消研輯報第60号[PDF 14.3MB]

グラビア写真Ⅰ 消防研究センター 平成 18 年度の研究活動より
●
横風中の火災域風下に発生する
旋 風 の構 造 と発 生 メカニズムに
関する研究
直径 0.9m のメタノールプール火
炎の風下に発生した旋風。
●
経年劣化および地震動による石
油 タンク損 傷 被 害 推 定 システム
の開発
実規模タンク(直径 38m)の浮
き屋根の加振実験
●
消 防 防 災 ロボ ットの活 用 を促 進
するための技術的研究
小型移動ロボット FRIGO を基本
とした耐環境性(完全防水、防
塵、防爆、耐衝撃性)の高い実
用化型の開発
グラビア写真Ⅱ 消防研究所の研究発表・啓蒙活動
一般公開
一般公開
(平成 18 年 4 月)
(平成 18 年 4 月)
全国消防技術者会議(展示発表会場)
消防防災研究講演会
(平成 18 年 11 月)
(平成 19 年 1 月)
消防防災機器の開発等及び
消防防災機器の開発等及び
消防防災科学論文表彰式
消防防災科学論文表彰式
(平成 19 年 3 月)
(平成 19 年 3 月)
グラビア写真Ⅲ 消防研究センターの関連業務
[火災原因・災害調査]
千葉県市原市石油コンビナート火災(左)と現場調査(右)
(平成 18 年 4 月)
大阪府東大阪市化学薬品工場火災
千葉県船橋市産業廃棄物置場の火災現場
(平成 18 年 12 月)
(平成 19 年 1 月)
新潟県上越市化学工場火災
兵庫県宝塚市カラオケ店火災の鑑識支援
(平成 19 年 3 月)
(発災:平成 19 年 1 月
鑑識:平成 19 年 4 月)
消防防災機器の開発・改良及び消防防災科学論文に関する消防庁長官表彰
平成 18 年度 入選作品の一部より
頸椎固定器具の改良について
照明付瞳孔ゲージの開発
ホースラインや歩道の段差等を
聴覚障害者用住宅火災警報器の
安全に乗り越え可能なホースカーの改良
付属装置の開発について
防火かるたを活用した
水道水を利用した
子どもワークショップの手法について
住宅用スプリンクラー設備の開発
屋外用炎検出器の開発
呼吸管理補助器具の考察について
消研輯報 60
Ⅰ 研究業務
(1)
火災原因調査技術の高度化に関す
① 広域応援部隊消防力最適配備
1
支援システムの開発
る調査研究
(2)
過密都市空間における火災安全確
② アドホックネットワーク技 術 を用
2
ナノテク消防防護服の要素開発・評
報共有システムに関する検討
8
価方法の開発
(4)
サブテーマ III
10
化学物質の火災爆発防止と消火
向上に関する研究
化学物質等の危険性を把握するため
サブテーマ IV
の研究
119 番通報に対する救急業務の高度
サブテーマ II
化に関する研究
廃棄物、リサイクル物及びその処理
サブテーマ V
施設の火災安全技術に関する研究
災害対策本部における応急対応支
サブテーマ III
援システムの構築
(7)
(6)
経年劣化および地震動による石油タ
サブテーマ I
14
リサイクル資源化施設の火災爆発災
大 規 模 自 然 災 害 時 等 の消 防 防 災 活
害における消防戦術の研究
動 を支 援 するための総 合 システムの
サブテーマ II
研究開発
発電用軽水炉における消防技術の確
18
27
28
特殊災害に対する安全確保
ンク損傷被害推定システムの開発
サブテーマ I
24
斜 面 崩 壊 現 場 の消 防 活 動 の安 全 性
サブテーマ I
化学物質の消火に関する研究
(5)
23
いた広域消防援助隊用災害情
保
(3)
21
32
立
災 害 時 要 援 護 者 等 に 対 する 警 報 伝
サブテーマ III
達システムの開発
消 防 防 災 ロボットの活 用 を促 進 する
サブテーマ II
ための技術的研究
36
円滑な消防活動を支援するためのシ
ステムの開発
Ⅱ 研究発表等
1
所外研究発表状況
39
(1)
口頭発表
39
(2)
論文発表
49
(3)
解説、その他
51
(4)
著書
53
(5)
所外報告書
54
2
一般公開
55
3
全国消防技術者会議
58
4
消防防災研究講演会
63
消研輯報 60
5
消防防災機器の開発・改良及び
66
6
研究懇話会
113
7
火災原因調査技術会議
123
消防防災科学論文に関する消防庁長官表彰
Ⅲ 関連業務等
1
(2)
鑑定
147
受賞・学位
149
(1)
受賞
149
(2)
学位
149
工業所有権
150
特許
150
視察・見学
151
(1)
国内
151
(2)
海外
152
研究交流
126
(1)
派遣
126
(2)
受け入れ
127
4
(3)
共同研究
128
2
所外講師派遣及び所外委員会等
131
5
参加状況
(1)
所外講師派遣状況
131
(2)
所外委員会、研究会への参加状況
135
(3)
所外実験等への参加
142
3
(1)
災害調査等
144
災害調査
144
(1)
6
付 録
1
研究体制
154
(2)
主な研究施設の概要
160
(1)
組織
154
(3)
主な研究設備・機器の整備状況
161
(2)
予算
155
(4)
図書
161
(3)
定員
155
(4)
職員
156
3
年表
163
(5)
人事異動
157
(1)
昭和 23 年~平成 18 年度略年表
163
(6)
委員会
157
平成 18 年度刊行物
165
4
2
(1)
施設設備
159
(1)
消防研究所報告
165
土地、建物の現況
159
(2)
その他の刊行物
166
消研輯報 60
Ⅰ
(1)
研 究 業 務
火災原因調査技術の高度化に関する調査研究
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
火災災害調査部
火災原因調査室
田村裕之、笠原孝一
象究明のための研究を行う。
目的
近年の火災・爆発事故は、社会情勢・経済活
動等の動向により、新たな要因を内在するもの(例
成果
えば、グループホーム火災(新しい使用形態の施
(1) 火 災 原 因 調 査に活 用 可 能な科学 技 術 等につ
設での火災)、RDF 貯糟火災(RDF を大量に積み
いての調査
重ねて長時間貯蔵したことによる蓄熱発火)、屋外
火災原因調査に X 線マイクロフォーカス顕微鏡
タンクの全面火災(浮き屋根が地震により損傷して
が有効であることを明らかとし、火災調査に必要な
タンク内に沈降したため、液面全体が燃焼する火
顕微鏡の仕様をとりまとめ、装置を整備した。
災)等)が発生するなど、複雑・多様化している。
(2) 無人航空機による情報収集技術に関する研究
そのため、それらの原因の解明のために必要な調
無 人 航 空 機 から無 線 によりリアルタイムの画 像
査用資機材の高度化や科学技術の高度利用が求
を地上で観察できるシステムを構築した。無人航
められている。
空機を用い、山間部及び河川敷での可視光画像
このような状況に的確に対応し、効果的な火災
の撮影を実施し、昼間の可視光画像によって車両、
原因の解明を行うためには、火災の発生のメカニ
人の確認や焼け跡の把握が可能であることを示し
ズム、火災拡大の経過、建築物の構造等への影
た。無人航空機に搭載した CCD カメラでも活用可
響や火災後の現象などを解明するための手がかり
能な精度の可視光画像が得られることが分かった。
となる残留ガスの状況、材料の変形の状況、飛散
(3) 特殊火災の原因調査に関する研究
火災原因調査に関連して 3 件の火災事案に対し、
物の状況等を、現場調査において早期に確実に収
集し、高度な分析を行うことが不可欠である。この
現 場 から収 去 した製 品 や物 質 の導 電 性 の測 定 を
ため、火災原因調査に資することができる科学技
実施した。石油タンク内部での事故発生時の作業
術についての調査研究を行いつつ、サンプル採取
中の静電気帯電計測を実施し、着火能力のある放
技術、計測・分析技術、現場保存技術など多岐
電が発生する可能性があることを明らかとした。
にわたる技術の高度化を行うことが必要である。
石油中における水滴の沈降帯電について、実験装
この調査・研究では、現場調査に必要な調査用
置を整備した。
資機材の性能・機能を明らかにする、サンプルの
採取・分析方法、火災前の状態の再現と火災現
平成 19 年度の研究計画
象の再現の方法、原因の推定又は特定を行う手法
平成 19 年度においては、火災原因調査に活用
等についての調査研究、火災原因調査に必要な現
可能な科学技術等についての調査、火災原因調
-1-
消研輯報 60
査に必要な現象究明のための研究を実施する。
検討を行う。また、実タンク規模における帯電量の
(1) 火 災 原 因 調 査に活 用 可 能な科学 技 術 等につ
検討を行う。
いての調査研究
採取・分析技術の動向に関しての調査を実施し、
火災原因調査に活用可能な技術を抽出する。
(2) サンプルの採取・分析手法の研究
X 線マイクロフォーカス顕微鏡等により、焼毀し
た製品等の内部状況を観察することにより火災原
因となった状況を明らかにする手法を研究する。
(3)火災原因調査に必要な現象究明のための研究
石油中における水滴の沈降帯電について、小型
模型により帯電量の油種による差に関する検討を
行う。
図1
次年度以降の研究計画
(1) 火 災 原 因 調 査に活 用 可 能な科学 技 術 等につ
いての調査研究(図 1)
・溶融した樹脂が外部を覆っているような残渣物に
対し、内部の部品等を破壊することなく外部樹脂を
除去する技術について検討する。
(2) 火 災 原 因 調 査 に必 要な現 象 究 明 のための研
究
・石油中における水滴の沈降帯電に関する研究
小型模型により帯電量の油種による差に関する
(2)
沈降帯電による放電のイメージ図
過密都市空間における火災安全確保
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
大規模火災研究室
研究企画部
山田常圭
箭内英治、篠原雅彦、松島早苗、若月
薫
どの災害は、消防隊がこれまで経験したことのない
目的
近年発生した阪神淡路大震災での市街地火災、
規模や様態のもので、①消火・救出に長時間を要
WTC の超高層ビルへのテロ攻撃、韓国テグ市の
したこと、②消火・救助活動を行う消防隊員が危
地下鉄放火火災、ロンドン地下鉄同時多発テロな
険にさらされたこと、③多くの住民(乗客)が避難を
-2-
消研輯報 60
要したこと等、その活動は困難を極めた。
ドした。
地下施設、超高層ビル、大規模市街地などに
おける火災は、極めて複雑な様相を呈し、従来か
らの経験や知識だけでは、円滑な避難と救助、火
災の早期鎮圧による被害軽減及び消防隊の安全
確保を円滑かつ効果的に実施することが困難とな
るおそれがある。このため、先端科学技術を活用
して、都市空間における火災進展等の予測手法を
確立し、災害の特徴を考慮した有効な消防戦術に
ついての研究を早急に行う必要がある。
本研究は、その必要性をもとに以下の目的をも
って行う。
(1) 火災時に消防活動の困難が予測される空間と
して地下空間・高層ビルに対象を絞り、各々の火
災現場において火災環境を把握する技術、および
現場での火災状況をもとに、火災の進展が予測で
きる技術開発を行う。
(2) 市街地火災については、既往の消防力では対
応できない、火災旋風のような火災性状のメカニ
ズムを明らかにするとともに、そうした特殊な火災
についての被 害軽 減のための適切な対 応が可 能
図1
な知識の蓄積を図る。
タベース本体)
燃焼実験データベース(上:メイン、下:デー
(3) 火 災 進 展 のみならず、 避 難 者 状 況 、 消 防 装
備・設備の状況等、最大限利用可能な情報を統
②有毒ガスデータベースのスクリーニングに関す
合化して、合理的な消防活動が可能となる消防活
る調査研究
避 難 阻 害 要 素 として重 要 な火 災 時 に材 料 から
動支援ツールの開発を行い、実用化をめざす。
発生する燃焼生成ガス(有毒ガス)に関する国際
試験基準及び文献調査等を行った。
成果
(1) 燃焼実験データベースの構築と整備
火災時に発生する有毒ガスの重量分率は、燃焼
主として地下空間、高層ビル等での火災時にお
物の雰囲気酸素濃度や雰囲気温度が低下するに
ける燃焼性状および有毒ガスについて、火災性状
つれ増加する。そこで、基材レベルで代表的な素
予測につながるデータベースの構築および収集を
材の燃焼生成ガスデータの取得及び解析検討を
行った。
行うため、任意の酸素濃度の雰囲気ガスを供給で
①既開発の燃焼実験データベースへの過去の燃
きる小 規 模 燃 焼 実 験 装 置 および発 生した燃 焼 生
焼性状の登録作業および改良
成ガス(有毒ガス)の分析システムを完成させた。図
試験運用中であった燃焼実験データベースシス
2 は、本実験システムの系統図である。独立行政
テムの移設調整を行い、消防研究センターホーム
法 人 建 築研 究 所と防 火 材 料における次 世 代ガス
ページ上に燃焼実験データベースをリンクし、過去
有害性試験に関わる調査研究で共同研究をし、燃
に行われた実験のデータ及び映像等をアップロー
焼熱分解装置の製作を行った。
-3-
消研輯報 60
均で 3 倍以上になった。高さ 25cm、50cm になる
と、最大接線速度はそれほど変わらず、渦核が大
きくなっていることがわかる。
③多数の旋風の高さ 1cm における水平断面内
の最大接線速度の最大値は 1.7m/s であった。こ
れは、この高さでの横風風速が 0.5m/s なのに対
し、旋風が発生することにより 3 倍以上の風が吹く
ことを示している。
図2
小規模燃焼実験装置の概要
(2) 横 風 中 の火 災 域 風 下 に発 生 する旋 風 の構 造
と発生メカニズムに関する研究(中規模実験)
平成 18 年度は、これまでよりも規模の大きな 1m
級の火炎の風下でできる旋風について、その速度
場の構造を PIV(粒子画像流速測定法)などを用
いて詳細に調べ、発生メカニズム、発生条件をよ
図 3
り詳しく調べた。
発生した旋風をスモークワイヤ法で可視化した写
具体的には、内径 90cm のメタノールプール火
内径 90 ㎝のメタノールプール火炎風下に
真。
炎に風速 0.7m/s の横風をあてた時に、その火炎
の風下に発生する旋風(図 3 参照)の速度場を,
PIV によって調べた。その結果、以下に示すこと
が明らかになった。
①火炎風下の床面から高さ 1cm の速度場を見
ると,図 4 に示すように風上に向かう流れがあり、
風向
その流 れの両 側 には互 いに反 対 方 向 に回 転 する
旋風が発生している。これは火炎風下の床面付近
で、風上側つまり火炎に向かうエントレインメントと、
風上から火炎を回り込む横風とが合流する場所で
鉛直渦が発生しているように見える。
②ひとつの旋風について、ある一瞬の 3 次元速
度場を求めることは非常に難しい。そこで、ある高
図4
さの水平断面内の二次元速度場を多数の旋風に
平断面内の速度ベクトルと渦度の分布。図の右上
ついて測定し、高さを変えて別の多数の旋風につ
から左下に向かう流れは、火炎に向かう流れであ
いても二次元速度場を測定することで、旋風の速
り、この流れの両側で互いに反対方向に回転する
度場の垂直分布の特徴を調べた。結果を図 5 に示
渦が発生していることがわかる。
す。旋風の最大接線速度は,床面から高さ 1cm
でもっとも低く、高さ 11cm では 1cm にくらべて平
-4-
火炎風下の床面からの高さ 1 ㎝における水
消研輯報 60
風向
図5
床面からの高さ 1 ㎝から 50 ㎝における旋風
図6
の水平断面図の最大接線速度成分 Vmax と渦核
整備した熱流体数値解析用並列計算機
の半径 r の関係。
(3) 消防活動支援のための火災進展等の予測手
法の開発
本 研 究 項 目 で は 、 地 下 施 設 ・ 超 高 層 ビルの
CAD/CAM 設計データを用い、火災発生時に起
こる火災環境の把握および、速やかに予測可能な、
あるいは類似のシミュレータをもとに、危険性につ
図7
CAD 図面→FDS 入力ファイル用コンバータ
いて技術情報 の与えられる技術を開発することを
ープログラムの開発
主たる目的としている。またシミュレータ開発に必
要な火災拡大現象について、実験によって基礎デ
・その他、FDS 中の乱流モデルや燃焼モデル等の
ータの収集を図る。
平成 18 年度においては、以下の 3 つの項目に
物理モデルを変更し易くするための、ソースプログ
ついて技術的な検討を行った。
ラムコード中の各モデルにかかわる変数について、
① FDS 火災シミュレータの実用化に向けての高
物理モデルが判りやすくまた容易に検索可能とす
速化・運用の効率化向上に関わるシステム構築
るための解読作業を行った。
・熱流体数値解析のための並列計算機のハード
②地下街、地下鉄等、ネットワーク空間における
およびソフトの環境を整備した。その結果、数値
煙流動シミュレータ技術調査および消防隊の訓練、
流 体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン (FDS:
現場での利用に関するフィージビリティー調査
Fire Dynamics
Simulator)による演算速度を、従来使用していた
・既往のネットワーク空間(管路網)モデルとして、
環境に比べ、約 30 倍まで向上させることができ、
有 望 な 二 つ の プ ロ グ ラ ム ( SES (Subway
多様な数値計算に応えられる環境が整った。(図
Environment
6)
(Enhanced Virtual Environment Simulator for
・FDS で用いるための形状データを、建物の CAD
Aimed and Yielded Fatal Accident))の、機能
デ ー タ (dxf フ ァ イ ル ) か ら 、 読 み 込 む と 共 に 、
比較、基本的な物理現象をおよび入出力項目を
smokeview と呼ばれるポスト処理プログラムで利
調査しその違いを明らかにした。
用可能なインターフェースプログラムを作成した。
・EVE SAFER を、地下空間での火災等危険性把
(図 7)
握のために用いるにあたっての可能性を検討(FS)
-5-
Simulator) 、 EVE
SAYFA
消研輯報 60
し、大邱地下鉄火災を模した模擬計算を実施した。
動として効果が期待されている噴霧注水や強制給
(図 8)
気(Positive Pressure Ventilation)の火勢への
影響を調べるために、東京消防庁消防技術安全所
と共同研究で実験を実施した(図 9)。その結果、
両者を併用することである程度の消防活動の改善
となるが、条件によっては煙を押し下げる事があり、
運用面で今後のさらなる検討の必要があることが
明らかにされた。
平成 19 年度の研究計画
(1) 火災データベースの構築と整備
①既存燃焼実験データベースの整備
発熱速度、煙発生速度等の不足データの取得
およびデータベース化、および発熱速度、煙発生
速度等の既存データのデータベース化を図る。ま
た、東京理科大学火災科学研究センターと共同研
究(予定)を実施し、不足している燃焼性状測定
データを補完する。
図8
EVE SAYFA を用いた、大邱地下鉄を対象
②毒性データベースの整備
平成 18 年度製作した燃焼生成ガス(毒性)用
とした汚染物拡散のケーススタディー
小規模燃焼分解装置を用い、各種材料から発生す
る有毒ガスデータの取得およびそれらデータのデ
ータベース化を図る。
(2) 過 密 都 市 空 間 モデルを用 いた火 災 進 展 等 の
実験
① 過 去 に発 生 した火 災 旋 風 の事 例 収 集とその分
析
②横風中の火災域風 下に発生する旋風の構造と
発生メカニズムに関する研究(小規模実験)
1) 引き続き、低速風洞の改良
図 9
2) 小規模実験(火炎規模数 cm)
強制給気と間接噴霧放水併用時の実験風
発生条件として、横風風速、火炎の規模、発
景
熱量の効果を調べる。
③閉鎖的な空間内でのフォッグガン、強制給気に
(3) 消防活動支援のための火災進展等の予測手
よる煙制御効果に関する実験研究
法の開発
・過去に定量的に明らかにされていなかったフォッ
①ネットワークモデルによる煙流動・制御シミュレ
グガンによる周辺空気の巻き込み空気量の測定を
ーションプロトタイプモデルの開発
実施した。
②CFD によるシミュレーションにおいて以下の改
・地下空間等の消防活動困難な空間での消防活
良を行う。
-6-
消研輯報 60
・ 燃 焼 実 験 データベースとのインターフェース
火炎を含む火災旋風の発生条件について,これ
(I/F)の開発および火源入力プログラムの変更
まで考慮されていなかった部分について調べる.
・建物入力イン CAD/CAM データを用いた FDS
(3) 消防活動支援のための火災進展等の予測手
インターフェース部分の検証と改良
法の開発
・計算機に対して高速・最適化した FDS 火災シミ
①CFD によるシミュレーションの改良と対策効果
ュレータの性能評価
の検討
③FDS とネットワークモデルの練成シミュレータの
・地下鉄空間を対象としたケーススタディー実施に
基本設計
よる、改良 CFD モデルの課題検討
・排煙対策等、各種消防活動対策を加えた効果
次年度以降の研究計画
の検討
(1) 火災データベースの構築と整備
② ネットワークモデルによるシミュレーションの改
世界各国 で発表されている可燃物の発熱速度
良とケーススタディーの実施
データを再度収集し、既存データベースに組み込
・地下鉄空間を対象としたケーススタディー実施に
む。材料の火災時における発熱及び生成ガス特性
よるネットワークモデルの課題検討
を試験するコーンカロリメーター装置(ISO5660、
・CFD とネットワークモデルの練成モデルのプロト
基材 試験を対象)やルームコーナー試験装 置
タイプ開発
(ISO9705、実サイズ試験を対象)を代表とする
③消防活動・避難行動支援のための統合ツール
中規模実験区画を用いて、可燃物から火災時に発
の開発
生する燃焼生成ガス(有毒ガス)のデータを測定し、
最終的には、(1)~(4)までの研究を有機的に繋
小規模実験でのデータと比較検討し、材料に対す
げて、消防戦術の高度化に繋げる。これら研究項
る標準火災ガス毒性評価モデルを構築する。実験
目の関係を図 10 に示す。
においては 1)換気開口(窓・ドア等)の大きさ
や縦横比、2)火災継続において蓄熱された区画
内煙層や壁・天井の熱(温度)がどのように燃焼
速 度 や毒 性 ガスの濃 度 変 化 に影 響 を与 えるのか
を検討する。実大規模建物での燃焼生成ガスを収
集し、評価モデルの検証を行う。
(2) 過 密 都 市 空 間 モデルを用 いた火 災 進 展 等 の
実験
① 過 去 に発 生 した火 災 旋 風 の事 例 収 集とその分
析
図 10
②火災旋風の発生条件に関する研究
-7-
各研究項目の関係
消研輯報 60
(3)
ナノテク消防防護服の要素開発・評価方法の開発
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 21 年 3 月
技術研究部
大規模火災研究室
箭内英治、篠原雅彦、若月
薫
ナノコーティング、ナノフィルター等を活用する場合
目的
近年、日本においてタンク火災、RDF 火災、放
の性能要素を明確にするとともに、現有サーマル
射性施設の火災、地震災害などが多発しており、
マネキン装置の修復及び改造、耐熱性能評価シミ
また、テロ災害などが懸念されている。これらの火
ュレーション(一次元)の開発を行った。
災あるいは災害は極めて複雑な様相を呈し、消防
(1) 消防用防火服の開発目標となる耐熱性能、快
隊員が過酷な環境にさらされるおそれがある。ま
適性能など具体的な数値目標の設定
た、消火活動や救助活動で消防隊員の身を守る
現 在 までの全 体 防 火 服 のサーマルマネキン試
防護装備の一つが防火服や防護服であり、消防隊
験結果報告、ISO の消防隊員用防護装備の規格、
員の身を守る最後の砦となる。しかし、これら防護
消防隊員へのアンケート調査などを勘案して、表 1
装備は機能及び使用範囲に限界があり、消防隊
に示 すような開 発 する消 防 用 防 火 服 の性 能 目 標
員にとってまだまだ不十分である。
値を設定した。
(2) 現存サーマルマネキン装置の修復及び改造
一方、米国においては多額の予算を投じて、従
来の半分の重量の軽量で、化学、バイオ、熱など
現存サーマルマネキンの表面は、これまでの使
を含めたトータルな防護性能を持つ軍服、警察官、
用により大分痛んでいるため、修復すると共に耐熱
消防隊員などが着用する多機能な防護服などナノ
性黒色塗料で再塗装を実施した。
ファイバー技術を活用した開発研究が国主導で進
また、現存のサーマルマネキン装置は、暴露時
間を 10 秒から 20 秒まで延長できるように改造し、
められている。
以上のような現状を考慮すると、ナノテク、ナノ
開発した性能の良い防火服を評価できるようにし
ファイバー等の先端科学技術を活用して、現有の
た。
消防服より優れた性能を有する消防服の開発に関
表1
する研究を早急に行う必要がある。また、消防服
開発消防防火服の性能目標値
の開発には、消防服に必要な性能を明確にし、そ
れらの必 要 な性 能 の数 値 目 標 を立 てる必 要 があ
る。さらに、開発前のあるいは開発した消防服の
要求 性 能を適 切に評 価する手法の開 発 研究も早
急に行う必要がある。
成果
* 1:接炎時間 8 秒、下着有り、執務服ズボン有
地下施設、超高層ビル、大規模市街地などに
おける火災等の環境にも耐えて、安全かつ効果的
りの条件
な消防活動を行うため、消防防護服にナノ素材、
-8-
消研輯報 60
(3) 耐熱性能のシミュレーションプログラムの開発
能の評価
ナノテク、ナノファイバー技術を利用して開発す
ナノテク防火服の開発先で作成された試作生地
る消防服の耐熱性能評価技術を開発する前に、繊
の耐熱、快適性能について評価し、開発元にフィ
維の物性値を入力することにより、開発消防服の
ードバックを計り、より優れた消防服の開発のデー
耐熱性能を予測できるシミュレーションプラグラム
タを提供する。
(一次元)の開発を実施した。また、外部から与える
(4) 耐熱性能評価のシミュレーションプログラムの
火災環境の入力熱流束を、3 次元熱流体解析ソフ
開発
ト Advance/FrontFlow/red を用いてシミュレー
開 発した耐 熱 性 能 評 価シミュレーション結 果と
ションし、実際のサーマルマネキン試験の裸暴露
現有サーマルマネキン試験結果を比較検討し、シ
での体表面上の熱流束分布を再現することができ
ミュレーションプログラムを完成させる。
た。
次年度以降の研究計画
(1) 開発消防服の性能目標のロードマップの作成
(平成 19 年度からの継続)
この研究は 3 年間であるが、さらに将来を見据
えた消 防 服のあり方をロードマップの形 で作 成す
る。
(2) 試作ナノテク消防防火服生地や防火服の耐熱、
快適性能の評価
ナノテク防火服の開発先で作成された試作生地
や防火服の耐熱、快適性能について評価し、開発
元にフィードバックを計り、より優れた消防服の開
図1
発のデータを提供する。
サーマルマネキンのシミュレーション結果
(3) 初心者でも使いやすい耐熱性能評価のシミュ
レーションプログラムの開発
平成 19 年度の研究計画
(1) 開発消防服の性能目標のロードマップの作成
ユーザーインタフェースを改良し、初心者でも
この研究は 3 年間であるが、さらに将来を見据
使いやすいようにした耐熱性能評価シミュレーショ
えた消 防 服のあり方をロードマップの形 で作 成す
ンプログラムを開発し、自治体消防へ配布できる
る。
耐熱性能評価シミュレーションプログラムを完成さ
(2) ナノテク消防防護服の耐炎性能を評価できる
せる。
ように現有サーマルマネキン装置の改良
前 年 度 実 施 したサーマルマネキン試 験 装 置 の
暴露時間の延長の改良では、燃焼室のドアを全開
して実施すると 20 秒間暴露できるが、燃焼室のド
アを閉めて 20 秒暴露すると燃焼室内の酸素が減
少して暴露時間が 20 秒継続されないことが判明
した。そのため、今年度は燃焼室のドアを閉めた
状態でも 20 秒間暴露できるように装置を改良する。
(3) 試作ナノテク消防防火服生地の耐熱、快適性
-9-
消研輯報 60
(4)
化学物質の火災爆発防止と消火
サブテーマ I
サブテーマ II
化学物質等の危険性を把握するための研究
廃棄物、リサイクル物及びその処理施設の火災安全技術に関
する研究
サブテーマ III 化学物質の消火に関する研究
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 21 年 3 月
技術研究部
危険性物質研究室
古積
博、佐宗祐子、岩田雄策、内藤浩由
技術研究部
特殊災害研究室
金田節夫
案する。
目的
現代社 会 で使用されている化学物 質 の数は膨
これらのことを達成するために、以下の三つのサ
大で、かつ、新規に開発された化学物質が登場し
ブテーマを設けて研究を行う。
ているため、化学物質等の火災を予防するための
・サブテーマ I
危険性評価法、安全技術、消火技術が必要とさ
ための研究
れており、その解明・開発が本研究の主たる目的
・サブテーマ II
である。
処理施設の火災安全技術に関する研究
化学物質等の危険性を把握する
・サブテーマ III
高度な各種熱分析・熱量計技術を用いて、化
廃棄物、リサイクル物及びその
化学物質の消火に関する研究
学物質の火災危険性を評価する。化学物質の危
険性は、発熱の有無とその温度依存性に支配され
成果
るため、これらの情報を適正に把握するための危
サブテーマ I
険性評価法を検討する。研究成果を基に、化学物
めの研究
質の安全管理に重要な情報である「熱安定性」、
(1) 熱分解の危険性評価方法
化学物質等の危険性を把握するた
「反応の激しさ」、「発火性」、「混合危険性」及
双子型熱量計及び圧力追従式断熱型熱量計を
び「発生するガスの毒性」を含めて総合的に把握
用いて、従来の化学物質及び新規化学物質等の
する危険性評価法を提案する。
危険性を明らかにするとともに、適正な危険性評価
化学物質のタンク火災が発生した場合に備えて、
方法を検討した。双子型熱量計を用いて自己触媒
大容量泡放水砲の放射試験及び小規模な液面燃
型(発熱の仕方が突発的で急激な物質)の自己反
焼での泡消火試験から、定性的な泡放射特性と各
応性物質である AIBN について、融解と分解を分
種泡消火剤の消火性能が調べられている。化学物
離した危険性評価法及び反応の解析法を提案し
質のタンク火災の消火性状を明らかにすることは、
た。圧力追従式断熱型熱量計を用いてジターシャ
消防隊の大容量泡放水砲による消火に限らず、火
リーブチルの分解ガス発生量を明らかにし、圧力
災発生直後の初期火災に対応する固定泡消火設
上 昇 速 度 及 びガス発 生 量 等 を指 標とした危 険 性
備の泡性能の把握にとっても重要である。結果を
評価方法を提案した。
基にタンク全面火災に対する最適な消火方法を提
(2) 混合危険の評価方法
- 10 -
消研輯報 60
3) 更に流動性の評価は、tan(δ)=1 となる歪み
混 合 危険 性のある化 学 物 質 等に対して圧 力 追
(γ)の順から、AFFF>AR-AFFF>SD>FP>P
従式断熱型熱量計を用いる危険性評価方法を検
(2) フォースフルアプリケーションの泡展開性
討した。カルシウム及びカルシウム化合物と水との
反応を検討し、圧力上昇速度及び発熱速度、発
粘弾 性計 測で得られた各泡の流 動 性と被覆 性
生ガス等を指標とすることで混合時における反応
の相関関係を求めるため、実際の石油タンク消火
の激 しさについて定 量 的 評 価 及 び推 定 が可 能 で
をイメージしたアプリケーションを使用し、非燃焼
あることを示した。
時における各泡の油面泡被覆性の実験を行った。
サブテーマ II
その結果、
廃棄物、リサイクル物及びその処
1) 泡の油面被覆時間は、泡供給率によって変
理施設の火災安全技術に関する研究
各地で問題になっている大量に放置された廃棄
化するが、被覆率 80%を越えると、タンク壁面
物施設において、試料を採取、熱分析を行って、
や泡の剪断応力の違いにより、100%被覆時間に
発熱機構を明らかにした。木材チップでは、発熱
大きく影響することが分かった。
量は極めて小さいが、シュレッダーダスト系では、
2) 泡 の運 動 量 が高 い泡 供 給 率 (5Lpm/㎡ )の
発熱量は大きく化学反応が関係している。
場合、被覆率 80%では、泡の粘弾性計測によ
今 後 流 通 される可 能 性 の高 い再 生 資 源 燃 料
る流動評価と同じ傾向を示す。また、低い泡供
(バイオマス燃料)合計 8 種類、RDF、RPF 及
給率(1.25Lpm/㎡)では、その傾向が顕著に表
び石炭について、発熱開始温度、水添加の場合
れている。
の発熱状況からその危険性を明らかにした。その
3) たん白系および水成膜系の泡消火剤の被覆
結果、下水汚泥から作る汚泥燃料や鶏糞燃料は、
性、流動性には、大きな違いがあることが分か
発熱開始温度、発熱量が大きく、また、水の添加
る。非燃焼時の泡被覆性実験の結果と流動性
の影響も大きく危険であることが明らかになった。
評価には定性的であるが、良い相関性があるこ
また、RDF や鶏糞は可燃性ガスを多く発生し、同
とが分かった。
(3) 大容量泡放水砲による最適放射条件
時に大きな発熱を生じる。木材系では、バーク(樹
大容量泡放水砲による放水実験から、放水時の
皮)部分を原料としたものの発熱危険性が高い。
サブテーマ III
速 度 ベクトル解 析 が精 度 の高 いシミュレーション
化学物質の消火に関する研究
(1) 泡の油面被覆の予測
開発のために有効であることが分かった。
(4) ボイルオーバー等の火災性状の研究
代表的な泡消火剤である、たん白泡(P)、フッ素
たん白泡(FP)、水成膜泡(AFFF)、粘性付与水成
イギリス、ハンガリー等の研究者と共に、ハンガ
膜 泡(AR-AFFF)、そして合 成 界 面 活 性 剤 泡(SD)
リーにおいて原油等を燃料としてボイルオーバー
の 5 種類を使用し、アスピレート方式の小型ノズル
の実験を行い、その性状を明らかにした。また、
により発泡させ、各泡消火剤の粘弾性計測を行っ
ガソリン、軽油を混合した場合、激しいボイルオー
た。泡消火剤の粘弾性計測を行うことは、発泡し
バーが起こることを確認した。
た泡(以下、泡)の流動性を定量的に評価するため
に必要となる。粘弾性計測より、貯蔵弾性率 G’
平成 19 年度の研究計画
主な研究項目は以下の通り
の大きさから、以下のことが判った。
1) 硬質性状の泡は、P > SD > FP > AR-AFFF
サブテーマ I
> AFFF の順となる。
めの研究
2) 損失正弦 tan(δ)より、構造的な安定性を評
(1) 熱分解の危険性評価方法
価すれば、FP > P > SD > AR-AFFF > AFFF
化学物質等の危険性を把握するた
圧 力 追 従 式 断 熱 型 熱 量 計 及 び等 温 型 高 感 度
- 11 -
消研輯報 60
熱量計等を用いて、自己反応性物質等の熱分解
る場合、船舶火災となる。そのため、海上保安庁
に伴う危険性を適正で、かつ詳細な評価が可能な
と協力して、その出火原因を明らかにし、防止対
危険性評価方法を検討する。
策を検討し、また、有効な消火方法の開発につい
(2) 混合危険の評価方法
ても検討する。
混合危険性のある化学物質等を対象として、暴
走反応測定装置及び混合型反応熱量計を用いて
圧力上昇速度及び発熱速度、発生ガス等の分解
の激しさに関する基礎データを得る危険性評価方
法を検討する。水等と反応して微少発熱を伴う反
応 に対 して等 温 型 高 感 度 熱 量 計 等 を用 いる危 険
性評価方法を検討する。
(3) 反応危険性の評価方法
図2
火災予防・安全対策に役立てるために、反応中
大量廃棄物施設での温度、ガスの測定(千
葉県)
間体の検出 及びガス分析を取り入れた危険物用
(2) バイオマス燃料等の危険性評価
評価手法を検討する。
圧力追従式断熱型熱量計を用いて、分解の激し
液 体 系 バイオマス燃 料 ( バイオアルコール、
さについて定量的評価及び推定が可能であること
ETBE、バイオディーゼル等)について、発熱発火
を示した。
による火災危険性を評価すると共に燃焼消火実験
を行い、火災時の対応方法(適応泡の評価等)
を検討する。
今後、木材、石炭その他バイオマスを基に作ら
れるリサイクル燃料の提案があれば試料を入手し、
その危険性評価を検討する。
サブテーマ III
化学物質の消火に関する研究
(1) 泡の油面被覆性能の評価
液面燃焼における泡消火のメカニズムは、泡被
膜による可燃性蒸気の抑制と発泡した泡に含まれ
る水分蒸発による冷却効果であるが、前者による
図1
サブテーマ I の研究項目間の関係図
消火機構が支配的となる。そこで、重要となるの
が泡の油面被膜性能となる。引き続き、各泡消火
サブテーマ II
廃棄物、リサイクル物及びその処
剤、各泡性状(発泡倍率、水溶液還元時間)の
理施設の火災安全技術に関する研究
違いに着目し被覆性能に寄与するパラーメーター
(1) 廃棄物及びその処理施設での問題点の究明
の整理を行なう。
現 実 に問 題 となっている大 量 廃 棄 物 堆 積 施 設
(千葉県内)において、内部温度、ガス濃度を測
定し、また、堆積物内への空気流入の動きを調べ、
発熱発火機構を明らかにする。
最近、廃金属による火災が増加している。金属
図3
等を回収した後、船舶に積み込み、海外へ輸出す
- 12 -
泡の展開および被覆性能実験
消研輯報 60
(2) 泡の耐性評価
今後、多くの化学物質に対応するために、定量
泡が油面被覆中や油面被覆後に消泡しないた
的で適正な危険性評価方法を提案する。火災に至
めの泡の耐性(耐油性、耐熱性、封鎖性)は、
る兆候(微少発熱現象)の検知とともに熱分解の
泡の被覆性と同様、非常に重要な要素となる。各
激しさを適正に評価する危険性評価方法を検討す
泡消火剤、各泡性状の違いによる泡の耐性評価を
る。
行い、また油種の違いによる消火に必要な泡の耐
(2) 混合危険の評価方法
性評価も行う。
多くの混合危険のある化学反応に対応するため、
混 合 危 険 性 を定 量 的 に把 握 するための方 法 を提
案する。
(3) 反応危険性の評価方法
種々の反応に対して反応中間体の検出及びガ
ス分 析 を取 り入 れた危 険 物 用 評 価 手 法 を適 用 す
る。
サブテーマ II
図4
廃棄物、リサイクル物及びその処
理施設の火災安全技術に関する研究
泡の耐性(耐熱、耐油)評価実験
(1) 引き続き、今後流通するであろうバイオ燃料の
(3) 大容量泡放水砲によるシミュレーション開発
危険性について検討する。
大容量泡放水砲のシミュレーション開発の精度
(2) 最近、廃金属の火災が急激に増加しているの
向上のため、引き続き、泡放水泡での放射実験が
で、その出火機構、防火対策、消火方法を検討
行われる場合には参加し、シミュレーションに必要
する。
な放射データの蓄積を行う。
サブテーマ III
(4) ボイルオーバー等の火災性状の研究
(1) 泡消火の高度化に関する研究
化学物質の消火に関する研究
泡の性状が消火に与える影響を整理し、泡消火
消火が成功しない場合、長時間の火災が継続
する。その場合、ボイルオーバーや複数のタンク
に必要な性状を検討していく。
火災に至る場合があるので、長時間火災時の燃焼
(2) 大規模な化学物質タンク火災の消火
フォースフルアプリケーション・ジェントルアプリ
性 状 について国 内 外 の研 究 機 関 と協 力 して大 規
ケーションについて得られたデータとシミュレーシ
模実験を行って確認する。
ョン結果を基に最適放射条件を明らかにする。
(3) 燃焼性状に関する研究
ハンガリー国 営 石 油 会 社 等 による大 規 模 な燃
次年度以降の研究計画
主な研究項目は以下の通り
サブテーマ I
焼・消火実験に参加して、共同で原油、軽油等の
化学物質等の危険性を把握するた
燃焼性状を調べる。地震時等最悪のケースでの大
めの研究
規模化学物質火災の対策を提案する。
(1) 熱分解の危険性評価方法
- 13 -
消研輯報 60
(5) 経年劣化および地震動による
石油タンク損傷被害推定システムの開発
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
山田
實
技術研究部
地震等災害研究室
座間信作
技術研究部
施設等災害研究室
西
晴樹
本研究では、タンクの損傷被害評価手法を高度
目的
石 油 タンクに代 表 される危 険 物 施 設 の安 全 確
化するため、石油タンクを開放せずにタンク底部の
保は、現在、2 つの重大な課題に直面している。
経 年 劣 化 状 況 を迅 速かつ経 済 的に評 価 できる手
一つは、施設の経年劣化の進行(腐食)であり、
法の開発、タンク底部浮き上がりによる損傷評価
もう一つは南海トラフ等における巨大地震発生の
手法、地盤の液状化がタンクに及ぼす影響の評価
切迫である。
手法および浮き屋根揺動時の強度評価手法に関
危険物施設の漏洩事故の主たる原因は、腐食
する検討を行う。また、同じくタンクの損傷被害評
であり、これらの防止対策の一つとして石油タンク
価の高度化のため、想定大地震発生時の石油コン
では開放検査が義務付けられている。しかし、漏
ビナート地域における強震動予測を行い、コンビナ
洩件数は、近年増加の現象を示していることから、
ート地 域 における揺 れの空 間 較 差 の高 精 度 な予
もはや開 放 検 査 だけでは漏 洩 防 止 対 策 として十
測・推定手法を探求する。さらに、危険物施設の
分とは言えず、新技術の導入が必要と考えられる。
リスク等の解明するための評価手法を事故事例の
一方、巨大地震による過去の事故事例を見ると、
分析に基づいて構築する。
1978 年宮城県沖地震における仙台の製油所での
これらの研究成果を用いて、大地震発生時の石
重油大量流出事故は、経年劣化した石油タンクが
油コンビナート等における多様な被害を危険物施
強震動を受け、タンク本体に亀裂が生じたために
設の経年劣化、液状化危険等を考慮に入れて評
起こった。また、2003 年十勝沖地震で発生した苫
価することのできる「石油タンク地震被害推定シス
小牧の石油タンク全面火災の背景には、長周期地
テム」を構築・実証するとともに、危険物施設の
震動によって励起された液面揺動が原因で浮き屋
保安管理等に関する科学的知見の創出を目指す。
根が破損・沈没したという事情があった。大地震
発生時にこのような大規模な事故・火災が起きる
成果
と、消防力が分散し市街地における火災鎮圧・人
主な研究成果は以下の通りである。
(1) 危 険 物 施 設 の地 震 動 および経 年 劣 化 等 によ
命救助の妨げとなる。
以上のことから、危険物施設の経年劣化の状況
る漏洩
を把握し、地震等による異常・被害を予見診断す
危険性評価手法の高度化
る技術の確立と体制の整備は、より有効な被害予
①AE 法によるタンク底部の腐食損傷評価(AE 源
防対策と迅速かつ的確な応急対応を可能とし、災
の位置標定手法の確立)
タンク底部の腐食損傷に起因する AE(音の放
害 の未 然 防 止 と拡 大 抑 止 に対 して多 大 な効 果 を
持つと言える。
出)の発生位置を検出し、底板と構造強度部材で
- 14 -
消研輯報 60
あるアニュラ板のそれぞれの腐食損傷を分離する
置した強震計ならびに石油コンビナート地域周辺
ためのニューラルネットワークを用いた AE 源位置
に設 置 されている他 機 関 の強 震 計 の地 震 記 録 を
評定ソフトウェアを作成した。位置評定誤差は、タ
(1)地震発生後すみやかに自動的に収集・処理し、
ンク直径の 5% 以下であり、実用化のための十分
(2)地震動情報を地図上にわかりやすく表示し、(3)
な精度が得られた。
集約された地震動情報を Web 上で閲覧すること
ができるシステムを試作した。
(3) 石 油 コ ン ビ ナ ー ト 地 域 に お け る 強 震 動 の 予
測・推定に関する研究
①長周期地震動の理論的予測・評価に関する研
究
単純化した勇払平野の 3 次元地下構造モデル
に対して 2003 年十勝沖地震の際の長周期地震動
の地震波動伝播シミュレーションを行うことにより、
この地 震 の際 に石 油 タンクに甚 大 なスロッシング
被害が発 生した苫小牧西 港において長 周期の揺
れが最大となったことの原因を考察した。その結果、
苫 小 牧 西 港 付 近 の地 表 近 くの軟 らかい堆 積 層 構
造に加えて、勇払平野西側の山地境界が地震波
動伝播に及ぼす影響もその一因として考えられる
ことがわかった。
勇 払 平 野 の 3 次 元 地 下 構 造 モデ ルに 対 して
2003 年十 勝 沖 地震の際 の長 周期 地 震動 の地 震
図1
N-N を用いた AE 源位置評定ソフトウェア
波動伝播シミュレーションを行った結果(最大地動
速度分布)を図 2 に示す。この図において、平野
②液状化による危険物施設の挙動
西側の山地境界の影響によって、苫小牧西港付近
主として阪神淡路大震災における石油タンクの
と千歳付近の長周期地震動が他の場所よりも大き
沈 下 量 と地 盤 の液 状 化 指 数 との関 係 を検 討 する
くなることを示している。
ためのボーリングデータおよびタンク本体の傾斜
②地震観測記録に基づく長周期地震動特性の把
に関する資料を収集した。
握
(2) 石油タンク地震被害推定システム(地震動情
長周期地震動の影響を強く受けると考えられる
報伝送伝達モジュール)の試作
石油コンビナート地域に設置されている強震計の
①強震観測の実施
データ等の解析を行い、現行基準における液面揺
想定東南海・南海地震の震源域近くに立地する
動の水平設計震度の地域補正係数の有効性を検
石油コンビナート地域のなかから選んだ 3 つの地
討した。この一年間に得られた記録では、データ
域(尾鷲、海南、志布志)をシステム開発におけ
量は十分とは言えないものの、上磯、秋田、酒田、
るパイロットサイトとして位置づけ、これらの地域の
京葉臨海北部、同中部、同南部、京浜臨海、清
石油タンクサイトに速度型強震計を設置した。
水の各石油コンビナート地域についての検討が可
②地震動情報伝送伝達モジュールの試作
能であった。得られたデータを見る限り、これらの
消防研究センターが石油コンビナート地域に設
地 域に対する地 域 補正 係 数の有 効 性を疑わせる
- 15 -
消研輯報 60
知見は得られなかった。
札幌の記録を収集し、数値化を行った.札幌の記
石油コンビナート地域とその近隣の既存強震観
録は③の検討に用いられた。
測点の揺れの比較(スペクトル比)を図 3 に示す。
現行基準では、これらの石油コンビナート地域の
液面揺動の水平設計震度は、各地の気象官署等
近 隣の既 存 強 震 観 測 点 で得られた地 震 記 録から
長 周 期 地 震 動 の特 性 を分 析 した結 果 に基づいて
