Rev.0 2008 年 4 月 06 日 Rev.1 2008 年 4 月 13 日 定常状態の Fo の補足説明を第 11 項として追加 Rev. 2 URL 追記 ATP(EMTP)の小さな研究室 高橋賢司 著 当研究室のその他の解説書は下記からアクセスできます。 http://atp-emtp-reserch.o.oo7.jp/ 1 1. 前え書き ........................................................................................................................4 2. Ideal 1 phase と Ideal 3 phase..........................................................................................6 2.1 理想変圧器とは...............................................................................................................6 2.2 理想変圧器を使ってみましょう ......................................................................................6 1) 単相理想変圧器 .............................................................................................................6 2) 三相理想変圧器 .............................................................................................................8 3) 理想変圧器は直流回路にも適用できます..................................................................... 11 3. Saturable 1 phase と Saturable 3 phase ........................................................................13 4. 単相変圧器......................................................................................................................14 4.1 単相変圧器の入力データの説明 ....................................................................................18 1) Attributes Tag のデータ入力 .......................................................................................18 2) Characteristic(励磁特性) Tag への入力 .......................................................................21 4.2 入力データの作成方法の説明........................................................................................24 1) Io, Fo を求めます........................................................................................................24 2) 飽和特性の入力 ...........................................................................................................25 3) Saturable transformer の漏れインピーダンスの入力データ作成.................................26 4) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスデータの作成 ................................................27 4.1) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの測定........................................................27 4.2) % IZ t への変換...........................................................................................................27 4.3) 交流抵抗の算出 ........................................................................................................28 4.4) 交流抵抗値の % IR への変換.......................................................................................29 4.5) % IX の求め方...........................................................................................................29 4.6) % IZ の求め方 ...........................................................................................................29 4.7)ご参考 一次巻線、二次巻線の区別と変圧比.............................................................29 4.8) 漏れインピーダンスの各巻線への具体的な分割作業...............................................30 a. 最初に%IZ から変圧器全体の漏れインピーダンス Z(Ω)を求めます .............................30 b. 次に単相二巻線変圧器全体の交流交流抵抗を求めます ................................................30 c. 単相二巻線変圧器全体の漏れリアクタンス X(Ω)を求めます ........................................30 d. 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスを一次巻線分と二次巻線分に分割します ......31 d-1. ATP Rule Book の漏れインピーダンスの分割に関する Rule.....................................31 d-2 交流交流抵抗値の一次巻線、二次巻線への分割 ........................................................32 d-3 インピーダンス変換に用いる変圧比についての注意 .................................................32 d-4 漏れインダクタンスの一次巻線、二次巻線への分割 .................................................34 4.9) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの具体的な分割作業例 ...............................35 5) 単相三巻線変圧器の等価回路と漏れインピーダンスの測定 .........................................36 5. 三相二巻線変圧器 ...........................................................................................................38 5.1 三相変圧器の入力データ項目の説明 .............................................................................38 5.2 三相変圧器の漏れインピーダンスの入力データ作成方法の説明.....................................42 1) 三相変圧器の漏れインピーダンスの測定.....................................................................42 2) 漏れインピーダンスを算出する時の定格出力、定格電圧、定格電流の留意点 .............42 3) 三相変圧器の漏れインピーダンスの入力データ作成 ...................................................44 4) 三相変圧器の漏れインピーダンスの具体的な分割作業 ................................................45 5) 一次、二次巻線の漏れインダクタンス値の求め方 .......................................................46 6) 一次、二次巻線の交流交流抵抗の求め方.....................................................................46 5.3) 三相変圧器のデータ入力..............................................................................................47 6. 三相二巻線 Saturable 変圧器の漏れインピーダンスの簡易入力方法...............................48 7. サブルーチンプログラム”SATURA” の使い方................................................................49 1) カードイメージ入入力プログラムの ATPDraw からの走らせ方 ..................................52 2) 計算結果の利用方法 ....................................................................................................52 8. 内蔵の非線形励磁特性を無効にし、外付けでヒステリシス特性をつけたい場合 .............54 2 8.1Type96 のヒステリシス特性を得る方法 ...........................................................................57 9. その他の変圧器モデル ....................................................................................................59 1) BCTRAN による変圧器模擬方法について ...................................................................59 2) ATPDraw による BCTRAN の使い方 ..........................................................................60 9.3) カードイメージの入力プログラムを作成して BCTRAN を走らせる方法..................62 9.4 Mutually-coupled R-L Element による変圧器模擬方法について ...............................66 10. 単相三巻線変圧器の漏れインピーダンスの PU 化について...........................................66 11. 定常状態の磁束鎖交数について.....................................................................................69 3 1. 前え書き 電力系統のシミュレーションをする時、変圧器は必ずと言ってよいほど回路に入って来ますね。 ATP の変圧器モデルの取り扱いに慣れておくと Simulation 対象が広がると同時に短時間で変圧 器入力データを作成することができます。 そこで今回は ATP の変圧器モデルについて解説致します。 従来はカードイメージの入力データで変圧器を模擬していましたが、ここでは例によって ATPDraw を使用して簡単に変圧器を模擬する方法を説明いたします。 ATPDraw のキャンバス上でフローティングメニューから Transformer にカーソルを置くと、 用意されている各種変圧器のサブメニューが次のように表れます。 サブメニュー 本稿ではサブメニューの内、主として上図の点線で囲んだ変圧器モデルを対象にして説明を行い ます。 これらの変圧器が基本で、且つたぶん最も多用されている変圧器モデルと考えるためです。 これら以外に相互結合ブランチで変圧器を模擬する方法にも触れています。 サブメニュー中の変圧器の簡単な説明は次の通りです。 Ideal 1 phase と Ideal 3 phase はそれぞれ単相と三相の理想変圧器です。詳細は次項で説明し ます。 Saturable 1 phase と Saturable 3 phase は頻繁に使用される変圧器モデルです。これの詳細は 第 3 項に解説しています。本稿の単相、三相変圧器については漏れインピーダンスを各巻線へ 入力するようになっているので漏れインピーダンスを半分ずつ分割する方法について注力して 説明して参ります。 #Sat. Y/Y 3-leg は一次、二次結線が星形の三相三脚鉄心の Saturable 変圧器用のモデルです BCTRAN とは変圧器の無負荷試験、インピーダンス試験のデータから Rule book IV-B の Branch cards for PI-Equivalent の相互結合作用を利用して作る単相及び三相の変圧器モデル です。このように相互結合しているブランチ回路でも変圧器を模擬できるのですね。変圧器モデ ルにはこのように奥が深いです。BCTRAN については第 9 項で簡単ですが紹介しています。 Hybrid model とは三相変圧器の無負荷試験、インピーダンス試験のデータから作る XFRM component を利用して作る変圧器モデルですがこれについては現在未だ発展途中のもので、 User の責任において使用することが求められています。 4 上述の全ての変圧器モデルは商用周波数領域の変圧器モデルですが、雷サージ解析などの高周波 領域用の変圧器モデルとしてはキャパシタンスを主に使うモデルや実測データから求まるキャ パシタンスとインダクタンスを組み合わせた CIGRE モデルなども存在していますがこれらに ついては本稿では次の機会に譲ることとし、カバーしておりません。 尚、本解説書は御自由にご利用くださって結構です。 但しこの解説書にしたがって発生したいかなる不具合についても責任は負いかねます。 あしからずご了承のほどお願いいたします。 5 2. Ideal 1 phase と Ideal 3 phase フローティングメニューの Transformers を開いた時、 サブメニューの上部にある、 これらは各々 Ideal 1 phase transformer と Ideal 3 phase transformer の意味です。 以下にこれらの理想変圧器の説明、使用例及び使用上の注意点を述べます 2.1 理想変圧器とは 理想変圧器は漏れインピーダンスと励磁インピーダンスが存在していなく、それでいて変圧作用 ができる理想的な変圧器です。このため、理想変圧器を使えば負荷電流が流れている状態でも一 次側の電圧、電流は正確に変圧比で変換されて二次側に表れてきます。実際の変圧器では巻線の 漏れインピーダンスによる電圧降下があるので、負荷電流が流れれば二次側の電圧は変圧比で変 換した値より低くなります。また二次電流も僅かですが励磁電流分少なくなった電流になります。 理想変圧器は漏れインピーダンスが 0 なので短絡電流を制限することはありません。 鉄心飽和、ヒステリシス損、励磁損失も存在していない変圧器モデルです。 理想変圧器の用途はこれらの理想変圧器の特徴が模擬上必要な場合に使用します。 一例をあげれば、電圧を変換する必要があるが、挿入する変圧器の漏れインピーダンスの電圧降 下があっては困る場合などに使用します。 尚 、 大 事 な 点 で す が 、 こ の 理 想 変 圧 器 機 能 は 最 も 頻 繁 に 使 用 さ れ る 次 項 の Saturable Transformer の内部に変圧機能を果たす要素として内蔵されています。 2.2 理想変圧器を使ってみましょう 次の回路で理想変圧器の動作を確認してみましょう。 1) 単相理想変圧器 対地電圧 200 V Peak の正弦波電源電圧を理想変圧器で 100 V の対地 Peak 電圧に変換後、100 Ωの抵抗に接続する単純な例で示します。極めて簡単な例ですが下記するように意外な注意点が ありますよ。 フローティングメニューから Ideal 1 phase のアイコンを選択すると次図左側のアイコンが現れ ます。更にこのアイコンを右クリックすると次図右側のデフォルト状態の理想変圧器の入力窓が 開きます。 n:1 P S 6 n はこの理想変圧器の変圧比で n P側定格電圧 です。従ってこの例の場合 n = 2 を入力します。 S側定格電圧 この状態で OK ボタンを押し、次図のように題意の回路を作成し、計算させてもエラーになり ます。これは理想変圧器と電源の直接接続が許容されていないためです。 P UI n: 1 AC200V S 100Ω 理想変圧器入力窓で “BRANCH = 0”とした場合のエラーの回避策は次図の上段のように電源と 変圧器一次側端子間に微小抵抗(例えば 1E-6Ωなど)を入れれば可能です。 又は上図の理想変圧器の入力窓中の BRANCH 欄に 0 の代わりに 1 を入れ、電源と変圧器一次 側端子間に次図下段のように Measuring switch を追加すればエラーを回避できます。 後者の方法が計算精度に影響が無いのでお奨めです。 微小抵抗 NS1 P1 S1 n: 1 P S UI BRANCH=0 とした 場合の解決方法 Measuring switch NS2 M P S2 n: 1 S UI BRANCH=1 と し た 場合の解決方法 P2 UI Measuring switch のアイコンを開くと Output の選択窓が次図のように現れます。出力要求を する時は下向き矢印クリックして出力の指定をします。 出力指定は 0 でもエラーになりません。この例では電圧と電流を要求しています。 これをクリック して 出力候補 を選択します 7 計算結果は次図の如く、S1 対地電圧も、S2 対地電圧も正しく 100 V の Peak 値になっています。 次図は両電圧をプロットしていますが値が同じなので重なって表示されています。 