第 68 回：ついに開園した上海ディズニーリゾート常陽銀行上海駐在員事務所上海ディズニーリゾート（中国名：上海迪士尼度假区、以下、『上海ディズニー』）が2016年６月16日（木）に開園しました。アジア最大の規模を誇り、世界やアジアで初の施設を有することで期待が高まる一方、その安全性・運営手法のほか、来場者のマナーについて不安視する声を受けながらのスタートとなりました。今回は、注目の上海ディズニーについてご紹介します。チケットとパンフレット上海ディズニーの入口世界のディズニーランドの概要名称開園場所敷地面積（ha）ディズニーランド・リゾート 1955年米カリフォルニアウォルトディズニーワールド 1971年米フロリダ東京ディズニーリゾート 1983年日本千葉ディズニーランド・パリ 1992年フランスパリ香港ディズニーランド・リゾート 2005年上海ディズニーリゾート 2016年パーク数チケット料金 12,200 6 10,500円 73 2 10,000円 201 2 7,400円 1,973 2 8,500円中国香港 180 1 7,500円中国上海 400 1 ＊ US ドル 105 円、ユーロ 117 円、香港ドル 14 円、人民元 16 円で計算 8,000円（各種報道より）上海ディズニー開園までの経緯上海市では、上海ディズニー計画の承認と同時に、「上海国際観光リゾート区」構想を発表し、上海ディ ’ 16.8 64 ズニーをその中心区として開発計画を進めました。その中で上海ディズニーは合弁での開発・管理となり、 2010年８月に中国パートナーとなる国上海ディズニー開園までの歩み有企業（上海申迪（集団）有限公司、以下、「申迪」）を設立しました。 2009年その後、2011年に基礎工事が着工し 1月協力枠組み協議を取り交わし 11月政府当局が上海ディズニーランドの事業申請を承認 12月認可された総投資額は245億元と発表たものの、開園時期は当初の2014年か 2010年 8月中国側の開発会社「申迪集団」設立ら2016年春まで度々延期されました。 2011年 4月基礎工事着工 2012年 4月本体工事着工米ディズニー社が本物志向に基づき、 3月チケット販売開始、購入申込が殺到、社会現象に建設資材や設備などの輸入割合を高め 2016年 5月プレオープン、マナーの悪さ、食事高額等指摘たほか、新たな要素も組み込めるよう 6月正式オープン（各種報道より当事務所作成）頻繁に設計の修正を加えたことが原因のようです。上海ディズニーの概要・特長（１）上海国際観光リゾート区と上海ディズニーリゾート「上海国際観光リゾート区」は、浦東上海国際観光リゾート及び上海ディズニーの全体図空港の東側に位置し、総敷地面積24.7 ㎢。上述の通り、上海ディズニーは、その中心区（７㎢）の第１期部分（3.9㎢）として開発したものです。中心区では、第２期及び第３期（計3.1 ㎢）が未開発であり、上海ディズニーが拡張される可能性もあります。なお、上海国際観光リゾート区には、中心区の他に17.7㎢の土地があり、アウトレットモールやホテルなど、上海ディズニーをメインとした一大リゾート地区としての開発が計画されていま（申迪社 HP より）す。（２）世界のディズニーパーク最大規模の「お城」上海ディズニーは、６つのテーマランドを有する「パーク」、ミュージカル「ライオンキング」が上演されている「ウォルト・ディズニー・グランド・シアター」、店舗面積約3,000㎡の大型ストアでアジア初上陸の「ワールド・オブ・ディズニー」、２つの直営ホテルから構成されています。「パーク」を象徴するお城は“魔法がかかった童話のお城”と名付けられ、世界各地のディズニーパークのお城のうち、最大規模です。他国のお城には“シンデレラ”や“眠れる森の美女”など、特定のディズニープリンセスの名前が冠されていますが、上海ディズニーでは全てのプリンセスが集まっているお城とのコンセプトになっているようです。 ’ 16.8 65 巨大な「魔法がかかった童話のお城」海賊のテーマランド「トレジャー・コーヴ」（３）中国テイスト上海ディズニーには、多くの中国的要素が取り入れられています。