第4章 入職経路の日米欧比較分析−日本は欧米と異なるのか−1) 平成 17 年 6 月 22 日 樋口美雄・児玉俊洋・阿部正浩 Masanori Hashimoto Rene Fahr and Hilmar Schneider 1. はじめに 本書が分析の主要課題としている外部労働市場の機能向上のためには、能力開発と並ん で求職者と求人企業のマッチングに直接に関わる職業紹介システムの整備が極めて重要で ある。職業紹介経路としては、公共及び民間の「職業紹介機関」、求人広告等の「広告」、 並びに「縁故」などがあり、これらは、「求職手段」、または、「入職経路」とも呼ばれ ている。「入職経路」とは、現職への入職を果たした転職者が利用した経路という意味で あり、「求職手段」とは、失業者または在職中の求職者が職を探すための方法または経路 という意味である。現職への入職に導いた「入職経路」は通常一つであるが、失業者の「求 職手段」としてはこれは一つとは限らず、一人の失業者が同時に複数の「求職手段」を利 用する場合もある。また、求職者と求人企業のマッチングが一定期間に成立する確率(す なわちスピード)、及び、成立したマッチングの成功度合いを総称して「マッチング効率」 という。本書では、職業紹介経路に関して、特に、転職者が現職を見出すために利用した 「入職経路」の機能に注目し、「入職経路」の相違が「マッチング効率」とどのような関 係を持っているかについてを中心とした分析を行っている。 前章では、まず、わが国国内の入職経路について分析を行った。本章では、新たに米国 及び欧州主要国についての分析を加え、第3節及び第4節として紹介する。これらの米欧 分の分析については、Hashimoto, Masanori が米国に関して、Fahr, Rene and Hilmar Schneider が欧州主要国(デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、英国)に関して、 それぞれ、労働者の転職状況を「入職経路」との関連で把握できる個票統計の利用によっ て分析を行った。これら、日、米、欧それぞれの分析は、相互に比較可能になるよう、可 能な限り共通の変数や式の特定化を用いて行われた。 本章では、これらの日、米、欧の分析結果を踏まえ、比較検討を行う。本章の目的は、 日米欧における入職経路とマッチング効率との関係について、個票統計を利用し、極力統 一的な枠組みの下で比較を行い、これを通じて、特に日本の労働市場及び政策に対する示 唆を導き出すことである。 2. 既存研究と本章の研究の特徴 1)本章は、樋口美雄・児玉俊洋・阿部正浩(2004)、Hashimoto, Masanori (2004)及び Fahr, Rene and Hilmar Schneider (2004)を基にこれらを再構成して作成した。 -1- 求職手段または入職経路のマッチング効率との関係を論じた欧米の既存文献の多くは、 Fahr and Schneider(2004)によると、失業中の求職者の観点に立っている。英国についての Gregg and Wadsworth (1996)、Böheim and Taylor (2002)、米国についての Holzer (1988)、カナダについての Osberg (1993)がその例である。Holzer は、「縁故(friends and relatives)」並びに「直接求職(direct search)」の求職手段が最も頻繁に用いられ、ま た、求人を開拓する上でも生産的であると論じている。Gregg and Wadsworth(1996)は、 「広告(advertisements)」と「ジョブセンター(Jobcentre)」が英国で最も普及した 2 つの求職手段であると指摘している。これらの求職手段の成功率は高くないが、もっとも 頻繁に用いられることから、絶対数で見た就職成功件数は最大のものになっている。また、 入職を条件として、さまざまな求職手段を用いる確率をモデル化すると、失業期間とジョ ブセンター利用との間には正の相関関係が存在し、他の求職手段との間には負の相関関係 があることを示している。 英国についてはさらに、Böheim and Taylor (2002)は、広告への応募と、ジョブセンタ ーすなわち職業紹介機関が、2 つの最も一般的な求職手段だと論じている。Böheim and Taylor は、求職者が一度に複数の手段を用いる場合が多いことを強調した。特に彼らは、 最も一般的な方法として、直接応募(direct application)、広告への応募、ジョブセンタ ーの訪問、縁故(friends and contacts)が組み合わされて用いられることを指摘した。 Böheim and Taylor はまた、面接直後に採用される確率が最も高い求職方法、すなわち潜 在的な雇い主に直接応募することが、最も一般的な求職手段と一致するわけではないと指 摘している。これらの研究の弱点は、当該データから就職に結びついた入職経路の観測が できないにもかかわらず、用いられた求職手段がその後の就職と因果関係を有すると仮定 せざるを得ない点である。 例外は Addison and Portugal (2001)で、ポルトガルのデータから、求職手段と最終的な 入職経路の情報を得ている。Addison and Portugal は、翌期の入職につながる求職手段と 見なされる方法の「成功率」が、「自営(self-employment)」、「縁故(friends and relatives)」、「直接応募(direct application)」において最も高いことを発見している。 しかし、これらの手段を通じて職を見つけることが、必ずしも賃金上昇に結びつくとは限 らない。また、公共の職業紹介サービスの効率の低さを論じるとき、Addison and Portugal は、それを示す推計値が、制度的な非効率性と選択の効果(公共職業紹介の利用者という グループに一定の傾向のあること)が混ぜ合わさったものと考えるべきであることを認め ている。 このように、欧米においては、求人と求職者とのマッチングと求職手段の関係について いくつか分析がなされており、その一部は、入職経路とマッチング効率との関係を分析し ている。また、前章で紹介したように、わが国についても、少ないながらも、入職経路と マッチング効率性の関係について分析した研究がある。しかし、これらは、いずれも、国 別に行われた分析であり、入職経路または求職手段とマッチング効率性との関係を国際比 較した分析ではない。本章は、入職経路とマッチング効率性の関係について、個票統計を 利用した計量分析によって、日米欧間の比較分析を行うものであり、その点に大きな特徴 がある。 -2- 2-1 比較の枠組み 本章において入職経路の日米欧比較は、次のような枠組みに基づき行う。 2-1-1 中心的な変数(転職者に関する入職経路とマッチング効率) (入職経路) 職業紹介経路は、「入職経路」と「求職手段」としての性格があるが、我々の関心は、 職業紹介経路がマッチングの成果とどのような関係を持っているかにあるため、最終的に 入職に利用された「入職経路」としての職業紹介経路に注目する。幸い、本章でわれわれ が利用する日米欧のデータ出所は、基本的には「入職経路」を調査している。米国につい ては、データ出所として使用した Current Population Survey (CPS) が失業期間中の「求職手 段」(job search methods)を調査しているので、本章の 3.においても「求職手段」の用語 を用いている。しかし、直接の分析対象としては、転職者が入職した月の前月に利用して いた「求職手段」の中で最も重要な1つを使用しているので、事実上、日本及び欧州の分 析における「入職経路」(entry methods)とほぼ同じものを指している。 さて、「入職経路」として日米欧のデータ出所から共通に把握できる職業紹介経路は、 「職業紹介機関」、「広告」、「縁故(家族及び友人等)」である。「職業紹介機関」に ついては、米国及び英国については、公共と民間の区別が可能である。日本については、 1999 年までは公共のみ区分して調査され、民間は「その他」の中に含まれていたが、2000 年から公共も民間も区分して調査されている。他の 5 か国については公共と民間の区別は できない。もっとも独、仏、デンマークでは、「職業紹介機関」といえば、もっぱら公共 機関であるといってよく、民間はほとんど存在しないために区別されていない。また、米、 欧各国については、雇用主への「直接応募」が区分されており、また、日本については、 「前の会社」による紹介及び「学校」、英国を除く欧州については「創業または家業従事」 が区分されているといった違いがある。 (マッチング効率) 本章は、入職経路とマッチング効率との関係を分析する。前章のわが国の分析において は、マッチング効率を表す指標として、マッチングが成立するまでのスピードを表すとこ ろの、前職の離職から現職への再就職までに要した「離職期間」、並びに、成立したマッ チングの質の良し悪しを示すところの前職と現職との間の「賃金変化率」、及び、再就職 先における転職後の「満足度」を用いた。本章では、日、米、欧で比較可能な分析を行う ために、マッチング効率としては、「離職期間」と前職と現職との間の「賃金変化率」を 用いる。「離職期間」が短いほどマッチング効率は高く、また、前職に比べて現職の賃金 が高いほど(または賃金低下幅が小さいほど)マッチング効率が高いと考える。 このうち、「離職期間」については、「失業期間」との関係を説明する必要がある。「失 業期間」とは、仕事がない状態で、かつ、求職活動をしている期間のことであり、「離職 期間」とは、求職活動の有無にかかわらず、仕事がない期間のことである。したがって、 「失業期間」は、「離職期間」のうち求職活動を行っている期間であると言い換えること もできる。「離職期間」か「失業期間」かは、日米欧各国のデータ出所によって異なって いる。米国については、Hashimoto(2004)は、「失業期間」を用いている。欧州についても、 -3- Fahr and Schneider(2004)は、「失業期間」の用語を用いているが、国によっては求職活動 をしていない時期も含んでいる(特に、ドイツ)。日本の場合は、主たるデータ出所であ る『雇用動向調査』で把握できるのが「離職期間」のみであるため「離職期間」を用いて いる。このように「失業期間」概念によるデータを使用している国も含んでいるが、後節 5.において、日米欧の分析結果を比較する際には、統一的に「離職期間」の用語を用いる。 (対象となる労働者の範囲) 本章は、「転職者」を対象として分析する。「転職者」は、前職を離職してから現職へ の再就職に成功した労働者である。再就職に成功した労働者である点で、標本選択に偏り が生じている可能性があるため、本来は、離職期間分析については、「転職者」と「求職 継続者」であるところの「失業者」を含めた分析であることが望ましい。しかし、この章 では、日米欧比較に利用可能なデータの範囲から、「転職者」に絞った分析を行っている。 「求職継続者」を加えることによって分析結果が影響を受けるかどうかについて、日本 について分析した前章において、「求職継続者」を含めて分析できる『労働力調査特別調 査』(以下では『労調特別』という)を利用した阿部正浩・戸田淳仁(2004)の分析結果と、 雇用動向調査の分析結果との比較によって検証した2)。その結果、雇用動向調査を用いた 分析結果と阿部・戸田(2003)の分析結果との間で、「離職期間」で評価した入職経路間の 順位に違いはなかったことが確認されている。 2-1-2 データ出所 分析に用いたデータ出所は以下のとおりであり、その概要は表4−1に示した。それぞ れの説明は、日本については前章で述べたとおりであり、米国及び欧州については、本章 3.及び 4.で詳細に述べる。ここでは、それぞれの概要を簡潔に述べる。 (日本) 日本については、厚生労働省の『雇用動向調査』の個票統計を用いた。本章の集計・分 析結果は、前章で紹介した集計・分析結果を米・欧との比較用に編集したものである。『雇 用動向調査』は、厚生労働省が、半年毎に、常用労働者 5 人以上の事業所を対象として、 入職・離職等の状況を調査する調査である。『雇用動向調査』において入職経路、離職期 間、前職からと現職への賃金変化率が把握できる調査対象は、離職期間が1年未満の転職 者に限られる。従って、本章で紹介する日本についての回帰分析は、離職期間1年未満の 転職者のみを対象としているが、記述統計分析においては、必要に応じて、阿部・戸田(2003) が行った『労調特別』の集計結果を用いてデータを補完する。 2)阿部・戸田(2004)は、総務省統計研究所において、労調特別の個票統計を用いて、求職 者が一定期間に失業を脱する確率を求職手段(入職していない標本も対象としているので 「求職手段」と呼ぶ)及び個人属性で説明するハザードモデルを推計した。阿部・戸田(2003) の推計結果とその雇用動向調査の分析結果との比較についてのより詳細な説明について は、前章を参照。 -4- (米国) 米国については、米国国勢調査局の Current Population Survey(以下では、「CPS」と呼 ぶ)を用いる。CPS は、米国国勢調査局が、約 5 万世帯を対象に毎月行っている調査であ る。この調査は、ある標本単位について、4 か月連続で調査し、その後 8 か月の空白期間 を置いて、1 年後の同じ 4 か月連続で調査し、計 1 年 4 か月の間に 8 か月を調査している。 この間に、当初就業状態にあり、その後失業を経験し、再び就業状態にはいったことが観 察される標本を転職者としてとらえている。従って、事実上、CPS で把握できる転職者は、 離職期間が1年以内の転職者に限られている。 そこで、日米欧の分析結果の比較を行う 5.節での記述統計分析においては、CPS とは別 に、離職期間についてのみ、その一般傾向の確認のため、米国の代表的なパネル・データ である National Longitudinal Survey of Youths (以下では、「NLSY」と呼ぶ)を用いた集計 も行った。 (欧州) 欧州については、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ及び英国の 6 か 国を対象としている。Fahr and Schneider (2004)による検討の結果、英国を除く 5 か国につ いては、The European Community Household Panel (以下では「ECHP」という)を用い、 英国については、The British Quarterly Labor Force Survey (以下では「BQLFS」という)を 用いた。これは、英国以外の 5 か国については、ECHP で統一的なデータが得られ、英国 については ECHP では入職経路のデータが得られないからである。 ECHP は、1994 年以来継続する標本世帯に対して毎年1回ずつの調査を行っている。入 職経路や離職期間等のデータは、現職入職後の最初の調査での回答から得られる。離職期 間は、多くの国については月単位で回答が得られるが、ドイツについては年単位のデータ しか得られない。このため、離職期間の分析からはドイツを除外している。 英国の BQLFS は、5四半期継続する標本家計に対して、四半期毎に調査を行っている。 入職経路情報は現職に入職した四半期の調査において、また、離職期間情報は現職に入職 した四半期の前の四半期に失業していた場合に入手される。一方、賃金に関する情報は欠 損値が多いため、賃金変化率の分析からは英国を除外している。 2-1-3 分析手法の概観 分析手法としては、記述的な集計表の作成と回帰分析を用いる。いずれにおいても、マ ッチング効率指標と入職経路との関係をみる。 回帰分析においては、マッチング効率を示す離職期間または賃金変化率(賃金変化率に ついてはその対数)を被説明変数として、入職経路を示すダミー変数と性別・年齢・教育 水準・離職理由など、転職者の個人属性をコントロールする他の観察可能な変数を説明変 数として推計を行った。回帰分析方法の詳細については、各関連か所で述べるとともに、 回帰分析結果の比較については、後節 5.においてあらためて述べる。 -5- 米国における求職手段とマッチング効率の関係 3. 本節の目的は、米国における失業者について、利用可能な個票データを用いて、日本及 び欧州の分析結果と比較可能できるように、求職手段とマッチング効率との関係を分析す ることである。 3‑1 データの出所 データの出所としては、本章のテーマに取り組むうえでは、労働人口の実態・賃金の漸 進的変化を観察できるような、長期的なパネル・データが望ましい。日本について用いら れた『雇用動向調査』は、パネル・データではないが、標本となる労働者の前職の状態も 調査されており、前職と現職の間の変化を分析することができる。そこで、米国に関して は、まずパネル・データの本分析への利用可能性を検討すると、米国の代表的なパネル・ データである National Longitudinal Survey of Youths Data(NLSY)と Panel Study of Income Dynamics(PSID)が候補として挙げられる。NLSY 及び PSID は、パネル・デー タであるという利点はあるものの、NLS の回答者は狭い年齢に限定されており、また失業 3) 者の標本数は少ないため、日本や欧州との比較には適さない 。また PSID においては、 求職手段に関する情報が包括的ではなく、また各年度で一貫した基準での情報が得られな い。 米国のさまざまなデータのメリット・デメリットを考量した結果、本節の分析では Current Population Survey(CPS)のデータを用いることにした。CPS は労働市場調査に 関して米国で入手できる最も包括的で標本数の大きいデータの一つである。 CPS は、米国勢調査局が労働統計局向けに約 5 万世帯を対象に毎月行っている調査であ る。CPS には、各世帯の 15 歳以上の全世帯員に関する就業状況の情報が含まれており(た だし発表されるデータでは 16 歳以上に重点を置いている)、米国の労働力としての特徴に 関する一次情報源となっている。CPS では、就業・失業状況、所得、労働時間その他の変 数が、年齢・性別・人種・既婚/非婚の別・学歴・職種・業種・労働階層といった人口統 計上の特性別に分類されている。 CPS は時系列的に蓄積されたクロスセクション・データであって、本格的なパネル・デ ータのように長期にわたって調査標本を追跡することはできないが、同一の調査標本を一 定期間継続し毎月少しずつ入れ替えているため、短期についてはパネル・データに準じた 分析を行える。ここでその仕組みを説明しておこう。毎月、調査担当者が無作為抽出され た調査単位に接触し、その住所に居住するすべての成員の基本的な人口統計情報と、15 歳 以上の成員全員に関する詳細な労働情報を取得する。月次・年次データの変化を推計する 際の信頼性を改善するため、8 つのパネル(パネル=調査標本のグループ)を用意して毎 月の調査標本をローテーションさせている。ある標本単位は 4 か月連続で調査を受け、そ 3) NLSY は 1979 年、14 歳から 21 歳までの個人 1 万 2686 名を対象とした年次調査として開 始された。1990 年代半ば以降、調査は隔年で行われるようになった。このデータでは求職者の 数は比較的少ない。たとえば 2000 年の NLSY には、雇用されていない求職者 269 名、雇用さ れている求職者 617 名しか含まれていない)。 -6- の後 8 か月の空白期間を置いて、1 年後の同じ 4 か月間、また調査対象となる。そして、 毎月、調査対象パネルが一つずつ(つまり標本全体の 8 分の 1 ずつ)新しいものに入れ替 わっている。CPS のデータはパネル・データに準ずる性格を備えており、制約はあるもの の、特定個人の求職活動をその成果と結びつけることが可能になっている。 