100 [V] 75 50 25 0 -25 -50 -75 -100 0 10 (file Ideal_1pahse_tr.pl4; x-var t) v:S1 20 - v:S2 30 40 50 [ms] 60 - 2) 三相理想変圧器 デフォルトで用意されている三相理想変圧器を使用してみましょう 電源と三相理想変圧器の接続の注意事項は上記と同じです。 三相理想変圧器の使用例の一例として次図の回路の計算例を示します。 Measuring switch は単相用しか無いので次図のように Splitter を使用して三相回路に入れます。 理想変圧器一次、二次巻線が星型接続で 中性点が接地されています M P1 P M n: 1 S S1 UI Y Y M これは Splitter と呼ばれるもので三相表 示回路から単相表示回路に変換する時に 使用します。 フローティングメニューから Probes & 3-phase→Splitter (3 phase)を 選択して呼び出します。 100Ωの抵抗をデルタ接続した負荷です。 UI は各 100Ωの抵抗の両端電圧と電流を 出力するよう要求した結果表示されるも のです。U は電圧、I は電流を示します。 上図の三相理想変圧器の入力データは以下のとおりです。 8 電源電圧を Peak 値で 115.47 V と指定したので、電源側の線間電圧は 200 V Peak となり、理 想変圧器の結線が一次、二次共星型で、変圧比が次図に示すように 2:1 にするので計算結果の二 次線間電圧ピーク値は 100 V となるはずです。これを以下のように ATPDraw を使った計算で 確認しましょう。 三相理想変圧器の入力データは次のとおりです。 負荷抵抗は三相デルタ接続の負荷アイコンが用意されているので、フローティングメニューから 9 Branch Linear → RLC-D3ph を選びます。この呼び出されたアイコンを右クリックして次のよ うに入力します。 Measuring switch はエラー回避のため取り付けていますが、ここでは出力要求はしていません。 計算用の Setting は次のようにしています。 計算結果は次図の如く、二次側各負荷ブランチの線間電圧は正しく 100 V になっています。 10 100 [V] 75 50 25 0 -25 -50 -75 -100 0 10 20 (file Ideal_3phase_tr.pl4; x-var t) v:S1A -S1B 30 v:S1B -S1C v:S1C 40 50 [ms] 60 -S1A 3) 理想変圧器は直流回路にも適用できます 特殊な用途として、この理想変圧器は直流回路にも適用できます。変圧比で電圧、電流を変換で きます。この例を次に示します。 NS1 P1 I S1 n: 1 P S UI M 10Ω これは 1000 V の直流電圧源 で次に示す入力データです。 変圧器の入力データは次の通りです。 11 負荷抵抗値は 10Ωとしています。 計算結果は次のようになり、直流でも電圧、電流が変圧比で変換できることがわかります。 120 二次側電圧 100 V 100 80 60 40 一次側電流 1 A 20 二次側電流 10 A 0 0 10 20 (file dc_circuit_application_of_ideal_tr.pl4; x-var t) v:S1 30 - c:S1 - 40 c:NS1 50 [ms] 60 -P1 12 3. Saturable 1 phase と Saturable 3 phase Saturable 1 phase とは ATPDraw 上の Saturable 1 phase transformer を省略名称で、単相の 飽和する変圧器を指します。 また Saturable 3 phase とは Saturable 3 phase transformer の ATPDraw 上の省略名称で、三 相の飽和する変圧器を指します。 以下の説明では Saturable 1 phase を略して単相変圧器と称します。また Saturable 3 phase も 三相変圧器と称します。 Saturable とは飽和することができるという意味ですが、これは変圧器に定格電圧より高い電圧 を印加した場合や、又は鉄心に残留磁束のある状態で或るタイミングで電源に接続した時に鉄心 が飽和しますが、Saturable 変圧器とはこの鉄心が飽和する状態を模擬できる変圧器という意味 です。 実際の電力用変圧器は皆、この飽和特性を有しているので、このモデルを使えば実際の電力用変 圧器を模擬が出来ます。変圧器モデルの中でも最も使用頻度の高いと思われる重要にモデルです。 この Saturable 特性を待たせるため、変圧器モデル内にデフォルトで非線形の飽和励磁特性が 組み込まれています。 このデフォルト状態を変更することもできます。そのためにはこの特性を無効にした上で外部に 非線形のヒステリシスの飽和特性をつけます。詳細は 8 項で解説しています 最初に解説する単相変圧器は単に単相回路の変圧器として使われるのみならず、これを三台使用 して三相の Saturable 変圧器モデルを構成している極めて基本的な変圧器モデルです。 つまり、この単相変圧器を三台使用して、三相五脚鉄心変圧器、三相外鉄型変圧器、三相三脚変 圧器がモデル化されているので、単相変圧器は大変重要なもので単相変圧器の取り扱いをマスタ ーすれば三相変圧器は簡単に取り扱えます。 三相五脚鉄心変圧器、三相外鉄型変圧器は零相磁束の戻る鉄心の磁気回路があるため気中の零相 磁気抵抗を考慮する必要が無い変圧器群で、ATP の Rule Book では低リラクタンス(低磁気抵抗) の変圧器と称しています。 三相三脚変圧器は零相磁束の戻り鉄心磁気回路が無いため気中の零相磁気回路を通るので高リ ラクタンス(高磁気抵抗)変圧器と称されています。 この変圧器には気中の零相磁気回路を考慮する必要があり、零相磁束の戻り回路の模擬分だけ構 成は複雑になっていますが、変圧器部分や正相、逆相用の励磁回路部分は単相変圧器とまったく 同じなので、ATP の単相変圧器の取り扱いに習熟することが三相三脚変圧器にも役立つことに 変わりはありません。 13 4. 単相変圧器 単相変圧器の構成を知っておくとこの変圧器の理解の助けになると思われるので、以下に示しま す。 単相の二巻線の Saturable transformer は次の構成になっています。 変圧作用 を行うのは この理想変圧器 です 一次漏れインピーダンス 二次漏れインピーダンス これらは 励磁回路です。 この内の左側は Type98 と呼ばれる折れ線近似の飽和励磁特性です。 SATURA とは 実効値の励磁特性データから Type98 の Peak 値の励磁電流と 磁束鎖交数の非線形飽和特性 を自動的に計算してくれる プログラムです。 折れ線近似の飽和特性 のほかにヒステリシス特性も持たせた Type96 の非線 形 飽和特 性 も 変圧器 の外部 に取 り付け ること がで きます 。この 場合 内蔵の Type98 の特性を無効にする必要があります。(この方法は 8 項で説明してい ます ) 右側の RMAG は励磁損失を表す抵抗です。 上図の如く、理想変圧器が変圧作用を行わせるために使用されています。 一次、二次巻線には図の如く、それぞれ漏れインピーダンスが接続されるようになっています。 漏れインピーダンスとは上図の如く、変圧器を等価回路で表したとき、等価回路に直列に入る各 巻線の抵抗分と漏れリアクタンス分のベクトル和のインピーダンスです。 等価回路に直列に入りますから負荷電流に直接作用し、電圧降下の発生や短絡電流制限、並列変 圧器の負荷分担の決定などをする重要なものです。 漏れインピーダンスを構成する各巻線の抵抗分には巻線の直流抵抗のほかに次の等価抵抗を含 まれるのでご注意ください。 等価抵抗とは漏れ磁束によって発生する巻線の渦電流損、漏れ磁束によって発生する鉄心クラン プ、タンク外壁、鉄心などの渦電流損または漏れ磁束に基づくヒステリシス損の抵抗です。この 意味で漏れインピーダンスの抵抗は実際に作用する全抵抗を考慮しているという意味で交流交 流抵抗又は交流抵抗と呼ばれますが以下の説明では交流抵抗と統一します。 このように漏れインピーダンスの内の抵抗値は巻線の直流抵抗ではなく、交流で計測された交流 抵抗で表現されています。 漏れリアクタンスについての説明は次のとおりです。 変圧器に負荷電流が流れると、それによって二次巻線または三次巻線による AT(アンペアターン、 起磁力のことですね)による磁束が鉄心中に発生するので、電磁誘導則でこの発生磁束を打ち消 すように一次巻線には負荷電流が流れます。このため鉄心中の二次、三次巻線の負荷電流で発生 した磁束は一次負荷電流の磁束でキャンセルされ、結果として鉄心中には印加電圧とバランスす るのに必要な主磁束のみが存在することになります。 一方負荷電流が流れると鉄心の外側では一次、二次巻線、三次巻線で作られる磁束の一部が鉄心 14 から漏れ、一次巻線のみ、二次巻線とのみ、または三次巻線のみと鎖交する漏れ磁束が発生しま す。 この漏れ磁束鎖交数 は電気回路的に各巻線の漏れインダクタンス L があるために負荷電流に よって L i で発生していると考えることができます。このように漏れ磁束鎖交数を発生させ るインダクタンスを漏れインダクタンスし称しています。この漏れインダクタンスに商用周波数 の角速度ωを乗じたものが漏れリアクタンスです。 これからおわかりのように漏れ磁束は、印加電圧とバランスするように誘起電圧を発生させる励 磁電流の主磁束とは別物で、負荷電流によって発生するものです。 尚、漏れインダクタンスは実際には各巻線に分割することはできません。したがって各巻線の漏 れインダクタンスと言っても ATP の変圧器モデルの入力データの入力方法がそのように各巻線 に入力するようになっているため、止むを得ず、変圧器全体としての漏れインピーダンス値が変 わらないように便宜上各巻線に分割しているだけですので注意が必要です。 したがって変圧器メーカの仕様書に各巻線ごとの漏れインダクタンス値が明示されることはあ りません。 それでは各巻線の漏れインピーダンスの入力データの作成をどうすればいいかということにな りますね。 これらの入力データは一般に変圧器メーカから入手できる変圧器データから本稿の第 4.2 項又 は 5.2 項に述べる方法で私達が計算して求める必要があります。じつはこの各巻線の漏れインピ ーダンス値を求める作業と励磁特性を求める作業は Saturable transformer の入力データを作 成する上で、かなりのウエイトを占めています。言い換えればこれに習熟すれば Saturable transformer の取り扱いが楽になるということになります。このため本稿ではこの算出方法に注 力して説明しています。 具体的な漏れインピーダンスの入力値の算出は後で説明することにしてとりあえず漏れインピ ーダンスの話はこれくらいにして次に進みましょう。 前出の単相変圧器の構成図中の励磁回路の SATURA と表記してあるのは非線形リアクトルで折 れ線で飽和励磁曲線を近似している飽和励磁特性です。 (“SATURA” とは後述するように励磁 特性を算出するサブルーチンプログラムの名称です。SATURA を使って算出した非線形励磁特 性の意味合いで “SATURA”と表記されているだけです。) 鉄心が飽和した状態になるとこの励磁回路に励磁電流が多く流れるようになります。 入力データの内のこの飽和を表す励磁特性(変圧器アイコンを開いた時の Characteristic の特性) を何も入力しないと、ATP はこの非線形飽和励磁特性は存在しないものと見なします。 変圧器の飽和励磁特性は磁束鎖交数( V sec )の Peak 値と励磁電流(A)の Peak 値の対で飽和励磁 特性上の点を何点か入力するようにします。 ここで留意したいのは通常励磁特性として入手できるデータは励磁電圧と励磁電流の実効値の データですから、飽和励磁特性の入力データを作成するために次の変換作業が必要になります 励磁電圧実効値 磁束鎖交数( V sec )の Peak 値 励磁電流実効値 励磁電流(A)の Peak 値 この変換作業のために用意されているのが “SATURA” と呼ばれるサブルーチンプログラムで ATP の中に用意されています。通常の励磁電圧実効値と励磁電流実効値を“SATURA”に入力す れば最終的な磁束鎖交数 v.s. 励磁電流 Peak 値の特性が得られます。 15 SATURA の使い方については第 7 項に説明しています。 実はこの変換作業を省略して実効値の励磁電圧、励磁電流の実効値をそのまま入力できる方法も あり、本稿でも第 4.1 の 1)項で説明しています。 変圧器の構成図の説明に戻ります。 RMAG は励磁損失を表す抵抗です。 励磁回路のところに書かれている BUSTOP とは上図に示す如く、変圧器モデル回路の内部の励 磁回路ブランチが接続されるノード名です。このノードの三相変圧器用のノード名を Rule book ではでは Star point とも呼んでいます。三相変圧器の Star point の詳細は 5.2 項で説明してい ます。 ATPDraw ではこの励磁回路の BUSTOP の名称は変圧器台数に応じて TX0001, TX0002 …の ように自動的に採番されるので、人間系でデータとして入力する必要はありません。 BUS1-1, BUS2-1 と BUS1-2, BUS2-2 これらは一次巻線端子と二次巻線端子の図面上の端子名を示しています。この端子名はフルファ ベットと数字の組み合わせた 6 桁の任意の名前を人為的にもつけることができます。人為的に つけなければ ATPDraw の方で自動的に名前を付けてくれます。 単相三巻線変圧器のような多巻線線変圧器の構成は次に示すように、巻線を BUSTOP より分岐 して追加することで作成できます。 ATPDraw では特に特にこの単相三次巻線付変圧器は特に用意されていませんが次のようにす れば模擬できます。 1) 単相変圧器モデル内蔵の励磁特性を無効にした上で励磁特性は変圧器モデルの外部に取り 付けます。 内蔵の励磁特性を無効にするには Io, Fo 共に 0 とします。又非線形の飽和特性も何も入力し ません。 2) 変圧器モデルの漏れインピーダンス L1, R1 は微小な値とします(例インダクタンスは 1E-4(mH)、抵抗値は 1E-4(Ω)など)。その代わり本来の L1,R1 は変圧器の一次側の外側に 接続します。 3) 三次巻線用の単相変圧器を 1)の変圧器一次端子に並列に接続します。 16 この変圧器の一次巻線の漏れインピーダンスは 2)で入力されるので微小な値を入力します。 (例インダクタンスは 1E-4(mH)、抵抗値は 1E-4(Ω)など)。 この変圧器の二次巻線の漏れインピーダンスが三次巻線の漏れインピーダンスになります。 この変圧器の変圧比は定格一次電圧、定格三次電圧とします。 4) この三次巻線用変圧器の励磁特性は Io, Fo 共に 0 とします。又非線形の飽和特性も何も入力 しません。1)で変圧器モデルの外部に取り付けた励磁特性を共用します。 上記に従って作成した ATPDraw の単相変圧器を用いた単相 3 次巻線付変圧器の構成図を次図 に示します。 ATPDraw による単相三巻線変圧器の構成 外付けにした一次巻線 漏れインピーダンス PS 二次巻線 NP NS P 外付けにした励磁特性 I S 三次巻線 NT P I S これらの 単相変圧器の励磁特性は既に外付けした ので無しとし、又一次巻線漏れインピーダンス も 既に外付けしたので微小漏 れインピーダンスをエ ラー回避のため入力しておきます。 但し二次巻線の漏れインピーダンス、三次巻線 の 漏れインピーダンスには正規の値を入力します。 次に Saturable transformer モデルを動かすための入力データについて説明します。 17 4.1 単相変圧器の入力データの説明 1) Attributes Tag のデータ入力 本項では単相変圧器を動かすための入力データとしてどのようなものがあるか説明します。その 後、項を改めて具体的に変圧器の一般に入手できるデータから Saturable transformer の入力デ ータを導出する例を紹介します。 先ず Saturable transformer のアイコンを呼び出しましょう。 キャンバス上で右クリックし、フローティングメニューを開いて、Transformers→Saturable 1 phase を選択します。 すると次の単相変圧器のアイコンが表示されます。 P S このアイコンを右クリックすると入力データの窓が次のように現れます。 スクロールバー 上図の入力窓の右側にある上下方向のスクロールバーを使い更に入力データの下の方を見ると 次の 2 項目の入力データが現れます。 18 スクロールして現れ た新しい入力項目 単相変圧器を使うためには基本的にはこれらの入力窓すべてに入力する必要があります。 先ず、Attributes(属性)の Tag をクリックして開く入力項目の説明を致しましょう。 各入力項目の簡単な説明は上図右下の Help ボタンを押せば表示されます。これだけの説明では 若干不足であると思われるので以下に各入力窓の説明を行います。以下でも不足と感じられる場 合は JAUG のパスワード保護サーバの Rulebook/ 内の Rb-04e.pdf をご参照お願い致します。 Io 定常状態の励磁電流です。Peak 値で入力します。単位が Volts になっていますがこれ は Ampere の単純間違いです。 Fo 定常状態の磁束鎖交数の Peak 値です。単位の Vs は volt sec . の意味です。磁束鎖交 数を とすれば、 v t d の関係式から、磁束鎖交数 の単位は volt sec . であること dt がおわかりになると思います。 又磁束の単位は Wb であるのでターン数(巻数)を T とすれば磁束鎖交数は Wb-T とも 表せます。つまり磁束鎖交数の単位は volt sec . .=Wb-T で、どちらの単位にしても数値 は変わりません。 Rule book では磁束鎖交数を単に磁束と称していますが正確には磁束ではなく、磁束 鎖交数が正です。 Io と Fo の一対で定常状態の線形励磁インダクタンス値を規定しています。 Io と Fo の一対は定常状態の線形の励磁インダクタンス値を規定するだけで、飽和励 磁特性については未だ何も規定していないことになります。定常状態の計算はこの Io と Fo を使って行われます。 この Io, Fo だけ入力して非線形の励磁特性データを入力しないと ATP は励磁回路には この線形のインダクタンスが存在すると見なし、飽和特性は存在しないと見なします。 この定常状態の Io, Fo 値については飽和値の 70%以上の値にしなければならないと 19 いう ATP のルールがあるので守る必要があります。 飽和励磁特性は、上図の Characteristics の タグをクリックしてサブルーチン “SATURA”で作成した何点かの励磁電流(A)の Peak 値と、その時の磁束鎖交数(Wb-T)の Peak 値を入力します。このように線形の インダクタンスを幾つか集めて直線近似の飽和特性が形成されるようになっています。 これらの Peak 値は励磁電圧と励磁電流の実効値からサブルーチンプログラム “SATURA”を使って求めることができます。 飽和特性の入力方法はこのように励磁電流(A)の Peak 値と、その時の磁束鎖交数 (Wb-T)の Peak 値を入力で入力する他に、オプション機能として励磁電流実 効値と印加電圧実効値を入力する方法があります。オプション機能を採用するには 後述の RMS のところに 1 を入力します。 具体的な Io, Fo の入力方法は次項の 2) Characteristic(励磁特性) Tag への入力で説明 しています。 Rmag JAUG パスワード保護サーバにある Rule book RB-04E.pdf の Page 306 に Io,Fo の 例題があります。これの説明は第 11 項で解説しています。 鉄損を表す線形の抵抗値です。この値は鉄損 Pex.loss W と鉄損を測定した側の巻線 の測定電圧 V Rmag V2 Pex.loss V から次式で算出できます。 (Ω) もし、この Rmag = 0 と入力すると、Rmag 値は∞と解釈され、鉄損抵抗は無いもの と解釈されます。 Rp 一次側巻線の漏れインピーダンスの内の交流抵抗です。Ω値で入力します。 各巻線の漏れインピーダンスの抵抗分、インダクタンス分の求め方は 4.2 の 4)項で説 明しています。 