定められている。
図2
勇払平野の 3 次元地下構造モデルに対して
2003 年十勝沖地震の際の長周期地震動の地震
波動伝播シミュレーション結果(最大地動速度分
布)
図 3
③長周期地震動の設計水平震度の設定
北 海 道 石 狩 北 地 区 が石 油 コンビナート特 別 防
石油コンビナート地域とその近隣の既存強
震観測点の揺れの比較(スペクトル比)
災地区に指定されたことから、当該地区の長周期
(4) 浮き屋根揺動時の強度評価の検討
地震動の設計水平震度に関する検討を行い、当該
地区が「地域 1- ハ」に相当することを示し、消
以下の実験を実施し、具体的な浮き屋根の力学
防庁危険物保安室に報告した。その結果に基づき、
的特性を明らかにし、浮き屋根の耐震・補強対策
関連基準の改正が行われた(平成 18 年 11 月 10
への活用を図った。
日付消防危第 242 号)。
①振動台による模型タンク(直径 7.6m)の揺動実
④気象庁一倍強震計記録の収集・数値化等
験
過去 10 年以上に亘って収集・数値化した気象
図 4 に示す模型タンクによる一次および二次モ
庁一倍強震計記録約 10000 成分の数値データを
ードを励起する実験、あるいは線形および非線形
ホームページで公開した。また、尾鷲、和歌山、
領域での揺動実験を行い、自由液面の表面形状
- 16 -
消研輯報 60
図 5 に示す実タンクの浮き屋根を直接揺動させ、
計測および浮き屋根の変形挙動解析を実施した。
その結果、浮き屋根で 2 次モードが励起された
液 面 揺 動 による浮 き屋 根 の変 位 および浮 き屋 根
場合、加振方向の浮き屋根の直径の変化は、こ
各部に発生するひずみ等の計測を実施した。
れに直角の方向に比較して大きいことから、浮き屋
これらの実験から、浮き屋根がある場合、非線
根が楕円状に変形していることがわかった。これは、
形の効果による液面増加分は線形理論から約 4%
消防庁の報告書において、浮き屋根の変形挙動で
ずれていることがわかった。また、揺動時に発生す
仮定されていたことであり、本実験により初めて確
るポンツーンアウターリムの最大ひずみは、消防庁
認された挙動である。また、デッキの面外変形量
で検討された算定式とほぼ同様な値であることが
は、ポンツーン半径方向変形量の関係式として表
確認された。
現できることを証明した。
平成 19 年度の研究計画
主な研究項目は以下の通りである。
(1) 石油タンク損傷被害推定システムの開発
タンク底部の経年劣化状況評価、タンク底部浮
き上がりによる損傷評価、地盤の液状化による影
響評価、浮き屋根揺動時の強度評価および想定
大地震発生時の石油コンビナート地域における強
震動予測などを盛り込んだタンクの損傷被害評価
手法の高度化システムを開発する。(継続)
図4
(2) 地震時における浮き屋根式石油タンクの溢流
模型タンクの揺動実験風景
実験
浮き屋根の揺動が余裕空間より大きくなった場
合、タンクの上部から内容物が溢流する。この溢
流量の算定式を求めるために、模型タンクを用い
た溢流実験を行う。
(3) 強風時における浮き屋根の変形計測
シングルデッキ型浮き屋根が、台風等の強風を
受けると、デッキ部の剛性がダブルデッキ型に比
較して小さいため、屋根板に大きな力が発生し、
場合によっては破損が生じることが考えられる。そ
こで、タンクが受ける強風の影響を実タンクを用い
た観測データから検討する。
(4) 地 震 によるスロッシング時 の浮 き屋 根 損 傷 形
態の推定手法の検討
図5
実規模タンク(直径 38m)の浮き屋根の加
振実験
次年度以降の研究計画
主な研究項目は以下の通りである。
②実規模タンク(直径 38m)の浮き屋根の加振実
(1) 石油タンク損傷被害推定システムの開発
験
(2) 石 油 コ ン ビ ナ ー ト 地 域 に お け る 強 震 動 の 予
- 17 -
消研輯報 60
測・推定に関する研究(継続)
●平常時
(3) 強 風 時 における浮 き屋 根 の強 度 評 価 手 法 の
強震動予測結果に基づいて石油タンクの被害を
検討
事前に予測し、被害予防対策に活用。
(4) 地 震 によるスロッシング時 の浮 き屋 根 損 傷 形
●地震発生時
態の推定手法の検討
観測された地震記録等に基づいて石油タンクの
石油タンク地震被害推定システムの概要
(6)
被害を地震直後に推定し、応急対応に活用。
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ I
災害時要援護者等に対する警報伝達システムの開発
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
施設等災害研究室
河関大祐
技術研究部
地震等災害研究室
座間信作、高梨健一、新井場公徳、鄭
炳表、遠藤
真
大規模災害のうち水害を対象として、防災行政
目的
大規模災害に際して、住民が自らの安全を確保
無線の使用についての過去の事例を災害報告書
するために必要な防災情報や避難情報を、災害時
や新聞記事等から収集し、その効果や問題点等に
要援護者を考慮した、誤解なく理解しやすい内容
ついての調査を行った。更に、災害時要援護者も
で住民へ提示する警報伝達システムを開発するこ
考慮した、誤解なく、理解しやすい防災情報を提
とを目的とする。本研究では社会心理学等の分野
示するための音声、文字ならびに絵などを用いた
で研究されている、防災情報伝達手法等を検討し
表現方法について検討・整理を行った。
1) 防災広報に関連した表現方法に関する資料、
導入を図る。また、情報提示に主に音声を用いる
同報系防災行政無線の弱点を補うため、文字や絵
情報の収集を行い、理解しやすい文章表現として、
などを用いた防災情報表示の検討、防災情報受信
文章の文字数は 20~50 文字程度、文章はセンテ
端末装置の検討を行う。さらに、J-ALERT(全国
ンスごとに完結し「なお」「また」等の接続詞でつ
瞬時警報システム)からの情報を警報伝達システ
なげない、1 センテンスに盛り込む情報はひとつ、
ムへ受け渡す技法を確立する。
多くのセンテンスは理解不能(平常時でも 7 センテ
ンス)、等の知見を得た。
2) 過去 10 年において市町村が刊行した洪水ま
成果
平成 18 年度は以下の 2 項目について研究開発
たは土砂災害に関する災害記録を収集し、気象注
を実施した。
意報・警報の履歴、住民向け避難勧告・避難指
(1) 住 民 提 示 に適 した防 災 情 報 文 章 のための基
示履歴、避難者(世帯)数の推移、消防署との
礎調査
連絡履歴等の取りまとめを行った。
- 18 -
消研輯報 60
◆市町村が刊行した災害記録の収集と住民向け広報、避難等に関する情報整理(抜粋)
調査対象とした災害の概要
被害概要
平成 16 年 7 月新潟・福
島豪雨による災害
平成 16 年 7 月福井豪雨
による災害
平成 16 年台風第 23 号に
よる災害
三条市
見附市
福井市
鯖江市
舞鶴市
洲本市
垂水市
平成 17 年台風第 14 号と
豪雨による災害
延岡市
宮崎市
岡谷市
平成 18 年梅雨前線によ
る災害
辰野町
湧水町
発災年月
日
及び時刻
H16.07.13
H16.07.13
H16.07.18
H16.07.18
H16.10.20
H16.10.20
H17.09.05
H17.09.05
H17.09.04
H18.07.19
H18.07.17
H18.07.21
対応
時期
死者数
行方不
明者数
9
0
1
79
0
0
0
6
0
0
0
0
1
0
2
11
6
0
3
160
5
0
6
5
5
0
0
0
1
0
1
2
0
0
0
10
8
0
4
8
4
0
1
2
0
0
0
0
H16.07.13
-
H16.07.13
09:20
H16.07.18
07:10
H16.07.18
07:30
H16.10.20
15:45
H16.10.20
10:00
H17.09.04
19:12
H17.09.05
08:10
H17.09.04
16:38
H18.07.19
05:40
H18.07.17
14:57
H18.07.21
12:00
重傷
者数
軽症
者数
・気象注意報・警報の通知:災害当時、ほとんどの市町村で住民向け通知はなかった。
・避難等に関する問合せ:避難不能に対する救助要請、災害時要援護者に関する通報が多い。
・発災直後から住民から道路冠水等による避難阻害要因に関する情報がもたらされた。
3) 市町村における住民向け防災広報に関するア
広報車
ンケート調査を実施し、防災行政無線の設置・使
消防団による呼びかけ
用状況、他の防災広報の伝達手段、防災広報文
56.8%
42.6%
* 防災広報の文例準備
例の有無と収集等を行った。
準備あり
39.0%
防災行政無線用 87.3%
呼びかけ用 37.0%
◆市町村における住民向け防災広報に関するアン
作成にあたり住民の意見を
ケート調査
参考にした 12.1%
参考にしていない 85.0%
調査対象:1840 自治体
回収 500 件における調査(中間)結果(抜粋)
準備なし
61.0%
4) 薩摩川内市ならびに豊岡市に行き、水害時の
* 防災行政無線の有無
設置している 88.8%
住民向け防災広報、消防組織の活動等の実情調
設置していない 11.2%
査を行い、災害広報と住民の避難行動の実情、
* 住民向け防災広報の主たる情報伝達手段
防災行政無線
画像情報や橋からの高さによる河川水位表現の有
82.9%
効性、リアルタイム道路冠水情報の必要性などの
- 19 -
消研輯報 60
知見を得た。
テムの改良およびシステム化
(2) J-ALERT と警報伝達システムの接続基本設計
J-ALERT 信 号 受 信 機 を入 力 し、 住 民 宅 の 警
J-ALERT からの情報をリアルタイムに取得・分
報・通報装置へ防災情報を配信するシステムの試
作を行う(図 2)。
析し、既開発の警報音、振動装置、発光装置お
よび香気発生装置等を用いた、インターネット警
報・通報装置へ適切・迅速に受け渡す技術につ
いて検討を行った。
1) J-ALERT 信号受信機から出力される情報フォ
ーマット、市町村に既設の J-ALERT 警報システム
等に関する情報収集を行い、
・住民向け広報はサイレン音や音声放送が用いら
れる。
・聞き取り困難等の問題は改善されていない。
等の知見を得た。
2) 平成 17 年度までに試作したインターネット警
図1
報・通報装置への情報受け渡しについて検討を行
ム動作概念図
災害時要援護者等に対する警報伝達システ
い、インターネット警報・通報装置との親和性は
高いことを確認した。
3) YOZAN 地域防災システムは数秒で情報配信
完了するように改良され、本研究の検討対象となり
得ることを確認した。
平成 19 年度の研究計画
以下の項目について研究を行う。
(1) 住 民 提 示 に適 した防 災 情 報 文 章 のための基
礎調査
平成 18 年度に引き続き、住民向け防災広報の
図2
J-ALERT 警報受信イメージ
事例調査を行い、理解しやすい防災情報の提示に
資する資料の収集・分析を行う。
次年度以降の研究計画
(2) 防災情報文章作成支援システム化
上記課題を継続するとともに,下記項目につい
て検討する。
洪水注意報・警報、降雨予測・河川水位予測
等の情報の到来に対して、平成 18 年度の研究で
(1) 防災情報文章作成支援システムの検証,改良
得られた成 果 に基づいた住 民 向け広 報 文 章の作
(2) 一般人を対象とした情報提示実験、システム
成を支援するシステムの試作を行う(図 1)。
検証、改良
(3) J-ALERT 警報伝達のための既開発の警報シス
(3) 消防防災活動支援システムとの統合化
- 20 -
消研輯報 60
(6)
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ II 円滑な消防活動を支援するためのシステムの開発
①広域応援部隊消防力最適配備支援システムの開発
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
火災災害調査部
技術研究部
関澤
愛
地震等災害研究室
座間信作、高梨健一、新井場公徳
杉井完治、遠藤
真、鄭
炳表
のための機能拡張
目的
兵 庫 県 南 部 地 震 時 にみられたような同 時 多 発
一 つの消 防 署 あるいは消 防 本 部 管 内 を対 象 と
火災など甚大かつ広域にわたる被害に対しては、
していた既存の消防力最適運用システムを発展さ
被災地域内の消防機関はもちろんのこと、近隣を
せ、近隣の複数の消防本部管内を対象として適用
はじめとする広 域 の応 援 消 防 部 隊 や防 火 水 槽 な
可能とするためには、エリアの広域化、および 100
どの限 られた消 防 防 災 資 源 を最 大 限 効 率 的 に運
件 程 度 の同 時 多 発 火 災 件 数 に対 しても迅 速に延
用することが、少しでも多くの住民の生命や財産を
焼予測計算できるように機能拡張を行う必要があ
守り、安全を確保することにつながる。このような
り、そのために既存システムに以下のような機能向
大規模災害時における、広域応援を含めた円滑な
上と標準化のための改良を行った。
緊急・応急活動が実施されるためには、発生した
a) 東 海 地 震 に備 えて受 援 計 画 作 りを進 めている
火災などの災害情報を基に、迅速に被害拡大予測
静岡県下の静岡市を、その管轄面積が広大である
と消防力最適運用のための支援情報の創出と、国
ことから対象地域として選び、市域全体の市街地
や近隣府県の広域応援部隊やその指揮機関によ
データ、消防部隊、消防防災資源データをシステ
るこれら防災情報の効果的な伝達・活用方法の検
ムに取り込んだ。次に、これを基盤に同時多数の
討が必要である。
延焼シミュレーションや消防力運用の結果を、現
本研究では、このための一環である広域応援部
実に利用可能な時間内にリアルタイム出力するた
隊の消防力最適配備支援システムの開発として、
めの計算アルゴリズムの工夫と改良を行った。
県内応援隊、緊急援助隊を考慮した災害地域(受
b) 広範囲の対象地区を俯瞰する支援情報として、
援側)における広域対応の消防力最適運用システ
従来の個別建物状況が示される表示のほかに、延
ムをまず開発する。また、応援側における、広域
焼危険予測を街区単位やメッシュ単位で表示する
に亘る災害現場に対応した適正な支援部隊数とそ
機能を追加した。(図 1)
の編成、展開に関する情報を提示できる消防力最
c) 100 件程度の同時多発火災発生という負荷を与
適 配 備 支 援 プログラムを開 発 することを目 的とす
えた場合のシミュレーションのロバストネスの確保
る。
と計算時間の短縮化を図るとともに、延焼シミュレ
ーション結果のみを直ぐに出力する選択ボタン設
成果
置など計算結果の出力のリアルタイム性を向上さ
(1) 消 防 力 最 適 運 用 プログラムの広 域 応 援 対 応
せるための工夫を行った。(図 2)
- 21 -
消研輯報 60
a) 静岡市消防局、浜松市消防局、大阪市消防局、
神戸市消防局の各消防機関を訪問し、東海地震
を想定した広域応援の場合における、受援側消防
機 関 と応 援 側 府 県 隊 それぞれの計 画 についてヒ
ヤリング調査を行った。受援側では広域応援隊の
到着予測の把握は困難であることから、応援側府
県隊の派遣計画から広域応援隊の到着分布予測
を行う必要のあることがわかった。
b) ヒヤリング調査結果から、上記応援側府県隊に
関しての名神 高 速 道路 直 近の集 結 場 所からの消
図 1
100 点同時多発火災のメッシュ単位での延
防 車 両 別 出 発 に関 する計 画 と資 料 から車 両 別 出
発数の時間別分布を検討し、また、両府県からの
焼棟数情報表示(静岡市南部全域)
緊援隊(緊消隊)消防車両群が、静岡県西部の
集結拠点(浜名湖 SA)に到着するまでの走行予
測 と当 該 拠 点 での到 着 分 布 の求 め方 について考
察した。(図 3)
A:応援側府県(大阪府、兵庫県)の出発地点
から受援側府県(静岡県)の進出地点までの移
動
図 2
100 点同時多発火災の静岡市中心部周辺
での 12 時間後延焼状況図
(2) 広 域 応 援 部 隊 の最 適 配 備 運 用 支 援 プログラ
図3
ムの開発
到着分布の求め方の例
消火、救助、救急などの支援分野と時系列的な
推移によって現実的に可能となる支援の内容につ
いて、消防機関への訪問調査を実施して現状の広
平成 19 年度の研究計画
以下のような研究作業を継続する。
域支援・受援計画等の資料収集と分析を行った。
追加的に必要な広域応援消防隊と消防防災資源
(1) 消 防 力 最 適 運 用 プログラムの広 域 応 援 対 応
について、国や都道府県あるいは応援側の消防防
のための機能拡張
災機関が随時に簡易に消防部隊運用支援情報と
静岡市のほか、京都市、浜松市など県内他地
して入手できるような仕組みを構築するために、ま
域のデータの収集と消防力最適運用プログラムの
ず受援側における応援部隊消防力の到着時間を
整備。また、複数市町村にまたがった広域の同時
考慮した最適消防部隊運用に関するシステムの基
多 発 火 災 に対 しても延 焼 予 測 計 算 と結 果 表 示 が
礎的な仕様の検討を行った。具体的には以下のと
迅 速 に行 えるように機 能 拡 張 した試 作 プログラム
おり。
を開発する。
- 22 -
消研輯報 60
(2) 広 域 応 援 部 隊 の最 適 配 備 運 用 支 援 プログラ
2 次活動拠点(またはメッシュ)別の被害(火災、
ムの開発(図 4)
救助& 救急)の出場緊急度、重要度別に応じて、
・対象を静岡、京都とし、時々刻々と進出拠点へ
必要応援部隊数を順次振り分けるアルゴリズムの
到着する広域応援部隊の時空間的到着の予測。
検討。
・想定東海地震等による想定火災件数、要救助
・追加予想応援部隊を加えての効果的な最適運
件数(救急はこれとセットとする)を静岡県・京都
用配備を求める機能、およびその運用効果を予測
府広域応援受援計画に示されている 2 次活動拠
表示する機能の試作。
点(またはメッシュ単位)に配分する。
・受援側からの広域に亘る災害現場に対応した支
・2 次活動拠点(またはメッシュ)別の被害(火
援必要部隊数の提示と、応援側がこうした広域応
災、救助& 救急)の出場緊急度、重要度のランク
援支援情報に対して随時アクセスし情報共有でき
付けをなんらかの評価尺度により行い、必要応援
る最適配備運用支援システムの開発。
部隊配備の優先順位を求める方法を検討する。
B:受援側府県(静岡県)の集結地点から消防部
次年度以降の研究計画
隊配備現場への移動
上記課題を継続実施するほか、以下の課題を検
討する。
(1) 消 防 力 最 適 運 用 プログラムの広 域 応 援 対 応
のための機能拡張
・静岡県、京都府全域を対象地域としたケースス
タディを行い、試作プログラムの検証、改良を行う。
(2) 広 域 応 援 部 隊 の最 適 配 備 運 用 支 援 プログラ
ムの開発
・時系列的に進出拠点における到着済み消防隊を、
(6)
図4
最適配備のイメージ
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ II 円滑な消防活動を支援するためのシステムの開発
② アドホックネットワーク技術を用いた広域消防援助隊用災害情報共有
システムに関する検討
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 21 年 3 月
技術研究部
地震等災害研究室
高梨健一、座間信作、遠藤
真、鄭
炳表
災以降 整備 の進められてきた緊急消 防 援助隊制
目的
新潟県中越地震は、阪神淡路大震災以降、初
度の新潟県中越地震に対する運用について、いく
めて震度 7 を記録した地震である。阪神淡路大震
つかの問題点が報告されている。それらの問題点
- 23 -
消研輯報 60
の一つが、出場中の緊急消防援助隊への情報提
・アドホックネットワーク構築機能(隣接する緊急
供である。
消防援助隊の動的検出機能)
本サブテーマでは、アドホックネットワーク技術
・災害情報データベースの共有機能
による車 々 間 通 信 などを用 いた緊 急 消 防 援 助 隊
・災害情報データベースの収録項目
用災害情報共有システム(以下、「広域応援ナビ
・アドホックネットワーク構築手法(ルーチングプ
ゲーションシステム」という)に関する検討・開発
ロトコルの選定、改修など)
および標準システムの提案を行う(図 1 参照)。
平成 19 年度の研究計画
平成 19 年度は、広域応援ナビゲーションシステ
ムの要求仕様の検討を継続するとともに、下記の 2
項目について研究を行う。
(1) 広域応援ナビゲーションシステムの試作
平成 18 年度に実施した詳細設計を踏まえ、広
域応援ナビゲーションシステムの試作を行う。
(2) 広域応 援 ナビゲーションシステム試 作機の検
証
図1
試作した広域応援ナビゲーションシステムの検
開発システムイメージ
証を行う。
成果
(1) 広域応 援 ナビゲーションシステムの要求 仕 様
次年度以降の研究計画
平成 19 年度の研究課題を継続実施するほか、
の検討
広域応援ナビゲーションシステムの持つべき機
下記の項目について研究を行う。
能や収録するべきデータベース項目などについて、
・平成 19 年度開発機器の改良(データベース交
下記の項目を中心に検討を行い、基本的な仕様を
換方式の効率化、アドホックネットワーク関連研究
取りまとめ、これに基づきシステムの根幹となるデ
の反映など)
ータ共 有 部 を試 作 するために必 要 な詳 細 設 計 を
・平成 19 年度開発機器の実証実験
行った。
・広域応援ナビゲーションシステムに収録するデー
・災害情報データベース入出力機能
タベース項目の再検討
・ユーザインターフェイス機能(入出力アプリケー
・消防・救急ディジタル無線、衛星通信との連携
ション)
を図る
(6)
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ III
斜面崩壊現場の消防活動の安全性向上に関する研究
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
地震等災害研究室
新井場公徳、鄭
- 24 -
炳表、遠藤
真
消研輯報 60
伸縮計や地中傾斜計による観測事例と、本研究の
目的
斜面災害現場での消防活動を安全に実施する
計測結果について検討を行う。
(2) 斜面災害現場の救助活動事例収集
ために必要な、活動場所の危険性評価や活動方
針決定に役立つ情報を、消防活動に即した時間・
斜面災害現場の救助活動の事例について、事
空間的尺度で作り出すことを目的とする。本サブテ
例を収集し、被災家屋の埋没場所を推定する手法
ーマは二次 的崩 壊を予測 する手法の研 究と斜 面
を統計的に研究する。木造家屋を想定し、斜面源
災害現場の救助活動事例収集の二つの項目から
頭部から堆積域最下部までの距離と平均傾斜、崩
構成する。
壊土量、流動幅に対する家屋の位置をパラメタと
して、家屋の流下距離を説明することを試みる。
成果
(1) 変形する斜面の変形深さを推定する手法の研
究
過去の崩壊実験等のレーザースキャナデータに
ついて、変形領域の時間的変化について検討した。
その結果、潜在的崩壊面を、二つの円弧とその間
を結ぶ直線で想定する方法が適当と考え、崩壊前
の前兆変形中に崩壊深さを推定する手法を開発し
た。
(2) 斜面災害現場の救助活動事例収集
過去の災害対応経緯に関する文献資料を収集
図1
した。フィリピンレイテ島の地すべり災害について、
研究計画の概要模式
救助活動の実態及び災害対応技術の適応可能性
について検討した。その結果、効率的な救助活動
次年度以降の研究計画
場所の選定等について把握し、収集すべきデータ
(1) 斜 面 内 部 変 形 と地 表 変 形 の関 係 についての
の内容について検討している。
検討
本研究手法によって得られる 3 次元の変形量か
平成 19 年度の研究計画
ら、崩壊までの時間を予測する手法を開発する(継
(1) 斜 面 内 部 変 形 と地 表 変 形 の関 係 についての
続)。
検討
(2) 斜面災害現場の救助活動事例収集
地 表変 形に基づく崩壊時 間予 測手 法 の開発 を
斜面災害現場の救助活動の事例について、事
目的として、前駆的変形と地下内部の変形につい
例を収集し、被災家屋の埋没場所を推定する手法
て関係を検討する。斜面崩壊前の変形についての
を統計的に研究する(継続)。
- 25 -
消研輯報 60
図2
2006 年の大型降雨実験設備における崩壊実験時の前兆変位。中央断面上の各点(斜面奥行き方
向の座標値(Y)で示した)の鉛直方向変形量。斜面手前の隆起領域は Y が 12.6~13.6m 斜面に投影す
るとそれぞれ 1.4m、0.9m となる。実際の崩壊深さは 1m。
図3
図4
岡谷市土石流災害の救助活動状況
フィリピン・レイテ島地すべり災害の堆積土
砂の深さ分布
- 26 -
消研輯報 60
(6)
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ IV
119 番通報に対する救急業務の高度化に関する研究
研究期間:平成 19 年 4 月~平成 21 年 3 月
研究企画部
久保田勝明
技術研究部
地震等災害研究室
寒河江幸平、杉井完治、座間信作
用し、画像による応急手当方法を示すことにより、
目的
大規模災害時における救急要請の中には、極め
応急手当実施率を向上させるシステム(以下、画
て緊急度・重症度の高い心肺停止傷病者から、四
像応急手当指導システム)の開発を行う。
肢の軽微な外傷のような緊急度・重症度の低いも
のまで様々ある。これら様々な事案がある中で、
平成 19 年度の研究計画
救急業務の本来の目的である「救命率の向上」を
(1) 心 肺 停 止 傷 病 者 救 命 率 向 上 についての諸 要
目指すためには、緊急度・重症度の高い傷病者に
因に関する統計分析
対して、より迅速・適確な対応を行うことが効果的
全国の心肺停止傷病者に関する救急活動等の
と考えられる。
記録から、救命率と関連する諸要因に関して統計
また、心肺停止傷病者に対しては、救急隊によ
処理により分析をする。
る迅速・適格な対応と同時に、一般住民による応
(2) トリアージ・システム
急手当の実施も重要である。特に、大規模災害時
1)トリアージ・システムを考慮した救急隊の効率的
においては、救急隊が不足するため、一般住民に
運用方法の開発
よる応急手当の実施は重要な意味を持つ。
トリアージ・システムを実施する場合の救急隊の
しかし、実際に応急手当が実施されているのは、
運用では、①現場到着所要時間の目標値を異なら
平常時においても全心肺停止傷病者の 33.6% で
せる、②救急隊の種類を区別する、③救急隊の編
あり、実施率が低いのが現状である。現在、この
成基準を異ならせる、の 3 種類が考えられる。平
応急手当実施率を向上させるために、消防の通信
成 19 年度は、この 3 種類の中で①に関して、救
指令員からの音声によるアドバイス(以下
口頭指
急業務シミュレーション(平成 17 年度に完成済み)
導)が行われているが、音声のみだと応急手当講
を使用し、規模や人口密度などが異なる複数の消
習の未受講者は具体的な方法が分からないため、
防本部において、最も効果の高い方法について検
応急手当を行えない恐れがある。そこで、音声だ
討する。
けではなく、画像を含めた応急手当指導を行うこと
2)トリアージ・プロトコルの作成
1)の運用方法を検討する上で、その判断基準と
が効果的であると考えられる。
そこで、先ず、救命率に関連する諸要因につい
なるトリアージ・プロトコルは必須である。これに
て統計的検討を行う。さらに、通報内容から緊急
関しては、既に昨年度消防庁においてトリアージ・
度・重症度の判断を行い、それに応じて救急隊の
プロトコル(案)を作成し、共同研究予定である
運用を弾力的に行うシステム(以下、トリアージ・
消防本部において、その有効性に関する検証を実
システム)と、口頭指導において TV 電話などを利
施している。しかし、緊急度・重症度の高い事案
- 27 -
消研輯報 60
を、次に低い事案と誤認する場合があることや、
(1) トリアージ・システムを考慮した救急隊の効率
最も緊急度が低い事案の対象範囲が狭いなどの
的運用方法の開発
課題がある。
②救急隊の種類、③救急隊の編成基準について
そこで、これらの問題点を解決するため、昨年
(2) 心肺停止傷病者の救命率を向上させるための
度実施した検証データの再検証(例えば、通報者
救急隊運用方法及び応急手当等の適正な方法に
が傷病者本人や家族であったか、バイスタンダー
関する検討
であったかによる分類など)や救急活動記録の検
討を行い、トリアージ・プロトコルの修正を行う。
(3) 画像応急手当指導システム
携帯電話の TV 電話機能などを使用し、119 番
の通 報 者 と消 防 の通 信 指 令 台 とを画 像 でつない
だ場合の応急手当実施効果を検証する。具体的
な検証方法として応急手当講習を受けていない被
験者に対して、模擬的に応急手当を音声のみで指
導した場合と画像を含めて行った場合の応急手当
成功率を比較する。また、これに必要な端末の画
面の大きさ、画素数、通信速度およびそのコンテ
ンツの違いによる応急手当成功率への影響につい
て検討を行う。
本研究の基礎となる、一般市民の応急手当実
施率や応急 手当 実 施による蘇生 率への影響 を調
査するため、既存のウツタインデータの分析を実
施する。
次年度以降の研究計画
引き続き上記課題の検討を行うとともに、下記
課題を実施する.
(6)
大規模自然災害時等の消防防災活動を支援するための
総合システムの研究開発
サブテーマ V
災害対策本部における応急対応支援システムの構築
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
地震等災害研究室
座間信作、寒河江幸平、遠藤
技術研究部
施設等災害研究室
河関大祐
- 28 -
真、鄭
炳表
消研輯報 60
のリアルタイム被害想定システムの開発、情報収
目的
地震等大規模災害においては、災害現場の複
集端末の開発,輻輳に巻き込まれない情報伝達技
雑性と相まって、災害対策本部が行う応急対策項
術に関する検討を行い、自治体の協力を得た実証
目は非常に多い。しかも、対策実施の判断条件、
実験も行ってきている。これらの継続的検討も更に
優先順位、対応力の限界などが複雑に絡み合って、
必要ではあるが,本研究では、特に時々刻々と変わ
どのような対策を、いつ、どのように実施できるの
る状況の中での大 局的 目 標設 定にかかわる合 理
かは自明ではない。また、これらは、発災期・避
的な「意思決定」、効率的・確実な「対策実施」
難誘導期・避難生活期と時間の経過に伴って時々
に向けて、支援情報を創出・提示する応急対応支
刻々と変化するという性質を持っているため、たと
援システムの開発を行う。
え経験豊かな防災担当者であっても、適切な判断
を下すことは極めて困難と考えられる。そのため、
成果
何らかの知的支援技術が必要となることは明らか
(1) 意思決定支援システムの構築:応急対応計画
である。加えて、公的機関の他職と同様に、防災
におけるルールベースの調査
担当職においても 2、3 年毎の人事異動が行われ
的確な応急対応支援情報を提示するため、地域
るのが慣例であり、そのため、非熟練者が災害対
防災計画における各対策の実施条件、タイミング、
策本部で応急対応を担当せざるを得ないことが十
優先順位の決め方に関して、地震被害を受けた自
分に考えられ、応急対応支援の必要性は極めて高
治体、その危険の高い自治体等 9 地方自治体(兵
い。
庫県神戸市、西宮市、芦屋市、静岡県静岡市、
発災後の応急対応を被害に対する「問題解決」
四日市市、大阪府吹田市、神奈川県横浜市、新
プロセスとして捉えると、
「状況把握」、
「意思決定」、
潟県小千谷市、福岡県福岡市)における地域防
「対策実施」の 3 つのフェーズが時間の流れの中
災計画等を収集し、各対策の実施条件、タイミン
で繰 り返 されるものと考 えることができる.状 況 把
グ、手順の考え方等を整理した(表 1、2)。
握 については,従 前 から情 報 の空 白 を埋 めるため
表1
地震後の応急対策事項の共通項目
- 29 -
消研輯報 60
表2
市町村毎の地域防災計画の「事項分類」及び「実施基準」整理シート例
(2) 情報管理支援システムの構築:基本設計と試
業務内容、時期、組織編成、職員数、資機材数
作
等(具体的、詳細な 5W2H)を提示する情報管
災害発生直後の緊急・応急対応の迅速かつ的
理支援システムについて検討を行った。既開発の
確な実施を可能とするための支援として、被害状
地震被害想定システム・需要量推定システムをベ
況の想定のみならず、発災直後の状況に応じた、
ースに図 1 に示す支援システムを試作した。また、
- 30 -
消研輯報 60
これには、豊橋市を例とした応急対応計画マニュ
平成 19 年度の研究計画
アルを電子化し、容易に資料を参照できる機能も
(1) 意思決定支援システムの構築
組み込まれている(図 2)。さらに、人口 30 万人程
応急 対 応 計 画におけるルールベースの調 査を
度の都市(豊橋市程度)での地震被害情報等の
継続して行う。特に職員の行動マニュアルについて
収集・共有・活用を考えた場合の情報システムに
調査・分析を行う。また、ルールベースに基づく
関する基本設計の検討を行った。
意思決定支援システムの概念設計を行う。
(2) 情報管理支援システムの試作・評価・改良
前年度一部試作したシステムの評価とそれに基
づく改良を行うとともに、情報の収集・統合整理等
に係るシステム部分に関する設計と試作を行う。
次年度以降の研究計画
上記項目を継続研究するとともに、下記研究項
目について検討する。
(1) 意思決定のためのルールベースのシステム化
(H20)
(2) 情報管理支援システムの改良(H20)
図1
(3) 意 思 決 定 支 援 と情 報 管 理 支 援 等 を統 合 した
情報管理支援システム
応急対応支援システムの構築、改良(H21、22)
(活動状況表示画面)
(4) 他システムとの統合化(H21、22)
図2
マニュアル提示例
- 31 -
消研輯報 60
(7)
サブテーマ I
特殊災害に対する安全確保
リサイクル資源化施設の火災爆発災害における消防戦術の研究
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 20 年 3 月
サブテーマ II
発電用軽水炉における消防技術の確立
研究期間:平成 20 年 4 月~平成 22 年 3 月
技術研究部
特殊災害研究室
鶴田
俊、鈴木
健
策研究(平成 18 年 4 月~平成 20 年 3 月)
目的
1995 年地下鉄サリン事件での救急隊員被災、
サブテーマ II
1999 年の JCO 臨界事故における救急隊員の放射
発電用軽水炉における消防技
術の確立(平成 20 年 4 月~平成 22 年 3 月)
線被爆、2003 年の三重県のゴミ固形化燃料(RDF)
本 研 究の過程で得られる熱や燃焼 生 成物に関
施設火災における消防職員の殉職等、特殊災害
する情報は、対象となる空間内で使用予定の消防
での消 防 活 動 において消 防 職 員 が被 害 を受 けて
隊員用機材、ロボット・救援資機材の環境耐久試
いる。
験や操作性評価のための基礎資料としても活用す
消防隊は、類似事例あるいは対応経験がなく、
る。これらは、消火方法等の資機材活用方法と戦
危険性が未知の火災や災害に対しても、現場へ迅
術をとりまとめた原子力・テロ等特殊災害対応の
速に駆け付け、災害の拡大防止と火災の早期鎮
ためのガイドラインとしてロボットシステムとともに
圧に努めなければならない社会的責務を負ってい
消防機関へ提供される。
る。
上述のような特殊災害発生時において、被災者
成果
を迅速に救助し、火災を鎮圧するためには、救助
(1) 負 圧管 理 された屋 内 型 廃 棄 物処 理 施 設 内で
や消火の活 動を行う消 防 隊員自 身が被害を受け
の火災発生時の煙流動に関する研究
ないようにすることが不可欠である。そのためには、
①大空間内での煙流動の様子を把握する目的で、
災害状 況を活 動前に的確に把握する手法 や消火
可視画像を記録し、得られた画像を電子計算機処
技術の確立、消防隊員の安全を確保し負担を軽減
理した。二次元画像から画素列を抽出し、時間に
する技術の開発を行わなければならない。
沿って並べた X-t 線図を作成し、煙の上昇速度を
本研究では、放射性物質や臭気を封じ込める目
求めた。実験では、発炎筒と燃焼模型の煙を用い
的で、施設の気密性を高くし、排気を行い内部の
た。燃焼模型が大空間で燃えた場合と大空間内の
気圧を外部より低く維持する負圧管理が行われて
小区画で燃えた場合について比較を行った。
いる原 子 力 施 設 や廃 棄 物 処 理 施 設 等 を対 象 とし
その結果、大空間で燃えた場合では、大空間内の
て、これらの特殊な施設、特殊な環境、特殊な原
小区画で燃えた場合よりも火炎が長く上方へ伸び
因での火災等の性状把握と消火方法の確立を行
た。燃焼模型が大空間で燃えた場合については、
う。
上昇速度が大きく現在の解析手法では定量的計
ここでは、以下の二つのサブテーマを設けて研
測はできなかった。大空間内の小区画で燃えた場
合(図 1)について、X-t 線図(図 2)を作成し、自由
究を行う。
サブテーマ I
リサイクル資源化施設の爆発対
燃焼時と消火時の上昇速度を測定することができ
- 32 -
消研輯報 60
た。
化を床面に設置した赤外カメラで観測した結果を
②大空間内での高温気体の流動を垂直方向の温
図 4 に示す。ビデオカメラの観察結果から放水後
度分布計測結果を用い検討した。図 3 に示すよう
に大空間下側に煙の層が形成されることがわかっ
に、高温気体は天井まで上昇し高温の層が形成さ
た。
れる。可視の照明光が届かない天井部の温度変
開口部閉鎖時
開口部開放時
小区画内で発炎筒を用いた実験
着火前
着火後
小区画内で燃焼模型を用いた実験
図1
図2
小区画内実験の様子
ビデオ画像から再構成した X-t 線図
- 33 -
消研輯報 60
Test1
Test2
Test3
Unit: ℃
等温度線図
図3
点火から 2 分
熱電対を用いた温度分布時間変化の解析例
点火から 3 分
図4
消火開始
赤外線カメラとビデオカメラ画像による内部の状況
- 34 -
点火から 4 分
消研輯報 60
(2) 住 友 大 阪 セメント岐 阜 工 場 ㈱ サイロ爆 発 事
RDF 貯蔵槽火災の場合と異なり、爆発により屋
例の調査
根が部分的に吹き飛ばされ、熱や燃焼生成物が
2003 年の三重県のゴミ固形化燃料(RDF)施設
拡 散しやすい条 件 下で開 口から大 量 放 水が実 施
火災の被災サイロとほぼ同じサイロ(図 5)の爆発
可能だったことにより消火作業が容易であったこと
火災事例を調査した。この事例では、爆発によっ
が分かった。今回の貯蔵槽のように屋根が部分的
て屋根全体が飛散することなく部分的損傷に留ま
に吹き飛ばされるような構造は、一般の廃棄物処
っていた。この原因は、サイロの屋根周辺が腐蝕
理 施 設 では常 に期 待 できるわけではないので燃
していたこと、および過去に屋根の部分的取り替え
焼 性 生 成 物 による視 界 悪 化 条 件 下 でも火 災 の状
補修が行われたことにより、屋根が腐蝕・減肉し、
況を把握できることが望まれる。
実質的には、放爆構造に近いものとなっていたも
のと推定される。
平成 19 年度の研究計画
(1) 大 空 間 内 における火 災 発 生 時 の煙 流 動 状 況
また、この事業所内には、豊富な用水があり、
確認実験(図 7)
消 火のための水の確 保は容 易であった。 貯 蔵 物
(図 6)も豊富な研究例、事故事例のある石炭であ
実験区画(縦 25m 横 25m 高さ 22m)における
り、事態を収束させることは比較的容易であったも
上部の煙層を床面から高輝度照明装置とビデオカ
のと思われる。
メラで撮影し、①煙層下面の高さを読み取る。②
床面近傍の一酸化炭素濃度、酸素濃度濃度、温
度を測定する。③画像と濃度データを実験区画外
へ有線で送信する。
図5
住友大阪セメント岐阜工場㈱
図7
サイロ爆発事例
大空間内における火災発生時の
煙流動状況確認実験
次年度以降の研究計画
平成 20 年度からは、サブテーマⅡの発電用軽
水炉における消防技術の確立(平成 20 年度~21
年度)を実施する。
発 電 用軽 水炉の負 圧 管理 を行った空間におい
て、①火災により負圧を維持する空調システムがど
の様な挙動を示しながら性能低下を起こすのかを
図6
採集物の CT 画像
検討し、②火災事例と比較し、③実プラントにおけ
る消防活動上の注意点をまとめる。
- 35 -
消研輯報 60
(7)
サブテーマ III
特殊災害に対する安全確保
消防防災ロボットの活用を促進するための技術的研究
研究期間:平成 18 年 4 月~平成 23 年 3 月
技術研究部
特殊災害研究室
天野久徳
てその価値が認められるものである。そこで、既に
目的
特殊災害の緊急対応時においては、効率的に
技術研究がなされた技術に関連したロボットにつ
活動を遂行するために、消防隊員の負担を軽減す
いて、他の研究機関、企業と連携し、実用化に向
ることが有効と考えられている。そのためにロボッ
けた開発を行う。
ト技術を利用し、機械力によって効率化することが
一つの方法として考えられる。さらに、消防隊員が
進 入 不 可 能 な環 境 下 に進 入 できると有 効 な消 火
成果
活動、救助活動を遂行できることがある。このよう
(1) 複数の小型移動ロボットによる連携協調動作
に、消防活動を行うロボットの開発が期待されてお
の消防防災活動支援への応用
り、一部では配備活用が始まってきている。しかし
研究全体の概念図を図 1 に示す。小型移動ロ
ながら、消防防災ロボットが必ずしも十分に活用さ
ボットによる資材搬送を目的として、図 1 の 1 に示
れている状況に有るとはいえない。そこで、本研究
すような、人間の移動に対する自動追従機能の研
では、特殊災害の状況、原因調査と連携し、より
究を行った。
ロボットが活用されることを目標として、ロボット技
A.図 2 に示す自動追従ロボットを製作した。
術研究を行う。
B.製作したロボットを使用して、実験を行った結果、
また、消防防災ロボットは最終的に実戦配備さ
人 間 の移 動 に対 する追 従 性 能 を実 験 的 に検 証し
た。実験結果の一例を図 3 に示す。
れ、緊急時などの消防防災活動に活用されて初め
図1
研究全体の構想
- 36 -
消研輯報 60
図2
図3
追従ロボットの開発
追従実験結果の一例
(2) 実用化に向けた改良開発
C-2. 震災対策ロボットに組み込み可能となるよう、
A-1. 検知・探査型災害対策ロボットの基本性能
図 6 に示すように、人体認識センサの駆動制御回
向上させる改良を行った。
路を含めた小型化改良を行った。人体認識実験を
A-2. 検知・探査型災害対策ロボットを消防本部に
行い、良好な結果を得た。
貸与し、試験的に使用した上で、配備および実戦
における問題点を検討し、改良を進めた。
A-3. 改良後のロボットの概観を図 4 に示す。この
ロボットを東京消防庁に配備した。
B-1. 小型移動ロボット FRIGO の耐環境性の向上
を図り、図 5 に示すような完全防水、防塵、防爆、
耐衝撃性の高い実用化品の開発を行った。
B-2. 操縦装置の改良を行い、片手での操縦を可
能とし、可搬性の高い操縦装置を試作した。
C-1. 震災対策ロボットの操縦アルゴリズムの整理
図4
と装置の改良を行い、遠隔で良好に操縦できるイ
東京消防庁へ配備した検知・探査型
災害対策用ロボット
ンターフェイスを開発した。
(a)
(b)
防水、防塵、防爆、耐衝撃性の高い本体
操縦装置(試作)
(FRIGO-M)
図5
FRIGO を基本とした耐環境性の高い実用化型の開発
- 37 -
消研輯報 60
(a)
(b)
小型化したセンサ
図6
組み込んだ状態
小型化した震災対策ロボット用人体認識センサ
平成 19 年度の研究計画
(3) FRIGO の拠点的都市への実戦配備の推進と、
(1) 複数の小型移動ロボットによる連携協調動作
実戦上の問題点の改良
の消防防災活動支援への応用。
A. 小型ロボットによる消防隊員に追従して小型ロ
平成 21 年度
ボットが移 動 した経 路 をマップ認 識 し記 憶 する技
(1) 平成 19 年度に開発した、移動経路マップ生成
術の開発(図 1 の 2 参照)。
を利用し、消防隊員が撤収経路を見失ったときに
B. 自動追従時、人間の無駄動作への不感フィル
おける、ロボットによる撤収路先導技術の開発(図
ターの開発(継続)。
1 の 2 参照)。
(2) 実用化に向けた改良開発
(2) 複数の小型移動ロボットが連携協調し、自律
A. 検知・探査型災害対策用ロボットの実戦上の
的に要救助者 を安全領域に搬送する技術 の基礎
問題点の検討。
開発
B. FRIGO の実戦配備を推進するため、各消防本
(3) FRIGO の中核都市への実戦配備推進と、実戦
部に適した機能検討と改良。
上の問題点の改良
C. FRIGO の操縦装置の問題点の検討と改良。
平成 22 年度
(1) 4 年間の、追従、往路マップ生成、復路先導
次年度以降の研究計画
平成 20 年度
技術、協調連携、連結分離を統合し、複数の小
(1) 小型移動ロボットが階段昇降するための、連
型移動ロボットが連携協調し、自律的に要救助者
結分離技術の研究開発
を安全領域に搬送する技術開発(図 1 の 4 参照)。
(2) 複数の小型移動ロボットが連携協調し、消防
(2) FRIGO の小都市への実戦配備推進と、実戦上
隊員に追従移動して、現場へ資機材を搬送する技
の問題点の改良
術開発(図 1 の 3 参照)。
- 38 -
消研輯報 60
Ⅱ
研 究 発 表 等
1
所外研究発表状況
(1)口頭発表
題
1
名
発
表
者
名
発
表
会
名
2003 年十勝沖地震の際の苫小牧・勇
畑山
払平野における長周期地震動:
神野達夫
学連合 2006 年大
(2)苫小牧西港の揺れが大きかったの
工藤一嘉
会
Applicability of Water Screen (WS)
R. Amano (Kajima co. )他 3
3rd International
Fire Disaster Prevention System to
名
Conference Tunnel
Japanese Road Tunnels
T. Tsuruda, T. Suzuki
Safety and
Y. Ogawa
Ventilation
消防隊員活動支援システムの研究と
吉村眞一 (横浜市安全管理
平成 18 年度日本
開発
局)他 3 名
火災学会研究発
健
日本地球惑星科
発表年月
2006. 5.14
~5.18
はなぜか?