CPS 調査において失業者としてカウントされるには、回答者は一時的なレイオフ状態に あるか、過去 4 週間にわたって積極的な求職活動を行ったと主張しなければならない。求 職活動を放棄した人は、労働人口から離脱したと見なされる。回答者は、求職活動をして いるかどうかだけでなく、職を見つけるために具体的にどのような活動を行っているかを 質問される。回答される活動としては、通常、「州の(公共の)職業紹介機関に問い合わ せる」「民間の職業紹介機関(に問い合わせる)」「雇用主に直接連絡する」「友人・親 戚に照会」「求職広告の出稿/回答」「新聞の求人広告を探す」といったものがある。求 職活動の結果のデータとしては、現在の就業形態や賃金、雇用期間など、労働市場におけ る通常の特性が含まれる。 一般のデータ群と同様、この CPS のデータ群にも長所と限界がある。長所としては、 (1)大規模なデータ群であり、あらゆる年代の(16 歳以上)回答者を含んでいる、(2) コントロール変数として使える社会経済的変数を豊富に含んでいる、(3)求職手段に関 する情報を伴う雇用者・非雇用者の標本が、他の標準的なデータソースに比べ、はるかに 多く取得できる、(4)失業者が用いる求職手段に関する情報を豊富に含んでいる、とい った点がある。限界としては、(1)就業中の労働者が求職活動を行っている場合に関し ては求職手段に関する情報がない、(2)パネルのローテーションにより同一の個人の集 合をある程度の期間追跡調査できるとはいえ、個人を追跡調査できる月数は限られている ため、何か長期的な影響があったとしても確認できない、(3)8 か月の空白期間がある ため、その期間中の就業状況については仮定が必要になる。これについては後で確認する。 3-2 標本の抽出 CPS は豊富なデータを提供しているため、失業、求職手段、その後の結果について、い ろいろな分析を行うことが可能である。しかしここでの第一の目標は、日本についての調 査標本と比較できる標本を構成することである。本章の分析で日本について用いる『雇用 動向調査』の標本特性を考慮し、これとなるべく類似したデータがとれるよう、CPS の回 答者のうち失業から脱した人に注目する。失業期間の前後での賃金の変化を追求するには、 転職入職者に限定する必要がある。 CPS の調査体制では 8 か月の空白期間があるため、空白期間中の就業状況については仮 定が必要になる。我々は、以下の仮定が最も自然なものだと考えている[以下の仮定にお いて E(あるいは U)は、その人が 8 か月の空白期間の直前の月、あるいは 8 か月の空白 期間の終了直後に就業(もしくは失業)状態にあったことを意味する]。 [E、8 か月の空白期間、E]→空白期間中も就業。 [E、8 か月の空白期間、U]→空白期間のうち前半 4 か月は就業、後半 4 か月は失業。 [U、8 か月の空白期間、E]→空白期間のうち前半 4 か月は失業、後半 4 か月は就業。 [U、8 か月の空白期間、U]→空白期間中も常に失業。 -7- 3-3 標本結果 本分析で利用する全調査期間(1998 年 1 月〜2002 年 3 月)において、標本調査期間中の どこかで失業を経験した人は 21,530 人である。このうち標本調査期間中に失業と再就職の 両方を経験した標本、すなわち、転職入職者は 966 人である4。 表4−2は、観察が可能であった月数別に人数をまとめたものである。CPS 調査への協 力継続を拒否した人がいる、転居し現住所が不明な人がいるなどの理由で、調査対象とな っていた全員が調査サイクルを完了したわけではない。男女を問わず圧倒的に多いのは、4 か月しか調査に参加しなかった人である。 表4−3は、転職のパターン別に個人の分布をまとめたものである。最初の列(EUE) は、調査期間中に失業と再就職を経験した調査標本であることを示す。調査期間中に失業 したすべての事例のうち、調査期間中に再就職に至った例は少数に留まっている。 3‑4 失業期間の長さ 表4−4は、失業と再就職を経験した調査標本を、失業期間の長さ別に分類したもので ある。失業し、最終的に再就職した(つまり失業から脱した)966 人に関しては、男女双 方とも、失業期間は約 5.5 か月となっている。 失業期間をもっと幅広く把握するには、調査標本のうち、調査期間中に失業を経験し、 失業が継続している人について失業期間を推定することが有益である。つまり、再就職し た人に加えて、調査期間中に再就職できなかった人、また最初に調査標本となった時点で すでに失業していた人についての検証も行わねばならないということである。 再就職した人だけでなく、調査標本全体について失業期間を推定するには、状態遷移確 率を伴う一次マルコフ連鎖を想定する必要がある。 これに基づき、1998 年〜2001 年までの失業期間を、性別、学歴、年齢別に推定した結 5) 果が表4−5である。この時期の推定失業期間は 3〜4 か月と短くなっている 。女性は男 性よりも失業期間が短くなる傾向にあり、また学歴の高い者は低い者よりも失業期間が長 くなる傾向が見られる。ただしその差は有意ではない。年齢の差異に注目すると、年齢が 高くなるほど失業期間が長くなる傾向にある。 米国の労働市場の特異性として、短期的な雇用の調整のために一時的レイオフが用いら れることが多いという特徴がある。一時的レイオフは、企業固有のスキルを有する労働者 がその企業と完全に切り離されてしまう可能性を最小限に抑えている(Feldstein (1976)、 Katz (1986))。 失業期間が短い理由は、これらの個人のほとんどが、一時的レイオフの結果として職か ら離れていたことによるのかもしれない。表4−6は、失業者のなかに一時的レイオフの 4 ) 本節の基となった Hashimoto (2004)は、CPS からの標本抽出の手順についても言及している。 5) これは調査期間中に失業から脱した人の実際の平均失業期間が 5.5 か月だったのとは対照 的である(表4−4参照)。もちろん、予測と実績が必ずしも類似しているとは限らないし、 またこの差異は、一つには 8 か月の空白期間中の就業状況に関する仮説に基づくものかもしれ ない。 -8- 対象となった者がどの程度いるかを、学歴・年齢別に、失業者全体に占めるレイオフ対象 者の比率(L/TU)で示したものである。この時期、失業者全体に占めるレイオフ対象者の比 率は、学歴・年齢層を問わず、25%前後となっている。したがって、一時的なレイオフは、 すべてのレイオフが一時的なものではないこともあり、失業の主要な原因であるとは言え ないが、失業の大きな原因となっている可能性がある6。一時的なレイオフが女性よりも男 性にとって、また低学歴の労働者、高齢の労働者にとってより重要であることに注意され たい。 3-5 求職手段についての記述統計 表4−7は、失業期間中に 966 人の回答者が用いたさまざまな求職手段をまとめたもの である。CPS データの構成により、これらは排他的な区分となっている。先にも述べたよ うに、本節の「求職手段」は、転職者が入職した月の前月に利用していた「求職手段」の 中で最も重要な1つを使用しているので、事実上、日本及び欧州の分析における「入職経 7) 路」とほぼ同じものである 。非常に目立つ点は、「企業への直接の問い合わせ/面接」 という手法を用いた人が多い(52.1%)ことである。この手法は、「履歴書・応募願書を 送付」(21.7%)「公共の職業紹介機関に照会」(7.8%)「求人広告を見る」(6.7%) といった他の手法よりも圧倒的に多い。 3‑6 求職手段についての回帰分析 さまざまな求職手段は、失業期間を短縮する上で、また、賃金上昇を実現する上で、ど の程度有効なのだろうか。この疑問に答えるために、失業期間については、調査期間中に 失業し失業から脱した人の失業期間を被説明変数とし、年齢、既婚/非婚の別、人種、学 歴、業界、求職手段などさまざまな説明変数を持つ多重回帰モデルを推定した。また、賃 金変化に関しては、 ln(wt / wt − τ ) (ただし wt は新たな職における賃金、wt- τ は前職におけ る賃金)を被説明変数とし、失業期間関数と同様の多重回帰モデルを推定した。求職手段 を表すダミー変数は、「求人広告を見る」を基準として作成している。 6 ) ただし、CPS は、恒常的レイオフと一時的レイオフを区別していない。CPS は、労働者が、 需要の一時的減少、景気後退、工場の改装、材料の不足、在庫の削減など、業況に関連した理 由によって一時的に職を離れ、元の職場に呼び戻されることを待っている状態をレイオフとし ている。また、レイオフとみなされるためには、勤務再開日があらかじめ告げられているか、6 か月以内に職場に呼び戻されると期待できることが必要である。レイオフ対象者は、求職活動 をしていなくても失業者に分類される唯一のカテゴリーである。このような定義は、レイオフ が通常は一時的レイオフであることを意味している。 7) CPS では回答者に対し、求職手段について複数回答を可能とするよう、同じ質問を 6 回繰 り返している。仕事を見つけるために 1 人の人間が複数の方法を試みることは十分考えられる。 一般には、最も頻繁に試みた手法が一番目の回答となり、最も頼ることが少なかった方法が 6 回目の質問の回答になると思われる。いずれにせよ、この質問に複数回答えた回答者は少数に 留まっている。したがってここでは一番目の回答のみを用いている。 -9- これらの回帰分析では、前職賃金も説明変数としている。これは、前職賃金には個人に 特有の人的資本その他の観察不可能な要因が反映されているという仮定に基づき、個人の 不均一性を調整するためである。さらに、前職賃金は、提示された職を引き受けるか否か、 また、職探しをどれだけ長く行うかを個人が判断する「留保賃金」に影響を与え、従って、 個人は、直前の仕事で得ていた賃金が次の仕事に反映されることを期待するからである。 表4−8は、失業期間について回帰分析の結果を示したものである。われわれが注目す るのは求職手段の効果である。ここでは、すべての転職者標本を対象とした場合には、求 職手段と失業期間のあいだの関係ははっきりしない。どの手法も統計的に有意な係数を示 していない。男性に限れば、唯一有意な(失業期間を短くする方向での)係数は、民間の 職業紹介機関の利用に関連するものである。女性に限れば、「民間の職業紹介機関に照会」 が統計的に有意で失業期間を長くする方向での係数を示しており、また「組合/専門職登 録機関に照会」が有意性は低いものの失業期間を短くする方向での係数を示している。公 共の職業紹介機関の利用は、男性に関しては失業期間の短縮につながっているが、女性に 関しては逆に失業期間が長期化している。もっとも、いずれも有意であるとは言えない。 表4−9は、賃金の変化に関する回帰分析の結果をまとめたものである。利用された求 職手段のうち、統計的に有意な効果が得られたのは、「民間の職業紹介機関に照会」と「組 合/専門職登録機関に照会」のみだった。この結果は、男女別には必ずしも有意ではない が、男女合計では、「公共の職業紹介機関」に比べ、「民間の職業紹介機関」のほうが賃 金上昇を実現するうえではるかに効果的であることが表れている。また、「組合・専門職 登録機関」が賃金上昇に関してポジティブな影響を与えているというのは、自然な結果で あると考えられる。 失業期間及び賃金の変化に関する回帰分析の結果からは、「民間の職業紹介機関」を利 用すると、女性の場合は失業期間が延びる可能性がある(逆に男性の場合は失業期間が短 縮される)ものの、いったん新たな職が見つかれば、賃金上昇の幅は他の求職手段の場合 よりも大きくなることがうかがわれる。ただし、「民間の職業紹介機関」と「組合/専門 職登録機関」が、求職手段としてはあまり頻繁に用いられる方法ではないことに注意すべ きである。表4−7に見るように、この 2 つの手法は全体の 2.8%を占めるにすぎない。 したがって、これらは求職手段としては一部の労働者のみが利用できる手法である。これ らをうまく活用できる人が、賃金上昇を実現しているように見える。対照的に、「公共の 職業紹介機関」は、利用頻度は高いものの(7.8%)、賃金や失業期間に対する影響という 点ではあまり効果的であるとはいえない。 3-7 米国の求職手段に関する分析結果のまとめ 本節の主眼は、米国において新たな雇用を早期に見つけるうえで、どの求職方法が有効 か、また、以前よりも賃金のいい仕事を見つけるうえで、さまざまな求職手段がどの程度 有効かという点である。早期再就職に関しては、回帰分析の結果によれば、「民間の職業 紹介機関」は、幅広く利用されてはいないものの、男性に関しては失業期間を短縮し、女 性に関しては失業期間を延長する傾向が見られた。対照的に、「公共の職業紹介機関」の 活用は、男性に関しては失業期間を短縮するが、女性に関してはこれを延長する。しかし、 いずれも有意であるとはいえない。 - 10 - 賃金変化に関しては、転職者標本に関しては、「民間の職業紹介機関の利用」と「組合 /専門職登録機関への照会」が賃金上昇をもたらす傾向が見られた。対照的に、「公共の 職業紹介機関」はあまり効果的ではないように思われる。 欧州における入職経路とマッチング効率の関係 4. 本節の分析の目的は、欧州主要国の入職経路を国際比較することにより、これらを日米 の入職経路と比較できるようにすることである。具体的には、デンマーク、ドイツ、フラ ンス、イタリア、オランダ、英国の 6 か国を対象とする分析を行う。ところで、国際比較 にはさまざまな問題が付随し、特に、完全に比較可能なデータを見つけ出すことの困難さ がある。本節では欧州主要 6 か国の分析を行うに当たり、各国間のデータの比較可能性に ついて留意点を述べておこう。たとえ、質問票の設計された欧州共同体家計パネル (European Community Household Panel = ECHP)によって、極めて比較しやすいデー タが入手できるとしても、慣習や慣行が異なる国の間で質問と変数がまったく同じ内容に なっているかどうかは分からない。ましてや各国の質問項目は、その国の問題意識のもと に追加、削除されていることも多い。ときには、分析結果は各国固有の労働市場制度、文 化的側面から直接的に影響を受けている面もあり、他国への政策提言に有益な示唆を得る ことのできないものも多い。しかし、複数の国にまたがって類似したパターンが見つかれ ば、分析結果はより信頼性の高いものになるだろう。国による相違があったとしても、労 働市場を有効に機能させるための共通な改善点や問題点が見つかれば、結果として示唆さ れる政策的インプリケーションも一層重みを増すことになる。 4‑1 データの出所 本節の主要目的は、欧州主要 6 か国にまたがる入職経路の実態やその効率性に関する分 析結果を提供することである。そのためには、極力一つのデータセットを用いることが望 ましい。本研究は、欧州、日本、米国の入職経路の比較を提供することにあるため、欧州 について単一のデータセットを用いることができれば、分析を簡素化できるばかりではな く、各国毎に入手可能なデータに基づき単一の比較分析フレームワークを提供できるとい う点でも望ましい。 欧州共同体家計パネル(European Community Household Panel = ECHP)は、ほとんど の欧州諸国について標準化されたデータを提供しており、幸い、我々は、主要な欧州諸国 のうち 5 か国について比較可能なデータを用いることができた。しかし英国については、 ECHP の中に入職経路に関する情報がないため、代わりに英国四半期労働力調査(British Quarterly Labor Force = BQLFS)を用いることにした。ただし、このデータセットに示 されている情報やデータの構造は、ECHP とはまったく異なるものである。重要な点とし ては、賃金に関して、前職から現職に転職した際の賃金変化を分析し、これを入職経路と 関連付けるために十分な情報が含まれていないことである。データセットの一般的構造と、 我々の分析において行われた選択について以下に説明することとする。 4‑1‑1 欧州共同体家計パネル(The European Community Household Panel = ECHP) - 11 - 1) 概要 欧州共同体家計パネル(ECHP)は、EU 中央統一局(ユーロスタット)の指導のもと、 統一された共通な質問票を基礎に、各国の事情を反映して修正された調査である。各国の 家計及び個人を無作為に抽出し、同じ対象者に対して毎年、面接調査を行い、所得、健康、 教育、住宅、人口統計、雇用の特性等の幅広いテーマについて調査している。ECHP は、 1994 年から実施されており、我々は 2001 年までの計 8 年のデータを利用する。当初、す なわち 1994 年には、当時の加盟国 12 か国で各国の家計を代表する約 6 万 5000 の標本(す なわち、16 歳以上の成人約 13 万人)に対して面接調査が行われた。 ECHP は、3 つの特徴を持っている。 すなわち、第一の特徴は、ECHP は、当該個人の経済活動と個人所得という 2 つの主要 分野について細部に及ぶ調査を行っている点である。各個人の社会的関係と責任、健康と 年金と保険、仕事と生活の様々な側面に関する満足度、教育と訓練、これまでの経歴情報 その他幅広いテーマが調査の対象となっている。欧州連合(EU)が行っている他の社会調 査に比べて、ECHP ははるかに広範かつ総合的な性質を有するものとなっている。ECHP は、例えば所得、社会保障手当、雇用、労働条件、住宅、家族構成、社会的関係、物の考 え方に関して、比較可能で相互関連した情報の提供を目指している。これらのテーマの一 部に関する情報は、単一テーマの情報源ほど詳しくなく、あるいは、厳密さに欠けるかも しれないが、ECHP は、異なる分野の相互関係や個人の生活状況に対する特定の要因の重 要性を分析することができる基盤の上に単一のミクロ情報源を形成している。 第二の特徴は、統一された手法と手順を各国に適用することによって、各国間にまたが って、このような相互関係を比較検討することができる点にある。このような比較可能性 は、EU 中央統計局が各国国内調査を統一的に支援及び調整するとともに、統一された調 査設計及び共通の技術的・実施上の手順を用いることによって実現した。ECHP の設計に は、国家間の比較可能性を高めるために導入された数多くの特徴がある。その特徴とは、 共通の調査構造と手順(所定の追跡調査規則を用いてのパネルへの毎年の面接など)、編 集、変数の構築、ウェイト付け、データ調整、分散の計算などデータ処理と統計分析の共 通基準、共通した標本抽出要件(標本数の規模、確率を選別する手順などに関して)、さ らには、実際の調査設計を各国の国内条件に合わせたものとする柔軟性である。比較可能 性をもたらす中心的な手法として、ECHP では共通の「青写真」である質問票を用いてお り、これはすべての各国調査の出発点となっている。 第三に、パネル・データとして設計されていることは、ECHP のとりわけ重要な特徴で ある。各国内で当初の家計と個人の標本は、1 年間隔で長期的に追跡調査される。長期的 パネル・データを与えるだけでなく、ECHP はさらに、適切な追跡調査規則を通じて常に 標本を更新することによって、時間を通じた代表的な部門横断的(クロスセクションの) 状況描写も与えるように設計されている。新たな家計に移動した者、新たな家計を形成す る者又は新たな家計に参加する者は、新しい居所で追跡調査を受ける。子供だった者は、 16 歳の年齢に達したときに、詳しい本人面接の対象者となる。標本の女性から生まれた子 供は、自動的に調査対象母集団の一部に組み込まれる。このようにして、標本は母集団の 人口構造の変化を反映し、標本の減少によるロスや母集団への新規移民だけで純粋に形成 される家計を除いて、長期的に母集団の代表であり続ける。その上、常に、当初の標本の - 12 - 誰かと同じ家計内で一緒に暮らす者全員が、詳細調査の対象となる。これは、標本である 者を家計全体という文脈の中で調査するためである。 研究者は、厳格な契約条件の下で、原データをさらに匿名化した副次標本(sub-sample)、 すなわちユーザー・データベース(UDB)が利用できる。