2100
2120
2140
Conventional Oil (S650)
100%
Conventional Oil (S450)
Unconventional Oil (S650)
400
Unconventional Oil (S550)
Unconventional Oil (S450)
300
200
100
100
0
2000
2040
Conventional Oil (S550)
100%
Conventional Oil (S450)
Unconventional Oil (S650)
400
2020
石炭
Conventional Oil (S550)
500
Coal (S650)
Coal (S550)
Coal (S450)
2020
2040
2060
2080
Year
2100
2120
0
2000
2140
2020
2040
2060
2080
Year
2100
2120
2140
(b) 石 油
700
Conventional Gas (S650)
700
Conventional Gas (S550)
Unconventional Gas (S650)
500
Unconventional Gas (S550)
Unconventional Gas (S450)
400
300
200
100
0
2000
Conventional Gas (S650)
Conventional Gas (S550)
600
Conventional Gas (S450)
Cumulative gas production [Gtoe]
Cumulative gas production [Gtoe]
600
100%
100%
Conventional Gas (S450)
Unconventional Gas (S650)
500
Unconventional Gas (S550)
Unconventional Gas (S450)
400
300
200
100
2020
2040
2060
2080
Year
2100
2120
0
2000
2140
2020
2040
2060
2080
Year
(c) ガ ス
図 4 .3 -1 8
在来型・非在来型化石燃料累積生産量
( 左 図 : B 2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
- 234 -
2100
2120
2140
CO 2 排 出 ・ 貯 留 量
c.
図 4.3-19 に 世 界 全 体 の CO 2 排 出 ・ 貯 留 量 の 計 算 結 果 を 示 す 。な お 、こ こ に 示 し て い
る の は エ ネ ル ギ ー 起 源 の CO 2 排 出 量 で あ る 。 前 述 の よ う に 、 土 地 利 用 変 化 や セ メ ン ト
起 源 の CO 2 排 出 量 が B2 ベ ー ス と A1FI ベ ー ス で 異 な る た め 、 そ れ ら を 総 CO 2 排 出 量 か
ら 差 し 引 い た 、 エ ネ ル ギ ー 起 源 の CO 2 排 出 量 は 、 CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル が 同 じ で も B2
ベ ー ス と A1FI ベ ー ス で 異 な っ て い る 。
•
B2 ベ ー ス で は 、 ま ず 植 林 や EOR が 利 用 さ れ た 後 、 帯 水 層 及 び 廃 ガ ス 田 に 貯 留 さ
れ る 。 海 洋 隔 離 は 主 と し て 評 価 対 象 期 間 の 後 半 (2100~ 21 5 0 年 )に 利 用 さ れ る 。
•
A1FI ベ ー ス で は 、 B2 ベ ー ス よ り CO 2 濃 度 安 定 化 の た め に 必 要 な 排 出 削 減 量 が 多
い た め 、よ り 早 期 か ら CO 2 回 収 貯 留 が 実 施 さ れ 、海 洋 隔 離 は 今 世 紀 後 半 か ら 実 施
される。
30
40
Reforestation
Ocean Disp.
Aquifer Disp.
Gas Well Disp.
EOR Use Disp.
Net Emission
CO2 emissions & reductions [GtC/yr]
CO2 emissions & reductions [GtC/yr]
40
20
10
0
2000
2025
2050
2075
Year
2100
2125
30
20
10
0
2000
2150
Reforestation
Ocean Disp.
Aquifer Disp.
Gas Well Disp.
EOR Use Disp.
Net Emission
2025
2050
2075
Year
2100
2125
2150
2050
2075
Year
2100
2125
2150
( a ) S6 50
30
40
Reforestation
Ocean Disp.
Aquifer Disp.
Gas Well Disp.
EOR Use Disp.
Net Emission
CO2 emissions & reductions [GtC/yr]
CO2 emissions & reductions [GtC/yr]
40
20
10
0
2000
2025
2050
2075
Year
2100
2125
2150
30
Reforestation
Ocean Disp.
Aquifer Disp.
Gas Well Disp.
EOR Use Disp.
Net Emission
20
10
0
2000
2025
( b ) S4 50
図 4.3 -1 9
②
CO 2 排 出 ・ 貯 留 量
(左 図 : B2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス )
短期緩和策評価
各 排 出 パ ス 下 で の 20 2 7、2 0 47 年 の 産 業 別 GDP ロ ス を 図 4.3-20 、図 4.3-21 に そ れ ぞ
れ示す。
他 の 研 究 事 例 と し て 、 他 の モ デ ル に よ る 20 50 年 に お け る GDP ロ ス の 推 定 結 果 を 図
4.3-2 2 に 示 す 。
- 235 -
•
B2 と A1FI に 共 通 す る 傾 向 と し て 、 産 業 別 の GDP ロ ス (Reference 比 )を 比 較 す る
と、サービス産業のロスは相対的に小さく、エネルギー多消費・その他産業のロ
スは大きい傾向にある。
•
B2 と A1FI の 異 な る 傾 向 と し て 、濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ に お い て CO 2 削 減 量 の 大 き
い A1FI シ ナ リ オ の 産 業 別 の GDP ロ ス (Reference 比 )は 、 B2 シ ナ リ オ に 比 べ 非 常
3
2
1
Sector
Total Y2027
Other
Sectors Y2027
Energy
Sector Y2027
Service
Sector Y2027
0
-1
S650*
S550*
S450
20
15
10
5
0
Sector
Total Y2027
4
Reference
25
Other
Sectors Y2027
S450
Energy
Sector Y2027
S550
Service
Sector Y2027
S650
Energy
intensive
Sector Y2027
Reference
GDP loss relative to reference [%]
5
Energy
intensive
Sector Y2027
GDP loss relative to reference [%]
に大きい傾向にある。
*は Feasible Solution(Non-Optimal)を 示 す 。
図 4 .3 -2 0
2027 年 の 世 界 産 業 別 GDP ロ ス
30
20
Sector
Total Y2047
Other
Sectors Y2047
Energy
Sector Y2047
0
Service
Sector Y2047
10
図 4 .3 -2 1
S650*
S550*
S450
40
30
20
10
0
Sector
Total Y2047
40
Reference
50
Other
Sectors Y2047
S450
Energy
Sector Y2047
S550
Service
Sector Y2047
S650
Energy
intensive
Sector Y2047
Reference
GDP loss relative to reference [%]
50
Energy
intensive
Sector Y2047
GDP loss relative to reference [%]
( 左 図 : B 2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス 、 各 Reference 比 )
2047 年 の 世 界 産 業 別 GDP ロ ス
( 左 図 : B 2 ベ ー ス 、 右 図 : A1FI ベ ー ス 、 各 Reference 比 )
注 1): 産 業 の 分 類 は 下 記 の 通 り 。
Energy intensive sector: Iron & steel, Chemical, Non-ferrous metals, Non-metallic metals,
Paper and paper products
Service sector: Av iation, Other tran sport, Business services, Social services
Energy sector: All energy sectors
Other sector: Transport equipments, Other ma chinery, Other minings, Food produ cts, Wood
products, Construction, Textiles, Other manufacturing, Agriculture
注 2): B2-S450 で GDP ロ ス が 急 増 す る 原 因 と し て 、 モ デ ル 感 度 分 析 よ り 輸 送 部 門 に よ
る CO 2 排 出 の 影 響 が 大 き い こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 DNE21 モ デ ル と 比 較 し て 、
エネルギー燃料種間の代替がやや硬直的な構造となっていることがその一因と考え
- 236 -
ら れ る 。仮 に 輸 送 部 門 の CO 2 原 単 位 が 50 %改 善 し た 場 合 に は 、2 04 7 年 の GDP ロ ス を
約 1.8%に 抑 え る こ と が 可 能 と な る 。
図 4 .3 -2 2
安 定 化 濃 度 別 GDP ロ ス の 評 価 事 例 (世 界 全 体 )
出 典 : IP CC - TA R- WG II I 4 )
(4) 比 較 の ま と め
人口、経済、エネルギー技術といったベースラインシナリオの違いが、温暖化の影
響 及 び 緩 和 策 評 価 に 与 え る 影 響 を み る た め 、 こ れ ま で の SRES-B2 ベ ー ス の 排 出 パ ス に
加 え 、 SRES-A1F I ベ ー ス の 排 出 パ ス に つ い て 分 析 し 、 そ れ ら の 結 果 を 比 較 し た 。 そ れ
をまとめると、次のようなことがいえる。
a.
温暖化影響
•
A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス に 比 べ 総 人 口 が 少 な い た め 、水 資 源 、農 作 物 、健 康 と も 、
温暖化による影響も小さくあらわれる傾向がある。例えば、温暖化による水スト
レ ス 増 大 人 口 、水 ス ト レ ス 減 少 人 口 は い ず れ も A1FI ベ ー ス の 方 が B2 ベ ー ス よ り
少ないと推定された。
•
小麦、米の世界全体の生産ポテンシャルは、経済成長が大きく生産性向上が急速
に 進 展 す る と 期 待 さ れ る A1FI ベ ー ス の 方 が B2 ベ ー ス よ り 大 き い 。但 し 、一 人 当
た り 生 産 ポ テ ン シ ャ ル で 見 る と 、B2 ベ ー ス で は 、人 口 の 増 加 が 生 産 ポ テ ン シ ャ ル
の 増 大 を 上 回 る た め 、小 麦 、米 と も に 大 き く 減 少 す る の に 対 し 、A1FI ベ ー ス で は 、
一人当たり生産ポテンシャルの減少はほとんどなく、むしろ増大する。
•
熱ストレスの死亡者数については、総人口の違いに加え、年齢構成の違いによる
影 響 が 見 ら れ た 。例 え ば 、20 5 0 年 に 、A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス よ り も 総 人 口 は 少
な い が 熱 ス ト レ ス の 影 響 を 受 け や す い 高 齢 者 人 口 が 多 い た め 、温 暖 化 に よ る 暑 さ
起 因 の 死 亡 者 数 増 加 、 寒 さ 起 因 の 死 亡 者 数 減 少 と も 、 A1 FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス と
同程度かそれ以上と推計された。
- 237 -
•
生 物 媒 介 性 感 染 症 の 死 亡 者 数 で は 、 A1FI ベ ー ス は B2 ベ ー ス に 比 べ 一 人 当 た り
GDP が 高 い こ と に よ る 違 い が み ら れ た 。 す な わ ち 、 B2 ベ ー ス で は 、 一 人 当 た り
GDP が 低 い 2 0 50 年 の サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ 地 域 に お い て 、 温 暖 化 に よ り 死 亡 者 数
が 約 10 万 人 増 加 す る と 推 計 さ れ た が 、 A1FI ベ ー ス で は 世 界 全 域 で 一 人 あ た り
GD P が 高 い た め 、温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数 へ の 影 響 は 、世 界 全 域 で 無 い と 推 計 さ れ
た。
b.
緩和策評価
•
長 期 緩 和 策 評 価 に よ る と 、最 終 エ ネ ル ギ ー 需 要 が 大 き く CO 2 濃 度 安 定 化 の た め に
必 要 な CO 2 排 出 削 減 量 が 多 い A1FI ベ ー ス の 方 が B2 ベ ー ス よ り 、CO 2 限 界 削 減 費
用 、 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム コ ス ト 、 GDP 低 減 と も 大 き い と 分 析 さ れ た 。 一 次 エ ネ ル
ギ ー に つ い て 、A1FI ベ ー ス の 方 が B2 ベ ー ス に 比 べ 、太 陽 光 や 石 炭( IGCC)の 生
産 量 が 多 い 。 CO 2 回 収 に つ い て 、 A1FI ベ ー ス で は 、 B2 ベ ー ス よ り 早 期 か ら 実 施
され、海洋隔離も今世紀後半から実施される。
•
短 中 期 緩 和 策 に よ る と 、 A1FI ベ ー ス の 方 が B2 ベ ー ス よ り 部 門 別 生 産 額 ロ ス は 非
常に大きい。産業間の差異をみると、両ベースともに、サービス産業への生産ロ
スは相対的に小さく、エネルギー多消費・その他産業の生産ロスは大きい傾向に
ある。
以 上 の よ う に 、ベ ー ス ラ イ ン シ ナ リ オ の 違 い が 温 暖 化 影 響 と 緩 和 策 の 評 価 に 及 ぼ す 影
響 は 小 さ く な い 。そ の 影 響 の 程 度 は 、場 合 に よ っ て は 、CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル の 違 い に
よる影響以上に大きい可能性がある。
参 考 文 献 ( 4.3 節 に 関 す る も の )
1)
Nebojsa Nakicenovic, et al.: Special Report on Emissions Scenarios,(2000),Cambridge university press.
2)
United Nations : World Population Projections to 2150 (1998).
3)
IIASA : Population Projections for the IPCC Special Report on Emission Scenarios (1996)
(http://www.iiasa.ac.at/Research/POP/IPCC/index.html).
4)
IPCC WGIII, 2001: Climate Change 2007: Mitigation.
4.4
総合評価のまとめ
総 合 評 価 は 、 望 ま し い CO 2 排 出 経 路 の 合 理 的 な 決 定 に よ っ て 完 結 す る 。 望 ま し い 温
室効果ガス濃度安定化レベルがいかなるレベルにあるべきかは、人類が利用できる資
源には当然限りがある以上、基本的に費用便益分析的に考えるべきである。しかしな
がら、この問題は科学的な分析のみでは決定できず、価値判断に依存する部分は大き
い。そこで、本研究では、科学的な分析に基づきつつ、温暖化影響、緩和費用等をで
きるだけ総括的に専門家に提示した上で、現時点における地球温暖化問題に関わる専
門家(エキスパート)の価値判断も調査し、望ましい温室効果ガス濃度安定化レベル
の評価を行った。れは、従来多く用いられてきた個別の影響要因を金銭換算して積み
上げ、緩和費用と比較すると言う手順とは異なるものである。
- 238 -
ま ず 、エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト の た め の 前 提 と な っ た 温 暖 化 影 響・緩 和 策 評 価 の
知見は、以下の3点に集約できる。
1.
温 暖 化 の 影 響 は 、空 間 的 に も 時 間 的 に も 広 が り を 持 ち 、か つ 多 様 な 不 確 実 性 を 伴
う。
2.
気 候 変 動 の 影 響 は 強 い 地 域 性 を 持 つ 。 2 1 世 紀 中 、 「世 界 平 均 」あ る い は 「 世 界 合
計 」で 世 界 全 体 の 経 済 活 動 と 比 較 す れ ば 、さ ほ ど 深 刻 な 数 値 に は 至 ら な い と 見 ら
れるものの、社会の持続可能性は損なわれる可能性がある。
3.
温 暖 化 の 緩 和 費 用 は 、も し 現 在 の 社 会・産 業 構 造 を 基 準 と す る な ら 、制 約 目 標 が
厳しくなるにつれ、急激に増加する可能性が高い。
そ の 上 で 、第 1 ス テ ッ プ と 第 2 ス テ ッ プ の 2 段 階 に 分 け て エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン
トを実施した。
第 1 ス テ ッ プ で は 、 21 00 年 時 点 の 影 響 事 象 5 項 目 と 、 緩 和 コ ス ト に 的 を 絞 り 、 費 用
便益分析を行った。影響事象5項目とは、海面上昇・沿岸影響、農作物影響、健康影
響 、 陸 上 生 態 系 影 響 、 THC 崩 壊 で あ り 、 こ れ ら は 本 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 、 物 理 的 な
変化の定量評価が可能であった項目である。第 1 ステップにおいて、回答者間のばら
つきが大きく、一次最適安定化レベルは回答者により差異があるものの、全回答者の
相 乗 平 均 を 取 る と 、 S650 が 一 次 最 適 安 定 化 レ ベ ル と な る 結 果 を 得 た 。
第 2 ス テ ッ プ で は 、 第 1 ス テ ッ プ で 注 目 し た 5 項 目 以 外 の 温 暖 化 影 響 事 象 や 、 21 00
年 の み な ら ず 、 20 50 年 、 21 50 年 時 点 の 影 響 事 象 に つ い て も 注 目 し 、 か つ 地 域 間 差 異 、
時点間差異などの幅広い要素を総合的に判断した上での望ましい安定化レベルについ
て質問を行い回答を得た。第 2 ステップでの望ましい安定化レベルについても回答者
に よ り 差 異 が あ る も の の 、そ の 分 布 の 広 が り は 第 1 ス テ ッ プ よ り も 狭 ま る 方 向 に あ り 、
ま た 相 乗 平 均 を と る と S5 5 0 が 最 も 望 ま し い 安 定 化 レ ベ ル と な っ た 。
第 1 ス テ ッ プ で は 、「 THC 崩 壊 」「 海 面 上 昇 ・ 沿 岸 影 響 」 の 緩 和 便 益 を 大 き い と す る
回答が多く、第 2 ステップでは、さらに異常気象、農作物影響、氷河・氷床・永久凍
土 な ど の 重 要 度 が 高 か っ た 。た だ し 、こ れ ら の 影 響 事 象 は 総 じ て 重 要 度 は 高 い も の の 、
第 2 ステップでの望ましい安定化レベルの選択とは関係が見られなかった。これに対
し、生態系影響は、重要視度は高くないものの、望ましい安定化レベルの選択と統計
的に有意な関係があった。すなわち、生態系影響を重視する回答者は、数値の低い安
定化レベルを選択する傾向にあった。従って、望ましい安定化レベルや究極目標に関
する議論の収束を図るためには、重要視度の高い影響事象のみならず、生態系影響と
いった安定化レベルの選択に大きな影響を与える事象についても、知見を収集し議論
していくことが必要であることが示唆された。
最 後 に 、改 め て 、本 総 合 評 価 の 結 果 を 要 約 し て お く と 、以 下 の 2 点 に ま と め る こ と が
できる。
1.
各 影 響 要 因 へ の 個 々 の 専 門 家 判 断 に は 広 が り が あ る も の の 、現 時 点 で は 、総 合 的
に 最 も 好 ま し い CO 2 安 定 化 濃 度 は 5 50 pp mv 前 後 と い う 結 論 が 導 か れ た 。
- 239 -
2.
こ れ は 、4 50–50 0 pp mv( あ る い は そ れ 以 下 )で の 恩 出 効 果 ガ ス 濃 度 安 定 化 と い う 、
よ り 厳 し い 排 出 緩 和 を 求 め る EU 提 言 や Stern Review と は や や 異 な る も の で あ る
1
。
し か し な が ら 、言 う ま で も な く 本 調 査 の 対 象 者 数 が 限 定 さ れ て い る こ と 、ま た 温 暖 化
問題全体について判断を求めるという本研究の方法はほかに例を見ないものであるだ
けに、エキスパートジャッジメントの方法、結果の分析とも残された課題がなお多い
ことも付記しておく必要がある。
な お 、 以 上 の エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト は 、 SRES B2( 中 位 的 な シ ナ リ オ ) に 基 づ
く社会シナリオを前提とした。一方、温暖化影響、緩和費用共に、濃度安定化レベル
の み な ら ず 、人 口 や 経 済 成 長 な ど の 社 会 シ ナ リ オ に 大 き く 依 存 し 得 る た め 、第 4 . 3 節 で
は 、A1FI の ケ ー ス に つ い て も 各 影 響 事 象 の 評 価 を 行 い 、B2 シ ナ リ オ と の 比 較 を 行 っ た 。
その分析結果によると、社会経済シナリオによって、温暖化影響、緩和費用に非常に
大きく異なることが示された。エキスパートジャッジメントは、回答者に大きな負担
を か け る た め 、 本 研 究 で は 、 SRES A 1 FI シ ナ リ オ 下 で の エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト
は 実 施 し な か っ た 。 し か し 、 第 4 .3 節 の 分 析 結 果 か ら は 、 上 記 の SRES B2 に 基 づ い た
エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト の 結 果 が 、 A1FI シ ナ リ オ 下 で は 大 き く 変 わ っ て も 不 思 議
がないと考えられるものであったことには留意が必要である。温暖化対策以外の様々
な政策を、温暖化対応政策と調和させることの重要性が改めて指摘できる。
1
詳細については、5章を参照のこと。
- 240 -
第 5章
温暖化長期抑制目標に関する政策的含意
本章では、まず、温暖化長期抑制目標に関する国際的な動向についてまとめ、その
後に、本研究において得られた分析・評価等からの政策的含意を、それらの国際的動
向と合わせながら整理を行った。
5.1
温暖化長期抑制目標に関する動向
本節では、温暖化長期抑制目標に関する動向についてまとめておく。
5.1.1 気 候 変 動 枠 組 条 約 に お け る 言 及
温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 動 向 を ま と め る に あ た り 、気 候 変 動 枠 組 条 約( UNFC C C )
の 条 文 は 重 要 で あ る た め 、改 め て ま と め て お く( 下 線 は 、本 PHOENI X プ ロ ジ ェ ク ト に
お い て 、 特 に 留 意 を 払 っ て い る 箇 所 )。
第2条目的における「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水
準の大気中の温室効果ガス濃度」はいわゆる「究極目標」と呼ばれるが、枠組み条約
では、そのレベルは明示されておらず、下記のような定性的な記述となっている。そ
のため、それがどのレベルなのかの議論が続いており、特に昨今、京都議定書以降の
排出削減枠組・目標の議論とも絡んで、研究も盛んに行われている。その研究動向に
ついては、次節でまとめる。
ここで、要求されているのは、気候系が危険な人為的干渉とならないようにすると
共に、それが、経済開発が持続可能なように実行されるべきとしている。すなわち、
持 続 的 な 経 済 開 発 無 く し て は 、 有 効 な 気 候 緩 和 方 策 も 実 行 で き な い た め 、「 究 極 目 標 」
は、気候系と経済活動へのインパクト双方のバランスを考えたものである必要性が述
べられている。
本研究では、枠組み条約によく適合しつつ、その「究極目標」に対する評価の枠組
みおよびその具体的な評価の提供を行っている。
第2条 目的
この条約及び締約国会議が採択する関連する法的文書は、この条約の関連規定に従
い、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の
温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。そのような水準は、
生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続
可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきである。
第3条 原則
締約国は、この条約の目的を達成し及びこの条約を実施するための措置をとるに当
たり、特に、次に掲げるところを指針とする。
- 241 -
1
締約国は、衡平の原則に基づき、かつ、それぞれ共通に有しているが差異のあ
る責任及び各国の能力に従い、人類の現在及び将来の世代のために気候系を保護すべ
きである。したがって、先進締約国は、率先して気候変動及びその悪影響に対処すべ
きである。
2
開発途上締約国(特に気候変動の悪影響を著しく受けやすいもの)及びこの条
約によって過重又は異常な負担を負うこととなる締約国(特に開発途上締約国)の個
別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮が払われるべきである。
3
締約国は、気候変動の原因を予測し、防止し又は最小限にするための予防措置
をとるとともに、気候変動の悪影響を緩和すべきである。深刻な又は回復不可能な損
害のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、このような
予防措置をとることを延期する理由とすべきではない。もっとも、気候変動に対処す
るための政策及び措置は、可能な限り最小の費用によって地球的規模で利益がもたら
されるように費用対効果の大きいものとすることについても考慮を払うべきである。
このため、これらの政策及び措置は、社会経済状況の相違が考慮され、包括的なもの
であり、関連するすべての温室効果ガスの発生源、吸収源及び貯蔵庫並びに適応のた
めの措置を網羅し、かつ、経済のすべての部門を含むべきである。気候変動に対処す
るための努力は、関心を有する締約国の協力によっても行われ得る。
4
締約国は、持続可能な開発を促進する権利及び責務を有する。気候変動に対処
するための措置をとるためには経済開発が不可欠であることを考慮し、人に起因する
変化から気候系を保護するための政策及び措置については、各締約国の個別の事情に
適合したものとし、各国の開発計画に組み入れるべきである。
5
締約国は、すべての締約国(特に開発途上締約国)において持続可能な経済成
長及び開発をもたらし、もって締約国が一層気候変動の問題に対処することを可能に
するような協力的かつ開放的な国際経済体制の確立に向けて協力すべきである。気候
変動に対処するためにとられる措置(一方的なものを含む)は、国際貿易における恣
意的若しくは不当な差別の手段又は偽装した制限となるべきではない。
5.1.2 温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 に 関 す る 政 治 的 な 動 向
EU を 除 く ほ と ん ど の 国 は 、温 暖 化 長 期 抑 制 目 標 が ど の レ ベ ル で あ る べ き か の 政 治 的
な判断を現時点においても示していない。
一 方 、EU は 早 く か ら 積 極 的 に 濃 度 安 定 化 レ ベ ル を 2℃ に 抑 制 す べ き と し て お り 、19 96
年 6 月の欧州環境相理事会では、
「地球の平均気温の上昇幅を産業革命以前のレベルか
ら 2℃ を 越 え な い よ う に す べ き で あ り 、 そ の た め に は 二 酸 化 炭 素 の 大 気 中 濃 度 を
55 0ppm 以 下 に す る た め の グ ロ ー バ ル な 努 力 が 求 め ら れ る べ き で あ る 。」 と し た 。
ま た 、2005 年 3 月 の 欧 州 環 境 相 理 事 会 に お い て 、
「気候変動枠組条約の究極目標を達
成 す る た め 、全 球 年 平 均 気 温 の 上 昇 幅 が 、産 業 革 命 以 前 の レ ベ ル に 比 べ て 2℃ を 超 え て
は な ら な い こ と を 再 確 認 す る 。こ の た め に は 、最 近 の IPCC で の 研 究 に よ る と 、5 5 0pp m
( 二 酸 化 炭 素 換 算 ) を は る か に 下 回 る 濃 度 で の 安 定 化 が 必 要 で あ る 。」 と し た 。
- 242 -
更 に 、 2005 年 3 月 の 欧 州 理 事 会 ( EU の 最 高 意 思 決 定 機 関 ) で も 、「 気 候 変 動 枠 組 条
約の究極目標を達成するため、全球年平均気温の上昇幅が、産業革命以前のレベルに
比 べ て 2℃ を 超 え て は な ら な い こ と を 再 確 認 す る 。」 と し て い る
19)
。
そ し て 、 欧 州 委 員 会 は 、 2 007 年 1 月 10 日 に 、 欧 州 エ ネ ル ギ ー 政 策 に 関 す る EU 理 事
会 へ の 伝 達 文 書 及 び 関 連 文 書 を 公 表 し 、2 00 7 年 3 月 8~ 9 日 に 開 催 さ れ た 欧 州 理 事 会 で
最終的に決定した。主要な点は下記の通りである。
• 地球の平均気温の上昇幅を、工業化前から2℃以内抑制する目標を達成すること
が重要
• エネルギーの利用が温室効果ガスの主要排出源であるため、欧州エネルギー政策
( Energy Policy for Europe) で は 、 以 下 の 目 標 を 追 求 す る
- 供給の安全性・安定性の向上
- 欧州経済の競争力、手ごろな価格でのエネルギー提供の確保
- 環境保全の促進と気候変動対策
• 気 候 変 動 に 対 し て は 、国 際 的 に 結 束 し た 行 動 が 必 要 で あ り 、20 1 3 年 以 降 に 関 す る
包括的合意は、京都議定書を受け継ぎ、幅広い参加のために公平で、かつ柔軟な
枠 組 み で あ る べ き 。そ の た め の 交 渉 は 、2 0 07 年 末 の 国 連 の 下 で の 気 候 変 動 会 議 で
開 始 し 、 20 0 9 年 ま で に 終 了 す べ き 。
• 先 進 国 は 、 引 き 続 き 率 先 し て 気 候 変 動 に 取 り 組 む べ き で あ り 、 先 進 国 全 体 で 202 0
年 ま で に 19 9 0 年 比 で 3 0% 削 減 す べ き 。 20 5 0 年 ま で に 、 19 9 0 年 比 で 6 0~ 8 0% 削
減すべき。
• EU は 、 他 の 先 進 国 が 相 応 の 削 減 を 行 い 、 経 済 的 に 発 展 し て い る 途 上 国 が そ の 責
任 及 び 能 力 に 応 じ て 十 分 な 貢 献 を 行 う 場 合 は 、2 0 13 年 以 降 の 包 括 的 合 意 の 一 部 と
し て 、 20 20 年 ま で に 1 99 0 年 比 で 3 0% 削 減 す る 。 20 13 年 以 降 の 包 括 的 合 意 が な
されるまでは、国際交渉における主張にかかわらず、独自のコミットメントとし
て 、 2020 年 ま で に 19 9 0 年 比 で 少 な く と も 2 0% 削 減 す る 。
ま た 、 欧 州 理 事 会 行 動 計 画 ( 20 0 7 年 ~ 20 0 9 年 ) に お い て 、 以 下 の 点 が 位 置 づ け ら れ
た。
• 2020 年 に 予 測 さ れ る エ ネ ル ギ ー 消 費 か ら 2 0%省 エ ネ す る 目 標 を 達 成 す る た め 、エ
ネルギー効率を改善していく。
• 2020 年 ま で の E U 全 体 の エ ネ ル ギ ー 消 費 に 占 め る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の シ ェ ア
を 、 拘 束 力 の あ る 目 標 と し て 2 0%に 設 定 す る 。
• 2020 年 ま で の E U 全 体 の 運 輸 部 門 の ガ ソ リ ン 及 び デ ィ ー ゼ ル の 消 費 に お け る バ イ
オ 燃 料 の シ ェ ア を 、 全 て の E U 加 盟 国 が 拘 束 力 あ る 目 標 と し て 最 低 10 %に 設 定 す
る。
- 243 -
5.1.3 ス タ ー ン ・ レ ビ ュ ー ( Stern Review)
(1) Stern Re vi e w の 概 要
COP12 、COP/MOP2 を 前 に し た 2 00 6 年 1 0 月 3 0 日 に 、英 国 財 務 省 の 委 託 を 受 け た N.
Stern 卿 ら に よ る 気 候 変 動 問 題 に 関 す る 報 告 書 Stern Review が 公 表 さ れ た 。Review 報 告
書ではあるものの、政治的な色彩が強く英国のポスト京都への方針が伺える内容とな
っ て い る 。 COP12 に お い て も 、 話 題 提 供 が な さ れ た 。
報告書の概要は以下の通りである。
• 断固たる排出削減行動による便益は、行動を取らなかった場合の経済的費用を大
幅に上回る。
• 気 候 変 動 の リ ス ク と 費 用 の 総 額 は 、 現 在 お よ び 将 来 に わ た っ て 世 界 GDP の 5 %強
に 相 当 し 、 よ り 広 範 な リ ス ク や 影 響 を 考 慮 す れ ば 、 GDP の 2 0 %に も 達 す る 可 能 性
有り。
• 450-550 ppm CO 2 eq に 安 定 化 す れ ば 、 最 悪 の 気 候 変 動 に よ る 影 響 は か な り 減 少 。
• 現 在 の CO 2 eq 濃 度 は 4 3 0 pp m C O 2 eq で あ り 、 45 0 -550 pp m CO 2 eq に 安 定 化 す る た
め に は 、 20 5 0 年 の 排 出 量 を 少 な く と も 現 在 の レ ベ ル か ら 25 %削 減 す る 必 要 有 り 。
究 極 的 に は い か な る 濃 度 に 安 定 化 す る に し て も 現 在 の 排 出 量 レ ベ ル か ら 80 % 以 上
削減しなければならない。
• な お 、500-550 pp m CO 2 eq に 安 定 化 す る た め の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 削 減 コ ス ト は 、世
界 GDP の 1 %未 満 に 留 ま る 可 能 性 が あ る 。 一 方 、 45 0 pp m CO 2 eq に 安 定 化 す る こ
と は 、 大 変 難 し く 、 コ ス ト が か か る 。 す ぐ に 対 策 を と ら な け れ ば 、 500-550 p p m
CO 2 eq に 安 定 化 す る 機 会 を 失 っ て し ま う 。
• 排出量取引制度などによって炭素に価格をつけること、低炭素技術のイノベーシ
ョンと展開をサポートする政策、エネルギー効率基準、障壁を取り除く行動等が
政策として重要。
こ の Stern Review に 対 し て は 、 多 く の 賞 賛 の コ メ ン ト が 寄 せ ら れ て い る 一 方 で 、 温
暖化問題の専門家からは下記のような批判的な見方が多い。特に長年に亘って温暖化
の 統 合 評 価 に 携 わ っ て き て い る 専 門 家 で あ る R.S.J. To l と W.D. Nordhaus が そ れ ぞ れ の
視 点 か ら 的 を 射 た 批 評 し て い る こ と は 注 目 に 値 す る 。 一 方 、 B. Lo mborg は 元 々 、 温 暖
化問題に対して懐疑的な立場をとっているものの、その批評の一部は尤もなものでも
ある。
(2) R . S. J. T ol の 批 判 ( T he C ent e r f o r Sc i en ce a nd T ec h no lo g y P o li cy R es e arch
に寄稿)
主に2つのポイントに批判を向けている。
1) 温暖化による影響は、現在そして将来ずっと、少なくとも世界GDPの5%と
している点
• 現在、世界は大きく成長しており、「現在」そうだということはおかしい。
- 244 -
• 人類は、座して待つことはなく、賢い。技術の進歩、適応、改革をする。「将来
ずっと」はおかしい。
• 例 え ば 、水 資 源 の 評 価 は Arnell (2004)に 基 づ い て い る が 、STERN Review で も 注 釈
はしているが、適応を考慮しておらず、大きなバイアスがかかっている。
• 気候変化は、例えば、アフリカの食糧生産性を悪化させるとしているが、これは
気 候 変 化 以 前 に 、 現 在 の 世 界 の 深 刻 な 問 題 で あ る 。 一 方 、 STERN Review で は 、
アフリカの経済は急激に成長すると想定している。しかし、食糧生産の問題を解
決せずに、経済が急速に成長するなど想像しがたく、矛盾している。また、世界
全体での食糧生産は、気候変化によって脅かされることはないので(注:生産適
地が移動するだけと言いたいのだと思われる)、中所得の国々は、飢えることな
く、食糧を輸入するはずである。
• 健 康 影 響 で も 、STERN Review は 同 じ 誤 り を 犯 し て い る 。下 痢 や マ ラ リ ア に よ る 死
亡 を 懸 念 し て い る が 、こ れ ら は 、わ ず か の 支 出 に よ っ て コ ン ト ロ ー ル 可 能 で あ る 。
• 気 候 関 係 の 自 然 災 害 に つ い て の 推 定 は 、 Mu ir-Wood et al. (2006)を 用 い て い る が 、
反 対 の 結 論 を 導 い て い る Pielke et al. (2005)や Pielke (2005)を 無 視 し て い る ( こ れ
は 、 し か も 、 Muir-Wood ら と 同 じ 会 議 で 発 表 さ れ て い る も の で あ る ) 。
• 難 民 の 推 定 と し て 、 Myers and Kent (1995)を 利 用 し 、 恒 久 的 に 150-200 millio n 人
が 難 民 と な る と し て い る が 、こ れ は 査 読 論 文 で は な い し 、Myers は 有 名 な alarmi st
である。
• 海 面 上 昇 で は 、 Nicholls and Tol (2005)の ” millions at risk” だ け を 取 り 上 げ て い る
が、これは適応を考慮していないものである。この文献では、適応策も議論して
いるのに。
• 統 合 評 価 モ デ ル と し て PAGE2002 を 用 い て い る が 、 こ の モ デ ル は 、 気 候 変 化 の 影
響が負であることが必要であり、開発発展状況は、気候変化に対する脆弱性とは
無関係であると想定しており、影響を悲観的に推定する。
2 ) 極 め て 早 期 の 排 出 削 減 行 動 に よ る 便 益 が 、緩 和 コ ス ト に 打 ち 勝 つ と し 、5 50 p p m
CO 2 eq 以 下 が 必 要 と し て い る 点
• 緩 和 コ ス ト の 推 定 は 、IMCP を ベ ー ス に し て い る が 、技 術 変 化 の 想 定 、緩 和 コ ス ト
が 楽 観 的 で 、 Weyant (2004)や van Vuuren et al. (2006 )の 方 ( EMF) が 本 流 で あ る 。
Stern Review で は 、 緩 和 に よ る 高 い 便 益 、 低 い 緩 和 コ ス ト の 両 方 に よ っ て 、 標 準
的な費用便益分析の結果よりも、厳しい排出削減を推奨することになっている。
• 実 は 、 Stern Review は 、 正 式 な 費 用 便 益 分 析 を し て い な い 。 た だ 、 緩 和 コ ス ト の
大 き さ ( GDP の 1%程 度 ) と 気 候 変 化 の コ ス ト ( GDP の 5-20%) を 比 較 し た だ け
である。
• 次の2つの誤りを犯している。1)気候変化によるコストは排出削減の便益と等
しくはなく、排出削減の便益は気候変化のコストよりも小さい。2)限界費用と
限界便益を比較しなければならないが、限界費用について言及していない。
- 245 -
結論として、温暖化の影響が大きい文献をセレクトしており、また、評価に用いて
いる割引率は低すぎるし、費用便益分析をやったようにしているが、実のところやっ
た こ と に は な っ て い な い 。よ っ て 、Stern Review は 人 騒 が せ で 不 適 切 な も の と し て 葬 り
去られるべきものとしている。自分は、温暖化が問題でないとは言わないし、排出削
減 が 必 要 で な い と も 言 わ な い 。し か し 、Stern Review は 、気 候 変 動 と 気 候 政 策 の 懐 疑 論
者にカイバを与えるだけだ、と結んでいる。
ま た 、 BBC の イ ン タ ビ ュ ー ( 20 0 7 年 1 月 2 6 日 ) に 対 し 、「 も し 自 分 の 修 士 課 程 の 学
生 が こ の レ ポ ー ト を 提 出 し た ら 、 自 分 の 機 嫌 が 良 い と き は 、 そ の 努 力 に 対 し て ’D’判 定
を 与 え る か も し れ な い が 、普 通 で あ れ ば 、誤 っ た 内 容 と し て ’F’判 定 と す る だ ろ う 。」と
述べている。
(3) W. Nordh au s の 批 判
科学的な文献として見るべきではなく、政治的な文献と解釈すべきものであるなど
の指摘を行っているが、その批判のほとんどは、割引率の取り扱いに割かれており、
要点は以下のとおり。
• Stern Review で は 割 引 率 は 0 に 近 い も の を 用 い て い る が 、 こ れ を 通 常 の 温 暖 化 分
析 で 用 い ら れ て い る 割 引 率 に す る と 、 Stern Review の 結 論 は 全 く 異 な っ た も の に
な り 、 こ れ ま で 同 様 、 ”clima te-policy ramp”( 初 期 時 点 は 大 き な 削 減 は 行 わ ず 、 低
炭素技術へ投資し、後の時点になって排出削減を加速する)となる。
• Stern Review で は 対 数 の 効 用 関 数 を 用 い て い る が 、 効 用 関 数 形 と 社 会 割 引 率 は 独
立ではない。対数の効用関数の場合、高い社会割引率を、高いリスク回避や将来
世代の不衡平回避を指向した関数の場合、低い割引率を利用しなければ、市場利
子率、民間・公的貯蓄率、投資との整合性が取れない。
• DICE モ デ ル の 分 析 に よ る と 、通 常 の 社 会 割 引 率( DICE で は 初 期 時 点 3%/yr で 300
年 後 に は 1%/yr に 減 少 )を 用 い る と 、clima te-policy ramp と な る 。一 方 、St e rn R eview
の 0.1%/yr を 利 用 す る と 、Stern Review と 同 じ よ う に 近 い 時 点 か ら 大 幅 に 削 減 す る
の が 最 適 と な る 。 そ し て 、 社 会 割 引 率 を 0.1%/yr と す る も の の 、 実 測 さ れ る 値 と
整合的になるように効用関数の形を調整し、その調整された効用関数を用いて同
様に分析すると通常の割引率の結果とほぼ等しくなる。
• 元々、政治的な文献で、結論が先にあるのだから、低い割引率を使ってまわりく
どくするのではなく、むしろ、「危険な閾値を超えない」気候変化になるような
政策を採用すべきであると、直接的に言った方が透明性も高く効率的な議論がで
きたはず。
(4) B. Lomborg の 批 判 ( O p in io n Journal( The Wall Street Jounal) に 寄 稿 )
Stern Review は 、偏 っ た 文 献 セ レ ク ト を し て お り 、不 安 を セ ン セ ー シ ョ ナ ル に 煽 る だ
けで、結局、世界を悪い方向に持っていくだけだ、としている。
• ハリケーンの被害の増大は、主に、より多くの財をより多くの人が保有すること
に よ る も の で あ り 、 そ れ は 95 - 98%を 占 め る と 推 定 さ れ る 。 ま た 、 屋 根 の 補 強 な ど
- 246 -
の 安 価 な 対 応 で 8 0%以 上 被 害 を 防 止 で き る 一 方 、CO 2 削 減 で は ダ メ ー ジ の せ い ぜ い
1-2%程 度 し か 削 減 で き ず 、 愚 か な 対 策 で あ る 。
• 英 国 の 洪 水 被 害 が 4 倍 に な る と し て い る が 、無 対 策 の 場 合 を 論 じ て も 仕 方 が な い 。
英 国 政 府 は 、気 候 政 策 と は 無 関 係 に 、洪 水 防 止 の 対 策 を し 、洪 水 被 害 を GDP の 0. 0 4 %
に 減 少 さ せ る と 公 式 に 表 明 し て い る ( 現 在 0. 1%) 。 S T ERN R e vi ew は こ の 情 報 を ど
う考えているのか。
• 用いている割引率が極端に低すぎる。
• 20%の GD P ロ ス と し て い る 部 分 は 、い ろ い ろ 理 由 を つ け た ワ ー ス ト ケ ー ス で 、世 界
に 向 け て 花 火 を 打 ち 上 げ た 数 値 に す ぎ ず 、図 に 示 さ れ て い る 現 在 で は GDP 比 0 % で 、
2100 年 に 3 %と い う 標 準 ケ ー ス は 、多 く の 経 済 学 者 が 納 得 す る 数 値 で 、こ れ が 、よ
り価値を持った数値である。
• 対 策 コ ス ト は 、 GDP の -4%~ 15% と し て い る が 、 も し 、 現 在 の 税 制 の 非 効 率 性 を 理
由 に -4%が あ り 得 る と 主 張 す る の な ら 、な ぜ 、気 候 政 策 の 非 効 率 性 も 論 じ な い の か 。
• GDP の 1%( 400 billion $ ) で 安 定 化 で き る と し て い る が 、 国 連 の 推 定 で は 、 75
billion $で 世 界 の 主 要 な 基 本 的 な 問 題 ( 安 全 な 飲 料 水 、 下 水 、 健 康 、 教 育 な ど )
の問題を解決できるとしている。
• 先週、コペンハーゲンコンセンサスの一貫で、国連大使24人に政策の優先順位
を尋ねたが、健康、栄養、水、下水、教育は、気候変動に優先されるという結果
だった。
• 我々はよい良い世界を求めている。我々は、不安を煽られることによって、悪い
投資がなされることを防さがなければならない。
5.1.4 IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書
IPCC WGI に よ る 第 4 次 評 価 報 告 書 が 20 0 7 年 3 月 に 公 表 さ れ た 。 ま た 、 引 き 続 き 、
WGI I が 2007 年 4 月 、 WGIII に よ る 第 4 次 評 価 報 告 書 が 2 007 年 5 月 に 公 表 予 定 と な っ
ている。
WGI の 報 告 書 の 主 要 な 点 は 以 下 の よ う な も の で あ る 。 な お 、 以 下 の 【 】 内 は RITE
によるコメントである。
• 温暖化していることは間違いない。人為的活動による効果が大きいことに高い信
頼 性 が あ る 。 【 TA R で は 「 信 頼 性 が あ る 」 と し て い た 】
• 過 去 100 年 の 間 に 全 球 平 均 気 温 は 0.74℃ 上 昇【 TAR の 時 点 ま で で は 0.6℃ と し て
いた】
• 成 り 行 き シ ナ リ オ ( Ba U、 I PC C SRES 6 シ ナ リ オ ) で は 、 2100 年 の 全 球 平 均 気 温 上
昇 は 1.1~ 6. 4 ℃ と 推 定【 T AR で は 1.4~ 5.8℃ 。た だ し 、利 用 し て い る シ ナ リ オ
等が異なるので比較は意味がない】
• 平 衡 気 候 感 度 は 2 .0 ~ 4 .5℃ の 範 囲 で あ り 、 最 良 推 定 値 は 約 3℃ 【 TAR ま で は 1. 5
~ 4.5℃ の 範 囲 、 SA R で は 最 良 推 定 値 を 2.5℃ と し て い た 。 】
- 247 -
• 熱帯低気圧の強度が増大する可能性が高い(発生回数は減少する可能性有り(た
だし信頼性は低い))
• 大 気 中 CO2 濃 度 上 昇 に 伴 う 海 洋 酸 性 化 の 危 険 性 の 指 摘 【 新 た な 指 摘 事 項 】
• 温 暖 化 に よ り 、 大 気 中 CO 2 の 陸 地 と 海 洋 へ の 吸 収 が 減 少 し 、 人 為 起 源 排 出 の 大 気
残留が増加する傾向にある。【新たな指摘事項】
5.2
本プロジェクトからの政策的含意
本 節 で は 、以 上 の よ う な 背 景 を 踏 ま え つ つ 、本 PHOEN IX プ ロ ジ ェ ク ト か ら の 政 策 的
含 意 を ま と め る 。 前 節 で 触 れ た Stern Review は 温 暖 化 影 響 と 緩 和 策 の 総 合 的 な レ ビ ュ
ー で あ り 、本 研 究 と 関 連 す る 点 が 非 常 に 多 い 。そ こ で 、PHOENIX の 政 策 的 含 意 を Stern
Review と 比 較 し つ つ ま と め る こ と と と す る 。こ れ に よ っ て 、PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト が
何 を 目 指 し た か が 理 解 で き る は ず で あ る 。そ し て ま た 、Stern Review に 寄 せ ら れ た 多 く
の 批 判 の 一 部 に も 、PHOE NIX プ ロ ジ ェ ク ト が 答 え て い る こ と が 理 解 で き る は ず で あ る 。
5.2.1 PHOENIX と Stern Review の 比 較
Stern Review に お い て 究 極 目 標 と し て 推 奨 す る 濃 度 安 定 化 レ ベ ル は 必 ず し も 明 確 に
は 記 載 さ れ て い な い 。 し か し 、「 4 50 ~ 550 ppmvCO 2 eq . の レ ベ ル に 抑 え ら れ れ ば 、 気 候
変 動 が も た ら す 最 悪 の 影 響 は か な り 減 少 」、「 50 0~ 550 ppmvCO 2 eq.に 抑 え る た め の 費 用
は 世 界 の 年 間 GDP の 1 %程 度 と 推 定 さ れ 、 何 も し な か っ た 場 合 の リ ス ク に 比 べ れ ば ず
っ と 低 い 費 用 で 達 成 が 可 能 」、「 450 ppmv CO 2 eq. に 抑 え る の は 非 常 に 困 難 で 費 用 も か か
りすぎる」
( い ず れ も SOx の 冷 却 効 果 を 含 ま な い CO 2 等 価 濃 度 で あ り 、SOx の 冷 却 効 果
を 含 ん だ CO 2 等 価 濃 度 と し て は 、 そ れ ぞ れ 50 ppmvCO 2 eq.程 度 低 い レ ベ ル と 解 釈 で き
る )、「 早 期 に 断 固 と し た 対 応 策 を と る こ と に よ る メ リ ッ ト は 、 対 応 し な か っ た 場 合 の
経 済 的 費 用 を は る か に 上 回 る 」と い っ た 記 述 か ら は 、50 0~ 550 ppmv CO 2 eq.( SOx の 冷
却 効 果 を 含 め る と 4 5 0~ 500 ppmvCO 2 eq.前 後 相 当 、 CO 2 単 独 で は 420~ 455 ppmv (CO 2
only)相 当 ) を 暗 に 推 奨 し て い る も の と 推 察 で き る 。 50 0 ppmv CO 2 eq.( SOx 冷 却 効 果 含
ま ず ) の 場 合 に は 、 EU 提 案 で あ る 産 業 革 命 以 前 比 で 2 ℃ を 超 え な い と す る 目 標 と 整 合
的でもある。
(1) 2 ℃ 安 定 化 目 標 の 意 味
そ こ で 、 PHOEN IX と Stern Review の 比 較 を 述 べ る 前 に 、 ま ず 、 2 ℃ 安 定 化 や 5 00 ~
550 ppmv CO 2 eq.安 定 化 の 意 味 を 整 理 し て お く 。
①
気温上昇の時間遅れ
IPCC WG1 AR4 に よ れ ば 、2 005 年 時 点 で 0 .7 4℃ 既 に 気 温 が 上 昇 し て い る 。す な わ ち 、
2 ℃ を 超 え な い よ う に す る た め に は 、現 時 点 か ら は 残 り 1.3℃ し か 余 裕 は な い こ と と な
る 。 し か も 、 図 5.2.1-1 で 見 ら れ る よ う に 、 仮 に 今 す ぐ に 大 気 中 GH G 濃 度 の 安 定 化 を
- 248 -
図 っ た と し て も 0.2~ 1.0℃ 程 度( 気 候 感 度 1 .5~ 4 .5℃ )の 上 昇 が 見 込 ま れ る と の 報 告 が
あ る 1。
GHG濃度現状レベル安定化を想定
(今後、ほぼGHG排出をしない非現実的な想定)
GHG大気中濃度
1800
2005
将来
全球平均気温上昇
安定化レベル
2℃
今後に残された余裕:
0.3~1.1℃
0.9 ~
1.7℃
GHG濃度を現状レベルに安定化し
たとしても時間遅れによって上昇
が見込まれる分:0.2~1.0℃
0.7℃
1800
2005
図 5 .2 .1 -1
②
将来
過去に既に上昇した分: 0.7℃
気 温 上 昇 の 時 間 遅 れ ( T.M.L.Wigley, 2005)
2℃安定化のために必要な濃度安定化レベル
次 に 産 業 革 命 以 前 比 で 2 ℃ に 安 定 化 す る た め に は 、 具 体 的 に ど の 程 度 の CO 2 濃 度 レ
ベ ル が 必 要 に な る か を 分 析 し た 事 例 を 示 す 。 図 5.2.1-2 は 、 等 価 CO 2 濃 度 レ ベ ル 別 の
2℃を超えない確率を、さまざまな気候感度の確率密度分布評価の事例を用いて評価
を 行 っ た も の で あ る 。 こ の 分 析 結 果 に よ る と 、 仮 に 4 50 p p mv -CO 2 eq.に 濃 度 安 定 化 し た
と し て も 平 均 5 4%の 確 率 で 2 ℃ を 超 え て し ま う 、 ”likely”( 6 6– 9 0%) に 2 ℃ を 超 え な い
よ う に す る た め に は 、 400 ppmv-CO 2 eq.( 平 均 で 72 %の 確 率 で 2 ℃ を 超 え な い ) が 必 要
で あ る と す る 結 果 を 示 し て い る 。 現 在 の CO 2 濃 度 は 約 3 8 0 pp mv で あ り ( 現 時 点 で は
Non-CO 2 GHG と SOx の 冷 却 効 果 と が ほ ぼ 相 殺 し て い る た め 、等 価 CO 2 濃 度 も ほ ぼ 等 し
い 380 ppmv 程 度 )、 SOx の 排 出 が 今 後 減 少 傾 向 に あ る こ と を 考 え る と 、 Non-CO 2 G H G
を 含 め て CO 2 濃 度 を 現 時 点 で 即 座 に 安 定 化 す る こ と が 必 要 と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 仮
に こ の 濃 度 レ ベ ル を 目 標 と す る の で あ れ ば 、濃 度 に つ い て は 一 旦 400 ppmv-CO 2 eq .を 超
え て 、そ の 後 、400 ppmv-CO 2 e q .に 戻 す と い う シ ナ リ オ で し か 実 現 性 は な い 。な お 、400
ppmv-CO 2 e q .は CO 2 単 独 の 濃 度 で は 3 50 p p mv 相 当 に な る が 、 IPCC WG1 の S350 濃 度 安
定 化 シ ナ リ オ で も 一 旦 は 400 ppmv-CO 2 only 程 度 に 上 昇 を 認 め た 後 に 安 定 化 さ せ る シ ナ
リ オ を 描 い て い る ( 図 5.2.1-3 )。 し か し 、 い ず れ に し て も 、 現 実 的 に 、 こ の シ ナ リ オ
は 不 可 能 に 近 く 、 ”likely”( 6 6 -9 0 %) に 2 ℃ を 超 え な い よ う に す る こ と は で き な い と 言
える。
1
AR4 で は 、気 候 感 度 が 2.0~ 4.5℃ と 修 正 さ れ た た め 、最 新 の 知 見 に 基 づ く と こ の 研 究 報 告 に お け
る 下 限 値 の 0.2℃ の ケ ー ス の 可 能 性 は 低 い と 考 え ら れ 、 残 さ れ た 余 地 は 更 に 狭 い 範 囲 と 推 定 さ れ
る。
- 249 -
等 価 CO 2 濃 度 レ ベ ル 別 の 2 ℃ を 超 え な い 確 率( 出 典:M . Mei n sh au se n, 2 006)
a) CO2 排 出 量 推 移
CO2 emissions (including deforestation and cement)
(GtC/yr)
16
IS92a
14
S750
S650
12
S550
S450
S350
10
8
6
4
2
0
-2
1990 2010 2030 2050 2070 2090 2110 2130 2150 2170 2190 2210 2230 2250 2270 2290
b) CO2 濃 度 推 移
800
Atmospheric CO2 concentration (ppmv)
図 5.2.1-2
750
700
650
S750
S650
S550
S450
S350
600
550
500
450
400
350
300
1990 2010 2030 2050 2070 2090 2110 2130 2150 2170 2190 2210 2230 2250 2270 2290
図 5 .2 .1 -3
I PC C WG I に よ る C O 2 濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ
- 250 -
③
2℃安定化のために必要な排出削減量
次 に 2 ℃ 安 定 化 の た め に は 、 ど の 程 度 CO 2 排 出 量 を 削 減 し な け れ ば な ら な い か を 整
理 す る 。 図 5.2.1-4 は 、 Stern Review に 記 載 の あ る 等 価 CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル ( た だ し
6 ガ ス の み に よ る 等 価 CO 2 濃 度 )、 先 進 国 の 削 減 率 に よ る 途 上 国 ( 非 附 属 書 I 国 ) の 排
出 許 容 量 を 示 し た 一 例 で あ る 。Stern Review で は「 450 ppmvCO 2 eq.に 抑 え る の は 非 常 に
困難で費用もかかりすぎる」としているが、この図からも明らかに不可能な目標と考
え ら れ る 。気 候 感 度 が 3 .0℃ 程 度 で あ れ ば 、500 ppmv-CO 2 eq.( SOx 冷 却 効 果 を 含 ま な い
6 ガ ス の み に よ る 等 価 CO 2 濃 度 で 、 SOx を 含 む と 450 ppmv-CO 2 eq.程 度 ) が 2 ℃ 安 定 化
目 標 と 整 合 的 で あ る が 、 こ れ で あ っ て も 、 先 進 国 が 2 050 年 ま で に 仮 に 6 0%削 減 し た と
し て も ( 米 国 を 含 め て )、 途 上 国 も 9 0 年 比 で 3 5%削 減 が 必 要 で あ る 。 途 上 国 は 2 005 年
ま で に 90 年 比 で 既 に 8 0%近 く 排 出 が 増 大 し て い る 。 今 後 の 更 な る 成 長 を 考 え 、 ま た 、
BAU か ら の 排 出 削 減 量 と し て み た と き の 先 進 国 と 途 上 国 と の 負 担 の 差 異 を 考 え る と 、
と て も 途 上 国 が 合 意 で き る よ う な 目 標 値 と は 言 え な い 。 そ れ で は 、 55 0 pp mv -CO 2 eq .
