リウマチ性多発筋痛症 最近の知識に学ぶ

病気のプロフィル
No.
22
リウマチ性多発筋痛症
─最近の知識に学ぶ─
リウマチ性多発筋痛症の病名がはじめて提唱されてから今年で41年目で、わが国
の医学雑誌と教科書に現われるようになったのは今からおよそ25年前と推測される
(後述)。
このようにリウマチ性多発筋痛症という病気はわれわれの視野に入ってきてから
まだ日が浅く、しかも欧米に比べてわが国には少ないらしいから、一般の医師のあ
いだにこの病気に対する認識がさほど浸透していなくても不思議ではない。しかし、
これからはおそらく様相が変わってくるであろう。
後で述べるように、この病気は60歳以上の人に圧倒的に多く、人口の高齢化とと
もに増加する可能性がある。また知識がいま以上に深まり、かつ普及すれば、病態
のより複雑な例や非定型例が発見される機会が多くなり、この病気に対する理解は
いま一層高まるであろう。もう一つ、この病気の魅力は病因論である。ミステリア
スな病気で、まだ「ああでもない、こうでもない」式の混とんとした論文が多いが、
おそらく、後十年もすれば、かなりスッキリとした形で論議できるようになるので
はないかと思う。現在でも、訳がわからないままに面白いところの多い病気である。
はじめに、最近、筆者が患者の家族から相談を受け、又聞きの病歴だけによって
リウマチ性多発筋痛症と診断し、それがたまたま的中した例を紹介する。
最近の経験例
1998年の1月のある日、ある女性患者
(82歳)
の息子夫婦が相談にやってきた。
二人の話によると、約2ヵ月前から両側の頚(項)、肩、上腕、腰、大腿の部分が耐
えがたいほど痛く、この2ヵ月間、近くの診療機関でいろいろな鎮痛剤を使ってき
たが、ほとんど効かないという。
息子夫婦からさらに詳しく患者の症状を聴いているうちに問題の病気はリウマチ
性多発筋痛症のように思えてきた。それで筆者は彼らに言った。
「病歴だけでは結論は出ないが、リウマチ性多発筋痛症のように思える。この病
気についてはまだ医学的にしっかりとした診断の基準が確立しているわけではなく、
どちらかというと、職人的なカンのようなもので診断する部分が多い。また日本に
少ない病気のためか、専門外の医師はそれと気づきにくく、原因のはっきりしない
神経痛や関節症として処理されていることが多い」と。
何はともあれ、話を聴いて推測ばかりしていたのでは埒があかないから、とりあ
えず九大のリウマチ専門グループに連絡して私見を述べ、患者を送ってひととおり
の検査をしてもらった。その結果、「先生のお見立てどおりと思いますが‥‥」と
いう返事があった。そこで、患者にはその日のうちに福岡市内の関連病院に入院し
てもらって、専門医が主治医になり、リウマチ性多発筋痛症に対する特異的な治療
1
を開始した。
治療後、筋肉の痛みとこわばりは急速に薄れて忘れたようになり、その後順調に
経過している。
この例はリウマチ性多発筋痛症の定型かそれに近い例と思われるが、非定型の例
になると診断はそう簡単ではない。以下、そのような例をも含めて解説する。
病名の由来
1957年に
Barber
は、比較的高齢な人の両側の頚、肩、腰帯、上腕、大腿などの
近位部分の筋肉の痛みとこわばりをきたす筋痛症候群
Polymyalgia
myalgic
rheumatica(日本語名:リウマチ性多発筋痛症)
syndrome
を
と名づけた。一般に
はこのラテン語名の主要な文字をとってPMRの略語で呼ばれ、これはわが国の「内
科学用語集」第5版
性多発筋痛症を
(1998年)
PMR
にも採用されているから、このプリントでもリウマチ
の略語で通すことにする。
PMR に対する各国の関心と認識
1888年にスコットランドの
例の患者
(いずれも60歳以上)
rheumatic
(東條
Bruce
gout
が広い範囲にわたる筋肉の痛みを主訴とした5
を報告し、この病気を老人のリウマチ様痛風