回答なしの取り扱い方法を含め、 このデータセットの詳しい説明は、Peracchi (2002)で示されている。 2) 問題と制約 調査対象者が現職へ新たに入職したことを知ることができるのは、労働者が就業状態に あると報告する面接のなかで、現在の雇用関係の始まりについての情報が、その面接に先 立つ最も直近の面接での情報に比べて、新しいときである。入職経路に関する情報を含め て、現職に関する情報はすべて、その面接によって得られる。前職に関するすべての情報 は、新規入職を認知した面接の前に当該個人が就業していたことが観察される最も直近の 面接から得られる。質問票には、前職に直接触れる質問もいくつかあるが、この情報には、 たくさんの欠損値が含まれていることがわかっている。そのため、前職の情報については、 当該個人が新規入職に先行する職に就いていたことが観察できる面接から得た情報のみを 採り上げることにする。回帰分析における観測の独立性を確保するため、われわれは、各 人の新たな雇用関係への最新の変化のみを標本とする。標本 1 人につき一つの変化に制限 することで、それほど多くの観察を取りこぼすわけではない。 しかし、この認定手順によって前職から現職への変化を把握しているために、多くの雇 用関係が安定したものであると仮定しなければならない。すなわち、失業期間については、 雇用主が異なる時点の面接を比較するだけでは、労働者がそれらの面接の間に短い失業期 間を経て雇用されたかどうかを把握することはできない。現職を見つける前の失業期間に 関する情報は、現職になって最初の面接と認知した面接での質問票への回答から入手され る。この質問に対する回答は、ECHP の大半の国で、失業していた月数を報告する形にな っている。例外はドイツで、現職を見出すまでの失業期間としては年数のみが調査されて おり月数は不明である。このため、失業期間と入職経路との関係の分析ではドイツを除外 する。もうひとつの問題は、月単位で調査されているために非常に短期の失業期間(例え ば 2 週間)を、1 か月の失業期間と区別できないことである。しかし、前職から現職への 直接の転職(失業期間が介在しない)があったかどうかは、はっきりと識別される。 また、本節では、消費者物価指数によって賃金をデフレートした実質賃金の変化を使用 している。賃金は、被雇用者の所得と定義する。したがって、「自営」の入職経路を賃金 変化と関係づけることはできない。 他にも、ECHP で扱われるそれぞれの国について、いくつか把握できない重要な情報が ある。例えば、ECHP ではドイツについては産業についての情報を得ることはできない。 回帰分析では、分析対象の欧州各国のすべてについてデータが入手できるモデルを選択し ようとして、各国毎に適合度が高い代わりに比較分析を妨げかねないモデルよりも、分析 対象の欧州各国について比較可能なモデルを選ぶことにした。 4‑1‑2 英国四半期労働力調査(BQLFS) - 13 - 1) 概要 8) 英国の労働力調査(LFS)は、英国内の個人住所に居住する家計を調査するものである。 その目的は、労働市場政策の策定、管理、評価、報告に用いることのできる英国労働市場 に関する情報の提供にある。実施機関は、グレートブリテンについては国家統計局(ONS) の社会調査部(SSD)であり、北アイルランドについては経済開発部の依頼によって財政 人事部中央調査課が実施している。 LFS の調査設計も、ありうる変化に関してある種の推測を要するものとなっている。標 本は、以下に述べるように相互に重なり合って存続しており、ある四半期に入れ替わった 標本に関して変化の推測が行われる。LFS は、英国の全人口を代表することが意図されて いる。LFS の標本の設計とその実行詳細については、国家統計局の社会調査部が責任を負 っている。調査対象となる母集団は、民間の家計に属する全ての居住者、国民健康保険制 度の施設内の全居住者、学期中に親元から離れ学生寮などの施設で暮らす若者である。(最 後のグループは、特に若者の対象率を上げるため、LFS の標本に含められている。)現在 の標本設計は、各四半期にグレートブリテン内の約 5 万 9000 世帯の回答家計で構成され、 グレートブリテン人口の 0.3%に相当する。北アイルランド人口の 0.4%に相当する北アイ ルランドの約 2000 世帯の回答家計の標本がこれに加えられ、英国全体の分析を行うこと が可能になっている。 各四半期の英国 6 万 1000 世帯の LFS 標本は、5 つのグループで構成され、それぞれが 約 1 万 2000 民間世帯で構成される。それぞれのグループは 5 四半期連続でインタビュー を受ける。ある四半期では、あるグループが初回のインタビューを受け、あるグループが 2 回目のインタビューを受けるというふうにして、あるグループは最終の 5 回目のインタ ビューを受ける。従って、それぞれに引き続く四半期の標本は 80%が前の四半期と同じ標 本となっている。家計は、調査に初めて加わったときに対面インタビューを受け、以後は、 可能であれば四半期ごとに電話インタビューになり、初回インタビューの 1 年後に 5 回目 の最終四半期インタビューを受ける。LFS のインタビューは、インタビューが 1 年の各週 に関する情報を収集するために行われており、この点で継続的なものとなっている。 調査結果は、英国内の民間家計及び国民健康保険制度施設の居住者に関するものである。 大半の人々は一つの住所に住んでいるため住所の確定に疑問の余地はない。複数の住所を 持つ人の場合、彼らが主たる住所とみなす住所の居住者としてカウントされる。この四半 期労働力調査は、地域的な偏りが少なくなるよう標本設計されている。無作為に開始し、 一定の間隔をあけることによって地域的な偏りのない住所標本が、スコットランド・カレ ドニア運河以南のグレートブリテンの郵便番号住所ファイル(Postcode Address File)か ら抽出された。LFS は、並べられたリスト(事実上、地域別に層化)からの系統的な無作 為住所標本を用いる。標本は 145 のインタビュー地域に割り当てられている。各地域は 13 の区域に分割される。これら 13 の区域は、1 四半期(13 週間)に無作為に配分される。一 人の LFS インタビュー担当者が、1 四半期の同じ週に同じ区域をカバーする。体系的な住 所標本が、国全体で四半期ごとに選び出され、毎週のインタビューのための住所リストに 8) この記述は、LFS User Guide Vol.1 (2001)の説明に従っている。 - 14 - 分割される。 質問票は、毎回の調査に含まれる基本質問と、四半期ごとに変わる特別質問から成り立 っている。特別質問は、1 年に 1、2 回のみ必要とされる情報を提供する。基本質問の一部 は最初のインタビューにおいてのみ質問されるが、それは時間がたっても変化しない性質 に関わるからである(例えば、性別、人種)。所得に関する質問もあり、1997 年春以降、 初回と 5 回目のインタビューで回答者に質問されている(以前は、5 回目のインタビュー でのみ質問されていた)。所得データは残りのデータとともに四半期ごとに処理されるが、 別途、集計される。 2) 問題と制約 BQLFS の質問票と構造には、何度か変更があった。比較的統一された情報を得るため、 我々は 1997 年春の四半期から 2002 年春の四半期までの個人を追跡することにした。その 結果、我々の分析に用いた期間は合計 20 四半期となる。 概要で述べたとおり、家計は 5 四半期連続でインタビューを受ける。われわれは、現職 または前職に関連する背景情報と入職経路を関連付けるため、二つの異なる職で個人を観 測する必要があり、5 四半期通して得られる家計だけを採り上げることにした。このよう にして 16 グループを分析することができ、それぞれが上記のとおり、約 1 万 2000 の民間 世帯で構成される。 入職経路情報は、労働者がインタビュー日前 3 か月以内に新たな雇用関係に入ったとき に入手できる。データセットが以前の雇用関係について情報を一切与えないため、前職に 関する情報はすべて、当該個人が入職経路情報を得られるインタビューの四半期に先立つ どこかの四半期で働いていたことが観察された場合のみ入手できる。 失業期間に関する情報は、失業中の労働者から収集される。我々は、この情報を収集す るため、労働者が新規入職した四半期より前のインタビューで、自分の雇用状態を失業中 と回答したかどうかを確認した。そのように回答していた場合の失業期間の長さについて の回答を、入職までに要した失業の長さとみなす。しかし、当該個人が新たな雇用関係に はいった期日を正確に測れない点に留意する必要がある。本当の失業期間は、実は約 1、2 か月長い可能性もある。加えて、労働者が転職の際に、短い失業期間を全く経なかったか どうかをはっきりとは見極められない。これは、新規入職者への質問からは、それに先立 つ失業期間に関する情報を得られないためである。既に説明したとおり、我々は代わりに、 新規入職者として行われたインタビューの 3 か月前に失業者だった時に尋ねられた質問を 利用する。このことは、失業が「3 か月未満」の回答区分に失業期間がない者がはいって いないことを意味する。また、失業期間の定義に関するもう一つの問題は、失業期間と前 職に関する情報を結び付けられないことである。これは、我々が前職に関する情報を観察 できるのが、前職がデータ収集期間(すなわち、連続 5 四半期)の中にはいっている場合 に限られ、これにあてはまらない失業期間である場合が多いからである。 他にもいくつか重要な情報が BQLFS に欠けている。我々が分析対象とする四半期では 職業に関する情報がない。また、賃金情報は、あるにはあるが、欠損値や異常値が多く、 利用できない。 - 15 - 4‑2 求職手段か入職経路か 求職に関する大半の既存研究は、失業者または在職の求職者がどの求職手段を用いるの かについて分析している(例えば、最近の例では Böheim and Taylor (2003))。個別の求 職手段の成功は、求職過程の長さ、すなわち、労働者が新たな雇用を見つけるまでに経過 した時間で評価されることが多い。しかし、新たな雇用が特定の求職手段で得られたのか、 他の経路で得られたのかは、はっきりしないことが多い。新たな雇用関係にはいる者から 入職経路の情報を得た場合には、どの経路が最終的に新たな雇用関係を得る原因となった か、疑問はない。しかしその一方、求職過程の履歴に関する情報がない。利用した求職手 段と最終的な入職経路を結び付けることのできた研究は、ごくわずかである(Addison and Portugal (2002)を参照)。 日本のデータ出所である『雇用動向調査』からは、入職経路についての情報を得られる。 本節では日本のデータと比較するため、分析対象の変数としては入職経路を選択する。欧 州における求職活動を調べるデータの利用可能性から見ても、このことは好ましい。なぜ なら、欧州のデータ出所となる ECHP UDP データセットからは、入職経路について詳し い情報を得られるが、求職手段については非常に雑駁な情報しか得られないためである。 ECHP データの英国カバレッジが不十分なため我々が英国の分析に用いる英国四半期労働 力調査(BQLFS)からも、新たな雇用関係にはいる転職者の入職経路についての情報は得 られる。 4‑3 記述統計 記述統計については、次節 5.の日米欧比較の中であらためて紹介するが、この節では、 以下の諸点のみ紹介する9。表4−10及び表4−10a は、欧州の入職経路の分布を示す。 「家族及び友人」の分類は、欧州各国で大きさが似通っている。入職経路「その他」は、 どのような個別の経路が含まれているのかが不明なため、やや評価しにくい。デンマーク と英国では、これはあまり重要な入職経路ではないが、ドイツでは大きな構成比を占める。 労働市場の制度的違いを端的に示すのは、「直接応募」が、デンマーク、イタリア、英国 では大きな構成比を占めるのに、ドイツでは小さな役割を果たすに過ぎない点である。 表4−11は、ECHPで比較可能なデンマーク、フランス、オランダ、イタリアの男 性について、入職前の失業期間の平均月数を見たものである。同表によると、各国におい て職業紹介機関利用者の失業期間が非常に長い。この点をさらにはっきりと示すため、図 4−1a と図4−1b は、デンマークとフランスにおける、入職経路毎の、前職から現職へ の直接転職者(失業期間のない転職者)と現職に入職するまで 1 年以上の失業期間のある 転職者との間の構成比を示し、これを入職経路間で比較した図である。 デンマークでは、直接転職者の全体に対する割合が非常に高い。したがって、直接転職 者は、この図に示された転職者の大部分を占める。例外は職業紹介機関であり、長期失業 9 )本節の基になった Fahr and Schneider (2004) は、入職に成功した入職経路の観察され る頻度が、マッチング効率と関係があるかどうかについても検討している。入職に成功し た入職経路の観察された頻度の比較(例えば構成比に表される)そのものから入職経路の マッチング効率を判断することはできないが、欧州においては、ある程度、失業期間の短 い求職手段がより高い確率で選択されている傾向が認められるとの観察を行っている。 - 16 - 経験者もこれを同じようによく用いている。このパターンは、フランスの数値にも反映さ れている。フランスでは、全体に長期失業経験者の構成比がかなり大きいが、職業紹介機 関は他の入職経路よりもその利用者に長期失業経験者の割合が高いという点は共通してい る。デンマークと比べると、フランスでは、「直接応募」と「広告」の利用者における長 期失業経験者の割合が特に大きい。これは、長期失業者の割合が高くなるほど、これらの 求職手段への入職障壁が低くなることを示唆している可能性がある。 4‑4 回帰分析の結果 入職経路を評価するため、本節でも、日本及び米国と同じように、二つのマッチング効 率指標を使用する。その一つは、ある入職経路を経由して入職に至るまでに経過した失業 期間であり、もう一つは、前職と現職との間の賃金変化、である。特定化された実証モデ ルを用いて失業期間と賃金変化を説明できるかどうかは、記述統計以上にデータの入手可 能性に左右される。欧州各国の標本数が日本に比べて少ないため、賃金変化を職業や業種 など前職と現職の属性を用いて説明することはできない。 また、本節においては、入職経路によるマッチング効率の違いが、入職経路の違いその ものによってもたらされているのか、それとも、入職経路を利用する転職者の属性の違い によってもたらされているのかを少し詳しく分析する。そのため、以下においては、説明 変数として入職経路ダミー変数(「職業紹介機関」を基準(reference)とする)のみを用 いた回帰式(以下では「一類型説明変数モデル」という)と入職経路ダミー変数とともに 転職者の属性を表す変数として利用できる他の説明変数を全て用いた回帰式(以下では「多 説明変数モデル」という)の両方の推計結果を比較した考察を行う。 4‑4‑1 失業期間の回帰分析 1) 一類型説明変数モデル(デンマーク、フランス、イタリア、オランダ) 表4−12は、デンマーク、フランス、イタリア、オランダについて、現職に入職する までの失業期間(ただし、失業期間のない転職者を除く)を入職経路のみを説明変数とし た一類型説明変数モデルを最小自乗法で回帰した推計結果である。入職経路と入職までに 要した失業期間との間には一定の相関関係が認められる。 表4−12によると、デンマークでは、直接応募と広告への応募を通じて入職する労働 者の平均失業期間が、「職業紹介機関」を通じて入職する労働者の失業期間より 4 か月短 く、また、これは統計的に有意である。「家族及び友人」による職業紹介は、「職業紹介 機関」を経由する労働者よりも失業期間が 3 か月半短く、これは統計的に弱い有意性があ る。 イタリアについては、「職業紹介機関」に比べてほぼ全ての入職経路が大幅に短い失業 期間を示すという非常に大きな効果が見出される。すなわち、「直接応募」2 年、「家族 及び友人」21 か月、「自営」1 年、「その他」8 か月となっている。後に紹介する賃金水 準の入職経路による回帰結果(後掲表4−16)から、イタリアでは「職業紹介機関」に 登録される求職者と求人が他の国より質が高いと見られることを踏まえると、この結果は 興味深い。これほど大幅な失業期間の短縮が観察されるのは、記述統計から明らかなとお り、長期失業にある労働者数が我々の標本では非常に多いことと関係すると考えられる。 - 17 - オランダについては、この表は、広告に応募する労働者の失業期間が、「職業紹介機関」 によって紹介される労働者に比べて 4 か月短いという弱い有意性のある効果を示してい る。他の経路を通じて入職した労働者は、「職業紹介機関」を通じて入職した労働者に比 べて、統計的に有意ではないが、失業を脱するのに 3 か月余分に必要としている点が興味 深い。 さしあたって、観察された効果は、それが入職経路自体の効果だと仮定すると、全ての 労働者がそれぞれの求職手段を同等に利用できるとの仮定を追加することで、政策提言に つなげることができよう。しかし、一部の求職手段は、全員が均等に利用できるわけでは ない。例えば、相当な社会的ネットワークを持っているか、新たな雇用主に勤務する家族 がいる求職者については、「家族及び友人から職を知らせてもらう」の入職経路が観察さ れるだろう。また、事業を起こすことが失業者にとって代替策となるには、一定のソフト 面のスキルや、借り入れ資金を調達する機会が必要である。観察された入職経路の係数が 入職経路自体の効果かどうかについては、疑問の余地がある。むしろ、ここでの入職経路 についての推計結果は、それぞれの経路を通じて雇用される労働者の入職経路以外の観察 可能及び観察不可能な属性を示している可能性が大きい。もし、高学歴の在職求職者が、 もっぱら新たな雇用主への直接応募によって求職活動を行っているとすれば、表4−12 のモデルにおいて、「職業紹介機関」を基準(reference)とする「直接応募」のダミー変 数に負の係数が観測されるとともに、これは実は、高学歴転職者は、通常、「直接応募」 によって求職活動を行っていることを示唆することになる。この場合、入職経路(そして それゆえに求職手段)は観察結果と因果関係はなく、最適な求職手段に関する政策提言は 無意味となってしまう。われわれは求職手段の効果に関するこの仮説を表4−13で詳し く検討する。 2) 一類型説明変数モデル(英国) 表4−12a は、表4−12に対応する英国の推計結果を示している。被説明変数は、8 つの分類(3 か月未満、3-6 か月、6-12 か月、1-2 年、2-3 年、3-4 年、4-5 年、5 年以上) から成る失業期間の分類変数で、より高い分類順位がより長い失業期間に対応する。表4 −12a(及び表4−13a)は、順位ロジット・モデルの推計結果であり、係数は定性的 にのみ解釈しなければならない。入職経路ダミー変数の基準(reference)は、他の欧州諸 国の公共職業紹介機関に相当する「ジョブセンター(Jobcentre)」である。公共職業紹介 機関の一形態である「ジョブクラブ(Jobclub)」10)を除いて全ての入職経路は、「ジョブ センター」よりも失業期間の短い分類の方向に、高い統計的有意性をもって関連している。 「ジョブクラブ」は、失業期間に対して強く有意な正の係数を示している。 3) 多説明変数モデル(デンマーク、フランス、イタリア、オランダ) 10)「ジョブクラブ」とは、英国の公共職業紹介機関における、求職者がグループで行う 自主的な求職活動を活動場所や活動資源(電話、文房具、新聞など)の提供、専門家によ るアドバイス等により支援する支援メニューの一つ(厚生労働省職業能力開発局(2002))。 - 18 - 表4−13は、入職経路に加え、入職までの失業期間(ただし、失業期間のない転職者 を除く)を説明しうる他の属性要因を説明変数に加えた多説明変数モデルの推計結果を示 す。