( SOx 冷 却 効 果 を 含 ま な い 6 ガ ス の み に よ る 等 価 CO 2 濃 度 で 、 SOx を 含 む と 500
ppmv-CO 2 e q .程 度 ) で は ど う だ ろ う か 1 。 こ れ で も 、 途 上 国 は 90 年 比 で 20 50 年 に 25 %
増 ま で に 抑 制 す る 必 要 が あ る 。 繰 り 返 す が 、 途 上 国 は 既 に 80 %近 く 増 加 し て お り 、 現
状からは排出削減が必要である。
a) 先 進 国 205 0 年 60 %削 減
図 5.2.1-4
b) 先 進 国 205 0 年 90 %削 減
等 価 CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル ( た だ し 6 ガ ス の み に よ る 等 価 CO 2 濃 度 )、
先進国の削減率による途上国(非附属書I国)の排出許容量シナリオ
( 出 典 、 N. Stern, 2006)
以上見てきたように、2℃安定化目標は、極めて厳しい排出削減が必要であり、と
ても世界で合意が図れるような目標ではないと考えられる。
(2) Stern Re vi e w と PH OE N IX― 方 法 論
次 に 、 450~ 500 ppmvCO 2 eq.前 後 相 当 の 安 定 化 レ ベ ル を 推 奨 す る に 至 っ た 方 法 論 に つ
い て 、PHOENIX と 比 較 し つ つ 見 る こ と と す る 。ま ず 、温 暖 化 影 響 の 評 価 で あ る が 、Ste r n
1
こ の 濃 度 レ ベ ル で は 気 候 感 度 が 低 く な け れ ば ( 2.5℃ 程 度 ) 2 ℃ 安 定 化 は 達 成 で き な い 。
- 251 -
Review で は 、 基 本 的 に IPCC SRES A2 ベ ー ス ( 人 口 高 位 、 一 人 当 た り 経 済 成 長 低 位 )
の BaU シ ナ リ オ ( 温 暖 化 緩 和 策 を と ら な い 場 合 ) で 行 っ て い る 。 そ の 結 果 、 2 1 00 年 の
一 人 当 た り GDP ロ ス は 0 .9 %、 22 00 年 で は 5 .3 %と し て い る ( 時 間 選 好 効 用 割 引 率 は
0.1%/yr を 想 定 )。 し か し 、 非 市 場 の 温 暖 化 影 響 を 考 慮 す る と 2 20 0 年 に 11 %に 、 ま た 、
最 近 注 目 さ れ つ つ あ る 気 候 シ ス テ ム の フ ィ ー ド バ ッ ク を 更 に 考 慮 す る と 1 3 .8 %の G D P
ロ ス に な る と し て い る 。そ し て 地 域 的 な 貧 富 の 差 に 関 す る 重 み 付 け を 行 う と 2 20 0 年 の
GD P ロ ス は 2 0%に な る と し て い る ( 表 5.2.1-1)。
表 5.2.1-1
S te rn R e vi e w に お け る 温 暖 化 影 響 の 推 定 ( 一 人 当 た り GDP ロ ス )
市場影響
2100 年
0.9%
2200 年
5.3%
+非市場影響
+ ポ ジ ティ ブ FB
+南北格差
11%
13.8%
20%
一 方 、 PHOENI X で は 、 ベ ー ス シ ナ リ オ は IPCC SRES B2( 人 口 中 位 、 一 人 当 た り 経
済 成 長 中 位 ) で 実 施 し 、 BaU シ ナ リ オ の み な ら ず 、 65 0、 55 0、 450 ppmv(CO 2 only)濃 度
安 定 化 シ ナ リ オ で 評 価 を 実 施 し た 。Stern Review で は 濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ に 対 応 し た シ
ステム的な評価を実施していないため、濃度安定化による温暖化影響低減の便益は算
出されていない。費用便益を考える場合、温暖化影響の大きさそのものではなく、無
対策時と比べて対策によって影響を低減できる便益と、対策にかかる費用とを比較し
な け れ ば な ら な い が 、 Stern Review で は そ れ を 実 施 し て い る わ け で は な い ( 先 述 の To l
の 批 判 に も あ っ た 指 摘 )。 対 策 に よ っ て 温 暖 化 影 響 を 低 減 で き る も の の 、 PHOEN I X の
分析においても、その温暖化影響の低減分は、緩和策をとらない場合の影響の大きさ
よりもずっと小さいことが示唆されており、緩和策をとらない場合の影響が緩和コス
ト を 上 回 る か ら と 言 っ て 、 影 響 低 減 の 便 益 が 緩 和 コ ス ト を 上 回 る と は 限 ら な い 。( 図
5.2.1-5)
温暖化影響費用
(Stern Review)
BaU
温暖化影響低減の便益
650ppm
550ppm
450ppm
温暖化影響低減の便益
(PHOENIX)
(PHOENIX)
450ppm
550ppm
650ppm
年
図 5 .2 .1 -5
年
温暖化影響費用と影響低減による便益の関係
- 252 -
そ し て 、 Stern Review で は 、 ベ ー ス シ ナ リ オ と し て SRES A2 ベ ー ス を 利 用 し て い る
が 、 PHOENIX で の 検 討 に お い て も 、 温 暖 化 影 響 の 大 き さ は 人 口 や 経 済 成 長 の 度 合 い に
よ っ て 大 き く 影 響 さ れ ( A2 の 場 合 、 温 暖 化 影 響 が 大 き く 出 や す い )、 ベ ー ス シ ナ リ オ
の違いは濃度安定化レベル以上に支配的な要因となり得ることが示唆されている。ま
た 、Stern Review で は 非 市 場 的 な 温 暖 化 影 響 や 地 域 的 な 貧 富 の 差 に 関 す る 重 み 付 け の 根
拠 は 必 ず し も 明 確 で は な い が 、 PHOENIX で は 割 引 率 も 含 め 、 こ れ ら は 価 値 判 断 の 問 題
であることを明確にした上で、手続きを明確にした専門家によるアンケート調査を介
し て 望 ま し い 濃 度 安 定 化 レ ベ ル の 導 出 を 行 っ た 。 PHOENIX で は 科 学 的 な 分 析 ・ 評 価 と
価 値 判 断 を 区 分 す る こ と に よ り 、 政 策 的 な 論 点 を 明 確 に す る こ と を 試 み て お り 、 Ster n
Review の 方 法 論 と 決 定 的 に 異 な っ て い る 。
次 に 緩 和 コ ス ト 面 に つ い て だ が 、 Stern Review で は 温 暖 化 影 響 評 価 は SRES A2 ベ ー
ス で 実 施 し て い る に も 関 わ ら ず 緩 和 コ ス ト の 評 価 に お い て は A2 シ ナ リ オ を ベ ー ス に
し て お ら ず 、む し ろ B2 ベ ー ス に 近 い 条 件 で の モ デ ル 計 算 結 果 が 中 心 と な っ て お り 整 合
し て い な い 。 一 方 、 PHOENI X で は 温 暖 化 影 響 ・ 緩 和 策 評 価 を 通 じ て 同 一 の ベ ー ス シ ナ
リ オ ( B2 : 人 口 中 位 、 一 人 当 た り 経 済 成 長 中 位 ) で 統 一 し た 評 価 を 実 施 し て お り 、 整
合的な評価となっている。
(3) Stern Revi e w と PH OE N IX― 政 策 的 含 意
以上、方法論の差異を中心に見てきたが、それでは、それを踏まえて政策的な含意
を 考 え る 。 基 本 的 に は 費 用 便 益 的 に 考 え よ う と す る ア プ ロ ー チ は Ste r n R e v ie w も
PHEO NI X も 両 者 共 通 し て お り 、限 り あ る 資 源 を 有 効 に 使 い 全 体 的 な 最 適 性 を 追 求 す る
た め に は 基 本 的 に こ れ し か 評 価 の 方 法 論 は あ り 得 な い 。し か し 、費 用 便 益 と い っ て も 、
非市場的な影響もあれば、世代間や地域間の衡平性の問題もあり、また、不確実性が
未 だ に 大 き い 問 題 で も あ る た め 、 必 然 的 に 価 値 判 断 が 入 り 込 む 問 題 で あ る 。 PHO E N I X
で は ベ ー ス ラ イ ン の シ ナ リ オ ( 人 口 や GDP) を 揃 え 、 そ の 上 で 、 各 濃 度 安 定 化 レ ベ ル
について各種温暖化影響・緩和策を可能な限り定量的かつ整合的に分析・評価し、そ
の結果を専門家に提示した上で、専門家の価値判断を調査した。その結果は、平均と
し て は 、 第 1 ス テ ー ジ で の 調 査 で は 650 ppmv (CO 2 on ly)程 度 ( 800 ppmvCO 2 eq.程 度 に
相 当 )、非 市 場 的 な 温 暖 化 影 響 や 世 代 間 や 地 域 間 の 衡 平 性 等 が 考 慮 さ れ た と 考 え ら れ る
第 2 ス テ ー ジ の 調 査 結 果 で は 550 ppmv (CO 2 o nly)程 度 ( 650 pp mv CO 2 eq.程 度 ) が 望 ま
し い と 考 え る レ ベ ル で あ っ た 。Stern Review が 暗 に 推 奨 し て い る と 考 え ら れ る レ ベ ル の
450~ 500 pp mvCO 2 eq.は 、 少 な く と も 日 本 の 専 門 家 は 低 過 ぎ る レ ベ ル と 考 え て い る と 示
唆される。しかしながら、調査は気候予測、温暖化影響、緩和策等の分野に跨りつつ、
それぞれ日本を代表する気候問題の専門家に対して実施したものの、人数が限られる
こともあり、この平均化された望ましいと考えた濃度安定化レベル自体が大きな意味
を有しているとまでは言えない。むしろ、整合的に評価された同じ科学的情報の下で
あっても、望ましいと考えるレベル、また、重視する影響要因に大きな開きがあるこ
とに注目すべきだと思われる。そのため、望ましいと考える濃度安定化レベルが主に
何に起因しているかを特定することの方が、今後更に究極目標を具体化していく議論
の上で、より重要なポイントであるとも考えられる。その一例は、生態系影響を重要
と考えた専門家ほど、望ましいと考える濃度安定化レベルが低い傾向が見られ、これ
- 253 -
は 統 計 的 に も 有 意 で あ っ た こ と が 挙 げ ら れ る 。こ の よ う な 示 唆 は 、Stern Review や IP C C
の 評 価 報 告 書 か ら は 見 出 せ ず 、 PHOENIX に お け る 専 門 家 の 価 値 判 断 に 関 す る 調 査 ・ 分
析およびその根本となった温暖化問題全体の整合的な分析・評価によって実現できた
点である。今後、より信頼性を持ってそういった点を明確にしていくことによって、
究極目標をめぐる科学的認識や価値判断の差異の収斂にもつながる可能性があり、政
策の合意にとっても極めて重要であると考えられる。
最 後 に 、緩 和 策 の 評 価 の 面 か ら 政 策 的 な 含 意 を 考 え た い 。先 述 の よ う に 、Stern Rev i e w
で は 500~ 550 pp mvCO 2 eq.( 42 0~ 45 5 pp mv (CO 2 o nly)相 当 ) に 抑 え る た め の 費 用 は 世
界 の 年 間 GDP の 1 %程 度 と 推 定 さ れ る と し て い る 一 方 、 PHOEN IX で 開 発 し た DEAR S
モ デ ル に よ る 分 析 で は 450 pp mv(CO 2 on ly)に 安 定 化 す る に は 2 05 0 年 頃 に は 1 0%を 超 え
る GDP 損 失 が 推 定 さ れ 大 き く 結 果 は 異 な っ て い る 。 550 ppmv(CO 2 only)程 度 ま で の 安
定 化 で は 、 Stern Review の 報 告 と 大 き な 差 異 は 見 ら れ な い も の の 、 45 0 pp mv (CO 2 onl y)
になると大きな差異が見られた。第3章で詳細に議論されているように、特に長期的
な緩和策モデルは、産業構造とエネルギーの関係が簡略化されるため、ややもすると
楽観にすぎる結果を提示する危険性があることが示唆された。これまでも、一般均衡
モ デ ル ( CGE) は 過 去 の 産 業 構 造 の 影 響 を 強 く 受 け る た め 、 GDP ロ ス が 比 較 的 大 き く
算 出 さ れ る 傾 向 に あ る こ と は 指 摘 さ れ て い た 。 し か し 、 DEARS モ デ ル は 産 業 構 造 を 詳
細 に 表 現 す る と 同 時 に 、CO 2 回 収 貯 留( CCS)も 含 め て エ ネ ル ギ ー 技 術 を 比 較 的 詳 細 に
モデル化し、また、エネルギー需要部門も含めた技術進歩も考慮した先進的なモデル
である。そのモデルが示した結果は、緩和策から究極目標を考えるときの一つの材料
と し て の 意 義 は 小 さ く な い 。 し か し 、 そ の 示 さ れ た 結 果 を 悲 観 的 に 見 て 、 Stern Rev i e w
と は 異 な り 450 pp mv(CO 2 only)は 無 理 と 考 え 諦 め る べ き な の か と 言 え ば 、そ れ も 否 で あ
る 。 モ デ ル 結 果 は 、 運 輸 部 門 に お け る 革 新 的 な CO 2 排 出 削 減 を 安 価 に 実 現 で き れ ば 可
能性はあることを示唆している。しかし同時に、技術開発とその普及のために残され
た時間はわずかだということも事実である。いずれにしても、技術の見通しは究極目
標を考える上で、切っても切れない関係であり、技術開発・普及戦略と切り離して究
極目標レベルを論じることはあまり意味をなさないと言える。
以 上 の Stern Review と PHOENI X の 比 較 の 概 要 を 表 5.2.2-1 に ま と め た 。
5.2.2 政 策 的 含 意 の ま と め
本 PHOENI X は 、温 暖 化 影 響 ・ 適 応 策 、緩 和 策 全 体 を 整 合 的 に 分 析 ・ 評 価 し た と い う
点 で 、 世 界 的 に 見 て も 稀 有 の 研 究 と 言 え る 。 も ち ろ ん 、 IPCC の 評 価 報 告 書 で は 温 暖 化
問 題 全 体 の 研 究 を レ ビ ュ ー し て い る 。 し か し 、 IPCC の 評 価 報 告 書 は 最 新 の 既 往 研 究 を
サーベイすることが目的であり、温暖化問題全体について独自に整合的な分析・評価
を し て い る わ け で は な い 。ま た 、Stern Review も 温 暖 化 問 題 全 体 を カ バ ー し た 報 告 書 で
はあるものの、ここまでに見てきたように、温暖化影響・適応策、緩和策全体を整合
的 に 分 析 ・ 評 価 し た と は 言 え な い 。 こ の 面 か ら 、 PHOENIX は 非 常 に 有 効 な 知 見 を 提 供
で き た と 言 え る 。そ し て 更 に PHOEN IX で は 、究 極 目 標 を 議 論 し 政 策 決 定 に つ な げ て い
く場合には、それに関連する価値判断を避けて通れないことを明らかにした上で、専
- 254 -
門 家 の 価 値 判 断 に つ い て も 調 査 を 実 施 し た 。こ う い っ た 取 り 組 み も ま た 、IPCC や Ste rn
Review で は ほ と ん ど 見 ら れ な い も の で あ る 。
温 暖 化 問 題 は 極 め て 広 範 か つ 学 際 的 な 問 題 で あ り 、5 年 間 の 取 り 組 み で も 不 十 分 で は
あ る 。し か し な が ら 、本 PHOENI X は 、独 自 の シ ス テ ム 的 な ア プ ロ ー チ を 通 し て 、温 暖
化 問 題 の 本 質 に 迫 り 、 ま た 、 UNFCCC 第 2 条 の 究 極 目 標 を ど の よ う に 考 え 、 今 後 、 ど
のように政策として結び付けていくべきかの新たな示唆を与えたと考えられる。
最後に主要な政策的含意として次のようにまとめておく。
• 現 時 点 の 温 暖 化 影 響 に 関 す る 科 学 的 知 見 の 集 積 か ら は 、 産 業 革 命 以 前 比 2℃ 上 昇
安 定 化 ( CO 2 単 独 の 濃 度 で は 450 ppmv を 下 回 る レ ベ ル に 安 定 化 ) が 必 須 で あ る よ
うな結果は得られなかった。
• ま た 、 産 業 革 命 以 前 比 2℃ 上 昇 安 定 化 の た め に は 、 仮 に 先 進 国 が 90 年 比 で 20 5 0
年 に 60%削 減 の よ う な 大 幅 な 削 減 を 実 施 し た と し て も 、 途 上 国 も 大 幅 な る 排 出 削
減が必要であり、先進国と途上国との排出削減分担の差異化を図ることはほとん
どできない。
• 温 暖 化 影 響 は 、適 応 の 余 地 も 大 き く 、経 済 状 況 な ど の 社 会 環 境 に 大 き く 依 存 す る 。
これらは濃度安定化レベル以上に、温暖化影響に大きな差異をもたらし得る。
• 仮 に 今 す ぐ に C O 2 濃 度 を 安 定 化 し て も 、現 在 か ら 更 に 1℃ 前 後 の 気 温 上 昇 は 不 可 避
であり、また、海面は更に時間遅れをもって上昇すると見込まれる。緩和策と共
に、適応策およびそれを実施するための枠組みの検討をより充実させていくこと
が必要。
• 緩 和 コ ス ト の 面 か ら は 、 GDP の 大 幅 な 低 減 を 避 け る に は 、 技 術 が キ ー を 握 っ て い
ることは間違いない。技術の開発、普及戦略と切り離して、望ましい濃度安定化
レベルを論じることはあまり意味をなさない。
• 望ましい濃度安定化目標は、緩和コストや適応機会に大きな影響を及ぼす技術進
展や社会進展と不可分であり、それら全体像の中で議論しなければならない。
• 日本における気候問題の専門家においても、望ましい濃度安定化目標への見方は
未だ大きな差異を有している。例えば、生態系影響への見方の差異は、望ましい
と考える濃度安定化レベルと比較的相関が強いと見られたが、どのような事象に
対して価値判断に差異が生じているのかを今後更に明確にした上で、知見の共有
化、そして必要があれば、より集中的に更なる知見の集積を図っていくことも重
要。また、世界的にも専門家の判断の集積を図ることも重要と考えられる。
• それぞれの国が様々な価値観を有しており、また、適応策も重要であることも明
らかであるため、持続可能な発展の文脈における様々な政策が、気候変動問題と
調和し、温暖化緩和を促進するような枠組みとするにはどうすべきかを模索・検
討することも重要と考えられる。
- 255 -
表 5 .2 .2 -1
望ましい濃度安定
化レベルを言及す
るためのアプロー
チ
PH OE NI X と S te rn Re vi e w の 比 較
Stern Review
PHOENIX
温暖化緩和費用(GDP 損失)と、緩和策を取ら
ない場合の温暖化影響の被害額をそれぞれ算
出。両者を比較し、望ましい濃度安定化レベ
ルを言及。一見すると、費用とそれによりも
たらされる便益を考えているようではあるが、
温暖化の緩和がもたらす温暖化影響低減の便
益を算出しているわけではなく、緩和策を取ら
ない場合の温暖化影響の被害額と緩和費用と
を比較しているので、実は費用便益分析とはな
っていない。
費用便益的アプローチ。緩和策を取らない場
評価において用い ~2100 年まで:IPCC SRES A2 シナリオ(人
られたベースシナ 口高位、一人当たり経済成長低位)
2100-2200 年:世界人口 0.6% p.a.で増大す
リオ
ると仮定(2100 年:150 億人、2200 年:270
億人相当)
《ただし、A2 シナリオが用いら
れているのは温暖化影響の評価のみであ
り、緩和コストの算出のベースは B2 シナ
リオに近いものがほとんど》
全球平均気温上昇 SRES A2 リファレンスパス
推定
ベースライン:2100 年 2.4~5.8℃(4.1℃)
高シナリオ:2100 年 2.6~6.5℃
評価において用い 温暖化影響評価において 0.1%/yr を利用
られた時間選好割
引率
温暖化影響の金銭 不透明さを有する
換算
(市場的影響としては 2200 年には GDP 比 5%と
合、および、各種レベルに濃度安定化する場合、
それぞれの排出パスに沿って、各種温暖化影響
の大きさを算出。これから温暖化緩和策を講じ
たときの温暖化影響の低減効果(便益)を算出。
一方、各種レベルに濃度安定化するための緩和
費用を算出。これらを専門家に提示した上で、
温暖化影響低減のための支払い意思額を調査。
費用便益分析によって望ましい濃度安定化レ
ベルを推定。その推定結果を参考にしつつ、現
時点では定量化できない温暖化影響や世代
間・地域間の衡平性なども考慮してもらい、最
終的に望ましいと考える濃度安定化レベルを
表明してもらった。
~2100 年まで:IPCC SRES B2 シナリオ(人
口中位、一人当たり経済成長中位)
2100-2200 年:世界人口 0.06% p.a.で増大す
ると仮定(2100 年:100 億人、2200 年:110
億人)
SRES B2 リファレンスパス
気候感度 3.0℃:2100 年 3.3℃
気候感度 4.5℃:2100 年 4.3℃
緩和策評価においては 5%/yr を利用
温暖化影響評価においては明示的に用い
ず、専門家の判断に包含される。
温暖化影響は項目毎にそれぞれの指標で
算出。その上で、その情報を基に専門家が
しているものの、非市場影響など様々な面を考 判断。その導出プロセスは明瞭。
慮すると 20%に及ぶとしている。ただし、その
数値的根拠は必ずしも明瞭ではない。)
適応策
適応策の重要性には言及があるものの、温 不十分ではあるが、適応策についても考慮
暖化影響のコスト算出にあたって適応策
の考慮はほとんど行われていない(緩和策
には技術の進展を考慮している一方で、適
応の進展は見込まれていない)
温暖化影響の閾値 450-550 ppmv-CO2eq.に安定化すれば、主要 既往文献からは、THC 崩壊の閾値は気候感
な温暖化影響は回避可能
度を予防的に考えた場合、 550-650 ppmv
(CO2 only)に存在する可能性がある。1℃の
上昇により、サンゴが白化すると見込まれ
る。ただし過去の排出により既に 1℃程度
の上昇は不可避。他の温暖化影響事象に特
段の閾値的な存在は見出されなかった。
温暖化緩和費用の 500-550 ppmv-CO2eq.安定化は 2050 年まで 550 ppmv(CO2only)安定化は GDP 比 1%未
見積もり
は GDP 比 1% 未 満 。 た だ し 、 450 満。ただし、450 ppmv (CO2 only)は GDP 比
ppmv-CO2eq.安定化は費用がかかりすぎ、 10%以上となる可能性有り。それを回避す
非現実的
るためには、2030 年頃までに運輸部門にお
ける革新的な CO2 排出削減技術の導入が
不可欠
注)PHOENIX では CO2 大気中濃度をベースに分析したため”ppmv(CO2 only)”と記している。一方、Stern Review では Non-CO2 GHG の温
室効果を含めた等価 CO2 濃度(”ppmv-CO2eq.”)で検討されている(ただし SOx の冷却効果は考慮されていない)。大雑把に、SOx の
冷却効果を含まない等価 CO2 濃度(Stern Review の場合)の 550 ppmv-CO2eq. は、冷却効果を含めると 500 ppmv-CO2eq.程度、CO2 のみ
の濃度に換算すると 455 ppmv(CO2 only)程度に相当する。
- 256 -
参考文献(第 5 章に関するもの)
1) IPCC, 2000. Special Report on Emissions Scenarios, Cambridge, Cambridge University Press.
2) IPCC, 2001. Climate Change 2001, Cambridge, Cambridge University Press.
3) IPCC, 2007. Climate Change 2007, Cambridge, Cambridge University Press.
4) N. Stern, 2007. The Economics of Climate Change – The Stern Review, Cambridge, Cambridge University
Press.
5) R.S.J. Tol, The Stern Review of the Economics of Climate Change: A Comment. The Center for Science
and Technology Policy Research (2006).
http://www.fnu.zmaw.de/fileadmin/fnu-files/reports/sternreview. pdf
6) S. Cox, R. Vadon, Running the rule over Stern’s numbers, BBC NEWS (2007).
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/6295021.stm
7) W.D. Nordhaus, The Stern Review of the Economics of Climate Change, (2006).
http://www.econ.yale.edu/~nordhaus/homepage/recent_stuff.html
8) B. Lomborg, 2006. Stern Review, Opinion Journal, (2006).
http://www.opinionjournal.com/extra/?id=110009182
- 257 -
第 6章
国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 (IIASA)と の 連 携
本研究プロジェクトでは、国際共同研究の相手方として、地球温暖化、エネルギー
システム等の分野において優れた研究蓄積を有し、また、世界をリードする研究を行
っ て い る 国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 ( IIASA ) を 選 定 し た 。 本 プ ロ ジ ェ ク ト を 通 し て
の 研 究 交 流 と 情 報 交 換 、お よ び 関 連 す る 学 会 等 で の 活 動 を 通 じ 、IIAS A を は じ め 内 外 の
研究機関から、本事業の新規性と地球温暖化問題への貢献が認められつつある。本プ
ロ ジ ェ ク ト で は 、 最 終 年 度 に あ た り 平 成 17 年 度 ま で の 訪 問 調 査 、 研 究 者 招 聘 を さ ら に
継続・拡大し、人口推定、温暖化対策評価、技術変化のモデル評価、土地利用変化、
温暖化の農作物への影響評価、温暖化総合対策研究等の分野で引き続き研究交流を行
っ た 。 ま た 、 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム を 開 催 し て 、 RITE お よ び IIAS A の 本 事 業 関 連 の 研 究 活
動・研究成果を広く関連機関、関連専門家に紹介した。これらは、本事業の進展に寄
与するものであったが、同時に、本事業の成果を内外にアピールする機会となった。
IIAS A の 研 究 活 動 の 現 状 と PHOENI X プ ロ ジ ェ ク ト と の 関 連 に つ い て は 、昨 年 度 ま で
の 報 告 書 で 詳 細 に 記 し た の で 、こ こ で は 要 点 の み 記 す こ と と す る 。IIAS A は 、本 プ ロ ジ
ェ ク ト と 関 連 の 深 い 気 候 と 農 業 影 響 を 詳 細 に 分 析 ・評 価 し た 土 地 利 用 プ ロ ジ ェ ク ト
LUC、 地 域 環 境 汚 染 と 自 然 生 態 系 へ の 影 響 評 価 を 行 っ た RAINS プ ロ ジ ェ ク ト 、 人 口 予
測 の 世 界 的 な 拠 点 で あ る POP プ ロ ジ ェ ク ト な ど 、 こ れ ま で に 長 期 的 な 世 界 的 な 社 会 経
済活動と環境影響の評価研究に経験と実績を持つ。
地 球 温 暖 化 問 題 で は 、1997-2000 年 に 策 定 作 業 が 行 わ れ 温 暖 化 シ ナ リ オ の ベ ン チ マ ー
ク と な っ た IPCC-SRES、 世 界 エ ネ ル ギ ー 会 議 で の エ ネ ル ギ ー 資 源 ・ 技 術 評 価 な ど 、 本
プロジェクトと関連が深いだけでなく、この分野での先駆的役割を果たしてきた。特
に、ヨーロッパ、ロシアの研究においては世界トップレベルの水準にある。また、中
国との交流も盛んであり、特に農業と環境の影響評価では実績を上げつつある。この
よ う に 、IIAS A と の 連 携 は 地 球 温 暖 化 政 策 提 言 を 目 標 と す る PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト に
資するところは大きい。
平 成 18 年 度 に お け る 連 携 の 成 果 と 意 義 を 、 以 下 に ま と め る 。
(1) 平 成 17 年 度 に 引 き 続 き 、 AEZ モ デ ル を は じ め と す る 温 暖 化 と 食 糧 生 産 に 関 し 、 デ
ータ、モデルフレーム、文献等の提供を受け、情報交換を行った。
(2) 食 糧 需 給 と 適 応 に 関 し て 、 AEZ の フ レ ー ム と デ ー タ ベ ー ス を 踏 襲 し つ つ 、 新 た な
適応モデルを構築した。モデルのシミュレーション結果について情報交換を行う
こ と が で き た 。平 成 1 8 年 度 は 、IIASA か ら の 研 究 者 の 招 聘 だ け で な く 、RITE か ら
約 2 カ月間研究者を派遣し、詳細な意見交換を行った。
(3) 本 プ ロ ジ ェ ク ト 最 終 年 度 に あ た っ て 、 こ れ ま で に 構 築 し た 多 部 門 ・ 動 学 的 エ ネ ル
ギ ー 経 済 モ デ ル 、 影 響 ・ 緩 和 策 評 価 の 取 り ま と め 結 果 ( ス コ ア ボ ー ド )、 実 施 し た
エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト の 手 順 と 結 果 等 を 英 訳 し て IIAS A を 訪 問 し 、 関 連 す
- 258 -
る IIAS A の 研 究 者 に 対 し て 報 告 を 行 い 、 詳 細 な 意 見 交 換 を 行 っ た 。 こ れ ら は 今 後
の展開において極めて有益な示唆を提供した。
(4) IIAS A-RIT E シ ン ポ ジ ウ ム に お い て 地 球 環 境 問 題 に 関 す る 、 IIAS A お よ び 米 国 か ら
の研究者を招き意見交換することで、国内外の学際的なネットワークの構築を続
け 得 た 。 IIASA で は 、 RAINS を は じ め 本 プ ロ ジ ェ ク ト の よ う な 環 境 政 策 に 資 す る
モデル開発の経験が長く、モデル開発の方法論だけでなく、開発したモデルをど
のような手続きで政策決定者に提示するか、また研究の信頼度を得るためにどの
ような成果報告をすべきかに関して有益な示唆を得た。シンポジウムの概要につ
いては、付録4に記載した。
- 259 -
第 7章
まとめと今後の課題
本 章 で は 、第 7.1 節 で 本 研 究 を ま と め 、第 7.2 節 に お い て 今 後 の 課 題 に つ い て 述 べ る 。
7.1
本研究のまとめ
7.1.1 周 辺 状 況
本 研 究 は 、平 成 1 4 年( 20 0 2 年 )に ス タ ー ト し 、本 年 度 で 当 初 計 画 の 5 年 間 の 研 究 を
終了した。この間、地球温暖化をめぐる研究は進展し、国際的にも地球温暖化問題は
一層注目されるようになった。
IPCC の 第 4 次 評 価 報 告 書 は 2 0 07 年 出 版 予 定 で あ り 、 本 研 究 期 間 と 機 を 同 じ く す る
よ う に 執 筆 作 業 が 進 め ら れ た 。 ま た 、 20 05 年 2 月 に は 、 英 国 グ レ ン イ ー グ ル ス G 8 サ
ミットに向け、最新の科学的知見を議論するため、英国エクセターにおいて世界的に
注 目 さ れ た 会 合 も 開 催 さ れ た 。更 に は 、20 0 6 年 10 月 に は 、英 国 財 務 省 の 委 託 に よ っ て
N.Stern 卿 ら が ま と め た Stern Review も 公 表 さ れ 、 こ れ ら は マ ス コ ミ に も 大 き く 取 り 上
げられた。
一方、地球温暖化に関する国際的な枠組みも進展を見た。何と言っても、発効が危
ぶ ま れ て い た 京 都 議 定 書 が 、 こ の 間 の 2 00 5 年 2 月 1 6 日 に 発 効 し た こ と は 、 温 暖 化 対
策 に 重 要 な 一 歩 を 刻 ん だ と い う 意 味 で 意 義 の 大 き い こ と で あ っ た 。ま た 、UNFCC C 、京
都 議 定 書 と い う 国 連 の 枠 組 み だ け で は な く 、グ レ ン イ ー グ ル ス G8 サ ミ ッ ト で 合 意 さ れ
た行動計画、また、日本、米国、豪州、韓国、中国、インドの6カ国によるクリーン
開 発 に 関 す る ア ジ ア 太 平 洋 パ ー ト ナ ー シ ッ プ( APP)の 発 足 な ど 、今 後 の 温 暖 化 抑 制 に
大きな期待ができる新たな枠組みも出来たことも重要な動きであった。
そ し て 、 ポ ス ト 京 都 を め ぐ る 公 式 な 国 際 的 議 論 も 20 0 5 年 に 開 始 さ れ た 。 20 0 6 年 11
月 に 開 催 さ れ た COP12 、COP/MOP2 で は 、① 京 都 議 定 書 第 3 条 9 項 に 基 づ く 先 進 国( 附
属書Ⅰ国)の更なる約束に関する議論(第二回アドホック・ワーキング・グループ
( AWG2 ))、 ② 京 都 議 定 書 第 9 条 に 基 づ く 議 定 書 の 見 直 し の 議 論 、 ③ UNFCCC の 下 で の
「 気 候 変 動 に 対 応 す る た め の 長 期 的 協 力 に 関 す る 対 話 」第 2 回 会 合 が 行 わ れ た こ と は 意
義深いことであった。しかし、先進国と途上国の意見の相違はもちろんのこと、先進
国間においても多くの意見の相違が見られ、これまでと変わらず今後の見通しは明る
くないことにかわりはない。
ポスト京都をめぐる議論で、現在までのところ、主導的な役割を果たしてきている
の は 、EU で あ る こ と は 間 違 い な い 。2 00 5 年 3 月 に は 欧 州 理 事 会 に お い て 、産 業 革 命 以
前 比 で 2 ℃ を 越 え る べ き で は な い と 改 め て 宣 言 し た 。 そ し て 、 20 0 7 年 3 月 に は 、 そ の
た め に 先 進 国 全 体 で 2 02 0 年 ま で に 1 9 90 年 比 で 30 % 削 減 す べ き で 、 2 05 0 年 ま で に
1990 年 比 で 6 0~ 8 0% 削 減 す べ き と し た 。 そ の 上 で 、 EU は 、 他 の 先 進 国 が 相 応 の 削 減
を行い、経済的に発展している途上国がその責任及び能力に応じて十分な貢献を行う
場 合 は 、 2013 年 以 降 の 包 括 的 合 意 の 一 部 と し て 、 20 20 年 ま で に 1 9 90 年 比 で 3 0 % 削
減 す る 。 2013 年 以 降 の 包 括 的 合 意 が な さ れ る ま で は 、 国 際 交 渉 に お け る 主 張 に か か わ
- 260 -
ら ず 、 独 自 の コ ミ ッ ト メ ン ト と し て 、 20 2 0 年 ま で に 1 990 年 比 で 少 な く と も 2 0% 削 減
するとした。
こ の よ う な 外 部 環 境 の 下 、本 PHOENI X プ ロ ジ ェ ク ト が 取 り 組 ん で き た 課 題 は 、正 に
時 機 を 得 た も の で あ っ た 。 EU は 長 期 安 定 化 目 標 ( 2 ℃ 目 標 ) を 規 定 し た 上 で 、 そ れ と
整 合 す る 排 出 削 減 目 標 と し て 2 050 年 や 2 020 年 の 目 標 を 提 案 し て き て い る 。 し か し な
がら、科学的にも政治的にも大きく進展を見た5年間であったものの、真に温暖化の
全 体 像 を 捉 え 、合 理 的 な 方 策 を 示 し た 科 学 的 知 見 が 意 外 と 少 な く 、特 に EU の 方 針 に お
いても、科学的な知見からはその政策合理性の根拠にいささか疑問を投げかけざるを
得 な い こ と が 、 こ の PHOEN IX プ ロ ジ ェ ク ト の 研 究 を 通 し て 明 ら か に な っ て き た 。
PHOE NI X で 得 ら れ た 成 果 は 、今 後 更 に 本 格 化 す る で あ ろ う 京 都 議 定 書 第 1 約 束 期 間 以
降 の 枠 組 み の 議 論 を 、よ り 実 り あ る 議 論 と す る も の と な っ た と 確 信 で き る も の で あ る 。
7.1.2 研 究 総 括
以 下 に は 改 め て 、 PHOEN IX か ら の 重 要 な 知 見 を 整 理 し て お く 。
(1) 分 析 ・ 評 価 の 方 法 論
本研究は、科学的な知見に基づいて、政策的な含意を導き出した。そこでまず、導
き出した政策的含意を構成する上での科学的な分析・評価の方法論の注目すべき点を
下記にまとめておく。
• PHOE NI X に お い て は 、高 度 に 洗 練 化 し た シ ス テ ム 的 な ア プ ロ ー チ に よ っ て 、各 種
排出パスに沿って整合的に各種の温暖化影響と緩和費用・緩和方策を導出した。
そこではいくつかの温暖化影響評価、緩和策評価のためのモデルを新たに構築、
もしくは既存のモデルの改造・改良を実施した。
• なお、その分析・評価においては、温暖化問題の特徴である温暖化影響に地域差
が大きいことを踏まえて、比較的詳細な地域的な影響までを評価した。
• PHOE NI X で は 、費 用 便 益 的 に 望 ま し い 長 期 安 定 化 レ ベ ル を 導 出 し た が 、こ れ を 導
くに際し、温暖化問題の特徴(各種温暖化影響事象の相対化、地域的な差異の考
慮、世代間の衡平性の考慮など)を反映した評価手法を新たに採った。本方法で
は、それらの特徴は自然科学的な評価では決定できない事柄であることを明確に
した上で、各種温暖化影響事象や緩和費用等の定量的な評価結果を専門家に提示
し、望ましい緩和策についての判断を求めた。これによって、科学的な評価と価
値判断のステージを明確に区別することができた。
• 温暖化緩和策の評価においては、中長期にわたる動的な評価を可能としつつ、部
門間の産業構造連関、各種部門とエネルギー種との連関をも考慮した新たなモデ
ルを構築した。これは、従来の短期の評価モデルの長所を、長期モデルに統合し
た形式であり、世界的にも類を見ないモデルであり、新たな示唆を与え得るモデ
ルとなった。
- 261 -
(2) 主 要 な 政 策 的 含 意
地球温暖化への対応は、全世界の将来にわたる社会のあり方、幸福感などを大きく
左右することになる。そのため、人類の英知を結集してこれに当たらなければならな
い 。 PHOENIX で は 世 界 の 最 新 の 知 見 を 、 シ ス テ ム 的 な 視 点 か ら 出 来 る 限 り 収 集 ・ 整 理
しつつ、足りない部分について、独自の手法を開発し、分析・評価を行った。そこか
ら得られた主要な政策的含意を以下のようにまとめる。
• 現 時 点 の 温 暖 化 影 響 に 関 す る 科 学 的 知 見 の 集 積 か ら は 、 産 業 革 命 以 前 比 2℃ 上 昇
安 定 化( CO 2 単 独 の 濃 度 で は 45 0 p p mv を 下 回 る レ ベ ル に 安 定 化 )が 必 須 で あ る よ
う な 結 果 は 得 ら れ ず 、む し ろ 合 理 的 な 濃 度 安 定 化 レ ベ ル と し て は 55 0 p p mv 程 度 の
方が正当化されやすい結果が得られた。
• 温 暖 化 影 響 は 、適 応 の 余 地 も 大 き く 、経 済 状 況 な ど の 社 会 環 境 に 大 き く 依 存 す る 。
これらは濃度安定化レベル以上に、温暖化影響に大きな差異をもたらし得る。
• 仮 に 今 す ぐ に CO 2 濃 度 を 安 定 化 し て も 、 現 在 か ら 更 に 1℃ 前 後 の 気 温 上 昇 は 不 可
避であり、また、海面は更に時間遅れをもって上昇すると見込まれる。緩和策と
共に、適応策およびそれを実施するための枠組みの検討をより充実させていくこ
とが必要。
• 緩 和 コ ス ト の 面 か ら は 、 GDP の 大 幅 な 低 減 を 避 け る に は 、 技 術 が キ ー を 握 っ て い
ることは間違いない。技術の開発、普及戦略と切り離して、望ましい濃度安定化
レベルを論じることはあまり意味をなさない。
• 望ましい濃度安定化目標は、緩和コストや適応機会に大きな影響を及ぼす技術進
展や社会進展と不可分であり、それら全体像の中で議論しなければならない。
• 日本における気候問題の専門家においても、望ましい濃度安定化目標への見方は
未だ大きな差異を有している。例えば、生態系影響への見方の差異は、望ましい
と考える濃度安定化レベルと比較的相関が強いと見られたが、どのような事象に
対して価値判断に差異が生じているのかを今後更に明確にした上で、知見の共有
化、そして必要があれば、より集中的に更なる知見の集積を図っていくことも重
要。また、世界的にも専門家の判断の集積を図ることも重要と考えられる。
7.2
今後の課題
以 上 の よ う に 、本 PHOEN IX プ ロ ジ ェ ク ト は 重 要 な 成 果 を 挙 げ る こ と が で き た 。し か
し、地球温暖化問題は極めて幅の広い問題であり、多くの課題も残っている。以下に
主要な課題をまとめる。
• 本研究でも適応策による温暖化影響低減効果を一部考慮した評価を実施したが、
その評価の困難さゆえに必ずしも十分とは言えなかった。排出削減の温暖化緩和
策を実施するとしても、ある程度の温暖化は不可避であり、また、適応の効果は
大きいと見られることから、今後更に温暖化適応策の評価が重要である。
• 各種の持続可能な発展に関係する政策が存在する。それらは、温暖化適応策、緩
和策との関係が深いものも多い。世界は多様性に富んでおり、それぞれが重要視
する政策には差異がある。各種の持続可能な発展に関係する政策が、温暖化適応
- 262 -
策、緩和策としてどの程度の効果があるのか、それを更に強化することで更にど
の程度効果を有するのかを評価することは、実効ある温暖化対応を明確化するた
めに重要な研究課題と考えられる。
• 例 え ば 水 資 源 影 響 と 農 作 物 影 響 は 大 き な 相 互 依 存 性 を 有 す る 。PHOENI X で は 同 じ
シナリオ・気候変動推定量に基づき、両者の影響を推定したが、より正確な評価
のためには、両者の影響の相互関係が整合するようモデルを改造することも課題
である。
• 中 長 期 の 緩 和 策 影 響 評 価 モ デ ル DEARS は 先 進 的 な モ デ ル で あ る 。 し か し 、 そ の
モデルの複雑な構造のため、革新的な技術について、更にモデルで考慮すべきと
考えられるものもあり、今後のモデル改良も引き続き課題として挙げられる。
- 263 -
付
録
付録 1
料
エキスパートジャッジメント第1ステップのための提供資
エキスパートジャッジメント(EJ)第1ステップにおける提示資料及び質問票は次の
通りである(次ページ以降)。
- 267 -
EJ-STEP1 資料
平成 18 年 11 月 15 日
(財)地球環境産業技術研究機構
システム研究グループ
濃度安定化レベルに関するエキスパートジャッジメント
- 調査の概要と流れ 本調査は、経済産業省の補助事業「地球環境国際研究推進事業<国際産業経済の方向を
含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価>」の一環で実施するものであり、11 月 13 日
に開催した「温暖化影響・総合評価WG委員会」での議論結果に基づき、委員の方々にも
回答をお願いするものです。
本調査では、温暖化をあるレベルに緩和するためのコストと、そのレベルに温暖化を緩
和した時に生じる温暖化影響低減の便益の大きさとを総合的に考慮して頂いた上で、最も
望ましい濃度安定化レベルを委員の方々にご判断頂くことを目的としております。
本調査の流れは、下記の様になっております。第一ステップと第二ステップの二段階で
実施することとしており、今回はそのうち第一ステップのみについてお答えいただきます。
第一ステップ
資料1に二酸化炭素濃度をあるレベルに安定化することによる
主要な温暖化影響事象の影響低減度合いの評価結果を示しております。
資料2の回答用紙を用いて、
(1) 5つの温暖化影響事象について、影響低減の便益の大きさの
相対比較(2~11ページ)と、
(2) 健康影響低減の金銭評価(14ページ)を、
行っていただきます。
第二ステップ
より詳しい温暖化の影響と緩和の評価結果を示しますので、第一ステップでの
調査結果 * も参考にして温暖化抑制の長期目標として最も適切と思われる
濃度安定化レベルをお答えいただきます。
(次回の「温暖化影響・総合評価WG委員会」にて実施の予定です。
当該資料は同封しておりません。)
*濃度を各種レベルに安定化するのに必要なコストを算出すること、および、影響事象毎に影響低減の
便益の相対的な大きさを安定化レベル間で値付けることを事務局で行っています。この結果と、
第一ステップで回答いただいた影響低減の便益に関する影響事象間の相対的重み付け結果に基づいて、
第一ステップではどの濃度安定化レベルが望ましいとあなたが示唆されているかを事務局より示します。
ご回答を記入して頂いた資料 2 を、お手数ですが、11 月末日までに事務局宛返信願いま
す。電子メール添付にて下記宛返信いただいても結構です。
ご不明な点やご質問等がございましたら、下記までご連絡願います。
〒619-0292 京都府相楽郡木津町木津川台 9 丁目 2 番地
(財) 地球環境産業技術研究機構 システム研究グループ
担当: 秋元 圭吾、平澤 栄一
TEL:0774-75-2304
E-mail:[email protected][email protected]
FAX:0774-75-2317
- 268 -
EJ-STEP1 資料
資料 1
平成 18 年 11 月 15 日
(財)地球環境産業技術研究機構
システム研究グループ
温暖化影響低減に対する支払意志額に関する調査
(濃度安定化レベルに関するエキスパートジャッジメント第一ステップ)
1. 本調査について
本調査では、まず、二酸化炭素濃度をあるレベルに安定化することによって、主要な温
暖化影響事象毎に温暖化影響をどの程度低減できるかの推定結果をお示しします。それを
読んだ後、温暖化の緩和によってこれらの事象において生じる温暖化影響の低減がどの程
度の価値を持つかを事象間の相対比較でご回答願います。そして最後の質問として、温暖
化影響のうち、健康影響の低減が、どの程度の金銭価値を有すると考えるかをお尋ね致し
ます。
なお、次ページに本調査での計算に用いた主な前提条件を記しています。
調査結果は公表する可能性がありますが、そのときでも、個人名が特定できない形と致し
ます。
- 269 -
EJ-STEP1 資料
<本調査での計算に用いた主な前提条件>
世界人口、GDPシナリオ(IPCC
世界平均一人当たり GDP
(US$/年/人)
付属書 I 国平均一人当たり
GDP(US$/年/人)
非付属書 I 国平均一人当た
り GDP(US$/年/人)
B2ベース)
1990年
2050年
2100年
2150年
52
94
104
108
人口(億人)
GDP (billion US$/年)
SRES
23,100
106,700
222,400
296,600
4,400
11,400
21,400
27,500
16,200
36,300
58,400
73,200
1,000
7,400
16,400
21,400
二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化するための
各時点における二酸化炭素排出削減コスト
2050年
2100年
2150年
世界全体の排出削減コスト
200
1240
4120
(1990年 billion US$/年)
(5)
(13)
(32)
注1) この値は、各時点におけるエネルギーシステムコストの無対策ケースからの増分で
ある。
注2) 括弧内の数値は、この増分の無対策ケースにおけるその時点のエネルギーシステム
コストに対する比(%)である。
注3) このコストは二酸化炭素のみで排出削減すると想定して算出した値である。
一人当たりで見た排出削減コスト(US$/年/人)
世界平均
附属書I国のみですべて負担
するとした場合の附属書I国
平均
2050年
2100年
2150年
20
120
390
160
1000
3240
- 270 -
EJ-STEP1 資料
2. 温暖化の影響について
以下では、主要な温暖化影響事象毎の温暖化影響低減の相対的な価値をお尋ねしますが、
ここでお尋ねする温暖化影響事象は、以下の5つの影響に限定しています。なお、これら
5つの影響事象の評価においては、事象間における影響の相互作用(例えば、海面上昇に
伴って、農業用地が減少したり塩害が発生したりすることによって農作物生産が減少する
効果や、農作物生産が減少することによって食糧供給が悪化し、健康に影響を及ぼすなど
の影響)は極力排除し、5つの事象間の独立性を持った評価としています。
1)海面上昇・沿岸影響
2)農作物影響
3)健康影響
4)陸上生態系影響
5)熱塩循環(THC)の崩壊
これ以外については、現時点では定量的な評価が難しいもの(異常気象の影響、漁業影
響)や、地域によって正負混在し、世界全体としてみるとどちらかというとプラスの影響
が出るもの(水資源への影響)、影響が小さいと見込まれるもの(畜産影響)、温暖化影響
の重複が大きいもの(水資源は農作物に大きく影響)などであり、それらは、これらの理
由により、ここでの評価からは除外しています。
- 271 -
EJ-STEP1 資料
2.1
海面上昇・沿岸影響
以下は、ある二酸化炭素濃度に安定化(1.で示した排出削減コストで実現可能)する
ことによる温暖化による海面上昇・沿岸影響の低減度合いを試算したものです。
全球平均海面上昇
2050年
2100年
2150年
24
50
80
23
43
59
温暖化無対策ケース
(単位:1990年比cm)
本想定ケース(濃度安定化)
(単位:1990年比cm)
注)これらの数値には、熱膨張の他に、グリーンランドや南極の氷床の融解による効果も
含まれるが、南極西部氷床(WAIS)崩壊については不確実性が大きく、この推定には含ま
れていない。
本想定ケース(濃度安定化)における無対策ケースからの全球平均海面上昇の低減
本想定ケース(濃度安定化)における無対
策ケースからの低減分
(単位:無対策ケース比cm)
2050年
2100年
2150年
1
7
21
海面上昇による影響として、低地の水没や湿地帯の変化、沿岸侵食、沿岸域の洪水の激
化、河口部の塩分濃度増大や淡水帯水層への塩水の進入、河川や湾内での潮汐の変化、堆
積物の堆積パターンの変化、深海生物への光量減少等が挙げられている。
定量的な評価として、例えば、嵐の高波によって浸水する年間人口は、1990年で1,
000万人程度であるのに対し、2080年頃の海面上昇が38cm とした場合、防護の充
実を考慮しても9,000万人程度になるとの推定がある。
- 272 -
EJ-STEP1 資料
2.2
農作物影響
以下は、ある二酸化炭素濃度に安定化(1.で示した排出削減コストで実現可能)する
ことによる小麦および米の生産ポテンシャルへの温暖化影響の低減度合いを試算したもの
です。
小麦と米の世界全体における生産ポテンシャルの変化
1990年
実績生産量
(Mton/年)
生産ポテンシャル変化(1990年比%)
2050年
2100年
2150年
温暖化無対策ケース
小麦
559
+26
+19
+2
米
518
+39
+48
+42
+29
+32
+31
本想定ケース(濃度安定化)
小麦
米
+39
+53
+56
注1) 海面上昇による農業用地の減少や塩害等による影響は含まれていません。それらの影響
については、前出の海面上昇の項目で、他の海面上昇による影響と合わせて、ご判断下
さい。
注2) 突発的な異常気象による影響は、定量的な評価が困難なため、本評価においては考慮さ
れていません。
注3) 作付け時期、作付け品種の変更による適応策を考慮している。
注4) 現状の米国市場での小麦価格:100 $/ton 前後、米価格:220 $/ton 前後
本想定ケース(濃度安定化)における無対策ケースからの
小麦と米の生産ポテンシャルの増分(単位:無対策ケース比%ポイント)
2050年
2100年
2150年
小麦
+3
+13
+29
米
+0
+5
+14
注1) 小麦は、特に、アフリカ、ラテンアメリカ地域、東南アジア地域で、温暖化抑制による
生産ポテンシャルの増大率は大きい。1990年比では、米国は無対策ケース、濃度安
定化ケース共に、生産ポテンシャルは減少。
注2) 米は、無対策ケースよりも濃度安定化ケースの方が、生産ポテンシャルの減少する地域
がかなり多く見られる。
注3) 小麦は、寒冷~温帯に向いている一方、米は、温帯~亜熱帯に向いているため、温暖化
の影響は、小麦には比較的大きく、米には比較的小さい傾向がある。
- 273 -
EJ-STEP1 資料
2.3
健康影響
以下は、ある二酸化炭素濃度に安定化(1.で示した排出削減コストで実現可能)する
ことによる人間健康への温暖化影響の低減度合いを試算したものです。
世界全体における温暖化に起因する死亡者数変化
(単位:1990年比
熱ストレス
(呼吸器疾患、循環器疾患)
1990 年
2050年
2100年
2150年
万人)
生物媒介性感染症
(マラリア、デング熱)
1990
2050年 2100年 2150年
年
159
490
846
10.2
0
0
(5844)
(8438)
(9514)
(88)
(103)
(0)
(0)
本想定ケース
148
382
513
9.6
0
0
(濃度安定化)
(5850)
(8481)
(9641)
(102)
(0)
(0)
注 1) 温暖化に起因する死亡者数変化には、寒さに起因する循環器疾患の死亡者数変化を含んで
いない。
注 2) 括弧内の数値は、温暖化以外の要因も含めた総死亡者数(単位:万人)。
無対策ケース
(1726)
本想定ケース(濃度安定化)における無対策ケースからの
温暖化に起因する死亡者数の低減分(単位:万人)
熱ストレス
生物媒介性感染症
(呼吸器疾患、循環器疾患(暑さ起因))
(マラリア、デング熱)
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
11
108
333
0.6
0
0
注1) 熱ストレスの死亡者数低減の多くは高齢者の死亡減少による(循環器疾患(暑さ起因)の
死亡者数低減の90%以上は65歳以上、呼吸器疾患死亡者数低減の80%以上は60歳
以上)
。
注2) 死亡者数低減が大きい地域:熱ストレス(呼吸器疾患、循環器疾患(暑さ起因))はイン
ド、サハラ以南アフリカ等、生物媒介性感染症はサハラ以南アフリカ。
注3) 適応策について、熱ストレスでは特に考慮していない。生物媒介性感染症では所得向上に
伴い住居や医療環境が改善される効果を考慮している。
注4) 循環器疾患で寒さに起因する死亡者数は、温暖化により逆に減少し、無対策ケースで、2
52万人(2050年)、687万人(2100年)、1170万人(2150年)の減少と推計
された。中国、先進資本主義圏等、現在温帯~寒冷な地域で減少が大きい。
注5) 生物媒介性感染症について、海面上昇によって媒介生物の生息域が変化する恐れもあるが、
ここでの評価では考慮していない。
注6) 温暖化による健康影響として、他に下痢、栄養失調も懸念されているが、これらは社会イ
ンフラ、食物供給システム等、温暖化以外の要因も複雑に絡み合っており、現時点で、温
暖化影響の定量的評価は困難である。ここでは、定量的評価が可能な熱ストレスと生物媒
介性感染症を取りあげている。
- 274 -
EJ-STEP1 資料
2.4
陸上生態系影響
以下は、ある二酸化炭素濃度に安定化(1.で示した排出削減コストで実現可能)する
ことによる陸上生態系への温暖化影響の低減度合いを試算したものです。
世界全体における温暖化に起因する陸上生態系の種の減少
温暖化無対策ケース
(単位:1970年比%)
本想定ケース(濃度安定化)
(単位:1970年比%)
2050年
2100年
2150年
4.0
7.9
12.0
3.8
6.1
7.2
本想定ケース(濃度安定化)における無対策ケースからの温暖化に起因する
陸上生態系の種の減少の低減
2050年
2100年
2150年
0.2
1.7
4.8
本想定ケース(濃度安定化)における
無対策ケースからの低減分
(単位:%ポイント)
注1) 地球上の生物種(海洋も含む)は、現在約150万種存在するとされている。
注2) 温暖化による影響が大きいのは、ツンドラ、亜寒帯針葉樹林やサバンナといった植生帯に
生存する種である。
注3) 種の減少は温暖化以外の要因(例:農業用地拡大)によっても生じる。下表に示すように、
温暖化以外の要因による種の減少も大きいとされる。
2050年における世界全体での陸上生態系の種の減少
無対策ケース
(単位:1970年比%)
本想定ケース(濃度安定化)
(単位:1970年比%)
温暖化以外の要因
温暖化起因
合計
12
4
16
12
3.8
15.8
- 275 -
EJ-STEP1 資料
2.5
熱塩循環(THC)の崩壊
温暖化によって熱塩循環が崩壊した場合の影響は不明確ですが、一般には、ヨーロッパ
は寒冷化が見込まれるものの、温暖化による平均気温上昇分を打ち消す程度と考えられて
います。しかしながら、海洋生態系などに重大な影響を及ぼす可能性が懸念されます。気
候モデル予測によると、2100年までに熱塩循環が崩壊すると予測した結果はありませ
んが、2150~2200年頃については崩壊の可能性を示唆する結果も報告されていま
す。
熱塩循環崩壊の可能性を示唆したモデル結果と、気候感度の不確実性を考慮して推計し
たところ、無対策ケースおよび本想定ケース(濃度安定化ケースであり、1.で示した排
出削減コストで実現可能)における熱塩循環が崩壊する確率は、下記の表のとおりです。
なお、そのときの熱塩循環崩壊の時期は、2150~2200年頃と見込まれます。
熱塩循環が崩壊する確率
無対策ケース
57~93%
本想定ケース(濃度安定化)
2~7%
- 276 -
EJ-STEP1 質問票
資料 2
回
答
用
紙
質問は、1~11までの11問あります。
11問すべてにご回答願います。
ご回答の理由もご記入頂ける場合は、各回答の下の記述欄にお願い致します。
調査結果は公表する可能性がありますが、そのときでも、個人名が特
定できない形と致します。
ご所属:
ご芳名:
- 277 -
EJ-STEP1 質問票
1.
海面上昇・沿岸影響と農作物影響の相対関係
先に示したように、2100年の海面上昇は、温暖化に関して無対策の場合1990年
比で50cmであるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合は43
cmである。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では7cm分の海面
上昇を食い止めることができる。
一方、2100年の小麦の生産ポテンシャルは、温暖化に関して無対策の場合1990
年比で+19%であるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には+
32%となる。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では13%ポイント
の生産ポテンシャルの増大を見込める。また、米についても2100年では5%ポイントの
増大を見込める。
それでは、あなたは、この農作物の生産ポテンシャルの増大による2100年の便益を
1とする時、海面上昇の抑制によって得られる2100年の便益は何倍もしくは何分の一
程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
農作物生産ポテンシャルの増大によって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
海 面 上 昇の抑 制 に よって
得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 278 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
2.
海面上昇・沿岸影響と健康影響の相対関係
先に示したように、2100年の海面上昇は、温暖化に関して無対策の場合1990年
比で50cmであるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合は43
cmである。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では7cm分の海面
上昇を食い止めることができる。
一方、温暖化に関して無対策の場合、温暖化によって、2100年の呼吸器疾患と循環
器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖化しない場合より世界全体で490万人増加する
が、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には382万人の増加に留
まる。すなわち、排出削減をはかることによって、死亡者数が108万人減少できる。
それでは、あなたは、健康への温暖化影響がこのように低減されることによって得られ
る2100年の便益を1とする時、海面上昇の抑制によって得られる2100年の便益は
何倍もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
健康への温暖化影響が低減されることによって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
海 面 上 昇の抑 制 に よって
得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 279 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
3.
海面上昇・沿岸影響と陸上生態系影響の相対関係
先に示したように、2100年の海面上昇は、温暖化に関して無対策の場合1990年
比で50cmであるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合は43
cmである。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では7cm分の海面
上昇を食い止めることができる。
一方、2100年における温暖化に起因する陸上生態系の種の多様性の減少は、温暖化
に関して無対策の場合、1970年比で7.9%と見込まれるが、二酸化炭素濃度をここで
想定したレベルに安定化した場合には6.1%と見込まれる。すなわち、排出削減をはかる
ことによって、2100年では1.7%ポイントの種の減少を防ぐことができる。
それでは、あなたは、この程度の陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる2
100年の便益を1とする時、海面上昇の抑制によって得られる2100年の便益は何倍
もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
海 面 上 昇の抑 制 に よって
得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 280 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
4.
海面上昇・沿岸影響と熱塩循環(THC)の崩壊の相対関係
先に示したように、2100年の海面上昇は、温暖化に関して無対策の場合1990年
比で50cmであるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合は43
cmである。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では7cm分の海面
上昇を食い止めることができる。
一方、熱塩循環が崩壊する確率は、無対策ケースの場合は57~93%であるが、二酸化
炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、その確率は2~7%となる。なお、
そのときの熱塩循環崩壊の時期は、2150~2200年頃と見込まれる。
それでは、あなたは、熱塩循環崩壊のリスクをこの程度低減し、将来(2150~220
0年以降)の便益を確保することによって得られる2100年の便益を1とする時、海面上
昇の抑制によって得られる2100年の便益は何倍もしくは何分の一程度だと考えます
か。数字に○をつけて下さい。
THC のリスクを低減し、将来の便益を確保する事によって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
海 面 上 昇の抑 制 に よって
得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 281 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
5.
農作物影響と健康影響の相対関係
先に示したように、2100年の小麦の生産ポテンシャルは、温暖化に関して無対策の
場合1990年比で+19%であるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化し
た場合には+32%となる。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では1
3%ポイントの生産ポテンシャルの増大を見込める。また、米についても2100年では
5%ポイントの増大を見込める。
一方、温暖化に関して無対策の場合、温暖化によって、2100年の呼吸器疾患と循環
器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖化しない場合より世界全体で490万人増加する
が、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、382万人の増加に
留まる。すなわち、排出削減をはかることによって、死亡者数が108万人減少できる。
それでは、あなたは、健康への温暖化影響がこのように低減されることによって得られ
る2100年の便益を1とする時、農作物の生産ポテンシャルの増大によって得られる2
100年の便益は何倍もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
健康への温暖化影響が低減されることによって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
農 作 物 の 生 産 ポ テ ン シャ ル の 増 大
によって得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 282 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
6.
農作物影響と陸上生態系影響の相対関係
先に示したように、2100年の小麦の生産ポテンシャルは、温暖化に関して無対策の
場合1990年比で+19%であるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化し
た場合には+32%となる。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では1
3%ポイントの生産ポテンシャルの増大を見込める。また、米についても2100年では
5%ポイントの増大を見込める。
一方、2100年における温暖化に起因する陸上生態系の種の多様性の減少は、温暖化
に関して無対策の場合、1970年比で7.9%と見込まれるが、二酸化炭素濃度をここで
想定したレベルに安定化した場合には6.1%と見込まれる。すなわち、排出削減をはかる
ことによって、2100年では1.7%ポイントの種の減少を防ぐことができる。
それでは、あなたは、この程度の陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる2
100年の便益を1とする時、農作物の生産ポテンシャルの増大によって得られる210
0年の便益は何倍もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
農 作 物 の 生 産 ポ テ ン シャ ル の 増 大
によって得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 283 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
7.
農作物影響と熱塩循環(THC)の崩壊の相対関係
先に示したように、2100年の小麦の生産ポテンシャルは、温暖化に関して無対策の
場合1990年比で+19%であるが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化し
た場合には+32%となる。すなわち、排出削減をはかることによって、2100年では1
3%ポイントの生産ポテンシャルの増大を見込める。また、米についても2100年では
5%ポイントの増大を見込める。
一方、熱塩循環が崩壊する確率は、無対策ケースの場合は57~93%であるが、二酸化
炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、その確率は2~7%となる。なお、
そのときの熱塩循環崩壊の時期は、2150~2200年頃と見込まれる。
それでは、あなたは、熱塩循環崩壊のリスクをこの程度低減し、将来(2150~220
0年以降)の便益を確保することによって得られる2100年の便益を1とする時、農作物
の生産ポテンシャル増大によって得られる2100年の便益は何倍もしくは何分の一程度
だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
THC のリスクを低減し、将来の便益を確保する事によって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
農 作 物 の 生 産 ポ テ ン シャ ル の 増 大
によって得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 284 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
8.
健康影響と陸上生態系影響の相対関係
先に示したように、温暖化に関して無対策の場合、温暖化によって、2100年の呼吸
器疾患と循環器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖化しない場合より世界全体で490
万人増加するが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、382
万人の増加に留まる。すなわち、排出削減をはかることによって、死亡者数が108万人
減少できる。
一方、2100年における温暖化に起因する陸上生態系の種の多様性の減少は、温暖化
に関して無対策の場合、1970年比で7.9%と見込まれるが、二酸化炭素濃度をここで
想定したレベルに安定化した場合には6.1%と見込まれる。すなわち、排出削減をはかる
ことによって、2100年では1.7%ポイントの種の減少を防ぐことができる。
それでは、あなたは、この程度の陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる2
100年の便益を1とする時、健康への温暖化影響が低減されることによって得られる2
100年の便益は何倍もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる便益に対して
1/100 1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
健 康 へ の 温暖 化 影 響 が 低 減 さ れ る
ことによって得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 285 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
EJ-STEP1 質問票
9.
