平成18年度 構造変化に対応した雇用システムに関する調査研究 報告書

平成18年度
経済産業省委託事業
平成18年度
構造変化に対応した雇用システムに関する調査研究
日本企業における外国人留学生の
就業促進に関する調査研究
報告書
平成19年3月
財団法人 海外技術者研修協会
この報告書は、財団法人海外技術者研修協会が経済産業省より平成 18 年度受託事業とし
て委託を受け実施した「平成 18 年度構造変化に対応した雇用システムに関する調査研究(日
本企業における外国人留学生の就業促進に関する調査研究)」の成果です。
目次
第1章
調査の背景と目的................................................................................................. 1
第2章
調査概要
2.1 調査内容及び実施方法 ......................................................................................... 2
2.2 ヒアリング調査概要............................................................................................. 3
2.3 アンケート調査概要............................................................................................. 4
2.4 文献調査概要........................................................................................................ 6
第3章
ヒアリング調査結果
3.1 企業の留学生採用に関するニーズ ....................................................................... 7
3.2 元留学生の業務内容と課題 .................................................................................11
3.3 元留学生に対する上司の見解............................................................................. 19
3.4 考察.................................................................................................................... 22
第4章
アンケート調査結果(1)−企業担当者―
4.1 調査対象企業の属性........................................................................................... 25
4.2 外国人従業員の雇用状況.................................................................................... 26
4.3 今後の活用方針 .................................................................................................. 33
4.4 就業に向けた留学生在学中の研修 ..................................................................... 35
4.5 企業が求める能力 .............................................................................................. 37
第5章
アンケート調査結果(2)−元留学生―
5.1 元留学生の属性 .................................................................................................. 40
5.2 元留学生の就職時状況 ....................................................................................... 42
5.3 元留学生の職務内容........................................................................................... 43
5.4 外国人が就業する際に必要な能力 ..................................................................... 49
第6章
文献調査結果
6.1 ビジネス日本語コースにおけるコース設計 ....................................................... 55
6.2 ビジネス日本語コースの実践報告と現状、課題 ................................................ 57
6.3 ビジネス日本語コースにおける教師の資質 ....................................................... 62
6.4 ビジネス日本語コースにおける評価設計........................................................... 65
6.5 ビジネス日本語教材........................................................................................... 68
6.6 考察.................................................................................................................... 76
第 7 章.調査結果の分析と考察
−留学生の就業を促進するに当たっての課題−
7.1 留学生側の課題 .................................................................................................. 77
7.2 企業側の課題...................................................................................................... 83
7.3 課題克服のための方策 ....................................................................................... 86
第 8 章.おわりに............................................................................................................. 88
参考文献 ........................................................................................................................... 89
添付資料
1)検討委員会
委員名簿
2)アンケート調査票①:企業担当者向け
3)アンケート調査票②:元留学生向け
4)文献調査リスト
第1章
調査の背景と目的
我が国企業の海外展開を取り巻く情勢は刻々と変化している。2004 年度末時点の現地法
人数は 14,996 社、そのうち、地域別に見ると、アジア地域が 8,464 社(地域別シェア 56.4%)
と全世界の 6 割弱を占めており1、アジア地域の占める割合は年々増加している。さらに、
前述した我が国企業のグローバル展開の加速に加え、我が国の人口減少、海外企業による
国籍を問わず優秀な人材の確保等、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。このよう
な環境の変化に伴い、産業界の人材ニーズは、日本と現地の橋渡しができる人材、企業の
グローバル化促進の中核となることができる人材、研究開発等新しいイノベーションに必
要な人材など、多岐にわたっており、それら人材ニーズへの担い手として、日本の大学・
大学院に在籍する外国人留学生に対する期待が大きい。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査2によると、平成 18 年 5 月 1 日現在の
留学生総数は 117,927 人、前年度に比べ 3,885 人(3.2%)減ではあるが、平成 15 年以降
10 万人以上の留学生を受け入れている状況が続いている。そのうち、アジア地域からの留
学生が 109,291 人(92.7%)を占めている。したがって、海外進出企業、留学生ともにア
ジア地域の占める割合が非常に高く、産業界のニーズに対応できる留学生数と人材確保に
向けた基盤が整いつつあると言える。
一方、
「留学」及び「就学」の在留資格を有する外国人が我が国の企業等へ就職する際に
は在留資格変更許可申請が必要となるが、平成 17 年の許可数は 5,878 人である。この数
は、前年の許可数 5,264 人より 614 人(11.7%)の増加となっているものの、留学生総数
と比べその数は少ない3。そこには社会制度上の課題をはじめ、日本企業の文化・習慣、ビ
ジネスに必要な日本語能力の問題等、さまざまな課題が就職者数増加を阻害する要因とし
て存在することが予想される。
このような状況において、省庁、関係機関による留学生の就職状況に関する実態調査は
散見されるものの、就業に際して課題となっている要因の分析およびその課題に対応した
留学生への就職支援のあり方に関する包括的な研究は管見では存在しない。そこで、本調
査では、日本企業における外国人留学生の就業に際する課題調査を行うとともに、今後の
外国人留学生の就業促進に向けた研修のあり方についての検討を行うことを目的とする。
本調査により、外国人留学生の就業を促進する支援策の策定につなげたい。
経済産業省(2007)『第 35 回我が国企業の海外事業活動海外事業活動基本調査
−平成 16(2004)年度実績/平成 17(2005)年 7 月 1 日調査 −』参照。
2 独立行政法人日本学生支援機構(2006)
「留学生受入れの概況(平成 18 年版)
」参照。
3法務省入国管理局(2006)
「平成 17 年における留学生等の日本企業等への就職状況について」
参照。
1
1
第2章
調査概要
本調査では、外国人留学生の就業促進に向けた研修のあり方について検討を行うために、
ヒアリング及びアンケート調査を通して企業側と日本の大学・大学院出身の外国人社員側
(以下、元留学生とする)の両面から課題調査を行うとともに、既存の文献調査を併せて
実施する。
2.1
調査内容及び実施方法
本調査の内容は、以下の通りである。
図表 2-1 調査実施フロー
(1)仮説立案
企業ヒアリング調査
(先行調査)
(2)実態調査
①ヒアリング調査
②アンケート調査
③ビジネス日本語に関す
・ 人事部門
・ 人事部門
る文献調査
・ 元留学生
・ 元留学生
・ 元留学生の上司
外国人留学生向けの就業
促進のための研修のあり
方に関する検討
(1)仮説立案
企業ヒアリング調査を先行して行うことにより、企業が求める日本語能力、日本
企業文化に関する仮説を構築する。
(2)実態調査
国内企業・元留学生に対し、ヒアリングおよびアンケート調査を行うことにより
留学生の就業促進にあたっての課題についての実態を把握する。
2
①日本企業で働いている元留学生及び企業(人事部門及び元留学生の上司)に対す
るヒアリング調査
企業で就労している元留学生に対し、元留学生の立場から見た日本企業が求め
る日本語能力の要件、日本企業文化等について調査すると同時に、企業の人事部
門及び元留学生の上司に対してもヒアリングを行い、双方からの意見の分析を行
う。
②企業(人事部門)および元留学生に対するアンケート調査
日本企業の潜在的な留学生ニーズを把握するとともに、日本企業が求める日本
語能力の要件、日本企業文化等に関する要件・水準を調査するため、企業(人事
部門)および元留学生に対しアンケート調査を実施し、双方向からの意見の分析
を行う。
③文献調査
ビジネスに必要な日本語能力、ビジネス日本語教育についての先行事例や研究
を把握する。また、企業が求める日本語能力を習得する上で有用と思われるテー
マプロジェクト型の日本語学習法についての先行事例や研究なども合わせて把
握する。
2.2
ヒアリング調査概要
2.2.1 実施期間
2006 年 11 月から 2007 年 2 月に実施した。
2.2.2 調査対象企業および対象者
いずれも日本国に法人格を有する民間企業 18 社で、業種は以下のとおりである。
(1)製造業
12 社
(2)サービス業
2社
(3)情報通信業
2社
(4)卸業・小売業
1社
(5)建設業
1社
調査対象者は以下の通りである。
(1)企業の人事担当者
(2)元留学生
(3)(2)の担当管理職
7社 /7名
13 社 /14 名
9社 /9名
3
図表 2-2 ヒアリング協力企業
企業名
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
Q
R
業種
製造業
卸業・小売業
製造業
製造業
製造業
製造業
建設業
製造業
製造業
情報通信業
製造業
製造業
サービス業
サービス業
製造業
製造業
製造業
情報通信業
(1)人事部門
●
●
●
●
●
●
●
(2)元留学生
(3) (2)の上司
●
●
●
●
●(2名)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
2.2.3 調査方法
企業への訪問調査を行った。
(1)人事担当者
各担当者につき、約 30 分程度、元留学生の採用実績とその基準、企業の求める外国人
人材像等を中心に質問した。
(2)元留学生
調査対象となった元留学生には、事前に数日分の業務日誌を記入の上、調査担当者への
送付を依頼した。調査当日は、提出された業務日誌を基に元留学生が直面したビジネス場
面の実態とそこで生起する問題点について質問した4。所要時間は約1時間であった。
(3)(2)の上司
(2)の調査で得られた情報を基に、元留学生が直面しているビジネス場面の実態とそ
こで生起する問題点について約 30 分程度質問した。
2.3 アンケート調査概要
2.3.1 実施期間
2007 年 2 月から 2007 年 3 月に実施した。
4
本調査手法は、インターアクション・インタビューと呼ばれ、対象者に参加していたインタ
ーアクションの時点まで遡って記憶に残っている出来事や行動を報告してもらい、実際の言語
行動についてのデータとして収集する方法である(村岡 2002)。外国人社員の企業内での言語
活動については、参与観察や録音・録画が困難なため、この手法を採用した。
4
2.3.2 調査対象
証券取引所へ株式を公開している国内企業のうち、3,500 社を無作為に抽出した。対象
となった業種及び社数は以下の表の通りである。
図表 2-3 企業向け/元留学生向けアンケート調査表 送付先一覧
業種
農業
鉱業
建設業
製造業
卸売・小売業、飲食店
金融・保険業
不動産業
運輸・通信業
電機・ガス・水道・熱供給
サービス業
中分類
農業
原油・天然ガス鉱業
非金属鉱業
職別工事業
総合工事業
設備工事業
食料品・飼料・飲料製造業
たばこ製造業
繊維工業
衣服・その他の繊維製品製造業
木材・木製品製造業
家具・装備品製造業
パルプ・紙・紙加工品製造業
出版・印刷・同関連産業
化学工業
石油製品・石炭製品製造業
ゴム製品製造業
皮革・同製品・毛皮製造業
窯業・土石製品製造業
鉄鋼業、非鉄金属製造業
金属製品製造業
一般機械器具製造業
電気機械器具製造業
輸送用機械器具製造業
精密機械・医療機械器具製造業
ペン・鉛筆・絵画用品・その他の事務用品製造業
卸売業(1)
卸売業(2)
代理商、仲立業
各種商品小売業
織物・衣服・身の回り品小売業
飲食料品小売業
飲食店
自動車・自転車小売業
家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業
その他の小売業
銀行・信託業
中小商工・庶民・住民等金融業
補助的金融業、金融付帯業
証券業、商品先物取引行
保険業
保険媒介代理業、保険サービス業
投資業
不動産業
鉄道業
道路旅客運送業
道路貨物運送業
水運業
航空運輸業
倉庫業
運輸に付帯するサービス業
郵便業、電気通信業
電気業
ガス業
物品賃貸業
旅館、その他の宿泊所
洗濯・理容・浴場業
その他の個人サービス業
映画・ビデオ制作業
娯楽業
放送業
自動車整備業、駐車場業
その他の修理業
広告・調査・情報サービス業
その他の事業サービス業
専門サービス業
医療業
保健衛生、廃棄物処理業
教育
社会保険、社会福祉
合計
社数
2
6
190
1348
752
350
109
137
23
583
3500
5
2.3.3 調査方法
3,500 社に対し、以下の 2 種類の調査票を送付した。
(1) 人事担当者向け調査票
1通
(2) 元留学生向け調査票
1通
回答は郵送またはFAXによる返却とした。
2.4 文献調査概要
2.4.1 実施期間
2006 年 11 月から 2007 年 2 月に実施した。
2.4.2 調査対象
日本企業での長期的就労に必要な日本語能力について、主に以下の 5 つの観点から調査
を行った。
(1)ビジネス日本語コースにおけるコース設計、理論
(2)ビジネス日本語コースの実践報告および現状、課題
(3)ビジネス日本語コースにおける教師研修
(4)ビジネス日本語コースにおける評価設計
(5)ビジネス日本語に関する教材
2.4.3 調査方法
上述の観点に該当する文献を調査し、リストおよび要旨を作成した上で、日本での就業
を希望する留学生向けの研修への示唆という点から、3 段階の評価を行った。
6
第3章
ヒアリング調査結果
本章では、企業と日本の大学・大学院出身の外国人社員(以下、元留学生とする)に対
して実施したヒアリング調査結果から、元留学生が直面したビジネス場面の実態とそこで
生起する問題点について概観する。調査方法については、2.2 を参照されたい。
図表 3-1 ヒアリング協力企業
企業名
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
Q
R
業種
製造業
卸業・小売業
製造業
製造業
製造業
製造業
建設業
製造業
製造業
情報通信業
製造業
製造業
サービス業
サービス業
製造業
製造業
製造業
情報通信業
(1)人事部門
●
●
●
●
●
●
●
(2)元留学生
(3) (2)の上司
●
●
●
●
●(2名)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
3.1 企業の留学生採用に関するニーズ
インタビューに協力をいただいた企業すべてにおいて元留学生の新卒採用実績があり、
海外への事業展開を積極的に推進している企業であった。
3.1.1 採用動機
各社とも、優秀な人材の確保という点が採用動機として最も高くなっており、国籍を問
わず、優秀であれば採用するという傾向にある。さらに、元留学生に対しては、海外事業
展開を視野に入れ、グローバル化に対応できることをあわせて期待しており、日本と現地
側のブリッジ的な要素のみならず、企業内の「内なるグローバル化」という観点から、企
業内の活性化、日本人社員への好影響を期待する企業も見られた。
図表 3-2 元留学生の採用動機
採用動機
A社
国籍によらない優秀な人材の確保が最も大きな理由となっているが、企業内の多
様性の推進、各国に展開している海外事業や関連企業との取引増加等に対応すべ
7
く、ブリッジ人材としての位置づけも併せ持っている。
B社
日本人と同じ基準での人材の確保を進めている。
C社
海外事業展開の足がかりとして、採用を行っている。
D社
各国に展開している海外拠点のマネジメントを主眼としたブリッジ人材の育成が
急務となっているため、積極的に採用を進めている。
E社
日本人と同等の基準で、国籍に寄らない優秀な人材に主眼を置いている。
F社
国籍に関係なく優秀な人材の確保という視点から採用を行っている。
G社
日本人と同じ基準での人材の確保を進めている。
3.1.2 職種
前述の通り、各社とも優秀な人材の確保という観点からの採用のため、職種を問わず採
用する傾向にあるが、理系の総合職、研究職を中心に採用している企業も見られる。
図表 3-3 元留学生の採用職種
職種
A社
総合職全般、研究職を問わず、優秀な人材の確保を進めている。
B社
文系、理系を問わず、総合職全般での採用を行っている。
C社
文系、理系を問わず、総合職全般での採用を行っている。
D社
主に文系総合職を中心に採用している。
E社
主に理系総合職を中心に採用している。
F社
職種を問わず、文系及び理系総合職全般、研究職で採用している。
G社
理系総合職全般を中心に採用している。
3.1.3 採用基準
採用基準において、外国人採用のために別途枠を設けることはせず、日本人と同様の採
用基準が活用されているケースが多い。日本語能力だけではなく、本人の資質、専門性を
重視する点は新卒採用の特徴といえる。また、理系の場合、学校推薦による採用も行われ
ている。
図表 3-4 元留学生の採用基準
採用基準
A社
現地採用ではなく日本採用の際は日本人と同様の基準でもって採用している。日
本語能力もさることながら、高い専門性、本人の資質、能力を見極めた採用を行
っている。また、技術系の場合は学校推薦による採用も散見される。
B社
基本的には、日本人と同様の採用基準を採用しており、別途留学生向けの枠は設
8
けていない。日本語能力については、日本語能力試験1級レベルは最低限必要で
あると考え、日本語のレベルが一定のレベルに達していないと判断した場合には
不採用としている。また、専門性についても採用の際重視している。
C社
日本人の新卒社員採用時と同様の基準で行っているが、外国人留学生の場合は、
日本語能力について重視している。
D社
何よりも本人の人格を重視している。日本企業で働く以上、日本語能力について
はできるだけ高いレベルが望まれる。また、組織人として働く際には、チームワ
ーク力が非常に重要となるため、採用の際にはその点についても注目をしている。
E社
日本人と同様の採用基準だが、企業に対する忠誠心についても採用の際に重視し
ている。
F社
採用の際の基準は日本人と同様で、外国人を対象とした別基準は設けていない。
専門性、人格、企業風土への順応性、年齢等、総合的に判断している。また、大
学との共同研究を行っており、大学からの推薦もある。
G社
日本人と同様の基準でもって採用している。日本語能力については、日本語能力
試験1級レベルは最低限必要であるが、高い専門性も期待している。
3.1.4 日本語能力
日本語能力については、採用時のポイントとしている企業も多く、各社ともに職種を問
わずネイティブレベル、または業務に支障をきたすことのない高いレベルの日本語能力を
求める傾向にある。ただし、技術職採用の場合、採用基準において日本語能力よりも専門
性に対するウェイトが高い。
図表 3-5 採用時に期待する日本語能力
日本語能力
A社
職種によるが、技術系の場合、採用時には専門性をより重視する。営業職の場合
は、ネイティブレベルの日本語能力がないと本人が苦労する。
B社
日本語能力試験1級レベルの日本語能力を期待しているが、特に幅広いビジネス
場面で対応できるだけの高度なコミュニケーション能力を求めている。また、助
詞や待遇表現などの精度をできうる限り向上してほしい。
C社
日本語能力については、ネイティブレベルの高度な日本語能力を期待している。
D社
高度なコミュニケーション能力は必要となる。
E社
日本語能力については、ネイティブレベルの高度な日本語能力を期待している。
F社
すべてネイティブレベルで対応できる日本語能力を期待することはないが、ビジ
ネス場面で必要となる幅広いコミュニケーション能力は習得していることが望ま
しい。
G社
幅広いビジネス場面での高度なコミュニケーション能力を期待する。
9
3.1.5 外国人留学生への要望
現在雇用している外国人留学生に対して企業が抱える課題や採用時の基準を踏まえ、さ
まざまな観点から意見が寄せられた。これら意見を集約すると、以下の3点となる。
(1)日本語能力
各社とも、高い日本語能力を期待しているため、在学中に高度かつ実践的な日本語運用
能力をできる限り高めてほしいというニーズが高い。特に、新聞や資料といった情報収集
時の読解能力、資料作成、敬語等の待遇表現といった点のニーズが多い。
(2)日本に対する理解
優秀な人材の確保という観点からの採用基準ではあるが、外国人人材に対する不安要素
として、この点を挙げる企業は少なくない。日本で働く上で、日本人のものの考え方、日
本企業特有の企業風土、日本社会全般に関して深い理解が求められると企業側は認識して
いる。
(3)日本企業に勤務する社会人として求められる行動能力
帰国せずに日本で働く意義、目的を明確にする必要性、さらに、その際には短期的では
なく、中長期的な視点に立って検討する必要性を挙げている。ビジネスマナーに関しては、
在学中に基本的な点は習得しておくほうがよいと考える企業が大半を占めている。また、
インターンシップやアルバイトを通した就業経験を重視する企業が見られた。
図表 3-6 外国人留学生への要望
外国人留学生への要望
A社
短期間でスキルアップをしたいという意識を強く持つ人材が散見される。また、
中長期的な視野で働くという前提がないため、離職する人材もいる。日本で働く
以上は、理由は問わないので日本で働く目的を明確にしておくべきである。また、
インターンシップは積極的にやってほしい。数週間でも経験していることは非常
に大切である。さらに、アルバイトの経験を採用時に質問し、その経験から得た
ものなども採用時の参考としている。在学中に、わかりやすい資料の作成、ビジ
ネスマナー、敬語等の待遇表現を積極的に習得してほしい。
B社
採用時だけではなく就業後も日本語能力を重視しており、在学中に日本語レベル
を高めてほしい。
C社
日本での就業のため、日本社会への深い理解が必要となる。
D社
ビジネスのための実践的な日本語能力とビジネスマナーを在学中に習得するこ
と、また、新聞等の読解・要約などを通して日本語能力の向上と企業を取り巻く
状況への理解を深めることを期待する。
10
E社
日本人と日本企業のものの捉え方をはじめとする日本社会に対する理解を深めて
ほしい。
F社
日本企業文化、習慣等の理解を通して、組織的な仕事の仕方への理解を深めてほ
しい。また、ビジネスのための日本語やマナーを習得していることを期待したい。
G社
ビジネスマナー、コミュニケーション能力の向上を期待したい。
3.2 元留学生の業務内容と課題
次に、元留学生に対して実施したインタビュー調査について報告する。インタビューの
際は、事前に記入済の数日分の業務日誌を基に、元留学生が直面したビジネス場面の実態
とそこで生起する問題点について調査を行った。以下に、業種、職種別に記載する。
な
お、F 社∼Q 社までの 12 社は日本の大学・大学院出身の外国人社員について概観するが、
R社については、12 社との比較対象として、母国の大学を卒業した外国人社員のインタビ
ュー結果について報告する。R社に勤務する外国人社員は、母国の大学を卒業し、在学中
に 2 年間日本語を学習した経験を持つ。大学在学中、インターン学生として同社で学んだ
経験を持っている。
3.2.1 業務で日本語を使用する場面
R社を除いては、業種・職種を問わず、業務全般にわたって日本語を使用している。一
部は、業務上海外との折衝、現地取引先との連絡において母語、英語を使用するケースも
見られた。
図表 3-7 業務で日本語を使用する場面
業種
職種
業務で日本語を使用する場面
F社
製造業
研究職
研究開発に関する業務全般にわたり、日本語を使用する。
G社
建設業
技術職
業務全般にわたって日本語を使用している。
H社
製造業
業務全般にわたり日本語を使用する。海外現地の取引先や
グループ会社との打ち合わせや連絡の際に通訳として同席
し、中国語を使用することがある。
I社
製造業
業務全般にわたり、日本語を使用している。
J社
情報通信業
取引先への訪問、開発案件の仕様書と付随する打ち合わせ、
開発に必要な情報、要員の提案等の業務で日本語を使用し
ている。
K社
製造業
L社
製造業
業務全般にわたり、日本人と同様に日本語を使用している。
事務職
海外の取引先への販売および営業が主要業務であり、海外
企業との連絡では英語や中国語を使用することもあるが、
11
業務の大半は日本語を使用している。
M社
サービス業
業務全般にわたって日本語を使用している。
N社
サービス業
業務全般にわたって日本語を使用している。
O社
製造業
業務全般にわたって日本語を使用している。
P社
製造業
業務全般にわたって日本語を使用している。上司、同僚、
社内連絡についてはすべて日本語を使っている。
Q社
製造業
業務全体の7割程度は日本語で行っており、残り3割は中
国語を使用する。
R社
情報通信業
技術職
基本的に英語で業務することが前提であり、開発会議以外
で日本語を使用する場面は現在のところほぼない。
技能別に見ていくと、口頭コミュニケーション(話す・聞く)では、社内/社外を問わ
ず、会議、打合せ、電話応対といった場面が多い。また、プレゼンテーションや来客応対
を日本語で遂行する場面も散見される。一方、書記コミュニケーション(読む・書く)で
は、職種を問わず、資料読解及び作成、メールでの連絡が必須となっている。特に、技術
職、研究職においては、口頭での日本語に劣らず、書記での日本語の比重も高くなる傾向
にある。
図表 3-8 口頭コミュニケーション(話す・聞く)
F社
業種
職種
業務で日本語を使用する場面−口頭コミュニケーション−
製造業
研究職
商品化に向けた他部署との会議、上司との打合せは常時日
本語で行われる。電話を利用する頻度は少ない。
G社
建設業
技術職
施主から協力会社まで、業務上関係のある機関との連絡は
日本語で行っている。
H社
製造業
社内連絡、グループ会社および取引先企業への連絡や打ち
合わせの際は、基本的にすべて日本語で行う。来客応対や
電話での会話については、学生時代のアルバイトの経験で
克服している。
I社
製造業
社内で行われる打ち合わせや連絡については、日本語で行
っている。
J社
取引先へ訪問し、開発案件に関する打ち合わせを行うこと
情報通信業
が多い。
K社
製造業
主に、会議での打ち合わせ、報告、プレゼン、来客応対を
日本語で行っている。
L社
製造業
事務職
社内での上司や同僚との業務連絡、国内の取引先との電話、
12
業務に付随して発生する外部との折衝、発注等はすべて日
本語で行っている。また、国内での展示会への出展、デモ
ンストレーションに関しても業務を一部担当している。
M社
サービス業
取引のある企業との応対、面接等を日本語で行なっている。
N社
サービス業
外国人学生や海外関係先へは英語等で対応するが、それ以
外の社内外の応対は全て日本語で行う。
O社
製造業
現地関係機関への対応は母国語で行っているが、現地駐在
員などとは全て日本語で行っている。
P社
製造業
国内展示会の手配および開催に関わる業務を全て日本語で
行っている。
Q社
製造業
現地法人の事業計画及び統括管理業務を行う上で必要とな
る現地法人及び本社関連部署との連絡が主となる。
R社
情報通信業
技術職
開発会議のみ日本語を使用する。
図表 3-9 書記コミュニケーション(読む・書く)
F社
業種
職種
業務で日本語を使用する場面−書記コミュニケーション−
製造業
研究職
専門書籍の読解、研究報告書の執筆やプレゼンテーション
資料の作成をはじめ、書記コミュニケーションの比重が高
い。メールについては、社内からの連絡が大半を占めてい
る。
G社
建設業
H社
製造業
技術職
検討書の作成を日本語で行っている。
仕様書、製品情報に関する資料は日本語で書かれているも
のが中心となっている。また、メールでの連絡は必須。
I社
製造業
仕様書、製品情報に関する資料、技術文書の読解、週報の
作成を日本語で行うため、高い専門性と専門的な日本語能
力が必要となっている。
J社
プログラマーの場合、仕様書等書記コミュケーションが中
情報通信業
心となる。そのため、口頭コミュニケーションに対して苦
手意識を持つことが多い。
K社
製造業
工業製品の分析(依頼、検討、コスト計算)、会議資料作成、
メール処理が中心である。ただし、メールを作成する際は、
日本人従業員の2倍時間がかかる。
L社
製造業
事務職
メールでの連絡、他部署への書類、出荷依頼等は日本語で
行っている。輸出に関する手配等では、英語を使用するこ
ともある。
13
M社
メールや文書作成、プレゼンテーション資料の作成などは
サービス業
すべて日本語で行う。
N社
ポスターの作成、メールによる外部への依頼文書の作成は
サービス業
全て日本語で行う。
O社
製造業
予算資料作成、役員会等に提出する上程文書の作成など、
業務の全般において日本語を使用する。
P社
製造業
予算資料作成、契約書管理の際に日本語を使用する。
Q社
製造業
事業計画の立案、市場調査、調査報告用資料作成の際、日
本語を使用する。
R社
情報通信業
技術職
なし。
3.2.2 就職後の課題
(1)日本語能力に関する課題
まず、日本語能力に関する課題が圧倒的に多い。今回の調査対象者は非常に日本語のレ
ベルが高く、インタビューの際にコミュニケーションに支障をきたすことはないレベルで
あったにもかかわらず、敬語など相手との関係、状況、場面に応じて使い分けが求められ
ると、非常に困難を感じるという意識が強い。この点に加え、電話応対、メール連絡等、
日常的に多用する非対面型のコミュニケーションツールに対し、不安を覚える元留学生が
多く見られた。また、ビジネス上の日本語以外に、同僚との日常会話、営業先での世間話、
勤務先の方言等、人間関係を円滑に保つためのコミュニケーションの重要性を認識してい
る元留学生も見られた。R社の社員は基本的には英語で業務を遂行しているが、英語のみ
で日本国内で勤務する際の限界を感じていることから、日本企業で勤務する際に、日本語
能力が1つのキーとなることは必至である。
(2)日本企業文化に関する課題
社内の上下関係、年齢、職歴に偏重した業務配分、徹底した「報・連・相」といった日
本企業の特徴に対して、当初違和感を覚えたが、現在は文化的な差異として受け止めてい
る元留学生は多い。また、R社の外国人社員からも日本企業の組織構造、仕事の進め方の
差異について指摘があることから、外国人人材にとって言語面のみならず、企業特有の風
土に対する理解も大きな障壁の1つといえる。
(3)外国人人材に求める人材像とのギャップ
日本人社員の中でグローバルな考え方をあわせもつ人材の不足に加え、中長期的なスキ
ルマップが企業側から明示されておらず、外国人としての特性を生かした業務へ従事した
いと希望する元留学生が散見された。一方、現在海外事業関連に従事する元留学生につい
ては、同様の点を生かせていると自己評価しており、仕事への満足度も比較的高かった。
14
(4)社会人としての行動能力に関する課題
相手を尊重した言動、適切に情報の収集および取捨選択ができる能力が挙げられている。
図表 3-10
F社
業種
職種
製造業
研究職
就職後の課題
就職後の課題、苦労した項目
報告書やプレゼンテーション用資料の作成に苦労する。ま
た、理系の場合、日本人で留学経験のある人材が少ないた
めか、多文化的な視点やグローバルな考え方を持つ人材が
周囲に少ないように感じる。
G社
建設業
技術職
電話、ビジネスメールといった日常的なツールで使用する
日本語、また、場面や状況による日本語の使い分け、具体
的には、同僚との日常会話と業務上の会話との使い分け、
交渉や報告文書における言い回し表現等に苦労することが
多い。業務経験とそれから得られるスキルの蓄積も必要。
H社
製造業
相手の立場、状況に合わせて日本語の表現を選ぶ際に非常
に気を使う。現地企業との打ち合わせで技術内容を日本語
に通訳する際に、職位の高い方と同席することが多いので、
直訳せずニュアンスを意訳するように心がけている。
I社
製造業
電話での企業名、氏名の聞き取りが難しい場合がある。社
内での上下関係に馴染むことが求められる。
J社
IT業界という性質上、専門用語や外来語の習得が困難。
情報通信業
また、相手との関係や場面に応じて待遇表現を使い分ける
ことが難しい。社内で使用する敬語と社外のそれとは相違
するため、非常に苦労する。打ち合わせや営業の際、仕事
の内容以外の世間話、日常会話の場面では諺やジョークが
飛び交うことが多く、外国人にはハードルが高い。
K社
製造業
上司や顧客に敬語を多用するが、意識すると間違うのでな
るべく丁寧体を使って切り抜けている。敬語の多用に加え、
会社の社風や同僚と仲良くやっていくためには、その土地
の方言を覚えて使わなければならなかった。また、日本人
と同様に資格取得を奨励され、資格を取得したことも就職
後苦労した。
L社
製造業
事務職
電話応対の際、先方の企業名や名前が聞き取れないことが
ある。また、日本企業特有の企業風土に違和感を覚えるこ
とがある。具体的には、先輩よりも得意な業務であっても
先輩が担当することがあり、能力よりも年齢、職歴に比重
15
が置かれている点、スキルマップが見えず、コピーやお茶
汲み等の雑務が多いので、より専門や外国人としての特性
を生かした業務へ従事したい点、直接部長へ報告するので
はなく、必ず課長から部長への報告を行うというように、
職制を通して「報・連・相」を行わなければならない点、
という3点が挙げられる。
M社
敬語に非常に苦労する。また、クレーム処理のお詫び文書、
サービス業
雑誌に掲載する広告等、文書作成の際は必ず上司にチェッ
クを依頼している。
N社
上司、取引先の顧客といった相手や場面に応じた言葉の使
サービス業
い分けに非常に苦労する。また、同僚とのコミュニケーシ
ョンについても同様である。助詞については誤用が多く、
上司に訂正されることがある。
O社
製造業
社内用語や専門用語等、目的に応じた語彙とその運用につ
いて困難な場面がある。
P社
製造業
電話での企業名、氏名の聞き取りが難しい場合がある。ま
た、現在、海外関連業務には直接携わっておらず、外国人
の特性を生かした人事配置を希望する。
Q社
製造業
単なる日本語能力だけではなく、相手を尊重した上で自ら
の意見を述べること、現場からの声を引き出すことができ
るコミュニケーション能力の必要性を感じている。また、
収集した情報の必要性を取捨選択できる能力についても、
社会人として求められる。自己の役割や立場に即した意見
の伝達ができるコミュニケーション能力が必要である。
R社
情報通信業
技術職
言語面では、英語で業務を遂行することが前提となってい
るが、社内の情報に乗り遅れること、同僚・上司と複雑な
話、ハイレベルな業務の話をしようとすると、英語ではや
はり限界もある。日本企業の特性という面では、課長、部
長等の職位の細かい分類、母国と異なる日本企業の組織構
造について理解が必要である。また、仕事の進め方の差異
があり、日本人はイエスノーが曖昧で、かつ、時には細か
い問題に焦点を絞り過ぎるために、問題の根源を見逃す傾
向があると感じている。
16
3.2.3 在学中に取り組むべき課題、要望
在学中に取り組むべき課題としては、3.2.2 に記載した、ビジネス日本語能力の向上、
日本企業文化に対する理解、社会人としての行動能力の 3 点に加え、日本での就職及び就
職活動への理解として、就職に対する目的の明確化、就職活動に関する情報提供、インタ
ーンシップ、就職試験対策を求める元留学生が多く見られた。
(1)ビジネス日本語能力の向上
相手との関係や目的に応じて適切に使い分ける日本語能力の向上、電話応対やメールな
どの非対面型のコミュニケーション能力の向上、業務で必要となる文書の読解能力および
作成能力の向上、という3点が多く指摘された。
(2)日本企業文化に対する理解
日本社会全体の業界分布と希望業界に対する理解、日本企業の組織構造や仕事の進め方
に対する理解等、業務を進める上で必要となる日本企業に関する背景的知識に対する理解
を在学中に取り組むとよいと示唆する元留学生が多く見られた。
(3)社会人として求められる行動能力の向上
ビジネスマナーに加え、プレゼンテーション能力、情報収集能力といったコンピテンシ
ーの向上に期待が寄せられた。
(4)日本での就職活動に関する理解
就職活動そのものに対する情報不足、在留資格や年金などの就職に付随する社会制度へ
の理解といったインフラ面の整備に加え、日本人と同様の筆記試験、面接試験対策を事前
に受ける必要性を痛感している元留学生は多い。また、就業目的の明確化、専門性やスキ
ル向上の一環として資格取得を推奨する声も挙げられた。
図表 3-11
F社
業種
職種
製造業
研究職
在学中に取り組むべき課題、要望
在学中に取り組むべき課題、要望
資料の作成や発表スキルを含めたプレゼンテーション能力
の向上と、研究報告書や論文など文書作成について、在学
中に取り組むとよいのではないか。
G社
建設業
技術職
年金等、就職に付随する社会制度に関する情報が必要であ
る。また、ビジネスマナーについても在学中に取り組んで
おくとよい。
H社
製造業
社内で使用するビジネス日本語および企業内の習慣、文化
について事前に習得していると、就職後スムーズに業務に
17
入ることができる。また、就職活動する際に、日本社会全
体の業界分布を知らずメーカーに限定して応募していたの
で、日本における主要業界の分類や分布について在学中に
知る機会があるとよい。
I社
製造業
就職試験は日本人と同じ内容および基準で実施されること
が大半となっているため、就職試験に向けた筆記テスト及
び面接対策が必要である。
J社
業界によって用語や風土が異なるため、就職を希望する業
情報通信業
界に関する理解を深める必要がある。
K社
製造業
資格取得の重要性を在学中から認識しておく必要がある。
また、自己や得意分野をアピールできるプレゼンテーショ
ン能力、企業に関する情報収集能力を習得しておくとよい。
L社
製造業
事務職
外国人留学生の場合、日本での就職活動に関する情報・理
解が不足している。就職活動の開始時期、就職活動に必要
な準備、試験や面接の対策等、就職活動全般に関する情報
提供が急務である。また、ビジネス日本語能力を高めるた
めに、JETROビジネス日本語テストの対策講座を学内
で受講できるとよい。自らの強みは、専門性と語学力(母
語・日本語・英語)の2つを持ち合わせている点であると
感じているので、在学中にどちらもスキルアップしておく
と強みとなるのではないか。
M社
サービス業
留学生が就職時に在留資格を切り替える際、学生時代の専
門や出身国との業務上の関わりについて問われることが多
いため、貿易関係を希望する傾向が強い。在留資格という
外形的な要因によって就職活動の幅を狭めるのではなく、
自らの希望する業種や日本で就職する目的を明確にした上
で、就職活動に臨むことが必要である。
N社
サービス業
インターンシップを経験し、企業での就業の疑似体験をし
ておくとよい。また、学生の場合、大学という環境内でビ
ジネス場面を経験、想定することが困難なため、ビジネス
場面とそれに付随する日本語について経験しておくことが
重要である。
O社
製造業
実践的、具体的な内容のビジネス教育を受けるとよい。
P社
製造業
希望業種でのインターン、アルバイト経験があるとよい。
Q社
製造業
自らの専門性やキャリアパスと業務内容とのギャップが生
じないよう、企業が留学生に求める人材像の明確化が必要
18
である。現状では、企業がどのような人材を必要としてい
るかが学生側に十分伝わっていない。
R社
情報通信業
技術職
日本の組織構造の特徴、日本人の仕事の進め方について、
在学中に取り組むとよい。
3.3 元留学生に対する上司の見解
次に、3.2 の調査で得られた情報を基に、元留学生が直面しているビジネス場面の
実態とそこで生起する問題点について、日常業務において元留学生と接することの多
い上司による見解を以下に報告する。
3.3.1 必要となる日本語能力と求められる行動
英語での業務遂行を基本としているR社を除き、日本語能力に関しては、業務全般で必
要となるため、あらゆる場面で高いコミュニケーション能力が必要とされる。また、社会
人としての行動という観点では、背景理解や周辺情報の咀嚼、コスト意識、プロジェクト
管理能力、確実な「報・連・相」、チームワーク力を求める企業が多い。特に技術系におい
ては、論理性と専門性が高く求められる傾向にある。
図表 3-12
F社
業種
職種
製造業
研究職
必要な日本語能力及び行動能力
必要な日本語能力及び行動能力
業務全般で日本語が必要となり、上司や同僚とはすべて日