デンマーク、フランス、オランダの入職経路ダミーについては、表4−12で示した 入職経路モデルとある程度共通した結果が観察されている。しかし、イタリアの係数は低 く、標準誤差は大きいため一部の入職経路ダミーは有意でなくなっている。一方、拡張さ れたモデルの説明力は、大幅に高まっている。デンマーク、フランス、オランダについて は、他の属性要因を一定とした場合に、前職を自発的に失業した転職者の方が非自発的な 理由で失業した転職者よりも失業期間が長いという結果が見出されている。イタリアの失 業期間は主に、景気循環に左右されている。さらに、デンマーク、フランス、イタリアで、 女性の求職者にとって明らかに入職に至るまでの期間が長くなっている。また、全ての国 で、高齢者ほど失業期間が長い傾向が見られる。総じて、ここでの分析結果からは、入職 経路自体は、失業期間を強く規定する要因ではないと見られる。失業期間への効果が見ら れる他の要因についても、各国で共通する明らかな要因は特定できない。 4) 多説明変数モデル(英国) 表4−13a は、英国に関して、8 つの分類で構成される失業期間を入職経路で回帰する 順位ロジット・モデルに、他の説明変数を加えた推計結果を示す。説明変数のリストは、 BQLFS で入手できる情報の関係で、ECHP による他の欧州各国のモデルとは多少異なる。 しかし、英国のモデルの説明力は、他の欧州各国を上回っている。 入職経路ダミー変数の基準とする「ジョブセンター」に対して、「ジョブクラブ」は依 然として、失業期間を有意に長期化する効果をもっていることを示している。「民間の職 業紹介機関」は失業期間を短縮する方向で弱い有意性を示している。ECHP を用いて分析 した他の欧州各国では公共と民間の職業紹介機関を区別できなかったが、英国における両 者の違いは興味深い。このことは、英国におけるジョブセンターと他の欧州各国における 「公共職業紹介機関」が欧州全土で比較可能であり、「民間職業紹介機関」も欧州全土で 比較可能だとすると、ECHP のデータで分析した欧州各国において「職業紹介機関」を基 準とした他の全ての入職経路の効果は過小評価されていることを示唆することになろう。 英国に関する回帰分析では、産業間移動を示すダミー変数を加えた。この産業間移動ダ ミー変数は、失業期間との間で、強く有意な正の相関関係にある。これは、長期間失業し ている人々だけが、異業種に就職する傾向があるのと同時に、産業特有の人的資本を失う ことを受け入れるためであるのかもしれない。年齢については、失業期間に対して想像通 り、正の影響を示していた。 女性については、明らかに失業期間が短い。同じことは、Gregg and Wadsworth (1996) によって確認されている。彼らは 1992 年に英国で、求職手段全般にわたり、失業中の女 性は男性と比べて、職業紹介が成功する「成功率」が総じて高いと論じた。ただし、女性 は、職探しに用いる求職手段は少ないという。これは、女性はすぐに新しい仕事を見つけ られない場合、さらに長く職業紹介機関に登録する(すなわち失業状態にとどまる)ので はなく、労働市場から撤退し労働力でなくなることが多いためということが考えられる。 女性は就職の際に、男性ほどえり好みがうるさくないということも考えられる。 - 19 - 4‑4‑2 賃金変化の回帰分析 次に、賃金変化の回帰分析を検討する。 1) 一類型説明変数モデル 賃金変化への最初のアプローチとして、表4−14は、前職から現職にかけての物価変 動調整済み時間当たり実質賃金変化率の対数を被説明変数とし、入職経路のみを説明変数 とした回帰分析の結果を示している。説明力は非常に低い。これは、一般的に、差分方程 式のモデルの説明力が、分散の大きさのせいで低いことによるのかもしれない。しかし、 このことは、単に、入職経路が、前職と現職との間の賃金変化の重要な決定要因ではない ために生じている可能性もある。すなわち、ほとんどの求職者が利用可能なすべての求職 手段を利用し、全ての求職手段が賃金条件提示分布の同じ部分を目指し、どの手段が最終 的に成功するかはほとんど運任せだと仮定すれば、この結果はそれほど意外なことではな い。 しかし、全体的な説明力は依然低いものの、ドイツとオランダの入職経路は有意な係数 を示しており、このような説明が少なくとも両国には該当しないことになる。「直接応募」 による入職は、基準(reference)としている「職業紹介機関」と比べて、ドイツで 18%、 オランダで 20%高い賃金上昇につながっている。「広告への応募」は、「職業紹介機関」 に比べて、ドイツで 16%、オランダでは 11%高い賃金上昇につながっている。「その他」 のグループにまとめられた入職経路による転職者も、ドイツでは「職業紹介機関」による 転職者に比べて 13.6%高い有意な賃金上昇を得ている。この「その他」の入職経路は、ド イツの転職入職者全体の約 3 分の 1 をカバーするが、先に記述統計の項でも述べたとおり、 具体的にどのような手段がどのくらいのシェアで用いられるのかはつかめない。オランダ では、「家族及び友人による仕事の紹介」が「職業紹介機関」を通じた入職に比べて約 12 %高い、統計的に有意な賃金上昇につながっている。 2) 多説明変数モデル 次に、表4−15に示されたとおり、前職から現職への賃金変化を説明すると考えられ るさらに多くの説明変数を加えた推定結果を見てみよう。モデルの説明力は高まるが、そ れでもその程度は小さい。さて、ここで、入職経路ダミーの係数推定値は、ドイツの推定 において、係数は小さく、標準誤差(standard error)は大きくなり、このため、全ての 入職経路の係数が有意でなくなっている。この観察は、主として、前職を離職した理由が 自発的か否かのダミーを含めることに起因している。表4−15では、前職を自発的に離 職した転職者が前職から解雇された転職者に比べて、約 7%高い賃金上昇を得ていること を見出せる。表には示されていないが、表4−15の説明変数のうち自発的離職ダミー以 外の全ての説明変数を入れて回帰を行うと、前掲表4−14のドイツと同じように、入職 経路に有意な効果が見出される。 実際、在職または自発的に退職し、高い再雇用の確率を期待する求職者が、雇用主への 直接応募や広告への応募のような求職手段を好んで用いるということは、ありそうなこと - 20 - である。このような労働者は、賃金の高まる仕事のみを受け入れると考えられる 11) 。これ によって、自発的離職の変数が賃金上昇に対して正の係数となるとともに入職経路に有意 な効果がなくなること、そして、自発的離職の変数を除外した入職経路に有意な効果が表 れることが説明できる。政策的観点からは、入職経路は、自発的離職者にとって新たな仕 事に就く経路ではあるが、それ自体賃金効果をもたらさないため、入職経路に政策介入す る理由はない。別の言い方をすれば、ドイツに対するこの観察は、逆の因果関係を示して いる。すなわち、労働者がある入職経路で成功するがゆえに、より大きな賃金上昇を観察 されるのではなく、労働者が低賃金の仕事から高賃金の仕事に移る機会があるからこそ、 その入職経路における賃金上昇が観察されるのである。 オランダについては、依然として、「職業紹介機関」との比較で、「直接応募」で入職 する方が有意に 20%高い賃金上昇につながり、「家族及び友人」から紹介された仕事に入 職する方が、弱い有意さでより高い賃金上昇につながることが見出せる。この効果は、少 なくとも部分的には次のように説明できる。1990 年代には、(長期的)失業者、高齢者な どを労働市場に再参入するのを支援するため、公的資金による雇用が導入された。こうし た仕事における給与は法定最低賃金の水準にあり、公共職業紹介機関だけが仲介した。 表4−14の結果を念頭に置くとあまり意外ではないが、他の欧州各国では、現職と前 職の賃金変化に対する入職経路の有意な効果は確認されない。他の変数を調べても、入職 年次ダミーが有意に労働市場に表れた景気循環の影響を示している以外には、予想外の結 果は出ていない。正規労働から正規労働の転職に比べて、パートタイムから正規労働また はその逆の場合の転職は、賃金変化に有意な違いが発生している 12) 。パートタイムは、正 規労働より賃金が低いと見込まれる。しかし、フランスとイタリアについては、正規労働 から正規労働への転職に比べて、パートタイムから正規労働への転職の方が、驚くほど有 意に賃金が低下している。 3) 賃金水準の回帰 表4−16は、物価変動調整済み時間当たり賃金水準を入職経路で回帰した推計結果を 示している。これらの回帰は、賃金変化の回帰モデルの推定結果のように時間に依存しな い観察不可能な要因で補正された13)わけでもないので、大幅な選別の偏りにさらされる。 一類型説明変数モデルの推計結果によって入職経路と時間当たり賃金水準の関係を見る と、イタリアを例外として、他の欧州各国には共通のパターンがある。「職業紹介機関」 11) これは、現職の限界生産物が前職に比べて増えるようなより高い組み合わせ価値を 持つ仕事のみを労働者が受け入れるためか、あるいは、労働者が賃金が下がる衰退産業か ら成長産業に移動しているためであるかもしれない。 12) 欧州については、時間当たり賃金を被説明変数としているため、賃金に対する直接 的な時間効果はない。 13)後掲脚注 17 を参照。 - 21 - と比べると、「直接応募」はデンマークの 14%からドイツの 31%まで賃金水準が高い。「求 人広告に応募」した場合はデンマークの 23%からドイツの 43%まで賃金が高く、「友人や 親類から紹介」された場合はオランダの 9%からドイツの 25%まで賃金水準が高くなって いる。「その他の入職経路」については、分析対象の欧州各国で一様に、現職の賃金にプ ラスの効果があることが観察できる。この効果は、オランダで最も低く、ドイツで最も高 い。「職業紹介機関」を通ずる入職に比べて、他の入職経路にこれほど大きなプラスの違 いが観察されるのは、「職業紹介機関」に登録する求職者がネガティブに選別されている か、雇用主が「職業紹介機関」に低賃金の仕事だけを登録しているかのいずれかを示唆し ている。 個人属性、前職からの自発的離職、入職までの失業期間も説明変数に加えた多説明変数 モデルの推計結果を見ると、入職経路ダミー変数は、一類型説明変数モデルと質的に類似 の係数を生み出すが、影響力ははるかに小さい。これは、「職業紹介機関」に登録された 求人と求職者の両方とも、ネガティブに選別されているとの想定と整合的である。各国間 を比較すると、「職業紹介機関」に登録された求人と求職者の質的な差は、デンマークや オランダなどの国に比べて、ドイツで一層はっきりしていることが示されている。 表4−16のイタリアの推定値は、他の国と若干異なっている。「職業紹介機関」を通 じた入職に比べて、「直接応募」では賃金が約 4%低く、友人及び親類からの紹介では賃 金が 9%低い。この効果は、より多くの説明変数を加えた推定においてもロバスト(頑健) である。イタリアでは、求職手段の周囲にある制度的環境が他とは異なっているようだ。 公共職業紹介機関に求人を登録することが義務付けられているため、「職業紹介機関」に 登録される求職者と求人は、他の分析対象国に比べて、はるかに質が高いと見られる。イ タリアの職業紹介サービスは 1997 年まで、労働省の地方事務所を通じて国によって直接、 独占的に管理されてきた。 4‑5 欧州の入職経路分析の結論 欧州主要国間の入職経路の構成比の比較から、類似点と相違点が示された。全体的なパ ターンは類似しているが、一部の国は特異性を示している。例えば、ドイツでは、直接応 募はマイナーな役割しか果たしていないが、「その他」の入職経路は入職全体の 3 分の 1 を占めている。デンマークとフランスでは、入職経路と失業期間の関係を比べると、転職 者に占める各入職経路の構成比は類似しているものの、失業期間が長い転職者の全体とし ての割合は相当異なっている。しかし記述統計だけでは、入職経路ごとの効率性の差異は はっきりせず、さらに検討するには、より詳細な分析が必要なことを示した。 本節では、一定の求職方法の効率性についてさらに多くを知るため、入職経路とそのマ ッチング成果を示す二つの成果指標との関係を分析した。入職経路の失業期間との関係に ついて行われた入職経路のみを説明変数とした推定結果では、欧州各国において、「職業 紹介機関」と比べて、ほぼすべての入職経路を通じて就職した人の失業期間は短いことが 見出された。例外はフランスで、「職業紹介機関」からの入職者は他の経路を経由して入 職する労働者より失業期間が長いという関係にはなっていなかった。しかし、入職経路に ついて観察された係数の多くは、他の観察可能変数を加えた多説明変数モデルでは統計的 に有意ではなくなった。 - 22 - 入職経路と前職から現職までの賃金変化との間にも、実証的には明確な関係は見出され なかった。失業期間への効果と同様、入職経路のみを説明変数としたモデルで観察される 入職経路の賃金変化への効果の多くは、転職入職者の他の観察可能変数をコントロールす ると消滅する。このことは、各自がすべての入職経路を同じように利用でき、その利用し た入職経路によって賃金変化に差が発生していたというよりも、各自の利用できる入職経 路は異なっており、転職により賃金上昇の可能な仕事に就いている人のみが特定の入職経 路を選べる状況にあることを示している。その証拠に入職経路のみを説明変数にしたとき には、これにより賃金変化に有意な差が発生していたが、個人属性を示す変数を説明変数 に加えると、入職経路は有意ではなくなってしまう。 比較のため、われわれは賃金水準を入職経路によって説明する回帰分析も行った。イタ リアを例外として、全ての入職経路が「職業紹介機関」に比べて高賃金の仕事に関連して いる。この結果は、他の観察可能変数でコントロールしてもなお当てはまる。このことは 逆に、「職業紹介機関」に登録された求職者と求人はネガティブに評価されていることが 多いと見ることができる。 日米欧分析結果の比較−公共職業紹介機関に現れた相違点− 5. 以上に見た米国及び欧州に関する分析結果に前章の日本の分析結果を加えて比較すると どのようなインプリケーションを導くことができるのであろうか。 5-1 記述統計分析から見られる特徴 まず、記述統計から、転職者の属性及び入職経路と労働市場成果としての離職期間及び 賃金変化率との関係にみられる特徴を挙げると次のようなことがいえる。 5-1-1 転職者属性別の離職期間と賃金変化率の傾向 表4−17は、年齢、教育水準、離職理由等の属性別に、転職者のうちの離職期間が 1 年以上だった者の比率(長期離職者比率)、及び、離職期間1年未満の転職者における離 職期間6か月以上1年未満の者の比率を示している。日本の雇用動向調査及び米国の CPS では、離職期間1年以上の転職者が把握できないので、日米欧の比較を行いやすくするた めに離職期間6か月以上1年未満の転職者の比率は離職期間1年未満の転職者を分母とし て算出した。ただし、日本についても労調特別を用いた推計によって長期離職者比率を掲 載した。米国についても NLSY を用いて長期離職者比率を算出した。 これによると、日米欧各国で、年齢別には、高齢者ほど再就職に長期間を要する傾向が うかがわれ、教育水準別には、学歴が低いほど再就職に時間がかかる傾向が現れている。 また、離職理由別には、非自発的離職者の方が再就職までに要する時間が長い。また、こ れらの傾向は、日欧については、後述する回帰分析の結果からも確認できる14)。 14)米国については、回帰分析に使用した CPS の集計結果は他の国と傾向が異なり、年 齢及び教育水準、離職理由の違いによる離職期間の長さの違いが顕著でない。この理由と - 23 - 表4−18は、年齢、教育水準、離職理由等の属性別に、転職者の賃金変化率を示した ものである。これによると、年齢別には、若年者の賃金上昇率が高く、高齢者の賃金上昇 率が低いないしは賃金が低下する傾向にある国が比較的多い。教育水準別には、国によっ て傾向は一定していない。離職理由別には、日本でのみ非自発的離職者の賃金低下傾向が 顕著である。 以上から、高齢者、低学歴層、非自発的離職者といった属性の転職者にとって、再就職 までに要する期間は長いことが認められる。 5-1-2 多く利用されている入職経路 1) 入職経路別の構成比 表4−19は、転職者数における入職経路別の構成比(以下では「ある入職経路の利用 者構成比」ともいう)を求めたものである。これによると、各国で利用される入職経路は かなり異なっている。 日本では、「公共職業紹介機関」、「広告」及び「縁故」が最も多く利用されている。 米国では、雇い主への「直接応募」が圧倒的に高いシェアを占めており、次いで「公共 職業紹介機関」と、「広告」がある程度のシェアを占めている。 英国とオランダは比較的共通しており、両国とも、「広告」、「縁故」、「職業紹介機 関」及び「直接応募」が、主な入職経路である。「職業紹介機関」において「民間職業紹 介機関」の比重が高いと見られる点もこの二つの国では共通している。 ドイツでは、「縁故」が最も主要な入職経路であり、それに次いで、「広告」と「職業 紹介機関」(主として公共)が主な入職経路である。 フランスでは、「縁故」と「直接応募」が最も主要な入職経路であり、それに次いで「公 共職業紹介機関」と「広告」も一定の割合で利用され、「創業または家業に従事」する場 合もある。 イタリアでは、「直接応募」及び「縁故」と並んで、「創業または家業従事」する者の 割合が高いことが特徴的である。 デンマークでは、「直接応募」と「広告」が最も主要な入職経路であり、「縁故」の利 用者構成比も比較的高い。 (公共職業紹介機関の利用者属性) 入職経路別構成比を利用者の属性別にみると、「職業紹介機関」(公共と民間の区別が 可能な日本、米国、英国においては「公共職業紹介機関」に限定)に特色がある。表4− 20は、日米欧各国で共通している入職経路区分のうち「職業紹介機関」について、性別、 年齢別、教育水準別、離職理由別の属性毎に「職業紹介機関」が利用されている割合(利 用者構成比)をみたものである。このうち、公共と民間の区別のつく日本、米国、英国で して、米国 CPS での集計対象年次である 1998 年から 2002 年にかけては、企業のリストラ の頻発、金融部門の停滞、IT 部門の高技能を要する仕事の減少などが、高学歴層の職種に 打撃を与え、これらの層から多くの離職者が発生するとともに、これらの離職者の多くが、 好条件の職場を求めて、自発的に離職期間を長引かせた可能性があることが考えられる。 - 24 - は「公共職業紹介機関」について、その他の欧州各国については公共と民間をあわせた「職 業紹介機関」について、利用者構成比をみたものである。「公共職業紹介機関」と「民間 職業紹介機関」の区別がつかない国の中でも、デンマーク、ドイツ、フランスの「職業紹 介機関」は主として公共機関であることがわかっているので、表4−20は、基本的には 「公共職業紹介機関」の利用者構成比を利用者の属性別にみたものといえよう。 教育水準別にみると、日米欧各国とも、これら「職業紹介機関」の利用者構成比は低学 歴層において高い。また、離職理由別にみると、欧州各国においては、「職業紹介機関」 の利用者構成比は非自発的離職者において高い。すなわち、「公共職業紹介機関」の利用 者は、低学歴層、非自発的離職者という、労働市場で不利な立場にある離職者が多いこと がわかる。 例外的に、日本の「公共職業安定所」が、自発的離職者によっても多く利用されている が、これは日本では自発的離職者にも失業手当が給付され、その受給資格の認定が公共職 業安定所において行われることと連動していることが要因になっているものと考えられる (デンマーク、フランスにおいては、公共職業紹介機関は失業給付を所管しておらず、別 機関により認定がなされる。フランスについては第5章参照。)。 ただし、米国は、「公共職業紹介機関」がワンストップ・サービスとして失業給付や能 力開発を所管しているが、自発的離職者には失業給付の受給資格が認められていない。