舞台『彼女の言うことには。』東京公演レポート ドラマや映画、CM など多方面で活躍する女優として、またバラエティー番組で見せる気さ くな人柄でも幅広い層から人気を集める真矢みき。映像作品での美しいたたずまいはもち ろん、宝塚歌劇団出身の真矢のもう 1 つの魅力は、一度舞台に立てば芝居に笑いにとサー ビス満点に魅せる“舞台役者”ぶりにある。 『ロングバケーション』、 『ビューティフルライ フ』など多くのヒットドラマを手掛けた脚本家・北川悦吏子との初仕事である『彼女の言 うことには。』でも、それは同様。共演の筒井道隆や矢田亜希子とのやりとりを通して等身 大の女性を生き生きと演じることで、このキャスト勢ならではのチャーミングな恋のドラ マが完成した。5 月上旬、東京公演後半の様子をお伝えする。 主人公の夏来(真矢)は、パリに住む年下の恋人(瀬川亮)からのメールを待ちながら東 京行きの飛行機に乗り込む。恋の終わりを予感している夏来は食事も睡眠も上の空だが、 偶然隣合った是枝(筒井)も同じく浮かない顔つき。キャビン・アテンダント(矢田)が 興味しんしんに見守るなか、約 12 時間のフライト中に少しずつ会話を始める 2 人。最初は 反発しながらも、それぞれフラワー・アレンジメントと作曲家として奮闘している事情を 知るうち、ある感情が夏来と是枝を包んでいき…。 前半、真矢が演じる夏来は慌しく荷物を出し入れしたり、機内食でビーフが無くなって恨 めしそうに隣の是枝(最後の 1 つをゲット)を見つめたりと、少々“イタい”女性として 描かれる。それでも観客に「あるある」と共感させてしまうのは、どこか純粋さを感じさ せる真矢自身の存在感ゆえだろう。相手役の筒井も最初は仏頂面なのが、そんな真矢につ られるように笑顔になってゆくのがリアル。終盤、尚も言い募る夏来に対し、いつのまに か楽しそうな表情を浮かべている是枝。言い合いの言葉が恋の戯れに変わるサジ加減の巧 さは、このコンビならではと感じ入った。 ちなみに先の“ビーフ”のくだりや夏来のとある“熱唱”、是枝の破顔するシーンなど、芝 居の細かい部分は真矢と筒井の間合いによって毎回変わるのだとか。時に観客を笑わせ、 北川作品らしい“恋の格言”を散りばめつつ、肩の力を抜いて舞台を泳ぐキャストたち。 美しい立ち姿と耳に響く声で、これが初舞台とは思えない落ち着きを見せる矢田も含めて、 抜群のチームワークの良さが伝わってくる。終演後に劇場を出れば、心地よい初夏の風。 束の間の恋の気分に浸りながら帰途に着いた。
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