本語で会話している。特に、プレゼンテーションの資料作
成・実施、研究報告書や論文の執筆が日本語で行えること
が重要となる。また、研究職ということもあり、論理性と
高い専門性が求められる。
G社
建設業
技術職
業務全般において日本語を使用している。日本語能力はネ
イティブレベルが望ましい。上司への「報・連・相」の徹
底、業務経験から必要知識を帰納する能力、先方にわかり
やすい資料作成が求められる。
I社
製造業
議事録、社内説明書、特許申請等の書類作成をはじめ、業
務全般で日本語が必要となり、上司、同僚とはすべて日本
語で業務を行っている。日本語だけでなく、英語も含めた
対外的なコミュニケーション能力およびプロジェクト管理
能力が求められる。
K社
製造業
業務全般において日本語を使用している。日本語能力はネ
イティブレベルが望ましい。
19
N社
サービス業
事務職
業務全般で日本語が必要となり、上司、同僚、取引先とは
すべて日本語で行っている。また、会議の議事録作成も担
当している。上司や目上の人への配慮を含んだ表現、社会
人としてオンとオフの使い分け、丁寧な表現が日本語で遂
行できることが必要となる。
O社
製造業
海外進出における法務、契約手続き、海外拠点の統括管理
等、業務全般で日本語を使用している。業務を行う上で、
背景理解や周辺情報の咀嚼が十分行えることが求められ
る。さらに、役員会等上程に対応する日本語等、状況に応
じた日本語の使用が必要となる。
P社
製造業
契約書および予算管理、展示会の開催、運営に関わる業務
全般において日本語を使用する。上司、同僚とはすべて日
本語で会話をしている。指示が分からない場合は確認をす
る、業務内容を理解しないまま進めない、といった上司や
同僚への「報・連・相」の徹底が必要である。
Q社
製造業
海外事業展開に関する関連業務全般において日本語を使用
している。日本語能力はネイティブレベルが望ましい。ま
た、自社および取引先の利益を最優先に考えた行動、さら
に、日本と現地をブリッジする人材として誠実で明るく前
向きな人格とチームワーク力が求められる。
R社
情報通信業
技術職
外国人社員に対する日本語能力は不問であるが、プロジェ
クト管理能力、エンジニアとして求められる論理性、担当
領域における日本人社員と同等の専門性を期待する。
3.3.2 現在の日本語能力
現在部下として迎えいれている元留学生の日本語能力に関しては、総じて非常に高い評
価を得ている。ただし、細かな誤用や書類上のチェック等、必要に応じて訂正、フォロー
を行っている企業が多い。R社については、英語での業務が基本ではあるが、打ち合わせ
の大意をつかむレベルの日本語能力を持っており、全く日本語ができない人材ではない。
図表 3-13
F社
業種
職種
製造業
研究職
現在の日本語能力
現在の日本語能力
会話に関しては、ほぼ問題はない。プレゼンテーションの
資料や報告書の作成に苦労しているように感じる。
G社
建設業
技術職
非常に高く、現在のところ問題はない。
20
I社
製造業
コミュニケーション上問題はない。
K社
製造業
会話、社内メール、社内報告ではほとんど問題ない。重要
な顧客や契約書作成の場合は上司のチェックを受ける。
N社
サービス業
事務職
電話応対に関しては問題なく行っている。助詞の使い分け
に苦労しており、訂正することが多い。
O社
製造業
コミュニケーション上特に問題はない。
P社
製造業
非常に日本語能力は高いが、どんなに流暢であっても上司
の意図が伝わらない場面はある。
Q社
製造業
R社
情報通信業
非常に高く、現在のところ特に問題はないと考えている。
技術職
限定的であり、基本的に英語で業務をこなしている。ミー
ティング等一部の業務は日本語で行われているが、ミーテ
ィング内容の大意を聞き取る程度の日本語力はある。ミー
ティング後、英語の分かる日本人社員にまとめて質問し、
疑問点を解消させることで対応している。
3.3.3 外国人留学生への要望
管理者という立場から外国人留学生に対する要望としては、元留学生の視点から在学中
に取り組むべき課題として 3.2.3 に記載した、
(1)ビジネス日本語能力の向上、
(2)日
本企業文化に対する理解、(3)社会人としての行動能力の3点と重複する点が多い。
(1)ビジネス日本語能力の向上
相手との関係、状況、目的に応じた使い分けができるレベルの日本語能力、業務で使用
する資料や文書の読解能力および作成能力の向上を求める企業が多い。
(2)日本企業文化に対する理解
日本文化に対する一般的な理解に加えて、日本企業の組織構造や仕事の進め方に対する
理解、法律等業務を進める上で必要となる背景知識の理解を希望する企業が多く見られた。
(3)社会人として求められる行動能力の向上
チームワーク力、調整能力、情報収集・集約能力、プレゼンテーション能力、規律意識
といったコンピテンシーの涵養を求める声が多数聞かれた。また、事務職の場合は、高い
日本語能力をすでにもった人材が多いため日本語以外の語学力や専門的なスキル・資格を、
技術職の場合は、エンジニアとしての論理性及び専門性を期待する傾向が強い。
21
図表 3-14
F社
業種
職種
製造業
研究職
外国人留学生への要望
外国人留学生への要望
ロジックの構築とプレゼンテーションスキルが在学中に習
得できていると望ましい。また、文理問わず、幅広く基礎
と教養を学生のうちに身につけることが重要である。
G社
建設業
技術職
コミュニケーション能力の涵養と専門知識を在学中に身に
つけておくとよい。
I社
製造業
日本企業で働く上で、日本人的な考え方の情報を事前に提
示しておくと、入社後のカルチャーショックが軽減できる
のではないか。
K社
製造業
日本の法律に対する見方の理解、業務にリンクした専門に
関するカリキュラム、さまざまな専門の資格試験に合格す
る学習と意欲が必要である。
N社
サービス業
事務職
在学中に就職を意識したアルバイト経験やインターンシッ
プ等を通じてビジネス場面を経験することが必要である。
また、日本語能力だけでなく、専門+αのスキルを在学中
に習得しておくことが望ましい。
O社
製造業
留学生の場合、日本人よりも目的意識が高い。
P社
製造業
情報収集及び集約能力と基本的なPCスキルは在学中に習
得しておくべきである。また、納期を徹底する等、規律管
理の意識を高めて欲しい。
Q社
製造業
日本社会の常識、マナーの習得は必須であるが、ブリッジ
人材としての素養、具体的には、現地と日本とのチームワ
ーク力、調整能力を研鑽しておくとよい。また、日本語能
力もさることながら、日本語以外の語学と資格取得等専門
スキルの獲得を在学中に行うことが好ましい。
R社
情報通信業
技術職
日本の組織構造の特徴、日本人の仕事の進め方、意欲さえ
あれば、それ以外は特にない。
3.4 考察
以上、①企業の人事担当者、②元留学生、③元留学生の上司、という立場の異なる 3
者に対する調査の結果を概観した。これら 3 者の調査から、企業が求める人材像と元
留学生の就業促進に向けた課題について、以下に述べる。
3.4.1 元留学生に対して企業が求める人材像
人事部門に対する調査から、元留学生に対して、職種、国籍を問わず優秀であること、
22
そして、グローバル化に対応できる素質、能力を備えていることの 2 点に大きく期待した
上で採用する傾向にあることが明らかになった。したがって、企業は元留学生を「高度グ
ローバル人材」として活用することに主眼を置いて採用する傾向が強いといえよう。また、
日本企業での採用の際は、中長期的な視野での人材育成、スキルマップを想定しているこ
とから、この点に関する理解と日本で就職する意義の明確化を就職時に求めている。
一方、採用された元留学生からは、企業が元留学生に対してどのような期待、キャリア
パスを想定しているのか明示されていないという指摘がなされた。元留学生自身も自らが
備え持つグローバルな視点、能力を十分に発揮できる人事配置を求めていることからも、
企業側の意向が十分に伝わっていない可能性が高い。したがって、企業側が元留学生に対
して求めている人材像を明確に発信する必要があると言える。
3.4.2 就職後の課題
企業側、元留学生側双方の調査から、3.4.1 の人材像に加え、大きく以下の3点が課題
として指摘された。企業側は以下の項目についての研鑽を求める一方、元留学生側も就職
後に苦労した項目として同様の項目を指摘している。したがって、双方とも方向性として
は共通の問題意識といえる。特に、日本語やマナー等、表面化しやすい問題については、
双方の見解が比較的一致している。しかしながら、企業文化、行動能力といった言語面に
比べ必ずしも明示的でない項目に関しては、企業が社会人として求めるレベルと元留学生
が自身の課題として認知している課題の間には差異があり、企業の求めるレベルが元留学
生側の問題意識として顕在化していない傾向にある。
(1)ビジネス日本語
この点については、業務を遂行する上で表面化しやすい課題のため、双方の問題意識が
一致しており、大きく3点に集約される。
①
相手に応じて使い分けるコミュニケーション能力
まず、相手との関係、場面、目的に応じて適切に使い分けるコミュニケーション能力で
ある。特に、社内と社外、上司と同僚等、ビジネス場面で使用される敬語や丁寧語などの
待遇表現に関する指摘が多い。
②
非対面型コミュニケーション能力
次に、電話応対やメール等、非対面型のツールに対応するコミュニケーション能力であ
る。打ち合わせなど、対面してコミュニケーションをとる場合、言語面だけではなく、非
言語面をも駆使することが可能であるが、電話やメールの場合、言語面による情報伝達に
比重が高くなるため、日本語が母語ではない元留学生にとって負担が大きいと言える。
23
③
文書読解能力および作成能力
3 点目は、業務上必要となる文書の読解能力および作成能力である。職種や業種に応じ
て、必要となる文書は異なるものの、読む・書くという能力は共通して必要となる。
(2)ビジネス文化・知識への理解
元留学生側は、社内の上下関係、
「報・連・相」をはじめとする日本企業特有の習慣、文
化、特質に関する指摘が多い。一方、企業側は、上述の点に加え、企業を取り巻く背景理
解や周辺情報の咀嚼、コスト意識、チームワーク力、コスト意識を挙げており、留学生側
の問題意識よりも強い。
(3)社会人としての行動能力
この点についても、
(2)と同様に、元留学生側の問題意識と、企業の求めているレベル
にギャップが生じている。留学生側は、ビジネスマナー、プレゼンテーション能力、情報
収集能力を課題としてあげている。一方、企業側は、留学生側と同様の問題意識に加えて、
調整能力、情報収集・集約能力、規律意識、プロジェクト管理能力、確実な「報・連・相」
、
チームワーク力、と幅広い能力を求める企業が多い。特に技術系においては、論理性と専
門性への期待が強い。
24
第4章
アンケート調査結果(1)−企業担当者―
第 4 章および第 5 章では、アンケート調査の結果に基づき、日本企業における外国人留
学生の雇用実態を把握する。アンケート調査票の配布数 3,500 社のうち、回答総数は 352
(回収率 10.0%)であった。まず、第 4 章では、企業担当者向けのアンケート調査票(回
答数 288)の結果を踏まえ、外国人留学生の就業促進における課題を明らかにする。
4.1 調査対象企業の概要
(1)業種
今回の調査で回答のあった企業を業種別に見ると、
「製造業」の割合が最も高くなってい
る(67.0%)。続いて、「卸売・小売業」(15.3%)
、建設業(5.9%)となっている。
図表 4-1 業種別企業数
業種
回答数
農業
0
林業
0
漁業
0
鉱業
0
建設業
17
製造業
193
電気・ガス・熱供給
1
情報通信業
5
運輸業
5
卸売・小売業
44
金融・保険業
4
不動産業
1
飲食店・宿泊業
1
医療、福祉
0
教育、学習支援業
1
複合サービス業
2
サービス業(他に分類されないもの)
7
分類不能の産業
4
その他
3
合計
288
割合
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
5.9%
67.0%
0.3%
1.7%
1.7%
15.3%
1.4%
0.3%
0.3%
0.0%
0.3%
0.7%
2.4%
1.4%
1.0%
100.0%
(2)資本金
「10∼50 億円未満」の割合が最も高くなっている(31.7%)。次いで、
「1∼10 億円未満」
(23.5%)、「50∼100 億未満」(16.4%)となっている。
図表 4-2 資本金別企業数
11.4%
1億円未満
1.1%
23.5%
1億∼
10億円未満
10億∼
50億円未満
16.0%
50億∼
100億円未満
100億∼
500億円未満
16.4%
500億円以上
31.7%
N=281
25
(3)従業員規模
今回回答が得られた企業の正規従業員数は、
「100∼499 人」の規模が 38.2%と最も多く、
次いで「1,000∼4,999 人」の規模(26.3%)、
「500∼1,000 人」の規模(16.5%)となって
おり、やや幅が見られた。
図表 4-3 従業員数
6.0%
6.0% 2.5% 4.6%
0∼
49人
50∼
99人
100∼
499人
26.3%
38.2%
500∼
999人
1,000∼
4,999人
5,000∼
9,999人
10,000人
以上
16.5%
N=283
(4)全体の売上に占める海外事業の比率
海外事業実績のある企業のうち、企業全体の売上に対して海外事業が占める割合が 1 割
以下の企業が約半数見られた。
図表 4-4 全体の売上に占める海外事業の比率
5%
2%
5% 3%
3%
4%
46%
8%
10%
14%
0∼9%
10∼19%
20∼29%
30∼39%
40∼49%
50∼59%
60∼69%
70∼79%
80∼89%
90∼100%
N=168
4.2 外国人従業員の雇用状況
(1)グローバル人材の確保
今後、新卒採用において、グローバルに活躍できる人材を獲得したいと考えているかと
いう質問に対し、72.8%の企業が獲得を考えているとの回答が得られた。グローバルな人
材に対する関心が 7 割強の企業から得られたということは、企業の国際化に対する関心の
高さが窺える。
26
図表 4-5 新卒採用におけるグローバル人材の獲得希望の有無
27.2%
はい
いいえ
72.8%
N=283
(2)グローバル人材の属性
上記の問に対し、獲得したい属性については、
「海外留学し、大学等を卒業した日本人」
(43.9%)と「日本に留学し、大学等を卒業した外国人」
(37.0%)の数がいずれも 4 割前
後と拮抗している。
図表 4-6 獲得したいグローバル人材の属性
12.1%
37.0%
日本に留学し、大学・大学
院を卒業した外国人
左記以外の外国人
海外留学し、大学・大学院
を卒業した日本人
その他
43.9%
6.9%
N=289
(3)元留学生の採用実績
アンケートの回答のあった企業の約半数が元留学生の新卒採用経験があった。
図表 4-7 元留学生の新卒採用実績の有無
ある
49.3%
50.7%
ない
N=286
27
(4)採用理由
採用実績のある企業に対し、その採用理由について回答を求めたところ、国籍に関係な
く優秀な人材の確保を行うという理由が最も多くあげられた。これは、ヒアリング調査の
結果とも一致し、優秀な人材であるということが企業における新卒採用の最優先事項とな
りつつあることを示していると考えられる。
図表 4-8 採用理由
112
国籍に関係なく優秀な人材を確保するため
41
海外の取引先に関する業務を行うため
自社(又はグループ)の海外法人における
36
将来の幹部候補として
新規に海外進出(工場、現地法人立ち上げ等)
36
する際に発生する業務を行うため
自社(又はグループ)の海外法人との
32
調整業務を行うため
23
日本人への影響も含めた社内活性化のため
日本人では確保しにくくなった専門分野を補うため
4
その他
3
0
20
40
60
80
100
120
N=287
28
(5)主要業務内容
従事する業務内容としては、技術系の開発・設計と事務系の販売・営業の 2 つが突出し
ている。
図表 4-9 主な業務内容(上位 10 項目)
66
販売・営業
64
開発・設計
33
企画関連
経理・会計
28
・財務
26
研究・調査
製造・生産
24
・品質管理
15
その他
購買・
12
原価管理
12
人事管理
11
物流管理
9
情報システム
0
10
20
30
40
50
60
70
N=318
29
(6)採用のポイント
採用のポイントとしては、
「日本語能力」、
「専門知識」、
「日本語以外の語学力」が上位を
占めており、採用の際、日本語能力を重視していることが明らかとなった。日本語以外の
語学力としては、英語力、留学生の母語を期待する傾向にあり、グローバル人材として日
本と海外をつなぐ語学力を期待している傾向も強いと考えられる。これら結果は、ヒアリ
ング調査で明らかになった点と一致する。
図表 4-10
採用したポイント
96
日本語能力
74
専門知識・能力
54
日本語以外の語学力
48
向上心
42
異文化への適応
40
性格
日本の文化・社会に関する
一般教養的知識
19
その他
12
人脈・紹介
12
学歴・資格
12
6
年齢
0
20
40
60
80
100
120
N=415
30
(7)元留学生に対する評価
他の外国人人材と比較した上で、元留学生に対しては日本人とのコミュニケーションを
円滑にとっていることを高く評価している。この点は、
(6)の結果とも関連しており、採
用時に日本語能力を重視した結果、日本語での円滑なコミュニケーションに対して高く評
価していると考えられる。
図表 4-11
他の外国人人材と比較して元留学生が評価できる点
現場における日本人とのコミュニケーションを
上手にとることができる
93
日本企業における働き方に理解が得やすい
65
日本人にも好影響を与えることができ、社内
がより活性化される
42
長期雇用に対する理解が比較的得やすく、定
着が期待できる
42
日本人への愛着が高く、企業への愛着にも繋
がりやすい
33
専門知識が豊富である
21
長期的な人材育成に対する理解が得やすく、
キャリアパスが比較的作りやすい
14
その他
10
人脈が豊富である
2
0
20
40
60
80
100
N=322
31
(8)採用時から就業後までに重視する項目の経過
採用時、入社時、入社後という3つの時間軸で比較し、各時点で重視する項目に変化が
見られるかどうかを調査した結果、採用時においては、前述の通り「日本語能力」を重視
している。一方、入社後に企業独自で育成していきたい項目としては、
「専門知識」をあげ
た企業が最も多く、次いで、傾聴力や柔軟性等の「チームで働く力」や課題発見力や計画
力等の「考え抜く力」といった社会人としての行動能力を挙げている5。専門知識について
は、学生時代の専門だけにとらわれない考え方、入社後に企業独自のカラー、方針で育成
していきたいという日本企業の特徴が影響していると考えられる。また、これらの項目に
ついては、入社時点で企業が求めていた能力との差が大きいことから、入社後の課題とし
ても考えられる。
図表 4-12
採用時、入社時、入社後に重視する項目
母語を含む日本語以外の語学力
47
19
日本語力
77
15
専門知識
83
66
58
24
日本企業文化・働き方への対応力
108
54
37
日本語文化・社会への対応力
40
①採用時に重視する
項目(N=501)
54
50
②入社時点で企業が
求めていた基準に達し
ていた項目(N=367)
47
37
53
前に出る力
考え抜く力
32
チームワーク力
その他
58
51
75
③入社後に企業として
育成したい項目
(N=396)
63
36
75
0
3
2
0
25
50
5
75 100 125
経済産業省「社会人基礎力研究会」の定義する「社会人基礎力」に基づき分類した。
「社会人
基礎力」とは、
「職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事も行っていく上で必要な基礎的な
能力」のことであり、
「前に踏み出す力(アクション)」
「考え抜く力(シンキング)
」
「チームで
働く力(チームワーク)」の 3 つの能力から構成される。
32
4.3 今後の活用方針
(1)今後の活用意向
2006 年度と比較した上で、今後の元留学生の活用方針について質問したところ、
「2006
年度よりも積極的に活用したい」企業が 10.9%、「2006 年度と同様の活用」を考えている
企業が 14.0%となっており、今後の活用を前向きに検討している企業(18.6%)と合わせ
ると 4 割強の企業が、留学生の採用に前向きな見解を示している。その一方、ほぼ同数と
なる 43.9%の企業が今後の採用については「未定」となっている。
図表 4-13
2006 年度と比較した今後の元留学生採用方針
10.9%
2006年よりも積極的
に活用したい
14.0%
2006年と同様に活
用したい
43.9%
今後できれば活用し
たい
活用の予定はない
18.6%
未定である
12.6%
N=285
(2)採用希望の留学生の属性
文系、理系とも、大学卒業時の採用を考えており、続いて日本の大学を卒業した大学院
修了者を考えている。企業のニーズとしては、文系出身の元留学生よりも理系出身者のほ
うが若干上回っている。
図表 4-14
採用したい留学生の属性
152
大卒(理系)
122
大卒(文系)
119
院卒(理系・日本の大卒)
87
院卒(理系・海外の大卒)
60
院卒(文系・日本の大卒)
47
院卒(文系・海外の大卒)
24
博士課程修了者
15
その他
10
短大・高専・専門学校
0
50
100
150
200
N=636
33
(3)外国人活用時の不安要因
日本人学生と比較し、外国人を活用する際に不安な要素として挙げられている項目には、
「定着/離職率」、「組織への順応性」、「日本語能力」の順となっている。離職の不安につ
いては、ヒアリング調査時にも企業側から挙げられた課題のひとつであった。日本企業の
場合、中長期的雇用を考えているため、離職が増加することで企業の雇用形態や人材育成
方針に多大な影響があることが一因と推察される。また、組織への順応性、日本語能力に
関する不安については、外国人特有の課題であり、文化的背景の違いによる影響を懸念し
ていると考えられる。
図表 4-15
外国人が就業する際に日本人と比べて不安な点
定着/離職率
165
組織への順応性
149
日本語能力
148
日本の文化・社会に関する
一般教養的知識
84
雇用手続き
80
協調性
79
顧客対応
45
性格
36
年齢
26
専門知識・能力
17
向上心
10
その他
5
日本語以外の語学力
5
学歴・資格
3
0
50
100
34
150
200
N=852
(4)留学生に関する情報獲得手段
今後の活用に向けた留学生に関する情報獲得の手段として、企業側は、大学の事務局、
教授陣等、大学側からの積極的なアクション、情報提供を期待している。
図表 4-16
留学生に関する情報獲得の手段
大学による企業訪問等を通じた
情報提供
87
81
大学教授による情報提供
大学の協力によるインターン
シップの実施
66
民間企業のインターネットによ
る情報提供
60
大学キャリアオフィスからのDM
60
大学・研究室のOB/OGによる
情報提供
46
留学生会など留学生間ネット
ワークによる情報提供
33
12
その他
0
20
40
60
80
100
N=445
4.4 就業に向けた留学生在学中の研修
(1)インターンシップの効果
在学中のインターンシップについては、日本人学生による活用は年々増加しており、学
生側、企業側双方にとって有用な就業擬似体験として認知されているものの、留学生に対
するインターンシップについては現況では稀有な事例になっている。留学生を知る手段と
してのインターンシップの有効性については、全体の 70%強の企業がその効果に肯定的で
ある。
図表 4-17
4.8%
インターンシップの効果
9.6%
非常に効果的
だと思う
24.3%
効果的だと思
う
あまり効果的
ではない
効果的ではな
い
61.4%
N=251
35
(2)インターンシップ受入の可能性
インターンシップの有効性については、前述の見解がなされている一方、インターンシ
ップを受け入れる可能性については、前向きに検討している企業が約 30%にとどまってい
る。企業側のより積極的な受入が望まれる。
図表 4-18
インターンシップ受入の可能性
3.4%
28.0%
積極的に受け入れ
る可能性がある
28.4%
受け入れる可能性
がある
あまり受け入れる
可能性はない
可能性はない
40.2%
N=261
(3)在学中に必要な研修内容
ヒアリング調査と同様に、
「ビジネス日本語」に関する要望が最も強くなっている。また、
「日本文化、社会に対する理解」に関する要望、
「企業文化、商習慣の理解」に関する要望
が高くなっている。
図表 4-19
在学中に受講することが望ましい研修
197
ビ ジネス日本語
159
日本の文化・社会に関する 一般教養知識
122
日本の企業文化・商習慣
86
専門知識・技術
81
ビ ジネスマナー
75
日本企業を 含む業界知識
イ ン ターン シップ など の擬似就業体験
26
日本語以外の語学
25
7
その他
0
50
100
150
200
N=778
36
4.5 企業が求める能力
(1)期待する日本語レベル
採用時のポイントとして、企業側が元留学生の日本語に関心が高いことが明らかとなっ
たが、8 割以上の企業が元留学生には大半の業務を日本語で遂行することを期待している。
この点は、ヒアリング調査とも一致し、現状では日本企業に勤務する以上は高い日本語能
力が求められることを示唆している。
図表 4-20
期待する日本語能力(口頭コミュニケーション能力)
0.0%
11.2%
(話す・聞く)
まったく業務の遂行に
問題がない
0.0%
33.5%
おおむね業務の遂行
に問題がない
ある程度業務が遂行
できる
日本語での業務遂行
は、あまりできなくても
よい
日本語での業務遂行
は、ほとんどできなくて
もよい
55.4%
N=269
図表 4-21
期待する日本語能力(書記コミュニケーション能力)
0.4%
16.4%
(読む・書く)
まったく業務の遂行に
問題がない
0.0%
30.9%
おおむね業務の遂行
に問題がない
ある程度業務が遂行
できる
日本語での業務遂行
は、あまりできなくても
よい
日本語での業務遂行
は、ほとんどできなくて
もよい
52.4%
N=269
37
(2)ビジネス場面における日本語能力の必要性
具体的な場面を想定した上で期待される日本語能力および現在の日本語能力について、
「1.ほとんどできない」
「2.あまりできない」「3.ある程度できる」「4.おおむね問題ない」
「5.全く問題ない」の 5 段階評定の調査を行い、その平均値を算出した。その結果、いず
れの項目もおおむね業務の遂行に問題のないレベルを求めている。したがって、日本企業
において元留学生が勤務する上では、日本語能力が高い方が望ましい。
図表 4-22
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(口頭コミュニケーション能力)
(口頭)
3.9
1.敬語・丁寧語等
2.相手の依頼・苦情対応
4.1
3.8
3.依頼・主張
4.0
3.9
4.相手への確認
3.6
6.電話での用件連絡
3.8
3.4
3.6
4.2
4.0
7.電話の要点確認
3.2
現在の能力
求められる能力
4.2
4.0
5.相談・報告
図表 4-23
4.1
3.8
4.0
3.8
4
4.2
4.4
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(書記コミュニケーション能力)
(書記)
3.7
3.7
8.新聞読解
3.8
9.資料スキャニン グ
3.7
10.資料スキミン グ
3.9
3.7
12.メール発信
3.6
14.ビ ジネスレター作成
3.4
3.6
現在の能力
求められる能力
3.9
3.8
13.受信メールへの返信
3.2
3.8
3.6
11.報告文書作成
4.0
4.0
3.8
3.8
38
4
4.2
図表 4-24
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(複合的コミュニケーション能力)
(複合)
3.7
15.プ レゼン 理解と要点作成
3.5
16.資料作成とプ レゼン 実施
3.9
3.8
3.6
17.議論理解と意見発信
3.5
18.会議理解と報告作成
3.2
3.4
3.6
現在の能力
求められる能力
3.9
3.8
3.8
4
(3)ビジネス場面における社会人としての行動能力の必要性
社会人として求められる行動能力6のうち、いずれの項目も「おおむね問題ないレベル」
を期待しているにもかかわらず、現在の能力としては「ある程度できるレベル」という評
価にとどまっているものが多く、求められる能力に達している項目が見られなかった。
図表 4-25
現在の行動能力と業務上必要なレベル
3.7
1.主体性
3.4
2.働きかけ力
4.1
4.0
3.6
3.実行力
4.1
3.6
4.課題発見力
4.0
3.6
5.計画力
4.0
3.5
6.創造力
4.0
3.7
7.発信力
4.1
3.5
8.傾聴力
3.9
3.5
9.柔軟性
4.0
3.6
10.情況把握力
4.0
3.7
11.規律性
3.7
12.ストレスコントロール力
3.2
3.4
3.6
現在の能力
求められる能力
4.1
4.0
3.8
4
4.2
4.4
「社会人基礎力」の 3 つの能力を構成する 12 の能力要素。1-3 は「前に踏み出す力」、4-6
は「考え抜く力」、7-12 は「チームで働く力」の能力要素として定義されている。
6
39
第5章
アンケート調査結果(2)−元留学生―
第 5 章では、元留学生に対するアンケート調査の結果に基づき、日本企業における外国
人留学生の雇用実態を把握する。アンケート調査票の配布数 3,500 社のうち、回答総数は
352 であった。そのうち、第 5 章では、元留学生向けのアンケート調査票(回答数 64)の
結果を踏まえ、元留学生の就職の実態や就業状況について把握する。
5.1 元留学生の属性
(1) 性別
今回のアンケート調査で回答が得られた元留学生の男女比は、男性が 61%、女性が 39%
となっている。
図表 5-1 元留学生の性別
女性
39%
男性
女性
男性
61%
N=64
(2) 出身国・出身地域
出身国・地域では、
「アジア」が 98%と最も多く、なかでも中国が 46 名と最も多くなっ
ている。
図表 5-2 元留学生の出身国・地域
国・地域
中国
台湾
韓国
インドネシア
ベトナム
アジア
インド
マレーシア
タイ
モンゴル
ミャンマー
欧州
ブルガリア
40
46
4
3
2
2
2
1
1
1
1
1
64
N=64
(3) 日本での最終学歴
日本での最終学歴は、
「大学院修士課程」が 43%と最も多く、次いで「大学」が 39%と
なっており、修士課程修了者が若干多い。
図表 5-3 元留学生の最終学歴
11%
0%
高等学校
2%
専門学校・専修
学校
大学
5%
39%
大学院(修士)
大学院(博士)
その他
43%
N=64
(4) 専門分野
大学・大学院時の専門分野については、「工学」系が最も多く 36.7%となっている。人
文社会科学系があわせて 40%を占めており、理工学系と人文社会科学系がほぼ同数となっ
ている。
図表 5-4 元留学生の専門分野
20.0%
20.0%
人文科学
社会科学
1.7%
理学
工学
20.0%
農学
その他
36.7%
1.7%
N=64
(5) 滞在年数
今回のアンケート調査で回答が得られた元留学生の平均滞在年数は 7.8 年、平均在職年
数は 3.6 年であった。
41
5.2 元留学生の就職時状況
(1) 入社前の日本語能力
日本語能力試験 1 級取得者が 41 名(89%)と最も多かった。
(2) 日本語学習期間
日本企業に就職するまでに日本語を学習した平均期間は 4.2 年であった。
(3) 就職の動機
留学生が留学後に就職をする場合、母国へ帰国するケースと日本にそのまま滞在し日本
で就職するケースの 2 つに大別される。日本で就職した動機を調査したところ、
「キャリ
ア・スキル形成ができる」という理由が最も多かった。この点はヒアリング調査の際にも
同様の傾向が見られた。特に、中国では、現地での新卒就職状況が厳しく、帰国をしても
希望した業種、職種に就職が難しいという声が多数聞かれた。日本企業での就業経験が現
地でのキャリア、処遇に好影響を与えることから、まずは日本で就職し、キャリア、スキ
ルの形成をしたいと考えている元留学生が多いと推測される。
また、
「仕事の内容に興味があったから」という自らの職業観、希望職務との一致や、
「留
学経験を生かせるから」
「習得した日本語を行かせるから」という元留学生特有の動機も上
位を占めている。
図表 5-5 日本で就職した動機
37
キャリア・スキル形成ができるから
32
留学経験を生かせるから
31
仕事の内容に興味があったから
30
習得した日本語を生かせるから
21
学生時代の専門を生かせるから
18
企業ブランド・イメージがよかったから
17
日本で生活がしたかったから
13
会社の将来性が期待できたから
11
日本企業との人脈が作れるから
10
会社の規模や安定性に魅力を感じたから
9
充実した社員研修制度があるから
8
給与・賞与がよかったから
2
その他
0
5
10
42
15
20
25
30
35
40
N=239
(4) 就職活動のネットワーク活用
就職活動の際には、日本人学生同様、インターネットを活用した元留学生が最も多かっ
た。また、大学のキャリアオフィス(就職課)等の活用も見られる。
図表 5-6 日本で就職した動機
44
インターネットから入手した
29
大学のキャリアオフィスを活用した
14
大学の同期や友人のネットワークを活用した
13
教授のネットワークを活用した
12
大学のOB・OGのネットワークを活用した
9
その他
5
母国のネットワークを活用した
0
10
20
30
40
50
N=126
5.3 元留学生の職務内容
(1) 職種と対象地域
今回のアンケートに回答が得られた元留学生の場合、事務職と技術・研究職の割合がほ
ぼ同数であった。大学時の専門分野の項目において、理工学系と人文社会科学系がほぼ同
数であったことから、同様の結果が得られたと考えられる。
図表 5-7 元留学生の職種
3.2%
0.0%
事務(総合)職
50.8%
46.0%
技術(総合)職
研究職
その他
N=64
43
また、業務上対象となっているエリアについては、76.6%が国内関連業務と海外関連業
務を兼務しており、そのうち 46.9%の元留学生は国内業務のほうが比重が高いことが明ら
かとなった。
図表 5-8 元留学生の対象エリア
12.5%
29.7%
国内向けの業務のみ
10.9%
海外向けの業務のみ
国内と海外の業務で国内
の業務がメイン
国内と海外の業務で海外
の業務がメイン
46.9%
N=64
44
(2) 業務内容
業務としては、「開発・設計」が最も多く、次いで、「企画関連」となっている。具体的
な業務内容では、
「通訳・翻訳」が多くなっており、特に元留学生の語学力(日本語力とそ
れ以外の言語)に対する企業側の期待が大きいことと関連している。
図表 5-9 元留学生の主な業務
図表 5-10 具体的な業務内容
17
開発・設計
22
通訳・翻訳
13
企画関連
19
技術改良
11
その他
検討書・
14
報告書の作成
9
販売・営業
11
その他
製造・生産・
品質管理
8
研究・調査
8
人事管理
8
シミュレーショ ン
9
・解析
9
商品企画
販促・
経理・会計
・財務
8
営業活動
7
事業計画・
情報
システム
8
予算管理
5
各種申請・
購買・
広報・宣伝
3
総務・庶務
3
2
法務事務
0
8
認可取得
4
原価管理
5
10
15
20
照査・テスト
7
プ レゼン テーショ ン
7
契約
7
取引相手
7
の選定
工程管理
6
庶務管理
6
決算・精算
5
販売・
5
仕入れ
製造・
施工管理
4
工場業務
4
取引商品の
4
開拓・選定
販売・購入の
3
計画立案
0
45
5
10
15
20
25
(3) 就職時の問題点
日本企業に就職した際の問題点としては、
「日本語」に関する項目が最も多かった。この
点は、外国人特有で課題であると同時に企業側が挙げている課題とも重複し、企業側、元
留学生側双方にとって「日本語能力」が日本企業で勤務する上での大きな課題として位置
づけられている。この点はヒアリング調査と同様の傾向といえる。
図表 5-11
就職時の課題
25
日本語
22
専門知識
18
文化の違い
企業文化
・習慣
17
13
電話応対
職場の
人間関係
12
10
仕事の進め方
時間外の
付き合い方
8
日本語以外
の語学
8
寮・社宅
7
顧客対応
7
人事
評価制度
6
家族・子供
5
転勤・転職
の相談
5
給与・賞与
5
0
その他
0
5
10
15
20
25
30
N=168
46
(4) 元留学生活用に向けた課題
留学生が日本企業でより活躍できる環境を構築するために必要な項目として、
「日本人社
員の異文化理解力」と「留学生を人材として活かす方法の共有・蓄積」が挙げられている。
外国人人材を受け入れるに際し、日本企業が組織的、制度的に受入可能な環境を早急に整
えるだけではなく、組織のマジョリティである日本人社員の意識変容、改革が急務といえ
る。
図表 5-12
留学生が日本企業で活躍するために必要な項目
34
日本人社員の異文化理解力
留学生を 人材として活かす方法の共有・蓄積(現場・人
事)
31
25
ビ ジネスに必要な日本語教育の充実
21
評価・処遇の透明性の確保
19
年功よ りも能力重視の評価・処遇体系
入社直後の仕事のやり方を OJT的に伝授
18
就職に関する 情報と機会の大幅な拡大
18
日常業務における 上司の丁寧なサポート
18
職務内容の明確化
18
仕事、プ ラ イ ベートに関し相談できる カ ウン セラ ーの配
置
14
12
母国の宗教・風土・習慣への理解
研修メニューの充実
11
キャリアパス(社内ロ ーテーショ ン )の明示
11
7
時間外の過ごし方に対する 理解
2
その他
0
5
47
10
15
20
25
30
35
N=259
(5) 在学中に必要な研修内容
在学中に必要な研修としては、企業担当者の回答と同様に、
「ビジネス日本語」に関する
要望が圧倒的に多くなっている。
図表 5-13
在学中に受講することが望ましい研修
ビ ジネス
41
日本語
日本の文化・社会に関する
27
一般教養的知識
26
ビ ジネスマナー
日本企業を 含む
25
業界知識
24
専門知識・技術
イ ン ターン シップ など の
20
就業の擬似体験
日本の企業文化
20
・商習慣
日本語以外
11
の語学
1
その他
0
10
20
48
30
40
50
N=195
5.4 外国人が就業する際に必要な能力
(1) 現在の日本語レベル
第 4 章では、8 割以上の企業が元留学生には大半の業務を日本語で遂行することを期待
していることが明らかとなったが、元留学生に対し現在の日本語能力を確認した結果、9
割以上が業務を日本語で問題なく遂行しているという回答が得られた。この結果は、ヒア
リング調査とも一致しており、現状では日本企業に勤務する上で高い日本語能力が求めら
れ、また現在日本企業に勤務する元留学生の日本語能力が非常に高いレベルにあることを
示唆している。
図表 5-14
現在の日本語能力(口頭コミュニケーション能力)
(話す・聞く)
0%
0%
4%
まったく業務の遂行に問題が
ない 42%
おおむね業務の遂行に問題
がない
ある程度業務が遂行できる
日本語での業務遂行は、あま
りできなくてもよい
54%
日本語での業務遂行は、ほと
んどできなくてもよい
図表 5-15
現在の日本語能力(書記コミュニケーション能力)
(読む・書く)
2%
5%
0%
36%
まったく業務の遂行に問題が
ない おおむね業務の遂行に問題
がない
ある程度業務が遂行できる
日本語での業務遂行は、あま
りできなくてもよい
日本語での業務遂行は、ほと
んどできなくてもよい
57%
49
(2) ビジネス場面における日本語能力の必要性
具体的な場面を想定し、現在の日本語能力と業務上求められる日本語能力に関して、企
業担当者同様、
「1.ほとんどできない」
「2.あまりできない」
「3.ある程度できる」
「4.おおむ
ね問題ない」
「5.全く問題ない」の 5 段階評定の調査を行い、その平均値を算出した。その
結果、現在の能力が業務で求められるレベルに達していない(現在の能力<求められる能
力)と評価した項目(表中:点線の楕円)と、業務で求められる能力よりも現在の能力が
上回っている(現在の能力>求められる能力)と評価した項目(表中:実線の楕円)の 2
つに大別された。
前者(現在の能力<求められる能力)は大きく 3 つの項目が挙げられ、
「敬語、丁寧語」、
「依頼、主張」等、相手との関係と場面に応じて対応や表現に変化が必要とされる項目、
ビジネスレター作成、プレゼンテーションや会議等の複合的なコミュニケーション能力が
必要となる項目の 3 点であった。
一方、後者(現在の能力>求められる能力)は、
「報告・相談」、
「電話応対」、
「資料読解」、
「メール応対」の 4 項目が挙げられる。
図表 5-16
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(口頭コミュニケーション能力)
口頭コミュニケーション能力(聞く・話す)
1.敬語・丁寧語等
3.7
2.相手の依頼・苦情対応
3.8
3.依頼・主張
3.8
4.5
4.6
4.6
4.2
4.相手への確認
4.7
5.相談・報告
6.電話での用件連絡
7.電話の要点確認
4.8
4.2
4.1
3.8
4.6
4.7
3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8
50
現在の能力
求められる能力
図表 5-17
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(書記コミュニケーション能力)
書記コミュニケーション能力(読む・書く)
8.新聞読解
4.6
4.0
9.資料スキャニング
4.6
10.資料スキミング
4.1
4.6
11.報告文書作成
4.1
4.6
12.メール発信
3.8
13.受信メールへの返信
4.7
3.9
3.6
14.ビジネスレター作成
3.4
図表 5-18
現在の能力
求められる能力
4.7
4.2
4.5
3.9
4.4
4.9
現在の日本語能力と業務上必要なレベル(複合的コミュニケーション能力)
複合的なコミュニケーション能力
4.0
15.プレゼン理解と要点作成
4.6
16.資料作成とプレゼン実施
3.6
4.5
現在の能力
求められる能力
3.8
17.議論理解と意見発信
4.6
3.5
18.会議理解と報告作成
4.5
3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8
しかしながら、後者(現在の能力>求められる能力)で挙げられた「報告・相談」、「電
話応対」、「資料読解」、
「メール応対」の項目について、企業側に実施した現在の能力評定
(第 4 章参照)と比較すると、以下の図表の通り、企業側の評定は元留学生の自己評価ほ
ど高くないことが顕著に現れており、企業側と元留学生側の認識にギャップが見られる。
51
図表 5-19
現在の日本語能力評価比較(口頭コミュニケーション能力)
口頭コミュニケーション能力(聞く・話す)
3.7
1.敬語・丁寧語等
3.9
3.8
3.8
2.相手の依頼・苦情対応
3.8
3.8
3.依頼・主張
4.相手への確認
4.8
5.相談・報告
4.0
4.6
6.電話での用件連絡
3.6
7.電話の要点確認
4.7
3.8
3.4 3.6 3.8
図表 5-20
元留学生
企業
4.2
3.9
4
4.2 4.4 4.6 4.8
5
現在の日本語能力評価比較(書記コミュニケーション能力)
書記コミュニケーション能力(読む・書く)
8.新聞読解
4.6
3.7
9.資料スキャニング
4.7
3.8
10.資料スキミング
4.6
3.7
11.報告文書作成
4.6
3.6
12.メール発信
4.6
3.7
13.受信メールへの返信
元留学生
企業
4.7
3.8
3.6
3.6
14.ビジネスレター作成
3.4 3.6 3.8 4 4.2 4.4 4.6 4.8 5
図表 5-21
現在の日本語能力評価比較(複合的コミュニケーション能力)
複合的なコミュニケーション能力
15.プレゼン理解と要点作成
3.6
3.5
16.資料作成とプレゼン実施
17.議論理解と意見発信
3.6
元留学生
企業
3.8
3.5
3.5
18.会議理解と報告作成
3.2
4.0
3.7
3.4
3.6
52
3.8
4.0
(3) ビジネス場面における社会人としての行動能力の必要性
社会人としての行動能力についても、前述の日本語能力と同様に、現在の能力が業務で
求められるレベルに達していない(現在の能力<求められる能力)と評価した項目(表中:
点線の楕円)と、業務で求められる能力よりも現在の能力が上回っている(現在の能力>
求められる能力)と評価した項目(表中:実線の楕円)の 2 つに大別された。前者(現在
の能力<求められる能力)としては、
「主体性」
