1.パレート最適性(Pareto Optimality) ●パレート改善 [定義1] 資源配分 B が資源配分 A より「パレートの意味 で改善」するとは... A から B に移動したときに, (1) 誰一人の効用を下げずに (2) 少なくとも一人の効用が上がる ●パレート最適(パレート効率)的な資源配分 パレート改善するような他の資源配分が存在しない配分 2. 厚生経済学の第1基本定理 ●厚生経済学の第1基本定理 市場均衡での資源配分はパレート最適。 3. 厚生経済学の第2基本定理 ●厚生経済学の第2基本定理 パレート最適な資源配分は,適切な所得再分配によって, 市場均衡で実現可能である。 4.エッジワースの箱を使った分析 パレート最適な資源配分と相対価格 エッジワースの箱 A,B二人の所有量をA,Bそれぞれの原点を 図のように配置することによって記述可能な箱 油の量 Bの所有する米の量 Bの原点 米の量 Aの原点 Aの所有する米の量 油の量 Bの所有する米の量 Bの原点 Bの無差別曲線 × Aの無差別曲線 米の量 Aの原点 Aの所有する米の量 AとBの所有量で決まる●点と×点との違いは 何か?どちらがAとBにとって望ましいか? 油の量 Bの所有する米の量 Bの原点 Aの無差別曲線 Bの無差別曲線 米の量 Aの原点 Aの所有する米の量 パレート効率的な資源配分とはAとBの無差別 曲線がどのような状況になる必要があるのか? ● 効用関数によるシステム解析 AとBの無差別曲線が与えられるとすると、現在AとBが所有している米と油をお互いに交換し て二人とも満足度を高めることができることが分かった。さてどのようにすると最も望ましい交 換となるのか?さらにその時二人にとって米と油の相対的な価値はどのようになるのか? 効用関数U A R A0 O A0 を考える。ただしU A R A0 O A0 はAの効用関数で、R A0 はAが 始めに所有している米の所有量、O A0 は油の所有量を表しているものとする。よってBの効用関 数は同様にU B R B0 O B0 と表現できる。いまAとBの二人だけで直接物々交換して、それぞ れの満足度を高めることを考えるので、 R=R A0 +R B0 =R A +R B :一定値 O=O A0 +O B0 =O A +O B :一定値 は常に成り立たなければならない。ただしR A とR B は交換後のAとBの米の所有量であり、 O A とO B は交換後の油の所有量である。 効用関数を具体的な形で U A R A O A =R A O A および U B R B O B =R B O B と与える。また需要関数が決まるように、米と油の相対価格をpと仮定する。つまり油の価格を 単に量(リットル)当たり1とすると米はpになるものとする。すると初めにAとBが所有して いた米と油の貨幣価値I A0 とI B0 はそれぞれ I A0 =pR A0 +O A0 とI B0 =pR B0 +O B0 で与えられる。 以上の条件のもとでAが効用を最大にする配分はラグランジュの未定乗数法を利用するとラグラ ジアンLを下式として L=R A O A + (pR A +O A ーI A0 ) に対して L RA =0、 L OA =0、 L =0 (1) が成立することである。よって L RA =O A +p =0、 この連立方程式を解くと、 RA = = L OA =ー I A0 2p I A0 、OA = 2p となる。ここで米と油の超過需要 L =R A + =0、 =pR A +O A ーI A0 =0 となる。また効用を最大にするR A とO A は p = I A0 (2) 2 R と O いう概念を導入する。つまり米と油の初期の所有量と 現時点での所有量から R= R A ーR A0 +(R B ーR B0 ) O= を考える。二人だけの物々交換の場では当然であるが O A ーO A0 +(O B ーO B0 ) (3) R と O はゼロでなければならない。よっ て式(2)の結果を式(3)に代入してゼロとおくと、相対価格pが p= O A0 +O B0 R A0 +R B0 (4) と決定する。 よって、下図の○点のようにAとBにとって最も満足できる物々交換の配分とその時の相 対価格が一意的に決定することになる。 油の量 Bの所有する米の量 Bの原点 Aの無差別曲線 Bの無差別曲線 米の量 Aの原点 Aの所有する米の量 5.パレート効率的な配分における価格の安定性 前節では物々交換によりパレート効率的な交換が成立すること、その時には相対価格pが決まる ことを明らかにした。次に、考えている前提を変えて、商品の価格の変動が需要にどのような影 響を与えるのかについて考えてみる。つまり、米と油は生産者が売っているものとして、この売 り手が、パレート効率的な配分によって決まる相対価格pよりも高い価格で販売したとすると、 需要にどのような影響が出るのかを考えるのである。 まず相対価格がpからp+δpに変化したと仮定する。Aには予算制約があり (p+δp)R A +O A ーI A0 =0 このときの効用最大の配分は L=R A O A + ((p+ p)R A +O A ーI A0 ) に対して L RA =0、 RA = L OA I A0 2(p+ p) =0、 L =0 が成立する必要がある。よって (5) I A0 は予算制約の金額であり一定の値であるが、価格がpからp+δpに変化すると、δpが正 となる。つまり価格が上昇したとするとR A は(2)式の値より減少する。Bに関しても全く同 様であり、その結果式(3)で与えられる超過需要 R が減少する。つまり、米の相対価格を高く すると、米の販売量が減少する。この結果売り手はコメの価格を下げることになる。逆にδpを マイナス、つまり価格を下げると需要が増大し、価格を上げても売れることになる。つまり、パ レート効率的な配分で決まる相対価格は、価格の変化に対して安定していることが明らかとなる。
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