2
3
鶴田
俊、鈴木
健
尾川義雄 (東京消防庁)
太田二朗 (N B C 三栄)
4
5
浮力により誘起される小型プール火炎
後藤田浩 (立命館大学)
の振動特性
佐宗祐子
大量物品販売店舗における消防対策
佐藤衛寿 (東京消防庁)他 1
検証実験の結果について
名
(その 1)住宅用スプリンクラー設備の
田村裕之
火災抑制効果確認実験の結果
6
大量物品販売店舗における消防対策
千葉
検証実験の結果について
田村裕之
博 (東京消防庁)
(その 2)早期火災感知方策の確認実
験の結果
7
大量物品販売店舗における消防対策
田村裕之
検証実験の結果について
森永健治 (東京消防庁)他 5
(その 3)早期火災通報方策の確認実
名
験の結果
8
新燃料自動車火災の消火について
鶴田
俊、鈴木
健
尾川義雄 (東京消防庁)
廖
赤虹 ((株)モリタ)
- 39 -
表会
2006. 5.15
~5.17
2006. 5.18
~5.19
消研輯報 60
題
9
名
発
者
名
13
健
表会
赤虹 ((株)モリタ)
火災区画への窒素富化空気の注入が
佐宗祐子、廖
赤虹 (㈱
木材クリブの燃焼速度に及ぼす影響
モリタ)他 1 名 、尾川義雄、
俊、井上聡則 (コ
ノズルから放水されたウォーターミスト
金田節夫、竹元昭夫
の床面への散水密度の推定
内藤浩由
住宅用火災警報器の火災感知性能を
万本
評価するための火源モデルに関する
箭内英治、関沢
研究
藤本龍雄 (東京ガス)他 2 名
消防隊員用赤外カメラに要求される性
太田二朗 (NEC 三栄)
能の実験検証Ⅱ
鶴田
敦 (ホーチキ)他 2 名
俊、鈴木
愛
健
猛 (横浜市安全管理
統計手法を用いた火災感知アルゴリ
高梨健一
ズムに対するサンプリング周期及び蓄
河関大祐
積期間の与える影響
災害弱者の火災時避難安全のための
河関大祐
警報・通報システムの試用調査
高梨健一
住宅におけるゴミ箱から建具への初期
江幡弘道 (ホーチキ)他 2 名
拡大火災の再現と基礎データの収集
箭内英治、関沢
愛
藤本龍雄 (東京ガス)他 2 名
17
商品陳列棚火点近傍の火災拡大性状
阿部伸之、篠原雅彦
間宮浩之、横溝敏宏
山田常圭、箭内英治
18
出火場所・出火時間等別にみた住宅
小林将之 (東京大学)
火災における放火の傾向
関沢
愛
万本
敦 (ホーチキ)
野竹宏彰 (清水建設)
野崎洋之 (あいおい損保)
19
2006. 5.18
~5.19
火災学会研究発
俊、鈴木
局)他 3 名
16
発表年月
鶴田
金西
15
名
添加したヘプタンの消炎濃度
尾川義雄 (東京消防庁)
14
会
平成 18 年度日本
ベルコ科研)
12
表
尾川義雄 (東京消防庁)
鶴田
11
発
カップバーナー法によるアルコールを
廖
10
表
住宅タイプ別・居住者属性別にみた住
野竹宏彰 (清水建設)
宅防火対策の影響に関する分析住宅
関沢
愛
火災による死者発生及び建物損害リ
万本
敦 (ホーチキ)
スクの軽減対策に関する研究- その 5
小林将之 (東京大学)
-
野崎洋之 (あいおい損保)
- 40 -
消研輯報 60
題
20
名
発
横風中の火炎風下に発生する旋風に
関する実験研究
表
者
名
篠原雅彦
- 横風風速、火炎
のフリッカリング及び床が旋風の発生
不活性気体による RDF の消火につい
鈴木
て
尾川義雄 (東京消防庁)
廖
22
RDF 及び滅菌 RDF の発酵について
24
健、鶴田
俊
赤虹 (㈱モリタ)
柴田靖史 (名古屋市消防局)
古積
23
博
Various combustion properties of
W.S.Lim, J.P.Garo
biodiesel
Y.Iwata, H.Koseki
地下鉄火災における駅構内の煙制御
松島早苗
その 3
渡部勇市
に関する研究
機械排煙時
の排煙量と煙層高さ
25
深層地下駅内における階段内の煙流
渡部勇市
動特性に関する研究
松島早苗
- 水平天井と
傾斜天井による煙流動の違い-
26
平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震に
吉原
浩
よる長岡市旧山古志村における防火
水槽の被害
27
階段内歩行のモデル化による全館避
掛川秀史 (清水建設)
難の検討
海老原学 (東京理科大)
関沢
愛
野竹宏彰 (清水建設)
大脇
厚 (デジタルネットワー
ク)
28
煙流動・避難行動連携モデルによる
関沢
1990 年長崎屋尼崎店火災の検討
掛川秀史 (清水建設)
煙
愛
流動・避難行動連携モデルに関する研
海老原学 (東京理科大)
究- その 6-
野竹宏彰 (清水建設)
大脇
厚 (デジタルネットワー
ク)
29
実空間及び VR 空間における音声を
用いた避難誘導実験
その 1
実空
間での指向性スピーカ及び従来型ス
名
発表年月
平成 18 年度日本
2006. 5.18
火災学会研究発
~5.19
表会
に及ぼす影響-
21
発
阿部伸之
山田常圭
須賀昌昭 (フジタ)
ピーカの誘導特性
- 41 -
表
会
消研輯報 60
題
30
名
名
発表年月
山田常圭
平成 18 年度日本
2006. 5.18
阿部伸之
火災学会研究発
~5.19
間での誘導効果
須賀昌昭 (フジタ)
表会
林野火災発生に影響する気象要素に
寒河江幸平
実空間及び VR 空間における音声を
用いた避難誘導実験
31
発
その 2
VR 空
表
者
名
発
表
会
ついて
32
石油タンク火災用の泡消火薬剤につ
内藤浩由、竹元昭夫
いて(第 2 報)
沖山博通
- 泡消火薬剤の規模効果について-
田中良樹 (第一化成産業)他
9名
木戸健二 (深田工業)他 3 名
33
大容量泡放水砲の放射特性
佐澤
潔 (深田工業)他 2 名
竹元昭夫、内藤浩由
沖山博通
築地千春 (第一化成産業)
34
合成樹脂間の S 字形曲がり管路にお
金田節夫
ける損失水頭
35
町丁目を単位とした地域消防力の評
井手寛貴 (東大)
価方法の検討
関沢
愛
西田幸夫 (東京理科大)
36
FRIGO を利用した有線操縦型化学剤
天野久徳
日本機械学会ロ
放射線検知ロボットの開発
ボティクス・メカト
2006. 5.26
~5.28
ロニクス講演会
2006
37
物体の表面硬さを利用した人体認識
センサの開発
~第 2 報:ロボット搭
載を考慮した人体認識センサの改良
鈴木隆司、天野久徳
稲葉昭夫 (岐阜県生産研)他
1名
~
38
実規模タンクによる浮き屋根のスロッ
西
晴樹、山田
シング揺動挙動に関する実験的検討
座間信作
實
日本高圧力技術
2006. 5.26
協会平成 18 年度
春季講演会
39
横風を受ける火炎後流に発生する竜
篠原雅彦
巻状の渦に関する実験研究
40
RPF の熱的性状
シンポジウム
古積
博、W-S. Lim
若倉正英 (神奈川産業技術
センター)
41
第 43 回日本伝熱
ハイドロオキシプロピルセルロースの
C.M. Lim(Pukyong Univ.)
粉塵爆発危険性の変化
古積
博
- 42 -
安全工学シンポジ
ウム 2006
2006. 5.31
~6. 2
2006. 7. 6
~7.7
消研輯報 60
題
42
43
名
発
表
者
名
発
表
会
名
発表年月
グリニャール試薬製造中に発生した火
岩田雄策
安全工学シンポジ
2006. 7. 6
災の概要
横溝敏宏
ウム 2006
~7.7
Study on Thermal Decomposition
X-R. Li
Characteristics of AIBN
X-l. Wang(南京理工大学)
2006. 7.11
~7.13
H. Koseki
44
45
Effects of water screen system in
H Kuwana (Kajima co. )他 3
12th International
compartments
名
Symposium on
T Tsuruda, T Suzuki
Aerodynamics and
Y Ogawa(Tokyo Fire
Ventilation of
Dept. )
Vehicle Tunnels
K. Araiba
International
Ground-based Landslide Scanning
Technology and Its Applications
Workshop of
2006. 8.17
~8.19
Geological Hazards
on Three Gorges
Reservoir Area
46
Thermal Ignition of Moving Pile of
鶴田
第 31 回国際燃焼
俊
Self-Heating Materials
47
Extinction of a Burning RDF
シンポジウム
鈴木
健、鶴田
2006. 8. 6
~8.11
俊
(Refuse Derived Fuel) Pile by
Injecting Inert Gas
48
地すべり防止区域に関する調査につい
新井場公徳
日本地すべり学会
て
福本安正 (元新潟県庁)
第 45 回研究発表
野崎
会
鄭
49
崩壊実験時の前駆的変形に関する研
保 (アーキジオ)
2006. 8.29
~9.1
炳表
新井場公徳
究
50
Defromation characters of the
F.W. Wang
Shuping landslide reactivated by
G.H. Wang
impoundment of Three Gorges
A.Takeuchi
Reservoir, China
K. Araiba
Y. Zhang
Z. Huo
51
Long-Period Strong Ground
K. Hatayama
The 3rd
Motions in Tomakomai, the Yufutsu
T. Kanno (Hiroshima Univ.)
International
Basin, Hokkaido, During the 2003
K. Kudo(Tokyo Univ.)
Symposium on "The
Tokachi-Oki, Japan, Earthquake
Effects of Surface
Geology on Seismic
Motion"
- 43 -
2006. 8.29
~9.1
消研輯報 60
題
52
53
54
名
発
表
者
名
Motions in Tomakomai, the Yufutsu
T. Kanno (Hiroshima
Conference on
Basin, Hokkaido, During the 2003
Univ. )
Earthquake
Tokachi-Oki, Japan, Earthquake
K. Kudo(Tokyo Univ. )
Engineering
地震災害時における情報収集支援シ
柴山明寛、細川直史
日本建築学会
ステムの開発
市居嗣之、久田嘉章
2006 年度大会(関
座間信作、村上正浩
東)学術講演
地域住民参加による地震被害情報収
井上卓哉、久田嘉章
集実験に関する研究
村上正浩、座間信作
住民参加による発災対応型訓練の実
土志田俊次、村上正浩
施と支援ツールの開発について
座間信作、久田嘉章
地下鉄火災における駅構内の煙制御
松島早苗
その 3 機械排煙時の
渡部勇市
排煙量と煙層高さ
深層地下駅内における階段内の煙流
渡部勇市
動特性
松島早苗
- 水平天井と傾斜天井によ
る煙流動の違い-
58
住宅タイプ別・居住者属性別にみた住
野竹宏彰 (清水建設)
宅防火対策の影響に関する分析
関沢
愛
宅火災による人的・物的損害リスクの
万本
敦 (ホーチキ)
軽減対策に関する研究:その 5
小林将之 (東大)
住
野崎洋之 (あいおい損保)
59
60
61
住宅における放火火災の類型化と住
小林将之 (東大)
宅形式ごとの出火箇所と着火物の傾
万本
向
野崎洋之 (あいおい損保)
敦 (ホーチキ)
関沢
愛
住宅用火災警報器の火災検出性能を
万本
敦 (ホーチキ)他 2 名
評価するための火源モデルに関する
箭内英治、関沢
研究
本多一賀 (東京ガス)
住宅におけるゴミ箱から建具への初期
江幡弘道 (ホーチキ)他 2 名
拡大火災の再現と基礎データの収集
箭内英治、関沢
愛
愛
本多一賀 (東京ガス)
62
名
First European
に関する研究
57
会
K. Hatayama
柴山明寛
56
表
Long-Period Strong Ground
柴山明寛、土志田俊次
55
発
移動目標の変更を伴う階避難歩行モ
海老原学 (東京理科大)
デルに関する検討
関沢
愛
- 煙流動・避難行動連携モデルに関
する研究(その 7)-
- 44 -
発表年月
2006. 9. 3
~9.8
2006. 9. 7
~9.9
消研輯報 60
題
63
名
発
表
者
名
発
表
会
名
発表年月
階段内歩行モデルによる全館避難の
掛川秀史 (清水建設)他 1 名
日本建築学会
2006. 9. 7
検討
海老原学 (東京理科大)
2006 年度大会(関
~9.9
煙流動・避難行動連携モデルに関する
関沢
愛
東)学術講演
煙流動・避難行動連携モデルによる
関沢
愛
1990 年長崎屋尼崎店火災の検討
海老原学 (東京理科大)
研究- その 8-
64
煙流動・避難行動連携モデルに関する
研究- その 9-
65
Scale Modeling for Safety of Energy
T. Tsuruda
Storage Systems
Fifth International
Symposium on
2006. 9.13
~9.16
Scale Modeling
66
A Study on Extinction of RDF Piles
T. Suzuki
67
Whirlwinds in the downwind side
M. Shinohara
of a fire area
68
ニューラルネットワークを用いた屋外
村上小百合 電通大)他 4 名
日本機械学会年
石油タンクの擬似 AE 源位置標定
山田
次大会
實
2006. 9.18
~9.22
湯山茂徳 (PAC-Japan)
69
70
Study on the method for detecting
K. Araiba
INTERPRAEVE
and monitoring of pre-failure
NT2006 国際シン
deformation in slope
ポジウム
Characteristics of Hazardous
Y. Iwata
国際産業安全衛
Evaluation with Automatic
H. Koseki
生シンポジウム
Pressure Tracking Adiabatic
2006. 9.25
~9.29
2006.10. 3
~10.4
(ISISH2006)
Calorimeter
71
Investigation of Ignition Causes of a
H. Tamura, T. Kataoka
Slop Oil Tank Fire
T. Yokomizo, H. Nishi
Y. Saso, H. Koseki
Y. Iwata
72
Reaction Zone Structure in a Stirred
A. Yoshida
8th Asian -Pacific
Rector with Highly Preheated
H. Naito
International
Methane-Air Premixture
D. P. Mishra
Symposium on
2006.10.10
~10.12
Combustion and
Energy Utilization
73
Risk Evaluation on the Basis of
Y. Iwata
Mary Kay O'Connor
Pressure Rate Measured by
H. Koseki
Process Safety
Automatic Pressure Tracking
Center Annual
Adiabatic Calorimeter
Symposium 2006
- 45 -
2006.10.24
~10.25
消研輯報 60
題
74
名
発
表
者
名
発
表
会
名
発表年月
Study on Thermal Decomposition
X-R. Li
Mary Kay O'Connor
2006.10.24
Characteristics of AIBN
X-l. Wang(南京理工大学)
Process Safety
~10.25
H. Koseki
Center Annual
Symposium 2006
75
76
77
2003 年十勝沖地震の際の苫小牧・勇
畑山
健
日本地震学会
払平野における長周期地震動:(3)平
2006 年度秋季大
野の平面的形状の影響
会
マニラ市における SRTM-3 に基づく地
座間信作
第 12 回日本地震
形分類と地盤増幅度の推定に関する
鄭
工学シンポジウム
研究
細川直史 (消防庁)
石油タンクのスロッシングに係るやや
座間信作
炳表
2006.10.31
~11.2
2006.11. 3
~11.5
長周期地震動の設計用スペクトル
78
地震被害情報等の収集・伝達に関す
座間信作、遠藤
る実証実験
高梨健一、鄭
真
炳表
新井場公徳
細川直史 (消防庁)
胡
哲新 (消防科学総合セン
ター)
79
想定宮城県沖地震発生時の仙台の石
畑山
健
油タンクサイトにおける強震動予測と
石油タンクの耐震性評価
80
WebGIS を利活用した防災ワークショ
村上正浩、市居嗣之
ップに関する研究
柴山明寛、久田嘉章
遠藤
真、胡
哲新
座間信作、小澤佑貴
81
地域住民による地震被害情報収集と
小澤佑貴、村上正浩
発災対応型訓練に関する実験
柴山明寛、久田嘉章
座間信作
82
83
84
地震災害応急対策需要量推計システ
胡
哲新、遠藤
ムの開発
座間信作
Long-Period Strong Ground Motion
K. Hatayama
真、
東京大学地震研
and Damage to Oil Storage Tanks
究所国際ワークシ
due to the 2003 Tokachi-Oki
ョップ「長周期地
Earthquake
震動と地下構造」
石油タンクのスロッシング時における
山田
實、西
自由液面の挙動について
座間信作
晴樹、
日本高圧力技術
協会平成 18 年度
秋季講演会
- 46 -
2006.11.14
~11.15
2006.11.16
消研輯報 60
題
85
名
Development and applications of
発
表
者
名
H. Amano
発
表
会
名
The IASTED
basic unit of track mobile robotic
International
system of "FRIGO" series
Conference on
発表年月
2006.11.20
~11.22
Conputational
Intelligence -CI
2006-
86
吹田市非常参集訓練での地震被害情
座間信作、遠藤
報等の収集・伝達実験
高梨健一、鄭
真
炳表
新井場公徳
平成 18 年度地域
安全学会研究発
2006.11.23
~11.24
表会
細川直史 (消防庁)
胡
哲新 (消防科学総合セン
ター)
87
木造密集市街地における地震防災に
久田嘉章、村上正浩
関する研究(その 10:愛知県豊橋市に
柴山明寛、座間信作
おける地域被害情報収集と発災対応
遠藤
真
型訓練)
88
89
90
混合反応熱量計を用いた 2,4 トリレン
李
第 39 回安全工学
ジイソシアネートと 1,3 ブチレングリコ
古積
ールの重合反応に関する研究
岩田雄策
断熱型圧力追従式熱量計を用いた混
岩田雄策、林
合危険性の評価方法に関する研究
古積
泡消火剤の消火性能試験基準につい
築地千春 (第一化成)他 2 名
て- 各国規格と日本規格との比較-
内藤浩由
新蕊
博
研究発表会
2006.11.30
~12.1
佑燮、
博
木戸健二 (深田工業)他 3 名
竹元昭夫 (KHK)
91
石油タンク火災用の泡消火剤による流
内藤浩由
動性
佐澤
潔 (深田工業)他 3 名
築地千春 (第一化成産業)他
2名
92
93
94
小型プール火炎の非定常特性
雰囲気酸素濃度と RDF の熱分解挙動
後藤田浩 (立命館大学)
第 44 回燃焼シン
佐宗祐子
ポジウム
鶴田
俊
鈴木
健
RDF の火災性状に関する研究- 不活
鈴木
健
性気体の注入の効果について-
鶴田
俊
- 47 -
2006.12. 6
~12.8
消研輯報 60
題
95
名
クローラユニット FRIGO を利用した消
発
表
者
名
天野久徳
発
表
会
名
計測自動制御学
防防災活動支援への応用に関する一
会第 7 回システム
提案
インテグレーショ
発表年月
2006.12.14
~12.17
ン部門学術講演
会
97
検知・探査災害対策用クローラロボッ
津久井慎吾 (トピー工業)他
トの開発
2名
滝田謙介 (ハイボット)
広瀬茂男 (東工大)他 1 名
天野久徳
97
フレキシブルセンサチューブを用いた
大須賀公一 (神戸大)
人間追従型移動ロボット FRIGO
岩野優樹 (明石高専)
天野久徳
98
救助支援型担架ロボットの開発
岩野優樹 (明石高専)
大須賀公一 (神戸大)
天野久徳
99
100
101
移動ロボットによる自己位置推定とガ
横小路泰義 (京大)他 2 名
レキの 3 次元マップ生成実験- 第 2 報
栗栖正充 (東京電機大)
-
天野久徳
Spontaneous Ignition of Wood
X-R. Li
Fire and Materials
Chips by Fermentation
H. Koseki
2007
Hybrid Radio Frequency
O. Takizawa
Identification System for Use in
A. Shibayama
Disaster Relief as Positioning
Univ.), et. al.
Source and Emergency Message
M. Hosokawa
Boards
K. Takanashi
(NICT)
M. Murakami
(Tokyo
International
2007. 1.29
~1.31
2007. 2.22
workshop on
Mobile Information
(FDMA)
Technology for
Emergency
(Kogakuin
Response
Univ.) et al.
Y. Hada (RIKEN) et al.
I. Noda
102
Reconstruction after Catastrophe in
(AIST)
Y. Murosaki
Fourth
Japan; Experience and Problems A
International
Case Study of the 1995 Hanshin
Conference on
-Awaji Great Earthquake
Urban Earthquake
Engineering
- 48 -
2007. 3. 5
~3.6
消研輯報 60
題
103
名
Long-Period Strong Ground
発
表
者
名
K. Hatayama
発
表
会
名
発表年月
Fourth
2007. 3. 5
Motions and Damage to Oil Storage
International
~3.6
Tanks Due to the Mw8.0 2003
Conference on
Tokachi-Oki Earthquake
Urban Earthquake
Engineering
104
石油タンクの健全性評価の現状と課
山田
第 6 回保守検査シ
實
題
105
ンポジウム
Flame and Thermal Resistance
箭内英治
International
Performance of Trial Protective
Mini-Symposium
Clothing for Firefighters
on Safety, Wearer
2007. 3. 8
~3.9
2007. 3. 8
Mobility and
Comfort for
Firefighter
Protective Clothing
106
救助支援型担架ロボットの開発
岩野優樹 (明石高専)
第 12 回ロボティク
大須賀公一 (神戸大)
ス・シンポジア
2007. 3.15
~3.16
天野久徳
107
浮力により誘起される非予混合火炎の
川口慎太郎 (立命館大)他 2
日本機械学会関
不安定挙動と酸素濃度の関係
名
西支部第 82 期定
佐宗祐子
時総会講演会
2007. 3.16
~3.17
(2)論文発表
題
1
名
発
表
者
名
原子力施設災害における救助活動用
岩野優樹
担架構成ロボットの開発
大須賀公一 (神戸大)
掲載誌名等
ロボット学会誌
Vol.24
No.3
pp.356-363
(2006. 4)
都市住宅学
53 号
pp86-97
(2006. 4)
日本燃焼学会誌
第 48 巻
144 号
PP.198-205
(2006. 5)
天野久徳
2
阪神・淡路大震災からみた住宅再建
北後明彦 (神戸大)
支 援 のあり方 - 被 災 市 街 地 における
樋口大介 (阪急電鉄)
住宅再建と災害復興公営住宅団地の
室﨑益輝
巻号
比較-
3
かく拌 燃 焼 器 内 に形 成 される分 散 型
吉田
亮
火炎構造
内藤浩由
D. P. Mishra
- 49 -
消研輯報 60
題
4
名
発
表
者
名
掲載誌名等
Performance Verification Method
Notake H.
Proceedings of 6th
of Pressurization Smoke Control
A. Sekizawa
International
System for a Staging Area of
Conference on
Firefighting and Rescue Activity
Performance -
巻号
pp.196-204
(2006.6)
Based Codes and
Fire Safety Design
Methods
5
地震災害時における情報収集支援シ
柴山明寛、遠藤
ステムの開発
滝澤
真
修、細川直史
日本建築学会技術
報告集
第 23 号
p.497-502
(2006. 6)
市居嗣之、久田嘉章
座間信作、村上正浩
6
Evaluation of Danger from
X. R. Li
Journal of
Fermentation-Induced
H. Koseki
Hazardous
Spontaneous Ignition of Wood
M. Momota
Materials
Vol.135
pp.15-20
(2006. 7)
Chips
7
Seismic Design of Floating Roof of
Y. Yamauchi
Oil Storage Tanks under Liquid
Eng. Co.)
ICPVT-11
Sloshing
A. Kamei (Japanese
Conference
(Nichiryo
ASME PVP 2006 /
pp.1-9
(2006. 7)
committee of ISO/TC21) ,
S.ZAMA
Y. Uchida
8
十 勝 沖 地 震 にみる石 油 タンク被 害 の
(HMSTA)
座間信作
物理探査
第 59 号
第4巻
p.353
(2006. 8)
Thermal Decomposition Kinetic of
X. R. Li
Journal of Thermal
Reactive Solids Based on
H. Koseki
Analysis and
Vol.85
No.3
pp.637-642
(2006. 9)
特徴と対策
9
Isothermal Calorimetry
Calorimetry
Measurements
10
Thermal Risk Evaluation of
Y. Iwata
Journal of Thermal
Organic Peroxide by Automatic
M. Momota
Analysis and
Pressure Tracking Adiabatic
H. Koseki
Calorimetry
K. Araiba
Proceedings of
Vol.85
No.3
pp.617-622
(2006. 9)
Calorimeter
11
Study on the Method for Detecting
and Monitoring of Pre-Failure
INTERPRAEVENT
Deformation in Slope
2006
- 50 -
pp.581-589
(2006. 9)
消研輯報 60
題
12
名
発
表
者
Large-Scale Boilover Experiments
H. Koseki
Using Crude Oil
Y. Natsume
名
掲載誌名等
巻号
Fire Safety Journal
Vol.41
pp.529-535
(2006.10)
第 12 回日本地震工
p.1526-1529
(2006.11)
(Tomakomai
Tobu Oil Storage Co. Ltd.)
Y. Iwata
T. Takahashi
T. Hirano
(FDMC)
(Chiba Institute
of Science)
13
想 定 宮 城 県 沖 地 震 発 生 時 の仙 台 の
畑山
健
石油タンクサイトにおける強震動予測
学シンポジウム
と石油タンクの耐震性評価
14
WebGIS を利活用した防災ワークショ
村上正浩、市居嗣之
第 12 回日本地震工
ップに関する研究
柴山明寛、久田嘉章
学シンポジウム
遠藤
真、胡
p.1302-1305
(2006.11)
哲新
座間信作、小澤佑貴
15
16
第 12 回日本地震工
マニラ市 における地 盤 増 幅 度 の推 定
鄭
炳表
ための SRTM-3 に基づく地形分類に
座間信作
関する研究
細川直史 (消防庁)
石油タンクのスロッシングに係るやや
座間信作
学シンポジウム
第 12 回日本地震工
長周期地震動の設計用スペクトル
17
学シンポジウム
地域住民による地震被害情 報収集と
小澤佑貴、村上正浩
第 12 回日本地震工
発災対応型訓練に関する実験
柴山明寛、久田嘉章
学シンポジウム
p.374-377
(2006.11)
p.1550-1553
(2006.11)
p.1398-1401
(2006.11)
座間信作
18
19
地震災害応急対策需要量推計システ
胡
哲新、遠藤
ムの開発
座間信作
被害情報等の収集・伝達に関する実
座間信作、遠藤
証実験
高梨健一、鄭
真
第 12 回日本地震工
学シンポジウム
真
炳表
第 12 回日本地震工
学シンポジウム
p.1378-1381
(2006.11)
p.1406-1409
(2006.11)
新井場公徳
細川直史 (消防庁)
胡
20
哲新
接地 面上の円柱 電荷による電位と電
浅野和俊 (山形大)
界の計算
田村裕之
静電気学会誌
松原美之
Vol.30
No.6
p.291-296
(2006.12)
(3)解説
題
1
名
発
表
者
名
欧州における防炎 品の規 制及び普
関沢
愛
及の最新動向について
小林将之 (東京大)
小林裕 (大成建設)
- 51 -
掲載誌名等
防 炎 ニュース(日 本 防
炎協会)
巻号
No.166
p.8-14
(2006. 4)
消研輯報 60
題
2
名
機械設備別に学ぶ安全の基礎 - タ
発
古積
表
博
ンクの爆発火災を防ぐ(その 1)-
3
これからの災害対策- 防災から減災
者
名
掲載誌名等
巻号
安全と健康(中央労働
2006 年 4 月
号
(2006. 4)
災害防止協会)
室﨑益輝
公共建築(営繕協会)
188 号
pp6-7
(2006. 4)
室﨑益輝
消防防災(東京法令
16 号
pp102-103
(2006. 4)
へ
4
住 宅 火 災 の 死 者 を 軽 減 する 総 合 戦
略を
出版)
5
減災への行政的アプローチ
室﨑益輝
減災(山海堂)
1号
pp25-27
(2006.4)
6
消防防災とロボット技術(下)
天野久徳
月刊消防(東京法令
通巻 320 号
p.82-87
(2006. 4)
出版)
7
機械設備別に学ぶ安全の基礎 - タ
古積
博
ンクの爆発火災を防ぐ(その 2)-
8
高層ビル火災におけるエレベータ避
災害防止協会)
関沢
愛
難の課題
9
機械設備別に学ぶ安全の基礎 - タ
消防防災とロボットの活用
予防時報(日本損害
保険協会)
古積
博
ンクの爆発火災を防ぐ(その 3)-
10
安全と健康(中央労働
安全と健康(中央労働
災害防止協会)
天野久徳
油空圧技術(日本工
業出版)
11
機械設備別に学ぶ安全の基礎 - タ
古積
博
ンクの爆発火災を防ぐ(その 4)-
12
石油タンクのスロッシングに係るやや
安全と健康(中央労働
災害防止協会)
グループホーム火災に学ぶ
防炎化を住宅防災の切り札に
第 45 巻第 6
号
通巻 558 号
p.1-11
(2006. 6)
2006 年 7 月
号
(2006. 7)
No. 55
p.221-226
(2006. 7)
室﨑益輝
消防防災(東京法令
17 号
p.116-117
(2006. 7)
室﨑益輝
防 炎 ニュース(日 本 防
炎協会)
15
2006 年 6 月
号
(2006. 6)
号外地球(海洋出版)
出版)
14
通巻第 226
号
pp.44-49
(2006. 6)
座間信作
長周期地震動設計用スペクトル
13
2006 年 5 月
号
(2006. 5)
十勝沖地震に見る長周期地震動と石
畑山
健
油タンクの被害
座間信作
- 52 -
号外地球(海洋出版)
167 号
pp2-3
(2006. 7)
No. 55
p.55-63
(2006. 7)
消研輯報 60
題
16
17
名
発
表
同 時 多 発 火 災 に 対 する 最 適 消 防 力
関沢
運用とその効果に関する研究
座間信作
-同
者
愛、遠藤
名
真
掲載誌名等
巻号
月刊消防(東京法令
通巻 324 号
p.93-100
(2006. 8)
出版)
時多発火災に対して消防力はどの程
山瀬敏郎 ( 消 防 科 学 総 合 セ
度有効か? -
ンター)
合理的な地震直後対応に向けて
座間信作
ペトロテック(石油 学
会)
29(9)
p.67-70
(2006. 9)
18
減災の視点と防災ボランティア
室﨑益輝
広報ぼうさい(内閣府)
35 号
pp2
(2006. 9)
19
住 宅 火 災 による死 者 発 生 リスクと高
関沢
火災(日本火災学会)
齢社会
野竹宏彰 (清水建設)
Vol56
No.6
通巻 285 号
(2006.12)
火災リスクの現状と消防防火の課題
室﨑益輝
建築の研究(建築研究
179 号
(2006.12)
20
愛
振興協会)
21
性 能 設 計 時 代 の建 築 防 火 と消 防 防
関沢
愛
検 定 協 会 だ より(日 本
災
22
23
検定協会)
2006 年 7 月号岡谷市湊地区土石流
新井場公徳
消防科学と情報(消防
災害対応への技術支援について
吉原
浩
科学総合センター)
出火防止は防火対策の基本
関沢
愛
近代消防(近代消防
社)
24
防災まちづくり・・その全国的展開
室﨑益輝
地域活性化ガイドブッ
ク(地 域 活 性 化 センタ
第 313 号
(2007. 1)
No.87
p.44-51
(2007. 1)
Vol 552
2007 年 2 月
号
(2007. 2)
pp6-9
(2007. 2)
ー)
25
長周期地震動
大 地 震 に特 有 の周
畑山
健
なゐふる(日 本 地 震 学
期数秒から 20 秒程度の揺れ
会)
第 60 号
p.2-3
(2007. 3)
(4)著書
題
1
名
1923 関東大地震報告書(一部執筆)
執
関沢
筆
者
名
発行元
愛
中央防災会議「災
篠原雅彦
害教訓の継承に関
発行年月
2006. 7
する専門調査会」
2
人とわざわい
持続的幸福へのメッ
鶴田
俊
SBB
2006. 9(上)
2007. 1(下)
学芸出版社
2006.12
セ- ジ (一部執筆)
3
路地からのまちづくり(共著)
室﨑益輝
- 53 -
消研輯報 60
(5)所外報告書
題
1
岐阜県生産情報技術研
究所報告
2
名
第 7 号
平
担当箇所
執筆者名
発行元
情 報 収 集 (被 災 者 捜 索 )
天野久徳(共
岐阜県生産
ロボットの移動機構に関
著)
情報技術研
成 17 年度
する研究(第 4 報)
消防技術安全所報第 43
大 量 物 品 販 売 店 舗 にお
千葉
号
ける消 防 対 策 検 証 実 験
消防庁)他 2 名
の結果について(その 2)
田村裕之
発行年月
2006. 6
究所
博 (東 京
東京消防庁
2006. 9
東京消防庁
2006. 9
総務省消防
2007. 3
早期火災感知方策の確
認実験の結果
3
消防技術安全所報第 43
大 量 物 品 販 売 店 舗 にお
田村裕之
号
ける消 防 対 策 検 証 実 験
森永 健治 (東 京
の結果について(その 3)
消防庁)他 5 名
早期火災通報方策の確
認実験の結果
4
やや長周期地震動に係る
石油コンビナート地域に
危険物施設の技術基準
おける強震観測
畑山
健
庁
に対応した合理的改修方
法の開発に関する調査検
討報告書
5
やや長周期地震動に係る
屋外タンク揺動実験検
危険物施設の技術基準
討部会
西
晴樹
総務省消防
2007. 3
庁
に対応した合理的改修方
法の開発に関する調査検
討報告書
6
平成 18 年度「消防防災
2
試作消防隊員用防
科学技術研究推進制度」 火服の耐炎・耐熱・快
次世代防火服の開発に
箭内英治(共
(財 )日 本 防 炎
著)
協会
2007. 3
適性能
関する研究報告書(3)
7
次 世 代 ロボット技 術 (RT)
第 2 章開発促進戦略
天野久徳(共
(財)機械シス
の環境構造化に関する調
2.3.5
著)
テム振興協会
災害分野
2007. 3
査研究報告書
8
平成 18 年度安全・安心
災害分野の環境構造化
天野久徳(共
(社 )日 本 機 械
のためのセキュリティロボ
における RT システムの
著)
工業連合会
ットシステムに関する調査
構想
(社)日本 ロボ
報告書
ット工業会
- 54 -
2007. 3
消研輯報 60
2
一般公開
消防研究センターでは、平成 18 年度の科学技
れた。また研究内容の紹介のほかに、実際の泡放
術週間(4 月 17 日から 4 月 23 日)における行事の
射砲も展示され、多数の来場者の関心を引いた研
一環として、4 月 21 日(金)に消防研究センターの
究項目であった。
一般公開を開催した。科学技術週間とは、科学技
術について広く一般の方々に理解と関心を深めて
いただき、日本の科学技術の振興を図ることを目
的として制定されたもので、消防研究センターでは
これにあわせて毎年 4 月に一般公開を行っている。
今年度は、昨年度までの独立行政法人消防研
究所の解散から総務省消防大学校消防研究セン
ターの新設と組織が変わったため、一般公開の広
報体制等に十分な準備期間をとることができなか
写真 1
った。しかし、表 1 に示すように 538 名という大勢
射砲(公開番号 2)
全面タンク火災に有効な泡消火剤と泡放
の方にご来場頂くことができた。これも、平素から
国民が安全・安心に強い関心を持っているためで
公開番号 11 は、
「長周期地震動と石油タンクの
あり、また消防科学技術の向上に多くの期待を寄
被害」という項目で研究紹介が行われた。この研
せているためと受けとめている。
究項目も公開項目 2 と同じように、十勝沖地震に
今年度に一般公開された研究項目は、表 2 に
関連した公開内容であった。ここでの研究紹介で
示すように全部で 20 項目である。これらの研究項
は、特に地震動によって発生するスロッシングによ
目の中には、これまで独立行政法人消防研究所が
り生じる、石油タンクへの被害の紹介が行なわれ
取り組んできた研究の内容、あるいは既に終了し
てた。また、この地震によって被害を受けた石油タ
た研究の成果があり、研究員が実演やパネル等を
ンクのサンプルの展示のほかに、模型のアクリルタ
用いて紹介した。中には研究紹介の方法として実
ンクを用いての振動台による液面揺動の実演が行
演も行われ、来場者の方が体験できる場も用意さ
われ、来場者の興味を引いていた。
れた。公開された 20 項目のうち、5 項目は今年度
も財 団 法 人 消 防 科 学 総 合 センターに協 賛 出 展 を
頂いたものである。この中には、一般市民や消防
防災職員向けの消防防災博物館等の紹介があっ
た。
公開項目 2 の「全面タンク火災に有効な泡消火
剤と泡放射砲」は、来場者から良い評価を受けた
研究紹介のひとつである。2003 年 9 月に十勝沖地
写真 2
震が発生し、地震によってナフサタンクが全面火災
長周期地震動と石油タンクの被害
(公開番号 11)
の状況となった。石油タンクの消火について、消
火実験、泡消火剤の性能についての研究が紹介さ
- 55 -
消研輯報 60
公開番号 3 では、「消防研究センターの火災原
について、各研究者の努力が評価されたことから、
因調査業務」が紹介された。この中では、早期の
今年度もできるだけ一般の方に分かりやすい説明
火災状況把握を目的とした、無人航空機(カイトプ
とするため、理解していただこうと研究者がパネル
レーン)の運用について紹介された。
による紹介や実演を通じて説明を行った。そのため
今年度も大勢の来場者の方にアンケートのご協
か、来場者の中には、実演によい評価を与えてく
力をいただき、今回の一般公開について、公開内
ださった方が数多くいた。今後も、アンケートのご
容や運営方法に関してご意見・ご感想をお聞きす
意見を参考にして、研究活動、研究成果の普及、
ることができた。昨年度は、研究に関連した説明
広報活動の充実に努力していきたいと考えている。
表1
一般公開来場者数
H13
13
201
110
14
32
156
7
93
626
区分
総務省・消防庁
消防大学校学生等
地方公共団体(消防本部等)
国立研究機関等
関係協会等
企業
報道関係
一般
合計
表2
H14
5
210
102
8
48
198
6
48
625
H15
13
153
114
19
59
286
7
136
787
H16
7
232
136
10
18
306
6
175
890
H17
21
165
86
42
51
257
10
60
692
H18
34
141
65
7
33
148
9
101
538
一般公開プログラム
番号
公開項目
公開方法
概要
1
消 防 研 究 センター紹 介 コ
展示
ポスター等での消防研究センターの研究紹介や、開発し
ーナー
2
全 面 タンク火 災 に有 効 な
た機器の実物展示を行います。
展示
泡消火剤と泡放射砲
全面タンク火災に有効な泡消火剤の検証のため、各種泡
薬剤を用いた小規模タンク火災の消火実験結果、タンク
火災用泡放射砲の試験結果を紹介します。
3
消防研究センターの火災
展示
火災原因調査室の調査業務、研修業務、支援業務等の
紹 介 と災 害 の初 期 (早 期 )状 況 把 握 を目 的 とした無 人 航
原因調査業務
空機(カイトプレーン)を紹介します。
4
5
リアルタイム地 震 防 災 情
展示及び
地 震 直 後 の 合 理 的 な 応 急 対 応 を 情 報 面 か ら 支 援 する
報システム
実演
様々な地震防災情報システムを紹介します。
総 務 省 消 防 庁 (消 防 防 災
展示
消防庁で毎年実施している消防防災科学技術に関わる
科学技術研究開発推進
競争的資金の制度とその研究成果を紹介します。
制度の成果の展示)
6
長 周 期 地 震 動と石 油タン
クの被害
展示及び
長周期地震 動と石油タンクの被害を十勝沖地震の被災
実演
例などで紹介するとともに、実際の製油所を対象とした強
震動予測を紹介します。また、模型アクリルタンクを用い
て、振動台による液面揺動の実験を行います。
- 56 -
消研輯報 60
番号
公開項目
公開方法
概要
7
地 すべり・ 崖 崩れに関 す
展示
斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究
る研究
8
を紹介します。
火災時の安全避難技術
の高度化
展示及び
災害弱者への早期火災通報のための機器開発および地
実演
下鉄構内等での火災時発生状況下での効果的な避難方
法を検討する VR システムを紹介します。
9
消 防 防 災 用 ロボ ッ ト に 関
実演
消防研究所 で開発した,消防防災 用ロボットベース
FRIGO シリーズ,および,総務省消防庁が開発し消防
する研究
研究センターで評価試験を行っている検知・探査型災害
対策用ロボットを紹介します。
10
熱分析技術の火災原因
調査への応用
展示及び
最近の火災原因調査において使われた熱分析、熱測定
実演
技 術と各 種 測 定 機 器 の紹 介とその調 査 手 法 を紹 介しま
す。
11
サーマルマネキンによる
展示及び
消防隊用防火服の耐炎
実演
サーマルマネキンに着 用 させた消 防 隊 用 防 火 服 を火 炎
暴露する試験を実演します。
性能試験
12
13
火災時に発生する旋風
廃棄物処理施設と原子力
展示及び
大規模な市街地火災や森林火災などで発生する旋風(巨
実演
大なつむじ風)の研究を、実験をまじえて紹介します。
展示
最近発生した廃棄物処理施設と原子力施設における災
施設における災害
害・問題点を紹介すると共に、その対策に利用可能な要
素技術について解説を行います。
14
東京消防庁消防技術安
全所
展示
(技 術 改 良 検 証 結
警報器の高機能化」、
「防火衣の技術改良」、
「微少熱量
果の展示)
15
横浜市安全管理局
消防技術安全所が行った技術改良検証の中から、
「携帯
測定による自然発火の検証」について紹介します。
(水
/空気 2 流体混合噴霧消
火 システムを用 いた 放 水
展示及び
マンション等の中高層建物火災における階下等への消火
実演
水流出を軽減するため、水と空気を同時噴霧し、低圧で
細かい霧により消火を可能とした放水装備を紹介します。
装備の実演)
- 57 -
消研輯報 60
3
全国消防技術者会議
1. はじめに
れていること等の指摘をいただいた。
平成 18 年度は、11 月 1 日(水)、2 日(木)の 2
また、会議初日の午後は、消防庁技術政策室
日間にわたり、
「 第 54 回全国消防技術者会議」が、
白石氏により「消防防災科学技術戦略の策定につ
東京都港区虎ノ門のニッショーホールにて開催さ
いて」の講演がなされ、その後から会議 2 日目の
れた。
夕刻にわたり、セッション別に研究発表が行われた。
この会議は、消防防災の科学技術に関する調査
研究発表の内訳は口頭発表が 22 題(消防本部 20
研究、機器の開発、技術開発等の成果を発表し、
題、消防研究センター2 題)、試作品等の展示発
消防関係者間での意見の交換を行うことを目的と
表が 5 題(5 題とも消防本部)であった。
して、昭和 28 年より消防庁消防研究所、独立行
なお、今回は、平成 17 年度の「消防防災機器
政 法 人 消 防 研 究 所 時 代を通じて毎 年 開 催されて
の開発等及び消防防災科学論文表彰制度」にお
いる。本年は、全国より、延べ 760 人に及ぶ消防
いて、「消防吏員及び消防団員等による消防防災
職員や消防防災関係者の参加を得て開催された。
機器の開発・改良の部」における消防庁長官優
開催初日においては、当研究センターの室﨑所
秀賞を受賞した 5 編のうち 4 編について発表してい
長、大石消防庁次長の挨拶(写真 1)ののち、特定
ただいた。
非営利活動法人災害情報センター理事の駒宮功
2. 特別講演
額氏より、「火災・中毒な
どの化 学 災 害 に関 する話
駒宮先生は、東京理科大
題」と題して、貯留可燃物
学卒業後、労働省産業安全
の自然発火、高地におけ
研究所に入 所 され、爆発や
る火 災 時 に発 生 する有 毒
過剰酸素火災など、化学的
ガス、高酸素濃度環境に
災害、廃棄物焼却処理など
おける火 災 事 例 等 につい
を研究された。平成 2 年 3
てご講演いただいた(写真
月に辞職されたのちも、化学
2)。
関連事故・災害の専門家と
写真 1
大石消防庁次長挨拶
して、また災害技術史の研
究家として活躍されている。
大石次長の挨拶では、
近年科学技術が飛躍
現在、特定非営利活動法
的に発展しているが、災
人 ・ 災 害 情 報 センターの
害 が多 発 していること、
理 事 として災 害 データベ
首都圏直下や東南海地
ースの整 備 を手 がけてお
震等の巨大地震の発生
られる。
が懸念されていること
特別講演では、石炭や
から、 消 防の科 学 技 術
木材等の大量貯留物の自
による対応が強く望ま
写真 2
駒宮功額先生による特別講演
- 58 -
然発火や断熱材中の鉱油
消研輯報 60
自然発火事例等について、発熱し発火に至るメカ
の内外からの放水による散水分布に関する実験例
ニズムを、多くの事例について紹介された。また、
が報告され、壁面や天井に衝突した水が、反射し