「働きかけ力」といった「前に踏み出す力」
が、後者(現在の能力>求められる能力)としては、「考え抜く力」「チームで働く力」が
挙げられる。
図表 5-22
現在の行動能力と業務上必要なレベル
3.8
1.主体性
2.働きかけ力
3.6
3.実行力
3.6
4.5
4.5
3.9
5.計画力
4.5
3.7
6.創造力
4.5
3.6
4.7
3.5
8.傾聴力
4.6
3.7
9.柔軟性
4.6
3.7
10.情況把握力
4.7
4.0
11.規律性
4.7
3.9
12.ストレスコントロール力
3.4
4.6
4.1
3.6
現在の能力
求められる能力
4.6
4.課題発見力
7.発信力
4.6
3.8
4.0
4.2
4.4
4.6
4.8
しかしながら、前章において分析した企業側の評価が元留学生の自己評価と同水準には
達していない点、入社後に育成したい項目として「考え抜く力」
「チームワーク力」を企業
側が挙げていた点を考慮すると、「考え抜く力」「チームワーク力」に関しては、企業側と
元留学生側の認識にずれが生じている可能性が示唆される。
53
図表 5-23
現在の行動能力評価比較
3.8
1主体性
3.7
3.6
2働きかけ力
3.4
4.6
3実行力
3.6
4.5
4課題発見力
3.6
4.5
5計画力
3.6
4.5
6創造力
3.5
4.7
7発信力
3.7
4.6
8傾聴力
3.5
4.6
9柔軟性
3.5
4.7
10情況把握力
3.6
4.7
11規律性
3.7
4.6
12ストレスコントロール力
3.7
3.2
3.4
3.6
3.8
54
4
4.2
4.4
4.6
4.8
元留学生
企業
第6章
文献調査結果
本章では、ビジネスに必要な日本語能力、ビジネス日本語教育についての先行事例や研
究に関する文献調査から、ビジネス日本語教育に関する現況を概観する。
本調査では、ビジネス日本語プログラムを検討する上で必要な5つの分野に該当する文
献の調査を行った。日本での就業を希望する留学生向けのビジネス日本語プログラムへの
示唆という観点から、要旨をまとめた後、①非常に示唆に富む文献、②示唆に富む文献、
③直接裨益しないが、参考になる文献という 3 つのいずれかへの分類を行った。以下、非
常に示唆に富む文献を中心に報告する。
6.1 ビジネス日本語コースにおけるコース設計
ビジネス日本語コースにおけるコース設計、理論について報告する。日本語教育におけ
るコース設計や理論について述べられている文献は多く存在するが、ビジネス日本語に特
化するとその数は少なくなる。その中でコース設計及び理論で非常に示唆に富むものには、
次のようなものが挙げられる。
6.1.1 コース設計
①
田丸(1994)
ビジネス・スクールでの日本語教育のコース・デザインの課題について取り上げている。
ビジネス・スクールでの問題点として、①到達目標の高さと時間的制約、②ニーズ特定の
目標設定の難しさ、③日本語使用の実態に関する情報不足、④文化の扱い方を問題点とし
て挙げている。そこで田丸(1994)では、成功例として CIBER(Center for International
Business Education and Research)のプログラムを取り上げ、そこからビジネス・スクー
ルでのコースの成否は、目標設定、授業の方法、目標到達、評価のそれぞれで学生を納得
させ、主体的に取り組めるようにすることであると述べている。
②
羽太・熊野(2003)
将来対日関係の職務に就く可能性の高い外交官・公務員の日本語研修(スピーチクラス)
において、先行研究より得られた示唆から①学習者の専門知識や経験を利用できるよう、
職業上のタスクを取り入れる、②成功経験が得られるようタスクが内包するコミュニカテ
ィブ・ストレスに留意する、③タスクの中に相互交渉の場を取り入れ、意識的な学習の機
会を作る、という職業人の特性を生かす学習環境を設定した。研修中に学習者自身が目標
言語調査を行い、結果のニーズ分析も学習者自身が行っている。このスピーチクラスは、
このような過去の分析データをもとに設計されている。
55
③
有馬・島田(2002)
埼玉県 JET 青年日本語研修において、学習者にとっての意味のある学習を重視した学習
環境のコース・デザインを実践した。Jonassen, Peck and Wilson(1999)の「意味ある学習
は学習者が積極的に意味を構成している時に起こる」とし、意味ある学習を、能動的、構
成的、主体的、現実的、協調的の 5 つの属性に集約している。有馬・島田(2002)は、この
考えに基づきコースを設計し、体験学習と協調学習をコースの柱とした。そのため、コー
スではグループで活動を行う英語と日本語のスキット作成やフィールドトリップなどが盛
り込まれた。
④細川(2003a,2003b)
どのようなコースを設計するかは、コースの目的により異なるが、コース理論の一つに
細川(2003a,2003b)の総合型日本語教育がある。総合型日本語教育はプロジェクト・ワー
クをベースにしており、学習者が主体となって学習し、問題発見解決能力を身につけるこ
とを目的としている。これは早稲田大学の留学生授業で行われているもので、細川
(2003a,2003b)では授業シラバス、テーマの構成、活動手順、成果、評価、留意点などを
詳細に示している
⑤高見澤(1987)
高見澤(1987)は、アメリカ人外交官に対する実務的な日本語能力の養成を目的とした日
本語及び日本事情の教育の実践例の中で、日本事情が日本語研修と同程度に重要視されて
いることを報告している。また、クラス編成、授業時間数、使用教材、テストと評価など
具体的なコース設計も示している。
⑥宮副(1997)
香港理工大学においてビジネスパーソンを対象としたビジネス日本語コースを実施し、
日本語教師間の連携、日本語教師と学習者の連携、学習者同士の連携、香港の日本人コミ
ュニティーとの連携など、ネットワークを利用した様々な連携を試みた。
6.1.2 学習ニーズ
①池田(1996a)
現在、日本国内には多くのビジネスパーソンが勤務しているが、日本文化や日本式ビジ
ネスに悩まされるビジネスパーソンは少なくない。池田(1996a)では、どのような文化・習
慣をビジネス日本語教育で取り上げるべきなのかを、ビジネスパーソンを対象に行ったア
ンケート結果から明らかにしている。その結果、外国人ビジネスパーソンが困難であると
感じるものは、あいまいさ、企業のアプローチ法、コミュニケーションのとり方など文化
が影響しているものが多かった。そこで池田(1996a)は、今後のビジネス日本語教育は日本
56
語教育の専門家と実際のビジネスの知識を持つビジネスパーソンが連携して行うことが有
効であると示唆している。
②秋山(1994)
平成 5 年に NHK が一部上場企業 298 社を対象に行った「ビジネス・コミュニケーショ
ン上の問題」の調査結果をもとに、ビジネスにおける話しことばの要件を考察した。その
結果、①話の組み立て、②話体の簡潔さ、③音声化の明快さ、④聞き取り能力の適正化、
の 4 つの要素が挙げられた。秋山(1994)は、これらはマニュアル学習で身につくものでは
なく、学校教育の場で身につけるべきであると主張している。
6.2 ビジネス日本語の実践報告と現状、課題
本節では、ビジネス日本語コースの実践報告および現状、課題に関する文献について報
告する。カリキュラムの実践、コースの実践など前節と重複するものも多いため、カリキ
ュラム・デザイン、コース・デザイン、プログラム・デザインなど明確な記述があるもの
は 6.1 に記しており、本節では取り上げていない。
6.2.1 留学生対象のビジネス日本語コース
現在日本国内では高齢化、少子化が加速の一途を辿っている。少子化に伴い日本の大学
等では留学生数を増やし、結果として日本で就職を希望としている留学生が増えているが、
留学生が日本で就職することは容易ではない。一方、これまでビジネス日本語は主にビジ
ネスパーソンを対象に教えられてきた。また、大学における留学生への日本語教育は、留
学生が学校生活の中で必要とされる日本語能力の育成に重きが置かれてきた。しかしなが
ら、留学生も日本人学生のように大学 3 年次になれば就職活動を始めなければならず、就
職活動で必要とされる日本語能力に関しては留学生個人に任されている。
①野元 (2004)
立命館アジア太平洋大学の経営・社会両学部で日本企業への就職を希望する 3 年生の留
学生にビジネス日本語の授業を実施し、その後アンケートを行った。その結果、留学生に
とっては、就職活動は「学習の一環」であり、社会人としてのマナーや日本語運用能力を
高めるためには長期を要するものであるとしている。就職活動をする際には、学習者は教
師から離れ自分の力で判断し行動しなくてはならない。そこで、野元(2004)は「就職活動
を支援する日本語教育」とは「自己成長を促す日本語教育」であり、教師は学生が自発的
に行動し、気づき、考え、自分の目標へと歩んでいくことができるように力を引き出す、
「コーチ」を兼ねると捉えている
57
②野元(2005)
大学におけるビジネス日本語の目的や今後の課題などについて検証するために、立命館
大学アジア太平洋大学の経営学部と社会学部の 3・4 年次在学の留学生に対して「ビジネ
ス日本語」の授業内容についてのアンケートを行った。その結果、学生が一番難しいと感
じていたのは、日本企業の中で何が行われているかに対する理解であった。そのため、野
元(2005)は大学でのビジネス教育を「内定まで」と設定せずに、就職後までを視野に入れ
指導すべきとしている。そして総合的な今後の課題として、①就職活動に関する情報提供、
②就職活動に求められる日本語運用力の養成、③日本企業就職直後の戸惑いをなくすため
の知識、④日本企業就職後に求められる言語行動の手ほどき、⑤低学年生の職業観育成(キ
ャリア形成)
、を挙げている。
③佐々木・吉田(2002)
北陸大学留学生別科で日本の就職事情をトピックにして日本語イマージョンプログラム
を実施した。北陸大学留学生別科では、①日本事情を学ぶ、②自己発見をする、③総合的
な日本語力を養成する、の 3 点がプログラム・デザインする際に念頭に置かれた。イマー
ジョンプログラムでは、就職活動模擬体験、インタビュー、報告・発表会など実践的な活
動が盛り込まれた。一方、講義ではテーマとして「求められる人材」、
「大学生の就職活動」、
「中途採用・失業の現状」などが取り上げられた。
6.2.2 ビジネスパーソン対象のビジネス日本語コース
①清(1995a)
日本語上級レベルのビジネスパーソンが仕事上で感じる日本語の問題点を把握し、ビジ
ネス日本語の教授内容について調査を行った。その結果、上級レベルのビジネスパーソン
は、意見を述べることと、意見を聞くことに問題を感じており、その原因はスピーチレベ
ルが十分に習得できていないことにあるということが浮き彫りとなった。外国人ビジネス
パーソンと日本人ビジネスパーソンと双方に意見を聞いたところ、前者からはスピーチレ
ベル設定が学べる教材が少ないという日本語の学習に対する意見が挙げられたが、後者か
らは言葉だけではなく、日本のビジネス慣習を学んでもらいたいという意見が挙げられた。
②清(1995b)
日本語上級ビジネスパーソンを対象にビジネス日本語の指導の方向性を探るためのイン
タビューを行った。その結果、①上級の学習者には、状況を正確に把握してスピーチレベ
ルを設定する能力及び会話中での意見の産出と受容の能力の養成の 2 つを盛り込む必要が
ある、②一般的に行われている新聞読解等の授業は、ビジネス現場で求められている日本
語能力の養成という目的から外れている、③言語能力が向上すると情意面で越えにくいも
のもある程度越えられる、という 3 つの仮説が検証された。
58
6.2.3 日本人学生対象のビジネス日本語コース
①粟屋(2003)
近年、日本ではニート人口の増加が問題となっている。働く意志のない人たちに、働く
という意識を持たせるためには周りからの働きかけも重要となってくる。粟屋(2003)は、
日本人学生(短大 1 年生)を対象に、就職意識の向上を目的としたプロジェクト・ワークを
実践した。授業では、仕事についての意識付け、企業の情報収集、企業訪問、調査発表な
どが行われた。学生からの聞き取り調査では、実践的な授業を受けたことで就職活動の際
に心強かったという回答や、実際に自分の目で様々な情報を確認したことにより仕事に対
する興味へとつながったという回答が見受けられた。
6.2.4 留学生対象のプロジェクト・ワーク
近年、学習者主体型の教育への移行傾向が見られるが、学習者が主体となって学べる授
業形態の一つとしてプロジェクト・ワークがある。プロジェクト・ワークは学習者が自発
的にクラスに参加することができるという利点があるが、グループ内に同じ国籍の学生が
いると母語で話してしまう、日本語があまり上手でない学生が発言の機会がなかなか得ら
れないなど、日本語能力を伸ばすことができるのかという点では懸念事項も残る。
(1)上級者対象
①佐尾(2003)
上級クラスの口頭表現の授業としてビデオ作品を作成するというプロジェクト・ワーク
を実践した。学生たちはカメラの前で話すという普段とは違った状況を体験することで、
自分の発音を意識するようになり、自然なアクセントを心がけるようになったとしている。
また、原稿作りを通して自分たちの持つ言語知識を最大限に利用する姿勢が見られたこと、
ただ知っているから使用するのではなく、どのような場面でどんな言葉が適切なのかを考
えることができたことが、学生たちにとっての収穫であったと述べている。
②齋木(1991)
同様に、口頭表現のクラスでビデオを用いるプロジェクト・ワークには齋木(1991)があ
る。齋木(1991)は、コマーシャルの特徴の 1 つである「説得のディスコース」が口頭表現
の技術に通じるとして、作成するビデオをコマーシャルビデオに限定して授業を行った。
学習者主体の授業であるため、教師はなるべく口出しをせず、学生からの質問があった場
合でも即答せずに他の学生に尋ねさせて学生の知識を引き出す等のサポート役に徹した。
問題が生じた場合も他のグループにアドバイスを求めさせるなど、教師が主導しないよう
配慮した。実施の結果、グループ内の学習者の国籍が異なっていたこともあり、日本語で
の発話量が増大したと報告している。ただし、プロジェクトが中心だったこともあり、日
本語能力が向上したかについては、語彙や用法といった言語要素のインプットとチェック
59
を充分に行うことができなかったとしている。
③架谷・二村他(1995)
南山大学外国人留学生別科の準上級・上級プログラムにプロジェクト・ワークを組み込
み、グループ・ダイナミクスに注目し、学習効果、特に異文化理解の深まりを考察した。
その結果、グループ内の相互作用の高まりが「参加」「共有化」「役割分担」という現れ方
で学習効果を生んだ。また、グループ外からの作用はグループ内の作用発現に相関し、
「考
察を深める」「論点を絞る」「情報・意見を補強する」という形をとって機能することが分
かった。プロジェクト・ワークを行ったことでの言語学習効果としては、「発話量の増加」
「漢字やコンピューター、報告書の書き方を学びあう」
「理解が得られないときには、他の
言い方をして説明している」などの場面が見られたとしている。初級や中級レベルでのプ
ロジェクト・ワークの導入は、発話者が限定されるなどの問題点が出ているが、上級レベ
ルの学習者では活発的な議論がされているため成功例が多く、その学習効果が期待できる。
(2)中級者対象
①高木・内藤(1991)
中級前半レベルを対象に自己管理学習を目指したプロジェクト・ワークの実践として、
高木・内藤(1991)がある。自己管理学習とは、学習を通して、学習者が自分自身の弱点に
気づいたり、弱点を無くそうと自ら学習計画を立て管理、学習していくことが可能になる
ことである。プロジェクト・ワークでは結果よりもプロセスを重視し、中間報告と発表を
コース内で行い振り返りの時間を設けたり、4 技能を伸ばせるように配慮した 2 種類の自
己評価表を使うなどの工夫をし、目標実現を目指した。自己評価表を用いた結果、学習者
は 4 技能を活発に使用し、日本語や日本文化に対する理解を深めることができた。しかし
ながら、自己管理学習として学習者が自ら学習することができるようになるためには、学
習者自身の「気づき」が動機づけの上でも学習の継続の上でも非常に重要であることが分
かった。教師は学習者に学習者の苦手とする箇所や足りない部分を気づかせるよう促すが、
それでも本人が「気づき」を得られない場合もある。そのため、自己管理学習においては
学習者の心理面での充実がなくてはなかなか成果結びつかないことが認められた。
②倉八(1993)
慶応義塾大学日本語・日本文化教育センターの中級クラスにおいてプロジェクト・ワー
クを実施した。プロジェクト・ワークを導入した目的は次の 3 点である。①プロジェクト・
ワークの学習効果、特に新聞記事の理解力及びその記事についての意見発表力に及ぼす効
果の検討、②学習意欲と学習成果の関係の検討、③プロジェクト・ワークの効果が学習者
の適性によって異なるかどうかの検討である。2回のプロジェクト・ワークを行った結果、
新聞記事の理解力、及び意見の発表力が向上することが示された。学習意欲と学習成果の
60
関係は、プロジェクト・ワークが調査発表への学習意欲を喚起することによって学習成果
を高め、この学習成果がさらなる日本語学習への肯定的態度をもたらすという形で示され
た。プロジェクト・ワークの効果が学習者の適性によって異なるかどうかは、プロジェク
ト・ワークは道具的動機が高い学習者の理解力を高めること、及び、統合的動機が高い学
習者、プロジェクト・ワークへの期待度が高い学習者に肯定的に評価されることが明らか
になった。
③倉八(1994)
プロジェクト・ワークが学習者の学習意欲及び学習者の意識・態度に及ぼす効果を検証
するにあたり、①プロジェクト・ワーク全体への評価、②言語技能の各側面への意欲、③
意識・態度の変容、の 3 つに分けて調査を行った。その結果、プロジェクト・ワークに対
する全体的評価は高く、国籍、動機、外国語学習に対する意識など学習者により個人差の
ある要因による評価の違いは見られなかった。
6.2.5 教師対象のプロジェクト・ワーク
①久保田・八木(1999)
海外日本語教師長期研修の中級クラスを対象にマルチメディア機材を利用したプロジェ
クト・ワークを行った。学習者は教員であるが、プロジェクト・ワークという学習方法に
慣れていない者が多い。そこで、実際のプロジェクト・ワークに入る前準備として小プロ
ジェクト・ワークを導入した。プロジェクト・ワークは、グループの構成員やテーマによ
って作業の進み具合やプロセスが異なる。そのため、綿密に評価項目を定めておかなけれ
ばならないという課題が明らかになった。
②高・長坂(2000)
国際交流基金日本語国際センターでは毎年タイ中等学校日本語教師研修を行っている。
高・長坂(2000)は、1999 年度の研修でトピックベースのプロジェクト・ワークを行った。
プロジェクト関連の授業は全 68 時間設けられ、
「買い物」
「食生活」
「教育」
「発表会」の 4
つをプロジェクト・ワークのテーマとした。プロジェクト・ワークは「話す」技能を重点
に置いているため、1 つのタスクが終了すればそのタスクを達成させたという達成感が得
やすい。しかしながら、それだけではただ楽しんだだけで終わってしまい、学習には結び
つきにくい。こうしたことから、プロジェクト・ワークを行う際にタスクを通して本来学
習すべきものが見落とされてしまう可能性があることが示唆されている。
6.2.6 タスク活動
①羽太・和泉・上田(2002)
国際交流基金関西国際センターでは、外国人外交官・公務員を対象に 9 ヶ月間の専門日
61
本語研修を行っている。この研修に参加する研修生たちは、ほとんどが初級からのスター
トである。初級段階で専門的な語彙や技能を導入することは、言語能力が不十分なため困
難なこととされているが、羽太・和泉・上田(2002)は、学習者のニーズ、認知レベルを考
慮し、初級段階から専門性を打ち出した技能科目を設定したカリキュラムを実践した。そ
の結果、初級にしては非常に高度な内容について表現できるようになったとしている。こ
れは、タスクが 1+αのレベルであり、内容が職業人としての意欲を引き出すもので、学
習者が主体的に活動したためであるとしている。
②来嶋・鈴木(2004)
先行研究より、上級までの日本語学習を修了した大学生、大学院生には、教材を渡した
だけでは独習が成立しにくいことが明らかになっている。そこで来嶋・鈴木(2004)は、
『新
書ライブラリー』を利用して学習レポートと読後座談会という 2 つのタスクを取り入れた
独習ベースの学習を実施し、中国人とシンガポール人学習を対象に、この 2 つのタスクが
学習行動に与える影響と学習成果、独習過程における動機への影響を調査した。調査の結
果、2 つのタスクがない場合と比べて学習量が増加したこと、学習成果があったことが示
され、タスクが自律的学習行動を促進していることが明らかになった。
③中山(2003)
早稲田大学の日本語授業(総合クラス)の活動の一つとしてタスクをベースとしたプロジ
ェクト・ワークを実践している。これはビデオドラマ作成を手段とし、
「自分たちの考えて
いることを上映会での作品発表を通して、他者に向けて発信すること」を目標として行わ
れた。プロジェクト・ワークでは、日本人のボランティア学生が参加し、補佐的な役割を
するのだが、グループ内でのもめごと、意見の対立、それによって作業自体がなかなか進
まない場合にはボランティア学生が調整するなど、教師には介入が困難な場面をサポート
している。教師 1 人では全てに目が行き届かないこともあり、教師以外の日本語母語話者
の存在がグループ活動にとって有益であることを示唆している。
6.3 ビジネス日本語コースにおける教師の資質
本節では、産業界の人材ニーズに即したプログラムに携わる教師に必要な資質は何かを
見極め、教師育成・研修の参考とするため、ビジネス日本語コースにおける教師研修、教
師力量の観点から報告する。
6.3.1 教師の役割
①津村・石田(2004)
津村・石田(2004)は、ファシリテーターを教師の役割の一つとして提唱しており、ファ
シリテーターとしての学習支援に必要な基礎知識、対人関係能力を育成するための基礎知
62
識など、ファシリテーター・スキル養成のための基本的枠組みを提示している。
②マルカム(2005)
学習者自身の自律的学習姿勢を促すという考えに基づいて、教師の役割をファシリテー
ターやリソース提供者と位置づけ、学習方法では「学習契約」を用いる実践例を紹介して
いる。
③池上(1995)
個別化授業をメインテーマとしてはいるが、学習者を主体とし教師は支援者であるとい
う自律学習の考え方は成人を対象とするビジネス日本語コースに参考になる。池上(1995)
は、学習者の多様化に対する一つの方法として学習過程の個別化について考察した。その
結果、以下の 4 つの提案によって積極的に個別化を取り込むことが十分可能だとしている。
まず、1つ目に学習者の特性を生かせる形態、即ち個別指導もしくは小集団指導と一斉指
導を組み合わせることで、効率と個別対応という双方の利点の共存を図ること。2 つ目に、
指導を行う際の個別化はカリキュラム開発の発想に基づいた役割拡大の方向に向かう積極
的なものであること。3 つ目は、カリキュラムを開発し、設計するプロセスに学習者が参
加し、教授者は支援者としてそれを支援していくこと。最後は、これら 3 つの実現のため
に、教授者同士が連携を保ち情報交換を行い、所属する組織の内部にも外部にもネットワ
ークを作ることである。以上のことを実施すれば、個別学習をすることで起こる可能性の
あるコース全体の能率の低下を回避することが可能になるばかりではなく、これまで以上
に学習者と教師間のつながりが築けるとしている。
6.3.2 専門家との連携、チーム・ティーチング
(1)大学の専攻、専門科目関連
①中村(1991)
専門日本語教育を教える現場では、日本語教員と専門科目教員との連携が一つの課題と
なっている。大学の留学生に対する日本語教育では、アカデミック・ジャパニーズに主眼
が置かれているが、それでも留学生からは日本語の授業以外の学部の専門的な授業につい
ていくことが難しいという悩みが聞かれる。その原因の一つとして、留学生は授業がなか
なか聞き取れず要点がつかめないことを挙げられるのではないか。
中村(1991)は、一橋大学で社会科学分野の「専門のための日本語(以下 JSP)」教育の一
環として、専門科目教員と日本語教員との協働による上級日本語クラスを開設した。留学
生の多くが聴解力に難点を持つことに配慮し、クラスは聴解に重きが置かれている。授業
の流れは以下の通りである。
① 学習者が専門科目教員による講義のビデオを視聴する。
② 視聴したビデオに関する自分の見解、疑問点を加えたレポートを提出する。
63
③ (可能な場合のみ)専門科目教員が JSP クラスに出席し、講義ビデオと学生のレポ
ートをもとにゼミ(または講義)を行う。
④ フィードバックを行い、自己の日本語をモニターする能力を高める。
学習者のアンケートからは、各自の専門分野が異なる点、読解、フィードバックのやり
方への問題点が挙げられていたが、全般的には満足しているとの回答が得られた。
②五味(1996)
五味(1996)は、東京工業大学の聴解練習を目標とした「科学技術日本語」のクラスで日
本語教員と専門科目教員によるチーム・ティーチングを実践した。このクラスは日本語中
級レベル以上の電気・電子工学系の大学院留学生が対象であった。授業は日本語教員によ
る専門用語、漢字、文法事項等の言語要素、表現を取り上げ、自習時間に専門科目教員が
専門教育の講義をするという方法で行われた。また、日本語教員も専門科目教員も双方の
授業を見学しあいそれぞれの認識を深め合った。学生からの評判は非常に良かったが、初
めての試みということもあり、教材開発、日本語教員と専門科目教員の役割分担などの課
題が残ったと述べている。
③仁科(1997)
仁科(1997)は、ある専門分野の知識修得の手段としての言語(LSP:Language of Specific
Purpose)を習得する場合の、専門教員と日本語教員の連携について国内外の現状を考察し
ている。そこでは、慶応大学、東工大、金沢工大の例から、日本語教育の立場からは①専
門教育に必要な日本語がどのようなものであるかという情報を得られる機会が少ない、②
専門教員は留学生の言語運用上の問題を見過ごしがちである、という問題点が挙げられて
いる。その解決法の 1 つとして、二者の他に専門用語の理解を助ける辞書などの学習ソフ
トを開発できる CAI システムの専門家(専門工学教員)との三者間の連携が挙げられている。
(2)ビジネス関連
①丸山(1991)
丸山(1991)は、上級ビジネスコースにおけるビジネスパーソン教師の役割の重要性につ
いて述べており、日本語教師とビジネスパーソンとの役割分担を明確にし、互いの専門知
識が有効に使えるようコースを運営すべきであるとしている。
②松本・山口・高野(1998)
アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(以下センター)は、アメリカおよびカナ
ダの大学生、大学院生を対象に学術的、専門的使用に耐えうる高度な日本語習得を支援し
ている機関である。センターでは、1997 年度から 1998 年度まで経済分野に関連するコー
スとして、「ビジネス・社会」、「政治・経済」、
「ビジネスクラス」という 3 つのコースを
64
実施した。松本・山口・高野(1998)は、前述の 3 つのコースにおいて日本語教師と専門家
との連携を行った。
「ビジネス・社会」、
「政治・経済」は読解、聴解、発話の技能を総合的
に伸ばすことを目標として日本語教師が指導にあたった。一方、
「ビジネスクラス」は、日
本経済と金融の専門家により週1回指導した。講義の内容を書き記したハンドアウトが配
布され、内容理解を重点とした講義が行われた。専門的日本語の指導にあたり、日本語教
師には①教材内容の全体像についての包括的な知識、②教材に関連する詳細・最新の情報、
③報道や活字などによらない現場の知識、といった知識や情報の欠如が見られたとしてい
る。
(3)専門家との連携方法
①松下・齋藤(2004)
チーム・ティーチングを行うには、教師間の連携がプログラムの成功の鍵を握る。松下・
齋藤(2004)は、チーム・ティーチングでは、関係者が情報・ビリーフ・方法を共有(ある
いは相互に意識する)ことが重要だと述べている。また、現場スタッフの協働の成否が、
授業を中核とするプログラム全体の質に影響し、結果として学習者の学習成果に影響を与
えてしまうとしている。そこで、桜美林大学の日本語教育プログラムではスタッフハンド
ブックを開発し情報の共有化を図っている。ハンドブックのなかには、日本語教育プログ
ラムの目標構成、各科目の運営、参考となるアプローチ、アイディア、リソース、ツール、
スタッフの役割と意志決定のプロセス、問題への対処などが詳細に記されており、それぞ
れの教員のコースに対する意識を一致させようとしている。
②大隈他(2003)
大隈他(2003)は、平成 14 年度研究者を対象とした日本語研修(以下、研究者日本語研修)
について報告している。研究者日本語研修では、研究活動を行うという目標を達成するた
めの「研究活動支援制度」がコース・デザインに組み込まれた。この制度は、個人単位の
学習活動で専門家(研究アドバイザー)に専門的な日本語学習機会の提供を依頼したり、
個別単位に専門家の指導を仰いだりするものである。この制度では、学習の計画や実施は
研究アドバイザーに任されており、日本語教員はサポーターにまわる形態がとられた。日
本語学習のほとんどが研究アドバイザーに委ねられるといった学習方法は数少ないが、有
効な学習方法の1つであると考えられる。
6.4 ビジネス日本語コースにおける評価設計
本節では、ビジネス日本語コースにおける評価設計について報告する。
6.4.1 目標設定
①金澤・三井他(2003)
65
金澤・三井他(2003)は、授業評価を 1 回限りの総括的評価ではなく、学生の伸びを測る
ことができる継続的評価が望ましいとして、京都外国語大学留学生別科の上級クラスの修
了発表を例に目標規準準拠評価を目指した評価基準案の作成を試みた。修了発表のクラス
では、学習の伸びを測るために発表を複数回行い、学習のプロセスが見えるような配慮が
された。評価は取り組む姿勢・読む・書く・話す・聞いて応答する能力の他、情意的観点、
言語知識的観点、認知的能力観点、社会的・文化的な受容に関わる観点に分け、全 8 の観
点に基づきポイント別に評価が行われた。
②細川(2002)
早稲田大学の日本語クラスでは問題発見解決学習を主旨とした総合活動型日本語教育を
行っている。総合活動型日本語教育は、学習者主体の教育である。細川(2002)は、評価を
めぐる問題について述べ、学習者主体の活動型学習では、各々目標やテーマが異なるため、
一定の評価基準を定めることが難しいとしている。そこで統一感を持たせるために、総合
活動型日本語教育では、共通項目と約束を設定する。それをクラスが共有することによっ
て評価の範囲を限定し、評価のずれを少なくする。また、評価を共有することで信頼性と
公平性が守られることにも繋がる。評価は、最終的に教師が学習者の行った自己評価、他
者評価、メタ評価をもとに点数化をしている。
6.4.2 自己評価
①岡崎・吉武(1992)
これまで日本語教育に限らず教育現場では教師のみが評価を行ってきたが、近年では、
学生による自己評価を用いることも多くなってきた。岡崎・吉武(1992)は、学習者の多様
化に対応するために、学習者による自己評価が有効であると提唱している。学習者の自己
評価が必要な理由として、学習者自身が学習にかかわる決定に参加することが求められて
きているからだとしている。岡崎・吉武(1992)は日本語教育においては、以下の 3 つのよ
うな自己評価形式の可能性があるとしている。
① pair autonomous と統合された自己評価
② 教室活動と統合された自己評価
③ 教室活動に内蔵された自己評価
コースや学習目標が具体的に決まっている授業では、自律学習をベースとして自己評価
形式を用いることは困難であると考えられるが、いくつかの項目を用意して学習者に課題
を決定させるような授業スタイルであれば自己評価を用いることは可能であると考えられ
る。
②高木(1992)
高木(1992)は、自律学習を効率的に行う土俵作りのために、日本語学習者を対象に自己
66
評価表を用いたプロジェクト・ワークを行った。自己評価表は、学習者が自ら立てた目標
を達成できたかどうか、プロジェクト・ワークを通して学習者が何を学んだのかを認識さ
せるために使用された。また、自己評価表の存在は活動の活性化を左右すると述べており、
自己評価表の設問項目は具体的であるほうが望ましいとしている。自己評価表を導入した
結果、学習者の異文化に対する認識を向上させることができただけでなく、自律的学習を
行っていくための基礎能力をつけることができたとしている。また自己評価表は、学生の
成績評価には直接結びつけずに授業のフィードバックとしてのみ用いられた。
6.4.3 産出系評価
(1) 口頭能力
①笠原・木山他(1995)
日本語国際センターで行われている海外日本語教師長期研修では、この研修を受講する
研修生である日本語教師の口頭表現能力をどのように伸ばすかが研修開始以来の課題とな
っている。長期研修では、研修生の言語運用力の伸びを測るために口頭テストを用いてき
た。そこで、笠原・木山他(1995)は、口頭表現能力向上のための口頭テスト改訂に伴い、口
頭表現能力を測定する 4 種のテストを分析し、評価・判定方法を比較検討した。その結果、
改訂するための課題として、以下の 2 つの要素が挙げられた。
① どんな能力を測定するのか。
各長期研修生は所属機関が異なり、国において教師として教える対象が多様であ
るため、特定の日本語使用場面を取り出すことが困難である。また、上級レベルに
達している研修生には「研究目的の日本語」に近いものも必要となるため、「一般
目的の日本語」と「研究目的の日本語」の両方を視野に入れなくてはならない。
② どのように測定するのかについて検討項目を選定する。
研修生の日本語学習の背景が異なるなど、研修生の多様性により測定対象が広範
なレベルに分散しているという問題がある。
②羽太・熊野(2003)
国際交流基金関西国際センターでは外交官日本語研修、公務員日本語研修(以下、外交
官・公務員日本語研修)が毎年行われている。外交官・公務員日本語研修は、約 9 ヶ月の
集中日本語コースであり参加者の大半がゼロ初級者である。研修には選択科目の一つとし
てスピーチクラスが用意されているが、この科目は約 2 ヶ月(学習時間は約 135 時間)の
基礎的な日本語能力の養成を受けた後に受講が可能となる。
羽太・熊野(2003)は、スピーチクラスの評価法として、教師、クラスメート、発表者が
評価を行う方法を報告している。スピーチクラスの発表は全てビデオに記録されるが、そ
のビデオを見ながら 3 者がそれぞれ口頭で評価をする。クラスと発表会のパフォーマンス
が評価の対象となり、教師は①内容(構成、情報量)、②発音、③話し方(スピード、ポー
67
ズ)、④視覚情報(写真や地図、ハンドアウトの使用法)、⑤態度(アイコンタクト、ジェ
スチャー)、⑥やりとり(質疑応答の内容の適切さ)の観点から採点し、3 段階評価を行う。
また、教師は学習者と個別の評価セッションを行い、ビデオをもとに評価の説明を行うな
ど学習者と教師が確認し合える場を設けている。
③熊野・石井他(2005)
外交官・公務員日本語研修では口頭能力の習得に重点が置かれてきたが、熊野・石井他
(2005)は、平成 14 年の最終オーラルテストの分析結果から、初級レベルの外交官・公務員
日本語研修で目標とする日本語運用能力や評価のあり方を考察した。その結果、初級レベ
ルであっても、基本的な文型を使用してある程度専門的な用語を含むことで相互交渉のよ
うなタスクも達成することが可能であることが明らかとなった。
(2) 書記能力
①菊池(1987)
作文の評価は読みやすさを重視する人、文法や語彙を重視する人など読み手によってば
らつきが出てしまう。そのため、評価基準を明確にしておかなくては適切な採点が行えな
い。菊池(1987)は、作文の評価方法を、以下の 5 つのファクターに分けている。
(1)
趣旨の明確さ
何が書いてあるかを一読して理解できるかどうか。
(2)
内容
原則として日本語能力についての評価は含まない。日本語の誤りには目をつぶり、適
切な日本語で書かれていると想定し、文章能力の面だけを評価する。
(3)
正確さ
日本語能力だけを見る。具体的には、文法・語法、語彙、表記等に関する誤りをチェ
ックし、減点法で行う。
(4)
表現意欲・積極性(日本語能力)
難しい(あるいは最近学習した)文法事項、単語、漢字、言い回し等をどの程度使用して
いるか。または、失敗していても用いようとしているかを見る。
(5)
表現力・表現の豊かさ(文章能力)
正確さ以上の適切さを評価することを趣旨とする。ある程度の日本語能力がなければ
できないことであるため、中級後半以上の学習者のみが評価対象となる。
6.5 ビジネス日本語教材
本節では、既存のビジネス日本語教材開発に関する文献およびビジネス日本語教材につ
いて報告する。
68
6.5.1 教材開発に向けた分析
(1)教材ニーズ分析
①横須賀(2002)
横須賀(2002)は、関東圏に勤務する外国人ビジネスパーソン 54 名を対象に、専門的職業
に関わるビジネスパーソン向け日本語教材開発のための事前調査を行った。被験者は主に
アジア圏出身の 30 代正社員が多く、勤務先はメーカーや情報通信関連で外資系よりも日
系企業に勤務する者が多かった。調査結果より教材のニーズの傾向として、①多様な仕事
場面で広範囲に使用できる情報を必要としている、②情報源の種別を問わず、専門性の高
い情報を必要としている、③言語知識、経済関連知識、コミュニケーション能力が獲得で
きるような情報を必要としていることが明らかになった。横須賀(2002)は、これから求め
られる教材は、読解の技能を使って専門性の高い情報を収集するもの、および作文、会話
の技能を必要とする多様なコミュニケーション場面で使用できるものであると述べている。
また、受信した情報をどのように使うかという点に主眼を置いたものとして、受動的な情
報収集行動と能動的な情報提供行動とを有機的に結びつけた教材も必要となると示唆して
いる。
(2)学習項目分析
①茂住(2004)
茂住(2004)は、日中合併企業の中国人 SE に対する社員研修についての調査を行い、中
国人社員に対する日本語研修と日本国内におけるビジネス日本語教育と比較し、両者の相
違点および中国人社員が直面した問題から外国人(中国人)が働く上で習得しておくべき
項目を明らかにしている。調査の結果、4 技能の中は特に「話す」
「聞く」というコミュニ
ケーション能力、学習者の業務内容に特有の日本語を学ぶ必要性がわかった。コミュニケ
ーション面においては、意思疎通に支障が生じた場合の対処法として問題解決ストラテジ
ーを身につけることが重要であることが中国人社員の回答から窺われた。
②小野寺他(2004)
小野寺他(2004)は、日本企業 2 社(生命保険と運輸会社)の新人教育マニュアルを比較
分析し、ビジネス日本語の定義を試みた。分析では、マニュアル項目を言語と非言語に分
類し、日本企業の求める能力を明らかにしている。その結果、共通項目として挙がったも
のには以下のようなものがある。
<言語面、非言語面の基礎項目>
・ 会社の顔である自覚
・ 顧客とのコミュニケーションの大切さ
<言語面>
69
・ 言葉遣い(適切な敬語)
<非言語面>
・ おじぎ
・ 服装と身だしなみ
小野寺他(2004)では、ビジネス日本語を教える際は言語面ではなく、心構えや身構えと
いった言語を支える非言語も重要な教授項目だと述べている。言語教育ではどうしても言
語面にスポットが当てられるが、言語面からのアプローチだけでは企業が求める人材像に
は辿り着けない。つまり、言語面と非言語面の両方を備えた人材が企業での採用時におい
て利点となるとしている。
③小野寺(2005)
小野寺(2005)は、ビジネス日本語教育がどのように行われているのかを探るため、日本
と韓国におけるビジネス日本語教科書各 1 冊ずつの特徴を分析した。その結果、韓国の国
定教科書は日系企業に就職を希望する高校生向けになっており、インターネットの利用ま
でも含み、電話対応、文書作成等、新入社員研修で使えそうなほど高度なものであること
がわかった。
(3)表現・語彙分析
①池田(1996b)
池田(1996b)は、日本人ビジネスパーソンが普段のビジネス場面で使用する語彙に注目し、
30 時間分のビジネスパーソンの会社における発話(社内、社外のミーティング、打ち合わ
せ、電話)から、会社における会話から語彙を分析した。その結果、ビジネスパーソンの
語彙は話し言葉の語彙であるため、感動詞が多く含まれており、
「的」の使用が多いことが
明らかになった。このような使用語彙の調査結果は、シラバス作成時の教授語彙の選択に
有益であると考えられる。
②小宮(2001)
小宮(2001)は、日本人学生が中学生で習うような語彙を留学生が学習していないがため
に、授業についていくのが困難になっていることへの解決策として、連語による専門語の
使い方指導を提案している。例えば、「公定歩合」という語の概念を学習しても、「公定歩
合を引き下げる」
「公定歩合の据え置き」のような連語の知識がなければ、留学生は推測で
使用するしかなく、結果として不適切な日本語表現となってしまうことがある。専門語の
使い方は辞書でも例文が少なく、留学生たちは用例を自分で探す等レポートを書くまでに
日本人学生が通常体験しなくてすむような問題を一つ一つクリアしていかなくてはならな
い。そこで、専門語を最初から連語で学習することで使い方を理解し、語の使用法を別途
70
考える負担を低減できるとしている。
③川口(2002、2003)
川口(2002、2003)は、台湾の日本語教育における待遇表現指導の問題点及び待遇表現そ
のものについて分析、考察している。これは実際の教育現場をもとに分析が行われている
ため、ビジネスパーソンには欠かせない待遇表現の指導例の参考になる。
(4)面接場面分析
①古川(2004)
就職活動で避けては通れないものの一つとして就職面接がある。近年、日本の企業への
就職を希望する留学生が増加しているが、彼らも日本人学生同様、就職面接を受けなけれ
ば内定をとることができない。古川(2004)は、市販の日本語教材で就職面接場面が取り上
げられている 4 冊(面接場面は 9 冊)を対象に、面接場面の取り上げられ方、学習対象レ
ベルを調査し、留学生の就職面接を支援する日本語教材について検討した。使用スクリプ
トの分析から、日本語教材で取り扱われているスクリプトは転職活動を想定しており、新
卒採用等の面接は想定されていないことが明らかとなった。そのため、新卒面接で一般的
に質問されるような項目は教材に載せられていないのが現状であった。
「留学生枠」を設け
ている企業もあるが、多くの場合は日本人学生と留学生が同じ土俵で就職試験に臨むこと
になる。就職試験の参考書は数多く市販されているが、主として日本人学生を対象として
いる。しかしながら、留学生にとっては異文化の中での就職活動であるため事前に頭に入
れなくてはならないことが日本人学生以上にあると想定される。そのため、出身国との文
化差、日本式対人コミュニケーション、日本事情等が含まれる留学生向けの日本語教材が
求められるとしている。
6.5.2 ビジネス日本語教材 −中級向けー
①日米会話学院日本語研修所(1987)
日米会話学院日本語研修所(1987)『日本語ビジネス会話−中級編−』は、日本企業で働
く外国人社員、外国人企業研修生、日本企業と関連の深いビジネス活動をする外国人を対
象としたテキストである。テキストのレベルは一般的な初級レベルを終えた程度の学習者
を想定している。本書で設定されているビジネス会話は、機能に着目したビジネス場面を
メインとしている。そのため、機能が合えば他の場面でも代用が可能なように作成されて
いる。テキストが中級学習者を対象にしているため、会話は基本的表現が使用されており
易しすぎず難しすぎず上級学習者にも入りやすいようになっている。
②米田他(1996)
米田他(1996)『商談のための日本語』は、ビジネスパーソンを対象としたテキストであ
る。商談場面が、説明、意見、賛成、反対、結論、説得、クレームなど細かく機能別に分
71
け構成されている。テキストでは社内と社外の使い分けが留意されており、口頭コミュニ
ケーション能力を伸ばすことを重点に考えられている。
③友松他(2003)
友松他(2003)『Japanese for CIRs』は、CIR(Coordinator for International Relations:
国際交流員)で来日した外国人を対象にしたテキストで日本語能力試験 2 級レベルを想定
している。職場で使われる日本語の他、日本の役所の雰囲気が伝わるように作成されてい
る。CIR 用に作られているため、ビジネス場面は役所が中心となっているため、ビジネス
パーソンにはあまり適していない。しかしながら、行政、社会、環境関係の用語、日本特
有の文化や表現の説明がしっかりしている。
④小田他(2004)
小田他(2004)『新ビジネスマン物語−50 の場面で学ぶビジネス会話とマナー−』は、日
