論題:インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究 A

インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
修士学位申請論文
論題:インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
A Basic Study on a Design of the Comparison Index of Internet Auctions
青山学院大学 氏田伸吉
目次:
第1章
:研究の概要 .................................................................................................................. 3
1.1.
研究の動機 ......................................................................................................................... 3
1.2.
研究の対象 ......................................................................................................................... 3
1.3.
研究の目的 ......................................................................................................................... 4
1.4.
研究の方法 ......................................................................................................................... 4
1.4.1.
第1章
研究の概要.................................................................................................... 4
1.4.2.
第2章
インターネットオークションの問題点の整理................................................ 4
1.4.3.
第3章
比較指標の試作と検証................................................................................... 4
1.4.4.
第4章
結論............................................................................................................... 4
第2章
2.1.
インターネットオークションの問題点の整理 ................................................................. 5
インターネットオークションの登場................................................................................... 5
2.1.1.
従来のオークションの概念.......................................................................................... 5
2.1.2.
インターネット技術の普及とオークションへの影響 ................................................... 6
2.1.3.
インターネットオークションの登場............................................................................ 8
2.1.4.
用語法 ....................................................................................................................... 11
2.2.
インターネットオークション取引の分析.......................................................................... 11
2.2.1.
インターネットオークション取引の一般的な流れ..................................................... 11
2.2.2.
電子商取引の一形態としての位置付け ...................................................................... 13
2.2.3.
BBS 取引との比較..................................................................................................... 14
2.2.4.
eBay の歴史からみる改善の変遷............................................................................... 15
2.2.5.
学術的考察の欠如...................................................................................................... 16
2.3.
インターネットオークションにおける問題点................................................................... 16
2.3.1.
現実社会と情報空間の乖離........................................................................................ 16
2.3.2.
インターネットを利用した機能が個別に導入されている点....................................... 18
2.3.3.
インターネットオークションを支える構造 ............................................................... 20
第3章
3.1.
比較指標の試作と検証 .................................................................................................. 22
比較指標の利便性............................................................................................................. 22
-1-
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
3.2.
比較指標の設定 ................................................................................................................ 22
3.2.1.
インターネットオークション取引の流れの洗い出し ................................................. 22
3.2.2.
機能項目の作成 ......................................................................................................... 24
3.2.3.
ダミー変数を用いたモデル化 .................................................................................... 25
3.2.4.
調査対象の選出 ......................................................................................................... 26
3.2.5.
比較指標の設定 ......................................................................................................... 27
3.2.6.
比較指標の数値化...................................................................................................... 28
3.3.
比較指標の検証 ................................................................................................................ 29
3.3.1.
検証の概要 ................................................................................................................ 29
3.3.2.
分析データの作成...................................................................................................... 30
3.3.3.
定量化データの分析 .................................................................................................. 30
3.3.4.
分析結果及びその解釈............................................................................................... 31
3.3.5.
分析結果の検証 ......................................................................................................... 32
3.4.
第4章
まとめ .............................................................................................................................. 39
結論 .............................................................................................................................. 39
4.1.
本論文における結論 ......................................................................................................... 39
4.2.
展望と課題 ....................................................................................................................... 39
謝辞................................................................................................................................................ 40
参考文献......................................................................................................................................... 40
図表一覧......................................................................................................................................... 42
付録................................................................................................................................................ 42
-2-
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
第1章 :研究の概要
本章では、この研究の動機、対象、目的、方法を述べる。
1.1.
研究の動機
現在、インターネットは急速に普及し、一般的に利用されるインフラストラクチャーとして定着し
た。利用者数の増加に伴って、インターネット上では多くの電子商取引サービスや情報サービスがビ
ジネスとして提供されるようになった。このインターネットを利用したビジネスはまだ黎明期の域を
出ておらず、そのため誰にでもそのビジネスの性格を分析できるというものではない。困難である理
由として、インターネットオークションの概念そのものがまだはっきりとは定まっていないこと、イ
ンターネットそのものがまだ発展段階にあることなどが挙げられる。また、黎明期であるが故、ビジ
ネスモデルの変化のサイクルが非常に早い。その環境の変化への迅速な対応が経営上重要であること
は言うまでもなく、利用が容易な比較指標を用いることができれば、自身のサービスのポジションを
把握し、環境の変化への迅速な対応が容易になる。また、新しいビジネスを始める場合や、投資を検
討するための重要な手がかりとなり得る。
変化が激しく、浮き沈みのサイクルも非常に早いインターネットビジネスにおいて、着実に発展・
普及しているサービスとしてインターネット上のオークションサービス(以下、インターネットオー
クション)がある。また、インターネットオークションはインターネットの持つ特徴をうまく取り込
んでいると考えられ、直感的に、将来のインターネットビジネスの試金石となり得る可能性を持って
いると考えられる。
以上に挙げた問題意識が本研究を始めるための動機となっている。
1.2.
研究の対象
本研究が対象とするのは、インターネット上のオークションサービスである。数多く存在するイン
ターネットビジネスの中でインターネットオークションを対象とした理由としては、以下の項目が上
げられる。
・ オークション自体はインターネット登場以前から存在するサービスであること
・ インターネット上で展開することでサービスが非常に活発化し、成功を収めているモデルであ
ること
・ インターネットの持つ特徴がうまく活用されていること
・ 未だ黎明期の域を出ない分野であること
・ 複数のサービスが存在するが、それぞれに異なる特徴を持っていること
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
1.3.
研究の目的
本研究の目的は、インターネットオークションの比較指標作成のための問題点の整理・分類を行う
ことである。本来ならば、インターネットオークションの像を明確にするための比較指標を定めたい
のであるが、それ以前に多くの整理すべき問題点があるため、本研究ではまず、問題点を整理してそ
れぞれを明確に分類し、その結果を持って、指標設計への道筋を示すことを目的とする。また、本論
文の第 3 章においては、本論文で主張する考えに基づいて比較指標を試作し、その検証を行うこと
で今後への改善の材料とする。
1.4.
研究の方法
基礎調査からオークション指標の試作までの流れを述べる
本研究の方法を、本論文の章立てと共に以下に述べる。
1.4.1. 第 1 章
研究の概要
研究の動機、対象、目的、方法について述べる。本章。
1.4.2. 第 2 章
インターネットオークションの問題点の整理
従来のオークションモデルの調査、インターネットオークションの登場の過程、インターネットオ
ークションの分析、インターネットオークションの問題点の整理を行う。
1.4.3. 第 3 章
比較指標の試作と検証
第 2 章の結果を元に比較指標を実際に試作し検証する。この試作検証を通じて、本研究の有用性
を示す。また、今後への改善のための材料とすることで、比較指標設計への道筋の提示とする。
1.4.4. 第 4 章
結論
本研究での結論および、今後への課題を述べる。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
第2章 インターネットオークションの問題点の整理
本章では、以下の内容について、既存の文献、過去の論文、実際のサービスなどを調査し、整理し
た。従来のオークションモデルの調査、インターネットオークションの登場の過程、インターネット
オークションの分析、インターネットオークションの問題点の調査・整理を行った。
2.1.