と名づけた。おそらくこれが
PMR
senile
に関する最初の報告であろう
1982)。
以来90年余のあいだ、PMRまたはそれを示唆する症例は主にヨーロッパ、特にイ
ギリスと北欧で報告された。しかしアメリカの医学界はこの病気に対して関心が薄
く、1963年になってやっと症例の報告が出始めたが
(岡崎
の決定版である
Diseases"
編)
の第6版
"Primer
(1964年)
on
the
ではまだ
になってようやくリウマチ性疾患
Rheumatic
PMR
1980)、リウマチ学入門
(アメリカ・リウマチ協会
の病名は登載されていない。第7版
rheumatic
diseases
(1973年)
のなかに加えられている
5)。
わが国で注目され始めたのはさらに遅く、おそらく柏崎ら
(1974)
の報告が最初
ではないかと思う。内科学の教科書に記載された年から逆算しても、およそ25年前
か、それよりやや早い年になる。これは、医学発展の歴史からみて、かなり遅いペー
スである。
統計学的なデータ
PMRに関する統計学的なデータは内外ともにきわめて乏しいが、寺井
(1994)
総説にしたがって要約すると、次のようになる。
⑴ アメリカの北部のある地域では、年間の発病率は50歳以上で10万人あたり約
50人強、有病率は10万人あたり約500人である。
⑵ 女性の患者は男性患者のおよそ2倍である。
⑶ 発病年齢は平均65〜70歳で、65歳以上の患者は全症例の約63%をしめる。40
歳代に発病した例もあるが、このデータからPMRは比較的高齢の人に多いことが分
2
の
(表
かる。
症
状
以上のように、PMR
は複数の筋肉の疼みとこわばりを主徴とする。まずこの病気
に最も特徴的な筋肉に関連する症状について述べる。
筋肉の痛みとこわばり
頚部、肩(肩甲帯)、骨盤帯、四肢近位部分の筋肉に痛み
とこわばりをきたす。頚部、肩甲帯、腰帯などに朝のこわばり(朝硬直 morning
stiffness)
が一時間以上続く。物を噛むときに顎が痛いと訴える患者もいる。また
前駆的に頑固な肩こりを訴えることもある。
ある朝急に痛み始めるといったエピソードが多い。ふつう片側の肩の筋肉から痛
み始め、数日または数週間のうちに両肩の筋肉が痛むようになる。次いで痛みは他
の近位の筋肉群におよび、1ヵ月以上続く。
痛みの内容が診断の助けになる。すなわち、痛みのうらづけとなる他覚的所見は
乏しいにもかかわらず、患者の訴えは顕著、かつ深刻である
(高杉
1998)。
「朝、カミソリで筋肉が削り取られるように痛む」,「寝返りを打つことも、起き
上がることもできない」,「起き上がろうとすると、両側の大腿の後部が絞るように
痛む」,「排便・排尿が至難である」などの訴えがある。
他覚的には、肩胛部その他の部分に圧痛と運動制限がある以外に大した所見はな
い。筋力は痛みによって多少制限されるが、目立って低下していない。また筋萎縮
もない。
筋肉痛の原因(推論)
筋肉痛の基本的な原因はまだほとんど分かっていないが、
次のような推論がある。
PMRの成立には動脈炎が基礎になっている。しかし筋肉の小動脈には炎症はなく、
比較的大きな鎖骨下動脈や腸骨動脈の動脈炎
肉に乏血状態をきたす結果、筋肉が痛む
うに
PMR
arteritis
(岡崎
のためにその支配下にある筋
1980)。O'Duffy
et
al.(1976)
のよ
に潜在する滑膜炎が筋肉痛の主な原因とみなす研究者もいる。
次に述べるように、苛烈、かつ執拗な筋肉痛をうらづける臨床検査の所見も乏し
く、不可解な点が少なくない。
全身的な症状
微熱、全身倦怠感、食思不振、体重減少をきたし、ときとして貧
血が認められる。
これらの症状はどのリウマチ性疾患にも大なり小なり認められるが、PMR
つのは抑うつ状態
1979,
Chuanget
臨床検査の所見
depressive
に目立
で、これを重視する研究者が多い et
(Bird
al.
