Available Information Report for Corporate Management 経 営 情 報 レ ポ ー ト 第 44 号 「説得力」「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの 実行ポイント 1 論理思考は相手と理解しあうための思考の共通基盤 2 論理思考のための基本スキル 3 論理思考をビジネスの場面で活用した事例 森田 務 公認会計士事務所 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 論理思考は相手と理解しあうための思考の共通基盤 1│論理思考は相手と理解しあうための思考の共通基盤 最近、日本でもビジネスマンのスキルとして、論理思考が重要視されるようになってき ました。もともと欧米では、高校の授業に組み込まれるほど一般的な素養です。欧米に限 らず、インドや中国など多民族で構成される社会では、それぞれ生活規範や常識が異なり ます。しっかりと自分の意思を持ち、それを正しく表現する手段を身につけていないと自 分の存在や生活が危うくなることもあります。そのような環境において、論理思考は身を 守るための必須スキルであるといっても過言ではありません。 ビジネスマンとしても業種や業態はもとより、社風の異なる企業や、価値観の異なるお 客様との間で、論理思考を共通基盤として活用すれば、合理的なコミュニケーションが実 現します。 論理思考は、あくまで思考のための方法です。自分の思考をしっかりと確立することも 大切ですが、どんなに素晴らしい考えでも、頭の中にとどめておくだけでは周囲に対して 役立てることができません。アウトプットしてはじめてその価値が認められるからです。 ビジネスの現場では、「考える」にとどまらず、アウトプットしないと意味がありません。 このレポートでは、アウトプットまでを強く意識し、下記をテーマとしています。 「論理思考」+「コミュニケーション」=「ロジカル・コミュニケーション」 単に知識や教養として身につけるのではなく、是非実践してその効果を実感し、その具 体的なアウトプットの方法を体得して下さい。 ■あなたの論理思考度チェック 以下の質問に対して、「あてはまる」と思った場合には、チェックして下さい Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 「なぜ?」と問われると、返答に困ることが多い 思いついたことをそのまま話してしまう 大事なことを最後に言う癖がある 一方的に話してしまう傾向が強い 人の話をじっくり聞くことができない アイディアは良くても、それ以上の具体的な段階まで進まない 「話が飛躍する」と言われたことがある 「話がわかりにくい」と言われたことがある 新しい仕事を始める場合、どこから手をつけてよいかわからない 感情的に反応することが多い □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 0∼1 A 既に論理思考に慣れているか、元々備えている 2∼3 B ほぼ論理思考を備えている 4∼ C やや論理思考に欠けている 1 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント ■論理思考が欠けている人の傾向 ●論理的な飛躍がある ●言葉が足りない ●結論がハッキリしない ●重要な内容と些末な内容が混在する ●話の主体性が見えない ●短い単語、句、センテンスを用いる ●話の内容が連鎖的に変わる ●文章の途中で話をやめたり、沈黙する 2│論理思考の2本柱は「検証」と「根拠」 では、ロジカル・コミュニケーションにおける「論理思考」とは何なのでしょうか。 冒頭にも紹介しましたが、欧米の高校で学習する論理思考は「Critical Reasoning」と呼 ばれます。Critical には、「批判的な」という訳もありますが、ここでは「あら捜しをす る」というような意味です。一方、Reasoning は「理由付け」です。 言い換えると、論理思考とは下記のことをいいます。 (考えを)十分に検証する (主張に対して)根拠をしっかりと揃える あるテーマに対して、深く考えたり、考えをまとめあげていく際に、頭の中だけで展開 するのは誰にとっても至難の業です。堂々巡りになったり、途中で空中分解してしまいが ちです。 皆さんは複雑な物事を理解するとき、普段どのようにしていますか。ごく自然に、図に 描いて理解しているのではありませんか。