そ れにもかかわらず、自発的離職者における「公共職業紹介機関」の利用者構成比が非自発 的離職者のそれを上回っているのは、特筆に値する。 (民間職業紹介機関の利用者属性) 表4−21として、「民間職業紹介機関」を区別して把握できる日本(2000 年のみ)、 米国、英国について、転職者の属性別に転職者における「民間職業紹介機関」利用者の構 成比を示した。同表によると、日米英3か国にほぼ共通する特徴として、「民間職業紹介 機関」は、教育水準別にみて高学歴層における利用者構成比が高いことが挙げられる。こ のことは、「民間職業紹介機関」が、労働市場で高く評価されている属性の転職希望者の 入職経路として機能していることを示唆している。 5-1-3 入職経路とマッチング効率 (入職経路と離職期間、賃金変化率) 表4−22は、転職者の離職期間について各国毎に入職経路間の比較を行ったものであ る。離職期間を示す指標としては、表4−17と同じく、「長期離職者比率」(わかる国 のみ)と「離職期間1年未満の転職者のうち離職期間が6か月以上だった転職者の比率」 を用いている。これをみると、日欧各国においては、「職業紹介機関」(日、英において は「公共職業紹介機関」)利用者の離職期間が、他の入職経路利用者と比べて長い。その 傾向は、公共と民間の区別がわかる日本と英国の「公共職業紹介機関」について長期化の 傾向は強く、また「職業紹介機関」のほとんどが公共によって占められているデンマーク とフランスにおいて顕著である。 表4−23は、転職者の賃金変化率について各国毎に入職経路間の比較を行ったもので ある。これについても、日本及び米国の「公共職業紹介機関」(英国は賃金変化率のデー - 25 - タがない)、並びに、主として公共機関とされるデンマーク、フランス、ドイツの「職業 紹介機関」の利用者の賃金上昇率が、他の入職経路の利用者に比べ賃金上昇率が低いか、 または、賃金が低下する傾向にある。 すなわち、「公共職業紹介機関」の入職経路としてのマッチング効率は、離職期間でみ ても賃金上昇率でみても低いものとなっている。これが、「公共職業紹介機関」自体のサ ービスの質・量または効率性の問題によるものなのか、それとも「公共職業紹介機関」を 利用する転職者の資質によるものなのかはこの時点でははっきりしない。あとで回帰分析 の比較結果も踏まえてあらためて検討する。 5-2 回帰分析の結果 次に、回帰分析の結果を比較してみよう。 5-2-1 回帰分析結果の比較の方法 回帰分析においては、マッチング効率を示す「離職期間」または「賃金変化率の対数」 を被説明変数とし、入職経路を示すダミー変数と性別・年齢・教育水準・離職理由などを コントロールする他の観察可能な変数を説明変数として回帰式を推計した。 それぞれの国の離職期間関数と賃金変化率関数のそれぞれについて、入職経路と属性変 数との概括的な関係を見るため、マッチング効率を入職経路だけで回帰した一類型説明変 数モデルと、入職経路に加えて転職者の個人属性を含むそれ以外の観察可能な変数を説明 変数に加えた多説明変数モデルとを推定した。多説明変数モデルに使用する説明変数は、 変数の利用可能性などの理由により 1)日本、2)米国、3)デンマーク・独・仏・伊・蘭、及 び、4)英国のそれぞれにより必ずしも共通ではない。 入職経路を示すダミー変数は、日本及び欧州については、「職業紹介機関」(公共と民 間の区別がある場合には「公共職業紹介機関」)を基準(reference)とし、米国について は、「広告閲覧」を基準として作成されている。 5-2-2 回帰分析結果の比較 表4−24は、離職期間関数における入職経路ダミー変数の係数の推定結果、表4−2 5は、賃金変化率関数における入職経路ダミー変数の係数の推定結果を総括した表である。 ここには、欧州だけでなく、日本と米国についても、入職経路ダミー変数のみを説明変数 とした一類型説明変数モデルの推定結果を掲載した。これによって、日本についても、米 国についても、欧州各国についても、一類型説明変数モデルの推定結果と、他の観察可能 な説明変数を入れた多説明変数モデルの推定結果を一覧できるようにしてある。 入職経路の係数に着目すると、日本は、離職期間関数、賃金変化率関数ともに、一類型 説明変数モデル、多説明変数モデルとも、全ての入職経路の係数が有意であるが、欧米の 入職経路の係数の推計結果は必ずしも有意ではない。 (欧米の回帰分析の結果) まず、欧州からみていくと、一類型説明変数モデルでは、入職経路とマッチング効率指 標との見かけ上の関係を反映して、いくつかの国で入職経路の係数が有意となっている。 - 26 - たとえば、離職期間関数においてはデンマークとイタリア、賃金変化率関数においてはド イツとオランダで、「直接応募」や「広告」などいくつかの入職経路が有意な係数をとっ ている。 しかし、他の観察可能変数で転職者の個人属性等をコントロールした多説明変数モデル になると、ドイツの賃金変化率関数で有意な入職経路がひとつもなくなるのをはじめとし て、多くの入職経路が有意ではなくなるか、有意性が大きく低下する(デンマークとイタ リアの離職期間関数の多説明変数モデルでは、「直接応募」が明確に有意であるが、それ は「直接応募」の利用者の求職意欲など、観察不可能な要因による可能性が高い)。 欧州の入職経路ダミー変数は、「職業紹介機関」(英国については最も主要な公共職業 紹介機関である「ジョブセンター」)を基準として作成されている。入職経路の係数が有 意でなくなるということは、素朴な比較において「(公共)職業紹介機関」の利用者の再 就職に要する期間が長かったり、賃金上昇率が低かったりするのは、転職者の属性や資質 によるものであり、「(公共)職業紹介機関」のサービスの質・量や効率性の問題の影響 ではないということを意味する。 なお、欧州4か国(デンマーク、フランス、イタリア、オランダ)の離職期間関数は、 離職期間がなく、離職後、直ちに就職した標本を除いて推定されている。われわれは、別 途、転職に際して離職期間の有無をロジット・モデルによって入職経路及びその他の観察 可能変数で回帰する推定も行った。その結果は、表4−26のとおりであり、入職経路(「(公 共)職業紹介機関」を基準とする)だけを説明変数とした一類型説明変数モデルだけでな く、多説明変数モデルでも各入職経路ダミー変数の係数は有意である。つまり、離職期間 の有無については、「(公共)職業紹介機関」とそれ以外の入職経路では有意な差がある。 しかし、これについて、Fahr and Schneider は、欧州では、在職求職者が「公共職業紹介機 関」をあまり利用しないためであり、「(公共)職業紹介機関」の入職経路としての優劣 を示すものではないとしている。 米国については、賃金変化率関数の多説明変数モデルにおいて、「民間職業紹介機関」 と「労働組合及び専門職登録機関」が有意にプラスの係数となっており、これらの入職経 路の賃金上昇率が大きいことを示す結果になっている。しかし、これらの入職経路の利用 者構成比は 2.8%(わずかに有意な「縁故」を入れても 5.2%)に過ぎず、労働市場の中で 限界的な役割しか果たしていない。大多数の転職者が利用する入職経路は、マッチング効 率指標との関係で有意な関係がないとの結果になっている。 (欧米において入職経路が労働市場成果に対して影響がない理由) 以上のように、欧米各国に関する回帰分析の結果では、全般的に、入職経路自体のマッ チング効率への有意な効果は見られなかった。 その理由としては、転職者によってどの入職経路が選択されるかは、転職者の個人属性 に大きく左右され、その結果が離職期間や賃金変化率に反映しているためであると考えら れる。 Fahr and Schneider(2004)は、欧州に関して、前掲表4−16のような賃金水準関数の推 定結果も用いて、公共職業紹介機関には、質の低い求人及び求職が登録されているとして いる。 - 27 - これらの観察事実は、先に 5-1 でみた記述統計によって、公共職業紹介機関は、非自発 的離職者、低学歴層及び高齢層での利用者構成比が高いという観察と整合的である。 (日本の回帰分析結果の特徴とその背景) 以上のような欧米の回帰分析結果に対して、日本の回帰分析結果では、入職経路以外の 観察可能な変数を説明変数に加えても、「公共職業安定所」と比較した各入職経路は、離 職期間を短縮させ、または、賃金を上昇させる有意な効果をもっていた。すなわち、他の 入職経路と比較して、「公共職業安定所」は相対的にマッチング効率が有意に劣るという 結果になっていた。 このことは、「公共職業安定所」の利用者についての統計上観察できる変数ではとらえ られない観察不可能な要因によってもたらされているという可能性15)と、「公共職業安定 所」そのものの職業紹介に関する非効率性によってもたらされている可能性がある。 前章では、観察不可能な属性要因での偏りの可能性として、「公共職業安定所」が全て の求職者に公平に職業紹介を行うことを義務づけられていることによって他の入職経路よ りも就職困難者が多数集まってくる可能性があり、また雇用保険給付の資格認定及び給付 機関を兼ねていることによって必ずしも求職意欲が旺盛でない利用者が集まっている可能 性を指摘した。利用者の求職意欲については、「公共職業安定所」のカウンセリング等の サービスのあり方によって向上させたり低下させたりする面があることも指摘した。他方、 「公共職業安定所」そのものの非効率性の可能性として、「民間職業紹介」や「縁故」、 「前の会社」をはじめとする他の入職経路に比べ情報仲介機能や職員のモティベーション に問題がある可能性を指摘した。 本章の分析結果は、このような「公共職業安定所」の利用者の観察不可能な属性要因で 15)本章の米国部分及び欧州部分の基となった Hashimoto (2004)及び Fahr and Schneider (2004)は、観察不可能な属性要因を「時間に依存しない観察不可能要因(time-invariant unobserved heterogeneity)」と「時間に依存する観察不可能要因(time-dependent unobserved heterogeneity)」とに分けた説明を行っている。そこでは、賃金変化率関数においては、潜 在的な賃金水準関数の一階の階差を用いているので、時間に依存しない観察不可能要因は 排除されていることが指摘されている。しかし、時間に依存する観察不可能要因は排除さ れていない。また、離職期間関数(失業期間関数)においては、いずれの観察不可能要因 も排除されていない。 本章及び第5章が観察不可能な属性要因として重要視する転職者の求職意欲は、時間に 依存する観察不可能要因としても時間に依存しない観察不可能要因としても、マッチング 効率に影響を与えている可能性がある。日、米の賃金変化率関数の多説明変数モデルにお いては説明変数に離職期間がはいっているので、離職期間の長期化に伴う就業能力の劣化 や離職期間の長期化に伴う求職意欲の高まりといった要因はコントロールされている可能 性がある。しかし、職業紹介機関の働きかけによって転職者の求職意欲に様々な変化があ りうることを考えると、賃金変化率関数においても、離職期間変数によってコントロール しきれない「時間に依存する観察不可能要因」が存在している可能性がある。 - 28 - の偏り及び「公共職業安定所」そのものの職業紹介に関する効率性の他の入職経路との差 が、日本では顕著であることを示している。日本ではなぜこのような相違が観察されるの かを把握するため、欧米と日本の職業紹介制度の制度や運用内容について比較することは 重要な示唆を与えてくれるかもしれない。そこで、次章ではこれらの点に焦点をあてて実 施した欧州主要国におけるヒアリング調査の結果を紹介するとともに、そこからわが国の 職業紹介制度に示唆される点について考察する。 おわりに−公と民の補完関係をいかすべき− 6. 入職経路の日米欧比較に関して、次章において制度的な側面からの考察を行う前に、こ こで、本章における統計分析の結果をまとめておこう。 6-1 セーフティネットとしての公共職業紹介機関 第一に、欧米においても、「公共職業紹介機関」は、非自発的離職者、低学歴層、高齢 者など労働市場で就職に不利な立場にある労働者の職業紹介経路として機能していること が示されている。わが国においても、「公共職業安定所」には、就職困難者を含め、全て の求職者に対して職業紹介サービスを提供する義務があるが、欧米においても同様の傾向 が見られ、「公共職業紹介機関」にセーフティネットとしての役割が期待されていること が確認された。 6-2 日本と欧米との間での公共職業紹介機関のマッチング効率の相違 しかしながら、第二に、日本と欧米との間で「公共職業紹介機関」の他の入職経路と比 較した相対的なマッチング効率に相違が認められる。日本では、少なくとも 2000 年までの データでは、他の入職経路との比較で「公共職業紹介機関」のマッチング効率の低さが認 められ、欧米との比較において、その差が顕著である。その理由としては、「公共職業安 定所」そのもののサービスの質・量及び効率性の問題に加えて、求職意欲などの観察不可 能な属性において利用者に偏りがある可能性が考えられる16)。次章9節で述べるような 2001 年以降の「公共職業安定所」の種々の改善策によってマッチング効率が改善している 可能性もあるが、日本の「公共職業安定所」のマッチング効率の更なる改善の可能性を検 討する余地がある。 6-3 民間職業紹介機関のマッチング効率の高さ 一方、「民間職業紹介機関」については、日本だけでなく、米国、英国において、マッ 16)欧米の回帰分析において利用可能な標本数が少ないために、欧米の分析では本来ある べき入職経路の効果がはっきり出ていないという可能性もある。しかし、少なくとも日本 では、公共職業安定所と他の入職経路との間で非常に有意(1%水準)なマッチング効率の 格差が存在しており、公共職安低所と他の入職経路との間でマッチング効率の格差が顕著 であると言うことができる。 - 29 - チング効率への効果が認められる。ただし、「民間職業紹介機関」は、主として、高学歴 層や専門的・技術的職業従事者などに利用されている。このような労働市場で評価が得ら れやすい属性や職業の労働者の転職には、「民間職業紹介機関」が有効であることが確認 された。 6-4 統計分析による日米欧比較から示唆される日本の職業紹介制度の在り方 これらのことから、日本の職業紹介制度の在り方として、就職困難者を含む全ての労働 者のセーフティネットとして「公共職業安定所」を機能させるとともに、高学歴者などの 高度な人材については「民営職業紹介事業」を一層活用していくことが重要であることが 示唆される。すなわち、「公共職業紹安定所」と「民営職業紹介」の補完的役割に注目し て、これらの活用を図っていくことが重要である。同時に、「公共職業紹介機関」のマッ チング効率を向上させるため、「公共職業紹介機関」自体のサービスの質・量及び効率性 を改善する可能性とともに、その利用者の求職意欲を高める可能性について検討すること が必要である。先に述べたように、この点について、次章において、欧州主要国との制度 比較を行うことを通じて、考察を深めることとする。 - 30 - 参照文献 日本語文献 阿部正浩・戸田淳人(2004)『労働力調査特別調査における労働移動の効率化に関する研究 について』総務省統計局統計調査部労働人口統計室・統計研修所. 児玉俊洋・樋口美雄・阿部正浩・松浦寿幸・砂田充(2003)「雇用動向調査を用いた労働移 動分析−入職経路を中心として−」、RIETI ウェブ掲載報告. 児玉俊洋・樋口美雄・阿部正浩・松浦寿幸・砂田充(2004)「入職経路が転職成果にもたら す効果」、RIETI Discussion Paper Series 04-J-035. 厚生労働省職業能力開発局(2002)『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会報告書』. 樋口美雄・児玉俊洋・阿部正浩(2004)「入職経路の日米欧比較分析」、RIETI Discussion Paper Series 04-J-036. 英語文献 Addison, John T. and Pedro Portugal (2002): Job Search Methods and Outcomes. Oxford Economic Papers, Vol. 54, pp. 505-533. Böheim, René and Mark P. Taylor (2002): Job Search Methods, Intensity and Success in Britain in the 1990s, Working Paper No. 0206, University of Linz, Austria. Fahr, Rene and Hilmar Schneider, IZA, Bonn (2004), "Comparison Study of Job Turnover and Job Search Methods between Japan and Europe," 樋口美雄・児玉俊洋・阿部正浩(2004)「入職経 路の日米欧比較分析」、RIETI Discussion Paper Series 04-J-036 の付属論文として掲載. Gregg, Paul and Jonathan Wadsworth (1996): How Effective are State Employment Agencies? Jobcentre Use and Job Matching in Britain. Oxford Bulletin of Economics and Statistics, Vol 58 (3), pp. 443-467. Hashimoto, Masanori (2004), "Unemployed Workers and Job Search Methods in the United States," 樋口美雄・児玉俊洋・阿部正浩(2004)「入職経路の日米欧比較分析」、RIETI Discussion Paper Series 04-J-036 の付属論文として掲載. - 31 - LFS User Guide - Volume 1: Background & Methodology, ONS, London, February 2001. LFS User Guide - Volume 3: Details of LFS Variables 2000, ONS, London, November 2000. Osberg, Lars (1993): Fishing in Different Pools: Job-Search Strategies and Job-Finding Success in Canada in the Early 1980s. Journal of Labor Economics, Vol. 11 (2), pp.348-386 Peracchi F. (2002): The European Household Panel: A Review. In: Empirical Economics, Vol. 27, pp. 63-90. - 32 - 表4−1 データ出所 欧州 日本 米国 雇用動向調査 労調特別 対象年次 労働者の範囲 転職者 離職期間なし 離職期間あり 失業者 離職期間継続中 データ項目の有無 離職期間 1年未満 1年以上 賃金変化 回帰分析に使用した標本数 離職期間関数(フルモデル) 賃金変化関数(フルモデル) CPS Jan98‑ Mar02 NLSY デ、仏、 伊、蘭 ECHP 79̲00 94‑99 94‑99 97‑02 ドイツ 英国 ECHP BQLFS 91‑00 88‑00 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × ○ ○ ○ × × × ○ × ○ ○ ○ × ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × ○ ○ ○ × 324,840 336,156 36,761 n.a. 959 959 18,903 80‑206 211‑751 n.a. 839 2,212 n.a. (注) 1.