states
al. 1982, 高杉 1998など)。
ほとんどの患者で赤沈が40㎜/時以上に促進する。これまで筆
者は考慮に入れていなかったが、血清タンパク質分画のα2-グロブリンの上昇を特
異的な所見とみなす人もいる
(原
1990)。
血清のCRP値が上昇し、末梢血液の白血球数が軽度に増多するが、赤沈の促進ほ
ど特異的な所見とはいえない。またリウマトイド因子は陰性で、自己抗体が証明さ
れないことが多い。これらの点が慢性関節リウマチとは異なる。
3
筋原性酵素
(CPK、アルドラーゼ、GOT、GPT、LDHなど)
は上昇せ
ず、また筋
肉の生検で特異的な組織学的変化も見出されない。筋電図にも異常はない。これら
の点は多発性筋炎/皮膚筋炎などとも異なる。
診
断
PMRにはこの所見があるからPMRであるという診断の決定的な決め手がなく、と
くに複雑な病態や非定型的な患者については除外診断を進めざるを得ない。また
PMRの診断では病歴と治療的診断法
診断基準
therapeutic
diagnosis
のウェイトが大きい。
PMRには全身性エリテマトーデスのような国際的にほぼ統一された診
断基準はないが、Bird et
al.(1979)、西岡ら(1985)、および
Cohen
&
Ginsberg
(1990)などから発病初期の診断基準が提出されている。これらのうちの一つを表1
に示す。
表1.
リウマチ性多発筋痛症
診断基準
(PMR)
の
1. 両側の肩に痛みとこわばりがある。
2. 発病から2週間以内に症状が完成する。
3. 朝のこわばり
4. 赤沈が
(頚部、肩甲帯、腰帯)
が1時間以上続く。
40㎜/時以上に促進する。
5. 65歳以上に発病する。
6. うつ状態ないしは体重減少がある。
PMR を疑う基準:
Ⅰ. 上述の項目のうち、3項目を充たす場合.
Ⅱ. 上述の項目のうち1項目以上を充たし、また臨床的、
病理組織学的に側頭動脈に異常が認められる場合.
補足:PMR に特異的な所見はない。除外診断が必要で、この基準だけでは
診断確定はできない。診断をさらに確実にするためにステロイド剤
による治療的診断が有用である (Birdet al. 1979 および寺井 1994
を一部改変).
治療的診断法
PMRの場合にはとくに治療的診断法が有用である。後で述べるよ
うに、少量のステロイド剤によって筋肉の痛みとこわばりが改善すれば、PMRの疑
いが濃厚になる。ふつうステロイド剤服用後12時間で効果があるが、1週間続けて
効果がなければ、別の病気を考えるべきである。
鑑別診断
PMRの診断が常に容易であるとは限らない。とくに時日を経て受診し
た患者の診断には発病初期に立ちかえって症状を検討して診断する必要がある。そ
れでも診断決定に至ることがむずかしい例が少なくない。そのような例については、
表2に示すような病気一つ一つについて慎重に除外診断diagnosis
進めなければならない。
4
by
exclusion
を
表2.
PMR
の鑑別診断の対象になる主な病気
慢性関節リウマチ
筋炎およびその周辺疾患
多発性筋炎/皮膚筋炎、線維性筋痛、好酸球性筋膜炎など
その他の筋疾患
重症筋無力症、代謝性ミオパチー、神経原性筋萎縮症、
内分泌性ミオパチーなど
血管炎をふくむ膠原病
PMR
または
PMR
様症状を呈する病気
悪性新生物、サルコイドーシス、感染症など
東條・秋谷
(1992),
寺井
(1994)
を参考に編成.
鑑別の対象になる病気のうち、中・老年期以降に発病する慢性関節リウマチと関
節痛をともなう
PMRとの鑑別がとくに問題になろう。
PMRの発病の初期では主に近位部分の筋肉の痛みとこわばりをきたし、遠位部分
ではまれである。これに対して慢性関節リウマチでは遠位部分の関節を中心に痛み
とこわばりがある。
しかし、Chuang et
al.(1982)
の長期にわたる追跡観察によると、時日の経過と
ともにこの鑑別点が次第に明確でなくなっていく
(表3)。
治
療
PMR
に対する薬物療法の第一選択はステロイド剤である。
PMR
は少量のステロイド剤によって短時間のうちに症状が改善する。
早期診断・早期治療が望ましい。とくに、後に述べるように、側頭動脈炎が合併
している場合には失明などの眼病を未然に防ぐために、ステロイド剤の中〜大量療
法が必要になる。
ステロイド少量療法
換算量
10〜15
PMRに対するステロイド剤の初回使用量はプレドニゾロン
㎎/日
(経口:2〜3回分服)
で、これでおよそ12時間後から症状が改
善し始める。患者のそれまでの辛さからみれば、劇的といっていいほどの改善が見
られる。このプリントの初めに紹介した患者もまさにそうであった。
以上の治療法で効果があったならば、赤沈や
とに
1〜2
ふつう
㎎/日ずつ減量し、維持量を5
CRP
の値を参考にしながら2週間ご
㎎/日前後にして1年以上継続する。
1〜2年で軽快して寛解状態に入るが、長期にわたる例があり、なかには
10年以上ステロイド剤を継続しなければならない例もある。
5
表3.