ビジネスの世界には、「図」「ネットワークダイ アグラム」 「フローチャート」など図解ツールがたくさんあります。論理思考のためにも「ロ ジック・ツリー」や「マトリクス」など、いくつかの図解ツールがあります。 皆さんが物事を考えるとき、推論を司る脳の領域が活性化します。記憶領域もアクティ ブになります。頭の中だけにとどまらず、思考の過程で、自分の考えをいったん自分の外 へアウトプットし、再び目でインプットすることで、脳の視覚領域も働かせることができ ます。脳の様々な機能を動員することで、短い時間でより多くのフィードバックを得るこ とができ、精度の高い結果に近づけていくことができます。最近、理解を深めるために「見 える化」することの効用がよく話題になっていますが、脳の仕組みから考えても理にかな っています。 2 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 3│論理思考の基礎技術 論理思考を行うのに必要な基礎的な技術として、4つの項目を説明します。 ●MECE ●演繹法 ●帰納法 ●ピラミッド・ストラクチャー はじめの3つは論理思考を実践するには欠かす事ができないものです。4つめの「ピラ ミッド・ストラクチャー」は、 「演繹法」 「帰納法」よりも一歩進んだ内容となっています。 応用を知ることも大切ですが、基礎がしっかりしていないと応用はできません。論理思考 を極めるには、まずはこの基礎理論が重要です。 4│論理思考の活用法 論理思考は日常の様々な場面で使う機会があります。 下記のような場面で、論理思考によって論理的に考え、分析し、わかりやすく伝える必 要があります。ぜひ論理思考を実際の場面で活用してみて下さい。 ●情報収集 ●コミュニケーション ●商談 ●報告書/資料 ●プレゼンテーション 等 3 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 論理思考のための基本スキル 1│MECE ∼モレなく、ダブりなく∼ (1)MECEとは 論理思考の基礎技術で最も重要なものがMECEです。MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは、 「各事柄間に重なりがなく、全体として漏れがない」 状態のことで、「ミーシー」と呼ばれます。 例えば、「人」を「男」と「女」に分けると、それはMECEとなります。 一方で、 「旅行」を「国内旅行」と「海外旅行」と「日帰り」に分類すると、明らかに重 複があります。 「パソコンのOS」を「Windows」と「Mac OS」に分類すると、 「Linux」 が抜けてしまいますので、漏れが発生します。 【 MECEな例 】 【重なりのある例】 【漏れのある例】 人 旅行 PC OS 男 女 海外旅行 国内旅行 日帰り旅行 Windows Mac OS Linux MECEは同じ対象でも分け方が幾通りもあります。例えば、東京から大阪までの交通 手段をMECEに分けると、陸路、海路、空路という分け方や乗り物を使うか、使わない かという分け方もできます。 基本的には「AとA以外」という分け方をすれば確実にMECEになります。これを繰り 返すことによってMECEで細かく切り分けていくことができます。 4 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント (2)MECEに分けることの重要性 問題に対する原因や方策を考えるのに、何の根拠もなくバラバラに事柄を羅列しても、 なかなか解決策は見出せません。また、適当な羅列ではダブリによって時間をロスしたり、 モレによって最重点項目が抜ける場合があります。そのため、MECEの考え方を段階的 に適用していき、物事の解決策を見出すことが重要になってきます。MECEを段階的に 見ていくプロセスは後述のピラミッド・ストラクチャーで構成します。 (3)MECEでないことの弊害 MECEに切り分けられていないと起こる不都合はいろいろとあります。例えば、東京 都・埼玉県をエリアとする営業所で、営業マンの担当区分を東京都の顧客、埼玉県の顧客、 大規模顧客という分け方をすると、大規模顧客担当と各府県担当との間で、顧客の取り合 いが起こります。逆に、お互いがお見合いをしてしまって大規模顧客をカバーできなくな る可能性もあります。 担当区分を3つに分けるのなら、東京都の小規模顧客、埼玉県の小規模顧客、大規模顧 客などのようにMECEに分けておくと、上記のような非効率的なことは発生しません。 