ソロバ村ダニ族女性の生活について

ヒマラヤ学誌
No.
7 2000
ソ口バ村ダニ族女性の生活について
友枝寛枝、エヴァ・ガルシア、瀬口春道
高知医大アジア僻地医療を支援する会
はじめに
その後川へ行き、洗濯、水浴び等をする。そして、
集落へ戻って台所で一休みをしてから畑へで、かけ
インドネシア・イリアンジャヤ州、ソロパ村で
7月 2
3日より 2
3日間現地の宿泊所で生活をした。
その中でダニ族の女性の生活を知りたいと思い、
ダニ族の女性と共に生活することで、その生活ス
タイルを知りたいと思い、ホームステイを実施し
たO
る。昼 まで畑の手入れをする 。午後は一度集落へ
戻って一休みをしてから、夕方、いも堀りのため、
いも畑へでかける。いも堀りの後、豚にいもをあ
げに行く。それから、台所の囲炉裏でいもや葉つ
ばを調理する。できあがったいもや葉つばを食べ、
くつろぎ、 2
0時-21時に就寝する。
対象
ダニ族の女性を対象とし、ソロパ村の酋長シパ
ダ二族の女性の服装について
の集落に在住するノルチェの生活を調査した。(普段の服装)
ノルチェや他の女性の服装は Tシャツにスカー
トである 。ノルチェの場合下着は、上はつけてお
らず、下はつけている 。マルタもアナも Tシャツ
ホームステイ先の家族について:
酋長シパの息子ヘルマンの第一夫人のノルチェ
(推定 2
4歳)とその子供であるマルタ(推定 7歳
)
、
にスカートで、下着は下だけつけている。ドクテ
イヌスは Tシャツにズボンであるが、下着はつけ
)
、 ドクテイヌス(推定 4歳)。他
アナ(推定 6歳
に子供が、現在ジャヤプラにいるマルテイヌス
ていない。 ドクティヌスについては、普段は裸で
ある 。服は購入したもので、ノーケンは女性各自
の手作りである。足は、裸足である。
(伝統衣装)
(推定 9歳)と今年 4月に 1歳 3ヶ月で亡くなった
男の子がいる。
ノルチェは小学校に通った経験があり、ヘルマ
ンとは小学生の時に結婚した。また、第二夫人と
女性の衣装は、上半身は裸で腰みのをつける
腰みのには 2種類あり、未婚の女性は葉つばを縦
O
はうまくいっておらず、現在第二夫人は村に立ち
入り禁止である 。 ノルチェの性格は強く、たくま
し
し
、
。
につなぎ合わせて作った質素なもので、 一方既婚
の女'性は夫が作った細やかな鶴を編み込んで色を
付け、横につなげ作り上げたものを着用している。
化粧は、黒やオレンジの土を顔に塗っている人
もいる 。
方法
1
9
9
9年 8月 3日(火 )-7日(士)の期間ホームステ
イをし、生活スタイルを取材する 。
ノーケンという頭から吊して使うネッ ト状の袋
を持ち歩く。この中には、いもを入れた り、赤ん
坊を入れたり、子豚を入れたりする。
場所
酋長シパの集落(ビッ トニアン集落)
ダニ族の食事について
集落内見取り図
(食事の状況)
食事の時間についてはだいたい朝・昼・晩であ
1日の流れについて
朝 5時-6時に起床し、川へ水くみに行き、帰
るが様々である。朝は台所で囲炉裏の周りに全員
ってから台所にある囲炉裏で火をおこす。それか
が集まって食べる 。昼はお弁当として調理済みの
らいもを調理し始め、できあがったいもを食べる 。
いもを持参し、畑で食べることもあれば、集落に
qL
ヒマ ラヤ学誌
戻って台所で食べることもある。晩は朝と同様に
台所で全員が集まって食べる。畑仕事等、台所か
ら離れる際に食事をすることもある。
水は川でくんできた容器に口を付けてそのまま
N
o
.
