「土地利用」(PDF:937KB)

10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
目
Ⅰ
次
研究の背景と目的 ........................................................ 48
1.研究テーマの背景と目的 ................................................. 48
Ⅱ
研究の基本的考え方 ...................................................... 50
1.景観をめぐる社会情勢、法制度等の現状や事例............................. 50
2.三浦市としての景観への取り組みについて ................................. 52
Ⅲ
三浦市の景観について .................................................... 54
1.三浦市の景観の特色 ..................................................... 54
2.三浦市における景観形成に関する状況や課題 ............................... 61
3.望まれる 10 年後の三浦市の景観像 ........................................ 63
Ⅳ
4つの提言 .............................................................. 68
1.屋外広告物の規制・誘導
2.支援、応援の取り組み
∼「できることから」∼......................... 68
∼「やるきのある所から」∼....................... 69
3.モデル地域における取り組み
∼「わかり易い方法で」∼................... 70
4.三浦市景観審議会(審査会)の設置
所感
みうら政策研究所所長
日端
∼「外からの視点、発想も入れて」∼ .. 71
康雄 ...................................... 73
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
47
10 年 後 の 三 浦 市 に と っ て の
土地利用とは
ⅠⅠ
研究の背景と目的
1.研究テーマの背景と目的
みうら政策研究所の平成 18 年度の全体の基本テーマは、『三浦市というまちにとっての
経営基盤の再構築』であり、次の3つの視点で、本研究のテーマである、「10 年後の三浦
市にとっての土地利用とは」について研究する。
視点1:
今後 10 年間の社会・経済環境・生活価値観等の変化見通しを念頭においた
研究とすること。
視点2:
三浦市の成長メカニズムの特性を念頭においた研究とすること。
視点3:
外部の眼からみた三浦市の魅力や優位性に着目した研究とすること。
「10 年後の三浦市にとっての土地利用とは」という研究テーマを提示され、まず職員研
究員である4名でそのテーマに関する3つの課題を考えた。
1つ目は、「既存市街化区域内の可住地の未利用について」である。
人口増加策、自治体経営、開発促進などの観点から市街化区域拡大の検討が求められて
いるが、本市では既存市街化区域内の可住地の未利用地が多い状況(約 151ha/約 781ha)
にあり、加えて、中心市街地の空洞化(空き店舗)により、さらに未利用は進んでいるた
め、その理由と対策の検証が必要である。
2つ目は、「土地利用における農地の位置付けについて」である。
三浦市における農地の占める割合は他の自治体と比較しても多い状況(農地 約
1,405.8ha、農地の占める割合 44.9%、県内平均 11.4%)にある。しかも、三浦市の農地
は、耕作放棄地などの未利用地(約 14ha)は少なく、農地としての生産性は高い。しかし、
優良農地は平地で日照条件が良く、住宅適地でもある。三浦市内の農地を一律に考えるの
ではなく、様々な観点からの再検討が必要である。ただし、農地を単なる生産性や市税収
入の観点からだけではなく、環境、防災、食料自給等の役割も考え合わせた上で、位置付
けを明確にし、農地とその他の土地利用上の整序が必要である。
3つ目は、「自然環境の活用」である。
平成 11 年度に実施した「三浦市市民アンケート調査」によると、三浦市の魅力は
自
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
48
然環境
にくくることが出来るとまとめている。今後は、インフラ整備や都市的利便施設
(大規模な商業施設やエンターテイメント施設等)の充実を優先とした土地利用を検討し
ていくのではなく、市の魅力である豊かな自然環境を活かした土地利用を図ることが求め
られる。本市の自然環境は、首都圏近郊緑地保全区域や風致地区など既存の法制度により、
ある程度保全が図られているが、今後の土地利用を考える上では、
「保全」という観点に加
え、「活用」という観点からの検討をさらに進めていく必要がある。
しかし、3名の政策研究専門委員も含めた全体会議を踏まえて、本年度の個別研究テー
マとしては、先に掲げた3つの視点を充足するように配慮し、至近の課題を取り上げるの
ではなく、「10 年後の三浦の土地利用ベースのあり方(都市・地域像)をどのようなまち
づくりの展開で可能にしていけるか。今後、まちづくりの進め方はどのように変わってい
くか、あるいは、いくべきか。」という大きな視点に立ち、三浦の特徴(ポテンシャル)を
高め、磨き上げることで市民生活の真の豊かさを獲得することを目指して、職員研究員が