本語レベル中級の学習者の他、日本人とのビジネスや日本企業勤務を希望している人、お
よび社会人として日本語の知識やマナーを身につけたい人を対象としたテキストである。
ビジネス現場で必要不可欠な会話とマナーを細かい場面に分けて学習できるようになって
いる。日本語学習者向けのテキストではあるが、易しい表現に直すことはあえてしていな
い。
6.5.3 ビジネス日本語教材 −中∼上級向けー
①堀内・足高(1989)
堀内・足高(1989)『日本でビジネス』は、中級以上の日本語力を持ち、仕事で日本語を
必要とするビジネスパーソン、あるいは将来必要とする外国人学生を対象としている。日
本におけるビジネスマナーと表現を習得することを目標とし、ビジネス場面での失敗例を
もとに学習者が自ら正しい答えを考える問題提起型のテキストとなっている。
②日本語映像教育社(2004)
日本語映像教育社(2004)『ビジネス日本語テキスト① 内定者編』は、日本語能力試験 2
級程度を想定した中・上級学習者向けの教材である。日本語学習者にとって障壁となって
いるビジネス日本語をはじめ、ビジネスマナー、日本独特の考え方、習慣等を分かりやす
く伝えることで、ビジネス現場ですぐに役立つ会話を身につけ、即戦力となる人材を育成
することを目標として掲げている。本書は副教材ではあるが、テキストとしての学習も可
能である。初出勤、電話の応対などビジネス場面の基礎が主であるが、敬語の勉強にも使
用しやすい一冊である。
日本語映像教育社(2004)『ビジネス日本語テキスト② 新入社員編』は、上記のテキスト
の一歩先の段階である、社会人になってからの場面を想定している。新入社員編であるた
72
め、
『ビジネス日本語テキスト①内定者編』よりもビジネスマナー、敬語が応用的な内容と
なっている。基本のみでなく、より詳しい内容を学習するためには『ビジネス日本語テキ
スト ②』の方が適している。
③TOP ランゲージ(2006)
TOP ランゲージ(2006)『新装版 実用ビジネス日本語』は、日本語レベルが中級以上の
ビジネスパーソンを対象としており会話が中心である。場面別に構成されているが、例え
ば「電話応対」の章では、夜遅く電話をかける時、初めての相手に電話をかける時など同
じ電話応対でもさらに細かく場面を設定しているため、柔軟に対応するためのスキルを磨
くことができる。また、決まった表現だけではなく、その状況で考えられる様々な表現が
提示されているのが特徴であるため、バリエーション豊かに学習することが可能である。
④ことばと文化センター(1996)
ことばと文化センター(1996)『実用日本語 ビジネスマン物語 80 の場面で学ぶビジネス
会話とマナー』は、日本人と日本語でビジネスができることを目標に、基礎・応用・実践
の 3 段階で学ぶことができる日本語中上級学習者を対象としている。企業で働くビジネス
パーソンが監修を務めているため、実際のビジネス会話により近い内容が記載されており、
会話練習に適している。
6.5.4 ビジネス日本語教材 −各国語別−
①岩澤他(2006)
岩澤他(2006)『日本企業への就職(ビジネス会話トレーニング)』は、中国語を母語とす
る日本語学習者向け教材である。ビジネス場面での会話力向上を目標としており、各課、
段階をきちんと踏みながら学習できるよう配慮されている。また、会話は数通り設定され
様々なパターンで練習できるようになっている。中国語母語話者を対象としているので、
中国語母語話者に多い誤用を取り上げ解説するページもあるが、中国語以外を母語とする
学習者にも使用することができる。
②ビジネス日本語フォーラム(1991)
ビジネス日本語フォーラム(1991)『TALKING BUSINESS IN JAPANESE』は、日本
語上級者のビジネスパーソンを対象としている。特に日本のビジネス場面での会話の流れ
や表現を勉強したい学習者に適している。英訳がついているため、英語圏学習者には使用
しやすい作りになっている。各課、目的と留意点が細かく書かれており、学習者が情景描
写や背景を理解しやすいように構成されている。また、会話の前にはフローチャートが載
っており、これから行われる会話がどのような切り出し方で始まり、どのような項目が話
されているのかが示されている。外国人が難しいとする、日本人のコミュニケーションス
73
タイルを学習しやすいよう配慮されている教材である。
③清(1994)
清(1994)『ビジネス日本語速修コース』は、多忙なビジネスパーソンのために最低限の
時間で最大限の効果学習を目指した初級向けテキストである。40 時間の学習を目標に実用
的で適切なコミュニケーションが身につくことを最優先にしている。会話部分以外は全て
英語表記となっているため、英語圏出身の日本語学習者には適している。ビジネスパーソ
ンを対象としているが、あいさつ、電話のかけ方、道の尋ね方などビジネス場面に限定し
ているわけではなく日常場面が中心となっている。
6.5.5 ビジネス日本語教材 −技能別−
(1)口頭能力
①金子(2006)
金子(2006)『初級が終ったら始めよう にほんご敬語トレーニング』は、初級は修了した
が敬語が思うように使えないといった学習者を対象としている。実社会でのコミュニケー
ション力を高めるのに適している。ビジネスパーソン、日本語上級レベルの学習者を対象
にしたテキストではないが、敬語のポイントが整理されており、収録場面も電話対応、お
詫び、サービス敬語などビジネス日本語テキストとしても使用することが可能である。初
級を終えた学習者が対象であるため、普通体と敬語の表現比較表、敬語を用いた人の呼び
方など細かいところまで配慮されている。
②野田・森田(2004)
野田・森田(2004)『日本語を話すトレーニング』は、大学や短大などの日本語表現法や
音声表現法の授業で使用できるように作成された。スクリプトには正しい文や受け答えが
載っていないため、学習者自身がどのような文章で答えれば適切なのかを考えながら勉強
することができるよう工夫されている。テーマも細分化されており、学習者が遭遇しそう
な場面が意識されている。話し方と同時に日本語でのコミュニケーションルールやマナー
も学習できるテキストである。
③バルダン田中(1988)
バルダン田中(1988)『コミュニケーション重視の学習活動Ⅰプロジェクト・ワーク』は、
プロジェクト・ワークの理論及び、
「学習者が身につけた日本語を運用し、実際のコミュニ
ケーションを体験できる」よう作成されたタスクを収録した教師用教材となっている。タ
スクは初級レベルから上級レベルまでを対象としているが、主として大学生や就学生向き
の内容となっている。教師が学習者に応じてアレンジができるようになっており、タスク
設定の際の手順を詳しく示している。
74
(2)書記能力
①Keisuke Maruyama(1999)
Keisuke Maruyama(1999)『Writing Business Letters in Japanese』は、日本語上級者
の外国人ビジネスパーソンを対象にしており、紹介・依頼・確認などの対外文書から、稟
議書や議事録などの社内文書、あいさつ状から礼状まで、すぐに使える文例が約 100 文例
記されている。文例は「販売提携」をテーマとしたストーリーに沿って提示されており、
分かりやすいよう配慮されている。テキスト内の文書は上級学習者であっても難しいと感
じてしまうような内容ではあるが、各課のフローが文書の構成をしっかりと示しており、
学習者の理解を助けている。
②Reiko Suzuki 他(1999)
Reiko Suzuki 他(1999)『Business Kanji : Over 1,700 Essential Business Terms in
Japanese』は、日本の企業、経済新聞、雑誌で多用される 1700 以上の漢字を収めたテキ
ストである。日本語と英語で表記されており英語圏の日本語学習者、初級を修了した日本
語学習者を対象としている。経済用語を勉強するのに適しており、経済新聞の読解の授業
には有効利用することができる。また、漢字の意味が全て記されているので、辞書代わり
にも使用することも可能である。
6.5.6 ビジネスマナー教材
①海老原・岩澤他(2006)
海老原・岩澤他(2006)『日本企業への就職(ビジネスマナーと基本のことば)』は、日系
企業で働いている人、またはこれから働こうとしている人を対象としている教材である。
就職活動ガイドには、日本での就職活動の方法が示されており、異文化で就職活動を行う
外国人の手助けになる。また、本書は敬語問題が多く載せられているため、敬語学習にも
適している。
②井上(1991)
井上(1991)『実社会で求められるビジネスマナー』は、ビジネスパーソンがビジネス場
面で必要となる知識が整理されている。講義の後、すぐに実習ができるよう作成されてお
り、講義シートとワークシートが用意されている。テキスト内のテーマは小区分されてい
るので、その時々にあったものを学習できるよう配慮されている。
③大貫他(1992)
大貫他(1992)『学生のためのセンスアップマナー』は、学生が就職活動をしてビジネス
社会へ出る準備をするためのテキストである。お茶の出し方、紹介の順番などビジネス社
75
会で最低限必要なマナーが実践的に学べるようになっている。
④早稲田教育出版編集部(2005a)
早稲田教育出版編集部(2005a)『ビジネスマナー基礎実習 新版』は、学生たちが新社会
人として働く際に、身につけていないと困るビジネスマナーを学習することができる。最
も基本的な事柄に絞られ、短期間で体得できるようロールプレイ形式を採用し実践的に活
動を行うことができる。
⑤早稲田教育出版編集部(2005b)
早稲田教育出版編集部(2005b)『ビジネスマナー基礎実習 新版 講義用指導書』は、上記
の『ビジネスマナー基礎実習 新版』の教師用指導書となっている。学生が理解しやすいよ
う工夫されており、5∼6 時間で指導できるように作成されている。本書は学生の解答本と
しても使用することができる。
⑥気賀沢他(2005)
気賀沢他(2005)『マナーの基本と就職対策』は専門学校で学ぶ学生を対象に作成された
テキストで、日本語母語話者を対象としたものではない。学生に分かりやすいよう作成さ
れており、代替可能な単語は○○と示されており、留学生も学習しやすいと考えられる。
練習問題も多く載せられており、ただ読むだけにはならないテキストである。
6.6 考察
今回の調査から、現在するビジネス日本語に関する文献や教材は、大方拾い出せたと考
えている。調査が進むにつれ、ビジネスパーソンを対象とした実践報告や教材は多く見ら
れるが、外国人留学生の就業促進を対象としたビジネス日本語に関する文献や教材は現段
階では不足していることが明らかになった。
また、ビジネス日本語教材の大部分は初中級を対象としているものであった。そのため、
中級レベル以上の外国人留学生を対象としたビジネス日本語教育に関する教材研究は今後
さらなる開発が必要であり、外国人留学生を対象としたビジネス日本語教育に関する研究
は今後発展が待たれるという示唆が得られた。
76
第7章.調査結果の分析と考察
−留学生の就業を促進するにあたっての課題−
本章では、これまで挙げられた各種調査事業の結果を踏まえ、留学生、企業側の課題を
整理し、日本企業内における外国人留学生の就業促進にあたっての課題を顕在化させると
ともに、課題克服のための方策について考察を行う。
7.1 留学生側の課題
7.1.1 ビジネスにおける日本語能力
日本の大学・大学院出身の外国人社員(以下、元留学生とする)にとっては、日本企業
での就労にあたり日本語能力が最大の課題である。ただし、これを痛感するのは入社後で
あることが特徴的で、学生時代に友人や学内におけるコミュニケーションには痛痒を感じ
ていなかった元留学生でも、実際のビジネス場面で使用する日本語との差異に苦しんでい
る。このことから、まず社会人として必要とされるビジネス日本語能力への「気づき」が
必要であることがわかる。また、ビジネス日本語の主たる課題としては、
「待遇表現」、
「非
対面コミュニケーション」、「ビジネス文書」があがっている。
ビジネスシーンにおいては、テ、ニ、ヲ、ハ、の誤りから待遇表現にいたるまで、ネイ
ティブレベルといった観点での完璧さを求められることが多い。学生時代と比較すると、
場面と相手との関係性が複雑化し、且つ即応性が求められている。基本的なコミュニケー
ション能力に加え、企業社会ではビジネスシーンにおける応用力、行動力が求められてい
る。
具体的には以下のような課題が挙げられる。
(1)待遇表現の熟達ニーズ
企業活動においては、会議、打合せ、商談、雑談などのビジネス場面要素と、相手との
関係性、即ち、上司、同僚、取引先、顧客といったようにヒエラルキーを伴った関係性と
が連関している。そのため、日本企業内で使用される日本語には、敬語、丁寧語、謙譲語、
命令語など、待遇表現を必ず伴うと言ってよい。学生時代にはこのような複雑な文脈にお
かれることが少ないことから、比較的日本語の既習歴が長い元留学生においても、待遇表
現は最大の課題となっている。学生時代に授業等で待遇表現を学んでおり、日本語能力に
自信を持っている元留学生でも、入社後にその運用の難解さに改めて気づくケースが多い。
待遇表現に対する抵抗感の少ない元留学生においては、学生時代のアルバイト経験が有
益であったというケースが多いことから、座学により習得した知識だけでなく実際のビジ
ネスシーンにおける運用経験が重要であると思われる。また、飲食店、コンビニエンスス
トアなどのアルバイトで使用する日本語はマニュアル化されているケースが多いため、単
なるアルバイト経験だけでは不十分であることから、一般企業における事務職系のアルバ
77
イトを選択したという声も聞かれている。このことから待遇表現の習得には単なる社会経
験だけでは不十分であり、相手との多様な関係性を伴う活動を通じて適切に言葉を使い分
ける経験が重要であると考えられる。
待遇表現の困難さは、対人関係と文脈を認識しそれに基づき言語を運用することにある
が、企業社会においては単に対人関係と文脈が複雑化するだけでなく、例えば企業活動に
おける打合せにおいては、上下関係を持つ複数のクライアントと元留学生とその上司とい
ったように、複数の関係が同一場面において多発的に生じることが多い。このような関係
は学生時代に経験する機会が少ないことが、待遇表現が就職後に課題となる要因であろう。
(2)非対面型コミュニケーションの涵養
一般的に電話応対のような非対面形式のコミュニケーションは、相手の姿が見えず言語
のみによる情報の伝達が求められるため、日本語学習者にとっては困難な課題となる。
更にビジネスシーンにおける電話応対は、学生時代と比較すると対話者が多岐に渡り、
会話内容等を予め準備することが難しい要素が多い。同時に先述したような待遇表現を織
り交ぜて対応する必要性や、面識の有無に関わらない意思疎通の必要性があることから困
難度が多く、元留学生は最大の課題として挙げている。また、ビジネス上のコミュニケー
ションの課題として、Eメールを挙げる元留学生も多かった。電話応対との共通点は、非
対面で言語のみによるコミュニケーション・情報伝達を行なわなければならない点であろ
う。メールの作成時間が日本人の2倍かかるという声も聞かれる。
電話、Eメール等による非対面形式のコミュニケーション自体は学生時代の日常生活で
も十分に行っている。しかし、ビジネスシーンにおいては相手との関係が多様な中、待遇
表現を伴った定型ビジネスの表現を基本としながらも、多様な状況に対処しなければなら
ない点が、元留学生にとって課題となると思われる。さらに、言語的要因と同時に、電話
であれば3コール内に受話器をとるといったような日本の企業慣習から必要とされる行動
力や、分からない点を臆せず聞き返すといった対応力が同時に必要となる。これら語学力、
行動力、対応力などが、総合的に問われるのが非対面コミュニケーションと言える。
克服の仕方としては、電話応対については一般的な対応の仕方を身につけた上で、実践
を重ねて対応力を高めることが必要と思われる。自分の業務範囲内の資料を分かりやすく
整理しておくなど、可能な限りの準備をしているケースもあった。また、Eメールについ
ても、定型的なフォームの習得と、その応用が指摘されている。
(3)ビジネス文書の作成・読解
企業活動においては、業務の遂行過程から最終成果にいたるまでに、様々な文書を常時、
読解・作成することが求められる。日常的な週間報告や稟議書、役員等への上程文書とい
った社内文書から、プレゼンテーション資料、仕様書、企画書といった社外向け文書まで、
内容・種類は多岐にわたる。
78
一般的な日本語学習者にとっては、理解系の技能(読む、聞く)よりも、産出系の技能
(話す、書く)の方が困難である。論文、レポートといった形で学生時代にも文書読解・
作成経験があるにも関わらず、元留学生からの意見では社会人生活においても、やはり読
解よりもビジネス文書の作成の困難さを指摘する声が多い。
ビジネスシーンで使用する語彙や表現などが学生時代と異なるという声や、或いは、知
識として知っていても、実際のビジネスシーンにおける運用がわからないために、上手く
作成できないという声も聞かれる。また、企業による独自のフォームが存在し、それを基
本としながら、目的や相手との関係に応じ、体裁、表現を変える必要があることから、応
用力が求められる。さらに、必要とされる情報を要約して表現することの困難さなども挙
げられている。また、技術系を中心に各種資格取得が必要となるケースがある。これらの
試験は基本的に日本語で実施されており、専門用語を含めて更なる読解力と表現力が必要
とされる。
ビジネスにおける文書作成の要点は、定型フォーム・既存資料等を参考にしながら、目
的に応じて運用することであり、元留学生はさらに先輩、上司等の意見を参考にしながら
経験を重ねて習得していることが分かった。
7.1.2 日本企業のビジネス文化・知識
元留学生から見て、終身雇用的な発想、組織を重視する姿勢などの社内風土や、顧客サ
ービス志向、カイゼン意識など、日本人には当たり前と思っていることも外国人人材には
違和感を覚えるケースがある。企業文化、習慣が異なり、その相克が課題となる。
日本の企業文化には、他の国・文化圏との共通点と共に、独自性・固有性がある。その
独自性が製造業を中心とした日本の民間企業が世界的に評価される基盤となっているとも
言える。これらのことを認知し、理解することが、日本企業で就労する上では必要不可欠
であると考えられる。
(1)日本的組織への順応
日本企業においては、組織性が重視される。元留学生が経験した日常業務においては、
いわゆるホウレンソウ(報・連・相)や、朝礼、週間報告などであり、また、業務成果だ
けでなくその過程も重視する傾向が強いことから、日常的なコミュニケーションや、課、
部といった組織単位の行動と成果が求められる。それに対し、元留学生を始めとする外国
人人材は、個人のスキルに基づく成果や行動を重視する傾向にある。
人材活用、育成に対する考え方においても、日本企業では入社後に新人訓練として他部
署を経験させるケースや、また、部署に正式に配属された後も直ぐに仕事を任すのではな
く、中間管理職や配属先の先輩がその経験や知識に基づき後進の指導を行ないながら業務
を遂行することが多い。これは組織的な能力を個人を通じて伝承することを目指している
ことを意味すると思われる。
79
元留学生は業務分担や個人スキルを明確化すること好む傾向にあるが、日本の産業社会
の組織性とは、組織内活動に応じ職位や業務分担が発生しているものの、その枠組みの中
で個人の責任が明確に存在しないことが多い。職位で責任が生じることや、組織力に依存
するといった、どちらかといえば家族主義的な色合いが強い。企業力は個人能力に帰属す
るのではなく、組織に帰属するという思想が強いと思われる。
これはともすれば、分担や人間関係が元留学生から見れば明確ではないように映り、個
人のスキルや成果を重視する立場からは違和感があると言える。
(2)顧客サービス志向の習得
日本企業社会の特質として、個人消費者や取引先など、顧客との関係を重視する傾向に
ある。
「お客様は神様」という企業文化はその典型例といえる。本来、法人間等の契約に基
づく取引などでは対等な関係であるべきであるが、実際には、対顧客、親会社と子会社の
関係など、個人、業界、企業単位での関係が存在し、これらを理解した上での内外におけ
る折衝等が求められる。これらの日本的な社会関係の存在への気づきと理解が、社会人と
しての活動において必要と思われる。
(3)ものづくりに対するこだわりへの理解
日本の産業社会、特に製造業においては、ものづくりへのこだわりが非常に強い。西洋
的発想にも職人気質的な craftsmanship という言葉があるが、日本企業の「ものづくり」
は、一社員は勿論、部署や会社全体、経営陣に至るまで全社的にこだわりを持ち、その理
念の下に全社的企業活動を行なう点であろう。これらの重要性に気づく必要があると思わ
れる。
(4)企業内外における背景理解
日本的な仕事の仕方のうち、特徴的な点として、背景知識の理解という点が挙げられる。
例えば、ライン業務において「自分の担当業務だけでなく、前後の工程を理解して自分の
業務・役割を考える」「後工程はお客様」といった仕事の仕方などはその典型例であろう。
業務全体を俯瞰・把握しつつ、自分の担当業務を遂行することは、日本的な仕事の仕方の
特徴であり、周辺知識、背景知識を理解した上での業務遂行を求めている。
また、企業内だけでなく、企業を取り巻く環境に対しても、近年の工業所有権など知的
財産権や、企業のコンプライアンス、業界事情など、企業人として活動する上で必要とさ
れる背景知識や社会常識についての理解も同時に求められている。
7.1.3 異文化への対応能力
留学という形で日本社会を経験した留学生は、異文化への対応能力は日本人学生と比べ
ると高いと言える。その対応能力を日本の産業社会で更に活かすこと、また、アピールす
80
ることが重要である。
留学生にとって、日本企業の特質を理解・対応することが日本企業で就労する場合に必
要不可欠であると同時に、日本企業でスキルを身につける上でも重要である。求められる
日本の社会ニーズと自己特性を鑑み、異文化対応能力の研鑽がなお一層求められるものと
思われる。
(1)日本企業で就労する意義の顕在化
外国人人材の受入に慎重であった日本企業においても、経済グローバル化や世界的規模
の人材獲得競争の影響など、門戸が開かれつつある。企業によっては、優秀な人材確保、
グローバル人材というニーズのほか、組織内の活性化を目的とし外国人人材を雇用するケ
ースもある。
留学生においては、就職活動や就労を考慮するにあたり、日本企業が求める人材像、ニ
ーズと、留学生人材であるが故の自分自身の長所を分析する必要がある。今回ヒアリング
した元留学生の中には、筆記テストや個別面接では世界的な超大手企業を始めとして複数
社の試験に合格したが、集団面接において積極的な発言を繰り返したため、最終面接等で
断られたと言う声も聞かれた。これは個人の優秀さと同等に、先述したように日本企業は
組織力や協調性を望むケースが多いことを表した事例であり、協調性の観点でのアピール
が必要だったものと推察される。
留学生であることや、学生時代のキャリアパス、日本での留学・生活経験、専門知識・
語学などの個人能力を日本企業内において如何に活用できるのか、また、必要とされる人
材像に如何に応えることが出来るのかということを自己分析し、アピールする必要がある
と考えられる。
(2)国籍に囚われないグローバルな価値観の創出
留学生には、母国の価値観からの相対化と、日本の産業社会という異文化体を咀嚼し、
その橋渡し役となるべく新たな価値観の創出が望まれる。これは、単に文化の相違点を理
解するだけでなく、異文化に自己を適応させながら、複数文化の枠組みから考えることが
でき、日本文化でも母国文化でもない架け橋的人材の発想が必要とされるのではないだろ
うか。
例えば、日本は長期雇用的な発想が強いために、段階、経験を重視しながら、業務内容
や賃金が設定されている。このような状況下で、自己スキルや学生時代の経験を主張し、
業務や報酬を短期的に期待しても、恐らく受け容れられない。その反面、人材の育成とい
う観点では日本企業は熱心であり、業務内外において人材育成は時間と経費を用いて行な
われている。この過程を理解し、順応することが出来れば、日本の産業社会が有する「も
のづくり」の精神やスキルを習得することが出来る。
日本企業の特質と自身の描く将来像や価値観との接点を探り、日本企業の特質を理解し
81
ながら日本企業での活躍を目指すことが必要である。
7.1.4 日本企業内での行動能力の向上
社会人として必要とされる行動能力は、日本人学生、留学生を問わず必要とされる。そ
のなかでも、留学生に対しては、協調性など、日本的な組織性に順応するための能力を強
く求められている。これらの行動能力を学生時代に身につけておくことで、学生から社会
人への円滑な移行が期待できるとともに、就職活動においても有用であるものと考えられ
る。
(1)ビジネスマナー
日本社会における最低限度の一般的なビジネスマナーは、学生時代から身につけておい
た方が良いとの声が多い。挨拶、ビジネスシーンでの立居振舞といった日本社会における
基本的なマナーは、就職活動でも必要となる。
(2)コミュニケーション・協調性・チームワーク
日本企業では先述のように組織性が重視されることから、日常のコミュニケーションや
チームワークと協調性が求められる。これらは単に業務上の関係だけでなく、日本企業的
な特徴である業務時間外での「つきあい」など、コミュニケーションの重要性が指摘され
ている。また、役職によらない先輩、後輩といった上下関係や、同期同士の関係の重要性
も指摘されている。
元留学生にも、公私にわたってコミュニケーションや日本的な協調性が求められる。
(3)規律意識
勤怠管理に関する自律的な勤務態度や、社内規則、慣習など、日本企業は組織性を重視
する場合多いため、職場内の規律の遵守が求められる。
(4)情報収集、要約
昨今のビジネスシーンにおいては、インターネットを駆使した情報収集や検索が、必要
不可欠になっている。また、安易に膨大な情報を得ることが出来るようになった半面、ビ
ジネスシーンでは、収集した情報から要点のみを抽出する必要性がある。
また、インターネットや既存の資料からの情報収集に加え、他部署とのコミュニケーシ
ョンなど、ヒューマンネットワークを活用した収集も期待されている。
(5)プレゼンテーション能力・説明能力
企業活動では日本語能力も必要であると共に、その能力を駆使して、日常のホウレンソ
ウに始まり、あらゆるビジネスシーンで説明能力が必要とされる。知識を知るだけではな
く、それを上司や同僚等に説明する能力も同時に身につける必要がある。
82
また、単に説明・発言するだけでなく、複数参加者がいる会議等において、議論をしな
がら発言・説明する能力なども必要とされる。
7.1.5 留学生側の課題のまとめ
留学生は、まず必要とされる日本語能力や、日本企業文化の存在に気づく必要があると
思われる。特に日本語能力に関しては、入社後痛感する場合が多いことから、現在の語学
力や日本語に関する検定試験の結果などに満足することなく、ビジネスシーンにおける実
践力、応用力を身につけなければならない。
また、日本語の産業社会が有する独特の文化、風土を理解した上で、元留学生人材故に
有しているブリッジ人材としての能力や異文化対応能力を発揮し、行動することが求めら
れる。
7.2 企業側の課題
7.2.1 日本語能力
日本企業の多くで業務活動が日本語で行なわれていること、取引先、関係先との連絡な
ど対外的な活動も基本的に日本語で行なわれているため、日本語能力についてもネイティ
ブレベルというニーズが多い。企業から、挙げられた日本語能力についての課題は、業務
を遂行する上で表面化しやすい課題であるため、留学生側とほぼ重複する。
企業側では、待遇表現、非対面コミュニケーション、ビジネス文書作成・読解といった
日本語能力について、日本人と同等の高い日本語能力を希望するケースが多く、採用時に
留学生の日本語能力が大きな関門となっていることが分かった。
また、入社後においても外国人であることを理由に日本語学校等に通学させてもらえる
ということは殆どなく、日常業務においてOJT形式で日本語の習得が行なわれるケース
が多い。さらに入社後の各種手続きや、人事考課、昇進試験等も全て日本語で行なわれる
場合、日本語能力が十分でないと入社後の社内活動においても影響が出ることも点も指摘
されている。
企業側においても、元留学生が社内活動において極端に日本語能力による不利益を被ら
ないような配慮が求められる。
7.2.2 ビジネス文化・知識
言語能力は企業側、外国人人材側にともに表面化しやすく、問題解決が図りやすいが、
日本企業のビジネス文化・知識に関しては意識下の領域であり、解決が困難な課題と言え
る。
日本的な仕事の仕方や組織というものが、元留学生には当たり前ではないと言うことを
十分認識した上で、企業は彼らに対し求める業務や成果について、採用時や入社後の日常
業務において繰返し説明する必要がある。留学生に理解を求めると同時に、受け手側であ
83
る企業においても留学生の特質を理解する姿勢が必要である。
(1)日本的組織の説明
日本企業で就労するに当たって、日本的な組織性は、外国人人材にとって最も分かりづ
らい点であり、これは日本での生活経験がある外国人留学生においても同様といえる。組
織力を重視する日本企業にとっては、元留学生の有する個人主義や強い自己主張は採用時
や業務上においてマイナスと捉えることが多い。しかし、世界的な経済のグローバル化と
日本国内の労働人口の減少といった波に晒されている日本企業側にも変革が求められるの
ではないだろうか。
日本語という言語には、同音異義語などが多く存在し、文脈からの関連性や暗黙知とい
うものがより強い言語といえる。この言語文化は、日本企業文化にも少なからず影響して
いると考えられ、業務上においてもコンテクストから明白なことを表現・指示しないなど
の傾向が見られる。この結果、日本人から見た「当たり前」の感覚を元留学生に強要する
傾向がある。このような点は、ものづくりへのこだわりなど日本企業の長所を生み出す土
壌となる要素もあるが、同時に元留学生にとってのバイアスとなる場合もある。
日本人にとっての当たり前の感覚、仕事の仕方等を、元留学生に説明する配慮と同時に
OJT、OFFJT等を通じて継続的に伝える努力が必要である。企業風土の強みを活か
しつつ、経済のグローバル化や世界標準に対応できる新たな企業風土の構築も望まれる。
(2)企業風土や求める人材の明確化
日本企業は企業文化や風土を重視し、人材の獲得においても個人能力のほか、企業文化
への順応性を重視する傾向がある。一方、多くの元留学生は個人能力を重視する。企業が
求める人材像について、企業間の相違や特色を明確にして、アピールする必要があると思
われる。
また、元留学生を始めとする外国人人材は、スキルマップ、キャリアパスがはっきりし
ていることを望む傾向が強い。これに対して、日本企業は一般的に人材に複数の能力やス
キルを求めることが多く、企業を取り巻く環境・状況に応じた人事配置を行なうため、そ
の結果人事が流動的になることが多い。毎年、会社の都合により人事、キャリアが決定さ
れるということは日本社会では当たり前であっても、元留学生には奇異に映る。入社後の
スキルパス、人事方針について、外国人には明文化した形で予め方針を示す必要がある。
7.2.3 グローバル人材としての活用
元留学生に対する企業側のニーズとして、
「国籍を問わず優秀な人材」、
「グローバル化に
対応できる素質、能力」の2点が最も多くあげられている。留学生の希望や、実際の配属
先においても海外事業部門であるケースが多い。国籍を問わず、
「グローバル化に対応でき
る優秀な人材」としての期待が大きい。
84
(1)日本人学生との差異
日本企業が現在のところ留学生の採用に慎重であるのは、日本語能力と企業文化への適
応に対する不安が大きな要因となっているものと推察される。しかし、
外国人留学生で
あるということは、言語能力に関しては、母語とかなりのレベルの日本語というバイリン
ガルであるといってよい。また、母語だけでなく英語等、第三言語も日本人よりも堪能で
あるケースが多い。今後企業活動がグローバル化することを鑑みれば、日本語能力のレベ
ルはとにかく、母語、英語という面では、外国人留学生人材は、一般的な日本人学生と比
べ比較優位といってよい。また、留学を経験している時点で異文化への理解に関する能力
を発芽させていることも考慮すれば、
「グローバル化に対応できる素質、能力」は日本人学
生と比べれば高いと考えられる。転職等、長期雇用に対する価値観の相違に関しても、近
年日本人学生の考え方も変化しており、以前よりは日本人人材と遜色がないものと考えら
れる。
これらの要素を考慮すれば、グローバル人材の予備軍という観点では、日本人学生と比
べて高く評価でき、活用すべき人材ではないだろうか。
(2)企業の活性化への活用
一部の企業では、組織の活性化やイノベーション効果を期待して、意図的に外国人人材
を採用するケースも見られる。このような観点では、語学力、異文化対応という観点で、
留学生は人材としての付加価値が高いと思われる。また、現地の外国人人材を採用する場
合と比べると、留学経験者は日本社会への愛着感や理解度が高く、現地で雇用した外国人
人材と比べると、雇用関係が良好であるという意見も聞かれた。
7.2.4 日本企業内での行動能力
経済産業省の『企業の「求める人材像」データベースの構築について∼社会人基礎力に
基づく情報発信∼』によれば、業界、企業等により求められる行動能力に差異を生じてい
る。
これに対して、今回の調査結果では元留学生に対し日本人と同等という表現で幅広い能
力を求める傾向にあるが、これに加え、特にチームワーク、調和力、規律意識などを、特
に強く望む傾向にある。これは、留学生は日本企業が求める企業風土の理解が十分でない
こと、前例の少なさや言語文化面等の不安から、専門性や個人能力の優秀さを日本人学生
よりも強く望んでいるものと思われる。
7.2.5 企業側の課題のまとめ
日本企業は、固有の企業文化や企業風土への順応を重視する傾向が強く、その適性に必
要となる日本語能力や姿勢に不安がある留学生人材の採用には、一般的には消極的である。
85
留学生側にも努力が求められるものの、留学生が持つ特質を活用することが企業側にも求
められる。
7.3 課題克服のための方策
7.3.1 パーセプションギャップによる課題整理
異文化コミュニケーションのギャップと共通項については、氷山を例にモデル化されて
いる。目に見える言語面の差異だけではなく、海面下に存在する目に見えない社会文化に
おいてもギャップがある。
これを留学生の就労という観点で考えれば、目に見える日本語能力のギャップだけでは
なく、在学中には目に入りづらい企業文化などのギャップへの対応も必要であることがわ
かった。
本調査から明らかになった課題には、表面化しやすい言語的な違い(①)だけではなく、
日本的な仕事の進め方やビジネス文化(②)、社会人としての行動能力(③)など表面化し
にくいものも含まれる。
(下図参照)
これらの留学生の課題に対して、日本企業は留学生人材に対してグローバル人材として
の期待が大きいことを鑑みれば、上述の①∼③を克服しうる人材が、企業が求めるグロー
バル人材であると言えるのではないだろうか。
図表 7-1 パーセプションギャップによる課題
留学生向けビジネス日
本語研修の予想領域
文化的差異
①ビジネス日本語
可視領域
(目に見える差異)
海面
不可視領域
②日本企業文化・知識
(目に見えない差異)
④グローバル人材としての能力
③社会人としての行動能力
The “dual-iceberg” representation of bilingual proficiency
Cummins, J. and Swain, M. (1986) Bilingualism in Education.参照
また、グローバル人材として必要な適性を学生時代に最も兼ね備えているのが、留学生
人材であるともいえるので、企業側においてはその活用と、特質の理解が必要であると考
えられる。
7.3.2 必要とされる方策
必要とされる課題克服の方策としては、留学生は基本的にビジネス経験のないことを考
86
慮し、企業側が求める日本語能力レベルと日本企業に就業する社会人として必要となる能
力の高さについての気づきを与える必要がある。また、同時に、この調査より明らかとな
った課題を克服するための研修を在学中に行い、留学生に高い付加価値をつける必要があ
る。
日本の企業文化、ビジネス習慣というのは、高コンテクストな日本の言語・文化の特質
と密接に関わりあう。調査より明らかになった先述の 3 つの課題(①∼③)は、それぞれ
不可分に重なり合い連動している。したがって、日本企業入社前の大学在学期間中に、調
査より明らかとなった3つの項目を統合した学習コンテンツを経験することが望まれる。
また、これらの課題について克服しようという留学生人材を、日本企業も積極的に受け
入れる態勢整備が望まれる。その結果、企業活動と個人活動の双方がWIN−WINの関
係が構築できるものと考えられる。
87
第8章
おわりに
本調査研究事業では、日本企業における外国人留学生の就業に際する課題調査を行うと
ともに、今後の外国人留学生の就業促進に向けた課題克服のあり方についての検討をおこ
なった。今後の産業人材政策にこれらの調査結果が活用されることを望むものである。
なお、本事業実施については、ご多忙な折に大変貴重なお時間を頂き、インタビューや
アンケート調査事業に応じていただいた企業のご担当者や元留学生の方々、本事業を進め
る上でご指導いただいた検討委員の先生方、文献調査にご協力いただいた特定非営利活動
法人日本語教育研究所の方々に御礼を申し上げたい。
88
参考文献
Cummins, J. and Swain, M.(1986) Bilingualism in Education.
経済産業省(2006)『社会人基礎力に関する研究会「中間とりまとめ」報告書』
経済産業省(2007)『企業の「求める人材像」調査 2007∼社会人基礎力との関係∼』
経済産業省(2007)『第 35 回我が国企業の海外事業活動海外事業活動基本調査
−平成 16(2004)年度実績/平成 17(2005)年 7 月 1 日調査 −』
独立行政法人日本学生支援機構(2006)「留学生受入れの概況(平成 18 年版)」
法務省入国管理局(2006)
「平成 17 年における留学生等の日本企業等への就職状況につい
て」
村岡英裕(2002)「質問調査:インタビューとアンケート」 J.V.ネウストプニー・宮崎里
司共編著『言語研究の方法』pp.125-142 くろしお出版
89
添付資料
4) 文献調査リスト
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
1994
「ビジネス・コミュニケーションにおける「話し
『日本語学』13(12), pp.38-45.
ことば」の役割と課題」
明治書院
NHKがH5年に行ったアンケート結果(一部上場企業298社:にビジネスコミュニケーション上の問題)をもとに、ビジネ
スにおける話しことばの要件を考察。話の組み立て・話体の簡潔さ・音声化の明快さ・聞き取り能力の適正化の4つ
の要素が挙げられており、これらはマニュアル学習で身につくものではなく、学校教育の場でも身につけるべきとして
いる。
2
阿久津智・
酒井たか子
1992
「新開発教材におけるタスク作成(1)
-初級前期を中心に」
『筑波大学留学生センター日本語教育論
集』 7,pp.65-107.
筑波大学留
学生センター
『SFJ』について。会話と文法の2本の柱を持つ、その課で学んだことを実際の場面で使えるための橋渡しがタスク。
タスク作成の際、話題としては1)学習者の必要性、2)積極的に日本に関する情報を与える3)学習者の知的・認知
的・社会的能力を生かせるものの3点に考慮した。タスク作成上の留意点・内容紹介の詳細な記述あり。さらに学習
項目及び話題・内容からの分類もされている。問題点としては、1)タスクの役割2)学習スタイル3)評価4)書き能力が
挙げられている。実際のタスク例も資料としてついている(『SFJ』より)。
3
阿部敦
中野克彦
2001
『外国人住民の生活相談とボランティア−
実証的ボランティア論の構築に向けて−』
ぎょうせい
多文化共生センターの生活相談事業で外国人住民が抱える問題を収集し、政府やNGOが求められる「適切な問題
解決へのアプローチ」を考察。外国人住民の歴史的経緯、共生阻害要因、アプローチ法が示されている。
4
荒木晶子
1989
「外国人企業研修生の日本体験」
『異文化間教育』3, pp.81−94.
異文化間教育学
会
1984年度の日系企業の新入社員研修参加者(5カ国27名、研修は3ヶ月日本で開催)に対して行ったアンケートの回
答が紹介されている。カリキュラム的なものではなく、参加者の異文化への適応に焦点が当てられている。
5
有馬淳一・島田徳
子
2002
「意味のある学習環境の設計を目指した
『日本語国際センター紀要』
コースデザイン−2000年度埼玉県JET青
12, pp.87−105.
年日本語研修での実践−」
研修におけるコースデザインとその実践について。学習者にとっての意味のある学習を重視し、能動的・構成的・主
国際交流基金日 体的・現実的・協調的の5つがコースの特色となっている。期間は5日間、「文法・会話」「語彙・漢字」で学んだ内容を
本語国際センター 「デイリー・コミュニケーション」の授業で実践できるようになっており、グループでのフィールドトリップやスキット作成。
コース終了後の学習者からの評価の記述もある。
多様化に対応する一つの方法として学習過程の個別化について考察。以下の4つ提案の提案によって個別化を積
極的に取り込むことが十分可能だとしている。①学習者の特性を生かせる形態、即ち個別指導、もしくは小集団指導
と一斉指導を組み合わせることで、効率と個別対応という双方の利点を共存を図ること。 ②その際の個別化はカリ
キュラム開発の発想に基づいた役割拡大の方向に向かう積極的なものであること。 ③カリキュラムを開発し、設計
するプロセスには学習者が参加し、教授者は支援者としてそれを支援していくこと。 ④①∼③を実現のために、教
授者同士は連携を保ち情報交換をすること。所属する組織の内部にも外部にもネットワークを作ること。
1
秋山和平
6
池上摩希子
1995
「教授・学習過程における積極的な個別化 『中国帰国者定着促進センター紀要』 3,
に関する考察と提案」
pp.108-127.
財団法人 中国残
留孤児援護基金
中国帰国者定着
促進センター
7
池田伸子
1995
「教授システム開発におけるニーズ評価に 『ICU日本語教育研究センター紀要』4,
ついて」
pp.43-62.
国際基督教大学
ビジネスパーソンの日本語教授法システムを開発するために、ビジネス日本語を学習しているビジネスパーソンを対
象に行われたニーズ評価。被験者は主に英語圏出身者。
8
池田伸子
「ビジネス日本語教育における教育目標の 『ICU日本語教育研究センター紀要』 5,
1996a 設定について:文化・習慣についての重要
pp.11-24.
性を考える」
国際基督教大学
日本で働いている外国人ビジネスパーソンを対象に行ったアンケート結果から、ビジネス日本語教育において取り上
げる文化・習慣項目を明らかにしている。アンケートは日本(人)のビジネスに関する文化・習慣的特徴について。調
査対象は英語圏出身者が多い。
9
池田伸子
「日本人ビジネスマンの話し言葉における
1996b 語彙調査−ビジネスマン用日本語教育シス 『日本語教育』88, pp.117-127.
テム開発の基礎として−
日本語教育学会
30時間分のビジネスマンの会社における発話から(社内・社外のミーティング・打ち合わせ・電話)、語彙を分析。ビジ
ネスマンの語彙は話しことばの語彙であるため、知識階層の語彙同様、感動詞が多く含まれており、「的」の使用が
多い。漢語の使用率及び名詞語彙数が高いという書き言葉同様の特徴も見られた。
10
石川清彦
池田万季
2004
『いろは』16, pp.1-3.
財団法人
交流センター
左記団体が、台湾の日系企業に対して人材の募集、求める日本語能力など、アンケート調査を行った報告。不足し
ている日本語能力については、「書く能力」が多くあげられている。
11
伊藤守
2002
『コーチング・マネージメント』
コーチング・スキル・導入法を紹介。ビジネス社会での上司と部下の関係を意識し、どのような会話・対話が必要か、
ディスカバー トゥ
どのような姿勢が必要かということを論じている。コーチングに限らず、コミュニケーション・スキルにも重きを置いてい
エンティワン
る。
「日系企業が期待する日本語能力」
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 1/6ページ
添付資料
4) 文献調査リスト
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
12
上田和子
1995
「「テープ通信」を用いた日本語コースの
試み 香港でのビジネス・ジャパニーズの
場合」
13
上田和子
羽太園
和泉元 千春
2001
「専門日本語教育のプログラム・デザイン−
国際交流基金日 9ヶ月間の外交官及び公務員日本語研修の開設期におけるコース・デザインに関する論文。自律学習能力育成のた
外交官・公務員日本語研修における選択シ 『日本語国際センター紀要』 11, pp.69-87.