アルミサッシやプラスチックなどの普及により、居住
たり壁面に沿って流れる条件等が示された。
性は改善されたが、火災時にはアルミサッシの普
消防設備に関するセッションでは、スタティック
及による密閉化や、プラスチックの燃焼による CO
ロープとテープスリングについての経 年 劣 化に関
や HCN 等の有毒ガスが発生して、ガス中毒と酸
する実験的研究、危険区域内への隊員の入退出
素欠乏症被害が増加していること、高酸素濃度中
時間に関する情報を把握することを目的とし、IC タ
の特異な燃焼、熱媒体ダウサムの火災等について
グの取り付け位置や見通し距離、耐火建屋内外の
紹介頂いた。
通信可能範囲等についての検証結果、水と空気の
駒宮先生のご講演は、特殊な火災事例について、
2 流体混合噴霧を使用した場合に、火災現場の濃
発火に至るメカニズムや予防法について豊富なご
い煙や水蒸気環境下で、赤外線カメラを用いて火
経験を元に述べられたものであり、消防防災関係
点を確認することの有効性についての実験結果が
者にとって示唆に富み、とても有意義であったと思
紹介された。また、消防ポンプ自動車の電動ホー
われる。
スカー用パワーゲート部につり下げて使用する布
なお、駒宮先生の手がけられている災害データ
水槽の開発、音と光により聴覚と視覚に訴えて、
ベースは、災害情報センターのホームページ
講習時に記憶しやすく講習効果の向上を図る補助
(http://www.adic.rise.waseda.ac.jp/adic/men
具の開発についての発表がなされた。
u.html)からアクセス出来る。
第 2 日目は、火災原因調査に関する 3 セッショ
ン、展示発表及び消防活動に関するセッションが
3. 講演、研究発表及び展示発表
行われた。
火災原因調査 1 のセッションでは、ポリマー樹
消防庁消防技術政策室白石氏より、
「消防防災
科学戦略の策定について」と題して講演があった。
脂の原料の製造工程におけるグリニャール試薬製
白石氏の講演では、消防庁の今後の科学技術戦
造中に発生した化学工場火災、滅菌した RDF 試
略について、策定の背景、消防防災行政の課題、
料を用いての発熱挙動に関する実験結果、オリー
科学技術のニーズ・シーズ、研究開発の推進方
ブオイルが染みこんだ下着の洗濯・乾燥後の温度
策などについて全体像が紹介された。
上昇に関する実験、劇場において花火(ジャーブ)
研究発表(口頭による発表、写真 3、4)は、消火
の火花により堆積していた紙吹雪に着火した事例
設備・消防活動、消防装備、火災原因調査、消
について報告された。
防活動のセッションに分かれて行われ、展示発表
火災原因調査 2 のセッションでは、セルフスタン
は第 2 日の研究発表の昼休みの時間帯に行われ
ドにおいて給油中に出火した事例について、再現
た(プログラム参照)。
実験により出火のメカニズムを特定した事例、減圧
会議初日は、消火設備・消防活動及び消防装
残渣油を貯蔵するタンク貯蔵所の爆発火災事例、
備のセッションが行われた。消火設備・消防活動
直径 7.6m の模型タンク及び直径 38m の実タンク
のセッションでは、大量物品販売店舗の圧縮陳列
を用いたスロッシング時における浮き屋根の挙動
部分の火災に対して、住宅用スプリンクラーが設
に関する実験結果が報告された。
置されていた場合に、どの段階で作動すれば延焼
火災原因調査 3 のセッションでは、外国製普通
拡 大 抑 制 効 果 が得 られるかについて実 験 的 に検
自動車の火災発生後に、ディーラーの協力を得て
証し、住宅用スプリンクラーと火災感知システムを
エアコンディショナー付近からの出火原因を究明し
必要とするとの結果が報告された。また、火災室
た事例、小型乗用車の前照灯スイッチから出火し
- 59 -
消研輯報 60
た例についての調査がリコールに結びついた事例、
4. おわりに
鉄道橋梁上の鉄粉が付着し、腐食した枕木を経由
今回の会議では、760 名もの参加者のもとに、
してアースしたために発熱し着火に至った事例、ご
盛況のうちに閉会となった。各発表では、発表者
み処理施設において、粗大ごみ処理施設のベルト
の創意・工夫が随所に感じられ、また熱心な質疑
コンベア部分及び焼却炉設備の触媒反応等の活
が行われ、消防防災の分野において科学技術の
性炭が発火した事例、火災及び災害現場において
役割が大であること、また情報を共有することが大
キャニスターを用いてガスを採取し、微量ガス成分
切であることがうかがわれた。
今回の全国消防技術者会議は、平成 18 年 3
の分析を行った事例が報告された。
消防活動のセッションでは、台車とコンテナを利
月に独立行政法人消防研究所が廃止され、同年 4
用して災害対応用の資機材を災害種別毎に整理、
月に消防庁消防大学校消防研究センターが設置
保管することにより、迅速かつ人為的なミスを防止
されて最初の開催であった。平成 18 年 4 月から
するシステム、消防活動に特有の動きに関連した
の準備開始となったが、関係各位の多大のご協力
基礎体力の測定と、消防活動に内在する動きを取
をいたたけたことにより、例年通り開催することがで
り入れた専門性体力測定を行うことにより、消防職
きた。関係各位には謝意を表する。
なお、平成 19 年度は、10 月 18 日(木)、19 日
員の体力評価を試みた結果が報告された。また、
惨事ストレス対策として、デフュージング及びデブ
(金)の両日、今回と同じニッショーホールにて開催
リーフィング(災害直後及び災害後しばらく経過し
の予定である。
てから実施するグループミーティング)の効果につ
いての検討結果、40mm ホースやクアドラフォグノ
ズルの導入、消火剤の活用ならびに泡放水装置を
搭載した車両の導入により、建物火災における消
火効率の向上と水損被害の軽減を図る戦術、送水
効率に優れる 90~125mm ホースを地震時の被災
地 に活 用 する場 合 の効 果 についての検 討 結 果 が
報告された。
展示発表はニッショーホールのロビーにおいて、
試作・開発した機器等を展示し、発表者が参加者
に直接説明する発表形式である(写真 5)。鼻カニュ
写真 3
ーレを内蔵した高濃度酸素マスクの開発、空気呼
吸器面体内にヘッドマウントディスプレイや小型の
カメラを設けて、隊員と指揮本部との情報の共有と
安全管理を行うことを目的とした情報管理装置の
開発事例が紹介された。また、設定及び収納がワ
ンタッチででき、シートに深く腰掛けられ布担架と
しても利用できるストレッチャー、太陽光発電によ
る可搬式小型動力ポンプバッテリーの補充電装置
が紹介された。
- 60 -
一般発表における会場風景
消研輯報 60
図4
一般発表の様子
3
特別講演
「火災・中毒などの化学災害に関する話題」
特定非営利活動法人災害情報センター理事
駒宮功額
4
講演
「消防防災科学技術推進戦略の策定について」
消防庁消防技術政策室課長補佐
5
白石暢彦
研究発表・セッション 1(消火設備・消防活動)
(1)大量物品販売店舗における住宅用スプリンク
ラー設備の火災抑制効果確認実験の結果
東京消防庁
細谷昌右
湯浅弘章
森永健治
中川英二
佐藤衛寿
(2)屋外から屋内及び屋 内での放水による散水
分布の検証結果について
東京消防庁
6
根本昌平
研究発表・セッション 2(消防装備)
(1)スタティックロープ(R・R・R 資機材)の強度
等に関する実験的研究
札幌市消防局
五十嵐征爾
橋上
写真 5
橋本好弘
展示発表の様子
川瀬
◆
勉
信
(2)IC タグを活用した消防隊員の進入管理の検
プログラム
証について
注:*印は長官表彰「消防吏員及び消防団員等に
東京消防庁
(3)消防隊員活動支援装置の研究開発
よる消防防災機器の開発・改良の部」優秀賞
横浜市安全管理局
第1日
1
鈴木照雄
11 月 1 日(木)
井野幸夫
(4)「西部消防「阿部式」布水槽の開発につい
所長挨拶
て」*
消防研究センター所長
室﨑益輝
鳥取県西部広域行政管理組合消防局
阿部
2
至
(5)リズム発生器を使用した胸骨圧迫心臓マッサ
消防庁次長挨拶
消防庁次長
ージ補助具「ハートマーカー」の考案につい
大石利雄
- 61 -
消研輯報 60
(4)可搬式小型動力ポンプソーラー補充電の考
て*
呉市消防局
第2日
1
惣引陸王
案(試作)について*
11 月 2 日(金)
京都市消防局
克己
研究発表・セッション 3(火災原因調査 1)
(1)グリニャール試 薬 製 造 中 に発 生 した化 学 工
4
研究発表・セッション 5(火災原因調査 3)
(1)火災原因究明におけるメーカー等の連携事
場火災の概要
消防研究センター
岩田雄策
例
(2)RDF 及び滅菌 RDF の発酵並びに微小発熱
川崎市消防局
佐藤健一
(2)乗用車の前照灯スイッチから出火した火災
について
名古屋市消防局
消防研究センター
東京消防庁
柴田靖史
古積
廣田
勲
(3)鉄道橋梁上の枕木から出火した火災
博
(3)不乾性油(オリーブオイル)の発熱の可能性に
東京消防庁
吉本隆寿
(4)ごみ処理施設の火災事例について
ついて
京都市消防局
箕面市消防本部
河中慶次郎
東京消防庁
東京消防庁
入口洋史
5
研究発表・セッション 4(火災原因調査 2)
豊橋市消防本部
(2)減圧残渣油貯蔵タンク爆発火災
東京消防庁
西
坂口智久
(3)惨事ストレス対策に関する調査検証
新一
(3)実タンクを用いた浮き屋根揺動挙動の検証
消防研究センター
河合克欣
(2)消防隊員の体力評価について
冷水美良
森
黒田裕司
研究発表・セッション 6(消防活動)
災
川崎市消防局
浩二
(1)搬送システムの一本化
(1)セルフスタンドにおいて給油中に出火した火
東京消防庁
原
(5)微量ガス成分の分析システム
(4)公演中の劇場から出火した火災
2
畑
東京消防庁
加藤友啓
(4)北九州方式建物火災における消火戦術につ
晴樹
いて
3
北九州市消防局
展示発表
(5)送水効率の向上とその効果
(1)鼻カニューレ内蔵高濃度酸素マスクの開発
川越地区消防局
松本裕二
横浜市安全管理局
池田盛雄
消防研究センター研究統括官
松原美之
波田野英二
(2)情報送受信装置の検証
東京消防庁
6
鈴木照雄、有山修平
(3)自在ストレッチャーの改良について*
川越地区消防局
内田
平
- 62 -
閉会の辞
消研輯報 60
4
消防防災研究講演会
消防防災研究講演会は、消防防災に関する消防研究所における研究成果及び時宜にかなったトピックス
等をまとまった形で公開の場で発表し、あわせて、参加者と討論する場として平成 9 年度より始められたも
のである。研究講演会の主要な目的は、特定の課題に関係する専門的な知識を有する技術者及び研究者
との討議を通じて、火災に関する解決策を模索し、その糸口を見いだすことであるが、併せてこれらの討論
を踏まえ、将来に向けた研究計画の糧を得ることへの利用も期待されている。
今年度、第 10 回消防防災研究講演会は「住宅火災の死者低減に向けて」のテーマで下記のように開催
された。
1. はじめに
の観点から、今回は、「住宅火災の死者低減に向
第 10 回消防防災研究講演会は、平成 19 年 1
けて」を主テーマとして、下記のように開催するこ
月 26 日(金)、消防研究センターにおいて、約 250
ととなった。講演に先立ち、消防研究センター所
名の参加者を集めて開催された。平成 15 年消防
長室﨑益輝より開催の挨拶及び趣旨説明を行い、
白書によると、住宅火災による死者が年々増える
消防庁予防課国際規格対策官楠田勝彦様より
傾向にあり、また、その死者の約 6 割が 65 歳以
「改正消防法による住宅用火災警報器の設置義
上の高齢者であることなどが示されている。平成
務化などについて」と題してお話しいただいた。そ
18 年 1 月に長崎県グループホーム火災で死者 7
の後、午前の部で「住宅火災の初期火災性状」
名、負傷者 3 名という痛ましい火災が発生した。
について、午後の部で「高齢者等要援護者の火災
このような状況下において、住宅火災による死者数
安全」について、それぞれ 3 つの報告及び総合討
の低減は、重要かつ緊急の課題となっており、こ
論がなされた(表 1)。
表1
プログラム
住宅火災の死者低減に向けて
◇ 開会の辞及び趣旨説明(消防研究センター所長
室﨑益輝)
(1) 改 正 消 防 法 による住 宅 用 火 災 警 報 器 の設 置 義 務 化 などについて(消 防 庁 予 防 課 国 際 規 格 対 策 官
楠田勝彦)
【住宅火災の初期火災性状】
(2) 住宅火災の初期火災の典型的パターンの抽出(消防研究センター
(3) 住宅初期火災の典型的パターンの再現実験(消防研究センター
(4) 実大規模における煙流動性状(ホーチキ株式会社
万本
関沢
愛)
箭内英治)
敦)
【高齢者等要援護者の火災安全】
(5) 長崎県グループホーム火災の概要と再現実験(消防研究センター
片岡俊明)
(6) 火災時避難安全のための警報・通報手法の開発(消防研究センター
(7) 住宅火災高リスクグループの実態とその動向(消防庁消防技術政策室
◇ 総合討論(司会
山田常圭)
◇ 閉会の辞(消防研究センター統括官
松原美之)
- 63 -
河関大祐)
鈴木恵子)
消研輯報 60
2. 発表概要
ホーチキ株式会社
以下各発表概要について紹介する。
万本
敦
二階 建て住宅を模擬した火災実 験室 の内部で
火災モデルを用いておこなった煙流動性状の確認
改正消防法による住宅用火災警報器の設置義務
実験と、発熱速度、煙発生速度、ガス発生速度
化などについて
などの火災モデルの火源特性データを用いておこ
消防庁予防課国際規格対策官
なった煙流動性状の予測および住宅用火災警報
楠田勝彦
「住宅火災の現状」はどのようになっているか、
器の作動時間の予測について報告がなされた。
「これまでの住宅防火対策」はどうであったのか
などが報告され、これらを受けての「住宅用火災
【高齢者等要援護者の火災安全】
警報器の設置義務化」、さらには「これからの住宅
長崎県グループホーム火災の概要と再現実験
防火対策」はどうあるべきかなどについて報告が
消防研究センター
片岡俊明
平成 18 年 1 月に長崎県グループホーム火災で
なされた。
死者 7 名、負傷者 3 名という痛ましい火災が発生
【住宅火災の初期火災性状】
した。この火災の調査結果である火災概要、調査
住宅火災の初期火災の典型的パターンの抽出
結果から推定した延焼拡大状況、この火災の再現
愛
実験の結果などについて報告がなされた。再現実
1995 年から 2001 年の 7 年間に全国で発生した
験では、想定される着火物(クッション、藤製ゴミ
住宅火災(寄宿舎、合宿所等を除く)のうち、放火
箱、ソファー)と着火源(タバコ、ライター)との組み
および放火の疑いを除く 99,502 件についての火災
合わせの着火状況の結果、この着火予備実験の
報告を基にした火災統計データの分析により、住
結果を基にしたソファー(防炎品、非防炎品)に置い
宅 における初 期 火 災 の典 型 的 なパターンの抽 出
たクッションにライターで着火した実験などの結果
を行った結果が報告された。また、この火災統計
についての報告がなされた。
消防研究センター
関沢
分 析 によって得 られた住 宅 火 災 の初 期 火 災 の典
型的パターンから、住宅用火災警報器の感知性能
火災時避難安全のための警報・通報手法の開発
を評価するための住宅における初期火災モデルと
消防研究センター
してふさわしい発火源・着火物パターンとその再
河関大祐
高齢者や聴覚障害者への火災警報ならびに病
現方法について提案がなされた。
人や寝たきり老人などの救助のための通報に対応
した火災警報・通報システムとして、高齢者や聴
覚障害者を考慮した火災警報通報装置、電話転
住宅初期火災の典型的パターンの再現実験
箭内英治
送機能を有する火災通知装置、香気による火災警
前講演で提案された初期火災の典 型的なパタ
報装置、携帯メール火災通知用ソフトウエア、緊
ーンにつて、ルームコーナ実験室を用いて再現実
急 通 報 機 能 を有 する地 域 防 災 情 報 配 信 システム
験を実施し、住宅用火災警報器の作動予測を行う
などの機器の開発についての報告がなされた。
消防研究センター
ための火 源 の特 性 データを得た結 果 や得 た火 源
の特性データを用いての住宅用火災警 報器の火
住宅火災高リスクグループの実態とその動向
災 検 出 性 能 を評 価 するための火 源モデルの構 築
消防庁消防技術政策室
について報告がなされた。
鈴木恵子
住宅火災による死者の人的要素に着目して、死
亡率の差違とその経年変化、住宅火災による死者
の占める割合の変化などにより、近年の死者数の
実大規模における煙流動性状
- 64 -
消研輯報 60
増加要因について報告がなされた。また、人的要
による死者を低減するための対策についての提案
素に基づく死者類型化について検討し、住宅火災
がなされた。
- 65 -
消研輯報 60
5
消防防災機器の開発・改良及び消防防災科学論文に
関する消防庁長官表彰
自治体消防制度 50 周年を記念して、消防庁は平成 9 年度から消防科学・技術の高度化と消防防災活
動の活性化に寄与することを目的に消防防災機器の開発・改良及び消防防災科学に関する論文を募集し、
優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を創設した。平成 13 年度からは、平成 13 年 4 月に消防研究所
が独立行政法人化されたことに伴い、消防庁と独立行政法人消防研究所の共催で行われることとなった。
平成 18 年度には第 10 回が実施され、文書による募集案内、消防紙誌、各種消防関係団体の機関誌へ
の募集広告及びインターネットへの掲載等により広く作品を募った結果、64 編の作品の応募があった。応募
作品は、学識経験者及び関係行政機関並びに関係団体を代表する者からなる表彰選考委員会において審
査され、10 編(優秀賞 8 作品、奨励賞 2 作品)が表彰作品となった。
表彰作品
1
優秀賞(8 編)
【消防吏員・消防団員等による消防防災機器の開発・改良】
(1)
4編
頸椎固定器具の改良について
川越地区消防局
(2)
照明付瞳孔ゲージの開発
柏原羽曳野藤井寺消防組合消防本部
(3)
小松浩二、吉田忠司、北野佳則
ホースラインや歩道の段差等を安全に乗り越え可能なホースカーの改良
京都市消防局
(4)
岡野恭哲、柴田利尚、北岡二朗、佐々木靖浩
聴覚障害者用住宅火災警報器の付属装置の開発について
京都市消防局
ガスこんろの過熱防止装置と天ぷらなべ火災に関する考察
京都市消防局
(2)
【一般による消防防災機器の開発・改良】
(2)
谷村良明、西村浩二、伊藤麻美子
防火かるたを活用した子どもワークショップの手法について
京都市消防局
(1)
齋藤敏広、宇佐美明香
2編
【消防吏員・消防団員等による消防防災科学論文】
(1)
金子亮一
堂前義紹、福田
真由子、池田
ひろみ、牧
文明
2編
水道水を利用した住宅用スプリンクラー設備の開発
株式会社大昭商事
清水信博
ホーチキ株式会社
相澤真人
屋外用炎検出器の開発
- 66 -
消研輯報 60
【一般による消防防災科学論文】(対象無し)
2
奨励賞(2 編)
(1)
呼吸管理補助器具の考察について
備北地区消防広域行政組合
(2)
村本満昭
住宅用火災警報器は高齢者世帯にどこまで有効か
京都市消防局
- 67 -
南田美貴男
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災機器の開発・改良
頸椎固定器具の改良について
川越地区消防局
金子亮一
(3) 縁部分にあっては U 字状の塩化ビニールを使
1. はじめに
用し、緩衝材とした。(図 9)
多発する交通事故をはじめとした外傷事故に対
する活動指針は、年々要救助者の社会復帰を最
重要視するようになってきました。とりわけ頸椎の
3. 効果
固定は、その成否が傷病者の社会復帰を大きく左
(1) 本体を透明にしたことにより、皮下気種の有無
右することから、その重要性が強く認識されていま
及び気管の変位など観察上重要なポイントを見逃
す。
すことなく、継続観察が可能になった。
一方でアメリカにおける外傷患者データでは、
(2) 傷病者の容態の変化に対して、頸椎固定器具
頸椎損傷の約 35%は、救出活動中に生じた動揺
を装着した状態で気道確保が可能であり、且つ頭
により発生したものであると報告されています。こう
部への動揺が抑えられる点で優れている。
いった背景に基づき、我が国においても災害現場
(3) 従来の頸椎固定器具に比べ、換気までの時間
において救助活動をする際には、活動の最初期段
が短縮でき、嘔吐への対応も迅速にできる。(図 7、
階において固定器具を使用して頸部を固定するの
8、後段参照)
が必要不可欠となっています。
(4) 装着後においても下顎部分の調整が可能であ
しかしながら、現在使用している頸椎固定器具
るため、傷病者に合わせた装着が可能である。(表
2 参照)
は不透明な素材が用いられている為、装着以降に
頸部を視診することが不可能(図 1、3)となってしま
4. 終わりに
い、また用手にて気道確保をする際は、固定器具
を解除しなければならないという欠点があります。
今回開発した頸椎固定器具の使用結果は極め
(図 5、6)
て良好でした。今後、更に研究を重ね、実用化を
そこで今回、上記の欠点を改良し、頸椎固定後
目指して創意工夫を重ねていきたいと思います。
も継続して頸部の観察ができるようにするとともに、
要救助者の容態の急変時には、頸椎固定器具を
装 着 した状 態 で気 道 確 保 できる頸 椎 固 定 器 具 を
考案試作しましたので、ここに発表します。
2. 構造
(1) 従来の固定器具、ワンピースタイプネックカラ
ーの全体をアクリル製にし、透明とした。(図 2、
4)
(2) 下顎部分を可動式にした。(図 7、8)
- 68 -
消研輯報 60
図1
図 4
従来の頸椎固定器具を装着した状態
今回試作した頸椎固定器具を装着し横
から撮影したもの
図 2
図5
今回 試作した頸椎固定器 具を装着した
状態
気道確保が必要になった場合、従来のも
のでは、頸椎固定器具を外さないと気道確保で
きない
図 3
図 6
従来の頸椎固定器具を装着し横から撮
影したもの
従来の頸椎固定器具を外し気道確保し
ている状態
- 69 -
消研輯報 60
図 7
図 8
マジックテープを解除することで顎先が
可動し、装着した状態で気道確保が可能となっ
マジックテープを解除後、気道確保して
いる状況
た
図9
- 70 -
消研輯報 60
表1
成人男性 50 名の頸部の高さ(肩から下顎先先端までの高さ)を計測したデータ
表2
今回試作した頸椎固定器具を装着し固定状態を判定したデータ
・換気までの時間
全身固定後、JPTEC のインストラクターが下顎挙上による気道確保を行い、換気までの時間を計測したと
ころ、従来の頸椎固定器具では 12.5 秒(平均値)、今回試作した頸椎固定器具では 9.2 秒(平均値)であり、
換気まで 3.2 秒短縮できた結果となりました。
- 71 -
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災機器の開発・改良
照明付瞳孔ゲージの開発
柏原羽曳野藤井寺消防組合消防本部
小松浩二、吉田忠司、北野佳則
1. はじめに
りました。
近年、病院前救護活動における処置において、
3. 構造及び使用方法
傷病者の観察は重要視され迅速、的確な観察が
求められてきております。
構造は、本体、瞳孔ゲージを設けた測定パネ
特にバイタルサインの観察は、傷病者の病態把
ル及び眼窩部を照らすソフトライトより構成され、
握、搬送病院の選別、医師への情報提供に必要
大きさは幅 6cm、高さ 12 ㎝、厚み 0.7 ㎝の板状
不可欠なものであり、短時間で正確に実施するこ
のもので、落としても破損しにくい樹脂板(塩化ビニ
とを必要とされ、神経学的所見の 1 つである瞳孔
ール板)を使用し、軽量(約 45g)に製作しました。
観察は重傷度、緊急度の高い病態では非常に重
(寸法図参照)
要な観察項目で、救急現場のさまざまな環境下で
本体は、消費電力が少なく球切れの無い
LED(発光ダイオード)を用いた照明回路を内部に
実施しなければなりません。
本考案は、瞳孔の観察を悪条件の救急現場で
組み込み、前面中央に押したときのみ点灯する凹
も迅速、的確に観察できるようにすることを課題と
凸のない平面的なスイッチを設け、右上にボタン
しました。
電池の電池収納部、下部にスポットライトを設けて
おります。(写真 1・2)
2. 開発の経緯
本体の前面左側の測定パネルは、透明の樹脂
救急活動の傷病者観察時、瞳孔観察は瞳孔径
板を使用し黒い瞳孔に瞳孔ゲージを合わせやすく
の測定と対光反射を観察しなければなりません。
するため、瞳孔ゲージを刻んで白くし、瞳孔ゲー
従来の観察方法は、片方の手でまぶたを広げ開
ジの数字部分の下地を黒くし読み取りやすくし、夜
眼して、もう片方の手で検眼ライトを持ち瞳孔径の
間等の暗い状況下では、本体のスイッチを押すこ
測定と対光反射の観察をしています。
とにより、本体の LED の光が透明の樹脂板を透し、
瞳孔径を測定するときには、検眼ライトに貼られ
瞳孔ゲージ及び数字に入り鮮明に見える構造とし
ています。(写真 1・2)
たシールの瞳 孔ゲージか瞳 孔ゲージ定 規 を使 用
しており、夜間等の暗い状況下では観察者は開眼
本体の背面右側のソフトライトは、測定パネルの
させながら、検眼ライトと瞳孔ゲージの両方を同時
裏にあり、瞳孔径を測定するときに眼窩部を照らす
に持つことは不可能であるため、他の隊員が開眼
もので、半透明の樹脂製で本体からの LED の光
して、観察者が検眼ライトを持ち瞳孔ゲージ及び
が樹脂板を透し、光を広角に照らす構造でありま
眼窩部を照らして観察していますが、上部より検眼
す。(写真 3)
ライトで照らすため瞳孔が瞳孔ゲージの影になり、
本体中央のスイッチを押すことにより、スポットラ
また検眼ライトの光が瞳孔ゲージに反射し瞳孔に
イトが点灯し測定パネル及びソフトライトが同時に
合わせにくいなどの迅速に測定できない問題があ
明るくなります。(写真 4~6)
- 72 -
消研輯報 60
使用方法は、明るい場所での瞳孔径の測定方
孔径が測定しやすい。
法は測定パネルに刻まれた瞳孔ゲージにより測定、
④測定パネルの瞳孔ゲージを白くし、黒い瞳孔に
対光反射の観察は検眼ライトを持つことなく、本体
瞳孔ゲージを合わせやすくしたため、測定の誤差
中央のスイッチを押しスポットライトを点灯させて、
が少ない。
瞳孔を観察します。
⑤測定パネルの裏から、照明(ソフトライト)により眼
夜間等の暗い状況下では、本体中央のスイッチ
窩部を照らすため、瞳孔ゲージに光が反射せず瞳
を押し点灯させ、ソフトライトにより眼窩部を照らし
孔に合わせやすく数字が読み取りやすい。
ながら、測定パネルの瞳孔ゲージを瞳孔に合わせ
⑥樹脂製で、電源にボタン電池を使用するため軽
て測定、対光反射の観察は本体下部のスポットラ
量(約 45g)である。
イトにより、瞳孔を観察します。(写真 7・8)
5. まとめ
また、スポットライトは検眼ライト同様、口腔内
等の観察にも使用することができます。(写真 9)
救急活動において、病態評価や病院選定に非常
に重要なバイタルサイン測定にあたり、短時間に正
4. 開発の効果
確な観察を実 施しなければならないことは言うま
①夜間等の暗い状況下でも、観察者一人で瞳孔
でもありません。
径の測定と対光反射の観察をすることができる。
照明付瞳孔ゲージの開発により、救急隊員が現
②瞳孔ゲージと検眼ライトを持ち換えることなく、
場で従来まで行なってきた瞳孔観察方法から、容
瞳孔径の測定と対光反射の観察をすることができ
易に、また的確、迅速に瞳孔観察を実施出来るこ
るため、観察時間を短縮することができる。
とにより傷病者の生命、身体を有効に守ることが出
③従来の瞳孔ゲージとは異なり、透明の樹脂板を
来るよう切に願っています。
使用し眼窩部全体を確認できるようにしたため、瞳
写真 1
写真 2
試作の全容
全面
黒い部分が本体、左側が測定パネル、下面の
黒い部分が本体、左側が測定パネル、右上の
丸い部分が、スポットライト
電池収納部を外した状態
- 73 -
消研輯報 60
写真 3
写真 7
背面
本体右側の白い部分がソフトライト
写真 4
瞳孔ゲージによる瞳孔径の測定
写真 8
点灯状況
測定パネル及び背面のソフトライトの照光状況
写真 5
使用方法
対光反射の観察
写真 9
点灯状況
測定パネル及び本体下面のスポットライトの照
使用方法
口腔内の観察
光状況
写真 6
使用方法
点灯状況
測定パネル及びスポットライトの点灯状況
- 74 -
消研輯報 60
- 75 -
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災機器の開発・改良
ホースラインや歩道の段差等を安全に乗り越え可能なホースカーの改良
京都市消防局
岡野恭哲、柴田利尚、北岡二朗、佐々木靖浩
1. はじめに
段差)を乗り越える場合、ホースカーが水平バ
消防隊の現場活動中、ホースカーを使用し、ホ
ランスを失い転倒するおそれや、ホースカー
ースを延長する際、先着消防隊が延長したホース
の車輪にかかる強い衝撃により、消防器材を
ラインや、歩道の段差等が、消防活動の障害とな
破損させるおそれがある。
る場合がある。
ウ
上記イの場合、ホースカーの操作に多大な
このような場合には、①ホースカーごと障害物を
労力が必要であり、危険を伴うので、安全管
乗り越える、②障害物を避けて迂回する、③ホー
理上、複数の隊員で慎重に操作しなければ
スカーの使用を中止する、などの方法で対処して
ならない。(隊員が一人で操作することは不可
おり、消防活動に時間を要する原因となっている。
能。)
さらに、上記①の場合には、ホースを踏みつけ
② 改良方法
ることによるホースの破損、ホースカーの転倒等に
ホースカーの石突き部分に補助輪を装着するこ
よる消防器材の破損、危険な操作による隊員の負
ととし、試作品を作製した。
傷、などの危険性がある。
ア
そこで、安全・迅速な消防活動を行うためのホ
補助輪の形状等
試作品は、ホースカー及び消防車両(ホー
ースカーの改良方法について研究した。
スカー積載用リフト部分)を加工しないですむ
よう、補助輪(鋼製ベアリング:JIS6301ZZ)及び
2. 研究内容について
取付け金具(鉄製サイドプレート:t=6mm、鉄
(1) 研究目的
製ボルト:M12、その他)で構成される組立式
ホースカー(京都市型ホースカー)を改良し、操
のものとした。
作性を向上することにより、操作時の安全性の向
なお、ホースカーの荷重(本体及びホース
上及び隊員労力の軽減を図ることを目的とした。
等の積載物全体で、約 200kg)に十分耐えう
(2) 問題点及び改良方法
る強度があるように設計し、一式当たりの重さ
は 980g である。(図 1、2 及び写真 1-1、1-2、
研究にあたり、ホースカーでホースラインを乗り
1-3)
越える場合と、歩道の段差を乗り越える場合を想
イ
定し、問題点と改良方法を検討した。
ホースカーの石突き部分(左右 2 箇所)に、
① 問題点
ア
ボルトとナットで補助輪を挟み込むようにして
ホースライン(65mm ホース)を乗り越える場
装着する。(写真 2、4)
合、ホースカーの車輪がホースに乗り上げる
ウ
際の衝撃により、ホース等の消防器材を破損
車両への積載
ホースカーに補助輪を装着した状態で、消
するおそれがある。
イ
ホースカーへの装着
歩道の段差(歩道と車道との高さ約 15cm の
防車両を改造せずに支障なく車載できるよう
- 76 -
消研輯報 60
設計した。(写真 3)
で、次のような課題が残る。
(1) 補助輪の形状等の変更
3. 検証結果について
今回は、舗装道路において検証を行ったが、補
(1) ホースラインを乗り越える場合
助輪の形状等から、砂利道等の軟弱地面での使
次の手順で操作することで、ホースカーの車輪
用は困難であると考えられるので、補助輪の形状
をホースに全く接触させることなく、ホースラインを
や素材等を変えて比較検証する必要がある。
乗り越えることが可能となった。
(2) ホースカーの強度の見直し
改良に伴い、補助輪を支点とし、えん木を上下
①ホースラインの手前でホースカーを停止させる。
(写真 5-1)
する操作が加わったので、これに応じた車体強度
②補助輪と車輪がホースを挟む位置までホースカ
の見直しが必要となる。
ーを前進させる。(写真 5-2)
(3) 消防車両の改良
③えん木を押し下げ(一人操作の場合、約 40kg の
試作品は、現行車両のホースカーリフト部分を
力が必要。)、補助輪を支点にして車輪を持ち上
改造せずにホースカーを車載可能とするため、形
げた状態を保ち、ホースカーを前進させる。(写真
状等に制約があったが、より効果の期待できる補
5-3)
助輪の開発に伴い、消防車両の改造も必要となっ
④車輪がホースを通過すれば、車輪を地面に下ろ
てくる。
し、ホースカーを前進させる。(写真 5-4)
(2) 歩道の段差を乗り越える場合
5. おわりに
今回は、試作品により効果検証を行ったが、当
次の手順で操作することで、歩道の段差を安全
初の目的どおり、ホースカーの操作性を向上する
に乗り越えることが可能となった。
ことにより、操作時の安全性の向上と隊員労力の
① 歩道の段差の手前で、ホースカーを停止させ
る。(写真 6-1)
軽減を図ることができた。
②えん木を持ち上げ、補助輪を歩道上に乗せる。
(写真 6-2)
今後は、補助輪の形状等について、さらに比較
検討していくことで、実用化することが可能であり、
③補助輪を支点にして、えん木を進行方向に水
より安全・迅速な消防活動が行えるようになり、火
平に引く。(一人操作の場合、約 65kg の力が
災による被害の軽減を図ることができるものと考え
必要。)(写真 6-3)
る。
④車輪が歩道上に完全に乗り上げるまで、ホー
スカーを前進させる。(写真 6-4)
(3) 労力の軽減と危害防止
①歩道の段差を乗り越える際、てこの原理を応
用した補助輪を使用することで、隊員の労力
が大幅に軽減された。
② 補助輪を装着することで、ホースカーが現行
の 2 輪から 4 輪になり、操作時の安定性が増
すとともに、危険性が減少した。
4. 今後の課題について
補助輪を装着したホースカーを実用化するうえ
- 77 -
消研輯報 60
図1
図2
写真 1-1
補助輪装着図
組み立て図
写真 1-2
補助輪(側面)
- 78 -
補助輪(構成部品)
消研輯報 60
写真 1-3
写真 4
補助輪(後面)
補助輪をホースカーに取り付けた状態
での走行
写真 2
補助輪をホースカーに取り付けた状態
写真 3
補助輪を取り付けたホースカーを車両
写真 5-1
写真 5-2
に積載した状態
だ状態
- 79 -
ホースラインを乗り越える前の状態
補助輪と車輪でホースラインを挟ん
消研輯報 60
写真 5-3
写真 6-2
車輪を持ち上げ、ホースカーを引い
補助輪を段差に乗せた状態
ている状態
写真 5-4
写真 6-3
ホースラインを乗り越えた後の状態
写真 6-1
写真 6-4
段差を乗り越える前の状態
- 80 -
ホースカーを引いている状態
段差を乗り越えた後の状態
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災機器の開発・改良
聴覚障害者用住宅火災警報器の付属装置の開発について
京都市消防局
齋藤敏広、宇佐美明香
1. はじめに
来署当時市販されている住宅用火災警報器は、
平成 17 年版消防白書によれば、平成 16 年中
警報器本体からの警報は、音声もしくはブザー音
における、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住
となっており、聴覚障害者への対応としては、光と
宅及び併用住宅)火災の件数(1 万 6,866 件)は、
チャイム音を発する付属装 置が販売されていまし
建物火災の件数(2 万 9,528 件)の 6 割、また、放
た。
火 自 殺 者 等 を 除 く 住 宅 火 災 に よ る 死 者 数 (1,038
来署された方の具体的な要望は、光を発する警
人)は、建物火災による死者数(1,159 人)の約 9 割
報器がないかとのことでした。
となっており、過去 10 年以上この傾向で推移して
インターネットで検索したところ、UL 規格のもの
います。
はありましたが、現行の基準に適合するかは不明
住宅火災による死者の半数以上が 65 歳以上の
でした。
高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進
小さな光の点滅するもの(ガス漏れ警報機併用)
展とともに、更に住宅火災による死者が増加する
はありましたが、点滅する光が小さすぎるとのこと
おそれがあります。
でした。
そこで住宅防火対策として、平成 16 年の消防
光やチャイム音を発する付属装置は販売されて
法改正により、新築住宅については平成 18 年 6
いますが、警報器から有線で配線し、固定して使
月 1 日から、既存住宅にあっても、本市では平成
用するもので、光を発する付属装置の所にいつも
23 年 6 月 1 日から全ての住宅に住宅用火災警報
人がいるとは限らないとのことでした。
無線送信器を内蔵した住宅用火災警報器から、
器等の設置、維持が義務付けられました。
これを受けて本市独自の取り組みとして「地域
通報 機 能付 き受信 警 報装 置を介して携 帯電 話に
力を活かした住宅用火災警報器設置促進事業」に
通報することができるもの(通報機能付き無線警報
より悪質な販売の防止と、警報器の早期設置を目
システム)がありましたが、来署者は聴覚障害者の
指すとともに、日々自主防災組織、事業所、各種
ため、電話の必要性がなく、高齢者のためメール
団体等を通じて、住宅用火災警報器等の設置につ
も使用しないとのことで、またシステムとして大変
いて、広報・普及啓発活動を展開しているところ
高価なものでした。
聴覚障害者用に、玄関の来客や電話・FAX 等
です。
に反応し、無線で腕時計型、携帯型の受信器に
2. 開発理由
振動とメッセージが送信されるものがありましたが、
住宅用火災 警報器から送信器までは有線で配線
今回の機器の開発は、聴覚障害者が来署され、
しなければならず、大変高価でした。
「 聴 覚 障 害 者 にも有 効 に火 災 を知 るための住 宅
用火災警報器はないか?」との質問からはじまりま
した。
- 81 -
消研輯報 60
3. 開発概要
No.6)
聴覚障害者の方が火災を有効に覚知できるよう
チャイム本体(受信部)に付置したリレースイッチ
に、警報を音のみでなく、光または振動等で知ら
により、乾電池式の扇風機を作動させ、風により
せること。
火災を知らせます。(写真
No.7)
住宅用火災警報器から付属装置の警報部分ま
チャイム本体(受信部)に付置したリレースイッチ
で有線でなく無線で信号を送信し、警報部分を常
により、乾電池式の玩具を作動させ、玩具の動き
時自分のいるところに移動可能な物とすること。
により、火災を知らせます。(写真
No.8)
警報部分が小さく携帯可能なものとすること。
5. 問題点等
比較的安価(目安として、住宅用火災警報器より
今回使用した無線チャイムは、ホームセンターで
安価)であること。
1、500 円程度で販売されており、リレースイッチ
以上を念頭に付属装置を試作しました。
は電気部品販売店で 500 円程度で販売されてい
4. 試作品
ました。乾電池式の小さなバイブレーターや扇風
(1) 住 宅 用 火 災 警 報 器 ( ニ ッ タ ン 株 式 会 社
機は 100 均ショップや家電量販店で購入しました。
KRC-5A
移信端子付
また、電波の到達距離が見通し 15 メートル程
乾電池式)と家庭用の無
線チャイム(LED フラッシュライト付)を使用しました。
度とのことなので、面積約 170 平方メートルをカバ
(写真
ーでき、寝室に設置するには十分な広さをカバー
No.1)
できました。
警報器の移信端子に、無線チャイムの押しボタ
ンスイッチ(送信部)を接続し、火災を感知すると、
無線を使用し、光、振動等で火災を知らせ、移
チャイム本体(受信部)から光と音で火災を知らせま
動 可 能 で比 較 的 安 価 に製 作 するという目 標 は一
す。(写真
No.2)
応達成することができました。
しかし、使用した無線チャイムの電波が、微弱
チャイム本体は、小さく軽量なため、テレビを観
ている時はテレビの上、料理をしている時はキッチ
電波のため、遮蔽物による電波の到達距離の減衰、
ンへ、食事中はテーブルの上と、付属装置をどこ
隣接物件による干渉、様々な雑音に対する信頼性
へでも移動でき、常時自分の目の届く所に置くこと
の確保等解決しなければならない問題はまだいく
が可能になりました。(写真
No.3)
つもあります。
(2) 住 宅 用 火 災 警 報 器 ( ニ ッ タ ン 株 式 会 社
KRC-5A
今後さらなる改良を加え、誰でも、いつでも、住
乾電池式)、家庭用の無
宅のどこにいても、火災を知ることのできる、だれ
線チャイム(LED フラッシュライト付)、リレースイッ
もが安全、安心を平等に享受できるような機器の
チと乾電池式のバイブレーター、扇風機、玩具等
研究、開発を進めていきたいと考えています。
移信端子付
の家庭内にある品物を使用しました。
警報器の移信端子に、無線チャイムの押しボタ
ンスイッチ(送信部)を接続し、火災を感知すると、
チャイム本体(受信部)に付置したリレースイッチに
より、携帯したバイブレーターを作動させ、振動で
火災を知らせます。(写真
No.4)
就寝中は布団や、枕の下に差し込んだ振動板
(フットマッサージャーを板に固定した物)を振動さ
せることにより、火災を知らせます。(写真
No.5、
- 82 -
消研輯報 60
- 83 -
消研輯報 60
写真 No.1
写真 No.5
写真 No.2
写真 No.6
写真 No.3
写真 No.7
写真 No.4
写真 No.8
- 84 -
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災科学論文
ガスこんろの過熱防止装置と天ぷらなべ火災に関する考察
京都市消防局
谷村良明、西村浩二、伊藤麻美子
1. はじめに
でおり、なべや油の種類、油の量など多くの想定
京都市では、年間約 330 件前後あった火災を平
の基に実施された結果、この装置が有効であると
成 22 年までに 220 件まで減少させることを目標と
結論付けている。
して掲げており、様々な対策を実施して努力を重
また、業界規制で、平成 17 年 8 月以降に製造
ねている。特に放火防止に努め、年間約 50 件強
されている 2 口式以上のガスこんろは、全て 1 個
の減少も達成できたが、平成 16 年は 272 件、平
以上のバーナーにこの装置を付けたものとされて
成 17 年は 275 件で横ばい傾向となっている。火
おり、業界も有効性を認めて、積極的に普及促進
災件数を着実に減少させ、被害を軽減させていく
を図ろうとしている。
には、火災の実態を正確に分析し、効果的な手法
3. データの収集について
を新たに見い出す必要があるものと考える。
そこで平成 17 年以前の火災原因を見直したとこ
住 宅 火 災 の減 少 が全 国 的に大 きな目 標とされ
ろ、天ぷらなべ火災の中に過熱防止装置(以下「装
ていることと、ほとんどの天ぷらなべ火災がガス(都
置」という。)付きこんろからの出火事案が散見さ
市ガス及び LP ガスをいう。以下同じ。)こんろから
れた。装置付きこんろは一般的に安全と考えられて
発生している状況から、今回の研究対象は住宅等
いるが、実際には装置付きこんろからの火災が何
のガスこんろとした。ガスこんろは形態からテーブ
件も発生している。目的どおりの効果が発揮されて
ル式こんろとビルトイン式こんろに大別されるが、
いない状況の中に、火災予防上改善の余地が十
使用方法等に大差が無いことから、これらの区別
分有るものと考えられた。
は行っていない。
調査の結果、装置と火災との関係を示したデー
最初に平成 15 年から同 17 年の、京都市内の
タを見つけることはできなかった。そこで、本研究
住宅等におけるガスこんろからの天ぷらなべ火災
はこの点を明らかにし、天ぷらなべ火災減少の方
(損害の軽微なものを含む。以下同じ。)のうち、
策を提言するものである。
装置付きこんろからの出火状況について、火災調
査書を基に調査を実施した。調査済みの情報を利
2. こんろの過熱防止装置について
用するので、さほど労力を要さないものと考えてい
装置は、なべの底に接触するセンサー部の温度
たが、調査項目に装置に関する項目が無く、実際
が約 250℃以上になるとガスを供給停止して火災
には火 災調 査 書の細 部を読 み取る作業が発生し
を防ぐというものであり、機種によってはセンサー
ている。
併せて、市民に対するアンケート調査を実施した。
の温度設定ができるものもある。
装置が普及し始めた平成 13 年に国民生活セン
アンケートの内容は現在使用している調理器の種
ターがガステーブルこんろの商品テストを実施し、
類、機能等と使用者の意識に関するものである。
結果を公表している。テストは装置の機能にも及ん
回収率と内容の精度を上げるために設問は 15 問
- 85 -
消研輯報 60
程度とし、A4 用紙 1 枚に収まるように工夫した結
の 3 件に 1 件は装置付きこんろからの出火であるこ
果、回収率は約 80%を達成できた。
とは重大な事実である。
アンケートの対象として管轄区内の事業所勤務
しかし、過去 3 年間に発生した装置付きこんろ
者に協力を依頼し、1500 部を配布して有効回答約
からの火災は全てセンサーの無いバーナー側から
1、200 部を得ることができた。この種のアンケート
の出火であったことから、火災は装置の有効性と
としてはサンプル数も多く、結果はかなり実態を反
は別の要因で発生していることが分かる。
メーカーの資料によれば、現在普及している装
映しているものと考える。
置付きこんろは、2 口のバーナーのうちいずれか片
4. 天ぷらなべ火災と過熱防止装置の関係につい
方にしか防止装置のセンサーが付いていないもの
て
が約 95%を占めている。装置付きであっても、セ
(1) ガスこんろからの天ぷらなべ火災について
ンサーの無い側で天ぷらを揚げていれば、装置無
京都市における過去 3 年間の住宅等における天
しこんろと危険性は変わりなく、このようなケース
ぷらなべ火災の件数をグラフ 1 に示す。総数には
が多数あることは明らかである。
あまり変化がなく、毎年約 30 件強と横ばい傾向と
なっている中で、装置付きこんろからの出火が平成
5. アンケートにみる過熱防止装置付きこんろの実
15 年に比べて同 16 年、17 年は約 2 倍に増加して
態について
いる。
(1) こんろの種類別分布
平成 16 年及び同 17 年の火災件数を装置の有
グラフ 2 を見ると、IH 調理器を含めて、ほとん
無で比べてみると 1:2 の比率となっていることが分
どの家庭にこんろが普及していることが分かる。ガ
かる。アンケートによると、京都市内で使用されて
スこんろが圧倒的に多く、こんろ使用者の 90%を占
いるこんろは装置付きと装置無しでほぼ同数と推
めており、天ぷらなべ火災のほとんどがガスこんろ
定されることから、装置付きこんろは装置無しこん
からの出火である結果とも一致している。
ろに比べて火災発生率が約 1/2 であり、2 年間の
(2) 過熱防止装置付きこんろの認知度と普及度
グラフ 3 に示すように、過熱防止装置のことを知
少ないデータながら安全性が高いものと考えられ
らないと回答した人がガスこんろ使用者全体の約
る。
また、アンケートで装置付きこんろを使用してい
26%にも及んだ。装置付きこんろが市場に出回り
ると回答した人のうち、調理中の装置作動例が 106
始めて約 10 年経過しているが、ガスこんろ使用者
例あり、中には「その場を離れているときに装置が
の 4 人に 1 人は知らないという結果になった。
作動した」という確実な奏効例が 16 例もあった。
知 っていると答 えた人 のこんろは装 置 付 きのも
そのうち 4 例は 1 年以内に購入されたこんろである。
のが多く、ガスこんろ使用者全体で見ると 46%に
アンケート回答者の 0.8%に過ぎない 4 つの奏功例
なった。平成 16 年に当市で実施したアンケートで
をそのまま引 用 しても正 確 な数 値 を予 測 すること
も普及率は約 50%となっており、地域と時間を変
はできないが、あえてこの 4 例を京都市内の装置
えて実施した 2 回のアンケートでほぼ同様の結果
付きこんろ使用者 28 万世帯に換算すると年間 2、
が出たことから、京都市内では約半数近くの世帯
200 件にも及ぶ。装置によって相当数の火災が未
で装 置 付 きこんろが使 用 されているものと推 測 さ
然に防がれているのは十分推測されるところであ
れる。
なお、メーカーの資料によると全国の平均普及
る。
率は 30%程度であり、京都市内の普及率は全国
(2) 過熱防止装置付きこんろからの出火
的にみて高いことが分かった。
火災発生率が低いと言っても、天ぷらなべ火災
- 86 -
消研輯報 60
(3) 装置付きこんろの使用状況について