考えた3つ目の課題「自然環境の課題」をより発展的、長期的スタンスで捉えて、潜在資
源である『景観』に焦点を当てて、三浦らしさを生かした土地利用の方針に関して研究す
ることとした。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
49
ⅡⅡ
研究の基本的考え方
1.景観をめぐる社会情勢、法制度等の現状や事例
「景観」とは、風景などと同じ意味合いで使われることもあるが、風景が主に自然の景
色を指すのに対して、人工的な、あるいは人間の手が加わった景色を指すことが多いとさ
れている。また、風景や景色が、単に眺めそのものを表しているのに対して、
「景観」は見
る人の価値観を通じて捉えられているとも言われている。このように、さまざまな定義が
あるが、基本的には何らかの形で人との関わりをもっているものと言える。
景観法が施行(2005.6.1
平成 17 年6月1日)されるまでは、経済性が優先され、地
域の特色ある街並みはあまり考慮されず、国民(企業、個人)が勝手に手を加えた、ある
いは放置したために雑然とした景観が多いという状況であった。500 弱の自治体では先行
して自主的に条例を定めていたが、法律の委任に基づかないため、確固たる規制、誘導と
は成りえず、先進諸国において、日本の「景観」は劣っているという評価を受けている現
実もあった。
そこで、景観を整備・保全するための国民共通の基本理念の確立のため、景観法が施行
されることとなった。景観法は、これまでの法律のように上から規制するのではなく、地
方自治体に委ねられた、もっと言えば地域住民に委ねられた景観形成を促進するという性
質の法律であり、法自身が規制するのではなく、自治体が独自に計画や条例を策定する際
にそのバックボーンとなるものである。
同法は、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を図るため、良好な景観の形成に
関する基本理念及び国等の責務を定めるとともに、景観計画の策定、景観計画区域、景観
地区等における良好な景観の形成のための規制、景観整備機構による支援等所要の措置を
講ずる我が国で初めての景観についての総合的な法律である。その一番の特色は、市町村
という最小単位の行政組織と住民が一緒になって進めなければ何も変わらないという法律
であることである。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
50
出所:国土交通省ホームページ
真鶴町の事例
先進的な景観まちづくりで名高い神奈川県真鶴町は、日光市とともに全国第1号の景観
行政団体である。1988 年代のリゾートブームにおけるマンション開発ラッシュに対して、
町の景観を守るため、3年の歳月をかけて策定作業を行い、
「真鶴町まちづくり条例(別名:
美の条例)」(1994.1.1
平成6年1月1日
施行)を制定した。
容積率や建蔽率だけではなく、地区ごとに高さ制限を定めたり、生垣や地元特産の石を
活用するなどの美の基準が盛込まれており、全国のまちづくり条例の参考とされた。
同条例には、「美」を個人的な主観でとらえないように、8原則(基準=場所、格付け、
尺度、調和、装飾と芸術、コミュニティ、眺めの8つ)の具体的内容がイラストや写真を
用いて、デザイン・コードで提示されていた。
しかし、平成 16 年、岩海岸に面した斜面地に地上5階地下3階、高さ 22mの高齢者マ
ンション計画が持ち上がり、建築基準法の遵守を前提に条例を無視した開発を進めようと
した業者と条例による規制を行う姿勢の町は真っ向から対立した。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
51
景観法の施行後、全国第1号の景観行政団体となった真鶴町は、町民とともに策定した
「真鶴町景観計画」を平成 18 年6月1日から施行し、今後は景観法を後ろ盾に、自然と
共生する美しいまちづくりをさらに推進するために取り組んでいる。
藤沢市の事例
藤沢市は、1989(平成元)年に藤沢市都市景観条例を制定し、神奈川県の中でも早くか
ら景観行政を推進してきた経緯がある。2005(平成 17)年に景観法が施行されたことに
伴い、2006(平成 18)年 4 月には景観行政団体となり、12 月 18 日には同法を活用した、
より実効性のある景観施策の検討を進め、当初の都市景観条例を景観法に基づく条例に改
正し、「藤沢市景観計画」を 2007(平成 19)年 1 月 12 日に告示した。
藤沢市景観計画において、特徴的なことは、特に重要な景観として、江の島の歴史的景
観と新しく創造するJR辻堂駅北口・湘南C−X地区の景観を、景観地区として定めるこ
とである。都市計画法による景観地区の指定として、2007(平成 19)年4月1日に施行
される予定であり、全国で3番目の先進的取り組みである。
また、市民との関わりでは、これまでも地域の住民による景観形成協議会の組織化、景観
法移行に向けた勉強会、景観タウンミーティング、市民意識調査、住民説明会などを通じ
て、積極的に市民参加の機会を設けてきたが、今回の景観計画において、市民による景観
づくりを推進するための支援制度の強化・拡充を図っている。
一方、住民サイドの独自な取り組みとして、鵠沼松が岡の自治会による、緑豊かな生活
環境を尊重し、その財産を次世代に継承していくための「ニコニコ住民協定(H18.8.)」
の策定や、「旧モーガン邸を守る会」による、景観資源のひとつである建築家 J.H.モーガ
ンの自邸の存在と価値を広く一般に知らせる活動など、景観に関する積極的な活動が行わ
れている。
2.三浦市としての景観への取り組みについて
県内において、真鶴町や藤沢市は 20 年近く前から景観まちづくりについて住民と共に
取り組んできたが、三浦市は自治体として、景観に関する規制や誘導に積極的には取り組