Lp 一次巻線の漏れインピーダンスの内の漏れインダクタンス値です。mH の単位で入力 します。 Vrp 一次巻線の実効値の定格電圧です。(KV)の単位で入力します。 (変圧比を規定しているだけですから Vrp と Vrs の単位が同じであれば KV にこだわる 必要性はありません) Rs 二次巻線の漏れインピーダンスの内の交流抵抗です。Ω値で入力します。 Ls 二次巻線の漏れインピーダンスの内の漏れインダクタンス値です。mH の単位で入力 します。 本来漏れインピーダンスは一次、二次巻線に分割できないものですが、入力上、この ように漏れインピーダンスを一次、二次巻線に分割して入力するようになっているの で、変圧器全体の漏れインピーダンス値が変わらないように、変圧器全体の漏れイン ピーダンスを一次巻線と二次巻線に分割して入力するようになっています。分割比率 は任意ですが通常は一次、二次巻線に半ずつ分割します。 Vrs 二次巻線の実効値の定格電圧です。(KV)の単位で入力します。 RMS デフォルトの 0 を入力すると飽和励磁特性を励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値で 20 入力することを宣言することになります。この場合サブルーチン「SATURA」を使っ て実効値の励磁特性から Peak 値の励磁特性に変換する必要があります。 また 1 を入力することは飽和励磁特性を励磁電流実効値と印加電圧実効値で入力する ことを宣言することになります。 これらの 0 又は 1 のことを ATP では Flag(旗)と呼んでいます。 RMS を 1 にすると変圧器メーカからの実効値の励磁特性をそのまま入力できるケース が多く、便利ですのでお奨めです。 2) Characteristic(励磁特性) Tag への入力 次に Characteristic の Tag をクリックして開く励磁特性の入力欄について説明いたします。 この Tag をクリックすると次の窓が開きます。 右上の Add ボタンをクリックすると次図のように飽和特性カーブ上の一点を定義する データ入力窓が開くので励磁特性データを RMS の Flag で決まる Peak 値又は実効値 で入力します。 単相変圧器にデフォルトで組み込まれている励磁特性は Type-98 Pseudo-Nonlinear Reactor と呼ばれる非線形励磁特性です。 これは励磁飽和特性をいくつかの直線のセグメントの折れ線で近似したものです。 通常はこれを使って各種シミュレーションをしますが、残留磁束を考慮したい場合や ヒステリシス損も考慮したい場合は Type-98 Pseudo-Nonlinear Reactor の代わりに Type-96 Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor を変圧器の外部に接続して使うこと もできます。このようにするには内蔵の非線形飽和特性は何も入力せず、又 Io,Fo に も 0 にしておきます。 Type-98 Pseudo-Nonlinear Reactor と Type-96 Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor の非線形励磁特性の詳細については JAUG のパスワード保護サーバ内の Rule Book RB-05A.PDF 内に説明がありますのでご参照願います。 21 さて話を戻し、デフォルトで組み込まれている Type-98 Pseudo-Nonlinear Reactor の 励磁特性データの入力方法について説明いたします。 非線形励磁特性上の一点を決定する励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値(または RMS フラッグを 1 とした場合は励磁電流実効値と励磁電圧実効値)の一対のデータの 入力を完了するごとに Add ボタンを押し、データを入力して行きます。 これらの励磁電流の Peak 値とその励磁電流に対する磁束鎖交数の Peak 値は ATP の サブルーチンプログラム「SATURA」で求めることができます。 「SATURA」の使い方については第 7 項に記載したのでご参照願います。 最後の励磁特性上の点を指定し終えたら OK ボタンを押せば励磁特性の入力は完成し ます。 カードイメージの入力データを手作業で作成する場合、最後の励磁特性上の点を指定 し終えたら、9999 を最後に入力する必要がありますが、ATPDraw ではこの入力は ATPDraw がやってくれるので入力しなくて大丈夫です。 以前作成した励磁特性がある場合、次のように Copy & Paste で簡単に励磁特性の入力 作業を行うことができます。 ①以前作成した ATPDraw の変圧器のアイコンから Characteristic のタグをクリック し励磁特性を開きます。 ②開いた Characteristics タグの下部にある Copy ボタンを押します。 ③次にこれから励磁特性を入力しようとする変圧器の Characteristic タグを 開き、Paste ボタンを押します。すると一発で Copy した非線形励磁特性の 全てを貼り付けることができます。 この Copy & Paste 機能は Type 98 Pseudo-Nonlinear Reactor のみならず、 22 Type 96 Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor にも適用できます。 尚、上述の励磁特性の入力は単相変圧器のみならず、三相変圧器も全く同 じです。 このようになるのは ATP の三相変圧器は単相変圧器 3 台を使用して 模擬するようになっているからです。 ヒステリシスループを有する励磁特性を入力する場合 ATP の Saturable transformer は Type 98 の非線形励磁特性を内蔵しているので、 この内蔵されている Type 98 の励磁特性を無効にした上で、変圧器に外付けで Type 96 の Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor を接続します。 内蔵されている Type 98 Pseudo-Nonlinear Reactor を無効にするには 変圧器の Characteristic のところに何も入力しなければ済みます。Attributes Tag の Io,Fo にも何も入力しません。もし入力すると Type 96 Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor の他に Io,Fo で定義される線形インダクタンスが入ることになってしまうた めです。 単相変圧器の場合に Type 96 の Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor を接続する方法は次図に示すように単相変圧器の巻線漏れインピーダンスの外側に取 り付けます。 このように接続すると Type96 の Inductor の接続点の対地電圧と鉄心に印加される対 地電圧に差が出てしまい、問題であるので、対策として漏れインピーダンス値は極め て小さな値を入力し、その代わり、Type 96 のインダクターの外側に正規の漏れイン ピーダンスのブランチを電源と直列になるように接続します。 外付けした Type 96 Hysteretic Inductor 右 に 記 す よ う に 変圧 器 内 部 の 漏れ イ ン ピ ー ダンスを極めて小さい値にしているので、そ の か わ り 本 来 の 漏れ イ ン ピ ー ダン ス 値 に な るように インピーダンスを外付けします。 こ の巻 線の 漏れイ ンピ ーダ ンス 値 はで き るだけ小さくします 鉄損抵抗 もう一方の巻線の漏れインピーダンス 理想変圧器 三相変圧器のアイコンを使う場合は Star point に Type 96 の Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor を接続することができます。(5.1 項をご参照ください) ヒステリシス特性データを得るには次のように行います。 ATP のサブルーチンプログラム「HYSDAT」を使用して、ヒステリシスループが第一 23 象限で象限に於いて二本の曲線から一本の曲線になる励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値を入力し、且つ Rule book で要求されているその他の指定を指定した後、 「HYSDAT」を走らせれば、ヒステリシス特性を有する励磁特性の各点のデータが得 られます。 得られた計算結果を Characteristic に入力すれば OK です。 尚、ヒステリシス特性はヒステリシスの閉ループを構成する全ての点を入力する必要 が無く、ヒステリシスループの下半分の特性データを入力すれば良いことになってい ます。 「HYSDAT」を走らせて得られる励磁電流の Peak 値 v.s. 磁束鎖交数の Peak 値の各 点もヒステリシスループの下半分のデータです。 「HYSDAT」の具体的な適用方法については第 8 項に記していますので、ご参照願い ます。 以上で入力項目の説明を終わり、次に具体的に一つの変圧器を取り上げ、入力データを作成して みましょう。 4.2 入力データの作成方法の説明 次の変圧器を例に取って変圧器の入力データを作成してみましょう。 この変圧器は Rule book のセクション IV-E で変圧器入力データの作成例題として取り上げられ ている単相変圧器です。尚、この例題と同じく基準巻線温度への換算は省略しています。 定格出力 S: 励磁損 Pex: 励磁電流 Iex(実効値): 短絡テスト時の有効電力入力: 0.0063 MVA 65 W (220 V 巻線側で 220 V を印加して測定した値) 1.85 A (同上) 95 W(高圧巻線に電源を接続して短絡テストを実施した結 果) 短絡テスト時の電流: 16 A (同上) 短絡テスト時のインピーダンス電圧: 8.3 V (同上) 電圧定格: 一次 220 V / 二次 377 V 定格周波数: 50 Hz 飽和特性 無し。励磁インダクタンスは線形であると仮定しています。 1) Io, Fo を求めます この例では一次定格電圧 220 V を印加した時の励磁電流 Iex=1.85 A が与えられているので、こ れらから Io, Fo を求めます。 Io, Fo の Peak 値を求める方法はもともとサブルーチンプログラム “SATURA”を使って求めま すが、このサポートルーチンを使わずとも Io, Fo の関係が線形と見なせる範囲であれば次のよ うに簡単に求められます。 220 V を印加する定常状態で、鉄心が飽和していないと見なせる励磁特性であれば、原点からそ の点までは線形ですから、定常状態の運転点については次のように手計算で簡単に励磁電流ピー ク値と磁束鎖交数 Peak 値を求めることができます。 励磁電流 Peak 値は実効値が 1.85 A rms であるのでピーク値は 1.85 2 2.616 A となります。 多くの変圧器の教科書に記載されている BH 曲線から磁束の正弦波曲線から励磁電流歪波形を 導出する関係図で BH 曲線が原点から直線とみなせれば、励磁電流も正弦波となり、このよう になること理解戴けると思います。 次に磁束鎖交数を求めましょう。誘起電圧と磁束鎖交数の関係式は次式です。 24 e t d t d t (1) この式を積分形で表現すると、 t et dt 2 E rms sin t dt (2) となります。ここで E rms は電圧の実効値です。 この積分を行うと磁束鎖交数に関する次式が得られます。 t 2 E rms cos t 2 E rms cos t E rms cos t 2 f 4.44288 f (3) 磁束鎖交数はこのように余弦曲線になるので、この磁束鎖交数の式の最大値は max E rms 4.44288 f (4) なので、この式から磁束鎖交数の最大値を求める ことができます。 この例題の場合は max 220 0.990 4.44288 50 V sec 又はWb T となります。 もし定格電圧で飽和の影響があるようであれば、サポートルーチン SATURA を使用して 励磁電流 Io と磁束鎖交数 Fo の Peak 値を求めます。 2) 飽和特性の入力 この例題では飽和特性を無しとしていますが、飽和特性を考慮する場合は入力窓に表示されてい る Characteristic のタグをクリックし、飽和特性を入力します。飽和特性に何も入力しないと 飽和特性は存在せず、Io, Fo で決まる線形の励磁インダクタンスのみが存在するとプログラムの 方で解釈されます。 飽和特性の入力は励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値の対で入力する方法と 励磁電流実効値と励磁電圧実効値の対で入力する方法が選択できます。 この選択は入力項目の内の RMS のフラッグを 1 にすれば励磁電流実効値と励磁電圧実効値の対 の入力となり、RMS のフラッグを 0 にすれば励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値の対で入 力することを宣言することになります。 励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値の対で入力する場合はサブルーチンプルグラム “SATURA”を使い、変圧器メーカから入手できる励磁特性曲線に示されている励磁電流実効値と 励磁電圧実効値を入力して、SATURA を走らせて、これらの Peak 値を求めてから Characteristic に入力します。 RMS のフラッグを 1 として、変圧器メーカより入手できる励磁特性の励磁電流実効値と励磁電 圧実効値を直接入力する方法は SATURA を走らせる必要が無いので簡便です。 変圧器モデルに内蔵されている飽和特性は Type 98 の非線形飽和特性で、これは一本の直線セ グメントを何本か接続して飽和特性を直線近似しています。ATP の励磁特性はこの他にヒステ リシス特性を有する Type 96 の飽和特性も用意されています。これについては第8項に解説し ています。 さて、次の入力項目の説明として順番から行けば Rp, Lp ですがこれは Rs, Ls と一緒に後で説明 する事とし、Vrp, Vrs について説明します。これらは変圧比を規定します。 Vrp Vrs 定格一次電圧が 220 V の実効値です。KV 単位で入力するので 0.22 と入力します。 定格一次電圧が 377 V の実効値です。KV 単位で入力するので 0.377 と入力します。 さて次は Rp, Lp と Rs, Ls の説明です。 25 これらは変圧器の漏れインピーダンスと呼ばれるものですね。 これらのデータ入力に際しては、変圧器メーカから与えられる変圧器全体の漏れインピーダンス を一次巻線と二次巻線に分割、あるいは三次巻線付変圧器では更に三次巻線にもこれらの漏れイ ンピーダンスを分割して入力する必要があります。 これら作業を行う上で漏れインピーダンス、%IZ,%IR の意味について知っておく必要があるの で以下に説明します。 3) Saturable transformer の漏れインピーダンスの入力データ作成 ATP では各巻線に対して、当該巻線の漏れインピーダンスを入力するようになっているので、 変圧器メーカから提示される変圧器全体の漏れインピーダンスを各巻線に分割して入力する必 要があります。 この分割作業は ATP ユーザが変圧器メーカより提示される定格容量、定格電圧、%IZ、%IR の 諸量を使って作業を行う必要があります。 この作業は基本を理解してしまえば何も難しいことはありません。 ここでは基本を御理解戴くためメーカから入手できるデータから各巻線の抵抗値とインダクタ ンス値(mH の単位)に変換するまで作業をできるだけ易しく解説したいと思います。 一度基本を理解したら本稿に紹介している変換式を Excel などに組み込んでおき、変圧器メーカ のデータからの漏れインピーダンスに関するデータをそれに入力し、機械的に各巻線の抵抗値と mH 単位の漏れインダクタンス値得られるようにしておくことをお奨めします。 その都度、基本に戻って手作業で変換作業をするのは大変ですし、また途中の過程で計算ミスを 回避できます。 具体的な作業に入る前に漏れインピーダンス、%IZ、交流抵抗、%IR、%IX の求め方について復 習しておきましょう。 それには次項以降に述べるように変圧器の漏れインピーダンスがどのように測定されて、それら の測定値から漏れインピーダンス、交流交流抵抗及び漏れリアクタンスがどのように求められる かという点を見て行くのが良いと考えます。 26 4) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスデータの作成 4.1) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの測定 最初に単相二巻線変圧器の漏れインピーダンス測定方法を紹介します。 通常インピーダンス測定は次図の如く、当該変圧器の低圧巻線を短絡しておき、高圧巻線に高圧 巻線の定格電流 I 1n ( A) を流し、この時高圧巻線端子間に生じるインピーダンス電圧 V1 (V ) を測定 します。 以下の説明も、この通常のインピーダンス測定方法にならい、試験電源は高圧巻線に接続される 前提で説明をして行きます。 このインピーダンス測定は変圧器の標準試験項目で、インピーダンス試験と呼ばれている試験項 目になります。この試験を ATP の Rule book では短絡テストと呼んでいます。 高圧巻線に換算した低圧巻線 漏れインピーダンス Z L 低 圧 巻 線 は 短 絡 + I 1n A 高圧巻線漏れインピーダンス Z H V1 V 励磁インピ ーダンス 上図の励磁インピーダンスは大きく、低圧側は短絡されているので電源からの電流は励磁インピ ーダンスに殆ど流れず、上図の朱線で示したルートを通り電源に還流します。 このため、巻線温度 t℃の時に測定した高圧巻線から見た変圧器全体の漏れインピーダンス Z1t は Z 1t V1 I Z H Z L 1n I 1n I 1n () (5) として求められます。 この時得られる漏れインピーダンス値は上図から明らかなように、高圧巻線側に換算した低圧巻 線の漏れインピーダンス Z L と高圧巻線の漏れインピーダンス Z H の和、つまり高圧巻線側から 見た変圧器全体の漏れインピーダンス値になります。 しかしこの漏れインピーダンスは (5)式のようにΩ値で表されることは少なく、一般には次項の 定義式による % IZ t で表されます。ここでサフィックスの t は測定時の巻線温度が t℃の時の % IZ であることを示しています。変圧器メーカから提示される % IZ はこの % IZ t から更に絶縁種別に よって決まる基準巻線温度に既に変換されているので単に % IZ と表現されます。ここでは未だ t℃の時の測定値なので % IZ t としています。 4.2) % IZ t への変換 % IZ t は高圧巻線の定格電圧を V1n 、低圧巻線の定格電圧を V 2 n 、高圧巻線の定格電流を I 1n 、低圧 巻線の定格電流を I 2 n 、巻線温度 t℃の時の測定された高圧側から見た変圧器全体の漏れインピ ーダンスを Z 1t 又二次側から見た変圧器の全漏れインピーダンスが Z 2t である時の % IZ t は次のように定義されます。 % IZ t 値のインピーダンスZ 1t I Z I Z 1n 1t 100 2 n 2t 100 その回路のベースインピーダンスZ base V1n V 2n % (6) %IZ は正式には百分率インピーダンス電圧のことですが、これは%アイゼットとそのまま発音す るか、または単にパーセントインピーダンスなどと略称されることもあります。 27 百分率の代わりに百分率の値を 100 で除した PU 値(Per Unit 値)もあり、後者の表現も広く使 われています。本稿では百分率の表現で話を進めて参ります。 