本語国際センター めの選択科目履修制度の問題点、その対策実践例の報告が中心。
ステムの実践−」
14
ウォン 宮副裕子
1997
「海外における日本語教育の連携香港」
15
宇都野友宏
2001
「FIELDWORK:当地日系企業における日 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 4, pp.189-196.
本語専攻コースに関わる調査」
16
内海美也子
2001
「ビジネス場面における敬語・待遇表現の
指導」
17
王敏東
1997
「台湾におけるビジネス日本語関係の教材
『日本語教育研究』34, pp.128−141.
について」
18
岡崎敏雄・
岡崎眸
1993
19
大隈敦子
羽太園
林敏夫
品川直美
2003
「専門日本語の学習過程
―研究活動支援制度を利用した
学習を通して―」
20
小田切隆
1990
「中級日本語教科書から発展した読み物」 『講座日本語教育』 25, pp.40-49.
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
90%以上が政治・経済・商学専攻の日本語中級クラスにおいて、経済関係の読みものを使用した例と手順を紹介。
学習者は関心を持っていたが中級ではまだ、まとめて読む力が不足していた。
21
小野寺志津
李徳奉
金久保紀子
2004
「ビジネス日本語教育のあり方−新入社員 『東京家政学院筑波女子大学紀要』 8,
教育マニュアルから見えるもの−」
pp.127-137.
筑波学院大学
日本企業2社(生命保険会社と運輸会社)の新人教育マニュアルを比較分析し、ビジネス日本語の定義を試みた論
文。マニュアルの項目を言語、非言語に分類し、日本企業の求める能力を明らかにしている。
22
片桐準二
椿 晴海
2002
「タイ国の大学における日本語主専攻開設 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 5, pp.53-68.
前後の卒業生の動向」
国際交流基金バン
コック日本語セン タイ・シラパコーン大学日本語講座卒業生2001年の追跡調査の結果と考察。
ター
23
川口義一
(1)『早稲田大学日本語研究教育センター紀
「海外における待遇表現教育の問題点
要』15, pp.15-28.
2002早稲田大学日本
―台湾での研修会における「事前課題」分 (2)『講座日本語教育』38, pp.1-15.
語教育センター
2003
(3)『早稲田大学日本語教育センター紀要』
析(1)∼(3)―」
16, pp.37-50.
24
岸田由美
2004
『日本語教育論集 世界の日本語教育』5,
国際交流基金
pp.45−60.
『日本語学』16(6), pp.211−222.
明治書院
言語文化研究所
『日本語教育におけるコミュニカティブ・アプ
凡人社
ローチ』
「理系大学院留学生の生活とニーズに関す
る事例研究―金沢大学留学生生活実態調 『金沢大学留学生センター紀要』7, pp.4558.
査の分析より―」
香港における日本語の出来る香港人ビジネス・パーソンに期待される能力の具体的な記述あり。また、香港理工大
学の日本語コースの記述では「日本語教師間の連携」「日本語教師と学習者の連携」「学習者の連携」「香港のコミュ
ニティーとの連携」他、様々な連携の試みの記述あり。学習者中心のカリキュラムで短期間で高度の日本語のイン
ターアクション能力の養成を目標としている。
国際交流基金バン
コック日本語セン タイの日系企業15社への調査・面接をもとに、タイにおけるビジネス日本語教育の課題等を提言。
ター
『日本語教育学会春季大会予稿集』 pp.36日本語教育学会
42.
『日本語国際センター紀要』13, pp.65-82.
香港社会の要求にあった日本語が使えるビジネスパーソンの養成を目指している香港理工学院(現香港城市大学)
商業及管理学系日本語コースの副専攻における、「テープ通信」の試みの紹介。
初級・中級レベルのビジネスピープルに対する敬語・待遇表現の指導法と授業例報告.
台湾で発行されているビジネス日本語の書籍一覧が紹介されている。
本書の第2章と第3章に「タスク中心の指導」について書かれている。タスクの定義、タスクの校正、活動のタイプ、タ
スクの教師にとっての意味、タスクが可能にし得るもの、よいタスクの条件など理論が説明されている。
国際交流基金日 研究者に対する日本語教育の実践報告個人単位の学習活動で専門分野の専門家を研究アドバイザーとし、日本語
本語国際センター 教育はサポーターにまわる形態をとる。研究活動支援制度が日本語研修全体において果たす役割を考察.
台湾での「日本語教育冬期研修会」において「事前課題」として課したレポートをもとに台湾の日本語教育における待
遇表現指導の問題点及び待遇表現そのものについて分析・考察。
金沢大学留学生セ 金沢大学理系大学院生の留学の経緯、経済状況、生活環境、希望する進路、留学の満足度などの調査がまとめら
ンター
れている。
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 2/6ページ
添付資料
4) 文献調査リスト
No.
25
26
27
執筆者
工藤節子
熊野七絵
石井容子
亀井元子
田中哲哉
岩澤和宏
栗原幸則
近藤 彩
品田潤子
保坂敏子
島田めぐみ
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
明治書院
特殊目的日本語教育(Japanese for specific purpose;JSP)カリキュラム方法論の改善に向けて、タスク中心のカリ
キュラムの可能性について考察を行っている.
「初級レベルの専門日本語研修の
『国際交流基金 日本語教育紀要』
ためのオーラルテスト評価基準開発
1, pp.175-188.
−外交官・公務員日本語研修での試み−」
国際交流基金
初級レベルの外交官・公務員日本語研修で目指すべき日本語運用能力や評価のあり方について考察する。
2001
「営業担当者のタスクの特徴
―打ち合わせの事例から―」
日本語教育学会
実録のビジネスの場の打ち合わせを録音・文字化したデータをもとに営業担当者のタスクを明らかにする.
1994
「JSPにおけるタスク中心のカリキュラム」
2005
『日本語学』 13(12), pp.62-70.
『日本語教育学会春季大会予稿集』
pp.103-108.
28
国頭美紀
1992
「プレゼンテーションにおける学習者とネイ
『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 7, 文化外国語専門
ティブスピーカーの相互交渉分析
−コミュニケーション・ストラテジーの使用を pp.57−77.
学校
中心に−」
「ビジネスプレゼンテーション」コースでのプレゼンテーション(日本人の前でプレゼンテーションを行い、日本人からの
質問に答える)終了後のアンケート調査の回答から、学習者のコミュニケーション行動の実態、ストラテジーの使用状
況が検証されている。学習者の大部分は問題が起こった際、瞬間的に解決方策を考えており、問題回避が出来るか
否かで、学習者の日本語も評価が異なり、ストラテジー能力の役割の重要性が書かれている。
29
榊原挿隆
1991
「米大学の国際ビジネス学科での大学院生 『日本語教育論集 世界の日本語教育』 1,
を対象とした日本語プログラムの開発」
pp.173-182.
国際交流基金
サウスカロライナ大学の国際ビジネス修士課程におけるプログラムの紹介。
30
佐々木ひとみ
水野治久
2000
「外国人研修生の異文化適応に
関する縦断的分析」
『日本語国際センター紀要』 10, pp.1-16.
国際交流基金
国際交流基金日本語国際センターの平成10年度海外日本語教師長期研修プログラムに参加した外国人研修生の
異文化適応の実態を調査、考察。
31
清水百合・
山本そのこ
1992
「新開発教材におけるタスク作成(2)
-初級後期の小規模なタスクについ
て」
『筑波大学留学生センター日本語教育論
集』 7,
pp.103-126.
筑波大学留
学生センター
『SFJ』改定をするにあたって、第3巻を担当した筆者らがタスクをどのように考えたかの記述。初級後期では、中・上
級を念頭に置き、複数の技能を必要とするタスクが増えてくる。教科書としての制限も書かれている。第3巻の特徴は
1)小規模なタスクとトータルタスクの混在(小タスク→大タスクへと学習が進められる)2)タスクの多様性が挙げられ
ている。聞き・読みタスクについての分析が細かくなされている。
32
島田めぐみ
渋川晶
1998
「外国人ビジネス関係者の日本語使用:実 『日本語教育論集 世界の日本語教育』 8,
態と企業からの要望」
pp.121-140.
国際交流基金
日本で働く外国人ビジネス関係者と在日企業の日本語に対するニーズについての調査。日本・合弁企業と外資系企
業を比較しながら調査結果がまとめられている。
「新開発教材におけるタスク作成(3)
-初級後期のトータル・タスク−」
『筑波大学留学生センター日本語教育論
集』 7,pp.127−154.
筑波大学留
学生センター
『NFJ』では、タスクを大きな流れを持った活動全体としてとらえ、実生活へのリハーサルとしたいとの思いからトータ
ルタスクが導入されている。そのねらいは1)動機・意味・必要性がある2)活動の流れがある3)四技能を自然な形で連
動させる4)大人としての知的作業として考えるとされる。よって教室活動は内容が重要な要素となり、4つの学習効
果、具体例が挙げられている。問題点としては1)学習者がタスクのテーマに興味が持てないことがある2)タスクがあ
る学習者には難しすぎる・易しすぎるの教科書という性質上避けられないものがあるが、これに関する解決策も書か
れている。
『コーチングが人を活かす』
コーチング・スキルについての紹介。ビジネスパーソンを対象に書かれている。状況別にスキルが使えるように、「部
ディスカバー トゥ
下が期限通りにレポート等を提出しない場合」、「部下が顧客とどのように商談を進めているのか今ひとつ見えない」
エンティワン
といったように項目分類されている。
33
新谷あゆり・
藤牧喜久子
1992
34
鈴木義幸
2000
35
清 ルミ
2001
「学生・社会人に対する待遇表現教育につ 『日本語教育学会春季大会予稿集』 pp.28日本語教育学会
いての方法論・具体的な指導法」
35.
従来の待遇表現の指導法の問題点を指摘し、筆者の実践する指導法を報告している.
36
清ルミ
1995
「上級日本語ビジネスピープルのビジネス
コミュニケーション上の支障点−インタ
ビュー調査から教授内容を探る−」
上級レベルのビジネスピープルが仕事上で感じる日本語の問題点を把握し、教授内容を探る。外国人の出身国・母
語についての記述はない。論文内では、日本人ビジネスパーソンが挙げた外国人ビジネスパーソンの問題点につい
ても述べられている。
『日本語教育』87, 139-152.
日本語教育学会
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 3/6ページ
添付資料
4) 文献調査リスト
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
37
高見澤孟
1987
「Job-oriented Trainingー米国国務省日本
『日本語教育』 61, pp.63-75.
語研修所における日本語教育」
日本語教育学会
外交官に対する実務的な日本語能力の養成を目的とした日本語及び日本事情の教育について紹介。研修では「日
本事情」が日本語研修と同程度に重要視されている。
38
高見澤孟
1994
「ビジネス・コミュニケーションと日本語の問
題−外国人とのコミュニケーションを考える 『日本語学』13(12), pp.30-37.
−」
明治書院
社内の会話、打ち合わせ、調査、広報活動など、ビジネス場面でのコミュニケーション活動をビジネス・コミュニケー
ションと定義し、活動内容と日本語のかかわりを考察。
39
谷原公男
栗山恵子
2002
「アメリカのビジネス日本語教育事情−最
近の動向−」
『専門日本語教育研究』4, pp.11-16.
専門日本語教育
学会
アメリカの大学・大学院におけるビジネス日本語の事例紹介。特にニューヨーク州立大バッファロー校のオンラインビ
ジネス日本語コース"E-business Japanese"が中心。
40
田丸淑子
1994
「ビジネス・スクールの日本語教育−コー
ス・デザインの課題−」
『日本語学』13(12), pp.54-61.
明治書院
ビジネス・スクールでの日本語教育について取り上げる。①到達目標の高さと時間的制約、②ニーズ特定と目標設
定の難しさ、③日本語使用の実際に関する情報不足、④文化の扱い方、の4つを問題点として挙げている。
41
津村俊充
石田裕久
2004
42
野元千寿子
2004
「留学生に対するビジネス日本語−APUに 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』 15,
昭和女子大学
pp.31-43.
おける教育実践とアンケート実施より−」
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部で日本企業に就職を希望している留学生を対象に行った授業とア
ンケートの実践報告。就職活動を主なテーマとし、就職活動を行う際の問題点や就職活動で必要な技術、ビジネス日
本語クラスに対する評価を紹介。
43
野元千寿子
2005
「大学におけるビジネス日本語:受講者アン 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』16,
ケートを通して見えること」
pp.13-23.
昭和女子大学
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部の留学生を対象に行ったビジネス日本語クラスに対する授業アン
ケートの報告。アンケート結果から、カリキュラム上での課題を提示している。
44
羽太園
熊野七絵
2003
「職業人の特性を生かす学習環境−外交 『日本語国際センター紀要』
官・公務員日本語研修スピーチクラスの検
13, pp.47−63.
証−」
国際交流基金日 職務上のスピーチのニーズから、スピーチクラスのコースをデザイン。スピーチクラスが提供している学習環境を「コ
本語国際センター ミュニカティブ・ストレス」という観点から分析する。
45
袴田麻里
2000
製造組み立てラインで働く日本人リーダー・インドネシア・スリランカ人研修生・日系ブラジル人就労者に行ったアン
「職場における外国人と日本人のコミュニ 『異文化コミュニケーション研究』 12, pp.79 神 田 外 語 大 学 異
ケート結果(コミュニケーションについての意識)が記述。日本人が作業中のコミュニケーションを重視しているのに対
ケーション−製造組み立てライン職場での
文化コミュニケー
し、外国人は生産活動とは直接関係ない状況でもコミュニケーションを図ろうとしている。また日系ブラジル人はトラブ
−96.
アンケート調査から−」
ション研究所
ルを解決するストラテジーにを研修生より多く持っていた。
46
原田 明子
2004
「バンコクの日系企業の求める日本語ニー
『早稲田大学日本語教育研究』 5, pp.169ズに関する分析 −ビジネスパーソンによる
早稲田大学
181.
日本語学習動機との比較から−」
47
平井一樹
2005
「ビジネス日本語の課題と新たな領域」
『愛知産業大学日本語教育研究所紀要』 2, 愛知産業大学日
本語教育研究所
pp.49−56.
48
藤本明
1993
「スタンフォード大学夏期講座”Japanese
for Business”」
『AJALT』16, pp.10−15.
49
札野寛子
1996
「日本人学生との交流を通して学ぶ科学技
術基礎日本語短期プログラム
『世界の日本語教育<日本語教育事情報告 国際交流基金日 SPGの概要、日本人学生との交流を通しての科学技術日本語の指導の実例が紹介され、成果の検討も行われてい
―金沢工業大学夏季日本語プログラム(KI 編>』 4, pp.153-172.
本語国際センター る。プログラムの運営方法・指導のポイントについての考察も行われている。
T−SPJ)―」
『ファシリテーター・トレーニング∼自己実現
ナカニシヤ出版
を促す教育ファシリテーションへのアプローチ∼』
ファシリテーターの役割について実践例も含めて紹介。学習支援に必要な基礎知識、対人関係能力を育成するため
のラボラトリー・メソッドを用いた体験学習の基礎知識など、ファシリテーション・スキル養成のための基本的枠組みを
提供。
将来海外の日系企業で働きたいと考えている人に役立つような、企業と学習者双方のニーズに合ったビジネス日本
語シラバスの作成を目的とした研究。
シャープ、松下、韓国のITエンジニア派遣等、ビジネス日本語の現状が述べられ、教材・シラバスが現状に追いつい
ていないとする。電子メールを題材とした試案が提案され、シラバスを考える際の参考になると筆者は述べている。
(社)国際日本語普 タイトルの講座についての実践報告。教材開発・カリキュラムに多くがさかれている。筆者はロールプレー・討論を重
視していたようである。
及協会
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 4/6ページ
添付資料
4) 文献調査リスト
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
「就職面接場面を取り上げた日本語教材の 『昭和女子大学大学院日本語教育研究紀
昭和女子大学
要』 2, pp.118-127.
現状分析」
要旨
市販の日本語教材で就職面接場面が取り上げられている4冊(面接場面は9冊)を対象とし、面接場面の取り上げ
方、学習対象レベルを調査し、留学生の就職面接を支援する日本語教材について検討。
50
古川雅子
2004
51
細川英雄
酒井和子他
2003
『「総合」の考え方と方法』
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
早稲田大学での日本語クラスを元に、「総合」についての考え方、実践例を紹介。各章、実践例の具体的方法、テー
マ、評価が整理されている。
52
細川英雄
酒井和子他
2003
「「総合」の考え方−問題発見解決学習とし
『「総合」の考え方と方法』
ての総合型日本語教育」
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
早稲田大学の留学生授業で行われている総合活動型日本語教育の方法を示したテキスト。総合活動型日本語教育
の定義に加え、実践例集では活動項目や評価などが細かく示されている。
53
堀井恵子
2006
「アカデミック・ジャパニーズをふまえたビジ
ネス・ジャパニーズ教育の意義と課題 How
『武蔵野大学文学部紀要』 7, pp.151-160. 武蔵野大学
to Develop Business Japanese Based on
Academic Japanese」
54
前家裕美
1999
「ビジネスコースの変遷とカリキュラム」
55
松本隆、山口麻
子、高野昌弘
1998
アメリカ・カナダ大
「経済分野の専門的日本語教育−語学教 『アメリカ・カナダ大学連合日本研究センタ左機関での「ビジネス・社会」「ビジネスコース」「政治・経済」コースの実践報告。コース概要、授業内容、学生への聞
学連合日本研究セ
師と専門家の連携を目指して−」
き取り調査結果が述べられている。語学教師と専門分野の教師との連携の必要性が挙げられている。
紀要』 21, pp.1−40.
ンター
56
丸山敬介
1991
「日本語教育上級段階における専門教育の 『同志社女子大学日本語日本文学』 3,
一モデル−営業職にあるビジネスマンを対
pp.31−53.
象に−」
同志社女子大学
上級ビジネスコースにおけるビジネスマン教師の役割の重要性。ビジネスマン教師の専門知識が有効に引き出され
るように、日本語教師は役割分担を明確にし、コースを運営すべき。営業職ビジネスマンを対象としたコースのモデ
ルが述べられている。
57
丸山敬介
1992
「専門家との共同実施形態による総括テス 『同志社女子大学日本語日本文学 』4,
トの試み」
pp.12-30.
同志社女子大学
上級段階で学ぶ営業職のビジネスマン対象のコースにおける評価(オープン・テスト)に関する論文。営業活動の場
面をロールプレイで行わせてその模様を評価・測定するパフォーマンステストを実施。コース運営から評価まで日本
語教師とビジネスマン教師との共同実施で行っている。
58
丸山敬介
2005
『教師とコーディネータのための日本語プロ スリーエーネット
グラム運営の手引き』
ワーク
企業研修生または定住型・長期滞在型の外国人を対象とした短期プログラムを設置・運営するコーディネーター、そ
こで指導する日本語教師のための手引き。学習者のニーズをよりよい形で実現させるための方法や姿勢を、プログ
ラムの立案・進行から就労にいたるまで段階ごとに解説。
59
村川雅弘
2005
『授業にいかす 教師がいきる ワーク
ショップ型研修のすすめ』
ぎょうせい
研修やワークショップの原理といった理論とともに、具体的な事例を多く取り上げている。「理論」、「事例」、「実際の
研修例」とわかりやすい構成になっている。
60
茂住和世
2003
「中国上海 復旦大学日語日文科に
おける日本語教育」
『東京情報大学 研究論集』 Vol.6,
No.2, pp.171-181.
東京情報大学
復旦大学日語日文科の日本語教育について具体的カリキュラム・指導法の紹介。
61
茂住和世
2004
「異文化環境に適応する人材に求められる 『東京情報大学 研究論集』7(2), pp.93もの∼日中合弁企業における社員研修の
104.
事例から∼」
東京情報大学
日中合弁企業中国人SEに対する社員研修についての調査結果。外国人の人材育成にはコミュニケーション技能お
よびソーシャルスキルを重点的に教える必要性が挙げられる。
国際交流基金
オハイオ州立大学における日本語個人教授プログラムの概要、その目的、注意点及び問題点に言及した実践報告
論文。個人教授プログラムの目的としては以下の4点が挙げられる。①日本語を学ぶ機会を提供する ②各々の学
習者のペースにあった進度 ③様々な学習者のニーズに十分答える ④自然な日本語コミュニケーション。 しかしな
がら、個人教授プラグラムの実践においては有効点と同時に問題点・注意点も浮上する。それには以下の5つが挙
げられる。①学生への情報伝達の問題 ②自習中心のプログラム ③教師のワークロードと教案 ④記録 ⑤プログ
ラム全体の効率
62
湯浅悦代
2005
「日本語個人教授プログラムの目的と実
践」
留学生の就職の現状を明らかにした上で、先行文献・教材などから21世紀に対応したビジネス・ジャパニーズがどの
ようなものであるかをさぐり、それに基づいて、留学生を対象としたアカデミック・ジャパニーズをふまえたビジネス・
ジャパニーズ教育の意義と課題を明らかにする。
『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 文 化 外 国 語 専 門 1986年からのビジネスコースの変遷が述べられている。‘95年以降はビジネスパーソン予備軍主体のコースとなり、
13, pp.81−99.
学校
教師が教えるより、学習者が考える授業へと変化した。具体的な教室活動が書かれている。
『世界の日本語教育』15, pp.193-206.
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 5/6ページ
添付資料
4) 文献調査リスト
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
63
横田淳子
1990
「専門教育とのつながりを重視する上級日
『日本語教育』 71, pp120-133.
本語教育の方法」
日本語教育学会
留学生の日本語教育に対するニーズに応えるため、専門分野の内容とつながる上級日本語教育の必要性が述べら
れ、その教育方法として5つのプログラムが提示されている。
64
吉原英樹
星野裕志
2003
総合商社
―日本人が日本語で経営―
『国民経済雑誌』187(3), pp.19-34.
神戸大学経済経
営学会
海外多国籍企業と日本の多国籍企業(例:総合商社)の対比。日本企業の特徴として日本人が日本語を使って経営
活動を行う点があげられる。様々な商社での例や商社へのインタビューがまとめられている。
65
梁安玉
上田和子
1999
「書きことば教育のカリキュラムデザイン」
『世界の日本語教育 日本語教育事情報告
国際交流基金
編』 5, pp.217-231.
66
梁 安玉
2001
「香港の学習者のための日中・中日の翻
訳、通訳カリキュラム・デザインへの試み」
『日本学刊』 5, pp.53-60.
香港日本語
教育研究会
67
(座談会)
1993
「日本語でビジネス」座談会
『AJALT』 16, pp.16−21.
(社)国際日本語普 4人の外国人の座談会。学習過程、業務での日本語使用状況や、日本語でビジネスを行う際の困難点が述べられて
及協会
いる。
68
筆者記述なし
2005
「ビジネス日本語の「目標能力」例
−インド人IT技術者の場合−」
『AJALT』28, pp.44−47.
(社)国際日本語普 優秀なインド人IT技術者にインドで日本語教育を実施し、日本へ派遣している企業の日本語コースについて。目標と
及協会
なる日本語能力、訓練法、評価法の一例が書かれている。
69
マルカム・S・ノー
ルズ
2005
『学習者と教育者のための自己主導型学習
明石書店
ガイド―ともに創る学習のすすめ』
読者が学習者でも教師でも、双方にとって、自己主導的な学習者として活用すべきリソースを提供している。自分の
コンピタンスを開花するために、または本書そのものがリソースとして活用できる。
2004
『参加型 ワークショップ入門』
明石書店
本書は、講義や授業などのシーンで使える活動や演習を多数盛り込み、会議やワークショップを双方向のものにした
い、訓練コースを生き生きとしたものにしたい、自分のレパートリーを広げたい人などに必読の書である。
『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・
ベース学習』
学事出版
プロジェクト・ベース学習とは何かという紹介と学習者をどう評価するかについて書いてある。有能な社会人の育成を
教育の目的におき、学校は学習者に何を提供すべきかについて提案した書である。
『開発金融研究所報』 13, pp.60-97.
国際協力銀行
マレーシア・タイ・ベトナムの3カ国を対象とし、これらの国々への今後の高等教育支援のあり方を日本の大学・企業
との協力の観念から検討するもの。
香港日本語
教育研究会
香港人スタッフについて、香港日系企業マネージャーにインタビュー。日本語よりも日本の社会・文化の知識が重視
されている。
70
ロバート・チェン
バース
71
ロナルド・J・ニュー
エル
2004
72
国際協力銀行
開発金融研究所
2002
高等教育支援のあり方
―大学間・産学連携―
73
Tsoi, Eva
2002
「日本人上司から見た香港人スタッフ:異文
化コミュニケーションによる問題・日本語学 『日本学刊』 6, pp.123-125.
習者へのアドバイス」
香港社会のビジネスの場における日本語の書きことばのニーズ及び「書類への対応」のための書きことば教育のカ
リキュラム・デザインを紹介。
香港城市大学での「日中翻訳・通訳」クラスのカリキュラム・デザインの紹介。
文献調査:コース設計例、設計理論に関する先行研究 6/6ページ
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
明治書院
NHKがH5年に行ったアンケート結果(一部上場企業298社:にビジネスコミュニケーション上の問題)をもとに、ビジネ
スにおける話しことばの要件を考察。話の組み立て・話体の簡潔さ・音声化の明快さ・聞き取り能力の適正化の4つ
の要素が挙げられており、これらはマニュアル学習で身につくものではなく、学校教育の場でも身につけるべきとして
いる。
『外国人住民の生活相談とボランティア−
実証的ボランティア論の構築に向けて−』
ぎょうせい
多文化共生センターの生活相談事業で外国人住民が抱える問題を収集し、政府やNGOが求められる「適切な問題
解決へのアプローチ」を考察。外国人住民の歴史的経緯、共生阻害要因、アプローチ法が示されている。
「企業内の外国人社員に対する日本語研
修」
『月間日本語』 11
アルク
日本国内の77企業に対して行ったアンケートの抜粋。回答が示されている項目は①外国人社員採用の実績②その
社員に対する日本語教育③期待する日本語能力④日本の商習慣習得への期待。
2003
「就職意識高揚を目的とした「プロジェクト
ワーク」の実践」
『比治山大学短期大学部紀要』38, pp.1-12
比治山大学
短期大学
「働く」ことに興味をを持たせるため、短大1年生(日本人)に行ったプロジェクトワークの事例報告。1)自己認識2)グ
ループワーク3)振り返りの3段階を経る。学習者からは概ね「働くことに興味がわいた」「チームワークの重要性が理
解できた」等、肯定的な評価がなされた。
荒木晶子
1989
「外国人企業研修生の日本体験」
『異文化間教育』3, pp.81−94
異文化間教育学
会
1984年度の日系企業の新入社員研修参加者(5カ国27名、研修は3ヶ月日本で開催)に対して行ったアンケートの回
答が紹介されている。カリキュラム的なものではなく、参加者の異文化への適応に焦点が当てられている。
6
池田伸子
1995
「教授システム開発におけるニーズ評価に 『ICU日本語教育研究センター紀要』4,
ついて」
pp.43-62
国際基督教大学
ビジネスパーソンの日本語教授法システムを開発するために、ビジネス日本語を学習しているビジネスパーソンを対
象に行われたニーズ評価。被験者は主に英語圏出身者。
7
池田伸子
「ビジネス日本語教育における教育目標の 『ICU日本語教育研究センター紀要』 5,
1996a 設定について:文化・習慣についての重要
pp.11-24
性を考える」
国際基督教大学
日本で働いている外国人ビジネスパーソンを対象に行ったアンケート結果から、ビジネス日本語教育において取り上
げる文化・習慣項目を明らかにしている。アンケートは日本(人)のビジネスに関する文化・習慣的特徴について。調
査対象は英語圏出身者が多い。
8
池田伸子
「日本人ビジネスマンの話し言葉における
1996b 語彙調査−ビジネスマン用日本語教育シス 『日本語教育』88, pp.117-127
テム開発の基礎として−」
日本語教育学会
30時間分のビジネスマンの会社における発話から(社内・社外のミーティング・打ち合わせ・電話)、語彙を分析。ビジ
ネスマンの語彙は話しことばの語彙であるため、知識階層の語彙同様、感動詞が多く含まれており、「的」の使用が
多い。漢語の使用率及び名詞語彙数が高いという書き言葉同様の特徴も見られた。
9
石川清彦
池田万季
2004
『いろは』16, pp.1-3
財団法人
交流センター
左記団体が、台湾の日系企業に対して人材の募集、求める日本語能力など、アンケート調査を行った報告。不足し
ている日本語能力については、「書く能力」が多くあげられている。
10
伊藤守
2002
『コーチング・マネージメント』
コーチング・スキル・導入法を紹介。ビジネス社会での上司と部下の関係を意識し、どのような会話・対話が必要か、
ディスカバー トゥ
どのような姿勢が必要かということを論じている。コーチングに限らず、コミュニケーション・スキルにも重きを置いてい
エンティワン
る。
11
上田和子
1995
12
上田和子・梁安玉
1996
13
上田和子
羽太園
和泉元 千春
2001
1
秋山和平
1994
2
阿部敦
中野克彦
2001
3
アルク編集部
1992
4
粟屋仁美
5
「ビジネス・コミュニケーションにおける「話し
『日本語学』13(12), pp.31-45
ことば」の役割と課題」
「日系企業が期待する日本語能力」
「テープ通信」を用いた日本語コースの試 『日本語教育論集 世界の日本語教育』5,
み 香港でのビジネス・ジャパニーズの場
国際交流基金
pp.45−60
合」
「香港城市大学での「ビジネス・ジャパニー
ズ」」
『日本語教育通信』 24
「専門日本語教育のプログラム・デザイン−
外交官・公務員日本語研修における選択シ 『日本語国際センター紀要』 11, pp.69-87
ステムの実践−」
国際交流基金
香港社会の要求にあった日本語が使えるビジネスパーソンの養成を目指している香港理工学院(現香港城市大学)
商業及管理学系日本語コースの副専攻における、「テープ通信」の試みの紹介。
香港城市理工学院でのビジネス・ジャパニーズをもとに、ビジネス・ジャパニーズとなるものをカテゴリーに分け、その
内容と言語機能、必要性を考察。実践報告有。ここでは、ビジネス・ジャパニーズを、①接客用語としての「ビジネス・
ジャパニーズ」 ②学術対象としての「ビジネス・ジャパニーズ」 ③ビジネスパーソンにとっての「ビジネス・ジャパニー
ズ」の3つの範疇に分けている。
国際交流基金日 9ヶ月間の外交官及び公務員日本語研修の開設期におけるコース・デザインに関する論文。自律学習能力育成のた
本語国際センター めの選択科目履修制度の問題点、その対策実践例の報告が中心。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 1/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
14
ウォン 宮副裕子
1997
「海外における日本語教育の連携
香港」
15
宇都野友宏
2001
「FIELDWORK:当地日系企業における日 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 4, pp.189-196
本語専攻コースに関わる調査」
16
内海美也子
2001
「ビジネス場面における敬語・待遇表現の
指導」
『日本語学』Vol.16, No.6, pp.211−222
出版元
明治書院
要旨
香港における日本語の出来る香港人ビジネス・パーソンに期待される能力の具体的な記述あり。また、香港理工大
学の日本語コースの記述では「日本語教師間の連携」「日本語教師と学習者の連携」「学習者の連携」「香港のコミュ
ニティーとの連携」他、様々な連携の試みの記述あり。学習者中心のカリキュラムで短期間で高度の日本語のイン
ターアクション能力の養成を目標としている。
国際交流基金バン
コック日本語セン タイの日系企業15社への調査・面接をもとに、タイにおけるビジネス日本語教育の課題等を提言。
ター
『日本語教育学会春季大会予稿集』
pp.36-42
日本語教育学会
母語や英語ですでにビジネス経験のある学習者に対する敬語待遇表現の指導例。
『明海日本語』 8, pp.61-69
明海大学日本語
学会
釜山外国語大学校での実践報告。人数の多い会話クラスでは、学習者全員が発言機会を満足に得られないという
実態がある。そこで、グループ・ダイナミックスに注目し、人数の多い会話授業(中級レベル)でプロジェクトワークを
行った。その結果、授業へ積極的に参加する姿勢が見られた。しかしながら、プロジェクトワークの最後に行われる
発表では、日本語能力の高い学習者が中心となっている場合が多く、環境が韓国ということもあり韓国語での会話が
しばしば聞かれた。そのため、クラス全員が発言機会を多く得られるようになったという結果にはならなかった。
17
鴻野豊子
2003
「人数の多い日本語会話授業での試み−
プロジェクトワークを通じてー」
18
小田切隆
1990
「中級日本語教科書から発展した読み物」 『講座日本語教育』 25, pp.40-49
早稲田大学日本
語教育センター
90%以上が政治・経済・商学専攻の日本語中級クラスにおいて、経済関係の読みものを使用した例と手順を紹介。
学習者は関心を持っていたが中級ではまだ、まとめて読む力が不足していた。
19
王敏東
1997
「台湾におけるビジネス日本語関係の教材
『日本語教育研究』 34, pp.128−141
について」
言語文化研究所
台湾で発行されているビジネス日本語の書籍一覧が紹介されている。
20
大隈敦子
羽太園
林敏夫
品川直美
2003
「専門日本語の学習過程 ―研究活動支援 『日本語国際センター紀要』
13, pp.65-82
制度を利用した学習を通して―」
国際交流基金日 研究者に対する日本語教育の実践報告。個人単位の学習活動で専門分野の専門家を研究アドバイザーとし、日本
本語国際センター 語教育はサポーターにまわる形態をとる。研究活動支援制度が日本語研修全体において果たす役割を考察。
21
小野寺志津
李徳奉
金久保紀子
2004
「ビジネス日本語教育のあり方−新入社員 『東京家政学院筑波女子大学紀要』 8,
教育マニュアルから見えるもの−」
pp.127-137
筑波学院大学
22
片桐準二
椿 晴海
2002
「タイ国の大学における日本語主専攻開設 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 5, pp.53-68
前後の卒業生の動向」
国際交流基金バン
コック日本語セン タイ・シラパコーン大学日本語講座卒業生2001年の追跡調査の結果と考察。
ター
23
架谷真知子・
二村直美・
津田彰子・
三好和恵
1995
「上級留学生のプロジェクト・ワーク−グ
『日本語教育』87, pp.126-138
ループ・ダイナミクスに関する実験的考察」
日本語教育学会
24
川口義一
(1)『早稲田大学日本語研究教育センター紀
「海外における待遇表現教育の問題点
要』15, pp.15-28
2002早稲田大学日本
―台湾での研修会における「事前課題」分 (2)『講座日本語教育』38, pp.1-15
語教育センター
2003
(3)『早稲田大学日本語教育センター紀要』
析(1)∼(3)―」
16, pp.37-50
25
岸田由美
2004
「理系大学院留学生の生活とニーズに関す
る事例研究―金沢大学留学生生活実態調 『金沢大学留学生センター紀要』
7, pp.45-58
査の分析より―」
金沢大学
日本企業2社(生命保険会社と運輸会社)の新人教育マニュアルを比較分析し、ビジネス日本語の定義を試みた論
文。マニュアルの項目を言語、非言語に分類し、日本企業の求める能力を明らかにしている。
南山大学外国人留学生別科の準上級・上級プログラムにプロジェクト・ワークを組み込み、グループ・ダイナミックス
に注目し、学習効果、特に異文化理解の深まりを考察。考察の結果、グループ内の相互作用の高まりが「参加」「共
有化」「役割分担」という現れ方で学習効果を生み、グループ外からの作用はグループ内の作用発現に相関し、「考
察を深める」「論点を絞る」「情報・意見を補強する」という形をとって機能することが明らかになった。
台湾での「日本語教育冬期研修会」において「事前課題」として課したレポートをもとに台湾の日本語教育における待
遇表現指導の問題点及び待遇表現そのものについて分析・考察。
金沢大学理系大学院生の留学の経緯、経済状況、生活環境、希望する進路、留学の満足度などの調査がまとめら
れている。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 2/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
26
熊野七絵
石井容子
亀井元子
田中哲哉
岩澤和宏
栗原幸則
2005
「初級レベルの専門日本語研修のための 『国際交流基金
オーラルテスト評価基準開発
日本語教育紀要』
−外交官・公務員日本語研修での試み−」 1, pp.175-188
27
国頭美紀
1992
「プレゼンテーションにおける学習者とネイ 『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 7,
文化外国語専門
ティブスピーカーの相互交渉分析−コミュニ
学校
pp.57−77
ケーション・ストラテジーの使用を中心に−」
28
久保田美子・八木
敦子
1999
「マルチメディアを利用したプロジェクトワー
『日本語国際センター紀要』 9, pp.55-68
ク−海外日本語教師研修における試み−」
1997年度海外日本語教師長期研修の中級クラスを対象に行ったマルチメディア機材を利用したプロジェクト・ワーク
の内容と成果についての実践報告。準備段階として、小プロジェクトワークを導入したのが特徴。実際のプロジェク
国際交流基金日
ト・ワークの問題点として、グループ分け、グループ活動、機材や技術に関連したことが問題点として明らかになっ
本語国際センター
た。授業の評価では、学習者の自己評価を取り入れている。評価内容は「日本語について」「グループ活動につい
て」「プロジェクト・ワークの日程について」「機械の使用について」など。
29
倉八順子
1993
「プロジェクトワークが学習者の学習意欲及
び学習者の意識・態度に及ぼす効果(1)− 『日本語教育』 80, pp.49-61
一般化のための探索的調査−」
日本語教育学会
学習意欲を検討するにあたっては、1.プロジェクトワーク全体への評価、2.言語技能の各側面への意欲、3.意識・態
度の変容、にわけて調査を行った。その結果、プロジェクトワークに対する全体的評価は高いこと、またプロジェクト
ワークは学習者の個人差要因(国籍、動機、外国語学習に対する意識、性格)に関わらず肯定的な評価が得られる
ことが見出された。
日本語教育学会
慶応義塾大学日本語・日本文化教育センターの中級クラスにおいて行われたプロジェクトワークの実践例。プロジェ
クトワークを導入した目的は、①プロジェクトワークの学習効果、特に新聞記事の理解力及びその記事についての意
見発表力に及ぼす効果を検討、②学習意欲と学習成果の関係を検討、③プロジェクトワークの効果が学習者の適性
によって異なるかどうかを検討することである。2回のプロジェクトワークを行った結果、新聞記事の理解力、及び意
見の発表力を高めることが示された。②は、プロジェクトワークが調査発表への学習意欲を喚起することによって学
習成果を高め、この学習成果がさらなる日本語学習への肯定的態度をもたらすことが示された。③は、プロジェクト
ワークは道具的動機が高い学習者の理解力を高めること、及び、統合的動機が高い学習者、プロジェクトワークへの
期待度が高い学習者に肯定的に評価されることが示された。
2004
「独習による日本語学習の支援−その方策 『日本教育工学会論文誌 』 27(3), pp.347日本教育工学会
とARCS動機づけモデルによる評価−」
356
先行研究より、上級までの日本語学習を修了した大学生、大学院生が教材を渡しただけでは独習が成立しないこと
が明らかになっている。そこで、本稿では『新書ライブラリー』を利用して「学習レポート」と「読後座談会」という2つの
具体的方策を取り入れた独習ベースの学習を実施し、この2つの方策が学習行動に与える影響と学習成果、独習過
程における動機への影響を調査。被験者は中国人学習者とシンガポール人学習者。調査の結果、2つの方策がない
場合と比べて学習量が増加したこと、学習成果があったことが示された。また、アンケート結果から2つの方策が自律
的学習行動を促進したとみることができた。
国際交流基金日本語国際センターで行った1999年度タイ中等学校日本語教師研修に関する実践報告。研修ではト
ピックベースのプロジェクト・ワークを行った。プロジェクト関連の授業は全部で68時間。プロジェク・ワークのテーマ
国際交流基金日
本語国際センター は、「買い物」「食生活」「教育」「発表会」の4つであった。テーマは、来日した研修生(現役教師)が日本でスムーズに
生活が行えること、日本でタイ料理が食べられる機会を与えられること、研修生が高校教員であること、成果を発表
できる場を設けることができるなどの理由で選択された。
30
31
倉八順子
来嶋洋美・
鈴木庸子
1994
「プロジェクトワークが学習成果に及ぼす効
『日本語教育』 83, pp.49-61
果と学習者の適性との関連」
国際交流基金日
初級レベルの外交官・公務員日本語研修で目指すべき日本語運用能力や評価のあり方について考察する。
本語国際センター
「ビジネスプレゼンテーション」コースでのプレゼンテーション(日本人の前でプレゼンテーションを行い、日本人からの
質問に答える)終了後のアンケート調査の回答から、学習者のコミュニケーション行動の実態、ストラテジーの使用状
況が検証されている。学習者の大部分は問題が起こった際、瞬間的に解決方策を考えており、問題回避が出来るか
否かで、学習者の日本語も評価が異なり、ストラテジー能力の役割の重要性が書かれている。
32
髙偉建・長坂水晶
2000
「アシスタントを導入したプロジェクトワーク
−タイ中等学校日本語教師研修での実践 『日本語国際センター紀要』10, pp.51-67
−」
33
小宮千鶴子
2001
「経済の初期専門教育における専門連語」 『専門日本語教育研究 』 3, pp.21-28
専門日本語教育
研究会
34
小林和夫
1993
「ビジネス・コミュニケーションの実態を調べ
『AJALT』 16, pp.22-26
る」
(社)国際日本語普 海外の企業に働く日本語学習者(8カ国20社105名)へのインタビュー結果の一部が報告されている。日本語学習
の動機、教師や教材についての問題点などが叙述されている。
及協会
35
小林和夫
1994
「ビジネス・コミュニケーションの阻害要因と
『日本語学』 Vol.13, No.12, pp.21-29
言語投資状況の実態調査」
明治書院
「株主」「公定歩合」等は、日本語能力試験の出題基準にはないが日本人学生ならば中学で学ぶような語である。大
学の学部で経済の基礎的な専門教育を受ける留学生は、このような基本的専門語を早く学ぶ必要がある。指導は使