んでこなかった経緯がある。
今年度実施した「三浦市未来のまちづくりアンケート」において、本市の自然や景観を
大切と感じている住民が多いことからも環境への思い入れは深いと推測される。
そこで、三浦市も景観に関する計画をしっかり作りこみ、大切な景観を保全していくこ
とが重要である。価値を高める為の空間利用とはどのようなものがあるかを考え、特徴的
で独特な起伏や形状からなる景観を守る(コントロール)ためにも規制や誘導を早いうち
に行なう時期にきている。なお、三浦市は平成 19 年度中に県の同意を得て、景観法に基
づく「景観行政団体」となる予定である。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
52
本市が先進事例に学ぶべきものは、どのような景観計画を策定したかという結果も大切
であるが、それよりもどのようにしてより多くの住民とともに景観について、議論して計
画を作り上げてきたかという過程、歴史である。
そのためには、景観計画の策定を行政主体で短期間に決定することなく、住民との話し
合いや議論の中で熟度が高まった段階でひとつの形としてまとめるという考え方も必要で
ある。
「できることから」、「やるきのある所から」、「わかり易い方法で」、「外からの視点、発
想も入れて」という観点で、景観について、様々な立場の住民と行政が考えていく必要が
ある。
景観に関する社会情勢等
・景観に関する社会情勢は高まってきている。
・先進的自治体では早くから取り組みを始めている。
三浦市の景観の特色
景観形成に関する状況や課題
・自然系に関わる景観は概ね保たれている。
・都市系に関わる景観はそれほどひどくはない。
・市民は景観を大切と感じている。
・景観が失われていく前に、行政、市民ともの危機認識を持ち、
三浦の景観を見直す必要がある。
望まれる10年後の景観像
除くべき景観・守るべき景観・つくる、導くべき景観
4つの提言
「できることから」、「やるきのある所から」、「わかり易い方法で」、
「外からの視点、発想も入れて」の視点からの提言
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
53
ⅢⅢ
三浦市の景観について
1.三浦市の景観の特色
(1)三浦市の景観の類型
住んでいると慣れてしまい普通に感じてしまうことであるが、三浦市は、市民の殆どが
自宅から 15 分程度移動すれば海を望むことが出来るという、非常に恵まれた住環境を有し
ている。これは、三浦市が海に突出した半島の先端に位置していること、陸地部分はなだ
らかな台地が続き視界をさえぎる高い山が無いことなどがその理由である。
この景観が守られてきた理由は、その基礎となる地形的な特徴だけではなく、三浦市の
先人達が農業や漁業を営み、そのフィールドである畑や海の保全と活用の調和を保ちつつ
環境を守ってきたからにほかならない。その結果として首都圏に位置しながらも画一化さ
れた都市化を招かず、豊かな景観を現在までも維持し続けることが出来たのではないだろ
うか。先人達が残してくれた三浦市の財産である景観の特徴について触れたい。
①三浦の自然景観
・変化に富んだ海岸線
三浦市は三浦半島の南端に位置し、北側のみ
が横須賀市と接しており、他の三方は海に囲ま
れている。このため、約 42.9kmもの変化に富
んだ海岸線を有している。
三浦市の海岸線の特徴をおおまかに言うと、
市の北半分は砂浜を中心とした砂浜海岸が広が
り、南半分は入り組んだ海岸線が広がっている。
砂浜海岸では、東京湾側に三浦海岸、相模湾
側に三戸海岸や和田長浜海岸がある。三浦海岸
三浦海岸の砂浜
は、南は南下浦町菊名から北は横須賀市久里浜
の千駄ヶ崎まで続く長さ約7kmもある半島最
長の長大な砂浜海岸である。
一方、砂浜海岸が広がる北側と違い、南側の
海岸は海岸線の入り組んだ所が多く、断崖や岩
礁地帯、小規模な砂浜などがあり、多様な形態
が特徴となっている。
その中でも剱崎から毘沙門へと続く半島の南
端に位置する海岸は、傾斜した広い岩礁帯と連
毘沙門の岩礁帯と断崖地
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
54
続した断崖地(約3km)で構成され、三浦半
島でも特に優れた自然海岸のまとまりを持つ景
勝地であり、剱崎や断崖地の中にある盗人狩は
かながわ景勝 50 選に選定されている。
相模湾側には油壺周辺に深く陸に切れ込んだ
湾が複数あり、これらの波静かで穏やかな湾は
沿岸漁業の漁港や避難港として古くから利用さ
れてきた。また、ヨットハーバーとしても活用
され、青い海に白い帆が映える情景は、マリン
レジャーを楽しむ人達だけでなく観光客をも魅
油壺のヨットハーバー
了し、かながわ景勝 50 選に選定されている。
・入り組んだ谷戸と広がる台地
三浦市の陸地の特徴の一つは、北側に接している横須賀市武山から続く台地が半島の南
端までなだらかに続く丘の町であることだろう。
北部に宮田台地が広がり、その西に一段低い初声平地を挟み、市の中央部から南端に引
橋丘陵、三崎台地と続いている。三浦の台地は、ここ数千年の間にたびたびおこった地震
などにより、かつての海岸が隆起し、かつての海底が、何段にもなって海岸段丘を作って
おり、隆起海蝕台の特徴がよく表れている。この標高 30∼80mの台地に、海岸から続く幅
の狭い平地(谷戸)が深く切り込んでいることが三浦市全体を見回した際の地形の特徴だ
といえる。
台地上の平坦部には、生産性の高い畑が幾何学的模様でパッチワークのように広がって
いる。この広大な畑で、春・夏にはスイカ、メロン、キャベツが、秋・冬にも青首ダイコ
ンや早春キャベツなど、1年を通して野菜が栽培されており、まさに緑の台地となってい
る。台地の上に、絵画のように広がる牧歌的な田園風景は、三浦市を訪れた人の心を和ま