Ω値表現では高圧側から測定した場合の漏れインピーダンス値と低圧側から測定した漏れイン ピーダンス値は異なりますが、このように % IZ で表せば高圧側から見た % IZ と低圧側から見た % IZ も等しくなるので、或るベース容量で換算した % IZ に統一しておけば複数の変圧器が接続 される時など、変圧比を気にすることなく % IZ の単純な直、並列計算で合成インピーダンスを 求めることができるため、Ω値による表現より % IZ による表現が広く使われています。 (6)式が成立することは次のことから明らかでしょう。今変圧比 を V1n I w 2n 1 V2n I 1n w2 Z 2t Z 1t 2 V Z1t 2n V1n (7) とし、変圧器の定格出力を S(VA)とします。 (8) です。これらの関係式を(6)式の右側の式に代入 2 すれば、 I 2 n Z 2t I 100 2 n Z 1t V2 n V2n V 2 n V1n 2 V I I S 100 Z1t 2n 2n 100 Z1t 100 Z 1t 1n 100 2 2 V1n V1n V1n となり、(6)式 が得られます。 4.3) 交流抵抗の算出 このインピーダンス試験の際、電源から変圧器に供給される巻線温度 t℃の時の有効電力も一緒 に測定されます。この有効電力測定から、以下の交流抵抗を求めることができます。 交流抵抗とは巻線抵抗およびその他の抵抗分である漂遊負荷損(つまり漏れ磁束によって発生す る巻線の渦電流損、漏れ磁束によって発生する鉄心クランプ、タンク外壁、鉄心などの渦電流損 または漏れ磁束に基づくヒステリシス損)の抵抗分を含めた交流に対して実際に働く抵抗です。 交流抵抗とも呼ばれます。 変圧器の巻線抵抗というものがあり、これは直流で測定され、巻線だけの直流抵抗で交流抵抗で は無いので注意が必要です。 この交流交流抵抗値は直流の巻線抵抗に比べて漂遊負荷損を含んでいるのでその分大きな値に なります。 この交流交流抵抗は一次巻線に電源を接続して巻線温度 t℃の時の時に定格一次電流を流した時 に電源から入力された有効電力(インピーダンスワット)が W1t(W)と計測されれば、一次側から 見たこの変圧器の全抵抗 R1t は次のように求められます。 R1t W1t I 1n 2 (9) () もしインピーダンス測定時に電源容量などの問題で定格一次電流を流せず、定格電流以下の I 1 (A)で試験し、その時の入力が W1at (W)の時、定格一次電流の時の入力 W1t (W)は、定格出力を 2 S ですから次の(10)式になるので、(10)式の結果 S(VA)とすれば、 R1t W1at / I 1 2 であり I 1n V1n を(9)式に入れて R1t を求めることができます。 W1t 交流実効抵抗R t 定格一次電流I 1n 2 W1at S I 1 2 V1n 2 (10) 28 4.4) 交流抵抗値の % IR への変換 一般にこの交流交流抵抗も(9)式のΩ値の形で使われることは少なく、次式で定義される % IR の形式で使われます。次式は巻線温度 t℃の時の抵抗値を使っているため % IRt と表記してい ます。基準巻線温度に換算したものは % IR と表記されています。これは百分率抵抗電圧のことで すが、これは通常%アイアールとそのまま発音するか、またはパーセント抵抗などとも略称され ることもあります。 このように%IR が広く使われるのは%IZ が採用されている理由と同一です。 巻線温度 t℃の時の % IRt は高圧一次巻線の定格電圧、定格電流をそれぞれ V1n 、 I 1n とし、(9)式 で求められた一次側から見た変圧器の全交流交流抵抗を R1t とすれば(11)式で定義されます。 % IRt I 1n R1t I 2 R1t W 100 1n 100 1t 100 (%) (11) V1n V1n I 1n S R1t を基準巻線温度の抵抗値に換算して R1 (Ω)であれば、基準巻線温度に換算した % IR は次式の 如く求められます。 % IR I 1n R1 I 2 R1 W 100 1n 100 1 100 (%) V1n V1n I 1n S (12) となります。 4.5) % IX の求め方 (6)式と(11)式から % IX は次式のように求められます。 % IX % IZ t 2 % IRt (13) 漏れリアクタンスは温度で変わらないので、基準巻線温度でも(13)式で求めた % IX の値です。 4.6) % IZ の求め方 従って、(12)式と(13)式から、基準温度に換算した % IZ は次のようになります。 Z 1 , Z 2 は基準巻線温度の時のそれぞれ一次側から見た漏れインピーダンスと二次側から見た漏 れインピーダンスです。 % IZ % IR 2 % IX 2 I 1n Z 1 I Z 100 2 n 2 100 V1n V2n % (14) 変圧器メーカから提示される % IR , % IZ の値はこのように全て基準巻線温度に換算してあります。 上述の説明でインピーダンス試験は通常の測定方法に則り、高圧巻線から測定することで説明し ましたが、高圧巻線を短絡して低圧巻線に電源を接続して定格二次電流を流して測定する方法も 考えられなくはありません。しかしその場合は電流が大きくなり電源容量や巻線温度上昇の問題 があるので低圧巻線から測定されるケースはあまりありません。 4.7)ご参考 一次巻線、二次巻線の区別と変圧比 通常は電源に接続される方の巻線が一次巻線と言われ、負荷側に接続される巻線が二次巻線にな ります。 この定義ですと潮流が運転中に逆転する場合、一次側は潮流が逆転すると一次、二次が逆転する ことになってしまいますね。このような場合は慣習上高圧巻線を一次巻線と呼んでいます。 このように一次巻線、二次巻線の定義は必ずしも厳密ではありません。 一方、4.2 の例題のようにインピーダンス試験結果から変圧器の入力データを作成する上で無負 荷試験、インピーダンス試験時に試験電源が何れの巻線に接続されて実施されたかということは 次のことから重要です。 29 ATP の二巻線変圧器モデルを例に取れば、ATP は漏れインピーダンスを一次巻線、二次巻線に 分割して入力されることを要求しているため、変圧器全体の漏れインピーダンスを通常のやりか たでは半分ずつ一次巻線、二次巻線に分割しますが、この時変圧比の二乗で変圧器全体の漏れイ ンピーダンスの半分を相手側巻線のインピーダンス分として等価変換します。この時、電源がど ちら側に接続されてインピーダンス試験が行われたかにより変圧比の分子、分母が逆転します。 従って変圧比は常に(7)式のとおりと固定して考えるとインピーダンス分割が正しく行えません。 この例は 4.8)の d-3 で説明しています。 したがって、インピーダンス試験は一般に一次巻線に電源が接続されて試験されるという一般論 で判断することなく、実際に何れの巻線に試験電源が接続されて試験されているかという点を確 認して正しい変圧比を採用して漏れインピーダンスを分割する必要があります。 4.8) 漏れインピーダンスの各巻線への具体的な分割作業 a. 最初に%IZ から変圧器全体の漏れインピーダンス Z(Ω)を求めます 漏れインピーダンスの分割作業は % IZ を使って開始します。 変圧器メーカから与えられる%IZ 値から、変圧器全体の漏れインピーダンス値は (14)式を変形 した次の(15)式で求めることができます。一次側から見た変圧器全体の漏れインピーダンス Z 1 は Z1 % IZ V1n 100 I 1n この式の形は、 (15) V1n がこの変圧器の一次側の 100%のインピーダンスであるので、この 100%イ I 1n ンピーダンスに%IZ を乗じ、100 で序したものが一次側から見た変圧器全体の漏れインピーダン スという覚えやすい形になっています。 b. 次に単相二巻線変圧器全体の交流交流抵抗を求めます (12)式を変形した次の(16)式を利用して、%IR, 定格電圧、定格電流のデータから一次側から見 たこの変圧器全体の交流交流抵抗 R1 値を求めます。 R1 % IR V1n 100 I 1n (16)式の形も、 (16) V1n がこの変圧器の一次側の 100%のインピーダンスで、この 100%インピーダ I 1n ンスに%IR を乗じ、100 で序したものが一次側から見た交流交流抵抗という形になっています。 この変圧器全体の交流交流抵抗 R1 を一次巻線の交流交流抵抗と二次巻線の交流交流抵抗に分割 のうえ ATP の変圧器モデルに入力する必要があります。漏れリアクタンス分も同様で全体のリ アクタンス値を一次巻線と二次巻線に分割し、更にこれらのリアクタンス値は mH の単位に変 換してから入力する必要があります。 c. 単相二巻線変圧器全体の漏れリアクタンス X(Ω)を求めます (15)式から求めた変圧器全体の漏れピーダンスと、(16)式)から求めた交流交流抵抗から、一次 巻線側から見た変圧器全体の漏れリアクタンス X1 は X 1 Z 1 2 R1 2 (17) として求めることができます。 又は%IX から 30 % IX I 1n X 1 100 V1n X 1 % % IX V1n 100 I 1n (18) ですから、この式を変形して (19) としても一次巻線から見た変圧器全体 の漏れリアクタンス値を求められます。 以上で変圧器全体の漏れインピーダンスを構成する交流抵抗と漏れリアクタンスが求まったの で、次にこれらを一次巻線、二次巻線に分割しましょう。分割作業は次項のように行います。 尚、この分割作業を行わず、上記で求めた変圧器全体の漏れインダクタンスと交流抵抗をそのま ま変圧器の片方の巻線に集中して入力し、他の巻線には微小漏れインピーダンスを入力するとい う簡易入力法もあります。この方式の詳細は第 6 項に記載しています。 d. 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスを一次巻線分と二次巻線分に分割します 以下の説明は三相変圧器の漏れインピーダンス分割の基礎になります。 本稿では上述の(16)、(17)又は(19)の各式で求められた変圧器全体の交流交流抵抗、漏れリアク タンスを一次、二次巻線に分割する方法を説明します。 これらは単相二巻線変圧器の入力データの中で、一次巻線の交流交流抵抗値は Rp, 一次巻線の 漏れインダクタンスは Lp で表されています。また二次巻線のそれらは Rs, Ls という入力項目 で表されています。 この分割比率は下記の ATP Rule Book の要求事項を満たせば任意の比率で分割できますが 一般には全体の漏れインピーダンスを一次巻線、二次巻線に 50%ずつ分割しています。この一 般的な方法に則り、各巻線の交流交流抵抗と漏れリアクタンス値を計算する例を示しましょう。 d-1. ATP Rule Book の漏れインピーダンスの分割に関する Rule 漏れインピーダンスの分割に関する ATP の Rule は Rule book 中にあります。 JAUG のパスワード保護サーバの内の Rulebook/RB-04e.pdf の Section IV-E 通しページ 298 の Note の 3. と 2.をご参照ください。この意訳は次になります。 「次の一つの例外を除いて各巻線の漏れインダクタンスは 0 であってはならないが、各巻線の 抵抗は 0 でもかまわない。この一つの例外とは次のとおりである。 一次巻線だけは漏れインダクタンスは 0 で良い。しかしその時は一次巻線の抵抗は 0 にしては ならない。」 この Rule から次のイ)~ハ)を守れば任意の比率で分割してかまわないことになりますね。 まぁ、50%ずつ分割する分にはインダクタンスも抵抗も 0 にはならないのでこの Rule は気にす ることはありませんが、漏れインピーダンスをどちらかの巻線に集中して置きたい場合はこの Rule が大変役立ちます。この簡易入力法については第 6 項で説明しています。 イ) 一次巻線の漏れインダクタンスは 0 で良いが、その時は一次巻線の抵抗は 0 にしてはならな い。 ロ) また、二次巻線の漏れインダクタンスは 0 であってはならないが、二次巻線の交流交流抵抗 は 0 でもかまわない。 ハ) また三次巻線の漏れ漏れインダクタンスも 0 であってはならないが、三次巻線の交流交流抵 抗は 0 でもかまわない。 31 さて、更に次の点も留意が必要です。三次巻線付変圧器(三巻線変圧器)で漏れインピーダンスを、 一次、二次、三次の各巻線に分割すると抵抗又はインダクタンスの値がマイナスの値になること がありますが、マイナスの抵抗、インダクタンス値は Saturable transformer では許容されてい ません。 このような場合は Saturable transformer のモデルは使うことができないので、代わりに Rule book IV-C の Mutually coupled branch を使った変圧器や Section IV-B の相互結合π型回路 の内の Alternative high precision format を使用して変圧器を模擬する必要があります。 これらについては 9 項で触れています。 d-2 交流交流抵抗値の一次巻線、二次巻線への分割 一次巻線から見たこの変圧器の全交流交流抵抗値の値 R1 を一次巻線、二次巻線に 50%ずつ分割 する場合、(16)式から求めた抵抗値 R1 に 1 を乗じた値がインピーダンス試験時電源を接続した 2 巻線(この場合は一次巻線)の交流抵抗値になります。 つまり Rp 残りの Rp 1 % IR V1n 2 100 I 1n (20) として求めることができます。 を二次巻線の交流交流抵抗値 Rs に換算するには、(7)式の変圧比 を使い次のように 2 して求められます。 Rs 1 % IR V1n 1 2 100 I 1n 2 (21) ここで変圧比に具体的な数値を当てはめてもう少し深く、変圧比を使用したインピーダンス変換 について次項の如く考察しておきたいと考えます。 なぜなら変圧比 の値は試験電源がどちら側に接続されているかによって分母、分子が逆転する ためです。 d-3 インピーダンス変換に用いる変圧比についての注意 一例として、一次巻線定格電圧が V1 220 V 、二次巻線定格電圧が V 2 377 V の単相の理想変 圧器で考えてみます。 今次図左側のように一次巻線側に電源を接続して、定格電圧 V1 を印加した時定格電流 I 1 が流れ る大きさのインピーダンス Z 1 を接続し、二次巻線側は短絡して短絡しておきます。 次に次図右側の如く一次巻線側の Z 1 を取り去り、一次巻線側の電圧、電流 V1 , I 1 が変わらないよ うな等価インピーダンス Z 2 を二次巻線側に接続したとすれば、二次巻線の電圧、電流は理想変 圧器ですから V2 , I 2 になり、 I1 V1 Z1 一次 220V 二次 377 V L=∞ 理想変圧器 I1 V1 一次 220V 二次 377 V L=∞ V 2 Z2 I2 理想変圧器 この時二次巻線側では次の式が成り立ちます。 32 Z2 V2 I2 (22) 変圧比 は(7)式のとおりですから(7)式の関係を(22)式に入れると Z2 1 1 1 377 Z1 Z1 Z1 2 I1 220 2 220 377 V1 2 (23) となります。 (23)式から二次側に挿入する等価抵抗 Z 2 は Z 1 より大きくなります。これは二次巻線定格電圧が 一次巻線定格電圧より高く、二次巻線定格電流が一次巻線定格電流より小さいためですね。 次にこのケースとは逆に理想変圧器の二次巻線側に電源を接続し、次図左側の如く二次巻線側に 定格電圧 V 2 を印加した時、定格電流 I 2 が流れる大きさのインピーダンス Z 2 を接続し、一次巻線 側は短絡しておきます。 次に次図右側の如く二次巻線側の Z 2 を取り去り、二次巻線側の電圧 V 2 、電流 I 2 が変わらない ような等価インピーダンス Z 1 を一次巻線側に接続したとすれば、一次巻線の電圧、電流が理想 変圧器のため V1 , I 1 になります。 二次 370 V Z 2 一次 220V I1 Z1 I2 L=∞ I2 V1 V2 L=∞ V2 理想変圧器 理想変圧器 この時、一次巻線で次の関係式が成立します。 Z1 V1 I1 (24) (24) 式の Z 1 を変圧比と Z 2 を使って表現してみましょう。 今、 V1 I 2 V2 I1 Z1 V V1 V 2 V2 2 Z 2 2 Z 2 1 I2 I1 I2 V2 とすると、 V1 V 2 , I 1 となるので I2 です。従って 2 377 Z2 220 (25) Z 1 > Z 2 になってしまいます。これは正しくありません。 この時は Z 1 の大きさは、一次巻線側電圧が二次巻線に比べて低くなり、且つ一次巻線電流も 二次巻線電流に比して大きくなるので一次巻線側に挿入する等価 Z 1 は Z 1 < Z 2 にならなけれ ばならないからです。 この間違った答えが出て来たのは電源がどちらに接続されているかを考慮すること無しに機械 的に V1 I 2 220 を採用したためです。 V2 I 1 377 この場合の正しい変圧比は電源が接続されている側の定格電圧を分子に持ってきて 変圧比 V2 I 377 1 V1 I 2 220 (26) としなければなりません。 33 又は変圧比を 変圧比 電源を接続した巻線の定格電圧 反対側の巻線の定格電圧 (27) と解釈する必要があります。 そうすれば、 V1 Z1 V2 , I1 I 2 1 1 220 Z2 Z 2 2 I2 377 V2 2 (28) となり、これを(25)に入れて (29) となって正しい結果が得られます。 または等価変換した時のインピーダンスが変換前の値に比して大きくなるべきか又は小さくな るべきかを変圧器の電圧 Ratio を考えれば、正しい変圧比を採用することができます。 このように変圧比はインピーダンス試験時電源をどちら側に接続して得られた漏れインピーダ ンスなのかを把握した上で変圧比を決めインピーダンスの等価変換をする必要があります。 d-4 漏れインダクタンスの一次巻線、二次巻線への分割 (17)又は(19)式で求められた一次巻線から見た変圧器全体の漏れリアクタンスを mH 単位のイ ンダクタンスに直し、それを半分ずつ一次巻線、二次巻線に分割する例で紹介しましょう。二次 の漏れインダクタンスは半分にした一次漏れインダクタンスに 1 を乗じたものになるのは前 2 述のとおりですが変圧比 の値については前項の注意が必要です。 一次側から見た変圧器全体の漏れインダクタンス L1 は L1 X 1 1000 X 1 1000 2 f mH (30) ですから 一次巻線漏れインダクタンス L p は Lp 1 X 1 1000 2 2 f mH (31) となります。 (32) です。 二次巻線漏れインダクタンス Ls は Ls 1 X 1 1000 1 2 2 f 2 mH この説明では一次側に試験電源を接続する前提としているので V1n V2 n です。 以上で、単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの分割に関する説明は終わりです。 次に第 4.2 項の例題の変圧器を例に取り、実際に漏れインピーダンスを一次巻線、二次巻線に分 割してみましょう。 34 4.9) 単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの具体的な分割作業例 4.2 の例題のところで説明をつけて置いたように試験電源は二次側の高圧巻線に接続されて試験 されています。 二次(高圧)巻線定格電流 I 2 n は I 2n 6300 VA 16.711 A 377 V (33) です。一方インピーダンス試験時二次(高圧)巻線 に流した電流は 16 (A)なので定格二次電流ではありませんが、単相変圧器等価回路より次の関 係式が成立します。 変圧器全体の二次巻線から見た漏れインピーダンスを Z 2 とすれば 16 A Z 2 8.3 V Z2 8.3 0.51875 16 (34) の関係が成り立つので (35) となります。 また変圧器全体の二次(高圧)巻線から見た交流交流抵抗を R 2 とすれば 16 A 2 R2 95 W R2 95 162 (36) 0.37109375 (37) の関係が成り立つので となります。 この全体の抵抗値を半分ずつ一次(低圧)巻線、二次(高圧)巻線に分割します。 すると二次(高圧)巻線の交流交流抵抗 R s は Rs 0.37109375 0.185546875 2 (38) 変圧器の漏れインピーダンス値は有効数字 6 桁まで入力できます。 このため小数点以下 6 桁目を四捨五入して、少数点以下 5 桁まで求めておきます。