い方に重点を置いた連語で行うと効果的であるとされ、指導すべき連語の特定が試みられている。
海外に進出している日本企業内のコミュニケーション問題を調査.面接調査を踏まえたアンケート調査の結果が示さ
れている。日本語学習状況と阻害要因では日本語の難しさ・教師や教材の問題を理由に挙げる割合より企業の支援
体制が原因だと判断される理由の方が遥かに多い。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 3/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
100名の外国人会社員を対象に実施したアンケート調査結果に関する報告。支障の要因として①不当な待遇②仕
事の非効率③仕事にまつわる慣行の相違④文化習慣の相違の4因子が抽出された。また4因子に影響を及ぼす要
因を考察した結果、会社の形態(日本企業/外資系)・出身国(欧米系/アジア系)・滞在年数(5年基準)が有意であっ
た。
36
近藤彩
1998
「ビジネス上の接触場面における問題点に
関する研究―外国人ビジネス関係者を対 『日本語教育』 98, pp.97-108
象にして―」
37
近藤彩
2001
「商談におけるインターアクション―参加者 『アメリカ・カナダ大学連合日本研究センタ- アメリカ・カナダ大 上記と同一の研究.内容の洗練度は上がっている。通訳や韓国人ビジネス関係者の視点も入れて、異文化間にお
学連合日本研究セ
ける規範の逸脱について考察を加えている。
全員の視点から―」
紀要紀要』 24, pp.35-60
ンター
38
近藤 彩
品田潤子
保坂敏子
島田めぐみ
2001
「営業担当者のタスクの特徴
―打ち合わせの事例から―」
39
佐尾ちとせ
2003
『日本語教育学会春季大会予稿集』
pp.103-108
「上級クラス「口頭表現」授業の実践報告− 『同志社大学留学生別科紀要』 3, pp.79ビデオ作品を作成するプロジェクトワーク
93
−」
日本語教育学会
日本語教育学会
実録のビジネスの場の打ち合わせを録音・文字化したデータをもとに営業担当者のタスクを明らかにする。
同志社大学留学
生別科
同志社大学留学生別科の口頭表現の授業(上級クラス)で行われたプロジェクトワークの実践例。プロジェクトワーク
は、学生主体の活動ができ、自発かつ積極的にクラスに参加することができるという利点がある。しかしながら、それ
によっていかに日本語能力を伸張させることができるのかという問題点がある。そこで、ビデオ作品を作成するという
活動を通し、本研究では以下のような収穫があった。①自分の発音を意識し、自然なアクセントで発音することを心
がけるようになったこと。②既習の表現を使って会話や文章を組み立てようとする姿勢が顕著になったこと。③ただ
知っているから使うというのではなく、どのような場面でどのような表現を使うのが適切なのかをいうことにも思い至る
きっかけになったこと、である。
1990年に東海大学の留学生向け口頭表現クラスで行われた「コマーシャル作成」と称するプロジェクトワークの実践
例。コマーシャル作成をプロジェクトとして選択した理由は、コマーシャルの特徴のひとつである「説得のディスコー
ス」を学習者に気づかせるためである。授業は学習者が主体となり、教師はなるべく口出しを少なくする、学生からの
質問は即答せず、他の学生に尋ねさせ知識を借りさせる、問題が生じている場合は他のグループにアドバイスを求
めさせるなどとした。実践の結果、国籍が異なることもあり、日本語での発言量が増大した。ただし、日本語能力が向
上したかについては、プロジェクトが中心だったこともあり、言語要素(語彙や、用法等)のインプットとチェックは充分
に行うことができなかった。
40
齋木ゆかり
1991
「口頭表現クラスにおけるプロジェクトワー
クの試み−コマーシャルビデオの作成−」
『東海大学紀要 留学生センター』11,
pp.27-37
東海大学
41
佐々木ひとみ
水野治久
2000
「外国人研修生の異文化適応に関する縦
断的分析」
『日本語国際センター紀要』10, pp.1-16
国際交流基金日 国際交流基金日本語国際センターの平成10年度海外日本語教師長期研修プログラムに参加した外国人研修生の
本語国際センター 異文化適応の実態を調査、考察。
北陸大学
北陸大学留学生別科での日本の就職事情をトピックにした日本語イマーションプログラムの実践報告。北陸大学留
学生別科では、①日本事情を学ぶ ②自己発見をする ③総合的な日本語力を養成する、の3点をプログラムデザ
インする際に、念頭に置かれた。イマーションプログラムでは、講義の他に就職活動模擬体験、インタビュー・報告・
発表会などが盛り込まれた。講義は、「求められる人材」、「大学生の就職活動」、「中途採用・失業の現状」をテーマ
に行われた。就職活動模擬体験では、日本人大学生が行うような適正診断テストや会社募集の記事を読む、面接な
どが行われた。
国際交流基金
日本で働く外国人ビジネス関係者と在日企業の日本語に対するニーズについての調査。日本・合弁企業と外資系企
業を比較しながら調査結果がまとめられている。
42
佐々木技好・
吉田晃高
2002
「留学生別科におけるイマーションプログラ
ムの可能性−「日本の就職事情」をトピック 『北陸大学紀要』 26, pp.265-276
にして−」
43
島田めぐみ
渋川晶
1998
「外国人ビジネス関係者の日本語使用:実 『日本語教育論集
世界の日本語教育』8, pp.121-140
態と企業からの要望」
44
鈴木義幸
2000
45
清ルミ
1995
「上級日本語ビジネスピープルのビジネス
コミュニケーション上の支障点−インタ
ビュー調査から教授内容を探る−」
46
清ルミ
1995
「ビジネスコミュニケーション能力向上のた
めの指導法開発に向けて―仕事を日本で
『日本語教育学会春季大会』 pp.43-48
遂行している上級日本語ビジネスピープル
の場合―」
47
清 ルミ
2001
「学生・社会人に対する待遇表現教育につ 『日本語教育学会春季大会予稿集』 pp.28日本語教育学会
いての方法論・具体的な指導法」
35
『コーチングが人を活かす』
コーチング・スキルについての紹介。ビジネスパーソンを対象に書かれている。状況別にスキルが使えるように、「部
ディスカバー トゥ
下が期限通りにレポート等を提出しない場合」、「部下が顧客とどのように商談を進めているのか今ひとつ見えない」
エンティワン
といったように項目分類されている。
『日本語教育』 87, pp.139-152
日本語教育学会
上級レベルのビジネスピープルが仕事上で感じる日本語の問題点を把握し、教授内容を探る。外国人の出身国・母
語についての記述はない。論文内では、日本人ビジネスパーソンが挙げた外国人ビジネスパーソンの問題点につい
ても述べられている。
日本語教育学会
指導の方向性を探るためのインタビュー調査の結果報告。以下の3つの仮説が検証されている。①上級の学習者に
は状況を正確に把握してスピーチレベルを設定する能力及び会話中での意見の産出と受容の能力の養成の両面を
盛り込む必要がある②一般的に行われている新聞読解等の授業はビジネス現場で求められている日本語能力を養
成するという目的からずれている③言語能力が向上すると情意面で越えにくいものもある程度越えられる。
従来の待遇表現の指導法の問題点を指摘し、筆者の実践する指導法を報告している。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 4/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
1991
「中級レベルの自己管理学習を目指しての 『関西外国語大学留学生別科日本語教育
関西外国語大学
プロジェクトワーク」
論集』 2, pp.55-68
関西外国語大学留学生別科の中級前半レベルを対象に、自己管理を目指して行われたプロジェクトワークの実践報
告。プロジェクトワークは結果よりもプロセスを重視し、中間報告と発表をコース内で行い、2種類の自己評価表を
使って目標実現を目指した。自己評価表は、4技能が伸ばせるように配慮された。自己評価表を用いた結果、活動を
通じて4技能の使用が活発になっただけでなく、日本語や日本文化に対する理解を深めることができた。しかしなが
ら、自己管理学習に向けては、学習者の心理面での充実が大切であるということが認められた。
谷原公男
栗山恵子
2002
「アメリカのビジネス日本語教育事情−最
近の動向−」
『専門日本語教育研究』 4, pp.11-16
専門日本語教育
学会
アメリカの大学・大学院におけるビジネス日本語の事例紹介。特にニューヨーク州立大バッファロー校のオンラインビ
ジネス日本語コース"E-business Japanese"が中心。
50
田丸淑子
1994
「ビジネス・スクールの日本語教育−コー
ス・デザインの課題−」
『日本語学』13(12), pp.54-61
明治書院
ビジネス・スクールでの日本語教育について取り上げる。①到達目標の高さと時間的制約、②ニーズ特定と目標設
定の難しさ、③日本語使用の実際に関する情報不足、④文化の扱い方、の4つを問題点として挙げている。
51
津村俊充
石田裕久
2004
48
高木裕子・
内藤裕子
49
『ファシリテーター・トレーニング∼自己実現
ナカニシヤ出版
を促す教育ファシリテーションへのアプローチ∼』
ファシリテータの役割について実践例も含めて紹介。学習支援に必要な基礎知識、対人関係能力を育成するための
ラボラトリー・メソッドを用いた体験学習の基礎知識など、ファシリテーション・スキル養成のための基本的枠組みを提
供。
『講座日本語教育』39, pp.122-138
早稲田大学の日本語授業(総合クラス)で行われた活動の実践報告。ビデオドラマ作成を手段とし、「自分たちの考
えている事を上映会での作品発表を通して、他者に向けて発信する」ことを目標とした。グループ活動での評価は、
①出席、②グループ作業、③個人作業、④グループ内相互評価を総合して行われた。②は提出物とビデオドラマの
完成で点数が与えられ、③は日記の提出状況で判断し、全てが提出されれば満点を与えられた。④は最終授業でグ
ループ内の話し合いで決められた。
52
中山由佳
2003
「「ビデオドラマ作成」授業の可能性」
53
難波康治・
中山亜紀子
2002
短期留学中級クラスプロジェクトワークの実践報告。具体的で緊急な学習目的を持っていないものも多い。教師はプ
「日本語中級クラスにおける調査研究型プ
『大阪大学留学生センター研究論集 多文 大阪大学留学生セ ロジェクトの進行を補佐役として必要。日本人学生も準備段階から協力。学習者からの評価は活動の意義を理解し
ロジェクトワークー短期留学特別プログラム
化社会と留学生交流』 6, pp.51-63
ンター
ていないものもいるが、日本語で発表を達成できた点を評価、異文化接触としては、調査時ではなく、準備段階での
における実践報告」
共同作業を評価していたものが多く、教師が期待した評価とはずれがあった。
54
野元千寿子
2004
「留学生に対するビジネス日本語−APUに 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』 15,
昭和女子大学
pp.31-43
おける教育実践とアンケート実施より−」
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部で日本企業に就職を希望している留学生を対象に行った授業とア
ンケートの実践報告。就職活動を主なテーマとし、就職活動を行う際の問題点や就職活動で必要な技術、ビジネス日
本語クラスに対する評価を紹介。
55
野元千寿子
2005
「大学におけるビジネス日本語:受講者アン 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』16,
ケートを通して見えること」
pp.13-23
昭和女子大学
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部の留学生を対象に行ったビジネス日本語クラスに対する授業アン
ケートの報告。アンケート結果から、カリキュラム上での課題を提示している。
56
羽太園
熊野七絵
2003
「職業人の特性を生かす学習環境
−外交官・公務員日本語研修
スピーチクラスの検証−」
国際交流基金日 職務上のスピーチのニーズから、スピーチクラスのコースをデザイン。スピーチクラスが提供している学習環境を「コ
本語国際センター ミュニカティブ・ストレス」という観点から分析する。
57
羽太園・和泉元千
春・上田和子
2002
「初級からの専門日本語教育のカリキュラ
ム・デザイン−外交官・公務員日本語研修 『日本語国際センター紀要』12, pp.115−
における専門語彙・スピーチクラスの実践 121
−」
58
羽太園・熊野七絵
2003
「職業人の特性を生かす学習環境−外交
外交官・公務員日本語研修スピーチクラスの検証。学習者のスピーチのニーズ、使用テキスト、クラス活動の流れ、
国際交流基金日
官・公務員日本語研修スピーチクラスの検 『日本語国際センター紀要』13, pp.47−63
発表会(評価)の記述がある。「コミュニカティブ・ストレス」の観点からコース分析を行い、またスピーチを行うための
本語国際センター
証−」
一連の学習活動がどのような「相互交渉」の機会を提供しているかの分析がされている。
59
袴田麻里
2000
製造組み立てラインで働く日本人リーダー・インドネシア・スリランカ人研修生・日系ブラジル人就労者に行ったアン
「職場における外国人と日本人のコミュニ 『異文化コミュニケーション研究』12、pp.79 神 田 外 語 大 学 異
ケート結果(コミュニケーションについての意識)が記述。日本人が作業中のコミュニケーションを重視しているのに対
ケーション−製造組み立てライン職場での
文化コミュニケー
し、外国人は生産活動とは直接関係ない状況でもコミュニケーションを図ろうとしている。また日系ブラジル人はトラブ
−96
アンケート調査から−」
ション研究所
ルを解決するストラテジーにを研修生より多く持っていた。
60
原田 明子
2004
「バンコクの日系企業の求める日本語ニー
『早稲田大学日本語教育研究』 5, pp.169ズに関する分析 −ビジネスパーソンによる
早稲田大学
181
日本語学習動機との比較から−」
『日本語国際センター紀要』13, pp.47−63
早稲田大学
センターで行われている外交官・公務員日本語研修コースの報告。職務遂行には基本文型に合わせ、専門語彙の
国際交流基金日
習得、日本語語彙の分析ー特に造語力が必要。またスピーチ・プレゼンテーションも必要。但し、学習者のアンケート
本語国際センター
からは負担が重いとの声があり、語彙・スピーチそれぞれのクラスの連携を試み、可能な限り語彙を重複させた。
将来海外の日系企業で働きたいと考えている人に役立つような、企業と学習者双方のニーズに合ったビジネス日本
語シラバスの作成を目的とした研究
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 5/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
61
平井一樹
2005
「ビジネス日本語の課題と新たな領域」
『愛知産業大学日本語教育研究所紀要』 2, 愛知産業大学日
本語教育研究所
pp.49−56
62
藤本明
1993
「スタンフォード大学夏期講座
”Japanese for Business”」
『AJALT』16, pp.10−15
63
札野寛子
1996
「日本人学生との交流を通して学ぶ科学技
術基礎日本語短期プログラム―金沢工業 『世界の日本語教育<日本語教育事情報告 国際交流基金日 SPGの概要、日本人学生との交流を通しての科学技術日本語の指導の実例が紹介され、成果の検討も行われてい
大学夏季日本語プログラム(KIT−SPJ) 編>』 4, pp.153-172
本語国際センター る。プログラムの運営方法・指導のポイントについての考察も行われている。
―」
64
古川雅子
2004
「就職面接場面を取り上げた日本語教材の 『昭和女子大学大学院日本語教育研究紀
昭和女子大学
要』 2, pp.118-127
現状分析」
65
細川英雄
酒井和子他
2003
66
堀井恵子
2001
「アカデミック・ジャパニーズをふまえたビジ
ネス・ジャパニーズ教育の意義と課題How
『武蔵野大学文学部紀要』7, pp.151-160
to Develop Business Japanese Based on
Academic Japanese」
67
前家裕美
1999
「ビジネスコースの変遷とカリキュラム」
68
松本隆、山口麻
子、高野昌弘
1998
アメリカ・カナダ大
「経済分野の専門的日本語教育−語学教 『アメリカ・カナダ大学連合日本研究センタ- 学連合日本研究セ 左機関での「ビジネス・社会」「ビジネスコース」「政治・経済」コースの実践報告。コース概要、授業内容、学生への聞
師と専門家の連携を目指して−」
き取り調査結果が述べられている。語学教師と専門分野の教師との連携の必要性が挙げられている。
紀要』 21, pp.1−40
ンタ-
69
丸山敬介
1991
「日本語教育上級段階における専門教育の 『同志社女子大学日本語日本文学』 3,
一モデル−営業職にあるビジネスマンを対
pp.31−53.
象に−」
同志社女子大学
上級ビジネスコースにおけるビジネスマン教師の役割の重要性。ビジネスマン教師の専門知識が有効に引き出され
るように、日本語教師は役割分担を明確にし、コースを運営すべき。営業職ビジネスマンを対象としたコースのモデ
ルが述べられている。
70
丸山敬介
1992
「専門家との共同実施形態による総括テス 『同志社女子大学日本語日本文学 』4,
トの試み」
pp.12-30.
同志社女子大学
上級段階で学ぶ営業職のビジネスマン対象のコースにおける評価(オープン・テスト)に関する論文。営業活動の場
面をロールプレイで行わせてその模様を評価・測定するパフォーマンステストを実施。コース運営から評価まで日本
語教師とビジネスマン教師との共同実施で行っている。
71
丸山敬介
2005
『教師とコーディネータのための日本語プロ スリーエーネット
グラム運営の手引き』
ワーク
企業研修生または定住型・長期滞在型の外国人を対象とした短期プログラムを設置・運営するコーディネーター、そ
こで指導する日本語教師のための手引き。学習者のニーズをよりよい形で実現させるための方法や姿勢を、プログ
ラムの立案・進行から就労にいたるまで段階ごとに解説。
72
三門準
1994
73
村川雅弘
2005
74
茂住和世
2003
『「総合」の考え方と方法』
シャープ、松下、韓国のITエンジニア派遣等、ビジネス日本語の現状が述べられ、教材・シラバスが現状に追いつい
ていないとする。電子メールを題材とした試案が提案され、シラバスを考える際の参考になると筆者は述べている。
(社)国際日本語普 タイトルの講座についての実践報告。教材開発・カリキュラムに多くがさかれている。筆者はロールプレー・討論を重
視していたようである。
及協会
市販の日本語教材で就職面接場面が取り上げられている4冊(面接場面は9冊)を対象とし、面接場面の取り上げ
方、学習対象レベルを調査し、留学生の就職面接を支援する日本語教材について検討。
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
早稲田大学での日本語クラスを元に、「総合」についての考え方、実践例を紹介。各章、実践例の具体的方法、テー
マ、評価が整理されている。
武蔵野大学
留学生の就職の現状を明らかにした上で、先行文献・教材などから21世紀に対応したビジネス・ジャパニーズがどの
うようなものであるかをさぐり、それに基づいて、留学生を対象としたアカデミック・ジャパニーズをふまえたビジネス・
ジャパニーズ教育の意義と課題を明らかにする。
『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 文 化 外 国 語 専 門 1986年からのビジネスコースの変遷が述べられている。‘95年以降はビジネスパーソン予備軍主体のコースとなり、
13, pp.81−99
学校
教師が教えるより、学習者が考える授業へと変化した。具体的な教室活動が書かれている。
「テレビ番組「視点・論点」を利用した専門日
『日本語教育』 82,pp.158-170
本語教育の試み」
『授業にいかす 教師がいきる ワーク
ショップ型研修のすすめ』
「中国上海 復旦大学日語日文科における 『東京情報大学研究論集』
6(.2), pp.171-181
日本語教育」
日本語教育学会
経営・経済学部の学部留学生へ「視点・論点」を利用して行った授業の実践報告。専門用語の学習よりも日本語の理
解を重視した。大意の把握・ノートテイキング・図表の説明・再表現・専門用語の聞き取り・談話全体の要約練習等、
大学の授業に必要な技能の練習を行った。
ぎょうせい
研修やワークショップの原理といった理論とともに、具体的な事例を多く取り上げている。「理論」、「事例」、「実際の
研修例」とわかりやすい構成になっている。
東京情報
大学
復旦大学日語日文科の日本語教育について具体的カリキュラム・指導法の紹介。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 6/7ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
75
茂住和世
2004
「異文化環境に適応する人材に求められる 『東京情報大学研究論集』
もの∼日中合弁企業における社員研修の
7(2), pp.93-104
事例から∼」
東京情報
大学
日中合弁企業中国人SEに対する社員研修についての調査結果。外国人の人材育成にはコミュニケーション技能お
よびソーシャルスキルを重点的に教える必要性が挙げられる。
76
横田淳子
1990
「専門教育とのつながりを重視する上級日
『日本語教育』 71, pp.120-133
本語教育の方法」
日本語教育学会
留学生の日本語教育に対するニーズに応えるため、専門分野の内容とつながる上級日本語教育の必要性が述べら
れ、その教育方法として5つのプログラムが提示されている。
77
吉原英樹
星野裕志
2002
「総合商社―日本人が日本語で経営―」
『国民経済雑誌』187(3), pp.19-34
神戸大学経済経
営学会
海外多国籍企業と日本の多国籍企業(例:総合商社)の対比。日本企業の特徴として日本人が日本語を使って経営
活動を行う点があげられる。様々な商社での例や商社へのインタビューがまとめられている。
78
李志瑛
2002
「ビジネス日本語教育を考える」
『言語文化と日本語教育増刊特集号, 第二 お茶の水大学
言語習得・教育の研究最前線』 pp.245日本言語文化学
研究会
260
ビジネス関係者を対象とした先行研究及び教育現場での実情を概観し今後の課題を模索.先行研究の概観では分
析観点が言語面であるのか文化面であるかによってまとめられている.教育現場については、ビジネス日本語教育
の事例とともに教育現場からのニーズを整理した上で、それらを踏まえ今後の基礎研究の方向性を探っている。
79
梁安玉
上田和子
1999
「書きことば教育のカリキュラムデザイン」
『世界の日本語教育 日本語教育事情報告 国際交流基金日 香港社会のビジネスの場における日本語の書きことばのニーズ及び「書類への対応」のための書きことば教育のカ
本語国際センター リキュラム・デザインを紹介。
編』 5, pp.217-231
80
梁 安玉
2001
「香港の学習者のための日中・中日の翻
訳、通訳カリキュラム・デザインへの試み」
『日本学刊』5, pp.53-60
香港日本語教育
研究会
81
(座談会)
1993
「「日本語でビジネス」座談会」
『AJALT』16, pp.16−21
(社)国際日本語普 4人の外国人の座談会。学習過程、業務での日本語使用状況や、日本語でビジネスを行う際の困難点が述べられて
及協会
いる。
82
筆者記述なし
2005
「ビジネス日本語の「目標能力」例
−インド人IT技術者の場合−」
『AJALT』 28, pp.44−47
(社)国際日本語普 優秀なインド人IT技術者にインドで日本語教育を実施し、日本へ派遣している企業の日本語コースについて。目標と
及協会
なる日本語能力、訓練法、評価法の一例が書かれている。
83
マルカム・S・ノー
ルズ
2005
『学習者と教育者のための自己主導型学習
明石書店
ガイド―ともに創る学習のすすめ』
読者が学習者でも教師でも、双方にとって、自己主導的な学習者として活用すべきリソースを提供している。自分の
コンピタンスを開花するために、または本書そのものがリソースとして活用できる。
2004
『参加型 ワークショップ入門』
明石書店
本書は、講義や授業などのシーンで使える活動や演習を多数盛り込み、会議やワークショップを双方向のものにした
い、訓練コースを生き生きとしたものにしたい、自分のレパートリーを広げたい人などに必読の書である。
『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・
ベース学習』
学事出版
プロジェクト・ベース学習とは何かという紹介と学習者をどう評価するかについて書いてある。有能な社会人の育成を
教育の目的におき、学校は学習者に何を提供すべきかについて提案した書である。
香港日本語教育
研究会
香港人スタッフについて、香港日系企業マネージャーにインタビュー。日本語よりも日本の社会・文化の知識が重視
されている。
84
ロバート・チェン
バース
85
ロナルド・J・ニュー
エル
2004
86
Tsoi, Eva
2002
87
多文化共働プログラ
ム
2006
88
金児真由美・木村
出・山岸良一
2002
「高等教育支援のあり方
―大学間・産学連携―」
89
高見澤孟
井岡祐治
1992
「ビジネスマンに求められる日本語力ー日
本企業と外国人社員・それぞれの視点と課 『月間日本語』11, pp.10-15.
題」
「日本人上司から見た香港人スタッフ:異文 『日本学刊』
化コミュニケーションによる問題・日本語学
6, pp.123-125
習者へのアドバイス」
『多文化協働プログラム「外国人従業員受
け入れに関する調査報告書」∼外国人研 多文化共生セン
修生・技能実習生受け入れに関する意識 ター・大阪
調査∼』
『開発金融研究所報』13, pp.60-97.
香港城市大学での「日中翻訳・通訳」クラスのカリキュラム・デザインの紹介。
外国人従業員の受け入れがますます増大する中、外国人従業員と受け入れ側の従業員双方が「共に働く」ことにつ
いて互いにどのように感じているか、また企業にとって外国人従業員のいる職場をマネジメントしていく際の問題は何
か、などを明らかにすることを目的として、外国人研修生・技能実習生の受け入れ企業を対象にアンケート及びヒアリ
ング調査を行い、報告書としてまとめた。
国際協力銀行開
発金融研究所
マレーシア・タイ・ベトナムの3カ国を対象とし、これらの国々への今後の高等教育支援のあり方を日本の大学・企業
との協力の観念から検討するもの。
アルク
ビジネス日本語をめぐる問題、専門分化したあるいは母語話者別のテキストに対するニーズ、更には外国人社員と
日本式経営のあり方などについての鼎談。
文献調査:ビジネス日本語コース実践報告 7/7ページ
文献調査:教師研修に関する研究
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
『外国人住民の生活相談とボランティア
−実証的ボランティア論の構築に向けて
−』
多文化共生センターの生活相談事業で外国人住民が抱える問題を収集し、政府やNGOが求められる「適切な問題
解決へのアプローチ」を考察。外国人住民の歴史的経緯、共生阻害要因、アプローチ法が示されている。
「ビジネス日本語教育における教育目標の 『ICU日本語教育研究センター紀要』5,
設定について:文化・習慣についての重要
pp.11-24.
性を考える」
国際基督教大学
日本で働いている外国人ビジネスパーソンを対象に行ったアンケート結果から、ビジネス日本語教育において取り上
げる文化・習慣項目を明らかにしている。アンケートは日本(人)のビジネスに関する文化・習慣的特徴について。調
査対象は英語圏出身者が多い。
「教授システム開発におけるニーズ評価に 『ICU日本語教育研究センター紀要』4,
ついて」
pp.43-62.
国際基督教大学
ビジネスパーソンの日本語教授法システムを開発するために、ビジネス日本語を学習しているビジネスパーソンを対
象に行われたニーズ評価。被験者は主に英語圏出身者。
阿部敦
中野克彦
2001
2
池田伸子
1996
3
池田伸子
1995
4
伊藤守
2002
5
小野寺志津
李徳奉
金久保紀子
2004
「ビジネス日本語教育のあり方−新入社員 『東京家政学院筑波女子大学紀要』8,
教育マニュアルから見えるもの−」
pp.127-137.
1996
「専門日本語教育におけるチームティーチ
ングー科学技術日本語教育での日本語教 『日本語教育』 89, pp.1-12.
員と専門科目教員による協同の試みー」
五味政信
要旨
ぎょうせい
1
6
出版元
『コーチング・マネージメント』
「日本語教育と専門教育の連携」
コーチング・スキル・導入法を紹介。ビジネス社会での上司と部下の関係を意識し、どのような会話・対話が必要か、
ディスカバー トゥ
どのような姿勢が必要かということを論じている。コーチングに限らず、コミュニケーション・スキルにも重きを置いてい
エンティワン
る。
筑波学院大学
日本企業2社(生命保険会社と運輸会社)の新人教育マニュアルを比較分析し、ビジネス日本語の定義を試みた論
文。マニュアルの項目を言語、非言語に分類し、日本企業の求める能力を明らかにしている。
日本語教育学会
1995年に東工大で行われた日本語教員と専門科目教員によるチームティーチングの実践報告。授業は聴解練習を
目標として「科学技術日本語」のクラス。中級以上の電気・電子工学系の大学院留学生を対象とした。授業は日本語
教員が先に専門用語、漢字、文法事項等の言語要素、表現を取り上げ、次週に専門教員が専門領域の講義をする
という方法で行われた。また、日本語教員も専門教員も双方の授業を見学しあいそれぞれの認識を深め合った。学
生からの評判は非常に良かったが、初めての試みということもあり教材開発、日本語教員と専門教員の役割分担な
ど課題も残った。
『日本語学』15(2), pp.35-45.
明治書院
東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻を例にとり、日本語教員と専門教員の連携について考えた論文。日本
語教員と専門教員の連携では、個々の教員がばらばらの考えで行動していては効率の良い教育は望めないとして
いる。日本語教員と専門教員との日本語教育に対する意識、求める日本語能力、具体的な指導内容、カリキュラム
全体に対する考え方など、両者にずれがあるままでは連携は難しい。そこで、連携をとるためには*日本語教員か
ら、留学生に対する認識を高めてもらうため、専門の教員に対するオリエンテーションを行う。*教材作成の段階や専
門語彙の与え方について情報を共有するなどが考えられている。
『コーチングが人を活かす』
コーチング・スキルについての紹介。ビジネスパーソンを対象に書かれている。状況別にスキルが使えるように、「部
ディスカバー トゥ
下が期限通りにレポート等を提出しない場合」、「部下が顧客とどのように商談を進めているのか今ひとつ見えない」
エンティワン
といったように項目分類されている。
7
佐々木倫子
1996
8
鈴木義幸
2000
9
清ルミ
1995
「上級日本語ビジネスピープルのビジネスコ
ミュニケーション上の支障点−インタビュー 『日本語教育』 87, pp.139-152.
調査から教授内容を探る−」
日本語教育学会
上級レベルのビジネスピープルが仕事上で感じる日本語の問題点を把握し、教授内容を探る。外国人の出身国・母
語についての記述はない。論文内では、日本人ビジネスパーソンが挙げた外国人ビジネスパーソンの問題点につい
ても述べられている。
10
高見澤孟
1994
「ビジネス・コミュニケーションと日本語の問
題−外国人とのコミュニケーションを考える 『日本語学』 13(11), pp.30-37.
−」
明治書院
社内の会話、打ち合わせ、調査、広報活動など、ビジネス場面でのコミュニケーション活動をビジネス・コミュニケー
ションと定義し、活動内容と日本語のかかわりを考察。
11
田丸淑子
1994
「ビジネス・スクールの日本語教育−コー
ス・デザインの課題−」
明治書院
ビジネス・スクールでの日本語教育について取り上げる。①到達目標の高さと時間的制約、②ニーズ特定と目標設
定の難しさ、③日本語使用の実際に関する情報不足、④文化の扱い方、の4つを問題点として挙げている。
12
津村俊充
石田裕久
2004
『日本語学』13(12), pp.54-61.
『ファシリテーター・トレーニング∼自己実現
ナカニシヤ出版
を促す教育ファシリテーションへのアプローチ∼』
ファシリテータの役割について実践例も含めて紹介。学習支援に必要な基礎知識、対人関係能力を育成するための
ラボラトリー・メソッドを用いた体験学習の基礎知識など。ファシリテーション・スキル養成のための基本的枠組みを提
供。
文献調査:教師研修に関する研究 1/3ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
国際交流基
『世界の日本語教育. 日本語教育事情報告
金日本語国
編』 5, pp.187-201.
際センタ-
要旨
Peer Coachingの実践報告。複数の教師が共同で行うことにより各自の深い自己内省を可能にする自己研修の手
法と位置づけられている。異なる教育経験をもつ教師2名のティーチングスタイルの変化が具体的なコメント・データ
により記述。効果的なPeer Coachingの5つの要因も挙げられている。
13
寺谷貴美子
1999
「教師の自己研修におけるPeer Coaching」
14
中村重穂
1991
「専門教官と日本語教官との協働による社
会科学系留学生のための上級日本語教育 『日本語教育』74, pp.172-187.
−一橋大学に於ける実践報告−」
日本語教育学会
15
西谷まり
2001
「日本語教官と専門科目教官の協力体制−
東北師範大学赴日本国留学生予備学校の 『専門日本語教育研究』3, pp.35-40.
事例から−」
文科省、国際交流基金共同のプログラムによる5ヶ月の集中コース。日本語教育・専門教育両方の教官が派遣。学
専門日本語教育研 習者は博士号取得、もしくは、既に博士号取得者で研究活動のための来日予定の中国の大学教員。中国への赴任
究会
当初は両分野の日本人教官に大きな認識にずれがあり、情報の共有を中心として行われた連携の試みが紹介され
ている。 また、プログラムの改善と日本語・専門教官のさらなる連携への具体的な提言もされている。
16
仁科喜久子
1997
「日本語教員と専門教員の連携」
17
縫部義憲
2002
広島大学大学院教 文化庁が2003年に発表した「日本語教員養成において必要とされる新たな教育内容」に関しての考察。新教育内容
「「日本語教員養成において必要とされる教
育学研究科日本語 では今まで中心的であった「言語」の相対的価値が下がったと言われるが、新しい「区分」の中に旧教育内容の「主
『広島大学日本語教育研究』12, pp.25-31.
育内容」に関する一考察‐
教育学講座紀要編 要項目」が全て位置づけられ、これまで重視されていなかった「社会・文化・地域」「言語と心理」「異文化理解」の教
‐学校日本語教育の視点から」
集委員会
育に光を当てようとしていると縫部は述べている。
18
野元千寿子
2004
「留学生に対するビジネス日本語−APUに 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』 15,
昭和女子大学
pp.31-43.
おける教育実践とアンケート実施より−」
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部で日本企業に就職を希望している留学生を対象に行った授業とア
ンケートの実践報告。就職活動を主なテーマとし、就職活動を行う際の問題点や就職活動で必要な技術、ビジネス日
本語クラスに対する評価を紹介。
19
野元千寿子
2005
「大学におけるビジネス日本語:受講者アン 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』16,
ケートを通して見えること」
pp.13-23.
昭和女子大学
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部の留学生を対象に行ったビジネス日本語クラスに対する授業アン
ケートの報告。アンケート結果から、カリキュラム上での課題を提示している。
20
古川雅子
2004
「就職面接場面を取り上げた日本語教材の 『昭和女子大学大学院日本語教育研究紀
要』 2, pp.118-127.
現状分析」
昭和女子大学
市販の日本語教材で就職面接場面が取り上げられている4冊(面接場面は9冊)を対象とし、面接場面の取り上げ
方、学習対象レベルを調査し、留学生の就職面接を支援する日本語教材について検討。
21
細川英雄
酒井和子他
2003
22
堀井恵子
2001
『日本語学』16(6), pp.118-124.
『「総合」の考え方と方法』
明治書院
かなり詳細な実践報告。専門教官の講義ビデオの視聴→自分の見解、疑問点を加えたレポート提出→(可能な場合
のみ)専門教官がJSPクラスに出席し、ゼミ→フィードバックが大筋の流れとなっている。学習者のアンケートからは、
各自の専門分野が異なる点、読解・フィードバックのやり方への問題点が挙げられたが、修正後は満足しているとの
回答。専門教官へのアンケート結果に関しても記述あり。
LSP(Language for Specific Purpose)を習得する場合の、専門教員と日本語教員の連携について国内外の現状を
概観・考察。国内における問題点としては、日本語教員の立場から言うと1)専門教育に必要な日本語がどのようなも
のであるか情報を得られる機会が少ない。2)専門教員は留学生の言語運用上の問題を見過ごしがちである。解決
法のひとつには、2者のほかにCIAシステムの専門家との三者間の連携が挙げられている。
早稲田大学日本語 早稲田大学での日本語クラスを元に、「総合」についての考え方、実践例を紹介。各章、実践例の具体的方法、テー
研究教育センター マ、評価が整理されている。
「アカデミック・ジャパニーズをふまえたビジ
ネス・ジャパニーズ教育の意義と課題 How
『武蔵野大学文学部紀要』 7, pp.151-160. 武蔵野大学
to Develop Business Japanese Based on
Academic Japanese」
留学生の就職の現状を明らかにした上で、先行文献・教材などから21世紀に対応したビジネス・ジャパニーズがどの
うようなものであるかをさぐり、それに基づいて、留学生を対象としたアカデミック・ジャパニーズをふまえたビジネス・
ジャパニーズ教育の意義と課題を明らかにする。
文献調査:教師研修に関する研究 2/3ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
桜美林大学日本語教育プログラムのスタッフハンドブックについて。チームティーチングでは、関係者が情報・ビリー
フ・方法を共有(あるいは異なりを相互に意識する)ことが重要である。現場のスタッフの協働の成否が、授業を中核
とするプログラムの質に影響し、結果として学習者の学習成果に影響してしまう。そこで、桜美林大学ではプログラム
の目標構成、各科目の運営、参考になるアプローチ・アイディア・リソース・ツール、スタッフの役割と意思決定のプロ
セス、問題への対処、FAQなど事細かに示したオリジナルのスタッフハンドブックを開発した。
23
松下達彦・
齊藤伸子
2004
「情報・ビリーフ・方法の共有のための日本 『2004年日本語教育国際研究大会予稿集
日本語教育学会
語スタッフハンドブック開発の試み」
発表2』 pp.141-146.
24
松本隆、
山口麻子、
高野昌弘
1998
「経済分野の専門的日本語教育−語学教
師と専門家の連携を目指してー」
25
丸山敬介
1991
「日本語教育上級段階における専門教育の 『同志社女子大学日本語日本文学』3,
一モデル−営業職にあるビジネスマンを対
pp.31−53.
象に−」
26
丸山敬介
2005
『教師とコーディネータのための日本語プロ スリーエーネット
グラム運営の手引き』
ワーク
企業研修生または定住型・長期滞在型の外国人を対象とした短期プログラムを設置・運営するコーディネーター、そ
こで指導する日本語教師のための手引き。学習者のニーズをよりよい形で実現させるための方法や姿勢を、プログ
ラムの立案・進行から就労にいたるまで段階ごとに解説。
27
村川雅弘
2005
『授業にいかす 教師がいきる ワーク
ショップ型研修のすすめ』
ぎょうせい
研修やワークショップの原理といった理論とともに、具体的な事例を多く取り上げている。「理論」、「事例」、「実際の
研修例」とわかりやすい構成になっている。
28
マルカム・S・ノー
ルズ
2005
『学習者と教育者のための自己主導型学習
明石書店
ガイド―ともに創る学習のすすめ』
読者が学習者でも教師でも、双方にとって、自己主導的な学習者として活用すべきリソースを提供している。自分の
コンピタンスを開花するために、または本書そのものがリソースとして活用できる。
2004
『参加型 ワークショップ入門』
明石書店
本書は、講義や授業などのシーンで使える活動や演習を多数盛り込み、会議やワークショップを双方向のものにした
い、訓練コースを生き生きとしたものにしたい、自分のレパートリーを広げたい人などに必読の書である。
2004
『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・
ベース学習』
学事出版
プロジェクト・ベース学習とは何かという紹介と学習者をどう評価するかについて書いてある。有能な社会人の育成を
教育の目的におき、学校は学習者に何を提供すべきかについて提案した書である。
29
30
ロバート・チェン
バース
ロナルド・J・ニュー
エル
『アメリカ・カナダ大学連合日本研究セン
ター紀要』21, pp.1-40.
前半は、センターで行われる「ビジネス・社会」「政治・経済」「ビジネスクラス」の報告。初めの二つと異なり、内容理
アメリカ・カナダ大
解に重点を置く「ビジネスクラス」では、専門家による講義。事後アンケートからは、内容の専門度に関する意見等が
学連合日本研究セ
挙げられている。後半では海外での外国語教育における語学教師と専門分野の教師の連携の実践を例に挙げ、語
ンター
学教師と専門家の連携の重要性と困難さを説いている。
同志社女子大学
上級ビジネスコースにおけるビジネスマン教師の役割の重要性。ビジネスマン教師の専門知識が有効に引き出され
るように、日本語教師は役割分担を明確にし、コースを運営すべき。営業職ビジネスマンを対象としたコースのモデ
ルが述べられている。
文献調査:教師研修に関する研究 3/3ページ
文献調査:コース評価、評価設計に関する研究
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
学習者の多様化に対応するために、学習者による自己評価が有効であるとしている。学習者の自己評価が必要な
理由として、学習者自身が学習に関わる決定に参加することが求められてきているからだとしている。日本語教育に
おいては、以下の3つのような自己評価形式が可能性を持っているとしている。1)pair autonomousと統合された自
己評価、 2)教室活動と統合された自己評価、3)教室活動に内臓された自己評価。
1
岡崎敏雄・
吉武康行
1992
「日本語教育における自己評価」
『広島大学日本語教育学科紀要』2, pp.15広島大学
22.
2
笠原ゆう子他
1995
「日本語口頭能力開発に関する考察―今
後のテスト開発に向けて―」
『日本語国際センター紀要』
5, pp.85−104.
3
金澤眞智子
三井久美子
山本真智子
白岩美穂
2003
「留学生別科における統合的タスクの評価
基準−レベル5クラスの修了発表を事例と 『日本語・日本文化研究』10, pp.84−94.
してー」
4
菊池康人
1987
「作文の評価方法についての一私案」
5
河野美抄子他
2004
6
近藤彩
2000
「国際見本市におけるインターアクションー
言語管理理論を枠組みとして日韓ビジネス関係者の「商談」における文化的側面を考察。日本語の通訳が介在した
お茶の水大学日本
日本人ビジネス関係者は何をどのように評 『言語文化と日本語教育』 19, pp.75−88.
日韓ビジネス関係者の「商談」をとりあげ、規範からの逸脱と評価までのプロセスを考察。日本人は自らの規範を維
言語文化学研究会
価するのかー」
持しそれをもとに評価を行い接触場面での新しい規範は生まれてこなかった事が観察された。
7
高木裕子
1992
「自律的学習を目指してー上級レベルでの 関西外国語大学留学生別科日本語教育論
関西外国語大学
集』2, pp.39−53.
プロジェクトワークと自己評価表の導入」
8
熊野七絵
石井容子
亀井元子
田中哲哉
岩澤和宏
栗原幸則
2005
「初級レベルの専門日本語研修のための
『国際交流基金 日本語教育紀要』
オーラルテスト評価基準開発
1, pp.175-188.
−外交官・公務員日本語研修での試み−」
国際交流基金日本
初級レベルの外交官・公務員日本語研修で目指すべき日本語運用能力や評価のあり方について考察する。
語国際センター
9
羽太園
熊野七絵
2003
「職業人の特性を生かす学習環境
『日本語国際センター紀要』
−外交官・公務員日本語研修スピーチクラ
13, pp.47−63.