インターネットオークションの登場
2.1.1. 従来のオークションの概念
インターネットの登場以前、オークションという言葉は、サザビーやクリスティといったオー
クション運営会社が、主に高級美術品の売買を行うために利用していた仕組みを指した。そこで
用いられる仕組みは、個人が直接せりにかけるのではなく、主催者が出品物をいったん預かり、
現物の確認を行った上でせり(競売)にかけるものである。運営会社は、落札すると落札者から
代金を受け取る一方、落札品の受渡についての責任を持つ。
従来型のオークションの特徴は、出品者の委託を受けた運営会社が、買い手の決定プロセスだ
けでなく、代金の決済、落札品の受け渡しにまで全ての責任を持つ点である。運営会社では一連
のプロセスの運営に人手が必要となり、物の移動も必要なため、日数もかかる。そのため必要と
なる手数料は高くなり、高額の商品の取引が中心となる。
美術品に関する従来型オークションでは、より商品の価値の信頼性を高めるために、美術品の
鑑定人を雇い、高額の商品の鑑定結果をつけてオークションにかけていた。また、より安全な取
引を行うためにオークションへの参加資格を設けて入札可能者の選別も行っていた。これらの目
的は、コストと時間が必要なオークション開催の回数をそのままにして、より効率的な運用を行
い、利益率を高めるためであった。
オークションにはさまざまな取引形態があり、またその分類方法も多様である。経済学で一般
的に言われるのに次の 4 つの形態である。(参考文献1、2、3、4、5)
1)英国型(English)オークション・・・複数の買い手が参加して、最後の一人の入札者が残
るまで競り上げていく。オークション終了時にもっとも高い Bid を提示していた者が落札
者となり、Bid された金額での取引の権利を得る。もっとも一般的な形態で、娯楽性が高い。
2)オランダ型(Dutch)オークション・・・英国型とはまったく逆に、かなりの高額からオー
クションを開始し、オークション管理側が、徐々に金額を下げていき、入札者の一人が物件
獲得の声を上げるまで価格を下げていく。声を掛けたものが、そのときの価格で商品を購入
できる権利を得る。この形態は、落札までの時間が非常に短く、生鮮品などの企業間取引に
用いられることが多い。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
3) 第一価格型・・・英国型やオランダ型とは異なり、Bid は公開されず、指値入札で行われ
(つまり他の入札者からは見えない)、入札者の中で最高の値段をつけた入札者を落札者と
し、提示した Bid 金額で購入できる権利を得る。この形態は、政府機関の受注時によく用
いられる形態である。
4)第二価格型・・・Vickery オークションとも呼ばれる。第一価格型と仕組みはほとんど同じ
で、指値入札で行われ、最も高い金額を提示した入札者が落札者となるが、支払う金額は 2
番目に高い入札で提示された金額に1最小入札単位を加えたもの、というものである。
英国型では、落札者が最後に Bid した金額は、2 番目の入札に 1 最小入札単位を上乗せした
ものであるとも言え、その点では、英国型オークションと第二価格型オークションは同じメ
カニズムであるといえる。
上記の1)2)はオープンオークション、3)4)をクローズドオークションという。3)と
4)の違いについて、第一価格型は、短時間でオークションを完結させることができるという利
点があるが、第一価格型の場合、必ずしも効率的な資源配分が常に行われるわけではない。例え
ば、各買い手が他の買い手の戦略を予測しながら行動したと仮定し、ある買い手が低い Bid で
も勝てる可能性が高いと確信した場合には(低い Bid で勝つほど得られる満足度は高いので)
結果的に自分の購買意欲よりもかなり低い Bid を提示するかもしれない。しかし低い Bid を提
示したために負ける可能性もあり、実際に負けた場合には、仮にその買い手が(結果的に)参加
者の誰よりも購買意欲が高かったにも関わらず負けてしまった、ということも発生し得るわけで
ある。これは、第一価格型のルールから明らかなように、自分の購買意欲(すなわち最大限支払
ってもいいと思う金額)に等しい金額を提示すれば勝つ可能性が最も高くなるにも関わらず、
(負
けた場合には納得できるが)勝った場合その金額で購入することになるため、割高感があるので
ある。したがって、通常は、購買意欲よりも低い金額を提示することになる。一方、第二価格型
であれば、購買意欲に等しい金額を提示するという最適な戦略を採用しても購入金額は二番手の
提示金額プラス 1 最低入札価格である。そのため、他の参加者全員も結果に納得するうえに実
際の勝者の満足度も「(購買意欲)−(実際の購入金額)」分だけ高めることができる第二価格型
の方が、経済的に資源配分の面で効率的である性質があるため、クローズドオークションでは、
第二価格型を用いられることが多くなっているようである
2.1.2. インターネット技術の普及とオークションへの影響
1995年から世界で急速にインターネットとワールドワイドウェブ( WWW)が急速に普及
し、インターネット人口が爆発的な増加をした。2000年8月現在の数値では、日本でも約3
300万人の利用者(日経 BP 社調査、以下参照)が存在し、日本の 15 歳以上の推定人口を1
億829万人とした場合の人口普及率で30%を超したと推定される。(推定人口の数値は、総
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
務庁による 2000 年 8 月 1 日時点での 15 歳以上の推定人口より)
図 2 - 1 日本のインターネット普及率(1 9 9 9 年 7 月∼2 0 0 0 年 8 月調査)
「1 カ月以内にインターネットを使った」という 15 歳以上の比率は 30%を越えた。パソコンからの利用者は前
回を 10 ポイント以上上回る全体の 28.1%だった。インターネットを利用できる環境にあるものの,この 1 カ月
以内には使っていない人が 6.6%おり,これまで一度も利用したことがない人は 62.8%だった。出所:日経 BP
社インターネット視聴率センター『インターネット普及率調査 2000 年秋』
また、これまで標準的な利用方法として見られていたワークステーションやパソコンを経由し
たアクセスに加え、ケーブル TV 網や光ファイバー網、電話回線を用いた DSL などの広帯域(ブ
ロードバンド)アクセス、反対に携帯電話や携帯情報端末といった限られたリソースを利用して
インターネットにアクセスするものまで多様な利用方法が見られるようになった。これらの PC
以外のアクセス方法は一般的な利用法として認知されたとは言い難く、技術的な統一もなされて
いない。価格的にもまだ誰にでも手の届くものだとは言えない。普及進度については、今後の動
向を見守る必要があるが、PC 経由での利用者数との比較でも見過ごせない存在となっている。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
図 2 - 2 インターネットを利用するときに使用した機器(2 0 0 0 年 8 月調査)
インターネットを利用するために使う機器では,依然パソコンが圧倒的に多い。しかし携帯電話・PHS も 19.3%
が利用している。PDA の利用は 5%に満たない。複数回答。出所:日経 BP 社インターネット視聴率センター
『インターネット普及率調査 2000 年秋』
インターネットへのアクセスの多様化は社会へさまざまな影響をもたらした。元々学術レベル
での情報共有を目指して設計されていたインターネット利用が一般に利用されるようになった
ことも社会に与えた影響の一つである。学術レベルでの情報共有であれば、アクセスする人も限
定され、技術的な知識水準も高く維持できるため、それほど機密性や個人特定に力点がおかれて
いなかった。だが、利用者が2000万人を超え、人口普及率が 3 割を超えるようになると、
技術的な知識水準が高くない人々や悪意を持つ者の存在が大きく取り上げられるようになった。
2.1.3. インターネットオークションの登場
前項までで述べた背景から、オークションをインターネット上で開催しようという試みが行わ
れ始めた。
インターネット登場以前や登場の直後(WWW 普及前)には、一部の BBS(電子掲示板サー
ビス)やニュースグループなどを通じて、行われていたが、それはごく一部の参加者と、ごく一
部の商品に限られていた。
インターネット上でのオークション開催の契機は、95 年 5 月に米国で Onsale 社がはじめた
商用サイトと 95 年 9 月にはじめられた米国 eBay 社の商用サイトのサービス開始である。Onsale
社の提供したサービスはいわゆる B2C と呼ばれる形態で、企業の持つ余剰在庫をオークション
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
という仕組みを用いて処分することを目的としたものであった。Onsale 社のサービス企業から
仕入れて消費者に販売するという小売の一形態を取っていた。また、eBay 社は、Onsale 社と
は異なるアプローチでインターネットオークションを展開した。企業と個人間のサービスとして
ではなく、消費者間の取引を志向したのである。(詳細は、本章 2.2.4 に述べる)これは、いわ
ゆる C2C とオ y ばれる形態である。
Onsale 社は 97 年から eBay 社のサイトと同様の C2C 型のサービスにも進出したが、満足で
きる結果が出せないまま 99 年にサービスを閉鎖し、Yahoo!社へ顧客データベース及び同サービ
スに関する営業権を譲渡することになる。
一方、日本でも、99年後半からいくつかのサイトでサービスが提供されはじめた。当初は米
国のようにガレージセール文化がないため、普及が疑問視されたが、それに反して、非常に多数
の取引が行われるようになっている。2000 年 12 月末現在では、60 ものインターネットオーク
ションが存在する。
Y a h o o ! J a p a n 掲 載 オ ー ク シ ョ ン 一 覧 2000 年12月30日現在
カテゴリ:ホーム> ビジネスと経済> 企業 >オークション
1.Yahoo!オークション
2.AUCTION -WANTED Internet Group のサイト。
3.BidParty - オークションのノウハウや用語、掲示板、リンク集等。
4.Ciao! - デジタルプロジェクトが運営するフリーマーケット。
5.cm@uction -サイバーコムが運営。広告スペース専門。
6.COLLE-SERI! コレセリ- @niftyが運営。
7.Crazy Hammerオークション -インターアイランドによるサイト。
8.e-sTate 達人 - イイステートが運営するオークション。ゴルフ用品が中心。
9.EasySeek -ビズシークが運営。ユーザーが欲しい商品を指定し、販売業者が入札
を行う逆オークション。
10.eBay Japan - イーベイジャパンが運営。
11.ecap24 - バーテックスリンクが運営。
12.EcoZa -リサイクル品、鉄道忘れ物品の販売。エコザドットコムが運営。
13.eHammer -オン・ザ・エッヂとイー・マーキュリーによる共同運営。
14.eLady.com - イーレディーが運営。ブランド品。
15.eオークション - プライムリンクが運営。ホテル宿泊券も扱う。
16.e店オークション - ベビー服、子供服が専門。
e店が運営。
17.G-COLLE リアルタイムオークション - 時計が中心。
18.itemon .com - 光陽商事が運営。
19.KAMIWAZA-Auction - コスモプラザが運営。
20.LYCOSオークション - ディー・エヌ・エーが運営。
21.質バーチャルオークション- 複数の質屋が主催。
22.!channel - 電話で入札を行うテレビオークション。ディナックティービーが運営。
23.P-Auction -イーエス・クリエイトが運営。
24.PersonalTrade - ツインバード・ドット・コムが運営。
25.Rakusatsu .com - Blue Skyが運営。
26.Seriya オークション - セリヤによる運営。メーカー在庫を出品。
27.Sitigura.com - 質流れ品。ピーネットドットコムが運営。
28.T-ZONE Real Time Auction - CSK、CSKネットワークシステムズ、T-ZONEによ
る会員制のサイト。
29.TAO - タオが運営。パソコン、周辺機器専門。
30.WebStyle買いもの天国- アールシーワイ・ビジョンが運営。
31.Yhope - ワイホープが運営。
32.アスクルB2Bマート- パソコン、周辺機器等のオークション。
33.イージーバイバイ
図 2-3 Yahoo!