なわれているが、実際にはこのように使用状況に
グラフ 4 は装置付きこんろ使用者 484 人にその
大きな差異があるので、効果的、効率的ではなく、
使用状況を質問したものである。53%が常にセン
さらにきめ細かい指導が必要と考えられる。
サーの付いている側のバーナーで天ぷらを揚げて
指導を効果的かつ効率的に進める前提として、
いると回答しており、装置付きこんろ使用者の約半
各世帯がどの群に属するのかということが明確で
数は装置を有効活用していることが分かった。火
なければならないが、本市では訪問防火指導とい
災 予 防 に対 する意 識 が高 いこの群 からの出 火 危
う個別調査の機会があることと、今年度の取組とし
険は非常に小さいものと考えられる。
て、全世帯に対するアンケートの実施も掲げられて
一方、「使わないときもある」が 24%、「気にし
いることから、これについても十分対応できるもの
ていない」が 23%もあった。装置付きこんろを使
と考えている。
用していても装置についての関心が低く、天ぷらな
(2) 天ぷらなべ火災予防に関する指導の進め方
目標は全てのこんろ使用者を A 群とすることで
べ火 災 を発 生 させる可 能 性 がある人 もほぼ同 数
ある。使用者の状況に違いがあることから、以下
存在するということになる。
の手順で指導を進めることが効率的であると考え
6. 分析結果から
る。
(1) 天ぷらなべ火災予防の指導対象
最初に行うべきことは、B 群を速やかに A 群に
アンケートの結果から、ガスこんろの使用者は大
移行させることである。装置付きこんろからの火災
きく 3 群に別れることが分かった。便宜上それぞれ
は B 群から発生している可能性が高いと考えられ
を次のように A 群、B 群、C 群と分けて指導対象
るが、B 群はもともと装置付きこんろを使用してい
とする。
るので、買換え等の出費を要するような改修の必
・A 群
過熱防止装置付きこんろを有効に活用し
要が無い。適切な指導を実施すれば、効果は十
ている人
・B 群
分に見込めるのではないかと考えられる。もし、
100%指導を達成できれば、昨年の数値を参考に
過熱防止装置付きこんろを使用していて
も、有効に活用していないと考えられる人
すると、年間約 10 件の減少を見込むことが可能で
・C 群
ある。
過熱防止装置の無いこんろを使用してい
次に C 群を A 群に誘導する必要がある。昨年
る人、又は、過熱防止装置の存在を知らない人
グラフ 5 はその割合であるが、A 群及び B 群は
からは装置付きこんろしか販売されておらず、入手
装置付きこんろの使用者、C 群は装置無しこんろ
時の選択肢が無くなっているので、C 群は今後 A
の使用者である。A 群以外は天ぷらなべ火災発生
群又は B 群へ移行していくのが確実であるが、そ
予備軍とも言え、その割合はこんろ使用者全体の
のままでは必ずしも A 群に入るとは限らない。買
3/4 近くになる。22%を占める B 群が装置付きこん
換えのタイミングを逃さず積極的に誘導し、全ての
ろからの火災発生に大きく関与しているものと考え
新規購入者が A 群となるよう今から啓発していくこ
られ、C 群とのほぼ 1:2 という比率も火災発生率と
とが重要である。
以上 2 点の指導を適切に進めることで、今後天
符号している。
なお、C 群のうち、装置自体を認識していない
ぷらなべ火 災 を大 幅 に減 少 させることができるも
人のこんろについては、装置の有無が不明確であ
のと考えられる。
るが、装置の機能を一から指導する必要があるこ
また、メーカー各社が想定しているこんろの耐用
年数は約 10 年とのことだが、グラフ 6 のとおり実
とから、C 群に入れることとした。
際には 10 年以上の使用者も多い。買換えを待つ
現在、天ぷらなべ火災に対する指導は一律に行
- 87 -
消研輯報 60
だけでは遅きに失することは間違いなく、指導は積
るなど、本体デザインによる改良をメーカーに要望
極的かつ継続的に実施していかなければならない。
することが必要である。
(3) 天ぷらなべ火災予防に関する指導の内容につ
方策のひとつとして、センサーの付いている側が
いて
ア
目立つようにするマグネットシートを試作した。(写
真 1)
過熱防止装置を有効なものとして市民に啓発
する。
簡単なものであり、B 群に配布すれば十分利用
装置の有効性は火災件数からも実証されている。
されるのではないだろうか。耐熱性のある材質の
また、グラフ 7 に示すように、装置付きこんろの使
選定や色彩効果など改良の余地があるものの、上
用者のうち 66%は装置を有効なものと認めている。
記イの指導時に併用すると有効なものと考える。
なお、平成 17 年に福岡市消防局においても同
今後装置付きこんろが普及することは確実であり、
有効性についてさらに正確な情報を提供し、周知
様のシールを市民に配布し、天ぷらなべ火災防止
していくことが必要である。
の指導強化を行っている。
一方で 28%の使用者が「有効と思わない」と回
7. 終わりに
答していることから、完全とは言えない面があるこ
とも否めない。この理由をさらに詳しく分析し、装
疑問を持った結果として、天ぷらなべ火災と装
置の信頼性をさらに向上させる必要がある。消防
置の関係がデータ上で確認されたことは大きな成
機関の持つ情報を積極的に提供して、改良すべき
果であった。普及率もかなり高く、装置付きこんろ
点は改良し、使用方法についても分かり易い説明
からの出火がてんぷらなべ火災の約 1/3 に達して
を用意するなど、今まで以上に業界との協力体制
いるにもかかわらず、火災と装置の関係が今まで
が求められている。
明確にされていなかったのである。
イ
効果的な指導を取り入れる。
今後、装置付きこんろの普及によって、天ぷら
10 年前まではほとんどが C 群という状況の中「う
なべ火災を大幅に減少できる可能性があるものの、
っかり」がその主な原因だったので、
「その場を離
積極的に指 導 を実施していかなければ結果が変
れない」又は「離れるときは火を消す」という指
わる可能性も明らかになった。
導が有効であった。しかし、今では A 群及び B
これらの結果を受け止め、速やかに指導方法の
群が約半数を占める状況に変化しており、これに
検討を進める必要がある。装置の普及という変化
対応していくことが必要となっている。装置付きこ
を重要な機会として上手く捉えられるかどうかは、
んろ使用者は、使用方法さえ理解していれば、
「う
他の火災原因における姿勢にも関連していく問題
っかり」をかなり防げるのである。従来の指導と併
である。効果的、効率的に問題を解決するには、
せて「安全のために、天ぷらはセンサーの付いた
消防独自の方策で対応するだけでなく、業界との
側のバーナーを必ず使用する」という指導を加え
積極的な協力体制も必要と思われる。
実際、平成 20 年には製造されるガスこんろの全
ることが効果的であると考える。
ウ
過熱防止装置付きバーナーを目立つようにす
てのバーナーに装置を標準装備するという業界の
る。
取組が進んでいるという。実現すれば天ぷらなべ
グラフ 8 のとおり、装置付きバーナー側の表示
火災の減少に大きく貢献すると考えられ、歓迎す
に関する質問に、装置使用者の 21%が「分かりに
べきことではあるが、現在使用されているガスこん
くい」と回答した。センサーの付いた側のバーナ
ろ全てがそれに取って変わるには長い年月を要す
ーを目立たせる工夫がまだまだ十分ではないもの
ることが予測される。それまでの間、消防機関は
と考えられる。装置側のスイッチや五徳を目立たせ
継続した調査により常に実態を把握し、適切な指
- 88 -
消研輯報 60
導を実施していかなければならない。ガス供給事
して、より効果的な指導を実施することが消防機関
業者においても、定期機器点検やメーター検針時
には要求されているのである。その意味ではこの
に指導を行うことが強く望まれる。
研究もほんの一例に過ぎない。常に真摯な態度を
また、火災調査は全国的な統計情報を得るため
持って業務を見つめ直し、火災による被害を少し
に、国の示した火災報告取扱要領を基に行われて
でも軽減できるように努めたいと考えている。
いるが、この結果を火災予防に有効利用するため
には実態に合わせた見直しも必要と考える。増加
している加熱防止装置付きこんろからの出火に関
する調査項目を追加して、状況の変化に対応させ
ることを望むものである。
例えば医療の世界では EBM(証拠に基づいた
医療)が主流となっているが、火災予防対策や指
導 も証 拠 に基 づいていることが求められているの
は同様であろう。火災発生に関わる状況が変化し
写真 1
ていることを敏感に察知し、その状況に正確に対応
グラフ 1
装置の有無別でみた過去 3 年間の天
グラフ 3
ぷらなべ火災の推移
グラフ 2
ガスこんろにおける加熱防止装置の
有無別状況
グラフ 4
種類別調理器の使用状況
用状況
- 89 -
加熱防止装置付き側バーナーの使
消研輯報 60
グラフ 5
グラフ 7
ガスこんろ使用者の指導方法別分布
過熱防止装置付きこんろに対する信
頼度
グラフ 6
グラフ 8
過熱防止装置付きこんろの購入時期
別分布
示について
- 90 -
過 熱防止 装置 付き側バーナーの表
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
消防吏員・消防団員等による消防防災科学論文
防火かるたを活用した子どもワークショップの手法について
京都市消防局
堂前義紹、福田
真由子、池田
1. 研究の趣旨
ひろみ、牧
文明
札には、文字札に対応したイラストを用いた(写真
1)。
本研究では、住宅防火を推進するための方策と
して「家庭での防火の話合い」に着眼し、防火の
4. 防火かるたの検証
話合いや火気使用器具の点検、火気の正しい取
扱い等を行うきっかけとなることを視野に入れ、楽
作成した防火かるたを A 小学校の 1 年生 72 名
しみながら防火の話合いを行うための広報媒体と
に配付し、それぞれの家庭でかるた遊びを行って
して、「防火かるた」を作成した。
もらい、その後に実施したアンケート調査から、防
そして、かるた遊びの住宅防火への効果を確認
火かるたの住宅防火への効果について検証した。
した上で、防火かるたを更に発展させた「子どもワ
その結果、かるた遊びを行った家庭からは、
「子
ークショップ」の手法を考案した。かるたと合わせ
どもが防火に興味を持った」、「防火について親子
てパソコン画像等の電子データや補助器材を活用
で話せた」、「親の勉強にもなった」などの感想が
したワークショップを行い、その効果について検証
寄せられた。また、かるたの内容に関連して実践し
した。
たいことはあるかとの問いには、「電気プラグの清
掃」や「防炎製品を取り入れる」などの回答が得
2. かるた遊びについて
られ、防火かるたを用いて家族や友達と遊ぶことで、
かるた遊びは、日本では江戸時代後期に全国に
住宅防火への意識を高め、楽しみながら防火の知
広まった伝統的な遊びの一つである。「犬も歩け
識を身に付けられたことが確認できた。一方で、
ば棒にあたる」や「論より証拠」など、いろはかる
低年齢の子どもには分かりにくい言葉があるなど、
たの言葉は教訓やことわざを簡潔に表現しており、
いくつかの課題が明らかになった。
無意識のうちに日常の行動規範となっているもの
5. 子どもワークショップの実践
も多い。かるた遊びの特徴は、繰り返し遊ぶこと
によって言葉や内容を自然に覚えられる点、また、
防火かるたの課題を克服するため、文字を読め
会話をすることにより、コミュニケーションを高めら
ない子どもにもかるた遊びを楽しむことができ、か
れる点にある。
るたの内容への理解が深まるよう、防火かるたと
合 わせてパソコン画 像 等 の電 子 データや補 助 器
3. 防火かるたの作成
材を活用した「子どもワークショップ」の手法を考
かるた遊びの特徴を生かし、楽しみながら防火
案した。
の話合いを行うための広報媒体として、
「防火かる
子どもワークショップでは、指導対象を「5 歳児
た」を作成した。文字札には、
「あ」から「わ」で
を中心とした園児」及び「小学 1 年生の児童」と
始まる 44 種の防火の言葉を用いて、家庭内に潜
し、防火かるたをベースに、ワークショップに用い
む火災原因を中心とした内容で構成した(表 1)。絵
る 7 種類の指導アイテム(①画像かるた ②○×クイ
- 91 -
消研輯報 60
ズ ③ストーブの絵札探し ④絵札の種類分け ⑤
濯物を置いたら火事になるよ」
「たこ足配線はいけ
火事のたまご探し ⑥実物展示 ⑦ビフォーアフタ
ないよ」など具体的な回答が多く得られ、学校で
ー)を考案した。各手法の指導方法と指導の着眼
の防火指導が住宅防火につながることが確認でき
点は、表 2 のとおりである。
た。
なお、いずれのアイテムも、子どもたちが積極的
7. 子どもワークショップの検証
に参加できる内容とし、指導対象及び指導時間に
合わせていくつかのアイテムを組み合わせ、計 3
子どもたちの反応やアンケート調査から、子ども
回の子どもワークショップを実施した(写真 2)。
ワークショップを検証した。
(1) 園児ワークショップ A
(1) 視覚による指導効果
指導対象:3 歳児~5 歳児の園児
190 名(約 10
絵札を画像で表示するかるたは、文字の読めな
名×18 グループ)
い子どももかるた遊びに参加でき、低年齢への防
指導時間:30 分間
火指導に効果があった。また、画像の絵札を発展
使用アイテムと順序:①(かるた取り)+⑥+③+⑦
させた「ビフォーアフター」や「実物展示」など
(2) 園児ワークショップ B
指導対象:5 歳児の園児
の視覚に訴えるアイテムは、子どもへの印象が強く
56 名(7 名×8 グルー
残り、指導の効果が特に高かった。
(2) 絵札を発展させたアイテムの効果
プ)
指導時間:60 分間
「ストーブの絵札探し」や「絵札の種類分け」
使用アイテムと順序:①(かるた取り)+⑥+③+⑦
などの絵札を発展させたアイテムにより、火災原因
+②
や火災予防への関心を高めることができた。子ど
(3) 児童ワークショップ A
もたちは絵札を見ながら熱心に火事の話をしてお
指導対象:小学 1 年生の児童
72 名(6 名×12
り、その効果は、イラストの中から火災の要因を探
グループ)
す「火事のたまご探し」の結果からも明らかとなっ
指導時間:90 分間
た。かるたをする前に見つけた火事のたまごは平
使用アイテムと順序:⑤+かるた取り+④+⑥+⑦+
均 5.4 個だったが、ワークショップの最後には平均
10.8 個のたまごを見つけており、子どもたちが家庭
②+⑤
内に潜む火災危険により多く気づくようになったこ
6. アンケート調査
とが確認できた。
(3) 子どもたちの様子
それぞれのワークショップの後にアンケートを行
い、指導結果の検証材料とした(別紙 1)。園児ワ
子どもたちは、かるた遊びを大変楽しんでいる
ークショップでは、保育士へのアンケートを行い、
様子だった。特に、小学 1 年生を対象とした授業
児童ワークショップでは、児童自身へのアンケート
では、約 90 分の間、飽きることなくワークショップ
を行った。
に集中しており、手法の有効性を十分に裏付ける
保育士からの回答では、「文字の読めない子ど
結果となった。ワークショップの重要な要素である、
もでも参加でき、みんなで楽しめた」との感想が
子ども同士の話し合いも十分に行われていた。ま
多く、画像を用いたかるたへの評価が高かった。
た、園児ワークショップでは、絵札の画像に注目
一方、児童の回答を分析すると、スプレー缶から
する様子や発言から、子どもたちの画像に対する
の火災に対する反応がもっとも高く、実物展示によ
関心の高さがうかがえた。
る指導の効果がよく現れた。また、家に帰ったらど
アンケート調査及び指導結果から、昔ながらの
んな話をするかとの質問には、「ストーブの前に洗
かるた遊びと現在の IT 技術を活用した補助器材
- 92 -
消研輯報 60
を組み合わせた子どもワークショップは、防火指導
発展させた形で、防火かるたと合わせて電子デー
に高い効果をもたらすことが確認できた。
タや補 助 器 材 を用 いた子 どもワークショップを考
案し、様々な手法について試行した上で、指導マ
8. 指導マニュアルの作成
ニュアルとしてまとめた。
防火かるたを用いた子どもワークショップを全て
今後は、保育士や教職員が指導者となって、子
の職員が行えるよう、上記 5 で考案したアイテム①
どもワークショップを行うための指導テキストを電
~⑦をもとに、指導対象ごとに必要な画像データ
子媒体により作成し、誰もが様々な年代を対象に
や器材と指導内容をまとめて「指導マニュアル」を
ワークショップを展開できるよう、また、防火かる
作成した(別紙 2)。指導マニュアルには、1 グルー
たによるワークショップが授業の一環としても活用
プあたりの適 切な人 数 や指 導 のポイントを記 載 し
されるよう発展させていきたい。
た。
更に、各家庭でも、ワークショップのアイテムを
活用しながら防火かるたで遊ぶことにより、家族の
9. まとめ
会話を充実させ、防火意識の向上や住宅防火へ
本研究では、防火かるたを作成し、更にそれを
の効果が一層高まることを期待したい。
- 93 -
消研輯報 60
写真 1
表1
項
目
「防火かるたの例」
防火かるたの構成
枚数
文 字 札 の 例
放火
5枚
あきや
たばこ
4枚
しかっり消そう
台所の火災
5枚
むちゅうでおしゃべり
暖房器具
6枚
せいりせいとん
電気器具
4枚
コードにのせるな
おもいもの
火遊び・花火
4枚
ただしくあそんで
たのしい花火
防炎品
3枚
わがやのふとんは
ぼうえんひん
避難方法
2枚
けむりのなかでは
しせいをひくく
消火器・消火方法
4枚
そなえてあんしん
わがやに 1 本
その他
7枚
ゆっくり
合
44 枚
計
写真 2
ものおき
かぎかけて
たばこの火
ストーブのまわり
あわてず
「子どもワークショップの様子」
- 94 -
火は消した?
119
消研輯報 60
表2
番
名
称
号
対
象
指導時間
画像かるた
①
30 分
園
児
○×クイズ
②
1回5分
方
防火かるた指導アイテム
法
指導の着眼点
パワーポイントを活
用し、絵札を画像とし
て表示し、その画像を
見てかるたを取らせ
る。
画像を見せながら
防火の話を補足する。
かるたの絵札をもと
にした○×クイズ。
全員で一斉に答え
させる。
園児・児童
ストーブの
③
絵札探し
園
10 分
児
絵札の種類
分け
④
15 分
児
童
火事のたま
⑤
ご探し
たまご探し
1回5分
答えあわせ
児
童
10 分
実物展示
⑥
随
時
園児・児童
ビフォーア
⑦
フター
園児・児童
随
時
・文字の読めない園児
でもかるた遊びを楽し
める。
・絵札とともに文字札の
言葉を表示し、言葉も
覚えさせる。
・絵札にちなんだ問題
とすることで後の指導
につなげる。
・身近で答えやすい問
題とする。
絵 札 の 中 か ら ス ト ・絵札を全て調べること
ーブの絵を見つけさ
で、かるたへの関心を
せ、その絵札をもと
高めさせる。
に、ストーブ火災につ ・全員で絵札をみて話
いて指導する。
し合うきっかけとする。
6 種類の火災(放
火 、 たばこ、 暖 房 器
具、台所の火事、火
遊び、電気)を例示し
火災の概 要 を説明し
た後、関連する絵札を
探してグループ分け
をさせる。
住 宅 内 の様 子 を書
いたイラストの中から、
火災の原 因 となる要
素(= 火事のたまご)を
見つけさせる。
ストーブやスプレー
缶の実物を展示し、子
どもたちの視覚に訴え
る教材とする。
絵札をもとに(ビフォ
ー)に、この後どうなる
か(アフター)を子 ども
たちに連想させた後、
画像を用いて火災に
ついて話す。
- 95 -
・火災の種類への関心
を高めさせる。
・全員で絵札を見て話
し合うきっかけとする。
・防火かるたの前後に
行うことで、かるたから
得られた知識を確認
する教材とする。
・火災危険についてグ
ループで話し合う。
・ストーブやスプレー缶
を見たことのない子ど
もが多い。
・実物を見て印象を強
くさせてから防火指導
を行う。
・どのようにすれば火災
になるのか、火災の原
因と結果を考えさせ
る。
アイテム画像
指導の様子
消研輯報 60
別紙 1
1. 園児に対する指導実施時
○
防火かるたアンケート結果
(引率の保育士が回答
防火教育への効果は?
回答数 26)
○
よかった点は
・
字を読めない子どもでも参加できた。9 人
・
楽しくできた。遊びながら、防火について学
ぶことが出来た。9 人
・ かるた取りが終わった後に、防火の話もあっ
てよかった。5 人
○ 改良する点は
・ 人数が多く(10 人で実施時)、ケンカになりそ
うだった。1 人
・ 画像を前にして、U の字型になって座ること
に慣れていなっかたため、かるたを取りにくか
った。1 人
2. 児童に対する指導実施時
○
(児童が各自で記入
回答数 68)
火事の原因で初めて知ったこと。(複数回答可)
○
班で話し合いはできたか?
人数
もう少し 1 人
できた 9 人
できなかった
0人
よくできた 58 人
○
家に帰ってから、家族にどんな話しをするか。
○
活動は楽しかったか?
(各自で記入)
人数
楽しかった
4人
少し楽しく
なかった 2 人
楽しくなかった
0人
とても楽しかった 62 人
- 96 -
消研輯報 60
別紙 2
子どもワークショップ指導マニュアル
1. 指導対象
小学校 低学年
2. 指導時間
90 分(途中 5 分休憩)
[小学校 低学年用]
*7~8 人ごとのグループに分ける。
3. 使用アイテム「火事のたまご探し」「絵札の種類分け」「○×クイズ」「実物展示」「ビフォーアフター」
4. 使用器材
火事のたまご探し用紙、防火かるた、種類分け用模造紙、マジック(青、赤)、
パワーポイントデータ、パソコン、スクリーン、展示用ストーブ
5. 指導の流れとポイント
時
間
0 :0 0 ~
0 :0 5
実施事項
指導のポイント
「火事のたまご探し」
・ グループ単位で考えさせる。・マジックは「青」を使用する。
(1 回目)
・ 見つけたたまごに○をつけさせるが,答えはまだ発表させな
い。(2 回目のたまご探しが終わってから発表)
[5 分]
0 :0 5 ~
0 :2 5
・ グループごとに行い,読み手もグループの中で児童が行う。
かるた取り
・ 文字札を積んでおき,読み手は順番に交替させる。
・ 進め方に戸惑っているグループがあれば助言する。
[20 分]
0 :2 5 ~
0 :3 0
かるた取りの成績発表
・ 各グループで1 番多く取った人を発表する。
・ 発表時には,みんなで拍手をする。
[5 分]
0 :3 0 ~
0 :4 5
・ グループごとに各自が取ったかるたの枚数を数えさせる。
「絵札の種類分け」
・ 絵札を分類する火事の種類は,放火,たばこ,ストーブ,台
所の火事,電気,火遊び・花火遊びの6 種類
・ それぞれの火事について説明した後,絵札を分類させる。
[15 分]
・ 選んだ絵札は,火事の種類ごとに模造紙の上に置いていく。
0 :4 5 ~
0 :5 0
[5 分]
休憩
・ 「絵札の種類分け」の答え合わせの前に5 分休憩を取る。
0 :5 0 ~
1 :0 0
[10 分]
「絵札の種類分け」
・ グループごとに一つずつ答えを発表させて,全てのグループ
1 :0 0 ~
1 :0 5
「○×クイズ」
[例:ストーブ火災の場合]
「実物展示」
・ ストーブの種類を紹介(実物展示)
「ビフォーアフター」
・ ストーブ火災を題材とした○×クイズを出題する。
[5 分]
答え合わせ
に発言する機会を与える。
・ 答え合わせのときに,ストーブ火災に関連した画像を映し,
防火のポイントを指導する。(ビフォーアフター)
1 :0 5 ~
1 :1 0
「火事のたまご探し」
(2 回目)
・ 1 回目に見つからなかったたまごを探して,○をつけさせる。
・ 1 回目と違う色を使うことで,新たなたまごを区別させる。
[5 分]
1 :1 0 ~
1 :2 0
[10 分]
1 :2 0 ~
1 :3 0
[10 分]
・ グループ単位で再度実施。 ・マジックは「赤」を使用する。
「火事のたまご探し」
・ パワーポイントでイラストを拡大表示し,答え合わせをする。
答え合わせ
子どもワークショップの
・
家庭での防火の話合いに発展させるようアドバイスする。
まとめ
- 97 -
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
一般による消防防災機器の開発・改良
水道水を利用した住宅用スプリンクラー設備の開発
株式会社大昭商事
清水信博
1. はじめに
肉体的弱者である高齢者は、家庭用火災警報
~火災発生件数から~
総務庁消防庁が発表した平成 17 年(1 月~12
器の普及が行われても、問題が解決しません。な
月)における火災状況では、
ぜなら、警報機が鳴っていても聴覚障害の方々や
全国総出火件数 57,460 件に対し、建物火災の
寝たきりの方々など、自力非難出来ない方々の割
割合 57.5%(33,049 件)。
建物火災件数
合
合が多いからであります。
33,049 件に対し住宅火災の割
「火事だ」と叫んででも、実際、逃げられない方
56.7%(18,751 件)。
が如何に多いか、上記数値からでも容易に理解で
このうち、一般住宅は、66%(12,402 件)と非常に
きることと思われます。
高くなっています。
当技術は言うなれば、このように年々増加傾向
また、死者数に関しても、
総死者数
にある住宅火災の減少を大きな目的とし、特に災
2,195 名に対し建物火災による死者
害弱者と呼ばれる高齢者・身障者・乳児・幼児
73.4%(1,611 名)。
建物火災 死者数
を火災の犠牲から守ること、
「不幸にも火災が発生
1,611 名に対し住宅火災は
しても死者を絶対出さない」事をその最大の目的
実に 88.9%(1,432 名)。
としております。
また、このうち、一般住宅は、78.8%(1,129 名)
2. 住宅用スプリンクラーの開発
にのぼります。
平成 3 年
要するに、出火件数でも、それによる、死者数
「住宅用スプリンクラー設備及び住
をとっても圧倒的に住宅火災の割合が群を抜いて
宅用火災警報器に係る技術ガイドラインについて」
いるのが現状です。
(平成 3 年 3 月 25 日付
消防予第 53 号)が、施
国や地方自治体でも、住宅防火の問題を深刻に
行され住宅防 火対策に一定 の基準が示されたわ
受け止め、その対策を緊急課題とされているのは
けでありますが、一部メーカーがそれに合わせて
言うまでもありません。平成 18 年度より、家庭用
新商品を発表したものの、なかなか、普及してい
火災警報機の義務付けが開始され、既存建物に
ないのが現状です。
これは、法律上の義務設置がないためだと考え
も猶予期間の後の義務設置が待っております。
さて、上記にある消防庁の資料の中で、注目す
られます。一般家庭には、前述しました住宅用火
べきは、死者の年齢層であります。不幸にも犠牲
災 警 報 器 という特 例 的 な措 置 を除 いては消 防 法
になられた 2,195 名のうち、65 歳以上の高齢者の
が介入しないため、設置義務が発生しません。こ
割合が 44.9%にもなることであります。ほとんどの
のことは市民の中では、置かなくて良いという意識
年齢層が入ってしまう 6~64 歳が、51.6%であるこ
につながり、防火意識の低さ、いわゆる「対岸の
とを考慮すると、高齢者の 45%という数字が如何
火事」的意識と相重なって普及に繋がらない原因
に高いかが、理解出来ると思われます。
でしょう。
- 98 -
消研輯報 60
しかしながら、今年 1 月に発生した長崎県のグ
ループホームでの惨事を
本装置は、水道管直結による住宅用スプリンク
きっかけに、このような
ラー設備であり、水道水を最大限利用することによ
小規模施設への住宅用スプリンクラーの義務化の
り、スプリンクラー設備に必要とされる、大きな「貯
論議も進んでおります。今後、住宅用スプリンクラ
水槽」・高価な「加圧送水ポンプ」・非常電源設
ー設備は、その必要性が必ずや高まる防火設備で
備等を必要としません。
あると確信しております。
さらに、本装置のみの最大の特徴をあげさせて
我々もいち早くこの住宅用スプリンクラーの開発
頂きます。
に着手し、他に無い新しいシステムで、安全・安
水道管直結によるスプリンクラー設備は、水道
心を提供すべく日々、努力しております。
管の口径と圧力により水量が必然的に決定される
ことになります。一般のご家庭では、13 ㎜~20 ㎜
3. 本装置の特徴
備「命の見張り番
の水道管口径が一般的ではないでしょうか。問題
~ 住宅用スプリンクラー設
は、動圧状態の場合にスプリンクラーヘッドから満
消し太郎」~
まずは、特許等取得状況を列挙させていただき
足な水量が確保できるかという問題です。
ます。
① 特許
また、「住宅 用スプリンクラー設備等のガイドライ
第 2985064 号(平成 11 年 10 月 1 日)
② 日本消防検定協会
ン」を満足させるためにも、使用水を全て遮断し、
鑑定品
全量の水道水を破裂したスプリンクラーヘッドに向
鑑ス第 14~1 号(住宅用スプリンクラー設備)
けます。この技術は業界初と自負しております。
鑑パ第 54・55 号(警報ブザー関係)
鑑パ第 56 号
本装置は、閉鎖型スプリンクラーヘッドを使用し、
(圧力検知器)
日本消防検定協会
ス第 2~3~1 号
通常は生活水のみに水道水が使用され、同時に、
検定品
水 道 給水 装 置の為の腐 水 対 策(停 滞 対 策)も行っ
(閉鎖型スプリンクラーヘッ
ております。
ド)
これは、オリフィスの原理を利用しており、口径
③ (社)日本水道協会
器-44
認定品
の異なるコントロールバルブ内のピストンを利用し、
(コントロールユニット)
スプリンクラー側口径を生活水の 4 倍に設定しまし
給水用具 Z-21(閉鎖型スプリンクラーヘッド)
た。4 倍の流水がスプリンクラー側に発生したなら
④ 新潟県ものづくり支援事業補助金交付
反対側、生活水側のピストンが遮断する仕組みで
⑤ (財)新潟県中小企業振興公社
す。
商品化・事業化調査採択
この様な業 界 初の新技 術を用いることにより水
本来であれば上記に示したように、住宅用スプリ
道水を無駄なく効率よく使うことが可能となり、一
ンクラーは設置義務が生じません。であるならば、
般家庭での少ない水道水の水量で最大の消火効
日本消防検定協会の鑑定等は必要ありません。し
果を期待するものであります。
かしながら、あえて日本消防検定協会の鑑定を取
4. 最後に
得し、信頼性・安全性を高める努力を致しました。
また、水道給水装置のため、(社)日本水道協会認
本装置の特徴を今一度整理しますと
定を取得しております。
① コントロールバルブにより、生活水を使用して
また、当然ではありますが平成 3 年に示されまし
いても、スプリンクラー使用時と同時に生活水を停
た「住宅用スプリンクラー設備及び住宅用火災警
止。全量の水道水を効率よくヘッドに向けられる。
報器に係る技術ガイドラインについて」(平成 3 年 3
② ブザーによる警告音を出すこと以外は、電力・
月 25 日付
動力を必要とせず仮に停電等が発生したときでも
消防予第 53 号)を意識しております。
- 99 -
消研輯報 60
本装置は確実に作動する。
の性能は日進月歩しております。
③ 信頼性を得るため、あえて、国家検定・認定
しかしながら、ここで忘れてならない事は、日々
を取得した。
進化する消火機器は、高齢者・身障者・幼児等
④ 水道管直結のため、「省スペース」「低コスト」
のいわゆる災害弱者を救うことは出来ません。そこ
を実現し、また、設備のシンプル化を図り、フリー
から動くことが、逃げることが出来ないからであり
メンテナンス化を実現した。
ます。
火災を出さない努力は、我々、国民の義務であ
住宅用スプリンクラーの特性はまさにここにあり
ります。一人ひとりが、防火に努めなければなりま
ます。今後も私どもの地域においてまずは、防火
せん。また、不幸にも火災が発生したとしても、地
意識を高めるよういろいろなイベントの開催や、そ
域消防の力、地域消防団の存在が大きな形となり
のお手伝い、より積極的な PR 活動を推進してま
我々が守られている事を忘れてはいけません。さ
いります。
らに、消火器・家庭用火災警報器等の消火機器
図1
写真 1
オリフィスの原理を用いた、コントロール
本技術イメージ図
バルブ
図2
写真 2
システム系統図
- 100 -
本技術
外観図
ユニット本体
消研輯報 60
平成 18 年度
優秀賞
一般による消防防災機器の開発・改良
屋外用炎検出器の開発
ホーチキ株式会社
相澤真人
1. はじめに
ない四 つの大 気 の窓 が検 出 波 長 の候 補 として挙
屋外用炎検出器は、大気を通して火炎から放射
げられた。
される赤外線を受光するため、大気の透過特性お
また、大気中に含まれる可能性がある気体分子
よび誤作動源となる火炎以外の赤外線を想定し、
の吸収波長を表 1 に記す。大気の窓に吸収波長が
大気状態に影響なく火炎と誤作動源を効率よく区
ある気体分子は数多く存在しており、2.9μm~4.3
別可能な検出波長を選択する必要がある。
μm 帯および 7.5μm~14μm 帯は大気の窓では
ここでは、赤外線の大気中における透過特性、
あるが検出波長より除外した。
気体分子による減衰および火炎・誤作動源の赤外
よって本調査結果より気体分子の吸収による影
線分布に着目した調査・検討、実証実験結果を
響を避けるために、屋外用炎検出器は、2μm~
報告する。
2.5μm 帯、4.4μm~5μm 帯の大気の窓を使用
また、従来型屋外用炎検出器と受信装置間の
するのが望ましいことがわかった。
煩雑な配線作業を軽減するため無配線化の検討
3. 火炎・誤作動源の赤外線分布調査
も行ったので報告する。
屋外環境には誤作動源である太陽光・照明・
2. 大気の透過特性および気体分子による吸収調
人体・バイクのマフラーなどから放射される赤外線
査
が数多く存在し、火炎による赤外線と区別する必
赤外線が大気中を伝搬する場合、そこに存在す
要がある。よって屋外環境における誤作動源の代
る気体分子によって吸収を受ける。主に波長が 2.0
表とされる、太陽光、照明(ハロゲンランプ、ナトリ
μ m ~ 14 μ m の 赤 外 線 領 域 で は 、 H 2 O( 水 ) 、
ウム灯 等)および検 出 対 象 である火 炎(ホワイトガ
CO 2 (二酸化炭素)、O 3 (オゾン)という 3 原子分子の
ソリン、N ヘプタン)からの赤外線分布を把握する
振動モードによる吸収が大きく、H2 O 分子では 2.7
ため分光測定を行った。その測定結果を図 2 へ記
μm と 6.3μm、CO 2 分子では 4.3μm、O 3 分子
す。
では 9.6μm の波長近傍で吸収が起こることが古く
図 2 の分光測定結果より火炎は 4.5μm 付近に
か ら 知 ら れ て い る 。 た だ し 、 O3 分 子 は 上 空 約
特徴的なピークが存在し、太陽光、照明は 2μm
25,000m に大部分が存在しているため、地上付近
~2.5μm 帯、人体やバイクのマフラーは 5μm 帯
では無視することができる。
付近に特徴があり、この波長帯を採用することで火
図 1 の赤外線領域 2.0μm~14μm において、
炎と誤作動源を区別可能であることがわかった。
大気吸収の影響を受けない波長の中で、赤外線
透過率が高い四つの大気の窓 2.0μm~3.0μm、
4. 検出波長検討結果
3.0μm~4.0μm、4.5μm~5.0μm、7.5~14μ
大 気の透 過特 性および気体 分子による吸収 調
m が存在する。このことから、大気状態に影響が
査より、大気の窓に内包されかつ気体分子による
- 101 -
消研輯報 60
吸収の影響を避けた波長であること、また、火炎・
め、検出器の無配線化検討を行い、電源供給を
誤作動源の赤外線分布調査より火炎・太陽光・
電池方式(リチウム電池)、炎検出警報などの移報
照明・人体・バイクのマフラーなどから放射される
出力を無線方式とした。(写真 2)
赤外線の特徴的な波長であることが必要となる。
電池方式の検討では、電池寿命を考慮し監視
よって、火炎検出用 4.5μm、太陽光・照明検
時の消費電流 35μA を実現、電池寿命約 5 年を
出用 2.3μm、人体やバイクのマフラーなどから放
担保している。
射される赤外線検出用 5.0μm の赤外線 3 波長方
配線に関しては、炎検出警報を無線により屋内
式を採用することで信頼性の高い、屋外用炎検出
で受信可能となれば、受信装置(写真 3)より外部
器を構築した。
への有線移報は比較的容易であり、マンションなど
の共同ゴミ置き場、自家用車の車庫、店舗の倉庫
5.検出器の屋外検証実験
や廃材置き場 などの想定設 置場所で有 効に活用
本検出器は 2004 年 4 月より 2006 年 3 月までの
できると判断した。
24 ヶ月間、実際の屋外環境に設置し動作を確認し
本検出器の無線部分は、使用者が無免許にて
た。(写真 1)
使用できる、小電力セキュリテイシステムの無線局
の無線設備規格(RCR-STD-30)に準拠し、無線機
設置環境は、駐車場近傍で太陽光の西日が直
器の技術基準適合認証を得た。(写真 4)
接あたる場所を選択し、検出器の炎検出警報の移
使 用 している周 波 数 は 426MHz 帯 で出 力 は
報出力によりカメラの画像を記録するシステムを設
置したが、24 ヶ月もの間誤作動は一度も無かった。
5mW、電波の届く範囲は設置された周囲の条件
また火災検出性能の検証を行うため、検出対象
にもよるが概ね半径 30m であり、想定設置場所で
である火炎(ガソリン燃焼、紙屑)および太陽光下
は有効に使用できるものとなっている。また電波の
の火炎、誤作動源である太陽光、照明器具(ハロ
伝搬状況を確認するための試験スイッチを本炎検
ゲンライト・水銀灯)、花火にて実証実験を行った。
出器に設けると共に、1 日に数回定期的に無線通
その結果、検出対象である火炎および太陽光下の
信を行うことで通信回線の障害を監視する機能を
火炎において確実に炎を検出し、誤作動源での動
有している。屋外用炎検出器および受信装置の仕
作は皆無であった。
様概要を表 2 へ記す。
上 記の性 能 検 証 実 験により信 頼 性の高い炎 検
7. まとめ
出性能が実証された。
今回検討した結果より火炎検出用 4.5μm、人
6. 屋外用炎検出器の無配線化
体・バイクのマフラーなどの検出用 5.0μm、太陽
火 炎 検 出 性 能 を最 重 要 課 題として検 討 を重 ね
光・照明検出用 2.3μm を採用し赤外線 3 波長方
たが、従来の屋外用炎検出器の難点でもあった施
式にすることで誤作動がない信頼性の高い屋外用
工性も加味した。
炎検出器を開発した。
屋外に設置されるこれらの検出器は、検出器と
また、検出器から受信装置間の無配線化を行う
受信装置間の信号線や電源線を配置する必要が
ことで煩雑であった配線作業が無く、設置場所を
あった。施工に際し屋外と屋内の配線の煩わしさ、
制限される事のない機器を提供することが可能と
たとえば家屋 から電線を取 り出す際にはコーキン
なり、屋外環境における火気厳禁場所での炎検出
グなどの防水処理、屋外配線に至っては配管配線
や、放火ならびに延焼の予防に役立つものである。
などの必要があった。この様な問題を解決するた
参考書籍:赤外線工学-基礎と応用-(オーム社)p83
- 102 -
消研輯報 60
図1
図2
大気の分光透過率
表1
波長強度分布特性
気体分子の吸収波長
気体分子
吸収波長
SO 2 (二酸化硫黄)
8.7μm
H 2 S(硫化水素)
3.8μm、8.5μm
NO 2 (二酸化窒素)
7.6μm、13.3μm
CO(一酸化炭素)
4.7μm
NH 3 (アンモニア)
2.9μm、3μm、10.5μm
CH 4 (メタン)
3.3μm、3.5μm、12.2μm
C 2 H 6 (エタン)
3.3μm、3.5μm、12.2μm
C 2 H 4 (エチレン)
3.3μm、3.5μm、10.5μm、12.1μm
C 6 H 6 (ベンゼン)
3.3μm、9.6μm、14.9μm
HCN(シアン化水素酸)
3μm、14μm
- 103 -
消研輯報 60
表2
開発機器の仕様概要
屋外用炎検出器(無線式)
受信装置(無線式)
赤外線3波長方式
-
5級
-
検出方式
JIS 防水保護
等級
無線規格
小電力セキュリティシステム(STD-30)
使用周波数
426MHz帯
電池式
(6Vリチウムバッテリ)
電源
AC100V
電池寿命
50/60Hz
約5年
-10℃~+55℃
動作保証環境
30~80%RH(結露なきこと)
-30℃~+60℃
保存環境
30~80%RH(結露なきこと)
外形寸法
150mm(H)×85mm(W)×91mm(D)
135mm(H)×85mm(W)×40mm(D)
重さ
約520g
約350g
写真 1
写真 2
写真 3
屋外検証実験風景
写真 4
屋外用炎検出器(無線式)
- 104 -
受信装置(無線式)
受信装置(左)と屋外用炎検出器(右)
消研輯報 60
平成 18 年度
奨励賞
呼吸管理補助器具の考察について
備北地区消防広域行政組合
村本満昭
1. はじめに
・ 接続ジョイント・・1 個
(2) 寸法(図面 No.1)
呼吸管理、特に人工呼吸、補助呼吸は瀕死の
状態にいる傷病者に対し、生命予後も左右する重
・ 全長 60mm
要な処置である。その重要な処置を行うのに救急
・ 全幅 90mm
隊が使用する代表的な器具はバックバルブマスク
・ 厚さ 30mm
(以下「BVM」とする)である。BVM はマスクをき
・ 内径 22mm
ちんと顔 面 に密 着 させ使 用 すれば吸 入 口 の一 方
3. 仕組み(写真 4、図面 No.1、No.2)
向から空気が入り、バックの中に空気をためる。そ
してバックをおすことによりマスクから傷 病者の肺
T 字パイプの中に空気が流れると、空気は上方
に酸素を送る。逆に傷病者の肺から排出される呼
向に流れアルミ製の弁が持ち上がる。このアルミ
気はバックには戻らず、呼気排出口の一方向から
製の弁は小型ライトのスイッチになっているため、
空気を排出する仕組みとなっている。この仕組み
弁が動くことによりライトが点灯する。仮に、T 字パ
が正しく作用しないと助けようとしている命を逆に
イプの中に液体が入ってきたときは、下側に溜まる
悪化させてしまうため呼吸管理を担当する隊員の
ため、下側のゴム製の弁から液体を排出できるよう
技術と観察力が特に重要である。しかし救急搬送
になっている。
中の車内は道路条件によりよく揺れる、意外に狭
4. 使用方法
い、そしてなにより高規格救急車で防音設備が整
ってきたとは言えうるさい、など救急車内での呼吸
BVM の呼気排出口に合わせた接続ジョイントで
管理はいくらベテランの救急隊員でも困難を極め
フィットマンを差し込むだけで取り付け完了。(写真
るといわれている。
5、6、7)
そこでこのような問題点を解消するため、誰でも、
(1) 人工呼吸の場合
気道確保を行い、BVM のマスクを傷病者の顔
確実・適切・有効に呼吸管理を行なうことが出来
る「呼吸管理補助器具」その名も「フィットマン」
面に密 着させ換 気ができていれば必ずフィットマ
を考案試作した。(写真 1、.2)
ンに呼気が通るためライトが点灯する。仮にマスク
の密 着 が悪 く空 気 が漏 れている場 合 や傷 病 者 の
2. 器具の概要
肺に酸素が送られていないときは当然傷病者から
(1) 使用部品(写真 3)
の呼気はないためフィットマンには空気が流れず
・ T 字パイプ・・・・1 本
ライトは点灯しない。よって人工呼吸が適切か、不
・ 小型ライト・・・・1 個
適切か簡単に判断できる。
・ アルミ製の弁・・・1 枚
(2) 補助呼吸
人工呼吸と同様気道確保を行い、BVM のマス
・ ゴム製の弁・・・・1 枚
- 105 -
消研輯報 60
クを顔 面 に密 着 させれば自 発 呼 吸 のある傷 病 者
程度と安価で製作が可能。
であれば呼吸に合わせてライトが点灯する。よって
(4) 特別な構造をしていないため誰でも簡単に製
補助呼吸のときのタイミングがわかりやすくなる。
作が可能。
(3) 呼吸観察
(5) 接続ジョイントを BVM の呼気排出口の大きさ
に合わせてればどの BVM でも使用が可能。
傷病者の口元にフィットマンを直接近づければ、
当然傷病者の呼吸に合わせてライトが点灯するた
6. まとめ
め、呼吸観察時、有効に使用できる。
こんな小さな器具でも生 命の危 機にさらされた
5. 利点
傷病者に対し大きな仕事をしてくれると考える。最
(1) コンパクトサイズなので狭い救急車内でもスペ
後 にこの器 具 はあくまでも呼 吸 管 理 を行 う上での
ースが気にならず呼吸管理に全力を注げる。
補助器具である。よってこのフィットマンに頼るだけ
(2) 使用方法を応用すれば様々な用途に使用が
の活動に心がけるのではなく、日々の訓練と研修
可能。
を継続し、知識と技術の習得に努める必要がある
(3) 製作するに当たりかかった費用は 1 つ 500 円
と考える。
図面
写真 1
写真 2
フィットマンの側面
- 106 -
フィットマンの前面
消研輯報 60
T 字パイプ
ゴム製の弁
接続ジョイント
小型ライト
アルミ製の弁
写真 3
使用部品
写真 6
使用風景(傷病者から呼気あり状態)
写真 4
内部構造
写真 7
使用風景(傷病者から呼気なし状態)
写真 5
BVM に接続状況
- 107 -
消研輯報 60
平成 18 年度
奨励賞
住宅用火災警報器は高齢者世帯にどこまで有効か
京都市消防局
南田美貴男
1. はじめに
えるが、近隣者や通行人など屋外には聞こえない
平成 17 年、全国の住宅火災による死者が 1200
ものと想定した。
人を超え、このうち 65 歳以上の高齢者が過半数を
ただし、古い木造共同住宅については隣室にも
占めるに至った。今後、住宅用火災警報器(以下
聞こえるものと想定した。
「警報器」という。)が高齢者世帯に基準どおり設
置されていけばどんな効果があるか、また、そこ
3. 統計処理とそこからくる課題
にどんな課題が残るのか。
(1) 警報器の作動状況
このテーマについて研究チームを組み、手分け
別表 A 欄に示すように、出火事例 55 件のうち、
して過去の火災調査書を基に、改めて高齢者世帯
作動したと推定できるのは 42 件(76%)、作動しな
からの出火事例を掘り起こしてみた。そのうえで各
かったと推定できるのは 13 件(24%)であった。
事例における高齢者の行動の特徴を整理し、そこ
* 作動箇所の分類
に警報器が設置されていれば、どんな展開になっ
寝室
26 件(62%)
ていたかを模擬実験で推定し、考察を加えたのが
台所
13 件(31%)
この研究である。
階段
3 件( 7%)
不作動の原因についてみると、店舗や作業場併
2. 模擬実験の前提と方法
用 住 宅 の店 舗 などの非 設 置 場 所 から出 火 したの
平成 8 年から平成 17 年までの京都市上京区に
が 5 件、放火されたり、たばこの不始末で軒下な
おける出火事例のうち、高齢者が出火に関わった
ど屋外から出火したのが 3 件、その他(屋根裏、離
55 事例を抽出した。出火経過、初期対応などをま
れ、玄関など)5 件となっている。
とめ、そこに警報器が設置されていた場合の推定
* こうした不作動のケースでも火災が拡大し、全
結果を統計処理するとともに、個々の事案がもっ
面燃焼となれば警報器は作動することになったで
ている問題点を整理した。
あろうが、それよりも早く関係者や近隣者などが発
見することになったと思われた。よってここでは、
ここでは、出火責任者等が高齢者であった場合
警報器が家人にいち早く火災発生を知らせたとは
とそうでない者の場合の二通りの推定を行った。
なお、この「そうでない者」を便宜上「健常者」
みなさないこととした。
しかし、警報器の奏効率 76%はそのまま火災の
という言葉で一括した。
早期発見に寄与したわけではない。次にこの点を
推定するにあたっての前提は次のとおり。
(1) 各世帯には寝室、階段、台所などに法令の基
論じる。
準どおり警報器が設置されているものとした。ただ
(2) 警報器の作動は火災の早期発見にどこまで有
し、戸外ブザーはついていないものと想定した。
効か
警報器が作動した 42 件について分析すると、別
(2) 警報器が作動した場合、屋内ではどこでも聞こ
- 108 -
消研輯報 60
表 B 欄に示すように、警報器が作動したことにより
そこでチームでは、警報器が作動して効果があ
家人が早期に消火、通報、避難などの初期対応
ったと推定できた 25 件について、火災調査書に記
ができた、つまり効果があったのは 25 件(60%)、
された高齢者の個別の具体的状況を考え合わせ、
効果がなかったのは 17 件(40%)であることがわか
これらの高齢者は、警報器の作動後、どのように
った。
行動したかを推定してみた。
では、効果がなかった 17 件の内容はどういうも
その結果、健常者であれば 25 件(60%)で有効と
された数値は、別表 C 欄に示すように、高齢者の
のか?
