5. 政党

現代の社会(II)
2014 年度講義レジュメ(鈴田)
5. 政党
5-1 政党と他の団体の違い
・政治的目的で一部の人が自発的に集まった団体
政治に圧力をかけるが選挙には出ない利益団体を含まず、
非合法化されて地下活動に従事する政党を含む
5-2 民主主義体制下での政党の意義と目的
19 世紀までの政治思想では、政党(派閥・党派)は悪いものだった
現代では、政党がよいもの、民主主義に不可欠なものとみなされている
(しかし政治以外ではなお、派閥・党派は悪いものとされている)
○政党をめぐる政治思想の流れ
政党に対する敵視
↓
悪い政府に対する一時的な組織として承認(18 世紀)
↓
議会政治に必然的に伴うものとして承認(19 世紀)
↓
民主主義にとって積極的に良いものとして承認(20 世紀)
○現代民主主義における政党の意義 = 国家と社会の仲介
・政治参加。政治家の養成
・政治的要求の集約・整理
(選挙民の中にある対立の集約・整理)
・公約・政策の追跡・監視対象(個人政治家の挙動とその理由の報道は困難)
○現実の政党が持つ目的
現実の政党は複数の目的を同時に求めている
・自らの主義(イデオロギー)
・綱領(プログラム)の実現
- 公式目的
薄れることはあるが、まったくなくなることはしない
・選挙における勢力維持・拡大
- 外向けの権力追求
・組織利益(個別的利益の分配、組織の存続、党指導部の存続)- 内向けの権力追求
・党内対立の調整
- 誰かの目的というより、妥協によって生まれる党の方針
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5-3 政党組織と党内の権力
○誰が政党を支配するか
最高指導者(党首・首相・大統領)
、議員、党官僚、党員
○政党組織のタイプ(デュヴェルジェ『政党社会学』)
●幹部政党(名望家政党)
議員団
党本部
地方組織が党本部から独立している
有力者の組織。人数が少ない
議員
議員・地方組織が資金を調達・管理
既に名声・資金を持つ者が政治家になる
政党の規律は弱い。議員の独立性が高い
地方組織
*日本の自由民主党、フランスの国民運動連合
●大衆政党
党本部が地方組織・党員を掌握
党員が作る組織。人数が多い
議員団
党本部
議員
地方組織
党費が資金源。党本部が管理
政党活動で昇進して政治家になる
政党の規律が強い。中央集権的
*ドイツ社会民主党、スウェーデン社会民主労働党
イギリスの保守党、日本共産党
党員
●カリスマ政党(パーネビアンコ『政党』)
政党が指導者個人の付属物になっている場合
党組織は弱い。人事・地位が流動的
指導者の死か失脚で、一緒に没落するか、他のタイプに転換する
*国家社会主義ドイツ労働者党(ヒトラー)
、フランスの新共和国連合(ドゴール)
●他の要素
・外部団体(労働組合、宗教団体)への資金・運動員の依存 → 党組織は弱い
外部団体の意向・影響の程度により、政党規律は強くも弱くもなる
・与党としての経験 → 党組織は弱い
政府からの利益分配ができる。党員に頼らない支持調達
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○政党の制度化(パーネビアンコ『政党』)
初期段階
-制度化→
後期段階
主義主張の実現が重要な目的
組織の存続と個別利益が重要
イデオロギーが明らか
イデオロギーが隠れる
党員は党の公式目的でやる気に
党員は地位や報酬でやる気に
指導者の選択の自由が大きい
指導者の選択の自由が小さい
党の目標で外部環境を変えよう
党を外部環境に適応させよう
・時間がたつと制度化が進む
主義主張から、組織利益へ。しかし元の主張がゼロになるわけではない
・制度化の進み具合には大きな差がある。進化や発展というわけではない。
5-4 党内民主主義の問題
a. 一人のリーダーの命令で動く
b. 少数の幹部の間の交渉で動く
c. 多数の党員の公開の討議で動く = 党内民主主義
民主主義の政党にふさわしい組織原理は、党内民主主義
しかしそれが実現できなかったり、選挙との齟齬を来たすこともある
○党内民主主義の問題
・
「寡頭制の鉄則」
(ミヘルス『現代民主主義における政党の社会学』)
大衆政党が民主的な制度をとっても、結局は党官僚が支配する
→ 党内民主主義は実現できない?
・党内対立と選挙民の選択
党内の意思が統一されているときには自発的参加と服従が両立する
が、思想が同じでも戦術や人事で意見対立は必ず起きる
党内の討論・対立は党内民主主義に不可欠だが、党外の選挙民には無縁
党内討論による路線変更が、選挙公約を裏切る可能性が出てくる
*こうした問題は、党内民主主義がない政党にもある
党内民主主義でも解決が難しい問題
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5-5 政党の衰退・変容論
○「首相制」
(首相支配)と選挙プロフェッショナル政党
首相制 = 合議が原則となる議院内閣制のもとで、首相一人の力が増す現象
メディアの発達でトップの指導者が直接選挙民に結びつくことができる
仲介役だった党員・地元有力者等は要らない
メディア操作・イメージ戦略に長けた少数のチーム・広告会社が中心に
○政党衰退論
・大衆政党の衰退
党員の数と活動水準の低迷
世論調査における政党帰属意識の減退
・政党への不信
世論調査にみられる政党信頼度の低迷
無党派の増加
*衰退論にもかかわらず、政党は継続している
政党なしの個人人気は一時的・孤立的現象にとどまる
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