34.オークションJP
35.大阪あきんど質屋オークション - ダッシュが運営。質流れ品を出品。
36.オリエントコーポレーション オリコモール - オリコ加盟店よりパソコンとその周
辺機器を出品。
37.オンセール- パソコン、周辺機器が中心。
38.かいどうらく- 上新電機による販売サイト。
39.コンチェルト
40.質屋通り商店街- ブランド品中心。
41.ジョッキーネット- JRA所属騎手がレースで使用した馬具のオークション。
42.シンコー-開催案内。
43.スポーツ・バザール- シラトリが運営。スポーツサプリメント、インラインス、ス
ケートボード、マウンテンボード等。
44.大黒屋 - チケットが中心。
45.田丸屋 - 横須賀市のロレックス専門店。オークションも開催。
46.チケットオークション@finally -ファイナリィが運営。
47.デジタルプライス- 逆オークション。クリエイティブマッシュルームが運営。
48.東京質屋情報センター -複数の質屋による団体が主催。ブランド品中心。
49.ドラゴンプライス - DRAGONSEEKが提供。
50.なんじゃもんじゃ市場- 日本テレホンが運営。
51.日本プロテック Auction PC市場 -中古パソコン、周辺機器等。
52.ハローグッバイ- ウェブマネーが運営するフリーマーケット。
53.ビッダーズ(2)
54.プライスダウン・ドット・コム-価格が競り下がる消費者主導型のオークション。
55.ブランドオークション- ジャストネットと東京質屋情報センターによる。
56.フリオ - 古物商許可取得の個人売買が可能なオークションサイト。
57.米軍放出オキナワ屋- 沖縄米軍の放出品。
58.楽天フリーマーケット- 楽天市場が運営。
59.わいわいオークション - Hi-HOショッピングアベニューのサービス。
60.ワンビーズ - オークションの開催案内。出品も可能。
J a p a n の該当カテゴリに掲載のサイト数
また、日本国内の取引実績については下記を参照のこと。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
図 2-4
国内の主な総合型オークションサイトとオークション件数(2 0 0 0 年 1 月∼2 月)
国内の消費者向けオークションのうち,比較的広範囲の商品を扱う総合的なサイトを対象にまとめた(パソコ
ンなど特定分野の商品だけを扱っているオークションは除いた)。このうち入札可能なオークション件数が 2000
年初めの時点で 1000 以上であるのは 4 カ所で,大規模オークションサイトはそれほど多くない。オークション
件数で見る限り Yahoo!オークションの独走である。もっとも,件数の多さがオークションサイトの実力のす
べてとは言えない。仮に出品数が同じでも入札期間が長いサイトほど,オークション件数は多くなる。それ以
上に,将来的にはオークション事業による売上高と費用とのバランスが重要である。仮に商品数が少なくても
黒字であれば,事業としては成立するからだ。Copyright(C)2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Right
Reserved.
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
インターネットの普及がオークションに与えた影響は大きく2つ挙げられる。それはオークション
を提供する対象顧客と商品調達の経路のグローバルにした点である。サービスを提供する側としては、
インターネットを用いてサービスを展開することで、コストの増大を押さえながら、より多くの人が
より多くの物に触れることができるようになった。これによって対象顧客を限定することや、商品を
高級品に限らなくとも一般的に利用することが可能になり、オークションという概念を質的に変える
契機となったと言える。
2.1.4. 用語法
以下に、本研究にて使用する言葉について、いくつか示しておく。
l
売り手:オークションでの出品者、Seller
l
買い手:オークションでの入札者、落札者、Buyer
l
B2C:Business To Consumer 企業と消費者間で行われる取引(小文字の b を用いる場
合、中小企業や個人事業主を指す)
2.2.
l
C2C:Consumer To Consumer 消費者同士の間で行われる取引
l
Bid:入札者が自分の希望する価格を提示する行為(入札)
l
競売品:オークションに掛けられる、商品や権利
l
WWW:World Wide Web の略。
l
BBS:電子掲示板。WWW 以前はキャラクターベースのものが用いられていた
l
EC:Electronic Commerce の略語。電子商取引、E-Business とも呼ばれる
インターネットオークション取引の分析
2.2.1. インターネットオークション取引の一般的な流れ
原理的には、オークションとは、買い手と売り手が一同に会して、売り手の提供する商品に対
して、買い手が Bid(入札)し、売り手に対してもっとも魅力的な条件を提示した買い手がその
品物を入手することができるものである。非常にシンプルな仕組みであり、比較的短時間で効率
よく透明性の高い方法で売買を成り立たせることができるマーケットメカニズムであるとも言
える。主な利用方法として、前述した美術品などの高級贅沢品や業者間取引、政府系機関の受注
に際して利用されている。
それに対して、インターネットオークションは、参加者である出品者と入札者の需給をインタ
ーネット上でマッチングさせるサービスである。主に、WWW とメールを用いて実現している。
取引の流れは、大まかに、
(1)ユーザー登録、(2)出品、
(3)入札、
(4)落札(=取引相
手の決定)、(5)商品と金銭の受渡、(6)取引相手の評価及び蓄積・公開となる。これらの中
- 11 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
で、(5)実際の金品の取引については、金融機関や物流を利用するのであるが、それ以外の全
てインターネット上で行われる。
商用インターネットオークションサイトで、商品をせりにかける際の一般的な流れを以下に示
す。
1)
登録(本人確認)
出品・入札ともにオークションへ参加を希望する場合、希望者はまずサイトへの登録が
必要である。ここでは、参加者個人をインターネット上でのユーザと一致させるために、
電子メールアドレス、クレジットカード番号、住所情報などを取得して確認を取ること
が多い。
2)
出品(市場への参加・情報流通)
出品者希望者は、出品にあたって商品の情報をインターネット上に記載する。記載する
情報は、画像・商品の説明・入札期間・最低価格などがあり、サイトによって異なる。
また記載の有無は任意となっている項目も多いため、商品によって取得できる情報量が
大きく異なる。出品に際しては再認証が行われる場合もある。
3)
入札(市場への参加・情報流通)
入札者は、出品情報を見て、自分が希望する条件を満たしている商品に対して、Bid(入
札)を行う。自身の最大の条件を入力しておいてソフトウェアが自動的に入札していく
機能なども備えるサイトも多い。また、入札にあたって不足している情報があった場合
にそれを補うため、WWW や電子メールを利用するコミュニケーション機能を提供す
る場合が多い。
4)
落札(取引相手と取引価格の決定)
商品は、出品期間内に最高の条件を提示した入札者に落札される。落札者は、購入でき
る権利を得て、出品者と取引を行う。
5)
受渡(経済価値の交換)
商品とその対価が交換される。方法は、金融機関と郵便や宅急便などの流通機関を利用
する場合が多い。一部では、対面での交換やエスクローと呼ばれる第三者の提供するサ
ービスを利用する場合もある。取引の流れの中で、この部分はインターネット以外の場
所で行われ、最もトラブルの生じやすい部分であるため、一部のサイトでは保険による
問題低減を図っている。
6)
評価及びその蓄積(信用創出)
取引が終了した後に、双方がお互いの取引に関する評価を行う。評価方法は、サイトに
よって若干異なるが、基本的に取引に際して相手に感じた印象を良い(Positive)、悪
い(Negative)、どちらでもない(Neutral)で付けて、点数化して表示する。また、
- 12 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
過去に評価した情報はすべて蓄積され、すべての参加者から確認できるように公開され
る。こうすることで、評価の低い参加者を実質的に締め出し、良い多い善良な参加者の
利益を守る。サイトによっては、参加者毎にブラックリストを用意したり、サイト側か
らのユーザ削除を行ったりすることもある。
以下に取引の流れを図示する。
インターネットオークションの一般的な流れ(フ ェ ー ズ 分 け )
市場参加・
情報流通
本人確認
価格決定
意義
経済価値
の交換
信用創出
高信頼化
t
登録
出品
入札
落札
フェーズ
受渡
評価
蓄積
場所
手段
インターネット
・メール認証
・クレジットカード
認証(
他社の与
信情報利用)
・
住所認証
インターネット
インターネット
・画像
・補足情報
・説明
・
Q&A
・
引用
・取引時間
・最低価格設定
・再認証
図 2-5
実社会
・金融機関
・郵便/宅配
・対面交換
・保険
・エスクロー
インターネット
インターネット
・
出品者⇔
・
評価情報の蓄積
落札者が
と参照を可能とする
互いを評価 ・低評価者の実質的
する。
締め出し。
(ブラックリスト・登録
削除もある)
インターネットオークションの取引の流れ
このインターネットオークション取引の中のフェーズは、複数のサイトで共通して見られるもので
ある。但し、それぞれのフェーズで取得される情報量や利用される機能については、相違が見られ、
その有無や、組み合わせによってそのサイトの特徴が生み出されている。
2.2.2. 電子商取引の一形態としての位置付け
本項では、インターネットオークションを、電子商取引の一形態としての位置付けについて、
オークション形態ではない店舗形態の電子商取引サイトとの比較から検討してみる。店舗形態の
- 13 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
電子商取引サイトとは、一般的に企業から商品を仕入れて消費者に販売するという仕組みをイン
ターネットに取りこんだものである。
比較項目としては、1)価格、2)取引成立ロジック、3)参加資格、4)商品情報、5)コ
ミュニケーションの 5 つを用いた。
1)価格:インターネットオークションにおいては、取引価格はダイナミックに変動する。電子