健康影響と熱塩循環(THC)の崩壊の相対関係
先に示したように、温暖化に関して無対策の場合、温暖化によって、2100年の
呼吸器疾患と循環器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖化しない場合より世界全体
で490万人増加するが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合
には、382万人の増加に留まる。すなわち、排出削減をはかることによって、死亡
者数が108万人減少できる。
一 方 、熱 塩 循 環 が 崩 壊 す る 確 率 は 、無 対 策 ケ ー ス の 場 合 は 5 7 ~ 9 3 % で あ る が 、二
酸 化 炭 素 濃 度 を こ こ で 想 定 し た レ ベ ル に 安 定 化 し た 場 合 に は 、そ の 確 率 は 2 ~ 7 % と な
る。なお、そのときの熱塩循環崩壊の時期は、2150~2200年頃と見込まれる 。
そ れ で は 、 あ な た は 、 熱 塩 循 環 崩 壊 の リ ス ク を こ の 程 度 低 減 し 、 将 来 (2 1 5 0 ~ 2
2 0 0 年 以 降 )の 便 益 を 確 保 す る 事 に よ っ て 得 ら れ る 2 1 0 0 年 の 便 益 を 1 と す る 時 、
健康への温暖化影響が低減されることによって得られる2100年の便益は何倍もし
くは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
THC の リ ス ク を 低 減 し 、 将 来 の 便 益 を 確 保 す る 事 に よ っ て 得 ら れ る 便 益 に 対 し て
1/10 0
1/50
1 /2 0
1/1 0
1 /5
1/2
1 .0
2
5
10
20
50
1 00
健康への温暖化影響が
低減されることによっ
て得られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 286 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+
EJ-STEP1 質問票
10. 陸 上 生 態 系 影 響 と 熱 塩 循 環 ( T H C ) の 崩 壊 の 相 対 関 係
先に示したように、2100年における温暖化に起因する陸上生態系の種の多様性
の 減 少 は 、温 暖 化 に 関 し て 無 対 策 の 場 合 、1 9 7 0 年 比 で 7 .9 % と 見 込 ま れ る が 、二
酸 化 炭 素 濃 度 を こ こ で 想 定 し た レ ベ ル に 安 定 化 し た 場 合 に は 6 .1 % と 見 込 ま れ る 。す
な わ ち 、排 出 削 減 を は か る こ と に よ っ て 、2 1 0 0 年 で は 1 .7 % ポ イ ン ト の 種 の 減 少
を防ぐことができる。
一 方 、熱 塩 循 環 が 崩 壊 す る 確 率 は 、無 対 策 ケ ー ス の 場 合 は 5 7 ~ 9 3 % で あ る が 、二
酸 化 炭 素 濃 度 を こ こ で 想 定 し た レ ベ ル に 安 定 化 し た 場 合 に は 、そ の 確 率 は 2 ~ 7 % と な
る。なお、そのときの熱塩循環崩壊の時期は、2150~2200年頃と見込まれる 。
そ れ で は 、 あ な た は 、 熱 塩 循 環 崩 壊 の リ ス ク を こ の 程 度 低 減 し 、 将 来 (2 1 5 0 ~ 2
2 0 0 年 以 降 )の 便 益 を 確 保 す る こ と に よ っ て 得 ら れ る 2 1 0 0 年 の 便 益 を 1 と す る
時、陸上生態系の種の減少を防ぐことによって得られる2100年の便益は何倍もし
くは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて下さい。
THC の リ ス ク を 低 減 し 、 将 来 の 便 益 を 確 保 す る 事 に よ っ て 得 ら れ る 便 益 に 対 し て
1/10 0
1/50
1 /2 0
1/1 0
1 /5
1/2
1 .0
2
5
10
20
50
1 00
陸上生態系の種の減少
を防ぐことによって得
られる便益は
極めて大きい
非常に大きい
かなり大きい
- 287 -
大きい
【ご回答の理由】
やや大きい
同程度である
やや小さい
小さい
かなり小さい
非常に小さい
極めて小さい
+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+ ――+
EJ-STEP1 質問票
11. 健 康 影 響 低 減 の た め の 支 払 い 意 志 額
こ こ で は 、二 酸 化 炭 素 濃 度 を あ る レ ベ ル に 安 定 化 す る こ と に よ る 健 康 影 響 の 低 減( 温
暖化による死亡者数の低減。下表のとおり)を、どの程度の価値と考えるかをお尋ね
致します。
<再掲>
本想定ケース(濃度安定化)における無対策ケースからの死亡者数の低減分
(単位:万人)
熱ストレス
生物媒介性感染症
(呼吸器疾患、循環器疾患(暑さ起
(マラリア、デング熱)
因))
2050
2100
2150
2050
2100
2150
年
年
年
年
年
年
11
108
333
0.6
0
0
注 1) 熱 ス ト レ ス の 死 亡 者 数 低 減 の 多 く は 高 齢 者 の 死 亡 減 少 に よ る ( 循 環 器 疾 患 ( 暑 さ 起
因)の死亡者数低減の90%以上は65歳以上、呼吸器疾患死亡者数低減の80%
以 上 は 6 0 歳 以 上 )。
注 2) 死 亡 者 数 低 減 が 大 き い 地 域 : 熱 ス ト レ ス ( 呼 吸 器 疾 患 、 循 環 器 疾 患 ( 暑 さ 起 因 ))
はインド、サハラ以南アフリカ等、生物媒介性感染症はサハラ以南アフリカ。
なお、本計算の条件における一人当たりGDPは下表のとおりです。また、生命価
値に関する評価例および実際の安全・健康・環境政策の投資費用に関する調査例とし
て、下記のような研究例があります。必要がありましたら、ご判断のための参考情報
としてお使い下さい。
GDP (billi on US$/ 年 )
世界平均一人当たり
GDP (US$/ 年 / 人 )
付属書 I 国平均一人当
た り GDP(US$/ 年 / 人 )
非付属書 I 国平均一人
当 た り GDP
(US$/ 年 / 人 )
1990年
2050年
2100年
2150年
2 3 ,1 0 0
1 0 6 ,7 0 0
2 2 2 ,4 0 0
2 9 6 ,6 0 0
4 ,4 0 0
1 1 ,4 0 0
2 1 ,4 0 0
2 7 ,5 0 0
1 6 ,2 0 0
3 6 ,3 0 0
5 8 ,4 0 0
7 3 ,2 0 0
1 ,0 0 0
7 ,4 0 0
1 6 ,4 0 0
2 1 ,4 0 0
- 288 -
EJ-STEP1 質問票
海 外 の V S L ( 統 計 的 生 命 価 値:一 人 の 統 計 的 死 亡 を 回 避 す る た め の 支 払 い 意 志 額 ) の 事
例
対 象 国 (文 献 の 公 開 年 )
米国(2001年)
カ ナ ダ (2 0 0 2 年 )
内容
VSL
大気汚染に関する
6 . 1 2 million US$ ( 1 9 9 9 年 ) /
もの
人
リスク一般
9 6 ~ 3 . 0 4 million US$
( 1 9 9 9 年 PPP 換 算 ) / 人 ( 4 0 ~ 7
5 歳 ) 、 た だ し 7 0 歳 以 上 は VSL が 約
3 0 %減 少
英 国 、イ タ リ ア 、フ ラ ン
大気汚染に関する
0 . 8 million Euro / 人 ( 英 国 )
ス (2 0 0 4 年 )
もの
1 . 4 million Euro / 人 ( イ タ リ ア )
1 . 0 million Euro / 人 ( フ ラ ン ス )
チ リ (1 9 9 8 年 )
大気汚染に関する
5 2 ~ 0 . 6 8 million US$
もの
(1 9 9 2 年
PPP 換 算 ) / 人
日本の安全・健康・環境政策における平均寿命1年延長あたりの費用
事例数
平均値
中央値
(万円/年/人)
(万円/年/人)
安全規制
5
4,400
3,000
環境規制
16
110,000
32,000
健康(予防)
37
390
240
健康(治療)
27
270
76
85
20,000
330
全分野
出 典 ) A. Kishimoto, 1 9 9 9
注)表は、各種規制や予防、治療に対する政策費用の効果の推定結果が示されています。
このように、実績としては、環境規制に関して大きな費用を費やした規制が一般には行わ
れています。
- 289 -
EJ-STEP1 質問票
温暖化に関して無対策の場合、温暖化によって、2100年の呼吸器疾患と循環器
疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖化しない場合より世界全体で490万人増加す
るが、二酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、382万人の
増加に留まる。すなわち、ここで想定したレベルに濃度安定化することによって、無
対策よりも死亡者数が108万人減少できる。
それでは、この死亡者数を減少させる価値は、どの程度だと考えますか。2100
年 に お け る 死 亡 者 1 人 減 少 当 た り の 価 値 で お 答 え 下 さ い 。( 数 字 に ○ を つ け る か 、 も し
く は 適 当 な 数 字 を 記 入 し て 下 さ い 。)
単位:万円/人(死亡回避者)
10
50
10 0
50 0
1,0 00
5,000
10,000
5 0 ,00 0
10 0 ,0 00
―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――+ ―――
)
(
【ご回答の理由】
- 290 -
付録 2
料
エキスパートジャッジメント第2ステップのための提供資
エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ ン ト ( E J ) 第 2 ス テ ッ プ で は 、 RITE で 見 積 も り 評 価 を 行
っ た 網 羅 的 な 情 報 /デ ー タ を 提 示 し た( ス コ ア ボ ー ド )。具 体 的 に は 、2 0 50 年 、2 1 00 年 、
2150 年 に お け る 温 暖 化 影 響 事 象 の 定 量 的 /定 性 的 評 価 、及 び 緩 和 コ ス ト な ど が 地 域 別 に
記載されている。また、質問票の最初には、各回答者の一次最適安定化レベルを記載
した。
第 2 ス テ ッ プ に お け る 提 示 資 料 及 び 質 問 票 は 次 の 通 り で あ る ( 次 ペ ー ジ 以 降 )。
- 291 -
EJ-STEP2
平 成 18 年 12 月 15 日
(財)地球環境産業技術研究機構
システム研究グループ
濃度安定化レベルに関するエキスパートジャッジメント
- 調査の概要と流れ 本調査は、経済産業省の補助事業「地球環境国際研究推進事業<国際産業経済の方
向を含めた地球温暖化影響・対策技術の総合評価>」の一環で実施するものであり 、9
月 22 日 に 開 催 し た 「 温 暖 化 影 響 ・ 対 策 総 合 評 価 委 員 会 」 で の 議 論 結 果 に 基 づ き 、 委 員
の方々に回答をお願いするものです。
本調査では、温暖化をあるレベルに緩和するためのコストと、そのレベルに温暖化
を緩和した時に生じる温暖化影響低減の便益の大きさとを総合的に考慮して頂いた上
で、最も望ましい濃度安定化レベルを委員の方々にご判断頂くことを目的としており
ます。
本調査の流れは、下記の様になっております。第一ステップと第二ステップの二段
階で実施することとしており、第一ステップについては先日ご回答していただきまし
た。今回は第二ステップについてお答えいただきます。
第一ステップ
提示した二酸化炭素濃度をあるレベルに安定化することによる主要な温暖化影響事象の
影響低減度合いの評価結果に基づき、温暖化影響事象間の影響低減の便益の大きさの
相対比較と、健康影響低減の金銭評価を行っていただきました。
第二ステップ
第二ステップ質問票(資料1)に第一ステップで回答いただいた結果に
基づいて、第一ステップの段階でどの濃度安定化レベルが望ましいと
あなたが示唆されているかを示しております。
資料2、3、4は温暖化による影響とその緩和に関する評価結果をとりまとめ
たものです。
資料2:主な前提条件
資料3:排出パス間比較と地域分布(主要事象についてのみ)
資料4:排出パス別評価結果
資料2~4をご理解いただいたうえ、第二ステップ質問票(資料1)の回答欄
に、あなたが望ましいと考える濃度安定化レベル、および、ご判断の際に
重要視された項目をお答え願います。
- 292 -
EJ-STEP2 資料1
資料 1
濃度安定化レベルに関するエキスパートジャッジメント
第二ステップ質問票
調査結果は公表する可能性がありますが、そのときでも、個人名が特定で
きない形と致します。
ご所属:
ご芳名:
- 293 -
EJ-STEP2 資料1
1. 第 一 ス テ ッ プ の 結 果
先ほどは濃度安定化レベルに関する調査にご協力いただき有り難うございます。
ご回答いただいたのは、5つの事象(海面上昇・沿岸影響、農作物影響、健康影響、
陸 上 生 態 系 影 響 、 海 洋 の 熱 塩 循 環 崩 壊 ) に つ い て 、 一 定 の レ ベ ル ( 55 0 pp mv ) に 濃 度
安定化を図った場合の温暖化影響低減に伴う便益の相対的重み付けと、健康影響低減
の便益の金銭換算した価値でした。事務局では、これらを基に、5つの事象すべてに
ついて、この濃度レベルに安定化することによる金銭換算した便益を算出しました。
また一方、異なる濃度安定化レベルにおける温暖化影響低減に伴う便益の大きさを、
5つの事象それぞれについて、事務局で推定した定量的な数値を元に相対的に値付け
を行いました。更には、同様に、異なる濃度安定化レベル別に、レファレンスから排
出を抑制する際の緩和コストも推定しました。これら事務局での推計結果とご回答い
ただいた結果から、費用便益的な方法によって推定すると、あなたが望ましいとされ
る温暖化抑制目標の濃度安定化排出パスはおおよそ次の通りだと示唆されました。
X ppmv 濃 度 安 定 化 排 出 パ ス
2.質問
温暖化影響には、上記5事象以外にも異常気象など現時点では排出パスに対応した
定量評価が困難ではあるものの無視し得ないと思われる事象の存在も懸念されます。
資 料 3 は 上 記 5 事 象 以 外 も 含 め 温 暖 化 影 響 の 大 き さ の 評 価 結 果 と 温 暖 化 の 緩 和 策 (レ
フ ァ レ ン ス か ら 当 該 濃 度 安 定 化 パ ス へ )・ コ ス ト を 排 出 抑 制 レ ベ ル 間 で 比 較 し や す い 図
と影響の地域分布図等を示したものです。また、資料 4 は排出パス毎に温暖化影響の
大きさと温暖化の緩和策に関する評価結果を一覧表形式にまとめたものです。定量的
な評価が困難な事象については資料 4 にどのような影響が生じるかのみを記載してい
ます。なお、これら評価の主たる前提条件は資料 2 にまとめています。
これら資料をよくご理解の上、以下の質問にお答え下さい。
- 294 -
EJ-STEP2 資料1
質 問 1:温 暖 化 の 影 響 低 減 の 便 益 と 温 暖 化 緩 和 の コ ス ト を 総 合 的 に 考 慮 し た と き 、あ な
たは温暖化抑制目標としてどの濃度安定化パスが最も望ましいと考えますか。1項
の結果も参考にして望ましいと考える濃度安定化レベルに○を付けるか、数値
(ppmv) を 書 き 込 ん で く だ さ い 。
レ フ ァ レ ン ス( 特 段 の 排 出 抑 制 な し )~
650ppm v
~
550ppmv
~
450ppmv
~
+―――――――――+――――――+――――――+―――――
[
]ppmv 濃 度 安 定 化 パ ス が 望 ま し い 。
ご回答の理由
注)ご回答の理由欄には、先の調査を元に事務局で推定した暫定的な濃度安定化パス
と、今回ご回答頂いたパスが異なった場合、その違いの理由等をお書き下さい。例え
ば 、 先 の 調 査 に お い て は 、 5 つ の 影 響 事 象 の み に 限 定 し て い た こ と 、 基 本 的 に は 2 10 0
年 の 時 間 断 面 に 限 定 し た 評 価 で あ っ た こ と 、地 域 的 な 差 異 の 情 報 が 不 足 し て い た こ と 、
推定方法は事務局による費用便益的な方法であったことなどから、今回のご回答と差
異が生じるものと思われます。これらに限定しませんが、このような理由を含めてご
回答下さい。
- 295 -
EJ-STEP2 資料1
質 問 2:質 問 1 に お い て ど の 濃 度 安 定 化 パ ス が 望 ま し い か 判 断 す る 際 に 、各 項 目 を ど の
程 度 重 要 視 し ま し た か 。1 ~ 5 の 5 段 階 で 下 表 の 記 入 欄 の 数 字 に ○ を 付 け て 下 さ い 。
項目
Ty p e Ⅱ
温暖化影響
Ty p e Ⅰ
記入欄
THC
5
4
3
2
1
WA I S
5
4
3
2
1
海面上昇・沿岸影響
5
4
3
2
1
水資源
5
4
3
2
1
生態系
5
4
3
2
1
農作物
5
4
3
2
1
健康
5
4
3
2
1
海洋酸性化
5
4
3
2
1
林業
5
4
3
2
1
漁業
5
4
3
2
1
畜産業
5
4
3
2
1
その他産業
5
4
3
2
1
異常気象
5
4
3
2
1
グリーンランド氷床
5
4
3
2
1
北極の海氷
5
4
3
2
1
永久凍土
5
4
3
2
1
氷河・氷帽
5
4
3
2
1
5
4
3
2
1
5
4
3
2
1
温暖化緩和コスト・対策
その他
全く重要と思わない
あまり重要と思わない
- 296 -
重要と思う
ご回答の理由
かなり重要と思う
)
非常に重要と思う
(
EJ-STEP2 資料1
質 問 3:質 問 1 に お い て ど の 濃 度 安 定 化 パ ス が 望 ま し い か 判 断 す る 際 に 、地 域 間 の 差 異
と 時 点 間 の 差 異 を 、 そ れ ぞ れ ど の 程 度 考 慮 し ま し た か 。 質 問 2 と 同 様 に 、 1~ 5 の
5 段階で下表の記入欄の数字に○を付けて下さい。
1
時点間の差異*
5
4
3
2
1
ご回答の理由
*: 現 世 代 と 各 将 来 世 代 間 あ る い は 各 将 来 世 代 間 の 衡 平 性 を 意 味 す る 。
- 297 -
全く重要と思わない
2
あまり重要と思わない
3
重要と思う
4
かなり重要と思う
5
非常に重要と思う
地域間の差異
EJ-STEP2 資料2
資料 2
本調査での計算に用いた主な前提条件
1. 世 界 人 口 ・ GDP
本 調 査 で の 計 算 に 用 い た 世 界 人 口 及 び GDP の 想 定 を 表 1 に 示 す 。
表 1
世界人口、GDPシナリオ(IPCC
人口(億人)
GDP (billion US$/
年)
世界平均
一 人 当 た り GDP
(US$/年 /人 )
付属書 I 国平均
一 人 当 た り GDP
(US$/年 /人 )
非付属書 I 国平均
一 人 当 た り GDP
(US$/年 /人 )
SRES
B2ベース)
1990年
2050年
2100年
2150年
52
94
104
108
2 3 ,1 0 0
1 0 6 ,7 0 0
2 2 2 ,4 0 0
2 9 6 ,6 0 0
4 ,4 0 0
1 1 ,4 0 0
2 1 ,4 0 0
2 7 ,5 0 0
1 6 ,2 0 0
3 6 ,3 0 0
5 8 ,4 0 0
7 3 ,2 0 0
1 ,0 0 0
7 ,4 0 0
1 6 ,4 0 0
2 1 ,4 0 0
注 ) GDP は レ フ ァ レ ン ス 時 の 値
- 298 -
EJ-STEP2 資料2
2. 排 出 パ ス
表 1 の 想 定 に 基 づ き 、 以 下 の 4 つ の CO 2 排 出 パ ス に つ い て 評 価 を 行 っ た 。
・ Reference : 特 段 の 温 暖 化 抑 制 政 策 を 取 ら な い ケ ー ス で の 排 出 パ ス
・ S650 : 大 気 中 CO 2 濃 度 を 2200 年 以 降 650ppmv に 安 定 化 す る た め の 排 出 パ ス
・ S550 : 大 気 中 CO 2 濃 度 を 2150 年 以 降 550ppmv に 安 定 化 す る た め の 排 出 パ ス
・ S450 : 大 気 中 CO 2 濃 度 を 2100 年 以 降 450ppmv に 安 定 化 す る た め の 排 出 パ ス
こ れ ら の 各 排 出 パ ス に つ い て 、 CO 2 排 出 量 を 図 1 に 示 す 。 ま た 、 大 気 中 CO 2 濃 度 と
CO 2 以 外 の 温 室 効 果 ガ ス も 考 慮 し た 温 室 効 果 ガ ス 大 気 中 濃 度 (CO 2 等 価 換 算 ) を 図 2 に 示
す 。 な お 、 CO 2 以 外 の 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 パ ス は 、 CO 2 の 排 出 パ ス に よ ら ず 一 定 で あ
るとした。
30
CO2 emission [GtC/yr]
25
Reference
S650
S550
S450
20
15
10
5
0
1990
2040
図 1
2090
YEAR
1800
Reference
S650
S550
S450
1600
CO2eq concentration [ppmv]
CO2 concentration [ppmv]
2190
世 界 の CO 2 排 出 量
1200
1000
2140
800
600
400
200
1400
Reference
S650
S550
S450
1200
1000
800
600
400
200
0
1990
図 2
2040
2090
YEAR
2140
2190
0
1990
2040
2090
YEAR
2140
2190
大 気 中 CO 2 濃 度 ( 左 図 ) と CO 2 等 価 換 算 の 温 室 効 果 ガ ス 大 気 中 濃 度 ( 右 図 )
- 299 -
EJ-STEP2 資料3
資料 3
事象別評価結果の排出パス間比較及びその地域分布
1. 気 候 変 動 量
各排出パスの下での各時点の全球平均気温上昇及び降水量増加を図 1 及び図 2 にそ
れ ぞ れ 示 す 。 ま た 、 そ れ ら の 地 域 分 布 の 例 と し て 、 Reference 排 出 パ ス の 下 で の 210 0
年における変動量分布を図 3 に示す。
気温については北半球の高緯度地域での上昇が大きく、降水量については赤道付近
での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
この地域分布パターンは排出パスにより大きく影響を受けないと予測される。
Temperature rise relative to
Y1990 [℃]
6
Reference
S650
S550
S450
5
4
3
2
1
0
1990
図 1
Precipitation change relative to
Y1990 [mm/year]
90
80
70
2040
2090
YEAR
2140
2190
気 温 上 昇 ( 全 球 平 均 : 1990 年 比 )
Reference
S650
S550
S450
60
50
40
30
20
10
0
Y2050
図 2
Y2100
Year
Y2150
降 水 量 増 加 ( 全 球 平 均 : 1990 年 比 )
- 300 -
EJ-STEP2 資料3
図 3
2100 年 に お け る 気 温 上 昇 及 び 降 水 量 増 加 の 地 域 分 布
(Reference : 1990 年 比 、 上 : 気 温 上 昇 、 下 : 降 水 量 増 加 )
注)東京大学気候システム研究センター・国立環境研究所・地球環境フロンティア研
究 セ ン タ ー に よ る MIRO C モ デ ル 高 解 像 度 版 (1.125 ° × 1.125 ° ) の 計 算 結 果 と 簡 易 気 候
変 動 モ デ ル ( MAGICC ベ ー ス ) に よ る 統 合 モ デ ル に よ る 結 果 。 簡 易 気 候 変 動 モ デ ル の
気 候 感 度 は 3.0 ℃ と し た 。
- 301 -
EJ-STEP2 資料3
2. 熱 塩 循 環 (THC)
温 暖 化 に よ っ て THC が 崩 壊 し た 場 合 の 影 響 は 不 明 確 で あ る が 、一 般 に は 、ヨ ー ロ ッ
パでは寒冷化が見込まれるものの、温暖化による平均気温上昇分を打ち消す程度であ
ると考えられている。しかしながら、海洋生態系等に重大な影響を及ぼす可能性が懸
念される。
THC 崩 壊 の 可 能 性 を 示 唆 し た モ デ ル 結 果 ( Stocker et al., 1997 ) と 気 候 感 度 の 確 率
密 度 分 布 関 数 ( Murphy et al., 2004 、 Annan et al., 2006 、 Hegerl et al., 2006 ) を 考
慮 し て 推 計 し た 、 各 排 出 パ ス の 下 で の THC 崩 壊 確 率 の 分 布 を 図 4 に 示 す 。
な お 、 THC が 崩 壊 す る 場 合 、 そ の 時 期 は 、 モ デ ル 結 果 ( Stocker et al., 1997 ) か ら
概 算 す る る と 2150 ~ 2200 年 頃 と 見 込 ま れ る 。
100
90
Probability of THC collapse [%]
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Reference
S650
図 4
S550
THC 崩 壊 確 率
- 302 -
S450
EJ-STEP2 資料3
3. 海 面 上 昇 ・ 沿 岸 影 響
各 排 出 パ ス の 下 で の 全 球 平 均 海 面 上 昇 を 図 5 に 示 す 。た だ し 、図 5 は 2150 年 ま で を
排出パス間で比較したものを示しているが、図 6 で見られるように、仮に大気組成が
200 0 年 以 降 一 定 と し て も 海 面 は 長 期 に わ た っ て 上 昇 す る 可 能 性 が 高 い 。
海面上昇の地域分布については、北半球の高緯度地域では全球平均に比べて海面上
昇が大きいものの、沿岸影響が大きいと考えられる地域では全球平均との差異は大き
くないと予測されている。
また、海面上昇による影響としては、低地の水没や湿地帯の変化、沿岸侵食、沿岸
域の洪水の激化、河口部の塩分濃度増大や淡水帯水層への塩水の進入、河川や湾内で
の潮汐の変化、堆積物の堆積パターンの変化、深海生物への光量減少等が挙げられて
い る 。 定 量 的 な 評 価 と し て 、 例 え ば 、 嵐 の 高 波 に よ っ て 浸 水 す る 年 間 人 口 は 1 99 0 年 で
1,000 万 人 程 度 で あ る の に 対 し 、 2 0 80 年 頃 の 海 面 上 昇 が 38 c m と し た 場 合 、 防 護 の 充 実
を 考 慮 し て も 9 ,0 0 0 万 人 程 度 に な る と の 推 定 が あ る 。
Sea level rise relative to Y1990 [cm]
なお、特に海面上昇に対して脆弱な地域は、図 7 のような箇所とされている。
90
80
70
Reference
S650
S550
S450
60
50
40
30
20
10
0
Y2050
図 5
Y2100
Y2150
海 面 上 昇 ( 全 球 平 均 : 1990 年 比 )
- 303 -
EJ-STEP2 資料3
図 6
大 気 組 成 が 2000 年 以 降 一 定 と 仮 定 し た 場 合 の 海 面 上 昇 ( 出 典 : Wigley, 200 5 )
注 ) 図 中 、 海 面 上 昇 値 の 幅 は 、 気 候 感 度 の 不 確 実 性 ( 1.5 ℃ 、 2.6 ℃ 、 4.5 ℃ )、 エ ア ロ ゾ
ル 放 射 強 制 力 の 不 確 実 性 ( Q a e r =Low 、 Middle 、 High )、 氷 床 ・ 氷 帽 融 解 の 不 確 実 性
( Melt=Low 、 High ) に よ る 。
図 7
デ ル タ 地 帯 に お け る 海 面 上 昇 に よ る 脆 弱 性 の 度 合 い( 出 典:Ericson et al., 2006 )
- 304 -
EJ-STEP2 資料3
4. 水 資 源
4.1 人 口 変 化 の み に よ る 影 響
水 資 源 賦 存 量 は 1990 年 の ま ま で 人 口 の み 変 化 す る と 仮 定 し た 場 合 の 、世 界 の 水 ス ト
レ ス 流 域( 一 人 当 た り 年 水 資 源 賦 存 量 が 1000m 3 以 下 の 流 域 )を 図 8 に 、又 、世 界 の 水
ストレス人口と、その全人口に対する比率を表 1 に示す。
人口増加に伴い、例え温暖化により水資源賦存量が変化しなくても、世界の水スト
レス人口は増加する。
1 99 0 年
図 8
表 1
2 15 0 年
人口変化のみを考慮した場合の水ストレス流域(紫色領域)
人口変化のみを考慮した場合の世界の水ストレス人口と全人口に対する比率
199 0 年
205 0 年
210 0 年
215 0 年
水ストレス人口(百万人)
112 0
371 2
416 9
444 7
水 ス ト レ ス 人 口 比 率 ( %)
22
41
41
42
4.2 温 暖 化 に よ る 影 響
温暖化による水資源賦存量変化も考慮した場合について、水ストレス変化の地域分
布の例を図 9 に示す。なお、本評価で想定した温暖化による水ストレス変化のタイプ
(「 水 ス ト レ ス ・ 強 化 」、
「 水 ス ト レ ス ・ 新 規 」、
「 水 ス ト レ ス ・ 緩 和 」、
「 水 ス ト レ ス 解 消 」、
「 水 ス ト レ ス ・ 変 化 無 」、「 水 ス ト レ ス 無 」) の 定 義 は 下 図 の 通 り 。
注)本評価で想定した、温暖化による水ストレス変化のタイプ
一人当たり年水資源賦存量
水ストレス無
水ストレス・新規
水ストレス解消
1000
[m3/人/年]
水ストレス
人口変化のみを
考慮した場合
温暖化による
水資源賦存量
変化も考慮
した場合
水ストレス・変化無
水ストレス・緩和
水ストレス・強化
水ストレス増大
水ストレス減少
- 305 -
EJ-STEP2 資料3
R ef e re n ce
S450
水 ストレス 水 ストレス
・強化
・新規
水 ストレス 水 ストレス
・変化無 ・緩和
水ストレス増大
図 9
水 ストレス解 消
水ストレス減少
2150 年 に お け る 温 暖 化 に よ る 水 ス ト レ ス 変 化 の 地 域 分 布
注)図中、灰色は水ストレス無の流域を意味する。
図 10 に 各 排 出 パ ス の 温 暖 化 に よ る 世 界 の 水 ス ト レ ス 変 化 人 口 を 示 す 。
2150年
1,500
1,000
500
図 10
2050年
3,500
2100年
2150年
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
Reference
Reference
S450
0
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
0
4,000
S550
2100年
水ストレス・緩和
水ストレス解消
S650
2050年
水ストレス減少人口 [百万人]
2,000
Reference
水ストレス増大人口 [百万人]
水ストレス・強化
水ストレス・新規
温暖化による水ストレス変化人口(世界全体)
全ての排出パスに対し、世界全体では温暖化による水ストレス減少人口の方が水ス
トレス増大人口より多い。但し、図 9 に見られるように地域差は大きい。
排出抑制すると、排出抑制しない場合に比べ、
・南アメリカやヨーロッパ等の一部地域で「水ストレス・新規」人口が抑制される。
・一方、南アジアの一部地域等では「水ストレス・強化」人口が増え、東アジアの
一部地域等では「水ストレス解消」人口が抑制される。
- 306 -
EJ-STEP2 資料3
5. 陸 上 生 態 系
各 排 出 パ ス の 下 で の 温 暖 化 に よ る 陸 上 生 態 系 の 種 の 減 少 を 図 11 に 示 す 。
減少する種は具体的には特定できないが、温暖化による影響が大きいのはツンドラ
Bio-diversity loss relative to Y1970 [%]
や亜寒帯針葉樹林のような寒冷地やサバンナといった植生帯に生存する種である。
14
12
10
Reference
S650
S550
S450
8
6
4
2
0
Y2050
図 11
Y2100
Y2150
温 暖 化 に よ る 陸 上 生 態 系 の 種 の 減 少 ( 世 界 全 体 : 1970 年 比 )
注 1) 地 球 上 の 生 物 種 ( 海 洋 も 含 む ) は 、 現 在 約 150 万 種 存 在 す る と さ れ て い る 。
注 2) 種 の 減 少 は 温 暖 化 以 外 の 要 因 ( 例:農 業 用 地 拡 大 ) に よ っ て も 生 じ る 。2050 年 に お
け る 温 暖 化 に よ る 陸 上 生 態 系 の 種 の 減 少 は 4% 弱 で あ る が 、同 時 点 に お け る 温 暖 化 以 外
の 要 因 に よ る 種 の 減 少 は 12% 程 度 と さ れ る 。
- 307 -
EJ-STEP2 資料3
6. 農 産 物
各 排 出 パ ス の 下 で の 小 麦 及 び 米 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル の 増 加 を 図 12 に 示 す 。途 上 国 を
中 心 に 農 業 生 産 性 の 向 上 が 見 込 ま れ る た め 、 2150 年 ま で は す べ て の 排 出 パ ス で 生 産 ポ
テンシャルの増大が推定される。小麦は寒冷~温帯に適した作物である一方、米は温
帯~亜熱帯に適した作物であるため、温暖化による影響は、小麦には比較的大きく、
米には比較的小さい傾向にある。
図 13 に は 、各 排 出 パ ス の 下 で の 小 麦 及 び 米 の 一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ ャ ル の 変 化 を
示 す 。 人 口 増 大 の 影 響 で 、 2050 年 以 降 す べ て の 排 出 パ ス で 一 人 当 た り 生 産 ポ テ ン シ ャ
図 12
60
Reference
S650
S550
Increase in potential production (%)
Increase in potential production (%)
ルは減少すると推定される。
S450
50
40
30
20
10
0
Y2050
Y2100
Y2150
60
Reference
S650
S550
S450
50
40
30
20
10
0
Y2050
Y2100
Y2150
小 麦 及 び 米 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル の 増 加 ( 世 界 全 体 : 1990 年 比 、 左 : 小 麦 、 右 :
米)
注 1) 海 面 上 昇 に よ る 農 業 用 地 の 減 少 や 塩 害 等 に よ る 影 響 は 含 ま な い 。
注 2) 突 発 的 な 異 常 気 象 に よ る 影 響 は 、定 量 的 な 評 価 は 困 難 で あ る た め 本 評 価 で は 考 慮
していない。
注 3) 作 付 け 時 期 ・ 品 種 の 変 更 に よ る 適 応 策 を 考 慮 し て い る 。
Y2050
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
-45
-50
Y2100
Reference
図 13
S650
Y2150
S550
S450
Increase in potential per-capita production (%)
Increase in potential per-capita production (%)
注 4) 現 状 の 米 国 市 場 で は 、 小 麦 価 格 : 100$/ton 前 後 、 米 価 格 : 220$/ton 前 後 で あ る 。
Y2050
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
-45
-50
Y2100
Reference
S650
Y2150
S550
小麦及び米の一人あたり生産ポテンシャルの変化
( 世 界 全 体 : 1990 年 比 、 左 : 小 麦 、 右 : 米 )
- 308 -
S450
EJ-STEP2 資料3
地 域 分 布 の 例 と し て 、 Reference 排 出 パ ス の 下 で の 2150 年 に お け る 1990 年 比 の 変
動 量 分 布 を 図 14 に 示 す 。 小 麦 で は 、 米 国 、 欧 州 、 オ ー ス ト ラ リ ア 等 で 生 産 ポ テ ン シ ャ
ルの減少が見られ、米では、米国、オーストラリア等で減少が見られる。一方、温暖
化 抑 制 を 行 っ た 場 合 の Reference か ら の 便 益 に つ い て は 、 小 麦 で は 、 特 に ア フ リ カ 、
ラテンアメリカ及び東南アジアといった地域で生産ポテンシャルが増大し便益が大き
い 。し か し 、米 の 場 合 は 、温 暖 化 抑 制 を 行 っ た 場 合 、 Reference よ り 生 産 ポ テ ン シ ャ ル
が減少する地域もかなり多く見られる。
図 14
2150 年 に お け る 小 麦 ・ 米 の 生 産 ポ テ ン シ ャ ル 変 化 の 地 域 分 布
(Reference : 1990 年 比 、 上 : 小 麦 、 下 : 米 )
- 309 -
EJ-STEP2 資料3
7. 健 康 (熱 ス ト レ ス : 呼 吸 器 疾 患 ・ 循 環 器 疾 患 )
7.1 人 口 と 年 齢 構 成 の 変 化 の み を 考 慮 し た 場 合 の 死 亡 者 数 ( ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 )
気 候 条 件 は 199 0 年 と 同 じ で あ る と 仮 定 し 人 口 と 年 齢 構 成 の 変 化 の み を 考 慮 し た 場
合 の 呼 吸 器 疾 患 お よ び 循 環 器 疾 患 に よ る 死 亡 者 数 ( ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 ) と 、そ の 人 口
の全人口に対する比率を表 2 に示す。
表 2
呼吸器疾患と循環器疾患のベースライン死亡者数(世界全体)
199 0 年
205 0 年
210 0 年
215 0 年
ベースライン死亡者数(百万人)
17
59
86
98
人 口 に 対 す る 比 率 ( %)
0.3
0.6
0.8
0.9
注 ) 1990 年 は 文 献 値 、 2050 年 以 降 は 推 計 値 。
7.2 温 暖 化 に よ る 死 亡 者 数 変 化
各排出パスの下で温暖化を考慮した場合の、呼吸器疾患と循環器疾患の死亡者数変
化 ( ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 比 ) を 図 15 に 示 す 。
温暖化により暑さ起因の死亡者数は増加する、一方、寒さ起因の死亡者数は逆に減
少する。両変化を考慮すると、世界全体では温暖化により呼吸器疾患および循環器疾
図 15
15
Y2050
Y2100
Y2150
10
5
0
-5
-10
heat-related-diseases
cold-related-diseases
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
Reference
S450
S550
S650
-15
Reference
Change in numbers of death relative to Baseline
[million people]
患の死亡者数は減少する。
温暖化による呼吸器疾患および循環器疾患死亡者数変化
(世 界 全 体 : ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 比 )
heat-related diseases : 呼 吸 器 疾 患 + 循 環 器 疾 患 ( 暑 さ 起 因 )
cold-related diseases : 循 環 器 疾 患 ( 寒 さ 起 因 )
- 310 -
EJ-STEP2 資料3
地 域 分 布 の 例 と し て 、 Reference 排 出 パ ス の 下 で の 2150 年 に お け る 死 亡 者 数 変 化 の
分 布 を 図 16 に 示 す 。サ ハ ラ 以 南 ア フ リ カ 等 で は 、暑 さ 起 因 の 死 亡 者 数 増 加 が 寒 さ 起 因
の死亡者数減少より大きい。一方、中国、先進資本主義圏等は寒さ起因の死亡者数減
少の方が大きい。なお、温暖化による死亡者数変化の多くは高齢者の死亡者数変化で
Change in numbers of death relative to Baseline
[million people]
ある。
heat-related respiratory disease(all ages)
heat-related cardiovascular disease(age 65+)
heat-related cardiovascular disease(age <65)
cold-related cardiovascular disease(age 65+)
cold-related cardiovascular disease(age <65)
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
SubSaharan
Africa
図 16
India
Other Asia
Latin
and islands America and
the
Caribbean
Middle
Eastern
crescent
Formerly Established
socialist
market
economies economies
of Europe
China
温 暖 化 に よ る 呼 吸 器 疾 患 (respiratory disease) と
循 環 器 疾 患 (cardiovascular di sease) 死 亡 者 数 変 化 の 地 域 分 布
(Reference : 2150 年 : ベ ー ス ラ イ ン 死 亡 者 数 比 、 国 別 推 計 値 を 世 界 8 地 域 に 集 約 )
注) 本評価で適応策は特に考慮していない。
- 311 -
EJ-STEP2 資料3
8. 海 洋 酸 性 化
各 排 出 パ ス の 下 で の 表 層 に お け る pH と CaCO3(Calcite 、 Aragonite) の 飽 和 度 を 図
17 ~ 図 19 に そ れ ぞ れ 示 す 。
pH の 低 下 は 、気 温 の 高 い 地 域 で 大 き く な る が 、長 期 的 に は 地 域 の 差 異 は 小 さ く な る
とされているため、赤道での結果のみを示している。
CaCO 3 の 飽 和 度 は 、 気 温 の 低 い 地 域 で 小 さ く な り 、 殻 や 骨 を 形 成 す る 海 洋 生 物 へ の
影響がより大きく現れる。限界飽和度は 1 であり、それ以下では殻や骨を形成できな
い。
8.1
Reference
S650
S550
S450
[pH]
8
7.9
7.8
7.7
Y2050
Y2100
図 17
Reference
S650
S550
pH ( 赤 道 )
6
S450
5
5
4
4
Ω (Calcite)
Ω (Calcite)
6
3
2
1
Reference
S650
S550
S450
3
2
1
0
0
Y2050
Y2100
図 18
3.5
Reference
Y2150
Y2050
Y2100
Y2150
CaCO 3 (Calcite) の 飽 和 度 ( 左 : 赤 道 、 右 : 北 緯 60 度 )
S650
S550
3.5
S450
3
3
2.5
2.5
Ω (Aragonite)
Ω (Aragonite)
Y2150
2
1.5
1
0.5
Reference
S650
S550
S450
2
1.5
1
0.5
0
0
Y2050
図 19
Y2100
Y2150
Y2050
Y2100
Y2150
CaCO 3 (Arag onite) の 飽 和 度 ( 左 : 赤 道 、 右 : 北 緯 60 度 )
- 312 -
EJ-STEP2 資料3
9. 緩 和 策
各 排 出 パ ス を 達 成 し た 際 の CO 2 限 界 削 減 費 用 及 び エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム コ ス ト の 増 加
を 図 20 及 び 図 21 に そ れ ぞ れ 示 す 。 ま た 、 各 排 出 パ ス の 下 で の エ ネ ル ギ ー 種 別 一 次 エ
ネ ル ギ ー 生 産 量 を 図 22 に 示 す 。CO 2 排 出 を 抑 制 す る た め に 原 子 力 や 再 生 可 能 エ ネ ル ギ
ーがより多く導入され、その分エネルギーシステムコストが増加する。
CO2 shadow price [$/tC]
400
Reference
S650
S550
S450
350
300
250
200
150
100
50
0
Y2050
Increase in energy system cost relative
to Reference [%]
図 20
図 21
40
35
30
25
Y2100
Y2150
CO 2 限 界 削 減 費 用
Reference
S650
S550
S450
20
15
10
5
0
-5
Y2050
Y2100
Y2150
エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム コ ス ト の 増 加 ( 世 界 全 体 : Reference 比 )
各 排 出 パ ス の 下 で の 産 業 別 GDP ロ ス を 図 23 に 示 す 。
- 313 -
図 23
25
S650
- 314 -
S550
S550
Sector
Total Y2027
Other
Sectors Y2027
S650
S450-Y2150
S450-Y2100
S450-Y2050
S550-Y2150
S550-Y2100
S550-Y2050
Nuclear
Sector
Total Y2047
Reference
S650-Y2150
S650-Y2100
S650-Y2050
Fossil fuel
Other
Sectors Y2047
Reference
Energy
Sector Y2027
Service
Sector Y2027
Reference-Y2150
Reference-Y2100
Reference-Y2050
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
Energy
Sector Y2047
Service
Sector Y2047
Energy
intensive
Sector Y2027
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
Energy
intensive
Sector Y2047
GDP loss relative to Reference [%]
図 22
GDP loss relative to Reference [%]
Primary energy production [Gtoe/yr]
EJ-STEP2 資料3
Renewables
エ ネ ル ギ ー 種 別 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 生 産 量 (世 界 全 体 )
S450
S450
20
15
10
5
0
-5
産 業 別 GDP ロ ス ( 世 界 全 体 : Reference 比 、 上 : 2027 年 、 下 : 204 7 年 )
EJ-STEP2 資料3
注 1) 産 業 の 分 類 は 下 記 の 通 り 。
Energy intensive sector : Iron & steel, Chemical rubber products, Non-ferrous
metals, Non-metallic metals, Paper and paper products
Service Sector : Aviation, Other transports, Business services, Social services,
Energy Sector : All energy sectors
Other Sectors : Transport equipments, Other machinery, Other minings, Food
products,
Wood
products,
Construction,
Textiles,
Other
manufacturings,
Agriculture
注 2) S450 で GDP ロ ス が 急 増 す る 原 因 と し て 、 モ デ ル 感 度 分 析 よ り 輸 送 部 門 に よ る
CO 2 排 出 の 影 響 が 大 き い 事 が 明 ら か に な っ て い る 。 現 モ デ ル で は 、 輸 送 部 門 へ の バ イ
オ エ ネ ル ギ ー フ ロ ー を 想 定 し て い な い 。 仮 に 輸 送 部 門 の CO 2 原 単 位 が 50% 改 善 し た 場
合 に は 、 2047 年 の GDP ロ ス を 約 1.8% に 抑 え る こ と が 可 能 と な る 。
他 の 研 究 事 例 と し て 、 他 の モ デ ル に よ る 2050 年 に お け る GDP ロ ス の 推 定 結 果 を 図
24 に 示 す 。 本 調 査 の 主 た る 前 提 条 件 の 想 定 に 用 い た B2 シ ナ リ オ の 下 で は 、 GDP ロ ス
は Reference 比 で 、 S650 : 0.35 % 、 S550 : 0.65% 、 S450 : 2.6 % と 推 定 さ れ て い る 。
図 24
安 定 化 濃 度 別 GDP ロ ス の 評 価 事 例 ( 世 界 全 体 )
出 典 : IPCC-TA R-W GIII
- 315 -
EJ-STEP2 資料4(Ref)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
10.8
2100年
15.6
2150年
22.4
2050年
463
2100年
613
2150年
840
545
828
1240
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.43
2100年
2.85
2150年
4.27
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.13
2150年
0.22
2100年
50
2150年
79
・THCが崩壊する確率: 57~93%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
24
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
世界全体
1442
1241
1215
2283
3020
3327
北西太平洋・東アジア
70
64
69
619
610
663
南アジア
800
435
373
1077
1698
1833
中央ヨーロッパ
75
94
97
21
5
23
南アメリカ
77
88
102
18
20
21
アラビア半島
72
93
88
55
78
93
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比) [%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
4
7.9
12
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.3
19.2
8.3
米国
-1.1
-2.6
-3.6
ロシア
2.7
2.4
2.0
中国
4.5
5.4
4.6
日本
0.0
0.0
-0.1
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
39.1
52.5
52.1
米国
1.1
-0.2
-3.2
ロシア
2.2
3.8
4.5
中国
5.7
8.8
9.4
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年 2050年 2100年
世界全体
-134 (-2)
-305 (-4)
-509 (-5)
+157
+484
+837
-291
-789
サハラ以南アフリカ
+6 (+0.6)
+24 (+1)
+45 (+2)
+28
+104
+184
-22
-80
インド
+3 (+0.3)
+9 (+0.6)
+16 (+0.9)
+36
+109
+187
-33
-100
中東・北アフリカ
-6 (-0.6)
-17 (-1)
-28 (-2)
+34
+112
+193
-40
-128
中国
-78 (-7)
-213 (-14) -363 (-21)
+8
+27
+50
-85
-240
先進資本主義圏
-43 (-7)
-82 (-14)
-135 (-22)
+12
+23
+38
-54
-105
2150年
-1346
-139
-171
-221
-413
-172
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
マラリア
10.2 (11)
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0.06 (49)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.01
2100年
7.94
2150年
7.85
#2000年では8.06
2100年
4.41
2.22
2.73
1.37
2150年
3.63
1.81
2.24
1.12
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.02
2.55
3.10
1.57
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 316 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない
EJ-STEP2 資料4(Ref)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
0
2150年
0
・エネルギーシステムコストの増加
建設
0
0
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
0
0
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
0
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年 2047年
全産業
0
0
エネルギー多消費
0
0
2050年
2100年
2150年
サービス
0
0
0 (0)
0 (0)
0 (0)
エネルギー
0
0
その他
0
0
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
0 (0)
0 (0)
0 (0)
原子力
0 (0)
0 (0)
0 (0)
再生可能エネルギー
0 (0)
0 (0)
0 (0)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
0
0
OECD90
旧ソ連・東欧
0
0
0
0
0
0
0
0
アジア(日本除)
その他
- 317 -
E J - S T E P 2 資 料 4( S 6 5 0 )
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
10.0
2100年
10.6
2150年
8.5
2050年
458
2100年
553
2150年
616*
535
709
787
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注1)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
注2)大気中CO2濃度は2200年以降650ppmvに安定化する。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.43
2100年
2.47
2150年
3.09
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.11
2150年
0.14
2100年
46
2150年
65
・THCが崩壊する確率: 9~23%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
23
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
世界全体
1442
1237
1293
2283
2994
3233
北西太平洋・東アジア
70
64
67
619
610
663
南アジア
800
456
444
1077
1676
1762
中央ヨーロッパ
75
88
97
21
5
21
南アメリカ
77
88
97
18
20
20
アラビア半島
72
93
95
55
78
85
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比) [%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.9
6.8
8.4
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.6
21.6
19.6
米国
-1.1
-2.3
-2.9
ロシア
2.7
2.5
2.2
中国
4.5
5.5
5.3
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
39.0
52.7
55.1
米国
1.1
0.4
-0.7
ロシア
2.2
3.4
4.0
中国
5.7
8.5
8.9
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年 2050年 2100年
世界全体
-131 (-2)
-264 (-3)
-368 (-4)
+153
+419
+605
-283
-683
サハラ以南アフリカ
+6 (+0.6)
+21 (+1)
+32 (+2)
+27
+90
+133
-22
-69
インド
+3 (+0.3)
+8 (+0.5)
+12 (+0.6)
+35
+95
+136
-32
-87
中東・北アフリカ
-6 (-0.6)
-14 (-1)
-20 (-1)
+33
+97
+139
-39
-111
中国
-76 (-7)
-184 (-12) -263 (-15)
+7
+23
+36
-83
-208
先進資本主義圏
-41 (-7)
-71 (-12)
-97 (-16)
+11
+20
+27
-53
-91
2150年
-974
-100
-124
-160
-299
-125
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
マラリア
9.9 (11)
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0.06 (48)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.01
2100年
7.96
2150年
7.92
#2000年では8.06
2100年
4.59
2.31
2.83
1.43
2150年
4.22
2.12
2.61
1.31
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.03
2.55
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 318 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない
E J - S T E P 2 資 料 4( S 6 5 0 )
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
その他産業 ・貿易
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
122
2150年
222
・エネルギーシステムコストの増加
建設
0.0
1.0
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
0.0
0.3
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
27
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
-0.1
0.3
エネルギー多消費
-0.1
0.6
2050年
2100年
2150年
サービス
-0.1
0.2
-100 (-2)
230 (2)
3040 (24)
エネルギー
-0.3
0.3
その他
0.0
0.5
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-0.8 (-6)
-4.7 (25)
-9.0 (-35)
原子力
0.1 (92)
1.5 (33)
0.3 (6)
再生可能エネルギー
0.2 (2)
1.5 (14)
6.5 (59)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
-0.1
0.3
OECD90
旧ソ連・東欧
0.0
0.3
0.3
0.0
0.3
0.8
-0.3
0.2
アジア(日本除)
その他
- 319 -
E J - S T E P 2 資 料 4( S 5 5 0 )
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
9.0
2100年
7.9
2150年
4.8
2050年
451
2100年
517
2150年
550
521
645
674
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.33
2100年
2.22
2150年
2.60
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.10
2150年
0.11
2100年
43
2150年
59
・THCが崩壊する確率: 2~7%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
23
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
世界全体
1436
1238
1313
2283
2993
3204
北西太平洋・東アジア
70
64
67
619
610
663
南アジア
800
456
468
1077
1676
1738
中央ヨーロッパ
75
88
97
21
5
21
南アメリカ
75
88
91
18
20
20
アラビア半島
72
94
97
55
77
84
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.8
6.1
7.2
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.9
23.2
23.2
米国
-1.1
-2.1
-2.4
ロシア
2.7
2.6
2.6
中国
4.6
5.4
5.4
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
38.8
52.5
55.7
米国
1.1
0.6
0.2
ロシア
2.1
3.0
3.6
中国
5.6
8.3
8.6
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年 2050年 2100年
世界全体
-126 (-2)
-238 (-3)
-309 (-3)
+147
+378
+508
-272
-616
サハラ以南アフリカ
+5 (+0.5)
+19 (+1)
+27 (+1)
+26
+81
+112
-21
-62
インド
+3 (+0.3)
+7 (+0.4)
+10 (+0.5)
+33
+85
+114
-30
-78
中東・北アフリカ
-5 (-0.6)
-13 (-0.9)
-17 (-1)
+32
+87
+117
-38
-100
中国
-73 (-7)
-166 (-11) -221 (-13)
+7
+21
+30
-80
-187
先進資本主義圏
-40 (-7)
-64 (-11)
-82 (-13)
+11
+18
+23
-51
-82
2150年
-818
-84
-104
-134
-251
-105
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
2150年
マラリア
9.5 (10)
0 (0)
0 (0)
デング熱
0.06 (46)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
7.98
2150年
7.95
#2000年では8.06
2100年
4.70
2.37
2.90
1.47
2150年
4.47
2.25
2.76
1.39
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.06
2.56
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 320 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない
E J - S T E P 2 資 料 4( S 5 5 0 )
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
214
2150年
312
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
0.1
0.7
エネルギー多消費
0.0
1.2
・エネルギーシステムコストの増加
建設
0.3
1.8
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
0.1
0.5
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
36
2050年
2100年
2150年
サービス
0.0
0.5
150 (3)
1180 (13)
4420 (35)
エネルギー
-0.4
0.6
その他
0.3
0.9
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-1.6 (-11)
-6.2 (-33)
-10.0 (39)
原子力
0.4 (390)
1.7 (35)
1.1 (19)
再生可能エネルギー
0.6 (8)
1.9(18)
8.4 (76)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
0.1
0.7
OECD90
旧ソ連・東欧
0.2
0.4
-0.2
0.0
0.8
1.6
0.6
0.5
アジア(日本除)
その他
- 321 -
E J - S T E P 2 資 料 4( S 4 5 0 )
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
6.0
2100年
3.8
2150年
3.3
2050年
431
2100年
450
2150年
450
482
536
544
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.17
2100年
1.68
2150年
1.91
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比)[mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
健康
2100年
0.07
2150年
0.08
2050年
21
2100年
36
2150年
47
・THCが崩壊する確率: 0~2%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.05
全球平均
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1421
1678
1761
2283
2519
2713
北西太平洋・東アジア
70
59
65
619
610
663
南アジア
800
917
948
1077
1216
1258
中央ヨーロッパ
75
77
90
21
5
21
南アメリカ
75
84
87
18
20
20
アラビア半島
72
100
104
55
71
76
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.4
4.8
5.4
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
21.2
26.6
27.6
米国
-1.0
-1.4
-1.9
ロシア
2.7
2.6
2.5
中国
4.6
5.6
5.5
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
38.2
52.0
55.4
米国
0.9
1.0
0.9
ロシア
1.9
2.4
2.7
中国
5.6
7.8
8.0
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年 2100年
2150年
世界全体
-110 (-2) -180 (-2) -228 (-2)
+129
+286
+375
-239
-466
-603
サハラ以南アフリカ
+5 (+0.5) +14 (+0.8)
+20 (+1)
+23
+62
+82
-18
-47
-62
インド
+2 (+0.2)
+5 (+0.3)
+7 (+0.4)
+29
+65
+84
-27
-59
-77
中東・北アフリカ
-5 (-0.5) -10 (-0.7) -13 (-0.8)
+28
+66
+86
-33
-76
-99
中国
-64 (-6)
-126 (-8) -163 (-10)
+6
+16
+22
-70
-142
-185
先進資本主義圏
-35 (-6)
-48 (-9)
-60 (-10)
+10
+14
+17
-45
-62
-77
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
マラリア
8.6 (9)
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0.05 (41)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
8.00
2150年
7.99
#2000年では8.06
2100年
4.95
2.51
3.06
1.55
2150年
4.83
2.44
2.98
1.51
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.12
2.60
3.16
1.60
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 322 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない
E J - S T E P 2 資 料 4( S 4 5 0 )
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
2050年
146
・エネルギーシステムコストの増加
Reference比 [billion$/yr] ([%])
2050年
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
緩和策
360 (8)
2100年
287
2150年
365
2100年
2150年
2750 (30)
4740 (37)
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
2.2
11.2
エネルギー多消費
2.9
14.8
建設
9.5
28.3
輸送
2.0
7.0
サービス
0.6
8.5
エネルギー
1.5
9.9
その他
4.4
15.6
・一次エネルギー構成
Reference比 [Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-4.6 (33)
-7.4 (39)
-9.1 (36)
原子力
2.4 (2200)
1.8 (38)
1.5 (25)
再生可能エネルギー
1.0 (13)
5.2 (49)
8.5 (77)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
2.2
11.2
OECD90
旧ソ連・東欧
3.3
2.8
0.8
0.3
13.1
23.6
8.1
8.7
アジア(日本除)
その他
- 323 -
付録 3
A1FI シ ナ リ オ ベ ー ス の ス コ ア ボ ー ド
PHOE NI X で は 、 総 合 評 価 実 施 に 関 し て 、 IPCC SRES B2 シ ナ リ オ を ベ ー ス と し た 。
こ れ は 、 B2 シ ナ リ オ が 、 現 在 の 人 口 推 移 、 GDP 推 移 、 エ ネ ル ギ ー 構 造 な ど か ら 判 断 し
て、中位的でかつ現実性が高いシナリオであるためである。一方、無対策(リファレ
ンス)ケースでの温暖化影響や、ある特定の安定化レベルへ緩和するための対策コス
トは、想定するベースシナリオに強く依存することは以前から指摘されているところ
である。
以 上 の 背 景 に 基 づ き 、 PHOENIX で は B2 を 分 析 の 中 心 と し つ つ も 、 相 対 的 に CO 2 排
出 の 著 し い A1FI シ ナ リ オ に つ い て も 、温 暖 化 影 響 及 び 緩 和 コ ス ト な ど を 評 価 分 析 し た 。
本付録では、これら結果をスコアボードの形式にてまとめたものを示す。
- 324 -
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S650 (1/2)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
10.0
2100年
10.6
2150年
8.5
2050年
458
2100年
553
2150年
616*
532
813
920
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注1)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
注2)大気中CO2濃度は2200年以降650ppmvに安定化する。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.29
2100年
2.82
2150年
3.57
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.12
2150年
0.16
2100年
50.0
2150年
72.7
・THCが崩壊する確率: 42~77%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
21.5
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1378
847
625
2036
1297
918
北西太平洋・東アジア
61
38
33
482
196
143
南アジア
704
267
101
973
527
232
中央ヨーロッパ
87
84
80
6
4
4
南アメリカ
72
60
46
16
11
9
アラビア半島
121
92
76
58
64
63
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比) [%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.6
7.8
10.1
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
29.6
25.6
19.7
米国
-1.1
-2.3
-2.9
ロシア
2.7
2.5
2.2
中国
4.5
5.5
5.3
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
51.9
63.1
63.0
米国
1.1
0.4
-0.7
ロシア
2.2
3.4
4.0
中国
5.7
8.5
8.9
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
世界全体
-184 (-3)
-366 (-4)
-385 (-5)
+149
+434
+489
-333
-799
サハラ以南アフリカ
+6 (+1)
+16 (+1)
+22 (+2)
+18
+74
+86
-12
-57
インド
+1 (+0.1)
-6 (-0.3)
-1 (-0.1)
+32
+94
+100
-31
-100
中東・北アフリカ
-11 (-1)
-34 (-2)
-33 (-2)
+32
+104
+123
-43
-138
中国
-106 (-7)
-172 (-14) -161 (-18)
-117
-194
+10
+22
+22
先進資本主義圏
-52 (-6)
-127 (-14) -163 (-18)
+14
+36
+47
-66
-163
2150年
-874
-64
-102
-156
-183
-210
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
世界全体
マラリア
2050年
0 (0)
2100年
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0 (0)
0 (0)
0 (0)
世界全地域で、一人当たりGDPが高く温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.01
2100年
7.96
2150年
7.92
#2000年では8.06
2100年
4.59
2.31
2.83
1.43
2150年
4.22
2.12
2.61
1.31
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.03
2.55
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 325 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S650 (2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
304
2150年
423
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
8.5
28.7
エネルギー多消費
12.0
35.1
・エネルギーシステムコストの増加
建設
24.7
41.4
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
5.3
21.1
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
266
2050年
2100年
2150年
サービス
5.0
26.0
1400 (15)
6730 (23)
12550 (26)
エネルギー
5.6
26.0
その他
13.7
34.4
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-8.4 (-34)
-17.6 (-40)
-19.8 (-33)
原子力
2.8 (196)
0.4 (5)
0.8 (9)
再生可能エネルギー
0.9 (10)
16.5 (80.5)
21.8 (69)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
8.5
28.7
OECD90
旧ソ連・東欧
10.7
12.3
7.3
3.4
24.9
37.0
29.0
32.7
アジア(日本除)
その他
- 326 -
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S550 (1/2)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
9.0
2100年
7.9
2150年
4.8
2050年
451
2100年
517
2150年
550
518
739
773
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.23
2100年
2.58
2150年
3.08
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.11
2150年
0.14
2100年
47.1
2150年
65.9
・THCが崩壊する確率: 9~23%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.05
全球平均
2050年
21.0
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1369
850
647
2036
1286
878
北西太平洋・東アジア
55
38
33
482
196
143
南アジア
704
276
144
973
519
195
中央ヨーロッパ
85
83
76
6
4
4
南アメリカ
72
60
46
16
11
8
アラビア半島
121
92
78
58
64
61
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.5
7.2
8.5
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
30.0
27.4
24.9
米国
-1.1
-2.1
-2.4
ロシア
2.7
2.6
2.6
中国
4.6
5.4
5.4
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
51.8
63.3
64.5
米国
1.1
0.6
0.2
ロシア
2.1
3.0
3.6
中国
5.6
8.3
8.6
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
世界全体
-176 (-3)
-334 (-4)
-332 (-5)
+142
+397
+422
-318
-731
サハラ以南アフリカ
+6 (+1)
+15 (+1)
+19 (+2)
+18
+67
+74
-11
-53
インド
+1 (+0.1)
-5 (-0.3)
-1 (-0.1)
+30
+86
+87
-30
-91
中東・北アフリカ
-10 (-1)
-31 (-2)
-29 (-2)
+31
+95
+106
-41
-126
中国
-102 (-6)
-158 (-13) -139 (-15)
-112
-178
+10
+20
+19
先進資本主義圏
-49 (-6)
-116 (-13) -141 (-15)
+13
+33
+41
-63
-149
2150年
-754
-56
-88
-135
-158
-181
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
世界全体
2050年
2100年
マラリア
0 (0)
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0 (0)
0 (0)
0 (0)
世界全地域で、一人当たりGDPが高く温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
7.98
2150年
7.95
#2000年では8.06
2100年
4.70
2.37
2.90
1.47
2150年
4.47
2.25
2.76
1.39
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.06
2.56
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 327 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S550 (2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
337
2150年
511
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
8.2
30.2
エネルギー多消費
11.8
36.4
・エネルギーシステムコストの増加
建設
24.9
43.2
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
5.2
21.0
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
320
2050年
2100年
2150年
サービス
4.5
27.2
1450 (16)
7630 (25)
14360 (29)
エネルギー
6.9
29.6
その他
13.6
36.9
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-8.9 (-36)
-17.2 (-39)
-21.7 (-36)
原子力
2.9 (205)
0.5 (8)
1.0 (12)
再生可能エネルギー
1.0 (11)
17.7 (87)
26.8 (85)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
8.2
30.2
OECD90
旧ソ連・東欧
9.9
11.7
7.7
3.8
25.6
37.3
30.0
36.4
アジア(日本除)
その他
- 328 -
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S450 (1/2)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
6.0
2100年
3.8
2150年
3.3
2050年
431
2100年
450
2150年
450
480
606
632
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.07
2100年
2.04
2150年
2.40
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比)[mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
健康
2100年
0.09
2150年
0.11
2050年
19.4
2100年
40.0
2150年
54.3
・THCが崩壊する確率: 1~6%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.05
全球平均
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
世界全体
1360
1045
644
2036
1037
861
北西太平洋・東アジア
55
37
30
482
196
143
南アジア
702
516
155
973
278
183
中央ヨーロッパ
84
76
74
6
4
4
南アメリカ
67
53
44
16
11
8
アラビア半島
121
99
75
58
57
60
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.1
5.9
7
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
31.0
32.1
29.6
米国
-1.0
-1.4
-1.9
ロシア
2.7
2.6
2.5
中国
4.6
5.6
5.5
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
51.0
63.5
65.3
米国
0.9
1.0
0.9
ロシア
1.9
2.4
2.7
中国
5.6
7.8
8.0
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
-153 (-2) -264 (-3) -259 (-4)
+124
+313
+329
-276
-577
-588
サハラ以南アフリカ
+5 (+0.8) +12 (+0.9)
+14 (+1)
+15
+53
+58
-10
-41
-43
インド
+1 (+0.1)
-4 (-0.2)
-1 (-0.1)
+26
+68
+68
-26
-72
-68
中東・北アフリカ
-9 (-0.9)
-24 (-2)
-22 (-2)
+27
+75
+83
-36
-99
-105
中国
-88 (-6) -124 (-10) -108 (-12)
-97
-140
-123
+9
+16
+15
先進資本主義圏
-43 (-5)
-92 (-10) -110 (-12)
+12
+26
+32
-55
-118
-142
サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
世界全体
2050年
2100年
2150年
マラリア
0 (0)
0 (0)
0 (0)
デング熱
0 (0)
0 (0)
0 (0)
世界全地域で、一人当たりGDPが高く温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
8.00
2150年
7.99
#2000年では8.06
2100年
4.95
2.51
3.06
1.55
2150年
4.83
2.44
2.98
1.51
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.12
2.60
3.16
1.60
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 329 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
A1FI シ ナ リ オ を ベ ー ス
S450 (2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
2050年
520
2100年
432
・エネルギーシステムコストの増加
Reference比 [billion$/yr] ([%])
2050年
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
緩和策
2400 (23)
2150年
598
2100年
2150年
9560 (30)
14840 (30)
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
11.4
37.2
エネルギー多消費
18.3
45.4
建設
31.6
45.7
輸送
6.6
21.8
サービス
6.4
35.1
エネルギー
8.9
32.8
その他
18.7
44.1
・一次エネルギー構成
Reference比 [Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-11.0 (-45)
-16.2 (-37)
-22 (-37)
原子力
3.5 (244)
1.1 (16)
0.8 (10)
再生可能エネルギー
2.5 (27)
18.8 (92)
26.2 (83)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
11.4
37.2
OECD90
旧ソ連・東欧
12.3
14.5
13.3
5.3
29.7
40.4
38.1
46.5
アジア(日本除)
その他
- 330 -
付録 4
IIASA-RITE 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム
RITE で は 、 経 済 産 業 省 の 補 助 金 事 業 と し て 、 IIASA を 国 際 研 究 コ ン ソ ー シ ア ム の 相
手方と定め「地球温暖化の影響と対策の総合評価」を実施してきた。その中で、温暖
化の影響の大きさと温暖化の緩和コストの双方を評価し、長期排出削減目標レベルを
ど の よ う に 決 定 し て い け ば よ い か に 取 り 組 ん で き た 。本 年 度 が 事 業 の 最 終 年 度 で あ り 、
事 業 の 成 果 を 取 り ま と め そ の 報 告 を 行 う 。ま た 、IIASA 他 の 世 界 的 に 著 名 な 研 究 者 に よ
る関連研究の報告も行い、関係者の理解とともに今後に向けて指導・助言を得ようと
するものである。
以 上 を 背 景 と し 、「 IIAS A-RIT E 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム ― 地 球 温 暖 化 の 抑 止 を 目 指 し て ―
( IIASA -RI TE International Symp osium “ To ward Stabilization of Global Warming”)」 を 開
催 し た 。 当 日 は 、 企 業 、 研 究 機 関 、 官 公 庁 、 大 学 、 そ の 他 団 体 等 か ら 計 1 38 名 が 参 加
し、温暖化の抑止に関して、長期目標、中間目標、エネルギー、技術、排出削減の経
済各部門への影響等の側面から活発な議論がなされた
以下に、本シンポジウムの要旨集を掲載する。
記
開催年月日
平 成 1 9 年 3 月 1 2 日 (月 )
開催
新 霞 ヶ 関 ビ ル 1 F 灘 尾 ホ ー ル (東 京 都 千 代 田 区 霞 ヶ 関 )
主
場所
催
財団法人
地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 (RITE)
国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 (IIASA)
IIAS A 日 本 委 員 会
後
援
経済産業省
以上
- 331 -
Contents
目次
Challenges for IIASA’ s Interdisciplinary Research
Professor Leen Hordijk, Director, IIAS A
Technologies for Stabilizing Climate Change
Professor Nebojsa Nakicenov ic, Leader, En ergy Program, Transition to
New Technologies Progra m, Co-Leader, Greenhouse Gas Initiativ e, IIASA
Interim Targets: Guideposts to Achieving Long-term Climate Change Goals
Dr. Brian C. O'Neill, Leader, Population and Climate Change Progra m,
Co-Leader, Greenhouse GAS Initiative, IIASA
Project PHOENIX; An Integrated Assessment of Global Warming and its Mitigation
Technologies in the Changing of Wo rld Economy and Indus try
(1) An Overview and the Outcome (Pro ject PHOENIX 2002 – 2006; Final Report)
Professor Shunsuke Mo ri, Project Leader, Systems Analysis Group, RITE
「 概 要 と 成 果 (PHOENIX2002-2006 プ ロ ジ ェ ク ト 最 終 報 告 )」
RITEシステム研究グループ 森
俊介 プロジェクトリーダー 森
俊介
(2) Economic Impacts of Emission Reductions and Bottleneck Sectors
Dr. Takashi Ho mma , Researcher, Systems Analysis Group, RITE
「産業連関を考慮した排出削減の経済影響とボトルネック経済部門」
RITEシステム研究グループ
研究員 本間 隆嗣
(3) Implications to International Arguments on Stabiliza tion Target
Dr. Keigo Akimoto, Senior Researcher, Systems Analysis Group, RITE
「温暖化抑制目標に関する国際議論への含意」
RITEシステム研究グループ 主任研究員 秋元 圭吾
Energy Implications of Stabilizing Greenhouse Gas Concentratio ns
Dr. James Ed monds, Laboratory Fellow and Chief Scientist, Pacific Northwest
National Laboratory
- 332 -
Presentations by researchers who stayed at IIASA
(1) Influence of Technological Learning of Advanced Energy Conversion Technologies
on Future Energy Perspectives
Mr. To mohiko Araki ,Tokyo Electric Power Co mp any (ex-visiting research
scholar of IIASA)
「革新的エネルギー変換技術の進歩が将来のエネルギー見通しに与える影響分析」
東京電力株式会社 火力部 火力技術グループ 主任 荒木 智彦
(2) A Repo rt of YSSP 2006 and for the Future YSSPers
Mr. Shinichiro Fujimori ,Graduate Student, Urban and Environmental
Engineering, Kyoto Un iversity
「 YSSP 報 告 と 今 後 の YSSP に 向 け て 」
京都大学 大学院 工学研究科 博士課程1回生 藤森 真一郎
- 333 -
Challenges for IIASA’s Interdisciplinary Research
Leen Hordijk
Director, IIASA, Aus t ria
Summary
Most of IIASA’s programs focus on broad issues (like forestry or en ergy) and they are not
organized in scientific discip lines.