データ出所名 (1)雇用動向調査:厚生労働省『雇用動向調査』特別集計(児玉俊洋・樋口美雄・阿部正浩他(2003)の 作成時の集計を再編集)。 (2)労調特別:総務省『労働力調査特別調査』特別集計(阿部正浩・戸田淳人(2004)による)。 (3)CPS: US Bureau of the Census (for the Bureau of Labor Statistics of US Department of Labor), Current Population Survey (calculated by Masanori Hashimoto for RIETI). (4)NLSY: Bureau of Labor Statistics of US Department of Labor, National Longitudinal Survey of Youths. (5)ECHP: Eurostat, European Community Household Panel (calculated by IZA for RIETI). (6)BQLFS: UK Office for National Statistics, British Quarterly Labor Force Survey (calculated by IZA for RIETI). 2.米国『NLSY』を除き、入職経路または求職手段の情報がある標本の範囲である。 3.日本の『労調特別』は、阿部正浩・戸田淳人(2004)で使用したものを参考としてここに併記した。 4.米国の『NLSY』は、入職経路の情報を問わず、離職期間の一般傾向の記述統計表(表4−17)のみ のデータ出所として使用した。本表では、同表で使用したNLSYデータの性質のみを記載している。従っ て、標本数は、回帰分析ではなく表4−17の標本数である。また、NLSYの対象標本は、1979年において 14歳から21歳の間の個人であり、従って、2000年において35歳から42歳の間の個人であり、全対象年次を あわせても14歳から42歳までの限られた年齢層を対象とした統計である。 表4−2 米国CPSにおける失業経験者標本の概要 調査対象者数(人) 観察月数 4 5 6 7 8 男女計 12,949 72 1,880 2,131 4,498 男性 7,168 41 1,037 1,145 2,597 女性 5,781 31 843 986 1,901 表4−3 米国CPSにおける離転職パターン別の失業経験者標本人数 男女計 男性 女性 EUE 966 510 456 UEU 140 88 52 EUU 889 489 400 UEE 3,171 1,654 1,517 UUU 2,533 1,448 1,085 合計 7,699 4,189 3,510 (注)継続して就労状態にあった人及び賃金・求職方法など重要な情報が欠 落している人を除外した数。 表4−4 米国CPSにおける転職者標本の失業期間別人数 男女計 男性 女性 上3か月 未満 50 27 23 上6か月 未満 269 142 127 (注)表4−3の注に同じ。 上1年未 満 647 341 306 1年以上 0 0 0 合計 966 510 456 表4−5 米国CPSにおける全失業経験者標本の推定失業期間(月数) 性別 1998年 1999年 2000年 2001年 合計 3.13 3.44 3.43 3.72 男性 3.26 3.56 3.46 3.87 女性 3.00 3.34 3.43 3.56 中卒・ 高卒相 当 3.12 3.44 3.56 3.75 学歴別 短大・ 高専卒 相当 3.09 3.34 3.26 3.57 年齢別 大卒相 当 3.53 3.75 3.39 4.01 16-29 30-49 50-59 2.91 3.29 3.66 3.11 3.60 4.00 3.12 3.58 4.00 3.36 3.94 4.23 60+ 3.20 4.12 4.11 3.74 (注)Markov chainの仮定に基いて算出した月平均の数値を各年毎に単純平均したものであ る。 表4−6 米国CPSの失業者におけるレイオフ対象者の比率(%) 性別 合計 年 1998年 22.0 1999年 23.1 2000年 23.1 2001年 24.4 2002年 26.5 男性 24.1 26.0 25.9 26.7 31.0 女性 19.3 19.3 19.6 21.2 18.7 (注)2002年は1〜3月について。 学歴別 年齢別 中卒・ 短大・ 高卒相 高専卒 大卒相 当 相当 当 16-29 30-49 50-59 24.1 19.4 16.7 13.6 24.6 30.1 26.6 20.8 13.5 16.1 25.1 28.5 26.0 21.0 15.7 13.8 27.3 28.2 28.5 22.2 14.5 17.5 26.2 29.2 32.6 23.6 10.9 22.3 26.7 30.1 60+ 46.6 39.5 42.1 41.8 38.4 表4−7 米国CPSの転職者標本が用いた求職手段(1998年1月〜2002年3月) 求職手段 雇用主に直接連絡/面接 公共職業紹介機関に照会 民間職業紹介機関に照会 友人・親戚に照会 学校/大学の就職センターに照会 履歴書の送付・応募願書の記入 組合/専門職登録機関に照会 求職広告の出稿/回答 その他積極的活動 求人広告を見る 職業訓練プログラム/講座への参加 何もしない その他受動的活動 合計 使用頻度 比率 累積比率 16,337 52.1 52.1 2,438 7.8 59.9 556 1.8 61.7 754 2.4 64.1 169 0.5 64.6 6,811 21.7 86.3 324 1.0 87.4 1,032 3.3 90.7 640 2.0 92.7 2,092 6.7 99.4 92 0.3 99.7 41 0.13 99.8 66 0.21 100.0 31,352 100.0 (注)表中の数値は観察数であり人数ではない。 表4−8 米国のOLS失業期間関数の推計結果 被説明変数:転職者の失業期間 男女計 係数推定値 t値 男性 係数推定値 t値 女性 係数推定値 t値 前職賃金 年齢 既婚/非婚の別 1:既婚 2:死別/離婚/別居 人種 1:黒人 2:アメリカ・インディアン /アレウト族/エスキモー 3:アジア系/太平洋島嶼部 学歴 1:短大・高専卒相当 2:大卒以上相当 産業 1:農林水産業 2:鉱業 3:建設業 4:製造業 5:運輸・通信業 6:公益事業 7:商業 8:金融業 9:サービス業 求職手段 1:企業に直接連絡/面接(577) 2:公共の職業紹介機関に照会(78) 3:民間の職業紹介機関に照会(24) 4:友人・親戚に照会(21) 5:履歴書送付/応募願書記入(151) 6:組合/専門職登録機関に照会(11) 7:求職広告出稿/回答(33) 8:その他の積極的な活動(19) -0.113 -0.006 -1.42 -1.05 -0.011 -0.001 -0.09 -0.13 -0.188 -0.008 -1.71 c -1.08 0.143 0.25 1.05 1.43 -0.053 0.091 -0.27 0.33 0.351 0.388 1.78 c 1.65 c 0.023 0.14 0.134 0.52 -0.017 -0.08 0.265 0.076 0.73 0.25 0.772 -0.304 1.05 -0.72 0.038 0.658 0.09 1.42 -0.151 0.158 -1.24 0.99 -0.331 0.108 -1.85 c 0.46 0.042 0.361 0.24 1.59 0.018 -0.508 0.365 0.248 0.293 -0.662 0.124 0.559 0.263 0.03 -0.7 0.82 0.59 0.62 -0.74 0.3 1.23 0.64 0.477 -0.275 0.666 0.581 1.414 0.353 0.498 0.543 0.59 0.56 -0.28 0.86 0.77 1.74 c 0.3 0.66 0.65 0.78 -0.196 0.705 0.13 0.173 -0.758 -2.852 -0.075 0.533 0.037 -0.21 0.44 0.17 0.33 -1.23 -1.76 c -0.15 1 0.08 0.035 0.131 0.158 0.131 0.041 -0.08 -0.215 0.052 0.14 0.44 0.39 0.31 0.15 -0.15 -0.58 0.12 -0.274 -0.136 -1.243 -0.114 -0.265 -0.05 -0.269 -0.02 -0.75 -0.3 -1.9 c -0.2 -0.65 -0.08 -0.49 -0.03 0.414 0.448 1.035 0.435 0.414 -2.474 -0.023 0.311 1.22 1.12 1.99 b 0.6 1.13 -1.52 -0.05 0.53 定数項 6.128 5.428 5.08 a 6.285 7.13 a 標本数 決定係数 標準誤差 F値 9.29 a 959 -0.01 1.58 0.63 505 -0.011 1.606 0.79 454 0.016 1.532 1.27 (注) 1.求職手段の括弧内の数値は、求職手段に対する回答数を示す。 2.EUEという経緯をたどった観察標本において、「学校/大学の就職センターに照会」 「職業訓練プログラム・講座に参加」「何もしない」「その他の受動的な活動」はゼロない し非常に少数だったので、回帰分析の対象からは除外した。 3.a、b及びcは、それぞれ、推定された係数が1%、5%、10%水準で統計的に有意である ことを示す。 表4−9 米国のOLS賃金変化率関数の推計結果 被説明変数:ln(wt/wt-1) (対数賃金変化率) 男女計 係数推定値 t値 前職賃金 失業期間(単位:月、平均5.625) 年齢 既婚/非婚の別 1:既婚 2:死別/離婚/別居 人種 1:黒人 2:アメリカ・インディアン /ア ウト族/ キ 3:アジア系/太平洋島嶼部 学歴 1:短大・高専卒相当 2:大卒以上相当 産業 1:農林水産業 2:鉱業 3:建設業 4:製造業 5:運輸・通信業 6:公益事業 7:商業 8:金融業 9:サービス業 求職手段 1:企業に直接連絡/面接(577) 2:公共の職業紹介機関に照会 ( ) 3:民間の職業紹介機関に照会 ( ) 4:友人・親戚に照会(21) 男性 係数推定値 t値 女性 係数推定値 t値 -0.452 -0.012 -0.003 -14.71 a -0.94 -1.53 -0.5 0.003 -0.003 -10.22 a 0.15 -1.22 -0.465 -0.026 -0.002 -10.72 a -1.38 -0.58 0.058 0.019 1.1 0.29 0.157 0.099 2.11 b 0.94 -0.02 0.003 -0.26 0.03 -0.032 -0.238 0.142 -0.51 -1.7 c 1.19 -0.021 -0.539 0.222 -0.21 -1.92 c 1.37 -0.011 -0.125 0.041 -0.13 -0.76 0.23 0.04 0.243 0.86 3.94 a -0.002 0.201 -0.03 2.21 b 0.124 0.326 1.84 c 3.64 a 0.481 0.257 0.729 0.479 0.527 1.104 0.431 0.561 0.431 2.31 0.92 4.24 2.96 2.88 3.22 2.68 3.21 2.73 a a a a a a a 0.803 0.754 1.004 0.793 0.871 1.157 0.721 0.863 0.751 2.45 1.98 3.39 2.73 2.8 2.53 2.49 2.69 2.61 b b a a a b b a a 0.13 -1.065 0.38 0.264 0.266 1.405 0.269 0.445 0.266 0.36 -1.68 c 1.28 1.3 1.1 2.21 b 1.38 2.13 b 1.4 8:その他の積極的な活動(19) 0.05 -0.035 0.324 -0.238 -0.033 0.468 -0.124 0.02 0.53 -0.31 2.08 b -1.44 -0.31 2.24 b -0.88 0.12 0.009 -0.111 0.369 -0.147 -0.12 0.46 -0.281 0.005 0.06 -0.65 1.47 -0.68 -0.76 1.89 c -1.34 0.02 0.069 0.036 0.306 -0.475 0.049 0.286 0.008 0.058 0.52 0.23 1.49 -1.68 c 0.34 0.45 0.04 0.25 定数項 2.198 8.27 a 2.169 5.17 a 2.376 6.5 a 5:履歴書送付/応募願書記入 ( ) 6:組合/専門職登録機関に照会 ( ) 7:求職広告出稿/回答(33) 標本数 決定係数 標準誤差 F値 (注)表4−8の注に同じ。 959 0.223 0.609 11.06 b 505 0.212 0.614 5.97 454 0.243 0.6 6.32 表4−10 欧州5か国における転職者の入職経路別構成比(1994-1999) 入職経路 直接応募 広告 職業紹介機関 家族及び友人 自営 その他 デンマーク 29.2 28.6 6.1 19.3 6.5 10.3 (単位:%) ドイツ フランス イタリア オランダ 10.8 23.4 27.6 15.6 16.0 8.8 3.9 30.0 9.1 8.9 5.8 14.5 31.7 31.2 22.3 17.0 1.9 8.6 18.8 7.2 30.5 19.1 21.6 15.8 (出所)ECHP 表4−10a 英国における転職者の入職経路別構成比(1997-2002) 入職経路 広告 職業案内センター(Job center) 職業相談所(Careers office) ジョブクラブ(Jobclub) 民間機関 家族及び友人 直接応募 その他 (出所)BQLFS (単位:%) 英国 27.8 8.9 0.9 0.1 8.8 28.1 14.9 10.5 表4−11 欧州4か国の入職経路別平均失業期間(男性) (単位:月) 入職経路 デンマーク フランス オランダ イタリア 直接応募 2.1 2.8 2.4 9.6 広告 1.8 2.6 2.2 8.9 職業紹介機 8.0 5.0 5.4 33.5 家族及び友 2.9 2.5 3.7 11.8 自営 3.3 2.4 4.4 10.6 その他 2.5 2.2 3.2 15.2 (注)1994-99年のECHPデータで計算。数値は男性のみ。 図4−1a: デンマークの入職経路と 失業期間 失業期間 1 年以上 全体 その他 自営 家族と友人 職業紹介機関 広告 直接応募 100% 80% 60% 40% 20% 0% の転職者 直接転職者 図4−1b: フランスの入職経路と 失業期間 失業期間 1 年以上の 転職者 全体 その他 自営 家族と友人 (出所)ECHP 職業紹介機関 広告 直接応募 100% 80% 60% 40% 20% 0% 直接転職者 表4−12 欧州4か国のOLS失業期間関数の推計結果(一類型説明変数モデル) デンマーク フランス 直接応募 広告 家族及び友人 自営 その他 定数項 標本数 決定係数 -4.471 [1.809]b -4.745 [1.870]b -3.407 [1.998]c -1.458 [2.275] -1.892 [2.872] 13.642 [1.554]a 1012 0.01 0.636 [1.147] -1.235 [1.208] 1.034 [1.082] 1.293 [1.643] 3.112 [1.756]c 9.745 [0.786]a 1050 0.01 イタリア オランダ -24.559 [4.378]a -13.138 [9.048] -21.215 [4.416]a -12.001 [4.958]b -8.878 [4.611]c 51.29 [4.057]a 2033 0.03 3.037 [3.613] -4.387 [2.266]c -1.382 [2.681] 3.942 [4.679] -0.955 [2.856] 16.558 [1.742]a 750 0.01 (注)1994-98年のECHP UDPデータを用いたOLSによる係数の推定結果。被説明変数 は、入職までの失業月数。入職経路ダミー変数の基準(レファレンスグループ)は職業 紹介機関。[ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。 a、b及びcは、それぞれ、推定さ れた係数が1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 表4−12a 英国の順位ロジット・モデル失業期間関数の推計結果(一類型説明変数モデル) 英国 求人広告への応募 -0.617 [0.067]a 職業相談所(Careers office) -0.572 [0.177]a ジョブクラブ(Jobclub) 1.955 [0.404]a 民間の職業紹介所または企業(民間機関) -0.977 [0.096]a そこで働く者からの伝え聞き(家族及び友人) -0.433 [0.069]a 直接応募 -0.71 [0.080]a 他の何らかの方法(その他) -0.32 [0.096]a 標本数 8691 (注)BQLFSデータを用いた順位ロジットモデルによる 係数の推定結果。被説明変数は、8分類からなる失業 期間分類。[ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。係 数欄のa、b及びcは、それぞれ、推定された係数が 1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示 す 表4−13 欧州4か国のOLS失業期間関数推計結果(多説明変数モデル) デンマーク フランス 3.417 3.37 [1.233]a [0.9333]a 年齢 0.343 0.358 [0.081]a [0.057]a 未婚/既婚 -3.668 -1.342 [1.617]b [0.969] -4.6 1.681 直接応募 [1.903]b [1.326] -4.486 -1.524 広告 [2.032]b [1.209] -2.637 0.596 家族及び友人 [2.028] [1.210] -2.344 0.371 自営 [2.406] [1.793] -2.78 4.389 その他 [2.932] [1.892]b 教育水準(高) -0.539 -4.826 [1.836] [1.169]a 教育水準(中) -3.499 -1.267 [1.430]b [1.142] 前職から自発的離職 3.037 2.232 [1.358]b [1.298]c 入職年次= 95 1.573 -0.718 [1.860] [1.385] 入職年次= 96 0.652 -0.883 [2.016] [1.073] 入職年次= 97 -2.51 -0.644 [1.765] [2.076] 入職年次= 98 -1.024 1.017 [1.859] [2.893] 入職年次= 99 -0.645 0.049 [1.861] [1.699] 定数項 1.972 -2.48 [2.887] [2.490] 標本数 936 829 決定係数 0.06 0.1 女性 (注)表4−12の注に同じ。 