商取引サイトにおいては、ほとんど変化することがない。
2)取引成立ロジック:インターネットオークションでは入札者が Bid を重ね、最高額を提示
したものが取引をする権利を得ることができるという仕組みを提供している。この取引成立
のロジックは公開されており、誰もが同じルールで取引を行うことができる。電子商取引に
おいては、基本的に提示された金額に対して購入の意志を示すことが取引成立の契機となる。
3)参加資格:インターネットオークションでは、参加者に対してサイトへの入会を義務付ける
ことで、実社会での個人を、オークションサイト上のユーザと同期させている。個人の登録
があってはじめて、Bid への参加や出品が可能になる。電子商取引サイトにおいては、サイ
ト上で個人が入札などを行わないが登録を義務付けているケースもある。少なくとも、個人
名と決済条件の入力があれば利用可能である。
4)商品情報:出品している商品について、メーカが提供するカタログ情報だけではなく、その
商品固有の画像や情報を付与させている。これは、中古品などの販売が多いために商品の状
態が価格に影響を与えるためである。基本的に新品を扱う電子商取引サイトでは見られない。
5)コミュニケーション:オークションサイトでは、その中にコミュニティと呼ばれる、一種の
対話空間が形成されている。参加者間での情報交換やサポート提供、個人の嗜好情報の提供
などが行われる。こういった対話空間を持つことで、参加者はオークションサイトへの愛着
や帰属意識を持つことになる。電子商取引サイトでも一部商品の批評などを掲載することは
あるが、参加者間での対話空間を提供しているサイトは少ない。
2.2.3. BBS 取引との比較
本項では、BBS と呼ばれる電子掲示板を通じて行われる個人間取引とインターネットオー
クションを比較する。BBS 自体は、電子取引を志向したサイトではなく、ユーザ間のコミュ
ニケーションを志向したサイトであるため、前項とは別の扱いとした。BBS ではコミュニケ
ーションの一環として参加者の所有する余剰品の売買が行われることが多々ある。BBS との
比較を通じてもインターネットオークションの特徴を検討する。
比較項目としては、1)価格、2)取引成立ロジック、3)参加資格、4)商品情報、5)
コミュニケーションの 5 つを用いた。
1)価格:電子商取引サイトと同様、明示的な取引価格の変動は存在しないということである。
但し、個人間の交渉で変動する場合はある。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
2)取引成立ロジック:提示する条件項目などは任意となっている場合が多く、落札という概念
がないため、出品者と落札者がいつ、どうやって取引したというのがほとんどわからない状
況になっている。取引後のお互いの評価を公開することなく、当事者のみが知っている状況
が多い。
3)参加資格:BBS ではユーザ登録などを必要としないものがほとんどである。必要であって
も、個人を特定できる情報まで取得しないサイトが多い。二重ユーザや成りすましなどは容
易に行える状況にある。
4)商品情報:BBS においては、出品情報の記載は、出品者の判断に任されるが、一般的に必
要十分な条件が揃っている場合は少ない。
5)コミュニケーション:取引条件などは当事者間の対話において決定されていくのが通常であ
る。
2.2.4. eBay の歴史からみる改善の変遷
本項では、eBay のスタート時の仕組みとその後の経緯について述べることで、様々な問題
点に対してインターネットオークションがどのような改善を図ってきたかを見る。
米国の商用サイト eBay は、95 年 9 月からサービスを開始したが、当初より消費者同士の
個人売買(C2C)の場としてサイトをオープンした。取り扱う商品は、当初はコレクター向け
のもの(おもちゃや骨董品など)が多かったが、次第に広範囲にわたる取り扱い品目を獲得す
るようになった。98 年には NASDAQ への株式公開を果たし、一般的な知名度と多くの新規
顧客を獲得し、99 年末時点、米国内で 1000 万人の登録者と 99 年一年間の落札件数 120 万と
いう規模を得ている。
(米国内で競合にあたる Yahoo! Auction・Amazon などが提供している
サービスの規模は、同社の 1/10 にも満たない)
同社のサービスは、中立性と信用を重視して作られている。同社はユーザの自主性と発想を
重んじて、自身は「場」の提供という黒子に徹している。ユーザ間のコミュニティの重要性を
認識し、ユーザ同士の意見交換やサポートが受けることができる環境を整備してきた。
また、信用に関して、もっとも特徴的であるのが、評価のフィードバックである。これは実際
の取引当事者(出品者・落札者)は取引が終了するごとに相手の評価をつけることができると
いうものである。ここで一定の範囲を超える悪い評価を受けた参加者は eBay からの締め出し
を食らうことになる。腐ったみかんを自動的に排除する仕組みを用意することで、大多数を占
める信用ができるユーザを生かす、という発想である。この仕組みは非常に成功し、取引の促
進に大いに役立った。
しかし、IPO 後の知名度向上によって、新規の、あまりなじみのないユーザが増えたため、
詐欺行為が頻発したため、99 年 1 月に英 Lloyds と組んで 200 ドル以下の取引すべてに保険
- 15 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
をかけることにした。また、i-Escrow という企業のエスクロー(預託)サービス業者と提携
し、ユーザはそれを用いて金額決済を代行してもらえることになった。(ただし、利用料が必
要なため高額決済向け)これらの変更点は、評価のフィードバック(eBay では Feedback
Forum と呼ばれる)の限界を示し、そこを金銭的なプロテクトを掛けることで信頼性を保と
うとしている。また、クレジットカードを通じて個人間で決済が可能とし、いわゆる取りっぱ
ぐれを防止することに成功している。また、最近では、B2C(もしくは b2C)分野に力を入
れ、企業(もしくは小規模企業)を想定したさまざまなサービスを提供し始めている。
個人間インターネットオークションの代表格である eBay の変遷を見ていて分かることは、
個人同士の信頼関係に支えられた C2C 型取引から始まり、徐々に中小企業の販売の場に移行
したことで異なった信用プラットフォームが必要とされ始めているということである。保険に
よるプロテクトや第三者機関を経由することによる取引の安全性向上、代金決済手段の多様化
などがそれにあたる。ここで注目したいのは、これらは同一のインターネットオークションで
あると言えるのかどうか、という点である。もう少し視野を広げた場合、オークション形態で
はないインターネット上の店舗や、オークション形態を一部成しているものの一般的な
BBS(電子掲示板)などを用いているものは異なる点が存在しているのかどうか、という視点が
これまで用いられて来なかった。
2.2.5. 学術的考察の欠如
先行研究を見る限り、現状のインターネットオークションを比較するための指標の導出に関しては、
まだ学術的な考察がなされていない。(参考文献11、12、13、14、15)これは第一章で述
べたとおり、登場以降急速に利用者数、取引数ともに拡大してきたため学術的な研究がその成長に追
いついていない面があることは否めない。そこに本研究で整理することの有効性が存在する。
2.3.
インターネットオークションにおける問題点
2.3.1. 現実社会と情報空間の乖離
インターネットオークションが現在ほど支持されるようになったかについて考えてみるとい
くつかの点が挙げられる。
一つは、インターネットを利用することで、手間のかかる個人間取引を効率良く行うことが可
能となったことによる利便性である。もう一つは、オークションの持つ娯楽性で、入札・落札の
プロセス自体を楽しめる点である。この2つの点が市場からの支持を受けたポイントであると考
えられる。
インターネットオークション登場以前の個人余剰品の処分方法は、いくつかの形態があり、第
一には、質屋やセカンドハンドショップ(中古品販売店)、リサイクルショップといった店舗を
- 16 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
利用した方法である。これらの店舗では、売れ残る危険性(在庫リスク)があるため、そこで余
剰品を引き取ってもらおうとした場合、店舗が考えるリスクの金額だけ安くなる。つまり一般的
に売り手である個人は市場価格から大幅に低い値段で買い叩かれることが多い。ほかには、いわ
ゆるフリーマーケットがある。フリーマーケットは、売り手が開催者に小額の開催料を支払って、
自らの店舗を開くものである。この方法では、所有者自身が販売するため、在庫リスクは小さく
なり、一定期間に多くの人を集めるため対象となる市場も大きくなるため、質屋などよりは高く
売れる可能性が高くなる。インターネットオークションは、上記の 2 つの方法よりはるかに多
くの潜在顧客と触れることができ、在庫リスクも小さくなる。また、インターネットオークショ
ンでは、画像データなどを用いて、モノと情報の分離を進め、時間や場所の制約をなくし、より
効率的な市場運営を可能としている。
しかし、これらのメリットがあると同時にデメリットも存在する。インターネットオークショ
ンについての問題点をいくつか挙げておくと、出品する商品に関しての問題点として、
・ モノと情報の乖離(実際の品物を自分の目で確かめることができないため、思っていたの
と違う商品が送られて来たり、写真では確認できない傷があったりする場合がある)
・ 取引の不確実性(入金したが、実際にモノが届かない、さらに出品者との連絡が取れない
という場合がある)
・ 不正商品(偽ブランド商品が送られてくる場合がある)
また、不正ユーザによる Bid(サクラ行為)が存在し、オークションメカニズムの信頼性そのも
のに影響を及ぼしている。
図 2-6 に示すようにこれらの問題点は、インターネットを用いることによって生じる実際の世
界とインターネット上での情報によって構成される世界の間の非整合性によって生じている。
- 17 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
インターネットオークションにおける
情報のレイヤーと物質のレイヤーの整合性
情報のレイヤー
・インターネットオークション
で掲載されるアイテム情報
・
入札情報
・
落札情報
・
ユーザ情報
ここに多くの問題がある。
ビジネス的にどうやって
整合性を取るのが良いか?