40% of IIASA’s scientists have a social science
background; the other 60% come fro m n atural science, mathematics and engineering.
Interdisciplinary work is thus at the co re of mo st of IIASA’s work in energy, technology,
environment, and population studies.
In my prese n tation I will briefly review the current IIAS A re search programs, followed by
an overview of stumbling blocks and success f actors of mu lti- and in terdisciplin ary research.
This overview will not be based on IIASA experience only, but on a multitude of projects an d
programs that I have been involved in , ranging fro m research projects, via international
scientific reviews, to selection procedures for scientific projects by research councils.
Why is interdisciplinary work need ed? I have listed five reasons:
-
The world has prob lems, the university has departments
-
The whole is mo re than the su m of its parts
-
Knowledge, skills, methods and instrumen tation often cut across disciplinary
boundaries
-
Serendipity and new discoveries often occu r at th e borders of established research
fields an d/or discip lines
-
Industrial research exemplifies that it is possible to work in an in terdisciplinary way
with good results
I will touch upon organizational aspects such as commu nication, location and recruitment
policy, but also pay attention to issues of training , experience, in centiv es and rewards.
My main conclu sions include that high quality interdisciplinary collaboration needs to be
based on high quality monodisicplinary skills, on joint formulation of the research plan, on
the joint choice of the research tools, an d on a lo ng term co mmi t ment of the particip an ts.
Factors outside of the control of an Interdisciplinary team include the availability of high
quality journals for interdisciplinary research, th e willingness of funding organizations to
support high risk research, and a reward structure in th e universities and research in stitutes.
- 334 -
Biosketch
Professor Hordijk is currently Director of the International Institute for Applied Syste ms
Analysis (IIAS A), in Laxenburg, Austria.
Prior to join ing IIASA, he was Director of the Wageningen Institute for Environ ment and
Climate Research (WIMEK) in the Netherlands and professor in Environmental Systems
Analysis at Wageningen University. He was Chairman of the Social Science Research Council
of the Netherlands Organization fo r Scientific Research (NWO).
Leen Hordijk pioneered the development of methods for linking environmental science and
econo mics for integrated assess-ments of air pollution problems in Europe. His approaches
are recognized as amo ng the mo st effectiv e ever developed for linking science and policy in
international environmental affairs.
- 335 -
IIASA の 学 際 的 研 究 に 関 す る 課 題
Leen Hordijk
Director, IIASA
要旨
ほ と ん ど の IIASA の プ ロ グ ラ ム は 、 林 業 や エ ネ ル ギ ー の よ う に 幅 の 広 い 課 題 に 焦 点
を 当 て て お り 、 科 学 分 野 毎 に 組 織 さ れ て は い な い 。 4 0 % の IIASA の 科 学 者 は 社 会 科
学のバックグランドを有し、残り60%は自然科学、数学、工学出身である。学際的
研 究 は 、 エ ネ ル ギ ー 、 技 術 、 環 境 や 人 口 な ど ほ と ん ど の IIAS A の 研 究 の 核 に あ る 。
講 演 で は 、IIAS A の 現 在 の 研 究 プ ロ グ ラ ム を 簡 単 に 紹 介 し 、多 分 野 学 際 的 研 究 の 障 害
要 因 、成 功 要 因 に つ い て 概 観 す る 。こ の 概 観 は 、IIAS A で の 経 験 の み に よ る も の で は な
く、私が参画した研究プロジェクトや国際的な研究レビューから研究理事会による科
学プロジェクトの選定手続きなどにわたる数多くのプロジェクトやプログラムに根ざ
したものである。
なぜ、学際的研究が必要なのか?それには5つの理由がある。
-
世界に問題があり、大学に学科がある
-
全体は部分の和以上である
-
知識、技能、方法、手段はしばしば学問境界を横断する
-
発見能力と新発見は確立された研究領域や学問の境界に生じる
-
産業分野での研究は学際的方法による研究が良き結果もたらすことを実証して
いる
意志疎通、場所、採用方針などの組織的側面に触れるが、訓練、経験、動機付け、
報奨などの課題にも注目する。
主たる結論として、質の高い学際的協同は質の高い単一学問のスキルの基盤が必要
で、研究計画の協同立案、研究ツールの協同選定、参加者の長期参画が必要であるこ
と、学際的チームの制御範囲外にある要因として、学際的研究の良質なジャーナルの
存在、リスクのある研究に資金サポートする組織の意思や大学や研究所での報奨の仕
組みなどがあることが含まれる。
- 336 -
略歴
Leen Hordijk は 現 在 IIAS A 所 長 を し て い る 。
IIAS A に 来 る 前 は 、 オ ラ ン ダ の Wagening en 環 境 と 気 候 研 究 所 (WIMEK) の 所 長 で あ
り 、 Wagening en 大 学
環境システム分析の教授であった。彼は、オランダ科学研究機
構 の 社 会 科 学 研 究 理 事 会 ( NMO) の 議 長 で あ っ た 。
Leen Hordijk は 欧 州 に お け る 大 気 公 害 問 題 の 統 合 評 価 の た め に 環 境 科 学 と 経 済 学 を
結合させる方法の開発を先駆的に行った。彼のアプローチは国際環境問題の科学と政
策を結び付けるためにこれまで開発された最も効果的なものの一つと認識されてい
る。
( RITE
- 337 -
仮訳)
Technologies for Stabilizing Climate Change
Nebojsa Nakicenovic
Leader, IIASA, Austria
Summary
New technologies are needed for providing th e essential services to the need y as well as
improving the quality of life in th e more affluent parts of the world. Technological ch ange
i mproves the performance while lowering th e costs as well as the adverse environmental
i mpacts of human activities at all scales, fro m local to the global. Consequently, the
diffusion of new technologies at affordable costs is the key determinant of econo mic
develop ment and is essential for raising standa rds of living and easing hu manity’s burden on
th e en viro nmen t.
Climate change is a central aspect of adverse imp acts of human activities on the
environment. Thus, the challenge is to improve human well being while simultaneously
mitigating anthropogenic climate chan ge. Th e role of technology in achiev ing this double
challenge is unique. Technology is on e of the main drivin g forces of increasing GHG
e missions. It is also an i mportant part of th e possible solution both in mitigating global
war ming through reductions of GHG e mi ssions and in helping adapt to its impacts.
Technology was very important in catalyzing the historical drive of doing mo re with less –
fro m increasing efficiency of factor inputs to reducing so me of the adverse impacts of human
activities – and it at the same ti me i mportant driving force of ever-higher (per capita)
consumption levels. In a way, this is the paradox of technology of being bo th a part of the
problem and a part of th e solution .The main energy-related technology measures for reducing
GHG e mi s sions are efficiency i mprove ments, decarbonization of fossil energy, carbo n
capture and storag e (over hu nd reds if no t thou sand s of years), and a shift toward less
carbon-intensive and zero-carbon energy sources.
Generally, cost reductions and improvements will be requ ired to assure timely replacement
of fossil intensiv e systems by new and ad vanced tech no logies with lower or zero emissions.
At the same time, technology imp rovements through learning and increasing returns to scale
are uncertain. Investments in new and ad vanced technology will only achieve improve ments
and cost reductions in so me cases. However, th e co rollary is also true, without such uncertain
invest ments there surely will be no improvements. Thus, experime ntation an d accumulation
of experience are indisp ensable to achieve techno logical change and the replacement of old
by new systems. This calls for a glob al process and timely local and in ternational action .
This also means that early e mi ssions reductions, even if only hu mb le, are necessary fo r
buy-downs along learning cu rves for so me of the mo re successful technologies. Thus, the
- 338 -
nature of technological change requires innovation s to be adop ted as early as possible in
order to lead to lower co sts an d wider diffusion in the following decades. The longer we wait
to in troduce these advanced technologies, th e higher the required e missions reduction will
be. At the same time, we may miss the opportunity window for achiev ing substantial
buy-downs. This is a direct consequence of techno logical path-d ependency to be co ntrasted
with higher degrees of freedo m associated with emissi ons paths fro m the climate change
perspective.
Technological change is a co mp lex process that is associated with many uncertainties.
Generally, it is not possible to forecast futu re technological “winners” or “losers”. The very
fact that it is virtually impossible to an ticipate specific future technological change to any
degree of specificity is what interests researchers and innovators. Discovering new
possibilities and demo nstrating unanticipated possibilities is often what attracts the curiosity
of researchers and innovato rs. Thus, the ri sk and opportunity are join t features of
technological change rendering the process inherently unpredictable. This is an important
reason why programs directed at pro moting techno logy diffusion need to consider a range of
alternative develop ments rather than atte mp ting to dictate a particular direction of ch ange.
History teaches that technological change is a re latively slow process. It takes up to half a
century to replace energy infrastructures and equip ment through natural obsolescence and
perhap s half that time for end-use devices such as vehicles and stoves. The concept of
leapfrogging involves taking long steps and thereby skipping many if not mo st of the rung s in
the development process. The idea is not to repeat all development stages of the now mo re
affluent but to directly adopt more advanced technologies. Clearly, this is a very desirable
develop ment strategy but also very difficult to achieve. In practice, th ere needs to be a
balanced portfolio of options from near-term and incremental changes to the very long-ter m
and radical transitions to th e highest technological “rungs” of the development “ladder”.
The dual nature of the technological ch allenge in the en ergy and cli mate nexsus (na mel y
that it is both a part of the problem and a part of the solution ) means that improvement of
technologies leads to higher consumption due to the lower costs of energy services and at th e
same time reduction of specific envoronmental impacts such as the e missions of greenhouse
gases. Th e consequence is th at we need to accelerate the efficiency i mprovement rates and
the transition toward the mo re sustanable en ergy systems in general. Th is requires both
RD&D as well as invest ments to achieve accelerated diffusion and adoption of advanced
energy technologies.
Current energy RD&D trends are unfortunately in the opposite direction. Public
expenditures in OECD countries have declin ed to some $ 8 billion fro m about $12 billion two
decades ago, while private ones have declin ed to $4.5 billion comp ared to almo st $8 billion a
- 339 -
decade ago. This means that today we are investing barely abou t $2 per person in the world
per year in energy-related RD&D activities. Many studies indicate that th is needs to increase
by at least a factor of two to three in order to enab le the transtion toward new and advanced
techn olo gies in th e energ y systems. Investment needs in energy are at least a factor 100
larger compared to RD&D needs. It is estimat ed that the current en ergy investments are about
$500 billion per year. The future needs are huge.
A si mple exa mple illustrates the ch allenges. The global electric installed capacity is about
4TWe. At average costs of $1000 per kWe installed the replacement would cost ab ou t $4
trillion. Assu ming that half of the capacity needs to be replaced during th e next 30 years and
that the overall capacity would double by 2030 implies th at 6TWe would need to be
constracted at say costs of some $6 trillion. Adding the same investment for the grid s and
distribuiton results in th e overal financing requiremnets of so me $12 trillion by 2030. In fact,
IIASA and IEA est mat e the actual electricity syste ms for the next 25 years are indeed th at
large depending on the energy scenario in question. The total energy-related investments are
about
$20
trillion.
More
sustainable
development
paths
require
10
percent
higher
invest ments. This tran slates into about one trillion dollars per year or at least twice the
currnent level of investments with most of the requirements being in developing parts of the
world.
All told, RD&D efforts need to be trippled and energy investments at least doubled
in order to assure the ti mely replacement of en ergy tech no logies and infrastructures.
The additional co sts of stabilization are relatively sma ll in co mp a rison to these ovearll
invest ment needs. They are in th e range of 10 percen t or about $2 trillion by 2030. The gre a t
benefit of these additional investments into a future characterized by a carbon-leaner energ y
systems and a more sustainable development path is th at in the lo ng-run (to 2050 and beyond)
the investments would be substantially lower. The reason is th at the cu mu lative natu re of
technological change translatesw the early invest ment into a carbon-leaner future into lowe r
costs of the energy syste ms in th e long run along with the cobene fit of stabilization. Th is al l
points to the need for radical ch ange in en ergy policies in order to assu re sufficent
invest ment in our common future and thereby pro mote accelerated technological ch ange in
the energy system and end use.
Biosketch
Nebojsa Nakicenovic is Leader of the Transitions to New Techno logies and En ergy
Programs and Greenhouse Gas Initiative at th e International Institu te for Applied Systems
Analysis (IIAS A) and Professor of Energy Economics at the Vienna University of
Technology. He is also an Associate Ed itor of the International Journal on Technological
- 340 -
Forecasting and Social Change , Editor of International Journal on Climate Policy , Membe r
of Editorial Board of the International Journal of Energy Sector Management , a Coordinating
Lead Author of the Intergovernmental Panel of Climate Change (IPCC), Fourth Assessme nt
Report, and Coordinating Lead Author of the Millennium Ecosystem Assessment.
Prof. Nakicenovic was Director, Global En ergy Perspectiv es, Wo rld Energy Co un cil, 1993
to 1998, Convening Lead Author of the Second Assessment Report of the Intergovernmental
Panel on Climate Change, 1993 to 1995, Conv ening Lead Author of the IPCC Special Report
on Emissions Scen arios, 1997 to 2000, Lead Author of Th ird Assessment Repo rt of th e IPCC,
1999 to 2001, Co nv ening Lead Author of the World Energy Assessment: Energy and the
Challenge of Sustainability, 1999 to 2000, an d Guest Professor at th e Technical University of
Graz, 1993-2003.
He first join ed IIASA in 1973 to work in the En ergy Systems Program on long -term, global
energy prospects; from 1984 he worked in the Science and Technology Program on the
restructuring of the glob al au tomo tive in du stry; fro m 1986 on th e dynamics of techno logical
and social change in th e Tech nology, Economy and Society Program as Progra m Leader and
as Leader of the Environmentally Co mp atible Energy Strategies Project from 1991 to 2000 .
Prof. Nakicenovic holds bachelor's and master's degrees in economics and co mputer
science from Princeton Univ ersity, New Jersey, USA and th e Univ ersity of Vienna, where he
also comp leted his Ph.D. He also holds Honoris Causa Ph .D. degree in en gineering fro m the
Russian Academy of Sciences.
Among Prof. Nakicenovic’s research interests are the lo ng -term patterns of technological
change, economic development and response to climate change and, in particular, th e
evolution of energy, mobility, information and communicatio n technologies.
Currently, his
research focuses on the diffusion of new technologies and their interactions with the society
and the environment.
He is author and coauthor of man y scientific papers an d books on th e
dynamics of technological an d social change, econo mic restructuring and development,
mitigation of anthropogenic i mpacts on the environment and on response strategies to glob al
change.
Additional information can be found in Marquis Who' s Who in Science and Engineering
and Who's Who in the World . Curriculum vitae , list of publications is available on the
following web site:
http://www.iiasa.ac.at/Research/TNT/WEB/People/Staff/naki-tnt.p df.
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気候変動を抑止するための技術
Nebojsa Nakicenovic
Leader, IIASA, Austria
要旨
世界の貧困者に不可欠のサービスを提供するためには、より裕福な層の生活の質の
向上を提供するためと同様に、新しい技術が必要である。技術変化は、地域から世界
にわたるあらゆる規模の人間活動による不都合な環境影響とコストを低減すると同時
に人間活動の質を改善する。その結果、手頃なコストでの新技術の普及は、経済発展
のキーとなる決定因子であり、生活レベルの向上と人間の環境への負担軽減に対して
不可欠のものである。
気候変動は人間活動の環境への悪影響の中心的側面である。そのため、人間の幸福
を改善し同時に人間活動による気候変動を緩和することが課題となる。この2重の課
題 を 解 決 す る 上 で の 技 術 の 役 割 は ユ ニ ー ク な も の と な る 。技 術 は GHG 排 出 増 大 の 主 要
な 駆 動 力 の 一 つ で あ る 。 そ れ は ま た 、 GHG 排 出 削 減 に よ る 地 球 温 暖 化 緩 和 と と も に そ
のインパクトに対する適応を支援する重要な解決策である。技術は、より僅かなもの
でより多くを為すという-入力因子の効率改善から人間活動の悪影響低減までー歴史
的駆動の触媒として非常に重要であった。また、同時に、一人当たり消費レベルの絶
えざる増大は重要な駆動力である。これは、技術は問題の一部でもありその解決の一
部 で も あ る と い う パ ラ ド ッ ク ス を 意 味 し て い る 。 GHG 排 出 低 減 の 主 た る エ ネ ル ギ ー 関
連技術手段は効率改善、化石エネルギーの脱炭素化、炭素の回収貯留および低炭素や
炭素フリーエネルギー源への移行である。
一般に、コスト低減や改善は、低排出あるいは排出無しの新技術や先進技術による
化石燃料システムの適時交代を確保するのに必要である。同時に、習熟とリターンの
大幅な増大による技術進歩は不確実な性質を有している。新あるいは先進技術への投
資はある場合にのみコスト低減と改善を達成する。しかし、逆もまた新であり、その
ような不確実な投資無しに何らの改善もないことは確かである。このように、技術変
化と新システムによる旧システムの交代をかち取るのに実験と経験の蓄積が不可欠と
い え る 。世 界 的 な プ ロ セ ス と 地 域 お よ び 国 際 的 な 適 時 行 動 を 必 要 と し て い る と い え る 。
また、より成功見込みの高い技術の習熟曲線に沿った価格引き下げには、早期の排出
削減が、それがつつましいものであっても、必要である。このように、技術変化の性
質上、コストの低減と普及拡大を導くためにはできるだけ早期に革新が採用されるこ
とが必要である。これらの先進技術の導入を遅らせば遅らせるほど、必要な排出削減
は 高 価 な も の と な ろ う 。同 時 に 、大 き な 価 格 引 き 下 げ の た め の 機 会 を 失 う こ と と な る 。
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これは、技術の経路依存性の直接の結果であり、気候変動において排出経路にはより
大きな自由度があることと対照的である。
技術変化は複雑なプロセスであり多くの不確実性を伴っている。一般に、将来の技
術勝者あるいは敗者を予言することは不可能である。特定の将来技術変化をいくらか
でも具体的に予測することはほとんど不可能であるという事実が研究者や革新家の関
心を引き、また、新しい可能性の発見や予測されてなかった可能性の実証はしばしば
研究者や革新家の好奇心を引きつける。このように、リスクと機会は技術変化が本質
的に予言不可能なプロセスであることの二つの特徴である。これは、技術普及の推進
プログラムは、特定の変化方向を指示したりせずに広く代替開発を考慮する必要があ
ることの重要な理由である。
技術変化は相対的にゆっくりしたプロセスであることを歴史が教えている。自然の
淘汰を通じたエネルギーのインフラや機器の代替には半世紀を要し、車や暖房機など
のエンドユース機器の代替にはその半分の期間が必要であろう。蛙飛びの概念は、大
きなステップを取ること、それにより、開発過程のほとんどでなくとも多くの段を踏
み越えることである。現在のより裕福な国々が歩んだ全ての開発段階を繰り返すこと
ではなく直接より先進的な技術を採用することというのがそのアイデアである。明ら
かに、これは大層望ましい開発戦略でありまた同時に達成困難な戦略でもある。実際
には、短期の漸進的変化から開発の梯子の最高位の技術レベルへの長期の革新的変化
までバランスの取れたポートフォリオが必要である。
エネルギーと気候の結合という技術課題の二重性(すなわちそれは問題の一部であ
り同時に解決の一部であること)は、技術進歩はエネルギーサービスのコスト低下に
よ る よ り 大 き な 消 費 を 導 き 、同 時 に GHG の 排 出 な ど 特 定 の 環 境 イ ン パ ク ト の 低 減 に つ
ながることを意味している。そのため我々は効率改善速度とより持続的なエネルギー
システムに向けた遷移の両方を加速する必要がある。これには先進エネルギー技術の
RD&D、 お よ び 、 採 用 ・ 普 及 を 加 速 す る た め の 投 資 が 必 要 で あ る 。
現 在 の RD&D の 動 向 は 不 幸 な こ と に 逆 方 向 と な っ て い る 。 OECD 国 の 公 的 支 出 は 2 0
年 前 120 億 ド ル で あ っ た の が 現 在 、 約 8 0 億 ド ル に 落 ち 込 ん で い る 。 一 方 、 民 間 の 支 出
は 10 年 前 80 億 ド ル で あ っ た の が 現 在 45 億 ド ル と な っ て い る 。 こ れ は 、 今 日 、 エ ネ ル
ギー関連の投資に年・人当たり世界でかろうじて 2 ドル投資していることを意味して
いる。多くの研究がエネルギーシステムにおける先進的技術への遷移を可能にするに
は 、 投 資 を 少 な く と も こ の 2- 3 倍 に す る 必 要 が あ る と 指 摘 し て い る 。 エ ネ ル ギ ー で の
投 資 ニ ー ズ は RD&D ニ ー ズ に 比 べ 少 な く と も 10 0 倍 は 大 き い 。 将 来 ニ ー ズ は 巨 大 で あ
る。
簡 単 な 例 を 挙 げ て 課 題 を 説 明 す る 。 世 界 の 現 在 の 電 力 設 備 容 量 は 約 4 TWe で あ る 。
平 均 設 備 コ ス ト は お よ そ 1 000 ド ル / kWe な の で 、更 新 に 要 す る 費 用 は 4 兆 ド ル と な る 。
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設 備 の 半 分 は 次 の 30 年 以 内 に 更 新 が 必 要 と し 、 ま た 、 全 体 の 容 量 は 2 030 年 ま で に 倍
増 す る と 仮 定 す る と 、 約 6 兆 ド ル の 建 設 費 用 で 6 TWe が 必 要 と な る 。 同 額 の 投 資 が 系
統 や 配 電 に 必 要 と す る と 全 体 と し て 20 30 年 ま で に 約 12 兆 ド ル が 必 要 と な る 。 実 際 、
IIAS A と IEA は 、今 後 2 5 年 間 の 電 力 シ ス テ ム は エ ネ ル ギ ー シ ナ リ オ に 依 存 す る が そ の
程 度 の 大 き さ と 予 測 し て い る 。 エ ネ ル ギ ー 関 連 の 投 資 合 計 は 約 20 兆 ド ル と な る 。 よ り
持 続 可 能 な 発 展 経 路 に は 10%大 き い 投 資 が 必 要 で あ ろ う 。 こ れ は 、 年 間 約 1 兆 ド ル あ
るいは少なくとも現行レベルの 2 倍の投資-その多くは途上国で必要-となろう。こ
れ ら か ら し て 、 エ ネ ル ギ ー 技 術 と イ ン フ ラ の 適 時 更 新 の た め に は 、 RD&D の 努 力 は 現
在の 3 倍にする必要があり、エネルギー投資は少なくとも 2 倍にする必要がある。
(温暖化)抑止のための追加的支出はこれら全体の投資に比すと小さいものである。
そ の 値 は 全 体 の 1 0%あ る い は 2 03 0 年 ま で に 約 2 兆 ド ル で あ る 。将 来 の こ の 追 加 投 資 の
大きな便益は、低炭素エネルギーシステム及びより持続的発展経路により特徴づけら
れ る も の で 、 長 期 的 ( 20 50 年 ま で 及 び そ れ 以 降 ) に は 投 資 は は る か に 小 さ い と い う こ
とである。その理由は、技術変化の累積的性質上、低炭素への早期の投資が(温暖化)
抑止の便益を持ち、長期のエネルギーシステムコストを低下させることにつながるた
めである。これは、共通の将来に向けた十分な投資を確実にするためにはエネルギー
政策の急激な変化が必要であり、従って、エネルギーシステムとエンドユースの技術
変化の加速を推進する必要があることを示している。
略歴
ナ ボ ー シ ャ ナ キ セ ノ ビ ッ チ は 、国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所 (IIAS A)に お け る 新 技 術
への変遷プログラム、エネルギープログラムと温室効果ガスイニシアティブのリーダ
ー 及 び ウ ィ ー ン 工 科 大 学 エ ネ ル ギ ー 経 済 学 教 授 で あ る 。氏 は ま た 、International Journ al
on Technological Forecasting an d Social Change 誌 の 副 編 集 長 、 International Journal on
Climate Policy 誌 の 編 集 者 、 気 候 変 動 に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル (IPCC) 第 四 次 評 価 報 告 書
の Coordinating Lead Author (CLA)、 ミ レ ニ ア ム エ コ シ ス テ ム ア セ ス メ ン ト の CLA で
もある。
ナ キ セ ノ ビ ッ チ 教 授 は 、19 93 年 か ら 19 9 8 年 の 間 に Wo rld Energy Council (WEC) の 世
界 エ ネ ル ギ ー 見 通 し の 責 任 者 、 1 9 93 年 か ら 1 995 年 の 間 に IPCC 第 二 次 評 価 報 告 書 の 執
筆 代 表 者 、 199 7 年 か ら 2 00 0 年 の 間 に IPCC 排 出 シ ナ リ オ に 関 す る 特 別 報 告 書 の 執 筆 代
表 者 、 1999 年 か ら 20 0 1 年 の 間 に IPCC 第 三 次 評 価 報 告 書 の 代 表 執 筆 者 、 19 99 年 か ら
2000 年 の 間 に 世 界 エ ネ ル ギ ー 評 価:エ ネ ル ギ ー と 持 続 可 能 性 の 挑 戦 の 執 筆 代 表 者 、199 3
年 か ら 2003 年 の 間 に グ ラ ー ツ 工 科 大 学 客 員 教 授 を 務 め た 。
氏 は 1973 年 に 初 め て IIAS A に 入 所 し 、長 期 的 、世 界 エ ネ ル ギ ー 展 望 に お け る エ ネ ル
ギ ー シ ス テ ム プ ロ グ ラ ム に 従 事 ; 1984 年 か ら 世 界 の 自 動 車 産 業 の 再 編 に お け る 科 学 技
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術 プ ロ グ ラ ム に 従 事 ; 19 86 年 か ら は 技 術 、 経 済 及 び 社 会 プ ロ グ ラ ム の 技 術 的 社 会 的 変
化 の ダ イ ナ ミ ク ス に 関 し て プ ロ グ ラ ム リ ー ダ ー 、1 99 1 年 か ら 2 000 年 の 間 に 環 境 調 和 型
エネルギー戦略プロジェクトのリーダーを務めた。
ナ キ セ ノ ビ ッ チ 教 授 は 、ア メ リ カ ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー 州 の プ リ ン ス ト ン 大 学 か ら 経 済
学士を、ウィーン大学から計算機科学の修士号を取得し、同大学で博士課程を修了し
た。氏はまた、ロシア科学アカデミーから名誉博士号を授与されている。
ナ キ セ ノ ビ ッ チ 教 授 は 、技 術 変 化 、経 済 発 展 及 び 気 候 変 動 へ の 対 応 の 長 期 パ タ ー ン 、
そして特に、エネルギー、移動体と情報通信技術の進化に興味を持つ。現在、氏は、
新技術の普及と、それらと社会及び環境との相互関係に関する研究に注力している。
氏は、技術的及び社会的な変化のダイナミクス、経済構造再編及び発展、環境への人
為的影響の緩和及び地球規模の変動への対応戦略に関する多くの科学論文と書籍の主
著者及び共著者である。
よ り 詳 細 な 情 報 は 、Marquis 社 の Who's Who in Science and Engineering 及 び Who’s Who
in the World に 掲 載 さ れ て い る 。 履 歴 書 及 び 公 表 文 献 リ ス ト は 、 以 下 の ウ ェ ブ サ イ ト で
入手可能である。
http://www.iiasa.ac.at/Research/TNT/WEB/People/Staff/naki-tnt.p df
( RITE
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仮訳)
Interim Targets:
Guideposts to Achieving Long-term Climate Change Goals
Brian C. O’Neill
Leader, Population and Climate Change Program Co-Leader,
Greenhouse Gas Initiative, IIASA, Aus tria
Summary
Climate change policies are often discussed fro m the perspective of on e of two very
different time-scales: long-term objectives a century or mo re in the future, or near-te r m
targ ets for the comi ng decade or two. For examp le, Article 2 of the UN Fra mework
Convention on Climate Change, which describes its ‘ultimate objective’, has mo tivated man y
analyses of possible 100- to 200-year goals aimed at avoiding dangerous climate impacts,
while near-term emissions targets such as those of the Kyoto Protocol currently prov ide the
main focus for international policy formulation.
The emphasis to date on eith er the lo ng term or the short term has been logical and
necessary. Several of the greenhouse gases, particularly carbon dioxide, have atmo spheric
life times on the order of a century or mo re, and other aspects of the climate system respond
over the course of decades, centuries, and even millennia. Climate policy therefore demands
a long-term perspective. At the same ti me, the international regime is pre mised on the id ea
that the design and imp le mentation of policies consistent with potential lo ng-term objectives
ought to begin now.
But between the long term and the short term lies a yawning gap that cannot be effectively
b ridged by current p olicy persp ectives. A key problem is that specifying only a long-ter m
target – unless it is relatively stringent – provides little guidan ce on the short-term steps
necessary to achieve it because a wide range of emissions and concentratio n pathways ma y
do so. This loose connection between the short and lo ng term has serious shortcomings. First,
because it provides no clear signal about where emissions should be headed over the next few
decades, it precludes the kind of policy certainty over the timesc ale of mu ltiple decades
necessary to support investmen t s in long-lived capital. It is precisely these types of
invest ments that would be required now to make possible the additional emissions reductions
needed in the mediu m term.
Second, a pair of short- and lo ng -term targ ets by itself cannot constrain th e rate of climate
change in th e intervening period. High rates of change over several decades could trigger
dangerous consequences (O’Neill and Oppenh eimer, 2004), especially for ecosyste ms, and
would make adaptation mo re difficult. A short-term targ et by itself cannot guard ag ainst this
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possibility because it covers only a limited period of time. A long-term goal can limit
maxi mu m l evels of climate change, but since it can be reached via many possible emission
and concentration pathways, the risk of a high rate of change during the in tervenin g years
would rema in.
Finally, a long-term target is particularly vulnerable to uncertain ty: the longer the time
horizon, the more scientific uncertainty accumu lates. As a result, the prospects for soon
reaching a binding political ag reement on a single long-term targ et are dim. While some
Parties to the Framework Co nv ention support particular long-term goals, with the EU’s 2°C
targ et for global averag e temp erature (above pre-industrial) perhaps most pro minent, it will
take widespread adoption of such a targ et for it to substantially affect glob al emissions and
therefore cli mate change. Yet, deferring action until agree ment is achieved risks committing
the world to potentially dangerous climate change.
As nations move forward under both the UNFCCC and the Kyoto Protocol to consider
future emission reductions in the contex t of assessments of the science, we suggest that
international climate policy would greatly benefit from the development and adoption of
interim targets for at mo spheric concentrations 30–50 years in the future, in addition to longand
short-term
targets.
Interim
targ ets,
which
co uld
be
acco mmodated
within
th e
Convention/Protocol framework, would bridge the gap between the short term and the long
term in three ways.
First, because it directs emissions and co ncen tratio n path ways over the next few decades
mu ch mo re clearly than any particular pair of short- and long-term targets, an interim
concentration target can more effectively address th e risk of dangerously high rates of
climate change. Second, th e process of developing, adopting and re-evaluating interim
targets would better inform near-term policy decisions and provide important sign als to
decision makers who have mu lti-decade planning ho rizons, such as those addressing
invest ments in emissions-produ cing in frastructure and capital stock. Of course, targ ets alone
are not enough: only if econo mic agents believe in the ability of governments to maintain
targets for limiting GHG e mis sions will emitters’ expectations support the kind of
mu lti-decade investme nt decisions required to stabilize concentrations. Carefu lly selected
interim targ ets, with regular reviews of progress and of the targets themselves, could play a
vital role in anchoring those expectations. Industry lead ers have begun asking for precisely
this kind of direction, with so me calling on governme nts to an nounce, well before 2012,
‘quantified objectives’ to 2020, 2030, 2040 and 2050.
Third, an interim targ et co uld be design ed to ensu re that a range of century-scale
objectives remains feasible while un certain ties are narrowed. A strategy of keepin g
long-term options open may broaden th e grounds for ag reement in climate policy discussions.
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Parties that may not be able to ag ree no w to a commo n long-term targ et might be able to
agree to the lesser objectiv e th at the option to achiev e su ch a targ et should be preserved, in
case it should tu rn out to be necessary. An interim target would be a useful means of
implementing such a consensus.
In this talk, I describe the interim target concep t, discuss its pros and co ns, and show
results from both mi tigation models and greenhouse gas cycle and climate models that
illustrate how such targets might be set.
Biosketch
Brian O’Neill is the Leader of the Population and Climate Ch ange (PCC) Pro g ra m at the
International Institute for Applied Syste ms Analysis (IIAS A) in Laxenburg, Austria.
He
also co-lead s the Greenhouse Gas Initiative, an interdisciplin ary research activity on cli mate
change involving co llaboration across seven IIASA research programs. Before join ing IIASA
in 2002, he spen t four years in the Global Environ ment Program at Brown University’s
Watson Institute for International Studies, where he still holds a position as Associate
Professor (Research).
O’Neill earned a Ph.D. in Earth Syste ms Sc ience and an M.S. in Applied Science, both
fro m New York University, and spent two years on the clima te science staff of the
Environmental Defense Fund in New Yo rk before joining th e Brown faculty.
interests
are
in
th e
science
and
policy
of
global
climate
His research
change
and
in
population-environment interactions, and he has published in a variety of journals, in cluding
Science, Proceedings of the National Academy of Science – USA, and Population an d
Development Review, and is co -author of the book Population and Climate Change
(Cambridge University Press) and editor of a forthcoming special issue of the journal
Climatic Change on Learning and Climate Change.
He has served as a lead author for both
the Intergovernmental Panel on Climate Change (Fourth Assessment Report) and the
Millennium Ecosystem Assessment.
In 2004, he received a European Young Investigator
(EURYI) award to support his work on climate change.
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暫定目標;気候変動の長期目標を達成するためのガイドポスト
Brian C. O’Neill
Leader, Population and Climate Change Program
Co-Leader, Greenhouse Gas Initiative, IIASA
要旨
気候変動政策はしばしば非常に異なる二つの時間スケールのうちの片方からの見通
し に よ り 議 論 が な さ れ る 。 1 世 紀 以 上 の 長 期 目 標 と 今 後 10 年 ま た は 20 年 の 短 期 目 標
のいずれかである。たとえば国連気候変動枠組み条約の2条は究極目標を規定してお
り 危 険 な 気 候 影 響 を 避 け る こ と を 目 的 に し た 100-20 0 年 先 の ゴ ー ル に 関 し て 数 多 く の
分析を促してきた。一方京都議定書のような短期の排出目標は、現在、国際政策定式
化に主たる焦点を当てている。
長期あるいは短期のいずれかに焦点を当てるということは論理的であり必要なこと
で あ る 。 い く つ か の 温 室 効 果 ガ ス と り わ け CO 2 は 1 00 年 以 上 の 大 気 中 寿 命 を 有 し 、 気
候システムの応答は何十年、何百年、時には何千年にもおよぶ。そのため、気候政策
には長期の見通しを要する。同時に、国際的枠組みは、長期目標と整合する政策の設
計や実施は今から開始すべきであるとの前提に立っている。
しかし、長期及び短期の(目標)の間には現在の政策見通しでは埋められない大き
なギャップが存在する。鍵を握る問題は、長期目標のみを特定しても、もしそれが相
対的に厳格なものでないならば、広範囲の排出経路と濃度経路がそうであるように、
長期目標を達成するに必要な短期のステップに対してあまりガイドとはならない。こ
の短期と長期の(目標)が緩やかにしか結合していないことは重大な問題である。第
一に、それは、今後数十年にわたり排出はどこに向かうべきかについて明確なシグナ
ルを与えないので、長期資本への投資を行うに必要な何十年もの時間軸に亘る政策の
確定性を排除する。中期的に必要な追加的排出削減を可能にするのに今必要なのはま
さにこのタイプの投資である。
第二には、短期目標と長期目標の一組の組合せそれ自体が、途中の期間の気候変動
の速度を制限することはできない。数十年にわたる大きな速度の気候変動は、特に生
態 系 に 対 し て 、 危 険 な 結 果 の 引 き 金 に な る 可 能 性 が あ り 、( O’ Ne i l l an d Op p en h ei me r,
2004 ) そ し て 適 応 を 一 層 困 難 に す る 。 短 期 の 目 標 は 、 限 ら れ た 期 間 を カ バ ー す る の み
なので、それ自体でこの可能性を排除することはできない。長期の目標は気候変動の
最大のレベルを制限することができる、しかし、その長期目標の達成には多くの排出
経路と濃度経路が可能なので途中の期間には大きな速度の気候変動のリスクが残され
たままである。
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最後に、長期目標は不確実性に対して脆弱である:時間軸が長ければ長いほど科学
的不確実性は増大する。その結果、単一の長期目標について早期に政治的に合意に達
する見通しは明るくない。国連枠組み条約締約国のいくつかは長期目標を支持してい
る 、 EU は 産 業 革 命 以 前 と 比 し 全 球 平 均 温 度 上 昇 を 2 ℃ 以 下 と し て 、 お り た ぶ ん 最 も 突
出していると思われるが、実質的に世界の排出、従って気候変動に影響を与えるには
広くそのような目標が受け入れられる必要がある。しかも、合意がなされるまで行動
を起こさないことは世界を危険な気候変動に曝すリスクを伴う。
各 国 は 、 UNFCCC と 京 都 議 定 書 の も と で 科 学 的 評 価 の コ ン テ キ ス ト を 踏 ま え て 将 来
の排出を考慮すべく前進するので、国際的な気候政策は長期及び短期の目標に加えて
30-50 年 の 大 気 中 濃 度 の 暫 定 目 標 の 開 発 と 採 用 に よ り 大 き な 便 益 を 得 る も の と 思 わ れ
る。暫定的目標は条約や議定書の枠組みの中で調整できるので短気と長期の間のギャ
ップを次の3通りのやり方で埋めることができよう。
まず、いかなる短期目標と長期目標の組合せよりもずっと明確に数十年にわたる排
出と濃度の経路を指し示すので、暫定的な濃度目標はより効果的に気候変動の高速変
化の危険なリスクを扱うことができる。第二に、暫定目標を開発、採用、再評価する
プロセスは、近時の政策決定によりよい情報を与え、また、何十年もの計画が必要で 、
排出源となるインフラや資本蓄積の投資を扱っている意思決定者に重要なシグナルを
提 供 す る 。 も ち ろ ん 、 目 標 の み で は 十 分 で は な い : 経 済 主 体 が GH G 排 出 の 制 約 目 標 を
維持する政府の能力を信じてこそ、排出者の期待が濃度安定化に必要な何十年に亘る
投資決断を支持するものと思われる。注意深く選定した暫定的目標はその進展と目標
自体を定期的に見直せばそれらの期待を確固たるものにするのに非常に重要な役割を
果 た す も の と 思 わ れ る 。産 業 界 の リ ー ダ ー は ま さ に こ の よ う な 指 示 を 求 め 始 め て お り 、
な か に は 政 府 に 2 020 、 2 03 0、 2 0 40、 20 50 年 の 定 量 的 目 標 を 20 1 2 年 よ り ず っ と 前 に 発
表することを求めているものもいる。
第三には、暫定目標は不確実性が狭まり百年スパンの目標が現実的であることを確
実にするように設計可能である。長期のオプションをあけておくという戦略は気候政
策の議論における合意の基盤を広げるものである。共通の長期目標に現在は合意でき
ない締約国もそれが必要と判明した場合を考慮してそのような目標を達成するオプシ
ョンが確保されておくべきだということには、より小さな目標になるが、合意できる
可能性がある。暫定目標はそのような合意を得る有用な手段である。
この講演では、暫定目標の概念を述べ、それへの賛成・反対を論じ、緩和モデルと
温室効果ガスサイクル・気候モデルの両方からの結果を示し、そのような目標がどの
ように設定すればよいかを説明する。
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略歴
Brian O’Neill は IIAS A の 人 口 及 び 気 候 変 動 プ ロ グ ラ ム の リ ー ダ ー で あ る 。彼 は 、気
候 変 動 の 学 際 的 研 究 活 動 で あ り 、IIASA の 7 つ の プ ロ グ ラ ム に ま た が る Greenhouse Gas
Initiative の 共 同 リ ー ダ ー で も あ る 。200 2 年 に IIAS A に 参 画 す る 前 の 4 年 間 を Brown 大
学 Watso n 国 際 研 究 所 の Global Environment プ ロ グ ラ ム で 過 ご し た 。 現 在 も な お 、 そ こ
の助教授の地位にある。
O’ Neill は New York 大 学 か ら 地 球 シ ス テ ム 科 学 の 博 士 号 、 応 用 化 学 の 修 士 号 を 取 得
し た 。 Brown 大 学 の ス タ ッ フ に な る 前 に は ニ ュ ー ヨ ー ク の Environmental Defense 基 金
の気候研究スタッフとして2年間を過ごした。彼の研究の関心は気候変動の科学と政
策 、 人 口 と 環 境 の 相 互 作 用 に あ り 、 Science 誌 や 米 国 の National Academy of Science 誌
な ど に 数 多 く の 論 文 を 発 表 し 、 ま た 、 Population and Climate Change (Cambridge Univ.
Press)の 共 著 者 で あ り 、Cli mate Change の 次 の 特 集 号( Learning and Cli mate Change)の
編 集 者 で あ る 。彼 は 、IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書 と Millenniu m Ecosystem Assessment の 主
執 筆 者 で も あ る 。 20 0 4 年 に 彼 の 研 究 を サ ポ ー ト す る た め の ヨ ー ロ ッ パ 若 手 研 究 者 賞
( EURYI) を 受 賞 し た 。
( RITE
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仮訳)
An Overview and the Outcome
- Project PHOENIX 2002 – 2006; Final Report Shu nsuke Mori
RITE, To kyo University of Science
1. In troduction
In 2005, Kyoto Protocol is taken effect after long debate and po licy makers are now
negotiating the measures and options to ward the post Kyoto practice. Since Kyoto Protocol is
agreed in 1997, so many debate and political actions have been adopted . For instan ce, USA
left Kyoto Protocol in 2001 criticizing th e cost effectiv es. Developing co untries such as
China and India participate in Kyoto Protocol but have not agreed to the GHG e miss ion
reduction targets. EU, on the contrary, emph asizes the possible disaster caused by the global
warming and proposes an upper limit on the glob al mean at mo spheric temp erature rise to the
pre-industry level at 2 Celsiu s degree. On January 10 t h , 20 07 , EU also d eclared 20 % GHG
e mission cut in 2020. Since th e political conditions are comp licated, the role of in tegrated
assessment to provide the long term strategies is increasing to find th e direction of th e
rational policy decision s. The project PHOENIX, - Paths toward Harmony Of Environment,
Natural resources and Indu stry comp leX, developed by RITE - Research Institute of
Innovative Technology for the Earth – ai ms at providing the in tegrated in fo rmation an d
assess ments for the global warmin g issues. This project is supp orted by the Ministry of
Econo my, Trade and Industry as a part of an “International Research Pro motion Funds for the
Global Environment” started in 2002 to assess and provide the global warming policies based
on the scientific knowledge an d terminates in March, 2007. In this symposium, we present
the overview of Project PHOENIX and give th e concluding outcome s of the Phoenix.
2. The need for the integrated assessment and Procedure of PHOENIX
When we determine the preferable policies for the global warming mitigation, they should
be based on the scientific basis. Since 1990, IPCC has assessed the scientific researches with
respect to the natu ral scientific basis, warming i mpacts and vuln erability, and mitigation
options. By developing and expanding models, th e researchers today provide detailed
projections of climate changes to answer th e questions when and to what ex tent the global
warming affects the earth. However, since the damage level of climate change significantly
depends on the structure of hu ma n activities, e.g. water manageme nt and th e sophisticated
agriculture, the assessments of cli mate changes is not straightforward.
PHOENIX started to gather and co mp ile th e scientific knowledg e on th e global warming
i mpacts from literature to assess the CO 2 emi ssion contro l pathways accordin g to the climate
change phenomena and their i mpacts concretely. We also focus on the properties and the
uncertainties of the impacts. For instance, events with high uncertainty, irreversibility and
- 352 -
possible high risk su ch as the shutdo wn of th e thermohaline circulation (THC), the co llapse
of west antartic ice sheet (WAIS) and the co llapse of Greenland ice sheet are often called as
"Typ e-II" impacts in contrast to the continuously increasing impacts (Type-I impacts) where
adaptation options are often applicable. Simp le to tal su m of the monetary assessed values of
these events may be hard to in terpret. Loss of biodiversity is also th e case. Table 1
su mmarizes the possible global warming impacts ( 1 ) . As can be seen, the global warming
impacts involve various properties. So me could be represented quantitatively and some are
not. So me could be evaluated in monetary term and the others are not.
The PHOENIX project aims at the development of an in tegrated assessment procedure to
explore the most rational and feasible co ntrol po licies based on the systematic assessme nt of
the climate change impacts and th e mitigation policy evaluation by the detailed model s
including energy tech nologies, land use changes, economics and environ mental in teractions.
Table-1 Possible dama ges and events by global warming ( 1 )
Impacts and events
Type-1
-
events
Property
increased death and serious illness in older ag e
-
groups and urban poor
continuously
increasing
i mpact level and risk
-
increased heat stress in livestock and wildlife
-
high regional variety
-
shift in tourism
-
variety on availability of
-
increased risk of damages to a numb er of crops
adaptation
-
increased cooling power
and costs
-
extended range and activity of so me pest and
-
disease vectors
-
increased
flood,
opportunities
uncertainty in occurrence
a n d i mp a c t l e v el
landslide,
avalanche
and
-
mudslide da mage, soil erosion, flood runo ff
increase
of
damage
and
vulnerability
-
decreased crop yields
-
decreased water resource quantity and quality
-
increased fo rest fire
-
extinction of species
-
i mpacts on marine ecosyste m
Type-II
-
shutdo wn of thermohaline circulation (THC),
-
discontinuous impacts
events
-
collapse of west antarctic ice sheet (WAIS)
-
irreversibility
-
the co llapse of Greenland ice sh eet
-
high uncertainty in ti me
-
methane outburst
-
So me are reversible while
so me are not.
and occu rrence
-
- 353 -
no ad aptation opportunity
3. Model Development for the Assessment of Mitigatio n and Adaptation Options
In the first step, we picked up the scientific information on th e cli mate change impacts
fro m literature. However, in order to assess th e climate policies as well as th e tech no logy
develop ment strategies concretely, we need so me models for the quantitative analysis. Since
the time horizon of the targ et are different among fields, e.g. climate change requires long
term – mo re than 200 years – time horizon wh ile the target of econo mic activities by industry
may be at mo st in the first half of this century. Energy and resource policies as well as the
land use and agriculture issues
Short-middle term
(2010~2050)
will be discussed through this
century.
Therefore,
we
Long term
(2100~2200)
Warming impacts
Climate model (MAGICC + GCM results)
e mployed the multiple model
approach as shown in Figure 1.
Middle-long term
(2050~2100)
Carbon emission
pathways
Energy technology
strategies
Abrupt climate impacts
(THC collapse etc.)
Energy-economics model (DNE-21)
Food supply potential
Firstly we set th e long term
GHG e mis s ion scenarios as no
p olicy
cases
and
concentration
Integration
(Score-board)
Global Warming
Strategies
Agriculture and Land-use model (GIS)
Biomass energy potential model (GLUE)
GHG
Energy technology and
resource scenario
Dynamic multiregional
CGE model
stabilization
Social and policy scenarios
cases to meet the targ ets of
450ppmv,
550ppmv
and
Atmospheric temperature,
precipitation, sea level
rise and regional climate
changes
•Assessments of carbon tax and Kyoto instruments
•Industry structure change
•Economic impacts of new technologies
650
ppmv. These are applied to the
Assessment direction
si mple climate model MAGICC
to
calculate
the
global
temp erature rise for 2000-2200.
Figure 1 Procedure of applying multiple models for the
integrated assessment
3.0 degree climate sensitivity is employed in this step. The calculated global mean clima te
data is then applied to th e detailed si mu lation results of GCM available in th e IPCC data
distribution center to estimate the spatial distribution of temperature and precipitation. In
2006, we employ the MIROC mo del prov ided by the CCSR/NIES/ FRCGC, Japan (2) which
currently provides highest sp atial resolu tion results. Some emission scenario, GHG
concentration path ways and pattern of climate changes in 2100 are shown in Figure 2 – 4.
CO2 emission [GtC/yr]
25
6
Reference
S650
S550
S450
Temperature rise relative to Y1990 [℃]
30
20
15
10
5
0
1990
2040
2090
Year
2140
2190
Figure 2 CO 2 emission scenarios until 2200
- 354 -
Reference
S650
S550
S450
5
4
3
2
1
0
1990
2040
2090
Year
2140
2190
Figu re 3 Atmo spheric temp erature rise
(a) At mos pheric temp erature rise
(b) Precipitation changes
Figure 4 Estimated climate changes in 2100 relative to 1990 in S550 stabilization case
(GCM:MIROC-HR, CS =3.0)
From Climate Model
Historical monthly
Max/Min temperature
Based on the emissi on control
pathways
and
climate
change
scenarios, we can assess the energy
technology strategies and land use
changes
fo r
the
assessment
of
Historical monthly
Average cloudcover
averagecloud
cover
Monthly average
Temperature
Monthly average
precipitation
Potential
Evapotranspiration
Evapotranspiration
Max temperature
Min temperature
Actual
Evapotranspiration
potential food productions usin g
models. DNE-21 energy-economic
Monthly average
wind speed
model generates the middle to long
term
energy
technology
Elevation
develop ment scenarios under the
carbon emission contro l po licies.
GIS
based
adaptation
crops
including
possibilities
estimate
production
model
the
for
future
potentials.
the
Terrain slopes
Crop yields
potentials
Soils
Crop
characteristics
crop
Figure 5 Estimation procedure of PHOENIX agriculture
Th e
impacts and adapt a tion assessment model
procedure is shown in Figu re 5.
Assess ments on health effects, water resource issues, forestry management, fishery and other
i mpact categories are also surveyed based on literatu re and expert's information.
For the short to middle term assessments of warming policies on the world economies and
industries, we develop another dynamic mu lti- sectoral and mu lti- regional model exhibited
in Figure 6.
Base on the above, we estimate the impacts of climate changes and th e mitigation co sts
when control policy is imposed. These are su mmarized as "Scoreboard". This provides th e
main information in the next expert judgment stag e. These are shown in th e Appendix.
- 355 -
4.
Expert
Consumption
by Non-energy sector
Judgment
for the As sessment of
Emission
1
Control
Non-energy sector
Consumption
Policies
Non- 2
energy
・
sector
Limt
The evaluation of the
carbon control policy is
1
・
・
N
(=18)
CO2
the final targ et of the
integrated
assess me nt.
As has been pointed ou t
in the previous reports,
in
PHO ENIX
the
decision ma ker assesses
them
examining
Coal
Crude Oil
bottom- up
Natural Gas
energy
system
Others
model
(Nuclear, Hydro etc.)
2
・・・
N
・・・
・・・
・・・
・
・
・
Investment
投資
・・・
Solid Fuel
・・・
Liquid Fuel
・・・
Gas Fuel
・・・
Electricity
International
Trade
Final
Consumption
Capital, Labor
energy consumption
・・・
the
i mpacts and mitigation
International Trade
(Primary Energy Sector)
costs on the scoreboard
基準年の産
Industrial structure
in base year
業連関構造
Income elasticity of
エネルギー需
energy demand
要の所得弾力性
rather than su mming up
Figure 6 Structure of the Phoenix intertemporal optimization
the
multisectoral mu ltiregional energy economic model DEARS
evaluation
monetary
of
each
i mpact and costs. However, it is still hard for the experts to see the large scoreboard attached
in the Appendix and to evaluate the emission policy. In PHOENIX 2 006, we divide the expert
judg ment into two stag es as follows.
4.1 First stage for the selected impact factors
The first stage aims at the quantitative ev aluation of carbon control scenario s fo cusing on
the selected impact events. Th is stage consists of three steps. First, selected impacts events
are exhibited to the expert for th e preliminary evaluation of the emission control paths.
Co mparing the impact levels of "reference (no control policy) case" and those of the certain
GHG control policy case, (550pp mv is e mployed here) the expert gives relative weights
a mong imp act events by pair-wise comp arison fro m the view of "how the GHG control policy
could mitigate the cli mate change damages". This step is simil ar to the AHP(Analytic
Hierarchy Process) decision making tool. We select the following five events; (1) sea level
rise, (2) impacts on agriculture and food production, (3) health effects, (4 ) impacts on
biosphere and biod iv ersity, and (5) collapse of THC. It should be noted that th e even t (5) is a
typical Type-II event which should be avoided with highest priority in the previous report o f
PHOE NIX. In PHOENI X 2006, we include this Type-II event to see how th e experts evalua t e
the uncertainty of Type-II event. In fact, the uncertain range of climate sensitivity (CS)
allows the probability of "THC co llapse" avoidance even in the 750ppmv stabilization case
and vice versa. These values are docu mented in the Appendix. The expert gives the pair-wise
comparison valu e by answering the questionnaire shown in Figu re 7.
- 356 -
Second, the relative weights are then converted into monetary term based on questionnaire
in the following manner, “ how do you evaluate the value of the avoidance of the above 1.09
million death? Please answer the value per death in 10 thousand Japanese yen. ” like VOSL
(Value Of Statistical Life) adopted in Extern-E(3). The direct evaluation of th e above impa cts
in monetary term see ms to be hard.
However,
the
existing
Questionnair e for pair-wise comp arison
investigations have tried to
evaluate
the
Question on the relative weights of (1) sea level rise to (3)
health effects
en vironmental
damages on human life to
As is shown in the Appendix, th e sea level rise in 2100 is 50c m
relative to that in 1990 level in the reference case while it will
come to 43cm rise when carbon concentration is stabilized.
assess the cost effectiv eness
of
policies
even
if
there
remain serious aporia. The
form
of
this
question
I n 21 00 , nu mb er of d eath b y a respiratory disease and
circulatory organ disease will i n crease by 4.9 mi llio n by
glo b al warming in the reference case while it is 3.82 mil lion
when carbon concen tration is stabilized.
is
shown in Figure 8.
Then how do you evaluate the benefits of "7 cm mitigat ion of
sea level rise" relative to the benefit of "r eduction of 1.08
mil l i on de ath by global w a rming" ? Ple a s e mark the re l at i v e
n u mb e r of th e fo r me r a s s u min g t h a t o f t h e l a t t e r t o b e 1 .
Third, we constitute utility
function of (avoided impact)
=
(warmi ng
impact
of
reference case) - (w ar ming
i mpact
of
concentration
case)
to
1/100
carbon
stabilizatio n
co mp are
different
the
estimated
for
550ppmv
and
450ppmv cases are applied.
We
tentatively
employed
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
comp arison
scenarios. The impact valu es
650ppmv,
1/20
Figure 7 Example of questio nn aire for the pair-wise
stabilization
already
1/50
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
a
linear utility function for the
Questionnair e on the assessment of avoided death
I n 2 10 0, nu mb e r o f d e a t h b y a respiratory disease and
circulatory organ disease will incr ease by 4.9 mil lion by global
warming in the reference case while it is 3.82 mill ion when
carbon concentration is stabilized.
Th en ho w do you ev aluate th e value of the avoidance of the
above 1.09 mil lion death? Please an swer the value per death in
1 0 th ou s an d J a p an e s e yen .
event (1)-(4). For event (5),
since
the
utility
of
risk
aversion can be a nonlinear
function
of
the
occurrence
probability, we employ linear
10
50
100
500
1,000
5,000
10,000
50,000 100,000
+―――+―――+―――+―――+―――+―――+―――+―――+
Figure 8 Questionnaire on VOSL of health effects by
warming
function of probability, inverse of probability and other po wer function form. However, these
three types prov ided similar results with respect to th e preferen ce among stabilization
scenario s. Figure 9 exhibit the results on the ev aluation of net benefit of carbon control
policies by three expert groups as well as the total average values. Although th e individual
answers vary so broadly and it is not easy to find the consensus, the average assessments of
- 357 -
the group give similar tendency where 650ppmv is mo st preferable in focusing on th e above
five events.
4.2 Second stage including all fa ctors
Since th e results in the first stage ev aluated the selected five factors, th e experts are
requested to examine all other impact factors as well as the sp atial and temporal distribution
of impacts shown in the "Scoreboard" in the Appendix.
Figure 10 exhibits the nu mber of
12
experts and their preference level of
10
carbon control policy in Stage-1 and
8
Stage-2.
6
As
can
be
seen,
many
4
experts shift to 550ppmv stabilization
2
policy. They pointed out that the risk
0
on th e ex tre me cli mate events such as
typhoon,
flood
and
drought
Ref
Ref-650
650
are
i mportant even if the forecasting of
their occurrence is difficult.
650-550
Stage-1
550
550-450
450
Stage-2
Figure 10 Histogram on th e experts' preference level
5. Conclusion and future works
The PHOENIX project for the past five years have developed various models including
long term climate mo del, agriculture production model and mu lti-regional mu lti-sectoral
dynamic optimization energy-economy model investigating th e scientific knowledge on the
global warming impacts and mitigation options. In the final year, we propose the integrated
assessment procedure to evaluate the costs and impacts. Although th e final examination on
the expert judgment provides the diversity and variety of the value judg ment on th e warming
i mpacts and mitigation costs rather than the agreement on the judgment, still it clarifies the
(1)
PHO NIX
pro vides
consistent
assessme nt
fro m
long-term
the
the
process
uncertain
impacts of glob al warming to th e
short
term
control
impacts
policy
of
including
GHG
the
international industry structure
changes.
(2) The developments of mo st
preferable and rational energy
Net benefit (billion US1990$ per year)
ground of debate and consensu s on the carbon control target.
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
-2,000
Ref
S650
S550
S450
-3,000
-4,000
-5,000
Expert Group-A
Expert Group-B
Expert Group-C
All Experts
Figure 9 Evaluation of net benefit of carbon control
policies
- 358 -
strategies will be addressed in detail.
(3) In the short- to mi ddle- term, the mo st preferable technology development scenarios are
generated taking in to account the distribution of in dustries and trade structure.
PHOENIX project views the current situation on climate change investigations and
remaining issues. For the assessment of policy and techno logy actions, it will be needed to
extract and how to solve the current and th e future bottlenecks to imple ment the strategies. In
the next stage, mo re detailed technological and societal structural ch anges should be
addressed in the long term scenarios.
Reference
1) IPCC, Third Assessme nt Report, WG-I – WG3, Cambridge Univ. Press, 2001
2) http://kyousei.aesto.or.jp/~k021open/ind ex-e.htm
3) ExternE, "Externality of En ergy: Vol.7 Globa1 Warming Damages", EU, 1998, available
fro m http://www.externe.info/
- 359 -
Emission path and global warming impacts
Reference
- CO2 emission [GtC/yr]
CO2 emission
2050
10.8
- Atmospheric concentration [ppmv]
2050
CO2concentration
463
CO2 equivalent
545
GHG concentration
Emission path
2100
15.6
2150
22.4
2100
613
2150
840
828
1240
(*) The emission scenarios on non-carboon GHGs are assumed constant.
(**) Atmospheric GHG concentraion stabilizes at 650 ppmv after 2200.
Atmospheric temperature in nothern hemisphere rises more than that of global mean.
Temperatur
e
Atmospheric temperature rise relative to 1990 value [℃]
Global mean
Climate changes
2050
1.43
2100
2.85
2150
4.27
Precepitation in equator area increases remarkably while that in Northamerican area decreases.
Precipitation increase relative to 1990 value [mm/day]
2050
2100
2150
Global mean
0.06
0.13
0.22
Precipitation
TypeⅡ
THC
- THC collapse probability 57-93%
- Sea level rise relative to 1990 value [cm]
Sea level
rise and
impacts in
costal area
Global
warming
impacts
Type I
Global mean
2050
24
2100
50
2150
79
- Changes in water-stressed population relative to no climate change case in million
Increase of water-stressed people Decrease of water-stressed people
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
1466
1178
1181
2287
3090
3406
North-West Pacific- E
70
66
70
619
610
663
Water
South Asia
799
368
365
1079
1765
1880
resources
Middle Europe
84
94
97
21
5
23
South America
77
97
107
18
20
24
Alabic peninsula
72
87
85
55
84
95
Water stressed population in North-West Pacific, East Asia, South Asia etc. is larger than those under mitigated water stress while this
direction is opposite in Middle Europe, South America etc.
- Land
Decrease of species in percent
2050
2100
2150
Biosphere
(*) Decrease of species due to factors other than global warming (e.g. land
World total
4
7.9
12
use changes) is estimated 12% in 2050.