7 2000
①深鍋で蒸す (市販の塩を入れる)
②中華鍋で妙める(市販の塩・ Royco (コンソ
メ)で味つけをする)
これを数枚の皿に分け、手で食べる 。食器類は
飲む。
鍋・皿・スプーン・コップがある。
(畑仕事)
I家族がいろいろな場所に畑を持ってお り、 日
使用する湯は、 200mほど離れた川で汲んでき
た水を用いて、囲炉裏にかけ沸騰させる 。水くみ
によって違う畑へ行く。朝食後食器を洗い、一休
は、主にマルタが毎夕行い、朝はノルチェが行う
こともあった。 しかし、水くみの時間については
みした後、 9時頃に畑へ向かう。しかし畑仕事
に出かける時間は様々で 8時半頃であったり、 1
0
時頃になることもあった O
午前中は畑の草抜きなどの手入れを行うのみ
で、いも掘りなどの農作物の採取は行わない。
作業を 1
2時半頃にいったん終了し、休憩に入
る。弁当持参の際には、畑の中に適当に座り皆で
様々でありはっきりとは決まった時間はなかった
が、だいたい 1日に 3回は水くみにいく 。水くみ
に使用する入れ物は、ひょうたんや小さなポリ容
器に入れていた。
食器洗いについては、 川の近 くの草をとって水
洗いをするのみである 。
食べる 。集落に戻る際には使用した道具をそのま
まもって帰る。
弁当持参の際には、 2時から 3時くらいまで畑
の手入れをし、いったん集落に戻る 。その後、別
の畑にいも 掘 りへ行く O
昼休みに集落に戻った場合は、 4時頃に別の畑
にいも掘りへ行く 。
いもの掘り方はスコップを使用するが、逆さま
0cmくらい
にし、その柄の部分を用いる O 長さ 3
の柄の先を使って土を掘る。なぜ、本来のスコッ
プの使い方をしないかはわからなかった。すぐに、
いもが見えはじめそれを手で掘り出す。ものすご
いスピードで、あっという聞に大量のいもが掘れ
ていく O ノーケンにいっぱいのいもを掘った後、
それをノーケンに入れ豚の餌やりに行く O 豚の餌
は、人聞が食べるのに適さないいもを与えている 。
(炊事について)
主にいもで調理方法は次のようになる 。
いもは皮を剥いたものを用いる。皮の剥き方は、
薬瓶の蓋の部分(アルミまたはスチール製)を用
いて、手前から向こうへ背Jjるようにして剥く 。そ
の後以下のようにして調理する。
①深鍋でゆでる
②灰の中で焼く
①② ともほぼ 3
0分くらいであ り、きわめて簡
単であり味付けは行わない。
これは、そのまま手渡しで皿などは用いない c
他に、いものつると葉や畑でとれた葉っぱ類を
次のようにして調理する 。
ダ二族の住居について
(生活形態)
男性の家、女性の家があ り、女性は各自 一つ家
をもっ。男性は男性の家に住み、台所は一つの建
物内に女性一人につき一つの囲炉裏がある 。
(集落周辺の様子)
集落は柵で囲まれており、家の外はいろいろな
植物(バナナなど)が植えられている 。なお、 ト
イレは集落の外でし、その場所は集落から 1
0
0メ
ートル程離れた草むらであった。ただし、畑仕事
へ行っている時は、畑近くの林の中などでする
。
(家の中の様子)
入り口は人が一人くぐれる程度であり、 ドアは
二重になっている 。外からも内からも鍵をかけら
れるようになっており、家にいない時と寝る時は
いつも鍵をかけている 。内は二階建てで一階は高
さ1
5
0
c
mくらいであり、真ん中にはいろりがあり、
床には干 し草が敷かれている。 二階へは、四段く
らいのは しごで登る 。二階は竹のような植物で編
んだ床になっている 。そして、 二階は屋根に接し
ているためドーム状になっており、広さは四畳 く
らいである 。夜は三階で寝るのだが、みんな搬を
着たまま適当に寝つ転がる O 夜中にねずみが走り
まわることもある 。
家の中は昼でも夜でも真っ暗である 。朝日が覚
めても朝なのか夜なのか分からないが、烏の鳴き
声で朝であると分かる 。
一階に囲炉裏があるが私がホームステイをして
-218-
ヒマラヤ学誌
No.7 2000
書 きをする状況がなく、必要と しない。
(気温について)
ソロパ村滞在中に気温測定を行った。
いる聞は一回も火をたいていなし、。夜寝る時に台
所の囲炉裏から、ろうそくやオイルランプを使っ
て火を家に持ってきて、ろうそくを二階へ持って
(方法)
上がり、消してから寝る 。
家の中の温度はちょうどよい。
湿温度計を宿泊所の食堂入 り口に設置。朝、 昼
、
夜の 1日3回測定を実施。
夕、ニ族の生活状況について
(結果)
(水あびについて)
川で石鹸を使ってよく頭や体を洗う 。 ドクテイ
ヌス だけは時々集落の広場で、ノルチェが深鍋で
沸したお湯を使って洗 ってもらっていた。水あぴ
の時間は様々である 。
気温表を以下に示す。
.4度差が
気温は日中の気温は、朝・夜に比べ 7
あり、夜はかなり気温が下がる。
また夜間は必ず雨が降った。
(言葉について)
私に対してはダニ語とインドネシア語混じ りで
あるが、それ以外はダニ語である。
読み書 きについてはほとんどできないが、読み
感想
日付
7月 2
4日
i
.