せてくれる。
横須賀市大楠山から見た三浦市
松輪の谷戸
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
55
・特徴ある残された自然環境の拠点
三浦市には特徴ある地形や地質により、生態
学的にも恵まれた地域といわれる、非常に価値
の高い自然環境が数多く残っている。
城ヶ島や毘沙門などの岩礁地から続く断崖地
には独特な海岸植生がみられ、それらが織り成
す環境も三浦半島を代表する海岸景観になって
いる。
また、江奈湾や小網代湾には谷や谷戸から注
小網代の森
ぐ小河川により干潟が形成されており、小網代湾は県内3大干潟に数えられている。
このように豊かな自然環境が数多く残る三浦市の中でも、その緑のまとまりや自然環境
の質からして特筆すべきものは、小網代の森である。この森の特徴は、海、干潟、湿地、
河川、集水域の森林が自然状態で連続的にまとまっている集水域生態系を構成しているこ
とであり、この集水域生態系は関東・東海地方で唯一といわれ、大変貴重なものとなって
いる。
・自然環境の拠点に生息する動植物
三浦市に残る自然環境の拠点は、その近辺に居住者や来遊者を楽しませてくれるだけで
はなく、野生の動植物の生息地という機能も担っている。市内最大の拠点である小網代の
森では、集水域生態系がそのまま残っていることから、良好な自然環境の成立の指標とな
るオオタカ、サシバ、ミサゴ等の猛禽類、タヌキ等の中型哺乳類が生息している。さらに
は、小網代の森の保全活動の象徴にもなっているアカテガニ等 30 種にのぼるカニ類や県
内では貴重なサラサヤンマやアカシジミも見ることが出来るうえ、隣接する油壺湾ととも
に、日本でも珍しいクサフグの産卵場にもなっている。
また、多くの鳥類を観察することが出来るのも三浦市の自然環境の特徴であろう。三浦
半島で一年を通して比較的普通に観察できる鳥類は約 100 種類位といわれており、小松ヶ
池や江奈湾の干潟をはじめとする三浦市の自然環境の拠点で観察することが出来る。その
中でも城ヶ島にはウミウ、ヒメウ、クロサギの生息崖があり、県内では初めての動物関係
の天然記念物の指定を受けている。
これらの野生動植物が生息、生育できるということ自体が、三浦市の自然環境の豊かさ
を物語るものであり、このような野生動植物自体が自然景観の一形態となっている。
・多様な三浦市の自然環境が織り成す景観
三浦市には、限りない広がりを持つ海やなだらかな丘、丘に広がる広大な農地、残され
た数多くの自然環境の拠点など貴重な自然環境が多数存在している。首都圏の中では、こ
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
56
れらの自然環境をそれぞれ個々に見ても十分魅力的である。
しかし、三浦市の自然環境の最大の特徴は、これらの自然環境が織り成す景観である。
台地の上の緑溢れる農地越しに望む青い海や、農地の緑と農地を縁取る斜面林の緑のコン
トラストなど、海、畑、森林などの多様な自然環境を有している三浦市ならではの景観と
言えよう。
②三浦からの眺望景観
三浦市はなだらかな丘の町であり、地形にしても建物にしても高く視界をさえぎるもの
が少ない。加えて三方を海に囲まれているという環境により、小高い場所からの眺望には
すばらしいものがある。
東には東京湾と房総半島を望むことができ、湾奥の東京港、横浜港へと行き来する、大
きさも船籍も様々な多数の船舶がみられる。
南には太平洋の水平線がはるかなる広がりをみせ、その中に伊豆大島がカルデラ火山の
様相を見せながら、ぽっかりと浮かんでいるように見ることができる。
西には相模湾全体が一望でき、近くには江ノ島、遠くには伊豆半島から箱根・丹沢山系
の連なりを望み、さらにはその後ろには冨士山をも望むことができる。
また冨士山は四季や時間帯によりその表情を変化させ、時期によっては山頂に夕日が沈
む瞬間の姿をとらえ、「ダイヤモンドリング」というような呼ばれかたもしている。
この様に三浦からの眺望は多岐に富んでおり、その眺望を可能とする非常に恵まれた位
置関係と環境にあるといえる。
東:東京湾と房総半島
西:富士山
南:伊豆大島
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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③三浦の産業(農業)
・気候風土を生かした丘陵の畑作中心の農業
三浦半島の最南端にあり、三方を海で囲まれ、
冬暖かく、夏涼しいという自然環境に恵まれ、
一年を通して露地栽培ができる、自然を生かし
た農業を営んでいる。
総面積は神奈川県内で第 22 位なのに対し、
経営耕地面積は神奈川県内で第4位と農地の割
合が高い。経営耕地面積のほとんどが畑(全体
キャベツの露地栽培
の 96%)となっている。
また、全国各地の経営耕地面積が減少傾向に
ある中で、三浦市においては谷戸を埋める等の
農地造成が進み、今も増加傾向にある。
これだけの規模でまとまって畑が展開されて
いる地域は、北海道を除くと全国でも稀少であ
ることに注目する必要がある。特に、東京大都
市圏近郊では、三浦地域のみなのである。
毘沙門周辺の農地
④三浦の産業(漁業と漁港)
三浦市は三方向を海に囲まれており、自然に漁業とかかわってきた。中でも三崎漁港は
江戸時代より港町としてにぎわい、次第に漁港としての整備が進み、遠洋漁業基地として
の景観が形成されてきた。
三浦市の東西 6.8Km、南北 9.4Km、面積 31.44K㎡の中に市営漁港が5港6地区もあ
る。その風景は自然と一体となっており、中でも間口漁港間口地区や毘沙門漁港、初声漁
港は、昔ながらの沿岸漁業の
漁村
の風景がそこにある。
三崎漁港
間口漁港
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