症
状
リウマチ性多発筋痛症の症状
頻度
近位筋肉の痛みとこわばり
症
100 %
圧
状
頻度
痛
39 %
肩
96
肩
26
臀部
77
上腕
24
頚部
66
二頭筋腱溝
17
上腕部
63
関節炎(同時発症)
12
大腿部
54
全身的な症状
54
躯幹部
45
発熱(>38℃)
13
全身倦怠感(易疲労) 30
遠位筋肉の痛みとこわばり
83
抑うつ状態
15
下肢(膝-足趾)
73
体重減少
15
上肢(肘-手指)
56
食思不振
14
Chuang et
al.(1982), 松田・富井 (1992) を一部改変.
患者の約30%は投薬を中止した後に再燃する。このような例にはステロイド剤を
再開しなければならない。
後に述べるように、PMRには薬物療法によって比較的短時日で改善して後にさほ
ど問題を残さない群と長期の薬物療法を必要とする群の2群がある
(Ayoub et
al.
1985)。
非ステロイド抗炎症剤
PMR患者のなかには非ステロイド抗炎症剤に反応して症
状が改善する例がある。高齢の患者には骨粗しょう症などのステロイド剤の副作用
は重大な問題であるから、ステロイド剤を減量した後に非ステロイド抗炎症剤に切
り換えることも必要である。
病
因
論
読者は次のような疑問を持つかもしれない。
「PMR
の正体がはっきりしないのに、病名にリウマチ性の名を冠していいのか」
と。
筆者も同感である。おそらく
Barber
も同様な気持ちで病名を提唱したのであろ
う。またアメリカのリウマチ協会が1973年に至るまで
PMR
をリウマチ性疾患に加
えなかったのも同様な拘わりがあったためかもしれない。今日では、その辺のとこ
ろがあいまいなままに、PMR
はリウマチ性疾患
rheumatic
disease
のなかに分類
されているが、おそらく全身にわたる痛みの多発に対して「リウマチ性」の名が付
けられたのであろう。
リウマチ性疾患
リウマチ (rheumatism) という言葉は紀元前4世紀にヒポクラー
テスが書いた論文に出ているらしい。これは「流れる」という意味のロイマに由来
6
し、当時の人々は関節炎を起こす物質が身体のなかを流れて病気を起こすと考えて
いた。当時、この考えにもとづく病気はリウマチ熱や痛風で、慢性関節リウマチが
記載されたのはずうっと後の1800年代であった
表4.
(安倍
1990)。
リウマチ性疾患
1. 汎発性結合織病
2. 脊椎炎をともなう関節炎
3. 関節変性疾患
4. 感染病原体にともなう関節炎、腱滑膜炎、滑液包炎
5. リウマチ症状をともなう代謝性および内分泌疾患
6. 新生物
7. 神経系の異常
8. 関節症状のある骨と軟骨の病気
9. 関節外リウマチ
10. その他の種々の病気
Rodnam
&
Schumacher
(1983),
安倍
アメリカのリウマチ財団はリウマチ性疾患を表4のように10項目
(1990)
を一部改変.