l
u
l
. 湿 差
(朝)
9 3
22 1
% 天気
i
星 差
% 天気
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2
3
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1
9
1
8
2
1
1
8
20
1
8
(昼)
74 晴れ
7月 25日
1
J
量
日本と 全 く異なる環境や価値観のなかで生活 し
てみて、はじめはどんな生活なのか想像もつかな
かったが、実際にその生活にと けこめた自分にと
26
20
6
55 晴れ
55 晴れ
24
1
9
5
60 曇 り
27
22
5
63 晴れ
2
2
1
8
24
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4
2
0
1
8
24
20
4
2
0
1
8
27
20
7
6
8 曇り
68 曇 り
50 晴れ
26
20
90 晴れ
7月 26日
1
8
1
7
7月 27日
1
8
1
7
7月 28日
1
5
1
4
I
89
7月 29日
1
7
1
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1
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1
卯
7月 30日
1
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17
2
7月 3
1日
1
9
1
8
1
開
8月 1日
1
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1
7
2
8
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8月 2日
2
1
1
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3
7
3
8月 3日
20
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1
8月 4日
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2
8
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8月 5日
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7
1
6
I
卯
8月 6日
2
1
1
7
4
5
8
晴れ
晴れ
晴れ
晴れ
晴れ
晴れ
晴れ
曇り
曇り
曇り
晴れ
1
昆 湿
(夜)
2
1
1
7
2
1
1
9
20
1
9
2
4
1
9
5
8月 7日
24
1
7
7
雨
晴れ
74
青れ
50 H
60 雨
46 晴れ
8月 8日
25
1
9
6
6
1 晴れ
20
1
7
曇り
26
20
6
1
8
26
20
6
55 晴れ
青
れ
55 日
2
0
7
5 晴れ
6
55 晴れ
8月 9日
2
1
1
7
8月 1
0日
1
7
1
6
8月 1
1日
23
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8月 1
2日
20
1
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2
2
2
1
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3
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7
2
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1
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65 晴れ
叩
3
1
9
2
1
I2 i81 I
~れはι20
差
% 天気
4
68 曇り
75 晴れ
雨
(
夜)
あり
あり
1 90 雨
あり
3 7
3 晴れ あ り
2 8
1 晴れ あ り
4 66 晴れ あ り
2 8
1 曇り あ り
2 8
1 曇り あ り
4 73 晴れ あり
2 82 曇り あ り
I 9
1 曇り あり
2 8
1 雨
あり
4 67 晴れ あ り
2 8
1 晴れ あり
5 57 晴れ あ り
3 73 曇り あり
一 あり
2 8
1 曇り あり
一 あり
3
一
あり
ハ
叫
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ヒマラヤ学誌 N
ο 7 2000
但
1
i
番号
温(朝)
温(昼)
温(夜)
湿(朝)
i
星(昼)
7月 2
4日
1
22
26
24
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6
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5日
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6日
3
1
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7月 27日
4
1
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7月 2
8日
5
1
5
湿(夜)
開
60
7
3
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7月 29日
6
1
7
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22
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7月 3
0日
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1
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8
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8月 7日
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1
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8月8日
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2
0
6
1
7
3
8月 9日
1
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2
1
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0日
1
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7
2
6
20
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55
8
1
8月 1
1日
1
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23
26
7
5
55
8月 1
2日
20
20
26
8
1
55
65
」
ソロパ気温
30
25
20
制
目
月
15
10
5
。
2
6
10 1
1
12 13 14 15 16 17 18 19 20
日にち
-220-
ヒマラヤ学誌
No.
7 2000
ソロパ湿度
100
90
80
70
次 60
性H 50
闘
40
30
20
10
。
2 3 4 5 6 7 8 9 10 1
1 12 13 14 15 16 17 18 19 20
日にち
て も驚いている 。言葉が完全に分からなくても、
今夏、なにものにも代えがたい素晴らしい、貴重
相手の言いたい事が分かり、自分の言いたい事も
な出会い・体験ができたことをうれしく思う 。
分かつてくれ、心が通じ合うことができた。私は
Summary
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