つまり、 Rs 0.18555 (38a) を Rs の入力データとします。以下同様です。 一次巻線抵抗 R p はこの(38)式から次のように求めることができます。 377 であるかという点に留意する必要がありま 220 377 す。変圧比はインピーダンス試験を二次(高圧)巻線に接続して行っているので を採用し 220 ここで変圧比 を 220 377 であるかまたは なければなりません。 (理由は d-3 項をご参照願います) 2 220 0.18555 0.06318533691 2 377 小数点以下 6 桁目を四捨五入して、 R p 0.06319 Rp 0.185546875 (39) (39a) 次に各巻線の漏れインダクタンスを求めるために二次(高圧)巻線側から見た全体の漏れリアク タンス X 2 を最初に求めます。この値は(17)式の関係に (35), (37)式の値を入れて次のように求められます。 X2 Z 2 2 R2 2 0.518752 0.371093752 0.3624789528 (40) 二次巻線から見た全体の漏れリアクタンスを mH 単位のインダクタンスに直すと L2 0.36247895281000 0.36247895281000 1.153806342 mH 2 50 (41) 35 この漏れインダクタンスを一次(低圧)、二次(高圧)巻線に半分ずつ分割すると、二次(高圧)巻線の 漏れインダクタンス Ls は Ls L 0.576903171 mH 2 (42) 小数点以下 6 桁目を四捨五入して、 Ls 0.5769 (42a) 一次(低圧)漏れインダクタンスは(32)式を利用して 2 Lp L 1 220 0.576903171 0.1964561312 mH 2 2 377 小数点以下 6 桁目を四捨五入して、 L p 0.19646 mH (43) (43a) 以上です。 Excel などを使い、間違いが起きないように機械的に求められるようにしておくと良いと思いま す。 この Rule book の例題はどちらかというと希な部類ですね。通常は高圧巻線が一次巻線ですか ら。 5) 単相三巻線変圧器の等価回路と漏れインピーダンスの測定 この変圧器は三相低リラクタンス三巻線変圧器の基礎になります。なぜならこれら三相三巻線変 圧器は単相三巻線変圧器を 3 台使って模擬できるからです。 単相三巻線変圧器の漏れインピーダンスを理解するのも単相三巻線変圧器の漏れインピーダン スの測定方法を知るのが近道と考えられるので以下に測定方法を説明します。 三巻線変圧器の各巻線の % IZ 値は二巻線ごとに測定、演算されてメーカより示される、同一容 量ベースに換算した(通常最大容量の一次巻線の容量ベースに換算されて表示されています)次 の % IZ 値から求めることができます。 尚、測定されたΩ値のインピーダンスから最大容量ベースの PU 値を求める方法は第 10 項の三 巻線変圧器の漏れインピーダンスの PU 化」に解説したので必要によりご参照ください。 1) 三次巻線を開放して測定された一次巻線と二次巻線間の %IZ 12 2) 二次巻線を開放して測定された一次巻線と三次巻線間の %IZ 13 3) 一次巻線を開放して測定された二次巻線と三次巻線間の %IZ 23 %IZ12 , %IZ13 , %IZ 23 と各巻線の % IZ とは次の関係になります。 これらの値は % IZ 化されているので巻数比を気にしながらのインピーダンスの換算は不要で次 のように単純な式になります。 % IZ 12 % IZ 1 % IZ 2 % IZ 13 % IZ1 % IZ 3 % IZ 23 % IZ 2 % IZ 3 (44) (45) (46) この方程式を % IZ 1 , % IZ 2 , % IZ 3 について解けば次式の如く、各巻線の % IZ が次のように得られま す。 % IZ 12 % IZ13 % IZ 23 2 % IZ12 % IZ 23 % IZ 13 % IZ 2 2 % IZ 1 (47) (48) 36 % IZ13 % IZ 23 % IZ12 (49) 2 次に(47)~(49)式の IZ12 , IZ13, IZ 23 は次のように抵抗分とリアクタンス分から成り立つので、それ % IZ 3 らの抵抗値とリアクタンス値を IZ12 , IZ13, IZ 23 に代入します。 % IZ12 % Ir12 % Ix12 (50) % IZ 13 % Ir13 % Ix13 (51) (52) % IZ 23 % Ir23 % Ix 23 すると(47)~(49)式から各巻線の漏れインピーダンスは次のように求められます。次図もご参照 願います。 % IZ 1 % Ir1 % Ix1 (53) % IZ 2 % Ir2 % Ix 2 (54) % IZ 3 % Ir3 % Ix 3 (55) % IZ 2 % Ir2 j % Ix 2 %Ir2 %Ix 2 2 % IZ1 % Ir1 j % Ix1 1 %Ir1 % Ix 1 % IZ 3 % Ir3 j % Ix 3 %Ir3 %Ix 3 3 後は、これらの%表示の値を実際の抵抗値とインダクタンス値に変換するだけですね。 この作業は(16),(17)又は(19)を用いて各巻線の抵抗値(Ω)とリアクタンス値に換算します。 この際、これらの % IZ 値は或る基準のベース容量、ベース電圧、ベース電流における値である ため、定格電圧 V1n 、定格電流 I1n も基準となった値を使って換算する必要があります。 リアクタンス値は更に (mH) の単位のインダクタンス値に変換します。 これで作業は完了です。 ところで、三巻線変圧器の場合、ここでしばしば問題に直面することがあります。 それはこのようにして得られた各巻線の抵抗値又はインダクタンス値が負の値になってしまう ことがある点です。この問題は又三相三巻線変圧器の模擬で遭遇する問題でもあります。三相変 圧器も単相変圧器三台で模擬できるからですね。 このように抵抗値又はインダクタンス値が負の値になってしまうのは本来各巻線に分割できな い漏れインピーダンスを人為的に強制的に分割していることに起因しています。 しかしながらこのように人為的に分割しても全体のインピーダンス、抵抗分、リアクタンス分は 変わらないので変圧器全体としての漏れインピーダンスの効果(電圧変動の大きさ、短絡電流抑 制効果、負荷分担率など)は正しく保たれています。 各巻線の抵抗値又はインダクタンス値が負の値になってしまう場合、Saturable transformer モ デルはこれら負の値は受け付けてくれないので、第 9 項で述べる変圧器モデルを採用する必要 があります。 さて次は最も使用頻度の高い三相変圧器の入力データの説明を致します。 以下の必要な作業は殆どが既に上記単相変圧器で学んだとおりですので別に難しくありません。 37 5. 三相二巻線変圧器 三相二巻線変圧器の構成を知っておくと、この変圧器の理解の助けになると思われるので以下に 一次が三角結線、二次が星型結線の場合で三相変圧器の構成例を示します。 三相変圧器内部の構成は次図の如く、点線で示す単相変圧器が三台使われています。このことか ら三相変圧器は前項で述べた単相変圧器を理解していれば簡単です。 また、次図より明らかなように三相外鉄形変圧器、三相五脚変圧器を模擬する三相変圧器は三相 変圧器のアイコン(以下に説明しています)を使わずとも単相変圧器 3 台を組み合わせて模擬しよ うとすればできることがお分かりになると思います。 この部分は単相変圧器です 一次漏れインピーダンス 鉄損抵抗 非線形励磁特性 二次漏れインピーダンス 理想変圧器 尚、上図は三相五脚鉄心又は三相外鉄形変圧器の等価回路で、三相三脚鉄心変圧器の等価回路は 上図とは異なります。詳細は JAUG のパスワード保護サーバ内の Rule book RB-04E の IV.E.4 Three-phase 3-leg core-type transformer をご参照願います。 5.1 三相変圧器の入力データ項目の説明 白紙のキャンバス上の任意の位置で右クリックして Floating Menu を出し Transformers→ Saturable 3 phase をクリックします。すると次の三相三巻線変圧器のアイコンが表示されます。 Y Y Y SAT 38 このアイコンはデフォルト状態でこのように三巻線変圧器になっていますが、簡単に三相二巻線 変圧器に変えることができます。 三相二巻線変圧器に変えるにはこのアイコンの任意の部分を右クリックし、下図の入力窓を出し、 3-winding のところに入っている check マークを外し、OK ボタンを押せばアイコンは次図下段 のように三相二巻線変圧器のアイコンに変わります。 このチェックを外します 三相二巻線変圧器のアイコン Star point ノード 一次主回路 (三相回路 ) 一次中性点 Y Y 二次主回路 (三相回路 ) SAT 二次中性点 二巻線変圧器のアイコンの Star point の単相変圧器の BUSTOP に相当するノードで各単相変圧 器の BUSTOP から引き出されていて、ここに各相の励磁回路の非線形飽和特性と励磁損の抵抗 を接続できるノードです。 このノードの使い道は、ここに Type 96 の Pseudo-Nonlinear Hysteretic Inductor を接続した り又は各相の Pseudo-Nonlinear Reactor もここに出して接続することができます。但し、この Star point に非線形励磁特性や励磁損失抵抗を接続する時は、内蔵の Type 98 Pseudo-Nonlinear Reactor と入力データの Rmag は二重に励磁特性と抵抗が入ることにならぬ よう無効にしておく必要があります(無効にするにはこれらのデータは何も入力しません)。 Star point のノードは結果として一本の線に纏められていますが Star point のノードを右クリ ックして見れば次図朱線で囲んだようになっていて、ここに単相変圧器 3 台分の励磁特性が接 続できるようになっています。 39 3 つの非線形励磁特性をこの Star point に接続する例は第 8 項に図示しています。 これらの三台の単相変圧器の励磁特性が内蔵の Type 98 で十分で見なせる時は三相変圧器のア イコンを右クリックして開く Characteristics のところに一台分の励磁特性を代表として入力す るだけで済みます。残りの 2 台分は入力した特性と同一と見なされます。この場合は Star point には何も接続しなくて OK です。 三相変圧器アイコンを右クリックして開く入力データ窓の入力項目の説明をします。 U[V] UV には変圧器の定格電圧を入力します。 ところで、ここには三相変圧器の一次、二次の定格線間電圧を入力するのでし ょうか? 答えは No です。ここにはこの三相変圧器を構成する 3 台の単相変圧 器の一次、二次巻線の定格電圧を入力します。 間違えやすいので気をつけましょう。 単相変圧器は三台ありますが、代表して一台分の一次、二次巻線の定格電圧 を入力します。 例えば次の三相変圧器の例で説明します。 一次線巻線が星型接続で、定格一次線間電圧が 187 KV 二次巻線が三角接続で、定格二次線間電圧が 17.1 KV の時、一次巻線の単相変圧器の定格電圧は 187 / 3 KV になりますから Prim. の U(V)には 187 / 3 KV の値を入力します。 一方二次巻線の単相変圧器の定格電圧は三角結線で定格線間電圧と同じにな るので Sec.の U(V)には 17.1 KV を入力します。 入力する数値の単位は変圧比を定義するだけですから KV なら KV に揃え、V なら V に揃えて入力すれば OK です。 尚 Prim.、Sec.及び Tert.はそれぞれ次の省略形です。 Primary winding Secondary winding Tertiary winding(三次巻線) R[ohm]-Prim. R[ohm]-Sec. L[mH]-Prim. L[mH]-Sec. これらは一次巻線、二次巻線の漏れインピーダンスのデータです。 第 5.2 項に従って計算した値を入力します。 40 Coupling 一次巻線、二次巻線、三次巻線(もしあれば)の巻線の接続種類を下向きボタ ンを押して選択します。Auto transf.であれば一次巻線も二次巻線も A を選 択します。 千鳥結線の時は Z を選択します。詳細は ATPDraw の Help を参照願います。 Phase shift 三相変圧器による電圧の角変位を指定します。Phase shift を 30 と指定した 場合、二次電圧の u 相電圧は一次電圧の U 相から+30 度遅れる角変位を指定 したことになります。+30 度進みにしたい場合は、下向き矢印ボタンを押し て 330 を選択します。 すると 330 度遅れ=30 度進みになるからです。 I(0) 定常状態の励磁電流ピーク値です。単相変圧器の第 4.1 項と同じですので参 照願います。 F(0) 定常状態の磁束鎖交数のピーク値です。単相変圧器の第 4.1 項と同じですの で参照願います。 Rmag 励磁損を表す抵抗値です。単相変圧器の第 4.1 項と同じですので参照願いま す。 三相変圧器が三相三脚鉄心の場合にこのチェックボックスにチェックを入れ ます。三相三脚鉄心は零相磁束が通る鉄心の閉回路が無いため、零相磁束は 空気中を通らざるを得ません。そのため零相磁束に対して低透磁率の空隙回 路の磁気抵抗値を入力する必要があります。このチェックボックスにチェッ クを入れると自動的にこの零相磁気抵抗の入力窓 R0 が現われるので数値を 入力します。ここに入力するリラクタンス値の算出式については JAUG の Password 保護サーバ内にある Rule book Rb-04.pdf に記載ありますのでご 参照願います。このようにこの変圧器アイコンは三相三脚鉄心の高リラクタ ンス変圧器にも使用できます。 ここに Check を入れると、励磁特性を入力する Characteristics の Tag の 内容を実効値の励磁電流と実効値の励磁電圧で入力することができます。 一般に入手できる実効値ベースの励磁特性をそのまま入力することができて 非常に便利です。サブルーチンプログラム SATURA を使わずに済みます。 但しこの場合でも Attributes のタグ内の I(0), F(0)には Peak 値の値で入力す る必要があります。 3-leg core RMS 3-winding この Check の機能は三相三巻線変圧器にする時に使います。 既に三相変圧器のアイコンのところで説明したとおりで す。 Characteristics この Tag をクリックして非線形励磁特性を入力します。 この Characteristic タグの励磁特性は三相分の励磁特性が Type 98 Pseudo-Nonlinear Reactor で同一特性の場合に使用します。 つまりここに入力する励磁特性が 3 台の単相変圧器の励磁特性と して使用されます。 入力作業は一台分の励磁特性だけを入力すれば済みます。 このデータ入力作業は既に単相変圧器の励磁特性データのところで述べた 方法とまったく同一ですのでそちらをご参照願います。 励磁電流 Peak 値 vs 磁束鎖交数 Peak 値の入力の他に励磁電流実効値 vs 励磁電圧実効値の入力ができるのも全く同一です。 41 5.2 三相変圧器の漏れインピーダンスの入力データ作成方法の説明 1) 三相変圧器の漏れインピーダンスの測定 三相変圧器の漏れインピーダンス測定は一方の巻線(通常は低圧巻線)を短絡し、他方の各巻線(高 圧巻線)に定格周波数の低電圧を印加して、高圧の各巻線に定格電流を流した時の高圧巻線のイ ンピーダンス電圧と電源から供給される有効電力を測定します。 つまり、4.2 の 4.1) 項の「単相二巻線変圧器の漏れインピーダンスの測定」と同じ測定を各相巻 線に対して実施します。 このように三相変圧器のインピーダンスも単相変圧器と同じく、同一鉄心脚上に巻かれた同一相 の一次、二次巻線間の単相のインピーダンスとして測定されます。この点は重要です。 三相三巻線変圧器ではこれに加え、同相の一次、三次巻線間と二次、三次巻線間の単相漏れイン ピーダンスも測定されます。 このように三相変圧器であっても各相当たりの漏れインピーダンスとして測定、算出されるので、 算出に使われる電圧、電流は単相変圧器のものであることに注意が必要です。詳細は後述します。 高圧巻線に高圧巻線の定格電流を流した時のその相の高圧巻線間に生じるインピーダンス電圧 V (V ) を測定します。この時高圧巻線に流れた定格電流を I 1n ( A) とすれば漏れインピーダンス Z 1 は単相変圧器の(5)式で Z1 V I1n ( ) として求められます。 またこの試験時電源から入力された電力(インピーダンスワットと称します)が W1(W)と計測さ れれば交流交流抵抗 R1 は(8)式で R1 W I 1n 2 () として求められます。 以上で一次側から見た漏れピーダンス、巻線抵抗が求まったので、一次側から見た漏れリアクタ ンス X1 は(13)式で X 1 Z1 2 R1 2 として求めることができます。 これらから%IR, %IX, %IZ を求める方法はすでに 4.2 の 4.4), 4.5), 4.6)で述べた方法と同じです が定格電圧、定格電流については次項の点に注意する必要があります。 2) 漏れインピーダンスを算出する時の定格出力、定格電圧、定格電流の留意点 三相変圧器の漏れインピーダンスも % IZ , % IX , % IR から求めますが、この時使用する定格出力、 定格電圧。定格電流については三相変圧器の定格出力、定格電圧、定格電流と異なるので留意が 必要です。 なぜ異なるかというと ATP の三相変圧器は単相変圧器 3 台を使用して三相変圧器を模擬してい て、前項で述べた如く、三相変圧器の漏れインピーダンスも同一鉄心脚上の単相変圧器の漏れイ ンピーダンスとして測定されるので定格出力、定格電圧、定格電流は単相変圧器のもので計算す る必要があるためです。 もう少し具体的に説明しましょう。 三相二巻線変圧器の定格出力は二次定格電圧(線間電圧)、定格周波数、定格力率(指定が無い時は 1.0)のもとに規格の温度上昇を超えることなく三相の二次端子間に得られる皮相電力ですから、 二次定格電圧(線間電圧ですね)を V 2 、二次定格電流(線電流です。)を I 2 とすれば定格出力 S は S 3 V 2 I 2 で表されます。 42 このように私達電気屋は三相変圧器の出力と言うと上述のように三相全体の出力であり、定格電 圧は線間電圧であり、定格電流は線電流であるという習慣に慣れてしまっています。しかし 漏れインピーダンスを算出する時は単相変圧器の定格出力、定格電圧、定格電流を使いますから、 定格出力は三相出力の S (VA)では無く単相巻線の出力で、 S (VA) が単相変圧器の定格出力にな 3 ります。 単相変圧器の定格電圧は三角接続の場合は線間電圧が単相変圧器の定格電圧になりますが、星形 接続の場合の単相変圧器の定格電圧は線間電圧 V では無く、単相変圧器にかかる V 3 になります。 また三相変圧器が三角接続の場合、単相変圧器の定格電流は三相変圧器の定格出力を規定する定 格線電流 I では無く、単相変圧器に流れる I 3 が単相変圧器の定格電流になります。星形接続の 場合は定格線電流 I が単相巻線の定格電流になります。 このように三相変圧器の結線種類によって単相変圧器の定格電圧、定格電流の取り方がかわりま す。 三相変圧器の出力式 S 3 V 2 I 2 は次のように単相変圧器の定格電圧 V 2n 、定格電流 I 2 n を使っ て表現すると結線によって定格電圧、定格電流の値が次のように変わります。 三相変圧器の二次巻線が星型接続の場合 V 2n V2 3 であり、且つ I 2 n I 2 であるので S 3 V 2 n I 2 n 3 V 2 I 2 となります。 また二次巻線が三角接続の場合、 V 2n V 2 であり、且つ I 2 n I 2 3 であるので S 3 V 2 n I 2 n 3 V 2 I 2 となります。 余談ですが出力式は又 S 3 V1 I 1 が使われています。 これは定格一次電圧、定格一次電流は定格の二次電圧、電流を変圧比で換算したものなので V V1 1 V2 V V2 であり、 I 1 2 I 2 なので 3 V1 I 1 を計算すると 3 V1 I 1 3 V 2 I 2 とな V1 るからですね。 