スの検証−」
国際交流基金日本 職務上のスピーチのニーズから、スピーチクラスのコースをデザイン。スピーチクラスが提供している学習環境を「コ
語国際センター
ミュニカティブ・ストレス」という観点から分析する。
10
古川ちかし
1988
11
細川英雄
2002
海外日本語教師長期研修研修生に対する口頭テスト改定のためのプロジェクトの中間報告。口頭表現能力を測定
国際交流基金日本 する4種のテストを分析し評価・判定方法を比較検討。比較するための項目は以下の6点。①対象者②測定対象③
語国際センター
目的④受験者の発話サンプルの抽出法⑤評定尺度の項目⑥評価・判定方法。検討結果を踏まえて長期研修の口
頭テストの見直し・改定に向けての課題にも言及。
上級クラスでの評価について。修了時の発表は基本的な言語能力以外にも、様々な能力を必要とする統合的タスク
京都外国語大学留
とされる。取り組み姿勢・読む・書く・話す・聞いて応答する能力の他、全部で8つの観点から評価を行い、評価場面と
学生別科
3つの評定尺度の具体的な記述がされている。
『日本語教育』 63, pp.87-104 .
日本語教育学会
作文の評価方法の紹介。具体的には、①趣旨の明確さ②内容③正確さ④表現意欲・積極性⑤表現力・表現の豊か
さ、の5ファクターに分けて評価し、それらを総合して点数を与えるもので、それぞれのファクターについての採点要
領等が詳しく述べられている。実際の採点用紙も示されている。
『日本語教師養成シリーズ⑤日本語教授
法』
凡人社
評価の目的対象、評価の種類、評価の方法、テストの作り方についての基本知識が書かれている。
『NAFL 日本語教師養成プログラム Vol.8
アルク
日本語教育評価法』
「合意形成としての評価−総合活動型日本 『早稲田大学日本語教育センター紀要』15,
早稲田大学
語教育における教師論のために−」
pp.105-117.
上級クラスでのプロジェクトワークの実践報告。活動の目的は1)自律学習につなげる2)文化に付随した問題の予防
線とする。発表後、自己評価を行い、更に発表の様子の録画を視聴後、発表や日本人との意見交換を行う。結果
は、学習者は活動を肯定的に捉えていた。但し、主にアメリカ人学習者が対象となっており、国籍の異なる学習者に
は不向きな場合もあるとの記述もある。
コミュニケーションと評価、日本語教育の評価、情報収集・判断・フィードバック、テストの3つに大きく分け、言語教育
で教師が必要とする教育評価法についてのテキスト。教育場面は誰が誰を何を基準に評価を行うのか、評価を行う
ことはどういう意味のあることなのかについてなど評価の基本がしっかりと記述されている。
問題発見解決学習を主旨をした総合活動型日本語教育をベースに、日本語教育の評価のあり方、評価をめぐる問
題とその考え方について論じる。総合活動型日本語教育は、学習者主体の教育になる。学習者主体の活動型学習
では、各々目標やテーマが異なるため、評価基準にばらつきがでてしまう。そこに統一感を持たせるために、総合活
動型日本語教育では、共通項目と約束を設定する。それをクラスが共有することによって、評価の範囲を限定してズ
レを少なくする。評価は、自己評価、他者評価、メタ評価を行い、最終的に教師が学習者の行った評価をもとに点数
をつける。自己評価と他者評価(相互評価)は、学習者の間で共有されることにより、信頼性と公平性が守られる。
文献調査:コース評価、評価設計に関する研究 1/2ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
12
細川英雄
酒井和子他
2003
『「総合」の考え方と方法』
13
牧野成一
鎌田修
山内博之
斉藤真理子他
2001
『ACTFL−OPI入門ー日本語学習者の「話
アルク
す力」を客観的に測る』
14
丸山敬介
1992
15
丸山敬介
2005
16
筆者記述なし
2005
17
マルカム・S・ノー
ルズ
2005
『学習者と教育者のための自己主導型学習
明石書店
ガイド―ともに創る学習のすすめ』
読者が学習者でも教師でも、双方にとって、自己主導的な学習者として活用すべきリソースを提供している。自分の
コンピタンスを開花するために、または本書そのものがリソースとして活用できる。
18
ロナルド・J・ニュー
エル
2004
『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・
ベース学習』
学事出版
プロジェクト・ベース学習とは何かという紹介と学習者をどう評価するかについて書いてある。有能な社会人の育成を
教育の目的におき、学校は学習者に何を提供すべきかについて提案した書である。
19
ティム・
マクナマラ
2004
『言語テスティング概論』
スリーエーネット
ワーク
テスティング、言語テスティング、コミュニケーションと言語テストの設計、テスティングの開発サイクル、評定手順、妥
当性、測定について書かれている。日本語教育、教室場面に限定したものではなく、TOEFL, TOEIC, 日本語能力試
験などの大きなテストのテスティングが主となる。
日本語OPIの入門書.理論編・基礎編(CD対応)・活用編の3部構成。理論編ではOPIの理論が丁寧に説明されて
いる。基礎編では各レベル別の口頭能力が実際のインタビューに即しながら解説されている。活用編ではOPIの活
用法が実践的な報告をもとに紹介されている.全体的に理論から応用まで幅広い内容を扱っている。
同志社女子大学
上級段階で学ぶ営業職のビジネスマン対象のコースにおける評価(オープン・テスト)に関する論文。営業活動の場
面をロールプレイで行わせてその模様を評価・測定するパフォーマンステストを実施。コース運営から評価まで日本
語教師とビジネスマン教師との共同実施で行っている。
『教師とコーディネータのための日本語プロ スリーエーネット
グラム運営の手引き』
ワーク
企業研修生または定住型・長期滞在型の外国人を対象とした短期プログラムを設置・運営するコーディネーター、そ
こで指導する日本語教師のための手引き。学習者のニーズをよりよい形で実現させるための方法や姿勢を、プログ
ラムの立案・進行から就労にいたるまで段階ごとに解説。
「専門家との共同実施形態による総括テス 『同志社女子大学日本語日本文学 』4,
トの試み」
pp.12-30.
「ビジネス日本語の「目標能力」例
−インド人IT技術者の場合−」
早稲田大学日本語 早稲田大学での日本語クラスを元に、「総合」についての考え方、実践例を紹介。各章、実践例の具体的方法、テー
研究教育センター マ、評価が整理されている。
『AJALT』28, pp.44−47.
(社)国際日本語普 優秀なインド人IT技術者にインドで日本語教育を実施し、日本へ派遣している企業の日本語コースについて。目標と
及協会
なる日本語能力、訓練法、評価法の一例が書かれている。
文献調査:コース評価、評価設計に関する研究 2/2ページ
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究
No.
執筆者
出版年
1
秋山和平
1994
2
阿部敦
中野克彦
2001
3
荒木晶子
1989
論文名
書籍名
要旨
明治書院
NHKがH5年に行ったアンケート結果(一部上場企業298社:にビジネスコミュニケーション上の問題)をもとに、ビジネ
スにおける話しことばの要件を考察。話の組み立て・話体の簡潔さ・音声化の明快さ・聞き取り能力の適正化の4つ
の要素が挙げられており、これらはマニュアル学習で身につくものではなく、学校教育の場でも身につけるべきとして
いる。
『外国人住民の生活相談とボランティア
−実証的ボランティア論の構築に向けて
−』
ぎょうせい
多文化共生センターの生活相談事業で外国人住民が抱える問題を収集し、政府やNGOが求められる「適切な問題
解決へのアプローチ」を考察。外国人住民の歴史的経緯、共生阻害要因、アプローチ法が示されている。
『異文化間教育』3, pp.81−94.
異文化間教育学
会
1984年度の日系企業の新入社員研修参加者(5カ国27名、研修は3ヶ月日本で開催)に対して行ったアンケートの回
答が紹介されている。カリキュラム的なものではなく、参加者の異文化への適応に焦点が当てられている。
『トピックによる日本語総合演習 テーマ探 スリーエーネット
しから発表へ上級』
ワーク
表題のとおり、あるトピックについて、ディスカッションの材料、グラフ等の客観的な資料、記事が与えられ、学習者間
での情報交換の後、アンケートやインタビューによる調査へと発展、その結果の発表までを筋道を立てて実際に行え
るように組み立ててある。また、発表のための手引きとして、グラフ説明や調査等で必要となる表現がまとめて示して
ある。トピックは以下の5項目、①食文化 ②仕事 ③生活習慣と宗教 ④リサイクル ⑤ジェンダー。 尚、各トピック
に沿った「上級用資料集」が別売されている。
「ビジネス・コミュニケーションにおける「話し
『日本語学』Vol.13, No.12, pp.38-45.
ことば」の役割と課題」
「外国人企業研修生の日本体験」
出版元
4
安藤節子 他
2001
5
池田伸子
1995
「教授システム開発におけるニーズ評価に 『ICU日本語教育研究センター紀要』4,
ついて」
pp.43-62.
国際基督教大学
ビジネスパーソンの日本語教授法システムを開発するために、ビジネス日本語を学習しているビジネスパーソンを対
象に行われたニーズ評価。被験者は主に英語圏出身者。
6
池田伸子
「ビジネス日本語教育における教育目標の 『ICU日本語教育研究センター紀要』5,
1996a 設定について:文化・習慣についての重要
pp.11-24.
性を考える」
国際基督教大学
日本で働いている外国人ビジネスパーソンを対象に行ったアンケート結果から、ビジネス日本語教育において取り上
げる文化・習慣項目を明らかにしている。アンケートは日本(人)のビジネスに関する文化・習慣的特徴について。調
査対象は英語圏出身者が多い。
7
池田伸子
「日本人ビジネスマンの話し言葉における
1996b 語彙調査−ビジネスマン用日本語教育シス 『日本語教育』88、pp117-127.
テム開発の基礎として−
日本語教育学会
30時間分のビジネスマンの会社における発話から(社内・社外のミーティング・打ち合わせ・電話)、語彙を分析。ビジ
ネスマンの語彙は話しことばの語彙であるため、知識階層の語彙同様、感動詞が多く含まれており、「的」の使用が
多い。漢語の使用率及び名詞語彙数が高いという書き言葉同様の特徴も見られた。
8
石川清彦
池田万季
2004
『いろは』16, pp.1-3.
財団法人
交流センター
左記団体が、台湾の日系企業に対して人材の募集、求める日本語能力など、アンケート調査を行った報告。不足し
ている日本語能力については、「書く能力」が多くあげられている。
9
伊藤守
2002
『コーチング・マネージメント』
コーチング・スキル・導入法を紹介。ビジネス社会での上司と部下の関係を意識し、どのような会話・対話が必要か、
ディスカバー トゥ
どのような姿勢が必要かということを論じている。コーチングに限らず、コミュニケーション・スキルにも重きを置いてい
エンティワン
る。
10
上田和子
羽太園
和泉元 千春
2001
「専門日本語教育のプログラム・デザイン−
国際交流基金日 9ヶ月間の外交官及び公務員日本語研修の開設期におけるコース・デザインに関する論文。自律学習能力育成のた
外交官・公務員日本語研修における選択シ 『日本語国際センター紀要』 11, pp.69-87.
本語国際センター めの選択科目履修制度の問題点、その対策実践例の報告が中心。
ステムの実践−」
11
上田和子
1995
「「テープ通信」を用いた日本語コースの試 『日本語教育論集 世界の日本語教育』 5,
み 香港でのビジネス・ジャパニーズの場
国際交流基金
pp.45−60.
合」
12
ウォン 宮副裕子
1997
「海外における日本語教育の連携香港」
13
宇都野友宏
2001
「FIELDWORK:当地日系企業における日 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 4, pp.189-196.
本語専攻コースに関わる調査」
「日系企業が期待する日本語能力」
『日本語学』Vol.16, No.6, pp.211−222.
明治書院
香港社会の要求にあった日本語が使えるビジネスパーソンの養成を目指している香港理工学院(現香港城市大学)
商業及管理学系日本語コースの副専攻における、「テープ通信」の試みの紹介。
香港における日本語の出来る香港人ビジネス・パーソンに期待される能力の具体的な記述あり。また、香港理工大
学の日本語コースの記述では「日本語教師間の連携」「日本語教師と学習者の連携」「学習者の連携」「香港のコミュ
ニティーとの連携」他、様々な連携の試みの記述あり。学習者中心のカリキュラムで短期間で高度の日本語のイン
ターアクション能力の養成を目標としている。
国際交流基金バン
コック日本語セン タイの日系企業15社への調査・面接をもとに、タイにおけるビジネス日本語教育の課題等を提言。
ター
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 1/6ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
『日本語教育学会春季大会予稿集』 pp.36日本語教育学会
42.
要旨
14
内海美也子
2001
「ビジネス場面における敬語・待遇表現の
指導」
15
王敏東
1997
「台湾におけるビジネス日本語関係の教材
『日本語教育研究』34, pp.128−141.
について」
言語文化研究所
16
大隈敦子
羽太園
林敏夫
品川直美
2003
「専門日本語の学習過程
―研究活動支援制度を利用した
学習を通して―」
『日本語国際センター紀要』
13, pp.65-82.
国際交流基金日 研究者に対する日本語教育の実践報告。個人単位の学習活動で専門分野の専門家を研究アドバイザーとし、日本
本語国際センター 語教育はサポーターにまわる形態をとる。研究活動支援制度が日本語研修全体において果たす役割を考察。
17
小田切隆
1990
「中級日本語教科書から発展した読み物」
『講座日本語教育』 25, pp.40-49.
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
90%以上が政治・経済・商学専攻の日本語中級クラスにおいて、経済関係の読みものを使用した例と手順を紹介。
学習者は関心を持っていたが中級ではまだ、まとめて読む力が不足していた。
18
小野寺志津
李徳奉
金久保紀子
2004
「ビジネス日本語教育のあり方−新入社員 『東京家政学院筑波女子大学紀要』 8,
教育マニュアルから見えるもの−」
pp.127-137.
筑波学院大学
日本企業2社(生命保険会社と運輸会社)の新人教育マニュアルを比較分析し、ビジネス日本語の定義を試みた論
文。マニュアルの項目を言語、非言語に分類し、日本企業の求める能力を明らかにしている。
19
小野寺志津
2005
「ビジネス日本語教科書の日韓対照分析」
『東京家政学院筑波女子大学紀要』 9,
pp.67-71.
筑波学院大学
日本、韓国におけるビジネス日本語教科書各1冊ずつの特徴を分析している。韓国の国定教科書は日系企業に就職
を希望する高校生向けとなっており、インターネットの利用までも含み、電話応対、文書作成等、新入社員研修で使
えそうなほど高度なものになっている。
20
片桐準二
椿晴海
2002
「タイ国の大学における日本語主専攻開設 『国際交流基金 バンコック日本語セン
ター』 5, pp.53-68.
前後の卒業生の動向」
21
川口義一
(1)『早稲田大学日本語研究教育センター紀
「海外における待遇表現教育の問題点
要』15, pp.15-28.
2002早稲田大学日本
―台湾での研修会における「事前課題」分 (2)『講座日本語教育』38, pp.1-15.
語教育センター
2003
(3)『早稲田大学日本語教育センター紀要』
析(1)∼(3)―」
16, pp.37-50.
22
岸田由美
2004
「理系大学院留学生の生活とニーズに関す
る事例研究―金沢大学留学生生活実態調 『金沢大学留学生センター紀要』7, pp.4558.
査の分析より―」
金沢大学留学生セ 金沢大学理系大学院生の留学の経緯、経済状況、生活環境、希望する進路、留学の満足度などの調査がまとめら
ンター
れている。
23
熊野七絵
石井容子
亀井元子
田中哲哉
岩澤和宏
栗原幸則
2005
「初級レベルの専門日本語研修の
『国際交流基金 日本語教育紀要』
ためのオーラルテスト評価基準開発
1, pp.175-188.
−外交官・公務員日本語研修での試み−」
国際交流基金
24
国頭美紀
1992
「プレゼンテーションにおける学習者とネイ
『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 7, 文化外国語専門
ティブスピーカーの相互交渉分析
−コミュニケーション・ストラテジーの使用を pp.57−77.
学校
中心に−」
「ビジネスプレゼンテーション」コースでのプレゼンテーション(日本人の前でプレゼンテーションを行い、日本人からの
質問に答える)終了後のアンケート調査の回答から、学習者のコミュニケーション行動の実態、ストラテジーの使用状
況が検証されている。学習者の大部分は問題が起こった際、瞬間的に解決方策を考えており、問題回避が出来るか
否かで、学習者の日本語も評価が異なり、ストラテジー能力の役割の重要性が欠かれている。
25
近藤 彩
品田潤子
保坂敏子
島田めぐみ
2001
「営業担当者のタスクの特徴
―打ち合わせの事例から―」
日本語教育学会
実録のビジネスの場の打ち合わせを録音・文字化したデータをもとに営業担当者のタスクを明らかにする。
26
茂住和世
2003
「中国上海 復旦大学日語日文科における 『東京情報大学 研究論集』 Vol.6,
日本語教育」
No.2, pp.171-181.
東京情報大学
中国トップレベルの復旦大学での日本語教育の概要が述べられている。3年次後半に行われるインターンシップにも
触れていたが、詳細な記述はない。
『日本語教育学会春季大会予稿集』
pp.103-108.
母語や英語ですでにビジネス経験のある学習者に対する敬語待遇表現の指導例。
台湾で発行されているビジネス日本語の書籍一覧が紹介されている。
国際交流基金バン
コック日本語セン タイ・シラパコーン大学日本語講座卒業生2001年の追跡調査の結果と考察。
ター
台湾での「日本語教育冬期研修会」において「事前課題」として課したレポートをもとに台湾の日本語教育における待
遇表現指導の問題点及び待遇表現そのものについて分析・考察。
初級レベルの外交官・公務員日本語研修で目指すべき日本語運用能力や評価のあり方について考察する。
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 2/6ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
27
茂住和世
2004
「異文化環境に適応する人材に求められる 『東京情報大学研究論集』
もの∼日中合弁企業における社員研修の
Vol.7, No.2, pp.93-104.
事例から∼」
東京情報大学
28
清水百合・
山本その子
1992
「新開発教材におけるタスク作成(2)-初級 『筑波大学留学生センター日本語教育論
集』 7,pp.103-126.
後期の小規模なタスクについて」
筑波大学留学生セ 新教材開発のタスク班による報告。4技能のうちの1つあるいは2つを使った小規模なタスクが紹介されている。「聞
ンター
きタスク」「話タスク」は具体的内容が盛り込まれている。
29
新谷あゆり・
藤牧喜久子
1992
「新開発教材におけるタスク作成(3)
-初級後期のトータル・タスク−」
筑波大学留学生セ 小さなタスクが有機的に結びついて構成され、ある目標に向かって行われる活動全体をトータルタスクと定義。新開
ンター
発教材におけるトータルタスクのねらいと具体例、今後の展望が述べられている。
30
榊原挿隆
1991
「米大学の国際ビジネス学科での大学院生 『日本語教育論集
世界の日本語教育』1, pp.173-182.
を対象とした日本語プログラムの開発」
国際交流基金
31
佐々木ひとみ
水野治久
2000
「外国人研修生の異文化適応に関する縦断
『日本語国際センター紀要』10, pp.1-16.
的分析」
国際交流基金日 国際交流基金日本語国際センターの平成10年度海外日本語教師長期研修プログラムに参加した外国人研修生の
本語国際センター 異文化適応の実態を調査、考察。
32
島田めぐみ
渋川晶
1998
「外国人ビジネス関係者の日本語使用:実 『日本語教育論集
世界の日本語教育』8, pp.121-140.
態と企業からの要望」
国際交流基金
33
鈴木義幸
2000
34
清ルミ
1995
「上級日本語ビジネスピープルのビジネスコ
ミュニケーション上の支障点−インタビュー 『日本語教育』 87, pp.139-152.
調査から教授内容を探る−」
35
清 ルミ
2001
「学生・社会人に対する待遇表現教育につ 『日本語教育学会春季大会予稿集』 pp.28日本語教育学会
いての方法論・具体的な指導法」
35.
従来の待遇表現の指導法の問題点を指摘し、筆者の実践する指導法を報告している。
36
高見澤孟
1994
「ビジネス・コミュニケーションと日本語の問
題−外国人とのコミュニケーションを考える 『日本語学』 Vol.13, No.11, pp.30-37.
−」
明治書院
社内の会話、打ち合わせ、調査、広報活動など、ビジネス場面でのコミュニケーション活動をビジネス・コミュニケー
ションと定義し、活動内容と日本語のかかわりを考察。
37
谷原公男
栗山恵子
2002
「アメリカのビジネス日本語教育事情−最
近の動向−」
『専門日本語教育研究』 4, pp.11-16.
専門日本語教育
学会
アメリカの大学・大学院におけるビジネス日本語の事例紹介。特にニューヨーク州立大バッファロー校のオンラインビ
ジネス日本語コース"E-business Japanese"が中心。
38
田丸淑子
1994
「ビジネス・スクールの日本語教育−コー
ス・デザインの課題−」
『日本語学』Vol.13, No.12, pp.54-61.
明治書院
ビジネス・スクールでの日本語教育について取り上げる。①到達目標の高さと時間的制約、②ニーズ特定と目標設
定の難しさ、③日本語使用の実際に関する情報不足、④文化の扱い方、の4つを問題点として挙げている。
39
津村俊充
石田裕久
2004
『ファシリテーター・トレーニング∼自己実現
ナカニシヤ出版
を促す教育ファシリテーションへのアプローチ∼』
ファシリテータの役割について実践例も含めて紹介。学習支援に必要な基礎知識、対人関係能力を育成するための
ラボラトリー・メソッドを用いた体験学習の基礎知識など。ファシリテーション・スキル養成のための基本的枠組みを提
供。
40
野田尚史
2005
『なぜ伝わらない、その日本語』
日本語の書き言葉、そのなかでも、Eメール、掲示、アンケートなど、特定の相手に意図が充分に伝わり、ときに返事
や反応を求める文書について、さまざまな例を示し、問題点と改善点が具体的に挙げられている。文書を書くときに、
相手の状況、反応を考えて工夫すべき点がわかり易く示されている。
41
野元千寿子
2004
『筑波大学留学生センター日本語教育論
集』 7,pp.127−154.
『コーチングが人を活かす』
日中合弁企業中国人SEに対する社員研修についての調査結果。外国人の人材育成にはコミュニケーション技能お
よびソーシャルスキルを重点的に教える必要性が挙げられる。
サウスカロライナ大学の国際ビジネス修士課程におけるプログラムの紹介。
日本で働く外国人ビジネス関係者と在日企業の日本語に対するニーズについての調査。日本・合弁企業と外資系企
業を比較しながら調査結果がまとめられている。
コーチング・スキルについての紹介。ビジネスパーソンを対象に書かれている。状況別にスキルが使えるように、「部
ディスカバー トゥ
下が期限通りにレポート等を提出しない場合」、「部下が顧客とどのように商談を進めているのか今ひとつ見えない」
エンティワン
といったように項目分類されている。
日本語教育学会
岩波書店
「留学生に対するビジネス日本語−APUに 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』 15,
昭和女子大学
pp.31-43.
おける教育実践とアンケート実施より−」
上級レベルのビジネスピープルが仕事上で感じる日本語の問題点を把握し、教授内容を探る。外国人の出身国・母
語についての記述はない。論文内では、日本人ビジネスパーソンが挙げた外国人ビジネスパーソンの問題点につい
ても述べられている。
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部で日本企業に就職を希望している留学生を対象に行った授業とア
ンケートの実践報告。就職活動を主なテーマとし、就職活動を行う際の問題点や就職活動で必要な技術、ビジネス日
本語クラスに対する評価を紹介。
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 3/6ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
42
野元千寿子
2005
「大学におけるビジネス日本語:受講者アン 『昭和女子大学大学院日本文学紀要』16,
ケートを通して見えること」
pp.13-23.
昭和女子大学
43
羽太園
熊野七絵
2003
「職業人の特性を生かす学習環境
−外交官・公務員日本語研修
スピーチクラスの検証−」
国際交流基金日 職務上のスピーチのニーズから、スピーチクラスのコースをデザイン。スピーチクラスが提供している学習環境を「コ
本語国際センター ミュニカティブ・ストレス」という観点から分析する。
44
袴田麻里
2000
製造組み立てラインで働く日本人リーダー・インドネシア・スリランカ人研修生・日系ブラジル人就労者に行ったアン
「職場における外国人と日本人のコミュニ 『異文化コミュニケーション研究』 12, pp.79 神 田 外 語 大 学 異
ケート結果(コミュニケーションについての意識)が記述。日本人が作業中のコミュニケーションを重視しているのに対
ケーション−製造組み立てライン職場での
文化コミュニケー
し、外国人は生産活動とは直接関係ない状況でもコミュニケーションを図ろうとしている。また日系ブラジル人はトラブ
−96.
アンケート調査から−」
ション研究所
ルを解決するストラテジーにを研修生より多く持っていた。
45
原田 明子
2004
「バンコクの日系企業の求める日本語ニー
『早稲田大学日本語教育研究』 5, pp.169ズに関する分析 −ビジネスパーソンによる
181.
日本語学習動機との比較から−」
46
平井一樹
2005
「ビジネス日本語の課題と新たな領域」
『愛知産業大学日本語教育研究所紀要』 2, 愛知産業大学日
本語教育研究所
pp.49−56.
47
藤本明
1993
「スタンフォード大学夏期講座
”Japanese for Business”」
『AJALT』16, pp.10−15.
48
古川雅子
2004
「就職面接場面を取り上げた日本語教材の 『昭和女子大学大学院日本語教育研究紀
要』 2, pp.118-127.
現状分析」
49
細川英雄
酒井和子他
2003
50
堀井恵子
2006
「アカデミック・ジャパニーズをふまえたビジ
ネス・ジャパニーズ教育の意義と課題 How
『武蔵野大学文学部紀要』 7, pp.151-160. 武蔵野大学
to Develop Business Japanese Based on
Academic Japanese」
51
前家裕美
1999
「ビジネスコースの変遷とカリキュラム」
『文化外国語専門学校日本語課程紀要』 文 化 外 国 語 専 門 1986年からのビジネスコースの変遷が述べられている。‘95年以降はビジネスパーソン予備軍主体のコースとなり、
13, pp.81−99.
学校
教師が教えるより、学習者が考える授業へと変化した。具体的な教室活動が書かれている。
52
松本隆、
山口麻子、
高野昌弘
1998
「経済分野の専門的日本語教育−語学教
師と専門家の連携を目指して−」
『アメリカ・カナダ大学連合日本研究センタ- アメリカ・カナダ大 左機関での「ビジネス・社会」「ビジネスコース」「政治・経済」コースの実践報告。コース概要、授業内容、学生への聞
学連合日本研究セ
き取り調査結果が述べられている。語学教師と専門分野の教師との連携の必要性が挙げられている。
紀要』 21, pp.1−40.
ンター
53
丸山敬介
1992
「専門家との共同実施形態による総括テス 『同志社女子大学日本語日本文学 』4,
トの試み」
pp.12-30.
同志社女子大学
上級段階で学ぶ営業職のビジネスマン対象のコースにおける評価(オープン・テスト)に関する論文。営業活動の場
面をロールプレイで行わせてその模様を評価・測定するパフォーマンステストを実施。コース運営から評価まで日本
語教師とビジネスマン教師との共同実施で行っている。
54
丸山敬介
1991
「日本語教育上級段階における専門教育の 『同志社女子大学日本語日本文学』 3,
一モデル−営業職にあるビジネスマンを対
pp.31−53.
象に−」
同志社女子大学
上級ビジネスコースにおけるビジネスマン教師の役割の重要性。ビジネスマン教師の専門知識が有効に引き出され
るように、日本語教師は役割分担を明確にし、コースを運営すべき。営業職ビジネスマンを対象としたコースのモデ
ルが述べられている。
55
丸山敬介
2005
『日本語国際センター紀要』
13, pp.47−63.
『「総合」の考え方と方法』
早稲田大学
立命館アジア太平洋大学の経営学部、社会学部の留学生を対象に行ったビジネス日本語クラスに対する授業アン
ケートの報告。アンケート結果から、カリキュラム上での課題を提示している。
将来海外の日系企業で働きたいと考えている人に役立つような、企業と学習者双方のニーズに合ったビジネス日本
語シラバスの作成を目的とした研究。
シャープ、松下、韓国のITエンジニア派遣等、ビジネス日本語の現状が述べられ、教材・シラバスが現状に追いつい
ていないとする。電子メールを題材とした試案が提案され、シラバスを考える際の参考になると筆者は述べている。
(社)国際日本語普 タイトルの講座についての実践報告。教材開発・カリキュラムに多くがさかれている。筆者はロールプレー・討論を重
視していたようである。
及協会
昭和女子大学
市販の日本語教材で就職面接場面が取り上げられている4冊(面接場面は9冊)を対象とし、面接場面の取り上げ
方、学習対象レベルを調査し、留学生の就職面接を支援する日本語教材について検討。
早稲田大学日本
語研究教育セン
ター
早稲田大学での日本語クラスを元に、「総合」についての考え方、実践例を紹介。各章、実践例の具体的方法、テー
マ、評価が整理されている。
『教師とコーディネータのための日本語プロ スリーエーネット
グラム運営の手引き』
ワーク
留学生の就職の現状を明らかにした上で、先行文献・教材などから21世紀に対応したビジネス・ジャパニーズがどの
うようなものであるかをさぐり、それに基づいて、留学生を対象としたアカデミック・ジャパニーズをふまえたビジネス・
ジャパニーズ教育の意義と課題を明らかにする。
企業研修生または定住型・長期滞在型の外国人を対象とした短期プログラムを設置・運営するコーディネーター、そ
こで指導する日本語教師のための手引き。学習者のニーズをよりよい形で実現させるための方法や姿勢を、プログ
ラムの立案・進行から就労にいたるまで段階ごとに解説。
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 4/6ページ
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
『授業にいかす 教師がいきる ワーク
ショップ型研修のすすめ』
出版元
要旨
研修やワークショップの原理といった理論とともに、具体的な事例を多く取り上げている。「理論」、「事例」、「実際の
研修例」とわかりやすい構成になっている。
56
村川雅弘
2005
57
山本富美子
2006
第4回中日韓文化 大部分は教材紹介。「実用的」かつ「教養的」な人材養成を目指して作成された『国境を越えて』を使用したコンテン
「論理的表現力を養成するタスク・シラバス 『第4回中日韓文化教育フォーラム 発表資
ト・ベース教育に対する学生の評価、教員側の指導について述べた論文。その結果、学生からは高い評価が得られ
教育フォーラム
によるコンテント・ベース教育」
料』
ているが、一般の日本語教員には指導しにくく、適切な教員研修の実施が課題であるとしている。
発表資料
『Journal of Interncultural
Communication』 5, pp.115-129.
異文化コミュニ
ケーション学会
神戸大学経済経
営学会
ぎょうせい
教材開発の事前調査。被験者は主に関東圏に勤務する外国人54名のうち分析対象は47名。被験者はアジア圏出
身の30代正社員が多い。勤務先はメーカーや情報通信関連が多く、外資系よりも日系企業・機関が多い。調査結果
より、教材のニーズの傾向として以下の3つの点が挙げられた。(1)多様な仕事場面で広範囲にしようできる情報を必
要としている。(2)情報源の種別を問わず、専門性の高い情報を必要としている。(3)言語知識、経済関連知識、コミュ
ニケーション能力を獲得できるような情報を必要としている。
58
横須賀柳子
2002
「専門的職業に携わる在日外国人の情報
収集行動ー日本語教材開発にむけてー」
59
吉原英樹
星野裕志
2002
「総合商社―日本人が日本語で経営―」
『国民経済雑誌』187(3), pp.19-34.
60
梁安玉
上田和子
1999
「書きことば教育のカリキュラムデザイン」
『世界の日本語教育 日本語教育事情報告 国際交流基金日 香港社会のビジネスの場における日本語の書きことばのニーズ及び「書類への対応」のための書きことば教育のカ
本語国際センター リキュラム・デザインを紹介。
編』 5, pp.217-231.
61
梁 安玉
2001
「香港の学習者のための日中・中日の翻
訳、通訳カリキュラム・デザインへの試み」
『日本学刊』5, pp.53-60.
香港日本語教育
研究会
62
(座談会)
1993
「「日本語でビジネス」座談会」
『AJALT』16, pp.16−21.
(社)国際日本語普 4人の外国人の座談会。学習過程、業務での日本語使用状況や、日本語でビジネスを行う際の困難点が述べられて
及協会
いる。
63
ロバート・チェン
バース
2004
『参加型 ワークショップ入門』
明石書店
本書は、講義や授業などのシーンで使える活動や演習を多数盛り込み、会議やワークショップを双方向のものにした
い、訓練コースを生き生きとしたものにしたい、自分のレパートリーを広げたい人などに必読の書である。
学事出版
プロジェクト・ベース学習とは何かという紹介と学習者をどう評価するかについて書いてある。有能な社会人の育成を
教育の目的におき、学校は学習者に何を提供すべきかについて提案した書である。
海外多国籍企業と日本の多国籍企業(例:総合商社)の対比。日本企業の特徴として日本人が日本語を使って経営
活動を行う点があげられる。様々な商社での例や商社へのインタビューがまとめられている。
香港城市大学での「日中翻訳・通訳」クラスのカリキュラム・デザインの紹介。
64
ロナルド・J・ニュー
エル
2004
『学びの情熱を呼び覚ますプロジェクト・
ベース学習』
65
マルカム・S・ノール
ズ
2005
『学習者と教育者のための自己主導型学習
明石書店
ガイド―ともに創る学習のすすめ』
66
筆者記述なし
2005
「ビジネス日本語の「目標能力」例
−インド人IT技術者の場合−」
『AJALT』 28, pp.44−47.
(社)国際日本語普 優秀なインド人IT技術者にインドで日本語教育を実施し、日本へ派遣している企業の日本語コースについて。目標と
及協会
なる日本語能力、訓練法、評価法の一例が書かれている。
67
国際協力
銀行
開発金融
研究所
2003
「高等教育支援のあり方
―大学間・産学連携―」
『開発金融研究所報』13, pp.60-97.
国際協力銀行開
発金融研究所
マレーシア・タイ・ベトナムの3カ国を対象とし、これらの国々への今後の高等教育支援のあり方を日本の大学・企業
との協力の観念から検討するもの。
68
Tsoi, Eva
2002
「日本人上司から見た香港人スタッフ:異文 『日本学刊』
化コミュニケーションによる問題・日本語学
6, pp.123-125.
習者へのアドバイス」
香港日本語教育
研究会
香港人スタッフについて、香港日系企業マネージャーにインタビュー。日本語よりも日本の社会・文化の知識が重視
されている。
69
多文化共働プログラ
ム
2006
『多文化協働プログラム「外国人従業員受
け入れに関する調査報告書」∼外国人研修 多文化共生セン
生・技能実習生受け入れに関する意識調査 ター・大阪
∼』
読者が学習者でも教師でも、双方にとって、自己主導的な学習者として活用すべきリソースを提供している。自分の
コンピタンスを開花するために、または本書そのものがリソースとして活用できる。
外国人従業員の受け入れがますます増大する中、外国人従業員と受け入れ側の従業員双方が「共に働く」ことにつ
いて互いにどのように感じているか、また企業にとって外国人従業員のいる職場をマネジメントしていく際の問題は何
か、などを明らかにすることを目的として、外国人研修生・技能実習生の受け入れ企業を対象にアンケート及びヒアリ
ング調査を行い、報告書としてまとめた。
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 5/6ページ
No.
執筆者
出版年
70
文化庁文化部国語
課
1994
論文名
書籍名
出版元
『外国人ビジネス関係者のための日本語教
大蔵省印刷局
育Q&A』
要旨
全6章。①現状②概観;外国人ビジネス関係者を対象とした日本語教育の全般的な特徴が述べられている③日本語
の学習;学習者や教師に係わる基本的な問題について解説している④コースデザイン;関係者を3グループに分類し
各グループのコースデザインについて解説している⑤教室活動;コースデザインで組まれたカリキュラムを具体化し
た教室活動について具体的に解説している⑥リソース;コースデザインや教室活動を行う際に必要となるビジネス関
係の情報等について解説するとともに、リソースとなる資料を一覧表にして掲載してある。
文献調査:ビジネス日本語教材に関する研究 6/6ページ
文献調査:ビジネス日本語教材一覧
No.
1
教材名
執筆者
㈱日本映像教
『映像で学ぶビジネス日本語』(DV
育社 教育事
D10巻+テキスト2冊セット)
業部
出版年
2004
出版元
シラバス構成
課数
時間数
㈱日本
映像教 場面別/ロールプ
育社 教 レーによる会話 Vol.10まで
育事業 練習
部
課構成
<内定者編>1∼5巻
ビジネスマンの基本・敬語・ビジネス文書
<新入社員編>6∼10巻
電話を受ける・電話をかける・訪問のマナー・応接
のマナー
対象者
想定場面
職種・業種
到達目標
ビジネスパーソン、研
修生、入社内定者、
ビジネス場面 中級・上級
日本・日系企業に就
職を希望する大学生
2
『オフィスで使うビジネス日本語23
森野豊作
00』
1993
凡人社
①生産 ②流通
③金融 ④政治・
経済 ⑤国際関
係 ⑥貿易 ⑦農
業・水産 ⑧経営
全課で3ヶ月 語彙と問題
⑨会計 ⑩労働
⑪社会一般 ⑫
知っておきたいビ
ジネス用語の分
類
3
『オフィスの日本語』
1991
アルク
場面シラバス
4
『外国人のための新聞の見方・読
KIT教材開発
み方 応用編 How to Read about
グループ
Business in Japanese』
2005
凡人社
5
『改訂版第2版 新聞の経済面を読
む
AJALT
READING JAPANESE FINANCIAL
NEWSPAPERS Revised Edition』
1999
講談社
インター
機能別
ナショナ
ル
面積と人口、国土と気候、産業、金融機関、国民
生活、略語、法人、会社、日本の政治、内閣の構
ビジネスパーソン
造、報道記事の読み方、見出し・解説記事、他新
聞によく出てくる表現を18のカテゴリーに分類
経済、金融な
中級∼
ど
専門教
育出版
全14章で構成。基本編が9章、応用編が5章の配
分になっている。基本編は、学生のエチケット&マ
ナー、あいさつ、動作の基本、言葉遣い、手紙の
書き方、文書の作成、電話のかけ方・受け方・応 学生
対のマナー、会社訪問のマナー。応用編は、冠婚
葬祭の基礎知識、食事のマナー、国際マナー、就
職活動に備えて、社会人になるにあたって。
日常場面・ビ
ジネス場面
6
『学生のためのセンスアップマ
ナー』
高見澤孟
大貫久子
気賀沢よし子
清涼子
土田万里子
中島啓子
水谷志保子
1992
技能シラバス
全12課。
―
中級日本語をマス
ターした学習者
関連教材
カセットテープ
備考
英語併
記、ルビ
あり
機能別に各課を構成。STAGE1-4までを通して各課で社内/
社外の使い分けを類型的に学べるテキスト。
中級日本語をマスターした学習者に対し、生産流通、金融、
政治経済、貿易、会計など12章からなる専門分野の語彙2300
語とその表現を825場面にて例示。外国人ビジネスパーソン、
ビジネスを教える教師にも最適。
ビジネス場面 全用語習得
①モデル会話
②会話の練習
③Expression to Describe Actions
④聞き取りタスク
ビジネス場面・ 実際の場面や相手に
外国人ビジネスパー 日本企業に勤 合わせた「職場での会 カセットテープ2
ソン
めるビジネス 話」ができるようになる 本
パーソン
こと。
①中上級向け日本のビジネス情報
②よく使う日本語の慣用表現と短文
(付)読んで理解する経済用語100
③読んで理解する経済用語100
④経済関連の新聞記事から
⑤言い回し便利帳
中上級
―
要旨
日本のビジネス社会で活動し、またこれから活動しようと考え
ている外国人ビジネスパーソン向け。オフィスでの特別な表現
などを、わかりやすく解説。
新聞が読めるようにな
り、読んだものをきっか
けに日本人とのコミュ 練習帳
ニケーションを円滑に
する。
―
3部構成になっており、それぞれ、新聞を読むための背
景知識と語彙力を身につけるための練習、見出し・リー
ド文から内容を把握するための練習、記事全体を読む
練習ができるようになっている。
英語併
記、ルビ
あり
新聞によく出てくる表現を18のカテゴリーに分類。初級終了
後、新聞から情報が取れるよう基本文、新聞の例を提示。
学生が就職活動をしてビジネス社会へ出る準備をするための
テキスト。ビジネス社会で最低限必要なマナーが例題や演習
問題と一緒に実践的に学べるようになっている。
ビジネス日本語教材一覧 1/7ページ
No.