(130余種類の疾
病単位)に分類した。PMRはこの分類のなかで汎発性結合織病のなかに入れられて
いる。その細分類を見ると、PMRはリウマチ性疾患の辺縁疾患として位置づけられ
ているようにみえる
(表5)。
病因論に示唆を与えるデータ
上に述べたように、PMR
の病因論はまだ混とんと
しているが、次の報告は病因論に示唆を与えるものとして注目される。
⑴ PMRの発病頻度には種族差があり、白人集団に多い(Cohen
&
Ginsburg
1990)。日本人には少ないと言われているが、確かなデータがあるわけではない。
ようやくわが国でもこの病気は注目され始めたから、いずれ具体的な数字が出され
るであろう。
⑵ 同じ血縁の者に2人以上
PMR
が発現した家系の例が報告されている
(Liang
et
al. 1974)。
⑶ PMRとHLA-DR4
Armstrong et
または
CW3抗原との相関が高い(Calamia
et
al.1981,
al. 1983, Cid
et al. 1988)。
以上の⑴、⑵、および⑶の報告は、まだ十分な資料とは言いがたいが、PMR
成立
の基礎に遺伝要因があずかっていることを示唆している。
⑷ PMRは比較的高齢の人に多い。これは加齢とともに特定の環境要因に対応する
免疫系の調節不全の傾向が増大することを示唆している。T細胞の機能不全を指摘
する研究が多い
(Beeson
1979,
Healey
7
1993)。
⑸ PMRが好発する季節があるらしい。Cimmino et
al.(1990)
は広い範囲の調査
によって夏期に集中して発病すると報告している。
⑹ PMRに悪性腫瘍が合併した例の報告が数篇ある。報告例は乳がん、消化管がん、
甲状腺がんなどの合併で、サルコイドーシスが合併した例の報告が一つある。多発
性筋炎/皮膚筋炎の
10〜20
%にがんが合併することと対比される報告である。
表5.
汎発性結合織病
A. 慢性関節リウマチ
B. 若年性関節リウマチ
1. 全身発症
2. 多関節発症
3. 少数関節発症
C. 全身性エリテマトーデス
D. 進行性全身性硬化症
E. 多発性筋炎/皮膚筋炎
F. 壊死性血管炎と血管症
1. 結節性多発動脈炎群
(B型肝炎関連動脈炎、アレルギー性
肉芽腫症をふくむ)
2. 過敏性血管炎
(シェーンライン・ヘノッホ紫斑病をふくむ)
3. ウェゲナー肉芽腫症
4. 巨細胞動脈炎
a. 側頭動脈炎
b. 高安動脈炎
5. 粘膜皮膚リンパ節症候群
(川崎病)
6. ベーチェット病
G. シェーグレン症候群
H. 重複症候群(混合性結合織病をふくむ)
I
.その他
リウマチ性多発筋痛症、ウェーバー・クリスチァン病、
結節性紅斑、再燃性多発軟骨炎など
Rodnam
側頭動脈炎との関連
arteritis
&
Schumacher
(1983),
安倍
(1990)
を一部改変.
原因不明の中大動脈の血管炎として巨細胞動脈炎giant
がある。その一つである側頭動脈炎
PMRが併発し、他方、PMR
の15〜40
temporal
arteritis
cell
の50〜75%に
%に側頭動脈炎が併発する。また側頭動脈炎
の症状がみられないPMRにおいて生検によって側頭動脈炎が発見されることがある。
側頭動脈炎は発病の年齢層がPMRによく似て比較的高齢の人に多い。したがって
8
PMRではこの病気に絶えず気を配っていなければならない。Mary
(1991)
&
Nancy
は、共通の病因でPMRと側頭動脈炎が一緒に発現する一群があると考えてい
る。
慢性関節リウマチとの関連
PMRの病因論でさらに昏迷を深めるのは、慢性関節
リウマチとの関連である。
PMRと慢性関節リウマチの病態に共通する点が多いことを指摘する報文が少なく
なく、Jacob
(1979)
のごときは
PMRは慢性関節リウマチの早期症状ではないかと
考えている。またPMRに関節滑膜炎を合併した報告が4篇あり、滑膜液の免疫学的、
生化学的性状が慢性関節リウマチのそれに類似していることを指摘する報告もある
(Zen-nyoji et
al. 1993)。
さらに注目されるのは、Chuang et
al.(1982) や Al-Hussaini & Swanell (1985)
の長期にわたる追跡調査である(表3)。PMRの発症時には通常見られない遠位部の
筋肉の痛みとこわばりが83%に見られ、また関節炎を同時に発現した例が12%に認
められている。この知見は上述の
Jacob
の見解と合わせて注目される。
PMRの病因についての筆者の推論 PMRという病気は当初考えられていたほど単
純、明快ではなさそうである。
PMRはおそらく遺伝と環境の相互作用のもとに成立する病気で、その病因はきわ
めて異質
heterogenous
であろう。
加齢にともなって発現する宿主内部の変化、例えば免疫系の機能不全が主因で
PMRが発病することもあれば、一部側頭動脈炎と共通の原因で発病することもあろ
う。また悪性腫瘍が原因で二次的に
PMR
が発病することもあるかもしれない。
慢性関節リウマチとの関連はさらに複雑である。
筆者はPMRと慢性関節リウマチとは別の疾患単位と考えたい。この視点から、
PMRと慢性関節リウマチとの関連には三とおりあると考えられる。⑴全経過を通じ
てPMRの病態が不変な群、⑵初期にはPMRで、次第に慢性関節リウマチに転位して
いく群(自己免疫性疾患のなかには一つの疾病単位からの別の疾病単位に転位
transition
を起こした例がいくつか報告されている)、⑶二つの疾病単位が重複する
群である。
PMR
の異質性
Ayoub et
(heterogeneity)
al.(1985)
を示唆する報告にもう一つある。
によれば、側頭動脈炎が証明されない75例の
期にプレドニゾロン換算量の平均
22.8
PMR
患者は初
㎎/日で治療され、治療期間は平均
37.3ヵ
月であった。これらの患者の約40%は4年以上の治療期間を必要とした。
この報文は、治療の面から、PMRには少なくとも2群あることを示唆している。