イタリア 16.281 [2.692]a 1.454 [0.256]a -3.027 [3.500] -10.421 [5.187]b -5.5 [9.525] -7.359 [5.302] -9.125 [5.424]c -6.009 [6.054] -11.763 [5.392]b -1.192 [2.691] 4.169 [2.562] -8.33 [4.088]b -16.272 [3.199]a -8.698 [3.085]a -6.269 [5.439] -5.849 [7.306] -13.373 [9.860] 946 0.19 オランダ 1.181 [1.693] 0.713 [0.095]a -5.527 [1.862]a 1.425 [3.251] -1.674 [2.294] -2.672 [2.419] 1.269 [4.289] 0.081 [2.818] -1.924 [2.423] -0.789 [1.981] 11.365 [2.149]a 0.924 [3.322] 6.644 [4.129] 3.342 [3.114] 4.257 [2.782] 1.203 [2.306] -15.172 [4.299]a 617 0.15 表4−13a 英国の順位ロジット・モデル失業期間関数の推計結果(多説明変数モデル) 英国 -0.22 [0.106]b 年齢 0.012 [0.005]b 未婚/既婚 -0.067 [0.125] 求人広告への応募 0.031 [0.166] 職業相談所(Careers office) 0.077 [0.550] ジョブクラブ(Jobclub) 3.559 [0.225]a 民間の職業紹介所または企業(民間機関) -0.392 [0.223]c そこで働く者からの伝え聞き(家族及び友人) 0.01 [0.170] 直接応募 0.042 [0.200] 他の何らかの方法(その他) 0.241 [0.221] 前職から現職にかけて業種が変更(CHIND) 0.303 [0.109]a 教育水準(高) -0.245 [0.153] 教育水準(中) -0.178 [0.128] 標本数 2212 女性 (注)表4−12aの注に同じ。 表4−14 欧州5か国のOLS賃金変化率関数の推計結果 (一類型説明変数モデル) デンマーク ドイツ 0.055 0.181 [0.034] [0.086]b 広告 0.044 0.159 [0.036] [0.065]b 家族及び友人 -0.01 0.056 [0.042] [0.060] その他 0 0.136 [0.044] [0.059]b 定数項 0.009 -0.106 [0.030] [0.053]b 観測数 890 1052 決定係数 0.01 0.01 直接応募 フランス 0.064 [0.059] 0.054 [0.068] 0.05 [0.061] 0.095 [0.063] -0.072 [0.046] 537 0 イタリア 0.028 [0.059] -0.001 [0.073] 0.002 [0.062] 0.066 [0.063] -0.006 [0.056] 491 0.01 オランダ 0.198 [0.063]a 0.108 [0.063]c 0.116 [0.067]c 0.047 [0.076] -0.087 [0.051]c 814 0.01 (注)1994-98年のECHP UDPデータを用いたOLSによる係数の推定 結果。被説明変数は、前職から現職にかけての物価調整済み時間 当たり総賃金変化の対数。入職経路ダミー変数の基準(レファレンス グループ)は職業紹介機関。入職経路を「自営」と申告した者は考慮 していない。 [ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。 a、b及びcは、それぞれ、推 定された係数が1% % 10%有意である とを示す 表4−15 欧州5か国のOLS賃金変化率関数の推計結果(多説明変数モデル) デンマーク 女性 -0.03 [0.021] 年齢 0.001 [0.002] 未婚/既婚 -0.06 [0.023]a 直接応募 0.028 [0.033] 広告 0.021 [0.037] 家族及び友人 -0.04 [0.043] その他 -0.043 [0.046] 前職から現職への転職 -0.042 [0.022]c 教育水準(高) 0.004 [0.031] 教育水準(中) -0.004 [0.032] パートから社員 -0.071 [0.068] 社員からパート 0.061 [0.071] パートからパート 0.079 [0.056] 新規雇用関係に入る前の失業月数 -0.005 [0.005] 前職からの自発的離職 0.02 [0.024] 入職年次= 95 0.266 [0.089]a 入職年次= 96 0.238 [0.086]a 入職年次= 97 0.263 [0.087]a 入職年次= 98 0.298 [0.087]a 入職年次= 99 0.233 [0.086]a 定数項 -0.184 [0.106]c 観測数 751 決定係数 0.05 ドイツ フランス イタリア オランダ 0.019 [0.036] 0.005 [0.002]b -0.082 [0.037]b 0.141 [0.099] 0.095 [0.074] -0.025 [0.070] 0.057 [0.071] -0.014 [0.036] -0.049 [0.064] -0.062 [0.055] 0.274 [0.112]b -0.257 [0.126]b -0.023 [0.062] -0.002 [0.001] 0.073 [0.039]c 0.04 [0.160] 0.31 [0.101]a 0.107 [0.091] 0.219 [0.082]a 0.231 [0.082]a -0.379 [0.130]a 839 0.07 0.049 [0.067] 0.002 [0.004] 0.029 [0.069] 0.019 [0.081] -0.089 [0.090] -0.013 [0.083] -0.023 [0.084] 0 [0.065] 0.018 [0.093] -0.067 [0.093] -0.449 [0.187]b 0.043 [0.161] -0.12 [0.100] -0.011 [0.009] 0.114 [0.061]c -0.255 [0.087]a -0.157 [0.092]c -0.03 [0.133] -0.175 [0.158] -0.043 [0.127] 0.024 [0.171] 211 0.17 -0.045 [0.029] -0.003 [0.002] -0.028 [0.029] 0.038 [0.047] 0.025 [0.059] -0.005 [0.051] 0.099 [0.056]c -0.016 [0.026] 0.042 [0.048] 0.024 [0.027] -0.205 [0.071]a 0.131 [0.080] -0.002 [0.105] 0.001 [0.001] -0.013 [0.029] 0.138 [0.039]a 0.147 [0.044]a 0.192 [0.035]a 0.297 [0.057]a 0.194 [0.058]a -0.032 [0.086] 420 0.17 0.006 [0.041] 0.005 [0.003] 0.015 [0.042] 0.199 [0.068]a 0.106 [0.067] 0.123 [0.069]c 0.063 [0.080] 0.008 [0.040] -0.065 [0.064] -0.072 [0.055] 0.117 [0.055]b -0.252 [0.065]a -0.029 [0.053] 0 [0.004] 0.025 [0.040] 0.298 [0.088]a 0.386 [0.119]a 0.163 [0.092]c 0.276 [0.081]a 0.223 [0.067]a -0.469 [0.142]a 752 0.06 (注)1994-98年のECHP UDPデータを用いたOLSによる係数の推定結果。被説明変数 は、前職から現職にかけての物価調整済み時間当たり総賃金変化の対数。入職経路 ダミー変数の基準(レファレンスグループ)は職業紹介機関。入職経路を「自営」と申告 した者は考慮していない。[ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。 a、b及びcは、それ ぞれ、推定された係数が、1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 表4−16 欧州5か国のOLS賃金水準関数の推計結果 (ECHP data 1994-1999) デンマーク 一類型説 多説明変 明変数モ 数モデル デル -0.115 女性 [0.013]a 年齢 0.01 [0.001]a 結婚 -0.014 [0.014] 直接応募 0.14 0.056 [0.032]a [0.033]c 広告 0.227 0.086 [0.032]a [0.033]a 縁故紹介 0.12 0.078 [0.034]a [0.034]b 0.122 0.012 その他 [0.045]a [0.043] 教育水準(高) 0.331 [0.019]a 教育水準(中) 0.148 [0.019]a -0.003 失業期間(月数) [0.001]a 前職から自発的離職 0.057 [0.014]a -0.04 入職年次= 95 [0.023]c -0.053 入職年次= 96 [0.030]c 0.026 入職年次= 97 [0.020] 0.051 入職年次= 98 [0.019]a 0.046 入職年次= 99 [0.018]b 定数項 4.429 4.034 [0.030]a [0.044]a 2995 2683 標本数 決定係数 0.02 0.25 ドイツ 一類型説 多説明変 明変数モ 数モデル デル -0.022 [0.017] 0.006 [0.001]a -0.011 [0.018] 0.31 0.114 [0.040]a [0.037]a 0.43 0.206 [0.035]a [0.035]a 0.253 0.064 [0.034]a [0.033]c 0.416 0.181 [0.033]a [0.034]a 0.178 [0.028]a 0.017 [0.022] -0.004 [0.001]a 0.129 [0.019]a -0.017 [0.049] 0.026 [0.042] -0.01 [0.039] 0.045 [0.034] -0.022 [0.031] 2.517 2.484 [0.029]a [0.057]a 3480 2649 0.06 0.14 フランス 一類型説 多説明変 明変数モ 数モデル デル -0.148 [0.018]a 0.008 [0.001]a 0.076 [0.018]a 0.171 0.062 [0.030]a [0.031]b 0.284 0.045 [0.037]a [0.040] 0.141 0.041 [0.029]a [0.030] 0.354 0.146 [0.031]a [0.033]a 0.52 [0.025]a 0.135 [0.021]a -0.004 [0.001]a 0.081 [0.018]a -0.166 [0.038]a -0.251 [0.030]a -0.114 [0.035]a -0.118 [0.035]a -0.088 [0.028]a 3.701 3.511 [0.025]a [0.054]a 3956 2019 0.04 0.3 イタリア 一類型説 多説明変 明変数モ 数モデル デル -0.071 [0.015]a 0.005 [0.001]a 0.064 [0.015]a -0.04 -0.056 [0.023]c [0.025]b 0.053 -0.025 [0.034] [0.035] -0.091 -0.094 [0.024]a [0.026]a 0.193 0.058 [0.023]a [0.026]b 0.383 [0.033]a 0.136 [0.015]a -0.001 [0.000]a 0.06 [0.015]a -0.057 [0.025]b -0.067 [0.028]b -0.053 [0.020]a 0.086 [0.035]b 0.066 [0.033]b 2.467 2.238 [0.020]a [0.040]a 3472 1913 0.1 0.25 オランダ 一類型説 多説明変 明変数モ 数モデル デル -0.035 [0.017]b 0.011 [0.001]a 0.009 [0.017] 0.259 0.144 [0.028]a [0.027]a 0.247 0.159 [0.026]a [0.023]a 0.086 0.051 [0.027]a [0.025]b 0.095 0.064 [0.033]a [0.034]c 0.293 [0.026]a 0.079 [0.021]a -0.003 [0.001]a 0.071 [0.018]a -0.083 [0.050]c -0.006 [0.035] -0.057 [0.034]c -0.047 [0.036] -0.063 [0.028]b 3.047 2.64 [0.020]a [0.053]a 3157 2608 0.04 0.15 (注)ECHP1994〜98年のパネルデータを用いた最小自乗法による推計結果。被説明変数は現職における賃金(物価水準で デフレート)の対数。入職経路ダミー変数の基準は職業紹介機関。「創業または家業従事」の転職者は標本から除かれてい る。 [ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。a、b及びcは、それぞれ、推定された係数が1%、5%、10%水準で統計的に有意 であることを示す。 表4−17 転職者属性別の離職期間 日本 米国 91_00 長期(1 年以上) 離職者 比率 性別 男子 女子 29歳以下 年齢別 30〜49歳 50〜59歳 60歳以上 教育水準別 中・高卒相当 短大・高専卒相当 大卒以上相当 離職理由別 自発的 非自発的 非労働力からの復帰 全体 2000 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 5.4 5.9 4.9 4.8 5.4 13.7 1年未満 のうち6 か月以 上離職 者の比 率 4.0 7.3 14.9 20.2 16.7 16.6 20.4 22.3 17.0 20.6 14.7 17.3 18.4 6.1 6.1 3.5 4.9 8.4 14.9 6.1 8.2 4.3 8.3 5.2 18.5 24.6 19.2 21.9 27.4 23.1 22.0 21.3 19.6 20.8 24.5 5.6 17.3 6.1 21.5 CPS 98.1_02. NLSY 79_2000 3 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 66.9 67.1 68.0 66.1 62.9 83.3 65.6 66.8 71.0 66.6 66.4 68.6 67.0 デンマーク フランス イタリア オランダ 94_99 94_99 94_99 94_99 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 6.0 10.7 7.3 10.2 11.9 14.0 13.3 11.7 10.3 6.4 4.1 7.0 10.9 8.2 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 97_02 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 比率 者の比 率 1年未満 のうち6 か月以 上離職 者の比 率 15.1 11.1 8.2 9.7 20.4 52.2 60.9 40.1 39.0 73.7 98.9 72.3 49.9 44.9 37.7 55.0 5.6 7.4 6.3 6.6 6.5 0.0 6.6 6.8 5.7 2.8 14.3 75.8 82.2 69.6 70.2 90.1 99.0 87.5 73.7 67.0 60.8 72.3 6.6 6.2 5.8 7.0 6.1 5.6 7.3 7.6 5.9 2.2 14.9 76.4 86.7 73.3 73.8 94.6 99.6 85.8 72.8 68.9 60.0 71.2 7.2 8.5 8.9 6.5 7.5 13.3 8.4 6.3 8.2 3.3 15.9 64.3 67.2 46.6 55.1 76.5 95.4 73.1 64.7 53.9 43.3 59.2 4.4 4.4 3.9 4.5 6.7 1.9 5.4 3.9 4.6 1.6 11.0 14.9 9.2 9.6 15.0 17.4 10.9 14.5 9.8 9.1 9.0 11.8 15.8 11.8 12.7 15.1 16.2 13.9 15.0 13.0 12.6 12.4 15.0 12.8 56.7 6.4 79.1 6.4 81.6 7.7 65.9 4.4 12.2 13.8 (注) 1.「長期離職者比率」は、転職者全体のうち離職期間1年以上の転職者の比率。 2.「1年未満のうち6か月以上離職者の比率」は、離職期間1年未満の転職者のうち、離職期間6か月以上の転職者の比率 3.日本の「長期離職者比率」は労調特別を用いた筆者による推計値、「1年未満のうち6ヶ月以上離職者の比率」は雇用動向調査を用いた筆者による計算値。 4.教育水準別、及び離職理由別の数値は、無回答の標本を除外して算出しているため、平均しても全体の数値と一致しない。 (出所)表4−1のとおり。 (単位:%) 英国 表4−18 転職者属性別の賃金変化率 性別 男子 女子 29歳以下 年齢別 30〜49歳 50〜59歳 60歳以上 教育水準別 中・高卒相当 短大・高専卒相当 大卒以上相当 離職理由別 自発的 非自発的 非労働力からの参入 全体 日本 91_00 2000 1.0 -0.9 0.5 -1.5 2.6 1.0 1.7 0.1 -5.2 -6.2 -8.4 -16.1 1.1 -1.3 0.2 -1.1 -0.7 -0.5 2.1 0.7 -7.4 -8.9 0.8 -1.2 (注)前職の賃金から現職の賃金への変化率。 (出所)表4−1のとおり。 米国 デンマーク フランス 98.1_02.3 94_99 94_99 12.6 11.1 -1.3 13.9 5.4 5.8 28.2 14.8 -1.1 5.7 3.5 0.4 2.4 12.7 -7.6 7.9 0.0 -6.1 13.9 7.3 8.3 18.4 8.4 -7.7 2.4 11.7 5.1 7.7 7.6 -1.6 19.9 9.4 4.6 20.7 13.2 8.3 2.1 ドイツ 94_99 6.3 2.4 12.5 3.1 -15.0 -23.2 9.2 0.0 15.7 2.6 9.5 4.3 (単位:%) イタリア オランダ 94_99 94_99 3.5 17.0 -1.9 19.3 6.6 14.0 -2.9 20.6 -10.3 25.1 -2.2 -1.7 -6.7 17.8 5.7 15.1 -2.1 24.6 4.3 11.3 2.5 16.5 1.3 18.2 表4−19 転職者の入職経路別構成比 国名 日本 対象期間 91_00 2000 米国 98.1_02.3 デンマーク 94_99 フランス 94_99 ドイツ 94_99 イタリア 94_99 オランダ 94_99 英国 97_02 職業紹介機関 公共 民間 21.7 21.6 27.5 26.5 1.0 11.9 8.1 3.8 5.0 9.7 10.8 5.3 16.6 18.7 9.9 8.8 (単位:%) 広告 32.3 31.6 8.1 30.5 7.8 15.7 3.7 26.9 27.8 縁故(家 直接応募 族・知人) 前の会社 75.4 32.8 24.5 8.2 26.8 16.2 14.9 30.1 25.0 2.2 16.2 29.9 29.5 21.3 16.3 28.1 5.3 5.8 学校 創業また は家業 1.1 1.0 0.0 6.5 8.5 1.6 19.0 7.2 その他 9.5 9.1 2.5 9.1 19.7 34.2 23.9 16.7 10.5 合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 (注) 1.