労働契約法平成24年改正 - ベーカー&マッケンジー法律事務所

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労働契約法平成 24 年改正(有期労働者の保護)
August 2012
労働契約法の改正が平成 24 年 8 月 10 日(一部 1 年以内、現在来年度(平成
25 年 4 月 1 日)施行の見込み)に公布・施行されました。本改正は、不安定
な地位にある有期労働者(契約社員)の雇用の安定を目的とするもので、具
体的には、次のとおりです。
①雇止め法理(有期労働契約の更新拒絶への解雇権濫用法理の類推適用)の
法制化
②契約社員の正社員への転換権の付与(来年度施行)
③契約社員の不合理な労働条件設定の禁止(来年度施行)
雇止め法理(労契法
新 18 条、完全施行後 19 条)
雇止め法理とは、一定の状況下においては雇止め(有期労働契約の期間満了
時の使用者による更新拒絶)には正当な理由が必要であるとする法理です。
より具体的には、契約社員の契約期間満了に際して、使用者は、一定の状況
の下においては、正当な理由がない限り、期間満了を理由として労働契約の
更新を拒絶することができないとされるものです。これは、解雇には正当な
理由が必要であるとする解雇権濫用の法理を雇止めに類推適用するものです
が、既に、判例により確立されている法理です。今回の労働契約法の改正で
は、この雇止め法理が法文化されました。改正労働契約法における雇止め法
理は次のとおりです。
有期労働契約が反復更新されている場合で、雇止めが社会通念上解雇と同視
されうるとき、又は、契約期間満了時に労働者が更新されるものと期待する
ことについての合理的な理由があるとき、期間満了までに労働者による更新
の申し込みがあった場合又は期間満了後遅滞なく労働者による有期労働契約
の締結の申込みがあった場合で、かつ、使用者が更新又は有期労働契約締結
の申込みを拒絶することに客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当で
あると認められない場合には、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働
条件で当該申し込みを承諾したものとみなされ、当該労働条件での有期労働
契約が成立することになります。但し、更新ないし有期労働契約締結の申込
みを拒絶する「正当な理由」がある場合は、当該申し込みを承諾したものと
はみなされません。
当該改正は、既に施行されていますが、前記のとおり、既存の判例法理を法
制化したものと理解されていますので、実務への影響はそれ程多くはないも
のと考えられます。むしろ、今般の改正を、当該判例法理についてあらため
て理解を深めるよい機会ととらえるべきでしょう。
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有期労働契約の無期労働契約への転換(新 18 条)
改正法では、長期間継続的に勤務をした契約社員に正社員への転換を求める
権利が与えられています。具体的には、1回以上の更新ないし契約締結を経
て有期労働契約を継続した期間(通算契約期間)が 5 年を超えた契約社員が、
期間満了までに、期間満了後の無期労働契約の締結の申込みをした場合、使
用者は当該申し込みを承諾したものとみなされ、従前の有期労働契約と同一
の条件(契約期間及び特段の定めがある部分を除く)の無期労働契約が成立
することになります。なお、原則として 6 ヶ月以上の空白期間(クーリング
期間)がある場合には、通算契約期間は、空白期間後にあらためて起算され
ることになります。
当該改正は、来年度に施行され、施行後に開始した有期労働契約の期間から
通算契約期間に算入されますので、正社員転換権の行使を受けるまでには 5
年以上の猶予がありますが、雇止め法理により雇止めが制限されていること
からすると、今後の契約社員の採用や現在の契約社員の処遇について検討を
始める必要があります。
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不合理な労働条件の禁止(新 20 条)
改正法では、契約社員の労働条件は、正社員の労働条件と比較して、不合理
に不利益なものであってはならないものと定められています。不合理か否か
の判断は、①労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度、②当該職務
の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して判断されることに
なります。この不合理な労働条件の禁止が、実務にどのような影響を与える
ことになるかは不透明ですが、契約社員が、正社員と同様の労働条件を求め
て労働条件の変更を申立て、あるいは、正社員の賃金との差額を賃金又は損
害賠償として請求することが予想されます。
当該改正は、来年度に施行されますが、施行前に、正社員と契約社員の労働
条件や採用の経緯などを確認し、必要な措置を講じておくことが望ましいで
しょう。
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同じく、「オフィス」とは、かかるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。
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新 18 条、完全施行後 19 条)⎜August 2012