このように結線によって定格電圧、定格電流の取り方が変わるので % IZ , % IX , % IR から漏れイン ピーダンスのリアクタンス値と抵抗値を求める際留意する必要があります。 以下の漏れインピーダンスの測定方法で述べる定格一次電圧、定格一次電流はこのような単相分 の定格電圧、定格電流なのでご留意願います。 43 3) 三相変圧器の漏れインピーダンスの入力データ作成 漏れインピーダンスの測定の結果、得られるインピーダンスは(Ω)値ですが、実用面ではそれ を%IZ にして、%IZ が使われているのは単相変圧器のところで述べたとおりです。 三相変圧器の % IZ はすでに示した(14)式で定義されます。(14)式を下記に再掲します。 % IZ I1n Z 1 I Z 100 2n 2 100 V1n V2 n % この式を利用して変圧器データとして容易に入手できる%IZ, I1n, V1n のデータから一次側から 見た漏れインピーダンス Z1 を簡単に求めることができます。 前述の如く三相変圧器の一次巻線の結線が星形の場合は、三相変圧器を構成する単相変圧器の V1n の定格電圧は三相変圧器の定格線間電圧の 1 / 3 とし、三相変圧器の一次巻線が三角接続の 場合は三相変圧器の定格電圧(線間電圧ですね)と三相変圧器を構成する単相変圧器の定格電圧 が等しいので V1n は三相変圧器の定格線間電圧がそのまま使えます。 又三相変圧器の一次巻線が三角接続の場合、三相変圧器を構成する単相変圧器の定格電流は三相 変圧器の定格電流(これは線電流で表示されています)の 1 / 3 の値とします。 三相変圧器の一次巻線が星形接続の三相変圧器を構成する単相変圧器の定格一次電流は三相変 圧器の定格一次電流がそのまま使えます。 三相変圧器の%IR ,%IX も(12) (18) , 式の通りの定義式になります。(12) (18)式を次に再掲して おきます。 % IR I 1n R1 100 (%) V1n % IX I1n X 1 100 (%) V1n 三相変圧器の%IR, %IX が入手できれば I1n, V1n のデータを使ってこの(12),(18)式から一次側か ら見た全体の漏れリアクタンス X1 と交流交流抵抗値 R1 を簡単に算出することができます。 さてこれら算出された Z1, R1, X1 のオーム値は一次側から見た全体の値なので、ATP に漏れイン ピーダンスデータを入力するために一次巻線分と二次巻線分とに適当な比率で分割する必要が あることは既に単相変圧器のところで述べたとおりです。 またリアクタンス分は更にインダクタンス値(mH の単位)に変換が必要なのも同様です。 44 4) 三相変圧器の漏れインピーダンスの具体的な分割作業 以上の解説を基に次の三相変圧器を例に取り上げ、ATP の漏れインピーダンスデータの作成方 法を説明致します。 定格出力 一次高圧巻線接続 二次低圧巻線接続 一次線間電圧 S(MVA) 星形 三角 二次線間電圧 V s (KV ) 一次線電流 I p (KA) V p (KV ) 漏れインピーダンス % IZ 百分率リアクタンス電圧 % IX 百分率抵抗電圧 % IR インピーダンス試験は試験電源を通常の試験方法に則り一次巻線の高圧側に接続して行われて いるものとします。 これらの変圧器データは入手可能な一般的なデータです。 ATP の三相変圧器の漏れインピーダンスの入力データは三相変圧器を構成する単相変圧器の一 次巻線の交流交流抵抗 R p と漏れインダクタンス L p mH 、二次巻線の交流交流抵抗 Rs と漏れイ ンダクタンス Ls mH を入力することになります。 上記の与えられたデータから三相変圧器の漏れインピーダンスデータを作成してみましょう。 尚、ATP の三相変圧器は単相変圧器 3 台で構成されていますが、漏れインピーダンスの入力デ ータはこれら 3 台の内の一台分の単相変圧器の一次、二次巻線の交流抵抗値とインダクタンス 値を入力すれば済むようになっています。 これらのデータを求めるために三相変圧器を構成する単相変圧器 3 台の一次定格電流 I 1n 、一次 定格電圧 V1n を使うのでそれらを最初に求めておきましょう。 三相変圧器の定格容量は S(MVA)ですから、 S ( MVA) 3 V p ( KV ) I p ( KA) (56) です。 (59)式から三相変圧器の一次線電流 I p (KA) は I p ( KA) S ( MVA) (57) 3 V p ( KV ) 一次巻線接続が星形なので、三相変圧器を構成する単相変圧器の定格電流は三相変圧器の定格一 次線電流と同じですから、 I 1n ( KA) I p ( KA) S ( MVA) 3 V p ( KV ) (58) となります。 単相変圧器の定格電圧 V1n は三相変圧器定格電圧が星型接続で V p (KV ) (線間電圧)ですから、 V1n ( KV ) V p ( KV ) 3 (59) となります。 45 5) 一次、二次巻線の漏れインダクタンス値の求め方 単相変圧器の % IX から単相変圧器全体の漏れリアクタンスを求める(19)式に(61),(62)の関係を 入れて整理すると X () 2 % IX V1n ( KV ) % IX V p ( KV ) 3 V p ( KV ) % IX V p ( KV ) 100 I 1n ( KA) 100 S ( MVA) 100 S ( MVA) 3 (60) この(63)式で得られる X(Ω)は一次巻線側から見たこの単相変圧器全体の漏れリアクタンス値で、 この中には一次換算された二次巻線の漏れリアクタンスも含まれています。 次に ATP の三相変圧器の漏れインピーダンスデータとするために、上記の単相変圧器全体のリ アクタンスを単相変圧器の一次巻線分の漏れリアクタンスと単相変圧器の二次巻線分の漏れリ アクタンスに分割し、且つリアクタンス値をインダクタンス値(mH)に変換しましょう。 分割比率は任意でかまいませんがここでは全体の漏れリアクタンス値を一次巻線と二次巻線に 半分ずつに分割することにします。 一次巻線漏れインダクタンスを L p (mH ) 、二次巻線漏れインダクタンスを Ls (mH ) とすれば L p (mH ) 2 % IX V p ( KV ) 1 1 1000 100 S ( MVA) 2 f 2 (61) (15)式の 1000 は Henry から milli Henry に変換するためのものです。 二次漏れリアクタンス Ls (mH ) は(64)式の値に 1 2 を乗じたものになります。 は三相変圧器を 構成する単相の変圧器の変圧比で、このケースでは一次側に試験電源が接続されてインピーダン ス試験が行われているので w1 V1n ( KV ) w2 V 2n ( KV ) (62) この変圧器の場合一次が星形接続なので V1n は三相変圧器定格電圧の つまり V1n ( KV ) V p ( KV ) 3 です。 1 3 の大きさとなります。 となります。 二次側は三角接続なので V 2n ( KV ) V s ( KV ) です。 よって Ls (mH ) は 2 % IX V ( KV ) 2 % IX V ( KV ) 2 1 1 1 1 1 3 Vs ( KV ) p p Ls ( mH ) 1000 1000 100 S ( MVA) 2 f 2 2 100 S ( MVA) 2 f 2 V p ( KV ) % IX 1000 1 1 3 V s ( KV ) 2 100 S ( MVA) 2 f 2 (63) このようにして、ATP の漏れインダクタンスデータを 通常得られる三相変圧器データより算出することができます。 6) 一次、二次巻線の交流交流抵抗の求め方 交流交流抵抗は(16) 式の % IR, I 1n , V1n に変圧器のデータを入力して先ず一次、二次巻線全体の交 流交流抵抗値 R1 () を求めます。 R1 () % IR V1n ( KV ) 100 I 1n ( KA) (64) 次にこの単相変圧器の全体抵抗値を一次巻線と二次巻線に半分ずつ分割する例では次のように 46 して一次巻線の交流交流抵抗 R p 、二次巻線の交流交流抵抗 Rs を算出します。 Rp % IR V1n ( KV ) 1 100 I 1n ( KA) 2 (65) 一次巻線が星形のため(61)式と(62)式の関係を(67)式に代入し、単相変圧器の一次交流交流抵抗 を求める次式が得られます。 Rp 2 %IR V p ( KV ) 3 V p ( KV ) 1 %IR V p ( KV ) 1 100 S MVA 2 100 S MVA 2 3 単相変圧器の二次巻線の交流交流抵抗は(68)式に 1 2 (66) を乗じたものになります。 は三相変圧 器を構成する単相の変圧器の変圧比で(62)式で示した内容です。 一次巻線は星形接続、二次巻線は三角結線ですから V1n ( KV ) V p ( KV ) 3 、 V 2n ( KV ) V s ( KV ) の関係 になりますから、これらを単相変圧器の(20)式に反映させ二次巻線の交流交流抵抗が次のように 得られます。 2 2 2 2 %IR V p ( KV ) 1 1 %IR V p ( KV ) 1 3 V s ( KV ) %IR 1 3 Vs ( KV ) R s () 100 S MVA 2 2 100 S MVA 2 V p ( KV ) 100 2 S ( MVA) (67) 5.3) 三相変圧器のデータ入力 ATP 三相変圧器は単相変圧器 3 台で模擬されますが、この ATP の三相変圧器の漏れインピーダ ンスは次図の入力窓の点線で囲んだ部分の如く一台分の単相変圧器の一次巻線の交流抵抗値と 漏れインダクタンス値及び二次巻線の交流抵抗値と漏れインダクタンス値を入力するだけで済 み、3 台分を入力する必要はありません。 47 6. 三相二巻線 Saturable 変圧器の漏れインピーダンスの簡易入力方法 本稿では Saturable 変圧器の各巻線の漏れインピーダンス値の算出方法について比較的詳細に 説明しました。 これらの算出式を Excel などで計算式を作成しておけば、簡単に漏れインピーダンスの入力デー タを求めることができ、漏れインピーダンスの分割に煩わされることは無いと考えます。 しかし「漏れインピーダンスの分割はどうも煩わしい」と思われる方のために多少精度が落ちま すが漏れインピーダンス入力に関する ATP の Rule から、単相二巻線 Saturable 変圧器及び三 相二巻線の Saturable 変圧器を対象にした簡易的な漏れインピーダンスの入力方法をご参考ま でに紹介しておきたいと思います。 この方法は得られた単相変圧器全体の漏れインピーダンスを各巻線に分割せず、変圧器全体の漏 れインダクタンスと交流抵抗を二巻線の内の一つの巻線に集中して入力し、他の巻線の漏れイン ピーダンス値は次のように入力します。集中してデータを入力する巻線は変圧器全体の漏れイン ピーダンスを算出した側の巻線となります。 「抵抗値は 0 にします。インダクタンス値は 0 にするとエラーになってしまうのでその代わり に極めて微小な値例えば 1E-3(mH)以下の 1E-4(mH)などを入力します。」 という方法です。 この方法では他の巻線に入力した極めて微小な漏れインダクタンス値が余計なものであり、誤差 になります。 他の巻線の漏れインダクタンスを 0 にすることは既に 4.2 4.8) d-1 で述べた次の ATP の Rule か ら 0 を入力することはできません。 「次の一つの例外を除いて巻線の漏れインダクタンスは 0 であってはならないが、各巻線の抵 抗は 0 でもかまわない。この一つの例外とは次のとおりである。 一次巻線だけは漏れインダクタンスは 0 で良い。しかしその時は一次巻線の抵抗は 0 にしては ならない。」 4.2 の 4.9)項の単相変圧器を例に取り、この入力方法による一例を紹介しましょう。 最初に高圧巻線、低圧巻線に漏れインピーダンスを半分ずつ分割した場合の入力データは既に示 したように次の通りです。 簡易方法の入力データは次のようにします。 4.2 項の例題は高圧巻線で漏れインピーダンス測定がされていますから、得られた漏れインピー ダンスデータを全て高圧巻線に入れ、低圧巻線の交流抵抗は 0、漏れインダクタンスは微小な値、 ここでは 0.001 mH を入力します。入力データは次のようになります。 48 簡易法の入力データ Rp は 0(Ω) にします Lp は 1E-4(mH) などの微小値にします Rs,Ls には変圧器全体の交流抵抗と 漏れインダクタンスをそのま入力し ます これら両者の模擬方法による計算例として、高圧側に 377(V) Peak の単相正弦波電源を接続し、 低圧側に 1(Ω)の負荷抵抗を接続した時の負荷抵抗における両者の電圧、電流を比較してみまし ょう。 これらの計算結果を同一画面上にプロットすると次の如く差異は殆ど現れず(ある程度拡大して も)、実用できる簡易模擬方法であることがわかります。 電流波形 電圧波形 200 200 [A] [V] 150 150 100 100 50 50 0 0 -50 -50 -100 -100 -150 -150 -200 0 10 (file Comparison.pl4; x-var t) v:S1 20 - 30 v:S2 - 40 50 60 70 [m s] 80 -200 0 10 (file Comparison.pl4; x-var t) c:S1 20 - 30 c:S2 40 50 60 - この簡易入力方法が三相三巻線にも適用できればよいのですが、扱わなければならない漏れイン ピーダンスは二巻線だけ分だけでは無く二次-三次間も一次-三次間の漏れインピーダンスも同 時に扱わなければならないので残念ながら適用はできません 7. サブルーチンプログラム”SATURA” の使い方 “SATURA”は従来のカードイメージの SATURA の入力プログラムを手作業で作成し、それを走 らせて励磁電流 Peak 値と磁束鎖交数 Peak 値のデータを得ます。 カードイメージの入力プログラム作成は Windows のアクセサリの中にあるメモ帳を使って作成 することもできます。その際、カーソル位置が明らかになるように表示メニューのステータスバ ーをクリックしてから作業しましょう。これはカードイメージデータのため、入力位置つまり何 行目の何桁目かを確認しながら作業ができるようになるからです。 カードイメージの入力プログラムではデータの入力位置がずれるとエラーになるからですね。 尚、ATP にはこのほかにもかなりサブルーチンプログラムがあり、ATP を使用するにつれてこ れらを使用するケースも増えると思われるのでテキストエディタを一本用意しておくと今後カ 49 70 [m s] 80 ードイメージの入力プログラムの作成に便利であると思います。 “SATURA” の入力プログラムの構成順序は次のようになります。 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) “BEGIN NEW DATA CASE”のカード SATURA -サポートルーチン SATURA を有効にするための要求として “SATURATION”カード “$ERASE” カード、これはパンチバッファーをクリヤーするための要求です。 PU(PER UNIT)法ベースの仕様カード 励磁特性曲線上の点を示す IRMS と VRMS のデータグループ これらのデータの最後に 9999 を挿入します。 “$PUNCH”カード。これは計算結果の出力要求です。 (訳注;この$PUNCH は指定しなくても同じ結果が計算結果として***.lis ファイルに表示さ れます。出力させたいときは “$PUNCH, DC13A.PCH というようにファイル名まで入力 してやりましょう。) 注 上記の 3.~6.の要求は必要な数だけ繰り返し入力できます。それぞれの入力グループは 別の飽和カーブのデータケースとみなされます。 BLANK CARD 全てのケースの終了の宣言です。 BEGIN NEW DATA CASE カード BLANK CARD この Rule に則り作成した SATURA の入力プログラム例を次ページの□内に示します。 50 C からブランクスペース一つ分空けて始まる行はコメント行と呼ばれるもので入力データとし ては扱われないので、任意にプログラム作成者のコメントを付けておくことができます。 C EXAMPLE OF SUBROUTIN PROGRAM "SATURA" BEGIN NEW DATA CASE SATURATION $ERASE C Next card is Miscellaneous Data Card C --+----1----+----2----+----3----+----4----+----5----+----6----+----7----+---C FREQ.|| VBASE|| PBASE||IPUNCH||KTHIRD| C -------------------------------------50. 6.6 0.165 0 C ************************************** C Next card is RMS base V-I characteristics of non linear inductor C 下記の I, V の実効値 data は BASE 電流、BASE 電圧に対する PU 値で入力します。 C C --+----1----+----2----+----3----+----4----+----5----+----6----+----7----+---C I RMS PU|| V RMS PU | 9.447548E-3 1.0 .028867512 1.1 .049862068 1.15 .0892268596 1.2 .157459164 1.23 .8082903752 1.4 C 最後のデータ対からは後は直線状に増加するという宣言の為に 9999 を C 次のように入力します C | | 9999 C ************************************** $PUNCH BLANK BEGIN NEW DATA CASE BLANK 以上です。 尚、ここで一つ注意があります。非線形特性を直線近似する際に、近似する直線のセグメント数 が多ければ多いほど近似が正確になるのではと言う思い込みに陥りやすい点です。この思い込み は、こと Type98 の模擬方法としては錯覚です。多くすればエラーになる可能性が高まります。 これは一つのセグメントから隣りのセグメントに移動するのは一つのタイムステップの間にし か許容されていません。多くのセグメント数にすると、この移動が間違ったセグメントに行き、 エラーになってしまうためです。その他のデータ作成上の留意点の詳細は Rule book section IV-B Type-98 Pseudo-Nonlinear Reactor L(i) と XIX-G “SATURA” to derive (ψ,i) peak value curves を御参照願います。 この入力データを走らせて、Io Peak 値と Fo Peak 値を計算させるのは次のようにします。 51 1) カードイメージ入入力プログラムの ATPDraw からの走らせ方 上記で作成した入力プログラムを ATPDraw の work フォルダーに名前を付けて保存します。名 前は Long name がサポートされていますからアルファベットと数値の組み合わせからなる適当 な名前をつけます。例 Example_of_SATURA. atp などと付けます。拡張子は.atp としておきま す。 これを走らせるには ATPDraw を起動し、白紙のキャンバスを出します。この時 Specify result directory を聞いて来ます。デフォルトで work が選択されています。この状態でかまわないの で ok ボタンを押します。 次に ATPDraw のメニューバーから ATP→run ATP (file)を選択します。すると work フォルダ ー内の.atp ファイルの一覧が表示されるので、先ほど保存した Example_of_SATURA. atp を選 択し、開くボタンをクリックすれば DOS 窓が開き、計算が自動的に開始され、計算終了後に Hit any key to close this windows のメッセージを出して停止します。どれかキーを押してこの DOS 窓を閉じます。 