一つは比較的限られた期間内で治療して寛解に入る群であり、他は長期間の治療を
要する群である。
樋口雅則博士の協力に深謝する。
柳瀬敏幸(1998.
9
5.
16)
参考文献 (アルファベット順)
安倍達 (1990) リウマチ、自己免疫疾患、全身性結合織疾患. 日医会誌. 104: 375
Al-Hussaini AS & Swanell AJ (1985) Peripheral joint involvement
in
polymyalgia rheumatica : A clinical study of 56 cases.
matol.
Br J Rheu
24:
27
Armstrong RDet al (1983) Histocompatibility antigens in polymyalgia
rheumatica and giant cell arteritis. J Rheumatol. 10: 659
Ayoub WTet al (1985) Polymyalgia rheumatica. Duration of therapy and
long-term outcome. Am J Med. 79: 309
Barber HS (1957) Myalgic syndrome with constitutional Polymyalgia
effects :
rheumatica. Ann Rheum Dis. 16: 230
Beeson PB (1979) Polymyalgia rheumatica and cranial narteritis.
: Textbook
I
of Medicine (Eds: Beesonet PB
al
) WB Saunders, Philadelphia: 216
Benedek TG (1988) Neoplastic association of rheumatic nd
diseases a
rheumatic manifestations of cancer. Clin Geriatr Med. 4: 333
Bevan AJet al (1968) Clinical and biopsy findings in temporal arteritis. Ann
Rheum Dis. 27: 271
Bird HAet al (1979) An evaluation of criteria for polymyalgia rheumatica.
Ann Rheum Dis. 38: 434
Bruce W (1888) Senile rheumatic gout. Br Med J. 2: 811
Bruk MI (1967) Articular and vascular manifestations ofgiapolymyal
rheumatica. Ann Rheum Dis. 26: 103
Calamia KTet al (1981) HLA-DR locus antigens in polymyalgia rheumatica
and giant cell arteritis. J Rheumatol. 8: 993
Chou Cet al (1984) Clinical and pathologic studies of synovitis gia
in polymyal
rheumatica. Arthr Rheum. 27: 1107
Chuang TYet al (1982) Polymyalgia rheumatica: A 25-year epidemiologic,
clinical and pathologic study. Ann Int Med. 97: 672
Cid MCet al (1988) Polymyalgia rheumatica ─ a syndrome associated with
HLA-DR4 antigen. Arthr Rheum. 31: 678
Cimmino MAet al (1990) A seasonal pattern in the onset of polymyalgia
rheumatica. Ann Rheum Dis. 49: 521
Cohen MD & Ginsburg WW (1990) Polymyalgia rheumatica. Clin
Rheum Dis
North Am. 16: 325
Douglas JGet al (1979) Polymyalgia rheumatica: A clinical review. Eur J Clin
Invest. 9: 137
Douglas WACet al (1983) Polymyalgia rheumatica: An arthroscopic study of
the shoulder joint. Ann Rheum Dis. 42: 311
Fauchald Pet al (1972) Temporal arteritis and polymyalgia rheumatica. Ann
Int Med. 77: 845
Goodman MA & Pearson CM (1969) Polymyalgia rheumatica ated
and associ
arteritis, a review. Calif Med. 111: 453
Gordon I (1960) Polymyalgia rheumatica: A clinical study
ases. ofQ 21 J c
Med. 29: 437
10
原まさ子 (1990) リウマチ性多発筋痛症. 日医会誌. 104: 390
Healey LA (1983) Polymyalgia rheumatica and the AmericanismRheumat
Association criteria for rheumatoid arthritis. Arthr Rheum.