(インターネットオークションでは、
評価システムを用いることで
この2つのレイヤーの整合性を
高めている。=情報だけ、物質だけ、
ということにはならないようにして
ビジネスに必要十分な整合性を確保
している。)
図 2-6
実際の物質のレイヤー
・
商品の移動(
物流)
・
お金の移動(金融)
・
参加者(個人)
情報のレイヤーと物質のレイヤーの整合性
2.3.2. インターネットを利用した機能が個別に導入されている点
インターネットオークションは、商業的には、単に入札・落札できる機構を用意しただけ
で、よく利用されるサイトになり得るという訳ではなく、実際に商業的成功を収めているサ
イトは数えるほどしかない。市場からの支持を受け、成功するインターネットオークション
の条件とは何か、また、インターネットオークションにおいて、どのような要素が重要であ
るのかについては、まだ具体的に解明されていない分野である。
インターネットを用いたことでオークションモデルにもたらした利便性については下記
の事項がある。(参考文献6.7.8、9、10及び各社のサイトより)
1)代理入札機能
代理入札機能とは、エージェント機能とも言い換えられる。この機能は、買い手があら
かじめ、支払うつもりのある最大提示金額をインプットしておくと、その情報を元に、
ソフトウェアが自動的に、1最小入札金額ずつ入力を可能とする、というものである。
最大提示金額をそのまま公開するのではなく、競争相手の行動に対して、自分の許容す
る範囲で、常に自動的に入札することが可能になるので、利用者にとっては自己に最も
有効な戦略を実行する代理人(エージェント)となる。実際にその時刻にインターネッ
- 18 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
トに接続してオークションに参加している入札者と、監視作業と入札をソフトウェア任
せにしてその時間にインターネットオークションサイトに参加していない入札者の並存
環境を可能としており、この機能によってより多くの入札者を得ることを可能としてい
る。
2)開催期間・場所
従来型オークションは、オークション運営会社が一定期間のみある場所でオークショ
ンを開催し、入札者はそこに集まる必要があった。(一部は電話での参加も可能)
インターネットオークションでは、開催期間を出品者自身が決定できる。開催期間は
大体 3 日∼2 週間の中から選べるが、期間を長く持つことで潜在的な顧客の目に触れる
ことが多くなり、その商品の存在を知らしめることで機会損失を極少化していると言え
る。
3)期限延長機能
この機能は eBay では採用されていないが、その他のオークションサイトでは用いら
れているものである。英国型オークションでは、オークションの終了間際に Bid が集中
し、多くの入札者の攻めぎ合いとなるが、期限延長機能を選択しておくと、タイミング
に依存せず、終了前の 5 分前に Bid があればその時点から終了時間を 5 分延長する、と
いうものである。この繰り返しにより、最適な水準に価格を均衡させることが可能とな
る。得られる効用は、1)の代理入札機能のそれと同様である。
4)ミニマム・ビッド(開始価格)
出品価格・開始価格と呼ばれる。出品者側が設定するもので、Bid はこの金額からス
タートする。この金額の設定にはいくつかの面白い性格がある。この金額が小額であれ
ばあるほど、その商品が「お買い得」であるという印象を与えることができ、多くの入
札者を引き付ける効果がある。また、少額に設定することで入札者に対して、出品者が
その商品を売りたいという「意志」を示し、好印象を得ることができる。これらは広告
と同様の効果を持つが、開始価格を小額に設定することは、落札金額が非常に安くなる
というリスクを持つことになる。しかし、ある程度巨大な市場においては、最終的には
市場価値に近い水準に落ち着くことが多い。
(商品の性質が大きく影響するため一概には
言いきれない部分もある。)
5)リザーブ・プライス(最低落札価格)
リザーブ・プライスは、出品者側の収益保護の手段で、売り手が予め設定する非公開の
最低の落札水準である。この金額は非公開であるが、入札するとその Bid がリザーブ・
プライスに達しているかどうかを入札者に提示する。一般的には、保守的な出品者はこ
れを高めに設定することが多いが、そうすることで落札率は下がることになる。リザー
ブ・プライスが非公開のため、入札者側からは、出品者がよい売り手なのか、売る気が
- 19 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
ないのかの判断が付けにくく、入札者側には悪い印象を与えることになる。
6)バイアウト・プライス(希望落札価格)
この機能は、出品者が設定する Bid の最大値で、Bid がここに達した場合、自動的にオ
ークションは終了する。この機能は、商品を早く処分したいと思っており、また、入札
者も早く入手したいと思っている場合に有効である。(eBay では未導入だが、他のオー
クションサイトでは一般的に導入されている)
7)コミュニティ機能
インターネットオークションサイトでは、いくつかのソフトウェアを用いてコミュニ
ティ機能を提供している。この機能を提供することで、ユーザ同士のコミュニケーショ
ンを可能とし、サポートや情報交換などを提供させることに成功している。コミュニケ
ーションを通じて情報量の少ない商品についての購買意思決定源として、詐欺的行為を
事前防止している。また、コミュニケーションそのものを娯楽としている場合もある。
提供される代表的なものは、BBS(電子掲示板)、個人ページなどがある。
8)レイティング・システム(取引のフィードバック、評価の蓄積)
インターネットオークションでは一般的に導入されている機能で、実際の取引当事者
(出品者・落札者)は取引が終了する毎に相手の評価をつけることができるというもの
である。評価は、Positive(良い)、Neutral(普通)、Negative(悪い)の中から選ばれ、
蓄積される。一度付けられた評価は決して削除されることなく、すべて公開される。こ
のシステム内で一定の範囲を超える悪い評価を受けた参加者はオークションサイトから
の締め出される。腐ったみかんを自動的に排除する仕組みを用意することで、大多数を
占める信用ができるユーザを生かす、という発想である。但し、このレイティング・シ
ステムに蓄積された情報を信じるか否かはあくまで参加者の意志に委ねられるため、限
界がある。また、相互に評価をつけることが可能であるため、Negative な評価を付けら
れた参加者は相手に対して報復的に Negative な評価を付けることが多く、それを恐れ
て正しい評価を下せない、という状況も生み出している。
インターネットを利用することで以上のような機能が提供されるようになったのである
が、各サイトではすべてが導入されているわけではなく、また一度導入された後も流動的に
変化している。これらが個別に導入されていることは大きな整理すべき点であり、それぞれ
の機能の役割やオークションサイトに与える影響を考慮すべきである。またこれらが個別に
導入されていることが、比較を困難にしている原因の一つであることを述べておく。
2.3.3. インターネットオークションを支える構造
本項では、前項までの内容を踏まえ、インターネットオークションが成り立っている構造につ
- 20 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
いて考察してみる。
まず、利用するインフラであるインターネットから得られる性質として、有益な点と不利益な
点が存在する。有益な点としては、イ ン タ ー ネ ッ ト の 持 つ グ ロ ー バ ル 性 と フ ラ ッ ト な 構 造 を 導
入 で き る ことであり、不利益な点は、情 報 と 物 質 の レ イ ヤ ー の 乖 離 が 生 じ る こ と か ら 、 不 正 ユ
ーザや不正商品の発生を招いてしまうということである。
また、オークションモデルに起因する特徴として、以下の三点が挙げられる。
1)システム化された競りによる価格決定ルールを採用している
2)取引条件を対話によって柔軟に変更でき、最終条件の修正は参加者間で行うことが可
能である
3)取引後の相互評価を蓄積することで、時間的な連続を生み出し、一回限りの取引の場
にならないようにして場の信用を創出している
これらの特徴をまとめて、現状で考えうるインターネットオークションの定義としては、「 イ
ンターネットによってシステム化された価格決定プロセスと、取引条件を参加者間の対話によ
って柔軟に変更可能な、時間的に連続した場」であるといえる。
インターネット・オークションを支える構造
オークション
の構成要素
対話による
問題解決
Bidによる
価格形成
時間的な
連続性
サービスを形成
実現される
サービス
インターネットオークション
実装
イン
フラ
インターネット技術
インフラから
得られる要素
図 2-7
対象のグローバル化・
構造のフラット化
不正ユーザ
不正商品
インターネットオークションを支える構造
- 21 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
第3章 比較指標の試作と検証
前章では、インターネットオークションの分析と問題点の整理を行った。本章では、その結果から
考えられる比較指標の試作と検証を行う。
3.1.
比較指標の利便性
前章までで述べたように、インターネットオークションはまだ発展途上のサービスである。インタ
ーネットオークションの比較指標を持つことで、そのサービスの相対的な位置付けを得ることができ、
環境の変化や競合に対しての戦略を検討する手懸かりを得ることとなる。実際のビジネスにおいては、
その比較指標を元にして、そのサイトの特徴を変化させていくことができる。これが実現できれば、
現在、さまざまな電子商取引サービスが未定義のまま成長している中で、インターネットオークショ
ンに関して経営上の利点が生まれる。
今後、インターネットの成長と電子商取引の成長に伴って、インターネットオークションで重要な
新しい要素が出てくる可能性がある。その際に基礎となる指標を持っておくことで変化に柔軟に対応
できることが可能となる。
以上が、比較指標を持つことの利便性である。本論文では、実際の比較指標の雛型として、試作及
びその検証を行う。
3.2.