- Ocean
Possible risks on decrease of coral leaf, variety of species, accelaration of species extinction.
- Potential production of wheat
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
19.3
19.2
8.3
USA
-1.1
-2.6
-3.6
Russia
2.7
2.4
2.0
China
4.5
5.4
4.6
Japan
0.0
0.0
-0.1
(*) Negative impacts in Australia, Europe etc.
Impacts of global warming in Africa and Latin America are relatively larger than others while progress in agricultural productivity is also
Agriculture
large. Thus, total number varies broadly by region.
- Potential production of rice
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
39.1
52.5
52.1
USA
1.1
-0.2
-3.2
Russia
2.2
3.8
4.5
China
5.7
8.8
9.4
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia.
- Heat stress
Increase of death from base line by climate changes from base case in 10 thousands (in percentage)
Heat stress + Cold stress
Heat stress
Cold stress
2050
2100
2150
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
-93 (-2)
-197 (-2)
-324 (-3)
159
490
846
-252
-687
-1170
India
7 (0.7)
21 (1)
37 (2)
37
113
193
-30
-91
-155
Sahara and
6 (0.6)
25 (1)
46 (2)
28
105
184
-22
-80
-138
southern Africa
Middle East and
-4 (-0.5)
-12 (-0.8)
-20 (-1)
35
112
194
-39
-124
-214
North Africa
China
-54 (-5)
-147 (-10) -249 (-15)
8
28
51
-62
-174
-300
OECD
Health
-37 (-6)
-71 (-13)
-117 (-19)
12
23
38
-49
-94
-155
Death by heat stress increases in India, Sahara and other south Africa regions while those by cold stress decreases in China and other
OECD countries.
- Disease by vector infection
Increase of death from base line by climate changes in 10 thousands (in percentage)
Sahara and
2050
2100
2150
southern africa
Maralia
10.2 (11)
0 (0)
0 (0)
Dengue fever
0.06 (49)
0 (0)
0 (0)
2100
7.94
2150
7.85
(*) 8.06 in 2000
2150
3.63
1.81
2.24
1.12
5.43 in 2000
2.76 in 2000
3.35 in 2000
1.71 in 2000
No change appears in other regions.
- pH
pH
2050
8.01
Acidificatio - Saturation level of CaCO3 (Calcite and Aragonite)
n of Ocean
2050
2100
CaCO3 (Calcite), EQ
5.02
4.41
CaCO3 (Calcite), N60
2.55
2.22
CaCO3 (Aragonite), EQ
3.10
2.73
CaCO3 (Aragonite), N60
1.57
1.37
- 360 -
Saturation level decreases in low temperature area
and this phenomenon affects marine species with
shells/bones. Upper limt of saturation level is 1.0 to
grow shells/bones for them.
Emission path and global warming impacts
S650 (1/2)
S650
- CO2 emission [GtC/yr]
CO2 emission
2050
10.0
- Atmospheric concentration [ppmv]
2050
CO2concentration
458
CO2 equivalent
535
GHG concentration
Emission path
2100
10.6
2150
8.5
2100
553
2150
616*
709
787
(*) The emission scenarios on non-carboon GHGs are assumed constant.
(**) Atmospheric GHG concentraion stabilizes at 650 ppmv after 2200.
Atmospheric temperature in nothern hemisphere rises more than that of global mean.
Temperatur
e
Atmospheric temperature rise relative to 1990 value [℃]
Global mean
Climate changes
2050
1.43
2100
2.47
2150
3.09
Precepitation in equator area increases remarkably while that in Northamerican area decreases.
Precipitation increase relative to 1990 value [mm/day]
2050
2100
2150
Global mean
0.06
0.11
0.14
Precipitation
TypeⅡ
THC
- THC collapse probability 57-93%
- Sea level rise relative to 1990 value [cm]
Sea level
rise and
impacts in
costal area
Global
warming
impacts
Type I
Global mean
2050
23
2100
46
2150
65
- Changes in water-stressed population relative to no climate change case in million
Increase of water-stressed people Decrease of water-stressed people
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
1469
1240
1213
2285
3023
3311
70
65
69
619
610
663
North-West Pacific- E
Water
South Asia
800
430
373
1079
1703
1833
resources
Middle Europe
84
94
98
21
5
22
South America
77
95
100
18
20
21
Alabic peninsula
72
92
88
55
80
93
Water stressed population in North-West Pacific, East Asia, South Asia etc. is larger than those under mitigated water stress while this
direction is opposite in Middle Europe, South America etc.
- Land
Decrease of species in percent
2050
2100
2150
Biosphere
(*) Decrease of species due to factors other than global warming (e.g. land
World total
3.9
6.8
8.4
- Ocean
use changes) is estimated 12% in 2050.
Possible risks on decrease of coral leaf, variety of species, accelaration of species extinction.
- Potential production of wheat
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
19.6
21.6
19.6
USA
-1.1
-2.3
-2.9
Russia
2.7
2.5
2.2
China
4.5
5.5
5.3
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia, Europe etc.
Impacts of global warming in Africa and Latin America are relatively larger than others while progress in agricultural productivity is also
Agriculture
large. Thus, total number varies broadly by region.
- Potential production of rice
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
39.0
52.7
55.1
USA
1.1
0.4
-0.7
Russia
2.2
3.4
4.0
China
5.7
8.5
8.9
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia.
- Heat stress
Increase of death from base line by climate changes from base case in 10 thousands (in percentage)
Heat stress + Cold stress
Heat stress
Cold stress
2050
2100
2150
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
-90 (-2)
-170 (-2)
-234 (-2)
155
423
613
-245
-593
-847
India
7 (0.6)
18 (1)
27 (2)
36
97
139
-29
-79
-112
Sahara and
6 (0.6)
22 (1)
33 (2)
27
91
134
-22
-69
-100
southern Africa
Middle East and
-4 (-0.4)
-10 (-0.7)
-15 (-0.9)
34
97
140
-38
-107
-155
North Africa
China
-53 (-5)
-126 (-9)
-180 (-11)
8
24
37
-60
-151
-217
OECD
Health
-36 (-6)
-61 (-11)
-85 (-14)
12
20
28
-48
-81
-112
Death by heat stress increases in India, Sahara and other south Africa regions while those by cold stress decreases in China and other
OECD countries.
- Disease by vector infection
Increase of death from base line by climate changes in 10 thousands (in percentage)
Sahara and
2050
2100
2150
southern africa
Maralia
9.9 (11)
0 (0)
0 (0)
Dengue fever
0.06 (48)
0 (0)
0 (0)
2100
7.96
2150
7.92
(*) 8.06 in 2000
2150
4.22
2.12
2.61
1.31
5.43 in 2000
2.76 in 2000
3.35 in 2000
1.71 in 2000
No change appears in other regions.
- pH
pH
2050
8.01
Acidification - Saturation level of CaCO3 (Calcite and Aragonite)
of Ocean
2050
2100
CaCO3 (Calcite), EQ
5.03
4.59
CaCO3 (Calcite), N60
2.55
2.31
CaCO3 (Aragonite), EQ
3.12
2.83
CaCO3 (Aragonite), N60
1.58
1.43
- 361 -
Saturation level decreases in low temperature area
and this phenomenon affects marine species with
shells/bones. Upper limt of saturation level is 1.0 to
grow shells/bones for them.
Ap
S650 (2/2)
S650
Global warming impacts listed in the below will become more serious as the atmospheric temperature rises. However, curent researches provide
insufficient information to assess them quantitatively.
WAIS
Type Ⅱ
- The collapse of WAIS causes 4-6m sea level rise while its probability in 21 century is low.
- Changes in wood supply potential
Forestry
Wood supply potential will increase as the CO2 concenration rises when the effects of forest fire and damages by insects,
which can be accelarated be the warming, are excluded.
- Impacts of lower pH and sea temperature rise
Fishery
- Fishery can be altered largely due to The change/decrease of plankton habitat area.
- Pasture production and livestock production
Impact direction
Atmospheric
CO2 concentraion
temperature rise less
increase
+
High humidity and warm area
+
Dry/semi dry area
- Livestock productivity/insemination rate
Livestock Heat stress decreases the live stock productivity and insemination rate.
industry - Feed Intake changes
Cow and Ox
Poultry
20℃
100%
100%
28℃
75%
N.A.
33℃
50%
65%
- Infection
Vector infection by ticks can cause productivity loss.
- Tourism
World total impact on tourism by climate change will be small although local imcats appear. Economic growth will influence
- Insurance
Damages and disasters by climate change can increase the repayment of insurance. It is estimated that the premium on
the typhoon disaster insurance inthe gloabal warming case requires 60% higher than that in the mitigated case.
Other
industries Trade
Climate change can increase the loss of trade infrastructure, change of trading root and higher transportation cost.
- Retail and other commerce services
Typhoon and sea level rise can cause local damages in certain regions.
Global
warming
impacts
- Extreme high temperature
Type I
Highest/lowert temperature may rise globally.
- Extreme high precipitation
Heavy rain can occur more frequently.
No rain day can increase in the Mediterranean Sea and southern Africa area.
Extreme
climate
events
- El Neno
El Neno occurrence frequency can increase in spite of its low probability.
- Tropical low pressure
Although total frequency my decrease, strong low pressure with more than 45m/s maximum wind verocity can occur more
frequently.
- Asian monsoon
Asian monsoon can grow stronger and cause more flood.
Precipitaion pattern can be altered and thus cause both positive and negative impactsin agriculture.
Occurrence pattern of Asian monsoon can change.
- Greenland ice sheet
Greenland ice sheet will melt continuously and thus sea level rises. This effect is already included in the above "sea level
It will take more than thousand years for the Greenland ice sheet to melt down according to a literature.
- Icebergs in the arctic sea
Average iceberg area decreases according to the global warming.
Others
- Permanent frozen soil
Permanent frozen soil is already melting in the polar area, north Asian region and north America.
The melt down of permanent frozen soil can cause ground sinkage and cave-in. Buildings and transportaion infrastructure
In the no mitigation case, permanent frozen land in the north hemisphere decreases in 20-35% in 2050.
It is reported thatn 11% of tundra changes to forest and 14-23% of polar forest does to tundra in 2050.
- Glacier
Glacier will decrease according to the global warming and can cause sea level rise while its contribution level wil decrease
Water resource can be damaged according to the decrease of glacier in Bolivia, Ecoador and Peru.
Risk of flood by the collapse of glacier lake (Nepal and Bhutan) is suggested.
- Marginal abatement cost of CO2 emission
- Sectoral GDP loss (World total)
[$/tC]
Loss relative to reference case in %
marginal abatement cost
2050
2100
2150
27
122
222
- Increase of energy system costs
Increase from reference case in billion$/yr (%)
Emission
reduction
from
reference
scenario
Energy system costs
2027 2047
Whole industry -0.1
0.5
Energy intensive
industry
0
0.7
Construction
0.1
1.1
Transportation
0.2
0.3
2050
2100
2150
Services
-0.1
0.4
-100 (-2)
230 (2)
3040 (24)
Energy
-0.2
0.5
Others
0
0.7
Mitigation
- Primary energy demand
Increase from reference case in Gtoe/yr (%)
2050
2100
2150
Fossil fuels
-0.8 (-6)
-4.7 (25)
-9.0 (-35)
Nuclear power
0.1 (92)
1.5 (33)
0.3 (6)
Renewable energy
0.2 (2)
1.5 (14)
6.5 (59)
- Regional GDP loss (Whole industry)
Loss relative to reference case in %
2027 2047
World total
-0.1
0.5
0
0.5
Asia (excl. Japan -0.3
Other region 0.1
0.5
1.3
0.4
0.5
OECD90
FSU/EEU
- 362 -
Emission path and global warming impacts
Emission path and global warming impacts
S550 (1/2)
S550
- CO2 emission [GtC/yr]
CO2 emission
2050
9.0
- Atmospheric concentration [ppmv]
2050
CO2concentration
451
CO2 equivalent
521
GHG concentration
Emission path
2100
7.9
2150
4.8
2100
517
2150
550
645
674
(*) The emission scenarios on non-carboon GHGs are assumed constant.
(**) Atmospheric GHG concentraion stabilizes at 650 ppmv after 2200.
Atmospheric temperature in nothern hemisphere rises more than that of global mean.
Temperatur
e
Atmospheric temperature rise relative to 1990 value [℃]
Global mean
Climate changes
2050
1.33
2100
2.22
2150
2.60
Precepitation in equator area increases remarkably while that in Northamerican area decreases.
Precipitation increase relative to 1990 value [mm/day]
2050
2100
2150
Global mean
0.06
0.10
0.11
Precipitation
TypeⅡ
THC
- THC collapse probability 57-93%
- Sea level rise relative to 1990 value [cm]
Sea level
rise and
impacts in
costal area
Global
warming
impacts
Type I
Global mean
2050
23
2100
43
2150
59
- Changes in water-stressed population relative to no climate change case in million
Increase of water-stressed people Decrease of water-stressed people
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
1443
1238
1299
2285
3016
3220
70
64
69
619
610
663
North-West Pacific- E
Water
South Asia
800
435
444
1079
1698
1763
resources
Middle Europe
75
94
97
21
5
21
South America
77
88
97
18
20
21
Alabic peninsula
72
92
95
55
79
85
Water stressed population in North-West Pacific, East Asia, South Asia etc. is larger than those under mitigated water stress while this
direction is opposite in Middle Europe, South America etc.
- Land
Decrease of species in percent
2050
2100
2150
Biosphere
(*) Decrease of species due to factors other than global warming (e.g.
World total
3.8
6.1
7.2
land use changes) is estimated 12% in 2050.
- Ocean
Possible risks on decrease of coral leaf, variety of species, accelaration of species extinction.
- Potential production of wheat
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
19.9
23.2
23.2
USA
-1.1
-2.1
-2.4
Russia
2.7
2.6
2.6
China
4.6
5.4
5.4
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia, Europe etc.
Impacts of global warming in Africa and Latin America are relatively larger than others while progress in agricultural productivity is also
Agriculture
large. Thus, total number varies broadly by region.
- Potential production of rice
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
38.8
52.5
55.7
USA
1.1
0.6
0.2
Russia
2.1
3.0
3.6
China
5.6
8.3
8.6
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia.
- Heat stress
Increase of death from base line by climate changes from base case in 10 thousands (in percentage)
Heat stress + Cold stress
Heat stress
Cold stress
2050
2100
2150
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
-86 (-1.5) -153 (-1.8) -196 (-2.0)
148
382
513
-234
-535
-710
India
7 (0.6)
17 (1)
23 (1)
34
88
117
-28
-71
-94
Sahara and
6 (0.6)
20 (1)
28 (1)
26
82
112
-21
-62
-84
southern Africa
Middle East and
-4 (-0.4)
-9 (-0.6)
-12 (-0.7)
32
87
117
-36
-97
-130
North Africa
Health
China
-51 (-5)
-114 (-8)
-151 (-9)
7
22
31
-58
-136
-182
OECD
-35 (-6)
-55 (-10)
-71 (-11)
11
18
23
-46
-73
-94
Death by heat stress increases in India, Sahara and other south Africa regions while those by cold stress decreases in China and other
OECD countries.
- Disease by vector infection
Increase of death from base line by climate changes in 10 thousands (in percentage)
Sahara and
2050
2100
2150
southern africa
Maralia
9.5 (10)
0 (0)
0 (0)
Dengue fever
0.06 (46)
0 (0)
0 (0)
2100
7.98
2150
7.95
(*) 8.06 in 2000
2150
4.47
2.25
2.76
1.39
5.43 in 2000
2.76 in 2000
3.35 in 2000
1.71 in 2000
No change appears in other regions.
- pH
pH
2050
8.02
Acidificatio - Saturation level of CaCO3 (Calcite and Aragonite)
n of Ocean
2050
2100
CaCO3 (Calcite), EQ
5.06
4.70
CaCO3 (Calcite), N60
2.56
2.37
CaCO3 (Aragonite), EQ
3.12
2.90
CaCO3 (Aragonite), N60
1.58
1.47
- 363 -
Saturation level decreases in low temperature area
and this phenomenon affects marine species with
shells/bones. Upper limt of saturation level is 1.0 to
grow shells/bones for them.
S550 (2/2)
S550
Global warming impacts listed in the below will become more serious as the atmospheric temperature rises. However, curent researches provide
insufficient information to assess them quantitatively.
WAIS
- The collapse of WAIS causes 4-6m sea level rise while its probability in 21 century is low.
Type Ⅱ
- Changes in wood supply potential
Forestry
Fishery
Wood supply potential will increase as the CO2 concenration rises when the effects of forest fire and damages by insects,
which can be accelarated be the warming, are excluded.
- Impacts of lower pH and sea temperature rise
- Fishery can be altered largely due to The change/decrease of plankton habitat area.
- Pasture production and livestock production
Impact direction
Atmospheric
CO2 concentraion
temperature rise less
increase
+
High humidity and warm area
+
Dry/semi dry area
- Livestock productivity/insemination rate
Livestock Heat stress decreases the live stock productivity and insemination rate.
industry - Feed Intake changes
Cow and Ox
Poultry
20℃
100%
100%
28℃
75%
N.A.
33℃
50%
65%
- Infection
Vector infection by ticks can cause productivity loss.
- Tourism
World total impact on tourism by climate change will be small although local imcats appear. Economic growth will influence
- Insurance
Damages and disasters by climate change can increase the repayment of insurance. It is estimated that the premium on
the typhoon disaster insurance inthe gloabal warming case requires 60% higher than that in the mitigated case.
Other
industries - Trade
Climate change can increase the loss of trade infrastructure, change of trading root and higher transportation cost.
- Retail and other commerce services
Typhoon and sea level rise can cause local damages in certain regions.
Global
warming
impacts
- Extreme high temperature
Type I
Highest/lowert temperature may rise globally.
- Extreme high precipitation
Heavy rain can occur more frequently.
No rain day can increase in the Mediterranean Sea and southern Africa area.
Extreme
climate
events
- El Neno
El Neno occurrence frequency can increase in spite of its low probability.
- Tropical low pressure
Although total frequency my decrease, strong low pressure with more than 45m/s maximum wind verocity can occur more
frequently.
- Asian monsoon
Asian monsoon can grow stronger and cause more flood.
Precipitaion pattern can be altered and thus cause both positive and negative impactsin agriculture.
Occurrence pattern of Asian monsoon can change.
- Greenland ice sheet
Greenland ice sheet will melt continuously and thus sea level rises. This effect is already included in the above "sea level
It will take more than thousand years for the Greenland ice sheet to melt down according to a literature.
- Icebergs in the arctic sea
Average iceberg area decreases according to the global warming.
Others
- Permanent frozen soil
Permanent frozen soil is already melting in the polar area, north Asian region and north America.
The melt down of permanent frozen soil can cause ground sinkage and cave-in. Buildings and transportaion infrastructure
In the no mitigation case, permanent frozen land in the north hemisphere decreases in 20-35% in 2050.
It is reported thatn 11% of tundra changes to forest and 14-23% of polar forest does to tundra in 2050.
- Glacier
Glacier will decrease according to the global warming and can cause sea level rise while its contribution level wil decrease
Water resource can be damaged according to the decrease of glacier in Bolivia, Ecoador and Peru.
Risk of flood by the collapse of glacier lake (Nepal and Bhutan) is suggested.
- Marginal abatement cost of CO2 emission
- Sectoral GDP loss (World total)
[$/tC]
Loss relative to reference case in %
marginal abatement cost
2050
2100
2150
36
214
312
- Increase of energy system costs
Increase from reference case in billion$/yr (%)
Emission
reduction
from
reference
scenario
Energy system costs
2027 2047
Whole industry
0
Energy intensive
industry
0.1
0.9
1.4
Construction
0.5
1.8
Transportation
0.2
0.6
2050
2100
2150
Services
-0.1
0.7
150 (3)
1180 (13)
4420 (35)
Energy
-0.2
0.8
Others
0.2
1.2
Mitigation
- Primary energy demand
Increase from reference case in Gtoe/yr (%)
2050
2100
2150
Fossil fuels
-1.6 (-11)
-6.2 (-33)
-10.0 (39)
Nuclear power
0.4 (390)
1.7 (35)
1.1 (19)
Renewable energy
0.6 (8)
1.9(18)
8.4 (76)
- Regional GDP loss (Whole industry)
Loss relative to reference case in %
2027 2047
World total
OECD90
FSU/EEU
0
0.1
0.5
Asia (excl. Japan -0.3
Other region 0.1
- 364 -
0.9
0.9
2.5
0.6
0.9
Emission path and global warming impacts
Emission path and global warming impacts
S450
S450 (1/2)
- CO2 emission [GtC/yr]
CO2 emission
2050
6.0
- Atmospheric concentration [ppmv]
2050
CO2concentration
431
CO2 equivalent GHG
482
concentration
Emission path
2100
3.8
2150
3.3
2100
450
2150
450
536
544
(*) The emission scenarios on non-carboon GHGs are assumed constant.
(**) Atmospheric GHG concentraion stabilizes at 650 ppmv after 2200.
Atmospheric temperature in nothern hemisphere rises more than that of global mean.
Temperatur
e
Atmospheric temperature rise relative to 1990 value [℃]
Global mean
Climate changes
2050
1.17
2100
1.68
2150
1.91
Precepitation in equator area increases remarkably while that in Northamerican area decreases.
Precipitation increase relative to 1990 value [mm/day]
2050
2100
2150
Global mean
0.05
0.07
0.08
Precipitation
TypeⅡ
THC
- THC collapse probability 57-93%
- Sea level rise relative to 1990 value [cm]
Sea level
rise and
impacts in
costal area
Global
warming
impacts
Global mean
2050
21
2100
36
2150
47
- Changes in water-stressed population relative to no climate change case in million
Increase of water-stressed people Decrease of water-stressed people
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
1442
1229
1307
2285
2987
3183
70
63
66
619
610
663
North-West Pacific- Ea
Water
South Asia
800
456
472
1078
1676
1734
resources
Middle Europe
75
88
97
21
5
21
South America
77
88
91
18
20
20
Alabic peninsula
72
94
97
55
77
84
Water stressed population in North-West Pacific, East Asia, South Asia etc. is larger than those under mitigated water stress while this
direction is opposite in Middle Europe, South America etc.
- Land
Decrease of species in percent
2050
2100
2150
Biosphere
(*) Decrease of species due to factors other than global warming (e.g. land use
World total
3.4
4.8
5.4
changes) is estimated 12% in 2050.
- Ocean
Possible risks on decrease of coral leaf, variety of species, accelaration of species extinction.
- Potential production of wheat
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
21.2
26.6
27.6
USA
-1.0
-1.4
-1.9
Russia
2.7
2.6
2.5
China
4.6
5.6
5.5
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia, Europe etc.
Impacts of global warming in Africa and Latin America are relatively larger than others while progress in agricultural productivity is also
Agriculture
large. Thus, total number varies broadly by region.
- Potential production of rice
Increase in percent ; 1990 based
2050
2100
2150
World total
38.2
52.0
55.4
USA
0.9
1.0
0.9
Russia
1.9
2.4
2.7
China
5.6
7.8
8.0
Type I
Japan
0.0
0.0
0.0
(*) Negative impacts in Australia.
- Heat stress
Increase of death from base line by climate changes from base case in 10 thousands (in percentage)
Heat stress + Cold stress
Heat stress
Cold stress
2050
2100
2150
2050
2100
2150
2050
2100
2150
World total
-76 (-1.3) -116 (-1.3) -145 (-1.5)
130
289
379
-206
-405
-523
India
6 (0.5)
13 (0.8)
17 (0.9)
30
66
86
-24
-54
-69
Sahara and southern
5 (0.5)
15 (0.8)
21 (1)
23
62
83
-18
-47
-62
Africa
Middle East and
-3 (-0.4)
-7 (-0.5)
-9 (-0.5)
28
66
87
-32
-73
-96
North Africa
China
-44 (-4)
-86 (-6)
-111 (-7)
6
16
23
-51
-103
-134
Health
OECD
-31 (-5)
-42 (-7)
-52 (-8)
10
14
17
-40
-56
-69
Death by heat stress increases in India, Sahara and other south Africa regions while those by cold stress decreases in China and other
OECD countries.
- Disease by vector infection
Increase of death from base line by climate changes in 10 thousands (in percentage)
Sahara and southern
2050
2100
2150
africa
Maralia
8.6 (9)
0 (0)
0 (0)
Dengue fever
0.05 (41)
0 (0)
0 (0)
2100
8.00
2150
7.99
(*) 8.06 in 2000
Acidificatio - Saturation level of CaCO3 (Calcite and Aragonite)
n of Ocean
2050
2100
CaCO3 (Calcite), EQ
5.12
4.95
CaCO3 (Calcite), N60
2.60
2.51
CaCO3 (Aragonite), EQ
3.16
3.06
CaCO3 (Aragonite), N60
1.60
1.55
2150
4.83
2.44
2.98
1.51
5.43 in 2000
2.76 in 2000
3.35 in 2000
1.71 in 2000
No change appears in other regions.
- pH
pH
2050
8.02
- 365 -
Saturation level decreases in low temperature area and
this phenomenon affects marine species with
shells/bones. Upper limt of saturation level is 1.0 to
grow shells/bones for them.
S450 (2/2)
S450
The impact values in the below are extracted from literature. It should be noted that global warming impacts would become more serious than the
expected today when the atmospheric temperature rises. However, current researches provide few information to assess them quantitatively.
WAIS
- The collapse of WAIS causes 4-6m sea level rise while its probability in 21 century is low.
Type Ⅱ
- Changes in wood supply potential
Forestry
Wood supply potential will increase as the CO2 concenration rises when the effects of forest fire and damages by insects,
which can be accelarated be the warming, are excluded.
- Impacts of lower pH and sea temperature rise
Fishery
- Fishery can be altered largely due to The change/decrease of plankton habitat area.
- Pasture production and livestock production
Impact direction
Atmospheric
CO2 concentraion
temperature rise less
increase
+
High humidity and warm area
+
Dry/semi dry area
- Livestock productivity/insemination rate
Livestock Heat stress decreases the live stock productivity and insemination rate.
industry - Feed Intake changes
Cow and Ox
Poultry
20℃
100%
100%
28℃
75%
N.A.
33℃
50%
65%
- Infection
Vector infection by ticks can cause productivity loss.
- Tourism
World total impact on tourism by climate change will be small although local imcats appear. Economic growth will influence
- Insurance
Damages and disasters by climate change can increase the repayment of insurance. It is estimated that the premium on
the typhoon disaster insurance inthe gloabal warming case requires 60% higher than that in the mitigated case.
Other
industries - Trade
Climate change can increase the loss of trade infrastructure, change of trading root and higher transportation cost.
- Retail and other commerce services
Typhoon and sea level rise can cause local damages in certain regions.
Global
warming
impacts
- Extreme high temperature
Type I
Highest/lowert temperature may rise globally.
- Extreme high precipitation
Heavy rain can occur more frequently.
No rain day can increase in the Mediterranean Sea and southern Africa area.
Extreme
climate
events
- El Neno
El Neno occurrence frequency can increase in spite of its low probability.
- Tropical low pressure
Although total frequency my decrease, strong low pressure with more than 45m/s maximum wind verocity can occur more
frequently.
- Asian monsoon
Asian monsoon can grow stronger and cause more flood.
Precipitaion pattern can be altered and thus cause both positive and negative impactsin agriculture.
Occurrence pattern of Asian monsoon can change.
- Greenland ice sheet
Greenland ice sheet will melt continuously and thus sea level rises. This effect is already included in the above "sea level
It will take more than thousand years for the Greenland ice sheet to melt down according to a literature.
- Icebergs in the arctic sea
Average iceberg area decreases according to the global warming.
Others
- Permanent frozen soil
Permanent frozen soil is already melting in the polar area, north Asian region and north America.
The melt down of permanent frozen soil can cause ground sinkage and cave-in. Buildings and transportaion infrastructure
In the no mitigation case, permanent frozen land in the north hemisphere decreases in 20-35% in 2050.
It is reported thatn 11% of tundra changes to forest and 14-23% of polar forest does to tundra in 2050.
- Glacier
Glacier will decrease according to the global warming and can cause sea level rise while its contribution level wil decrease
Water resource can be damaged according to the decrease of glacier in Bolivia, Ecoador and Peru.
Risk of flood by the collapse of glacier lake (Nepal and Bhutan) is suggested.
- Marginal abatement cost of CO2 emission
- Sectoral GDP loss (World total)
[$/tC]
Loss relative to reference case in %
marginal abatement cost
2050
2100
2150
146
287
365
2027 2047
Whole industry 2.1
Energy intensive
industry
- Increase of energy system costs
Increase from reference case in billion$/yr (%)
2050
Emission
reduction
from
reference
scenario
Energy system costs
360 (8)
2100
2150
2750 (30)
4740 (37)
Mitigation
16
3.8
20.1
Construction 12.6
Transportation 1.5
Services
0.5
26.6
10.7
14.2
Energy
1.3
14.8
Others
5.9
20.5
- Primary energy demand
Increase from reference case in Gtoe/yr (%)
2050
2100
2150
Fossil fuels
-4.6 (33)
-7.4 (39)
-9.1 (36)
Nuclear power
2.4 (2200)
1.8 (38)
1.5 (25)
Renewable energy
1.0 (13)
5.2 (49)
8.5 (77)
- Regional GDP loss (Whole industry)
Loss relative to reference case in %
2027 2047
World total
OECD90
FSU/EEU
2.1
3.1
1.8
Asia (excl. Japan 0.3
Other region 0.6
- 366 -
16
15.2
15.1
18.6
13.8
Biosketch
Shu nsuke Mori
Current Position
RITE Chief Researcher, System Analysis Group
Professor, Department of Industrial Ad ministration,
Faculty of Science and Techno logy,
Tokyo University of Science
Born in 1953. He received Doctor of Engineering from Tokyo University in 1981. Research
Assistant of Industrial Ad ministration Department, Tokyo University of Science in 1981,
Associate Professor in 19 89 , and Professor in 1994. Chie f Researcher, Syste ms Analysis
Group of Research Institute of Innovative Technology for the Earth since 2002. Invited
Researcher of Economic Planning Agency, Science Researcher of In ternational Institute fo r
Applied
Systems
Analysis
for
1986-1987.
Lead
Authore
of
IPCC-SRES
and
IPCC-TAR(WG3). His main field is system engineering, assessment of global warming,
model development of environmental technologies
Main Publications (in English)
Choice
for
Global
" Global Environ mental Secu rity", "Society in 2050 -
Sustainability – ", “ Emissions Scenarios”, “ Climate Change 2001
Mitigation” etc.
- 367 -
概要と成果
森
俊介
Project PHOENIX 2002 – 2006 最 終 報 告 (RITE
システム研究グループ,
東京理科大学理工学部)
1. は じ め に
京 都 議 定 書 は 2005 年 に 発 効 し 、温 暖 化 対 策 も 実 行 段 階 に 入 っ た 。し か し な が ら 、各
国とも温暖化対策の重要さには合意しつつも、具体的な実行となると決して足並みは
そろっていないのが現状である。実際、米国は京都プロトコルから離脱したままであ
り戻る様子はない。また、インド、中国と言う大きな排出国も、削減には消極的であ
る 。こ れ に 対 し 、 EU は 京 都 プ ロ ト コ ル の 先 と し て 、温 度 上 昇 を 産 業 革 命 前 の 2 度 以 下
に 抑 え る 提 案 を 行 っ て い る 。さ ら に 2007 年 1 月 1 0 日 に は 、CO 2 排 出 の 20% 削 減 を 202 0
年までに独自に行なうという提案を行った。
わが国は、このような状況の中で、情報を整理し、どのような対策が実効的かつ実
施 可 能 か を 探 ら ね ば な ら な い 。 本 プ ロ ジ ェ ク ト PHOENIX(Paths toward Harmony Of
Environment, Natural resources and Industry complex) は 、 経 済 産 業 省 「 地 球 環 境 国
際 研 究 推 進 事 業 」の 一 環 と し て 2002 年 よ り 5 ヵ 年 の プ ロ ジ ェ ク ト と し て 開 始 さ れ 、本
年 3 月 に 終 了 す る も の で あ り 、 21 世 紀 半 ば 頃 ま で の 世 界 と 日 本 の 総 合 的 な 地 球 温 暖 化
対応策を提示することを目的としている。
本報告では、プロジェクトの概要と成果の報告を行なう。
2. 総 合 評 価 の 必 要 性 と プ ロ ジ ェ ク ト PHOENIX の 構 成
温暖化対策を合理的かつ最適に定めるには、当然ながら温暖化の科学的知見に基づ
か ね ば な ら な い 。 IPCC は 、 1990 年 以 来 3 度 に わ た り 評 価 報 告 書 を 取 り ま と め て き た 。
200 1 年 の 第 3 次 評 価 報 告 書 は 、 気 候 科 学 、 影 響 と 脆 弱 性 、 緩 和 評 価 の 3 WG か ら 構 成
され、現在第 4 次評価報告書の作成が進行中である。機構化学者は、高解像度のモデ
ルの開発と改良により、気候変動問題の様々な疑問点に答えようとしてきた。しかし
ながら、かりに温暖化の進行についての知識の増加に対し、温暖化の影響評価では温
暖 化 以 外 の 人 間 活 動 と の 相 互 関 係 に 依 存 す る と こ ろ が 大 き く 、か つ 地 域 性 も 高 い た め 、
決して直最適なものとはならない。実際、降雨量の変化の影響は、水管理体制の巧拙
により大きく影響を受けることになる。
PHOENIX は ま ず 、 温 暖 化 に 関 連 す る 最 新 の 科 学 的 知 見 を 文 献 よ り 収 集 す る こ と か
ら 始 ま っ た 。 PHOENIX で は 、 特 に 様 々 な 温 暖 化 事 象 と 影 響 の 特 性 に 着 目 し た 。 例 え
ば 、 非 可 逆 的 か つ 破 局 的 な 現 象 と し て 、 例 え ば 熱 塩 循 環 (THC) 停 止 、 西 部 南 極 氷 床
(WAIS) の 崩 壊 、 グ リ ー ン ラ ン ド 氷 床 の 融 解 等 が 指 摘 さ れ て お り 、 し ば し ば 温 暖 化 に 伴
う 降 水 量 の 上 昇 や 農 業 影 響 、空 調 需 要 の 増 大 な ど の 連 続 的 か つ 漸 増 的 な 事 象 (Type - I 事
象 ) に 対 し 、 Type-II 事 象 と 呼 ば れ て き た 。 表 1 は そ の 例 で あ る 。
- 368 -
PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト で 、 様 々 な 気 候 変 動 の 影 響 と 緩 和 コ ス ト 、 適 応 策 等 の 諸 要
因 を 考 慮 し 、 最 も 合 理 的 な CO 2 排 出 策 を 模 索 し よ う と い う も の で 、 こ の 中 に は 気 候 変
動 そ の 影 響 に 加 え 食 糧 需 給 、 エ ネ ル ギ ー ・資 源 戦 略 、 経 済 活 動 な ど を 詳 細 か つ 定 量 的 に
評価しようとするものである。
3. 総 合 評 価 の た め の モ デ ル 開 発
最 初 に 、 PHOENIX で は 文 献 調 査 に よ り 温 暖 化 と そ の 影 響 に 関 す る 調 査 を 行 っ た 。
しかしながら、気候変動政策を定量的に評価するには、何らかのモデル開発が不可欠
であった。ここで、温暖化事象は時間軸が短期から超長期まで多様であることに注意
せ ね ば な ら な い 。 温 暖 化 の 振 興 と 海 面 上 昇 や 氷 床 の 融 解 な ど は 、 言 う ま で も な く 100
年 、時 に は 1000- 10 000 年 の ス パ ン が 必 要 で あ る 。こ れ に 対 し 、経 済 活 動 、特 に 産 業 の
活 動 は 10 年 、 多 く は 数 年 単 位 で あ る 。 エ ネ ル ギ ー ・ 資 源 、 技 術 開 発 、 土 地 利 用 変 化 な
ど は 10 年 単 位 か ら 100 年 の ス パ ン で 語 ら れ る こ と が 多 い 。こ の よ う に 視 点 が 多 様 で あ
る一方、気候変動政策という点これらは一貫していなければならない。そのため、
PHOENIX で は 複 数 の モ デ ル を 開 発 し つ つ 定 量 評 価 可 能 な 情 報 に つ い て は モ デ ル に よ
り整合的に評価を行い、そうでない不確実性の多い部分については、文献情報を体系
的 に 整 理 す る と い う 手 順 を 取 る こ と と し た 。 PHOENIX に お け る モ デ ル ア プ ロ ー チ の
体系を図1に示す。
表 1 温 暖 化 事 象 群 と特 性 ( 1 )
影響及び事象
Ty p e - 1
- 高齢者、都市部貧困層に対する疾病の増加
事象群
- 家畜・野生動物に対するヒートストレスの増
加
- 旅行目的の変化
- 多くの農作物の被害とリスクの増大
- 空調需要の増加
- 害 虫 ・病 原 菌 媒 介 動 物 の 範 囲 の 拡 大 と 増 加
- 洪水、地すべり、雪崩、泥流、表流水による
土壌流出、浸食の増加
- 穀物生産性の低下
- 水 資 源 の 質 ・量 的 低 下
- 森林火災の増加
- 生物種の減少
- 生態圏全体への様々な影響
Ty p e - I I - 熱 塩 循 環 ( TH C ) の 停 止 ,
事象群
- 西 部 南 極 氷 床 ( WA I S ) の 崩 壊
- グリーンランド氷床の融解
- メタンアウトバースト
-
-
- 369 -
特性
連続的な影響水準の
上昇とリスク増加
高い地域性
適応策適用可能性と
費用の多様性
発生と影響レベルの
不確実性
損害と脆弱性の増加
非可逆的と可逆的影
響の混在
不連続的影響
非可逆的影響
発 生 と 、発 生 の 時 期 の
高い不確実性
適応策が期待できな
い
PHOENIX の 手 順 は 、ま
ず評価の基本となる超長
SRESシナリオ、GCM結果、化石燃料資源・原子力導入・社会文脈シナリオ
超長期:
2100~2200
全球温度上昇・温度上昇速度・海面上昇
期 の 温 暖 化 ガ ス (GHG) 排
簡易気候変動モデル
出パスを定義し気候変動
こ と か ら 始 ま る 。
2050~2100
(無 制 約 ケ ー ス )の 他 、 い く
2010~2040
つかのベンチマークとし
て 450ppmv 、 550ppmv 、
650 ppmv 安 定 化 ケ ー ス を
土地利用
短期:
気候変動
た 。こ こ で は 、参 照 ケ ー ス
バイオマスエネル
ギー潜在供給量
産業構造変化、貿易構造変化、
炭素税等部門別政策評価
多地域・多部門エネ
ルギー経済モデル
し延長する作業を行なっ
バイオマスエネルギー評価モデル
た め 、こ こ で は こ れ を 改 訂
・
農作物需給評価モデル
GIS
までのシナリオしかない
地域別気候変動・農業影響・水資源・
海面上昇・生態系等温暖化影響
21
バイオマス供給
IPCC=S R ES で は 210 0 年
DNE- エネルギー技術・マクロ経済モデル
長期:
炭素排出パス・
温度上昇制約・
温度上昇速度制約
の長期シナリオを求める
資源利用・原子力技術開発・炭素隔離技
術・長期エネルギーシナリオ
エネルギー需
給シナリオ・自
然資源制約
適応策・緩和策・総合評価
図1
総合評価システムにおけるモデル適用のフロー
取 り 上 げ た 。 RITE は 独 自
の 気 候 モ デ ル を 持 た な い た め 、 Web 状 に 公 開 さ れ て い る GCM シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果
に 当 て は め る こ と で 気 候 変 動 の 地 域 パ タ ー ン を 推 計 す る 。 2006 年 度 は 、 こ れ ま で の
ECHAM 4 に 代 え 、現 在 最 も 空 間 解 像 度 の 高 い CCSR/NIES/ FRCG C の MIROC-H を 用
いることとした
(2)
。 い く つ か の 将 来 の 気 候 変 動 シ ナ リ オ を 図 2-4 に 例 と し て 示 す 。
こ の 排 出 経 路 と 気 候 変 動 を 前 提 と し て 、次 に 土 地 利 用 ・食 糧 供 給 モ デ ル と DNE- 2 1 モ
デ ル に よ り 、 エ ネ ル ギ ー 長 期 戦 略 を 策 定 す る 。 後 者 に よ り 、 中 期 ー長 期 の エ ネ ル ギ ー 経
済の相互関係が定量的に評価できる。
CO2 emission [GtC/yr]
25
6
Reference
S650
S550
S450
Temperature rise relative to Y1990 [℃]
30
20
15
10
5
0
1990
図 2
2040
2090
Year
2140
2190
220 0 年 ま で の CO 2 排 出 経 路
- 370 -
Reference
S650
S550
S450
5
4
3
2
1
0
1990
図 3
2040
2090
Year
2140
2190
1990 年 か ら の 大 気 平 均 温 度 上 昇
(b) 降 雨 量 変 化 の 地 理 的 分 布
(a) 大 気 温 度 上 昇 地 理 的 分 布
図 4
2100 年 に お け る 気 候 変 動 の 地 理 分 布 推 計 値
(199 0 年 基 準 : 550 ppmv 安 定 化 ケ ー ス ) (GCM:MI ROC-H R, CS=3.0 )
将 来 の 気 候 変 動 を 影 響 が 懸 念 さ れ る 食 糧 需 給 に つ い て は 、 GIS に よ り 詳 細 な 空 間 分
布評価を行なった。図5にそのフローを示す。このモデルは、作付け時期の変化など
気候変動に対する適応策を含む点に特徴がある。これにより、温暖化による潜在生産
力の変化を地域別に評価できる。
経済活動への影響評価を具体的に行
From Climate Model
Historical monthly
Max/Min temperature
な う に は 、産 業 を 細 分 化 し た 多 地 域 多 部
門 動 学 モ デ ル が 必 要 で あ る 。さ ら に こ こ
Monthly average
Temperature
にはエネルギーシナリオとの整合性を
保 つ た め 、ボ ト ム ア ッ プ モ デ ル と 統 合 さ
Historical monthly
Average cloudcover
averagecloud
cover
Monthly average
precipitation
Potential
Evapotranspiration
Evapotranspiration
Max temperature
Min temperature
Actual
Evapotranspiration
れ て い な け れ ば な ら な い 。こ の よ う な 野
心 的 な モ デ ル は 、現 在 ま で 報 告 さ れ て い
Monthly average
wind speed
な い 。 し か し な が ら 、 PHOENIX で は 、
DEAR S モ デ ル を 開 発 し 、こ の 問 題 に 正
Elevation
面 か ら 取 り 組 ん だ 。こ の モ デ ル の 構 成 を
Terrain slopes
図6に示す。
Crop yields
potentials
Soils
Crop
characteristics
こ れ ら の モ デ ル と 収 集 し た 文 献 値 、あ
るいは提供を受けたモデルなどに基づ
図 5 PHOENIX に お け る 土 地 利 用 と 潜 在 的 農 業
き 、温 暖 化 時 の 影 響 や 緩 和 費 用 な ど を 総
覧 で き る よ う 、「 ス コ ア ボ ー ド 」 と 呼 ば れ る 表 に ま と め る こ と と し た 。 こ こ で は 、 そ の
一 部 と し て 参 照 ケ ー ス と 550ppmv 安 定 化 ケ ー ス に つ い て 、付 録 に 示 す こ と と す る 。こ
れ ら の 情 報 に 基 づ き 、 最 終 的 に ど の よ う な CO 2 排 出 政 策 が 好 ま し い か を 、 エ キ ス パ ー
トジャッジメントにより評価していく。
- 371 -
4. エ キ ス パ ー ト ジ ャ ッ ジ メ
Consumption
by Non-energy sector
ン ト に よ る CO 2 排 出 経 路 の
1
評価
Non-energy sector
Consumption
総 合 評 価 は 、望 ま し い CO 2
Non- 2
energy
・
sector
Limt
排出経路の合理的な決定に
1
・
・
N
(=18)
CO2
よ っ て 完 結 す る 。 PHOENIX
で は 、こ れ ま で 、個 別 の 影 響
2
・・・
International
Trade
Final
Consumption
N
・・・
・・・
・・・
・
・
・
・・・
要因を金銭観座右して積み
Coal
上 げ 、緩 和 費 用 と 比 較 す る と
Crude Oil
言 う 手 順 を 取 ら ず 、影 響 、費
Natural Gas
用等をできるだけ総括的に
Solid Fuel
・・・
energy
Liquid Fuel
・・・
system
Gas Fuel
・・・
bottom- up
Others
model
(Nuclear, Hydro etc.)
Electricity
Investment
投資
Capital, Labor
energy consumption
・・・
専門家に掲示して評価を仰
ぐ 手 順 を 進 め て き た 。し か し
International Trade
(Primary Energy Sector)
な が ら 、 専門 家と言え ど
基準年の産
Industrial structure
in base year
業連関構造
Income elasticity of
エネルギー需
energy demand
要の所得弾力性
Appendix に あ る よ う な 莫 大
図 6 PHOENIX に お け る 動 学 的 多 地 域 ・ 多 部 門 モ デ ル
な 情 報 を 一 度 に 見 て 、排 出 経
DEARS の 基 本 構 成
路の相互比較を行なうのは
困難である。そこで、ここではこのエキスパートジャッジメントの段階を 2 つのステ
ップに分割することとした。
4. 1 第 一 ス テ ー ジ : 限 定 し た 影 響 要 因 に 対 す る 定 量 的 評 価
第1のステージでは、限定した影響要因について、温暖化影響と緩和時の影響の差
を酔うお印鑑で比較し相互ウェイトを与える段階、健康影響をもとに金銭換算を行な
う段階、緩和の効用関数を与えネットの便益を算出する段階の 3 ステップからなる。
第 1 ス テ ッ プ で は 、 ま ず 主 要 か つ 定 量 評 価 が 可 能 な 5 影 響 因 子 、 す な わ ち (1) 海 面 上
昇 、 (2) 農 業 影 響 、 (3) 健 康 影 響 、 (4) 生 物 圏 ・ 生 物 種 減 少 、 お よ び (5)THC 崩 壊 を 取 り 上
げ る 。こ こ で 、 Type-II 事 象 で あ る THC 崩 壊 は 、こ れ ま で は 抑 制 を 前 提 と し て き た が 、
気 候 感 度 を は じ め と す る 不 確 実 性 の 下 で は 、 650ppmV 安 定 化 ケ ー ス で も こ の 事 象 が 発
生しない確率もある。また逆のケースもなりたつ。そこで専門家がこのような非可逆
的かつ不確実性が高い場合、そのリスクをどのように評価しているかを調査する意味
で、ここに加えることとした。
具 体 的 に は 、 各 影 響 要 因 に つ い て 参 照 ケ ー ス 時 と あ る CO 2 濃 度 安 定 化 時 ( こ こ で は
550 ppmv 安 定 化 ケ ー ス を 採 用 ) の 影 響 レ ベ ル を 示 し 、一 対 比 較 法 に よ り 要 因 の 緩 和 の 便
益 の 相 対 ウ ェ イ ト を 尋 ね る と い う も の で あ る 。 こ れ は 、 AHP と 同 様 の も の で あ る 。 具
体的な質問の例を図7に示す。
第 2 ステップでは、この相互ウェイトをもとに、各影響因子の影響レベルに対する
金銭換算を行なう。ここで、環境リスク評価としてしばしば用いられる健康影響を基
準 に 取 り 、 Extern-E ( 3 ) で 活 発 に 用 い ら れ て い る VOSL (Value Of Statist ical Life) を
- 372 -
専門家に尋ねることとした。この質問例を図8に示す。言うまでもなく、このような
生命の金銭観には困難が付きまとい、とくに長期かつ全地球的な問題では、評価に多
くの問題点が残ることはやむをえない。
第 3 ス テ ッ プ で は 、 温 暖 化 緩 和 策 に よ り 達 成 さ れ る 便 益 を 、 (影 響 緩 和 ) = (参 照 ケ ー
ス の 温 暖 化 影 響 ) - (CO 2 濃 度 安 定 化 ケ ー ス の 温 暖 化 影 響 ) の 関 数 で 表 現 す る 。 影 響 の レ
ベ ル は 、 す で に 650ppmv, 550 ppmv 、 45 0ppmv 各 ケ ー ス に つ い て 前 章 ま で の 方 法 で 推
計してあるため、この関数を用いることで異なる排出シナリオについて、コストと便
益 を 計 算 で き る こ と に な る 。 こ こ で は 、 基 本 的 に 線 形 関 数 を 仮 定 し た が 、 (5)T H C 崩 壊
については、確率についての評価であるため、線形関数の他、確率の逆数や確率のべ
き乗関数などを比較検討したが、結果として排出経路のランキングには影響しなかっ
た 。こ の よ う な 手 順 を 取 る
こ と で 、専 門 家 の 判 断 を 総
合 化 し 、ど の よ う な 排 出 経
路が望ましいかの評価を
得 ら れ る 。こ こ で は 、バ ッ
クグラウンドの異なる 3
グ ル ー プ 合 計 24 名 の 専 門
家による評価を行なった。
図 9 に は 、各 グ ル ー プ の 評
価 付 け の 平 均 を 示 す 。個 別
の回答にはどの因子を重
視 す る か 、ま た ど の よ う な
重み付けや金銭換算を行
海面上昇・沿岸影響と健康影響の相対関係
先 に 示 し た よ う に 、 2 10 0 年 の 海 面 上 昇 は 、 温 暖 化 に 関 し て
無 対 策 の 場 合 19 9 0 年 比 で 5 0 c m で あ る 一 方 、二 酸 化 炭 素
濃度をここで想定したレベルに安定化した場合は43cm
で あ る 。 す な わ ち 、 排 出 削 減 を は か る こ と に よ っ て 、 21 0 0
年では7cm分の海面上昇を食い止めることができる。
一 方 、温 暖 化 に 関 し て 無 対 策 の 場 合 、温 暖 化 に よ っ て 、2 1 0 0
年の呼吸器疾患と循環器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、
温 暖 化 し な い 場 合 よ り 世 界 全 体 で 490 万 人 増 加 す る が 、 二
酸化炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合に
は 、3 8 2 万 人 の 増 加 に 留 ま る( 無 対 策 よ り も 死 亡 者 数 が 10 8
万 人 減 少 )。
それでは、あなたは、健康への温暖化影響がこのように低
減 さ れ る こ と に よ っ て 得 ら れ る 21 0 0 年 の 便 益 を 1 と す る
時 、海 面 上 昇 の 抑 制 に よ っ て 得 ら れ る 21 0 0 年 の 便 益 は 何 倍
もしくは何分の一程度だと考えますか。数字に○をつけて
下さい。
なうかについて大きなば
ら つ き が あ り 、共 通 し た 知
見を求めることは困難で
は あ っ た も の の 、平 均 と し
て み た 場 合 、い ず れ の グ ル
ー プ も 650ppmv を 最 も
合理的な排出経路と見
たことが分かる。ただ
し 、こ れ は 上 記 5 因 子 に
限定した評価である。
4. 2 第 2 ス テ ー ジ:総 合
的評価
第1ステージは定量
性の高い主要な影響因
子についての評価であ
1/100
1/50
1/20
1/10
1/5
1/2
1.0
2
5
10
20
50
100
+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+――+
図 7 一対比較による温暖化緩和策便益の相互ウェイトア
ンケート
温 暖 化 に 関 し て 無 対 策 の 場 合 、温 暖 化 に よ っ て 、2 1 0 0 年 の
呼吸器疾患と循環器疾患(暑さ起因)の死亡者数は、温暖
化 し な い 場 合 よ り 世 界 全 体 で 4 90 万 人 増 加 す る が 、二 酸 化
炭素濃度をここで想定したレベルに安定化した場合には、
382 万 人 の 増 加 に 留 ま る 。 す な わ ち 、 こ こ で 想 定 し た レ ベ
ルに濃度安定化することによって、無対策よりも死亡者数
が 10 8 万 人 減 少 で き る 。
それでは、この死亡者数を減少させる価値は、どの程度
だ と 考 え ま す か 。死 亡 者 1 人 減 少 当 た り の 価 値 で お 答 え 下
さ い 。( 数 字 に ○ を つ け る か 、 も し く は 適 当 な 数 字 を 記 入
し て 下 さ い 。)
10
50
100
500
1,000
5,000
10,000
50,000 100,000
+―――+―――+―――+―――+―――+―――+―――+―――+
図 8 健康影響低減のための支払い意志額の質問
- 373 -
(万 円 )
った。そこで、第 2 ステージではこれをもとに、時間的変化及び空間的分布を含む影
響 要 因 す べ て の 専 門 家 に 見 せ 、好 ま し い 排 出 経 路 の 再 評 価 を 行 な っ て も ら う 。こ の 際 、
Appendix に 示 し た ス コ ア ボ ー ド が 中 心 的 な 資 料 と な る 。
図 10 は 、第 1 ス テ ー ジ と 第 2 ス テ ー ジ で 、最 も 好 ま し い と さ れ た CO 2 濃 度 安 定 化 経
路がどのように変化したかを示すものである。このように、第1ステージと比較する
と 、 第 2 ス テ ー ジ で は 550ppmv ケ ー ス を 好 ま し い と 修 正 す る 傾 向 が う か が え る 。
回 答 し た 専 門 家 に は 、さ ら に ど の 影 響 因 子 を 重 視 し た か に つ い て も 質 問 を 行 な っ た 。
この結果、定量性が低く不確実性も高いため第1ステージで取り上げなかった「異常
気象の増加」要因がこのステージでは重視されていることが示された。
5. 結論と今後の展望
PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 過 去 5 年 の 間 に 温 暖 化 評 価 の た め の 文 献 調 査 を は じ
め 、 気 候 変 動 評 価 簡 易 シ ス テ ム 、 土 地 利 用 ・食 糧 需 給 評 価 モ デ ル 、 動 学 的 多 地 域 多 部 門
モデルなど様々な開発を行なってきた。最終年度においては、総合評価を行なうため
にエキスパートジャッジメン
ト を 実 施 し た 。こ の 際 、従 来 し
12
ばしば用いられてきた費用便
10
益法に代わるものとしてスコ
8
アボードによるとりまとめと 2
6
4
段階から構成される手順を開
2
発した。
0
Ref
Ref-650
このエキスパートジャッジ
メ ン ト か ら は 、専 門 家 と 言 え ど
どのような影響要因を重視す
650
650-550
Stage-1
550
550-450
450
Stage-2
図 10 第 1 ス テ ー ジ 及 び 第 2 ス テ ー ジ で の 最 も
好ましいと判断された濃度安定化経路の回答者分布
を行なうのかについて共通し
た見解を導き出すのは難しい
も の の 、平 均 を 取 っ た 結 果 は 共
通性の高い傾向を示している。
こ れ は 、地 球 温 暖 化 問 題 の 広 さ
の た め 、専 門 分 野 に よ り 注 目 す
る分野と情報が一様でなかっ
た こ と が 一 因 と 考 え ら れ る 。し
Net benefit (billion US1990$ per year)
る か 、ま た ど の よ う な 金 銭 換 算
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
-2,000
Ref
S650
S550
-3,000
-4,000
-5,000
か し 、平 均 を と っ た 結 果 は 比 較
Expert Group-A
Expert Group-B
的 安 定 性 が 高 い こ と は 、目 標 設
Expert Group-C
All Experts
定しての合意形成には可能性
が あ る と も 解 釈 で き る 。本 プ ロ
S450
図 9 CO 2 濃 度 安 定 化 経 路 に よ る 純 便 益 の 変 化
(専 門 家 グ ル ー プ お よ び 全 体 平 均 の 推 移 )
- 374 -
ジェクトの成果をまとめると、以下のようになろう。
(1) 超 長 期 気 候 変 動 評 価 か ら 中 長 期 温 暖 化 影 響 評 価 と エ ネ ル ギ ー 戦 略 な ど の 緩 和 策 、さ
らに短中期経済産業影響評価までを一貫した方式で総合評価する方法を開発した、
(2) 長 期 的 温 暖 化 策 を エ ネ ル ギ ー 戦 略 も 含 め 、詳 細 か つ 定 量 的 に 提 示 す る こ と を 可 能 と
した、
(3) 温 暖 化 対 策 を 中 心 と し て 国 際 的 な 産 業 構 造 変 化 も 考 慮 し た 具 体 的 な 短 期 的 政 策 と
その影響評価を示すことが可能となった。
PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト は 、 気 候 変 動 研 究 と 今 後 方 向 を 鳥 瞰 す る も の で あ っ た 。 政
策 ・技 術 評 価 と し て は 、 今 後 、 政 策 実 施 に あ た り ど こ に ど の よ う な ボ ト ル ネ ッ ク が あ る
かをさらに詳細に検討していく必要性が高まろう。その意味で、今後、エネルギーに
とどまらないより詳細な技術と社会のあり方が、長期的戦略の中に位置づけられるよ
うな方向性が重要となるものと思われる。
参考文献
1) IPCC, Third Assess ment Report, WG-I – WG3, Cambridge Univ. Press, 2001
2) http://kyousei.aesto.or.jp/~k021open/index-e.htm
3) ExternE, "Externali ty of Energy: Vo l.7 Globa1 Warming Damages", EU, 1998,
avail able from http://www.externe.info/
- 375 -
排出パス別評価結果一覧表
Reference
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
10.8
2100年
15.6
2150年
22.4
2050年
463
2100年
613
2150年
840
545
828
1240
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.43
2100年
2.85
2150年
4.27
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.13
2150年
0.22
2100年
50
2150年
79
・THCが崩壊する確率: 57~93%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
24
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
世界全体
1466
1178
1181
2287
3090
3406
北西太平洋・東アジア
70
66
70
619
610
663
南アジア
799
368
365
1079
1765
1880
中央ヨーロッパ
84
94
97
21
5
23
南アメリカ
77
97
107
18
20
24
アラビア半島
72
87
85
55
84
95
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比) [%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
4
7.9
12
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.3
19.2
8.3
米国
-1.1
-2.6
-3.6
ロシア
2.7
2.4
2.0
中国
4.5
5.4
4.6
日本
0.0
0.0
-0.1
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
39.1
52.5
52.1
米国
1.1
-0.2
-3.2
ロシア
2.2
3.8
4.5
中国
5.7
8.8
9.4
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
世界全体
-93 (-2)
-197 (-2)
-324 (-3)
159
490
インド
7 (0.7)
21 (1)
37 (2)
37
113
サハラ以南アフリカ
6 (0.6)
25 (1)
46 (2)
28
105
中東・北アフリカ
-4 (-0.5)
-12 (-0.8)
-20 (-1)
35
112
中国
-54 (-5)
-147 (-10) -249 (-15)
8
28
先進資本主義圏
-37 (-6)
-71 (-13)
-117 (-19)
12
23
2150年
846
193
184
194
51
38
2050年
-252
-30
-22
-39
-62
-49
寒さ起因
2100年
-687
-91
-80
-124
-174
-94
2150年
-1170
-155
-138
-214
-300
-155
インド、サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
2150年
マラリア
10.2 (11)
0 (0)
0 (0)
デング熱
0.06 (49)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.01
2100年
7.94
2150年
7.85
#2000年では8.06
2100年
4.41
2.22
2.73
1.37
2150年
3.63
1.81
2.24
1.12
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.02
2.55
3.10
1.57
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 376 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
排出パス別評価結果一覧表
(1/2)
S650
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
10.0
2100年
10.6
2150年
8.5
2050年
458
2100年
553
2150年
616*
535
709
787
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注1)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
注2)大気中CO2濃度は2200年以降650ppmvに安定化する。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.43
2100年
2.47
2150年
3.09
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.11
2150年
0.14
2100年
46
2150年
65
・THCが崩壊する確率: 9~23%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
23
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1469
1240
1213
2285
3023
3311
北西太平洋・東アジア
70
65
69
619
610
663
南アジア
800
430
373
1079
1703
1833
中央ヨーロッパ
84
94
98
21
5
22
南アメリカ
77
95
100
18
20
21
アラビア半島
72
92
88
55
80
93
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比) [%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.9
6.8
8.4
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.6
21.6
19.6
米国
-1.1
-2.3
-2.9
ロシア
2.7
2.5
2.2
中国
4.5
5.5
5.3
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
39.0
52.7
55.1
米国
1.1
0.4
-0.7
ロシア
2.2
3.4
4.0
中国
5.7
8.5
8.9
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
世界全体
-90 (-2)
-170 (-2)
-234 (-2)
155
423
インド
7 (0.6)
18 (1)
27 (2)
36
97
サハラ以南アフリカ
6 (0.6)
22 (1)
33 (2)
27
91
中東・北アフリカ
-4 (-0.4)
-10 (-0.7)
-15 (-0.9)
34
97
中国
-53 (-5)
-126 (-9)
-180 (-11)
8
24
先進資本主義圏
-36 (-6)
-61 (-11)
-85 (-14)
12
20
2150年
613
139
134
140
37
28
2050年
-245
-29
-22
-38
-60
-48
寒さ起因
2100年
-593
-79
-69
-107
-151
-81
2150年
-847
-112
-100
-155
-217
-112
インド、サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
2150年
マラリア
9.9 (11)
0 (0)
0 (0)
デング熱
0.06 (48)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.01
2100年
7.96
2150年
7.92
#2000年では8.06
2100年
4.59
2.31
2.83
1.43
2150年
4.22
2.12
2.61
1.31
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.03
2.55
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 377 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
S650
(2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
122
2150年
222
・エネルギーシステムコストの増加
建設
0.1
1.1
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
0.2
0.3
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
27
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
-0.1
0.5
エネルギー多消費
0
0.7
2050年
2100年
2150年
サービス
-0.1
0.4
-100 (-2)
230 (2)
3040 (24)
エネルギー
-0.2
0.5
その他
0
0.7
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-0.8 (-6)
-4.7 (25)
-9.0 (-35)
原子力
0.1 (92)
1.5 (33)
0.3 (6)
再生可能エネルギー
0.2 (2)
1.5 (14)
6.5 (59)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
-0.1
0.5
OECD90
旧ソ連・東欧
0
0.5
-0.3
0.1
0.5
1.3
0.4
0.5
アジア(日本除)
その他
- 378 -
排出パス別評価結果一覧表
S550
(1/2)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
9.0
2100年
7.9
2150年
4.8
2050年
451
2100年
517
2150年
550
521
645
674
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.33
2100年
2.22
2150年
2.60
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比) [mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
2100年
0.10
2150年
0.11
2100年
43
2150年
59
・THCが崩壊する確率: 2~7%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.06
全球平均
2050年
23
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1443
1238
1299
2285
3016
3220
北西太平洋・東アジア
70
64
69
619
610
663
南アジア
800
435
444
1079
1698
1763
中央ヨーロッパ
75
94
97
21
5
21
南アメリカ
77
88
97
18
20
21
アラビア半島
72
92
95
55
79
85
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.8
6.1
7.2
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
19.9
23.2
23.2
米国
-1.1
-2.1
-2.4
ロシア
2.7
2.6
2.6
中国
4.6
5.4
5.4
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
38.8
52.5
55.7
米国
1.1
0.6
0.2
ロシア
2.1
3.0
3.6
中国
5.6
8.3
8.6
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
-86 (-1.5)
-153 (-1.8) -196 (-2.0)
148
382
513
-234
-535
-710
インド
7 (0.6)
17 (1)
23 (1)
34
88
117
-28
-71
-94
サハラ以南アフリカ
6 (0.6)
20 (1)
28 (1)
26
82
112
-21
-62
-84
中東・北アフリカ
-4 (-0.4)
-9 (-0.6)
-12 (-0.7)
32
87
117
-36
-97
-130
中国
-51 (-5)
-114 (-8)
-151 (-9)
7
22
31
-58
-136
-182
先進資本主義圏
-35 (-6)
-55 (-10)
-71 (-11)
11
18
23
-46
-73
-94
インド、サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
健康
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
2150年
マラリア
9.5 (10)
0 (0)
0 (0)
デング熱
0.06 (46)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
7.98
2150年
7.95
#2000年では8.06
2100年
4.70
2.37
2.90
1.47
2150年
4.47
2.25
2.76
1.39
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.06
2.56
3.12
1.58
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 379 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
S550
(2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け金
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
緩和策
2100年
214
2150年
312
・エネルギーシステムコストの増加
建設
0.5
1.8
Reference比 [billion$/yr] ([%])
輸送
0.2
0.6
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
2050年
36
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
0
0.9
エネルギー多消費
0.1
1.4
2050年
2100年
2150年
サービス
-0.1
0.7
150 (3)
1180 (13)
4420 (35)
エネルギー
-0.2
0.8
その他
0.2
1.2
・一次エネルギー構成
Reference比[Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-1.6 (-11)
-6.2 (-33)
-10.0 (39)
原子力
0.4 (390)
1.7 (35)
1.1 (19)
再生可能エネルギー
0.6 (8)
1.9(18)
8.4 (76)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2047年
世界
0
0.9
OECD90
旧ソ連・東欧
0.1
0.5
-0.3
0.1
0.9
2.5
0.6
0.9
アジア(日本除)
その他
- 380 -
排出パス別評価結果一覧表
S450
(1/2)
・CO2排出量 [GtC/yr]
CO2排出量
2050年
6.0
2100年
3.8
2150年
3.3
2050年
431
2100年
450
2150年
450
482
536
544
・大気中濃度 [ppmv]
排出パス
CO2濃度
温室効果ガス濃度
(CO2等価換算)
注)CO2以外の温室効果ガス(CH4、Nox、CFCs等)の排出パスは、
CO2の排出パスによらず一定とした。
北半球の高緯度地域では全球平均より気温上昇が大きい。
気温上昇(1990年比) [℃]
気温
全球平均
気候変動
2050年
1.17
2100年
1.68
2150年
1.91
赤道付近での増加が顕著である一方、アメリカ大陸や地中海付近等では減少傾向が見られる。
降水量増加(1990年比)[mm/day]
降水量
全球平均
TypeⅡ
THC
生態系
農作物
温暖化影響
Type I
健康
2100年
0.07
2150年
0.08
2050年
21
2100年
36
2150年
47
・THCが崩壊する確率: 0~2%程度
・海面上昇(1990年比) [cm]
海面上昇・
沿岸影響
水資源
2050年
0.05
全球平均
・気候変動無しに比べ水ストレス増大/減少する人口[百万人]
水ストレス増大人口
水ストレス減少人口
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
1442
1229
1307
2285
2987
3183
北西太平洋・東アジア
70
63
66
619
610
663
南アジア
800
456
472
1078
1676
1734
中央ヨーロッパ
75
88
97
21
5
21
南アメリカ
77
88
91
18
20
20
アラビア半島
72
94
97
55
77
84
北西太平洋・東アジア、南アジア等で水ストレス増大人口<水ストレス減少人口。中央ヨーロッパ、南アメリカ等では逆の傾向。
・陸上
温暖化による陸上生態系の種の減少(1970年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
3.4
4.8
5.4
注) 温暖化以外の要因(農地拡大等)による減少は、2050年で12%
・海洋
珊瑚の減少、生物多様性減少、種の絶滅速度の加速といった可能性有
・小麦生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
21.2
26.6
27.6
米国
-1.0
-1.4
-1.9
ロシア
2.7
2.6
2.5
中国
4.6
5.6
5.5
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリア、ヨーロッパの国を中心に負の影響。
アフリカ、ラテンアメリカ地域等は温暖化の影響は大きいが、農業生産性向上が大きく、地域によって増減まちまち。
・米生産ポテンシャル
ポテンシャルの増加(1990年比)[%]
2050年
2100年
2150年
世界全体
38.2
52.0
55.4
米国
0.9
1.0
0.9
ロシア
1.9
2.4
2.7
中国
5.6
7.8
8.0
日本
0.0
0.0
0.0
注)オーストラリアは負の影響。
・熱ストレス
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
暑さ起因+寒さ起因
暑さ起因
寒さ起因
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
2050年
2100年
2150年
世界全体
-76 (-1.3) -116 (-1.3) -145 (-1.5)
130
289
379
-206
-405
-523
インド
6 (0.5)
13 (0.8)
17 (0.9)
30
66
86
-24
-54
-69
サハラ以南アフリカ
5 (0.5)
15 (0.8)
21 (1)
23
62
83
-18
-47
-62
中東・北アフリカ
-3 (-0.4)
-7 (-0.5)
-9 (-0.5)
28
66
87
-32
-73
-96
中国
-44 (-4)
-86 (-6)
-111 (-7)
6
16
23
-51
-103
-134
先進資本主義圏
-31 (-5)
-42 (-7)
-52 (-8)
10
14
17
-40
-56
-69
インド、サハラ以南アフリカ等で暑さ起因の死亡者数増加が大きい。中国、先進資本主義圏等では寒さ起因の死亡者数減少が大きい。
・生物媒介性感染症
温暖化による死亡者数変化[万人] (ベースライン死亡者数に対する比率[%])
サハラ以南アフリカ
2050年
2100年
マラリア
8.6 (9)
0 (0)
2150年
0 (0)
デング熱
0.05 (41)
0 (0)
0 (0)
その他の地域では、温暖化による死亡者数変化無し
・pH値
pH
2050年
8.02
2100年
8.00
2150年
7.99
#2000年では8.06
2100年
4.95
2.51
3.06
1.55
2150年
4.83
2.44
2.98
1.51
#2000年では5.43
#2000年では2.76
#2000年では3.35
#2000年では1.71
海洋酸性化 ・CaCO3 (CalciteとAragonite)の飽和度
CaCO3 (Calcite), EQ
CaCO3 (Calcite), N60
CaCO3 (Aragonite), EQ
CaCO3 (Aragonite), N60
2050年
5.12
2.60
3.16
1.60
EQ:赤道、N60:北緯60°
- 381 -
飽和度は、気温の低い地域で小さくなり、殻や骨を形成
する海洋生物への影響がより大きく現れる。
限界飽和度は1であり、それ以下では殻や骨を形成できない。
S450
(2/2)
以下の温暖化影響事象についても温暖化の程度が大きくなるに従いその影響が大きくなると考えられるが、現時点では排出パス対応の研究は十分でなく定量評価が困難なため、
排出パスとは独立にどのような温暖化影響があるかのみを記述した。
WAIS
Type Ⅱ
・WAISが崩壊すると4~6mの海面上昇の懼れがあるが、21世紀中の崩壊の可能性は小。
林業
漁業
・木材供給ポテンシャル
森林火災、病害虫被害の増加を考慮しなければ、温暖化及び大気中CO2増大に伴い木材供給ポテンシャルは増加。
但し、温暖化に伴い森林火災、病害虫被害が増加する可能性有
・pH低下、海水温上昇の影響
プランクトンの生息域が変化/減少し、漁場の大幅な変化を引き起こす可能性有
・牧草生産と家畜生産
影響のトレンド
畜産業
温度上昇が2℃以下
CO2濃度
+
多湿温暖地域
+
乾燥地/半乾燥地
・家畜の生産性、受精率
熱ストレスによって生産性・受精率は低下する。
・飼料摂取量
相対比
20℃
28℃
33℃
牛
100
75
50
鶏
100
65
・疫病
マダニ等の生物媒介性感染症により生産損失が生じる恐れあり
・観光産業
局所的な影響はあるが、世界全体では気候変動による観光客の行動への影響は小さいと推定。(むしろ、経済成長による影響の方が大きい。)
・保険業
気候変動による被害のための保険金の増大によって、大きな影響を与える可能性有(温暖化緩和策なしの時台風等の異常気象に対する保険の掛け
・貿易
その他産業
貿易施設・ルートの損失や輸送コストの上昇が発生し、貿易における地域間の競争優位が再構築される可能性有
・小売その他商業サービス産業
台風・海面上昇等によって影響を受ける特定の地域に影響が生じる可能性有
温暖化影響
・異常な気温
全球的に最高気温/最低気温が上昇する可能性有
Type I
・異常な降水量
まとまった雨が増加する可能性有
地中海や南アフリカ等では無降水日が増加する可能性有
異常気象
・エルニーニョ現象
発生頻度は現状から変化しない可能性が高いが、可能性は低いものの増加する可能性有
・熱帯低気圧
全体の発生数は減少するが、最大風速45m/s以上の強い熱帯低気圧の発生回数が増加する可能性有
・アジアモンスーン
強度が増大し、洪水頻度の増加をもたらす可能性が高い
降水レジームを変化させ、農業分野に正負両方の影響を与える可能性有
アジアモンスーンの突然の変化が発生する可能性有
・グリーンランド氷床
連続的に融解し、海面上昇に寄与(上記「海面上昇」の評価にこの寄与は含まれている)
完全な融解には1000年以上を要するとの予測有
・北極の海氷
年平均海氷面積は温暖化に伴い連続的に減少する
その他
・永久凍土
現在でも極地、アジア北部、北米北部において生じている。
融解により、地盤沈下・陥没、それに伴う建築物の損壊・倒壊、輸送インフラへの影響、海面上昇等
2050年には北半球の永久凍土は20~35%減少との予測有り(温暖化緩和策なしの時)
2100年にはツンドラの11%が森林に、極域の砂漠の14~23%がツンドラに替わるとの予測有り(温暖化緩和策なしの時)
・氷河・氷帽
温暖化に伴い減少し、海面上昇に寄与しうる。但し、体積が減少すると海面上昇への寄与も減る可能性有
氷河が水供給源の一役を担っている地域(ボリビア、エクアドル、ペルーの一部地域等)では、水資源への影響懸念有
氷河湖決壊による洪水の危険性(ネパール、ブータン)を示唆する報告有
・CO2限界削減費用
[$/tC]
限界削減費用
2050年
146
・エネルギーシステムコストの増加
Reference比 [billion$/yr] ([%])
2050年
エネルギーシステムコスト
基準シナリオ
からの
排出削減
緩和策
360 (8)
2100年
287
2150年
365
2100年
2150年
2750 (30)
4740 (37)
・産業別GDPロス (世界全体)
Reference比 [%]
2027年
2047年
全産業
2.1
16
エネルギー多消費
3.8
20.1
建設
12.6
26.6
輸送
1.5
10.7
サービス
0.5
14.2
エネルギー
1.3
14.8
その他
5.9
20.5
・一次エネルギー構成
Reference比 [Gtoe/yr] ([%])
2050年
2100年
2150年
化石燃料
-4.6 (33)
-7.4 (39)
-9.1 (36)
原子力
2.4 (2200)
1.8 (38)
1.5 (25)
再生可能エネルギー
1.0 (13)
5.2 (49)
8.5 (77)
・地域別GDPロス (全産業)
Reference比 [%]
2027年
2.1
16
OECD90
旧ソ連・東欧
3.1
1.8
0.3
0.6
15.2
15.1
18.6
13.8
アジア(日本除)
その他
- 382 -
2047年
世界
略歴
森
俊介
現職
地球環境産業技術研究機構 システム研究 G 主席研究員
東京理科大学理工学部経営工学科
教授
昭 和 28 年 ま れ 、 昭 和 56 年 東 京 大 学 大 学 院 電 気 工 学 博 士 課 程 修 了 、 工 学 博 士 。 同 年 東
京 理 科 大 学 理 工 学 部 経 営 工 学 科 助 手 、 昭 和 58 年 同 講 師 、 平 成 元 年 同 助 教 授 、 平 成 6 年 同
教授、現在に至る。この間、経済企画庁経済研究所客員研究員、国際応用システム分析研
究 所 ( I IA SA ) S c i e n ce R e se a r c her 、 科 学 技 術 庁 科 学 技 術 政 策 研 究 所 客 員 研 究 官 他 。 平 成 1 4
年 よ り 地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 シ ス テ ム 研 究 G 主 席 研 究 員 。 IPC C S RES お よ び
I P C C - TAR( W G 3)の 主 要 著 述 者 。
専門
エネルギーシステム、地球環境問題、廃棄物再資源化など社会経済システムのモデ
リング
著 書 (和 文 )
「 地 球 環 境 と 資 源 問 題 」、「 2 1 世 紀 の 問 題 群 (共 著 )」、「 エ ネ ル ギ ー と 環 境 の 技
術 開 発 (共 著 )」 他
- 383 -
RITE PHOENIX-PJ
Economic Impacts of Emission Reductions and Bottleneck Sectors
Ta kashi Ho mma
Systems Analysis Group, RITE
1.