7
教材名
執筆者
『技術研修生のためのにほんご100
柳沢玲一郎
時間』
バルダン田中
幸子・
猪崎保子他
出版年
1992
出版元
技能シラバス
文法と場面
・初級段階を修了し
1章=1∼3
たレベル
<第1章>おもてなしの基本の話し方、表現やこと
課
・すでにホテルで働い
ば
ホテル場面
2章=1∼10
ている人
<第2章>ホテルの仕事の基本となる10の場面
課
・これからホテルで働
く予定の人
2003
凡人社
10
『実社会で求められるビジネスマ
ナー』
1991
専門教
育出版
11
12
『実用日本語 ビジネスマン物語
ことばと
80の場面で学ぶビジネス会話とマ
文化センター
ナー』
1993
1996
想定場面
職種・業種
凡人社
9
社団法人 国
際日本語普及
協会
対象者
活動例は全
10例。時間
数は活動に
よって異な
る。
岡部麻美子
『サービス日本語 −ホテルスタッ
鎭目怜子
フ編−』
向井あけみ
『じっせんにんほんご(改訂版)技
術研修編』
課構成
全11課で
100時間。基
本のみの場
合は80時
会話、練習、ワークシート
間。各課参
考時間数が
異なる。
『コミュニケーション重視の学習活
動Ⅰ プロジェクト・ワーク』
井上洋子
課数
時間数
TOPラン
構造シラバス、
ゲージ
場面シラバス、
日本語
機能シラバス
研究会
8
1988
シラバス構成
社団法
人 国際 場面シラバス・
日本語 機能シラバス・
普及協 トピックシラバス
会
ことばと
文化セ 場面シラバス
ンター
①レベル
②時間
③タスク
④学習目標
⑤準備
⑥設定
⑦学習活動の流れ
⑧全般的注意
⑨バリエーション
研修生(初級)
到達目標
関連教材
ビデオ、テー
実際に研修生
プ、語訳(中国
サバイバル的な日本語
が遭遇する場
語・ポルトガル
ができるようになるまで
面を想定
語・英語等)、
教師指導書
特に限定はし
ていないが、
教員用教材。授業対
活動例は日本
象者は初級レベルか
語教育現場で
ら上級者まで。
できるもの設
定している。
全8章の構成。実務編として、話し方、電話対応、
来客応対、ビジネス文書の計4章。心構え編とし
ビジネスパーソン
て、マナー一般、冠婚葬祭、執務の基本、明るい
職場づくりの計4章。
備考
要旨
技術研修生を対象とした初級レベルの教科書。日常生活や研
修現場で必要なことば・安全用語・仕事用語を100時間で学習
する。12課からなり、語彙数1100、漢字100、日本の習慣を学
ぶ。
プロジェクトワークとは、「学習者が身につけた日本語を運用
し、実際のコミュニケーションが体験できる活動」と本書は定
義。日本語教育とプロジェクトワークを具体的に記述。
ホテルで働く人のための日本語テキスト。ホテルのサービスで
必要なおもてなしの基本となる表現や言葉の使い方から、す
ぐに仕事にで使える会話まで短時間で無理なく学べる。英語
表記あり。
CD
ビジネスパーソンがビジネス場面で必要となる知識が整理さ
れている。講義の後、すぐに実習できるように作られており、
講義シートとワークシートが載せられている。また、テーマが
小区分されているので時々にあったものを学習できるよう配慮
されている。
ビジネス場面
①くちならし
全20課で60 ②質問に答える
時間前後を ③繰り返し言って覚える・よくきいてそのとおりに
想定。
動く・聞く練習
④話す練習
①文法的な構文力をつ
けることよりもコミュニ
ケーションに必要な基
研修と訓練を通じて
礎力な聞く力、話す力
技術を習得し、それ
をつけることを。 ②第 翻訳語版・かな
を生かして一定期間 研修現場を想
一に日本語の音に慣 ワークブック・
現場で働く外国人
定。
れること、第二に話さ 教師用指導書
(技術研修生)を対
れている中から自分に
象。
必要な情報を聞き取
り、自分の意思が伝え
られるようになること。
職場ですぐに役に立つ日本語が60時間で学べるような内容。
文法的な構文力よりも、コミュニケーションに必要な聞く・話す
力をつけることを目的としている。分類語彙表には、カラーの
写真とイラストで、職場と日本の暮らしに必要なことばがまと
められている。辞書代わりにも使える。
90課
総時間数:
100∼120時
間
中級以上の日本語
外国人にとって障壁と
学習者で、日本の会
なる、ビジネス会話特
社、日本人とビジネ
有の表現や複雑な敬
スをしようとしている
語、ビジネスマナー、ひ
人、日本の会社で働
ビジネス場面 いては日本語独特の
きたいと思っている
考え方・習慣といったも
人。また、社会人とし
のを、無理なく学習し、
ての日本語の知識や
自然な表現を身につけ
マナーを身につけた
る。
い人。
「日本人と日本語でビジネスができる」を目標に、基礎・応用・
実践の三段階で学ぶ中上級者向けの教科書。会議・報告・交
渉等や企画書から挨拶状まで、日本式ビジネスの会話・知
識・マナーが習得できる。
基礎編:1課∼30課
応用編:31∼60課
実践編:61∼80課
ロールプレイシート:81∼90課
―
ビジネス日本語教材一覧 2/7ページ
No.
教材名
執筆者
13
TOPランゲー
『実用ビジネス日本語 −成功への
ジ
10章−』
14
『商談のための日本語』
15
16
17
米田隆介
藤井和子
重野美枝
池田広子
『初級が終わったら始めよう にほ
金子広幸
んご敬語トレーニング』
小田明子、
『新実用日本語 新ビジネスマン物
森恭子、
語 ―50の場面で学ぶビジネス会
湯本雅信、
話とマナー―』
吉田洋子
『新装版 実用ビジネス日本語』
TOPランゲー
ジ
出版年
出版元
シラバス構成
場面別
社内/社外別
課数
時間数
1993
アルク
1996
スリー 機能別
8課
エーネッ 社内と社外の表
トワーク 現対比
2006
2004
2006
ask
テーマ別
10章
3章
2章(18課)
場面シラバス
アルク
技能シラバス(話
す・コミュニケー
10章
ション能力)・機能
シラバス
『新装版ビジネスのための日本語
(初中級)』
米田隆介
1998
スリー
エー
機能シラバス
19
『体験しよう日本の文化
EXPERIENCING JAPANESE
CULTURE』
KEK 国際交流
会
1989
アプリ
コット
話題
全8課で目
安は30時
間。1課につ
き4時間(ク
ラス授業の
場合)
―
対象者
想定場面
職種・業種
到達目標
関連教材
備考
要旨
英語併
記、ルビ 機能別に各課を構成。更に対象や場面による使い分けを提
あり(台湾 示。コミュニケーション能力を伸ばすことを目標としている。
版は中国 コーヒーブレイクとして日本の慣習なども紹介。
語あり)
初級終了後、日本語
挨拶、電話の応対、依頼、注文する、誘う、許可、
をビジネスに生かし 内勤場面
アドバイス、情報伝達、意見陳述、意見交換
たい人
中級∼上級
説明、意見、賛成、反対、結論、説得、クレーム、
ビジネスパーソン
プレゼンテーション
営業、商談
中級
カセットテープ
⇒プレゼン方法の習得
英語併
記、ルビ
あり
機能別に各課を構成。STAGE1-4までを通して各課で社内/
社外の使い分けを類型的に学べるテキスト。
1章「敬語への入り口」どんなとき、だれに?
2章テーマ別敬語トレーニング全18課:訪問する、
簡単に挨拶する、誘う、断る、お願いする、反対の
意見、批判的な意見を言う、申し出る、お詫びをす
留学生・ビジネス
る、予約を受ける、サービスの敬語、相談を受ける、
パーソン
電話する、正式にあいさつする、スピーチをする、
面接試験を受ける、取材する、発表する、メール
の敬語、
3章 だんだん敬語をとる:
日常場面・大
学生活・就職
活動
中級∼
英語・
中国語・
韓国語の
語訳付き
実社会でのコミュニケーション力を高めるのに効果抜群の書。
18の場面・テーマに沿った会話を中心に、CDを使いながら、た
くさんの例文・表現に慣れていく。なるべく早く敬語の練習がで
きるようにつくられた1冊。
カセットテープ
CD
中級以上の日本語
外国人にとって障壁と
学習者で、日本の会
なる、ビジネス会話特
社、日本人とビジネ
有の表現や複雑な敬
スをしようとしている
語、ビジネスマナー、ひ
人、日本の会社で働
ビジネス場面 いては日本語独特の CD
きたいと思っている
考え方・習慣といったも
人。また、社会人とし
のを、無理なく学習し、
ての日本語の知識や
自然な表現を身につけ
マナーを身につけた
る。
い人。
ビジネスの現場で必要不可欠な会話とマナーが50の場面で
実践的に学べる。外国人向けといってもやさしく直したりやさし
い表現にかえたりしていない。
第1章:挨拶
第2章:電話の対応
第3章∼第7章:依頼、注文する、誘う、許可、アド
バイス
第8章∼第10章:情報伝達、意見陳述、意見交換
各ユニットは、[基本会話]、[戦略表現]、[実用会
話]という順で展開。
中級レベル以上(初
級段階をすでにマス
ターし、さらに日本語 ビジネス場面
を磨きビジネスに生
かしたい人)
CD
日本語レベルが中級以上のビジネスパーソンを対象とした会
話中心テキスト。「挨拶」、「電話応対」、「依頼」、「意見交換」
などの場面別10章構成。例えば、「電話応対」の章では、夜遅
くかけるとき、初めての相手にかけるとき、外線と内線の区別
など、多くの場面を設定。型にとらわれず、柔軟な対応スキル
を磨くことができる。
STAGE1からSTAGE4。
STAGE1はその場面で学習する機能表現を含ん
だ短い会話、
STAGE2は場面と状況を把握させる問題。
STAGE3ではSTAGE1、2で学習した表現を練習
し、ロールプレーによる運用練習を行う。
STAGE4では学習した表現を実際の場面で観察さ
せたり、使わせたりして、その結果を教室で発表さ
せ、まとめとする。
ビジネスマン/企業
研修生、日本企業へ
の就職を希望する大 ビジネス場面 初中級
学生(レベルは中級
前期)
CD
ビジネスパーソンのための会話テキスト。各STAGEは社内と
社外で使う表現を分けて練習するようになっている。また、語
彙や指示語には英語訳つき。各課末には日本でのビジネス
習慣に関する読み物があり、自習用とすることもできる。
①伝統文化
②年中行事
③子供のあそび
④日本の味覚
日本語非母語話者
タイ語版
日本の伝統文化・年中行事・味覚・子供の遊びの中から50項
目を選び、アクティビティとQ&Aでわかりやすく解説した外国人
向けの手引書。日英対訳形式なので日本語や日本文化を学
ぶテキストとしても最適。
50課
総時間数は 1∼26課:基礎編
100∼120時 27∼50課:実践編
間
新宿
日本語
学校
18
課構成
―
―
―
ビジネス日本語教材一覧 3/7ページ
No.
20
21
教材名
執筆者
『日・英・中 ビジネスレター Eメー 田中則明・キ
ルハンドブック』
ア・シェリーン
『日本企業への就職 ビジネス会話 岩澤みどり
トレーニング』
寺田則子
海老原恭子
岩澤みどり
寺田則子
小柴宏邦
蔡忠
22
『日本企業への就職 ビジネスマ
ナーと基本のことば』
23
『日本語でビジネス会話−初級編: 日米会話学院
生活とビジネス−』
日本語研修所
24
『日本語でビジネス会話−中級
編ー』
日米会話学院
日本語研修所
25
『日本語の達人 仕事上の会話』
田中則明
出版年
2006
出版元
心弦社
シラバス構成
技能シラバス・
場面シラバス
2006
ask
機能と場面シラ
バス
2006
ask
マナー
1989
日米会
話学院
場面シラバス・
構築シラバス・
機能シラバス
課数
時間数
課構成
対象者
想定場面
職種・業種
外国人ビジネスパー
ソン
全15課
到達目標
関連教材
備考
ビジネスパーソンが、日・英・中のビジネスレターをスピー
ディーに書くための手引書。筆者、田中氏の「田中式レター作
法」により、三ヶ国語変換自在。また、日・英・中のビジネスレ
ターとしても最適。
ビジネスレターの書き
方を身に着ける
①文型・表現
②聴解
③内容理解
④内容理解2
⑤発話練習
中国語を母語として
練習を通して職場での
⑥ロールプレイ
いる日本語学習者向 ビジネス場面 コミュニケーションを円 CD
⑦コラム
き
滑にする。
⑧聴解練習(自然なスピードを聞き取れるか)
⑨新出単語
⑩漢字
⑪日本人と日本社会を理解するためのキーワード
8課
―
全46課で
300時間が
目安
要旨
ビジネス場面での会話力向上を目指す。アポイントメント、依
頼など8つの課を設け、たっぷりと会話練習をする。また、中国
語母語話者に多い誤用と取り上げ、丁寧に解説。異文化理解
のためのコラムやビジネス語彙集などの付録あり。
Part1:日本のビジネスマナー
Part2:就職活動ガイド
『日本企業への
日本の企業で働いて
ビジネス場面・ 日本ビジネス社会での 就職ビジネス会
いる人、これから働こ
就職活動場面
礼儀作法を学ぶ。 話トレーニン
うとしている人
グ』
日系企業に就職希望の中国人、中国人研修生の指導者を対
象。ビジネスマナーと基本のことば、ビジネス文書の書き方な
どをサンプル付きで説明。就職活動のノウハウも紹介。中国
語の全対訳付き。
文型小会話と本文会話とイラスト
日本語を初歩から勉
英訳・文法概説
初級レベルの文法項目
強したいと考えてい 前半は生活場
冊、練習冊、練
を習得し、日常会話及
るビジネスパーソンを 面、後半ビジ
習用テープ、視
び、職場での会話がで
はじめとする成人外 ネス場面
覚教材、文法テ
きるようになる。
国人。
スト
日本語を初歩から勉強したいと考えているビジネスパーソンを
はじめとする成人を対象にした初級テキスト。文法項目を習得
しながら、その項目がどんな状況・場面で使われているのか
が理解できるようにしてある。(学習時間300時間)全46課
1987
日米会
話学院
場面シラバス・
機能シラバス
全20課で
120時間を
目安として 目的、本文会話、語句の使い方、
いる。(各課
6時間)
日本企業で働く外国
人社員、外国人企業
研修生、日本企業と
関連を持つビジネス
活動をする外国人を
対象。また、一般的
な初級レベルを終え
た程度の力を持って
いる人を対象。
2003
心弦社
場面シラバス
全12課。
日本人、外国人ビジ
社内
ネスパーソン
会話スクリプト
自己紹介、依
頼、社外から
かかってきた 各課ごとに目標が異な 練習冊、英訳・
電話、問い合 る。
語彙冊
わせなどのビ
ジネス場面。
仕事上におけるコミュ
ニケーションを円滑化
すること
価格は練
習冊と語
彙冊を含
めたもの。
「談話型」の設定により画期的な中級会話テキスト。依頼・断
り・あいさつ・電話など、ビジネスパーソンのためのより自然で
よりコミュにカティブな話し方を、さまざまな方向からアプロー
チしている。
BJTビジネス日本語能力テスト530点以上を目指す学習者向
け。日本企業で使われる生きたビジネス日本語を学ぶための
テキスト。
ビジネス日本語教材一覧 4/7ページ
No.
教材名
執筆者
出版年
出版元
2004
ひつじ書
房
シラバス構成
課数
時間数
課構成
対象者
特に明記されていな
いが、大学・短大用
日常場面・
テキストに使用できる
ビジネス場面
ように作成されてい
る。
8課
3つのユニットとまとめ
例:
①命令を受けるときのポイント
②復唱は大切に
③複数の命令を受けたとき
・中級以上
問題解決能力を身につ
・仕事で日本語を必
ビジネス場面 けながら日本語を上達
要とする人、あるい
させる。
は将来必要とする人
全4課
Ⅰ.名詞系 Ⅱ.動詞系 Ⅲ.形容詞系 Ⅳ.数量詞系
中国語を学んでいる
人
100例
・アポイント
・訪問
・参観
・プレゼンテーションなどの例が100例
ビジネス日本語を学
ビジネス場面
ぶ人
26
『日本語を話すトレーニング』
27
『日本でビジネス』
堀内みね子、
足高千恵子
1989
専門教
育出版
28
『ビジネス中国語基本単語350』
田中則明
2005
心弦社
29
『ビジネス日本語会話 商談・取引
田中則明
編』
2006
心弦社
30
『ビジネス日本語慣用表現 200
+50』
田中則明
2005
心弦社
慣用表現の壁にぶつ
教訓を含まない慣用表現200と教訓を含む慣用表
かっている中・上級
現50
学習者
31
『ビジネス日本語基本単語360』
田中則明
2005
心弦社
Ⅰ.名詞系 Ⅱ.動詞系 Ⅲ.形容詞系 Ⅳ.数量詞系
32
『ビジネス日本語速修コース』
清ルミ
1994
アルク
場面
構造シラバス、
場面シラバス、
話題シラバス
到達目標
全15課から構成。(1)問い合わせをする ①ファミ
リーレストランのアルバイト情報について調べる
②理容室に営業時間を問い合わせる ③レストラ
ンでウェディングパーティーについて問い合わせ
る・・・ のように課の中で場面がさらに小区分され
ている。
野田尚史・森
田稔
場面
想定場面
職種・業種
全6課を40
Dialogue, Grammar Notes, Expression Notes,
時間で学習
Units, Review, Listening Review. Japan Japan,
することが
Total Review
目安。
電話番号を聞
く、道を尋ねる
などの生活場
面。
備考
日本語を書くト
CD付き
レーニング
要旨
大学や短大などで「日本語表現法」や「音声表現法」のテキス
トと使用できるように作成されている。全15課から構成され、
CD付き。特にビジネス場面だけを重点に取り扱った教材では
ない。
中級以上の日本語力を持ち、仕事で日本語を必要とするビジ
ネスパーソン、あるいは、将来必要とする外国人学生を対象と
して、日本におけるビジネスマナーと表現を習得させることを
目的としている。
CD
日本語初級者∼上
級者
初級学習者で日本語
を勉強したいがなか
なか時間がない
人々。短期滞在者や
サバイバルレベルの
日本語を短時間で学
びたいという学習者
に適している。
関連教材
―
ビジネス中国語を学ぶ人を対象にしたテキスト。
―
アポイントからクレームまで、様々な商談場面における売り手
と買い手の対話の100例を収録。生きたビジネス日本語会話
と日本流ビジネスが同時に学べる。
CD
BJTビジネス日本語能力テスト受験者向け。ビジネス日本語
の言い回し、慣用句、諺、俗語、四字熟語などの慣用表現を
学ぶためのテキスト。
CD
ビジネス日本語の中でも基本的な単語を学ぶためのテキス
ト。英訳、中国語訳付き。
テープ
最低限の時間で最大限の効果的学習をしたい多忙なビジネ
スパーソンのための本。40時間の学習を目標に、実用的で適
切なコミュニケーションが身につくことを最優先にしている。
ビジネス日本語教材一覧 5/7ページ
No.
教材名
執筆者
33
『ビジネス日本語テキスト①
内定者編』
日本語映像
教育社
34
『ビジネス日本語テキスト②
新入社員編』
日本語映像
教育社
35
『ビジネスマナー基礎実習 新版』
早稲田教育出
版 編集部
出版年
出版元
シラバス構成
課構成
対象者
想定場面
職種・業種
到達目標
関連教材
備考
要旨
日本語学習者にとって障壁となっているビジネス日本語をはじ
め、ビジネスマナー、日本独特の考え方、習慣等を分かりや
すく表現することで、ビジネス現場ですぐ役立つ会話を身につ
けてもらい、即戦力として活躍できる人材を育成することを基
本コンセプトとしている。
日本語学習者にとって障壁となっているビジネス日本語をはじ
め、ビジネスマナー、日本独特の考え方、習慣等を分かりや
すく表現することで、ビジネス現場ですぐ役立つ会話を身につ
けてもらい、即戦力として活躍できる人材を育成することを基
本コンセプトとしている。
2004
日本映
像教育
マナー
社(凡人
社発売)
例:第1課
①自己紹介
全5課 各
②服装とエチケット
課、映像教
③挨拶とお辞儀
材の時間数
④基本的なビジネスマナー
は異なる
⑤指示命令の受け方 漢字一覧
練習問題:マナーの問題、漢字の問題
中・上級(日本語能
力試験2級程度)の
学習者
ビジネス場面
(内定者)を想
定
DVD
¥102,900
映像教材
「映像で学
ぶビジネ
ス日本語」
の副教
材。
2004
日本映
像教育
マナー
社(凡人
社発売)
例:第6課
全5課 各
①電話応対の基本
課、映像教
②電話の受け方
材の時間数
③電話を取り次ぐ 漢字の一覧
は異なる
練習問題:マナーの問題、漢字の問題
中・上級(日本語能
力試験2級程度)の
学習者
ビジネス場面
(新入社員)を
想定
DVD
¥102,900
映像教材
「映像で学
ぶビジネ
ス日本語」
の副教
材。
早稲田
教育
出版
大学の講義
用に作られ
ているため、
明記されて
いない。
①声を出してみよう
②指示の受け方・報告の仕方
③言葉遣い
④電話対応
⑤受付と訪問
⑥ビジネス文書
各課、[基礎問題]、[応用問題]、[ロールプレイン
グ]に分かれている。
大学生
最低限のビジネスマ
ビジネス場面
ナーを身につける。
大学の講義
用に作られ
ているため、
明記されて
いない。
①声を出してみよう
②指示の受け方・報告の仕方
③言葉遣い
④電話対応
⑤受付と訪問
⑥ビジネス文書
各課、[基礎問題]、[応用問題]、[ロールプレイン
グ]に分かれている。
大学生
ビジネス場面
日本語−英語、
英語−日本語、
言い回し便利帳
ビジネスパーソン
金融、製造、
営業など
2005
36
『ビジネスマナー基礎実習新版
講義用指導書』
早稲田教育出
版 編集部
2005
早稲田
教育
出版
37
『ビジネス用語集』
KIT教材開発
グループ
1993
凡人社
38
『フレッシュマンと外国人のための
日本語の達人 仕事上の会話』
田中則明
2000
アポヤン 場面別
ド
社内/社外別
『マナーの基本と就職対策』
気賀沢よし子・
小泉淑美・
清 凉子・
高橋陽子・
土田万里子
共著
39
課数
時間数
2005
専門教
育出版
語彙集
マナー
―
12課
(20回/120
分)
全14章
・日本人フレッシュマ
初対面、上司との会話、同僚との会話、部下との
ン
営業場面、
会話、電話、打合せ、会議、商談、プレゼン、アテ
・日本企業に就職し 内勤場面
ンド、挨拶、慶弔
ている外国人
①エチケット・マナー ②態度とお辞儀 ③話し方・
聞き方 ④敬語 ⑤電話対応のマナー ⑥手紙・
葉書の書き方 ⑦他社訪問・来客者との接し方
⑧自己分析で始まる就職活動 ⑨自己PRと志望
動機 ⑩就職活動の流れ ⑪提出書類の作成上
の注意 ⑫応募企業への接し方 ⑬面接 ⑭就職
試験対策問題
例:第一章→ *エチケット・マナーとは *マナーを
守る効用 *基本は挨拶と返事 (1)挨拶 (2)返事
*練習問題
専門学校で学ぶ学生
(専門学校でマナーを
教えている先生が作
成したため)
就職活動
講義用指導書
学生たちが新社会人として働く際に、身につけていないと困る
ビシネスマナー。本書は、ビジネスマナーの中でも最も基本的
な事柄に絞り、短期間で体得できるよう、ロールプレイング形
式で学べる実習教材。また、巻末の常識資料集は必要最低
限のマナーを、イラストを使いわかりやすく解説。勉強したこと
が検定合格につながるよう、検定問題を収録。
最低限のビジネスマ
ナーを身につける。
ビジネスマナー
基礎実習新版
『ビジネスマナー基礎実習』の教師用指導書。イラストが豊富
になっており、学生が理解しやすいように工夫されている。5∼
6時間で指導できる。
中級
ビジネス情報の
見方・読み方
ビジネスで用いられる約2500語を集め英訳をつけ、さらに英
語から日本語も探せるよう編集。ローマ字で読み方も提示。
中∼上級
―
―
仕事上のコミュニケーションの円滑化を目的に場面別に構
成。「言い換え方式」を採用し、1つの例文に対しスピーチレベ
ルの異なる複数の置き換え可能な文を列挙。
本書は大きく2編に分けられている。第1編は社会人として必
要なマナーだけではなく、既に組織の一員として活躍されてい
る方との接し方、失礼のない態度を学べるよう構成されてい
る。第2編は、卒業後の人生設計の立て方、企業に就職する
ことを前提とした就職活動がメインとなっている。
ビジネス日本語教材一覧 6/7ページ
No.
40
41
42
43
44
45
教材名
『Business Kanji :Over 1,700
Essential Business Terms in
Japanese』
『JAPANESE FOR BUSY
PEOPLEⅠ』
『JAPANESE FOR BUSY
PEOPLEⅡ』
『Japenese for CIRs』
『TALKING BUSINESS IN
JAPANESE』
『Writing Business Letters in
Japanese』
執筆者
Reiko Suzuki・
Are Hajikano・
Sayuri Kataoka
AJALT
AJALT
友松悦子・宮
本淳他
ビジネス日本
語フォーラム
Keisuke
Maruyama
出版年
出版元
シラバス構成
全50課
SECTION 1
と SECTION
2に分かれ
ている。
課構成
対象者
想定場面
職種・業種
SECTION 1:経済記事の中に出てくる漢字で使用
頻度が高く、最も重要な語彙を文法的な機能や意
味の関連するものに分けてまとめてある。
初級(300時間)を終 経済新聞を読
SECTION 2:漢字語彙を増やすために漢字別に
了した学習が対象
む
語彙を集めた「総漢字表」、読めない漢字を調べ
るための「部分・部首索引」、漢字を音読み、訓読
みで探せるようにした「音訓検索」からなっている。
到達目標
関連教材
備考
要旨
日本の企業と経済新聞と雑誌で多用される1,700以上の漢
字を収録。日本語と英語で書かれて、日本語レベルが初級の
学生を設定。エクササイズを読むことと同様に日本語文法の
授業を提供している。英語訳つきなので、欧米系学習者向き。
漢字の意味が全て書かれているので、辞書代わりにもなる。
1999
Tuttle
1994
講談社
インター
構造シラバス
ナショナ
ル
全30課。50 会話スクリプト、GRAMMAR&LESSON
∼60時間を OBJECTIVE、NOTES,PRACTICE、EXERCISES、
想定。
SHORT DIALOGUES、QUIZ
すぐに日本語を使う
必要に迫られなが
ら、日本語学習に十
分な時間を費やすこ
とができない人々。
・生活に最低
限必要な場面
への対応。例:
買い物、レスト
ランでの注
文、交通機関
の利用など
ワークブック・
・サバイバルのための
かなワークブッ
日本語能力。・自分か
ク・カセットテー
ら話、状況に対応する
プ・CD・教師用
力。
指導書
すぐに日本語を使う必要に追われながら、日本語学習に十分
な時間を費やすことができない人々のためのテキスト。初級
向け。
1990
講談社
インター
構造シラバス
ナショナ
ル
すぐに日本語を使う
全40課。100
必要に迫られなが
会話スクリプト、GRAMMAR、NOTES,PRACTICE、
∼120時間
ら、日本語学習に十
EXERCISES、SHORT DIALOGUES、QUIZ
を想定。
分な時間を費やすこ
とができない人々。
・日常的な場
面、話題への
対応。例:忘れ
物の届け出、
スポーツクラブ
の入会手続
き、仕事の面
接など。
・ひと通りのコミュニ
ケーションができる日
本語能力。・日常的な
話題について、聞いて
理解し、話す力。
すぐに日本語を使う必要に追われながら、日本語学習に十分
な時間を費やすことができない人々のためのテキスト。初中
級向け。
2003
財団法
人 自治
場面シラバス
体国際
化協会
全22課。
The
Japan
Times
外国人ビジネスパー
全20課。1課
ソン。特に日常の会
につき6時
話には困らないが、
課の目的、留意事項、フローチャート、会話、重要
間、20課で
特に日本のビジネス
表現、語彙/表現
120時間を
場面での会話の流れ
想定。
や表現を勉強したい
学習者向け。
1991
1999
The
Japan
Times
技能シラバス
課数
時間数
場面シラバス
技能シラバス
全20課
①Key conversation
②Follow-up Conversation
③Cuntural Hints
④For Your Information
⑤Reference
⑥Grammatical Notes
CIRに選ばれた人
各課、3∼8例ほどの文章例が載っている。第一文
は、本書のストーリーに沿った文書。第二文は、第
日本語上級者の外
一文とは状況や内容は異なるが同じ目的・同じ文
国人ビジネスパーソ
章構成を持つ文書で第一文の応用となっている。
ン。
3番目以降は、その課のビジネス段階でやり取りさ
れるその他の文書。
―
ワークブック・
かなワークブッ
ク・カセットテー
プ・CD・教師用
指導書
職場、国際交
流場面、CIRで 職場で必要とされる日
CD
来日した外国 本語を身につける
人
名刺を作る、
日本着任の挨
拶、アポイント
を取るなどの
ビジネス場
面。
アメリカのイン
テリア・家具製
造販売会社が
日本の専門商
社と販売契約
を結ぶというス
トーリーを設定
している。
CIRで来日した外国人を対象にしたテキスト。職場で使われる
日本語のほか、日本の役所の雰囲気が出るように作られてい
る。テキストが能力試験2級レベルになっている。
カセットテープ
―
―
日本人ビ
ジネス
パーソン
が会話文
を執筆。
会話の流
れに重点
を置いた
学習内
容。
外国人ビジネスパーソンを対象にした上級者向きビジネス日
本語学習書。アポイントの取り方から交渉成立まで、ビジネス
の一連の動きに沿って、ビジネス日本語の即戦力が身につ
く。
紹介・依頼・確認・クレームなどの対外文書から、稟議書や議
事録などの社内文書、あいさつ状や礼状まで、ビジネスですぐ
に使える約100文例を収録。文例は販売提携の交渉というス
トーリーに沿って提示。また、文書本文や各文書の留意事項
は現役のビジネスマンが執筆。ビジネスの流れに則した実践
的な文書の書き方が分かる。英訳付き。
ビジネス日本語教材一覧 7/7ページ
文献調査:その他関連文献
No.
執筆者
出版年
論文名
書籍名
出版元
要旨
1
ウォン宮副裕子
1994
習得の場としての接触場面について
−日本における夏季語学/企業研修報告結 『日本・教育ニュース』6, pp.110-119.
果からの一考察−
香港理工学院の日本での日本語研修をもとに、研修についての評価、評価後の自己の日本語能力の評価、また、
香港日本・教育研
研修期間中に遭遇した接触場面と問題点とその解決への試み、学生の学習の方法、学習の動機と自律についての
究会
論文。
2
大橋憲司
2003
「Interview 対象別日本語教育から目的別
日本語教育へ--アイポック社インド人IT技 『アジャルト』 26, pp.38-40.
術者への日本語教育」
IT技術と日本語力を持つインド人技術者を日本へ派遣しているアイポック社社長へのインタビュー。派遣する技術者
国際日本語普及協
の日本語力は能力試験2∼3級のコミュニケーション能力。育成には、全く日本語が分からないインド人技術者に1日
会
6時間の講義、聴解を1日4時間を4ヶ月、更に2ヶ月IT基礎知識の日本語での再学習を行う。
3
蒲谷宏
2003
「待遇コミュニケーション教育の構想」
『講座日本語教育』
39, pp.1-28.
早稲田大学日本語 敬語教育・待遇表現教育という考え方からさらに発展させた「待遇コミュニケーション教育」を提唱し、そのあり方、方
教育センター
法論について述べたもの。
4
鎌田勝
諸星龍
芳賀綏
高橋達男
守谷雄司
鶴巻敏夫
米澤信二
武田文男
1975
「'75新入社員の人生知識
最新号」
『社会教育』 179
国土社
日本で日本語を使用して働く上級レベルの外国人社員の仕事上の阻害要因を言語面と心理面から考察。その結
果、外国人社員がもっとも難しいとするものが「意見を述べる」、次いで「意見を聞く」であることが分かった。しかしな
がら、困難点の根底には「疲れる」、「いらいら」、「はっきり言え」など日本人の伝達方法が関係していることが見え
た。そのほかに、「談笑する」のも難しい項目のひとつとして挙げられており、これはスピーチレベルの設定が原因で
あった。
神戸学院大学
中国の労働市場概略・対中ビジネスに必要な人材・日本への留学・留学生の就職・日本語/中国語教育について記
述。日系企業は欧米企業に比べ賃金が低いといわれる中で、営業職には高い報酬を与えていたり、採用には協調性
を挙げる等、日系企業のニーズが読み取れる。
中国における日本語人材獲得の競争の激化の現状レポート。日系企業3社、米国系企業1社、台湾企業1社へのイン
タビュー、中国の大学生の就職事情、中国における人事戦略のポイントの記述もある。
新入社員の社会人としての心構え、挨拶の仕方、電話のかけ方、人間関係をよくするためのことば、命令の受け方と
報告の仕方、付き合い、責任感とは・・・などが書かれている。
5
清ルミ
1998
「外国人社員と日本人社員
『異文化コミュニケーション研究』10, pp.57- 異文化コミュニ
ケーション研究所
−日本語によるコミュニケーションを阻むも
73.
の−」
(神田外語大学)
6
北原恵
2005
「日中間ビジネスにおける中国語・日本語
『神戸学院経済学論集』6(3/4), pp.37-80.
人材の育成 」
7
九門崇
2005
「逼迫する日本語人材」
『ジェトロセンサー』 55(656), pp7-19.
日本貿易振興機構
8
佐々木ひとみ
水野治久
2000
「外国人研修生の異文化適応に関する縦
断的分析」
『日本語国際センター紀要』10, pp.1-16.
国際交流基金日本 国際交流基金日本語国際センターの平成10年度海外日本語教師長期研修プログラムに参加した外国人研修生の
語国際センター
異文化適応の実態を調査、考察。
チョン
エケイ
仲曄慶
1993
「日中合弁企業の人材育成システムに関す
『経営行動科学 』 8(1), pp55-62.
る調査」
10
中川忠夫
1974
「システムのなかの企業システム」
11
永尾正章
1994
12
西尾珪子
1994
9
経営行動科学学会
中国北京・上海の合弁企業8社(製造業5社、サービス業3社)にアンケートを行い、日本的人材育成システムの中国
での適用可能性を始め、合弁企業の人材育成上の問題を考察している。中国の合弁企業では、日本企業の人材育
成システムのうち、教育訓練システムのみを取り入れているが、教育訓練を受けた現地従業員の自発的離職が問題
として挙げられている。
『情報科学』10(12)
情報科学研究所
企業システムの中の開言語と閉言語についての基本的な説明がある。企業は仲間コトバ(閉言語)によって成り立
ち、企業システムは論理構造であるが、企業システムの重要な一部である人間は非論理的存在であることを忘れが
ちであることを指摘している。
「国際ビジネス・コミュニケーション」
『日本語学』 13(12), pp.46-53.
明治書院
国際部ビジネスの変貌、言葉による障害、日本人の英語、日本語とジャパノロジー、ビジネス日本語、コミュニケー
ションの手段としての日本語の国際化の課題などが述べられている。
「ビジネス・コミュニケーションと日本語教
育」
『日本語学』 13(12), pp.9-13.
明治書院
ビジネスコミュニケーションと日本語教育との関わりの推移、今後の展望が述べられている。
文献調査:その他 1/3ページ
13
水谷修
1994
「ビジネス日本語を考える−公的話ことばを
『日本語学』 13(12), pp.14-20.
求めて−」
14
水谷信子
1987
「ビジネスの場面で敬語を使いこなす」
15
三橋英之
柳生譲治
富岡修
2004
16
宮崎里司
17
栁田純子
明治書院
日本語使用の公共的な場の一例としてのビジネス日本語の考察。
アルク
ビジネスにおける、「感じのよい人」という印象を与えるために話し方の3原則を提示し、その上で「日本語が上手に話
せる」「敬語が正しく使える」ことを基本に「初対面の挨拶」「再開したとき」「電話」「話し合い」などの場面を紹介してい
る。日本人がどんな態度の人を好むかなどの知識も、基礎的ではあるがそれぞれの場面において紹介されている。
「謝罪、要求、説得――仕事に効く「読む、
書く、話す」の新常識 あなたの日本語、ホ 『日経ビジネスassocie』3(15), pp.30-32.
ントに大丈夫?仕事に効くコトバの新常識」
日経BP
日本人社会人に対する日本語のスキルの重要性を指摘している。上司や顧客にいかに真意を伝え、納得を得、相手
を動かす点がまとめてある。人を動かすメール術、謝罪に必要な文体、交渉時の歩み寄りの表現技術などが具体的
にまとめてある。
2001
「外国人力士の日本語習得と学習ストラテ
『講座日本語教育』37, pp.71-83.
ジー:社会的ストラテジーを中心として」
早稲田大
学日本語
教育セン
ター
外国人力士の日本語習得過程を、社会的ストラテジーを中心に検証した研究。一般の日本語学習者とは異なる力士
特有の学習行動が、彼らの日本語習得に大きく影響している。日本人・日本文化との様々な接触場面で周囲のリ
ソースを有効に利用して自然習得を行っている。これらの研究成果を一般の日本語教育にどのように応用すべきか
の考察。
2002
「日中合弁企業における現地中間管理職人 『東京情報大学研究論集』6(2), pp.183−
東京情報大学
材の育成」
197.
上海、上海近郊、杭州市の日系企業に勤務する現地人中間管理職17名に行ったアンケート結果。現在までのキャリ
ア形成過程で学んだ・感じたことをはじめとする3項目の質問。日系企業が求める高品質、職場全体の中での自分の
仕事の位置づけ等の回答が詳細に記述されている。
異文化コミュニ
ケーション学会
外国人留学生が日本企業へ就職する前に、職業的自己概念をどのように形成するかについて考察。研究の目的
は、元外国人留学生が在日企業に就職して1年の間に、どのようにキャリアを形成していくのか、主に「期待する自己
イメージ」と「現実の自己」との差に焦点を当て組織社会化の過程を探求。考察の結果、入社時点での「期待するイ
メージ」と「現実の自己」との同化、新入社員研修による「氷解」は被験者全員の共通点であった。その後は、与えら
れた職務、配属先などの組織によってそれぞれ異なった変容が見られた。
『日本語ジャーナル』2(12)
18
横須賀柳子
2006
「元外国人留学生の入職期における組織社 『Journal of Interncultural
会化の変容過程」
Communication』 9, pp.155-171.
19
横須賀柳子
2005
「外国人留学生の職業的自己概念形成に
関する一考察」
『Journal of Interncultural
Communication』 8, pp.239-252.
異文化コミュニ
ケーション学会
異文化間移動を経験する外国人留学生による日本での就職活動の実態を微視的に考察し、活動前後の時間経過
の中で、彼らが職業的自己概念をいかに形成したか、またその要因を調査。被験者4名の共通した要因を分析したと
ころ、1)自己イメージ、2)自己分析力、3)自己効力、4)コミュニケーション能力、5)メンター・サポーター・モデル、の5点
が職業的自己概念形成に結びついていた。
20
横須賀柳子
2004
「外国人留学生の就職に関する日本企業
のニーズ」
『国士舘大学教養論集』56, pp.43-67.
国士舘大学
国士舘大学を一事例とし、留学生の現状把握、企業ニーズに関する調査結果を分析。その結果、以下のような課題
が見えてきた。まず、留学生の課題として①日本語力、日本語社会文化知識、コミュニケーション向上 ②専門的知
識・技術の向上 ③外国人としての特性の向上 ④日本的な雇用慣習の理解とそれに適合したキャリア・パスの形成
⑤採用機会への積極的なアプローチ 一方、大学側の課題としては、①日本語力、コミュニケーション能力の教育 ②実
用性のある専門・技術教育 ③キャリア教育 ④求人企業の開拓 ⑤留学生への情報提供、である。
21
吉原英樹
星野裕志
2002
「総合商社―日本人が日本語で経営―」
『国民経済雑誌』187(3), pp.19-34.
神戸大学経済経営 海外多国籍企業と日本の多国籍企業(例:総合商社)の対比。日本企業の特徴として日本人が日本語を使って経営
学会
活動を行う点があげられる。様々な商社での例や商社へのインタビューがまとめられている。
22
若松 勇
2006
「日本語人材の不足 高まる需要に供給が
追いつかず」
『ジェトロセンサー』 56(671),pp.18-19.
日本貿易振興機構
23
脇田里子・
越智洋司
2003
「日本語教育におけるビジュアル表現の一 『教育システム情報学会研究報告』18(4),
考察」
pp.3-4.
日本語中級レベルの学習者を対象に、文章表現文書(レポートや報告書のような読んで理解する文書)からビジュア
教育システム情報
ル表現文書(業務マニュアルや設計図のような見て理解する文書)を作成する上で、有効なビジュアル化要素の考
学会
察。
24
Dang Jessie
2002
「多言語職場における日本語インターアク
ションに関して ―オフィスコミュニケーショ
『日本学刊』 6, pp.113-118.
ンにおける香港人と日本人の誤解の事例
―」
香港日本語
教育研究会
香港の日系企業で収集した電話のやりとりを含めた会話、E-mailおよび観察データから、「日本語の誤用による誤
解」と「日本企業と香港企業の習慣の違い」を分析。誤用例として、促音、終助詞、敬語の使用があった。習慣の違い
では、電話の取り方、贈り物の仕方、部下の結婚式の参加が例として挙げられていた。
25
Ho Chi Kin, Kelvin
2003
「上級日本語学習者の葛藤∼日本語学習
『日本学刊』 7, pp.131-132.
および人生の再スタート」
香港日本語
教育研究会
香港人日本語学習者の書いたショートエッセイ。日本語を使用して職場で働くが故に、日本人社員とローカルスタッフ
の板挟みになってしまい、それが原因で「日本」や「日本語」を敬遠するようになってしまう。しかしながら、大学院で進
んだコースで「お互いを理解し合うこと」という最も大切なコミュニケーションの意味を忘れていた自分に気がつく。
アジア進出日系企業の間で日本語人材の需要は高まっているが、供給できる日本語人材が少なく、慢性的な不足状
況が続く。
文献調査:その他 2/3ページ
26
Lau, Gavin
2002
「香港日系企業で働く日本人駐在員、現地
採用日本人職員の総合的な(言語・社会文
『日本学刊』 6, pp.137-139.
化・ビジネス)能力およびホスト社会に溶け
込む程度について」
香港日本語
教育研究会
香港の日系企業で働く日本人駐在員と現地採用に日本人職員のホスト社会(香港)への溶け込み具合を比較。その
結果、日本人駐在員は香港で使用される英語、広東語、北京語が話せないため、異文化参加をなるべく回避し、香
港にいながら日本料理店や日系スーパーを利用するなど、母文化(日本文化)に身を置いておきたい傾向が強いこと
が分かった。一方、現地採用の職員は日系スーパーや日本料理屋の利用は少なく、現地のスーパーやレストランを
利用していることがわかった。
27
Man, Danny
2003
「営業マンはつらいよ!日系企業の香港社
『日本学刊』 7, pp.115-117.
員が語るインターアクション問題」
香港日本語
教育研究会
香港の日系企業で営業社員をしている日本語非母語話者が書いた研究ノート。日本語が上手になればなるほど、非
母語話者は母語話者からより高いレベルの「日本式ビジネスマナー」が求められると指摘。その中でも特に敬語は日
本ビジネス社会での重要度が高く非母語話者にとっては最大の難点であるとしている。
文献調査協力者:
特定非営利活動法人 日本語教育研究所
主任研究員 武田聡子
研究員 青山未来
内桶正子
黒岩幸子
黒沢美保
後藤倫子
玉津マリタ
徳島陽子
西上鈴江
野田百合子
藤本かおる
本間壽子
前坊香菜子
山下直美
(敬称略)
文献調査:その他 3/3ページ