比較指標の設定
本節では、比較指標の試作を行う。まず、第 2 章でおこなったインターネットオークション取引
の分析から取引のフェーズ分けを行い、機能項目の作成、ダミー変数を用いたモデル化、調査対象と
なるサイトの選出、比較指標の設定、比較指標の数値化までを行った。
3.2.1. インターネットオークション取引の流れの洗い出し
本項では、第 2 章の 2.2.1.項で述べたインターネット取引の流れに基づいて、取引の流れを洗い出
し、フェーズ分けを行う。
- 22 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
インターネットオークションの一般的な流れ(フ ェ ー ズ 分 け )
本人確認
市場参加・
情報流通
価格決定
意義
経済価値
の交換
信用創出
高信頼化
t
登録
出品
入札
落札
フェーズ
受渡
評価
蓄積
場所
手段
インターネット
・メール認証
・クレジットカード
認証(
他社の与
信情報利用)
・
住所認証
インターネット
インターネット
・画像
・補足情報
・説明
・
Q&A
・
引用
・取引時間
・最低価格設定
・再認証
実社会
・金融機関
・郵便/宅配
・対面交換
・保険
・エスクロー
インターネット
インターネット
・
出品者⇔
・
評価情報の蓄積
落札者が
と参照を可能とする
互いを評価 ・低評価者の実質的
する。
締め出し。
(ブラックリスト・登録
削除もある)
(再掲)インターネットオークションの取引の流れ
取引は、登録、出品、入札、落札、受渡、評価の 6 つのフェーズに分けた。
登 録:オークションサイトへの利用登録を行う一連の作業。参加者をサイト上のユーザとして登録す
る。そのために必要とする情報入力や作業を行うフェーズ。
出 品:オークションへの出品にあたって、商品の情報や取引条件をインターネット上に記載する。そ
の際に入力できる情報や設定できる取引条件の入力、情報不足を補うための機能を利用するフェーズ。
入 札:入札者は、出品情報を見て、自分が希望する条件を満たしている商品に対して、Bid(入札)
を行う。入札の意思決定を行うための情報の閲覧、情報不足を補うための機能を利用するフェーズ。
落 札:商品は、出品期間内に最高の条件を提示した入札者に購入の権利が発生する。その際に落札を
示す情報の提供や、出品者との間でコミュニケーションを行うフェーズ。
受 渡:商品とその対価が交換されるフェーズ。一連の取引の流れの中で、この部分だけはインターネ
ット以外の場所で行われ、最もトラブルの生じやすい部分である。
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
評価:取引が終了した後に、取引相手を評価し、また、その情報を蓄積し、公開するフェーズ。
3.2.2. 機能項目の作成
ここでは、前項で、分けられたフェーズ毎に、用いられている機能や取得される情報1つに対して、
機能項目1つとして設定した。その結果、機能項目数は、100 を超えた。
また、一連の取引の中では表れない事項であるが、サイト全体で用いられているルールや機能に関
して、「その他」として取り入れた。この「その他」についても用いられているルールや機能1つを
機能項目の1つのして数え上げた。
以上を考慮し、作成した項目が添付の「表1」の「Phase」-「機能項目」の対である。
付録の「表1」を参照のこと
(表1)から一部抜粋
(表1)機能のリストアップ
Phase
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
機能項目
使用者の名前の取得
性別の取得
職業の取得
業種の取得
生年月日の取得
住所の取得
電話番号の取得
FAX番号の取得
会社名の取得
商号の取得
法人代表者名の取得
メールアドレスの取得
フリーメールの使用可能
クレジットカード番号の取得
クレジットカード番号の認証
IDの発行
ユーザーIDの変更
パスワードの発行
パスワードリマインド用の質問と答えの設定
ニックネームの利用
入会金の徴収
登録時のSSL使用
メールアドレスの認証作業
住所の認証作業
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
自己紹介ページの作成
自己商品ページの作成
メールアドレスの公開
ブラックリストの利用
図 3-1
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
商品カテゴリの設定
商品カテゴリの途中変更
商品写真の使用
商品写真のアップロード可能
商品写真のリンク可能
商品タイトルの設定
商品の詳細情報の記述可能
商品の詳細情報のHTML使用が可能か
支払い方法の指定
手数料負担者の指定
数量の設定
出品時
ダッチオークションの開催
出品時
出品時
パワーオークションの開催
開始価格の設定
出品時
最低落札価格の設定
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
出品時
希望落札価格の設定
早期終了設定
発送元地域の公開
終了時間の指定
入札対象地域の設定
配送方法の指定
配送料金負担者の指定
新品/中古品情報の設定
太字アイコンの設定
商品の特徴をあらわすアイコンの設定
出品時
出品時
出品時
特選アイテム登録
プライベートオークションの指定
背景色の設定
(表1)からの一部抜粋 「P h a s e 」- 「機能項目」
- 24 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
3.2.4. 調査対象の選出
モデル化にあたっての調査対象の選出は、異なる性質を持つが成功している 3 つのサイトを対象
とした。例えば、Yahoo! Japan Auction では、クレジットカード情報などを一切利用することなく、
取引のダイナミズムをより簡単に体感させることで、インターネットオークションを娯楽として提供
している。反対に、eBay や楽天では、より確実な取引を実行させるためにクレジットカード情報な
どを積極的に取り入れ、現実の取引に近しいものを実現しようとしている。この結果、利用者に対し
ては異なる印象を与えるサービスとして認識されている。こういった違いがありながらもそれぞれ成
功しているモデルを調査対象とした。
調査対象としたサイトは以下の 3 つである。それぞれ簡単に選出理由を挙げる。
Yahoo! Japan Auction :現状、日本でもっとも多くの出品数と集客を集めている。加えて、いわゆる
ポータルサイト内におかれたサービスであることも選出理由である。
URL:http://auction.yahoo.co.jp/
eBay Japan:米国では最大のインターネットオークションを展開している eBay の日本語版サイト。
インターネットオークション専業のサイトである。また、米国での実績と日本サイトから世界中のサ
イトとの連動が図られていることも選出理由とした。
URL:http://www.ebay.co.jp/
楽 天 フ リ ー マ ー ケ ッ ト :日本で最大級の電子商取引サイトの中に設置されたサービスである。また、
3 社中で唯一、日本資本の会社である。
URL:http://trading.rakuten.co.jp/
これらのサイトを対象に、前項で述べたダミー変数を用いたモデル化を行った。その結果が、付録
の(表1)の機能項目毎の数値である。
付録の「表1」を参照のこと
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
サイト毎にダミー変数を入力
(表1)から一部抜粋
(表1)機能のリストアップ
00/12/30時点
Phase
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
機能項目
詳細
使用者の名前の取得
性別の取得
職業の取得
業種の取得
生年月日の取得
住所の取得
電話番号の取得
FAX番号の取得
会社名の取得
商号の取得
会社名と異なる場合があるので。
法人代表者名の取得
メールアドレスの取得
フリーメールの使用可能
クレジットカード番号の取得
クレジットカード番号の認証
IDの発行
ユーザーIDの変更
パスワードの発行
パスワードリマインド用の質問と答えの設定
ニックネームの利用
入会金の徴収
登録時のSSL使用
メールアドレスの認証作業
住所の認証作業
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
ユーザ登録
自己紹介ページの作成
自己商品ページの作成
メールアドレスの公開
ブラックリストの利用
図 3-3
自分の出品リストを一覧で公開するページ
一般に公開するか決める
Yahoo
1
1
1
1
1
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
1
0
1
1
1
0
0
1
0
eBay
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
0
楽天フリマ
1
1
0
0
1
1
1
0
1
0
0
1
0
0
0
1
1
1
0
1
0
1
0
0
1
1
0
1
1
1
0
0
1
1
1
0
(表1)から一部抜粋 サイト毎にダミー変数を入力
3.2.5. 比較指標の設定
本項では、前章までの調査結果を踏まえて、インターネットオークションの比較指標として想定さ
れる項目を設定する。
ここでの指標設定は、第 2 章 2.3.3.項に示したインターネットオークションを形作る構造の分析を
その根拠とする。オークションモデルに起因する要素として、以下の1)、4)、5)、また、インタ
ーネットをインフラとして利用することに起因する要素として、2)、3)を挙げている。
また、指標の定義については、インターネット自体が黎明期であり照らし合わせるものがないため、
調査で得た情報と著者自身の経験、直感に基づく部分が大きいことを付け加えておく。
インターネットオークション比較指標(括弧内は中間報告時の表現)
1)価格設定の自由度(価格変動性)
購入者(または出品者)に許された価格設定についての行動範囲とその影響度合いを示す指
標
2)利用者の特定度(本人特定性)
- 27 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
インターネットオークション内で利用者個人を特定する方法や利用する情報、その組み合わ
せによって異なる特定の度合いを示す指標
3)商品情報の記述力(商品実在性)
取引される商品の情報をどれだけインターネット上に記載できるか、また、どのような情報
を記載できるかを示す指標
4)利用者間の対話性(対話性)
商品情報の不足を補ったり、取引条件の交渉をインターネットオークション上で行ったりす
るためのコミュニケーション機能をどれだけ提供しているかを示す指標
5)取引の公開性(取引透明性)
取引を行うための条件や取引の実行状況をインターネット上でどれだけ公開しているか、ま
た、公開させるための仕組みを用意しているかの度合いを示す指標
インターネット
オークション
比較指標
価格設定の自由度
(
購入者(または出品者)
に許された価格設
定についての行動範囲とその影響度合いを
示す指標)
取引の公開性
利用者の特定度
(インターネットオークショ
ン内で利用者個人を特定
する方法や利用する情報、
その組み合わせによって
異なる特定の度合いを示
す指標)
(取引を行うための条件
や取引の実行状況をイ
ンターネット上でどれ
だけ公開しているか、
また、公開させるため
の仕組みを用意してい
るかの度合いを示す指
標)
利用者間の対話性
商品情報の記述力
(
商品情報の不足を補ったり、取引条
件の交渉をインターネットオークショ
ン上で行ったりするためのコミュニ
ケーション機能をどれだけ提供して
いるかを示す指標 )
図 3-4
(
取引される商品の情報をどれだ
けインターネット上に記載できる
か、また、どのような情報を記載
できるかを示す指標 )
インターネットオークションの比較指標
3.2.6. 比較指標の数値化
本項では、前項で設定した指標に、3.2.2.項で洗い出した機能項目を割り振り、指標毎に定量化し
た。
- 28 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
割り振る基準としては、該当する機能項目がどの指標を示す機能であるかという観点から著者が設定
した。指標毎に機能項目の数値(0,1)を合計し、定量化したものが(表2)である。
付録の(表2)を参照のこと
(表2)から一部抜粋
(表2) 指標毎に集計
番 号
①
②
③
④
⑤
①
Phase
出品時
00/12/30時点
指標名
価格設定の自由度
利用者の特定度
商品情報の記述力
利用者間の対話性
取引の公開性
機能項目
開始価格の設定
①
出品時
最低落札価格の設定
①
①
出品時
出品時
希望落札価格の設定
早期終了設定
①
①
①
①
①
①
①
①
①
出品時
出品時
出品時
出品時
入札時
入札時
入札時
入札時
入札時
自動再出品の設定
自動再出品の回数指定
自動延長機能
出品の取り消し
手動入札
自動入札機能の利用
入札金額幅の指定
入札状況の連絡(メール)
入札の取り消し
図 3-5
3.3.