出火と発見が同時
10 件
不在・外出中
6件
その他
1件
場合は 14 件(33%)に下落した。
では、健常者と高齢者の差 11 件の内訳はどん
な内容であったか。
認知症等
5件
トーブに給油していてカートリッジタンクのキャップ
体が不自由で行動できなかった
2件
が外れ炎上したなどの場合である。この場合、早
近隣等に知らせず自力で消そうとした
3件
期に警報器は作動したであろうが、同時に家人が
気づかなかった
1件
火災に気付いており、警報器の効果はなかったも
具体例をあげれば次のとおりである。
「出火と発見が同時」というのは例えば石油ス
のと分類した。
ア
86 歳の女性が無意識にライターで火をつけ火
「その他」として計上した 1 件は特異なケース
である。
72 歳の女性が強火で湯をわかし始めたが、そ
れを忘れて風呂に入った。やがて沸騰の後、コン
認知症等の例
災になったが、近隣者が煙に気付き、ベランダに
うずくまっていたこの女性を救出した。
イ
体が不自由で行動できなかった例
ロ付近のプラスチック製品から出火して拡大、風呂
寝たきり状態の女性(79 歳)が自分の喫煙により
に入っていた女性は停電に気づき、風呂から出る
まくらやふとんが燃え出したが動けず、通行人が煙
と台所が燃えているのに気づいたというもの。研究
に気付いて 119 通報した。
チームでは議論を重ね、このケースでは警報器が
ウ
近隣等に知らせず自力で消そうとした例
作動しても風呂場の女性には聞こえなかったので
深夜、74 歳の男性が住む家で、たばこの火種
はないかと推定した。これは稀なケースではある
によりホームごたつから出火、自力で消そうとして
が、チームの実験では、木造 3 階建てで 3 階の閉
いるうちに拡大、近隣者が大きな音に気付いて 119
めた部屋で警報器が作動したとき、2 階のリビング
通報した。
でテレビをつけていると大変聞こえにくいということ
エ
これは京都 市支給の警 報器が実際に作動した
もわかった。
こうした稀 なケースは今 後とも起こりうるものと
例。
89 歳の女性がトイレに行こうと室内を歩いたとき、
思われる。
というわけで、警報器の作動が実際に有効だっ
たのは作動した 44 件中の 25 件(60%)となった。
気付かなかった例
電気ストーブのかたわらに置かれた衣類に触れて
しまい、用を足しているときに衣類が燃え出したと
しかし、ここで想定しているのは、普通の判断力
いうもの。このとき警報器が作動したが、女性は
と行動力を備えた健常者である。チームで研究し
気付かず。隣人が警報音を聞きつけ、「どないし
た中では、高齢者の場合には別の問題があること
たん」と尋ねたが女性は「どうもない」と否定。
がわかった。
それでも「おかしい」と思った隣人が室内に上り
(3) 高齢者宅ではどうか
込み火災を発見、消火したもの。
- 109 -
消研輯報 60
このようにみてくると、せっかく警報器が作動し
② 認知症の女性が仏壇でろうそくを使っていると
ても、高齢者についてみると、それが適切な初期
きに出火、家人が気づくのが遅れ、消火に駆けつ
対応につながるのは健常者の約 6 割くらいである
けた息子(65)が焼死したもよう。
ことがわかる。
③ 何らかの原因で石油ストーブが異常燃焼、高
その要因は統計のとおり、認知症をはじめ、体
齢男性が消火活動をしているうちに火災が拡大、
が動かないなどの心身の衰えに加え、近所に知ら
近隣者が発見して通報したもよう。
れないようにして何とか自力で消してしまおうとい
④ 深夜、体の不自由な高齢女性が寒いため、店
う心理などである。もっとも、一言で「認知症」と
舗まで伝い歩きして石油ストーブ点火、このとき捨
言えども、実際のところ、高齢になれば多かれ少
てたマッチが紙類に着火、拡大。店舗のガラスが
なかれ記憶力や注意力が衰えるのは否定できず、
割れる音で近隣者が気付き通報したもよう。他の
その意味では「認知症」とそうでない人との間の
家族は外出中。
明確な区分も難しいのが現実であろう。警報音が
⑤ ガス乾 燥 機 を横 倒 しにして暖 房 器 具 として使
鳴っているにもかかわらず、気付かないという例な
用中、高齢女性の着衣に着火、うめき声ですぐに
どは注意力の衰えの典型であろうと思われる。
家人が気づいて消火したが、搬送先の病院で死亡
こうしたことから、高齢者世帯での警報器の作動
したもよう。4.
効果を確実にするには、戸外ブザーをつけること
この例から、警報器が高齢者本人又は家族らの
が不可欠であるといえる。
火災の早期発見につながるのは①②で、③④⑤は
加えて重要と思われるのは、近隣への周知であ
出火=発見であり高齢者本人にとっては効果はほ
る。
とんどない。しかし③④はいずれも火災による異音
すでに紹介した奏功事例であるが、戸外ブザー
で近隣者が火災に気付いて初動活動をするに至っ
を聞きつけて女性宅を確認しに行った近隣者は次
ている。そのかぎりでは、戸外ブザーが設置され
のように申し述べている。
ていれば、火災がまだ小さいうちに近隣者に知ら
「2 年ほど前に警報器がついたとき、(消防の)
せ得たことは疑いない。ここでもやはり、火災に気
担当の人から、この警報器が鳴れば、おばあさん
付 いても適 切 な行 動 がとれない身 体 の不 自 由 な
の家の中で何 かが起こっているから見に行ってあ
高齢者、あるいは「自分だけで何とかしよう」と
げてくださいと言われていました・・・」
いった高齢者向けの戸外ブザーが必要不可欠で
つまり、警報器を設置したときの隣人への教示
あることがわかる。
が生かされた例である。こうした隣近所のお互いの
5 例だけでは焼死防止のための全般的資料と
理解、心づもりをさせておくことを同時に進めてお
はならず、偏りが出ることは否めないが、着目して
かなくては、戸外ブザーの効果も生かせないという
おくべき要素は出そろっていると見てよいであろう。
ことになるであろう。
なお、市内では戸外ブザー付きの警報器があっ
(4) 焼死を防ぐうえでの効果
たにもかかわらず焼死を防げなかった事案もある。
最後に京都市上京区でこの 10 年間に発生した
戸 外ブザーによる近 隣 者の早 期 発 見が有 効であ
高齢者の焼死事案について考察する。
ること、この点は疑いないものの、それがどこまで
個々のケースをあげれば次のとおりである。
焼死を防ぎうるか、またさらにそこにどんな課題が
① 認知症の男性(72)が 2 階で喫煙後階下に降り、
残るかは今後の継続的な検討課題である。
家族と食事。そのとき 2 階で異音がしたため本人
が 2 階へ確認に行ったが、そのまま戻らず焼死し
4. おわりに
住宅用火災警報器は消防法の改正を経て、いよ
たもよう。
- 110 -
消研輯報 60
いよ本格的な設置をすすめなくてはならない時期
なったと考える。
を迎えた。
なお、チームの議論の中では特に高齢者住宅で
我々研究チームの検討の結果、警報器の設置
は、経費、技術の問題を別とすれば、将来は警
は火災の早期発見に大いに効果があることがわか
報器と緊急通報システムとの合体、つまり警報器の
った。しかし、それは決して万全のものではなく、
作動を直接「119」につなぐことも、いずれは現実
特に高齢者についていえば、戸外ブザーの設置や
的 な課 題 となるかもしれないという意 見 も出 され
近隣協力態勢の充実など設置に併せてのこまかく
たことを付記しておく。
根気強い指導が同時に求められることも明らかに
別表
作動
○
A
不作動
B
×
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
健常者
有効 ○
不作動理由
出火場所から遠い
非設置(屋外)
非設置(屋外フェンス)
非設置(玄関)
非設置(玄関)
非設置(作業場)
非設置(店舗)
非設置(店舗)
非設置(店舗)
非設置(軒下)
非設置(離れ)
非設置(本堂)
非設置(屋根)
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
- 111 -
無効 ×
無効理由
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
出火= 発見
不在
不在
不在
不在
不在
不在
その他
C
高齢者
有効 ○
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
無効 ×
無効理由
認知症
認知症
認知症
認知症
統合失調症
知らせない
知らせない
知らせない
消研輯報 60
作動
○
A
不作動
No.
B
×
健常者
有効 ○
不作動理由
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
- 112 -
無効 ×
無効理由
C
高齢者
有効 ○
×
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
無効 ×
無効理由
体不自由
腎不全
気づかない
消研輯報 60
6
研究懇話会
研究懇話会は、消防研究所における研究の活性化、研究の効率的推進、研究員の資質の向上等を図る
ため、研究成果や事故等の調査結果に関する報告、また海外事情の報告などの発表、講演または話題の
提供により、意見の交換、討論、質疑応答を行う場として設けられている。
会は毎月(2 月と 8 月を除く)一度開催されており、加えて、海外からの招へい研究者による発表など理事
長が必要と認めた場合には臨時に開催されている。
●平成 18 年 5 月 12 日
地下 鉄火 災における駅 構内 の煙制御に関 する研
究
その 3
深層地下駅構内における階段内の煙流動特性に
関 する研 究
機械排煙時の排煙量と煙層高さ
○松島早苗、渡部勇市
- 傾 斜 天 井 と水 平 天 井 による煙 流
動の違い-
火災時の初期避難、消防活動支援のため、機
○渡部勇市、松島早苗
械排煙設備が設置されている。機械排煙と煙層高
首都圏の土地の高度利用から地下 3 階以下の
さに関する研究は、一般建物において床上に置か
深層地下駅構内が増加している。深層地下駅構内
れた火源での機械排煙実験がなされ、2 層ゾーン
の煙流動については、実験、シミュレーション等の
モデルによって煙層高さの降下を予測し、実験結
研究が行われているが、二階層高さの階段内の煙
果との比較が行われている。しかし、地下駅構内
流動についてはほとんど研究が行われていない。
ホーム階での地下鉄車両火災では、熱気流が複
そこで、本研究では 1/5 縮尺の地下駅構内模型を
数の車両出入り口から水平方向に噴出するので、
用い、車両を出火源とした火災実験を行った。階
床上火源でのプリューム流量とは異なり、機械排
段内の温度分布等を測定し、水平天井階段と傾斜
煙の有効性については、実験的にほとんど確認さ
天 井 階 段 内 の煙 流 動 とコンコース階 への流 出 特
れていない。
性の違いについて調べた。その結果、次のことが
本研究では、地下 3 階層 1/5 縮尺の島式の駅
分かった。
構内模型を使用し、車両を出火源とした機械排煙
(1) 水平天井階段の場合、熱気流は周囲空気を
実験を行い、排煙量と煙層下端高さの関係につい
巻き込みながら垂直に上昇するため、コンコース
て調べ、機械排煙時に必要な排煙量と防煙壁高さ
階の出入口の熱気流は、ほぼ、一様分布に近い
について検討した結果、次のことがわかった。
混合流となった。
(1) プラットホーム階 の上 部 に溜 まった煙 層 の下
(2) 30 度傾斜天井階段の場合、熱気流は傾斜天
端高さは、排煙量の増加にともない高くなったが、
井に沿い下部層の空気を巻き込みながら上昇する
ある排煙 量 以 上では天 井 下を流れる煙 層の厚み
ので、上部へ上昇するにしたがい混合が強くなり、
となり、一定の高さ 0.35m(実大 1.75m)となった。
コンコース階出入口の熱気流は、床の底部まで達
この高さは、発熱速度によってほとんど変わらなか
する混合流となった。
った。
これらの結果から車両から流出した熱気流が、
(2) (1)の結果から、機械排煙により上階への熱気
ホーム階で 2 層流であっても、両天井共に 2 階層
流を阻止するためには、階段出入り口での防煙壁
高さの階段を上昇することによりコンコース階では
高さは、0.15m(実大 0.75m)以上必要である。
混合流となり、上階ではより避難が困難になると予
- 113 -
消研輯報 60
想される。
間が、マハラノビスの距離を用いた火災感知アル
ゴリズムの感知性能に与える影響について、検証し
た結果を示した。
林野火災発生に影響する気象要素について
○寒河江幸平
林野火災発生には気象要素が影響する。なか
災害弱者の火災時避難安全のための警報・通報
でも実効湿度が最も影響するといわれている。以
システムの試用調査
前 行 った林 野 火 災 発 生 件 数 を目 的 関 数 とする重
○河関大祐、高梨健一
回帰で、気象要素数を増やして再度分析した。結
平成 14 年度から平成 16 年度までに試作ならび
果として実効 湿度がやはり最も影響 することがわ
に改良を行った「電話 転 送機能 付き火 災通知装
かった。一日の林野火災発生件数を気象要素の
置」および「聴覚障害者を考慮した火災警報通報
一次式で表せないかも検討した。結果として、実
装置」の試用調査結果について報告した。「電話
効湿度が最も影響することより、実効湿度の一次
転送機能付き火災通知装置」は、関東圏の 4 消
式で表しても相関が著しく悪くならないことがわか
防本部に持ち込み、119 番通報の対応を担当する
った。その一次式において、一日の平均林野火災
職員の試用よる講評を得た。試用試験の結果、自
発生件数 0.7 件に対応する実効湿度を求めると、
力 避 難 が困 難な人 を救 助 するために任 意 設 置 で
60%を平均として分布することがわかった。これら
使 用 できる通 報 警 報 装 置 として肯 定 的 な評 価 が
実 効 湿 度 が林 野 火 災 発 生 に最 も影 響 すること及
得られた一方で、消防への通報に第 3 者が入るこ
び実効湿度 60%が平均林野火災発生件数 0.7 件
とによる時間的ロスを心配する意見が目立った。ま
に対応することが再確認された。対象とした都道府
た、3 者通話機能を望む意見も聞かれた。「聴覚
県は林野火災発生件数の多い県 20 県である。使
障害者を考慮した火災警報通報装置」は、日常
用した統計ソフトは SPSS で、影響する説明変数の
的に交流のある聴覚障害者 6 名および健聴者 1
選択は有意確率 0.05 以下のものとした。
名の自宅に 2 ヵ月間設置し、火災や急病を想定し
た緊急通報の模擬実験等の試用よる講評を得た。
統計手法を用いた火災感知アルゴリズムに対する
試用試験の結果、本装置の有効性が認められた
サンプリング周期および蓄積期間の与える影響
上で、緊急時手動操作用の引き抜きピンの改良、
文字表示の工夫、携帯電話との連携などに改良す
○高梨健一、河関大祐
現在、住宅用火災警報器や自動火災報知設備
べき課題のあることがわかった。
には、主に熱、煙、炎を検出するセンサが用いら
れ、それぞれの特徴に即した火災感知アルゴリズ
火災区画への窒素富化空気の注入が木材クリブ
ムが用いられている。しかしながら、これらの火災
の燃焼速度に及ぼす影響
感知アルゴリズムには、それぞれ一長一短があり、
○佐宗祐子、廖
赤虹、尾川義雄、鶴田
俊、
例えば、差動式の熱感知器は燻焼火災のように熱
坂本直久(モリタ)、井上聡則(モリタ)
量 の増 加 が少 ない火 災 を感 知 するには不 向 きで
窒素富化空気が区画火災の性状に及ぼす影響
あるといわれている。一方、マハラノビスの距離と
を把握することを目的に、容積 8m 3 の半実大区画
呼 ばれる統 計 的 距 離 を用 いた火 災 感 知 アルゴリ
内に窒素富化空気を注入しながら木材クリブを燃
ズムが提案されており、消防研究所においても、
焼させた時の、木材クリブの重量減少および区画
その有効性の検証を目的として、温度、湿度、一
内温度、酸素濃度、一酸化炭素濃度、二酸化炭
酸化炭素濃度などのデータを長期的に計測してき
素濃度の変化を、実験的に調べた。区画内に注入
た。本発表では、サンプリング周期および蓄積期
する窒素富化空気中の酸素濃度と窒素富化空気
- 114 -
消研輯報 60
の流量が、木材クリブの燃焼速度と区画内温度、
市 原 市 に存 するコスモ石 油 株 式 会 社 千 葉 製 油 所
ガス濃度に及ぼす影響について検討した。注入す
の減圧軽油脱硫装置/第 1 水素製造装置付近に
る窒素富化空気中の酸素濃度が低い程、有炎燃
おいて爆発火災が発生し、敷地内約 500m 2 内の
焼と無炎燃焼のいずれに対しても抑制効果が大き
施設に被害が及んだ。火災原因調査室では、発
いこと、外部空気が流入しない流量範囲では注入
災日から 2 日間にかけて現地調査を実施し、調査
流 量 が木 材 クリブの燃 焼 速 度 に及ぼす影 響は比
結果の概要を報告した。
較的小さいこと、区画火災の性状には酸素供給量
に加え窒素の効果が顕著に影響すること、等を明
●平成 18 年 6 月 9 日
らかにした。
平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震による長岡
市旧山古志村における防火水槽の被害
○吉原
新燃料自動車火災の消火について
○鶴田
俊、鈴木
健、尾川義雄、廖
浩
平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震において、
赤虹
自 動 車 用 液 体 燃 料 に農 作 物 等 を原 料 とするア
新潟県長岡市旧山古志村では多数の防火水槽に
ルコール系 燃 料 を化 石 燃 料 に添 加 した新 燃 料 を
被害が発生した。旧山古志村に設置された防火水
用いることが検討されている。想定されるアルコー
槽は、積雪地域であるため、半地下式または土か
ル系燃 料を化 石燃 料に添 加 した新燃 料 火 災を消
ぶりの無いものがほとんどであること、取水管が側
火 する場 合 に従 来 の自 動 車 火 災 用 の泡 を用 いる
壁上部を貫通する構造となっているなどの特徴が
ことが可能か、実験により確認を行った。実験では
ある。この地震による旧山古志村における防火水
ヘプタンとエタノールを混合し模擬新燃料(E10)を
槽の被害状況等について現地調査を行うとともに、
作成した。新燃料自動車が、路上で火災を起こし
数量化理論Ⅱ類による分析を行った。その結果次
た場合を想定し、側溝に滞留し火災となった状況
のことが分かった。
を模擬して実験を行った。漏洩量が少ない場合を
(1) 減水した放火水槽では、取水管の側壁貫通部
模擬したトレイを用いた均一深さプール火災と、漏
分が損傷している場合がある。また、側壁を上下
洩量が多く路面に一部拡がった場合を模擬した傾
方向に亀裂が発生している場合がある。
斜深さプール火災で消火実験を行った。10% のエ
(2) 数量化理論Ⅱ類により、減水に至る被害の発
タ ノ ー ル をヘ プ タ ン に 添 加 し た 模 擬 新 燃 料 が 、
生の有無と各被害要因について検討した。取水管
0.8m2 程度の範囲に漏洩した場合には、従来の自
がある場合、周辺の地盤に亀裂がある場合、傾斜
動車火災用の泡を用いることが可能であることが
地に設置されている場合、また埋設され土かぶり
分かった。可燃性液面近傍に壁面が存在する条件
がない場合が、減水に至る被害の発生に、それぞ
では、壁面が存在しない条件に比べ消火時間が延
れ寄与している。
びた。今回の実験は、それぞれの条件で 1 回の
みであるが、新燃料火災の消火特性については、
バイオデイーゼルの種々の燃焼性状
新 燃 料供 給 事 業 者が実 験 等により注 意 点を調 査
林
し、使用者に周知させる必要があることが分かった。
佑燮、J-P Garo、柴田靖史
○岩田雄策、古積
博
バイオディーゼル(BDF)は、植物油から製造さ
コスモ石油株式会社千葉製油所爆発火災調査概
れる脂肪酸メチルエステル化合物で、環境問題の
要
高まりと共に、軽油の代替燃料として生産量が増
○斎藤忠男
平成 18 年 4 月 16 日(日)5 時 37 分頃、千葉県
加しつつある新規の燃料である。本発表において、
BDF の燃焼性状を直径 54cm と 92cm の燃焼容器
- 115 -
消研輯報 60
を用いて実験的に調べ、軽油及びガソリン等の燃
においては、その特徴である指向性により音声が
料と比較した。主な発表内容は次のとおりである。
聞こえる領域を避難者が聞 き逃してしまう可能性
(1) バイオデイーゼルの引火点は軽油よりも高く、
が高く、また、出力する音声アナウンスの無音領域
その燃焼性状もおだやかであった。ただし、BDF
がそれを助長するので、指向性スピーカを大空間
中にメタノールが含まれていれば、引火点は大き
にて使用する場合には、設置位置や音声出力方法
く下がる可能性がある。
をさらに改善する余地がある。
(2) 火炎温度の測定結果で、BDF の火炎温度は
軽油のものよりも低かった。
実空間及び VR 空間における音声を用いた避難
(3) 火 炎 から周 囲 への放 射 熱 の測 定 結 果 から、
誘導実験
その 2
VR 空間での誘導効果
BDF の周囲への放射熱は軽油よりも小さかった。
○山田常圭、阿部伸之、須賀昌昭(フジタ)
(4) 重量減少速度について BDF の値は、軽油及
実空間及びバーチャルリアリティ(VR)空間にお
びガソリンと比較して小さかった。
いて音声を用いた避難誘導実験を行った。そのう
(5) BDF の燃焼の終盤でボイルオーバーに似た現
ち、VR 空間において実空間と同様の音声誘導実
象が起きた。目視と放射熱のデータから、BDF の
験を VR 火災シミュレータ「fire cube」を用いて
ボイルオーバーに似た現象は軽油よりも激しかっ
行った。実空間での実験室である大会議室を再現
た。BDF の定常燃焼では、煙が少なく、植物油に
した映像と実験、条件に合わせた音響を同期させ
近い燃焼性状を有していた。
た VR 空間内をゲームパッドで視点移動をする。
被験者は、実空間実験を体験した約 40 名が対象
実空間及び VR 空間における音声を用いた避難
誘導実験
その 1
となり、実験条件として、実大実験条件の中から
条件を絞り込んだ。なお、誘導音・暗騒音ともに
実空間での指向性スピーカ
三次元の立体音響ではなくモノラルの音源とし、音
及び従来型スピーカの誘導特性
阿部伸之、○山田常圭、須賀昌昭(フジタ)
圧レベルの変化で音源の方向を認知することとし
実空 間 及 びバーチャルリアリティ空間において
た。避難口到達正解割合、避難時間及び経路、
音声を用いた避難誘導実験を行った。そのうち、
実験後のアンケート結果から、VR 空間と実空間実
実空間において指向性スピーカ及び従来型(拡散
験の双方において、“指向性”に比べ“従来型”
型)スピーカを用いた音声 誘導を行った際の避難
が、正解割合が高く、所要時間も短くなるという、
者(被験者)の誘導特性を実験的に調べた。指向性
定性的には同じ結果を得られ再現性があった。な
スピーカは、韓国地下鉄駅舎内での避難実験(韓
お、“指向性”の誘導効果においては被験者と音
国・慶北大学との共同実験)において、あらかじめ
源との配 置 条 件によれば高 い誘 導 効 果 が上げら
避難経路が限られる場所での避難誘導 効果を確
れると考えられる。
認している。そこで本研究では、本館大会議室を
避難経路を限定しない大空間の実験室として選ん
●平成 18 年 7 月 14 日
だ。音声アナウンスが出力されるスピーカ位置、
ノズルから放 水 されたウォー ター ミストの床 面へ
暗騒音の大きさ、被験者のスタート位置を変え、
の散水密度の推定
実験条件を 37 ケースとした。避難口到達正解割
○金田節夫、竹元昭夫(KHK)、内藤浩由
床面における散水密度の分布を推定するため、
合、避難時間及び経路、実験後のアンケート結果
から、従来型スピーカは指向性スピーカに比べ短
その散水密度分布が比較的なだらかで裾広がりと
時間で正確に避難口へと誘導させる効果があるこ
なるパターンのノズルにおいて、PDPA による測定
とが明らかになった。指向性スピーカは、大空間
値との関係を求めた。床面で得られた測定値を、
- 116 -
消研輯報 60
散水密度のパターンがノズル直下を中心とする同
覚に真っ先に入った階段を優先的に選択し易い事、
心円状になると仮定し、散水密度毎の面積から床
誘導 灯の条 件については暗闇および誘 導灯のサ
面におけるノズル中心からの距離とその距離にお
イズによる誘導効果の向上について定量的に示す
ける散水密度となるように補正した。また、PDPA
事ができた。
で得 られた体 積 流 量 の測 定 値 からその単 位 の次
元を床面における散水密度と同じにして、ノズル中
住宅火災死者急増の背景要因に関する一考察
心からの距離とその距離における散水密度を求め
○鈴木恵子(消防庁消防技術政策室)
平成 17 年の住宅火災による死者が、近年の漸
た。
増傾向から一転して前年比約 18%増の 1220 人と
そこで両者の散水密度間の関係を調べた結果、
床面における散水密度と PDPA で得られた体積流
なったことを受け、その背景要因を探るべく火災報
量からの散水密度とは相関係数が R2=0.8 以上と
告に基づくデータの分析を行った結果を示し、参
なり、正の相関の強いことが判った。今回の測定
加者の意見を仰いだ。
条件でここまでの結果が得られたことから、今後さ
死者数は 1990 年の男女別年齢階級別死亡率
らに測定方法等を精査し、データを蓄積することに
から推定される死者数の誤差範囲内であるが、高
より、一層強い相関となることが想定されるので、
齢者層の死亡率が低下する一方、中高年男性層
PDPA により計測することで床面散水密度分布の
の死亡率が上昇していた。55~59 歳男性死者の
推定が高い精度で可能となる事が伺えた。
状況を一般的な状況と比較すると、無職と一人暮
らしである割合が高く、経年変化では失業率と死
亡率の高い相関が認められた。
バーチャルリアリティー技術を用いた火災疑似体
験 システムの開 発
また、近年の自殺者急増に関する既往の分析で
- 地 下 鉄 駅 構 内 での避 難
指摘された事項と共通点が多かった。
経路探索に関する実験研究 -
○山田常圭、阿部伸之、須賀昌昭(フジタ)
人工現実感(VR)技術の防火安全分野における
有 効 活 用 を目 指 して火 災 擬 似 体 験 システムの開
●平成 18 年 9 月 8 日
発を行ってきた。VR 空間では、例えば煙が充満
Changes of Dust Explosion Characteristics of
し視界がきかないような非日常的状況下を再現で
Hydroxypropyl Methyl Cellulose(セルロースの
き、避難行動や心理実験を通じ、従来得られなか
粉じん爆発)
Woo-Sub LIM
った新たな知見を得ることが期待される。今回は、
VR の火災研究分野への応用例として、韓国大邱
This study was performed with Hartmann
市の地下鉄火災を対象とし、駅舎構内における各
and Godbert-Greenwald furnace type dust
種環境条件下( ①照明、②煙、③誘導灯(サイズ・
explosion apparatus in order to research the
輝 度 )の有 無 )における避 難 経 路 探 索 の実 験 を実
changes of dust explosion characteristics for
施しその結果を報告した。
changing humidity and oxygen concentration
VR 空間として韓国大邱市中央路駅(地下 3 階
of Hydroxypropyl Methyl Cellulose(HPMC).
層)を対象とし、被験者が階段を経て各階間を連続
Sample of HPMC is using as additives for
的に視点移動が可能となるモデルを作成した。実
building materials, and as raw materials for
験では、42 名の成人を被験者とし、各々、複数
agricultural
の条件(2 または 4 ケース)で避難実験を行った。そ
printing
の結果、最も頻度が高い避難経路においては、視
medical supplies. As was stated above, its
- 117 -
chemicals,
inks,
surface
adhesives,
coatings,
cosmetics,
and
消研輯報 60
derivatives have been so widely used as the
では火災関連の文献を集め、ドイツ語の要約を毎
most important additive in the chemical
月、雑誌として刊行している。
industry fields of various kinds that its
ザクセンアンハルト州火災研究所は、かつては
production and storage have been increased
東ドイツの火災研究所として消防機器の開発で 50
year by year.
人くらいの研究者がいた。統合後、ザクセンアンハ
ルト州内務省傘下となり現在研究員は 21 人であ
Therefore, it is important to analyze the
characteristics of its dangerous characteristics.
