レプトスピラ症 - グローバルピッグファーム

レプトスピラ症
レプトスピラ症って知っていますか?
豚のレプトスピラ症はレプトスピラ菌というラセン状菌の感染によって起こり、妊娠豚では流産や早産、出産間際の死
産、虚弱この娩出などの異常産を引き起こし、子豚では黄疸や貧血などの症状をおこします。この病気は世界中の豚
生産地域で発生が報告されており、子豚生産に大きな経済的損失をもたらしています。日本では古典的な病気と捉
えられており、あまり問題視されてきませんでしたが、九州や沖縄地方では発生があり問題となっています。この病気
はワイル病、秋病みなど地方病として人にも感染する人獣共通の細菌感染症で、家畜伝染予防法による届出伝染病
(監視伝染病)に指定されています。人は保菌動物の尿で汚染された水や土壌から皮膚や粘膜、あるいは経口的に
感染します。レプトスピラ菌は保菌豚の腎臓や生殖器官に長くとどまり、尿とともに排泄されるので、土壌や水を汚染し
感染源となったりします。ねずみなどのげっ歯類などの保菌動物から感染する機会も比較的多いと考えられ、レプトス
ピラ症は豚の飼育に携わる人への感染の危険もはらんでいます。
レプトスピラはスピロヘータ目レプトスピラ科に属するグラム陰性菌で 23 の血清群と 212 の血清型が確認されてい
ます。豚のレプトスピラ症の伝染は複雑で、不明の点が多いのですが、病原性菌としてリストアップされた比較的限定
された血清型菌による感染が世界各地で流行していると考えられています。感染経路は①保菌豚の導入②汚染環境
による感染③豚以外の感染動物との接触が考えられ、中でも保菌豚からの感染が一般的な経路で、レプトスピラは尿
とともに排泄され、土や水(pHがややアルカリ)の中ではより長く生きるため感染源となります。豚群での流行は①保菌
豚のいる群に若雌を導入した場合②豚群に新に保菌豚が導入された場合に起こることが多いようです。
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
レプトスピラ
PCR
-
+
-
+
-
-
-
+
+
-
-
+
豚丹毒
凝集
16
32
8
32
16
16
32
8
32
16
8
32
PPV
HI
640
非特異
640
1280
1280
1280
320
640
1280
640
2560
640
PRRS
PCR
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
この表は昨年の12月初旬にグループ内の、ある農場の隔離舎における更新豚の PRRS の状況を検査するために行
った血液検査ですが、パルボウイルスの感染状況と豚丹毒の抗体の保有状況の確認とともに、レプトスピラの保菌状
態を遺伝子検査(PCR)で確認した際の検査結果です。この検査結果を見て驚きました。レプトスピラに関してあまり
関心が無かったというのが本音でしたが、私の関与している農場においても潜在的な浸潤があり、何らかの影響があ
るのではないかと思ったからです。この検査結果がすぐに発症につながっているとは考えたくはありませんが、今後こ
の病気に少し関心を持っていこうかという思いに至りました。レプトスピラの異常産は前述したように流産や早産、分娩
間際の死産が主流ですが、再発情の増加、産子数の低下、虚弱豚の娩出が認められること、妊娠3ヶ月前後で流産
することが多いことや、その後の虚弱豚の増加など PRRS や PCV2 の感染と類似する症状が多いことなどから今後類
症鑑別をしていく必要がありそうです。
対策はストレプトマイシンに高い感受性を示すことからストレプトマイシンの投与(2PS)かテトラサイクリン系(OTC)の
薬剤投与で対処します。海外においてはワクチンによる予防が行なわれていますが、日本ではまだ発売の段階では
ありません。時折行う豚群のクリーニングなどで知らない間に対処されてしまっているのかもしれません。
レプトスピラの検査は、レプトスピラ菌の分離が困難で時間がかかることから、診断は一般的に抗体検査で行なわれ、
異常産が起きた時点と2~3週間後のペア血清で検査し、抗体があがればレプトスピラの感染を疑いましたが、ペア血
清を採るのが難しかったり抗体の上昇が確認できなかったりして確定診断がなかなか難しいものがありましたが、最近
では流産胎児を用いた、蛍光抗体法や免疫組織化学検査により直接レプトスピラを検出する方法や PCR 検査の発達
により比較的簡単に検査できるようになって来ました。農場において異常産や理由の不明な流産などが発生した場合
には一度検査をしてみてはいかがでしょうか。
<繁殖障害の原因となる病原体・非病原体の鑑別点>
病原体
オーエスキー病ウィルス
パルボウィルス
封入体性鼻炎ウィルス
エンテロウィルス
PRRS
レプトスピラ
PCV2
非病原体
季節の移行期
カビ毒
種付け失宜
産歴
母豚コンディション
豚舎環境
雄豚能力
流産
+
-
-
+
+
++
?
流産
++
+
-
-
+
+
-
ミイラ
+
+++
+
+
-
++
?
ミイラ
-
++
-
-
-
-
-
死産
+
++
++
+
-
+
?
死産
-
+
-
++
++
+++
+
虚弱
+
+
+
+
++
+
?
虚弱
-
+
++
++
+
-
++
再発
+
++
+
+
+
+
?
再発
+
+
++
+
++
-
+++
2009 年 1 月 グローバルピッグファーム㈱