指標の意味
購入者(または出品者)に許された価格設定についての行動範囲とその影響度合いを示す指標
インターネットオークション内で利用者個人を特定する方法や利用する情報、その組み合わせに
よって異なる特定の度合いを示す指標
取引される商品の情報をどれだけインターネット上に記載できるか、また、どのような情報を記
載できるかを示す指標
商品情報の不足を補ったり、取引条件の交渉をインターネットオークション上で行うためのコミュ
ニケーション機能をどれだけ提供しているかを示す指標
詳細
Yahoo
出品した商品を売ってもいいと思う最低の価格。何も入力し
ない場合、最低落札価格は設定されません。
入札価格がこの価格に達すると、オークションは自動的に終
了する。即決価格。
オークションが落札されずに終了した場合、自動的に商品を
再出品します。
オークションが終了する5分前に入札があった場合、自動的
に5分間オークションを延長します。
金額を直接入札する
自己の最大金額を入力し、AGENTにより入札
値上げ幅を指定できる機能
入札圏外になった場合の連絡メールの受け取り
入札者による入札取り消し
1
eBay
1
楽天フリマ
1
1
1
0
1
1
0
1
0
0
1
1
0
0
1
1
1
1
0
1
0
1
0
10
0
1
1
1
1
1
0
8
0
0
1
0
1
1
0
6 ←指標①の数値
(表2)より一部抜粋 比較指標の数値化
比較指標の検証
本節では、前節までで設定した指標の有効性についての検証を行う。
3.3.1. 検証の概要
本項では、比較指標の有効性を検証するために、多変量解析の一手法である主成分分析を用いて、
平面空間での比較指標の散らばりと対象サイトの散らばりを照らし合わせることで各サイトの特徴
を推測するために役立つ指標かどうかを検証する。この検証を通じて、設定した比較指標有用性をは
かることとする。有用性が見とめられる場合、対象とした 3 サイト以外への適用可能性を確認する
- 29 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
ことにする。
分析のための入力データは、前節の比較指標の試作で作成した数値を用いることとする。
3.3.2. 分析データの作成
前節で作成した、比較指標毎の数値を入力データとして用いる。
入力データ(
3サイト)
価格設定 利用者の 商品情報 利用者間 取引の公
SITE
の自由度 特定度
の記述力 の対話性 開性
YAHOO
10
15
8
15
21
EBAY
8
27
12
10
23
RAKUTEN
6
16
9
11
27
図 3-6
入力データ(3 サイト)
3.3.3. 定量化データの分析
本項では、前項の入力データに対して主成分分析を行う。主成分分析を用いることで、各指標間で
共通化される成分を抽出することで、平面空間に指標のプロットとサイトのプロットを行うことが目
的である。主成分分析は、入力データの変数毎の標準偏差を用いて基準化を行い、失われる情報が最
小となる関数を導き、変数毎の相関係数が大きくなるようにすることで共通する成分を求めるもので
ある。
また、この分析には、統計分析の標準的なソフトウェアである「SPSS 10.0J for Windows」を用
いたことを加えておく。
- 30 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
3.3.4. 分析結果及びその解釈
本項では、主成分分析の結果とその解釈を試みる。
主成分分析結果(1)
成分行列 a
元データ
成分
価格設定の自由度
利用者の特定度
商品情報の記述力
利用者間の対話性
取引の公開性
1
-.341
6.628
2.076
-2.048
-.058
2
1.971
.639
-.148
1.676
-3.055
再調整
成分
1
2
-.170
.985
.995
.096
.997
-.071
-.774
.633
-.019
-1.000
成分プロット
価格設定の自由度
1.0
因子抽出法: 主成分分析
a. 2 個の成分が抽出されました
利用者間の対話性
.5
利用者の特定度
商品情報の記述力
0.0
の
2 成分
-.5
-1.0
-1.0
取引の公開性
-.5
0.0
.5
1.0
1 の成分
図 3-7
主成分分析結果(1) 指標空間
分析結果から、比較指標に関しての数値及びプロットについては図 3-7 のようになる。比較指標と
主成分との係数から読み取れるのは、以下となる。
第一主成分は、比較指標「利用者の特定度」
・
「商品情報の記述力」について、それぞれ 0.995・0.997
と数値が高いため、この 2 つの指標と関連性が高いと考えられる。2つの比較指標の性質からこの
第一主成分については、
「インターネットと現実社会との同期度」と解釈できると思われる。
(プラス
の方向に行くほどインターネットと現実社会の同期がなされている)
また、第 2 主成分は、特に比較指標「価格設定の自由度」・「利用者間の対話性」について、それ
ぞれ 0.985・0.633 と正の数値が高いため、関連性が強いと考えられる。この 2 つの比較指標の性質
から、「プラスの方向に取引の娯楽性、マイナスの方向に取引の確実性・信頼性」を取ると解釈でき
ると思われる。
この図 3-7 に示された成分プロットを指標空間と呼ぶことにする。
- 31 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
主成分分析結果(
2)
Yahoo
1.0
eBay
.5
主成分スコア
SITE
第1主成分 第2主成分
yahoo
-0.73934 0.88697
ebay
1.13781
0.1968
rakuten
-0.39847 -1.08377
0.0
-.5
SITE
の
2 成分
Yahoo
-1.0
Rakuten
-1.5
-1.0
eBay
-.5
1の成分
図 3-8
0.0
.5
1.0
1.5
Rakuten
主成分分析結果(2) サイト空間
主成分分析の結果として、サイトについては、図 3-8 のようになる。
前述の指標空間との位置関係と重ね合わせて検討すると、以下のことが考えられる。
・Yahoo! Japan Auction は、相対的に娯楽性が高く、インターネットと現実社会をあまり一致させ
ていないタイプのサイトである。
・eBay は、相対的にインターネットと現実社会の一致性が高いタイプのサイトである
・楽天フリマは、相対的に取引の確実性・信頼性が高く、より確実な取引を行わせることを志向した
サイトである。
また、この図 3-8 の空間をサイト空間と呼ぶことにする。
以上のように主成分分析を行うことで、3 つのサイトそれぞれの特徴についての解釈を行うことが
可能になる。
3.3.5. 分析結果の検証
主成分分析の結果、サイトの持つ特徴第四項で選出の際に抱いていたイメージと概ね近しいもので
- 32 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
あった。この分析の結果として、当初設定した指標は利用できる可能性があるものであることが確認
された。少なくとも各サイトの特徴を記述するために利用が可能である。
さらに、以下ではこの結果が、選出した 3 サイトだけに利用できるものではなく、他のインター
ネットオークションに一般的に利用できることを確認するために、他のサイトへの適用を試してみる。
対象としては、以下の2つのサイトを選んだ。
「Auction.Excite」
:著者も利用したことがなくサービス内容を良く知らないサイトとして選出した。
URL:http://auction.excite.co.jp/
「Bidders」:若干の情報を持ち合わせており、楽天や eBay と近しいイメージを持っていたサイトと
して選出した。
URL:http://www.bidders.co.jp/
A u c t i o n . E x c i t e での適用例
■入力データ
前述の検証に用いたチェックリストを利用して、同サイトの機能を変数化し、算出した数値を先の
3 サイトに加えて新たな入力データとする。結果、図 3-9 を入力データとして得た。
Auction.Exciteを加えた入力データ
価格設定 利用者の 商品情報 利用者間 取引の公
SITE
の自由度 特定度
の記述力 の対話性 開性
YAHOO
10
15
8
15
21
EBAY
8
27
12
10
23
RAKUTEN
6
16
9
11
27
Excite
8
18
7
9
17
図 3-9
A u c t i o n . E x c i t e を加えた入力データ
- 33 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
A u c t i o n . E x c i t e の比較指標数値算出のための機能項目リストは付録の(表 3 )を参照のこと。
■分析結果
Auction.Exciteでの適用
指標空間
成分行列
a
元データ
成分
1
価格設定の自由度
-.342
利用者の特定度
5.419
商品情報の記述力
1.901
利用者間の対話性
-1.448
取引の公開性
.627
因子抽出法: 主成分分析
a. 2 個の成分が抽出されました
2
-.887
-.652
.859
.677
4.115
再調整
成分
1
2
-.209
-.543
.989
-.119
.880
.397
-.550
.258
.151
.988
成分プロット
取引の公開性
1.0
.5
商品情報の記述力
利用者間の対話性
0.0
利用者の特定度
価格設定の自由度
の
2 成分
-.5
-1.0
-1.0
-.5
0.0
.5
1.0
1 の成分
図 3-10
A u c t i o n . E x c i t e での適用 指標空間
指標空間についての分析結果は、図 3-10 のようになる。ここで読み取れる内容としては、
第 1 主成分は、3 サイトの場合と同様の数値の関連性が出ているので、「インターネットと現実社
会との同期度」と解釈できると思われる。(プラスの方向に行くほどインターネットと現実社会の同
期がなされている)
第 2 主成分は、「取引の公開性」について 0.988 と高い正の数値と、「価格設定の自由度」につい
て、−0.543 の負の数値が出ているため、プラスの方向に取引の確実性・信頼性、マイナスの方向に
取引における価格自由度を取ると思われる。
- 34 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
Auction.Exciteでの適用例
サイト空間
Rakuten
1.5
主成分スコア
SITE
第1主成分 第2主成分
yahoo
-0.85191 -0.08268
ebay
1.44696 0.03244
rakuten
-0.33941
1.248
Excite
-0.2557 -1.1978
1.0
eBay
.5
Yahoo
0.0
SITE
-.5
Yahoo
の
2主成分
Rakuten
Excite
-1.0
Excite
-1.5
-1.0
eBay
-.5
0.0
.5
1.0
1.5
1の主成分
図 3 -11
A u c t i o n . E x c i t e での適用例 サイト空間
図 3-11 に示すサイト空間についての分析結果は、Auction.Excite は各サイトとの位置関係からは
っきりしたことは言いにくいが、価格設定の自由度に秀でていることと、若干 Yahoo 近いことが読
み取れる。
B i d d e r s での利用例
■入力データ
前述の検証に用いたチェックリストを利用して、同サイトの機能を変数化し、算出した数値を先の
3 サイトに加えて新たな入力データとする。結果、図 15 を入力データとして得た。
- 35 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
Biddersを加えた入力データ
価格設定 利用者の 商品情報 利用者間 取引の公
SITE
の自由度 特定度
の記述力 の対
開性
YAHOO
10
15
8
15
21
EBAY
8
27
12
10
23
RAKUTEN
6
16
9
11
27
BIDDERS
8
22
14
9
24
図 3-12
B i d d e r s を加えた入力データ
B i d d e r s の比較指標数値算出のための機能項目リストは付録の(表4)を参照のこと。
- 36 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
■分析結果
Biddersでの適用例
指標空間
成分行列
a
元データ
成分
1
2
価格設定の自由度
-.299
1.538
利用者の特定度
5.489
.845
商品情報の記述度
2.406
-.353
利用者間の対話性
-2.159
1.441
取引の公開性
.088
-2.469
因子抽出法: 主成分分析
a. 2 個の成分が抽出されました
再調整
成分
1
2
-.183
.942