1417 26:
Healey LA (1993) Polymyalgia rheumatica and giant cell
. Inarteritis
:
Arthritis and Allied Conditions (Eds : McCarty DJ & Koopman
Lee & WJ),
Febiger, 12th ed: 1377
Huskisson EC
et al (1977) Complicated polymyalgia. Br Med J. 2: 1459
Jacob D (1979) Rheumatoid arthritis in the elderly, presenting
s polymyalgia
a
rheumatica. J Am Geriatr Soc. 17: 183
John VK & Oldof S (1976) Sarcoidosis with thyroid involvement,
olymyalgia p
rheumatica and breast cancer. Scand J Rheumatol. 5: 77
柏崎禎夫ら (1974) Polymyalgia rheumatica の1例. 日本臨牀 32: 1047
北村諭 (1997) 膠原病の考え方診かたの進歩. 臓器病変・診かたの進歩 ⑵ 肺病変. 日
内会誌 86: 1358
近藤啓文 (1983) 側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症. 治療 65: 1609
Liang GCet al (1974) Familial aggregation of polymyalgia rheumatica and
giant cell arteritis. Arthr Rheum. 17: 19
Mary RJ & Nancy BA (1991) Giant cell arteritis. In sculitis
: Systemic
(Eds: Va
Churg Aet al
) Igaku Shoin, New York, Tokyo: 143-157
松田祐子, 富井正邦 (1992) 側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症. Medical Practice
9: 2093
日本内科学会編 (1998) 内科学用語集. 第5版. Pp 487
西岡淳一ら
(1985)
わが国におけるリウマチ性多発筋痛症の病態調査と日本人にお
け る診断基準確立の必要性への示唆. リウマチ 25: 265
西原龍司ら(1985) Biopsy にて Temporal Arteritis の合併を確認した Polymyalgia
rheumatica の1例. 内科 41: 862
O'Duffy JDet al (1976) Joint imaging in polymyalgia rheumatica. Mayo Clin
Proc. 51: 515
岡崎太郎 (1980) 結合織炎. 新内科学大系 (編集 : 吉利和ら) 56A: 300
Robbins DL & White RH (1988) Interrelationship between iapolymyalg
rheumatica and polyarthritis. J Rheumatol. 15: 1323
Rodnam GP & Schumacher HR (Eds) (1983) Primer on the Rheumatic
Diseases. 8th ed.
Tabata M
&
Kobayashi
T
(1994)
Polymyalgia
rheumatica
and
thyroid
papillary
carcinoma. Int Med. 33: 41
高杉潔 (1998) 注目される膠原病周辺疾患─その診断と治療. Medical Practice 15:
645
寺井千尋 (1994) リウマチ性多発筋痛症, 側頭動脈炎. Medical Practice 11: 531
東條毅 (1982) リウマチ性多発筋痛症候群. 日本臨牀. 40: 94
東條毅, 秋谷久美子 (1992) 皮膚筋炎・多発性筋炎. Medical Practice. 9: 2067
戸叶嘉明, 橋本博史 (1998) 膠原病治療の現況と新しい治療戦略. Medical Practice.
15: 558
von Knorring J & Somer T (1974) Malignancy in association
olymyalgia
with p
rheumatica and temporal arteritis. Scand J Rheumatol. 3: 129
Zen-nyoji A
et al (1993) Increased RAHA titer and interleukin-6 levels in the
synovial fluid in a patient with polymyalgia rheumatica.
. 32:
Int 484
Med
11