58
⑤都市景観
・住居系
戦災復興区画整理により基盤が整えられた旧市街地やかつての住まいを残す落ち着きあ
る旧集落など、三浦市には多様な住宅地景観が形成されている。
第一種低層住居専用地域(高さ制限 10m)が市街化区域約 780 ㎡のうち約 250 ㎡(約
3割)を占めており、比較的低層な町並みが多い。
また、建築協定が市内に6箇所あり、低層かつ区画整理された閑静な住宅街が広がり、
敷地内には植栽もあり良好な住宅景観を形成している。
また、三浦市には都内のように高層ビルなどが密集しているわけでもなく、市内全域を
見ても圧迫感を感じられるような場所が少なく、ゆったりとした印象の街並みが形成され
ている。
ただし、線引き以前からの、既成市街地である三崎港周辺地区では古い住宅がひしめき
あうように建てられ、生活道路は狭く迷路の様に入り組んでいる。一団の開発により作ら
れた地域ではないので、猥雑とした雰囲気の街並みを形成している。味わい深い小路や歴
史ある寺社など心和む景観もあるが散在しているため、まとまりがない印象である。
海岸線沿いは風致地区の指定により、高さや色彩、壁面線や緑地率などが制限されてい
るので、海岸沿いは目立った建築物が少なく良好な景観が保たれている。
しかし一方では、風致地区から外れた場所に、突出した高さや色彩の建築物など、住宅
景観と調和しない要因が生じている。
閑静な住宅街
三崎港周辺地区の住宅地
・工業系
三浦市は準工業地域および工業地域が市街化区域の5%しか存在しなく、場所も三崎港
沿いに限られる。よって、景観を損なうような工場等は少ないと思われる。
古くからある工場が多数を占め、今でも三浦の歴史を感じさせる景観を形成している。
三崎漁港の影響を受けながら発展したため、食品製造業や船舶関係の工場が多い。港に
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
59
面した所には、比較的大規模な工場が立ち並んでいるが、海より離れるにしたがって、町
工場的な工場による工業地域が形成されている。
また、三浦半島と城ヶ島を結ぶ城ヶ島大橋は壮大で、工業地域の中でランドマーク的な
景観要素を持っている。
三崎港沿いの工業地域
船舶関係の工場
・商業系
三浦市には、三浦海岸駅周辺の中心商業地をはじめ、幹線道路沿いの商業地や日々の暮
らしを支える地域の商店街など、多様な個性ある商業地景観が形成されている。
特に、三浦海岸駅周辺は、観光客を迎える玄関口として、賑わいと活気のある景観を創
出している。駅周辺にありがちな屋外広告物や高層建築物は少なく、田舎らしい市街地を
形成している。
また、三崎地区は線引き以前にすでに出来上がっていた商業地のため、低層な建築物が
それほど広くない道路沿いに、ひしめく様に立ち並び商店街を形成している。また蔵作り
建築物も目を引く。
一方、周辺と調和しない建築物や屋外広告物、電柱や電線類、放置自転車など、商業地
景観と調和しない要因が生じている。
三浦海岸駅周辺
三崎港周辺
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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2.三浦市における景観形成に関する状況や課題
(1)市民の意識や価値観
今年度実施した三浦市未来のまちづくりアンケートの結果によると、市民の中では、景
観づくりのあり方について自然環境を守る規制の導入を求める声が多い。全体的な傾向と
して、市民の中で景観の保全・改善について重要であるという意識は高いようである。現
状の風致地区についても、現在の良好な景観を守るため今後とも今の区域を維持すべきで
あるという答えが高い割合を占めている。これらから、景観に対する市民の意識はさほど
低いというわけでなく、現状の三浦市の景観を維持・保全するために何かしらの規制は必
要であるという市民の声は多いというのが現状である。
出所:三浦市 都市部 計画整備課
図Ⅲ−1
三浦市未来のまちづくりアンケート
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
61
(2)行政の役割
①市民の関心を高める活動
景観形成に対して大切なのは、まず市民が景観に対して関心をもつこと。そのために、
行政は広報紙・ホームページ等で情報を常に景観について情報を発信するよう努めていく。
そして美観のための活動をおこなうことにより、市民ひとりひとりの関心のレベル・価
値観を高めていくことが必要である。
②市民活動の支援
行政は、市民活動に対して有効な諸制度の情報の提供等、出来る限りの支援をおこなう
こと。時には、景観について市民が参加し意見交換のできる機会をつくることも必要であ
り、市民活動の仕組みづくりをおこなうことも大切である。
③景観について方策の検討・立案
市民と共に、外部からの意見を取り入れながら景観について調査・研究し、実現可能な
レベルの景観形成のための方策や計画を立案していく。市民と行政が一体となった方策で
あることが大切である。
④景観について規制及び誘導
良い景観形成のためには、行政は市民・事業者における建築行為や開発等に対して、一
定の基準を設けて規制またはより良い景観形成へ誘導する必要がある。今ある景観の保全、
新しい景観の創出に向けて、行政はその姿勢を明確に示していかなければならない。
⑤先導的な景観整備
行政が主体となり、率先して景観に配慮した事業整備をしていくことは市民や事業者へ
行政の意志・姿勢を示す意味でも重要なことである。これらは、市民の声を反映した整備
であることが重要であり、決して行政独りよがりのものであってはならない。
(3)景観形成、美観運動の状況
三浦市における景観形成や美観運動について具体的な例を以下に挙げる。