米国の職業紹介機関計には、米国CPS統計における公共、民間以外に、「労働組合及び専門職登録機関」、「職業訓練」を含む。 2.英国の公共職業紹介機関は、英国BQLFS統計における「ジョブセンター等」、「キャリアズオフィス」、「ジョブクラブ」の計。 (出所)表4−1のとおり。 表4−20 転職者における職業紹介機関の利用者構成比(転職者属性別) 性別 年齢 性別 男子 女子 29歳以下 年齢別 30〜49歳 50〜59歳 60歳以上 教育水準別 中・高卒相当 短大・高専卒相当 大卒以上相当 離職理由別 自発的 非自発的 非労働力からの参入 全体 日本 (公共) 91_00 2000 21.0 26.8 22.4 26.2 21.5 25.6 21.5 27.6 24.2 30.9 17.6 16.2 21.1 26.0 23.5 27.3 15.2 20.9 21.5 26.7 22.9 26.0 21.6 26.5 (単位:%) デンマー 米国 ク フランス ドイツ イタリア オランダ 英国 (主として (主として (主として (民間を (民間を (ジョブセ (公共) 公共) 公共) 公共) 含む) 含む) ンター等) 98.1_02.3 94_99 94_99 94_99 94_99 94_99 97_02 6.9 4.4 9.4 11.1 5.1 15.8 9.6 9.4 5.7 10.0 10.5 5.6 17.4 8.1 8.0 5.3 12.1 11.0 4.3 19.9 9.4 8.5 4.8 7.5 10.4 6.0 14.8 8.2 7.3 5.0 9.7 10.8 7.8 16.3 9.1 5.6 6.3 13.8 18.3 10.5 25.0 4.8 9.8 6.4 20.3 10.6 7.2 11.1 14.1 6.6 4.8 17.0 8.3 5.6 10.1 10.3 5.7 2.7 11.1 5.7 3.0 5.7 9.5 5.6 5.2 3.7 11.6 8.4 8.7 2.8 14.7 17.6 8.7 27.1 11.6 6.1 9.4 8.6 9.7 10.8 5.3 16.6 8.9 8.1 5.0 (注) 1.表側の属性区分毎に、転職者のうち公共職業紹介機関または職業紹介機関を入職経路として利用した者の割合である。 2.日本、米国は、公共職業紹介機関。英国は、公共職業紹介機関の主要な部分を占める「ジョブセンター等」。 3.デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダは公共と民間とあわせた職業紹介機関。ただし、デンマーク、フランス、ドイ ツは、主として公共職業紹介機関である。 4.教育水準別、及び離職理由別の数値は、無回答の標本を除外して算出しているため、平均しても全体の数値と一致しない。 (出所)表4−1のとおり。 表4−21 転職者における民間職業紹介機関の利用者構成比 (転職者属性別) (単位:%) 性別 年齢 性別 男子 女子 29歳以下 男女計 30〜49歳 50〜59歳 60歳以上 教育水準別中・高卒相当 短大・高専卒相当 大卒以上相当 離職理由別自発的 非自発的 非労働力からの参入 全体 日本 2000 1.1 0.8 0.9 1.1 1.1 0.8 0.6 1.1 2.3 1.1 0.7 1.0 米国 英国 98.1_02.3 97_02 1.8 9.4 3.3 8.3 2.1 9.4 2.3 8.4 3.2 7.7 5.6 6.1 1.2 6.8 4.3 9.3 2.8 14.8 2.8 7.8 0.9 10.1 3.3 0.0 2.5 8.8 (注) 1.表側の属性区分毎に、転職者のうち民間職業紹介機関 を入職経路として利用した者の割合である。 2.米国の標本数(計24)が少ないことに注意。 3.教育水準別、及び離職理由別の数値は、無回答の標本 を除外して算出しているため、平均しても全体の数値と一致 しない。 (出所)表4−1のとおり。 表4−22 転職者の入職経路別離職期間 (単位:%) 職業紹介機関 公共 長期(1 年以上) 離職者 比率 国名 日本 対象期間 91̲00 2000 米国 98.1̲02.3 デンマーク 94̲99 フランス 94̲99 イタリア 94̲99 オランダ 94̲99 英国 97̲02 28.8 54.8 54.8 13.4 14.1 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 20.1 27.2 70.8 14.7 12.8 14.2 7.4 16.0 16.7 民間 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 20.1 27.5 69.2 20.7 広告 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 17.4 17.4 70.8 5.9 35.2 33.3 5.0 9.8 6.6 12.6 直接応募 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 19.1 22.1 64.1 6.1 7.2 7.3 37.1 7.8 32.0 4.6 5.5 9.5 10.7 縁故(家族・知人) 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 66.5 4.4 6.3 8.7 1.7 10.1 7.6 34.6 37.5 7.8 15.7 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 14.8 19.8 61.9 7.8 6.4 9.3 6.1 12.3 (注) 1.「長期離職者比率」及び「1年未満のうち6か月以上離職者の比率」に関して、表4−17の注1.及び2.に同じ。 2.米国、英国に関して、表4−19の注1.及び2.に同じ。 (出所)表4−1のとおり 前の会社 学校 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 9.8 6.3 創業または家業 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 18.2 19.7 12.4 25.6 29.0 9.2 その他 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 8.2 7.2 4.2 2.6 7.1 31.2 45.3 6.4 17.5 全体 1年未満 のうち6 長期(1 か月以 年以上) 上離職 離職者 者の比 比率 率 14.2 17.7 79.2 6.9 8.3 3.8 35.8 5.8 37.1 3.0 7.5 14.1 13.8 1年未満 のうち6 か月以 上離職 者の比 率 17.0 21.5 67.0 6.4 6.4 7.4 4.4 12.2 表4−23 転職者の入職経路別賃金変化率 国名 日本 対象期間 91_00 2000 米国 98.1_02.3 デンマーク 94_99 フランス 94_99 ドイツ 94_99 イタリア 94_99 94_99 オランダ 職業紹介機関 公共 民間 -0.1 -1.7 -1.8 2.0 18.6 -0.8 60.4 2.0 1.0 4.3 4.7 9.7 (単位:%) 広告 1.2 -0.1 6.1 9.1 -4.9 14.1 -0.5 22.3 縁故(家 直接応募 族・知人) 前の会社 13.8 10.5 6.2 40.5 2.5 28.5 (注)米国、英国に関して、表4−19の注1.及び2.に同じ。 (出所)表4−1のとおり 2.2 -0.6 2.1 6.9 4.4 1.5 -0.8 13.8 -4.2 -8.7 学校 2.6 -1.0 その他 0.0 -0.3 4.8 -5.1 -6.3 1.7 13.9 全体 0.8 -1.2 13.2 8.3 2.1 4.3 1.3 18.2 表4−24 離職期間関数における入職経路変数の係数推定値の総括表 日本 入職経路 (基準:公共職業安定所) 学校 前の会社による紹介 縁故紹介 広告 その他 民営職業紹介所 標本数 決定係数 91̲00 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル -0.687 a -1.044 -1.458 a -1.674 -0.589 a -0.498 -0.314 a -0.280 -0.882 a -0.849 336,156 0.016 a a a a a 324,840 0.053 2000 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル -0.783 a -2.129 a -2.020 a -2.483 a -0.706 a -0.323 a -0.468 a -1.068 a -1.216 a -0.680 a -1.163 a -0.350 b 35,105 30,041 0.029 0.106 米国 98.1̲02.3 一類型説明変数 多説明変数 (基準:広告閲覧) モデル モデル 0.040 0.035 直接応募(面接) 0.127 0.131 公共職業紹介機関 0.089 0.158 民間職業紹介機関 0.172 0.131 縁故紹介 0.082 0.041 履歴書・願書の送付 -0.123 -0.080 労働組合・専門職登録機関 -0.234 -0.215 求人広告 0.001 0.052 その他の能動的方法 959 959 標本数 決定係数 -0.007 -0.010 入職経路 入職経路 (基準:職業紹介機関) 直接応募 広告 縁故紹介 創業・家業従事 その他 標本数 決定係数 入職経路 (基準:職業紹介機関) 直接応募 広告 縁故紹介 創業・家業従事 その他 標本数 決定係数 入職経路 (基準:ジョブセンター等) 広告 キャリアズオフィス ジョブクラブ 民間職業紹介機関 縁故紹介 直接応募 その他 標本数 決定係数 デンマーク フランス 94̲99 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル モデル モデル -4.471 b -4.600 b 0.636 1.681 -4.745 b -4.486 b -1.235 -1.524 -3.407 c -2.637 1.034 0.596 -1.458 -2.344 1.293 0.371 -1.892 -2.780 3.112 c 4.389 b 1,012 936 1,050 829 0.01 0.06 0.01 0.10 イタリア オランダ 94̲99 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル モデル モデル -24.559 a -10.421 b 3.037 1.425 -13.138 -5.500 -4.387 c -1.674 -21.215 a -7.359 -1.382 -2.672 -12.001 b -9.125 c 3.942 1.269 -8.878 c -6.009 -0.955 0.081 2,033 946 750 617 0.03 0.19 0.01 0.15 英国 97̲02 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル -0.617 a 0.031 -0.572 a 0.077 1.955 a 3.559 a -0.977 a -0.392 c -0.433 a 0.010 -0.710 a 0.042 -0.320 a 0.241 8,691 2,212 (注)a、b及びcは、それぞれ、推定された係数が1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 (出所)児玉俊洋・樋口美雄・阿部正浩他(2003)及び同報告作成時の回帰分析並びに本章各節の分析。 表4−25 賃金変化関数における入職経路変数の係数推定値の総括表 日本 入職経路 (基準:公共職業安定所) 学校 前の会社による紹介 縁故紹介 広告 その他 民営職業紹介所 標本数 決定係数 91̲00 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.026 a 0.010 -0.053 a -0.004 0.017 a 0.008 0.020 a 0.003 -0.002 0.013 336,156 0.014 a a a a a 336,156 0.299 2000 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.028 a 0.014 -0.070 a -0.011 0.013 a 0.009 0.024 a 0.006 0.005 c 0.022 0.033 a 0.022 35,105 35,105 0.025 0.290 b a a a a a 米国 98.1̲02.3 一類型説明変数 多説明変数 (基準:広告閲覧) モデル モデル 0.049 0.050 直接応募(面接) -0.046 -0.035 公共職業紹介機関 0.328 c 0.324 b 民間職業紹介機関 -0.197 -0.238 縁故紹介 -0.004 -0.033 履歴書・願書の送付 0.273 0.468 b 労働組合・専門職登録機関 -0.076 -0.124 求人広告 -0.009 0.020 その他の能動的方法 標本数 959 959 決定係数 0.003 0.223 入職経路 入職経路 (基準:職業紹介機関) 直接応募 広告 縁故紹介 その他 標本数 決定係数 入職経路 (基準:職業紹介機関) 直接応募 広告 縁故紹介 その他 標本数 決定係数 入職経路 (基準:職業紹介機関) 直接応募 広告 縁故紹介 その他 標本数 決定係数 デンマーク 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.055 0.028 0.044 0.021 -0.010 -0.040 0.000 -0.043 890 751 0.01 0.05 ドイツ 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.181 b 0.141 0.159 b 0.095 0.056 -0.025 0.136 b 0.057 1,052 839 0.01 0.07 フランス 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.064 0.019 0.054 -0.089 0.050 -0.013 0.095 -0.023 537 211 0.00 0.17 イタリア 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.028 0.038 -0.001 0.025 0.002 -0.005 0.066 0.099 c 491 420 0.01 0.17 オランダ 94̲99 一類型説明変数 多説明変数 モデル モデル 0.198 a 0.199 a 0.108 c 0.106 0.116 c 0.123 c 0.047 0.063 814 752 0.01 0.06 (注)a、b及びcは、それぞれ、推定された係数が1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 (出所)児玉俊洋・樋口美雄・阿部正浩他(2003)及び同報告作成時の回帰分析並びに本章各節の分析。 表4−26 欧州4か国の離職期間の有無に関するロジット・モデル推計結果(ECHP data 1994-1999) デンマーク 一類型説 多説明変 明変数モデ 数モデル ル 女性 0.312 [0.093]a 年齢 0.001 [0.005] 既婚 -0.303 [0.100]a -1.879 -1.695 直接応募 [0.190]a [0.240]a -2.01 -1.791 広告 [0.192]a [0.243]a -1.872 -1.645 縁故紹介 [0.202]a [0.252]a -1.943 -1.594 創業・家業従事 [0.234]a [0.287]a -1.867 -1.627 その他 [0.219]a [0.269]a 教育水準(高) -0.318 [0.128]b 教育水準(中) -0.136 [0.116] 前職から自発的離職 -1.967 [0.092]a 入職年次= 95 0.156 [0.160] 入職年次= 96 0.379 [0.158]b 入職年次= 97 -0.027 [0.157] 入職年次= 98 -0.086 [0.150] 入職年次= 99 -0.04 [0.132] 定数項 1.026 2.095 [0.178]a [0.319]a 3250 2926 標本数 フランス 一類型説 多説明変 明変数モデ 数モデル ル 0.145 [0.099] -0.007 [0.006] -0.203 [0.102]b -1.198 -0.918 [0.137]a [0.225]a -1.095 -0.86 [0.167]a [0.261]a -1.388 -1.067 [0.135]a [0.221]a -1.648 -1.056 [0.168]a [0.245]a -2.007 -1.73 [0.149]a [0.244]a -0.291 [0.135]b 0.086 [0.115] -2.39 [0.100]a 0.143 [0.178] -0.01 [0.184] -0.214 [0.223] -0.216 [0.161] -0.15 [0.141] 0.712 2.027 [0.119]a [0.316]a 3729 2618 イタリア 一類型説 多説明変 明変数モデ 数モデル ル 0.538 [0.102]a -0.015 [0.006]b -0.161 [0.112] -0.715 -0.825 [0.148]a [0.227]a -0.712 -1.183 [0.205]a [0.327]a -0.647 -0.766 [0.151]a [0.231]a -1.279 -1.337 [0.153]a [0.239]a -0.867 -1.021 [0.151]a [0.234]a -0.496 [0.200]b -0.364 [0.103]a -1.544 [0.101]a -0.192 [0.153] 6.533 [1.008]a 0.102 [0.131] -0.797 [0.252]a -1.023 [0.268]a 0.804 1.826 [0.137]a [0.317]a 4556 2713 オランダ 一類型説 多説明変 明変数モデ 数モデル ル 0.005 [0.106] 0.026 [0.006]a -0.171 [0.111] -1.398 -0.98 [0.151]a [0.188]a -0.981 -0.555 [0.120]a [0.158]a -0.558 -0.275 [0.128]a [0.169] -1.124 -0.904 [0.190]a [0.249]a -1.166 -0.827 [0.142]a [0.189]a -0.302 [0.154]c -0.181 [0.124] -2.242 [0.107]a 0.243 [0.273] 0.111 [0.275] 0.163 [0.233] -0.055 [0.217] -0.426 [0.201]c -0.471 -0.019 [0.086]a [0.312] 3461 2878 (注) 1.ECHP1994〜98年のパネルデータを用いたロジットモデルによる推計結果。被説明変数は離職期間の有 無。入職経路ダミー変数の基準は職業紹介機関。 2. [ ]内は不均一分散修正済み標準誤差。a、b及びcは、それぞれ、推定された係数が1%、5%、10%水準で とうけいてきに有意であることを示す。 (出所)Fhar, Rene and Hilmar Schneider による回帰分析
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