る。2000 年頃から設備が拡充され、州内の教育
機関、民間とも共同研究をしている。消防活動を
行 う上 で危 険 となりうるすべての物 質 についての
岡谷市湊地区土石流災害への技術支援について
○新井場公徳、吉原
情報を集め、データベース化し、消防機関からの
浩
2006 年 7 月 19 日に長野県岡谷市湊地区で発
問い合わせに答えるという事業を進めている。
生した土石流災害における行方不明者 捜索活動
ブラウンシュヴァイク工科大学建材・コンクリート
について、7 月 20 日午後から現地にて技術支援を
構造・防火に関する研究所(iBMB)防火・コンクリ
行った。現地において行った助言内容と、その根
ート構造部門は、学生の教育と研究を行っている。
拠とした調査や資料収集の内容について報告する。
コンクリート構造や建築部材の耐火試験以外にも、
あわせて災害対応中の消 防機関に対する技術支
建物内の煙流動の縮小模型実験・シミュレーショ
援のあり方について、考えたことを述べた。
ン、建物構造の火災の熱による影響解析、建物内
の火災性状解析、建築部材の開発、建物内の環
国際燃焼シンポジウム、ドイツの火災研究機関に
境計測、規格(DIN、CEN、ISO)関係の業務等も
ついて
行っている。研究所の人員は、研究者 60 名、そ
○鈴木
の他技術者など 20 名である。
健
8 月 7 日から 11 日まで、ハイデルベルグ市内で
開催された第 31 回国際燃焼シンポジウムに参加し、
今治市:太陽石油(株)タンク火災について
ポスター発表を行った。国際燃焼シンポジウムは、
○栗原政幸、田村裕之
直径約 75m、高さ約 24m の浮き屋根式原油タ
燃焼全般に関する最大規模の国際会議で、今回の
参加者は 1000 名を超えた。口頭発表は 359 件、
ンクを開放するために、着床した浮き屋根の下に 7
ポスター発表は 636 件、招待講演が 9 件であった。
人が入り、床に堆積した原油スラッジと軽油を混合
8 月 14 日から 8 月 18 日にかけて、カールスル
しながらポンプで排出していた。人が各種のトンボ
ーエ大学火災研究所、ザクセンアンハルト州火災
を用いて、スラッジと軽油の混合物を排出口へかき
研究所、ブラウンシュヴァイク工科大学建材・コン
寄せる作業をしていた。この作業中に火災が発生
クリート構造・防火に関する研究所(iBMB)を訪問
し、5 人が死亡、2 人が負傷した災害となった。こ
した。
の火災の概要や現地調査等の内容を報告した。
カールスルーエ大学火災研究所は 1950 年の設
立で、ドイツ統合以来、大学と州からの資金が増
●平成 18 年 10 月 13 日
えず、外部資金の獲得が求められ、現在予算の 4
構想発表「スプリンクラー設備の性能評価ツール
割が外部資金(外部の機関や民間企業からの受託
の開発」
試験、コンサルティング)となっている。人員は、
○阿部伸之(消防庁消防技術政策室)
所長、秘書、文献管理、図書室業務、エンジニア、
現在、初期拡大抑制、避難安全支援、消防活
実験場の管理運営などで、12 名である。図書室
動支援の各性能における消防用設備等の具体的
- 118 -
消研輯報 60
な性能規定化への検討がなされている。本テーマ
所事故現場調査報告
でターゲットとしているスプリンクラー設備は、性能
○笠原孝一
規定化により今まで想定していない条件(例えば、
平成 18 年 8 月 8 日(火)に北海道室蘭市に存す
高天井、室に合わせたヘッドのレイアウト、少ない
る新日本石油精製株式会社室蘭製油所内におい
放水 量など)において性能 を評価 することによりス
て、屋外タンク貯蔵所(内部浮き屋根式タンク)の内
プリンクラー設備の合理的な設計が可能である。
部浮き屋根が沈降している事実が確認された。こ
本研究では、主に過去の蓄積した実験データをも
の事故に関して行った技術支援とその後の原因調
とに、仕様規定にとらわれない体系的なデータの
査について、概要を報告した。
収集・整理を行い、技術的な側面から性能規定の
先駆けとなる汎用的なスプリンクラー設備の性能
●平成 18 年 10 月 23 日
評価法を開発することを研究目的としている。研究
Introduction of Recent Research on Smoke
懇 話 会 では本 テーマの構 想 について概 略 を述 べ
Toxicity in The U.S. and ISO(煙の毒性に関す
た。
る米国及び ISO における最近の研究紹介)
臨時研究懇話会
○Dr. Richard Gann(米国商務省 NIST)
本発表は、米国商務省標準技術研究所(NIST)
三峡ダム湛水により誘発された地すべりの調査に
/建築火災研究所(BFRL)のガスの毒性に係わる
ついて
○新井場公徳
研究者が、来所した折りに、特別講演を依頼し臨
中 国 中 南 部 に建 設 中 の三 峡 ダム(長 江 )におい
時に開催したものである。主として最近の
ては、元々海抜 85m の河川水位が 175m まで上
NIST/BFRL および ISO TC92/SC3 で進行中の実
昇する。2003 年 6 月 15 日に第一期湛水が終了し、
験 に基づくガス毒 性 試 験 法 および評 価 方 法 の紹
現在の水位は 135m である。第一期湛水に伴い、
介を中心に講演された。
長江流域で複数の地すべりで活動が誘発され、河
現在、従来の小動物を使用した曝露実験に代わ
川に津波をもたらしたり、住民の移転が必要となっ
って燃焼試験装置のガス分析による試験が主流と
たりしている。ダムの堤体建設は本年終了し、発
なりつつある。その際、ベンチスケールによる燃焼
電設備等の付帯工事の後、2008 年 6 月(当初予
試 験 方 法 としては、 ① NBS スモークチャンバー
定・堤体建設工事は予定より早く終了)には最終水
(NFPA 270)、②硝子チューブファーネス(BS7990)、
位へ湛水が予定されている。その際には、さらな
③放 射 熱 試 験装 置 (NFPA 269)および④コーン
る地すべり活動の活発化が懸念されている。資源
カロリメータ(ASTM E1354)あるが、分析ガスの結
鉱物調査所等中国の政府系研究機関においても、
果は燃焼状況によってかなり幅がある。こうした試
その重要性が認識されつつある。ダム貯水池の湛
験装置での現実の火災状況との対応を明らかにす
水に伴う地すべりは、我が国でも問題とされている
るため、NIST/BFRL においては、実大スケール
が社会問題としての側面からデータが得られにくく、
での火災 室・ 廊下を含む実 験を実施し、 CO2、
十分な検討が行われていない。消防研究所では、
CO、O2、HCl、HBr、HCN、HF、HBr、SO2、
2004 年に京都大学と共同で、いくつかの地すべり
アクロレイン、ホルムアルデヒド等、多種多様のガ
について調査及び観測計器設置を行っている。本
ス成分の分析比較を試みている。また、こうした計
年 8 月には、科研費をうけ、観測機器の増設を行
測 結 果 をもとに、 部 分 的 影 響 摂 取 量 (Fractional
った。その概要について述べた。
Effective Dose)という人間へのガス毒性についた
指標を検討中である。
新日本石油精製㈱室蘭製油所
屋外タンク貯蔵
- 119 -
消研輯報 60
●平成 18 年 11 月 10 日
とを目的としている。
具体的には、延焼動態図をアニメーションで時
関東大震災で発生した旋風についての仮説
○篠原雅彦
刻 別 に動 かすことにより風 向 や風 速 により延 焼 速
関東大震災で被服廠跡を襲い約 3 万 8 千人の
度が変化する様子を示している。また、死者の状
死者を出した旋風はどこで、どのような状況で発生
況では,地震発生後 1 時間後には、神田区南神
し、なぜこれだけの死者を出したのかを、当時の
保町、浅草区江戸町など逃げ遅れで死者が出始
証言、当時の調査結果、火災状況、気象条件、
め、14 時には、浅草区浅草寺周辺の火災 12 ヶ所、
震災時に別の場所で起きた旋風の発生状況、世界
神田区神保町付近の 9 ヶ所が合流して、浅草区田
中で起きた旋風の発生状況、これまでの実験など
中小学校、吉原公園など百名を越える死者が発生
から推測した。その結果、以下のような仮説を立
している。17 時には避難場所として安全だと思い
てた。
「旋風は、被服廠跡の隅田川対岸の大規模
込んでいた被服廠跡地、錦糸町駅も火災にのまれ
な火災域の風下に発生し、川を渡り、安田邸を通
死者の発生を見ていることを示している。
り、被服廠跡を襲った。隅田川から安田邸に上陸
した際、旋風は炎を含まない旋風(巨大 なつむじ
1923 年関東大震災を探る:新知見による地震の
風)であった。旋風が被服廠跡に来た時、被服廠
様相、揺れと被害
跡の周囲には火災が広がっていた。さらに被服廠
○武村雅之(鹿島建設小堀研究室次長)
跡内には、約 4 万人の避難者が家財道具を持ちこ
史上空前の被害を出した関東大震災が、近年
み、避難者も含む可燃物であふれていた。そのた
見直されつつある。地震観測記録の発掘や解析に
め、被服廠跡の周囲の火が被服廠跡内の膨大な
体験談も加え、震源断層の動きや余震活動などが
可燃物に燃え移り、旋風の最大風速 80m/s にも
明らかにされた。建物被害数の再調査から関東全
およぶといわれる強風によって急速に燃え広がり、
域や旧東京市、旧横浜市などの詳細震度分布が
多数の死者を出した。」そのほか、震災当日の元
評価された。公文書などで用いられてきた死者・
衛町の風速について、補正を行った値を示した。
行方不明者数の誤りが指摘され、新しく数字が示
また、被服廠跡で生き延びた人々がどうやって生
されて死亡原因の分析も進められている。筆者は
き延びたかについても、証言から紹介した。
これらの多くに関わり、様々な教訓を得た。その内
容は『関東大震災- 大東京圏の揺れを知る』鹿
島出版会(2003)などにまとめられている。最新レベ
関東大地震における火災被害
○西田幸夫
ルの見 直 しはデータがあって初 めてできることで
(東京理科大学総合研究機構 COE 技術者)
ある。講演では被害地震の様々なデータを後世に
大正 12 年 9 月 1 日の関東大震災害は東京市,
残すことの重要性を訴えた。
横浜市という近代都市に壊滅的被害を与えた。特
に、地震発生直後から、市内各所よりほぼ同時に
●平成 18 年 12 月 8 日
発生する火災によって、当時の消防能力を上回り
市町村合併による消防力のあり方について - 消
進展し多くの犠牲者をだした。
防署所数についての現在の考え方-
本発表では、災害発生直後から行われた詳細な
○寒河江幸平
調査によって作られた東京市における 9 葉の延焼
最 近の市 町村 合併による広域化に伴 い消防 力
動態図を基に出火点、延焼動態,死者分布を地
の見直しが必要である。管制システムの一元化、
図ソフトによって重ね合わせ、当時の状況をわかり
消防署所の統廃合または新設、消防吏員数の見
やすく伝え、新たな防火対策を考える一助とするこ
直し等が必要となってくる。それで現在の消防力
- 120 -
消研輯報 60
のあり方はどうなっているのか。戦後自治体消防の
創設により、各自治体での消防力の整備がなされ
2003 年十勝沖地震の際の苫小牧・勇払平野にお
たが、昭和 36 年、バラバラだった消防力を最低
ける長周期地震動
限の基準を設けることによって、各自治体での消防
レーションによる平野の平面的形状の影響の検討
力を一定水準以上にするために「消防力の基準」
-
- 3 次元地震波動伝播シミュ
が制定された。従来の基準は消防力の整備に一
○畑山
健
定の水準以上になるよう十分機能した。近年都市
2003 年十勝沖地震の際、火災・浮き屋根沈没
構造の変化、消防需要の変化等に十分機能するよ
などの甚 大な被 害が生じた苫 小 牧 西 港 の浮 き屋
う、市町の実態に応じた消防力の整備が必要にな
根式石油タンクは、主としてスロッシング 1 次固有
ってきている。そのため平成 12 年「消防力の整備
周期が 7~8 秒のものであり、この周期における揺
指針」を定め、各自治体の実情に応じて消防力を
れは、勇払平野のなかでは苫小牧西港付近が最
整備するよう制定された。ここでは消防力のうち、
大であった。この地域において長周期地震動が最
消防署所の現行の必要数算出の仕方を紹介した。
大になった原因を解明するため、勇払平野 2 次元
地下構造モデルに対する地 震波動伝 播 計算を行
った。
イギリス(HSL、バンスフィールド火災現場)、フラ
その結果、苫小牧西港地域地表直下の S 波速
ンス(TOTAL)での業務視察について
○田村裕之
度 800m/s 以下の堆積層(厚さ約 800m)が他の場
イギリスの衛生安全研究所(Health and Safety
所 に比 べて厚 くなっていることが一 因 である可 能
Laboratory) と フ ラ ン ス の 石 油 会 社 ト タ ー ル
性を見出した。しかしこの計算では、平野地下構
(TOTAL)の業務調査と、イギリスバンスフィールド
造の 3 次元的な不均質性の影響はもとより、平野
(Buncefield)で 2005 年に起きた大規模火災現場
西側周縁の山地の影響も考慮されていない。そこ
の視察を行ったので、その概要を紹介した。
で、単純化した勇払平野 3 次元速度構造モデルに
対する地震波動伝播計算を行うことにより、東西を
●平成 19 年 1 月 12 日
山地で挟まれているという勇払平野の平面的形状
住宅火災高リスクグループの実態とその動向
の特 徴がそこでの長 周 期 地 震 動 に及 ぼす影 響を
○鈴木恵子(消防庁消防技術政策室)
調べた。その結果、平野の堆積層内を伝播する表
2005 年の住宅火災による死者数は前年から急
面波が平野西側の山地境界にぶつかることによっ
増して 1220 人に達し、消防機関は原因の解明と
て水平方向に屈折される表面波が発生し、この波
さらなる対策を求められている。このため、死者数
が地震動レベルの空間較差を際立たせた可能性
と死亡率の推移の分析及び死者の類型化を行い、
があることがわかった。
対策の検討を行った。この結果、2005 年の死者総
数は 1990 年の死亡率に基づく推定の誤差の範囲
米国における消防用機器開発,消防本部における
内であるが、属性別の死亡率は変化していること、
運用に関する調査
死者を家族型、中年男性型、高齢者型の 3 クラス
○天野久徳
ターに分類でき、中でも中年男性型の死者数と死
11 月に行った、米国 TSWG(Technical Support
亡率が上昇していることが明らかになった。対策と
Working Team)の組織概要および消防関連の開
して、これまで住宅防火対策の重点的啓発対象と
発機器の調査および、ロボット配備消防本部サン
なっていなかった中年男性を対象とした対策を講
タアナ消防局における調査を紹介した。
じることが必要であると考えられた。
- 121 -
消研輯報 60
●平成 19 年 3 月 13 日
情報を利用して、延焼範囲や特定の場所の位置情
各種再生資源燃料の危険性評価
報を得ることが可能であった。
博、岩田雄策、桃田道彦
活用方法としては、ヘリコプターが到着する前
将来実用化される可能性のある各種再生資源
の情報収集や要救助者の探索、夜間の監視やヘリ
燃料の危険性評価方法を提案した。主として熱量
コプターの乗 務 員 にとって危 険 な環 境 になるよう
測定、ガス発生量によって評価した。
な場所での情報収集が考えられる。
○古積
発生熱量は、主に高感度熱量計 C80 及び TAM
によって行った。提供された試料の中では、汚泥
米国ミズーリ州で発生したグループホーム火災概
燃料、鶏糞、木材チップ(バーク)が 30℃以下でも
要と予防施策の現状について
高い発酵危険性を有している。汚泥燃料が、最も
○片岡俊明
発熱量が高い。汚泥燃料は水素を多く生じる。鶏
○細川直史(消防庁消防技術政策室)
糞は、発酵に伴うと思われる二酸化炭素を多く生
平成 18 年 11 月 27 日に米国で発生したグルー
じる。水を添加した場合、鶏糞が最も発熱する。
プホーム火災の調査、米国の火災原因調査におけ
る組織・体制や現場での活動状況などについての
無人航空機を用いた被害情報収集について
調査、さらに、米国における認知症施設の防火対
○田村裕之、片岡俊明、栗原政幸
策の現状と今後についての調査を目的に、平成 19
矢内良直、藤原正人
年 2 月 21 日から 3 月 1 日にかけてミズーリ州、ニ
大規模災害等の被害範囲や消防活動を把握す
ューヨーク市、ワシントン DC へ出張した結果を発
表した。
る方 法として上 空 からの映 像 情 報 を活 用 すること
が考えられ、有人のヘリコプターでは危険な場所
や夜間を考慮すると無人航空機の利用も有力であ
●平成 19 年 3 月 26 日
る。カイト型の無人航空機を活用しての上空から
研 究 生 活 を終 えるにあたって
の情報収集を検討した。
介-
(1) 可視カメラによる情報収集実験
臨時研究懇話会
- 研 究 の概 要 紹
○渡部勇市
地上から 150m までであれば人の位置を把握す
最初に、消防研究所(消防研究センター)におい
ることが可能で、また、地上から 600m の高さでも
て、38 年間にわたった研究の基本的考え方につい
延焼範囲や車両を把握することができる。
て述べた。次に、これまでに行ってきた避難・救
(2) 暗視カメラによる情報収集実験
助および煙流動等に関する研究を紹介した。最後
地上から 300m の高さからでも、木材の焚き火
に平成 19 年 1 月に博士号を取得した加圧防煙に
が熾の状態になった熱源や、石油ストーブ程度の
関する論文「加圧煙制御時の発熱速度から求める
大きさの熱源を把握でき、残火を確認することは可
臨界給気量の簡易予測法に関する研究」の内容に
能と考える。
ついて発表した。
(3) GPS データによる延焼範囲の把握について
地上基地局へ 1 秒毎に送られてくる機体の位置
- 122 -
消研輯報 60
7
火災原因調査技術会議
最新の火災原因調査や特異火災原因調査の事例の紹介や火災原因調査に生かすことができる科学技術等
について情報や意見の交換を行い、火災原因調査に関する情報を全国の消防本部等で共有することによっ
て、各消防本部等における火災原因調査技術の向上を図ることを目的として「火災原因調査技術会議」を
年間 5 回、全国各地で開催した。
第1回
開催日 平成 18 年 6 月 29・30 日
基調講演
消防研究センター
事例発表 1
東京消防庁
松原
立川
会場 消防研究センター
参加者 194 人
美之
克
外気温度センサーに過多の電流が流れ出火した火災について
後付けした機器の電気配線から出火した火災について
エアコンの空気清浄ユニットから出火した火災について
事例発表 2
川崎市消防局
瓜生
英一
ポップコーン製造用玩具から出火した火災について
セルフ式ガソリンスタンドで給油中に静電火花により出火した火災について
事例発表 3
船橋市消防局
茅根
宏臣
コーヒー焙煎機の火災について
事例発表 4
川越地区消防局
水村
一重
乳製品樹脂ケース火災について
事例発表 5
横浜市安全管理局
渡辺
俊之
ガス風呂釜の火災について
洗濯乾燥機の火災について
地下鉄火災について
事例研究
消防研究センター
片岡
俊明
情報交換
消防研究センター
笠原
孝一
第2回
開催日 平成 18 年 7 月 26・27 日
基調講演
消防研究センター
事例発表 1
名古屋市消防局
松原
神野
会場 名古屋市国際会議場
美之
研二
国産貨物車火災について
事例発表 2
京都市消防局
森
雅彦
地下鉄駅舎内における発煙事故とその後の対応について
- 123 -
参加者 120 人
消研輯報 60
事例発表 3
豊田市消防本部
橋本
靖史
火災時使用状況不明の車両火災について
事例発表 4
豊田市消防本部
藤村
均
連続放火による車両火災について
事例発表 5
豊橋市消防本部
本橋
由行
食器洗い乾燥機による火災について
事例発表 6
名古屋市消防局
酒向
忠晴
ユニットバス換気乾燥暖房機システムの火災について
事例発表 7
高山市消防本部
玉舎
久幸
充電式掃除機からの出火の可能性について
事例研究
消防研究センター
栗原
政幸
情報交換
消防研究センター
吉原
浩
第3回
開催日 平成 18 年 9 月 21・22 日
基調講演
消防研究センター
事例発表 1
釧路市消防本部
室﨑
堀部
会場 札幌コンベンションセンター
参加者 119 人
益輝
正
カーボンヒーターから出火した火災について
事例発表 2
旭川市消防本部
中村
光宏
ネオン配線の漏電による火災について
事例発表 3
札幌市消防局
店舗放火火災について
蝦名
暢仁
舞台幕(防炎物品)がハロゲンライトの蓄熱により発火
ダウンライトからの出火事例について
事例発表 4
仙台市消防局
本田
立花
斎藤
斉
真紀
美智範
プラグ火災について
乾燥おから火災について
事例発表 5
札幌市消防局
岩間
康晃
アロマポットから発生した火災について
テーブルタップの配線短絡により発生した火災について
オートガススタンド敷地内で埋設タンクの点検作業中に発生した火災について
事例研究
消防研究センター
齋藤
忠男
情報交換
消防研究センター
吉原
浩
第4回
開催日 平成 18 年 11 月 13・14 日
基調講演
消防研究センター
事例発表 1
広島市消防局
室﨑
片岡
会場 ヴィアーレ大阪
益輝
吉典
- 124 -
参加者 131 人
消研輯報 60
プッシュ式ガステーブルの点火立証について
事例発表 2
大阪市消防局
多羅尾
安宏
浴室暖房乾燥機の火災について
事例発表 3
神戸市消防局
桂
敏美
阪神・淡路大震災における火災調査
事例発表 4
岡山市消防局
二島
洋
金属粉による工場火災について
事例発表 5
堺市高石市消防組合消防本部
古藤
進、内田篤志
前後輪でサイズの違うタイヤを装着した四輪駆動車から出火した火災について
事例研究
消防研究センター
矢内
良直
情報交換
消防研究センター
田村
裕之
第5回
開催日 平成 19 年 2 月 15・16 日
基調講演
消防研究センター
事例発表 1
福岡市消防局
室﨑
清水
会場 福岡市民防災センター
参加者 122 人
益輝
昭智
九州大学で試験中の実証試験設備「水素ステーション」の爆発火災概要について
事例発表 2
北九州市消防局
天野
和宏
分電盤部分から出火した火災について
事例発表 3
長崎市消防局
三浦
洋一
大型客船火災における火災調査
事例発表 4
福岡市消防局
榎並
裕介
電気火災について
事例発表 5
熊本市消防局
下村
保
トラッキング火災について
事例研究
消防研究センター
藤原
正人
情報交換
消防研究センター
田村
裕之
- 125 -
消研輯報 60
Ⅲ
関 連 業 務
1
研究交流
(1)派遣
ア.国際研究集会等
派遣者名
1
室﨑益輝
期
間
18. 4.14
派遣先
国際研究集会の名称等
米国
地震防災会議
韓国
国際火災・危機管理シンポジウム
オーストリア
第 3 回トンネルの安全と換気の国際
経費負担方法
~ 18. 4.20
(このうち 4.18
~4.20)
2
室﨑益輝
18. 4.25
依頼出張
~18. 4.27
3
鶴田
俊
18. 5.14
~18. 5.19
4
鈴木
健
会議
ドイツ
第 31 回国際燃焼シンポジウム
18. 8.30
フランス
(1) Third International Symposium on
~ 18. 9. 8
スイス
the Effects of Surface Geology on
18. 8. 6
~18. 8.20
5
畑山
健
( 9.2 ~ 9.4 は
調査)
(1) 依頼出張
Seismic Motion (2) First European
Conference on Earthquake Engineering
and Seismology
6
山田常圭
19. 1.11
韓国
~19. 1.15
International symposium on
依頼出張
"Disaster-prevention Expert Project for
Training"
7
岩田雄策
18.10.23
アメリカ
~18.10.27
8
天野久徳
18.11.14
Mary Kay O'Connor Process Safety
Center Annual Symposium 2006
アメリカ
~18.11.24
International Conference on Circuits,
Signals and Systems
( こ の う ち
11.20~11.22)
9
高梨健一
19. 1.28
The 4th European conference on
韓国
ISO/TC94/SC13 防 護 服 及 び関 連
~19. 2. 2
(このうち 1.29
~ 1.31)
10
箭内英治
19. 2.14
~19. 2.24
科学技術振興
調整費による
Wireless Sensor Networks(EWSN2007)
派遣
オランダ
WG
- 126 -
依頼出張
消研輯報 60
イ.調査・共同研究等
派遣者名
1
室﨑益輝
期
間
18. 4.14
派遣先
目
的
経費負担方法
等
米国
ハリケーン被害調査
中国
三峡地域における地盤災害防止に
~18. 4.20
2
新井場公徳
18. 8.16
~18. 8.24
依頼出張
関する会議出席、三峡貯水池地域
における大 規 模 湛 水 に伴 う地 すべ
り発生危険度調査に関する研究打
ち合わせ及び現地調査
3
畑山
健
18. 8.30
フランス
グルノーブル盆地地下構造探査の
~ 18. 9. 8
ための微動観測
( こ の う ち 9.2
~9.4)
4
古積
博
内藤浩由
依頼出張
18.10.15
ハンガリー
ボイルオーバー、大容量泡放水砲
~18.10.26
イギリス
実験(ハンガリー)
火災現場調査(イギリス)
5
田村裕之
18.10.16
ハンガリー
ボイルオーバー、大容量泡放水砲
~18.10.29
イギリス
実験(ハンガリー)
フランス
火災現場調査(イギリス)
石油会社の業務調査(フランス)
6
天野久徳
18.11.14
アメリカ
米 国 に お け る 消 防 防 災 ロ ボッ ト の
~ 18.11.24
開発配備動向調査
(11.20~11.22
は学会出席)
7
新井場公徳
19. 1.29
フィリピン
レイテ島地すべり災害の調査
~19. 2. 3
(2)受け入れ
ア.実務研修員
研修員名(国籍、所属等)
1
片岡俊明(船橋市消防局)
期
間
研修部局
18. 4. 1
研修担当官
火災原因調査室
火災原因調査室長
火災原因調査室
火災原因調査室長
火災原因調査室
火災原因調査室長
火災原因調査室
火災原因調査室長
火災原因調査室
火災原因調査室長
~19. 3.31
2
栗原政幸(横浜市消防局)
18. 4. 1
~19. 3.31
3
斎藤忠男(さいたま市消防局) 18. 4. 1
~20. 3.31
4
藤原正人(川崎市消防局)
18. 4. 1
~20. 3.31
5
矢内良直(千葉市消防局)
18. 4. 1
~20. 3.31
- 127 -
消研輯報 60
イ.実習学生、インターンシップ等
研修員名(国籍、所属等)
1
潮来勇二(千葉科学大学)
期
間
研究課題
18. 8.21
可燃性固体の粉塵
~19. 9. 1
爆発(インターンシッ
受入研究室
危険性物質研究室
プ)
2
鄭
貞林(韓国、Kyungpook
National Univ.)
19. 1.15
防火衣の素材の伝
~19. 2.17
熱、透湿性の物性試
大規模火災研究室
験 に基 づ く快 適 性 評
価(JKF 主催「第 14
回理工系大学院生
研究支援事業」によ
る)
3
苫米地
守(東京消防庁)
18. 4. 1
間接噴霧放水と強制
~19. 3.31
給 気 による消 火 戦 術
研究企画部長
の実験的研究
ウ.その他
研修員名(国籍、所属等)
1
林
佑燮(韓国、釜慶国立大
学)
期
間
研究課題
18. 4. 1
化学物質の火災爆
~18.12.10
発防 止と消 火 に関す
受入研究室
危険性物質研究室
る研究
2
高 黎静(千葉科学大学)
18. 4. 1~
特殊災害研究室
(3)共同研究
ア.国際学術交流
機
1
関
名
国
Urban Safety and Security Research Institute of the University of
韓国
実施期間
14. 1.16
~19. 1.15
Seoul (ソウル市立大学校地震・防災研究所)
2
名
Texas Engineering Experiment Station, Texas A&M Univ
米国
16. 1.26
~21. 1.25
3
Samcheok National University
韓国
16. 3.15
~21. 3.14
4
Institute of Chemical Processes, Seoul National University (ソウル
韓国
16. 9. 8~
国立大学工学部化学プロセス研究所)
イ.国内の大学等との連携
機
関
名
契約日
1
東京工業大学
18. 4. 1
2
神戸大学
18. 4. 1
- 128 -
消研輯報 60
機
3
関
名
契約日
18. 4. 1
横浜国立大学
ウ.調査・共同研究等
1
2
共同研究課題名
共同研究相手先
担当研究室
消防活動支援要救助者自律搬
国立大学法人神戸大学工学
送に関する研究
部機械工学科
ナノ構造ファイバー技術を用い
帝人プロダクツ株式会社
特殊災害研究室
4
5
18. 6. 1
~23. 3.31
大規模火災研究室
18. 6. 7
~21. 3.31
た消防服の開発に関する研究
3
実施期間
斜面崩壊現場の二次崩壊危険
独立行政法人防災科学技術
度予測手法に関する研究
研究所
FRIGO-D の実 用 性 能 向 上 型
三 菱 電機 特 機システム株式
の製品化に関する研究
会社
ガレキ内移動型探索ロボットに
岐阜県生産情報研究所
地震等災害研究室
18. 6.27
~19. 3.31
特殊災害研究室
18. 7. 3
~19. 3.31
特殊災害研究室
18. 8. 1
~19. 3.31
必要となる要 素技 術に関 する
研究
6
強制給気、噴霧放水による建物
東京消防庁消防技術安全所
研究企画部
18. 9. 1
~19. 3.31
火災時の消防活動環境改善に
関する研究
7
減 酸 素 雰 囲 気 を利 用 した火 災
株式会社モリタ
危険性物質研究室
~21. 3.31
安全技術に関する研究
8
火災時の燃焼生成ガスの毒性
独立行政法人建築研究所
大規模火災研究室
10
18.11.15
~21. 3.31
に関する研究
9
18.10. 2
地 震 時 における浮 き屋 根 式 石
独立行政法人防災科学技術
油タンクの溢流実験
研究所
火 災 発 生 危 険 を有する堆 積 廃
独立行政法人国立環境研究
棄 物 の防 火 技 術 に関 する開 発
所、財団法人産業廃棄物処
研究
理事業振興財団、大成建設
施設等災害研究室
18.12. 1
~19. 3.15
危険性物質研究室
18.12. 1
~19. 9.30
株式会社
11
大 容 量 放 水 砲 による放 水 挙 動
国立大学法人福井大学大学
の予測技術に関する研究
院工学研究科ファイバーアメ
ニテ ィ 工 学 専 攻 教 授
危険性物質研究室
18.12. 1
~23. 3.31
川端
信義
12
全国強震観測ネットワークの石
独立行政法人防災科学技術
油 コンビナート地 域 を対 象 とし
研究所
施設等災害研究室
19. 2.28
~19. 3.31
た準リアルタイム地震防災情報
システムへの利 活 用 に関 する
研究
- 129 -
消研輯報 60
エ. 科学技術振興調整費
共同研究課題名
1
相手国、期間、参加者名
担当室名
種別
地震等災害研究室
科学技術連
電子タグを利用した測位と安
H18 年度~H20 年度
全・安心の確保
瀬崎
薫 (東京大)他 1 名
携施策群の
神谷
泉(国土地理院)他 7 名
効果的・効
滝澤
修 (情報通信研究機構)
率的な推進
原田
豊(科学警察研究所)他
プログラム
2名
細川直史 (消防庁)
- 130 -
消研輯報 60
2
所外講師派遣及び所外委員会等参加状況
(1) 所外講師派遣状況
ア.大学教授等
派遣先機関
講
義
題
目
職
名
氏
名
1
神戸大学(連携大学)
大学院自然科学研究科
教授
室﨑益輝
2
東京大学工学系研究科
消防防災科学技術寄付講座
客員教授
関沢
愛
3
東京理科大学 COE
21 世紀 COE プログラム「先導的建
客員教授
関沢
愛
連携教授
山田常圭
客員教授
座間信作
築火災安全工学研究の推進拠点」
4
東京工業大学(連携大学) 大学院総合理工学研究科人間環境
システム専攻人間環境評価講座
5
横浜国立大学大学院(連携
地震リスク評価
大学)
イ.大学非常勤講師
派遣先機関
講
義
題
目
氏
名
1
熊本県立大学
環境共生学部
室﨑益輝
2
長岡技術科学大学
ロボット工学
天野久徳
ウ.その他講義
年月日
1
18. 5.25
派
遣
先
機
関
講
日本損害保険鑑定人協会
義
題
目
氏
名
火災事故原因調査の方法
笠原孝一
なにをもって復興か
室﨑益輝
千葉市消防局「平成 18 年度
危険物取扱い時の静電気危険-基
松原美之
千葉市危険物防災講習会」
礎から対策まで-
大津市消防局「危険物保安セ
危険物施設の事故事例及び事故防
ミナー」
止対策について
福島県危険物安全協会連合
静電気による障災害の発生につい
会「危険物安全セミナー」
て
18. 6.13
原子力安全技術センター「第
消防活動Ⅰ、消防活動Ⅱ、演習
鶴田
~ 6.15
29 回消防関係実務講座」
18. 7.11
危険物保安技術協会「第 21 回
屋外貯蔵タンクにおける浮き屋根
西
危険物保安技術講習会」
揺動挙動の検証
「ASC(鑑定技能大学)」
2
18. 5.28
震災がつなぐ全国災害救援
ネットワーク「新潟県中越地
震復興支援フォーラム」
3
4
5
6
7
18. 6. 2
18. 6. 6
18. 6. 8
- 131 -
岩田雄策
松原美之
俊
晴樹
消研輯報 60
年月日
8
9
18. 7.25
派
遣
先
機
関
講
義
題
目
東京大学消防防災科学技術
高齢化社会における安全・安心をめ
寄付講座「公開セミナー」
ぐる今日的課題
18. 8. 2
原子力安全技術センター「平
消防関係実務講座(消防活動Ⅰ、消
~ 8. 3
成 18 年度原子力防災研修講
防活動Ⅱ、緊急時における放射線被
座」
ばくの防護)
氏
名
室﨑益輝
山田常圭
10
18. 8.25
宮城県消防学校火災調査科
原因調査(概要と現状)
栗原政幸
11
18. 8.25
岡山県「危機管理トップセミ
災害に直面しての市町村長として
室﨑益輝
ナー」
の行動・判断
日本水環境学会「第 15 回市民
火災と水
佐宗祐子
マルチハザードの時代に備える
室﨑益輝
日本建築学会大会(関東)研
超高層ビル火災における消防上の
山田常圭
究協議会
課題
日本高圧力技術協会「HPI 技
タンク底部の AE による腐食損傷評
12
18. 8.29
セ ミ ナ ー “ 災 害 と 水 -そ の 日
に備えて”」
13
18. 9. 1
兵庫県住宅再建共済制度推
進会議「兵庫県住宅再建シン
ポジウム」
14
15
18. 9. 8
18. 9.15
術セミナー
AE 法適用によ
山田
實
価-Ⅱ(AE データ評価方法の現状)
る構造物のグローバル診断
と試験技術者の技量認証」
16
18. 9.15
兵庫県社会福祉協議会「地域
災害に強い地域づくりを目指して
室﨑益輝
土木学会「平成 18 年度土木
地下空間の火災
山田常圭
学会全国大会研究討論会『安
下鉄火災を巡る諸課題-
防災セミナー」
17
18. 9.22
-韓国大邱市地
全・安心・快適な地下空間の
構築とデザイン』」
18
19
20
18. 9.26
原子力安全技術センター「第
~ 9.28
33 回消防関係実務講座」
18. 9.27
18. 9.28
消防活動Ⅰ、消防活動Ⅱ、演習
鶴田
俊
東京防災指導協会「防火安全
出火防止に係る火災安全工学理論
鈴木
健
技術講習」
に関する知識(理論)
エネルギー土木委員会
第9
回講演会「長周期地震動に関
2003 年十勝沖地震による石油タン
座間信作
ク被害と設計用スペクトル
する講演会」
21
18.10. 3
埼玉県危機管理防災部消防
火災原因調査の基礎技術について
笠原孝一
消防活動Ⅰ、消防活動Ⅱ、演習
鶴田
防災課「平成 18 年度火災原因
調査研修会」
22
18.10.10
原子力安全技術センター「第
~10.12
34 回消防関係実務講座」
- 132 -
俊
消研輯報 60
年月日
23
24
18.10.24
18.10.30
派
遣
先
機
関
講
義
題
目
佐倉市八街市酒々井町消防
火 災 現 場 で の 見 分 要 領 等(電 気 火 災
組合「火災原因調査研修会」
関係)について
日本地震学会「強震動委員会
石油タンクのスロッシングに関す
研究会」
る諸問題
氏
名
笠原孝一
座間信作
25
18.11. 1
静岡県「防災講演会」
次の大震災に備える
室﨑益輝
26
18.11. 4
津市「地震防災講演会」
東海・東南海・南海地震に備えて
室﨑益輝
27
18.11. 7
堺市高石消防本部「住宅防火
住宅火災から命を守る
室﨑益輝
近年の火災事例と企業防災
鶴田
大地震があなたを襲うとき
室﨑益輝
東京防災指導協会「防火安全
出火防止に係る火災安全工学理論
鈴木
技術講習」
に関する知識(理論)
栃木県消防学校「平成 18 年度
火災調査概論
笠原孝一
消防活動Ⅰ、消防活動Ⅱ、演習
鶴田
俊
燃焼と消火、熱移動
鈴木
健
立命館大学総合理科工学研
地震・災害発生後の被害情報収集・
座間信作
究機構防災システム研究セ
伝達・活用に関する最近の研究紹介
対策推進シンポジウム」
28
18.11.10
日本原子力研究開発機構「防
俊
火講演会」
29
18.11.11
愛知県「あいち防災セミナー
in 弥富市」
30
31
18.11.15
18.11.28
健
消防職員専科教育火災調査
における講義」
32
33
18.11.28
原子力安全技術センター「第
~11.30
35 回消防関係実務講座」
18.11.29
東京消防庁「火災性状教養講
習」
34
18.12. 1
ンター「防災システム研究会
2006 年度 第 4 回研究セミ
ナー」
35
36
18.12. 7
さいたま市消防局「第 1 回火
~12. 8
災原因調査事例研究発表会」 体制について
18.12. 8
危険物保安技術協会
新技
消防研究センターの火災原因調査
大容量泡放水砲等の構成、構造及び
術等情報セミナー
機能に関する事項
齋藤忠男
内藤浩由
37
18.12.15
滋賀県消防学校火災調査科
特異火災事例
笠原孝一
38
18.12.24
東京防災指導協会「防火安全
出火防止に係る火災安全工学理論
鈴木
技術講習」
に関する知識(理論)
毎日新聞社「ぼうさい甲子園
地域における防災教育のあり方
室﨑益輝
今求められる危機管理と国民保護
室﨑益輝
39
19. 1. 7
健
表彰式」
40
19. 1.12
奈良県「危機管理国民保護講
演会」
- 133 -
消研輯報 60
年月日
41
42
19. 1.20
19. 1.22
派
遣
先
機
関
講
義
題
目
氏
名
内閣府「自然災害フォーラ
迫り来る自然災害の脅威とその対
室﨑益輝
ム」
策
東京防災指導協会「防火安全
火災安全工学概論
山田常圭
阪神淡路大震災と環境問題
室﨑益輝
グループホーム火災について
片岡俊明
福岡県築上町米燃料化調査
新エネルギーに係る火災・爆発危険
佐宗祐子
委員会
性と安全対策
情報通信研究機構「災害・危
安全・安心な社会を実現するための
機管理 ICT シンポジウム」
情報通信技術
神奈川県消防学校火災調査
特殊火災事例
笠原孝一
物語復興 ~中越の復興を描く~
室﨑益輝
都市の安全・環境シミュレー
日本における CFD を活用した火災
山田常圭
ション -ワークショップ
安全解析
技術講習」
43
19. 1.27
日本損害保険協会「環境講
座」
44
19. 1.30
千葉市消防局「第 10 回火災
調査研究発表会」
45
46
47
19. 1.31
19. 2. 1
19. 2. 8
松原美之
科
48
19. 2.17
中越復興市民会議「地域復興
交流会議」
49
19. 2.26
(第8回)
50
19. 2.28
2007 産業安全対策シンポジ
最近の石油タンク事故事例分析
古積
博
東京防災指導協会「防火安全
出火防止に係る火災安全工学理論
鈴木
健
技術講習」
に関する知識(理論)
福岡県「地域防災シンポジウ
地域の安全安心と自主防災組織
室﨑益輝
尾道市消防局「火災原因調査
火災現場での見聞要領(電気火災関
笠原孝一
研修」
係)について
東京防災指導協会「防火安全
出火防止に係る火災安全工学理論
技術講習」
に関する知識(理論)
ウム
51
52
19. 3.15
19. 3.17
ム」
53
54
19. 3.23
19. 3.28
- 134 -
鈴木
健
消研輯報 60
(2)所外委員会、研究会への参加状況
団体等名
1
消防庁
2
委員会等名
役職名
消防審議会
幹事
今後の消防体制のあり方に関する調査検討
委員
会
3
自主防災組織の手引き改定委員会
委員
4
防災研修運営懇談会
委員
5
大阪建築防災センター
建築防災事業企画委員会
委員
6
内閣府
中央防災会議専門委員会
委員
首都直下地震の復興対策のあり方に関する
委員
7
検討会
8
文部科学省科学技術政
専門調査
策研究所
員
9
大阪府
大阪府国民保護協議会
委員
10
兵庫県
兵庫県国民保護協議会
委員
11
ひょうご安全の日推進県民会議企画委員会
委員
12
復興フォローアップ委員会
委員
兵庫県住宅再建制度運営協議会
委員
13
兵庫県住宅再建共済基
金
14
新潟県
防災立県推進戦略顧問
顧問
15
墨田区
墨田区不燃化促進事業再検討調査検討会
委員
16
大阪市消防振興協会
大阪市阿倍野防災センター
名誉館長
17
日本学術振興会
日本学術振興会特別研究員等審査会
委員
18
危険物保安技術協会
19
20
消防科学総合センター
21
日本火災学会
22
技術顧問
危険物事故防止対策論文審査委員会
委員
防災まちづくり大賞選定委員会
委員
会長
日本火災学会役員候補者推薦委員会
委員
日本建築学会学術推進委員会
委員
24
日本建築学会防火委員会
委員
25
日本建築学会学会賞選考委員会
委員
23
26
日本建築学会
日本電気協会
原子力規格委員会
運転・保守分科会
防
委員
火管理検討会
27
関西学院大学災害復興
顧問
制度研究所
28
兵庫震災記念 21 世紀研
人と防災未来センター
究機構
上級研究
員
- 135 -
氏
名
室﨑益輝
消研輯報 60
団体等名
29
兵庫震災記念 21 世紀研
委員会等名
役職名
氏
名
ひょうご震災記念 21 世紀研究機構
参与
室﨑益輝
セルフスタンドにおける給油時の安全確保に
委員
松原美之
究機構
30
消防庁危険物保安室
関する検討会
31
消防庁
セルフスタンドにおける給油時の安全確保に
委員
関する検討会
32
文部科学省科学技術政
客員研究
策研究所
員
33
東京地方裁判所
専門委員
34
日本消防検定協会
消防機器等評価委員会
委員
35
消防科学総合センター
ヒヤリハットD B 運営委員会
委員
36
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
消防活動が困難な地下空間等における活動
アドバイ
ター
支援情報システム開発作業部会
ザー
37
性能評価委員会
委員
38
性能評価第 2 専門委員会
委員
39
消防活動が困難な地下空間等における活動
委員
支援情報システム開発作業部会
40
消防設備システム評価委員会
委員
企業防災対策支援センター運営委員会
委員
41
全国危険物安全協会
42
安全工学会
理事
43
静電気学会
運営理事
44
Journal
of
Electro-
編集委員
statics
45
日本経済研究所
国際協力の支援手法に係る研究会
委員
46
三菱総合研究所
消防/救急・救命への先進技術の適用に関
委員
する勉強会
47
消防庁予防課
優良消防用設備等審査会
委員
48
東京消防庁
第 17 期火災予防審議会
委員
49
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
消防活動支援性能のあり方検討会
委員
大 容 量 泡 放 水 砲 等 の配 置 におけるチェック
委員
関沢
愛
吉原
浩
ター
50
危険物保安技術協会
ポイント検討会
51
大型化学消防車等評価委員会
委員
52
水張り検査の合理化に関する調査検討会
委員
編集委員会
委員
53
地質汚染- 医療地質-
社会地質学会
- 136 -
消研輯報 60
団体等名
54
消防庁予防課
委員会等名
高齢者等災害時要援護者に適した消防用機
役職名
委員
氏
名
田村裕之
械器具等に関する調査検討会
55
環境省
温泉に関する可燃性天然ガス等安全対策検
委員
討会
56
消防科学総合センター
広域的な林野火災の発生時における消防活
委員
動体制のあり方検討会
57
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
避難設備等専門委員会
委員
ター
58
全国危険物安全協会
災害対応ノウハウ共有化検討委員会
委員
59
日本火災学会
日本火災学会学術委員会
委員
60
理事会
理事
61
日本火災学会総務委員会
委員
62
静電気学会
静電気障災害研究委員会
委員
63
ISO/TC21
ISO/TC21/SC3/WG10
委員
ISO/TC21/SC3/WG20
委員
性能規定化に対応した火災感知に関する調
特別委員
64
65
日本火災報知器工業会
査委員会
66
IEC/TC101 国内委員会
IEC TC 31 JWG 29 国内審議 WG
委員
67
日本消防検定協会
消火器・消火器用消火薬剤規格研究委員会
委員
68
消防試験研究センター
危険物取扱者試験問題検討会
専門員
69
日本火災学会
火災時に発生する有毒ガスおよびその評価
委員
佐宗祐子
方法に関する文献調査委員会
70
理事会
理事
71
総務委員会
委員
72
学術委員会 火災時の有毒ガス調査専門委
委員
員会
73
日本燃焼学会
74
理事会
理事
第6 回アジア太平洋国際燃焼会議組織委員
委員
会
75
男女共同参画学協会連
運営委員会
運営委員
絡会
76
ISO/TC21
ISO/TC21/SC2
委員
77
日本消防検定協会
小 規 模 施 設 用 スプリンクラー設 備 等 評 価 基
委員
準策定検討会
78
危険物保安技術協会
石 油 コンビナート等 特 別 防 災 区 域 における
災 害 に対 応 するための訓 練 のあり方 に係 わ
る検討会
- 137 -
委員
内藤浩由
消研輯報 60
団体等名
79
消防庁危険物保安室
委員会等名
危険物保安に関する技術基準の性能規定導
役職名
委員
氏
名
山田
實
入・推進に係る調査検討会
80
危険物保安技術協会
屋外タンク貯 蔵所の余 寿 命予 測に関する検
委員
討会
81
やや長周期地震動に係る危険物施設の技術
委員
基準に対応した合理的改修方法に関する調
査検討会屋外タンク揺動実験検討部会
82
危険物関連設備等性能評価委員会
委員
83
FF 二重殻タンク中仕切り破損に係る調査検
委員
討委員会
84
屋外貯蔵タンクに関する腐食・劣化評価手法
主査
の開発・導入環境整備ワーキンググループ
85
全国危険物安全協会
鋼製地下タンク FRP 内面ライニング施工事
委員
業者認定委員会
エンジニアリング振 興 協
平成 18 年度高度メンテナンスのあり方検討
会
委員会
日本防炎協会
次世代防火服研究会
委員
88
「防炎ニュース」編集委員会
編集委員
89
防炎製品認定委員会・防火服基準検討分科
委員
86
87
委員
箭内英治
会
90
日本火災学会
91
92
日本保安用品協会
93
94
火災時に発生する有毒ガスおよびその評価
オブサー
方法に関する文献調査委員会
バー
企画委員会
委員
ISO/TC94/SC13 国内対策委員会
委員
ISO/TC94/SC13/WG2
主査
帝人テクノプロダクツ
「ナノ構造ファイバーを適用した遮熱、耐熱、 委員
(株)
快適性に優れる先進消防服の開発」研究推
進委員会・総合調査委員会
95
消防庁危険物保安室
危険物保安に関する技術基準の性能規定導
委員
入・推進に係る調査検討会
96
東京消防庁
廃棄物処理施設等に係わる安全対策検討委
委員
員会
97
日本海事検定協会
危険物等海上運送国際基準検討委員会危
委員
険性評価試験部会
98
危険物保安技術協会
再生資源燃料等の安全の確保に係る調査検
討会
- 138 -
委員
古積
博
消研輯報 60
団体等名
99
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
委員会等名
役職名
可とう管継手等専門委員会
委員
氏
名
古積
博
ター
100
安全工学会
企画委員会
委員
101
日本化学会
環境・安全推進委員会防災小委員会
委員
102
中央労働災害防止協会
物理的危険性評価のためのタスクフォース
委員
103
危険物保安技術協会
危険物保安に関する技術基準の性能規定導
委員
岩田雄策
入・推進に係る調査検討会製造所等の性能
規定化ワーキンググループ
104
全国危険物安全協会
危険性評価方法検討第 2 部会
委員
105
日本火災学会
日本火災学会学術委員会化学火災専門委
委員
員会
106
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
消防防災用設備機器性能評定委員会
委員
渡部勇市
ター
107
日本電気協会
誘導灯認定委員会
委員
108
危険物保安技術協会
やや長周期地震動に係る危険物施設の技術
委員
西
晴樹
基準に対応した合理的改修方法に関する調
査検討会屋外タンク揺動実験検討部会
109
やや長周期地震動に係る危険物施設の技術
委員
基準に対応した合理的改修方法に関する調
査検討会ポンツーン補強方法検討部会
110
111
安全工学会
112
113
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
水張り検査の合理化に関する調査検討会
委員