Introduction
In order to carry out the evaluations of the mi tigation po licies on glob al warming, which is
one of the main targets in PHOENIX project, we performed the following an alysis: (1) a
long-term analysis mai n ly focusing on the changes in energy systems till th e year 2150, and
(2) a short- to middle- term analysis mainly focusing on the ch anges in industrial structures
until the middle of this century. In the former si mula tion cases, we observe the dynami c
changes in structures of energy supplies and expansion of CCS applications with DNE21
model under the CO 2 emissions control policies. In the latter simulation cases, we observe
the dyna mic changes in the sectoral valu e-added under the CO 2 emissions control policies.
For the analysis of the latter cases, we have newly developed an energy-economic mod el,
DEARS (Dyn a mic Energy-economic Analysis model with mu lti-Region s and mu lti-Sectors),
integrating a top-down economic module with mu lti-sectors and a bo tto m-up energy syste ms
module, because the following two main issues in the previous model studies are identified.
One is that mo st of the existing energy systems models, e.g., MERGE1) and MESSAGE2),
fail to assess the dynamic structural chan ges in th e explicit international reallocations of
industry sectors an d en ergy dema nds under CO 2 emission constraints although th ese mo dels
have provided dyna mic analyses, focusing on the technological changes in energy syste ms
and th eir mitigation costs. The other reason is that th ough the in tegration of energy syste ms
model and CGE model with mu lti-sectors, e.g., AIM3) and MIT-EPPA4), have iterative
procedures to run dynamic simulations, th ey could not ob tain fu lly-opti mized so lutions for
capital formation trajectories and economic growth path s.
2.
Overviews of DEARS
DEARS is an intertemporal non-linear opti mization model, extending the formulation
fra me work based on GTAP6) model which is a static mu lti-sectoral model. The solu tions of
DEARS include comparatively sectoral productions, expo rts and imports, household
consumptions, and cost-effective structures of energy supply required to perform their
economic activities under maximi zation of th e discounted to tal consumption utilities. In
order to evaluate carbon po licies until the middle of this centu ry, the model time span is up
to th e year 2067 with a 10 years step; th e base year of this model is th e year 1997 , dependent
on the available database of world and regional economic input-output tables. The model
includes 18 regions and 18 non-energy sectors and eleven en ergy sources with seven types of
primary energy —coal, crude oil, natural gas, biomass, hydro power, wind power, and nu clea r
- 384 -
power— and four types of secondary powers —solid, liquid, and gaseous fuels and
electricity. —
Figure 1 shows inputs and ou tputs of DEARS. The model structures includ e the economic
module th rough input-output tables is integrated with th e simp lified en ergy system module
based on the DNE21 model, wh ere en ergy supply techno logy and CCS (carbon diox ide
capture and storage) technology are consid ered. Th e model decides en dog eounously the
economic activities and the energy de mands of the respectiv e sectors. The model is suitable
for analyzing a mid-term change in th e energy syste m an d the industrial structures under th e
carbon control policies.
Constraint
・Reference scenario
・CO2 emission reduction
scenario
DEARS
Model results
Model assumptions
• Population
• Rate of technological progress
• Input-output coefficient
• Trade balance scenario
etc.
• Primary energy resources and
supply cost
• Energy conversion efficiency
• Potential and cost of CCS
etc.
Economic Module
Optimization
Energy systems
Module
•GDP
•Sectoral energy consumption
•Sectoral value added
•Sectoral intermediate inputs
•Final consumption
etc.
•Primary energy production
•Power generation
•CO2 sequestration
•Energy price
•CO2 emission
•Marginal emission reduction cost
etc.
Figure 1: Inputs and ou tputs of DEARS
3.
Middle-term evaluation of mitigation policies focusing on industrial structure ch anges
3.1. Resp on se of in du strial structures to CO 2 emission redu ction
In this paper, we focus on how the econo mic activities are affected by the carbon control
policies. We co mp are the sectoral economic impacts at the following different stabilizing
levels of atmo spheric CO 2 concentration by using DEARS: reference case (without climate
policy) and stabilization cases (S650, S600, S550, S500 , and S450 ). Under th e latter five
cases, the global CO 2 emissions are constrained su ch th at th ey do not ex ceed their IPCC WGI
stabilization profiles with emissi on trad ing allowed.
The population scenario in th is study is taken fro m SRES-B2. CO 2 emissions and GDP
trajectories, which are determined en dogenously in the model, are harmonized with th e
SRES-B2 marker scenario by ad justing parameters such as the regional annual rate of
technical progress. We assumed that the parameters of both th e annual discou nt an d
depreciation rates are 5% in all the regions. The intermediate coefficien ts of th e in put-output
tables in the economic module are based on the time-series input-output coefficients
estimated under th e industrial structure chan ges scenario . The optimi zatio n software
GAMS/CONOPT3 was used for the simu lation stud y. As mentioned previously, it is important
- 385 -
to note here that in order to avoid the “terminal effect,” which in fluences the co mputational
results around the end of ti me horizon, we accept the solutions only until the year 2047,
although we solve our dynamic model through the time horizon until the year 2067. It should
be noted that th e lifespan of power plan ts and other plan ts was not explicitly consid ered.
Figures 2 and 3 show the ch anges in sectoral value-added in th e stabilization cases. 18
non-en ergy sectors and 11 energy sources are aggregated into six sectors in the figures. The
mo re stringent redu ctions in CO 2 emissions, the larg er lo sses of productions are observed in
all the sectors. The sectoral losses in productions of “energ y-intensive sector” and
“construction sector” in the stabilization cases are higher because “energ y intensive sector”
such as “iron and steel sector”, which serves as intermediate and in vestment goods, has large
energy-intensity, and “construction sector” is largest shares of total invest ments. In addition,
“construction sector” is also a domestic demand-oriented industry so that the effect of
international division of production is very sma ll. The lo sses of “o ther sector” such as “other
machinery sector” are also high because they serve as investment goods. On the other hand,
losses of “transport sector” and “service sector” are low because these sectors have larg e
shares of total consumptions and small shares of total invest ments. In particular, “service
-0.4
-0.6
Sector total
Other sector
Energy
sector
Service
sector
Transport
sector
-1.0
Construction
sector
-0.8
Y2027
Y2037
Y2047
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
Sector total
-0.2
Y2017
Other sector
0.0
Y2007
0.5
Energy
sector
Y2047
Service
sector
Y2037
Transport
sector
Y2027
Construction
sector
Y2017
Energyintensive
sector
Y2007
0.2
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
0.4
Energyintensive
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
sector” has low energy-intensity.
Figure 2: Changes in value-added of aggregated six sectors
5.0
0.0
Y2007
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
Sector total
Other sector
Energy
sector
Service
sector
Transport
sector
-25.0
-30.0
-35.0
Construction
sector
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
Energyintensive
sector
Changes in VA (%, relative to that in reference case)
- S650 case(left), S550 case(right)-
Figure 3: Changes in value-added of aggregated six sectors and whole sector -S450 case-
- 386 -
3.2. Effect of reduction s of CO 2 emissions on GDP
Table 1 and Figure 1 show the GDP losses and CO 2 shadow prices un der the CO 2
stabilization cases, respectively. The GDP losses an d shadow prices increase within the
relatively small ranges in th e S650-S500 cases while the losses in the S450 case increase
rapidly and enormously. Under the assu mp tions of this model, the whole econo mic activities
decrease so that large world GDP losses and high CO 2 sh adow prices are required to meet the
450 ppmv (CO 2 only).
Table 1: GDP losses under the CO 2 constraints (relative to that in reference case)
Year
1997
2007
2017
2027
2037
2047
2050
(DNE21)
2050
ShadowPrice $/tC
(Stern Review)
S450
0.00%
0.01%
0.77%
1.94%
4.62%
11.12%
1.33%
S500
0.00%
0.00%
0.06%
0.20%
0.58%
1.67%
-
S550
0.00%
0.00%
0.02%
0.10%
0.24%
0.68%
S600
0.00%
0.00%
-0.02%
-0.05%
0.00%
0.32%
0.40%
-
S650
0.00%
0.00%
-0.03%
-0.05%
-0.03%
0.20%
0.32%
around 1% (500-550 CO2 eq)
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
S450
S500
S550
S600
S650
1997
2007
2017
2027
2037
2047
Figure 4: CO 2 shadow prices in the stabilization cases
3.3. Why are large GDP losses observed in the S450 case?
Co mpared with the GDP losses in past studies, DEARS results in th e S650 -S500 cases are
not significantly different fro m the m. On the other hand, we see a consid erable difference
between DEARS results and past stud ies in the S450 case. Th e solutions of past energy
systems mo dels and integrated assessment mo dels do not show surprisingly large GDP losses
even in the S450 case. To explain the differences, th e following two reasons are considered.
Firstly, the model structures of DEARS and past energy systems models are different.
DEARS explicitly includes the industrial input-outputs defined by the Leontief function so
that the substitutions of the energy inputs fro m energy sources to the respective in dustrial
sectors are not flexible in order to incorporate price-induced en ergy saving with price
elasticities. On the other hand, the conventional bo ttom-up type of energy systems models
are based on the model structures consisting only one macro-economic sector to represent the
whole econo mic activity so that they do not have th e explicit linkages between in du strial
- 387 -
sectors. The represen tative en ergy syste ms models are assu med on the allo wed flex ibility of
energy demands requ ired in th e industry with no constraints of th e chan ges in industrial
structures under the carbon contro l policies. For examp le, DEN21 model represents whole
energy demands by fuel source with no classificatio n of indu stry, transport and residential
sectors; the whole energy demands by fuel source are determined by using price elasticities
as the top-down approach. The model also allows flexible substitutions of energy sources
among or within sectors.
In addition, the profiles of the final energy consumptions by fuel source between DEARS
and DNE21 in the reference scenario are different alth ough th e total CO 2 emi ssion paths are
based on the same profiles, SRES-B2 scenarios. Under the respective assu mptions of
substitutions of en ergy demand, the final energy demands of liquid fu els in DEARS are larger
than that in DNE21, and the electrification in DEARS expands less than that in DNE21 so
that the rigid structures of energy demands in DEARS at stabilizing 450 ppmv concentrations
of CO 2 cause larger GDP losses.
Secondly, th e assumptions of energy tech no logies in both models are different. Co mpared
with DNE21 model that focuses on the detailed en ergy syste ms, DEARS does not represent
so me energy technolog ies su ch as liquefaction of biomass. In order to evaluate effects of
energy technologies, a sensitivity analysis was conducted; GDP losses with and with out
liquefaction of biomass by using DNE21 model in the S450 case are 1.3% and 1.8%,
respectively. The result suggest th at the detailed representation of energy technology does
not explain the differences in GDP losses.
These findings in dicate that the differences in model structures between DEARS with
mu lti-sectors and DNE21 with one-macro sector and detailed energy syste ms cause the large
differences in th e impa cts on GDP losses under the stringent carbon e mission constraint. The
GDP losses are considerably influenced by the structures of final energy demands su ch as
substitutions of energy sources in the deman d side. Consequently, th e conventional energy
syste ms mo dels with one-macro econo my sector th at assu mes the flexibility in substitution
among en d-use energies tend to result in the op timistic solutions, while DEARS tend s to
result in the pessimistic solutions. Although we do no t assess in general which solu tions are
realistic and reasonable, we should interpret the solutions in consideration of their model
structures. The evaluations by using past energy systems might underestimate the GDP losses
under the CO 2 emissions constraints.
3.4. Which sectors cause serious GDP losses in the S450 case?
As mentioned prev iously, the GDP losses in the S450 are considerably large when DEARS
is used, while those in the S500-S650 cases are not different from past studies. In order to
search the bottleneck sectors causing the serious GDP losses in th e S450 case under this
- 388 -
model structures, we carried out the fo llowing sensitivity analysis on the hypothetical
introductions of CO 2 emissions reductions technologies in the respective sectors. We
compare the i mpacts on world GDP losses when the CO 2 e mission coefficients of all the fuels
in the respective sectors after the year 2027 are 50% of them. The technologies introduced in
the sensitiv e an alysis are assu med to be cost-free; the details of technologies are not
explicitly considered in this study
Table 2 shows the GDP losses under the hypothetical improvements of halvin g CO 2
emissions in each sectors in the S450 case; S450 regular case co rresponds to the S450 case
without th e above hypothetical technologies that halving CO 2 emissions. Figure 4 shows the
CO 2 e mission paths in the reference and S450 cases, respectively. As shown in Table 2, th e
CO 2 emission improvements in “transport sector” result in the greatest improvements in GDP
losses, while energy-intensive sectors like “iron and steel sector” have the small impacts.
This indicates that “transport sector” is a bottleneck sector so as to cause th e serious GDP
losses in the S450 case. In this study, “transport sector” includ es energy consumptions of
own-vehicles in the household according to the classifications of IEA energy balances.
As shown in Figure 4, mo st of the sectoral shares of total CO 2 emissions remains
unchanged, while the shares in the S450 case changes dynamically and the shares o f
“transport sector” gradually increase especially in th e latter of this model time span. The
i mprovements o f CO 2 emissions in “transpo rt sector” lead to the increases in productions of
its own, and th e positive effects of which th rough input-output tables lead to increases in
productio n of other sectors. The emissions improvements of “transport sector” allo w othe r
sectors to increase the CO 2 emissions replacing the assignments of emissions of “transport
sector” in the case of CO 2 emissions improvements of “transport sector.” The production of
other sectors, which decrease by decreases in the whole economic activities in the S450
regular case, in creases and th e world GDP losses declines in the case of CO 2 emissi ons
improvements of “transport sector.” Meanwhile, the “iron an d steel sector”, which is one o f
the greatest carbon-intensities an d energy-intensities, the decreases in GDP losses in the case
of emissions improvement in “iron an d steel sector” are small even in consideration of
positive effects of increases in production of this sector.
Table 2:World GDP losses under the 50 % hypothetical improvements of CO 2 emissions of
each sector in th e S450 case (relative to that in reference case)
S450
regular
case
Y2007
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
CO2-50% emissions improvement case
Iron and
steel
0.01% 0.01%
0.79% 0.74%
2.08% 1.84%
4.74% 4.51%
11.28% 11.00%
Chemical
products
Nonferrous
metals
Nonmetalic
metals
0.00% 0.01% 0.01%
0.64% 0.78% 0.75%
1.47% 2.04% 1.80%
3.93% 4.70% 4.62%
9.94% 11.22% 11.34%
Transport Other
Other
equipments machinery mining
Food
products
Paper,
pulp, and
printings
Wood and
wood
Construction Textiles
products
0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01%
0.78% 0.75% 0.78% 0.77% 0.78% 0.79%
2.04% 1.90% 2.07% 1.96% 1.99% 2.04%
4.70% 4.56% 4.73% 4.62% 4.68% 4.71%
11.20% 10.97% 11.26% 11.06% 11.24% 11.24%
- 389 -
Other
Bussiness Social
manufactur Agriculture
service
service
ing
0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01%
0.78% 0.78% 0.69% 0.73% 0.69% 0.69%
2.00% 2.05% 1.66% 1.88% 1.74% 1.76%
4.67% 4.71% 4.17% 4.40% 4.19% 4.26%
11.12% 11.20% 10.79% 10.69% 10.14% 10.39%
Transport
0.00%
0.04%
0.07%
0.34%
1.60%
14
10
12
CO2 emissions(GtC)
8
6
4
2
10
8
6
4
2
0
Figure 5: Wo rld sectoral CO 2 emissions
4.
2047
2037
2027
2017
2007
2047
2037
2027
2017
2007
1997
0
1997
CO2 emissions (GtC)
12
Residential
Social service
Bussiness service
Aviation
Transport exluding aviation
Agriculture
Other manufacturing
Textiles
Construction
Wood and wood products
Paper, pulp, and printings
Food products
Other mining
Other machinery
Transport equipments
Non-metalic metals
Non-ferrous metals
Chemical products
Iron and steel
-reference case(left), S450 case(right)-
Conclusions
This study evaluates the economi c impacts of stabilizing at mo spheric CO 2 concentration at
different levels by an in tertemporal energy-economic optimization model, DEARS. The
sectoral losses of productions of “energ y-intensive sector” and “construction sector” in the
stabilization cases are higher because “energy intensive sector” has larger energy-intensity
and also play a main role of intermediates and investment goods and “con struction sector”
has the largest shares of total investments in the world and region s. On the other hand, lo sses
of “transport sector” and “service sector” are lower becau se these sectors have larg e shares
of total consu mptions with small shares of to tal investments. In particular, “service sector”
has a lowest energy-intensity.
The concentration stabilization at 550-500 ppmv-CO 2 only can be achiev ed by changes of
energy demands acco mp anied with industrial structural chan ges which are reasonably
expected by DEARS and by ad op tion of technological measures of emission reductions.
However, the stabilizations at 450 ppmv -CO 2 only is possible only when innovative
transportation technologies are installed before 2030 in addition to new technology
installations into energy supply sectors if the assump tion of th e relatively rigid substitution
of energy de mands as in the DEARS model is accepted .
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Reduction Policies.” Energy Policy Vol.23; pp.17–34, 1995.
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- 390 -
6) Hertel TW (eds). Global Trade Analysis: Modeling and Applications, Cambridge University Press; 1997.
7) IPCC, “Special report on emissions scenarios”, Cambridge University Press; 2000.
Biosketch
Takashi Homma
Takashi Homma was born in Japan in 1976. He received Ph.D degree in Engineering from
Tokyo University of Science in 2003. He is presently a researcher at Research Institute of
Innovativ e Technology for the Earth (RITE). His main field is system analysis on climate
change mitigation, and economic and energy syste ms.
- 391 -
RITE フ ェ ニ ッ ク ス プ ロ ジ ェ ク ト ( 地 球 温 暖 化 の 影 響 と 対 策 を 含 め た 総 合 評 価 )
産業連関を考慮した排出削減の経済影響とボトルネック経済部門
本間 隆嗣
RITEシステム研究グループ研究員
1.
はじめに
本プロジェクトの主要な目的の一つである近未来の地球温暖化緩和戦略の評価を行
う た め に ,温 暖 化 緩 和 策 に つ い て は 、(1)エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 変 革 に 注 目 し た 2 150 年
ま で の 超 長 期 の 評 価 、お よ び (2)産 業 構 造 の 変 化 も 扱 う 2 050 年 頃 ま で の 中 期 の 評 価 、の
2 通りを異なるモデルを用いて行っている。超長期評価のエネルギーシステムモデル
( DNE21)か ら は 温 暖 化 緩 和 策 を 講 じ た と き の 一 次 エ ネ ル ギ ー 構 成 や CO 2 固 定 ・ 貯 留 量
の時系列変化などが得られる。中期評価のモデルは本プロジェクトで新たに開発した
もので動学的なボトムアップ型多地域エネルギーシステムモデルとトップダウン型多
地 域 多 部 門 経 済 モ デ ル の 両 者 の 長 所 を 生 か し た 統 合 モ デ ル (DEARS; Dynami c
Energy-economic Analysis model with mu lti-Regions and mu lti-Sectors)で あ り 、 こ の モ デ
ル か ら は 温 暖 化 緩 和 策 を 講 じ た と き の 2 05 0 年 頃 ま で の 部 門 別 付 加 価 値 損 失 な ど が 得 ら
れ る 。本 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て DEARS モ デ ル を 開 発 し た 背 景 と し て 、従 来 の 緩 和 策 モ
デル分析では、次のような課題が指摘されていたためである。第一に、エネルギー技
術 を 詳 細 に 扱 っ た エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル (例 え ば 、MERGE モ デ ル
デル
2))
1)
や MESSA GE モ
で は CO 2 削 減 政 策 に 伴 う 明 示 的 な 産 業 構 造 変 化 や そ れ に 伴 う エ ネ ル ギ ー 需 要 変
化を十分に扱うことが難しかった。第二に、非エネルギー産業を数部門に集約して明
示 的 に 扱 っ た CGE モ デ ル と エ ネ ル ギ ー 技 術 を 組 み 合 わ せ た 統 合 モ デ ル (例 え ば 、AI M モ
デル
3)
や MIT-EPPA モ デ ル
4)
)は 存 在 す る が 、 前 述 の エ ネ ル ギ ー モ デ ル の よ う な 時 系 列
的な分析を行うためには反復シミュレーション計算を行う必要があり、それらの方法
では同時最適化ではないために最適な資本蓄積や経済成長のパスが得られない問題点
があった。
2.
モデル概要
DEARS モ デ ル は 、 静 学 的 な 多 地 域 多 部 門 一 般 均 衡 モ デ ル で あ る GTAP (Global Trad e
Analysis Project)モ デ ル
6)
に基づきつつも、複数時点を同時最適化する非線形計画モデ
ルである。本モデルでは、割引後の全期間・全地域の消費効用の総和が最大となるよ
うに、各地域における産業別生産額、貿易額や家計消費額と、それら生産活動および
家計消費活動に必要なエネルギーのコスト効率的な供給構造を整合的に計算する構造
になっている。
モデルの特徴としては、トップダウン型経済モジュールとボトムアップ型エネルギ
ーシステムモジュールの統合モデルであり、世界全体の消費効用最大化を目的とする
動 的 非 線 形 最 適 化 モ デ ル で あ る 。 モ デ ル 対 象 期 間 は 、 21 世 紀 中 頃 ま で を 分 析 で き る よ
- 392 -
う に 1997 年 を 基 準 時 点 に 2 067 年 ま で 最 適 化 時 点 間 隔 を 1 0 年 と し て 計 算 し て い る 。地
域 分 割 に 関 し て は 、 世 界 を 18 地 域 分 割 し 、 産 業 分 類 に 関 し て は 、 非 エ ネ ル ギ ー 産 業 を
18 産 業 分 類 と し て い る 。 産 業 連 関 表 ・ エ ネ ル ギ ー バ ラ ン ス 表 に 関 連 し た 経 済 デ ー タ は
GTAP5(基 準 年 1 99 7 年 )や IEA 統 計 に 基 づ い て い る 。エ ネ ル ギ ー 産 業 に 関 し て は 、 一 次
エ ネ ル ギ ー 7 種 (石 炭 、 原 油 、 天 然 ガ ス 、 水 力 、 風 力 、 バ イ オ マ ス 、 原 子 力 )、 二 次 エ ネ
ル ギ ー 4 種 (固 体 燃 料 、 液 体 燃 料 、 気 体 燃 料 、 電 力 )を 扱 っ て い る 。
DEARS モ デ ル で は 、DNE21 モ デ ル に 基 づ く 簡 略 化 し た エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ ジ ュ ー
ル が ハ ー ド リ ン ク し 、 ボ ト ム ア ッ プ 的 に エ ネ ル ギ ー 供 給 技 術 や CO 2 回 収 ・ 貯 留 技 術 を
モデル化している。また、産業や運輸などの各部門の生産・輸出等は内生的に決定さ
れ、それらにともなって必要となる各産業のエネルギー需要量も内生的に決定され、
家計部門はエネルギー価格・所得弾性をもとに決定される。本研究における、温暖化
対策によるエネルギーシステム及び産業構造の中期の変化を分析することに適してお
り、地域別・産業別の分析・評価も可能である。図 6 にモデルの入力及び出力項目を
示す。
制約条件
温暖化緩和策評価
DEARSモデル
・CO 2排出抑制シナリオ
・GDP
・産業部門別エネルギー消費量
・産業部門付加価値生産額
・産業部門別中間投入額
・最終消費額
前提条件
・人口
・技術進歩率
・中間投入係数
・貿易収支シナリオ
経済モジュール
等
等
・一次エネルギー資源量
・化石燃料生産コスト
・エネルギー変換効率
・CO 2貯留可能容量、貯留コスト
エネルギーシステム
モジュール
等
最適化
計算
・一次エネルギー生産量
・一次エネルギー消費量
・発電電力量
・CO 2排出量(燃料種別・産業部門別)
・CO 2回収・貯留量
・エネルギー価格
・CO 2削減限界費用
等
図 6: DEARS モ デ ル の 入 出 力
3.
産業構造変化を考慮した中期緩和策評価
3.1. CO 2 排 出 削 減 に よ る に よ る 産 業 構 造 の 対 応
CO 2 排 出 パ ス に 関 し て 、 リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス (特 段 の CO 2 排 出 削 減 対 策 を と ら な い ケ
ー ス )と CO 2 濃 度 安 定 化 ケ ー ス (S650,S600,S550,S500,S450)に つ い て DEARS モ デ ル を 用
い て 温 暖 化 緩 和 策 評 価 を 行 っ た 。 な お 、 世 界 の GDP や CO 2 排 出 量 パ ス は SRES-B2 7 ) に
ほ ぼ 合 致 す る よ う に パ ラ メ ー タ を 調 整 し た 。 ま た 、 人 口 シ ナ リ オ に は SRES-B2 シ ナ リ
オ を 用 い 、 割 引 率 と 資 本 減 耗 率 は そ れ ぞ れ 年 5%と し 、 炭 素 抑 制 時 の 排 出 量 取 引 は 有 り
と し た 。 な お 、 動 学 的 最 適 化 モ デ ル に 生 じ る 終 端 効 果 へ の 対 応 と し て は 、 19 9 7 年 を 基
準 年 と し 、 最 適 化 時 点 間 隔 10 年 と し て 2 067 年 ま で モ デ ル 計 算 を 行 い 、 終 端 効 果 の 影
響 が 十 分 小 さ い と 考 え ら れ る 2 04 7 年 ま で の 解 を 評 価 に 用 い た 。
- 393 -
図 7-3 は 各 抑 制 シ ナ リ オ の 産 業 別 付 加 価 値 額 変 化 を 示 す 。前 述 の 1 8 非 エ ネ ル ギ ー 産
業・7 種一次エネルギー・4 種二次エネルギーを集約して 6 産業に集約して表示してい
る。どの産業も、濃度安定化レベルが厳しくなるにつれて付加価値額の減少は大きく
なる。相対的に消費財の役割が大きい輸送部門や、家計の主要な消費財でありかつエ
ネルギー原単位が低いサービス部門は付加価値額減少の割合が小さい。なお、ここで
の 輸 送 部 門 と は IEA エ ネ ル ギ ー バ ラ ン ス 表 に 基 づ き 自 家 用 自 動 車 も 含 ま れ る 。 一 方 、
エネルギー原単位の大きく投資財・中間財である「鉄鋼」を含むエネルギー多消費産
業は付加価値額減少の割合が大きくなる。原単位の低い「その他機械」を含むその他
産業の付加価値額減少の割合が大きい理由としては、産業の波及効果や、経済成長の
資本ストックの蓄積に関わる投資財の役割が大きい点があげられる。また、原単位の
低い建設産業の付加価値額減少の割合が相対的に大きい理由としては、消費財として
の役割がほとんどなく、経済成長の資本ストックの蓄積に関わる投資財の役割が非常
に大きいために、生産活動の縮小に大きく影響を受ける。特に、建設産業は内需産業
であり、貿易による国際分業による影響が少ないために、付加価値額の大幅な減少に
Y2007
0.5
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
合計
その他産業
エネルギー産業
サービス産業
輸送産業
-2.5
建設産業
-2.0
エネルギー
多消費産業
エネルギー産業
付加価値額の変化(%, Reference基準)
Y2047
合計
Y2037
その他産業
Y2027
サービス産業
Y2017
輸送産業
Y2007
建設産業
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
エネルギー
多消費産業
付加価値額の変化(%, Reference基準)
つながる。
Y2047
合計
その他産業
Y2037
エネルギー産業
Y2027
サービス産業
Y2017
輸送産業
Y2007
建設産業
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
-25.0
-30.0
-35.0
エネルギー
多消費産業
付加価値額の変化(%, Reference基準)
図 7: ア グ リ ゲ ー ト 6 産 業 の 付 加 価 値 額 変 化 - S650(左 )、 S550(右 )-
図 8: ア グ リ ゲ ー ト 6 産 業 の 付 加 価 値 額 変 化 -S4503.2. CO 2 削 減 に よ る GDP へ の 影 響
各 抑 制 シ ナ リ オ の DEARS モ デ ル に よ る GDP ロ ス (リ フ ァ レ ン ス 基 準 )と CO 2 削 減 の
シ ャ ド ー プ ラ イ ス を 表 2 と 図 9 に そ れ ぞ れ 示 す 。GDP ロ ス と シ ャ ド ー プ ラ イ ス は と も
に 、 S650-S500 ケ ー ス ま で は 比 較 的 小 さ な 値 を 示 し て い る が 、 S450 ケ ー ス に な る と 急
- 394 -
激 に 増 加 す る 。 DEARS モ デ ル の 想 定 の も と で は 、 45 0p pmv 達 成 の た め に は 、 経 済 活 動
全 体 の 縮 小 を も た ら し 、 極 め て 大 き な GDP ロ ス と な っ て い る 。
表 2: 各 排 出 シ ナ リ オ の GDP ロ ス (リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス 比 )
Year
1997
2007
2017
2027
2037
2047
2050
(DNE21)
2050
ShadowPrice $/tC
(Stern Review)
S450
0.00%
0.01%
0.77%
1.94%
4.62%
11.12%
S500
0.00%
0.00%
0.06%
0.20%
0.58%
1.67%
1.33%
-
S550
0.00%
0.00%
0.02%
0.10%
0.24%
0.68%
0.40%
S600
0.00%
0.00%
-0.02%
-0.05%
0.00%
0.32%
-
S650
0.00%
0.00%
-0.03%
-0.05%
-0.03%
0.20%
0.32%
around 1% (500-550 CO2 eq)
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
S450
S500
S550
S600
S650
1997
2007
2017
2027
2037
2047
図 9: 濃 度 安 定 化 レ ベ ル 別 の CO 2 シ ャ ド ー プ ラ イ ス
3.3. S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GD P ロ ス が 発 生 す る 理 由
DEARS モ デ ル と 従 来 の エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル と の 計 算 結 果 を 比 較 し て (表 2 ) 、
S650- S500 ケ ー ス ま で の GDP ロ ス は そ れ ほ ど 大 き な 違 い は な い 。 一 方 、 S450 ケ ー ス
で は DEARS モ デ ル で は 急 激 な GDP ロ ス が 生 じ る が 、 従 来 研 究 の 多 く の エ ネ ル ギ ー シ
ス テ ム モ デ ル で は S4 5 0 ケ ー ス に お い て も こ れ ほ ど 急 激 な GDP ロ ス は 生 じ て は い な い 。
この原因として以下の 2 点が考えられる。
第 一 に 、 両 者 の モ デ ル 構 造 の 違 い が あ げ ら れ る 。 DNE21 モ デ ル を 含 め た 代 表 的 な エ
ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル の モ デ ル 構 造 を 比 較 し た 場 合 、 DEARS モ デ ル で は 産 業 の 連 関
構造を明示的に扱っており、それに関連して産業用エネルギー需要の代替の想定に関
してやや保守的な想定となっている。一方、従来のエネルギーシステムモデルは、非
エネルギー産業部門を 1 マクロ経済部門として扱っているモデル構造に基づき、産業
構造は明示的に扱っていないために地域内での産業移転の制約が無く自由に動くこと
ができる想定であり、また各産業が必要とするエネルギー需要に関してもそれらの代
替 関 係 が 極 め て 柔 軟 に 対 応 す る こ と が で き る と い う 想 定 と な っ て い る 。例 え ば 、DN E 2 1
モデルでは産業・輸送・民生用を区別することなくそれらをアグリゲートした燃料種
別最終エネルギー需要が価格弾性値によりトップダウン型で表現され、産業間及び産
業内の燃料間のリンクが比較的容易に行われる。また、リファレンスケースでの最終
エ ネ ル ギ ー 消 費 構 成 も 異 な り 、DEARS モ デ ル で は DNE21 モ デ ル の 想 定 シ ナ リ オ よ り も
- 395 -
液 体 燃 料 需 要 が 相 対 的 に 伸 び る 。 こ の た め に 、 DEARS モ デ ル で は 、 モ デ ル 構 造 よ り 電
力 化 が あ ま り 進 展 せ ず 、S450 へ の 対 応 が 難 し く 大 幅 な GDP ロ ス と な っ て い る と 考 え ら
れる。
第二に、エネルギー技術の想定に関する違いがあげられる。エネルギー技術を詳細
に モ デ ル 化 し て い る DNE21 モ デ ル に 比 べ 、DEARS モ デ ル は 扱 っ て い な い エ ネ ル ギ ー 技
術 が 存 在 す る 。 例 え ば 、 DNE21 モ デ ル で は モ デ ル 化 し て い る バ イ オ マ ス 液 化 プ ロ セ ス
が DEARS モ デ ル で は モ デ ル 化 し て い な い 。 し か し 、 こ れ が 原 因 で 大 き な GDP ロ ス が
生 じ て い る わ け で は な い 。こ こ で 、S450 ケ ー ス に お い て DNE21 モ デ ル の バ イ オ マ ス 液
化 プ ロ セ ス の 有 無 に よ る GDP ロ ス の 比 較 を 行 う と 、 そ れ ぞ れ 1.3%(バ イ オ マ ス 液 化 プ
ロ セ ス 有 )、 1.8 %(バ イ オ マ ス 液 化 プ ロ セ ス 無 )と な り 、 DEARS モ デ ル ほ ど の GDP ロ ス
は生じない。
こ れ ら の こ と か ら 、多 数 の 経 済 部 門 を も つ DEARS モ デ ル と 、DNE21 モ デ ル の よ う な
1 経 済 部 門 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム モ デ ル で は 、前 述 の 電 力 シ フ ト を 産 業 部 門 が ど こ ま で 許
容できるかといった産業のエネルギー需要構造に関するモデル構造の違いが大きな影
響 を も た ら し て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 こ の た め に 、 DNE21 モ デ ル の よ う な 1 部 門 マ
ク ロ 生 産 関 数 で は 楽 観 的 な 結 果 を 導 く 可 能 性 が あ る の に 対 し 、多 部 門 モ デ ル DEAR S は 、
産業部門のエネルギー需要に関しては悲観的な結果を提供しているといえる。どちら
がより現実的であるとは一概に述べることはできないが、それぞれのモデル上の特徴
を踏まえて、結果の解釈をすることが重要である。すなわち、従来の多くのエネルギ
ー シ ス テ ム モ デ ル に よ る 温 暖 化 緩 和 策 評 価 で は 、 CO 2 排 出 削 減 に よ る GDP ロ ス が 過 小
評価されている可能性がある。
3.4. S450 ケ ー ス に お い て 大 き な GD P ロ ス を 発 生 さ せ る 部 門 の 調 査
前 述 の よ う に 、 GDP ロ ス に 関 し て 、 S500 ケ ー ス ま で は 従 来 研 究 の 緩 和 策 評 価 モ デ ル
と そ れ ほ ど 大 き な 違 い は な い が 、S450 ケ ー ス に お い て GDP ロ ス が 急 激 に 増 加 す る 結 果
と な っ て い る 。 こ の 原 因 を 現 在 の モ デ ル 構 造 の 範 囲 内 で 詳 し く 探 る た め に 、 S4 50 ケ ー
ス に お い て ど の 産 業 部 門 が ボ ト ル ネ ッ ク と な り 大 き な GDP ロ ス を 生 じ さ せ て い る か を
調 べ た 。 具 体 的 に は 、 S4 5 0 ケ ー ス に お い て 仮 想 的 な CO 2 削 減 技 術 を 導 入 す る こ と に よ
り 調 べ た 。 今 回 は 、 S450 ケ ー ス の 際 に 、 対 象 と な る 各 部 門 の CO 2 排 出 係 数 を 改 善 さ せ
ることにより、仮想的な部門別の排出削減技術導入の効果を想定し、その影響を調べ
た 。 S450 ケ ー ス に お い て 、 全 地 域 の 20 2 7 年 以 降 の S450 ケ ー ス に お い て 、 各 需 要 部 門
別 に 世 界 一 律 で そ れ ぞ れ CO 2 排 出 5 0%改 善 す る よ う な 場 合 (コ ス ト フ リ ー で 、当 該 部 門
の み の 化 石 燃 料 消 費 の CO 2 排 出 係 数 を 従 来 値 の 5 0%に す る よ う な 技 術 が 導 入 さ れ た 場
合 )の 結 果 を 表 3 に 示 す 。 図 1 0 は リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス と S4 5 0 通 常 ケ ー ス の CO 2 排 出
量の推移をそれぞれ示す。
表 3 よ り 、 当 該 部 門 の CO 2 削 減 向 上 に よ る GDP ロ ス へ の 影 響 が 最 も 大 き い 部 門 は 、
輸 送 部 門 で あ る 。エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 で あ る 鉄 鋼 産 業 等 の 改 善 に よ る 影 響 は 小 さ い 。
- 396 -
よ っ て 、 輸 送 部 門 が ボ ト ル ネ ッ ク と な り S4 5 0 に お い て 大 き な GDP ロ ス を 生 じ さ せ て
いることが示唆される。
図 8 よ り 、 CO 2 排 出 削 減 に よ っ て 、 輸 送 部 門 の 生 産 へ の 影 響 が 他 部 門 に 比 べ て 相 対
的 に 小 さ い 。ま た 、輸 送 部 門 は 他 産 業 と 比 較 し て CO 2 排 出 量 も 大 き い 。図 10 よ り 、リ
フ ァ レ ン ス ケ ー ス の CO 2 排 出 の 部 門 別 シ ェ ア が あ ま り 大 き な 変 動 な く 安 定 的 に 推 移 し
て い る の に 比 べ 、 S4 5 0 通 常 ケ ー ス に お い て は 輸 送 部 門 の CO 2 排 出 量 が 後 期 で は か な り
の シ ェ ア を 占 め て い る た め 、 こ の よ う な 条 件 下 で 輸 送 部 門 に CO 2 削 減 技 術 が 導 入 さ れ
る と 、 輸 送 部 門 の CO 2 排 出 削 減 が 緩 和 さ れ 、 輸 送 部 門 の 生 産 額 は 増 加 す る 。 そ の 生 産
波及効果によって他の産業の生産増加を促す。同時に、他の部門の排出にかなり大き
な ゆ と り が で き る た め 、 そ れ ま で 抑 制 さ れ て い た 部 門 か ら の CO 2 排 出 を 増 加 さ せ る こ
と が で き 、 GDP ロ ス も 大 き く 減 ら せ る 。 一 方 、 鉄 鋼 部 門 の CO 2 原 単 位 は 相 対 的 に 大 き
い が 、CO 2 排 出 量 の 絶 対 量 が そ れ ほ ど 大 き く な い た め に 、そ の 波 及 効 果 を 含 め た と し て
も 、 そ れ ら の CO 2 排 出 改 善 に よ る GDP へ の 影 響 は 限 定 的 で あ る と い え る 。
表 3:S450 シ ナ リ オ に お け る 各 部 門 CO 2 -50%改 善 技 術 導 入 仮 想 ケ ー ス の 世 界 GD P ロ ス
(リ フ ァ レ ン ス 比 )
CO2-50%改善ケース
非金属
繊維
その他製
造
農業
2
2047
2037
2027
2017
0
図 10: 部 門 別 の 世 界 CO 2 排 出 量
12
10
8
6
4
2
0
2047
4
家庭
社会サービス
ビジネスサービス
航空
運輸
農業
その他の製造
繊維
建設
製材・木製品
紙・パルプ
食料品
その他鉱物
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
2037
6
2007
建設
2027
8
1997
製材
2017
10
CO2排出量(GtC)
紙・パル
プ
食料品
ビジネス 社会サー
サービス ビス
0.00% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01%
0.64% 0.78% 0.75% 0.78% 0.75% 0.78% 0.77% 0.78% 0.79% 0.78% 0.78% 0.69% 0.73% 0.69% 0.69%
1.47% 2.04% 1.80% 2.04% 1.90% 2.07% 1.96% 1.99% 2.04% 2.00% 2.05% 1.66% 1.88% 1.74% 1.76%
3.93% 4.70% 4.62% 4.70% 4.56% 4.73% 4.62% 4.68% 4.71% 4.67% 4.71% 4.17% 4.40% 4.19% 4.26%
9.94% 11.22% 11.34% 11.20% 10.97% 11.26% 11.06% 11.24% 11.24% 11.12% 11.20% 10.79% 10.69% 10.14% 10.39%
12
4.
鉱業
2007
0.01% 0.01%
0.79% 0.74%
2.08% 1.84%
4.74% 4.51%
11.28% 11.00%
化学
輸送機 その他機
械
械
1997
Y2007
Y2017
Y2027
Y2037
Y2047
鉄鋼
非鉄金
属
CO2排出量(GtC)
S450
通常ケース
輸送
0.00%
0.04%
0.07%
0.34%
1.60%
家庭
社会サービス
ビジネスサービス
航空
運輸
農業
その他の製造
繊維
建設
製材・木製品
紙・パルプ
食料品
その他鉱物
その他機械
輸送機械
非金属
非鉄金属
化学
鉄鋼
- リ フ ァ レ ン ス ケ ー ス (左 )、 S450 通 常 ケ ー ス (右 )-
まとめ
本 研 究 で は DEARS モ デ ル を 用 い て CO 2 濃 度 安 定 化 レ ベ ル に よ る 産 業 部 門 へ の 影 響 を
分析した。産業別の生産影響について注目すると、濃度安定化ケースでは、中間財や
投 資 財 と し て の 役 割 が 比 較 的 大 き い 「 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 」、「 建 設 産 業 」 で の 付 加
価値額低減が相対的に大きく、消費財の役割が大きい「輸送産業」や「サービス産業」
の 付 加 価 値 額 低 減 は 小 さ い 傾 向 に あ る 。 こ れ は 、「 エ ネ ル ギ ー 多 消 費 産 業 」 は エ ネ ル ギ
ー 原 単 位 の 大 き く か つ 投 資 財 ・ 中 間 財 で あ る 、 ま た 、「 建 設 産 業 」 は 総 投 資 額 に 占 め る
- 397 -
割合が大きい投資財であるためである。一方、排出抑制ケース時における「サービス
産業」の生産損失が相対的に小さい要因として、エネルギー原単位が他産業に比べて
相 対 的 に 小 さ い こ と が 主 要 因 で あ り 、 ま た 、「 サ ー ビ ス 産 業 」 は 消 費 財 と し て の 役 割 が
大きく、投資財としての役割が小さいため、排出抑制時の生産損失が相対的に小さく
なる。
ま た 、 マ ク ロ 経 済 へ の 影 響 に 関 し て 、 550 ~500ppmv-CO 2 only 程 度 は 、 現 状 で 期 待 で
き る 産 業 構 造 変 化 に よ る エ ネ ル ギ ー 需 要 変 化 や CO 2 削 減 の た め の 技 術 的 方 策 の 対 応 範
囲 で あ る 可 能 性 が 大 き い 。 さ ら に 厳 し い 450ppmv-CO 2 only レ ベ ル を 実 現 す る に は 、 産
業のエネルギー需要の代替関係がやや保守的である想定に基づくと、産業構造変化や
エ ネ ル ギ ー 供 給 部 門 の 技 術 導 入 以 外 に も 、特 に 運 輸 部 門 で 2 03 0 年 頃 に は CO 2 を 大 幅 に
抑 制 で き る 技 術 革 新 が あ れ ば GDP ロ ス は 大 き く 緩 和 で き る 可 能 性 が あ る 。
参考文献
1) Manne AS, Mendelsohn R, Richels R. ”A Model for Evaluating Regional and Global
Effects of GHG Reduction Policies.” En ergy Policy Vo l.23; pp.17–34, 1995.
2) Messner S and Strubegger M. User ’s Guide for MESSA GE III. WP -95-69, In ternational
Institute for Applied Syste ms Analysis; 1995.
3) Morita T, Matsuoka Y, Penna I, an d Kainu ma M. Global Carbon Diox id e Emission
Scenarios and Their Basic Assu mptions: 19 94 Survey. CGER-1011-94, Center for Global
Environmental Research, National Institute for Environmental Stud ies; 1994.
4) Paltsev S, Reilly JM, Jacoby HD, Eckaus RS, McFarland J, Sarofim M, Asadoorian M and
Babiker M. The MIT Emissions Prediction and Policy Analysis (EPPA) Model: Version 4.
5) http://web.mit.edu/globalchange/www/MITJ PSPGC_Rpt125.pd f (accessed Feburuary 6,
2007).
6) Hertel TW (eds). Global Trade Analysis: Modeling and Applications, Ca mb ridge
University Press; 1997.
7) IPCC, “Special report on emissions scenarios”, Camb ridge University Press; 2001.
略歴
本間
隆嗣
昭 和 51 年 生 ま れ 。平 成 1 5 年 東 京 理 科 大 学 理 工 学 研 究 科 経 営 工 学 専 攻 博 士 後 期 課 程 修
了 。 工 学 博 士 。 平 成 15 年 財 団 法 人 地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 入 所 、 同
研究グループ研究員。エネルギー・経済を対象とするシステム工学が専門。
- 398 -
システム
Project PHOENI X: Integrated Assess ment of Global Warming Impacts and Measures
Implications to International Arguments on Stabilization Target
Keigo Akimoto
Senior Researcher, Systems Analysis Group, RITE
1. Introducti on
Japan is obligated to reduce her greenhouse gas (GHG) e missions to –6% relative to the
base year (the year 1990/1995) by the Kyoto Protocol. Wh ile larg e efforts by both the
government and private sectors have been conducted, current GHG emissions in Japan were
+8.1% in FY2005 (preliminary statistics from the govern ment) and a larg e gap exists between
the current level and the target by the Kyoto Protocol. On the other hand, official discussions
on the post-Kyoto frameworks and targets after 20 13 have started. Th ese discussions are
composed of the emissions reduction targ ets fo r Annex 1 coun tries after 2013, reviews of the
Kyoto Protocol itself, and dialogues on long-term cooperative action to address climate
change under UN Fra mework Conventions on Climate Change (UNFCCC). For all the
discussions, the ulti mate target of GHG c onc entration stabilization, which Article 2 of
UNFCCC mentions as “The ultimate objective of this Convention and an y related legal
instruments that the Conference of the Parties may adopt is to achieve (…) stabilization of
greenhouse gas concen trations in the atmo sphere at a level that would prevent dangerous
anthropogenic interference with th e climate syste m,” is funda mental for th e cli mate policy,
and also crucial for current and future human beings in the world beyond the scope of climate
policy. The PHOENIX has tackled th is difficult issue. This paper provides the ov erview of
recent internatio nal arguments about the post-Kyoto framework and the policy i mplications
fro m the PHOEN IX achievements .
2. Current International Argument s about Emissions Reductions
While the objective of UNFCCC (Article 2) “is to achieve (…) stabilization of greenhouse
gas concentrations in th e at mo sphere at a level that would prevent dangerous anthropogenic
interference with th e climate syste m,” the article does not mention th e sp ecific level. There
is no doubt about the necessity of the atmospheric GHG concentration stabilization; however,
it is very difficult to determine the specific stabilization level. On the other hand, th e
stabilization level is the most critical issue to decide th e middle- or lo ng-ter m targ et for
e missions reductions. There is little flex ibility for the emission profiles to be followed
particularly if the target of th e stab ilization is set at a low level.
EU has asserted that the global mean temp er ature increase should not exceed 2 ºC and the
at mospheric CO 2 concentration should be stabilized at 550 pp mv (Conclu sion s adopted by
Coun cil Meetin g of Environment in 1996). In recent decision s, “it confirms that (…) the
global annual mean surface temp erature increase shou ld no t ex ceed 2 ºC above pre-industrial
- 399 -
levels (Presidency conclusions by European Coun cil in 2005); “in order to have a reasonable
chance to li mit global warming to no mo re than 2 ºC, stabilization of concentrations well
below 550 ppmv CO 2 equivalent may be need ed” (Conclusion s adop ted by Council Meeting
of Environment in 2005). In addition, on January 10, 2007, Commission of the European
Co mmunities asserted that the global mean temp erature should not ex ceed 2 ºC comp ared to
pre-indu strial level. In order to achieve it, by 2050 global emissions mu st be reduced by up
to 50 % compared to 1990. In th is case, th e emissions of 60 –80 % should be reduced in
developed coun tries by 2050, if differentiations in the burden of emission reductions are
considered. In order to meet the emissions reduction in 20 50 , the reductio ns of 30% in
developed countries are needed by 2020 1 . Although th e distribution of probability density for
climate sensitivity has still larg e uncertain ties and is not very reliable, th e allowable
e mission may not be larg ely different from t he EU target if the stabilization target is set at
such a low level as 2 ºC.
However, it is not necessarily clear that the 2 ºC target is truly approp riate for global
human societies. Nevertheless, this issue is al mo st directly conn ected to the proposal for th e
post-Kyoto target by Commission of the Eu ropean Co mmunities and therefore it is a
near-term issue to be discussed i mmediately. The project of PHOENIX scientifically
approached this serious and internationally important issue of the ultimate target. Th e polic y
i mplications fro m the PHOENIX are discussed below as comp aring the PHOENIX with the
Stern Review because the Review see ms to have exerted fairly larg e an impact on the
proposal by the Commi ssion of the European Co mmunities.
3. Stern Review and PHOENIX
UK HM Treasury had asked Sir Nicholas Stern to lead a review of The Economics of
Climate Change (So-called ‘Stern Review’). It was released on October 30, 2006, and also
discussed at the COP12 meeting on Novemb er for the Dialogue under th e UNFCCC. Stern
Review is a review paper focusing on the whole climate change issues including global
warming i mpacts and mitigation measures, and looks similar to the PHOENIX. However, the
methodology and the obtained results of the PHOENIX are different from Stern Review in
so me critical points (Table 1 shows co mparisons between the PHOENIX and th e Stern
Review). Following discussions fo cus particularly on differences between the two studies.