・スカベンジ運動
『スカベンジ』とは『ごみ拾いをする』という意味。三浦市ではこの活動を広く市民へ
呼びかけている。この活動を頻繁に実践することによりまちをきれいにし、そのきれい
なまちを維持していく。平成 18 年度からは、学生ボランティアと協働による活動や、
民間企業によるスカベンジイベントを誘導していく等その活動の幅を広げている。
・三浦海岸桜まつり
三浦海岸駅から小松ヶ池までの約1kmの沿道に、約 1000 本の河津桜を植樹し『三浦
海岸桜まつり』と称して来遊者、観光客の目を楽しませている。主催者は市民団体『三
浦海岸まちなみ事業協議会』。この沿道を桜で満開にしようと8年前に植樹したもので
ある。年々桜も大きくなり、沿道沿いの菜の花とともに2月∼3月頃に美しい景観が
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
62
形成されている。
・マリーゴールド事業
三浦市が 2001 年から 2003 年の間におこなった事業のひとつ。街並みを花いっぱいで
形成することと、病害虫駆除に効果のあるマリーゴールドを栽培することで低農薬野
菜の産地をPRすることが目的であった。幹道路沿いの畑 439 箇所、学校・公共施設
などプランター2300 鉢のマリーゴールドを咲かせ、観光客の目を楽しませた。
どの活動・運動も市民の支持・協力がないと成立しないものであり、これらを定着させ
るためには地に足がついた活動が必要不可欠となる。
3.望まれる 10 年後の三浦市の景観像
本市の場合、三浦市の「景観」の特徴である、起伏に富む美しい自然系景観、農地や漁
港、農漁業集落や港町集落などの産業に関わりの深い景観などの素晴らしい景観を再発見、
再認識し、
「除くべき景観」、
「守るべき景観」、
「つくる、導くべき景観」に分類し、それを
再構築することにより、住む人が望む「美しい景観を」を『景観遺産』として後世に伝え
ていくべきものが望まれる 10 年後の景観像である。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
63
望まれる 10 年後の三浦市の景観像について
除くべき景観
散乱ごみ、廃屋、不法投棄、放置自転車
放置された産業器具・資材、違法駐車
守るべき景観
守るべき景観
・変化に富んだ海岸線(砂浜、断崖、岩礁、入り組
・変化に富んだ海岸線(砂浜、断崖、岩礁、入り組
んだ湾、干潟)
んだ湾、干潟)
・入り組んだ谷戸と台地
・入り組んだ谷戸と台地
・特徴ある残された自然による景観(地形、地質、
・特徴ある残された自然による景観(地形、地質、
生態系、植生)
生態系、植生)
・多様な自然環境が織り成す複合景観
・多様な自然環境が織り成す複合景観
・眺望景観(東京湾、房総半島、相模湾、箱根・丹
・眺望景観(東京湾、房総半島、相模湾、箱根・丹
沢山系、冨士山)
沢山系、冨士山)
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
・野菜畑による緑の台地
・野菜畑による緑の台地
・遠洋漁業基地
・遠洋漁業基地
・農漁村
・農漁村
・建築協定による良好な住宅景観
・建築協定による良好な住宅景観
・ランドマーク景観(城ヶ島、城ヶ島大橋)
・ランドマーク景観(城ヶ島、城ヶ島大橋)
つくる、導くべき景観
屋外広告物、公共建築物、
周囲との調和(色彩、高さ、空間)
植栽、植樹、アート、サイン
現
在
10 年後
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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城山町から富士山を臨む
三崎下町から城ヶ島大橋を臨む
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
諸磯湾に浮かぶヨット
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
菊名から三浦海岸を望む
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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ⅣⅣ
4つの提言
1.屋外広告物の規制・誘導
∼「できることから」∼
(1)屋外広告物法の改正にあたり
2005(平成 17)年の景観法の施行に伴い、屋外広告法も改正された。この改正では、景
観行政団体が屋外広告物条例を策定して、区域や物件を定めて広告物の表示を禁止するこ
とが可能になった。この制度により、全国でも各市町村が独自で条例を定め、それぞれの
地域に見合った規制をかけていく姿勢が強くなっている。
三浦市でも平成 19 年度に景観行政団体に加入する予定であり、この制度を利用すること
が可能となる。これは三浦市がより良い景観を形成するにあたって、まず始めに取り組む
べきことであると考えられる。
(2)現在の三浦市の状況
三浦市は、幸い他の市町村に比べ屋外広告物が非常に少ない。除去数は年に数十件程と
少なく県内でもトップクラスに入る。多いところでは年に 1,000 件以上のところもある。
また、許可数も年に 60 件ほどと極めて少ない。
このことからも、三浦市は屋外広告物の観点から、非常に恵まれた場所であるといえる。
良好な景観を実現する上で、屋外広告物はとても重要な要素になってくる。他の市町村で
も実際に困っている状況で、規制を厳しくするなどの措置をとっている市町村も増えてき
ている。そういった状況の中で、三浦市はまだ屋外広告物が浸透しておらず、特段景観を
損なうような看板等も少ない。
(3)今後の三浦市の取り組みと課題
現在、屋外広告物条例に関しては、三浦市はまだ権限委譲を受けておらず、神奈川県が