例えば、ある中国風建物について、中国古来の質感や色彩を忠実に再現するため、調達担当者が何度も浙江省などに赴き陶土を吟味し、伝統技法を用いて屋根瓦を製造したことや、高山をテーマとしたレストランの建設のため、数百キロ離れた安徽省から石材を輸送したことが報上海ディズニーの特徴の一つ、中国風の建物道されました。中国的要素を取り入れた建物の例魔法がかかった童話のお城ディズニー・ヴィレッジガーデンズ・オブ・イマジネーション祥雲、牡丹、蓮花など、中国色豊かなデザインや造形上海伝統の石庫門などの建築物を配置「十二朋友園」には、人気キャラクターの巨大で色鮮やかなモザイクタイル壁画12枚で中国伝統の「十二支」を再現ソアリン・オーバー・ホライズン上海仕様にカスタムメイド、全く新しいストーリーを展開し、壮大で美しい中国の歴史と急成長が再現される。ライオンキング中国版リメイク（各種報道より）（４）合弁方式による開発・運営上海ディズニーは、下表の通り、中国国有企業（「申迪」）と米ディズニー社との合弁会社３社により開発・運営されています。運営会社などの出資比率各国のディズニーリゾートのうち、東京のみフランチャイズ経営で、パリ、香港は上海同様に合弁経営です。東京社名出資比率（％）ディズニー申迪上海国際テーマパーク有限公司開発会社 43 57 上海テーマパーク関連設備有限公司開発会社 43 57 上海国際テーマパーク・リゾート管理有限公司管理会社 70 30 がフランチャイズ経営になっ（申迪社 HP から当事務所作成） ’ 16.8 66 形態た理由は、米ディズニー社がアメリカ本土以外の経営に懐疑的で、本体に影響の少ない方式を採用したためと言われています。もっとも、東京は独自の運営で日本人の心を掴み、リピート率は97％と大成功しました。一方、合弁経営のパリ、香港は赤字が続いている模様で、合弁での運営の難しさも指摘されています。実際に訪れた印象実際に上海ディズニーを訪れてみて、園内は思ったよりも混んでおらず、清潔でした。スタッフが笑顔で出迎えるなどホスピタリティーもしっかりしており、来場者のマナーも悪くなかったことから「また行ってみたい」という印象を持ちました。ホスピタリティーに関しては、上海市など周辺の14の大学の学生約200人が、２カ月間米ディズニー・ワールドへ派遣され、現地でグッズ販売やパーク運営などを研修していたようです。また、清潔感を維持するため、多くの清掃員がパーク内を巡回しています。なお、iPhoneやAndroidに対応した上海ディズニーランドの公式アプリがあり、スマートフォンなどを使って、開園時間やショップ営業時間、アトラクションの待ち時間、トイレやATMの場所等が確認することが出来ます。おわりに上海ディズニーの年間来場者数は１千万人超、チケット売上は20億元（約320億円）超が見込まれています。ディズニーのこれまでの経済波及効果調査に基づくと、チケット１元あたり８元の消費を生み出すとされており、年間のサービス総生産額は160億元（約2,560億円）に達する計算になります。上海ディズニーの開園時期は、２桁台の成長を続けていた中国の高成長期が終わったタイミングと重なりました。しかし、ディズニー社では「中国の経済減速が、急増する中国の中産階級の勢いを食い止めることはできない。中国の消費者が徐々に中国経済をけん引する大きなパワーとなりつつあり、これらの消費者層が、ミッキーマウスの新居を訪れ、お土産を買い、食事をして、宿泊したいと考えている」とコメントし、成功に自信を示しています。一方、中国では、中国不動産大手万達グループやユニバーサル・スタジオ等、昨年１年間で 21のテーマパークが開園、さらに20園が建設中と、全国的に「テーマパーク経済」ブームが到来しており、競争は激化しています。テーマパークの成功には、リピーター率を上げることが必須条件です。東京ディズニーリゾートの成功のように、上海ディズニーがどこまで独自色を出し、リピート率を上げられるか、今後の動向が注目されます。上海ディズニーの出口∼「また来ます、再見！」 ’ 16.8 67