2) 計算結果の利用方法 この計算が終了すると計算結果は ATP の work folder 内に同名ですが拡張子が.pch のファイル が自動生成されています。これが計算結果のファイルです。 これを開くと次図の通りの内容になっています。 赤の□で囲んだ部分が計算結果の I(励磁電流), F(磁束鎖交数)の Peak 値のデータです。 赤の□の内、左側が I (A),右側が F (Wb-T 又は Volt-sec で同じ値)です。 この部分の内容を Saturable transformer の Characteristic に転記します。 尚、計算結果の最後の 9999 は ATPDraw では省略できます。 52 C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C <++++++> Cards punched by support routine on 12-Feb-08 13:25:29 <++++++> SATURATION $ERASE C Next card is Miscellaneous Data Card C --+----1----+----2----+----3----+----4----+----5----+----6----+----7----+--C FREQ.|| VBASE|| PBASE||IPUNCH||KTHIRD| C -------------------------------------50. 6.6 0.165 0 C ************************************** C Next card is RMS base V-I characteristics of non linear inductor C 下記の I, V の実効値 data はベース電流、ベース電圧に対する PU 値で入力します。 C この例では IBSAE=755*E6/(3*20*E3)(A),VBASE=20*E3(V)としています。 C --+----1----+----2----+----3----+----4----+----5----+----6----+----7----+--C I RMS PU|| V RMS PU | 9.447548E-3 1.0 .028867512 1.1 .049862068 1.15 .0892268596 1.2 .157459164 1.23 .8082903752 1.4 C 最後のデータ対からは後は直線状に増加するという宣言の為に 9999 を C 次のように入力します C | | 9999 3.34021263E-01 2.97104384E+01 1.73930417E+00 3.26814823E+01 3.07628708E+00 3.41670042E+01 5.64096026E+00 3.56525261E+01 1.14189708E+01 3.65438393E+01 4.57915573E+01 4.15946138E+01 9999 ATPDraw の Characteristic に転記した状況を次図に示します。 最初入力画面には何も表示されていませんが、右横にある Add のボタンを押せばデータ入力カ ラムが表示されます。一対のデータ入力を完了し次のデータを入力するには Add ボタンを押し ます。この作業を最後のデータまで繰り返します。 データの並びは電流が順に増加するように入力します。 最後の一対のデータ入力が完了したら OK ボタンを押します。 53 8. 内蔵の非線形励磁特性を無効にし、外付けでヒステリシス特性をつけたい場合 先ず内蔵の励磁特性を無効にするには Io, Fo を共に 0 にし、且つ Characteristics の所に飽和励 磁特性を何も入力しません。 この内蔵非線形励磁特性を無視する方法は例えば変圧器モデルに内蔵の Type 98 pseudo-nonlinear reactor を使わず、変圧器モデルの外側にヒステリシス特性を有する Type 96 の Hysteretic inductor を外付けして使いたい場合などに使用する方法です。 この Type 96 pseudo-nonlinear hysteretic reactor は残留磁束を指定することができ、変圧器の 励磁突流のシミュレーション他に利用されます。Type 98 pseudo-nonlinear reactor は残留磁束 の指定はできないので励磁突流のシミュレーションには使えません。 Type 96 pseudo-nonlinear hysteretic reactor の使用 rule は JAUG パスワード保護サーバの Rulebook 中の RB-05A.PDF に あり ます ので ご参照 願 いま す。 この 和 訳版 は同サー バ の common/doc 中の rulebk-j[1]内にあります。TYPE96.ZIP がそれです。 この Type 96 の非線形飽和特性を三相変圧器に接続する方法は次のように二通りあります。 54 1) Star point に Splitter を用いて次図のように Type96 の非線形特性を接続する方法 この方法は簡単ですのでお奨めです。 Star point HT1 LT1 Y SAT I I I NP1 I M この例では中性点は直接接地で抵抗 0 と仮定しています 2) 変圧器外部に Type96 の非線形特性を接続する方法 次図の如く変圧器アイコンの外側に Type 96 非線形特性を接続します。 これら 2 例の ATPDraw の回路図は関連 ATPDraw の Project File として添付しておきます。 変圧器内部の HT2 に接続される漏れインピーダンスは微小値とします 外出した HT2 につ接続された 巻線の漏れインピーダンス LT2 HT2 Y SAT I I I NP2 I M この方法では Type96 の非線形飽和特性の接続点に注意が必要です。 なぜかというと非線形飽和特性を接続する箇所の電圧の時間積分値が鉄心の磁束鎖交 数に等しくなければならないからです。 一次巻線と二次巻線に漏れインピーダンスを分割して、一次側巻線の外側に Type96 の 非線形飽和特性を接続すると、この点の電圧と理想変圧器の点の電圧が漏れインピーダ ンスによる電圧降下で異なって来て非線形飽和特性を接続する箇所の電圧の時間積分 値が鉄心の磁束鎖交数に等しく無くならないからです。 このための工夫として変圧器モデル内の一次側巻線の漏れインピーダンスは極めて小 さい値に (交流抵抗は 1E-4(Ω), 漏れインダクタンスも 1E-4(mH)ぐらいに ) して非 線形飽和特性を接続する箇所の電圧の時間積分値が鉄心の磁束鎖交数に等しくするよ うに工夫します。 またこうすると本来の一次漏れインピーダンスが小さくなってしまうので、非線形励磁 特性の更に外側に通常のブランチ回路として抵抗とインダクタンスを直列接続し、それ らの値を正規の一次巻線漏れインピーダンス値を入力します。 55 鉄心飽和を表す非線形励磁特性は一次巻線側、二次巻線側いずれに接続しても飽和の効果は現れ るのでかまいませんが、もし得られた励磁特性(印加電圧 v.s.励磁電流特性)と反対側に接続する 時は、励磁特性(印加電圧 v.s.励磁電流特性)をその接続される側の値に換算する必要があります。 Type 96 の非線形飽和特性の入力は次のようにします。 残留磁束の指定は Type 96 非線形飽和特性のアイコンを右クリックして開く Attributes の窓に 次図のように入力します。 残留磁束の最大値は定格電圧を発生する磁束の(Peak 値)の 85%と言われています。 定格電圧時の磁束鎖交数の Peak 値は(4)式で求められますのでこれに 0.85 を乗じて最大の残留 磁束(正確には磁束鎖交数)とします。 CURR のところの 8888 は定常状態の励磁電流と磁束鎖交数を ATP により自動的に決定しても らうための指定です。 8888 を入力しておくと原点から正の飽和点までの励磁特性上の飽和磁束鎖交数の 70%の点が定 常状態の運転点であるとプログラムの方で判断してくれます。 残留磁束鎖交数 Characteristics の Tag の窓には次項で得られるヒステリシス特性のデータを入力します 56 8.1Type96 のヒステリシス特性を得る方法 このType 96には瞬時値の励磁電流とそれに対になる瞬時値の磁束鎖交数でヒステリシス特性を データ入力する必要があります。 この作業のために簡便な方法がATP-EMTPには用意されており、それは“HYSDAT”と言うユーティリ ティプログラム で、これを使えば“HYSTERESIS”と言うSPECIAL REQUEST WORDSとそのほか少しの データを入力するだけでこれらの特性を自動生成出来るサブルーチンプログラムが存在します。 このプログラムの使用方法のRuleはJAUGのパスワード保護サーバのRulebook/ 内のRB-19E内の Section XIX-H “HYSTERESIS” to punch Type-96 branch cardsを併せてご参照願います。 以下に “HYSDAT”の概要を紹介致します。プログラムは下記のように極めて簡単なものです。 このプログラムにファイル名として任意の名前例えば、MAG.DATと言うように名前をつけて ATP-EMTPで走らせます。 これもカードイメージの入力プログラムになるので走らせ方は前項の7と同じです。 C HYSDATプログラム BEGIN NEW DATA CASE HYSTERESIS C ITYPE><LEVEL ><IPUNCH> 1 4 0 C ITYPE 1:ARMCO M4 ORIENTED SILICON STEELの磁化特性を使っていることを示す。 C LEVEL 2:励磁特性カーブの点が10点出力される。3:15点、4:20~25点が出力される。 C I SAT><FLXSAT> 74.1 822.1 C ISAT:第一象限のヒステリシスループが一本になるところの電流、CURSATと C Rule bookでは表記されているもの。入力カラム数の制限からI SATとしている。 C FLXSAT:その時の磁束鎖交数 $PUNCH BLANK プログラムの内容は上記のCがついてコメントカードの通りです。補足すると I SATとFLXsatは第一象限で2つのヒステリシス曲線の交点の所の励磁電流(瞬時値)と磁束鎖交 数(瞬時値)として入力する必要がある点です。 I SATとFLXsatの値については2つのヒステリシス曲線の交点の所のV-I実効値から磁束と瞬時値 電流を求めればOKですがこの値が求まらない時は次の suggestion がルールブックのセクショ ンXIX-Hの中に述べられているのでこのsuggestionに従って行なえば良いと考えます。 「一般に入手できる鉄心の励磁特性又は直流励磁特性からこの2つのヒステリシス曲線の交点を 探すにはこれらの飽和領域の直線部分に定規を当て、左側でこれらの励磁曲線から離れる最初の 点が交点になる。」 この方法でFLXSATとCURSATの交点を求めるには次の手順になります。 ① 一般に入手できる鉄心の励磁特性又は直流励磁特性を第7項で述べたサポートルーチン SATURATIONを使いPeak値の磁束鎖交数 VS 励磁電流データに変換します。 ② 上記で得られたPeak値の磁束鎖交数 VS 励磁電流のカーブを作図します。 ③ 作図したカーブに上記Rule bookのSuggestionに従い交点の磁束鎖交数 と 励磁電流を読み 取ります。これらがFLXSATとCURSATの値になります。 あとは③で得られたデータを上記HYSDATプログラムに入力して走らせ、ヒステリシスデータを算 出します。 上述のプログラムを走らせて得られた出力ファイルのコピーを次に示します。 57 C C C C C C C C <++++++> Cards punched by support routine on 18-Apr-99 21.43.03 <++++++> HYSTERESIS C ITYPE><LEVEL ><IPUNCH> 1 4 0 C ITYPE 1:ARMCO M4 ORIENTED SILICON STEELの磁化特性を使っていることを示す。 C LEVEL 2:励磁特性カーブの点が10点出力される。3:15点、4:20~25点が出力される。 C I SAT><FLXsat> 74.1 822.1 -2.77875000E+01 -8.02756471E+02 -1.85250000E+01 -7.97920588E+02 -8.33625000E+00 -7.80995000E+02 -3.70500000E+00 -7.64069412E+02 -1.38937500E+00 -7.49561765E+02 4.63125000E-01 -7.20546471E+02 1.62093750E+00 -6.86695294E+02 2.68612500E+00 -6.28664706E+02 3.24187500E+00 -5.31947059E+02 3.70500000E+00 -3.86870588E+02 4.63125000E+00 2.58719706E+02 5.09437500E+00 3.57855294E+02 6.48375000E+00 4.83588235E+02 8.33625000E+00 5.80305882E+02 1.00961250E+01 6.28664706E+02 1.31990625E+01 6.77023529E+02 1.80618750E+01 7.20546471E+02 2.47771875E+01 7.54397647E+02 3.24187500E+01 7.78577059E+02 4.63125000E+01 8.02756471E+02 7.41000000E+01 8.22100000E+02 1.01887500E+02 8.26935882E+02 9999. 以上がHYSDATの計算出力ファイルですが、この出力ファイルの上図で四角で囲んだi-ψ特性部分 をコピーして、type 96非線形インダクターの励磁特性として貼り付けます。 尚、ヒステリシス特性はITYPE 1のARMCO M-4 ORIENTED SILICON STEELの磁化特性の他に、BENCH MARK中のホルダーにあるDC13.ATPにITYPE 2のARMCO M-6の ORIENTED SILICON STEELの磁化特性 も紹介されています。このARMCOのM-6はM-4より若干損失が大きいものとして紹介されています。 BENCH MARKのホルダーはATPDrawをダウンロードした際、ATP/BNCHMARKのディレクトリに自動生 成されています。 58 9. その他の変圧器モデル 上述以外の変圧器モデルとして次のものを紹介しておきます。 1) BCTRAN to derive [A],[R] or [R],[ωL] of Multi-phase transformer 2) Mutually-coupled R-L Element これらは相互結合ブランチを応用して変圧器をモデル化するものです。 これら以外にも XFORMER もありますが、本稿ではカバーしていません。 1) BCTRAN による変圧器模擬方法について BCTRAN は変圧器の定格内容、励磁データ、インピーダンス電圧、交流交流抵抗などのデータ から、変圧器を等価な相互結合している高精度π型ブランチに変換するサブルーチンプログラム です。 BCTRAN に入力するデータは無負荷試験とインピーダンス試験によって得られるデータを入力 するのでこれら試験が実施されている場合はもとより、試験が実施されていなくともそれらに対 応する設計デーが入手できればそれらを用いて BCTRAN の入力データを作成することができ ます。 この方法は多巻線の単相変圧器、三相変圧器模擬に使うことができます。 BCTRAN は ATPDraw でも従来のカードイメージの入力データの何れでも使うことができます。 この BCTRAN の詳細は JAUG パスワード保護サーバ内の Rulebook/内の RB-19C.PDF に記載 されています。 この中には使用上の Rule のみならず、具体的な使用例が示されていて利用しやすい内容になっ ています。 この Section XIX-C の全和訳版も JAUG パスワード保護サーバ内の common/ doc/ 内の XIX-C-BCTRAN.doc としてアップデートされています。最初にこれを読んでから Rulebook/内 の RB-19C.PDF を読むようにすると時間の節約になると考えます。 BCTRAN の ATPDraw での使用例を次に示します。 ここで取り上げている例題は BCTRAN の上述の Rule book 内の XIX-C-2 にある単相変圧器の BCTRAN による模擬例です。 この例題の入力データの算出については Rule book 内の XIX-C-2 に解説がありますのでご参照 願います。この Rule book の解説内容に対し訳者が補足説明をつけた解説書が JAUG パスワー ド保護サーバ内の common/ doc/ 内の XIX-C-BCTRAN.doc 内の XIX-C-2 にあります。こちら の方には補足説明がついているので理解しやすいと思います。 以下はこのように入力データが既に算出されたものとして BCTRAN への入力方法と走らせ方 を解説致します。 この例題の変圧器定格と与えられたデータは次の通りです。 59 2) ATPDraw による BCTRAN の使い方 a) BCTRAN のアイコンを出します キャンバスの任意の位置を右クリックしてフローティングメニューを出します。 メニューの中から Transformer→BCTRAN を選択します。 次のアイコンが表示されます。 Y Y B CT Y b) このアイコンを右クリックして入力窓を開きます。 c) BCTRAN へのデータ入力 これらの入力窓に対し、JAUG パスワード保護サーバ内の common/ doc/ XIX-C-BCTRAN.doc 内の XIX-C-2 で算出した無負荷試験のデータを次図のように入力します。 単相の場合は Connection 欄はブランクでかまいません。 60 d) Short circuit のタブへのデータ入力。 次に XIX-C-BCTRAN.doc 内の XIX-C-2 で算出したインピーダンス試験のデータを次のように 入力します。 e) データ入力が済んだら OK ボタンをクリックします。 すると次のメッセージが表示されます。 f) Yes ボタンを押します すると次のメッセージが表示されるので、任意の名前を次のように入力し、OK ボタンを押しま す。 このデータは ATPDraw の Project File 内 BCT のファイルに保存されます。 g) BCTRAN の計算を実行します 上図の OK ボタンを押すと、自動的に DOS 窓が開き、BCTRAN のサブルーチンの計算が開始 されます。計算終了後 DOS 窓を閉じるため任意のキーを押します。 h) BCTRAN の変圧器アイコンが表示されます 下図の如く BCTRAN の変圧器アイコンが表示されるので、これに電源、他のブランチ回路を接 61 続してシミュレーション回路を完成します。 BCTRAN による単相変圧器アイコン これ以降は通常の ATPDraw のシミュレーション手順どおりにメニューバーから ATP→ Settings を選び、計算条件の指定をしメニューバーから File→Save as でこのシミュレーション のファイル名をつけて保存した上でメニューバーから ATP→run ATP ボタンを押し、シミュレ ーション計算を実行します これによりプログラムは BCTRAN で作成した相互結合した高精度π型ブランチを呼び出して 回路全体のシミュレーション計算を実行します。 9.3) カードイメージの入力プログラムを作成して BCTRAN を走らせる方法 この方法はサブルーチン BCTRAN の入力 Rule に従って、先ずカードイメージの BCTRAN 計 算用入力プログラムを手作業で作り、それを ATP で走らせ、得られる変圧器部分を模擬する高 精度π型ブランチの計算結果であるパッチファイルを copy して本体プログラムに貼り付けて利 用する方法です。 このパッチファイルの利用方法は次のようになります。 