The Stern Review does not clearly provide the desirable stabilization level of GHG
concentration as th e ulti mate target. However, it mentions “the risks of the worst i mpacts of
climate change can be substantially reduced if greenhouse gas level in the atmo sphere can be
stabilized between 450 and 550 ppmvCO 2 eq.”, “the annual costs of achieving stab ilization
between 500 and 550 pp mv CO 2 eq. are around 1% of global GDP”, “i t would already be very
1
The EU should take the lead by committing autonomously to reduce its own emissions by at least 20%
by 2020 and a cut that should be increased to 30% as part of a satisfactory global agreement.
- 400 -
difficult and co stly to aim to stab ilize at 450 ppmv CO 2 eq.” (these valu es of the levels are
equivalent CO 2 concentration including th e po sitive effects of non-CO 2 GHG but excluding
the negative effects of sulfur aerosols), and “the benefits of strong and early action far
outweigh the economic costs of not acting”. Fro m the descriptions, we can in fer that Stern
Review reco mmends us to stabilize at 500–550 ppmv CO 2 eq. (which corresponds to around
450–500 pp mv CO 2 eq. if the negative effects of sulfur aerosol are taken into account; to
420–455 ppmv if only CO 2 concentration is counted.)
The methodology which leaded to the abov e co nclusions will be discussed belo w as
compared that of the PHOENIX. The global warming impacts under a BaU scenario (no
specific policy for climate chan ge) in Stern Review were evaluated based on th e assump tions
of IPCC SRES A2 (high population and low per-capita econo mic g rowths). As a result, th e
estimated per-capita GDP loss by global warming is 0.9% and 5.3% in 2100 and 2200,
respectively (assu med discount rate of time preference is 0.1% p.a.). However, the Review
asserts that the GDP lo ss in 2200 will be 11% if non-market impacts of global warming ar e
included; it will be 13.8% if clima te-syste m feedbacks are also included. In addition, it says
that if regional costs are weighted using valu e judgments consistent with those for risk and
ti me, it will be 20%.
In contrast, the PHOENIX assessed the global warming impacts under IPCC SRES B2
assu mptions (mediu m population and medium per-capita economic growths) for not on ly BaU
scenario but also the stabilization scenarios of 650, 550 and 450 ppmv (CO 2 only). The Stern
Review did not evaluate the global warming impacts for different levels of GHG
concentration and not estimate the benefits resulting from the alleviation of global warming
i mpacts by stabilizin g the concen tration. In cost-benefit analyses, the mitigation costs of
stabilizing the concen tration and the global warming impacts in case of no global warming
mitigation measures are not th e two factors to be co mp ared for the analysis, but the benefits
resulting fro m the alleviation of global warming impacts by a certain mitigation measures
and the cost of th at measures should be co mp ared. However, in th e Stern Review, the
mitigation costs and the global warming impacts in case of no mitigation measures were
compared and discussed. Usually th e benefits of the impacts alleviation are sma ller than the
i mpacts in case of no mitigation measures, and this is confirmed by the studies of PHOENIX.
In addition, the Stern Review uses SRES A2 scenario for the assu mp tions of population an d
economic growth, while the base scenario s have larg e effects on the magnitude of the global
warming impacts. It is well known that larg er impacts will be esti mated particularly under
SRES A2 assu mp tions; the base scenario assu mp tions would be mo re crucial fo r the impacts
evaluation than the targ et level of the concen tration stab ilization. The methodology of th e
Stern Review to estimate non-market impacts and to weigh regional differences considering
equity is not clear. In contrast, th e PHOENIX dealt these issues in cluding time prefere nce
discou nt rate to value judgment of experts and estimated the desirable level of GHG
concentration through questio nn aires to the experts with a clear procedure. The PHOENIX
- 401 -
addressed the ultimate targ et of concentration stabilization based on a clear distinction
between scientific analyses and value ju dg ments, and tried to make clear po litical discussion
points. The methodology of the PHOENIX is very different from that of Stern Review in
these points.
Next discussed will be mitigation costs. As mentioned above, Stern Review utilizes the
base scenario assump tions of SRES A2 for th e assessme nts of global warming impacts. On
the other hand, Stern Review basically evaluates the GDP loss by taking mitigation measures
under the assu mption of SRES B2, and thus has inconsistency in th e assessments of glob al
warming impacts and the mitigation co sts. In contrast, the PHOENIX assesses the global
warming impacts and mitigation costs consistently with the base scenario fixed (SRES B2:
mediu m population and medium p er-capita economic growths).
While the above discussions focused on the methodology, the po licy i mplications will be
discussed below. Both the Stern Review and the PHOENIX basically explore the desirable
stabilization level of GHG concentration through cost and benefit considerations. The
cost-ben efit analysis is the in evitable approach in order to optimize whole the syste ms wi th
limited resources. However, the cost-ben efit an alysis also has a limitation particularly for
global warming issues. The limitations are attributed to non-market i mp acts, equity o f
generations and regions, and large uncertain ties of global warming issues. These issues can
never be treated with out valu e ju dgments. The PHOENIX investigated the value judgments of
experts after providing th e evaluation results of major glob al warming impacts and
mitigation measures and costs for different stabilization levels, keeping the base scenario
fixed. As discussed in the paper of S. Mori in th is proceedings, the result of expert judg ments
indicated that ab out 650 ppmv (CO 2 on ly) (corresponding to 80 0 pp mv CO 2 eq .) an d 55 0 pp mv
(CO 2 only) (corresponding to 65 0 ppmvCO 2 eq.) are desirable stabilization level in average,
respectively, at the first stage and at the second stage; the second stage inquired the valu e
judg ment on equity of generations and regions in addition to th e values of non-market
i mpacts of wider areas than at the first stage. According to th e valu e judgment results, many
Japanese experts on climate change consider th at the desirable level of 450–500 ppmvCO 2 eq.
implied by the Stern Review is too lo w. While th e investig ation was conducted to ma jor
Japanese experts of the fields of climate change projection, assessments on global warming
i mpacts and adap tations and mitigation measures, the obtained averaged values do no t
necessarily have a decisive imp o rtance due to th e limitation on number of the ex perts.
Rather, we should notice a wide range in th e desirable level that the ex perts consider to
stabilize at and in th e important i mpact sectors that they consid er to be addressed in the
judg ment of desirable stabilization level, even after providing the same scientific
information on global warming i mpacts and mitigatio n costs. Thus, it will be mo re i mportant
to id entify what is the key factor fo r the desirabl e level of concentration, in order to attain a
convergence in the discussions on the ultima te targ et. On e of the re markable findings was
warming impacts on ecosystems; the larger importance th e experts provide for the impacts on
- 402 -
ecosystems, the lower stabilization level th ey recommended, an d this relationship was
statistically significant. These insights cannot be obtained fro m the Stern Review or the
assessment reports of IPCC, but the PHOENIX succeeded in obtaining th em through the
investigations and analyses of expert judg ments, requiring a highly systematic approach to
global warming issues. It will be an important work to make further in vestig ations with a
larger confidence in order to ob tain a convergence of the value judgments which had a wide
range at present for the ultimate targ et.
Finally, the policy implications are discussed fro m the assessme nt results of mitigation
measures. As already discussed, according to St ern Review, the mitigation cost to achieve the
stabilization at 500–550 pp mv CO 2 eq. (corresponding to 420–455 ppmv for only CO 2 ) is
around 1% of the glob al an nu al GDP. In contrast, acco rding to th e esti mation by DEARS
model which was developed in the PHOENIX, the GDP loss in achiev ing 450 pp mv (CO 2
only) was above 10% by around 2050 and th is is very different fro m the result of the Stern
Review as reported by T. Homma in this proceedings. The estimated losses for the
stabilization at levels higher than around 550 ppmv (CO 2 only) are not very different between
the Stern Review and DEARS; however, th e lo ss fo r th e stab ilization at 45 0 ppmv (CO 2 o nl y)
is very different between th e two. Long-term mitigation ev aluation models are usually
si mplified in the relationship between in dustrial structures and en ergy dema nds, and the
studies of the PHOENIX indicate th at long-term models would optimistically esti mate losses
of GDP. Computable general equilibriu m (CGE) models depend on past in du strial structures
and therefore the estimated GDP losses with these types of models are relatively large as
compared to si mplified long-term models. However, DEARS is an up-to-date model which
treats industrial structures and energy supply technologies in cluding CCS in detail and
considers techno logy improvements of energy deman d sectors. The significance of the
DEARS mo del results is not small in considering the ultimate target from the viewpoint of
mitigation measures and costs. Should we despair of achiev ing 450 ppmv (C O 2 only) as the
DEARS results suggest? The answer is ‘No’ because the DEARS may be a little pessimi stic.
Other model results show the possibility to achieve 450 ppmv(CO 2 only) stabilization
without large GDP lo sses if larg e CO 2 emission reductions can be achieved in transportation
sector without larg e co sts by innovative technologies. However, it is also true th at the ti me
for develop ments and diffusio ns of such transportation technologies is left short. Th e
technology perspective and the desirable targ et level have a close connection and th e
ultimate target should be discussed to gether with the strategies of technology develop ments
and diffusions.
4. Conclusions
The PHOENIX is a striking project that assesses global warming impacts, adaptation and
mitigation with a highly syste mat ical approach. Assessment reports of IPCC review all the
subjects relating to cli mate change; however, the aim of the report is to survey existing
scientific studies and therefore the reports have no t analyzed or evaluated the global
- 403 -
warming issue as a whole systema tically. The Stern Review is a re markable paper that also
has reviewed almost all the subjects relating to climate change as th e assessment reports of
IPCC, and conducted so me original analyses. However, the Stern Review did not necessarily
analyze the global warming i mpacts, adaptations and mitigations syste matically with due
consistency. On the other hand, the PHOENIX made clear that the issue of the ulti mate target
naturally includ es valu e judgments and investigated the judg ments of Japanese experts on
climate change. This type of evaluation work is no t fo und in the assessment reports of IPCC
or in the Stern Review.
Global warming is an interdisciplinary issue and therefore the study of the PHOENIX is
not enough while it has spent almo st 5 years. However, th e PHOENIX addresses the ultima te
target of Article 2 of UNFCCC by an original systemat ic approach. Through a unique and
highly syste matic treat ment, th e PHOENIX approached the core of the global warming issue
and brought about precious implications regard ing to how we should consider the Article 2 of
UNFCCC and proceed with the discussions for the future.
Finally, ma jor policy i mplicatio ns fro m the PHOENIX achievements are summarized as
follows.
1) Current scientific ev idences on global warming impacts obtained by the research activity
of the PHOENIX could not find th e ground for the stabilization below 2 ºC increase
comp ared to pre-industrial levels (below 45 0 ppmv-CO 2 only).
2) Several global warming impacts can be alleviated by adaptation measures and therefore
they
strong ly
socio-econo mic
depend
on
conditions
so cio-economic
on
global
conditions.
warming
i mpacts
The
will
effects
be
of
larger
different
than
the
stabilization level of GHG concentration.
3) Even if CO 2 concentration is stabilized at the cu rrent level immediately, around 1 ºC will
increase additionally fro m the current level and the sea level will increase with a larger
response time than the temp erature. This calls mo re attentio n to the stud y of adaptation
measures and frameworks implementing them.
4) Technology is a key to avoid a larg e loss of GDP fro m the viewpoint of mitigation
measures. Discussions on the desirable stabilization level of GHG concentration without
the strategy for technology develop ment and diffusion will have little value.
5) The desirable stabilization level of GHG concentration is related to technology and social
progresses which affect mitigatio n costs and opportu nities of adaptations. Th erefore, they
should be regarded as within the context of th e ultimate targ et level.
6) Japanese experts of climate change still show larg e differences in the desirable
stabilization level of GHG concentration. Relatively a strong relationship between the
value judgment on the importance of ecosystems and th e desirable stab ilization level of
GHG concentration was observed. In order to converge the value judgments of the experts,
what impacts of which sector mak e a wide gap between th e experts judg ments should be
investigated and sh aring scientific findings in common is important. It will be also
- 404 -
important to gather the value judg ments of th e experts glob ally.
7) Each country has its own sense of value, an d th e adap tations and sustainable
develop ments are also i mportant. It will be indispensable to investig ate what fra meworks
of the sustainable developments pro mote th e global warming mitigations in harmony with
the climate change issue.
References
1) IPCC, 2000. Special Report on Emissions Scenarios, Cambridge, Cambridge University Press.
2) IPCC, 2001. Climate Change 2001, Cambridge, Cambridge University Press.
3) N. Stern, 2007. The Economics of Climate Change – The Stern Review, Cambridge, Cambridge University
Press.
- 405 -
Table 1: Comp arison between PHOENIX and Stern Review
A pp ro a c h to
the ulti mat e
stabilizat ion
level
A s s u med
baseline
scenario for
the
assessments
Esti ma ted
g l o b a l mea n
te mp erature
increase
Social
p refer ence
discount
rate utilize d
for
the
assessments .
Mo n e t a r y
conversions
of
g l ob al
w a r mi n g
i mpacts
Adap tation
Stern Review
Co s t s f or glo b a l w a r mi n g mit i g a t i o n ( l o ss
of GDP) and global warming impacts (loss
of GDP) in case of no mi tigatio n policy
were esti ma ted. Comp aring these two costs,
the desirable stabiliza tion level of GHG
concen tration was discussed. While both
mit i g a t i o n
and
d amag e
c o sts
were
consid ered,
the
benefits
of
damage
reduction by mitigat ion measures were not
esti ma ted.
Comp arison
between
the
mitigation costs and benefits of damage
reduction was not mad e and theref ore the
analysis cannot be a true cost-ben efit
analysis.
Until
year
2100:
IPCC
SRES
A2
( po pu l a t i o n : h i gh , p er- cap i t a GDP g ro w t h :
low)
Between year 210 0 and 2 200 , wor ld
population growth: 0.6% p.a. (year 21 00 :
15 billion, year 2200: 27 billion)
[SRES A2 is utilized for the ev aluations on
global warming impacts, SRES B2 is
basically utiliz ed for the estimations on
mitigation co sts.]
SRES A2 Reference (BaU) Pathway
Base: 2 . 4– 5. 8 º C (4 . 1º C) in 2 100
H i g h s c e n ari o : 2 .6 –6 .5 º C i n 210 0
0 . 1% p . a . f o r t h e a s ses s men t s of g l o b a l
w ar mi n g i mp act s was ad op te d.
This is unclear.
(The GDP loss of 5% is esti mated for
market i mpacts in 2200. the loss reaches to
20% if non-market i mpacts etc. are
consid ered. However, the process to
esti ma te them is not clear.)
The report mentioned the importance of
adaptations;
however
the
adaptation
measures were not consid ered for th e
estima tion processes of global warming
i mp act s ( W h i l e t ech n ol o g y improv e me nts
on mitigat i on measures are considered,
those on adaptation measures are not
consid ered.)
- 406 -
PHOENIX
Cost-ben efit approach was ad opted.
Global warming impacts on many sectors
were estimated fo r emission pathways
with no climate policy and to achieve
diff er ent levels of th e concen tration
stabilization, and the benefits of da mage
reduction by
the
stabilizat ion.
In
addition, the mi tigation costs to stabilize
at diff eren t levels were esti ma ted. These
scientific results were provided to
experts and willingness to pay was
investigated. The desirable stabili zation
level of the experts was estima ted by
cost-ben efit analysis. Experts finally
decided th eir desirable level consid ering
the temporally esti mate d desirable level
and
o t her
factors
i n clu d i ng
non-quantitative evaluation results of
impacts, equity of generations and
regions etc.
Until year 2100: IPCC SRES B2
(population: mediu m, per- capita GDP
g ro w t h : med i u m)
Between year 21 00 an d 2 200 , wor ld
popula tion grow th: 0. 06 % p. a. ( year
2100: 10 billion, year 2200: 11 billion)
[SRES B2 is utilized for both the
a s s e s s me n t s o f g l ob a l w a r mi n g i mp a c t s
and mitigati on co sts.]
SRES B2 Reference (BaU) Pathway
Cli mate sensitivit y 3.0 ºC: 3.3 ºC in 2100
Cli mate sensitivit y 4.5 ºC: 4.3 ºC in 2100
5% p.a. for th e assess ments of the
mitigation measures was adopted.
The temp oral integration of global
warming impacts was not co nducted
using any discount rate, but it was left to
the value judgment of experts.
The global warming i mpact on each
sector was esti ma ted for an ap propriate
physical value of th e sector. Based on the
e s t i ma t e d i mp a c t s , e x p e r t s w er e j ud g ed
for th e desirable stabilizat ion level of
GHG
concentration.
The
valuation
processes are clear.
Adap tation measures are also considered ,
although they are not en ough.
T h r e sh o ld of
global
w a r mi n g
damage
If the concentration is stabil ized at
4 50 –55 0
p p mv - CO 2 eq . ,
maj o r
g l ob a l
w a r mi n g i mp a c t s c a n b e a v o id e d.
According to the exis ting literatures, the
threshold for collapse of THC will exist
only)
with
5 50 –65 0
p p mv
( CO 2
precautionary considerations. Bleaching
o f so me c o r a l r e ef o c c ur s b y 1 º C
increase. However, around 1 ºC increase
will not be avoided due to the past
e mi s s i o n s . Cle a r t hres h o ld s o f o t h er
g l o b a l w a rmi n g i mp a c t s w e r e n o t f ou nd .
Esti ma ted
Below 1% of GDP for stabilization at Below 1% of GDP for stabilization at 550
costs
for 5 00 –55 0 ppmv - CO 2 eq b y 20 50 . Ho wev er, p p mv ( CO 2 only). GDP loss will be over
the stabilization at 450 ppmv -CO 2 eq. is too 1 0 % f or s t a b i l i z a t i o n a t 4 5 0 pp mv ( CO 2
global
costly and unrealistic.
only) . In order to avoid the loss,
w a r mi n g
installat ions of innovative technologies
miti gat i on
of smal ler carbon intensity are required
in transp or tation sectors by 203 0.
Note: Th e PHOENIX evaluated the impacts a nd co sts b ased on stab ilizat io n scen ar io s of
a t mo s p h e r i c CO 2 and therefor e the targ ets were designated by “ppmv(CO 2 only) ”. On the other
h a nd , th e Ste r n Rev i e w e v a l u a t e d the m b a s e d o n CO 2 equivalent concen tr ation (”ppmv-CO 2 e q . ” )
including the effects of Non-CO 2 GHGs (howev er, the negative effects of SOx were excluded .).
Ro ug h l y, 55 0 p p mv - CO 2 eq. ex clud ing th e negative effects of SOx, (designation in the Stern
Rev i e w ) cor r e sp on d s to 50 0 pp mv - CO 2 eq. in cluding the negative effects and 455 ppmv (CO 2
o n l y) .
Biosketch
Keigo Akimoto was born in 1970. He received Ph.D. degree fro m Yokohama National
University in 1999. He joined Research Institute of Innovativ e Technology for the Earth
(RITE) to work with the Systems Analysis Group in April 1999. Currently he is a senior
researcher at RITE. His scientific interests are in modeling and analysis of energy and
environment systems includ ing th e costs, risks and public perceptions. He was a guest
researcher at IIASA in 2006 and is currently a guest researcher at th e Research Center fo r
Advanced Science and Tech nology, the Un iversity of Tokyo. He received the Peccei
Scholarship fro m IIASA in 1997, an award fro m the Institute of Electrical Engineers of Japan
in 19 98 , and an award fro m the Japan Society of Energy and Resources in 2004.
- 407 -
R IT E フ ェ ニ ッ ク ス プ ロ ジ ェ ク ト ( 地 球 温 暖 化 の 影 響 と 対 策 を 含 め た 総 合 評 価 )
温暖化抑制目標に関する国際議論への含意
秋元圭吾
RITEシステム研究グループ 主任研究員
1. は じ め に
京 都 議 定 書 に お い て 日 本 は 基 準 年 比 ( 基 本 的 に 1990 年 比 ) –6% が 求 め ら れ て い る も
の の 、 官 民 挙 げ て の 努 力 に も 関 わ ら ず 2005 年 度 の 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 量 は +8.1% ( 速
報 値 ) と 、 目 標 に は 程 遠 い 状 況 に あ る 。 一 方 、 2013 年 以 降 の 排 出 削 減 枠 組 み ・ 目 標 に
関 す る い わ ゆ る Post-Kyoto を め ぐ る 議 論 も 本 格 化 し 始 め て き た 。京 都 議 定 書 の 次 期 約
束期間における先進国の排出削減目標の議論、京都議定書の見直しの議論、そして国
連 気 候 変 動 枠 組 条 約( UNFCCC )の 下 で の 長 期 対 話 な ど に よ っ て Post-Kyoto の 公 式 な
議 論 が 始 ま っ て い る 。 し か し 、 こ れ ら い ず れ に お い て も 、 UNFCCC の 第 2 条 で 言 及 さ
れている「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大
気 中 の 温 室 効 果 ガ ス の 濃 度 を 安 定 化 さ せ る 」、い わ ゆ る 究 極 目 標 が い か な る レ ベ ル に あ
るべきかは、その根幹に関わる問題であり、また、気候政策の枠に留まらず、現在お
よび将来の全人類社会のあり方に大きな影響を与える重要な決断が求められる問題で
も あ る 。 PHOENIX は 正 に 、 こ の 困 難 な 課 題 に 正 面 か ら 取 り 組 ん で き た も の で あ り 、
本 稿 で は 、 本 格 化 し て き た Post-Kyoto を め ぐ る 国 際 議 論 と 合 わ せ な が ら 、 PHOENI X
で得られた知見が、それらの議論に対しどういった含意を有するのかを述べる。
2. 温 暖 化 抑 制 目 標 に 関 す る 国 際 議 論 の 動 向
UNFCCC の 目 的 ( 第 2 条 ) に お い て は 、「 気 候 系 に 対 し て 危 険 な 人 為 的 干 渉 を 及 ぼ
すこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究
極的な目的」とするとしているが、その具体的な濃度レベルは示されていない。人類
にとって温室効果ガス濃度の安定化が必要なことは疑いの余地はないが、どういった
レベルに安定化すべきかは非常に困難な課題である。しかし、困難ではある一方、中
長期的な排出削減目標を決定する上での根幹となる部分でもある。とりわけ低い濃度
安定化レベルを目標とする場合には、年間許容排出量に関する時間的な柔軟性はほと
んど有さなくなる。
EU は 早 く か ら 産 業 革 命 以 前 か ら の 全 球 平 均 気 温 上 昇 が 2.0 ℃ を 超 え る べ き で は な
く 、 そ の た め に は CO 2 濃 度 を 550 ppmv に 安 定 化 す べ き で あ る と 主 張 し て き た ( 1 9 9 6
年 欧 州 環 境 相 理 事 会 決 定 )。 そ し て 近 年 で は 、 2.0 ℃ を 超 え る べ き で は な い と 確 認 す る
一 方 ( 2005 年 欧 州 理 事 会 決 定 )、 2.0 ℃ を 超 え な い た め の 安 定 化 CO 2 濃 度 は 、 最 近 の 気
候 感 度 の 確 率 密 度 分 布 推 定 を 利 用 し た 分 析 等 を 基 に 、 550 ppmvC O 2 eq. を は る か に 下 回
る レ ベ ル が 必 要 と し た ( 2005 年 欧 州 環 境 相 理 事 会 決 定 )。 ま た 、 2007 年 1 月 10 日 に
欧 州 委 員 会 は 、 改 め て 2.0 ℃ を 超 え る べ き で は な い と し た 上 で 、 そ の た め に は 20 5 0 年
- 408 -
に は 基 準 年 比 50% 排 出 削 減 が 必 要 と し た 。 そ し て 、 負 担 の 差 異 を 考 え る と 、 先 進 国 は
205 0 年 に 60 ~ 80% 削 減 が 求 め ら れ 、 2020 年 で は 30% 削 減 が 必 要 と し た 1 。気 候 感 度 の
確率密度分布が現在の科学的知見で高い精度を有しているとは考えられないものの、
2.0 ℃ は 厳 し い 目 標 に な る た め 、2.0 ℃ を 超 え な い こ と を 目 標 と す る の で あ れ ば 、そ こ に
至る経路はかなり限定的で、逆算して算出される排出削減量は必然的でもある。
し か し 、 世 界 の 人 類 社 会 に と っ て 、 2.0 ℃ 目 標 が 果 た し て 真 に 適 切 な 目 標 な の か 、 と
い う 点 は 明 確 で は な い 。 一 方 こ れ は 、 欧 州 委 員 会 に よ る 提 案 で あ る Post-Kyoto の 数 値
目 標 と 直 結 し て い る た め 、 直 近 の 問 題 で も あ る 。 本 PHOENIX プ ロ ジ ェ ク ト は 、 今 ま
さに国際的に極めて重要となっているこの究極目標がいかにあるべきかについて、科
学的にアプローチしたものである。以下には、欧州委員会の提案にも少なからず影響
を 与 え た と 思 わ れ る い わ ゆ る Stern Review と PHOENIX と を 比 較 し つ つ 、 PHOENI X
プロジェクトからの政策的含意を見てみたい。
3. St ern Rev i e w と P H O E N I X
英 国 財 務 省 の 委 託 に よ っ て N. Stern 卿 ら が 取 り 組 ん だ The Economics of Climate
Change( 通 称 Stern Review ) が 2006 年 10 月 30 日 に 公 表 さ れ 、 11 月 の COP12 に お
け る 長 期 対 話 な ど で も 話 題 と し て 取 り 上 げ ら れ た 。 Stern Review は 温 暖 化 影 響 と 緩 和
策の総合的なレビューであり、本研究と関連する点は多い。しかし一方、方法論や得
ら れ た 知 見 は 必 ず し も 同 じ で は な い ( 表 1 に は PHOENIX と Stern Review の 概 要 の
比 較 を 示 す )。 以 下 で は と り わ け 両 者 の 差 異 を 中 心 に 見 て い く こ と と す る 。
Stern Review に お い て 究 極 目 標 と し て 推 奨 す る 濃 度 安 定 化 レ ベ ル は 必 ず し も 明 確 に
は 記 載 さ れ て い な い 。し か し 、
「 450 ~ 550 ppmvCO 2 eq. の レ ベ ル に 抑 え ら れ れ ば 、気 候
変 動 が も た ら す 最 悪 の 影 響 は か な り 減 少 」、「 500 ~ 550 ppmvCO 2 eq . に 抑 え る た め の 費
用 は 世 界 の 年 間 GDP の 1% 程 度 と 推 定 さ れ 、 何 も し な か っ た 場 合 の リ ス ク に 比 べ れ ば
ず っ と 低 い 費 用 で 達 成 が 可 能 」、
「 450 ppmvCO 2 e q. に 抑 え る の は 非 常 に 困 難 で 費 用 も か
か り す ぎ る 」( い ず れ も SOx の 冷 却 効 果 を 含 ま な い CO 2 等 価 濃 度 で あ り 、 SOx の 冷 却
効 果 を 含 ん だ CO 2 等 価 濃 度 と し て は 、そ れ ぞ れ 50 ppmvCO 2 eq. 程 度 低 い レ ベ ル と 解 釈
で き る )、「 早 期 に 断 固 と し た 対 応 策 を と る こ と に よ る メ リ ッ ト は 、 対 応 し な か っ た 場
合 の 経 済 的 費 用 を は る か に 上 回 る 」と い っ た 記 述 か ら は 、500 ~ 550 ppmv CO 2 eq.( SOx
の 冷 却 効 果 を 含 め る と 450 ~ 500 ppmvCO 2 eq. 前 後 相 当 、 CO 2 単 独 で は 420 ~ 4 5 5
ppmv( CO 2 only) 相 当 ) を 暗 に 推 奨 し て い る も の と 推 察 で き る 。
そ れ で は こ の 結 論 が 導 き 出 さ れ た 方 法 論 に つ い て 、 PHOENIX と 比 較 し つ つ 見 る こ
と と し た い 。 ま ず 、 温 暖 化 影 響 の 評 価 で あ る が 、 Stern Review で は 、 基 本 的 に IPCC
SRES A 2 ベ ー ス( 人 口 高 位 、一 人 当 た り 経 済 成 長 低 位 )の BaU シ ナ リ オ( 温 暖 化 緩 和
1
こ れ を 基 に 先 進 国 が 協 力 す る の で あ れ ば 、E U も 2 0 2 0 年 ま で に 3 0 % 削 減 を 実 施 し 、単 独 で あ っ て
も 20%削 減 を 実 施 す べ き と し た 。
- 409 -
策 を と ら な い 場 合 )で 行 っ て い る 。そ の 結 果 、210 0 年 の 一 人 当 た り GDP ロ ス は 0.9% 、
2200 年 で は 5.3% と し て い る ( 時 間 選 好 効 用 割 引 率 は 0.1%/yr を 想 定 )。 し か し 、 非 市
場 の 温 暖 化 影 響 を 考 慮 す る と 2200 年 に 11% に 、ま た 、最 近 注 目 さ れ つ つ あ る 気 候 シ ス
テ ム の フ ィ ー ド バ ッ ク を 更 に 考 慮 す る と 13.8% の GDP ロ ス に な る と し て い る 。そ し て
地 域 的 な 貧 富 の 差 に 関 す る 重 み 付 け を 行 う と 2200 年 の GDP ロ ス は 20% に な る と し て
いる。
一 方 、 PHOENIX で は 、 ベ ー ス シ ナ リ オ は IPCC SRES B2 ( 人 口 中 位 、 一 人 当 た り
経 済 成 長 中 位 ) で 実 施 し 、 BaU シ ナ リ オ の み な ら ず 、 650 、 550 、 450 ppmv(CO 2 only)
濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ で 評 価 を 実 施 し た 。 Stern Review で は 濃 度 安 定 化 シ ナ リ オ に 対 応
したシステム的な評価を実施していないため、濃度安定化による温暖化影響低減の便
益は算出されていない。費用便益を考える場合、温暖化影響の大きさそのものではな
く、無対策時と比べて対策によって影響を低減できる便益と、対策にかかる費用とを
比 較 し な け れ ば な ら な い が 、 Stern Review で は そ れ を 実 施 し て い る わ け で は な い 。 対
策 に よ っ て 温 暖 化 影 響 を 低 減 で き る も の の 、 PHOENIX の 分 析 に お い て も 、 そ の 温 暖
化影響の低減分は、緩和策をとらない場合の影響の大きさよりもずっと小さいことが
示唆されており、緩和策をとらない場合の影響が緩和コストを上回るからと言って、
影響低減の便益が緩和コストを上回るとは限らない。一方、ベースシナリオとして
Stern Review で は SRES A2 ベ ー ス を 利 用 し て い る が 、 PHOENIX で の 検 討 に お い て
も 、 温 暖 化 影 響 の 大 き さ は 人 口 や 経 済 成 長 の 度 合 い に よ っ て 大 き く 影 響 さ れ ( A2 の 場
合 、 温 暖 化 影 響 が 大 き く 出 や す い )、 ベ ー ス シ ナ リ オ の 違 い は 濃 度 安 定 化 レ ベ ル 以 上 に
支 配 的 な 要 因 と な り 得 る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 ま た 、 Stern Review で は 非 市 場 的 な
温暖化影響や地域的な貧富の差に関する重み付けの根拠は必ずしも明確ではないが、
PHOENIX で は 割 引 率 も 含 め 、 こ れ ら は 価 値 判 断 の 問 題 で あ る こ と を 明 確 に し た 上 で 、
手続きを明確にした専門家によるアンケート調査を介して望ましい濃度安定化レベル
の 導 出 を 行 っ た 。 PHOENIX で は 科 学 的 な 分 析 ・ 評 価 と 価 値 判 断 を 区 分 す る こ と に よ
り 、 政 策 的 な 論 点 を 明 確 に す る こ と を 試 み て お り 、 Stern Review の 方 法 論 と 決 定 的 に
異なっている。
次 に 緩 和 コ ス ト 面 に つ い て だ が 、 Stern Review で は 温 暖 化 影 響 評 価 は SRES A 2 ベ
ー ス で 実 施 し て い る に も 関 わ ら ず 緩 和 コ ス ト の 評 価 に お い て は A2 シ ナ リ オ を ベ ー ス
に し て お ら ず 、む し ろ B2 ベ ー ス に 近 い 条 件 で の モ デ ル 計 算 結 果 が 中 心 と な っ て お り 整
合 し て い な い 。 一 方 、 PHOENIX で は 温 暖 化 影 響 ・ 緩 和 策 評 価 を 通 じ て 同 一 の ベ ー ス
シ ナ リ オ( B2 : 人 口 中 位 、一 人 当 た り 経 済 成 長 中 位 )で 統 一 し た 評 価 を 実 施 し て お り 、
整合的な評価となっている。
以上、方法論の差異を中心に見てきたが、それでは、それを踏まえて政策的な含意
を 考 え た い 。 基 本 的 に は 費 用 便 益 的 に 考 え よ う と す る ア プ ロ ー チ は Stern Review も
PHEONIX も 両 者 共 通 し て お り 、 限 り あ る 資 源 を 有 効 に 使 い 全 体 的 な 最 適 性 を 追 求 す
るためには基本的にこれしか評価の方法論はあり得ない。しかし、費用便益といって
- 410 -
も、非市場的な影響もあれば、世代間や地域間の衡平性の問題もあり、また、不確実
性が未だに大きい問題でもあるため、必然的に価値判断が入り込む問題である。
PHOENIX で は ベ ー ス ラ イ ン の シ ナ リ オ ( 人 口 や GDP ) を 揃 え 、 そ の 上 で 、 各 濃 度 安
定化レベルについて各種温暖化影響・緩和策を可能な限り定量的かつ整合的に分析・
評価し、その結果を専門家に提示した上で、専門家の価値判断を調査した。その結果
は 、本 予 稿 集 の 森 の 報 告 に あ る よ う に 、平 均 と し て は 、第 1 ス テ ー ジ で の 調 査 で は 65 0
ppmv (CO 2 only) 程 度 ( 800 ppmvCO 2 eq . 程 度 に 相 当 )、 非 市 場 的 な 温 暖 化 影 響 や 世 代 間
や 地 域 間 の 衡 平 性 等 が 考 慮 さ れ た と 考 え ら れ る 第 2 ス テ ー ジ の 調 査 結 果 で は 550 pp m v
(CO 2 only) 程 度 ( 650 ppmv C O 2 eq. 程 度 ) が 望 ま し い と 考 え る レ ベ ル で あ っ た 。 Stern
Review が 暗 に 推 奨 し て い る と 考 え ら れ る レ ベ ル の 450 ~ 500 ppmvCO 2 eq. は 、 少 な く
とも日本の専門家は低過ぎるレベルと考えていると示唆される。しかしながら、調査
は気候予測、温暖化影響、緩和策等の分野に跨りつつ、それぞれ日本を代表する気候
問題の専門家に対して実施したものの、人数が限られることもあり、この平均化され
た望ましいと考えた濃度安定化レベル自体が大きな意味を有しているとまでは言えな
い。むしろ、整合的に評価された同じ科学的情報の下であっても、望ましいと考える
レ ベ ル 、ま た 、重 視 す る 影 響 要 因 に 大 き な 開 き が あ る こ と に 注 目 す べ き だ と 思 わ れ る 。
そのため、望ましいと考える濃度安定化レベルが主に何に起因しているかを特定する
ことの方が、今後更に究極目標を具体化していく議論の上で、より重要なポイントで
あるとも考えられる。その一例は、生態系影響を重要と考えた専門家ほど、望ましい
と考える濃度安定化レベルが低い傾向が見られ、これは統計的にも有意であったこと
が 挙 げ ら れ る 。 こ の よ う な 示 唆 は 、 Stern Review や IPCC の 評 価 報 告 書 か ら は 見 出 せ
ず 、 PHOENIX に お け る 専 門 家 の 価 値 判 断 に 関 す る 調 査 ・ 分 析 お よ び そ の 根 本 と な っ
た温暖化問題全体の整合的な分析・評価によって実現できた点である。今後、より信
頼性を持ってそういった点を明確にしていくことによって、究極目標をめぐる科学的
認識や価値判断の差異の収斂にもつながる可能性があり、政策の合意にとっても極め
て重要であると考えられる。
最 後 に 、 緩 和 策 の 評 価 の 面 か ら 政 策 的 な 含 意 を 考 え た い 。 先 述 の よ う に 、 Stern
Review で は 500 ~ 550 ppmvC O 2 eq. ( 420 ~ 455 ppmv (CO 2 only) 相 当 ) に 抑 え る た め
の 費 用 は 世 界 の 年 間 GDP の 1% 程 度 と 推 定 さ れ る と し て い る 一 方 、 本 予 稿 集 の 本 間 の
報 告 に あ る よ う に 、 PHOENIX で 開 発 し た DEARS モ デ ル に よ る 分 析 で は 45 0
ppmv( CO 2 only) に 安 定 化 す る に は 2050 年 頃 に は 10% を 超 え る GDP 損 失 が 推 定 さ れ 大
き く 結 果 は 異 な っ て い る 。 550 ppmv( CO 2 only) 程 度 ま で の 安 定 化 で は 、 Stern Revi e w
の 報 告 と 大 き な 差 異 は 見 ら れ な い も の の 、 450 ppmv( CO 2 only) に な る と 大 き な 差 異 が
見られた。本予稿集の本間の報告で詳細に議論されているように、特に長期的な緩和
策モデルは、産業構造とエネルギーの関係が簡略化されるため、ややもすると楽観に
すぎる結果を提示する危険性があることが示唆された。これまでも、一般均衡モデル
( CGE ) は 過 去 の 産 業 構 造 の 影 響 を 強 く 受 け る た め 、 GDP ロ ス が 比 較 的 大 き く 算 出 さ
れ る 傾 向 に あ る こ と は 指 摘 さ れ て い た 。し か し 、 DEARS モ デ ル は 産 業 構 造 を 詳 細 に 表
現 す る と 同 時 に 、 CO 2 回 収 貯 留 ( CCS ) も 含 め て エ ネ ル ギ ー 技 術 を 比 較 的 詳 細 に モ デ
- 411 -
ル化し、また、エネルギー需要部門も含めた技術進歩も考慮した先進的なモデルであ
る。そのモデルが示した結果は、緩和策から究極目標を考えるときの一つの材料とし
て の 意 義 は 小 さ く な い 。 し か し 、 そ の 示 さ れ た 結 果 を 悲 観 的 に 見 て 、 Stern Revi e w と
は 異 な り 450 ppmv( CO 2 only) は 無 理 と 考 え 諦 め る べ き な の か と 言 え ば 、 そ れ も 否 で あ
る 。 モ デ ル 結 果 は 、 運 輸 部 門 に お け る 革 新 的 な CO 2 排 出 削 減 を 安 価 に 実 現 で き れ ば 可
能性はあることを示唆している。しかし同時に、技術開発とその普及のために残され
た時間はわずかだということも事実である。いずれにしても、技術の見通しは究極目
標を考える上で、切っても切れない関係であり、技術開発・普及戦略と切り離して究
極目標レベルを論じることはあまり意味をなさないと言える。
4. ま と め
本 PHOENIX は 、 温 暖 化 影 響 ・ 適 応 策 、 緩 和 策 全 体 を 整 合 的 に 分 析 ・ 評 価 し た と い
う 点 で 、世 界 的 に 見 て も 稀 有 の 研 究 と 言 え る 。も ち ろ ん 、 IPCC の 評 価 報 告 書 で は 温 暖
化 問 題 全 体 の 研 究 を レ ビ ュ ー し て い る 。し か し 、 IPCC の 評 価 報 告 書 は 最 新 の 既 往 研 究
をサーベイすることが目的であり、温暖化問題全体について独自に整合的な分析・評
価 を し て い る わ け で は な い 。 ま た 、 Stern Review も 温 暖 化 問 題 全 体 を カ バ ー し た 報 告
書ではあるものの、温暖化影響・適応策、緩和策全体を整合的に分析・評価したとは
言 え な い 。 更 に 、 PHOENIX で は 、 究 極 目 標 を 議 論 し 、 政 策 決 定 に つ な げ て い く 場 合
には、それに関連する価値判断を避けて通れないことを明らかにした上で、専門家の
価 値 判 断 に つ い て も 調 査 を 実 施 し た 。 こ う い っ た 取 り 組 み も ま た 、 IPCC や Ste rn
Review で は ほ と ん ど 見 ら れ な い も の で あ る 。
温 暖 化 問 題 は 極 め て 広 範 か つ 学 際 的 な 問 題 で あ り 、5 年 間 の 取 り 組 み で も 不 十 分 で は
あ る 。 し か し な が ら 、 本 PHOENIX は 、 独 自 の シ ス テ ム 的 な ア プ ロ ー チ を 通 し て 、 温
暖 化 問 題 の 本 質 に 迫 り 、 ま た 、 UNFCCC 第 2 条 の 究 極 目 標 を ど の よ う に 考 え 、 今 後 、
どのように政策として結び付けていくべきかの新たな示唆を与えたと考えられる。
最 後 に PHOENIX に よ っ て 得 ら れ た 知 見 か ら の 主 要 な 政 策 的 含 意 と し て 次 の よ う に
まとめておく。
-
現 時 点 の 温 暖 化 影 響 に 関 す る 科 学 的 知 見 の 集 積 か ら は 、 産 業 革 命 以 前 比 2℃ 上
昇 安 定 化 ( CO 2 単 独 の 濃 度 で は 450 ppmv を 下 回 る レ ベ ル に 安 定 化 ) が 必 須 で
あるような結果は得られなかった。
-
温暖化影響は、適応の余地も大きく、経済状況などの社会環境に大きく依存す
る。これらは濃度安定化レベル以上に、温暖化影響に大きな差異をもたらし得
る。
-
仮 に 今 す ぐ に CO 2 濃 度 を 安 定 化 し て も 、 現 在 か ら 更 に 1 ℃ 前 後 の 気 温 上 昇 は 不
可避であり、また、海面は更に時間遅れをもって上昇すると見込まれる。緩和
策と共に、適応策およびそれを実施するための枠組みの検討をより充実させて
いくことが必要。
-
緩 和 コ ス ト の 面 か ら は 、 GDP の 大 幅 な 低 減 を 避 け る に は 、技 術 が キ ー を 握 っ て
- 412 -
いることは間違いない。技術の開発、普及戦略と切り離して、望ましい濃度安
定化レベルを論じることはあまり意味をなさない。
-
望ましい濃度安定化目標は、緩和コストや適応機会に大きな影響を及ぼす技術
進 展 や 社 会 進 展 と 不 可 分 で あ り 、そ れ ら 全 体 像 の 中 で 議 論 し な け れ ば な ら な い 。
-
日本における気候問題の専門家においても、望ましい濃度安定化目標への見方
は未だ大きな差異を有している。例えば、生態系影響への見方の差異は、望ま
しいと考える濃度安定化レベルと比較的相関が強いと見られたが、どのような
事象に対して価値判断に差異が生じているのかを今後更に明確にした上で、知
見の共有化、そして必要があれば、より集中的に更なる知見の集積を図ってい
くことも重要。また、世界的にも専門家の判断の集積を図ることも重要と考え
られる。
-
それぞれの国が様々な価値観を有しており、また、適応策も重要であることも
明らかであるため、持続可能な発展の文脈における様々な政策が、気候変動問
題と調和し、温暖化緩和を促進するような枠組みとするにはどうすべきかを模
索・検討することも重要と考えられる。
参考文献
1)
IPCC, 2000. Special Report on Emissions Scenarios , Camb ridge, Ca mb ridge University
Press.
2)
IPCC, 2001. Climate Change 2001 , Cambridge, Cambridge University Press.
3)
N. Stern, 2007. The Economics of Climate Change – The Stern Review , Camb r i dge,
Ca mbridge University Press.
- 413 -
表 1
PHOENIX と Stern Review の 比 較
Stern Review
望ましい濃
度安定化レ
ベルを言及
するための
アプローチ
評価におい
て用いられ
たベースシ
ナリオ
全球平均気
温上昇推定
PHOENIX
温 暖 化 緩 和 費 用 ( GDP 損 失 ) と 、 緩
和策を取らない場合の温暖化影響の
被害額をそれぞれ算出。両者を比較
し、望ましい濃度安定化レベルを言
及 。一 見 す る と 、費 用 と そ れ に よ り も
たらされる便益を考えているようで
は あ る が 、温 暖 化 の 緩 和 が も た ら す 温
暖化影響低減の便益を算出している
わ け で は な く 、緩 和 策 を 取 ら な い 場 合
の温暖化影響の被害額と緩和費用と
を 比 較 し て い る の で 、実 は 費 用 便 益 分
析とはなっていない。
費用便益的アプローチ。緩和策を取ら
ない場合、および、各種レベルに濃度
安定化する場合、それぞれの排出パス
に沿って、各種温暖化影響の大きさを
算出。これから温暖化緩和策を講じた
ときの温暖化影響の低減効果(便益)
を算出。一方、各種レベルに濃度安定
化するための緩和費用を算出。これら
を専門家に提示した上で、温暖化影響
低減のための支払い意思額を調査。費
用便益分析によって望ましい濃度安定
化レベルを推定。その推定結果を参考
にしつつ、現時点では定量化できない
温暖化影響や世代間・地域間の衡平性
なども考慮してもらい、最終的に望ま
しいと考える濃度安定化レベルを表明
してもらった。
~ 2 1 0 0 年 ま で : I P C C S R E S A 2 シ ナ ~ 2 1 0 0 年 ま で:I P C C S R E S B 2 シ ナ リ
リ オ( 人 口 高 位 、一 人 当 た り 経 済 成 長 オ ( 人 口 中 位 、 一 人 当 た り 経 済 成 長 中
位)
低位)
2100-2200 年 : 世 界 人 口 0.6% p.a.で 2100-2200 年 : 世 界 人 口 0.06% p.a.で
増 大 す る と 仮 定 ( 2100 年 : 150 億 人 、 増 大 す る と 仮 定 ( 2100 年 : 100 億 人 、
2200 年 : 270 億 人 相 当 ) 《 た だ し 、 2200 年 : 110 億 人 )
A2 シ ナ リ オ が 用 い ら れ て い る の は 温
暖 化 影 響 の 評 価 の み で あ り 、緩 和 コ ス
ト の 算 出 の ベ ー ス は B2 シ ナ リ オ に 近
いものがほとんど》
SRES B2 リ フ ァ レ ン ス パ ス
SRES A2 リ フ ァ レ ン ス パ ス
気 候 感 度 3.0℃ : 2100 年 3.3℃
ベ ー ス ラ イ ン : 2100 年 2.4~ 5.8℃
気 候 感 度 4.5℃ : 2100 年 4.3℃
( 4.1℃ )
高 シ ナ リ オ : 2100 年 2.6~ 6.5℃
温 暖 化 影 響 評 価 に お い て 0.1%/yr を 緩 和 策 評 価 に お い て は 5%/yr を 利 用
利用
温暖化影響評価においては明示的に用
いず、専門家の判断に包含される。
評価におい
て用いられ
た時間選好
割引率
温 暖 化 影 響 不透明さを有する
の 金 銭 換 算 ( 市 場 的 影 響 と し て は 2200 年 に は
G D P 比 5 % と し て い る も の の 、非 市 場
影 響 な ど 様 々 な 面 を 考 慮 す る と 20%
に 及 ぶ と し て い る 。た だ し 、そ の 数 値
的根拠は必ずしも明瞭ではない。)
適応策
適応策の重要性には言及があるもの
の 、温 暖 化 影 響 の コ ス ト 算 出 に あ た っ
て適応策の考慮はほとんど行われて
い な い( 緩 和 策 に は 技 術 の 進 展 を 考 慮
し て い る 一 方 で 、適 応 の 進 展 は 見 込 ま
れていない)
温 暖 化 影 響 450-550 ppmv-CO2eq. に 安 定 化 す れ
の閾値
ば、主要な温暖化影響は回避可能
- 414 -
温暖化影響は項目毎にそれぞれの指標
で算出。その上で、その情報を基に専
門 家 が 判 断 。そ の 導 出 プ ロ セ ス は 明 瞭 。
不十分ではあるが、適応策についても
考慮
既 往 文 献 か ら は 、T H C 崩 壊 の 閾 値 は 気
候 感 度 を 予 防 的 に 考 え た 場 合 、5 5 0 - 6 5 0
ppmv (CO2 only)に 存 在 す る 可 能 性 が
あ る 。1 ℃ の 上 昇 に よ り 、サ ン ゴ が 白 化
すると見込まれる。ただし過去の排出
に よ り 既 に 1℃ 程 度 の 上 昇 は 不 可 避 。
他の温暖化影響事象に特段の閾値的な
存在は見出されなかった。
温 暖 化 緩 和 500-550 ppmv-CO2eq.安 定 化 は 2050 550 ppmv(CO2only)安 定 化 は GDP 比
費 用 の 見 積 年 ま で は G D P 比 1 % 未 満 。 た だ し 、 1 % 未 満 。た だ し 、4 5 0 p p m v ( C O 2 o n l y )
もり
450 ppmv-CO2eq. 安 定 化 は 費 用 が か は GDP 比 10%以 上 と な る 可 能 性 有 り 。
そ れ を 回 避 す る た め に は 、2 0 3 0 年 頃 ま
かりすぎ、非現実的
で に 運 輸 部 門 に お け る 革 新 的 な CO2 排
出削減技術の導入が不可欠
注 ) PHOENIX で は CO2 大 気 中 濃 度 を ベ ー ス に 分 析 し た た め ”ppmv(CO2 only)”と 記 し て い る 。 一
方 、 Stern Review で は Non-CO2 GHG の 温 室 効 果 を 含 め た 等 価 CO2 濃 度 ( ”ppmv-CO2eq.”) で 検
討 さ れ て い る ( た だ し SOx の 冷 却 効 果 は 考 慮 さ れ て い な い ) 。 大 雑 把 に 、 SOx の 冷 却 効 果 を 含 ま
な い 等 価 CO2 濃 度 ( Stern Review の 場 合 ) の 550 ppmv-CO2eq. は 、 冷 却 効 果 を 含 め る と 500
ppmv-CO2eq.程 度 、 CO2 の み の 濃 度 に 換 算 す る と 455 ppmv(CO2 only)程 度 に 相 当 す る 。
略歴
秋元
圭吾
昭 和 45 年 生 ま れ 。平 成 11 年 横 浜 国 立 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 博 士 課 程 修 了 。工 学 博
士 。 平 成 11 年 財 団 法 人 地 球 環 境 産 業 技 術 研 究 機 構 入 所 、 現 在 、 同
システム研究
グ ル ー プ 主 任 研 究 員 。平 成 18 年 国 際 応 用 シ ス テ ム 分 析 研 究 所( IIASA )客 員 研 究 員 、
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員兼務。エネルギー・環境を対象とする
シ ス テ ム 工 学 が 専 門 。著 書 と し て 、 CO 2 削 減 戦 略( 分 担 執 筆 )、図 解 CO 2 貯 留 テ ク ノ ロ
ジ ー ( 分 担 執 筆 )。 199 7 年 II ASA よ り Peccei 賞 、 1998 年 電 気 学 会 よ り 優 秀 論 文 発 表
賞 、 2004 年 エ ネ ル ギ ー ・ 資 源 学 会 よ り 茅 奨 励 賞 を そ れ ぞ れ 受 賞
- 415 -
Energy Implications of Stabilizing Greenhouse Gas Concentrations
Jae Edmonds
Laborato ry Fellow and Chief S cientist
PNNL’s Joint Global Change Research Institute (JGCRI)
Summary
Stabilizing the concen tration of greenhouse gases is the go al of the United Nations
Framework Conv ention on Climate Change.
This goal is shared by more than 170 nations of
the world including Japan and The United States.
The implications of th is goal ar e
profound.
The most i mportant greenhouse gas released by humans into the atmo sphere is CO 2 and th e
most important source of CO 2 emissions is fossil fuel use, followed in tu rn by land-use
change and industrial processes.
Unlike traditional pollutants, the concentration of CO 2 in the atmo sphere depends on
cumu lative, not an nual e missions.
That is, there is an effective limit on cumu lative global
CO 2 emissions ov er the 21st century for any CO 2 concen tration limit.
Thus, stabilizing the
concentration of CO 2 requires th at global emissions must peak and then decline indefinitely
thereafter, regardless of the concentration at which CO 2 is stabilized.
The challenge of stabilization of CO 2 co ncen trations carries with it many and profound
implications.
The economically efficient price of CO 2 rises at the rate of interest plus the
average rate of removal from the atmosphere, because CO 2 is a “stock” pollu tant.
Thus,
unlike traditional “flow” pollutants such as SO2 or local air pollu tants, an economically
efficient price can be expected to rise, doubling at a regular rate, in this case the price of
carbon doubled approxi mately every 15 years.
Stabilization of greenhouse gas concentrations dramatically changes th e glob al energy
system.
The mo re stringent limits on climate change, 450 pp m, began with relatively high
values for carbon an d these escalated rapidly, lead in g to a mo re r ap id peak in glob al CO 2
emissions and a subsequent decline.
Regardless of the level of climate chan ge stab ilization,
CO 2 emission mu st always peak and decline thereafter, but in less stringent control cases the
peak is higher and later and the subsequent decline is delayed.
The global energy syste m is dra matically changed in stabilization regimes.
Electric
power generation shifts fro m fos sil fuels, largely natural g as and co al, to ren ewable and
nuclear energy and to fossil fuels with CO 2 capture and storage technologies.
- 416 -
Buildings and
indu stry increase their use of electricity, which becomes increasingly carbon free.
However, th e transportation sector shifts increasingly to the use of biofuels.
biomass crops for their energy content requires land.
Th e growth of
It is important to note that terrestrial
carbon emissions associated with land use can be just as i mportant as fossil fuel carbon
emissions.
Thus, unless terrestrial carbon emissio n s fro m land-use change such as
deforestation face the same carbon price as fossil fuel carbon emissions, accelerated
deforestation can occur.
Technology availability will be an i mportant determi n ant of the cost of stabilization.
Many technologies potentially play i mportant roles.
The suite of technologies responding to the stabilizatio n challenge will evolve over time.
While an y time profile of greenhouse gas stabilization begins with the present suite of
available technologies, the faster that suite i mproves, th e lower the cost.
e missions mu st continually fall to stab ilize the concentration of CO 2 .
larger emissions mitigation ch allenge.
Ov er time C O 2
This leads an ev er
More than half of all 21st century CO 2 emissions
mitigation occurs after the year 2050 ev en if the desired CO 2 concentration is as low as 450
ppm.
Thus, the nature of technology th at can be made available in that period will have a n
important role in shaping the technology response to stab ilization and to co st.
Finally, we note th at th e non-CO 2 gases play an important role in managing th e costs o f
climate change.
Technologies that li mit e missions of gases such as methane can relax the
need for energy-related CO 2 emis sio n s controls by hundreds of EJ.
This presentation employs new scenarios, developed at the Jo int Global Ch ange Research
Institute (JGCRI) that explore potential futures with an d without policies to stab ilize climate
change.
Th ese scenarios were developed using the 14-region MiniCAM model of lo ng -ter m
energy, economy, agriculture, land use, atmo sphere and climate.
The reference scenario,
which examines the i mplications of proceeding without further actions to limit climate
change is characterized by a global population th at reaches a maximu m of 9 billion people in
the second half of the 21st century and then declines to 8.5 billion peop le at th e end of th e
century.
The scenario assu mes heterogeneous econo mic growth with the presently
developed nations of the world continuing to ex perience productiv ity growth, an d some
developing countries, notably China, India and other South and East Asia embarking on an
economic transition.
The global energy system expand s to approx imately 1 400 ex ajoules
(EJ) per ye ar by the end of the century, fueled largely by fossil fuels, though renewable and
nuclear energy forms gain market share.
Li mited co nventional oil implies a transition to
unconventional liquids to fuel a rapidly growing transportation sector.
Fossil fuel CO 2
emissions increase to mo re than 20 petagrams of carbon (PgC) per year by the end of the 21 st
century.
- 417 -
Biosketch
Jae Edmonds is a Ch ief Scientist and Laboratory Fellow at the Pacific Northwest National
Laboratory’s (PNNL) Joint Global Change Research In stitute, and Adjunct Professor of
Public Policy at the University of Maryland at Co llege Park.
Dr. Ed monds is the principal
investigator for the Global Energy Techno logy Strategy Program to Address Climate Change,
an international, public-private research collaboration.
His research in the areas of
long-term, global, en ergy, economy, and climate chan ge span s mo re than 25 years, during
which time he published several books, nu merous scientific papers and made countless
presentations.
He serves on nu merous panels and adviso ry bo ards related to en ergy,
technology and climate change.
His received his Ph.D. fro m Duke University in 1975.
- 418 -
温室効果ガス濃度安定化のエネルギー問題への含意
Jae Edmonds
Laboratory Fellow and Chief S cientist,
PNNL’s Joint Global Change Research Institute
要旨
温室効果ガス濃度の安定化は国連気候変動枠組み条約の目標である。この目標は、
日 米 を 含 む 1 70 以 上 の 国 に よ っ て 共 有 さ れ て い る 。 こ の 目 標 の 含 意 は 深 い 。
人 類 に よ っ て 大 気 中 に 放 出 さ れ る 最 重 要 の 温 室 効 果 ガ ス は CO 2 で あ り 、 CO 2 排 出 源
の 最 も 重 要 な も の は 化 石 燃 料 の 使 用 で あ り 、次 に 土 地 利 用 変 化 と 工 業 プ ロ セ ス が 続 く 。
伝 統 的 な 汚 染 物 質 と 異 な り 、CO 2 の 大 気 中 濃 度 は 排 出 の 年 間 量 で な く 、累 積 量 に よ り
決 ま る 。 す な わ ち 、 CO 2 の 濃 度 安 定 化 に は い か な る レ ベ ル で あ れ 、 21 世 紀 に わ た る 世
界 の 累 積 的 CO 2 排 出 量 に 対 し て 実 効 的 制 限 が 生 じ る 。 そ の た め 、 CO 2 の 濃 度 安 定 化 の
ためには世界の排出量はピークに達した後、その後永遠に減少する必要がある。これ
は安定化レベルによらない。
CO 2 濃 度 安 定 化 の 課 題 が 意 味 す る も の は 多 く あ り 、ま た 、深 い も の が あ る 。経 済 的 に
効 率 的 な CO 2 の 価 格 は 利 子 率 と 大 気 か ら の 平 均 除 去 率 の 和 の 率 で 上 昇 す る が 、 そ れ は
CO 2 が“ ス ト ッ ク ”汚 染 物 だ か ら で あ る 。こ の よ う に 、SO2 や ロ ー カ ル な 空 気 汚 染 物 な
ど の 伝 統 的 な “ フ ロ ー ” 汚 染 物 と 異 な り 、 経 済 的 に 効 率 的 な CO 2 価 格 は あ る 一 定 の 率
で 2 倍 と な り ( こ の 場 合 炭 素 価 格 は 約 1 5 年 毎 に 倍 増 )、 上 昇 す る と 予 測 さ れ る 。
温 室 効 果 ガ ス 濃 度 の 安 定 化 は 世 界 の エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム を 劇 的 に 変 化 さ せ る 。 450
ppm と い う 、 よ り 厳 し い 制 約 は 相 対 的 に 高 い 炭 素 価 格 と と も に 始 ま り 、 そ し て 、 急 速
に 上 昇 し 、CO 2 排 出 量 は よ り 早 く ピ ー ク を 迎 え 、そ の 後 低 下 す る 。気 候 変 動 の 安 定 化 レ
ベ ル に 関 係 な く CO 2 排 出 は 常 に ピ ー ク に 達 し そ の 後 低 下 せ ね ば な ら な い 。 し か し 、 緩
やかな制約の場合には、ピークは高く後ろに動き、その後の低下も遅くてよい。
世界エネルギーシステムは安定化の制度により大きく異なる。電力生産は化石燃料
( 多 く は 天 然 ガ ス と 石 炭 ) か ら 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー や 原 子 力 、 ま た 、 CO 2 の 回 収 ・ 貯 留
技術のついた化石燃料へと移行する。建物や産業用電力の使用は増大し、電力は益々
炭素フリーとなる。しかし、運輸部門ではバイオ燃料の使用が増大する。エネルギー
利用バイオマスの収量の増大には土地が必要である。土地利用に付随する陸上炭素の
排出は化石燃料からの排出と同じ程度に重要であることには注意すべきである。その
- 419 -
ため、もし、森林伐採など土地利用変化からの炭素排出に化石燃料からの炭素排出と
同じ炭素価格が付かないなら、森林伐採が加速的に生じることとなる。
技術の利用可能性も安定化のコストの重要決定因子である。多くの技術が潜在的に
重要な役割を果たす。安定化の課題に対応する一連の技術は時間とともに変革する。
温室効果ガス安定化のどのような時間プロフィルも現在利用可能な技術群からスター
トするが、技術群の改善がより早く進むと、それだけ費用は小さくなる。濃度安定化
の た め に は 、 時 間 軸 に わ た る CO 2 排 出 は 絶 え ず 減 少 す る 必 要 が あ る 。 こ れ は 、 よ り 大
き な 排 出 抑 制 が 課 題 と な る こ と に つ な が る 。 た と え CO 2 濃 度 の 450 pp m 安 定 化 を 望 む
と し て も 、21 世 紀 の 全 排 出 削 減 の 半 分 以 上 は 2 050 年 以 降 で あ る 。そ の た め 、こ の 期 間
に利用可能となる技術の性格が安定化とそのコストに対する技術対応を形成するうえ
で重要となる。
最 後 に 、 非 CO 2 ガ ス も 気 候 変 動 の コ ス ト 管 理 に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と を 注 意 し て
お く 。 メ タ ン な ど の ガ ス の 排 出 抑 制 技 術 は エ ネ ル ギ ー 関 連 CO 2 の 排 出 制 御 の 必 要 性 を
数 百 エ キ サ ジ ュ ー ル ( EJ) も 緩 和 す る 。
こ の 講 演 で は 、 気 候 変 動 共 同 研 究 所 ( JGCRI) が 開 発 し た 新 し い シ ナ リ オ を 用 い る 。
このシナリオは気候変動安定化政策有り無しについての将来おの姿を探索するもので
あ る 。こ れ ら は 、長 期 エ ネ ル ギ ー 、経 済 、農 業 、土 地 利 用 、大 気 と 気 候 の 14 地 域 MiniCam
モデルを用いて作成したものである。レファレンスシナリオは気候変動を制限するた
め の 行 動 を こ れ 以 上 取 ら な い 場 合 の 進 展 を 調 べ る も の で あ り 、世 界 人 口 は 2 1 世 紀 後 半
に 最 大 90 億 人 に 達 し 、 そ の 後 世 紀 終 わ り に は 8.5 億 人 に 減 じ る と い う 人 口 シ ナ リ オ に
より特徴付けられる。このシナリオは非均質的な経済成長、現在の先進国は生産性の
成長を続け、特に中国、インドや他の南アジア、東アジアのいくつかの途上国が経済
移行にのりだすという仮定をしている。世界エネルギーシステムは世紀終わりまでに
は 年 間 約 1400 エ キ サ ジ ュ ー ル( EJ)に 拡 大 す る 。再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー と 原 子 力 は 市 場
シェアを高めるが、その供給の大部分は化石燃料によるものである。在来型オイルに
は制限があるので急速に発展する運輸部門への供給のため非在来型液体燃料への移行
す る 。 化 石 燃 料 か ら の CO 2 排 出 は 21 世 紀 の 終 わ り に は 年 間 20 ペ タ グ ラ ム 炭 素 を 越 え
ることとなる。
- 420 -
略歴
ジ ェ イ ・ エ ド モ ン ズ は 太 平 洋 北 西 国 立 研 究 所 ( PNNL) に あ る 気 候 変 動 共 同 研 究 所 の
研究所フェローであり、チーフサイエンティストである。また、メリーランド大学公
共 政 策 学 の 準 教 授 も 兼 任 し て い る 。 彼 は 国 際 的 な public-private 共 同 研 究 で あ る 「 気 候
変動世界エネルギー技術戦略」プログラムの主席研究員である。長期・グローバルの 、
エネルギー、経済、気候変動分野における彼の研究は25年以上に及び、その間、書
籍を数冊、科学論文を数多く発表し、無数の講演を行ってきた。彼は、エネルギー、
技術、気候変動に関連する数多くのパネルや諮問委員会のメンバーを務めている。
( RITE
- 421 -
仮訳)
Influence of Technological Learning of Advanced
Energy Conversion Technologies on Future Energy Perspectives
To mohiko Araki
To kyo Electric Power Company (ex-visiting research scholar of IIASA)
Summary
This study examines the influence of innovative tech nologies with technological learning
on mid- and long-term perspectives of the global energy system. In addition, the influence of
CO 2 constraints on diffusion of the tech no lo gies is also ex amined. We separate th e scenarios
based on whether th e technologies learn en dogenously and further differentiate by adding
CO 2 constraints. In th is study, we define comb ined cycles (GCC and IGCC), fuel cells,
hydrogen production and CO 2 capture and sequestration (CCS) as innovative tech no logies
and attemp t to determine what kind of role these techno logies could have in determining the
course of the futu re en ergy system.