2│演繹法 (1)演繹法とは 演繹法とは、一般論やルールに観察事項を加えて、必然的な結論を導く思考方法のこと です。三段論法とも言われます。演繹法には次のようなものがあります。 ル ー ル : 「この事務所で働いているのはAさんとBさんである。」 観察事項 : 「一人帰って、事務所にはあと一人しかいない。」 観察事項 : 「事務所にいるのはAさんだ。」 結 : 「帰ったのはBさんだ。」 論 (2)演繹法を用いる際の留意点 演繹法を用いる際に陥りがちな落とし穴がいくつかあります。そのため、自分の思考が 落とし穴に陥っていないか、他人の思考が落とし穴に陥っているのではないか、という観 点で結論を疑ってみることが必要です。 5 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 一 般 論 : 「顧客へのサービスが豊富なら大きな利益が得られる」 実施事項 : 「コストをかけて、顧客へのサービスを充実させた」 結 : 「自社の利益は増加するだろう。」 論 この場合、顧客へのサービスを豊富にさせるためにコストをかければ、利益減につなが る可能性があります。サービスを簡素化して利益を出している会社があることを忘れては いけません。 3│帰納法 (1)帰納法とは 帰納法とは、いくつか観察される事項から一般論を導く思考方法のことです。帰納法に は例えば次のようなものがあります。 観察事項1:「A市場は伸びている」 観察事項2:「A市場の競合は少ない」 観察事項3:「A市場では自社の強みが生かせる」 結 論:「A市場に参入しよう」 帰納法は、演繹法と違い自動的に結論が導かれることはないので、主張が弱すぎないよ うに、かつ論理が飛躍しないように想像を働かせる必要があります。 上記の例で、 「A市場は魅力的だ」というのも正しい結論ですが、少し主張に弱いところ があるので、 「A市場に参入しよう」と結論づけました。逆に「A市場に参入すれば、自社 は 10 年安泰だ」だと飛躍しすぎていることになります。もし、10 年安泰であることを言 いたいのであれば、もう少し情報を集める必要があります。 (2)帰納法を用いる際の留意点 演繹法と同じく、帰納法を用いる際にもいくつか落とし穴があります。 次の事例は演繹法の場合と同じで観察事項が間違っているため、結論も間違ってしまう という状況です。 6 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 「愛知県は海に面している」 「岐阜県は海に面している」← 間違った情報 「三重県は海に面している」 →「愛知、岐阜、三重の東海三県は全て海に面している」← 間違った結論 この場合、岐阜県は海に面していないのに、海に面しているという間違った情報から結 論が出されているので、結論自体も間違ったものになっています。 4│ピラミッド・ストラクチャー (1)ピラミッド・ストラクチャーとは ピラミッド・ストラクチャーとは、主張とその根拠や、問題点とその詳細をピラミッド 構造にしたものです。ピラミッド・ストラクチャーは、ロジック・ツリーとも呼ばれます。 ピラミッド・ストラクチャーの構成要素はMECEであることが基本です。 下図はピラミッド・ストラクチャーの例です。 大阪から東京へ行くための交通手段は、陸路、空路、海路と分けることができます。陸 路はさらに電車、車、徒歩、バイク、自転車……と分けていくことができます。さらに電 車なら新幹線、在来線に分けていくことができます。さらに新幹線なら自由席、指定席(あ るいは禁煙席、喫煙席)に分けられます。 ■ピラミッド・ストラクチャー事例 ⇒ 大阪から東京へ行くための交通手段にはどんなものがあるか? 空路 陸路 電車 新幹線 指定席 通路側 徒歩 在来線 自由席 窓側 飛行機 自動車 自家用車 レンタカー 海路 ヘリコプター 船 泳ぐ クロール キーになる箇所 はとことん掘り 下げる バタフライ 重 要度の低 い箇所 は あまり掘り下げない 7 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント ピラミッド・ストラクチャーにすることで、方法を網羅的に考えることができます。 実際にピラミッド・ストラクチャーを構成するときは重要なところだけ掘り下げます。 例えば、大阪から東京に行くのにクロールで行くかバタフライで行くかを真剣に検討して も仕方ありません。 