許可や除去を行っている。しかし、景観法の施行に伴い屋外広告物法が一部改正され、市
町村の役割が強化された。今後三浦市は景観行政団体に加入し、景観計画、景観条例を策
定していく予定である。景観行政団体に加入すれば、今までは都道府県の条例の中で行っ
ていたものが、各自治体で条例を策定することができる。これは、景観計画を策定し、良
好な景観を実現する上で大きな強みになってくる。
よって、全国の市町村でも屋外広告物条例は独自で策定し、景観計画、景観条例とうま
くリンクさせる傾向が強くなっている。
今後、三浦市でも屋外広告物条例は神奈川県から権限委譲を受け、独自で条例を定め、
独自の視点や規制の下で三浦市らしい良好な景観を保っていくことが求められる。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
68
(4)独自で条例を策定した場合
①景観計画、景観条例とリンクさせて三浦市独自の区域、規制を策定することができる。
②除去の観点から、現在は業者に委託して行っているが、権限委譲を受けると除却協力
員を市民で構成でき、より効率が良くなる。
③違法広告物を早期発見でき、迅速な対応ができる。
2.支援、応援の取り組み
∼「やるきのある所から」∼
景観法はこれまでの法律のように上から規制するのではなく、地域住民に景観形成が委
ねられている性質の法律であるため、市民が主体的に景観形成に取り組んでいくことが最
も必要である。
現時点では三浦市が景観に関する規制や誘導に積極的には取り組んでこなかったこと
もあり、市民の景観に対しての取組みは、わずかな地域で行われているだけである。
景観後進市といえる三浦市では、まず市民に景観に関して興味をもって貰うことと、景
観法によって何が出来るのかを理解して貰えるように啓発活動を実施することが急務であ
ると言えよう。三浦市が行う景観まちづくり活動に対する支援については、当初の啓発活
動は景観についての情報提供を主題に全市的に実施する。しかし啓発活動以後の景観まち
づくり活動への支援については、
【市民が主体的に景観形成に取り組む】ことを念頭におい
て支援するか否かを判断する。判断基準は市民のやります・やりたいんだけどという意思
表明(発意)をもって、
「やるきのあるところ」として判断し支援を行うことが適当である
と考える。
ただし、これに対応するためにも市民の発意を的確に受け止めるための仕組み、景観ま
ちづくり活動に対する支援システムの構築が必要である。参考例として、
「 ふじさわ景観ま
ちづくりフォーラム 2007」で紹介されたシステムを示す。
取組み・活動の進化と、それに応じた参加プログラムの提
供
取市
り民
組の
み
支
援
策
支
援
母
体
景観への関心の
芽生え
景観まちづくり
の活動開始・組
織づくり
景観まちづくりの
組織拡大・ネット
ワーク化
景観まちづくり
のネットワーク
の核となる組織
・情報提供
・タウンミー
ティング開催等
によるきっかけ
・情報提供
・技術支援
・場の提供
・情報提供
(他の団体の活動
等)
・交流機会の提供
・専門会議
・政策提言機会
の創出
当
面
位
置
づ
け
行 政
連携
将
来
景観整備機構
行 政
出所:ふじさわ景観まちづくりフォーラム 2007
配布資料
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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3.モデル地域における取り組み
∼「わかり易い方法で」∼
三浦市内に景観モデルとなる地域を設定する。モデル地域とは、率先して景観形成のた
めのルールづくりや実践を進めていこうという地域である。行政は、市民が景観について
発言できる場面づくりや、景観に対する情報の提供等を協力していく。モデル地域ならで
はの景観に対する独自なルールづくりも積極的におこない、学生や芸術家からの意見もと
りいれていきたい。
モデル地域を市民と行政によりつくりこむ事によって、その景観形成の整備手法やノウ
ハウは他の地域でのモデルとなり、さらなる展開へつながる。また美しく形成されたモデ
ル地域の景観は、視覚的に景観に対する市民の意識向上の啓発をもたらす。
設定するモデル地域は以下の通りである。三浦市のなかで人が集まる地域、いわば『顔』
である3箇所を設定した。
・三浦海岸駅周辺
先に述べた『三浦海岸桜まつり』のようにすでに景観形成コミュニティの基盤はで
きつつあり、景観への関心は市内の中でも高い。モデル地域として整備は比較的し
やすい地域である。以前にくらべ人数は減少したものの、いまだ多数の観光客が来
遊する場所でもある。そこで駅から海岸までをモデル地域として想定する。
【整備の一例】
□ 市民・鉄道事業者・商店街事業者・行政が一体となった美化運動
□ 駅から海岸までの道路、歩行者(観光客)への景観配慮(舗装色、植栽)
□ 沿道の店舗、看板等の色彩の統一
□ 駅前広場への季節ごとの演出
□ 海岸線の眺望に配慮した建築物・工作物の規制
□ 海岸線道路の舗装色による演出
・三崎口駅周辺
京浜急行の終点駅であり、ここから三崎、城ヶ島方面へ来遊する観光客も多い。し
かし現状の駅周辺の景観はとても美しいとはいいがたい。観光客をもてなすために
も良好な景観形成に向けて整備をする必要がある。そこで、駅周辺から市内へ向か
う道路沿いをモデル地域として想定する。
【整備の一例】
□ 駅前広場のベンチ・バス停のデザインの統一
□ 市内マップ・案内板へのデザイン統一
□ 市民コミュニティによる花壇づくり
□ 市内へ向かう道路沿いをアクセスロードとして整備(街路樹、防護柵)
□ 農産物直売所の色彩、デザイン配慮
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
70