.981
.151
.874
-.128
-.821
.548
.035
-.987
成分プロット
価格設定の自由度
1.0
利用者間の対話性
.5
利用者の特定度
0.0
商品情報の記述度
の
2 成分
-.5
-1.0
-1.0
取引の公開性
-.5
0.0
.5
1.0
1 の成分
図 3-13
B i d d e r s での適用例 指標空間
指標空間についての分析結果は、図 3-13 のようになる。ここで読み取れる内容としては、
第 1 主成分は、3 サイトの場合と同様の数値の関連性が出ているので、「インターネットと現実社
会との同期度」と解釈できると思われる。(プラスの方向に行くほどインターネットと現実社会の同
期がなされている)
第 2 主成分は、3 サイトの場合と同様の数値の関連性が見られるので、「プラスの方向に取引の娯
楽性、マイナスの方向に取引の確実性・信頼性」を取ると解釈できると思われる。
- 37 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
Biddersでの適用例
サイト空間
1.5
Yahoo
eBay
1.0
主成分スコア
SITE
第1主成分 第2主成分
yahoo
-1.0571 1.05644
ebay
1.08333 0.48547
rakuten
-0.60834 -1.25028
Bidders
0.58211 -0.2916
.5
Bidders
0.0
SITE
-.5
YAHOO
の
2主成分
RAKUTEN
Rakuten
-1.0
EBAY
-1.5
BIDDERS
-1.5
-1.0
-.5
0.0
.5
1.0
1.5
1の主成分
図 3-14
B i d d e r s での適用例 サイト空間
サイト空間についての分析結果は、図 3-14 のようになる。ここで読み取れる内容としては、Bidders
は eBay と楽天の中間くらいのサービスであり、この 2 サイトと同様に取引の確実性や信頼性を重視
したサイトであると言える。また、Yahoo とは異なる特徴を持つことは明らかである。
3.3.5.1. 他のサイトでの適用例のまとめ
「Auction.Excite」・「Bidders」の2サイトでの適用例を取りこんで比較した結果、少なくとも他
のサイトとの相対的な位置関係を記述できる可能性があることを示せた
また、他のサイトへの適用に関しての問題点としては、以下が考えられる。
新しい機能が非常に多いと比較が困難になる。インターネットオークションが他のビジネスの要素を
多く取り込んでいた場合、比較の軸を検討する必要がある。
- 38 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
3.4.
まとめ
比較指標の試作と検証の結果、以下のことが示せた。
本論文で設定した比較指標を利用したサイトの分析で、当初抱いてイメージと近しい結果を得るこ
とができた。このことから、今回設定した指標が限られた範囲ではあるが有効であることが確認でき
たといえる。また、比較指標を用いることでサイト間の相対的な特徴及びポジションの記述が可能で
あることを示すことができた。このことで、インターネットビジネスにおける比較指標の導入が実現
可能であることを確認できた。
第4章 結論
4.1.
本論文における結論
本研究の目標としていた、指標設計の前段階での問題点の整理と分類についても、本研究にて多く
の部分を網羅することができた。また、将来的な目標としていたインターネットビジネスにおける自
身のポジション把握のための比較指標の設計についても、試作と検証を通じて、その設計の可能性と
導入の実現可能性を示した。
4.2.
展望と課題
今後への展望として、第一に本研究の延長としてインターネットオークションの比較指標設計があ
る。実務的にも利用可能な汎用的な設計が求められる。また、将来的にはこの比較指標の定式化も考
えられるだろう。また、当初の動機である、インターネットオークション以外のビジネスモデルへの
適用も可能であると思われる。
今回触れなかった事項として、インターネットオークションにて用いるアプリケーションの種類の
問題や利用するアクセス経路の問題(モバイル端末・携帯インターネット・PC など)があるが、こ
れらもここ数年で急速に多様化していくことが予想されインターネットオークションに大きな影響
を与えていくと思われるため、視野に入れておく必要がある。
今後の課題としては、長期的なインターネットオークションの俯瞰や社会的な意義について研究を
行うことである。
インターネットオークションは仕組みとしてまだ成長段階であることは何度か述べた。加えて市場
としてもまだ成長段階にある。特に日本では、99 年後半に導入されたばかりで、オークションサイ
トも市場への参加者数もまだ増加している。現在見受けられるいくつかの問題点は、成長中であるた
めに生じている場合もあると思われる。
例えば、インターネットのさらなる普及とともにインターネットオークションへの参加者が一般市
場のそれと変わらなくなってくると、そこで取引される価格は市場価格に近くなることは容易に想像
される。その場合、インターネットオークションにはこれまで以上に小売的要素が多くなり、商品の
- 39 -
インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
価格設定の重要度が高くなると考えられる。その場合にはこれまでなかったような新たな価格設定シ
ステム(例えば、価格設定のランク付けシステムなど)が必要とされる可能性もある。
また、インターネットの特徴に依存する問題としては、インターネット利用によるグローバル化に
よって、異国の消費者との文化的な衝突が生じる問題や、これまでなかった消費者と供給者のフラッ
トな関係による新たな消費者心理の問題などが考えられる。 これらは本研究では対象としていない
ため触れていないが、インターネットオークションには多くの解決すべき問題が存在している。(参
考文献16、17、18)
また、広い概念として、通常の経済社会には信用という概念が存在する。インターネットオークシ
ョンでも同様に信用という概念が存在するのであれば、その概念がどのように適用できるのかを本研
究の延長上として取り組みたい。どのような企業や店舗が信頼できるのか、という問いと同様に、ど
のような仕組みやブランドを持ったインターネットオークションサイトが信用を得られるのかとい
う視点を導入したい。またインターネットオークションだけではなく、他の電子商取引サイト、コミ
ュニケーションサイトでも同様に考察できる事項であり、非常に大きな問題であるため、本研究では
将来的な課題としておく。
謝辞
本論文を執筆するにあたって、有益なご指導をいただいた井田昌之教授に感謝します。また、井田
研究室の方々にも忌憚ない助言をいただけたことを感謝します。
参考文献
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参考 Web サイト
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Ø
eBay
²
Ø
Onsale
²
Ø
http://trading.rakuten.co.jp/
Auction.Excite
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Ø
http://www.ebay.co.jp/
楽天フリマオークション
²
Ø
http://auction.yahoo.co.jp/
eBay Japan
²
Ø
http://www.onsale.com/
Yahoo! Japan Auction
²
Ø
http://www.ebay.com/
http://auction.excite.co.jp/
Bidders
²
http://www.bidders.co.jp/
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インターネットオークションの比較指標の設計に関する基礎研究
・ 日経マーケットアクセス(日経 BP 社)
図表一覧
図 2-1 日本のインターネット普及率(1999 年 7 月∼2000 年 8 月調査)................................. 7
図 2-2 インターネットを利用するときに使用した機器(2000 年 8 月調査)........................... 8
図 2-3 Yahoo! Japan の該当カテゴリに掲載のサイト数......................................................... 9
図 2-4
国内の主な総合型オークションサイトとオークション件数(2000 年 1 月∼2 月)... 10
図 2-5
インターネットオークションの取引の流れ................................................................ 13
図 2-6
情報のレイヤーと物質のレイヤーの整合性................................................................ 18
図 2-7
インターネットオークションを支える構造................................................................ 21
図 3-1
(表1)からの一部抜粋
図 3-2
機能項目の選出とダミー変数によるモデル化の例..................................................... 25
図 3-3
(表1)から一部抜粋
図 3-4
インターネットオークションの比較指標................................................................... 28
図 3-5
(表2)より一部抜粋
図 3-6
入力データ(3 サイト)............................................................................................ 30
図 3-7
主成分分析結果(1)
指標空間.............................................................................. 31
図 3-8
主成分分析結果(2)
サイト空間.......................................................................... 32
図 3-9
Auction.Excite を加えた入力データ.......................................................................... 33
図 3-10
「Phase」-「機能項目」................................................. 24
サイト毎にダミー変数を入力.............................................. 27
比較指標の数値化................................................................ 29
Auction.Excite での適用
図 3-11 Auction.Excite での適用例
指標空間........................................................................ 34
サイト空間 ................................................................. 35
図 3-12
Bidders を加えた入力データ ................................................................................... 36
図 3-13
Bidders での適用例
指標空間................................................................................ 37
図 3-14
Bidders での適用例
サイト空間 ............................................................................ 38
付録
(表1)機能のリストアップ
(表2)指標毎の集計
(表3)チェックリスト(Excite)
(表4)チェックリスト(Bidders)
(表5)ESCROW
Service 一覧
以上
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