Initially, we co mp ared the results with and without technological learning and found that
technological learning significantly influenced the scenarios outcome. The differences
between the scenarios were rather large (Figure 1). Techno logical learning promoted the
diffusion of new technologies, mo st no tably, fu el cells were diffused larg ely in co mp arison to
the scenarios with no technological learning. On the other hand, the gas comb ined cycle wa s
a major electricity source until 2050 in all scenarios, but decreased in th e latter part of the
century in the learning scenarios. Diffusion of hydrogen production was also promo ted
(Figure 2), especially hydrogen fro m bio mass increased dra matically fro m 2040.
Furthermore, we ev aluated what effect CO 2 constraints had on the scenario s. Energy
sources for fuel cells were shifted fro m coal to natu ral gas due to the CO 2 constraints (Figure
1). Whereas coal fired IGCC increased because the CCS technology was applied to IGCC.
Meanwhile, hydrogen production with CO 2 constraints was si milar to the scen ario without
CO 2 constraints until 2060. Thereafter, hydrogen production in creased mo re than without
CO 2 constraints for several decades. The sh are of hydrog en production from natural gas, coal
and biomass is almost 100% from 2010 to 2070, bu t after 2070, it decreased rapidly (Figure
T-L
level
2). CCS technologies played the mo st important role in achieving the CO 2 concentration
required (Figure 3). Among them, CCS tech no logy for IGCC contributed th e mo st.
- 422 -
IGCC
100%
2500
124 EJ
120%
80%
Nuclear
Coal fuel cell
40%
145 EJ
100%
2000
60%
80%
229 EJ
1500
GWyr
20%
0%
60%
1000
40%
Renewables
500
Gas fuel cell
162 EJ
97 EJ
0
2000
95 EJ
20%
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
0%
2100
Gas combined cycle
T-L
T-L 550
T-F
Biomass
T-F 550
Figure 1: Electricity production by
technology in 2100 for the four scenarios
Gas
Coal
Share
Figure 2: Hydrogen production by source and the
share of the three sources studied in the scen arios
with learning and a constraint
20000
T-L
18000
16000
MtonC/yr
14000
12000
10000
8000
6000
T-L550
4000
2000
0
1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100
550 path (Learning)
CCS
Fossil fuel switch
Renewables
Nuclear
Figure 3: Contributions to reaching the CO 2 targ et (Carbon
emission comparison of scenarios with learning)
Biosketch
Tomohiko Araki received his bachelor's degree in me chanical engineering fro m Sophia
University and his master's degree in mechanical engineering from the Univ ersity of Tokyo,
Japan. Since 1999, he has been with th e To kyo Electric Power Comp any (TEPCO). He was
seconded to the Environ mentally Co mp atible Energy Strategies Project at IIASA in July
2004. He joined the th er mal power department of TEPCO in 20 06 .
- 423 -
革新的エネルギー変換技術の進歩が
将来のエネルギー見通しに与える影響分析
荒木 智彦
東京電力株式会社(元 国際応用システム分析研究所派遣研究員)
要約
本報告はラーニング(普及に伴うコストの減少)により現時点ではまだコストの高
い新技術が中長期的なエネルギーシステムの中でどのような役割を果たしていくか調
査したものである。また、二酸化炭素排出規制の影響についても調査を行った。本報
告 で は ガ ス コ ン バ イ ン ド サ イ ク ル ( GCC)、 石 炭 ガ ス 化 コ ン バ イ ン ド サ イ ク ル ( I G C
C )、 燃 料 電 池 、 水 素 製 造 技 術 、 二 酸 化 炭 素 分 離 技 術 を 調 査 対 象 の 技 術 と し た 。
ラーニングがある場合/ない場合のシナリオを比較した結果、ラーニングはシナリ
オ に 大 き な 影 響 を 与 え る こ と が わ か っ た ( 図 1 )。 ラ ー ニ ン グ は 新 技 術 の 普 及 を 促 進 さ
せ る 効 果 が あ り 、特 に 燃 料 電 池 は ラ ー ニ ン グ が な い シ ナ リ オ と 比 べ 、大 き く 普 及 す る 。
一方、ガスコンバインドサイクルはすべてのシナリオで2050年までは主要な電源
であったが、ラーニングのあるケースでは今世紀の後半には減少していく。水素製造
技 術 も ラ ー ニ ン グ に よ り 普 及 が 促 進 さ れ ( 図 2 )、 特 に バ イ オ マ ス か ら の 水 素 製 造 が 2
040年から急激に増加する。
次に二酸化炭素排出規制がシナリオに与える影響を調査した。二酸化炭素排出規制
に よ り 、 燃 料 電 池 の 燃 料 は 石 炭 か ら 天 然 ガ ス へ 移 行 す る ( 図 1 )。 一 方 で 石 炭 を 燃 料 と
するIGCCは二酸化炭素分離技術を伴い普及する。水素製造量については2060
年までは二酸化炭素排出規制の影響はあまりない。2010年から2070年までは
天然ガス、石炭、バイオマスからの水素製造のシェアがほぼ100%であるが、20
7 0 年 以 降 急 激 に そ れ ら か ら の 水 素 製 造 の シ ェ ア が 減 少 す る ( 図 2 )。 二 酸 化 炭 素 分 離
技術は二酸化炭素規制を達成するために最も重要な役割を果たし、なかでもIGCC
用二酸化炭素分離の役割が大きい。
- 424 -
IGCC
100%
124 EJ
2500
80%
60%
Nuclear
Coal fuel cell
40%
145 EJ
120%
100%
2000
229 EJ
80%
20%
1500
GWyr
0%
60%
1000
40%
Renewables
Gas fuel cell
162 EJ
500
97 EJ
95 EJ
0
2000
Gas combined cycle
T-L
T-L 550
T-F
20%
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
0%
2100
T-F 550
Biomass
図 1 :各 シ ナ リ オ で の 調 査 対 象 技 術
の発電量 (2100年)
Gas
Coal
Share
図 2 : 水 素 製 造 量( 石 炭 、天 然 ガ ス 、バ イ オ マ ス )( 左
軸)及び全水素製造量に対するこれらのシェア
( 点 線 、 右 軸 ) ( T-L550 )
20000
18000
16000
MtonC/yr
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100
550 path (Learning)
CCS
Fossil fuel switch
Renewables
Nuclear
図3: 二酸化炭素排出規制による二酸化炭素
削減内訳
略歴
荒木 智彦
【現職】東京電力株式会社火力部火力技術グループ
主任
【経歴】昭和49年生まれ。平成9年上智大学理工学部機械工学科卒業、
平成11年東京大学大学院工学系研究科(産業機械工学専攻)修士課程終了。平成
11年東京電力株式会社入社。平成16年~平成18年国際応用システム分析研究所
ECS プ ロ ジ ェ ク ト 派 遣 。 平 成 1 8 年 7 月 よ り 現 職 。
- 425 -
A Report of YSSP 2006 and for the Future YSSPers
Shinichiro Fujimori
Ph.D. candidate ,Urban and Enviro nmental Engineering ,Kyoto University
In this presentation, I would like to talk about YSSP 2006 which I participated in th e last
su mmer. I will show th e th ree points; which are (1) ab out th e YSSP, (2) my current research
and the results of the YSSP, and (3) one of the su gg estions to improve th e YSSP fro m
Japanese side.
YSSP is the abbreviation of Yo ung Scientists Su mmer Program. This prog ram has been
annu ally held since 1977. IIASA provides us the chan ce to make research about global
environmental, social and economic issues wh ich IIASA’s researchers deal with. The period
of the YSSP is from the beginning of June to the en d of August. Th e participan ts are ab out 50
people each year and fro m various coun tries. We could get the advantages fro m this program,
for example; (1) advance their re search under the direct supervision of an experienced IIASA
scientist, (2) at th e same time contribu te to IIASA’s ongoing scientific ag en da, (3) broaden
their research in terests by wo rking in IIASA’s interdisciplin ary and international research
environment; (4) build contacts with IIASA’s worldwide network of collaborators and with
other YSSP fellows. Not on ly these advantages, we can get another one. IIASA gave various
events, for example; (1) A wide range of lectures, seminars, and discussion groups is being
offered, (2) various social even ts, (3) the weekend trip s, and so on. In this program these
scientific and en jo yable ele ments are mixed and we can say that th e research and life
environments are totally good.
My research field is global mat erial flow account and analysis. I clarified the carbon,
nitrogen and phosphorus flows caused by econo mic activities. To deal with the flows I
proposed the material accoun ting tables and developed the estimation method to calculate the
flows according the syste m of accounting. However, this method requ ires input-output table .
When I was go ing to estimate past or futu re flows, I should get th e global input-output table.
Therefore, in this YSSP I developed th e method to estimated in pu t-output table by usin g
limited information. Finally, I could develop the practical estimation method with
cross-entropy method. Now, I am going to estimate global inpu t-outpu t table for th e past
three decades.
YSSP is the excellent program for me and I guess same as for other young scientists. But I
feel that this program is not so common in Japan. It was so sad that this year ’s Japanese
participants are only two peop le in clud ing me. In addition, another was fro m US. I hope that
- 426 -
many young scientists who are in similar research fields in Japan could know abou t YSSP.
So, I would like to propose two po ints to improve this situation.
Biosketch
Shinichiro Fujimori was a participan t of th e 2006 Young Scientists Su mmer Program
(YSSP) for the IME project at IIASA. He received an engineering masters in Urban an d
Environmental Engineering from Kyoto University in 2006.
Currently he is a Ph.D. candidate in th e same department. He is researching global
Material Flow Accounting and Analysis.
- 427 -
YSSP 報 告 と 今 後 の YSSP に 向 け て
藤森 真一郎
(京都大学 大学院
工学研究科 博士課程1回生
本 発 表 で は 2 00 6 年 夏 季 に 私 が 参 加 し た (1)YSSP の 概 要 、(2)私 の 研 究 と 成 果 物 に つ い
て 述 べ た あ と 、今 後 の YSSP を よ り よ く す る た め に (3)日 本 か ら の YSSP 参 加 者 を 充 実 さ
せる方策を提案する。
YSS P と は Young Scientists Summer Program の 略 で 、 1 97 7 年 か ら 毎 年 行 わ れ て い る プ
ロ グ ラ ム で あ る 。IIAS A で 扱 っ て い る よ う な 地 球 環 境 、経 済 、社 会 問 題 等 に 関 す る 研 究
をする機会を若手研究者に与えるというプログラムである。期間は 6 月から 8 月の三
ヶ 月 間 で 毎 年 5 0 名 程 度 の 参 加 者 が 世 界 各 国 か ら 集 ま る 。 YSSP 参 加 の メ リ ッ ト を い く
つ か 以 下 に 挙 げ る と 、 (1) IIASA の 科 学 者 か ら 直 接 研 究 指 導 し て も ら え る 。 (2) 同 時 に
IIAS A の プ ロ ジ ェ ク ト に も 参 加 で き る 可 能 性 が あ る 、 (3) IIAS A で 国 際 的 、 学 際 的 な 研
究 を 経 験 す る こ と に よ り 研 究 領 域 、興 味 の 対 象 を 拡 大 で き る 、(4) IIASA、そ の 他 の Y S S P
参 加 者 と グ ロ ー バ ル な ネ ッ ト ワ ー ク を 構 築 で き る 、 (5) こ の 業 界 が ど う い う も の か を 知
るいい機会、等が考えられる。研究はもちろん、それ以外にも多くの行事等が用意さ
れ て い る 。 た と え ば 以 下 の よ う な も の が あ る 。 (1)IIAS A の ス タ ッ フ や そ れ 以 外 の 研 究
者 、 著 名 人 に よ る レ ク チ ャ ー 、 (2) 科 学 や 学 際 領 域 の 研 究 自 体 に 関 す る デ ィ ス カ ッ シ ョ
ン 、 (3)数 々 の ソ ー シ ャ ル イ ベ ン ト 、 (4)週 末 の 旅 行 等 の 企 画 。 こ れ ら の 遊 び 的 要 素 と 学
術 的 な 要 素 が ふ ん だ ん に 盛 り 込 ま れ 充 実 し た 内 容 と な っ て い る 。 さ ら に IIAS A の ス タ
ッ フ に よ る 生 活 面 で の バ ッ ク ア ッ プ も し っ か り し て お り 、 YSSP に 参 加 す る こ と に よ
り、トータルで非常によい経験ができると言える。
次に私が行っている研究について簡単に述べる。私は全世界のマテリアルフローの
研究を行っている。これまで、炭素、窒素、りん の人間活動によるフローを明らかに
してきた。このフローを記述するために物質勘定体系をまとめ、産業連関表と各種統
計を調整してその物質勘定体系に基づいたフローの推計手法の開発と適用を行った。
発表中にはその結果の一部を示す。ただし、この手法は産業連関表があるということ
が前提となっている。今後過去や将来におけるフローの推計を行うために、グローバ
ル な 産 業 連 関 表 の 推 計 を 行 う 必 要 が 生 じ た 。そ こ で 、YSSP で は 限 ら れ た 情 報 を も と に
産 業 連 関 表 を 推 計 す る 手 法 の 開 発 を テ ー マ と し た 。YSSP で の 研 究 に よ り 、Cro ss-en tro p y
法を用いた実践的な産業連関表推計手法を開発し、適用できる状態に達した。今後、
こ の 手 法 を 用 い て 世 界 の 産 業 連 関 表 を 過 去 30 年 に わ た っ て 推 計 す る と い う の が 目 下 の
課題となっている。
YSS P は す ば ら し い プ ロ グ ラ ム で あ る が 、日 本 に お け る 認 知 度 は ま だ そ こ ま で 高 く な
いように思われる。残念ながら昨年の日本人参加者は私を含めて 2 名、もう一人はア
- 428 -
メ リ カ か ら の 参 加 で あ っ た 。こ の 状 況 か ら 私 は も っ と 多 く の 方 に YSS P の 参 加 す る あ る
いはその存在を知っていただきたいと思う。そこで今回は 2 点提案を行う。
略歴
藤森 真一郎
2000 年 京 都 大 学 工 学 部 地 球 工 学 科 入 学
2004 年 京 都 大 学 工 学 部 地 球 工 学 科 卒 業
2004 年 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 都 市 環 境 工 学 専 攻 修 士 課 程 入 学
2006 年 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 都 市 環 境 工 学 専 攻 修 士 課 程 卒 業
2006 年 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 都 市 環 境 工 学 専 攻 博 士 課 程 入 学
2006 年 夏 YSS P に 参 加
現在は地球規模のマテリアルフロー勘定・分析を専門分野とし、研究活動を行って
いる。
- 429 -
付録 5
IIASA に お け る 本 事 業 の 関 連 研 究
Transitions to New Technologies
The objective of the Transitions to New Technologies (TNT) Progra m is to analyze
patterns and driv ers of technological change ranging from the spatial and temp oral diffusio n
of individual in novations to the emergence of new technological combinations that could
lead to fundamentally new huma n activities. TNT’s re search goal includes an improved
understanding and modeling of technological change with an emphasis on the treatme nt of
technological uncertain ties as well as assessments of th e potential econo mic and societal
impacts that could result from pervasive diffusion and adoption of new tech nologies with a
focus on new co mmu nication, information, mobility, and energy technologies. Research is
based in a blend of both basic research includ ing co ncep tual as well as theoretical modeling
work inspired by empi rical case studies as well as applied research informing technology
policy choices through sectorial case stud ies, uncertainty and scenario robustness analysis as
well as inputs to major international assessments.
In all of TNT’s research areas important prog ress milestones were achieved in 2006 with
an emphasis on communicating TNT’s re search th rough peer reviewed publications,
including two books and 20 journal articles and bo ok ch apters in addition to the successful
completion of draft chap ters in a nu mber of major international scientific assessments slated
for publication in 2007.
Three TNT staff me mb ers (Arnulf Grübler, Nebojsa Nakicenovic, Keywan Riahi) serve as
Conv ening Lead and Lead Authors for the forthco ming IPCC Fourth As sess ment Report
(AR4). 2006 was ch aracterized by a crest of IPCC-related activities including successful
completion of two successive rounds of expert and gov ernment reviews, two Lead Author
meetings (14-18 February, Beijing, Chin a, and 8-14 October, Ch ristchurch, New Zealand),
and the resulting revision and final co mp letion (with the quasi un avoidable culmination
around the Christmas and New Year ho lidays) of two ch apters with in IPCC Wo rking Group
III on framing issues (Chapter 2) and issues related to mitigation in a long-term context
(Chapter 3). TNT’s co ntribution to these two chapters mirrors two of the three TNT research
themes: technology policy and inducement instruments (comprehensively reviewed in
Chapter 2) as well as techno logy assessment for develo pment and climate protection (Chapter
3 contains the mo st comp rehensive scenario literatu re assessment to date drawing on a data
base developed by Peter Kolp of TNT especially for that purpose, see Figure 1). AR4 will be
published in 20 07 after approv al at th e IPCC plen ary (May 4 , 20 07 fo r WG III). In addition,
the AR4 findings will by summa rized in a Synthesis Report, for which Keywan Riahi has
been appoin ted as Lead Author. On a mo re forward looking note, the IPCC has instituted a
- 430 -
Task Group for New Emissions Scenario s (TGNES), following up th e conclusions arrived at
the IPCC Scenario Workshop co nv ened in 2005 at IIASA with th e objective of coordinating
scenario-related activities in prep aration for the Fifth IPCC Ass ess ment Report. Nebojsa
Nakicenovic has been appo inted as me mb er of TGNES, with th e other TNT IPCC authors
activ ely contributing as well.
F i g u re 1 . Screenshot from the inte ractive, web-based GGI Scenar io Data Base illustrating the
evolution of glob al GHG emissions in th ree base case scenarios (solid lines) as well as the
resulting emission path ways for achieving stab ilization of atmo spheric GHG concentrations a t
670 and 480 pp mv -equivalent respectively (dashed line s). The res ulting diff erence in emissi on
pathways is a reflection of the need fo r deploying lo w- and zero-car bo n technology op tions,
which are subj ect to detailed analysis an d techn o log y assess men t with in TNT. Th e GGI Scen a r i o
Data Base breaks new ground in the full do cu men t a t i o n o f t h e r e su lts o f mo d e l - b a s ed c l i ma t e
mitigation an alysis.
In addition to IPCC, TNT Program me mb ers in particular Nebojsa Nakicenovic (who next
to TNT also leads th e ENE Progra m) were also involved in additional three maj o r
- 431 -
international assessme nts, two of which were comp leted in 2006 and will be published in
2007. These are summarized in mo re detail in the Progress Repo rt of the ENE Program.
Another major publication was also comp leted in 2006: An entire special issue of th e
International Journal of Technogical Forecasting and Social Change, reporting on the results
of the modeling work on long -ter m GHG emissions and stab ilization scen arios performed
within IIASA’s Greenhouse Gas Initiative was finalized this year, including completion of
draft papers, peer review, an d publication of the final papers in electronic format
(publication in paper form will be forthcoming in 2007). TNT researchers served as lead
authors for four of the eight papers of the GGI special issue, highlightin g the importance th is
institute-wide collaborative effort represents within TNT’s research portfolio (see also the
GGI Progress Report).
Three TNT contributions to the GGI scenario an alysis deserve emphasis: first, the GG I
scenarios are the first in terms of presenting results in addition to global and world regional
levels also in a dynamically spatially explicit fo rm. Next to their usefulness for climate
impact and vulnerability assessme nts, the spatially explicit scenarios also provide essential
input data for an imp roved understanding and modeling of technology diffusion that is
characterized by the persistence of spatial spillover effects (the neighborhood effect in the
terminology of spatial diffusion) and of network ex ternalities ex ercised particularly by large
urban agglo merations (as exemplified by the urban concentration of ITC and internet
infrastructures and uses). A second, tech no logy-specific methodolog ical advance reported in
the GGI special issue is a novel concept of technological robustness analysis that yields a
convenient aggregate measure of the persistence and variability of th e deployment of
individual techno logical options across a wide spectrum of future uncertainties. For instance
considering the full range of uncertainties, investments into energy efficiency improvements
and conservation as well as the redu ction of F-gases turn out to be the mo st robust
technological response strategies in a potentially climate constrained, uncertain world.
Conv ersely nuclear, or carbon capture and sequestration of fossil fuels, while of ex treme
i mportance in worst case scenarios, turn out to be technology options with a comp aratively
low robustness factor. Finally, the GGI scenarios also break new ground in th eir
docu mentation. Next to the eight papers of the special issu e, all results of the mode l
calculations, including the spatially explicit results are made available through an interactive
web-based GGI Scena rio Data Base develo ped by Peter Kolp of TNT and that has been made
available for in-house IIASA re searchers and will be opened to the public in 2007 (see also
the GGI Pr ogress Report).
Additional,
particularly
noteworthy
peer-reviewed
publicatio ns
authored
by
TNT
researchers that have been published in high visibility fora in 2006 include: A book on
“Avoiding Dangerous Climate Change” (Cambridge Univ ersity Press), co-edited by Nebojsa
- 432 -
Nakicenovic, whose policy relevance can be best judged by th e fact th at its preface was
provided by Pri me Minister Tony Blair; a conceptual piece framin g th e e merging scientific
field of “green engineering” au thored by Arnulf Grübler and published in Environment ; as
well as a co mmentary on avoiding hazards of best-guess climate scenarios (coauthored by
Grübler, Brian O’Neill and Detlef van Vuuren) that appeared in Nature.
The three TNT core research to pics comp rise the following areas: technology policy and
inducement
instruments
(con ceptual/theoretical
work
co mb ined
with
case
studies);
technology for develop ment and climate protectio n (predominantly focused on technolo g y
and scenario assessment), as well as methodology and modeling (with an emphasis on
uncertainty and agent based modeling approach es, as well as software development
supporting the other two TNT research areas and GGI).
An important Conference on Globalization as Ev olutionary Process was organized
jointly by TNT and Tessaleno Devezas, a former TNT guest scholar, in association with th e
University of Beira Interior, Portugal, and with financial support fro m the Calouste
Gulbenkian Foundation of Lisbon . Th e conference was held April 5–8 at IIASA a n d
addressed
“g lobalization”
as
a
mu lti-dimensional,
transformational
process
th at
is
intrin sically intertwined with other processes th at join tly constitute Global Change, which is
at the heart of IIASA’s research agenda. The significance of the globalization topic for
technology studies arises fro m two main areas: first, in in fluencing th e regulatory mode
governing selection, development and diffusion of technologies that in creasingly transcend
traditional national systems of innovation in favor of co mp lex, polycentric webs of formal
and
informal
technology
coop eration
and
develop ment
networks.
Secondly,
ne w
technologies, especially in transport an d communication, are important enablers of
globalization, with th eir availability and network structures structurin g core-periphery
relations across as well as with in regions. Recognizing these new dime nsions of the
“regulatory regime” for new technologies is an important new di mension for th e discussion
of technology policy and inducement options. The conference also provided an opportunity to
revisit globalization fro m both a historical as well as evolutio nary perspectiv e. Next to act as
co-organizers and host, two TNT scientists presented at th e conference: Gerald Silverberg,
who joined TNT in 2006 as guest research scholar, presented a paper on “Innovation,
Globalization, and th e Rhythms of Socio-econo mic Evolution”, and Arnulf Grübler presented
a paper on “U rbanization as a Core Process of Global Ch ange: The last 1000 Years and the
Next 100”. Selected contributions to th e conference will be published in 2007 in form of a
special journal issue.
Research on technology for climate protection focused primarily on the GGI modeling and
scenario assessment work reported above. Comp lementin g these primarily global, and
world-regional analyses is a more place-based life-cycle assessment for alternative
- 433 -
decentralized energy systems comp rising alternative gas and hydrogen based distributed
energy systems, a study partially supported by Tokyo Gas and cond ucted by Michnib u
Furukawa . This study, which was initiated in 2006 reported first findings in an interim
report in September.
Basic in-house research on modelling also continued strong in 2006, spearheaded by Tieju
Ma with contributions fro m Institute Scholar Brian Arthur , as well as Grübler and
Nakicenovic. The work on developing a stylized model of technological change incorporatin g
uncertain in creasing returns with heterogeneous ag ents, developed in 2005 was further
refined and presented at two in tern ational conferences and su mma rized in an IIASA Interim
Report. A new model aimed at simulating technological comp lexification was developed (see
Figure 2). A particularly novel feature of th is agen t based model is that the simu lations treat
technologies, or their constituent components, as “agents” while preserving innovation and
economic drivers as main co mponents of th e evolutionary algorith m underlying a continued
(re-)co mbination of techno logies resulting in an “organic” build-up of novel systems
structures, punctuated by Schumpeterian “g ales of destruction” resulting from the emergence
of new technologies and of new technological comb inations. Wo rk on th is pro mising, new
modeling avenue of will continue in 2007. The ag ent based modeling work is also taken up in
the research of Gerald Silverberg, whose ma in research thru st in 2006 was on an invasion
percolation model in a self-organizational fra mework of collective, agent-based R&D
searches. A significant
find ing
of
the
modeling work
is
that
th e introduction
of
self-organization leads to a transformation of innovation size distributions fro m simp ly to
highly skewed distribu tions that conforms with the perplexing emp irical finding of extreme
skewness in “returns to innovation” functions. In other words, innovation -wise, a few “big
hits” account for a majority of the economic returns to innovation, a finding that represents a
considerable challenge to attempts of using portfolio or option valu e th eory for developing
“optimal” techno logy innovation po rtfolios in the wake of persistent, deep un certainty, as th e
case in climate mitigation, which is a central research topic at IIASA and TNT.
Co mp lementing this insight-driven modeling work is the mo re user- or application-driven
software development that increasingly becomes a hallmark of TNT research products. The
LSM softw are package for the analysis of the dynamics of techno logical diffusion and
substitution phenomena, develo ped by Peter Kolp, based on earlier work by Nebojsa
Nakicenovic and Max Posch, with contributions by Arnulf Grübler, and extensively tested by
Arnulf ’s and Nebojsa’s students 1 at Yale and th e TU Vienna, for which th e TNT Program is
extremely grateful, was officially released in Novemb er 2006. In less than three months, the
1
Grübler and Nakicenovic are associated with IIASA on a part-time basis only. They hold in addition
professorships for Energy Economics at the Vienna University of Technology, Vienna, Austria
(Nakicenovic) and Energy and Technology at the School of Forestry and Environmental Studies of Yale
University, USA (Grübler).
- 434 -
LSM webpage counted more than 1200 hits, includ in g some 500 online applications of the
software package and an equal nu mber of downloads of this multi-platform software tool,
illustrating the high impact of web-based disse mination efforts in addition to peer-reviewed
literature publications and conference presentations and lectures. Additional software tools
released in 2006 for internal research purpo ses included th e IPCC S cenario Data Base u s ed
extensively in the preparations for the IPCC AR4 as well as the GGI Scenario Data Base ,
both developed by Kolp. Finally, recognizing th at the intricate index nu mb er problem in
long-term scenario s of econo mic growth cannot be solved in an y definitive manner soon,
Tieju Ma developed a so ftware pack age that allows to calculate a variety of metrics and index
number combinations of economic growth assu mp tions underlying the GGI scenarios, or for
that matter of fact any scenario disaggregating world regional to national-level projections.
A public release of these three so ftware packages is envisioned for 2007.
Figure 2. Modeling in creasing co mp lexity of tech no logical systems. Snapshot from a model
simulation of increasing technological interdependence and (re-) combinations yielding a
new systems architecture of interlinked techno logy comp onents (green) bridging demand for
and supply of natural resources (right panels) via intermediary transformations (red). The
objective of these type of simu lation models is to yield in sights into th e dyna mics o f
technological comp lexification and change that constrain possible rates of change of large,
complex technological syste ms that need to be consid ered in policy choices such as for
climate mit igation.
- 435 -
Land Use Change and Agriculture Program
The Land Use Change and Agriculture (LUC) Program’s strategic goal is to support
policy- mak ers in developing rational, science-based and realistic national, regional and
global strategies th at achiev e lo ng-term sustainability and environmental stewardship of lan d
and water resource management for the production and distribu tion of food, fibre and
bio-energy, while promoting rural development.
To achieve this strategic goal and responding to iden tified scientific needs in the field, th e
research objectives of the LUC Program are to:
•
Develop improved an d new tools and databases, with th e ai m of providing a spatially
detailed und erstanding of alternative land and rural development op tions and strategies,
against the background of global ch ange.
•
Analyze synerg ies and trade-offs of alternative uses of agro-resources (land, water,
technology) for producing food and energy, wh ile maintaining en vironmental services.
•
Identify convergence of unfavorable trends and conditions that represent potential
future ho t spots of significant environmental and rural social risks, and clarify their
relation to global change.
•
Extend, apply and verify methodologies and tools in regional/national case studies,
thereby
shaping
the
global
picture
increasingly
on
the
basis
of
an
improved
understanding of region -specific conditions, issues and po licy op tion s.
Three areas of research are identified for the period 20 06–2010, co vering key issues of the
importance to understanding th e interactions between society, land use, ag riculture and
climate over the co min g decades. The first area – Global projects: Food and Agriculture to
2100; Meeting th e Millenn iu m Development Goals: Prospects to 2015/2030 – provides a
common thread for the prog ram’s global research, by proposing a Food and Agriculture to
2100 project that un ifies themes of climate and anthropogenic impacts on soil and water
resources, adaptation and mitigation strategies, and rural develo pment. The second area –
Policy support fo r su stainable develop ment of regional ag ricu ltural and rural sectors:
Restructuring Europe towards su stainability; Biofuels roadmap for Europe; Water and
environmental impacts of ag riculture in Ch ina; Agriculture and rural development in
Transition Econo mies – an alyzes sub-sets of these issues in regional case studies. Finally, th e
third area – Methodology development: Sequential rebalancing methods for spatial
downscaling; Framework for spatial ecolog ical-economic analysis – proposes activities
aimed at develo ping new methodologies that advance our ab ility to derive and manage
spatially-explicit data and provide better in tegration of socioeconomic and bio-ph ysical
analyses.
- 436 -
In the frame of the global project Food and Agriculture to 2100 and as a contribution to
IIASA’s Greenhouse Gas Initiative (GGI), two global studies were comp leted and published
in 2006. First, th e study Reducing Climate Change Impacts on Agriculture: Global an d
Regional Effects of Mitigation , 2000-20 80 investigated agricu ltural impacts of climate
mitigation. What are the implications for gl obal and regional ag ricultural productio n of
mitigating greenhouse gas emissi ons, and thus slowing climate change over time? By whe n
and by how mu ch do impacts get reduced? Where does it matter mo st? Two distinct sets of
climate si mulations were analyzed: (1) A non-mitigated scenario, with emissio ns reaching
above 25 GT C yr-1 and atmospheric CO 2 concentrations over 800 ppm CO 2 by 2100; and (2)
A mitigation scenario, with emissions prog ressively reduced below 1990 levels and CO 2
concentrations stab ilizing at 550 ppm by 2100. Simulations were performed fro m 1990 to
2080, with glob al coverage yet with sign ificant region al detail. Key trends expected over this
centu ry for food de mand, production and trade were computed, with specific attentio n given
to potential monetary (aggreg ate value added) and human (risk of hunger and malnutrition)
i mplications of mitigation.
The results fro m this study suggest that mitigation of climat e change would have
significant positive effects on agriculture, comp ared to unmitigated climate. Specifically,
global econo mic costs of cli mate change imp acts on agriculture, though relatively small in
absolute amounts, were reduced by roughly 75–100 percent by mitigation; the numb er of
additional people at risk of malnutrition du e to climate ch ange was reduced by 80 –95
percent. In addition, significant geographic and te mporal differences were found.
In a second study, published as Climate Change I mpacts on Irrigation Water Requirements:
Effects of Mitigation, 1990-2080, potential changes in glob al and region al agricultural water
demand for irrigation were investigated within a new socio-econo mic A2 scenario developed
at IIASA, with and without climate ch ange, and with and without mitigation of greenhouse
gas emissions. Future region al and global irrigation water requirements were computed as a
function of both projected irrigated land and climate change. Key trends expected over this
century for extents of irrigated land, irrigation water use and withdrawals were co mputed ,
with specific attention given to the implications of climate change mitigation.
Si mu lation results can be su mma rized as follows: First, th e i mpacts of un mitigated cli mate
change on increasing irrigation water requirements are globally of similar magnitude as
projected changes due to socio-economic development in this century. Second , th e effects of
mitigation on irrigation water requirements in th e comi ng decades show larg e overall water
savings, both globally and regionally. Specifically, mitigation of climate change reduces the
i mpacts of climate change on agricultural water use by about 40 percent, with si milar effects
in developing and developed regions, providing roughly estimated cost benefits of 10 billo n
- 437 -
US$ annually, of particular importance in those developing countries where food security is
fragile and water resources are already scarce today.
Several project proposals were prepared in 2006 for water studies to cover the activities
listed in the research plan . WATCH (WATer and global CHange) and SCENES (Water
SCenarios for Europe and for Neighbouring States) were successful FP 6 proposals, which
respectively started in February 2007 and Novemb er 2006. Descriptions of th ese projects an d
the specific contributions of LUC were prepared for an update of LUC’s website. On the
other hand, as the earlier submitted VIEWS FP 6 proposal did not receive funding, some
portions of this project that were in the research plan ma y no longer be doable to the extent
origin ally envisaged. In particular, water an d health issues (planned to be studied as part of
the VIEWS project together with external partners) can only be studied to a very limi ted
extent.
Another major LUC activ ity in 2006, prov iding state-of-the-art inpu ts for the global
project Food and Agriculture to 2100, has been concerned with a sign ifican t update of GAEZ
(Fischer et al., 2002). This FAO sponsored project, referred to as GAEZ 2006, aims to
include practical applications such as a significantly updated CD-ROM version, including
expanded crop coverage, consideration and assessmen t of specific dry-land management
techniques, updating and expansion of GAEZ resource databases (in particular a mu ch
improved soils and terrain database), and a novel methodology for spatially do wnscalin g of
agricultural production statistics to produce a global gridded inventory of year 2000
agricultural yields and production. This information, in conjunction with attainable yield
potentials fro m GAEZ 2006, is used to estimate yield gaps and to identify production
opportunities for food, feed and bioenerg y worldwide. Publication of these new products is
scheduled for 2007.
In support of and co mp lementing the global studies, LUC has been conducting or initiating
in 2006 a number of regional projects: e.g., in Ukraine on ag riculture an d rural
transformation in transition economies; in Europe on land use issues related to sustainability
and bio-fuel production ; and in Ch ina on water scarcity and ag ro-environmental impacts in
the context of rapid growth, globalization and global change.
These projects consider a ti me horizon of 25 to 50 years and are carried out at the
regional/n ational scales in close collaboration with lo cal research partners. Th e studies
address critical po licy issues of land stewardship, based on spatially-detailed assessments of
policy alternatives with specific consideratio n of social development in rural areas an d
i mplications for the resource base and ecosyste ms.
- 438 -
LUC research concerned with Po licy su ppo rt for su stainable development of regional
agricultural and rural sectors focused in 2006 on Europe and Ch in a. As coordinato r of the
EU-funded project Modeling Opportunities and Limits for Restructuring Euro pe towards
Sustainabi lity (MOSUS), LUC scientists prepared and submitted a major final project
report. In MOSUS an integrated ecolo gical-econo mic simu lation model was developed and
applied to quantify the interrelations between socio-economic driving forces and th e state of
the environ ment. This multi-country, mu lti-sectoral macro-econo mic fra me work include s
trade flows within Eu rope, as well as between Europe and all other economically relevant
parts of the world. The model directly in tegrates co mp rehensiv e bio-physical data (material
and energy flows, land use) in European and global simulations up to the year 2020 and puts
them in relation to stru ctural indicators of social and economic development.
Three main scenarios were developed. The baseline scenario projects a co ntinuation of
trends observed between 1980 and 2002, if no additional sustainability-oriented policy
strategies and in struments are put in to force. The weak sustainability scenario reflects
sustainability p o licy go als an d measu res deri ved fro m strategic documents of the European
Co mmunity. The strong sustainability scen ario defines policy goals and in struments that are
more ambitious fro m the point of view of sustainable develop ment as comp ared to th ose
currently included in EU documents.
An important conclusion fro m the scenario simulations performed in the MOSUS project is
that th e implementation of a well-designed mix of policies can result in a win-win situation
for the economy and the environment. Environmental policy measures primarily geared
towards decoup ling economic activ ity fro m material and energy throughput can be conducive
to economic growth, contrary to the popular assu mp tion that su ch policies will mainly raise
costs for enterprises, decrease competitiveness and th erefore suffer fro m opportunity costs in
terms of reduced econo mic performance.
Policies aiming at a radical i mprovement of en ergy an d material efficien cy in th e Eu ropean
Union can therefore contribute to key objectives of both the EU Sustainable Development
Strategy and the Lisbon Strategy. Fro m this perspective, environmental policy becomes one
of the key strategies to reach th e Lisbon goals. MOSUS identified a number of European
sustainability policy measures, which could significan tly contribute to th e transforma tion
towards more sustainable production and consumption patterns, including: Shift of tax
burden from labor to th e use of natural resources; removal of environmentally (and socially)
harmful subsidies that encourage overuse of resources; stimulating research and technolog y
develop ment for resource efficiency in products and processes; implementation of best
practice programs; stimulation of transfer of knowledge and information instead of material
goods; fostering of voluntary environmental agreements between industries; and promoting
- 439 -
green consu merism and non-material and public consu mption vs. material and individual
consumption.
Planning the roads ahead for biofuels (REFUEL) : A new activ ity established at the
beginning of 2006, the REFUEL project, is designed to encourage a greater ma rket
penetration of biofuels. To help achieve th is go al, th e project is developing a biofuels
roadmap, consistent with EU biofuel po licies and supported by stakeholders involved in th e
biofuels field. Th e project involves seven renowned European partners and will take 24
months to co mplete at the end of 2007. REFUEL is co -financed by the European Co mmission
under the ‘Intelligent En ergy – Eu rope’ program.
The work, carried out by a consortiu m of European research in stitutes with comp lementary
know-how and co mp etencies, comp rises: (i) qu antification of biomass poten tials for biofuels
for EU25 plus Romania, Bulgaria, Croatia, Ukraine, No rway and Switzerland (EU25+); (ii)
compilation of different scenario’s regarding land use in EU25+ and the subsequent technical
and economic poten tials for biomass production fo r biofuels; (iii) design and construction,
using techno -economic market mo dels, of alternativ e biofuels scenarios to geth er with the
corresponding supply chain and market structure; (iv) analyses of the impacts on th e supply
side, the larger socio-economic effects, co sts and benefits of altern ativ e biofuels scenarios;
and (v) definition of policies in support of an a mbitious European biofuel scen ario to gether
with a framework for legislation, fiscal regimes and fuel standards and norms.
In 2006, LUC’s research concentrated on establishing a spatially detailed and consistent
REFUEL land resources database for EU25+; a detailed assess ment of technical and
econo mic biomass production potentials for the EU25+; scenarios of agricultural land
poten tially available for biofuel agro-feedstocks, incorporatin g economic factors, land-use,
energy- and agricu ltural policy comb ining in a coherent manner a nu mb er of key drivers.
Land use changes, agriculture, and rural development play a critical role in th e adap tation
and tran sfor mation of transition econo mies of Central and Eastern Europe. In Ukraine,
agriculture occupies 70 percent of total land, a result of the country’s political heritage
combined
with
an
endowment
of
rich
and
high ly
productive
land
resources.
Tw o
comp lemen tary projects were formulated to build on cu rrently ongoing collaboratio n with
scientists in Ukraine. The 2006 research activities on Ukrainian Agriculture in Transitio n
resulted in the establish ment of a spatially explicit land resource databases reflecting
Ukraine’s biophysical and land use characteristics; setting up and verifying the AEZ-Ukraine
model and evaluating land productiv ity potential for food and selected bio-en erg y
production; and an assessment of 1960–2000 climate variability impacts on the cro p
production in Ukrain e.
- 440 -
A related project, on Carbon, Climate and Managed Land in Ukraine: Integrating Data
and Models of Land Use for NEESPI , focuses on pred icting land-use carbon emissions fro m
agriculture. It is coordinated at Columbia University in co llaboratio n with Ukrainian
scientists and IIASA. Interactions between carbon dyna mics, land use for agriculture and
forestry, and climate variab ility are consid ered explicitly in th is modeling effort. The
emphasis is on biophysical descriptions of agricultural systems at various scales, fro m far m
site to regional and national level. Site crop models are being used, at the farm scale, to
focus on plant growth and yield dynamics as a function of climate as well as genetic and
manage ment factors such as cultivar characteristics, irrigation and fertilization schedules,
rotation types, and soil management. An agro-ecological zone model developed by IIASA
allows for region al scaling of key agrono mic indicato rs an d production. In addition to a focus
on the current status of land use/carbon dynamics in Ukraine, this project will assess the
trends in region al land use and productiv ity in Ukraine expected ov er the next 30 years to
project regional cli mate impacts on agricu lture and forestry, including adaptation and
mitigation strategies fo r carbon manage ment. In the first eight mo nths of work th e projec t
has focused on climate ch ange simulations with the DSSAT dynamic crop model. In
particular, it conducted an an alysis of the consequences of the co llapse of N fertilization on
crop production. The project also started to use the IIASA AEZ-Ukraine agro-ecological
model for climate change simulations.
In the context of its regional studies, join tly with the Institute of Cybernetics, (NASU,
Ukraine), Institute of Math ematical Machines and Syste ms (Cybernetics Center, NASU,
Ukraine) and Integrated Modeling En viron ment Project at IIASA, the LUC program
participated in th e project Integrated system for hazardous flood modeling and risks
reduction: case study for Tisza (Ukraine), Riony (Georgia) rivers funded by the TACIS
program. This project analyzed natural and econo mic factors that contributed to occu rrences
of floods in Tran s-Carpathian regions of Ukraine an d Hungary. Novel Fast Monte Carlo
stochastic optimization methodology and downscaling and upscaling procedures were used
for the design of robust strategies coherent with go als and constraints of the local
stakeholders. The outco mes of the research were presented at the International Conference
“Problems of Decision Making under Uncertainties” (PDMU-2006 Alushta, Crimea, Ukraine,
September 18–23, 2006 ).
Water scarcity and environmental hazards and impacts due to agricultural land use and
manage ment practices are of increasing imp o rtance in LUC’s research for policy support.
LUC joined a consortium co mp rising of world-class research partners including CCAP
(IGS NRR, Beijing, China), IFPRI (Washington, DC, USA), LEI ( The Ha gue, Netherlands)
and SOW- VU (Amsterdam, Netherlands) to prepare a successful research proposal for a
policy study on Chinese Agricultural Transition: Trade, Social and Environmental Impacts
(project 44255-CATSEI).
- 441 -
This major project investigates the impact of Chin a’s current economic transition on its
agricultural economy with special reference to th e consequences of trade liberalization and
of changing trad e flows. The project will track impacts on social conditions and on th e
environment in Ch in a’s rural areas as well as on mark ets in the rest of the world, with
particular emphasis on the EU. The work block lead by LUC investigates agricu lture in
relation to environ ment in terms of five components: Water scarcity; emissions; climate
change; non-point pollution from cropping and livestock; co nducive environmental po licies.
Related to and in preparation of CATSEI, the project Sustainable livesto ck production
planning and allocation in China builds on methodologies developed in LUC’s detailed case
study of China (Fischer et al., 2005). In 2006 , attention focused on data harmonization and
scaling procedures, and non-parametric estimation approaches that assisted in comp iling a
spatially-detailed inventory of current livestock distribution by location, animal type and
major production system as well as indicators of livestock system sustainability and related
risks. In 2006 the approach was developed to inco rporate th ese indicato rs in to the spatial
livestock model to flag i mportant conditions, li mitations, thresholds, and trends to help in
planning and decision making regarding livestock production in tensificatio n and allocation .
The main conclusion of the study is th at livestock produ ctio n expansion should avoid to
follow th e historical intensification trends. Sustainable development requires diversification
of producers, planning of integrated production chains with larg e and small producers and
production facilities to stabilize the aggreg ate production, hedge against economic and
environmental risk s and un certainties, and improve rural welfare. Outcomes of this research
were presented in workshops and su mmarized in Fischer, G., Ermo lieva, T., Ermo liev, Y., Van
Velthuizen, H.: Livestock Production Planning under Environmental Risks and Uncertain ties:
China Case Study. Journal of Syste ms Sciences and Sys te ms Engineering, (JSSSE), S ystems
Engineering Society of China, Vol.15, No.4, 2006.
Methodology develo pment: Land-use changes ar e driven by a mu ltitude of interdependent
processes involvin g natural and an thropogenic forcing. Analysis of these co mp lex processes
requires integrated approach es th at po se a number o f methodological ch allenges. These
include the consistent representation of spatial and te mporal heterogeneities of a variety of
social characteristics and environ mental determinants. Downscaling methods are essential
elements in various projects of the LUC Prog ram and are seen as a key ingredient of spatial
modeling.
In 2006, th e project focused on identification of proper indicators, new measures of
uncertainties and risks, and goodness criteria for downscaling an d upscaling of results. The
sequential rebalancing procedures that were developed in this project rely on an approp riate
- 442 -
optimization principle (Fischer et al., 2006a, 2006b), e.g., cross-entropy maximization, and
combine the available sa mples of real observations in th e locations with other “p rior” hard
(statistics, accounting identities) and soft (expert opinion, scen arios) data. In particular,
distribu tion-free non-parametric estimation procedures were identified and developed for
capturing spatio-temp oral interdependencies among the variables po tentially determining the
priors. The research was conducted jointly with me mb ers of the Integrated Modeling
Environment Project at IIASA. The downscaling procedures and the non-parametric
estimation techniques were extensively tested and applied in variou s projects of LUC, in
particular, in the project on sustainable livestock production planning and allocation.
- 443 -
World Population Program
The main research objective of the Wo rld Population Program (POP) is to analyze and
forecast the dynamics of global population change in its interactions with changing social,
economic and en viron mental conditions. Special emp h asis will be put on quantitative
assessments of uncertainty and on capturing population heterogeneity that goes beyond age
and sex by further distingu ishing by level of education and place of residence. With th is
research objectiv e, POP will continue to function as the world’s only group that is primarily
dedicated to the scientific analysis of global population dyna mics. The Program will aim to
combine innovativ e work at the highest scientific standards (publishing in top journals) with
relevance to other research programs at IIASA and to th e glob al po licy co mmunity. In order
to meet this a mbitious aspiration with the li mited resources available from IIAS A’s core
funds, POP will utilize an ex tensive glob al network of regional population centers and
function as the scientific node for these regional activities.
Over the course of the year, POP played a very high-profile role in th e Eu ropean level
discussions about demographic trends and th e consequences of population ag eing . These
issues recently moved to the top of the European agenda, with European Commission
President Barroso calling demographic trends one of the th ree main challenges of Europe (the
other two being globalization and technological chan ge) and th e Commission issuing its first
official communication on demographic challenges. POP’s involvement in 2006 started with
several high-level speeches by Wolfgang Lutz to all-European audien ces in the context of th e
Austrian EU presidency. This was augmented by the publicatio n of the first “European
De mographic Data Sheet” which for the first ti me produced a wall chart listing a large
number of important de mographic indicators (partly based on official statistics, partly based
on own estimates) which has been widely disseminated and frequ ently cited. Ov er th e co urse
of the year Wo lfgang Lutz was invited several times to Brussels to personally meet with
Co mmissioner Spidla (in charge of employment and social affairs) in preparation of the
official communication. He also gave th e keynote address in the closing session of th e First
European De mographic Foru m in Brussels with many national ministers and Co mmissioners
present.
Another important even t in this context was the publication of a new IIASA book entitled
The New Generations of Europeans. Demography and Families in the Enlarged European
Union , ed ited by Wolfgang Lutz, Rudo lf Rich ter an d Chris Wilson (London, Earthscan). Th is
book substantiv ely su mmarizes in 16 scientific chapters th e work of the Eu ropean
Observatory for the Social Situation, Demography and Fa mily, for which Wolfgang Lutz
served as the de mographic coordinator.
- 444 -
Finally, in this context a recent paper by Wolfgang Lutz, Vegard Skirbekk and Maria Rita
Testa entitled “The low fertility trap hypothesis: Forces that ma y lead to further
postponement and fewer births in Europe” (pp. 167-192 in Vienna Yearbook of Population
Research 2006 ) received a lot of attention among policy makers and journalists. It was even
cited in the only footnote on the front page of the official EU Co mmunicatio n on
Demographic Challenges.
A so me what different perspective on European develo pments was shed by a contribution
published in Science as a Policy Foru m by Wo lfgang Lutz, Sylvia Kritzinger and Vegard
Skirbekk entitled “The demography of growing European identity” (Science 31 4:425). In this
study the authors analyze data fro m a series of Eu robaro meter surveys which asked samples
in all EU countries about their feelings of national identity and to what degree this is being
complemen ted by a Eu ropean identity. Using the tools of demographic age-period-cohort
analysis, the authors show that there is a clear cohort effect in the sense that the younger
cohorts do, to a significantly higher degree, have a European identity in addition to their
national one. Projections show th at this effect presents a major long-term force towards
stronger Eu ropean identity, despite all th e short-term problems concerning the European
constitution and th e financial planning. Th is piece of analysis received great attention a mong
the highest European po licy circles and is frequently cited as a welcome positive ou tlook fo r
future European integration.
IIASA is a founding me mb er (together with the Nation al Univ ersity of Singapo re and
Chulalon gko rn University in Bangkok) of the Asian MetaCentre for Population and
Sustainable Develop ment Analysis, which received generous funding as a regional center of
excellence by the Wellcome Trust. To mark the comp letion of the first six-year cycle of its
activities, the MetaCentre held a region al conference on “Population and Development in
Asia: Critical Issues for a Sustainable Future” in Phuket (Thailand) in March 2006, which
brought together around 20 0 scho lars, mo stly fro m the Asian region. The papers of many of
the sessions and panels are forthco ming as sp ecial issu es of several prestigious journals.
The year 2006 saw the bulk of ou r new efforts to reconstruct th e po pu lation by ag e and sex
and for levels of educational attain ment for 120 co un tries in th e world for the period
1970-2000. This major new effort used demo graphic mu lti-state techniques (as pioneered at
IIASA during the 19 70 s an d 1980 s) to back-project the population by going back along
cohort lines fro m an empirically-given distribution for th e year 2000. Th rough this method
we could make sure that the educational categories used are consistent across ti me. This is
the major problem affecting existing empirical datasets which tend to have a lot of gaps. This
new database is superior to all previous datasets (including, e.g., th e often used Barro and
Lee data) in that it gives a comp lete cross-classification of the four educational attainment
categories by age and sex for a larg e number of countries over three decades. It is also the
- 445 -
only such effort that explicitly consid ers the important fact that people with higher
educational status tend to have significantly lower mortality.
Such a consistent and detailed dataset is of great interest for economists studying the
determinants of economic growth. While according to econo mic theory, hu ma n capital should
be a major driver of economic growth and at th e micro-level it has been empirically
demonstrated beyond any reasonable doubt that mo re education leads to higher income, this
has not yet been convincingly demonstrated at the macro level. The main reason for th is
supposedly lies in the fact that only insu fficient empirical national-level time-series d ata
have been available so far. Our new data change this situation an d were met with
overwhelming interest at a presentation of the results in October at the Wo rld Bank
headquarters in Washington, D.C.
Because of this great relevance of
consistent past data on human capital by ag e and sex
for scholars of economic growth, in October 2006 it was decided to establish a separate new
project on “Hu man Capital and Economic Growth” under the umbrella of the World
Population Progra m. The main task of th is new project will be to re-estimate major economic
growth models usin g ou r new data. Beyond this was the id ea that we should try to capitalize
on the great potentials of this new dataset ourselves and not leave it to other groups to derive
important new finding s while using our data. As leader of this new activity, Dr. Jesús Crespo
Cuaresma, an economi c growth expert working at the University of Vienna, was recruited on
a part time basis. Th e first results are very encourag ing in th e sense that ou r new data tend to
produce consistently positive significant effects of huma n capital on economic growth. The
bulk of th is work will be carried out during 2007.
- 446 -
Greenhouse Gas Initiative
The Greenhouse Gas Initiative’s (GGI) overall objective is to advance scientific
understanding and inform policy processes related to the challenge of climate change.
The
Initiative takes as its contex t the ultimate goal of the UN Fra me work Convention on Cli mate
Change to stabilize at mo spheric concen trations of greenhouse gases in order to avoid
dangerous i mpacts.
Principal research activities in clude (1) th e develop ment of global,
long-term, multigas stabilization scenario s; (2) the development of short- to mediu m-term
country-specific case studies and policy options analysis within a global stabilization
fra me work; and (3) the develop ment of a policy assessment tool fo r analyzing alternative
international climate change policy regimes.
Through these activities, GGI ai ms to
integrate IIASA’s expertise in global and long-term analyzes of population, technology,
energy syste ms and agriculture with more place-specific assessme n ts of land use, forestry
and air po llution, both for industrialized and developing coun tries.
In 2006 GGI continued the development of long-term energy-climate scen arios with
multiple greenhouse gases and varying clima te stabilization targ ets. This process involved
the integration of contributions fro m various programs within GGI into an overall modeling
fra me work. Key findings of GGI’s research efforts over th e past few years have resulted in a
Special Issue of the journal Technological Forecasting and Social Change entirely dedicated
to GGI work. This Special Issue of so me 280 pages contains eight research articles by 22
authors (of which 13 belong to th e core GGI team) covering a wide range of aspects of GGI’s
modeling
fra me work,
including:
implications
of
uncertain ty
in
climate
parameters;
methodologies of downscaled data; issues of delayed participation of coun tries in greenhouse
gas mitigation regi mes; climate change imp acts on irrigation water requirements; global
assessment of biomass supply and sequestration potential; and the influence of mitigation on
climate change impacts on agriculture. GGI’s Nebojsa Nakicenovic and Keywan Riahi served
as guest editors on the editorial board of the Special Issue and played an instrumental role in
harmonizing and coordinating this GGI hallmark publication.
In order to facilitate the dissemination of GGI’s research findings covered in the Special
Issue a new web-based interactive GGI scenario database has been developed an d
implemented. The database in cludes consistent datasets for demographic, econo mic, energy
and environmental indicators of the GGI scenarios. Th is exercise is expected to culminate i n
the release in early 2007 of a version of th e data that will be publicly accessible version fro m
the IIASA website and thus will provide a unique and useful service to the research
community worldwide.
- 447 -
In 2006, GGI also strategically developed various co mponents of its rich Integrated
Assessment modeling framework:
The DIMA model, which had been developed in GGI and used for generating scenarios of
terrestrial carbon sink potentials (incl. av oided deforestation) and potential bioenerg y supply
for the GGI scenario s was reprogrammed and subsequently also used to prep are a publication
in the journal Carbon Balance and Management on the economics of avoided deforestation
(the paper was cited in th e Stern Review and is used as background material by the Coalition
of Rainforest Nations and the European Union in UNFCCC negotiations).
The forestry model OSKAR, which was initiated in 2005, has been paramete rized for all
important European tree species and its management cost functions have been updated to
match different European regions. The model has been used to produce the mo st extensiv e
estimates yet (in terms of scope and resolution) of po tential produ ctiv ity in creases, carbon
accumulation, and forest structural changes in response to management practices across
Europe. These results have been presented at the Climate Change conference by the European
Science Foundation, and at th e 13th International Boreal Forest Research Association
(IBFRA) conference. The OSKAR simulations of potential forestry output have also been
adapted to fit into th e format of the larg e scale forestry and agricu lture econo mic
optimization framework FASOM. Forestry potentials, subject to trad e and comp etition from
other sectors, through FASOM, will provide a major forestry contribution to GGI
applications. In 2006 particular emphasis has been given to enhance OSKAR ’s capab ility to
assess climate impacts and adaptation strategies (journal papers forthcoming).
In addition, methodological advances were accomp lished to run the dynamic OSKAR
model for any region glob ally and that it is easily in tegrated with other global models of
climate change effects (e.g. the LPJ model used at Bern University) and the land use
economic optimization FASOM model with in the GGI In tegrated Assessment framework. In
2006, th e Forest and Agricultural sectors have been merg ed in to one single program code in
order to assess i mplications of enhanced competition over land due to GHG mitigation
policies.
The calibration of the static agricultural part has been accomp lished. However,
the calibration of th e dynamic forest part is still un der way due to co mp lexity of the task.
Results of the Global FASOM are expected for the seco nd quarter of 2007 and will be used to
further gu id e th e in tegration of the modeling approaches within GGI.
Work continued to develop an d implement a first version of the Policy Assessment
Fra me work (PAF). A feasibility study for th e linkage of th e MESSAGE and the GAINS
models has been carried out and the linkage has become operational for th e region ‘Western
Europe’. The methodology has undergone initial testing with baseline and mitigation
scenarios, first in a reduced form version then with th e full models, and has been refined to
- 448 -
bridge methodological differences between the two models. An interi m report on th is project
is expected to be finalized in the first quarter of 2007.
During 2006 , GGI made significant further progress in the development and ap plication of
the
innovative
model
Interaction Model).
1
of
economic
growth
SEDIM
(Simple
Econo mic
Demographic
This included introducing additional detail in the representation of
savings behavior among corporate an d lifetime savers, includ ing represen ting variable
working life estimates for different ag e cohorts. Along with other features of SEDIM, this
facilitated the exploratory analysis of future economic development and savings patterns in
Japan, which highlighting the po tential importance of corporate savers (rather than lifetime
savers) to longer-term econo mic develop ment. This preliminary finding is relatively novel
given that corporate savers are not dealt with explicitly in other models of economic growth,
and with further development ma y provide additional understanding of th e range of future
uncertainties in long-term scenarios of clima te change.
In collaboration with IIA SA’s F OR and DYN programs, GG I c ontinued a project on
attainability domains for analysis of models of economics of climate change which started as
a YSSP project in 2005. The project was ai med at utilizing the concept of attainabilit y
domains
known
in
the
mathematical
control
theory
in
analysis
of
large-scale
climate-economy systems with non-specified time-varying in pu ts. A system’s attainab ility
domain associated with a given fu ture point in time is understood as the set of all states that
are potentially reachable by the syste m at that point in ti me. An origin al specialized software
package was used to carry out the attainability analysis of a si mp lified version of the
Dyna mic Integrated Model of Climate and the Economy (DICE-94). The attainability domai n
of this model is represented in Figure 1 by the green area. The red surface is the model’s
utility surface; forme d using the values of the model’s cost function which, in this case, is
social welfare. For any given state in the green attainability domain, the utility surface gives
the maximu m possible value for the model’s cost function. The yellow spot shows the highes t
point on the utility surface and represents the state at which welfare is maxi mi zed for all th e
possible comb inations of economic development and accu mulations of greenhouse gases that
may have happened by 2020. In the DICE case, it was found th at the utility surface has a
significant flat area around the yellow spot. This fact immediately highlights that a range of
possible combinations of economic develop ment and greenhouse gas accumu lations will
provide a level of welfare that is only slightly less (less than one percent) than the maximu m
attainable. The main results of this analysis have been su mmarized in an in terim report.
1
SEDIM is a tool for both developing new internally consistent scenarios of global economic
development and exploring the implications of existing long-term scenarios of climate change in terms
of demographic, social and political variables, including fertility, life expectancy, education,
productivity, foreign investment, institutional quality and corruption. Unlike conventional approaches
to modeling long-term economic growth, SEDIM is capable of generating, and hence exploring,
scenarios of economic divergence, expanding the range of future trajectories that can be analyzed.
- 449 -
Figure 1. Utility surface for the DICE mode l at the year 2020. (IIASA ‘Options’ magazine,
Su mmer 2006).
GGI initiated collaboration with the Energy Research Institute in Chin a to study the
develop ment of the future energy syste m and associated GHG e mi ssions in China. GGI/EN E
scientists worked with researchers fro m ER I to establish th e initial phase of the study and
successfully implemen ted the methodological basis for ex amining issues of en ergy taxation,
local air quality and GHGs within the Chinese energy syste m. This project is expected to last
until the end of 2007 and to provide valuab le in sigh ts in to th e dyna mics of ho w emissio n s
will evolve in developing countries, the policies th at can influence this develop ment and th e
i mpacts this will have on th e energy syste m a nd th e econo my as a whole.
Networkin g
GGI researchers actively participated in va rious high level in ternational work shop s and
conferences to disseminate th e results of the GGI scenarios to research an d policy
communities.
Some of the important audiences in cluded th e IPCC (working groups II and
III), the US Environme ntal Protection Agency, and the Energy Modeling Foru m (EMF).
To
ensure
the
validity
of
the
forestry
management
models
GGI
is
maintaining
collaborations with scientists at BOKU (the agricultural university) in Vienna and has started
a new collaboration with scientists at th e Swedish Agricultural Univ ersity (Ri mvis
- 450 -
Vasilauskas). As part of an internatio nal group of ecosystem mo delers, new concepts of
modeling of forest response to elevated CO 2 are developed in associatio n with the FAC E
(large scale CO 2 experiments) group in Oak Ridg e, USA. The collaboration with the
University of Bern on carbon cycle models in continuing.
- 451 -
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