しかし、原因究明や問題解決のためには、いらないと思う部分もピラミッドの上位の方 で網羅したほうがよいでしょう。検討した上で切り捨てるのと、始めから検討しないのと では大きな違いがあるからです。 (2)ピラミッド・ストラクチャーの効果 ①問題の全体把握が容易 ピラミッド・ストラクチャーを広く、深く構成すると問題の全体像が明確になります。 全体像が把握できると、最有力だった案がダメになっても、別の案をすぐに検討できると いうメリットがあります。また、広く検討した上での最善の結論であるということがわか りやすいので、交渉やプレゼンテーションでの説得力が増します。 ②議論のズレを修正できる 先述の例でいうと、 「新幹線の自由席」と「レンタカー」の優劣を論じても、お互いの階 層が異なるので優劣を比較できません。この場合は、 「電車」と「車」といった同じ階層の もので優劣を論じる必要があります。先述の例ではまずありませんが、実際の場面では階 層のずれたところで議論を戦わすことがよくあります。 ③議論の目的がはっきりする ピラミッド・ストラクチャーの頂点に問題があるため、議論の目的がはっきりします。 先述の例では、 「大阪から東京までの交通手段」を導くという目的がはっきりしていますが、 ピラミッド・ストラクチャーができていないと「新幹線を選ぶ」ことが目的になりかねま せん。あるいは、議論がいきなり「在来線」と「新幹線」の比較になりかねないところを ピラミッド・ストラクチャーで防ぐことができます。 8 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 論理思考をビジネスの場面で活用した事例 1│短時間で趣旨を説明する習慣を身につける (1)エレベータートークとは ビジネスの場面では、限られた時間で言いたいことをわかりやすく相手に伝えることが 頻繁に求められます。エレベータートークとは、エレベーターに乗っている程度の時間(30 秒∼1分程度)で言いたいことの要旨を述べ、相手に理解してもらうことです。 語源は、アメリカのシリコンバレーで、起業家がベンチャーキャピタルや投資家の勤務 するオフィスのエレベーターの前で待ち伏せをして、偶然エレベーターに乗り合わせたふ りを装い、短時間に自らの事業内容の魅力を伝えることに成功し資金調達にこぎつけたと いうサクセスストーリーからきています。 では、実際にエレベータートークの事例を使って解説します。 (2)エレベータートーク事例 あなたは、アメリカの本社から来日したCEOに、日本での新商品Nの投入に関する戦 略を報告しなければなりません。しかし、CEOは多忙で、唯一のチャンスはエレベータ ーに一緒に乗るわずか 30 秒ほどです。報告する内容は下記のとおりです。 ①新商品Nの物流拠点は買収により対応可能である。 ②高い技術力は、対競合との優位性構築のために不可欠な要素である。 ③新商品Nは海外では販売されているが、日本国内では規制により販売できなかった。 しかし、国内ニーズは高く、規制緩和が行われれば、大きな市場が形成されるだろう。 ④海外で新商品Nと同じような商品を扱っている会社の収益性は高い。 ⑤自社の技術力は業界でもかなり高い。 ⑥スムーズな配送が他社との優位性構築のために不可欠である。 ⑦新商品Nの規制緩和が次年度から施行されることが決定した。 ⑧優位性を確保できる物流拠点の買収がもうすぐ完了する。 さて、30 秒で報告するには、どのようにまとめたらよいでしょうか。例題の解答例に至 るまでのプロセスを順に考えていきます。 9 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント ①MECEとピラミッド・ストラクチャーを意識する まず重要なのは、与えられた情報をいかにグルーピングし、ピラミッド・ストラクチャ ーを構成するかです。論理的思考の基礎を身に付けるには、非常に重要な作業になります。 ②ピラミッド・ストラクチャーを作る 情報を整理しただけでは、実況中継に過ぎません。そこから一歩踏み込んで「どうする べきか」という解釈をする必要があります。 ここでは「新商品Nを投入すべき」という仮説を立て、根拠を3C(自社:Company、 競合:Competitor、市場・顧客:Customer)でグルーピングして階層を掘り下げていく と、ピラミッド・ストラクチャーは下図のようになります。 ●自社:情報①②⑤⑥⑧ ●競合:情報④ ●市場:情報③⑦ Nを投入すべき 競争優位性がある 技術力で優位性がある 物流で優位性がある 情報②⑤ 情報①⑥⑧ Nの収益性が高い 市場が拡大する 情報④ 情報③⑦ そして、このグループ分けした中で、それぞれどのようなメッセージが抽出できるのか を考えます。もちろん抽出したメッセージは、結論をしっかりサポートできるものでなく てはいけません。 この作業では、演繹法か帰納法を用いることになりますが、大抵の場合は帰納法を用い ることになります。ビジネスの情報の中で、演繹法のように必然的な結論が出ることは少 ないからです。 ここでは、「新商品Nを投入すべき」という解釈で問題ないことがわかります。 10 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント ③導き出された論理展開を文章化する 先述のピラミッド・ストラクチャーから導き出された論理展開を文章にまとめると次の ようになります。 「日本での新商品Nは早期に投入すべきです。その理由は3つあります。 ①高い技術力と物流拠点の構築で自社競争優位性があること ②他社が同等品で高い収益をあげていること ③規制緩和による市場拡大が見込めることです。 新商品Nの投入をご承認下さい。」 重要なことは結論から話すことです。これにより相手は次の論理構成をスムーズに受け 入れることができます。結論から話すということは非常に重要で、これだけで論理的思考 力を鍛えられると言われています。 次に結論の根拠を述べる際に、始めにいくつあるか言っておくと相手はポイントを押さ えて聞き取ることが可能になります。 ④論理展開する際の留意点 この例題を出されたとき、最初に「新商品Nを投入すると高い収益が得られます」で話 し始めました。しかし、これだけでは説得力が弱いという指摘を受ける可能性があります。 なぜなら、 「高い収益が得られる」だけでは、具体的にどうアクションするかという方法 が見えないのです。 また、結論を後回しにして、 「新商品Nは競争優位性があり、高い収益が得られ、規制緩 和による市場拡大により……。」というのも聞き手には伝わりません。 11 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 2│ロジカル・コミュニケーションを進める上でのポイント (1)自分が話し手の場合 人に何かを伝えるときには、聞き手に「期待する反応」が重要となります。この「期待 する反応」こそが、論理思考の基礎技術で説明した「結論」となります。つまり、聞き手 から「期待する反応」を導き出すためには、どういった「根拠」をもってきて、どういう 論理を使えばいいかを意識してコミュニケーションをするのです。 結 論 Why So? 根拠1 根拠2 根拠3 結論を導き出した理由 この際「根拠」としては、 「重複や漏れ」が無い(つまりMECEとなっている)ように 注意する必要があります。同様に「根拠」と「結論」の間に、 「話しの飛びがなく、流れが 明瞭である」ことが必要です。更に「根拠」と「結論」との間の「論理」が正しいことを 守れば、相手に期待する反応が実現できるでしょう。これによりロジカル・コミュニケー ションが実現できます。 (2)自分が聞き手の場合 逆に、自分が聞き手である場合には、 「自分に期待される反応」を想定した上で、自分が 話すのと同様にMECEで聞くようにすることです。このときに「重複や漏れ」あるいは 「話の飛びや流れの不明瞭さ」があれば、話し手に質問をすれば、ロジカル・コミュニケ ーションが実現できます。 <参考文献> ■ロジカルシンキングが身に付く入門テキスト 西村 克己 著 中経出版 2003 年 ■3分でわかるロジカル・シンキング 大石 哲之 著 日本実業出版社 2008 年 12 企業経営情報レポート 「説得力」 「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 企業経営情報レポート 「説得力」「営業力」の強化に役立つ 論理的コミュニケーションの実行ポイント 【著 者】日本ビズアップ株式会社 【発 行】森田 務 公認会計士事務所 〒630-8247 奈良市油阪町456番地 TEL 0742-22-3578 第二森田ビル 4F FAX 0742-27-1681 本書に掲載されている内容の一部あるいは全部を無断で複写することは、法律で認められた場合を除き、著 者および発行者の権利の侵害となります。 13 企業経営情報レポート
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