シャープ技報 第74号・1999年8月 車載対応 TFT 液晶ディスプレイTV LC-10RV1 TFT-Liquid Crystal Display TV for Car Use LC-10RV1 森 誠 治 *1 Seiji Mori 岡 崎 正 喜 *2 Masaki Okazaki 阿久津 昌 彦 *1 Masahiko Akutsu まえがき 1999年度の液晶テレビの市場規模は、約120万台と みられ着実な需要の伸びを示している。当社では, 1995年にホームユースとして高画質,薄型,低消費電 力などを実現した大型液晶ディスプレイTV「ウイン ドウ」初代機を発売。以来,シリーズは好評を得てい る。 一方,自動車の新車需要は,余暇時間の増加に伴う レジャー志向を背景にRV車が新車販売台数の約半数 のウエイトを占め, 車載機器としてフロント席のカー ナビゲーションに加え,リア席用のカーテレビへの ニーズが高まりつつある。 本機は,大型液晶 TV で初めて高耐熱液晶パネルを 開発。 液晶ならではの薄型デザインと豊富なセッティ ングオプション機器により,ホームユースだけでな く,RV 車やワンボックス車のリア席用として活用で きる車載対応液晶テレビとして開発した。 以下にその 概要を紹介する。 写真1 LC-10RV1 表1 製品仕様 L C D 部 1 . 製品概要 表1に本製品の主な仕様を, 写真1に製品外観を示 す。 液晶表示部に高耐熱仕様 10.4 型 VGA パネルを搭載 し,保存温度 -20℃∼ +80℃に対応,車載耐熱性を向 上した。高輝度,長寿命の薄型バックライトユニット の開発,内部部品の小型化,及び高密度実装により奥 行49.5mmと車載使用時も車内の雰囲気にマッチする 薄型ラウンドフォルムデザインを実現した。 品 名 形 名 画面サイズ 表示方式 駆動方式 画素数 使用光源 受信チャンネル 音声出力 スピーカ 接続端子 使 消 外 本 用電源 費電力 形寸法 体質量 液晶ディスプレイTV LC-10RV1 10.4型(縦158.4mm×横211.2mm) 透過型TN液晶パネル TFT(薄膜トランジスタ)アクティブマトリクス駆動方式 921,600ドット (縦480×横640×3) 内部光(L字型蛍光管内蔵) VHF1∼12チャンネル,UHF13∼62チャンネル 1W+1W 3×4cm 2個 DC入力端子,アンテナ入力端子,ビデオ1映像入力端子, ビデオ1S映像入力端子,ビデオ1音声入力端子, ビデオ2映像入力端子,ビデオ2音声入力端子, 映像出力端子,音声出力端子,ヘッドホン出力端子, パーキング信号検出端子 AC100V・50/60Hz(ACアダプタ使用時),DC12V 28W(ACアダプタ使用時),23W(DC12V入力時) 幅267mm×奥行49.5mm×高さ232mm(セットスタンド含まず) 約1.8kg 2 . 特長 (1)目にやさしい高画質映像 画素数 921,600 ドット(縦 480 ×横 640 ×3)の高 精細TFT液晶パネルを採用。視聴範囲を広げる「広視 *1 AV システム事業本部 液晶システム事業部 第2技術部 *2 AV システム事業本部 液晶システム事業部 第3技術部 野角化(左右 120°上下 100°) 」および映り込みの少 ない「ノングレア処理」により,目にやさしく見やす さを向上した。さらに,色ノイズを低減する「ディジ タルコムフィルタ」や映像帯域を4 MHz から 10MHz に広げた「広帯域ビデオクロマ IC」 ,階調再現性を高 める「パネル適応型ガンマ補正回路」などの高画質化 ― 72 ― 車載対応 TFT 液晶ディスプレイ TV LC-10RV1 技術を採用し,より美しく鮮明な映像を実現した。 (2)用途を広げるシステム発展性 ビデオ入力2系統(内1系統はS映像端子装備), ビデオ出力1系統の豊富な外部端子群を装備しビデオ デッキや DVD プレーヤなど各種映像機器,外部ス ピーカなどとのシステムアップを可能とした。 また赤 外線の AV ワイヤレス伝送システム(別売)により, 壁掛けやテーブルトップでの使用時に面倒な配線なし でビデオ映像・ステレオ音声を楽しめる。 (3)省エネ・長寿命化 年間消費電力量 38kWh/ 年と,10 型ブラウン管テレ ビに比べ約 51%削減した。また,AC アダプタ内に間 欠発振・省エネ回路を搭載し,リモコン待機時の消費 電力を 0.3W 以下とした。バックライトは, 「調光(省 エネ) 」ボタンにより3段階の調光を可能にし,さら に高効率・長寿命化を図り,寿命は25,000時間を実現。 1日8時間視聴しても約8年間バックライト交換なし で使用できるようにした。 (4)車載対応 写真2に車載実施例を示す。 リア席用としてヘッドレスト取付スタンドをオプ ションで開発した。また,カー電源アダプタ,ダイ バーシティユニット等の豊富なカーライフオプション が,使用できる。 その場で受信可能な放送局を自動的にキャッチし, 同時に最大 16 局のプリセットを完了できる「オート プリセット」ダイレクトボタンを装備し,見たい放送 局を移動場所で簡単に選べるようにした。また,変化 する車内の明るさに応じて画面輝度を瞬時に切替えら れるように「調光」ダイレクトボタンを本体とリモコ ンに装備した。走行中の安全確保の為,テレビ画面が 見られないように対応するパーキング信号連動安全機 能スイッチを搭載した。 写真2 車載実施例 3 . ハードウエア,ソフトウエアの共通化,共用化 機種展開をあらかじめ考慮し, 開発初期段階より詳 細な仕様をすべて盛り込みハードウエア,ソフトウエ アの共通化,共用化設計を実践した。10 型から 20 型 までの液晶テレビに対応し,機種ごとに回路,基板を 新規設計せず,開発効率の向上及び開発日程の短縮を 図ると同時に,生産効率の向上を図った。 むすび 本稿では, 高耐熱大型液晶パネルを搭載した車載対 応ディスプレイ TV を簡単に紹介した。今後,ますま す大型化,高画質化が進むものと考えられる液晶ディ スプレイ分野において, ユーザ目線に立ち更なる独自 特長のある技術開発を推進していく所存である。 謝辞 本商品を開発するにあたり液晶パネル,AC アダプ タの開発にご尽力頂きましたTFT液晶事業本部,並び に電子部品事業本部の関係各位に深く感謝致します。 (1 99 9年6月1 5日受理) 〈お問い合わせ先〉 AV システム事業本部 液晶システム事業部 第2商品企画部 〒3 2 9-2 193 栃木県矢板市早川町174番地 電話 (02 8 7)4 3−1 13 1(大代表) ― 73 ―
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