変圧器部分を除いて予め手作業で作り上げたシミ ュレーション用入力プログラム(これは Miscellaneous data card, Branch card, switch card, power source card 等が入った本体のシュ ミレーションプログラムを指します)のブランチカードの任意の位置にこのパッチファイルを貼 り付けて、シミュレーション用の入力データを完成させ、これを走らせて計算結果を得るもので す。 62 a) BCTRAN 計算用プログラムを作成します テキストエディタなどを用いて次のように BCTRAN の入力プログラムを作成します。 このファイルは ATPDraw の work ホルダーに名前を付けて保存しておきます。 この例では Rev1_bctran_1_phase_transf.atp という名前をつけています・ C This example indicates input data of BCTRAN for two winding single phase transC former BEGIN NEW DATA CASE ACCESS MODULE BCTRAN $ERASE C Next is card type 4 C Meaning of each abreviation; Please refer to Rule book Section XIX-C BCTRAN C Following 2 of NW is set at column 2 C | FREQ || IEXPOS || SPOS || LEXPOS ||IEXZERO || SZERO ||LEXZERO |NP IW C | || % || MVA || KW || % || MVA || KW | IT IP 2 50. 6.4603 0.0063 0.065 1 2 2-1 C Since IP is set as -1, output is both [A]-[omega L] and [R]-[omega L]. C C Next is card type 5 for HV winding(k = 1) C HV side rated voltage is 377 V, accordingly VRAT = 377/sqrt(3) according to C VRAT rule. See explanation of VRAT of Card type 5. C R is set as blank since automatic calculation is applied in this example(See C IL flag of Card type 5) C PHASE2 and PHASE3 are blank since this transf. is 1-phase transf. C | VRAT || R | |BUS1||BUS2||BUS3||BUS4||BUS5||BUS6| C KV OPTION | PHASE1 || PHASE2 || PHASE3 | 1 0.21766 H1 C Next is Card type 5 for LV Winding C || VRAT || R | |BUS1||BUS2||BUS3||BUS4||BUS5||BUS6| 2 0.12702 L1 C C Next is Card type 6 C ZZEROIJ, SZERO are left as blank since transf is 1-phase transf. C ||| Pij || ZPOSij || SPOS ||ZZEROij || SZERO ||||| C | KW || % || MVA || % || MVA | I I C | || || || || | D L 1 2 0.10363 2.2994 0.0063 0 1 BLANK card C Next is $PUNCH Card in order to get punch output C | $PUNCH BLANK BEGIN NEW DATA CASE BLANK 63 b) ATPDraw を起動し白紙のキャンバスを出しておきます 次のように Specify result directory の窓が表示されます→このままでかまわないので OK ボタ ンを押します。 c) 作成した BCTRAN のプログラムを走らせます メニューバーから ATP→run ATP (file) を選択します すると次図のように work ホルダー内に保存したファイル一覧が表示されるので 64 Rev1_bctran_1_phase_transf.atp をクリックし、開くボタンを押します。 すると自動的に DOS 窓が開き、BCTRAN のサブルーチンの計算が開始され自動終了します。 DOS 窓を閉じるため任意のキーを押します。 この計算で次のパッチファイルが Rev1_bctran_1_phase_transf.pch と言う名前で work ホルダ ー内に作成されます。 C <++++++> Cards punched by support routine on 24-Jan-08 14:41:03 <++++++> C ACCESS MODULE BCTRAN C $ERASE C C Next is card type 4 C C Meaning of each abreviation; Please refer to Rule book Section XIX-C BCTRAN C C Following 2 of NW is set at column 2 C C | FREQ || IEXPOS || SPOS || LEXPOS ||IEXZERO || SZERO ||LEXZERO |NP IW C C | || % || MVA || KW || % || MVA || KW | IT C 2 50. 6.4603 0.0063 0.065 1 2 2 C C Since IP is set as -1, output is both [A]-[omega L] and [R]-[omega L]. C C C C Next is card type 5 for HV winding(k = 1) C C HV side rated voltage is 377 V, accordingly VRAT = 377/sqrt(3) according to C C VRAT rule. See explanation of VRAT of Card type 5. C C R is set as blank since automatic calculation is applied in this example(See C C IL flag of Card type 5) C C PHASE2 and PHASE3 are blank since this transf. is 1-phase transf. C C | VRAT || R | |BUS1||BUS2||BUS3||BUS4||BUS5||BUS6| C C KV OPTION | PHASE1 || PHASE2 || PHASE3 | C 1 0.21766 H1 C C Next is Card type 5 for LV Winding C C || VRAT || R | |BUS1||BUS2||BUS3||BUS4||BUS5||BUS6| C 2 0.12702 L1 C C C C Next is Card type 6 C C ZZEROIJ, SZERO are left as blank since transf is 1-phase transf. C C ||| Pij || ZPOSij || SPOS ||ZZEROij || SZERO ||||| C C | KW || % || MVA || % || MVA | I I C C | || || || || | D L C 1 2 0.10363 2.2994 0.0063 0 1 C BLANK card $VINTAGE, 1, 1L1 747.00896590668 USE AR 1H1 866.71803330735 .18554656040922 2L1 -1485.197977718 0.0 2547.6262427514 .06318876613197 $VINTAGE, -1, USE OLD これを全て(最上段から一番下の USE OLD まで)copy して、本体プログラムのブランチカード 部分の任意の位置に貼り付けます。(コメント行は copy しなくても ok です) これで BCTRAN の変圧器が本体プログラムに組み込まれたことになります。 65 あとはこのパッチファイルを貼り付けた本体プログラムを走ら、計算結果を表示させます。 9.4 Mutually-coupled R-L Element による変圧器模擬方法について 三相三巻線変圧器で漏れインピーダンスを各巻線に分割すると漏れインピーダンスがマイナス になってしまう場合の対策として、Mutually coupled R-L Elements を使って変圧器を模擬する 方法があります。 これは Rule book の Section IV-C の Mutually coupled R-L Elements で変圧器を模擬する方法 です。このブランチの Rule は JAUG のパスワード保護サーバの Rulebook/ 内の RB-04A.PDF 内にあります。 この方式の具体例と説明は JAUG のパスワード保護サーバ内の次の箇所にありますので必要に よりご参照ください。 common/doc/ 内の Tr-rlc.zip がそれです。具体的に入力データの算出方法を示しています。こ れは日本語の解説書になっています。 10. 単相三巻線変圧器の漏れインピーダンスの PU 化について 4.2 5)の単相三巻線変圧器のところで述べた如く一般に三巻線変圧器の漏れインピーダンスは 最大容量 base の PU 値で表されます。 変圧器の漏れインピーダンスの入力データを求めには PU 値表現の漏れインピーダンスの取り 扱いに慣れる必要があります。この観点から、最大容量ベースの PU 値を求める方法について以 下にご参考までに解説します。 次の変圧器を例に取って考察します 一次容量 800 KVA 定格電圧 6.6 KV 二次容量 500KVA 定格二次電圧 3.3KV 三次容量 300KVA 定格三次電圧 1.1KV インピーダンス試験結果は次の通りであったとします。 二次巻線を短絡して一次巻線に定格電流を流し、一次側で測定したインピーダンスが Z 12 0.015 J 4.0 三次巻線を短絡して一次巻線に定格電流を流して一次側で測定したインピーダンスが Z 13 0.012 J 3.5 三次巻線を短絡して二次巻線に定格電流を流して二次側で測定したインピーダンスが Z 23 0.007 J 1.5 これらの測定値を先ず各インピーダンスを測定した各々の巻線のベースインピーダンスで PU 化してみます。尚下記のステップを踏まずとも後述の(76)式で直接最大容量ベースの PU 値を求 めることができますが、ここでは算出過程を明らかにするために順序を追って説明します。 最初に Z12 を一次巻線のベースインピーダンスで PU 化することを考えましょう。 ベース容量は s 800 KVA ,電圧ベースは 6.6 KV で、この巻線のベースインピーダンスは 66002 ですから Z pu は 12 800000 Z 12 pu Z 12 Ω 800000 6600 2 (68) Z 13 を一次巻線のベースインピーダンスで PU 化します。(68)と同様に次のようになります。 66 Z 13 pu Z 13 800000 (69) 66002 Z 23 を二次巻線のベースインピーダンスで PU 化します。 Z 23 pu Z 23 500000 (70) 33002 このように最初にその回路の定格容量、定格電圧で決まるベースインピーダンスで測定漏れイン ピーダンスを PU 化します。 (70) 式では三巻線の漏れインピーダンスは 500KVA ベースの PU 値ですが、これを通常行われ ているように最大容量の巻線の 800KVA の容量ベースでこれらを換算します。これらを Z 12 n pu , Z13n pu , Z 23 n pu とすると、Z12 n pu , Z13n pu はもともと 800KVA ベースになっているか ら値は変わりません。変わるのは Z 23 n pu だけです。 Z12 n pu , Z13n pu は次のようになります。 Z 12 n pu Z 12 Ω 800000 (71) 66002 Z 13 n pu Z 13 800000 (72) 66002 次に Z 23 n pu を 800 KVA ベースから 500 KVA ベースにしますが、これは次の関係式を使って 変換します。 新しい容量ベースのZ 元のZ 新しいベース容量(VA) 元のベース容量(VA) (73) この関係式により、新しい容量ベースの漏れインピーダンスは次のようになります。 Z 23 n pu Z 23 500000 800000 800000 Z 23 2 500000 3300 33002 (74) この式の最終的な姿は Z 23 n pu Z 23 新しいベースインピーダンス Z 23 800000 3300 2 (75) の形になっている点に留意ください。このことから、次のようにして直ちにΩ値表示のインピー ダンスから(70),(73)の演算を省略して最大容量ベースの PU 値表示のインピーダンスを得るこ とができます。 Z 23n pu Z 23 最大容量巻線の容量(VA) 回路の電圧 2 Z 23 800000 33002 (76) これで漏れインピーダンスを最大容量ベースに統一できました。変圧器メーカから提示される 三巻線変圧器の漏れインピーダンスはこのように一般に最大容量ベースの値にして導かれてい ます。 次に短絡が発生したときの短絡電流がこの PU 化したインピーダンスから正しく求められるか 検討してみましょう。 一次巻線が開放の時に、二次巻線から電力が供給され、三次巻線出口で短絡が発生するケースを 想定します。この時二次巻線、三次巻線に流れる短絡電流を計算して見ましょう。 67 二次巻線に流れる短絡電流を I s2 pu 、三次巻線に流れる短絡電流を I s3 pu とすれば(76)式から I s 2 pu 33002 9.074901189 pu Z 23n pu Z 23 800000 1 (77) となります。 実際の二次回路の短絡電流値はこれに各々の巻線のベース電流を乗じて求められます。 二次巻線回路のベース電流 I 2base は容量ベースが 800 KVA,電圧ベースは二次巻線回路の定格電 圧ですから 3.3 KV から次のようになります。 I 2base 800 A 3.3 (78) よって二次回路の短絡電流値 I s2 A は I s 2 A 33002 800000 3300 2200 A Z 23 800000 3300 Z 23 (79) と求まります。 この(12)式を見れば、(二次回路定格電圧 / 二次から見た変圧器漏れインピーダンス Z 23 )の形 になっていますからこれで正しい結果になっています。 次に一次巻線が開放の時に、二次巻線から電力が供給され、三次巻線出口で短絡が発生するケー スで三次巻線側の短絡電流を PU 化されたインピーダンスを使って求めてみましょう。 (9)式の PU 化されたインピーダンスは三次巻線から見ても同じ pu 値のインピーダンスです。 したがって、三次側短絡電流の PU 値も(9)式と同じになります。 実際の三次回路の短絡電流値はこれに三次回路のベース電流を乗じて求められます。 三次巻線回路のベース電流 I 3base は容量ベースが 800 KVA,電圧ベースは二次巻線回路の定格電 圧で 1.1 KV ですから次のようになります。 I 2base 800000 A 1100 (80) よって三次回路の短絡電流値 I s2 A は I s 3 A 9.074901189 800000 6600 1100 A (14) と求まります。 これが正しいことは次から明らかです。 三次巻線側の短絡電流は、三次巻線側から二次巻線の電源側を見ると漏れインピーダンス Z 3 は Z3 0.007 j 1.5 2 1.1 0.007 j 1.5 3.3 2 0.16667 (81) よって三次側短絡電流は I s3 1100 6600 A 0.16667 (82) になります。二次巻線、三次巻線の短絡電流の大きさを比較すると正しく変圧比に従った電流比 なっていて妥当な結果になっていますね。 68 11. 定常状態の磁束鎖交数について 変圧器の入力データとして定常状態の励磁電流 Io と磁束鎖交数 Fo を入力するようになってい ますが、これらの内、磁束鎖交数 Fo は定常状態の印加電圧の Peak 値に相当する磁束鎖交数で 入力する必要があります。もし定格電圧相当の磁束鎖交数よりも小さい値を入力すると二次電圧 に振動が発生してしまいます。 これについて以下のように補足説明をしておきたいと思います。 Rule book RB-04E.pdf の Page 306 に一次が三角結線の変圧器の例題が示されているのでこの 例題で説明します。 次のようになっています。 Rmagn = 3.E5 Ohm, VLV = VHV = 3.03E5 Volt (これらの電圧は P306 に示されている入力データからそれぞれの巻線 の定格電圧です。) RLV = RHV = 0.25 Ohm. XLV = XHV = 25 mH 結線 一次 三角結線 二次 星型結線 また Io,Fo と飽和特性は次のように与えられています。 Io = 2.0 A Peak Fo =1137 Peak (Wb T ) 飽和特性 i (Peak 値) Wb-T (Peak 値) 2.0 1137 50. 1365 1E4 1478.6 ここで一次巻線定格電圧の 303000 V rms に対する磁束鎖交数は第(4)式から、 peak 303000 1363.98 (Wb t ) となります。 4.44288 * 50 一方この例題では定常時の磁束鎖交数が 1137 (Wb T ) としていて、定格電圧相当の磁束鎖交数よ りも低い値に指定されています。このためこれから述べるように一次巻線に定格電圧を印加 すると印加電圧に相当する磁束鎖交数の方が変圧器に指定した定常時の磁束鎖交数よりも大き いので計算開始直後に過渡現象が発生し、二次電圧波形に振動が発生します 一次巻線の定格電圧 3.03E5 rms (V)になるような加えるべき電源電圧の対地電圧の Peak 値の 大きさは次の通りです。 印加電圧の対地電圧の rms 値は 303000 / 3 V になります。これの Peak 電圧は 303000 * 2 3 V 247398.464 V となります。こ の電源電圧を変圧器に印加して二次電圧を計算してみると次のようになります。尚変圧器二次側 は星型で中性点直接地として無負荷状態としています。 このように、定常状態の磁束鎖交数は変圧器の定格電圧に相当する値にしておく必要があります。 69 500 [kV] 375 250 Fo =1137 Peak (Wb T ) では 二次側電圧波形に振動が発生してしまいます 125 0 -125 -250 -375 -500 0 10 (file Incorrect_Fo.pl4; x-var t) v:SA 20 v:SB 30 40 50 [ms] 60 v:SC 上図の○で囲んだ部分の拡大図を次に示します。 500 [kV] 過渡計算開始後も電圧波形に振動が発生しています 400 300 200 100 0 -100 -200 -300 0.0 0.5 1.0 (file Incorrect_Fo.pl4; x-var t) v:SA 1.5 v:SB v:SC v:SB v:SC 2.0 2.5 3.0 3.5 [ms] 4.0 定常時の Fo Peak を 303000 Vrms に相当する 1363.98 (Wb T ) にすると、この振動は解消され ます。 500 [kV] 375 250 125 0 -125 -250 -375 -500 0 10 (file Correct_Fo.pl4; x-var t) v:SA 20 30 40 50 [ms] 60 70
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