・三崎公園バスターミナル周辺
おいしいマグロ、その他産物を求めて、休日になると三崎周辺の飲食店には市外か
ら多くの人々が集まる。これらの人々に配慮した空間とするためにも、三崎公園バ
スターミナル周辺景観を整備する必要がある。猥雑なイメージの街並みを、統一感
のあるにぎやかな街並みへと整備する。そこで、三崎港とうらりを一体のモデル地
域として想定する。
【整備の一例】
□ ベンチ、歩道柵、舗装などデザイン・色彩の統一
□ ランドマークの設置
□ 総合案内板・マップのデザイン配慮
□ 海辺への眺望配慮
□ 店舗や飲食店の看板
色彩統一
□ 自販機類の独自なデザイン
4.三浦市景観審議会(審査会)の設置
∼「外からの視点、発想も入れて」∼
三浦らしい「景観」については、行政と住民の対話によって積み上げていくことが、そ
の過程、結果とともに大切ではあるが、
「景観」は見る人の価値観によって捉えられること
が多いので、ある人にとって「美しいもの」であっても、別の人にとっては「美しくない
もの」と感じる場合がある。より多くの住民との対話により客観性は高めることは可能で
あるが、そこに住んでいる、あるいはその場所をいつも見たり、感じたりしている人はそ
れに慣れてしまうことにより、本来その人のもつ感性が鈍る場合も往々にしてある。
そこで「外からの視点、発想も入れて」という観点で、外部の有識者、専門家などによ
る『三浦市景観審議会(審査会)』を設置し、色彩・デザイン、造園(風景計画)、都市計
画、建築、写真など、景観に関わるさまざまな分野からの専門家、女性の積極的登用、近
年になって転入してきた住民などの委員により構成されるような組織に意見や考えを求め
ることが望ましい。
景観審議会(審査会)の活動内容としては、景観条例の策定・見直し、景観計画の策定・
見直し、大規模開発に対する指導・助言、公共事業に対する指導助言、屋外広告物規制の
作成・見直し、景観に関する施策に対する指導・助言などが考えられる。
既に同様の審議会、委員会を設置している例として、近隣では横須賀市、鎌倉市、逗子
市、茅ヶ崎市等がある。特に興味ある活動内容としては、茅ヶ崎市において、湘南海岸沿
いに計画されている 14 階建てマンション問題で、マンション計画の高さとボリュームを
具体的にイメージするために、茅ヶ崎市景観まちづくり審議会と茅ヶ崎市により、平成 18
年 1 月 25 日、マンションと同じ高さ(約 45m)までバルーンを揚げて景観への影響を調
査した事例である。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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三浦市においても、実際の現地踏査や写真画像、シミュレーション画像などを活用する
ことで、
「わかり易い方法で」の景観の価値観の共有や景観に対する意識の醸成が可能にな
る。
実現化に向けて、以上の4つの提言は、いずれも「景観」に対する首長の強い意思をも
った旗振りを中心とした、市民や企業の参加、協働による取り組みが不可欠である。
10 年後の三浦市にとっての土地利用とは
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所感
みうら政策研究所所長
日端
康雄
土地利用チームのテーマとして景観を取り上げたことは、十年後を視野に入れた中長期
の三浦市の経営基盤の再構築という点では極めて適切な選択であると考えている。これか
らの国民生活の中では文化や自然環境の価値がますます重視されるようになると考えられ
る。景観はまさに文化的価値であり、景観の保全、創造は、豊かな成熟社会を目指す21
世紀の日本の願いである。景観法が成立した背景にもこのことがある。とりわけ、自然景
観は都市景観以上に貴重と思われ、一度破壊されてしまうと、現代の複雑な社会の諸力の
なかでは復元は極めて困難である。巨額のコストを要することは例をあげるまでもない。
景観は単に保全とか規制とかいった取り上げ方ではなく、市場社会、市民社会の中で評
価されその制度が組み入れられていく方策を明らかにすることが重要である。とりわけ、
首都圏のなかで三浦がその独自性を高めつつそうした方向を高めていくのが目指すべき方
向であり、三浦にはその潜在的可能性があるのである。それを顕在化していくことは絶対
に必要と考えられるからである。
しかし、景観問題にはいくつかの本質的課題もあり、それをどう乗り越えるかを我々は
これからも考えていかなければならない。たとえば、1)景観の評価は、理性というより
は感性で測られる面があり、合理的な価値の決定が難しい。2)景観保全、創造には土地
に関わる私権、つまり所有権とぶつかる。所有権の保護は憲法規定にあり、戦後長く土地
利用の公共性に対しては私権は強く保護されてきた。現在の法制度では、公共性の軽重に
応じて公共介入の度合いを判断する傾向があり、生命財産の保全には最も強い公共介入、
強い規制や財政措置などがあてられる。しかし、景観保全というのは、公共性の位置づけ
としてはまだ曖昧である。裁判所の判例も増えてはいるが、所有権との関係では現行法が
優先する以上、曖昧な公共性の認定のもとで、どこまで私権保護の塀を乗り越えられるか
が問題である。
弱者救済や国民経済といった大きな公共性に対して、もうひとつの大きな公共性は市民
全員の利益に対応していると考えれば、議会での独自の決定や直接投票などで市民の意向
を問い、たとえば、4分の3以上の合意があれば強い公共性にならないか。このためには
市長の強い指導性も必要である。
景観の保全、創造の可能性は、これからも様々な角度から、実践され、議論していくこ
とで拡げられていくことが期待される。
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