第 39 回安全工学研究発表会実行委員会
委員
平成 18 年度・19 年度安全工学編集委員会
委員
防火安全機器等専門委員会
委員
畑山
健
ター
114
日本建築学会
長周期地震動による被害予測 WG
委員
115
日本地震学会
強震動委員会
委員
116
消防庁危険物保安室
やや長周期地震動に係る危険物施設の技術
委員
基準に対応した合理的改修方法に関する調
査検討会屋外タンク揺動実験検討部会
117
危険物施設の津波・浸水対策検討会
委員
118
静岡市
防災情報の共有化等にかかる連絡調整会議
委員
119
防災科学技術研究所
大型耐震実験施設運用委員会
委員
120
消防科学総合センター
静岡 県 石油コンビナート等防災アセスメント
委員
調査検討委員会
121
日本建築学会
容器構造小委員会
- 139 -
委員
座間信作
消研輯報 60
団体等名
122
土木学会
委員会等名
震度計の設置促進と震度データの利用高度
役職名
氏
名
委員
座間信作
委員
新井場公徳
化に関する研究小委員会
123
危険物保安技術協会
危険物保安に関する技術基準の性能規定導
入・推進に係る調査検討会地下タンク貯蔵
所の性能規定化ワーキンググループ
124
地すべり学会
編集出版委員会
委員
125
日本火災学会
Web 小委員会
幹事
126
「電子タグを利用した
高梨健一
委員
測 位 と安 全 ・ 安 心 の 確
保」研究運営委員会
127
リアルタイム地震情報利
平成 18 年度「分野別リアルタイム地震情報
用協議会
利活用の調査・研究」ワーキンググループ
メンバー
(データ伝送 WG)
128
川崎市
川崎市コンビナート安全対策委員会
委員
129
危険物保安技術協会
自主保安対策の推進に関する検討会
委員
130
単独荷卸しに係る仕組みの評価委員会
委員長
131
危険物関連設備等性能評価委員会
特別専門
鶴田
俊
委員
132
消防科学総合センター
消防ヒヤリハットデータベース運営委員会
委員
133
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
ガス系消火設備等専門委員会
委員
都市基盤の安全工学に関する研究
研究員
エネルギー総 合 工 学 研
平成 18 年度原子力事業者等との連携に関
委員
究所
する調査・検討委員会
136
原子力安全基盤機構
PSA 検討会・外的事象 PSA 分科会
委員
137
原子力安全技術セン
平成 18 年度原子力防災研修事業教材作成
委員
ター
ワーキンググループ
日本原子力研究開発機
溶融設備火災事故再発防止対策検討委員
構東海研究開発セン
会
ター
134
東京大学生産技術研究
所
135
138
委員
ター
139
消防庁
イノベーション 25「消防により『救える命を、 委員
必ず救う』社会へ」ワーキンググループ
140
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
避難設備等専門委員会
委員
システムインテグレーション部 門 レスキュー
委員
ター
141
計測自動制御学会
工学部会運営委員会
- 140 -
天野久徳
消研輯報 60
団体等名
142
日本ロボット学会
役職名
評議会
評議員
第 11 回実用化技術賞選考委員会
委員
原子力安全技術セン
平成 18 年度
委員
ター
ム調査「モニタリング技術部会」
143
144
委員会等名
緊急時対策総合支援システ
平成 18 年度緊急時対策総合支援システム
145
氏
名
天野久徳
主査
「 遠 隔 モニタリング技 術 検 討 ワー キング グ
ループ」
146
日本ロボット工業会
セキュリティロボットシステム調 査 研 究 専 門
委員
委員会
平成 18 年度「次世代ロボット技術環境構造
147
委員
化調査研究専門員会
148
次世代ロボット技術環境構造化調査研究専
委員
門委員会作業現場構造化ワーキンググルー
プ
149
消防庁
新規物質および新しい様態の火災に関する
委員
鈴木
健
情報の一元化検討委員会
150
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
防火安全機器等専門委員会
委員
ター
151
東京地方裁判所
152
東京消防庁
警防業務事故再発防止対策検討部会
委員
153
日本消防検定協会
小 規 模 施 設 用 スプリンクラー設 備 等 評 価 基
委員
専門委員
山田常圭
準策定検討会
154
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
消防活動支援性能のあり方検討会
委員
ター
155
日本建築学会
防火委員会
委員
156
建築・住宅国際機構
ISO/TC21/SC4
委員
157
日本消防検定協会
消火栓等操作性評価委員会
委員長
158
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
水系消火設備等専門委員会
委員
平成 18 年度林野火災対策に係る研究調査
委員
金田節夫
ター
159
森林総合研究所
委託事業検討委員会
160
消防庁予防課
住 宅 用 火 災 警 報 器 等 の音 以 外 の警 報 に係
委員
わる調査・研究検討会
161
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
警報設備等専門委員会
委員
保守用機器専門委員会
委員
日本火災学会理事会
理事
ター
162
163
日本火災学会
- 141 -
河関大祐
消研輯報 60
団体等名
委員会等名
役職名
氏
河関大祐
164
日本火災学会
日本火災学会学術委員会
副委員長
165
リアルタイム地震情報利
平成 18 年度「分野別リアルタイム地震情報
委員
用協議会
利活用の調査・研究」ワーキンググループ
名
(家庭内制御対応 WG)
平成 18 年度「分野別リアルタイム地震情報
166
委員
利活用の調査・研究」ワーキンググループ
(人向け検討 WG)
167
ISO/TC21
ISO/TC21/SC3
委員
168
ISO/TC21/SC3/WG2
委員
169
ISO/TC21/SC3/WG6
委員
170
ISO/TC21/SC3/WG7
委員
171
ISO/TC21/SC3/WG9
委員
172
ISO/TC21/SC3/WG14
委員
173
ISO/TC21/SC3/WG17
委員
174
ISO/TC21/SC3/WG18
委員
175
日本消防検定協会
消防用車両の安全基準検討会作業幹事会
幹事
176
日 本 消 防 設 備 安 全 セン
防火材等専門委員会
委員
地下タンク等の点検方法等の性能評価委員
委員
松島早苗
ター
177
全国危険物安全協会
会専門部会
(3)所外実験等への参加
実験・研究名等
1
見附市被害情報伝達
主催団体名
分担事項
見附市
情報伝達・表示
実験
参加者
北区被害情報伝達実
上十条町会
情報伝達・表示
験
3
4
間
座間信作
18. 6.16
高梨健一
~18. 6.18
遠藤
2
期
真
座間信作
18. 9. 3
高梨健一
遠藤
真
博
18.10.15
石 油 タンクの火 災 及 び
ハンガリー石 油 ガス
放射熱及び泡の消
古積
消火実験
会社(MOL)
火性状の測定
内藤浩由
~18.10.19
見附市被害情報伝達
防災科学技術研究
情報伝達・表示
座間信作
18.10.25
実験
所、見附市ほか
高梨健一
~18.10.27
遠藤
鄭
真
炳表
新井場公徳
- 142 -
消研輯報 60
5
実験・研究名等
主催団体名
分担事項
参加者
豊橋市被害情報収
豊橋市、工学院、消
情報の収集・伝達・
座間信作
18.11.10
集・伝達等実験
防研ほか
処理等
高梨健一
~18.11.12
遠藤
鄭
真
炳表
新井場公徳
細川直史
- 143 -
期
間
消研輯報 60
3
災害調査等
(1) 災害調査
ア.長官調査(自主):消防法第 35 条の 3 の 2 に基づき、消防庁長官が特に必要であると認めた火災の
原因の調査
(該当無し)
イ.長官調査(依頼)
:消防法第 35 条の 3 の 2 の規程に基づき、消防庁又は都道府県知事から消防庁長
官に対しての求めによる火災の原因の調査
発災日
1
19. 1.20
場所/管轄
施設等名称
概要
兵庫県宝塚市
カラオケボッ
火 災 原 因 調 査 に関 する技
/宝塚市消防
クス「ビート」 術的支援
消防本部
カラオケ店 1 階調理場内
本部
現地出向者
現地調査
月日
笠原孝一
①19. 1.21
片岡俊明
~19. 1.22
矢内良直
②19. 1.30
から出火したもの。
(死者 3
~19. 2. 1
名、傷者 5 名)
ウ.センター調査(依頼)
:消防長等による依頼に基づく特異な火災に対する火災原因調査に関する技術支
援
発災日
1
18. 8. 8
場所/管轄
概要
北海道室蘭市
新日本石油
危 険 物 漏 洩 事 故 に対 する
笠原孝一
①18. 8.10
/室蘭市消防
㈱室蘭製油
技術的支援
山田
實
~18. 8.16
本部
所
付近住民の通報により調
西
晴樹
②18. 9. 5
査した結果、インナーフ
岩田雄策
~18. 9. 6
18.10.26
消防本部
現地出向者
現地調査
施設等名称
月日
ロートタンク(ナフサ)の
浮 き屋 根 が沈 没 している
ことが判明したもの
2
18.10.23
千葉県印西市
一般住宅の
火 災 原 因 調 査 に関 する技
笠原孝一
/印西地区消
火災
術的支援
片岡俊明
防組合消防本
専 用 住 宅 基 礎 のアンカー
矢内良直
部
ボルトが漏電により発熱し
基礎から出火したもの。
- 144 -
消研輯報 60
発災日
3
18.12.11
場所/管轄
概要
富山県富山市
金剛化学株
火 災 原 因 調 査 に関 する技
笠原孝一
18.12.12
/富山市消防
式会社第1
術的支援
齋藤忠男
~18.12.13
局
2 工場
引 火 性 のある有 機 溶 媒 か
矢内良直
ら析出した薬品(粉)を遠
岩田雄策
消防本部
現地出向者
現地調査
施設等名称
月日
心 分 離 器 で分 離 する作 業
中に何らかの火源により爆
発したもの。(死者 1 名、
傷者 14 名)
4
18.12.16
鳥取県米子市
洗濯乾燥機
「電気用品及び燃焼機器
笠原孝一
/鳥取県西部
の鑑識
に 係 る 火 災 等 事 故 に つい
齋藤忠男
て」に基づく技術的支援
矢内良直
広域行政管理
18.12.27
組合消防局
5
18.12.18
福岡県粕屋郡
暖房機の鑑
「電気用品及び燃焼機器
消防研究セ
19. 1.18
/粕屋南部消
識
に 係 る 火 災 等 事 故 に つい
ンター鑑識
~19. 1.19
て」に基づく技術的支援
室にて実施
防本部
6
18.12.19
大阪府東大阪
明和化学工
消火及び火災原因調査に
笠原孝一
①18.12.19
市/東大阪市
業株式会社
関する技術的支援
藤原正人
~18.12.22
消防局
東大阪工場
鋳造用発熱保温材を製造
鈴木
②18.12.26
健
中に爆発したもの。(傷者
~18.12.27
2 名)
③19. 1.15
~19. 1.18
7
18.12.22
宮城県黒川郡
電気マッサー
「電気用品及び燃焼機器
笠原孝一
/黒川地域行
ジ器の鑑識
に 係 る 火 災 等 事 故 に つい
齋藤忠男
18. 1.15
て」に基づく技術的支援
政事務組合黒
川消防署
8
9
10
19. 1. 2
19. 1. 4
19. 1. 6
千葉県船橋市
照明器具(蛍
「電気用品及び燃焼機器
笠原孝一
/船橋市消防
光灯安定器) に 係 る 火 災 等 事 故 に つい
片岡俊明
局
の鑑識
て」に基づく技術的支援
矢内正人
千葉県船橋市
株式会社甲
消火に関する技術的支援
片岡俊明
18. 1.12
/船橋市消防
斐興業小室リ
処 理 場 内 に堆 積 された木
矢内良直
~18. 1.13
局
サイクルセン
屑から出火し、廃プラスチ
内藤浩由
ター
ックへと延焼したもの。
京都府宇治市
「風呂ポッ
「電気用品及び燃焼機器
北島良保
/宇治市消防
ト」の鑑識
に 係 る 火 災 等 事 故 に つい
齋藤忠男
て」に基づく技術的支援
藤原正人
本部
- 145 -
18. 1.10
19. 4.12
消研輯報 60
発災日
11
19. 3.20
場所/管轄
概要
新潟県上越市
信越化学工
火 災 原 因 調 査 に関 する技
田村裕之
①18. 3.21
/上越地域消
業株式会社
術的支援
笠原孝一
~18. 3.23
防事務組合消
直江津工場
セルロース(粉体)を混合
齋藤忠男
②19. 5. 7
防本部
(セルロース
する際、何らかの火源で粉
矢内正人
③19. 5.16
工場)
塵に着火し爆発したもの。 鶴田
消防本部
現地出向者
現地調査
施設等名称
月日
俊
エ.センター調査(自主):消防研究センターによる自主的な災害・事故・火災原因等調査
発災日
1
18. 4.16
場所/管轄消
概要
千葉県市原市
コスモ石油 株
危 険 物 施 設 内 における火
笠原孝一
18. 4.16
/市原市消防
式会社千葉
災に対する調査
片岡俊明
~18. 4.17
局
製油所
製油所内の間接脱硫装置
齋藤忠男
及び水素製造装置の設置
矢内良直
防本部
現地出向者
現地調査
施設等名称
月日
区画において、漏洩した水
素に何らかの火源により着
火し爆発が発生したもの。
2
3
18. 5.21
18. 5.25
神奈川県川崎
東亜石油株
危 険 物 施 設 における火 災
田村裕之
18. 5.31
市/川崎市消
株式会社京
に対する調査
栗原政幸
18. 6.12
防局
浜製油所
屋 外 タ ン ク貯 蔵 所 ( 残 渣
藤原正人
油・アスファルト原料)に
矢内良直
て何らかの火源により爆発
鶴田
したもの。
内藤浩由
俊
千葉県市原市
大 日 本 インキ
化 学 工 場 における爆 発 事
片岡俊明
/市原市消防
化学工業㈱
故に対する調査
矢内良直
局
千葉工場
製造所内(ポリウレタン生
岩田雄策
18. 5.26
産 現場 )にて反 応釜が爆
発(破裂)したもの。
4
18. 6. 3
富山県富山市
富山市西町
延 焼 拡 大 した商 店 街 火 災
笠原孝一
18. 6. 5
/富山市消防
商店街
に対する調査
片岡俊明
~18. 6. 6
富 山市の中 心 部に位 置 す
齋藤忠男
局
るアーケードに囲まれた商
店街の店舗から出火し、11
棟焼損したもの。(負傷者
2 名)
- 146 -
消研輯報 60
発災日
5
18. 7.17
場所/管轄消
施設等名称
概要
長野県岡谷市
岡谷市湊地
土 石 流 災 害 防 止 に関 する
吉原
/諏訪広域消
区土石流災
技術的支援
藤原正人
防本部
害
平成 18 年 7 月豪雨に伴い
新井場公徳
防本部
現地出向者
浩
現地調査
月日
18. 7.20
~18. 7.21
土 石 流 災 害 が発 生 したも
の。
6
18. 8.12
滋賀県大津市
東レ株式会
延 焼 拡 大 した工 場 におけ
片岡俊明
18. 8.14
/大津市消防
社瀬田工場
る火災に対する調査
齋藤忠男
~18. 8.16
落雷により第 2 工場から出
藤原正人
局
火し約 10,000 ㎡焼損、鎮
火まで約 8 時間半を要した
もの。
7
18.10. 8
広島県尾道市
太陽石油販
危 険 物 漏 洩 事 故 に対 する
片岡俊明
18.11. 6
/尾道市消防
売株式会社
調査
山田
~18.11 .7
局
サントップ尾
F F 二 重 殻 地 下 タ ン クの
道給油所
中仕切りが破損し、ガソリ
實
ンと灯 油が混 合した事故
に関する調査
8
19. 3. 8
秋田県秋田市
出光興産株
危 険 物 漏 洩 事 故 に対 する
/秋田市消防
式会社秋田
技術的援支援
本部
油槽所
西
晴樹
19. 3.10
~19. 3.11
(2) 鑑定
1
2
発災日
場所/依頼者
施設等名称
概要
鑑定の目的
鑑定者
18. 8.23
神奈川県横浜
横浜市水道
配 管 工 事 中 にアセチレ
水道配管内面
火災原因
市/横浜市安
局峰配水池
ンバーナーを使 用 して
塗装の発火点に
調査室
全管理局
港南台第一
いたところ配 管 内 の塗
ついて
ポンプ場
装に着火したもの。
-
木造 2/0 専用住宅から
助燃剤の使用
火災原因
出火し全焼したもの。
の有無について
調査室
18.11. 5
岩手県九戸郡
/久慈地区広
域行政事務組
合消防本部
- 147 -
消研輯報 60
3
発災日
場所/依頼者
施設等名称
概要
鑑定の目的
鑑定者
18.12.11
富山県富山市
金剛化学株
引火性のある有機溶
使 用 されていた
火災原因
/富山市消防
式 会 社 第 12
媒から析出した薬品
溶媒の引火性
調査室
局
工場
(粉)を遠心分離器で
の有無について
分離する作業 中に何ら
かの 火 源 によ り爆 発 し
たもの。
(死者 1 名、傷
者 14 名)
4
5
18.12.19
19. 3.20
大阪府東大阪
明和化学工
鋳造用発熱保温材を
危険物に該当す
火災原因
市/東大阪市
業株式会社
製造中に爆発したも
るかについて
調査室
消防局
東大阪工場
の。(傷者 2 名)
新潟県上越市
信越化学工
セルロース(粉体)を
粉 塵 爆 発 を起 こ
火災原因
/上越地域消
業株式会社
混合する際、何らかの
す最小着火エネ
調査室
防事務組合消
直江津工場
火源で粉塵に着火し爆
ルギー及びその
発したもの。
濃度
防本部
- 148 -
消研輯報 60
4
受賞・学位
(1)受賞
受賞者名
1
鈴木
健
受賞年月
18. 5.18
賞
の
種
別
日本火災学会内田奨励
受
賞
内
容
RDF(ゴミ固形燃料)の火災・爆発の研究
賞
(2)学位
氏名
1
渡部勇市
論
文
名
種別
加圧煙制御時の発熱速度から求める臨
界給気量の簡易予測法に関する研究
- 149 -
授与年月
博士(工学) 平成 19 年 1 月
授与大学
京都大学
消研輯報 60
5
工業所有権
(1)特許
ア.取得特許
種別
1
2
特許
特許
番
号
特許第 3903076 号
特許第 3903115 号
発明の名称
発明者
アルカリ金属蒸気の発光誘起方法と標準
鶴田
光源及びアルカリ金属の漏洩検出装置
他1名
火災の消火方法及び消火設備
鶴田
俊、斎藤
直
俊、尾川義雄
佐宗祐子他 1 名
3
特許
特許第 3924623 号
火災防止システム
尾川義雄、佐宗祐子
他1名
4
特許
特許第 3928034 号
火害軽減床構造
斎藤
他3名
- 150 -
直、鶴田
俊
消研輯報 60
6
視察・見学
(1)国内
日
付
訪
問
者
人
数
1
2006. 5.11
内閣府参事官他
4
2
2006. 5.24
消防大学校幹部科第 1 期
32
3
2006. 6.15
人事院職務調査視察
4
4
2006. 6.27
総務省新人研修
23
5
2006. 6.29
岩手県消防学校
35
6
2006. 6.30
第 1 回火災原因調査技術会議参加者
60
7
2006. 7. 4
小笠原総務省自治行政局公務員部長
3
8
2006. 7.11
五所川原地区消防事務組合議会
10
9
2006. 7.12
㈱ヒント
1
10
2006. 7.19
東久留米市防火女性の会
34
11
2006. 7.20
羽生総務省消防庁総務課長補佐
1
12
2006. 7.26
消防大学校幹部科第 2 期
55
13
2006. 7.31
消防大学校火災調査科第 11 期
51
14
2006. 7.31
消防大学校警防科第 79 期(1)
31
15
2006. 8. 1
消防大学校警防科第 79 期(2)
31
16
2006. 8. 2
高部総務省消防庁長官
1
17
2006. 8. 3
岡山県議会総務委員会
11
18
2006. 8. 8
徳島県議会事務局防災対策特別委員会
12
19
2006. 8.11
ニッセイ同和損害保険㈱
3
20
2006. 8.30
埼玉県消防学校
58
21
2006. 8.31
消防大学校(北海道消防学校初任教育学生)
4
22
2006. 9. 4
調布市消防団、長野県木島平消防団
21
23
2006. 9.13
福井県消防学校
19
24
2006. 9.22
江戸川大学経営社会学科
15
25
2006. 9.25
消防大学校救助科
48
26
2006. 9.26
消防大学校予防科第 80 期
56
27
2006. 9.27
エムエスエイ
3
28
2006.10. 4
総務省新人研修
21
29
2006.10.16
鳥取県議会総務警察常任委員会
9
30
2006.10.19
船橋市自衛消防協会
39
31
2006.10.20
千葉市防火管理者協議会稲毛支部
15
32
2006.10.23
消防大学校幹部科第 3 期
55
33
2006.10.27
静岡県長泉町防火協会
18
ジャパン㈱
- 151 -
消研輯報 60
日
付
訪
問
者
人
数
34
2006.11. 7
小山地区自治会連合会(神奈川県)
28
35
2006.11. 8
入間東部地区消防組合消防団諮問委員会
15
36
2006.11. 8
京都大学防災研究所斜面災害研究センター
4
37
2006.11.15
消防大学校上級幹部科第 70 期
40
38
2006.11.16
陸上自衛隊化学学校
4
39
2006.11.24
調布消防署防火女性の会調布支部
14
40
2006.12. 5
消防大学校警防科第 80 期
62
41
2006.12. 6
消防大学校火災調査科第 12 期
48
42
2006.12. 8
熊本県消防協会阿蘇支部
15
43
2007. 1.15
井上文部科学省室長他
5
44
2007. 1.23
大野総務副大臣視察
2
45
2007. 1.24
野田市消防委員会
9
46
2007. 2. 7
東京消防庁予防部調査課研修生
40
47
2007. 2. 9
JISTEC
2
48
2007. 2.14
ユニ・チャーム㈱グローバル開発本部
1
49
2007. 2.2
消防大学校幹部科第 4 期
50
50
2007. 2.21
徳島県消防協会板野地方分会
6
51
2007. 2.23
消防庁防災課
2
52
2007. 2.27
東京消防庁予防部調査課研修生
61
53
2007. 2.28
消防大学校予防科第 81 期
58
54
2007. 3. 9
千葉市千葉港沿岸地区防災協議会事務局
28
55
2007. 3.28
河井総務政務官
2
56
2007. 3.3
鹿島建設㈱技術研究所
6
1330
計
(2)国外
日
付
訪
問
者
人
数
1
2006. 4.18
カナダ・アルバータ大学ほか
2
2
2006. 6.14
ベトナム・消防大学校
7
3
2006. 7.11
韓国消防防災庁次長ほか
9
4
2006. 9.29
JICA(火災予防技術研修)
9
5
2006.10.26
JICA(平成 18 年度大都市地震災害軽減のための総合戦略コース)
11
6
2006.10.23
NIST/BFRL
1
7
2006.12. 7
韓国・鉄道技術研究院
3
8
2007. 1.19
㈱B&Tec ほか
5
9
2007. 2.27
Air Flow Consulting ほか
2
- 152 -
消研輯報 60
日
10
付
2007. 3.28
訪
問
者
人
数
4
アジア科学技術交流協会
63
計
- 153 -
消研輯報 60
付
1
録
研究体制
(1)組織
消防研究センター所長
研 究 統 括 官
火災災害調査部
消防研究センターの事務を掌理すること。
命を受けて、災害時における消防の活動その他の消防の科学技術に
関する研究、調査及び試験に関する事務を統括すること。
1 消防法第三十五条の三の二第一項の規定により火災の原因の調査
を行うこと。
2 災害時における消防の活動に係る科学技術に関する研究、調査及
び試験を行うこと(研究企画部の所掌に属するものを除く。)。
火災原因調査室
技 術 研 究 部
火災災害調査部の事務のうち、火災原因調査に関する事務
を行うこと。
1 消防法第十七条の二の四第一項の規定により同法第十七条の二第
一項に規定する性能評価を行うこと。
2 消防法第二十一条の十一第一項の規定により同法第二十一条の二
第一項に規定する検定対象機械器具等についての試験又は同条第三
項に規定する個別検定を行うこと。
3 消防の科学技術に関する研究、調査及び試験を行うこと(火災災害
調査部及び研究企画部の所掌に属するものを除く。)。
大規模火災研究室
過密都市空間における火災時の安全確保に関する研
究、調査及び試験を行うこと。
危険性物質研究室
化学物質の火災爆発防止及び消火に関する研究、調
査及び試験を行うこと。
施設等災害研究室
危険物施設等の安全性向上に関する研究、調査及び
試験を行うこと。
地震等災害研究室
地震などの大規模自然災害時の消防防災活動に関す
る研究、調査及び試験を行うこと。
- 154 -
消研輯報 60
特殊災害に対する安全確保に関する研究、調査及び
試験を行うこと。
特 殊 災 害 研 究 室
災害時における消防の活動その他の消防の科学技術に関する研究、
研 究 企 画 部
調査及び試験の実施に係る企画及び立案、研究並びに評価並びにそ
の成果の普及に関する事務をつかさどること。
(2)予算
平成 18 年度の消防研究センターの予算は次表の通りである。
単位:千円
対前年度
増減率
18 年度予算額
17 年度予算額
増減額
(% )
A
B
A-B
A/B × 100
研究費
323,479
-
-
-
運営に関する経費
163,618
-
-
-
振興調整費等
61,825
-
-
-
施設・設備費
15,943
-
-
-
564,865
-
-
-
合
計
また、主な研究課題の予算額は次表の通りである。
単位:千円
18 年度予算額
研究課題名
17 年度予算額
火災原因調査技術の高度化に関する調査研究
12,783
-
過密都市空間における火災時の安全確保に関する研究
42,395
-
9,982
-
大規模自然災害時等の消防防災活動に関する研究
43,268
-
特殊災害に対する安全確保に関する研究
45,274
-
化学物質の火災爆発防止と消火に関する研究
39,767
-
危険物施設の安全性向上に関する研究
39,874
-
564,865
-
ナノテク消防防護服の要素開発及び評価手法の開発に関する研
究
合
計
(3)定員
平成 18 年度末の予算定員は 26 名である。
- 155 -
消研輯報 60
H19.3.31 現在)
(4)職員(主任研究官以上の者
所長
室
﨑
益
輝
研究統括官
松
原
美
之
部長
関
沢
愛
火災原因調査室長
吉
原
浩
調整官
田
村
裕
之
〃
笠
原
孝
一
佐
宗
祐
子
山
田
大規模火災研究室長
箭
内
危険性物質研究室長
古
積
施設等災害研究室長
渡
部
勇
市
地震等災害研究室長
座
間
信
作
特殊災害研究室長
鶴
田
主幹研究官
天
野
主任研究官
西
〃
岩
田
〃
畑
山
〃
新井場
〃
鈴
木
火災災害調査部
火災災害調査官
技術研究部
部
長
實
英
治
博
俊
久
徳
晴
樹
雄
策
健
公
徳
健
研究企画部
部
長
山
田
常
圭
調整官
金
田
節
夫
主幹研究官
河
関
大
祐
主任研究官
寒河江
幸
平
研究支援専門官
松
早
苗
島
- 156 -
消研輯報 60
(5)人事異動
平成 18 年 3 月 31 日付
渡
氏
名
部
勇
新
市
旧
定年退職
消 防 大 学 校 消 防 研 究 センター技 術 研 究
部上席研究官
吉
原
浩
辞職
消 防 大 学 校 消 防 研 究 センター火 災 災 害
【危険物保安技術協会技術審議役へ】
調査部主幹研究官
(6)委員会
ア.消防研究センター研究評価委員会
(目的)
消防研究センターが行う研究等を総合的観点から検討し、消防研究センターが社会的ニーズに沿った消
防防災に係る基礎的または応用的研究及び開発研究等を効率的に推進するため、消防研究センター及びそ
の研究課題等について評価を行う。
(構成員)
吉
村
秀
委
犬
伏
由利子
消費科学連合会副会長
〃
浦
野
義
早稲田大学大学院教授
〃
大
内
田鶴子
江戸川大学助教授
〃
木
挽
孝
紀
全国消防長会事務総長
〃
菅
原
進
一
東京理科大学大学院教授
〃
田
村
昌
三
(独)産業技術総合研究所 RCES
〃
内
藤
裕
史
つくば大学名誉教授
〃
西
浦
英
次
(社)日本損害保険協会専務理事
〃
関
口
昌
男
(社)全国消防機器協会会長
員
實
NPO 法人環境防災総合政策研究機構(CeMI)副理事長
委員長
頼
イ.消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文に関する表彰選考委員会
(目的)
消防科学・技術の高度化と消防防災活動の活性化に資するため、消防防災機器の改良・開発及び消防
防災科学に関する論文について、応募作品から消防庁長官表彰作品を選考する。
(構成員)
委
員
秋
本
敏
文
日本消防協会理事長
委
員
上
原
陽
一
横浜国立大学名誉教授
〃
寺
村
映
消防庁審議官
〃
亀
井
浅
道
横浜国立大学教授
〃
小
林
茂
昭
日本消防設備安全センター常務理事
〃
関
口
和
重
全国消防長会会長
- 157 -
消研輯報 60
〃
橋
本
〃
本
間
〃
室
﨑
巨
東海大学教授
恭
二
電気通信大学教授
益
輝
消防研究センター所長
ウ.火災原因調査高度支援専門員制度
(目的)
消防研究センターが行う火災原因調査等のより一層の充実を図るため、火災原因調査に資する極めて高
度な専門的知見を有する者で、火災原因調査における専門的事項の審議等を行う。
(構成員)
浅
野
和
俊
山形大学名誉教授
大
島
義
人
東京大学新領域創世科学研究科教授
大
塚
尚
武
龍谷大学理工学部機械システム工学科教授
亀
井
浅
道
横浜国立大学安心・安全の科学研究教育センター教授
須
川
修
身
諏訪東京理科大学システム工学部教授
長谷川
和
俊
千葉科学大学危機管理学部危機管理システム学科教授
長谷見
雄
二
早稲田大学理工学術院教授
柳
大
樹
危険物保安技術協会タンク審査部タンク審査課長
澤
- 158 -
消研輯報 60
2
施設設備
(1)土地、建物の現況
平成 19 年 3 月 31 日現在の土地及び建物の現況は、下記の通りである。
ア.土
地
異動年月日
面積(㎡)
昭 23(当初)
77,530
異
動
事
国有財産一時使用:当時北多摩郡三鷹町新川 700
25.11. 3
三鷹市制施行により三鷹市新川 700 となる。
32. 7.11
関東財務局より所管換え
34. 1.31
△ 867
公務員宿舎へ用途変更
34. 6.17
△ 19,647
消防大学校へ整理替え
35. 1.16
△ 402
公務員宿舎へ用途変更
35. 8.31
△ 947
〃
38.12.14
1,607
△ 8,780
39. 2. 6
由
公務員宿舎より用途変更
日本消防検定協会へ出資のため大蔵省へ引継ぎ
住居表示変更により三鷹市中原三丁目 14 番 1 号となる。
40. 4. 1
40. 7. 9
△ 1,005
公務員宿舎へ用途変更
41. 8.18
△ 1,156
〃
48.11. 2
△ 453
消防大学校へ整理替え
61.10.29
△ 167
三鷹市道路拡張工事のため大蔵省へ引継ぎ
63. 1.14
△ 100
調布市道路拡張工事のため大蔵省へ引継ぎ
平 9. 2.21
△ 3,715
三鷹市・調布市道路拡張工事及び公務員宿舎への用途変更のため大
蔵省へ引継ぎ
12. 4.21
184
12. 5. 1
三鷹市側土地登記(15,225 ㎡)
13. 3.16
調布市側土地登記(26,857 ㎡)
42,082
計
イ.建
物
建
物
等
名
称
本
燃
焼
実
車
非
自
土地登記のため構内測量(42,082 ㎡)
験
庫
破
転
壊
検
車
査
置
構
造
面
積(㎡)
床面積(㎡)
備
考
平成 13 年 1 月竣工
館
RC-3
1,421.86
3,968.11
棟
RC-2
301.60
507.58
〃
〃
棟
S-1
297.97
248.78
〃
〃
棟
RC-1
77.65
77.65
場
S-1
18.51
18.51
- 159 -
平成 13 年 3 月竣工
〃
〃
消研輯報 60
建
廃
物
棄
等
名
物
称
置
構
場
総 合 消 火 研 究 棟
造
面
積(㎡)
RC-1
RC-4-1
床面積(㎡)
52.50
52.50
1,251.87
2,503.00
備
考
平成 13 年 3 月竣工
平成 8 年 3 月竣工
S-1
物 質 安 全 研 究 棟
RC-2-1
663.62
1,515.34
〃
〃
建 築 防 火 研 究 棟
RC-3
718.55
1,742.22
〃
〃
情
報
管
理
棟
RC-2
488.33
772.11
〃
〃
機
械
研
究
棟
RC-3
643.35
1,143.33
〃
〃
〃
〃
S-1
守
衛
棟
RC-1
101.63
83.07
79.40
79.40
昭和 29 年 3 月竣工
575.57
575.57
昭和 56 年 3 月竣工
10.50
10.50
平成 8 年 3 月竣工
1,284.30
2,128.30
昭和 59 年 11 月竣工
危
険
物
倉
庫
CB-1
防
災
実
験
棟
S-1
ボ
ン
ベ
庫
CB-1
大 規 模 火 災 実 験 棟
SRC-2
材
棟
RC-3
759.18
2,087.61
平成 3 年 8 月竣工
フ ァ ン ル ー ム ( 1 )
RC-1
18.00
18.00
平成 8 年 3 月竣工
フ ァ ン ル ー ム ( 2 )
RC-1
42.00
42.00
〃
〃
ガ
RC-1
20.00
20.00
〃
〃
8,826.39
17,593.58
料
ス
研
バ
究
ナ
ー
合
室
計
(2)主な研究施設の概要
施
本
設
名
概
館
要
管理部門の他、研究紹介コーナー、図書室、情報機器室等を有する研究開発業
務の管理中枢機能を持っている施設
情 報 管 理 棟
約 100 名を収容できる大会議室、小会議室(2 室)を有する施設
機 械 研 究 棟
消防ポンプ、ノズル、ホース等の流体機器に関する研究および防災技術等に関す
る研究のための施設
材 料 研 究 棟
危険物施設や消防用資機材の強度を研究するための施設(試作工場を有する。)
防 災 実 験 棟
起震機により地震時の地盤、構造物の挙動を把握する研究を行うための施設
建築防火研究棟
火災の感知、初期消火、煙の流動、避難誘導など建物火災に関する研究を行う
施設
大規模火災実験棟
石油タンク等の火災実験を行うための施設(主実験場は面積 576 ㎡、高さ 20m、
排煙処理設備を備えている。)
物質安全研究棟
危険物、防炎材料などの各種化学物質の安全性についての研究および防火服の
耐熱性能に関する研究を行うための施設
総合消火研究棟
火災・消火に関する基礎、応用研究および各種規模の模型による火災や消火実験
を行う施設(主実験場は面積 625 ㎡、高さ 22m、排煙処理設備を備えている。)
- 160 -
消研輯報 60
施
設
名
燃 焼 実 験 棟
概
要
消防機器および消防装備の耐熱性能、動作特性に関する研究および小規模火災
実験を行い、可燃物の燃焼特性について調べる施設
非 破 壊 検 査 棟
X 線透過画像記録装置により化学電池や化学物質廃棄物等の異常反応に起因す
る火災発生メカニズムを非破壊検査にて解析するための施設
(3)主な研究設備・機器の整備状況
ア.平成 18 年度に整備された主な設備・機器
○マイクロフォーカスエックス線透過装置(鑑識物件等を破壊せずに内部の状況を確認し、製造物から
の出火可能性の有無及び出火原因の特定を行う)
○熱流体数値解析用計算機(火災の数値シミュレーションを高速に行うことが可能)
○ハイスピードカメラ(急激に変化する現象をカラーで高速かつ詳細に、デジタル映像で撮影、記録す
ることが可能)
○鑑識用無影灯(広光野で無影性が高くて、色調が太陽光に近く、鑑識室内においてより鮮明な記録
写真の撮影やより詳細な見分が可能)
○材料燃焼分解装置(火災雰囲気で材料を燃焼分解し、燃焼生成ガスを発生させることが可能)
○速度型強震計
イ.その他の主な設備・機器
○カイトプレーン(災害時に上空から被害の状況等を把握することが可能)
○泡性状・泡消火性能実験用機器(液状から泡及び半固体に対してレオロジー測定ができ、超微小
歪みから大変形の測定が可能)
○浮き屋根式石油タンク解析ソフトウェア(浮き屋根揺動時の浮き屋根の変位、圧力、応力、傾斜な
どの挙動の動的変化を解析することが可能)
○回線コントローラー間接続ソフトウェア(相互接続回線コントローラーのソフトであり、被害情報及び災
害時の防災資源情報等を総合的に把握が可能)
○延焼予測システム(広域応援システムを利用して、現場の消防職員が簡易に延焼シミュレーションを行
い、事前に問題点の抽出やその解決を図ることが可能)
○仮想現実災害体験シミュレーターシステム(火災等の災害が発生した建物内の状況を仮想現実空間
で再現し、擬似的な体験が可能)
(4)図書
ア.蔵書数
単行本
製本雑誌等
10,598 冊
9,651 冊
イ.平成 18 年度に購入した単行本冊数
166 冊
- 161 -
消研輯報 60
ウ.定期購入刊行物
和
誌
51 誌
洋
誌
46 誌
エ.定期購読の外国雑誌
1
Brandschutz
ドイツ
2
Bulletin of the Seismological So-
アメリカ
28
Journal of Fire Protection Engi-
アメリカ
neering
ciety of America
29
Journal of Hazardous Materials
オランダ
30
Journal of Geotechnical and
アメリカ
3
Combustion and Flame
アメリカ
4
Corrosion
アメリカ
5
Disasters
イギリス
6
Engineering Fracture Mechanics
イギリス
7
Emergency Medical Service
アメリカ
8
Fire
イギリス
9
Fire and Materials
イギリス
33
Journal of Research of NIST
アメリカ
10
Fire Engineering
アメリカ
34
Journal of Loss Prevention in the
イギリス
11
Fire Prevention Fire Engineers
アメリカ
Geoenvironmental Engineering
31
Journal of Physical Chemistry
アメリカ
イギリス
32
Journal of Physics D, Applied
イギリス
Physics
Process Industries
Journal
35
Loss Prevention Bulletin
イギリス
36
Measurement Science and Tech-
イギリス
12
Fire Safety Journal
イギリス
13
Fire Safety Engineering
イギリス
14
Fire Technology
アメリカ
37
NFPA Journal
アメリカ
15
Fire and Rescue
イギリス
38
Proceeding of The IEEE
アメリカ
16
Géotechnique
イギリス
39
Proceedings. Mathematical, Physi-
イギリス
17
Hydrocarbon Processing
アメリカ
18
I&EC Research
アメリカ
19
International Journal of Fracture
オランダ
20
Journal of Applied Fire Science
アメリカ
41
Seismological Research Letters
アメリカ
21
Journal of Applied Meteorology
アメリカ
42
Textile Research Journal
アメリカ
43
Trans. ASME JC. Journal of Heat
アメリカ
nology
cal and Engineering Sciences
40
Journal of Applied Physics
アメリカ
23
Journal of the Atmospheric
アメリカ
イギリス
teorological Society
and Climatology
22
Quarterly Journal of the Royal Me-
Transfer
44
Trans. ASME JE. Journal of Applied
アメリカ
Mechanics
Sciences
24
Journal of Chemical Physics
アメリカ
25
Journal of Electrostatics
オランダ
26
Journal of Fluid Mechanics
イギリス
27
Journal of Fire Sciences
アメリカ
45
Trans. ASME Journal of Manufac-
アメリカ
turing Science and Engineering
46
- 162 -
VFDB Zeitchrift
ドイツ
消研輯報 60
3
年
表
(1)昭和 23 年~平成 18 年度略年表
年月日
昭和
事
23. 3. 7
項
国家消防庁の内局として消防研究所設立、初代所長に小林辰男就任、定員 87 人、
書記室、技術課、査察課の 1 室 2 課を置く。
25. 2
消防研究所報告創刊
26. 8. 1
書記室を庶務課に改める。
27. 8. 1
行政機構改革により、消防研究所は国家消防本部の附属機関となる。
27. 8.18
検定課(技術課検定係の昇格)を置き、4 課制となる。
28. 5
消研輯報創刊
28.11.11
第 1 回全国消防技術者会議開催、以後毎年秋期に開催
~12
31. 5. 1
2 代所長に鈴木茂哉就任
34. 4.20
消防組織法改正、消防研究所組織規則制定により、所掌業務の明確化、機構改正
により、業務の一部及び技官 7 人を国家消防本部に移す。
34. 5.11
技術課の各係を研究室に改め、7 研究室とする。
35. 7. 1
自治省設置、消防庁はその外局となり、消防研究所は消防庁の附属機関となる。(自
治庁設置法、消防組織法の一部改正)
36. 3.27
R.I 実験棟竣工
36. 4. 1
技術課を研究部に改め、9 研究室とする。
37.10. 1
3 代所長に中田金市就任
38. 4.20
研究部を 2 研究部(10 研究室)とし、査察課を廃止。(組織規則改正)
38.12.31
検定課を廃止し(検定業務を日本消防検定協会に移す。)2 部 1 課制となる。(組織
規則改正)定員 17 人減
40. 5.20
総合消火実験棟竣工
42. 3.20
本館庁舎竣工
42. 8
消防研究所年報創刊
43. 3. 7
消防研究所創立 20 周年、「消防研究所 20 年史」刊行
43. 4.25
排煙救命実験棟及び爆発実験棟竣工
44. 3.20
水力及び機械実験棟竣工
44. 7.22
研究部を 3 研究部(12 研究室)とし、特別研究員を設ける。(組織規則、同規程の改
正)
46. 4.16
消防研究所一般公開、以後毎年春期に公開
46.10. 1
4 代所長に熊野陽平就任
48. 4. 1
組織規則の一部改正により、各研究部の研究室について改廃、再編成を行う。
51. 5.10
組織規則の一部改正により、1 室新設し、13 研究室となる。
- 163 -
消研輯報 60
年月日
事
項
53. 3. 7
消防研究所創立 30 周年、「消防研究所 30 年史」刊行
54.10. 1
各部に主任研究官を設置。(消防庁訓令の改正)
55. 5.21
5 代所長に矢筈野義郎就任
57. 4. 6
組織規則等の一部改正により研究企画官を設置し、第三研究部の研究室の一部に
ついて再編成を行う。(特別研究員を廃止、特殊機材研究室を地震防災研究室へ改
編)
平成
58. 5. 1
6 代所長に渡辺彰夫就任
59. 7. 1
消防庁の施設等機関となる。
59.11. 7
排煙処理装置付消火実験棟竣工
61. 5.16
7 代所長に山鹿修蔵就任
63. 3. 7
消防研究所創立 40 周年、「最近 10 年のあゆみ」刊行
元.11. 6
8 代所長に長谷川壽夫就任
3. 8.20
材料実験棟竣工
4. 7. 1
9 代所長に佐々木弘明就任
7. 1. 1
10 代所長に次郎丸誠男就任
8. 3.29
情報管理棟、機械研究棟、建築防火研究棟、物質安全研究棟及び総合消火研究
棟竣工
10. 3. 7
消防研究所創立 50 周年、「消防研究所 50 年史」刊行
10. 4. 1
11 代所長に亀井浅道就任
13. 1. 6
総務省設置により、総務省消防庁の施設等機関となる
13. 1.31
本館、燃焼実験棟、車庫棟竣工
13. 3.30
非破壊検査棟竣工
13. 4. 1
独立行政法人消防研究所法施行により、独立行政法人消防研究所となる。1 課 3
部。
13. 4. 1
初代理事長に平野敏右就任
15. 2. 1
研究企画部に火災原因調査室を設置。
15. 4. 1
上席研究官を設置。(組織規程の一部改正)
15. 4. 1
1 課 3 部 1 室となる。(組織規程の一部改正)
16. 4. 1
2 代理事長に室﨑益輝就任
18. 4. 1
独立行政法人消防研究所解散(平成十八年三月三十一日法律第二十二号)
18. 4. 1
総務省消防庁消防大学校に、消防研究センターを設置
初代所長に室﨑益輝就任
- 164 -
消研輯報 60
4
平成 18 年度刊行物
消防研究センターで行った研究成果の一部は、「消防研究所報告」あるいは「消防研究技術資料」とし
て刊行し、国内・国外の学会、研究機関、都道府県、消防学校、全国の消防本部等に配布しております。
研究の詳細についてのご希望やご意見等がございましたら、消防研究センターまでご連絡下さい。
(1)消防研究所報告
3. 石油タンクのスロッシングによる内容液の溢流
ア.通巻 101 号(2006 年 9 月)
量の算定
座間信作、山田
【論文】
實、西
晴樹
廣川幹浩、平野廣和、鈴木森晶
1. メタン- 空気対向流拡散火炎の限界活性ラジ
4. 平成 17 年いわき市で発生した化学工場火災の
カル量
佐宗祐子
概要
拡散火炎に対する消火剤の抑制効果の定量的
岩田雄策
指標となる火 炎パラメーターを見 出すことを目的
に、メタン- 空気対向流拡散火炎に様々な火炎抑
【研究紹介】
制剤を添加したときの活性ラジカル量の変化を、
5. ハンガリーでの大規模タンクの火災・消火実験
数値計算により調べた。酸化剤流の速度勾配一定
廣川幹浩、古積
博、竹元昭夫、岩田雄策
の条件下、空気に不活性ガスまたはハロゲン系抑
制剤を添加すると、活性ラジカル量は消炎に至る
イ.通巻 102 号(2007 年 3 月)
までほぼ直線的に減少した。一方、金属系抑制剤
を少量添加した場合には、火炎温度の上昇ととも
に活性ラジカル量は顕著に減少したが、消炎限界
【論文】
付近では火炎温度が低下に転じる反面、活性ラジ
1. 区画火災煙層挙動に関する実験研究
カル量の減少は鈍化した。消炎限界における活性
鶴田
ラジカル量は、抑制剤の種類により大きく異なった。
俊
区画火災煙層の安定性を調べる目的で実験を
拡散火炎中の活性ラジカル量は、消化剤の抑制効
行い、煙層挙動画像と区画内垂直温度分布を計
果の定性的指標にはなり得るが、反応時間を定量
測した。得られた画像からスリット画像を再構成し
的に見積もるための普遍的パラメーターにはなら
解析した。それぞれの画像の画素情報から煙層底
ないことが明らかとなった。
部の位置を求め、区画内垂直温度分布から煙層底
部温度を推定した。着火用燃料が消費された後の
【技術報告】
煙層底部温度は、ほぼ一定であった。区画内に
2. 地下鉄火災における駅構内の上階への煙阻止
形成された流れ場によって生じる混合作用を上回
に関する実験研究
る速度で熱と煙が火源から供給されていることが
その 3
分かった。
機械排煙時の排煙量と煙層高さ
松島早苗、渡部勇市
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消研輯報 60
【技術報告】
時に利用できそうな技術について検討した。社会
2. 石狩地区におけるやや長周期帯域の設計用ス
構造や地図・統計等の基盤的情報量の違いから、
ペクトルに関する検討
フィリピンにおける経験がそのまま我が国について
座間信作
適用可能とは言えない。しかし例えば、被災地内
への進入方法、救助対象の選定・捜索方法、二
3. 生ごみ処理施設の爆発火災事故について
古積
博、岩田雄策、吉野
次災害に対する備えなど共通する問題は多く、学
薫
ぶべき点は多数あると思われる。本調査はそのよ
うな観点から実施した。なお、規模だけを見れば、
4. 圧 力 追 従 式 断 熱 型 熱 量 計 を用 いた混 合 危 険
1985 年に発生した御嶽山の崩壊の方が、サンベ
性の評価方法に関する研究
ルナルドの地すべり災害よりも大きい。
岩田雄策、林
佑燮、古積
本報告が防災に何らかの貢献ができれば幸い
博
である。
(「はじめに」より)
【研究紹介】
5. 大容量泡放水砲により放射された泡の指向性
評価
内藤浩由、佐澤
潔
6. イギリスでの大規模タンク火災の調査
古積
博、白石暢彦、内藤浩由
新井場公徳、田村裕之
(2)その他の刊行物
ア.フィリピン・レイテ島地すべり災害における救
援活動の実態と応援技術の性能調査報告書
消防研究センター
国土技術政策総合研究所
国土地理院
災害は被害を生じる前に防がねばならない。事
前に危険性を察知し避難することが最重要である
ことは間違いない。しかし災害は起こってしまうこと
がある。災害が発生したとき、私達はなんとか救
える命を救いたいと希望する。救助活動は時間と
の戦いであり迅速に有効に実施されなければなら
ない。同時に、安全になされなければならない。
本調査では、一つの地方自治体が壊滅するよう
な巨大災害において、どのような対応がとられたの
か調査し、そこから教訓を得るとともに、同種災害
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消研輯報 60
消 研 輯 報
第 60 号
平成 20 年 1 月発行
編 集 者 兼
発 行 者
総務省消防庁 消防大学校
消防研究センター
東京都調布市深大寺東町 4 丁目 35-3
電話 0422-44-8331(代表)
http://www.fri.go.jp/